主文 1 原告が、刑事施設の長との間において、別紙人物目録記載の各人物が刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律139条1項1号にいう「死刑確定者の親族」に当たらないことを理由に、当該各人物との間の信書の発受を不許可とされない地位にあることを確認する。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用はこれを2分し、その1を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 原告が、別紙人物目録記載の各人物との間において、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律139条1項1号により、信書を発受することができる地位にあることを確認する。 2 被告は、原告に対し、148万5000円及びこれに対する令和2年10月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、死刑確定者である原告が、3名の養親子及び3名の知人に対して信書を発信しようとしたところ、福岡拘置所長からこれらを違法に制限されたとして、被告に対し、①原告が、養親子3名との間で、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(以下「刑事収容施設法」という。)139条1項1 号により、信書を発受することができる地位にあることの確認を求めるとともに(この確認の訴えを以下「本件確認の訴え」という。)、②国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づき、上記制限によって生じた精神的苦痛に対する慰謝料及び弁護士費用の損害合計148万5000円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和2年10月16日から支払済みまで民 法(ただし、平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定 の年5分の割合による遅 びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和2年10月16日から支払済みまで民 法(ただし、平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定 の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 関連法令等の定め別紙関連法令等の定めのとおり(以後、別紙で定義した略称は、特に断りなく使用する。) 2 前提事実(当事者間に争いがないか、掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容 易に認められる事実)⑴ 当事者等ア原告について原告(昭和▲年▲月▲日生)は、平成18年10月17日、福岡地方裁判所久留米支部において死刑判決を受け、平成23年10月21日、当該 判決が確定した死刑確定者である(甲102の1~3)。 イ AについてA(昭和▲年▲月▲日生)は、令和3年1月26日時点までに刑事施設入所歴8回を有し、同日現在は、懲役11年の刑を科され、刑事施設に服役中であった者である(甲50、乙5)。 Aは、原告と養子縁組する以前の平成18年10月16日、養父であったBと養子離縁しており、その後、平成22年4月28日、原告との間で、Aを養父、原告を養子とする養子縁組をした(甲1、50)。 ウ SについてS(昭和▲年▲月▲日生)は、令和3年1月26日時点までに刑事施設 入所歴4回を有しており、平成31年2月14日に刑事施設を出所した者である(乙5)。 Sは、原告と養子縁組をする以前の平成17年9月13日、Dとの間で、同人を養父、Sを養子とする養子縁組をし、平成23年6月15日、原告との間で、Sを養父、原告を養子とする養子縁組をした(甲2、52)。 エ Eについて Dとの間で、同人を養父、Sを養子とする養子縁組をし、平成23年6月15日、原告との間で、Sを養父、原告を養子とする養子縁組をした(甲2、52)。 エ EについてE(昭和▲年▲月▲日生。A、S及びEを併せて以下「Aら」という。)は、令和3年1月26日時点までに刑事施設入所歴5回を有しており、同日現在は、懲役3年6月の刑を科され、刑事施設に服役中であった者である(乙5)。 Eは、平成21年8月14日、原告との間で、原告を養父、Eを養子とする養子縁組をし、同年12月28日、Fとの間で、同人を養父、Eを養子とする養子縁組をした(甲3、53)。 オ GについてGは、刺青の絵師(彫師名は「G2」)である(甲93)。 カ HについてHは、刺青の絵師(彫師名は「H2」)である(甲72、94)。 キ IについてI(以下G、H及びIを併せて以下「Gら」といい、Aら及びGらを併せて以下「訴外6名」という。)は、フリーライターであり、原告等との面 会を基に執筆した「殺人犯との対話」という書籍を出版した者である(甲96)。 ⑵ 原告の収容経緯等原告は、平成17年5月12日、強盗殺人事件(以下、関連する他の被疑事件も併せて「本件強盗殺人等事件」という。)の被告人として久留米拘置支 所から福岡拘置所に移送され、平成18年10月17日、福岡地方裁判所久留米支部において、本件強盗殺人等事件により死刑に処する旨の判決を受けた(甲102の1)。 原告は、これを不服として控訴したが、平成19年12月25日、福岡高等裁判所において、控訴棄却の判決を受けた(甲102の2)。 原告は、更にこれを不服として上告したが、平成2 2の1)。 原告は、これを不服として控訴したが、平成19年12月25日、福岡高等裁判所において、控訴棄却の判決を受けた(甲102の2)。 原告は、更にこれを不服として上告したが、平成23年10月3日、上告 棄却の判決を受け、同年10月21日に前記刑が確定し、同年11月7日以降、死刑確定者として福岡拘置所に収容されている(甲102の3)。 ⑶ 原告の外部交信者名簿の届出等福岡拘置所は、平成23年11月中旬頃、原告に対し、面会及び信書の発受が予想される者について、その氏名、年齢、続柄、職業及び住所を「外部 交信者名簿」に記載して届け出るように求めた。原告は、同名簿において、A及びSを養父、Eを養子と記載するなどして、これを福岡拘置所に提出した。 これに対し、福岡拘置所は、原告とAらとの養子縁組は、「外部交通の確保が目的であると認められる養子縁組」(本件通達27項。なお、本件通達は平 成28年2月24日付け法務省矯成第694号により改正されたことにより、現在は28項である。甲4)に該当すると判断し、福岡拘置所企画首席は、平成24年1月12日、原告に対し、外部交通の申請のあったAら等の養子縁組者については許可しない方針とする旨を告知した。 ⑷ 原告のGらに対する信書の発信制限 ア原告は、福岡拘置所に対し、平成30年2月27日、Gに対する信書(甲31。以下「本件信書④」という。)につき、発信の許可を求めた。これに対し、福岡拘置所は、同年4月12日、本件信書④の発信申請を不許可とする旨の決定(以下「本件不許可処分④」という。乙13。)をし、同月13日、その旨を原告に告知した。 イ原告は、福岡拘置所に対し、平成30年2月28日、Hに対する信書(甲32。 不許可とする旨の決定(以下「本件不許可処分④」という。乙13。)をし、同月13日、その旨を原告に告知した。 イ原告は、福岡拘置所に対し、平成30年2月28日、Hに対する信書(甲32。以下「本件信書⑤」という。)につき発信の許可を求めた。これに対し、福岡拘置所は、同年4月12日、本件信書⑤の発信申請を不許可とする旨の決定(以下「本件不許可処分⑤」という。乙14。)をし、同月13日、その旨を原告に告知した。 ウ原告は、福岡拘置所に対し、平成31年3月20日、Iに対する信書(甲 33。以下「本件信書⑥」という。)につき、発信の許可を求めた。これに対し、福岡拘置所は、同月25日、本件信書⑥の発信申請を不許可とする旨の決定(以下「本件不許可処分⑥」という。乙16。)をし、同月26日、その旨を原告に告知した。 ⑸ 原告のAらに対する信書の発信制限 ア原告は、福岡拘置所に対し、平成30年6月13日、A宛ての信書(甲6。以下「本件信書①」という。)の発信許可を求めた。これに対し、福岡拘置所は、同月14日、本件信書①の発信を不許可とする旨の決定(以下「本件不許可処分①」という。乙7。)をし、同月15日、その旨を原告に告知した。 イ原告は、福岡拘置所に対し、平成30年6月14日、S宛ての信書(甲7。以下「本件信書②」という。)の発信許可を求めた。これに対し、福岡拘置所は、同月15日、本件信書②の発信を不許可とする旨の決定(以下「本件不許可処分②」という。乙8。)をし、同月18日、その旨を原告に告知した。 ウ原告は、福岡拘置所に対し、平成30年6月15日、E宛ての信書(甲8。以下「本件信書③」という。)の発信許可を求めた。これに対し、福岡拘置所は、同月18日、本件信書③の発信を 知した。 ウ原告は、福岡拘置所に対し、平成30年6月15日、E宛ての信書(甲8。以下「本件信書③」という。)の発信許可を求めた。これに対し、福岡拘置所は、同月18日、本件信書③の発信を不許可とする旨の決定(以下「本件不許可処分③」といい、本件不許可処分①~⑥を併せて以下「本件各不許可処分」という。乙9)をし、同月19日、その旨を原告に告知し た。 3 本件の主な争点本件の主な争点は、次のとおりであり、これに関する当事者の主張の要旨は、別紙争点に関する当事者の主張のとおりである。 ⑴ 本件確認の訴えに係る訴えの利益の有無(争点1) ⑵ 原告がAらとの間で刑事収容施設法139条1項1号により信書を発受す ることができる地位にあるか(争点2)⑶ 本件各不許可処分の国賠法上の違法性の有無(争点3)⑷ 損害(争点4)第3 当裁判所の判断 1 認定事実 前提事実並びに証拠(甲93~96、原告本人及び後掲の各証拠)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実(以下「認定事実」といい、項番号等により「認定事実⑴」等と略称する。)が認められる。 ⑴ 原告の身上経歴、生活状況等原告は、昭和▲年▲月▲日、父J及び母Kとの間に出生した(甲3・1枚 目)。 Jは、指定暴力団道仁会L一家M組組長であり、Kは、父親の家業を継いで建設会社を経営するなどしていた。原告は、平成12年3月に福岡県大牟田市内の中学校を卒業した後、同年5月頃に上京して相撲部屋に入門したが、平成13年11月に怪我を理由に廃業して大牟田市に戻り、数か月間、Kの 経営する建設会社の手伝いをしていた。しかし、原告は、平成15年に覚せい剤取締法違反、大麻取締法違反、暴力行為等処罰に関する法律違反及 1月に怪我を理由に廃業して大牟田市に戻り、数か月間、Kの 経営する建設会社の手伝いをしていた。しかし、原告は、平成15年に覚せい剤取締法違反、大麻取締法違反、暴力行為等処罰に関する法律違反及び器物損壊の非行で中等少年院送致の保護処分を受け、平成16年5月に仮退院したが、その直後からM組組員となった(甲102の1)。 ⑵ 原告による強盗殺人等について J及びKが、金融業を営むNについてかねてから抱いていた憤まんの情を晴らすとともに、N方にあるとされた多額の現金を奪うためにNを殺害することを企てていたところ、①平成16年9月16日、J及びKから当該計画を打ち明けられていた原告の兄であるOにおいて、KらがNの殺害をためらっている間に、自らN方に一人でいるNの二男であったPを殺害してNの現 金を手に入れようと企て、原告を誘い、O及び原告が、Pに対し、背後から その頸部をタオルで強く締め付けるなどして失神させ、N所有の指輪等在中の金庫1個を強取した後、意識を取り戻したPに対し、二人掛かりでその頸部をロープで強く絞め付け、その身体にコンクリートブロック3個を結び付けて川に投げ込み、Pを殺害し(強盗殺人)、②同月18日、J、K、O及び原告の4名において共謀の上、Nを殺害してその現金を奪うため、睡眠薬入 りの弁当を食べて抵抗できない状態に陥っているNの背後からその頸部をワイヤー錠で強く絞め続けて殺害し、Nの手提げバックの中から現金約26万円を強取し(強盗殺人)、さらに、Nの長男であるQ及びたまたまQと一緒にいたその友人のRを、口封じなどのために殺害することを企て、Q及びRに対し、その頭部及び胸部に向けて至近距離から自動装填式けん銃で銃弾を3 発ずつ発射し、Rに対しては更にアイスピックで1回胸 いたその友人のRを、口封じなどのために殺害することを企て、Q及びRに対し、その頭部及び胸部に向けて至近距離から自動装填式けん銃で銃弾を3 発ずつ発射し、Rに対しては更にアイスピックで1回胸を突き刺し、両名を殺害し、その際、自動装填式けん銃一丁を適合実包6発と共に携帯して所持し(殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反)、③その後、N、Q及びRの各死体を載せた軽四輪乗用自動車を川に水没させて3名の死体を遺棄した(死体遺棄)(甲102の1~3)。 原告は、上記各罪(本件強盗殺人等事件)により、前提事実⑵のとおり、死刑判決を受け、当該判決が確定して死刑確定者となった(甲102の1~3)。 ⑶ 原告の刺青絵について原告は、M組組長であったJの下で育ったことから、小学生の頃から、M 組にいた彫師から刺青の下絵を教わるなどし、中学生時代には先輩や後輩に頼まれて刺青を彫るなどしていた。 原告は、前記⑵の事件による身柄拘束以降も、拘置所において刺青の下絵を作成していた。原告は、平成19年に刺青画作品集を作成し、原告の作成した作品が死刑囚表現展において平成22年及び平成24年に受賞したり、 雑誌で紹介されたりするなどし、福岡拘置所内において、現在も刺青の下絵 の制作を続けている(甲35、36、95、97の1~97の7、100、101、原告本人)。 ⑷ 福岡拘置所長が原告との信書の発受を許可する方針としている者福岡拘置所長は、平成31年3月29日当時、原告の親族32名、弁護士14名及び知人1名について、原告との信書の発受を許可する方針としてい た(乙5)。しかし、訴外6名は、福岡拘置所長が原告との信書の発受を許可する方針としている者に含まれていない。 ⑸ 原告と訴外6名 人1名について、原告との信書の発受を許可する方針としてい た(乙5)。しかし、訴外6名は、福岡拘置所長が原告との信書の発受を許可する方針としている者に含まれていない。 ⑸ 原告と訴外6名との外部交通の事実経過ア原告とAとの外部交通の事実経過等原告とAとの外部交通については、原告が未決拘禁者であった平成2 1年5月20日、原告がA宛てに信書を発信したことから始まり、本件不許可処分①の時点まで、要旨、別紙原告とAとの間の外部交通一覧記載のとおりの信書の発受を行っていた(甲6、乙5、6、55)。 なお、Aは、原告訴訟代理人である松井仁弁護士(以下「松井弁護士」という。)に対し、平成22年11月7日、平成27年4月6日、同年7 月30日、平成29年2月27日、同年8月20日及び平成30年1月25日付けで、原告等について記載した手紙(甲56~58、78~80)を出した。 イ原告とSとの外部交通の事実経過等原告とSとの外部交通については、原告が未決拘禁者であった平成2 2年12月9日、原告がS宛てに信書を発信したことから始まり、本件不許可処分②の時点まで、要旨、別紙原告とSとの間の外部交通一覧記載のとおりの信書の発受を行っていた(甲7、乙5、6、20、21、24、56)。 なお、Sは、松井弁護士に対し、平成23年6月7日、平成24年2 月25日、同年3月26日付けで、原告等について記載した手紙(甲6 1~63)を出した。 ウ原告とEとの外部交通の事実経過等原告とEとの外部交通については、原告が未決拘禁者であった平成21年5月22日、Eから原告に受信があったことから始まり、本件不許可処分③の時点まで、要旨、別紙原告とEとの間の外部交通一覧記載の とおり、信書の 交通については、原告が未決拘禁者であった平成21年5月22日、Eから原告に受信があったことから始まり、本件不許可処分③の時点まで、要旨、別紙原告とEとの間の外部交通一覧記載の とおり、信書の発受を行っていた(乙5、6、19、33、57)。 なお、Eは、松井弁護士に対し、平成22年12月1日、平成23年7月5日、同年8月31日、同年10月5日、同月23日、同年11月17日、同月22日及び同月29日付けで、原告等について記載した手紙(甲64~71)を出した。 エ原告とGとの外部交通の事実経過Gは、昭和56年から彫師として独立し、平成4年以降「U」という店舗を経営して「G2」を名乗る彫師である(甲93)。 