主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 第1事件被告は、別紙原告目録1の原告らに対し、それぞれ10万円及びこれに対する平成29年3月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 第2事件被告は、別紙原告目録2の原告らに対し、それぞれ10万円及びこれに対す る平成29年6月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 第3事件被告は、別紙原告目録3の原告らに対し、それぞれ10万円及びこれに対する令和元年12月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は、昭和20年8月6日に広島市に投下された原子爆弾(以下「原爆」という。)により被爆した「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」(以下「被爆者援護法」という。)1条所定の「被爆者」の子(親の被爆時に胎児であった者を除く。以下「被爆二世」という。)である原告らが、原告らは原爆による 放射線被害の遺伝的影響と考えられる疾病に罹患するなど、親の受けた放射線被害による影響が否定できないことによる健康不安に苛まれており、被爆者援護法の被爆者等と同等の援護を受ける権利が憲法13条により保障され、また、被爆者等との差別的取扱いをすることは憲法14条1項に違反することから、被告には、被爆者援護法が制定された平成6年までには、下記⑴から⑶のとお り、被爆二世を援護の対象に含める法律の制定や改正を行う義務があるにもか かわらずこれを怠った旨主張して、被告に対し、国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づき、慰謝料各10万円及びこれに対する訴状送達の日(第 める法律の制定や改正を行う義務があるにもか かわらずこれを怠った旨主張して、被告に対し、国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づき、慰謝料各10万円及びこれに対する訴状送達の日(第1事件につき平成29年3月15日、第2事件につき同年6月26日、第3事件につき令和元年12月23日)から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を 求める事案である。 ⑴ 被告は、被爆者援護法1条に定める「被爆者」(以下、単に「被爆者」と表記する場合には、被爆者援護法1条に定める「被爆者」又は原子爆弾被爆者の医療等に関する法律(以下「原爆医療法」という。)2条に定める「被爆者」を指す。)に被爆二世を加える立法を行う義務を負う。 ⑵ 被告が上記⑴の立法義務を負わないとしても、被告は、被爆二世を被爆者援護法7条に定める健康診断の対象者とし、その結果、同法27条に定める健康管理手当の支給対象とされる疾病に該当すると診断された場合には、申請により同法2条の被爆者健康手帳を交付し、同法に基づく援護措置を採る立法を行う義務を負う。 ⑶ 被告が上記⑴、⑵の各立法義務を負わないとしても、被告は、被爆二世にも被爆者援護法上の健康診断を実施し、その結果原爆の傷害作用に起因する疾病として定められた疾病に罹患していると認定を受けた場合には、同法上の被爆者として同法2条の被爆者健康手帳を交付し、同法に基づく援護措置を採る立法を行う義務を負う(以上の⑴ないし⑶の各立法義務を併せて「本 件立法義務」という。)。 2 関係法令の定め別紙「関係法令の定め」記載のとおり(同別紙で定義した略語は本文においても用いる。)。 3 前提事実(当事者間に争いがないか、後掲の証拠及び弁論の 立法義務」という。)。 2 関係法令の定め別紙「関係法令の定め」記載のとおり(同別紙で定義した略語は本文においても用いる。)。 3 前提事実(当事者間に争いがないか、後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容 易に認められる事実) 原爆投下等昭和20年8月6日午前8時15分頃、広島市上空に原爆が投下され、爆発した。原爆は、爆発の直前に瞬時に放射線を放出し(初期放射線)、地上に到達した初期放射線の中性子は、地面や建造物を構成する物質中の特定の元素の原子核と反応を起こして放射線を生じさせ(誘導放射線)、地上に降下し た放射性微粒子からも放射線が発生した(この放射線と誘導放射線を併せて残留放射線という。)。 ⑵ 原告らについて原告らは、いずれも、その父若しくは母又は父母が被爆者援護法1条所定の「被爆者」に当たる者である(争いがない)。 ⑶ 口頭弁論終結時における国等の被爆者等に対する援護の主な内容ア被爆者に対する援護被爆者援護法は、被爆者に被爆者健康手帳を交付し(同法2条)、被爆者健康手帳の交付を受けた者に対し、毎年健康診断を実施し(同法7条)、原爆の傷害作用に起因して負傷し、又は疾病にかかり、現に医療を要する状 態にあり、あらかじめ厚生労働大臣の認定を受けた被爆者に対し、必要な医療の給付を行い(同法10条、11条)、当該給付が受けられない場合にも一定の場合に一般疾病医療費を支給し(同法18条)、一定の疾病にかかった場合等に健康管理手当や介護手当等の手当を支給し(同法24条から31条)、被爆者が死亡した場合には、葬祭料等を支給する旨規定する(同 法32条)。 イみなし被爆者に対する援護みなし被爆者は、被爆者援護法7条の適用について被 法24条から31条)、被爆者が死亡した場合には、葬祭料等を支給する旨規定する(同 法32条)。 イみなし被爆者に対する援護みなし被爆者は、被爆者援護法7条の適用について被爆者とみなされ(同法制定附則17条)、被爆者援護法7条の健康診断を受けることができる。 また、みなし被爆者のうち、第一種健康診断受診証の交付を受けた者であっ て、健康診断の結果、造血機能障害、肝臓機能障害、細胞増殖機能障害、 内分泌腺機能障害、脳血管障害、循環器機能障害、腎臓機能障害、水晶体混濁による視機能障害、呼吸器機能障害、運動器機能障害の障害があると診断された者については、通達により、3号被爆者として、被爆者健康手帳の交付を受けることができる。(甲A9、乙40、50)ウ被爆二世 被告は、昭和54年以降、各都道府県、広島市及び長崎市に委託し、被爆二世に対する健康診断を実施しており(甲C7、8、10)、地方自治体の中には、被爆二世に対し、がん検診を含む健康診断や医療措置を実施しているところもある(甲C11から20)。 4 争点及びこれに関する当事者の主張 本件の主な争点は、本件立法義務の有無及び国会がこれを履行しないこと(以下「本件立法不作為」という。)が国賠法1条1項の適用上違法であるかであり、これに関する当事者の主張は以下のとおりである。 (原告らの主張)⑴ 本件立法義務の存在 昭和32年以降、多数の研究を通じ、被爆二世が原爆による放射線の遺伝的影響を受ける可能性があることが繰り返し指摘され、昭和50年には厚生省の政府委員が放射能の遺伝的影響が存在すると明言し、平成元年には被爆二世を被爆者とする法案が参議院において賛成多数で可決されていた。このような経過からすれば、被爆 返し指摘され、昭和50年には厚生省の政府委員が放射能の遺伝的影響が存在すると明言し、平成元年には被爆二世を被爆者とする法案が参議院において賛成多数で可決されていた。このような経過からすれば、被爆二世が原爆の放射線の影響を受ける可能性があ ることは、どれだけ遅くとも被爆者援護法が制定された平成6年には明らかになっていたから、被告は、遅くとも平成6年には、本件立法義務を負っていた。ところが、被告は、単年度の予算措置として被爆二世に対する健康診断を実施するのみで、何らの立法措置も講じていない(本件立法不作為)。 ⑵ 本件立法不作為の国賠法上の違法性 ア被爆者援護法の趣旨 被爆者援護法は、1号被爆者及び2号被爆者のみならず、「原子爆弾が投下された際又はその後において、身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」を3号被爆者として定め(同法1条3号)、原爆の放射線による被害について科学的知見に基づく具体的な根拠を前提とせずに援護の対象としていること、原爆の投下の結果として生じた放射線 に起因する健康被害は、健康と思われる被爆者の中からも突然発病し、死亡する者が生ずるなど、他の戦争被害とは異なる特殊の被害であり(被爆者援護法前文参照)、健康上問題がないと思われる者であっても、その影響を受けている可能性のある者については健康診断を受けさせて健康状態の把握をすることが被爆者援護法の目的の達成に必要であること、被爆者援 護法の前身である原爆医療法について判例(最高裁昭和53年3月30日第一小法廷判決・民集32巻2号435頁。以下「昭和53年判決」という。)が判示するとおり、被爆者援護法の根底には国家補償的配慮があり、被爆者援護は国家補償の見地に立って行われるべきであることなどからすれば、 決・民集32巻2号435頁。以下「昭和53年判決」という。)が判示するとおり、被爆者援護法の根底には国家補償的配慮があり、被爆者援護は国家補償の見地に立って行われるべきであることなどからすれば、被爆者援護法が、原爆による放射線の影響を受ける可能性が否定で きない者を援護の対象とする趣旨であることは明らかである。 被告は、原爆被爆者対策基本問題懇談会(以下「基本問題懇談会」という。)による報告書を根拠として、被爆者援護法が、被爆者の範囲については科学的・合理的な根拠が認められる範囲に限るとの考え方に基づいて制定されたものであると主張するが、基本問題懇談会は、被爆者援護法の前 身である原爆医療法につき、昭和53年判決においてその根底に国家補償的配慮があることが明示されたにもかかわらず、同法を国家補償と位置付けることにより援護の範囲が拡大することを恐れた当時の内閣の意向を受け、被爆者援護政策の国家補償的側面をできるだけ希薄化する方向で議論して作成されたものであるから、これを根拠とする被告の上記解釈は恣意 的な被告独自の見解にすぎない。 イ被爆二世に対する原爆放射線の遺伝的影響が否定できないこと被爆二世は、身体の全ての細胞のDNAの半分又は全部が、原爆による放射線に曝された親のDNAから複製されてこれを受け継いでいる。そして、被爆者である親の生殖細胞のDNAは、原爆による放射線の被爆によって誘発された変異や遺伝的不安定性を有している可能性があるから、被爆 二世は身体に原爆の放射線の影響を受けている可能性がある。 このことは、ヒトと同じ哺乳類等を用いた動物実験において放射線被曝による遺伝的影響が科学的に証明されており、ヒトにも遺伝的影響が生じることが推測されること、ヒトについても放射線被 性がある。 このことは、ヒトと同じ哺乳類等を用いた動物実験において放射線被曝による遺伝的影響が科学的に証明されており、ヒトにも遺伝的影響が生じることが推測されること、ヒトについても放射線被曝の遺伝的影響を示唆する調査研究結果が発表されていることなどの現在の科学的知見に照らし ても明らかである。 ウ本件立法不作為が憲法13条に違反すること被爆二世は、原爆の放射線被曝の影響により健康を病んで苦しむ周囲の被爆者や、同じ被爆二世が白血病等の疾病を発症する姿を見続け、自らの将来における健康に不安を抱き、現在患っている疾病等と親の放射線被曝 の影響を懸念し、自分の子や孫への放射線被曝の影響が発現する不安などに絶え間なく苛まれている。このような被爆二世が抱く不安は、現在の科学的知見において被爆の遺伝的影響が否定されていないことにより裏付けられ、一般的な健康不安とは質的に異なるものである。また、被爆二世が抱く上記不安が国の戦争遂行の結果であることにも鑑みれば、被爆二世が上 記不安に対し国に措置を求めること、すなわち、援護を求めることは、個人の人格的な生存に不可欠な基本的人権に基づくものとして憲法13条により保障されている。 被爆二世に対する被爆者援護法に基づく援護が実施されていないことにより、被爆二世の生命・健康は脅かされているから、本件立法不作為は憲 法13条に違反する。 エ被爆二世と被爆者等との差別的取扱いが憲法14条1項に違反すること 被爆者と被爆二世との間の不合理な差別被告は、被爆者援護法に基づき、被爆者に健康診断を実施し、原爆の放射線によるとみられる疾病の治療費を全額負担し、それ以外の病気の治療費の自己負担分を負担するなど医療面での援護を実施し、各種手当 被告は、被爆者援護法に基づき、被爆者に健康診断を実施し、原爆の放射線によるとみられる疾病の治療費を全額負担し、それ以外の病気の治療費の自己負担分を負担するなど医療面での援護を実施し、各種手当 も支給する一方で、被爆二世に対しては、単年度の予算措置によるがん検診を含まない調査事業としての健康診断を実施するにとどまる。前記アのとおり、被爆者援護法は、原爆による放射線の影響を受ける可能性が否定できない者を援護の対象とする趣旨であるところ、前記イのとおり、被爆二世は原爆による放射線の遺伝的影響を受けることが否定でき ないという意味で被爆者と何ら変わるところはないから、被爆者援護法を改正せずに被爆者と被爆二世の取扱いに差異を設けることは不合理な差別であり、憲法14条1項に違反する。 