【DRY-RUN】主 文 原判決中、被告人A1、同A2に関する部分を破棄する。 同被告人らを各懲役一〇月に処する。 被告人A2に対し本裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
主文原判決中、被告人A1、同A2に関する部分を破棄する。 同被告人らを各懲役一〇月に処する。 被告人A2に対し本裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。 被告人A1から金一三五万円を追徴する。 本件公訴事実中、被告人A2はA3と共謀のうえ、被告人A1に現金一五万円を贈賄したとの点(昭和三七年六月一四日付起訴状中公訴事実第二の一)につき、被告人A2は無罪。 当審における訴訟費用は被告人両名の負担とする。 理由本件各控訴の趣意は、記録に編綴の被告人A1の弁護人佐伯千仭と同井戸田侃の連名、同和島岩吉と同岡田忠典の連名、被告人A2の弁護人竹内知行のそれぞれ作成にかかる各控訴趣意書に記載のとおりであるから、いずれもこれを引用する。 弁護人佐伯千仭、同井戸田侃の控訴趣意第一点について。 論旨は、原判決の法令適用の誤りを主張し、要するに、原判決は、被告人A1は、a町議会議長の職にあつたもので、同町施行にかかる工事の請負についてその入札参加業者を選定する権限を有していた同議会建設委員会に出席して意見を述べる等の職務権限を有していたものであると判示し、建設委員会が入札参加業者を選定する権限は、議会建設委員会の適法な職務権限の範囲内にあることを前提として、被告人に有罪の言渡をしたものであるが、工事の請負について、町議会議長、ないしは町議会建設委員会が入札参加業者を選定することは地方官治法に違反する違法な職務執行というべきであつて、議会建設委員会としては本来右のような権限を有しないのであり、右委員会が、入札参加業者を選定するというような執行機関固有の事務に立ち入ることは、議決機関と執行機関とを峻別する地方自治法に違反すること明らかである。このような事務は、本来、 を有しないのであり、右委員会が、入札参加業者を選定するというような執行機関固有の事務に立ち入ることは、議決機関と執行機関とを峻別する地方自治法に違反すること明らかである。このような事務は、本来、議会建設委員会の抽象的な職務の範囲内に属さず、これが、条例によつて行なわれていようと、慣例によつて行なわれていようと、違法であることに相違はなく、また、それが、議決機関である議会構成員の権限に属しない以上、それは、本来の職務執行行為でないことはもちろん、これと密接な関係のある行為であるともいえないから、被告人A1が、建設委員会において、あるいは同議会内外において、H工業所をその入札参加業者に選定するよう意見を述べ、あるいは建設委員に働きかけるなど尽力したことがあつたとしても、賄賂罪を構成しないというのである。 よつて考察するに、原判決が、被告人A1の職務権限について、所論指摘のように認定判示していること、及び地方自治法第一〇九条に基づく普通地方公共団体の議会の常任委員会である本件a町議会建設委員会が、法令上、同町の施行する工事の請負契約締結について、その入札参加業者を決定する権限を有しないことは所論のとおりである。すなわち、関係各証拠によると、本件a町議会建設委員会は、地方自治法第一〇九条第一項及び同条項に基づくa町条例第八号(a町議会常任委員会及び特別委員会条例)により設置された地方自治法上の普通地方公共団体の議会の常任委員会であつて、議決機関である議会の内部機関としてa町建設課及び水道課の所管に属する事項に関する調査及び議案並びに請願等の審査をする権限を有するにすぎ、ず(地方自治法第一〇九条第三項、前記条例第二条。なお、町議会議長は、委員会に出席して発言することができる。同条例第一四条)、町の施行する工事の請負契約締結の手続の一環である る権限を有するにすぎ、ず(地方自治法第一〇九条第三項、前記条例第二条。なお、町議会議長は、委員会に出席して発言することができる。同条例第一四条)、町の施行する工事の請負契約締結の手続の一環である入札参加業者の決定は、元来、執行行為に属し、執行機関たる町長の権限に属するのであつて、議決機関またはその構成員には法令上そのような権限は存しないのである。そして、地方自治法は、議決機関と執行機関との区別を明確にしており、議決機関が執行機関の権限に不当に介入することは、違法の措置と解すべきこともまた所論のとおりである。 <要旨>しかし、町長が、町政の円滑な運営を期するため、その権限に属する事務につき、慣例として、分掌事項上関</要旨>連のある議員(当該常任委員会の委員など)に意見を求め、右議員らが、これに応して意見を述べることは、それが町長の権限をはく奪するような不当な結果をもたらすものでないかぎり、地方自治法に違反する措置とまでは解せられないのであつて、これを本件に則して言えば、町長が、条例により議会の議決事項とされている契約の締結につき、分掌事項上関連のある議会常任委員会の委員などに対し、協力を要請するため、入札参加業者の指名などについて諮問しまたは協議を求め、右委員等が諮問に応じて意見を述べ、あるいは協議に加わることは、その意見が町長を拘束するものでないかぎり、執行機関の権限に対する不当な介入として違法な措置と目すべきではないと解する(最高裁判所昭和三五年三月二日決定・刑集一四巻二二四頁。同昭和三五年四月二八日判決・刑集一四巻七七八頁参照)。所論は、a町議会建設委員会は、入札参加業者を決定する権限を行使していた旨主張し、原判決も、右委員会が入札参加業者を選定する権限を有していた旨判示しているけれども、原判決挙示の関係各証拠、ことに建設委 は、a町議会建設委員会は、入札参加業者を決定する権限を行使していた旨主張し、原判決も、右委員会が入札参加業者を選定する権限を有していた旨判示しているけれども、原判決挙示の関係各証拠、ことに建設委員会書類綴、被告人A1の検察官に対する昭和三七年六月七日付、同月九日付各供述調書、その他、同被告人の原審並びに当審公判廷における各供述、当審証人B1、同B2の各証言によると、本件a町は、昭和三四年四月二〇日、旧b町とc町が合併してd町として発足し、昭和三五年一月一日からa町と改称したものであるが、旧b町及びc町においては、町長は、大規模な請負工事を指名競争入札の方法によつて実施するにあたつて、分掌上関連のある議会常任委員会に入札参加業者の指名などにつき諮問し、右委員会は右諮問に応ずる慣行があつたこと、a町においても、右従前の慣例を踏襲し、このような場合、町長は、入札参加者の適正、公正なる指名を確保するなど町政の万全な運営を期するため、慣例として、町議会建設委員会に前記のような事項について諮問し、同委員会においては、これに応じて会合を開き、同会合には町長、助役などのいわゆる理事者、議長、副議長も随時出席して発言し、委員会の意見をまとめて右諮問に応じていたものであることが認められる。