原告は、未決拘禁者であった平成23年5月10日頃、Gに対し、雑誌に掲載されたGの記事を読んで手紙を送ることとしたなどとして、原 告の描いた絵を同封した手紙(甲10)を送付した(甲93)。 その後、原告とGとの外部交通については、平成23年5月18日以降、要旨、別紙原告とGとの間の外部交通一覧記載のとおり、Gと原告との間で信書の発受や2回の面会が行われていた(甲10~23、乙5、22、23、25、52、53)。原告は、その際、Gに対し、自身が作 成した刺青の下絵を送付し、これに対し、Gは、原告の描き方についてコメントを付すなどした(甲24、93)。 オ原告とHとの外部交通の事実経過Hは、19歳のときに上京し、「V」という彫師に弟子入りして住み込みで修業をした後、故郷である岐阜県に戻って「H2」と名乗って彫師 として活動していた。Hは、その後、ハワイの彫師と手紙での交流をし た後にハワイに渡り、刺青のインクや機械について学び、帰国後にこれを日本で広める活動をし、海外の って彫師 として活動していた。Hは、その後、ハワイの彫師と手紙での交流をし た後にハワイに渡り、刺青のインクや機械について学び、帰国後にこれを日本で広める活動をし、海外のタトゥーコンベンションに参加するなどしていた(甲72)。 原告は、中等少年院退院後、刺青に関する書籍においてコンベンション参加者として名前が掲載されている彫師に対し、弟子にしてもらいた い旨の手紙を多数送付し、その際に、Hに対しても手紙を送付し、Hから返信があって、原告とHとの間で手紙のやりとりがされるようになった(以上につき、甲94)。 その後、原告が未決拘禁者となって以降の原告とHとの外部交通については、要旨、別紙原告とHとの間の外部交通一覧記載のとおり、信書 の発受が行われた(甲25~30、54、75、乙5、26、54)。原告は、その際、Hに対し、自身が作成した刺青の下絵を送付し、これに対し、Hは、原告の描き方についてコメントを付すなどした(甲30、94)。 なお、Hは、松井弁護士及び原告訴訟代理人である坂口裕亮弁護士に 対し、平成27年2月20日及び平成30年10月2日付けで、原告等について記載した手紙(甲74、76)を出した。 カ原告とIとの外部交通の事実経過についてIは、フリーライターであるところ、弁護士を通じて原告からIの取材記事を載せていた週刊誌の編集部に対して話したいことがある旨の連 絡があったことから、これに応じ、原告の取材をするために原告と面会することとした(甲96)。 原告とIとの外部交通については、原告が未決拘禁者であった平成18年10月12日、Iが原告と面会を行ったことから始まり、その後、要旨、別紙原告とIとの間の外部交通一覧記載のとおり、面会及び信書 の発受 の外部交通については、原告が未決拘禁者であった平成18年10月12日、Iが原告と面会を行ったことから始まり、その後、要旨、別紙原告とIとの間の外部交通一覧記載のとおり、面会及び信書 の発受を行っていた(甲81~91、乙5、17、50、51)。 原告は、Iとの外部交通の許可を求めるために提出した願箋において、Iとの関係について「子供の頃から家族ぐるみの付合をしている兄的存在の者。」という申告をした(乙15)。 Iは、平成19年7月号の月刊現代において、「極妻が綴った「48年間」の転落物語」と題する原告の実母等に関する記事(甲37)を執筆 した。 Iは、平成21年2月21日号の週刊現代において、「獄中から告発殺人犯元力士が激白角界の「麻薬、暴力、カネ」」と題する原告等に関する記事(甲38)を執筆した。 Iは、平成27年1月22日号の週刊文春以降、「殺人犯との対話」と 題する連載記事を執筆するようにより、同日号、同月29日号、同年2月5日号の週刊文春において原告に関する記事(甲39~41)を執筆した。Iは、同日号以降は他の死刑確定者に関する記事等を執筆し、これらの記事等を基に「人殺しの論理」と題する書籍を出版した(以上につき、甲96、乙15)。 ⑹ 原告とJ等との外部交通ア原告は、平成22年2月1日、Jに宛てた信書において、「親父の許可が出たので2~3ヶ月のみ山菱系の方の所へ養子に入ります。」と記載した(乙42)。 イ原告は、平成22年4月5日、Kに宛てた信書において、「数回養子縁 組をする予定、でもキチンとM(姓)に変るけ安心を。。。」と記載した(乙5)。 ウ原告は、平成22年4月20日、Kに宛てた信書において、「俺あ形上養子縁組みしてもここ いて、「数回養子縁 組をする予定、でもキチンとM(姓)に変るけ安心を。。。」と記載した(乙5)。 ウ原告は、平成22年4月20日、Kに宛てた信書において、「俺あ形上養子縁組みしてもここではM(姓)のままでしとく。縁組も1ヶ月間のみよ。」と記載した(乙43)。 エ原告は、平成23年7月20日、Jに宛てた信書において、「俺自身はA さんと養子縁組みをしてA姓になり、次に又再縁組でSさんと縁組し今S姓になってます。確定後の外部交通の為なので別の人とも縁組を重ねていきます。」と記載した(乙5)。 オ原告は、平成23年11月10日、Oに宛てた信書において、Eについて「11/17に俺の養子も戻るばい!!こいつにも稼がせてカスリ取らや ん(笑)たのしみたい会えるの!!」と記載した(乙6〔4、5枚目〕)。 カ原告の姉は、平成31年1月29日、原告に宛てた信書において、「昨日1/27 13:30TVで知りました。「大牟田4人殺人事件のT(原告)死刑囚について」という特集で、昨年11/30Iが本を出しているとまた大さわぎになってます。■(マスキング箇所。以下同じ。)は成人し、■も 内定決まり必死に頑張っている。ネットでは姉は■で子供を産んで普通の暮らしが許されんやろ等の内容ばかりです。残された時間を少しでも記憶にのこれば笑顔になればと写真を送りました。久し振りにT(原告)にも■の写真を送った自分がバカだった。苦しまされると思わず何度ケンカにもやはり弟やけんと思った自分に後悔してます。■だって映画から離婚話 にまでなって4人の子供をそだて頑張っています。ある意味そっちにいる方が楽じゃない。これ以上関わる事は出来ません。もう連絡も絶つつもりです。私には守るべき子供達がいます。年 て映画から離婚話 にまでなって4人の子供をそだて頑張っています。ある意味そっちにいる方が楽じゃない。これ以上関わる事は出来ません。もう連絡も絶つつもりです。私には守るべき子供達がいます。年金の振込みだけはします。」と記載した(乙34)。 キ Kは、平成31年2月7日、原告に宛てた信書において、「■から■の写 真5枚が来た。30日が■が受験日だから応援するよ。知らんかったけど、Iが勝手に本出したりTVに流したりしたの。Iから一筆取って。私の気休めに。■には時間掛けて話していくよ。誰でも同じたい。T(原告)も社会に残ったら同じ事言うよ。色々しちゃあいかんよ。私がIとかに色々言われるのが嫌なのよ。」と記載した(乙35)。 ⑺ 本件各不許可処分の事実経過ア本件不許可処分①の事実経過原告は、平成23年11月7日に死刑確定者に資格異動した後、外部交信者名簿(親族)を提出し、Aとの外部交通の許可を求めた。 これに対し、福岡拘置所首席矯正処遇官は、平成19年規程22条3 号に基づき、Aとの養子縁組について調査をした結果、原告とAとの間に在社会時での交流がないことや、原告が未決拘禁者の頃にJに宛てて発信した信書の中で、Aと養子縁組したのは外部交通のためとの記載があったこと、やり取りの多くは彫師としての技術指導に関する内容や、Aが提起していた民事訴訟に関する内容であったこと等の具体的事情を 把握した。その結果、福岡拘置所長は、原告とAとの養子縁組は、彫師としての技術指導やAが行う訴訟の支援等を主眼として、外部交通確保の目的でされたものであり、刑事収容施設法120条1項1号及び139条1項1号に規定される親族に該当しないと判断した(乙6)。 そのため、福岡拘置所長は、平成24年 支援等を主眼として、外部交通確保の目的でされたものであり、刑事収容施設法120条1項1号及び139条1項1号に規定される親族に該当しないと判断した(乙6)。 そのため、福岡拘置所長は、平成24年1月11日、原告とAとの外 部交通については、許可しない方針とする旨を決定した上、同月12日、看守長を介して、原告に対し、その旨を告知した(乙6)。 原告は、平成30年6月13日、本件信書①の発信申請を行った。 これに対し、福岡拘置所長は、前記の事情に加え、本件信書①の内容が、Aとの外部交通を求め、訴訟の共同原告になってもらいたい旨の 依頼及び今後の対応を求めるものであったものの、その時点で訴訟は提起されておらず、また、訴訟提起に当たって共同訴訟を行うことが不可欠とも認められないことから、本件信書①を発信する必要があるとは認められず、その発信が刑事収容施設法139条1項及び同条2項のいずれにも該当しないと判断し、平成30年6月14日、これを不許可とす ることを決定した上、同月15日、副看守長を介して、原告に対し、そ の旨を告知した(本件不許可処分①。乙7)。 イ本件不許可処分②の事実経過原告は、平成23年11月7日に死刑確定者に資格異動した後、外部交信者名簿(親族)を提出し、Sとの外部交通の許可を求めた。 これに対し、福岡拘置所首席矯正処遇官は、平成19年規程22条3 号に基づき、原告とSとの間に在社会時での交流がないことや、原告が未決拘禁者の頃にSに宛てて発信した信書の中で、刑務所の中の間だけでも手紙のため自身と養子縁組しないかと提案する記載があったこと、やり取りの多くは彫師としての技術指導に関する内容であったこと等の具体的事情があるとし、福岡拘置所長は、原告とSとの養子縁組は、彫 でも手紙のため自身と養子縁組しないかと提案する記載があったこと、やり取りの多くは彫師としての技術指導に関する内容であったこと等の具体的事情があるとし、福岡拘置所長は、原告とSとの養子縁組は、彫 師としての指導を受けること等を主眼として、外部交通確保の目的でされたものであり、刑事収容施設法120条1項1号及び139条1項1号に規定される親族に該当しないと判断した。 そのため、福岡拘置所長は、平成24年1月11日、原告とSとの外部交通については、許可しない方針とする旨を決定した上、同月12日、 看守長を介して、原告に対し、その旨を告知した(乙6)。 原告は、平成30年6月14日、本件信書②の発信申請を行った。 これに対し、福岡拘置所長は、前記の事情に加え、本件信書②の内容が、Sとの外部交通を求め、訴訟の共同原告になってもらいたい旨の依頼及び今後の対応を求めるものであったものの、その時点で訴訟は提 起されておらず、また、訴訟提起に当たって共同訴訟を行うことが不可欠とも認められないことから、本件信書②を発信する必要があるとは認められず、その信書が刑事収容施設法139条1項及び同条2項のいずれにも該当しないと判断した。そして、福岡拘置所長は、平成30年6月15日、これを不許可とすることを決定した上、同月18日、副看守 長を介して、原告に対し、その旨を告知した(本件不許可処分②。乙8)。 ウ本件不許可処分③の事実経過原告は、平成23年11月7日に死刑確定者に資格異動した後、外部交信者名簿(親族)を提出し、Eとの外部交通の許可を求めた。 これに対し、福岡拘置所首席矯正処遇官は、平成19年規程22条3号に基づき、原告とEとの養子縁組について調査した結果、原告とEの 間に在社会時での 族)を提出し、Eとの外部交通の許可を求めた。 これに対し、福岡拘置所首席矯正処遇官は、平成19年規程22条3号に基づき、原告とEとの養子縁組について調査した結果、原告とEの 間に在社会時での交流がないことや、原告が未決拘禁者の頃にEに宛てて発信した信書の中で「私と離縁すれば外部交通も出来なくなりますよ。 考えて下さいね。」との記載があったこと、死刑確定後にOに宛てて発信した信書の中で、「11/17に俺の養子も戻るばい!!こいつにも稼がせてカスリ取らやん(笑)」との記載があったこと等の具体的事情がある とし、福岡拘置所長は、原告とEとの養子縁組は、原告が自己の弟子としてEと関係を結び、自己の彫師の一門の勢力を拡張するとともに、死刑確定後の資金的な裏付けとすることを主眼として、外部交通確保の目的でされたものであり、刑事収容施設法120条1項1号及び139条1項1号に規定される親族に該当しないと判断した。 そのため、福岡拘置所長は、平成24年1月11日、原告とEとの外部交通については、許可しない方針とする旨を決定した上、同月12日、看守長を介して、原告に対し、その旨を告知した(乙6)。 原告は、平成30年6月15日、本件信書③の発信申請を行った。 これに対し、福岡拘置所長は、前記の事情に加え、本件信書③の内 容が、Eとの外部交通を求め、訴訟の共同原告になってもらいたい旨の依頼及び今後の対応を求めるものであったものの、その時点で訴訟は提起されておらず、また、訴訟提起に当たって共同訴訟を行うことが不可欠とも認められないことから、本件信書③を発信する必要があるとは認められず、その信書が刑事収容施設法139条1項及び同条2項のいず れにも該当しないと判断した。そして、福岡拘置所長は、平成30年6 ないことから、本件信書③を発信する必要があるとは認められず、その信書が刑事収容施設法139条1項及び同条2項のいず れにも該当しないと判断した。そして、福岡拘置所長は、平成30年6 月18日、これを不許可とすることを決定した上、同月19日、副看守長を介して、原告に対し、その旨を告知した(本件不許可処分③。乙9)。 エ本件不許可処分④の事実経過原告は、平成23年11月7日に死刑確定者に資格異動した後、外部交信者名簿(親族外)を提出し、Gとの外部交通の許可を求めた。 これに対し、福岡拘置所首席矯正処遇官は、原告とGの間に在社会時からの継続的な交流がないことや、原告が未決拘禁者の頃にGに宛てて発信した信書の中で、自己との関係をGが経営する店舗の店員ということにしてほしいなどと依頼する内容の記載があり、その関係について虚偽の申告を行うことで、Gとの間で不正な外部交通を計画していたこと、 絵の師匠との申告についてその事実が確認できないこと等から、Gとの外部交通を許すべき事情は認められず、施設の規律及び秩序を害するおそれがないと判断するまでにも至らなかったことから、刑事収容施設法120条2項及び139条2項のいずれにも該当しないと判断した(乙10)。 そのため、福岡拘置所長は、平成23年12月22日、原告とGとの外部交通については、許可しない方針とする旨を決定した上、同月26日、看守長を介して、原告に対し、その旨を告知した(乙10)。 原告は、平成25年5月7日、「外部交通許可及び名簿記載願」と題する願箋を提出し、Gとの外部交通の許可を求めた。 これに対し、福岡拘置所長は、平成25年5月15日、原告とGとの外部交通については、相手方からの面会の申出や相手方への発信の申請等 題する願箋を提出し、Gとの外部交通の許可を求めた。 これに対し、福岡拘置所長は、平成25年5月15日、原告とGとの外部交通については、相手方からの面会の申出や相手方への発信の申請等がない時点では、その許否を判断することができないため、相手方からの面会の申出、相手方への発信申請、相手方からの受信があった都度、その内容等を踏まえながら、その許否の判断を行うことを決定し、同月 23日、看守長を介して、原告に対し、その旨を告知した(乙11)。 原告は、平成30年2月7日、「外部交通者許可方針者認定願」と題する願箋を提出し、Gとの外部交通の許可を求めた。 これに対し、福岡拘置所長は、前記の事情に加え、原告がGについて在社会時から交流があった旨を申告したものの、未決拘禁者の頃の外部交通の状況からすれば、実際には在社会時の交流はなかったものと推 察されることや、G宛ての発信の中で、「パンフの方出来たので同封します。」、「良ければ投稿掲載の方宜しくお願いします。」などと依頼する内容の記載があり、Gを通じて第三者との外部交通を図り、その制限を潜脱する意図もうかがわれたこと等の具体的事情から、Gについて、刑事収容施設法120条及び139条のいずれにも該当しない者と判断し、 平成30年4月13日、看守長を介して、原告に対し、原告とGとの外部交通については、許可しない方針である旨を告知した(乙12)。 原告は、平成30年2月27日、本件信書④の発信申請を行った。 これに対し、福岡拘置所長は、前記及びの事情に加え、その信書の内容も近況報告、絵の指導等に関する依頼、原告とGとの交流が心情 安定に資するとの意見などが記載されたものにすぎず、刑事収容施設法139条1項及び同条2項のいずれ びの事情に加え、その信書の内容も近況報告、絵の指導等に関する依頼、原告とGとの交流が心情 安定に資するとの意見などが記載されたものにすぎず、刑事収容施設法139条1項及び同条2項のいずれにも該当しないと判断し、同年4月12日、これを不許可とすることを決定した上、同月13日、看守長を介して、原告に対し、その旨を告知した(本件不許可処分④。