平成22(行ウ)4 介護保険料減額更正請求事件

裁判年月日・裁判所
平成23年1月28日 和歌山地方裁判所
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判決文本文7,801 文字)

平成23年1月28日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成22年行ウ第4号介護保険料減額更正請求事件口頭弁論終結日平成22年11月5日主文 1 処分行政庁は,原告に対し,原告の平成19年度の介護保険料を4万2840円に更正するとの処分をせよ。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを2分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。事実及び理由第1 請求処分行政庁は,原告に対し,原告の平成19年度の介護保険料を2万8560円に更正するとの処分をせよ。第2 事案の概要本件は,原告が,処分行政庁から,平成19年度の介護保険料を7万1400円とする賦課決定を受け,これを徴収されたが,その後に同年度の市民税が非課税になった結果,所定の介護保険料は2万8560円になったと主張して,被告に対し,行政事件訴訟法37条の2に基づいて,原告の平成19年度の介護保険料を2万8560円に減額更正する処分の義務付けを求めた事案である。 1 関係法令の定め 介護保険法には,以下の定めがある。 ア次の各号のいずれかに該当する者は,市町村又は特別区(以下単に「市町村」という。)が行う介護保険の被保険者とする(9条)。 ① 市町村の区域内に住所を有する65歳以上の者(以下「第1号被保険者」という。)イ市町村は,介護保険事業に要する費用(財政安定化基金拠出金の納付に要する費用を含む。)に充てるため,保険料を徴収しなければならない(129条1項)。 ウ前項の保険料は,第1号被保険者に対し,政令で定める基準に従い条例で定めるところにより算定された保険料率により算定された保険料額によって課する(同条2項)。 エ保険料の賦課期日は,当該年度の初日とする(130条) 1号被保険者に対し,政令で定める基準に従い条例で定めるところにより算定された保険料率により算定された保険料額によって課する(同条2項)。 エ保険料の賦課期日は,当該年度の初日とする(130条)。 オ 129条の保険料の徴収については,135条の規定により特別徴収(国民年金法による老齢基礎年金その他の同法,厚生年金保険法,国家公務員共済組合法,地方公務員等共済組合法若しくは私立学校教職員共済法に基づく老齢若しくは退職,障害又は死亡を支給事由とする年金たる給付であって政令で定めるもの及びその他これらの年金たる給付に類する老齢若しくは退職,障害又は死亡を支給事由とする年金たる給付であって政令で定めるものの支払をする者に保険料を徴収させ,かつ,その徴収すべき保険料を納入させることをいう。以下同じ。)の方法による場合を除くほか,普通徴収の方法によらなければならない(131条)。 カ保険料その他この法律の規定による徴収金(150条1項に規定する納付金及び157条1項に規定する延滞金を除く。)については,地方税法9条,13条の2,20条,20条の2及び20条の4の規定を準用する(143条)。 キ保険給付に関する処分(被保険者証の交付の請求に関する処分及び要介護認定又は要支援認定に関する処分を含む。)又は保険料その他この法律の規定による徴収金(財政安定化基金拠出金,納付金及び157条1項に規定する延滞金を除く。)に関する処分に不服がある者は,介護保険審査会に審査請求をすることができる(183条1項)。 ク保険料,納付金その他この法律の規定による徴収金を徴収し,又はその還付を受ける権利及び保険給付を受ける権利は,2年を経過したときは,時効によって消滅する(200条1項)。  介護保険法施行令(以下「本件政令」という。)には, る徴収金を徴収し,又はその還付を受ける権利及び保険給付を受ける権利は,2年を経過したときは,時効によって消滅する(200条1項)。  介護保険法施行令(以下「本件政令」という。)には,以下の定めがある。 特別の必要がある場合においては,市町村は,基準額に各年度分の保険料の賦課期日における次の各号に掲げる第1号被保険者の区分に応じ,それぞれ当該各号に定める割合を乗じて得た額を保険料率とすることができる。この場合において,市町村は,6号に掲げる第1号被保険者の区分を合計所得金額に基づいて更に区分し,当該区分に応じて定める割合を乗じて得た額を保険料率とすることができる(39条1項)。 ① 次のいずれかに該当する者 4分の2を標準として市町村が定める割合イ老齢福祉年金の受給権を有している者であって,次のいずれかに該当するもの(ロに該当するものを除く。) 市町村民税世帯非課税者(その属する世帯の世帯主及びすべての世帯員が,当該保険料の賦課期日の属する年度分の地方税法の規定による市町村民税が課されていない者。38条1項1号イ) 要保護者(現に生活保護法による保護を受けているといないとにかかわらず,生活保護法による保護を必要とする状態にある者をいう。 以下同じ。本件政令22条の2第5項2号,生活保護法6条2項。)であって,その者が課される保険料額についてこの号の区分による割合を適用されたならば保護を必要としない状態となるものロ被保護者(現に生活保護法による保護を受けている者をいう。以下同じ。本件政令22条の2第2項,生活保護法6条1項。)ハ要保護者であって,その者が課される保険料額についてこの号の区分による割合を適用されたならば保護を必要としない状態となるもの(イ(に係る部分を除く。),次号ロ,3号ロ,4 保護法6条1項。)ハ要保護者であって,その者が課される保険料額についてこの号の区分による割合を適用されたならば保護を必要としない状態となるもの(イ(に係る部分を除く。),次号ロ,3号ロ,4号ロ,5号ロ又は6号ロに該当する者を除く。)② 次のいずれかに該当する者 4分の2を標準として市町村が定める割合イ市町村民税世帯非課税者であって,当該保険料の賦課期日の属する年の前年中の公的年金等の収入金額及び当該保険料の賦課期日の属する年の前年の合計所得金額の合計額が80万円以下であり,かつ,前号に該当しない者ロ要保護者であって,その者が課される保険料額についてこの号の区分による割合を適用されたならば保護を必要としない状態となるもの(前号イ(に係る部分を除く。),次号ロ,4号ロ,5号ロ又は6号ロに該当する者を除く。)③ 次のいずれかに該当する者 4分の3を標準として市町村が定める割合イ市町村民税世帯非課税者であり,かつ,前二号に該当しない者ロ要保護者であって,その者が課される保険料額についてこの号の区分による割合を適用されたならば保護を必要としない状態となるもの(1号イ(に係る部分を除く。),次号ロ,5号ロ又は6号ロに該当する者を除く。)④ 次のいずれかに該当する者 4分の4を標準として市町村が定める割合イ当該保険料の賦課期日の属する年度分の地方税法の規定による市町村民税が課されていない者であり,かつ,前三号のいずれにも該当しないものロ要保護者であって,その者が課される保険料額についてこの号の区分による割合を適用されたならば保護を必要としない状態となるもの(1号イ(に係る部分を除く。),次号ロ又は6号ロに該当する者を除く。)⑤ 次のいずれかに該当する者 4分の4を超える割合で市町村が による割合を適用されたならば保護を必要としない状態となるもの(1号イ(に係る部分を除く。),次号ロ又は6号ロに該当する者を除く。)⑤ 次のいずれかに該当する者 4分の4を超える割合で市町村が定める割合イ合計所得金額が市町村が定める額未満である者であり,かつ,前各号のいずれにも該当しないものロ要保護者であって,その者が課される保険料額についてこの号の区分による割合を適用されたならば保護を必要としない状態となるもの(1号イ(に係る部分を除く。)又は次号ロに該当する者を除く。) 平成20年A市条例第12号による改正前のA市介護保険条例(乙1。以下「本件条例」という。)には,以下の定めがある。 ア市が行う介護保険については,法令に定めがあるもののほか,この条例の定めるところによる(1条)。イ平成18年度から平成20年度までの各年度における保険料率は,次の各号に掲げる第1号被保険者の区分に応じ,当該各号に定める額とする(9条1項)。① 本件政令39条1項1号に掲げる者 28,560円② 本件政令39条1項2号に掲げる者 28,560円③ 本件政令39条1項3号に掲げる者 42,840円④ 本件政令39条1項4号に掲げる者 57,120円⑤ 本件政令39条1項5号に掲げる者 71,400円 2 争いのない事実等以下の事実は当事者間に争いがないか,証拠(甲1,3,乙5)及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる。 当事者ア原告(昭和15年○月○○日生)は,A市内に住所を有し,平成17年1月20日に,第1号被保険者(介護保険法9条1号,上記1ア)の資格を取得した。イ被告は,普通地方公共団体である。 本件の経緯ア処分行政庁は,平成19年5月10日,特 平成17年1月20日に,第1号被保険者(介護保険法9条1号,上記1ア)の資格を取得した。