令和元年10月3日判決言渡同日原本受領裁判所書記官平成28年(ワ)第3928号製造販売差止等請求事件口頭弁論終結日令和元年6月7日判決原告株式会社ダブリュー・ビー・トランス 同訴訟代理人弁護士宮川孝広同川口俊之同岩本貴晴同訴訟復代理人弁護士横田紀彦被告大阪高波株式会社 (以下「被告大阪高波」という。)被告ウラックス電子株式会社(以下「被告ウラックス電子」という。)被告武蔵野通工株式会社(以下「被告武蔵野通工」という。) 被告清水電子工業株式会社(以下「被告清水電子工業」という。)被告 P1被告山陽電氣工業株式会社(以下「被告山陽電氣工業」という。) 被告今井電機株式会社(以下「被告今井電機」という。)被告日幸電機株式会社(以下「被告日幸電機」という。)被告西村無線電機株式会社 (以下「被告西村無線電機」という。) 被告渡辺電機株式会社(以 会社 (以下「被告西村無線電機」という。) 被告渡辺電機株式会社(以下「被告渡辺電機」という。)被告有限会社イチデン製作所(以下「被告イチデン製作所」という。)被告中遠電子工業株式会社 (以下「被告中遠電子工業」という。)被告浦川トランス工業株式会社(以下「被告浦川トランス工業」という。)被告鶴田電機株式会社(以下「被告鶴田電機」という。) 被告株式会社保全工業(以下「被告保全工業」という。)被告有限会社国電機製作所(以下「被告国電機製作所」といい,以上16名を合わせて「被告大阪高波ら」という。) 被告大阪高波ら訴訟代理人弁護士柏木千鶴同洞良隆被告東京トランス株式会社(以下「被告東京トランス」という。)同訴訟代理人弁護士寺島哲 同金帝憲同訴訟復代理人弁護士坂根響子主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求 1 被告大阪高波は,原告 根響子主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求 1 被告大阪高波は,原告に対し,37万4774円及びこれに対する平成27年11月1日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。 2 被告ウラックス電子は,原告に対し,12万4413円及びこれに対する平成27年11月1日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。 3 被告武蔵野通工は,原告に対し,19万2326円及びこれに対する平成27年11月1日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。 4 被告清水電子工業は,原告に対し,103万3046円及びこれに対する平成27年11月1日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。 5 被告P1は,原告に対し,68万0211円及びこれに対する平成27年1 1月1日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。 6 被告山陽電氣工業は,原告に対し,1万5250円及びこれに対する平成27年11月1日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。 7 被告今井電機は,原告に対し,22万0885円及びこれに対する平成27年11月1日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。 8 被告日幸電機は,原告に対し,41万4591円及びこれに対する平成27年11月1日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。 9 被告西村無線電機は,原告に対し,1万0327円及びこれに対する平成27年11月1日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。 10 被告渡辺電機は,原告に対し,175万9186円及びこれに対する平成 27年11月1日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。 日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。 10 被告渡辺電機は,原告に対し,175万9186円及びこれに対する平成 27年11月1日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。 11 被告イチデン製作所は,原告に対し,24万5170円及びこれに対する平成27年11月1日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。 12 被告中遠電子工業は,原告に対し,9万7744円及びこれに対する平成27年11月1日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。 13 被告浦川トランス工業は,原告に対し,135万9016円及びこれに対 する平成27年11月1日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。 14 被告鶴田電機は,原告に対し,22万3651円及びこれに対する平成27年11月1日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。 15 被告保全工業は,原告に対し,4万3952円及びこれに対する平成27年11月1日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。 16 被告国電機製作所は,原告に対し,71万6771円及びこれに対する平成27年11月1日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。 17 被告東京トランスは,原告に対し,64万6163円及びこれに対する平成27年11月1日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。 18 被告らは,別紙差止等目録記載の変圧器を製造,販売してはならない。 19 被告らは,その占有にかかる別紙差止等目録記載の変圧器を廃棄せよ。 第2 事案の概要 本件は,川鉄電設株式会社(現JFE電制株式会社。以下「川鉄電設」という。)が被告らと締結した,後記WBトランス事業に係る後記本件各基本契約についての契約上の地位を川鉄電設より 事案の概要 本件は,川鉄電設株式会社(現JFE電制株式会社。以下「川鉄電設」という。)が被告らと締結した,後記WBトランス事業に係る後記本件各基本契約についての契約上の地位を川鉄電設より承継した原告が(一部は被告らと原告との直接契約), 被告らの債務不履行を理由に本件各基本契約を解除したとして,被告らに対し,①本件各基本契約解除前に発生していたロイヤルティ支払義務の履行として,本件各基本契約に基づき,平成27年4月から8月までの未払いロイヤルティ(金額は,別紙損害推計一覧表のとおり。)及びこれに対する支払期日の翌日である同年11月1日から支払済みまでの商事法定利率である年6%の割合による遅延損害金の支 払を請求し(請求の趣旨1ないし17),②被告らが,本件各基本契約の解除後においても,原告から被告らに対して開示した後記本件技術情報を使用して変圧器を製造,販売していることは,不正競争防止法2条1項7号の不正競争行為に当たるとして,同法3条1項及び2項に基づき,被告らの製品の製造,販売の差止め及び廃棄を求めた(請求の趣旨18及び19)事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実又は後掲の各証拠及び弁論の全趣旨に より容易に認められる事実)⑴ 当事者等ア川鉄電設(甲57,89)川鉄電設は,平成6年ころ,WBトランス(後記⑶イで定義されるコイルボビン式巻鉄心変圧器)を開発し,コイルボビン,WBコア(WBトランスの構成部品 である鉄心)及びこれらを用いた最終製品としてのWBトランスの各製造,販売に係るビジネスグループ(後述)を形成し,WBトランス事業を進めた。 後に原告代表者となるP2(以下,原告設立の前後により,P2あるいは「原告元代表者」という。)は,川鉄電設におけるW 各製造,販売に係るビジネスグループ(後述)を形成し,WBトランス事業を進めた。 後に原告代表者となるP2(以下,原告設立の前後により,P2あるいは「原告元代表者」という。)は,川鉄電設におけるWBトランスの研究開発責任者(変圧器事業室長)であった。 イ原告原告は,コイルボビン式巻鉄心変圧器の開発,製造,販売,同製造装置の製造,販売,及び同材料,部品の製造,販売等を目的とする株式会社であり,川鉄電設がWBトランス事業を譲渡することになった際,その受け皿として,P2が平成13年2月6日に設立した会社である。なお,原告元代表者は,同年3月,川鉄電設を 退職した。 ウ被告ら被告らは,いずれも,近畿変成器工業会(平成4年発足。以下「工業会」という。)加盟のトランスメーカーであり,別紙当事者関係図のとおり,原告による購入先の指定に従い,日本磁性材工業株式会社(以下「日本磁性材工業」という。)から巻 鉄心を,株式会社西本合成販売(以下「西本合成販売」という。)からボビン,コアマック(乙1。鉄心巻込み装置)及びフレームをそれぞれ購入し,これらを組み立てることにより,WBトランスの製造,販売を行ってきた。 なお,被告P1は,平成28年5月1日付けで,法人化して株式会社米田電機となっており,同日以降,WBトランスの製造,販売を行っておらず,同社は被告P 1の契約上の地位を承継していない。 ⑵ 本件各基本契約の締結,更新及び契約上の地位の移転(甲1~29,30~55,89,90)ア川鉄電設と被告らは,別紙契約関係一覧表左側の「締結日」欄記載の日に(8社が平成7年4月6日,平成10年9月28日が最終。),「契約名」欄左側記載の,100ないし1500VAの規格のWBトランスに関する設計,製造技術 ,別紙契約関係一覧表左側の「締結日」欄記載の日に(8社が平成7年4月6日,平成10年9月28日が最終。),「契約名」欄左側記載の,100ないし1500VAの規格のWBトランスに関する設計,製造技術情報 供与に関する契約を締結した(以下,同一覧表の左側の欄記載の契約を「当初契約」という。)。 イ被告らのうち9社(同一覧表会社名欄No.1,4,5,7,11,13ないし16)は,同一覧表右側の「締結日」欄記載の日(平成13年2月又は3月)に,「契約名」欄右側記載の,2000及び2500VAの規格のコイルボビン式 巻鉄心変圧器(WBトランス)に関する設計,製造技術情報供与に関する契約を締結した(以下,同一覧表の右側の欄記載の契約を「追加契約」といい,当初契約と合わせて「本件各基本契約」という。)。 ウ川鉄電設は,平成13年3月,原告に対し,WBトランス事業を全部譲渡し,川鉄電設,原告及び被告らは,同一覧表の「地位承継覚書締結日又は時期」欄記載 の日又は時期に覚書を作成し,それまでに締結されていた本件各基本契約に基づく川鉄電設の契約上の地位を,すべて原告に承継させることを合意した。 エ被告らのうち3社(同一覧表会社名欄No.8,10,17)は,同一覧表右側の「締結日」欄記載の日(平成14年,17年,22年)に,原告との間で追加契約を締結した。 オ本件各基本契約の最終更新後契約期間は,同一覧表記載の「契約期間」欄記載のとおりである。 ⑶ 本件各基本契約の内容(甲1~29)本件各基本契約の内容は,契約期間及びイニシャルフィーの金額を除いてほぼ同一であり,本件各基本契約に係る契約書には,以下の記載がある。 ア頭書き 川鉄電設と被告らは,川鉄電設が開発し,保有する後記WBトランスに関 ルフィーの金額を除いてほぼ同一であり,本件各基本契約に係る契約書には,以下の記載がある。 ア頭書き 川鉄電設と被告らは,川鉄電設が開発し,保有する後記WBトランスに関する後記本件技術情報を被告らへ供与することについて,以下の通り契約する。 イ定義(第1条)WBトランス(当初契約では「BSWトランス」と表記され,追加契約ではその後通称となった「WBトランス」の表記が使用されているが,名称変更の前後 を通じ,以下「WBトランス」という。)とは,巻線部の断面形状を矩形状もしくは60度をなす船底状とし,鉄心巻込部の外周を鉄心の内径と等しい曲率部を有するコイルボビンを使用したコイルボビン式巻鉄心変圧器という。 本件技術情報(本件各基本契約では「本技術情報」と表記されているが,以下「本件技術情報」という。)とは,川鉄電設が本件各基本契約締結時において所 有し,かつWBトランスの設計・製造に必要と考える技術資料及びデータをいい,技術資料であるコイルボビン式巻鉄心変圧器(80~1500VA)の標準電気関係設計書,及びデータであるコイルボビン式巻鉄心変圧器(80~1500VA)の捲線,ワニス含浸,温度上昇等の技術データを内容とする。 ウ実施許諾(第2条) 川鉄電設は,被告らに対し,本件技術情報に基づきWBトランスを,本件各基本契約存続期間中,製造,販売する非独占的実施権を許諾する。 被告らは,前項の実施権について,第三者に対し,再許諾,譲渡,質権の設定をしてはならない。 被告らは,上記実施許諾に基づきWBトランスを製造する場合,その品質確 保のため,鉄心巻込装置,コイルボビン及びフレーム(ただし,川鉄電設が特許出願中のものに限る。)については,川鉄電設が供給又は指定する者より購 諾に基づきWBトランスを製造する場合,その品質確 保のため,鉄心巻込装置,コイルボビン及びフレーム(ただし,川鉄電設が特許出願中のものに限る。)については,川鉄電設が供給又は指定する者より購入し,WBトランスの製造のために使用する。 