【DRY-RUN】主 文 原決定を取り消す。 抗告人を処罰しない。 抗告手続の費用及び原審において抗告人の負担に帰した費用は国庫の負担とする。 理 由 原決定による抗告人の本件緊急命令違反事由の
主文 原決定を取り消す。 抗告人を処罰しない。 抗告手続の費用及び原審において抗告人の負担に帰した費用は国庫の負担とする。 理由 原決定による抗告人の本件緊急命令違反事由の要旨は、抗告人は、昭和四二年五月四日大阪府地方労働委員会より、同委員会昭和四一年(不)第三八号事件につき、不当労働行為に対する救済命令として、「Aに対する昭和四一年一月二〇日づけ解雇を取消し、原職に復帰させるとともに、解雇の翌日から原職復帰の日までの間に同人が受けるはずであつた賃金相当額を支払わなければならない。」旨を命ぜられ、さらに同年八月二日大阪地方裁判所より労働組合法二七条七項に基づく緊急命令として、「同裁判所昭和四二年行(ウ)第七二号不当労働行為救済命令取消請求事件の判決確定に至るまで大阪府地方労働委員会がなした前記不当労働行為救済命令に従わなければならない。」旨の決定を受け、同決定は同月五日抗告人に送達されたが、抗告人はこれに対し緊急命令において命ぜられた義務を一部履行したのみで、なおその命ぜられた義務の内容となる(1) Aの妻Bが昭和四一年一月三一日従来勤務していた上二病院を退職したことにともない、Aが同年二月以降受けるはずであつた家族手当(配偶者分)。 (2) Aが同年二月以降昭和四二年七月までの間に受けるはずであつた昼食費補助金(月額金一、〇〇〇円を限度とし、解雇当時の合理的方法により算定した同人の平均出勤日数に応じた一日金四〇円の割合による金員)。 (3) Aが昭和四一年四月から昭和四二年七月までの間に受けるはずであつた通勤手当の一部(鉄道運賃の値上りによる従来の運賃との差額分)。 に相当する金員の支払いをしないで、その義務の一部を履行せず、前記緊急命令に違反した、というにあり、これに対する本件抗告の趣旨および理由は、別紙に (鉄道運賃の値上りによる従来の運賃との差額分)。 に相当する金員の支払いをしないで、その義務の一部を履行せず、前記緊急命令に違反した、というにあり、これに対する本件抗告の趣旨および理由は、別紙に記載したとおりである。 そこで、右の各違反事実の有無につき検討する。 (1) 家族手当について記録によると、抗告人においてはその従業員をもつて組織する総評全国一般大阪証券労働組合取引所分会との間の賃金に関する協定によつて昭和四〇年七月三一日以降従業員に対する家族手当として、妻については月額金八、〇〇〇円以上の定収のない場合に限り、月額金三、〇〇〇円(昭和四三年四月からは月額金四、〇〇〇円となる。)を支給することとし、別に、これが受給手続について右の家族手当の支給を受けようとする者は「家族給(変更)申請書」に所要事項を記入し、従業員所属課長を経て労務課給与係に申請すること、労務課は、右の支給基準により支給の可否を決定するが、この場合その受給資格の判定のため扶養の事実を証明する書類及び他の所得者の収入を証明する書類の提出を求めることがある旨を定めたこと、Aは、昭和四二年八月二五日付で妻Bが昭和四一年一月三一日従来勤務していた上二病院を退職したことを事由として家族手当(配偶者分)の増額申請書を昭和四二年八月二九日抗告人に提出したので、抗告人よりAに右申請の事由である退職の事実を証する書面の提出を求めたが同人はこれを提出せず、昭和四四年四月一一日になつてようやく上二病院長の作成にかかる右退職証明書を提出したので、抗告人は同年五月一〇日Aに対し昭和四一年二月から昭和四四年四月までの妻にかかる家族手当の差額支給分として金一五万五、四〇〇円を支払つたことが認められる。 ところで、家族手当は賃金の一部として、前記緊急命令において抗告人に支払を命ぜられた賃 から昭和四四年四月までの妻にかかる家族手当の差額支給分として金一五万五、四〇〇円を支払つたことが認められる。 ところで、家族手当は賃金の一部として、前記緊急命令において抗告人に支払を命ぜられた賃金相当額に含まれることはもちろんであるが、これが支給については上述の如き手続が定められているのであるから、抗告人においてAからの妻退職による家族手当の増額申請に対しその証明書の提出を求めるのは当然の措置であり、これに対しAは容易に右の事由を証明する書類を提出することができたにもかかわらず、その要求を全く無視して来たものであつて、その間抗告人には右家族手当の支払につき何らの義務違反もなかつたものというべきである。