平成14(ワ)10400 保証債務請求

裁判年月日・裁判所
平成14年12月18日 東京地方裁判所
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判決文本文11,269 文字)

H14.12.18東京地方裁判所平成14年(ワ)第10400号保証債務請求事件 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,金76万0362円を支払え。 第2 事案の概要本件は,東京東和信用組合がAに対して貸し付けた金200万円の貸金債権を譲り受けた原告が,東京東和信用組合との間で上記貸付けについて保証した被告に対し,保証契約に基づき,上記貸金の残元本75万2508円,平成13年11月20日当時の上記貸金の残元金77万6000円に対する同日から平成14年2月4日までの約定利息金4092円及び同月5日当時の残元本75万2508円に対する同日から75日分の約定利息金3762円の合計金76万0362円の支払を請求するのに対して,被告が,約定による保証債務の除斥期間を経過しているとして争っている事案である。 1 争いのない事実等(1)ア原告は,特定住宅金融専門会社の債権債務の処理の促進等に関する特別措置法に基づき設立された,同法第2条第2項に規定された特定住宅金融専門会社から譲り受けたその貸付債権その他の財産の管理,回収及び処分等を業とする会社である(争いのない事実)。 イ被告は,信用保証協会法に基づいて,中小企業等が金融機関から融資を受ける際に,当該金融機関に対してその債務を保証すること等を業とする法人である(争いのない事実)。 (2) 東京東和信用組合は,A(以下「A」という。)に対し,平成7年12月7日,以下の約定で金200万円を貸し付けた(以下「本件消費貸借契約」という。 争いのない事実,甲1)。 ア弁済期限平成14年12月7日イ弁済方法平成8年2月7日を初回とし,以後毎月7日限り金2万4000円を,最終回に金3万2000円をそれぞれ支払う。 ウ利 いう。 争いのない事実,甲1)。 ア弁済期限平成14年12月7日イ弁済方法平成8年2月7日を初回とし,以後毎月7日限り金2万4000円を,最終回に金3万2000円をそれぞれ支払う。 ウ利息年2.5パーセント(年365日の日割計算)エ期限の利益喪失支払の停止又は破産,和議開始,会社更生手続開始,会社整理開始若しくは特別清算開始の申立てがあった場合には,通知催告等がなくとも一切の債務について当然期限の利益を失い,直ちに債務を弁済する(以下この規定を「本件当然喪失約款」という。)。 (3) 被告は,東京東和信用組合との間で,平成7年12月7日ころ,東京東和信用組合のAに対する本件消費貸借契約に基づく貸金債権(以下「本件貸金債権」という。)を担保するため,以下の約定で信用保証契約(以下「本件信用保証契約」という。)を締結した(争いのない事実,甲6,弁論の全趣旨)。 ア被告は,Aが最終履行期限(期限の利益喪失の日を含む。以下同じ。)後60日を経てなお被保証債務の全部又は一部を履行しなかったときは,東京東和信用組合の請求により,東京東和信用組合に対し保証債務(以下「本件保証債務」という。)を履行するものとする。ただし,東京東和信用組合は,特別の事情があるときは,60日を経ずして被告に対し本件保証債務の履行請求を行うことができる。 イ本件保証債務履行の範囲は,主たる債務に利息及び最終履行期限後60日以内の延滞利息を加えた額を限度とする。 ウ延滞利息は,貸付利率と同率とする。 エ東京東和信用組合は,最終履行期限後2年を経過した後は,被告に対し,本件保証債務の履行を請求することができない(以下この規定を「本件履行期限約款」という。)。 (4) Aは,平成8年5月7日,東京地方裁判所に自己破産を申し立て(以下「本件破産申立て」という 対し,本件保証債務の履行を請求することができない(以下この規定を「本件履行期限約款」という。)。 (4) Aは,平成8年5月7日,東京地方裁判所に自己破産を申し立て(以下「本件破産申立て」という。),同裁判所は,同年10月8日,Aに対して破産宣告決定を行い(以下「本件破産宣告」という。),同年11月13日,Aの破産宣告が同日付け官報に掲載された(争いのない事実,甲2(枝番を含む。),12,18)。 (5) Aは,上記(4)の各事実を東京東和信用組合に通知せず,また,本件破産申立てに際して届け出た債権者名簿にも同信用組合を記載しなかった(甲3,18)。 (6) Aは,東京東和信用組合に対し,本件貸金債権につき,以下のとおり返済を行った(甲9,10,18)。 平成8年 4月 8日 2万7829円同年 5月 9日 2万8066円同年 6月10日 2万8027円同年 7月 8日 2万7813円同年 8月 7日 2万8140円同年 9月 9日 2万7467円同年10月 7日 2万7787円同年11月 7日 2万7857円同年12月 9日 2万7448円平成9年 1月 7日 2万7635円同年 2月 7日 2万7237円同年 3月 7日 2万7533円同年 4月 7日 2万7369円同年 5月 7日 2万7652円同年 6月 9日 2万7053円同年 7月 7日 2万7329円同年 8月 7日 2万7384円 7日 2万7652円同年 6月 9日 2万7053円同年 7月 7日 2万7329円同年 8月 7日 2万7384円同年10月 8日 2万7379円同年11月 4日 2万7512円同年12月 2日 2万7425円平成10年 1月 6日 2万7323円同年 3月30日 2万8202円同年 5月11日 8万2451円同年 6月26日 2万7510円同年 7月29日 2万7202円同年 8月31日 2万7377円同年10月 1日 2万7326円同月29日 2万7155円同年11月30日 2万7378円平成11年 1月 4日 2万6942円同月29日 2万7099円同年 3月 1日 2万7125円同月26日 2万6684円同年 4月30日 2万6871円同年 6月 1日 2万6846円同月29日 2万6844円同年 8月 5日 2万6795円同年 9月29日 2万7250円(6) 東京東和信用組合は,原告に対し,同年10月25日,本件貸金債権を譲渡した(争いのない事実,甲4(枝番を含む。),5)。 (7) 被告と原告は,同日,「保証付貸付債権等の譲渡に係る覚書」(甲5)を締結し,上記(6)の債権譲渡に伴い原告,被告間に移転した本件信用保 譲渡した(争いのない事実,甲4(枝番を含む。),5)。 (7) 被告と原告は,同日,「保証付貸付債権等の譲渡に係る覚書」(甲5)を締結し,上記(6)の債権譲渡に伴い原告,被告間に移転した本件信用保証契約について,上記(3)の各約定を変更しないことを確認した(争いのない事実,甲5,18)。 (8) Aは,原告に対し,本件貸金債権につき,以下のとおり弁済したため,本件貸金債権の残元本は金75万2508円となった(甲10,18)。 平成12年 1月31日 2万8022円同年 3月 3日 2万8075円同年 3月31日 2万8128円同年 5月 1日 2万7879円同年10月30日 2万9787円平成13年 3月 1日 3万0828円同年 5月 2日 3万1036円同年 6月11日 3万1230円同年10月 2日 3万2163円平成14年 2月 5日 2万3492円(9) 原告は,平成13年11月20日,本件破産申立て及び本件破産宣告の事実を確認し,同日,被告に対し,Aの破産宣告通知を送付した(甲2(枝番を含む。),甲18)。 (10) 被告は,原告に対し,同月21日,保証債務消滅通知書を送付し,保証債務の履行を拒んだ(争いのない事実,甲8,18)。 2 争点(1) 原告の被告に対する保証債務履行請求権が,本件破産申立てを始期とする除斥期間経過により消滅したか否か。 (2) 原告の被告に対する保証債務履行請求権が,本件破産宣告を始期とする除斥期間経過により消滅したか否か(判断の必要がなかった。)。 3 争点に対する主張(1) 争点1(原告の被告に対する保証 (2) 原告の被告に対する保証債務履行請求権が,本件破産宣告を始期とする除斥期間経過により消滅したか否か(判断の必要がなかった。)。 3 争点に対する主張(1) 争点1(原告の被告に対する保証債務履行請求権が,本件破産申立てを始期とする除斥期間経過により消滅したか否か。)について(被告の主張)ア本件消費貸借契約においては,本件当然喪失約款によって,債務者の破産申立てにより当然期限の利益を失うと定められており,Aは,平成8年5月7日の破産申立てによって,同日に期限の利益を失った。 イ他方,本件信用保証契約においては,本件履行期限約款によって,期限の利益喪失の日を含む最終履行期限後2年を経過した後は,東京東和信用組合は,被告に対し,保証債務の履行を請求することができないと定められており,被告と原告は,東京東和信用組合から原告に債権譲渡された本件信用保証契約について,本件信用保証契約の各約定を変更しないことを確認している。