平成12(ワ)1222 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成16年7月28日 大阪地方裁判所
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判決文本文137,171 文字)

主文 1 被告らは,原告訴訟引受人に対し,連帯して,70億円及びこれに対する被告A1については平成12年2月21日から,被告A2については同月20日からそれぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は被告らの負担とする。 3 この判決は,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要本件は,①脱退原告が株式会社綜合ハウジング(以下「綜合ハウジング」という。)に対して25億円の融資を行ったことについて,当時,脱退原告の取締役兼代表取締役であった被告らは,綜合ハウジングの経営状況及び脱退原告の経営状態を認識し,徴求済みの担保では脱退原告の綜合ハウジングに対する貸付金債権を担保することができず,同社に対して新規融資を行っても回収の可能性がないことを知っていたのであるから,融資に関する社内手続を履践し,適切な債権保全措置を講じるべき善管注意義務(商法254条3項,民法644条)及び忠実義務(商法254条ノ3)を負っていたにもかかわらず,同義務に違反して上記融資を決定・実行し,脱退原告に少なくとも21億円の損害を与えたと主張して,脱退原告から損害賠償請求権等を譲り受けた原告訴訟引受人(以下「原告」という。)が,被告らに対し,商法266条1項5号に基づき,連帯して,上記損害額及びこれに対する訴状送達の日の翌日(被告A1については平成12年2月21日,同A2については同月20日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を賠償するよう求めた事案(以下「綜合ハウジング案件」という。)と,②脱退原告が幸和不動産株式会社(以下「幸和不動産」という。)に対して,2年間余りにわたって合計106億5390万円の融資を行ったことについて,当時,脱退原告の取締役兼代表取締役であった被告らは,当時幸和不 が幸和不動産株式会社(以下「幸和不動産」という。)に対して,2年間余りにわたって合計106億5390万円の融資を行ったことについて,当時,脱退原告の取締役兼代表取締役であった被告らは,当時幸和不動産の倒産は確実で上記融資金の回収は全く期待できず,その上脱退原告自身の経営状態の悪化も深刻であり,上記融資を継続しうる状態になかったのであるから,新規貸付けを中止すべき善管注意義務(商法254条3項,民法644条)及び忠実義務(商法254条ノ3)を負っていたにもかかわらず,同義務に違反して上記各融資を決定・実行し,脱退原告に上記各融資によって貸出残高の増額分である55億1270万円の損害を与えたと主張して,原告が,被告らに対し,商法266条1項5号に基づき,連帯して,上記損害額の内金49億円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(被告A1については平成12年2月21日,同A2については同月20日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を賠償するよう求めた事案(以下「幸和不動産案件」という。)とからなる。 1 当事者間に争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実(1) 当事者等ア原告等(ア) 脱退原告は,大正15年7月2日設立された幸福無尽株式会社を前身とし,昭和26年10月に相互銀行の営業免許を受けて株式会社幸福相互銀行に商号変更し,平成元年2月に普通銀行に転換して商号変更したものであり,平成13年3月14日現在の発行済株式の総数は82万8000株,資本の額は130億8000万円であった。 脱退原告は,平成11年5月22日,金融機能の再生のための緊急措置に関する法律8条1項に基づき,金融再生委員会により,金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分を受け,同日付けで,金融整理管財人の管 ,平成11年5月22日,金融機能の再生のための緊急措置に関する法律8条1項に基づき,金融再生委員会により,金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分を受け,同日付けで,金融整理管財人の管理下に置かれた。 脱退原告は,株式会社関西さわやか銀行に営業を全部譲渡し,平成13年3月30日解散した(甲A62号証,63号証)。 (イ) 原告は,平成8年7月26日に設立された株式会社住宅金融債権管理機構(以下「住管機構」という。)を前身とする株式会社であり,平成11年4月1日,株式会社整理回収銀行を吸収合併し,商号を変更した。その目的は,特定住宅金融専門会社の債権債務の処理の促進等に関する特別措置法(平成8年法律第93号)2条2項に規定された特定住宅金融専門会社から譲り受けたその貸付債権その他の財産の管理,回収及び処分等である。原告の平成15年7月7日現在の発行済株式の総数は424万株,資本の額は2120億円である。(弁論の全趣旨)イ被告ら等(ア) 被告A1は,昭和39年1月に脱退原告に入行するとともに取締役に就任し,昭和48年4月に取締役副社長,昭和50年4月に代表取締役社長にそれぞれ就任したが,平成11年5月23日に取締役兼代表取締役を辞任した。 (イ) 被告A2は,昭和27年4月に脱退原告に入行し,昭和38年1月に取締役に就任し,昭和46年4月に常務取締役,昭和50年6月に専務取締役,昭和55年5月に代表取締役副社長にそれぞれ就任したが,平成11年5月21日に取締役兼代表取締役を辞任した。 (ウ) Bは,昭和61年11月に脱退原告に入行し,平成6年6月に取締役に就任し,平成7年6月に常務取締役(人事部・関連事業部・事務統括部・事務集中部担当),平成8年6月に専務取締役(全般・関連事業部・特命担当)にそれぞれ就任したが,平成11年 ,平成6年6月に取締役に就任し,平成7年6月に常務取締役(人事部・関連事業部・事務統括部・事務集中部担当),平成8年6月に専務取締役(全般・関連事業部・特命担当)にそれぞれ就任したが,平成11年5月23日に取締役を辞任した(甲B11号証)。 (2) 脱退原告における融資に関する決裁権限及び決定手続等ア通常の融資の決裁権限及び決定手続等(ア) 脱退原告においては,本部内の融資について,次のとおり金額に応じた決裁権限が定められていた(甲B11号証,12号証の1)。 ① 社長 10億円超② 副社長 7億円超 10億円以下③ 担当常務取締役 5億円超  7億円以下④ 融資部長 1億円超  5億円以下⑤ 審査課長及び主任審査役  1億円以下(イ) 脱退原告においては,融資部(平成9年4月1日以降は審査部。以下この段落において同じ。)担当取締役,管理部長,融資第2部長,(証券)国際部長,営業第2部長,融資部長で構成される貸出協議会が,融資部所管の7億円を超える融資(取引先の脱退原告に対する保証債務額も含む。),有価証券引受案件及びその他融資部長が必要と認める案件(ただし,関連事業部の対象案件を除く。)について,協議をすることが定められていた(甲B11号証,12号証の1)。 (ウ) 脱退原告においては,「業績不芳の取引先に対する新たな貸付,保証,その他の受信」(ただし,上場会社等有力企業の保証のある先は除く。)で,1件当たり20億円を超えるものについては,「重要な財産の処分および譲受」として取締役会付議事項と定められていた。そして,ここにいう「業績不芳の取引先」とは,直近の事業年度の末日において債務超過の状態にある先をいうとされていた。(甲B11号証)(エ) 通常の融資の場合, して取締役会付議事項と定められていた。そして,ここにいう「業績不芳の取引先」とは,直近の事業年度の末日において債務超過の状態にある先をいうとされていた。(甲B11号証)(エ) 通常の融資の場合,各営業部店が本部の所管部に稟議書を提出し,所管部がその内容を審査し,可決すれば,前記(ア)の決裁権者が決裁することになるが,金額が7億円を超える場合などには貸出協議会が協議し,副社長が決裁し,金額が10億円を超える場合には更に社長が決裁することになっていた(甲B12号証)。 イ脱退原告の関連会社等に対する融資の決裁権限及び決定手続等(ア) 脱退原告は,平成5年4月1日,関連事業部を新設し,同部は,融資第2部から脱退原告の関連会社等との取引を引き継いだ(甲B11号証)。 (イ) 関連事業部は,a関連会社に対する支援,管理,指導に関する事項(①関連会社等の資金調達,運用の方針,②関連会社等に対する貸出の審査,管理,③関連会社等の監査,④関連会社等と本部各部の調整,⑤役員の特命事項)及びb特定企業先に関する事項(①特定企業先の選定,②その他)を所管する部署であった(甲B11号証)。 平成7年当時,関連事業部の所管となる「関連会社」とは,幸福カード株式会社(以下「幸福カード」という。),幸福総合リース株式会社(以下「幸福総合リース」という。),幸福総合管理株式会社及び幸福投資顧問株式会社の4社であり,「特定企業先」とは,株式会社大一商店(以下「大一商店」という。),綜合ハウジング,幸和不動産,ハッピークレジット株式会社(以下「ハッピークレジット」という。),株式会社スカイ(以下「スカイ」という。)及び株式会社コーエークレジット(以下「コーエークレジット」という。)等27社であった(甲B25号証の1)。 (ウ) 関連事業部所管の融資については,貸出協議 株式会社スカイ(以下「スカイ」という。)及び株式会社コーエークレジット(以下「コーエークレジット」という。)等27社であった(甲B25号証の1)。 (ウ) 関連事業部所管の融資については,貸出協議会の協議の対象とされなかった(甲B11号証)。 (エ) 関連事業部の融資案件については,被告A1及びBのほか,被告A2も稟議書の回付を受け審査することとされていた(乙B16号証の2)。 (オ) 関連事業部の所管事項については,いずれも,社長が決定権限を有していた(甲B11号証)。 (3) 被告らの権限ア脱退原告においては,社長及び副社長は各自銀行を代表する,社長は銀行の業務を統轄し,副社長は銀行業務を掌理するものとされていた(職制1条。 甲B11号証)。 イ脱退原告においては,業務担当取締役(専務取締役又は常務取締役)は,担当部の業務について経営方針に基づく管理・指導責任と,運営をとりまとめる統括責任を負うとされていた(甲B11号証)。 (4) 綜合ハウジング案件についてア綜合ハウジングの概要(ア) 綜合ハウジングは,宅地建物取引業業務等を目的として,昭和47年5月22日設立された株式会社であり,発行済株式の総数は5万株,資本の額は2500万円であった(甲A9号証)。 (イ) 平成7年8月当時,綜合ハウジングの取締役兼代表取締役はC,取締役はD及びE(営業部長)であったが,被告A1が同社を実質的に経営していた(甲B21号証の3,28号証の3)。 イ綜合ハウジングの経営状態綜合ハウジングの短期借入金,長期借入金,営業損益及び当期損益は,次のとおり推移した(百万円未満切捨て。甲A28号証の1ないし6)。 平成2年6月期短期借入金 20億0700万円長期借入金 (計上なし)営業利益 1億4400万円当期利益 7600万円平 推移した(百万円未満切捨て。甲A28号証の1ないし6)。 平成2年6月期短期借入金 20億0700万円長期借入金 (計上なし)営業利益 1億4400万円当期利益 7600万円平成3年6月期短期借入金 34億0700万円長期借入金 25億1000万円営業利益 2億9900万円当期利益 1億5800万円平成4年6月期短期借入金 39億9300万円長期借入金 25億円営業損失 8000万円当期損失 7000万円平成5年6月期短期借入金 38億3700万円長期借入金 25億円営業損失 1億8900万円当期損失 1億8600万円平成6年6月期短期借入金 40億5200万円長期借入金 25億円営業損失 2000万円当期損失 2200万円平成7年6月期短期借入金 42億6700万円長期借入金 25億円営業損失 1500万円当期損失 1800万円ウ本件マンション開発事業(ア) 綜合ハウジングは,平成元年9月ころから平成3年8月ころにかけて,神戸市a区千鳥ヶ丘,奈良県大和高田市b,大阪府枚方市c町及び大阪府高槻市dの4か所の土地(以下,それぞれ「垂水物件」,「大和高田物件」,「枚方物件」,「高槻物件」という。)を購入して,マンションの建築プロジェクトに着手した(以下「本件マンション開発事業」と総称する。)(甲A18号証,21ないし23号証)。 (イ) 本件マンション開発事業のうち,高槻物件(面積約7300坪)に関する案件(以下「高槻プロジェクト」という。)については,株式会社富士住建(以下「富士住建」という。)が地銀生保住宅ローン株式会社(以下「地銀生保住宅ローン」という。)から平成2年1月に,100億円の融資を受けて購入し( ロジェクト」という。)については,株式会社富士住建(以下「富士住建」という。)が地銀生保住宅ローン株式会社(以下「地銀生保住宅ローン」という。)から平成2年1月に,100億円の融資を受けて購入し(高槻物件に最先順位の抵当権を設定し,その旨の登記を経由した。),開発していたものであるが,平成2年8月ころ,富士住建の関連会社等とともに,綜合ハウジングも共同事業者として参加することになった。そのため,綜合ハウジングは,平成2年8月31日,共同開発者である富士住建,阪和都市開発株式会社(以下「阪和都市開発」という。)及び株式会社ジェイ・エイ・シー(以下「ジェイ・エイ・シー」という。)との間で,富士住建が40パーセント,綜合ハウジングが25パーセント,阪和都市開発が20パーセント,ジェイ・エイ・シーが15パーセントの権利を取得し(土地は共有名義とする。)義務を負担する旨の協定を締結した。(甲A24号証,25号証,甲B27号証の5)(ウ) 綜合ハウジングは,平成2年8月31日,地銀生保住宅ローンの子会社であるシーエス総合サービス株式会社(以下「シーエス総合サービス」という。)から,高槻プロジェクトに関する資金として,次の約定で,25億円を借り入れた(甲A24号証,26号証,甲B27号証の5)。 最終弁済日平成9年1月9日利率年8.4パーセント(ただし,市中銀行の長期プライムレート(当時は,年7.9パーセント)の変更に伴って引き上げ又は引き下げられる。)利息支払方法借入日及び平成2年9月28日以降毎月末に,翌日から次回利息支払日又は最終弁済日までの利息を前払いする。 弁済方法最終弁済日に借入金全額を一括弁済する。 なお,同じく,シーエス総合サービスから,阪和都市開発は20億円,ジェイ・エイ・シーは15億円をそれぞれ借り入れ, 弁済日までの利息を前払いする。 弁済方法最終弁済日に借入金全額を一括弁済する。 なお,同じく,シーエス総合サービスから,阪和都市開発は20億円,ジェイ・エイ・シーは15億円をそれぞれ借り入れ,高槻物件についての綜合ハウジング等の各持分の上に最先順位で抵当権を設定し,その旨の登記を経由した。これに伴い,地銀生保住宅ローンの抵当権は,富士住建持分の上の抵当権で,債権額を40億円とする旨の変更登記がされた。(甲A24号証)(エ) 綜合ハウジングは,本件マンション開発事業に供する土地について,いずれもいわゆるバブル経済のピーク時の価格で仕入れていたところ,バブル経済の崩壊による地価下落等により,地価の低迷が続けば,マンションを建築しても,損失を出さない程度の価格で販売することが不可能となる状況となった(甲B22号証の1,28号証の3,4)。 綜合ハウジングは,平成5年6月期,垂水物件の開発を断念し,約1億5000万円の損失を計上して売却処分したものの,これ以外の土地建物の売上げは全くなかった(甲A20号証,28号証の4,甲B22号証の1,28号証の1)。 平成6年6月期及び平成7年6月期においても,綜合ハウジングの土地建物の売上げはなく(甲A28号証の5,6),大一商店から毎年2000万円ほどの資金援助を受けて人件費等を支払い,シーエス総合サービス及び脱退原告に対する金利の支払については,脱退原告からの借入れによって賄っていた(甲B28号証の1)。 そのため,綜合ハウジングは,平成4年2月28日に借換えをした垂水物件に関する融資金の残額2億円を,弁済期の平成6年2月25日に返済することができず,同日以降延滞した(甲A18号証,19号証,29号証)。また,高槻プロジェクトに関する7億6700万円の融資金についても,弁済期の平成7年6月3 ,弁済期の平成6年2月25日に返済することができず,同日以降延滞した(甲A18号証,19号証,29号証)。また,高槻プロジェクトに関する7億6700万円の融資金についても,弁済期の平成7年6月30日に返済することができず,同日以降延滞した(甲A12号証,29号証)。 エ脱退原告の綜合ハウジングに対する担保脱退原告は,平成3年8月29日,綜合ハウジングとの間で,高槻物件の持分各20分の5について,銀行取引による一切の債権並びに脱退原告が第三者から取得する手形上及び小切手上の債権を被担保債権の範囲とする極度額10億円の根抵当権を設定する旨の契約を締結したが,根抵当権設定登記は留保していた(甲A16,17号証の各1,2)。 オ本件綜合ハウジング融資(ア) 脱退原告は,平成7年8月2日,綜合ハウジングに対し,次の条件で,25億円を貸し付けた(甲A12号証,13号証以下「本件綜合ハウジング融資」という。)。 ① 資金使途シーエス総合サービスからの借入金の肩代わり② 担保物件高槻物件の持分各20分の5③ 返済期限平成8年8月2日④ 利率年2.0パーセント⑤ 返済原資分譲マンション売却代金(イ) 脱退原告は,平成7年8月2日,綜合ハウジングとの間で,高槻物件の持分各20分の5について,銀行取引による一切の債権並びに脱退原告が第三者から取得する手形上及び小切手上の債権を被担保債権の範囲とする極度額35億円の根抵当権を設定する旨の契約を締結したが,根抵当権設定登記は留保していた(甲A14号証の1,2)。 (ウ) 被告らは,本件綜合ハウジング融資に関する貸出稟議書に決裁印を押した。 カ綜合ハウジングに対する債権の償却脱退原告は,平成10年3月期決算において,綜合ハウジングに対する貸出金(手形貸付9件)残高67億6700万円の ジング融資に関する貸出稟議書に決裁印を押した。 カ綜合ハウジングに対する債権の償却脱退原告は,平成10年3月期決算において,綜合ハウジングに対する貸出金(手形貸付9件)残高67億6700万円のうち50億9700万円について,第Ⅳ分類の破綻先債権として債権償却特別勘定に繰り入れた(甲A31号証)。 脱退原告は,平成10年9月30日,綜合ハウジングに対する上記債権のうち5500万円について,債権償却特別勘定に繰り入れた(甲A32号証)。 脱退原告は,平成11年3月31日,綜合ハウジングに対する上記債権のうち2億0150万円について,債権償却特別勘定に繰り入れた。 (5) 幸和不動産案件についてア幸和不動産の概要(ア) 幸和不動産は,宅地建物取引業務及び賃貸借管理経営等を目的として,被告A1の父であるA1(以下「先代A1」という。)により,昭和38年12月17日設立された株式会社であり,発行済株式の総数は4000株,資本の額は4000万円であった。 (イ) 平成9年2月から平成11年5月までの間,幸和不動産の取締役兼代表取締役は,F(平成10年12月22日まで社長,同日以降会長)及びG(平成10年1月16日就任,同年12月22日まで副社長,同日以降社長),取締役は,H(業務部長)及びI(総務部長)であったが,被告A1が,同社を実質的に経営していた。 イ幸和不動産の経営状態幸和不動産の平成7年9月期から平成10年9月期までの短期借入金,1年内返済予定長期借入金,長期借入金,経常損益,当期損益及び当期未処理損失は,次のとおり推移した(百万円未満切捨て。甲A38号証の10ないし13)。 平成 7年9月期短期借入金 406億5700万円1年内返済予定長期借入金 129億2800万円長期借入金 225億7300万円経常損失 切捨て。甲A38号証の10ないし13)。 平成 7年9月期短期借入金 406億5700万円1年内返済予定長期借入金 129億2800万円長期借入金 225億7300万円経常損失 9億6200万円当期利益 27億8000万円当期未処理損失  36億8200万円平成 8年9月期短期借入金 581億4000万円1年内返済予定長期借入金  90億3900万円長期借入金 90億4200万円経常損失 9億8200万円当期損失 9億8500万円当期未処理損失  46億6700万円平成 9年9月期短期借入金 667億5400万円1年内返済予定長期借入金  19億3700万円長期借入金 91億8700万円経常損失 6億4900万円当期損失 6億4900万円当期未処理損失  53億1600万円平成10年9月期短期借入金 666億5700万円1年内返済予定長期借入金  41億6200万円長期借入金 163億2500万円経常損失 10億7500万円当期損失 10億7500万円当期未処理損失  63億9200万円ウ山手台開発事業(ア) 幸和不動産は,昭和51年10月,宝塚市eにおいて「宝塚サングリーン開発計画」との名称で宅地開発を行うことを計画した(以下「山手台開発事業」という。)。 (イ) 昭和54年,三井不動産株式会社が山手台開発事業に参加したが,昭和59年2月には同事業から撤退し,代わって恒和興業株式会社が同事業に参加した。また,同年12月には,阪急不動産株式会社(以下「阪急不動産」という。)も同事業に参加した。具体的には,幸和不動産と阪急不動産は,昭和59年12月26日,「宝塚市仮称「阪急山本山 同事業に参加した。また,同年12月には,阪急不動産株式会社(以下「阪急不動産」という。)も同事業に参加した。具体的には,幸和不動産と阪急不動産は,昭和59年12月26日,「宝塚市仮称「阪急山本山手台」団地の共同開発に関する基本協定書」(甲A37号証の1 以下「本件基本協定」という。)を締結した。 そして,幸和不動産は,昭和61年春ころ,山手台開発事業の造成工事に着工した。 恒和興業株式会社は,平成元年秋ころ,山手台開発事業から撤退した。 平成2年2月,株式会社日建エンジニアリング(以下「日建エンジニアリング」という。)が山手台開発事業に参画し,阪急不動産50パーセント,幸和不動産45パーセント及び日建エンジニアリング5パーセントの各持分で山手台開発事業を進めることになった。 (ウ) 幸和不動産らは,昭和61年3月に山手台開発事業の造成工事に着手し,この宅地開発は次のとおり進行した。 平成 5年 4月第1工区(410区画),商業地区の一部,幼稚園用地完成平成 8年 3月第2-1工区(138区画)完成平成 8年 9月第3-3工区(商業用地)完成平成10年10月第2-2工区,第2-3工区(61区画)完成エ幸和不動産の担保権設定状況(ア) 脱退原告は,平成5年6月30日,株式会社日貿信(以下「日貿信」という。),株式会社日本興業銀行(以下「興銀」という。),株式会社日本債券信用銀行(以下「日債銀」という。),株式会社日本長期信用銀行(以下「長銀」という。),中央信託銀行株式会社(以下「中央信託」という。),安田信託銀行株式会社(以下「安田信託」という。),株式会社大和銀行(以下「大和銀行」という。),富士火災海上保険株式会社(以下「富士火災海上」という。),株式会社富士銀行(以下「富士銀行」という。),第一ファイナンス株式会社 田信託」という。),株式会社大和銀行(以下「大和銀行」という。),富士火災海上保険株式会社(以下「富士火災海上」という。),株式会社富士銀行(以下「富士銀行」という。),第一ファイナンス株式会社(以下「第一ファイナンス」という。)及び幸福総合リースとの間で,各当事者が,山手台開発事業の用地(兵庫県宝塚市f所在の149筆ほか29筆(合計178筆)及び兵庫県宝塚市g所在の431筆。以下「山手台物件」という。)について幸和不動産が有する持分各20分の9の上に,次のとおりの抵当権又は根抵当権を有すること(ただし,設定登記は留保する。)を確認することなどを内容とする協定をし,幸和不動産はこれを承認した(以下「本件旧担保協定」という。)(甲A49号証)。 順位債権者権利の種類被担保債権額又は極度額 1  日貿信根抵当権 65億円 1  興銀根抵当権 95億円 1  日債銀根抵当権 95億円 1  長銀根抵当権 95億円 1  中央信託根抵当権 60億円 1  安田信託根抵当権 10億円 1  大和銀行根抵当権 40億円 1  富士火災海上根抵当権 10億円 1  富士銀行根抵当権 10億円 2  第一ファイナンス抵当権 10億円 3  幸福総合リース抵当権 10億円 4  脱退原告根抵当権  220億円(イ) 脱退原告は,平成10年6月30日,興銀,日債銀,長銀,中央信託,大和銀行,富士銀行,安田信託,富士火災海上,日貿信,平河町ファイナンス株式会社(以下「平河町ファイナンス」という。)及び幸福総合リースとの間で,次の内容を含む協定をし,幸和不動産はこれを承認した(以下「本件新担保協 安田信託 富士火災海上 日貿信 平河町ファイナンス株式会社(以下「平河町ファイナンス」という。)及び幸福総合リースとの間で,次の内容を含む協定をし,幸和不動産はこれを承認した(以下「本件新担保協定」という。)(甲A50号証)。 a 各当事者及び幸和不動産は,各当事者が,幸和不動産が所有する物件(①兵庫県宝塚市f所在の66筆ほか26筆(合計92筆)の持分各2分の1及び②兵庫県宝塚市h所在の238筆(うち15筆については幸和不動産の単独所有,その余223筆については共有持分))の上に,次のとおりの抵当権又は根抵当権を有することを確認した。 順位債権者権利の種類被担保債権額又は極度額 1 興銀根抵当権 95億円 1 日債銀根抵当権 95億円 1 長銀根抵当権 95億円 1 中央信託根抵当権 60億円 1 大和銀行根抵当権 40億円 1 富士銀行根抵当権 10億円 1 安田信託根抵当権 10億円 1 富士火災海上根抵当権 10億円 1 日貿信根抵当権 65億円 2 平河町ファイナンス抵当権 9億1158万円 3 大和銀行根抵当権 30億円 4 幸福総合リース抵当権 10億円 5 株式会社京都共栄銀行根抵当権 50億円(以下「京都共栄銀行」という。) 5 福寿信用組合根抵当権 12億円 5 興和信用組合根抵当権 9億円 5 大同信用組合根抵当権 4億5000万円 5 大阪東和信用組合根抵当権 4億円6 根抵当権 12億円 5  興和信用組合根抵当権 9億円 5  大同信用組合根抵当権 4億5000万円 5  大阪東和信用組合根抵当権 4億円 6  三菱信託銀行株式会社根抵当権 30億円 7  脱退原告根抵当権  270億円b 各当事者は,a①の物件については根抵当権又は抵当権の設定仮登記の登記手続をする(ただし,順位4番から7番の抵当権又は根抵当権については,その設定登記を留保する。)が,a②の物件については根抵当権又は抵当権の設定登記を留保する。 オ本件幸和不動産融資(ア) 脱退原告は,平成9年2月から平成11年5月までの間,幸和不動産に対し,別紙「幸和不動産㈱平成9年貸出金実績表」「幸和不動産㈱平成10年貸出金実績表」「幸和不動産㈱平成11年貸出金実績表」各記載のとおり,合計106億5390万円を貸し付けた(以下,総称して「本件幸和不動産融資」という。また,本件綜合ハウジング融資及び本件幸和不動産融資を総称して「本件各融資」という。)。 (イ) 脱退原告は,毎月,幸和不動産から翌月の資金繰り及び必要とされる資金額等の報告を受けた上で,本件幸和不動産融資を実行した。 (ウ) 被告らは,本件幸和不動産融資に関する貸出稟議書に決裁印を押した。 カ幸和不動産の破産幸和不動産は,平成11年8月4日午後3時15分,大阪地方裁判所において,破産宣告を受けた。 キ損害賠償請求権と被告ら等の預金債権との相殺脱退原告は,被告ら等に対し,平成11年8月,本訴請求債権をもって,被告ら等の次の預金債権とそれぞれその対当額において相殺するとの意思表示をした。 被告A1  1億6348万1730円被告A2 6450万5749円B 95万4004円合計 ら等の次の預金債権とそれぞれその対当額において相殺するとの意思表示をした。 被告A1  1億6348万1730円被告A2 6450万5749円B 95万4004円合計  2億2894万1483円(6) 債権譲渡ア原告は,脱退原告から,平成13年2月23日,同月26日をもって,脱退原告が有する債務不履行に基づく損害賠償請求権及び事務管理,不当利得,不法行為その他契約以外の原因に基づいて脱退原告が有する権利(現在及び過去における脱退原告の役職員等に対し責任追及する一切の権利を含む。 また,既に権利が確定しているもののほか,同月26日においてその存在の確認若しくは内容の特定が未了であるものを含む。)等を買い受けた(甲A62号証)。 イ脱退原告は,平成13年3月9日到達の内容証明郵便で被告A1に対し,同月10日到達の内容証明郵便で被告A2に対し,それぞれ,脱退原告が本訴請求債権を原告に譲渡した旨を通知した(甲A61号証の1ないし3)。 (7) 弁済被告A1は,原告に対し,次のとおり,本訴請求債権に対する弁済をした。 平成14年 8月27日 1億0220万円平成14年10月 8日 8670万円平成14年11月20日 300万円平成14年12月13日 1億2314万8000円合計 3億1504万8000円 2 争点(1) 本件綜合ハウジング融資について,被告らに具体的法令違反又は善管注意義務違反・忠実義務違反があるか。 (2) 本件綜合ハウジング融資について違法性阻却事由があるか,又は被告らに過失若しくは期待可能性がないといえるか。 (3) 本件綜合ハウジング融資によって,脱退原告が被った損害額(4) 本件幸和不動産融資について,被告らに具体的法令違反又は善管注意義務違反・忠実義務違反が 失若しくは期待可能性がないといえるか。 (3) 本件綜合ハウジング融資によって,脱退原告が被った損害額(4) 本件幸和不動産融資について,被告らに具体的法令違反又は善管注意義務違反・忠実義務違反があるか。 (5) 本件幸和不動産融資について違法性阻却事由があるか,又は被告らに過失若しくは期待可能性がないといえるか。 (6) 本件幸和不動産融資によって,脱退原告が被った損害額第3 争点に関する当事者の主張 1 争点(1)(綜合ハウジング案件に関する具体的法令違反又は善管注意義務違反・忠実義務違反)について(原告の主張)(1) 金融機関の取締役の善管注意義務・忠実義務金融機関の取締役は,特定の顧客に対して融資の可否を検討する場合には,法令・定款等の規定を遵守するのはもとより,銀行法が求める健全性,安全性の原則にのっとり,融資先の経営又は資産の状況等について必要な調査を遂げた上,社内規定にのっとって融資の可否,融資条件等を決定しなければならず,また,融資の実行に際しては,融資先の状況によって,担保の徴求や積増しなど適切な債権保全措置を講じるべきであり,貸付金が回収不能に陥るおそれがある場合には,融資を控えるべき注意義務を負う。 (2) 綜合ハウジングの経営状況綜合ハウジングは,本件マンション開発事業がすべて挫折したため,平成5年6月以降は実質的な事業活動をしておらず,運転資金すらも調達できず,大一商店から毎年2000万円ほどの資金援助を受けてその人件費等を賄い,シーエス総合サービスや脱退原告に対する金利の支払は,脱退原告からの借入金に依存する状態であった。 しかも,本件綜合ハウジング融資当時は,脱退原告の綜合ハウジングに対する貸付金は合計42億円を超え,弁済期が到来した債務が順次延滞となって返済不能の状態に陥り,綜合ハウジングが実質的に倒 であった。 しかも,本件綜合ハウジング融資当時は,脱退原告の綜合ハウジングに対する貸付金は合計42億円を超え,弁済期が到来した債務が順次延滞となって返済不能の状態に陥り,綜合ハウジングが実質的に倒産状態に陥っていたことは明らかであった。 (3) 脱退原告の経営状況本件綜合ハウジング融資当時,脱退原告の経営状態は,「特に注意を要する状況にある」(日本銀行の考査結果)との評価であった。 (4) 本件綜合ハウジング融資についての担保の取得状況脱退原告は,本件綜合ハウジング融資に際して,高槻物件の持分各20分の5について極度額35億円の根抵当権の設定を受けたが,高槻物件には,既に平成3年8月及び平成6年8月に極度額10億円とする根抵当権の設定を受けていた(いずれも登記留保)ほか,本件綜合ハウジング融資当時,高槻物件の時価は9億8700万円程度しかなかったから,大幅な担保不足であった。 (5) 経営判断の原則被告らは,本件綜合ハウジング融資について,いわゆる経営判断の原則によって注意義務違反による損害賠償責任を負わない旨争うので,反論する。 ア経営判断の原則の適用要件取締役が経営判断に際して注意義務を尽くしたといえるためには,①問題となる経営判断の内容について取締役が個人的利害関係を有しないこと(利益相反の不存在),②意思決定の過程に法令違反や不合理な点がないこと(判断過程の合法性・合理性),③判断内容それ自体にも法令違反や不合理な点がないこと(判断内容の合法性・合理性)が要求される。 イ利益相反の存在(ア) 綜合ハウジングや幸和不動産を含むグループ会社は,法人格こそ別であったが,互いに株式を持ち合い,脱退原告や大一商店の出身者あるいはJ家の親族が役員を務めるなど,密接な関係にあり,被告A1が,各グループ会社の役員等から報告を受け,指示を プ会社は,法人格こそ別であったが,互いに株式を持ち合い,脱退原告や大一商店の出身者あるいはJ家の親族が役員を務めるなど,密接な関係にあり,被告A1が,各グループ会社の役員等から報告を受け,指示を出すなどして,実質的に経営を行っていた。 (イ) したがって,綜合ハウジング及び幸和不動産に対して融資を行うこと自体,個人的な利害関係を有することは明らかであり,利益相反の不存在という要件が欠落している。 ウ判断過程の違法性(ア) 商法260条2項1号違反a 脱退原告は,昭和63年10月14日開催の取締役会において,「業績不芳の取引先」に対して20億円を超える与信を行う場合には取締役会の承認を要する旨決議していた。 b 綜合ハウジングの平成7年6月期の貸借対照表によると,商品土地建物及び仕掛品が資産のほとんどを占めていたところ,これらの不動産は多額の含み損を抱えており,同社は債務超過となっていた。 c したがって,本件綜合ハウジング融資当時,綜合ハウジングは「業績不芳の取引先」に該当していたものであり,上記融資は取締役会の決議を経て行わなければならないものであった。 d しかるに,被告らは,取締役会決議を経ることなく本件綜合ハウジング融資を決定した。 e 以上より,本件綜合ハウジング融資は商法260条2項1号に違反するものであり,判断過程の合法性という要件が欠落している。 (イ) 商法265条,銀行法14条違反a 前記イ(ア)と同じ。 b したがって,脱退原告が綜合ハウジング及び幸和不動産に対して融資をすることは被告A1個人に融資をするのと同じことであり,取締役会の承認を要すると解される(商法265条)ところ,取締役会の承認を得ることなく上記各融資が実行された。 c また,銀行の取締役が当該銀行から受ける信用の供与は,その条件が,当該銀行の あり,取締役会の承認を要すると解される(商法265条)ところ,取締役会の承認を得ることなく上記各融資が実行された。 c また,銀行の取締役が当該銀行から受ける信用の供与は,その条件が,当該銀行の信用の供与の通常の条件に照らして,当該銀行に不利益を与えるものであってはならない(銀行法14条)ところ,本件各融資は,通常の貸出先よりも金利が優遇され,実質的には無担保で行われており,脱退原告の信用の供与の通常の条件に照らして,脱退原告に不利益を与えるものであった。 d 以上より,本件各融資は,商法265条及び銀行法14条に違反するものであり,判断過程の合法性という要件が欠落している。 (ウ) 銀行法13条違反a 銀行法13条は,同一人のみならず政令で定める特殊の関係にある者に対する信用の供与について,信用供与等限度額を超えてしてはならないと定める。そして,ここにいう特殊の関係にある者とは,名義が異なっていても,単なる名義上のものであり,実質的には同一人と認められるものを指す。 b 前記(イ)aの事実からすると,幸福銀行グループの会社は,銀行法13条との関係においては,特殊の関係にある者に含まれる。 c 脱退原告は,幸福銀行グループの会社に対し,本件各融資の前に既に銀行法13条に基づく信用供与等限度額をはるかに超える多額の融資(平成8年の日銀考査の時点で関連企業グループ36社に対する与信残高は964億円であった。)を行っていた。 d したがって,本件各融資は銀行法13条に違反するものであり,判断過程の合法性という要件が欠落している。 エ判断過程の不合理性脱退原告においては,グループ会社向けの融資については,関連事業部と称する特別の部局を設け,通常とは異なる特殊な審査,管理体制をとっていた。すなわち,グループ会社からの融資申込みは,本店営業部 理性脱退原告においては,グループ会社向けの融資については,関連事業部と称する特別の部局を設け,通常とは異なる特殊な審査,管理体制をとっていた。すなわち,グループ会社からの融資申込みは,本店営業部が受け付けていたが,ここでは融資条件の調整等は一切行わず,形式的に稟議書のみを作成して関連事業部に稟議を申請し,また,関連事業部でも他の部局との合議,協議等は一切せず,直接,社長等の決裁にあげていた。グループ会社に対する融資を決するための稟議手続は,全く形式的なものであり,専門の審査部や貸出協議会の関与が一切排除され,実質的には被告らのみで融資判断を行っていた。 このように,本件各融資の決定過程では,通常金融機関で行われるべき利害関係のない審査部等の部局による専門的な審査,検討がむしろ意図的に排除されていたのであり,その判断過程は不合理かつ不明朗なものであった。 オ判断内容の不合理性(ア) 本件綜合ハウジング融資の必要性の不存在綜合ハウジングがシーエス総合サービスに弁済した債務は,弁済期限が平成9年1月9日であっていまだ到来していたものではなく,脱退原告がシーエス総合サービスから肩代わりを要求されたものでもなかった。その上,高槻プロジェクトの他の共同事業者は金利の支払を停止していたのであって,本件綜合ハウジング融資をしなければ脱退原告の信用が損なわれるような状況ではなかった。 (イ) 本件綜合ハウジング融資の回収可能性本件綜合ハウジング当時,本件マンション開発事業のうち,枚方及び大和高田の各物件については事業が止まっていたこと,高槻プロジェクトも進入路の問題や採算の問題のため進んでいなかったこと,綜合ハウジングは事業による利益をほとんど上げておらず,主たる収入は大一商店からの援助であったこと,綜合ハウジングだけではシーエス総合サービス も進入路の問題や採算の問題のため進んでいなかったこと,綜合ハウジングは事業による利益をほとんど上げておらず,主たる収入は大一商店からの援助であったこと,綜合ハウジングだけではシーエス総合サービスに対する金利の支払や経費の負担もできない状態であったこと,平成7年の大蔵省検査では,綜合ハウジングについて「プロジェクトの頓挫により実質的に経営破綻」していると評されていたこと,結果的に高槻プロジェクトは進展せず,綜合ハウジングに対する債権の大部分が償却されたという経緯等をも併せ考慮すると,本件綜合ハウジング融資の当時,綜合ハウジングは実質的に経営破綻の状態に陥っており,その融資の回収は著しく困難であった。 (ウ) 高槻プロジェクトを中止した場合の損害綜合ハウジングは,本件綜合ハウジング融資がなくても実質的に経営破綻の状態に陥っていたのであり,また,同社がシーエス総合サービスに対して弁済した債務は,期限が到来していたものではなく,脱退原告がシーエス総合サービスから肩代わりを要求されたものでもなかった。 すなわち,本件綜合ハウジング融資をしなければ綜合ハウジングが倒産するという関係にはなかった。 (エ) 綜合ハウジングに対する支援策等被告A1が主張する綜合ハウジングに対する支援策等のうち,現実化したのは,綜合ハウジングの実質人員3名のうち1名を脱退原告に転籍させて脱退原告から給料を出すことくらいである。また,スカイ等との合併についても,幸和不動産,コーエークレジット,ハッピークレジット等との吸収合併等を併せて検討していたうちの1案にすぎず,その後これについて具体的に検討された形跡は見られない。 (オ) 大蔵省の容認について平成7年の大蔵省検査における検査報告書は,綜合ハウジングについて「プロジェクトの頓挫により実質的に経営破綻していることか について具体的に検討された形跡は見られない。 (オ) 大蔵省の容認について平成7年の大蔵省検査における検査報告書は,綜合ハウジングについて「プロジェクトの頓挫により実質的に経営破綻していることから欠損見込額が発生しているほか,他行借入金の肩代わりも余儀なくされている」と指摘した上で,主要留意事項の中で,「特に,実質経営破綻先はもとより業況不芳先に対しては極めて慎重な対応が必要であるにもかかわらず,安易に対応したことから,損失が拡大している事例が少なくなく,極めて厳正さを欠く融資姿勢となっている。」と厳しく指摘しているところであり,大蔵省が本件綜合ハウジング融資を容認していたとは到底考えられない。 また,仮に大蔵省が容認したとしても,被告らの善管注意義務違反による責任は免責されない。 カ母体行責任論について銀行法の諸規定(1条,4条2項,5条,10条,13条等)からすると,銀行の信用はその財務内容を堅固なものとすることにより維持されるべきであり,またこれにより預金者等の保護や金融の円滑を図ろうとしているものと解される。そして,このような見地から,銀行の貸付けに当たっては,その貸出金の確実な回収という安全性が最も重要であるといえる。 したがって,仮に母体行責任という考え方が存在したとしても,母体行は,当該関係する会社の債務について,法律上負担している金額以上の責任を負うことになるから,前記安全性の要請に反する要素がある上,これを果たすにはそれだけの財務状況の裏付けを欠かすことができないのであり,その妥当範囲には自ずから限界がある。 また,本件各融資当時,母体行責任の考え方によらずに銀行の系列ノンバンクの債務処理が行われた事例も現れており,このような考え方が確固たるものであったわけではない。 以上のように,母体行責任の妥当範囲には限界が 各融資当時,母体行責任の考え方によらずに銀行の系列ノンバンクの債務処理が行われた事例も現れており,このような考え方が確固たるものであったわけではない。 以上のように,母体行責任の妥当範囲には限界があるから,母体行責任を理由に認められる取締役の裁量の範囲にも限界があるというべきである。 キ経営判断の原則の適用基準仮に経営判断の原則が適用される場合でも,取締役の経営判断に関する裁量権の逸脱の有無は,抽象的・一般的な通常の企業人を基準としてではなく,当該会社の属する業界における通常の経営者の有すべき知見及び経験を基準に判断されるべきであるところ,銀行業は特段の健全性,安全性が求められる業務領域であり,一般の事業会社におけるのと同様な意味での経営リスクを銀行業務に持ち込むことは,それ自体が許されず,銀行の取締役は,銀行の健全性,安全性を害しない範囲で経営裁量を有するにすぎない。 (6) 被告らの責任原因ア被告A2は,上記貸出稟議書の回付を受けて,脱退原告のK関連事業部部長から本件綜合ハウジング融資の詳細な説明を受けながらこれを決裁した。 イ被告A1は,上記貸出稟議書の回付を受けてこれを決裁した。 ウ被告らは,遅くとも本件綜合ハウジング融資当時までには前記(2),(3)の事情を認識し,徴求済みの担保では脱退原告の綜合ハウジングに対する貸付金債権を担保することができず,同社に対して新規融資を行っても回収可能性がないことを知りながら,前記(1)の善管注意義務及び忠実義務に違反して,担保余力のない高槻物件に根抵当権を設定する契約を締結したのみで,他に債権保全の措置を講じることもないまま,本件綜合ハウジング融資を決裁し,実行させた。 エ本件綜合ハウジング融資は,前記(5)ウ(ア)ないし(ウ)のとおり,商法260条2項1号,265条,銀行法13条 権保全の措置を講じることもないまま,本件綜合ハウジング融資を決裁し,実行させた。 エ本件綜合ハウジング融資は,前記(5)ウ(ア)ないし(ウ)のとおり,商法260条2項1号,265条,銀行法13条,14条に違反する。 オしたがって,被告らは,本件綜合ハウジング融資について,商法266条1項5号に基づいて損害を賠償する責任がある。 (被告A1の主張)原告主張の注意義務については,一般論としてそのような注意義務があることは認めるが,取締役が金融機関としての業務の健全かつ適切な運営の確保に努め,銀行に損害を加えることのないよう誠実にその職務を遂行するに当たって果たすべき注意義務はそれに尽きるものではない。 脱退原告が本件綜合ハウジング融資を実行せず,かつ,金利分の融資もしなかったとすれば,綜合ハウジングは自力での金利支払ができなくなり,倒産に至ることが明らかであった。綜合ハウジングは幸福銀行グループに所属していると一般に認識されており,シーエス総合サービスもこれを前提に与信したものであって,母体行責任の下,幸福銀行グループで責任をとらざるを得ないと判断された。また,当時,綜合ハウジングの事業継続は可能であり,融資の返済見込みはあると考えたことから,被告A1は,綜合ハウジングの倒産を防止し脱退原告の信用を維持するため,綜合ハウジングに対する融資を実行した。被告A1は,対外的金利負担を少なくしてグループ全体の負担を減少させながら,いずれは利益を上げているスカイ等の関連企業との合併によって損失を吸収することが可能であると考えていた。また,高槻プロジェクトについては,そろそろ地価の上昇も期待できると考え,時宜を待つことにより損失を少なくするのが得策とも考えた。 なお,貸出協議会については,貸出協議会規定は,7億円を超える融資を協議対象としていると については,そろそろ地価の上昇も期待できると考え,時宜を待つことにより損失を少なくするのが得策とも考えた。 なお,貸出協議会については,貸出協議会規定は,7億円を超える融資を協議対象としているところ,① 目的「貸出政策の具体化を図るため,融資部所管の対象案件について協議を行う。」② 構成「融資部担当専務又は常務取締役・管理部長・融資第二部長・国際部長・営業第二部長・融資部長で構成する。」としているのであって,要するに,同協議会は,通常の一般融資先を担当する融資部所管の高額融資について,「その貸出政策の具体化を図るため」担当役員以下,担当部長だけでなく他の同列部長をも加えて検討しようとするものである。融資部所管の融資についても,その可否の審査・決定は,あくまでも,貸出決裁権限規定に基づき,金額に応じ審査課長,審査部長,担当取締役,副社長又は社長の権限によってされる。貸出協議会は,「貸出政策の具体化を図ること」を目的とするものであって,貸出の可否審査を目的としたものではない。関連事業部所管の融資が貸出協議会の協議対象とされていないのは当然のことである。 (1) 経営判断の原則ア裁判所としては,実際に行われた取締役の経営判断そのものを対象として,その前提となった事実の認識について不注意な誤りがなかったかどうか,また,その事実に基づく意思決定の過程が通常の企業人として著しく不合理なものでなかったかどうかという観点から審査を行うべきであり,その結果,前提となった事実認識に不注意な誤りがあり,又は意思決定の過程が著しく不合理であったと認められる場合には,取締役の経営判断は許容される裁量の範囲を逸脱したものとなり,取締役の善管注意義務又は忠実義務に違反するものとなると解するのが相当である。 イ原告の主張に対する反論(ア) 原告は,法令 場合には,取締役の経営判断は許容される裁量の範囲を逸脱したものとなり,取締役の善管注意義務又は忠実義務に違反するものとなると解するのが相当である。 イ原告の主張に対する反論(ア) 原告は,法令に違反する場合には,経営判断の原則は適用されない旨主張する。 しかしながら,経営判断の原則が司法審査自体を排除する米国における議論を我が国においてそのまま適用することは適切とはいえない。 また,法令違反の主張は,結局,当該判断の過程が著しく不合理かという問題との関係で検討される以外にないから,上記のような独自の要件を設定すること自体,無意味に帰する場合が多い。 仮に,法令違反がある場合には経営判断の原則が適用されないとしても,それは取締役が「故意」に法令に違反した場合のことであるところ,原告は被告らの故意に基づく法令違反をおよそ主張していない。 (イ) 原告は,問題となる経営判断の内容について取締役が個人的利害関係を有しないことも,経営判断の原則が適用される前提となる旨主張する。 しかしながら,善管注意義務と忠実義務を峻別する英米法の立場からの議論が我が国においてそのまま妥当するとは思われない。 のみならず,利益相反のある場合においては,商法266条1項4号に基づく責任を問えば足りるほか,利益相反の問題も,結局,当該判断の過程が著しく不合理かという問題に帰着するから,善管注意義務違反を問う原告の主張との関係では,余り意味がない。 (2) 経営判断の前提事実の認識に不注意な誤りがない。 被告A1は,本件綜合ハウジング融資に際し,綜合ハウジングの経営及び資産状況等について十分な調査をしていた。被告A1は,高槻プロジェクトはもとより,綜合ハウジング全体の資産及び経営状況等を十分に把握し,脱退原告及びそのグループ企業を取り巻く母体行責任を要請する情勢について 等について十分な調査をしていた。被告A1は,高槻プロジェクトはもとより,綜合ハウジング全体の資産及び経営状況等を十分に把握し,脱退原告及びそのグループ企業を取り巻く母体行責任を要請する情勢についても熟知していた。さらに,母体行責任を放棄したらどれだけの信用が損なわれ,いくらの損失となるかを具体的に見積もることは不可能である一方,かかる場合に生じる損失が本件綜合ハウジング融資の金額を超えること自体は明白であるから,これらの点に関する調査義務違反ということはおよそ考えられない。 ア被告A1において,Cから決算前等に定期的に綜合ハウジングの状況報告を受けるとともに,重大な事実の発生についてはその都度報告を受ける体制となっていた。 イ被告A1は,平成6年12月1日,高槻プロジェクトの当初計画した進入路の確保が,地権者の同意が得られずに難航していることをCからの報告により知った。しかし,同時に,新たな進入路を策定することにより計画を進めることになっており,遅れてはいるものの,いずれは,高槻市都市計画審議会にかけられる見込みであるとの報告を受けた。 ウ被告A1は,平成7年7月5日,Cから綜合ハウジングの同年6月期の決算予定内容について報告を受け,Kに対し,シーエス総合サービスへの金利支払問題の対策を考えるよう指示した。Kは,検討の結果,被告A1に対し,本件綜合ハウジング融資を含む対策を提案した。 被告A1は,平成7年7月24日,K及びBと協議した上,本件綜合ハウジング融資を決定し,同月31日,これを決裁した。 エ被告A1は,以上のような本件綜合ハウジング融資の決定及びその実行までの間,Cから,何ら高槻プロジェクトの進行に支障をきたすような事実発生の報告を受けていなかった。 (3) 経営判断の過程が著しく不合理ではない。 本件綜合ハウジング融資 ング融資の決定及びその実行までの間,Cから,何ら高槻プロジェクトの進行に支障をきたすような事実発生の報告を受けていなかった。 (3) 経営判断の過程が著しく不合理ではない。 本件綜合ハウジング融資は,脱退原告の信用を維持するという,融資をしないことによって確保できる利益に優越する利益のためにされたものであり,それ以外の具体的選択肢は存在しなかった。このような優越的目的のための融資であれば,たとえ回収困難性を伴う部分があったとしても,なお融資は正当である。 また,高槻プロジェクトはいまだ利益が見込まれており,綜合ハウジングの経営も,脱退原告の関連会社であるスカイとの合併等によって将来は立て直すことが可能な状態にあった。したがって,本件綜合ハウジング融資当時,同融資の回収可能性があった。そして,脱退原告は,当時とりうる担保措置をとっていた。 他方,上記優越的利益を確保するためには,融資を控えるという選択肢はなかった。 しかも,本件綜合ハウジング融資の額は,脱退原告の体力からすれば,小規模なものであった。 ア高槻プロジェクトの状況(ア) 高槻プロジェクトは,高槻市自身の主導の下に始まった,住宅地高度利用地区計画制度に基づく開発計画(以下「住地区計画」という。)であったが,その用地への進入路として,同用地北側に接する幅員9メートルの道路を設置することが予定されていた。 (イ) 平成6年11月当時,前記(ア)の北側進入路の設置が地元住民の反対で難航し,平成7年5月,上記進入路の設置を断念すべきと考えられるに至った。 (ウ) しかしながら,代替道路を設けることで住地区計画自体は実現可能であったから,高槻プロジェクト自体が不可能となったものではなかった。かえって,今後も高槻市と協議を重ねながらプロジェクトを進めていくことが当然と考えられていたので ることで住地区計画自体は実現可能であったから,高槻プロジェクト自体が不可能となったものではなかった。かえって,今後も高槻市と協議を重ねながらプロジェクトを進めていくことが当然と考えられていたのであり,高槻市もまた,これと同じ考えであった。高槻市から住地区計画による開発はできないとの意思表示があったのは平成9年になってからであり,本件綜合ハウジング融資当時,被告A1は,住地区計画そのものが不可能になったなどとはおよそ聞いていなかった。 イ高槻プロジェクトを中止した場合の莫大な損害高槻プロジェクトを中止した場合,高槻物件の各共有持分は極めて低額でしか売却することができなかった。脱退原告は,本件綜合ハウジング融資前,上記各共有持分の上に極度額10億円の第2順位根抵当権を有していたが,シーエス総合サービスが被担保債権額25億円の第1順位抵当権を有していた。そして,当時高槻プロジェクトを中止した場合の上記各共有持分の価格は明らかに25億円を下回るものであった。したがって,本件綜合ハウジング融資をせずに綜合ハウジングを倒産させれば,脱退原告は,上記各共有持分からは1円も回収できない状況にあった。 他方,高槻プロジェクトは相当程度進行しており,その投入資金も莫大なものとなっていた。 したがって,高槻プロジェクトを中止して土地だけを売却するという選択の可能性は,現実には存在しなかった。 ウ綜合ハウジングの経営状態綜合ハウジングは,脱退原告に資金供給を頼っており,脱退原告が本件綜合ハウジング融資をしなければ,自力でシーエス総合サービスに対する金利の支払を継続することは不可能であった。そのため,脱退原告が本件綜合ハウジング融資をしなければ,支払が停止し,綜合ハウジングは一括返済を求められて一気に破綻してしまう状況にあった。 他方,高槻プロジェクトは 継続することは不可能であった。そのため,脱退原告が本件綜合ハウジング融資をしなければ,支払が停止し,綜合ハウジングは一括返済を求められて一気に破綻してしまう状況にあった。 他方,高槻プロジェクトは,本件綜合ハウジング融資当時,なお利益が見込まれる継続する価値のある事業と考えられていたから,本件綜合ハウジング融資により,綜合ハウジングの経営を立ち直らせる可能性自体は存在していた。したがって,本件綜合ハウジング融資当時,綜合ハウジングを法的に整理したり,同社に対する債権を償却することなどは全く想定されていなかった。 エ脱退原告の信用失墜の危険(ア) 本件綜合ハウジング融資当時,母体行主義が当然のこととされており,これに基づいて,銀行の関連会社は銀行が責任を持って処理し,他の取引先に損害を及ぼしてはならないとの考えが強固に存在していた。 そして,綜合ハウジングは,脱退原告と相互に協力し補完しあう関係にあった。 したがって,綜合ハウジングの経済的信用は,同時に脱退原告の経済的信用でもあった。 (イ) シーエス総合サービスの綜合ハウジングに対する融資も,脱退原告の信用を前提としていた。 また,高槻プロジェクト自体も,幸福銀行グループの会社が参入する事業と見られていた。したがって,綜合ハウジングが,シーエス総合サービスに対する返済を滞らせたり,プロジェクトを積極的に推進してきた高槻市や,共同事業者である富士住建,阪和都市開発及びジェイ・エイ・シーに損害を与える事態となれば,それが直ちに脱退原告の信用失墜につながることは自明であった。 (ウ) 本件綜合ハウジング融資当時,脱退原告の関連会社である幸福総合リースの再建が進行していたものであるところ,もしこの最中に綜合ハウジングの破綻等が顕在化すれば,脱退原告に関連会社を支援する能力がないとの観測が ウジング融資当時,脱退原告の関連会社である幸福総合リースの再建が進行していたものであるところ,もしこの最中に綜合ハウジングの破綻等が顕在化すれば,脱退原告に関連会社を支援する能力がないとの観測が広まって,ドミノ倒し的に信用不安が拡大して,幸福総合リースの処理も失敗し,脱退原告自体が危機に瀕することも予見された。 (エ) 本件綜合ハウジング融資当時,金融機関に対する人々の視線が厳しさを増していた。すなわち,平成6年12月,東京協和信用組合及び安全信用組合が破綻し,平成7年8月,木津信用組合が取付け騒ぎにより破綻したほか,コスモ信用組合及び株式会社兵庫銀行も破綻していた。 このような状況下で,綜合ハウジングに対する支援を打ち切り倒産という事態を生じれば,直ちに銀行の信用が失墜し,預金流出及び銀行間の資金調達の困難化等による多大の損失を生じるばかりか,幸福総合リースの処理に支障をきたし,更には脱退原告自体の経営悪化にもつながるおそれが予見された。 オ本件綜合ハウジング融資の規模本件綜合ハウジング融資については,回収し得ない金額が発生するおそれのあったことは否定できない。 しかしながら,脱退原告の平成7年3月31日当時の預金総額は1兆8670億円,貸出金総額は1兆7748億円であった。これからみると,本件綜合ハウジング融資は金額25億円とごく小規模な貸付けである。 カまた,一括請求以外にも,債権者の交代によって綜合ハウジング再建のための交渉に困難をきたすことや,綜合ハウジングが住専関連会社の借り手であるとの事実自体住専処理の社会問題化によって母体行である脱退原告の信用を低下させるものであることが憂慮された。 キ脱退原告(被告A1)は,前記アからカまでを前提に,金利支払をなくして幸福銀行グループからの資金流出を防止するため,また,シーエス総 である脱退原告の信用を低下させるものであることが憂慮された。 キ脱退原告(被告A1)は,前記アからカまでを前提に,金利支払をなくして幸福銀行グループからの資金流出を防止するため,また,シーエス総合サービスが遠からず整理されることになり,同社の債権回収が加速して,綜合ハウジングが一括返済を求められることが予想されていたことから,高槻プロジェクトの完成や関連企業との合併による救済ができないうちに一括請求を受けて破綻してしまうことを回避するために本件綜合ハウジング融資を実行した。 被告A1は,仮に金利分のみを援助したとしても,綜合ハウジングが一括返済を求められて破綻した場合,全く無駄な資金流出となることから,金利支払の援助ではなく元金25億円全額の肩代わりを実行した。 ク綜合ハウジングに対する支援策等脱退原告は,他の支援策等と有機的に結合した形で本件綜合ハウジング融資を行った。すなわち,脱退原告は,本件綜合ハウジング融資後の処理として,①高槻市以外の土地の早期売却,②人員削減等の経費節減,③大一商店からの業務指導料名下による資金援助,④仲介業務による手数料収入の確保,⑤その他の事業による収入の確保等の方針を立てた。 また,実現はされなかったが,本件綜合ハウジング融資に先立って,スカイ等の利益が見込まれる関連企業との合併等の種々の対策が検討された。 ケ大蔵省の容認当時,大蔵省も,脱退原告が本件綜合ハウジング融資という支援を行うことを,やむを得ないこととして容認していた。すなわち,脱退原告は,平成7年の大蔵省検査に対し,綜合ハウジングの状況及び肩代わり融資の事実をありのままに報告したが,その検査結果において,綜合ハウジングに対する支援や肩代わり融資そのものを許されないという指摘はなかった。 コ法令違反の主張について(ア) 商法260条2 わり融資の事実をありのままに報告したが,その検査結果において,綜合ハウジングに対する支援や肩代わり融資そのものを許されないという指摘はなかった。 コ法令違反の主張について(ア) 商法260条2項1号の主張についてa 本件綜合ハウジング融資は,回収を前提とする融資であるから,商法260条2項1号にいう財産の「処分」に当たらない。 b 脱退原告においては,「業績不芳の取引先に20億円を超える与信を行う場合」には取締役会の承認決議を要すると定められていたが,同時に,「業績不芳の取引先」とは,直近事業年度末日において債務超過の取引先をいうと定義されていた。 そして,綜合ハウジングは,平成7年6月期において,債務超過ではなかった(原告は,不動産の含み損を考慮に入れれば,債務超過であった旨主張するが,本件綜合ハウジング融資は回収を前提としていたから,債務超過の有無の判断に当たって,あたかも綜合ハウジングを清算した場合を前提にした検討を当然視することはできない。)。 原告は,含み損を考慮すれば債務超過となって「業績不芳」に当たると主張するが,このような「実質的」配慮による操作を加えて判断していたのでは,判断が区々になり,決議を要する場合の基準が不明確となるから,上記定義は形式的に解釈すべきである。 したがって,綜合ハウジングは「業績不芳の取引先」に当たらず,本件綜合ハウジング融資は「重要ナル財産ノ処分」(商法260条2項1号)に当たらない。 (イ) 商法265条,銀行法14条違反の主張についてa 商法265条は,取締役個人と会社との利害が相反する場合を前提に,取締役個人の利益を図り,会社に不利益を及ぼす取引を規制しようとするものである。 しかるに,脱退原告の存立を離れた被告A1個人の地位や体面はおよそ観念できない。加えて,綜合ハウジング等のグル 提に,取締役個人の利益を図り,会社に不利益を及ぼす取引を規制しようとするものである。 しかるに,脱退原告の存立を離れた被告A1個人の地位や体面はおよそ観念できない。加えて,綜合ハウジング等のグループ企業は,すべて脱退原告の存亡と帰趨を共にするものであった。 したがって,被告A1が脱退原告の利益を犠牲にし,被告A1の利益を図るために,グループ企業に対し,脱退原告に不利益を及ぼす取引をするということは想定し難い。 b 綜合ハウジング及び幸和不動産は,独立した法人格を有しており,銀行法14条にいう銀行の「取締役」には当たらない。 (ウ) 銀行法13条違反の主張について銀行法13条にいう「当該同一人と政令で定める特殊の関係のある者」に関する政令の定めはなく,綜合ハウジング及び幸和不動産がこれに当たらないことは明らかである。 (被告A2の主張)被告A2は,一般論として,銀行の取締役として原告主張の適切な債権保全措置を講ずる義務に加え,金融システムの安定と確保,そのための母体行責任を履行する義務を負う。 被告A2は,職制上綜合ハウジングの財務や経営の状況には全く関与していないし,本件綜合ハウジング融資も,被告A1,Bら関係者が協議の上決定したもので,被告A2はこの協議に参加しておらず,その内容や経過についての詳細を知らないが,同被告は,慣例的に融資についての稟議に応否を示す押印をすることになっていた。 このような場合において,被告A2には,職制上自らの職務ではない関連事業部所管事項である本件綜合ハウジング融資の当否について,被告A1らが既に協議決定した事項について,更に改めて調査検討する任務はなく,かつ,経営判断にかかる事項については,意見を述べることが許されても反対することは職制上許されず,被告A2の任務の範囲は,稟議書面において確認し得る事 事項について,更に改めて調査検討する任務はなく,かつ,経営判断にかかる事項については,意見を述べることが許されても反対することは職制上許されず,被告A2の任務の範囲は,稟議書面において確認し得る事実を前提に,当該融資案件が明白に法令定款に違反しないか,又は,より良い稟議に修正できないかについて意見を述べるかの2点に限られる。 ところで,被告A2は,本件綜合ハウジング融資の稟議を通じ,綜合ハウジングが所有する土地の含み損も予想され,融資金の回収は容易でなく,担保も不足しており,融資金の一部が回収できなくなるかも知れないことは予測した。しかし,被告A2は,上記稟議に明白な法令定款違反はなく,かえって,本件綜合ハウジング融資は,主として金融システム安定のための母体行責任に基づく大蔵省の金融行政に従って実行せざるを得ないし,それをあえてしなければ,脱退原告は,融資によって被るかも知れない損害をはるかに超える計り知れない損害を被るおそれがあるため,これを避けるためには融資はやむを得ないと判断してこの融資稟議を承認したもので,被告A2に善管注意義務違反及び忠実義務違反はない。 (1) 被告A2は,職制上本件綜合ハウジング融資の決定に参加せず,綜合ハウジングの財務経営の状況,融資決定に至った経緯や内容の詳細を知らない。 ア被告A2の脱退原告における地位被告A1は,脱退原告や綜合ハウジングの株式を実質的にほとんど一人で保有し,かつ,これらの会社を経営しており,被告A2は同A1の弟であることで脱退原告の代表取締役副社長ではあったが,脱退原告の保有株式数は微々たるもので,いわゆるサラリーマン重役にすぎず,経営についてもそれが明らかに違法,不相当と判断し得る場合は格別,経営判断に関することについては,意見を述べることはできても,被告A1が決定した方針に従 たるもので,いわゆるサラリーマン重役にすぎず,経営についてもそれが明らかに違法,不相当と判断し得る場合は格別,経営判断に関することについては,意見を述べることはできても,被告A1が決定した方針に従わざるを得なかった。 イ被告A2の本件綜合ハウジング融資についての関与の内容被告A1と同A2の地位及び職務分掌は大きく異なっている上,現実の業務内容も全く異なっており,同被告は綜合ハウジングの財務や経営の状況には全く関与していないし,本件綜合ハウジング融資についても,被告A1,Bら関係者が協議の上決定したもので,被告A2はこの協議に参加しておらず,その内容や経過についての詳細を知らない。 ウ被告A2の本件綜合ハウジング融資の稟議への関与被告A2は,本件綜合ハウジング融資の稟議書の回付を受け,K又はその部下から口頭で説明を求め,融資金については高槻プロジェクトにより回収可能である,担保価格は不足しているが,高槻物件に極度額を35億円とする順位1番の根抵当権を登記留保の形で設定する,綜合ハウジングは3期連続の赤字で,平成6年6月期の売上げがわずか2200万円になっているが,それは,従業員も少人数の会社であり,不動産不況時営業を一時休止する方が得策と判断し休止しているためである,との説明を受けた。 エ被告A2は,綜合ハウジングの財務や経営の状況,被告A1らにより本件綜合ハウジング融資の決定がされた理由やその経緯の詳細は知らなかったが,綜合ハウジングが所有する土地の含み損も予想され,融資金の回収は容易でなく,担保も不足しており,融資金の一部が回収できなくなるかも知れないことは予測した。 (2) 本件綜合ハウジング融資は,銀行経営者に課せられている,金融システムの安定確保のための母体行責任に基づき,やむを得ないものであった。 ア本件綜合ハウジン くなるかも知れないことは予測した。 (2) 本件綜合ハウジング融資は,銀行経営者に課せられている,金融システムの安定確保のための母体行責任に基づき,やむを得ないものであった。 ア本件綜合ハウジング融資当時は,金融システム不安がある中,その安定のための預金保護等諸法制の制定もなく,金融システムの安定が強く求められており,大蔵省の金融行政は金融システム安定確保のため,各銀行に確固たる母体行責任を求めていた。 イ大蔵省は,平成7年大蔵省検査により,脱退原告の関連会社の経営状況や財務状態を確知した上で,脱退原告に対し,検査報告書やその結果の示達において,母体行責任に基づき,幸福総合リース,綜合ハウジング及び幸和不動産等関連会社の損失処理について,全額を脱退原告の負担で処理することを求めていた。 ウそこで,被告A2は,本件綜合ハウジング融資が,綜合ハウジングの含み損が予想され,担保が不足し,回収が容易でなく,脱退原告にいくらかの損害を与えるおそれのあるものであるとしても,大蔵省の指示があるほか,同融資は金融システムの安定確保のための母体行責任に基づき,やむを得ないものと判断し承認した。 (3) 本件綜合ハウジング融資は,融資をしなければ,融資により被るかも知れない損害をはるかに超える計り知れない損害を受けるおそれがあるため,これを避けるための経営判断に基づくものであった。 ア本件綜合ハウジング融資によって脱退原告が受ける損害は,最大でも,融資金額25億円から当時の担保物件の価格9億8700万円を控除した15億1300万円である。 イ脱退原告は,本件綜合ハウジング融資を実行しなければ,前記アの損害をはるかに超える計り知れない損害を受けるおそれがあった。 (ア) 脱退原告が一人金融行政や金融界の慣行に反し,母体行責任に基づく本件綜合ハウジン 本件綜合ハウジング融資を実行しなければ,前記アの損害をはるかに超える計り知れない損害を受けるおそれがあった。 (ア) 脱退原告が一人金融行政や金融界の慣行に反し,母体行責任に基づく本件綜合ハウジング融資を実行しないことは,脱退原告が当時大蔵省の指導の下,母体行責任に基づき幸福総合リースの損失処理を行っていたことと一貫性を欠き,大蔵省がそれを容認するはずがない。 したがって,そのような行為については,大蔵大臣の当時の銀行法に基づく監督権行使により,同法26条により必要な措置を命じられ,あるいはその行為が公益を害するものと認められた場合,同法27条により,業務の全部若しくは一部の停止,取締役若しくは監査役の解任又は免許の取消処分を受けるおそれすらあり得るほか,少なくとも監督官庁である大蔵省からあらゆる金融行政を通じ不利益な取扱いを受けることは必至であり,それにより計り知れない損害を受けるおそれがあった。とりわけ,当時はいわゆる住専7社の損失処理が政治問題化しており,そのうちの1社である地銀生保住宅ローン(シーエス総合サービスの親会社)が損害を受けることになれば,脱退原告は,大蔵省から,金融行政を通じてより厳しい不利益を受けることとなった。 さらに,脱退原告は,シーエス総合サービスに対する出資者である地方銀行や生命保険会社の信用を失い,金融機関間の取引において不利な状況に置かれることはもちろん,それら金融機関が脱退原告の信用に関わる風評を流せば,金融システム不安が叫ばれ,預金全額保護制度もなく,預金者が銀行の信用に敏感になっていた時であるから,その風評が波状的に次第に大きくなり,そのことにより更に計り知れない風評被害にさらされることになり,取付け騒ぎなど最悪の事態に追いやられるおそれがあった。 (イ) もっとも,本件綜合ハウジング融資を実行 風評が波状的に次第に大きくなり,そのことにより更に計り知れない風評被害にさらされることになり,取付け騒ぎなど最悪の事態に追いやられるおそれがあった。 (イ) もっとも,本件綜合ハウジング融資を実行しないことによって,脱退原告がどういう状況に追いやられるか,また,その損害額はいくらかを事前に検討し,予測することは不可能といっても過言ではない。しかし,平成7年3月末,約2兆2000億円に達する規模の脱退原告が受ける損害が,前記アの損害(当時の規模の約0.06パーセント)をはるかに超えるものであることは明らかである。 ウ脱退原告がより大きい損害を被ることを避けるため,本件綜合ハウジング融資はやむを得ないとした被告A2の経営判断に誤りはない。 本件綜合ハウジング融資を実行しない場合,脱退原告がどういう状況に追いやられるかについての予測やその損害額の予測は,事前に検討しても,景気判断と同様に,確実に予測することはおよそ不可能であり,被告A2のこの判断に誤りがあるかも知れない。 しかし,前記各事情等を総合すると,被告A2が,本件綜合ハウジング融資を実行しなければ,融資により受ける損害よりも大きな損害を受けるおそれがあるので,それを避けるための同融資はやむを得ないとした経営判断が,不誠実で合理的な選択の範囲を外れたものとは認め難い。 2 争点(2)(綜合ハウジング案件に関する違法性阻却事由,過失,期待可能性)について(被告A1の主張)前記1(被告A1の主張)のとおり,本件綜合ハウジング融資の実行は,当時としては最良の手段であり,社会通念上も相当で,他に代わるべき具体的な対策も考え難かった。 したがって,本件綜合ハウジング融資に違法性はない。また,被告A1に過失はなく,期待可能性もなかった。 (被告A2の主張)前記1(被告A2の主張)のとおり,被 わるべき具体的な対策も考え難かった。 したがって,本件綜合ハウジング融資に違法性はない。また,被告A1に過失はなく,期待可能性もなかった。 (被告A2の主張)前記1(被告A2の主張)のとおり,被告A2は,主として金融システム安定のための母体行責任に基づく大蔵省の金融行政に従い,本件綜合ハウジング融資を実行せざるを得ないし,それをあえてしなければ,融資により被るかも知れない損害をはるかに超える計り知れない損害を被るおそれがあるため,これを避けるための経営判断に基づき,やむを得ず同融資を実行せざるを得ないと判断していたもので,善管注意義務違反等法令又は定款に違反するとの認識はなく,かつ,その認識がなかったことについての過失もない。 (原告の主張)争う。 3 争点(3)(綜合ハウジング案件の損害)について(原告の主張)平成11年8月4日時点において,高槻物件の担保価値は3億5700万円であるから,これを控除したとしても,本件綜合ハウジング融資に係る融資金のうち21億円余りは回収不能となった。 よって,脱退原告は,本件綜合ハウジング融資によって,21億円を下らない損害を被った。 (被告A1の主張)争う。 (1) 本件綜合ハウジング融資による損害は,25億円から高槻物件の平成7年の路線価による評価額9億8700万円を控除した15億1300万円にとどまり,それを超える損害については民法416条2項にいう特別損害であって,被告A1は同融資当時これを予見することができなかった。 (2) 本件綜合ハウジング融資の前には,脱退原告は,綜合ハウジングに対し,7億7000万円の債権を有し,これを担保するものとして高槻物件上に2番根抵当権を有していたが,不動産価格の低下によって,同融資当時には同物件から上記債権を回収することはできなくなっていた。しかるに, 億7000万円の債権を有し,これを担保するものとして高槻物件上に2番根抵当権を有していたが,不動産価格の低下によって,同融資当時には同物件から上記債権を回収することはできなくなっていた。しかるに,本件綜合ハウジング融資を実行したことによって,脱退原告が高槻物件上に1番根抵当権(極度額35億円)の設定を受けることになった。 そして,本件綜合ハウジング融資当時,高槻プロジェクトを遂行した場合最終的に19ないし20億円程度の赤字となることが予測されたから,同額から上記7億7000万円を控除した12ないし13億円が予見された回収不能分すなわち損害である。 (被告A2の主張)(被告A1の主張)(1)のとおり,争う。 4 争点(4)(幸和不動産案件に関する具体的法令違反又は善管注意義務違反・忠実義務違反)について(原告の主張)(1) 金融機関の取締役の善管注意義務・忠実義務前記1(原告の主張)(1)と同じ。 (2) 幸和不動産の経営状況ア山手台開発事業の頓挫平成2年ころからのいわゆるバブル経済の崩壊と共に地価は下落の一途をたどり,平成5年に第1工区の販売を開始するころには,販売価額は当初の販売見込価額坪当たり160万円を大幅に下回る坪当たり約105万円に下落した。 その後も地価は下落を続け,景気低迷により宅地需要も低下の一途をたどり,加えて平成7年の阪神大震災の影響により,その売れ行きは急速に落ち込み,営業収支は単年度で黒字計上することは一度もなく,同社は膨大な不動産在庫を抱えることとなった。 その結果,平成5年以降の単年度の営業収入は大幅な赤字で推移し,平成8年の時点ではもはや再建が不可能なほどの債務超過状態に陥っていることは明らかな状態であった。 イ他行の融資打ち切り幸和不動産は,平成7年12月の大和銀行からの借入れを最後に,脱退原 推移し,平成8年の時点ではもはや再建が不可能なほどの債務超過状態に陥っていることは明らかな状態であった。 イ他行の融資打ち切り幸和不動産は,平成7年12月の大和銀行からの借入れを最後に,脱退原告以外の金融機関からの借入れは事実上打ち切られるに至った(なお,平成8年1月に京都共栄銀行から,平成9年2月に福寿信用組合からそれぞれ貸付けを受けているが,これらは脱退原告と密接なつながりを有する金融機関である。)。 ウ大蔵省からの検査結果の通知平成8年3月19日,大蔵省から,脱退原告に対して,平成7年8月に実施した検査の結果が通知された。 その検査報告書においては,幸和不動産について,巨額の資金を投じて進めてきた大規模プロジェクトの超長期化により資金繰りが逼迫していることから,脱退原告が元利返済資金を支援しなければならない状態に陥っているが,その融資残高は同一人に対する信用供与の限度に近い状態となっているなど,極めて慎重な管理が必要となっていることなどが指摘されており,被告らはこれに目を通した。 エ幸和不動産に対する債権保全の動き興銀が,脱退原告及び幸和不動産に対して,平成9年1月16日,幸和不動産を債務者とする登記留保の状態にあった根抵当権について登記手続を実行したいと通知するなど,他の金融機関が幸和不動産に対する債権保全の手段に乗り出してきた。 オ脱退原告及び幸和不動産内部における同社の評価(ア) 幸和不動産は,平成7年5月には,その財政状態及び市況の悪化等から,自社が必ず破綻すると考えるに至っていた。そして,幸和不動産の幹部は,平成7年5月及び6月の資金繰り会議において,被告A1ら脱退原告の幹部に対して,幸和不動産の現状及びこれに対して考えられる対策がいずれも見込みの極めて薄いものである旨の報告をしたので,被告A1は,遅く 7年5月及び6月の資金繰り会議において,被告A1ら脱退原告の幹部に対して,幸和不動産の現状及びこれに対して考えられる対策がいずれも見込みの極めて薄いものである旨の報告をしたので,被告A1は,遅くともこのころまでには,同社が破綻状態にあることを認識していた。 (イ) 平成8年7月1日,脱退原告において,幸和不動産の破綻状態に対する善後策を検討する会議が開催され,Kが,いずれにしても幸和不動産の破綻は避けられないとの現状認識を記載した書面を被告A1らに配布した。 (ウ) 被告A1は,平成8年8月中頃,阪急電鉄株式会社に対し,幸和不動産の売却を打診したが,断られた。被告A1は,その後,東京ファイナンス,伊藤忠ファイナンス株式会社及び株式会社大林組等に対し,開発済みの宅地の一括売却を提案したが,断られた。 (エ) Iは,平成8年11月27日,被告A2に対し,幸和不動産の破綻状況及び山手台開発事業が失敗であることを詳細に説明した。 また,Iは,平成8年12月17日,被告ら及びBに対し,幸和不動産とコーエークレジットとの合併のシミュレーションを説明したが,その後,合併は無理であるとの結論が出た。 (オ) 平成8年12月22日,被告ら,B,幸和不動産の幹部並びに脱退原告の顧問弁護士であったL及びMが集まって,同社の今後の対処法を検討した。その結果,更生手続開始申立てを考えるべきであること,できる限り速やかに整理を行わなければ脱退原告の損害がますます拡大するという方向性が出て,出席者の共通認識となった。 脱退原告及び幸和不動産は,平成9年1月8日,弁護士に法的整理手続の申立てについて相談し,これを検討した上で,会社更生法が望ましいとの結論に達した。脱退原告内で資料として作成されたと考えられる同日付けの「あらかん分析表」では,幸和不動産の総合評価は「自己資 手続の申立てについて相談し,これを検討した上で,会社更生法が望ましいとの結論に達した。脱退原告内で資料として作成されたと考えられる同日付けの「あらかん分析表」では,幸和不動産の総合評価は「自己資本脆弱,金利負担過重で復元力を欠き,資金繰り極めて危険!このままでは経営破綻に陥る可能性がある。」と記載されている。 (3) 脱退原告の経営状況平成8年当時,脱退原告の経営状況は極度に悪化していた。 (4) 幸和不動産に対する担保の取得状況ア脱退原告が山手台物件上に有していた根抵当権は,旧担保協定及び新担保協定によって最下位とされており,その担保価値は無きに等しかった。 イ脱退原告は,本件幸和不動産融資に際して,増担保などの債権保全措置を全く講じていなかった。 (5) 経営判断の原則被告らは,本件幸和不動産融資について,いわゆる経営判断の原則によって注意義務違反による損害賠償責任を負わない旨争うので,反論する。 ア経営判断の原則の適用要件前記1(原告の主張)(5)アと同じ。 イ利益相反の存在前記1(原告の主張)(5)イと同じ。 ウ判断過程の違法性(ア) 商法265条,銀行法14条違反前記1(原告の主張)(5)ウ(イ)と同じ。 (イ) 銀行法13条違反前記1(原告の主張)(5)ウ(ウ)と同じ。 エ判断過程の不合理性前記1(原告の主張)(5)エと同じ。 オ判断内容の不合理性(ア) 本件幸和不動産融資の必要性の不存在被告A1は,脱退原告が本件幸和不動産融資を行わなければ,脱退原告の信用が失われ,取付け騒ぎが起こり,銀行間の取引が困難となり,破綻する可能性が高かったなどと主張する。 しかしながら,本件幸和不動産融資当時,脱退原告が破綻するおそれがあったとすれば,その原因は脱退原告の財務状況が悪化していたことにこそ求められるべきであっ 破綻する可能性が高かったなどと主張する。 しかしながら,本件幸和不動産融資当時,脱退原告が破綻するおそれがあったとすれば,その原因は脱退原告の財務状況が悪化していたことにこそ求められるべきであって,本件幸和不動産融資を実行しないことは,そのような財務状況を表面化させる一要因となり得たにすぎない。 (イ) 幸和不動産については,脱退原告は,平成8年3月に示達された大蔵省の検査結果においても,既に融資残高が「同一人に対する信用供与」の限度額に近い状態になっており,極めて慎重な管理が必要であるとの指摘を受けていた。しかも,幸和不動産は,平成8年後半ころからは,他の金融機関から債権の保全や回収を求められるなど,経営破綻が懸念される状態にあった。 したがって,被告らは,遅くともこのころまでには早急に幸和不動産の最終処理を検討すべき注意義務を負っていたものである。 (ウ) 被告らは,平成9年1月ころから幸和不動産の倒産処理の検討を開始した旨を主張するが,どの程度具体的な検討をしたのかは,相当に疑問というべきである。そして,被告らは,同年7月,幸和不動産の法的処理を断念し,平成11年5月ころまでの間,同社の処理方針を何ら決定せず,融資だけを継続した。系列会社に対する救済融資は,系列会社の清算あるいは再建のスキームの枠組みの中で実施されるべきものであるが,本件幸和不動産融資は,幸和不動産の清算あるいは再建の計画を立てないまま,問題の先送りをするためだけに行われていた。 (エ) 幸和不動産は,平成11年に木村産業株式会社(以下「木村産業」という。)との間の不動産取引によって約30億円の利益を計上したが,この取引は,脱退原告から幸和不動産への融資について銀行法13条による貸出限度額を超え,同社が資金繰りできなくなり破綻が表面化する事態となったため,同社 産取引によって約30億円の利益を計上したが,この取引は,脱退原告から幸和不動産への融資について銀行法13条による貸出限度額を超え,同社が資金繰りできなくなり破綻が表面化する事態となったため,同社に益出しさせる目的でされたものである。 具体的には,幸和不動産及びハッピークレジットが,木村産業が所有していたマンション47棟を合計約120億円で買い取り,これを直ちに設立早々の実績の少ないペーパー会社4社に対して約180億円で売り渡し,脱退原告は,上記ペーパー会社4社に対し,買取代金及び費用に運転資金を加えた210億円を融資するという取引であり,背任のおそれも指摘されるような極めて危険性の高い特異な取引であった。 したがって,幸和不動産がその後もこのような取引によって継続的に収益を上げることは不可能であり,当分借入れを行わなくてもよい状態にまで再建されたといえる状態では到底なかった。 カ母体行責任論について前記1(原告の主張)(5)カのとおり,母体行責任の妥当範囲には限界がある。また,本件幸和不動産融資の前に,金融機関の自己責任の原則に基づく早期是正措置や自己査定制度が導入されることが決まっていたことからも,平成7年当時以上に,従前のいわゆる護送船団方式・母体行責任の考え方は変わりつつあった。 キ経営判断の原則の適用基準前記1(原告の主張)(5)キと同じ。 (6) 被告らの責任原因ア被告らは,脱退原告において毎月開催される報告会で翌月の資金繰り及び必要とされる資金額等の報告を受けていた。 イ被告らは,いずれも本件幸和不動産融資を決裁した。 ウ前記(2)から(4)までの諸事情を総合すれば,被告らは,遅くとも平成8年の時点では,幸和不動産に対する新規貸付けを中止する義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,平成9年2月以降も,本件幸和 前記(2)から(4)までの諸事情を総合すれば,被告らは,遅くとも平成8年の時点では,幸和不動産に対する新規貸付けを中止する義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,平成9年2月以降も,本件幸和不動産融資を決裁し,実行させた。 エ本件幸和不動産融資は,前記(5)ウ(ア),(イ)のとおり,商法265条,銀行法13条,14条に違反する。 オしたがって,被告らは,いずれも本件幸和不動産融資について,商法266条1項5号に基づいて損害を賠償する責任がある。 (被告A1の主張)原告主張の注意義務については,一般論としてそのような注意義務があることは認めるが,取締役が金融機関としての業務の健全かつ適切な運営の確保に努め,銀行に損害を加えることのないよう誠実にその職務を遂行するに当たって果たすべき注意義務はそれに尽きるものではない。 (1) 経営判断の原則前記1(被告A1の主張)(1)と同じ。 (2) 経営判断の前提事実の認識に不注意な誤りがない。 ア被告A1は,幸和不動産の経営又は資産の状況等について,十分に把握していた。 (ア) 脱退原告は,幸和不動産に対する融資については,昭和50年以前から,同社への入金のすべてを1度脱退原告に渡した上で,脱退原告が幸和不動産に対して改めて必要額を貸し付けるという,いわゆる「ゼロバランス方式」をとり,その収支を完全に管理下に置いて,同社の財務状況を把握していた。 (イ) 幸和不動産の従業員及び大半の役員は,脱退原告からの出向者であり,幸和不動産は,「幸福銀行・幸和不動産支店」と言われるほど,互いに情報を共有していた。 また,被告A1は,毎月の定例報告において,担当者から,予測資料に基づく幸和不動産の経営状態及び将来についての見通しについて詳細に報告・説明を受け,同社の状況を正確に把握していた。 (ウ) いた。 また,被告A1は,毎月の定例報告において,担当者から,予測資料に基づく幸和不動産の経営状態及び将来についての見通しについて詳細に報告・説明を受け,同社の状況を正確に把握していた。 (ウ) 被告A1は,当時社会において依然根強く母体行責任が要請されていたこと,平成9年ころには取付け騒ぎ等を生じさせて破綻したり,母体行責任を果たさなかった結果業務停止命令を受ける金融機関が存在していたこと,近畿財務局等担当官庁が即時幸和不動産を破綻させるべきではないと考え,その旨同被告にアドバイスしていたこと,山手台開発事業に関しては,本件基本協定の関係で事業から撤退すれば莫大な損害が発生すること,同社を倒産させた場合,同社に多額の融資を行っていた興銀をはじめとする幸和不動産の債権者が脱退原告に対して報復的行為をとると推測される発言を繰り返していたことなど,脱退原告及びそのグループ企業を取り巻く情勢についても熟知していた。 イ本件幸和不動産融資について,決定過程に関する手続違反などはおよそ認め難い。むしろ,関連事業部以外の融資に精通した脱退原告内部の人間の審査を経て,脱退原告の顧問弁護士の意見も聞きながら融資の継続を判断しており,通常よりも慎重に融資継続の可否が決定されたものである。 (ア) 被告A1をはじめとする脱退原告及び幸和不動産の関係者は,平成8年12月末ころの段階で,同社に対して何らかの対策を施さなければならないと考え,同月22日,脱退原告の顧問弁護士であったLを交えて協議を行った。その際には,更生手続開始申立てについても話が出たが,専らその手続のみについて議論していたものではなく,申立ての方針を決定したものではなかった。 (イ) Lの意見の最も重要な点は,各債権者との関係で「信義を守る」ということであった。すなわち,脱退原告にとっては 続のみについて議論していたものではなく,申立ての方針を決定したものではなかった。 (イ) Lの意見の最も重要な点は,各債権者との関係で「信義を守る」ということであった。すなわち,脱退原告にとっては,銀行間の信頼関係を維持することが最も重要であり,更生手続開始申立てをせざるを得ない場合であっても,脱退原告を信頼して担保権設定登記を留保していた各債権者に対しては,申立て前に登記手続をすることが最低限必要であるということであった。そうであるならば,その前提として,日建エンジニアリングとの関係の問題を処理しなければならなかった。すなわち,日建エンジニアリングが山手台開発事業の関連土地の5パーセントを所有していたが,開発許可手続との関係で所有権移転登記がされていなかった。そのため,日建エンジニアリングへの所有権移転登記を銀行等への担保権設定仮登記に先行させる必要があったが,日建エンジニアリングは,自らへの所有権移転登記を拒否し,同社の取得価格でその持分を買い取るようにと要求をしていたのである。 (ウ) 被告A1らは,日建エンジニアリング及び阪急不動産らとの交渉を開始して以後も,更生手続開始申立てというドラスティックな方法で実質的な子会社である幸和不動産を法的に整理したのでは脱退原告に与える悪影響が大きすぎるのではないかと考え,もっと良い方法はないかと苦慮しつつ対応していた。そのため,いったんは新会社設立案が提案され,その検討も続けていた。 (エ) 平成9年7月8日以降,関連事業部外の被告A2らが幸和不動産の処理方針について検討することになったが,ここでも,登記留保の問題を解決しないままにいきなり同社について更生手続開始を申し立てた場合,各債権者に対する著しい背信行為であり,ひいては脱退原告の存亡に関わるとして,即時の申立てをすべきではなく, でも,登記留保の問題を解決しないままにいきなり同社について更生手続開始を申し立てた場合,各債権者に対する著しい背信行為であり,ひいては脱退原告の存亡に関わるとして,即時の申立てをすべきではなく,当面融資を続けざるを得ないと結論づけられた。 (オ) そのような状況において,被告A1をはじめとする脱退原告及び幸和不動産の担当者は,粘り強く日建エンジニアリング等の関係者との交渉を行い,また,被告A1自身が,その都度経営者としての判断を行って,ようやく平成9年9月末,日建エンジニアリングの有していた共有持分の処理と各銀行等に対する根抵当権の仮登記を終えることができたわけである。 (3) 経営判断の過程が著しく不合理ではない。 本件幸和不動産融資は,脱退原告の信用を維持するという,融資をしないことによって確保できる利益に優越する利益のためにされたものであり,それ以外の具体的選択肢は存在しなかった。 ア脱退原告の信用確保(母体行責任)(ア) 銀行にとって,信用は,最優先で守らなければならない利益である。 当時の国・大蔵省の方針は,いわゆる「護送船団方式」に基づいて基本的に銀行は潰さないというものであった。しかし,信用不安情報が相次ぎ,取付け騒ぎが起こって資金繰りに窮することがあれば銀行の破綻もあり得たので,取付け騒ぎは銀行にとって最も恐ろしい出来事とされていた。 (イ) 本件幸和不動産融資当時,母体行主義は維持されていた。 (ウ) 幸和不動産を含む関連企業は,脱退原告を中心に運用され,相互に協力し補完し合う関係にあった。したがって,幸和不動産の経済的信用の確保は,同時に脱退原告の経済的信用の確保を意味した。 昭和40年代初頭に立ち上げられた山手台開発事業に,阪急不動産や他の銀行が関与してくるのも,この信用が存したからである。また,脱退原告が,融資金 保は,同時に脱退原告の経済的信用の確保を意味した。 昭和40年代初頭に立ち上げられた山手台開発事業に,阪急不動産や他の銀行が関与してくるのも,この信用が存したからである。また,脱退原告が,融資金融機関の幹事役となったのも,この信用が前提となっており,母体行責任の当然のあらわれであった。 (エ) 山手台開発事業に関する他行からの借入れについて,根抵当権又は抵当権の設定仮登記が留保されていたことから,更生手続開始申立てに先立ち,その登記手続を行う必要があった。これは,顧問弁護士の意見でもあった。仮に,上記登記手続をせずに更生手続開始申立てをした場合,脱退原告の信用が失墜するとともに,幸和不動産に対して融資していた各銀行が幸福銀行グループに対する援助を一切行わなくなり,脱退原告に対しても短期金融市場における融資を拒否し,早晩同グループ全体が窮地に立たされることは必定であった。 (オ) 脱退原告が幸和不動産に対して行っていた月々の融資を止めれば,同社の資金繰りが詰まって返済が滞ることは明らかであった。そして,幸和不動産が脱退原告の実質的な子会社であることは,周知の事実であったから,興銀等幸和不動産の債権者が幸福銀行グループの会社に対して強硬な手段に出て,その結果脱退原告をはじめ幸福銀行グループ全体が多大な悪影響を被る状況にあった。債権者銀行は,脱退原告に対して根抵当権設定登記に関する覚書を要求したり,登記手続完了後は幸和不動産ではなく脱退原告と交渉するなど,幸和不動産に関する問題を脱退原告ないし幸福銀行グループの問題と捉え,脱退原告の対応次第によっては報復的措置をとることを明確に示していた。 (カ) 平成9年ころには脱退原告も一定の不良債権を抱えていたし,幸福総合リースのように償却中の大口債権もあった。また,脱退原告は,平成9年4月22日 ては報復的措置をとることを明確に示していた。 (カ) 平成9年ころには脱退原告も一定の不良債権を抱えていたし,幸福総合リースのように償却中の大口債権もあった。また,脱退原告は,平成9年4月22日発売の専門紙等で経営不安説を執拗に報道されるようになっていた。したがって,脱退原告の実質的な子会社が倒産したということが世間に知れればマスコミが面白おかしく取り上げることは必定であった。そのようなことになると,脱退原告の信用が失墜して取付け騒ぎが起こり,銀行間の資金繰りにも支障をきたし,脱退原告の存立そのものの危機が生じかねないと予見された。現に,マスコミの報道によって取付け騒ぎが生じた例もあり,平成8年11月,阪和銀行に業務停止命令が出されていた。 イ山手台開発事業を中止した場合の莫大な損害山手台開発事業に関しては,平成5年4月29日の段階で,販売用宅地410区画が完成し,既に販売が開始されていた。 本件基本協定14条では,幸和不動産が山手台開発事業から撤退した場合,同社は阪急不動産に対して,損害賠償義務の代物弁済として山手台物件の持分権を譲渡するほか,これ以外に同社が被った損害金の一切を弁済するものとされていた。 したがって,山手台開発事業から撤退すれば,幸福銀行グループとしての損害額が更に増大するという関係にあった。 ウ Bは,平成8年12月23日,被告A1からの依頼で,Kとともに,個人的に親しかった日本銀行のNを訪ね,幸和不動産の処理に関する相談をした。Nは,その際,「幸和はⅡ分類が望ましい。」と述べ,幸和不動産の整理に当たっては,興銀,長銀,日債銀等の事前了解をとるべきであるとアドバイスした。さらに,整理の具体的な相談は,3月に各行の決算処理等があって忙しいため,1月下旬か2月初旬に行うのが望ましいが,4月以降であればいつでもよいと ,日債銀等の事前了解をとるべきであるとアドバイスした。さらに,整理の具体的な相談は,3月に各行の決算処理等があって忙しいため,1月下旬か2月初旬に行うのが望ましいが,4月以降であればいつでもよいと述べるなど,急いで処理する必要性のない旨示唆した。 エ平成9年1月以降同年9月ころまでの経営判断(ア) 平成9年1月の状況脱退原告及び幸和不動産の担当者らは,信頼できる外部者の意見を重視し,平成9年になると,幸和不動産に対する融資の継続の可否も含めた同社の今後の処理方針について打合せを行うため,頻繁に(1月だけで4回)Lの法律事務所を訪れた。Lは,打合せの場において,幸和不動産について更生手続開始申立てをせざるを得ないだろうと見通しを述べつつ,その場合であっても,申立て前に,根抵当権等の設定契約による設定登記を完了することが必要であり,その前提として日建エンジニアリングの持分を登記せざるを得ないことを繰り返し指摘した。 (イ) 平成9年2月の状況a 平成9年2月25日,脱退原告及び幸和不動産の担当者の会議が行われた。この会議には,被告A1らの独断で誤った判断がされないように,L並びに脱退原告及び幸和不動産以外の者も参加した。 この場では,Lが,幸和不動産の処理方針についてのいくつかの可能性を示した後,最終的には更生手続開始申立てをせざるを得ないだろうとの見通しを示した。そして,Lは,その場合でも,脱退原告を信用して登記留保に応じた各債権者銀行に対して絶対に担保権の仮登記を行う必要がある,その前提として,日建エンジニアリングへの共有持分の移転登記を行うべきであると述べた。 b また,同日,脱退原告と阪急不動産との間で協議がされた。阪急不動産は,興銀等が幸和不動産に対し担保の仮登記をせよと強く迫っていることを懸案事項と考えている旨を表明した を行うべきであると述べた。 b また,同日,脱退原告と阪急不動産との間で協議がされた。阪急不動産は,興銀等が幸和不動産に対し担保の仮登記をせよと強く迫っていることを懸案事項と考えている旨を表明した。そして,阪急不動産は,幸和不動産に対し,再度,本件基本協定14条を守り,担保権を設定しないよう強く要請した。このころには,既に,興銀や阪急不動産が,幸和不動産ではなく,脱退原告自体を折衝当事者として扱っていた。 c さらに,Iは,山手台物件を買い受けた上で負債も債務引受して事業を引き継ぐ新会社を設立し,山手台開発事業を承継させ,他方,幸福銀行グループからの借入金や同グループによる保証債務の履行に基づく求償権分の負担だけを残した幸和不動産については,時期を見て清算するというよりソフトな処理の方法を自発的に考え出した。脱退原告とグループを含めた損失処理の金額が変わらないのであれば,「会社を潰す」という方法をとるより,脱退原告主導でその損失負担のもと,幸和不動産を「再建し事業を継続する」という形を世間に示す方が,世間ひいては預金者に対する印象がよいのではないかと考えたのである。 Iは,平成9年2月24日,F及びKに対してのみ,上記処理案を提案した。ただ,KがIに対して本格的に検討するよう指示を出したのは,同年4月に入ったころである。 (ウ) 平成9年3月の状況被告A1は,平成9年3月4日,日本銀行大阪支店及び近畿財務局に対し,幸和不動産の現状を報告し,相談を行い,財務局から後記カのとおりの指摘を受けた。 (エ) 平成9年4月の状況平成9年4月に入って,同月9日には興銀の担当者が来訪し,日建エンジニアリングとの交渉について質問をし,協定行と協議する要請をするなど,幸和不動産の債権者である各銀行の対応が一層硬化し,脱退原告は対応に苦慮していた。 同月9日には興銀の担当者が来訪し,日建エンジニアリングとの交渉について質問をし,協定行と協議する要請をするなど,幸和不動産の債権者である各銀行の対応が一層硬化し,脱退原告は対応に苦慮していた。 また,この間,幸和不動産は,日建エンジニアリングと交渉を続けたが,同社は持分移転登記を拒否し,取得価格で持分を買い取るよう要求してきた。さらに,阪急不動産との交渉も難航していた。 このように,幸和不動産の処理を誤れば,幸福銀行グループ全体に多大な悪影響が生じることが一層明らかな状況に至ったため,平成9年4月22日,更生手続開始申立てという強硬な形での法的整理ではなく,主として新会社設立によって処理する方針を検討していくという方針が確認された。 (オ) 平成9年7月の状況Iは,平成9年4月に決定された営業譲渡方式による新会社設立案の大枠に基づいて,7月4日,「経営改善計画」をまとめ,提示した。 しかし,被告A2が,同月8日の会議において,上記新会社設立案に対して強硬に異議を述べたため,同被告において幸和不動産の処理方針を検討することになった。 そして,被告A2が,管理部出身のO及び同人の部下であったPに処理策の検討を行わせたところ,その結論は,「突如の更生手続開始の申立ては,各債権者に対する著しい背信行為であり,そのことが,ひいては銀行の存亡に関わる」ため,会社更生法で即時法的整理することはしない旨決定するというものであった。 Lは,上記結論について説明を受け,債権者の了解を得るために追加の担保を設定し,譲歩を求めるのは良い考えであるとの判断を示した。 オ平成9年10月以降の経営判断平成9年9月30日に,懸案であった興銀はじめ幸和不動産の債権者銀行に対する根抵当権の仮登記手続がようやく終了した。しかし,その後即座に幸和不動産の法的整理に着手し得 平成9年10月以降の経営判断平成9年9月30日に,懸案であった興銀はじめ幸和不動産の債権者銀行に対する根抵当権の仮登記手続がようやく終了した。しかし,その後即座に幸和不動産の法的整理に着手し得る状況にはなかった。なぜなら,法的整理の措置をとると,幸和不動産の他の債権者から登記について否認の主張をされるおそれがあったからである。被告A1も,顧問弁護士からこの旨聞いて認識していた。また,この時期においても,脱退原告に対する再建計画提出の要請等は強く,その要請をまったく無視することも困難な状況であった。そして,何よりも当時の金融情勢は,到底安易に実質的子会社を整理できる状況ではなくなってきており,被告A1の判断としても,このことをまずもって何よりも考慮しなければならない状況になっていた。 (ア) 金融業界の状況平成9年11月3日,経営破綻した三洋証券株式会社に対する無担保コール10億円がデフォルト(債務不履行)になったことを契機として,株式会社北海道拓殖銀行が同月16日に,山一證券株式会社が同月24日に,いずれも資金繰りがつかなくなる形で破綻した。これにより,大蔵省がかねて公言していた「大銀行は潰さない」という公約が事実上反古となり,取引銀行が現実に潰れるかも知れないという動揺が,世間一般にも広範に広がった。 (イ) 脱退原告の信用不安脱退原告は,平成9年10月14日,京都共栄銀行から営業譲渡を受けることを発表したことから,マスコミに最も露出度の高い銀行の一つとなっていた。 このような状況から,平成9年秋以降,被告A1は,何かあれば大規模な預金流出が発生し,資金繰りに詰まるという危険性にさらされた状態での銀行経営を余儀なくされた。この時,幸和不動産について慎重な対応をしなければ,マスコミに格好の材料を提供することとなり,脱退原告の資 預金流出が発生し,資金繰りに詰まるという危険性にさらされた状態での銀行経営を余儀なくされた。この時,幸和不動産について慎重な対応をしなければ,マスコミに格好の材料を提供することとなり,脱退原告の資金繰りがつかなくなるということは,あまりに明らかなことであった。幸和不動産については,即時整理ではなく,できる限り存続させる必要が生じたのである。 (ウ) 幸和不動産の経営状態の回復脱退原告は,平成10年1月,幸和不動産にGを出向させた。同人は,同年2月に代表取締役副社長,同年12月には代表取締役社長に就任した。 Gは,山手台開発事業の対象用地に関して阪急不動産との交渉を自ら行い,単独所有化や販売価格の引下げを成功させた。また,他の事業も成功させ,30億円以上の利益を上げるに至った。さらに,債権者である銀行との交渉によって,利率の引下げにも成功した。 このようなGの努力により,平成10年4月以降は脱退原告からの借入額よりも返済した金額の方が多い月が頻繁に生じ,同年半ばには脱退原告からほとんど借入れをしなくても足りるようになった。そして,平成11年には,不動産取引による約30億円の利益によって,脱退原告への返済額が借入額を上回ることなった。 Gによる収益マンションの転売による利益は,けうな事例ではなく,Gがその方針を進めていく限り,以後も定期的に見込める仕事であった。 (エ) 前記(ア)の金融業界全体の危機的状況に加え,脱退原告には前記(イ)の事情もあったことから,幸和不動産を法的に整理することは,直ちに脱退原告を崩壊させることを意味すると考えられた。他方,前記(ウ)のとおり,幸和不動産の経営状態は,一定期間同社を存続させるという被告らの経営判断に応え得るものであった。 そこで,被告A1は,脱退原告の信用を維持するため,本件幸和不動産融資を継 他方,前記(ウ)のとおり,幸和不動産の経営状態は,一定期間同社を存続させるという被告らの経営判断に応え得るものであった。 そこで,被告A1は,脱退原告の信用を維持するため,本件幸和不動産融資を継続したものである。 カ監督庁の判断銀行は,平成9年ころ,大蔵省の意向を最も重視していた。 被告A1は,平成9年3月4日,日本銀行大阪支店及び近畿財務局に対し,幸和不動産の現状を報告し,相談を行った。被告A1は,その際も,「社会的に表面化しない方法で処理したいと考えておりますが」と述べており,脱退原告側では会社更生によって処理すると決めていたわけではなかった。 これに対して,財務局は,「先ず再建計画をはっきり建てることである」「その後他行に支援を求めるべきである,しかもその各行への申し出の時期は十分に考えないといけない」「仮に法的整理を検討するにしても,その前に再建の可否をはっきり見極めなければならない」と指摘した。すなわち,脱退原告及び近畿財務局とも即時の更生手続開始申立て等を念頭には置いていなかった。 また,財務局は,幸和不動産の処理が脱退原告及び幸福銀行グループ全体に影響することを強く意識している。さらに,財務局は,処理方針を誤れば,例えば報道のされ方次第では,脱退原告の信用失墜の危険があることも指摘している。 したがって,財務局は,これらへの対応が完了していない間に法的処理をすべきではないという判断を行っていたものである。それらの作業を行っている過程において,脱退原告が幸和不動産に対し追加融資をせざるを得ないことは自明であった。 (被告A2の主張)被告A2は,一般論として,銀行の取締役として原告主張の適切な債権保全措置を講ずる義務に加え,「金融システムの安定と確保,そのための母体行責任を履行する義務」を負う。 被告A2は,職制上幸和不 張)被告A2は,一般論として,銀行の取締役として原告主張の適切な債権保全措置を講ずる義務に加え,「金融システムの安定と確保,そのための母体行責任を履行する義務」を負う。 被告A2は,職制上幸和不動産の財務や経営の状況には全く関与しておらず,含み損があるという以外の詳細は知らなかった。幸和不動産融資についても,被告A1,Bら関係者が協議の上決定したもので,被告A2は平成9年7月まではこの協議に参加しておらず,同年8月以降月1回の月例会に参加しただけで,協議の内容や経過についての詳細を知らないが,同被告は,慣例的に融資についての稟議に応否を示す押印をすることになっていた。 このような場合における被告A2の任務の範囲は,綜合ハウジング案件と同様,稟議書面において確認し得る事実を前提に,当該融資案件が明白に法令定款に違反しないか,又は,より良い稟議に修正できないかについて意見を述べるという点に限られる。 被告A2は,幸和不動産が所有する土地の含み損も予想され,融資金の回収は容易でなく,その一部が回収できなくなるかも知れないことは予測した。しかし,被告A2は,本件幸和不動産融資稟議に明白な法令定款違反はなく,かえって,同融資は,主として金融システム安定のための母体行責任に基づく大蔵省の金融行政に従って実行せざるを得ないし,それをあえてしなければ,脱退原告は,融資によって被るかも知れない損害をはるかに超える計り知れない損害を被るおそれがあるため,これを避けるためには融資はやむを得ないと判断してこの融資稟議を承認したもので,被告A2に善管注意義務違反及び忠実義務違反はない。 (1) 被告A2は,職制上本件幸和不動産融資の決定に参加せず,幸和不動産の財務経営の状況,融資決定に至った経緯や内容の詳細を知らない。 ア被告A2の脱退原告における地位前記 実義務違反はない。 (1) 被告A2は,職制上本件幸和不動産融資の決定に参加せず,幸和不動産の財務経営の状況,融資決定に至った経緯や内容の詳細を知らない。 ア被告A2の脱退原告における地位前記1(被告A2の主張)(1)アと同じ。 イ被告A2の本件幸和不動産融資についての関与の内容被告A1と同A2の地位及び職務分掌は大きく異なっている上,現実の業務内容も全く異なっており,同被告は幸和不動産の財務や経営の状況には全く関与していないし,その内容も,含み損があるとは聞いていたが,その詳細は知らず,本件幸和不動産融資についても,平成9年8月ころから月1回の月例会に出席するようになったことを除けば,被告A1,Bら関係者が協議の上決定したもので,被告A2はこの協議に参加していない。 ウ被告A2が本件幸和不動産融資を承認した経緯(ア) 被告A2は,平成8年12月22日の会議において,Kから,口頭で幸和不動産は300億円ないし400億円程度の含み損が見込まれるとの説明を受けた。そこで,被告A2は,各融資銀行に対して,更生手続開始申立てをするかも知れないというようなことをちらつかせて,幸和不動産の損失について応分の負担を求めてはどうかという意見を述べた。しかし,この意見は,脱退原告の信用を傷つけ,存続を危険にさらすのではないかというようなことから,関係者の同意を得ることができなかった。 (イ) 被告A2は,平成9年3月4日過ぎ,Kから,同人と被告A1が大蔵省に提出して了解を得たという書面を見せられた。被告A2は,その書面の記載から,幸和不動産は,他行に対し社会的に表面化しない方法で返済の猶予,金利の減免を受け,従来どおり脱退原告の支援の下に営業を継続することになったものと理解するとともに,①幸和不動産の含み損の処理については,時期を見て他行に対し 社会的に表面化しない方法で返済の猶予,金利の減免を受け,従来どおり脱退原告の支援の下に営業を継続することになったものと理解するとともに,①幸和不動産の含み損の処理については,時期を見て他行に対しても応分の負担を求めることによってもできるし,地価もいつまでもこのような続落状態は続かないだろうし,幸和不動産が山手台開発事業以外の部門で収益を上げることもでき,さらに,どうしても幸和不動産で損失を補填できないことになれば,その時点で,幸和不動産に対する債権放棄をすることによって損失を処理することが可能である,②幸和不動産を,社会的に表面化しない方法で他行に返済猶予及び金利減免を受けた上で,従来どおり支援するということは,脱退原告の大蔵省に対する約束事でもあるが,これを実行するためには,幸和不動産において売上げを伸ばして収入を増やし,工事費の支出を圧縮し,経費節減を図って支出を極力抑えることが重要であると判断した。 (ウ) 被告A2は,前記(イ)の大蔵省と脱退原告との協議の結果を踏まえ,その後の貸出稟議に際しては,Kに対し他行との返済猶予・金利減免交渉の経緯,売上げの増進,支出の削減等について突っ込んだ説明を求めた。Kは,返済猶予及び金利減免については「いや,難しいんです。」という程度の返答しかしなかったが,工事費の圧縮については,被告A1から,護岸工事や建設省から言われどうしてもしなければならないようなものなどに限定し,急がなくてもいい工事は後回しにするよう言われていると報告した。被告A2は,このように従来に比べより慎重に検討した上,本件幸和不動産融資を承認した。 (2) 本件幸和不動産融資は,銀行経営者に課せられている,金融システムの安定確保のための母体行責任に基づき,やむを得ないものであった。 本件幸和不動産融資のうち,幸和不動産に対す 融資を承認した。 (2) 本件幸和不動産融資は,銀行経営者に課せられている,金融システムの安定確保のための母体行責任に基づき,やむを得ないものであった。 本件幸和不動産融資のうち,幸和不動産に対する貸出増をきたすものは平成10年3月ころまでであって,同年4月以降は,同社の営業内容が著しく改善され,同社に対する貸出増はなく,反対に従前の融資を回収している。ただ,同年3月までの融資については,幸和不動産が含み損を抱えており,その回収は容易でなく,脱退原告にいくらかの損害を与えるおそれのあるものであったとしても,次のとおり,大蔵省の指示があったほか,金融システムの安定確保のための母体行責任に基づきやむを得ないとの経営判断に基づくものであって,この経営判断が不誠実で合理的な選択の範囲を外れたものとは認め難い。 ア本件幸和不動産融資当時は,本件綜合ハウジング融資当時と異なり,いわゆる金融3法が成立し,金融システム不安に対する初めての法整備がされたものの,その後も金融機関が相次いで破綻し,金融システム不安がますます強まっていた。そのため,従来以上に金融システム安定のための母体行責任が求められる一方,体力の衰退した金融機関は,母体行責任はあっても履行し得ない状況に追い込まれていた。 イ脱退原告は,破綻に至るまで,法律で要請されている自己資本比率4パーセントを維持していた。そのため,大蔵省は,脱退原告に対し,従来同様,母体行責任に基づき,幸福総合リース,綜合ハウジング及び幸和不動産等の損失負担を求めていた。 (3) 本件幸和不動産融資は,融資をしなければ,融資により被るかも知れない損害をはるかに超える計り知れない損害を受けるおそれがあるため,これを避けるための経営判断に基づくものであった。 ア本件幸和不動産融資によって脱退原告が受ける損害は,最大 融資により被るかも知れない損害をはるかに超える計り知れない損害を受けるおそれがあるため,これを避けるための経営判断に基づくものであった。 ア本件幸和不動産融資によって脱退原告が受ける損害は,最大でも,貸出金総額の増加分55億1270万円から,脱退原告が幸和不動産に対して負っておりいつでも相殺することのできた普通預金債務20億7200万円を控除した34億4070万円である。 イ脱退原告は,本件幸和不動産融資を実行しなければ,前記アの損害をはるかに超える計り知れない損害を受けるおそれがあった。その理由は,前記1(被告A2の主張)(3)イと同様である(信用を失う金融機関は,長期信用銀行及び多数の都市銀行に及ぶ。)。 ウしたがって,前記イの損害を避けるため,本件幸和不動産融資をやむを得ないとした被告A2の経営判断には,前記1(被告A2の主張)(3)ウのとおり,誤りがない。 5 争点(5)(幸和不動産案件に関する違法性阻却事由,過失,期待可能性)について(被告A1の主張)前記4(被告A1の主張)のとおり,本件幸和不動産融資の実行は,当時としては最良の手段であり,社会通念上も相当であった。 したがって,本件幸和不動産融資に違法性はない。また,被告A1に過失はなく,期待可能性もなかった。 (被告A2の主張)前記2(被告A2の主張)のとおり,被告A2は,主として金融システム安定のための母体行責任に基づく大蔵省の金融行政に従い,本件幸和不動産融資を実行せざるを得ないし,それをあえてしなければ,融資により被るかも知れない損害をはるかに超える計り知れない損害を被るおそれがあるため,これを避けるための経営判断に基づき,やむを得ず同融資を実行せざるを得ないと判断していたもので,善管注意義務違反等法令又は定款に違反するとの認識はなく,かつ,その認識がなか を被るおそれがあるため,これを避けるための経営判断に基づき,やむを得ず同融資を実行せざるを得ないと判断していたもので,善管注意義務違反等法令又は定款に違反するとの認識はなく,かつ,その認識がなかったことについての過失もない。 (原告の主張)争う。 6 争点(6)(幸和不動産案件の損害)について(原告の主張)(1) 平成9年1月31日時点の脱退原告の幸和不動産に対する貸付金総額は,161億5310万円であった。 (2) 平成11年5月21日時点の脱退原告の幸和不動産に対する貸付金総額は,242億0080万円であった。 (3) 脱退原告は,京都共栄銀行から,平成10年10月,幸和不動産に対する債権25億3500万円を譲り受けた。 (4) 以上より,平成9年2月1日から平成11年5月21日までの間,脱退原告の幸和不動産に対する貸付金は55億1270万円増加した。 (5) なお,本件幸和不動産融資とは関係のない資金約20億円が普通預金として残っていたとしても,これを損害から控除しなければならない理由は全くない。 (被告A1の主張)否認ないし争う。 (被告A2の主張)否認ないし争う。 脱退原告の損害は,原告主張の55億1270万円から,脱退原告が幸和不動産に対して負っておりいつでも相殺することのできた普通預金債務20億7200万円を控除した34億4070万円である。 第4 当裁判所の判断 1 前提事実前記第2の1の事実に,証拠(甲A6号証,7号証,甲B13号証,14号証の2,15号証の1,32号証の2,46号証の1,乙B13号証の2,11)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。 (1) 脱退原告の沿革等ア脱退原告は,大正15年7月2日設立された幸福無尽株式会社を前身とする。同社は,昭和18年2月ころ,紀伊無尽株式会社を吸収合併し 旨を総合すると,次の事実が認められる。 (1) 脱退原告の沿革等ア脱退原告は,大正15年7月2日設立された幸福無尽株式会社を前身とする。同社は,昭和18年2月ころ,紀伊無尽株式会社を吸収合併したが,この時,先代A1が,同社の株式の過半数を保有して事実上同社を経営しており,幸福無尽株式会社の株式も多数取得していた。その後,先代A1は,昭和23年ころまでに同社の株式をすべて取得するに至った。(甲B46号証の1,乙B13号証の2)イ脱退原告は,昭和26年10月に相互銀行の営業免許を受けて株式会社幸福相互銀行に商号変更し,さらに,平成元年2月に普通銀行に転換して商号変更した。 