なお、記録によると、右Aが所属する総評全国一般大阪証券労働組合は大阪府地方労働委員会に対し抗告人の本件緊急命令違反事件につき同委員会より裁判所に対する違反通知を要請するにあたり、Aの妻の退職証明書を同委員会に提出しており、抗告人が昭和四三年八月頃地労委における調査の席上右証明書を示されていることが認められるが、かかる事実はいまだもつて家族手当支給者たる抗告人に対する前記証明書の提出とはみられないから、その時から直ちに抗告人に右手当の支給を義務づけることにはならない。 (2) 昼食費補助金について記録によると、抗告人は昭和三二年三月より所員専用食堂を設け、従業員に対する現物給与として職務のため出勤した者であつて同食堂を利用した者に限り一人一日金二〇円あて補助給付することとし、昭和三六年三月八日からは、その補助額も一人一箇月金一、〇〇〇円の範囲で、米食については一人一食金四〇円、麺類食のうち、うどん又はそばについては一人一食金二〇円(二食まで)、玉子うどん又は玉子そばについては一人一食金三五円に改められ、さらに、昭和四一年一二月二四日限 、米食については一人一食金四〇円、麺類食のうち、うどん又はそばについては一人一食金二〇円(二食まで)、玉子うどん又は玉子そばについては一人一食金三五円に改められ、さらに、昭和四一年一二月二四日限り同食堂を閉鎖して四二年一月五日から別の場所に新食堂を開設し、引きつづき一箇月金一、〇〇〇円を限度として食券の支給による昼食費補助を行なうことになつたが、右の昼食費補助として従業員に支給される現物給与はすべての従業員に対し一率に支給されるものではなく、従業員のうち職務のため出勤しかつ所定の食堂を利用して昼食をとつた場合に限り支給されるものであること、ならびに、Aは昭和四一年一月二〇日抗告人から解雇通知をうけた以後昭和四二年八月の原職復帰に至るまでの間抗告人の業務のために現実に出勤し、かつ前記食堂を利用して昼食を採つた事実のないことが認められる。 ところで、本件救済命令によつて抗告人に支払を命ぜられた「Aの原職復帰の日までの間に同人がうけるはずであつた賃金相当額」のうちには、労働者が現実に就労した場合免がれない出費に対する実費弁償の性質を有するものは含まれないと解するのが相当であるところ、本件昼食費補助金はまさに右の実費弁償の性質を有するものというべく、Aが前記期間中現実に就労しなかつたことはすでに述べたとおりであり、またその間Aから抗告人に対して労務の提供を申出で、そのための昼食費の支出を余儀なくされた如き事実を認めるに足る何らの資料もないのであるから、抗告人には右期間の昼食費補助金を支払う義務はなく、これを支払わないからといつて緊急命令に違反したことにはならない。 (3) 通勤手当について記録によると、抗告人においては従業員に対しその自宅から職場までの通勤による費用を通勤手当として支給することとし、その支給の方法としては通勤定期券の発行 とにはならない。 (3) 通勤手当について記録によると、抗告人においては従業員に対しその自宅から職場までの通勤による費用を通勤手当として支給することとし、その支給の方法としては通勤定期券の発行されている交通機関にあつては抗告人において当該従業員の通勤定期券を購入して従業員に交付していたこと、右の通勤手当の支給については就労の事実のないもの、例えば一箇月以上にわたる長期欠勤、公私傷病休職等の場合、または労働基準法上休業の保障されている出産休暇請求者に対しては、当該期間にかかる通勤定期券を支給せず、この場合にはすでに交付してある通勤定期券を回収し、その利用交通機関との定期乗車券契約を解除し、現実に出勤就労するにいたつた日から再び通勤定期券を購入してこれを当該従業員に交付することとしていたこと、Aは右の解雇通知を受けた当時自宅より抗告人事業所までの通勤手当として通用期限を昭和四一年四月までとする期間六箇月の通勤定期乗車券の交付を受けており、当時の一箇月あたり通勤手当相当額(六箇月間の定期乗車券の六分の一に相当する額)は金一、五七五円であつたが、昭和四〇年一二月の運賃改訂により右定期券の通用期限後の金額は右により計算すると一箇月金一、八一八円となること、したがつて、右のように支給を受けた定期乗車券の通用期限後の昭和四一年四月から原職復帰までの昭和四二年七月までの運賃値上りによる差額合計額は金三、八八八円(一箇月金二四三円の一六箇月分)であること、抗告人は本件緊急命令に基づき解雇の翌日から原職復帰までの間の賃金として金七八万六、五六四円をAに支払つたが、そのうち通勤手当として昭和四一年四月から昭和四二年七月までの分として一箇月金一、五七五円の割合による金員が含まれていたこと、などが認められる。