主文 1 本件訴えのうち,被告が平成8年5月22日付けでした原告の平成7年分の所得税に係る無申告加算税の賦課決定処分の取消を求める訴えを却下する。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告が原告に対し平成9年3月14日付けでした原告の平成9年6月30日付け平成7年分所得税の更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分を取り消す。 2 被告が平成8年5月22日付けでした原告の平成7年分所得税に係る無申告加算税の賦課決定処分を取り消す。 第2 事案の概要原告は,被告に対し,平成7年分所得税について,法定申告期限である平成8年3月15日の後である同年4月19日に確定申告(以下「本件確定申告」という。)をしたところ,被告は平成8年5月22日付けで同申告に係る無申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)をした。また,原告は,被告に対し,平成9年3月14日付けで同申告に係る課税標準及び納付すべき税額について更正すべき旨の請求(以下「本件更正請求」という。)をしたところ,被告は,原告に対し,平成9年6月30日付けで更正をすべき理由がない旨を通知した(以下「本件通知処分」という。)。 本件は,原告が,被告に対し,本件通知処分は事実を誤認した違法があり,これに基づく本件賦課決定処分も違法であると主張して,両処分の取消しを求めた事案である。 1 争いのない事実(1) 本件確定申告原告は,訴外有限会社C(以下「C」という。)に対し,平成元年6月22日,別紙物件目録記載1及び2の土地(以下,それぞれ「本件土地1」及び「本件土地2」といい,これらを併せて「本件土地」という。)を代金3660万円で売却した(以下「本件売買契約」という。) 6月22日,別紙物件目録記載1及び2の土地(以下,それぞれ「本件土地1」及び「本件土地2」といい,これらを併せて「本件土地」という。)を代金3660万円で売却した(以下「本件売買契約」という。)。 被告は,本件土地について平成7年5月1日付けで原告から訴外株式会社D(以下「D」という。)に対する所有権移転登記がなされていることから,原告には平成7年分の譲渡所得につき確定申告をする必要があると認め,原告に対し,確定申告書用紙を送付した。 原告は,被告に対し,平成7年分所得税について,法定申告期限である平成8年3月15日の後である同年4月19日,分離長期譲渡所得金額3265万円,所得から控除される金額184万9700円,納付すべき税額765万円とする本件確定申告をした。 (2) 本件賦課決定処分被告は,平成8年5月22日付けで本件確定申告に係る無申告加算税114万7500円の賦課決定処分をした。 (3) 本件通知処分原告は,被告に対し,平成9年3月14日付けで,平成7年における不動産の譲渡所得がなかったことを理由として,分離長期譲渡所得金額0円,所得から控除される金額0円,納付すべき税額0円とすることを求める本件更正請求をした。 被告は,原告に対し,同年6月30日付けで,同請求に係る課税標準及び税額について更正をすべき理由がないとする本件通知処分をしたが,その計算根拠は次のとおりである。 ア分離長期譲渡所得の金額・・・・・・・・3265万円上記金額は,次のaの収入金額からbの必要経費及びcの特別控除額を差し引いた額である。 a 収入金額・・・・・・・・・・・・・・3660万円上記金額は,本件売買契約に係る本件土地の売却金額である。 b 必要経費・ 費及びcの特別控除額を差し引いた額である。 a 収入金額・・・・・・・・・・・・・・3660万円上記金額は,本件売買契約に係る本件土地の売却金額である。 b 必要経費・・・・・・・・・・・・・・295万円上記金額は,①本件土地の取得費183万円(租税特別措置法(以下「措置法」という。)31条の4)及び②原告が被告所部係官に説明した仲介料112万円(所得税法33条3項)の合計額である。 c 特別控除額・・・・・・・・・・・・・100万円上記金額は,措置法31条4項所定の特別控除額である。 イ所得控除額・・・・・・・・・・・・・・184万9700円上記金額は,①社会保険料控除49万4700円(所得税法74条),②生命保険料控除5万円(同法76条),③損害保険料控除1万5000円(同法77条),④配偶者控除38万円(同法83条),⑤扶養控除53万円(同法84条),及び⑥基礎控除38万円(同法86条)の合計額であり,被告所部係官に説明した額である。 