平成15(ネ)441 共済金等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成15年10月14日 名古屋高等裁判所 棄却 名古屋地方裁判所 岡崎支部 平成12(ワ)71
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判決文本文4,879 文字)

主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は,1審原告の負担とする。 事実及び理由 (以下,略語は原判決に準ずる。)第1 当事者の求めた裁判 1 1審原告(1) 原判決を取り消す。 (2) 1審被告は,1審原告に対し,3050万円及びこれに対する平成11年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 訴訟費用は,第1,2審とも1審被告の負担とする。 (4) 仮執行宣言 2 1審被告主文同旨第2 事案の概要 1 本件は,1審原告が1審被告との間で被共済者を1審原告の息子であるA(昭和43年生まれ)とした養老生命共済契約(本件共済契約)を締結し,Aが平成9年7月24日午後0時21分に死亡し,死亡共済金3000万円は既に受領したとの事実関係を前提として,1審原告が1審被告に対し,①Aの死亡が本件共済契約上の共済約款に定める「災害」による場合に該当するとして,本件共済契約の災害給付特約及び災害死亡割増特約(本件各特約)に基づく災害給付共済金600万円及び災害死亡割増共済金2400万円(以下「本件共済金」という。)並びにこれらに対する遅延損害金(1審原告が催告した期限の翌日である平成11年11月1日から民法所定の年5分)の支払を請求するとともに,②1審被告が本件共済契約の契約者変更手続の際に,1審原告名義の紛失届を偽造したとして,不法行為に基づく慰謝料50万円及びこれに対する遅延損害金(不法行為後である平成11年11月1日から民法所定の年5分)の支払を請求したところ,1審被告が,Aの死亡は胸部大動脈瘤破裂を原因とするもので,「災害」による死亡には該当しないと主張し,また,紛失届も1審原告の承諾のもとに作成されたもので,偽造ではないと主張して争った事案である。 原審は,A の死亡は胸部大動脈瘤破裂を原因とするもので,「災害」による死亡には該当しないと主張し,また,紛失届も1審原告の承諾のもとに作成されたもので,偽造ではないと主張して争った事案である。 原審は,Aの死亡が災害によるものとは認められないこと,紛失届も1審原告の意思に基づくもので偽造とは認められないことを理由に1審原告の各請求をいずれも棄却したところ,1審原告がこれを不服として控訴した。 2 争いのない事実等,争点及び当事者の主張は,次のとおり改めるほか,原判決「事実及び理由」の「第2 事案の概要」の1及び2のとおりであるからこれを引用する。 (1) 原判決2頁6行目の「被告の前身。」及び7行目の「被告は,平成8年4月1日設立。」を削り,9行目の「(甲1)」,18行目の「(乙5の1・2)」及び3頁3行目の「(甲2)」をいずれも「(争いがない。)」と,5行目の「お料理B家」を「料理B家」と,10行目の「(甲6,14の3)」を次のとおりそれぞれ改める。 「(AがB家で調理師として稼働していたこと,同人が平成9年7月22日に調理場で調理作業等に従事していたこと,同人が同日午前10時ころ倒れ,救急車で豊橋市民病院に搬送されたこと,同人が同月24日死亡したこと,直接の死因が胸部大動脈瘤破裂であることはいずれも争いがなく,その余は甲4,6,14の3による。)」(2) 原判決3頁12行目の次に行を改めて次を加える。 「(6) 安城市農協は,平成8年4月1日,他の農協と合併して,1審被告が設立され,安城市農協の債権債務関係は1審被告に承継された(弁論の全趣旨)。 (7) 1審原告は,1審被告に対し,平成11年9月22日到達の内容証明郵便で同年10月末日までに本件共済金合計3000万円を支払うよう請求した。」