ウ脱退原告は,平成11年5月22日,金融機能の再生のための緊急措置に関する法律8条1項に基づき,金融再生委員会により,金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分を受け,同日付けで,金融整理管財人の管理下に置かれた。 エ脱退原告は,株式会社関西さわやか銀行に営業を全部譲渡し,平成13年3月30日解散した。 オ被告ら及びその親族が実質的に経営する脱退原告及びそのグループ会社について,昭和30年代ころまでは大一商店が中心となる会社であったが,昭和30年代後半から昭和40年代初めころ,脱退原告が中心たる地位を担うようになった(乙B13号証の2,11)。 (2) 脱退原告の株主構成ア脱退原告の平成7年3月31日当時の株主構成は,次のとおりであり,被告ら及びその親族並びに脱退原告の関連会社がすべて保有していた(甲B13号証,乙B13号証の2,11)。 (ア) 大一商店 6万1000株(15.00パーセント)(イ) 大阪化学合金株式会社(以下「大阪化学合金」という。)5万4000株(13.33パーセント)(ウ) 御殿 店 6万1000株(15.00パーセント)(イ) 大阪化学合金株式会社(以下「大阪化学合金」という。)5万4000株(13.33パーセント)(ウ) 御殿山土地建物株式会社 4万9000株(12.15パーセント)(エ) スカイ 4万8000株(11.88パーセント)(オ) 幸保産業株式会社(以下「幸保産業」という。)4万株 (10.00パーセント)(カ) 幸和不動産 3万4000株( 8.33パーセント)(キ) 幸栄不動産株式会社(以下「幸栄不動産」という。)1万9000株( 4.66パーセント)(ク) 株式会社豊島屋(以下「豊島屋」という。)1万7000株( 4.21パーセント)(ケ) 大一産業株式会社 1万2000株( 2.94パーセント)(コ) 被告A1 7000株( 1.92パーセント)(サ) その他 6万7000株(15.58パーセント)合計 40万8000株イ脱退原告は,平成8年3月29日,次の株主に次の株式数を割り当てる第三者割当ての方法で,普通額面株式(券面額1万円)6万株を1株当たり10万円の価額で発行し,うち30億円を資本に組み入れた(甲B13号証)。 (ア) コーエークレジット 2万株(イ) 大一商店 1万5000株(ウ) ハッピークレジット 1万5000株(エ) スカイ 5000株(オ) 東洋興産株式会社(以下「東洋興産」という。)1000株(カ) 大福産業株式会社 1000株(キ) 大一不動産株式会社( 5000株(オ) 東洋興産株式会社(以下「東洋興産」という。)1000株(カ) 大福産業株式会社 1000株(キ) 大一不動産株式会社(以下「大一不動産」という。)1000株(ク) 幸保産業 1000株(ケ) 幸福カード 1000株ウ脱退原告は,平成10年3月17日,次の株主に次の株式数を割り当てる第三者割当ての方法で,普通額面株式(券面額1万円)12万株を1株当たり5万円の価額で発行し,うち30億円を資本に組み入れた(甲B13号証)。 (ア) 大阪化学合金 2万5000株(イ) 大一商店 2万4200株(ウ) ハッピークレジット 2万2400株(エ) 幸栄不動産 2万1400株(オ) 大一不動産 1万0600株(カ) アイコス株式会社 5800株(キ) スカイ 3200株(ク) 豊島屋 2000株(ケ) 幸福カード 2000株(コ) 東洋興産 2000株(サ) 大幸商事株式会社 700株(シ) 新栄産業株式会社 700株エ脱退原告は,平成11年1月30日,次の株主に次の株式数を割り当てる第三者割当ての方法で,普通額面株式(券面額1万円)24万株を1株当たり2万5000円の価額で発行し,うち30億円を資本に組み入れた(甲B13号証)。 (ア) 大一不動産 4万株(イ) アイコス株式会社 4万株(ウ) 大一商店 3万2000株(エ) ハッピークレジット 3万2000株(オ) 幸栄不動産 2万 不動産 4万株(イ) アイコス株式会社 4万株(ウ) 大一商店 3万2000株(エ) ハッピークレジット 3万2000株(オ) 幸栄不動産 2万株(カ) 大阪化学合金 1万6000株(キ) 幸保産業 1万6000株(ク) 豊島屋 1万2000株(ケ) 幸福カード 1万2000株(コ) 東洋興産 1万2000株(サ) スカイ 4000株(シ) 大幸商事株式会社 4000株(3) 脱退原告の経営成績脱退原告の平成7年3月期から平成11年3月期までの経常収益,経常費用及び経常損益は次のとおりである(甲B13号証)。 ア平成7年3月期経常収益 1048億4843万5211円(うち貸出金利息786億7518万2392円)経常費用  994億9293万5665円(うち貸倒引当金繰入額40億3563万8935円貸出金償却7億8613万4341円)経常利益 53億5549万9546円イ平成8年3月期経常収益  957億1764万4615円(うち貸出金利息664億1392万0208円)経常費用  961億9308万3146円(うち貸倒引当金繰入額110億7499万5958円貸出金償却22億2614万7013円)経常損失 4億7543万8531円ウ平成9年3月期経常収益  767億8183万2810円(うち貸出金利息516億7872万6419円)経常費用 1063億8800万7147円(うち貸倒引当金繰入額353億7678万7054円貸出金償却41億4232万3507円)経常損失  296億0617万4337円エ平成10年3月期経常収益  663 8800万7147円(うち貸倒引当金繰入額353億7678万7054円貸出金償却41億4232万3507円)経常損失  296億0617万4337円エ平成10年3月期経常収益  663億0312万4055円(うち貸出金利息446億5512万3580円)経常費用  984億8142万5716円(うち貸倒引当金繰入額410億7848万6825円貸出金償却15億2003万1900円)経常損失  321億7830万1661円オ平成11年3月期経常収益  590億0717万9239円(うち貸出金利息419億3105万5457円)経常費用 2876億4591万3563円(うち貸倒引当金繰入額2210億4368万5685円貸出金償却12億6039万1999円)経常損失 2286億3873万4324円(4) 幸福総合リースの処理ア脱退原告は,関連会社である幸福総合リースを支援するため,次のとおり,平成7年3月期から平成11年3月期までの間,同社に対する債権合計343億円を放棄した(甲B15号証の1)。 (ア) 平成 7年3月期  15億円(イ) 平成 8年3月期 118億円(ウ) 平成 9年3月期 120億円(エ) 平成10年3月期  50億円(オ) 平成11年3月期  40億円イ脱退原告は,幸福総合リースを支援するため,次のとおり,平成6年3月期から平成8年3月期までの間,同社の債務者等に対し,合計267億5380万円の肩代わり融資を行った(甲B15号証の1)。 (ア) 平成 6年3月期 132億0050万円(イ) 平成 7年3月期  90億3400万円(ウ) 平成 8年3月期  45億1930万円ウ脱退原告は,幸福総合リースを支援するため,次のとおり,平成7年3月期から平成11年3月期までの間,同 イ) 平成 7年3月期  90億3400万円(ウ) 平成 8年3月期  45億1930万円ウ脱退原告は,幸福総合リースを支援するため,次のとおり,平成7年3月期から平成11年3月期までの間,同社の債権を代金合計63億0864万2754円で買い取った(甲B15号証の1)。 (ア) 平成 7年3月期  49億7600万円(イ) 平成 8年3月期 9億9170万円(ウ) 平成 9年3月期 5640万円(エ) 平成10年3月期 30万円(オ) 平成11年3月期 2億8424万2754円エ脱退原告は,前記アからウまでの幸福総合リースの支援に必要な資金を捻出するため,次のとおり,平成7年3月期から平成10年3月期までの間,その所有する不動産等を関連会社に売却して益出しをした(甲B14号証の2,32号証の2)。 (ア) 平成 7年3月期 106億9686万1810円(イ) 平成 8年3月期  99億3590万4640円(ウ) 平成 9年3月期  94億2422万5185円(エ) 平成10年3月期  10億1551万2693円(5) 大蔵省検査大蔵省大臣官房金融検査部は,平成7年8月18日現在で,脱退原告に対する検査を実施した。近畿財務局は,平成8年3月19日,脱退原告に対し,上記検査結果に基づく示達書及び検査報告書(写)を交付した。この検査報告書には,脱退原告の経営状況等に関して,次のようなことが記載されている。(甲A6号証以下「本件大蔵省検査」という。)ア要約(ア) 経営上の際立った特徴a 資産内容は,前回検査よりも更に悪化度合いを強め,分類額は倍増し,前回検査のⅡ分類債権の劣化などから,今回検査の欠損見込額は1241億円にのぼり,欠損見込率も5.79パーセントへと上昇し劣悪となっている。 b 損 検査よりも更に悪化度合いを強め,分類額は倍増し,前回検査のⅡ分類債権の劣化などから,今回検査の欠損見込額は1241億円にのぼり,欠損見込率も5.79パーセントへと上昇し劣悪となっている。 b 損益については,資産不計上未収利息の増加等から利益水準は総じて低下していることに加え,多額の債権償却と平成5年度から関連ノンバンクへの支援損を計上したため,一部店舗の関連会社への売却や有価証券売却による多額の益出しにより,経常利益及び当期利益を確保している。 しかし,収益予算達成のために,利息貸増しによる多額の貸出金利息収入の確保を行っており,これらを除外した実態の当期利益は,平成5年度は赤字に転落している。 c 自己資本比率については,平成4年3月末までは国内基準値未達(3. 53パーセント)となっていたが,増資によって平成5年3月末に4.09パーセントとしている。しかし,その後は,総資産量の伸び悩みもあって4パーセント台を辛うじて維持している状況となっている。 なお,今回検査の結果,多額の欠損見込額の発生により自己資本は大きく毀損されており,正味自己資本額はマイナス382億円と実態的には債務超過に陥っている。 d 関連会社については,幸福総合リースの営業貸付金の約7割が不良化しており,脱退原告不良債権の償却計画とあわせ,同社に対する支援計画を,平成5年度を初年度とする10年間の「長期改善計画」として策定し,債権放棄による多額の支援損の計上,営業貸付金の肩代わり等を余儀なくされている。 また,綜合ハウジングについても,プロジェクトの頓挫により実質的に経営破綻しており,さらに,幸和不動産についても,大規模プロジェクトの超長期化により資金繰りがひっ迫しているなど,脱退原告の支援負担は多大なものとなっている。 (イ) 主要留意事項a 融資姿勢の厳正 営破綻しており,さらに,幸和不動産についても,大規模プロジェクトの超長期化により資金繰りがひっ迫しているなど,脱退原告の支援負担は多大なものとなっている。 (イ) 主要留意事項a 融資姿勢の厳正化,審査管理の充実強化及び融資構造の改善(分類資産等の適切な管理を含む。)b 収益力の強化と不良資産の整理促進c 内部事務管理の徹底(不祥事件の未然防止を含む。)イ概況(ア) 資産内容今回検査時の総資産分類額は5514億円,分類率25.74パーセントで,前回検査時に比べ大幅な増加,上昇となっている。また,総資産の欠損見込額は,1241億円に上り,欠損見込率も5.79パーセントへと大幅に上昇しているなど,資産内容は劣悪となっている。 分類資産の大部分を占める貸出金についてみると,分類貸出金は1780先,5379億円で,分類率は30.07パーセントとなり,前回検査時に比べ,先数,金額,率ともほぼ倍増している。また,欠損見込額は1236億円,欠損見込率は6.91パーセントとなり,前回検査時に比べ大幅な増加,上昇となっている。 このように,貸出金内容が更に悪化し,特に多額の欠損見込額を抱えるに至った要因は,主として特定業種及び大口融資に偏重し,極度枠承認等による安易な融資により,審査管理が不十分なままバブル経済期に地価の上昇を見込み,時価額まで貸し込んだ業務運営のとがめが,長引く不動産不況の中で表面化したことにある。さらに,その後においても,融資量の確保を意識し,不良債権の実態把握・管理が不十分なまま,債務者と同様に不動産市況の好転を期待し,整理・回収への対応が立ち後れたことによるところも大きいと認められる。 分類貸出金については,前回検査のⅡ分類先の多くの債権が,今回検査ではⅢ・Ⅳ分類債権へと劣化していることが特徴的である。 さらに,直近の 収への対応が立ち後れたことによるところも大きいと認められる。 分類貸出金については,前回検査のⅡ分類先の多くの債権が,今回検査ではⅢ・Ⅳ分類債権へと劣化していることが特徴的である。 さらに,直近の管理債権の残高は(平成7年8月末)は,経営破綻先が166億円,金利棚上げ先等が251億円,6か月以上延滞先が1056億円となっており,破綻先が依然増加しているほか,6か月以上延滞先についても,利息貸増しや元本据置き等による表面的糊塗を考慮すれば,実質的には増加に歯止めがかかっていない状況にある。 一方,延滞先及び経営破綻先に対し,不動産業を中心にニューマネーの貸増しにより不動産開発案件の価値を高めて回収促進を行うこととしているが,経営者を含めた厳格な検討を行っていないことに加え,いわゆる「二次災害」による損失の拡大のおそれが見込まれる。 (イ) 損益収支金利低下局面が続いたにもかかわらず,高金利時期に積極的に取り入れた期日指定定期預金の金利負担や資産不計上未収利息の増加から,業務純益は総じて低調に推移している。 また,多額の債権償却と平成5年度から関連ノンバンクへの支援損を計上したことから,最近の2期は資産の益出しを余儀なくされており,特に,平成6年度には,一部店舗の関連会社への売却により多額の利益を捻出し,経常利益及び当期利益を確保している実態にある。 しかしながら,この間,不稼働債権の発生が続く中で年初の収益予算達成のために,利息貸増しによる貸出金利息収入の確保を行っている事例が多数多額に認められる。これらを除外した実態の業務純益及び経常利益は大幅に圧縮され,実質的な当期利益は,平成5年度は赤字に転落しており,極めて厳しい決算状況に陥っている。 (ウ) 関連会社関連会社等の管理は,従来の旧「融資第二部」から平成5年4月の機構改革により「 幅に圧縮され,実質的な当期利益は,平成5年度は赤字に転落しており,極めて厳しい決算状況に陥っている。 (ウ) 関連会社関連会社等の管理は,従来の旧「融資第二部」から平成5年4月の機構改革により「関連事業部」を設置し所管することとなったが,同部は融資権限を有しているものの,実態的には,経営から指示されたことを実行しているにすぎず,事実上審査不在となっていることから,今後,組織的な審査体制を構築する必要がある。 幸福総合リースに係る営業貸付金は約7割が不良化しており,損失見込額は脱退原告貸出金を大幅に上回っている。近年,新規の営業貸付けを停止しているが,債権放棄による多額の支援損の計上,金利免除,人件費負担を強いられているほか,営業貸付金の肩代わりや買取りの実行を余儀なくされている。 綜合ハウジングについても,プロジェクトの頓挫により実質経営破綻していることから欠損見込額が発生しているほか,他行借入金の肩代わりも余儀なくされている。 幸和不動産についても,他行からの調達を中心に巨額(約770億円)の資金を投じて進めてきた大規模プロジェクトの超長期化により資金繰りがひっ迫していることから,他行等に対して残高維持要請をするとともに,元利返済資金を脱退原告が支援しなければならない状況に陥っているが,脱退原告融資残高は「同一人に対する信用供与」の限度に近い状態となっているなど,極めて慎重な管理が必要となっている。 このように,幸福総合リースについては今後も多額の支援が必要となっているほか,綜合ハウジングについても脱退原告の支援を含めた早急な対応策の検討が必要であり,また,幸和不動産については問題が山積しているなど,脱退原告自身の経営状態が極めて厳しい状況にあることを勘案すると,経営に与える影響は極めて甚大なものとなっている。 ウ主要留意事項 が必要であり,また,幸和不動産については問題が山積しているなど,脱退原告自身の経営状態が極めて厳しい状況にあることを勘案すると,経営に与える影響は極めて甚大なものとなっている。 ウ主要留意事項(ア) 貸出金内容は大幅に悪化し,前回検査以降,多額の償却や株式会社共同債権買取機構を利用した売却損を計上しているにもかかわらず,多額の欠損見込額を含む巨額の分類貸出金の発生が認められる。 (イ) 不良債権続発の過程において,当面の収益を確保するために,回収見通しの検討も不十分なままに利息貸増し等の不適正な対応によって実質的な損失の先送りを行っている。 今後においては,多額に上る要償却資産と関連ノンバンク等への支援負担を抱える一方,根源的な収益である業務純益の縮小は必至であり,また,新たな補填財源も少ない状況にあることから,収益力は一段と弱体化し,今後の決算見通しは極めて深刻な事態に陥っている。 今回検査で判明した欠損見込額は脱退原告の実態認識を大幅に超え,また,今後発生が見込まれる未収利息も多額に上ることなどから,脱退原告がリストラ計画として作成している10年間の「長期利益計画」(平成5年度から平成14年度まで)については,既に達成困難な状況に立ち至っている。 (6) 日銀考査日本銀行は,平成8年1月末現在で,脱退原告に対する考査を実施した。日本銀行考査役は,同年8月14日,脱退原告に対し,上記考査の所見を交付した。この所見には,脱退原告の経営状況等に関して,次のようなことが記載されている。(甲A7号証)アはじめに不良資産の現状をみると,今後の自主再建の道程は相当な努力を要さざるを得ず,脱退原告の経営は「憂慮すべき状況」にあるといわざるを得ない。 イ不良債権の実態と審査管理面の問題点(ア) 査定結果a 与信調査の結果は次のとおりであ 自主再建の道程は相当な努力を要さざるを得ず,脱退原告の経営は「憂慮すべき状況」にあるといわざるを得ない。 イ不良債権の実態と審査管理面の問題点(ア) 査定結果a 与信調査の結果は次のとおりであるが,要注意与信額・同比率,要償却与信額・同比率はいずれも前回比大幅に増加,特に要償却与信は最悪の水準となっている。 (a) 要注意与信・簿外与信① 回収不能見込み合計 856億円② 回収疑問合計1017億円③ 固定見込み合計3771億円④ 要償却額合計1364億円(b) その他要注意資産① 回収不能見込み合計  12億円② 固定見込み合計  86億円③ 要償却額合計  12億円(c) 要注意与信比率 32.13パーセント要償却与信比率  7.76パーセントb 今後の問題は一にかかっていかに不良債権を回収し,また償却を進めていくかにあるが,含み益が薄いため償却財源を専ら期間収益に頼らざるを得ない事情にある。業務純益の水準をみると,平成7年度は表面的には218億円となっているものの,昨春以来止めたとされていた利息追貸しが引き続き行われ,今回調査した限りにおいてもその額は平成7年度で30億円近くに上っており,実勢の業務純益は100億円を下回っているのが実態である。今後,金利が引き続き横ばいで推移するという極めて楽観的な場合を想定しても,貸出金利の更改に伴う利ざや縮小から利益水準が急速に低下する可能性が高く,期間収益で不良債権の処理にめどをつけるまでには今後極めて長期にわたる年数を要すると見込まれる。 (イ) 融資管理面の問題脱退原告の関連会社向け与信に係る本部稟議をみると,本店営業部が関連会社提出の月次資金繰表に記載の資金をそのまま資金使途も鵜呑みのままで稟議を行っている。関連企業グループ向 (イ) 融資管理面の問題脱退原告の関連会社向け与信に係る本部稟議をみると,本店営業部が関連会社提出の月次資金繰表に記載の資金をそのまま資金使途も鵜呑みのままで稟議を行っている。関連企業グループ向け貸出はいわば「聖域化」し,当然行われるべき審査管理がなされていないことは甚だ遺憾である。中でも一部不動産会社向け貸出をみると,他行借入分も含め同社の利払い資金全額を脱退原告で与信するという異常な姿となっており,その額も平成6年度中44億円,平成7年度中29億円の巨額に上っている。資産内容の改善が急務となっている中で業績不振の関連会社に対する貸出に特別扱いが許されるとあっては,全行的な審査管理力の強化をいくら叫んでもその徹底は難しい。融資規律の観点からも関連企業グループに対する融資審査が仮初めにも緩に流れることのないことを強く望みたい。 2 綜合ハウジング案件(争点(1)から(3)まで)について(1) 本件綜合ハウジング融資の経緯当事者間に争いのない事実に,証拠(甲A18ないし23号証,27号証の1ないし3,65号証の1ないし3,甲B21号証の3,22号証の2ないし4,23号証の1,2,24号証の1,2,25号証の1,3,26号証の1ないし4,27号証の1,3,5,6,28号証の1ないし3,6,7,41号証,42号証,46号証の4,乙B1号証の1,13号証の3,16号証の2,被告A1,同A2)を総合すると,次の事実が認められる。 ア本件マンション開発事業(ア) 垂水物件についてa 脱退原告は,綜合ハウジングの分譲マンションプロジェクト(以下「垂水プロジェクト」という。)の資金として,平成元年9月22日,10億6000万円の与信枠を設ける旨の稟議決裁をした。その後,綜合ハウジングは,上記与信枠の中で資金融資を受け,平成2年3月26日, 垂水プロジェクト」という。)の資金として,平成元年9月22日,10億6000万円の与信枠を設ける旨の稟議決裁をした。その後,綜合ハウジングは,上記与信枠の中で資金融資を受け,平成2年3月26日,マンション開発を目的として垂水物件を約2億8860万円で取得したが,その後開発を断念し,平成5年1月18日,前記土地を代金2億8000万円で売却処分した。(甲A18号証,19号証,20号証,甲B28号証の7)b 綜合ハウジングは,平成7年7月31日現在,垂水プロジェクトに関して,2億円の借入金債務を負っていた(甲B25号証の3)。 (イ) 大和高田物件についてa 脱退原告は,綜合ハウジングの分譲マンションプロジェクト(以下「大和高田プロジェクト」という。)の資金として,平成2年8月24日,29億円の与信枠を設ける旨の稟議決裁をした。その後,綜合ハウジングは,上記与信枠の中で資金融資を受け,同月30日,マンション開発を目的として大和高田物件を約11億0890万円で取得した。(甲A19号証,21号証,甲B28号証の7)b 大和高田物件に関しては,平成7年6月30日現在,綜合ハウジングにおいて,12億7000万円の含み損があるものと評価されていた(甲B41号証)。 c 綜合ハウジングは,平成7年7月31日現在,大和高田プロジェクトに関して,15億3500万円の借入金債務を負っていた(甲B25号証の3)。 (ウ) 高槻物件についてa 脱退原告は,綜合ハウジングの高槻プロジェクトの資金として,平成3年7月23日,10億円の与信枠を設ける旨の稟議決裁をした。その後,綜合ハウジングは,上記与信枠の中で資金融資を受け(甲A19号証,23号証),平成7年7月31日現在,脱退原告に対し,高槻プロジェクトに関して7億6700万円の借入金債務を負っていた(甲B2 の後,綜合ハウジングは,上記与信枠の中で資金融資を受け(甲A19号証,23号証),平成7年7月31日現在,脱退原告に対し,高槻プロジェクトに関して7億6700万円の借入金債務を負っていた(甲B25号証の3)。 b 綜合ハウジングは,シーエス総合サービスからの借入金25億円について,平成7年8月2日に至るまでの間,一度も延滞することなく利子を支払い続けた。その具体的な額は次のとおりである。(甲B27号証の6,28号証の2)(a) 平成2年8月31日から平成3年6月28日までの間1億9489万7255円(利率は年8パーセントから9.4パーセントまで)(b) 平成3年7月31日から平成4年6月30日までの間1億8110万2734円(利率は年6.5パーセントから8.4パーセントまで)(c) 平成4年7月31日から平成5年6月30日までの間1億4541万7802円(利率は年5.1パーセントから6パーセントまで)(d) 平成5年8月2日から平成6年6月30日までの間1億0709万5884円(利率は年3.5パーセントから5パーセントまで)(e) 平成6年8月1日から平成7年6月30日までの間1億1071万2323円(利率は年3パーセントから4.9パーセントまで)(f) 利率は,当初長期プライムレートに0.5パーセント上乗せをしていたが,綜合ハウジングからの度重なる金利引下げ要請があったこと,高槻プロジェクトを富士住建単独から綜合ハウジング等の共同事業へと変更した際にシーエス総合サービスが1億5000万円のコンサルタント料を徴求した経緯があったこと,綜合ハウジング以外の富士住建ら3社がシーエス総合サービスに対する金利支払をストップしていたことなどから,平成5年3月23日付け変更契約により長期プライムレートに0.2パーセントの上乗せを たこと,綜合ハウジング以外の富士住建ら3社がシーエス総合サービスに対する金利支払をストップしていたことなどから,平成5年3月23日付け変更契約により長期プライムレートに0.2パーセントの上乗せをすることに,同年6月30日付け変更契約により長期プライムレートとすることになった。なお,富士住建は平成3年10月1日から,阪和都市開発(富士住建と阪和銀行の関係会社)は同年11月1日から,ジェイ・エイ・シー(日本ハウジングローンと富士住建との関係会社)は平成4年5月1日から,それぞれ利払いを停止していた(利率は年8.4パーセントに固定)。(甲B27号証の5)c シーエス総合サービスは,綜合ハウジングに対し,融資金の返済について督促しておらず,脱退原告に対して肩代わり融資を要請したこともなかった(被告A1,乙B1号証の1)。 (エ) 枚方物件についてa 脱退原告は,綜合ハウジングのマンションプロジェクト(以下「枚方プロジェクト」という。)の資金として,平成2年9月19日,28億円の与信枠を設ける旨の稟議決裁をした。その後,綜合ハウジングは,上記与信枠の中で資金融資を受け,平成3年1月18日,マンション開発を目的として枚方物件を約12億9690万円で取得した。(甲A19号証,22号証,甲B28号証の7)b 枚方物件に関しては,平成7年6月30日現在,綜合ハウジングにおいて,13億8400万円の含み損があるものと評価されていた(甲B41号証)。 c 綜合ハウジングは,平成7年7月31日現在,枚方プロジェクトに関して,17億6500万円の借入金債務を負っていた(甲B25号証の3)。 (オ) 各プロジェクトに関する借入金債務の支払猶予要請綜合ハウジングは,脱退原告に対し,平成4年2月24日,垂水プロジェクトに関する融資金について,近隣対策等問題が多 ていた(甲B25号証の3)。 (オ) 各プロジェクトに関する借入金債務の支払猶予要請綜合ハウジングは,脱退原告に対し,平成4年2月24日,垂水プロジェクトに関する融資金について,近隣対策等問題が多発し大幅に許認可が遅れたとして,返済期限を同年2月末日から平成6年2月まで延長するよう要請する文書を提出し(甲A19号証),同年3月5日,本件マンション開発事業について,商品化もおぼつかない深刻な現状にあるとして,借入金金利の大幅引下げを要請する文書を提出し(甲A27号証の1),同年6月1日には,事業の進捗がなく,販売管理費財源にも苦慮する現状であるなどとして再び借入金金利の大幅減免又は支払猶予を要請する文書を提出し(甲A27号証の2),同年10月9日には,大和高田プロジェクトに関する融資金15億円について,マンション市場の状況が極めて悪いため着工を延期しているとして返済期限を平成4年10月末日から平成7年10月末日まで延長するよう要請する文書を提出した(甲A27号証の3)。 イ綜合ハウジングの再建に関する会議(ア) 平成4年4月17日,脱退原告において,綜合ハウジングの再建に関する会議が開かれた。この会議には,被告A1,Q融資第2部担当常務取締役,R同部部長,C綜合ハウジング代表取締役社長及びE同社取締役が出席した。その後,同年6月2日,同月11日及び同月19日にも同様の会議が開かれた。その結果,被告A1から,大和高田物件及び枚方物件については,関連会社に譲渡すること,垂水物件については,他社に売却すること,綜合ハウジングは高槻プロジェクトのみを進めること等の指示があったが,大和高田物件及び枚方物件については,市場価格が簿価の半額ほどであって,関連会社での買受けは困難ということになった。(甲B27号証の3,28号証の7)(イ) 被告 を進めること等の指示があったが,大和高田物件及び枚方物件については,市場価格が簿価の半額ほどであって,関連会社での買受けは困難ということになった。(甲B27号証の3,28号証の7)(イ) 被告A1,同A2及びQは,平成4年6月10日までに,脱退原告の綜合ハウジングに対する貸付金(手形貸付2億円及び与信枠77億6000万円(うち実行済み残高39億9300万円))の約定利率を年5.5パーセントから年2.0パーセントに引き下げることを決裁した(甲B27号証の3)。 (ウ) 平成4年6月2日の会議においては,被告Aの指示に基づいて,Cが,綜合ハウジングは独力では再建が不可能であるが,脱退原告の貸出金を償却させないために,綜合ハウジングを整理する方法を提案した。具体的には,①3年間現状のまま据え置いた後,幸和不動産が吸収合併する,②スカイが吸収合併する,③コーエークレジットが吸収合併する,④ハッピークレジットが吸収合併する,⑤綜合ハウジングを,枚方プロジェクトを扱う会社,大和高田プロジェクトを扱う会社及び高槻プロジェクトを扱う会社の3社に分割するという五つの方法を挙げた上で,⑤の方法について,新会社を設立し,綜合ハウジングから営業を譲り受けた上で,別の会社と合併するという方法を提案した。しかし,幸和不動産は綜合ハウジングの約10倍もの多額の負債を抱えていること,スカイ,コーエークレジット,ハッピークレジットには,綜合ハウジングの債務負担が大きいことから,立ち消えとなった。 (甲B28号証の7)ウ被告A1に対する綜合ハウジングの経営状況等の報告状況等綜合ハウジング代表取締役社長Cは,被告A1に対し,次のとおり,同社の事業報告を行っていた。 (ア) 平成4年8月18日(甲B28号証の2)富士住建の代理人であるS設計事務所のS社長の報告によれば 綜合ハウジング代表取締役社長Cは,被告A1に対し,次のとおり,同社の事業報告を行っていた。 (ア) 平成4年8月18日(甲B28号証の2)富士住建の代理人であるS設計事務所のS社長の報告によれば,高槻物件について,平成4年12月中には高槻市から開発許可が下りる見通しであると報告している。 (イ) 平成4年10月20日(甲B28号証の2)a 垂水物件について,2億5000万円の買上げ申出があったが,当初3億円の話合い価格であったため保留している。 (被告A1は,2億7000万円から2億8000万円で処分するよう指示した。)b 高槻プロジェクトについて,同年9月2日,高槻市まちづくり計画検討会が開催された。 (被告A1は,進捗をよく見るよう指示した。)c 枚方プロジェクト及び大和高田プロジェクトについては,いずれも平成3年12月に許認可を得ているが,市況が悪いため着工していない。 (被告A1は,両物件の取得に伴う金利等の費用が高くなったため,当分凍結させ,幸和不動産において処理する旨指示した。)(ウ) 平成4年11月30日(甲B28号証の2)平成4年10月20日,富士住建,綜合ハウジング,阪和都市開発,ジェイ・エイ・シー及びS設計事務所等が集まって,高槻プロジェクトに関する会議が開かれ,高槻市が進める住地区計画案に追随して費用負担の軽減を図ること(緊急住宅宅地関連特定施設整備事業(甲B28号証の7)の導入により,国と府・市が各々道路買収費用のうち3分の1を負担してくれるというもの。),現在の市況は良くなく,短期的な業界見通しも立てにくいので,当面1年余りの工程遅れはやむなく,大阪府及び高槻市の上記計画の進捗に並行して,景気動向を注視しながら共同事業体の申請書を作成する予定とするという結論となった。 (エ) 平成5年3月1日(甲B28 当面1年余りの工程遅れはやむなく,大阪府及び高槻市の上記計画の進捗に並行して,景気動向を注視しながら共同事業体の申請書を作成する予定とするという結論となった。 (エ) 平成5年3月1日(甲B28号証の2)a 平成5年1月18日,垂水物件を代金2億8000万円で売却した。 b 高槻プロジェクトについて,平成4年12月22日,Cが高槻市建設部開発調整室において,担当者から住地区計画について話を聞いた。その話の内容は,平成4年9月2日にd地区約8.4ヘクタールを住地区計画対象区域として第1回検討会を実施し,その後も4,5人の地権者と個別交渉を続けている,特に市公園から北側道路へ通す予定道路(最低幅員9メートル以上)に係る地権者は,利害関係が複雑に絡み,年末までには正確な道路位置指定に至らない,また,住地区計画内に生産緑地指定土地もあり,交渉には時間が必要である,国からの道路買収費用の補助金は,開発面積が5ヘクタール以上であれば出るが,高槻プロジェクトの物件は2.4ヘクタールで国からの補助金を受けられない状況である,また,住地区計画に便乗しないと,物件所在地周辺は第一種住居専用地域で容積率100パーセント,高さ制限10メートル以下の制限を遵守する必要がある(便乗すれば,容積率150パーセント,高さ制限15メートルとなる。),周辺住民との意見調整が重要であるなどというものであった。 (オ) 平成5年6月2日(甲A24号証,甲B28号証の2)a 平成5年5月31日,垂水物件の代金2億8000万円が決済されたが,売却損1億5454万5000円が出た。 b 阪和都市開発が有する高槻物件の共有持分(20分の4)に対し,大阪総合信用株式会社によって平成4年8月31日仮差押登記がされていたが,同社が同申立てを取り下げたことにより,平成5年4月16日,仮 b 阪和都市開発が有する高槻物件の共有持分(20分の4)に対し,大阪総合信用株式会社によって平成4年8月31日仮差押登記がされていたが,同社が同申立てを取り下げたことにより,平成5年4月16日,仮差押登記が抹消された。 c 平成5年5月25日,富士住建,綜合ハウジング,阪和都市開発,ジェイ・エイ・シー及びS設計事務所等が集まって,高槻プロジェクトに関する会議が開かれ,富士住建及びS設計事務所が,同事務所が都市計画審議会に必要な書類を準備している段階であること,今後,調査報告書に基づく地元や地権者への説明,大阪府との打合せ,地元,周辺住民との意見調整,都市計画審議会(2月と9月)等の工程があること,住地区計画の計画区域は縮小されてきており,建設省の指定する住地区計画の面積としては最低5ヘクタール以上なければならないが,4.0ヘクタールで承認を得ていること等の経過説明をした。 (被告A1は,幸和不動産への吸収合併のために時間を延ばす必要があるから,その間綜合ハウジングは自力で努力するようにと指示した。)(カ) 平成5年12月2日(甲B28号証の2)a 高槻プロジェクトについて,S設計事務所から,前向きに開発申請手続を進めている現状である,平成6年2月の都市計画審議会に提出すべく準備中である旨報告を受けた。 b なお,平成5年12月2日までの間,商品用土地の資産の現況と評価採算性について,平成5年11月30日現在の各プロジェクト別明細(大和高田,枚方及び高槻の各プロジェクトについて,土地の仕入高に土地関連費,建物関連費及び金利等を合計した原価をもとに坪当たりの原価を求め,これと周辺の取引地価を対照するなどした表),平成5年7月30日付け含み損予想明細(平成5年6月30日現在のもの(上記各プロジェクトについて,土地の売却予想額から購入価格 とに坪当たりの原価を求め,これと周辺の取引地価を対照するなどした表),平成5年7月30日付け含み損予想明細(平成5年6月30日現在のもの(上記各プロジェクトについて,土地の売却予想額から購入価格及び支払利息等の原価を控除した含み損を予想した表。大和高田物件について10億1800万円,枚方物件について10億9100万円,高槻物件について19億3300万円)と,平成6年3月31日現在の含み損を予想したもの(大和高田物件について10億3600万円,枚方物件について11億1100万円,高槻物件について20億5900万円))を提出して報告した。 (被告A1は,平成6年5月ころに綜合ハウジングと幸和不動産の合併を予定していたが,山手台開発事業の状況から延びる可能性が大きい旨告げた。)(キ) 平成6年3月2日(甲B28号証の2)a 高槻プロジェクトについて,S設計事務所から,進入道路の用地交渉の関係で,平成6年2月の都市計画審議会には上程することができず,同年9月の同審議会に上程するとの報告を受けた。 b 平成6年2月28日付け「含み損予想明細」に基づいて,同日現在の含み損予想について,報告した(大和高田物件について11億4800万円,枚方物件について11億4200万円,高槻物件について20億8500万円)。 c 大和高田,枚方,高槻の各プロジェクトについて,平成5年12月10日付け「収支計画表」を提出し,報告した。これによると,高槻プロジェクトの場合,収支がゼロとなるためには,坪単価399万円,1戸平均1億1657万円で45戸を販売しなければならないが,実勢価格に見合った1戸平均4672万円で45戸を販売することができたとしても,31億4400万円の赤字となり,事業化を断念して商品土地のみを販売したとしても20億6000万円の赤字となると予 が,実勢価格に見合った1戸平均4672万円で45戸を販売することができたとしても,31億4400万円の赤字となり,事業化を断念して商品土地のみを販売したとしても20億6000万円の赤字となると予測された。 (ク) 平成6年7月14日(甲B28号証の2)平成6年7月14日付け「含み損予想明細」に基づいて,同年6月末現在の含み損予想について,報告した(大和高田物件について11億5900万円,枚方物件について12億6900万円,高槻物件について21億2800万円)。 (ケ) 平成6年12月1日(甲B28号証の3)a 平成6年11月,S設計事務所から,共同開発地区への北からの進入路については,地権者の反対によって用地買収が困難なため,この進入路については断念し,共同開発地区の南部にある公園西側道路を延長し,西から東へ抜ける道に変更して計画を申請する予定である,平成7年2月か7月の都市計画審議会にかける予定である旨報告を受けた。 b 平成6年12月1日付け「含み損予想明細」(同年11月末現在で,大和高田物件について11億6900万円,枚方物件について12億8100万円,高槻物件について21億8300万円の含み損が予想される。),同年11月30日現在の各プロジェクト別明細(大和高田,枚方及び高槻の各プロジェクトについて,土地の仕入高に土地関連費,建物関連費及び金利等を合計した原価をもとに坪当たりの原価を求めるなどした表),同年9月13日付け「税金関係支払済分及び猶予支払予定分」(既払い及び未払いの税金についてまとめた表),同年11月28日付け「収支計画表」(高槻プロジェクトの場合,収支がゼロとなるためには,坪単価423万円,1戸平均1億2349万円で45戸を販売しなければならないが,実勢価格に見合った1戸平均4672万円で45戸を販売すること 表」(高槻プロジェクトの場合,収支がゼロとなるためには,坪単価423万円,1戸平均1億2349万円で45戸を販売しなければならないが,実勢価格に見合った1戸平均4672万円で45戸を販売することができたとしても,34億5500万円の赤字となり,事業化を断念して商品土地のみを販売したとしても21億8800万円の赤字となると予測された。)