みなし被爆者と被爆二世との間の不合理な差別被告は、被爆者援護法の被爆者に該当しない者であっても、原爆投下 時に被爆者援護法1条1号に規定する地域に隣接する区域内にあった者又はその者の胎児であった者について、当分の間、被爆者とみなし(みなし被爆者、被爆者援護法制定附則17条)、同法7条所定の健康診断の対象とし、第一種健康診断受診者証を交付し、健康診断の結果、同法27条に定める健康管理手当の支給対象とされる疾病に該当すると診断さ れた場合には、同条2条に定める被爆者健康手帳への切り替えを申請することで援護を与えている。これに対し、被爆二世に対しては、単年度の予算措置によるがん検診を含まない調査事業としての健康診断を実施するにとどまる。 みなし被爆者の範囲を画する健康診断特例区域が行政区画により定め られ、その範囲が放射線による健康への影響についての科学的根拠の議 論のないまま拡大されてきた るにとどまる。 みなし被爆者の範囲を画する健康診断特例区域が行政区画により定め られ、その範囲が放射線による健康への影響についての科学的根拠の議 論のないまま拡大されてきた経緯等に照らせば、みなし被爆者について、放射線による健康被害が科学的に根拠づけられているかを問わず、その可能性があることにより援護の対象とされていることは明らかである。 そして、前記イのとおり、被爆二世は原爆による放射線の遺伝的影響を受ける可能性が否定できないという意味でみなし被爆者と何ら変わると ころはないから、被爆者援護法を改正せずにみなし被爆者と被爆二世の取扱いに差異を設けることは不合理な差別であり、憲法14条1項に違反する。 オ本件立法不作為が国賠法1 条1 項の適用上違法であること以上のとおり、本件立法不作為により、原告らの憲法13条により保障 される被告に援護を求める権利が侵害され、また、憲法14条1項に違反する状態となっていることは明白である。また、被爆二世に対し援護を実施するには、本件立法義務を履行し、立法又は被爆者援護法の改正をすることが必要不可欠であって、そのことは明白である。加えて、被爆者援護法の制定に先立って、被爆二世に対する原爆放射線の遺伝的影響が繰り返し 指摘されて被爆二世に対する援護を実施することが議論され、二度にわたり被爆二世に援護を与える内容の法案が参議院で可決されたこと、被爆者援護法の制定時には、被爆二世の置かれている立場を理解して一層充実を図る旨の付帯決議がされたことなどからすれば、国会は正当な理由なく長期にわたって本件立法義務を怠っているといえる。 以上によれば、本件立法不作為は国賠法1条1項の適用上違法である。 ⑶ 被告の国賠法上の責任上 ば、国会は正当な理由なく長期にわたって本件立法義務を怠っているといえる。 以上によれば、本件立法不作為は国賠法1条1項の適用上違法である。 ⑶ 被告の国賠法上の責任上記のとおり、本件立法不作為は違法であり、かつ少なくとも過失が認められる。本件立法不作為により原告らが被った精神的苦痛を金銭評価すると、原告ら一人につき10万円を下らない。 (被告の主張) ⑴ 判断枠組国会議員の立法行為又は立法不作為は、その内容が憲法の規定に違反するものであるとしても、直ちに国賠法1条1項の適用を受けるものではなく、法律の規定が憲法上保障され又は保護されている権利利益を合理的な理由なく制約するものとして憲法の規定に違反するものであることが明白であるに もかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってその改廃等の立法措置を怠る場合など、例外的な場合に、国会議員の立法過程における行動が職務上の法的義務に違反したものとして、国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けることがあるにとどまる。 しかるところ、憲法には被爆二世を援護の対象とする立法を積極的に命ず る明文の規定は存しない上、戦争被害は、戦時という国の存亡にかかわる非常事態において、多かれ少なかれ、国民が等しく受忍しなければならなかった性質のものである。したがって、このような戦争犠牲ないし戦争損害に対する措置は、憲法の全く予想しないところであり、これらに対しては単に政策的見地からの配慮が考えられるにすぎず、適宜の立法措置を講じるか否か の判断は、国会の裁量的権限に委ねられるものと解すべきである。この点、「原子爆弾の投下の結果として生じた放射能に起因する健康被害が他の戦争被害とは異なる特殊の被害である」(被爆者援護法前文参照)ものの、その 、国会の裁量的権限に委ねられるものと解すべきである。この点、「原子爆弾の投下の結果として生じた放射能に起因する健康被害が他の戦争被害とは異なる特殊の被害である」(被爆者援護法前文参照)ものの、その対策は、国民の租税負担によって賄われるものであって、国の財政事情を無視することができず、他の戦争被害者に対する対策に比して著しい不均衡を生 じさせないようにしながら、公正妥当な範囲による措置を講ずべきものであるから、立法措置を講じるか否かの判断が国会の裁量的権限に委ねられることに変わりはない。 ⑵ 本件立法不作為が憲法13条に違反しないこと戦争犠牲ないし戦争損害に対する措置は憲法が全く予想しないところであ り、政策的見地からの配慮が考えられるにすぎないから、憲法13条は戦争 犠牲ないし戦争損害に対する措置を要求する権利を国民に保障するものではない。また、憲法13条は、個人主義を基調とする自由権的基本権ないし基本的人権を一般的、抽象的、包括的に宣言するものであって、同条から何らかの請求権が導かれる余地はない。 ⑶ 本件立法不作為が憲法14条1項に違反しないこと 憲法14条1項は、被告に対して実質的平等を実現するように要求する権利までを含むものではないから、憲法14条1項から前記第2の1⑴ないし⑶の内容の立法を求める請求権は導かれない。 この点を措くとしても、被爆二世について、被爆者援護法1条3号所定の被爆者やみなし被爆者と同等の援護を行わないことは、以下のとおり、不合 理な差別的取扱いには当たらない。 ア被爆者と被爆二世の取扱いの差異被爆者援護法1条3号の被爆者は、被爆態様や当該被爆が健康被害に影響を及ぼし得る機序、同様の被爆態様の下にあった者の健康被害の有無及び内容等を個別具体的に検討し ア被爆者と被爆二世の取扱いの差異被爆者援護法1条3号の被爆者は、被爆態様や当該被爆が健康被害に影響を及ぼし得る機序、同様の被爆態様の下にあった者の健康被害の有無及び内容等を個別具体的に検討した結果として、「身体に原子爆弾の放射能の 影響を受けるような事情の下にあった者」と認められた者である。 これに対し、被爆二世は、原爆が投下された当時は実在しておらず、直接被爆した可能性はない。被爆二世は、親が原爆の放射線に被曝したことによってその健康に影響が生ずるか否かが問題となるところ、親の放射線被曝により子供の健康に影響が生ずることは、現在に至るまで確認されて おらず、最新の科学研究においても、親の放射線被曝による次世代への遺伝性影響が生じるという考え方は支持されていない。 上記の被爆者と被爆二世との間に存する事実関係上の差異に照らせば、国民の租税負担という限られた財源の中で行われる法律に基づく援護施策として、両者で異なる取扱いをすることが、何ら合理的理由のない不当な 差別的取扱いであるとは到底いえない。原告らの主張は、被爆者援護法1 条3号の被爆者と被爆二世の上記の差異を考慮することなく、「原爆の放射線による身体への影響の可能性」という抽象的な概念により両者が同等であると主張するものにとどまり、具体的な根拠に欠ける。 イみなし被爆者と被爆二世の取扱いの差異みなし被爆者は、当該対象者が所在した区域を被爆地域とするほどの原 爆の放射線による健康被害を生ずる可能性を科学的知見に照らして肯定することができなかったため、被爆者援護法上の被爆者とはされていないものの、爆心地が放射能で汚染されたその当時に被爆地域に隣接する区域に実際に存在していた者又はその胎児であり、直接被爆した可能性を否定することができ ったため、被爆者援護法上の被爆者とはされていないものの、爆心地が放射能で汚染されたその当時に被爆地域に隣接する区域に実際に存在していた者又はその胎児であり、直接被爆した可能性を否定することができないため、被爆地域との隣接性や地理関係、地方公共団体等 からの拡大要望や地域住民の健康状況の訴え、あるいは、被爆地域とされている他の地域との爆心地からの距離関係等、諸般の事情を踏まえ、みなし被爆者として健康診断に限ってその対象とした者である。 これに対し、被爆二世は、前記のとおり、原爆が投下された当時は実在しておらず、直接被爆した可能性がない上、最新の科学研究においても、 親の放射線被曝による次世代への遺伝性影響が生じるという考え方は支持されていない。 上記のみなし被爆者と被爆二世との間に存する事実関係上の差異に照らせば、国民の租税負担という限られた財源の中で行われる法律に基づく援護施策として、原爆投下当時、胎児としても実在しておらず直接被爆の可 能性がない者よりも、原爆投下当時、被爆地域に隣接する区域に実際に存在し、又は胎児として存在し、直接被爆した可能性が否定できない者について、より手厚い援護をすることが、何ら合理的理由のない不当な差別的取扱いであるとはいえない。 ⑷ 親の放射線被曝により被爆二世に健康影響が生じることが高度の蓋然性を もって証明されていないこと 原告らは、原爆放射線の影響が及ぶ可能性がある者について援護が及ぶべきであることを前提に、被爆二世が原爆放射線の遺伝的影響を受ける可能性があることが科学的に立証されていると主張するが、被爆者援護法は、原爆医療法における被爆者の範囲に関する基本問題懇談会において示された、被爆者の範囲については科学的・合理的な根拠が認められる範囲に限るとの考 学的に立証されていると主張するが、被爆者援護法は、原爆医療法における被爆者の範囲に関する基本問題懇談会において示された、被爆者の範囲については科学的・合理的な根拠が認められる範囲に限るとの考 え方に基づいて制定されたものであり、放射線の影響を否定することができない者までを被爆者に含める原告らの主張は、被爆者援護法の被爆者の意義につき誤った解釈を前提とするものである。 そして、放射線被曝による遺伝的影響については、公益財団法人放射線影響研究所(以下「放影研」という。)が昭和22年から様々な調査を実施して いるが、現在に至るまで、いずれの調査研究においても、親が被曝した放射線によってその子供に異常が増えるとの結果は得られていない。また、発表された時点における世界最高の科学的知見である最新の国連放射線影響科学委員会(以下「UNSCEAR」という。)の報告書においても、放射線被曝による人間における遺伝的影響として明白に確認されたものはないというの が一般的な結論であるとの見解が示されている。このように、現時点で、親の放射線被曝による被爆二世の健康に影響が生ずることを示す科学的知見は存在しないから、親の放射線被曝により被爆二世に健康影響が生じることは高度の蓋然性をもって証明されていない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に加え、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ⑴ 放射線に関する知見ア放射線に関する一般的知見 放射線は、電磁波又は粒子の流れであり、物質への作用の仕方によって 電離放射線、非電離放射線に分類される。電離放射線は、γ線等の電磁波と、α線、β線、中性子線等の粒子線に分類される。粒子線のうち、電荷を持った粒子線を荷電粒子線、電荷 への作用の仕方によって 電離放射線、非電離放射線に分類される。電離放射線は、γ線等の電磁波と、α線、β線、中性子線等の粒子線に分類される。粒子線のうち、電荷を持った粒子線を荷電粒子線、電荷を持たない粒子線を非荷電粒子線という。α線及びβ線は荷電粒子線、中性子線は非荷電粒子線である。 電離放射線は、直接又は間接に物質を電離することができるエネルギー を持つ電磁波又は粒子の流れをいう。全ての物質は原子から成り、原子は中性子及び正の電荷を持つ陽子から成る原子核とその周辺を飛び回る負の電荷を持つ電子から成るところ、電離とは、原子が、電子と正の電荷を持つイオンとに分離することである。また、電離放射線は、物質を電離させるほか、励起(原子や分子を高いエネルギーにして活性化すること)させ ることができる。 α線は、電離を起こさせるエネルギーが強い一方で、物質を透過する力は弱く、紙一枚で止めることができ、β線は、厚さ1㎝のプラスチックの板により止めることができる。また、中性子線は、物質の原子核に当たるとその物質を放射性物質に変えてしまう性質(放射化)がある。 原子・分子に放射線のエネルギーが与えられると、原子・分子は電離・励起を受け、放射線はエネルギーを失う。電離・励起した原子・分子は科学的に活性を帯び、化学反応が誘発される。