令和5(わ)153 営利略取、強盗致傷、監禁、住居侵入、窃盗被告事件

裁判年月日・裁判所
令和6年7月9日 京都地方裁判所
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判決文本文5,896 文字)

判決令和6年7月9日宣告令和5年(わ)第153号営利略取、強盗致傷、監禁、住居侵入、窃盗被告事件 主文 被告人を懲役8年に処する。 未決勾留日数中310日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)第1 被告人は、A、B、C、D、E及びFと共謀の上、被害者を営利の目的で略取して監禁し、その保有する財産を強取するなどしようと考え、 1 令和4年6月7日午後4時43分頃から同日午後4時57分頃までの間、大阪市所在の建物内のパーソナルジムにおいて、B、C及びEが、被害者(当時31歳)に対し、警棒様のもので被害者の左膝を殴打するなどの暴行を加えるとともに、「今すぐいくら出せるんだ」などと語気鋭く申し向け、その反抗を抑圧した上、被害者所有又は管理の被害者方の鍵等3点在中のバッグ1個及びス マートフォン1台(時価合計約30万円相当)を強取し、さらに、被害者の左右からその腕と着衣をつかんで被害者を前記建物先歩道上まで連れ出し、その顔面を拳骨で殴るなどして、被害者を同所に停車中のD運転の普通乗用自動車内に押し込んで被告人らの支配下に置いた上、同車を発進させ、その頃から同日午後7時45分頃までの間、同所から滋賀県米原市所在の簡易宿所付近まで 同車を疾走させるとともに、同車内で、被害者に対し、ガムテープでその目や耳をふさぎ、手足を緊縛し、その身体を足で踏み付けて押さえ付けるなどし、被害者が同車内から脱出することを不能にし、 2 前記1に引き続き、同日午後7時45分頃、同車内からガムテープで緊縛された被害者を担いで運ぶなどして前記宿所に連れ込み、その頃から同月9日午 前1時5分頃までの間、同宿所内において、反抗抑圧状態にある被害者に対し、 その顔面 車内からガムテープで緊縛された被害者を担いで運ぶなどして前記宿所に連れ込み、その頃から同月9日午 前1時5分頃までの間、同宿所内において、反抗抑圧状態にある被害者に対し、 その顔面を複数回拳骨で殴打したり、その身体にスタンガンを当てて放電するなどの暴行を加えるとともに、「お前、金持ってるだろ」「幾ら持ってんだ」「俺らは暴力で飯食ってるから」「しゃべらないと殺すよ」「お前の親父の住所も分かってんだよ」「お前の親父も連れてきて同じ目に遭わせるよ」などと語気鋭く申し向けて被害者を脅迫し、被害者が保有する暗号資産等を管理していた暗号 資産取引所のログインパスワード等の暗号資産等の送金に必要な情報を聞き出し、被害者から強取した前記スマートフォンを使用して被害者が保有する暗号資産等を送金し得る地位を取得して、財産上不法の利益を得るとともに、被害者の動静を監視するなどして、被害者が同宿所内から脱出することを不能にし、 3 前記2に引き続き、同日午前1時5分頃、被害者を前記宿所から連れ出し、 車で運ぶなどして奈良県吉野郡吉野町所在の住宅宿泊事業施設に連れ込み、同日午前4時7分頃から同月16日午前11時49分頃までの間、同施設内において、被害者の動静を監視するなどして、被害者が同施設内等から脱出することを著しく困難にし、 4 前記3に引き続き、同日午前11時49分頃、被害者を前記施設から連れ出 し、車で運ぶなどして京都市所在の簡易宿所に連れ込み、同日午後4時10分頃から同月24日頃までの間、同宿所内において、被害者の動静を監視するなどして、被害者が同宿所内又は被告人らの周辺等から脱出するのを著しく困難にし、 5 前記4に引き続き、更にG及びHと共謀の上、同日頃から同月30日午後7 時29分頃までの間、前記 視するなどして、被害者が同宿所内又は被告人らの周辺等から脱出するのを著しく困難にし、 5 前記4に引き続き、更にG及びHと共謀の上、同日頃から同月30日午後7 時29分頃までの間、前記宿所内において、被害者の動静を監視するなどして、被害者が同宿所内又は被告人らの周辺等から脱出することを著しく困難にし、もって被害者を営利の目的で略取して不法に監禁し、財物を強取するとともに財産上不法の利益を得て、その際、前記一連の暴行により、被害者に全治までに約6週間を要する右上肢挫創、左腹部挫創及び左膝挫創の傷害を負わせた。 第2 被告人は、A、B、C、D、E及びFと共謀の上、金品窃取の目的で、令和 4年6月8日頃から同年7月3日頃までの間に、大阪市所在の被害者方に前記第1の1で強取した鍵で解錠した玄関戸から侵入し、その頃同所において、被害者所有又は管理の現金約1000万円及びネックレス1本等64点(時価合計約2130万円相当)を窃取した。 