平成12刑(わ)2427 受託収賄

裁判年月日・裁判所
平成14年10月16日 東京地方裁判所
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判決文本文11,277 文字)

平成14年10月16日宣告平成12年刑(わ)第2427号,同第2642号 主文 被告人を懲役2年に処する。 被告人から金6000万円を追徴する。 訴訟費用は被告人の負担とする。 理由 (前提となる事実等) 1 被告人の経歴被告人は,大学在学中から衆議院議員の秘書となり,青年運動をするなどの活動を経て,昭和42年1月29日施行の第31回衆議院議員総選挙に山梨全県区から無所属で立候補して初当選した後,自由民主党に入党し,以来昭和55年6月22日施行の第36回総選挙まで連続6回当選した。そして,被告人は,第37回総選挙には落選したものの,昭和61年7月6日施行の第38回総選挙から引き続き当選を果たして平成12年6月まで衆議院議員の地位にあり,この間,経済企画庁長官,通商産業大臣等を歴任して,平成8年1月11日から同年11月7日までの間は建設大臣の地位にあった。 2 被告人の建設大臣としての職務権限(なお,この項に挙示する法令,通達等は,いずれも平成8年の本件事件当時のものである。)建設省は,国家行政組織法3条2項,4項,別表第1に基づいて設置され,「河川,水流及び水面(港湾内の水面を除く。)の利用,改良,維持,修繕その他の管理並びにこれらの助成及び監督を行うこと。」,「道路の新設,改築,維持,修繕その他の管理並びにこれらの助成及び監督を行うこと。」など,建設省設置法3条所定の事務を所掌していた。そして,建設大臣は,建設省の長として,同省の事務を統括し,職員の服務についてこれを統督する(建設省設置法2条2項,国家行政組織法10条)などとされ,被告人は,本件において,建設大臣として,具体的に以下の職務権限を有していた。 (1) 建設省職員に対する再就職先のあっせんについて建設大臣は,建設省の職 行政組織法10条)などとされ,被告人は,本件において,建設大臣として,具体的に以下の職務権限を有していた。 (1) 建設省職員に対する再就職先のあっせんについて建設大臣は,建設省の職員について任命権限(辞職承認権限等を含む。)を有する(国家公務員法55条1項,61条等)。ただし,行政職(一)8級以下及び研究職4級以下等の職員に関する建設大臣の任命権限は,事務次官,各地方建設局長等に委任されていた(国家公務員法55条2項,建設省の職員の任命権の委任に関する訓令)が,建設大臣は,委任した上記任命権限の行使に関し,事務次官等に対する指揮監督権限(国家行政組織法10条,14条2項)を有していた。 ところで,建設省では,他の官庁と同様,人事の刷新,行政効率の維持・向上を図るなどのため,任命権者ないしその委任を受けた者により,一定の在職年数に達した職員の自発的な退職意思を形成させるための事実上のしょうよう行為として早期退職の勧奨が行われ(なお,この早期退職の勧奨は,国家公務員退職手当法4条,同法施行令3条にみられるように,法制度上もその存在が前提とされている。),退職勧奨の際に,併せて被勧奨者に対して,建設省の外郭団体又は民間企業を再就職先としてあっせんすることも,退職勧奨実施の上で必要かつ合理的な行為であるとして慣行化されていた。 このように,上記再就職先のあっせんは,上記のような目的,必要性等のため,同省において確立された慣行として行われ,建設大臣が,同省職員に対する早期退職の勧奨に際し,再就職先のあっせんを自らあるいは部下職員に指示して行うことは,建設大臣の任命権限,ないし建設大臣が事務次官等に委任した任命権限の行使に関し建設大臣が事務次官等に対して有する指揮監督権限とそれぞれ密接に関係する行為(職務密接関連 部下職員に指示して行うことは,建設大臣の任命権限,ないし建設大臣が事務次官等に委任した任命権限の行使に関し建設大臣が事務次官等に対して有する指揮監督権限とそれぞれ密接に関係する行為(職務密接関連行為)に当たる。 (2) 指名競争入札参加者の資格審査及び競争参加者の指名について建設省の所掌する河川の修繕,道路の新設・修繕等の事務に係る同省発注工事の請負契約の締結が指名競争入札の方法で行われる場合,指名競争参加者の資格の制定及び競争参加資格審査の権限は,予算決算及び会計令95条1項,2項,72条2項等により建設大臣又はその委任を受けた職員に帰属することになり,これを受けて,建設省所管会計事務取扱規程36条の4第1項,5項は,各地方建設局長等の部局長が,建設大臣の委任により,上記の資格を定め,審査を行う旨定めていた。