ウ課税される分離長期譲渡所得の金額・・・3080万円上記金額は,アの分離長期譲渡所得の金額からイの所得控除額を控除し国税通則法118条1項による1000円未満の端数を切り捨てた額である。 エ納付すべき税額・・・・・・・・・・・・765万円上記金額は,次のaの算出税額からbの特別税額を控除した額である。 a 算出税額・・・・・・・・・・・・・・770万円上記金額は,上記ウの課税される分離長期譲渡所得の金額に措置法31条(平成7年法律第55号による改正後のもの)を適用して算出したものである。 b 特別減税額・・・・・・・・・・・・・5万円 ,上記ウの課税される分離長期譲渡所得の金額に措置法31条(平成7年法律第55号による改正後のもの)を適用して算出したものである。 b 特別減税額・・・・・・・・・・・・・5万円上記金額は,平成7年分所得税の特別減税のための措置法4条(平成6年法律第110号による改正後のもの)を適用して算出したものである。 (4) 異議申立て原告は,被告に対して,平成9年8月19日,本件通知処分を不服として,異議申立てをしたところ,被告は,平成10年1月7日付けで,異議申立てに理由がないとして,これを棄却する決定をした。 (5) 審査請求原告は,本件通知処分及び本件賦課決定処分について不服があるとして,国税不服審判所長に対し,平成10年1月28日,審査請求をしたが,同所長は,平成11年3月16日付けで,本件通知処分に対する審査請求を棄却し,本件賦課決定処分に対する審査請求を却下する旨の裁決をし,同月23日頃,同裁決の裁決書謄本が原告に送付された。 2 争点(1) 本件賦課決定処分取消しの訴えの適否(2) 本件通知処分及び本件賦課決定処分の当否 3 争点についての当事者の主張(1) 争点1(本件賦課決定処分取消しの訴えの適否)についてア被告の主張a 国税に関する法律に基づく処分で不服申立てをすることができるものの取消しを求める訴えは,異議申立てをすることができる処分にあっては異議申立てについての決定を,審査請求をすることができる処分にあっては審査請求についての裁決をそれぞれ経た後でなければ提起することができないとされている(国税通則法115条1項)。 ところで,本件賦課決定処分は,国税通則法75条1項1号により,被告に対して異議申立てができるとされているにもかかわ ければ提起することができないとされている(国税通則法115条1項)。 ところで,本件賦課決定処分は,国税通則法75条1項1号により,被告に対して異議申立てができるとされているにもかかわらず,原告は同処分について,国税通則法77条1項の定める2か月の不服申立期間内に異議申立てをしなかった。 したがって,本件賦課決定処分の取消しを求める訴えは適法な不服申立てを経ていないものであるから,不適法な訴えとして却下されるべきである。 b なお,原告は,後記イのとおり不服申立ての前置を欠いたことに正当な理由(国税通則法115条1項3号)がある旨主張するが,本件賦課決定処分は,本件通知処分を前提としてされた処分ではなく,両処分は目的,性質及び効果が異なる別個独立の行政処分であり,一方に対する異議申立てが他方に対する異議申立てを当然に含むという関係にはない。また,原告は,本件賦課決定処分の異議申立期間中に本件更正請求をしたわけではないから,本件更正請求をもって本件賦課決定処分をも併せて争う趣旨であると解することはできない。したがって,異議申立てを経ていないことに正当な理由があるとはいえない。 イ原告の主張原告が本件賦課決定処分について国税通則法75条1項1号に基づく異議申立てをしていないことは認める。 しかしながら,異議申立てを経ていないことについて,国税通則法115条1項3号所定の正当な理由がある。すなわち,本件賦課決定処分と本件通知処分は密接不可分の関係にあり,本件通知処分が否定されれば,本件賦課決定処分も自動的に否定される関係にある。したがって,本件通知処分に対する異議申立ては本件賦課決定処分に対する異議申立てを含むと解すべきである。また,原告は,本件通知処分に対する異議申立てと別個に本件 処分も自動的に否定される関係にある。したがって,本件通知処分に対する異議申立ては本件賦課決定処分に対する異議申立てを含むと解すべきである。また,原告は,本件通知処分に対する異議申立てと別個に本件賦課決定処分に対する異議申立てが法的に要請されることを知らなかったから,被告は,原告に対して本件賦課決定処分の異議申立てを促す法的義務があった。また,原告は,被告に対し,平成8年5月11日,本件確定申告に係る所得税の納税義務がない旨の嘆願書を提出しているから,被告はその時点で本件賦課決定処分の可否も審理し得た。 (2) 争点2(本件通知処分及び本件賦課決定処分の当否)についてア原告の主張a 立証責任税務訴訟において,課税要件の立証責任は被告課税庁側が負担すると解するべきである。 