令和4(行ウ)210 障害年金請求却下処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和6年4月19日 東京地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-93578.txt

判決文本文14,637 文字)

令和6年4月19日判決言渡令和4年(行ウ)第210号障害年金請求却下処分取消請求事件 主文 1 厚生労働大臣が令和2年8月5日付けで原告に対してした障害基礎年金及び障害厚生年金の裁定請求を却下する旨の処分を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要 本件は、原告が、脳脊髄液減少症(以下「本件傷病」という。)により障害の状態にあるとして、障害認定日による障害基礎年金及び障害厚生年金(以下、総称して「障害給付」ということがある。)の支給の裁定請求をしたところ、厚生労働大臣から同請求を却下する旨の処分(以下「本件処分」という。)を受けたため、本件処分の取消しを求める事案である。 1 関係法令等の定め別紙2のとおり(同別紙で定義した略称は、本文においても用いる。) 2 前提事実次の事実については、当事者間に争いがないか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨により、容易に認められる。 ⑴ 原告ア原告は、昭和55年▲月生まれの男性である。 イ原告は、平成13年6月30日、愛媛県内において自動車を運転中、停止していたところに第三者が運転する自動車に追突されるという交通事故(以下「本件事故」という。)に遭って受傷した。 原告は、平成18年7月1日、A病院を受診し、本件傷病の診断を受けた。 (甲2、弁論の全趣旨)⑵ 本件処分に至る経緯等ア原告は、令和2年5月14日、本件傷病により障害の状態にあるとして、障害認定日による障害給付の裁定請求(予備的に事後重症による障害給付の裁定請求)をした(以下「本件裁定請求」という。乙1、弁論の全趣旨)。 イ厚生 件傷病により障害の状態にあるとして、障害認定日による障害給付の裁定請求(予備的に事後重症による障害給付の裁定請求)をした(以下「本件裁定請求」という。乙1、弁論の全趣旨)。 イ厚生労働大臣は、令和2年8月5日付けで、障害認定日による請求に関し、本件傷病について、提出された診断書では、障害認定日(平成14年12月30日。以下「本件障害認定日」という。)現在の障害の状態を認定することができないとして、同請求を却下する旨の処分をした(本件処分。甲3)。 その後、厚生労働大臣は、令和2年8月6日付けで、事後重症による請求 に関し、本件裁定請求の日である同年5月14日(以下「本件裁定請求日」という。)時点の原告の障害の程度が国年令別表に定める障害等級2級に該当するとして、同日を受給権発生日とする障害給付を支給する旨の決定をした(弁論の全趣旨)。 ウ原告は、令和2年10月14日(受理)、本件処分を不服として、近畿厚生 局社会保険審査官に対し、審査請求をしたが、同審査官は、令和3年2月19日付けで、同審査請求を棄却する旨の決定をした(甲4)。 また、原告は、同年4月15日、同決定を不服として、社会保険審査会に対し、再審査請求をしたが、同審査会は、同年11月30日付けで、同再審査請求を棄却する旨の裁決をした(甲5)。 ⑶ 本件訴えの提起原告は、令和4年5月21日、本件訴えを提起した。 3 争点及び争点に関する当事者の主張本件の争点は、本件処分の適法性であり、具体的には、本件障害認定日(平成14年12月30日)時点における原告の障害の状態が、障害等級2級に該当す る程度のものであったか否かに争いがある。 (原告の主張)⑴ 障害認定基準は内部基準 定日(平成14年12月30日)時点における原告の障害の状態が、障害等級2級に該当す る程度のものであったか否かに争いがある。 (原告の主張)⑴ 障害認定基準は内部基準にすぎないため、裁判所の判断を拘束するものではなく、また、画一的にこれを適用することがかえって不合理な結果となる場合もあることから、病状の特殊性等に照らし、障害認定基準において考慮されない要素等が存在する場合には、個別具体的に判断すべきであり、機械的に障害 認定基準に当てはめることは違法というべきである。 ⑵ 原告は、本件障害認定日から本件裁定請求日まで、一貫して、日常生活に支障が出ると考えられる程度の頭痛や嘔気、めまい、失神等の本件傷病の症状を訴えていたところ、本件裁定請求日時点における原告の障害の状態は、障害等級2級に該当する程度のものであった。したがって、原告の障害の状態は、本 件障害認定日の時点においても、「体幹の機能に歩くことができない程度の障害を有するもの」(国年令別表の2級14号)、あるいは、身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能になったもので、「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められ る状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」(同15号)として、障害等級2級に該当していた。 (被告の主張)⑴ 原告は、本件障害認定日から本件裁定請求日まで、原告の症状が一貫してお り、同一の障害の状態にあった旨を主張するが、本件障害認定日時点とA病院の初診日である平成18年7月1日時点、同日時点とA病院脳神経外科 害認定日から本件裁定請求日まで、原告の症状が一貫してお り、同一の障害の状態にあった旨を主張するが、本件障害認定日時点とA病院の初診日である平成18年7月1日時点、同日時点とA病院脳神経外科B医師作成の令和2年4月20日付け診断書(平成20年2月20日現症のもの。以下「平成20年現症診断書」という。甲2)の現症日である同日時点及び同日時点と本件裁定請求日時点で、原告の障害の状態が同程度であったとはいえな いことなどからすると、原告が本件裁定請求日時点で障害等級2級に該当する と認定されたことをもって、直ちに本件障害認定日における原告の障害の状態が障害等級2級に該当する程度であったとはいえない。 ⑵ 障害認定日による障害給付の裁定請求に際しては、障害の状態に関する医師の診断書を添付することとされ、その診断書の内容については、障害認定日から3か月以内の現症が記載されていることが必要である。C病院神経内科D医 師作成の令和元年11月22日付け診断書(以下「D医師診断書」という。甲6)は、この認定日診断書に当たるが、これには、本件障害認定日時点における原告の日常生活状況や日常生活能力等について明らかにする記載が何らないことから、これにより、本件障害認定日時点の原告の障害の程度を判断することはできない。 所定の診断書以外の資料から原告の障害の程度を認定することが許されるとしても、C病院及びA病院の診療録のほか、平成20年現症診断書や病歴・就労状況等申立書(甲1)等、原告が提出した資料からは、これを認定することができない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に加え、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ⑴ 原告の診療経過等ア原 とができない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に加え、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ⑴ 原告の診療経過等ア原告は、本件事故(平成13年6月30日)により受傷し、同日以降、複 数の医療機関を受診した後、同年10月24日、C病院を受診した。C病院の初診時、原告は、少し動くと右上肢痛があるほか、頭痛、頸部痛、頭がぼーっとする、仕事中に倒れた、嘔気、下痢の症状がある旨申告し、頸部捻挫等と診断された。 原告は、平成15年4月7日まで、C病院に通院し、レントゲン検査、頸 椎及び頭部のMRI検査、脳波検査等の検査を受けたほか、リハビリや薬剤 処方等の治療を受けた。この間の診療録には、次の記載がある。 平成13年10月24日 「仕事やめた。(バラ農家)」 平成13年11月14日、同月28日 「変わりなし」 平成14年7月27日 「2、3日前頭痛する(軽度)、嘔気は頭痛激しいときに出現」 平成14年9月2日 「頭痛はひどい、急にふっとなる時がある」 平成14年12月16日 「先月と一昨日頭痛生じた、(頭痛につき)ありとあらゆる痛み、嘔気」 平成15年3月3日 「一時頭痛ありと」(以上につき、甲1、6、7の2) イ原告は、平成15年9月及び平成17年2月、E病院において、腰椎EBP(ブラッドパッチ、硬膜外自家血注入療法)の治療を受け、また、平成18年7月1日、同病院の医師から紹介されたA病院を受診し、B医師の診察を受けた。