令和4(行ウ)386 元首相安倍晋三国葬差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年9月9日 東京地方裁判所
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判決文本文3,196 文字)

- 1 -令和4年9月9日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和4年(行ウ)第386号(以下「第1事件」という。) 元首相安倍晋三国葬差止等請求事件令和4年(行ウ)第417号(以下「第2事件」という。) 元首相安倍晋三国葬差止等請求事件判決 主文 1 本件各訴えをいずれも却下する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求の趣旨(第1事件及び第2事件とも同一) 1 被告は、元内閣総理大臣故安倍晋三の国葬を行ってはならない。 2 被告は、前項の国葬について、その費用を予備費から出捐してはならない。 第2 事案の概要本件は、安倍晋三元内閣総理大臣が、令和4年7月8日に銃撃を受けて死亡したことを受け、内閣が、同月22日、同人の国葬儀(以下「本件国葬儀」という。)を同年9月27日に行うことを閣議決定したところ、原告らが、本件国葬儀の実施及びこれに伴う国費の支出の差止めを求める訴え(行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)3条7項)を提起した事案である。 第3 当裁判所の判断1⑴ 差止めの訴えは、行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合において、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟をいう(行訴法3条7項)ところ、ここでいう「処分」とは、公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうものと解される(最高裁昭和37年 - 2 -(オ)第296号同39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁等参照)。 そして、差止めの訴えを含む抗告訴訟が、行 るものをいうものと解される(最高裁昭和37年 - 2 -(オ)第296号同39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁等参照)。 そして、差止めの訴えを含む抗告訴訟が、行政庁の行為にその根拠法令により公定力が認められ、これが取り消されない限り個人にその受忍を強制させる効果を付与していることを前提に、当該行為(処分)により個人の権利利益が侵害されている(あるいはこれが達成されない)場合の救済のための制度、すなわち主観訴訟であることに照らせば、ここで形成あるいはその範囲が確定される個人の権利又は法律上の利益とは、抽象的なものや事実上のものでは足りないと解すべきである。 ⑵ これを踏まえてみると、本件において原告らが問題とする行為は、内閣が、本件国葬儀につき、国を主体とする儀式として執り行う旨及びそのために必要な費用を国費から支出する旨を閣議決定したことであるところ、これら一連の行為は、そもそもそれ自体で原告らを含む国民に何らかの行動を義務付けたり、その法律上の権利義務を形成したりするものであるとは認められないし、当該各行為にそのような法的効果を生じさせるような法令上の規定も見当たらない。そうすると、仮に本件国葬儀の実施及びこれに対する国費の支出によって原告らが事実上精神的苦痛を感ずることがあるとしても、当該各行為が原告らの「権利義務関係を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められている」ものに当たると解することはできない。この理は、原告らが当該各行為によって侵害されるとするその人格権が憲法に淵源を有するとの事実によっても左右されるものではない。 ⑶ これに対し、原告らは、原告らには納税者かつ主権者(国政付託者)である国民として固有の人格権が認められるところ、本件国葬儀の実施及びこれに伴う予算の支出は、 によっても左右されるものではない。 ⑶ これに対し、原告らは、原告らには納税者かつ主権者(国政付託者)である国民として固有の人格権が認められるところ、本件国葬儀の実施及びこれに伴う予算の支出は、原告らに公権力をもって弔意を強制することになるから、当該人格権を直接に侵害するものであって、講学上のいわゆる事実行為であるとしても抗告訴訟の対象となる「処分その他公権力の行使に当たる行 - 3 -為」に該当する旨主張する。 しかしながら、本件一件記録を精査しても、本件国葬儀の実施及びこれに伴う公費の支出自体が、上記原告らの主張のように国民に対してその意に反して弔意ないしこれに沿った行動を強制する効果を有するものと解すべき理由は見当たらない。したがって、本件各訴えは処分性を欠くものというよりほかない。 2⑴ なお、原告らは、地方自治体の財政において、憲法を始めとする諸立法の趣旨等に違背する公費使用をコントロールするために住民監査請求及び住民訴訟の制度が設けられていることからすれば、そのような具体的法制度がない国政における国費の使用の局面においても、主権者として自身の権利法益が違憲違法に侵害されるような場合には、国民は、自身の人格権を根拠として、財政会計を伴う政府の行為に対して訴訟による拘制機能を発揮できるなどとも主張する。 ⑵ しかしながら、憲法が、新たに租税を課し、又は現行の租税を変更するには法律又は法律の定める条件によることを必要とするものとし(84条)、国の財政を処理する権限の行使及び国費の支出は国会の議決に基づくものとし(83条、85条)、内閣に、一会計年度における国の財政行為の準則である予算を作成し、これにつき国会の審議・議決を受けるよう義務付けている(86条)ことからすれば、憲法は、国費の支出については、納税者たる 、85条)、内閣に、一会計年度における国の財政行為の準則である予算を作成し、これにつき国会の審議・議決を受けるよう義務付けている(86条)ことからすれば、憲法は、国費の支出については、納税者たる国民の代表者により構成される国会において直接あるいは間接に審議されること等を通じて国民の意思を反映させることを予定しているものと解すべきである。他方で、憲法は、国費の支出について個々の国民が納税者又は主権者たる資格に基づいてその是非を争い得る制度について何ら規定を置いておらず、また、憲法が、納税者かつ主権者である個々の国民に対し、国費の支出について原告らが主張するような権利を具体的に保障していると解すべき根拠もない。 - 4 -⑶ しかるところ、原告らの主張するような、納税者又は主権者としての国民の人格権を根拠とする差止めの訴えは、その実質において、国民一般の地位に基づいて本件国葬儀に係る国費の支出の差止めを求めるものにほかならないから、「国…の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟」で「自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するもの」であって、いわゆる客観訴訟の一類型である民衆訴訟(行訴法5条)に該当するものといわざるを得ない。そして、民衆訴訟は、「法律に定める場合において、法律に定める者に限り、提起することができる」(行訴法42条)ところ、政府が行う国費の支出につき、その違法を理由として国民に対し納税者ないし主権者としての資格でその支出を差し止める訴訟の提起を認める法律の規定は存在しない。 第4 結論以上のとおり、本件各訴えは、その余の点について判断するまでもなく、いずれも不適法でその不備を補正できないから、行訴法7条、民訴法140条により口頭弁論を経ないでこれらを却下することとして、主文のとおり判決する。 件各訴えは、その余の点について判断するまでもなく、いずれも不適法でその不備を補正できないから、行訴法7条、民訴法140条により口頭弁論を経ないでこれらを却下することとして、主文のとおり判決する。 主文 東京地方裁判所民事第51部 裁判長裁判官岡田幸人 裁判官横地大輔 裁判官中村陽菜

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