イ被告は,普通地方公共団体である。 本件の経緯ア処分行政庁は,平成19年5月10日,特別徴収の方法で,原告の平成19年度の介護保険料として7万1400円を仮徴収した。 イ処分行政庁は,同年6月14日,原告が本件政令39条1項5号に定める者に当たるとして,本件条例9条1項5号に従い,原告の平成19年度の介護保険料を7万1400円とする賦課決定をした。 ウ原告は,平成21年6月26日,扶養者数等の修正申告を行った。その結果,同年7月31日付けで,原告の平成19年度ないし平成21年度の市民税を非課税とする市県民税変更決定がされた。エ処分行政庁は,同年8月7日付けで,原告の平成20年度及び平成21年度の介護保険料を減額更正する処分をした。オ原告は,同月13日付けで,A県介護保険審査会に対して,原告の平成19年度の介護保険料も減額更正する処分を求める旨の審査請求をした。同審査会は,同年11月10日付けで,原告の審査請求を棄却する旨の裁決をし(甲1),原告は,同月14日,その結果を知った。カ原告は,平成22年5月14日,本件訴えを提起した。 3 争点 訴えの利益があるか 義務付けの訴えの本案勝訴要件(行政事件訴訟法37条の2第5項)を具備するか 4 争点に対する当事者の主張 争点(訴えの利益があるか)(被告の主張)介護保険料の更正処分は,増額減額に関わらず,徴収権がある介護保険料についてのみ行うことができる。処分行政庁の介護保険料の徴収権は,2年を経過したときは時効によって消滅するところ(介護保険法200条1項。上記第2の1ク),原告に対する平成19年度の介護保険料の徴 いてのみ行うことができる。処分行政庁の介護保険料の徴収権は,2年を経過したときは時効によって消滅するところ(介護保険法200条1項。上記第2の1ク),原告に対する平成19年度の介護保険料の徴収権は,その納期限(上記仮徴収日)である平成19年5月10日の翌日から2年を経過した平成21年5月10日の 経過をもって,時効によって消滅した。一方,原告の平成19年度の介護保険料の額に変動をもたらす市県民税変更決定は,平成21年7月31日付けでされたから,処分行政庁は,同年8月7日当時,原告に対する平成19年度の介護保険料の徴収権がなく,その更正処分もできなかった。よって,処分行政庁は,現在も原告の平成19年度の介護保険料の更正処分をすることはできないので,その減額更正処分の義務付けを求める本件訴えには訴えの利益がない。(原告の主張)争う。 争点(義務付けの訴えの本案勝訴要件を具備するか)(原告の主張)原告の平成19年度の介護保険料は2万8560円であるから,処分行政庁は,原告の平成19年度の介護保険料を2万8560円に減額更正する処分をすべきであることが法令の規定から明らかである。(被告の主張)仮に本件訴えに訴えの利益があるとしても,原告の平成19年度の介護保険料は,本件条例9条1項3号によって,4万2840円である。第3 当裁判所の判断 1 争点(訴えの利益があるか)について被告は,原告に対する平成19年度の介護保険料の徴収権が時効によって消滅したから,それを減額更正する処分行政庁の権限も消滅した旨主張する。 確かに,新たな賦課及び徴収の必要がある増額更正処分の場合には,介護保険法200条1項(上記第2の1ク)により徴収権が2年を経過して時効によって消滅した後は,たとえ増額更正処分をしても 張する。 確かに,新たな賦課及び徴収の必要がある増額更正処分の場合には,介護保険法200条1項(上記第2の1ク)により徴収権が2年を経過して時効によって消滅した後は,たとえ増額更正処分をしても実効性を欠くから,増額更正する処分行政庁の権限も,2年を経過した後は行使できないと解される。しかし,介護保険料の減額更正処分は,既に賦課され徴収された介護保険料 の一部を否定する処分であって,新たな賦課及び徴収の必要はない。また,地方税法17条の5は,増額及び減額の更正の権限並びに賦課権の期間制限を定め,同法18条が徴収権の消滅時効を定めているのに対し,介護保険法は,更正の権限及び賦課権の期間制限も消滅時効も定めておらず,地方税法の規定を準用する規定(介護保険法143条。上記第2の1カ)を設けながら,上記の地方税法の規定を敢えて準用せず,徴収権の消滅時効を定めているにすぎない(介護保険法200条1項。上記第2の1ク。なお,同条項が定める介護保険料の還付権の消滅時効は,減額更正処分が行なわれ還付権が発生してから進行する性質のものである。)。以上の事情を考慮すると,介護保険法は,介護保険料の賦課権や減額更正処分をする権限が期間制限に服することを予定しているとは解されない。よって,処分行政庁の原告に対する平成19年度の介護保険料の減額更正処分をする権限が消滅したとはいえないから,本件訴えには訴えの利益があると認められる。 