判決当事者の表示別紙1「当事者目録」記載のとおり 主文 1 被告国関係原告6の被告国に対する請求を棄却する。 2 被告企業ら関係⑴ 別紙2「認容額等一覧表」の「被告」欄に記載された被告企業らは,対応する列の「認容額」欄に金額の記載のある行の原告に対し,同「認容額」欄記載の各金員及びこれに対する同「遅延損害金起算日」欄記載の各日から各支払済みまで年5分の割合による金員を(同一の行に金額の記載のある被告があるときは互いに連帯して)支払え。 ⑵ 原告らの被告企業らに対するその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用関係⑴ 原告6と被告国の間に生じた訴訟費用は,原告6の負担とする。 ⑵ 第2項⑴の当事者間の各訴訟費用は,別紙2「認容額等一覧表」の「負担割合」欄記載の割合を各原告の負担とし,その余を各被告の負担とする。 ⑶ 第2項⑵の当事者間の各訴訟費用は,当該各原告の負担とする。 4 仮執行関係この判決の第2項⑴は仮に執行することができる。ただし,別紙2「認容額等一覧表」の「被告」欄に記載された被告企業らが,各被告の列の「担保額」欄に記載のある行の原告に対し,同「担保額」欄記載の各金員の担保を供するときは,当該原告との関係でその執行を免れることができる。 事実及び理由 第1章請求第1 被告国に対する請求被告国は,原告6に対し,3850万円及びこれに対する平成26年2月13 日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 被告企業らに対する請求 1 主位的請求被告企業らは,別紙3の1「請求額一覧表・主位的請求」に記載された被告企業らに対応する列の「請求額」欄に金額の記載のある行の原告らに対し,同記載の各金員及びこれに対する同「療養 1 主位的請求被告企業らは,別紙3の1「請求額一覧表・主位的請求」に記載された被告企業らに対応する列の「請求額」欄に金額の記載のある行の原告らに対し,同記載の各金員及びこれに対する同「療養開始日」欄記載の各日から支払済みまで年5分の割合による金員を(同一の行に記載のある被告があるときは互いに連帯して)支払え。 2 予備的請求被告企業らは,別紙3の2「請求額一覧表・予備的請求」に記載された被告企業らに対応する列の「請求額」欄に金額の記載がある原告らに対し,それぞれ(ただし,乙ク・ケは連帯して),同記載の各金員及びこれに対する同「療養開始日」欄記載の各日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2章事案の概要(用語の主な略称は,別紙4「略称一覧表」の例による。)第1節事案の要旨本件は,主に北海道内において建設作業に従事した際,石綿(アスベスト)含有建材による石綿粉じんにばく露したことにより,石綿肺,肺がん,中皮腫等の石綿関連疾患にり患した旨を主張する者又はその承継人である原告らが,被告らに対し,以下の各請求をする事案である(いわゆる建設アスベスト訴訟)。 なお,原告6を除く原告らと被告国との間には訴訟上の和解が成立したので,被告国に対する請求は,原告6の関係のみである。また,第1事件原告亡01訴訟承継人02(分離前相原告)と被告らとの間の訴訟は,取下げ擬制により終了した。 第1 被告国に対する請求原告6は,被災者03が建設作業に従事した際,石綿含有建材から生ずる石綿粉じんにばく露したことにより肺がんを発症したのは,被告国が規制権限を適切に行使することを怠ったためであるなどと主張して,国家賠償法(以下「国賠法」 という。)1条1項に基づいて,3850万円及びこれに対する平成26年2月13日から支 は,被告国が規制権限を適切に行使することを怠ったためであるなどと主張して,国家賠償法(以下「国賠法」 という。)1条1項に基づいて,3850万円及びこれに対する平成26年2月13日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。 第2 被告企業らに対する請求 1 主位的請求⑴ 原告らは,本件被災者が石綿関連疾患を発症したのは被告企業らが十分な警告表示をせずに石綿含有建材を製造販売して流通に置いたためであるなどと主張して,民法719条1項後段の類推適用に基づいて,別紙3の1「請求額一覧表・主位的請求」の各原告に対応する被告企業欄に金額の記載がある被告企業らに対し,同記載の損害賠償金及びこれに対する同「療養開始日」欄記載の日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めた。 ⑵ なお,原告らは,被告企業らが製造販売した石綿含有建材には,設計上又は警告・表示上の欠陥があったと主張して,製造物責任法3条に基づいて,主位的請求と同額の金員の連帯支払を求めている(不法行為を理由とする請求とは選択的請求に当たる。)。 2 予備的請求原告らは,仮に被告企業らに対する連帯請求が認められないとしても,民法719条1項後段又はその類推適用に基づいて,各被告企業はその寄与度に応じて分割された割合による損害賠償責任を負うと主張して,別紙3の2「請求額一覧表・予備的請求」の各原告に対応する被告企業欄に金額の記載がある被告企業らに対し,同記載の損害賠償金及びこれに対する同「療養開始日」欄記載の日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(ただし,乙ク・ケについては連帯支払)を求めた。 第2節前提事実以下の事実は,当事 償金及びこれに対する同「療養開始日」欄記載の日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(ただし,乙ク・ケについては連帯支払)を求めた。 第2節前提事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,後掲括弧記載の各証拠及び弁論の全趣 旨により容易に認められる。 第1 当事者 1 原告らは,建設作業従事者であった者(本件被災者)又はその相続人である。 (弁論の全趣旨) 2 被告企業らは,石綿含有建材を製造販売していた企業又はその地位を承継したと原告らが主張する株式会社である。(弁論の全趣旨)⑴ 被告A&AMは,平成12年10月に,株式会社アスク(旧商号は「朝日スレート株式会社」であり,昭和25年に「朝日石綿工業株式会社」に,昭和62年に「株式会社アスク」に,それぞれ商号変更した。以下,商号変更の前後を問わず,「朝日石綿工業」ということがある。)と,浅野スレート株式会社(以下「浅野スレート」ということがある。)が合併した会社である(以下,朝日石綿工業,浅野スレート及び被告A&AMを特に区別することなく,単に「被告A&AM」ということがある。)。(弁論の全趣旨〔乙キ答弁書(第1事件のもの。以下,特に断らない限り,訴状・答弁書等の主張書面について同じ。)3~4頁〕)⑵ 被告クボタ及び松下電工株式会社(平成20年10月1日に「パナソニック電工株式会社」に商号変更し,平成24年1月1日に,パナソニック株式会社に吸収合併された。以下,商号変更の前後を問わず,「松下電工」という。)は,平成15年12月1日を効力発生日として,被告ケイミュー(旧商号は「クボタ松下電工外装株式会社」であり,平成22年10月1日に現商号に商号変更した。以下,商号変更の前後を問わず,「被告ケイミュー」という。)に対して,屋根材及び外壁材事業 被告ケイミュー(旧商号は「クボタ松下電工外装株式会社」であり,平成22年10月1日に現商号に商号変更した。以下,商号変更の前後を問わず,「被告ケイミュー」という。)に対して,屋根材及び外壁材事業等並びにこれに関する権利及び義務の全部を,会社分割(吸収分割)によって移転した(以下,被告クボタ又は松下電工が製造販売していた石綿含有建材についても,単に,被告ケイミューが製造販売していたものと記載することがある。)。ただし,被告クボタは,当該会社分割に際して,原告らに対して個別の催告を行っていなかったので, 上記効力発生日に損害賠償責任を負っていた場合には,被告ケイミューと連帯して弁済責任を負う。(弁論の全趣旨〔乙ク答弁書3頁,乙ケ準備書面1・10~11頁〕)⑶ 被告MMKは,昭和47年4月に三好石綿工業株式会社・九州菱産スレート株式会社・ミヨシボード株式会社・菱産スレート株式会社が事業統合してできた三菱セメント石綿工業株式会社(昭和48年1月に三菱セメント建材株式会社に商号変更)が,平成4年10月に富士見開発株式会社他2社を吸収合併して,三菱マテリアル建材株式会社に商号変更し,平成27年10月1日に現商号に商号変更した会社である(以下,合併等あるいは商号変更の前後を問わず,単に「被告MMK」という。)。(弁論の全趣旨〔乙ワ答弁書・11~12頁,被告MMKの履歴事項全部証明書〕)第2 石綿及び石綿含有建材の概要石綿は,天然に産出される蛇紋石族及び角閃石族の繊維状けい酸塩鉱物の総称であり,クリソタイル,クロシドライト,アモサイト,アンソフィライト,トレモライト及びアクチノライトがある。石綿は,紡織性,抗張力,耐熱性等にその特長を有しており,建材等に広く使用されてきた。 我が国の年間石綿輸入量は,高度経済成長期に急増し,昭和 ンソフィライト,トレモライト及びアクチノライトがある。石綿は,紡織性,抗張力,耐熱性等にその特長を有しており,建材等に広く使用されてきた。 我が国の年間石綿輸入量は,高度経済成長期に急増し,昭和36年に10万t,昭和44年に20万tをそれぞれ超え,昭和49年に35万2110tに達し,その後も20万t以上で推移し,昭和63年に32万0393tとなったが,平成元年以降は減少を続け,平成6年に20万t,平成12年に10万tをそれぞれ下回り,平成16年に8186t,平成17年に110tとなり,平成18年以降はゼロとなった。我が国に輸入された石綿の約7割は建設現場で使用された。 我が国で使用されてきた石綿含有建材には,壁や天井の内装材として用いられるスレートボード及びけい酸カルシウム板,外壁や軒天の外装材として用いられるスレート波板,屋根材として用いられる住宅屋根用化粧スレート,床材 として用いられるビニール床タイル等があった。また,鉄骨造建物の工事においては,躯体となる鉄骨の耐火被覆として,石綿とセメント等の結合材を混合した吹付け材が用いられていた。そのほか,煙突や給排水管として使用される石綿セメント円筒,建物内の配管の保温のための石綿含有保温材等があった。 (乙アA19,35,弁論の全趣旨)第3 石綿関連疾患の概要 1 石綿ばく露の指標石綿ばく露の指標となる医学的所見としては,①胸膜プラーク,②石綿小体及び石綿繊維,③石綿肺が挙げられる。(甲A106・3頁)⑴ 胸膜プラーク胸膜プラークは,胸膜肥厚斑あるいは限局性胸膜肥厚ともいわれ,石綿ばく露と極めて関係の深い医学的所見である。現在の我が国においては,石綿ばく露によってのみ発生すると考えてよいといわれている。 胸膜プラークは,石綿ばく露開始直後には認められず,石綿ば いわれ,石綿ばく露と極めて関係の深い医学的所見である。現在の我が国においては,石綿ばく露によってのみ発生すると考えてよいといわれている。 胸膜プラークは,石綿ばく露開始直後には認められず,石綿ばく露後少なくとも10年以上,おおむね15~30年で出現すると考えられている。経過とともに石灰化するが,ばく露開始から20年以内に石灰化胸膜プラークが出現することはまれである。(甲A106・3頁)⑵ 石綿小体及び石綿繊維石綿繊維は,他の粉じん粒子とは異なり,吸入された数十μmといった比較的長い繊維も直径が極めて細いので,肺胞にまで到達し,そのまま長期間滞留する。そうした石綿繊維の一部は,表面に鉄蛋白が付着して亜鈴状になった,いわゆる石綿小体を形成する。(甲A106・3~4頁)⑶ 石綿肺石綿肺はじん肺の一種であり,石綿粉じんを吸入することによって起こる肺のびまん性間質性線維症である。我が国では,胸部エックス線所見で下肺野の線状影を主とする異常陰影を不整形陰影と定義し,職業上の石綿ばく露 歴があり,じん肺法(昭和35年法律第30号)による胸部エックス線写真の像の型が第1型以上のものを石綿肺として,肺機能検査と組み合わせて健康管理の措置を講じている。 したがって,じん肺法で定めるところの石綿肺は,高濃度の石綿ばく露によって発生する疾患でもあり,同時に,石綿ばく露の重要な医学的所見の一つでもある。(甲A106・5頁) 2 石綿関連疾患石綿を吸入することによって生ずる石綿関連疾患には,①石綿肺,②肺がん,③中皮腫,④良性石綿胸水,⑤びまん性胸膜肥厚が知られている。(甲A106・6頁)⑴ 石綿肺ア石綿肺は,石綿を大量に吸入することによって発生する職業性の疾患である。(甲A106・17頁)石綿肺の自覚症状としては,最 まん性胸膜肥厚が知られている。(甲A106・6頁)⑴ 石綿肺ア石綿肺は,石綿を大量に吸入することによって発生する職業性の疾患である。(甲A106・17頁)石綿肺の自覚症状としては,最も早期に出現するのは労作時息切れであり,階段や坂道,平地での急ぎ足の際に自覚される。この自覚症状は石綿ばく露中止後も次第に進行し,呼吸困難を来すようになることが多い。咳・痰も主要な症状である。肺機能障害の著しく発展した場合にチアノーゼが出現することもある。(乙アA12・40頁)イ石綿肺の発症と石綿ばく露濃度には量-反応関係(環境条件の変化量とそれに対する生体の反応との関係)が見られ,一般に,ばく露開始後から10年以上の職業性石綿ばく露歴を経て現れるが,石綿吹付けなどの非常に高濃度の石綿ばく露作業では,1年程度のばく露でも所見が見られることがある。(甲A106・17頁,乙アA13,35・107頁,154・8頁,157・3頁)⑵ 肺がんア肺がん(原発性)は,石綿に特異的な疾患である中皮腫と異なり,喫煙 をはじめ,石綿以外に発症原因が多く存在する疾患であり,石綿粉じんばく露者の肺がんと石綿粉じんばく露を受けていない者にみられる肺がんとで臨床像に違いはない。 肺がん発症における喫煙と石綿の関係は,相加的よりも相乗的に作用すると考えられており,喫煙歴も石綿粉じんばく露歴もない人の発がんリスクを1とすると,喫煙歴があり石綿粉じんばく露歴がない人では10.85倍,喫煙歴がなく石綿粉じんばく露歴がある人では5.17倍,喫煙歴も石綿粉じんばく露歴もある人では53.24倍になると報告されている。 (甲A106・9~10,15頁)イ石綿肺がんの潜伏期間は,15~60年(中央値43年)とする報告や,平均31.8年で,石綿ばく露開始から4 露歴もある人では53.24倍になると報告されている。 (甲A106・9~10,15頁)イ石綿肺がんの潜伏期間は,15~60年(中央値43年)とする報告や,平均31.8年で,石綿ばく露開始から40年以上経過して発生する事例もあるとする報告などがある。 石綿のばく露量と肺がんの発症率との間には,累積ばく露量が増えれば発症リスクが上がるという直線的な量-反応関係があることが判明している。(甲A106・15~16頁,乙アA35・108頁)ウ肺がんは,一般に非常に予後の悪い疾患であり,効果的な治療はなく,5年生存率は15%とされている。(甲A106・15頁)⑶ 中皮腫ア中皮腫とは,漿膜(肺,心臓,消化管等の臓器の表面と体壁の内側を覆う透明な膜)の表面にある中皮細胞に由来する腫瘍である。 中皮腫は,そのほとんどが石綿を原因とするものである。中皮腫の診断の確からしさが担保されれば,当該中皮腫は石綿を原因とするものと考えて差し支えないとされており,肺がんと異なり,喫煙との相互作用は見られない。(甲A106・7頁,乙アA35・121,153頁)イ初発症状としては,息切れ,胸痛,咳が多い。胸痛は特定の部位に限局せず持続的で,中皮腫の進展とともに強くなる(肺がんなどによるがん性 胸膜炎は疼痛を伴わないことが多く,極めて対照的である。)。胸痛のコントロールは難しく,予後不良因子の一つに挙げられている。(乙アA35・155頁)ウ石綿ばく露開始から中皮腫発症の症状確認日までの潜伏期間は,平均39.4年,中央値は40.0年とする報告などがあるが,ばく露量が多いほど短くなり,一般に肺がんより長く,また,肺がんと異なり,石綿ばく露開始からの年数を経るほど発生リスクが高くなるとされている。 職業ばく露とみなすために必要なばく露期間 どがあるが,ばく露量が多いほど短くなり,一般に肺がんより長く,また,肺がんと異なり,石綿ばく露開始からの年数を経るほど発生リスクが高くなるとされている。 職業ばく露とみなすために必要なばく露期間としては,おおむね1年以上とされているが,作業環境管理が十分に行われていなかった時代に吹付け作業等に従事した場合は,1年未満でも発症が否定できない。(甲A106・8~9頁,乙アA35・120頁,40・80頁)エ中皮腫は,非常に予後の悪い疾患である。2年生存率は30%,平均余命の中央値は15か月,平均値は21か月であり,手術しても同じくらいの成績にすぎない。(甲A106・8~9頁)オすべての種類の石綿が胸膜中皮腫を引き起こすが,その発がん性は,クリソタイルを1とすると,アモサイトは100倍,クロシドライトは500倍とする意見もある。腹膜中皮腫は,クリソタイル単独ばく露による例は非常に稀である。(乙アA35・113頁)⑷ 良性石綿胸水ア良性石綿胸水は,石綿胸膜炎ともいい,通常は片側で少量の胸水を認める疾患である。石綿以外にも様々な原因で発症する疾患である。本疾患の「良性」とは,悪性腫瘍ではないということで,臨床経過が必ずしも良性であるということではない。 良性石綿胸水については,中皮腫,肺がん及び石綿肺に比べて,既知の疫学的並びに臨床的知見は非常に少なく,殊に,我が国での報告は余りない。(甲A106・21頁,乙アA35・128,197頁) イ半数は自覚症状がなく,検診等で偶然発見される。自覚症状としては,胸痛,発熱,呼吸困難等が挙げられるが,これらは,胸膜中皮腫の初発症状と同様である。(乙アA35・197頁)ウ石綿高濃度ばく露の場合に発生頻度が高いとの報告がある一方で,低濃度ばく露を示唆する胸膜プラークを 吸困難等が挙げられるが,これらは,胸膜中皮腫の初発症状と同様である。(乙アA35・197頁)ウ石綿高濃度ばく露の場合に発生頻度が高いとの報告がある一方で,低濃度ばく露を示唆する胸膜プラークを伴う症例の方が多いとの報告もある。 発症までの潜伏期間は石綿関連疾患中一番短く,ばく露後10年以内に発症する疾患は良性石綿胸水のみともいわれるが,他方,平均潜伏期間を28.7~34.5年とする報告もされている。(甲A106・20頁,乙アA35・201頁)エ約半数の例において,本人が気付かないまま胸水が自然消失するが,胸水が消失した後に約半数の症例でびまん性胸膜肥厚を残し,程度の差はあるものの,徐々に少なからぬ肺機能障害を来す。びまん性胸膜肥厚とともに,予後不良の要因は胸膜中皮腫の合併である。(甲A106・20頁)⑸ びまん性胸膜肥厚びまん性胸膜肥厚とは,胸膜プラークが壁側胸膜の病変であるのに対し,臓側胸膜(肺側胸膜)の病変であり,壁側胸膜との癒着を伴う。胸膜プラークとは異なり,石綿ばく露との関係は特異性が低く,必ずしも石綿によるものとは限らない。 石綿肺と同様に,病態は徐々に進行する経過をたどるが,肺がん・中皮腫のように短期間で死に至ることはない。(甲A106・22頁,乙アA35・129頁)第4 業務上疾病の認定等 1 労働者に発生した疾病が,石綿関連疾患として業務上疾病に該当するか否かを認定するための具体的基準として,厚生労働省労働基準局長通達(平成24年3月29日付け基発0329第2号「石綿による疾病の認定基準について」。 以下「石綿認定基準」という。)が発出されている。 石綿認定基準は,石綿との関連が明らかな業務上疾病として,①石綿肺,②肺がん,③中皮腫,④良性石綿胸水,及び⑤びまん性胸膜肥厚を挙げる。そし 「石綿認定基準」という。)が発出されている。 石綿認定基準は,石綿との関連が明らかな業務上疾病として,①石綿肺,②肺がん,③中皮腫,④良性石綿胸水,及び⑤びまん性胸膜肥厚を挙げる。そして,石綿認定基準は,良性石綿胸水以外について,具体的な認定要件を定めている(良性石綿胸水は全案件について本省協議とされている。)。 なお,石綿肺については,石綿ばく露作業に従事した労働者に発生した疾病であって,①じん肺管理区分が管理4に該当する石綿肺か,②石綿肺に合併した合併症のみが業務上の疾病として取り扱われている。 2 本件被災者は,いずれも,石綿関連疾患(石綿肺,肺がん,中皮腫及び良性石綿胸水)に罹患した者として,労働者災害補償保険法所定の労災認定を受けている。(乙アA2002,弁論の全趣旨〔乙ア準備書面⒇・別紙1〕)第5 建設アスベスト訴訟における最高裁判所の判断内容等本訴訟は,建設作業に従事し,石綿粉じんにばく露したことにより,石綿関連疾患にり患したと主張する者又はその承継人が,国及び建材メーカーらに損害賠償を求める集団訴訟(建設アスベスト訴訟)であるところ,最高裁判所第一小法廷は,令和3年5月17日,同種の先行事件4件について判決を言い渡した。本訴訟に関係する各判決の判断の概要は,以下のとおりである。 1 最高裁平成30年第1447号,同第1448号,同第1449号,同第1451号,同第1452号令和3年5月17日第一小法廷判決(以下「神奈川1陣最判」という。)は,①国に対する国家賠償請求及び②建材メーカーらに対する不法行為に基づく損害賠償請求について,次のとおり判断した。 ⑴ 国に対する国家賠償請求について労働大臣が建設現場における石綿関連疾患の発生防止のために労働安全衛生法(以下「安衛法」という。)に基づく規制権 づく損害賠償請求について,次のとおり判断した。 ⑴ 国に対する国家賠償請求について労働大臣が建設現場における石綿関連疾患の発生防止のために労働安全衛生法(以下「安衛法」という。)に基づく規制権限を行使しなかったこと(同法に基づく規制権限を行使して,通達を発出するなどして,石綿含有建材の表示及び石綿含有建材を取り扱う建設現場における掲示として,石綿含有建材から生ずる粉じんを吸入すると石綿肺,肺がん,中皮腫等の重篤な石 綿関連疾患を発症する危険があること並びに石綿含有建材の切断等の石綿粉じんを発散させる作業及びその周囲における作業をする際には必ず適切な防じんマスクを着用する必要があることを示すように指導監督をしなかったこと)は,屋根を有し周囲の半分以上が外壁に囲まれ屋内作業場と評価し得る建設現場の内部(以下「屋内建設現場」という。)における建設作業(石綿吹付け作業を除く。以下,特に言及しない限り同じ。)に従事して石綿粉じんにばく露した者のうち,労働者との関係においても,また,安衛法2条2号において定義された労働者に該当しない者(いわゆる一人親方及び個人事業主等)との関係においても,昭和50年10月1日以降,国家賠償法1条1項の適用上違法であるなどと判断した。 ⑵ 建材メーカーらに対する不法行為に基づく損害賠償請求ア民法719条1項後段の趣旨について,被害者の保護を図るため,公益的観点から,因果関係の立証責任を転換したものであることを明示した上で,①被害者によって特定された複数の行為者のほかに被害者の損害をそれのみで惹起し得る行為をした者が存在しないことは,同項後段の適用の要件であること,②同項後段を類推適用する場面でも,同様に因果関係の立証責任が転換されることを認めた。 イ多数の建材メーカーが,石綿含有建材を製造 行為をした者が存在しないことは,同項後段の適用の要件であること,②同項後段を類推適用する場面でも,同様に因果関係の立証責任が転換されることを認めた。 イ多数の建材メーカーが,石綿含有建材を製造販売する際に,当該建材が石綿を含有しており,当該建材から生ずる粉じんを吸入すると石綿肺,肺がん,中皮腫等の重篤な石綿関連疾患を発症する危険があること等を当該建材に表示する義務を負っていたにもかかわらず,その義務を履行しておらず,大工らが,建設現場において,複数の建材メーカーが製造販売した石綿含有建材を取り扱うことなどにより,累積的に石綿粉じんにばく露し,中皮腫,石綿肺,肺がん又はびまん性胸膜肥厚にり患した場合において,本件の事情の下では,民法719条1項後段の類推適用が認められると判断した。その上で,本件の事情の下において寄与度により賠償責任の範囲 を限定することを明示し,建材メーカーらは,上記大工らの各損害の3分の1について,連帯して損害賠償責任を負うと判断した。 ウまた,石綿含有建材の製造販売をする者が,建物の工事において,当該建材を建物に取り付ける作業等のような当該建材を最初に使用する際の作業に従事する者に対する義務として,当該建材が石綿を含有しており,当該建材から生ずる粉じんを吸入すると石綿肺,肺がん,中皮腫等の重篤な石綿関連疾患を発症する危険があること等を当該建材に表示する義務を負う場合,当該義務は,上記の者に対する関係においてのみ負担するものではなく,当該建材が一旦使用された後に当該工事において当該建材に配線や配管のため穴を開ける作業等をする者に対する関係においても負担するものと解するのが相当であると判断した。 2 最高裁平成31年第596号令和3年5月17日第一小法廷判決(以下「東京1陣最判」という。)は,次 を開ける作業等をする者に対する関係においても負担するものと解するのが相当であると判断した。 2 最高裁平成31年第596号令和3年5月17日第一小法廷判決(以下「東京1陣最判」という。)は,次の⑴~⑸までの手順による立証手法により,特定の建材メーカーの製造販売した石綿含有建材が特定の建設作業従事者の作業する建設現場に相当回数にわたり到達していたとの事実(以下「建材現場到達事実」という。)が立証され得ることを一律に否定した原審の判断には,経験則又は採証法則に反する違法があると判断した。 ⑴ 国土交通省及び経済産業省により公表されているデータベースに掲載されるなどした石綿含有建材を複数の種別に分類し,そのうち,建設作業従事者らの職種ごとに,直接取り扱う頻度が高く,取り扱う時間も長く,取り扱う際に多量の石綿粉じんにばく露するといえる種別を選定する。 ⑵ 上記のとおり選定された種別に属する石綿含有建材のうち,上記建設作業従事者らが建設作業に従事していた地域での販売量が僅かであるもの等を除外し,さらに,上記建設作業従事者ごとに,建設作業に従事した期間とその建材の製造期間との重なりが1年未満である可能性のあるもの等を除外する。 ⑶ 上記⑴及び⑵により上記建設作業従事者ごとに特定した石綿含有建材のうち,同種の建材の中での市場占有率がおおむね10%以上であるものは,その市場占有率を用いた確率計算を考慮して,上記建設作業従事者の作業する建設現場に到達した蓋然性が高いものとする。 ⑷ 上記建設作業従事者がその取り扱った石綿含有建材の名称,製造者等につき具体的な記憶に基づいて供述等をする場合には,その供述等により上記建設作業従事者の作業する建設現場に到達した石綿含有建材を特定することを検討する。 ⑸ 建材メーカーらから,自社の石綿含 者等につき具体的な記憶に基づいて供述等をする場合には,その供述等により上記建設作業従事者の作業する建設現場に到達した石綿含有建材を特定することを検討する。 ⑸ 建材メーカーらから,自社の石綿含有建材につき販売量が少なかったこと等が具体的な根拠に基づいて指摘された場合には,その建材を上記⑴から⑷までにより特定したものから除外することを検討する。 3 最高裁平成31年第290号,同第291号,同第292号令和3年5月17日第一小法廷判決(以下「京都1陣最判」という。)は,判示の事情の下では,国及び建材メーカーらが,平成13年から平成16年9月30日(建材メーカーらとの関係では平成15年12月31日)までの期間に,屋外の建設現場における石綿含有建材の切断,設置等の作業(以下「屋外建設作業」という。)に従事する者に石綿関連疾患にり患する危険が生じていることを認識することができたということはできないと判断した。 4 最高裁平成31年第491号,同第495号令和3年5月17日第一小法廷判決(以下「大阪1陣最判」という。)は,判示の事情の下では,建材メーカーが,昭和50年から平成2年までの期間に,屋外建設作業に従事する者に石綿関連疾患にり患する危険が生じていることを認識することができたということはできないと判断した。 第6 関係法令の概要1⑴ 昭和22年に公布された労働基準法(一部を除き同年11月1日施行。以下,昭和47年法律第57号による改正前の労働基準法を「旧労基法」とい う。)では,使用者は,粉じん等による危害を防止するために必要な措置を講じなければならない(42条),使用者は,労働者を就業させる建設物及びその附属建設物について,換気等に必要な措置その他労働者の健康,風紀及び生命の保持に必要な措置を講じなければならな 必要な措置を講じなければならない(42条),使用者は,労働者を就業させる建設物及びその附属建設物について,換気等に必要な措置その他労働者の健康,風紀及び生命の保持に必要な措置を講じなければならない(43条),労働者は,危害防止のために必要な事項を遵守しなければならない(44条),使用者は,労働者を雇い入れた場合においては,その労働者に対して,当該業務に関し必要な安全及び衛生のための教育を施さなければならない(50条)とされた。 使用者が42条及び43条の規定により講ずべき措置の基準及び労働者が44条の規定により遵守すべき事項は,命令に委任された(45条)。 ⑵ 労働大臣は,昭和22年10月31日,旧労基法の規定に基づき,労働安全衛生規則(同年労働省令第9号。以下「旧安衛則」という。同年11月1日施行)を制定した。旧安衛則には,次の内容の規定が設けられた。 ア粉じん等を発散するなど衛生上有害な作業場においては,その原因を除去するため,作業又は施設の改善に努めなければならない(172条)。 イ粉じん等を発散する屋内作業場においては,場内空気のその含有濃度が有害な程度にならないように,局所における吸引排出その他新鮮な空気による換気等適当な措置を講じなければならない(173条)。 ウ屋外又は坑内において,著しく粉じんを飛散する作業場においては,注水その他粉じん防止の措置を講じなければならないが,作業の性質上やむを得ない場合はこの限りでない(175条)。 エ粉じん等を発散し,衛生上有害な場所等には,必要ある者以外の者の立ち入ることを禁止し,その旨を掲示しなければならない(179条)。 オ粉じん等を発散し,衛生上有害な場所における業務等においては,その作業に従事する労働者に使用させるために,防護衣,保護眼鏡,呼吸用保護具等適当な保 その旨を掲示しなければならない(179条)。 オ粉じん等を発散し,衛生上有害な場所における業務等においては,その作業に従事する労働者に使用させるために,防護衣,保護眼鏡,呼吸用保護具等適当な保護具を備えなければならない(181条)。 カ 181条等に規定する保護具は,同時に就業する労働者の人数と同数以 上を備え,常時有効かつ清潔に保持しなければならない(184条)。 キ 181条等に規定する作業に従事する労働者は,就業中保護具を使用しなければならない(185条)。 ⑶ 労働大臣は,昭和46年4月28日,旧労基法の規定に基づき,及び旧労基法を実施するため,特定化学物質等障害予防規則(同年労働省令第11号。 以下「旧特化則」という。一部を除き同年5月1日施行)を制定した。旧特化則では,石綿は第二類物質とされ(2条2号,別表第2),第二類物質に係る作業に関し,次の内容の規定が設けられた。 ア使用者は,第二類物質の粉じん等が発散する屋内作業場について,当該発散源に局所排気装置を設けなければならず,局所排気装置の設置が著しく困難であること等により局所排気装置を設けない場合には,全体換気装置を設けるなど労働者の障害を予防するため必要な措置を講じなければならない(4条1項,2項)。 イ使用者は,第二類物質を製造し,又は取り扱う作業場に,関係者以外の者が立ち入ることを禁止し,かつ,その旨を見やすい箇所に表示しなければならない(25条1号)。 ウ使用者は,第二類物質の運搬又は貯蔵のために使用する容器又は包装の見やすい箇所に当該物質の名称及び取扱い上の注意事項を表示しなければならない(26条2項)。 エ使用者は,第二類物質を製造し,又は取り扱う作業場に,当該物質の粉じん等を吸入することによる障害を予防するため必要な呼吸用保護具 及び取扱い上の注意事項を表示しなければならない(26条2項)。 エ使用者は,第二類物質を製造し,又は取り扱う作業場に,当該物質の粉じん等を吸入することによる障害を予防するため必要な呼吸用保護具を備えなければならない(32条)。 オ使用者は,32条の保護具について,同時に就業する労働者の人数と同数以上を備え,常時有効かつ清潔に保持しなければならない(34条)。 2⑴ 昭和47年6月8日,安衛法が公布され(一部を除き同年10月1日施行),これに伴い,旧労基法42条以下に定められていた安全及び衛生に関する規 定が改正され,労働者の安全及び衛生に関しては,安衛法の定めるところによるものとされた。安衛法では,安衛法は,労働基準法とあいまって,労働災害の防止のための危害防止基準の確立,責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに,快適な作業環境(平成4年法律第55号による改正後は「職場環境」)の形成を促進することを目的とする(1条),事業者は,労働災害を防止するための管理を必要とする作業で,政令で定めるものについては,作業主任者を選任し,その者に作業に従事する労働者の指揮その他の省令で定める事項を行わせなければならない(14条),事業者は,粉じん等による健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない(22条),事業者は,労働者を就業させる建設物その他の作業場について,換気等に必要な措置その他労働者の健康,風紀及び生命の保持のため必要な措置を講じなければならない(23条),労働者は,事業者が22条,23条等の規定に基づき講ずる措置に応じて必要な事項を守らなければならない(26条),黄りんマッチ,ベンジジン,ベン 保持のため必要な措置を講じなければならない(23条),労働者は,事業者が22条,23条等の規定に基づき講ずる措置に応じて必要な事項を守らなければならない(26条),黄りんマッチ,ベンジジン,ベンジジンを含有する製剤その他の労働者に重度の健康障害を生ずる物で,政令で定めるものは,製造し,輸入し,譲渡し,提供し,又は使用してはならない(55条),ベンゼン,ベンゼンを含有する製剤その他の労働者に健康障害を生ずるおそれのある物で政令で定めるもの等を譲渡し,又は提供する者は,省令で定めるところにより,その容器又は包装に,名称並びに人体に及ぼす作用及び貯蔵又は取扱い上の注意等を表示しなければならない(57条),事業者は,労働者を雇い入れたとき及び労働者の作業内容を変更したときは,当該労働者に対し,省令で定めるところにより,その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない(59条1項,2項)とされた。22条,23条等の規定により事業者が講ずべき措置及び26条の規定により労働者が守らなければならない事項は,省令に委任され た(27条1項)。 ⑵ 内閣は,安衛法の規定に基づき,労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号。以下「安衛令」という。一部を除き同年10月1日施行)を制定し,安衛令は,同年8月19日,公布された。 ⑶ 労働大臣は,昭和47年9月30日,安衛法及び安衛令の規定に基づき,並びに安衛法を実施するため,労働安全衛生規則(同年労働省令第32号。 以下「安衛則」という。一部を除き同年10月1日施行)を制定し,旧安衛則を廃止した。安衛則には,次の内容の規定が設けられた。 ア事業者は,粉じん等を発散するなど有害な作業場においては,その原因を除去するため,代替物の使用,作業の方法又は機械等の改善等必要な措 安衛則を廃止した。安衛則には,次の内容の規定が設けられた。 ア事業者は,粉じん等を発散するなど有害な作業場においては,その原因を除去するため,代替物の使用,作業の方法又は機械等の改善等必要な措置を講じなければならない(576条)。 イ事業者は,粉じん等を発散する屋内作業場においては,空気中の粉じん等の含有濃度が有害な程度にならないようにするため,局所排気装置又は全体換気装置を設けるなど必要な措置を講じなければならない(577条)。 ウ事業者は,有害物を含む排気を排出する局所排気装置その他の設備については,当該有害物の種類に応じて,集じんその他の有効な方式による排気処理装置を設けなければならない(579条)。 エ事業者は,粉じんを著しく飛散する屋外又は坑内の作業場においては,注水その他の粉じんの飛散を防止するため必要な措置を講じなければならない(582条)。 オ事業者は,粉じん等を発散する有害な場所等に関係者以外の者が立ち入ることを禁止し,かつ,その旨を見やすい箇所に表示しなければならない(585条)。 カ事業者は,粉じん等を発散する有害な場所における業務等においては,当該業務に従事する労働者に使用させるために,保護衣,保護眼鏡,呼吸 用保護具等適切な保護具を備えなければならない(593条)。 キ事業者は,593条に規定する保護具については,同時に就業する労働者の人数と同数以上を備え,常時有効かつ清潔に保持しなければならない(596条)。 ク 593条に規定する業務に従事する労働者は,事業者から当該業務に必要な保護具の使用を命じられたときは,当該保護具を使用しなければならない(597条)。 ⑷ 労働大臣は,昭和47年9月30日,安衛法及び安衛令の規定に基づき,並びに安衛法を実施するため,特定化学物 要な保護具の使用を命じられたときは,当該保護具を使用しなければならない(597条)。 ⑷ 労働大臣は,昭和47年9月30日,安衛法及び安衛令の規定に基づき,並びに安衛法を実施するため,特定化学物質等障害予防規則(同年労働省令第39号。以下「特化則」という。一部を除き同年10月1日施行)を制定し,旧特化則を廃止した。特化則では,旧特化則と同様,石綿は第二類物質とされ(2条4号,安衛令別表第3第3号2),第二類物質に係る作業に関し,次の内容の規定が設けられ,従来の規制がほぼそのまま引き継がれた。 ア事業者は,第二類物質の粉じん等が発散する屋内作業場について,当該発散源に局所排気装置を設けなければならず,局所排気装置の設置が著しく困難であること等により局所排気装置を設けない場合には,全体換気装置を設けるなど労働者の健康障害を予防するため必要な措置を講じなければならない(5条1項,2項)。 イ事業者は,第二類物質を製造し,又は取り扱う作業場に,関係者以外の者が立ち入ることを禁止し,かつ,その旨を見やすい箇所に表示しなければならない(24条1号)。 ウ事業者は,第二類物質の運搬又は貯蔵のために使用する容器又は包装の見やすい箇所に当該物質の名称及び取扱い上の注意事項を表示しなければならない(25条2項)。 エ事業者は,第二類物質を製造し,又は取り扱う作業場に,当該物質の粉じん等を吸入することによる労働者の健康障害を予防するため必要な呼 吸用保護具を備えなければならない(43条)。 オ事業者は,43条の保護具について,同時に就業する労働者の人数と同数以上を備え,常時有効かつ清潔に保持しなければならない(45条)。 3⑴ 内閣は,昭和50年1月14日,安衛令を一部改正し(一部を除き同年4月1日施行),労働大臣は,同年3月 する労働者の人数と同数以上を備え,常時有効かつ清潔に保持しなければならない(45条)。 3⑴ 内閣は,昭和50年1月14日,安衛令を一部改正し(一部を除き同年4月1日施行),労働大臣は,同年3月22日,安衛則を一部改正した(安衛則別表第2の改正規定等につき同年4月1日施行)。上記の安衛令及び安衛則の改正により,石綿及び石綿を含有する製剤その他の物(ただし,石綿の含有量が重量の5%以下のものを除く。以下,石綿と安衛令,安衛則又は特化則が規制対象とする石綿を含有する製剤その他の物とを併せて「石綿等」ということがある。)が,安衛法57条に基づく表示義務の対象となり,名称,人体に及ぼす作用,取扱い上の注意等を表示すべきこととなった(上記改正後の安衛令18条2号の2,同条39号,上記改正後の安衛則30条,32条2号の2,33条,別表第2第2号の2。ただし,昭和50年4月1日において現に存するものについては,同年9月30日までの間は,安衛法57条の規定は適用しないとの経過措置が設けられた。)。 ⑵ 労働省労働基準局長は,昭和50年3月27日付けで,「労働安全衛生法第57条に基づく表示の具体的記載方法について」と題する通達(同日基発第170号〔乙アB172〕。以下「表示方法通達」という。)を発出し,石綿等についての安衛法57条に基づく表示の具体的記載方法を,「注意事項多量に粉じんを吸入すると健康をそこなうおそれがありますから,下記の注意事項を守つて下さい。1.粉じんが発散する屋内の取扱い作業場所には,局所排気装置を設けて下さい。2.取扱い中は,必要に応じ防じんマスクを着用して下さい。」などと示した。 ⑶ 労働大臣は,昭和50年9月30日,特化則を一部改正した(一部を除き同年10月1日施行)。上記の改正のうち,石綿等に関するものの主な内容は 応じ防じんマスクを着用して下さい。」などと示した。 ⑶ 労働大臣は,昭和50年9月30日,特化則を一部改正した(一部を除き同年10月1日施行)。上記の改正のうち,石綿等に関するものの主な内容は,次のとおりである。 ア石綿のほか,石綿を含有する製剤その他の物(ただし,石綿の含有量が重量の5%以下のものを除く。)も,第二類物質とされ,事業者の呼吸用保護具を備える義務の対象とされるなどした(前記改正後の安衛令別表第3第2号4,37,上記改正後の特化則2条1項2号,2項,別表第1第4号)。 イ事業者は,石綿等を含む特別管理物質を製造し,又は取り扱う作業場には,特別管理物質の名称,人体に及ぼす作用,取扱い上の注意事項及び使用すべき保護具に係る事項を,作業に従事する労働者が見やすい箇所に掲示しなければならないとされた(上記改正後の特化則38条の3。以下,この規定を「本件掲示義務規定」という。)。 ウ事業者は,原則として,石綿等を吹き付ける作業に,労働者を従事させてはならないとされた(上記改正後の特化則38条の7第1項)。 エ事業者は,石綿等の切断,穿孔,研磨等の作業,石綿等を塗布し,注入し,又は張り付けた物の破砕,解体等の作業,粉状の石綿等を容器に入れ,又は容器から取り出す作業及び粉状の石綿等を混合する作業のいずれかに労働者を従事させるときは,石綿等を湿潤な状態のものとすることが著しく困難なときを除き,石綿等を湿潤な状態のものとしなければならず,これらの作業を行う場所に,石綿等の切りくず等を入れるための蓋のある容器を備えなければならないとされた(上記改正後の特化則38条の8第1項,2項)。 オ石綿等を取り扱う作業(試験研究のため取り扱う作業を除く。)が,安衛法14条の作業主任者の選任を要する作業とされた(前記改正 ればならないとされた(上記改正後の特化則38条の8第1項,2項)。 オ石綿等を取り扱う作業(試験研究のため取り扱う作業を除く。)が,安衛法14条の作業主任者の選任を要する作業とされた(前記改正後の安衛令6条18号,別表第3第2号4,37,上記改正後の特化則2条2項,別表第1第4号)。 ⑷ 労働省労働基準局長は,昭和50年10月1日付けで,「特定化学物質等障害予防規則の一部を改正する省令の施行について」と題する通達(同日基 発第573号〔乙アB32〕。以下「573号通達」という。)を発出した。 この中で,特化則の改正は,最近特に大きな関心事となっている職業がん等職業性疾病の発生状況等に鑑み,特化則の充実を図ったものであるとされ,「特別管理物質」は,人体に対する発がん性が疫学調査の結果明らかとなった物,動物実験の結果発がんの認められたことが学会等で報告された物等人体に遅発性効果の健康障害を与える,又は治癒が著しく困難であるという有害性に着目し,特別の管理を必要とするものを定めたものであるとされた。 また,573号通達は,本件掲示義務規定の掲示事項のうち,特別管理物質の名称,人体に及ぼす作用,取扱い上の注意事項については,表示方法通達の当該部分と同一内容として差し支えないとした。 4⑴ 内閣は,平成7年1月25日,安衛令を一部改正し(一部を除き同年4月1日施行),アモサイト,クロシドライト及びこれらをその重量の1%を超えて含有する製剤その他の物を,安衛法55条により製造等が禁止される有害物等に定めた(上記改正後の安衛令16条4号,5号,10号)。 ⑵ 労働大臣は,平成7年1月26日,安衛則及び特化則を一部改正した(いずれも,一部を除き同年4月1日施行)。これにより,安衛則及び特化則の規制対象となる石綿を含有する製剤その他の物 ,10号)。 ⑵ 労働大臣は,平成7年1月26日,安衛則及び特化則を一部改正した(いずれも,一部を除き同年4月1日施行)。これにより,安衛則及び特化則の規制対象となる石綿を含有する製剤その他の物の範囲が,石綿の含有量が重量の5%を超えるものから,1%を超えるものに拡大された(上記改正後の安衛則別表第2第2号の2,上記改正後の特化則別表第1第4号,別表第5第1号)。このほか,上記改正後の安衛則により,事業者に,石綿等が吹き付けられている耐火建築物等における石綿等の除去の作業を行う場合の当該作業に関する計画の届出義務が課され(90条5号の2),上記改正後の特化則により,事業者に,石綿等の切断,穿孔,研磨等の作業,石綿等を塗布し,注入し,又は張り付けた物の破砕,解体等の作業,粉状の石綿等を容器に入れ,又は容器から取り出す作業及び粉状の石綿等を混合する作業のいずれかに労働者を従事させるときに,当該労働者に呼吸用保護具,作業衣等を使用 させる義務(38条の9第1項,2項),建築物の解体等の作業を行うときに,石綿等が使用されている箇所及び使用状況を設計図書等により調査し,結果を記録する義務(38条の10),建築物の鉄骨等に吹き付けられた石綿等を除去する作業に労働者を従事させるときに,当該除去を行う作業場所を,それ以外の作業を行う作業場所から隔離する義務(38条の11)が課された。 5 内閣は,平成15年10月16日,安衛令を一部改正し(平成16年10月1日施行),石綿を含有する石綿セメント円筒,押出成形セメント板,住宅屋根用化粧スレート,繊維強化セメント板,窯業系サイディング等の製品で,その含有する石綿の重量が当該製品の重量の1%を超えるものを,安衛法55条により製造等が禁止される有害物等に定めた(上記改正後の安衛令16条1項, 繊維強化セメント板,窯業系サイディング等の製品で,その含有する石綿の重量が当該製品の重量の1%を超えるものを,安衛法55条により製造等が禁止される有害物等に定めた(上記改正後の安衛令16条1項,別表第8の2)。 6 内閣は,平成18年8月2日,安衛令を一部改正し(同年9月1日施行),例外的に改正附則において除外するもののほか,石綿及び石綿をその重量の0. 1%を超えて含有する製剤その他の物を,安衛法55条により製造等が禁止される有害物等に定めた(上記改正後の安衛令16条1項,上記改正附則3条)。 第3節被告国に対する請求に係る当事者の主張の要旨第1 原告6の主張の要旨 1 被災者03の石綿被害に関する予見可能性⑴ 前提事実第5の3のとおり,京都1陣最判は,被告国は平成16年9月30日までの間,屋外建設作業に従事する者に石綿関連疾患にり患する危険が生じていることを認識することができたということはできないと判示して,被告国の責任を否定したが,かかる判断には誤りがある。 ア事実認定の誤り京都1陣最判が言及した測定結果のうち,平成19年(2007年)に出版された書籍に記載されていたとされる情報(後記「測定結果②」)は, 既に平成10年(1998年)に出版された書籍で公表されていた。また,0.15本/立方センチメートルを下回るとする測定結果の中には,除じん装置を設置した状況下でのものが含まれており(後記「測定結果④」),測定状況自体が適切でない。 イ判断・評価の誤り京都1陣最判が認定した測定結果には数値に大きなばらつきがあり,屋外での加工作業について,多くが0.15本/立方センチメートルを超える結果となっていたほか,2本/立方センチメートルを超えるものもあったのであるから,作業時の条件次第では石綿粉じん濃度が0 あり,屋外での加工作業について,多くが0.15本/立方センチメートルを超える結果となっていたほか,2本/立方センチメートルを超えるものもあったのであるから,作業時の条件次第では石綿粉じん濃度が0.15本/立方センチメートルはもとより,2本/立方センチメートルを超える場合があることを十分に認識し得た。そもそも,石綿粉じんには「これ以下なら癌を発症しない」という閾値がないのであるから,大きなばらつきのある測定結果の存在,特に除じん装置なしに電動工具を用いた場合に高濃度の石綿粉じんが発生する事実は,屋外建設作業についても石綿関連疾患にり患する危険性を認識させるに十分なものである。数値の高い結果だけを例外として扱う姿勢には合理性を認め難い。 