平成14年9月12日宣告贈賄被告事件 主文 被告人3名をそれぞれ懲役1年2月に処する。 被告人3名に対し,この裁判が確定した日から3年間それぞれその刑の執行を猶予する。 理由 【犯行に至る経緯】 1 被告人A1は,株式会社Bの系列会社であり,集じん装置,水処理その他の装置の設計及び工事の請負等を業とするC株式会社環境システム営業本部副本部長であった者であり,被告人A2は,C関東支店副支店長であった者であり,被告人A3は,C茨城営業所課長であった者であり,上記3名はいずれも工事等に関する情報収集及び受注等を担当していた者,Dは,平成3年12月16日から茨城県石岡市ほか1村の水道事業の運営に関する事務の共同処理を行う特別地方公共団体であるE企業団の企業長(なお,石岡市長でもある。)として,企業団を代表して業務を執行し,企業団が発注する工事に関し,指名競争入札参加者の指名,予定価格の決定及び請負契約の締結等の職務に従事していた者,Fは,公共工事等に関する情報収集等の請負を業とする株式会社Gの取締役として同社を実質的に経営していた者である。 2 Bの特約店であるH株式会社茨城支店では,平成10年12月ころ,企業団がI新配水場ほか3か所についての緊急対策事業に伴う電気計装,機械設備工事を発注する予定であることを聞き,本件工事の受注を目指すこととして,かつてI茨城支店土浦営業所において長年にわたり営業活動をしていた同社埼玉支店長Jに,Hが本件工事を受注できるよう企業長等の有力者に口利きをしてくれる人物を探すよう依頼した。そこで,Jは,平成11年1月ころ,Dの親類(従兄弟)であるKと接触し,更にKから,かねてからKとともに石岡市発注の公共工事に関する業者間調整等に携わっていたFを紹介された。しかし,Fから本件工事の受注に成功した場合にはDへの謝礼分 の親類(従兄弟)であるKと接触し,更にKから,かねてからKとともに石岡市発注の公共工事に関する業者間調整等に携わっていたFを紹介された。しかし,Fから本件工事の受注に成功した場合にはDへの謝礼分を含む報酬を支払ってほしいなどと求められたため,これが賄賂につながることを懸念したHでは,Fに口利き等を依頼することを断念した。 3 その後,Fは,B又はその系列会社に本件工事を元請受注させて,Hがその下請に入ることを提案した。そこで,Jは,同年2月上旬ころ,被告人A2に対し,本件工事の受注等のためにCにおいてGを利用するつもりがあるかどうか打診した。この話を受けた被告人A2は,本件工事の受注への協力等をFに求めるため,被告人A3を同道してFに面会することとし,被告人A2,同A3及びJの3名は,同年2月中旬ころ,東京都千代田区L町M丁目N番O号P所在のG事務所に赴いた。そして,被告人A2及び同A3は,Fの説明により,Cが本件工事の受注に成功した場合には,Gに対して報酬を支払うが,その一部は,Dが工事の受注に便宜を図る謝礼として,Fを通じてDに支払われ,これが賄賂となるものと確信したが,Cが本件工事を受注できるようFに協力を依頼するとともに,上記報酬の支払いを承諾した。 4 しかし,その後,本件工事の指名競争入札においては指名業者が大手電機メーカーに絞られ,Cが指名業者に選定されないこととなったため,Fは,J及び被告人A2に対し,Bに本件工事を元請受注させて,HやCがその下請に入ることを提案した。両名はこの提案に応じ,Fに対しBが本件工事を受注できるよう協力を求めるとともに,被告人A2は,Fの協力によってBが本件工事を受注し,Cが下請に入ることに成功した場合には,CにおいてDへの謝礼分を含む報酬をGに支払うこととし,その旨被告人A3にも説明した 協力を求めるとともに,被告人A2は,Fの協力によってBが本件工事を受注し,Cが下請に入ることに成功した場合には,CにおいてDへの謝礼分を含む報酬をGに支払うこととし,その旨被告人A3にも説明した。