主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告が原告に対して平成14年4月26日付けでした平成12年8月1日から平成13年7月31日までの事業年度に係る法人税の更正処分のうち所得金額211万0221円,納付税額41万6700円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。 第2 事案の概要 1 本件は,原告が,平成13年9月19日,平成12年8月1日から平成13年7月31日までの事業年度(以下「平成13年7月期」という。)の法人税の確定申告をしたが,被告が平成14年4月26日付けで更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」といい,両処分を合わせて「本件各処分」という。)を行ったため,本件更正処分のうち原告が申告した所得金額及び納付税額を超える部分及び本件賦課決定処分の取消しを求めている事案である。 2 争いのない事実等(1) 原告は,海洋機器,一般機械,文房具,装身具,日用雑貨の輸出入及び国内販売等を目的とする会社である。 (2) 原告は,住友海上火災保険株式会社(以下「住友海上」という。)との間で平成12年8月30日を始期とする自家用自動車総合保険契約を締結していたが,同年11月20日,住友海上との間で,上記保険契約を変更して,所有しているメルセデスベンツ(登録番号大阪302そ5000)(以下「本件車両」という。)を被保険自動車とし,以下の保険内容とする旨の変更合意をした(以下,変更後の契約を「本件保険契約」という。乙5)。 契約期間平成13年8月30日まで車両保険金額(協定保険価額) 950万円(3) 原告は,平成13年7月22日,本件車両が盗難に遭ったため,同年8月29日,住友海上に対し 」という。乙5)。 契約期間平成13年8月30日まで車両保険金額(協定保険価額) 950万円(3) 原告は,平成13年7月22日,本件車両が盗難に遭ったため,同年8月29日,住友海上に対し,本件保険契約に基づき,車両保険金の支払を請求した。 住友海上は,同年8月31日,原告に対し,969万円(全損盗難950万円,臨時費用10万円及び盗難代車費用9万円)の保険金を支払う旨の通知をした(甲9,乙6)。 住友海上は,同年9月4日までに上記保険金を原告口座に振込送金した(乙6,弁論の全趣旨)(4) 確定申告原告は,別表課税の経緯(法人税)記載のとおり,本件車両の盗難損失937万6000円を,平成13年7月期の損金に計上し(ただし,住友海上からの保険金の支払については同期の益金に計上しなかった。),同年9月19日,同期の法人税の確定申告をした(甲1)。 なお,原告は,住友海上から支払われた保険金969万円を平成14年7月期の益金に計上した。 (5) 本件各処分被告は,平成14年4月26日,原告に対し,本件車両の盗難損失は平成13年7月期の損金に含まれず,別途本件車両の減価償却費として損金算入される224万3208円との差額713万2792円は損金の額に算入されないとして,本件各処分を行い,これを原告に通知した(甲2)。 (6) 不服申立て及び本案訴訟の提起原告は,別表課税の経緯(法人税)記載のとおり,本件各処分を不服として,平成14年6月25日に被告に対して異議申立てを行ったところ(甲3),被告は,同年7月25日,これを理由のないものとして棄却した(甲4)。 原告は,同年8月23日に国税不服審判所長に対し,本件各処分について審査請求をしたが(甲5),国税不服審判所長は,平成15年2月6日,平成13年7月期に本件車両の盗難損失 として棄却した(甲4)。 原告は,同年8月23日に国税不服審判所長に対し,本件各処分について審査請求をしたが(甲5),国税不服審判所長は,平成15年2月6日,平成13年7月期に本件車両の盗難損失及び保険金収入を同時に算入すべきであるとし,本件更正処分に係る所得金額が裁決における認定額を下回るため,結果として本件更正処分は適法であるとして,審査請求を棄却する旨の裁決をし,平成15年2月17日,裁決書謄本が原告に送達された(甲7)。 原告は,これを不服として,同年5月14日,本件訴訟を提起した。 (7) 法人税法基本通達2-1-43(以下「本件通達」という。)の定め本件通達には,以下の定めがある。 「他の者から支払を受ける損害賠償金(債務の履行遅滞による損害金を含む。)