エ技術援助等(第3条)川鉄電設は,本件各基本契約締結日より3か月以内に,本件技術情報を被告 らに開示,提供する。 川鉄電設は,川鉄電設が必要と判断した場合,適当な技術者を派遣し,技術指導を行う。 オ対価(第4条)被告らは,ウの実施許諾及びエの技術援助等の対価として,イニシャルフィー(別紙イニシャルロイヤルティ一覧表記載のとおり,当初契約につき100万円 又は300万円,被告ら17社で総計3500万円,追加契約につき100万円,被告らのうち11社で総計1100万円)を支払う。 被告らは,ウの実施許諾及びエの技術援助等の対価として,ランニングロイヤルティとして,第三者へのWBトランスの販売価格の3%相当額を川鉄電設に支払う。 前項のランニングロイヤルティは,品番別に川鉄電設が工業会と協議決定した標準価格(最も小さな100VAのものの標準価格が2250円/台,最も大きな1500VAのものの標準価格が1万2100円/台などと定められている。)をベースに算定する。 カ実施報告(第5条) 被告らは,毎年2月末日及び8月末日から1か月以内に,その前6か月にお報告書を川鉄電設に提出する。 被告らは,前項の期間にWBトランスを販売した事実がないときは,その旨を記載した書面を川鉄電設に提出する。 キ川鉄電設特許権の実施許諾(第7条)川鉄電設は,川鉄電設が本件各基本契約期間中において取得するWBトランスに関する特許権等について きは,その旨を記載した書面を川鉄電設に提出する。 キ川鉄電設特許権の実施許諾(第7条)川鉄電設は,川鉄電設が本件各基本契約期間中において取得するWBトランスに関する特許権等について,本件各基本契約の履行を条件として,被告らに対し,通常実施権(出願中のものについては非独占的実施権)を許諾する。 ク秘密保持(第9条) 被告らは,本件技術情報をWBトランスの製造,販売のためにのみ使用する。 被告らは,本件技術情報に関し,本件各基本契約の存続期間中はもちろん,契約終了後においても,川鉄電設と被告らが秘密保持義務の解除を確認するまで,秘密保持義務を負う。 ただし,被告らの責めなくして公知になった情報,本件各基本契約締結日前に,被告らが現に知得していた情報,及び被告らがWBトランスを販売するに必要最小 限の技術情報はこの限りではない。 ケ解約(第11条)川鉄電設は,被告らが本件各基本契約に定める債務の履行を怠り,川鉄電設の催告後3か月以内にその履行をしないときは本件各基本契約を解約し,かつ被告らに対し,川鉄電設の被った損害の賠償を請求することができる。 コ契約終了後の措置(第12条)被告らは,本件各基本契約期間終了後(前記ケに基づき解約された場合を含む。),すみやかに,前記エにより川鉄電設より開示提供された本件技術情報に関する資料,データ等の書類(複製物を含む。)を川鉄電設に返却する。 被告らは,本件各基本契約期間終了後(前記ケに基づき解約された場合を含 む。),いかなる場合においても本件技術情報を使用してはならず,WBトランスを製造,販売してはならない。 サ契約期間(第13条)本件各基本契約は,前記クの秘密保持及び前記ケに基づき解約終了する場合を除き,契 場合においても本件技術情報を使用してはならず,WBトランスを製造,販売してはならない。 サ契約期間(第13条)本件各基本契約は,前記クの秘密保持及び前記ケに基づき解約終了する場合を除き,契約日から7年間有効とし,期間満了の3か月前までに双方いずれからも別段 の申出がない場合は,同様の条件をもって更に2年ずつ自動更新される。なお,こ ⑷ 本件各特許権(甲60,61,87,88,91,92)ア原告は,以下の2つの特許に係る権利(以下,イの特許権を「本件特許権1」,ウの特許権を「本件特許権2」,これらを合わせて「本件各特許権」という。)を, 株式会社西本合成販売と共有していたところ,本件各特許権は,出願から20年を 経過した平成27年3月31日をもって,いずれも存続期間満了により消滅した。 なお,川鉄電設は,平成13年3月27日,本件各特許権に係る発明について,出願にかかる特許を受ける権利の持分を原告に譲渡し,西本合成販売は,川鉄電設に対し,当該譲渡について同意した。 イ変成器及び変成器用のコイルボビンに関する特許 特許番号第3229512号出願日平成7年3月31日出願番号特願平7-99735優先権主張番号特願平6-117023優先日平成6年5月30日 登録日平成13年9月7日ウ変成器用の巻鉄心に関する特許特許番号第3672842号出願日平成13年5月1日出願番号特願2001-134268 優先権主張番号特願平6-117023優先日平成6年5月30日分割の表示特願平7-99735の分割原出願日平成7年3月31日登録日平成17年 優先権主張番号特願平6-117023優先日平成6年5月30日分割の表示特願平7-99735の分割原出願日平成7年3月31日登録日平成17年4月28日 ⑸ 本件技術情報の提供(甲76,81,82)被告らは,設又は原告は,「技術資料コイルボビン式巻鉄心変圧器(WBトランス)」と題する,平成7年5月付け(甲82。以下「平成7年技術資料」という。),平成13年2月1日付け(甲81。以下「平成13年技術資料」という。)及び平成24 年12月付け(甲76。以下「平成24年技術資料」といい,平成7年技術資料及 び平成13年技術資料と合わせて「本件技術資料」という。本件技術資料により開示された情報は,前記⑶の本件技術情報に相当する。)を,被告らに交付した。 ⑹ 本件各基本契約の終了ア被告らによる解除通知及びロイヤルティの支払拒絶(甲62~75。書証は枝番号を含む。以下同じ。) 被告らは,平成27年4月以降,原告に対し,同年3月31日に本件各特許権が消滅したことにより本件各基本契約の目的が達成できなくなったなどとして,同年4月1日をもって本件各基本契約を解除する旨の通知を送付した。 その後,文書を通じてやり取りを行う中で,被告らは,知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針を根拠として,同日以降のロイヤルティの支払を拒絶した。 イ原告による債務不履行解除の通知(甲58,59)原告は,被告らに対し,平成27年11月26日(被告東京トランスについては同月25日)到達の書面により,被告らが同年9月末までに,同年3月から8月までの6か月間の販売期間におけるWBトランスの品番別の販売数量及び支払うべきランニングロイヤルティ額を記載した実施報告書 は同月25日)到達の書面により,被告らが同年9月末までに,同年3月から8月までの6か月間の販売期間におけるWBトランスの品番別の販売数量及び支払うべきランニングロイヤルティ額を記載した実施報告書を提出して,同年10月末日まで に,同年4月から8月分のランニングロイヤルティを支払うべき義務を負うにも関わらず,前記アのとおり,同年4月以降の報告及び支払をあらかじめ拒絶し,実際に,同年9月末までに上記報告をせず,同年10月末までにランニングロイヤルティを支払わなかったとして,上記到達日において,債務不履行を理由に,本件各基本契約を解除する旨を通知した。 ウなお,平成27年3月31日以前において,ランニングロイヤルティの不払いその他本件各基本契約の債務不履行があったとする原告の主張は存しない。 2 争点⑴ 本件各基本契約の性質は,本件各特許権の実施許諾契約か,それともノウハウライセンス契約か。 ⑵ 本件各特許権の期間満了により,ロイヤルティの支払義務は消滅したか。 ⑶ 被告らがWBトランスを製造,販売することは,不正競争行為に当たるか。 ⑷ 未払いロイヤルティの額第3 争点についての当事者の主張 1 争点⑴(本件各基本契約の性質は,本件各特許権の実施許諾契約か,それともノウハウライセンス契約か。)について 【原告の主張】⑴ 本件各基本契約はノウハウライセンス契約であることノウハウとは,工業目的に役立つ技術を実現又は実施するために必要な秘密の技術的知識・経験を指すものであり,実施許諾契約の対象となることは珍しくない。 ノウハウは,秘密であることによって財産的価値が維持されるものであるから, ノウハウ実施許諾契約においては,契約が終了した後に被許諾者側にノウハウの使用 諾契約の対象となることは珍しくない。 ノウハウは,秘密であることによって財産的価値が維持されるものであるから, ノウハウ実施許諾契約においては,契約が終了した後に被許諾者側にノウハウの使用を禁止し,秘密を保持させておくことが重要となる。 本件各特許権は,その内容が公知になったとしても,それだけでは実用に耐えるWBトランスを設計・製造することができない「ノウハウの主要部以外の部分」を特許化したものであり,本件各基本契約は,特許化されずに秘匿された,WBトラ ンスを設計・製造するために必須のノウハウを対象とする,ノウハウ実施許諾契約である。 ⑵ 本件各基本契約の条項・体裁等ア当初契約及び追加契約のいずれにおいても,ロイヤルティは「第2条,第3条の対価」として支払う旨規定されているところ(第4条1項,2項),第2条1 項は,被告らに対し,本件技術情報に基づくWBトランスの製造,販売の非独占的実施権を認めたものであり,第3条には,原告が本件技術情報を開示・提供すること及び技術指導を行うことが定められているから,本件各基本契約におけるロイヤルティは,WBトランスの製品の設計・製造に必要なノウハウに対する対価であることが明らかである。 なお,第7条の規定は,被告らに対し,本件各特許権が権利化した際に通常実施 権を許諾する旨の規定であるが,第4条において「第7条の対価」と記載されていない以上,ロイヤルティに,特許権の実施許諾に対する対価が含まれていると解することはできない。 イまた,本件各基本契約には,本件各特許権の権利化が頓挫した場合や,特許権が消滅した際の扱い等,本件各特許権の将来の権利化を予定した契約に通常なさ れるであろう手当がされていないことからも,ロイヤルティの対価に本件各特許 ,本件各特許権の権利化が頓挫した場合や,特許権が消滅した際の扱い等,本件各特許権の将来の権利化を予定した契約に通常なさ れるであろう手当がされていないことからも,ロイヤルティの対価に本件各特許権の実施許諾の対価が含まれておらず,本件各基本契約は,ノウハウの使用に対し対価を支払うノウハウライセンス契約であると解釈すべきである。 ⑶ 本件各基本契約締結の経緯等ア本件アンケートの実施 川鉄電設は,工業会加盟のトランスメーカーに対し,本件各特許権の当初の出願後公開前の段階である平成6年12月ころ,「鉄心巻込方式によるコイルボビン式巻鉄心変圧器について」と題するアンケート調査(甲66の6,7頁目。以下「本件アンケート」という。)を行い,WBトランスの発明につき特許出願中であることを示した上で,各メーカーに対し,川鉄電設が開示するWBトランスの設計・製 造に関するノウハウを用いてWBトランスを製造,販売する内容の実施権契約を希望するか否かを尋ねた。このアンケートにおいては,上記開示されるノウハウが具体的に明らかにされ,同ノウハウは契約企業に対してのみ開示されること,契約企業は,当初3年は工業会会員各社及び同会の承認した企業に限定されることが記載されており,ノウハウの秘密としての価値を判断することを容易にするものであっ た。 イ当初契約の締結及びその内容本件アンケートを経て,被告らは,平成7年4月に8社,同年12月に3社,平成8年4月に1社,平成9年1月に1社,同年12月に1社,平成10年3月に2社,同年9月に1社,それぞれ,川鉄電設と当初契約を締結した。なお,本件特許 権1は,平成8年2月20日に出願公開されたのであるから,少なくとも6社は, 出願公開後特許権成立前に当初契約を締結した れぞれ,川鉄電設と当初契約を締結した。なお,本件特許 権1は,平成8年2月20日に出願公開されたのであるから,少なくとも6社は, 出願公開後特許権成立前に当初契約を締結したこととなる。 ウ追加契約の締結の経緯川鉄電設は,平成6年11月24日,工業会との間で,WBトランスの事業展開についての覚書(甲83)を締結し,開発中の低電圧・中容量(2.0KVA超)のトランス技術を公開する場合には,同会会員に最優先に公開すること等につ いて合意した。 川鉄電設は,平成12年末ころ,当初契約を締結しているトランスメーカーに対し,新たに開発した2000及び2500VAのトランスについても,当初契約と同様の契約を締結するかについてアンケート(甲84)を行い,希望するトランスメーカーとの間で,平成13年2月から同年3月にかけて,それぞれ追加契約 を締結した。 被告渡辺電機及び被告東京トランスは,これより遅れて追加契約を希望し,川鉄電設から事業譲渡を受けた原告との間で追加契約を締結した。 被告日幸電機は,さらに遅れて平成22年に追加契約を希望したが,このころには,既に原告において2000及び2500VAのWBトランスの製造に使用する 改良されたコアマック(「コアマックⅡ」)が完成していたため,被告日幸電機は,「コアマックⅠ」に付属アタッチメントを取り付ける等で対応した他の被告らとは異なり,改良後のコアマック(販売額280万円)を購入したため,原告は,同社に配慮し,追加契約に際しイニシャルフィーの支払を受けないこととし,覚書(甲22)の形で追加契約をした。 原告は,追加契約を締結した被告らに対し,2000及び2500VAのWBトランスに関する平成13年技術資料を新たに提供した。当該資料は,当初契約 し,覚書(甲22)の形で追加契約をした。 原告は,追加契約を締結した被告らに対し,2000及び2500VAのWBトランスに関する平成13年技術資料を新たに提供した。当該資料は,当初契約に従って提供された平成7年技術資料とは別個のものであり,容量ごとに独自のノウハウ性を有することの証左である。 