を提出して,報告した。 (コ) 平成7年7月5日(甲B28号証の3)a 第24期(平成7年6月期)決算について,別途積立金2000万円を取り崩すことの承認を求める。被告A1は,これを承認した。 b 平成7年7月3日付け「含み損予想明細」(同年6月末現在で,大和高田物件について12億7000万円,枚方物件について13億8400万円,高槻物件について22億7000万円,合計49億2400万円の含み損があると評価される。なお,当時の時価は,大和高田物件が3億2600万円,枚方物件が4億5200万円,高槻物件が12億6800万円,合計20億4600万円と評価される。)及び同年6月30日現在の各プロジェクト別原価算入額明細(大和高田,枚方及び高槻の各プロジェクトについて,土地の仕入高,税金及び建物の設計費等並びに借入金利息をまとめた表。シーエス総合サービスに対する利息支払額は,1会計年度において1億1071万2323円であり,累計で7億3922万5998円である。)に基づいて報告した。 エ本件綜合ハウジング融資以前の融資の決裁被告らは,平成7年6月6日ころ,綜合ハウジングに対し,5000万円の手形貸付極度額の更改を決裁したが,この極度額更改に係る貸出稟議書には,本件マンション開発事業に関する土地の取得時期(大和高田プロジェクトは平成2年8月30日,枚方プロジェクトは平成3年1月18日,高槻プロジェクトは平成 裁したが,この極度額更改に係る貸出稟議書には,本件マンション開発事業に関する土地の取得時期(大和高田プロジェクトは平成2年8月30日,枚方プロジェクトは平成3年1月18日,高槻プロジェクトは平成2年8月31日である。)及び平成7年5月31日現在における本件マンション開発事業ごとの原価(取得価格にそれまでに支出した土地・建物関連費,金利等を加算したもの)等(大和高田プロジェクトの坪当たり原価は235. 0万円,枚方プロジェクトの坪当たり原価は292.4万円,高槻プロジェクトの坪当たり原価は190.9万円である。)を記載した「各プロジェクト別明細」等が稟議補充用紙として添付されていた(甲B25号証の1,26号証の1)。 オ平成7年7月24日開催の会議平成7年7月24日,脱退原告本店社長室において,本件綜合ハウジング融資に関する会議が開かれた。この会議には,被告A1,B,K関連事業部部長,T同部次長及びU同部審査役が出席した。 この会議に先立ち,被告A1は,Kに対し,綜合ハウジングの金利支払をストップする方法を考えるように指示をした。そこで,上記会議の席上,Kは,まず,綜合ハウジングには,脱退原告から42億円余り,シーエス総合サービスから25億円の借入れがあること,綜合ハウジングの年間収入は,大一商店から業務指導料名目で受け取っている約2000万円しかないこと,綜合ハウジングは,借入金の利息及び人件費等の経費の支払を,脱退原告からの借入金や大一商店からの支援金によって行っていること等を説明した。そして,Kは,①脱退原告が綜合ハウジングに対して25億円を融資し,同社は上記融資金によってシーエス総合サービスに対する借入金の返済を行う,②上記融資金の金利を年2パーセントとするが,上記融資の後,脱退原告の綜合ハウジングに対する貸出金について,金利 円を融資し,同社は上記融資金によってシーエス総合サービスに対する借入金の返済を行う,②上記融資金の金利を年2パーセントとするが,上記融資の後,脱退原告の綜合ハウジングに対する貸出金について,金利をストップする,③大和高田物件及び枚方物件を早急に売却する,④人件費については,Cが退職し,残りの人員であるE及び従業員1名については脱退原告の関連会社に転籍させることでゼロにする,⑤その他経費については,年間1262万1000円を支払うが,節減に努める,⑥収入については,大一商店からの業務指導料2160万円のほか,脱退原告の取引先であった株式会社大紀ハウス等からの仲介手数料を確保するといった対応策(以下「綜合ハウジング対応案」という。)を説明した。 被告A1及びBは,Kの上記説明を受けて,上記対応案を了承した。 (甲B21号証の3,22号証の2,23号証の2,24号証の2,42号証,乙B1号証の1,13号証の3)カ貸出稟議書の内容等(ア) 被告A1が綜合ハウジング対応案を了承したことにより,脱退原告の関連事業部は,脱退原告本店営業部に対し,綜合ハウジングに対する融資稟議書を作成して決裁にあげるように指示した。これに基づき,本店営業部は,本件綜合ハウジング融資に係る貸出稟議書(以下「本件綜合ハウジング融資稟議書」という。)を作成し,被告A1による実質的決裁がされた後であることから,営業部,関連事業部の各部内では形式的な審査のみで実質的な審査をすることなく,B,被告A2,同A1の決裁にあげた。(甲B22号証の3,23号証の1,24号証の1,2,25号証の1,26号証の1,27号証の1)(イ) 本件綜合ハウジング融資稟議書には,シーエス総合サービスの肩代わり資金として,25億円を手形貸付けによって融資する(弁済期は平成9年1月,利率は年2 号証の1,26号証の1,27号証の1)(イ) 本件綜合ハウジング融資稟議書には,シーエス総合サービスの肩代わり資金として,25億円を手形貸付けによって融資する(弁済期は平成9年1月,利率は年2.0パーセント)案件であることのほか,綜合ハウジングの平成7年5月末現在の借入金残高の内訳(脱退原告42億4200万円,シーエス総合サービス25億円)並びに平成4年6月期から平成6年6月期までの売上高,経常利益及び純利益(平成4年6月期がそれぞれ1億2500万円,△7500万円,△7000万円,平成5年6月期がそれぞれ3億0200万円,△1億8600万円,△1億8600万円,平成6年6月期がそれぞれ2200万円,△2200万円,△2200万円),今回担保明細として,高槻物件について1番根抵当権(従来の極度額10億円を35億円とする。)を設定するが,登記留保とする旨が記載されている。 (ウ) 本件綜合ハウジング融資稟議書に添付された稟議補充用紙(甲B26号証の2)には,高槻プロジェクトの概要(土地の仕入高が14億8827万9000円であったのに対し,土地関連費,建物関連費及び金利が加わったことから,原価は34億5800万円(百万円未満切捨て)に達しており,坪当たり190万9000円となっていることを示す表を含む。)及び担保物件の一覧表が記載されている。 (エ) 本件綜合ハウジング融資稟議書に添付された貸出先取引状況表(甲B26号証の2)には,脱退原告の綜合ハウジングに対する貸付金残高42億6700万円の内訳(垂水プロジェクト関係2億円,大和高田プロジェクト関係15億3500万円,枚方プロジェクト関係17億5500万円,高槻プロジェクト関係7億7700万円(実際には,7億6700万円であった(甲B26号証の2)。))のほか,手形貸付け2件(合計9 ト関係15億3500万円,枚方プロジェクト関係17億5500万円,高槻プロジェクト関係7億7700万円(実際には,7億6700万円であった(甲B26号証の2)。))のほか,手形貸付け2件(合計9億6700万円)が延滞となっていること等が記載されている。 (オ) 本件綜合ハウジング融資稟議書に添付された平成7年7月28日付けの担保不動産総合表(甲B26号証の2)には,脱退原告が綜合ハウジング所有(又は共有)の三つの物件について,それぞれ第1順位の根抵当権を有し,平成6年6月期の簿価から金利を控除した評価額が合計54億6600万円であり,これに70パーセントの掛け目を乗じた担保価値が合計38億2500万円である旨が記載されていた。 (カ) なお,前記(オ)の三つの物件の平成7年路線価による評価額の合計は17億7400万円(高槻物件は9億8700万円)であり,担保価値の合計は12億4000万円(高槻物件は6億9000万円)であった(甲B23号証の1)。 また,高槻物件についてのシーエス総合サービス側での平成7年6月末時点の評価は,6億9000万円余にすぎなかった(甲B27号証の5)。 キ被告らによる決裁(ア) 被告A2a 被告A2は,平成7年7月31日までに,Bが決裁をした本件綜合ハウジング融資稟議書の回付を受けて,Kの説明を聞いた(被告A2,乙B16号証の2)。 なお,被告A2は,K又はその部下から,融資金については高槻プロジェクトにより回収可能である,担保価格は不足しているが,高槻物件に極度額を35億円とする順位1番の根抵当権を登記留保の形で設定する,綜合ハウジングは3期連続の赤字で,平成6年6月期の売上げがわずか2200万円になっているが,それは,従業員も少人数の会社であり,不動産不況時営業を一時休止する方が得策と判断し休止してい 設定する,綜合ハウジングは3期連続の赤字で,平成6年6月期の売上げがわずか2200万円になっているが,それは,従業員も少人数の会社であり,不動産不況時営業を一時休止する方が得策と判断し休止しているためである,との説明を受けた旨主張し,これに沿う同被告の供述及び被告人質問調書(乙B16号証の2,4)がある。しかしながら,これらの供述は,「担保はそれなりにある。プロジェクトがうまくいけば十分返済することができる。」という旨の説明を受けた,担保が25億円分あったかどうかは分からなかった,「Kの口ぶりから推測して,高槻プロジェクトでちょっとぐらい挽回してくれるのかなと期待した。」という極めてあいまいかつ不自然な内容であり,的確な裏付けを欠くから採用することができない。 また,Kの証人尋問調書(乙B1号証の1,2)には,Kは,本件綜合ハウジング融資について,回収には長期間を要するが,回収できなくなるとは思っていなかった旨の供述が記載されており,被告A2の上記主張に沿うようである。しかしながら,Kは,具体的に回収が可能となる根拠として,①時代の流れが変わり,不動産業にとって良い時代がくることもある,②新たな事業を展開することによって収益を上げて返済することもできる(新しいプロジェクトができれば,必要な従業員を増やせばよい。),という極めてあいまいな供述をするにとどまっており,しかも,Kは,綜合ハウジングは小規模な不動産仲介を別にすれば大一商店からの支援だけで何とか存続している状態であること,及び大和高田物件,枚方物件及び高槻物件を併せても綜合ハウジングの債務の弁済に到底足りないことは認識していたのであるから(乙B1号証の1,2),やはり,被告A2の上記主張のとおりの説明をしたという事実は認められない。 b そして,被告A2は,本件綜合ハウジン グの債務の弁済に到底足りないことは認識していたのであるから(乙B1号証の1,2),やはり,被告A2の上記主張のとおりの説明をしたという事実は認められない。 b そして,被告A2は,本件綜合ハウジング融資稟議書を読み,綜合ハウジングが3期にわたって経常損失及び当期損失を計上していること,平成6年6月期には売上げが2200万円にとどまりほとんど休眠状態であること,67億円余りの債務を負っていること,本件綜合ハウジング融資が同社のシーエス総合サービスに対する25億円の債務の肩代わり融資であることを認識しつつ,本件綜合ハウジング融資稟議書に添付された資料を一切読むことなく,同融資を決裁した(被告A2,乙B16号証の2,4)。 (イ) 被告A1は,平成7年7月31日,本件綜合ハウジング融資を決裁した(甲B46号証の4)。 ク本件綜合ハウジング融資の実行(ア) 脱退原告は,平成7年8月2日,綜合ハウジングに対し,本件綜合ハウジング融資の実行として25億円を貸し付け,1か月分の利息(利率年2パーセント)を天引きした24億9589万0411円を同社の当座預金口座に振込入金した(甲B25号証の3,26号証の3,4)。 (イ) 綜合ハウジングは,平成7年8月2日,シーエス総合サービスに対する債務(元本25億円及び利息36万9863円)を弁済した(甲B26号証の4,27号証の5,28号証の6)。これにより,高槻物件の綜合ハウジング持分の上に設定されていたシーエス総合サービスを抵当権者とする抵当権設定登記は抹消された(甲A24号証)。 ケ本件綜合ハウジング融資の返済状況等(ア) 綜合ハウジングは,平成8年3月以降,脱退原告に対する借入金の利払いを停止した(甲B28号証の1)。 (イ) 綜合ハウジングは,平成12年11月30日,高槻物件の売却代金2億95 返済状況等(ア) 綜合ハウジングは,平成8年3月以降,脱退原告に対する借入金の利払いを停止した(甲B28号証の1)。 (イ) 綜合ハウジングは,平成12年11月30日,高槻物件の売却代金2億9569万9049円を取得した(甲A65号証の1,2)。 (ウ) 原告は,綜合ハウジングの破産手続において,最後配当として938万5213円を受領した(甲A65号証の1,3)。 (2) 争点(1)(具体的法令違反又は善管注意義務違反・忠実義務違反)についてア経営判断の原則取締役は,営利を目的とする会社の経営を委ねられた専門家として,長期的な視点に立って全株主にとって最も利益となるように職務を遂行すべき善管注意義務及び忠実義務を負っている(商法254条3項,民法644条,商法254条ノ3)。もっとも,営利の目的を実現するためには,取引先,顧客,従業員,近隣の住民,地域社会等,会社をめぐる関係者に対する配慮を欠かすことができないから,取締役は,会社を経営するに当たっては,上記関係者に対する適切な配慮を行いつつ,営利の目的を実現すべきこととなる。 そして,事業を営み利益をあげるためには,会社の状況,会社を取り巻く市場及び業界の状況,国内・国外の情勢等,時々刻々変化するとともに相互に影響し合いかつ流動的な考慮要素を的確に把握して総合的に評価し,短期的・長期的な将来予測を行った上,時機を失することなく経営判断を積み重ねていかなければならないから,専門家である取締役には,その職務を遂行するに当たり,広い裁量が与えられているものといわなければならない。もっとも,銀行は,決済機能を担っていること等,その営む事業が公共性を有することから,自由競争原理に基づく市場への参入と退出が活発に行われることは元来予定されていないのであり,銀行の取締役は,銀行の業務の健全かつ適 ,決済機能を担っていること等,その営む事業が公共性を有することから,自由競争原理に基づく市場への参入と退出が活発に行われることは元来予定されていないのであり,銀行の取締役は,銀行の業務の健全かつ適切な運営を行うことにより,預金者等の保護を確保するとともに信用秩序の維持を図ることが期待されている(銀行法1条参照)。したがって,銀行の取締役は,一般の事業会社の取締役と同様,経営の専門家として広い裁量が与えられているけれども,貸出業務等の与信業務を行うに当たっては,信用リスクを適切に管理し,安全な資金運用を行うことが求められているなど,銀行の取締役であるがゆえの違いがあることに留意しなければならない。 そこで,銀行の取締役に対し,過去の与信業務における措置が善管注意義務及び忠実義務に違背するとしてその責任を追及するためには,その措置を執った時点において,判断の前提となった事実の認識に重要かつ不注意な誤りがあったか,あるいは,意思決定の過程,内容が企業経営者一般としてではなく,銀行の取締役として特に不合理,不適切なものであったことを要するものと解するのが相当である。 イ本件綜合ハウジング融資の回収可能性①綜合ハウジングは,平成4年6月期から3期連続して営業損失を計上し,平成5年6月期には垂水物件の開発を断念し,これを売却処分したほかには土地建物の売上げは全くなく,平成6年6月期においても,土地建物の売上げはなく,大一商店から毎年2160万円の資金援助を受けて人件費等を支払い,シーエス総合サービス及び脱退原告に対する金利の支払については,脱退原告からの借入れによって賄うという収益状況であったこと(前記第2の1(4)イ,ウ(エ),甲B28号証の7),②本件マンション開発事業は,平成7年6月末現在で,大和高田物件で12億7000万円,枚方物件で らの借入れによって賄うという収益状況であったこと(前記第2の1(4)イ,ウ(エ),甲B28号証の7),②本件マンション開発事業は,平成7年6月末現在で,大和高田物件で12億7000万円,枚方物件で13億8400万円,高槻物件で22億7000万円,合計49億2400万円の含み損を抱えていると評価されていた上,含み損の評価額が増大してきていること(平成5年6月30日現在で合計40億4200万円,平成6年6月30日現在で合計45億5600万円であった。)(前記(1)ウ(カ)b,同(ク),同(コ)b),③綜合ハウジングにおいて唯一マンション開発事業を継続していた高槻プロジェクトは,事業化を断念して商品土地のみを売却した場合でも21億8800万円の赤字であるのに対し,仮に進入路を確保して住地区計画に基づいて事業化したとしても34億5500万円と赤字が大幅に増額となると予想されていた(平成6年11月28日付け「収支計画表」)上,赤字額が増大してきていること(平成5年12月10日付け「収支計画表」によれば,商品土地のみの売却の場合で20億6000万円の赤字,事業化した場合で31億4400万円の赤字であった。)(前記(1)ウ(キ)c,同(ケ)b),④綜合ハウジングは,平成7年7月31日当時,既に脱退原告に対する借入金残高が合計42億6700万円に上っていたのに対し,その担保は,大和高田物件及び枚方物件の5億5000万円しかなかった(高槻物件は,シーエス総合サービスの先順位の抵当権のために実質的担保価値はなかった。)こと,25億円の本件綜合ハウジング融資をすることにより高槻物件について最先順位の根抵当権を取得したものの,その担保価値は,6億9000万円にすぎなかったこと(前記(1)カ(イ),同(カ))等の事実を総合すれば,本件綜合ハウジング融資当時, ことにより高槻物件について最先順位の根抵当権を取得したものの,その担保価値は,6億9000万円にすぎなかったこと(前記(1)カ(イ),同(カ))等の事実を総合すれば,本件綜合ハウジング融資当時,綜合ハウジングは,脱退原告からの救済融資ないし資金援助がなければおよそ存続することができない状態になっており,実質的には破綻していた(前記1(5)ア(ア)d参照)し,綜合ハウジングが唯一マンション開発事業を継続していた高槻プロジェクトの上記状況によれば,綜合ハウジング単体での再建はその可能性が極めて乏しい状況であり,同融資の相当部分が回収不能となる具体的な可能性があったものと認められる。 ウ被告らの認識(ア) 被告A1は,前記(1)ウ,オ認定のとおり,綜合ハウジングの経営状況等について頻繁に報告を受け,かつ,前記(1)カの資料が添付された本件綜合ハウジング融資稟議書に基づいて同融資を決裁したものであるから,前記イの事情を認識していたものと認められる。したがって,被告A1は,脱退原告からの救済融資ないし資金援助がなければ綜合ハウジングはおよそ存続することができない状態となっており,本件綜合ハウジング融資の相当部分が回収不能となる具体的な可能性があることを認識していたものと認められる。 これに対して,被告A1は,本件綜合ハウジング融資の決定及びその実行までの間,Cから,高槻プロジェクトの進行に支障をきたすような事実発生の報告を何ら受けていなかったなどと主張する。しかしながら,被告A1は,前記(1)ウ(ケ)b,(コ)bのとおり,高槻プロジェクトの場合,平成6年11月現在で,収支がゼロとなるためには,坪単価423万円,1戸平均1億2349万円で45戸を販売しなければならないが,実勢価格に見合った1戸平均4672万円で45戸を販売することができた 平成6年11月現在で,収支がゼロとなるためには,坪単価423万円,1戸平均1億2349万円で45戸を販売しなければならないが,実勢価格に見合った1戸平均4672万円で45戸を販売することができたとしても,34億5500万円の赤字となり,事業化を断念して商品土地のみを販売したとしても21億8800万円の赤字となるという予測や,平成7年6月末現在で,高槻物件について22億7000万円の含み損があるという評価について報告を受けていたものであるから,高槻プロジェクトが実現したとしても,本件綜合ハウジング融資の相当部分が回収不能となる具体的な可能性があることを認識していたものと認められる。したがって,被告A1の上記主張は理由がない。 (イ) 被告A2は,前記(1)キ(ア)bのとおり,本件綜合ハウジング融資稟議書を読み,綜合ハウジングが3期にわたって経常損失及び当期損失を計上していること,平成6年6月期には売上げが2200万円にとどまりほとんど休眠状態であること,67億円余りの債務を負っていること,本件綜合ハウジング融資が同社のシーエス総合サービスに対する25億円の債務の肩代わり融資であることを認識していたものであるから,脱退原告からの救済融資ないし資金援助がなければ綜合ハウジングはおよそ存続することができない状態となっており,本件綜合ハウジング融資の相当部分が回収不能となる具体的な可能性があることを少なくとも具体的に認識することができたものと認められる。 エ綜合ハウジングを支援する必要性綜合ハウジングは脱退原告の関連会社であり,証拠(甲B27号証の5)によれば,綜合ハウジングは,シーエス総合サービスから脱退原告の系列会社との認識のもと融資を受けていたことが認められる。しかしながら,他方,証拠(甲A24号証,甲B27号証の5,28号証の2) 5)によれば,綜合ハウジングは,シーエス総合サービスから脱退原告の系列会社との認識のもと融資を受けていたことが認められる。しかしながら,他方,証拠(甲A24号証,甲B27号証の5,28号証の2)によれば,高槻プロジェクトは,元来,富士住建が地銀生保住宅ローンから高槻物件を担保に100億円の融資を受けて進めていたプロジェクトであり,その後,綜合ハウジングや阪和都市開発等が共同事業者として加わるに際し,地銀生保住宅ローンの子会社であるシーエス総合サービスからその負担割合に見合う金額の融資を受けていたものであること,綜合ハウジングほかが共同事業者として加わるに際し,シーエス総合サービスはコンサルタント料として1億5000万円を徴求していた経緯があること,シーエス総合サービスから同様に融資を受けていた阪和都市開発は富士住建と阪和銀行の関係会社との認識のもとその負担割合に見合う20億円の融資を受けていたが,既に平成3年11月1日から利息の支払を停止し,他の共同事業者である富士住建及びジェイ・エイ・シーも平成4年5月1日までに利息の支払を停止している(いずれも利率は年8.4パーセントに固定)こと,阪和都市開発の持分(20分の4)については,大阪銀行の関連会社である大阪総合信用株式会社から平成4年8月28日に仮差押命令を受け,その旨の登記が経由された(なお,平成5年4月9日仮差押命令申立ての取下げにより同月16日仮差押登記は抹消された。)が,上記の利払いの停止や仮差押えに対しても,上記の利率の点を除き,シーエス総合サービスから特段の措置がとられていなかったことが認められる。 以上によれば,高槻プロジェクトは,本来,シーエス総合サービスの親会社である地銀生保住宅ローンが高槻物件を担保として富士住建に100億円を融資して開始され,シーエス総合サービ ったことが認められる。 以上によれば,高槻プロジェクトは,本来,シーエス総合サービスの親会社である地銀生保住宅ローンが高槻物件を担保として富士住建に100億円を融資して開始され,シーエス総合サービス自体もコンサルタント料として1億5000万円を徴求していた案件であるところ,プロジェクト自体が多額の含み損を抱え,事業化するよりも事業化しないで売却した方が赤字が少ないという状況に至っていた上,他の共同事業者は既に利払いを停止していたし,シーエス総合サービスに対する借受金債務の弁済期が平成9年1月9日であったこと,同社は貸金の返済について督促等もしていなかったこと等にかんがみると,脱退原告が平成7年8月の段階で綜合ハウジングに対して救済融資ないし資金援助をしなかったとしても脱退原告の信用不安を招来するおそれは必ずしも大きくはなかったと認められる。 仮に,シーエス総合サービスから,元金の一部放棄や金利の減免が得られなかったとしても,脱退原告が綜合ハウジングに対して利払いのための融資さえ継続すれば,本件綜合ハウジング融資を実行しなかったとしても直ちに同社が債務不履行に陥るという状況にはなかったから,本件綜合ハウジング融資を実行することによって脱退原告が得る利益(脱退原告にとっての同融資の必要性)は,直接的には,平成7年8月分から平成9年1月9日までの利払いのための融資(当時の利率が長期プライムレート(本件綜合ハウジング融資当時年2.7パーセント。甲B27号証の6)であったことからすると,約1億円が必要となると推認される。)が不要となるということにとどまる(経済的には,上記利払いのための融資額から,本件綜合ハウジング融資の元本額である25億円の運用利益を控除した額で表される。)。そして,前記の事情からすると,仮に綜合ハウジングが利払いを停止した る(経済的には,上記利払いのための融資額から,本件綜合ハウジング融資の元本額である25億円の運用利益を控除した額で表される。)。そして,前記の事情からすると,仮に綜合ハウジングが利払いを停止したとしても,それが必ずしも直ちに脱退原告の信用不安を招来することにつながるものではないと解される。 オ綜合ハウジング対応案の合理性及び本件綜合ハウジング融資の決定過程(ア) また,関連会社の経営破綻により信用不安を招来することを回避するためであっても,常に関連会社を存続させることが許されるわけではないし,また,存続させることが許されるとしても,無限定にあるいはどのような方法であっても許されるわけではなく,脱退原告の取締役に与えられている裁量を超えた場合には,善管注意義務違反及び忠実義務違反の責を負う場合も考えられる。 そして,本件においては,前判示のとおり,既に綜合ハウジングが実質的に破綻しており,その単体での再建の可能性も極めて乏しい状況下で本件綜合ハウジング融資(25億円)がなされたのであり,その相当部分が回収不能となり,脱退原告に損失が発生する具体的な可能性があったものである。 そこで,本件綜合ハウジング融資の前提となった綜合ハウジング対応案の合理性及び本件綜合ハウジング融資の決定過程について検討する。 (イ) 綜合ハウジング対応案の合理性綜合ハウジング対応案においては,1262万1000円の経費を支払う(ただし,節減に努める。)一方で,収入としては,大一商店からの業務指導料2160万円のほか,他の仲介手数料を確保することとしている。ただし,この仲介手数料については恒常的かつ安定的な取引先が見込まれた形跡はなく,綜合ハウジングの業務に従事するのは実質的にEと従業員1名にすぎなかったことをも併せ考えると,これらの収入から経費を控除した この仲介手数料については恒常的かつ安定的な取引先が見込まれた形跡はなく,綜合ハウジングの業務に従事するのは実質的にEと従業員1名にすぎなかったことをも併せ考えると,これらの収入から経費を控除した残額をもって同社の67億円を超える債務を合理的期間内に弁済する計画であったとは到底いえない(なお,綜合ハウジング対応案においてその他仲介手数料確保が挙げられた結果,平成9年6月期及び平成10年6月期には若干の手数料収入を得たものとうかがわれる(上記業務指導料を含め売上高合計はそれぞれ2700万円及び4400万円である。乙B1号証の5)。)。 そもそも,綜合ハウジングは,既に実質的には破綻しており,その単体での再建の可能性も極めて乏しかった上,本件綜合ハウジング融資には十分な担保もなく,マンション開発事業を継続していた唯一の事業である高槻プロジェクトは事業化しない場合よりも事業化した場合の方が赤字の予想額が大きくなっていて,綜合ハウジング融資の相当部分が回収不能となる具体的な可能性があり,さらに,脱退原告が本件綜合ハウジング融資をしなかったとしても脱退原告の信用不安を招来するおそれは必ずしも大きくはなかったという状況である。 このような状況下である以上,本来,今後,綜合ハウジングを他の会社との合併等をすることによって存続させるのか,存続させる場合,67億円を超える債務についてどのように処理するのか,存続させずに清算するとすればいつごろどのような形で清算するのか等(以下「綜合ハウジングの処理方針」という。)について,その利害得失の具体的な比較検討がされるべきである。そうした綜合ハウジングの処理方針にのっとって,金額にして3分の1を超える割合の債権を有し,脱退原告の他の唯一の債権者であるシーエス総合サービスの債権について,一部債権放棄,返済期限の べきである。そうした綜合ハウジングの処理方針にのっとって,金額にして3分の1を超える割合の債権を有し,脱退原告の他の唯一の債権者であるシーエス総合サービスの債権について,一部債権放棄,返済期限の延長,更なる金利の減免等を求めることができないかが検討されるべきであるところ,被告A1が本件綜合ハウジング融資をその内容に含む綜合ハウジング対応案を了承するに当たって,これらの点が検討された形跡はない。また,シーエス総合サービスに対して上記のような対応を求める場合と,脱退原告がシーエス総合サービスの債権を肩代わりする場合の利害得失についての具体的な比較検討がされた形跡もない。確かに,脱退原告が最終的にシーエス総合サービスに対して綜合ハウジングの債務を肩代わりして弁済するという前提に立てば,期限前に弁済することで金利負担を避けることができるという利点がある。しかしながら,そもそも,脱退原告が前記債務を肩代わりするか否かということについて,上記のような点を検討すべきであったにもかかわらず,被告らは自ら又は部下に指示してこれを検討していないものである。 以上の点からすれば,綜合ハウジング対応案は,ただ綜合ハウジングの規模を縮小して存続させるというだけのその場しのぎの対応策であって,著しく不合理な内容のものであったといわざるを得ない。 これに対して,被告A1は,本件綜合ハウジング融資に先立って,綜合ハウジングとスカイとの合併を検討した旨主張し,これに沿うかのような被告A1の被告人質問調書(乙B13号証の4,8,11)並びにK(乙B1号証の1ないし3)及びB(乙B14号証の1,4)の各証人尋問調書があるほか,脱退原告が,平成8年2月から平成9年9月にかけて,大蔵省に対し,綜合ハウジングに対する融資金の管理について報告していた文書にも,平成8年2月, (乙B14号証の1,4)の各証人尋問調書があるほか,脱退原告が,平成8年2月から平成9年9月にかけて,大蔵省に対し,綜合ハウジングに対する融資金の管理について報告していた文書にも,平成8年2月,同年8月,平成9年2月の各現在時点の報告において,今後の管理方針として,「将来収益力のある関係会社と合併を行い物件の有効利用と売却を計る。」旨の記載がある(なお,平成9年9月現在の報告には同趣旨の記載がなくなっている。丙B14号証)。 しかしながら,上記各供述はその内容が極めてあいまいで的確な裏付けを欠くから採用することができない。確かに,前記(1)イ(ウ)のとおり,平成4年の時点において,Cが検討した綜合ハウジングの整理案の中に,スカイが綜合ハウジングを吸収合併するという選択肢もあったことが認められる。 しかしながら,あくまで複数の選択肢の一つにすぎず,C自身,別の選択肢を提案したものである。また,その後具体的にスカイによる合併案の検討が進められた形跡はない。前記(1)ウ(イ),(オ),(カ)のとおり,平成4年10月から平成5年12月までの間,被告A1はスカイではなく幸和不動産との合併を考えていたものと認められることも併せ考えると,平成4年にスカイとの合併案がCによって提案されたからといって,上記各供述を採用することができないとの判断を左右するものではない。このほかに,被告A1は,スカイと綜合ハウジングとの合併を検討したにもかかわらずこれが実現しなかった理由として,「最高金利が40パーセントから29.3パーセントに引き下げられた」ことがある旨供述するが,貸金業者が刑罰を受ける利率を年40.004パーセントから年29.2パーセントに引き下げる旨の出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律の改正法(貸金業の規制等に関する法律等の一部を改 が,貸金業者が刑罰を受ける利率を年40.004パーセントから年29.2パーセントに引き下げる旨の出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律の改正法(貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律(平成11年法律第155号)は,脱退原告破綻後の平成11年12月17日に公布され,平成12年6月1日から施行されたものであることからすると,この点からも,同被告の供述は到底採用することができない。 なお,仮に被告A1,B及びKの上記各供述のとおりの事実が認められるとしても,その内容は,「収益力のある消費者金融会社であるスカイと合併し,赤字を埋める。そのために,スカイの業容拡大を目指す。」といった抽象的な内容にとどまり,上記報告文書の内容を総合しても,具体的にいつまでにどのような方法でスカイの業容をどの程度まで拡大し,いつごろ合併を行い,その後の新会社の財政状態はどのようなものと予測されるか等の具体的な検証をしたものとは認められない。よって,上記各供述のとおりの事実が認められるとしても,綜合ハウジング対応案が著しく不合理な内容のものであるという結論を左右するものではない。 (ウ) 本件綜合ハウジング融資の決定過程a 脱退原告における関連会社向けの融資については,関連事業部が融資権限を有していることにはなっているものの,実態的には,被告A1らの経営から指示されたことを実行しているにすぎず事実上審査不在という状況となっており(前記1(5)イ(ウ)),いわば「聖域化」し,当然行われるべき審査管理がなされていない状況であった(前記1(6)イ(イ))。 本件綜合ハウジング融資の決定過程においても,前記(1)カ(ア)のとおり,被告A1が事実上決定した後に稟議書の作成,決裁を行っており,特に脱退原告本店営業部及び関連事業部内においては,形式的な 本件綜合ハウジング融資の決定過程においても,前記(1)カ(ア)のとおり,被告A1が事実上決定した後に稟議書の作成,決裁を行っており,特に脱退原告本店営業部及び関連事業部内においては,形式的な審査がされただけで実質的な審査がされていない。 b 被告A1は,前判示のとおり,脱退原告からの救済融資ないし資金援助がなければ綜合ハウジングはおよそ存続することができず実質的に破綻しており,単体での再建の可能性も極めて乏しい状態となっており,本件綜合ハウジング融資(その金額は,脱退原告の平成7年3月期の経常利益(53億5549万9546円)のおよそ半分に上るという多額の救済融資である。)の相当部分が回収不能となる具体的な可能性があることを認識していたにもかかわらず,前判示のとおり,著しく不合理な内容の綜合ハウジング対応案を了承したのみで,綜合ハウジングの処理方針について具体的な検討をしないのみならず,シーエス総合サービスに一部債権放棄,返済期限の延長,更なる金利の減免等を求めることの可否,妥当性を何ら具体的に検討しないまま,本件綜合ハウジング融資を決裁したものである。 これに対して,被告A1は,本件綜合ハウジング融資を実行せずに利払いのための融資を継続した場合,シーエス総合サービスが整理されて綜合ハウジングが一括返済を求められて破綻してしまうおそれがある,あるいは一括返済を求められないまでも再建のための交渉に困難をきたす,さらに,綜合ハウジングが住専関連会社の借り手であるとの事実自体住専処理の社会問題化によって脱退原告の信用を低下させるおそれがあるといった点を考慮した旨主張し,これに沿う同被告の被告人質問調書(乙B13号証の4,8,11,12)がある。 しかしながら,被告A1の上記供述は,「住専7社が破綻になるのかどうなのかということが分 るといった点を考慮した旨主張し,これに沿う同被告の被告人質問調書(乙B13号証の4,8,11,12)がある。 しかしながら,被告A1の上記供述は,「住専7社が破綻になるのかどうなのかということが分からなかったから,その子会社であるシーエス総合サービスから綜合ハウジングが金を借りているということについて非常に不安があった。」「脱退原告の方に火の粉がかかってくるだろう。」「住宅ローン会社ががたついたら,当然これはがたつくなり何かが起こって取引先に影響を及ぼすということがはっきりしているから,そういうところとはなるべく早く縁を切っといた方がベターである。」「綜合ハウジングの方にどのような影響が出てくるのかはそのときになってみないと分からない。具体的に何が不安であったかというのは答えられない。」などという極めてあいまいなものであって,的確な裏付けを欠く上,そもそも,脱退原告が本件綜合ハウジング融資をしなかったとしても,脱退原告の信用不安を招来するおそれは必ずしも大きくはなかったこと前判示のとおりであるから,採用することができない。したがって,被告A1の上記主張は理由がない。 c 被告A2は,前判示のとおり,脱退原告からの救済融資ないし資金援助がなければ綜合ハウジングはおよそ存続することができない状態となっており,本件綜合ハウジング融資の相当部分が回収不能となる具体的な可能性があることを具体的に認識することができたにもかかわらず,本件綜合ハウジング融資稟議書に添付された資料を一切読むことなく,同融資を決裁したものであり,綜合ハウジングの処理方針についてはもちろん,シーエス総合サービスに一部債権放棄,返済期限の延長,更なる金利の減免等を求めることの可否,妥当性や綜合ハウジングの処理方針を何ら具体的に検討していない(被告A2自身,「3分あったか てはもちろん,シーエス総合サービスに一部債権放棄,返済期限の延長,更なる金利の減免等を求めることの可否,妥当性や綜合ハウジングの処理方針を何ら具体的に検討していない(被告A2自身,「3分あったかどうか分からないくらいの時間説明を聞いただけであるが,母体行責任があるから肩代わりせざるを得ないと考えて,決裁印を押した。やるかやらないかの判断に細かい説明は必要ない」旨供述している。)。 カ被告らの善管注意義務違反(ア) 被告A1は,脱退原告の代表取締役社長として,関連会社向け融資についても融資に際して実質的な審査をする態勢を築いておかなければならなかったにもかかわらず,事実上審査不在の状況となっているのを放置していた。また,本件綜合ハウジング融資の必要性は必ずしも大きくなかった。 そのような状況下において,被告A1は,本件綜合ハウジング融資の決定に際して,脱退原告からの救済融資ないし資金援助がなければ綜合ハウジングはおよそ存続することができない状態で実質的に破綻しており,本件綜合ハウジング融資の相当部分が回収不能となる具体的な可能性があることを認識していたにもかかわらず,綜合ハウジングの処理方針についてはもちろん,シーエス総合サービスに一部債権放棄,返済期限の延長,更なる金利の減免等を求めることの可否,妥当性についても何ら具体的に検討していないのであるから,被告A1が本件綜合ハウジング融資を可とする決裁をするという意思決定の過程,内容が銀行の取締役として特に不合理,不適切なものであったといわざるを得ない。 よって,本件綜合ハウジング融資を決定することとした経営判断については,被告A1に認められた裁量の範囲を逸脱するものであり,したがって,被告A1について善管注意義務違反及び忠実義務違反が認められる。 (イ) 被告A2は,脱退原告の代表取 ることとした経営判断については,被告A1に認められた裁量の範囲を逸脱するものであり,したがって,被告A1について善管注意義務違反及び忠実義務違反が認められる。 (イ) 被告A2は,脱退原告の代表取締役副社長として,関連会社向け融資についても融資に際して実質的な審査をする態勢を築いておかなければならなかったにもかかわらず,事実上審査不在の状況となっているのを放置していた。