平成4(オ)1011 処分無効確認等

裁判年月日・裁判所
平成8年3月28日 最高裁判所第一小法廷 判決 その他 東京高等裁判所 平成3(ネ)1146
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判決文本文2,295 文字)

主文 原判決中、上告人Aの被上告人に対する損害賠償請求に関する部分を破棄し、右部分につき本件を東京高等裁判所に差し戻す。 上告人Aのその余の上告及びその余の上告人らの各上告をいずれも棄却する。 前項の部分に関する訴訟費用は上告人らの負担とする。 理由 上告代理人白井巧一、同若月家光の上告理由第一について原審の適法に確定した事実関係の下において、本件訓告又は厳重注意の無効確認を求める訴えの利益は認められないとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、独自の見解に立って原判決を論難するものであって、採用することができない。 同第二について一原審の確定したところによれば、被上告人は、上告人Aに対し、D労働組合の分会に所属する組合員らと共に団体交渉を求めて被上告人のE運行部F運転所の事務室内に無断で立ち入り、助役による再三にわたる退去通告にも従わなかったことを理由として、E運行部長名で厳重注意の措置を執ったというのであり、上告人Aは、右事務室内立入り等(以下「本件行為」という。)に加わっていなかったにもかかわらず右厳重注意を受けたことにより多大の精神的苦痛を被ったと主張して、被上告人に対し不法行為に基づく損害賠償を求めている。 原審は、上告人Aが本件行為に参加しなかったとする証拠と同人が本件行為に参加したのを現認したとの助役らの証言等とのどちらに信をおくべきかは容易に決め難いものといわなくてはならず、本件証拠関係の下では上告人Aが本件行為に参加していなかったとの事実を認定することができないとした上で、上告人Aの主張す- 1 -る不法行為は同人が本件行為に参加しなかったとの事実を前提とするものであるところ、右事実を確定し難いのである 加していなかったとの事実を認定することができないとした上で、上告人Aの主張す- 1 -る不法行為は同人が本件行為に参加しなかったとの事実を前提とするものであるところ、右事実を確定し難いのであるから、その余の点につき判断するまでもなく、右不法行為の成立は認められないと判断した。 二しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。 原審の確定したところによれば、被上告人における厳重注意は、就業規則等に規定がなく、それ自体としては直接的な法律効果を生じさせるものではないが、実際上、懲戒処分や訓告に至らない更に軽易な措置として、将来を戒めるために発令されているものであり(記録によれば、書面をもって発令されるものであることがうかがわれる。)、人事管理台帳及び社員管理台帳に記載されるものであるというのである。そうすると、本件厳重注意は、企業秩序の維持、回復を目的とする指導監督上の措置と考えられるが、一種の制裁的行為であって、これを受けた者の職場における信用評価を低下させ、名誉感情を害するものとして、その者の法的利益を侵害する性質の行為であると解される。 一般に、使用者は、労働契約関係に基づいて企業秩序維持のために必要な措置を講ずる権能を持ち、他方、従業員は企業秩序を遵守すべき義務を負っているものではあるが、使用者の右権能の行使としての措置であっても、それが従業員の法的利益を侵害する性質を有している場合には、相当な根拠、理由もないままそのような措置を執ってはならないことは当然である。したがって、右のような性質を有する使用者の措置に基づき従業員が損害を被ったという事実があれば、使用者が当該措置を執ったことを相当とすべき根拠事実の存在が証明されるか、又は使用者において右のような事実があると判断したことに相当の る使用者の措置に基づき従業員が損害を被ったという事実があれば、使用者が当該措置を執ったことを相当とすべき根拠事実の存在が証明されるか、又は使用者において右のような事実があると判断したことに相当の理由があると認められるときでなければ、不法行為が成立すると解するのが相当である。 本件厳重注意は、前記のような性質を有するものであるから、上告人Aが本件行- 2 -為に参加したとの事実が証明されない以上、E運行部長において上告人Aが本件行為に参加したものと判断したことに相当の理由があったかどうかの点について審理判断をしないまま、同人が本件行為に参加したのか参加しなかったのかが不明であることのみを理由に不法行為の成立を否定することは許されないものというべきである。 したがって、右の点について審理判断を尽くすことなく、上告人Aの主張する不法行為の成立を否定した前記原審の判断には、法令の解釈適用の誤り、ひいては審理不尽、理由齟齬の違法があり、右違法が原判決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。論旨は右の趣旨をいうものとして理由があり、その余の点について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れない。 以上のとおりであるから、原判決のうち、上告人Aの被上告人に対する損害賠償請求に関する部分を破棄し、更に審理を尽くさせるため、右部分につき本件を原審に差し戻し、上告人Aのその余の上告及びその余の上告人らの各上告をいずれも棄却することとする。 よって、民訴法四〇七条一項、三九六条、三八四条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官遠藤光男裁判官小野幹雄裁判 する。 最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官遠藤光男裁判官小野幹雄裁判官高橋久子裁判官井嶋一友裁判官藤井正雄- 3 -

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