平成19年6月28日判決言渡平成18年(ワ)第184号不当利得返還請求事件口頭弁論終結日平成19年5月29日主文 被告は原告に対し,561万8835円及びうち513万9674円に対する平成18年8月16日から支払済まで年5分の割合による金員を支払え。 原告のその余の請求を棄却する。 訴訟費用は,被告の負担とする。 この判決第1項は,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求の趣旨被告は原告に対し,563万8168円及びうち515万6594円に対する平成18年8月16日から支払済まで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,下記1(2)の金銭消費貸借取引(以下本件各取引という)に関し,原告が利息制限法1条1項所定の制限利率を超過する利息部分(以下それぞれ制限利率,超過利息という)への弁済金を借入債務に充当することによって生じる不当利得(以下本件不当利得という)を原因として,被告に過払金の返還と悪意の不当利得に基づく法定利息の支払を請求する事案である。 争いのない事実及び証拠により容易に認められる事実(1)当事者①被告(旧商号・A株式会社)は,貸金業の規制等に関する法律(以下貸金業法という)3条所定の登録を受けた貸金業者であり,平成15年1月1日,B株式会社を吸収合併し(以下本件合併という),同日商号を現在のものに変更した(以下合併前の営業を個別にいうときは,それぞれA,Bという。 また,合併前の各営業とその後の営業を一括して,単に被告と表示することがある。弁論の全趣旨)。 ②原告は,被告と本件各取引をしていた者である。 (2)本件各取引の経過①B及び被告は,同一の基本契約に基づき,遅くとも昭和63年11月4日から平成15年3月3日にかけて,制限利率超過の利率で,原告に別紙 ,被告と本件各取引をしていた者である。 (2)本件各取引の経過①B及び被告は,同一の基本契約に基づき,遅くとも昭和63年11月4日から平成15年3月3日にかけて,制限利率超過の利率で,原告に別紙取引明細書1記載の貸付をし,原告から同記載の弁済を受けた(以下本件取引①という。甲1,弁論の全趣旨)。 ②A及び被告は,同一の基本契約に基づき,平成12年5月18日から平成18年8月15日にかけて,制限利率超過の利率で,原告に別紙取引明細書2記載の貸付をし,原告から同記載の弁済を受けた(以下本件取引②という。 また,この貸付,弁済と上記①の貸付,弁済を一括して,それぞれ本件各貸付,本件各弁済という。甲2,弁論の全趣旨)。 争点 ①本件不当利得による過払金の,同発生後に行なわれた本件各貸付にかかる借入債務への充当の可否②被告の悪意の不当利得の成否,及び法定利息の始期③本件取引①による過払金の,本件取引②にかかる借入債務への充当の可否④本件不当利得返還請求権の消滅時効の成否 争点に関する当事者の主張(1)争点①について(原告の主張)本件取引①及び本件取引②は,それぞれ同一の基本契約に基づく継続的取引であるから,超過利息に対する本件各弁済を借入債務に充当することによって生じた過払金は,各取引毎に,同発生後になされた新たな本件各貸付にかかる借入債務に充当される。 (被告の主張)本件不当利得による過払金は,同発生後にされた本件各貸付にかかる債務に当然に充当されるものではなく,超過利息に対する本件各弁済の充当により貸付残高がマイナスになる毎に,個別の不当利得返還請求権が成立する。 (2)争点②について(原告の主張)被告は,制限利率を超過する高利で本件各貸付を行ない,本件各弁済を受けており,本件不当利得にかかる過払金の悪意の受益者で に,個別の不当利得返還請求権が成立する。 (2)争点②について(原告の主張)被告は,制限利率を超過する高利で本件各貸付を行ない,本件各弁済を受けており,本件不当利得にかかる過払金の悪意の受益者であるから,各過払金発生の時点から法定利息の支払義務がある。 (被告の主張)①民法704条の悪意者とは,法律上の原因のないことを知りながら利得をした者をいうところ,貸金業法43条1項所定のみなし弁済(以下単にみなし弁済という)が成立する場合には,給付の原因があることになるから,本件における悪意とは,本件弁済当時,被告が超過利息の受領についてみなし弁済が成立しないことを知りながら利得をしたことを意味するというべきであり,原告に主張立証責任があるが,その主張立証はない。 ②被告は,以下のとおり,本件各取引当時,みなし弁済の要件を具備し,同弁済が成立しているとの主観的認識を有しており,事後的な判例等によって,当時被告が有していた認識が覆されることがあってはならない。 ③すなわち,みなし弁済における任意性につき厳格説を採用した最高裁平成16年2月20日判決以前は,緩和説を採用した最高裁平成2年1月22日判決が存在していたし,17条書面,18条書面についても最高裁は緩和説を採用しており,同様の学説が有力に展開されていた。 また,大蔵省の外郭団体・財団法人大蔵財務協会の出版する「新訂実例問答式貸金業法のすべて」も,任意性が否定される場合を,詐欺,錯誤,強迫,強制執行といった例外的な場合に限定する考えを示していた。 ④そもそも,みなし弁済の制度は,貸倒リスクの高い層が安心して金融を得る途を開くことを企図して,貸金業者が貸金業法17条,18条による書面交付義務を果たした場合,借主の任意の弁済について,超過利息を業者に帰属させることにしたものであり,貸金 高い層が安心して金融を得る途を開くことを企図して,貸金業者が貸金業法17条,18条による書面交付義務を果たした場合,借主の任意の弁済について,超過利息を業者に帰属させることにしたものであり,貸金業者は,みなし弁済の成立をビジネスの前提として,業者登録をし,貸倒リスクの高い層に融資を行ない,収受した超過利息を売上計上して,納税をしているのであって,悪意の成否の判断に当たっては,このような業界の当然の前提が看過されてはならない。 ⑤仮に以上の主張が認められないとしても,各過払金の発生時点から貸金業者に法定利息の支払義務を負わせて,借主による検算が不可能なほどの複雑な過払金の充当計算を必要とする錯綜した権利関係を発生させることは,当事者の合理的意思に合致しないから,原告は,最終の取引日以降の法定利息を請求できるにとどまるというべきである。 (3)争点③について(原告の主張)①本件合併後に,同種の金銭消費貸借取引を別個に併存させる理由はなく,特段の事情がない限り,本件取引①と本件取引②の各基本契約は一体になったと考えるのが当事者の合理的意思に合致するから,本件合併当時,本件取引①により生じていた過払金は,本件取引②による借入債務に充当される。 ②よって,別紙原告計算書1,2記載のとおり,被告には,本件不当利得に基づき,過払元金515万6594円及び確定利息48万1574円並びに過払元金に対する最終取引日の翌日以降の法定利息の支払義務がある。 (被告の主張)本件取引①の貸主はB,本件取引②の貸主はAであり,本件取引①と本件取引②は,別個の基本契約に基づくものであるから,前者による過払金を後者の借入債務に充当することはできない。 (4)争点④について(被告の主張)①上記(1)(3)の(被告の主張)のとおり,本件不当利得による過払金請求 約に基づくものであるから,前者による過払金を後者の借入債務に充当することはできない。 (4)争点④について(被告の主張)①上記(1)(3)の(被告の主張)のとおり,本件不当利得による過払金請求権は,それぞれ別個の権利であるから,各発生時から個別に時効が進行し,10年間の経過によって順次時効消滅した。 ②本件取引①によって生じた過払金は,別紙被告計算書1記載のとおりであるところ,被告は,平成8年12月4日以前に発生した過払金総額152万2302円について,原告の過払金返還請求権の消滅時効を援用したから,同過払金は,上記計算書記載のとおり,111万6626円を超えて存在しない。 ③また,本件取引②によって生じた過払金は,別紙被告計算書2記載のとおり33万7113円であるところ,被告は,これを被告の原告に対する貸金債権29万3713円及び利息7097円と対当額で相殺したから,同過払金は,上記計算書記載のとおり,3万6299円を超えて存在しない。 (原告の主張)①上記(1)(3)の(原告の主張)のとおり,本件不当利得による過払金請求権は,その後なされた本件各貸付にかかる借入債務に充当され,古いものから順次消滅しているから,別途時効消滅する余地はない。 ②また,そのつど新たに債務の承認が行なわれるか,消費貸借の清算が具体化した最終取引日の翌日から消滅時効が進行すると解すべきである。 