乙13)。 オ本件不許可処分⑤の事実経過 原告は、平成30年2月28日、本件信書⑤の発信申請を行った。 これに対し、福岡拘置所長は、Hが原告との外部交通を許可する方針とされている者に該当しないことや、その信書の内容も近況報告、絵の指導等に関する依頼、原告とHとの交流が心情の安定に資するとの意見等が記載されたにすぎず、刑事収容施設法139条1項及び同条2項のいずれに も該当しないと判断し、平成30年4月12日、これを不許可とすること を決定し、同月13日、看守長を介して、原告に対し、その旨を告知した(本件不許可処分⑤。乙14)。 カ本件不許可処分⑥の事実経過について原告は、平成30年12月11日、「外部交通許可方針者認定追記願」と題する願箋を提出し、Iとの外部交通の許可を求めた。 これに対し、福岡拘置所長は、原告とIとの交流は、原告が自身の事件について情報提供して金銭を得るために接触した上、雑誌社の取材を目的として開始したものであること、Iは原告の事件を題材として発行した書籍「殺人犯との対話」の中で、原告の発した言葉を常人には理解し難い死刑確定者の言葉として紹介するなど、心情安定に資する相手方 とは到底認められないこと、Iのメディアでの発言により、原告と家族との関係性が悪化した事実があり、これを継続させた場合には、原告の心情の安定を 言葉として紹介するなど、心情安定に資する相手方 とは到底認められないこと、Iのメディアでの発言により、原告と家族との関係性が悪化した事実があり、これを継続させた場合には、原告の心情の安定を害するおそれが顕著に認められること、原告が所内での処遇緩和を目的として、メディアに対する発信力のあるIに施設内の情報を提供する可能性も否定できず、施設の規律及び秩序を害するおそれも 認められること等の具体的事情から、Iについて、刑事収容施設法120条及び139条のいずれにも該当しないと判断し、平成31年3月29日、看守長を介して、原告に対し、原告とIとの外部交通については、許可しない方針である旨を告知した(乙15)。 原告は、平成31年3月20日、本件信書⑥の発信申請を行った。 これに対し、福岡拘置所長は、前記の事情に加え、その信書の内容も心境の報告等にすぎないものであり、刑事収容施設法139条1項及び同条2項のいずれにも該当しないと判断し、平成31年3月25日、これを不許可とすることを決定した上、同月26日、副看守長を介して、原告に対し、その旨を告知した(本件不許可処分⑥。乙16)。 2 争点1(確認の訴えの利益の有無)について⑴ 判断の枠組み確認の利益は、判決をもって法律関係の存否を確定することが、その法律関係に関する法律上の紛争を解決し、当事者の法律上の地位ないし利益が害される危険を除去するために必要かつ適切である場合に認められるものであ り(最高裁昭和44年(オ)第719号同47年11月9日第一小法廷判決・民集26巻9号1513頁、最高裁平成14年(受)第1244号同16年12月24日第二小法廷判決・裁判集民事215号1081頁、最高裁平成16年(受)第1939号同 47年11月9日第一小法廷判決・民集26巻9号1513頁、最高裁平成14年(受)第1244号同16年12月24日第二小法廷判決・裁判集民事215号1081頁、最高裁平成16年(受)第1939号同17年11月8日第三小法廷判決・裁判集民事218号263頁参照)、このことは、公法上の当事者訴訟のうち公法上の法 律関係に関する確認の訴えについても同様であると解される。 ⑵ 確認の利益の有無これを本件確認の訴えについてみると、前提事実及び認定事実によれば、次の点を指摘することができる。 ア本件確認の訴えの対象は、原告とAらとの関係が刑事収容施設法139 条1項1号の「親族」に当たり、原告がAらとの間で信書を発受することができるか否かという法律関係の有無であり、被告の主張を踏まえると、当事者間でこれについて争いがあるといえる。 イ福岡拘置所長は、原告との信書の発受を許可する方針としていた者の中にAらを含めておらず(認定事実⑷)、原告とAらが刑事収容施設法139 条1項1号の「親族」関係に当たらないとし、原告とAらとの外部交通については許可しない方針とする旨を決定して原告にその旨を告知した後、本件不許可処分①~③をしたものである(認定事実⑺)。このような事実経過からすれば、今後、原告がAらと信書の発受をしようとしても、それが許可されることは基本的にはないものと認めるのが相当である。 ウこれに対し、原告において、本件不許可処分①~③の取消しを求めると いう方法を採ることも考えられるものの、現時点では出訴期間を経過したものとして不適法となる可能性もある上、前記イのとおり、福岡拘置所長が原告とAらとの外部交通については許可しない方針とする旨を決定したことからすれば、原告とAらとの間で刑 時点では出訴期間を経過したものとして不適法となる可能性もある上、前記イのとおり、福岡拘置所長が原告とAらとの外部交通については許可しない方針とする旨を決定したことからすれば、原告とAらとの間で刑事収容施設法139条1項1号により信書を発受することのできる地位にあることの確認を求める本件確認 の訴えが認められるか否かで判断することが紛争をより直截に解決することができるものというべきである。 エこれに加え、原告は、死刑確定者であり、そのような原告のための外部交通の必要性・重要性は否定し難い上、法務大臣によって死刑の執行の命令がされることによって死刑が執行される状況にあり、原告に対し、法務 大臣によって刑事訴訟法475条1項に基づき死刑執行命令が出された場合、検察官が5日以内にその執行をしなければならないとされている(同法476条)という状況に置かれているものである。 ⑶ 小括以上の諸事情に照らすと、原告が、Aらとの関係で、刑事収容施設法13 9条1項1号の「親族」に当たるとして、信書を発受することができる地位を有することを確定することは、その地位の存否に関する法律上の紛争を解決するために有効適切な手段であるということができ、確認の利益を肯定することができるものというべきである。 そうすると、本件確認の訴えについては、原告がAらとの間で刑事収容施 設法139条1項により信書を発受することのできる地位にあることの確認を請求する趣旨のものとして適法な訴えということができる。 3 争点2(原告がAらとの間で刑事収容施設法139条1項1号により信書を発受することができる地位にあるか)について⑴ 判断の枠組み ア刑事収容施設法139条1項は、刑事施設の長が、死刑確定者に対し、 施設法139条1項1号により信書を発受することができる地位にあるか)について⑴ 判断の枠組み ア刑事収容施設法139条1項は、刑事施設の長が、死刑確定者に対し、 この目、同法148条3項又は次節の規定により禁止される場合を除き、①死刑確定者の親族との間で発受する信書(1号)、婚姻関係の調整、訴訟の遂行、事業の維持その他の死刑確定者の身分上、法律上又は業務上の重大な利害に係る用務の処理のため発受する信書(2号)、発受により死刑確定者の心情の安定に資すると認められる信書(3号)を発受することを許 すものとする旨を規定する。そして、同項が親族との外部交通を認める趣旨は、死刑確定者の拘禁の本質は、外部交通の遮断を含む社会からの隔離にあり、拘禁の本質だけで、死刑確定者の外部交通を制約する理由となり得る一方で、親族との外部交通は、人道上の観点から一般的にこれを許すのが適当であるとされることにあると解される。 このような趣旨に鑑みると、刑事収容施設法139条1項1号における「親族」は、民法上の「親族」と異なる解釈を採るべき根拠となる規定が見当たらない以上、民法725条にいう「親族」をいうものと解するのが相当である。 イ縁組は、戸籍法の定めるところにより届け出ることにより、その効力を 生じ(民法799条において準用する同法739条1項)、養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得することから(民法809条)、有効な養子縁組がされた場合には当該縁組当事者である養親子は、民法725条にいう「親族」に当たる。そして、民法802条は、縁組は、①人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき(同条1号)及 び②当事者が縁組の届出をしないとき(同条2号本文 25条にいう「親族」に当たる。そして、民法802条は、縁組は、①人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき(同条1号)及 び②当事者が縁組の届出をしないとき(同条2号本文)に限り、無効とする旨を規定するところ、上記①の「当事者間に縁組をする意思がないとき」とは、当事者間に真に養親子関係の設定を欲する効果意思を有しない場合を指し、たとえ縁組の届出をすること自体について当事者間に意思の合致があったとしても、それが単に他の目的を達成する便法として仮託された にすぎず、真に養親子関係の設定を欲する効果意思がなかった場合におい ては、当該養子縁組は効力を生じないのである(最高裁昭和23年(オ)第85号同年12月23日第一小法廷判決・民集2巻14号493頁参照)。 ⑵ Aらとの間の親族該当性アこれを本件についてみると、前提事実及び認定事実によれば、以下の事 実を指摘することができる。 原告とAらとの間では、在社会時において交流はなかった(前提事実⑴及び認定事実⑹ア~ウ参照)。 原告は、Jに宛てた信書において、「親父の許可が出たので2~3ヶ月のみ山菱系の方の所へ養子に入ります。」、「俺自身はAさんと養子縁組 みをしてA姓になり、次に又再縁組でSさんと縁組し今S姓になってます。確定後の外部交通の為なので別の人とも縁組を重ねていきます。」と記載した(認定事実⑹ア・エ)。 原告は、Kに宛てた信書において、「数回養子縁組をする予定、でもキチンとM(姓)に変るけ安心を。。。」、「俺あ形上養子縁組みしてもここで はM(姓)のままでしとく。縁組も1ヶ月間のみよ。」と記載した(認定事実⑹イ・ウ)。 原告は、Sに宛てた信書において、「いつ確定しますか 。。」、「俺あ形上養子縁組みしてもここで はM(姓)のままでしとく。縁組も1ヶ月間のみよ。」と記載した(認定事実⑹イ・ウ)。 原告は、Sに宛てた信書において、「いつ確定しますか。刑務所の中の間だけでも手紙のため私と養子縁組しませんか。」と記載した(別紙原告とSとの間の外部交通一覧番号30)。 原告は、Eに対し、平成23年3月10日付けの信書において、「F氏に己の気持ちを伝え、離縁を求めればいいのでは?不義理だけはしないように気をつけ、己で白黒キチンとつけて下さい。私と離縁すれば外部交通も出来なくなりますよ。」などと記載した(別紙原告とEとの間の外部交通一覧番号53)。 イ前記アで指摘の点からすると、被告が主張するとおり、原告とAらとの 間の養子縁組は、外部交通をする目的を達するためにされた側面があることが否定し難い。 ウしかしながら、認定事実によれば、以下の事実も指摘することができる。 原告は、平成12年3月に中学校を卒業し、相撲部屋に入門するなどした後、平成15年に中等少年院送致の保護処分を受け、その仮退院直 後にM組組員となり、平成16年9月に強盗殺人等の罪を犯し(当時20歳)、本件強盗殺人等事件で死刑判決を受けるに至った(前提事実⑵、認定事実⑴・⑵)。他方、原告は、小学生の頃から刺青の下絵を制作し始め、本件強盗殺人等事件による身柄拘束以降も、刺青の下絵の制作を続け、その作品が死刑囚表現展で受賞するなどしており、現在も刺青の下 絵の制作を続けているものである(認定事実⑶)。 以上の事実によれば、原告にとっては、刺青の下絵を描くことが、その人格的生存に関わる重要な事項であり、ひいては、その心情の安定に資するものであるとい けているものである(認定事実⑶)。 以上の事実によれば、原告にとっては、刺青の下絵を描くことが、その人格的生存に関わる重要な事項であり、ひいては、その心情の安定に資するものであるといえる。 原告は、Aとの間で、刺青の下絵のやりとりをするとともに(別紙原 告とSとの間の外部交通一覧番号19、29、32、35)、年賀状や互いの近況等についてやりとりをした(別紙原告とAとの間の外部交通一覧番号7~11、13~15、19~21、24、26、38、40)。 原告は、Sとの間で、刺青について語り合うことを目的として交流を始め、原告がSに対して自身が制作した刺青の下絵を送るなどしたほか (別紙原告とSとの間の外部交通一覧番号1、2、4、5~7、11~18、20、42、45、46)、原告とSとの間で、年賀状や時候の挨拶や、互いの近況等についてやりとりをした(別紙原告とSとの間の外部交通一覧番号3、44、49、53)。 原告は、Eとの間で、刺青をきっかけに交流を始め、原告がEに対し て刺青絵の指導をするなどしてやりとりをしたほか(別紙原告とEとの 間の外部交通一覧番号1~4、6~9、13、32、34、35、38、)、原告とEとの間で、近況等についての報告や、互いの状況について心配するなどした(別紙原告とEとの間の外部交通一覧番号23、25、28、40~45、52、55~59)。 このように、原告は、本件強盗殺人等事件による身柄拘束以降に、A らとの間で、刺青の下絵の指導等を通じて交流を深め、互いに関心を持ち近況等についてやりとりを深めるなどしたのであり、前記のような原告の身上経歴等に照らすと、在社会時における原告とAらの間で交流がなかったことを 青の下絵の指導等を通じて交流を深め、互いに関心を持ち近況等についてやりとりを深めるなどしたのであり、前記のような原告の身上経歴等に照らすと、在社会時における原告とAらの間で交流がなかったことをもって、原告とAらの前記交流等が真摯なものでなかったとはいえない。 養子縁組は、嫡出親子関係を創設するものであり、養親と養子の間では通常の社会生活上一般に認められる親子としての交際があってしかるべきであるところ、刑事施設収容中の原告とAらとの間における交流は、刑事収容施設法上、基本的に信書による外部交通しか想定されないのであるから、このような信書による外部交通を養子縁組の動機とすること と縁組をする意思とは、併存し得るものであるというべきである。そうすると、S及びEに対する信書の記載(前記ア)をもって直ちに原告とAらとの間の縁組が単に他の目的を達成する便法として仮託されたものと認めるのは相当とはいえない。また、J及びKに対する信書の記載(前記ア)の点については、実父母に対して養子縁組をすること を説明するために述べたものとして理解することもできる。 他に、原告とAらの間の養子縁組につき、縁組をする意思(真に養親子関係の設定を欲する効果意思)がないことをうかがわせる事情はない。 以上の事実関係の下においては、専ら信書による外部交通のために原告とAらとの間の養子縁組がされた場合であっても、直ちに当該養子縁 組について民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がない とき」に当たるとすることはできない。 エ以上の諸事情を総合考慮すれば、原告とAらとの間の養子縁組が、民法802条1号の「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たらず、無効であるとはいえない以 に当たるとすることはできない。 エ以上の諸事情を総合考慮すれば、原告とAらとの間の養子縁組が、民法802条1号の「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たらず、無効であるとはいえない以上、Aらは、死刑確定者である原告の「親族」(刑事収容施設法139条1項1号)に当たるといわざるを得ない。したがっ て、原告は、刑事施設の長(福岡拘置所長)との間で、Aらが刑事収容施設法139条1項1号にいう「死刑確定者の親族」に当たらないことを理由に、Aらとの間の信書の発受を不許可とされない地位にあるものと認めるのが相当である。 ⑶ 本件通達について アこれに対し、被告は、①本件通達によれば、原告とAらとの間の養子縁組が仮に民法上無効とならないとしても、専ら外部交通を得る目的などのためにされたものであり、養親子としての情を深めたりする目的意識はなく、あるいは極めて希薄であるときなど、法令における外部交通に関する各種規制を潜脱するためと認められる場合には、戸籍上養親子関係にある 者であっても、刑事収容施設法139条1項1号の「親族」には含まれないと解すべきであり、②福岡拘置所長は、原告に対し、Aらが刑事収容施設法139条1項1号にいう「死刑確定者の親族」に当たらないことを理由に、Aらとの間の信書の発受を不許可とすることができる旨を主張する。 他方、原告は、本件通達が、親族との間での信書の発受を原則的に認め る刑事収容施設法の趣旨に反して違法であると主張する。 