2 行政事件訴訟法37条の2第1項の訴訟要件本件訴えに係る減額更正処分がされないことによって原告の被る損害は金銭的損害であり,その額は大きいとはいえない。しかし,介護保険法には,介護保険料の賦課決定をした後,当該介護保険料を減額させる事由が発生した場合に,被保険者が,介護保険料の減額を保険者に求める権利を 銭的損害であり,その額は大きいとはいえない。しかし,介護保険法には,介護保険料の賦課決定をした後,当該介護保険料を減額させる事由が発生した場合に,被保険者が,介護保険料の減額を保険者に求める権利を認めた規定がない。この点,審査請求の制度は設けられているが(介護保険法183条1項。 上記第2の1キ),本件に関しては,原告の審査請求を棄却する旨の裁決がされた(上記第2の2オ)。また,原告は,後発的な事由をもって,平成19年度の介護保険料の賦課決定及び徴収の不当を主張するものである。このような損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質を勘案すると,原告の損害を回復することは困難であると認められる。そして,以上のような損害の回復の困難の程度を考慮すると,本件訴えに係 る減額更正処分がされないことにより,原告に重大な損害を生ずるおそれがあると認められ,かつ,その損害を避けるために他に適当な方法がないと認められる。よって,本件訴えは,行政事件訴訟法37条の2第1項の訴訟要件を具備すると認められる。 3 争点(義務付けの訴えの本案勝訴要件を具備するか)について 原告は,平成19年度の介護保険料の額を2万8560円とする更正処分の義務付けを求める。この点,本件条例9条1項1号及び2号によれば,本件政令39条1項1号又は2号に掲げる者の介護保険料額を2万8560円にするとされている。しかし,原告が,老齢福祉年金の受給権を有している者に当たると認めるに足りる証拠はなく,生活保護法6条1項の被保護者又は同条2項の要保護者に当たると認めるに足りる証拠もない。よって,原告が,本件政令39条1項1号に掲げる者に該当するとは認められない。 次に,証拠(甲3)によれば,原告の平成18年分所得金額合計は88万7902円であったことが認められ 足りる証拠もない。よって,原告が,本件政令39条1項1号に掲げる者に該当するとは認められない。 次に,証拠(甲3)によれば,原告の平成18年分所得金額合計は88万7902円であったことが認められる。よって,原告が,本件政令39条1項2号に掲げる者に該当するとは認められない。 もっとも,原告の本件訴えに係る請求には,平成19年度の介護保険料の額(7万1400円)を減額する更正処分の義務付けを求める趣旨も含むと解される。この点,原告が市町村民税世帯非課税者に当たることは争いがなく,かつ,原告が本件政令39条1項1号及び2号に掲げる者に該当しないことは,上記のとおりであるから,原告は,本件政令39条1項3号に掲げる者に該当すると認められるところ,本件条例9条1項3号によれば,本件政令39条1項3号に掲げる者の保険料額を4万2840円にするとされている。  そして,介護保険法には,介護保険料の賦課決定をした後,当該介護保険料を減額させる事由が発生した場合に,被保険者が,介護保険料の減額を保 険者に求める権利を認めた規定がないから,処分行政庁は,職権で,被保険者の介護保険料を適正な額に減額更正する処分をすべきであると解される。よって,処分行政庁は,原告に対し,平成19年度の介護保険料を4万2840円に減額更正する処分をすべきであることが,介護保険法の規定から明らかであると認められるので,その限度で,義務付けの訴えの本案勝訴要件を具備すると認められる。第4 結論以上によれば,原告の請求は,被告に対し,処分行政庁による原告の平成19年度の介護保険料を4万2840円に減額更正する処分の義務付けを求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却すべきである。よって,主文のとおり判決する。和歌 平成19年度の介護保険料を4万2840円に減額更正する処分の義務付けを求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却すべきである。よって,主文のとおり判決する。和歌山地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官髙橋善久 裁判官永野公規 裁判官田中一孝

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