b 所得税法36条1項の「収入すべき金額」の計上時期の基準本件売買契約について,所得税法36条1項の「収入すべき金額」の計上時期は,売主である原告,買主であるCの代表取締役E(以下「E」という。)及び隣地所有者ら立会いの下,国土調査による境界杭の打ち直しを行い,本件土地の引渡しがなされた平成元年7月と解すべきである。仮にこれが認められないとしても,平成2年4月26日には,Cから原告に対して本件売買契約の残代金が完済され,所得が現実化しているから,その時点をもって,所得税法36条1項の「収入すべき金額」の計上時期と解すべきである。さらに,本件土地は,平成2年7月にCにより埋立てが行われ,非農地化しているから,本件売買契約は契約時に遡って,又は埋立てのなされた平成2年7月にはその効力を生じ,収入すべき金額の計上時期はそのいずれかの時点と解すべきである。 c 除斥期間国税通則法70条4項は,課税標準申 時に遡って,又は埋立てのなされた平成2年7月にはその効力を生じ,収入すべき金額の計上時期はそのいずれかの時点と解すべきである。 c 除斥期間国税通則法70条4項は,課税標準申告書の提出を要する国税で当該申告書の提出がなかったものに係る賦課決定は当該申告書の提出期限から5年を経過した日以降はすることができない旨規定するところ,本件土地の譲渡に係る所得を収入すべき金額として計上すべき時期は,上記bのとおり,平成元年7月又は遅くとも平成2年7月であるから,その法定申告期限は,平成2年3月15日又は平成3年3月15日であって,それから5年経過した日である平成7年3月15日又は平成8年3月15日をもって無申告加算税の賦課決定権は消滅した。 d 消滅時効国税通則法72条1項は,国税の徴収を目的とする国の権利は,当該国税の法定納期限から5年間行使しないことにより,時効により消滅する旨規定するところ,本件土地の譲渡に係る所得を収入すべき金額として計上すべき時期は,前記bのとおり,平成元年7月又は遅くとも平成2年7月であるから,その法定申告期限は,平成2年3月15日又は平成3年3月15日であって,それから5年経過した日である平成7年3月15日又は平成8年3月15日をもって,本件土地の譲渡に係る所得税の徴収権は法律上消滅した。 イ被告の主張a 立証責任税務訴訟における課税要件については,原則として,被告課税庁側に立証責任があるが,本件のように,納税者の確定申告書に記載された譲渡所得の金額又は所得税額について,これらの減額を求めてなされた更正の請求について更正をすべき理由がない旨の通知処分の取消しを求める訴訟においては,その請求の実質は,同確定申告書に既に記載された所得金額又は所得税額 所得税額について,これらの減額を求めてなされた更正の請求について更正をすべき理由がない旨の通知処分の取消しを求める訴訟においては,その請求の実質は,同確定申告書に既に記載された所得金額又は所得税額の減税を求めるものにほかならず,納税者がいったん提出した確定申告書記載の所得金額が真実の所得金額と異なる旨主張して,申告により確定した税額等を納税者に有利に変更することを求めるのであるから,納税者において,確定申告書の記載が真実と異なる旨の立証責任を負うべきものである。 b 所得税法36条1項の「収入すべき金額」の計上時期の基準譲渡所得は,資産の譲渡による所得,すなわち資産の取得時から譲渡時までのその資産の増加益をいい,譲渡所得に対する課税は,資産の値上がりにより,その資産の所有者に帰属する増加益を所得として,その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会にこれを精算して課税する趣旨のものであるから,所得税法36条1項の「収入すべき金額」の計上時期は,現実の収入がなくとも,その収入の原因となる収入すべき権利が確定した場合には,その時点で所得の実現があったものとして同権利確定の日の属する年度を「収入すべき金額」の計上時期と解すべきである(いわゆる権利確定主義)。 もっとも,権利の確定という法的基準で全ての場合を律するのは妥当でなく,譲渡所得の収入すべき時期の判定は,資産の譲渡者が経済的にその資産の価値の増加による利得を実際に自己のために享受し,それを支配管理しているか否かという事実関係に着目して行うことが妥当である場合もあり,一例として,農地の譲渡において,都道府県知事の許可がなされた年度よりも前の年度に引渡しと代金の授受が完了し,譲渡人が自らそれを所得として申告しているような場合,その支払期の属する年分の収 もあり,一例として,農地の譲渡において,都道府県知事の許可がなされた年度よりも前の年度に引渡しと代金の授受が完了し,譲渡人が自らそれを所得として申告しているような場合,その支払期の属する年分の収入金額として所得を計上しても違法ではないと解される。 