また,最高裁は,過剰発がん生涯リスクレベル10-3に対応する評価値0.15本/立方センチメートルについて,この数値以上の濃度の石綿粉じんに短時間ばく露しても直ちにこの数値の過剰発がんリスクが発生するものではないなどとするが,評価値はそれ単体で安全性を意味するものではなく,それ以下なら許容されるというリスクレベルではない。せめて,リスクレベル10-4に対応する評価値(クリソタイルのみで0.0015本/立方センチメートル)に依拠して考えるべきである。 さらに,低濃度の環境ばく露が社会問題化する状況下において,閾値がないという石綿の有害性に鑑みれば,環境ばく露レベルを大きく超える職業性ばく露に関し,「屋内作業に比べて低濃度である」というだけで,何の 安全対策も危険情報の提供さえも施されないまま使い続けられていることの危険性を認識し得なかったとは考え難い。「特別な管理」というに相応しい安全対策を伴って初めて,予見可能性を否定できるというべきである。 ⑵ 京都1陣最判は,外装材等の屋外建設作業で れていることの危険性を認識し得なかったとは考え難い。「特別な管理」というに相応しい安全対策を伴って初めて,予見可能性を否定できるというべきである。 ⑵ 京都1陣最判は,外装材等の屋外建設作業で用いられる石綿含有建材の取扱作業が,飽くまで屋外のみで行われていることを前提としているが,屋外で使用されることが予定されている建材であっても,常に屋外で切断,加工されるとは限らない。例えば,サイディング材のような外装材の加工については,大量の粉じん(顔の直近で電動工具〔丸鋸〕を使うため,作業を始めて1時間もすると顔が真っ白になる状態であった。また,サイディング材を持ち上げた時や外壁に張り付ける時にも粉じんが落ちてきて,鼻が詰まったりするほどの状態であった。)や大きな騒音が発生することから,近隣住民等に対する配慮のため,車庫の中で作業したり,ビニールシート等で囲って作業したりするなど屋内に準ずる状態で行われていたものであり,殊に北海道では,秋口から春先にかけて,寒さや雪などを避けるため,養生された駐車場や建設中の屋内に建材を持ち込んで切断作業を行うことが多かった(甲A2002〔31~32頁〕参照)。この場合の粉じんの暴露は,屋内と何ら変わるものではない。 被災者03は,車庫内やビニールシートの中でサイディング材の切断作業を行ったか否かについて言及していないが,上述したような配慮はどの建設作業従事者も当然に行っているものであり,そのような現場が多数存在していた。そうすると,直接言及していないことをもって,車庫等での作業がなかったということはできないのであるから,屋内と同様の粉じんにばく露する現場が存在したことを前提として,予見可能性を考えるべきである。被告国は建設現場で建材がどのように扱われているのかを当然に把握しているはずであるから,この であるから,屋内と同様の粉じんにばく露する現場が存在したことを前提として,予見可能性を考えるべきである。被告国は建設現場で建材がどのように扱われているのかを当然に把握しているはずであるから,このような建設作業の実態を知らないことはあり得ない。 以上のとおりであるから,京都1陣最判を前提としても,外装材について屋内建設現場で切断等の作業を行った者との関係では,被告国において,当該作業に従事する者に石綿関連疾患にり患する危険が生じていることを認識することができたというべきである。 ⑶ したがって,被告国は,被災者03のように外装材について屋内建設現場で切断等の作業を行った者との関係でも,石綿関連疾患にり患する危険が生じていることを認識することができたのであるから,賠償責任を免れない(神奈川1陣最判参照)。 2 損害額等後記第4節第1の8⑹のとおり。なお,遅延損害金の起算日に関しては,療養開始日に遡らせるのが合理的である。仮に遅延損害金の起算日が死亡日と認定された場合には,石綿関連疾患にり患したことの慰謝料を元本とした療養開始日から死亡の前日までの遅延損害金も認容されるべきであるし,少なくとも,石綿関連疾患にり患したことによる慰謝料請求の場合と同額が認容されるべきである。 第2 被告国の主張の要旨 1 被災者03の石綿被害に関する予見可能性建設アスベスト訴訟に関する最高裁判決は,屋内建設現場における建設作業に従事して石綿粉じんにばく露した者と,屋外建設作業に従事して石綿粉じんにばく露した者とを明確に区分し,後者の関係では,石綿関連疾患にり患する危険を認識することができなかったため,国の規制権限不行使は違法ではない旨を明言した。 しかるに,原告6は,被災者03がサイディング工として屋外でサイディング材の切断作業等 石綿関連疾患にり患する危険を認識することができなかったため,国の規制権限不行使は違法ではない旨を明言した。 しかるに,原告6は,被災者03がサイディング工として屋外でサイディング材の切断作業等を行ってきた旨を一貫して主張してきたものであるし,被災者03自身,本人尋問や陳述書等の中で,働いていた現場は全て屋外であること,サイディング材の切断は屋外で行うことなどを明確に述べた。被災者03 は上記最高裁判決で国の責任が否定された屋外建設作業に従事する者であるから,国が責任を負うことはない。 2 損害額等争う。なお,石綿関連疾患を原因として死亡した場合,これにより生じた損害賠償債務に係る損害の発生時期は,死亡時とみるべきであるから,遅延損害金の始期も死亡時とみるべきである。 第4節被告企業らに対する請求に係る当事者の主張の要旨第1 原告らの主張の要旨 1 被告企業らが負う高度の注意義務(安全性確保義務)石綿粉じんは,人の生命,健康という最も尊重されるべき法益を侵害する重大な危険性を有するものであるが,その危険性情報は,被告企業らに偏在しており,被告企業らがこれを提供(警告)しなければ,建設作業従事者においてその危険性を知ることすらできず,その結果,防じんマスクの着用等のばく露防止対策の重要性を認識することができない。被告企業らは石綿含有建材の製造販売によって多額の利潤を得たが,警告義務の履行は比較的かつ安価な方法で行うことができるものであった。また,石綿含有建材に関する警告義務が課されたとしても,その効用(防火・耐熱)は何ら影響を受けるものではない。 これらの点に鑑みれば,石綿含有建材を製造販売した被告企業らは,その使用者(建設作業従事者)に対し,厳しい安全性確保義務を負うというべきである。 その具体的内容は,①石 ら影響を受けるものではない。 これらの点に鑑みれば,石綿含有建材を製造販売した被告企業らは,その使用者(建設作業従事者)に対し,厳しい安全性確保義務を負うというべきである。 その具体的内容は,①石綿粉じんの危険性に関する医学的知見の進展等を継続的に研究・調査する義務,②販売先や販売量等の情報を記録・保存する義務,③既に流通に置かれた石綿含有建材の使用状況の変化等を追跡監視する義務(これら①~③は,警告義務が生ずる前段階で被告企業らが負う義務である。),④医学的知見の進展等に伴い,石綿粉じんによる被害発生について予見可能となった段階においては,石綿含有建材の危険性や被害防止のための対策の必要性等を警告する義務(既に流通に置かれている石綿含有建材との関係でも同様 の義務を負うというべきであり,製品等の表示のみならず,現場への表示等の他の手段も併用して最大限の警告義務を尽くす必要がある。),⑤被害発生が一層確実であることが予見可能となった段階においては,当該石綿含有建材の製造販売の停止・中止義務であり,石綿粉じんの危険性に関する医学的知見の進展に伴って,課される安全性確保義務の内容・程度は,段階的に厳しくなると考えるべきである。 2 本件被災者の石綿被害に関する被告企業らの予見可能性等⑴ 被告企業らの予見可能性は,前述した調査義務があることを前提に判断されるべきである。警告義務が発生するための医学的知見の集積やそれに基づく被告企業らの予見可能性は,石綿粉じんの濃度と具体的な石綿関連疾患の関連性が厳密には明らかとなっていない段階であっても,石綿粉じんばく露により建設作業従事者の生命,健康に重大な影響が生ずることの疑念を抱かせる程度の医学的情報等の集積があれば足りると解される。1930年代以降の欧米での被害報告等の情報の集積状況 も,石綿粉じんばく露により建設作業従事者の生命,健康に重大な影響が生ずることの疑念を抱かせる程度の医学的情報等の集積があれば足りると解される。1930年代以降の欧米での被害報告等の情報の集積状況を踏まえれば,昭和40年(1965年)頃には,販売時の警告義務を負っていたというべきである。 ⑵ 欧米諸国では,石綿粉じんの危険性に関する医学的研究報告等が積み重ねられ,規制も強化されたため,石綿の使用量は激減していったところ,被告企業らは,このような海外の情報をリアルタイムで入手していた。また,国内でも同様の被害報告がされるようになり,被告企業らは,無石綿化を考えざるを得ないような状況になっていた。このような状況からすれば,被告企業らは,どんなに遅くとも昭和46年(1971年)頃までには,さらなる被害発生を防止するために,石綿含有建材の製造販売を停止・中止すべき義務(以下「製造中止義務等」という。)を負っていたというべきであり,少なくとも販売時及び販売後の警告義務を負っていたことは明らかというべきである。 ⑶ そして,それ以降の医学的情報や被害情報の集積を踏まえれば,被告企業 らが上述した各義務を果たさないことの違法性の程度は,より高くなっていった。特に昭和49年(1974年)に,吹付け材製造企業が自主的に吹付け石綿の製造を中止したことは,企業自らがその危険性を重く受け止めた証左であるから,既に製造販売した吹付け材との関係でも,より高度な警告義務を負っていたというべきである。どんなに遅くとも,石綿の発がん性,危険性が確固たるものとなっていた平成3年(1991年)には,製造中止義務等を負い,既に販売した石綿含有建材との関係でも厳しい警告義務を負っていたというべきである。 ⑷ 最高裁判決は,作業時における粉じん測定の結果に基づき ていた平成3年(1991年)には,製造中止義務等を負い,既に販売した石綿含有建材との関係でも厳しい警告義務を負っていたというべきである。 ⑷ 最高裁判決は,作業時における粉じん測定の結果に基づき,屋内建設現場における建設作業に従事した者との関係では石綿関連疾患り患の危険に係る予見可能性を肯定する一方,屋外建設作業に従事した者との関係ではこれを否定している。しかし,外装材に分類される建材であっても屋内で使用されるものがあり,また,外装材が常に屋外で切断・加工されるとは限らないことは,前述したとおりである。このような建材の用途や作業実態を前提とすれば,外装材を製造販売した被告企業ら(被告ケイミューなど)には予見可能性があったというべきである。 3 被告企業らの警告義務違反等⑴ 警告義務の対象範囲等ア被告企業らに課せられた警告義務は,石綿含有建材を使用する企業又は個人に対してその危険性を伝達し,石綿関連疾患にり患する危険から回避させることを目的とするものであるから,その相手方は,石綿含有建材を使用し,又はこれに接触することが想定される者全てに及ぶ。 したがって,石綿含有建材について,二次的加工(例えば,吹付け作業後に行われる配管工事や電気配線工事の際,吹付け材を削ること等。 以下,単に「二次的加工」という。)や,改修・解体作業が当然に想定される場合,その製造販売者は,当該作業者との関係でも危険を防止すべ き警告表示義務を負うというべきである。製造販売時に想定されるものに対しても警告義務を負い続けるということは,製造物責任法においては当然の理であり,同法制定以前の一般不法行為においても同様に妥当する。 施工時から補修・解体時までは長期間を経過することがあるものの,現行の石綿障害予防規則においては,現存する設計図書 おいては当然の理であり,同法制定以前の一般不法行為においても同様に妥当する。 施工時から補修・解体時までは長期間を経過することがあるものの,現行の石綿障害予防規則においては,現存する設計図書や成形板裏面の記載等を手掛かりとして,石綿含有建材の存否や施工個所の特定を行っているのであるから,被告企業らから適切な情報が提供されれば,実効的に被害発生を防止することが可能であった。 イ被告企業らは,石綿含有建材の製造販売を継続するのであれば,少なくとも,建設作業従事者が建設現場において大量の石綿粉じんにばく露することを防止するために,①建材に石綿が含有されている事実,②石綿粉じんを吸引すると肺がんを含む重篤な石綿関連疾患を発症する危険性があること,③上記危険を回避するために石綿粉じんを吸引してはならないことを,その石綿含有建材の形状・使用方法等に応じて,当該石綿含有建材を実際に取り扱う建設作業従事者に的確に伝わるようにすべきであった。 販売時及び販売後にこのような警告義務を履行することは,十分に可能であった。 販売時における警告義務の履行方法成形された石綿含有建材に関しては,その表面又は裏面に,石綿が含有されていること及び石綿の健康への危険性に加えて,「改修・解体時にも石綿が飛散するため,石綿の飛散を防止する措置をとり,作業時には防じんマスク等を着用する必要がある」旨を印字したり,シールを張ったりして表示する方法が考えられる。吹付け材の場合は,施工した吹付け材の表面に上記同様の危険性情報を記載したラベル等を設置して表示する方法が考えられる(乙ム3・12頁参照)。施工後を想定して石 綿含有建材の警告表示を行うことは可能であり,現に行われていた。 また,上記同様の危険性情報を記載した取扱説明書を作成し,施工者や建材店等 れる(乙ム3・12頁参照)。施工後を想定して石 綿含有建材の警告表示を行うことは可能であり,現に行われていた。 また,上記同様の危険性情報を記載した取扱説明書を作成し,施工者や建材店等に交付する方法も考えられる。これにより,建物所有者を介して改修・解体工事作業者に危険情報を伝達することが可能となる。 さらに,石綿含有建材の販売施工時において,建築士等の設計図書作成者に対して,建材の種類等だけでなく,石綿含有の有無を記載するよう指示する方法も考えられる。これにより,改修・解体工事の際に,粉じん飛散防止対策を取るべきか否かなどが明らかとなり,効果的な被害防止対策を取ることが可能となる。 販売後における警告義務の履行方法a 前提として,被告企業らは,石綿含有建材の製造販売当初から,当該建材の製造量,販売先,販売数量,石綿含有量などに関する情報を調査し,保存していたはずである(昭和44年からは生産実績等の情報を建設大臣に報告することが義務付けられていた〔甲B14〕。)。 そうすると,販売後の警告義務が発生する場合であっても,石綿含有建材の使用現場等を把握することは十分に可能であった。 この点を措くとしても,石綿含有建材の大部分が少数のシェア上位企業によって製造販売され,流通ルートが確立していたこと,直接施工や系列化した施工業者による施工がされていたことなどの事情からすれば,被告企業らは,石綿含有建材の使用現場等を相当程度把握していたといえる。 したがって,石綿含有建材の販売後においても,実効性のある警告を行うことが可能であったといえる。 b 被告企業らが,自社製品が使用された建物所有者に対して,上記で述べたのと同様の危険性情報を提供する方法が考えられる。被告企業らは,石綿含有建材を出荷するに当たり,情報を記録・保存すべ いえる。 b 被告企業らが,自社製品が使用された建物所有者に対して,上記で述べたのと同様の危険性情報を提供する方法が考えられる。被告企業らは,石綿含有建材を出荷するに当たり,情報を記録・保存すべき 義務を負っていたというべきであり,出荷先を把握していないことはそれ自体が当該義務の不履行になるというべきであるから,かかる義務懈怠を理由として,警告義務を免れることはできない。 また,官公庁や業界団体等に,石綿含有建材の危険性や改修・解体時の飛散防止対策の必要性等の危険性情報を提供する方法も考えられる。 さらに,新聞やテレビ等を通じて,広く危険性情報を提供する方法も考えられる。この方法は,実際に欠陥製品が流通した場合に広く行われているものである。 ⑵ 被告企業らの警告義務違反上述したとおり,被告企業らは,遅くとも昭和40年まで,どんなに遅くとも昭和46年までには,建設現場における石綿粉じんの危険性を現実に認識していたのだから,この時点から,上記⑴のような内容の警告表示等を行うべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠った。被告企業らの中には,表示方法通達に従った警告表示や,「a」マークを付して石綿含有建材であることを表示していた旨を主張する者があるが,これらの表示のみでは,石綿の危険性に関する警告表示としては不十分であり,警告義務を履行したとは評価できない。 4 被告企業らの石綿不使用義務(製造中止義務等)違反被告企業らは,警告表示を徹底しても建設作業従事者の安全を確保できないのであれば,建材を製造販売する者として,遅くとも昭和40年,どんなに遅くとも昭和50年(吹付け材については昭和47年頃)までには,建材の製造に際して石綿を使用しない義務を負っていたにもかかわらず,これを怠った。 5 被告企業らの共同不法行 とも昭和40年,どんなに遅くとも昭和50年(吹付け材については昭和47年頃)までには,建材の製造に際して石綿を使用しない義務を負っていたにもかかわらず,これを怠った。 5 被告企業らの共同不法行為(主位的請求)⑴ 総論ア神奈川1陣最判は,民法719条1項後段の趣旨が,被害者の保護を図 るため,公益的観点から因果関係の立証責任を転換するところにあることを明らかにした。同項後段類推適用の要件として,石綿含有建材が被災者の就労した建築現場に現実に到達したことを必要するか,到達の相当程度の可能性で足りるかという問題について,最高裁の判断は明らかではないが,上述した趣旨(被害者保護)に鑑みれば,立証責任が転換されるためには,到達の相当程度の可能性があれば足りると解するのが合理的である。 これによれば,後記⑵又は⑶で特定した建材(後述する主要原因建材)を製造販売して流通に置いた被告企業らは,当該建材が本件被災者の就労現場に現実に到達したか否かを問わず,民法719条1項後段の類推適用により,本件被災者に生じた損害について,連帯して責任を負うものというべきである。 建設アスベスト事案において,石綿含有建材を製造販売する被告企業らに共同不法行為責任が発生し得ることは,前提事実第5記載の各最高裁判決から明らかといえる。 イ被告企業らの集団的責任割合(寄与度)を認定するに当たり,これを特定の証拠に基づいて立証することが特に困難でないのであれば,わざわざ民法719条1項後段の類推適用という構成を検討する必要はない。最高裁が,同項後段の趣旨を明示して,その類推適用を認めたことからすれば,被告企業らの責任割合(寄与割合)を認定する場面においても,証拠の総合的判断によって裁判所が裁量的に判断することが許されると解すべきである。また,寄与 明示して,その類推適用を認めたことからすれば,被告企業らの責任割合(寄与割合)を認定する場面においても,証拠の総合的判断によって裁判所が裁量的に判断することが許されると解すべきである。また,寄与度の判断は,被災者の就労期間全体における石綿ばく露量の割合ではなく,石綿関連疾患を発症させるに十分な石綿粉じんばく露量との関係で論じられるべきである。 その上で,本訴訟の原告らが,被災者ごとにその主要な取扱い建材を精査して絞り込みを行っていることからすれば,対象となる被告企業らの集団的寄与度が3分の1にとどまるとはあり得ないというべきである。間接 的な責任原因により賠償責任を負う被告国の責任割合が2分の1とされていることからしても,最低でもこれを上回る責任割合とされるべきである。 ⑵ 主要原因建材の選定方法(主位的主張)本件被災者との関係で共同行為者となる被告企業らは,本件被災者の就労態様等から,含有する石綿に相当程度ばく露した可能性が高く,本件被災者が石綿関連疾患にり患する原因となった可能性がある石綿含有建材(以下「原因建材」という。)を製造販売し,市場に流通させた者である。原告らは,当該建材の市場占有率(以下「シェア」という。)を踏まえて,原因建材のうち本件被災者への到達可能性が高いと考えられる建材(以下「主要原因建材」という。)を抽出し,更に加害行為者(共同行為者)を絞り込んだ。かかる選定方法の詳細は,以下のとおりである。 ア原因建材の選定方法原告らは,まず,国土交通省及び経済産業省が作成し,インターネット上で公開している「石綿(アスベスト)含有建材データベース」(甲A1030。以下「国交省データベース」という。甲C29の1~2153は平成25年2月版であり。その後,適宜改訂・修正されている。甲C1001の1 いる「石綿(アスベスト)含有建材データベース」(甲A1030。以下「国交省データベース」という。甲C29の1~2153は平成25年2月版であり。その後,適宜改訂・修正されている。甲C1001の1~32は,平成26年2月版の国交省データベースのうち,「石綿(アスベスト)含有建材の特徴」である。)に掲載された石綿含有建材を,その「建材名(一般名)」に従って42種類に分類した上,これに,国交省データベースに掲載されていない混和材を加えて,合計43種類(別紙6「各職種におけるばく露可能性の高い(主要原因建材となりうる)石綿建材の種類」の「建材名(一般名)」欄に記載した43種類。以下,それぞれの石綿含有建材の種類については,同別紙の「建材名(一般名)」に,同別紙の「No.」欄の丸数字を付して「吹付け石綿①」等としたり,単に同別紙の「No.」欄の丸数字を用いて「建材種類①」 等といったりすることがある。)の石綿含有建材をリストアップした。 このうち,石綿含有吹付けバーミキュライト④,石綿含有吹付けパーライト⑤,石綿含有壁紙㉘,石綿含有ビニル床タイル㉙,石綿含有ビニル床シート㉚,石綿含有ソフト巾木㉜,石綿含有ルーフィング㉞は,発じん量が少なかった。 石綿含有せっこうボード㉕は,ノンアス製品が圧倒的に多く,含有石綿にばく露する機会が少なかった。 石綿セメント管㊵は,水道管として地中に施工されるものであり,建設作業従事者が通常取り扱う機会はなかった。 石綿含有その他パネル・ボード㉗は,流通量が微小であり,本件被災者の就労現場に到達した可能性は低かった。 よって,上記建材種類に該当する石綿含有建材を除外した。 次いで,製品の特性や販売事情等に照らして,本件被災者の就労現場に到達した可能性が極めて低いことを被告企業らが主張・立証した は低かった。 よって,上記建材種類に該当する石綿含有建材を除外した。 次いで,製品の特性や販売事情等に照らして,本件被災者の就労現場に到達した可能性が極めて低いことを被告企業らが主張・立証した石綿含有建材を除外した。 さらに,被告企業らの注意義務の始期に照らして,昭和40年以前に製造を終了した石綿含有建材を除外した。 原告らは,以上の方法により原因建材を選定した。最高裁は,企業が製造販売した石綿含有建材の寄与割合での責任を認めているから,取り扱った頻度が高い建材のみに限定することなく,一定程度のばく露が認められる建材は全て原因建材として抽出すべきである。 イ主要原因建材の選定(シェアによる絞り込み)原因建材が建設作業において通常使用される種類の建材であり,非石綿の代替製品がない場合を前提とすると,当該企業の製品が特定の被災者の就労現場に到達した確率を計算することができる。 具体的には,シェアが10%の製品について,被災者が年間20回の 建設現場で就労した場合,当該製品が少なくとも1回は当該現場に到達する確率は,計算式:1-(1-0.1)20によって求めることができる。その確率は87%を超えるから,建設作業従事者が,1年に1回程度は,当該建材を使用する建設現場において建設作業に従事した可能性が高いということができる。 したがって,原因建材のうち,用途を同じくする建材のシェアの割合がおおむね10%以上の製品は,本件被災者の就労現場に到達した可能性が高いので,これを主要原因建材として選定した。 各種資料に基づいて,各年度のシェアが確定できる建材種類は,別紙7「資料から認定されるシェアまとめ」のとおりである。 a 下記の建材種類は,各記載の理由から,本件において,一括してシェアの確定・推定を行った。 ⒜ ,各年度のシェアが確定できる建材種類は,別紙7「資料から認定されるシェアまとめ」のとおりである。 a 下記の建材種類は,各記載の理由から,本件において,一括してシェアの確定・推定を行った。 ⒜ 石綿含有吹付けロックウール②及び湿式石綿含有吹付け材③は,各種資料において,前者を乾式,後者を湿式として,一括して扱われていることが多い。 ⒝ 石綿含有スレートボード・フレキシブル板⑮,同・平板⑯,同・軟質板⑰,同・軟質フレキシブル板⑱及び同・その他⑲(以下,一括して「石綿スレートボード」又は「石綿スレートボード⑮~⑲」ということがある。)は,一般に「スレートボード」として流通し,かつ,いずれも内装材(壁・天井材)として用いられ,これらを使用する職種が同一である等の共通点がある。 ⒞ 石綿含有窯業系サイディング㉟及び石綿含有建材複合金属系サイディング㊱(以下,一括して「石綿含有サイディング」ということがある。)は,一般に「石綿含有サイディング」として流通し,かつ,いずれも外壁材として用いられ,これらを使用する職種が同一である等の共通点がある。 ⒟ 石綿含有スレート波板・大波㊲,石綿含有スレート波板・小波㊳及び石綿含有スレート波板・その他㊴(以下,一括して「石綿スレート波板」又は「石綿スレート波板㊲~㊴」ということがある。)は,一般に「スレート波板」として流通し,かつ,いずれも外装材として用いられ,これらを使用する職種が同一である等の共通点がある。 b 建材種類によっては,資料ごとに製造量等の数値に齟齬があるものがある。これらは,データの集積時期や生産量ないし出荷量の算定方法の違い等によるものであるが,いずれの数値が正確であるかについて判断が困難なときは,被告企業らに有利なように,低い方の数値を用いてシェア認定を行った。 データの集積時期や生産量ないし出荷量の算定方法の違い等によるものであるが,いずれの数値が正確であるかについて判断が困難なときは,被告企業らに有利なように,低い方の数値を用いてシェア認定を行った。 c 石綿スレートボード及び石綿スレート波板については,スレート協会(旧石綿スレート工業組合。昭和29年10月に石綿スレート協会に改組され,昭和63年4月にスレート協会に改組され,平成12年4月1日,耐火被覆板協会と統合されて,せんい強化セメント板協会になった。以下,改組・統合の前後を問わず,単に「スレート協会」ということがある。)作成の「スレート統計年報」(甲A1503,1517の44~46・53)という信頼性の高い資料により,北海道内のシェアと,全国のシェアとが判明している。 よって,これらの建材種類については,北海道内のシェアと全国のシェアを別々に認定した(本件被災者のうちこれらの建材を取り扱った者については,道内で建設作業に従事していた期間は前者の,道外で建設作業に従事していた期間は後者を基礎として,推定されたシェアに基づいて主要原因建材を特定した。)。 なお,これら建材種類の全国のシェアについては,スレート統計年報以外にも複数の資料が存在しているが,業界団体であるスレート協会が,各社の自己申告に基づいて作成したスレート統計年報が最も信 頼性の高い資料であるから,他の資料は参考とするにとどめた。 各年度のシェアが確定できなかった建材種類については,おおむね下記の方法により,資料が存在しない年度のシェアを推定した。その結果は,別紙8「各建材のシェアの推定」のとおりである。 a どの年度についてもシェアを認定する資料が全く見当たらない建材種類については,国交省データベースに従って,当該年度に当該建材種類を製造していた ,別紙8「各建材のシェアの推定」のとおりである。 a どの年度についてもシェアを認定する資料が全く見当たらない建材種類については,国交省データベースに従って,当該年度に当該建材種類を製造していたことが判明した企業に対し,その頭数に応じて等分の割合でシェアを割り付けた。 ある年度において,資料によって特定の企業のシェアが認定できるが,他の企業のシェアが不明である場合も,上記に準じた(例えば,ある年度において,A社のシェアが50%と認定できるが,B社・C社のシェアが不明の場合には,B社・C社とも25%のシェアを有するものと推定した。)。 b 国交省データベースにより,当該建材種類を製造している企業の増減がない期間について,ある年度のシェアが資料によって認定できるときには,他の期間についても同率のシェアを有するものと推定した(ただし,連続しない2つの年度のシェアが資料によって認定できるときには,その平均をもって,中間期間のシェアと推定した。)。 c 国交省データベースにより,当該建材種類を製造している企業がある年度において増えたが,その直前・直後のシェアが不明である場合には,当該新規参入社の参入直後のシェアは,当該年度に当該建材種類を製造していたことが判明した企業の頭数に応じて等分の割合でシェアを割り付け,残りの企業らのシェアは,シェアが判明している年度のシェアに比例して割り付けた(例えば,ある年度において,A社が50%,B社が40%,C社が10%のシェアを有していたと資料により認定でき,その後,D社が新規参入したが,その後のシェア の変動が不明である場合,D社は頭割りにより25%のシェアと推定し,残りのA社・B社・C社のシェアは,資料により認定できるシェアに比例して,それぞれ37.5%,30%,7.5%と推定した。)。 の変動が不明である場合,D社は頭割りにより25%のシェアと推定し,残りのA社・B社・C社のシェアは,資料により認定できるシェアに比例して,それぞれ37.5%,30%,7.5%と推定した。)。 d 国交省データベースにより,当該建材種類を製造している企業がある年度において減少したが,その直前・直後のシェアが不明である場合には,撤退した企業のシェアを,残りの企業らに対し,シェアが判明している年度のシェアに比例して割り付けた(例えば,ある年度において,A社が50%,B社が30%,C社・D社がそれぞれ10%のシェアを有していたと資料により認定でき,その後,A社が撤退したが,その後のシェアの変動が不明である場合,撤退したA社のシェア50%を,残ったB社・C社・D社に対し,資料により認定できるそれぞれのシェアに比例して,それぞれ30%,10%,10%と配分した。この結果,A社撤退後のB社・C社・D社のシェアは,それぞれ60%,20%,20%と推定されることになる。)。 原因建材のうち,上記の手法によってシェアが10%を超える期間を有するもの(主要原因建材)に属する製品は,別紙9の1「主要原因建材となりえない製品を除外した製品一覧(R2.9版)」のとおりである(以下,同別紙の個別の製品について,「商品名」欄の商品名に即して「ブロベスト」等と表記したり,「番号」欄の数字を用いて「製品番号1」等と表記したり,両者を併せて「ブロベスト⑴」等と表記したりすることがある。なお,同別紙の「No.」欄の数字は,建材種類を指す。)。 ウ被告企業らの主張に対する反論シェア論自体の問題性についてa 被告企業らは,建設現場においてどの建材が使用されるかは流通量のみによって決まるものではなく,ゼネコンや下請業者らの取引関係,建築物の性質及び用途 対する反論シェア論自体の問題性についてa 被告企業らは,建設現場においてどの建材が使用されるかは流通量のみによって決まるものではなく,ゼネコンや下請業者らの取引関係,建築物の性質及び用途,建材の価格,建設現場と建材の製造工場ない し保管場所との距離など様々な要因が影響することから,シェアに基づく確率計算によって建材現場到達事実を推認することはできない旨を主張する。 しかし,建設現場においてどの建材を使用するかは,現場ごとの偶然的な要素に支配されている一方で,本件被災者が就労した建設現場は相当数に上るから,建設作業従事者が特定の建材メーカーの製造販売した建材を使用する頻度は,年月と現場数で均せば,当該建材メーカーのシェアとの間に一定の相関関係が存在する蓋然性が高い。 これに加えて,原告らは,シェアだけに基づいて建材の到達可能性を論じているのではなく,建材が販売された時期・地域・対象,使用された建物の種類・箇所・工程,本件被災者が携わった建物の種類や施工箇所・工程などの事情を総合的に考慮して,主要原因建材を特定しているのであって,被告企業らの主張は失当である。 b 被告企業らは,確率計算を用いて建材現場到達事実を認定するという手法には,製造販売した石綿含有建材が現実には本件被災者の就労現場に到達していなかったのに敗訴する可能性が相当程度あるなどの問題があると主張する。 しかし,この点は,民法719条1項後段が,加害行為が被害者に現実には到達していない共同行為者にも損害賠償責任を負わせる規定であることに鑑みると,民法上許容された範囲内の事象であるにすぎない。原告らは,前記aのとおり,確率計算のみで建材現場到達事実を立証しているものではなく,被告企業らの上記主張は,その前提において誤っている。 シェアの認定資 容された範囲内の事象であるにすぎない。原告らは,前記aのとおり,確率計算のみで建材現場到達事実を立証しているものではなく,被告企業らの上記主張は,その前提において誤っている。 シェアの認定資料についてa 被告企業らは国交省データベースの正確性に疑問を呈するが,同データベースは,高度の専門的知識を有する関係機関等と主要な業界団 体により構成された委員会によって網羅的に情報収集されている上,建材メーカー自身が内容を確認し,訂正申立等により適宜修正が加えられているものである。原告らは,被告企業らの主張に従って製造期間等の修正を行ったが,その他には,自社製品に関する誤りを具体的に指摘する被告企業らはいない。したがって,少なくとも被告企業らの製品については正確性が担保されているといえる。 国交省データベースに多少の遺漏があったとしても,本件被災者の就労状況やシェアから到達可能性の高い建材を主要原因建材として特定した以上,原告らが主要原因建材として特定した建材が本件被災者の就労現場に到達した可能性が否定されるものとはいえないし,他に加害行為を行った者が存在する可能性があることは,被告企業らの共同不法行為の成立を否定する理由にはならない。 b 被告企業らは原告らがシェアを認定する際に用いた資料の正確性に疑問を呈するが,例えば,石綿含有吹付けロックウール②のシェアに関してベースとなる資料(甲A396,甲C19)のデータは,被告ニチアスや被告A&AMなど,日本を代表する石綿メーカーが会員となっている,吹付けロックウールの業界団体が作成したものであること,「百年史」(甲C103・491頁)は,被告太平洋セメント(日本セメント株式会社)の社史であること,建築同友会作成の資料(甲A1150,1167,1176)は,公式統計や工業会資 たものであること,「百年史」(甲C103・491頁)は,被告太平洋セメント(日本セメント株式会社)の社史であること,建築同友会作成の資料(甲A1150,1167,1176)は,公式統計や工業会資料のほか,公式統計がないものは全て建築同友会が市場調査を行って建材数量を調査したものであること(甲A1425)等から,信頼性の高い資料ということができる(甲A1426参照)。 スレート協会作成の「スレート統計年報」(甲A1503,1517の44~46・53)も,被告A&AMが会長を務め,被告ノザワや被告ニチアス等の主要なスレート製造業者が加入している業界団体 が作成した資料であって,各社から報告された内容を集計して作成されたものであり(甲A1316の1・2),市場全体の情報を網羅した,正確性の極めて高い資料である。 また,矢野経済研究所作成の資料(甲A1171等)も,建設業界において一定の信頼を得て,建材の市場調査を多数行っている同研究所が作成したものであるから,信頼性が高い。 そもそも,シェアは建材現場到達事実を判断するための一要素にすぎず,その判断が可能であれば足りるのであるから,厳密な数値を確定させる必要はない。反証がない限り,これらの資料に基づいてシェアを認定すべきである。 シェアの推定方法について被告企業らはシェアに関する資料が存在しない年度についての原告らのシェアの推定について疑問を呈するが,原告らのシェアの推定方法は前述したとおりであって,限られた資料に基づくシェアの推定方法として,十分に合理性を有する。 シェアの母数についてa 被告企業らは,建材現場到達事実をシェアに基づいて認定・推定するのであれば,ノンアス製品も含めた代替建材全体の中でのシェアを論ずべきであり,特定の建材種類のシェアを論じても ェアの母数についてa 被告企業らは,建材現場到達事実をシェアに基づいて認定・推定するのであれば,ノンアス製品も含めた代替建材全体の中でのシェアを論ずべきであり,特定の建材種類のシェアを論じても意味がない旨を主張する。 しかし,本件被災者が,建設現場で長年就労し,現に石綿関連疾患にり患した以上,石綿含有建材を扱ったことは明らかである。本件被災者に対して責任を負うべき企業を特定するためには,石綿含有建材を製造販売した企業の中からシェア上位企業を特定すれば足りるのであり,ノンアス製品の存在を考慮する必要はない。 b 被告企業らの中には,例えば,石綿を含有する吹付け材(建材種類 ①~⑤。以下「石綿吹付け材」などということがある。)は,互いに代替する関係にあるから,一括してシェアを算定すべきであると主張するものがいる。 しかし,吹付け石綿①と,石綿含有吹付けロックウール②及び湿式石綿含有吹付け材③は,互いに競合する関係にはない。石綿含有吹付けバーミキュライト④と石綿含有吹付けパーライト⑤は仕上用であるから,吹付け後にはつり作業を行うことはなく,吹付け工がいない本件被災者との関係で,到達可能性を検討する必要はない。原告らは,競合する関係にある石綿含有建材は一括してそのシェアを算定しているのであって,この他に一括してシェアを算定すべき競合建材は存在していない。 自社製品による石綿粉じんばく露の可能性を否定する主張についてa 被告企業らの中には,石綿含有建材の製造販売期間が短かったことを理由として,本件被災者が,自社の製造販売した石綿含有建材から発生した石綿粉じんにばく露したとは考え難い旨を主張する者もいる。 しかし,被告企業らの製造販売した石綿含有建材は,いずれの種類も製造販売期間が4年以上あるから,シェアが10%以 石綿含有建材から発生した石綿粉じんにばく露したとは考え難い旨を主張する者もいる。 しかし,被告企業らの製造販売した石綿含有建材は,いずれの種類も製造販売期間が4年以上あるから,シェアが10%以上であれば,本件被災者の就労現場に到達して,同製品から発生した石綿粉じんにばく露した可能性が十分にある。石綿含有建材の製造販売期間が短かったことは,他社の製品の寄与が大きいとして減責を求める事由になり得るとしても,不法行為責任を否定する事由にはならない。 b 被告企業らの中には,製品の性質(石綿含有量が少ない,カッターナイフで容易に切断できる,含有している石綿はセメント等により固着していた,プレカット建材である,釘等を除去することにより容易に取り外すことができるなど)を理由として,当該製品から発生した 石綿粉じんにばく露したとは考え難い旨を主張するものがいる。 しかし,仮に電動工具を使用せずにカッターナイフで切断したとしても,石綿粉じんが全く発生しないわけではない。含有している石綿の量が少なかったり,セメント等により固着したりするなどしていたとしても,切断や破砕時に石綿粉じんが発生するし,切断部分をきれいにする際,やすりで削ることがあり,その際にも石綿粉じんが発生する。また,釘等を除去することにより容易に取り外すことができるとしても,改修・解体工事の過程では,工期が限られること等から,建材を切断したり破砕したりすることが少なからずあり,その際,石綿粉じんが発生することは避けられない。 その他,被告企業らが種々主張する点を考慮しても,原告らが主要原因建材として特定した建材からの石綿粉じんの発生を否定することはできない。 c 被告企業らの中には,自社の石綿含有建材について,特定の販売店や施工業者等に対してしか販売しておらず,一 告らが主要原因建材として特定した建材からの石綿粉じんの発生を否定することはできない。 c 被告企業らの中には,自社の石綿含有建材について,特定の販売店や施工業者等に対してしか販売しておらず,一般の市場に流通するものではなかった,あるいは,一般の市場での流通量が限られていたから,本件被災者がこれらから発生した石綿粉じんにばく露した可能性はない旨を主張する者がある。 しかし,一次的な販売先が限定されていたとしても,建材の流通市場の実際や建設現場における重層的下請構造からすれば,本件被災者がこれらの建材を扱った可能性を完全に否定することはできない。また,本件被災者が直接にこれら建材を扱わなかったとしても,二次的加工や改修・解体工事に従事する中で,これら建材から発生した石綿粉じんにばく露した可能性を否定することもできない。 被告企業らの反証可能性についてa その他,被告企業らは,地域におけるシェアの違いを考慮していな いとか,販売金額や生産能力でシェアを認定することは相当ではないなど,種々の理由を挙げて,原告らのシェアの認定・推定に疑問を呈する。 しかし,被告企業らが製造販売した石綿含有建材のシェアに関する正確な資料は,原告らではなく,被告企業らこそが保有しているのであって,仮に原告らのシェアの認定・推定が誤っているというのであれば,これらの資料を提出して,具体的に反論すべきである。にもかかわらず,被告企業らが,一部を除いて自社で製造販売した石綿含有建材のシェアに関する資料を提出していない以上,原告らの主張に従ったシェアの認定・推定を行うべきである。 b また,被告企業らの中には,原告らによるシェアの算定について,石綿を含有する製品とノンアス製品の両方を製造販売していたのに,これを区別することなく,一括してシェア 認定・推定を行うべきである。 b また,被告企業らの中には,原告らによるシェアの算定について,石綿を含有する製品とノンアス製品の両方を製造販売していたのに,これを区別することなく,一括してシェアを算出していると主張する者がある。 しかし,石綿を含有する製品とノンアス製品とが混在しているのであれば,被告企業らの側において,両者の割合等に関する資料を開示すれば足りることである。 c 被告企業らの多くは,自社の製造販売した石綿含有建材のシェアに関する資料を有していないと主張する。 しかし,有価証券報告書等には,各社が製造販売した石綿含有建材の製造量や出荷量,受注した現場の吹付け材等の施工面積等のデータやシェア,地域ごとの販売状況等が記載されている可能性が高く,被告企業らが,これらの資料を提出することが不可能であるとは考えられない。 ⑶ 主要原因建材の選定方法(予備的主張)原告らは,最高裁判決等を踏まえて,主要原因建材に関する主位的主張を 一部修正したものを予備的に主張する。その変更点は次のアのとおりであり,予備的主張の関係で主要原因建材から外れる製品は,別紙9の2「(予備的主張)主要原因建材となりえない製品を除外した製品一覧」のとおりである。 ア主要原因建材の選定に当たり,昭和50年(1975年)よりも前に製造を終了したものを除外した。 主位的主張では,推定計算によってシェアが10%以上となっていた建材についても主要原因建材となり得る建材として扱っていたが,予備的主張では,客観資料に基づきシェア10%以上となる建材のみを主要原因建材となり得る建材に選定した。 ただし,石綿保温材⑩に関しては,客観資料は存在しないものの,国交省データベースにおいて,被告ニチアス及び被告A&AMしか製造しておらず,生産量に有意な を主要原因建材となり得る建材に選定した。 ただし,石綿保温材⑩に関しては,客観資料は存在しないものの,国交省データベースにおいて,被告ニチアス及び被告A&AMしか製造しておらず,生産量に有意な差があると認めるに足る証拠も存在しないから,主要原因建材からは除外していない。 吹付け材のシェアの算出については,吹付け石綿①,石綿含有吹付ロックウール②,湿式石綿含有吹付け材③をグルーピングして合算する高裁判決が多数派であるから,これに倣った(なお,石綿含有吹付ロックウール②と湿式石綿含有吹付け材③は元から合算している。また,吹付け石綿①は昭和50年に製造を終了したため,合算が必要なのは昭和50年である。)。合算に当たっては,各吹付け材の施工面積を基に施工量の比率を算出し,これを証拠から認められる各吹付け材のシェアに掛け合わせる方法で行った。 ⑷ 本件被災者ごとの主要原因建材の特定ア原告らは,下記のような方法で本件被災者ごとの主要原因建材を特定した。 就労時期に照らし,ばく露可能性が低いと考えられる時期に製造販売された製品を除外する。 国交省データベースを基礎にリストアップされた43種類の石綿含有建材のうち,職種ごとに想定される作業内容及び本件被災者の記憶等から,ばく露可能性の高い建材を特定し,それ以外の建材を除外する。 建物の種類(鉄骨造・鉄筋コンクリート造・木造の別と,国交省データベースが「建物の種類」で分類する,①戸建住宅,②共同住宅,③学校・幼稚園等,④店舗・事務所,⑤劇場・百貨店等,⑥工場,⑦倉庫の別)から,本件被災者が従事していない建物にのみ使用された建材種類を除外する。 国交省データベースに記載された「主な使用部位」及び「使われ方」に照らして,本件被災者との関係でばく露可能性が低いと考えら ら,本件被災者が従事していない建物にのみ使用された建材種類を除外する。 国交省データベースに記載された「主な使用部位」及び「使われ方」に照らして,本件被災者との関係でばく露可能性が低いと考えられる製品を除外する。 各職種におけるばく露可能性の高い(主要原因建材となりうる)建材種類は,別紙6「各職種におけるばく露可能性の高い(主要原因建材となりうる)石綿建材の種類」のとおりであり,また,各被災者の主要原因建材を特定するための就労状況等に関する事情は,別紙10「各被災者の主要原因建材(別冊3)を特定するための就労状況等に関する事情」のとおりである(別紙10-1が主位的主張に関するものであり,同10-2が予備的主張に関するものである。)。 上記を踏まえて,本件被災者ごとに特定した主要原因建材をリストアップしたものが,別紙11「当該被災者との関係で原因建材を特定したもの」である(別紙11-1が主位的主張に関するものであり,同11-2が予備的主張に関するものである。)。 イ被告企業らの主張に対する反論被告企業らは,同じ職種の被災者であっても作業内容や使用した建材はまちまちであり,作業内容等を類型化することはできないと主張する。 しかし,原告らは,本件被災者の職種だけではなく,携わった建物の種 類,施工箇所,日常的に取り扱った建材等に加え,企業側・建材側の事情(各企業のシェアや,販売地域や取扱職人の限定の有無,使用される建物の種類,施工される箇所等)も考慮した上で,本件被災者ごとの主要原因建材を特定したのであり,これらの特定方法は十分に合理的である。 6 被告企業らの分割責任(予備的請求)⑴ 分割責任論の根拠仮に民法719条1項後段の(類推)適用による被告企業らの連帯責任が認められないとしても,本件被災者が石綿 法は十分に合理的である。 6 被告企業らの分割責任(予備的請求)⑴ 分割責任論の根拠仮に民法719条1項後段の(類推)適用による被告企業らの連帯責任が認められないとしても,本件被災者が石綿関連疾患を発症したのは,各被告企業が主要原因建材を流通に置いたからであって,それ以外に原因が存在していない。そうすると,民法719条1項後段を類推適用して,各被告企業は,その寄与度に応じて,本件被災者に生じた損害について分割して責任を負うものというべきである。 ⑵ 被告企業らの責任割合の算定方法ア本件被災者に対する被告企業らの責任割合は,主要原因建材の石綿消費量(市場への石綿排出量)の総量のうち,被告企業らが製造販売した主要原因建材の割合と考えるのが合理的である。石綿含有建材の製造販売によって排出された石綿の量が多いほど,当該石綿にばく露する機会が増えるのであり,かかる石綿消費量が被告企業らのリスク寄与度を考える上で重要な要素となるからである。 イ建材種類ごとの石綿消費量は,原則として,①施工量や出荷量,生産能力などによって,各年度の当該石綿含有建材の製造販売量を推定し,②これに,国交省データベースなどにより判明する,当該石綿含有建材の石綿含有率の平均値を乗じて,算出した。 製造販売量が不明な石綿含有建材については,これら全部の建材の石綿消費量の考え得る最大値を算出した上で,これらを,当該年度における石綿消費量不明建材の数に応じて,等分に割り当てた。 ⑶ 被災者ごとの被告企業らの責任割合別紙12「原因建材となりうる石綿含有建材(種別)の累積石綿量(S)」のとおりである。なお,複数の職種がある被災者については,各職種の就労期間で按分して,各被告企業の責任割合を算定した。 7 製造物責任法に基づく責任被告企業 建材(種別)の累積石綿量(S)」のとおりである。なお,複数の職種がある被災者については,各職種の就労期間で按分して,各被告企業の責任割合を算定した。 7 製造物責任法に基づく責任被告企業らが製造販売した石綿含有建材は,必ずしも不可欠ではなかったにもかかわらず,石綿関連疾患の原因となる石綿が含有されていた(いわゆる設計上の欠陥)。