また,Jは,B茨城支店電機第1グループ部長代理Qに対し,本件工事には電機メーカーが指名されることなど本件工事に関する情報を伝えて,Bが本件工事を受注できるよう努力してほしい旨を告げるなどした。 5 同年2月25日,企業団が同年3月16日を入札予定日として本件工事を指名競争入札に付することを決定し,Bほか7社を本件工事の指名業者として選定した後,Qは,本件工事を確実にかつ予定価格に近い価格で落札するため,Jに予定価格等に関する情報を聞き出してもらうこととし,同年3月10日ころ,Jにその旨依頼した。そして,J,F及びKを通じて依頼を受けたDは,同月12日ころ,Kに対し,本件工事の設計金額が約9億1300万円で,予定価格を算出するための歩切率が3.2パーセント程度である旨を電話で内報し,KがF及びJを介してQにこれを伝えた。その結果,Bは,同月16日,上記情報に基づき,予定価格8億8600万円に近接する8億8300万円で本件工事を落札した。 6 上記入札予定日の前日である同月15日ころ,被告人A3は,Fから,Bが本件工事を落札するのは確実である,歩切率等を教えてもらったDに対する謝礼を含め報酬を支払ってもらいたい旨改めて要求され,被告人A2にその旨報告した。そして,被告人A2及び同A3は,Gに対する報酬の一部が,Dが上記情報を内報したことに対する謝礼の趣旨でFを通じてDに支払われ,これが賄賂となることを認識しながら,Fに上記報酬を支払うこととした。 7 その後,同年4月下旬ころ,被告人A3が,同A2の了解を得た上,これまでの経緯をC本社の被告人A1 でFを通じてDに支払われ,これが賄賂となることを認識しながら,Fに上記報酬を支払うこととした。 7 その後,同年4月下旬ころ,被告人A3が,同A2の了解を得た上,これまでの経緯をC本社の被告人A1に報告したところ,被告人A1も,そのころFと面会するなどし,Gに対する上記報酬の一部が上記の趣旨で賄賂としてDに支払われることになることを理解した上で,Gへの報酬の支払いを了承した。 8 他方,報酬額の交渉は難航し,被告人3名は,同年6月下旬ころ,報酬額を500万円と決め,Fの了解を得るに至ったが,報酬相当額のねん出に手間取り,報酬の支払いが遅れていた。同年7月中旬ころ,被告人A1及び同A3は,Fから,同月30日にDと会うことになっているから,それまでに報酬を支払うよう要求され,同月30日にFがDに謝礼を渡すものと了解し,被告人A3がその旨被告人A2に報告し,被告人A2もこれを了解した。その後,報酬相当額のねん出の算段がついたものの,報酬の支払いが同月30日には間に合わないことになったことから,被告人A3がその旨Fに連絡したところ,Fが被告人A3に対し,Dへの謝礼を立て替えておく旨を告げ,被告人A3もFにそうしてほしい旨依頼した。 【罪となるべき事実】被告人3名は,Fと共謀の上,平成11年7月30日,前記G事務所で,上記のとおりDが本件工事の指名競争入札に関し,職務上知り得た企業団の秘密である本件工事の設計金額や歩切率を上記B茨城支店のQに内報して職務上不正な行為をしたことに対する謝礼の趣旨のもとに,Fにおいて,Dに対し,現金200万円を供与し,もって,Dの職務に関して賄賂を供与した。 【証拠の標目】(省略)【法令の適用】(省略)【量刑の理由】 1 本件は,株式会社Bの系列会社であるC株式会社の環境システム営業本部副本部長であった被告人 て,Dの職務に関して賄賂を供与した。 【証拠の標目】(省略)【法令の適用】(省略)【量刑の理由】 1 本件は,株式会社Bの系列会社であるC株式会社の環境システム営業本部副本部長であった被告人A1,同社関東支店副支店長であった被告人A2及び同社茨城営業所課長であった被告人A3が,株式会社Gの実質的経営者Fと共謀の上,I企業団の企業長であるD石岡市長が,Fらを通じて,企業団が指名競争入札に付した電気計装,機械設備工事の予定価格等に関する情報をB茨城支店のQに内報して職務上不正な行為をしたことに対する謝礼の趣旨のもとに,Fにおいて,Dに対し,現金200万円の賄賂を供与したという事案である。 