イ前記⑴で説示したところを踏まえると、被告の主張に係る本件通達が定める場合(専ら外部交通を得る目的などのためにされたものであり、養親子としての情を深めたりする目的意識はなく、あるいは極めて希薄であるときなど、法令における外部交通に関する各種規制を る本件通達が定める場合(専ら外部交通を得る目的などのためにされたものであり、養親子としての情を深めたりする目的意識はなく、あるいは極めて希薄であるときなど、法令における外部交通に関する各種規制を潜脱するためと認め られる場合)は、当該養子縁組が民法上無効ではないものの、その外部交 通が権利濫用に当たり認められない場合があることを示したものと解するのが相当である(以上に反する被告の主張は、採用することができないが、本件通達27項⑴の定めは、このように解すれば、これが直ちに刑事収容施設法の趣旨に反して違法であるとはいえない。したがって、原告の上記主張は、採用することができない。)。 ウこれを本件についてみると、前記⑵で説示したところによれば、原告とAらとの間の外部交通が、少なくとも養親子としての情を深めたりする目的意識はなく、あるいは極めて希薄であるときなど、法令における外部交通に関する各種規制を潜脱するためのものとはいえない。 したがって、刑事施設の長(福岡拘置所長)は、原告に対し、本件通達 27⑴の定めを根拠として、Aらが刑事収容施設法139条1項1号にいう「死刑確定者の親族」に当たらないことを理由に、Aらとの間の信書の発受を不許可とすることはできない。 ⑷ 結論よって、原告は、刑事施設の長(福岡拘置所長)との間において、Aらが 刑事収容施設法139条1項1号にいう「死刑確定者の親族」に当たらないことを理由に、Aらとの間の信書の発受を不許可とされない地位を有するといえる。 本件確認の訴えに係る原告の請求は、上記の限度で理由がある。 4 争点3(本件各不許可処分の国賠法上の違法性の有無)について ⑴ 本件不許可処分①~③について いえる。 本件確認の訴えに係る原告の請求は、上記の限度で理由がある。 4 争点3(本件各不許可処分の国賠法上の違法性の有無)について ⑴ 本件不許可処分①~③についてア判断の枠組み福岡拘置所長の原告に対する本件不許可処分①~③は、Aらが刑事収容施設法139条1項1号にいう「死刑確定者の親族」に当たらないこと等を理由にされたものである(認定事実⑺ア~ウ)が、そのことから直ちに、 国家賠償法1条1項にいう違法があったとの評価を受けるものではなく、 福岡拘置所長が本件不許可処分①~③をする上において、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と判断したと認め得るような事情がある場合に限り、上記評価を受けるものと解するのが相当である(最高裁平成元年(オ)第930号、第1093号同5年3月11日第一小法廷判決・民集47巻4号2863頁参照)。 イ当てはめこれを本件についてみると、認定事実によれば、次の点を指摘することができる。 前記3で説示したところによれば、福岡拘置所長は、原告に対し、Aらが刑事収容施設法139条1項1号にいう「死刑確定者の親族」に当 たらないことを理由に、Aらとの間で信書の発受を不許可とすることができず、刑事収容施設法139条1項柱書が規定する例外の場合等に当たらない限り、これを許さなければならないこととなる。 ところが、福岡拘置所長は、原告とAらとの間の信書の発受について刑事収容施設法139条1項柱書が規定する例外の場合等に当たるべき 事情は見当たらないにもかかわらず、原告に対し、刑事収容施設法139条1項に該当しないと判断し、本件不許可処分①~③をしたものであり、本件不許可処分① 柱書が規定する例外の場合等に当たるべき 事情は見当たらないにもかかわらず、原告に対し、刑事収容施設法139条1項に該当しないと判断し、本件不許可処分①~③をしたものであり、本件不許可処分①~③は刑事収容施設法139条1項1号に反するものであるといわざるを得ない。 もっとも、本件不許可処分①~③当時、刑事収容施設法139条1項 1号の「親族」の概念に関しては、本件通達が発出されていた一方で、これと異なる見解もあったが、拠るべき判例は存在せず、この点に関する裁判例は分かれていた。また、前記3⑵アで説示したとおり、原告とAらとの関係は、在社会時において交流がなく、原告が外部交通のための養子縁組であるなどと複数回信書に記載するなどしていたものであり、 福岡拘置所長において、原告とAらとの間の身分関係の状況(前提事実 ⑴)や原告とAらとの間の刺青の下絵の指導等を通じた交流の実情等を正確に把握することは容易ではなかったというべきである。 このような事情の下では、福岡拘置所長が、認定事実⑺ア~ウの検討を経て、本件不許可処分①~③をしたことも、やむを得ない面があり、直ちに不合理であるとまではいえない。 そうすると、福岡拘置所長が本件不許可処分①~③をする上において、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と判断したと認め得るような事情があると認めることはできない。なお、以上の事情に照らすと、福岡拘置所長が本件不許可処分①~③をするにつき過失があったとも認め難いというべきである。 ウ小括したがって、福岡拘置所長が原告に対して本件不許可処分①~③をしたことには、いずれも国賠法1条1項の違法性があると認めることはできない。 ⑵ 本件不許可 ウ小括したがって、福岡拘置所長が原告に対して本件不許可処分①~③をしたことには、いずれも国賠法1条1項の違法性があると認めることはできない。 ⑵ 本件不許可処分④~⑥について ア判断の枠組み 刑事収容施設法139条1項3号刑事収容施設法139条1項3号が死刑確定者の心情の安定に資すると認められる信書の発受を許すこととしたのは、死刑確定者は、来るべき死を待つという特殊な状況にあり、極めて大きな精神的苦悩や動揺が あると考えられることから、同法32条1項が、死刑確定者が心情の安定を得られるようにすることに留意することを処遇の原則として掲げていることを踏まえたものであると解される。そうすると、刑事収容施設法139条1項3号にいう「心情の安定」とは、死刑確定者が、来るべき死刑の執行による自己の死を待つことに伴う精神的な苦悩や動揺の克 服又は制御をできる状態にあることであると解され、このような「心情 の安定」に資すると認められる信書の発受が同号により許されることとなる。 刑事収容施設法139条2項刑事収容施設法139条2項は、これら以外の信書の発受について、その発受の相手方との交友関係の維持その他その発受を必要とする事情 があり、かつ、その発受により刑事施設の規律等を害するおそれがないと認めるときは、これを許すことができる旨を規定する。これは、死刑確定者の拘置は外部交通の遮断を含む社会からの隔離をその内容としているものの、友人や知人との人格的な交流は、人間として自然な活動であり、良好な交友関係を否定すると、死刑確定者を精神的に孤立させる おそれがあるため、死刑確定者の人権に配慮するという観点から、そのような交友関 知人との人格的な交流は、人間として自然な活動であり、良好な交友関係を否定すると、死刑確定者を精神的に孤立させる おそれがあるため、死刑確定者の人権に配慮するという観点から、そのような交友関係を維持するための場合や、社会通念上、積極的に発受を許すべき理由となる事情がある場合には、刑事施設の規律等を害するおそれがない限り、刑事施設の長の裁量により、信書の発受を認めることとしたものであると解される。以上のような同項の趣旨に鑑みると、「交 友関係の維持」のために発信を必要とする事情があるといえるためには、人格的な交流があるといえるだけの継続的で良好な交際を行ってきたとの事情があることを要するというべきである。 そして、刑事施設の規律等を害するおそれの有無、当該信書の発受が死刑確定者の心情の安定に資すると認められるか否か及び当該信書の発 受の相手方との交友関係の維持その他その発受を必要とする事情の有無といった信書の発受の許否の要件に係る判断は、事柄の性質上、刑事施設内の実情に通暁し、日々の処遇等を通じて個々の死刑確定者の状況や心情等を把握することができ、外部交通等による当該刑事施設の規律等への影響等についても把握することができる刑事施設の長の合理的な裁 量に委ねられているものと解され、上記に係る同法139条所定の要件 を充たさないことを理由とする刑事施設の長による信書の発受を許さない措置は、その裁量権の行使に当たって裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があった場合に限り、当該死刑確定者に対して負う職務上の法的義務に違反したものとして違法となるものと解するのが相当である。 国家賠償法上の違法について 福岡拘置所長の原告に対する本件不許可処分④~⑥は、本件信書④~⑥が刑事収容施設 に違反したものとして違法となるものと解するのが相当である。 国家賠償法上の違法について 福岡拘置所長の原告に対する本件不許可処分④~⑥は、本件信書④~⑥が刑事収容施設法139条1項及び同条2項に当たらないこと等を理由にされたものである(認定事実⑺エ~カ)が、そのことから直ちに、国家賠償法1条1項にいう違法があったとの評価を受けるものではなく、福岡拘置所長が本件不許可処分④~⑥をする上において、職務上通常尽くすべ き注意義務を尽くすことなく漫然と判断したと認め得るような事情がある場合に限り、上記評価を受けるものと解するのが相当である(最高裁平成元年(オ)第930号、第1093号同5年3月11日第一小法廷判決・民集47巻4号2863頁参照)。 イ本件不許可処分④(G)について これを本件不許可処分④についてみると、前提事実及び認定事実によれば、前記3⑵ウで指摘した事実に加え、以下の事実を指摘することができる。 a 原告は、刺青の下絵を描くことが、その人格的生存に関わる重要な事項であり、ひいては、その心情の安定に資するものであったところ (前記3⑵ウ)、「G2」という彫師であるG(前提事実⑴オ)との間で、刺青絵を通じてやりとりを深めており(別紙原告とGとの間の外部交通一覧番号1~5、7、12、19~21、25~27)、時候の挨拶等のほか、近況報告等をしていた(別紙原告とGとの間の外部交通一覧番号6、8、11、15、18、24、29、31~33)。 b 本件信書④の内容は、別紙原告とGとの間の外部交通一覧番号34 のとおりであり、Gに対して、刺青絵の指導や交流を求めるものであって、心情の安定に資するとはいい難い記載内容は b 本件信書④の内容は、別紙原告とGとの間の外部交通一覧番号34 のとおりであり、Gに対して、刺青絵の指導や交流を求めるものであって、心情の安定に資するとはいい難い記載内容は見当たらない。 c 以上の事情を踏まえると、原告がGとの間で発信しようとした本件信書④は、心情の安定(来るべき死刑の執行による自己の死を待つことに伴う精神的な苦悩や動揺の克服又は制御をできる状態になること) に資すると認められる信書に当たるというべきであるにもかかわらず、福岡拘置所長は、Gについて、刑事収容施設法120条及び139条のいずれにも該当しない者と判断し、本件不許可処分④をしたものであり、本件不許可処分④は刑事収容施設法139条1項3号に反するものであるといわざるを得ない。また、福岡拘置所長が、本件信書④ が同条2項に当たらないとして、本件不許可処分④をしたことも、前記のような本件信書④の内容等に照らし、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるというべきである。 d もっとも、原告は、Gとの外部交通において、Gに対し、「私を「■」の店員として頂き仕事上の付合いと言う事にして頂きたいので す。もしだめな時は■(C弁護士)を通しての御連絡でよろしくご免下さい。」と記載した信書を発信していた(別紙原告とGとの間の外部交通一覧番号28)のであり、原告が虚偽の事実を述べてGとの外部交通を継続しようとしたという事実が認められる。また、前記aのような原告とGとの間のやり取りを踏まえても、福岡拘置所長におい て、原告とGとの間の刺青の下絵の指導を通じた交流の実情を正確に把握することは容易ではなかったというべきである。 そうすると、福岡拘置所長が、原告とGの間に在社会時からの継続的な交流がな 原告とGとの間の刺青の下絵の指導を通じた交流の実情を正確に把握することは容易ではなかったというべきである。 そうすると、福岡拘置所長が、原告とGの間に在社会時からの継続的な交流がないことや、原告が未決拘禁者の頃にGに宛てて発信した信書の中で、自己との関係をGが経営する店舗の店員ということにし てほしいなどと依頼する内容の記載があり、その関係について虚偽の 申告を行うことで、Gとの間で不正な外部交通を計画していたこと、絵の師匠との申告についてその事実が確認できないこと等から、Gとの外部交通を許すべき事情は認められないと判断し、本件不許可処分④をしたこと(認定事実⑺エ)は、やむを得ない面があり、直ちに不合理であるとまではいえない。 以上によれば、福岡拘置所長が本件不許可処分④をする上において、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と判断したと認め得るような事情があると認めることはできない。 なお、被告は、原告がGとの外部交通に当たって、法令上の規制の潜脱を目論み、原告との関係を偽った上で行うよう依頼したことからすれ ば、原告にとってGは、虚偽の申告や外部交通の各種規制を潜脱する行為を助長する相手方であると認められ、原告とGとの外部交通を認めた場合、原告が自己をコントロールできずに、外部交通を利用して更なる不正行為を画策し、実行するおそれが認められると主張する。 確かに、上記dのとおり、原告は、Gとの関係を仕事上の付き合い であるということとして外部交通の継続を試みたものであって、そのこと自体は問題のある行動をいうべきものであるが、原告の身上経歴(前提事実⑵及び認定事実⑴・⑵参照)からうかがわれる原告の未熟さや生育環境の特殊性等も として外部交通の継続を試みたものであって、そのこと自体は問題のある行動をいうべきものであるが、原告の身上経歴(前提事実⑵及び認定事実⑴・⑵参照)からうかがわれる原告の未熟さや生育環境の特殊性等も考慮すれば、このことのみをもって、本件信書④が原告の心情の安定に資すると認められる信書に該当することを否定する ことはできない。 被告の上記主張は、採用することができない。 したがって、本件信書④が心情の安定に資すると認められる信書に当たると認められるものの、福岡拘置所長が原告に対して本件不許可処分④をしたことにつき、国賠法1条1項の違法性があると認めることはで きない。 ウ本件不許可処分⑤(H)について 前記アの点を本件不許可処分⑤についてみると、前提事実及び認定事実によれば、以下の事実を指摘することができる。 a 原告は、刺青の下絵を描くことが、その人格的生存に関わる重要な事項であり、ひいては、その心情の安定に資するものであったところ (前記3⑵ウ)、「H2」という刺青の絵師であるH(前提事実⑴カ)との間で、刺青絵をきっかけに手紙のやりとりをするようになり、刺青絵の指導を受けるなどした(別紙原告とHとの間の外部交通一覧番号1~11、14~22、25)b 本件信書⑤の内容は、別紙原告とHとの間の外部交通一覧番号29 のとおりであり、Hに対し、刺青絵の指導や交流を求めるものであって、心情の安定に資するとはいい難い記載内容は見当たらない。 c 以上の事情を踏まえると、原告がHとの間で発信しようとした本件信書⑤は、心情の安定(来るべき死刑の執行による自己の死を待つことに伴う精神的な苦悩や動揺の克服又は制御をできる状態に 。 c 以上の事情を踏まえると、原告がHとの間で発信しようとした本件信書⑤は、心情の安定(来るべき死刑の執行による自己の死を待つことに伴う精神的な苦悩や動揺の克服又は制御をできる状態になること) に資すると認められる信書に当たるというべきであるにもかかわらず、福岡拘置所長は、本件信書⑤が刑事収容施設法139条1項及び同条2項のいずれにも該当しないと判断し、本件不許可処分⑤をしたものであり、本件不許可処分⑤は刑事収容施設法139条1項3号に反するものであるといわざるを得ない。また、福岡拘置所長が、本件信書 ⑤が同条2項に当たらないとして、本件不許可処分⑤をしたことも、前記のような本件信書⑤の内容等に照らし、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるというべきである。 d もっとも、原告は、Hに対し、「私の養子、Eがうかがい致しておる物かとH2師直々、厳しく修行させてやって下さい。養子によろしく お願いいたします。■(C弁護士)に気付お願いします。」