物質が生体の場合には、化学反応に続いて複雑な生化学反応が生じる。(甲B46、乙25)放射線の強さは、線源からの距離の二乗に反比例して減少する(乙74)。 イ原爆投下により生じた放射線原爆が爆発すると、その直後にγ線及び中性子線が放出され(このような放射線を「初期放射線」という。)、中性子線が空中や地上の物質に当たり、その原子が放射化して放射性物 原爆投下により生じた放射線原爆が爆発すると、その直後にγ線及び中性子線が放出され(このような放射線を「初期放射線」という。)、中性子線が空中や地上の物質に当たり、その原子が放射化して放射性物質になることにより、当該物質からα線、β線、γ線が放出され(このような放射線を「誘導放射線」という。)、 地上に降下した放射性微粒子からも放射線が発生する(この放射線と誘導 放射線を併せ、「残留放射線」という。)。 ウ原爆医療法制定当時の知見昭和26年に刊行された原子爆弾災害調査報告書(日本学術会議原子爆弾災害調査報告書刊行委員編)には、原爆の災害威力は、熱及び光の威力、機械的威力、放射能威力に区分でき、これらが個々に作用するのでは なく、同時に合わさって障害作用を現すものであると記載がある。また、上記の各威力とその障害作用について、下記ないしの記載がある。(乙51)熱及び光の威力とその障害作用爆発の瞬間に発生した強烈な熱波及び光波の作用によって、爆心直下 から半径4㎞迄の地域内に露出部を主とする熱傷が多数発生し、半径2㎞以遠の地域では障害は比較的表在性でかつ軽度だったが、半径2㎞以内の地域内では多数の重篤な熱傷者が発生し、特に爆心直下から1㎞以内の中心地域ではその障害は甚だ強烈で、即死又は瀕死の重熱傷を蒙り、数日のうちに死亡するに至った者がかなりの数に達した。 原爆の熱等の威力は、原因の熱度が極めて高い一方で作用時間が甚だ短いという特徴があり、中心地区ではそのような高熱により直接内蔵が損傷したと考えられる。一方、爆心直下から3㎞以上隔たった地点で発生した原子爆弾熱傷としての射熱傷は一次的には皮膚表層だけの損傷として取り扱ってよいと思われる。 機械的威力とそ 接内蔵が損傷したと考えられる。一方、爆心直下から3㎞以上隔たった地点で発生した原子爆弾熱傷としての射熱傷は一次的には皮膚表層だけの損傷として取り扱ってよいと思われる。 機械的威力とその障害作用原爆の爆発に際して発生する爆風はその威力が強烈であり、爆心直下における圧力の強度は広島では1㎡当たり4.5から6.7トン程度であった。人体に対する爆風の影響はあまり明らかにされておらず、直接の爆風で何メートルも飛ばされ、そのために内臓を損傷した者もあるが、 救護機関の記録からは、いわゆる爆風傷は記載されていなかった。 その他、家屋の倒壊等による圧死又は圧迫による内蔵等の重篤損傷等、家屋の破壊飛散等により様々な機械的損害が発生した。 放射能威力とその障害作用原爆の爆発と同時に発散した放射能威力のうち、人体に障害を与えたものとしては、レントゲン線、γ線、中性子が主たるものである。 爆心直下から半径1㎞の地域内では想像に絶する量の放射能が到達し、ことに、戸外で作業中の人々は全ての放射能威力が障害を与え、コンクリート建物内の隠された場所又は堅固の防空壕内等にあった者はγ線と中性子の作用を受けたが、十分に遮蔽された人々は障害の程度が比較的軽かった。放射能威力の作用は概ね半径4㎞迄の地域に及んでおり、戸 外にいた者の方が障害を受けた程度は強い。 放射能威力は、人体のうち、まず血液、次いで造血臓としての骨髄等が破壊し、続いて肝臓等の内臓を侵し、それらの機能が障害を受ける。 これらの障害が高度に起こると大部分の者は数日の間に死亡するが一部の者は2週間までの間に死亡し、中度の障害を受けると2週間から6週 間の間に重篤な症状を発生して多くの死者を出し、軽度の障害で済んだものは死亡を免れるが、数か月にわ は数日の間に死亡するが一部の者は2週間までの間に死亡し、中度の障害を受けると2週間から6週 間の間に重篤な症状を発生して多くの死者を出し、軽度の障害で済んだものは死亡を免れるが、数か月にわたって色々な障害が起こる。調査によれば、大体爆心直下から半径1㎞の地域内にいた者は高度の障害を受け、1㎞から2㎞の地域内にあった者は中度の障害を受け、2㎞から4㎞の地域内の者が軽度の障害を受けたものと思われる。 高度の障害を受けた者の多くは数日の内に死亡し、被爆当時戸外にあって直射を受けた者は、熱及び光の威力、機械的威力の作用も被って重篤な症状を呈し、高熱と共に極度の全身不快脱力感、嘔吐、吐血、喀血、下血、血尿等の症状を呈した。爆心直下から500mまでの地域内にいた者は、被爆時屋内にいた者も、被爆から10日までの間に吐血、 下血等の重篤な出血症状等を呈し、数日の経過で死亡する者が甚だ多 かった。爆心直下から500mから1㎞の地域内にいた者で屋内や戸外の影にいたため重篤な機械的損傷や熱傷を受けなかった者の多くは、2週間経過後に頭髪が抜け始めて出血症状等を呈し、発病者の大多数は一週間前後の経過で死亡する。 爆心直下から半径1㎞から2㎞の地域にいた者は、放射能威力による 中度の障害を受け、ことに戸外にいた者は熱傷と共に比較的強い障害を蒙った。家屋内等にいた者で重い外傷や熱傷を受けなかった者のうち、約半数の者が、被爆後3から6週間の間に脱毛、発熱及び出血等の症状を呈し、その内一部の者は重篤な容態を示して死亡した。 原爆放射能傷の中には、上記のような第一次障害ともいうべきものの 他に、中性子によって誘導された各元素からの放射能と原子核分裂の破片が落下した際にそれら破片から飛散した放射能に由来する「第二次障害」があり 中には、上記のような第一次障害ともいうべきものの 他に、中性子によって誘導された各元素からの放射能と原子核分裂の破片が落下した際にそれら破片から飛散した放射能に由来する「第二次障害」があり、第二次障害は第一次障害と比べると比較もできない程度にわずかなものであるが、一応は考えてみなければならない。 ⑵ 被爆者援護法の制定経過 ア原爆医療法の制定等昭和29年3月にアメリカ合衆国が実施した水爆実験により日本の漁船である第五福竜丸が被爆し、原水爆禁止の世論と運動が高まったことを契機として、同年4月、広島市原爆障害者治療対策協議会(原対協)が「原爆症患者の治療費全額国庫負担」などを内容とする陳情をし、同 年5月、広島市議会及び広島県議会で相次いで被爆者の治療費を全額国庫負担とすることを内容とする決議が採択されるなど、広島及び長崎における被爆者に対する援護を求める運動も加速した。これらを受け、昭和29年には予備費から原爆障害者調査研究事業委託費が支出され、昭和30年には原爆障害調査研究委託費が予算計上された。 また、被爆者援護の法制化を求める運動も加速し、昭和31年11月 5日付けで、広島市長、長崎市長、両市市議会議長の連名により、「原爆障害者援護法制定に関する陳情書」が作成され、昭和32年1月12日には、広島、長崎両県選出国会議員、両県知事、両市市長、両市市議会議長の連名により「原爆障害者の援護に関する陳情書」が政府に提出されるなどした。(乙1) その後、「原子爆弾被爆者の医療等に関する法律案」(原爆医療法)が国会に提出された。 国務大臣は、昭和32年2月22日に開催された衆議院社会労働委員会で、法案の提出理由として、「…原子爆弾による被爆者は、十余年を経過し の医療等に関する法律案」(原爆医療法)が国会に提出された。 国務大臣は、昭和32年2月22日に開催された衆議院社会労働委員会で、法案の提出理由として、「…原子爆弾による被爆者は、十余年を経過した今日、なお多数の要医療者を数えるほか、一見健康と見える人に おきましても突然発病し死亡する等、これら被爆者の健康状態は、今日においてもなお医師の綿密な観察指導を必要とする現状であります。しかも、これが、当時予測もできなかった原子爆弾に基くものであることを考えますとき、国としてもこれらの被爆者に対し適切な健康診断及び指導を行い、また、不幸発病されました方々に対しましては、国におい て医療を行い、その健康の保持向上を図ることが、緊急必要事であると考えるのであります。」などと説明した。(乙4)また、同年3月25日に開催された衆議院社会労働委員会で、政府委員は、原爆医療法が適用される被爆者について、「…第一は、投下されたそのときに、広島市、長崎市または政令で定める区域―これは爆心地か ら大体5キロくらいの区域を考えておるわけでございます。それから第二は、その爆弾が投下されたときには、この広島市、長崎市にはおりませんでしたけれども、今、二週間と申し上げましたが、二週間の期間の間に入ってきて、そうして遺骨を掘り出したとか、あるいは見舞にあっちこっち探して回ったとかいうような人を考えております。その際には、 爆心地から二キロくらいというふうに考えております。これも専門家の 意見を聞いて、大体そういうふうに考えておるわけでございます。第三は、その一にも二にも入りませんが、たとえば投下されたときに、爆心地から5キロ以上離れた海上で、やはり爆射を受けたというような人も、あとでいわゆる原子病を起してきております。そういう人を救 す。第三は、その一にも二にも入りませんが、たとえば投下されたときに、爆心地から5キロ以上離れた海上で、やはり爆射を受けたというような人も、あとでいわゆる原子病を起してきております。そういう人を救わなければならないということ、それからずっと離れたところで死体の処理に 当った看護婦あるいは作業員が、その後においていろいろ仕事をして、つまり二の方は二キロ以内でございますが、それよりもっと離れたところで死体の処理をして、原子病を起こしてきたというような人がありますので、それを救うという意味で三を入れたわけでございます。それから第四は胎児でございます。」などと説明し、被爆者であることの立証方 法に関し、「科学的に証明しろというふうなことになりますと、これこそよけいむずかしくなるのではないかというふうに考えるわけでございます。ただいまほとんど不可能に近いのじゃないかというお話でございましたが、私もごもっともだと存じます。…科学的にやってはかえって区別できないという建前で、先ほどのような証明方法をとったわけでござ います。」などと説明した。(乙5) 上記法案は、昭和32年3月26日、衆議院本会議で可決され、同月31日、参議院本会議で可決されて原爆医療法が成立した。(乙1)原爆医療法における被爆者の定義規定は別紙関係法令の定め3⑴のとおりであり(同法2条)、被爆者の申請により被爆者健康手帳を交付し(同 法3条)、被爆者健康手帳の交付を受けた被爆者に対し、健康診断を受けさせ(同法4条)、原爆の傷害作用に起因して負傷し、又は疾病にかかり、現に医療を要する状態にある被爆者に対して医療の給付を行うことが定められた(同法8条1項)(乙6)。 昭和32年5月14日、「原子爆弾被爆者の医療等に関する法律の施 傷し、又は疾病にかかり、現に医療を要する状態にある被爆者に対して医療の給付を行うことが定められた(同法8条1項)(乙6)。 昭和32年5月14日、「原子爆弾被爆者の医療等に関する法律の施行 について」と題する通達(発衛第267号厚生事務次官通達)が発出さ れた。同通達では、原爆医療法が「…原子爆弾による被爆者には今日においてなお多数の要医療者を数え、また、一方、健康と思われる被爆者の中からも突然発病し、死亡する者が生ずる等被爆者の置かれている健康上の特別の状態にかんがみ、国においてこれら被爆者の健康診断及び医療等を行うべく制定されたものである」とされ、被爆者の把握に当たっ ては、申請者において原爆医療法上の被爆者に該当することを立証するには相当の困難が伴うものと考えられるため、被爆者健康手帳の交付申請の際の添付書類に関し、必要に応じて弾力性のある処理をするなどして、被爆者となるべきものに被爆者健康手帳が交付されないことがないよう留意することとされた。(甲C6、乙7) イ原爆医療法の改正原爆医療法成立後も、各地で被爆者に対する生活援護の創設や医療給付の範囲の拡大を求める取組みが実施されていたところ、昭和34年頃、広島市議会厚生委員会において、広島市長が陳情要綱を提案し、同委員会がこれを採択したことなどから、上記取組みが本格化し、昭和35年、原爆 医療法が一部改正された(昭和35年法律第136号。以下「昭和35年改正」という。)。昭和35年改正では、被爆者の定義を維持したまま、「特別被爆者」の制度が創設され、下記の特別被爆者に認定された者は、原爆症認定を受けた疾病以外の一般疾病で医療を受ける場合にも医療費の自己負担分が国費から支給されることになった(昭和35年改正後の原爆医療 法 度が創設され、下記の特別被爆者に認定された者は、原爆症認定を受けた疾病以外の一般疾病で医療を受ける場合にも医療費の自己負担分が国費から支給されることになった(昭和35年改正後の原爆医療 法14条の2。以下、特別被爆者に当たらない被爆者を「一般被爆者」ということがある。乙9の1。)。