また,予算決算及び会計令97条1項によると,指名競争において競争参加者を指名する権限は同項所定の「契約担当官等」にあるとされているものと解されるところ,上記のような建設省発注工事の請負契約に係る支出負担行為に関する事務は,会計法13条1項,建設省所管会計事務取扱規程22条,別表第2により建設大臣から地方建設局長等に委任されており,結局,この関係では,地方建設局長等が建設大臣からの委任により,上記「契約担当官等」として競争参加者の指名権限を有することになる。 そして,建設大臣は,委任に係る上記資格審査及び競争参加者の指名に関する各権限の行使に関し,地方建設局長等に対する指揮監督権限を有していた。 (3) 建設省発注工事の下請業者選定について会計法29条の11第1項によると,「契約担当官等」は請負契約の適正な履行を確保するため必要な監督をする権限があるとされているところ,前記のような建設省発注工事 工事の下請業者選定について会計法29条の11第1項によると,「契約担当官等」は請負契約の適正な履行を確保するため必要な監督をする権限があるとされているところ,前記のような建設省発注工事の請負契約に係る支出負担行為に関する事務は,前記のとおり建設大臣から地方建設局長等に委任されていたから,この関係では,地方建設局長等が建設大臣からの委任により,「契約担当官等」として上記監督権限を行使することになるが,この監督は,下請負人の適格性やその施工工事の是正等に関する事項にも及ぶものとされていた。そして,建設大臣は,委任に係る上記監督権限の行使に関し,地方建設局長等に対する指揮監督権限を有していた。 そうすると,上記請負契約に関し,元請負業者に対しその下請業者として特定の業者をあっせんすることについて建設大臣が地方建設局長等に指示する行為は,建設大臣が地方建設局長等に対して持つ上記指揮監督権限を背景とし,地方建設局長の上記監督権限の行使について事実上の影響を与えるものであって,建設大臣の上記指揮監督権限と密接に関係する行為(職務密接関連行為)に当たる。 (犯行に至る経緯等(1)) 1 X株式会社は,土木,建築工事の調査,企画,設計,監理,施工及びその請負等を目的とする総合建設会社である。その筆頭株主は,同社の発行済株式総数の20パーセント余りを持つY株式会社であり,平成8年当時,Yの代表取締役会長であったAが,Xの代表取締役会長に就任していた。 Xは,海上土木工事を主体として営業活動を行ってきたが,同工事の受注は頭打ちの傾向を示していたため,業績向上のためには,建設省発注に係る陸上工事の受注拡大を目指すことが急務であった。そこで,Aら同社の幹部は,そのためには,建設省のいわゆるキャリア職員をXに再就職させて,同省の発注工事に いたため,業績向上のためには,建設省発注に係る陸上工事の受注拡大を目指すことが急務であった。そこで,Aら同社の幹部は,そのためには,建設省のいわゆるキャリア職員をXに再就職させて,同省の発注工事に係る各種の重要な情報を早期に得ることによって,受注調整と称して行われていた業者間の話し合いを有利に進めることなどを図る必要があるものと考え,同省の技官の再就職あっせんのとりまとめを行っていた同省技監及び同省技術審議官らに対して,Xを同省職員の再就職先としてあっせんされたい旨要請していたが,思うような結果は得られていなかった。 また,AらXの幹部は,建設省発注工事が指名競争入札によって行われる場合,入札参加者の資格審査に当たって,同社がその競争参加資格の等級区分をより上位に位置づけられるなどの有利な取扱いを受けて,競争参加者として指名されるなど,同省発注工事の受注について有利な取り計らいを受けることを強く希望し,さらに,上記資格審査等に当たって有利な取扱いを受けるため受注実績を上げるのに必要なら,同省発注工事の下請工事でもよいから受注したいと考えていた。 2 Aは,第三者に渡ったYの株式の取戻し等のため,自己の義兄であり,株式会社Zを経営するBを介してCと交渉していたところ,Bは,平成8年5月中旬ころ,Cから,政財界に広い人脈を持つ人物としてDを紹介された。