平成24(ネ)310 代位による詐害行為取消請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成24年12月27日 仙台高等裁判所 棄却 仙台地方裁判所 平成23(ワ)1896
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判決文本文4,103 文字)

主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 訴外Aと被控訴人との間において平成23年10月26日締結された,訴外Aが被控訴人に対し,株式会社B(商号は「有限会社B」)の株式1240株を贈与する旨の贈与契約を取り消す。 3 訴外Cと被控訴人との間において平成23年10月26日締結された,訴外Cが被控訴人に対し,株式会社B(商号は「有限会社B」)の株式235株を贈与する旨の贈与契約を取り消す。 4 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要本件は,特例有限会社である有限会社B(以下「本件会社」という。)の株主である控訴人が,本件会社の取締役であった訴外A(以下「A」という。)及び同C(以下「C」という。)から本件会社の株式を贈与された被控訴人に対し,訴外人らは,本件会社を害することを知りながら,本件会社の株式を被控訴人に贈与したことによって,訴外人らが本件会社に対して負う損害賠償債務の弁済に必要な資力を失った旨主張して,株式会社における責任追及等の訴え(以下「責任追及等の訴え」という。)に関する規定(会社法847条3項)に基づき,本件会社のために詐害行為取消の訴え(民法424条1項)を提起し,上記各贈与の取消しを求めた事案である。 原審が,本件詐害行為取消の訴えは会社法847条3項の予定する訴訟には当たらないとして,控訴人の本件訴えを却下したところ,控訴人は,これを不服として控訴した。 そのほかの事案の概要は,原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の1から3(原判決2頁11行目から6頁18行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する(なお,原判決中,「原告」とあるのは「 かの事案の概要は,原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の1から3(原判決2頁11行目から6頁18行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する(なお,原判決中,「原告」とあるのは「控訴人」と,「被告」とあるのは「被控訴人」とそれぞれ読み替えられることになる。 以下同じ。)。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人の本件訴えは不適法であるから却下すべきものと判断する。その理由は,以下のとおりである。 2(1) 会社法847条3項は広く株主に責任追及等の訴えを提起することを認めているが,これは,株式会社の代表機関と役員等との関係に鑑み,株式会社が役員等に対する責任追及を怠る場合に,株主に対して株式会社のために責任を追及する訴えを提起することを認めることにより,株式会社ひいては株主の利益を保護しようとする趣旨に出たものと解される。 (2) ところで,会社法は,株式会社の所有と経営とを分離し,株式会社の業務執行については,原則として取締役や代表取締役等の執行機関にこれを委ねている(会社法348条,349条)。他方,株主については,株主総会における議決権行使や議題の提案を通じて取締役の選解任や報酬の決定を行うことを基本的な権利として認め(同法295条1項,303条,308条ないし313条,329条,339条,371条等),更に一定数等の株式保有要件を充たした株主には,株主総会招集請求権(同法297条),株主総会検査役の選任請求権(同法306条)や,業務の執行に関する検査役の選任権(同法358条),取締役の違法行為差止請求権(同法360条)及び取締役の解任の訴えの提起権(同法854条)等を認めるにとどめている。 こうした株式会社の業務執行に関する会社法の基本構造の下で,会社法が,株主に対して責任追及等の訴えを提起するこ 法360条)及び取締役の解任の訴えの提起権(同法854条)等を認めるにとどめている。 こうした株式会社の業務執行に関する会社法の基本構造の下で,会社法が,株主に対して責任追及等の訴えを提起することを特に認めていることからすると,それは,株式会社が役員等に対して役員等の地位に基づく債務又は役 員等の株式会社との取引に基づく債務の履行の請求を怠っている場合などに,例外的に,株主に対し,株式会社のために,その役員等を相手方とする訴訟を提起,追行することを認めたものというべきであって,およそ役員等の責任追及等のために必要でありさえすれば,誰に対してでもどのような訴訟でも提起することを認めたものと解することはできない。 (3) そこで,責任追及等の訴えについての会社法の規定をみるに,会社法847条1項は,責任追及等の訴えを「発起人,設立時取締役,設立時監査役,役員等(第423条第1項に規定する役員等をいう。