平成30(ネ)175 国家賠償請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成31年1月31日 名古屋高等裁判所 名古屋地方裁判所 平成29(ワ)1041
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判決文本文9,276 文字)

- 1 -平成31年1月31日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成30年(ネ)第175号国家賠償請求控訴事件(原審・名古屋地方裁判所平成29年(ワ)第1041号)口頭弁論終結日平成30年11月14日主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は,控訴人に対し,50万円及びこれに対する平成29年3月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等(以下,略語は原判決に準ずる。) 1 本件は,控訴人が,刑事事件の公判を傍聴中,持ち込んだノートパソコンを使用して,傍聴記録を作成していたところ,裁判長が控訴人に対して法廷警察権を行使して上記ノートパソコンの使用を禁止したことにより,控訴人の成年後見業務及び法廷付添業務が妨害されるとともに,法廷記録作成権が侵害され,その結果,控訴人が精神的苦痛を被ったと主張して,被控訴人に対して,国家賠償法1条1項に基づき,慰謝料50万円及びこれに対する不法行為の日である平成29年3月7日から支払済みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原審は,控訴人の請求を棄却したところ,控訴人が控訴した。 2 前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,次のとおり補正し,当審補充主張を次項に付加するほか,原判決「事実及び理由」の第2の2ないし4に記載のとおりであるから,これを引用する。 - 2 -原判決2頁11行目の末尾に「本件刑事事件は,裁判員裁判事件である。」を加える。 3 当審補充主張⑴ 控訴人ア傍聴人のノートパソコンによる傍聴記録の作成が,公判審理の円滑との関係で下位に置かれるとしても,裁判所は,平成元年 件は,裁判員裁判事件である。」を加える。 3 当審補充主張⑴ 控訴人ア傍聴人のノートパソコンによる傍聴記録の作成が,公判審理の円滑との関係で下位に置かれるとしても,裁判所は,平成元年最高裁判決の法理に基づき,傍聴人の傍聴記録作成をみだりに妨げないように最大限配慮して,公正円滑な訴訟運営と控訴人の傍聴記録作成の権利との合理的調整を尽くす努力義務を負うが,A裁判長は,書記官をして,ノートパソコンの使用目的や使用機能を問うこともなく,ただ一方的に本件指示をしたのであってそのような努力義務を尽くしていない。 イ控訴人は,本件公判期日において,本件刑事事件の被害者であるBとともに特別傍聴席の提供を受けていたから,A裁判長は,控訴人が何のために本件公判期日を傍聴しているのか知っていたのであり,控訴人がノートパソコンで本件公判期日を録音録画したり,ウェブ上に流そうとしたりすると疑う余地はなく,ノートパソコンの文書作成機能を使用して傍聴記録を作成していると合理的に推認できる。 また,本件指示は,訴訟関係人から控訴人がノートパソコンを使うことに対する何らの苦情もなかった上,控訴人に対して,念のため注意喚起するなどせずになされたものであって恣意的なものである。 ウ本件公判期日において,傍聴人は,控訴人,B及びBの付添を除けばほとんどおらず,ノートパソコンを使用しているのは控訴人だけであるから,打鍵音による騒音を理由として本件指示が許容され - 3 -ることはない。また,打鍵音による騒音があれば個別に注意すればよいだけである。 エ控訴人は,被害者的地位があり,本件公判期日においても特別傍聴席が用意されるなど配慮されているのにもかかわらず,その傍聴記録の作成を心理的圧迫を理由として禁じることは本末転倒である。仮に, エ控訴人は,被害者的地位があり,本件公判期日においても特別傍聴席が用意されるなど配慮されているのにもかかわらず,その傍聴記録の作成を心理的圧迫を理由として禁じることは本末転倒である。