Dは,かねて被告人と親交があり,折から同月22日に判示第2の料亭「F」で被告人の建設大臣就任祝いの会を開く旨企画していたところ,このとき,Cから,Bの義弟のAが経営する会社の中にXがあり,これから陸の仕事もたくさん取ることを希望しているから,建設省関係に強い政治家を紹介してくれないかなどと持ちかけられて,Aらを被告人に引き合わせてやろうと考え,上記就任祝いの会にAとBが出席できるように ら陸の仕事もたくさん取ることを希望しているから,建設省関係に強い政治家を紹介してくれないかなどと持ちかけられて,Aらを被告人に引き合わせてやろうと考え,上記就任祝いの会にAとBが出席できるように取り計らう旨引き受け,その手配をした。 Aは,Bからその連絡を受けると,現職の建設大臣である被告人に対して,Xがかねて望んでいた前記各事項に関する依頼をし,それを引き受けてもらえれば,被告人が建設大臣として有する権限に基づいてその依頼の実現を図ってくれるものと考え,Bとも相談の上,とりあえず被告人の面識を得るとともにその歓心を買うために,Bとともに上記就任祝いの会に出席してその機会に現金2000万円を被告人に贈ることとし,現金を贈る役割はBに任せることにした。 被告人は,同年5月22日「F」で開催された上記就任祝いの会に出席し,その席上DからAとBを紹介され,両名のあいさつを受けるなどしたが,その機会に,Bが上記の趣旨のもとに交付した現金2000万円を建設大臣秘書官を通じて受領した。 その後,Dの発案により,同年6月12日に後記第1のレストラン「G」で被告人とA,Bらとが会食することになった。そこで,A及びBは,この機会に,被告人に対し,かねてXが希望していた上記各事項を請託するとともに,被告人が建設大臣として有する権限に基づいてその請託の実現に尽力することの謝礼として,被告人に現金1000万円を供与しようと企てるに至った。 (罪となるべき事実(第1))第1 被告人は,前記のとおり平成8年1月11日から同年11月7日までの間,建設大臣として前記「前提となる事実等」の2「被告人の建設大臣としての職務権限」の項記載のとおりの職務権限を有していたところ,平成8年6月12日,東京都千代田区a町b丁目c番d号所在のHホテル1階レストラン「 して前記「前提となる事実等」の2「被告人の建設大臣としての職務権限」の項記載のとおりの職務権限を有していたところ,平成8年6月12日,東京都千代田区a町b丁目c番d号所在のHホテル1階レストラン「G」において,前記X株式会社の代表取締役会長であったA及びその義兄であるBから,建設省職員に対する早期退職の勧奨に際し,Xを再就職先としてあっせんされたい旨,工事請負業者の指名競争入札の参加資格審査に際し,同社の競争参加資格の等級区分をより上位にする取り計らいを受けたい旨,同省発注工事の指名競争参加者の選定に際し,同社を選定されたい旨及び同省発注工事の元請負業者に対してXを下請業者に選定するようあっせんされたい旨の各請託を受け,それらの報酬として供与されるものであることを知りながら,同日,上記Hホテル敷地内に停車中の自動車内において,上記A及びBから現金1000万円の供与を受け,もって,自己の上記職務に関して賄賂を収受した。 (犯行に至る経緯等(2))被告人は,平成8年8月1日,後記第2の料亭「F」において,Dが設営したA,BらXの関係者との会食の場に出席し,A及びBから,改めて前記第1同様の請託を受けた。 さらに,被告人は,同月8日,東京都新宿区e所在の料亭「I」でDらと会食し,来るべき総選挙の資金に苦労しているなどと話すと,Dは,Aらが被告人に対して前記各請託をしていることを知っていたことから,それならXから選挙資金を出させればいいなどと,前記各請託事項の実現に対する報酬の趣旨でAらから更に資金の提供を求め,それを選挙の費用に充てればよいという趣旨を述べ,被告人も,その趣旨を了解した上でこれに賛同し,ここに,被告人はDとの間で,上記趣旨の受託収賄の共謀を遂げるに至った。 そして,被告人は,同月20日,東京都中央区銀座f丁目g番h号 いう趣旨を述べ,被告人も,その趣旨を了解した上でこれに賛同し,ここに,被告人はDとの間で,上記趣旨の受託収賄の共謀を遂げるに至った。 そして,被告人は,同月20日,東京都中央区銀座f丁目g番h号所在の料亭「J」において,Dが設営したA,Bらとの会食に出席し,Dともども,A及びBに対して選挙資金を供与するように求めたところ,A及びBは,被告人らの要求が上記趣旨のものであることを了知した上,できる限りの協力はする旨答えるとともに,改めて,被告人に対して前記第1同様の請託を繰り返した。 