昭和48(行ウ)100 恩給請求棄却処分無効確認請求事件

裁判年月日・裁判所
昭和50年1月22日 東京地方裁判所
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判決文本文10,182 文字)

○ 主文本件訴えを却下する。訴訟費用は原告の負担とする。○ 事実第一当事者の求めた裁判一原告 1 被告が亡Aのした公務傷病恩給請求につき、昭和一八年五月一日付でした右請求を棄却する旨の裁定処分は無効であることを確認する。2 訴訟費用は被告の負担とする。二被告(本案前の申立て)主文と同旨(本案の申立て) 1 原告の請求を棄却する。2 訴訟費用は原告の負担とする。第二当事者の主張一原告の請求原因 1 原告は訴外亡Aの妻である。右Aは昭和二六年五月一六日死亡した。2 右Aの軍歴は次のとおりである。(一) 昭和九年二月一三日、召集され、現役兵として工兵第一一大隊に入隊し、昭和一〇年一一月三〇日、現役満期となり、予備役に編入された。(二) 昭和一二年七月三日、演習召集のため工兵第一一連隊に応召し、同月二四日、召集解除となつた。(三) 昭和一二年八月二一日、充員召集のため工兵第一一連隊に応召し、同年九月二日、中支貴腰湾に上陸して日支事変に従軍していたところ、同年一二月二五日、次期作戦のため移動することとなり、台湾防寮に上陸したが、昭和一三年三月一八日、帰還することとなつて高雄港を出港し、同月二二日、坂出港に帰着して、同月三一日、召集解除となつた。(四) 昭和一三年九月二八日、再び臨時召集を受けて二兵第一一連隊留守隊に勤務していたが、翌昭和一四年一一月三〇日、現役に採用され、昭和一五年四月一日には、営外居住を命じられていたところ、翌一六年九月二七日、肺結核により善通寺陸軍病院に入院し、同年一二月一二日、公務に起因する疾病により永久服役免除となり、旧軍人を退職したものである。3 ところで、Aは、昭和一三年四月中旬ごろ、右肺尖浸潤に罹患し、その後、前述のように、軍務に服役中の昭和一六年九月一〇日ごろ、肺結核が再発し、永久 永久服役免除となり、旧軍人を退職したものである。3 ところで、Aは、昭和一三年四月中旬ごろ、右肺尖浸潤に罹患し、その後、前述のように、軍務に服役中の昭和一六年九月一〇日ごろ、肺結核が再発し、永久服役免除となつて退職したのである。 人を退職したものである。3 ところで、Aは、昭和一三年四月中旬ごろ、右肺尖浸潤に罹患し、その後、前述のように、軍務に服役中の昭和一六年九月一〇日ごろ、肺結核が再発し、永久 永久服役免除となり、旧軍人を退職したものである。3 ところで、Aは、昭和一三年四月中旬ごろ、右肺尖浸潤に罹患し、その後、前述のように、軍務に服役中の昭和一六年九月一〇日ごろ、肺結核が再発し、永久服役免除となつて退職したのである。Aの右の罹病は、同人が中国における戦闘参加により発病したものであつて、前示のごとく公務に起因することは明らかである。4 そこで、Aは、昭和一八年二月二五日付で、被告に対して公務疾病による恩給請求をしたところ、被告は、昭和一八年五月一日付で、右罹病を公務に起因して発病したものではないとして右請求を棄却する旨の裁定処分をした(以下本件棄却裁定処分という。)。1 ところが、Aは、右請求に際して、同人の履歴書一通、その発病状況を詳述して発病が公務に起因するものであることを明らかにした事実証明書二通、公務に起因するとの発病の原因及び経過・現症状を詳述して病状の程度が昭和二三年に廃止される前の恩給法施行令(大正一二年勅令第三六七号)二四条所定の第六項症に該当するものであるとした恩給診断書一通並びに発病当時の症状と経過を詳述した診断書一通を添付していたのであるから、それらによれば、Aの罹病が公務に起因すること及び右罹病状況が前記の恩給法施行令二四条にいわゆる第六項症に該当することは明らかであり、同人のその後の病状から見て第四項症にも該当するものであつた。ところが、被告は、他にこれを覆すに足りる何らの資料もないのに、本件棄却裁定処分をしたのであり、右処分は重大かつ明白な瑕疵があるというべきであつて無効である。