したがって,Aが破産申立てによって期限の利益を失った平成8年5月7日から既に2年を経過しているから,原告は,被告に対し,保証債務の履行を請求することができない。 (原告の主張)ア被告は,信用保証をした債権者からの代位弁済請求に先行する必須の要件として,事故報告書の提出及び協議を必要としており,債権者の請求なく当然に期限の利益が喪失する場合においても,債権者が債務者に対する期限の利益喪失の通知と催告を行うことをも代位弁済の必須の要件としている。これらの要件は,債権者が債務者の期限の利益喪失の事由(以下単に「喪失事由」という。)に該当する事実を知っていることを前提としているのであるから,本件履行期限約款における「最終履行期限」についても,債権者がその事実を知ったときと解すべきである。 イ本件消費貸借契約における本件 。)に該当する事実を知っていることを前提としているのであるから,本件履行期限約款における「最終履行期限」についても,債権者がその事実を知ったときと解すべきである。 イ本件消費貸借契約における本件当然喪失約款は,債務者の破産申立てにより期限の利益が当然に喪失し,本件貸金債権の民法上又は商法上の消滅時効が破産申立ての時点から開始するという点では債権者に不利であるところ,債権者には,客観的に破産申立ての事実を知る手段は担保されていない。そこで,債務者が,債権者に対して,破産申立ての事実を隠ぺいする手段を講じたために,債権者がこれを知ることができなかった場合などは,債務者が期限の利益の当然喪失を主張することは信義則上禁止されると解すべきである。 本件において,Aは,破産申立て後も平成13年までその事実を東京東和信用組合及び原告(以下「原告ら」という。)に対して告知せず,本件貸金債権を破産手続において届け出ることもせず,原告らに対し弁済を続けたため,原告らは,期限の利益喪失を覚知し得なかったのであるから,Aは,原告に対し,信義則上,本件破産申立てによる期限の利益喪失を主張できないというべきである。そして,保証人たる被告も,附従性及び正義衡平の観点から,同様にこれを主張できないと解すべきである。 (2) 争点2(原告の被告に対する保証債務履行請求権が,本件破産宣告を始期とする除斥期間経過により消滅したか否か。)について(被告の主張)ア Aは,平成8年10月8日に破産宣告を受けており,破産法第17条により本件貸金債権について履行期限が到来し,同日から2年後の平成10年10月8日は経過したので,原告は,保証債務の履行を請求することはできない。 (原告の主張)ア破産法第17条の破産宣告による期限到来の効果は,破産手続の迅速な遂行ないしは破産 ら2年後の平成10年10月8日は経過したので,原告は,保証債務の履行を請求することはできない。 (原告の主張)ア破産法第17条の破産宣告による期限到来の効果は,破産手続の迅速な遂行ないしは破産債権者間の公平平等を図るために認められたものであるから,その効力は,破産手続の関係する範囲内に限られ,連帯保証人たる被告には及ばない。 イしたがって,本件貸金債権につき,最終履行期限が到来したのは,原告が,Aの破産申立て及び破産宣告の事実を知った平成13年11月20日であり,本件保証債務の除斥期間は経過していない。 第3 争点に対する判断 1 争点1(原告の被告に対する保証債務履行請求権が,本件破産申立てを始期とする除斥期間経過により消滅したか否か。)について前記第2,1(3)のとおり,原告,被告間の本件信用保証契約においては,本件履行期限約款によって,期限の利益喪失の日を含む本件貸金債権の最終履行期限後2年を経過した後は被告に対し保証債務の履行を請求することができないと定められていたが,同約款は,本件保証債務について除斥期間を定めたものと解される。 他方,前記第2,1(2)のとおり,本件消費貸借契約においては,本件当然喪失約款が定められており,Aについて破産の申立てがあった場合には,原告らのかかる事実の覚知の有無にかかわらず,Aは,本件貸金債権につき当然に期限の利益を失うこととなるとされていた。 そして,前記第2,1(4)の事実及び弁論の全趣旨によれば,Aは平成8年5月7日に破産申立てをしていること及び破産申立て後2年間,原告らは被告に対し本件信用保証契約に基づき何らの請求もしていないことが認められる。 