ところで、右の通勤手当は抗告人が従業員に対し支払 が、そのうち通勤手当として昭和四一年四月から昭和四二年七月までの分として一箇月金一、五七五円の割合による金員が含まれていたこと、などが認められる。ところで、右の通勤手当は抗告人が従業員に対し支払うべき労働の対償としての賃金に含まれるものではあるが、これが支給を受けるためには、現実に抗告人事業所に就労のために出勤することを要するものであつて、これによつて従業員が支出した通勤費を実費弁償として支払う性質のものであるところ、解雇から原職復帰までの間、Aは抗告人事業所に就労のため出勤し、そのため通勤に要する費用を支出した事実は認められないから、同人にこれによる経済的損失があつたものということはできないし、たとえ救済命令により抗告人が右Aを原職に復帰させ、かつこの間の賃金相当額の支払義務を負つたとしても、右による通勤手当を支払う義務がないのであるから、前記通勤手当の差額金三、八八八円の支払いをしなかつたことをもつて本件緊急命令に違反したものということはできない。 以上説明のとおり、(1)Aの妻にかかる家族手当差額分については、昭和四四年四月一一日Aからの所定の退職証明書の提出に基づき同年五月一〇日その支払がなされているのであつて、その間約一箇月の期間の経過があるが、かかる短期間の遅延は処罰の対象となる程の義務違反に値いせず、また(2)昼食費補助金ならびに(3)通勤手当の不払いは、これをもつて本件緊急命令の違反行為というを得ず、かりに一歩を譲りこれが違反行為に当るとしても、抗告人は昭和四二年一〇月二四日当日現在における本件緊急命令の違反を理由として過料の裁判をうけ、その後該裁判において違反事項として挙げられた点はこれを履行しているのであつて、かかる事情のもとにおいて、右過料裁判のなされる当時すでに存在した昭和四二年八月以前の、しかも金額的にも の裁判をうけ、その後該裁判において違反事項として挙げられた点はこれを履行しているのであつて、かかる事情のもとにおいて、右過料裁判のなされる当時すでに存在した昭和四二年八月以前の、しかも金額的にもさして多額でない本件昼食費補助金および通勤手当支払義務の不履行を、後日に至つて再び前記緊急命令違反行為として採り上げ改めて処罰の対象とすることは、その制度本来の趣旨に照して相当とは認められない。 よつて、原決定を取り消し、抗告人を処罰しないこととし、非訟事件手続法二〇七条五項を適用して、主文のように決定する。 (裁判官小石寿夫宮崎福二館忠彦)抗告の趣旨原決定を取り消す。 抗告人を処罰しない。 手続費用は、原審抗告審とも国庫の負担とする。 との裁判を求める。 抗告の理由一原決定は、労働組合法三二条前段の解釈を誤つており、また憲法三九条に違反している。 労働組合法三二条前段の過料の対象となるべき事実は、裁判所が過料決定をなすまでの間の、すべての、緊急命令の不履行の事実を包含したものと解すべきであり、裁判所が現実に過料決定をなすにあたつて、緊急命令の不履行であると具体的に特定した事実以外に、他に不履行の事実が存在しても、その部分は、本来過料の対象となるべきであるのに裁判所が不履行と具体的に特定した事実から除外したのであるから、もはやこれを処罰しない趣旨である、と解すべきである。 従つて、再度過料が問題となる場合は、裁判所が前に過料決定をなした事実(具体的に緊急命令の不履行であると積極的に認定した事実)について、過料決定後においてもなお履行されていない場合に限られると解すべきである。 このことは、労働組合法三二条前段において、「裁判所の命令に違反したとき」と包括的に構成要件を定めていること、ならびに作為を 料決定後においてもなお履行されていない場合に限られると解すべきである。 このことは、労働組合法三二条前段において、「裁判所の命令に違反したとき」と包括的に構成要件を定めていること、ならびに作為を命ずる命令の違反について、過料金額の定め方が一日につき一〇万円以下と規定されていることから、明らかである。もし、一ケの緊急命令の内容を細分して、それぞれについて別個独立に過料の対象となると解するならば、これを手続的に別個にすること(つまり同時に審理しない)も可能となり、過料に処せられる者は極めて不安定な地位に立たされるといわざるをえない。