もつとも、原審証人B1(第一四回公判)は、入札参加業者は建設委員会が指名するのであつて、入札参加業者の指名決定権は建設委員会にある旨証言し、同人の検察官に対する昭和三七年五月三〇日付供述調書にも同様趣旨の供述記載が存するが、同証人の当審証言によると、町長は、入札参加業者の指名決定について建設委員会に付議し、同委員会には、町理事者並びに町議会議長、副議長も列席のうえ、審議の結果だされた同委員会の意見はこれを尊重し、従前、その意見と異つた決定をした実例はないが、町長が、こ 定について建設委員会に付議し、同委員会には、町理事者並びに町議会議長、副議長も列席のうえ、審議の結果だされた同委員会の意見はこれを尊重し、従前、その意見と異つた決定をした実例はないが、町長が、このように委員会の意見を尊重するのは指名業者の選定につき町の理事者に対する運動や汚職を防止し、議会との円満な協調を保持するためとの配慮にでているものであつて、その実質は、町長の常任委員会に対する諮問であることが認められ、また、本件C中学校建設第一期工事の指名競争入札の参加業者指名につき最終審議の行なわれた昭和三四年八月二八日の文教建設委員会議記録には、「町長―町当局へ一任されることは困る、委員会決定線で進むこととする。異議なし。助役―現在指名願の提出は七業者である。即ちD建設、E組、F組、G組、H工業、I組、J組であると報告した。右指名することに異議なし」との記載があつて、右の記載は町長が、入札参加業者の指名を町理事者の独断にまかされては困るので、委員会でまとめた意見を尊重して手続を進める方針を述べ、一同これに賛成し、次いで、助役の提案した七業者を指名することについて、同委員会としては異議がないという意見であつたという趣旨と解され、以上諸般の証拠を綜合すると、入札参加業者の指名決定権はあくまでも町長にあり、委員会の意見は最大限尊重されてはいたけれども、町長の決定権を拘束するものではなかつたものと解するのが相当であり、この点に関する前記B1証人の原審証言、同人の検察官に対する供述調書の記載は、前記各証拠ことに同証人の当審証言に対比し、全面的に措信することはできないものと考える。結局、原審が、建設委員会に入札参加業者を選定する権限があつた旨認定判示したことは事実を誤認したものというほかはないが、さりとて、同委員会が前記認定のような程度、方法で町長の はできないものと考える。結局、原審が、建設委員会に入札参加業者を選定する権限があつた旨認定判示したことは事実を誤認したものというほかはないが、さりとて、同委員会が前記認定のような程度、方法で町長の権限に属する入札参加業者の指名に関与したことをもつて、所論のように違法ということはできないこと、前叙したところからも明らかである。そして、被告人A1がa町議会議長として、前記条例第一四条による常任委員会への出席、発言権に基づき、入札参加業者の指名について諮問を受け、これを審議する建設委員会に出席、発言する慣例上の職務は、町議会議員または議長としての職務行為自体ではないが、元来、町議会は、地方自治法第九六条第一項第九号による議決により、町長の権限に属する契約の締結につき関与する権限を有するものであり(本件契約の締結が条例により議決事項とされていたことは関係証拠上明白である)、また、同議会は、同法第九八条ないし第一〇〇条により地方公共団体の事務に関する検査権、調査権などを有し、建設委員会は前叙のような調査、審査権を有していて、これらの権限により、同町の工事請負契約の締結などにつき監督し得べき権限を有するものであるから、被告人A1の前記行為は、町議会議員または議長としての職務に由来し、かつ、慣例により右の職務と密接な関係を有する行為であるというべきである。されば、原審が、建設委員会に入札参加業者を選定する権限がある旨認定判示したことは誤りであるが、被告人A1が、町議会議長として右の同議会常任委員会の一つである建設委員会に出席して意見を述べ、かつ、同委員会外においても、町理事者や建設委員その他の議会議員に対し特定業者指名の運動をすることをもつて、被告人の職務に含まれる行為と解し、それに関して賄賂を収受した行為を収賄罪に問擬したことは結局正当であり、 においても、町理事者や建設委員その他の議会議員に対し特定業者指名の運動をすることをもつて、被告人の職務に含まれる行為と解し、それに関して賄賂を収受した行為を収賄罪に問擬したことは結局正当であり、所論のような法令適用の誤りはない。論旨は理由がない。 同第二点について。 論旨は、原判決が証拠として挙示した所論被告人A2、原審相被告人A3、参考人B1、B3、B4の検察官に対する各供述調書は、いずれも特信性を欠き証拠能力のないものであるにかかわらず、原審が、被告人A1に対する関係で、刑事訴訟法第三二一条第一項第二号後段の書面として採用し取調べを行なつたのは、訴訟手続上の法令違反であると主張する。よつて案ずるに、右被告人A2、原審相被告人A3の検察官に対する各供述調書は、いずれも本件各金員は、被告人A1の職務に関し、原判示のような趣旨で賄賂として供与したものであることを詳細にわたつて供述しており、またB1、B4の検察官に対する各供述調書は、それぞれ、被告人A1が、本件C中学校建設工事の請負につき、H工業を入札参加業者に指名するよう建設委員会の内外において、町助役や建設委員らに働きかけていたことを詳細に供述し、いずれも被告人A1に不利益な内容の供述をしているが、同人らは、原審公判廷においてはいずれも右事実を否定し、A3、A2は、本件各金員は、職務に関係のない個人的貸借であつて賄賂ではない旨をるる供述し、またB1、B4は、被告人A1が前記のような働きかけをしたことはないといい、あるいは知らないという趣旨の供述をして、検察官に対する供述とは著しく異なつた内容の供述をしていた。しかし、記録を精査検討してみても前者の各供述調査には、その任意性に疑いをさしはさむべき根拠は全く発見できないばかりでなく、原審相被告人A3は、原審第三八回公判において大村検 内容の供述をしていた。しかし、記録を精査検討してみても前者の各供述調査には、その任意性に疑いをさしはさむべき根拠は全く発見できないばかりでなく、原審相被告人A3は、原審第三八回公判において大村検事の取調べを受けたが一方的に供述を強いられたようなことはなく、非常に親切で、今でも感謝している旨及び検察官にはあまり間違つたことは申し上げてない旨供述し、またB4は、検察官の取調にあたつてはうそは云つていないと供述しているのみならず、前記検察官に対する各供述は、他の関係各証拠とも符合し、後記のように証拠により認められる犯行前後の情況ともよく合致しており、また、同人らがことさら真実に反し、被告人A1を不利に陥れようとする特別の感情ないし利害関係があつたと疑うべき証拠も存しないことなどの諸事情を考慮すると、A3、A2らについては、所論のように従来経験したことのない勾留中の供述である点を参酌してみても、前記検察官に対する各供述調書が、公判廷における各供述よりも信用し得べき特別の情況があると認めるべきであるから、原審が、これらを刑事訴訟法第三二一条第一項第二号後段の書面として採用し、断罪の資料としたことを違法ということはできない。