2① 被告人A2は,本件工事をBに元請受注させることによって,その系列会社であるCが確実にその下請工事を請け負うことができることから,Bをして本件工事を受注させようと考え,FにDへの口利き等を依頼するとともに,Bが本件工事を受注してCが下請受注することに成功した場合には,その一部がDへの賄賂となることを知りながら,報酬をGに支払うこととし,被告人A3もその旨説明を受けてこれを了承し,Dが本件工事の予定価格等に関する情報をB茨城支店のQに伝えて同社が本件工事を落札するに至ると,経過報告を受けた被告人A1も上記報酬の支払いを了承し,被告人3名がFとともに本件犯行に及んだものである。被告人3名は,自社の利益を求めるあまり,極めて自己中心的かつ安易に本件犯行に及んだものであって,その経緯,動機に酌量の余地はない。 ② 供与された賄賂は200万円と多額であり,本来は自由な競争原理により公正な価格を形成すべき指名競争入札に関する職務の公正及びこれに対する社会一般の信頼を著しく害したもので,その結果は重大である。 ③ 被告人A2は,Jから本件工事の受注に関しFを利 由な競争原理により公正な価格を形成すべき指名競争入札に関する職務の公正及びこれに対する社会一般の信頼を著しく害したもので,その結果は重大である。 ③ 被告人A2は,Jから本件工事の受注に関しFを利用するかどうか打診を受けるや,すぐにこれに応じ,判示のとおりDへの賄賂を含むGへの報酬の支払いを決断したものであり,被告人A3も,Cの窓口となって,その報酬額をめぐるFとの交渉に当たったものである。また,被告人A3も,Dへの賄賂を含むGへの報酬の支払いが約束された後に報告を受けたものとはいえ,C本社の者として被告人A2及び同A3の行動を止めるべき立場にありながら報酬の支払いを了承し,被告人A3を同道してFとの交渉に臨んでいるのである。被告人3名はいずれもそれぞれの立場から本件犯行に重要な役割を果たしているというべきである。 ④ また,本件は,公共工事に絡む一連の贈収賄事件の1つとして一般に報道され,社会の耳目を集めたものである。被告人らの犯行は,地域社会やその住民に大きな衝撃を与え,公共工事に対する市民の信頼を著しく損ねたものであって,その社会的影響も大きい。 ⑤ 以上の事情に照らすと,被告人3名の刑事責任は相応に重いというべきである。 3 しかしながら,他方,被告人3名は,いずれも捜査・公判を通じて本件犯行を素直に認め,反省の態度を示していること,本件犯行の責任を取って,被告人A1は,本件後転属していたCの子会社の取締役を辞任するとともに同社を退社し,被告人A2及び同A3は,いずれもCを退社し,保釈後は本件を省みて各々自重した生活を送っていること,被告人A1の妹,同A2の妻及び同A3の妻がそれぞれ証人として出廷し,各被告人の今後を支えていく旨述べていること,被告人3名はいずれも家族の中心的な立場にあること,被告人3名にはいずれも前科がなく,こ 告人A1の妹,同A2の妻及び同A3の妻がそれぞれ証人として出廷し,各被告人の今後を支えていく旨述べていること,被告人3名はいずれも家族の中心的な立場にあること,被告人3名にはいずれも前科がなく,これまでC社員等として真面目に勤務していたことなど,被告人らにとって酌むべき事情も認められる。 そこで,以上の事情その他諸般の事情を総合考慮して,被告人3名に対しては,それぞれ,主文の刑を科した上,いずれもその刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑各懲役1年2月)東京地方裁判所刑事第7部裁判長裁判官小川正持裁判官浅香竜太裁判官渡邉史朗
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