【DRY-RUN】主 文 原判決を破毀し、本件を広島高等裁判所に差し戻す。 理 由 弁護人中川鼎上告趣意第一点「高等裁判所の判決に於ては判示犯罪事実中三の事 実を認定するに当り
主 文 原判決を破毀し、本件を広島高等裁判所に差し戻す。 理 由 弁護人中川鼎上告趣意第一点「高等裁判所の判決に於ては判示犯罪事実中三の事 実を認定するに当りAに対する司法警察官の第二回聴取書中同人の判示三と同旨の 供述記載ありとして(証拠説明六参照)右聴取書を証拠に援用せり。然れども被告 人は右高等裁判所の公判に於てはAとの共謀の事実を否認しAは被告人に無断で、 即ち被告人の意思によることなくA単独の意思でBに対し投票依頼の目的で金百円 を供与したものなりと供述して居り、之が立証の為当弁護人から右Aを証人として 喚問され度旨証拠調の申請を為しているのである。然るに同裁判所は右申請に対し 別段証人の喚問に付困難な事情もないのに之を却下して居るのであつて之を畢竟す るに供述者たるAを公判期日に於て訊問する機会を被告人に与へなかつたものと謂 はなければならない。而も同裁判所は右Aの供述を録取した書類である聴取書を証 拠として援用して居るのであるが此は日本国憲法の施行に伴ふ刑事訴訟法の応急的 措置に関する法律第十二条の規定に反し、被告人に供述者を訊問する機会を与うる ことなく証人の供述を録取した書類を証拠として援用したことになるのであつて違 法なることは明であると信ずる。」というのである。 原判決は、所論のように判示三の事実を認定するに当り、Aに対する司法警察官 の第二回聴取書中の同人の供述を証拠として採つている。しかるに、本件記録によ れば、原審において弁護人は、右供述者Aを証人として訊問の申請をしているにか かわらず、これを却下し供述者を公判期日において訊問する機会を被告人に与えな いで、前記聴取書を証拠として採つたことは明かである。従つて、原判決は、所論 のように刑訴応急措置法第十二条に反した違法があるから、本件上告は理由がある。 を公判期日において訊問する機会を被告人に与えな いで、前記聴取書を証拠として採つたことは明かである。従つて、原判決は、所論 のように刑訴応急措置法第十二条に反した違法があるから、本件上告は理由がある。 同上告趣意第二点は「原判決は擬律の項の末段に於て「C事D」外四名に交付し - 1 - た金品は返還を受けて居るので之を没収すべきであるが被告人所有の他の金品と混 合して没収出来ないので衆議院議員法第百十四条に依り被告人から其の価額五百二 十円を追徴することとすると判示して居る。然れども被告人がC事D(判示犯罪事 実の四)に対して供与したものは金百円に過ぎず、その他の四名に対しても判示事 実の各記載に照し各金百円宛を供与したのに過ぎない事は明であつて以上の合計は 金五百円に過ぎない。果して然らば被告人から金五百二十円を追徴し得ないのは別 に論を俟たないところであるが斯る違法は当然判決に影響を及ぼすものであるから 此の点に於ても原判決は破毀さるべきものと信ずる。」というにある。 原判決末尾においては「供与金品の内B、C事D、E、F、Gに交付した金品は 返還をうけて居る」として金五百二十円の追徴を命じたのであるが、事実認定の部 において前記五名に交付した金は所論のように金五百円に過ぎない。成程Dに対し ては外に時価一個約十円の靴クリーム二個を供与した旨の記載があるが、原判決の 表示によればDと、C事Dとは住所をも異にし同名異人であるから、C事Dに靴ク リーム二個(価二十円)を供与した事実は原判決の認めていないところであり従つ て同人から返還をうけたという事実も考えられない。この点で原判決の前後の事実 認定は齟齬している。それかといつて「C事D」とあるはDの誤記であると本件の 場合には速断することもできない。原判決はこの点においても違法があり上告は理 由がある。 なお、原判決は 原判決の前後の事実 認定は齟齬している。それかといつて「C事D」とあるはDの誤記であると本件の 場合には速断することもできない。原判決はこの点においても違法があり上告は理 由がある。 なお、原判決は、判示第三の事実を他の事実と連続一罪として単一刑をもつて、 処断し、Bに対する供与金をも追徴したものであるから、前記各違法は、判決に影 響を及ぼすこと明かであるから、原判決全部は破毀を免れない。 よつて、刑事訴訟法第四百四十七条第四百四十八条の二に則り主文の通り判決す る。 この判決は、裁判官全員の一致した意見である。 - 2 - 検察官福尾彌太郎関与。 昭和二十二年十二月十五日 最高裁判所第一小法廷 裁判長裁判官 真 野 毅 裁判官 沢 田 竹 治 郎 裁判官 斎 藤 悠 輔 裁判官 岩 松 三 郎 - 3 -
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