以上のとおり,被告らは,平成6年11月24日の工業会との覚書(甲83) 締結時から,100ないし1500VAの規格のWBトランスの技術と2000及 び2500VAの規格のWBトランスの技術を異なるものとしてとらえ,公開された特許情報と当初契約で開示された平成7年技術資料のみでは,2000及び2500VAのWBトランスの製品を設計・製造ができないことから,川鉄電設が新たに開発に成功した2000及び2500VAの規格のWBトランスに関する技術を優先的に得たいと考え,平成13年以降,追加契約を締結したのである。 なお,追加契約においても,特許の権利化が頓挫した場合や特許が消滅した場合の手当はなされておらず,本件各特許権成立後に締結された追加契約(被告日幸電機及び被告東京トランス)も,特許成立を前提とした契約内容となっていない。 エ本件各基本契約の更新等被告らは,いずれも,当初契約及び追加契約を,本件特許権1が登録された後で ある平成14年以降に契約を更新し,以後,2年ごとに契約を更新したが,更新後の契約には,本件各特許権が成立したことを前提とする変更は加えられなかった。 このことは,本件各基本契約が本件各特許権の実施許諾を目的として締結されたものではないことを意味している。 オまとめ 以上のとおり,被告らは,当初契約締結前から,本件アンケートにより本件各基本契約における実施権の対象が 特許権の実施許諾を目的として締結されたものではないことを意味している。 オまとめ 以上のとおり,被告らは,当初契約締結前から,本件アンケートにより本件各基本契約における実施権の対象がノウハウであることを理解した上で,当初契約を締結して本件技術情報の提供を受け,さらに,それだけでは2000及び2500VAの規格のWBトランスの設計・製造ができないことから,新たな技術情報の提供の対価としてロイヤルティを支払うことを約して追加契約を締結したものであり, 当初契約及び追加契約には,特許の権利化が頓挫した場合や特許が消滅した場合の手当はなされず,本件各特許権が成立した後の契約更新時にも,そのことを前提とする契約内容の改訂はなされていない。 このような契約締結の経緯から,本件各基本契約は,ノウハウの実施許諾契約であったというべきである。 ⑷ 本件各基本契約締結後の原告の被告らに対する技術援助 被告らは,本件技術情報に加え,P2又は原告元代表者に対し,数多くの質問,設計依頼,データ提供依頼等をなし,川鉄電設又は原告の技術指導を必要とする場合も稀ではなかった。 ⑸ 本件各特許権の特許情報と本件技術情報との差異ア本件各特許権の特許情報 川鉄電設は,本件特許権1の優先権の基礎となる出願を,平成6年5月30日に行った。 WBトランスは,独自のコイルボビンにより鉄心巻込技術と方向性珪素鋼帯の採用により鉄損を大幅に低減させて省エネルギー及び運転経費の抑制を実現した点に優れた特徴を有するものであって,川鉄電設が開発した,前身であるSCトランス (甲57)を改良し,トランスとしての性能を飛躍的に高めるとともに,大幅なコストダウンを可能とすることを目指して開発されたものであり,巻線を巻いたコイル 設が開発した,前身であるSCトランス (甲57)を改良し,トランスとしての性能を飛躍的に高めるとともに,大幅なコストダウンを可能とすることを目指して開発されたものであり,巻線を巻いたコイルボビン,巻鉄心及びフレームから成る。 本件特許権1は,独自のコイルボビンによる画期的な巻鉄心構造を有するトランス全体に関する発明であり,本件特許権2は,巻鉄心に関する発明であり,川鉄電 設の開発したWBトランスには,両方の発明が実施されている。 被告らは,WBトランス用のコイルボビンと巻鉄心とをそれぞれ指定業者から購入し,これらを用いて具体的な製品としてのWBトランスを設計し,当該設計に従った製造を行うところ,この設計・製造に必要な技術やデータは,本件各特許権の特許情報には記載されておらず,本件技術情報が一定の標準的なデータを提供する ものとなっており,本件技術情報により,初めて製品としてWBトランスの設計・製造が可能となる。 また,WBトランスは,革新的なトランスであることから,これを支える知識や技術の体系が従来のトランスとは全く異なっており,従来品の設計・製造実績を有していても役に立たない。 イ本件技術情報の内容 本件技術情報は,製品としてのWBトランスの設計・製造に必要な技術情報であり,SCトランスからWBトランス開発に至る過程において川鉄電設が蓄積した膨大な研究開発行為の具体的成果であって,本件各特許権の特許情報には記載がなく,推計することも不可能であるし,従来のトランスの専門図書から得ることもできない情報群である。トランス専門メーカーであっても,本件技術情報なくして製品と してのWBトランスを設計・製造することは不可能である。 ⑹ 本件技術情報がWBトランスの設計・製造に不可欠である ない情報群である。トランス専門メーカーであっても,本件技術情報なくして製品と してのWBトランスを設計・製造することは不可能である。 ⑹ 本件技術情報がWBトランスの設計・製造に不可欠であることア本件技術資料記載のノウハウ情報の意義について本件技術資料記載のノウハウ情報は,主として,WBトランスの設計作業に用いる情報である。 トランスの設計には,最低限の設計与件として,容量・周波数・一次電圧・二次電圧が必要であり,設計作業によって,最低限,①一次巻数・②二次巻数・③一次巻線径・④二次巻線径を算出する必要がある。 ①一次巻数を算出するためには,一次電圧,周波数,鉄心断面積及び最大磁束密度が定められる必要があるが,このうち,鉄心断面積及び最大磁束密度(巻鉄心の ものであり,その材料となる方向性珪素鋼体のものではない。),原告から開示されなければ,被告らがその値を知る方法はない。 ②二次巻数は,一次巻数にある数値を乗じることにより得られる数値であるから,上記のとおり,原告から開示される数値がなければ算出することができない。 ③一次巻線径及び④二次巻線径を算出するためには,一次電流,二次電流及び各 電流密度が定まらなければならないが,各電流密度は原告から教示されない限り被告らがその値を知る方法はない。 したがって,被告らは,本件技術資料記載のノウハウ情報によらなければ,製品としてのWBトランスを設計することができない。 また,トランスの設計では,上記各計算により得られた①ないし④の値を前 提に,使用する予定のコイルボビンと銅線に合わせて具体的に巻線設計を行う必要 があるところ,技術資料では,整列巻を実現するために必要な情報を被告らに与えており,これがなければ被告らは巻線設計を行 予定のコイルボビンと銅線に合わせて具体的に巻線設計を行う必要 があるところ,技術資料では,整列巻を実現するために必要な情報を被告らに与えており,これがなければ被告らは巻線設計を行うことができない。 さらに,トランスの設計においては,温度上昇に配慮する必要があるが,技術資料では,容量ごとに負荷損と温度上昇の関係をグラフにしたものをノウハウ情報として被告らに与えており,これがなければ被告らは顧客の要望に沿ったトラン スの設計を行うことができない。 鉄心巻込作業は,コアマックを用いて行われるが,その際には巻鉄心の弾性限界を超えて巻きほぐすことのないよう留意しなければならず,ノウハウ情報である,鉄心巻込における弾性限界内で作りうる大円の最大径の情報が不可欠となる。 イ本件技術資料に開示されたデータの意味に関する被告大阪高波らの主張に ついての反論鉄心巻込法についてWBトランス用の巻鉄心には,大きさの異なる9種類のものがあり,小さい巻鉄心を巻き込む際には本件技術資料に示された弾性範囲内で作り得る大円の最大径を超えて広げることができてしまうから,被告らは,上記情報を利用して,許された 範囲内に収まるように鉄心巻込装置及び巻鉄心を扱う必要がある。したがって,当該情報は,WBトランスの製造に不可欠の情報である。 鉄占積率についてパンフレット等で公開されている数値は,方向性珪素鋼板自体の値であって,これを円筒状に巻いて製造される巻鉄心の鉄占積率は異なる値となる。そして,巻鉄 心の鉄占積率は,トランスの磁束密度を左右し,ひいては巻線回数を左右する値であるから,WBトランスの設計・製造にとって不可欠な情報である。 ワニスについてWBトランスにおけるワニス含浸は,トランスに負荷を ランスの磁束密度を左右し,ひいては巻線回数を左右する値であるから,WBトランスの設計・製造にとって不可欠な情報である。 ワニスについてWBトランスにおけるワニス含浸は,トランスに負荷をかけた際に巻線に発生する熱を効率よく伝導させ放熱させるための工程であるから,平成7年及び平成24 年技術資料の5頁に示されたワニスの情報は,下記温度上昇データとあいまって意 味のあるデータである。 磁束速度及び鉄損について上記と同様に,パンフレット等で公開されている数値と,巻鉄心における数値とは異なるのであり,これらはトランスの設計において不可欠な数値である。 V/T値及び銅占積率について 被告大阪高波らは,トランスの設計においては必要な数値であるが,製造にあたっては必要ではないと主張するが,トランスを設計することなく製造することができないのは自明であって,上記主張には意味がない。 また,V/T値は一次巻回数を,銅占積率はコイルの断面積を知らなければ,算出することは不可能である。 一次巻回数及び二次巻回数について被告大阪高波らが,WBトランスの巻回数を計算・調整(簡易設計)するためには,本件技術資料において提供される一次巻回数・二次巻回数の情報が必要となるはずである。すなわち,被告大阪高波らのいう「簡易設計」とは,原告が提供するノウハウの応用であって,提供された情報通りの製品を作る場合にも,算出の基礎 として当該情報が必要となる。導体,電流密度及び導体重量(それぞれ一次側及び二次側)についても同様である。 銅損,抵抗及び全負荷損について上記と同様に,パンフレット等において公開されている数値は銅線自体の抵抗値であり,WBトランスの構成部としてのコイル 及び二次側)についても同様である。 銅損,抵抗及び全負荷損について上記と同様に,パンフレット等において公開されている数値は銅線自体の抵抗値であり,WBトランスの構成部としてのコイルにした場合の値とは異なる。そし て,コイルの銅損を求めるためには,巻線の長さ(巻回数)と太さ(電流密度)が必要であるところ,これらは原告から提供を受けなければ判明しない数値である。 無負荷損について上記のとおり,WBトランスにおける鉄損の値は,方向性珪素鋼板のパンフレット記載の数値から算定できるものではない。加えて,無負荷損は巻鉄心を鉄心巻 込み装置を用いてコイルボビンに巻き込み,ワニス含浸をした後の状態における値 であり,これらの作業によって生じる劣化を考慮に入れる必要があるところ,原告は,本件技術資料において当該修正に必要なパラメータを提供している。この数値は,川鉄電設において数多くの試作を行った結果から得られた値であり,原告から提供されない限り知り得ない数値である。 巻鉄心の磁化特性及び鉄損特性について 被告大阪高波らは,提供を受けている巻鉄心の特性が分からなければトランスの設計・製造はできないのであるから,これらの数値は必要不可欠である。 温度上昇について変圧器設計の核心とその困難は,トランスの温度上昇の制御にあるのであって,客先の要求に応じたトランスを設計するにあたっては,その使用環境の下で許され る大きさのコイルボビン・巻鉄心を利用することを前提として,本件技術資料において提供された温度上昇データを用いて行わなければならず,当該情報は必要不可欠である。 巻線計画,巻線仕様書,巻回数について被告大阪高波らが主張するように簡単に計算できるのは,当該コ 料において提供された温度上昇データを用いて行わなければならず,当該情報は必要不可欠である。 巻線計画,巻線仕様書,巻回数について被告大阪高波らが主張するように簡単に計算できるのは,当該コイルボビンに当 該巻線を巻き付けうる最大値であって,特定の性能を有するトランスを作成するために必要な巻回数ではない。 ウまとめ以上のとおり,本件各基本契約の条項・体裁等,当初契約及び追加契約締結の経緯,本件各特許権の特許情報と本件技術情報が互いに異なるものであり,本件技術 情報がWBトランスの設計・製造に不可欠であることから,本件各基本契約は,本件各特許権の実施許諾を内容とするものではなく,ノウハウである本件技術情報の使用を許諾するところのノウハウライセンス契約というべきである。 【被告大阪高波らの主張】⑴ 本件各基本契約は本件各特許権の通常実施許諾契約であること 一般的に,特許権実施許諾契約の締結に至るまでに,当該特許権を実施できるよ うに技術指導やノウハウの提供がなされるのであって,技術指導契約等は段階を踏んで手続が進むことから特許権実施許諾契約とは別個に締結されることになるが,これはあくまで特許権実施許諾契約に向けての手順に過ぎず,特許権実施許諾契約が成立したときに全体を実質的にみれば,手順の中で締結した各契約の内容も特許権実施許諾契約に包含されていると評価すべきである。 ⑵ 本件各基本契約締結の経緯ア当初契約締結の経緯川鉄電設は,西本合成販売からの紹介を受け,平成5年11月18日,工業会所属のトランスメーカーのうち数社を招き,SCトランスについての説明会を開催し,その中で,SCトランスをボビン化したいという話をした。 川鉄電設と西本合成販売は,平成6年5月30日, 工業会所属のトランスメーカーのうち数社を招き,SCトランスについての説明会を開催し,その中で,SCトランスをボビン化したいという話をした。 川鉄電設と西本合成販売は,平成6年5月30日,本件各特許権の優先権の基礎となる出願を行い,川鉄電設は,同年11月24日,工業会との間で,西本合成販売と共同開発中であったWBトランスについて,工業会の会員に対し,優先的に通常実施権を許諾する旨の覚書を作成した。 