以上によれば,Aは,平成8年5月7日に本件消費貸借契約における本件当然喪失約款により期限の利益を失い,これに伴って,本件信用保証 件信用保証契約に基づき何らの請求もしていないことが認められる。 以上によれば,Aは,平成8年5月7日に本件消費貸借契約における本件当然喪失約款により期限の利益を失い,これに伴って,本件信用保証契約における本件履行期限約款により,平成10年5月7日の経過によって,本件保証債務の除斥期間が経過し,原告の被告に対する保証債務履行請求権は消滅したとも考えられるところ,原告は,①本件信用保証契約にいう最終履行期限とは債権者が喪失事由発生を知った時点である,②被告が本件破産申立てによる期限の利益喪失を主張することは信義則に違反し許されない,と主張するので,以下これらの主張の当否について検討する。 (1) 最終履行期限とは喪失事由発生を原告らが知った時点であるとする点についてア証拠(甲6)によれば,本件履行期限約款が,最終履行期限に期限の利益喪失日を含む旨を明確に定めている一方で,債権者の期限の利益喪失事由発生の認識について文言上特に問題にしていないことが認められ,これに,法定の除斥期間においては,権利者の覚知より除斥期間が進行する場合は,その旨を明文で規定するのが通常であることをも考え併せれば,本件履行期限約款の文言上,最終履行期限について,当然に期限を喪失する場合に特に原告らがその事由発生の事実を知った時点としているとは解し難い。 イまた,証拠(甲5,6)及び弁論の全趣旨によれば,そもそも,本件信用保証契約の各条項は,被告が各金融機関との間で締結し,東京東和信用組合との間では昭和41年8月1日に締結した約定書(以下「約定書」という。)の規定に従ったものであり,これらは被告が信用保証協会法第20条第1項第1号に基づく保証を行う際に定型的に使用されているものであることが認められる。そして,本件履行期限約款が規定された趣旨は,期限の利益喪失の たものであり,これらは被告が信用保証協会法第20条第1項第1号に基づく保証を行う際に定型的に使用されているものであることが認められる。そして,本件履行期限約款が規定された趣旨は,期限の利益喪失の日を含む最終履行期限後,長期間当該債権を放置することが信用保証協会の求償権に対する債権保全上からも事務処理上からも適切ではなく,ひいては中小企業者に対する金融の円滑化を図るという目的を有する信用保証制度の健全な活用を阻害するものであることから,これらの弊害を防止すべく,保証債務履行請求権の存続期間に対して一定の期限を設けることにあると解される。このような本件履行期限約款の趣旨及び定型性からは,本件除斥期間について,期限の利益喪失事由についての債権者の認識という,主観的かつ不明確な要件を加重することは,むしろ,上記弊害防止及び履行期限を定型的に2年と定めた本件履行期限約款の趣旨を没却することとなる。 一方,証拠(甲11)によれば,原告の主張するとおり,被告は,原告らを含む債権者たる金融機関の代位弁済請求に先行する必須の要件として,金融機関からの事故報告書の提出と協議を必要とし,また,当然喪失条項に該当する事由(以下「当然喪失事由」という。)による期限の利益の喪失又は期限到来の場合であっても,金融機関が債務者に対して内容証明郵便による通知を要件としていることが認められ,かかる要件を充足するためには,債権者が当然喪失事由についてもその発生を知ることが当然の前提となっているといえ,かかる点との均衡も一応問題となり得る。 しかしながら,かかる要件は,本件信用保証契約によって定められている要件とは解されず,当然喪失事由による期限の利益の喪失の場合に,金融機関が債務者に対して内容証明郵便による通知をしなければ,被告に対し,本件信用保証契約に基づき 件信用保証契約によって定められている要件とは解されず,当然喪失事由による期限の利益の喪失の場合に,金融機関が債務者に対して内容証明郵便による通知をしなければ,被告に対し,本件信用保証契約に基づき保証債務の履行を求めることはできないとは到底解されないし,加えて,被告が,債務者に対する保護や円滑な事務処理上の観点から代位弁済請求に応じるために内部的に上記の要件を定めているとしても,これは,信用保証債務が除斥期間にかかっていないことを前提として,代位弁済請求に応じるための手続を定めたものであるから,被告が上記のような要件を定めていることをもって,本件履行期限約款における最終履行期限について,当然に期限を喪失する場合にも,原告らがその事由発生の事実を知った時点としているとは解することはできない。 