の額は,その支払を受けるべきことが確定した日の属する事業年度の益金の額に算入するのであるが,法人がその損害賠償金の額について実際に支払を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入している場合には,これを認める。 (注)当該損害賠償金の請求の基因となった損害に係る損失の額は,保険金又は共済金により補てんされる部分の金額を除き,その損害の発生した日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。」第3 争点及び当事者の主張 1 本件の争点は,原告の本件車両盗難による損失及びこれに対する保険金収入を計上すべき時期である。 2 原告の主張(1) 車両盗難による損失は,本件車両が盗難にあった日である平成13年7月22日の属する平成13年7月期の損金に算入すべきであり,これに対する保険金収入は,住友海上から保険金の支払通知のあった日である同年8月31日の属する平成14年7月期の益金に算入すべきである。 (2) 本件車両盗難による損失及びこれに対する保険金収入の計上時期については,異 入は,住友海上から保険金の支払通知のあった日である同年8月31日の属する平成14年7月期の益金に算入すべきである。 (2) 本件車両盗難による損失及びこれに対する保険金収入の計上時期については,異時両建説が相当である。 法人税法(以下「法」という。)22条は,益金又は損金の額に算入すべき金額は,それぞれ単独でその金額を確定することを予定している。また,盗難損失の場合には,盗難損失の金額から保険金等で補てんされる金額を控除する旨の「別段の定め」は設けられていない。したがって,盗難損失と保険金収入は独立して計上されるべきものである。 最高裁判所昭和60年3月14日判決(税務訴訟資料144号546頁。以下「昭和60年判決」という。)も,原審である東京高等裁判所昭和54年10月30日判決(税務訴訟資料109号127頁)が「所得金額の計算に当たって,同一原因により収益と損失とが発生しその両者の額が互いに時を隔てることなく確定するような場合に,便宜上右両者の額を相殺勘定にして残額につき単に収益若しくは損失として計上することは実務上許されるとしても,益金,損金のそれぞれの項目につき金額を明らかにして計上すべきものとしている制度本来の趣旨からすれば,収益及び損失はそれが同一原因によって生ずるものであっても,各個独立に確定すべきことを原則とし,したがって,両者互いに他方の確定を待たなければ当該事業年度における確定を妨げるという関係に立つものではない。」と判示し,異時両建説を採用した判断を支持している。したがって,同時両建説を採用した最高裁判所昭和43年10月17日判決(税務訴訟資料53号659頁。以下「昭和43年判決」という。)は,昭和60年判決によって変更されたのであり,異時両建説によるべきである。 本件では,保険金収入の計上時期が問題となるとこ 17日判決(税務訴訟資料53号659頁。以下「昭和43年判決」という。)は,昭和60年判決によって変更されたのであり,異時両建説によるべきである。 本件では,保険金収入の計上時期が問題となるところ,保険金収入を益金として計上するには,①保険金の請求に係る原因が適法であるか否か,②保険金の請求手続が適式であるか否か,③保険金の支払の有無及びその金額について,保険会社が調査・確認する必要があり,本件の保険金収入は,住友海上から支払通知のあった平成13年8月31日に保険金収入が確定したというべきであり,同日が属する平成14年7月期に計上すべきである。 (3) 被告は,保険金収入の計上時期も,不法行為による損害賠償金の計上時期と同様に解するべきであると主張するが,損害賠償金は損害による損失を補てんするものであるのに対し,保険金は保険契約に定められた事由による損失を広く補てんするものであり,その支払の基因となる事由の範囲が異なる。また,保険金を支払う者は,その原因(事故,傷害,災害,盗難その他の事由)の当事者ではなく,保険会社であるのに対し,損害賠償金を支払う者は,その損害の原因を生じさせた当事者である。さらに,損害賠償金の額は,損害額と同額であるのに対し,保険金の額は契約で定められた金額であり,必ずしも損害額と同額ではない。 また,被告は,本件通達が保険金の場合にも適用されると主張するが,本件通達の注書は,損害賠償金と保険金とで異なる扱いをすることを予定しており,本件通達は保険金の場合に適用される余地はない。 