そしてまた、右各供述調書の信用性を是認し得べきことも前叙のとおりであるから、原審がこれらを断罪の資料としたことをもつて、所論のように自由心証主義を濫用した違法があるとも云えない。所論は、ひつきよう、独自の見解に立つて、原審の適正な証拠価値の判断を非難するに帰し、到底採るを得ない。しかし、前記B3の検察官に対する供述調書については、同人は、原審において、手続分離中の原審相被告人A3に対する証人として尋問されたことがあるにとどまり、被告人A1に対しては、証人として尋問請求されてもいないし、取り調べられてもいないことが記録上明白で 人は、原審において、手続分離中の原審相被告人A3に対する証人として尋問されたことがあるにとどまり、被告人A1に対しては、証人として尋問請求されてもいないし、取り調べられてもいないことが記録上明白であるから、原審が、同人の検察官に対する供述調書を、刑事訴訟法第三二一条第一項第二号後段に該当する書面として採用したのは、その前提を欠き違法の措置というべく、結局、原審は、証拠能力のない証拠を犯罪事実認定の資料とした違法があるけれども、右供述調書は、本件において重要な証拠とは考えられず、原判決挙示の他の対応証拠によつて、本件犯罪事実を優に認定することができるから、右の違法は、いまだ判決に影響を及ぼさないものと考える。論旨は理由がない。 同第三、第四点、弁護人和島岩吉、同岡田忠典の控訴趣意第一点、及び弁護人竹内知行の控訴趣意中事実誤認の主張について。 論旨はいずれも事実誤認を主張する。よつて、記録を精査し、原審において適法に取り調べたすべての証拠に、当審における事実取調の結果を参酌して考察するに、本件各証拠によれば、原判示各事実中、被告人A2が、被告人A1に対する現金一五万円の贈賄につき原審相被告人A3と共謀したとの点(原判示第七の一)を除き、被告人A1が、その職務に関し、昭和三五年四月上旬ごろ、被告人A2から現金五〇万円の供与を受け(原判示第二の一)、同年五月上旬ごろ、同被告人から現金五〇万円の供与を受け(原判示第二の二)、同年一〇月中旬ごろ、原審相被告人A3から現金一五万円の供与を受け(原判示第二の三)、同年一二月上旬ごろ、被告人A2から現金二〇万円の供与を受け(原判示第二の四)、もつてそれぞれ収賄した事実、及び、被告人A2が、被告人A1に対し、原判示第二の一、二記載のとおり二回にわたり現金各五〇万円を供与し(原判示第一一の一、二)、原審相 円の供与を受け(原判示第二の四)、もつてそれぞれ収賄した事実、及び、被告人A2が、被告人A1に対し、原判示第二の一、二記載のとおり二回にわたり現金各五〇万円を供与し(原判示第一一の一、二)、原審相被告人A3と共謀のうえ、原判示第二の四記載のとおり、現金二〇万円を供与し(原判示第七の二)、それぞれ贈賄した各事実を認定するに充分である。 一、現金五〇万円二口の贈収賄(原判示第二の一、二、第一一の一、二)について。 所論は、右現金合計一〇〇万円の授受は、被告人A1の前記職務とは関係なく、同被告人らの間における個人的貸借であるというのである。なるほど、被告人A2が、被告人A1の申入れに応じて、現金五〇万円二口合計一〇〇万円を同被告人に交付するにあたつては、H工業の社長原審相被告人A3に相談することなく一存でこれを行なつていることは所論のとおりであり、しかも、その一部は、H工業とは関係のない金員をこれにあてていることも証拠上否定しがたい。しかし、被告人A1、同A2、原審相被告人A3の原審公判廷における各供述、被告人A1の検察官に対する昭和三七年五月二六日付、同年六月七日付各供述調書、A3の検察官に対する同月六日付供述調書、被告人A2の検察官に対する同月一二日付、同月二九日付(二通)各供述調書によると、H工業株式会社は土木建築の請負などを業とし、原審相被告人A3がその代表取締役、被告人A2は当時その専務取締役をしていたものであり、被告人A1は、昭和二二年五月以降、旧c町議会議員に連続当選し、昭和三二年一二月ごろからは議長となり、昭和三四年四月、旧b町と合併してa町となつてからも、引き続き議長の職にあり議会の実力者と目されていたものであるが、昭和二五年ごろ、H工業が旧c町から水道工事を請負つたことを機縁として被告人らは知り合うようになり、その と合併してa町となつてからも、引き続き議長の職にあり議会の実力者と目されていたものであるが、昭和二五年ごろ、H工業が旧c町から水道工事を請負つたことを機縁として被告人らは知り合うようになり、その後、被告人A1はH工業のために種々尽力し、その結果、H工業は、同町の施行する小学校新築工事、水源地工事などをしばしば請負うようになり、これらをとおして被告人らは親しくなり、ことにH工業のc町関係工事の担当者であつた被告人A2は、しばしば被告人A1と接触していたこと、a町においては、昭和三四年四月合併直後から中学校校舎の建設を計画していたが、これを聞知したH工業は、被告人A2が中心となつて、被告人A1に対し、その入札参加業者に指名されるように尽力して欲しい旨をしばしば依頼し、被告人A1もこれを了承していたことが認められ、前記各供述調書に、原審証人B5の証言、原審における証人B6尋問調書、B6の検察官に対する昭和三七年五月三一日付、同年六月一二日付各供述調書、B1、B7、B4、B8、B5、B9の検察官に対する各供述調書、建設委員会書類綴を綜合すると、被告人A1は、建設委員会の内外において、町長助役等の町理事者及び建設委員その他の議会議員に対しH工業を入札参加業者に指名するよう働きかけ、その結果、a町在住業者に請負わすべきであるとの反対説を押し切り、H工業は、昭和三四年九月八日、同中学建設第一期工事請負の入札参加業者に指名されて一、三四四万円で落札し(同月一二日議会の承認を経て正式契約)、引き続き、第二期工事についても、被告人A2や原審相被告人A3の依頼を受けた被告人A1が前同様尽力し、H工業は入札参加業者に指名されて昭和三五年三月一五日、二、四八〇万円で落札したが、第二期工事の施行に手落ちがあり、手なおしを命じられたことがあつたことから、第三期工 受けた被告人A1が前同様尽力し、H工業は入札参加業者に指名されて昭和三五年三月一五日、二、四八〇万円で落札したが、第二期工事の施行に手落ちがあり、手なおしを命じられたことがあつたことから、第三期工事については反対が強く、結局指名から除外されるに至つたことが認められる。