あるいは,当該石綿含有建材が石綿を含有しており,その使用過程において石綿粉じんを吸入した場合には肺がんなど重篤な石綿関連疾患を発症する危険性があり,そのばく露を回避する必要がある旨の警告表示が欠けていた(いわゆる警告・表示上の欠陥)。 よって,製造物責任法が施行された平成7年7月1日以後に石綿含有建材を製造販売した被告企業らは,製造物責任法3条に基づく責任も負う(不法行為責任と選択的に請求するものである。)。 8 原告らの損害⑴ 被災者1(原告番号1番)についてア同被災者は,ブロック工として,同被災者名の別紙5「職歴一覧表」①~⑪のとおり,石綿粉じんばく露作業に従事した(ばく露作業は左端に丸番号を付したもののみ。以下,本件被災者に関し,同丸番号に即して「被災者の職歴①」等ということがある。)。 イ同被災者は,平成23年9月22日,石綿を原因とする原発性肺がんとの診断を受けて,同日,療養を開始した。 ウよって,原告1は,損害賠償金3850万円(慰謝料3500万円,弁護士費用350万円)及び遅延損害金の支払を求める。 ⑵ 被災者04(原告番号2番)についてア同被災者は,大工又は内装工として,同被災者の職歴①~⑦のとおり, 石綿粉じんばく露作業に従事した。 イ同被災者は,平成23年12月14日,石綿を原因とするじん肺症との診断を受けて,同日,療養を開始したが,平成27年1 同被災者の職歴①~⑦のとおり, 石綿粉じんばく露作業に従事した。 イ同被災者は,平成23年12月14日,石綿を原因とするじん肺症との診断を受けて,同日,療養を開始したが,平成27年11月25日,石綿を原因とするじん肺症(石綿肺)により死亡した。 同被災者の損害賠償請求権は,原告2-1(妻。相続分2分の1),同2-2・同2-3・同2-4(いずれも子。相続分各6分の1)が相続した。 ウよって,原告2-1は損害賠償金1925万円(慰謝料1750万円,弁護士費用175万円)及び遅延損害金の支払を,同2-2・同2-3・同2-4はそれぞれ損害賠償金641万6666円(慰謝料583万3333円,弁護士費用58万3333円)及び遅延損害金の支払を求める。 ⑶ 被災者05(原告番号3番)についてア同被災者は,配管工として,同被災者の職歴①~㉕のとおり,石綿粉じんばく露作業に従事した。 イ同被災者は,平成25年6月18日,石綿を原因とする肺がんとの診断を受けて,同日,療養を開始したが,同年8月10日,同疾患により死亡した。 同被災者の相続人は,06(妻),07・原告3・08(いずれも子)であるが,同人らは,平成27年6月20日,同被災者の石綿関連疾患発症に基づく損害賠償請求権を原告3が相続する旨の遺産分割協議を成立させた。 ウよって,原告3は,損害賠償金3850万円(慰謝料3500万円,弁護士費用350万円)及び遅延損害金の支払を求める。 ⑷ 被災者4(原告番号4番)についてア同被災者は,塗装工として,同被災者の職歴①,②のとおり,石綿粉じんばく露作業に従事した。 イ同被災者は,平成23年6月24日,療養を開始し,平成25年6月1 9日,石綿を原因とする良性石綿胸水との診断を受けた。 ウよって,原告 とおり,石綿粉じんばく露作業に従事した。 イ同被災者は,平成23年6月24日,療養を開始し,平成25年6月1 9日,石綿を原因とする良性石綿胸水との診断を受けた。 ウよって,原告4は,損害賠償金3850万円(慰謝料3500万円,弁護士費用350万円)及び遅延損害金の支払を求める。 ⑸ 被災者09(原告番号5番)についてア同被災者は,現場監督として,同被災者の職歴①~③のとおり,石綿粉じんばく露作業に従事した。 イ同被災者は,平成25年8月28日,石綿を原因とする肺がんとの診断を受けて,同日,療養を開始したが,令和2年2月19日,同疾患のために死亡した。 同被災者の損害賠償請求権は,原告5-1(妻。相続分2分の1),同5-2・同5-3(いずれも子。相続分各4分の1)が相続した。 ウよって,原告5-1は損害賠償金1925万円(慰謝料1750万円,弁護士費用175万円)及び遅延損害金の支払を,同5-2・同5-3はそれぞれ損害賠償金962万5000円(慰謝料875万円,弁護士費用87万5000円)及び遅延損害金の支払を求める。 ⑹ 被災者03(原告番号6番)についてア同被災者は,サイディング工として,同被災者の職歴①~⑩のとおり,石綿粉じんばく露作業に従事した。 イ同被災者は,平成26年2月13日,療養を開始したところ,同年8月22日,石綿を原因とする原発性扁平上皮がんとの診断を受け,平成30年5月24日,石綿を原因とする肺がんにより死亡した。 同被災者の損害賠償請求権は,亡010(妻。平成31年1月11日死亡)が相続した。亡010は,原告6に対して,自筆証書遺言の方法により,同請求権を遺贈する旨の意思表示をした。 ウよって,原告6は,損害賠償金3850万円(慰謝料3500万円,弁護士費用350万 亡)が相続した。亡010は,原告6に対して,自筆証書遺言の方法により,同請求権を遺贈する旨の意思表示をした。 ウよって,原告6は,損害賠償金3850万円(慰謝料3500万円,弁護士費用350万円)及び遅延損害金の支払を求める。 ⑺ 被災者011(原告番号7番)についてア同被災者は,金物工として,同被災者の職歴①のとおり,石綿粉じんばく露作業に従事した。 イ同被災者は,平成25年10月29日,石綿を原因とする左胸膜悪性中皮腫との診断を受けて,同日,療養を開始したが,平成26年9月8日,石綿を原因とする左胸膜悪性中皮腫により,死亡した。 同被災者の損害賠償請求権は,原告7-1(妻。相続分2分の1),同7-2・同7-3・012(いずれも子。相続分各6分の1)が相続した。 ウよって,原告7-1は損害賠償金1925万円(慰謝料1750万円,弁護士費用175万円)及び遅延損害金の支払を,同7-2・同7-3はそれぞれ損害賠償金641万6666円(慰謝料583万3333円,弁護士費用58万3333円)及び遅延損害金の支払を求める。 ⑻ 被災者01(原告番号8番)についてア同被災者は,鍛冶工又は建物金物工として,同被災者の職歴①~⑱のとおり,石綿粉じんばく露作業に従事した。 イ同被災者は,平成23年6月10日,石綿を原因とするじん肺との診断を受けて,同日,療養を開始したが,平成31年3月15日,石綿を原因とする重症肺炎により死亡した。 同被災者の損害賠償請求権は,原告8(妻。相続分2分の1),013(子。相続分4分の1)・分離前相原告02(同被災者の子である亡014(平成30年3月5日死亡)の子。代襲相続分4分の1)が相続した。原告8は,013から,その相続分の譲渡を受けた(その結果,同原告の相続分は4分の3とな 分離前相原告02(同被災者の子である亡014(平成30年3月5日死亡)の子。代襲相続分4分の1)が相続した。原告8は,013から,その相続分の譲渡を受けた(その結果,同原告の相続分は4分の3となった。)。 ウよって,原告8は,損害賠償金2887万5000円(慰謝料2625万円,弁護士費用262万5000円)及び遅延損害金の支払を求める。 ⑼ 被災者9(原告番号9番)について ア同被災者は,大工として,同被災者の職歴①~㊽のとおり,石綿粉じんばく露作業に従事した。 イ同被災者は,平成26年7月,石綿を原因とする肺がんとの診断を受けて,同月5日,療養を開始した。 ウよって,原告9は,損害賠償金3850万円(慰謝料3500万円,弁護士費用350万円)及び遅延損害金の支払を求める。 ⑽ 被災者015(原告番号10番)についてア同被災者は,板金工又は保温工として,同被災者の職歴①~㊶のとおり,石綿粉じんばく露作業に従事した。 イ同被災者は,平成24年3月15日,石綿を原因とする続発性気管支炎との診断を受けて,同日,療養を開始したが,平成30年12月24日,石綿を原因とする呼吸器系疾患により死亡した。 同被災者の相続人は,原告10(妻),016・017(いずれも子)であるが,同人らは,令和元年5月11日,同被災者の石綿関連疾患発症に基づく損害賠償請求権を原告10が相続する旨の遺産分割協議を成立させた。 ウよって,原告10は,損害賠償金3850万円(慰謝料3500万円,弁護士費用350万円)及び遅延損害金の支払を求める。 ⑾ 被災者11(原告番号11番)についてア同被災者は,大工として,同被災者の職歴①~⑧のとおり,石綿粉じんばく露作業に従事した。 イ同被災者は,平成26年8月8日,石綿を原因とする る。 ⑾ 被災者11(原告番号11番)についてア同被災者は,大工として,同被災者の職歴①~⑧のとおり,石綿粉じんばく露作業に従事した。 イ同被災者は,平成26年8月8日,石綿を原因とする左上葉肺がんとの診断を受けて,同日,療養を開始した。 ウよって,原告11は,損害賠償金3850万円(慰謝料3500万円,弁護士費用350万円)及び遅延損害金の支払を求める。 ⑿ 被災者018(原告番号12番)について ア同被災者は,塗装工として,同被災者の職歴①~⑯のとおり,石綿粉じんばく露作業に従事した。 イ同被災者は,平成26年6月5日,入院して療養を開始したところ,同年7月上旬頃,石綿を原因とする肺腺がんとの診断を受け,同年11月17日,石綿を原因とする肺腺がんにより,死亡した。 同被災者の損害賠償請求権は,原告12(子)が相続した。 ウよって,原告12は,損害賠償金3850万円(慰謝料3500万円,弁護士費用350万円)及び遅延損害金の支払を求める。 ⒀ 被災者019(原告番号13番)についてア同被災者は,大工として,同被災者の職歴①~③のとおり,石綿粉じんばく露作業に従事した。 イ同被災者は,平成26年1月8日,療養を開始したところ,同年6月,石綿を原因とする肺がんとの診断を受け,同年10月8日,石綿を原因とする肺扁平上皮がんにより,死亡した。 同被災者の相続人は,原告13(妻),020・021(いずれも子)であるが,同人らは,平成28年8月1日,同被災者の石綿関連疾患発症に基づく損害賠償請求権を原告13が相続する旨の遺産分割協議を成立させた。 ウよって,原告13は,損害賠償金3850万円(慰謝料3500万円,弁護士費用350万円)及び遅延損害金の支払を求める。 ⒁ 被災者14(原告番号14 が相続する旨の遺産分割協議を成立させた。 ウよって,原告13は,損害賠償金3850万円(慰謝料3500万円,弁護士費用350万円)及び遅延損害金の支払を求める。 ⒁ 被災者14(原告番号14番)についてア同被災者は,大工として,同被災者の職歴①~⑥のとおり,石綿粉じんばく露作業に従事した。 イ同被災者は,平成26年3月26日,療養を開始したところ,同年8月21日,石綿を原因とする左上葉肺がんとの診断を受けた。 ウよって,原告14は,損害賠償金3850万円(慰謝料3500万円, 弁護士費用350万円)及び遅延損害金の支払を求める。 ⒂ 被災者022(原告番号15番)についてア同被災者は,解体工として,同被災者の職歴①~④のとおり,石綿粉じんばく露作業に従事した(なお,同被災者の職歴一覧表において,平成6年4月から平成15年11月の就労期間も石綿粉じんばく露作業であった旨記載しているが,同主張は撤回する。)。 イ同被災者は,平成25年9月,石綿を原因とする肺がんとの診断を受けて,同月25日,療養を開始したが,平成28年1月16日,石綿を原因とする肺がんにより,死亡した。 同被災者の相続人は,原告15(妻),023・024・025(いずれも子)であるが,同人らは,平成28年9月26日,同被災者の石綿関連疾患発症に基づく損害賠償請求権を原告15が相続する旨の遺産分割協議を成立させた。 ウよって,原告15は,損害賠償金3850万円(慰謝料3500万円,弁護士費用350万円)及び遅延損害金の支払を求める。 ⒃ 被災者026(原告番号16番)についてア同被災者は,ガラス取付工として,同被災者の職歴①~④のとおり,石綿粉じんばく露作業に従事した。 イ同被災者は,平成27年6月9日,療養を開始したところ 災者026(原告番号16番)についてア同被災者は,ガラス取付工として,同被災者の職歴①~④のとおり,石綿粉じんばく露作業に従事した。 イ同被災者は,平成27年6月9日,療養を開始したところ,同年9月2日,石綿を原因とする悪性胸膜中皮腫との診断を受け,平成28年12月4日,石綿を原因とする悪性胸膜中皮腫により,死亡した。 同被災者の損害賠償請求権は,原告16-1(妻。相続分2分の1),同16-2・同16-3(いずれも子。相続分各4分の1)が相続した。 ウよって,原告16-1は損害賠償金1925万円(慰謝料1750万円,弁護士費用175万円)及び遅延損害金の支払を,同16-2・同16-3はそれぞれ損害賠償金962万5000円(慰謝料875万円,弁護士 費用87万5000円)及び遅延損害金の支払を求める。 ⒄ 被災者027(原告番号17番)についてア同被災者は,内装工として,同被災者の職歴①~⑨のとおり,石綿粉じんばく露作業に従事した。 イ同被災者は,平成27年1月27日,石綿を原因とする肺小細胞がんとの診断を受けて,同年2月4日,療養を開始したが,平成28年12月2日,石綿を原因とする肺細胞がんにより,死亡した。 同被災者は,公正証書遺言の方法により,全財産を原告17(妻)に相続させた。 ウよって,原告17は,損害賠償金3850万円(慰謝料3500万円,弁護士費用350万円)及び遅延損害金の支払を求める。 ⒅ その他ア遅延損害金の始期は,別紙3の1・2の各「療養開始日」欄に記載の日とする。 イ被告企業らの主張(喫煙を理由とする慰謝料減額等)は争う。 9 消滅時効ないし除斥期間について被告企業らの主張は争う。 被告企業らの個別主張に対する反論⑴ 被告AGC(乙イ)の主張について被告 らの主張(喫煙を理由とする慰謝料減額等)は争う。 9 消滅時効ないし除斥期間について被告企業らの主張は争う。 被告企業らの個別主張に対する反論⑴ 被告AGC(乙イ)の主張について被告AGCの主張は争う。 ⑵ 被告永大産業(乙カ)の主張について更生計画認可を理由として,原告らの被告永大産業に対する損害賠償請求権が消滅している旨の被告永大産業の主張は争う。 ⑶ 被告A&AM(乙キ)の主張についてア被告A&AMは,原告らが吹付け石綿①,石綿含有吹付けロックウール②,湿式石綿含有吹付け材のシェアを合算していないと主張するが,原告 らは従前から上記②及び③建材のシェアを合算しているし,予備的主張では,上記各建材のシェアをいずれも合算した。 イ被告A&AMは,朝日石綿工業及び浅野スレートが製造したスレート材の多くは自社で消費しており,市場に流通させた量は少ない旨を主張し,同旨の陳述書(乙キ16~18)を提出するが,これを裏付ける客観的な証拠は提出されておらず,上記陳述書の記載は信用できない。 ⑷ 被告クボタ(乙ク)及び被告ケイミュー(乙ケ)の主張についてア被告クボタ及び被告ケイミューは,被告ケイミューが製造販売した石綿含有スレートボード・フレキシブル板⑮のうち,「カラートップ」など5建材(製品番号152,156・157,159,161・162,163)を原告らが内装材として分類したのは誤りであると主張する。 しかし,被告ケイミューは,上記5建材を内装材として販売する意図をもって販売戦略を立て,実際にその一部を内装材として販売していたから,原告らの分類は誤りではない。 イ被告クボタ及び被告ケイミューは,石綿含有住宅屋根用化粧スレート㉝について,積雪の多い北海道では一般に金属屋根材が用いられていた旨を主 材として販売していたから,原告らの分類は誤りではない。 イ被告クボタ及び被告ケイミューは,石綿含有住宅屋根用化粧スレート㉝について,積雪の多い北海道では一般に金属屋根材が用いられていた旨を主張する。 しかし,北海道内において鉄骨造建物等に住宅屋根用化粧スレートが使用された例も多く存在していたのであり(例えば,平成2年当時,被告ケイミューは,北海道内で少なくとも9944枚のスレートボードを販売・出荷した。),上記主張は事実に反する。 ⑸ 被告ケイミュー(乙ケ)の主張について被告ケイミューの主張は争う。 ⑹ 被告クラボウ(乙コ)の主張について被告クラボウの主張は争う。 ⑺ 被告神島化学(乙シ)の主張について 被告神島化学は,その製造した石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓に該当する製品の多くが被告大建工業から受託したOEM製品であり,被告神島化学は警告表示義務を履行すべき立場になかった旨を主張する。 しかし,販売を行ったのが被告大建工業であったとしても,被告神島化学は,被告大建工業を通じて石綿含有建材が市場に流通することを予見し得た以上,その責任を免れることはできない。 ⑻ 被告昭和電工(乙タ)の主張について被告昭和電工は,ラムダ会に所属していない職人が同社の製造販売した石綿含有建材を使用することはない旨を主張する。 しかし,ラムダ会に所属していない職人が,同社が製造販売した石綿含有建材を使用した建物の改修・解体工事に従事したことは十分に考えられる。 上記主張は,改修・解体工事に従事して石綿粉じんにばく露した本件被災者との関係では失当である。 ⑼ 被告日鉄ケミカル&マテリアル(乙チ)の主張についてア被告日鉄ケミカル&マテリアルは,認定特約店に対して,吹付け作業を行っている現場では他の作業を行わないこと 者との関係では失当である。 ⑼ 被告日鉄ケミカル&マテリアル(乙チ)の主張についてア被告日鉄ケミカル&マテリアルは,認定特約店に対して,吹付け作業を行っている現場では他の作業を行わないこと等を施工要領に基づいて指導等していた旨を主張するが,建設現場において施工要領が守られていたという証拠はなく,当該主張は失当である。 イ被告日鉄ケミカル&マテリアルは,石綿含有けい酸カルシウム板第2種⑪について,被告JICに製造委託していただけであり,自ら製造していない旨を主張する。 しかし,上記主張が事実であったとしても,被告日鉄ケミカル&マテリアルが上記建材を流通に置いたことに変わりはないから,責任を免れない。 ウ被告日鉄ケミカル&マテリアルは,社内記録に基づいて,石綿含有吹付けロックウール②の昭和43年から昭和53年までの期間のシェアが平均で5.8%にすぎなかった旨を主張するが,シェアの母数の認定に問題 があり,正確なシェアの算定とはいえない。 ⑽ 被告大建工業(乙ト)の主張について被告大建工業は,住宅用天井材に関するロックウール吸音天井板のシェアが2.4%にすぎないとして,仮に被告大建工業のシェアが25%であったとしても,住宅の天井施工に従事した建設作業従事者との関係では,同社製品に接触した可能性は0.6%にとどまる旨を主張する。 しかし,そもそもシェアは市場占有率であって,それだけで接触可能性を数値として表すものではない上,代替製品を考慮している点で誤りがある。 この点を措くとしても,天井材の割合を示した証拠(甲A1150)は,天井材の出荷面積の比率を示したものであるところ,全ての住宅で同一の天井板を使うとは限らないから,出荷面積だけで到達可能性を排除することは相当でない。住宅用天井材においてロックウール吸音天井 )は,天井材の出荷面積の比率を示したものであるところ,全ての住宅で同一の天井板を使うとは限らないから,出荷面積だけで到達可能性を排除することは相当でない。住宅用天井材においてロックウール吸音天井板が占める割合は昭和51年の資料しか開示されていないが,当該建材の出荷量が昭和51年以降増加していることからすれば,住宅用天井材全体に占める割合も増加していったはずである。以上の反論は,非住宅用建材との関係でも同様に妥当する。 ⑾ 被告太平洋セメント(乙ニ)の主張について被告太平洋セメントは,防じんマスクや作業場の養生等,種々の対策を検討し,吹付け施工業者に情報提供を行ってきた旨を主張するが,これを裏付ける客観的な証拠は提出されておらず,その主張は信用できない。 ⑿ 被告東レACE(乙フ)の主張について被告東レACEは,「ETボード(完壁)(1814)」は試作品であり,一般の流通過程に乗っていなかったと主張するが,これを裏付ける客観的証拠は提出されていない。また,同被告は,昭和56年時点で,既に窯業系サイディングについて高いシェアを有していた(甲A1295・9頁)ところ,当時製造販売していた窯業系サイディングは,上記製品以外に考えられない。 ⒀ 被告ナイガイ(乙ホ)の主張について被告ナイガイは,自社が施工する現場で使用するために石綿含有建材を製造しており,第三者が被告ナイガイの製品を購入して使用することはなかった旨を主張する。 しかし,被告ナイガイが元請け等として関わった建設現場で,本件被災者が下請け等として作業に従事した可能性は否定できず,被告ナイガイがその可能性がないことの具体的な反証をしていない以上,その主張は失当である。 ⒁ 被告ニチアス(乙マ)の主張についてア被告ニチアスは,「トムウェット(33)」及 能性は否定できず,被告ナイガイがその可能性がないことの具体的な反証をしていない以上,その主張は失当である。 ⒁ 被告ニチアス(乙マ)の主張についてア被告ニチアスは,「トムウェット(33)」及び「ATM-120(32)」について,被告ニチアスが指定する少数の特定業者しか取り扱うことができなかった旨を主張する。 しかし,本件被災者は,いずれも吹付け工としてではなく,二次的加工や改修・解体工事に従事した際に,これら製品から発生した石綿粉じんにばく露したものであるから,上記主張は,本件被災者の石綿粉じんばく露を否定する理由にはならない。 イ被告ニチアスは,石綿含有けい酸カルシウム板第1 種㉓(製品番号774,775)は,戸建住宅を中心とする大工等が扱うことは稀であると主張する。 しかし,本件被災者は,戸建住宅のみではなく,中高層建築を含む多数の建設現場で建設作業に従事してきたのであるから,上記主張は,本件被災者の石綿粉じんばく露を否定する理由にはならない。 ⒂ 被告日東紡績(乙ム)の主張についてア被告日東紡績は,「スプレーテックス(14~17)」及び「スプレーウェット(31)」は一般の吹付け業者が取り扱う可能性はなかった旨を主張する。 しかし,本件被災者に吹付け工はおらず,二次的加工や改修・解体工事の際に石綿吹付け材から発生する石綿粉じんにばく露したものであるから,上記主張は意味をなさない。 イ被告日東紡績は,「ダンウッドF2(780)」について,販売のみで製造はしていない旨を主張するが,当該建材を販売して流通に置いたのであれば,その責任を免れることはできない。 ウ被告日東紡績は,石綿含有ロックウール吸音天井板㉔について,天井材全体を考慮したシェアは約3.2%である等として,建材現場到達事実は認められない のであれば,その責任を免れることはできない。 ウ被告日東紡績は,石綿含有ロックウール吸音天井板㉔について,天井材全体を考慮したシェアは約3.2%である等として,建材現場到達事実は認められない旨を主張する。 しかし,そもそも被告日東紡績が昭和52年の天井材の資料として引用する証拠(甲A1150)は昭和51年当時の資料である。その余の点は,被告大建工業の関係で述べたとおりである。 ⒃ 被告JIC(乙メ)の主張について被告JICの主張は争う。 ⒄ 被告バルカー(乙ユ)の主張について被告バルカーは,過去に石綿含有建材を製造販売した事実はなく,原告らにおいて同被告が製造販売したと主張する石綿含有建材は,関連会社である日本リンペット工事株式会社(以下「日本リンペット」という。)が製造使用した建材である旨を主張する。 しかし,同被告の上記主張は,同被告が自ら各種石綿製品の広告をしていること(甲C1の207,甲C1の222の2)と整合しない。仮に上記主張が事実であったとしても,同被告は,日本リンペットと共同して,あるいはこれを幇助して石綿含有建材を製造販売したものであり,責任を免れない。 ⒅ 被告ノザワ(乙ラ)の主張についてア被告ノザワは,同社以外にも複数の会社が混和材を製造販売していたとして,シェアが100%ないし90%であったはずがない旨を主張する。 しかし,被告ノザワが製造販売した混和材「テーリング(2151)」は,市場において圧倒的なシェアを占め,モルタル作業改良材の代名詞ともなっていたのであって(甲C2001の1・1頁,同2・1頁),同被告のシェ アは90%を下回るものではなかった。 イ被告ノザワは,「テーリング」を使用した左官作業における石綿粉じん濃度測定結果(乙ラ9)をもとに,「テーリング」の発じん量 1頁),同被告のシェ アは90%を下回るものではなかった。 イ被告ノザワは,「テーリング」を使用した左官作業における石綿粉じん濃度測定結果(乙ラ9)をもとに,「テーリング」の発じん量は少なかった旨を主張する。 しかし,上記測定は,社内の研究機関である株式会社ノザワ技術研究所が行ったものである上,当時一般的に使用されていた電気攪拌機を用いることなく,舟を使ってスコップで混練している点や,どのような態様で「テーリング」を投入し,混練したのか等の記載もなく,信用性に乏しい。 これに対して,東京労働安全衛生センターの外山尚紀が行った粉じん濃度測定結果(甲A1523)によれば,「テーリング」を用いたモルタル調合作業時に許容濃度(0.15f/ml)を大きく超える石綿粉じんが発生している事実が認められ,「テーリング」から発生する石綿粉じんにばく露したことによって石綿関連疾患を発症した可能性は高い。 ⒆ 被告MMK(乙ワ)の主張について被告MMKの主張は争う。 第2 被告企業らの主張の要旨 1 本件被災者の石綿被害に関する被告企業らの予見可能性等⑴ 総論ア原告らの主張は争う。昭和55年以前の段階で,クリソタイル(白石綿)によって石綿関連疾患にり患する危険があることの知見は確立されておらず,微量のクリソタイルのみを含有する建材を製造販売していた被告企業らには,自社の建材によって石綿関連疾患を発症することを予見することは不可能だった。 この点を措くとしても,神奈川1陣最判において,被告国の規制権限の不行使が国家賠償法1条1項の適用上違法となる期間について,昭和50年10月1日からと判断されたことからすれば,国よりも調査能力・情報 収集能力に乏しい被告企業らの予見可能性等は,どんなに早くとも同日以降に生じたと考 用上違法となる期間について,昭和50年10月1日からと判断されたことからすれば,国よりも調査能力・情報 収集能力に乏しい被告企業らの予見可能性等は,どんなに早くとも同日以降に生じたと考えるべきである。なお,そもそも予見可能性やこれに基づく警告義務の発生時期は「過失」を根拠づけるものであるから,被告企業らごとの個別の事情に即して認定されるべきであり,個別性を捨象するような原告らの主張は誤りである(警告義務の程度や違反の有無についても同様である。)。 イまた,警告表示自体の履行は容易であるとしても,実際に警告表示を行うためには相当長期間の準備を要することとなり,直ちに履行が可能となるものではないのであるから,実際の警告義務の発生時期は,予見可能な時期よりも相当程度遅い時期と解すべきである。 ⑵ 屋外建設作業に従事する者との関係ア京都1陣最判及び大阪1陣最判は,被告国が平成13年から平成16年9月30日までの期間,建材メーカーが①昭和50年から平成2年までの期間及び②平成13年から平成15年12月31日までの期間に,屋外建設作業に従事する者に石綿関連疾患にり患する危険が生じていることを認識することができたということはできないと判断した。これらによれば,平成16年9月30日までに石綿含有建材の製造販売を終了した被告企業らについては,屋外建設作業に従事する者との関係において警告義務を負わないことが確定したということができる。 原告らは,外装材等の取扱作業が飽くまで屋外のみで行われていることを前提としているなどと主張するが,上記の判断は外装材等の通常の使用方法を前提としたものであるというべきであるから,当該建材に関し,被告企業らには石綿関連疾患発症の予見可能性がない。 イ原告らは,窯業系サイディング等の外装材の切断作業 判断は外装材等の通常の使用方法を前提としたものであるというべきであるから,当該建材に関し,被告企業らには石綿関連疾患発症の予見可能性がない。 イ原告らは,窯業系サイディング等の外装材の切断作業等について,車庫内で行われるという実態があるなどと主張する。 しかし,本件被災者が述べる作業実態によれば,基本的には屋外で加工 作業が行われていたことは明らかであり,車庫内での加工は「まれにある」程度のものにすぎない。原告らが依拠するA証人の陳述(甲A2007)は,限られた経験に基づくものにすぎず,供述内容にも変遷が見られるから,より経験豊富な本件被災者の供述より信用できるものとはいえない。 なお,北海道において冬季に戸建てを建築することがないことは,本件被災者の被保険者記録等(毎年冬頃に離職し,春頃に資格を取得している。)からも明らかである。 また,そもそも屋外での切断が予定されている建材であるにもかかわらず,個々の建設作業従事者の使用状況という偶然にすぎない事情によって,被告企業らに警告表示義務が生ずるとは解し難い。 ⑶ 吹付け作業後の工事(二次的加工)との関係石綿含有吹付ロックウールを含む耐火被覆材は,火災による火・熱から建物の鉄骨を保護するために鉄骨全体を被覆して耐火性能を確保する建材であり,耐火被覆材が剥がされて鉄骨が露出してしまうと,予定された耐火性能を得られなくなってしまうから,一度吹き付けられた吹付け材が施工後に剥がされることなど予定されていなかった。したがって,被告企業らにおいて吹付け作業後に他の職工が吹付け材を剥がしていることなど想定しておらず,それに伴う粉じんの発生や対策について検討する契機がなかった。 2 被告企業らに警告義務違反が認められないこと⑴ 警告義務の内容被告企業らが警告義務(警告表示 していることなど想定しておらず,それに伴う粉じんの発生や対策について検討する契機がなかった。 2 被告企業らに警告義務違反が認められないこと⑴ 警告義務の内容被告企業らが警告義務(警告表示義務)を負うとしても,その対象者は,一般消費者とは異なり,石綿の危険性についてもともと知識を有する職業従事者なのであるから,被告企業らには,安衛法57条に基づく警告表示以上の表示をすべき義務があったとはいえないというべきである。 ⑵ 警告義務の対象範囲等ア被告企業らが警告義務を負う対象は,建材の新規使用者に対してであっ て,改修・解体工事に関与する建設作業従事者に対しては,警告義務を負わない。また,現場監督などの周辺作業者や,二次的加工に従事する作業者との関係においては,個々の製品に表示された情報を契機に,事業者による安全配慮義務の履行によって危険を回避することが事実上期待されるのであるから,これら周辺作業者に対しては,警告義務を負わない。 イ被告企業らが改修・解体工事に従事した者との関係で警告義務を負わないことは,かかる義務を否定した神奈川1陣最判,大阪1陣最判,京都1陣最判の各原審の判断に関し,最高裁が上告受理申立てを受理しなかったことからも明らかといえる。 石綿含有建材はその用途に応じて様々な形や大きさに裁断され,建物の一部として使用されるから,建築自体に関与しない建材メーカーにおいて,建物に組み込まれた建材等に何らかの警告表示を改めて添付することはなし得ない。また,新築当時の建物所有者に必要な情報を伝えたとしても,所有者の変動があることはもとより,そのような情報を長期間保存し,これを解体業者に伝えることについて所有者に積極的動機があるとはいえないから,所有者を通じた情報伝達に期待することには無理がある。建築物が の変動があることはもとより,そのような情報を長期間保存し,これを解体業者に伝えることについて所有者に積極的動機があるとはいえないから,所有者を通じた情報伝達に期待することには無理がある。建築物が解体されるまでは長期間経過することがあり,図面等が残っていない場合もあるから,改修・解体作業に従事する者は,当該建築物にどのような建材が使われているのかを調査しなければならないのであって,その負担を解体工等に負わせることは何ら不当ではない。 ウ吹付け後の工事との関係では,仮に吹付け材を剥がすことが予見可能であったとしても,その場合に採り得る警告表示としては,「吹付け材を剥がす作業の禁止」でしかあり得ず,吹付け材が剥がされる作業が行われることを前提とした「防じんマスクの着用」を促す警告表示を行うことなどできない。 また,建築現場に搬入された吹付け材は,吹付施工業者が荷受けするも のであり,元請事業者やその他の事業者が包装を視認することはないから,これらの者を通じて吹付工以外の作業者に警告表示の内容を認識させることはできない。そうすると,吹付工以外の作業者に対しては,警告表示による結果回避可能性がないというべきである。 ⑶ 被告企業らによる警告義務違反被告企業らに警告義務違反があるとする原告らの主張は争う。 3 被告企業らに石綿不使用義務(製造中止義務等)違反が認められないこと石綿含有建材は,火災,地震及び風雨などからの安全性を提供する,国民生活にとって極めて重要な製品であり,他方で,例えば評価値と比較し,過剰発がん生涯リスクレベルを一定基準以下にコントロールしながら,管理使用を行うことが十分に可能であった。石綿粉じんのばく露対策は,警告表示や被告国が講じるべきであった規制措置等によって確保できたから,石綿の使用を全面禁止 を一定基準以下にコントロールしながら,管理使用を行うことが十分に可能であった。石綿粉じんのばく露対策は,警告表示や被告国が講じるべきであった規制措置等によって確保できたから,石綿の使用を全面禁止するという法規制が導入される前において,石綿の使用を中止すべき義務があったということはできない。 4 被告企業らの共同不法行為(主位的請求)について⑴ 総論神奈川1陣最判は,建材メーカーについて民法719条1項後段が類推適用される場合があることを認めたが,その判断に当たっては,問題となる石綿含有建材が被災者の稼働する建設現場に相当回数にわたり到達して用いられているという事実を前提としているから,建材現場到達事実の立証を不要とするものではないことに留意すべきである。原告らは,被告企業らが石綿含有建材を製造又は販売し,市場に流通させた行為が加害行為である旨主張するが,当該行為は実際の加害行為(個々の被災者が,稼働先の建設現場でアスベストにばく露することなど。)の前段階にすぎない。石綿含有建材が個々の被災者が稼働する建設現場に到達することは,共同行為者ないし加害行為の要件であるから,建材現場到達事実の証明が必要になると解すべき であり(建築現場に到達する相当程度の可能性があるだけでは,因果関係を法律上推定する前提を欠くというべきである。),この証明は,高度の蓋然性による証明であることが必要である。また,少数回のばく露によって直ちに石綿関連疾患が発症するとはいえないことなどを踏まえれば,相当回数にわたって到達したことが立証される必要があると解すべきである。 ⑵ 主要原因建材の選定方法(主位的主張)について東京1陣最判は,資料に基づくシェアの算定によって建材現場到達事実が推認し得ることを肯定したものであるところ,主要原因建材の選定 解すべきである。 ⑵ 主要原因建材の選定方法(主位的主張)について東京1陣最判は,資料に基づくシェアの算定によって建材現場到達事実が推認し得ることを肯定したものであるところ,主要原因建材の選定方法に係る原告らの主位的主張は,資料に基づかない完全な推定計算を含むものであり,このように算定されたシェアから建材現場到達事実を推認することはできない。 ⑶ 主要原因建材の選定方法(予備的主張)についてア東京1陣最判について東京1陣最判は,前提事実第5の2⑴~⑸記載の手法によって,特定の石綿含有建材につき建材現場到達事実が立証されることがあり得ると判断したにとどまり,建材現場到達事実の立証のためのシェア基準を定立したものではない。このことは,京都1陣最判においてはシェア基準に関する論点を上告受理の対象とせず,その結果,建材現場到達事実の立証のためのシェア基準を20%と判断した原審の判断が確定したことからも明らかである。 原告らが採用する建材現場到達事実の立証手法については,そもそも事実の擬制という側面を否定し難いこと,基になるシェア資料の数値において,正確性・信用性が担保されたものでなく,石綿含有・非含有の有無も区別されていないことなどの問題を内在するもの(後記イ,ウ参照)であるから,同手法に基づく建材現場到達事実の立証がされたかは慎重に判断する必要がある。仮にある建設作業従事者が20個の建築現 場を経験していたとしても,建材のシェアが10%の場合には,当該建材が建築現場に到達していない確率が約12%残ることとなるし,建材現場到達事実とは,当該建材が被災者の稼働する建設現場に相当回数にわたり到達して用いられたことであるから,1回の到達の可能性が高いだけでは足りない。建材現場到達事実の立証において,10%のシェア 現場到達事実とは,当該建材が被災者の稼働する建設現場に相当回数にわたり到達して用いられたことであるから,1回の到達の可能性が高いだけでは足りない。建材現場到達事実の立証において,10%のシェア基準では合理性を有しないことが明らかであり,20%~25%以上のシェア基準を要求すべきであるし,各被災者のばく露実態や就労現場数によっては更に高いシェアが必要になる場合もあるといえる。 また,建材現場到達事実の立証に関する東京1陣最判の判示内容に照らせば,①客観的なシェア資料が存在しない場合,②これが存在してもその内容に誤りがあることについて具体的な根拠に基づく指摘がされているような場合,③主要原因建材の特定に当たり,建材現場到達事実に影響を及ぼす個別的要因(建材の流通経路,請負業者や下請負業者等の取引関係,建材の出荷場所と建設現場との距離,建築物の性質,用途及び建築費用等)が十分に考慮されていない場合には,シェア資料に基づくシェアの算定により建材現場到達事実を推認することは困難ということとなる。被告企業らが製造販売した石綿含有建材に関する個別事情は,後記「被告企業らの個別主張」に記載のとおりである。 イシェアの認定資料の問題点についてシェアを算出する前提となる市場は,石綿含有量に比例していない売上高ではなく,販売(出荷)数量を基礎に算出されなければならず,対象建材の販売(出荷)数量の総数を把握するためには,日本国内全ての建材メーカーから当該数量に係る正確な情報開示がなされていなければならないが,各建材メーカーは現実的にそのような情報開示を行っていない。このため,原告らがシェア認定の基礎とした各種資料は,各建材メーカーの正確な生産量や出荷量を反映したものとはいえず,これら に基づいて行われたシェアの認定は,正確性に疑問 を行っていない。このため,原告らがシェア認定の基礎とした各種資料は,各建材メーカーの正確な生産量や出荷量を反映したものとはいえず,これら に基づいて行われたシェアの認定は,正確性に疑問がある。 また,原告らがシェア算定に用いた資料は,根拠となる第一次的資料の出所が不明なものが多く,その数値も推定値が多く用いられており,その推定の根拠も明らかではない上,制度的にその数値の信用性が担保されている資料でもない。 ウシェアの母数の問題点についてシェアに基づいて建材の到達可能性を論ずるのであれば,本来は,個別の建設作業従事者ごとに,どのような建築物で,どのような建材を取り扱ってきたのか,そのうち,各企業の建材を取り扱う可能性がどの程度あるのかを論ずる必要がある。仮に,例えば大工一般について,けいカル板,断熱材,石膏ボード,平板,ボード,吹付け材などの建材を取り扱う職種であると考えたとしても,これら全建材の製造販売数を母数としなければ,特定の建材のシェアを論ずることはできない。 石綿含有建材のシェアを論ずるのであれば,競合する石綿含有建材をすべて母数に含めて算定する必要がある。例えば,石綿吹付け材(建材種類①~⑤)は,互いに競合する関係にあるから,石綿吹付け材に分類される建材については,個別にシェアを算定するのではなく,石綿吹付け材全体の製造販売量を母数にすべきである。 また,建築基準法令で規定された不燃材料や防耐火構造として,石綿含有建材と石綿非含有建材(ノンアス建材)は常に競合する関係にあり,「石綿含有建材市場」なる特殊な需要を前提とした市場は存在していなかった。例えば,木造住宅を例にとれば,屋根材では金属系,スレート系,粘土瓦などが,外壁材や内装材ではスレート系,窯業系,金属系,コンクリート系,木質系などが 殊な需要を前提とした市場は存在していなかった。例えば,木造住宅を例にとれば,屋根材では金属系,スレート系,粘土瓦などが,外壁材や内装材ではスレート系,窯業系,金属系,コンクリート系,木質系などが常に競合してきたのであって,これら建材の中には,石綿含有建材もあれば,ノンアス建材もあった。石綿含有建材の各被災者への到達可能性を議論するのであれば,石綿含有建材に 限ることなく,ノンアス建材も含めた競合建材の生産量や出荷量を議論しなければならないのに,原告らの主要原因建材の特定(シェアの認定)は,こうした観点を欠いている。 ⑷ 本件被災者ごとの主要原因建材(共同不法行為者)原告らは,職種ごとに原因建材となり得る建材種類を特定するが,そもそも,同一の職種であっても実際に作業した現場は被災者ごとに異なるし,具体的な作業実態も様々であるから,特定の職種であれば特定の(個別の)建材を取り扱うという経験則が成り立つものではない。原告らのいう「原因建材」の特定は,各被災者の石綿関連疾患を惹起した蓋然性のある建材を選定する上で何ら意味のある作業ではない。 5 被告企業らの分割責任(予備的請求)について原告らの主張する分割責任論は争う。 6 製造物責任に基づく責任について平成7年7月1日より前に製造販売が終了した石綿含有建材については,これを製造販売した被告企業らが責任を負うことはない。同日以後に製造販売が行われた石綿含有建材についても,当該製造物が通常有すべき安全性を欠いているとの事実は存しないし,石綿に関する必要な警告表示を行っていた。 7 原告らの損害について⑴ 本件被災者の石綿関連疾患が,被告企業らの製造販売した石綿含有建材から発生した石綿粉じんによるものであるとする原告らの主張は争う。本件被災者は,就労現場において,他 7 原告らの損害について⑴ 本件被災者の石綿関連疾患が,被告企業らの製造販売した石綿含有建材から発生した石綿粉じんによるものであるとする原告らの主張は争う。本件被災者は,就労現場において,他社の製造販売した石綿含有建材から発生した大量の石綿粉じんのばく露を受けていたのであって,被告企業らの製造販売した石綿含有建材が原因であるとの立証はされていない。 ⑵ 本件被災者は,いずれも石綿関連疾患による労災認定を受けているが,労災認定は被災者救済という政策的目的に基づく判断である。これに対し,不法行為責任が争われている民事訴訟においては,通常人が疑いを差し挟まな い程度の立証がなされているかどうかによって判断されるのであるから,労災認定を受けたからといって,直ちに本件被災者の石綿関連疾患が石綿含有建材から発生した石綿粉じんによるものとはいえない。 例えば,原告9には,石綿肺所見も広範囲な胸膜プラークも確認されておらず,肺組織切片中に石綿小体がわずか1本確認されたにすぎない。切片中にたまたま1本の石綿小体が認められたとしても,偶然による可能性が否定できないから,同原告の肺がんが石綿粉じんばく露によるものであるということはできない。 ⑶ 喫煙は,肺がんの発症に重大な影響を及ぼしており,扁平上皮がん及び小細胞がんにあっては600以上,大細胞がんでは1200以上のブリンクマン指数が認められる場合,発がんの相対リスクがおおむね5倍以上になる(発がんへの寄与危険度割合が80%以上になる)から,石綿粉じんばく露と肺がん発症との因果関係は否定されるべきである。また,扁平上皮がん及び小細胞がんにあっては200以上,全ての病理組織型において400以上のブリンクマン指数が認められる場合,発がんの相対リスクが2倍(寄与危険度割合50%)以上になる べきである。また,扁平上皮がん及び小細胞がんにあっては200以上,全ての病理組織型において400以上のブリンクマン指数が認められる場合,発がんの相対リスクが2倍(寄与危険度割合50%)以上になるから,この場合は,少なくとも5割以上の慰謝料の減額をすべきである。 ⑷ 建設アスベストによる被害は,石綿含有建材を製造販売した被告企業らのみに責任があるものではないから,その責任は少なくとも損害額の3分の1を超えるものではないというべきである。 8 消滅時効ないし除斥期間について⑴ 被告ニチアス等の主張本件被災者のうち,訴え提起より3年以上前に労災その他の手続によって石綿関連疾患が認定された者については,その時点で損害及び賠償義務者を知ったということができるので,消滅時効を援用する。 ⑵ 被告永大産業等の主張 被告企業らのうち,訴え提起より20年以上前に石綿含有建材の製造販売を終了したものとの関係においては,原告らの主張に対する反論の前提となる証拠資料のほとんどが散逸してしまっている。他方で,原告らは,本件被災者が取り扱った可能性のある製品に関する,抽象的かつあいまいな主張に基づいて,被告企業らに損害賠償を求めている。これらの事実関係に照らすと,原告らの損害賠償請求は,民法724条後段(除斥期間)により許されないものというべきである。 9 被告企業らの個別主張⑴ 被告AGC(乙イ)ア原告らが被告AGCの製造販売した主要原因建材として主張する「ほんばん」(石綿含有窯業系サイディング㉟)は,屋外で使用される建材であるから,同建材によって本件被災者が石綿関連疾患を発症することについて予見可能性がない。「ほんばん」は長さ3m以上,重量も重いもので1枚38kgもあり,作業効率の観点から,運び込まれた場所で切断作業がなさ ,同建材によって本件被災者が石綿関連疾患を発症することについて予見可能性がない。「ほんばん」は長さ3m以上,重量も重いもので1枚38kgもあり,作業効率の観点から,運び込まれた場所で切断作業がなされるのが通常である。原告らが主張するような「屋内あるいはこれに準じた場所」で作業が行われるという実態は存在しない。 イ 「ほんばん」は,耐アルカリガラス繊維等の補強効果により高い粘性を有しており,その施工方法等からも,切断・取付けの際の粉じんの発生・飛散はごく微量に限られていた。 ⑵ 被告永大産業(乙カ)ア被告永大産業が製造販売した石綿含有建材は,石綿含有パルプセメント板㉑,石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓,石綿含有ロックウール吸音天井板㉔及び石綿含有その他パネルボード㉗の4種類13製品に限られる。いずれも品質・価格等の面から競争力に乏しく,その販売量はいずれも僅少であった。 石綿含有パルプセメント板㉑について 原告らが主張するシェアは一切の客観的根拠を伴わない推定計算に基づくものであり,このような主張が認められる余地はない。 警告義務の始期を昭和50年とした場合,昭和51年に製造販売を停止した製品(ハイブレストン(504),エイロックタフ(505),エイロックプリント(507),プレストンプリント(508))については,わずか1年程度の製造販売が問題となるにすぎず,このような時期に一定程度のシェアとして現れるような販売量を有していたとは考え難い。また,エイロックドリーム(506)は昭和49年までに製造販売を終了したから,警告義務違反の問題が生ずる余地はない。 石綿含有ロックウール吸音天井板㉔についていずれの製品も昭和51年に製造販売が終了した。原告らが主張する推定計算によっても,昭和50年及び昭和51年の 警告義務違反の問題が生ずる余地はない。 石綿含有ロックウール吸音天井板㉔についていずれの製品も昭和51年に製造販売が終了した。原告らが主張する推定計算によっても,昭和50年及び昭和51年の被告永大産業のシェアは7.4%にとどまっており,主要原因建材とされる水準を下回っている。そもそも,この期間はいわば終息の期間であるため,一定程度のシェアとして現れるような販売量を有していたとは考え難い。 イ被告永大産業の石綿含有建材は,基材にコーティングや化粧紙の貼付等といった表面化粧を施したものであったため,石綿含有粉じんが製品自体から直接発生することはおよそ考えられず,切断を要する場面は非常に少なかった。また,製品の性質上,ヤスリ掛けすることもあり得なかった。 したがって,被告永大産業が製造販売した建材から発生した石綿粉じんによって本件被災者が石綿関連疾患を発症したとは考え難い。 なお,被告永大産業の石綿含有建材が使用されたのは戸建住宅等の一般住宅のみであり,販売量も少なく,使用部位も台所に限定されていた。 ウ被告永大産業は,昭和53年5月1日,大阪地方裁判所により,会社更生手続開始決定を受けた。仮に被告永大産業が原告らに対して何らかの損害賠償責任を負うとしても,同日以前の被告永大産業による行為を原因と する部分は更生債権となり,原告らは届出期間内に届け出ることなく,更生計画の認可決定がなされたから,これら債権は消滅した(旧会社更生法241条,102条,125条1項参照)。 ⑶ 被告A&AM(乙キ)ア吹付け材(建材種類①~③)はいずれも主として鉄骨造建物の耐火被覆を目的として使用されるものであり,相互に代替性を有するものであるが,原告らが提出する吹付け材のシェア資料は,これらを合算したものではなく,年度や記載内容も )はいずれも主として鉄骨造建物の耐火被覆を目的として使用されるものであり,相互に代替性を有するものであるが,原告らが提出する吹付け材のシェア資料は,これらを合算したものではなく,年度や記載内容も異なるから,これによってシェアを割り出すことはできない。また,被告A&AMは,昭和50年までに石綿含有吹付ロックウールの製造を終了しており,同年以降のシェアの大部分は石綿を含有しない製品によるものであった。 イ朝日石綿工業は,その製造した石綿含有スレート波板・大波㊲,同・小波㊳の最大9割程度を社内で使用していた(乙キ16,17)。このことは,浅野スレートも同様であった(乙キ18)。したがって,これら建材の市場における流通量は,朝日石綿工業・浅野スレートの製造量よりもはるかに少なく,製造量だけから朝日石綿工業・浅野スレートのシェアを認定することはできない。 ウ保温材(建材種類⑥~⑩)のうち,⑥⑦⑨⑩は代替性が高く,競合関係にあるため,これら4種類全体における各社の製品のマーケットシェアを検討する必要があるが,これらの製品が合算されたシェアに係る証拠はなく,被告A&AMのシェアを認定することはできない。したがって,被告A&AMが製造販売した石綿含有けい酸カルシウム保温材⑦及び石綿保温材⑩が本件被災者に到達した事実は認められない。 ⑷ 被告クボタ(乙ク)被告クボタによる,石綿含有住宅屋根用化粧スレートを含む石綿含有建材の製造販売は,遅くとも平成13年までに終了した。被告ケイミューが権利 義務を承継した屋根材・外装材事業の関係については,被告ケイミューの主張を援用する。 ⑸ 被告ケイミュー(乙ケ)ア被告ケイミューは,遅くとも昭和53年から,石綿含有建材の販売先に対して,表示方法通達に従った注意事項を記載した文書等を交付し ,被告ケイミューの主張を援用する。 ⑸ 被告ケイミュー(乙ケ)ア被告ケイミューは,遅くとも昭和53年から,石綿含有建材の販売先に対して,表示方法通達に従った注意事項を記載した文書等を交付し,遅くとも昭和61年以降,同通達に従った警告表示を建材に記載してきた。さらに,昭和62年以降は,建材の施工説明書に,より詳細な警告表示を記載した。したがって,仮に警告表示義務を負う場合でも,被告ケイミューは十分に同義務を果たしてきた。 イ原告らは,被告ケイミューが製造販売した石綿含有スレートボード・フレキシブル板⑮のうち,「カラートップ」など5つの建材(製品番号152,156・157,159,161・162,163)を内装材に分類して,シェアを算定している。しかし,これら建材は基本的には外壁材に使用されたものである。 内装材として使用される場合は,プレハブ化工法におけるパネル建材として使用されたから,通常は現場での切断等の加工は発生しない。また,そもそも原告らがシェア算定の根拠とする数値は,被告ケイミューが製造販売した外装材(主に屋根材)を含むことが明らかであり,かかる数値をもって石綿含有スレートボード・フレキシブル板⑮のシェアを推測することは誤りである。 ⑹ 被告クラボウ(乙コ)被告クラボウが製造販売していた「クランセリート(1735・1736)」(石綿含有窯業系サイディング㉟)は,戸建て住宅の破風や窓飾りに使用される外装化粧材であり,用途に照らし,1戸の住宅に使用される量は極めて少ない。 また,同建材に用いられたアスベストは,セラミックス原料内に固着されている上,万一切断作業が行われる場合も屋外でされるから,本件被災者が同製品から発せられた石綿粉じんにばく露したとは考え難い。また,そもそも 「クランセリート」自体のシェア 料内に固着されている上,万一切断作業が行われる場合も屋外でされるから,本件被災者が同製品から発せられた石綿粉じんにばく露したとは考え難い。また,そもそも 「クランセリート」自体のシェアが僅少であり,ノンアス製品も相当含まれていることからすれば,本件被災者の就労現場に到達したとは考えられず,主要原因建材とはならない。 ⑺ 被告神島化学(乙シ)ア石綿含有窯業系サイディング㉟は外装材であり,屋外作業に従事する者に対する警告表示義務が存在しないことが最高裁判決によって確定したから,これが主要原因建材に当たる余地はない。 また,被告神島化学の製造する石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓に該当する製品は,多くが被告大建工業から受託したOEM製品であり,被告神島化学が自ら市場に製品を置くものではなく,特定の被災者に石綿含有建材を到達させるという行為を行ったわけではないし,警告表示義務を履行すべき立場にあったわけでもない。 イ石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓・第2種⑪の北海道内におけるシェアは,被告A&AMの製品が圧倒的であり,被告神島化学のシェアは5%を超えるものでなかったから,本件被災者に到達した蓋然性は認められない。 また,石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓は,石綿スレートボードや石綿含有スラグせっこう板⑳,石綿含有パルプセメント板㉑と用途が共通する建材であるから,シェアの検討においては,これらの建材の出荷量も分母に含める必要がある。 石綿含有けい酸カルシウム板第2種⑪については,耐火被覆材全体の施工実績に占める同建材の施工実績が8.2%にすぎないことを考慮すべきである。仮に建材のシェアと接触可能性を同視できるとしても,耐火被覆材を扱った被災者が石綿含有けい酸カルシウム板第2種⑪に接触する可能性は8.2% 建材の施工実績が8.2%にすぎないことを考慮すべきである。仮に建材のシェアと接触可能性を同視できるとしても,耐火被覆材を扱った被災者が石綿含有けい酸カルシウム板第2種⑪に接触する可能性は8.2%にすぎないのであるから,同建材が被災者に到達した高度の蓋然性は認められない。 ⑻ 被告昭和電工(乙タ)ア被告昭和電工は,製品に「a」マークを表示して,石綿を含有していることを明示していたし,防じんカッター及び防じんマスクの使用について施工説明書等に記載していたから,仮に警告表示義務を負うとしても,その違反はない。 イ被告昭和電工が製造販売していた建材は,通常の建材が採用する抄造成形ではなく,押出成形による製造法で製造されており,石綿はセメントで固化されていることから,そのままでは石綿粉じんにばく露する危険はない。現場で加工作業を行う際も,防じんカッター及び防じんマスクの使用を指導・説明していたし,切断時に発生する石綿粉じん濃度は許容値を下回るものだった。 また,被告昭和電工は,被告昭和電工が製造する建材を使用する代理店を組織化して(ラムダ会),特別な教育を行い,ラムダ会に属する代理店だけに建材を販売していたから,これら代理店以外の一般の業者,工務店及び大工が,被告昭和電工の製造した石綿含有建材を購入することはなかった。被告昭和電工の製造した製品は,割高である反面,耐久性が高かったから,本件被災者が改修・解体工事に従事した建物に,被告昭和電工の製造した製品が使用されていたとは考えられない。 ウ原告らが主張する被告昭和電工の窯業系サイディングのシェアは,一部の年分を除いて全く資料がない推定計算であるし,押出成形セメント板は完全な推定計算であるから,シェア算出の根拠とはなり得ない(乙タ21参照)。また,一部の資料に の窯業系サイディングのシェアは,一部の年分を除いて全く資料がない推定計算であるし,押出成形セメント板は完全な推定計算であるから,シェア算出の根拠とはなり得ない(乙タ21参照)。また,一部の資料に基づく年分のシェアの数値も,出荷開始の年の出荷量が先行業者の建材よりも多くなっているなどの信用性に欠ける資料を根拠としており,実態とは全く異なるものである。 ⑼ 被告日鉄ケミカル&マテリアル(乙チ)ア被告日鉄ケミカル&マテリアルは,「認定特約店」の制度を設けて,研修 を受けたロックウール吹付け材の十分な施工能力を有する事業者のみを特約店に認定した上で(乙チ11~13),その製造する石綿含有吹付けロックウール(スプレエース)を,認定特約店にのみ供給していた。当該認定特約店に対しては,作業時には防じんマスクを使用すること,吹付け作業を行っている現場では他の作業は行わないことなどを,施工要領に基づいて研修・指導・告知していたから,警告表示義務を尽くしていたといえる。また,納入先が認定特約店に限定されていたことからすれば,原告らが主張するような単純な確率計算によって建材現場到達事実を推認できないことは明らかである。 イ原告らは,被告日鉄ケミカル&マテリアルが石綿含有けい酸カルシウム板第2種⑪及び同第1種㉓も製造販売していたと主張する。 しかし,被告日鉄ケミカル&マテリアルは建材メーカーではないことから,これらのボード類を自ら製造しておらず,顧客からの希望を受けて,被告JICに製造委託し,同社が製造したボード類を自社ブランドとして販売していたにすぎず,その出荷数量も微々たるものであった。 ウ被告日鉄ケミカル&マテリアルの社内記録(乙チ11~22)により判明したロックウール吹付け材(スプレエース)の販売数量(これは業績管理のため いたにすぎず,その出荷数量も微々たるものであった。 ウ被告日鉄ケミカル&マテリアルの社内記録(乙チ11~22)により判明したロックウール吹付け材(スプレエース)の販売数量(これは業績管理のために社内で実際に用いていた数値であり,正確なものである。)と,「平成17年11月建築物の解体等における石綿飛散防止検討会報告書」が出典となっている石綿含有吹付けロックウールの生産量(甲A394・8頁。これも業務上作成された信頼性の高いデータによって算定されたものである。)を基に,石綿含有吹付けロックウール市場における被告日鉄ケミカル&マテリアルのシェアを算定すると,昭和43年から昭和53年までの平均は5.8%にすぎず,シェアが10%を超えるとする原告らの主張は誤っている。 原告らが提出したシェア資料に記載された数値は,飽くまで推定の数値 にすぎず,これを推定・公表する団体によって異なるものであるから,客観性を欠く。また,シェア認定の根拠とされた施工数量には,既にノンアスベスト化されたロックウール吹付け材も含まれており,そもそも石綿含有ロックウール吹付け材との区別がされていない。原告らが主張する加害行為は石綿含有建材の製造販売行為なのであるから,ノンアスベスト化された建材を含める算定方法は不当であるといわざるを得ない。さらに,建築工事においてロックウール吹付け材と吹付け石綿は,どちらか一方が使用されれば,もう一方が使用されることはないという代替性を有する関係にあるから,シェア算定に当たっては,当然,両者を合算した数量を分母とすべきである。 エ原告らは,各社が製造した建材の種類や石綿含有量等を無視して主要原因建材を特定するが,被告日鉄ケミカル&マテリアルは,多くの石綿含有建材の一部を占める吹付け材のうちの1種類(ロックウール吹付け エ原告らは,各社が製造した建材の種類や石綿含有量等を無視して主要原因建材を特定するが,被告日鉄ケミカル&マテリアルは,多くの石綿含有建材の一部を占める吹付け材のうちの1種類(ロックウール吹付け材)のごく一部を短期間かつ比較的少量製造したにすぎない。また,被告日鉄ケミカル&マテリアルが製造した石綿含有ロックウール吹付け材に含まれる石綿は,多い時期でも10%強であり,昭和50年以降は5%未満であるところ,他の吹付け石綿等の中には70%もの石綿含有量を有するものも存在した。さらに,警告義務が問題とされる昭和50年以降に限れば,被告日鉄ケミカル&マテリアルが石綿含有ロックウール吹付け材を製造していたのは3年にすぎない上,同製品にはクリソタイルしか使用されておらず,健康被害との因果関係は限りなく0に近いものであった。 ⑽ 被告大建工業(乙ト)ア被告大建工業が製造販売した石綿含有スラグせっこう板⑳は,そもそもシェアが極めて小さく,主要原因建材となる余地がない(同建材はスレートボード等と用途が共通するので,これらの建材の出荷量を考慮すると,そのシェアは更に小さいものとなる。)。 また,同建材はいわゆる「尺モジュール」で製造されており,尺を基準とする在来工法で建築される家屋に使用される場合には,現場で切断等をすることにより大きさを調整する必要性が低い。 さらに,施工説明書には,「切断・研磨等の加工の際に長時間・多量の粉塵を吸入すると健康を損なう恐れがありますので十分な防塵対策を行って下さい」等と警告表示がされており,これに従っていれば,切断時に石綿粉じんにばく露することはほとんどない。 イ被告大建工業が製造販売した石綿含有ロックウール吸音天井板㉔については,用途を同じくする「天井板」全体におけるシェアを考慮する必要が ば,切断時に石綿粉じんにばく露することはほとんどない。 イ被告大建工業が製造販売した石綿含有ロックウール吸音天井板㉔については,用途を同じくする「天井板」全体におけるシェアを考慮する必要がある。昭和51年時点の住宅用天井材に関するロックウール吸音天井板のシェアは2.4%,非住宅用天井材に関する同シェアは12%であるから,仮に被告大建工業のシェアが25%であったとしても,その製品に接触した可能性は,住宅の天井施工に従事した建設作業従事者との関係では0.6%,非住宅建造物の天井施工に従事した建設作業従事者との関係では3%にとどまる。 また,ロックウール吸音天井板と化粧石膏ボードは相互に代替可能な建材であり,一方が使用されればもう一方は使用されないという関係にあるから,上記建材の到達可能性を論じるのであれば,これらの出荷量を合算したものを分母として計算するべきである。 被告大建工業のロックウール吸音天井板は,「尺モジュール」で製造されており,現場で大きさを調整する必要性が低い。切断する場合も,丸鋸ではなく,ボードカッターで切断されるし(やすり掛けも,例外的な場合以外,必要ない。),建材用のホチキスを打ち込んで固定するため,釘打ちの必要もなく,石綿粉じんの発生量は少ない。したがって,本件被災者の石綿関連疾患発症に対する寄与度は極めて限定的であった。 ⑾ 被告太平洋セメント(乙ニ) ア被告太平洋セメントは,吹付工の吹付け作業時の作業環境に関しては,防じんマスクや作業場の養生等,種々の対策を検討し,吹付施工業者に情報提供を行ってきたのであるから,警告義務違反はない。二次的加工に関しては,吹付け作業後にどの職種の者にどのような作業をさせるかを知り得ないのであるから,対策の採りようがなかった。 イ被告太平洋セメント ってきたのであるから,警告義務違反はない。二次的加工に関しては,吹付け作業後にどの職種の者にどのような作業をさせるかを知り得ないのであるから,対策の採りようがなかった。 イ被告太平洋セメントが製造販売した「スプレーコート(20)」(石綿含有吹付けロックウール②)と「スプレーコートウェット(35)」(湿式石綿含有吹付け材③)は,系列化された特定の吹付施工業者(基本的に各都道府県に1社ずつ)に対してしか販売されておらず(販工店制度),それ以外の建設作業従事者が一般的に取り扱うことはなかったこと,耐火被覆材であることから,基本的に鉄骨造建物以外には使用されず(なお,スプレーコートウェットは内装用の性能を有していなかったから,鉄骨造建物以外に使用されることは一切ない。),また,耐火建築物にのみ使用されていたこと,代替となるノンアス建材が存在すること等の個別的要因が認められる。しかし,原告らの主要原因建材の特定に当たっては,これらの点が考慮されていない。 上記各製品は,いずれもノンアス化が進められていたから,ノンアス建材が考慮されていないシェアが高いからといって,直ちに建材現場到達事実が認められる蓋然性が高くなるという関係にはない。 また,上記製品は,いずれも施工後の削り取りを予定しておらず,正規の作業手順によれば石綿粉じんが発生しないこと,削り取り作業をしたとしても,ごく少量かつ短時間で済むこと(「スプレーコートウェット」の場合は,そもそも削り取りが不可能である。)等から,施工時に発生する石綿粉じん量は少なかった。したがって,建設現場の数が多いからといって,直ちに建材現場到達事実が認められる蓋然性が高くなるという関係にもない。 被告太平洋セメントに係るシェア資料のうち昭和52年の資料(甲A1177)だけ,25%も が多いからといって,直ちに建材現場到達事実が認められる蓋然性が高くなるという関係にもない。 被告太平洋セメントに係るシェア資料のうち昭和52年の資料(甲A1177)だけ,25%もの突出して高い数値が記載されているが,これは耐火被覆用途に限ったシェアである。吹付けロックウールのうち36.1%は耐火被覆用途以外に使用されていたというのであるから,耐火被覆用途以外の数値は無視できる割合ではない。 ⑿ 被告東レACE(乙フ)被告東レACEの「ETボード(完壁)(1814)」(石綿含有窯業系サイディング㉟)は,「完壁(1815)」(同)の試作品であり,一般の流通には乗っていない。また,「完壁」は,屋外作業に係る外装材であるから,被告東レACEには石綿関連疾患発症の予見可能性がない。 ⒀ 被告ナイガイ(乙ホ)被告ナイガイが製造した吹付け石綿①,石綿含有吹付けロックウール②,石綿含有けい酸カルシウム板第2種⑪の市場シェアはいずれも極めて低く,10%に満たないものであるから,これらの建材はいずれも主要原因建材に当たらない。 ⒁ 被告ニチアス(乙マ)ア被告ニチアスは,表示方法通達が発せられて以来,安衛法の趣旨に従った警告表示を行ってきたし,平成元年以降は,石綿含有建材に「a」マークを付して,注意喚起を行ってきた。さらに,被告ニチアスでは,石綿吹付け材に限らず,他の石綿含有建材も同様に少数の特定業者を通じて販売しており,これら業者を通じて,石綿の危険性等に関する情報を提供していた。したがって,被告ニチアスに警告表示義務違反は認められない。 イ石綿吹付け材の到達についてa 被告ニチアスは,昭和49年に耐火被覆用の石綿含有吹付けロックウール②の製造販売を終了した。昭和50年以降も製造していた湿式石綿含有吹付け材③は られない。 イ石綿吹付け材の到達についてa 被告ニチアスは,昭和49年に耐火被覆用の石綿含有吹付けロックウール②の製造販売を終了した。昭和50年以降も製造していた湿式石綿含有吹付け材③は,高層ビル等の大規模設備や高い費用に見合う 建設現場でのみ施工されたため,施工面積が限定的なものにとどまっていたから,これらが一定期間にわたり本件被災者に到達したと推認することはできない。 b 被告ニチアスが製造販売した湿式石綿含有吹付け材③のうち「トムウェット(33)」は,特殊な噴霧機が必要とされることから,被告ニチアスが指定する少数の特定業者しか取り扱うことができなかったこと,「ATM-120(32)」も「トムウェット」を使用しない現場で用いられることはほとんどなかったこと,「ミネラックス(34)」は,実際には化粧塗り材として用いられ,鉄骨や天井裏の耐火被覆のために用いられてはいなかったことなどから,本件被災者がこれら製品から発生する石綿粉じんにばく露したとは考え難い。 石綿含有けい酸カルシウム保温材⑦及び石綿保温材⑩の到達について石綿含有パーライト保温材⑨は石綿含有けい酸カルシウム保温材⑦と共通性が高く,相互に代替可能な建材であるから,石綿含有パーライト保温材⑨を含めた形でシェア及び到達の推認の可否を検討すべきである。 石綿含有けい酸カルシウム板第1 種㉓の到達についてa 原告らは,石綿スレートボードと石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓を区別して,それぞれシェア上位企業を特定しているが,これらの建材は用途や使用部位に共通性が高いから(いずれも内壁等の内装材である。),到達の推認に当たり,これらのシェアを合算して検討すべきである。その場合,被告ニチアスが製造販売した石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓のシェアは 共通性が高いから(いずれも内壁等の内装材である。),到達の推認に当たり,これらのシェアを合算して検討すべきである。その場合,被告ニチアスが製造販売した石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓のシェアはいずれも10%を超えるものではないから,主要原因建材に当たらない。 b また,被告ニチアスが製造販売した石綿含有けい酸カルシウム板 第1種㉓(製品番号774,775)は,得意先の大半がゼネコン各社であり,中高層ビル等の非住宅の現場で使用され,戸建住宅ではほとんど使用されなかった。 ⒂ 被告日東紡績(乙ム)ア被告日東紡績が製造販売した石綿含有吹付けロックウール②は,シェアが10%以上とはならないこと,特定の下請事業者により施工されたこと,昭和51年以降一部建材がノンアス建材に切り替えられたこと,有害性の低い白石綿のみを使用していたこと,吹付後にコテ押えという作業を行い,吹付表面が平滑になり飛散しにくい状態となるため,ばく露の危険性が低くなること等の事情から,建材現場到達事実は認められない。 イ湿式石綿含有吹付け材③も,ほとんど市場に流通しなかったし,左官工によるコテ作業により硬化し,石綿粉じんが飛散しにくい状態であったから,建材現場到達事実は認められない。 ウ石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓は,被告日東紡績が製造業者から仕入れて取引先に販売したにすぎない。 エ石綿含有ロックウール吸音天井板㉔については,有害性の低い白石綿のみを使用していたこと,施工時にカッターナイフで切断する方法をとるため,石綿粉じんはほとんど発生しないこと,発じん性についても最も低いレベルに分類されていること,シェア算定に当たりノンアス建材を考慮していないこと,現場で毎回使用される建材ではない(天井材全体を考慮した場合のシェアは約3.2%である と,発じん性についても最も低いレベルに分類されていること,シェア算定に当たりノンアス建材を考慮していないこと,現場で毎回使用される建材ではない(天井材全体を考慮した場合のシェアは約3.2%である。)こと等から,建材現場到達事実は認められない。 ⒃ 被告JIC(乙メ)ア原告らの主張では,建物解体工に関しては全ての建材に含有する石綿がばく露の対象となるというのであるから,そのばく露の可能性は,当該建設作業員がばく露した可能性のある全ての建材に含まれる石綿を分母と して算定されるべきである。日本全体における石綿含有建材の使用量から見れば,被告JICの石綿使用量の割合は極めて小さいから,解体工である被災者との関係では主要原因建材に当たらない。 イ被告JICが製造販売した石綿含有けい酸カルシウム保温材⑦(製品番号48~54)は,石油コンビナート,発電所等のプラントの配管並びに製鉄所等の加熱炉の保温材としてのみ使用されるから,プラントの解体工事に従事した者しか触れる機会はない。また,当該建材はけい酸カルシウムの中に補強繊維として石綿を配合して成形したもので,自然に崩れることはないし,わずかに切断する場合でも手鋸によるものであって,粉じんの飛散は極めて少ない。 ウ 「タカライト(69~74)」(石綿含有けい酸カルシウム板第2種⑪)は,上記イ同様,石綿が飛散する機会は非常に少ない。「ハイスタック(106,107)」(煙突用石綿断熱材⑭)も,上記イ同様,自然に崩れることはないし,煙突ユニットとして加工された状態で搬入されるから,現場で加工することはほとんどなく,粉じんが発生・飛散する可能性もほとんどない。 エ被告JICの製品は,もともと健康被害をもたらすような石綿粉じんを発生させるものではないから,本件被災者の石綿関連疾患 加工することはほとんどなく,粉じんが発生・飛散する可能性もほとんどない。 エ被告JICの製品は,もともと健康被害をもたらすような石綿粉じんを発生させるものではないから,本件被災者の石綿関連疾患発症との因果関係は存在しない。 ⒄ 被告バルカー(乙ユ)原告らにおいて,被告バルカーが製造販売した石綿含有建材であるとして主張するものは,被告バルカーが実施権を付与した日本リンペットが製造した製品である。日本リンペットは,同社が施工する工事に限って使用する目的で石綿含有建材を製造したにすぎず,その生産量は微々たるものであった。 なお,日本リンペットは平成11年(1999年)3月に解散し,法人格も消滅した。 ⒅ 被告ノザワ(乙ラ) 原告らは,被告ノザワの混和材のシェアを100ないし90%と主張するが,他にも混和材を製造販売していた会社が複数あり,被告ノザワのシェアが上記のように高かったとは考え難い。また,被告ノザワの混和材「テーリング」から発生する石綿粉じん濃度は極めて低かった。 ⒆ 被告MMK(乙ワ)被告MMKは,古くから,製品のパンレットにおいて,各種石綿含有建材に石綿が含有されていること,石綿粉じんを吸入すると健康被害を及ぼす恐れがることなどを表示し,平成元年以降は,「a」マークを表示して,石綿が含有されている事実を表示してきた。 第3章当裁判所の判断第1節被告らの予見可能性に関する認定事実括弧内に掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,被告らにおいて,建設作業従事者が石綿関連疾患にり患する危険を認識し得たか否か(認識し得た場合にはその時期を含む。)という点に関して,以下の事実が認められる。 第1 建設作業における石綿粉じんの発散建設現場において,以下の作業をする際などに,石綿含有建材から石綿粉じんが発 識し得た場合にはその時期を含む。)という点に関して,以下の事実が認められる。 第1 建設作業における石綿粉じんの発散建設現場において,以下の作業をする際などに,石綿含有建材から石綿粉じんが発散することがあった。 木造建物の建築工事において,石綿含有スレートボード等の石綿含有建材を切断する際に,石綿粉じんが発散した。また,左官工等がモルタルを作る際に,石綿又は石綿を含有する混和材を加えてかくはんすることにより,石綿粉じんが発散した。設備工事においても,電工や配管工が石綿を含有するボードに穴を開ける際に,石綿粉じんが発散するおそれがあった。 鉄骨造建物の建築工事においても,上記の木造建物の場合と同様に石綿粉じんが発散することがあったほか,吹付け材の吹付け作業の際に,ノズルから放出された吹付け材の石綿粉じんが周囲に飛散することがあった。また,吹き付けられた石綿等を配線や配管等のために削る際にも,石綿粉じんが発散することがあっ た。 建物の増改築工事や解体工事においても,建材に含まれる石綿が粉じんとなって発散することがあった。 このほか,工場等における配管及び機械等への石綿含有保温材の取付け及び取替え等の作業において,石綿粉じんが発散することがあった。 建設作業従事者は,自らが行った作業により発散し,又は飛散した石綿粉じんに直接的にばく露することがあったほか,同じ建設現場で他の者が行った作業によって発散し,又は飛散した石綿粉じんに間接的にばく露することもあった。 第2 電動工具の普及状況及び防じんマスクの着用状況 1 電動工具の普及状況電動丸のこ,電動ドリル等の電動工具で建材を加工する場合,手工具で加工する場合に比して多量の粉じんが発散する。機械統計年報によれば,我が国におけるこれらの電動工具の年間販売台数は,昭和4 普及状況電動丸のこ,電動ドリル等の電動工具で建材を加工する場合,手工具で加工する場合に比して多量の粉じんが発散する。機械統計年報によれば,我が国におけるこれらの電動工具の年間販売台数は,昭和43年に100万台,昭和48年に200万台,昭和52年に300万台,昭和54年に400万台,昭和55年に500万台,昭和58年に600万台,平成2年に700万台まで増加し,その後も数百万台の販売台数を維持した。 (甲A437の2,3,5,6,8) 2 防じんマスクの着用状況昭和60年頃の建設現場では,吹付け工や一部のはつり工を除き,大半の労働者は防じんマスクを着用しておらず,昭和50年頃も同様であった。(甲A430・30頁,乙マ28・82頁,1009・9,10頁,弁論の全趣旨)第3 石綿粉じん濃度の測定結果 1 屋内の作業に係る測定結果労働科学研究所の木村菊二は,昭和46年(1971年),雑誌「労働の科学」26巻9号において,「作業現場の石綿粉塵」と題する論文を発表した。同論文には,昭和40年頃から昭和45年頃までに行われた測定結果であるとして, 石綿板製造工場における石綿板切断に係る石綿粉じん濃度の測定結果が記載されているところ,これによれば,除じん装置がない場合で10.8~16. 2本/立方センチメートル,除じん装置がある場合で7.4~10.0本/立方センチメートルであったとされている。(甲A5,1208)また,木村菊二は,昭和51年,第49回日本産業衛生学会・第20回日本産業医協議会において,「アスベスト粉塵の測定法についての検討」と題する講演を行った。同講演では,「最近の数年間に測定を行った」作業場における石綿粉じん濃度の測定結果が,①電動のこを使用して大型のアスベスト板を切断した場合において,吸じん装置作動中は の検討」と題する講演を行った。同講演では,「最近の数年間に測定を行った」作業場における石綿粉じん濃度の測定結果が,①電動のこを使用して大型のアスベスト板を切断した場合において,吸じん装置作動中は2.89~25.08本/立方センチメートル,吸じん装置休止中は147.03~391.50本/立方センチメートルであり,②手動のこを使用して小型のアスベスト板を切断した場合において,0.31~2.55本/立方センチメートルあるいは0.11~0.38本/立方センチメートルであったとされている。(甲A1132・372~373頁) 2 屋外建設作業に係る測定結果⑴ 慶応義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室の東敏昭らは,昭和62年,「一般家屋壁材施工時の発塵状況調査結果」を公表した。この調査結果では,同年,一般個人用住宅建設時に,屋外で電動のこぎり又は丸のこを使用して防火サイディングの切断作業をする者につき測定時間を約2~3分として石綿粉じんの個人ばく露濃度を測定した結果は,0.08本/立方センチメートル,0.17本/立方センチメートル,0.20本/立方センチメートル,0.27本/立方センチメートル,0.27本/立方センチメートル,1. 16本/立方センチメートル,2.05本/立方センチメートルであったとされている(以下,この測定結果を「測定結果①」という。)。(乙アA206・2~4頁)⑵ 海老原勇は,平成19年,「建設作業者の石綿関連疾患-その爆発的なひ ろがり-」と題する書籍を出版した。同書籍では,昭和62年,屋外の木造住宅の建設現場において,防じん電動丸のこ,電動丸のこ又は手動のこぎりを使用して外壁材の切断及び張付けの作業をする者につき測定時間を129~203分として石綿粉じんの個人ばく露濃度を測定した結果は,4件で0.94~ いて,防じん電動丸のこ,電動丸のこ又は手動のこぎりを使用して外壁材の切断及び張付けの作業をする者につき測定時間を129~203分として石綿粉じんの個人ばく露濃度を測定した結果は,4件で0.94~1.58本/立方センチメートルであり,防じん電動丸のこを使用して外壁材の切断を中心とする作業をする者につき測定時間を11~15分として個人ばく露濃度を測定した結果は,3件で2.3~6.7本/立方センチメートルであったとされている(以下,この測定結果を「測定結果②」という。)。(甲A108・4~8頁)⑶ 名古屋大学医学部衛生学教室の久永直見らは,昭和63年,雑誌「労働衛生」に「アスベストに挑む三管理環境管理と作業管理-建築業の現場を中心に-」と題する論文を発表した。同論文では,同年,屋根葺き用石綿スレートによる屋根葺き作業をする者につき測定時間を115分としてその者の鼻先で気中石綿粉じん濃度を測定した結果は,0.13本/立方センチメートルであったとされている(以下,この測定結果を「測定結果③」という。)。 (甲A430・28頁)⑷ 労働省労働基準局長は,平成4年1月1日付けで「石綿含有建築材料の施工作業における石綿粉じんばく露防止対策の推進について」と題する通達(同日基発第1号)を発出した。同通達に添付された資料では,「石綿含有建築材料の施工における作業マニュアル」(後記⑸の初版と考えられる。)を出典として,屋外で除じん装置付き電動丸のこを使用してスレートの施工作業をする者につき測定時間を各120分として石綿粉じんの個人ばく露濃度を測定した結果は,4件で0.006~0.032本/立方センチメートルであったとされている(以下,この測定結果を「測定結果④」という。)。(乙アB45・221頁)⑸ 建設業労働災害防止協会は,平成9年に「改訂 は,4件で0.006~0.032本/立方センチメートルであったとされている(以下,この測定結果を「測定結果④」という。)。(乙アB45・221頁)⑸ 建設業労働災害防止協会は,平成9年に「改訂石綿含有建築材料の施工 における作業マニュアル-石綿粉じんばく露防止のために-」を出版した(初版は平成4年)。このマニュアルでは,昭和62年から昭和63年にかけての測定結果として,屋外で除じん装置の付いていない電動丸のこ又はバンドソーを使用してスレート等の切断,葺上げ,張付け等の作業をする者につき採取時間を32~180分として石綿粉じんの個人ばく露濃度を測定した結果は,14件で0.01~0.31本/立方センチメートル(うち0. 15本/立方センチメートル以上のものは5件)であったとされ,昭和62年の測定結果として,屋外で除じん装置付き電動丸のこを使用して押出成形板の切断,葺上げ,張付け等の作業をする者につき採取時間を15~230分として石綿粉じんの個人ばく露濃度を測定した結果は,10件で0.002~0.091本/立方センチメートルであったとされている(以下,この測定結果を「測定結果⑤」という。)。上記マニュアルには,屋外での石綿含有建材の切断作業に際しては,大気の拡散効果により,除じん装置を使用していなくても,風向き,天候によっては石綿粉じんの管理濃度の5分の1以下となり,作業者に対してはばく露抑制となっている旨が記載されている。 (甲A248・31,36,37頁)⑹ ドイツ職業保険組合中央会は,1997年(平成9年),石綿のばく露歴からばく露量を推定し,石綿原因の肺がんの労災認定を行う際のマニュアルとしてBKレポートを出版した。BKレポートでは,屋外で除じん装置のない研削切断器を使用して行う配管工事において,管の切断10回,積 らばく露量を推定し,石綿原因の肺がんの労災認定を行う際のマニュアルとしてBKレポートを出版した。BKレポートでは,屋外で除じん装置のない研削切断器を使用して行う配管工事において,管の切断10回,積み上げ,積み下ろし等の作業をした場合の繊維濃度90パーセンタイル値は2本/立方センチメートル,外壁化粧張りの作業をした場合の繊維濃度90パーセンタイル値は0.4本/立方センチメートルであったとされている(以下,この測定結果を「測定結果⑥」という。)。なお,「BKレポート」の上記測定データは,「傷害保険組合関係の情報源から得た」ものと記載されているが,その元データや,測定条件の詳細は不明である。(甲A492の1・2〔1, 10,11頁〕,弁論の全趣旨・原告らの平成29年10月12日付け証拠説明書)⑺ 平成17年に行われた第45回日本労働衛生工学会・第26回作業環境測定研究発表会の抄録集には,外山尚紀らによる建設現場における石綿含有建材加工時の気中石綿濃度に関する研究の報告が掲載されている。同報告では,屋根上でサンダーを使用して屋根用化粧スレートを加工する作業又は屋外で電動丸のこを使用してスレート若しくはサイディング材を加工する作業をする者につき採取時間を10~15分として石綿粉じんの個人ばく露濃度を測定した結果は,0.11本/立方センチメートル,0.14本/立方センチメートル,0.17本/立方センチメートル,0.25本/立方センチメートルであったとされている(以下,この測定結果を「測定結果⑦」という。)。(乙イウ2005)第4 石綿関連疾患に係る医学的知見の集積状況等 1 労働省は,労働衛生試験研究として,昭和31年度から昭和34年度まで,石綿肺等のじん肺に関する研究を専門家に委託した。昭和31年度及び昭和32年度には, 綿関連疾患に係る医学的知見の集積状況等 1 労働省は,労働衛生試験研究として,昭和31年度から昭和34年度まで,石綿肺等のじん肺に関する研究を専門家に委託した。昭和31年度及び昭和32年度には,石綿肺の診断基準に関する研究が行われ,石綿肺のり患の実態,臨床像,石綿粉じんにばく露することとの因果関係等が明らかとなり,診断基準の設定にまで到達したと報告された。この昭和32年度の研究の報告がされた昭和33年3月頃には,石綿肺に関する医学的知見が確立した。 (甲A19,乙アA23,24,1010) 2 セリコフらは,1964年(昭和39年),米国の医学誌において,「アスベストばく露と新生物」と題する論文を発表した。同論文では,建築業の断熱作業労働者の石綿ばく露は比較的軽度で断続的であるが,1943年(昭和18年)以前にこの産業に就業した632人について1962年(昭和37年)まで追跡調査を行ったところ,45人が肺又は胸膜のがんにより死亡しており,うち3人は胸膜中皮腫であったこと,このほか腹膜中皮腫の者が1名おり,2 55人の死亡者のうち4人が中皮腫であったこと,これは,このようなまれな腫瘍の発症率としては非常に高いこと等が報告されている。(甲A204の1・2〔1頁〕) 3 労働省労働基準局長は,昭和46年1月5日付けで,「石綿取扱い事業場の環境改善等について」と題する通達(同日基発第1号)を発出し,その中で,「最近,石綿粉じんを多量に吸入するときは,石綿肺をおこすほか,肺がんを発生することもあることが判明し,また,特殊な石綿によって胸膜などに中皮腫という悪性腫瘍が発生するとの説も生まれてきた。」と指摘した。(乙アB20) 4 国立療養所近畿中央病院院長の瀬良好澄は,昭和46年,雑誌「労働の科学」26巻9号において,「石綿作業 などに中皮腫という悪性腫瘍が発生するとの説も生まれてきた。」と指摘した。(乙アB20) 4 国立療養所近畿中央病院院長の瀬良好澄は,昭和46年,雑誌「労働の科学」26巻9号において,「石綿作業と肺疾患」と題する論文を発表した。同論文では,石綿と肺がんの発症との間に因果関係があることについては今や異論のないところであるとされ,石綿吹付け作業に従事した39名中6名に石綿肺を認めたこと等から吹付け作業については強力な予防指導を要すると思われるなどとされている。(甲A8・4,6頁) 5 労働省労働衛生研究所の松下秀鶴及び河合清之は,昭和46年,雑誌「労働の科学」26巻9号において,「アスベストの発がん性」と題する論文を発表した。同論文では,石綿ばく露と中皮腫の関係について強い関心が寄せられるようになったのは1960年(昭和35年)のワグナーらの報告以来であり,この報告以後,胸膜及び腹膜の中皮腫に関する疫学的研究が,英国,南アフリカ,米国,カナダ,イタリア,ドイツ等から続々と発表され,その研究結果からは,比較的低濃度の石綿ばく露であっても,長い年月を経れば十分に中皮腫が発生する危険性があるなどとされている。また,同論文では,石綿に発がん性があるということは,疫学的にも実験腫瘍学的にも,まず疑う余地はないように思われるなどとされている。(甲A8・17,18,20頁) 6 セリコフらが1972年(昭和47年)に行った報告では,米国及びカナダ の断熱作業労働者1万7800人の1967年(昭和42年)から1971年(昭和46年)までの肺がんと胸膜中皮腫による死亡者数について,石綿ばく露の開始からの年数に応じて分析がされ,肺がんによる死亡はばく露開始後15~19年で有意に増加し,肺がんによる死亡者数が最も多いのはばく露開始後30年以上3 膜中皮腫による死亡者数について,石綿ばく露の開始からの年数に応じて分析がされ,肺がんによる死亡はばく露開始後15~19年で有意に増加し,肺がんによる死亡者数が最も多いのはばく露開始後30年以上39年までであり,ばく露開始から少なくとも40年間観察しないと石綿ばく露による影響を評価するのは困難であるとされている。上記発表は,昭和47年度環境庁公害研究委託費によるアスベストの生体影響に関する研究報告でも紹介されている。(甲A31・62頁,甲A390の2・15~17頁) 7 国際労働機関(ILO)は,1972年(昭和47年)に開催した「職業がんの管理と予防に関する専門家会議」において,石綿は職業がんの危険性がある物質であると指摘した。(甲A307の1・20頁) 8 世界保健機関(WHO)の付属機関である国際がん研究機関(以下「IARC」という。)は,1972年(昭和47年)10月,石綿の生物学的影響に関して討議を行った。その結果の報告(「国際がん研究機関長に対する石綿癌諮問委員会の報告」)では,市販されている主要な種類の石綿は,全て肺がんを引き起こし得るとされ,アンソフィライトを除く市販の全ての種類の石綿が中皮腫を引き起こし得る証拠が得られているとされている。(甲A307の1・21,22頁,316の1・2〔2,3頁〕) 9 労働省労働基準局長は,昭和48年7月11日付けで,「特定化学物質等障害予防規則に係る有害物質(石綿およびコールタール)の作業環境気中濃度の測定について」と題する通達(同日基発第407号。以下「昭和48年通達」という。)を発出した。昭和48年通達では,通達発出の理由として,最近,石綿が肺がん,中皮腫等を発生させることが明らかとなったこと等により,各国の規制においても気中石綿粉じん濃度を抑制する措置が強化されつつあるこ 出した。昭和48年通達では,通達発出の理由として,最近,石綿が肺がん,中皮腫等を発生させることが明らかとなったこと等により,各国の規制においても気中石綿粉じん濃度を抑制する措置が強化されつつあることが挙げられていた。(乙アB51) IARCは,1973年(昭和48年),化学物質の人体に対する発がん性リスクについての検討結果を公表するモノグラフ集の第2巻を発行した。そこでは,石綿のがん原性に関し,肺がんの過剰リスクは,過去の強いばく露の結果であることが通常であり,肺がんのリスクは石綿肺に関連しているようである,石綿を製造,利用する産業では,中皮腫はクロシドライトへのばく露で引き起こされており,アモサイト,クリソタイルで引き起こされる頻度はより少ない,最初のばく露から腫瘍の発現までの期間は長く,通常は30年以上であるなどとされている。(乙アA26,1009の1・2) 11 労働省は,昭和51年,石綿粉じんにばく露することによる肺がん及び中皮腫の労災認定基準を検討するため,「石綿による健康障害に関する専門家会議」を設置した。同会議は,産業現場における石綿ばく露の実態,石綿関連疾患の臨床,病理,疫学,環境管理等に関する国内外の文献を幅広く検討し,昭和53年9月に報告書をまとめた。同報告書では,石綿肺の進展度と肺がんの合併率との間には直線的な関連はなく,軽度所見や無所見の石綿ばく露労働者にも肺がんの発生が認められるとされ,石綿ばく露量が大となるにつれて肺がん発生の超過危険が大きくなる傾向がみられ,症例としては石綿ばく露歴がおおむね10年を超える労働者に発生したものが多いとされている。また,同報告書では,現時点の知見では,全ての種類の石綿繊維に肺がんの危険性があると考えるのが妥当であるとされ,中皮腫については,石綿粉じん濃度が低 年を超える労働者に発生したものが多いとされている。また,同報告書では,現時点の知見では,全ての種類の石綿繊維に肺がんの危険性があると考えるのが妥当であるとされ,中皮腫については,石綿粉じん濃度が低くても発生した例もあり,肺がんを発生するのに必要なばく露量よりも少量で発生する可能性があるなどとされている。(乙アA40・170~172頁) 12 WHOが1989年(平成元年)に発表した「石綿の職業ばく露限界」と題する報告書では,それ以下ではがんが起こらないという石綿ばく露の閾値が存在するという実質的証拠はないなどとされている。 (乙アA4の1・2〔5頁〕)第5 建設業労働者のじん肺症発生件数及びじん肺合併症発生件数建設業労働者のじん肺症発生件数(昭和53年度以前)又はじん肺症及びじん 肺合併症発生件数(昭和54年度以降)は,昭和45年度には77件であったが,昭和46年度に100件を,昭和49年度に200件を,昭和51年度に400件をそれぞれ超え,昭和52年度に516件に達した。その後,平成15年度に至るまで増減を繰り返したが,多い年度では700件を超え,少ない年度でも200件を下回ることはなかった。建設業の中にはずい道工事も含まれることから,この件数が全て石綿肺の発生件数ということはできないものの,石綿肺の発生件数がかなりの割合を占めるものと推測される。また,産業別の石綿関連疾患発生件数の統計のある平成17年度以降,建設業労働者の石綿関連疾患の発生件数は,同年度が299件,平成18年度が1105件であり,平成19年度から平成26年度までは500件台又は600件台で推移した。(乙アA306)第6 石綿粉じん濃度の規制等1⑴ 日本産業衛生協会(昭和47年に日本産業衛生学会に名称が変更された。 以下,この名称変更の前後を通じ 度までは500件台又は600件台で推移した。(乙アA306)第6 石綿粉じん濃度の規制等1⑴ 日本産業衛生協会(昭和47年に日本産業衛生学会に名称が変更された。 以下,この名称変更の前後を通じて「日本産業衛生学会」という。)は,昭和40年,石綿粉じんの許容濃度として,1立方メートル当たり2mg(石綿の繊維数に換算すると,1立方センチメートル当たり33本。)を勧告した。 許容濃度とは,労働者が有害物に連日ばく露した場合に,空気中の有害濃度がこの数値以下であれば,健康に有害な影響がほとんど見られないという濃度であり,その数値は,感受性が特別に高くない労働者が,1日8時間以内,中等労働に従事する場合の1日のばく露労働時間内の平均濃度である。(甲A95,弁論の全趣旨・乙ア準備書面⑷38頁)⑵ 日本産業衛生学会は,昭和49年,昭和40年の勧告に示された石綿粉じんの許容濃度の数値の改訂を行い,クリソタイル,アモサイト,トレモライト,アンソフィライト及びアクチノライトの気中許容濃度を,時間荷重〔ママ〕平均として,5μm(マイクロメートル)以上の繊維として1立方センチメートル当たり2本,天井値(いかなる時も15分間の平均濃度がこの値を超えてはならない数値)として,5μm以上の繊維として1立方センチメ ートル当たり10本とし,クロシドライトの許容濃度については,これらの濃度をはるかに下回る必要があるとした。この改訂の理由として,石綿肺のみでなく肺及び消化器のがん及び中皮腫が注目されるようになり,日本の現行許容濃度が近年に各国で設定又は改訂された許容濃度と比較すると極めて高い値であること等が挙げられている。(乙アA136・58頁)。 ⑶ 日本産業衛生学会は,昭和57年,クロシドライトの許容濃度として,1立方センチメートル当たり0.2本を 許容濃度と比較すると極めて高い値であること等が挙げられている。(乙アA136・58頁)。 ⑶ 日本産業衛生学会は,昭和57年,クロシドライトの許容濃度として,1立方センチメートル当たり0.2本を勧告した。(甲A98)⑷ 日本産業衛生学会は,平成13年,リスクアセスメントの手法を導入し,石綿を発がん物質と分類した上,過剰発がん生涯リスクレベル10-3,10-4に対応する評価値として,クリソタイルのみのときは,それぞれ1ml当たり0.15本,1ml当たり0.015本,クリソタイル以外の石綿繊維を含むときは,それぞれ1ml当たり0.03本,1ml当たり0.003本を勧告した。上記の評価値の意味は,1日8時間,週40時間程度,50年間にわたり上記の濃度のクリソタイルのみの石綿粉じんにばく露した場合に,1ml当たり0.15本では1000人に1人,平均寿命に到達するまでに肺がん又は中皮腫で死亡するリスク(過剰発がんリスク)が生ずるという意味である。 (乙イウ1~3,弁論の全趣旨〔乙ケ準備書面5・11頁〕)2⑴ 労働大臣は,昭和46年4月28日,旧特化則6条2項の規定に基づき,局所排気装置の性能要件として,石綿の抑制濃度の規制値を1立方メートル当たり2mgと定めた(同年労働省告示第27号)。(乙アB24)⑵ 労働省労働基準局長は,昭和48年7月11日付けで,昭和48年通達を発出し,当面,石綿粉じんの抑制濃度を5μm以上の繊維として1立方センチメートル当たり5本と指導することを指示した。これは,当時,石綿について,濃度基準を繊維数で表示することが医学的に適切であると考えられるようになったことや,石綿が悪性新生物を発生させるとの知見が示されたことなどから,石綿粉じんを抑制する措置を強化するものであった。(乙アA 78・34,35頁 学的に適切であると考えられるようになったことや,石綿が悪性新生物を発生させるとの知見が示されたことなどから,石綿粉じんを抑制する措置を強化するものであった。(乙アA 78・34,35頁,乙アB25,51)⑶ 労働大臣は,昭和50年9月30日,特化則に基づく告示を改正し,石綿の抑制濃度の規制値を5μm以上の繊維として1立方センチメートル当たり5本と定めた。