川鉄電設は,同年12月8日,川鉄電設の西宮工場においてSCトランスについ ての研究会を行った際に,工業会の会員に対し,WBトランスに係る技術につき特許出願中であることを示した上で,①特許設定登録後は通常実施権の許諾をなすこと,②同許諾をなす対象の企業を,工業会会員及び工業会が承認する企業に限定すること等を説明した上で,製造,販売の実施権契約の希望の有無を尋ねる本件アンケートを実施した。 被告大阪高波らは,川鉄電設の説明を聞き,川鉄電設からライセンスを受けずにWBトランスに係る技術を実施することはできないと理解した。 川鉄電設と西本合成販売は,平成7年3月31日,本件特許権1について特許出願を行い,川鉄電設と被告大阪高波ら8社は,同年4月6日,川鉄電設大阪本社において,第一陣として当初契約を締結した。川鉄電設のP3社長(当時)は,川鉄 電設が巻鉄心トランス等関連技術について複数の特許出願をしていること,同年7 月にはトランスメーカー各社に対してコアマックの搬入を行うこと等を話し,被告大阪高波らに対し,当初契約により,本件各特許権の通常実施権設定を受けることになる旨の説明をしたが,このとき,被告大阪高波らが本件技術情報を見ることはなかった。 被告大阪高波らは,当初契約締結後に,川鉄電設から平成7 初契約により,本件各特許権の通常実施権設定を受けることになる旨の説明をしたが,このとき,被告大阪高波らが本件技術情報を見ることはなかった。 被告大阪高波らは,当初契約締結後に,川鉄電設から平成7年技術資料を受領し, 一目見て,参考にはなるかもしれないが特に有益な情報ではないと感じたが,当初契約に付随するものととらえたため,特に異議や苦情を述べることはしなかった。 川崎電鉄は,同年5月16日ないし19日,第一陣で契約したトランスメーカーを対象に,WBトランスの技術セミナーを実施し,本件特許権2について説明した。 イ追加契約の締結の経緯 当初契約では,100VA,150VA,200VA,300VA,500VA,750VA,1000VA,1500VAの規格のWBトランスがライセンス対象とされていた。 その後,川鉄電設は,平成13年2月から3月にかけて,被告大阪高波らに対し,2000VA及び2500VAのWBトランスについて追加契約を行うように申し 入れ,被告大阪高波らは,これに応じて上記規格のWBトランスについても追加契約をした。 追加契約時に提供された平成13年技術資料に有用性がないことは,当初契約の際に提供された平成7年技術資料と同様である。 被告大阪高波らが,追加契約の締結に応じ,イニシャルフィーを支払ったのは, あくまで,当初契約が100ないし1500VAの規格のみをライセンスの対象としていたこと,被告大阪高波らが指定業者から2000及び2500VA用の巻鉄心,コイルボビン及びフレームを入手するためには,川鉄電設と追加契約を締結するほかなかったことによる。 ウこのような経緯を経て,本件各基本契約が締結されたのであるから,本件各 基本契約は本件各特許権の実施許諾契約であるというべきである。 電設と追加契約を締結するほかなかったことによる。 ウこのような経緯を経て,本件各基本契約が締結されたのであるから,本件各 基本契約は本件各特許権の実施許諾契約であるというべきである。 ⑶ 本件各基本契約の契約文言及び形態等ア契約文言等について本件各基本契約に係る契約書2条の表題は「実施許諾」とされ,同7条においても,原告が取得するWBトランスに関する特許権等に関して被告らに通常実施権を許諾する旨の記載がある。 本件各特許権の優先権の基礎となる出願は平成6年5月30日,本件特許権1の出願は平成7年3月31日,その設定登録は平成13年9月7日であるところ,当初契約は,平成7年4月6日から平成10年9月28日までの間に締結され,原告及び川鉄電設と被告高波らは,本件特許権1が設定登録された後も,本件各基本契約を締結し直さなかった。 イ契約の形態について特許権出願前の段階であっても,先行して発明内容の製品化を行いたい場合には,特許権が認められることを見越して契約を締結する場合があり,このときに,便宜的に,本件各基本契約のように,「ノウハウライセンス契約」等の一つの契約により処理されることも一般的である。 本件においては,本件各特許権となった発明とノウハウが別個に存在しているのではなく,後記のとおり,特許権の対象となった発明があるのみである。そして,契約締結当初に実施されるべき技術援助や本件技術情報の提供も,特許権実施許諾契約(本件各基本契約)の中に含まれている。 ウイニシャルフィーの支払 被告大阪高波らは,本件技術情報の対価として,別紙イニシャルロイヤルティ一覧のとおりイニシャルフィーを支払っている。 エまとめ以上のとおり,本件各基本契約が締結された時期的経 の支払 被告大阪高波らは,本件技術情報の対価として,別紙イニシャルロイヤルティ一覧のとおりイニシャルフィーを支払っている。 エまとめ以上のとおり,本件各基本契約が締結された時期的経緯や本件各基本契約に係る契約書の2条及び7条の文言,本件各基本契約の形態からも,本件各基本契約は, 本件各特許権の実施許諾契約であり,ランニングロイヤルティは,その実施許諾に 対する対価というべきである。 ⑷ 本件技術情報の内容ア指定業者からの一部部品の購入トランスメーカーがWBトランスを製造するにあたり,必要な材料及び機械は,①巻線機,②銅線,③鉄心巻き込み装置(コアマック),④コイルボビン,⑤巻鉄 心,⑥絶縁テープ,⑦ワニス(表面保護用塗料)であるところ,このうち,コアマック(③)は川鉄電設が開発した機械であり,被告大阪高波らは,西本合成販売から購入して使用しており,コイルボビン(④)及び巻鉄心(⑤)は,それぞれ本件各基本契約2条3項による指定業者である西本合成販売と日本磁性材工業から購入している。 イ本件技術情報について本件各基本契約締結の際に,川鉄電設から被告大阪高波らに対して提示された本技術情報には,鉄心巻込法やWBトランスの参考値,WBトランスの寸法等が記載されているにすぎず,これらは,トランスメーカーである被告大阪高波らが,上記指定業者から組立部品となる鉄心,コイルボビン,フレームを購入し,川鉄電設の 指定業者から購入したコアマックを使用してトランスを製造するためには何ら必要のない情報である。 そのため,被告大阪高波らは,本件技術情報のうち,鉄心の磁束密度や断面積及び銅線の電流密度(いずれもメーカーの公知資料から知ることができる。)等を参考にしたことはあっても,それ のない情報である。 そのため,被告大阪高波らは,本件技術情報のうち,鉄心の磁束密度や断面積及び銅線の電流密度(いずれもメーカーの公知資料から知ることができる。)等を参考にしたことはあっても,それ以外の数値は全く利用していない。 また,本件技術資料中のデータは参考値や理論値であって,被告大阪高波らが実際に製作してきたトランスの各数値と異なる。 ウ個別のデータについて原告は,被告らに対し,本件技術情報として平成7年,13年,24年の各技術資料記載の情報を開示したと主張するため,以下,同技術資料に記載された個別の データについて検討する。 鉄心巻込法について被告大阪高波らは,西本合成販売からコアマックを購入しているため,鉄心巻込法に関する情報は不要である。 また,弾性限界内で作りうる大円の最大径に関する情報は,川鉄電設の方向性珪素鋼板の開発データにすぎず,巻き直し作業を行う際に鉄心を内径(小円径)に対 して外径(大円径)をどこまで広げても特性が落ちないかという観点で記載されているが,コアマック自体がその限度内にしか設定できない構造となっているため,被告大阪高波らがその情報を知る必要はない。 方向性珪素鋼板の弾性曲げの影響に関する情報は,方向性珪素鋼板(鉄心)にどの程度のひずみが生じた場合にどの程度特性が落ちるのかということを示すグラフ であるが,被告大阪高波らは,かかる性能を有した方向性珪素鋼板を用いて製造された巻鉄心を購入しているのであり,トランスの製造に必要なデータではない。 なお,被告大阪高波らは,巻鉄心を広げ過ぎればひずみが生じて磁性が落ちることは基本的な事項として認識しており,日本磁性材工業において焼鈍を経て製造された巻鉄心をできるだけ広げずに巻込み及び巻 。 なお,被告大阪高波らは,巻鉄心を広げ過ぎればひずみが生じて磁性が落ちることは基本的な事項として認識しており,日本磁性材工業において焼鈍を経て製造された巻鉄心をできるだけ広げずに巻込み及び巻締めをすることは,当然である。し たがって,巻鉄心をどこまで広げうるかという最大円について,トランスメーカーは知る必要がない。 電気設計の要点について鉄占積率とは,材料となる方向性珪素鋼板が有する特性であるところ,被告大阪高波らは,かかる方向性珪素鋼板を用いて製造された巻鉄心を購入しているため, 不要な数値であるし,鉄占積率は,一般的に方向性珪素鋼板のパンフレット等においても公開されている公知の数値である。また,巻鉄心の鉄占積率は,巻鉄心メーカーである日本磁性材工業に問い合わせれば開示される内容である。なお,巻鉄心の鉄占積率は,一定の想定範囲内に収まっているのが通常であり,万一これが開示されていなかったとしても,設計作業に大きな影響は生じない。 ワニスについても,川鉄電設が試作の際に使用した一つの実験例が記載されてい るにすぎず,被告大阪高波らは,それぞれ異なるメーカー・型番のワニスを使用しているため,特に不要な情報である。 電気設計一覧表について当該表記載の各数値は,川鉄電設が試作したトランスについての数値にすぎず,一つの実施例にすぎない。 ⒜ 1ないし7(相数,周波数,容量,定格電圧(一次,二次),絶縁の種類,捲線の温度上昇限度)は,所与の条件であり,ノウハウ性がない。 ⒝ 8(磁束密度)と11(鉄損)は,材料となる方向性珪素鋼板が有する性質であるところ,被告大阪高波らは,方向性珪素鋼板を用いて製造された巻鉄心を購入し,これらの数値はパンフレット等により公開されて ⒝ 8(磁束密度)と11(鉄損)は,材料となる方向性珪素鋼板が有する性質であるところ,被告大阪高波らは,方向性珪素鋼板を用いて製造された巻鉄心を購入し,これらの数値はパンフレット等により公開されている。 ⒞ 9(V/T(ボルト・パー・ターン))は,巻き数1ターンに誘起する電圧を指すが,定格電圧(一次)を一次巻回数で除すことによって算出することも可能な数値であり,トランスの設計に当たっては必要であるが,トランスの製造に当たっては不要である。 ⒟ 10(銅占積率)は,コイル断面積に対して銅線(巻線)が占める割合を指 すが,コイルボビンの断面図及び銅線の製品仕様から公式により容易に算出可能であるし,トランスの製造に当たり必要な数値ではない。 13(鉄心寸法)と15(鉄心単体重量)についても,被告大阪高波らは,これらの条件を充たす製品としての巻鉄心を購入しているのであり,トランスの製造に当たっては不要な数値である。また,市場に出回っているWBトランスの製品 から測定することもできる。 ⒡ 14(h/t比),16(鉄心断面積)及び17(磁路長)は,13で明らかになっている鉄心寸法から容易に算出であるし,17については,市場に出回っているWBトランスの製品から測定することもできる。 ⒢ 18(励磁電流)は,一つの巻線に定格周波数の定格電圧を加え,他の巻線 をすべて開放した時の線路電流実効値(いわゆる待機電力のこと。),19(Iо) は18をその巻線の定格電流に対する百分率で表したものを指すが,公式によって算出したり計測器によって測定したりすることも可能である。12(励磁実効電流)も同様である。 ⒣ 20(一次巻回数)及び26(二次巻回数)は,一次側及び二次側にそれぞれ銅線を何回巻き 式によって算出したり計測器によって測定したりすることも可能である。12(励磁実効電流)も同様である。 ⒣ 20(一次巻回数)及び26(二次巻回数)は,一次側及び二次側にそれぞれ銅線を何回巻き回しているかの回数であるが,これらは川鉄電設が試作したトラ ンスにかかる数値であり,一つの実施例にすぎないし,市販されている巻回数測定器を使えば,市場に出回っているWBトランスから容易に測定することができる。 また,被告大阪高波らは,各社において巻回数等を計算・調整(簡易設計)してトランスを製造しているから,被告大阪高波らがトランスを設計するために必要な数値ではない。 21及び27(導体(一次側・二次側),巻線(銅線)の径),22及び28(電流密度(一次側・二次側),銅線の単位面積当たりの電流の大きさ),並びに23及び27(導体重量(一次側・二次側),銅線の重量)も同様である。 なお,電流密度は,実験により計測・算出することで明らかになる。 ⒥ 25及び29(銅損(一次側・二次側))は,銅線自体が持つ電気抵抗によ り発生する損失であり,24及び28(抵抗75度(一次側・二次側))は,その抵抗値であるところ,これらの数値は銅線のパンフレット等において公開されている数値から算出可能であり,30(全銅損)は25及び29の数値を加えることで算出できる。 ⒦ 31(全負荷損)はほぼ銅損のことを指し,32(無負荷損)はほぼ鉄損の ことを指し,33(全損失)は31及び32の数値を加えることで算出できる。 ⒧ 34(各所寸法)及び35(変圧器外形)は物理的な数値であり,市場に出回っているWBトランスから容易に測定することができる。 ⒨ 36(効率。変圧器における出力の入力に対する比),37(電圧変動率。 無負荷時と全負荷時とで変動 圧器外形)は物理的な数値であり,市場に出回っているWBトランスから容易に測定することができる。 ⒨ 36(効率。変圧器における出力の入力に対する比),37(電圧変動率。 無負荷時と全負荷時とで変動する電圧変動の割合),38(電圧偏差。定格負荷電 圧と定格電圧の差)は,測定又は上記までの数値及び公式により容易に算出できる。 ⒩ 39(全鉄心重量),40(全導体重量),42(全重量)も,上記までの数値により算出可能であるし,市場に出回っているWBトランスから容易に測定することができる。