しかしながら,本件土地の譲渡については,上記のような事情はないから,収入すべき金額を計上すべき時期は,本件土地の譲渡について茨城県知事の許可がなされ,しかも,実質的に本件土地の引渡しがあった日の属する年度であり,それは,以下述べるように平成7年度である。 すなわち,本件土地の取引については,①原告は,平成7年3月9日,譲渡人を原告,譲受人をDとして,売買による所有権移転に基づき本件土地を農地以外に転用する目的で,茨城県知事に対し,農地法5条の規定による許可を申請し(以下「本件5条許可申請」という。),同年4月17日付けで同許可を受けたこと,②原告は,地目が田である本件土地につき,平成7年5月1日売買を原因として,同日付けで所有者をDとする所有権移転登記を経由したこと,③本件土地は,登記簿上,平成8年4月10日に,田から雑種地に地目変更されていること,④原告は,本件土地について,平成2ないし4年度においては,水田農業確立対策事業,平成5及び6年度においては,水田営農活性化対策事業(以下,これらの事業を併せて,「水田農業確立対策事業等」という。)に基づく転作等実施計画に本件土地を自ら保全管理している旨記載し,署名捺印の上,阿見町役場に提出し,平成2ないし6年分の水田農業確立対策事業等に基づく助成金の交付を受けていたこと,⑤原告は,本件売買契約締結後も平成7年まで,本件土地に係る固定資産税を阿見町役場に納付し,本件土地の譲受人に対しては現在に至るまでその精算を行っていないこと,⑥本件土 成金の交付を受けていたこと,⑤原告は,本件売買契約締結後も平成7年まで,本件土地に係る固定資産税を阿見町役場に納付し,本件土地の譲受人に対しては現在に至るまでその精算を行っていないこと,⑥本件土地が埋め立てられた事実のみをもって,本件土地が非農地化したとはいえないことなどの事実があり,これらに照らすと,原告は,本件売買契約締結後も,本件土地を農地として自ら管理し,使用収益をしていたものと認められ,平成元年7月に本件土地について現実の引渡しが確定的に行われたとか,平成2年7月に本件土地が非農地化した事実は認められない。 c 除斥期間及び消滅時効について以上のとおり,本件売買契約に係る所得を収入すべき金額として計上すべき時期は,平成7年であるから,その法定申告期限は,平成8年3月15日であって,原告の除斥期間及び消滅時効の主張は理由がない。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)(本件賦課決定処分取消しの訴えの適否)について(1) 国税に関する法律に基づく処分で不服申立てをすることができるものの取消しを求める訴えは,異議申立てをすることができる処分にあっては異議申立てについての決定を,審査請求をすることができる処分にあっては審査請求についての裁決をそれぞれ経た後でなければ提起することができないとされているところ(国税通則法115条1項), 本件賦課決定処分は,同法75条1項1号により,被告に対する異議申立てができるとされているにもかかわらず,原告は同処分に対し,同法77条1項の定める2か月の不服申立期間内に異議申立てをしていない。 したがって,本件賦課決定処分の取消しを求める訴えは適法な不服申立ての前置を経ていないと解される。 (2) なお,原告は,①本件賦課決定処分と本件通知処分は密接不可分 立てをしていない。 したがって,本件賦課決定処分の取消しを求める訴えは適法な不服申立ての前置を経ていないと解される。 (2) なお,原告は,①本件賦課決定処分と本件通知処分は密接不可分の関係にあり,本件通知処分が否定されれば,本件賦課決定処分も自動的に否定される関係にあるから,本件通知処分に対する異議申立ては本件賦課決定処分に対する異議申立てを含むと解すべきであること,②被告は原告に対し,本件賦課決定処分の異議申立てを促す法的義務があったこと,③原告は,被告に対し,平成8年5月11日,本件確定申告に係る所得税の納税義務がない旨の嘆願書を提出しているから,被告はその時点で本件賦課決定処分の可否も審理し得たことなどを主張する。 しかしながら,本件賦課決定処分は,本件通知処分を前提としてされた処分ではなく,両処分は目的,性質及び効果が異なる別個独立の行政処分であり,一方に対する異議申立てが他方に対する異議申立てを当然に含むという関係にないから,上記①の主張には理由がない。また,甲第3号証によれば,原告は,本件賦課決定処分の際,処分に不服がある場合は通知を受けた日の翌日から起算して2月以内に被告に対して異議申立てできる旨教示されていると認められるから,上記②の主張はその前提において失当である。