もつとも、被告人A1は、原審並びに当審公判廷において、H工業のために尽力したことはない旨供述し、被告人A2、原審相被告人A3も原審公判廷において、H工業が指名業者に選定されたのは会社の実力からして当然のことであり、被告人A1の尽力によるものではない旨供述しているけれども、右各供述は、前掲各証拠に対比し到底信用できない。以上認定のように、被告人A2と被告人A1との関係は、しよせん、業者と、注文者である町の議会議長という関係を基底とするものであり、本件五〇万円二口の金員の授受された時期は、あたかもH工業が、a町から中学校建設第一期工事終了、第二期工事請負直後であること、当時、被告人A1と被告人A2との間には、相互に金融しあうような特別な個人的関係があつたものと認むべき証跡も存しないことから考えて、右の金員は、被告人A1の職務に関して授受されたことは明白である。もつとも、この点に関し、被告人A1は、原審公判廷において、被告人A2がH工業をやめたあと二〇〇万円二回、二五〇万円一回、一〇〇万円一回、同被告人に貸したことがある旨供述し、被告人A2も原審公判廷で同趣旨の供述をしているが、昭和三六年一〇月ごろ、被告人A2の経営するK工業株式会社(被告人A1は監査役として名を連らねている)のため同被告人に一〇〇万円をL農業協同組合から借り入れて融資したことは関係証拠上これを認めることができるけれども、当審証人B10、同B11の各証言によると、前記二〇〇万円二回、二五〇万円一回というのは、 被告人に一〇〇万円をL農業協同組合から借り入れて融資したことは関係証拠上これを認めることができるけれども、当審証人B10、同B11の各証言によると、前記二〇〇万円二回、二五〇万円一回というのは、いずれも被告人A2のあつせんにより、被告人A1が、B11のため、同人の手形を道明寺農業協同組合で割引き、金融の便を与えていたものであつて、被告人A2に貸与したものではないことが明白であるから、前記各供述は到底信用できず、前記一〇〇万円の融資(その他、被告人A2がK工業を設立する際、五〇万円を融資していると解されること後記のとおりである)も、被告人A1がともかくも監査役として名を連らねているK工業設立の際、もしくはその後のものであるから、これをもつて、本件金員授受当時、個人的貸借の行なわれるような間柄にあつたとの証左とすることは相当でないと考える。さらに、被告人A1の検察官に対する昭和三七年六月一四日付供述調書、被告人A2の検察官に対する昭和三七年六月二九日付供述調書(二通)によると、最初の五〇万円は被告人A1の指定した大阪市内道頓堀の道路上で歩きながら手交し、次の五〇万円は、被告人A2が、被告人A1の自宅に持参していることが認められるのであつて、右のような本件金員授受の方法、その他、本件金員が、H工業から支出されていないからといつて、必ずしもその賄賂性を否定することはできないのみならず、後記認定のように、本件一〇〇万円も、被告人A2の実質的な個人的負担をもつて支出されたものとするには疑いがあり、その中にはH工業に帰属すべき金員も含まれていることなど、以上のような諸般の情況に徴すると、被告人A1の検察官に対する昭和三七年六月一二日付供述調書中の「もちろんA2の方でそれまでに私の力で同社の入札工事の指名等について有利な取計いをしてやつた謝礼や、今 以上のような諸般の情況に徴すると、被告人A1の検察官に対する昭和三七年六月一二日付供述調書中の「もちろんA2の方でそれまでに私の力で同社の入札工事の指名等について有利な取計いをしてやつた謝礼や、今後もよろしくという気持から私の要求どおりの金を用立てしてくれたものである事情についてはわかつていました」旨の供述記載、及び被告人A2の検察官に対する昭和三七年六月一二日付供述調書中の「私としては、c時代から特命で入札工事や資材の納品をさせてもらうなど便宜な取扱いを受けている以上、合併後も先程の様に中学の建設工事の指名についてA1から特別に運動してもらつて有利な取計らいを受け、その外入札の際には予定価額等を事前に教えてもらうなど、これまで何かと世話になつているので、その謝礼の気持と今後も入札工事の指名等について有利な取計いをしてもらいたいという意味から、そのつど要求されるままの金額を贈つてきたのであります」との供述記載、同被告人の検察官に対する同月二九日付供述調書中の「三十五年三月下旬頃、私がA1の自宅に何かの用事で出向いた際、A1から土地を買う話が出て、その金を百万円程都合して欲しいと言うことだつたのです。私は百万円とは大口だなあとちよつとためらつたのですが、その日は『なんとか致しましよう』と承諾して帰つたのであります。私は、最初A3社長に相談して会社から出してもらおうと思つたのですが、余り大口なので、とても相談したところで、引き受けてくれないだろうと思い直し、社長には相談せず、その段取りをすることにしました。二十万円くらいまでの小口の金なら、社長に話せば出してくれると思つたのですが、それ以上になればA1には、前回申上げた通り、それまでにも何回かの金か渡つていましたのでとても相談する勇気がなかつたのです。……私がA1に用立てしてやつた百万円 話せば出してくれると思つたのですが、それ以上になればA1には、前回申上げた通り、それまでにも何回かの金か渡つていましたのでとても相談する勇気がなかつたのです。……私がA1に用立てしてやつた百万円も、ただ今申したC中学の第一期工事が完成し第二期工事に着工したばかりの頃であり、そのような時期に要求を受けましたので、ただ今申したような工事の指名の御礼や予定価額を教えてもらつたりした謝礼や又将来もそのような点についてよろしくという意味から、断り切れずに渡したのであります」との供述記載は、いずれもこれを信用することができるのであつて、以上の諸証拠によると、本件合計一〇〇万円が、被告人A1の職務に関し原判示のような趣旨で授受された賄賂たる性質を有するものであり、被告人A2としては、被告人A1の要求を断ることができず、やむを得ず自ら金策をして贈賄したものと認めるほかないから、これが職務と関係のないものであるとの所論は採るを得ない。次に、本件金員の授受が、貸借であるとの所論につき考察するに、前掲各証拠のほか、B12の検察官に対する供述調書によると、被告人A1は、情婦B12が、大阪市内難波新地に、ニツカバー「N」を開業するに必要な権利金などにあてるため、被告人A2に一〇〇万円の用立てを依頼し、同被告人から受領した一〇〇万円は、そのころただちに同女に贈与していること、しかし、被告人A2に対しては、土地購入費といつわり右のような事情を秘していたことが明白であり、また、本件金員の授受に際しては、借用証が差し入れられてもいないし、弁済期日、利息などの定めもなく、担保が提供されたようなことがないことも、関係証拠上明白である。