トランスの製造に必要なデータではない。 WBトランスの設計書データについてこれらのデータについて,被告大阪高波らが受け取った記憶はない。 これらのデータのうち,上記一覧表において主張していない数値は,当該トランスにどの程度抵抗があるかという指標として利用されるが,トランス製造において必要な数値ではないし,被告大阪高波らにおいて測定することも可能である。 巻鉄心の磁化特性,巻鉄心の鉄損特性についてこれらは,材料となる方向性珪素鋼板が有する特性であるが,被告大阪高波らは, 方向性珪素鋼板を用いて製造された巻鉄心を購入しており,トランスの製造に必要な数値ではない。 原告の主張するように,方向性珪素鋼板のカタログ記載値と加工された巻鉄心の実数値は,完全に同一ではないかもしれないが,カタログ記載値はメーカーとしての保証数値であって少しマージンが設けられているし,加工時に生じたひずみは焼 き鈍し工程で除去されているから,カタログ記載と加工後の実数値の間には,トランスの設計にあたり有意な差はない。また,被告大阪高波らは,巻鉄心の提供元である日本磁性材工業に対し,いつでも実数値を確認することができるし されているから,カタログ記載と加工後の実数値の間には,トランスの設計にあたり有意な差はない。また,被告大阪高波らは,巻鉄心の提供元である日本磁性材工業に対し,いつでも実数値を確認することができるし,磁束密度等は,実験により簡単に測定することもできる。 BSWシリーズのV/T,温度上昇,コイルボビン基本外形図,巻線計画, 巻線仕様書,巻回数,外形寸法及び重量についてV/Tで述べたとおりであり,その余は,いずれも物理的な数値であって,市場に出回っているWBトランスから測定可能であったり,公知であったり,測定値から計算により算出可能であったり,あるいは実施例にすぎず,WBトランスの製造に当たり必要とはいえない数値である。 まとめ 以上のとおり,本件技術情報には,被告大阪高波らが,WBトランスを設計・製造する上で有用な情報は含まれていない。 ⑸ 本件技術情報に関する原告の主張に対する反論原告は,本件特許権はWBトランスに係る技術の主要部ではなく,本件技術情報がなければWBトランスを製造することは不可能であると主張する。 しかし,特許出願には,発明,産業上の利用可能性,新規性,進歩性,実施可能要件などの要件を満たす必要があるところ,上記原告の主張は,本件各特許権が実施可能要件を満たしていないと主張するのと同義である。 また,そのような価値のない技術について,特許出願する必要性やメリットはないところ,特許権を出願していなければ,情報としてのノウハウは公知となったと たんにその価値を失う。本件では,製品としてのWBトランスが市場に出回り,リバースエンジニアリングが可能となった時点で,本件技術情報は公知となる。一方,特許権は設定登録されれば,公知となった後も消滅するまでは排 値を失う。本件では,製品としてのWBトランスが市場に出回り,リバースエンジニアリングが可能となった時点で,本件技術情報は公知となる。一方,特許権は設定登録されれば,公知となった後も消滅するまでは排他的な権利を持つのであるから,少なからぬコストを負担して本件各特許権について特許出願を行った原告が,本件各特許権は本件技術の主要部ではないと主張することは認められな い。 ⑹ まとめ以上のとおり,本件各基本契約締結の経緯,文言,契約の形態,本件技術情報の内容を総合すると,本件各基本契約は,ノウハウである本件技術情報の使用に対し対価を支払うノウハウライセンス契約ではなく,本件各特許権の実施許諾に対し対 価を支払うことを内容とする特許権の実施許諾契約である。 【被告東京トランスの主張】⑴ 本件各基本契約は本件各特許権の通常実施権の設定契約であること本件各基本契約の実態は,第2条の表題に「実施許諾」と記載され,第7条において通常実施権を許諾すると明文化されているとおり,原告が保有していた本件各 特許権に係る通常実施権の設定契約である。 ⑵ 本件技術情報の価値について原告が,本件技術情報として被告らに提供した各種データは,原告が自認するとおり,「特定容量のトランスについて一定の標準的データを提供するもの」にすぎず,ライセンシーが本件各特許権の使用許諾を得るかどうかの判断基準となる本件各特許権の標準性能を表したデータにすぎない。 被告らトランスメーカーは,WBトランスの設計・製造にあたり,顧客からのオーダーに応じて,その規格・基準に合った設計を行う過程で試行錯誤を繰り返し,独自にデータを計測し蓄積することにより商品化に至るのであって,被告東京トランスは,顧客からの各オーダーに応じたトラ らのオーダーに応じて,その規格・基準に合った設計を行う過程で試行錯誤を繰り返し,独自にデータを計測し蓄積することにより商品化に至るのであって,被告東京トランスは,顧客からの各オーダーに応じたトランスを商品化するために,各種データや設計技術を独自のノウハウ(丙1~5)として積み上げ利用している。 一方,原告から提供を受けた技術資料の各種データは,標準性能としての目安となり,それまでのデータ測定・集積の時間を短縮する効果はあるにすぎず,本件技術情報だけではWBトランスの商品化(設計・製造)を行うことは不可能である。 ⑶ 原告による技術援助について被告東京トランスは,原告から,当初指示により購入した鉄心巻込装置の使用方 法について一度指導を受けたにすぎず,それ以外の技術指導を受けたことはない。 ⑷ 被告大阪高波らの主張の援用本件各基本契約締結の経緯及び原告が提供した本件技術情報に有用性がないことに関し,被告大阪高波らの主張を援用する。 ⑸ まとめ 以上より,被告東京トランスを含む各トランスメーカーが,特許出願公開情報ではなく,ノウハウ(本件技術情報)に価値を認めて基本契約を締結し,対価を支払ってきたということはあり得ない。 2 争点⑵(本件各特許権の特許期間満了により,ロイヤルティの支払義務は消滅したか。)について 【被告大阪高波らの主張】 ⑴ 本件各基本契約の終了(主位的主張)前記1で主張したとおり,本件各基本契約は本件各特許権の実施許諾を内容とするものであり,ロイヤルティの支払はこれに対する対価である。 本件各基本契約の文言上ロイヤルティ支払の終期は定められていないが,前記1で主張したとおり,川鉄電設又は原告と被告らは,本件各特許権の実施許諾を目的 イヤルティの支払はこれに対する対価である。 本件各基本契約の文言上ロイヤルティ支払の終期は定められていないが,前記1で主張したとおり,川鉄電設又は原告と被告らは,本件各特許権の実施許諾を目的 と明示して本件各基本契約を締結したのであるから,本件各特許権が期間満了により消滅し,その技術を自由に使用することができるようになった時点で,本件各基本契約を終了するという黙示の合意があったか,あるいは,契約の目的が達せられなくなったことにより当然に終了したというべきである。 本件各特許権は平成27年3月31日に期間満了により消滅したから,被告らは, 同年4月1日以降のWBトランスの製造,販売について,原告にロイヤルティを支払うべき義務を負わない。 ⑵ 本件各基本契約の無効(予備的主張)仮に本件各基本契約が,本件各特許権が消滅した後にも契約が存続する限り実施料を請求し得る旨を定めたものであるとすれば,特許法が特許の存続期間を出願か ら20年とし,20年経過後の技術は公有になるとした趣旨が没却され,公正取引委員会の指針においても,不公正な取引方法に該当するとされているから,本件各基本契約の定めは民法90条に照らし無効というべきである。 また,仮に本件各基本契約がノウハウライセンス契約であるとしても,ノウハウが公知となった後も長期間のノウハウ使用の対価を求めることは,やはり不公正な 取引方法にあたるというべきであるし,被告らは,本件技術情報の提供と引換えに,多額のイニシャルフィーを支払っているのであるから,本件各基本契約が,本件各特許権の期間が満了した後に,ノウハウ使用に対するロイヤルティを支払うべきことを定めているとすれば,民法90条に照らし無効というべきである。 【被告東京トランスの主張】 本件各基 本件各特許権の期間が満了した後に,ノウハウ使用に対するロイヤルティを支払うべきことを定めているとすれば,民法90条に照らし無効というべきである。 【被告東京トランスの主張】 本件各基本契約の実体が,本件各特許権の通常実施権の許諾契約であることは前 記1で主張したとおりであり,被告東京トランスが原告に支払うロイヤルティは,本件各特許権の実施許諾に対する対価である。 本件各特許権が平成27年3月31日に存続期間満了により消滅し,原告が,本件各基本契約の核心である本件各特許権の実施許諾をすることが無意味,あるいは不能となった以上,本件各基本契約は当然に終了し,同年4月1日以降,原告に対 するロイヤルティ支払義務は発生しない。 ライセンサーがライセンシーに対し,技術に係る権利が消滅した後においても,ライセンス料の支払義務を課す行為は,公正取引委員会の指針に照らし不公正な取引方法に該当し許されない。 【原告の主張】 前記1のとおり,本件各基本契約は,本件各特許権の実施許諾契約ではなく,ノウハウライセンス契約であるから,本件各特許権の消滅によっても当然に終了することはなく,被告らは,平成27年4月1日以降も,WBトランスの製造,販売に対し,ロイヤルティの支払義務を負う。 3 争点⑶(被告らがWBトランスを製造,販売することは不正競争行為に当た るか。)について【原告の主張】⑴ 営業秘密性本件技術情報は,本件技術資料に集約され,これを交付することにより開示・提供されてきたのであるから,本件技術情報は,原告及び被告らにおいて,秘密とし て管理されてきた。よって,本件技術情報は,営業秘密に当たる。 ⑵ 有用性前記1のとおり,本件技術情報は,WBトランスの設計・製造に不可欠 本件技術情報は,原告及び被告らにおいて,秘密とし て管理されてきた。よって,本件技術情報は,営業秘密に当たる。 ⑵ 有用性前記1のとおり,本件技術情報は,WBトランスの設計・製造に不可欠なものであり,その全体が有用なノウハウの蓄積である。 ⑶ 非公知性 本件技術情報は,被告ら及び原告が本件各基本契約と同様の契約を締結している 訴外の特定トランスメーカーのみに開示されているところ,これらすべてのトランスメーカーは秘密保持義務を負う。 したがって,本件技術情報は,原告の管理下以外では一般に入手できないものであり,非公知である。 ⑷ 被告らによる本件各基本契約解除後のノウハウの使用 被告らは,原告が本件各基本契約を解除した後も,本件技術情報を使用して別紙差止等目録記載の変圧器を製造,販売している。 ⑸ 不正の利益を得る目的以上より,被告らは,不正の利益を得る目的で営業秘密を使用しており,不正競争法2条1項7号の不正競争を行っている。 ⑹ まとめよって,原告は,被告らの上記不正競争行為により営業上の利益を侵害されているから,被告らに対し,同法3条1項,2項に基づき,別紙差止等目録の変圧器の製造,販売の差止めを求め,被告らの占有に係る同変圧器の廃棄を求める。 【被告大阪高波らの主張】 ⑴ 営業秘密性川鉄電設が主導して作成し,被告大阪高波らと連名で販売先に配布したパンフレット(乙3),及び平成13年に川鉄電設が原告に対しWBトランス事業を譲渡した後に原告が主導して作成したパンフレット(甲57)には,本件技術情報に記載されたWBトランスの外径寸法,重量等の数値が表示されているため,これらの数 値については,原告によって開示がなされているものとして営業秘密に該当しない レット(甲57)には,本件技術情報に記載されたWBトランスの外径寸法,重量等の数値が表示されているため,これらの数 値については,原告によって開示がなされているものとして営業秘密に該当しない。 ⑵ 有用性本件技術情報には,前記1のとおり,鉄心巻込法やWBトランスの参考値,WBトランスの寸法が記載されているところ,トランスメーカーが川鉄電設の指定業者から鉄心,コイルボビン,フレーム,コアマックを購入してトランスを組み立てる にあたって,なんら必要のない情報である。また,本件技術情報には,鉄損値や磁 束密度も掲載されているが,これらもトランスメーカーがトランスを組み立てるにあたって必要不可欠な情報ではない。 ⑶ 非公知性上記⑴のとおり,本件技術情報の一部については,川鉄電設及び原告が作成したパンフレットに掲載されたことによって公知となっている。 また,本件技術情報は物理的な値であって,使用する銅線や鋼板のメーカーが公開している数値から計算可能なものも多く,さらに本件各基本契約締結後,被告らがWBトランスを流通に置いた時点で,リバースエンジニアリングを行って測定,計測,計算することで,本件技術情報の内容を得られる状態になったから,その時点で本件技術情報は公知となったというべきである。 ⑷ まとめ以上より,本件技術情報は,営業秘密に該当せず,被告らの行為は不正競争行為に当たらない。 【被告東京トランスの主張】被告大阪高波らの主張を援用する。 4 争点⑷(未払いロイヤルティの額)【原告の主張】被告らは,本件各基本契約に基づき,平成27年4月1日以降もノウハウ使用の対価としてのロイヤルティ支払義務を負っており,同年9月末までに,同年3月から8月までの間 ヤルティの額)【原告の主張】被告らは,本件各基本契約に基づき,平成27年4月1日以降もノウハウ使用の対価としてのロイヤルティ支払義務を負っており,同年9月末までに,同年3月から8月までの間のWBトランスの販売数量等を原告に報告し,ロイヤルティを支払 うべきところ,これを拒んでいる。 被告らが原告に支払うべき同年4月から8月までのロイヤルティ額は,被告西村無線電機を除き平成26年4月から8月までと同額と推計され,同期間の実績がゼロである被告西村無線電機については,同年9月から平成27年2月の実績の6分の5と推計されるので,原告は被告らに対し,別紙損害推計一覧表記載の金員及び これに対する本件各基本契約所定の支払期限の翌日である同年11月1日から支払 済みまで商事法定利率による遅延損害金の支払を求める。 