令和5年10月31日判決言渡令和5年(ネ)第10068号損害賠償請求控訴事件(原審・東京地方裁判所令和4年(ワ)第19430号)口頭弁論終結日令和5年9月19日判決 控訴人(第1審原告) X同訴訟代理人弁護士太田真也 被控訴人(第1審被告) Y 同訴訟代理人弁護士加藤伸樹同山城在生主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 (略語は原判決の例による。)第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人の原審における請求被控訴人は、控訴人に対し、1000万円及びこれに対する令和4年9月5 日から支払済みまで、年3%の割合による金員を支払え。 【請求の法的根拠】・主請求のうち500万円の部分:投稿動画1-1から同1-4までに係る不正競争防止法2条1項21号、4条に基づく損害賠償請求・主請求のうち残余の500万円の部分:投稿動画2-1から同2-4までに 係る民法709条(名誉毀損、侮辱、脅迫)に基づく損害賠償請求 ・附帯請求:遅延損害金請求(起算点は請求の翌日、利率は民法所定) 2 原審の判断及び控訴の提起原審は、本件各発言が控訴人についての発言であるとは同定できないから不正競争行為及び名誉毀損の成立は認められないとし、侮辱及び脅迫の成立も否定し、控訴人の請求を全部棄却する判決をした。これを不服とする控訴人が下 記のとおり控訴を提起した。 【控訴の趣旨】(1) 原判決を取 毀損の成立は認められないとし、侮辱及び脅迫の成立も否定し、控訴人の請求を全部棄却する判決をした。これを不服とする控訴人が下 記のとおり控訴を提起した。 【控訴の趣旨】(1) 原判決を取り消す。 (2) 上記1と同旨。 第2 事案の概要等 1 前提事実、争点及び争点に対する当事者の主張は、後記2のとおり当審における控訴人の補充的主張を加えるほか、原判決の第2の2~4(2~7頁)に記載するとおりであるから、これを引用する。 2 本件各発言が控訴人についての発言であると同定できるか(争点1-1、同2-1)についての当審における控訴人の補充的主張 (1) 投稿動画2-1及び同2-2について原判決は、投稿動画2-1の被控訴人の発言に接した視聴者が、「A」という名称の特定の人物がいることを理解し、また、投稿動画2-2の被控訴人の発言に接した視聴者に「A」が、特定の者や団体あるいは投稿のチャンネルの名称であると理解する者がいるとしても、一般の視聴者において、そ れらが控訴人を指すと認識すると認めるには足りないとしている。 しかし、被控訴人がYouTubeで動画配信している「B」は82万人を超える登録者を持つ人気番組で、多数の著名な投資家が出演し、出演者には事件を起こしメディアや世間を騒がす者もいるなど、一定の社会的影響力を有する。同番組の登録視聴者が毎日1回は「B」について検索していると 想定した場合、10個しか表示されないサジェストキーワードの自動検索表 示上位に「A」が表示されていることは、「A」といえば控訴人を指すと一般の視聴者が想起することを示すものである。 (2) 投稿動画1-1について前記(1)のとおり、一般の視聴者が「某A」「A」が控訴人を指すと理解するのであ 、「A」といえば控訴人を指すと一般の視聴者が想起することを示すものである。 (2) 投稿動画1-1について前記(1)のとおり、一般の視聴者が「某A」「A」が控訴人を指すと理解するのであるから、投稿動画1-1の「A´のなんちゃらってやつ?」とい う発言からも、一般の視聴者は、控訴人のことを指すと理解する。 (3) 投稿動画1-2から同1-4まで、同2-3及び同2-4についてこれらの投稿動画では被控訴人は「A」との言及はしていないが、既に投稿動画1-1、同2-1及び同2-2が投稿されている状況下で投稿され、話の内容も酷似していることから、一般の投稿者は、投稿動画1-1、同2 -1及び同2-2で言及された「A´のなんちゃら」「某A」「A」と同一人物について言及されていると理解し、検索サイトで「A´の」あるいは「A」で検索することで、控訴人のブログに到達することができる。「社員に危害が及んでいる」という内容も酷似していることから、一般の視聴者は、「とある某ブロガー」との被控訴人の発言から、控訴人を指すものと理解する。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も、控訴人の請求はいずれも棄却すべきものと判断する。その理由は、後記2のとおり当審における控訴人の補充的主張に対する判断を付加するほか、原判決の第3の説示(7頁~)のとおりであるから、これを引用する。 2 当審における控訴人の補充的主張に対する判断 (1) 投稿動画2-1及び同2-2について控訴人は、82万人を超える登録者を持つ人気番組で、一定の社会的影響力を有する「Bチャンネル」の登録視聴者が、毎日1回は「B」について検索していると想定した場合、サジェストキーワードの自動検索表示上位に「A」が表示されていることは、「A」といえば控訴人を指 的影響力を有する「Bチャンネル」の登録視聴者が、毎日1回は「B」について検索していると想定した場合、サジェストキーワードの自動検索表示上位に「A」が表示されていることは、「A」といえば控訴人を指すと一般の視聴 者が想起することを示す旨主張する。 しかし、そもそも、「B」と「A」を結びつけるサジェストキーワードの表示がされるからといって、そのことから「A」が控訴人を指すものと視聴者が理解すると解すべき根拠は不明というほかない。 これを措くとしても、サジェストキーワードは、ユーザーの検索履歴や検索期間によっても変動するものであって、控訴人の主張は、一般視聴者の認 識を合理的に推認させるものとはいえない。すなわち、被控訴人との紛争を背景に、被控訴人の「Bチャンネル」の投稿動画における「A」との発言に着目し、何回も「A」について検索していることが容易に推認できる控訴人又は控訴人代理人が、特定の時点において、インターネット上の検索サイトで検索した結果、「A´の」と検索すると6番目に「AB」とのサジェス トキーワードが表示され(甲5)、「A」と検索すると2番目に「AB」とのサジェストキーワードが表示された(甲7)からといって、一般の視聴者がインターネット上で検索した場合にも、同様のサジェストキーワードが同程度の頻度で表示されることを証するものとはいえない。現に、被控訴人代理人が、令和5年9月8日に、甲5や甲7と同じインターネット上の検索 サイトで「A´の」と入力しても、サジェストキーワードに「AB」との表示はされていない(乙15の1、2)。 したがって、控訴人の上記補充的主張は採用できない。 (2) 投稿動画1-1から同1-4まで、同2-3及び同2-4についてこの点に関する控訴人の主張は、いずれ れていない(乙15の1、2)。 したがって、控訴人の上記補充的主張は採用できない。 (2) 投稿動画1-1から同1-4まで、同2-3及び同2-4についてこの点に関する控訴人の主張は、いずれも一般の視聴者が「某A」又は 「A」という表現をもって控訴人のことを指すと理解することを前提とするものであるところ、前記(1)のとおり、その前提において失当である。 第4 結論以上によれば、控訴人の請求はいずれも理由がないから棄却すべきところ、これと同旨の原判決は相当である。よって、本件控訴は理由がないからこれを 棄却することとし、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官宮坂昌利 裁判官本吉弘行 裁判官岩井直幸
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