そして現実には、同時に審理された場合よりも多額の過料に処せられるということもありうることになる。かように、同時に審理されるか、手続的に別個とされるか、過料に処せられる者が関与できない事実によつて、その地位が左右されることがあつてはならないはずである。 ところで、抗告人は、かつて、大阪地方裁判所(以下地裁という)より緊急命令の一部を履行していないとして、労働組合法違反に問われ、二〇万円の過料決定を受けた。 右過料事件において、抗告人の不履行とされた事項は、被解雇者A(以下Aという)に対する原職復帰の態様に不充分な点のあつたこと、および解雇後の賞与を支払わなかつたこと、の二点であつた。本件において、原審が緊急命令の不履行であると具体的に特定している事実は、原決定一、(三)に記載されている三点であるが、この三点は、前回の過料事件において、当然審理の対象となるべき事実であつたのである。しかしながら、前回の過料事件においては、裁判所が緊急命令の不履行であると決定し、過料に処したのは、前記二点のみであつて、本件の三点は、本来過料の対象となるべきであるのに裁判所が不履行と具体的に特定した事実から除外されているのであるか 、裁判所が緊急命令の不履行であると決定し、過料に処したのは、前記二点のみであつて、本件の三点は、本来過料の対象となるべきであるのに裁判所が不履行と具体的に特定した事実から除外されているのであるから、もはやこの三点については、過料に処することはできないものといわなければならない。一度不処罰とされた行為について処罰することは、一事不再審を定めた憲法三九条の禁止するところである。よつて原決定は、労働組合法三二条前段の解釈を誤り、憲法三九条に違反しているといわなければならない。 なお付言するに、前回の過料事件において、大阪府地方労働委員会(以下地労委という)は、地裁に不履行通知をなすにあたつて、前記二点にのみ限定していた。 地労委は、Aの所属する労働組合の要請により、緊急命令の履行状況につき調査したうえ、地裁に不履行通知を行つたのであるが、組合の要請には本件の三点も含まれていたにもかかわらず(一号証、六号証参照)、これを不問に付し、前記二点に限定していたのである。前回の過料事件において、裁判所が、全ての不履行事実について審理が可能であるのに、地労委の不履行通知に記載された事実についてのみ審理を行つたことは、地労委の見解を尊重したという意味においては正しかつたといえる。ところで、抗告人は、前回の過料事件において即時抗告が棄却されたので、裁判所が緊急命令の不履行であると指摘した事実について、全てこれを履行した。 その後にいたつて、Aの所属する労働組合は、本件の三点を含む諸点について、地労委へ要請書を提出し、地労委は、前回自ら不問に付した事項につき緊急命令違反として過料に処すべきであるとして、不履行通知をなすにいたつたのである。もともと前回の過料事件といい、本件といい、かかる紛争が生じたのは、緊急命令の内容が不確定であることに起因しているので 命令違反として過料に処すべきであるとして、不履行通知をなすにいたつたのである。もともと前回の過料事件といい、本件といい、かかる紛争が生じたのは、緊急命令の内容が不確定であることに起因しているのであり、緊急命令の根拠となつている救済命令の発令者である地労委自らも、紛争の遠因を作り出しているといいうるのである。従つて、一般の場合もそうであるが、特に本件のような場合には、地労委としては、緊急命令の履行について疑義が生じないよう、また疑義が生じた場合にはこれを解消するよう行政上の措置をとるべきであるのに、抗告人より本件の三点について見解を求められても(二号証、三号証参照)、何らこれについては見解を示さず(一件記録中の地労委作成の「大阪証券取引所の緊急命令履行状況に関する第三回調査書」参照)、地裁に不履行通知をしたのである(詳細は原審における抗告人の昭和四三年一〇月三日付陳述書一~九頁参照)。かかる地労委の措置は極めて不当であるといわなければならないが、原審が、前回の過料事件と本件との関係につき、抗告人の主張があるにもかかわらず、何らの考慮するところがなかつたことも不当であるといわなければならない。 二原決定は事実誤認ないし審理不尽の違法がある。 (1) 家族手当の支給に関しては抗告人の責に帰すべき事由は存在しない。 