ウ以上によれば,本件履行期限約款における最終履行期限が,原告らが喪失事由発生を知った時点を指すと解することはできず,原告の主張は認められない。 (2) 信義則違反との主張についてア (1)のとおり,本件当然喪失約款により,当然喪失事由が生ずれば,原告らがかかる事実を知らなくても,Aは,原則として,本件貸金債権につき当然に期限の利益を失うこととなる。その場合,原告らとしては,喪失事由の発生の時点から権利の行使ができるのであるから,原告らが当然喪失事由の発生を知らなくとも,当然喪失事由発生時から,本件貸金債権につき,民法上又は商法上の消滅時効が進行する。 イしかしながら,債務者が殊更に債権者に対して当然喪失事由の発生を隠ぺいするなどの行為に出たために,債権者が当然喪失事由の発生を知り得なかった場合には,債権者と当該債務者との間において,かかる行為をした債務者が,期限の利益の喪失を主張して消滅時効を援用することは,信義則上許されないと解する余地も十分 が当然喪失事由の発生を知り得なかった場合には,債権者と当該債務者との間において,かかる行為をした債務者が,期限の利益の喪失を主張して消滅時効を援用することは,信義則上許されないと解する余地も十分にあるというべきである。 本件においては,前記第2,1(5)(6)(8)の各事実によれば,Aは,本件破産申立ての際に知れたる債権者を届け出るべき(破産法第138条)ところ,これを怠り,本件破産宣告後も約5年間にわたり,破産申立て及び破産宣告の事実を原告らに告知することもせず,原告らに対し本件貸金債権の弁済を続けていたものである。そして,証拠(甲12,17(枝番を含む。),18)及び弁論の全趣旨によれば,債権者たる原告らが当該債務者からの告知なしに,債務者の破産申立ての事実を知ることは困難であり,また,破産宣告決定も,官報に1回掲載して公告されるだけであって,原告らがこれを知ることは実際上容易ではないことが認められるところ,上記のAの行動は,同人が原告らに対し殊更に本件破産申立て及び本件破産宣告の事実を隠ぺいしていたと評価し得る余地もあり,そのような評価をすることができる場合に,Aがこれらの事実による期限の利益喪失を主張して民法上又は商法上の消滅時効を援用することは信義則に反して許されないとすることも十分あり得るところである。 ウもっとも,この場合に被告が除斥期間の始期として期限の利益喪失を主張できるかは別論である。すなわち,信義則に反するか否かは,当該当事者間の個別具体的な利益状況に基づいて判断されるべき事柄であって,上記のようなAと原告らとの関係と,第三者である被告と原告らとの関係を必ずしも同列に論じることはできない。このことは,いわゆる保証債務の附従性により,主債務者Aに生じた事由の効果が原則として被告に対する本件保証債務に対して及ぶ 係と,第三者である被告と原告らとの関係を必ずしも同列に論じることはできない。このことは,いわゆる保証債務の附従性により,主債務者Aに生じた事由の効果が原則として被告に対する本件保証債務に対して及ぶこととは次元を異にするものというべきである。 エそこで,原告らと被告との関係において,被告が除斥期間の始期として本件破産申立てによる期限の利益喪失を主張することが信義則に反するか否かを検討するに,前記第2,1(1)イの事実及び弁論の全趣旨によれば,被告は,信用保証協会であり,中小企業者に対する金融の円滑化を図ることを目的として,中小企業者のために信用保証を行うものであることが認められ,被告がAとの個人的関係から保証人となったとか,被告においてAが本件破産申立て等を隠ぺいする行為等を認識し,又はこれに関与していたであるとか,原告らと比べて,Aの隠ぺい行為等をより容易に認識できる地位にあって,これを阻止できたというような,Aの隠ぺい行為等に積極的に関与し得る立場にあったとの主張はなく,また,そのような事実は,本件全証拠によっても到底認められない。むしろ,本件貸金債権及びAの状況については,第一義的には,債権者たる原告らが適切に把握すべきものであって,たまたま原告らにおいてAの状況を十分把握できなかったからといって,原告と被告との間でこれによって生じた不利益を被告が負担すべき理由は全くない。 オまた,上記(1)イにおいて認定したとおり,本件信用保証契約の各条項は,被告が各金融機関との間で締結し,東京東和信用組合との間では昭和41年8月1日に締結した約定書の規定に従ったものであり,これらは被告が信用保証協会法第20条第1項第1号に基づく保証を行う際に定型的に使用されているものである。