また,本件綜合ハウジング融資の必要性は必ずしも大きくなかった。そのような状況下において,被告A2は,本件綜合ハウジング融資の決定に際して,脱退原告からの救済融資ないし資金援助がなければ綜合ハウジングはおよそ存続することができない状態で実質的に破綻しており,本件綜合ハウジング融資の相当部分が回収不能となる具体的な可能性があることを少なくとも具体的に認識することができたにもかかわらず,被告A2は,本件綜合ハウジング融資稟議書に添付された資料を一切読まず,綜合ハウジングの処理方針についてはもちろん,シーエス総合サービスに一部債権放棄,返済期限の延長,更なる金利の減免等を求めることの可否,妥当性についても何ら具体的に検討していないのであるから,被告A2が本件綜合ハウジング融資を可とする決裁をするという意思決定の過程,内容が銀行の取締役として特に不合理,不適切なものであったといわざるを得ない。 よって,本件綜合ハウジング融資を決定することとした経営判断については,被告A2に認められた裁量の範囲を逸脱するものであり,したがって,被告A2について善管注意義務違反及び忠実義務違反が認められる。 これに対して,被告A2は,職制上自らの職務ではない本件綜合ハウジング融資の当否について,被告A1らが既に協議決定した事項について,更に改めて調査検討する任務はなく,かつ,経営判断にかかる事項に 。 これに対して,被告A2は,職制上自らの職務ではない本件綜合ハウジング融資の当否について,被告A1らが既に協議決定した事項について,更に改めて調査検討する任務はなく,かつ,経営判断にかかる事項については,意見を述べることが許されても反対することは職制上許されず,被告A2の任務の範囲は,稟議書面において確認し得る事実を前提に,当該融資案件が明白に法令定款に違反しないか,又はより良い稟議に修正できないかについて意見を述べるかの2点に限られる旨主張し,これに沿う同被告の被告人質問調書(乙B16号証の2)がある。 確かに,脱退原告内部の文書上は,関連事業部の所管事項については社長が決定権限を有することが記載されているのみで,副社長(被告A2)の決裁権限を直接に規定したものは見当たらない。しかしながら,商法上,代表取締役は会社を代表してその営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有しており(商法261条3項,78条1項),その前提として包括的・一般的な業務執行権限を有している。そして,脱退原告は,職制上も,「社長および副社長は各自銀行を代表する。社長は銀行の業務を統轄し,副社長は銀行の業務を掌理する。」と,「統轄」と「掌理」という文言の使い分けによって社長と副社長の上下関係を示しつつも,両者の業務執行権限をともに包括的なものとして並列して定めており(前記第2の1(3)ア。定款にも同様の規定が置かれている(25条2項。甲B11号証)。),副社長の権限を特に制限する規定類は見当たらない。また,逆に,副社長について特定の業務を担当することとする旨の規定類も見当たらない。さらに,関連事業部の融資案件については,前記のとおり副社長の決裁権限を直接に規定した文書がないにもかかわらず,金額の多寡にかかわらず被告A2のもとに稟議書が回付され, る旨の規定類も見当たらない。さらに,関連事業部の融資案件については,前記のとおり副社長の決裁権限を直接に規定した文書がないにもかかわらず,金額の多寡にかかわらず被告A2のもとに稟議書が回付され,同被告がこれを審査していたこと(乙B16号証の2,弁論の全趣旨),同被告のもとに回付された稟議書について,同被告が意見を述べたことから貸付極度額が減額された事案や,貸付極度額の増額について当初無担保とされていたものが,同被告が意見を述べたことから不動産及び入居保証金等を担保として徴求することとされた事案があること(乙B16号証の2,甲B47号証の5)をも併せ考えると,同被告は,脱退原告の代表取締役副社長として,関連事業部の融資案件に関する決裁権限を有していたものと認められ,特に同被告の任務が同被告主張の範囲に限られるとは認められない(同被告は,上記の各事案について,反対したのではなく修正意見を述べたものであるなどと供述するが,同被告が意見を述べたことから稟議の内容が変更されて決裁されたことに変わりはないから,「反対」か「修正意見」であるかは前記認定を左右しない。)。よって,被告A2の上記主張は理由がない(なお,仮に同被告の任務が同被告主張の範囲に限られるとしても,同被告はより良い稟議に修正できないか意見を述べるための具体的検討をすべき善管注意義務及び忠実義務を負うと解されるところ,判示の事実関係によれば,同被告は,本件綜合ハウジング融資を決裁するに当たり,上記義務を果たしたものとは認められない。)。 キ母体行責任論についてところで,被告A1は,本件綜合ハウジング融資当時,母体行主義が当然のこととされており,これに基づいて,銀行の関連会社は銀行が責任を持って処理し,他の取引先に損害を及ぼしてはならないとの考えが強固に存在しており,綜合ハ 本件綜合ハウジング融資当時,母体行主義が当然のこととされており,これに基づいて,銀行の関連会社は銀行が責任を持って処理し,他の取引先に損害を及ぼしてはならないとの考えが強固に存在しており,綜合ハウジングに対する支援を打ち切って同社を倒産させれば,直ちに脱退原告の信用が失墜し,預金流出及び資金調達の困難化等による多大の損失を生じ,経営悪化につながるおそれが予見されたから,本件綜合ハウジング融資を決定した同被告らの経営判断の過程は著しく不合理ではない旨主張する。また,被告A2は,本件綜合ハウジング融資は,銀行経営者に課せられている,金融システムの安定確保のための母体行責任に基づき,やむを得ないものであった旨主張する。 (ア) まず,銀行が出資をし,あるいは取締役等を派遣してその経営に実質的に関与している関連会社の債務処理に当たって,当該銀行が,当該関連会社に対する自己の債権を放棄したり,更に進んで当該関連会社が他の金融機関に対して負担している借入金等債務を肩代わりしたりしなければならない法律上の義務を負うものとは解されない。なお,大蔵省は,平成4年8月18日,「金融行政の当面の運営方針-金融システムの安定性確保と効率化の推進」を示しており,その中には,「金融システムの安定と資金の円滑な供給のために金融機関が総力をあげて取り組むべきことは当然であるが,当局としても,永年にわたって金融システムに寄せられてきた国民の信頼がいささかも損なわれることのないよう最大限の努力を傾注して参る所存である。」「不良資産処理方針の早期確定とその計画的・段階的処理が急務であり,これにより国民の金融システムへの不安感を払拭するとともに,その安定性の確保に努めることが極めて重要である。」といった記載がある。そして,同省は,同月21日,金融機関に対して,上記運営方 急務であり,これにより国民の金融システムへの不安感を払拭するとともに,その安定性の確保に努めることが極めて重要である。」といった記載がある。そして,同省は,同月21日,金融機関に対して,上記運営方針を前提に,①株価低迷への当面の対応,②融資への対応,③金融機関経営の一層の合理化への対応といった措置を講じることなどを求める「金融行政の当面の運営方針について」と題する銀行課長・中小金融課長名義の事務連絡を発している(丙A1号証以下では,両者を併せて「本件通達等」という。)。しかし,本件通達等の文言に照らしても,本件通達等が前記のような銀行の法律上の義務を前提とし,あるいはこれを基礎づけるものとは認められない。 (イ) また,前判示のとおり,脱退原告が綜合ハウジングに対して救済融資ないし資金援助をしなかったとしても,脱退原告の信用不安を招来するおそれは必ずしも大きくはなかったし,被告らは,脱退原告からの救済融資ないし資金援助がなければ綜合ハウジングはおよそ存続することができない状態となっており,本件綜合ハウジング融資の相当部分が回収不能となる具体的な可能性があることを認識し,あるいは具体的に認識することができたにもかかわらず,綜合ハウジングの処理方針についてはもちろん,シーエス総合サービスに一部債権放棄,返済期限の延長,更なる金利の減免等を求めることの可否,妥当性についても何ら具体的に検討していない。したがって,被告らの意思決定の過程,内容が銀行の取締役として特に不合理,不適切なものであったといわざるを得ない。 よって,被告らの上記主張を採用することはできない。 (ウ) 一口に「母体行責任」といっても,その内容は必ずしも一義的かつ明確ではなく,いわゆる母体行がすべての不良債権を肩代わりする場合もあれば,貸出残高の範囲内でのみ償却に応じる ることはできない。 (ウ) 一口に「母体行責任」といっても,その内容は必ずしも一義的かつ明確ではなく,いわゆる母体行がすべての不良債権を肩代わりする場合もあれば,貸出残高の範囲内でのみ償却に応じる場合(「修正母体行方式」などと呼ばれた。丙A2号証,18号証)もあるほか,他の債権者の債権の一部について負担する方法等も考えられたものである。例えば,平成8年の住宅金融専門会社の破綻処理に当たっては,いわゆる母体行は,自行の貸出金債権3兆5000億円を放棄するが,他の債権者の損失については負担しない方式が採られている(丙A2号証,丙B9号証)。また,平成7年3月から同年4月にかけて,株式会社大阪銀行(以下「大阪銀行」という。),株式会社阪和銀行及び株式会社福徳銀行(以下「福徳銀行」という。)が,いずれも系列ノンバンクの会社整理あるいは特別清算を申し立てるなど,いわゆる母体行による関連会社の法的整理も行われていた(甲B18ないし20号証。なお,平成7年度における,預金残高は,脱退原告が1兆8845億2800万円であるのに対し,福徳銀行が1兆4535億0600万円,大阪銀行(平成7年12月末)が1兆6579億円であり,貸出金残高は,脱退原告が1兆7280万7300円であるのに対し,福徳銀行が1兆3457億9200万円,大阪銀行(平成7年12月末)が1兆5095億円であり,平成8年度における預金残高は,脱退原告が1兆7923億5700万円であるのに対し,福徳銀行が1兆3119億5000万円であり,貸出金残高は,脱退原告が1兆6308億4500万円であるのに対し,福徳銀行が1兆2661億5700万円であり(甲B18号証,丙A3号証の6,7),資金量から見ると福徳銀行は脱退原告の約4分の3から5分の4の規模であり,大阪銀行は約8分の7の規模を有して に対し,福徳銀行が1兆2661億5700万円であり(甲B18号証,丙A3号証の6,7),資金量から見ると福徳銀行は脱退原告の約4分の3から5分の4の規模であり,大阪銀行は約8分の7の規模を有していたのであるから,脱退原告とほぼ同程度の規模である。)。そして,この大阪銀行ほか2行による系列ノンバンクの法的整理は,本件綜合ハウジング融資が行われる約4か月前に行われ,かつ,系列ノンバンクの法的整理をしたからといって母体行である大阪銀行ほか2行に取付け騒ぎ等が生じなかったものである(甲B18ないし20号証)。 なお,大阪銀行ほか2行による系列ノンバンクの法的整理のような修正母体行方式による処理が許されるのは,母体行方式を貫徹したならば自らが破綻するということが明らかな場合に限られると考えられていたとの指摘もある(乙A51号証)。しかしながら,本件綜合ハウジング融資が実施された当時,脱退原告は,平成7年8月18日現在の大蔵省検査において,多額の欠損見込額の発生により自己資本は大きく毀損されており,正味自己資本額はマイナス382億円と実態的には債務超過に陥っていると評価されていた(前記1(5))し,平成8年1月末現在における日銀考査においても,不良資産の現状をみると,今後の自主再建の道程は相当な努力を要さざるを得ず,脱退原告の経営は「憂慮すべき状況」にあるといわざるを得ないと評価されていた(前記1(6))。これらからすると,当時,脱退原告自身の体力は既に著しく低下していたと評価される。 (エ) このほか,被告A1は,本件綜合ハウジング融資当時,大蔵省も,脱退原告が同融資を行うことをやむを得ないこととして容認していた旨主張するが,大蔵省が同融資を許されないと指摘していなかったからといって,本件綜合ハウジング融資が取締役の善管注意義務及び忠実義務 ,脱退原告が同融資を行うことをやむを得ないこととして容認していた旨主張するが,大蔵省が同融資を許されないと指摘していなかったからといって,本件綜合ハウジング融資が取締役の善管注意義務及び忠実義務に照らして当然に許されることとなるものではないから,上記主張は採用することができない。 さらに,被告A2は,本件綜合ハウジング融資当時,大蔵省が,綜合ハウジングの損失処理について,全額を脱退原告の負担とすることを求めていたとか,大蔵省が,脱退原告が本件綜合ハウジング融資を実行しないことを容認するはずがなく,仮に同融資を実行しなければ,大蔵大臣によって必要な措置を命じられたり,免許の取消処分等を受けるおそれがあったなどと主張する。しかしながら,上記のとおり,本件綜合ハウジング融資の約4か月前に,大阪銀行ほかが関連ノンバンクを法的整理しているにもかかわらず,免許の取消処分等を受けていない事実がある上,本件通達等本件全証拠を総合しても被告A2の上記主張事実を認めることはできない。この点に関して,被告A2は,脱退原告が,当時,幸福総合リースの損失処理を行っていたことと一貫性を欠くから,大蔵省がそれを容認するはずがない旨主張するが,本件綜合ハウジング融資を実行するか否かを判断するに当たっては,脱退原告が幸福総合リースの損失処理について相当の負担をしているという当時の財務状態をも考慮に入れざるを得ず,全体の負債の額並びに他の債権者の数及び債権額等によって損失処理の方法は異なり得るのであるから,一つの関連会社について肩代わり融資等による損失処理をしたからといって,当然に他の関連会社についても同様の処理をしなければ大蔵省が容認しないものとはいえない(大蔵省が本件綜合ハウジング融資を容認していたからといって,善管注意義務違反及び忠実義務違反が当然に否定さ て,当然に他の関連会社についても同様の処理をしなければ大蔵省が容認しないものとはいえない(大蔵省が本件綜合ハウジング融資を容認していたからといって,善管注意義務違反及び忠実義務違反が当然に否定されるものでないことは前判示のとおりである。)。 なお,本件大蔵省検査の検査報告書には,「綜合ハウジングについても,プロジェクトの頓挫により実質経営破綻していることから欠損見込額が発生しているほか,他行借入金の肩代わりも余儀なくされている。」との記載があるが,本件大蔵省検査は本件綜合ハウジング融資を実施してしまった後の平成7年8月18日を基準日とする検査であるから,上記記載があるからといって,大蔵省が本件綜合ハウジング融資を求めていたものとは認められない。 (3) 争点(2)(違法性阻却事由,過失,期待可能性)について取締役が善管注意義務及び忠実義務に違反した以上,違法性阻却事由がある,当該取締役に故意及び過失がない,又は当該取締役について責任阻却事由があるといった事情がない限り,商法266条1項5号に基づく責任を負うものであるところ,被告らは,違法性阻却事由がある,被告らには過失がない,被告らには期待可能性がないといった点を主張している。 しかしながら,被告らは上記主張を基礎づける具体的事実を主張していないから,上記主張はいずれも理由がない。 なお,本件では,前判示のとおり,経営判断の誤りについて善管注意義務違反及び忠実義務違反が認められるから,違法性の意識の有無は過失の有無を左右しない。 (4) 争点(3)(損害)についてア本件綜合ハウジング融資の金額は25億円であるところ,証拠(乙B13号証の11)によれば,脱退原告は,平成10年3月末までの間,同融資を全く回収していないことが認められる。そして,前記第2の1(4)カのとおり,脱退原告は 金額は25億円であるところ,証拠(乙B13号証の11)によれば,脱退原告は,平成10年3月末までの間,同融資を全く回収していないことが認められる。そして,前記第2の1(4)カのとおり,脱退原告は,平成10年3月期決算から平成11年3月までにかけて,綜合ハウジングに対する債権67億6700万円のうち合計53億5350万円を償却したこと,前記(1)ケ(イ)のとおり,綜合ハウジングは,高槻物件の売却代金2億9569万9049円を取得していること,同(ウ)のとおり,原告は,綜合ハウジングの破産手続において最後配当として938万5213円を受領していることを総合すれば,本件綜合ハウジング融資によって,脱退原告に,少なくとも21億円を下らない損害が生じたものと認められる(融資金額25億円から2億9569万9049円及び938万5213円を控除した21億9491万5738円が回収できなかったものと推認される。)。 イこれに対して,被告らは,本件綜合ハウジング融資による損害は,25億円から高槻物件の平成7年の路線価に基づく評価額9億8700万円(甲B26号証の2)を控除した15億1300万円にとどまり,それを超える損害については民法416条2項にいう特別損害であって,被告らは同融資当時これを予見することができなかった旨主張する。 しかしながら,善管注意義務・忠実義務に違反して,相当部分が回収不能となる具体的な可能性のある融資を実行した場合に,当該融資の担保となっている不動産の回収時点の価値によって最終的な回収不能額が増減するのは当然のことである。本件綜合ハウジング融資についていえば,そもそも,同融資当時,高槻物件を平成7年の路線価に基づく評価額と同額又はそれ以上の額で処分することができたかどうかも明らかではない上,本件全証拠を総合しても,特別の事 ウジング融資についていえば,そもそも,同融資当時,高槻物件を平成7年の路線価に基づく評価額と同額又はそれ以上の額で処分することができたかどうかも明らかではない上,本件全証拠を総合しても,特別の事情があったために高槻物件から2億9569万9049円しか回収できなかったものとは認められない。 したがって,特別の事情に対する予見可能性について判断するまでもなく,被告らの上記主張は理由がない。 ウ被告A1は,本件綜合ハウジング融資の前には,脱退原告は高槻物件上に無価値の2番根抵当権しか有していなかったが,同融資を実行したことによって1番根抵当権を取得したから,損害額の算定に当たって,脱退原告が同融資前に綜合ハウジングに対して有していた債権額7億7000万円を控除すべきである旨主張する。そして,被告A1は,本件綜合ハウジング融資当時,高槻プロジェクトを遂行した場合最終的に19ないし20億円程度の赤字となることが予測されたとして,同額から上記7億7000万円を控除した12ないし13億円が予見された回収不能分すなわち損害である旨主張する。 しかしながら,そもそも,綜合ハウジングが高槻プロジェクトを遂行した場合の最終収支の予測額を超える損害がすべて民法416条2項にいう特別損害に当たるとする理由はないのであり,本件についていえば,融資額から最終的な回収額を控除した額が,すべて本件綜合ハウジング融資によって通常生ずべき損害(民法416条1項)に当たるものといえる。そして,綜合ハウジングは,高槻物件から2億9569万9049円を回収したにとどまるのであり,上記債権額(7億7000万円)を損害額から控除する理由はない。 したがって,特別の事情に対する予見可能性について判断するまでもなく,被告A1の上記主張は理由がない。 3 幸和不動産案件(争点(4)から( 債権額(7億7000万円)を損害額から控除する理由はない。 したがって,特別の事情に対する予見可能性について判断するまでもなく,被告A1の上記主張は理由がない。 3 幸和不動産案件(争点(4)から(6)まで)について(1) 本件幸和不動産融資の経緯前記第2の1(5)の事実に,当事者間に争いのない事実,証拠(甲A43号証,44号証,65号証の1,4ないし6,甲B30号証の1,31号証の2ないし10,32号証の3ないし6,34号証,36号証の2ないし4,6,7,37号証の1,3,38号証の1ないし5,39号証の1ないし5,40号証の1,2,48号証の14の1,49号証の9,乙B1号証の2,3,2号証の1ないし4,3号証の1,2,4,4号証の1,2,5号証の1,10号証,11号証の1,13号証の6,7,14号証の1,3,16号証の2ないし4,47号証,丙B15ないし17号証)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。 ア山手台開発事業の推移(ア) 幸和不動産は,昭和51年10月,宝塚市eにおいて「宝塚サングリーン開発計画」との名称で宅地開発を行うことを計画した。 (イ) 幸和不動産と阪急不動産は,昭和59年12月26日,本件基本協定を締結した。 本件基本協定においては,将来の販売に関しては,①団地呼称の再検討,②販売価格の決定と統一に関する事項,③販売方法について事前協議を行うが,最終的には阪急不動産が決定し,販売窓口は阪急不動産に一本化すること(12条),④幸和不動産及び阪急不動産は,それぞれの保有する土地を担保物件として第三者に提供しないほか,山手台開発事業からの脱退又は肩代わり等によって本件基本協定上の地位を第三者に譲渡してはならないこと,上記禁止事項及び本件基本協定上の取決めを履行しなかった場合,その損害賠償の代物弁 供しないほか,山手台開発事業からの脱退又は肩代わり等によって本件基本協定上の地位を第三者に譲渡してはならないこと,上記禁止事項及び本件基本協定上の取決めを履行しなかった場合,その損害賠償の代物弁済として,幸和不動産又は阪急不動産は,相手方に対し,その有する持分権を譲渡するほか,相手方が被った損害金の一切を弁済すること(14条)等が定められていた(甲A37号証の1)。 (ウ) 幸和不動産は,昭和61年3月に開発許可を受けるとともに,そのころ山手台開発事業の造成工事に着工した。また,平成元年3月に開発変更許可を受け,開発面積が188万7080平方メートル,総戸数が2750戸となり,さらに,平成9年3月にも開発変更許可を受け,総戸数が3246戸となった。(甲B32号証の1)(エ) 平成2年2月,日建エンジニアリングが山手台開発事業に参画し,阪急不動産50パーセント,幸和不動産45パーセント及び日建エンジニアリング5パーセントの各持分で山手台開発事業を進めることになった。 (オ) 山手台開発事業(売面積9万2700坪)の収支計画は次のとおりであった(甲B31号証の9)。 a 平成2年2月28日現在のもの平成3年から平成11年までに全区画を,平均坪当たり単価210万円で売却し,1948億3000万円の売上げ,1053億9200万円の営業利益を見込んだ。 b 平成5年3月31日現在のもの平成5年から平成11年までに総区画1325区画を,坪当たり110万円から175万円の単価で売却し,1366億3500万円の売上げ,327億4900万円の経常利益を見込んだ。 (カ) 山手台開発事業に基づく宅地開発は,次のとおり進行した。 平成 5年 4月第1工区(410区画),商業地区の一部,幼稚園用地完成平成 8年 3月第2-1工区(138区画)完成 見込んだ。 (カ) 山手台開発事業に基づく宅地開発は,次のとおり進行した。 平成 5年 4月第1工区(410区画),商業地区の一部,幼稚園用地完成平成 8年 3月第2-1工区(138区画)完成平成 8年 9月第3-3工区(商業用地)完成平成10年10月第2-2工区,第2-3工区(61区画)完成(キ) 幸和不動産は,平成5年6月30日,日貿信,興銀,日債銀,長銀,中央信託,安田信託,大和銀行,富士火災海上,富士銀行,第一ファイナンス,幸福総合リース及び脱退原告(以下「協定者」という。)との間において,本件旧担保協定のほか,幸和不動産は,毎月1日から月末までの間に売却した山手台物件中の土地の代金について,次の割合に相当する額を内入弁済引当金とし,これを前月末における協定者の債権額に基づいて案分し,弁済する(協定者は,根抵当権又は抵当権を一部解除する。)旨の担保物件一部解除協定を締結した(甲B32号証の3,39号証の3)。 平成7年3月末まで売却代金の30パーセント平成9年3月末まで売却代金の35パーセント以後売却代金の40パーセント(ク) 山手台物件の販売状況は,次のとおりであった。なお,平成8年9月期の販売区画数には,積水ハウスに対して21区画を卸売価格(代金5億2494万5000円)で販売した分が含まれるほか,幸和不動産は,上記販売区画数とは別に,兵庫県に対し,震災者用の賃貸住宅地として72区画を代金18億0970万3000円(一坪当たり単価約69万円)で売却した。(甲B32号証の3,6,36号証の3,6,38号証の5,39号証の3)平成 5年9月期 14区画(  4億7725万3000円)平成 6年9月期 95区画( 31億7285万5000円)平成 7年9月期 36区画( 11億 ,38号証の5,39号証の3)平成 5年9月期 14区画(  4億7725万3000円)平成 6年9月期 95区画( 31億7285万5000円)平成 7年9月期 36区画( 11億9421万4000円)平成 8年9月期 73区画( 34億3117万8000円)平成 9年9月期 22区画( 14億8746万4000円)平成10年9月期 43区画( 27億5731万3000円)平成11年5月まで  27区画( 14億9634万6000円)合計 310区画(140億1662万3000円)なお,一坪当たりの販売単価,販売原価(支払利息を含む。)及び山手台物件周辺の中山台の公示価格の推移(1万円未満四捨五入)は,次のとおりであり(甲B36号証の3),平成8年9月以降,原価割れ状態での販売が続いた。 販売単価販売原価公示価格平成 5年9月期  108万円 90万円  106万円平成 6年9月期  105万円  103万円 93万円平成 7年9月期  108万円  104万円 86万円平成 8年9月期 84万円  104万円 81万円平成 9年9月期  105万円  108万円 79万円平成10年9月期 88万円  110万円(ケ) 幸和不動産は,阪急不動産との間において,次のとおり,3回にわたって,共有していた宅地を分割して単独所有とし,当該宅地については独自に販売することになった(甲B39号証の1,2,40号証の1)。 ① 平成8年6月28日分割対象区画第1工区の98宅地幸和不動産及び阪急不動産がそれぞれ49宅地を単独所有② 平成10年6月30日分割対象区画第1工区の60宅地幸和不動産が28宅地,阪急不動産 平成8年6月28日分割対象区画第1工区の98宅地幸和不動産及び阪急不動産がそれぞれ49宅地を単独所有② 平成10年6月30日分割対象区画第1工区の60宅地幸和不動産が28宅地,阪急不動産が32宅地をそれぞれ単独所有③ 平成11年5月24日分割対象区画第2工区の170宅地幸和不動産が88宅地,阪急不動産が82宅地をそれぞれ単独所有(コ) 脱退原告は,平成7年末ころから計画を立て,山手台物件の購入者に対して金利を優遇する貸付けをするなどして,山手台物件の販売を支援するようになり,平成9年中ごろには,山手台物件の購入者に対して不動産購入資金に加えて事業資金についても融資するなどして,山手台物件の販売を支援した(甲B30号証の1,36号証の2,37号証の1,3,38号証の3,39号証の2,5)。 イ平成7年5月25日及び同年6月2日の会議(甲B36号証の7,38号証の1,5,39号証の1)(ア) 幸和不動産の取締役総務部長Iは,山手台物件の販売による収支見込みに関する平成7年5月25日付け「[山手台]収支試算合計表(ケース別)」と題する書面及び「資金繰推移予想(今後2年間)」と題する書面を作成した(甲B38号証の1,5)。 (イ) 「[山手台]収支試算合計表(ケース別)」は,概ね次のような内容であった。 a 前提条件① 金利は年5.5パーセントとする。 ② 平成9年10月以降地価が年3パーセントの割合で上昇する。 b ケース1(現状の販売方法で平成18年9月までに完売する。)① 資金最終的に147億9800万円の資金不足を生じ,475億3100万円の借入金が残る。 ② 損益売上高が1062億8300万円であるのに対し,売上原価が1135億7300万円であって原価割れとなる。また,金利負担が212億8000万円となるこ 475億3100万円の借入金が残る。 ② 損益売上高が1062億8300万円であるのに対し,売上原価が1135億7300万円であって原価割れとなる。また,金利負担が212億8000万円となることなどから,最終的に416億4400万円の繰越損失を計上する。 c ケース2(現状の販売方法で平成18年9月までに完売することに加え,脱退原告の株式3万4000株及び京都共栄銀行の株式156万4000株並びに兵庫県宝塚市の遊休土地を売却する。)① 資金最終的に46億0800万円の資金不足を生じ,373億4100万円の借入金が残る。 ② 損益通常分についてはbと同じ。株式の売却益45億円及び土地の売却益5100万円を計上するため,繰越損失は336億7900万円となる。 (ウ) 「資金繰推移予想(今後2年間)」によると,平成7年5月から平成9年3月までの間,24億5500万円の販売高が予想される平成8年3月を除いては,毎月経常赤字を計上することが予想され,平成7年9月以降,脱退原告からの借入額が銀行法13条に基づく信用供与限度額を超過することが予想された。 (エ) Iは,平成7年5月25日に開催された臨時の資金繰会議において,被告A1に対して,上記資料の内容を説明した。 被告A1は,上記説明を聞いた後,「土地を半分でも全部でも売るか。荷を軽くするか。夜明け前が一番暗い。」等と言った。 (乙B13号証の6)(オ) Iは,山手台物件の共有持分を他社に売却した場合を想定した試算表(平成7年6月2日付け「[山手台]収支試算合計表(持分の売却別)」(甲B38号証の1,5))を作成した。 (カ) 「[山手台]収支試算合計表(持分の売却別)」は,概ね次のような内容であった。 a 前提条件① 金利は年5.5パーセントとする。 ② 平成9年10月以降地価が年3パ の1,5))を作成した。 (カ) 「[山手台]収支試算合計表(持分の売却別)」は,概ね次のような内容であった。 a 前提条件① 金利は年5.5パーセントとする。 ② 平成9年10月以降地価が年3パーセントの割合で上昇する。 ③ 平成8年9月末に共有持分の一部又は全部を他社に売却する。 ④ 平成18年9月末までに残りの共有持分を完売する。 ⑤ 平成8年9月末に兵庫県宝塚市の遊休土地を売却して売却益5100万円を計上する。 なお,本資料では,平成7年9月末に脱退原告及び京都共栄銀行の株式を売却した場合とそうでない場合とが記載されているが,次に,株式を売却した場合の内容のみ記載する。 b 共有持分22.5パーセントを他社に売却する場合① 資金最終的に122億4500万円の資金不足を生じ,449億7800万円の借入金が残る。 ② 損益売上高が827億8500万円であるのに対し,売上原価が968億0200万円であって原価割れとなる。また,金利負担が195億7400万円となることなどから,最終的に413億1500万円の繰越損失を計上する。 c 共有持分35パーセントを他社に売却する場合① 資金最終的に164億8500万円の資金不足を生じ,492億1800万円の借入金が残る。 ② 損益売上高が692億4100万円であるのに対し,売上原価が870億2500万円であって原価割れとなる。また,金利負担が206億7700万円となることなどから,最終的に455億5600万円の繰越損失を計上する。 d 共有持分40パーセントを他社に売却する場合① 資金最終的に181億8600万円の資金不足を生じ,509億1900万円の借入金が残る。 ② 損益売上高が638億2300万円であるのに対し,売上原価が831億0800万円であって原価割れとなる。また,金利負担 81億8600万円の資金不足を生じ,509億1900万円の借入金が残る。 ② 損益売上高が638億2300万円であるのに対し,売上原価が831億0800万円であって原価割れとなる。また,金利負担が211億2900万円となることなどから,最終的に472億5600万円の繰越損失を計上する。 e 共有持分45パーセント(幸和不動産の持分全部)を他社に売却する場合① 資金最終的に48億7100万円の資金余剰を生じ,278億6200万円の借入金が残る。 ② 損益売上高が584億0500万円であるのに対し,売上原価が748億7500万円であって原価割れとなる。また,金利負担が51億4600万円となることなどから,最終的に256億5400万円の繰越損失を計上する。 (キ) Iは,平成7年6月2日に開催された資金繰会議の際に,被告A1に対して,上記資料の内容を説明した。 ウ幸和不動産の平成7年7月から平成8年2月までの資金調達状況等(ア) 平成7年8月ころには,脱退原告の幸和不動産に対する融資額が,銀行法13条に基づく信用供与限度額に近づいた。そこで,幸和不動産は,同月,脱退原告関連事業部の指示に基づいて,脱退原告の関連会社に対し,保有していた脱退原告の株式3万4000株及び京都共栄銀行の株式156万4000株を代金45億0945万1000円で売却した。また,被告A1が直接大和銀行の経営陣のトップに対して,幸和不動産への30億円の融資を申し込んだ結果,幸和不動産は,同月,大和銀行から15億円を借り入れることができた。そして,幸和不動産は,脱退原告に対し,借入金60億1640万円を弁済した。なお,これにより,脱退原告の幸和不動産に対する融資額は,銀行法13条に基づく信用供与限度額まで66億3300万円の枠が空いた。(甲B36号証の2,38号 対し,借入金60億1640万円を弁済した。なお,これにより,脱退原告の幸和不動産に対する融資額は,銀行法13条に基づく信用供与限度額まで66億3300万円の枠が空いた。(甲B36号証の2,38号証の1,5)(イ) 幸和不動産は,平成7年12月,大和銀行から15億円を,京都共栄銀行から5億円をそれぞれ借り入れた。これ以後,幸和不動産は,脱退原告及びその系列金融機関以外の金融機関からの貸増しを断られるようになった。(甲B36号証の2,38号証の1,5)(ウ) 幸和不動産は,平成8年2月,阪急不動産と共同して,兵庫県に対し,山手台物件の一部を売却し,共有持分代金として18億0970万3000円を受領した(甲B36号証の2)。 エ平成8年7月9日の会議(甲B31号証の3,38号証の4,39号証の4)(ア) Iは,Kの依頼を受けて,山手台物件の販売による収支見込みに関する平成8年7月9日付け「収支見込み合計表」と題する書面(甲B39号証の4)を作成した。 (イ) 「収支見込み合計表」は,概ね次のような内容である。 a ケース(1)(a) 前提条件① 金利は平成9年9月については4.0パーセント,同年10月以降は4.5パーセントとする。 ② 平成23年9月に販売が完了する。 ③ 平成11年10月以降地価が年2.5パーセントの割合で上昇する。 (b) 資金最終的に417億円の資金不足を生じ,543億1200万円の借入金が残る。 (c) 損益売上高が1028億4000万円であるのに対し,売上原価が1117億8300万円であって原価割れとなる。最終的に483億1500万円の繰越損失を計上する。 b ケース(2)(a) 前提条件① 金利は平成9年9月については4.0パーセント,同年10月以降は4.5パーセントとする。 ② 平成23年9月に販売 483億1500万円の繰越損失を計上する。 b ケース(2)(a) 前提条件① 金利は平成9年9月については4.0パーセント,同年10月以降は4.5パーセントとする。 ② 平成23年9月に販売が完了する。 ③ 平成11年10月以降地価が年1.0パーセントの割合で上昇する。 (b) 資金最終的に505億4000万円の資金不足を生じ,631億5200万円の借入金が残る。 (c) 損益売上高が952億3900万円であるのに対し,売上原価が1117億8300万円であって原価割れとなる。最終的に571億5400万円の繰越損失を計上する。 c ケース(3)(a) 前提条件平成9年10月1日で残存分を売却する。 (b) 資金最終的に221億0400万円の資金不足を生じ,347億1600万円の借入金が残る。 (c) 損益売上高が515億5700万円であるのに対し,売上原価が766億8200万円であって原価割れとなる。最終的に311億4100万円の繰越損失を計上する。 (ウ) Iは,平成8年7月9日に開催された資金繰会議の終了後に,被告A1及びBに対して,上記資料の内容を説明した。 オコーエークレジットとの合併又は一括売却についての検討(ア) 被告A1は,Kに対し,幸和不動産とコーエークレジットの合併及び両社の一括売却について検討するよう指示した。これに対し,Kは,平成8年7月1日,V関連事業部次長及びU同部審査役とともに,被告A1及びBに対し,K作成の「幸和不動産㈱の現状を打開するについて」(甲B31号証の3)と題する書面に基づき,概ね次のとおり説明した。(甲B31号証の3,9,36号証の3,乙B13号証の6,14号証の1)a 幸和不動産について(a) 幸和不動産の長期見通しとしては,大幅赤字となり,借入金残高も多額となる。 (b) 説明した。(甲B31号証の3,9,36号証の3,乙B13号証の6,14号証の1)a 幸和不動産について(a) 幸和不動産の長期見通しとしては,大幅赤字となり,借入金残高も多額となる。 (b) 山手台物件を現状のまま売却可能価格で売却すると,大幅赤字となり,借入金残高も多額となる。 (c) 現状で資金調達を継続していくことは,資金使途,業種及び脱退原告の信用状態により,脱退原告の保証付きでも困難である。 (d) 残存借入金を脱退原告及び関連金融機関で債権放棄ないし償却することはできない。 よって,いずれにしても破綻は避けられない状況である。 b 収益面のみをカバーするならば,コーエークレジットと合併してサラ金部門を拡大すれば何とかなる。 (a) 合併すると,脱退原告及び関連金融機関の信用供与限度額超過状態となるので,これを解消する必要がある。 (b) サラ金部門を拡大する合併会社の資金調達を継続することは困難である。 (c) そうすると,脱退原告の力では合併会社の規模を維持することは困難である。 (d) 主要銀行に頼んでプロジェクトチームを作ってもらい一任することが可能か。 c 幸和不動産及びコーエークレジットをセットにして買い取ってくれる相手を探すか。 (a) サラ金業者(東京の市場にメリットのあるもの)(b) 不動産業者(サラ金業に興味のあるもの)(c) その他d 本件作業にコンサルタントが必要ではないか。 (イ) 被告A2は,平成8年夏ころ,被告A1から,幸和不動産が赤字であり,コーエークレジットが相当黒字であるから,合併して埋め合わせをするというような話を聞いた。また,このころ,Kから前記(ア)の「幸和不動産㈱の現状を打開するについて」及び前記エ(ア)の「収支見込み合計表」(平成8年7月9日付け)を受け取った。(乙B16号証の2 るというような話を聞いた。また,このころ,Kから前記(ア)の「幸和不動産㈱の現状を打開するについて」及び前記エ(ア)の「収支見込み合計表」(平成8年7月9日付け)を受け取った。(乙B16号証の2)(ウ) Kは,平成8年7月19日付け「幸和不動産(株)とコーエークレジット(株)との合併の問題点」,同年8月26日付け「幸和不動産(株)とコーエークレジット(株)との合併について」同年9月30日現在の借入金残高表,銀行法13条に関する問題点を検討した資料及び平成8年12月17日付け資料等を作成し,被告A1及びBにその内容を説明した。