(乙アB52)⑷ 労働省労働基準局長は,昭和51年5月22日付けで,「石綿粉じんによる健康障害予防対策の推進について」と題する通達(同日基発第408号)を発出し,最近,関係各国において環気中の石綿粉じん濃度の規制を強化しつつあるとして,当面,1立方センチメートル当たり2本(クロシドライトにあっては,1立方センチメートル当たり0.2本)以下の環気中粉じん濃度を目途とするよう指導することを指示した。(乙アB34)⑸ 労働省労働基準局長は,昭和59年2月13日付けで,「作業環境の評価に基づく作業環境管理の推進について」と題する通達(同日基発第69号)を発出し,石綿の管理濃度を1立方センチメートル当たり2本とした。管理濃度とは,有害物質に関する作業環境の状態を評価するために,対象となる区域について実施した測定結果から当該区域の作業環境管理の良否を判断する際の指標である。個々の労働者のばく露量と対比することを前提として設定されている許容濃度とは異なる考え方であり,環境の状態が健康にとって許容できるかどうかを判定するためのものではないことから,管理濃度の超過は,健康障害に直ちに結びつくものではないとされる。(乙アA78・35頁,137・45~47頁,乙アB54,55・252,253頁)⑹ 労働大臣は,昭和63年法律第37号による安衛法の改正に伴い,管理濃度に基づく作業環境 くものではないとされる。(乙アA78・35頁,137・45~47頁,乙アB54,55・252,253頁)⑹ 労働大臣は,昭和63年法律第37号による安衛法の改正に伴い,管理濃度に基づく作業環境管理が法制化されたことから,同年9月1日,石綿の管理濃度を5μm以上の繊維として1立方センチメートル当たり2本(クロシドライトにあっては,1立方センチメートル当たり0.2本)と定めた(同年労働省告示第79号)。(乙アB57)⑺ 厚生労働大臣は,平成16年10月1日,石綿の管理濃度を5μm以上の 繊維として1立方センチメートル当たり0.15本と定めた(同年厚生労働省告示第369号)。(乙アB62)第2節被告国に対する請求について第1 被告国の責任に関する最高裁判所の判断等 1 前提事実第5の1のとおり,最高裁判所は,労働大臣が,安衛法に基づく各種規制権限を行使しなかったことは,屋内建設現場における建設作業に従事して石綿粉じんにばく露した者のうち,労働者との関係においても,また,安衛法2条2号において定義された労働者に該当しない者との関係においても,昭和50年10月1日以降,国家賠償法1条1項の適用上違法であるなどと判断するとともに,その違法状態は,平成16年9月30日まで継続し,同年10月1日以降は解消されたと判断した(神奈川1陣最判)。原告6は,当該判断内容については特に争っていない。 2 前提事実第5の3のとおり,最高裁判所は,被告国が,平成13年から平成16年9月30日までの期間に,屋外建設作業に従事する者に石綿関連疾患にり患する危険が生じていることを認識することができたということはできないと判断した(京都1陣最判)。原告6は,当該判断には事実認定の誤り等があるとしてこれを争うとともに,当該判断を前提としても,被災 り患する危険が生じていることを認識することができたということはできないと判断した(京都1陣最判)。原告6は,当該判断には事実認定の誤り等があるとしてこれを争うとともに,当該判断を前提としても,被災者03との関係では,被告国において石綿関連疾患にり患する危険が生じていることを認識することができた旨を主張する。 3 そこで,以下,被災者03の作業実態を検討し,次いで被告国の予見可能性について論じる。 第2 被災者03の作業実態について 1 証拠(甲D6の3の1,被災者03本人)によれば,①被災者03はサイディング工としてのみ稼働し,稼働した現場は全て屋外であったこと,②主な作業内容は,新築の一軒家において,サイディング材を切断して木造建物の外壁に張り付けることであったこと,③サイディング材の切断は屋外で行われたが, 建物の横で行っていたため,風通しはあまり良くなかったこと,④切断の際には電動の丸鋸を使うために大量の粉じんが発生し,作業を始めて1時間もすると顔が真っ白になる状態であったことが認められる。 以上によれば,被災者03が従事した石綿粉じんばく露作業は,屋外建設作業に限られると認めることが相当である。 2 これに対し,原告6は,近隣住民に粉じんで迷惑をかけないという配慮はどの建設作業従事者も当然に行っているから,他のサイディング工が述べるような車庫やビニールシートで囲まれた中での作業が行われたことも当然推測されるなどと主張する。 しかし,原告6も認めるとおり,被災者03の陳述書及び本人尋問では,上記の事情には何ら触れられていない(被災者03は,本人尋問でサイディング材を切断する場所について尋ねられた際,「建物の横に材料を積んで,大工さんたちの邪魔にならないようにしてやっていました」と述べている〔4頁〕。)。 かえっ いない(被災者03は,本人尋問でサイディング材を切断する場所について尋ねられた際,「建物の横に材料を積んで,大工さんたちの邪魔にならないようにしてやっていました」と述べている〔4頁〕。)。 かえって,被災者03は,本人尋問においてよく洗濯物が汚れるという苦情を受けたとも述べており(24頁),作業中は大気中に粉じんが飛散する常態であったことがうかがわれる。 また,確かに車庫でサイディング材を切断したことがあると述べる者(028)も存在するが(甲A2002),同人は大工としての経験を述べるものであり,「大工さんたちの邪魔にならないように」サイディング材を切断していた旨を述べる被災者03の作業実態と同一であるとは,直ちには認め難い。そもそも被災者03が主に従事した新築の一軒家の工事において,車庫が存在することが通常であるとは考え難く,この点からも,車庫内で切断作業が行われていたとは認め難い(車庫内での作業に言及する者は,改築作業にも相当程度従事している。)。 ビニールシートに囲まれた中での切断作業という点については,これが密閉された作業空間であるとは認め難い上(被災者11本人6,18頁,被災者1 4本人5,26頁),シート内では相当の粉じんが舞っていたとする者も,居住中の住宅の改修工事に関して述べるにとどまる(被災者09本人16,17頁)から,主に一軒家の新築工事に従事していた被災者03の作業実態と同視できるものではない。 したがって,原告6の主張は採用できない。 第3 屋外建設作業に従事する者との関係における被告国の責任について 1 昭和63年9月1日から平成16年9月30日までの期間において,被告国が法令により定めていた石綿粉じん濃度の規制値は,管理濃度としての2本/立方センチメートルであった。同期間中,日本産業衛生学 1 昭和63年9月1日から平成16年9月30日までの期間において,被告国が法令により定めていた石綿粉じん濃度の規制値は,管理濃度としての2本/立方センチメートルであった。同期間中,日本産業衛生学会から0.15本/立方センチメートルという評価値が発表されたが,これは法令上の規制値ではなく,その意味合い(1日8時間,週40時間程度,50年間にわたり上記の濃度のクリソタイルのみの石綿粉じんにばく露した場合に,1ml当たり0. 15本では1000人に1人,過剰発がんリスクが生ずる。)に照らしても,当該数値以上の濃度の石綿粉じんに短時間ばく露したことによって,直ちに上記過剰発がんリスクが発生するものでもない。 また,前記認定事実第3(石綿粉じん濃度の測定結果)によれば,屋外建設作業に係る石綿粉じん濃度の測定結果は,全体として屋内の作業に係る石綿粉じん濃度の測定結果を大きく下回ることが認められる。これは,屋外の作業場においては,屋内の作業場とは異なり風等により自然に換気がされ,大気で拡散される割合が大きいことから,石綿粉じん濃度が薄められるためであることがうかがわれる(前記認定事実第3の2⑸)。そうすると,測定結果に0.15本/立方センチメートルを上回るものがあるとしても,そのことをもって直ちに被告国が屋外建設作業に従事する者に石綿関連疾患にり患する危険が生じていることを認識できたとはいえない。 さらに,屋外の作業に係る石綿粉じんの測定結果のうち0.15本/立方センチメートルを上回るものについて見ても,測定結果①及び⑤については主に 石綿含有建材の切断作業等をする者につきその作業をする限られた時間の個人ばく露濃度を測定したものであり,測定結果⑥については測定時間等の測定条件の詳細が明らかでないから,これらの測定結果をもって,屋外建 含有建材の切断作業等をする者につきその作業をする限られた時間の個人ばく露濃度を測定したものであり,測定結果⑥については測定時間等の測定条件の詳細が明らかでないから,これらの測定結果をもって,屋外建設作業に従事する者が就業時間を通じて当該濃度の石綿粉じんにばく露していたということはできない(前述した評価値の定義に照らし,作業時間中に短時間,これを超える濃度の石綿粉じんにばく露したとしても,直ちに健康被害が生ずる危険があったとはいい難いものである。)。 以上によれば,被告国は,昭和50年10月1日から平成16年9月30日までの期間に,屋外建設作業に従事する者に石綿関連疾患にり患する危険が生じていることを認識することができたと認めることはできない(京都1陣最判)。 2 上記認定に反する原告6の主張はいずれも採用できない。その理由は以下のとおりである。 ⑴ 原告6は,測定結果②は平成10年に出版された書籍に記載されていたこと,測定結果④は除じん装置を設置した状況下でのものが含まれていることなどを指摘する。 しかし,前者については,証拠上,指摘された書籍を特定できない。また,後者については,測定結果④と屋内の作業に係る測定結果を比較すれば,同様に除じん装置が付いた電動のこであっても,その粉じん濃度に顕著な差があることが明らかであり,このことは屋内と屋外の作業を区別する合理的根拠となり得るものである。 ⑵ 原告6は,①前述した各測定結果によれば,作業時の条件次第では石綿粉じん濃度が0.15本/立方センチメートルはもとより,2本/立方センチメートルを超える場合があることを十分に認識し得たのであり,大きなばらつきのある測定結果の存在は,屋外建設作業についても石綿関連疾患にり患する危険性を認識させるに十分なものであること,②評価値はそれ単体で ルを超える場合があることを十分に認識し得たのであり,大きなばらつきのある測定結果の存在は,屋外建設作業についても石綿関連疾患にり患する危険性を認識させるに十分なものであること,②評価値はそれ単体で安 全性を意味するものではなく,それ以下なら許容されるというリスクレベルではないから,リスクレベル10-4に対応する評価値(クリソタイルのみで0.0015本)に依拠して考えるべきであること,③閾値がないという石綿の有害性に鑑みれば,環境ばく露レベルを大きく超える職業性ばく露に関し,屋内に比べて低濃度であるというだけで,何の安全対策も危険情報の提供さえも施されないまま使い続けられていることの危険性を認識し得なかったとは考え難いこと等を指摘する。 しかし,平成16年9月30日までに被告国が認識し得た測定結果のうち,2本/立方センチメートルを超える測定結果(測定結果①)や0.15本/立方センチメートルを超える測定結果(測定結果⑤)は,前述したとおり,限られた時間における個人ばく露濃度にすぎず,直ちに健康被害が生ずる危険性があることを示すものとはいい難いから,これをもって石綿関連疾患にり患する危険を認識させるものと評価することはできない。 また,評価値がそれ単体で安全性を意味するものではないとしても,逆に,これを超えたからといって直ちに危険性を示すものともいえず,リスクレベル10-4に対応する評価値(クリソタイルのみで0.0015本)に依拠して予見可能性を判断することが相当とはいえない。 なお,石綿の発がん性に閾値がないとしても,環境ばく露レベルを超えるばく露があることをもって,石綿関連疾患にり患する危険を認識させるものとはいえない。 ⑶ 原告6は,通常は屋外建設作業で用いられる建材を取り扱う場合であっても,切断等の作業が屋内ある ベルを超えるばく露があることをもって,石綿関連疾患にり患する危険を認識させるものとはいえない。 ⑶ 原告6は,通常は屋外建設作業で用いられる建材を取り扱う場合であっても,切断等の作業が屋内あるいはこれに準ずる場所で行われることがあり,そのような作業実態は被告国も当然に把握していたはずであるから,屋内の作業に関する測定結果をもって,石綿関連疾患にり患する危険の予見可能性を判断すべきであるとも主張する。 しかし,被災者03が屋外建設作業に従事していた者であり,原告6が主 張するような屋内あるいはこれに準ずる場所での作業に従事していなかったことは前記認定のとおりであるから,上記主張は結論を左右するものではない。 第4 まとめ以上のとおりであるから,その余の争点について論じるまでもなく,原告6の被告国に対する請求には理由がない。 第3節被告企業らに対する請求について第1 原告らが主張する安全性確保義務について 1 原告らは,石綿含有建材から生ずる石綿粉じんが,人の生命,健康という最も尊重されるべき法益を侵害する重大な危険性を有することからすれば,石綿含有建材を製造販売した被告企業らは,当初から,①石綿粉じんの危険性に関する医学的知見の進展等を継続的に研究・調査する義務,②販売先や販売量等の情報を記録・保存する義務,③既に流通に置かれた石綿含有建材の使用状況の変化等を追跡監視する義務等を負っていたというべきであり,被告企業らの予見可能性や各種義務違反の有無は,これらの義務があることを前提に判断されるべきであると主張する。 2 確かに石綿粉じんは,戦前から既に有害性が問題視されていた(例えば,保安院社会保険局健康保険相談所大阪支所長であった助川浩らが昭和15年に発表した報告書では,昭和12年から昭和15年にかけて, 2 確かに石綿粉じんは,戦前から既に有害性が問題視されていた(例えば,保安院社会保険局健康保険相談所大阪支所長であった助川浩らが昭和15年に発表した報告書では,昭和12年から昭和15年にかけて,石綿工場等に勤務する650人を調査対象に行われた一般健康調査において,65人が石綿肺罹患者,15人が石綿肺疑いとの結果が得られたとして,飛じん〔石綿粉じんばく露量〕と勤続年数が石綿肺罹患の二大因子であることが結論付けられたとする。甲A12・3,5,32,86頁等〕)。製品を製造し販売する企業は,自社の製品の危険性の有無に強い関心を有しているのが通常であるから,石綿含有建材を製造する企業についても,石綿に関する医学情報を積極的に収集していたものと考えられ,また,積極的に収集すべきものであったということがで きる(上記①)。 他方で,上記②や③のような義務を課することは,わが国の石綿の使用量の推移等(前提事実3参照)を踏まえると,石綿含有建材を製造販売する企業に相当の経済的負担を強い得るものである。また,石綿粉じんばく露と石綿関連疾患の発症との因果関係が明らかとなったのは,石綿粉じんの有害性が認識された時点より相当程度後のことであり(前記認定事実第4),その医学的知見も,当初は主に石綿製造工場等における調査研究を踏まえたものであった(乙アA23・1頁等)。これらの事情を踏まえると,石綿含有建材を製造販売する企業らが,建設作業従事者の石綿被害に関する予見可能性が認められるより前の時点において上記②や③のような義務を負っていたとはいい難い。この点に係る原告らの主張は採用できない。 第2 建設作業従事者の石綿被害に関する被告企業らの予見可能性 1 屋内建設現場における建設作業に従事した者との関係⑴ 被告企業らの予見可能性について 点に係る原告らの主張は採用できない。 第2 建設作業従事者の石綿被害に関する被告企業らの予見可能性 1 屋内建設現場における建設作業に従事した者との関係⑴ 被告企業らの予見可能性について前記認定事実のとおり,昭和33年3月頃には,石綿肺に関する医学的知見が確立し(認定事実第4の1),昭和47年には,石綿粉じんにばく露することと肺がん及び中皮腫の発症との関連性並びに肺がん及び中皮腫が潜伏期間の長い遅発性の疾患であることが明らかとなっていた(認定事実第4参照)。前述したとおり,石綿含有建材を製造する企業としては石綿に関する医学情報を積極的に収集していたものと考えられることからすれば,被告企業らにおいても,その頃には同様の認識を有するに至っていたことがうかがわれる(被告企業らの中にも会員がいるスレート協会の四十年史においても,昭和47年には石綿症関係で各企業の対策,研究が急務となった旨が記載されている〔甲C2・128頁〕。)。そして,昭和48年には,石綿が肺がん,中皮腫等を発生させることが明らかとなったこと等を理由として,石綿粉じん対策の指導を大幅に強化する内容の昭和48年通達が発出された(前記認 定事実第4の9,同第6の2⑴)ほか,昭和49年には,日本産業衛生学会が,他国の許容濃度の数値を踏まえて,昭和40年の勧告に示された石綿粉じんの許容濃度の数値を厳格化しており(前記認定事実第6の1⑵),規制強化の流れも明らかとなっていた。 また,昭和50年当時の建設現場は,我が国に輸入された石綿の約7割が建設現場で使用され,多量の粉じんを発散する電動工具の普及とあいまって,石綿粉じんにばく露する危険性の高い作業環境にあったということができる(前記認定事実第2の1)。当時,吹付け工や一部のはつり工を除き,大半の労働者は防じん じんを発散する電動工具の普及とあいまって,石綿粉じんにばく露する危険性の高い作業環境にあったということができる(前記認定事実第2の1)。当時,吹付け工や一部のはつり工を除き,大半の労働者は防じんマスクを着用していなかったから(前記認定事実第2の2),建設作業従事者に,石綿粉じんにばく露することにより石綿関連疾患にり患する広範かつ重大な危険が生じていたということができる(現に,建設業労働者のじん肺症発生件数が昭和40年代後半から急増し,その後も,建設業労働者のじん肺症及びじん肺合併症発生件数又は石綿関連疾患の発生件数が高い水準にあった〔前記認定事実第5〕。)。これらはいずれも石綿の使用状況等に関する基本的な事実関係であり,市場調査等の際にも参考にされた情報と考えられるから,石綿含有建材を製造販売する被告企業らがおおむね認識していた事実と認められる。以上の経緯を踏まえれば,石綿含有建材の製造販売をしていた被告企業らは,昭和50年1月1日には,屋内建設現場における建設作業に従事する者との関係で,当該建材によって石綿関連疾患にり患する危険を認識することができたと認めることが相当である(被告企業らにおいて,同時点では上記危険を認識し得なかった者がいたことをうかがわせる事情は見当たらない。)。このことは,例えば被告ニチアスの社史において,石綿粉じんによる健康障害の懸念の高まりを受け,昭和40年代後半から脱石綿の動きを本格化させたとしていること(甲C3の1・153,154頁)などからも裏付けられる。 ⑵ 被告企業らの主張に対する判断 ア被告企業らは,被告国の規制権限の不行使が国賠法1条1項の適用上違法となる始期について,昭和50年10月1日と判断されたこと(神奈川1陣最判参照)を挙げ,被告企業らの予見可能性は,どんなに早くとも 被告企業らは,被告国の規制権限の不行使が国賠法1条1項の適用上違法となる始期について,昭和50年10月1日と判断されたこと(神奈川1陣最判参照)を挙げ,被告企業らの予見可能性は,どんなに早くとも同日以降に生じたと考えるべきであるなどと主張する。 しかし,被告企業らが,昭和50年1月1日には,被告企業らの予見可能性を基礎付ける事情を認識していたとみられることは前記認定説示のとおりである。被告企業らが主張する事情(企業の調査・情報収集能力が国に比べて劣後すること等)は一般論にとどまるものであり,結論を左右するに足る事情とはいえない。 イ被告企業らは,特にクリソタイルについては他の種類の石綿(アモサイトやクロシドライト)に比して発がん性が低いことから,少なくともクリソタイルを微量含有しているにすぎない石綿含有建材から発生する石綿粉じんによって,石綿関連疾患が発症する危険性があることを予見することはできなかった旨を主張する。 この点,確かに,クリソタイルは他の種類の石綿に比して発がん性が低いとされており,その発がん性を否定する見解(仮説)に基づく論文は,平成18年(2006年)頃にも存在していた(甲A215の2,乙アA8・21頁,116,120の1・2)。しかしながら,前述したとおり,国際的に確立した医学的知見は,クリソタイルを含む主要な種類の石綿が肺がんを惹起し得る(クリソタイルは,発がんのリスクが低いというにとどまる)というものである(認定事実第4の8)。また,個々の被告企業らが製造販売した石綿含有建材から生ずる石綿粉じんが微量であったとしても,他社の製造販売する石綿含有建材から生ずる石綿粉じんと相まって,建設作業従事者に石綿関連疾患を発症させる危険性は否定できない。他社と競合しつつ石綿含有建材を製造販売していた被告企業らにお としても,他社の製造販売する石綿含有建材から生ずる石綿粉じんと相まって,建設作業従事者に石綿関連疾患を発症させる危険性は否定できない。他社と競合しつつ石綿含有建材を製造販売していた被告企業らにおいて,こうした危険性を予見することがおよそ不可能であったということはできな い。 ウ被告企業らのうち吹付け材を製造販売した者の中には,吹付け材が剥がされる事態は想定しておらず,吹付け工以外の者が石綿関連疾患にり患する危険を認識し得なかった旨を主張する者もいるところ,確かに吹付け材を剥がした場合には本来の性能(耐火,吸音・断熱)が損なわれてしまうから,このような事態が一般的に生ずるとはいい難いように思われる。 しかし,この場合も後で補修することは可能であるし,工程が前後してしまう等の現場の都合によって耐火被覆材を剥がす必要が生じ得ることは,吹付け材の製造企業においても十分に予見できたと認められる(乙マ1002・4頁)。また,例えば電気工事や配水管工事等の関係では,壁面の開口部を閉め切った後に壁面に孔を空けること等も想定し得たと考えられる(乙マ1009・7頁参照)。 したがって,被告企業らにおいて耐火被覆用吹付け材を剥がす事態をおよそ想定できなかったとは認め難い。 ⑶ 原告らの主張に対する判断原告らは,警告義務発生の前提となる被告企業らの予見可能性は,石綿粉じんばく露により建設作業従事者の生命,健康に重大な影響が生ずることの疑念を抱かせる程度の医学的情報等の集積があれば足りるとした上で,遅くとも昭和40年頃,どんなに遅くとも昭和46年時点には,建設作業に従事する者が石綿関連疾患にり患する危険を予見できた旨を主張する。 しかし,被告企業らに法的責任を生じさせることとなる予見可能性を肯定するためには,原告らが主張するような疑 6年時点には,建設作業に従事する者が石綿関連疾患にり患する危険を予見できた旨を主張する。 しかし,被告企業らに法的責任を生じさせることとなる予見可能性を肯定するためには,原告らが主張するような疑念を抱かせる程度の医学的情報等の集積では足りないというべきである。原告らが主張する時点では,石綿粉じんにばく露することと肺がん及び中皮腫の発症との関連性並びに肺がん及び中皮腫が潜伏期間の長い遅発性の疾患であることが明らかとなっていたということはできず,石綿含有建材から生ずる石綿粉じんにばく露するこ とにより建設作業従事者が石綿関連疾患にり患する具体的な危険性を認識することができたとは認められない。上記の危険性が人の生命・身体に関わる問題であることを十分に考慮しても,原告らが主張するような疑念があるということから,被告企業らに警告義務を負わせることはできない(石綿吹付け作業の危険性に関しては,昭和46年時点で既に「強力な予防指導を要するものと思われる。」とする研究報告も存在したが〔甲A8・6頁〕,建設作業一般についてそのまま当てはまるものとはいい難い。昭和50年以前に石綿吹付け作業が自主的に中止されたことは,吹付工以外の者に対する危険を具体的に予見できたことを意味するものではない。)。 したがって,原告らの主張は採用できない。なお,原告らは,薬害の場合を例に挙げて,医学的知見が確立する以前から製造業者に情報提供義務を課すべきであるとも主張するが,人体に薬理作用を及ぼすことを目的とした医薬品の場合とは同一視できない。 2 屋外建設作業に従事した者との関係⑴ 前記認定説示に照らせば,被告企業らにおいても,平成16年9月30日以前において,自らの製造販売する石綿含有建材を使用する屋外建設作業に従事する者に石綿関連疾患にり患する危険 事した者との関係⑴ 前記認定説示に照らせば,被告企業らにおいても,平成16年9月30日以前において,自らの製造販売する石綿含有建材を使用する屋外建設作業に従事する者に石綿関連疾患にり患する危険が生じていることを認識できたとは認められないというべきである。 ⑵ 原告らは,屋外建設作業の中には,例えば車庫のような屋内建設現場と評価できる場所で石綿含有建材の切断作業を行う場合があり,かかる作業実態は被告企業らも当然に認識していたから,当該作業を行った者との関係では予見可能性が認められるべきであるなどと主張する。 しかし,屋根材や外壁材等のいわゆる外装材を取り扱っていた本件被災者は,前述した被災者03を含め,いずれも専ら屋外で外装材の切断作業等に従事していたと説明しているのであり(被災者9本人5頁,被災者015本人26頁,被災者11本人32頁,被災者14本人5,7頁),車庫内での作 業に言及した被災者も「まれにあった」と述べるにとどまるのであるから(被災者9本人7,8,10頁。被災者14も,そのようなことがあった旨を述べるにとどまる〔5,6頁〕。),原告らが主張するような屋内に準じた状況下での作業が常態化していたとは認め難い。外装材の用途に照らせば,その切断作業等は屋外で行うことが最も合理的であるといえるところ,被告企業らにおいて原告らが主張するような作業実態を特に認識していたと認めるに足りる証拠もない。 したがって,原告らの主張は採用できない。 第3 被告企業らの警告義務違反の有無について 1 警告義務の始期・終期⑴ 一般に製品を製造販売する企業は,危険性のない製品を製造販売する義務を負うというべきであるが,当該製品の使用に当たり一定の危険性を免れない場合には,これが実現しないよう,危険性に関する情報を正しく購入者 に製品を製造販売する企業は,危険性のない製品を製造販売する義務を負うというべきであるが,当該製品の使用に当たり一定の危険性を免れない場合には,これが実現しないよう,危険性に関する情報を正しく購入者又は使用者に伝達する義務があるといえる(警告義務)。 前述したとおり,被告企業らは,昭和50年1月1日には,屋内建設現場における建設作業に従事する者との関係で,自らが製造販売した石綿含有建材によって石綿関連疾患にり患する危険を認識することができたと認められる。そして,後述するような内容の警告表示であれば,建材自体に何らかの変更を加える必要はないから,製品に記載することに格別の困難があったとは考えられない。そうすると,被告企業らは,昭和50年1月1日までには,上記の建設作業従事者との関係で,自らが製造販売した石綿含有建材の危険性及びその回避手段について警告する義務があったというべきである。 当該義務は,石綿含有建材の製造販売に伴って課されるものであるから,当該石綿含有建材の製造販売を終了した時が終期となる(石綿等の製造は平成18年9月1日に施行された安衛令で全面的に禁止されたところ,それ以降も被告企業らが石綿含有建材の製造販売を続けたという事情は見当たら ない。したがって,製造販売期間が不明な製品に関しても,遅くとも同年8月31日が警告義務の終期となる。)。 ⑵ この点について,被告企業らの中には,実際に警告表示を行うためには相当長期間の準備を要するなどとして,警告義務の発生時期は危険を認識し得た時期よりも相当程度遅い時期と解すべきであると主張する者もいる。 しかし,石綿関連疾患が人の生命・身体に重大な危険を及ぼすものであることを踏まえれば,医学的知見を基にかかる危険性を認識できたにもかかわらず,これを警告すべき義務が発生しな ると主張する者もいる。 しかし,石綿関連疾患が人の生命・身体に重大な危険を及ぼすものであることを踏まえれば,医学的知見を基にかかる危険性を認識できたにもかかわらず,これを警告すべき義務が発生しないとは解し難い。危険な製品を製造販売したことに伴う責任の重大性を理解しない主張というほかなく,採用の限りでない。 2 警告義務の内容等⑴ 石綿関連疾患は人の生命・身体に対する重大な危険を及ぼすものであるから,かかる危険を認識した被告企業らにおいては,石綿含有建材を購入し,又は使用する者に対して危険性に関する情報を正しく伝達し,適切な予防策を具体的に認識させることで,危険を生じさせないようにすることが期待されていた(警告義務)。石綿含有建材の流通形態等を踏まえれば,各建材に共通する内容としては,①建材に石綿が含有されていること,②石綿粉じんを吸引すると石綿肺,肺がん,中皮腫等の重篤な石綿関連疾患を発症する危険性があること,③上記危険を回避するために,当該建材を取り扱う際には適切な防じんマスクを着用する必要があること等を,当該建材に明確かつ具体的に表示することであるといえ,取り扱う作業者の目に確実に触れるように,個々の建材自体(又はその最小単位の包装)にラベルを貼付すること等により表示されることが必要と解される(警告表示義務)。 また,石綿粉じんは周囲に飛散し,特に屋内建設現場においては高い濃度となっていたところ,上述した警告表示の目的に鑑みれば,石綿含有建材が新規に使用された建設現場におけるすべての建設作業(屋外建設作業を除 く。)に従事する者に対して警告が表示される必要性がある。警告表示自体を直接目にすることがない建設作業従事者も当然に想定されるが,これらの者との関係では,同じ建設現場で作業をしている関係上,当該工事を監督 に従事する者に対して警告が表示される必要性がある。警告表示自体を直接目にすることがない建設作業従事者も当然に想定されるが,これらの者との関係では,同じ建設現場で作業をしている関係上,当該工事を監督する立場にある者等を通じて内容が伝達されることが合理的に期待できる。 ⑵ 原告らは,被告企業らにおいて,製造販売した石綿含有建材に係る情報を記録・保存する義務及び既に流通に置かれた石綿含有建材の使用状況の変化等を追跡監視する義務等を負うという前提の下,石綿含有建材の販売後においても,実効性のある警告を行うことは可能であったなどとして,被告企業らが負う警告義務は,警告表示義務には限られない旨を主張する。 しかし,被告企業らにおいて原告らが主張するような義務を負うと解されないことは,前述したとおりである(前記第1)。原告らは,官公庁や業界団体,更には新聞やテレビ等を通じて広く危険性情報を提供する方法も考えられるとも主張するが,上述したとおり,警告表示は,これを見た者を介して警告表示の内容が伝達されることが期待できるから,これを超えて積極的に危険性を広報する義務があるとまでは解されない。 3 警告表示義務を負担する相手方の範囲⑴ 前述した被告企業らが負う警告表示義務の内容(前記2⑴)に照らせば,石綿含有建材から生ずる粉じんを吸入することで石綿関連疾患にり患する危険があることは,当該建材に付された表示を契機として,当該工事を監督する立場にある者等を通じて,一旦使用された石綿含有建材に後から作業する者にも伝達されるべきものであるから,当該警告表示義務は,当該建材が一旦使用された後に当該工事において当該建材に配線や配管のため穴を開ける作業等をする者に対する関係においても負担するものと解するのが相当である(神奈川1陣最判)。 したがって,被告企業 当該建材が一旦使用された後に当該工事において当該建材に配線や配管のため穴を開ける作業等をする者に対する関係においても負担するものと解するのが相当である(神奈川1陣最判)。 したがって,被告企業らが負う警告表示義務の相手方には,二次的加工に従事した者が含まれる。 ⑵ 石綿含有建材による石綿粉じんは,建物の改修・解体工事(既存建材の取壊し)でも発生するところ,原告らは,改修・解体工事の際に石綿含有建材に接触することも当然に想定されていたから,被告企業らが負う警告表示義務の相手方には,これらに従事した者が含まれると主張する。 しかし,被告企業らが負う警告表示義務は,危険性を有する製品を製造販売した事実に基づき,これを使用する者に危険性を正しく伝達するために負うものと解されるから,その対象となる相手方としては,当該建材に警告表示が付されなければ,当該建材の危険性を知ることを合理的に期待し得ない者が想定される。しかるに,国は,改修・解体工事に従事する業者に対し,①建築物の解体・改修等の工事における石綿等の除去・封じ込め等の作業などを行う際,石綿等が使用されている箇所及び使用の状況の事前把握及び作業者に対する石綿使用箇所等の周知を図るなどの対策を自主的に講ずるよう指導することなどを求めるほか(昭和63年3月30日付け「石綿除去作業,石綿を含有する建設用資材の加工等の作業等における石綿粉じんばく露防止対策の推進について」〔同日基発第200号〕,乙アB44),②建築物の解体等の作業を行うときは,あらかじめ,石綿等が使用されている箇所等を調査し,記録すること(平成7年1月26日の改正後の特化則38条の10)や,柱等として使用されている鉄骨等に石綿等が吹き付けられた建築物の解体等の作業を行う場合,作業場所を他の作業を行う作業場所から 調査し,記録すること(平成7年1月26日の改正後の特化則38条の10)や,柱等として使用されている鉄骨等に石綿等が吹き付けられた建築物の解体等の作業を行う場合,作業場所を他の作業を行う作業場所から隔離すること(同38条の11)等を義務付けており,かかる調査等によって石綿含有の有無等の危険性を知ることが,合理的に期待できた。すなわち,改修・解体工事における石綿粉じんばく露の危険性は,製造販売業者の警告表示によって回避するのではなく,当該改修工事等に従事する者が安全配慮義務を尽くすことによって回避することが想定されていたということができる。 したがって,被告企業らが負う警告表示義務の相手方には,改修・解体工事のような既存建材の取壊作業に従事した際に石綿粉じんにばく露した者 は含まれないというべきである。 4 被告企業らの警告表示義務違反前記2⑴で述べた警告表示義務について,被告企業らがこれを履行したと認めるに足りる証拠はない。被告企業らの各主張に対する当裁判所の判断は,次のとおりである。 ⑴ 被告企業らの中には,表示方法通達で示された内容を履行していた旨を主張する者もいるが,そこで示された内容は,石綿粉じんの危険性及び防じんマスクの必要性に関する抽象的な警告表示にとどまっているから,表示方法通達に従ったというだけでは警告表示義務を尽くしたとはいえない。 ⑵ 被告企業らの中には,自社の製造販売した石綿含有建材に「a」マーク(平成元年7月生産分から日本石綿協会が導入した制度で,石綿含有量が5%を超える石綿含有建材〔平成7年1月1日以降は石綿含有量が1%を超えるものに対象が拡大された。〕について,20mm四方の当該マークを表示する扱いとしていた〔甲A248・23~24頁,377,甲C1の588・16頁〕。)を付すことで警告 以降は石綿含有量が1%を超えるものに対象が拡大された。〕について,20mm四方の当該マークを表示する扱いとしていた〔甲A248・23~24頁,377,甲C1の588・16頁〕。)を付すことで警告表示を行った旨を主張する者もいる。 しかし,上記マークは,当該建材に石綿が含有されている事実を表示するにとどまるものであるから,警告表示の内容としては不十分である。 ⑶ 被告企業らの中には,販売先を系列化する等,製造販売した石綿含有建材を特定の者に対してのみ供給し,併せて石綿の危険性等に関する情報を提供していた旨を主張する者もいる。 しかし,本件全証拠に照らしても,例えば,石綿粉じんを吸引すると石綿肺,肺がん,中皮腫等の重篤な石綿関連疾患を発症する危険性があること等の情報を提供していたことを裏付ける的確な証拠は見当たらないのであるから,警告表示義務の履行としては不十分といわざるを得ない。 ⑷ 被告企業らの中には,二次的加工に関し,吹付け材が剥がされる作業が行われることを前提とした「防じんマスクの着用」を促す警告表示を行うこと はできない等として,結果回避可能性がない旨を主張する者もいる。 しかし,石綿含有の事実やその危険性,防じんマスクを使用することの必要性等の情報を含んだ警告表示が適切になされていれば,二次的加工を行う者との関係でも実効性のある対策となるのであるから,上記主張は採用できない。 第4 被告企業らの製造中止義務等の違反の有無について 1 原告らは,警告表示を徹底しても建設作業従事者の安全を確保できないのであれば,どんなに遅くとも昭和50年(吹付け材については昭和47年頃)までには,建材の製造に際して石綿を使用しない義務を負っていた旨を主張するところ,前述のとおり,昭和50年当時,石綿含有建材から生ずる粉じんによ に遅くとも昭和50年(吹付け材については昭和47年頃)までには,建材の製造に際して石綿を使用しない義務を負っていた旨を主張するところ,前述のとおり,昭和50年当時,石綿含有建材から生ずる粉じんにより建設作業従事者が石綿関連疾患にり患する広範かつ重大な危険が生じていたということができる。 2⑴ 他方で,この頃は,石綿の含有量が重量の5%を超える石綿含有製剤に関する各種規制措置(安衛法57条に基づく表示義務や本件掲示義務規定等)が始まった時期であるところ,被告企業らにおいて,かかる措置が守られ,防じんマスクが適正に使用されれば建設作業従事者が石綿関連疾患にり患する危険を減少させることができると考えても不合理とはいえない(当時,防じんマスクを適正に使用してもなお,石綿関連疾患の発症を防止することができないという知見が一般化していたと認めるに足りる証拠はない。)。 また,国際機関においては,石綿が発がん性を有することを前提としながらも,(特にクリソタイルに関して)その管理使用の余地を認めており(乙アA4の1・2),石綿の使用等の全面的な禁止に言及したのは,ILO第95回総会において平成18年6月14日に採択された決議が初めてであった(甲A324)。これ以前に石綿の管理使用を全面的に禁止すべきであるとの国際的なコンセンサスが形成されたと認めるに足りる証拠はない。 さらに,代替建材についてみると,代替繊維は,石綿繊維に比べると耐熱 性や耐火性等の点で難点があり,石綿含有建材の全面的な代替化は必ずしも容易なものではなく,平成15年頃になって,ようやく代替化が可能との見通しが立った(乙アA105・35,60頁,108・11~12頁,121・41頁,132・1,12頁,1036・450~454頁等)。代替繊維の安全性についても議論は分 ,ようやく代替化が可能との見通しが立った(乙アA105・35,60頁,108・11~12頁,121・41頁,132・1,12頁,1036・450~454頁等)。代替繊維の安全性についても議論は分かれており,例えば,IARCが,石綿代替繊維である断熱材グラスウール等の評価をグループ2B(ヒトに対してがん原性となる可能性がある。)からグループ3(ヒトに対するがん原性として分類され得ない。)に変更したのは,平成14年になってからであった(乙アA129の1・2〔175頁〕)。 ⑵ 以上のとおり,石綿等の管理使用が不可能であり,早急に石綿等の製造等を全面的に禁止すべきであるとの知見が確立したのは,早くとも平成18年と認められるのであって,同年9月1日に施行された安衛令で石綿等の製造が全面的に禁止されるまでの間,被告企業らにおいて,石綿等の管理使用が可能であると考えたとしても不合理とはいい難い。このことに加えて,石綿含有建材を石綿代替製品で代替することが技術的な観点及び安全性に関する医学的な観点から可能な状態であるとの見通しが立ったのは,平成15年頃以降と認められることを併せ鑑みれば,既に石綿のがん原性が明らかとなっていたことを十分に考慮しても,上記知見が確立した平成18年よりも前に,より制約が大きい製造中止義務等が生じたということはできないというべきである。 3 したがって,被告企業らにおいて,石綿含有建材の製造等が全面的に禁止された平成18年9月1日までの間にその製造を中止する義務等が課せられていたとは認めるに足りない。その上で,同日以後も被告企業らが石綿含有建材の製造を続けたと認めるに足りる証拠はないから,結局,被告企業らの製造中止義務等の違反をいう原告らの主張は採用できない。 第5 被告企業らの共同不法行為(民法719条1項後段類 企業らが石綿含有建材の製造を続けたと認めるに足りる証拠はないから,結局,被告企業らの製造中止義務等の違反をいう原告らの主張は採用できない。 第5 被告企業らの共同不法行為(民法719条1項後段類推適用)について 1 建材現場到達事実に係る立証の程度原告らが主張する主要原因建材の特定は,本件被災者それぞれとの関係で加害行為をした被告企業ら(共同行為者)を特定するためのものである。民法719条1項後段は,複数の者がいずれも被害者の損害をそれのみで惹起し得る行為を行い,そのうちのいずれの者の行為によって損害が生じたのかが不明である場合に,被害者の保護を図るため,公益的観点から,因果関係の立証責任を転換する趣旨の規定であると解されるから(神奈川1陣最判),同項後段を類推適用するためには,直接適用の場合と同様に被害者の保護を図るために,因果関係の立証責任を転換することを正当化し得るだけの事情が必要になるといえる。そして,同項後段においては,複数の者がいずれも被害者の損害をそれのみで惹起し得る行為を行ったこと,当該行為を行った者が,特定された複数の行為者のほかに存在しないこと等の要件を立証する必要があること(神奈川1陣最判参照)との権衡を考慮すれば,同項後段を類推適用する前提となる建材現場到達事実については,高度の蓋然性をもって立証されなければならないと解することが相当である。 2 主要原因建材の選定方法(主位的主張)について⑴ 主要原因建材の選定方法に係る原告らの主位的主張と予備的主張の違いは,昭和50年よりも前に製造を終了した建材が含まれているか否か,シェア認定の際に推定計算が用いられているか否か,吹付け材のシェアの算出に関し,建材種類①~③を合算しているか否かという点である。 しかるに,被告企業らの警告表示義務違反 建材が含まれているか否か,シェア認定の際に推定計算が用いられているか否か,吹付け材のシェアの算出に関し,建材種類①~③を合算しているか否かという点である。 しかるに,被告企業らの警告表示義務違反が認められるのは昭和50年以降であること(前記第3の1),建材現場到達事実の立証は高度の蓋然性をもってなされる必要があり(前記1),推定計算はこれに馴染まない上,その前提となるシェアの認定に当たっては,使用する部位や目的等の諸点に照らし代替性が高いと認められる建材がある場合,それらを合算したシェアを算出する必要が生じ得ること(ただし,被災者の供述等から建材種類を特定で きる場合や,各建材の流通量等から使用割合を個別に認定できる場合は,あえてシェアを合算する必要はない。)を踏まえれば,主要原因建材の選定方法に係る原告らの主位的主張は採用し難いといわざるを得ない。 ⑵ 他方で,原告らの予備的主張についてはおおむね東京1陣最判で言及された立証手法に則るものと認められ,一定の合理性を有するものといえる。そこで,以下,当該予備的主張に沿って,原因建材ごとの被告企業らのシェアを認定した上で(後記3),本件被災者ごとの主要原因建材及び主要原因企業(共同行為者)を認定する(後記4)。 3 原因建材ごとのシェアの認定⑴ 前提ア被告企業らは,屋外建設作業に従事する者が石綿関連疾患にり患する危険を認識し得なかったと認められ,また,被告企業らの警告表示義務は,改修工事や解体工事に従事する建設作業従事者に対して負担するものではない(前記第2の2,第3の3⑵)。シェアの認定(主要原因建材の選定)は,シェアを用いた確率計算を考慮して建材現場到達事実を認定し,本件被災者との関係で加害行為をした共同行為者を特定するために行うものであるところ,一般的に 3⑵)。シェアの認定(主要原因建材の選定)は,シェアを用いた確率計算を考慮して建材現場到達事実を認定し,本件被災者との関係で加害行為をした共同行為者を特定するために行うものであるところ,一般的に屋外建設作業で用いられる石綿含有建材(外装材等)に関しては,これを製造販売した被告企業らが責任を負うことはないのであるから,シェアの認定は不要である。 イシェアを用いた主要原因建材の選定は,建材のシェアが高ければ高いほど,また,被災者の作業現場が多ければ多いほど,建材現場到達事実が認めら得る蓋然性が高くなるという経験則に基づくものである。原告らは,本件被災者が石綿粉じんばく露した期間はいずれも10年を超えるものであると主張するところ,同主張が認められるのであれば,作業した現場の数も相当多数に上るということができる。しかるに,例えば,特定の建材が作業現場で用いられる確率が10%,被災者の作業現場数 が20箇所~30箇所である場合には,当該建材が作業現場に1回でも到達する可能性は約88%~96%になるのであるから,原告らが主張するシェア10%は,一応の合理性を有する数値であると考えられる。 この点について,被告企業らの中には,シェアを用いて主要原因建材を選定するのであれば,その母数にはノンアス製品を含めるべきである旨を主張する者がいる。確かに特定の建材について代替品のノンアス製品が存在するのであれば,作業現場に到達した建材の中にノンアス製品が含まれる可能性があるから,石綿含有建材のみを母数とするシェアを用いた石綿含有建材の到達の確率は,ノンアス製品を考慮した到達の確率よりも高率となることが考えられ,例えば,石綿含有建材におけるシェアが10%,作業現場数が20箇所~30箇所であっても,必ずしも,上記のように,到達する可能性は は,ノンアス製品を考慮した到達の確率よりも高率となることが考えられ,例えば,石綿含有建材におけるシェアが10%,作業現場数が20箇所~30箇所であっても,必ずしも,上記のように,到達する可能性は約88%~96%ということはできないこととなり,ノンアス製品が存在する場合,その存在について考慮する必要がある場合もあるということはできる。 もっとも,以下で行うシェアの認定は,本件被災者との関係で主要原因建材となる製品を製造販売した企業(共同行為者。以下「主要原因企業」という。)に当たり得る者を特定するために行うものであり,認定したシェアを用いて直ちに建材現場到達事実の認定を行うものではない。 ノンアス製品も含めたシェアが10%を下回った場合に,石綿関連疾患にり患した本件被災者との関係で直ちに建材現場到達事実が認められなくなるというものでもなく,ノンアス製品が含まれている等の事情は,最終的に主要原因建材を特定する際に考慮すれば足りる。 以上の点を踏まえれば,シェアがおおむね10%を超える企業が製造販売した製品は,建設現場において相当程度使用されたことを一応推認できるといえる。以下,原因建材ごとの被告企業らのシェアについて検討する(認定したシェアは,小数点第2位を四捨五入した。)。なお,シ ェアを用いる際は,市場に流通した製品が全て同年中に消費されるものではなく,一定の在庫の存在を観念し得る点に留意する必要がある。 ⑵ 石綿吹付け材(建材種類①~③)ア石綿吹付け材は,石綿をセメント等の結合材と水に混合して,直接吹き付けて使用する建材である。吸音,断熱,結露防止,耐火等に優れており,昭和31年頃から学校,ビル,ホテル,劇場,公民館・公会堂,体育館,ダンスホール,ボウリング場,駐車場,船舶,電車等の車両,工場等について,吸 建材である。吸音,断熱,結露防止,耐火等に優れており,昭和31年頃から学校,ビル,ホテル,劇場,公民館・公会堂,体育館,ダンスホール,ボウリング場,駐車場,船舶,電車等の車両,工場等について,吸音,断熱・耐火,結露防止を目的として広く吹き付けられた(天井断熱材・機械室吸音材等)。一方,昭和42年頃から建築物の高層ビル化と鉄骨構造化が進み,耐火被覆目的で鉄骨に吹き付けられた(鉄骨耐火被覆材)。鉄骨造以外の戸建て住宅に使われた事例は少ない。 吹付け石綿としては,クロシドライトが多く用いられ,アモサイトとクリソタイルは下吹きや吹付けクロシドライトの表面に化粧のために吹き付けた場合等があった。学校や保育園,ホールや体育館等公共の建物にはクロシドライトが吹き付けられる場合が特に多かった。 昭和50年に改正された特化則は,石綿含有率5%を超える石綿含有製剤を吹き付ける作業を原則として禁止した。そのため,吹付け石綿①の使用期間は,耐火被覆用のものが昭和38年頃から昭和50年まで,吸音・断熱用のものが昭和30年頃から昭和50年までとされ,昭和50年以降は,代替製品として,石綿含有吹付けロックウール②や湿式石綿含有吹付け材③が,同様の用途で使われた。石綿吹付け材としては,このほかにひる石(バーミキュライト)やパーライト等に石綿を混ぜて吹き付けたものがあり,仕上げ材や吸音材等として使用された。 