原決定は、「Aは、被審人に対して、妻が退職したことによる家族手当増額申請書を提出しており、さらに、大阪府地方労働委員会の調査の際に上二病院発行の退職証明書を提出し、被審人もこれを閲知しているのであるから、これに加えて、被審人の主張するような公的機関ないしこれに準ずるものの証明書の提出を不可欠のものとする合理的な理由に乏しい」(原決定三丁参照)としているが、かかる判断は、企業内における事務手続を全く無視するものであり、違法であると うな公的機関ないしこれに準ずるものの証明書の提出を不可欠のものとする合理的な理由に乏しい」(原決定三丁参照)としているが、かかる判断は、企業内における事務手続を全く無視するものであり、違法であるといわなければならない。 抗告人は、Aが抗告人において定める家族手当受給に関する手続を履践すれば直ちに支給する旨、つとに言明しており(C証言、D証言参照)、Aに対して不可能なことを強いているわけではない。現にAは、本件過料決定後に上二病院作成の退職証明書を抗告人に提出しているが(一七号証参照)、その作成日付が昭和四三年六月七日であることからみて、地労委が本件に関して不履行通知をなす以前に提出可能な状況にあつたのである。抗告人の証明書提出の要求に対し、その提出が可能であるにもかかわらず、本件過料決定までこれを拒みつづけてきたのであつて、A自身が家族手当の支給されない原因を作り出していたといわなければならない。 ところで、抗告人において、家族手当支給基準は次のとおりであり、従業員が家族手当の受給を申請した際、その受給資格に疑義ある場合は、証明書の提出を求める取扱となつている(四号証、五号証参照)。 記(1) 配偶者、三親等内の血族、二親等内の姻族(2) 無職無収入の者税法上の扶養控除を認められる者ただし妻については月八、〇〇〇円以上の定収のない者(3) 日常生活の資を共通にしている者(4) 主として従業員本人の収入により生計を維持している者前(1)ないし(3)項該当者の親等の近い者に従業員本人より高収入とみなされる定職のある者は除く過去においても、疑義が生じた前例があり、いずれも証明書の提出後、支給決定がなされている(D証言、九号証の一、二、一〇号証、一一号証の各一、二、三参照)。 Aについては、家族手当増額申請書が緊急命令発令後で ても、疑義が生じた前例があり、いずれも証明書の提出後、支給決定がなされている(D証言、九号証の一、二、一〇号証、一一号証の各一、二、三参照)。 Aについては、家族手当増額申請書が緊急命令発令後である昭和四二年八月二九日に提出されたが、右申請書の記載によれば、Aの妻が退職したのは昭和四一年一月三一日であり、退職後申請書提出まで約一年半経過しており、その間就職して月額八、〇〇〇円以上の収入を得ているのではないかと十分に考えられる余地があつた。さらに同人の妻の退職年月日については、A自身の主張と、地労委の調査の結果には齟齬があり、これに加えてAは、かつて妻が就職して月額八、〇〇〇円以上の定収入があつたにもかかわらず、その旨申告せず不正に家族手当を受給していた事実もあつた(原審における抗告人の昭和四三年一〇月三日付陳述書一〇~一一頁、同一〇月一六日付陳述書四~八頁参照)。かかる事実に徴すれば、家族給の受給資格について疑義が生ずるのは当然のことであり、抗告人は通常の事務手続に従つて、証明書の提出を求めたにすぎないのである。 原決定によれば、抗告人はAが地労委に対して上二病院作成の退職証明書を提出していることを知つているのであるから、さらに証明書の提出を求める必要はない、とのことである。しかしながら、証明書は、地労委に対して、地労委の調書の記載を訂正させる目的で提出されたものにすぎず、これをもつて家族手当受給の手続が履践されたと解するのは、明らかに誤つている。 Aが、緊急命令によつて、解雇がなかつたと同様の取扱を受けようとするのであれば、他の従業員と同様、家族手当の受給についても当然予め定められた手続に従うべきであり、Aがかかる手続を履践しない以上、抗告人に支給義務が発生するはずがない(ちなみに、抗告人は家族手当を供託すべく法務局に照会したが 同様、家族手当の受給についても当然予め定められた手続に従うべきであり、Aがかかる手続を履践しない以上、抗告人に支給義務が発生するはずがない(ちなみに、抗告人は家族手当を供託すべく法務局に照会したが、民法四九四条の義務は生じていないので供託は受理できないとのことであつた)。従つて家族手当については履行、不履行の問題は本来生じないのである。