これによれば,平成8年9月30日現在で,脱退原告の幸和不動産に対する融資残高は149億1300万円,コーエークレジットに対する融資残高は115億円であり,これを合算すると264億1300万円となるところ,脱退原告の当時の銀行法13条に基づく信用供与限度額は204億2500万円であるから,59億8800万円も超過する。(甲B31号証の3,乙B13号証の6,14号証の1)(エ) 被告A1及びFは,平成8年8月中ごろ,阪急電鉄株式会社本社を訪れ,阪急グループに対して,幸和不動産及びコーエークレジットの一括売却等を申し入れ,同年12月中ころまで交渉したが,交渉は成立しなかった。また,複数の金融業者に対し,一括売却を申し入れたが,いずれも拒絶され,不動産業者や建設会社に対しては,山手台物件の売却を申し入れたが,いずれも拒絶された。(甲B31号証の3,36号証の3,7)(オ) 幸和不動産は,平成8年11月,貸金業の登録をした。 (カ) 平成8年12月17日の会議(甲B31号証の3,9,38号証の2,4)aIは,Kの依頼を受けて,平成8年12月17日付け「「山手台」の試算」と題する書面(甲B31号証の3)を作成した。 b カ) 平成8年12月17日の会議(甲B31号証の3,9,38号証の2,4)aIは,Kの依頼を受けて,平成8年12月17日付け「「山手台」の試算」と題する書面(甲B31号証の3)を作成した。 b 「「山手台」の試算」は,概ね次のような内容である。 (a) 前提条件ⅰ 事業期間は,平成23年9月までとする(同月までに山手台物件を完売する。)。 ⅱ 販売単価(坪当たり)について,①平成9年9月期は90万円,平成10年9月期は95万円,平成11年9月期は100万円,平成12年9月期以降年1パーセントずつ上昇すると仮定した場合(売上総額813億1200万円)と,②平成9年9月期から平成11年9月期までは105万円,平成12年9月期以降年1パーセントずつ上昇すると仮定した場合(売上総額857億9800万円)の二通りを想定する。 ⅲ 金利について,①年4.5パーセント,②年3.0パーセント,③脱退原告からの借入金については0パーセント,他行からの借入金については年3.0パーセントの三通りを想定する。 ⅳ 金融部門の収益について,①年30億円ベース,②年40億円ベース,③年50億円ベースの三通りを想定する。 (b) 幸和不動産の借入金を返済することができるように上記前提条件を組み合わせると,次のように試算された。 ⅰ 販売単価について前記(a)ⅱ①,金利について前記(a)ⅲ①,金融部門の収益について前記(a)ⅳ③の各条件を組み合わせた場合金融部門の借入金が1394億5400万円増加し,繰越損失は平成18年9月期に解消する。 ⅱ 販売単価について前記(a)ⅱ①,金利について前記(a)ⅲ②,金融部門の収益について前記(a)ⅳ②の各条件を組み合わせた場合金融部門の借入金が1281億9800万円増加し,繰越損失は平成18年9月期に解消する。 ⅲ 販売単価につ 金利について前記(a)ⅲ②,金融部門の収益について前記(a)ⅳ②の各条件を組み合わせた場合金融部門の借入金が1281億9800万円増加し,繰越損失は平成18年9月期に解消する。 ⅲ 販売単価について前記(a)ⅱ①,金利について前記(a)ⅲ③,金融部門の収益について前記(a)ⅳ①の各条件を組み合わせた場合金融部門の借入金が1003億1300万円増加し,繰越損失は平成19年9月期に解消する。 ⅳ 販売単価について前記(a)ⅱ②,金利について前記(a)ⅲ①,金融部門の収益について前記(a)ⅳ②の各条件を組み合わせた場合金融部門の借入金が1322億9800万円増加し,繰越損失は平成21年9月期に解消する。 ⅴ 販売単価について前記(a)ⅱ②,金利について前記(a)ⅲ②,金融部門の収益について前記(a)ⅳ②の各条件を組み合わせた場合金融部門の借入金が1261億9800万円増加し,繰越損失は平成17年9月期に解消する。 cIは,平成8年12月17日,被告A1,B及びKら関連事業部行員に対して,上記資料の内容を説明した。すなわち,合併会社において,幸和不動産の借入金を返済して採算がとれるようになるためには,金融部門で年間30億円以上の利益を上げることが最低限の条件であるが,そのためには,更に1000億円を超える借入れが必要となるところ,担保物件の不足のために脱退原告以外の金融機関から上記の借入れをすることは困難であり,脱退原告も銀行法13条に基づく信用供与限度額の制限をクリアーする方法が見つからないため,合併会社の資金需要を満たす方法がない旨を説明した。 被告A1は,このころ,幸和不動産の赤字を補てんするための収益があがるだけの規模にするための資金調達が基本的に困難であること及び消費者金融部門の資金調達について担保が足りなくなることから,幸 た。 被告A1は,このころ,幸和不動産の赤字を補てんするための収益があがるだけの規模にするための資金調達が基本的に困難であること及び消費者金融部門の資金調達について担保が足りなくなることから,幸和不動産とコーエークレジットの合併及び一括売却を断念した。 (乙B1号証の2,13号証の6)カ平成8年12月ころの状況(ア) 幸和不動産が平成7年8月と12月に大和銀行から借り入れた30億円(前記ウ(ア),(イ))の支払期限が平成8年11月末であったところ,大和銀行からその履行を求められ,交渉の末,10億円については大一商店名義の定期預金を担保提供し,20億円については脱退原告が債務保証をすることで支払期限を平成9年3月末まで延長してもらった。なお,平成9年3月には,後者の20億円について,更に脱退原告が保有していた国債を差し入れて支払期限の延長を認めてもらった。また,このころ,平河町ファイナンスからの要求により,幸和不動産の同社に対する9億4700万円の債務について脱退原告が保証をした。(甲B32号証の1,乙B2号証の2)(イ) 平成8年12月22日の会議(甲B31号証の9,10,32号証の4,36号証の3,7,乙B1号証の2,2号証の1,4,5号証の1)被告A1は,平成8年12月22日,被告A2,B,W(大一商店代表取締役社長で,被告A1の実弟),K,V,F,X(大一商店の元専務取締役),Y(京都共栄銀行代表取締役社長),L及びMを集めて,被告A1の自宅において,幸和不動産の今後について,会議を開いた。 被告A1は,幸和不動産を法的に整理しなければならない事態になったときにどのような方法があるかを聞くために,L及びMに上記会議への参加を依頼したものである(乙B11号証の1,13号証の6)。 Lは,上記会議の席上,会社を法的に整理する方法 ればならない事態になったときにどのような方法があるかを聞くために,L及びMに上記会議への参加を依頼したものである(乙B11号証の1,13号証の6)。 Lは,上記会議の席上,会社を法的に整理する方法としては,会社整理や会社更生があること,会社整理の場合,全債権者の同意が必要となること,会社更生の場合,税金も止められること,いずれの方法を採るにしても,その前には金融機関間の信義を尽くしておかなければならない,すなわち,幸和不動産の他の借入先金融機関に対して根抵当権設定登記が登記留保の状態であるので,その仮登記手続をしなければならないことなどを説明した(乙B5号証の1,11号証の1,13号証の6,14号証の1,3)。 被告A2は,幸和不動産には400億円くらいの含み損があると聞いたことから,脱退原告が幸和不動産あて債権の回収不能分をすべて償却する力はないので,更生手続開始申立てを持ち出して他の金融機関にも応分の負担をしてもらっていいではないかという意見を述べた(乙B16号証の2,3)。 この会議においては,法的整理を検討するという選択肢が示されたのみで,法的整理によることが決定されたものではなかった(被告A1,乙B1号証の2,16号証の2)。 (ウ) B及びKは,平成8年12月23日,幸和不動産の処理等に関してBの知人である日本銀行行員と会い,同月25日,その内容(「幸和不動産の整理等の当局への相談は平成9年1月下旬又は2月初旬に行うのがよいのではないか。」「一般的には会社整理にしても5年程度のものである。」「幸和不動産は金額的には大きくないと思う。」「福徳銀行等は縮小して存続可能リース等は会社整理,その他は特別清算で処理している。」等の話があった。)を被告A1に報告した(甲B31号証の3)。 キ平成9年1月の状況(ア) K,V及びIは 。」「福徳銀行等は縮小して存続可能リース等は会社整理,その他は特別清算で処理している。」等の話があった。)を被告A1に報告した(甲B31号証の3)。 キ平成9年1月の状況(ア) K,V及びIは,平成9年1月8日,Lの事務所を訪問し,幸和不動産の収支計画等について説明したところ,a会社整理については,①欠損見込みが大きく再建計画が成り立たないこと,②原則として債権者全員の承認が必要であるが,①の状況と先順位担保権者の保全状況から判断して,承認が得られないと予想されることから,「会社整理では生ぬるい。会社更生法が望ましい。」旨の説明を,b会社更生については,(a)申立て上の問題点として,①必要資金の調達,②債権者の同意,③経営権,④抵当権設定の否認といった問題がある,(b)申立て前にしておかなければならない事項として,①日建エンジニアリングへの持分移転登記,②全債権者に対する根抵当権・抵当権設定契約に基づく登記,③第三者による担保提供がある旨の説明をそれぞれ受けた。Kは,上記説明を被告A1及びBに報告した。 (甲B31号証の4,5,38号証の2,乙B2号証の1,11号証の1,13号証の6,14号証の1)K及びVは,平成9年1月10日,Lの事務所を訪問し,幸和不動産が借入先金融機関に対して約定弁済の猶予と金利引下げを求める場合の問題点について相談した。Lは,幸和不動産が自ら返済不可能であることを認めるものであり,仮差押え等法的措置をとられる可能性があることから,日建エンジニアリングへの持分移転登記が完了した後に申し入れた方がよい旨説明した(甲B31号証の5,乙B2号証の1,11号証の1)。Kは,上記説明を被告A1及びBに報告した(乙B13号証の6,14号証の1)。 K,V及びIは,平成9年1月23日,Lの事務所を訪問し,興銀からの後記 B31号証の5,乙B2号証の1,11号証の1)。Kは,上記説明を被告A1及びBに報告した(乙B13号証の6,14号証の1)。 K,V及びIは,平成9年1月23日,Lの事務所を訪問し,興銀からの後記(ウ)の根抵当権設定仮登記手続の申出について相談し,同月30日には,Lの事務所において興銀に差し入れる念書について相談した(甲B31号証の5,38号証の5)。 (イ) Kは,平成9年1月14日,B,F,H及びIに対し,K作成の「幸和不動産のスケジュール」と題する書面の内容について説明した(甲B36号証の4,7,38号証の2,5,39号証の1,4,乙B14号証の1)。 上記書面の「9年1月」の欄には,「完成宅地及び未完成宅地をまとめて売却して借入金の返済を図ることとして,現在阪急不動産と具体的方策を話合い中」「担保物件については,日建エンジニアリングに対する移転登記作業を始める」などという旨の記載が,「9年3月(4月)」の欄には,「約定返済ストップ」「金利1%?へ」との記載及び「担保権をいつでも設定できる状態にしておく」旨の記載が,「9年7月以降」の欄には,「X日」との記載がある。 なお,Bは,Kが上記書面の内容について被告A1に説明した旨供述している(乙B14号証の1,4)。しかし,Kは,上記書面の内容について被告A1に説明したと思う旨供述したものの,記憶がはっきりしないとも供述している(乙B1号証の2,3,甲B31号証の5)。そして,被告A1は,上記書面の内容について説明を受けていない旨供述している(乙B13号証の6)。したがって,Kが被告A1に対して上記書面の内容を説明したか否かは証拠上明らかではないが,少なくとも,被告A1が,上記書面に記載されているように,幸和不動産の整理について具体的なスケジュールを検討したり指示した形跡は全くない。 て上記書面の内容を説明したか否かは証拠上明らかではないが,少なくとも,被告A1が,上記書面に記載されているように,幸和不動産の整理について具体的なスケジュールを検討したり指示した形跡は全くない。 (ウ) 興銀は,平成9年1月16日,脱退原告及び幸和不動産に対し,平成8年4月30日付け担保協定(甲B31号証の5 本件旧担保協定の内容を一部変更したもの。)に基づき,登記のための当事者間の協議を開始するよう依頼する書面を送付した(甲B31号証の5,38号証の5)。 また,長銀も,口頭で根抵当権設定仮登記手続を申し出るなど,幸和不動産の借入先金融機関は債権保全の動きを強めてきた(甲B31号証の5)。 Kは,被告A1及びBに対し,平成9年1月から同年9月までに弁済期が到来する借入先が,いずれも脱退原告の幸和不動産に対する支援計画を待っており,同年1月中に脱退原告が上記支援計画を提出しない場合,山手台物件について保全措置等を講じるおそれがあること並びに興銀及び長銀が根抵当権設定仮登記手続を申し出ていること等を報告した(甲B31号証の5,38号証の2)。 (エ) 脱退原告及び幸和不動産は,Lと相談の上,平成9年1月31日,興銀に対し,「脱退原告及び幸和不動産は,平成8年4月30日付け担保協定上の当事者(脱退原告を除く。)と幸和不動産の間で抵当権仮登記手続に関する合意書を締結し,抵当権の目的たる持分の上に抵当権設定仮登記を行う所存である。脱退原告は,以上のことを承諾の上,責任を持って上記合意書の締結及び仮登記を完了させ,幸和不動産が上記担保協定上の当事者に対し迷惑をかけないよう十分配慮する。」旨の念書を差し入れた(甲B31号証の5,36号証の7,38号証の2,5)。 ク平成9年2月及び3月の状況(ア) 平成9年2月17日の会議(甲B31号証の5, 対し迷惑をかけないよう十分配慮する。」旨の念書を差し入れた(甲B31号証の5,36号証の7,38号証の2,5)。 ク平成9年2月及び3月の状況(ア) 平成9年2月17日の会議(甲B31号証の5,36号証の4,7,38号証の2,5,乙B13号証の6,14号証の1,3)被告A1,B,K,V,F及びIは,平成9年2月17日,会議を開いた。Bは,会議の席上,「現状の幸和は整理以外にない。」「外から(銀行団,阪急等)追い詰められている。時間的な余裕もない。延ばせばそれだけロスが増え,すべてが駄目になる。資金的には(銀行法13条に基づく信用供与限度額の関係で)6月が限度である。」などと説明した。ただし,Bは,現状のままでは整理せざるを得なくなるので,幸和不動産の借入先金融機関との間で根抵当権設定仮登記手続をした上で金利減免の交渉をするなどの打開策,具体策を考えてほしいという趣旨で説明したのであり,幸和不動産を法的に整理しなければならないと考えていたわけではなかった。これに対し,被告A1は,具体的な指示をせず,もう一度みんなで集まって協議をする必要があると答えた。 (イ) 平成9年2月25日の会議(甲B31号証の5,36号証の4,7,乙B11号証の1,13号証の6,14号証の1,3,16号証の3,4)被告A1は,平成9年2月25日,被告A2,B,W,F,X,K,V,L及びMを,脱退原告グループの接待施設を兼ねた寮であるiに集めて会議を開いた。Lは,会議の席上,「会社整理では生ぬるく,徹底的な整理が必要である。」と述べ,更生手続開始申立て前にしておかなければならない事項として,①日建エンジニアリングへの持分移転登記及び②全債権者に対する(根)抵当権設定契約に基づく仮登記手続を指摘した。これに対して,上記事項を処理するに当たっての問題点として,① ればならない事項として,①日建エンジニアリングへの持分移転登記及び②全債権者に対する(根)抵当権設定契約に基づく仮登記手続を指摘した。これに対して,上記事項を処理するに当たっての問題点として,①国土法違反の問題及び②日建エンジニアリングが難色を示していることが挙げられ,協議の結果,幸和不動産の借入先金融機関が,日建エンジニアリングから要求があれば同社の持分についての(根)抵当権設定仮登記を抹消する旨の協定を締結することにより,同社の了解を得て,幸和不動産名義となっている持分50パーセントについて(根)抵当権設定仮登記をするという方針が決定された。しかしながら,この会議において,幸和不動産をどのような方法によって整理するのかについて,特定の法的手続によること等が決まったわけではなかった。 (ウ) V及びFは,平成9年2月27日,Lの事務所を訪問し,幸和不動産の借入先金融機関に対して根抵当権設定仮登記手続をすることについて相談した(乙B11号証の1)。 (エ) 被告A1及びKは,平成9年3月4日,日本銀行大阪支店及び近畿財務局を訪問し,幸和不動産の現状について,①販売ペースが平成7年の阪神大震災後大幅に落ち,かつ,工事費,負担金,借入金金利がかさみ,現在の価格を前提とすれば,将来大幅な赤字事業となる見込みであること,②借入金残高がグループ外530億4500万円,グループ内66億9700万円,脱退原告167億9500万円となっていて返済財源不足が見込まれるとともに,他行からの返済要請も強く,脱退原告からの融資以外資金調達方法がなくなりつつあること,③「社会的に表面化しない方法」で処理したいと考えているが,返済猶予,金利減免等の申出をせざるを得ない事態になっていること,及び④平成9年2月末現在,脱退原告の負担は257億4200万円(保証 と,③「社会的に表面化しない方法」で処理したいと考えているが,返済猶予,金利減免等の申出をせざるを得ない事態になっていること,及び④平成9年2月末現在,脱退原告の負担は257億4200万円(保証を含む。)となっており,今後も増加し債権償却負担となる可能性があること等を報告した。 これに対し,日本銀行大阪支店は,「幸和不動産の処理について,決断されたのですね。決断が遅すぎても傷が深くなりますからね。支払準備を厚くしておいてください。」と回答した。また,近畿財務局は,①まず再建計画をはっきり立てることである(脱退原告及び幸福銀行グループが債権放棄を含めどれだけの犠牲を払うのか腹を決められたい。),②法的整理をするにしても,その前に再建の可否をはっきり見極められたい,③情報管理を十分行われたい等と回答した。被告A2及びBは,上記回答について,Kから報告を受けた。 (甲B31号証の8,乙B13号証の6,14号証の1,16号証の3)(オ) I及びVらは,平成9年3月24日,Lの事務所を訪問し,日建エンジニアリングとの交渉について相談した(甲B34号証,乙B11号証の1)。 なお,脱退原告及び幸和不動産の担当者は,これ以降平成9年7月16日までの間,Lに幸和不動産の処理に関連した相談をしたことはなかった(甲B34号証,乙B11号証の1)。 (カ) 被告A1は,後記ケ(イ)の会議のころまでの間,最悪の場合には更生手続開始申立てをせざるをえないかとは考えていたものの,できるだけ穏便な,あまり目立たない方法で幸和不動産の問題を処理することができないかと考えていた。しかしながら,他に具体的な処理の方法を検討していたわけではなかった。(乙B13号証の7)ケ新会社設立案の検討(ア) 幸和不動産は,平成9年2月24日,脱退原告関連事業部(K)に対し,新会 た。しかしながら,他に具体的な処理の方法を検討していたわけではなかった。(乙B13号証の7)ケ新会社設立案の検討(ア) 幸和不動産は,平成9年2月24日,脱退原告関連事業部(K)に対し,新会社を設立し,山手台物件等の山手台開発事業に関する資産と,幸福銀行グループ以外の会社からの借入金債務を新会社に承継させ,幸福銀行グループの会社からの借入金債務及び同グループの会社からの求償金債務のみを残した幸和不動産については適当な時期に清算するという案(以下「新会社設立案」という。)を提出した(甲B31号証の6,38号証の2)。 (イ) 平成9年4月22日の会議(甲B31号証の6,32号証の5,36号証の4,7,38号証の2,39号証の2,乙B3号証の1,13号証の7,14号証の1)被告A1,B,K,F,H,I及びVは,平成9年4月22日,会議を開いた。 この会議では,Kが,幸和不動産の平成9年4月から同年12月までの資金繰りの説明を行った。その内容は,①約定どおりの元利弁済を実施した場合,49億1400万円の資金不足が生じ,同額を脱退原告から借り入れると,銀行法13条に基づく信用供与限度額を3億5100万円超過する,②約定弁済を実施するが,金利を1パーセントに引き下げるとすると,40億6600万円の資金不足が生じ,同額を脱退原告から借り入れると,銀行法13条に基づく信用供与限度額まで4億9700万円の空きが残る,③約定弁済を停止し,金利を1パーセントに引き下げるとすると,27億6400万円の資金不足が生じ,同額を脱退原告から借り入れると,銀行法13条に基づく信用供与限度額まで21億1500万円の空きが残るなどというものであった(甲B31号証の6)。これに対し,被告A1が,金利減免を申し入れて約定返済を停止した場合,マスコミリスク(幸和不動産 に基づく信用供与限度額まで21億1500万円の空きが残るなどというものであった(甲B31号証の6)。これに対し,被告A1が,金利減免を申し入れて約定返済を停止した場合,マスコミリスク(幸和不動産の経営が不振で脱退原告の負担となっている事実が幸和不動産の借入先金融機関を通じて外部に漏れるおそれ)が大きいとの意見を述べた(乙B13号証の7)。 次に,Iが新会社設立案について説明し(甲B31号証の6),Kが,現物出資によるよりも営業譲渡による方がメリットが大きいと意見を述べた。 上記会議では,全借入先金融機関に対して約定弁済の停止と金利の1パーセントへの引下げを依頼すること,マスコミリスクに対して体制を組むこと,新会社への移行は営業譲渡の方法によること,日建エンジニアリングの持分については買い取ること(その際,脱退原告が日建エンジニアリングに対して当該持分の原価として融資していた債権85億円と当該持分の時価との差額については,有税で償却する。),新会社の設立については,日建エンジニアリングとの話し合いがつくまでは,資産の評価をし,新会社を一応設立するにとどめ,対外的な活動はしないこと,新会社の資本金及び株主を検討すること等の結論が出た。 (ウ) 被告A1,B,K,V,F及びIは,平成9年5月26日,日建エンジニアリングの持分の処理に関して会議を開いた。この会議では,①法的整理を前提に,幸和不動産及び日建エンジニアリングの権利について第三者対抗要件を完備させておくこと,②借入先金融機関に協力を要請するための前提条件として担保権の設定登記を行うこと,③計画変更(売値の引下げ等)の支障を排除することを目的として,4通りの処理案が検討された。(甲B32号証の5,乙B1号証の3,2号証の1,3号証の2,5号証の1)(エ) F及びIは,前記(イ)の会 計画変更(売値の引下げ等)の支障を排除することを目的として,4通りの処理案が検討された。(甲B32号証の5,乙B1号証の3,2号証の1,3号証の2,5号証の1)(エ) F及びIは,前記(イ)の会議の結論に基づき,平成9年7月,大和銀行,日債銀,興銀及び長銀に対し,現状では資金繰りが同年10月から11月にパンクするので支払ができない,適用金利を同年7月から年1パーセントに引き下げられたい旨を要請した。これに対し,上記各行は,再建計画なくして金利引下げに応じることはできないなどと回答した。(甲B31号証の6,9,38号証の2,5)(オ) 平成9年7月4日の会議(甲B31号証の6,32号証の5,36号証の4,7,38号証の2,5)被告A1,B,K,V,F及びIらは,平成9年7月4日,会議を開いた。この会議では,Iが作成した資料を基にVが作成した「経営改善計画」(甲B31号証の6)について,検討された。 上記「経営改善計画」の内容は,概ね次のとおりである。 a 基本方針幸和不動産の子会社でない新会社を設立して「山手台」を時価(ただし,今後の事業遂行可能額)で売買し事業を引き継ぐ。 b 概要(a) 日建エンジニアリングの持分については幸和不動産が約85億円で買い戻す。 (b) 新会社は,日建エンジニアリングからの買戻し分を含めて約446億円で買い取る。 c 母体行及びグループの支援① 幸和不動産分約400億円② 日建エンジニアリング分約 39億円合計約439億円d 取引金融機関への要請(a) 1番抵当権者の現融資残高を新会社に移行する。 (b) 増額融資(脱退原告を含む。)① 日建エンジニアリングからの買戻し分約46億円② 新会社移行に伴う登録税,取得税約18億円③ 1,2年度運転 者の現融資残高を新会社に移行する。 (b) 増額融資(脱退原告を含む。)① 日建エンジニアリングからの買戻し分約46億円② 新会社移行に伴う登録税,取得税約18億円③ 1,2年度運転資金約12億円合計約76億円(c) 金利当初5年間1パーセント以後10年間3パーセント(d) 返済方法販売代金によるプロラタ方式e その他(a) 移行作業にかかる時間の短縮(b) 各種届出が必要となる。 (①国土法届出,②地位の承継,③公正取引委員会届出)(カ) 平成9年7月8日の会議被告A1,同A2,B,K及びVらは,平成9年7月8日,会議を開いた。Kが前記「経営改善計画」を説明したが,被告A2は,この計画は,新会社に資産と脱退原告以外の他の取引金融機関からの融資分が移行されるが,脱退原告を含むグループの融資分は資産のなくなった幸和不動産に残しておくことから債権償却が必要となるところ,脱退原告には幸和不動産に対する400億円を超える債権を償却するだけの体力がないとしてこれに反対した。その結果,被告A1らは新会社設立案を採用しないことを決定し,被告A1は,同A2に,幸和不動産の再建計画について検討するよう指示した。これを受けて,被告A2は,以前脱退原告の管理部長を務めていたOに,幸和不動産の処理について検討するよう指示した。(甲B31号証の6,32号証の5,36号証の4,7,38号証の2,5,乙B13号証の7,14号証の1,16号証の3)コ Oの報告内容等Oは,平成9年7月15日ころ,「幸和不動産㈱再建に関する件」と題する書面を作成した(乙B47号証,丙B15号証以下「O報告書」という。)。O報告書には,問題点として,①早急に日建エンジニアリングを排除する 9年7月15日ころ,「幸和不動産㈱再建に関する件」と題する書面を作成した(乙B47号証,丙B15号証以下「O報告書」という。)。O報告書には,問題点として,①早急に日建エンジニアリングを排除する必要があること,②幸和不動産の借入先金融機関に対し返済の猶予を求めるためには,根抵当権設定仮登記手続を行う必要があること,③根抵当権設定仮登記手続をしていない状況で突如法的整理手続を行った場合,関連会社に対する貸出金融機関は一斉に強硬な方策を採ることになり,ひいては脱退原告そのものに対する影響も強まり,重大な事態が生じることが想定されること,④法的整理を行う場合,合計366億6800万円を申し立てたその期に直ちに償却しなければならないこと等が挙げられている。 また,処理方法の案として,①脱退原告が日建エンジニアリングに対して有する貸金債権85億円について,脱退原告の関連会社(綜合ハウジングがよいのではないか。)に返済させ,日建エンジニアリングの持分(登記上は幸和不動産の持分)を代物弁済で取得させる,②幸和不動産の借入先金融機関に対しては,幸和不動産の持分の上に根抵当権設定の仮登記を行い,関連会社が取得した持分も担保に提供して山手台物件の処分ができるごとに処分代金を債権額に応じた比率により案分して弁済する,③脱退原告も根抵当権設定仮登記手続を経るが,売却代金の案分配当額はゼロとし,5年後以降は案分配当額が生じれば受領する,ただし,担保物件の処分による弁済であるので,利息はゼロとしたい,④脱退原告の金融機関に対する保証債務の履行については3年間(又は5年間)履行を猶予してもらい,それ以降,1年ごとに保証額の30パーセントを2回,40パーセントを1回支払う,⑤日建エンジニアリングの持分を取得する場合,和解調書があれば国土法上の届出は必要ないので 年間)履行を猶予してもらい,それ以降,1年ごとに保証額の30パーセントを2回,40パーセントを1回支払う,⑤日建エンジニアリングの持分を取得する場合,和解調書があれば国土法上の届出は必要ないので,裁判所に対する和解の申立てをLに依頼するといった案が記載されている。 そして,結論として,総合的に判断すると,更生手続開始申立てをした場合,①他の金融機関からの関連会社への締め付けが厳しく,共倒れの様相が明らかであること,②更生手続開始申立てをした場合,申し立てた期に366億6800万円の償却処理を直ちにしなければならないこと,③関連信組及び京都共栄銀行も同様に償却処理をしなければならないこと,④更生手続開始申立てをした後,造成費用及び運転費用等多額の費用を必要とするが,現在の状況で資金を貸し出してくれる他の金融機関はないと思われること,仮に貸出しに応じてくれたとしても,担保を提供しなければならないが,幸和不動産に担保設定のない借入金を担保する不動産が必要とされること,⑤協定までして根抵当権設定仮登記手続をしないまま突然更生手続開始申立てをした場合,他の債権者(「債務者」との記載があるが,明らかな誤記である。)は誰も更生計画案に同意せず,結局は破産宣告を受けることとなり,最終的には脱退原告の存亡に及ぶこととなることから,会社更生手続による処理はすべきでないと記載されていた(乙B13号証の7,16号証の3)。 被告A2,O,P(脱退原告の管理部整理第一課),F,I及びVは,平成9年7月16日,Lの事務所を訪問し,O作成の上記書面について説明した。Lは,借入先金融機関に対して根抵当権設定登記をしなければならないという従来の説明を繰り返したほか,追加の担保を設定して譲歩を求めるのはよい考えである旨述べた。この日の打合せは,まず日建エンジニアリング 借入先金融機関に対して根抵当権設定登記をしなければならないという従来の説明を繰り返したほか,追加の担保を設定して譲歩を求めるのはよい考えである旨述べた。この日の打合せは,まず日建エンジニアリングの持分を買い取るのに必要な85億円を負担できるかどうかの議論だけで終わった。(乙B10号証,11号証の1)サ借入先金融機関に対する金利減免要請等被告A1,F,I,K及びVは,平成9年8月,幸和不動産の借入先金融機関に対して元金の返済猶予及び金利減免を要請したが,借入先金融機関はいずれもこれを拒否し,興銀は,平成9年8月29日付けで,幸和不動産に対し,同社振出の手形の書替えに応じず,同社に対する債権を延滞扱いとし,支払期日以降年14パーセントの割合に当たる損害金を申し受ける旨を通知した(甲B31号証の7,40号証の2)。 K及びVは,平成9年8月26日,日本銀行大阪支店を訪問し,幸和不動産が,日建エンジニアリングの持分を買い取ること,借入先金融機関に対して金利減免及び返済猶予の申出を行っていること等を報告した。また,K及びVが,同月27日,近畿財務局を訪問し,同様の状況報告を行ったところ,近畿財務局は,①情報管理を十分されたい,②マスコミにコメントするときは毅然として対応できるよう準備されたい,③情報発信は一本化するのがよい等と回答した。(甲B31号証の7)シ日建エンジニアリングからの持分買取りと借入先金融機関に対する根抵当権設定仮登記手続(ア) 幸和不動産は,平成9年9月1日,日建エンジニアリングとの間で,山手台開発事業への参加に関する基本協定を合意解約し,同社に対して,同社が山手台開発事業に参加するために負担した正味負担金合計84億8711万6525円を返還するとともに,幸和不動産が同社名義で所有する山手台物件について,日建 基本協定を合意解約し,同社に対して,同社が山手台開発事業に参加するために負担した正味負担金合計84億8711万6525円を返還するとともに,幸和不動産が同社名義で所有する山手台物件について,日建エンジニアリングが何らの権利を有しないことを確認した。 幸和不動産は,上記合意解約の資金として,脱退原告から幸栄不動産を介して85億円の融資を受けた。 (甲B31号証の7,36号証の7,38号証の2,39号証の2,丙B16号証)(イ) 幸和不動産は,平成9年9月に,未造成地について,借入先金融機関に対する根抵当権設定仮登記手続を完了した(甲B37号証の1,40号証の2,乙B2号証の2,3,13号証の7,16号証の3,丙B17号証)。 ス借入先金融機関の金利引下げ興銀が,平成10年1月ころ,幸和不動産に対し,山手台物件が全く売れなかった場合,同社の資金繰りはどうなるのかという質問をしたことから,幸和不動産は,同年3月3日付けで,今後2年間山手台物件の売上げがない,工事は極力抑える,長期信用銀行及び都市銀行に対する金利を年1パーセントとし,信託銀行に対する金利を年1.625パーセントとする,必要な資金は株主から支援を受けるという前提を置いた資金繰計画を作成し,借入先金融機関に提出した。しかし,借入先金融機関は,長期信用銀行及び都市銀行に対する金利を年1.625パーセントとすること,山手台物件の売上げの50パーセントを返済に充てることを主張したため,幸和不動産はこれらの主張を受け入れ,平成10年3月24日付けで,借入先金融機関に対して修正資金繰計画を提出した。その結果,借入先金融機関のうち,興銀は,平成10年3月分から,幸和不動産に対する手形貸付債権の延滞扱いを解除し,同行を含む長期信用銀行,都市銀行及び信託銀行等は,同年6月以降,従来2. 提出した。その結果,借入先金融機関のうち,興銀は,平成10年3月分から,幸和不動産に対する手形貸付債権の延滞扱いを解除し,同行を含む長期信用銀行,都市銀行及び信託銀行等は,同年6月以降,従来2.125パーセントないし3.125パーセントであった金利を1.625パーセントに引き下げた。(甲B37号証の1,38号証の3,40号証の2)セ京都共栄銀行からの幸和不動産に対する債権譲受け脱退原告は,平成10年10月1日,京都共栄銀行から営業の全部譲渡を受け,幸和不動産に対する合計25億3500万円の債権を譲り受けた(甲A43号証,44号証)。これにより,脱退原告の幸和不動産に対する貸付債権が銀行法13条に基づく信用供与限度額を超えることとなった。脱退原告は,金融監督庁に申請をして,幸和不動産に対する貸出について信用供与限度額を超えることを許可する旨の承認を受けたものの,超過分を解消する必要があった。(甲B48号証の14の1,49号証の9)ソ幸和不動産によるマンション転売幸和不動産は,脱退原告の上記セの事情に加え,平成10年12月ころ,長銀の要請に応じて,同行に対し,年間30億円の利益を上げるという5年間の資金収支の計画書を提出しており,30億円の利益を上げる必要があったことから,30億円の利益を上げることのできる取引を探した。その結果,幸和不動産は,ハッピークレジットと共同で,平成11年2月18日,木村産業から,住管機構のために担保権が設定されていたマンション47棟を,代金総額115億円で購入し,この物件を,同月26日,富士住建の関連会社である有限会社セントラル企画(平成11年2月設立),株式会社ポラリス(平成10年10月設立),有限会社ネットワーク(平成11年2月設立),株式会社ティー・エム・エーコンサルティング(平成11 会社である有限会社セントラル企画(平成11年2月設立),株式会社ポラリス(平成10年10月設立),有限会社ネットワーク(平成11年2月設立),株式会社ティー・エム・エーコンサルティング(平成11年1月設立)の4社(以下,総称して「買主4社」という。)に代金総額185億円で売却し,幸和不動産とハッピークレジットが仲介手数料等の諸費用を除いた各30億円の利益を上げた。脱退原告は,平成11年3月30日,買主4社に対し,マンション購入資金のほか,購入諸費用や運転資金として25億円を上乗せした合計210億円を融資した。(甲B48号証の14の1,49号証の9,乙B3号証の4,4号証の1,2)脱退原告が上記融資を決定するに際し,被告A2代理人弁護士Zは,脱退原告に対し,平成11年3月19日,「元木村産業㈱所有不動産の取引に関する問題点」と題する書面を提出した。同書面には,「要旨」として,次のような記載がある。(甲B48号証の14の1,49号証の9)① この取引は,幸和不動産及びハッピークレジットが,代金120億円でマンション47棟を買い取り,これを即買主4社に約180億円で売り渡すもので,幸和不動産及びハッピークレジットにとって非常に有益な取引である。 ② ただ,脱退原告は,このペーパー会社ともいえる買主4社に対し買取代金に費用と運転資金約30億円を加えた計210億円を47棟のマンションを担保に貸し付けるもので,この貸付金の回収に懸念が生ずると,この担保が万全でなければ,幸和不動産及びハッピークレジットが得る60億円の利益相当分はもちろん最大210億円の損失を受けることとなる。 ③ したがって,本件取引の所期の目的を達成するには,47棟の担保物件の保全に万全を期さなければならない。特に,本件物件は公権力を背景に持つ住管機構でさえ110億円の損切り 損失を受けることとなる。 ③ したがって,本件取引の所期の目的を達成するには,47棟の担保物件の保全に万全を期さなければならない。特に,本件物件は公権力を背景に持つ住管機構でさえ110億円の損切りをして担保抹消している物件であり,その上,買主4社の信義を期待しうるような事情もなく,買主4社は本融資により運転資金として30億円を得れば,態度を一転して融資金返済をしないことも予想され,脱退原告は再び元の担保権利者である住管機構と同様の立場に追いやられ,大きな損失を受ける可能性が少なくないと考えるべきである。 タ本件幸和不動産融資の実行脱退原告は,平成9年2月から平成11年5月までの間,本件幸和不動産融資を実行した。 チ債権の一部回収原告は,脱退原告から,幸和不動産に対する貸付金債権等を譲り受けた後,平成15年4月14日,根抵当権設定仮登記の抹消料等として,合計300万円を回収した。また,物件売却により,同年8月25日に132万7483円を,同年10月16日に180万円をそれぞれ回収した。(甲A65号証の1,4ないし6)(2) 争点(4)(具体的法令違反又は善管注意義務違反・忠実義務違反)についてア綜合ハウジング案件と同様に,被告らが本件幸和不動産融資を実行するという措置を執った時点において,判断の前提となった事実の認識に重要かつ不注意な誤りがあったか,あるいは,意思決定の過程,内容が企業経営者一般としてではなく,銀行の取締役として特に不合理,不適切なものであったか否かについて検討する。 イ本件幸和不動産融資の回収可能性①幸和不動産は,平成7年9月期及び平成8年9月期においていずれも9億円を超える経常損失を計上する一方,平成7年9月期においては761億5800万円,平成8年9月期においては762億2100万円と多額の借入 動産は,平成7年9月期及び平成8年9月期においていずれも9億円を超える経常損失を計上する一方,平成7年9月期においては761億5800万円,平成8年9月期においては762億2100万円と多額の借入金債務を負っていたこと(前記第2の1(5)イ),②幸和不動産は,平成7年及び平成8年の時点において,山手台物件の完売(一部又は全部を他社に一括売却する場合を含む。)及び地価の上昇等の前提条件を置いたとしてもなお,販売については原価割れとなり,平成8年7月9日付けの試算によれば,200億円台から500億円台の資金不足,300億円台から600億円台の借入金残高,300億円台から500億円台の繰越損失が予想されていたこと(前記(1)イ,エ),③平成7年12月の大和銀行からの借入れを最後に,脱退原告及びその系列金融機関以外の金融機関からの借入れを断られるようになった(前記(1)ウ(イ))上,平成8年11月ころ以降には,支払期限の延長には脱退原告の保証や定期預金や国債といった他の確実な担保の提供を求められるようになったこと(前記(1)カ(ア))等の事実を総合すれば,遅くとも平成8年7月の時点において,幸和不動産は,単体では,脱退原告からの救済融資ないし資金援助がなければおよそ存続することができない状態であって,実質的には破綻しており,脱退原告が幸和不動産に融資した場合,融資金の相当部分が回収不能となる具体的な可能性があったものと認められる。 