原告は、同日、B医師に対し、頭痛、めまい、意識がとぶ、いらいら、うつ、不眠、急に手足が痛むといった症状があること等を申 8年7月1日、同病院の医師から紹介されたA病院を受診し、B医師の診察を受けた。原告は、同日、B医師に対し、頭痛、めまい、意識がとぶ、いらいら、うつ、不眠、急に手足が痛むといった症状があること等を申告した。 原告は、同日以降、A病院に入通院し、MRミエログラフィー検査、MRI検査等の検査を受けたほか、胸椎ブラッドパッチ(平成19年3月、平成22年5月)、アートセレブ(人工髄液)注入療法(平成24年3月、同年9月)や薬剤処方等の治療を受けた。A病院の診療録には、次の記載がある。 平成20年6月16日 「時々激しい頭痛あり」、「バイトをはじめた」 平成21年6月22日 「仕事休むのがふえて」、「アルバイトをして、生活している、週5回の仕事に移りたい」、「仕事をしている時はいいが、その後リバウンドがきつい」 平成21年10月19日 「現在農業の手伝いしている、家業」、「長時間の集中ができない、頭痛頻発、少し体が楽になった」 平成22年2月8日 「運動をはじめた、スポーツジムでトレーニング」、 「全体としてはよくなっている」 平成22年8月9日 「5月のEBP後よくなっている、痛み↓」、「ウォーキングできるようになった、スポーツジムに通っている」 平成23年10月17日 「週3回ジムに通っているが通うのがつらい」 平成24年12月17日 「体力がなくなった、頭痛の頻度↑」 平成25年4月22日 「少し改善傾向か」、「体調が回復している」、「アートセレブの効果も上がってきているのではないか」 平成25年9月9日 「5月から頭痛頻回、運動が困難」 平成25年12月21日 「水-金 か」、「体調が回復している」、「アートセレブの効果も上がってきているのではないか」 平成25年9月9日 「5月から頭痛頻回、運動が困難」 平成25年12月21日 「水-金会社の研修」、「今年の5月までは運動ができていて、6月から運動できず」 平成26年4月7日 「花のアレンジの仕事をしている、運動ができなかった」(以上につき、甲8)ウ平成20年現症診断書には、次の記載がある(甲2)。 障害の原因となった傷病名脳脊髄液減少症 傷病が治った(症状が固定して治療の効果が期待できない状態を含む。)かどうか。傷病が治っていない場合 … 症状の良くなる見込み不明 診断書作成医療機関における初診時所見(初診年月日平成18年7月1日)常に激しい頭痛、回転性めまい、頭重、腰痛、光過敏、手足の痺れが長 期にわたって持続している。 現在までの治療の内容、反応、期間、経過、その他の参考となる事項初診時のMRミエロで頸、胸椎から漏出像あり、脳脊髄液減少症の確定診断。平成19年3月に入院加療、胸椎にブラッドパッチ実施。症状の改善がなく、めまい、激しい頭痛、意識がとぶ、いらいら、不眠などの症状 持続(診療回数年間4回) 現在の症状、その他参考となる事項ブラッドパッチ治療後、症状の悪化が見られ、意識が遠のく発作、息切れ、殴られたような頭痛の症状が出現 一般状態区分表(平成20年2月20日)身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中 の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの (平成20年2月20日)身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中 の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの その他の障害(平成20年2月20日現症)a 自覚症状頭重、激しい頭痛、回転性めまい、などの他に意識がとぶようなてんかん症状が持続している。 b 他覚症状髄液漏出が持続し、充分な髄液がないために症状が改善しない。 現症時の日常生活活動能力及び労働能力回転性めまい、四肢の痺れのために充分に座位、立位を保持することができず、日中の8時間以上を臥床している。日常生活は不自由で介助を必 要としている。労働能力はない。 予後今後も症状が持続し、長期の療養が必要と思われる。 エ B医師作成の令和2年4月20日付け診断書(同年2月10日現症のもの。 以下「令和2年現症診断書」という。