と依頼した (別紙原告とHとの間の外部交通一覧番号27)のであり、前記のような原告とHとの間のやり取りを踏まえても、福岡拘置所長において、原告とHとの間の刺青の下絵の指導を通じた交流の実情を正確に把握することは容易ではなかったというべきである。 そうすると、福岡拘置所長が、Hが原告との外部交通を許可する方 針とされている者に該当しないことや、その信書の内容も時候の挨拶、絵の指導等に関する依頼、原告とHとの交流が心情の安定に資するとの意見等が記載されたにすぎず、刑事収容施設法139条1項及び同条2項のいずれにも該当しないと判断し、本件不許可処分⑤をしたこと(認定事実⑺オ)は、やむを得ない面があり、直ちに不合理である るとの意見等が記載されたにすぎず、刑事収容施設法139条1項及び同条2項のいずれにも該当しないと判断し、本件不許可処分⑤をしたこと(認定事実⑺オ)は、やむを得ない面があり、直ちに不合理である とまではいえない。 以上によれば、福岡拘置所長が本件不許可処分⑤をする上において、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と判断したと認め得るような事情があると認めることはできない。 なお、被告は、原告がHとの外部交通に当たって、Hを介してEとの 不正な連絡を企てているなどしており、原告とHとの交流を認めることによって、原告が自己をコントロールできずに、外部交通を利用して更なる不正行為を画策し、実行するおそれが認められると主張する。 しかし、前記dの原告がHに対する依頼は、HにEを彫師の修行をするよう依頼するものであって、これを不正な連絡を企てていると評価 はし難く、原告とHとの交流を認めることによって、原告が自己をコントロールできずに、外部交通を利用して更なる不正行為を画策し、実行する具体的なおそれが存するものとはいえない。 被告の上記主張は、採用することができない。 したがって、本件信書⑤が心情の安定に資すると認められる信書と認 められるものの、福岡拘置所長が原告に対して本件不許可処分⑤をした ことにつき、国賠法1条1項の違法性があると認めることはできない。 エ本件不許可処分⑥(I)について 前記アの点を本件不許可処分⑥についてみると、前提事実及び認定事実によれば、以下の事実を指摘することができる。 aIは、フリーのノンフィクションライターであり、原告に対して取 材をするために面会をし、 可処分⑥についてみると、前提事実及び認定事実によれば、以下の事実を指摘することができる。 aIは、フリーのノンフィクションライターであり、原告に対して取 材をするために面会をし、それをきっかけに原告との間で面会を重ねていたが、原告とIとの間のやりとりは、基本的には、原告やKに関する記事の執筆・掲載、書籍の出版をするに当たっての取材等に関するものである(別紙原告とIとの間の外部交通一覧番号1~58、60、61、63、65~73、75~82、84~92、95~10 6、108~110)。 b これらに加え、平成30年以降の原告とIとの信書の発受は、主に、原告が提起した簡易裁判所における民事訴訟の代理人になることをIに対して求めることや、原告が有する債権の回収の依頼等が主な内容となっている(別紙原告とIとの間の外部交通一覧番号112~12 9)。 cIが執筆した記事が掲載されたり、Iがテレビに出演して原告等について述べたりしたことを契機に、原告の姉が原告に対して「これ以上関わる事は出来ません。もう連絡も絶つつもりです。」と記載した信書を送付し、Kが原告に対して「私がIとかに色々言われるのが嫌な のよ。」と記載した信書を送付した(認定事実⑺カ・キ)。 d 本件信書⑥の内容は、別紙原告とIとの間の外部交通一覧番号130のとおりであり、Iに対し、差入れを求めるものである。 e 以上の事情を踏まえると、原告がIとの間で発信しようとした本件信書⑥は、心情の安定(来るべき死刑の執行による自己の死を待つこ とに伴う精神的な苦悩や動揺の克服又は制御をできる状態となること) に資すると認められる信書に当たるとはいえず、本件不許可処分⑥は、刑事収容施設 執行による自己の死を待つこ とに伴う精神的な苦悩や動揺の克服又は制御をできる状態となること) に資すると認められる信書に当たるとはいえず、本件不許可処分⑥は、刑事収容施設法139条1項3号に反するものであるとはいえない。 また、福岡拘置所長が、本件信書⑥が同条2項に当たらないとして、本件不許可処分⑥をしたことも、前記のような本件信書⑥の内容等に照らし、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとはいえない。 これに対し、原告は、本件信書⑥の記載(「Iさんと便り出来る事が私は喜びであり、大変心が落ち着くのです!」)やIが原告と多数回にわたり面談を行って多くの記事を執筆するなどして原告とIとの間に信頼関係が構築されてきたこと等からすれば、原告がIと信書の発受を行うことは心情の安定に資するものであると主張する。 しかし、刑事収容施設法139条1項3号の該当性(「心情の安定」に資すると認められる信書の発受であるか否か)の判断は、当該信書の記載文言のみならず、その相手方との間の関係性等を踏まえてすべきところ、原告とIとの面談の状況等については、前記aのとおりであり、Iのテレビ出演やIが執筆した記事の掲載を契機に、原告と親族との間 の関係性が悪化したこともあること等をも併せ考慮すると、本件信書⑥が原告の心情の安定に資するものであるとはいえない。 したがって、福岡拘置所長が原告に対して本件不許可処分⑥をしたことにつき、国賠法1条1項の違法性があると認めることはできない。 オ小括 以上によれば、福岡拘置所長が原告に対して本件不許可処分④~⑥をしたことには、いずれも国賠法1条1項の違法性があると認めることはできない。 ⑶ 結論したがって 以上によれば、福岡拘置所長が原告に対して本件不許可処分④~⑥をしたことには、いずれも国賠法1条1項の違法性があると認めることはできない。 ⑶ 結論したがって、本件各不許可処分はいずれも国賠法1条1項の違法性があると認めることができず、原告の被告に対する国家賠償請求は、争点4について検討判断するまでもなく、理由がないこととなる。 第4 結語 よって、原告の請求のうち、本件確認の訴えに係る部分は前記第3の3⑷の限度で理由があるからこれを認容し、原告のその余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 福岡地方裁判所第1民事部 裁判長裁判官林 史高 裁判官本城伶奈 裁判官柴田啓介は、退官により署名押印することができない。 裁判長裁判官林 史高 別紙「当事者目録」、「人物目録」及び「外部交通一覧」は掲載省略 別紙関連法令等の定め 1 刑事収容施設法刑事収容施設法139条1項は、刑事施設の長が、死刑確定者に対し、こ の目、同法148条3項又は次節の規定により禁止される場合を除き、①死刑確定者の親族との間で発受する信書(1号)、婚姻関係の調整、訴訟の遂行、事業の維持その他の死刑確定者の身分上、法律上又は業務上の重大な利害に係る用務の処理のため発受する信書(2号)、発受により死刑確定者の心情の安定に資すると認められる信書(3号)を発受することを許すものと する旨を規定する。 また、同条2項は、刑事施設の長が、死刑確定者に対し、上記発受することを許す信書以外の信書の発受について、その発受の相手方との交友関係の維 を発受することを許すものと する旨を規定する。 また、同条2項は、刑事施設の長が、死刑確定者に対し、上記発受することを許す信書以外の信書の発受について、その発受の相手方との交友関係の維持その他その発受を必要とする事情があり、かつ、その発受により刑事施設の規律及び秩序を害するおそれがないと認めるときは、これを許すことが できる旨を規定する。 2 刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則(以下「処遇規則」という。)処遇規則76条1項は、刑事施設の長が、受刑者及び死刑確定者に対し、信書を発受することが予想される者について、氏名、生年月日、住所及び職 業(1号)、自己との関係(2号)、予想される信書の発受の目的(3号)、その他刑事施設の長が必要と認める事項(4号)を届け出るよう求めることができる旨規定する。 3 平成19年5月30日付け法務省矯成第3350号法務省矯正局長依命通 達「被収容者の外部交通に関する訓令の運用について」(平成28年2月2 4日付け法務省矯正第694号による改正前のもの。以下「本件通達」という。)⑴ 本件通達27項(現:28項)⑴は、刑事収容施設法は、人道上の観点から、親族については外部交通を許すことが適当であるとして、その権利を保障しているところ、当該養子縁組が民法802条1号の規定により無 効を主張できる場合はもとより、無効とは認定できないまでも、専ら外部交通を得る目的などのためにされたものであり、養親子としての情を深めたりするという目的意識はなく、あるいは極めて希薄である場合など、法令における外部交通に関する各種規制を潜脱するためと認められる場合は、当該養子縁組による親族関係は、法における親族との外部交通に係る規定 を適用する基礎を欠くもの 極めて希薄である場合など、法令における外部交通に関する各種規制を潜脱するためと認められる場合は、当該養子縁組による親族関係は、法における親族との外部交通に係る規定 を適用する基礎を欠くものであり、当該外部交通を認めない運用もあり得ること、特に、暴力団関係受刑者の場合、安易に外部交通を認めないよう留意することと規定する。 ⑵ 本件通達27項(現:28項)⑵は、養子縁組が外部交通の確保を目的としたものであるか否かの判断に当たっては、在社会時における交流の状 況、養子縁組に至る経緯、被収容者の外部交通の内容、被収容者及び相手方の養子縁組及び離縁の回数等を十分に調査の上、記録を残すことが相当であることと規定する。 4 福岡拘置所における取扱い ⑴ 福岡拘置所の内部基準として、平成19年6月1日付け達示第33号「福岡拘置所死刑確定者処遇規程」(以下「平成19年規程」という。乙3)を定め、同規程の第1章17条1項2号は、刑事収容施設法139条に基づいて信書の発受を許可することができる者は、同条1項に該当する信書及び本人が希望する者において、事前に許可した者との信書の発受であり、刑事施設 の規律及び秩序を害するおそれがないと認められる信書である旨を規定して いる。 また、平成19年規程22条⑶は、処遇規則76条1項を受けて、統括矯正処遇官は、死刑判決が確定した後、当該死刑確定者の心情を配慮しつつ、早い時期に外部交信者名簿(平成19年規程(別紙1))の提出について指導するとともに、願い出のあった外部交通の相手方について調査を行うことと する旨を規定している。 ⑵ その後、平成19年規程は平成24年6月7日に廃止され、福岡拘置所においては、平成25年4月18日付け達示第7号「福岡拘置所死刑 通の相手方について調査を行うことと する旨を規定している。 ⑵ その後、平成19年規程は平成24年6月7日に廃止され、福岡拘置所においては、平成25年4月18日付け達示第7号「福岡拘置所死刑確定者処遇規程」(甲48、乙4)に基づく運用がされ、同規程の2⒀イは、刑事収容施設法139条に基づいて信書の発受を許可することができる場合とし て、同条1項に該当する信書及び信書の発受の相手方との交友関係の維持その他その発受を必要とする事情があり、かつ、その発受により刑事施設の規律及び秩序を害するおそれがないと認められる信書である旨を規定している。 以上 別紙争点に関する当事者の主張 1 確認の訴えの利益の有無(争点1)(原告の主張) ⑴ 原告は、いつ死刑の執行を受けるかもしれない死刑確定者という立場にあり(刑事訴訟法475条2項本文)、事後的な救済を求める時間的又は精神的な余裕はない。被告は、本訴提起前に本件各不許可処分を行っており、原告は、このような過去の経過を踏まえて本訴を提起したのであるから、確認の利益の中核である紛争の成熟性は認められる。 また、被告による本件各不許可処分は、刑事収容施設法の解釈適用において重大な違法性を帯びており、かつ、反復継続的かつ累積加重的に発生し拡大する危険が現に存在する状況下にある。したがって、解決すべき紛争の成熟性(即時確定の現実的必要性)の要件を充足する。 さらに、個別の事案につき原告が事後的な救済を求め得たとしても、それ が実現されるまで原告の命が長らえているか分からず、原告が被告の個々の行為に対して事後的な救済を個別に求めることは迂遠なものである。特に、本件において、今後も親族との信書の発受及び心情の安定に資する信書 現されるまで原告の命が長らえているか分からず、原告が被告の個々の行為に対して事後的な救済を個別に求めることは迂遠なものである。特に、本件において、今後も親族との信書の発受及び心情の安定に資する信書の発受を希望する原告にとっては、地位の確認により、被告の過去の行為に対する個別の救済だけでは獲得し難い、将来にわたる予測可能で安定的な法的利 益を獲得し得る。したがって、種々の訴訟類型からの確認の訴えを選択することの適否の要件も充足する。 ⑵ 公法上の法律関係に関する確認の訴えが認められる場合に関する被告の主張(後記(被告の主張)⑴)は、いずれも平成16年の行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)改正前の考え方であり、行訴法改正の趣旨とその後 の裁判例の展開とこれに対する実務の評価に鑑みるならば、現在においての 先例としての価値については慎重に判断すべきである。 ⑶ よって、本件確認の訴えには、確認の利益が認められる。 (被告の主張)⑴ 本件確認の訴えは、行訴法4条後段の公法上の法律関係に関する確認の訴えであるところ、同条に基づく確認の訴えについては、他により適切な訴え によってその目的を達成することができる場合には、確認の利益を欠き不適法であるとされている。また、一般に、確認の訴えは、原告の有する権利又は法律的地位に危険又は不安が存在し、これを除去するため被告に対し確認判決を得ることが必要かつ適切な場合に限り、許されるとされているが、実質的当事者訴訟においては、法令や一般処分により賦課された公法上の義務 の存否を争うような場合であっても、争訟の成熟性を有するといえるためには、義務違反の効果として、将来何らかの不利益処分があるというだけでは足りず、当該不利益処分を受けてからこれに関する訴訟の中で の存否を争うような場合であっても、争訟の成熟性を有するといえるためには、義務違反の効果として、将来何らかの不利益処分があるというだけでは足りず、当該不利益処分を受けてからこれに関する訴訟の中で事後的に義務の存否を争ったのでは回復し難い重大な損害を被るおそれがあるなど、事前の救済を認めないことを著しく不相当とする特段の事情がある場合に限ると 解されている。 ⑵ 本件についてみるに、原告は、本件確認の訴えについて、原告とAらとの間の各養子縁組が有効であり、Aらは原告との関係において刑事収容施設法139条1項1号の「親族」に該当するから、信書の発受が許可されるべきであり、原告のAらに対する信書の発信を不許可としたのは違法である旨を 主張するが、そうだとすると、原告は、本件不許可処分①~③の取消しを求める訴えを提起したり、国家賠償請求訴訟を提起したりすることにより、その目的を達成することができる。また、原告の主張を踏まえても、Aらの「親族」該当性の評価により直ちに原告に何らかの法的義務が課されるものではなく、現時点においてこの点を確認しなければ回復し難い重大な損害を被る おそれがあるとも認められない。 ⑶ したがって、本件確認の訴えは、確認の利益を欠き不適法であるから、却下されるべきである。 2 原告がAらとの間で刑事収容施設法139条1項1号により信書を発受することができる地位にあるか(争点2)(原告の主張) ⑴ 養子縁組が有効であることア養子縁組は「当事者間に縁組をする意思がないとき」に限り無効であるが(民法802条1号)、これは、当事者間において真に養親子関係の設定を欲する効果意思を有しない場合をいい、当事者間に「親子としての精神的なつながりをつくる」という単純な意思があ 」に限り無効であるが(民法802条1号)、これは、当事者間において真に養親子関係の設定を欲する効果意思を有しない場合をいい、当事者間に「親子としての精神的なつながりをつくる」という単純な意思があれば、当事者間において 真に養親子関係の設定を欲する効果意思が認められる。 イ本件についてみると、原告とAらとは、後記⑶イ~エのとおり、相互に精神的なつながりを求めて縁組を行っている。 したがって、原告とAらとの間には、縁組をする意思が認められるのであり、「当事者に縁組をする意思がないとき」には当たらないから、原告 とAらとの養子縁組は有効である。 