なお,被告A1は,平成10年4月以降,幸和不動産が脱退原告からの借入額よりも多く返済する月が頻繁に生じるようになり,同年半ばには脱退原告からほとんど借入れをしなくても足りるようになり,平成11年には,不動産取引による約30億円の利益によって,脱退原告への返済額が借入額を上回ることとなったのであり,一定期間同社を存 半ばには脱退原告からほとんど借入れをしなくても足りるようになり,平成11年には,不動産取引による約30億円の利益によって,脱退原告への返済額が借入額を上回ることとなったのであり,一定期間同社を存続させることができる経営状態であった旨主張する。 しかしながら,山手台物件の販売は,原価割れであった上に,その購入者に対して不動産購入資金に加えて事業資金についても融資するなどの特別の支援策をとっていたものであるし(前記(1)ア(コ)),脱退原告の幸和不動産に対する融資額は,銀行法13条に基づく信用供与限度額に近づいていた(前記(1)ケ(イ),同セ)上,証拠(甲B37号証の2,38号証の1)によれば,平成10年4月から平成11年3月までの間,脱退原告からの借入額よりも脱退原告への返済額が多かったのは平成10年5月,7月,8月,10月及び平成11年3月の5か月にとどまる。また,平成10年4月から平成11年3月までの収支をみると,収入が支出を上回ったのは平成10年5月,7月,9月,10月,平成11年2月,3月の6か月であり,平成10年5月の収入超過分(4億7563万8000円)は翌6月(7億0275万1000円の支出超過)に,同年7月,9月及び10月の収入超過分(合計4億1587万3000円)は同年11月及び12月(5億4793万4000円の支出超過)によっていずれも減殺されており,脱退原告からの借入れなくして資金繰りをつけていくことは極めて困難であったものと認められる(平成10年6月から平成11年2月にかけて脱退原告からの借入金は8億9680万円増加しており,平成10年7月から平成11年2月にかけてみても脱退原告の借入金は6億2320万円増加している(いずれも,京都共栄銀行の債権を承継した分を除く。)。)。したがって,被告A1の上記主張は前記 ており,平成10年7月から平成11年2月にかけてみても脱退原告の借入金は6億2320万円増加している(いずれも,京都共栄銀行の債権を承継した分を除く。)。)。したがって,被告A1の上記主張は前記認定を左右しない。 また,被告A1は,幸和不動産が平成11年3月に前記(1)ソの取引によって約30億円の利益を上げたことを挙げ,このような取引は以後も定期的に見込むことができたとして,上記主張を補足する。 しかしながら,上記取引は,前記(1)ソのとおり,脱退原告の幸和不動産に対する融資限度額との関係及び幸和不動産が借入先金融機関に提出した資金収支の計画書との関係で必要に迫られてされた取引であり,設立後間もない買主4社に対して脱退原告がリスクのある多額の融資を実行することによってはじめて実現したものであるから,脱退原告の経営に悪影響を及ぼすことなくこのような取引を定期的に見込むことができたとは認められない。 ウ被告らの認識(ア) 被告A1は,前記(1)イ,エのとおり,山手台開発事業の収支見込み等について詳細な説明を受けており,前記(1)オのとおり,幸和不動産とコーエークレジットの合併及び一括売却についての検討を指示するとともに,自らも一括売却の交渉を行っていたものであり,前記イの事情を認識していたものと認められる。したがって,被告A1は,遅くとも平成8年7月の時点において,幸和不動産は,単体では,脱退原告からの救済融資ないし資金援助がなければおよそ存続することができない状態であって,実質的には破綻しており,脱退原告が幸和不動産に融資した場合,融資金の相当部分が回収不能となる具体的な可能性があることを認識していたものと認められる。 (イ) 被告A2は,前記(1)オ(イ)のとおり,平成8年夏ころ,被告A1から,幸和不動産が赤字であり,コーエークレ 当部分が回収不能となる具体的な可能性があることを認識していたものと認められる。 (イ) 被告A2は,前記(1)オ(イ)のとおり,平成8年夏ころ,被告A1から,幸和不動産が赤字であり,コーエークレジットが相当黒字であるから,合併して埋め合わせをするというような話を聞き,Kから,幸和不動産は,山手台物件の完売及び地価の上昇等の前提条件を置いたとしてもなお,販売については原価割れとなり,200億円台から500億円台の資金不足,300億円台から600億円台の借入金残高,300億円台から500億円台の繰越損失が予想される旨の収支見込み合計表等を受け取っていたほか,前記(1)カ(イ)のとおり,平成8年12月22日の会議に出席し,幸和不動産を法的に整理する場合の問題点等について弁護士から説明を受け,自らも,脱退原告が幸和不動産あて債権の回収不能分をすべて償却する力はないので,更生手続開始申立てを持ち出して他の金融機関にも応分の負担をしてもらっていいではないかという意見を述べている。したがって,被告A2は,遅くとも平成8年12月の時点において,幸和不動産は,脱退原告からの救済融資ないし資金援助がなければおよそ存続することができない状態であって,実質的には破綻しており,脱退原告が幸和不動産に融資した場合,融資金の相当部分が回収不能となる具体的な可能性があることを認識していたものと認められる。 エ幸和不動産を支援する必要性幸和不動産は脱退原告の関連会社であり,前記(1)キ(ウ)のとおり,興銀や長銀等幸和不動産の借入先金融機関は,脱退原告に対し,根抵当権設定仮登記手続を求めるなど,脱退原告を幸和不動産の母体行と考えていたものである。したがって,脱退原告が幸和不動産に対して救済融資ないし資金援助をしない結果として同社が破綻した場合,脱退原告には関連会 仮登記手続を求めるなど,脱退原告を幸和不動産の母体行と考えていたものである。したがって,脱退原告が幸和不動産に対して救済融資ないし資金援助をしない結果として同社が破綻した場合,脱退原告には関連会社を救済する体力がないと判断されて,脱退原告の信用不安を招来するおそれがなかったとはいえない。したがって,本件幸和不動産融資当時,脱退原告としては,幸和不動産の再建を支援するか,あるいは信用不安を招来しない形での整理を支援するなど何らかの措置を講じる必要に迫られたものと推認することができる。 オ本件幸和不動産融資の決定過程(ア) しかしながら,関連会社の経営破綻により信用不安を招来することを回避するためであっても,常に関連会社を存続させることが許されるわけではないし,また,存続させることが許されるとしても,無限定にあるいはどのような方法であっても許されるわけではなく,脱退原告の取締役に与えられている裁量を超えた場合には,善管注意義務違反及び忠実義務違反の責を負う場合も考えられる。そして,本件においては,前判示のとおり,幸和不動産に対する融資の相当部分が回収不能となり,脱退原告に損失が発生する具体的な可能性があったものである。 そこで,本件幸和不動産融資の決定過程について検討する。 (イ) 脱退原告における関連会社向け融資の決定過程の実態については,本件綜合ハウジング融資の決定過程に関して,前記2(2)オ(ウ)aで判示したとおりであり,その後も改善がされていない。 (ウ) 平成9年2月から同年4月までの融資についてa 被告A1は,前判示のとおり,遅くとも平成8年7月の時点において,幸和不動産は,単体では,脱退原告からの救済融資ないし資金援助がなければおよそ存続することができない状態であって,実質的には破綻しており,脱退原告が幸和不動産に融資 とも平成8年7月の時点において,幸和不動産は,単体では,脱退原告からの救済融資ないし資金援助がなければおよそ存続することができない状態であって,実質的には破綻しており,脱退原告が幸和不動産に融資した場合,融資金の相当部分が回収不能となる具体的な可能性があることを認識していたが,前記(1)オのとおり,同年12月22日の会議に至るまでの間,コーエークレジットとの合併及び一括売却という処理方法のみを検討していたものである。そして,被告A1は,上記会議の後から初めて法的整理を含めた検討を始めたものであるが,同被告自身,前記(1)ク(カ)のとおり,最悪の場合には更生手続開始申立てをせざるをえないかとは考えていたものの,できるだけ穏便な,あまり目立たない方法で幸和不動産の問題を処理することができないかと考えていたことなどから,①幸和不動産を再建するのか整理するのか(前提として,幸和不動産の整理によって脱退原告の信用が損なわれるおそれと幸和不動産を存続させるために必要な融資の回収不能による損失とを比較検討することとなる。),②幸和不動産を再建するとすれば,山手台開発事業を今後も継続するのか,同事業を売却するのか,他に新たな事業を開拓するのか否か及びその具体的内容並びに幸和不動産が山手台開発事業により抱えることとなる資金不足や損失を填補するための資金をどのように調達するのか,③幸和不動産を整理するとすれば,どのような手続を選択するのか(任意整理か法的整理か,後者であるとして,会社整理か会社更生か等),幸和不動産の整理によって脱退原告の債権をどの程度償却しなければならなくなるのか,他の借入先金融機関にどの程度の負担を求めることとなるのか,④具体的にどのような日程で幸和不動産の再建又は整理の手続を行っていくか等(以下,総称して「幸和不動産の処理方 しなければならなくなるのか,他の借入先金融機関にどの程度の負担を求めることとなるのか,④具体的にどのような日程で幸和不動産の再建又は整理の手続を行っていくか等(以下,総称して「幸和不動産の処理方針」という。)について,期限を設定して,自ら又は部下に指示して具体的に検討した形跡がない。 b 被告A2は,前判示のとおり,遅くとも平成8年12月の時点において,幸和不動産は,脱退原告からの救済融資ないし資金援助がなければおよそ存続することができない状態であって,実質的には破綻しており,脱退原告が幸和不動産に融資した場合,融資金の相当部分が回収不能となる具体的な可能性があることを認識し,前記(1)カ(イ)の会議において,脱退原告が幸和不動産あて債権の回収不能分をすべて償却する力はないので,更生手続開始申立てを持ち出して他の金融機関にも応分の負担をしてもらっていいではないかという意見を述べたものであるが,その後,前判示のとおり被告A1が幸和不動産の処理方針について具体的に検討していないにもかかわらず,幸和不動産の処理方針について,自ら又は部下に指示して具体的に検討しておらず,被告A1にこれを具体的に検討するよう進言した形跡もない。 c 以上のとおり,被告らは,平成9年2月から同年4月までの幸和不動産に対する融資を決裁するに当たり,幸和不動産の処理方針について具体的な検討をして経営判断をしたものではなく,単に,幸和不動産の借入先金融機関に対して根抵当権設定仮登記手続をする前に幸和不動産が破綻すれば脱退原告の信用が損なわれるから,幸和不動産を存続させるという理由で上記融資を決裁したにすぎないものといえる。 なお,前記(1)キ(ア),同ク(ウ),同(オ)のとおり,平成9年1月から同年3月にかけて,脱退原告及び幸和不動産の担当者がたびたびLの事務所を いう理由で上記融資を決裁したにすぎないものといえる。 なお,前記(1)キ(ア),同ク(ウ),同(オ)のとおり,平成9年1月から同年3月にかけて,脱退原告及び幸和不動産の担当者がたびたびLの事務所を訪問しているが,1月当初こそ,法的整理の場合にどの手続を選択するのがよいか,更生手続開始申立てをする場合に何をしておかなければならないか,どのような申立て上の問題点があるかといった基本的な点について相談しているものの,その後は,借入先金融機関に対して約定弁済の猶予や金利減免を求める場合の問題点,興銀からの根抵当権設定仮登記手続の要求に対する対応等借入先金融機関に対する根抵当権設定仮登記手続に関する事項,日建エンジニアリングとの交渉といった点について相談するにとどまり,日建エンジニアリングの問題が解決し,上記仮登記手続が完了した後に,幸和不動産をどのように処理するのかという点については何ら相談していない。確かに,当時,興銀をはじめ借入先金融機関が仮登記手続を強く要求しているという状況であったから,どのような手続を経るにせよ,幸和不動産を再建又は整理するのであれば,借入先金融機関の権利関係を明確にしておくという経営判断はあり得ないことではない。しかしながら,上記仮登記手続が完了した場合,借入先金融機関はその権利を実行することがより容易となるのであり,幸和不動産にとっては前記権利を実行される可能性が高くなるという危険も生じることになるのであり,前判示のとおり,当時,幸和不動産が,単体では,脱退原告からの救済融資ないし資金援助がなければおよそ存続することができない状態にあり,実質的には破綻していたことからすれば,被告らは,日建エンジニアリングとの交渉及び上記仮登記手続の準備をするのと並行して,上記仮登記手続の完了後迅速かつ円滑に幸和不動産の再建 ができない状態にあり,実質的には破綻していたことからすれば,被告らは,日建エンジニアリングとの交渉及び上記仮登記手続の準備をするのと並行して,上記仮登記手続の完了後迅速かつ円滑に幸和不動産の再建又は整理を進めることができるように,幸和不動産の処理方針についても具体的に検討しておかなければならなかったといえる。 (エ) 平成9年5月から同年7月までの融資についてa 被告A1は,前記(1)ケ(イ)のとおり,平成9年4月22日,新会社設立案について検討した。しかしながら,ここにおいても,Kが新会社設立の形態別のスケジュール案等を示したにもかかわらず,日建エンジニアリングとの話し合いがつくまでは(その時期について具体的な見通しは立てられていない。)新会社を設立しても債務引受等の実質的活動はしないというあいまいな結論しか出しておらず,資本の額や株主構成等新会社の設立に必要な基本的事項についても検討事項とされるにとどまり,その後,被告A1が自ら又は部下に指示してこれらの点について具体的な検討をした形跡も認められない。 b 被告A2は,この間,新会社設立案の検討に関与しておらず,幸和不動産の処理方針について,自ら又は部下に指示して具体的に検討しておらず,被告A1にこれを具体的に検討するよう進言した形跡もない。 c 以上のとおり,被告らは,平成9年5月から同年7月までの幸和不動産に対する融資を決裁するに当たり,幸和不動産の処理方針について具体的な検討をして経営判断をしたものではなく,単に,幸和不動産の借入先金融機関に対して根抵当権設定仮登記手続をする前に幸和不動産が破綻すれば脱退原告の信用が損なわれるから,幸和不動産を存続させるという理由で上記融資を決裁したにすぎないものといえる。借入先金融機関の要求に応じて,日建エンジニアリングの問題を解決して 和不動産が破綻すれば脱退原告の信用が損なわれるから,幸和不動産を存続させるという理由で上記融資を決裁したにすぎないものといえる。借入先金融機関の要求に応じて,日建エンジニアリングの問題を解決して根抵当権設定仮登記手続を進めるという経営判断はあり得ないではないが,それまでの間,並行して幸和不動産の処理方針について具体的な検討をしておかなければならないことは前判示のとおりである。 (オ) 平成9年8月及び同年9月の融資についてa 被告A1は,前記(1)ケ(カ)のとおり,平成9年7月8日に新会社設立案を採用しないことを決定したが,同日,被告A2に幸和不動産の処理について検討するよう指示し,同被告は,これをOに検討させた。しかしながら,Oが同月15日ころに作成したO報告書は,前記(1)コのとおり,根抵当権設定仮登記手続をしないままに更生手続開始申立てをすると,幸和不動産の借入先金融機関が脱退原告の関連会社等に対して強硬な措置をとってくるおそれがあること,更生手続開始申立てをすると,脱退原告が多額の債権を償却しなければならなくなること等から,幸和不動産の借入先金融機関に対して根抵当権設定仮登記手続をした上で山手台物件の売却代金から案分弁済するというものであり,前判示のとおり,幸和不動産は当時既に脱退原告からの救済融資ないし資金援助がなければおよそ存続することができず,実質的に破綻した状態であったことからすると,著しく不合理な内容であったといわざるを得ない。そして,被告A1は,幸和不動産の処理方針について,自ら又は部下に指示して,これ以上には何ら検討をしてはいない。 b 被告A2は,被告A1の指示を受けて,平成9年7月8日以降,幸和不動産の処理について,Oに検討させたが,その検討結果は,前記aのとおり,著しく不合理な内容であったといわざるを 討をしてはいない。 b 被告A2は,被告A1の指示を受けて,平成9年7月8日以降,幸和不動産の処理について,Oに検討させたが,その検討結果は,前記aのとおり,著しく不合理な内容であったといわざるを得ない。そして,被告A2は,幸和不動産の処理方針について,自ら又は部下に指示して,これ以上には何ら検討しておらず,被告A1にこれを具体的に検討するよう進言した形跡もない。 c 以上のとおり,被告らは,平成9年8月及び同年9月の幸和不動産に対する融資を決裁するに当たり,幸和不動産の処理方針について具体的な検討をして経営判断をしたものではなく(Oの検討結果は,その内容が著しく不合理であって具体的な検討とはいえない。),単に,幸和不動産の借入先金融機関に対して根抵当権設定仮登記手続をする前に幸和不動産が破綻すれば脱退原告の信用が損なわれるから,幸和不動産を存続させるという理由で上記融資を決裁したにすぎないものといえる。借入先金融機関の要求に応じて,日建エンジニアリングの問題を解決して根抵当権設定仮登記手続を進めるという経営判断はあり得ないではないが,それまでの間,並行して幸和不動産の処理方針について具体的な検討をしておかなければならないことは前判示のとおりである。 (カ) 平成9年10月以降の融資についてa 被告A1は,平成9年9月に幸和不動産の借入先金融機関に対する根抵当権設定仮登記手続を完了した後も,幸和不動産の処理方針について,自ら又は部下に指示して何ら検討していない。 b 被告A2も,被告A1と同様に,根抵当権設定仮登記手続完了後も,幸和不動産の処理方針について,自ら又は部下に指示して何ら検討しておらず,被告A1にこれを具体的に検討するよう進言した形跡もない。 c 以上のとおり,被告らは,平成9年10月以降の幸和不動産に対する融資を決裁す 処理方針について,自ら又は部下に指示して何ら検討しておらず,被告A1にこれを具体的に検討するよう進言した形跡もない。 c 以上のとおり,被告らは,平成9年10月以降の幸和不動産に対する融資を決裁するに当たり,幸和不動産の処理方針について具体的な検討をして経営判断をしたものではなく,単に,幸和不動産が破綻すれば脱退原告の信用が損なわれるから,幸和不動産を存続させるという理由で上記融資を決裁したにすぎないものといえる(主張上も,被告A1は,当時の金融情勢等を根拠にして,幸和不動産をできる限り存続させる,あるいは一定期間存続させるという経営判断をした旨主張しており,被告A2は,「母体行責任」を根拠に本件幸和不動産融資をせざるを得なかった旨主張しており,いずれも幸和不動産の処理方針について具体的に検討していないことを前提としている。)。 これに対して,被告A1は,法的整理の措置をとると,幸和不動産の他の債権者から登記について否認の主張をされるおそれがあったから,仮登記手続の終了後即座に幸和不動産の法的整理に着手しうる状況にはなかった旨主張する。そして,これに沿うように,被告A1は,Lから,仮登記手続を完了した後も1年間は更生開始手続申立て等をすることができないと聞いていたので,1年間はじっとしておいて,1年後にその前後の状況を見ながらどう動くかを考えなければならないと考えた旨供述し(乙13号証の6,7),Bは,登記手続をした後すぐに破産申立てや更生手続開始申立てをすると登記が否認される可能性があるので一定期間置かないといけないという話があったと,あたかも法的整理を予定しつつも否認を避けるために申立てをしていなかったかのように供述している(乙B14号証の2)。 上記両名の供述自体,具体的に特定の法的整理手続を利用することを決定したというもの たかも法的整理を予定しつつも否認を避けるために申立てをしていなかったかのように供述している(乙B14号証の2)。 上記両名の供述自体,具体的に特定の法的整理手続を利用することを決定したというものではなく,1年後に状況を見ながら考えるというものにとどまっている(現実に,被告らは,1年後にも何ら具体的な措置をとっていない。)ところ,仮に根抵当権設定仮登記手続後1年間は法的整理の申立てをすることが否認の問題を生じさせるとしても,前判示のとおり,当時,幸和不動産が,単体では,脱退原告からの救済融資ないし資金援助がなければおよそ存続することができず,実質的には破綻した状態にあったことからすれば,被告らは,1年の間に,1年の経過を待たずして任意整理を行うのか,あるいは1年後にどの法的整理の手続を選択し,その際には幸和不動産の借入先金融機関に対してどのような損失の負担を求めるのか等を具体的に検討しておかなければならなかったといえる。しかるに,上記両名は,上記のとおり,平成9年10月以降そのような幸和不動産の処理方針について具体的な検討をしなかったことを自認しており,その他本件全証拠を総合しても,平成9年10月以降,上記両名が幸和不動産の処理方針について具体的に検討したものとは認められない。また,そもそも,本件全証拠を総合しても,被告らが,当時幸和不動産を法的に整理することを決定していたとも認められない。よって,被告A1の上記主張は理由がない。 カ被告らの善管注意義務違反(ア) 被告A1は,脱退原告の代表取締役社長として,関連会社向け融資についても融資に際して実質的な審査をする態勢を築いておかなければならなかったにもかかわらず,事実上審査不在の状況となっているのを放置していた上,本件幸和不動産融資の決定に際して,遅くとも平成8年7月の時点に 資に際して実質的な審査をする態勢を築いておかなければならなかったにもかかわらず,事実上審査不在の状況となっているのを放置していた上,本件幸和不動産融資の決定に際して,遅くとも平成8年7月の時点において,幸和不動産は,単体では,脱退原告からの救済融資ないし資金援助がなければおよそ存続することができず,実質的には破綻した状態であり,脱退原告が幸和不動産に融資した場合,融資金の相当部分が回収不能となる具体的な可能性があることを認識していたものである。それにもかかわらず,被告A1は,一時期,法的整理の可能性について想定したり,新会社設立案による処理の可能性について提案を受けて抽象的に検討したことこそあるものの,具体的に幸和不動産の処理方針について検討し決定することなく,ただ幸和不動産の破綻による脱退原告の信用失墜を恐れ,2年4か月もの長期間にわたって,本件幸和不動産融資を継続したものであるから,被告A1が本件幸和不動産融資を可とする決裁をするという意思決定の過程,内容が銀行の取締役として特に不合理,不適切なものであったといわざるを得ない。 よって,本件幸和不動産融資を決定することとした経営判断については,被告A1に認められた裁量の範囲を逸脱するものであり,したがって,被告A1について善管注意義務違反及び忠実義務違反が認められる。 (イ) 被告A2は,脱退原告の代表取締役副社長として,関連会社向け融資についても融資に際して実質的な審査をする態勢を築いておかなければならなかったにもかかわらず,事実上審査不在の状況となっているのを放置していた上,本件幸和不動産融資の決定に際して,遅くとも平成8年12月の時点において,幸和不動産は,脱退原告からの救済融資ないし資金援助がなければおよそ存続することができず,実質的には破綻した状態であり,脱退原告が幸 不動産融資の決定に際して,遅くとも平成8年12月の時点において,幸和不動産は,脱退原告からの救済融資ないし資金援助がなければおよそ存続することができず,実質的には破綻した状態であり,脱退原告が幸和不動産に融資した場合,融資金の相当部分が回収不能となる具体的な可能性があることを認識していたものである。それにもかかわらず,被告A2は,平成8年12月22日の会議において,脱退原告が幸和不動産あて債権の回収不能分をすべて償却する力はないので,更生手続開始申立てを持ち出して他の金融機関にも応分の負担をしてもらっていいではないかという意見を述べたり,新会社設立案に対して反対し,一時部下に幸和不動産の処理について検討させるなどしたものの,幸和不動産の処理方針に関する具体的検討のないO報告書の提出を受けたのみで,幸和不動産の処理方針について特に具体的に検討することなく,ただ幸和不動産の破綻による脱退原告の信用失墜を恐れ,2年4か月もの長期間にわたって,本件幸和不動産融資を継続したものであるから,被告A1が本件幸和不動産融資を可とする決裁をするという意思決定の過程,内容が銀行の取締役として特に不合理,不適切なものであったといわざるを得ない。 よって,本件幸和不動産融資を決定することとした経営判断については,被告A2に認められた裁量の範囲を逸脱するものであり,したがって,被告A2について善管注意義務違反及び忠実義務違反が認められる。 これに対して,被告A2は,綜合ハウジング案件と同様に,職制上自らの職務ではない本件綜合ハウジング融資の当否について,被告A1らが既に協議決定した事項について,更に改めて調査検討する任務はなく,かつ,経営判断にかかる事項については,意見を述べることが許されても反対することは職制上許されず,被告A2の任務の範囲は,稟議書面にお に協議決定した事項について,更に改めて調査検討する任務はなく,かつ,経営判断にかかる事項については,意見を述べることが許されても反対することは職制上許されず,被告A2の任務の範囲は,稟議書面において確認し得る事実を前提に,当該融資案件が明白に法令定款に違反しないか,又はより良い稟議に修正できないかについて意見を述べるかの2点に限られる旨主張するが,前判示のとおり,理由がない(なお,仮に同被告の任務が同被告主張の範囲に限られるとしても,同被告はより良い稟議に修正できないか意見を述べるための具体的検討をすべき善管注意義務及び忠実義務を負うと解されるところ,判示の事実関係によれば,同被告は,本件幸和不動産融資を決裁するに当たり,上記義務を果たしたものとは認められない。)。 (ウ) なお,被告らは,幸和不動産の借入先金融機関との関係で,根抵当権設定仮登記手続をする必要があり,そのためには前提として日建エンジニアリングが有していた持分を処理しなければならないと考え,この問題について検討していたことが認められるが,そうであるからといって,この問題を処理する間,幸和不動産の処理方針について何ら具体的な検討をしないで,実質的に破綻している幸和不動産に対し,本件幸和不動産融資を継続することが善管注意義務及び忠実義務に違反しないことになるとは到底いえない。 キ母体行責任論についてところで,被告A1は,本件幸和不動産融資当時,母体行主義は維持されており,幸和不動産を破綻させれば,脱退原告の信用が失墜し,脱退原告が幸和不動産の借入先金融機関から融資を受けることができなくなり,また,取付け騒ぎが起こるおそれもあったから,本件幸和不動産融資を決定した同被告らの経営判断の過程は著しく不合理ではない旨主張する。また,被告A2は,本件幸和不動産融資は,銀行経 とができなくなり,また,取付け騒ぎが起こるおそれもあったから,本件幸和不動産融資を決定した同被告らの経営判断の過程は著しく不合理ではない旨主張する。また,被告A2は,本件幸和不動産融資は,銀行経営者に課せられている,金融システムの安定確保のための母体行責任に基づき,やむを得ないものであった旨主張する。 (ア) しかしながら,前判示のとおり,銀行が出資をし,あるいは取締役等を派遣してその経営に実質的に関与している関連会社の債務処理に当たって,当該銀行が,当該関連会社に対する自己の債権を放棄したり,更に進んで当該関連会社が他の金融機関に対して負担している借入金等債務を肩代わりしたりしなければならない法律上の義務を負うものとは解されない。 (イ) ところで,前判示のとおり,脱退原告が幸和不動産に対して救済融資ないし資金援助をしない結果として同社が破綻した場合,脱退原告には関連会社を救済する体力がないと判断されて,脱退原告の信用不安を招来するおそれがなかったとはいえないから,本件幸和不動産融資当時,脱退原告としては,幸和不動産に対して救済融資ないし資金援助をする必要性がなかったとはいえない。 しかしながら,関連会社の経営破綻により信用不安を招来することを回避するためであっても,常に関連会社の再建を支援することが許されるわけではないし,また,再建を支援することが許されるとしても,無限定にあるいはどのような方法であっても許されるわけではない。 被告らは,脱退原告からの救済融資ないし資金援助がなければ幸和不動産はおよそ存続することができず,実質的には破綻した状態であり,脱退原告が幸和不動産に融資した場合,融資金の相当部分が回収不能となる具体的な可能性があることを認識していたにもかかわらず,幸和不動産の処理方針を具体的に検討しないまま,2年4か 綻した状態であり,脱退原告が幸和不動産に融資した場合,融資金の相当部分が回収不能となる具体的な可能性があることを認識していたにもかかわらず,幸和不動産の処理方針を具体的に検討しないまま,2年4か月もの長期間にわたって,本件幸和不動産融資を継続したものである。したがって,被告らの意思決定の過程,内容が銀行の取締役として特に不合理,不適切なものであったといわざるを得ない。 よって,被告らの上記主張を採用することはできない。 (ウ) これに対して,被告A1は,平成9年10月以降,三洋証券株式会社,株式会社北海道拓殖銀行,山一證券株式会社の相次ぐ破綻によって金融不安が高まっていたこと(乙A36ないし38号証,丙A2号証)などを挙げ,幸和不動産を一定期間存続させるという経営判断の過程は著しく不合理ではない旨主張する。 しかしながら,そもそも,本件においては,平成9年10月以降,被告らは,幸和不動産の処理方針について具体的な検討を一切せず,単に幸和不動産を一定期間存続させる(あるいはできる限り存続させる。)という判断をしており,もはや経営判断を放棄したものであるというのが相当であるから,上記主張を採用することはできない。前判示のとおり,被告らは,遅くとも平成8年12月には,幸和不動産が,単体では,脱退原告からの救済融資ないし資金援助がなければおよそ存続することができず,実質的には破綻した状態であることを認識していた。その上,脱退原告自身も,前記2(2)キ(ウ)で判示したとおり,その体力は本件綜合ハウジング融資の際に既に著しく低下しており,さらに,前記1(3)ウのとおり,平成9年3月期において296億0617万4337円の経常損失(前期の経常損失は4億7543万8531円(前記1(3)イ))を形上するなど経営状態が悪化していたのであるから(被 記1(3)ウのとおり,平成9年3月期において296億0617万4337円の経常損失(前期の経常損失は4億7543万8531円(前記1(3)イ))を形上するなど経営状態が悪化していたのであるから(被告A2自身,平成8年12月や平成9年7月の会議の際に,脱退原告が幸和不動産あての債権の回収不能分をすべて償却する体力がないことを認める発言をしている(前記(1)カ(ア),同ケ(カ))。),平成9年10月以降も(上記認識時期から少なくとも9か月が経過している。),幸和不動産を破綻させれば脱退原告の信用に影響を生じるおそれがあるからといって,幸和不動産の処理方針について何ら具体的な検討をすることなくただ同社を存続させておくべきではなく,脱退原告の信用に及ぼす影響を最小化するために,幸和不動産の処理方針について具体的かつ真しに検討すべきであったといえる。そして,その際には,前記2(2)キ(ウ)で判示したとおり,母体行責任とはいっても,修正母体行方式もあるし,平成7年3月から同年4月にかけて,大阪銀行ほか2行が系列ノンバンクの会社整理あるいは特別清算を申し立てたこともあったのであるから,当然,同様の法的整理も選択肢に含められてしかるべきであったといえる。 (エ) このほか,被告A1は,財務局は,例えば報道等への対応が完了していない間に法的処理をすべきではないという判断を行っていたから,本件幸和不動産融資が善管注意義務及び忠実義務に違反しない旨主張するかのようである。しかしながら,そもそも,被告らが幸和不動産についていわゆる法的整理を選択しなかったために善管注意義務違反・忠実義務違反が認められるのではなく,法的整理をするか否か等を含め,幸和不動産の処理方針を具体的に検討しないまま長期間にわたって融資を継続したために善管注意義務違反・忠実義務違反が認 注意義務違反・忠実義務違反が認められるのではなく,法的整理をするか否か等を含め,幸和不動産の処理方針を具体的に検討しないまま長期間にわたって融資を継続したために善管注意義務違反・忠実義務違反が認められるのであり,上記主張は理由がない。 また,被告A2は,本件幸和不動産融資当時,大蔵省は,脱退原告に対し,従来同様,母体行責任に基づき,幸福総合リース,綜合ハウジング及び幸和不動産等の損失負担を求めていたとか,大蔵省が,脱退原告が本件幸和不動産融資を実行しないことを容認するはずがなく,仮に同融資を実行しなければ,大蔵大臣によって必要な措置を命じられたり,免許の取消処分等を受けるおそれがあったなどと主張する。しかしながら,前記2(2)キ(ウ)のとおり,平成7年3月から4月に大阪銀行ほかが関連ノンバンクを法的整理しているにもかかわらず,免許の取消処分等を受けていない事実がある上,本件通達等本件全証拠を総合しても上記事実を認めることはできない。 この点に関して,被告A2は,脱退原告が,当時,幸福総合リースの損失処理を行っていたことと一貫性を欠くから,大蔵省がそれを容認するはずがない旨主張するが,本件幸和不動産融資を実行するか否かを判断するに当たっては,一つの関連会社について肩代わり融資等による損失処理をしたからといって,当然に他の関連会社についても同様の処理をしなければ大蔵省が容認しないものとはいえないこと(なお,被告A2自身,前記(1)カ(ア)のとおり,平成8年12月の会議において,脱退原告には幸和不動産あて債権の回収不能分をすべて償却する力はないので,更生手続開始申立てを持ち出して他の金融機関にも応分の負担をしてもらっていいではないかと提案し,前記(1)ケ(カ)のとおり,平成9年7月8日,脱退原告には幸和不動産に対する債権を償却 力はないので,更生手続開始申立てを持ち出して他の金融機関にも応分の負担をしてもらっていいではないかと提案し,前記(1)ケ(カ)のとおり,平成9年7月8日,脱退原告には幸和不動産に対する債権を償却するだけの体力がないと考えて新会社設立案に反対したものである。),大蔵省が本件幸和不動産融資を容認していたからといって,善管注意義務違反及び忠実義務違反が当然に否定されるものでないことは本件綜合ハウジング融資について判示したところと同様である。 (3) 争点(5)(違法性阻却事由,過失,期待可能性)について取締役が善管注意義務及び忠実義務に違反した以上,違法性阻却事由がある,当該取締役に故意及び過失がない,又は当該取締役について責任阻却事由があるといった事情がない限り,商法266条1項5号に基づく責任を負うものであるところ,被告らは,違法性阻却事由がある,被告らには過失がない,被告らには期待可能性がないといった点を主張している。 しかしながら,被告らは上記主張を基礎づける具体的事実を主張していないから,上記主張はいずれも理由がない。 なお,本件では,前判示のとおり,経営判断の誤りについて善管注意義務違反及び忠実義務違反が認められるから,違法性の意識の有無は過失の有無を左右しない。 (4) 争点(6)(損害)についてア甲A42号証の1,2によれば,脱退原告の幸和不動産に対する平成9年1月31日現在の貸出残高は161億5310万円,平成11年5月21日現在の貸出残高は242億0080万円であり,貸出残高が80億4770万円増加したものと認められるが,甲A43号証,44号証によれば,脱退原告は,平成10年10月に,京都共栄銀行から,幸和不動産に対する債権合計25億3500万円を譲り受けたものと認められるから,本件幸和不動産融資によって脱退原告の A43号証,44号証によれば,脱退原告は,平成10年10月に,京都共栄銀行から,幸和不動産に対する債権合計25億3500万円を譲り受けたものと認められるから,本件幸和不動産融資によって脱退原告の幸和不動産に対する貸出残高は55億1270万円増加したものである。 そして,前記第2の1(5)カのとおり,幸和不動産は破産宣告を受けたものであるところ,同イのとおり,幸和不動産は,平成10年9月期において当期未処理損失63億9200万円を計上していた会社であり,平成11年7月26日の破産宣告申立て当時,申立代理人は,資産の時価を150億4037万0350円と評価していたこと(甲A39号証),前記第2の1(5)エ(イ)のとおり,脱退原告が根抵当権を有していた幸和不動産所有又は共有の不動産の上には,先順位根抵当権の極度額の合計が619億5000万円,先順位抵当権の被担保債権の合計額が19億1158万円に上っていたことからすると,脱退原告が幸和不動産の破産手続において配当を受ける可能性は極めて低いものと推認されるから,本件幸和不動産融資によって,脱退原告に前記融資残高増加額と同額の損害が発生したものと認められる。 イしたがって,前記第2の1(5)キのとおり,脱退原告が,被告ら等に対し,本訴請求債権をもって,被告ら等の預金債権合計2億2894万1483円とその対当額において相殺するとの意思表示をしたこと,同(7)のとおり,被告A1が,原告に対し,本訴請求債権の弁済として3億1504万8000円を支払ったこと及び原告が,幸和不動産に対する債権のうち合計612万7483円を物件売却等により回収したこと(前記(1)チ)を総合しても,被告らの本件幸和不動産融資に基づく損害賠償債務の金額は,49億円を下らないものと認められる。 ウこれに対して,被告A2は,脱退 483円を物件売却等により回収したこと(前記(1)チ)を総合しても,被告らの本件幸和不動産融資に基づく損害賠償債務の金額は,49億円を下らないものと認められる。 ウこれに対して,被告A2は,脱退原告が幸和不動産に対して負っておりいつでも相殺することのできた普通預金債務20億7200万円を損害額から控除すべきである旨主張するが,前記のとおり,脱退原告は,平成11年5月21日当時,幸和不動産に対し,242億0080万円に上る債権を有しており,脱退原告が上記預金債務との相殺によってこの債権の対当額を回収したものと推認することはできるが,脱退原告又は原告が上記預金債務との相殺によって本訴請求債権を回収したという事実は認められないから,上記主張は採用することができない。 4 結論よって,原告の請求はいずれも理由があるからこれを認容することとし,訴訟費用の負担について民訴法61条,65条1項本文を,仮執行の宣言について同法259条1項を,それぞれ適用して,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第4民事部裁判長裁判官揖斐潔裁判官永井裕之裁判官齋藤毅

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