第3争点に対する判断 本件不当利得による過払金の,同発生後に行なわれた本件各貸付にかかる借入債務に対する充当の可否(争点①について)(1)同一の貸主・借主間で,基本契約に基づき,制限利率超過の利率によって,継続的な金銭消費貸借取引が行なわれ,超過利息に対する弁済により過払金を生じたときは,借主が過払金の発生を確定的に認識していない場合においても, 間で,基本契約に基づき,制限利率超過の利率によって,継続的な金銭消費貸借取引が行なわれ,超過利息に対する弁済により過払金を生じたときは,借主が過払金の発生を確定的に認識していない場合においても,(a)利息制限法の趣旨を害しない範囲で,借主の充当権限を制限する合意が成立していたなどの特段の事情のない限り,まず借主は,民法489条,491条に基づき,当該過払金を,その発生当時,当該基本契約に基づき存在していた他の借入債務に充当する旨の黙示の指定をしたとみなされ,あるいはその旨の指定をしたと推認するのが相当であるが(参考・最高裁平成15年7月18日判決),(b)同充当の結果,更に過払金を生じ,当事者間にこれを充当すべき借入債務が一旦存在しなくなった場合においても,その後新たな貸付がなされたときは,それ以前に,当該基本契約が終了していたとか,借主が当該過払金に関し不当利得返還請求権を行使するなどして充当権を放棄,喪失していたなどの特段の事情のない限り,借主は,新たな貸付の行なわれた各時点において,当該過払金を,新たに発生した借入債務に順次充当する旨の黙示の指定をしたとみなされ,あるいはその旨の指定をしたと推認するのが相当である。 (2)前示第2の1(2)のとおり,本件取引①及び本件取引②は,それぞれ同一の基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引であり,また上記(1)(a)(b)掲記の特段の事情については,本件取引①の終了に関して後示3で判断する以外の事情を認めるだけの証拠は存在しないから,本件取引①及び本件取引②のそれぞれにおいて,超過利息に対する本件各弁済が,既存の借入債務に充当された結果生じた個々の過払金は,各過払金の発生後に,更に上記各基本契約に基づいて新たに発生した借入債務に充当されるというのが相当であって,この点に関する原告の主 本件各弁済が,既存の借入債務に充当された結果生じた個々の過払金は,各過払金の発生後に,更に上記各基本契約に基づいて新たに発生した借入債務に充当されるというのが相当であって,この点に関する原告の主張には理由があると認められる。 (3)前示(1)(b)及び上記(2)の認定に対し,被告は,前示第2の3(1)(被告の主張)のとおり,本件不当利得による過払金は,同発生後に生じた新たな借入債務には充当されず,貸付残高がマイナスになる毎に,個別の不当利得返還請求権が成立する旨を主張している。 しかしながら,(ア)債務者による充当の指定は,弁済充当に関する債権者・債務者間の合意と異なり,民法488条1項に基づき,債務者が一方的に指定できる性質のものであるから,この点を勘案すれば,金銭消費貸借契約の弁済充当の内容は,貸主に不当な損害を与えるなどの特段の事情の認められない限り,借主にとって有利な結果になるよう,その合理的意思を推認する方法によって解釈するのが相当というべきところ,(イ)前示(1)(a)の場合と同様に,前示(1)(b)の場合においても,借入総額の減少を希望し,かつ複数の権利義務が発生,並存するような錯綜した法律関係が生じることを望まないのが,借主の通常の意思に沿うものと考えることができる。 そして,(ウ)前示(1)(b)の場合に,借主が当該過払金の発生を確定的に認識していないため,過払金返還請求権を行使しないまま,法定利率を上回る利率で更に新たな貸付を受けるといった,客観的合理性を欠き,借主にとって不必要かつ不利益な行動に出るのは,通常貸主において,みなし弁済の規定等に基づき,制限利率超過の利率による貸付及びこれに対する弁済が有効であるとの態度を取っていることに起因するものであるから,この場合,民法130条,95条の趣旨を類推して,借主は ,みなし弁済の規定等に基づき,制限利率超過の利率による貸付及びこれに対する弁済が有効であるとの態度を取っていることに起因するものであるから,この場合,民法130条,95条の趣旨を類推して,借主は,新たな貸付のあった時点において,前示(1)(a)の場合と同様の充当指定を行なうことができ,貸主は,信義則上これを拒絶することができないと解するのが衡平の原則に合致するというべきである。 