主文 原判決第一項に対する控訴を棄却する。原判決第二、三項を次のとおり変更する。被控訴人は、控訴人Aに対し金四万一二八六円、同Bに対し金七万九五六七円、同Cに対し金四万六一一九円、同Dに対し金四万八九四一円、同Eに対し金三万三二五〇円、同Fに対し金一万三八九四円、同Gに対し金二万八一七四円、同Hに対し金六万三一六四円及び右各金員に対する昭和五一年一一月一三日から支払ずみまで年五分の割合による金員を各支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。この判決は第三項に限り仮に執行することができる。事実 控訴人ら代理人は、「原判決を取消す。被控訴人は控訴人らに対し、主文同旨の各金員及びこれに対する昭和五一年一一月一三日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。被控訴人は控訴人らに対し、控訴人らの必要とする生理休暇のうち年間二四日は一日につき基本給一日分の支払義務のあることを確認する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。当事者双方の事実上の主張並びに証拠の提出、援用及び認否は、次のとおり付加、補正するほか原判決の事実摘示中控訴人ら関係部分と同一であるからこれを引用する。一原判決八枚目ー記録二三丁ー表三行目に「三」とある後に「同三1の事実のうち、株式会社タケダエレクトロンの設立年月日は昭和四一年八月一日であり、株式会社アイ・テイ・アールの設立年月日は昭和四三年一二月二〇日であることは認める。」と加える。二原判決九枚目ー記録二四丁ー表五行目に「また、」とある後に「全員が」と加え、同六行目に「者が殆んど全員である」とあるのを削る。三原判決一一枚目ー記録二六丁ー表二行目に「同額であること」とあるのを「同額であつて、昭和四九年度以 行目に「また、」とある後に「全員が」と加え、同六行目に「者が殆んど全員である」とあるのを削る。 テイ・アールの設立年月日は昭和四三年一二月二〇日であることは認める。」と加える。二原判決九枚目ー記録二四丁ー表五行目に「また、」とある後に「全員が」と加え、同六行目に「者が殆んど全員である」とあるのを削る。三原判決一一枚目ー記録二六丁ー表二行目に「同額であること」とあるのを「同額であつて、昭和四九年度以 行目に「また、」とある後に「全員が」と加え、同六行目に「者が殆んど全員である」とあるのを削る。三原判決一一枚目ー記録二六丁ー表二行目に「同額であること」とあるのを「同額であつて、昭和四九年度以降は基本給の上昇に伴ない生理休暇手当の額も上昇し、昭和五三年五月一六日現在では別表記載のとおりの額となつていること」と改める。四原判決一二枚目ー記録二七丁ー表二行目に「殆んど」とあるのを削る。五証拠(省略) 理由 一請求の原因一の事実は、控訴人らが組合員であるかどうかの点を除いて当事者間に争いがなく、弁論の全趣旨によれば控訴人らはいずれもその主張のとおりの組合員である(但し、控訴人Fは昭和五二年一二月一五日、同Gは同五一年九月三〇日、被控訴会社を退職した)ことが認められる。二請求の原因二の事実については当事者間に争いがなく、これによれば、被控訴人の就業規則二三条の変更は、控訴人ら女子従業員が生理休暇に関し旧規定により得ていた権利のうちから生理休暇による休業一日につき基本給一日分の三二パーセントの減額と一カ月三日以上の取得については三日目からはその一〇〇パーセントの減額をするものであることが認められ、労働者に対し長期的に実質賃金の低下を生ぜしめる点において不利益な労働条件を課することになつたことは明らかである。被控訴人は、本件の就業規則の変更は形式上労働者に不利益といえるが、実質的にみれば、従来単に有給とすると規定していたのを、一日につき基本給一日分の六八パーセントと明確にしたものであること、生理休暇手当の額は、新規定によつても旧規定の場合とほぼ同額であること、及び賃金総額が大幅に上昇していることにより、基本給の補完作用としての生理休暇手当の比重が相対的に低下していることにおいて、労働者にそれほどの打撃を与える よつても旧規定の場合とほぼ同額であること、及び賃金総額が大幅に上昇していることにより、基本給の補完作用としての生理休暇手当の比重が相対的に低下していることにおいて、労働者にそれほどの打撃を与えるものではない、と主張する。 場合とほぼ同額であること、及び賃金総額が大幅に上昇していることにより、基本給の補完作用としての生理休暇手当の比重が相対的に低下していることにおいて、労働者にそれほどの打撃を与える よつても旧規定の場合とほぼ同額であること、及び賃金総額が大幅に上昇していることにより、基本給の補完作用としての生理休暇手当の比重が相対的に低下していることにおいて、労働者にそれほどの打撃を与えるものではない、と主張する。