(3) 原判決4頁7行目及び8行目の各「真正大動脈瘤」 ) 1審原告は,1審被告に対し,平成11年9月22日到達の内容証明郵便で同年10月末日までに本件共済金合計3000万円を支払うよう請求した。」(3) 原判決4頁7行目及び8行目の各「真正大動脈瘤」を「真性大動脈瘤」と,22行目の「被告の慰謝料支払義務の有無」を「安城市農協の担当者が1審原告名義の書類を偽造するなどしたか。その慰謝料としてはいくらが相当か。」とそれぞれ改める。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,Aの死亡は本件共済契約上の共済約款に定める「災害」に該当するとはいえず,また,1審被告が本件紛失届を偽造したものとは認められないと判断する。その理由は,次のとおり改め,次項以下で当審での補充主張に対する判断を加えるほか,原判決「事実及び理由」の「第3 争点に対する判断」のとおりであるからこれを引用する。 (1) 原判決5頁11行目の「19,」を「15の1及び3,19,20,22,」と,14行目の「A」を「A(昭和43年4月8日生まれ)」と,6頁14行目の「幅約90センチメートル」から15行目の「窓,」までを「幅約170センチメートル・高さ40センチメートルの片側しか開かない引き違いの窓,」とそれぞれ改め,17行目の「ないし80」を削り,19行目の「東側から」から21行目の「開け放たれていた。」までを「幅約120センチメートルの扉のない出入口になっていた。Aが調理作業をしていた間,上記各窓が開いていたか否かは不明である。」と改める。 (2) 原判決7頁20行目,8頁3行目及び9頁15行目の各「真正大動脈瘤」を「真性大動脈瘤」と,8頁12行目の「偶発生」を「偶発性」と,9頁6行目の「南側の戸は開けっ放しの状態になっており,」を「南側には扉のない出入口があり,」と,10頁17行目から18行目にかけての「原告自身押印したことを認めているこ の「偶発生」を「偶発性」と,9頁6行目の「南側の戸は開けっ放しの状態になっており,」を「南側には扉のない出入口があり,」と,10頁17行目から18行目にかけての「原告自身押印したことを認めていること,」を「1審原告の妻であるCが1審原告の名前を署名し,押印したものであること,」と,22行目の「安城氏市農協」を「安城市農協」とそれぞれ改める。 2 1審原告は,本件共済金請求について,①Aは高血圧症及び大動脈中膜壊死の基礎疾患を有していなかったこと,②本件厨房内での高温の環境は日常生活上普通に生じ得るものではなかったこと,③本件厨房内は当然予見できない程度の高温と酸欠状態であったこと,④Aの胸部大動脈瘤が成長しかつ破裂した原因は,本件厨房内での超高温及び酸欠状態の継続により,過度の血圧上昇,発汗等による血液粘性の増大が考えられること,⑤仮にAに胸部大動脈瘤があったとしても,当時かかる超高温及び酸欠状態の継続という状況がなければ,これが成長し,破裂することはなかったもので,軽微な外因により発症したものではなく,本件約款の別表2の備考欄の記載からも,対象となる事故に含まれると考えるべきことなどを理由に,Aの死亡は「災害」であるとるる主張する。 しかしながら,上記①について,Aに基礎疾患があったことは,豊橋市民病院の診療録にも記載があり,病理検査の結果により大動脈中膜壊死が認められたことからすれば,1審原告の上記主張は理由がない。 また,上記②及び同③について,本件厨房内は,確かに,一般家庭における台所の火気の状況とは異なるものの,飲食店等の厨房内における火気の状況からすれば,高温の環境は普通に生じ得ることであり,上記認定(原判示を含む。)のとおり,本件厨房内で働いていたDにおいても,暑さや息苦しさから外に出るということはなかったこと,当日 おける火気の状況からすれば,高温の環境は普通に生じ得ることであり,上記認定(原判示を含む。)