さらに,上記嘆願書が提出されたのは,本件賦課決定処分の前であり,原告が本件賦課決定処分後にこれを争うかどうかは当然には明らかでないから,上記③の主張にも理由がない。 (3) よって,本件賦課決定処分の取消しを求める訴えは,不適法な訴えであって却下を免れない。 2 争点(2)(本件通知処分の当否)について(1) 立証責任税務訴訟における課税要件については,原則として,被告課税庁側に立証責任があるが,更正の請求に対する更 て却下を免れない。 2 争点(2)(本件通知処分の当否)について(1) 立証責任税務訴訟における課税要件については,原則として,被告課税庁側に立証責任があるが,更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分の取消訴訟においては,申告により確定した税額等を納税者に有利に変更することを求めるのであるから,納税者において,確定申告書の記載が真実と異なる点についての立証責任を負うものと解するのが相当である(最高裁判所平成元年4月11日第3小法廷判決・税務訴訟資料170号1頁)。 (2) 当裁判所の認定した事実上記争いのない事実に加え,甲第1,第2及び第4号証,第5号証の2,第6及び第7号証,第8号証の2,第9号証,第10号証の2,第12ないし第15号証,第17号証の1及び2,第18及び第19号証,乙第1号証の1及び2,第2号証の1及び2,第3号証の1ないし3,第4号証の1及び2,第5号証の1及び2,第6号証の2及び3,第7号証の2及び3,第8号証,第9号証の3,第10号証,原告本人の供述,証人Eの証言並びに弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。 ア原告は,肩書住所地に居住し,農業を営む者である。Cは,不動産業を営む有限会社,Dは,水槽清掃,廃棄物処理,土木工事等を業とする株式会社であり,Eが両社の代表取締役を務めていた。Cは,訴外株式会社F(以下「F」という。)から,平成元年当時は水田であった本件土地を紹介され,国道125号線のバイパス道路敷設予定地沿いの土地であり,バイパス道路の工事も開始されていたことから,将来の地価の上昇を見込み,建物を建築して売却する予定で購入を決意した。 イ原告は,Fの仲介により,Cとの間で,平成元年6月22日,以下の約定で本件売買契約を締結し,同日第2条 たことから,将来の地価の上昇を見込み,建物を建築して売却する予定で購入を決意した。 イ原告は,Fの仲介により,Cとの間で,平成元年6月22日,以下の約定で本件売買契約を締結し,同日第2条の約定に基づき手付金500万円を受領した。その際,原告はCに対し,農地法等の定める必要な手続について協力する旨約した。 第1条売買代金は3660万円とする。 第2条買主はこの契約と同時に手付金として500万円を売主に支払う。 第4条残金3160万円は,地目変更及び所有権移転登記手続完了と同時に買主より売主に支払うものとする。この支払により所有権は移転するものとする。 第6条売主は(中略)境界杭を敷設し完全なる所有権を買主に移転しなければならない。本件土地の地積は実測によるものとする。(過不足が有りたる場合は残金にて精算する。)第7条売買物件に賦課される租税公課その他の賦課金等は所有権移転登記完了の前日までの分は売主がこれを負担し,それ以後の分は買主がこれを負担する。 第11条所有権移転登記申請に際し,買主の都合により登記名義人を自己又は他の者の名義にすることは任意とする。 特約事項1) 本契約は平成2年4月末日までに地目が変更にならず,所有権移転が出来ぬときは,その時点において,本契約を失効させるか,又は,仮登記にて残金を決済するかの選択権は買主がもつ。但し,仮登記にて残金を決済した場合は平成3年4月末日まで売主は買主に対し,地目変更の手続に協力する。 2) 地目変更が遂行できぬ理由にて第9条(契約違反による解除)の規定は適用しない。 3) 引渡は現況渡しとし,瑕疵ある場合売主はその責を負わない。 ウ原告及びCは,平成元年7月頃,隣地所有者 行できぬ理由にて第9条(契約違反による解除)の規定は適用しない。 3) 引渡は現況渡しとし,瑕疵ある場合売主はその責を負わない。 ウ原告及びCは,平成元年7月頃,隣地所有者の立ち会いを得て,本件土地の境界を確認した。 エ原告は,平成元年8月17日,昭和47年5月27日相続を原因として,自己名義に本件土地の所有権移転登記を経由した。 