一方,(エ)基本契約が存続し,金銭消費貸借取引が継続している以上,新たな貸付の発生は通常予想されるところであるから,特段の事情のない限り,過払金の発生後に生じた新しい借入債務への充当が,貸主の信頼を裏切るということはできない。 また,(オ)弁済金を超過利息に充当する旨の指定があったとしても,当該弁済がみなし弁済として有効であるなどの特段の事情がない限り,指定自体無意味であるから,貸主が当該指定を信じたとしても,これに正当な根拠があるとは認められないし,(カ)新たな貸付の以前に,借主が過払金返還請求権を行使したなどの特段の事情が存在しない場合には,貸主において,当該過払金が他の債務に充当されない旨の信頼を有していたと認めることも困難である。 そして,以上(ア)(エ)ないし(カ)の特段の事情を認めるに足りる証拠はないから,直ちに被告の上記主張を採用して,前示(2)の認定を左右することができない。 被告の悪意の不当利得の成否,及び法定利息の始期(争点②について)(1)原告は,前示第2の3(2)(原告の主張)のとおり,被告が悪意の受益者である旨を主張し,これに対し,被告は,前示第2の3(2)(被告の主張)のとおり,(a)本件弁済当時,被告が超過利息の受領についてみなし弁済が成立しないことを知りながら利得をしたことの主張立証責任は原告にあり,また,(b)本件取引 は,前示第2の3(2)(被告の主張)のとおり,(a)本件弁済当時,被告が超過利息の受領についてみなし弁済が成立しないことを知りながら利得をしたことの主張立証責任は原告にあり,また,(b)本件取引当時,自己がみなし弁済の要件を具備し,同弁済が成立しているとの主観的認識を有していた旨を主張している。 (2)そこで検討するに,民法704条所定の悪意とは,利得者が自己の利得に法律上の原因が存在しないことを知っていることをいうが,それをもって足り,利得発生の具体的な時期やその金額について確定的な認識を有していることを要しないと解するのが相当である。 これを金銭消費貸借契約についてみるに,(a)利息制限法1条1項は,制限利率超過の契約が,超過部分につき無効である旨を明確に規定しており,(b)これに対し,貸金業法43条は,同条所定の要件を具備した弁済は,利息制限法の上記規定にかかわらず,有効な弁済とみなす旨を定めているにすぎない。 また,(c)一般に,みなし弁済の要件の具備は,貸主において主張立証すべき事項と解されている。そして,(d)制限利率超過の利率による継続的な金銭消費貸借取引において,上記(a)の無効な契約部分に基づいて超過利息に対する弁済が続いた場合,既存の借入債務への弁済金の充当によって,過払金が発生することは見易い道理というべきである。 以上の点を考慮すれば,制限利率超過の利率による継続的な金銭消費貸借取引について,①借主が過払金の不当利得に対する貸主の悪意をいうためには,制限利率超過の利息の定め及びその弁済があったことを主張立証すれば足り,②これに対し,貸主は,(ア)自己が当該取引に貸金業法所定のみなし弁済の規定の適用があると信じていた事実だけでなく,(イ)その信頼に正当な客観的根拠が存在することを主張立証しなければ,自己の悪意に関 ②これに対し,貸主は,(ア)自己が当該取引に貸金業法所定のみなし弁済の規定の適用があると信じていた事実だけでなく,(イ)その信頼に正当な客観的根拠が存在することを主張立証しなければ,自己の悪意に関する借主の主張を排斥することができないと解するのが相当であるところ,本件に提出された前示第2の3(2)(被告の主張)掲記の各事情が,直ちに上記(イ)の正当な客観的根拠に該当するとは認められない。 (3)したがって,被告の前示(1)の主張は,直ちに採用できず,被告が不当利得時から悪意である旨をいう原告の主張には理由がある。 (4)そのほか,被告は,借主の合理的意思の推認を理由に,民法704条所定の法定利息は,最終取引日以降について請求できるにすぎない旨も主張しているが,上記1(2)の弁済充当に当たり,原告が被告主張の趣旨の指定をしたと認めるだけの根拠はなく,被告の上記主張も採用できない。 