第3 被告人は、A、B、C、D、E及びFと共謀の上、令和4年6月8日午後5 時41分頃から同月16日午後7時9分頃までの間に、大阪市所在のホテルの駐車場において、同所に駐車中の被害者所有の普通乗用自動車1台(時価約800万円相当)並びに同車内に積載されていた被害者所有の現金約300万円及び腕時計5個等10点(時価合計約2524万円相当)を窃取した。 (証拠の標目) 省略(法令の適用)省略(量刑の理由) 1 本件は、被告人が、共犯者らと共謀して、①被害者に対して暴行を加えるなど して所持品を奪うとともに、営利の目的で被害者を自動車に押し込んで拉致し、車内や宿泊施設で監禁し、更なる暴行・脅迫を加えて暗号資産等の送金に必要な情報を聞き出すなどしてその送金 を加えるなど して所持品を奪うとともに、営利の目的で被害者を自動車に押し込んで拉致し、車内や宿泊施設で監禁し、更なる暴行・脅迫を加えて暗号資産等の送金に必要な情報を聞き出すなどしてその送金し得る地位を取得し、その後も宿泊施設を変えながら監禁を継続し、一連の暴行によって被害者に傷害を負わせた営利略取、強盗致傷、監禁(判示第1)のほか、その監禁期間中に②被害者方へ侵入して金品 等を盗み(同第2)、③被害者所有の自動車及び同車内の金品等を盗んだ(同第3)各窃盗からなる事案である。 2 まず、犯罪行為そのものに関する事情(犯情)について検討する。 (1) 本件の一連の犯行は、被害者を拉致してその保有する多額の資産を奪うという目的の下、被害者の日頃の行動パターンや家族構成等を調べ上げ、レンタカ ーや監禁場所、凶器等を準備するなどした上で、最終的には被告人を含めて9 名もの共犯者がそれぞれの役割を果たしながら敢行されたものであり、その組織性・計画性の高さは際立っている。そのような組織的な犯罪計画の下、被告人が経営するパーソナルジムにいた被害者を狙い、複数の共犯者が、膝を警棒で殴打するなどの暴行を加えて被害者の身体を拘束し、車に押し込んで簡易宿所に連れて行き、財産の在り処や暗号資産等の送金に必要な情報を聞き出すた めに、殴打やスタンガンの放電等の暴行を加え、家族も同じ目に遭わせるなどと脅迫して数日間にわたって拷問を繰り返し、また、被害者が隙をみて逃げ出すまで24日間もの長期間にわたって監禁が続き、その間に複数の共犯者によって被害者方への侵入盗や被害者所有車両等の窃盗が行われていることも併せて考慮すれば、身体に重大な傷害を与えるほどの危険な暴行は加えられていな いことを踏まえても、本件一連の犯行態様の悪質さは相 て被害者方への侵入盗や被害者所有車両等の窃盗が行われていることも併せて考慮すれば、身体に重大な傷害を与えるほどの危険な暴行は加えられていな いことを踏まえても、本件一連の犯行態様の悪質さは相当に高いというべきである。 (2) このような一連の犯行により、被害者は、全治までに約6週間を要する左膝挫創等の傷害を負っているところ、幸いにして重篤な傷害にまでは至っていないものの、長期間の監禁の中で被害者が感じた終わりの見えない恐怖・絶望は 計り知れず、精神的苦痛は甚大であったと認められる。また、強盗致傷の財産的被害は時価合計約30万円相当の財物と多額の暗号資産等を送金し得る地位であり、それ自体軽視できず、さらに、窃盗の被害としては、時価合計約6700万円相当にも及んでいるのであって、犯行全体としての被害結果は重大である。他方で、本件の発覚により時価合計約3255万円相当の被害品が被害 者に還付されている。 (3) 以上を前提に、被告人の個別の事情について検討する。 ア被告人は、本件犯行に関与するに至った経緯等について、①共同事業者であった共犯者Fから、被害者が事業資金等を持ち逃げしたと騙され、資金繰りや被害者からの資金の回収についてはFに任せていたのであり、被害者が 拉致された時点では、共犯者らから具体的な計画は聞かされておらず、被害 者と話し合うために被害者の意思に反して宿泊施設等に連れて行く可能性や、金銭を回収するために強い言葉を使って「詰める」可能性は思い至っていたが、その日に拉致することは知らなかったし、暴力が振るわれる可能性までは考えていなかった、②その翌日、共犯者Cが被害者方に侵入して窃盗を行った際、レンタカーにCを乗せて被害者方付近まで連れて行ったが、Cが被 害者方から大量の荷物を運 、暴力が振るわれる可能性までは考えていなかった、②その翌日、共犯者Cが被害者方に侵入して窃盗を行った際、レンタカーにCを乗せて被害者方付近まで連れて行ったが、Cが被 害者方から大量の荷物を運び出すのを見るまで盗みに入るとは思い至らなかった旨供述する。 