仮に,訴訟関係人に対する心理的圧迫があり得たとしても,控訴人は被害者的地位があるから,そのような心理的圧迫は受忍限度内である上,例外的に審理を優先する必要があるとしても,それは裁判長の意思に委ねるのではなく,心理的圧迫を主張する訴訟関係人に十分に事実確認するなど,傍聴記録作成との合理的調整を尽くさなければならない。 また,文書作成行為に関するノートパソコン使用を事前の許可制とし,許可の範囲で使用を認めることで,弊害を除去することができる。 オ本件公判期日の当時,名古屋地方裁判所では,傍聴席での録音録画等を禁止する告知を行うのみで,録音録画等が可能な機器の持ち込みを具体的に規制していたわけではないから,結局,録音録画等についても,その禁止に服することを傍聴人の良識に委ねていたのであり,控訴人に対しても録音録画等しないことについて同様に良識に委ねればよかったのであり,本件指示に正当性はない。 ⑵ 被控訴人ア傍聴人がノートパソコンを使用してメモを取る行為は,紙とペンによる筆記行為と異なり,法廷における公正かつ円滑な訴訟運営を妨げる種々のおそれがあるところ,控訴人が主張するノートパソコンを使用している傍聴人の属性,その使用目的,当該ノートパソコンの使用機能,打鍵音の大きさ等を個別に確認するなどして合理的 - 4 -調整を図ることについては,傍聴人のノートパソコンに録音録画機能や通信機能が備えられているかどうかを,書記官等が外観から識別することは著しく困難であるし,その確認のために時間を要することにもなり,それにより訴訟の進行に遅延 傍聴人のノートパソコンに録音録画機能や通信機能が備えられているかどうかを,書記官等が外観から識別することは著しく困難であるし,その確認のために時間を要することにもなり,それにより訴訟の進行に遅延が生じかねない。また,裁判所と傍聴人との間で論争が起こるなど法廷が紛糾する可能性があるから,それ自体が円滑な訴訟運営を著しく妨げることになる。 打鍵音についても,実際に法廷で使用されなければ,どれほどの打鍵音が発生し,訴訟運営に影響を与えるものか否かが判断できず,事前に書記官等によって弊害の有無を確認することは困難である。 さらに,一旦,傍聴人にノートパソコンの使用を認めたところ,弊害が生じたとしてその使用を中止するというのは,既に円滑な訴訟運営を妨げる状況であり,その状況の発生を防止する必要がある。 そのため,控訴人が主張する合理的調整を行うことによって,法廷における公正かつ円滑な訴訟運営が妨げられる事態を防止することはできず,かえって,そのような調整を行うことにより,訴訟運営への支障を生じさせるおそれがある。そして,本件指示は,控訴人に対して,ノートパソコンの使用を止めるように求めただけであって,控訴人が傍聴記録を作成すること自体を制約するものではない。 したがって,A裁判長は,公判におけるノートパソコンの使用による弊害や訴訟運営における支障を考慮し,また,合理的調整を行うことによって生じ得る支障等を踏まえた上で,本件指示をしたものであるから,A裁判長が合理的調整を行わずに,本件指示によっ - 5 -て控訴人に対してノートパソコンの使用の中止を求めたことは合理的であるといえる。 イ傍聴人がノートパソコンを使用したときの弊害は,傍聴人が弁護士であるとか,当該刑事事件の被害者の付添いや成年後見人をしているという事 パソコンの使用の中止を求めたことは合理的であるといえる。 イ傍聴人がノートパソコンを使用したときの弊害は,傍聴人が弁護士であるとか,当該刑事事件の被害者の付添いや成年後見人をしているという事情によって,減退することはなく,かえってその程度が増大するとすら考えられる。そもそも,一般的に,弁護士であれば,無許可による公判期日,口頭弁論期日などといった裁判手続の録音録画及びその外部流出のおそれが完全に否定できるとの社会通念が存在するかは疑問である。 ウ東京地方裁判所の半数以上の部が使用する刑事法廷において,裁判体の判断により,傍聴席における「OA機器」の使用を禁止する旨が記載された張り紙が傍聴席出入口に常時掲示されている。また,大阪地方裁判所のすべての刑事法廷の前に備え付けられている傍聴の注意書には,「携帯電話等の電子機器」の使用を禁止する旨の記載がされている。 そうすると,A裁判長の本件指示は,東京地方裁判所及び大阪地方裁判所の刑事裁判を担当する多数の裁判体の運用と一致するものといえるのであって,このことからも,本件指示が,法廷警察権の目的,範囲を著しく逸脱し,又はその方法が甚だしく不当であるということはいえない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人の請求は理由がないものと判断する。