オ原告は,本件土地にその資金で建物を建築し,非農地化した上で所有権を取得することを企図したCの依頼を受けて,訴外G建築事務所ことHに委任し,平成2年4月10日,茨城県知事に対し,本件土地について,用途をライスセンター建築のためとして,農地法4条の規定による転用許可申請をした。同申請は,平成2年5月16日,許可後1年以内に申請書に記載された事業の用に供しないときは,この許可を取り消すことがあるとの条件を付し,許可された。同申請の際,本件土地は休耕田であったが,原告の申請により,農業振興地域内の農用地区域外とされていた。なお,原告は,同申請の際,本件土地についてライスセンター敷地以外の目的への転用及び売買は一切しない旨の確約書を添付した。(なお,原告は,農地法4条の許可申請手続はCが勝手に行ったもので,原告は知らない旨主張し,本人尋問においてこれに沿う供述をするが,証人Eの証言及び,原告がHに対する委任状に署名押印していること(乙第6号証の3)などに照らすと,原告は,Cに依頼され,上記申請に協力するために手続に応じたものと認められる。)カ Cは,平成元年終わり頃,原告から残金支払の要請を受け,本件土地の農業振興地域内の農用地区域からの除外の手続が終了しており,将来的には農地法5条許可が受けられ,所有権移転が可能になると判断したことから,本件売買契約条項にかかわらず, 支払の要請を受け,本件土地の農業振興地域内の農用地区域からの除外の手続が終了しており,将来的には農地法5条許可が受けられ,所有権移転が可能になると判断したことから,本件売買契約条項にかかわらず,残金を支払う旨約束し,平成2年4月26日までに残金3160万円を支払った。 キ本件土地は周囲の道路より約2メートル低かったが,平成2年7月頃,Cは,訴外Iから余った土砂があるとして無償で本件土地の埋立工事を勧められ,これを実施した結果,本件土地は道路とほぼ同じ高さに,平らにならされたが,Cは,それ以上に建物等を建てるための本件土地の整地等をすることはなく,いまだ農地として利用することも可能な状態であった(原告本人尋問の結果)。その後も,本件土地は,平成7年の農地法5条許可申請の頃,Dにより一時的に砂利等の保管場所として利用されたほかは,平成9年9月頃にDの倉庫が建築されるまで荒れた休耕田として維持された。(原告は本人尋問において,Cにおいて草刈りをしていた旨主張するが,これを認めるに足る証拠はなく,信用できない。)ク原告は,平成2年12月頃,Cの依頼で本件土地及び隣接するJ所有の640番地の土地の一部について農業倉庫兼作業所(ライスセンター)を建築するため建築確認を申請し,これを受けたが,平成3年にはCの経営状態が思わしくなくなり,建築資金の確保が困難になり,結局,ライスセンターの建築はなされなかった。また,地価が下落し,本件土地の売却も困難になった。そのため,Cは,本件土地の所有権移転登記等の手続をしないまま,これを放置していた。 ケ平成6年頃,Cの事務所等が火災に遭い,本件契約の契約書等も焼失したことから,Cは,平成7年頃,Fから,権利関係を明確にしておくため,本件土地の所有権移転登記手続等をした方がよい旨指摘された ケ平成6年頃,Cの事務所等が火災に遭い,本件契約の契約書等も焼失したことから,Cは,平成7年頃,Fから,権利関係を明確にしておくため,本件土地の所有権移転登記手続等をした方がよい旨指摘された。Cは,建物の建築資金の確保が困難であったことから,用途を資材置場として,本件土地につき農地法5条の許可を受け,地目を雑種地にして所有名義を移転することとしたが,Cは土木工事を業としておらず,用途を資材置場としたのでは許可が受けられない可能性があったことから,土木工事等を業としている会社のDの名義で農地法5条の許可申請及び所有権移転登記手続を行うことにした。 原告は,平成7年3月9日,茨城県知事に対し,本件土地の譲渡人を原告,譲受人をDとして,駐車場及び資材置場の用途で農地を転用するための所有権移転の許可を求めて,農地法5条の許可を申請し,同年4月17日に同許可を受けた。(原告は同許可申請手続についても,Cに依頼されて説明を受けないまま応じたものであると主張し,それに沿う供述をするが,甲第10号証及び証人Eの証言等によれば,原告はCに依頼され,非農地化に協力するために手続に応じたものと認められる。)その後,本件土地については,平成7年5月1日売買を原因として,原告からDに所有権移転登記が経由され,原告からDに本件土地の権利証が交付された。その後,平成7年6月23日に真正な登記名義の回復を原因として,権利者をCとする所有権移転仮登記がなされた。 また,平成8年4月10日に,本件土地の地目が登記簿上「田」から「雑種地」に変更された。 コ原告は,阿見町長に対し,平成2年ないし4年度及び6年度は本件土地を原告が保全管理する旨,5年度は休耕である旨それぞれ記載した水田農業確立対策事業等に係る各年度の転作等実施計画書 された。 