そして、被告人A2は、原審公判廷において、当時、被告人A1から、土地を買うが、相当安いものだから君も買わないかと言われ、じや一口のせて下さ が提供されたようなことがないことも、関係証拠上明白である。そして、被告人A2は、原審公判廷において、当時、被告人A1から、土地を買うが、相当安いものだから君も買わないかと言われ、じや一口のせて下さいということで五〇万円づつ二回持つて行つたが、いずれも土地を買う資金であり、投資であつて貸金ではない旨供述し、当審公判廷においても、本件金員の性質は、なかば貸金である旨供述し、被告人A1も、原審公判廷において、被告人A2に一〇〇万円をお願いするとき、ちよつといるんだけれども、もしもお返しする金額がまとまりましたら、土地を買うことを頼んであるので、よかつたら同じように買いましようかという話し合いでお借りしましたというような供述をしているけれども、本件一〇〇万円は前記認定のようにB12に贈与されていて、被告人A1が、土地を共同購入した事実はもちろん、共同購入しようとした証跡もないのみならず、被告人らは、右一〇〇万円を返済し、また返済を受けたと繰り返えし弁解しているところからみても、本件金員が投資であるとか、金員授受の際に土地共同購入の話合いがあつたとする前記各供述は信用しがたく、被告人A1、同A2の検察官に対する各供述調書における供述のように、土地を買うのに必要だからとの口実をもつて、一〇〇万円の融通を依頼したものと解するのが相当である。所論は、一〇〇万円という金は、被告人A2としては優に一年分以上の月給に相当するのであつて、会社の仕事に関して、このような大金を個人の自弁をもつて贈与するようなことはあり得ないというけれども、関係各証拠によると、被告人A2はA3社長に相談することなく要求に応じたものではあるが、同被告人の実質的な負担においてなされたものとはにわかに解しがたい。すなわち本件一〇〇万円の出所につき、被告人A2は、原審公判廷において、「 はA3社長に相談することなく要求に応じたものではあるが、同被告人の実質的な負担においてなされたものとはにわかに解しがたい。すなわち本件一〇〇万円の出所につき、被告人A2は、原審公判廷において、「うち五〇万円は借りたりして持つて行つた。業務上横領した金も三〇万円くらいある」と供述するかたわら、「借りたのはB11から三、四〇万円である」とも供述していて、その趣旨明確を欠くうらみがあるが、少なくともH工業からの横領金三〇万円くらいが含まれているという趣旨の供述をしている。しかし、同被告人の検察官に対する昭和三七年六月一二日付供述調書には「最初は裏預金からB13に命じて四〇万円引き出させ、私の手持現金一〇万円を加えて五〇万円をA1に渡した。次の五〇万円は、B11から四〇万円借り、手持現金一〇万円を加えてA1に用立てた」旨、同被告人の検察官に対する同月二九日付供述調書(二一六二丁以下)には「どのような方法で捻出するか、種々悩んだ末、結局O企業のB11から借り受けることにしました。……同人から二〇万円程借り受け、私の手持金三〇万円を加えて最初の五〇万円の金を準備した。手持金の三〇万円は、昭和の取引先数軒から、私が販売手数料として、もらつていた金を出した。次の五〇万円は、会社の下請業者と話しあつて見積額を水増しして浮かしたB14名義の裏預金から引き出し、それをA1の方に廻したのです。四月二六日に五八万円引き出している様に承りましたが、この引き出しは、B13にやらせましたので、私にはその間の事情は分りませんが、B13が私のところに持つて来たのは丁度五〇万円でした」との供述記載がそれぞれ存するのであつて、B11の検察官に対する昭和三七年六月二八日付供述調書によると、同人が、当時被告人A2に貸与したのは二〇万円であることが明らかであり、しかも、これは同 した」との供述記載がそれぞれ存するのであつて、B11の検察官に対する昭和三七年六月二八日付供述調書によると、同人が、当時被告人A2に貸与したのは二〇万円であることが明らかであり、しかも、これは同被告人にやつた積りであるというのであるから、以上の各証拠によると、結局、被告人A2の実質的な個人的負担はないこととなるのである。同被告人は、当審公判廷において、四〇万円くらいを手持金から出したように供述しているけれども、その供述も明確を欠き、確証があるわけでもない。このようにみてくると、被告人A2が、A3社長に相談もせず一〇〇万円を交付したからといつて、これが供与でないとするのは相当ではない。次に、所論返済の主張について考察すると、昭和三六年八月ごろ、被告人A2がH工業を退職して、K工業株式会社を設立する際、被告人A1から、被告人A2に五〇万円が渡つていることは関係証拠により明白なところである。そして被告人A1、同A2は、原審公判廷において、右は、本件一〇〇万円のうちの一部弁済金であると供述しているのであるが、B11、B10の検察官に対する各供述調書、同人らの当審公判廷における証言によると、B11が昭和三六年八月九日ごろ、被告人A1に依頼して、道明寺農業協同組合から手形割引の方法により二〇〇万円を借り出してもらう際、同被告人から五〇万円を加えさせて欲しいと依頼されて結局額面二五〇万円の約束手形を振出し、これを同被告人によつて前記農協から割引いてもらつた割引金のうちから五〇万円を同被告人に交付したが、その際、右B11は、右五〇万円は被告人A1が被告人A2に融資するものであることを同被告人らから聞いていたので、被告人A2からその返済を受けるつもりで、実際に後日被告人A2から返済を受けていること及び前記農協との関係はB11が決済をして、被告人A1は 2に融資するものであることを同被告人らから聞いていたので、被告人A2からその返済を受けるつもりで、実際に後日被告人A2から返済を受けていること及び前記農協との関係はB11が決済をして、被告人A1は実質的な負担をしていないことが認められるのみならず、被告人A1の検察官に対する昭和三七年六月二六日付供述調書、被告人A2の検察官に対する同月二九日付供述調書(二一六二丁)における各供述によつても、右五〇万円の授受によつて、五〇万円の返済をしたつもりであり、返済を受けたつもりであつたというにとどまり、明確に返済の意思表示があつたものではないから、右五〇万円の授受をもつて、返済であると認めることはできず、一時的な融資と解されるのである。もつとも、被告人A1は、右五〇万円は親類のB15から借りたもので、前記B11からの五〇万円とは別口のような弁解をするけれども、そのような確証はなく、同被告人の義妹、B15の検察官に対する昭和三七年六月二〇日付供述調書によると、同女が同被告人に五〇万円を貸与したのは昭和三四年三月ごろではなかつたかと思うというのであつて、右弁解は到底信用できない。そしてまた、前記のように、昭和三六年一〇月ごろ授受された一〇〇万円も被告人A1が融資したものであつて、その後、被告人A2から六五万円と三五万円の二回にわけて返済されていることが関係証拠上明白であるから、右一〇〇万円のうち五〇万円が返済金であるかのように主張する所論も採用できない。