甲10、乙12)には、「その他の障害」 (同日現症)欄の「自覚症状」欄に、「手足の痺れと回転性めまいのため易転倒な状態が続いている。2018年8月に転倒し、足のケガのために体を動かすことができず、臥床しがちになった。」との記載がある。 ⑵ 脳脊髄液減少症(本件傷病)について(甲9、乙7)ア本件傷病は、何らかの理由により脳脊髄液が漏出、減少し、脳が下方にけ ん引されることにより頭痛等様々な全身症状が現れる疾患である。本件傷病 は、医療関係者の間でも十分に認識されているとはいい難く、治療経験の乏しい施設では正確な診断がされない可能性がある。 イ本件傷病に最も特徴的な症状は起立性頭痛であり、これは安静臥床で軽快することが多いが、必ずしも起立によって ているとはいい難く、治療経験の乏しい施設では正確な診断がされない可能性がある。 イ本件傷病に最も特徴的な症状は起立性頭痛であり、これは安静臥床で軽快することが多いが、必ずしも起立によって起こる頭痛ばかりではない。頭痛以外にも、視力・視野障害、聴力・平衡障害等、多彩な症状を呈することが ある。頭痛以外の随伴症状の例としては、嘔気嘔吐、項部硬直、上背部痛、倦怠・易疲労感、めまい、歩行困難等がある。 ウ本件傷病に対しては、ブラッドパッチ治療が効果的であるが、同治療により確実に治癒するものではない。 2 障害等級の認定について 国年令別表及び厚年令別表第一に規定する障害の程度の認定に関しては、その具体的な認定の基準として障害認定基準が定められており、厚生労働大臣による障害等級の認定はこれに従って行われているところ、障害認定基準は、行政規則であり法的拘束力はないものの、医学的知見を総合して定められたものであり、最新の知見を踏まえた改正がされていることも勘案すると、その内容は合理的な ものであると認められる。また、障害給付の公平を確保するためには、障害の程度の認定が、医学的知見を踏まえて一定の合理的基準に従って運用される必要がある。これらの点を考慮すると、障害の程度の具体的な認定は、特段の事情がない限り、障害認定基準を参酌して判断するのが相当である。 本件傷病による原告の障害については、いわゆる難病を含む「その他の疾患に よる障害」として、その障害の程度は、全身状態、栄養状態、年齢、術後の経過、予後、原疾患の性質、進行状況等、具体的な日常生活状況等を考慮し、総合的に認定すべきものであり、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものが障害等級2級 予後、原疾患の性質、進行状況等、具体的な日常生活状況等を考慮し、総合的に認定すべきものであり、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものが障害等級2級に該当することとなる(別紙2の3⑵ウ)。 3 障害等級2級該当性の検討 ⑴ 原告の症状ないし障害の程度の推移ア以下でみるとおり、原告には、本件事故後から、日々変動はあるものの、頭痛やめまい等の本件傷病の症状が断続的に生じており、平成15年以降、ブラッドパッチ等の治療により一時的には症状が改善することがあったものの、時間の経過により症状が再燃するということを繰り返していたと認め られる。 イ具体的には、原告は、本件事故により本件傷病を発症し、その約5年後、A病院を最初に受診した平成18年7月1日時点において、「常に激しい頭痛、回転性めまい、頭重、腰痛、光過敏、手足の痺れが長期にわたって持続している。」との所見であったところ(前記1⑴ウ)、この間、原告は、平 成13年10月24日のC病院初診時において、少し動くと右上肢痛があるほか、頭痛、頸部痛、仕事中に倒れた、嘔気等の症状があると訴えており、「仕事やめた。(バラ農家)」との同日の診療録の記載からは、本件事故から4か月弱の同日時点で、仕事(バラ園での勤務。甲11)を続けることが困難な程度の症状が現れていたことが認められ、また、「頭痛はひどい」(平成 14年9月2日)、「(頭痛につき)ありとあらゆる痛み、嘔気」(同年12月16日)といった診療録の記載からすると、同月頃の原告の症状は相当に重いものであったと認められるが(なお、病歴・就労状況等申立書(甲1)に、同月30日頃の状況として、「頭痛、めまい、てんかんの様な症状があり、ほとんど 録の記載からすると、同月頃の原告の症状は相当に重いものであったと認められるが(なお、病歴・就労状況等申立書(甲1)に、同月30日頃の状況として、「頭痛、めまい、てんかんの様な症状があり、ほとんどねていた。」