【被告らの主張】争う。 第4 当裁判所の判断 1 認定事実(前提事実及び後掲各証拠又は弁論の全趣旨から認定できる事実) ⑴ 川鉄電設によるWBトランスの開発,本件各特許権の出願及び本件アンケートの実施等(乙28)ア川鉄電設は,親会社である川崎製鉄株式会社(現JFEスチール株式会社。 以下「川崎製鉄」という。)の戦略商品である方向性珪素鋼板を使用した小型・高性能のトランスとしてSC(スパイラルコア)トランスの開発を行い,平成元年に は展示会の賞を受賞するなどしたが,平成2年にはSCトランス事業からの撤退を一旦決めた後,平成4年10月に事業化の再検討を開始した(甲79,乙4)。 イ川鉄電設は,平成5年11月18日,工業会所属のトランスメーカーのうち数社に対し,SCトランス事業から一旦撤退したのは,SCトランスに製造方法の単純化・自動化が進まないといったコスト上の問題があっ 川鉄電設は,平成5年11月18日,工業会所属のトランスメーカーのうち数社に対し,SCトランス事業から一旦撤退したのは,SCトランスに製造方法の単純化・自動化が進まないといったコスト上の問題があったためであること,事業 化再検討にあたっての課題は自動化等コストダウンであること,500VA以下のトランスについてはボビン化を検討していることを説明した(乙4,28)。 ウ川鉄電設は,コスト面で問題があるとしてSCトランスの生産を最終的に中止し,新発想のトランスとして,コイルボビン式鉄心変圧器であれば,小型,高性能であり製造コストも低減できるとして,WBトランスの開発を進めた(乙1,2 8)。 川鉄電設において,SCトランス及びWBトランスの開発は,同社の変圧器事業室長であり,後に原告を設立するP2が中心となって行い,川鉄電設は,WBトランスに用いるボビンの開発を,コイルボビンの専門メーカーである西本合成販売と共同で進めた(前提事実,乙1)。 エ川鉄電設と西本合成販売は,平成6年5月30日,本件各特許権の優先権主 張の基礎となる出願として,変成器及び変成器用のコイルボビンの発明について,両社を特許出願人,P2及び西本合成販売の代表者であるP4の2名を発明者とする特許出願の手続を行った(甲78の1)。 オ川鉄電設は,同年11月24日,工業会との間で,川鉄電設の開発したWBトランスを世に広めること等を目的として覚書を作成し,川鉄電設は工業会の会員 に対し最優先的にWBトランスの通常実施権を許諾すること,工業会の会員に対して最優先的に実施許諾する期間を平成7年4月から平成10年3月までの3年間とすること,当初開発が行われていた1500VAまでのトランスとは別に,2000VA超のトランスの技 こと,工業会の会員に対して最優先的に実施許諾する期間を平成7年4月から平成10年3月までの3年間とすること,当初開発が行われていた1500VAまでのトランスとは別に,2000VA超のトランスの技術を公開する場合は,工業会の会員に対し,優先的に公開すること等を合意した。 また,川鉄電設は,前記覚書に付帯文言を付して,WBトランスの通常実施権許諾に関し,実施許諾した工業会の会員に対し,WBトランスの設計,品質保証に関する技術指導をセミナー形式で少なくとも1回開催すること,技術並びに過去の使用例や実績についての資料を,可能な範囲で提供すること等を約した(甲83,乙4)。 カ川鉄電設は,平成6年12月8日,SCトランス研修会の名目で工業会の会員であるトランスメーカーを集め,特許出願中のコイルボビン式巻鉄心変圧器(WBトランス)について,①焼鈍済リングコアのコイルへの巻込技術,WBトランス(80~1500VA)の標準電気関係設計書,WBトランスの捲線,ワニス含浸,温度上昇等の技術データを公開又は提供すること,②特許出願中の鉄心巻込装置, WBトランス用焼鈍済リングコア,標準コイルボビン及びフレームを提供すること,③ロイヤルティは,イニシャルフィー1社100万円,ランニングフィーとして出荷額の3%であること,④提供する鉄心巻込装置の予定価格は180万円であり,標準コイルボビン及びフレームの価格表は近日配布すること,⑤WBトランスの標準品についての技術資料は無償,新製品の技術援助は有償であること,⑥契約企業 は工業会の会員会社及び工業会承認の企業に限定すること,⑦契約日は平成7年を 予定していることを説明した上で,工業会の会員であるトランスメーカーに対し,上記技術公開の概要を基本にした製造,販 会員会社及び工業会承認の企業に限定すること,⑦契約日は平成7年を 予定していることを説明した上で,工業会の会員であるトランスメーカーに対し,上記技術公開の概要を基本にした製造,販売の実施権契約について,希望する,希望しない,様子をみる,その他のいずれであるかを,アンケート形式により回答させた(本件アンケート。甲66)。 ⑵ 当初契約の締結 ア川鉄電設及び西本合成販売は,平成7年3月31日,前記⑴エの出願を優先権主張の基礎として,両社を出願人,発明者をP2及びP4として,変成器及び変成器用のコイルボビンの発明に関する本件特許権1の特許出願を行った。 本件特許権1の特許請求の範囲には,「外周全体に凹状溝が設けられたコイルボビンと,該コイルボビンの凹状溝に導線を所要回数巻き付けてなる巻線」,鉄心巻 込部の「外周面は断面形状が上記巻鉄心の内径と等しい曲率の円弧状である曲面」(請求項1),「上記凹状溝の断面形状を,底壁と側壁が120°の角度をなして接続する船底状としたことを特徴とする」(請求項3),「上記凹状溝の断面形状を,底壁と側壁がほぼ直交して接続する矩形状としたことを特徴とする」(請求項4)といった記載がある(甲60)。 また,本件特許権2は,平成13年5月1日に本件特許権1から分割出願された特許権であり,「円筒状に巻回された電磁鋼板が焼鈍されてなる変成器用の巻鉄心であって,この巻鉄心の内周側の端部に」,「この巻鉄心が巻回されるコイルボビンに設けた係止部を設け」(請求項1)ること等を内容とする発明である(甲61)。 イ川鉄電設は,平成7年4月6日,川鉄電設の大阪本社において,それまでに 契約希望を表明していた被告大阪高波,被告ウラックス電子,被告武蔵野通工,被告清水電子工業,被 である(甲61)。 イ川鉄電設は,平成7年4月6日,川鉄電設の大阪本社において,それまでに 契約希望を表明していた被告大阪高波,被告ウラックス電子,被告武蔵野通工,被告清水電子工業,被告P1,被告山陽電氣工業,被告今井電機及び被告日幸電機との間で,前提事実⑶の内容で,当初契約を締結した。 契約締結の前に,川鉄電設のP3社長(当時)は,川鉄電設において,円形コイルボビン,巻鉄心トランス,鉄心巻込装置内2件及びフレーム形態について特許出 願中であり,当初契約により,特許権の通常実施許諾を受けることになる旨を説明 した(乙6,8)。 ウその後,上記以外の被告らも,前提事実⑵アのとおり,平成10年9月28日までに,当初契約を締結した。 ⑶ 技術指導等ア被告らは,当初契約締結後,前提事実⑶オ記載のイニシャルフィーを川鉄 電設に支払い,川鉄電設は,平成7年技術資料を被告らに郵送した(乙28)。 イ川鉄電設は,平成7年4月21日,当初契約を締結した被告らに対し,WBトランスの技術セミナーの開催を通知した。同セミナーは同月5月16日から19日までの4日間開催され,会社ごとに参加日が割り当てられた。同セミナーでは,WBトランスの電気設計概要,製造技術概要,鉄心巻込方法による鉄心形成につい ての説明がなされたが,被告らが関心を有したのは,当初契約によって提供が予定される,川鉄電設が新たに開発した鉄心巻込装置コアマックの使用方法であった(乙26ないし28)。 ウ川鉄電設は,前記イのセミナーの前後ころ,当初契約を締結した被告らに対し,WBトランスの製造に使用するコアマックを提供し,被告らはWBトランスの 設計,製造に着手した。 エ被告らは,WBトランスの設計,製造に関し,疑 前後ころ,当初契約を締結した被告らに対し,WBトランスの製造に使用するコアマックを提供し,被告らはWBトランスの 設計,製造に着手した。 エ被告らは,WBトランスの設計,製造に関し,疑問点や依頼事項があると,当初は川鉄電設でWBトランスの開発を担当していたP2に対し,平成13年3月の承継以降は原告元代表者に照会を行い,P2(原告元代表者)はこれに回答していたが,その中でファクシミリによるやり取りが証拠として提出されているものは 以下のとおりである(被告らからP2(原告元代表者)に対するファクシミリを1通,これに対する回答を1通とするため,1つの照会事項につきファクシミリが往復した場合は2通となる。)。 被告大阪高波は,平成9年にP2とファクシミリを4通やり取りした後,追加契約(平成13年3月)の後,同年から平成20年にかけて,原告元代表者と6 通やり取りをした。内容は突入電流の測定結果その他である(甲107)。 被告ウラックス電子は,P2との間で平成8年に1通,平成9年に1通,平成10年に8通,平成12年に9通,平成13年に1通のファクシミリのやり取りをし,原告元代表者との間で平成13年に2通,平成14年に6通,平成15年に3通のファクシミリのやり取りをしたが,その後のやり取りはない。内容は,温度上昇対策の依頼やトランスの設計依頼等であった(甲108)。 被告武蔵野通工は,P2との間で平成8年から平成10年にかけて9通のファクシミリのやり取りをしたが,その後のやり取りはない。内容は,数値データの送付依頼やトランスの設計依頼であった(甲109)。 被告清水電子工業は,平成8年から平成11年にかけて,P2と15通のファクシミリのやり取りをし,追加契約(平成13年3月) 内容は,数値データの送付依頼やトランスの設計依頼であった(甲109)。 被告清水電子工業は,平成8年から平成11年にかけて,P2と15通のファクシミリのやり取りをし,追加契約(平成13年3月)後の同年と平成14年に 原告元代表者と5通のやり取りをしたが,その後のやり取りはない。内容はデータの送付依頼やトランスの設計依頼,顧客からの照会についての質問等であった(甲110)。 被告P1は,平成7年から平成9年にかけて24通,平成11年に2通のファクシミリをP2とやり取りし,追加契約(平成13年2月)後の平成14年に1 通,平成16年に2通,原告元代表者とやり取りをしたが,その後のやり取りはない。内容は,変成器試験成績表の送付依頼が中心である(甲111)。 被告山陽電氣工業は,平成8年及び平成9年に3通のファクシミリをP2とやり取りしたに止まる。内容は,顧客からの質問に対する照会等であった(甲112)。 被告今井電機は,平成10年から平成12年にかけて12通のファクシミリをP2とやり取りし,追加契約(平成13年2月)後の同年に10通のファクシミリを原告元代表者とやり取りしたが,その後のやり取りはない。内容はほとんどがトランスの設計依頼である(甲113)。 被告日幸電機は,平成9年にP2にコア捲きの指導を依頼する旨のファクシ ミリを送り,P2が同被告に指導を行った結果を返答するファクシミリを送ったに 止まる(甲114)。 被告西村無線電機は,P2との間で平成8年に3通,平成11年に4通,平成12年に1通のファクシミリのやり取りをし,その後のやり取りはない。内容は,温度上昇等,トランスの設計に関する相談が中心であった(甲115)。 被告渡辺電機は,平成9年から平成11年にかけて, 成12年に1通のファクシミリのやり取りをし,その後のやり取りはない。内容は,温度上昇等,トランスの設計に関する相談が中心であった(甲115)。 被告渡辺電機は,平成9年から平成11年にかけて,P2との間で7通のフ ァクシミリのやり取りをし,平成13年に原告元代表者との間で3通,追加契約(平成14年2月)の後,同年から19年にかけて,原告元代表者と11通のファクシミリをやり取りした。内容は,巻数,線径の照会や,トランスの設計依頼が中心であった(甲116)。 被告イチデン製作所は,平成8年から平成10年にかけて6通,平成12年 に2通のファクシミリをP2とやり取りし,追加契約(平成13年2月)後の同年,原告元代表者と2通のファクシミリをやり取した。内容はトランスの設計依頼が中心であった(甲117)。 被告中遠電子工業は,平成9年に3通,平成10年に7通,平成11年に1通のファクシミリをP2とやり取りしたが,その後のやり取りはない。内容はトラ ンスの設計依頼が中心である(甲118)。 被告浦川トランス工業は,平成10年にP2と3通のファクシミリをやり取したにとどまる。内容はトランスの設計依頼である(甲119)。 被告鶴田電機は,平成26年にWBトランスの振動試験等のデータを照会し,原告はこれに対しデータを送付した(甲120)。 被告保全工業は,当初契約(平成10年3月)の後,平成12年にP2と2通のファクシミリのやり取りをし,追加契約(平成13年3月)の後,同年から17年にかけて,原告と10通のファクシミリのやり取りをした。内容は,トランスの設計依頼及び突入電流に関する質問等であった(甲121)。 被告国電機製作所は,当初契約(平成10年9月)の後,平成11年に2通, 平成12年に2通,P のやり取りをした。内容は,トランスの設計依頼及び突入電流に関する質問等であった(甲121)。 被告国電機製作所は,当初契約(平成10年9月)の後,平成11年に2通, 平成12年に2通,P2とファクシミリのやり取りをし,平成21年に2通,平成 24年に1通,原告元代表者とファクシミリのやり取りをした。内容はトランスの設計依頼や顧客からの質問に対する照会等であった(甲122)。 被告東京トランスは,平成14年に6通,平成15年に2通,平成16年に3通のファクシミリを原告元代表者とやり取した。