そして,本件履行期限約款が規定された趣旨は,保証債務は,附従性を 書の規定に従ったものであり,これらは被告が信用保証協会法第20条第1項第1号に基づく保証を行う際に定型的に使用されているものである。そして,本件履行期限約款が規定された趣旨は,保証債務は,附従性を有するとはいえ,主たる債務とは別個独立の債務であるから,保証債務について主たる債務の消滅時効期間と別個に,その存続期間について債権者と保証人の間で定めることも許される(大審院昭和13年4月8日第2民事部判決・民集17巻664頁参照)ところ,期限の利益喪失の日を含む最終履行期限後,長期間当該債権を放置することが信用保証協会の求償権に対する債権保全上からも事務処理上からも適切ではなく,ひいては信用保証制度の健全な活用を阻害するものであることから,これらの弊害を防止すべく,保証債務履行請求権の存続期間に対して一定の期限を設けることにあると解される。 上記の弊害及びこれを防止するための制限の必要性は,主債務者について主債務の消滅時効が完成しているか否か,消滅時効援用が許されるか否かによって異なるものではなく,本件のように債務者が当然喪失事由の発生をことさら隠ぺいしていた場合においても,同じく妥当するものである。 カさらに,上記(1)イに認定したとおり,東京東和信用組合と被告間では,信用保証契約締結に当たって,昭和41年以来約定書の規定に従うこととされていたのであるから,本件消費貸借契約当時,東京東和信用組合は,本件貸金債権につき被告と締結することになる本件信用保証契約に本件履行期限約款が存在することについては,当然認識していたものと認められる。一方,証拠(甲1)及び弁論の全趣旨によれば,本件当然喪失約款は,東京東和信用組合が作成した契約書に基づき,東京東和信用組合とAの間で締結されたものであって,東京東和信用組合は,本件消費貸借契約締結時に本件 (甲1)及び弁論の全趣旨によれば,本件当然喪失約款は,東京東和信用組合が作成した契約書に基づき,東京東和信用組合とAの間で締結されたものであって,東京東和信用組合は,本件消費貸借契約締結時に本件当然喪失約款を排除することも可能であったと認められるのに対し,当然のことながら,本件全証拠によっても,被告は,何ら本件消費貸借契約の内容に関与しているとは認められない。 キ以上の検討によれば,本件当然喪失約款において当然喪失事由とされている破産申立てが,原告らにとって容易に認識できないものであり,また,これに乗じてAが原告らに対し信義則上許容されない行為に出たために原告らが不利益を被ったとしても,Aとの関係はともかく,被告との関係においては,その不利益は,本来,本件貸金債権の保全に必要な注意を行うべき地位にあり(約定書第9条第1項),本件当然喪失約款を作成して締結した東京東和信用組合ないし同信用組合から債権を譲り受けた原告が負うべきものであって,被告が,その不利益を転嫁されるべき事情は全くなく,かえって,かかる主張を認めることは,信用保証制度の健全な活用のために保証債務履行請求について除斥期間を設けた当事者間の合理的意思を没却するものといわざるをえない。 したがって,被告が本件破産申立てによる期限の利益喪失を主張することは信義則に違反するものではなく,原告の主張は認められない。 (3) 以上によれば,本件保証債務の除斥期間の始期は,Aが本件破産申立てを行った平成8年5月7日であって,原告の本件保証債務履行請求権は平成10年5月7日経過時に,除斥期間の経過によって,既に消滅している。 2 よって,原告の被告に対する本訴請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がないからこれを棄却し,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第34部裁 の経過によって,既に消滅している。 2 よって,原告の被告に対する本訴請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がないからこれを棄却し,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第34部裁判長裁判官前田順司裁判官池町知佐子裁判官増尾崇

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