さらに被告人A1は、昭和三八年中に二〇万円、昭和三九年中に残額二〇万円を返済したと弁解しているけれども、その確証はなく、かりにそのような事実があつたとしても、事件発覚後のことであるから、これをもつて、本件金員の趣旨が貸借であつたとの的確な証左とはなしがたいものと考える。そして、以上のような諸情況や、 の確証はなく、かりにそのような事実があつたとしても、事件発覚後のことであるから、これをもつて、本件金員の趣旨が貸借であつたとの的確な証左とはなしがたいものと考える。そして、以上のような諸情況や、被告人A1、同A2の前掲各供述調書によると、本件一〇〇万円の授受が個人的関係による貸借であつたとは到底認められず、被告人A2から被告人A1に供与されたものであると認めるのが相当である。結局、これが貸借であるとする所論は到底採るを得ないものであり、その他記録を精査しても、原判決に所論のような事実誤認を疑うべきかどはないから、論旨は理由がない。 二、一五万円、二〇万円の贈収賄(原判示第二の三、四、第七の一、二)について。 (一) 所論は、右一五万円、二〇万円の授受も、前同様個人的貸借であるというのである(但し、被告人A2の弁護人の所論は、二〇万円の贈賄についてのみ)。しかし前叙のような被告人A1と被告人A2、原審相被告人A3の関係、C中学校建設第一、二期工事をH工業が請負うに至つたいきさつ、及び、前掲各証拠によると、一五万円が交付された昭和三五年一〇月ごろは、第二期工事完了直後であり、また二〇万円を交付した同年一二月ごろは、第二期工事について、工事の不備があり、手なおしを命ぜられるなどしていた当時であること、右各証拠に原審相被告人A3の検察官に対する昭和三七年六月八日付供述調書を綜合すると、右一五万円は、被告人A1から、大阪府庁へ行くので、そこまで持つて来て欲しいとの申出により、原審相被告人A3が自ら府庁前まで出かけ、車中で同被告人に交付し、また二〇万円は、被告人A2が、文教建設委員会の開かれていたC中学校に持参し、他人の居ない便所前の廊下あたりまで行つて、そこで被告人A1に交付していることが認められること、原審相被告人A3は、原審公判廷に 〇万円は、被告人A2が、文教建設委員会の開かれていたC中学校に持参し、他人の居ない便所前の廊下あたりまで行つて、そこで被告人A1に交付していることが認められること、原審相被告人A3は、原審公判廷において、本件金員を交付した理由につき、「結局その時の私は、商人の弱さということしかお答えできません。便宜をはかつてもらうというのも一つの方法かも知れませんが、反対されるということも十分考えていたと思います」と供述していて、暗に被告人A1の職務と関連のあることを認める供述をしているほか、当審公判廷において、今まで世話になつたから、金を出したのか、これからも世話になりたいから出したのかとの問に対し、両方だと思いますと答えてもいること、以上のような情況に照らすと、A3の昭和三七年六月八日付供述調書中の「このような時期に、A1から要求を受け、私としてはc時代には特命で入札や資材の納品をさせてもらつており、合併後はA1の尽力で中学一期、二期工事を請負わせてもらい、その外入札に際し予定価格を事前に教えてもらつたり、何かと世話になつており、特に後の二〇万円の用立ての時は、雨もりを追及されていた時であつたので、A1にとりまとめてもらいたいとの気持もあり、又引続いて行なわれる三期工事もA1に頼んで指名をもらいたい希望もあり、それまでA1から受けた便宜の取扱いについての謝礼の気持と将来も同様よろしくお願いしますという意味で断りきれずに用立てたものである」旨の供述記載及び被告人A2の検察官に対する昭和三七年六月一二日付供述調書中における右の同趣旨の供述記載、並びに被告人A1の検察官に対する同月九日付供述調書中の、右供述記載のような趣旨を了知しながら受取つた旨の供述記載は、いずれも優に措信できるのであつて、右各金員が、被告人A1の職務に関し、原判示のような趣旨で授 1の検察官に対する同月九日付供述調書中の、右供述記載のような趣旨を了知しながら受取つた旨の供述記載は、いずれも優に措信できるのであつて、右各金員が、被告人A1の職務に関し、原判示のような趣旨で授受されたものであることを否定することはできない。そして、また、右各金員授受の際、借用証が差し入れられてもおらず、利息や弁済期限について話し合われたこともないことは関係証拠上明白であり、当審証人A3は、「金を出す時、返してもらうつもりと、返してもらわなくてもいいという気持とが半分半分であつた。返してくれればもらうし、返してくれなくても仕様がないという両方の気持であつた」と供述していること、同証人は、被告人A2に命じて返済の催促をするように言つておいたと供述しているけれども、同人の前掲検察官調書によると、「a町との縁もなくなり、また貸せと言われるとたまらんので、折にふれ、けんせいするつもりでA2に早く返すようにA1に言つておけと言つておいたが、いやがらせである」というのであり、被告人A1、同A2は、原審公判廷において、催促し、また催促を受けたと供述しているけれども、同被告人らの前掲各供述調書には、催促したこともなく、また催促を受けたこともない旨の供述記載が存するのであつて、同被告人らの関係から推して、返済の催促をしたことがあるなどとは到底考えられないこと、以上のような諸情況に徴すると、これが貸借であつたとは到底解することができず、供与されたものであると認めるほかはない。もつとも右三五万円が、本件捜査の開始される以前である昭和三六年一〇月ごろ、被告人A1から、原審相被告人A3に返済されていることは所論のとおりであるけれども、被告人ら及びA3の前掲各供述調書、原審相被告人A3の原審公判廷における供述及び当審公判廷における証言、B16の検察官に対する供 ら、原審相被告人A3に返済されていることは所論のとおりであるけれども、被告人ら及びA3の前掲各供述調書、原審相被告人A3の原審公判廷における供述及び当審公判廷における証言、B16の検察官に対する供述調書によると、原判決が説示しているとおりのいきさつから、被告人A1が、昭和三六年一〇月一四日、a町収入役B16から、同人の保管する同町の公金六五万円を一時借り受け、本件三五万円を含め、六五万円を前記A3に返済したが、そのなかには、昭和三一年ごろ、テレビを購入するため用立てを受けていた一〇万円、及び、旧c町時代に、H工業が同町に工事保証金として差し入れていた二〇万円を同会社には無断で同町役場から引き出し、費消していた分の弁償も含まれていること、そして右六五万円は、L農協から借り出し被告人A2に融資したばかりの一〇〇万円のうちから六五万円の返済を求め(被告人A2は、前記B11からこれを借り受けて被告人A1に返済した)、前記B16収入役に返戻していること、以上のような事実が認められるのであつて、右のような返済のいきさつ、方法に照らすと、被告人A1の検察官に対する昭和三七年六月九日付供述調書中の「それから間もなくA2から次のような話を聞いたのです。