そうすると、Aらは、刑事収容施設法139条1項1号の「親族」に該当するから、原告がAらとの間で刑事収容施設法139条1項1号により信書を発受することができる地位にあることとなる。 ⑵ 本件通達が違法であること ア刑事収容施設法が信書の発受等を認める趣旨等刑事収容施設法1条は、「被収容者の人権を尊重しつつ」「状況に応じた適切な処遇を目的とする」と規定しており、死刑確定者について、刑事施設の規律秩序の維持その他管理運営上必要な限りにおいて、その権利を最小限度制約することを認めているにすぎない。 また、死刑確定者は刑事施設に拘置されること(刑法11条2項)に より行動の自由を制約されるものの、当該制約は、あくまで刑の執行に付随する前置手続としての制約にすぎず、刑の執行に必要不可欠な範囲を超えて、その人権を制限することは許されない。 そうすると、刑事収容施設法は、死刑確定者の面会・信書の発受に関する規定を定める際にも、死刑確定者の人権保障と刑事施設の規律維持 によってもたらされる公益とを比較衡量した上で、類型的に、死刑確定者の ると、刑事収容施設法は、死刑確定者の面会・信書の発受に関する規定を定める際にも、死刑確定者の人権保障と刑事施設の規律維持 によってもたらされる公益とを比較衡量した上で、類型的に、死刑確定者の権利として認められる面会・信書の発受の範囲を定めているはずである。 そこで、死刑確定者の親族との信書の発受についてみるに、刑事収容施設法は、死刑確定者の権利として、「死刑確定者の親族との間で発受 する信書」を許可するものとし(刑事収容施設法139条1項1号)、「親族」の範囲を血縁親族に制限していない。 これは、刑事収容施設法が、死刑確定者に関する刑事施設における処遇について、死刑確定者が激しい精神的苦痛に陥ったりせず心情の安定を得られるよう配慮する必要があること(刑事収容施設法32条)を原 則として、親族との外部交通は人道上の観点から一般的に許すのが適当であると解されることにある。 そして、この理は、死刑確定者が外部交通を目的とした養子縁組によって生じた親族であったとしても、死刑確定者の心情の安定に寄与するものであるといえる以上、その他の親族との関係と何ら変わるところが ない。 他方で、死刑確定者の親族との間で発受する信書であっても、刑事収容施設法は、「この目、第148条第3項又は次節の規定により禁止される場合」(同法139条1項柱書)には、その発受を許していない。 すなわち、①信書の内容に不適切な記述があるためにその発受の差止め 等がされるとき(同法139条柱書、同法141条、同法129条)、 ②死刑確定者が外国語による信書の翻訳の費用を負担すべきであるのにこれを負担しないとき(同法139条柱書、同法148条3項)、③死刑確定者が閉居罰を執行されているとき(信書の発受をすることが死刑確定者 刑確定者が外国語による信書の翻訳の費用を負担すべきであるのにこれを負担しないとき(同法139条柱書、同法148条3項)、③死刑確定者が閉居罰を執行されているとき(信書の発受をすることが死刑確定者の権利の保護に必要とされる場合などを除く。同法139条柱書、同法152条1項6号)には、信書の発受を禁止している。 以上からすれば、刑事収容施設法は死刑確定者と親族の信書の発受について、心情の安定に寄与するという人道的な観点から原則的に許可することとしており、信書の発受が許されない場合を限定的に定めることで、死刑確定者の人権保障と刑事施設の規律維持の調和を図っていると理解することができる。 イ本件通達の違法性前記のとおり、刑事収容施設法は、死刑確定者の権利として親族との信書の発受につき、範囲を制限することなく原則としてこれを認めているのであり、それにもかかわらず、本件通達によってその範囲を制約することは、同法の趣旨・目的に反する。 この点、まず、本件通達は、前記のとおり「当該養子縁組が民法第802条第1号の規定により無効を主張できる場合はもとより、(中略)当該外部交通を認めない運用もあり得る」としている。 確かに、縁組無効については、当然無効とされ、縁組無効の主張は、必ずしも訴えの提起によらなくてもよいとされている。 しかし、縁組の無効という身分関係に関わる事由であり、他に多くの影響を及ぼしかねないことについて、その判断を裁判所ではなく、矯正施設の長に委ねることには慎重でなければならない。 それにもかかわらず、本件通達は、「無効の場合」ではなく、「無効を主張できる場合」と規定しており、さらに、主観的又は恣意的な判断 に陥る危険性を有しているのであり、権利制限機能を有する規定の定め わらず、本件通達は、「無効の場合」ではなく、「無効を主張できる場合」と規定しており、さらに、主観的又は恣意的な判断 に陥る危険性を有しているのであり、権利制限機能を有する規定の定め 方としては、曖昧に過ぎるというべきである。 このように、主観的又は恣意的な判断に陥る危険性を有する曖昧な規定により、刑事収容施設法が死刑確定者の権利として認める親族との信書の発受を制約することを許容する本件通達は、違法と解される。 次に、本件通達は、「無効とは認定できないまでも、専ら外部交通を 得る目的などのためにされたものであり」とし、各種規定の潜脱目的などを挙げて、外部交通を認めない運用もあり得るとする。しかし、死刑確定者は、死刑の執行のために収容されているのであり、執行停止がなされるなど、極めて例外的な場合を除き、収容施設の外に出ることは想定されておらず、死刑確定者が親子関係にある者との交流をするとすれ ば、信書を交わすなどの外部交通をするほかはない。そうすると、親子関係となることによって、相続関係が生じ、財産関係の承継を目的とするといった場合を除き、親族としての交流を目的として養親子関係となった者は、そのほとんどが「専ら外部交通を得る目的」との判断になりかねない。したがって、「専ら外部交通を得る目的」をもって、権利制 限の根拠とする本件通達は違法である。 このことは、外部交通の制限という権利制限規定の適用について、恣意的な適用を許す危険性を有するのであり、運用によっては、およそ親族としての交流を目的として養親子関係となった者に対する信書の発受が制限されることにもなりかねないのであって、このような内容を含む 本件通達は、親族との間での信書の発受を原則的に認める刑事収容施設法の趣旨に反し、違法であ 子関係となった者に対する信書の発受が制限されることにもなりかねないのであって、このような内容を含む 本件通達は、親族との間での信書の発受を原則的に認める刑事収容施設法の趣旨に反し、違法であるといわざるを得ない。 ⑶ 本件通達を本件に適用することが違法であることア本件通達が適法たり得る解釈・適用以上のとおり、本件通達はこれ自体違法と解されるが、仮に、これを適 法と解釈するとしても、本件通達の解釈・適用について、本件通達におけ る「専ら外部交通を得る目的などのためにされたものであり、養親子としての情を深めたりするという目的意識はなく、あるいは極めて希薄である場合など、 法令における外部交通に関する各種規制を潜脱するためと認められる場合」について、恣意的な運用がされないよう、適用範囲が予測可能な程度に限定的に解釈すべきであり、「特に、暴力団関係受刑者の場 合、安易に外部交通を認めないよう留意すること」という本件通達の記載も踏まえ、反社会的集団の組織維持等、反社会的な目的の外部交通を可能にするために養子縁組がされたことが明らかな場合、と限定的に解されるべきである。 本件通達については、このように解釈、適用されることによって、はじ めてその適法性を認め得るものと解される。 イ原告及びAの養子縁組について原告とAは、原告が福岡拘置所に未決勾留されている間に、Aが原告の出版した本を購入したことで知り合ってからは、信書等を通じて、刺青等について意見交換するとともに、オリジナル商品等の作成・販売事業の確 立のために協力してきた。 そのような中で、原告とAは、互いに精神的なつながりを求めて、平成22年4月28日、養子縁組を行った。 このように、原告とAの養子縁組は、刺青やオリジナル 業の確 立のために協力してきた。 そのような中で、原告とAは、互いに精神的なつながりを求めて、平成22年4月28日、養子縁組を行った。 このように、原告とAの養子縁組は、刺青やオリジナル商品の販売等を内容とする信書の発受を行う中で、互いに精神的なつながりを求めて養子 縁組を行ったものであり、反社会的な目的で外部交通するために行ったものではない。 ウ原告及びSの養子縁組について原告とSは、彫師の一門の師弟関係にあり、原告が「T2」を、Sが「S2」をそれぞれ名乗り、活動していた。 原告の逮捕・勾留後においても、Sが、原告に対して、彫師に関する書 籍を、弁護士を通じて差し入れるなどして、交流を深めていく中で、師匠であるSが弟子の原告を精神的に支えるために、平成23年6月15日、養子縁組を行った。 このように、Sは、原告との師弟関係を深めていく中で、原告を精神的に支えるために養子縁組を行ったものであり、反社会的な目的で外部交通 をするために行ったものではない。 エ原告及びEの養子縁組について原告とEは、Eが彫師になることを希望していたことから知り合いになり、その後、Eが原告に弟子入りした。 そして、原告とEは、師弟関係を深めるために、平成21年8月14日、 養子縁組を行ったものであり、このことは、養子縁組後、原告がEに彫師としての修業先を伝えるなどしていることから明らかである。 このように、原告とEの養子縁組は、両者の師弟関係を深めることを目的として養子縁組を行ったものであり、反社会的な目的で外部交通をするために行ったものではない。 オ以上により、原告とAらとの外部交通に対して本件通達を適用することは違法である。 ⑷ 小括以上のとおり、原告とAらとの 、反社会的な目的で外部交通をするために行ったものではない。 オ以上により、原告とAらとの外部交通に対して本件通達を適用することは違法である。 ⑷ 小括以上のとおり、原告とAらとの間には刑事収容施設法139条1項1号の「親族」の関係にあると認めることができる。 よって、原告は、Aらとの間において、刑事収容施設法139条1項1号により、信書を発受することができる地位にあることの確認を求める。 (被告の主張)⑴ 死刑確定者の処遇についてア死刑確定者の法的地位及び処遇の性質 死刑確定者とは死刑の言渡しを受けて拘置されている者をいう(刑事収 容施設法2条11号)。 刑法11条2項は、「死刑の言渡しを受けた者は、その執行に至るまで刑事施設に拘置する。」と規定しているところ、死刑が生命刑であり、刑罰の内容が、その生命を奪うことだけにあることから、死刑確定者の拘置の性質については、「『死刑確定者』の拘置は、死刑の執行(絞首)に至るまで 継続する、その執行行為に必然的に付随する前置手続であり、『受刑者』の拘置とも、『未決拘禁者』の拘置とも、性格を異にするものである。他方、死刑確定者は、来るべき自己の死を待つという特殊な状況にあり、日常、極めて大きい精神的動揺と苦悩のうちにあることから、心情の安定を得られるようにすることが要請される。」とされており、「その処遇に当たって は、人道的観点からも、その心情の安定に十分配慮することが求められる」ため、刑事収容施設法32条1項は、「死刑確定者の処遇に当たっては、その者が心情の安定を得られるようにすることに留意するものとする。」として、死刑確定者の処遇の原則を定めている。 このように、死刑確定者の処遇に当たっては、死刑確定者の地位の特殊 遇に当たっては、その者が心情の安定を得られるようにすることに留意するものとする。」として、死刑確定者の処遇の原則を定めている。 このように、死刑確定者の処遇に当たっては、死刑確定者の地位の特殊 性及びこれを踏まえた処遇上の配慮の必要性がある。 イ死刑確定者の外部交通における自由の制限刑事収容施設法においては、死刑確定者の外部交通が制限されており、これについては、「この法律でも、死刑確定者には、外部交通の自由は認められていない。すなわち、未決拘禁者には刑訴法により許されない場合を 除き基本的に外部交通が保障されているのとは異なり、死刑確定者は、受刑者と同様に、その拘禁の本質は、外部交通の遮断を含む社会からの隔離にあるという考えが前提にされ、拘禁の本質から、それだけで外部交通を制約する理由になり得る」上、「死刑確定者の拘置は、死刑の執行に付随する前置手続であって、その拘置中、刑事施設における処遇上、死刑という 刑罰に伴う制裁として、外部交通を含めた行動の自由を剥奪しあるいは制 限することも許される(もとより、どのような自由も無制限に剥奪するべきであるという趣旨ではない)と考えられる。死刑確定者は、最も重い刑に処せられた者であるから、受刑者との均衡からも、そうした自由の制約がなければならないともいえる。その意味で、死刑確定者の死刑の執行に至るまでの拘置は、外部交通の遮断を含む社会からの隔離を本質としてい るものである。」と解されており、死刑確定者の拘置の本質は社会からの隔離にあるとされ、外部交通の自由の制約もこの本質から導かれる。 ⑵ 死刑確定者は受刑者と比べ信書発受の範囲が制限されていること死刑確定者の外部交通の制限を受刑者と対比すると、受刑者の場合、信書の発受は、相手方に制限なく基 自由の制約もこの本質から導かれる。 ⑵ 死刑確定者は受刑者と比べ信書発受の範囲が制限されていること死刑確定者の外部交通の制限を受刑者と対比すると、受刑者の場合、信書の発受は、相手方に制限なく基本的に保障されている(刑事収容施設法12 6条)のに対し、死刑確定者の場合、信書の発受が許される範囲は制限され、親族等は基本的に保障されるものの、それ以外の者とは一定の要件がある場合に限り刑事施設の長の裁量で許すことができるにとどまっている(同法139条)。 このように、死刑確定者については、信書の発受が許される範囲が制限さ れている点で、受刑者と異なる特徴がある。 これは、死刑確定者の拘置が社会からの隔離を本質とするものである上、死刑確定者が、「死刑という最も重い刑に処された者であり、その刑罰に伴う制裁として、刑事施設における処遇上、受刑者よりも自由を制約することも許される(死刑確定者に、相手方の範囲に制限なく、自由に信書を発信する 権利を保障するようなことは、国民感情も、これを許さないものと思われる)と考えられること、来るべき自己の死を待つという特殊な状況にあり、外部交通によって、激しい精神的苦痛に陥ったりすることも十分に想定されることを考慮すれば、心情の安定を図ることを理由に保障されるべき権利や自由を制限したりすることは適当ではないものの、親族等との信書の発受を保障 するのに加え、精神的に孤立させることにならないようにも配慮し、交友関 係の維持など信書の発受を必要とする事情がある場合には、信書の発受を許すことができるものとする以上に、外部交通の自由を認めるのは適当ではないと考えられること等を踏まえたものである」と解される。 このように、死刑確定者については、その地位の特殊性及びこれを踏ま を許すことができるものとする以上に、外部交通の自由を認めるのは適当ではないと考えられること等を踏まえたものである」と解される。 このように、死刑確定者については、その地位の特殊性及びこれを踏まえた処遇上の配慮の必要性に鑑み、受刑者と比べて外部交通の自由は厳しく制 限されており、信書の発受が許される範囲も限定されている。 ⑶ 本件不許可処分①~③が適法であることア Aらが原告の「親族」に該当しないこと養子縁組が無効である場合には刑事収容施設法139条1項1号の「親族」には当たらないこと 刑事収容施設法139条1項1号における「親族」とは、6親等以内の血族、配偶者、3親等以内の姻族をいうと解される(民法725条)。 もっとも、「当事者間に縁組をする意思がないとき」には、当該養子縁組は無効であるから(民法802条1号)、戸籍上養親子関係にあるものであっても、刑事収容施設法139条1項1号にいう「親族」には当たら ない。 そして、「縁組をする意思」があるといえるためには、縁組の届出をする意思のみでは足りず、社会通念上、親子の関係と認められる関係を持つ意思、すなわち真に養親子関係の設定を欲する効果意思がなければならない。 養子縁組が無効ではない場合でも刑事収容施設法139条1項1号の「親族」に該当しない場合があること刑事収容施設法139条1項1号が、死刑確定者と親族との間での信書の発受を原則として認めている趣旨は、親族との外部交通は人道上の観点から一般的にはこれを許すことが適当であることにある。 そうだとすると、当該養子縁組は民法上無効とならないまでも、専ら 外部交通を得る目的などのためにされたものであり、養親子としての情を深めたりする目的意識はなく、あるいは極めて希 そうだとすると、当該養子縁組は民法上無効とならないまでも、専ら 外部交通を得る目的などのためにされたものであり、養親子としての情を深めたりする目的意識はなく、あるいは極めて希薄であるときなど、法令における外部交通に関する各種規制を潜脱するためと認められる場合には、そもそも外部交通の自由が認められていない死刑確定者の外部交通をその者との間で一般的に認める必要はない。