5 よつて、原告は、被告がAの恩給請求につき昭和一八年五月一日付でした本件棄却裁定処分が無効であることの確認を求める。二被告の答弁及び反論 1 被告の本案前の主張原告は、本訴において、Aの請求に係る傷病恩給請求 、被告がAの恩給請求につき昭和一八年五月一日付でした本件棄却裁定処分が無効であることの確認を求める。二被告の答弁及び反論 1 被告の本案前の主張原告は、本訴において、Aの請求に係る傷病恩給請求に対して被告がした本件棄却裁定処分の無効確認を求めるものであるが、仮に、原告主張のように、Aの疾病が公務に起因するものと認められ、同人に対し傷病恩給を給すべきものとされる場合においても、その恩給受給権は、一身専属的性質を有するものであるから、同人が昭和二六年五月一六日に死亡したことにより消滅したものであり(恩給法九条一項一号)、あとはその遺族の第一順位者である妻たる原告が右傷病恩給を受ける権利を取得するのみである(同法一〇条)。 分の無効確認を求めるものであるが、仮に、原告主張のように、Aの疾病が公務に起因するものと認められ、同人に対し傷病恩給を給すべきものとされる場合においても、その恩給受給権は、一身専属的性質を有するものであるから、同人が昭和二六年五月一六日に死亡したことにより消滅したものであり(恩給法九条一項一号)、あとはその遺族の第一順位者である妻たる原告が右傷病恩給を受ける権利を取得するのみである(同法一〇条)。ところが、恩給受給権は、給すべき事由が生じた日から七年間これを行使しないときは時効によつて消滅するところ(同法五条)、現在においてはAが死亡してから七年間以上経過しているから、原告自身の恩給受給権はすでに時効によつて消滅していることは明らかである。また一方、Aの恩給受給権も、前述のようにその死亡により消滅しているのであるから、結局、本訴において本件棄却裁定処分が無効であることを確認しても、原告は回復すべき何らの権利・利益を有していないというべきであつて、原告には本件棄却裁定処分の無効確認を求める法律上の利益はないといわなければならない。従つて、本件訴えは却下を免れないものである。2 請求原因に・対する被告の認否及び反論(一) 請求原因1、同2の事実はいずれも認める。但し、Aの発病が公務に起因しているとの事実は否認する。同3の事実のうち、昭和一三年四月中旬Aが右肺尖浸潤に罹病したこと及びその後軍務に服役中昭和一六年九月一〇日ごろ再発して肺結核となり、永久服役免除となつて同年一二年一二日退職したことは認めるが、その余の 事実のうち、昭和一三年四月中旬Aが右肺尖浸潤に罹病したこと及びその後軍務に服役中昭和一六年九月一〇日ごろ再発して肺結核となり、永久服役免除となつて同年一二年一二日退職したことは認めるが、その余の事実は否認する。同4の事実のうち、Aが昭和一八年二月二五日付で公務傷病による恩給請求をしたこと、被告が同年五月一日付でAの右罹病は公務に起因するものではないとして右請求を棄却したこと及び右請求に際して原告主張のようにAの病状について記載した診断書、事実証明書が添付されていたことは認めるが、その余の主張は争う。同5の主張は争う(二) 請求原因に対する被告の反論(本件棄却裁定処分の正当性)(1) 恩給法四六条(昭和二八年の改正前の恩給法四六条ノ二を含む。)により傷病恩給が給されるためには、「公務のため」に「傷病を受け」または「疾病に罹つた」もの、すなわち公務起因性がなければならない。 右請求に際して原告主張のようにAの病状について記載した診断書、事実証明書が添付されていたことは認めるが、その余の主張は争う。同5の主張は争う(二) 請求原因に対する被告の反論(本件棄却裁定処分の正当性)(1) 恩給法四六条(昭和二八年の改正前の恩給法四六条ノ二を含む。)により傷病恩給が給されるためには、「公務のため」に「傷病を受け」または「疾病に罹つた」もの、すなわち公務起因性がなければならない。