A3に退職金を請求したら、そんな金を払う必要はない。欲しければA1に渡つている金を取つたらいいじやないかと言つたというのです。私はその話を聞いて、A3がそんなことを言い出したのでは今後何を言い出すか分らない、そうなれば用立ててもらつている金も表面に出るか分らない。 そんなことで贈収賄などと言われて問題が大きくなつては大変だと思つたのです。……私は、A3とA2はそれだけ仲間割れし、私がA2の会社の監査役になつている以上、何を言われるかわからんという不安がつきまとい、返しておいた方が無難だと考え、急いで道明 ては大変だと思つたのです。……私は、A3とA2はそれだけ仲間割れし、私がA2の会社の監査役になつている以上、何を言われるかわからんという不安がつきまとい、返しておいた方が無難だと考え、急いで道明寺農協から二五〇万円借受けた。(もつとも借り受け先については、その後の調書で、前記のように供述が訂正されている)……私は、このお家騒動がなかつたら現在でもそのまま借りていたかも知れません」との供述記載は充分信用できるのであつて、事件の発覚をおそれて急ぎ受領金員並びに不正使用金員を返還したものと解せられるから、右の事実をもつて、前記認定を覆えし、本件金員が貸借であつたものとなすことはできないものと考える。その他、記録を精査検討しても、原判決には所論のような事実の誤認を疑うべきかどはなく、論旨は理由がない。 (二) 次に、被告人A2の弁護人の所論は、右一五万円の贈賄につき、同被告人は、原審相被告人A3と共謀したことはないと主張する。よつて検討するに、原判決挙示の各証拠によると、被告人A1は、昭和三五年一〇月はじめごろ、被告人A2を通じてH工業に一五万円の融通方を依頼し、同被告人は帰社してこれをA3社長に伝えたこと、その後、被告人A1は、直接H工業に電話をして、A3社長に、先ごろ被告人A2に依頼しておいた金員を大阪府庁まで持つて来て欲しい旨を述べ、A3社長はこれを了承して同日ただちに自分のポケツト、マネー一五万円を、自ら府庁玄関先まで行つて被告人A1に交付したこと、同日、被告人A2は会社におらず、夕方帰社してA3社長から右の次第を聞いたこと、以上のような事実が明らかである。右のように、被告人A2は、本件一五万円の贈賄の実行行為にはなんら加担していないのであるから、前記依頼を受けて、A3社長にこれを伝えた際、あるいは、その後A3社長が一五万円を交付 実が明らかである。右のように、被告人A2は、本件一五万円の贈賄の実行行為にはなんら加担していないのであるから、前記依頼を受けて、A3社長にこれを伝えた際、あるいは、その後A3社長が一五万円を交付するまでの間に、被告人A2が、A3社長と、被告人A1に右一五万円を贈賄することについて謀議をした事実が認められないかぎり、右一五万円の贈賄につき、同被告人に共同正犯者としての刑責を問うことはできない。ところが、前記依頼の事実を告げた際以外に、被告人A2とA3社長との間に、この一五万円のことについて話し合われたような証跡は、関係各証拠を精査検討してもこれを認めることができないから、前記依頼の事実を告げた際に、謀議が行なわれたか否かが本件の争点であると考えられる。ところで、被告人A2の検察官に対する昭和三七年六月一二日付供述調書中には「三十五年秋頃社長と相談の上で現金一五万円を贈つております。この時は、A1から私に確か車を買い度いと言う話しを持ち掛けて来てその購入費を都合して欲しいということだつたのです。私はそれまでにも土地の購入代金ということで相当額の金を渡していましたので、その頃になるとあつかましい人だなあと言う気もしたのですが、社長とも相談して用立てすることになつたのです。社長が私に『前に土地の金と言つて用立てした金もまだ返さないのに、また無心言つて来るとはひどいな』と厭がらせを言つていたのを覚えています。社長としては、私にそんなことを言つてA1からの要求を安請合しないようひにくを言つていましたもので、もちろん社長も私もA1にやつた金は返えしてもらおうとも、また返つて来るとも思つていなかつたのです。この時の一五万円は、一〇月中旬頃、私の不在中に会社の方に再度A1から催促の電話があつたらしく電話に出た社長が直接その話を聞いて自分のポケツトマ おうとも、また返つて来るとも思つていなかつたのです。この時の一五万円は、一〇月中旬頃、私の不在中に会社の方に再度A1から催促の電話があつたらしく電話に出た社長が直接その話を聞いて自分のポケツトマネーから準備し先方から指定された大阪府庁の方え持つて行つてA1に渡して来たということをその日外出先から帰社して社長から耳にしました」との供述記載があつて、これによると、A3社長と相談して一五万円を用立てすることになつたというのであるが、原審相被告人A3の検察官に対する昭和三七年六月八日付供述調書には「三五年の夏から秋頃にかけての話だつたように思いますが、A2からまたA1の方で金の無心を言つて来ているということを聞かされたのであります。その金がまた土地の話だつたのか、あるいはA1が自動車を買い度いと漏らしているといううわさを耳にしていたので、その方の金を頼まれたのかはつきりしませんが、とにかく一五万円くらい金を要求しているということをA2から耳にし、その用立ての相談を受けたのです。この時私はA2と『前に貸した土地の金もまだ返えしてもらつていないのに、またそんな事を言つて来るとはひどいな』と話し合つた記憶が残つているのです。私がそんな話を聞いてから間もなく確かA2の不在中でしたが、A1から会社の方に電話があり、直接私に『これから府庁の方に行くから、この前A2に話しておいた金を届けて欲しい』と言つて来ました。そこで私は早速P銀行Q支店の私名義の普通預金口座から五万円を引出し、それに手持現金一〇万円を加えて一五万円を準備し……昼から指定された時間に府庁の玄関先まで持つて行つたように記憶しています」との供述記載があつて、被告人A2と一五万円を供与することに話し合いがまとまつたか否かについては触れるところがなく、むしろ、その後、被告人A1から同人に直接電 まで持つて行つたように記憶しています」との供述記載があつて、被告人A2と一五万円を供与することに話し合いがまとまつたか否かについては触れるところがなく、むしろ、その後、被告人A1から同人に直接電話があるまで金員の準備もしておらず、右の電話があつて、はじめて供与するようになつたとなすもののように解されるのみならず、右各供述調書によると、その際、前の金も返さないのに、また言つてくるとはひどいというようなことを話し合つたことがうかがわれ、被告人A2の前記供述調書は、A3社長がそのようなことを言つたのは、同被告人に対するけんせいのように供述するのであるけれども、同被告人は原審公判廷において、社長に相談したら、まあ考えておこうという返事だつたと思う。