平成13(わ)265 殺人被告

裁判年月日・裁判所
平成13年9月19日 横浜地方裁判所 川崎支部
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判決文本文2,397 文字)

主文 被告人を懲役3年に処する。 この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。 理由 (犯行に至る経緯)被告人は,平成6年4月18日,夫Aと婚姻届出をし,平成8年2月10日に長女を,平成12年9月13日に長男Bをそれぞれ出産した。 被告人は,長男Bを出産後,実家で養生し,同年9月終わりころ自宅に戻ったが,10月中旬ころの1か月検診でBの体重の増加が大きすぎるので母乳だけにするように指摘されたためミルクの併用をやめてみたものの,Bがぐずって泣き止まない状態が続くなどして手がかかり,長女の世話にも手が回らなくなった上,11月末ころから母乳の出が悪くなり,ミルクを与える量や時間などの育児の方法に悩み次第に自信を喪失し,Bと長女を連れて,実母を頼って頻繁に里帰りしていたが,同年12月終わりころから,Bを連れて実家から自宅へ帰ろうとすると,自宅に帰ってからBが泣いたときどうしたらよいか不安で手足が震えるようになり,平成13年1月5日,母親の勧めでC医科大学病院精神科を受診し,うつ病と診断された。 被告人は,平成13年1月11日ころからBと長女と共に実家に滞在していたが,長女を保育園に通園させるため自宅へ帰らなければいけないとか,そろそろ両親に頼らず自分1人で子育てをしなければならないなどと考える反面,帰宅後の育児に対して不安を感じていた上,同月16日には定期検診で離乳食開始の指導を受け,ますます不安を募らせた。 (犯罪事実)被告人は,平成13年1月17日午前8時ころ,目覚めた後に布団の中で,今日こそ自宅に帰らなければ,いつまでも両親に頼っていられない,長女を保育園に連れて行かなければいけないなどと考えて追い詰められた気持ちになる一方で,自宅に戻った後の育児に対する不安やあせりが募ってゆき,咄 宅に帰らなければ,いつまでも両親に頼っていられない,長女を保育園に連れて行かなければいけないなどと考えて追い詰められた気持ちになる一方で,自宅に戻った後の育児に対する不安やあせりが募ってゆき,咄嗟に,Bがいなくなればいいと思い,被告人の隣で就寝していたBを殺害しようと決意し,a市b区cd丁目e番地fD住宅g号棟h号室の実父F方北側6畳間において,長男B(当時4か月)に対し,殺意をもって,その前頸部を左手の母指及び示指等で圧迫し,よって,同月18日午前7時54分ころ,b区ij丁目k番l号所在のC医科大学病院救命救急・熱傷センターにおいて,同児を頸部圧迫による低酸素性脳症により死亡させて殺害したものである。 (証拠)省略(弁護人の主張に対する判断)弁護人は,声を出すことのできなかった被告人に代わって被告人の夫が本件犯行を医療関係者に告げたことから被告人の緊急逮捕に至ったものであり,自首が成立すると主張する。 たしかに,被告人は,警察官が病院に臨場する前に,病院の待合室で,夫に対して自らの犯行を打ち明けたことは認められるが,被告人は,夫に対して捜査機関への申告を依頼したものではなく,また,夫が捜査機関に申告するのが当然であったともいえないから,被告人が,夫を介し,捜査機関に対して犯罪事実を申告して自首したものとは認められない。 (法令の適用)罰条刑法199条刑種の選択有期懲役刑刑の執行猶予同法25条1項訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由)被告人は,育児の行き詰まりから,長男Bへの愛情が感じられなくなると共にその育児を拒否する気持ちが高じ,判示の経緯で,いたいけな4か月のわが子の生命を奪ったものであり,その動機はあまりに短絡的であるといわざるを得ない。 また,その態様は,生後間もなく,自らの意思 共にその育児を拒否する気持ちが高じ,判示の経緯で,いたいけな4か月のわが子の生命を奪ったものであり,その動機はあまりに短絡的であるといわざるを得ない。 また,その態様は,生後間もなく,自らの意思を表明することもままならないBに対し,母親として保護し,養育すべき立場にあった被告人において,顔にバスタオルをかぶせ,その前頸部を左手の親指と人差し指で掴んだまま,脈を感じなくなるまで圧迫し続けたというものであり,最も信頼すべき実母の横で安心して就寝していた最中に,このような態様で殺害されたBはまことに哀れである。 Bの春秋に富む将来の人生が失われたその結果の重大さはいうまでもなく,Bの出生を喜び,その成長を楽しみにしていた被告人の夫や親族等に与えた悲しみも計り知れないものがある。このようにみてくると,被告人の刑事責任はまことに重大といわなければならない。 しかしながら,被告人は,産後のうつ病の症状の下で突発的に本件犯行に及んだものであって,恒常的ないわゆる「幼児虐待」があったとは認められないばかりか,本件までは,被告人なりにBの育児に努め,Bの育児を真剣に考え,それを1人で抱え込んでしまった被告人の生真面目さが本件を引き起こしたとみられること,被告人には前科前歴がなく,これまで平穏に暮らしてきたこと,本件について十分反省していること,夫と幼い長女が被告人の帰りを待っており,被告人に実刑を科すことが,残された長女の精神面に計り知れない悪影響を与えると考えられること,被告人の両親による監督も今まで以上に期待できることなど被告人に有利な又は酌むべき事情を考慮すれば,被告人には主文のとおりの刑を科し,その執行を猶予するのが相当と判断した。 (求刑・懲役4年)平成13年9月19日横浜地方裁判所川崎支部刑事部裁判長裁判 考慮すれば,被告人には主文のとおりの刑を科し,その執行を猶予するのが相当と判断した。 (求刑・懲役4年)平成13年9月19日横浜地方裁判所川崎支部刑事部裁判長裁判官中島肇裁判官髙木順子裁判官下馬場直志

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