との記載がある。)、原告は、E病院で平成15年9月にブ ラッドパッチ治療を受けるまでは、頸部捻挫等との診断で、対症的な治療しか受けていなかった。かかる原告の症状の発現状況や診療経過に加え、脳脊髄液の漏出、減少により、脳が下方にけん引され、頭痛等様々な全身症状が現れるという本件傷病における症状の発生の機序等に照らすと、本件事故から同月頃まで(本件障害認定日を含む。)の原告の症状は、悪化することはあ っても改善することはなく、本件事故から約1年半が経過した本件障害認定 日の頃には、既に、現在に至るまでの間で最も重い程度になっていたと認めるのが相当である。 その後、原告は、E病院及びA病院においてブラッドパッチのほか、アートセレブ注入療法等の治療を受け、少なくとも平成20年頃から平成26年頃にかけては、一時的ではあるが、アルバイトや「農業の手伝い」をしたり、 スポーツジムに通って軽い水泳や体操等をしたりすることができるようになった。もっとも、アルバイトといっても、原告が住んでいた家の近くのコンビニエンスストア等で体調がよい時に数時間程度アルバイトをするといったもので、その際も、問題なく就労できていたわけではなく、頭痛等の症状のため途中で帰宅したり、痛み止めを服用したりしていたほか、「農業の 手伝い」や「花のアレンジの仕事」も、実家で家族らが行っている農業やフラワーアレンジメント教室を手伝って、軽作業や座って行うことのできる作業をするといったものであった。(前記1⑴イ、甲11、12、原告本人、証人F) ンジの仕事」も、実家で家族らが行っている農業やフラワーアレンジメント教室を手伝って、軽作業や座って行うことのできる作業をするといったものであった。(前記1⑴イ、甲11、12、原告本人、証人F)そして、原告は、平成24年9月を最後に、ブラッドパッチ治療やアート セレブ注入療法を受けておらず、現在に至るまで、定期的にB医師の診察を受けるという状況が継続しているところ(甲11、原告本人、証人F)、A病院の診療録等によれば、原告においては、ブラッドパッチ等の治療により一時的に症状が改善しても、その後症状が再燃するなど、治療の効果が長く続かなかったことが認められる。 以上によれば、原告の症状は、少なくとも平成20年頃から平成26年頃までは一定程度改善していたものの、その後再び悪化し、同年頃以降、本件裁定請求日の頃までの症状は、本件障害認定日の頃から平成15年9月頃までと同程度あるいはこれを超えない程度のもので、平成20年頃から平成26年頃までに比べると重いものであったというべきである。 ウかかる症状の推移を踏まえ、原告の障害の程度について検討すると、本件 傷病の症状である頭痛やめまい等は、その症状の内容等に照らして日常生活状況や日常生活能力等に直接影響し得るものであることからすると、障害の程度は、基本的には症状の軽重によるということができる。そうすると、原告の障害の程度についても、本件事故から約1年半が経過した本件障害認定日の頃には、既に、現在に至るまでの間で最も重い程度になっており、少な くとも平成20年頃から平成26年頃までは一定程度改善していたものの、その後、本件裁定請求日の頃までは、本件障害認定日の頃から平成15年9月頃までと同程度あるいはこれを超えない程度の重い状態が継続していたと 20年頃から平成26年頃までは一定程度改善していたものの、その後、本件裁定請求日の頃までは、本件障害認定日の頃から平成15年9月頃までと同程度あるいはこれを超えない程度の重い状態が継続していたと認められる。 そして、原告は、令和2年現症診断書に基づき、本件裁定請求日時点にお いて、その障害の状態が障害等級2級に該当する程度であるとされていることからすると、少なくとも同日時点と同程度の重い障害の状態にあった本件障害認定日においても、その障害の状態は、障害等級2級に該当する程度のもの(身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要 とする程度のもの)であったと認めるのが相当である。 ⑵ 被告の主張についてアこれに対し、被告は、D医師診断書やC病院の診療録には、原告の日中の臥床状況等、本件障害認定日時点の日常生活状況及び日常生活能力等の判断の基礎となる記載は見当たらないこと、病歴・就労状況等申立書に係る記載 内容も信用し難いことなどから、本件障害認定日における原告の障害の程度を認定することはできない旨主張する。 