そして、右公務起因性とは、公務と傷痍・疾病との間に相当因果関係があることを要するものである。(2) ところで、肺結核は結核菌が人体に侵入して体組織に定着したとき感染といわれ、定着した結核菌が増殖してその毒性の緩和が人体の抵抗力に打ちかつた時に発病といわれるものである。当該結核病の公務起因性の認定については、個々の発病経緯についての医学上の検討と共に、当該疾病につき、(イ)感染が公務上のものかどうか、(ロ)発病の誘引が公務上のものかどうかの検討を要する。ところで、右(イ)の点の判断は、実際上は非常に困難であるが、結核病棟勤務者などの場合は、その勤務により感染したと推定ができるものである。また、右(ロ)の点の判断も過重な業務のほかに日常の生活、気候などのさまざまな誘因がありうるので、その認定は非常に困難であるが、右の過重な業務が発病ないし症状の増進の原因と認められる場合 のである。また、右(ロ)の点の判断も過重な業務のほかに日常の生活、気候などのさまざまな誘因がありうるので、その認定は非常に困難であるが、右の過重な業務が発病ないし症状の増進の原因と認められる場合においては、当該結核病の公務起因性が肯定できるであろう。(3) また、肺浸潤とは、肺に何らかの原因によつて白血球、細胞、浸出液などの浸潤が起つた状態であり、必ずしも結核性のものばかりではなく、ビールス性、がん性、白血病性など種々のものがあるが、その公務起因性の認定についても、前記の(イ)及び(ロ)に準じて考えることができる。(4) 従つて、結核性肺浸潤及び肺結核に罹患した旧軍人については、(1)結核病棟等の勤務者など、結核の感染及び発病の予見可能性が高い公務に従事していた場合で、当該感染及び発病に公務起因性が認められる場合、(2) 健康有害作用が当然予想される戦地・事変地の勤務が誘因となつて発病ないし症状増進を招来した場合で、当該発病などに公務起因性が認められる場合に公務傷病恩給を給すべきである。 考えることができる。(4) 従つて、結核性肺浸潤及び肺結核に罹患した旧軍人については、(1)結核病棟等の勤務者など、結核の感染及び発病の予見可能性が高い公務に従事していた場合で、当該感染及び発病に公務起因性が認められる場合、(2) 健康有害作用が当然予想される戦地・事変地の勤務が誘因となつて発病ないし症状増進を招来した場合で、当該発病などに公務起因性が認められる場合に公務傷病恩給を給すべきである。(5) そこで、請求原因一2掲記の軍歴及び病歴を前提にして、Aの発病の公務起因性を検討すると、同人は、昭和一三年五月六日から同年七月八日まで病名「右肺尖浸潤」で宇和島市立病院に入院しているが、右「右肺尖浸潤」が結核性であつたとする確かな証拠はない。また、右病院の診断書(甲第六号証)によれば、同年六月一七日頃には症状が軽快し、七月上旬には発熱も消えているのであり、約六〇日の入院加療の結果軽快退院して、退院時には治癒したものと推定される。従つて、Aの昭和一三年四月発病の肺尖浸潤については、公務起因性は認められるが、最終的に治癒したのであるから、傷病恩給が給される程度(本件では、昭和二三年政令第一二五七号による廃止前の恩給法施行令((大正一二年勅令第三 年四月発病の肺尖浸潤については、公務起因性は認められるが、最終的に治癒したのであるから、傷病恩給が給される程度(本件では、昭和二三年政令第一二五七号による廃止前の恩給法施行令((大正一二年勅令第三六七号))二四条、二四条ノ二に規定する程度)に達していないことは明らかである。(6) 次に、昭和一六年九月に発病の肺結核について検討するに、Aが昭和一三年七月八日宇和島市立病院を退院し、同年九月二八日応召して軍務に従事中、昭和一六年九月に肺結核に罹病するまでの健康状態については、営内居住時には毎月概ね一回の身体検査を受け、営外居住になつてからは適宜に身体検査を受けていたものであり、その間、昭和一四年一一月現役採用時における身体検査に合格しているのであるから、そのころは健康であつたことが明らかである。