A及びBは,同月下旬ころ,Bが金額についてDの意向を聞くなどした上で,被告人に対して上記趣旨の金員として1000万円を供与しようと相談した。そして,被告人は,そのころ,Dから供与場所について打診されて,建設大臣室に持参するよう答え,それをDがBに伝えたことから,A及びBは,Bが上記現金1000万円を建設大臣室に持参して被告人に供与することとし,また,Aは,Bに対し,上記供与の機会に改めて被告人に前記第1同様の請託を繰り返すよう指示した。 そこで,Bは,同月下旬ころ,現金1000万円を持参して,後記第2の建設省に赴いて,同省大臣室内で被告人に面会し,前記第1同様の請託を繰り返した上,その機会に,後記第2の金員供与に及んだ。 (罪となるべき事実(第2))第2 被告人は,建設大臣として前記のとおりの職務権限を有していたところ,Dと共謀の上,前記第1記載の各請託を受けたことに加え,更に,前記「犯行に至る経緯等(2)」のとおり,平成8年8月1日から同月下旬ころまでの間,3回にわたり,東京都墨田区i丁目j番k号所在の料亭「F」等において,A及びBから,いずれも前記第1同様の各請託を受け,それらの報酬として供与されるものであることを知りながら,同月下旬ころ,東京都千 回にわたり,東京都墨田区i丁目j番k号所在の料亭「F」等において,A及びBから,いずれも前記第1同様の各請託を受け,それらの報酬として供与されるものであることを知りながら,同月下旬ころ,東京都千代田区l丁目m番n号所在の建設省大臣室において,A及びBから現金1000万円の供与を受け,もって,自己の上記職務に関して賄賂を収受した。 (犯行に至る経緯等(3))平成8年9月下旬ころ,A及びBは,近く衆議院が解散される見通しであることを報道等によって知り,この機会に,前記各請託事項の実現のために,被告人に対して前記第1及び第2同様の趣旨で更に1000万円くらいの資金を供与しようと考えていたが,折から,被告人の甥で,かねて被告人の秘書をし,被告人の建設大臣在任中は建設大臣秘書官であったEは,Aらが被告人に対して前記各請託を行っていることを知っていたことから,Aらに選挙資金として金員の提供を依頼すれば,同人らは被告人がその請託事項の実現のために尽力することの見返りとして被告人に対し更に資金を供与するであろうと考え,Bに電話して,被告人に選挙資金を供与するよう求めた。これに対し,Bが被告人と直接電話で話したいと告げたので,Eが被告人にその旨を伝え,被告人がこれを承知してBと電話で話をしたところ,Bは,被告人に対し,Xが1000万円の資金を提供する旨話すとともに,かねてお願いしている人の件や仕事の件などが1日でも早く成就するようお願いしたい旨言って,前記第1同様の請託を繰り返した。そこで,被告人は,EがA及びBに対し前記第1及び第2同様の趣旨の金員の供与を要求してそれを選挙資金に充てようとしていることを了知し,その上で,Eに対し,Bから上記金員を受領するように指示し,ここにEとの間で,上記1000万円の受託収賄に関する共謀を遂げて,後記第3の金 与を要求してそれを選挙資金に充てようとしていることを了知し,その上で,Eに対し,Bから上記金員を受領するように指示し,ここにEとの間で,上記1000万円の受託収賄に関する共謀を遂げて,後記第3の金員供与を受けるに至った。 (罪となるべき事実(第3))第3 被告人は,建設大臣として前記のとおりの職務権限を有していたところ,前記Eと共謀の上,前記第1及び第2の各請託を受けたことに加え,更に,平成8年9月下旬ころ,前記「犯行に至る経緯等(3)」のとおり,Bから電話で前記第1及び第2同様の各請託を受け,それらの報酬として供与されるものであることを知りながら,そのころ,東京都港区o丁目p番q号所在のKビル6階株式会社Z事務所において,A及びBから現金1000万円の供与を受け,もって,自己の上記職務に関して賄賂を収受した。 (犯行に至る経緯等(4))平成8年10月8日に第41回衆議院議員総選挙が公示され,被告人は,山梨県第1区から立候補したものの,選挙戦は楽観を許さない状況であった。そこで,Eは,被告人のため更に多額の選挙資金を捻出する一環として,Aらに対し,前記「犯行に至る経緯等(3)」と同様の趣旨で,再び資金の提供を求めようと考え,Bに電話をかけて,500万円くらいの提供を求める趣旨で,「選挙で大臣が苦戦しているので,Xさんに応援してもらえないか。