しかしながら、日常生活状況等の判断の基礎となる記載が見当たらないという点については、本件傷病に係る医学的知見を踏まえ、C病院及びA病院の診療録を含む証拠によれば、原告の症状の推移を合理的に認定することが でき、また、頭痛やめまいといった症状が日常生活状況等に直接影響するも のであることは、前記⑴のとおりである。D医師診断書やC病院の診療録に原告の日常生活状況等に係る記載が乏しいとしても、前記認定に係る原告の症状の推移から、原告の障害の程度の推移についても合理的に推認することがで 、前記⑴のとおりである。D医師診断書やC病院の診療録に原告の日常生活状況等に係る記載が乏しいとしても、前記認定に係る原告の症状の推移から、原告の障害の程度の推移についても合理的に推認することができ、しかも、かかる推認は、何ら医学的、客観的根拠に欠けるものではないというべきである。 その他被告の主張する点によっても、前記⑴の認定が左右されるものではなく、被告の前記主張は採用することができない。 イ被告は、本件障害認定日時点と平成18年7月1日時点、同日時点と平成20年2月20日時点及び同日時点と本件裁定請求日時点の原告の障害の程度が同程度であったとはいえず、原告の障害の程度が本件障害認定日から 本件裁定請求日まで一定であったともいえないなどと主張するが、前記⑴のとおり、本件障害認定日時点と本件裁定請求日時点の障害の程度を比較して、少なくとも前者は後者と同程度に重いと認められる以上、この間における原告の症状ないし障害の程度に変動があったとしても、前記⑴の認定を左右するものとはいえない。 なお、被告は、平成20年頃から平成26年頃までの間、ブラッドパッチ等の治療により限定的に症状が改善する期間を超えて、原告の症状が改善していることから、それらの治療の有無にかかわらず、原告の症状は一定ではない旨を主張しているとも解されるが、上記期間中あるいはその前である、平成19年3月、平成22年5月、平成24年3月及び同年9月にそれぞれ ブラッドパッチ治療あるいはアートセレブ注入療法を受けるなどし、同月の最後の治療から相当程度の期間が経過した平成26年頃以降、その症状が再び悪化していることも踏まえると、上記期間中の原告の症状が一定程度改善していたことと当該治療の有無とが無関係であるとまでいうのは相当ではな から相当程度の期間が経過した平成26年頃以降、その症状が再び悪化していることも踏まえると、上記期間中の原告の症状が一定程度改善していたことと当該治療の有無とが無関係であるとまでいうのは相当ではない。 また、被告は、「2018年8月に転倒し、足のケガのために体を動かすこ とができず、臥床しがちになった。」との令和2年現症診断書の記載(前記1⑴エ)等から、原告の症状が平成30年頃以降、明らかに増悪した旨主張する。しかし、平成30年8月27日の診療録には「足にガラスが刺さる外傷、ストレス、怪我で1か月休んだ、台風でさらに症状悪化」との記載があることからすると(甲15)、令和2年現症診断書の記載は、この限度で捉えるべ きものであり、足のけがから1年半以上が経過した本件裁定請求日においてもその影響が残存していたとは認められない。原告が、ガラスを踏んで足をけがし、松葉杖を使っていたことはあるが、これが原因で臥床しがちになったことはない旨供述していることからしても(原告本人)、足のけがを含め、被告の主張する点が、前記⑴の認定を左右するものとは認められない。 ウ被告は、原告の症状について、C病院の診療録に「2、3日前頭痛する(軽度)」、「先月と一昨日頭痛生じた」等とあることなどから、本件障害認定日前後において、重度の頭痛等の症状が継続してあったものとはいえない旨主張する。しかし、頭痛等の症状には日々変動があってしかるべきと思われることからすると、前記記載が、原告に重度の症状があったことを直ちに否定す るものではないし、原告の診療経過に加えて、原告を継続して診察していたB医師が、E病院においてブラッドパッチ治療を受けた後であり、A病院の初診日である平成18年7月1日当時においても、原告には常に激 るものではないし、原告の診療経過に加えて、原告を継続して診察していたB医師が、E病院においてブラッドパッチ治療を受けた後であり、A病院の初診日である平成18年7月1日当時においても、原告には常に激しい頭痛や回転性めまい等の症状が持続していたとするとともに、C病院の診療録の記載を踏まえて、同日における原告の症状は、ほとんどC病院受診時の一貫 した症状と同一であるとしていること(甲9)等にも照らすと、前記診療録の記載をもって、原告の症状が軽度であったとか、継続したものではないとするのは相当ではないというべきである。 