緊急命令の履行は、当該企業における手続、慣行等に従つてなされるべきであり、特別の措置を必要とするものではない。緊急命令によつてうける救済は、単に事実上の原状回復にすぎず、それ以上の利益を与えるものではないからである(特別の措置を必要とするというのであれば、Aを他の従業員よりも優遇することになり、企業の秩序維持の観点からみて、好ましからざる結果を招き、緊急命令によつて原状回復を意図したところが、却つて原状を変更し混乱を招くことになる)。要するに原決定は、緊急命令の履行につき誤つた見解を前提としているか、あるいはAの家族手当の受給手続を履践していないのに、これを履践していると、誤つた事実認定をしているかであつて、いずれにしてもこの点で取消をまぬがれない。 (2) 食券の金銭換算支給、ならびに交通費の値上りによる差額支給についても、抗告人には支給すべき義務はない。 (イ) 原決定は、「昼食費補助金並びに通勤手当については、本件緊急命令は、解雇の翌日から原職復帰の日までの間にAが受けるはずであつた賃金(賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものー労働基準法第一一条参照。)相当額の支払、すなわち、同人が、その労働関係において、解雇がなかつたとすれば当然に得たであろう対償を事実上失つたことによる経済的損失を補填することを命じているのであるから、同人の解雇により 照。)相当額の支払、すなわち、同人が、その労働関係において、解雇がなかつたとすれば当然に得たであろう対償を事実上失つたことによる経済的損失を補填することを命じているのであるから、同人の解雇により事実上就労していないことはその支払をなさないことの理由たり得ず、また、その対償が一般に現物給付の形式でなされているとしても、その受けるはずであつた経済的利益を金銭に換算して支払をすべきことは明らかである」(原決定三丁参照)として、抗告人には食券の金銭換算支給ならびに交通費の値上りによる差額支給につき、緊急命令の一部不履行があるとしている。 しかしながら、昼食費の補助についても、交通費の値上り差額分についても、Aには原決定のいうところの「経済的損失」は生じていない。 (ロ) 食費補助の要件は、従業員が出勤して抗告人の指定する食堂を利用した場合であつて、出勤しても指定の食堂を利用しない場合、あるいは欠勤しながら指定の食堂を利用した場合には、食費の補助は行なわないことになつている(詳細は原審における抗告人の昭和四三年一〇月三日付陳述書一二~一四頁参照。なおD証言参照)。 従つてAにおいて経済的損失が生じたというためには、右の要件が充たされているにもかかわらず、昭和四一年二月以降同四二年七月まで、食費の補助がなされなかつたという事実が存在しなければならない。ところがAが右の期間出勤したという事実も存在しなければ、抗告人指定の食堂を利用したという事実も存在しない。 にもかかわらず、抗告人がAに対して食券の金銭換算支給をしなければならないとすると、これはもはや経済的損失の補填ではない。緊急命令の制度の目的は利得を与えることではない。いわゆるバツクペイについて中間収入を控除すべきであるとする判例理論(最判昭三七・九・一八民一六・九・一九八五参照)からいつて 済的損失の補填ではない。緊急命令の制度の目的は利得を与えることではない。いわゆるバツクペイについて中間収入を控除すべきであるとする判例理論(最判昭三七・九・一八民一六・九・一九八五参照)からいつても、原決定は経済的損失以上のものを与えようとする点において、誤つている。出勤したという事実の存在しない以上、過去の平均出勤日数でもつて出勤を擬制することはできないといわなければならない。 (ハ) 交通費についても、抗告人においては、現物給付であり、休職、長期出張の場合は交付しないことからみて、これは実費弁償的な性格を有するものである(詳細は前掲陳述書一五~一八頁参照。なおD証言参照)。従つて、抗告人に交通費の値上り差額分の支払義務があるとするためには、Aが、昭和四一年四月以降同四二年七月まで、当該交通機関を利用して出勤したという事実が存在しなければならない。かかる事実の存在しない本件において、交通費の値上り差額分を支給することは、とりもなおさずAに対して利得を与えることになり、緊急命令の制度の趣旨を逸脱することになるといわなければならない。 要するに原決定は「経済的損失」のないのに、その補填を問題としている点において、事実を誤認している。 三以上原決定はいずれの点からみても取消さるべきである。