さらに,被告は,保険事故による損失の発生した事業年度に収入する保険金の額が確定しないような場合には,その生じた損失の額は保険金の確定時まで未決算として処理するか(以下「処理1」という。),将来収入する保険金の額を適正に見積って計上す 生した事業年度に収入する保険金の額が確定しないような場合には,その生じた損失の額は保険金の確定時まで未決算として処理するか(以下「処理1」という。),将来収入する保険金の額を適正に見積って計上すること(以下「処理2」という。)により損益が生じないこととするのが通常である(乙3)と主張するが,車両に盗難保険が付されている場合と付されていない場合において,盗難損失の計上時期が異なることになり妥当でない。また,処理1と処理2については何ら法的根拠がない。 (4) 以上のとおり,本件更正処分は違法であり,それを前提とした本件賦課決定処分も違法であるから,取り消されるべきである。 3 被告の主張(1) 本件車両の盗難損失及び保険金収入は,平成13年7月期の損金及び益金に計上すべきである。仮に,保険金収入が平成13年7月期に確定していなかったとするならば,盗難損失とともに平成14年7月期に計上すべきである。 (2) 不法行為による損害及びこれに基づく損害賠償請求権の計上時期については,①当該損害に係る損失の計上と同時に,これに対応して損害賠償請求権を収益計上すべきであるという同時両建説,②不法行為による損害は加害者に求償し得るから,その求償不能のときに損失が確定したとして損失に計上すべきであるという損失確定説,及び③損失は損失としてその発生時点で計上し,損害賠償金はこれと切り離してその支払を受けるべきことが確定した時点で収益計上すれば足りるとする異時両建説がある。 昭和43年判決は,「横領行為によって法人の被った損害が,その法人の資産を減少せしめたものとして,右損害を生じた事業年度における損金を構成することは明らかであり,他面,横領者に対して法人がその被った損害に相当する金額の損害賠償請求権を取得するものである以上,それが法人の資産を増加させたも して,右損害を生じた事業年度における損金を構成することは明らかであり,他面,横領者に対して法人がその被った損害に相当する金額の損害賠償請求権を取得するものである以上,それが法人の資産を増加させたものとして,同じ事業年度における益金を構成するものであることも疑ない。」,「犯罪行為のために被った損害の賠償請求権でもその法人の有する通常の金銭債権と特に異なる取扱いをなすべき理由はないから,横領行為のために被った損害額を損金に計上するとともに右損害賠償請求権を益金に計上したうえ,それが債務者の無資力その他の事由によってその実現不能が明白となったときにおいて損金となすべき旨の原判示は,犯罪行為のために被った損害を損害賠償請求権の実現不能による損害に置き換えることになるものであるが,犯罪行為に基づき法人に損害賠償請求権の取得が認められる以上,その経理上の処理方法として十分首肯しうるものといわなければならない。」として,同時両建説を採っている。 同時両建説は,損失とそれを補てんする収入とが発生の原因を共通にし,密接不可分の関係にあることから,これらを同一時期に計上しようとするものであり,この考え方は盗難損失と保険金収入にも妥当する。また,本件通達の注書は,損失の全部又は一部が損害保険契約に基づく保険金等によって補てんされるときは,費用収益対応の原則に立ち返り,損失と保険金収入との対応関係を要求しているのであり,保険金の予測可能性及び支払の確実性から同時両建説を前提としている。したがって,盗難損失及び保険金収入は同一時期に計上すべきであり,保険事故が発生した事業年度に収入する保険金の額が確定しない場合は,その生じた損失の額は保険金の確定時まで未決算として処理するか,将来収入する保険金の額を適正に見積って計上すべきである。 本件においても,原告は, た事業年度に収入する保険金の額が確定しない場合は,その生じた損失の額は保険金の確定時まで未決算として処理するか,将来収入する保険金の額を適正に見積って計上すべきである。 本件においても,原告は,本件保険契約で協定保険価額を950万円とする車両価額協定保険特約を締結していた(甲8,乙5)。そして,同契約を締結している場合,車両の全損の場合に保険会社が支払う保険金額は,協定保険価額であると定められている。したがって,本件の保険金収入の発生及びその額は盗難被害の発生と同時に確定しているというべきである。