特別被爆者の定義は、「原子爆弾の放射線を多量に浴びた被爆者で政令で定めるもの」とされ、これを受けた原子爆弾被爆者の医療等に関する法律施行令6条(政令224号による改正後のもの)において、「一原子爆弾が投下された際爆心地から二キロメートルの 区域内にあった者及びその当時その者の胎児であった者、二法第8条第 1項の規定による厚生大臣の認定を受けた者、三法第2条第1号及び第2号に該当する者であって、法第4条の規定による健康診断の結果、造血機能障害、肝臓機能障害その他厚生大臣が定める障害…があると認められたもの」と定められた。特別被爆者の範囲は、その後の施行令の改正により徐々に拡大された。(乙1、乙9の1、9の2) ウ原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律(以下「原爆特別措置法」という。)の制定等原爆医療法制定後も、各地で被爆者の生活援護を求める陳情活動が継続して実施されていたところ、昭和43年5月17日、原爆特別措置法が成立した(以下、原爆医療法と原爆特別措置法を併せて「原爆二法」という。)。 原爆特別措置法の目的は、「広島市及び長崎市に投下された原子爆弾の被爆者であって、原子爆弾の傷害作用の影響を受け、今なお特別の状態にある者に対し、特別手当の支給等の措置を講ずることによりその福祉を図ること」であり(同法1条)、原爆医療法8条1項の認定を受けた者で特定の疾病の状態にある者に対し特別手当を(原爆特別措置法2 状態にある者に対し、特別手当の支給等の措置を講ずることによりその福祉を図ること」であり(同法1条)、原爆医療法8条1項の認定を受けた者で特定の疾病の状態にある者に対し特別手当を(原爆特別措置法2条)、特別被爆者 が一定の疾病にかかっている場合に健康管理手当を(同法5条)、特別被爆者が一定の障害により介護を要する状態にあり、介護に要する費用を支出している者に対し、介護手当を支給することになった(同法9条)ほか、医療手当が増額された。また、原爆特別措置法は、昭和44年、特別被爆者の死亡時に葬祭料を支給する改正が行われた(昭和44年法律第65号)。 (乙1、12、14)エ原爆二法の改正昭和49年5月27日、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律及び原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律(昭和49年法律第86号。乙17)が成立し、同年10月1日に施行された(同 法による原爆二法の改正を以下「昭和49年改正」という。)。昭和49年 改正により「特別被爆者」の制度が撤廃され、全ての被爆者が健康診断と一般疾病医療費の支給を受けられるようになった。また、健康診断に関して、一定の者を被爆者とみなす旨の規定が定められた(後記カ)。 オ被爆者援護法の制定原爆二法制定後、これらを一本化し、国家補償の観点から被爆者に対す る援護をさらに充実させる要望が強まっていたところ、昭和53年判決において、原爆医療法の意義につき、国家補償的配慮が根底にあることを否定できない旨判示されたことなどを契機として、被爆者援護策の基本理念を明確にすべきであるとの指摘が強まり、厚生大臣は、私的諮問機関として基本問題懇談会を設置し、基本問題懇談会は、昭和55年12月11日、 「原爆被爆者対策の基本理念及び基 爆者援護策の基本理念を明確にすべきであるとの指摘が強まり、厚生大臣は、私的諮問機関として基本問題懇談会を設置し、基本問題懇談会は、昭和55年12月11日、 「原爆被爆者対策の基本理念及び基本的在り方について」と題する報告書を取りまとめ、厚生大臣に報告した(乙18、20)。 その後、2度にわたって議員立法として原子爆弾被爆者等援護法案が国会に提出された。一回目に提出された法案においては、被爆者の子及び孫に対し健康診断を実施し、その結果、原爆の傷害作用に起因する疾病とし て政令に定めるものにかかっている旨の都道府県知事の認定を受けた者を被爆者とみなし、被爆者年金等に係る規定を除き、同法を適用することが盛り込まれ、平成元年12月15日に参議院で可決されたが、衆議院での可決に至らなかった。二回目に提出された法案も上記と同様の内容を含むものであり、平成4年4月24日に参議院で修正議決されたが、衆議院で の可決に至らなかった。(甲A20、甲C2、3)平成6年11月22日、被爆者援護法案が国会に提出され、同年12月9日、被爆者援護法が成立した(以下、原爆二法と被爆者援護法を併せて「原爆三法」ということがある。)。被爆者援護法は、原爆二法を一本化するとともに、医療、手当等の各施策を援護の施策として総合的に位置付け ることなどの内容が盛り込まれた(甲C4、5、乙23、24)。被爆者援 護法の議決に際し、「政府は、保険、医療及び福祉にわたる総合的な被爆者援護対策を講じるとの本法案の趣旨を踏まえ、次の諸点について特にその実現に努めるべきである。」とした上で、その諸点の一つとして「被爆者とその子及び孫に対する影響についての調査、研究及びその対策について十分配慮し、二世の健康診断については、継続して行うとともに、その置 現に努めるべきである。」とした上で、その諸点の一つとして「被爆者とその子及び孫に対する影響についての調査、研究及びその対策について十分配慮し、二世の健康診断については、継続して行うとともに、その置か れている立場を理解して一層充実を図ること。」を掲げた附帯決議がされた(甲C5)。 カみなし被爆者長崎県知事、長崎市長、長崎県西彼杵郡長与町及び同郡時津町は、昭和46年から昭和48年にかけて、被告に対し、住民の健康調査結果な どを根拠に、長崎県西彼杵郡長与町及び同郡時津町(原爆投下当時の長与村及び時津村)の全域を被爆地域として追加指定することを求める要望書を提出した(乙37の1ないし37の4)。 原爆二法の昭和49年改正により、健康診断の特例として、原子爆弾が投下された際、被爆地域に隣接する政令で定める区域内にあった者又 はその当時その者の胎児であった者は、健康診断の実施を定めた原爆医療法4条の適用について被爆者とみなす旨の規定が設けられた(原爆医療法制定附則3項)。また、昭和49年7月22日に厚生省公衆衛生局長が発出した「原子爆弾被爆者の医療等に関する法律及び原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律等の施行について」 と題する通達(衛発第402号。以下「402号通達」という。)により、上記健康診断特例措置の対象者(みなし被爆者)に対し、健康診断受診者証を交付して健康診断を実施すること、健康診断の結果、造血機能障害、肝臓機能障害、細胞増殖機能障害、内分泌腺機能障害、脳血管障害、循環器機能障害、腎臓機能障害、水晶体混濁による視機能障害、呼吸器 機能障害、運動器機能障害があると診断された者については、原爆医療 法2条3号に該当するものとして、被爆者健康手帳の交付を受けら 能障害、腎臓機能障害、水晶体混濁による視機能障害、呼吸器 機能障害、運動器機能障害があると診断された者については、原爆医療 法2条3号に該当するものとして、被爆者健康手帳の交付を受けられる取扱いとされた(甲A9、乙40)。 原爆医療法制定附則3項に規定する政令で定める区域(以下「みなし被爆区域」という。)として、原爆投下当時の長与村(高田郷及び吉無田郷を除く。)及び時津村が定められた(昭和49年政令210号。乙38)。 この経緯は、みなし被爆者が導入された昭和49年改正において特別被爆者と一般被爆者の区別が撤廃されたところ、長与村及び時津村にあった者については、調査により従来の一般被爆者とほぼ同様に原爆の放射能による影響があるものと認められたが、それまでの間、一般被爆者に該当しないため定期健康診断の対象ではなく、これらの者に健康被害が 生じているか把握されていなかったことから、直ちに一般被爆者が特別被爆者と同等の措置を受けることができるようになる昭和49年改正による措置を講じることに若干の疑問が残ったことから、当面の間、上記の者を原爆医療法の被爆者には含めない一方で、みなし被爆区域として指定することで従来の一般被爆者と同様の援護を実施することになった ことによるものである(甲A22)。 みなし被爆区域は、その後の政令の改正(昭和51年政令第243号)により、現行の被爆者援護法施行令別表三(後記の第一種特例区域)と同様の区域に拡大された(乙41)。 平成6年に制定された被爆者援護法制定附則17条は、前記の原爆 医療法におけるみなし被爆者の制度を引き継いだ。 被爆者援護法制定時のみなし被爆者とされる地域(以下、原爆医療法と被爆者援護法におけるみなし被爆者とされる地域を併せて「みなし被 記の原爆 医療法におけるみなし被爆者の制度を引き継いだ。 被爆者援護法制定時のみなし被爆者とされる地域(以下、原爆医療法と被爆者援護法におけるみなし被爆者とされる地域を併せて「みなし被爆区域」という。)は、被爆者援護法施行令の別表第三記載の第一種特例区域とされ、平成14年4月、同施行令の改正により、同施行令別表第 四記載の第二種特例区域(長崎の爆心地から12㎞以内の区域)が対象 区域として追加された(乙49)。また、402号通達によるみなし被爆者に対する取扱いは、第一種特例区域のみなし被爆者に対してのみ適用するものとされた(乙50)。 ⑶ 放射線被曝の遺伝的影響に関する科学的知見放射線被曝の遺伝的影響に関する主要な科学的知見は以下のとおりである。 ア動物に関する研究 ハーマン・マラーによるショウジョウバエの研究ショウジョウバエの精子に高線量のエックス線を照射し、その精子から生まれる子(照射群)とエックス線照射をしていないショウジョウバエから生まれた子(対照群)を比較したところ、エックス線照射をして いない対照群と比較し、照射群の突然変異頻度が上昇した。この研究は、1927年(昭和2年)に報告された。(甲B4(枝番含)、27(枝番含)、44) ウィリアム・ラッセルのメガマウス実験雄マウスの精子に電離放射線を照射し、当該マウスから生まれる子(照 射群)と電離放射線を照射していないマウスから生まれる子(対照群)を比較した。その結果、特定遺伝子座位の突然変異について、被照射群により多くの突然変異が観察された。この研究は、1951年(昭和26年)に報告された。(甲B5(枝番含)、28、29(枝番含)、44)野村大成によるマウス研究 変異について、被照射群により多くの突然変異が観察された。この研究は、1951年(昭和26年)に報告された。(甲B5(枝番含)、28、29(枝番含)、44)野村大成によるマウス研究 雄マウスに放射線を照射し、その子世代、孫世代の腫瘍の発生頻度を調査したところ、子世代に腫瘍がある場合には、孫世代に高頻度で腫瘍が発生した。この研究結果は、1982年(昭和57年)に発表された。 また、エックス線被爆により生じた「腫瘍化しやすい」という変異が次世代に受け継がれ、加齢等の環境因子が関係して腫瘍として発症する という仮説を検証するため、親マウスへの放射線照射と子マウスに対す る発がん性物質投与を組み合わせ、親マウスに放射線を照射した照射群と照射していない対照群のいずれにも発がん性物質(ウレタン)を投与したところ、腫瘍が発生する割合は照射群の方が有意に高いという結果が得られた。(甲B6(枝番含)、37(枝番含)、38(枝番含)、44、50、51) イヒトに関する知見 a 放影研は、米国原子力委員会の資金により米国学士院が設立した原爆傷害調査委員会(以下「ABCC」という。)を前身とし、「平和的目的の下に、放射線の人に及ぼす医学的影響及びこれによる疾病を調査研究し、原子爆弾の被爆者の健康保持及び福祉に貢献するとともに、 人類の保健の向上に寄与する」ことを目的として設立された公益財団法人である。ABCCは、昭和22年以降、厚生省国立予防衛生研究所と共同で被爆者健康調査を開始し、ABCCの調査研究は放影研に引き継がれた。 b 放影研は、平成12年、原爆による後影響全般についてこれまでに 判明した知見を取りまとめた文書において、被爆二世につき、出生届やABCCで実施した調査結果をもとに調査集団を設 継がれた。 b 放影研は、平成12年、原爆による後影響全般についてこれまでに 判明した知見を取りまとめた文書において、被爆二世につき、出生届やABCCで実施した調査結果をもとに調査集団を設定し、同集団について追跡調査を実施したところ、以下のとおりの結果が得られた旨報告した(乙36)。 (a) 出生時の障害 条件を満たした6万5431人の新生児のうち、594人(0. 91%)に異常が認められたが、親の放射線被曝との関連は見られず、一般集団での調査結果(0.92%)に近かった。また、奇形以外の死産、新生児死亡、9か月以内の死亡のいずれも親の放射線被曝による影響は示唆されなかった。 (b) 染色体異常 両親の少なくともどちらか一方が爆心地から2000m以内で被爆している子供8322人と、両親とも爆心地から2500m以遠で被爆したか、あるいは原爆時に市内にいなかった子供7976人の血液リンパ球における染色体分析を実施したところ、親の放射線被曝により被爆二世における異常が増加した可能性を示す証拠は得 られなかった。 (c) DNA突然変異放影研では、昭和60年までは、DNAの突然変異を直接スクリーニングする技術がなかったため、突然変異タンパク質を指標として調査を実施したが、タンパク質レベルの調査では、被爆群と対照群 の突然変異率に有意差は見られなかった。 