片手ほどお願いしたい。」旨申し向けた。Bはそれを聞いて,Eが5000万円を要求してきたものと理解し,いったん返事を保留した上で,Aにその話を伝えた。AとBは,3000万円くらいは出さざるを得ないだろうなどと話し合い,結局,前記第1ないし第3同様の趣旨の金員として,更に3000万円を被告人に供与することとしたが,その際,Aは,これまでの被告人に対する各請託の機会に被告人からその請託を受諾する趣旨 どと話し合い,結局,前記第1ないし第3同様の趣旨の金員として,更に3000万円を被告人に供与することとしたが,その際,Aは,これまでの被告人に対する各請託の機会に被告人からその請託を受諾する趣旨の意向を示されたり,Aらの依頼を被告人から建設省の担当幹部等に伝えてもらう配慮をしてもらったことなどはあるものの,いまだ各請託事項の実現が具体化していなかったことから,Bに対し,上記3000万円の供与の機会に被告人と直接話して改めて請託するとともに,今後の対応について確約を取るようにと指示した。そこで,Bは,Eに電話して,3000万円を段取りさせてもらうが,これまで被告人に依頼してきたことがまだ実を結んでおらず,その辺のところを被告人がどう考えているのか,直接うかがいたいので,被告人から電話をいただきたいと伝えた。 被告人は,そのころ,Eから,Bに選挙資金の提供を頼んだところ,直接被告人と話したいと言われた旨報告を受けて,Eに指示してBに電話をかけさせ,自ら電話に出たところ,Bは,被告人に対し,被告人の選挙のため更に3000万円を提供する旨伝えるとともに,かねてお願いしている人の件とか仕事の件がまだ実現していないので,とにかく早く実現するようお願いしたいなどと,改めて前記第1ないし第3同様の請託を繰り返した。そこで,被告人は,EがA及びBに対し,前記第1ないし第3と同様の趣旨の金員の供与を更に要求してそれを選挙資金に充てようとしていることを了知し,Bに対しては,分かっている,必ず恩返しをするなどと答えるとともに,Bとの電話を終えた後,Eに対し,Bから上記金員を受領するようにと指示し,ここにEとの間で,上記3000万円の受託収賄に関する共謀を遂げて,後記第4の金員供与を受けるに至った。 (罪となるべき事実(第4))第4 被告人は,建設大臣と 上記金員を受領するようにと指示し,ここにEとの間で,上記3000万円の受託収賄に関する共謀を遂げて,後記第4の金員供与を受けるに至った。 (罪となるべき事実(第4))第4 被告人は,建設大臣として前記のとおりの職務権限を有していたところ,Eと共謀の上,前記第1ないし第3の各請託を受けたことに加え,更に,平成8年10月上旬ころ,前記「犯行に至る経緯等(4)」記載のとおり,Bから電話で,前記第1ないし第3同様の各請託を受け,それらの報酬として供与されるものであることを知りながら,同月9日ころ,前記株式会社Z事務所において,A及びBから,Lを介して,現金2000万円及びM銀行支店長O振出に係る金額1000万円の自己宛小切手1通の供与を受け,もって,自己の上記職務に関して賄賂を収受した。 (証拠の標目)省略(法令の適用)省略(量刑の理由)本件は,建設大臣であった被告人が,その在任中に,被告人単独で,あるいは,判示D又はEと共謀の上,その職務に関し,関係する私企業の代表取締役である判示Aらから,繰り返し請託を受けて,約4箇月の間に4回にわたり,合計で6000万円の賄賂(現金5000万円及び銀行振出に係る金額1000万円の自己宛小切手)を収受したという事案である。 このように,建設大臣として,国政及び行政の上で枢要な地位にあった被告人が,関係する業者から繰り返し請託を受け,短期間の間に4回にわたって収賄に及び,6000万円もの多額の賄賂を収受したという事案の内容自体,国政及び行政に対する国民の信頼を著しく損なうものであって,厳しい非難を免れないことはいうまでもない。 また,本件各犯行の経緯等にも,特に酌むほどのものがあるとは認められず,殊に判示第2から第4までの各犯行は,判示のとおり,被告人の側のAらに対する賄賂の要求に発する れないことはいうまでもない。 また,本件各犯行の経緯等にも,特に酌むほどのものがあるとは認められず,殊に判示第2から第4までの各犯行は,判示のとおり,被告人の側のAらに対する賄賂の要求に発するものであったことが明らかであって,この点でも厳しい非難を免れないというべきである。 