昭和一六年九月ごろからAの肺結核が発病し、善通寺陸軍病院に入院したのであるが、同月一〇日ごろから、咳漱、喀痰、日哺潮熱、全身倦怠が始つており、入院時には空洞形成が出現しているが、それは右約三か月の入院加療により消失しているのであるから、右空洞は入院時以前さほどの期間を遡らない時期に生じたものと認められる。 役採用時における身体検査に合格しているのであるから、そのころは健康であつたことが明らかである。昭和一六年九月ごろからAの肺結核が発病し、善通寺陸軍病院に入院したのであるが、同月一〇日ごろから、咳漱、喀痰、日哺潮熱、全身倦怠が始つており、入院時には空洞形成が出現しているが、それは右約三か月の入院加療により消失しているのであるから、右空洞は入院時以前さほどの期間を遡らない時期に生じたものと認められる。従つて、Aの肺結核の発病時期は、右入院時から二、三か月遡る昭和一六年六月ごろないし同年七月ごろと推定されるのである。ところが、Aは、昭和一三年九月に入隊以来、結核病棟等の勤務に従事したこともなければ、戦地または事変地に勤務したこともないのであつて、同人の右発病につき公務起因性を認めることはできない。三原告の再反論 1 被告の本案前の主張に対する原告の反論恩給受給権は、本来一身専属の権利であるから、特別の規定のない場合、本人の死亡により本人のした恩給請求手続は効力を失うものであるが、法に特別の規定のある場合は、本人の死亡によつてもなお恩給請求が効 恩給受給権は、本来一身専属の権利であるから、特別の規定のない場合、本人の死亡により本人のした恩給請求手続は効力を失うものであるが、法に特別の規定のある場合は、本人の死亡によつてもなお恩給請求が効力を持続しうるものである。すなわち、恩給法一〇条によれば、「恩給権者死亡シタルトキハ其ノ生存中ノ恩給ニシテ給与ヲ受ケサリシモノハ之ヲ当該公務員ノ遺族ニ給シ(後略)」と規定してあるのであり、同法一〇条ノ二の規定と合せ解釈すると、本人が生存中恩給請求をし、これに対する裁定はなされたが未だ裁定に従つた恩給支給のないうちに本人が死亡したとき、または、右恩給請求に対し末だ裁定がされないうちに本人が死亡したときは、いずれも同法一〇条ノ二の規定による遺族の恩給請求をまたず、遺族に恩給を支給すべきであることを規定したものであることは明白である。してみると、本人の恩給請求は、本人のためにされたことは勿論であるが、その遺族のためにもされたものであつて、本人が死亡したことによつて、請求の効力が消滅するものではなく、本件の場合、被告は遺族のためにAの恩給請求に対して有効な裁定をなすべき義務を負うものであるから、被告の主張は失当であり、Aの恩給権は時効により消滅しておらず、原告が本件棄却裁定処分の無効確認を求める法律上の利益は、なお存するものというべきである。 人の恩給請求は、本人のためにされたことは勿論であるが、その遺族のためにもされたものであつて、本人が死亡したことによつて、請求の効力が消滅するものではなく、本件の場合、被告は遺族のためにAの恩給請求に対して有効な裁定をなすべき義務を負うものであるから、被告の主張は失当であり、Aの恩給権は時効により消滅しておらず、原告が本件棄却裁定処分の無効確認を求める法律上の利益は、なお存するものというべきである。2 被告の反論に対する原告の再反論(一) 原告の反論2(二)(1)の事実は認め、同(2)ないし同(4)の事実はいずれも不知、同(5)、同(6)の主張は全部争う。(二) 仮に、被告の主張するような公務起因性に関する裁定基準があるとすれば、それは失当というべきであるすなわち、公務中に発病ないし症状増進の事実があれば、特別の事情(例えば私的事由により負傷した等)がない限り、公務に起因したものと推定するのが合理的であ 準があるとすれば、それは失当というべきであるすなわち、公務中に発病ないし症状増進の事実があれば、特別の事情(例えば私的事由により負傷した等)がない限り、公務に起因したものと推定するのが合理的であり、因果関係の認定に際してそれ以上の厳格さは不必要である。