その理由は,次のとおりである。 2 国家賠償法1条1項にいう違法について国家賠償法1条1項にいう違法とは,国又は地方公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義 - 6 -務に違反することをいい(最高裁昭和53年(オ)第1240号同60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁,最高裁平成25年(オ)第1079号同27年12月16日大法廷判決・民集69巻8号2427頁参照) (最高裁昭和53年(オ)第1240号同60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁,最高裁平成25年(オ)第1079号同27年12月16日大法廷判決・民集69巻8号2427頁参照),公権力の行使に当たる公務員が同項の適用上違法と評価されるためには,当該公務員が職務上尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該行為をしたと認め得るような事情があることが必要であると解するのが相当である(最高裁平成元年(オ)第930号,同第1093号同5年3月11日第一小法廷判決・民集47巻4号2863頁,最高裁平成7年(行ツ)第116号同11年1月21日第一小法廷判決・集民191号127頁参照)。 3 裁判長の法廷警察権の行使に関する違法について⑴ 法廷を主催する裁判長には,裁判所の職務の執行を妨げ,又は不当な行状をする者に対して,法廷の秩序を維持するため相当な処分をする権限が付与されている(裁判所法71条,刑事訴訟法288条2項)。上記の法廷警察権は,法廷における訴訟の運営に対する傍聴人等の妨害を抑制,排除し,適正かつ迅速な裁判の実現という憲法上の要請(憲法32条)を満たすために裁判長に付与された権限である。しかも,裁判所の職務の執行を妨げたり,法廷の秩序を乱したりする行為は,裁判の各場面において様々な形で現れ得るものであり,法廷警察権は,上記の各場面において,その都度,これに即応して適切に行使されなければならないことに鑑みれば,その行為は,当該法廷の状況等を最も的確に把握し得る立場にあり,かつ,訴訟の進行に全責任を持つ裁判長の広範な裁量に委ねられて然るべきものというべきであるから,この行使の要否,執るべき措置についての裁判長の判断は,最大限に尊重されなければならない。 したがって,法廷警察権に基づく裁判長の措置は,それが法廷 量に委ねられて然るべきものというべきであるから,この行使の要否,執るべき措置についての裁判長の判断は,最大限に尊重されなければならない。 したがって,法廷警察権に基づく裁判長の措置は,それが法廷警察 - 7 -権の目的,範囲を著しく逸脱し,又はその方法が甚だしく不当であるなどの特段の事情のない限り,国家賠償法1条1項の規定にいう違法な公権力の行使ということはできないものと解するのが相当である(前掲平成元年最高裁判決参照)。 ⑵ 裁判を傍聴する者が,当該法廷において見聞きしたことを記録することは,憲法21条1項の規定の精神に照らして尊重されるべきものであるが,前記のとおり,傍聴している裁判が適正かつ迅速に行われることも,裁判を受ける権利(憲法32条)を実現するために重要なものであり,裁判長にはその実現のために広範な裁量が委ねられているから,裁判を傍聴する者が傍聴席において見聞きしたことをペンなどの筆記具とは異なる用具を用いて記録化する際に,当該用具を用いることにより傍聴している裁判が適正かつ迅速に行われることが妨げられるおそれがあれば,その用具の使用を制約すること自体も認められるというべきであって,そのように制約をする行為は,法廷警察権の目的,範囲を著しく逸脱し,またはその方法が甚だしく不当であるなどの特段の事情がない限り,国家賠償法1条1項の規定にいう違法な公権力の行使ということはできないものと解される。 ⑶ア控訴人は,本件公判期日で傍聴席においてノートパソコンを使用したものであるが,ノートパソコンには,その技術発展や機能の充実によって,ノートパソコン自体に装備されているカメラ,マイクやインストールされたソフトウェア(アプリ)によって録音録画すること,それ自体やスマートフォン等を組み合わせることよってインターネ の充実によって,ノートパソコン自体に装備されているカメラ,マイクやインストールされたソフトウェア(アプリ)によって録音録画すること,それ自体やスマートフォン等を組み合わせることよってインターネット通信をすることなど多種多能な機能がある。 