したがって、このよ うな場合には、戸籍上養親子関係にある者であっても、刑事収容施設法139条1項1号の「親族」には含まれないと解すべきである。 これを敷衍すれば、戸籍上養親子関係にある者であっても、縁組の意思がなく養子縁組が無効である場合は、刑事収容施設法139条1項1号の「親族」に該当せず、刑事施設の長は、当該「親族」に該当するか 否かの判断権限を有し、死刑確定者が申し出た信書の発受の相手方が戸籍上養親子関係にある者である場合、このような養子縁組が無効であると認められる場合はもとより、刑事施設の長において、養子縁組が有効であると認めるには至らない場合や、当該信書の発受の申出が権利の乱用に該当すると認められる場合には、当該信書の発受を許可しない処分 をすることができるというべきである。 イ本件通達が刑事収容施設法139条1項1号の正当な解釈を示すものであること本件通達が、「当該養子縁組が民法第802条第1号の規定により無効を主張できる場合はもとより、無効とは認定できないまでも、専ら外部交通 を得る目的などのためになされたものであり、養親子としての情を深めたりするという目的意識はなく、あるいは極めて希薄である場合など、法令における外部交通に関する各種規制を潜脱するためと認められる場合は、当該養子縁組による親族関係は、法に り、養親子としての情を深めたりするという目的意識はなく、あるいは極めて希薄である場合など、法令における外部交通に関する各種規制を潜脱するためと認められる場合は、当該養子縁組による親族関係は、法における親族との外部交通に係る規定を適用する基礎を欠くものであり、当該外部交通を認めない運用もあり得 ること。」と規定しているのは、刑事収容施設法139条1項1号の正当な 解釈を示しているというべきである。 本件通達は、それ自体が法の趣旨・目的に反するものとはいえず、これを適用することが違法ということはできない。 ウ本件について次のような事情からすると、原告とAらとの養子縁組は、法令における 外部交通に関する各種規制を潜脱するために行われたものであると認められ、養親子関係を成立させる効果意思に欠けるものであることから、刑事収容施設法139条1項1号に規定する「親族」とは認められないというべきである。 Aとの養子縁組について a 原告は、死刑確定後の外部交通確保を目的として、多方面に対し、外部交通に係る各種規制の潜脱を企図し、実行していたのであり、平成22年4月5日、Kへの信書に「数回養子縁組をする予定、でもキチンとM(姓)に変るけ安心を。。。」と記載し、平成23年7月20日、Jへの信書に「俺自身はAさんと養子縁組みしてA姓になり、次に又 再縁組でSさんと縁組みし今S姓になってます。確定後の外部交通の為なので別の人とも縁組を重ねていきます。」と記載していたことに照らせば、Aと養親子としての情を深めたりする目的意識はなく、法令における外部交通に関する各種規制の潜脱を目的とするための養子縁組であったことが認められる。 b そのため、原告とAの養子縁組は、真の親子関係の設定を欲してされ りする目的意識はなく、法令における外部交通に関する各種規制の潜脱を目的とするための養子縁組であったことが認められる。 b そのため、原告とAの養子縁組は、真の親子関係の設定を欲してされたものではなかったことから、当該養子縁組は無効であり、仮に当該養子縁組自体が無効とはいえないとしても、原告との関係においてAが刑事収容施設法139条1項1号に規定する「親族」に当たらない。 Sとの養子縁組について a 原告は、死刑確定後の外部交通確保を目的として、多方面に対し、外部交通に係る各種規制の潜脱を企図し、実行していたのであり、原告とSとの養子縁組についても、原告は、平成23年5月6日、Sへの信書に、「いつ頃確定しますか?刑務所の中だけでも手紙の為私と養子縁組しませんか」と記載したことや、同年7月20日、Jへの信書 に「俺自身はAさんと養子縁組みしてA姓になり、次に又再縁組でSさんと縁組みし今S姓になってます。確定後の外部交通の為なので別の人とも縁組を重ねていきます。」と記載したこと等に照らせば、Sと養親子としての情を深めたりする目的意識はなく、法令における外部交通に関する各種規制を潜脱するための養子縁組であったことが認め られる。 b そのため、原告とSの養子縁組は、真の親子関係の設定を欲してされたものではなかったことから、当該養子縁組は無効であり、仮に当該養子縁組自体が無効とはいえないとしても、原告との関係においてSが刑事収容施設法139条1項1号に規定する「親族」には当たら ない。 Eとの養子縁組についてa 原告は、死刑確定後の外部交通確保を目的として、多方面に対し、外部交通に係る各種規制の潜脱を企図し、実行していたほか、原告とEとの養子縁組については、平成23年 Eとの養子縁組についてa 原告は、死刑確定後の外部交通確保を目的として、多方面に対し、外部交通に係る各種規制の潜脱を企図し、実行していたほか、原告とEとの養子縁組については、平成23年11月10日、Oに宛てた信 書に出所後のEを利用して金銭を得ようとする旨を記載したことや、平成23年3月10日、Eに宛てた信書に「私と離縁すれば、外部交通も出来なくなりますよ。考えて下さいね。」などと記載したこと等から、原告とEの養子縁組は、養親子としての情を深めたりする目的意識はなく、法令における外部交通に関する各種規制を潜脱するための ものであったことが認められる。 b そのため、原告とEの養子縁組は、真の親子関係の設定を欲してされたものではなかったことから、当該養子縁組は無効であり、仮に当該養子縁組自体が無効とはいえないとしても、原告との関係においてEが刑事収容施設法139条1項1号に規定する「親族」に当たらない。 小括以上のとおり、原告とAらとの養子縁組関係が、それぞれ刑事収容施設法139条1項1号の親族に該当するとの原告の主張は、いずれも理由がない。 3 本件各不許可処分の国賠法上の違法性の有無(争点3) (原告の主張)⑴ 本件不許可処分①~③が違法であること前記争点2(原告の主張)のとおり、原告は、別紙人物目録記載の各人物との間において、刑事収容施設法139条1項1号により、信書を発受することができる地位にあり、それにもかかわらずされた本件不許可処分①~③ は、いずれも違法である。 ⑵ 本件不許可処分④~⑥が違法であることア権利発受(刑事収容施設法139条1項)について刑事収容施設法139条1項3号の趣旨刑事収容施設法139条1項3号の趣旨は、 れも違法である。 ⑵ 本件不許可処分④~⑥が違法であることア権利発受(刑事収容施設法139条1項)について刑事収容施設法139条1項3号の趣旨刑事収容施設法139条1項3号の趣旨は、心情の安定は、死刑確定 者本人の内心の問題であるから、心情の安定を図ることを理由に、死刑確定者に義務を課したり保障されるべき権利や自由を制限したりすることは適当ではないため、死刑確定者の人権に配慮するという観点から、交友関係を維持するための外部交通も、弊害が生ずるおそれがない限り、一般に信書の発受を認めるべきである点にある。そのため、心情の安定 に資すると認められる信書は原則として発受が許可されている。 そして、「心情の安定」とは、「死刑確定者が、来るべき死刑の執行による自己の死を待つことによる精神的な苦痛や動揺を克服し、あるいはコントロールできる状態にあることを意味」するとされ、「心情の安定に資すると認められる者」は、死刑確定者の精神的な支えになる恩師等が該当し得るとされている。 また、信書の相手方については、信書の相手方との交流自体が心情の安定に意味を有することが少なくないと考えられるので、厳密に信書の内容だけから判断すべきではないし、死刑確定者が心情の安定を得られるようにするための措置として絵画制作等の娯楽的活動の機会を認めていることも考慮すべきである。 刑事収容施設法139条1項3号該当性a 本件信書④について本件信書④には、「下絵を描(く)事を私が唯一最大の楽しみで癒しとしており、その世界の第一人者であり尊敬している先生様に未決の頃から描いた絵や資料のやり取りをして、接見・発受信で絵の手直 しを頂き話を聞いて色々習って来ており、その事を私自身最大の喜びを としており、その世界の第一人者であり尊敬している先生様に未決の頃から描いた絵や資料のやり取りをして、接見・発受信で絵の手直 しを頂き話を聞いて色々習って来ており、その事を私自身最大の喜びを感じて生甲斐にしている」、「以前の様に又これから心・絆のご交流を頂けます様に、心よりお願い申し上げます。」などと記載されており、発受の相手方であるGに対して、敬意や感謝を示すとともに、刺青の下絵の指導を依頼する内容となっている。このような内容は、 刑事収容施設法32条2項に定められた「その他の措置」の具体例として挙げられる絵画制作にかかわるものであり、同法が想定する心情の安定に資する活動の一つである。特に、原告の作成する下絵は美術作品としても評価されており、原告は専ら美術作品として下絵を作成してきた。 また、「手頃な私たちを、ためし又は布石にと執行するのではない か…等考え、近頃は憂いております。」などと死刑執行への不安を吐露しているところ、Gは原告にとって最も尊敬する人物の一人であり、このような人物に感情を吐露することは人として自然なことであり、原告の精神的な安定のために発信を認めるべき内容といえる。 さらに、原告はGと平成20年5月10日から継続的に信書発受を 繰り返しており、Gは原告に面会したこともあったのであり、本件不許可処分④がされるまで、4年間にわたり交友関係が続いていた。本件信書④にも「先生様との交流が「明らかに心情安定に資すること」と認められますので」と記載されており、このような文面は原告がGと信書の発受を行うことを強く望んでいたことの表れである。 以上より、本件信書④は、その内容・発信の相手方ともに「心情の安定」に資する信書であり、刑事収容施設法139条1項3号に該当する。 と信書の発受を行うことを強く望んでいたことの表れである。 以上より、本件信書④は、その内容・発信の相手方ともに「心情の安定」に資する信書であり、刑事収容施設法139条1項3号に該当する。 b 本件信書⑤について本件信書⑤の内容は、本件信書④と同様、原告はHとも平成20年 5月22日頃から信書の発受を繰り返しており、本件不許可処分⑤がされるまで、4年間にわたり交友関係が続いていた。 したがって、本件信書⑤は、その内容・発信の相手方ともに「心情の安定」に資する信書であり、刑事収容施設法139条1項3号に該当する。 c 本件信書⑥について本件信書⑥には、「Iさんは私の事を、“只の凶悪犯として仕事の種”とのみ見るのではなく、“それはそれと互いに割切った”上で、“一人の友人”として見て対等に接してくれるので、本当に嬉しくて有難いです。」、「私がIさんとの友情、交流を支えで励みとしてい て且つIさんも同じで居てくれてる嬉しさから、只々友人として普通 のお便りをしています。」と記載されており、少なくとも原告にとってIは、取材者・被取材者という関係を超えた友人関係にあるという認識を持っている。 また、本件信書⑥には、「Iさんと便り出来る事が私は喜びであり、大変心が落ち着くのです!」と記載されており、原告にとって、Iと 信書の発受を行うことは心情の安定に資するものであり、Iとの信書の発受を強く望んでいる。 さらに、Iは、原告と多数回にわたり面談を行い、多くの記事を執筆してきた。死刑確定者である原告を取材するには心情等への配慮や、信頼関係の構築が必要になるところ、Iが多くの記事を執筆してきた ことからも、原告とIの間に信頼関係が構築されたといえる。 加えて、「大変恐縮ですが、事前 原告を取材するには心情等への配慮や、信頼関係の構築が必要になるところ、Iが多くの記事を執筆してきた ことからも、原告とIの間に信頼関係が構築されたといえる。 加えて、「大変恐縮ですが、事前に代金送りますので、又以前の様に衣類や本、パンフ等の差入をお願いしていいですか?」と記載されているように、Iは、原告に対し、一支援者としても接している。 したがって、本件信書⑥は、「心情の安定」に資する信書であり、 刑事収容施設法139条1項3号に該当する。 d 小括以上より、本件信書④~⑥はいずれも刑事収容施設法139条1項3号に該当するにもかかわらず、福岡拘置所長はこれらの発受を不許可としていることから、本件不許可処分④~⑥はいずれも違法である。 イ裁量発受(刑事収容施設法139条2項)について仮に本件信書④~⑥が刑事収容施設法139条1項3号に該当しないとしても、本件不許可処分④~⑥は、裁量発受(刑事収容施設法139条2項)に係る福岡拘置所長の裁量権を逸脱し、違法である。 刑事収容施設法139条2項の趣旨 刑事収容施設法は、刑事施設の規律秩序の維持その他管理運営上必要 な限りにおいて、被収容者の権利を最小限度制約することを認めるに過ぎないことからすると、刑事収容施設法139条1項各号以外の信書の発受については、「その発受により刑事施設の規律及び秩序を害するおそれがない」ときは、原則として認められるべきである。 本件不許可処分④~⑥が裁量権を逸脱していること a 本件不許可処分④について原告はGと刺青の下絵制作を通して4年にわたり交友関係を維持してきたのであり、本件信書④は、従前の交流の経緯及び信書の内容からして、Gとの交友関係の維持を と a 本件不許可処分④について原告はGと刺青の下絵制作を通して4年にわたり交友関係を維持してきたのであり、本件信書④は、従前の交流の経緯及び信書の内容からして、Gとの交友関係の維持を目的としたものである。 また、本件信書④の発信を許可した場合に、福岡拘置所の規律や秩 序を害する事情は存在しない。 b 本件不許可処分⑤について原告はHと刺青の下絵制作を通して4年間にわたり交友関係を維持することで、その心情の安定を図ってきたのであるから、本件信書⑤は、従前の交流の経過及び信書の内容からして、Hとの交友関係の維 持を目的としたものである。 また、本件信書⑤の発信を許可した場合に、福岡拘置所の規律や秩序を害する事情は存在しない。 c 本件不許可処分⑥について原告とIは遅くとも平成23年頃から親交を深めてきており、その 心情の安定を図ってきたのであるから、本件信書⑥は、従前の交流の経過及び信書の内容からして、Iとの交友関係の維持を目的としたものである。 また、本件信書⑥の発信を許可した場合に、福岡拘置所の規律や秩序を害する事情は存在しない。 d 小括 よって、本件信書④~⑥は福岡拘置所長の裁量権をもってしても発信を認めなければならなかったのであり、本件各不許可処分④~⑥はいずれも福岡拘置所長に与えられた裁量権を逸脱した処分であるから、刑事収容施設法139条2項に違反するものである。 (被告の主張) ⑴ 国賠法1条1項の違法性の判断基準国賠法1条1項の「違法」とは、公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を与えることをいい、当該公務員の行為が違法といえるた 違法性の判断基準国賠法1条1項の「違法」とは、公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を与えることをいい、当該公務員の行為が違法といえるためには、それによって権利・利益を侵害したというだけでは不十分であり、当該公務員が損害賠償を求め ている国民との関係で個別具体的な職務上の法的義務を負担し、かつ、当該行為が職務上の法的義務に違反してされた場合でなければならない。 そして、具体的な判断においては、当該公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該行為をしたと認め得るような事情がある場合に限り、違法の評価を受けると解すべきである。 ⑵ 本件不許可処分①~③が適法であること前記2(被告の主張)のとおり、原告とAらとの養子縁組関係が刑事収容施設法139条1項1号の親族に該当するとの原告の主張は、いずれも理由がなく、本件不許可処分①~③は適法であるから、国賠法上違法の評価を受けるものではない。 ⑶ 本件不許可処分④~⑥が適法であることア刑事収容施設法139条1項3号該当性刑事収容施設法139条1項3号の解釈刑事収容施設法139条1項3号の「心情の安定」は、死刑確定者が来るべき死刑の執行による自己の死を待つことによる精神的な苦悩や動 揺を克服し、あるいはコントロールできる状態にあることをいい、「心情 の安定に資すると認められる信書」とは、このような意味での「心情の安定」に直接に若しくは間接に資する内容の信書をいうと解される。 そして、本件通達において、「法第120条第1項第3号に掲げる者については、死刑確定者の心情の安定に資すると認められる助言、講話等を行う宗教家が該当するものと考えられること。