なお,昭和55年には,乾式の製品(石綿含有吹付けロックウール②)について,平成元年には湿式の製品(湿式石綿含有吹付け材③)について,それぞれ業界団体の自主規制により石綿がほぼ使用されなくなったため, これらの石綿含有製品が製造されたのは平成元年までである(半乾式の製品は石綿を含有していない。)。(甲A36の1・14頁,36の2・8頁,395・6 石綿がほぼ使用されなくなったため, これらの石綿含有製品が製造されたのは平成元年までである(半乾式の製品は石綿を含有していない。)。(甲A36の1・14頁,36の2・8頁,395・6~11頁,甲C1001の28~30,乙アA35・34,35頁,乙ニ13・4~8頁)イ吹付け石綿①について原告らは,同建材に係る主要原因企業として被告ノザワを挙げ,そのシェアを示す証拠として,①甲A1139(「無機繊維系建材と石膏ボード」24頁),②甲A1149(「鉱石質建材市場要覧」25頁)及び③甲A1313(「防火建材の市場性と成長性」73,74頁)を提出する。 しかし,上記証拠①から読み取れるのは,吹付け石綿に係る被告企業らの月間生産能力にすぎず(時期は不明であるが,発刊された昭和46年頃の数値と思われる。),直ちに記載通りの生産量があったと認定できるものではない。かえって,石綿成形板に関する記載ではあるものの,月間生産能力が2万㎡であるとされる被告ノザワの「コーベックスマット」について,「実績少,4月より5000㎡/月の生産を予定」と記載されていることや,月間生産能力が1万2500㎡であるとされる内外アスベスト(被告ナイガイ)の「サーモボード」について,「実績なし」と記載されていることからすれば,同資料に記載された数値は,実際の生産量と相当程度乖離していることが合理的に疑われる。 また,上記証拠②についても,同様に月間生産能力の記載しかなく,その数値が信用し難いことは上述のとおりである(いずれも株式会社東洋化学経済研究所が作成したものである。)。この点を措くとしても,記載されているのは「7~8万㎡(月間)」,「15~20万㎡(月間)」等の幅のある数値であり,これを年間に換算すると相当の幅が生ずることは明らかであるから, たものである。)。この点を措くとしても,記載されているのは「7~8万㎡(月間)」,「15~20万㎡(月間)」等の幅のある数値であり,これを年間に換算すると相当の幅が生ずることは明らかであるから,これをもってシェアを認定することは困難である。 上記証拠③には,昭和48年の実績として,企業ごとに「吹き付け石綿700(トン/月)」(朝日石綿工業)等と記載されている。しかし,同社が製造していた吹付け石綿①の製品(「ブロベスト」)は,昭和46年(1971年)に製造を終了しているから(甲C29の1),上記証拠③の記載についても信用性が乏しいといわざるを得ない。 したがって,上記各証拠から吹付け石綿①のシェアを認定することはできず,他にこれを認めるに足りる的確な証拠は見当たらない。 なお,吹付け石綿①を製造していた被告企業らは,昭和50年(1975年)までに当該製品の製造を中止したことが認められ(甲C29の1~6),本件で問題となる同年1月1日以降の流通量は相当程度減少していたことが推認できる。このことに加えて,後記ウのとおり,石綿含有吹付けロックウール②及び湿式石綿含有吹付け材③に係る昭和50年のシェアを認定するに足りる証拠がないことも考慮すれば,結局,シェアの認定に当たり,石綿含有吹付けロックウール②及び湿式石綿含有吹付け材③との合算を検討する必要はないといえる。 ウ石綿含有吹付けロックウール②及び湿式石綿含有吹付け材③について原告らは,同建材に係る主要原因企業として,被告A&AM(朝日石綿工業),被告日東紡績,被告太平洋セメント(日本セメント),被告日鉄ケミカル&マテリアル(新日本製鉄化学),被告ニチアス(日本アスベスト),被告バルカー(日本リンペット)及び被告ノザワを挙げ,そのシェアを示す証拠として,①甲A11 メント(日本セメント),被告日鉄ケミカル&マテリアル(新日本製鉄化学),被告ニチアス(日本アスベスト),被告バルカー(日本リンペット)及び被告ノザワを挙げ,そのシェアを示す証拠として,①甲A1150(「昭和52~53年版建材用途・部位別需要動向と競合性」108頁),②甲A1167(「昭和51年版建材用途・部位別需要動向と競合性」72頁),③甲A1176(「’80年版建材用途・部位別需要動向と競合性」126頁),④甲A1177(「1980年版日本の建材産業」119頁),⑤甲C103(「百年史」491頁)等を提出する。 上記証拠①~④は,ロックウール吹付け材(乾式と湿式が含まれていることから,石綿含有吹付けロックウール②と湿式石綿含有吹付け材③の両者を含むものと認められる〔乙ニ10参照〕。)に係る主要メーカーの施工量(出荷量)の数値等を記載した資料である。この数値は,当該資料を作成した民間団体による推定値であるが,後記の点を除き,これが誤っていることをうかがわせる証拠等が見当たらないことからすれば,一応信用できるものと認められる。もっとも,証拠④については,耐火被覆材としての施工実績が記載されているにとどまり,吸音・断熱用としての施工実績は考慮されていないので,この点に留意する必要がある(耐火被覆材としての施工は鉄骨造建物に限定されると考えられ,本件被災者の作業場所から区別することができる。)。 また,証拠⑤には,「アサノスプレーコート⒇」(石綿含有吹付けロックウール②)の昭和56年の工事量が,シェア約20%を取得したとの記載がある一方で,同号証490頁には,当該製品が昭和53年4月にノンアス製品に切り替えられたと記載されている。そうすると,同証拠を用いることは相当でない。 上記証拠①~④によれば,吹付 たとの記載がある一方で,同号証490頁には,当該製品が昭和53年4月にノンアス製品に切り替えられたと記載されている。そうすると,同証拠を用いることは相当でない。 上記証拠①~④によれば,吹付けロックウールの施工実績ないし出荷量の割合は,以下のとおりと認められる(表中の年号は,特に断らない限り昭和である。以下同じ。)。 49 年 51 年 52 年 53 年 甲A1167甲A1150甲A1177(耐火被覆のみ)甲A1176日本アスベスト27.1%20.4%26.4%20.0%朝日石綿工業18.6%19.4%21.2%20.0%日本セメント18.6%16.5%23.0%16.4% 新日本製鉄化学18.6%12.6%3.7%12.7%日東紡績11.4%9.7%9.2%10.0%日本バルカー不明不明10.0%不明もっとも,上記の表中,新日本製鉄化学のシェアに関しては,製造販売していた石綿含有吹付けロックウール②が耐火被覆用途のものであったにもかかわらず(甲C29の25~27),耐火被覆用途に限ったシェアが著しく低くなる(昭和52年)など,不自然な点が認められる。また,被告日鉄ケミカル&マテリアルが,自社製品の販売数量に係る内部資料に基づいて計算した昭和50年以降のシェアは,いずれも10%を下回るものである(乙チ14)。 これらの点を勘案すれば,同被告が製造販売した石綿吹付け材のシェアが10%を超えるものであったとは,認め難いといわざるを得ない。 以上によれば,少なくとも昭和50年頃から昭和53年頃までの間に建設現場で使用された石綿含有吹付けロックウール②及び湿式石綿含有吹付 10%を超えるものであったとは,認め難いといわざるを得ない。 以上によれば,少なくとも昭和50年頃から昭和53年頃までの間に建設現場で使用された石綿含有吹付けロックウール②及び湿式石綿含有吹付け材③については,被告ニチアス(日本アスベスト),被告A&AM(朝日石綿工業)及び被告太平洋セメント(日本セメント)が製造販売した製品が相当程度使用されたことを一応推認できる。 ただし,上記建材については,この頃からノンアス化が随時進められていたこと,吹付け施工を一部の特約店に行わせていたこと等の事情が見られるので,シェアの確率計算を用いて石綿含有建材の現場到達事実を推認する際は,これらの点に留意する必要がある。 なお,被告企業らの中には,石綿吹付け材(建材種類①~⑤)は,互いに代替する関係にあるから,一括してシェアを算定すべきであると主張する者もいる。しかしながら,石綿含有吹付けバーミキュライト④及び石綿含有吹付けパーライト⑤は,専ら仕上げ材として用いられたものと認められ(甲A36の2・16,17頁,乙ケ60・4頁等),本件被 災者の作業内容を踏まえて建材種類を特定し得るから,そのシェア等を合算することが必須であるとはいい難い。 ⑶ 石綿含有保温材(建材種類⑥~⑩)ア石綿含有保温材は,ボイラーや各種の加熱炉,配管等を保温し,熱損失を防ぐために用いられる建材であり,石綿含有けいそう土保温材⑥,石綿含有けい酸カルシウム保温材⑦,石綿含有バーミキュライト保温材⑧,石綿含有パーライト保温材⑨及び石綿保温材⑩等がある。このうち石綿含有バーミキュライト保温材⑧は,800℃~1000℃の高温の箇所に使用することができるものであった。石綿含有けい酸カルシウム保温材⑦は,発電所,製鉄,製紙,造船,石油化学等のプラントに多く使用された。 バーミキュライト保温材⑧は,800℃~1000℃の高温の箇所に使用することができるものであった。石綿含有けい酸カルシウム保温材⑦は,発電所,製鉄,製紙,造船,石油化学等のプラントに多く使用された。(甲A36の1・4頁,247・27,28頁,1171の1・2・92頁,乙アA35・33,34頁)イ原告らは,石綿含有けい酸カルシウム保温材⑦に係る主要原因企業として,被告A&AM(朝日石綿工業),被告ニチアス(日本アスベスト),被告JIC(大阪パッキング)を挙げ,そのシェアを示す証拠として,甲A1171の1・2(「断熱材市場の全貌」93頁)及び甲A1407(「‘80各種断熱材の市場実態と中期需要予測」100頁)を挙げる。 上記各証拠によれば,けい酸カルシウム保温材の昭和50年から昭和53年までの出荷量の割合は,以下のとおりと認められる。 年 51 年 52 年 53 年 甲A1171甲A1171甲A1171甲A1407日本アスベスト29.7%29.7%30.0%32.2%朝日石綿工業20.0%20.0%20.0%19.9%大阪パッキング19.7%19.7%19.8%18.9%神島化学17.5%15.6%19.8%19.1%原告らは,石綿保温材⑩に係る主要原因企業として,被告ニチアス及 び被告A&AMを挙げるが,そのシェアを認定するに足りる的確な証拠は見当たらない。 しかし,国交省データベースに登録された石綿保温材⑩は,被告ニチアス(日本アスベスト)及び被告A&AM(朝日石綿工業)が製造した3製品のみであるところ(甲C29の61~63),各製造期間に照らし,一方の製品が他方に駆逐されたとは考え難い。これらの点に加 告ニチアス(日本アスベスト)及び被告A&AM(朝日石綿工業)が製造した3製品のみであるところ(甲C29の61~63),各製造期間に照らし,一方の製品が他方に駆逐されたとは考え難い。これらの点に加えて,上記各被告から同建材のシェアに係る的確な資料等も提出されていないことを踏まえれば,その製造期間中,上記各被告が製造販売した製品が,いずれも相当程度のシェアを有していたと考えられる。 ウ被告企業らは,建材種類⑥⑦⑨⑩は代替性が高く,競合関係にあるため,これら4種類全体における各社のシェアを検討する必要があると主張するので,以下検討する。 このうち石綿含有けいそう土保温材⑥については,昭和50年以前に製造が終了したと認められるから(甲C29の43,乙アA35・34頁),同年以降のシェアが問題となる本訴訟においては,検討する必要がない(ノンアス化された製品が販売された等の事情も見当たらない。)。 石綿含有パーライト保温材⑨については,昭和50年以降もノンアス製品が製造販売されており,その使用温度帯はけい酸カルシウム保温材と共通していた(甲A1171の2・5~7,88頁,甲C29の60)。 他方で,けい酸カルシウム保温材の製造業者の中には,「パーライトが競合素材となる」(甲A1407・145頁)と述べる者がいる一方,「けい酸カルシウムは用途がはっきりしている為,特に競合する素材はないと考えられる。」(同146頁)と述べる者もいたほか,「昭和58年度環境庁委託業務調査報告書」でも,パーライト保温材は「もろさがありけい酸カルシウム板に追われる。」とされていた(甲A1023・120頁)。これらによれば,パーライト保温材の代替性が高かったとまでは 認め難い。 これに対し,石綿保温材⑩については,使用温度帯がけい酸カルシウム 」とされていた(甲A1023・120頁)。これらによれば,パーライト保温材の代替性が高かったとまでは 認め難い。 これに対し,石綿保温材⑩については,使用温度帯がけい酸カルシウム保温材と共通しており(甲A1174の2・5頁),使用部位・目的が共通していたことがうかがわれる上(甲A36の2・18頁,乙アA35・33,34頁等参照),けい酸カルシウム保温材との代替性に疑いを抱かせるに足りる資料も特段見当たらないことから,代替性が高いと認められる。 以上の点に照らせば,石綿含有けい酸カルシウム保温材⑦と石綿保温材⑩については,他の証拠から使用した建材を特定できる場合等を除き,これらをまとめたシェアを考慮することが相当である。 この点について,証拠上,石綿保温材⑩の年間出荷量等は不明瞭であるが,同建材に係る製品が昭和53年から昭和54年までに製造を中止していること(甲C29の61~63)を踏まえれば,特に昭和53年頃においては,出荷量も相当程度少なくなっていることが推認される。 そうすると,両者を合わせた市場においては,被告ニチアス(日本アスベスト)及び被告A&AM(朝日石綿工業)がおおむね20%を超えるシェアを有していたと認めることが相当である。他方で,被告JIC(大阪パッキング)及び被告神島化学については,10%を下回るシェアであったことがうかがわれる。 エ以上によれば,少なくとも昭和50年頃から昭和53年頃までの間に建設現場で使用された石綿含有けい酸カルシウム保温材⑦及び石綿保温材⑩に関しては,被告ニチアス及び被告A&AMが製造販売した製品が相当程度使用されたことを一応推認できる。 ⑷ 石綿含有けい酸カルシウム板第2種⑪ア同建材は,石綿含有耐火被覆板⑫と共に,吹付け材の代わりに鉄骨造建物の耐火被覆材とし AMが製造販売した製品が相当程度使用されたことを一応推認できる。 ⑷ 石綿含有けい酸カルシウム板第2種⑪ア同建材は,石綿含有耐火被覆板⑫と共に,吹付け材の代わりに鉄骨造建物の耐火被覆材として用いられた建材であり,事務所,店舗,駐車場等の 柱・梁,壁,天井の下地材等として使用された(甲A36の2・20頁,247・30,32頁,甲C29の64等,1001の31)。 イ原告らは,石綿含有けい酸カルシウム板第2種⑪に係る主要原因企業として,被告A&AM(朝日石綿工業,浅野スレート),被告JIC(大阪パッキング),被告神島化学及び被告ニチアス(日本アスベスト)を挙げ,そのシェアを示す証拠として,①甲A1171の1・2(「断熱材市場の全貌」93頁)及び②甲A1177(「1980年版日本の建材産業」60頁)を提出する。 上記証拠①によれば,けい酸カルシウム板第2種の昭和50年から昭和52年までの出荷量の割合は,以下のとおりと認められる。 年 51 年 52 年 甲A1171甲A1171甲A1171日本アスベスト14.5%15.1%15.1%朝日石綿工業17.0%16.9%16.9%大阪パッキング28.4%26.5%41.7%神島化学13.7%8.2%10.7%また,上記証拠②によれば,昭和52年度におけるけい酸カルシウム板第2種の施工面積の割合は,被告JIC(大阪パッキング)が40.0%,被告ニチアス(日本アスベスト)が24.0%,被告A&AM(朝日石綿工業)が21.0%,被告神島化学が12.0%であったことが認められる。 ウこれに対し,被告企業らの中には,耐火被覆材全体の施工実績に占めるけい酸カルシウム板第2種の施工実績が8.2 (朝日石綿工業)が21.0%,被告神島化学が12.0%であったことが認められる。 ウこれに対し,被告企業らの中には,耐火被覆材全体の施工実績に占めるけい酸カルシウム板第2種の施工実績が8.2%にすぎないことを考慮すべきである旨を主張するものがいる。 そこで検討するに,確かに,けい酸カルシウム板第2種は,同じ成形耐火被覆材である石綿含有耐火被覆板⑫と使用する部位や目的も共通であ る(前掲甲A1177・118頁も,成形耐火被覆材として「硅カル板」と「石綿板」を併記する。)から,本件被災者が取り扱った成形耐火被覆材の中には,これらが混在していた可能性が相当程度認められる(吹付け材も耐火被覆材という点では共通するが,外観が明らかに異なるものであり,本件被災者の供述等を踏まえて建材種類を特定し得るから,そのシェア等を合算する必要はない。)。そして,前掲証拠によれば,成形耐火被覆材の施工面積中,けい酸カルシウム板第2種の占める割合は,72.0%(昭和50年),72.4%(昭和51年),71.9%(昭和52年)と認められる。 そうすると,同じ施工面積で比較した場合,成形耐火被覆材全体におけるけい酸カルシウム板第2種のシェア(昭和52年)は,被告JIC(大阪パッキング)が28.8%,被告ニチアス(日本アスベスト)が17. 3%,被告A&AM(朝日石綿工業)が15.1%,被告神島化学が8. 6%となる(他の年についても,おおむね出荷量の7割と見て良いと考えられる。)。 エ以上によれば,少なくとも昭和50年頃から昭和53年頃まで間に建設現場で使用された石綿含有けい酸カルシウム板第2種⑪に関しては,被告JIC,被告ニチアス及び被告A&AMが製造販売した製品が相当程度使用されたことを一応推認できる。 ⑸ 石綿含有耐火被覆板⑫ア 場で使用された石綿含有けい酸カルシウム板第2種⑪に関しては,被告JIC,被告ニチアス及び被告A&AMが製造販売した製品が相当程度使用されたことを一応推認できる。 ⑸ 石綿含有耐火被覆板⑫ア同建材は,吹付け材の代わりとして,鉄骨柱,梁,エレベーター周辺の下地材等として使用された耐火被覆材である(甲A36の2・21頁,247・30,32頁,甲C29の97等)。 イ原告らは,同建材に係る主要原因企業として,被告A&AM(朝日石綿工業),被告バルカー(日本リンペット)及び被告ノザワを挙げ,そのシェアを示す証拠として,甲A1139(「無機繊維系建材と石膏ボード」)を 提出するが,同証拠が信用できないものであることは,前述したとおりである。 したがって,石綿含有耐火被覆板⑫のシェアを認定することは困難である。 ⑹ 石綿含有スレートボード⑮~⑲ア石綿スレートは石綿とセメントを主原料とした建材であり,その形状により,「波板」(後述するスレート波板)と「ボード」に大別される。 石綿スレートボードの代表的製品であるフレキシブル板(フレキシブルボード)は,防火性能が高く,湿度による膨張・収縮が少ないという特性を有しており,外装材としては軒天井に,内装材としては壁,天井等に使用された(平板も同様の用途で用いられたが,フレキシブル板は,湿度による影響が少ないため,浴室の壁・天井,台所の壁等にも使用された。)。 軟質板は,湿度による伸縮性があることから外部には使用できず,また,浴室や洗面所等にも使用できなかった。軟質フレキシブル板は,耐候性等を改善する化粧加工を施した製品については外装材として,その他の化粧加工を施した製品は内装材として使用された。パーライト板は,主に工場,倉庫,事務所等の壁材,天井下地材等に使用された。 (甲A3 等を改善する化粧加工を施した製品については外装材として,その他の化粧加工を施した製品は内装材として使用された。パーライト板は,主に工場,倉庫,事務所等の壁材,天井下地材等に使用された。 (甲A36の2・24,40,41頁,1133・8頁,1176・45頁,甲C1001の2~5・13,乙アA35・29,30頁)イ原告らは,石綿含有スレートボード⑮~⑲に係る主要原因企業として,被告A&AM(浅野スレート,朝日石綿工業,アスク),被告ケイミュー,被告ノザワ及び被告MMK(三菱セメント建材)を挙げ,その北海道内及び全国のシェアを示す証拠として,甲A1503(「平成2暦年スレート統計年報」84,85頁等)及び甲A1517の53(「昭和53暦年石綿スレート統計年報」134,135頁等)等を提出する。 これらの証拠に記載された「ボード類」には,けいカル板,「ドライ製 品」(住宅屋根材)及び「その他」(石綿スレートボードと異なるものであることは明らかである。)の実績が含まれており(甲A1517の53・2,114頁参照),これらについては販売実績から除外する必要がある。 上記の各証拠について所要の修正を行うと,石綿スレートボードの北海道内における販売実績の割合は,以下のとおりと認められる。なお,「浅野防健社」の販売実績は浅野スレートに含めたが,「浅野防火社」の販売実績は「その他」のみなので問題とならない(下記も同じ)。 (道内) 53 年平成2 年 甲A1517 の53114,115,134,135 頁甲A150374,75,82,83 頁浅野スレート58.0%61.1%朝日石綿工業18.5%8.7%ノザワ17.6%8.8%三菱セメント建材1.8%5. 150374,75,82,83 頁浅野スレート58.0%61.1%朝日石綿工業18.5%8.7%ノザワ17.6%8.8%三菱セメント建材1.8%5.3%久保田鉄工2.7%0%上記の各証拠について所要の修正を行うと,石綿スレートボードの日本国内における販売実績の割合(上記による修正後のもの)は,以下のとおりと認められる。これらの年以外はけいカル板等が含まれている割合を認定することができず,適切に控除することができない。 (国内) 53 年平成2 年 甲A1517 の53114,115,134,135 頁甲A150374,75,82,83 頁浅野スレート21.5%18.7%朝日石綿工業26.0%24.3% ノザワ10.0%20.6%三菱セメント建材15.7%13.5%久保田鉄工2.7%0.3%ウ以上によれば,少なくとも昭和53年から平成2年頃までの北海道内の建設現場で使用された石綿スレートボードに関しては,被告A&AMが製造販売した製品が相当程度使用されたことを一応推認できる。また,同時期に国内の建設現場で使用された石綿スレートボードに関しては,被告A&AM,被告ノザワ及び被告MMKが製造販売した製品が相当程度使用されたことを一応推認できる。 ⑺ 石綿含有押出成形セメント板㉒ア同建材は,石綿,セメント無機質材を主原料として押出成形したもので,断熱,結露防止,遮音性等に優れており,非耐力壁用材料として使用された。昭和51年頃は非住宅の壁材(耐火間仕切り壁,外壁)に使用されることが多かったが,昭和54年頃には住宅の外壁材としても使用されるようになった。厚さ35mm以上の「厚物 耐力壁用材料として使用された。昭和51年頃は非住宅の壁材(耐火間仕切り壁,外壁)に使用されることが多かったが,昭和54年頃には住宅の外壁材としても使用されるようになった。厚さ35mm以上の「厚物」と15~25mmの「薄物」(昭和53年発売開始)の二つの規格があり,用途が異なるとされている(被告昭和電工の製品のうち「薄物」の「ラムダ」は,国交省データベースでは石綿含有窯業系サイディング㉟に分類される。)。(甲A36の2・38頁,1167・55頁,1176・52,53頁,1181・150~158頁,甲C1001の9,乙アA35・30頁)イ原告らは,押出成形セメント板に係る主要原因企業として,被告ノザワ及び被告MMK(三菱セメント建材)を挙げ,そのシェアを示す証拠として,①甲A1150(「昭和52~53年版建材用途・部位別需要動向と競合性」54頁),②甲A1176(「’80年版建材用途・部位別需要動向と競合性」52頁),③甲A1177(「1980年版日本の建材産業」46頁),④甲A1181(「’95建材の市場動向」151頁)を提 出する。 そこで検討するに,上記証拠③によれば,押出成形セメント板(厚物)の出荷量の割合は,以下のとおりと認められる(なお,「薄物」は昭和53年から生産が開始されたようであるが,ノザワの主力商品である「アスロック」及び三菱セメント建材の主力商品である「メース」は,「厚物」が一般的であった〔甲A1176・52頁参照〕。)。 年 51 年 52 年ノザワ96.8% 90.6% 90.9%三菱セメント建材3.2%9.4%9.1%また,上記証拠④及び甲A1182(「屋根材・外装材の市場展望」・208頁)によれば,押出成形セメント板(厚物)の出荷額の割合は, 90.9%三菱セメント建材3.2%9.4%9.1%また,上記証拠④及び甲A1182(「屋根材・外装材の市場展望」・208頁)によれば,押出成形セメント板(厚物)の出荷額の割合は,以下のとおりと認められる(ただし,この期間に昭和電工建材が製造した「厚物」には石綿が使われていない〔乙タ1・2枚目〕。)。 平成5 年平成7 年 甲A1181甲A1182ノザワ58.3%56.3%三菱マテリアル建材32.2%32.5%昭和電工建材6.1%6.3%なお,上記証拠①②に記載された数値は推定値であるところ,昭和53年の昭和電工建材の生産数量に大きな差がみられるなど信用性に疑義がある。そのため,押出成形セメント板との関係では,これらの証拠に基づく主張は採用しない。 ウ以上によれば,少なくとも昭和50年頃から平成7年頃までの間に建設現場で使用された押出成形セメント板(厚物)については,被告ノザワが製造販売した製品が相当程度使用された(遅くとも平成5年頃からは被告MMKの製造販売した製品も相当程度使用された)ことを一応推認できる。 ⑻ 石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓ア同建材は,石綿とけい酸カルシウムを原料とした石綿含有成形板の一種であり,軽量で耐火性・断熱性に優れているという特性を有することから,一般建築物の内装材(壁,天井,耐火間仕切り)や外装材(軒天井材)として使用された。住宅では,台所等の天板の裏打材や浴室のタイル下地(タイル補強板)等に使用された。(甲A36の2・26,31,39頁,1170・48頁,甲C1001の10)イ原告らは,同建材に係る主要原因企業として,被告A&AM(浅野スレート,朝日石綿工業,アスク),被告神島化学,被告ニチアス( の2・26,31,39頁,1170・48頁,甲C1001の10)イ原告らは,同建材に係る主要原因企業として,被告A&AM(浅野スレート,朝日石綿工業,アスク),被告神島化学,被告ニチアス(日本アスベスト)及び被告MMK(三菱セメント建材)を挙げ,そのシェアを示す証拠として,①甲A1150(「昭和52~53年版建材用途・部位別需要動向と競合性」50頁),②甲A1167(「昭和51年版建材用途・部位別需要動向と競合性」50頁),③甲A1176(「’80年版建材用途・部位別需要動向と競合性」47頁),④甲A1177(「1980年版日本の建材産業」48頁),⑤甲A1520(「1981年版/市場調査資料住宅システム市場調査総覧」35頁)を提出する。 上記証拠①~③によれば,けい酸カルシウム板の出荷量の割合は,以下のとおりと認められる。これらの証拠では「石綿セメント珪酸カルシウム板」という項目でまとめられており,けい酸カルシウム板第2種を含めた数値が記載されていることがうかがわれる(例えば,主要メーカーの紹介欄に耐火被覆板を作る企業が記載されていたり〔甲A1150・50頁,甲A1176・47頁〕,耐火被覆板としての用途が紹介されていたりする〔甲A1176・49頁〕。基となったスレート協会の数値が,けい酸カルシウム板第2種を含めていたと考えるのが合理的である。)から,この点に留意する必要がある(日本アスベスト,朝日石綿工 業及び神島化学等は両種製品を製造していた。)。 49 年 51 年 53 年 甲A1167甲A1150甲A1176日本アスベスト36.6%35.3%32.5%朝日石綿工業22.0%18.8%19.2%三菱セメント建材12.2%9.4% 甲A1150甲A1176日本アスベスト36.6%35.3%32.5%朝日石綿工業22.0%18.8%19.2%三菱セメント建材12.2%9.4%11.8%大建工業12.2%9.4%不明浅野スレート8.5%5.9%5.9%また,上記証拠⑤によれば,けい酸カルシウム板の販売数量の割合は,以下のとおりと認められる(内装材分野として記載されているが,耐火被覆板としての用途が紹介されているので〔同号証34頁〕,同じくけい酸カルシウム板第2種を含む数値であることがうかがわれる。)。 54 年年日本アスベスト30.3%30.6%朝日石綿工業18.3%17.6%三菱セメント建材9.6%9.8%久保田鉄工6.1%6.7%浅野スレート5.7%5.7%その他30.0%29.6%なお,上記証拠④は,証拠①~③と同様の問題があること(スレート協会の資料を基にしていると認められる。)に加えて,同一年について証拠③の数値と大幅に乖離しており,信用性に疑義がある。 以上の点に加えて,前述のとおり,石綿含有けい酸カルシウム板第2種⑪についても,日本アスベスト及び朝日石綿工業のシェアが相当程度高かったことを踏まえれば,少なくとも昭和51年頃から昭和55年頃 までの間に建設現場で使用された石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓については,被告ニチアス(日本アスベスト)及び被告A&AM(朝日石綿工業)が製造販売した製品が相当程度使用されたことを一応推認できる。 なお,被告ニチアスは,自社の製品は中高層ビル等の非住宅の現場で使用され,戸建住宅ではほとんど使用されなかった旨を主張するところ,証 が製造販売した製品が相当程度使用されたことを一応推認できる。 なお,被告ニチアスは,自社の製品は中高層ビル等の非住宅の現場で使用され,戸建住宅ではほとんど使用されなかった旨を主張するところ,証拠(乙マ1032・21頁,1033・62頁)によれば,確かに昭和50年頃の出荷先は非住宅が90%であり,中でも中高層建築の需要が圧倒的に多く,その傾向はその後も続いていたことが認められる。したがって,主に戸建住宅の建設に従事した本件被災者との関係では,この点に留意する必要がある。 ウ被告企業らの中には,石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓は,石綿スレートボードや石綿含有スラグせっこう板⑳,石綿含有パルプセメント板㉑と用途が共通する建材であるから,シェアの検討においてこれらの建材の出荷量も分母に含める必要があると主張する者がいるので,以下,検討する。 前述した石綿スレートボードの使用部位・目的によれば,確かにけい酸カルシウム板第1種との共通性が認められるから,建材現場到達事実の認定に当たっては,シェアの合算や使用割合の考慮が必要となり得る。 証拠(甲A396・5頁)によれば,石綿スレートボードとけい酸カルシウム板第1種を合わせた出荷量のうちけい酸カルシウム板第1種の出荷量が占める割合は,16.0%(昭和50年),20.9%(昭和51年),23.6%(昭和52年),25.2%(昭和53年)と徐々に増加し,平成3年には49.5%にまで達したが,その後はおおむね20%台で推移したことが認められる。 したがって,建材現場到達事実を認定する際は,この点に留意する必 要がある(被告企業らの中には上記各建材のいずれも製造販売していた者がおり,石綿スレートボードのシェアにも留意する必要がある。)。 石綿含有スラグせっこう板⑳は,スラグ, 留意する必 要がある(被告企業らの中には上記各建材のいずれも製造販売していた者がおり,石綿スレートボードのシェアにも留意する必要がある。)。 石綿含有スラグせっこう板⑳は,スラグ,せっこうを主原料とし,繊維を補強材とした加工性のよい材料であり,表層材の種類によって,外装材,軒天井材,下地材,内装材等,使われ方が異なるが,多くは居室の内装工事の仕上げ材として使用された建材である(甲A36の2・25頁,C1001の7)。これによれば,確かにけい酸カルシウム板第1種の使用部位・目的との共通性が認められる。 もっとも,石綿含有スラグせっこう板⑳の製造が開始されたのは昭和53年からであり,多くは1980年代前半(昭和55年~昭和59年頃)に製造が開始されたというのであるから(甲C29の390~442,C1001の7),上記イで認定したシェアを直ちに左右するものではない(前掲証拠甲A396・5頁にも,昭和56年以降の出荷量のデータしか載っていない。)。そこで,出荷量のデータがある昭和56年以降について,上記同様に,石綿含有スラグせっこう板⑳とけい酸カルシウム板第1種を合わせた出荷量のうち同建材の出荷量が占める割合を見ると,平成3年まではおおむね70%台後半で推移したことが認められる。 したがって,昭和56年以降の期間において建材現場到達事実を認定する際は,この点に留意する必要がある。 石綿含有パルプセメント板㉑は,セメント,パルプ等の無機質混合材を主原料とし,板状に形成された加工性のよい材料であり,主に内装材として使用されたが,外装材(軒天井)として使用された例もあるとされる(甲A36の2・25頁,C1001の8)。もっとも,耐水性が低いとされていることからすれば,浴室等の湿気の多い箇所で用いられたけい酸カルシウム板 ,外装材(軒天井)として使用された例もあるとされる(甲A36の2・25頁,C1001の8)。もっとも,耐水性が低いとされていることからすれば,浴室等の湿気の多い箇所で用いられたけい酸カルシウム板第1種と使用部位・目的が共通するとはいい難く, 代替性が高いとまでは認められない。したがって,当該建材の出荷量等を考慮する必要はない。 ⑼ 石綿含有ロックウール吸音天井板㉔ア同建材は,主に住宅,事務所,学校,講堂,病院等の天井に不燃・吸音天井板として多く使用された内装材(僅かに軒天等にも使用された。)である(甲A36の2・27,28頁,甲C1001の11)。 イ原告らは,石綿含有ロックウール吸音天井板㉔に係る主要原因企業として,被告永大産業,被告大建工業及び被告日東紡績を挙げ,そのシェアを示す証拠として,①甲A1150(「昭和52~53年版建材用途・部位別需要動向と競合性」72頁),②甲A1174(「内装材の総合分析〔市場分析篇〕」74頁),③甲A1176(「’80年版建材用途・部位別需要動向と競合性」80頁),④甲A1177(「1980年版日本の建材産業」122頁),⑤甲A1313(「防火建材の市場性と成長性」11頁)などを提出する。 上記証拠①~④によれば,ロックウール吸音板に係る出荷量(出荷面積)の割合は,以下のとおりと認められる(昭和54年以外の数値は壁材としての用途を含むが,同建材は9割以上が天井材として用いられていたので〔甲A1174・75頁〕,シェアに与える影響は限定的と考えられる。)。なお,上記証拠③は相応の出荷量があったと考えられる東洋テックス(甲A1174・74頁)の存在を考慮していない点で,上記証拠④は昭和50年の数値(5万4704トン)を母数にして昭和52年のシェアを算出しているように 相応の出荷量があったと考えられる東洋テックス(甲A1174・74頁)の存在を考慮していない点で,上記証拠④は昭和50年の数値(5万4704トン)を母数にして昭和52年のシェアを算出しているように見られる点で,いずれも信用性に疑義がある。 51 年 52 年 53 年 54 年 甲A1150甲A1174甲A1174甲A1174 大建工業40.0%26.9%25.9%25.0%日東紡績40.0%38.6%40.7%41.0%松下電工20.0%20.0%19.7%20.5%また,上記証拠⑤によれば,昭和49年におけるロックウール吸音板の推定シェアは,大建工業が31%,日東紡績が30%,松下電工が18%,永大産業が15%であるとされる。もっとも,永大産業は昭和51年にロックウール吸音板の業界から撤退したから(甲A1150・72頁参照),昭和50年時点における同社の出荷量の割合は,昭和49年に比して相当程度低くなっていることが推認できる。 以上によれば,少なくとも昭和51年頃から昭和54年頃までの間に建設現場で使用された石綿含有ロックウール吸音天井板㉔に関しては,被告大建工業及び被告日東紡績が製造販売した製品が相当程度使用されたことを一応推認できる(なお,被告ケイミューが松下電工から承継したのは,屋根材及び外壁材事業に関する権利義務に限られるから〔前提事実第1の2⑵〕,内装材であるロックウール吸音板に関しては責任を負わない〔主要原因企業にも挙げられていない〕。)。 ウ他方で,ロックウール吸音板は,天井材の分野において,不燃面では化粧石膏ボードと,断熱面や吸音面ではインシュレーションボード(木質系天井板)とそれぞれ競合しており(甲A1150 いない〕。)。 ウ他方で,ロックウール吸音板は,天井材の分野において,不燃面では化粧石膏ボードと,断熱面や吸音面ではインシュレーションボード(木質系天井板)とそれぞれ競合しており(甲A1150・43,72頁,甲A1174・75頁,甲A1176・200頁),吸音板という用途に絞っても,この分野の競合品は非常に多かった(甲A1149・24頁)。現に,住宅用天井材の出荷面積の割合(昭和51年)によれば,ロックウール吸音板が占める割合は5.3%にすぎず,競合品とされる化粧石膏ボードの割合(15.0%)やインシュレーションボードの割合(9.2%)を下回っていた(甲A1150・165頁)。非住宅用天井材の出荷面積の割合(昭和51年)についても,ロックウール吸音板が占める割合は22. 0%であり,競合品とされる化粧石膏ボードの割合(17.7%〔石膏吸音板の割合を含めると22.9%〕)も相当高かった(同236頁)。このような傾向は,その後も特に変化が見られない(甲A1176・197頁〔住宅用天井材の数値〕)。 また,ロックウール吸音板に関しては,各企業が得意とする分野を異にしていたと認められ,例えば,被告日東紡績の製品は非住宅用の需要が圧倒的であったのに対し,被告大建工業の製品は住宅用の需要の方が大きかった(甲A1137・383頁,甲A1176・80頁)。 これらの点を踏まえれば,天井材市場における被告企業らのシェアは,上記で認定した出荷量の割合よりも相当程度低くなることが明らかといえる。原告らは,ロックウール吸音板の出荷量は昭和51年以降増加しているから,天井材に占める割合も増加していったはずであるとも主張するが,前述のとおり,住宅用天井材に係るロックウール吸音板の出荷量(出荷面積)の割合は,出荷量の増加にもかかわらず,大き 以降増加しているから,天井材に占める割合も増加していったはずであるとも主張するが,前述のとおり,住宅用天井材に係るロックウール吸音板の出荷量(出荷面積)の割合は,出荷量の増加にもかかわらず,大きな変化が見られない(甲A1176・197頁参照)。 したがって,石綿含有ロックウール吸音天井板㉔について建材現場到達事実を認定する際は,以上の点に留意する必要がある。 ⑽ 石綿含有住宅屋根用化粧スレート㉝同建材は,セメントに補強材として石綿を混入し,平板状等に成形した屋根材であり,ほとんどが屋根材(一部外壁材)として使用された(甲A36の2・43頁,甲C1001の19)。 かかる外装材について主要原因建材の認定が不要であることは,前述したとおりである。 ⑾ 石綿含有サイディング石綿含有窯業系サイディング㉟は,防火・耐火性能,耐震性,耐久性が高い等の特性を有しており,一般的に外壁材として使用された。石綿含有建材 複合金属系サイディング㊱は,金属製の表面材に断熱性・耐火性を持つ裏打材を併せて成形されたものであり,軽量で凍害に強い等の特性を有している。 窯業系サイディングと同様に外壁材として使用された。(甲A36の2・36,37頁,甲C1001の21・22)かかる外装材について主要原因建材の認定が不要であることは,前述したとおりである。 ⑿ 石綿スレート波板㊲~㊴スレート波板は軽量強靭で塗装の必要もなく腐食もしないという特性があり,下地材も不要であることなどから,多くは工場,倉庫等の屋根(大波),外壁(小波)に使用された(外装材)。木造戸建て住宅の屋根や壁に使われた事例は少ないとされる。波のピッチにより,「大波」「小波」「その他」に分類される。(甲A36の2・42頁,1167・49頁,1176・45頁,甲C1001の 材)。木造戸建て住宅の屋根や壁に使われた事例は少ないとされる。波のピッチにより,「大波」「小波」「その他」に分類される。(甲A36の2・42頁,1167・49頁,1176・45頁,甲C1001の23~25,乙アA35・29頁)かかる外装材について主要原因建材の認定が不要であることは,前述したとおりである。 ⒀ 石綿セメント円筒㊶ア同建材は,石綿セメントを原料とするパイプ状製品の総称であり,煙突,排気管,上下水道管・雑排水管等に用いられた(甲A36の2・45頁,乙アA35・30,31頁)。 本訴訟においてシェアが争われている建材は,被告A&AM(浅野スレート)が昭和57年から昭和63年までの間に製造販売した耐火被覆塩ビ管(硬質塩ビ管の外面に繊維強化モルタル等を被覆した製品であり,主にマンション,ホテル,学校等の汚水管及び雑排水管として用いられた。)である「浅野耐火パイプ」であり,これ以外の製品のシェアを示す資料はない。耐火被覆塩ビ管と競合する建材は排水用塩ビライニング鋼管であるが,継手の価格が他の建材よりも高価という欠点があるとされる。(甲A22 03・139~142,147頁,2204・85~87頁,甲C29の2088)イ 「浅野耐火パイプ」は,北海道内では市営住宅(共同住宅)の給排水管として用いられていたところ,その販売実績によれば,昭和57年から昭和61年までの耐火被覆塩ビ管市場におけるシェアは,7.5%(昭和57年),9.8%(昭和58年),13.3%(昭和59年),16.9%(昭和60年),21.0%(昭和61年)と認められる(前掲各証拠)。 このことに加えて,その当時,耐火被覆塩ビ管市場の規模が年々拡大していたことを踏まえれば,昭和59年から昭和63年までの期間に建設現場で使用された耐火被覆塩 和61年)と認められる(前掲各証拠)。 このことに加えて,その当時,耐火被覆塩ビ管市場の規模が年々拡大していたことを踏まえれば,昭和59年から昭和63年までの期間に建設現場で使用された耐火被覆塩ビ管に関しては,「浅野耐火パイプ」が相当程度使用されていたことを一応推認できる。なお,競合品であるとされる排水用塩ビライニング鋼管に関しては,上述したような欠点があるとされていることや,その出荷量等も明らかでないことから,代替性の高い建材であるとはいい難いものである。 ⒁ 混和材㊸アモルタル混和材は,モルタルに混ぜることで必要な性能(可塑性,保水性,亀裂防止等)を付与させる目的で使用される。このうち材料の粘度を増してコテ滑り(伸び)を良くし,作業性を向上させる目的で混和される作業改良材に関しては,被告ノザワが昭和31年から平成15年まで販売した「テーリング」が,その代名詞となっていた。実際,平成4年4月に日本セメント株式会社(被告太平洋セメント)がモルタル混和材(作業改良材)の販売を開始した時には,「テーリング」が90%以上の圧倒的なシェアを有していた。(甲A1248の1・2枚目,甲C2001の1・1,3頁,2001の2・1頁)。 このことに加えて,他にも混和材を製造販売していた会社が複数あったなどと主張する被告ノザワにおいて,同主張を裏付けるに足りる資料等を 提出していないこと(競合他社の名称も明確には述べられていない。)を踏まえれば,「テーリング」と競合するモルタル混和材の市場においては,昭和50年以降,同製品が圧倒的なシェアを占めていたと認めることが相当である。 イなお,被告ノザワは,株式会社ノザワ技術研究所作成の平成元年9月付け報告書(乙ラ6,9)を根拠として,「テーリング」を使用した左官作業の作業環境に ェアを占めていたと認めることが相当である。 イなお,被告ノザワは,株式会社ノザワ技術研究所作成の平成元年9月付け報告書(乙ラ6,9)を根拠として,「テーリング」を使用した左官作業の作業環境における石綿粉じん濃度は最大で0.065f/cc,個人ばく露濃度は最大0.035f/ccであったから,「テーリング」による石綿粉じん濃度は極めて低いなどと主張する。この点は,本件被災者の石綿粉じんばく露作業の内容によって結論を異にし得ると考えられるので,後記4(「本件被災者ごとの主要原因建材及び主要原因企業(共同行為者)の認定」)で,必要に応じて検討する。 4 本件被災者ごとの主要原因建材及び主要原因企業(共同行為者)の認定⑴ 被災者1(原告番号1番)ア石綿粉じんにばく露した作業期間同被災者(昭和●年●月●日生)は,被告企業らが責任を負う可能性のある期間(昭和50年1月1日から最も遅くとも平成18年8月31日まで。以下,単に「責任期間」という。)内において,同被災者の職歴⑤(ただし,始期は昭和50年1月1日)・⑥~⑨・⑪のとおり,合計6年6か月間,ブロック工として石綿粉じんばく露作業に従事した(甲D1の2。なお,職歴①~④は責任期間外である。)。 なお,石綿粉じんばく露作業期間の算定について,始期の日付が不明の場合には当該月の末日を始期とし,終期の日付が不明の場合には当該月の1日を終期として年数,月数及び日数を算定し,30日に満たない日数は切り捨てた(ただし,石綿粉じんばく露作業期間が勤務先又は時期を異にして複数存在するときには,期間ごとに上記のとおり年数,月 数及び日数を算定した上で,各期間を合計し,日数の合計が30日以上の場合には,30日を1か月と算定し,30日に満たない日数は切り捨てた。)。 原告1の主張 とに上記のとおり年数,月 数及び日数を算定した上で,各期間を合計し,日数の合計が30日以上の場合には,30日を1か月と算定し,30日に満たない日数は切り捨てた。)。 原告1の主張について同原告は,同被災者の職歴⑩の期間も石綿粉じんばく露作業に従事していたと主張するが,同期間の作業内容は主に庭の塀のブロックの積込みであり,その作業場所に天井はなかったというのであるから(同被災者本人26,27頁),石綿粉じんにばく露したとは認められない。 イ同被災者が従事した石綿粉じんばく露作業の内容同被災者は,ブロック工として,鉄骨造建物や鉄筋コンクリート造建物(4~5階建ての団地や学校,病院,ビル等)の内壁等にブロックを積み上げる作業に従事した(新築工事や改築工事)。天井まで積み上げたブロックをモルタルで密閉するために,梁に吹き付けられていた防火材を剥がして磨くという作業を行った際,石綿粉じんにばく露した。ブロック壁を施工した内壁,外壁(外構),パイプスペース周りの各作業場所のうち,多かったのは外壁(外構)である。(甲D1の2・16頁,3の1,3の2,同被災者本人5,6,8,9,15~19,32~36頁)なお,同被災者の主な就業場所は北海道内である(以下,特に言及しない限り,本件被災者について同じ。)。 ウ主要原因建材及び主要原因企業の認定上記イで認定した石綿粉じんばく露作業の内容に照らせば,同被災者の主な粉じんばく露源(主要原因建材となり得る建材種類)は,石綿吹付け材(建材種類②,③)と認められる(作業内容に照らし,仕上げ材である石綿吹付け材〔建材種類④,⑤〕にばく露したとは認め難い。)。 原告1は吹付け石綿①も主要原因建材になると主張するが,同被災者は使用されていた吹付け材の種類については何ら述べていないとこ 上げ材である石綿吹付け材〔建材種類④,⑤〕にばく露したとは認め難い。)。 原告1は吹付け石綿①も主要原因建材になると主張するが,同被災者は使用されていた吹付け材の種類については何ら述べていないところ,被 告企業らの責任期間に鑑みれば,同被災者がり患した石綿関連疾患について,吹付け石綿①の影響が大きいとは考え難い。 a 同被災者によれば,作業現場は鉄骨造建物の割合が多く(同被災者本人35頁),また,吹付け材の色も鉄骨耐火被覆材によく似ていた(甲D1の3の1・5,7~9頁)というのであるから,同被災者が触れた石綿吹付け材は,専ら鉄骨造建物に施工された耐火被覆用途のものと認めることが相当である。そして,耐火被覆用途の吹付け材に関しては,前述したとおり,昭和52年時点で被告ニチアス(日本アスベスト),被告A&AM(朝日石綿工業),被告太平洋セメント(日本セメント)のシェアが高かったことが認められる。 b 上記各シェア上位企業との関係では,次の点を指摘できる。 被告ニチアスについては,主要原因建材であると主張されている湿式石綿含有吹付け材③のうち,「トムウェット(33)」は,最低でも10数階建て以上で施工面積が1万平方メートル以上の大規模な現場でないと使われていなかったこと(乙マ1002・2頁),「ATM-120(32)」はトムウェットと同一の素材を使用して間仕切り壁を設置できるという点に利点があったこと(同号証)が認められる。その上で,同被災者が上記のような大規模な現場での作業については述べていないことを踏まえると,同被災者がこれらの製品が用いられた現場で作業をしたとは認め難い。 ⒝ 被告A&AM(朝日石綿工業)については,昭和50年に石綿含有吹付けロックウール②の製造を中止しているものの,市場における被告A&AM(朝 らの製品が用いられた現場で作業をしたとは認め難い。 ⒝ 被告A&AM(朝日石綿工業)については,昭和50年に石綿含有吹付けロックウール②の製造を中止しているものの,市場における被告A&AM(朝日石綿工業)の製品の多くが直ちにノンアス製品に切り替わったとは考えにくい。