ところで,刑事訴訟規則215条は,「公判廷における写真の撮 - 8 -影,録音又は放送は,裁判所の許可を得なければ,これをすることができない。但し,特別の定のある場合は,この限りでない。」と定めており,仮に,公判期日において,裁判長の許可なく,傍聴席でノートパソコンの録音録画機能又は通信機能が利用された場合,同条に違反することになる。しかるに,傍聴席においてノートパソコンが使用される場合,その外見から,そのノートパソコンに録音録画機能又は通信機能が備わっているのか否か,スマートフォン等と連携させているのか否か,これらの機能が利用されているのか否かなどを一見して判別するのが難しいことが少なくない。 また,仮に,傍聴席においてノートパソコンを使用する者が録音録画機能又は通信機能を利用する意図を有する場合,その者は持参したノートパソコンの機能を偽ったり,その意図を偽ったりする可能性が高く,裁判長や裁判所職員が上記の機能や意図を正確に確認し,把握するのは困難な場合や,時間を要する場合があり得るし,傍聴人とのトラブルの原因にもなり得るから,このような確認をすること自体が,円滑な手続の進行を妨げ,ひいては適正かつ迅速な裁判の実現の妨げになり得る。 イさらに,傍聴席におけるノートパソコンの使用に対しては,訴訟関係人が,当該公判が録音録画等されているのではないかと疑念を持つなどし,その結果心理的圧迫を感じるおそれがあり,適正かつ迅速な裁判の実現の妨げになるおそれがある。加えて,傍聴している他 は,訴訟関係人が,当該公判が録音録画等されているのではないかと疑念を持つなどし,その結果心理的圧迫を感じるおそれがあり,適正かつ迅速な裁判の実現の妨げになるおそれがある。加えて,傍聴している他の傍聴人との関係において,録音録画等されているのではないかと疑念を持たれないようすることも適正かつ迅速な裁判の実現には必要である。 ウ以上によれば,刑事公判等の裁判手続において,裁判長が傍聴席におけるノートパソコンの使用を一律に禁止することをもって,直 - 9 -ちに,それが法廷警察権の目的,範囲を著しく逸脱し,またはその方法が甚だしく不当であるなどの特段の事情があるということはできない。 4 本件指示の違法性について⑴ 控訴人は,ノートパソコンによる傍聴記録の作成が,公判審理の円滑との関係で下位に置かれるとしても,裁判所は,平成元年最高裁判決の法理に基づき,傍聴人の傍聴記録作成をみだりに妨げないように最大限配慮して,公正円滑な訴訟運営と控訴人の傍聴記録作成の権利との合理的調整を尽くす努力義務を負うにもかかわらず,A裁判長は,書記官をして,ノートパソコンの使用目的や使用機能を問うこともなく,ただ一方的に本件指示をしたのであってそのような努力義務を尽くしていないと主張する。 しかし,前記3⑶アのとおり,傍聴席で使用されるノートパソコンの機能や,ノートパソコンを使用する者の目的や真意を正確に確認しようとすること自体が適正かつ迅速な裁判の妨げとなり得るものというべきであるから,裁判長が控訴人主張の努力をしないまま,傍聴席におけるノートパソコンの使用を一律に禁止することをもって,直ちに法廷警察権の目的,範囲を著しく逸脱し,またはその方法が甚だしく不当であるなどの特段の事情があるということはできない。 したがって,控訴人の主張 トパソコンの使用を一律に禁止することをもって,直ちに法廷警察権の目的,範囲を著しく逸脱し,またはその方法が甚だしく不当であるなどの特段の事情があるということはできない。 したがって,控訴人の主張は採用することができない。 ⑵ 控訴人は,本件公判期日が開廷してから休廷するまでの間,同期日を傍聴しながらノートパソコンを使用していたところ,その訴訟関係人(弁護人,被告人,証人)が,控訴人が傍聴席でノートパソコンを使用することは気にならず,被告人や証人が話しづらいこともなかったという供述記載があり(甲3の1,2),控訴人が本件公判期日でノートパソコンを使用したことで同公判期日の適正かつ - 10 -迅速な進行を妨げていないから,本件指示は違法であると主張する。 しかし,控訴人主張の事情を踏まえて検討しても,本件公判期日の再開後において,傍聴席における控訴人のノートパソコンの使用が裁判員を含む訴訟関係者に心理的圧迫を感じさせるおそれや,出入りする他の傍聴人に録音録画の疑念を生じさせるおそれなど,適正かつ迅速な裁判を妨げる事態を生じさせる可能性が全くなくなっているとまではいえないところであるから,本件公判期日が再開されてから本件指示がなされたことをもって,法廷警察権の目的,範囲を著しく逸脱し,またはその方法が甚だしく不当であるなどの特段の事情があるということはできない。 