補足すると,なるほど,Aらは,Cらにすすめられて被告人に接近することを図り,被告人と初めて面識を得た機会に2000万円の現金を贈るなどして被告人の歓心を買おうとした後,かねて建設省に対して希望していた判示各事項の実現を図るべく,被告人に請託をして1000万円の賄賂を供与することを企て,判示第1の事件に至ったという事情はうかがうことができる。しかしながら,被告人は,Aらの上記意図を知しつしつつ,Aらの供与した賄賂を安易に収受して判示第1の犯行に及んだことが明らかであって,この間の経緯には,弁護人が主張するほど被告人のため酌む点があるとはいえない。まして,判示第2から第4までの合計5000万円の受託収賄に係る各犯行は,上記のとおり,被告人の側が賄賂の供与をAらに要求してその収受に及んだものであることが明らかであって,その経緯等にはとりわけ芳しくないところがある。なお,判示第2の犯行で,Aらに賄賂を要求することを最初に発案したのはDであったが,被告人もまたDの提案に賛同し,DとともにAらに賄賂を提供するよう求める趣旨の言動に及んだ上でこれを収受したことは判示のとおりであるし,判示第3及び第4の各犯行についても,Aらに対する賄賂の要求を最初に行ったのはEであったとはいえ,被告人もその事情を知るや,これを了解した上,Eにその受領の指示をするなどしたことも判示のとおりであって,被告人が自ら賄賂を得ることを求めて判示第2から第4までの各犯行に及んだことは明らかである。 こ 告人もその事情を知るや,これを了解した上,Eにその受領の指示をするなどしたことも判示のとおりであって,被告人が自ら賄賂を得ることを求めて判示第2から第4までの各犯行に及んだことは明らかである。 このように,本件の経緯等には被告人のため特に酌むほどの事情があるとはいえず,本件はCとDに仕組まれ,作出された事件であるという趣旨の弁護人の主張も,理由がないというほかはない。 なお,弁護人は,Aらが被告人に対して行った依頼は被告人の職務との関係が希薄であったから,本件で授受された資金には賄賂としての性格が希薄であったとか,その賄賂性に関する被告人の認識も希薄であったなどの趣旨をいうかのように解される主張もしているが,この主張は,判示認定の事実関係には必ずしも沿わない事実を前提とするものであって,採用することができず,この点を理由として被告人のため酌むべき事情があるともいうことはできない。 以上に加え,関係証拠によれば,被告人は,Aらから請託を受けるとその都度これを承諾する旨の返事をした上,建設省の担当幹部等にAらの依頼を伝えてその依頼に沿う措置をとるよう指示する趣旨の働きかけをしたこともあるなどの事実関係も認めることができ,本件が建設省における公務の遂行に実際の影響を与える可能性も決して軽視できなかったことなどをも併せて考慮すると,被告人の刑責には誠に重いものがあるというほかない。 そうすると,被告人が,自己の罪を認めて,本件の事実関係についてもおおむね率直に供述し,公判でも,本件のような事件を起こしたことについて心底苦しんでおり,国民に対して大変申し訳ないと思っている旨,その心情を述べて,反省の意を表していること,判示のとおり,被告人は,長く衆議院議員の職にあり,経済企画庁長官,通商産業大臣,建設大臣等も勤めるなど,要職を歴任し,この間 変申し訳ないと思っている旨,その心情を述べて,反省の意を表していること,判示のとおり,被告人は,長く衆議院議員の職にあり,経済企画庁長官,通商産業大臣,建設大臣等も勤めるなど,要職を歴任し,この間,国政のため多くの貢献をしてきたこと,平成12年6月の第42回衆議院議員総選挙に落選して以来,国政から引退し,また,本件の発覚後,社会的にも厳しい非難を受け,それまで関わっていた会社や団体の役職も退いて,社会的活動から身を引くなど,社会的制裁も受けたこと,前科前歴がないこと,高齢であって,病状にも芳しくないところがあること等,被告人のため考慮すべき種々の事情を最大限に考慮しても,本件で刑の執行猶予を相当とするまでの事情があるとは認めることができない。そして,以上の諸事情を総合考慮して,被告人に対しては主文の刑を量定するのが相当であると判断した。 よって,主文のとおり判決する。 平成14年10月16日東京地方裁判所刑事第11部裁判長裁判官木口信之裁判官幅田勝行裁判官北村治樹

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