すでに述べたように、原審は前回の過料事件と本件との関係につき、充分審理を尽していない。また前回の過料事件についても、本件についても、緊急命令の内容が不確定であつたことに紛争の原因が存在しているのに、この点何ら考慮が払われていない。過料に処せられてはじめて何をなすべきであつたかが判るというのでは、緊急命令は行為規範としての機能を果さないといわなければならないし、命令を受けた者にとつては、組合の要求に、それが不当なものであつても、すべて応じておかなければ、 すべきであつたかが判るというのでは、緊急命令は行為規範としての機能を果さないといわなければならないし、命令を受けた者にとつては、組合の要求に、それが不当なものであつても、すべて応じておかなければ、常に過料の制裁に脅かされるという結果になりかねない。 かくしては、緊急命令の本来の目的は失なわれ、組合の使用者に対する戦術として利用されるだけである。本件はまさにこの適例といつても過言ではなく、Aが執拗に証明書の提出を過料決定まで拒んでいたのは、過料決定を得ることを目的としていたからにほかならない(抗告人は、証明書を提出すれば家族手当を支給する旨明言しており、不処罰の決定があつたとしても支給を受けられる。食費の補助、交通費の値上り差額分は金額が僅少であり、支給を受けなくてもそれほど痛痒を感じない)。 かかる不合理な結果を排除する意味においても、第一項で述べたように、本来過料の対象となるべき事実に含まれていたのに、裁判所が現実に過料決定にあつて、緊急命令の不履行であると具体的に特定した事実として掲記しなかつた事実は、もはやこれを処罰しない趣旨であると解さざるをえないのである。従つて本件においては、地労委が緊急命令の不履行であると通知した三点については、それがはたして緊急命令の不履行となるか、否か、の実体的な判断をするまでもなく、すでに前回の過料事件の際に対象となるべき事実であつたということのみをもつて、不処罰の決定をなすべきであつたのである。 なおすでに述べたように本件の三点については、履行、不履行の問題は生じない。検察官が「処罰不要」との意見を付したのは当然のことである。 四抗告人はすでに家族手当を支給したので、もはや過料に処すべき理由は存在しない。 抗告人は、Aが抗告人において定める家族手当支給に関する手続を履践すれば直ちに支給する したのは当然のことである。 四抗告人はすでに家族手当を支給したので、もはや過料に処すべき理由は存在しない。 抗告人は、Aが抗告人において定める家族手当支給に関する手続を履践すれば直ちに支給する旨、つとに言明してきたところであり、本件過料決定後、Aは、上二病院作成の退職証明書(一七号証)を抗告人に提出したことは、すでに述べたとおりである。 抗告人は、昭和四四年五月七日Aの所属する労働組合の分会長E等の立会のもとに、Aに対し、彼の妻が昭和四一年二月より今日にいたるまで再就職する等家族給支給に関する減額事由に該当する事実の存否を質したところ、そのような事実は存在しない旨回答したので、Aの妻は昭和四一年一月三一日上二病院を退職し、その後月額八、〇〇〇円以上の定収入のないことを確認した。よつて、昭和四一年二月より妻に関する家族手当を支給することに決定し、昭和四四年五月一〇日、昭和四一年二月より同四四年四月までの妻に関する家族手当一五五、四〇〇円をAに対して支給した(一八号証、一九号証参照)。 従つて仮りに原審の判断が正しいとしても、抗告人は家族手当の支給について右に述べたようにすでに履行したところであり、また食券の金銭換算支給ならびに交通費の値上り分差額支給については、その金額は僅少(原決定の通りに計算すれば一七、七一九円であるー二〇号参照)であつて、もはや過料に処すべき理由は存在しないといわなければならない。 よつて原決定を取消し、抗告人を処罰せず、との決定を求める次第である。 以上〔参考資料〕緊急命令違反過料事件大阪地方昭和四三年(ホ)第三〇二八号昭和四四年四月九日決定被審人大阪証券取引所 主文 被審人を過料五万円に処する。 手続費用は被審人の負担とする。 理由 一本件一件記録によると、 三〇二八号昭和四四年四月九日決定被審人大阪証券取引所 主文 被審人を過料五万円に処する。 手続費用は被審人の負担とする。 理由 一本件一件記録によると、次の各事実が認められる。 (一) 被審人は、昭和四二年五月四日大阪府地方労働委員会より同委員会同四一年(不)第三八号事件につき、不当労働行為に対する救済命令として、「Aに対する昭和四一年一月二〇日づけ解雇を取消し、原職に復帰させるとともに、解雇の翌日から原職復帰の日までの間に同人が受けるはずであつた賃金相当額を支払わなければならない。」旨を命ぜられ、これに対し当裁判所に右命令取消請求の訴を提起した(当裁判所同四二年行(ウ)第七二号不当労働行為救済命令取消請求事件)が、同委員会の申立に基づき(当裁判所同年行(ク)第一二号労働組合法第二七条第八項に基づく命令の申立事件)、同年八月二日裁判所より緊急命令として、「右不当労働行為救済命令取消請求事件の判決確定に至るまで大阪府地方労働委員会がなした前記不当労働行為救済命令に従わなければならない。」旨の決定を受け、該決定は同月五日被審人に送達された。 (二) しかるに、被審人は右緊急命令において命ぜられた義務の一部を履行したのみで、これが完全な履行をしなかつたため、同年一〇月二四日当裁判所において、過料二〇万円に処せられ、これに対して即時抗告の申立をしたが、同四三年二月二〇日付で大阪高等裁判所より抗告棄却の決定を受け、該決定に対して特別抗告の申立をなしている。 (三) 被審人は、右抗告審決定の告知を受けた(これにより前記過料決定が確定した)後まもなく、同年三月初頃、さらに右緊急命令の不履行部分の一部の履行をなしたけれども、その後も左記に相当する金員の支払をなさず、前記緊急命令に違反して、その命ぜられた義務の 前記過料決定が確定した)後まもなく、同年三月初頃、さらに右緊急命令の不履行部分の一部の履行をなしたけれども、その後も左記に相当する金員の支払をなさず、前記緊急命令に違反して、その命ぜられた義務の一部を履行していない。 記(1) Aの妻Bが同四一年一月三一日従来勤務していた上二病院を退職したことに伴い、Aが同年二月以降受けるはずであつた家族手当(配偶者分)。 (2) Aが同年二月以降同四二年七月までの間に受けるはずであつた昼食費補助金(月一、〇〇〇円を限度とし、解雇当時の合理的方法により算定した同人の平均出勤日数に応じた一日金四〇円の割合による金員)。 (3) Aが同四一年四月以降同四二年七月までの間に受けるはずであつた通勤手当の一部(鉄道運賃の値上げによる従来の運賃との差額分)。 二(一) ところで、被審人は、前掲金員の支払をしない理由として、(1) 家族手当については、配偶者の離職の時期並びに離職後も家族手当受給の要件たる月額八、〇〇〇円以上の定収を得ていないことを証明するための、公共職業安定所などの公的機関ないしこれに準ずるものによる証明書の提出がないことを、(2) 昼食費補助金並びに通勤手当については、それが現実に労務を提供していることを前提として、現物で給付されるものであることを主張している。 (二) しかしながら、(1)、家族手当については、Aは、被審人に対して、妻が退職したことによる家族手当増額申請書を提出しており、さらに、大阪府地方労働委員会の調査の際に上二病院発行の退職証明書を提出し、被審人もこれを閲知しているのであるから、これに加えて、被審人の主張するような公的機関ないしこれに準ずるものの証明書の提出を不可欠のものとする合理的な理由に乏しいものと云わなければならず、(2)、昼食費補助金並びに通勤手当については、本件緊 れに加えて、被審人の主張するような公的機関ないしこれに準ずるものの証明書の提出を不可欠のものとする合理的な理由に乏しいものと云わなければならず、(2)、昼食費補助金並びに通勤手当については、本件緊急命令は、解雇の翌日から原職復帰の日までの間にAが受けるはずであつた賃金(賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの--労働基準法第一一条参照。)相当額の支払、すなわち、同人が、その労働関係において、解雇がなかつたとすれば当然に得たであろう対償を事実上失つたことによる経済的損失を補填することを命じているのであるから、同人が解雇により事実上就労していないことはその支払をなさないことの理由たり得ず、また、その対償が一般に現物給付の形式でなされているとしても、その受けるはずであつた経済的利益を金銭に換算して支払をなすべきこと明らかである。 三よつて、本件記録に表われた諸般の事情を考慮し、労働組合法第三二条前段、非訟事件手続法第二〇七条第四項により主文のとおり決定する。 (裁判官松下寿夫)
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