コ原告は,阿見町長に対し,平成2年ないし4年度及び6年度は本件土地を原告が保全管理する旨,5年度は休耕である旨それぞれ記載した水田農業確立対策事業等に係る各年度の転作等実施計画書を提出し,阿見町長の確認を受け,平成2ないし4年度には,耕作面積893平方メートル(本件土地1及び2双方)につきそれぞれ,水田農業確立対策事業に係る助成金として平成2年に1万4064円,平成3年に1万0548円,平成4年に1万0548円を,平成5及び6年度には,水田営農活性化対策事業に係る助成金として,それぞれ,耕作面積462平方メートル(本件土地2)につき平成5年に8790円,平成6年に4550円の交付を受けた。なお,保全管理とは,原告が本件土地を常に耕作可能な状態に管理していることをいい,市町村長が農協,食糧事務所等の協力を得て各年度ごとに助成金の交付申請のあった土地につき保全管理期間及び良好な管理がなされているかどうかを確認した上で助成金が交付されるものである(当裁判所に顕著である。)。(なお,原告は,助成金については,昭和60年頃より長期間にわたり交付を受けていたもので,申請行為も単に申請書に署名するだけであって,毎年漫然と不注意で申請していたものであり,原告による本件土地の保全管理という事実は存在しない旨主張し,本人尋問において,これに沿う供述をするが,信用できない。)サ原告は,本件売買契約後平成7年度まで本件土地に係る固定資産税を納付していたが,現在に至るまでCとの間で既納付の固定資産税相当額の精算をしていない。(なお,原告は,固定資産税についても,漫然と納付又は放置していた旨主張し,本人尋問において,これに沿う供述をするが,信用できない。)シ平成9年9月頃,本件土地上にDの倉庫の建設が開始された。 (3) 固定資産税についても,漫然と納付又は放置していた旨主張し,本人尋問において,これに沿う供述をするが,信用できない。)シ平成9年9月頃,本件土地上にDの倉庫の建設が開始された。 (3) 判断以上の事実を前提に本件通知処分の当否について判断する。 ア所得税法36条1項の「収入すべき金額」の意義については,現実の収入がなくとも,収入すべき権利が確定すれば,その段階で所得の実現があったと考えるのが合理的であること,現実の収入の時点を基準とすると,課税を回避するため収入の時期を引き延ばし,あるいは人為的にその時期を操作する傾向が生じやすいことなどにかんがみ,資産の譲渡によって発生する譲渡所得についての収入金額の権利確定の時期は,当該資産の所有権その他の権利が相手方に移転するときであると解するのが相当である(最高裁判所昭和40年9月24日第2小法廷判決民集19巻6号1688頁)。したがって,農地の譲渡の場合には,所有権の移転に都道府県知事等の許可が必要であるから,原則として,現実の引渡や代金の授受が行われていても,同許可があるまでは所得があったということはできない。もっとも,都道府県知事等の許可がある前に代金の授受が完了し,譲渡人が自らそれを所得として申告しているような場合には,例外的に利得が納税者の管理可能下に入り,同年中に譲渡所得の実現があったものとして課税することも違法とはいえないと解するのが相当である(最高裁判所昭和60年4月18日第1小法廷判決・訟務月報31巻12号3147頁)。 イそこで,まず,本件土地が平成6年以前に非農地化していたのであれば,その時点で同土地の所有権は農地法上の許可がなくともCに移転すると解する余地があることから,本件土地が平成6年以前に非農地化したといえるか否かについて,検討す 6年以前に非農地化していたのであれば,その時点で同土地の所有権は農地法上の許可がなくともCに移転すると解する余地があることから,本件土地が平成6年以前に非農地化したといえるか否かについて,検討する。 前記認定のとおり,①本件土地については,平成2年5月16日,用途を建物の建築とする農地法4条の転用許可がなされ,建築確認もされたが,建物は建設されなかったこと,②平成2年7月頃,本件土地には土砂が埋め立てられ,高さが上げられ,平らにならされたが,それ以上に建物等を建てるための整地等はされず,農地として使用することも可能な状態が継続し,平成9年9月頃にDの倉庫が建築される頃まで荒れた休耕田として維持されたこと,③本件土地の地目が登記簿上「田」から「雑種地」に変更されたのは平成8年4月10日であること,④原告は,阿見町長に対し,平成2年ないし4年度及び6年度は本件土地を原告が保全管理する旨,5年度は休耕である旨記載した水田農業確立対策事業等に係る各年度の転作等実施計画書を提出し,平成6年度まで助成金を受領したところ,保全管理とは,原告が本件土地を常に耕作可能な状態に管理していることをいい,保全管理期間及び良好な管理がなされていることについて各年度とも,農協,食糧事務所等による現地の確認がなされていること,⑤本件土地についても平成7年4月17日に農地法5条の許可がなされているところ,同許可申請に添付された資材置場設置理由書によると休耕田として埋立てをしてあると記載され,阿見町農業委員会の進達意見書によると,当時の本件土地の状況について荒地と記載されていること,⑥平成9年9月頃に至り,本件土地上にDの倉庫の建設が開始されたことなどの事実が認められる。 