弁論の全趣旨によれば、控訴人らの昭和四九年一月における新規定による生理休暇手当一日分の額は、同四八年一二月における旧規定による額に比して、控訴人Gの場合の二五一円(一二月分の二二五八円と一月分の二〇〇七円との差)から同Hの場合の一〇一円(一二月分の二六二二円と一月分の二五二一円との差)までの減額になることと、控訴人ら八名について新規定による生理休暇手当一日分の額が、旧規定による額を上廻るようになつたのは、B、H、A、Eの四名において昭和五〇年七月、Gにおいて昭和五一年一月、F、D、Cの三名において昭和五一年一〇月であることが認められ、(被控訴人の当審提出の答弁書)これらによれば、本件の変更により控訴人らが相当期間に亘り生理休暇手当を減額されることとなることが認められる。次に、成立に争いのない甲第一一号証によれば、被控訴会社における昭和四九年度の基本給は、前年度に比して平均約三〇パーセント増額されたことが認められ、また、新規定によつて、同年度の生理休暇手当一日分の額は、前年度に比して基本給一日分の三二パーセント減額されたことは前述のとおりであるから、右基本給の増額によつて賃金総額が増加し、生理休暇手当の賃金総額に占める比重が相対的に低下したことは被控訴人の主張するとおりであるが、昭和四八年一〇月第四次中東戦争勃発前後の石油危機に対応し、物価、賃金等がかなり上昇したことは公知の事実であつて、被控訴会社の右基本給の増額も亦当時の経済情勢に応じて行われたものというべきであり、右基本給の増額により賃金総額が大幅に増加した 油危機に対応し、物価、賃金等がかなり上昇したことは公知の事実であつて、被控訴会社の右基本給の増額も亦当時の経済情勢に応じて行われたものというべきであり、右基本給の増額により賃金総額が大幅に増加した結果、生理休暇手当の賃金総額に占める比重が低下することになつたとしても、それは、女子労働者の保護を目的とする生理休暇制度の本質からみて、経済情勢の変動に応じて生理休暇手当の額も増額すべきであるのに、反つて基本給を増額した割合(前述のとおり平均約三〇パーセント)とほぼ同率(三二パーセント)の減額をしたことの当然の帰結であるにすぎず、女子労働者の実質賃金を低下させたことには変りはない。 が大幅に増加した結果、生理休暇手当の賃金総額に占める比重が低下することになつたとしても、それは、女子労働者の保護を目的とする生理休暇制度の本質からみて、経済情勢の変動に応じて生理休暇手当の額も増額すべきであるのに、反つて基本給を増額した割合(前述のとおり平均約三〇パーセント)とほぼ同率(三二パーセント)の減額をしたことの当然の帰結であるにすぎず、女子労働者の実質賃金を低下させたことには変りはない。また、昭和三九年一二月三〇日タケダ理研工業株式会社と全金タケダ理研支部との間で、生理休暇に関し、「年間二四日とし、それ以上の日数については無給とします。」との協定が結ばれ、その翌年に右の趣旨が就業規則にとり入れられたこと、昭和四六年六月被控訴会社がタケダ理研工業株式会社から分離して設立されたものであることは、当事者間に争いがなく、弁論の全趣旨によれば、被控訴会社設立後直ちに就業規則にタケダ理研工業株式会社と同じ内容の、生理休暇に関する規定(女子従業員は毎月生理休暇を必要日数だけとることができる。そのうち年間二四日を有給とするとの前示旧規定)が盛り込まれ実施されてきたことが認められる。そして、控訴人らは、右規定のもとに生理休暇休業一日につき基本給一日分の一〇〇パーセントを手当として支給されてきたものであつて、既に右生理休暇手当の支給方法は労使間の慣行となつていたものというべきであり、これを就業規則の変更により基本給一日分の三二パーセントを減額し、変更前の支給額を下廻る額の支給とすることは、右慣行上取得した労働者の既得の権利を奪うものであり、規定上支給額の基本給に べきであり、これを就業規則の変更により基本給一日分の三二パーセントを減額し、変更前の支給額を下廻る額の支給とすることは、右慣行上取得した労働者の既得の権利を奪うものであり、規定上支給額の基本給に対する割合を明記したからといつて、到底労働者に利益を与えるものということはできない。更に、成立に争いのない甲第三二号証によれば、女性の生理の周期は大体二五日から三五日くらいであり、各個人により或いは同一人でもその時の体調により右周期は異なるのが通常であることが認められるから、旧規定において生理休暇有給日数を年間二四日としていたのを、新規定において一カ月二日とし、これを超える部分について無給とすることは、生理が月二度あつた場合の保障を欠くことになり、また、年間一二回を超える場合に各人が自己の心身の状況に合わせて生理休暇を取得することができ難くなるなどの不利益を生ずる。 