よって,本件車両の盗難損失及び保険金収入は平成13年7月期の損金及び益金に計上すべきである。 (3) 原告は,昭和60年判決を根拠に異時両建説が妥当であると主張するが,同時両建説を採用した昭和43年判決が昭和60年判決によって変更されたものとはいえず,現在も判例は同時両建説を採用している。すなわち,最高裁判所が判例を変更する場合は,大法廷で裁判をしなければならないとされているところ(裁判所法10条3号),昭和60年判決は,第一小法廷において裁判がされている。また,昭和60年判決は,「原審の確定した事実関係の下において,被上告人が被った本件損害は本件事業年度における法人税額の算定上損金の額に算入することができるとした原審の判断は,結局正当であって,所論引用の判例(注:昭和43年判決)に反するものでもない。」と判示しており,昭和43年判決の示した法理を是認しこれを前提としつつ,原審の下した結論を正当としたものであることは明らかである。さらに,昭和60年判決以後の下級審裁判例も,昭和43年判決が判例であるとの理解に基づき,同判決を引用して同時両建説を採用している。よって,昭和60年判決を根拠に異時両建説が妥当であるとする原告の主張は失当である。 決以後の下級審裁判例も,昭和43年判決が判例であるとの理解に基づき,同判決を引用して同時両建説を採用している。よって,昭和60年判決を根拠に異時両建説が妥当であるとする原告の主張は失当である。 また,原告は異時両建説を前提とし,保険金の支払の有無及びその額が確定するのは,保険会社が調査・確認を行った後であると主張する。しかし,本件保険契約上,保険金が支払われない場合とは,車両条項2条から4条まで及び車両価額協定保険特約6条に該当する場合であるが,本件車両盗難において,上記各規定に該当する事情はなく,現に保険金は支払われているのであるから,盗難発生と同時に保険金収入が確定していたといえる。仮に,保険金が支払われない極めて低い可能性をもって,支払通知を受けるまでは保険金収入が確定していないとするならば,本件盗難損失は盗難発生と同時に確定しているとはいえず,本件車両が発見されないことが確定した時期,すなわち,本件車両の発見に要する合理的期間が経過した時期に確定することになる。この場合は本件事業年度の翌事業年度に盗難損失及び保険金収入を計上すべきである。 第4 当裁判所の判断 1 本件車両の盗難損失及びこれに対する保険金収入の計上時期について(1) 盗難による損害は,法22条3項3号の損失に該当し,その事実が生じた時点で被害者である法人の資産を減少させるものであり,その時点で損失を認識することができるから,その損害額は,基本的には,盗難の事実があった日の属する事業年度の損金の額に算入すべきことになる。 一方,法人がその資産について損壊・消滅等の保険事故による損害を補てんするために損害保険を付している場合は,その資産が損壊・消滅したときに,それを原因として保険金が支払われることになる。この場合の保険金は,資産の消滅等を原因として,その事実に基 故による損害を補てんするために損害保険を付している場合は,その資産が損壊・消滅したときに,それを原因として保険金が支払われることになる。この場合の保険金は,資産の消滅等を原因として,その事実に基づいて支払われるものであって,資産の消滅等による対価ともみられるので,保険事故の発生も資産の譲渡に準じて考えることができ,保険金請求権を行使することによって取得すべき保険金額は,同条2項の資本等取引以外の取引に係る収益の額に該当するものと解され,かつ,適正な期間損益の算定という観点からは,費用収益対応の原則に準じて,盗難損失との間に収支対応の関係を認めることができる。 (2) 法22条は,益金の額に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,資産の販売,有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供,無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とするものとし(同条2項),当該事業年度の収益の額及び損金の額は一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算すべきものと定めている(同条4項)。 