また、Aの昭和一三年五月発病の肺尖浸潤は公務に起因するものであるから、昭和一六年九月発病の肺結核はその再発であり、かつ、その原因は繁忙な内地勤務によるものであることが明らかである。以上のとおりであるから、Aの場合、前述の特別の事情がない限り、公務と疾病との間には因果関係を認めるのが相当である。第三証拠(省略)○ 理由一 1 まず、原告が本件棄却裁定処分の無効確認を求めるについて、法律上の利益を有するか否かにつき検討する。原告の主張によれば、旧軍人であつた原告の亡夫Aは、公務により肺尖浸潤あるいは肺結核に罹患し、それが原因となつて昭和一六年一二月一二日に旧軍人を退職したので、昭和一八年二月二五日付で被告に対し公務傷病恩給の請求をしたところ、被告は同年五月一日付で本件棄却裁定処分をしたのであるが、その後、Aは昭和二六年五月一日に死亡したというのであり、右事実のうち、Aの疾病が公務によることのほかは、いずれも当事者間に争いがない。2 ところで、恩給権は、法令所定の給与事由の発生とともに発生し、恩給請求に対してされる被告の認容裁定処分によつて具体的に確定し、それに基づいて現実に支給され、恩給権者の死亡など恩給法九条所定の事由の発生により消滅するものであるところ、恩給権者の死亡によつて恩給権が消滅した後は、同法七二条、七三条以下の規定により、その遺族が扶助料の給付を受けるものとされていることなどに照らすと、恩給法上、恩給権は民法上の相続の対象とはならないものと解されるのである。 もに発生し、恩給請求に対してされる被告の認容裁定処分によつて具体的に確定し、それに基づいて現実に支給され、恩給権者の死亡など恩給法九条所定の事由の発生により消滅するものであるところ、恩給権者の死亡によつて恩給権が消滅した後は、同法七二条、七三条以下の規定により、その遺族が扶助料の給付を受けるものとされていることなどに照らすと、恩給法上、恩給権は民法上の相続の対象とはならないものと解されるのである。そして、 滅した後は、同法七二条、七三条以下の規定により、その遺族が扶助料の給付を受けるものとされていることなどに照らすと、恩給法上、恩給権は民法上の相続の対象とはならないものと解されるのである。そして、恩給法一〇条は、恩給権者が死亡した場合、その生存中の恩給で公務員(恩給権者)が未だ給与を受けていないものについては、特に、その遺族または遺族がないときはその相続人が給与を受けるものと規定している。なお、同法一〇条ノ二においては、その場合を具体的に分けて手続を明らかにしており、すなわち、同条第一項によれば、恩給権者の死亡前すでに発生している恩給権で死亡した恩給権者が未だ恩給の請求をしていなかつたものは、遺族または相続人が自己の名をもつて死亡者の未給与恩給を請求できるものであり、また、同条第二項によれば、死亡した恩給権者の生存中の恩給で、すでに恩給権者の恩給請求に対して被告の認容裁定処分がなされ、具体的に確定しているものについても、遺族または相続人が自己の名をもつてその支給を受けることができるとされている。このように、恩給法上、恩給権者の死亡により、それ以降の恩給権は相続の余地なく消滅するが、同法一〇条、一〇条ノ二の規定の趣旨を総合すれば、死亡した恩給権者に生存中の未給与恩給があるときは、それはすべて遺族または相続人が自己の名をもつて(すなわち自己の恩給権として)その給与を受けることができるものと解することができるのである。3 そこで、本件の場合を考えてみるに、仮に、原告主張のように本件棄却裁定処分が無効であるとするならば、Aの昭和一八年二月二五日付の恩給請求に対して被告の裁定処分が未だされていない状態になるのであり、前記の恩給法一〇条ノ二第一項が直接規定する場合と同法一〇条ノ二第二項が直接規定する場合の中間に位置するものということができる。し 給請求に対して被告の裁定処分が未だされていない状態になるのであり、前記の恩給法一〇条ノ二第一項が直接規定する場合と同法一〇条ノ二第二項が直接規定する場合の中間に位置するものということができる。 