また、被告は、平成14年8月12日のC病院受診時に原告が記入した問診表(乙17)に、食欲が「ふつう」、最近の体重の変化が「増加」、運動は 「軽い運動ならできる」との記載があることから、当時の原告の症状は、原 告が主張するような重度のものではなかった旨主張するが、同記載は、飽くまで2つ又は3つの選択肢から該当するものを選ぶ方式でされた概括的な回答にとどまる上、前記のとおり原告の症状には日々変動があったとみられることにも鑑みると、この記載についても、直ちに前記⑴の認定を左右するものとは認められない。 エその他被告の主張する点を考慮しても、前記⑴の認定が左右されるものではなく、障害等級2級該当性を否定する被告の主張は、採用することができない。 第4 結論よって、原告の請求には理由があるからこれを認容することとし、主文のとお り判決する。 東京地方裁判所民事第38部 裁判長裁判官鎌野真敬 裁判官中畑啓輔及び同池田好英は,いずれも転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官鎌野真敬( 裁判長裁判官鎌野真敬 裁判官中畑啓輔及び同池田好英は,いずれも転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官鎌野真敬(別紙1省略) (別紙2)関係法令等の定め 1 障害給付の支給要件障害給付として、国民年金からは、障害等級1級又は2級の障害基礎年金が支給され、厚生年金保険からは、障害基礎年金に上乗せする形で障害等級1級又は2級 の障害厚生年金が支給される。また、厚生年金保険からは、厚生年金保険独自の給付として、障害の状態により障害等級3級の障害厚生年金が支給される。 障害給付の原則的な支給要件は、①疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(以下「傷病」という。)について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日(以下「初診日」という。)において、国民年金ないし 厚生年金保険の被保険者等であったこと、②一定の障害の状態にあること、及び③一定の保険料納付要件を満たしていることの三つの要件を充足することである。 (国民年金法〔以下「国年法」という。〕7条1項2号、30条、厚生年金保険法〔以下「厚年法」という。〕47条)そして、初診日から起算して1年6か月を経過した日(以下「障害認定日」とい う。)において、障害等級に該当する程度の障害の状態にある場合には、障害認定日による障害給付が支給され(国年法30条1項、厚年法47条1項)、障害認定日において障害の状態になくとも、その後に障害等級に該当する程度の障害の状態に至った場合には、いわゆる事後重症による障害給付が支給されることになる(国年法30条の2、厚年法47条の2)。 2 障害給付の裁定請求の手続障 に障害等級に該当する程度の障害の状態に至った場合には、いわゆる事後重症による障害給付が支給されることになる(国年法30条の2、厚年法47条の2)。 2 障害給付の裁定請求の手続障害給付の裁定請求は、日本年金機構に対して裁定請求書を提出することによって行うところ(国民年金法施行規則〔以下「国年規則」という。〕31条1項、厚生年金保険法施行規則〔以下「厚年規則」という。〕44条1項)、裁定請求書には、「障害の状態に関する医師又は歯科医師の診断書」(国年規則31条2項4号、厚 年規則44条2項4号)等を添付しなければならない。 3 障害等級の認定⑴ 障害認定基準による認定障害等級について、国年法30条2項は、障害の程度に応じて重度のものから1級及び2級とする旨、厚年法47条2項は、障害の程度に応じて重度のものから1級、2級及び3級とする旨それぞれ規定するとともに、各級の障害の状態を 政令で定めており、国民年金法施行令(以下「国年令」という。)4条の6及び同別表、厚生年金保険法施行令(以下「厚年令」という。)3条の8及び同別表第1に各級の障害の状態が定められている。 厚生労働省は、「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」を定め、厚生労働大臣は、同基準に基づいて障害等級を認定している。