しかし、関係証拠によれば、被告人は、被害者の連絡先等を知っているにもかかわらず、本件犯行日以前の時点で被害者方方向に向けての監視カメラを設置しており、本件当日(令和4年6月7日。以下、同じ。)には、自身が 経営するパーソナルジムに被害者が来る予定であることを少なくともFに伝えた結果、同ジムにおいて被害者が拉致されるに至っている上、その犯行前に監禁場所となる宿泊施設を偽名を用いて利用人数8名で予約し、さらには、共犯者が同ジムに押し入った際、閉め出されたトレーナーを散歩に誘い、口止めするなどしたことが認められる。このような客観的な経過に加えて、被 告人の供述によっても、本件当日より前には、話合いでは被害者から資金を回収できていないということを認識していたというのであるから、穏当な話合いを想定していたなどとは到底考えられず、被告人は、共犯者らが被害者を拉致した時点において、被害者の意思に反して上記宿泊施設等に連れて行くことや、抵抗したりした場合に何らかの有形力を行使して連れて行くこと になるであろうことは分かっていたと認められる(上記①の点)。 また、以上に加えて、被告人が、被害者が宿泊施設で監禁されていることを認識しながら、共犯者の指示の下でその日にレンタカーを借り、そのレンタカーにそれまで面識のなかった共犯者Cを乗せて被害者不在の被害者方付近まで送迎し、Cが被害品を盗み出すまで待っていたことからすれば、Cの 目的を知らなかったとは考え難いのであって、被告人 ンタカーにそれまで面識のなかった共犯者Cを乗せて被害者不在の被害者方付近まで送迎し、Cが被害品を盗み出すまで待っていたことからすれば、Cの 目的を知らなかったとは考え難いのであって、被告人は、Cが被害者方に侵 入する時点において、Cが窃盗に及ぶことを認識していたと認められる(上記②の点)。 以上のとおり、被告人の上記供述は信用できない。 イ以上の検討を踏まえ、本件犯行において被告人の果たした役割についてみるに、被告人は、本件の一連の犯行を計画したわけでも主導的地位にあった わけでもなく、暴行・脅迫、あるいは窃盗といった実行行為を担ったわけでもなければ、そうした犯行が行われている現場に同席もしてもいない。しかし、被告人が知らせた情報に基づいて拉致が実行されただけでなく、宿泊施設の予約、移動手段としてのレンタカーの手配や実行行為者の送迎など本件犯行に不可欠な重要な役割を果たしているというべきである。 また、仮に、被告人が、Fに騙され、被害者が事業資金を持ち逃げしており、その回収を行う必要があったと考えていたとしても、被告人と被害者とは友人であり、連絡することも容易であったにもかかわらず、被害者に事情を確認することすらしていないのであって、その動機・経緯に酌むべき事情があるとは評価し得ない。かえって、被告人は、負債返済・資金回収という 自身の利益・目的のために本件犯行に加担しているのであるし、上記のとおり、実行行為等に直接関与していないとはいえ、被害者を拉致して資産を奪うという一連の犯行計画を十分に分かりながら、いわば共犯者らを利用して自らの目的を達成しようとしたとも評価できるのであって、その意思決定は強い非難に値する。 3 以上の犯情を基に、同種事案(見るべき前科のない被告人が共犯者と共に ら、いわば共犯者らを利用して自らの目的を達成しようとしたとも評価できるのであって、その意思決定は強い非難に値する。 3 以上の犯情を基に、同種事案(見るべき前科のない被告人が共犯者と共に凶器等を用いて行った強盗致傷1件で、強盗の点が既遂であり、犯行態様がその他の類型で、他に主要な罪がなく、示談等がない事案)等の量刑傾向を踏まえて検討する。 本件は、被害者に重篤な傷害結果が生じておらず、被告人が主導的地位にな かった点などから特に重い部類に属するとまではいえないものの、計画性が高 い組織的犯行である点や、監禁が長期間にわたっている点、財産的被害が高額である点、さらには被告人の意思決定が強い非難に値する点などからすれば、本件の発覚により時価合計約3255万円相当の被害品が被害者に還付されていることを踏まえても、同種事案の中で重い部類に属するといえる。 4 以上を前提に、被告人が反省の弁を述べて被害者に対して被害弁償をしてい く旨述べていることや、被告人の父が公判廷に出廷して被告人の監督や更生への協力等を申し出ていることなど本件に現れた一切の事情も併せて考慮して、主文のとおり量刑した。 (求刑:懲役9年、弁護人の科刑意見:懲役6年)令和6年7月9日 京都地方裁判所第2刑事部裁判長裁判官川上 宏裁判官檀上信介裁判官中谷 洸

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