であり、各個人により或いは同一人でもその時の体調により右周期は異なるのが通常であることが認められるから、旧規定において生理休暇有給日数を年間二四日としていたのを、新規定において一カ月二日とし、これを超える部分について無給とすることは、生理が月二度あつた場合の保障を欠くことになり、また、年間一二回を超える場合に各人が自己の心身の状況に合わせて生理休暇を取得することができ難くなるなどの不利益を生ずる。以上によれば、本件変更が労働者に不利益を与えるものではないとの被控訴人の主張は採用することができない。三就業規則は使用者が一方的に変更しうるものではあるが、労働者またはその所属する労働組合の同意がないのに、使用者が就業規則の一方的変更によつて労働者に不利益な労働条件を課することは、原則として許されないと解すべきである。もつとも、労働条件の統一的かつ画一的な処理のため、たとえば、賃金締切期日が一カ月二回であつたのを一回とするような、賃金計算方法の変更などは、それが労使関係においては合理的なものである限り許される余地もあろう。しかし、賃金計算方法の変更であつても、継続的契約関係としての労働契約関係上、長期的に実質賃金の低下を生ずるような賃金計算方法の変更は、労働条件のうちでも労使の利害が真向から対立する賃金額を左右するものであるから、たとえ、それが使用者にとつて合理的にみえて 労働契約関係上、長期的に実質賃金の低下を生ずるような賃金計算方法の変更は、労働条件のうちでも労使の利害が真向から対立する賃金額を左右するものであるから、たとえ、それが使用者にとつて合理的にみえても、原則に立ち返つて考え、許されないと解すべきである(東京高裁昭和五〇年一〇月二八日判決、高裁民集二八巻四号三二〇頁参照)。これを本件についてみるに、本件の就業規則変更が控訴人ら女子従業員について、生理休暇手当の減額を受けることにより、長期的に実質賃金の低下を生ずるものであることは既述したとおりであるから、この変更は労働者に不利益な労働条件を一方的に課するものとして、許されないというべきである。被控訴人は、この変更は、生理休暇制度の濫用、賃金総額の大幅上昇の点からみて合理性を有するものであるから、許されるべきであると主張するけれども、たとえ、使用者にとつて合理的にみえても、本件のように実質賃金の低下を生ずるような就業規則の一方的変更によつて労働者に不利益な労働条件を課することは許されないのであり、かりに生理休暇制度の濫用があるとしても、その抑制には別途の方策を講ずべきもので、これを理由に生理休暇手当の額を就業規則の一方的変更により減額することは許されるものではなく、また、賃金総額が大幅に上昇したからといつて直ちに生理休暇手当の額を一方的に減額することが許されることにはならないから、本件規則変更の効力が生じないことは明らかである。 つて労働者に不利益な労働条件を課することは許されないのであり、かりに生理休暇制度の濫用があるとしても、その抑制には別途の方策を講ずべきもので、これを理由に生理休暇手当の額を就業規則の一方的変更により減額することは許されるものではなく、また、賃金総額が大幅に上昇したからといつて直ちに生理休暇手当の額を一方的に減額することが許されることにはならないから、本件規則変更の効力が生じないことは明らかである。四請求の原因五の事実は当事者間に争いがない。これによれば、その余の点について判断するまでもなく、控訴人らが被控訴人に対し、原判決別紙未払賃金一覧表合計金額欄記載の額の未払賃金請求権を有することを認めることができる。よつて右未払賃金及びこれに対する弁済期後である昭和五一年一一月一三日から支払ずみまで商事法定利率年 、原判決別紙未払賃金一覧表合計金額欄記載の額の未払賃金請求権を有することを認めることができる。よつて右未払賃金及びこれに対する弁済期後である昭和五一年一一月一三日から支払ずみまで商事法定利率年六分の範囲内の年五分の割合による遅延損害金の各支払を求める控訴人らの本訴給付請求は理由があるから認容すべきものである。五次に、控訴人らの確認請求は、具体的権利関係についての確認を求めるものではなく、控訴人らが旧規定の適用を受けるべきものであるとの就業規則変更に関する解釈を求めるものであつて、確認の訴の対象とはならないから、不適法な訴として却下すべきものである。以上のとおりであるから、原判決中控訴人らの確認請求を却下した部分は正当であるが、給付請求を棄却した部分は不当であり、控訴人らの本件控訴は一部理由があるので原判決を右の限度で変更することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九六条、九二条但書を、仮執行の宣言につき同法一九六条一項、四項を各適用して主文のとおり判決する。(裁判官吉岡進吉江清景手代木進)(別表省略)
▼ クリックして全文を表示