のとおり,本件厨房内で働いていたDにおいても,暑さや息苦しさから外に出るということはなかったこと,当日は停電で本件厨房内のクーラー等が作動していなかったが,Aが調理作業をしていたコンロ上(本件厨房内の北側)には引き違いの窓(幅約170センチメートル・高さ40センチメートル)があり,当時上記窓が開いていたか否かは不明であるが,普通に我慢できない暑さであれば,上記窓を開けることもできたはずであること,本件厨房の南側に扉のない出入口があり,本件厨房内の換気ができない状況ではなかったことなどからすれば,普段本件厨房内で調理作業をしているAにとって,本件厨房内の状況が予想を超えるほどの高温や酸欠状態であったものとはいえず,1審原告の上記主張は採用できない。 上記④について,確かに,書面尋問による証人E(以下「E医師」という。)の回答書には,1審原告の主張する内容に沿う記載があるものの,これはE医師がAの胸部大動脈瘤の破裂の原因として考えられる一つの仮説を記載したものにすぎず,Aが健康診断を受けていなかったこともあり,E医師としても上記大動脈瘤がいつごろ発症したものかは不明と結論付けているものであり,1審原告の上記主張を採用することはできない。 さらに,上記⑤についても,Aの胸部大動脈瘤の発症時期及びその破裂の原因が特定できないものであり,上記大動脈瘤が外因により発症したものとまではいえず,1審原告の上記主張も採用しがたい。 本件各特約に基づく保険金を請求する者は,外来の急激で偶発的な事故による被害であることについて主張,立証すべき責任を負うと解されるところ,既に判示のとおり,本件各証拠によるも,Aの死亡が本件各特約の適用を受ける「災害」によるもの る者は,外来の急激で偶発的な事故による被害であることについて主張,立証すべき責任を負うと解されるところ,既に判示のとおり,本件各証拠によるも,Aの死亡が本件各特約の適用を受ける「災害」によるものと認めることはできないといわざるを得ない。 3 1審原告は,本件慰謝料請求について,①養老生命共済証書(以下「本件証書」という。)を自宅の金庫に保管しており,紛失したことがないこと,②本件紛失届の筆跡が1審原告やその家族のものでないことなどから,本件紛失届が1審原告に無断で偽造されたものであるとるる主張する。 しかしながら,上記認定(原判示を含む。)のとおり,1審原告が安城市農協の担当者に勧められて本件共済契約について契約者の変更手続を執ることを了承したこと,上記変更手続を執る際に,本件証書の提出がなく,紛失したものとして手続を執っていること,本件紛失届には1審原告の印章による印影があることが認められる。そして,本件証書が1審原告から提出されておれば,わざわざ本件証書の紛失届を作成する必要がなく,安城市農協の担当者には,本件紛失届を偽造する動機が全く窺えないこと,本件共済契約の契約者の変更の手続を執れば,通常本件証書を返還するはずであるところ,1審原告の手元に本件証書があること(弁論の全趣旨)を併せ考慮すれば,本件紛失届の署名自体は安城市農協の担当者が行った可能性は否定し難いものの,本件共済契約の契約者の変更手続を執る際に,本件証書が見付からなかったため,1審原告の了承のもとに本件紛失届が作成されたことも十分に考えられ,1審原告の上記①及び同②の主張を考慮しても,安城市農協の担当者が本件紛失届を偽造したものと認めることはできない。 第4 結論よって,1審原告の各請求は理由がなくこれらをいずれも棄却すべきところ,これと結論を同じくする原判 を考慮しても,安城市農協の担当者が本件紛失届を偽造したものと認めることはできない。 第4 結論よって,1審原告の各請求は理由がなくこれらをいずれも棄却すべきところ,これと結論を同じくする原判決は相当であり,本件控訴は理由がないのでこれを棄却することとし,控訴費用の負担を定めて,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第1部裁判官小林克美裁判官佐藤真弘裁判長裁判官田村洋三は,退官につき署名押印することができない。 裁判官小林克美

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