そして自分の居ない時に電話があつて、持つて行つて貸したということを聞いた。貸すことについて相談を受けたという記憶はない旨供述し、当審公判廷においても、二〇万円のときはA3社長にも相談して自分が二〇万円を持つて行つたが、一五万円のときは、A3社長に被告人A1から一五万円の借用申込があるがどうしましようと言うように言つたことはあるが、社長がいい返事をしないが、もしくは貸してやれという確答はなかつた旨、あるいは、A3社長は前の金が返つていないということで、A1に貸すことを賛成しなかつた旨供述しており、原審証人A3も、「A2から、A1が一五万円ほど貸してくれと言つているが、どうしましようかという相談があつたが、前の金も返さんのに、また貸せというのは、ちよつとずうずうしいなという話をして保留にしておつた。その保留しているときに、A1から電話がかかつて自分の個人の金一五万円を届け、A2にはあとでそのことを話した」旨証言し、当審公判廷においても同様趣旨の証言をしていること等を綜合すると、その際、両者間に、明示的 ているときに、A1から電話がかかつて自分の個人の金一五万円を届け、A2にはあとでそのことを話した」旨証言し、当審公判廷においても同様趣旨の証言をしていること等を綜合すると、その際、両者間に、明示的に、一五万円を供与しようという相談がまとまつたとは解しがたいのであつて、被告人A2の前記供述調書中にも、そのような供述記載は存しないのである。しかし、同供述調書中の、相談のうえ用立てすることになつたとの供述記載は、暗黙のうちにそのような相談がまとまつたとの趣旨と解し得る余地がないことはないけれども、これとても、同被告人が当審公判廷において供述しているように、A3社長が承知したものであれば、被告人A2としては、被告人A1に、取りに来て欲しいとか、いつごろ持つて行きますとかの連絡をしたであろうと推測することは、充分に合理性のあることであり、それにもかかわらず、そのような連絡をした形跡はなく、前叙のように被告人A1からの催促の電話があつてはじめてA3社長が金員を準備し、持参していることは、その際暗黙のうちにも、相談がまとまつていなかつたことの証左と解するのが相当であると考える。そして、その際、被告人A2において、内心においては要求に応じたいつもりであり、断わるわけにはいかないと考えており、また決定権を有するA3社長においても、結局は断ることはできないであろうと考えていたとしても、それだけのことで、A3社長がその後において被告人A1から催促を受けるという事態によつて要求に応ずることを決意し、被告人A2には相談することなく一五万円を供与した本件行為について、被告人A2に共謀による共同正犯者としての刑責を認めることは到底できない。けだし、いわゆる共謀共同正犯が成立するには、二人以上の者が特定の犯罪を行なうため、共同意思の下に一体となつて互に他人の行為を 告人A2に共謀による共同正犯者としての刑責を認めることは到底できない。けだし、いわゆる共謀共同正犯が成立するには、二人以上の者が特定の犯罪を行なうため、共同意思の下に一体となつて互に他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議をすることが必要であるが、いまだそのような謀議があつたものとは解し得ないからである。されば、被告人A2の前記供述調書中の「相談のうえ」という簡単な供述記載があることだけでは両名間に共謀があつたものと断定するには足りない。その他記録を精査しても、原判示共謀の事実を認定するに足りる証拠は発見できないから、結局、本件一五万円の贈賄につき、被告人A2を共同正犯者とした原判決は事実を誤認したものというべく、右の誤認は判決に影響を及ぼすこと明らかである。 論旨は理由があり、原判決はこの点において破棄を免れない。 弁護人佐伯千仭、同井戸田侃の控訴趣意第五点、同和島岩吉、同岡田忠典の控訴趣意第二点について。 趣旨はいずれも量刑不当を主張する。しかし、原審において適法に取り調べたすべての証拠に、当審における事実取調の結果を参酌して考察するに、被告人A1は、昭和二二年五月以来、町議会議員に連続当選し、昭和三二年ごろからは議長の要職にあつたものであつて、率先して身の廉潔を保持し、地方自治の本旨にのつとり、地方住民全体の利益に奉仕すべき使命を有するものであるにかかわらず、その公的立場を忘れ、あるいは濫用して一事業会社の利益をはかり、数回にわたつて賄賂を要求して合計一三五万円の賄賂を収受し、しかも、そのうち一〇〇万円は、情婦のバ―開業資金にあてるなどしていることは、強い非難を免れ得ないものであるばかりでなく、同被告人の生活態度など諸般の情状を考慮すると、本件は極めて悪質な収賄事件であると断ずるほかなく、到底実刑を免れる バ―開業資金にあてるなどしていることは、強い非難を免れ得ないものであるばかりでなく、同被告人の生活態度など諸般の情状を考慮すると、本件は極めて悪質な収賄事件であると断ずるほかなく、到底実刑を免れることはできない案件と考える。しかし、本件は全く未知の業者に対し賄賂を要求したものでもなく、また被告人が永年にわたつて町政に尽してきたこと、その他所論の諸点を参酌すると原審が、被告人A1に対し懲役一年二月を言い渡したことは、その量刑いささか重きに過ぎ不当なるものと認められる。論旨はいずれも理由がある。 よつて、被告人A2の弁護人のその余の論旨に対する判断を省略して原判決中被告人A1に関する部分は刑事訴訟法第三九七条第一項、第三八一条により、同A2に関する部分は同法第三九七条第一項、第三八二条により、いずれも、これを破棄し、同法第四〇〇条但書に従い、さらに判決する。 原判決確定の各事実(但し原判示第七の一を除く)に、その掲記にかかる各法条を適用して被告人両名を各懲役一〇月に処し、被告人A2に対し本裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予し、被告人A1から金一三五万円を追徴することとし、当審における訴訟費用は、刑事訴訟法第一八一条第一項本文により被告人両名の負担とする。なお、被告人A2に対する本件公訴事実中、同被告人がA3と共謀のうえ、昭和三五年四月上旬ごろ、被告人A1に現金一五万円を贈賄したとの事実(昭和三七年六月一四日付起訴状中公訴事実第二の一)については、犯罪の証明がないので、刑事訴訟法第三三六条後段により無罪の言渡をする。 (裁判長裁判官山崎薫裁判官竹沢喜代治裁判官佐々木史朗) 裁判官竹沢喜代治裁判官佐々木史朗)
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