法第139 される。 そして、本件通達において、「法第120条第1項第3号に掲げる者については、死刑確定者の心情の安定に資すると認められる助言、講話等を行う宗教家が該当するものと考えられること。法第139条第1項第 3号に掲げる信書についても、同様の観点からの配慮が必要であること。」とされ、心情の安定に資すると認められる信書の発受の相手方として「助言、講話等を行う宗教家」を具体的に例示する。 その一方で、「死刑確定者の個人的依頼により個別に教誨を行う宗教家が想定されるほか、死刑確定者の精神的な支えになる恩師などもこれに 該当する場合があると考えられる。」とされているが、その文言上からも「精神的な支えになる恩師」が「心情の安定に資すると認められる者」に該当する場合はあるが、その範囲は「助言、講話等を行う宗教家」に比べて限定的なものと解され、単に死刑確定者本人が、精神的な支えになる恩師と位置付けるのみでは足りないとみるべきである。 この点、本件信書④及び⑤に「先生様との交流が「明らかに心情安定に資すること」と認められます」との記載があることや、本件信書⑥に「Iさんと便り出来る事が私の喜びであり、大変心が落ち着くのです!」と心情の安定に資することを強調するような文面があること等をもって、原告がこれらの信書が刑事収容施設法139条1項3号に該当するとな れば、心情の安定に資する記述に便乗することで、死刑確定者の信書の発受を事実上無制約に許容することにもなりかねない。 そもそも、死刑確定者については、来るべき死を待つという特殊な状況にあり、日常、極めて大きい精神的動揺と苦悩のうちにあるのであるから、その外部交通の相手方が「心情の安定に資する」か否かについて は、慎重な判断を要する。死刑確定者の精神状態や内心の意図 状況にあり、日常、極めて大きい精神的動揺と苦悩のうちにあるのであるから、その外部交通の相手方が「心情の安定に資する」か否かについて は、慎重な判断を要する。死刑確定者の精神状態や内心の意図は、その 外形上からは必ずしも明らかでないため、死刑確定者の心情の安定に資することを強調する記載があることのみをもって、その外部交通の相手方との信書の発受が心情の安定に資するか否かを判断すべきではなく、「心情の安定に資する」か否かの判断をするに当たっては、当該死刑確定者の性向や従前の行動等や、これまでの外部交通の状況等を踏まえる 必要がある。 したがって、死刑確定者に係る信書の発受の許否判断に際し、その心情の安定に資するものに該当するか否かを判断するに当たっては、死刑確定者の特殊性及びこれを踏まえた処遇上の配慮の必要性等に鑑み、死刑確定者の処遇について精通し、その日々の動静等を具体的に把握して いる刑事施設の長に裁量が認められ、その合理的な評価・判断に委ねられていると解される。 本件について次のような事情からすると、本件信書④~⑥は、いずれも「発受により死刑確定者の心情の安定に資すると認められる信書」(刑事収容施設法 139条1項3号)には該当しない。 a 本件不許可処分④についてGは、刺青の絵師(彫師名は「G2」)であるとされており、「助言、講話等を行う宗教家」に該当しない。 また、原告は、Gとの外部交通に当たって、法令上の規制の潜脱を 目論み、Gに対し、原告との関係を偽った上で行うよう依頼していることからすれば、原告にとってGは、心情の安定に資する「精神的な支えになる恩師」でなく、むしろ、虚偽の申告や外部交通の各種規制を潜脱する行為を助長する相手方であると認められ、原告とGとの 頼していることからすれば、原告にとってGは、心情の安定に資する「精神的な支えになる恩師」でなく、むしろ、虚偽の申告や外部交通の各種規制を潜脱する行為を助長する相手方であると認められ、原告とGとの外部交通を認めた場合、原告が自己をコントロールできずに、外部交通 を利用して更なる不正行為を画策し、実行するおそれが認められる。 したがって、Gは原告の心情の安定に資する者とは認められず、原告がGとの間で発受する信書は、刑事収容施設法139条1項3号に規定する原告の心情の安定に資する信書には該当しない。 b 本件不許可処分⑤についてHは、Gと同様に、刺青の絵師(彫師名は「H2」)であるとされて おり、「助言、講話等を行う宗教家」に該当しない。 また、原告は、Hとの外部交通に当たり、Hに対し、Hを介してEとの不正な連絡を企てている上、弁護士を介して外部交通の各種規制を潜脱する方法を伝えていることからすれば、Hは、原告の心情の安定に資する「精神的な支えになる恩師」でなく、むしろ、外部交通の 各種規制を潜脱する行為を助長する相手方であると認められ、原告とHとの交流を認めることによって、原告が自己をコントロールできずに、外部交通を利用して更なる不正行為を画策し、実行するおそれが認められる。 したがって、Hは原告の心情の安定に資する者とは認められず、原 告がHとの間で発受する信書は、刑事収容施設法139条1項3号に規定する原告の心情の安定に資する信書には該当しない。 c 本件不許可処分⑥についてIは、フリーライターであり「助言、講話等を行う宗教家」に該当しない。 また、原告は、Iとの面会において、法令上の規制の潜脱を目論み、宮城刑務所に服役中の者との仲介を依頼したことに対し、Iが 、フリーライターであり「助言、講話等を行う宗教家」に該当しない。 また、原告は、Iとの面会において、法令上の規制の潜脱を目論み、宮城刑務所に服役中の者との仲介を依頼したことに対し、Iがこれを承諾していることからすれば、Iは、原告の心情の安定に資する「精神的な支えになる恩師」でなく、むしろ、外部交通の各種規制を潜脱する行為を助長する相手方であると認められ、原告とIとの外部交通 を認めた場合、原告が自己をコントロールできずに、外部交通を利用 して更なる不正行為を画策し、実行するおそれが認められる。このことは、原告がIとの外部交通の許可を求めるために提出した願箋において、Iとの関係について「子供の頃から家族ぐるみの付合をしている兄的存在の者。」と、明らかに虚偽と認められる内容の申告をしている事実からも裏付けられる。 さらに、Iが、死刑確定前に原告を取材して書き記した本を出版したことや、テレビ番組に出演して原告の事件や対話の内容等について発言をしたことで、その内容が不特定多数の者に伝播されたことにより、その意図があったか否かにかかわらず、現に原告と親族との関係を悪化させるに至った事実が認められる。したがって、原告とIとの 交流が、原告の心情の安定に資するとは認められない。 以上のとおり、Iは原告の心情の安定に資する者とは認められず、原告がIとの間で発受する信書は、刑事収容施設法139条1項3号に規定する原告の心情の安定に資する信書には該当しない。 イ本件不許可処分④~⑥に裁量権の範囲の逸脱又は濫用が認められないこ と刑事収容施設法139条2項の解釈刑事収容施設法139条2項や本件通達の規定する文言上、信書の発受の許否を刑事施設の長の裁量に委ねている。これは、死刑確定者 は濫用が認められないこ と刑事収容施設法139条2項の解釈刑事収容施設法139条2項や本件通達の規定する文言上、信書の発受の許否を刑事施設の長の裁量に委ねている。これは、死刑確定者の特殊性及びこれを踏まえた処遇上の配慮の必要性等に鑑み、死刑確定者の 信書の発受の許否については、死刑確定者の処遇について精通し、その日々の動静等を具体的に把握している刑事施設の長の合理的な裁量判断に委ねる趣旨である。 したがって、このような刑事施設の長の判断が違法であるといえるためには、裁量権の範囲から逸脱し、又はこれを濫用したものと認められ ることが必要であり、具体的には、刑事施設の長の判断が、合理的根拠 を欠き、社会通念に照らし著しく妥当性を欠く場合に限り、その裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものとして違法と評価し得るというべきである。 本件信書④~⑥への当てはめ以下の事情からすると、本件信書④~⑥は、いずれも刑事収容施設法 139条2項により裁量的に発信を許すべき信書には該当しない。 a 本件信書④について原告とGは、在社会時における交流はなく、外部交通による交流があったのは、主に原告が未決拘禁者であった当時の平成23年5月18日から原告の法的地位が死刑確定者に資格異動するまでの約半年程 度であり、その内容は、専ら刺青の絵に関するものであった。 本件信書④についても、時候の挨拶、絵の指導等に関する依頼、原告とGとの交流が心情の安定に資するとの意見などが記載されたものである。 この点、原告とGとの外部交通を認めた場合、原告が自己をコント ロールできずに、外部交通を利用して更なる不正行為を画策し、実行するおそれが認められるのであるから、原告とGとの関係が良好な交 この点、原告とGとの外部交通を認めた場合、原告が自己をコント ロールできずに、外部交通を利用して更なる不正行為を画策し、実行するおそれが認められるのであるから、原告とGとの関係が良好な交友関係とは認められない。 また、本件信書④の内容からしても、「その他その発受を必要とする事情がある」ものとは認められず、加えて、原告がGに宛てて発信 した信書の中で、自己との関係を偽って申告するよう依頼することで、外部交通に係る規制の潜脱を画策していた事実もあることからすれば、まさに原告とGは、死刑確定者の拘禁の本質として外部交通が制限されている趣旨を没却し、刑事施設の規律及び秩序を害する行為をしようとしていたのであるから、その発受により刑事施設の規律及 び秩序を害するおそれがないとは到底認められない。 よって、福岡拘置所長が行った本件信書④について、刑事収容施設法139条2項の規定により裁量的に発信を許すべき事情があったとは認められない。 b 本件信書⑤について原告とHは、在社会時において交流はなく、原告とHとの交流は、 主に原告が未決拘禁者であった当時の平成20年5月22日から原告の法的地位が死刑確定者に資格異動するまでの約3年半程度のものであり、その内容は、専ら刺青の絵に関するものであった。 本件信書⑤についても、時候の挨拶、絵の指導等に関する依頼、原告とHとの交流が心情の安定に資するとの意見等が記載されたもので ある。 この点、原告とHとの交流を認めることによって、原告が自己をコントロールできずに、外部交通を利用して更なる不正行為を画策し、実行するおそれが認められるのであるから、原告とHとの交友関係が良好なものであるとはいえない。 また、本件信書⑤の内容からし ントロールできずに、外部交通を利用して更なる不正行為を画策し、実行するおそれが認められるのであるから、原告とHとの交友関係が良好なものであるとはいえない。 また、本件信書⑤の内容からしても、「その他その発受を必要とする事情がある」ものとは認められず、加えて、原告がHに宛てて発信した信書の中で、Hを介してEとの不正な連絡を企てていたほか、弁護士を介して外部交通の各種規制の潜脱を画策していた事実もあることからすれば、原告とHは、死刑確定者の拘禁の本質として外部交通が 制限されている趣旨を没却し、刑事施設の規律及び秩序を害する行為をしようとしていたのであるから、その発受により刑事施設の規律及び秩序を害するおそれがないとは到底認められない。 よって、福岡拘置所長が行った本件信書⑤について、刑事収容施設法139条2項の規定により裁量的に発信を許すべき事情があったと は認められない。 c 本件信書⑥について原告とIは、在社会時での交流はなく、原告とIとの交流は、主に原告が未決拘禁者であった当時の平成18年10月12日から原告の法的地位が死刑確定者に資格異動するまでの約5年程度のものであり、その内容は、専らIの取材を目的とするものであった。 本件信書⑥の内容についても、心境の報告等にすぎないものである。 この点、原告が宮城刑務所に服役中の者との仲介を依頼したことに対し、Iがこれを承諾していることや、原告がIとの外部交通の許可を求めて、その関係を偽って申告している事実からすれば、原告にとってIは、外部交通の各種規制を潜脱するなどの不正行為を助長する 相手方であると認められ、原告とIとの交友関係が良好なものであるとはいえず、原告とIは、死刑確定者の拘禁の本質として外部交通が制限さ は、外部交通の各種規制を潜脱するなどの不正行為を助長する 相手方であると認められ、原告とIとの交友関係が良好なものであるとはいえず、原告とIは、死刑確定者の拘禁の本質として外部交通が制限されている趣旨を没却し、刑事施設の規律及び秩序を害する行為をしようとしていたのであるから、その発受により刑事施設の規律及び秩序を害するおそれがないとは到底認められない。 また、本件信書⑥の内容からしても、「その他その発受を必要とする事情がある」ものとは認められず、加えて、Iについては、フリーライターであり、本の出版やテレビ番組の出演等により、不特定多数の者に対して原告や自己の意思を発信することが可能な立場にあるほか、原告からの取材等を基に「人殺しの論理凶悪殺人犯へのインタビュ ー」という過激なタイトルの書籍を出版したものであって、その内容も犯行時の心境や具体的状況等を生々しく詳細に書き記したものである。そのため、Iの真意がどうであれ、取材を受けた者がこれを閲覧し、自己の意に沿わない記載内容を認めた場合、心情のコントロールができなくなって突発的な行動に及ぶ可能性も否定できず、実際に、 Iがテレビ出演をして、その番組内で原告の事件に関する内容を発言 したことにより、原告の親族にまで影響を与え、原告との関係を悪化させるに至った事実もあることを考慮すれば、その発受により刑事施設の規律及び秩序を害するおそれがないと認めることもできない。 よって、福岡拘置所長が行った本件信書⑥について、刑事収容施設法139条2項の規定により裁量的に発信を許すべき事情があったと は認められない。 ウまとめ以上のとおり、本件信書④~⑥は刑事収容施設法139条1項3号又は同条2項に該当せず本件不許可処分④~⑥は適法であ 定により裁量的に発信を許すべき事情があったと は認められない。 ウまとめ以上のとおり、本件信書④~⑥は刑事収容施設法139条1項3号又は同条2項に該当せず本件不許可処分④~⑥は適法であるから、国賠法上違法の評価を受けるものではない。 4 損害(争点4)(原告の主張)前記争点3(原告の主張)のとおり、福岡拘置所長による本件各不許可処分は違法であり、福岡拘置所長にはその職務を行うについて故意又は過失が認められる。そして、原告は、福岡拘置所長による違法な本件各不許可処分を受け たことにより、次のとおりの損害を被った。 ⑴ 慰謝料 135万円ア Aらに対する信書発信制限 90万円原告は、Aら3名に対する信書発信制限を受けたことにより、憲法19条、21条、13条に基づく人権として保障されている外部交通権という 重要な権利を違法に侵害され、著しい精神的苦痛を被った。 とりわけ、死刑確定者の権利発受について規定した刑事収容施設法139条1項1号が「死刑確定者の親族との間で発受する信書」を敢えて親族以外の者との間で発受する信書と区別して規定している趣旨は、類型的に「親族」との外部交通が死刑確定者の心情の安定に寄与するものであるこ とを考慮したものであり、そうであれば、親族に対する信書発信制限の違 法性は、親族以外の者に対する信書発信制限の違法性と比較して、よりその程度が大きいというべきである。 このようなことを考慮すれば、親族に対する信書の発信制限により原告が被った精神的苦痛を慰謝するに足りる金額は、親族一人当たり30万円を下らない。 イ Gらに対する信書発信制限 45万円原告は、Gらに対する信書発信制限を受けたことにより、憲法19条、21条、13条に基づく 慰謝するに足りる金額は、親族一人当たり30万円を下らない。 イ Gらに対する信書発信制限 45万円原告は、Gらに対する信書発信制限を受けたことにより、憲法19条、21条、13条に基づく人権として保障されている外部交通権という重要な権利を違法に侵害され、著しい精神的苦痛を被った。 Gらに対する信書発信制限により原告が被った精神的苦痛を慰謝するに 足りる金額は、一人当たり15万円の合計45万円を下らないというべきである。 ⑵ 弁護士費用 13万5000円原告は、福岡拘置所長から本件各不許可処分を受け、本訴提起を余儀なくされたことから、本訴の追行を原告訴訟代理人弁護士らに委任した。このう ち、被告による違法行為と相当因果関係のある弁護士費用は、13万5000円である。 ⑶ 合計 148万5000円よって、原告は、被告に対し、国賠法1条1項に基づき、損害賠償金148万5000円及びこれに対する訴状送達日の翌日である令和2年10月 16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (被告の主張)争う。 以上
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