企業会計原則においては,「すべての費用及び収益は,(中略)その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない。ただし,未実現収益は,原則として,当期の損益計算に計上してはならない。」(第2損益計算書原則1のA)とされており,現金主義に対する意味における発生主義の原則が定められるとともに,未実現収益の計上が禁止されている。また,法22条3項2号は,費用について,当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除くとしている。 したがって,法人税に関し収益を計上すべき事業年度については,所得税法と同様,収入すべき権利が確定した時の属する事業年度の益金の額に算入すべきものと考えられる(いわゆる権利確定主義。最 している。 したがって,法人税に関し収益を計上すべき事業年度については,所得税法と同様,収入すべき権利が確定した時の属する事業年度の益金の額に算入すべきものと考えられる(いわゆる権利確定主義。最高裁判所平成5年11月25日第一小法廷判決・民集47巻9号5278頁参照)。そして,権利の確定とは,権利の発生に加え,権利の実現の可能性が客観的に認識し得る状況になることを意味し,取引の経済的実態から合理的な収益計上基準を是認する余地はあるものの,基本的には,法律上権利の行使が可能となった時点をいうものと解される。 損失と収益とが同一原因によって生ずるものである場合にも,それぞれ独立して確定すること自体は否定されないとしても,盗難による損害発生を原因とする保険金収入については,その損害発生時に法人は保険金請求権を取得する上,本件のような自動車損害保険契約において,保険金請求権を行使することができるのは保険事故発生の時からであること,保険金支払額は保険契約によって定められていること,真実盗難による損失が発生した場合であれば,保険会社が保険金支払債務を履行しない,又は履行できない可能性はほとんど考えられないことからすると,一般的には,保険金請求権は盗難発生と同時に発生し,権利の実現の可能性が客観的に認識し得る状況になったということができる。したがって,一般的には,保険金請求権は,盗難発生時に直ちに確定したものとして,盗難損失を計上すべき事業年度に同時に益金として計上すべきものである。 この点,不法行為に基づく損害賠償請求権は,責任の有無及びその賠償額について当事者の合意又は裁判の確定を待つことが必要な場合があり,その履行についても不法行為者の賠償能力等不確定な要素が多く,権利の確定に時間を要する場合が少なくない。そのことから,本件通達は,損害賠 いて当事者の合意又は裁判の確定を待つことが必要な場合があり,その履行についても不法行為者の賠償能力等不確定な要素が多く,権利の確定に時間を要する場合が少なくない。そのことから,本件通達は,損害賠償金について,原則としてその支払を受けることが確定した時の収益とするが,法人がこれについて実際に支払を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入している場合には,これを認めることとしているのである。 これに対し,前記のとおり,保険金請求権は保険契約によってその発生及び内容が定められていること,保険金支払債務の履行の可能性が極めて高いことから,あらかじめ保険金収入を予測することが可能であり,原則として,盗難発生と同時に権利内容の確定した保険金請求権が発生し,行使が可能になったものと解されるから,保険金収入を盗難損失と同一事業年度の益金として計上すべきである。 本件通達も,その(注)において,損害に係る損失と損害賠償金収入との対応関係を切断することができるとする一方,その損失が損害保険契約に基づく保険金等によって補てんされることとなっているときは,その補てんされる部分については保険金収入等との対応関係を要求しており,その損失を損害の発生した日の属する事業年度の損金の額に算入するときは,保険金収入の額も同一事業年度に計上して,これを控除することを前提としている。これも,保険金が契約に基づいて給付されるものであって,一般にあらかじめ予想することが可能であるし,支払を受け得ないことの方がむしろ稀であろうということを考慮した取扱いであると考えられる(乙1)。 以上によれば,原則として,損失及び保険金収入は同一事業年度に計上するのが相当である。 (3) 本件においては,平成13年7月22日に本件車両が盗難に遭ったのであるから,その時点で原告には車両相当額 以上によれば,原則として,損失及び保険金収入は同一事業年度に計上するのが相当である。 (3) 本件においては,平成13年7月22日に本件車両が盗難に遭ったのであるから,その時点で原告には車両相当額の損失が生じたといえる。 他方,保険金収入については,本件保険契約上,保険金請求権を行使することができるのは盗難事故発生の時からであり(一般条項20条1項5号。甲8),また,本件保険契約には保険金が支払われない場合として車両条項2条ないし4条及び車両価額協定保険特約6条等が定められているが,これらは保険契約者等の故意や地震等,いずれも盗難発生時に判断可能な事情であるところ,本件車両の盗難にはこれらに該当する事情は存在しなかったのであるから,盗難時に保険金が支払われることは確定していたといえる。また,保険金額についても,本件保険契約の車両価額協定保険特約4条1号及び5条1号(甲8)により,被保険自動車の損傷を修理することができない場合は,協定保険価額をもって支払保険金額としており,同特約2条により,その協定保険価額は契約締結時に被保険自動車と同一の用途・車種・車名・型式・仕様・初年度登録年月の自動車の市場販売価格相当額をもって定められているところ,本件車両は盗難により消滅したのであるから修理することができない損傷に該当し,本件車両の協定保険価額である950万円が保険金額となるから,保険金額も盗難時に確定していたものといえる。 したがって,本件の保険金請求権は,盗難時に発生し,権利内容も確定しており,権利実現の可能性を客観的に認識し得る状態になっていたというべきであるから,保険金収入は盗難損失と同一時期に計上すべきである。 原告は,昭和60年判決を根拠に,損失及び収益はそれぞれ確定した事業年度に計上すべきであるとして,盗難損失については平成13 いうべきであるから,保険金収入は盗難損失と同一時期に計上すべきである。 原告は,昭和60年判決を根拠に,損失及び収益はそれぞれ確定した事業年度に計上すべきであるとして,盗難損失については平成13年7月期に,保険金収入については平成14年7月期に計上すべきであると主張する。しかし,昭和60年判決の原審は,損失及び収益が同一原因によって生ずるものであっても,各個独立に確定すべきであることを原則とする旨判示したものであり,損失及び収益が同一時期に確定した場合に,損失及び収益を同一事業年度に計上することを否定するものではない。本件の場合,仮に,原告が主張する異時両建説を前提としたとしても,保険金請求権が盗難発生時に権利内容の確定したものとして発生している以上,盗難損失と同一時期に計上すべきであるから,原告の主張は採用できない。 (4) 以上のとおり,本件車両の盗難損失及びこれに対する保険金収入は,共に盗難時に確定していたのであるから,その損失及び収益を盗難発生時である平成13年7月22日が属する平成13年7月期に同時に算入すべきである。 2 本件更正処分の適法性被告は,本件盗難損失が保険金収入によって補てんされることが明らかであるとして,本件盗難損失の損金算入を認めず,原告の申告所得金額に本件車両の取得価額937万6000円を加算し,本件車両の減価償却費224万3208円を減算し,これを原告の所得金額として平成13年7月期の法人税の更正処分を行った。 前記のとおり,本件車両の盗難損失及び保険金収入は平成13年7月期に計上すべきものであるから,原告の所得金額として本件車両の盗難損失が損金として計上され,他方,保険金収入が益金に計上されることになり,平成13年7月期の原告の所得金額は1161万0221円となるべきところ,本件更正処分による所得金 所得金額として本件車両の盗難損失が損金として計上され,他方,保険金収入が益金に計上されることになり,平成13年7月期の原告の所得金額は1161万0221円となるべきところ,本件更正処分による所得金額は924万3013円であり,これを下回るものであるから,本件更正処分は,上記所得金額の範囲内でされたものとして,適法である。 3 本件賦課決定処分の適法性前記のとおり,本件更正処分が適法である以上,これを前提とした本件賦課決定処分も適法である。 4 以上によれば,原告の請求は理由がないから棄却することとし,訴訟費用について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部裁判長裁判官川神裕裁判官山田明裁判官芥川朋子
▼ クリックして全文を表示