本件取引①による過払金の,本件取引②にかかる借入債務に対する充当の可否(争点③について)(1)同一の貸主・借主間で,数個の基本契約に基づき,制限利率超過の利率によって,複数の継続的な金銭消費貸借取引が行なわれ,その一つが終了した時点で,当該取引において,超過利息に対する弁済によって過払金を生じていたときは,特段の事情のない限り,借主は,過払金の発生を確定的に認識していない場合においても,民法489条,491条に基づき,当該過払金を,その発生当時,他の基本契約に基づき存在した借入債務に充当する旨の黙示の指定をしたとみなされ,あるいはその旨の指定をしたと推認するのが相当である。 (2)前示第2の1(2)①のとおり,本件取引①では,平成15年3月3日以降,なんらの貸付,弁済が行なわれておらず,同取引は同日をもって終了したと認めるのが相当であるところ,前示第 が相当である。 (2)前示第2の1(2)①のとおり,本件取引①では,平成15年3月3日以降,なんらの貸付,弁済が行なわれておらず,同取引は同日をもって終了したと認めるのが相当であるところ,前示第2の1(2)①②の取引経過並びに前示1及び2判示の内容に基づき計算すると,同日当時,(a)本件取引①では,別紙充当計算書1のとおり,過払元金433万9019円及び確定利息23万2491円が発生しており,(b)他方,本件取引②では,別紙充当計算書2のとおり,23万6123円の貸付残高があると認められるから,上記(1)のとおり前者を後者に充当し,更に前示1(2)に判示の内容に従って,その後本件取引②で支払われた超過利息への弁済金を順次借入債務に充当してゆくと,最終取引日である平成18年8月15日当時,原・被告間には,513万9674円の過払元金と,47万9161円の確定利息が発生していたと認められる。 (3)上記認定に対し,被告は,前示第2の3(3)(被告の主張)のとおり,本件取引①と本件取引②が別個の基本契約に基づくものであることなどを理由に,両取引間での過払金の充当を争っているが,前示1(3)(ア)(イ)(オ)に判示したとおり,(a)過払金の充当指定の解釈に当たっては,借主にとって有利な内容で合理的意思を推認すべきところ,(b)借入総額の減少を希望し,複数の権利義務が並存する錯綜した法律関係が発生することを望まないのが,借主の通常の意思に沿うものであるし,(c)弁済金を超過利息に充当する旨の指定も無意味であるから,以上の点に照らし,被告の上記主張は,容易に採用できない。 本件不当利得返還請求権の消滅時効の成否(争点④について)(1)この点について,被告は,前示第2の3(4)(被告の主張)のとおり,(a)本件不当利得による過払金は,同発生 容易に採用できない。 本件不当利得返還請求権の消滅時効の成否(争点④について)(1)この点について,被告は,前示第2の3(4)(被告の主張)のとおり,(a)本件不当利得による過払金は,同発生後に生じた新たな借入債務に充当されないし,(b)本件取引①に基づき発生した過払金を本件取引②の借入債務に充当することもできない,(c)被告は,悪意の受益者に当たらないなどの主張を前提として,本件不当利得返還請求権の時効消滅を主張しているが,前示1ないし3判示のとおり,前提となる上記(a)ないし(c)の主張には,いずれも理由がない。 (2)そして,前示1及び3に判示したところによれば,本件各取引に基づき発生した過払金は,その発生した順に,各発生の当時,本件各取引に基づき存在していた既存の借入債務ないし,その後新たに発生した借入債務に充当されて消滅したというべきであって,この認定を覆して,被告の時効援用の当時,本訴提起より10年以前に発生した不当利得返還請求権が存続していたとは認められない。 したがって,被告の消滅時効の主張は採用できないというのが相当である。 結論 以上の次第で,原告の請求は,被告に対し,本件不当利得に基づき,前示3(2)末尾の過払元金及び確定利息の合計額561万8835円並びに,うち過払元金513万9674円に対する最終取引日の翌日である平成18年8月16日から支払済まで年5分の割合による法定利息の支払を求める限度で理由がある。 また,訴訟費用については,民訴法64条但書を適用して,全部被告に負担させるのが妥当である。 岐阜地方裁判所多治見支部裁判官夏目明徳 所多治見支部裁判官 夏目明徳
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