昭和60年以降、放影研は、ヒトで特に多型の出現率が高い8か所のミニサテライト遺伝子座について被爆群の子61人と対照群の子58人とその両親を検査したが、突然変異率は被爆群で2.6%、対照群で2.8%であり、有意な遺伝的影響は認められなかった。 また、高い自然突然変異率を示す40か て被爆群の子61人と対照群の子58人とその両親を検査したが、突然変異率は被爆群で2.6%、対照群で2.8%であり、有意な遺伝的影響は認められなかった。 また、高い自然突然変異率を示す40か所のマイクロサテライト遺伝子座について、被爆群家族の子66人と対照群の子63人とその両親を検査したが、突然変異率は被爆群で0.39%、対照群で0. 35%であり、有意な遺伝的影響は認められなかった。 欠失型突然変異をゲノム全域で調べるため、DNA二次元電気泳 動法を改良したスクリーニングを実施し、被爆群50家族の子66人、対照群50家族の子62人とその両親の解析をしたところ、対照群で調べた5万6176遺伝子座に1例の欠失型突然変異を検出したのみで、被爆群で検査した5万9942遺伝子座では突然変異は検出されなかった。 平成12年(2000年)初期には、ゲノム中の遺伝子コピー数 の変化に関する検索を開始し、被爆群の子40人と対照群の子40人を検査したところ、合計251個のコピー数変異が検出されたが、いずれもどちらかの親に存在していたことが確認され、新規突然変異ではなかった。 (d) 疫学・臨床調査 被爆二世の年代ごとの死亡調査が実施されたが、いずれの年代においても、親の放射線被曝による影響は観察されなかった。また、小児白血病及び若年性の固形癌に関する研究においても、親の放射線被曝の影響は観察されず、最新の癌罹患調査においても、親の放射線被曝による子供の癌罹患ヘの影響は明らかでない。 (e) 生活習慣病有病率放影研は、平成14年(2002年)から平成18年(2006年)にかけて、被爆二世1万1951人を対象に、成人期に発症する多因子疾患(がんを除く生活習慣病)の有病率と親 e) 生活習慣病有病率放影研は、平成14年(2002年)から平成18年(2006年)にかけて、被爆二世1万1951人を対象に、成人期に発症する多因子疾患(がんを除く生活習慣病)の有病率と親の放射線被曝との関連性を調べたが、親の放射線被曝と被爆二世の多因子疾患と の関連は認められず、多因子疾患を主要な個別疾患別に解析しても有病率の増加は見られなかった。 c 放影研は、被爆二世の出生時に重い障害の発生が増加するかに関して、昭和36年、昭和56年、平成2年に解析をそれぞれ実施し、そのいずれにおいても放射線被曝との明らかな関連性を特定していな かったところ、令和3年、出生時に確認された先天性形成異常、7日以内の周産期死亡、14日以内の周産期死亡と親の被曝線量の関連性の3つの指標について再解析を実施した結果、親の被曝線量が増加するといずれの指標についてもリスクが増加する傾向を示したが、両親の合計線量と14日以内の周産期死亡以外については統計学的に有意 なものではなかったと報告した。上記3つの指標は、貧困等の社会・ 経済的要因の影響を受けるが、上記の再解析ではそれらの調整はされていない。(甲B57の1、2、甲58)d 放影研の研究のうち、上記bの多因子疾患と両親の被爆との関連に関する研究に対し、ノースカロライナ大学公衆衛生学部疫学科准教授スティーブ・ウイングは、若年期の死亡率を増加させるような遺伝子 突然変異、調査に参加するか否かの選択等の選択因子、推定線量の誤りなどにより誤った結論が導かれる可能性があることなどを挙げて、放影研の調査の調査計画や仮設の設定に問題があると指摘した(甲B22)。多因子疾患に関する調査に関しては、研究対象となった集団が中年期であり、多因子疾患の多くはこれ る可能性があることなどを挙げて、放影研の調査の調査計画や仮設の設定に問題があると指摘した(甲B22)。多因子疾患に関する調査に関しては、研究対象となった集団が中年期であり、多因子疾患の多くはこれから発症すると考えられるこ とから、継続的な縦断的追跡調査が必要であるとの指摘があり(甲B33の1、2)、放影研も、令和4年時点において、今後の研究課題として挙げている(乙75)。 また、放影研所属の研究者である中村典は、「性比と血液タンパク質の電気泳動変化に関する調査は、現在の科学的知見からすると放射線 による突然変異誘発の影響を検出するには適当ではなかったことが言及されるべき」と述べた(甲B16の2)。 UNSCEARは、平成13年(2001年)にした報告において、「電離放射線に被ばくしたヒト集団では、放射線誘発遺伝的(遺伝性)疾患はこれまでのところ証明されていない。しかしながら、電離放射線 は普遍的な突然変異誘発原であり、植物や動物を用いた実験的研究では、放射線は遺伝的影響を誘発できることが明確に証明されている。従って、ヒトはこの点に関して例外ではないであろう。」と報告した(甲B15)。 また、UNSCEARは、平成25年(2013年)に実施した第60回会合において、放射線被曝の子供への影響等について審議し、審議 の結果を取りまとめた報告書において、「放射線被曝による人間における 遺伝的影響として明白に確認されたものは(原爆被害の生存者の子孫の研究においては特に)ない、というのが一般的な結論である。この10年間に、幼年期または青年期に癌を患い放射線療法を受けた生存者に焦点をあてた新たな研究が複数行われたが、生殖腺における線量がしばしば非常に高かった。放射線に被曝した親の子孫 的な結論である。この10年間に、幼年期または青年期に癌を患い放射線療法を受けた生存者に焦点をあてた新たな研究が複数行われたが、生殖腺における線量がしばしば非常に高かった。放射線に被曝した親の子孫において、染色体不安定 性の増大、ミニサテライト変異の増加、世代間ゲノムの不安定性の増大、子孫における性比の変化、先天性異常あるいは癌の危険性の増大、といった危険性は基本的にはない。」などと報告した。(乙26) a マーチン・ガードナーは、イギリスにあるセラフィールド核施設近傍に住む子供において白血病の罹患率が増加したことに関し、同施設 に関連した要因との関連性を調査するため、白血病(52例)、非ホジキンリンパ腫(22例)、ホジキンリンパ腫(23例)の子供及びこれらと性別や生年月日が同等となるような対照群を調査した。その結果、白血病と非ホジキンリンパ腫の相対リスクは、受胎時に父親が核施設で働いていた場合や受胎前に父親が高い放射線量を浴びた記録のある 子について高いという結果が得られた。この研究結果は、平成2年の論文で発表された。(甲B9の1、2)上記研究について、UNSCEARの1993年報告書は、その結論が極めて少数の症例に依存する関連性に基づくものである上、その他の被曝した親における監察結果とは相いれないことから、同研究で 得られた結果は偶然の帰結の可能性があるなどと指摘した(乙29(枝番含))。 b セラフィールド核施設の上記事象に関し、ヘザー・ディキンソンは、同施設の男性放射線作業従事者の授精前の被曝とその子供の白血病及び非ホジキンリンパ腫のリスク間の線量効果関係の有無等を明らかに するため、同施設があるカンブリア地方で生まれた子について追跡調 査を行い、同施設の男性 授精前の被曝とその子供の白血病及び非ホジキンリンパ腫のリスク間の線量効果関係の有無等を明らかに するため、同施設があるカンブリア地方で生まれた子について追跡調 査を行い、同施設の男性放射線作業従事者の子全てと父親が同施設で働いていない約25万人の子との間の白血病と非ホジキンリンパ腫のリスクを比較するコホート調査を実施した。その結果、放射線作業従事者の子供は他の子供より高い白血病と非ホジキンリンパ腫のリスクが認められた旨報告をした。この研究結果は、平成12年の論文で発 表された。(甲B10の1、2)c 英国政府により昭和60年に設立された諮問委員会である「環境における放射線の医学的側面に関する委員会」(以下「COMARE」という。)は、平成14年(2002年)の第7次報告において、ディキンソンの上記研究につき、少ない事例に依拠したものであり、データ に依拠していないなどとした一方で、ガードナーらが示した父の被曝と当該父の子の白血病等のリスクの上昇との関連性を支持するもので、その関連性が偶然の結果である可能性を一定程度低くしたと報告した(甲B17、乙30(枝番含))。また、COMAREは、平成23年(2011年)の第14次報告において、セラフィールド核関連施設 において、放射線の影響により小児白血病及びその他の癌のリスクが増加する見解を支持する証拠はないと報告した(乙31(枝番含))。 平成24年、鎌田七男らは、昭和21年(1946年)から昭和48年(1973年)までに生まれた11万9331人の被爆二世集団における白血病の発生状況について調査したところ、昭和30年(1955 年)までに94例の白血病が発症し、昭和21年(1946年)から昭和30年(1955年)に生まれた子供 1人の被爆二世集団における白血病の発生状況について調査したところ、昭和30年(1955 年)までに94例の白血病が発症し、昭和21年(1946年)から昭和30年(1955年)に生まれた子供の35年間の観察を終えた49例の解析では、両親が共に被爆している場合は、片親のみが被爆している場合に比して白血病発症の頻度が優位に超過していたとの研究結果を発表した。同研究は、臨床的監察結果を報告するものであり、今後、線 量を含めた解析と共に、一般人口との比較を加えた疫学的検討を行い、 さらに、両親被爆群において片親被爆群に比して白血病発生頻度に大きな超過があることのメカニズム解析を行うこととされている。 (甲B11) 被爆二世健康影響調査科学・倫理合同委員会(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科附属原爆後障害医療研究施設教授や広島大学原爆放射線医科学研究所放射線システム医学研究部門教授など研究者や医師を構成員 とする委員会)は、成人期に発症する多因子疾患(高血圧、糖尿病、心筋梗塞など)の有病率と親の放射線被曝との関連性の有無を調べるため、両親又はどちらかの被曝線量が5mGy以上等の条件を満たした者2万4673人の集団と両親の線量とも5mGy以下又は両親とも非被曝の者の対象集団を抽出して郵便調査を実施し、また、検診を実施して調査 を行い、得られた情報を解析した。その結果、親の放射線被曝に関連した子供の多因子疾患について、リスクの増加を示す証拠は見られなかった。この研究結果は、平成19年3月30日に発表された。(甲B13) 令和3年(2021年)5月、科学雑誌「Science」に、チェルノブイリ原子力発電所事故により電離放射線に被曝した親から生まれ た子130人とその両親の全ゲノム配列を調べた ) 令和3年(2021年)5月、科学雑誌「Science」に、チェルノブイリ原子力発電所事故により電離放射線に被曝した親から生まれ た子130人とその両親の全ゲノム配列を調べたところ、妊娠前の父の累積被曝線量や母の被曝線量に関わらず、新規の突然変異の総数は増加しておらず、この被曝範囲では、ヒトの生殖細胞突然変異が実質的に生じるという証拠はないという結論に至り、次世代への影響は極めて小さいことが示唆された旨の研究結果が掲載された(乙57:参考文献第2 章の8、同第5章の2)。 上海で実施された小児白血病の児童と健康な児童を対象とした対照研究において、父親がエックス線被曝した場合にはその子が急性リンパ性白血病及び急性非リンパ球性白血病となるリスクが優位に増加したとの結果が得られた。この研究結果は、昭和63年(1988年)に報告さ れた。(甲B19の1・2) 日本遺伝学会及び日本人類遺伝学会は、昭和32年4月に出された「人類に及ぼす放射線の遺伝的影響についての見解」の中で、放射線は生物に突然変異を誘発するもので、人類もその例外とは考えられないこと、突然変異の大部分は人類に有害であり、その影響は孫以後の代になって現れてくることが多く、子の代に影響がみられないからといって遺伝的 に安全とはいえないとの見解を示した(甲B1)。 ウ A氏の見解兵庫医科大学非常勤講師であり、医薬基盤・健康・栄養研究所特任研究員であるA氏は、概要、以下の意見を述べる。 ヒトの生殖、発生、遺伝の基本的知見に照らせば、ヒトにおいて親の生殖 細胞の被曝を通じて次世代以降に放射線被曝の影響が及ぶ可能性があることは明らかである。すなわち、被爆二世の親である被爆者は原爆に の生殖、発生、遺伝の基本的知見に照らせば、ヒトにおいて親の生殖 細胞の被曝を通じて次世代以降に放射線被曝の影響が及ぶ可能性があることは明らかである。すなわち、被爆二世の親である被爆者は原爆により放射線に被曝した者であるところ、その体内にある生殖細胞だけが原爆放射線の影響を全く受けていないということはできず、個体全体として放射線に被曝したとみなされる。そして、被爆二世は、被爆して変異した可能性のある親の 遺伝情報を受け継いでいるのであるから、被爆二世の身体に原爆放射線の影響を受けている可能性がある。 