以下この条において同じ。)若しくは清算人の責任を追及する訴え,第120条第3項の利益の返還を求める訴え又は第212条第1項若しくは第285条第1項の規定による支払を求める訴え」と定義している。そして,会社法が第7編第2章に規定する各種訴訟について被告適格に関する具体的な規定を設けている(同法834条,855条,858条2項,861条,864条,866条)のに対し,責任追及等の訴えについては被告適格に関する規定を特に設けてはいないが,これは,責任追及等の訴えについては,文理上被告となるべき者が明らかであることによるものと解される。すなわち,会社法847条1項のうち前段の役員等の責任を追及する訴えは,その「責任を追及する」との文理上,責任追及の対象となる役員等(その趣旨に照らし,役員等であった者及びそれらの一般承継人を含むものと解され 社法847条1項のうち前段の役員等の責任を追及する訴えは,その「責任を追及する」との文理上,責任追及の対象となる役員等(その趣旨に照らし,役員等であった者及びそれらの一般承継人を含むものと解される。以下同じ。)が被告となることを当然に予定しているものというべきであり,また,同条同項のうち後段の訴えは,第三者である株主権の行使に関して利益の供与を受けた者,著しく不公正な払込金額で株式を引き受けた者又は著しく不公正な条件で新株予約権を引き受けてこれを行使した者(その趣旨に照らし,それらの一般承継人を含むものと解される。以下同じ。)が被告となるもので,こうした訴えを限定的に列挙したものと解される。こうした会社法の規定する各種の訴えに係る被告とすべき者に関する規定の文言やその内容に照らすと,それら の被告とすべき者については,これを限定的に定めたものと解するのが相当である。なお,会社法847条3項の規定する責任追及等の訴えの制度のもととなったと考えられる昭和25年法律第167号により導入された株主代表訴訟制度についても,その累次の改正過程を通じて,その被告とすべき者については,取締役等の役員等のほかは,特に限定的に列挙した者を規定するにとどめているのであって,制度の趣旨を全うするため被告とすべき者の範囲を拡張し,たとえば取引の相手方などにも押し及ぼそうとすることが検討されたような形跡はみられないが,こうした点も,上記の解釈と整合性を有するものと思われる。 (4) 以上に検討したところによれば,会社法847条3項が規定する責任追及等の訴えにおいて,その被告とすべき者(被告適格を有する者)は,同条が明示的に規定する者,すなわち,責任追及の対象である役員等のほかは,株主権の行使に関して利益の供与を受けた者,著しく不公正な払込金額で株式 おいて,その被告とすべき者(被告適格を有する者)は,同条が明示的に規定する者,すなわち,責任追及の対象である役員等のほかは,株主権の行使に関して利益の供与を受けた者,著しく不公正な払込金額で株式を引き受けた者又は著しく不公正な条件で新株予約権を引き受けてこれを行使した者のみに限られているものと解するのが相当であって,制度の趣旨をより拡充するという名の下にこれを拡張して解釈することは許されないものというべきである。 (5) これに対し,控訴人は,会社法847条3項による役員等に対する損害賠償請求権の行使が認められても,それを実現するための強制執行,保全手続とともに詐害行為取消権の行使が許容されなければ,本件のような場合に役員等の責任財産が散逸されることを防止できないから,責任追及等の訴えを認めた趣旨が没却される旨主張する。 なるほど,詐害行為取消の訴えには,債務者の責任財産を保全することを目的とする点で保全手続に通じる機能があり,この訴えを責任追及等の訴えに関する規定に基づいて提起することが認められれば,責任追及等の訴えの実効性がより高まるであろうことは否定し難いところである。 けれども,上記のような会社法の基本構造及び会社法の関係条文の文理に照らすと,責任追及等の訴えに関する規定に基づいて役員等に対する損害賠償請求権を本案とする保全あるいは強制執行の手続を執ることが認められる場合があるとしても,その相手方とすべき当事者は前同様に会社法の定める上記の者に限られるというべきであるから,それ以外の者を相手方とする詐害行為取消の訴えを許容することはできず,控訴人の上記主張は採用できない。 (6) 以上によれば,控訴人の本件訴えは,責任追及等の訴えにおける被告とすべき役員等ではなく,その取引の相手方を被告とするものであって,被告 容することはできず,控訴人の上記主張は採用できない。 (6) 以上によれば,控訴人の本件訴えは,責任追及等の訴えにおける被告とすべき役員等ではなく,その取引の相手方を被告とするものであって,被告適格を欠く者を当事者とする訴えであるから,不適法というべきである。 3 よって,本件訴えを却下した原判決は正当であって,本件控訴は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 仙台高等裁判所第2民事部 裁判長裁判官佐藤陽一 裁判官鈴木陽一 裁判官小川直人

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