以上の事実に照らすと,本件土地の現況は,平成7年4月17日に農地法5条の許 載されていること,⑥平成9年9月頃に至り,本件土地上にDの倉庫の建設が開始されたことなどの事実が認められる。 以上の事実に照らすと,本件土地の現況は,平成7年4月17日に農地法5条の許可がなされるまでの間,引き続き農地(休耕田)であったものと認めるのが相当であり,他に平成6年以前に本件土地が非農地化したことを認めるに足る証拠はない。 ウそうすると,本件土地につき所有権移転の効力が生ずるためには,本件売買契約について農地法5条の許可がなされる必要がある。 そして,①本件売買契約の第11条において,所有権移転登記申請に際し,買主の都合により登記名義人を自己又は他の者の名義にすることは任意とするとされ,いわゆる中間省略登記の合意がなされていること,②CとDは代表取締役を同一人とする会社であること,③本件売買契約第4条により,残代金は,地目変更及び所有権移転登記手続完了と同時に買主より売主に支払い,この支払により所有権は移転するものとされ,同第7条により,売買物件に賦課される租税公課その他の賦課金等は売買物件の所有権移転登記完了の前日までの分は売主がこれを負担し,それ以後の分は買主がこれを負担するとされていたところ,Cは,原告から残代金の支払の要請を受け,本件売買契約条項にかかわらず,残代金を支払ったが,本件売買契約後平成7年度まで本件土地に係る固定資産税を納付していたのは原告であり,Cとの間でその精算はなされていないことを考慮すると,本件においては,原告の要請に応じて,Cの好意により,本件売買契約の効力が生じ所有権移転がなされる前に,売買代金が支払われたものの,本件土地の所有権移転の効力は,Cの意向により,中間省略登記を前提としてDを譲受人とする農地法5条の許可がなされた平成7年4月17日に生じたものと認められる なされる前に,売買代金が支払われたものの,本件土地の所有権移転の効力は,Cの意向により,中間省略登記を前提としてDを譲受人とする農地法5条の許可がなされた平成7年4月17日に生じたものと認められる。 エなお,農地の譲渡がなされた場合において都道府県知事等の許可がある前に代金の授受が完了し,譲渡人がそれを所得として申告した場合に,申告年中に譲渡所得の実現があったものとして課税することも違法といえないことは前判示のとおりであるところ,本件においては平成2年4月26日までには本件売買契約に係る代金全額が支払われたことが認められるが,原告は,平成3年3月15日までに,平成2年度分の所得として,同契約に係る所得税の確定申告をしていないのであるから,原則どおり,収入すべき金額は農地法5条の許可のなされた平成7年分の所得として計上すべきこととなる。したがって,除斥期間及び消滅時効に関する原告の主張にも理由がない。 オしたがって,本件売買契約について,原告に所得が実現したのは,本件売買契約が効力を生じた平成7年4月17日であるから,これを平成7年度の所得としてなされた本件通知処分は適法であって,他にこれを違法と認めるに足る証拠はない。 3 結論以上のとおり,本件賦課決定処分の取消しを求める訴えは不適法であるからこれを却下し,本件通知処分の取消しを求める請求は理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民訴法61条を適用して主文のとおり判決する。 水戸地方裁判所民事第1部裁判長裁判官仙波英躬裁判官清野正彦裁判官日野直子は差し支えのため署名押印できない。 裁判長裁判官仙波英躬・物件目録 1 所在茨城県稲敷郡a町b字下り地番 裁判官清野正彦裁判官日野直子は差し支えのため署名押印できない。 裁判長裁判官仙波英躬・物件目録 1 所在茨城県稲敷郡a町b字下り地番 125番1地目田(現況雑種地)地積 462平方メートル 2 所在茨城県稲敷郡a町b下り地番 126番1地目田(現況雑種地)地積 431平方メートル
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