また、動物実験、特に遺伝研究でモデル動物として重要なマウスを用いた実験において、親の被曝線量に依存して次世代で変異誘発頻度が有意に上昇することが確認されており、放射線被曝の遺伝的影響が次世代に及ぶことが 証明されている。 ヒトについても、倫理的問題等により調査の困難性と限界がある中で、親の被曝で誘発された可能性のある次世代の健康影響を示唆する報告がされている。この点、放影研の研究では、被爆二世の健康リスクの増加を示す証拠は得られていないと報告されているが、証拠がないことは影響がないことを 意味しないし、放影研の研究に対しては限界や課題が指摘されている。 以上によれば、ヒトにおいて、親の放射線被曝が生殖細胞を介して次世代の子供の身体に影響を及ぼす可能性があることは明らかである。(甲B44、68(枝番含)) 2 判断枠組国賠法1条1項は、国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の 国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに、国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うことを規定するものであるから、国会議員の立法行為又は立法不作為が同項の適 国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに、国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うことを規定するものであるから、国会議員の立法行為又は立法不作為が同項の適用上違法となるかどうかは、国会議員の立法過程における行動が個別の国民に対して負う職務上の法的義務に違背したかどうかの問題であって、当該立法の内容又は立法不作為の違 憲性の問題とは区別されるべきであり、仮に当該立法の内容又は立法不作為が憲法の規定に違反するものであるとしても、そのゆえに国会議員の立法行為又は立法不作為が直ちに違法の評価を受けるものではない。しかしながら、立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を 確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには、例外的に、国会議員の立法行為又は立法不作為は、国賠法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受けるものというべきである(最高裁平成17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087頁)。 原告らは、本件立法不作為により、原告らの憲法上保障されている権利が違法に侵害されており、また、原告らが憲法上保障されている権利行使の機会を確保するためには本件立法義務が履行されることが必要不可欠であると主張するので、以下、これについて検討する。 3 検討 ⑴ 憲法13条違反の主張について 原告らは、被爆二世は、自らの将来における健康や自身の子や孫の健康等につき、絶え間ない不安に苛まれており、このような被爆二世の健康不安に対する措置を国に対して求める権利は、個 ついて 原告らは、被爆二世は、自らの将来における健康や自身の子や孫の健康等につき、絶え間ない不安に苛まれており、このような被爆二世の健康不安に対する措置を国に対して求める権利は、個人の人格的な生存に不可欠な基本的人権に基づくものとして、憲法13条により保障される旨主張する。 原爆による戦争被害は、他の戦争被害と異なり、放射線被曝による被害を 含むものであり、前記認定事実⑶によれば、放射線が身体に及ぼす影響やその機序、放射線被曝が子孫に及ぼす影響の有無やその機序が十分に解明されておらず、放射線被曝の遺伝的影響による健康被害の可能性が科学的に明確に否定されているとはいえない現状からすると、被爆二世である原告らが自らの健康等につき不安を抱くのは自然なことである。 しかしながら、原告らが抱く上記不安は、第二次世界大戦中に広島市及び長崎市に投下された原爆により原告らの親が被爆したことに由来するものであるところ、憲法には、いわゆる戦争損害について措置を講ずる立法を積極的に命ずる明文の規定はなく、また、戦争損害は、国の存亡にかかわる非常事態のもとで、国民が等しく受忍しなければならなかったところであって、 これに対する補償や援護は憲法が予想しないところというべきであり、戦争損害に対する援護や補償の要否及びその在り方は、事柄の性質上、財政、経済、社会政策等の国政全般にわたった総合的な政策判断を待って初めて決しうるものであって、国家財政、社会経済、戦争によって国民が被った被害の内容、程度等に関する資料を基礎とする国会の裁量的権限に委ねられるもの と解するのが相当であり(最高裁昭和43年11月27日大法廷判決・民集22巻12号2808頁、最高裁昭和62年6月26日第二小法廷判決・集民151号147頁、最高裁 量的権限に委ねられるもの と解するのが相当であり(最高裁昭和43年11月27日大法廷判決・民集22巻12号2808頁、最高裁昭和62年6月26日第二小法廷判決・集民151号147頁、最高裁平成9年3月13日第一小法廷判決・民集51巻3号1233頁参照)、このことは、原爆の投下の結果として生じた放射能に起因する健康被害が他の戦争被害とは異なる特殊の被害であっても異なる ところはないというべきである。 したがって、被爆二世である原告らが健康不安に対する措置を被告国に求める権利が憲法13条により保障されているとはいえず、原告らの上記主張は採用できない。 ⑵ 憲法14条1項違反の主張についてア判断基準 憲法14条1項は、法の下の平等を定めており、合理的理由のない差別を禁止する趣旨のものであって、各人に存する経済的、社会的その他種々の事実関係上の差異を理由としてその法的取扱いに区別を設けることは、その区別が合理性を有する限り、同条項に違反するものではない(最高裁昭和39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁等参照)。 前記⑴のとおり、放射能に起因する健康被害を含む戦争損害に対する援護や補償の要否及びその在り方は、総合的な政策判断による国会の裁量的権限に委ねられているものであるところ、被爆者援護法が、原爆の投下の結果として生じた放射能に起因する健康被害が他の戦争被害とは異なる特殊の被害であることに鑑みて制定されたものであることから、被爆者援護 法がこのような特殊の戦争被害について戦争遂行主体であった国が自らの責任によりその救済を図るという一面を有するものであり、その点では実質的に国家補償的配慮が制度の根底にあることは否定できないものの(最高裁平成29年12月18日第一小法廷判 行主体であった国が自らの責任によりその救済を図るという一面を有するものであり、その点では実質的に国家補償的配慮が制度の根底にあることは否定できないものの(最高裁平成29年12月18日第一小法廷判決・民集71巻10号2364頁、最高裁昭和53年3月30日第一小法廷判決・民集32巻2号435 頁)、社会保障法としての他の公的医療給付立法と同様の性格を持つものでもあることから、原爆の放射能に起因する健康被害を受けた者及びその可能性のある者をどの範囲で援護の対象とするかは、被爆者援護法の趣旨目的を踏まえた、国会の合理的な裁量的判断に委ねられているというべきである。原告らが主張する本件立法不作為が憲法14条1項に違反するかど うかは、上記の観点を踏まえ、被爆二世と被爆者援護法の被爆者の取扱い、 また、被爆二世と被爆者援護法のみなし被爆者の取扱いの各差異が、合理的な理由を欠く不当な差別的取扱いであり、国会の上記裁量の逸脱・濫用と評価できるかにより判断するのが相当である。 イ被爆者援護法の被爆者と被爆二世の取扱いの差異について 被爆者援護法1条の「被爆者」の意義 被爆者援護法は、原爆二法を一本化して制定されたものであり、原爆医療法が被爆者の定義について被爆者援護法のそれと同様の定めを置いていることから、原爆医療法における被爆者の概念を被爆者援護法は引き継いだものといえる。以下、被爆二世の取扱いと対比される被爆者援護法1条の「被爆者」の意義について、原爆医療法制定時の議論状況等 も踏まえて検討する。 認定事実⑵アのとおり、原爆医療法は、原爆投下から十数年が経過した後にあっても、なお原爆により被爆したことに起因するとみられる原爆症に罹患して医療を要する者が多数おり、一見健康に見える者が突然原 認定事実⑵アのとおり、原爆医療法は、原爆投下から十数年が経過した後にあっても、なお原爆により被爆したことに起因するとみられる原爆症に罹患して医療を要する者が多数おり、一見健康に見える者が突然原爆病を発症し、死亡する事例が散見されたことなどの被爆者の健康 状態に鑑みて、被爆者の健康状態について医師の綿密な観察指導を必要とする現状であったこと、かつ、これらの原爆症が当時予測もできなかった原爆に基づくものであることから、国が被爆者に対して健康診断等を行い、発症した場合には国において医療を行い健康保持向上を図る必要があると考えられて制定されたものである。 このような趣旨を踏まえ、原爆三法は、原爆投下時に一定の区域内にいた1号被爆者及び原爆投下後一定の期間内に一定の区域内に入った2号被爆者を被爆者として定め、また、1号被爆者や2号被爆者に該当しない者の中にも原爆病を発症した者がいたことから、そのような者を救済するために「原子爆弾が投下された際又はその後において、身体に原 子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」を3号被爆 者として定め、加えて、原爆投下時に1号被爆者から3号被爆者の胎内にいた者を4号被爆者と定めたものである。 これらによれば、原爆三法は、原爆投下時に爆心地から一定の距離の範囲にいた者や原爆投下後一定の期間内に爆心地に近い場所に入った者が、高度の放射線量を受けて被爆した可能性が高く、被爆による健康被 害が生じる蓋然性が高いことから、これらを類型的に原爆放射線による影響を受ける蓋然性が高い者を被爆者(1号被爆者、2号被爆者)とした上で、上記の事由に該当しない場合であっても、原爆の放射線を浴びた遺体の処理に従事したなど、原爆の放射能に起因する高度の放射線被曝をすることがあり得ること 者を被爆者(1号被爆者、2号被爆者)とした上で、上記の事由に該当しない場合であっても、原爆の放射線を浴びた遺体の処理に従事したなど、原爆の放射能に起因する高度の放射線被曝をすることがあり得ることから、個別の被爆の事情を踏まえて、身体 に原爆の放射能の影響を直接受けるような事情の下にあった者を3号被爆者として定めたものと解される。認定事実⑵アのとおり、被爆者援護法が、被爆者の認定に当たり、個々の申請者が原爆の放射線の影響を受けたこと自体を要件としておらず、申請者において原爆放射線の影響を受けてこれにより健康被害が発生したことについて科学的な立証をす ることが想定されていないからすると、「原子爆弾が投下された際又はその後において、身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」とは、原爆の放射線を直接被曝したことにより健康被害が生ずる可能性がある事情の下に置かれていた者と解するのが相当である(前記認定事実⑵オのとおり、被爆者援護法の制定過程において、被爆 者の子や孫に対する援護は「被爆者」とは区別されて検討されていたこと、被爆者援護法制定時の附帯決議において被爆二世に対する健康診断の実施を継続して実施していくこととされて本文の規定外に位置付けられていることからすると、被爆二世は被爆者援護法1条3号の被爆者に該当するものではなく、本件立法不作為を違法と主張する原告らも、被 爆二世が同号の被爆者に直接該当しないことを前提にするものと解さざ るを得ない。)。 被爆者と被爆二世の取扱いの差異の合理性原告らは、被爆者援護法が原爆放射線の影響を受ける可能性が否定できない者を援護の対象とする趣旨であるとした上で、被爆二世についても、被爆者である親を介して原爆放射線の影響を受けている可 異の合理性原告らは、被爆者援護法が原爆放射線の影響を受ける可能性が否定できない者を援護の対象とする趣旨であるとした上で、被爆二世についても、被爆者である親を介して原爆放射線の影響を受けている可能性が否 定できない点で被爆者援護法の被爆者と何ら変わるところはないから、被爆者と被爆二世の取扱いの差異は不合理な差別である旨主張する。 前記のとおり、被爆者援護法の「被爆者」の受け皿的な位置付けとなる3号被爆者は、原爆の放射線を直接被曝したことにより健康被害が生ずる可能性がある事情の下に置かれていた者であるところ、これは、 原爆投下時に発生した初期放射線や残留放射線に直接被曝した者に健康被害が生じることは科学的に裏付けられた事実であることを前提に、被曝線量が大きいほど健康被害への影響の程度が大きくなることや、一般的に、爆心地からの距離が近いほど被曝線量が大きくなることなどの一定の科学的知見を踏まえ、原爆放射線の影響により健康被害が発生する 可能性が一定程度肯定される範囲を画するものとして1号被爆者及び2号被爆者を定義し、これらに該当しないものの、個別の事情により原爆の放射線を直接被曝した可能性のある者を3号被爆者として捕捉したものであり、被爆者援護法の「被爆者」は、基本的に、原爆の放射線に直接被曝した可能性のある者を援護の対象としたものと解するのが相当で ある。