したがって,控訴人の主張は採用することができない。 ⑶ 控訴人は,自らが本件刑事事件の被害者の成年後見人であり,本件公判期日の傍聴は,控訴人が被害者的立場で行ったものであって,控訴人が傍聴記録を作成することは一般の傍聴人より保護されるべきである上,控訴人がノートパソコンを使用したのは専ら傍聴記録を作成するためであって,本件公判期日を録音録画等していないのは明 あって,控訴人が傍聴記録を作成することは一般の傍聴人より保護されるべきである上,控訴人がノートパソコンを使用したのは専ら傍聴記録を作成するためであって,本件公判期日を録音録画等していないのは明らかであるから,本件指示は違法であると主張する。 たしかに,控訴人が本件刑事事件の被害者の成年後見人であり,本件公判期日において特別傍聴席が用意されていたから,A裁判長も控訴人が本件公判期日を傍聴する理由を理解して,それに対する一定の配慮をしていたところであるが(甲4),控訴人に対し特別傍聴席を用意して配慮することと,傍聴記録を作成するためにペンなどの筆記具を用いることを越えて,傍聴席においてノートパソコンの使用を認めることとは別の問題というべきである。控訴人が本件刑事事件の被害者の成年後見人でありかつ弁護士であり,ノートパソコンを使用し - 11 -て傍聴記録を作成していただけであったとしても,少なくとも前記3⑶イの点において,傍聴席におけるノートパソコンの使用自体が適正かつ迅速な裁判を妨げる事態を生じさせるおそれがあることは否定できないから,その使用を制限した本件指示について,法廷警察権の目的,範囲を著しく逸脱し,またはその方法が甚だしく不当であるなどの特段の事情があるということはできない。 したがって,控訴人の主張は採用することができない。 ⑷ 控訴人は,名古屋地方裁判所では,本件公判期日の当時,傍聴席での録音録画等を禁止する告知を行うのみで,録音録画等が可能な道具の持ち込みを具体的に規制していたわけではないから,結局,録音録画等についても,その禁止に服することを傍聴人の良識に委ねていたのであり,控訴人に対しても録音録画等しないことについて同様に良識に委ねればよかったのであると主張する。 この点,名古屋高等・地方裁判所庁 についても,その禁止に服することを傍聴人の良識に委ねていたのであり,控訴人に対しても録音録画等しないことについて同様に良識に委ねればよかったのであると主張する。 この点,名古屋高等・地方裁判所庁舎内の法廷前に掲示されていた傍聴の注意書には,裁判長の許可なく撮影,録音又は送信しない旨の記載があり,また,携帯電話については,入廷する前に電源を切るかマナーモードにして,法廷内では使用しない旨の記載があるものの,傍聴席でノートパソコン等の電子機器を使用すること自体を禁止する旨の記載はない(当裁判所に顕著な事実)。 しかし,録音録画等の機能を装備している可能性のあるノートパソコンの傍聴席における使用を制限する本件指示が,傍聴席での撮影,録音等が一般的に禁止されていること等について注意喚起する旨の上記注意書の記載と矛盾するものではないから,上記のような注意書があることによって,本件指示につき法廷警察権の目的,範囲を著しく逸脱し,またはその方法が甚だしく不当であるなどの特段の事情があることが裏付けられることにはならないというべきである。 - 12 -したがって,控訴人の主張は採用することができない。 ⑸ 以上のほか,控訴人が種々主張する点を考慮しても,本件指示について,法廷警察権の目的,範囲を著しく逸脱し,またはその方法が著しく不当であるなどの特段の事情があるということはできないのであって,本件指示が国家賠償法1条1項の規定にいう違法な公権力の行使に当たるとまで断定することができない。 第4 結論よって,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第4部 裁判長裁判官戸田 久 裁判官 主文 訴は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 理由 名古屋高等裁判所民事第4部 裁判長裁判官戸田久 裁判官水谷美穂子 裁判官髙橋信幸

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