内容はトランスの突入電流に関する相談やトランスの設計依頼が中心であった(甲96ないし106)。 ⑷ 追加契約の締結ア当初契約の対象とされたのが1500VAまでの容量のWBトランスであったところ,被告らに対し,顧客から2000VAないし3000VAの製品の引き合いがあったことから,被告P1が,P2に対し,容量の大きなトランス用のコイルボビン金型を起こし,被告らにおいてコイルボビンを製造することを打診したと ころ,P2は,それは当初契約に違反する行為であり,絶対に作ってはならない旨を明言し,被告P1はこれを工業会に報告した(甲84の2,乙28)。 イ川鉄電設は,大容量のトランスの開発を進め,平成12年12月21日付けで,「BSW2000の開発状況について」(ご連絡並びに意向の問わ合せ)と題する書面を被告らに送付し,BSW2000の開発に努めてきたがようやく実施の 見通しができたこと,現行の鉄心巻込装置コアマックの改造が必要であること,2000VAと2500VAの2種の仕様であること,部品材料はシングルコイルボビン1種と2000VA用と2500VA用の鉄心2種であること,費用は鉄心巻込装置の改 コアマックの改造が必要であること,2000VAと2500VAの2種の仕様であること,部品材料はシングルコイルボビン1種と2000VA用と2500VA用の鉄心2種であること,費用は鉄心巻込装置の改造を含み約100万円であること,BSW2000実施の意向の有無を平成13年1月9日までに回答して欲しいことを文書で告知した(甲84の1)。 ウ前提事実⑵イ及びエのとおり,被告らのうち9社は同年2月又は3月に川鉄電設との間で追加契約を締結し,被告らのうち3社は,平成14年から平成22年にかけて,原告との間で追加契約を締結し,イニシャルフィーとして100万円を支払った。 エ川鉄電設は,同年2月1日付けで2000VA,2500VAの容量のトラ ンスに関する技術資料及びデータを付加した平成13年技術資料を作成して,追加 契約を締結した被告らに交付した(甲81)。 ⑸ 原告への承継ア平成13年に,川鉄電設における事業の選択と集中の観点から,WBトランスを実質的に開発したP2が,川鉄電設を退社して原告を設立し,WBトランス事業を承継することとなった。 イ川鉄電設と原告は,同年3月27日,営業譲渡契約書を作成し,①WBトランスの製造に関し被告らに供給する機器及び資料に関する西本合成販売,コアマックの製造委託会社及び日本磁性材工業との各契約,②被告らとの当初契約,③被告らの一部との追加契約に関し,川鉄電設が有する一切の契約上の地位を原告に譲渡することを合意した。 また,川鉄電設と原告は,川鉄電設が特許権及び意匠権(出願中のものも含む。)を原告に無償で譲渡する一方で,原告は,電圧が3KV以上のものに限り,上記特許権等の通常実施権を,川鉄電設に無償で許諾することとした。 さらに,川鉄電設 が特許権及び意匠権(出願中のものも含む。)を原告に無償で譲渡する一方で,原告は,電圧が3KV以上のものに限り,上記特許権等の通常実施権を,川鉄電設に無償で許諾することとした。 さらに,川鉄電設と原告は,BSW2000及びBSW2500を対象とする追加契約のイニシャルフィーとして川鉄電設が受領した金員については,契約の実施 にかかった実費を差し引いて,川鉄電設が原告に支払う旨を約したが,当初契約のイニシャルフィーを川鉄電設が原告に引き継ぐ旨の定めは置かれなかった(甲87)。 ウ被告らは,それぞれ,同年3月16日から4月13日にかけて,川鉄電設及び原告との三者合意の形で,被告らと川鉄電設との間における本件各基本契約(追加契約を原告と締結した部分を除く。)の当事者を川鉄電設から原告に変更するこ と,WBトランスの販売に関するランニングロイヤルティの支払について,同年2月28日までに発生した販売に関しては川鉄電設に,同年3月1日以降に発生した販売に関しては原告に対し行うこと等を内容とする覚書を作成した(甲30ないし55)。 エ本件各特許権については,前記イ及びウの承継の時点では出願手続又は出願 準備中であったところ,西本合成販売は,同月,特許を受ける権利が川鉄電設から 原告に譲渡されることについて書面で同意し,本件特許権1については,追加契約(一部の被告を除く。)が締結された後である同年9月7日に,本件特許権2については平成17年4月28日に,それぞれ原告及び西本合成販売を特許権者として特許登録がなされたが,その際に,本件各基本契約の条項が改訂されたり,ロイヤルティの支払に変化が生じることはなかった(甲88,弁論の全趣旨)。 ⑹ WBトランスの製造ア被告らは,本件各基本契約の定め たが,その際に,本件各基本契約の条項が改訂されたり,ロイヤルティの支払に変化が生じることはなかった(甲88,弁論の全趣旨)。 ⑹ WBトランスの製造ア被告らは,本件各基本契約の定めに従い,川鉄電設が開発し,株式会社友久精機にOEM生産させた鉄心巻込装置コアマックを,代理店である西本合成販売を介して購入するほか,日本磁性材工業より,同社が川崎製鉄より納入を受けた方向性珪素鋼板で製造した巻鉄心を購入し,さらに,西本合成販売より,同社が製造し たコイルボビン及びフレームを購入してWBトランスを製造した(前提事実⑴ウ,甲87,乙16,17.23)。 イ被告らは,要旨以下の手順でWBトランスを製造し,販売した。 巻線作業機械を用いてコイルボビンに銅線を巻き付け,外側に固定用絶縁テープを貼る。 このとき,巻線幅,折り返しタイミング,巻線回数等は事前に設定しておく。 鉄心巻取作業コアマックを用いて,コイルボビンの一対の鉄心巻込部の回りに鉄心を巻き取る。 フレーム取付作業一体化したコイルボビンと鉄心に,フレームを取り付ける。 ワニス浸潤作業フレームごと,ワニスの入った容器に浸け,ワニスを浸潤させ,乾燥させる。 ウ既に認定したところによれば,コイルボビンは本件特許権1の実施品,巻鉄心は本件特許権2の実施品と認められ,フレームも,川鉄電設が有する特許(乙15)の実施品である。 ⑺ 本件各基本契約の終了の通告等 ア被告らは,平成27年4月以降,被告らが所属する工業会の名で,あるいは代理人弁護士を介して,ロイヤルティは本件各特許権の実施許諾の対価であり,同年3月31日をもって本件各特許権が消滅した以上,本件各基本契約の目的は達成できな ,被告らが所属する工業会の名で,あるいは代理人弁護士を介して,ロイヤルティは本件各特許権の実施許諾の対価であり,同年3月31日をもって本件各特許権が消滅した以上,本件各基本契約の目的は達成できなくなり本件各基本契約は終了したこと,本件技術情報にはWBトランスを分解すれば誰でも知り得る情報しか含まれておらず,すでに公知であることを理由に, 同年4月以降のロイヤルティの支払を拒む旨を原告に通告した。 イ原告は,同年4月以降も被告らはロイヤルティの支払義務を負っているのに,同月以降のロイヤルティの支払を予め拒絶しているとして催告を経ず,被告らの債務不履行を理由に,本件各基本契約を解除した旨を主張している(特許権消滅から契約解除までのロイヤルティ支払義務,及び本件技術情報の秘密保持義務について は,本件基本契約解除後も存続することを前提とする主張である。前提事実⑹,甲58ないし75)。 ⑻ 本件技術情報についての検討原告は,本件各特許権が消滅した後も被告らはロイヤルティ支払義務を負い,被告らの行為が不正競争行為に当たることの根拠として,本件技術情報は,それなし ではWBトランスを製造することのできない有用な情報であり,秘密としての保護に値する旨を主張するので,本件技術情報の性質について検討することとする。 ア本件技術資料の種類川鉄電設又は被告らに対して交付された,本件技術情報が記載された冊子につき,平成24年技術資料,平成13年技術資料,平成7年技術資料の3種類が証拠とし て提出されているが,いずれも「技術資料コイルボビン式巻鉄心変圧器(WBトランス)」との表題であり,「1.鉄心巻込法」,「2.電気設計法」,「3.製作等」という構成となっている。 平成13年技術資料は,平成7年技術資料と比較する 料コイルボビン式巻鉄心変圧器(WBトランス)」との表題であり,「1.鉄心巻込法」,「2.電気設計法」,「3.製作等」という構成となっている。 平成13年技術資料は,平成7年技術資料と比較すると,鉄心巻込法及び巻鉄心の磁化特性等が省略され,電気設計書が2000VA及び2500VAの規格とな り,WBトランスの型式ごとの外形寸法図(100ないし2500VA)が追加さ れているほかは,基本的に同内容である。 平成24年技術資料は,「WBトランスの設計書」(100ないし2500VA),「捲線仕様書」,WBトランスの型式ごとの外径寸法図(100ないし2500VA)等が追加され,いくつかのデータがアップデートされているほかは,平成7年技術資料と同内容である。 イ本件技術資料に開示された情報本件技術資料の内容は,大きく分けて,①川鉄電設及び原告において,WBトランスを開発した際に獲得したデータ(巻鉄心の磁化特性,鉄損特性,WBトランスの温度上昇等),②WBトランスの設計図(設計磁束密度,銅占積率等のデータについて,WBトランスの規格ごとに一覧表にしたもの),③コイルボビンやWBト ランスの製品の外形図及び寸法・重量,④巻線計画関連(WBトランスの規格ごとの船底部巻回数等の一覧表,捲線仕様書,WBトランスの規格ごとの巻回数の一覧表。以下「巻線計画等」という。)である。 原告は,上記情報は,被告らにおいてWBトランスを設計・製造するために必要不可欠なものである旨を主張するため,以下,具体的に検討する。 鉄心巻込法について原告は,①鉄心巻込手順,②鉄心巻込における弾性限界内で作りうる大円の最大径についてのグラフ及び③「方向性珪素鋼板の弾性曲げの影響」として曲率半径及び劣化率のグラ 鉄心巻込法について原告は,①鉄心巻込手順,②鉄心巻込における弾性限界内で作りうる大円の最大径についてのグラフ及び③「方向性珪素鋼板の弾性曲げの影響」として曲率半径及び劣化率のグラフを開示する。 被告らは,指定業者である西本合成販売からコアマックを購入して鉄心巻込作業 を行っているため,①の手順の説明は必須とはいえない。 また,②のグラフも,コアマックを使用する場合に,巻鉄心の初期状態の径よりも大きい径を設定するとしても,極端に大きな外径(弾性限度を超える外径)を設定しうるとは通常考えにくく,トランスの製造に不可欠なデータとはいいがたい。 ③のグラフは,巻鉄心の材料である方向性珪素鋼板のデータであるところ,被告 らは,指定業者である日本磁性材工業から方向性珪素鋼板を用いて製造した巻鉄心 を購入しているため,被告らにとって必須な情報であるとはいえない。 電気設計法について(乙21,22)電気設計一覧表及び電気設計書記載のデータについて本件技術資料中,電気設計一覧表及び電気設計書には,川鉄電設又は原告において,WBトランスの試作品を用いて計測した実測値が記載されている。 原告は,WBトランスの設計作業において,最低限,①一次巻数,②二次巻数(一次巻数に特定の数値を乗じた数値),③一次巻線径,④二次巻線径を算出する必要があるところ,これらは,原告から開示された数値(本件技術資料中,電気設計一覧表及び電気設計書に記載。)がなければ被告らにおいて算出することができないと主張する。 ①一次巻数の算出に必要な値として原告が主張する一次電圧,周波数,鉄心断面積及び最大磁束密度のうち,一次電圧及び周波数は所与の値であり(平成24年技資料の6頁参照。),鉄心断面積の算出に ①一次巻数の算出に必要な値として原告が主張する一次電圧,周波数,鉄心断面積及び最大磁束密度のうち,一次電圧及び周波数は所与の値であり(平成24年技資料の6頁参照。),鉄心断面積の算出に必要な鉄占積率は,巻鉄心の製造元である日本磁性材工業に問い合わせたり,一般的な値を用いたりすることにより,定めることができる。また,最大磁束密度についても,巻鉄心の製造元である日本磁性 材工業に問い合わせたり,独自に測定したりすることも可能である(乙11,18,19)。 ③一次巻線径及び②二次巻線径の算出に必要な値として原告が主張する一次電流,二次電流及び各電流密度のうち,一次電流及び二次電流は所与の値であり(平成24年技術資料の6頁参照。),各電流密度については,使用する巻鉄心を用いてト ランスを作成し,電圧や負荷を変化させながら電流・温度上昇を計測することにより算出することができる。 ⒝ その他のデータについて巻鉄心の磁化特性及び鉄損特性についても,被告らは,巻鉄心の製造元である日本磁性工業に問い合わせて確認したり,材料である方向性珪素鋼板のカタログに記 載された一般的な値を使用したりすることができる。なお,無負荷損は,鉄損や励 磁電流による巻線抵抗損等の和であるが,鉄損以外の損失は極めて小さいため,鉄損とほぼ同じである。 WBトランスのV/T値については,所与の値である一次定格電圧(平成24年技術資料の6頁参照。)を一次巻回数で除することによって算出可能であるところ,巻回数は一般に販売されている巻数測定器(乙20)により計測が可能であるし, WBトランスの完成品を分解して物理的に数えることも可能である。 同様に,WBトランスの温度上昇のデータについても,試行錯誤して測定したり,W 巻数測定器(乙20)により計測が可能であるし, WBトランスの完成品を分解して物理的に数えることも可能である。 同様に,WBトランスの温度上昇のデータについても,試行錯誤して測定したり,WBトランスの完成品があれば,これを用いて測定したりことができる。 銅線に関する数値(導体,電流速度,導体重量,抵抗,銅損,全銅損及び全負荷損)については,銅線のパンフレットに記載された数値から一定程度推測すること が可能であり,銅損の値を算出するために必要な巻回数及び電流密度は,上記のとおり,被告らにおいて得ることができる(乙12)。 