二五日付の恩給請求に対して被告の裁定処分が未だされていない状態になるのであり、前記の恩給法一〇条ノ二第一項が直接規定する場合と同法一〇条ノ二第二項が直接規定する場合の中間に位置するものということができる。し 給請求に対して被告の裁定処分が未だされていない状態になるのであり、前記の恩給法一〇条ノ二第一項が直接規定する場合と同法一〇条ノ二第二項が直接規定する場合の中間に位置するものということができる。しかしながら、前述のとおり、死亡した恩給権者の生存中の未給与恩給はすべてその遺族または相続人が自己の名をもつて給与を受けるものであるから、仮に、Aの生存中に恩給権が発生していたとしても、その未給与恩給については、同法一〇条二項、七三条一項により、妻として第一順位の遺族である原告が自己の名をもつて給与を受けることとなるものである。この場合、Aはさきに昭和一八年二月二五日付で恩給請求をしているが、同人が死亡したことにより、同人の恩給権自体が消滅し、それに応答する途はなくなつたのであるから、右恩給請求自体の効力も消滅したものと解するほかはなく、従つて、この場合は、死亡した恩給権者が未給与恩給につき恩給請求をしなかつた場合と同様になるのであり、原告は改めて同法一〇条ノ二第一項に基づき自己の名をもつて被告に右未給与恩給の請求をするよりほかはないのである。以上述べたところから考えてみるに、前述のとおり、Aの恩給請求の効力は、同人の死亡により消滅したのであるから、仮に、原告主張のように、本件棄却裁定処分が無効であるとしても、再度被告において裁定処分をやり直す余地がないことは明らかである。更に、前述のとおり、原告自身が別途同法一〇条ノ二第一項により自己の恩給権としてAの未給与恩給を請求することができるのであつて、その請求についてされる被告の裁定処分に対しては、本件棄却裁定処分の存在及びその理由は法律上何ら影響を及ぼすものではないと解すべきであるから、原告は本件棄却裁定処分に全く拘束されることなく未給与恩給の給与を受けることができることとなる。してみると、原告 裁定処分の存在及びその理由は法律上何ら影響を及ぼすものではないと解すべきであるから、原告は本件棄却裁定処分に全く拘束されることなく未給与恩給の給与を受けることができることとなる。してみると、原告において本件棄却裁定処分の効力を争うこと自体何らの実益をも伴わず、結局、原告は本件棄却裁定処分の無効確認を訴求するにつき法律上の利益を有する者ではないといわなければならない。 ることとなる。してみると、原告 裁定処分の存在及びその理由は法律上何ら影響を及ぼすものではないと解すべきであるから、原告は本件棄却裁定処分に全く拘束されることなく未給与恩給の給与を受けることができることとなる。してみると、原告において本件棄却裁定処分の効力を争うこと自体何らの実益をも伴わず、結局、原告は本件棄却裁定処分の無効確認を訴求するにつき法律上の利益を有する者ではないといわなければならない。4 なお、原告は、この点につき、同法一〇条、一〇条ノ二の解釈として、死亡した恩給権者の恩給請求は、本人のためばかりではなく、その遺族または相続人のためにもされるものと解すべきであるから、被告はAが死亡した後もその恩給請求に対して有効な裁定処分をすべき義務を負つていると主張するが、前述のように恩給権の相続が否定される以上、恩給請求手続の承継ということもありえないと解すべきこと当然であつて、被告の認容裁定処分を経ていない未給与恩給については、死亡した恩給権者が生前に恩給請求をしていたとしても、遺族または相続人が改めて自己の名をもつて恩給請求をしなければ被告の裁定処分を受けることができないことは前述のとおりであるから、原告の右主張は採用できない。二以上によれば、原告の本訴は、訴の利益を欠くものであるからこれを却下することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。(裁判官高津環上田豊三慶田康男)

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