すなわち、被爆者援護法の「被爆者」は、原爆放射線の影響を受けて健康被害が生ずる可能性がある者であるが、ここでの「可能性」の実質は、「健康被害が生じることが科学的に裏付けられた直接被爆をした可能性」ということができる。 これに対し、被爆二世についてみると、認定事実⑶イのとおり、昭 和22年頃から継続的に原爆被爆に関する遺伝的影響を ことが科学的に裏付けられた直接被爆をした可能性」ということができる。 これに対し、被爆二世についてみると、認定事実⑶イのとおり、昭 和22年頃から継続的に原爆被爆に関する遺伝的影響を調査研究してい る放影研の研究において親の被爆による子への遺伝的影響は確認されておらず(放影研の当該研究に批判的意見があることをもって、直ちに遺伝的影響が科学的に肯定されることにはならない。)、その他にも、親の放射線被曝の遺伝的影響に否定的な研究結果が複数発表されている(認定事実⑶イ、等)。他方、ヒトに関する放射線被曝の遺伝的影響につ いては、セラフィールド核施設にまつわる研究(認定事実⑶イ)や、鎌田七男らによる被爆二世の白血病の発症頻度に関する研究(認定事実⑶イ)など、遺伝的影響があることと整合する研究結果も報告されているが、いずれも批判やさらなる研究課題が残されている。また、国際的な研究機関であるUNSCEARの報告(認定事実⑶イ)において も、放射線被曝による人間における遺伝的影響として明白に確認されたものは原爆被害の生存者の子孫の研究においてはないというのが一般的な結論であるとされ、放射線に被曝した者の子孫において、先天性異常や癌の危険性の増大などの危険性は基本的にはないと結論付けられている。以上によれば、ヒトに関する放射線被曝の遺伝的影響については、 未だ研究途上にあり、現在の科学的知見において、放射線被曝の遺伝的影響による健康被害の可能性が明確に否定されているとはいえないものの、ヒトに関する放射線被曝の遺伝的影響があることが通説的見解や有力な見解として一般的に認識されているとは認められない。このように、被爆二世は、原爆による放射線の影響を直接受けた者からの遺伝的影響 による健康被害の可能 遺伝的影響があることが通説的見解や有力な見解として一般的に認識されているとは認められない。このように、被爆二世は、原爆による放射線の影響を直接受けた者からの遺伝的影響 による健康被害の可能性が否定できない者であるが、ここでの「可能性」の実質は、「放射線の遺伝的影響による健康被害の発生が科学的に承認も否定もされていないという意味での可能性」といえる。 そうすると、被爆者援護法の「被爆者」(特に3号被爆者)と被爆二世とでは、原爆放射線の影響を受けて健康被害が生ずる可能性がある者と いう広い意味では共通する部分があるものの、その背景にある科学的知 見の有無や精度には質的に大きく異なるものがあるといえる。このような事実上の差異の存在からすれば、被爆者援護法の被爆者と同等の措置を被爆二世に行う立法的措置を講じないことが、直ちに合理的な理由のない不当な差別的取扱いであると評価することはできず、憲法14条1項に違反するとは認められない。 ウ被爆者援護法のみなし被爆者と被爆二世の取扱いの差異についてみなし被爆者の意義被爆二世の取扱いと対比されるみなし被爆者は、原爆が投下された際、被爆地域に隣接する区域(みなし被爆区域)内に在った者又はその当時その者の胎児であった者であり、健康診断についてのみ被爆者とみなさ れる者であるところ、認定事実⑵カのとおり、原爆医療法の昭和49年改正において「特別被爆者」と「一般被爆者」の区別が撤廃され、「被爆者」に一律に健康診断と一般疾病医療費の援護がされるようになったことと併せて、旧長与村及び旧時津村にあった者について、調査の結果、従来の「一般被爆者」とほぼ同様に原爆の放射能による影響があるもの と認められたが、それまでの間、一般被爆者に該当しないため定期健康 せて、旧長与村及び旧時津村にあった者について、調査の結果、従来の「一般被爆者」とほぼ同様に原爆の放射能による影響があるもの と認められたが、それまでの間、一般被爆者に該当しないため定期健康診断の対象ではなく、これらの者に健康被害が生じているか把握されておらず、直ちに昭和49年改正後の「被爆者」としての措置を講じることに疑義が残ったことから、当面の間、上記の者を原爆医療法の「被爆者」には含めない一方で、みなし被爆区域として指定することで従来の 一般被爆者と同様の健康診断を実施することになった経緯により創設されたものである。これは被爆者援護法制定附則17条に引き継がれ、みなし被爆区域は、被爆地域との隣接性や地理関係、地方公共団体等からの拡大要望や地域住民の健康状況の訴え、被爆地域とされる他の地域と爆心地からの距離関係等の諸般の事情により、現在までに、被爆者援護 法施行令第三(いわゆる黒い雨が降雨したとされる地域)及び同第四の 区域(長崎の爆心地から12㎞以内の区域)に拡大されるに至っている。 被爆者援護法のみなし被爆者と被爆二世の取扱いの差異の合理性原告らは、みなし被爆区域が行政区画により定められ、その範囲が放射線による健康への影響についての科学的根拠の議論のないまま拡大されてきた経緯等に照らせば、みなし被爆者は、放射線による健康被害が 生じる可能性があることにより援護の対象とされているところ、被爆二世は、原爆による放射線の遺伝的影響を受ける可能性が否定できないという意味でみなし被爆者と何ら変わるところはないから、みなし被爆者と被爆二世の取扱いの差異は、不合理な差別である旨主張する。 前記のとおり、みなし被爆者は、原爆投下により爆心地周辺が放射線 汚染された当時において被爆地域の隣接区域(み いから、みなし被爆者と被爆二世の取扱いの差異は、不合理な差別である旨主張する。 前記のとおり、みなし被爆者は、原爆投下により爆心地周辺が放射線 汚染された当時において被爆地域の隣接区域(みなし被爆区域)に実在していた者又はその胎児であるところ、みなし被爆区域を被爆地域とするほどの原爆の放射線による健康被害の実態を把握することができなかったことから、みなし被爆区域に在る者を「被爆者」とすることはできなかったものの、その地理的要因や健康被害の訴え等からして、原爆 投下当時にみなし被爆区域に在った者が原爆の放射線を直接被曝した可能性があることに鑑みて、健康診断に限って被爆者とみなしたものと解される。すなわち、被爆者援護法のみなし被爆者は、原爆放射線の影響を受けて健康被害が生ずる可能性がある者であるが、ここでの「可能性」の実質は、「被爆者」と同様に、「健康被害が生じることが科学的に裏付 けられた直接被爆をした可能性」ということができ、被爆者と比べてその可能性の程度が相対的に低いことから、援護の内容も被爆者と比べて限定的になっているものと位置付けることができる。 これに対し、被爆二世が、原爆による放射線の影響を直接受けた者からの遺伝的影響による健康被害の可能性が否定できない者であり、ここ での「可能性」の実質が、「放射線の遺伝的影響による健康被害の発生が 科学的に承認も否定もされていないという意味での可能性」であることは前記イのとおりである。 そうすると、被爆者援護法のみなし被爆者と被爆二世とでは、原爆放射線の影響を受けて健康被害が生ずる可能性がある者という広い意味で共通する部分はあるものの、その背景にある科学的知見の有無や精度に は質的に異なるものがあるといえる。このような事実上の差異の存在か の影響を受けて健康被害が生ずる可能性がある者という広い意味で共通する部分はあるものの、その背景にある科学的知見の有無や精度に は質的に異なるものがあるといえる。このような事実上の差異の存在からすれば、被爆者援護法のみなし被爆者と同等の措置を被爆二世に行う立法的措置を講じないことが、直ちに合理的な理由のない不当な差別的取扱いであると評価することはできず、憲法14条1項に違反するとは認められない。 エ小括以上によれば、本件立法不作為が憲法14条1項に違反するとは認められない。 4 結論以上のとおり、本件立法不作為により原告らの憲法上保障された権利を違法 に侵害するものであったり、あるいは、原告らに憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合に当たるとは認められず、本件立法不作為が国賠法1条1項の適用上違法であるとはいえない。 よって、その余の点を検討するまでもなく、原告らの請求は理由がないからいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 広島地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官森實将人 裁判官望月一輝 裁判官中山さほ子 ※別紙「当事者目録」及び「原告目録」は、掲載省略 別紙関係法令の定め 1 被爆者援護法前文昭和20年8月、広島市及び長崎市に投下された原子爆弾という比類のない破壊兵器は、幾多の尊い生命を一瞬にして奪ったのみ 省略 別紙関係法令の定め 1 被爆者援護法前文昭和20年8月、広島市及び長崎市に投下された原子爆弾という比類のない破壊兵器は、幾多の尊い生命を一瞬にして奪ったのみならず、たとい一命を とりとめた被爆者にも、生涯いやすことのできない傷跡と後遺症を残し、不安の中での生活をもたらした。 このような原子爆弾の放射能に起因する健康被害に苦しむ被爆者の健康の保持及び増進並びに福祉を図るため、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律及び原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律を制定し、医療の給付、医療特別手当 等の支給をはじめとする各般の施策を講じてきた。また、我らは、再びこのような惨禍が繰り返されることがないようにとの固い決意の下、世界唯一の原子爆弾の被爆国として、核兵器の究極的廃絶と世界の恒久平和の確立を全世界に訴え続けてきた。 ここに、被爆後50年のときを迎えるに当たり、我らは、核兵器の究極的廃絶 に向けての決意を新たにし、原子爆弾の惨禍が繰り返されることのないよう、恒久の平和を念願するとともに、国の責任において、原子爆弾の投下の結果として生じた放射能に起因する健康被害が他の戦争被害とは異なる特殊の被害であることにかんがみ、高齢化の進行している被爆者に対する保健、医療及び福祉にわたる総合的な援護対策を講じ、あわせて、国として原子爆弾による死没者の尊い犠 牲を銘記するため、この法律を制定する。 第1条この法律において「被爆者」とは、次の各号のいずれかに該当する者であって、被爆者健康手帳の交付を受けたものをいう。 一原子爆弾が投下された際当時の広島市若しくは長崎市の区域内又は政令で定めるこれらに隣接する区域内に在った者(以下「1号被爆者」という。 また、上記各区域を「被爆区域」 受けたものをいう。 一原子爆弾が投下された際当時の広島市若しくは長崎市の区域内又は政令で定めるこれらに隣接する区域内に在った者(以下「1号被爆者」という。 また、上記各区域を「被爆区域」ということがある。) 二原子爆弾が投下された時から起算して政令で定める期間内に前号に規定する区域のうちで政令で定める区域内に在った者(以下「2号被爆者」という。)三前二号に掲げる者のほか、原子爆弾が投下された際又はその後において、身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者(以下 「3号被爆者」という。)四前三号に掲げる者が当該各号に規定する事由に該当した当時その者の胎児であった者(以下「4号被爆者」という。)第2条被爆者健康手帳の交付を受けようとする者は、その居住地(略)の都道府県知事に申請しなければならない。 (2項以下略)第7条都道府県知事は、被爆者に対し、毎年、厚生労働省令で定めるところにより、健康診断を行うものとする。 第10条厚生労働大臣は、原子爆弾の傷害作用に起因して負傷し、又は疾病にかかり、現に医療を要する状態にある被爆者に対し、必要な医療の給付を行 う。ただし、当該負傷又は疾病が原子爆弾の放射能に起因するものでないときは、その者の治癒能力が原子爆弾の放射能の影響を受けているため現に医療を要する状態にある場合に限る。 (2項以下略)第11条前条第1項に規定する医療の給付を受けようとする者は、あらかじめ、 当該負傷又は疾病が原子爆弾の傷害作用に起因する旨の厚生労働大臣の認定を受けなければならない。 (2項以下略)第18条厚生労働大臣は、被爆者が、負傷又は疾病(第10条第1項に規定する医療の給付を受けることができる 害作用に起因する旨の厚生労働大臣の認定を受けなければならない。 (2項以下略)第18条厚生労働大臣は、被爆者が、負傷又は疾病(第10条第1項に規定する医療の給付を受けることができる負傷又は疾病、遺伝性疾病、先天性疾病 及び厚生労働大臣の定めるその他の負傷又は疾病を除く。)につき、(略)医 療を受け(略)たときは、その者に対し、当該医療に要した費用の額を限度として、一般疾病医療費を支給することができる。ただし、その者が、当該負傷若しくは疾病につき、健康保険法(略)の規定により医療に関する給付を受け(略)たときは、当該医療に要した費用の額から当該医療に関する給付の額を控除した額(略)の限度において支給するものとする。 (2項以下略)第24条道府県知事は、第11条第1項の認定を受けた者であって、当該認定に係る負傷又は疾病の状態にあるものに対し、医療特別手当を支給する。 (2項以下略)第25条都道府県知事は、第11条第1項の認定を受けた者に対し、特別手当 を支給する。ただし、その者が医療特別手当の支給を受けている場合は、この限りでない。 (2項以下略)第26条都道府県知事は、被爆者であって、原子爆弾の放射能の影響による小頭症の患者であるもの(略)に対し、原子爆弾小頭症手当を支給する。 (2項以下略)第27条都道府県知事は、被爆者であって、造血機能障害、肝臓機能障害その他の厚生労働省令で定める障害を伴う疾病(原子爆弾の放射能の影響によるものでないことが明らかであるものを除く。)にかかっているものに対し、健康管理手当を支給する。ただし、その者が医療特別手当、特別手当又は原子 爆弾小頭症手当の支給を受けている場合は、この限りでない。 (2 かであるものを除く。)にかかっているものに対し、健康管理手当を支給する。ただし、その者が医療特別手当、特別手当又は原子 爆弾小頭症手当の支給を受けている場合は、この限りでない。 (2項以下略)第28条都道府県知事は、被爆者のうち、原子爆弾が投下された際爆心地から2キロメートルの区域内に在った者又はその当時その者の胎児であった者に対し、保健手当を支給する。ただし、その者が医療特別手当、特別手当、原 子爆弾小頭症手当又は健康管理手当の支給を受けている場合は、この限りでない。 (2項以下略)第31条都道府県知事は、被爆者であって、厚生労働省令で定める範囲の精神上又は身体上の障害(原子爆弾の傷害作用の影響によるものでないことが明 らかであるものを除く。以下この条において同じ。)により介護を要する状態にあり、かつ、介護を受けているものに対し、その介護を受けている期間について、政令で定めるところにより、介護手当を支給する。ただし、その者(その精神上又は身体上の障害が重度の障害として厚生労働省令で定めるものに該当する者を除く。)が介護者に対し介護に要する費用を支出しないで介 護を受けている期間については、この限りでない。 (2項以下略)第32条都道府県知事は、被爆者が死亡したときは、葬祭を行う者に対し、政令で定めるところにより、葬祭料を支給する。ただし、その死亡が原子爆弾の傷害作用の影響によるものでないことが明らかである場合は、この限りで ない。 第33条被爆者であって、次の各号のいずれかに該当する者(次項において「死亡者」という。)の遺族であるものには、特別葬祭給付金を支給する。 (以下略)制定附則第17条原子爆弾が投下された際第1条第1号に規定する区 の各号のいずれかに該当する者(次項において「死亡者」という。)の遺族であるものには、特別葬祭給付金を支給する。 (以下略)制定附則第17条原子爆弾が投下された際第1条第1号に規定する区域に隣接 する政令で定める区域内に在った者又はその当時その者の胎児であった者は、当分の間、第七条の規定の適用については、被爆者とみなす。 (以下、制定附則17条により被爆者とみなされる者を「みなし被爆者」といい、上記区域を「みなし被爆区域」という。なお、原爆医療法(昭和49年法律第86号による改正後のもの)制定附則3項により被爆者とみなされ る者を「みなし被爆者」といい、同項に規定する区域を「みなし被爆区域」ということがある。) 2 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律施行令(以下「被爆者援護法施行令」という。)第1条原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律…第1条第1号の政令で定め る区域は、広島市又は長崎市に原子爆弾が投下された当時の別表第一に掲げる区域とする。 2 法第1条第2号の政令で定める期間は、広島市に投下された原子爆弾については昭和20年8月20日までとし、長崎市に投下された原子爆弾については同年同月23日までとする。 3 法第1条第2号の政令で定める区域は、原子爆弾が投下された当時の別表第二に掲げる区域とする。 制定附則第2条法附則第17条の政令で定める区域は、同条に規定する者に対し行う厚生労働省令で定める健康診断の区分に応じ、広島市又は長崎市に原子爆弾が投下された当時の別表第三又は別表第四に掲げる区域(同表に掲げ る区域にあっては、原子爆弾が投下された際の爆心地から12キロメートルの区域内に限る。)とする。 (以下、別表三に定める区域を「第一種特例区域」といい、 表第四に掲げる区域(同表に掲げ る区域にあっては、原子爆弾が投下された際の爆心地から12キロメートルの区域内に限る。)とする。 (以下、別表三に定める区域を「第一種特例区域」といい、別表四に定める区域を「第二種特例区域」という。)別表第一 一広島県安佐郡祇園町二広島県安芸郡戸坂村のうち、狐爪木三広島県安芸郡中山村のうち、中、落久保、北平原、西平原及び寄田四広島県安芸郡府中町のうち、茂陰北五長崎県西彼杵郡福田村のうち、大浦郷、小浦郷、本村郷、小江郷及び小江 原郷 六長崎県西彼杵郡長与村のうち、高田郷及び吉無田郷別表第二一広島市のうち、楠木町一丁目、楠木町二丁目、楠木町三丁目、三篠本町一丁目、三篠本町二丁目、横川町一丁目、横川町二丁目、横川町三丁目、打越町、山手町、南三篠町、福島町、中広町、上天満町、天満町、西天満町、東観 音町一丁目、東観音町二丁目、西観音町一丁目、西観音町二丁目、観音本町、南観音町、広瀬北町、寺町、空鞘町、西引御堂町、広瀬元町、鷹匠町、錦町、横堀町、北榎町、新市町、榎町、西九軒町、西大工町、十日市町、左官町、鍛冶屋町、油屋町、猫屋町、塚本町、堺町一丁目、堺町二丁目、堺町三丁目、堺町四丁目、西地方町、西新町、小網町、河原町、舟入町、舟入仲町、舟入 本町、舟入幸町、舟入川口町、中島本町、材木町、天神町、木挽町、元柳町、中島新町、水主町、吉島町、吉島羽衣町、白島北町、白島中町、白島東中町、白島九軒町、白島西中町、西白島町、東白島町、基町、猿楽町、細工町、横町、鳥屋町、大手町一丁目、大手町二丁目、大手町三丁目、大手町四丁目、大手町五丁目、大手町六丁目、大手町七丁目、大手町八丁目、大手町九丁目、 塩屋町、尾道町、紙屋町、研屋町 猿楽町、細工町、横町、鳥屋町、大手町一丁目、大手町二丁目、大手町三丁目、大手町四丁目、大手町五丁目、大手町六丁目、大手町七丁目、大手町八丁目、大手町九丁目、 塩屋町、尾道町、紙屋町、研屋町、革屋町、立町、東魚屋町、八丁堀、上流川町、幟町、上柳町、鉄砲町、橋本町、石見屋町、胡町、東胡町、山口町、下柳町、銀山町、弥生町、薬研堀町、斜屋町、下流川町、堀川町、三川町、平田屋町、播磨屋町、西魚屋町、中町、鉄砲屋町、袋町、下中町、新川場町、小町、雑魚場町、国泰寺町、竹屋町、田中町、平塚町、鶴見町、宝町、冨士見町、昭 和町、平野町、南竹屋町、東千田町、千田町一丁目、千田町二丁目、千田町三丁目、台屋町、京橋町、的場町、金屋町、比治山町、稲荷町、松川町、土手町、桐木町、段原大畑町、段原町、段原東浦町、比治山本町、皆実町一丁目、二葉の里、大須賀町、松原町及び猿猴橋町二長崎市のうち、西北郷、東北郷、家野郷、西郷、家野町、大橋町、岡町、橋 口町、山里町、坂本町、本尾町、上野町、江平町、高尾町、本原町、松山町、 駒場町、城山町、浜口町、竹ノ久保町、稲佐町二丁目、稲佐町三丁目、旭町一丁目、岩川町、目覚町、浦上町、茂里町、銭座町、井樋ノ口町、船蔵町、宝町、寿町、幸町、福富町、玉浪町、梁瀬町、高砂町、御船蔵町、御船町、八千代町、瀬崎町及び浜平町別表第三 一広島県山県郡安野村のうち、島木及び段原二広島県佐伯郡水内村のうち、津伏、小原、井手ケ原、矢流、草谷、古持、森、下井谷、門出口、木藤及び恵下三広島県佐伯郡河内村のうち、魚切、中郷、下城、上小深川及び下小深川四広島県佐伯郡石内村 五広島県佐伯郡八幡村のうち、利松、口和田及び高井六広島県安佐郡久地村のうち、宇賀、高山、本郷下、本郷中、三国 のうち、魚切、中郷、下城、上小深川及び下小深川四広島県佐伯郡石内村 五広島県佐伯郡八幡村のうち、利松、口和田及び高井六広島県安佐郡久地村のうち、宇賀、高山、本郷下、本郷中、三国、魚切、本郷上、小野原中、名原、小野原上、境原及び幸ノ神七広島県安佐郡日浦村のうち、毛木二八広島県安佐郡戸山村 九広島県安佐郡安村のうち、長楽寺及び高取十広島県安佐郡伴村十一長崎県西彼杵郡福田村のうち、柿泊郷、中浦郷、手熊郷及び上浦郷十二長崎県西彼杵郡式見村のうち、向郷、木場郷及び牧野郷十三長崎県西彼杵郡三重村のうち、詰ノ内、白髪及び遠木場 十四長崎県西彼杵郡時津村十五長崎県西彼杵郡長与村(高田郷及び吉無田郷を除く。)十六長崎県西彼杵郡矢上村のうち、現川名、田川内、薩摩城、中尾及び矢筈十七長崎県西彼杵郡日見村のうち、河内名十八長崎県西彼杵郡茂木町のうち、田手原名、木場名及び田上名 別表第四 一長崎県西彼杵郡深堀村二長崎県西彼杵郡香焼村三長崎県西彼杵郡伊王島村四長崎県西彼杵郡式見村(向郷、木場郷及び牧野郷を除く。)五長崎県西彼杵郡三重村(詰ノ内、白髪及び遠木場を除く。) 六長崎県西彼杵郡村松村七長崎県西彼杵郡伊木力村八長崎県西彼杵郡大草村九長崎県西彼杵郡喜々津村十長崎県西彼杵郡矢上村(現川名、田川内、薩摩城、中尾及び矢筈を除く。) 十一長崎県西彼杵郡日見村(河内名を除く。)十二長崎県西彼杵郡茂木町(田手原名、木場名及び田上名を除く。)十三長崎県北高来郡古賀村十四長崎県北高来郡戸石村十五長崎県北高来郡田結村 3 原爆医療法⑴ 制定時(乙6)第1条この法律 (田手原名、木場名及び田上名を除く。)十三長崎県北高来郡古賀村十四長崎県北高来郡戸石村十五長崎県北高来郡田結村 3 原爆医療法⑴ 制定時(乙6)第1条この法律は、広島市及び長崎市に投下された原子爆弾の被爆者が今なお置かれている健康上の特別の状態にかんがみ、国が被爆者に対し健康診断及び医療を行うことにより、その健康の保持及び向上をはかることを目的とす る。 第2条この法律において「被爆者」とは、次の各号の一に該当する者であって、被爆者健康手帳の交付を受けたものをいう。 一原子爆弾が投下された際当時の広島市若しくは長崎市の区域内又は政令で定めるこれらに隣接する区域内にあった者 二原子爆弾が投下された時から起算して政令で定める期間内に前号に規定する区域のうちで政令で定める区域内にあった者三前二号に掲げる者のほか、原子爆弾が投下された際又はその後において、身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者四前三号に掲げる者が当該各号に規定する事由に該当した当時その者の胎児 であった者第3条被爆者健康手帳の交付を受けようとする者は、その居住地…の都道府県知事…に申請しなければならない。 (2項及び3項略)第4条都道府県知事は、被爆者に対し、毎年、厚生省令で定めるところにより、 健康診断を行うものとする。 第7条厚生大臣は、原子爆弾の傷害作用に起因して負傷し、又は疾病にかかり、現に医療を要する状態にある被爆者に対し、必要な医療の給付を行う。ただし、当該負傷又は疾病が原子爆弾の放射能に起因するものでないときは、その者の治ゆ能力が原子爆弾の放射能の影響を受けているため現に医療を要す る状態にある場合に限る。 ( 付を行う。ただし、当該負傷又は疾病が原子爆弾の放射能に起因するものでないときは、その者の治ゆ能力が原子爆弾の放射能の影響を受けているため現に医療を要す る状態にある場合に限る。 (2項及び3項略)第8条前条第1項の規定により医療の給付を受けようとする者は、あらかじめ、当該負傷又は疾病が原子爆弾の傷害作用に起因する旨の厚生大臣の認定を受けなければならない。 (2項略)⑵ 昭和35年改正後(乙9の1)第14条の2 厚生大臣は、原子爆弾の放射線を多量に浴びた被爆者で政令で定めるもの(以下「特別被爆者」という。)が、負傷又は疾病(第7条1項の規定による医療の給付を受けることができる負傷又は疾病、遺伝的疾病、先天 性疾病及び厚生大臣が定めるその他の負傷又は疾病を除く。)につき、…第7 条第2項各号に規定する医療を受け…たときは、その者に対し、当該医療に要した費用の額を限度として、一般疾病医療費を支給することができる。(以下略)⑶ 昭和49年改正後(乙17)附則第3項原子爆弾が投下された際第2条第1号に規定する区域に隣接する 政令で定める区域内にあつた者又はその当時その者の胎児であつた者は、当分の間、第4条の規定の適用については、被爆者とみなす。 以上
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