同被災者は,作業現場数について,「多数」と述べるにとどまり,具体的な現場数は述べていないが,同被災者が特定の大規模な現場で長く稼働したという事情もう かがわれないのであり,シェア10%を基準とすることの一応の合理性は失われないというべきである。吹付けロックウールについて,昭和49年における被告A&AM(朝日石綿工業)のシェアが18. 6%という高いものであったことを考慮すると,昭和50年中も,被告A&AM(朝日石綿工業)は相応のシェアを維持していたとみるのが相当であり,同被災者について建材現場到達事実を認めることが相当である。 ⒞ 被告太平洋セメントについては,吹付けロックウールの施工を「販工店」に行わせていたことが認められるが(乙ニ42・17,18頁),「販工店」による吹付け作業後に作業をする者を「販工店」ないし被告太平洋セメントの系列に属する者に限定していたと認めるに足りる証拠はない。また,同被災者は,作業現場数について,「多数」と述べるにとどまり,具体的な現場数は述べていないが,同被災者が特定の大規模な現場で長く稼働したという事情もうかがわれないのであり,シェア10%を基準とすることの一応の合理性は失われないというべきである。そして,被告太平洋セメントが製造販売した吹付けロックウールについては,昭和50年頃から昭和53年頃までのシェアが2割前後であったから,同被災者について建材現場到達事実を認めことのが相当である。 以上によれば,同被災者と 製造販売した吹付けロックウールについては,昭和50年頃から昭和53年頃までのシェアが2割前後であったから,同被災者について建材現場到達事実を認めことのが相当である。 以上によれば,同被災者との関係では,石綿含有吹付けロックウール②及び湿式石綿含有吹付け材③が主要原因建材と認められ,被告A&AM及び被告太平洋セメントが主要原因企業と認められる。 ⑵ 被災者04(原告番号2番)ア石綿粉じんにばく露した作業期間同被災者(昭和●年●月●日生)は,責任期間内において,同被災者の職歴①(ただし,昭和50年6月2日から同年12月5日まで,昭和5 1年5月1日から同年11月30日まで,昭和52年5月1日から同年12月3日まで,昭和53年5月1日から同年12月5日まで)・②(ただし,昭和54年6月1日から同年12月20日まで,昭和55年3月7日から同年12月10日まで,昭和56年2月2日から同年12月9日まで)・③(ただし,昭和58年4月1日から同年12月20日まで,昭和59年4月1日から同年12月20日まで,昭和60年4月1日から同年12月25日まで,昭和61年4月1日から同年12月25日まで,昭和62年4月1日から同年12月24日まで,昭和63年4月1日から同年12月20日まで,平成元年4月3日から同年12月20日まで,平成2年4月7日から同年12月17日まで,平成3年3月11日から同年12月17日まで,平成4年4月3日から同年12月18日まで,平成5年3月4日から同年12月20日まで,平成6年3月6日から同年12月20日まで,平成7年3月8日から同年12月20日まで,平成8年3月9日から同年12月19日まで,平成9年3月5日から同年12月20日まで)のとおり,合計15年11か月間,内装工として石綿粉じんばく露作業 で,平成7年3月8日から同年12月20日まで,平成8年3月9日から同年12月19日まで,平成9年3月5日から同年12月20日まで)のとおり,合計15年11か月間,内装工として石綿粉じんばく露作業に従事した(甲D2の2)。 原告2-1・同2-2・同2-3・同2-4の主張についてa 同原告らは,同被災者の職歴①について昭和49年6月1日から昭和53年12月5日まで,同②について昭和54年6月1日から昭和56年12月9日まで,同③について昭和58年4月1日から平成9年12月20日までと主張するが,冬季は作業に従事していなかったと認められるので(甲D2の2・18,19頁),上記のとおり認定した。 b 同原告らは,同被災者の職歴④~⑦も石綿粉じんばく露作業に従事していたと主張するが,同被災者は,労災申請時の事情聴取において,上記期間は石綿粉じんばく露作業に従事していなかった旨を説明し ているから(甲D2の2・8,9,12,13,22頁),同主張は採用できない。 イ同被災者が従事した石綿粉じんばく露作業の内容同被災者の職歴①は,主に鉄筋工作物の内装作業を行い,学校の体育館の断熱材のスレート材や床張り仕上げに従事した。体育館の天井に石綿が吹き付けられていたため,内装作業の時や掃除の際に石綿粉じんにばく露した。同職歴②・③は,マンション,病院,市民会館等の鉄筋コンクリート造の建物の内装作業に従事したものであり,石綿を含有するスレート材やけいカル板を丸鋸で切断した際,石綿粉じんにばく露した。(甲D2の2・6,7頁)ウ主要原因建材及び主要原因企業の認定職歴①について上記イで認定した石綿粉じんばく露作業の内容に照らせば,原告2-1らが主張する石綿吹付け材(建材種類①~③)が,同被災者の主な粉じんばく露源(主要 因建材及び主要原因企業の認定職歴①について上記イで認定した石綿粉じんばく露作業の内容に照らせば,原告2-1らが主張する石綿吹付け材(建材種類①~③)が,同被災者の主な粉じんばく露源(主要原因建材となり得る建材種類)に当たるとは認め難い。同被災者は,石綿吹付け材に直接触ったものではなく,舞っていた埃を吸っていたと思うと述べるにとどまるのであるから,そのばく露の程度は限定的と認められるのであって,上記各建材が同被災者の石綿関連疾患発症に強く影響したとは認め難いといわざるを得ない。 職歴②・③についてa 上記イで認定した石綿粉じんばく露作業の内容に照らせば,同被災者の職歴②に係る主な粉じんばく露源(主要原因建材となり得る建材種類)は,内装材一般(石綿スレートボード⑮~⑲,石綿含有押出成形セメント板㉒,石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓,石綿含有ロックウール吸音天井板㉔)であると認められる。 原告2-1らは,耐火被覆板(建材種類⑪,⑫)も主要原因建材に 含まれると主張する。しかしながら,これらの建材はいずれも鉄骨造建物の耐火被覆材として用いられるものであるから(前記3⑷及び⑸),同被災者が述べる鉄筋コンクリート造建物で使用したとは考え難い(同被災者は耐火被覆材を取り扱ったと明言するが,「耐火被覆材(スレート)」などと表現していることからすれば,単に耐火建材を取り扱ったにすぎないと認めることが相当である。)ので,これらを主要原因建材とみることはできない。 なお,同被災者は作業現場数については何ら述べておらず,1回の作業がどの程度の期間を要したのか,年間でどのぐらいの現場で作業したのか等の具体的事情は,本件全証拠に照らしても明らかではないが,同被災者の職歴(石綿粉じんばく露作業期間)は合計で20年近いから,相当 がどの程度の期間を要したのか,年間でどのぐらいの現場で作業したのか等の具体的事情は,本件全証拠に照らしても明らかではないが,同被災者の職歴(石綿粉じんばく露作業期間)は合計で20年近いから,相当多数の作業現場に従事していたと考えるのが自然である。 b 石綿スレート及び石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓に関しては,いずれも内壁等の内装材として用いられ,代替性が高い。前述したとおり,石綿スレートボード⑮~⑲の道内におけるシェアは被告A&AM(朝日石綿工業,浅野スレート)が圧倒的であり,また,石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓のシェアについても被告A&AM(朝日石綿工業,浅野スレート)が高いシェアを有していた。職歴②・③の期間中,当該シェアに大きな変動があったことをうかがわせる事情は見当たらない。 そして,他に建材現場到達事実に影響を生じさせるような事情も見当たらないことからすれば,被告A&AMが製造販売した製品が,同被災者の従事する作業現場に相当程度到達していたと認めることが相当である。 c 石綿含有押出成形セメント板㉒に関しては,前述したとおり,昭和50年頃から平成7年頃までの期間については被告ノザワのシェア が高く,平成5年頃から平成7年頃までの期間は被告MMKのシェアも高かったことが認められる。職歴②・③の期間中,当該シェアに大きな変動があったことをうかがわせる事情は見当たらない。 そして,他に建材現場到達事実に影響を生じさせるような事情も見当たらないことからすれば,被告ノザワ及び被告MMKが製造販売した製品が,同被災者の従事する作業現場に相当程度到達していたと認めることが相当である。 d 石綿含有ロックウール吸音天井板㉔に関しては,前述したとおり,昭和51年頃から昭和54年頃までの期間については,被告大建 者の従事する作業現場に相当程度到達していたと認めることが相当である。 d 石綿含有ロックウール吸音天井板㉔に関しては,前述したとおり,昭和51年頃から昭和54年頃までの期間については,被告大建工業及び被告日東紡績のシェアが高かったことが認められる。もっとも,天井材全体で見ると,ロックウール吸音板が占める割合は20%程度にすぎず,上記各被告企業のシェアも10%を下回ることからすれば,シェアを用いて建材現場到達事実を認定することは困難というべきである。また,同被災者においてロックウール吸音板を使用したことを明示的に述べるものでもない。 したがって,同建材を主要原因建材と見ることはできないというべきである。 以上のとおりであるから,同被災者との関係では,石綿スレートボード⑮~⑲,石綿含有押出成形セメント板㉒,石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓が主要原因建材となり,被告A&AM,被告ノザワ及び被告MMKを主要原因企業と認めるべきである。 ⑶ 被災者05(原告番号3番)ア石綿粉じんにばく露した作業期間同被災者(昭和●年●月●日生)は,責任期間内において,同被災者の職歴⑧~㉕のとおり,合計9年10か月間,配管工として石綿粉じんばく露作業に従事した(甲D3の2。なお,職歴①~③は責任期間外であ る。)。 原告3の主張について同原告は,同被災者の職歴④(ただし,始期は昭和50年1月1日)~⑦も石綿粉じんばく露作業に従事していた旨を主張するが,同被災者が上記期間中に石綿粉じんばく露作業に従事していたと認めるに足りる的確な証拠は見当たらないから,同主張は採用できない。 イ同被災者が従事した石綿粉じんばく露作業の内容同被災者は,配管工として,団地,マンション,個人住宅,地下鉄等の給排水設備等の配管作業に従事 確な証拠は見当たらないから,同主張は採用できない。 イ同被災者が従事した石綿粉じんばく露作業の内容同被災者は,配管工として,団地,マンション,個人住宅,地下鉄等の給排水設備等の配管作業に従事した(主として水道管であり,他にスプリンクラー・蒸気ボイラーの配管等も行った。)。保温材が巻き付いた配管の切断加工や取付けを行ったほか,石綿吹付け作業が行われている横で配管作業をしたこともあり,石綿粉じんにばく露した。(甲D3の2・16~18,56,57頁)ウ主要原因建材及び主要原因企業の認定上記イで認定した石綿粉じんばく露作業の内容に照らせば,同被災者の主な粉じんばく露源(主要原因建材となり得る建材種類)は,石綿吹付け材(建材種類②,③〔配管の作業中であったことからすれば,仕上げ材である建材種類④,⑤にばく露したとは認め難い。〕。吹付け材①がこれに含まれないことは,被災者1について述べたとおりである。以下同じ。),石綿保温材(建材種類⑦,⑩)及び石綿セメント円筒㊶であると認められる。原告3は,配管工事ではスリーブ工事(躯体等に電動工具で貫通孔を空ける工事)を行うことが多いとして,内壁材(石綿スレート,石綿含有押出成形セメント板㉒,石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓)も主要原因建材に当たる旨を主張するが,かかる作業内容について同被災者は何ら述べておらず,他にこの点を認めるに足りる的確な証拠は見当たらない(スリーブ工事を行う場合,配管の切断よりも多量 の粉じんが発生すると考えられるが,労災認定の際の事情聴取では何ら触れられていない。このことからすれば,原告らが主張するような作業があったとしても,その回数は僅かなものであったと考えられ,シェアを用いて建材現場到達事実を認定することは困難というべきである。)。 a 石綿吹 ない。このことからすれば,原告らが主張するような作業があったとしても,その回数は僅かなものであったと考えられ,シェアを用いて建材現場到達事実を認定することは困難というべきである。)。 a 石綿吹付け材(建材種類②,③)に関しては,同被災者の粉じんばく露期間の始期である昭和61年当時,既に乾式の吹付け材(石綿含有吹付けロックウール②)には石綿が使われておらず,また,この3年後には湿式の吹付け材(湿式石綿含有吹付材③)についても石綿が使われなくなったこと(前記3⑵ア)を踏まえれば,昭和61年時点では代替製品であるノンアス製品が相当の割合を占めていたことが推認できる。そうすると,前述した建材種類②③のシェアを用いてその建材現場到達事実を認定することは困難というべきである。 b 石綿保温材(建材種類⑦,⑩)に関しても,主要原因建材として主張されている製品はいずれも昭和55年までに製造が終了しているから,主要原因建材とはなり得ない。 c 石綿セメント円筒㊶(耐火被覆塩ビ管)に関しては,前述したとおり,昭和59年から昭和63年までの期間については,被告A&AMが製造販売した「浅野耐火パイプ」のシェアが高かったことが認められる(昭和61年時点のシェアは20%を超えている。)。同被災者は作業現場数については特に述べておらず,また,上記製品の製造が終了した昭和63年までの粉じんばく露期間は2年に満たないものであるが,一つの配管作業に長期間を要するとは考え難いことからすれば,少なくとも10~20程度の作業現場で稼働したとみるのが合理的である。 そして,他に建材現場到達事実に影響を生じさせるような事情も見当たらないことからすれば,被告A&AMが製造販売した製品が,同 被災者の従事する作業現場に相当程度到達していたと認めることが相当で 他に建材現場到達事実に影響を生じさせるような事情も見当たらないことからすれば,被告A&AMが製造販売した製品が,同 被災者の従事する作業現場に相当程度到達していたと認めることが相当である。 以上のとおりであるから,同被災者との関係では,石綿セメント円筒㊶が主要原因建材となり,被告A&AMを主要原因企業と認めるべきである。 ⑷ 被災者4(原告番号4番)ア石綿粉じんにばく露した作業期間同被災者(昭和●年●月●日生)は,責任期間内において,同被災者の職歴①(ただし,冬季は作業に従事していなかったと認められるので〔甲D4の2・41~43頁〕,作業期間は,昭和50年4月5日から同年12月15日まで,昭和51年4月1日から同年12月20日まで,昭和52年2月1日から昭和53年1月24日まで,同年4月1日から同年12月15日まで,昭和54年3月1日から同年12月15日まで,昭和55年3月1日から同年12月15日まで,昭和56年3月2日から同年12月20日まで,昭和57年2月1日から同年12月25日まで,昭和58年2月1日から同年12月15日まで,昭和59年2月15日から同年12月15日まで,昭和60年2月9日から同年12月15日まで,昭和61年3月1日から同年12月15日まで,昭和62年3月1日から同年12月15日まで,昭和63年3月2日から同年12月20日まで,平成元年3月1日から同年12月16日まで,平成2年3月1日から同年12月20日まで,平成3年2月4日から同年12月19日までである。)・②(ただし,終期は平成18年8月31日)のとおり,合計28年1か月間,塗装工として石綿粉じんばく露作業に従事した(甲D4の2)。 イ同被災者が従事した石綿粉じんばく露作業の内容同被災者は,職歴①②において,塗装工として, 月31日)のとおり,合計28年1か月間,塗装工として石綿粉じんばく露作業に従事した(甲D4の2)。 イ同被災者が従事した石綿粉じんばく露作業の内容同被災者は,職歴①②において,塗装工として,鉄筋コンクリート造建物や鉄骨造建物(商業施設,学校施設,マンション,市営住宅,役所,公 共施設等)の内部全般(室内,トイレ,廊下等の内壁・天井等)の塗装作業に従事し,塗装前に鉄骨に飛び散った吹付け材を掃除したり,塗装面にペーパー掛けをしたりした際,また,吹付け材が吹き付けられたデッキプレートに誤って触れてしまった際に,石綿粉じんにばく露した。また,改修工事に従事し,下地を剥がしたり,石綿が吹き付けられた場所を電動サンダーで削る際,石綿粉じんにばく露した。なお,被災者本人が作業している部屋で,同時に,他の業者が粉じんを生じさせる作業(吹付け作業やボードの切断作業等)を行うことはなかった。(甲D4の2・31~34頁,同被災者本人2~12,19~23,25~29,34頁)ウ主要原因建材及び主要原因企業の認定上記イで認定した石綿粉じんばく露作業の内容に照らせば,同被災者の主な粉じんばく露源(主要原因建材となり得る建材種類)は,石綿吹付け材(建材種類②,③)であると認められる(作業内容に照らし,仕上げ材である石綿吹付け材〔建材種類④,⑤〕にばく露したとは認め難い。)。原告4は,モルタル壁のひび割れを隠すためのパテ処理をした後にやすり掛けをしたとも述べており(同本人8,9頁),その際にモルタル混和材に含まれた石綿粉じんにばく露したと主張するようであるが,モルタルに含まれる石綿の量は微少であると考えられ,やすり掛けによって大量の粉じんが発生するとも考え難いことからすれば,混和材㊸が主要原因建材に当たるとは認め難い。 同被災者が るようであるが,モルタルに含まれる石綿の量は微少であると考えられ,やすり掛けによって大量の粉じんが発生するとも考え難いことからすれば,混和材㊸が主要原因建材に当たるとは認め難い。 同被災者が述べる粉じんばく露状況からすれば,耐火被覆として吹き付けられた石綿吹付け材に触れたものと認めることが相当である。同被災者は,年間で3~4棟のビルで塗装工事をしていたなどと述べるところ(同被災者本人10,11頁),塗装工であり,作業場所は専ら屋内であったと認められること,石綿吹付け材(建材種類②,③)が製造されている間,粉じんばく露作業に従事していたことを併せ考慮すれば,吹 付け材に接触する可能性のある作業現場に相当多数回従事していたと認められる。 そして,被災者1について述べたように,昭和50年から昭和52年頃,被告ニチアス(日本アスベスト),被告A&AM(朝日石綿工業)及び被告太平洋セメント(日本セメント)のシェアが高かったことが認められ,シェアを用いることにより建材現場到達事実を認めることが相当である(被災者4の述べる作業場所に照らし,被告ニチアスの湿式石綿含有吹付材③が使われていたとしても不自然ではない。また,被告太平洋セメントが販工店制度を取っていたとしても,「販工店」による吹付け作業後に作業をする者を「販工店」ないし被告太平洋セメントに系列に属する者に限定していたと認めるに足りる証拠はなく,シェアを用いた建材現場到達事実の認定の妨げとはならないというべきである。)。 以上のとおりであるから,同被災者との関係では,石綿吹付け材(建材種類②,③)が主要原因建材となり,被告A&AM,被告太平洋セメント及び被告ニチアスを主要原因企業と認めるべきである。 ⑸ 被災者09(原告番号5番)ア石綿粉じんにばく露した作業期間 材(建材種類②,③)が主要原因建材となり,被告A&AM,被告太平洋セメント及び被告ニチアスを主要原因企業と認めるべきである。 ⑸ 被災者09(原告番号5番)ア石綿粉じんにばく露した作業期間同被災者(昭和●年●月●日生)は,責任期間内において,同被災者の職歴①(ただし,昭和50年1月1日から昭和52年8月18日まで)のとおり,2年7か月間,現場監督として石綿粉じんばく露作業に従事した(甲D5の2)。 原告5-1・同5-2・同5-3の主張についてa 同原告らは,同被災者の職歴②も石綿粉じんばく露作業に従事していた旨を主張するところ,同被災者は,本件訴訟において,同期間の作業内容につき,ほとんどが新築工事で年に2,3件ほどの解体工事に従事していたとか(甲D5の3の1・3頁。改修工事に従事してい たとの記載はない。),新築工事・改修工事・解体工事に従事しており,いずれの工事でも石綿粉じんにばく露したなどと述べた(同被災者本人9~17頁)。 他方で,同被災者は,労災申請時の事情聴取において,同期間の作業内容につき,新築工事と解体工事に従事しており,解体作業時に石綿粉じんにばく露したと説明していた上(甲D5の2・33頁。改修工事に従事していたとは説明していなかった。),勤務先が解体工事の現場に入っていないと言っているのであれば,解体工事に従事したというのは勘違いであったなどと説明していたところ(同38頁),供述が変遷したことについての合理的な説明はされていない。同被災者は,労基署職員から聞かれなかったなどとも述べるが(同被災者本人31,32頁),石綿粉じんばく露を理由とする労災認定に関する事情聴取である以上,ばく露状況を聞かなかったとはおよそ考え難く,現にばく露環境にあったか否かという点は聴取書の随所に記載さ 同被災者本人31,32頁),石綿粉じんばく露を理由とする労災認定に関する事情聴取である以上,ばく露状況を聞かなかったとはおよそ考え難く,現にばく露環境にあったか否かという点は聴取書の随所に記載されている(甲D5の2・32頁以下参照)。 以上のとおり,職歴②の作業内容に関する同被災者の説明・供述には変遷が見られ,直ちには信用できないところ,他にこれを裏付ける的確な資料等も見当たらないことからすれば,結局,同期間に石綿粉じんにばく露したとは認め難い。 b 同原告らは,同被災者の職歴③も石綿粉じんばく露作業に従事していた旨を主張し,同被災者も同旨を述べる(同被災者本人17~19頁)。 しかし,同被災者は,同期間の作業内容について,労災申請時の事情聴取において,石綿含有建材を使用しない新築工事がほとんどで,改修工事においても石綿ばく露環境ではなかった旨を明確に説明していたのであり(甲D5の2・33,34頁),供述が変遷した理由に 関する合理的な説明はない。そうすると,上記aと同様の理由により,同期間に石綿粉じんにばく露したとは認め難い。 イ同被災者が従事した石綿粉じんばく露作業の内容同被災者は,職歴①において,現場監督として,マンション,ビル及び工場の新築工事,改修・解体工事に係る施工管理業務に従事し,昭和48年4月から昭和52年8月までの間に,10件程度(うち新築工事については4件程度)の現場で作業をした。作業場所は東京や関東近郊であり,主に鉄筋コンクリート造及び鉄骨造の建物を担当した。 現場監督として4件の新築工事に携わる中で,昭和51年頃に石綿吹付け作業に立ち会ったり,壁下地等に貼る内装ボードの切断作業に立ち会ったり,左官工のモルタルの混錬作業に立ち会ったり,作業終了後の粉じんを掃除したり,工場の煙突に石綿 わる中で,昭和51年頃に石綿吹付け作業に立ち会ったり,壁下地等に貼る内装ボードの切断作業に立ち会ったり,左官工のモルタルの混錬作業に立ち会ったり,作業終了後の粉じんを掃除したり,工場の煙突に石綿断熱材を積み上げていく作業等を行うなどした際,石綿粉じんにばく露した。このうち,石綿吹付け作業の立会い及び石綿断熱材の積上げ作業は1件のみ,混錬作業の立会いは2件のみ,内装材のボード切断作業の立会いは4件全てである。(甲D5の2・32頁,同被災者本人2~8,41~43,48頁)ウ主要原因建材及び主要原因企業の認定上記イで認定した石綿粉じんばく露作業の内容に照らせば,同被災者の主な粉じんばく露源(主要原因建材となり得る建材種類)は,内装材全般(耐火被覆板〔建材種類⑪,⑫〕,石綿スレートボード⑮~⑲,石綿含有押出成形セメント板㉒,石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓,石綿含有ロックウール吸音天井板㉔)であると認められる。 石綿吹付け材,石綿保温材及び混和材に関しては,これらにばく露する機会が1,2件しかなかったこと,現場監督という職種に照らし,実作業者よりも粉じんばく露の程度は低いと考えられることなどから,同被災者の石綿関連疾患発症に強く影響したとは認め難いといわざるを 得ない。 上記各内装材のシェア等に関しては,被災者04について述べたのと同様である(ただし,被災者09は道外で作業に従事していたので,石綿スレートのシェアは道外のものを用いる必要がある。)この点,石綿スレートに係る昭和53年の国内シェアは,被告A&AMが約48%を占めていた。もっとも,当該建材は石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓等と用途を共通にする建材であるから,そのシェアを合算する必要がある。石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓との関係では,同年の 8%を占めていた。もっとも,当該建材は石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓等と用途を共通にする建材であるから,そのシェアを合算する必要がある。石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓との関係では,同年の被告A&AMのシェアは約20%であったから,これを合算した場合,石綿スレート単体のシェアよりも下がることは確実である。 仮に統合したシェア30%と見た場合,作業現場数が4つであることを前提にすると,当該建材が建築現場に到達していない確率は約24%残ることとなる(シェア40%と見た場合の確率は約13%)。 そうすると,シェアを用いた方法によっては,高度の蓋然性をもって建材現場到達事実を認定することは困難といわざるを得ないところ,同被災者の供述等から使用した製品を特定することもできない。 したがって,同被災者との関係では,主要原因建材及び主要原因企業のいずれも認め難いというべきである。 ⑹ 被災者03(原告番号6番)同被災者は屋外建設作業に従事していた者であるところ,被告企業らにおいて,かかる建設作業従事者が石綿関連疾患にり患する危険を認識し得なかったことは,前述したとおりである。したがって,被告企業らが同被災者に対して不法行為責任を負うことはないから,同被災者との関係で主要原因建材等を認定する必要はない。 ⑺ 被災者011(原告番号7番)ア石綿粉じんにばく露した作業期間 同被災者(昭和●年●月●日生)は,責任期間内において,同被災者の職歴①(ただし,始期は昭和50年1月1日)のとおり,5年3か月間,金物工として石綿粉じんばく露作業に従事した(甲D7の2)。 イ同被災者が従事した石綿粉じんばく露作業の内容同被災者は,職歴①において,金物工として,ビルやマンション等の鉄骨に吹き付けられていた石綿を剥がして手すり, く露作業に従事した(甲D7の2)。 イ同被災者が従事した石綿粉じんばく露作業の内容同被災者は,職歴①において,金物工として,ビルやマンション等の鉄骨に吹き付けられていた石綿を剥がして手すり,ベランダ,天井の庇等を溶接したり,アンカーを打ったりする作業に従事した際,石綿粉じんにばく露した。また,同被災者が作業をしているすぐそばで,石綿吹付け作業が行われることもあった。 (甲D7の2・20,21頁,原告7-1本人6,13頁)ウ主要原因建材及び主要原因企業の認定上記イで認定した石綿粉じんばく露作業の内容に照らせば,同被災者の主な粉じんばく露源(主要原因建材となり得る建材種類)は,石綿吹付け材(建材種類②,③)であると認められる(作業内容に照らし,仕上げ材である石綿吹付け材〔建材種類④,⑤〕にばく露したとは認め難い。)。 同被災者が述べる粉じんばく露状況からすれば,耐火被覆として吹き付けられた石綿吹付け材に触れたものと認めることが相当である。同被災者は作業現場数について特に言及していないものの,作業場所は専ら屋内であったと認められること,約5年間粉じんばく露作業に従事していたことからすれば,石綿吹付け材に接触する可能性のある作業現場に多数回従事していたと考えるのが自然である。 そうすると,同被災者との関係では,被災者4について述べたのと同様に,石綿吹付け材(建材種類②,③)が主要原因建材となり,被告A&AM,被告太平洋セメント及び被告ニチアスを主要原因企業と認めるべきである。 ⑻ 被災者01(原告番号8番)ア石綿粉じんにばく露した作業期間同被災者(昭和●年●月●日生)は,責任期間内において,同被災者の職歴⑪・⑬(ただし,昭和57年6月1日から同年12月15日まで,昭和58年6月1日から同年1 ア石綿粉じんにばく露した作業期間同被災者(昭和●年●月●日生)は,責任期間内において,同被災者の職歴⑪・⑬(ただし,昭和57年6月1日から同年12月15日まで,昭和58年6月1日から同年12月20日まで,昭和59年3月12日から同年11月30日まで)・⑭(昭和60年6月1日から同年12月26日まで,昭和61年3月3日から同年12月20日まで)・⑮(昭和62年5月25日から同年12月15日まで,昭和63年6月1日から同年12月26日まで,平成元年4月28日から同年12月23日まで,平成2年3月1日から同月27日まで)・⑯(ただし,平成2年6月1日から平成3年1月31日まで,同年4月1日から同年5月16日まで)・⑰・⑱(ただし,終期は平成18年8月31日)のとおり,合計21年4か月間,鍛冶工・建築金物工として石綿粉じんばく露作業に従事した(甲D8の2。なお,職歴①~⑥は責任期間外である。)。 原告8の主張についてa 同原告は,同被災者の職歴⑬について昭和57年6月から昭和59年11月まで,同職歴⑭について昭和60年6月から昭和61年12月まで,同職歴⑮について昭和62年5月から平成2年3月まで,同職歴⑯について平成2年6月から平成3年5月までと主張するが,冬季は作業に従事していなかったと認められるので(甲D8の2・56,57頁),上記のとおり認定した。 b 同原告は,同被災者の職歴⑦~⑩及び同⑫の期間も石綿粉じんばく露作業に従事していた旨を主張するが,同被災者は,上記期間については石綿の粉じんを吸った可能性はない旨を明言するから(同被災者本人21,22頁),上記主張は採用できない。 イ同被災者が従事した石綿粉じんばく露作業の内容 同被災者は,鍛冶工又は建築金物工として,鉄骨造建物の新設工事に70件程 ら(同被災者本人21,22頁),上記主張は採用できない。 イ同被災者が従事した石綿粉じんばく露作業の内容 同被災者は,鍛冶工又は建築金物工として,鉄骨造建物の新設工事に70件程度従事し,石綿吹付け作業が行われているすぐそばで金物の溶接(手すりやデッキプレート,タラップの取付け等)を行ったり,吹付け材を剥がしたりした際に石綿粉じんにばく露した。(甲D8の2・12~15頁,同被災者本人7~13頁)ウ主要原因建材及び主要原因企業の認定上記イで認定した石綿粉じんばく露作業の内容に照らせば,同被災者の主な粉じんばく露源(主要原因建材となり得る建材種類)は,石綿吹付け材(建材種類②,③)であると認められる(作業内容に照らし,仕上げ材である石綿吹付け材〔建材種類④,⑤〕にばく露したとは認め難い。)。同被災者の粉じんばく露期間の始期である昭和55年は,業界の自主規制によって乾式の吹付け材(石綿含有吹付けロックウール②)について石綿がほぼ使用されなくなったとされる時期であり(前記3⑵ア),それ以前からノンアス製品が使われていたことがうかがわれるものの,市場における製品の多くが直ちにノンアス製品に切り替わったとまでは認め難い。 a 同被災者が述べる粉じんばく露状況からすれば,耐火被覆として吹き付けられた石綿吹付け材に触れたものと認めることが相当である。 同被災者は,鉄骨造建物の新設工事に70件程度従事したとするところ(上記イ),作業場所は専ら屋内であったと認められること,石綿吹付け材(建材種類②,③)が製造されている間粉じんばく露作業に従事していたことを併せ考慮すれば,同建材に接触する可能性のある作業現場に相当多数回従事していたと認められる。そして,耐火被覆用の吹付け材の関係では,被災者1らについて述べたとおり,昭和52 作業に従事していたことを併せ考慮すれば,同建材に接触する可能性のある作業現場に相当多数回従事していたと認められる。そして,耐火被覆用の吹付け材の関係では,被災者1らについて述べたとおり,昭和52年時点で被告ニチアス,被告A&AM及び被告太平洋セメントのシェアが高かったことが認められる。 b もっとも,このうち被告ニチアスと被告A&AMは,昭和50年までに石綿含有吹付けロックウール②の製造を中止しているところ,同被災者の粉じんばく露期間の始期である昭和55年頃においても,これらの企業の石綿含有製品が相応のシェアを有していたとは考え難い。湿式石綿含有吹付け材③の施工面積は,石綿含有吹付けロックウール②に比べて僅少であったから(弁論の全趣旨・原告らの令和3年12月9日付け準備書面「企業-39」34頁参照),前述したシェアがそのまま妥当するともいい難い。 また,被告太平洋セメントについても,昭和53年までに石綿含有吹付けロックウール②の製造を中止している上,同社が製造する湿式石綿含有吹付け材③は,昭和50年以降は少量の製造販売にとどまったことがうかがわれるから(乙ニ9,13・5~6頁等),同様に,前述したシェアがそのまま妥当するとはいい難い。同被災者の石綿粉じんばく露作業期間である昭和55年頃まで,同被告が製造販売した石綿含有吹付けロックウール②の製品が市場に残っていた可能性は存在するが,同被災者が述べる作業現場数(鉄骨造建物の新設工事に70件程度であるから,前記認定に係る石綿粉じんばく露作業期間で均すと,年間3件程度となる。)に照らすと,被災者09について述べたように,シェアを用いた方法によっては,高度の蓋然性をもって建材現場到達事実を認定することが困難である。 そうすると,被災者01との関係では,石綿吹付け材( )に照らすと,被災者09について述べたように,シェアを用いた方法によっては,高度の蓋然性をもって建材現場到達事実を認定することが困難である。 そうすると,被災者01との関係では,石綿吹付け材(建材種類②,③)が主要原因建材となるものの,主要原因企業を認定することはできないというべきである。 ⑼ 被災者9(原告番号9番)ア石綿粉じんにばく露した作業期間同被災者(昭和●年●月●日生)は,責任期間内において,同被災者の職 歴⑥~⑨及び⑫~㊵のとおり,合計21年3か月間,大工として石綿粉じんばく露作業に従事した(甲D9の2。なお,職歴①~⑤は責任期間外である。)。 なお,職歴⑩及び⑪に関しては,同被災者自身,粉じんばく露作業ではないと述べ(甲D9の3の1・6頁),本人尋問においてもばく露したかは分からないと述べている(同本人13,14頁)ので,上記のとおり認定した。 イ同被災者が従事した石綿粉じんばく露作業の内容同被災者は,大工として,主に木造戸建て住宅の新築工事において,床張り,壁張り,天井張り等の内装工事や,外壁,屋根等の外装工事をするに当たり,石綿スレート(フレキシブル板)や石こうボード,サイディング材等を切断する作業を行った際,石綿粉じんにばく露した。また,戸建て住宅の改修工事や解体工事において,内壁材や断熱材を剥がしたりした際,石綿粉じんにばく露した。スレートやサイディング材の加工(切断等)は,専ら屋外で行われた。(甲D9の3の1・2~4頁,同原告本人4~12,14~16頁)。 ウ主要原因建材及び主要原因企業の認定上記イで認定した石綿粉じんばく露作業の内容に照らせば,同被災者の主な粉じんばく露源(主要原因建材となり得る建材種類)は,石綿スレートボード⑮~⑲,石綿含有押出成形セメント板㉒, 原因企業の認定上記イで認定した石綿粉じんばく露作業の内容に照らせば,同被災者の主な粉じんばく露源(主要原因建材となり得る建材種類)は,石綿スレートボード⑮~⑲,石綿含有押出成形セメント板㉒,石綿含有ロックウール吸音天井板㉔であると認められる(石綿含有窯業系サイディング㉟が主要原因建材に当たらないことは,前述したとおりである。)。原告9は,石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓も主要原因建材に当たると主張するが,実物は分からない旨を述べている(同被災者本人39,40頁)ことに加え,それを用いたとする箇所は軒天井であり(甲D9の3の1・3頁),建材の切断は屋外で行っていたというのであるから(同 被災者本人23頁),いずれにしても主要原因建材に当たるとは認め難い。 なお,同被災者は,職歴全体では300件程度の新築工事に携わったと思う旨を述べているところ(同被災者本人17頁),前述した同被災者の職歴(石綿粉じんばく露作業期間)に照らしても,相当多数の作業現場に従事していたと認められる。 上記各建材の建材現場到達事実に関しては,被災者04について述べたのと同様であるから,被災者9との関係では,石綿スレートボード⑮~⑲及び石綿含有押出成形セメント板㉒が主要原因建材となり,被告A&AM及び被告MMKを主要原因企業と認めるべきである(なお,石綿含有押出成形セメント板㉒に係る被告ノザワの製品は主要原因建材に挙げられていないので,同社は主要原因企業には当たらない。)。 ⑽ 被災者015(原告番号10番)ア石綿粉じんにばく露した作業期間同被災者(昭和●年●月●日生)は,責任期間内において,同被災者の職歴⑤~㊱(ただし,終期は平成18年8月31日)のとおり,合計18年8か月間,主に板金工として粉じんばく露作業に従事した(甲D1 同被災者(昭和●年●月●日生)は,責任期間内において,同被災者の職歴⑤~㊱(ただし,終期は平成18年8月31日)のとおり,合計18年8か月間,主に板金工として粉じんばく露作業に従事した(甲D10の2。 なお,職歴①~④及び㊲~㊶は責任期間外である。)。 イ同被災者が従事した石綿粉じんばく露作業の内容同被災者は,板金工として,一般住宅,集合住宅,学校,工場,倉庫等の板金屋根(トタンやスレート)の張替作業や工場の外壁(小波スレート)の貼替作業等に従事した。屋根の張替作業では,軒天のスレートを金槌で壊したとき等に粉じんが発生し,外壁の張替作業では,小波スレートを切断したときに粉じんが発生したが,これらの作業はいずれも屋外で行われた(一般住宅の屋根の新築工事では,ほとんど粉じんは発生しなかった。)。なお,車庫(駒場車庫)のスレート屋根をトタン屋根 に張り替える作業では,屋根下の内部全面にネットを張り,床をブルーシートで養生しており,掃除の際に壊したスレートの破片から粉じんが発生した。(甲D10の2・25~28,38~45頁,3の1・4~10頁,同被災者本人2~12,22,26,30,31,34頁)同被災者は,昭和49年12月まで保温工として石綿粉じんばく露作業に従事したことがあったが(甲D10の2・25,26頁),これは責任期間外である。 また,その後,3か所でそれぞれ1週間から10日ほど,保温材の取付作業(配管に巻き付けられている古い保温材を外して,新しい保温材を巻き付け,トタンでカバーするという作業)に従事したとも説明しているが(甲D10の3の1・3頁),いずれも短期間のものであって,この間にばく露した石綿粉じんによって石綿関連疾患にり患したとは認め難い。なお,同被災者は,昭和53年頃に太平洋セメント工場で 明しているが(甲D10の3の1・3頁),いずれも短期間のものであって,この間にばく露した石綿粉じんによって石綿関連疾患にり患したとは認め難い。なお,同被災者は,昭和53年頃に太平洋セメント工場で3か月程度保温工事に従事したとも述べるが(同本人14頁),陳述書にはその旨の記載が全くない上,被告企業ら代理人から改めて保温工として作業した場所を聞かれた際も,上記太平洋セメント工場は挙げなかった(同本人41,42頁)。これらの点を踏まえれば,同被災者の上記供述は信用し難いというべきである(昭和49年頃に従事した王子製紙苫小牧工場や十條製紙釧路工場での作業期間はいずれも約3か月であり,これらと混同していることが疑われる。)。 ウ主要原因建材及び主要原因企業の認定上記イのとおり,同被災者が従事した石綿粉じんばく露作業は,建物改修の際の既存の石綿含有建材の取壊作業や屋外建設作業と認められる。しかるに,被告企業らの警告表示義務は上記のような改修作業中に石綿粉じんにばく露した建設作業者に対して負担するものでなく,また,被告企業らにおいて,屋外建設作業に従事した者が石綿関連疾患にり患する危険を 認識できたとは認め難いことは,いずれも前述したとおりである。 したがって,被告企業らが同被災者に対して不法行為責任を負うことはないから,同被災者との関係で主要原因建材等を認定する必要はない。 ⑾ 被災者11(原告番号11番)ア石綿粉じんにばく露した作業期間同被災者(昭和●年●月●日生)は,責任期間内において,同被災者の職歴③(ただし,昭和50年4月1日から同年12月15日まで,昭和51年4月1日から同年12月4日まで)・④(ただし,昭和52年4月1日から同年11月30日まで,昭和53年5月6日から同年11月30日まで)・⑤(ただ 50年4月1日から同年12月15日まで,昭和51年4月1日から同年12月4日まで)・④(ただし,昭和52年4月1日から同年11月30日まで,昭和53年5月6日から同年11月30日まで)・⑤(ただし,昭和54年4月2日から同年12月15日まで,昭和55年4月1日から同年12月20日まで,昭和56年4月1日から同年12月10日まで,昭和57年2月1日から同年12月15日まで,昭和58年4月2日から同年12月10日まで,昭和59年3月3日から同年12月15日まで,昭和60年3月1日から同年12月10日まで,昭和61年4月1日から同年12月10日まで,昭和62年4月1日から同年12月25日まで,昭和63年4月4日から同年12月11日まで,平成元年4月3日から同年12月14日まで)・⑧(ただし,平成11年10月から同年11月まで,平成12年9月から同年10月まで,平成13年7月から同年8月まで)のとおり,合計10年7か月間,大工・内装解体工として石綿粉じんばく露作業に従事した(甲D11の2。なお,職歴①,②は責任期間外である。)。 原告11の主張についてa 同原告は,同被災者の職歴③について昭和49年4月から昭和51年12月まで,同④について昭和52年4月から昭和53年11月まで,同⑤について昭和54年4月から平成元年12月までと主張するが,冬季は作業に従事していなかったと認められるので(甲D11の 2・23~24頁),上記のとおり認定した。 b 同原告は,同被災者の職歴⑥・⑦の期間も石綿粉じんばく露作業に従事していた旨を主張する。しかし,同被災者は,労災申請時の事情聴取において,上記期間に石綿含有建材を扱わなかった旨を説明しており(甲D11の2・56頁,同原告本人・20~21頁),他に石綿粉じんにばく露したことをうか る。しかし,同被災者は,労災申請時の事情聴取において,上記期間に石綿含有建材を扱わなかった旨を説明しており(甲D11の2・56頁,同原告本人・20~21頁),他に石綿粉じんにばく露したことをうかがわせる的確な資料等も見当たらないから,上記主張は採用できない。 c 同原告は,同被災者の職歴⑧について,平成10年5月から平成14年5月までであると主張する。 しかし,上記期間の勤務先である株式会社アトリエ素描は,労災申請時の調査の過程で,同被災者が石綿粉じんばく露作業に従事したのは上記で認定した期間だけであると回答している(甲D11の2・96頁)。また,同被災者も,同社での作業において石綿含有建材はなかったと思うと説明している(甲D11の2・56頁,同原告本人21頁)。 したがって,上記で認定した期間以外に石綿粉じんばく露作業に従事したとは認められないから,同原告の上記主張は採用できない。 イ同被災者が従事した石綿粉じんばく露作業の内容同被災者は,内装解体工として,昭和54年頃までは鉄筋コンクリート造のビルのテナントの内装解体(解体後の新設工事を含む。)に従事したほか,大工として,主に戸建て一般住宅の新築・改築工事に従事した。内装解体作業においては,既存の内装を解体する際や,新規の内装作業(スレート〔「フレキ」〕やボード〔「タイガーボード」〕を切断し,切り口にやすりをかけたりした。)の際に,石綿粉じんにばく露した(これらの作業は屋内で行われた。)。その他,石綿吹付け作業が行われている傍で作業をすることもあったが,件数は少なかった。また,一般住宅の新築・改築工事 においては,屋内で内装材を切断したり,屋外でサイディング材を切断したりした際に,石綿粉じんにばく露した。(甲D11の3の1・2~4頁,同原告本人1~1 また,一般住宅の新築・改築工事 においては,屋内で内装材を切断したり,屋外でサイディング材を切断したりした際に,石綿粉じんにばく露した。(甲D11の3の1・2~4頁,同原告本人1~12,16~18,28,32,35,36頁)ウ主要原因建材及び主要原因企業の認定上記イで認定した石綿粉じんばく露作業の内容に照らせば,同被災者の主な粉じんばく露源(主要原因建材となり得る建材種類)は,石綿スレートボード⑮~⑲,石綿含有押出成形セメント板㉒,石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓,石綿含有ロックウール吸音天井板㉔であると認められる。同被災者(原告)は,耐火被覆板(建材種類⑪,⑫)も主要原因建材に当たる旨を主張するが,主に従事していたのは木造建物及び鉄筋コンクリート造建物であったと認められ,通常耐火被覆板は用いられないのであるから,これらの建材から発生した石綿粉じんにばく露したとは認め難いものである。 なお,同被災者は,新築工事には120件程度(改築工事も同程度)携わった旨を述べているところ(同被災者本人12頁),前述した同被災者の職歴(石綿粉じんばく露作業期間)に照らしても,相当多数の作業現場に従事していたと考えるのが自然である。 上記各建材の建材現場到達事実に関しては,被災者04らについて述べたのと同様であるから,被災者11との関係では,石綿スレートボード⑮~⑲,石綿含有押出成形セメント板㉒,石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓が主要原因建材となり,被告A&AM及び被告MMKを主要原因企業と認めるべきである(なお,石綿含有押出成形セメント板㉒に係る被告ノザワの製品は主要原因建材に挙げられていないので,同社は主要原因企業には当たらない。)。 ⑿ 被災者018(原告番号12番)ア石綿粉じんにばく露した作業期間 成形セメント板㉒に係る被告ノザワの製品は主要原因建材に挙げられていないので,同社は主要原因企業には当たらない。)。 ⑿ 被災者018(原告番号12番)ア石綿粉じんにばく露した作業期間 同被災者(昭和●年●月●日生)は,責任期間内において,同被災者の職歴④~⑯のとおり,合計9年1か月間,塗装工として石綿粉じんばく露作業に従事した(甲D12の2。なお,職歴①~③は責任期間外である。)。 イ同被災者が従事した石綿粉じんばく露作業の内容同被災者は,塗装工として,戸建て住宅(改築工事)の屋根,内外壁,風呂場の塗装作業等に従事し,古い塗装を削り取って塗り直す際,塗料に含まれる石綿粉じんにばく露した。ビルや学校,倉庫,プレハブ工場の塗装作業に従事した際にも,同様に石綿粉じんにばく露した。作業場所は,北海道内のほか,東京や関東近郊であった。(甲D12の2・54~59,79頁,原告12本人5,6頁)同被災者は,労災申請時の事情聴取において,小学校や工場等の新築工事で塗装作業した際,石綿を吸い込んだ可能性がある旨を述べており,子である原告12も,同被災者から聞いた話であるとして,おおむね同旨を述べる(甲D12の2・55,59頁,12の3の1・2,3頁,同原告本人4,5頁)。 しかし,同被災者とともに作業したこともあるという同原告において,同被災者が上記作業によって粉じんを吸い込む場面を見たことはないというのであり(同原告本人16,19頁),いずれの供述からも,同被災者の具体的な作業状況(粉じんばく露状況)は明確ではない(同被災者は,「小学校のボイラー室の塗装をしましたが,この部屋のボイラーの周りに石綿がむき出しで有り,その石綿を吸い込んだのだと思います。」と述べており〔甲D12の2・59頁〕,吹付け作業が行われてい 災者は,「小学校のボイラー室の塗装をしましたが,この部屋のボイラーの周りに石綿がむき出しで有り,その石綿を吸い込んだのだと思います。」と述べており〔甲D12の2・59頁〕,吹付け作業が行われている傍で塗装作業に従事したものでないことがうかがわれるが,石綿への接触の有無等は不明である。)。 ウ主要原因建材及び主要原因企業の認定同原告は主要原因建材として石綿吹付け材を挙げるが,上述したとお り,被災者018の具体的な作業状況(粉じんばく露状況)は証拠から認定できない(塗装という作業内容からすれば,粉じんの飛散量が多い吹付け作業中にばく露したとは考え難いものである。)