また,被告らは,それぞれ異なるメーカー・型番のワニスを使用しており,ワニスの特性はパンフレット等によって公開されているところ,原告が開示するワニスの製品番号は,一つの例にすぎず,必須の情報ではない(乙10)。 ⒞ まとめ以上のとおり,本件技術資料中の電気設計一覧表及び電気設計書において開示された数値は,試作品における実測値にすぎず,被告らにおいても,独自に計測・算出したり,製造元に問い合わせて確認したり,WBトランスの完成品を用いて測定したりすることが可能であったものであるから,原告からの開示がなければWBト ランスの設計・製造が不可能であったものとはいえない。 製作等(外形寸法,巻線計画等)についてコイルボビン及びWBトランスの外径寸法や重量は,パンフレットを参照したり,WBトランスの完成品を測定したりすることにより容易に得られる値である(甲57,乙3)。 巻線計画等についても,原告から開示された数値によらなくても,被告らにおい て,使用するコイルボビンの凹状溝の幅と,選択した銅線の径から巻数を算出し,上記のとおり算出された一次巻数及び二 画等についても,原告から開示された数値によらなくても,被告らにおい て,使用するコイルボビンの凹状溝の幅と,選択した銅線の径から巻数を算出し,上記のとおり算出された一次巻数及び二次巻数まで,整列巻で巻き回していくことは可能であると考えられる。 ウまとめ 本件技術資料に記載された数値等は,WBトランスを開発した川鉄電設ない しP2が,開発の過程で得られた実験値や実測値,あるいはトランスの容量等に応じて推測した理論値や計算値を表形式に整理したものが多いと思われる。 そうすると,WBトランスを製造,販売しようとする者が本件技術情報を入手した場合,独自に実験を行って必要な値を計測・算出したり,部品の製造元等へ問い合わせたりすることなく当該トランスの特性を予測したりすることができるという 点において有用であるといえ,要件を充たせば,営業秘密として保護されるべきものと解されるから,例えば,被告らが,当初契約を締結して平成7年技術資料を入手し,未だWBトランスの製品が市場に出ていない段階で,原告の許諾を得ずにこれを第三者に開示したとすれば,秘密保持義務違反の責めを負うべきものと解される。 他方,上記検討したとおり,本件技術情報の開示を受けなければWBトランスを製造することができないといった事情までは認められず,本件技術情報がWBトランスの製造に必須であることを前提に,本件各基本契約の性質を考えることはできない。 また,本件技術情報に記載された数値は,物理的に測定したり,計算によっ て求めることができるものと考えられるから,WBトランスが市場に出回り,リバースエンジニアリングを行って計測等ができるようになった段階で,公知になるといわざるを得ない。 本件各特許権の明細書等を参照 めることができるものと考えられるから,WBトランスが市場に出回り,リバースエンジニアリングを行って計測等ができるようになった段階で,公知になるといわざるを得ない。 本件各特許権の明細書等を参照し,流通に置かれたWBトランスに対するリバースエンジニアリングを行ってもなお解明することができず,原告よりその開示を受 けない限り,WBトランスの製造はできないというようなノウハウが,本件技術情 報に含まれていると認めるべき証拠は提出されていない。 以上を前提に本件の各争点について検討する。 2 争点⑴(本件各基本契約の性質は,本件各特許権の実施許諾契約か,それともノウハウライセンス契約か)についての判断⑴ 本件各基本契約の内容 本件各基本契約の内容は,前提事実⑶のとおりであり,文言上は,WBトランス製造及び販売の実施許諾,指定された装置及び資材の使用,技術情報の提供,対価としてのイニシャルフィー及びランニングロイヤルティの支払,その前提としての実施報告,特許権等の実施許諾,改良技術の通知,秘密保持といった内容が双方の権利または義務として定められており,原告が主張する技術情報の提供および秘密 保持も,被告らが主張する特許権の実施許諾も,いずれも本件各基本契約の内容として定められているのであって,その関係をどのように解するかが問題となる。 ⑵ 原告の主張についてア原告は,本件各基本契約は,ノウハウライセンス契約であって特許の実施許諾を内容とするものではなく,イニシャルフィー及びランニングロイヤルティの支 払義務は,ノウハウの使用に対する対価であって,特許の使用許諾に対する対価ではないから,本件各特許権の消滅により影響されない旨を主張する。 しかしながら,ノウハウライセンス契約 ルティの支 払義務は,ノウハウの使用に対する対価であって,特許の使用許諾に対する対価ではないから,本件各特許権の消滅により影響されない旨を主張する。 しかしながら,ノウハウライセンス契約であるとの主張は,本件技術情報がなければWBトランスを製造することができないとの原告の主張を前提とするものであるところ,その主張が失当であることは既に述べたとおりである。 イ既に認定したとおり,WBトランスとして定義されたものは,本件各特許権の特許請求の範囲の文言と一致する部分が多く,当初契約の際の川鉄電設側の説明によっても,特許権者の許諾を得ない限り,これを製造,販売することはできないと考えられる。 WBトランスの製造に使用する資材や装置にも,川鉄電設や川崎製鉄の権利が及 ぶものは多いと考えられ,権利者の許諾を得るか,権利者又はその許諾を得た者が 製造した資材や装置を購入等するのでなければWBトランスを製造,販売することはできず,単に製造に関する技術情報やノウハウの提供を受けるのでは足りないというべきである。 ウ本件各基本契約,特に当初契約の締結に至る経緯を考えても,前記認定のとおり,川鉄電設は工業会の会員に対し,特許の実施許諾であることを前提に,それ に付随するものとして情報提供,技術指導を行う旨を案内しているのであり,その本質が特許の実施許諾ではなく,ノウハウライセンス契約であるとの説明が行われた事実は認められない。 エ前記認定したとおり,被告らの照会やトランスの設計依頼に応じて,川鉄電設又は原告から情報提供が多数回にわたって行われているが,時期的なところに着 目すると,被告らが当初契約を締結し,WBトランスの設計,製造をしてその販売を行い始めた平成9年から平成13年までの間に は原告から情報提供が多数回にわたって行われているが,時期的なところに着 目すると,被告らが当初契約を締結し,WBトランスの設計,製造をしてその販売を行い始めた平成9年から平成13年までの間になされたものが大部分であり,最長20年にわたるランニングロイヤルティの支払と技術情報の提供ないし技術情報とが対価関係に立つと解することは不合理である。 むしろ,従前にはなかった形式のものとして新たに開発したWBトランスについ ての実施許諾を行うに際し,被告らにおけるWBトランスの製造が軌道に乗るまでの間,WBトランスの開発者である川鉄電設又は原告が,技術情報を提供したり,技術指導を行うというのは,通常予定されるところと考えられること,川鉄電設から原告に契約関係を承継した際に,前記認定のとおり,当初契約に係るイニシャルフィーは承継せず,追加契約に係るイニシャルフィーは,実施分を控除して原告に 承継される扱いであったことからすると,本件各基本契約において,技術情報の提供や技術指導の対価と認められるのは,契約当初に支払われるイニシャルフィーと解するのが合理的である。 オ以上を総合すると,本件各基本契約には,前記⑴で要約した複数の要素が含まれるものの,その中心となるのは本件各特許権の実施許諾であり,本件技術情報 の提供は,これに付随するものというべきであるから,ランニングロイヤルティの 支払も,本件各特許権の実施許諾に対する対価と位置づけられるべきであり,これを本件技術情報の提供に対する対価と考えることはできない。 原告は,本件各基本契約の体裁として,第2条にWBトランスの製造,販売の実施権の許諾を,第3条に技術情報の提供を,第7条に特許権の実施許諾を定めた上で,第4条の対価は第2条,第3条の対価である旨 原告は,本件各基本契約の体裁として,第2条にWBトランスの製造,販売の実施権の許諾を,第3条に技術情報の提供を,第7条に特許権の実施許諾を定めた上で,第4条の対価は第2条,第3条の対価である旨定めていることをその主張の根 拠とする。しかし,既に検討したとおり,そもそも本件各特許権の実施許諾なしにWBトランスを製造,販売することはあり得ないし,契約の第2条において,鉄心巻込装置,コイルボビン,フレームについては川鉄電設が特許出願中のものを使用すべきことが定められていることからしても,同条の実施許諾は,本件各特許権の実施許諾を含むものであり,第7条の規定は,特許の登録後と出願中の場合とを分 けて規定したものと解されるから,第4条の対価に特許の実施許諾に対するものが含まれないと解することはできない。 カしたがって,本件各基本契約がノウハウライセンス契約であり,ランニングロイヤルティ等はノウハウの使用許諾の対価であって,本件各特許権の消滅によっては影響されないとする原告の主張は採用できない。 3 争点⑵(本件各特許権の期間満了によりロイヤルティの支払義務は消滅したか。)についての判断前記検討のとおり,本件各基本契約は,本件各特許権の実施許諾を中心とするものであり,少なくともランニングロイヤルティはこれに対する対価とみるべきものであるから,本件各特許権が存続期間満了により消滅した場合には,ランニングロ イヤルティの支払義務は当然に終了するものと解するのが相当である。 本件各基本契約に終期の定めは明記されていないが,本件各特許権が消滅した後に,その技術の使用に対する対価の支払を義務付けることは,特許権の本質に反する行為というべきであるし,本件技術情報の開示や技術支援のみの対価として,本件各特許権が消滅する ,本件各特許権が消滅した後に,その技術の使用に対する対価の支払を義務付けることは,特許権の本質に反する行為というべきであるし,本件技術情報の開示や技術支援のみの対価として,本件各特許権が消滅する前と同額のランニングロイヤルティの支払義務が継続的に生 じると解すべき事情も認められない(原告の被告らに対する技術指導の大半が,被 告らがWBトランスを製造するようになった当初の時期に集中していることは,前記認定のとおりである。)。 したがって,被告らの原告に対する本件各基本契約に基づくロイヤルティの支払義務は,本件各特許権が消滅した平成27年3月31日をもって消滅したと解すべきであり,同年4月1日以降に被告らがWBトランスを製造,販売したことに対す るランニングロイヤルティの支払請求は,理由がないというべきである。 4 争点⑶(被告らがWBトランスを製造,販売することは不正競争行為に当たるか。)についての判断⑴ 本件技術情報が,WBトランスを開発した川鉄電設やP2の知見を集約したものとして,一定の有用性が認められることは前記認定のとおりである。しか し,本件技術情報のうち,川鉄電設及び原告が作成したパンフレット(甲57,乙3)に記載されている数値は,当初から営業秘密性がないものと認められるし,既に検討したとおり,被告らが製造したWBトランスが市場に出回った後は,リバースエンジニアリングにより取得し得る数値については,公知になったというべきである。 ⑵ なお,本件各基本契約には,被告らの債務不履行による解約の場合を含め,契約終了後は本件技術情報を使用してはならず,WBトランスを製造,販売してはならない旨の条項が存在する(12条)。 この条項については,例えば,本件各特許権の存続中に被告 による解約の場合を含め,契約終了後は本件技術情報を使用してはならず,WBトランスを製造,販売してはならない旨の条項が存在する(12条)。 この条項については,例えば,本件各特許権の存続中に被告らの債務不履行により本件各基本契約が終了すれば,特許の排他的効力により被告らがWBトランスを 製造できないことは当然であるし,本件技術情報が秘密として保たれているのであれば,本件各基本契約終了後も,被告らはこれを秘密として保持すべき義務を負うと考えられる。 しかしながら,本件各特許権は既に消滅しており,本件各基本契約においても,被告らの責めによらず公知となった情報については,被告らは秘密保持義務を負わ ない旨を定めているのであって,被告らが製造,販売したWBトランスに係る情報 が公知になっているというべきことは前述のとおりであるから,上記条項(12条)の適用により,被告らがWBトランスを製造,販売することができないということはできない。 ⑶ 本件技術情報は,前記パンフレットの記載により,あるいは被告らがWBトランスを製造,販売したことによって公知となっており,営業秘密性は失われてい るというべきであるから,本件基本契約が終了(原告の主張では平成27年11月26日)した後にWBトランスを製造,販売することが,営業秘密の使用にあたるとする原告の主張は採用できず,不正競争行為に当たるとしてその差止め等を求める原告の請求は理由がない。 5 結論 以上により,原告の請求は,その余の点について検討するまでもなく,いずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官 く,いずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官谷有恒 裁判官野上誠一 裁判官島村陽子 (別紙)差止等目録巻線部の断面形状を矩形状もしくは60度をなす船底状とし、鉄心巻込部の外周を鉄心の内径と等しい曲率部を有するコイルボビンを使用したコイルボビン式巻鉄心変圧器 以上 ★差止等目録(訴状)★損害推計一覧表(訴状)★当事者関係図★契約関係一覧表(訴状)★イニシャルロイヤルティ一覧(大阪高波ら準備書面3修正)
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