同基準は、医学的知見を踏まえ て順次改正されており、本件の裁定請求に係る審査の時点では、平成29年12月1日改正後の障害認定基準(以下、単に「障害認定基準」という。乙3、13)が適用されていた。 ⑵ 障害認定基準の内容障害認定基準は、障害の程度の判断基準等について、次のとおり定めている。 ア障害等級2級に相当する障害の状態の基本(第2の「1 障害の程度」)身体の機能の障 準の内容障害認定基準は、障害の程度の判断基準等について、次のとおり定めている。 ア障害等級2級に相当する障害の状態の基本(第2の「1 障害の程度」)身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。この日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度とは、必ずしも他人の助けを借りる必要は ないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度のものである。例えば、家庭内の極めて温和な活動(軽食作り、下着程度の洗濯等)はできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの、すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね病棟内に限られるものであり、家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね家屋内に限られるも のである。 イいわゆる難病による障害(第3の第1章「第18節その他の疾患による障害」) いわゆる難病については、その発病の時期が不定、不詳であり、かつ、発病は緩徐であり、ほとんどの疾患は、臨床症状が複雑多岐にわたっているため、その認定に当たっては、客観的所見に基づいた日常生活能力等の程度を 十分考慮して総合的に認定するものとする。なお、厚生労働省研究班や関係学会で定めた診断基準、治療基準があり、それに該当するものは、病状の経過、治療効果等を参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定する。 いわゆる難病を含む「その他の疾患による障害の程度」について、「全身状 態、栄養状態、年齢、術後の経過、予後、原疾患の性質、進行状況等、具体的な日常生活状況等を考慮 的に認定する。 いわゆる難病を含む「その他の疾患による障害の程度」について、「全身状 態、栄養状態、年齢、術後の経過、予後、原疾患の性質、進行状況等、具体的な日常生活状況等を考慮し、総合的に認定するものとし、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状があり、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に、 また、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものを3級に該当するものと認定する。 障害の程度は、一般状態が次表の一般状態区分表のオに該当するものは1級に、同表のエ又はウに該当するものは2級に、同表のウ又はイに該当するものは3級におおむね相当するので、認定に当たっては、参考とする。 (一般状態区分表)区分一般状態ア無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるものイ軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はでき るもの例えば、軽い家事、事務などウ歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているものエ身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったものオ身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの以上 就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの以上

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る