。また,それが新築工事によるものか,改修工事によるものかも,明らかではない(同被災者が新築工事である旨を明言するのは昭和56年頃の学校新築工事1件にすぎない。同被災者は,平成3年以降の職場でも石綿を含む建材が使われた建物の塗装作業に従事したとするが,その頃には,既に業界団体の自主規制で石綿吹付け材の製造が中止されていたのであるから〔前記3⑵ア〕,新築工事ではない可能性が相当程度認められる。)。 したがって,石綿吹付け材が同被災者の石綿関連疾患り患に係る影響度が高い建材であるとは評価できないから,主要原因建材であるとは認められない。 なお,同原告は,被災者018がビルの改修工事や学校の解体工事でアスベストの除去作業を行ったとも述べるが(甲D12の3の1・2,3頁),前述したとおり,被告企業らの警告表示義務は,解体行為に従事する建設作業従事者に対して負担するものではないから,この点を考慮する必要はない。 同原告は,主要原因建材として混和材を挙げるとともに,同被災者の仕事を手伝っていた際,左官工が行うようなのろ掛けの作業(たらいにセメントと水を入れて ではないから,この点を考慮する必要はない。 同原告は,主要原因建材として混和材を挙げるとともに,同被災者の仕事を手伝っていた際,左官工が行うようなのろ掛けの作業(たらいにセメントと水を入れて捏ねて塗装の下地を作る作業)をしているのを見た,そのための道具(たらいと捏ねる道具)を持っていたなどと述べる(同本人7,8頁)。 しかし,同被災者が混和材を用いていたか否かという点には何ら言及しておらず,本件全証拠に照らしても,混和材の使用をうかがわせる事情は見当たらないから,主要原因建材であるとは認められない。 以上のとおりであるから,同被災者との関係で責任を負う主要原因企 業があるとも認められない。同被災者は,石綿を原因とする肺腺がんにり患しており(甲D12の1の1,12の2・19頁),石綿粉じんにばく露したことは間違いがないといえるものの,改修・解体工事の際にばく露した可能性や,削り取った塗料等に石綿が含まれていた可能性(甲C1014・4~6頁参照)も十分に考えられるものである。 ⒀ 被災者019(原告番号13番)ア石綿粉じんにばく露した作業期間同被災者(昭和●年●月●日生)は,責任期間内において,同被災者の職歴①(ただし,昭和50年4月15日から同年12月10日まで,昭和51年5月1日から同年11月30日まで,昭和52年5月1日から同年12月29日まで,昭和53年5月1日から同年12月16日まで,昭和54年4月13日から同年11月11日まで,昭和55年4月12日から昭和56年1月24日まで,同年3月3日から同年12月29日まで,昭和57年5月1日から同年12月27日まで,昭和58年6月1日から同年12月28日まで,昭和59年6月1日から昭和60年1月31日まで,同年6月10日から同年12月30日まで)・② 月29日まで,昭和57年5月1日から同年12月27日まで,昭和58年6月1日から同年12月28日まで,昭和59年6月1日から昭和60年1月31日まで,同年6月10日から同年12月30日まで)・②(ただし,昭和62年7月1日から同年12月19日まで,昭和63年2月20日から同年12月17日まで,平成元年2月20日から同年12月17日まで,平成2年2月20日から同年12月17日まで,平成3年2月20日から同年12月14日まで,平成4年4月17日から同年12月16日まで,平成5年5月7日から同年12月18日まで,平成6年5月10日から同年12月17日まで,平成7年5月1日から同年12月16日まで,平成8年5月1日から平成9年12月15日まで,平成10年5月11日から同年11月30日まで,平成11年4月15日から同年11月30日まで,平成12年7月1日から同年12月16日まで,平成13年4月16日から同年11月30日まで,平成14年5月 6日から同年12月13日まで)・③(ただし,平成16年4月15日から同年12月15日まで,平成17年4月21日から同年12月15日まで,平成18年4月21日から同年8月31日まで)のとおり,合計19年10か月間,大工として石綿粉じんばく露作業に従事した(甲D13の2)。 原告13の主張について同原告は,同被災者の職歴①について昭和41年4月から昭和60年12月30日まで,同②について昭和62年7月1日から平成14年12月13日まで,同③について平成16年4月15日から平成18年12月14日までと主張するが,冬季は作業に従事していなかった期間があると認められるので(甲D13の2・40~42頁),上記のとおり認定した。 イ同被災者が従事した石綿粉じんばく露作業の内容同被災者は,大 でと主張するが,冬季は作業に従事していなかった期間があると認められるので(甲D13の2・40~42頁),上記のとおり認定した。 イ同被災者が従事した石綿粉じんばく露作業の内容同被災者は,大工として,木造戸建て住宅・集合住宅の新築・改築・解体工事に従事し,床下に石綿含有断熱材を入れたり,壁材を切断したり,改築現場で壁材や床材を取り壊す時や廃材を片付ける時等に,石綿粉じんにばく露した(甲D13の2・32,33,39頁,13の3の1・2頁,原告13本人5,6頁)。 ウ主要原因建材及び主要原因企業の認定上記イで認定した石綿粉じんばく露作業の内容に照らせば,同被災者の主な粉じんばく露源(主要原因建材となり得る建材種類)は,石綿スレートボード⑮~⑲,石綿含有押出成形セメント板㉒,石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓,石綿含有ロックウール吸音天井板㉔であると認められる(石綿含有窯業系サイディング㉟が主要原因建材に当たらないことは前述したとおりである。)。 なお,同被災者は作業現場数については何ら述べておらず,1回の作 業がどの程度の期間を要したのか,年間でどのぐらいの現場で作業したのか等の具体的事情は,本件全証拠に照らしても明らかではないが,同被災者の職歴(石綿粉じんばく露作業期間)は合計で17年を超えるから,相当多数の作業現場に従事していたと考えるのが自然である。 上記各建材の建材現場到達事実に関しては,被災者04らについて述べたのと同様であるから,被災者019との関係では,石綿スレートボード⑮~⑲,石綿含有押出成形セメント板㉒,石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓が主要原因建材となり,被告A&AM及び被告MMKを主要原因企業と認めるべきである(なお,石綿含有押出成形セメント板㉒に係る被告ノザワの製品は主要原因建材 ト板㉒,石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓が主要原因建材となり,被告A&AM及び被告MMKを主要原因企業と認めるべきである(なお,石綿含有押出成形セメント板㉒に係る被告ノザワの製品は主要原因建材に挙げられていないので,同社は主要原因企業には当たらない。)。 ⒁ 被災者14(原告番号14番)ア石綿粉じんにばく露した作業期間同被災者(昭和●年●月●日生)は,責任期間内において,同被災者の職歴①(ただし,始期は昭和50年1月1日)・②・③(ただし,昭和59年6月7日から同年12月22日まで,昭和60年6月3日から同年12月7日まで,昭和61年5月1日から同年12月27日まで,昭和62年5月1日から同年8月13日まで)・④(ただし,昭和62年9月1日から昭和63年2月15日まで,同年4月1日から同年12月27日まで,平成元年5月1日から同年12月26日まで,平成2年4月2日から平成3年1月23日まで)・⑥のとおり,合計12年6か月間,木造大工として石綿粉じんばく露作業に従事した(甲D14の2)。 原告14の主張について同原告は,同被災者の職歴③について昭和59年6月7日から昭和62年8月13日まで,同④について昭和62年9月1日から平成3年1月23日までと主張するが,冬季は作業に従事していなかったと認めら れるので(甲D14の2・134~135頁),上記のとおり認定した。 イ同被災者が従事した石綿粉じんばく露作業の内容同被災者は,木造大工として,主に木造戸建て住宅の新築工事を年間5件程度行ったほか,全部で30件程度の改築工事(建物の破壊を伴うもの。 このうち解体作業のみは1,2件。)を行った。石綿スレートや石膏ボード,サイディング材等の建材を切断(軒天に使う石綿スレートやサイディング材の切断は,屋外で行っ 度の改築工事(建物の破壊を伴うもの。 このうち解体作業のみは1,2件。)を行った。石綿スレートや石膏ボード,サイディング材等の建材を切断(軒天に使う石綿スレートやサイディング材の切断は,屋外で行った。)して,天井,壁,軒天等に釘で打ち付けるなどした際に石綿粉じんにばく露したほか,改築・解体作業時に天井等を剥がした際に石綿粉じんにばく露した。ボード類はカッターで切り目を入れて折ったりしたが,硬いスレート板等は電動丸鋸で切断した。なお,けいカル板を使用した記憶はなく,切断したことがあるボード類の中にもけいカル板は入っていない。(甲D14の3の1・3~6頁,同被災者本人1~12,17,25,26,36,40頁)ウ主要原因建材及び主要原因企業の認定上記イで認定した石綿粉じんばく露作業の内容に照らせば,同被災者の主な粉じんばく露源(主要原因建材となり得る建材種類)は,石綿スレートボード⑮~⑲,石綿含有押出成形セメント板㉒,石綿含有ロックウール吸音天井板㉔であると認められる(石綿含有窯業系サイディング㉟が主要原因建材に当たらないことは前述したとおりである。石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓については,同被災者本人が使用を否定している。)。 なお,同被災者は,前述のとおり,主に木造戸建て住宅の新築工事を年間5件程度行った旨を述べているところ,同被災者の職歴(石綿粉じんばく露作業期間)は合計で12年を超えるから,相当多数の作業現場に従事していたと考えるのが自然である。 上記各建材の建材現場到達事実に関しては,被災者9らについて述べ たのと同様であるから,被災者14との関係では,石綿スレートボード⑮~⑲,石綿含有押出成形セメント板㉒が主要原因建材となり,被告A&AM及び被告MMKを主要原因企業と認めるべきである(なお,石綿 たのと同様であるから,被災者14との関係では,石綿スレートボード⑮~⑲,石綿含有押出成形セメント板㉒が主要原因建材となり,被告A&AM及び被告MMKを主要原因企業と認めるべきである(なお,石綿含有押出成形セメント板㉒に係る被告ノザワの製品は主要原因建材に挙げられていないので,同社は主要原因企業には当たらない。)。 ⒂ 被災者022(原告番号15番)ア石綿粉じんにばく露した作業期間同被災者(昭和●年●月●日生)は,責任期間内において,同被災者の職歴②・③(ただし,昭和51年5月1日から同年12月15日まで,昭和52年5月1日から同年12月23日まで,昭和53年5月16日から同年6月13日まで,同月16日から同月末日まで)・④(ただし,昭和53年7月1日から同年12月15日まで,昭和54年6月4日から同年12月15日まで)のとおり,合計2年9か月間,解体工として石綿粉じんばく露作業に従事した(甲D15の2。なお,職歴①は責任期間外である。)。 原告15の主張について同原告は,同被災者の職歴③について昭和51年5月から昭和53年6月まで,同④について昭和53年7月から昭和54年12月までと主張するが,冬季は作業に従事していなかったと認められるので(甲D15の2・88頁),上記のとおり認定した。 イ同被災者が従事した石綿粉じんばく露作業の内容同被災者は,解体工として,主に札幌のすすきの等にあるビルの解体作業に従事し,ブレーカーでコンクリート壁(外壁・内壁)や天井の建材を破壊するなどした際,石綿粉じんにばく露した。なお,同被災者は,新築のビルの建設作業において,吹付け作業をしている傍で足場を組んだりしたとも述べるが(甲D15の2・72,73頁),本件全証拠に照らしても, 回数等は明らかでなく,専ら解体 被災者は,新築のビルの建設作業において,吹付け作業をしている傍で足場を組んだりしたとも述べるが(甲D15の2・72,73頁),本件全証拠に照らしても, 回数等は明らかでなく,専ら解体作業に従事していたと認めることが相当である(妻である原告15も,解体をしているという以上の具体的な作業内容は知らないと述べる〔同本人1,2頁〕。)。 ウ主要原因建材及び主要原因企業の認定被告企業らの警告表示義務は,解体作業中に石綿粉じんにばく露した建設作業者に対して負担するものではない。したがって,被告企業らが同被災者に対して不法行為責任を負うことはないから,同被災者との関係で主要原因建材等を認定する必要はない。 ⒃ 被災者026(原告番号16番)ア石綿粉じんにばく露した作業期間同被災者(昭和●年●月●日生)は,責任期間内において,同被災者の職歴②(ただし,冬季は作業していなかったと認められるので〔甲D16の2・60~62頁〕,作業期間は,昭和50年6月2日から同年12月17日まで,昭和51年5月1日から同年11月30日まで,昭和52年5月2日から同年12月25日,昭和53年5月1日から同年12月25日まで,昭和54年4月2日から同年12月29日まで,昭和55年5月9日から昭和56年12月25日まで,昭和57年4月26日から同年12月30日までとなる。)のとおり,合計5年5か月間,ガラス取付工として石綿粉じんばく露作業に従事した(甲D16の2。なお,職歴①は責任期間外である。)。 原告16-1・同16-2・同16-3の主張について同原告らは,同被災者の職歴②の終期は昭和60年1月までであり,職歴③・④も石綿粉じんばく露作業期間であると主張する。 しかし,同被災者は,労災申請時の事情聴取において,昭和58年以降に ついて同原告らは,同被災者の職歴②の終期は昭和60年1月までであり,職歴③・④も石綿粉じんばく露作業期間であると主張する。 しかし,同被災者は,労災申請時の事情聴取において,昭和58年以降に石綿粉じんばく露作業に従事していたとは説明していないから(甲 D16の2・43頁),昭和58年以降も石綿粉じんばく露作業に従事したとは認め難い。 したがって,同原告らの主張は採用できず,上記のとおり認定した。 イ同被災者が従事した石綿粉じんばく露作業の内容同被災者は,ガラス取付工として,鉄筋コンクリート造の大規模商業施設の新築工事において,石綿吹付け作業が行われている現場でガラス取付作業に従事し,石綿粉じんにばく露した(時期は昭和49年から昭和57年頃までである。)。また,鉄骨造建物にガラスの防煙たれ壁を取り付けた際,H鋼に吹き付けてある石綿をへらで剥がす等して石綿粉じんにばく露した(この作業は,昭和49年から昭和50年がピークであり,昭和51年以降は1年に2回程度の作業しかなく,昭和54年頃までに設置工事がなくなった。)。解体工事には従事していなかった。(甲D16の2・42,43頁,原告16-1本人12,13頁)ウ主要原因建材及び主要原因企業の認定上記イで認定した石綿粉じんばく露作業の内容に照らせば,同被災者の主な粉じんばく露源(主要原因建材となり得る建材種類)は,石綿吹付け材(建材種類②,③)であると認められる(作業内容に照らし,仕上げ材である石綿吹付け材〔建材種類④,⑤〕にばく露したとは認め難い。)。 同被災者が述べる粉じんばく露状況からすれば,昭和50年から昭和57年までは専ら鉄筋コンクリート造建物の断熱・吸音用に吹き付けられた石綿吹付け材から生じた粉じんにばく露し,昭和50年から昭和54年頃まで 者が述べる粉じんばく露状況からすれば,昭和50年から昭和57年までは専ら鉄筋コンクリート造建物の断熱・吸音用に吹き付けられた石綿吹付け材から生じた粉じんにばく露し,昭和50年から昭和54年頃までは,これに加えて耐火被覆用に吹き付けられた石綿吹付け材から生じた粉じんにばく露したものと認められる。原告らにおいて主要原因建材に当たると主張する製品のうち,耐火被覆用以外のもの(「ブロベストR(タイプA)」及び「バルカロック」)は,いずれも昭和50 年に製造を終了していることからすれば,同年から昭和54年頃までに使用された耐火被覆用の石綿吹付け材によって石綿粉じんにばく露した可能性が高いと考えられる。 また,前記イで認定したところによれば,同被災者は,少なくとも20件程度の作業現場に従事していたことがうかがわれ,シェアを用いた方法によって建材現場到達事実を認定し得るというべきである。 そうすると,同被災者との関係では,被災者4らについて述べたのと同様に,石綿吹付け材(建材種類②,③)が主要原因建材となり,被告A&AM,被告太平洋セメント及び被告ニチアスを主要原因企業と認めるべきである。 ⒄ 被災者027(原告番号17番)ア石綿粉じんにばく露した作業期間同被災者(昭和●年●月●日生)は,責任期間内において,同被災者の職歴③(ただし,始期は昭和50年1月1日)・④~⑧のとおり,合計20年8か月間,内装工として石綿粉じんばく露作業に従事した(甲D17の2。なお,職歴①,②は責任期間外である。)。 原告17の主張について同原告は,同被災者の職歴⑨も石綿粉じんばく露作業期間として主張する。しかし,同被災者は,労災申請時の事情聴取において,同期間に内装工の仕事はほとんどしていないと説明しているから(甲D17の2・22頁 告は,同被災者の職歴⑨も石綿粉じんばく露作業期間として主張する。しかし,同被災者は,労災申請時の事情聴取において,同期間に内装工の仕事はほとんどしていないと説明しているから(甲D17の2・22頁),同期間に石綿粉じんばく露作業に従事したとは認められない。 イ同被災者が従事した石綿粉じんばく露作業の内容同被災者は,内装工として,主に鉄筋コンクリート造建物の新築工事において,石こうボード,スレート,吸音板等(天井材,壁材)の切断や張付け作業に従事した際,石綿粉じんにばく露した。(甲D17の2・17~ 18,21,22頁,17の3の1・2,3頁,原告17本人3,18,19頁)。 ウ主要原因建材及び主要原因企業の認定上記イで認定した石綿粉じんばく露作業の内容に照らせば,同被災者の主な粉じんばく露源(主要原因建材となり得る建材種類)は,石綿スレートボード⑮~⑲,石綿含有押出成形セメント板㉒,石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓,石綿含有ロックウール吸音天井板㉔であると認められる。原告17は,石綿吹付け材(建材種類①~③)と耐火被覆板(建材種類⑪,⑫)も主要原因建材に当たる旨を主張するが,前者については,本件全証拠に照らしてもばく露状況が不明瞭といわざるを得ず,また,後者については,主に従事していたのは鉄筋コンクリート造建物であったと認められ,通常耐火被覆板は用いられないのであるから,これらの建材から発生した石綿粉じんにばく露したとは認め難いものである。 なお,同被災者は作業現場数については何ら述べておらず,1回の作業がどの程度の期間を要したのか,年間でどのぐらいの現場で作業したのか等の具体的事情は,本件全証拠に照らしても明らかではないが,同被災者の職歴(石綿粉じんばく露作業期間)は合計で20年を超えるから,相当 の程度の期間を要したのか,年間でどのぐらいの現場で作業したのか等の具体的事情は,本件全証拠に照らしても明らかではないが,同被災者の職歴(石綿粉じんばく露作業期間)は合計で20年を超えるから,相当多数の作業現場に従事していたと考えるのが自然である。 上記各建材の建材現場到達事実に関しては,被災者04らについて述べたのと同様であるから,被災者027との関係では,石綿スレートボード⑮~⑲,石綿含有押出成形セメント板㉒,石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓が主要原因建材となり,被告A&AM,被告ノザワ及び被告MMKを主要原因企業と認めるべきである。 5 被告企業らの責任割合⑴ 前記認定説示のとおり,被告企業らが責任を負う期間(以下「有責期間」 という。)は昭和50年1月1日以降に限られるところ,弁論の全趣旨によれば,本件被災者は,別紙5のとおり,それ以前にも,石綿粉じんばく露作業に従事していたことが認められる。また,本件被災者ごとに主要原因企業と認定された被告企業らは,本件被災者の石綿関連疾患発症に高い影響を与えたものということができるものの,前記認定事実(第1節第1)のとおり,建設作業従事者は,自らが行った作業により発散し,又は飛散した石綿粉じんに直接的にばく露することがあったほか,同じ建設現場で他の者が行った作業によって発散し,又は飛散した石綿粉じんに間接的にばく露することもあったのであり,本件被災者も,同様に間接的にばく露することがあったものと認められ,主要原因企業とされた者が製造販売したもの以外の石綿含有建材から生じた石綿粉じんにばく露することもあったと認められる。 このように,本件被災者が石綿含有建材を取り扱ったことによる石綿粉じんのばく露量は,各自の石綿粉じんのばく露量全体の一部にとどまるという事情がある。被 粉じんにばく露することもあったと認められる。 このように,本件被災者が石綿含有建材を取り扱ったことによる石綿粉じんのばく露量は,各自の石綿粉じんのばく露量全体の一部にとどまるという事情がある。被告企業らは,こうした事情等を考慮して定まるその行為の損害の発生に対する寄与度に応じた範囲で損害賠償責任を負うというべきである(神奈川1陣最判)。 ⑵ア被告企業らが責任を負う本件被災者については,いずれも有責期間以前に石綿粉じんにばく露した期間が存在するから,その期間に応じて,被告企業らの寄与割合を限定することが相当である。昭和50年以前に製造販売された石綿含有建材には,発がん性の高いクロシドライト等が使われるものも多かったこと(石綿吹付け材①が,その典型例である。),昭和50年頃は石綿の危険性に対する認識が十分でなく,間接的にばく露する事態も相当数存在したと考えられること,時代を下るにつれて,ノンアス製品に触れる可能性も高くなることなどの事情を踏まえれば,昭和50年以前に10年前後の石綿粉じんばく露期間を有する者との関係では,各主要原因企業の寄与の割合は,5割を超えないというべきである(これよりも相 当短い石綿粉じんばく露期間しかない者については,後記⑶で論じる。)。 イまた,有責期間内のばく露についても,①原告らが主張する主要原因建材自体,石綿関連疾患にり患する原因となった可能性が高いと考えられるものを選定したものであること,②本件被災者ごとに認定した主要原因建材を製造販売した企業は,主要原因企業と認定した者以外にも複数存在したことなどの事情を指摘できる。これらの事情を踏まえれば,各主要原因企業の寄与の割合は,8割を超えないというべきである(別途の考慮が必要となる者については,後記⑶で論じる。)。 ⑶ 以上の点を踏まえ ことなどの事情を指摘できる。これらの事情を踏まえれば,各主要原因企業の寄与の割合は,8割を超えないというべきである(別途の考慮が必要となる者については,後記⑶で論じる。)。 ⑶ 以上の点を踏まえ,被告企業らが責任を負う本件被災者ごとに,責任割合を検討する。 ア被災者1(原告番号1番)同被災者は,昭和36年頃から石綿粉じんばく露作業に従事していたことを自認しており,冬季は作業に従事していない期間があるとしても(同本人5,36頁),少なくとも有責期間前に約9年間にわたり石綿粉じんにばく露していた(別紙5)。したがって,ばく露期間を考慮した場合,各主要原因企業の寄与の割合は,5割とみるべきである(前記⑵ア)。 また,他企業の存在を考慮した場合,各主要原因企業の寄与の割合は,8割とみるべきである(前記⑵イ)。 したがって,同被災者に生じた損害について,各主要原因企業が負担する責任割合(寄与度)は,損害全体の4割とするのが相当である。 イ被災者04(原告番号2番)同被災者は,昭和49年頃から石綿粉じんばく露作業に従事していたことを自認しており,有責期間前に約1年間にわたり石綿粉じんにばく露していた(別紙5)。ばく露期間を考慮した場合,期間の短さからすれば,各主要原因企業の寄与の割合を5割とみることは相当ではなく,これを7割程度とみるべきである。 また,他企業の存在を考慮した場合,同被災者が取り扱った建材種類が多岐にわたり,主要原因建材(企業)以外にも多数の原因建材(企業)が想定できることからすれば,各主要原因企業の寄与の割合は,6割程度とみるべきである。 したがって,同被災者に生じた損害について,各主要原因企業が負担する責任割合(寄与度)は,損害全体の4割とするのが相当である。 ウ被災者05(原告番号3番) 割合は,6割程度とみるべきである。 したがって,同被災者に生じた損害について,各主要原因企業が負担する責任割合(寄与度)は,損害全体の4割とするのが相当である。 ウ被災者05(原告番号3番)同被災者は,昭和36年頃から石綿粉じんばく露作業に従事していたことを自認しており,有責期間前に約13年間にわたり石綿粉じんにばく露していた(別紙5)。したがって,ばく露期間を考慮した場合,各主要原因企業の寄与の割合は,5割とみるべきである(前記⑵ア)。 また,他企業の存在を考慮した場合,各主要原因企業の寄与の割合は,8割とみるべきである(前記⑵イ)。 したがって,同被災者に生じた損害について,各主要原因企業が負担する責任割合(寄与度)は,損害全体の4割とするのが相当である。 エ被災者4(原告番号4番)同被災者は,昭和38年頃から石綿粉じんばく露作業に従事していたことを自認しており,作業に従事していない冬季の期間(甲D4の2・41頁)を除き,有責期間前に約9年間にわたり石綿粉じんにばく露していた(別紙5)。したがって,ばく露期間を考慮した場合,各主要原因企業の寄与の割合は,5割とみるべきである(前記⑵ア)。 また,他企業の存在を考慮した場合,各主要原因企業の寄与の割合は,8割とみるべきである(前記⑵イ)。 したがって,同被災者に生じた損害について,各主要原因企業が負担する責任割合(寄与度)は,損害全体の4割とするのが相当である。 オ被災者011(原告番号7番) 同被災者は,昭和48年頃から石綿粉じんばく露作業に従事していたことを自認しており,有責期間前に約2年間にわたり石綿粉じんにばく露していた(別紙5)。ばく露期間を考慮した場合,期間の短さからすれば,各主要原因企業の寄与の割合を5割とみることは相当ではなく,こ ことを自認しており,有責期間前に約2年間にわたり石綿粉じんにばく露していた(別紙5)。ばく露期間を考慮した場合,期間の短さからすれば,各主要原因企業の寄与の割合を5割とみることは相当ではなく,これを6割程度とみるべきである。 また,他企業の存在を考慮した場合,各主要原因企業の寄与の割合は,8割とみるべきである(前記⑵イ)。 したがって,同被災者に生じた損害について,各主要原因企業が負担する責任割合(寄与度)は,損害全体の5割とするのが相当である。 カ被災者9(原告番号9番)同被災者は,昭和41年頃から石綿粉じんばく露作業に従事していたことを自認しており,有責期間前に約7年間にわたり石綿粉じんにばく露していた(別紙5)。したがって,ばく露期間を考慮した場合,各主要原因企業の寄与の割合は,5割とみるべきである(前記⑵ア)。 また,他企業の存在を考慮した場合,被災者04について述べたのと同様に,各主要原因企業の寄与の割合は,6割程度とみるべきである(前記⑵イ)。 したがって,被災者9に生じた損害について,各主要原因企業が負担する責任割合(寄与度)は,損害全体の3割とするのが相当である。 キ被災者11(原告番号11番)同被災者は,昭和32年頃から石綿粉じんばく露作業に従事していたことを自認しており,有責期間前に約18年間にわたり石綿粉じんにばく露していた(別紙5)。したがって,ばく露期間を考慮した場合,各主要原因企業の寄与の割合は,5割とみるべきである(前記⑵ア)。 また,他企業の存在を考慮した場合,被災者04について述べたのと同様に,各主要原因企業の寄与の割合は,6割程度とみるべきである(前記 ⑵イ)。 したがって,被災者11に生じた損害について,各主要原因企業が負担する責任割合(寄与度)は,損害全体の3 様に,各主要原因企業の寄与の割合は,6割程度とみるべきである(前記 ⑵イ)。 したがって,被災者11に生じた損害について,各主要原因企業が負担する責任割合(寄与度)は,損害全体の3割とするのが相当である。 ク被災者019(原告番号13番)同被災者は,昭和41年頃から石綿粉じんばく露作業に従事していたことを自認しており,有責期間前に約9年間にわたり石綿粉じんにばく露していた(別紙5)。したがって,ばく露期間を考慮した場合,各主要原因企業の寄与の割合は,5割とみるべきである(前記⑵ア)。 また,他企業の存在を考慮した場合,被災者04について述べたのと同様に,各主要原因企業の寄与の割合は,6割程度とみるべきである(前記イ)。 したがって,被災者019に生じた損害について,各主要原因企業が負担する責任割合(寄与度)は,損害全体の3割とするのが相当である。 ケ被災者14(原告番号14番)同被災者は,昭和43年頃から石綿粉じんばく露作業に従事していたことを自認しており,有責期間前に約7年間にわたり石綿粉じんにばく露していた(別紙5)。したがって,ばく露期間を考慮した場合,各主要原因企業の寄与の割合は,5割とみるべきである(前記⑵ア)。 また,他企業の存在を考慮した場合,被災者04について述べたのと同様に,各主要原因企業の寄与の割合は,6割程度とみるべきである(前記イ)。 したがって,被災者14に生じた損害について,各主要原因企業が負担する責任割合(寄与度)は,損害全体の3割とするのが相当である。 コ被災者026(原告番号16番)同被災者は,昭和48年頃から石綿粉じんばく露作業に従事していたことを自認しており,有責期間前に約1年間にわたり石綿粉じんにばく露し ていた(別紙5)。ばく露期間を考慮した 号16番)同被災者は,昭和48年頃から石綿粉じんばく露作業に従事していたことを自認しており,有責期間前に約1年間にわたり石綿粉じんにばく露し ていた(別紙5)。ばく露期間を考慮した場合,期間の短さからすれば,各主要原因企業の寄与の割合を5割とみることは相当ではなく,これを6割程度とみるべきである。 また,他企業の存在を考慮した場合,各主要原因企業の寄与の割合は,8割とみるべきである(前記⑵イ)。 したがって,同被災者に生じた損害について,各主要原因企業が負担する責任割合(寄与度)は,損害全体の5割とするのが相当である。 サ被災者027(原告番号17番)同被災者は,昭和38年頃から石綿粉じんばく露作業に従事していたことを自認しており,有責期間前に約12年間にわたり石綿粉じんにばく露していた(別紙5)。したがって,ばく露期間を考慮した場合,各主要原因企業の寄与の割合は,5割とみるべきである(前記⑵ア)。 また,他企業の存在を考慮した場合,被災者04について述べたのと同様に,各主要原因企業の寄与の割合は,6割程度とみるべきである(前記イ)。 したがって,被災者027に生じた損害について,各主要原因企業が負担する責任割合(寄与度)は,損害全体の3割とするのが相当である。 6 まとめ以上によれば,被災者1,同04,同05,同4,同011,同9,同11,同019,同14,同026,同027について,それぞれ前記4で認定した各主要原因企業は,民法719条1項後段類推適用により,前記5の寄与割合の限度で連帯して損害賠償責任を負う(主位的請求)。原告らが主張する被告企業らの分割責任(予備的請求)は,主位的請求を超えるものとはいえないから,別途検討を要しない。 第6 製造物責任法に基づく責任の有無原告らは,製造物責任 う(主位的請求)。原告らが主張する被告企業らの分割責任(予備的請求)は,主位的請求を超えるものとはいえないから,別途検討を要しない。 第6 製造物責任法に基づく責任の有無原告らは,製造物責任法3条に基づき,石綿関連疾患の原因となる石綿が含ま れていたことや,その危険性等に関する警告表示が欠けていたことが製品の欠陥であるなどと主張する。しかし,前者については製造中止義務等違反を,後者については警告表示義務違反を根拠とする各不法行為責任と重なる。そうすると,製造物責任法3条に基づく請求は,不法行為責任に基づく請求を超えるものとはいえないから,別途検討を要しない。 第7 損害額の算定に関する基本的な考え方 1 基準慰謝料額(包括一律請求の可否を含む)原告らは,本件被災者一人当たり一律3500万円の慰謝料を請求する。しかし,本件被災者は,責任期間内に石綿粉じんばく露作業に従事し,石綿関連疾患にり患したしたという点で共通点を有するものの,り患した石綿関連疾患の内容や石綿粉じんばく露作業期間の長短等の点は異なっており,これらの差異を捨象して一律に慰謝料額を算定することは不合理である。 当裁判所は,上記事情に加えて本件被災者又はその相続人である原告らが受領した労災保険給付等の金額(別紙13「労災保険給付及び石綿健康被害救済法による給付の受領額」のとおりと認められる〔弁論の全趣旨・乙ア準備書面⒇〕。)等をも考慮して,以下の金額をもって,本件被災者一人当たりの基本となる慰謝料額とするのが相当と判断した。 ① 石綿肺(じん肺管理区分が管理3で合併症あり) 1800万円② 石綿肺(じん肺管理区分が管理4で合併症あり)・肺がん・中皮腫・良性石綿胸水 2200万円③ 石綿関連疾患による死亡 2500万円 2 喫煙による損害賠償額 3で合併症あり) 1800万円② 石綿肺(じん肺管理区分が管理4で合併症あり)・肺がん・中皮腫・良性石綿胸水 2200万円③ 石綿関連疾患による死亡 2500万円 2 喫煙による損害賠償額の修正喫煙歴も石綿粉じんばく露歴もない人の発がんリスクを1とすると,喫煙歴があり石綿粉じんばく露歴がない人では10.85倍,喫煙歴がなく石綿粉じんばく露歴がある人では5.17倍,喫煙歴も石綿粉じん曝露歴もある人では53.24倍になると報告されており(前提事実第3の2⑵),喫煙が石綿を原 因とする肺がんのり患リスクを相乗的に高めていることは,明らかといえる。 したがって,損害の公平な分担の見地に照らし,肺がんにり患した被災者のうち喫煙歴がある者の慰謝料額を定めるにあたっては,喫煙歴があることを斟酌するのが相当である(民法722条2項類推適用)。 もっとも,個々の喫煙量や喫煙期間がどの程度肺がんの発症に影響を与えるかは不明瞭であること,喫煙自体は社会的に許容された嗜好であることを考慮すれば,肺がんにり患した被災者の喫煙歴による慰謝料額については,一律1割を減ずることとするのが相当である。 3 弁護士費用本件事案の内容,審理の経過,請求額及び認容額等,本件に顕れた一切の事情を考慮すると,被告企業らの責任と相当因果関係のある弁護士費用としては,それぞれ認容額の1割に相当する金額と認めることが相当である。 第8 本件被災者の慰謝料額等 1 被災者1(原告番号1番)⑴ 石綿関連疾患の発症同被災者は,石綿粉じん曝露作業に従事した結果,平成23年9月22日に石綿を原因とする肺がんを発症し,同日,療養を開始した(甲D1の1の1)。 ⑵ 慰謝料額ア基準慰謝料額 2200万円イ寄与度による限定 ×0.4ウ喫煙歴による修 23年9月22日に石綿を原因とする肺がんを発症し,同日,療養を開始した(甲D1の1の1)。 ⑵ 慰謝料額ア基準慰謝料額 2200万円イ寄与度による限定 ×0.4ウ喫煙歴による修正(甲D1の3の1・14頁) ×0.9エ上記修正後の慰謝料額 792万円⑶ 認容額871万円(慰謝料792万円,弁護士費用79万円)及びこれに対する平成23年9月22日(療養開始日)から支払済みまで民法所定の年5分の 割合による遅延損害金 2 被災者04(原告番号2番)⑴ 石綿関連疾患の発症同被災者は,石綿粉じんばく露作業に従事した結果,平成23年12月14日,石綿を原因とするじん肺症と診断され,同日,療養を開始した(甲D2の1の1,2の1の3)。 ⑵ 同被災者の死亡等同被災者は,平成27年11月25日,石綿肺により死亡した。同被災者の損害賠償請求権は,原告2-1(妻。相続分2分の1),同2-2・同2-3・同2-4(いずれも子。相続分各6分の1)が相続した。(甲D2の1の3,2の4の2の1~12)⑶ 慰謝料額ア基準慰謝料額 2500万円イ寄与度による限定 ×0.4ウ上記修正後の慰謝料額 1000万円⑷ 認容額ア原告2-1について550万円(慰謝料500万円,弁護士費用50万円)及びこれに対する平成23年12月14日(療養開始日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金イ原告2-2・同2-3・同2-4についてそれぞれ182万6666円(慰謝料166万6666円,弁護士費用16万円)及びこれに対する平成23年12月14日(療養開始日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金 3 被災者05(原告番号3番)⑴ 石綿関連疾患の発症 士費用16万円)及びこれに対する平成23年12月14日(療養開始日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金 3 被災者05(原告番号3番)⑴ 石綿関連疾患の発症 同被災者は,石綿粉じんばく露作業に従事した結果,平成25年6月18日,肺がん及び石綿肺と診断され,同日,療養を開始した(甲D3の1の1)。 ⑵ 同被災者の死亡等同被災者は,平成25年8月10日,肺がんにより死亡した。同被災者の相続人は,06(妻),07・原告3・08(いずれも子)であるが,同人らは,平成27年6月20日,同被災者の石綿関連疾患発症に基づく損害賠償請求権を原告3が相続する旨の遺産分割協議を成立させた。(甲D3の1の3,3の4の2の1~4,3の4の3~7)⑶ 慰謝料額ア基準慰謝料額 2500万円イ寄与度による限定 ×0.4ウ喫煙歴による修正(甲D3の3の2・58頁) ×0.9エ上記修正後の慰謝料額 900万円⑷ 認容額990万円(慰謝料900万円,弁護士費用90万円)及びこれに対する平成25年6月18日(療養開始日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金 4 被災者4(原告番号4番)⑴ 石綿関連疾患の発症同被災者は,石綿粉じんばく露作業に従事した結果,平成23年6月24日,良性石綿胸水と診断され,同日,療養を開始した(甲D4の1の1)。 ⑵ 慰謝料額ア基準慰謝料額 2200万円イ寄与度による限定 ×0.4ウ上記修正後の慰謝料額 880万円⑶ 認容額 968万円(慰謝料880万円,弁護士費用88万円)及びこれに対する平成23年6月24日(療養開始日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金 5 被災者011(原告番号7番) 968万円(慰謝料880万円,弁護士費用88万円)及びこれに対する平成23年6月24日(療養開始日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金 5 被災者011(原告番号7番)⑴ 石綿関連疾患の発症同被災者は,石綿粉じんばく露作業に従事した結果,平成25年10月29日,左悪性胸膜中皮腫と診断され,同日,療養を開始した(甲D7の1の1)。 ⑵ 同被災者の死亡等同被災者は,平成26年9月8日,左悪性胸膜中皮腫により死亡した。同被災者の損害賠償請求権は,原告7-1(妻。相続分2分の1),同7-2・同7-3・012(いずれも子。相続分各6分の1)が相続した。(甲D7の1の3,7の4の2の1~6)⑶ 慰謝料額ア基準慰謝料額 2500万円イ寄与度による限定 ×0.5ウ上記修正後の慰謝料額 1250万円⑷ 認容額ア原告7-1687万円(慰謝料625万円,弁護士費用62万円)及びこれに対する平成25年10月29日(療養開始日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金イ原告7-2・同7-3それぞれ228万3333円(慰謝料208万3333円,弁護士費用20万円)及びこれに対する平成25年10月29日(療養開始日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金 6 被災者9(原告番号9番)⑴ 石綿関連疾患の発症同被災者は,石綿粉じんばく露作業に従事した結果,原発性肺がんと診断され,平成26年7月5日,療養を開始した(甲D9の2・2頁)⑵ 慰謝料額ア基準慰謝料額 2200万円イ寄与度による限定 ×0.3ウ喫煙による減額(甲D9の3の1・8頁) ×0.9エ上記修正後の慰謝料額 594万円⑶ 認容額653万円(慰謝料 ア基準慰謝料額 2200万円イ寄与度による限定 ×0.3ウ喫煙による減額(甲D9の3の1・8頁) ×0.9エ上記修正後の慰謝料額 594万円⑶ 認容額653万円(慰謝料594万円,弁護士費用59万円)及びこれに対する平成26年7月5日(療養開始日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金 7 被災者11(原告番号11番)⑴ 石綿関連疾患の発症同被災者は,石綿粉じんばく露作業に従事した結果,平成26年8月8日,左上葉肺がんとの診断を受けて,同日,療養を開始した(甲D11の1の1・2)。 ⑵ 慰謝料額ア基準慰謝料額 2200万円イ寄与度による限定 ×0.3ウ喫煙による減額(甲D11の3の1・6頁) ×0.9エ上記修正後の慰謝料額 594万円⑶ 認容額653万円(慰謝料594万円,弁護士費用59万円)及びこれに対する平成26年8月8日(療養開始日)から支払済みまで民法所定の年5分の割 合による遅延損害金 8 被災者019(原告番号13番)⑴ 石綿関連疾患の発症同被災者は,石綿粉じんばく露作業に従事した結果,平成26年1月8日から療養を開始し,同年6月頃,原発性肺がんとの診断を受けた(甲D13の2・1頁,13の3の1・3頁)。 ⑵ 同被災者の死亡等同被災者は,平成26年10月8日,肺扁平上皮がんにより死亡した。同被災者の相続人は,原告13(妻),020・021(いずれも子)であるが,同人らは,平成28年8月1日,同被災者の石綿関連疾患発症に基づく損害賠償請求権を原告13が相続する旨の遺産分割協議を成立させた。(甲D13の1の3,13の4の2の1~5,13の4の3)⑶ 慰謝料額ア基準慰謝料額 2500万円イ寄与度による限定 ×0 賠償請求権を原告13が相続する旨の遺産分割協議を成立させた。(甲D13の1の3,13の4の2の1~5,13の4の3)⑶ 慰謝料額ア基準慰謝料額 2500万円イ寄与度による限定 ×0.3ウ喫煙による減額(甲D13の3の1・2,3頁) ×0.9エ上記修正後の慰謝料額 675万円⑷ 認容額742万円(慰謝料675万円,弁護士費用67万円)及びこれに対する平成26年1月8日(療養開始日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金 9 被災者14(原告番号14番)⑴ 石綿関連疾患の発症同被災者は,石綿粉じんばく露作業に従事した結果,平成26年3月26日から療養を開始し,同年8月21日,左上葉肺がんとの診断を受けた(甲D14の2,14の3の1・7頁)。 ⑵ 慰謝料額ア基準慰謝料額 2200万円イ寄与度による限定 ×0.3ウ喫煙による減額(甲D14の3の1・8頁) ×0.9エ上記修正後の慰謝料額 594万円⑶ 認容額653万円(慰謝料594万円,弁護士費用59万円)及びこれに対する平成26年5月2日(原告らが主張する療養開始日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金被災者026(原告番号16番)⑴ 石綿関連疾患の発症同被災者は,石綿粉じんばく露作業に従事した結果,平成27年6月9日から療養を開始し,同年9月2日,悪性胸膜中皮腫と診断された(甲D16の1の1・2,2・20頁)。 ⑵ 同被災者の死亡等同被災者は,平成28年12月4日,アスベストを原因とする悪性胸膜中皮腫により死亡した。同被災者の損害賠償請求権は,原告16-1(妻。相続分2分の1),同16-2・同16-3(いずれも子。相続分各4分の1)が相続した。(甲D16 ,アスベストを原因とする悪性胸膜中皮腫により死亡した。同被災者の損害賠償請求権は,原告16-1(妻。相続分2分の1),同16-2・同16-3(いずれも子。相続分各4分の1)が相続した。(甲D16の1の3の2,16の4の2の1~7)⑶ 慰謝料額ア基準慰謝料額 2500万円イ寄与度による限定 ×0.5ウ上記修正後の慰謝料額 1250万円⑷ 認容額ア原告16-1687万円(慰謝料625万円,弁護士費用62万円)及びこれに対す る平成27年6月9日(療養開始日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金イ原告16-2・同16-3それぞれ343万5000円(慰謝料312万5000円,弁護士費用31万円)及びこれに対する平成27年6月9日(療養開始日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金 11 被災者027(原告番号17番)⑴ 石綿関連疾患の発症同被災者は,石綿粉じんばく露作業に従事した結果,肺がんとの診断を受けて,平成27年2月4日,療養を開始した(甲D17の1の2,17の2・1頁)。 ⑵ 同被災者の死亡等同被災者は,平成28年12月2日,石綿肺の影響を受けた肺細胞がん(脳転移)により死亡した。同被災者は,公正証書遺言の方法により,全財産を原告17(妻)に相続させた。(甲D17の1の3,17の4の1)⑶ 慰謝料額ア基準慰謝料額 2500万円イ寄与度による限定 ×0.3ウ喫煙による減額(甲D17の2・47頁) ×0.9エ上記修正後の慰謝料額 675万円⑷ 認容額742万円(慰謝料675万円,弁護士費用67万円)及びこれに対する平成27年2月4日(療養開始日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金第9 消 額 675万円⑷ 認容額742万円(慰謝料675万円,弁護士費用67万円)及びこれに対する平成27年2月4日(療養開始日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金第9 消滅時効及び除斥期間 1 消滅時効について 民法724条にいう「加害者を知った時」とは,被害者において,加害者に対する請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程度においてこれを知った時を意味する(最高裁昭和45年(オ)第628号同48年11月16日第二小法廷判決・民集27巻10号1374頁)。被告企業らの中には,労災その他の手続によって石綿関連疾患が認定された時点が消滅時効の起算点となる旨を主張する者(被告ニチアス)もいるが,かかる事情だけでは,各被告企業らの責任(注意義務違反)を基礎付ける事実を認識し得たとはいえず,被告企業らに対する請求が可能な程度に認識したとは認め難い。したがって,消滅時効に係る主張は採用できない。 2 除斥期間について石綿関連疾患は長い潜伏期間を経て発症するものであり,その損害の性質上,加害行為が終了してから相当期間経過後に損害が発生するものと認められるから,その不法行為責任に係る除斥期間の起算点は,損害の全部又は一部が発生した時と認めることが相当である(最高裁平成16年(受)第672号,第673号同18年6月16日第二小法廷判決・民集69巻5号1997頁)。しかるに,原告らのうち除斥期間が経過した者は存在しないのであるから,除斥期間に関する被告企業らの主張は採用できない。 第4章結論以上によれば,原告6の被告国に対する請求は理由がないから,これを棄却することとし,原告らの被告企業らに対する各請求は,別紙2「認容額等一覧表」の「原告」欄に記載のある各原告につき,同表の「認容額」欄に金額の記載の 告6の被告国に対する請求は理由がないから,これを棄却することとし,原告らの被告企業らに対する各請求は,別紙2「認容額等一覧表」の「原告」欄に記載のある各原告につき,同表の「認容額」欄に金額の記載のある被告企業らに対し同欄記載の金額及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,その限度で認容し,その余の請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとして,訴訟費用の負担につき,民事訴訟法67条2項,64条本文,61条を,仮執行宣言につき同法259条1項を,仮執行免脱宣言につき同条3項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 札幌地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官 中野郎 裁判官 間明宏充 裁判官 小西俊輔 ※別紙5ないし13は掲載を省略する。
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