- 1 -主文 原判決を取り消す。 被控訴人らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1章当事者の求めた裁判第1控訴人 原判決を取り消す。 被控訴人らの請求をいずれも棄却する。 第2被控訴人ら本件控訴をいずれも棄却する。 第2章事案の概要第1本件は,石川県羽咋郡志賀町赤住所在の志賀原子力発電所(以下「本件原発」という)に増設された2号原子炉(以下「本件原子炉」という)が運。 。 転されれば,平常運転時又は地震等の異常事象時に環境中に放出される放射線及び放射性物質によって被ばくすることにより自己の生命・身体等に回復し難い重大な被害を受ける旨主張する被控訴人らが,人格権又は環境権に基づき,その侵害を予防するため,本件原子炉を設置した控訴人に対し,その運転の差止めを求めた事案の控訴審である。 原審が,本件原子炉の耐震設計は妥当性を欠くため,本件原子炉の運転により被控訴人らが許容限度を超える放射線を被ばくする具体的危険性があるとして請求を認容したところ,控訴人が本件控訴を提起した。なお,当審で7名が訴えを取り下げた結果,被控訴人らは合計128名となった。 第2前提事実次の事実は,争いがないか,文中に記載した証拠及び弁論の全趣旨によって明らかに認められる。 - 2 -なお,証拠の摘示方法は,以下の例に従う。 甲1(1)甲第1号証の1頁甲819(添5)甲第819号証の添付資料5乙6(添1-1-1)乙第6号証の添付書類1の1-1頁乙8(添図1)乙第8号証の添付書類である図1乙92(添18)乙第92号証の別添18頁乙106(添1-①)乙第106号証の添付資料-1-①乙109(添3-1)乙第109号証の添付資料3-1乙125-1-1乙第125 付書類である図1乙92(添18)乙第92号証の別添18頁乙106(添1-①)乙第106号証の添付資料-1-①乙109(添3-1)乙第109号証の添付資料3-1乙125-1-1乙第125号証の1の1頁乙125-添7乙第125号証の別添資料7頁乙127-1-1乙第127号証の1の1頁乙127-1-参1乙第127号証の1の参考資料1頁証人甲野太郎(①1)原審における証人甲野太郎の証言(複数期日にわたって尋問が実施された場合に,1度目の期日における尋問調書の1頁) 当事者(1) 被控訴人らは,その大部分が石川県及び富山県に居住する者である。それ以外の都府県に居住する者の内訳は,福島県が1名,新潟県が4名,東京都が3名,神奈川県が1名,静岡県が2名,岐阜県が1名,愛知県が1名,滋賀県が1名,奈良県が1名,大阪府が1名,兵庫県が1名,岡山県が1名,広島県が1名,熊本県が1名である。 (2) 控訴人は,富山県,石川県,福井県の一部,岐阜県の一部を供給区域とする電気事業法上の一般電気事業を営む株式会社である。 本件原子炉の増設の経緯等(1) 控訴人は,平成9年5月20日,平成10年法律第62号による改正前の核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下「原子炉等規- 3 -。 ,制法」という)26条に基づき,通商産業大臣(現経済産業大臣)に対し本件原発において本件原子炉を増設する旨の原子炉の設置変更許可を申請した(以下「本件設置変更許可申請」という。通商産業大臣は,同法26。)条4項,24条2項に基づき,同法24条1項1号,2号及び3号(経理的基礎に係る部分)の各要件適合性については原子力委員会に,同項3号(技術的能力に係る部分)及び4号の各要件適合性については原子力安全委員会にそれぞれ諮問し,平成 24条1項1号,2号及び3号(経理的基礎に係る部分)の各要件適合性については原子力委員会に,同項3号(技術的能力に係る部分)及び4号の各要件適合性については原子力安全委員会にそれぞれ諮問し,平成11年3月29日原子力安全委員会から,同月30日原子力委員会からそれぞれ各要件に適合していると認める旨の答申を受けた上で,同年4月14日,控訴人に対し,本件設置変更許可申請に係る本件原子炉の増設を許可する旨の処分をした(以下,通商産業大臣及び原子力安全委員会が本件設置変更許可申請に対して同法24条1項3号(技術的能力に係る部分)及び4号の各要件適合性について行った審査を「本件安全審査」という。控訴人は,同年8月27日,本件原子炉及びその附属施設。)(以下「本件原子炉施設」という)の建設に着工し,平成17年4月26。 日,試運転を開始し,平成18年3月15日に本件原子炉の営業運転を開始した。建設に要した費用は,約3750億円であった〔甲953(12。 4,乙192〕)(2) 控訴人は,電力需要が中長期的には民生用需要を中心として着実に増加するものと想定し,将来にわたる電力の安定供給の確保,環境の保全の観点から,電源多様化の中核として必要不可欠な電源として,本件原子炉施設を建設した。 本件原子炉の特徴(1) 我が国で稼働している商業用の実用発電用原子炉(発電の用に供する原子炉)は,いずれも,冷却材及び減速材(これらは後記4(1)で説明する)。 に軽水(その分子が水素原子2,酸素原子1で構成されている水)を用いる軽水型原子炉(以下「軽水炉」という)であり,軽水炉には,原子炉で水。 - 4 -を沸騰させ,発生した蒸気で直接タービンを回す構造の沸騰水型原子炉(BWR)と,高圧を加えられた水が高温に熱せられて循環し(一次冷却系,)これ いう)であり,軽水炉には,原子炉で水。 - 4 -を沸騰させ,発生した蒸気で直接タービンを回す構造の沸騰水型原子炉(BWR)と,高圧を加えられた水が高温に熱せられて循環し(一次冷却系,)これとは別の循環系統(二次冷却系)との間で熱交換が行われ,二次冷却材が蒸気となってタービンを回す構造の加圧水型原子炉(PWR)とがあるが,本件原子炉は,改良型沸騰水型原子炉(ABWR)であって(以下「BWR」という概念はABWRを含んだ意味で用い,ABWRを除く場合には,「従来型BWR」という,その熱出力は約392万6000キロワット,。)電気出力は約135万8000キロワットである〔乙5(4。 )〕(2) ABWRは,通商産業省第三次軽水炉標準化プラントと位置づけられ,昭和60年に開発を完了したものであって,開発目標は,①安全性・信頼性の向上,②運転性・操作性の向上,③作業者の被ばく線量の低減,④経済性の向上であり,主たる特徴は,次のとおりである〔甲339,甲738,乙4(107,108。 )〕ア外部再循環ループの配管をなくしてインターナルポンプを採用した。 イインターナルポンプの採用によって大口径配管破断事故の想定の必要がなくなったので,ECCS(非常用炉心冷却設備)は小容量とされた。 ウ水圧駆動方式であった従来型制御棒駆動装置に代えて,水圧駆動方式と電気駆動方式とを併用する改良型制御棒駆動機構(FMCRD)を採用し,駆動源の多様化を図った。 エ従来の鋼製自立型格納容器に代え,原子炉建屋と一体化した円筒型鉄筋コンクリート製原子炉格納容器を採用し,耐震性の向上を図った。 オ熱効率の改善等を行い,電気出力を135万キロワット級の大容量プラントとした。 (3) 我が国で稼動している商業用の実用発電用原子炉のうち,ABWRは,本 納容器を採用し,耐震性の向上を図った。 オ熱効率の改善等を行い,電気出力を135万キロワット級の大容量プラントとした。 (3) 我が国で稼動している商業用の実用発電用原子炉のうち,ABWRは,本件原子炉のほか,東京電力株式会社(以下「東京電力」という)柏崎刈羽。 原子力発電所(以下「柏崎刈羽原発」ということもある)6号機及び7号。 - 5 -機並びに中部電力株式会社(以下「中部電力」という)浜岡原子力発電所。 5号機のみである〔乙193。 〕 原子力発電の仕組み(1) ウラン235などの原子核(核分裂性原子核)は,中性子を吸収するなどして不安定な状態になると,分裂して二つ以上の別の原子核(核分裂生成物)に変わるとともに,数個の中性子を放出する(核分裂反応)ことがあるが,このとき分裂前の原子核が質量として持っていた結合エネルギーの一部が新しく発生した原子核等の運動エネルギーに変わる。こうして発生した中性子は光速に近い速度を持つが,これを別の物質(減速材)に衝突させて十分に減速すれば(このように減速された中性子を熱中性子という,別の。)核分裂性原子核に吸収され易くなり,核分裂反応を継続させることができる。 また,核分裂反応により発生した原子核等が周囲の物質に衝突すると,周囲の物質の熱運動を増大させる(温度を上昇させる)から,核分裂性物質の周囲を別の物質(冷却材)で満たしておけば,核分裂性物質が冷却材を暖める燃料として働き,熱エネルギーを取り出すことができる〔甲1(33ない。 し35,甲635の1(11,甲637の1(12,乙1(17,21,)))22,乙2(1,6,10,12ないし18,乙7の1(4,乙8(1)))ないし3,証人B(①3ないし6〕))(2) 原子力発電においては,原子炉内で核分裂反応を発生させ, 1,)))22,乙2(1,6,10,12ないし18,乙7の1(4,乙8(1)))ないし3,証人B(①3ないし6〕))(2) 原子力発電においては,原子炉内で核分裂反応を発生させ,取り出した熱エネルギーを用いて水蒸気を発生させ,これを発電機のタービンに吹き付けて回転させるという方法で発電している。ABWRである本件原子炉施設では,本判決別紙1「タービン設備系統概要図」のとおりの設備を用いて,原子炉圧力容器内で発生させた水蒸気をタービンに導き,復水器で管内に海水を流して冷やした配管に触れさせて液体に戻し,給水加熱器を介して原子炉内に戻している。 自然界に存在するウランは,大部分(約99.3パーセント)が核分裂反- 6 -応を起こし難いウラン238であり,核分裂性物質であるウラン235は約0.7パーセントにすぎない。我が国の原子力発電所では,一般に,燃料としてウラン235の濃度を数パーセントに高めた二酸化ウランを円柱状に焼き固めて燃料ペレット(二酸化ウラン焼結燃料)にして用いている。 〔甲4(120,甲635の1(20,乙1(19,20,乙4(10)))7ないし115,乙6(10,添2-1,8-4-59,8-6-16,))乙7の1(4,乙8(1,2,添図1,証人B(①3,7,8〕)))(3) 原子力発電所は,原子炉の出力を一定にするため,核分裂反応の量が一定に維持される(臨界)ように制御しながら運転する。BWRは,中性子を吸収するための制御棒の出し入れと,炉心を流れる冷却水の流量(再循環流量)の調節により,炉心の出力(核分裂反応の量)が一定になるように制御し運転する。 すなわち,BWRでは冷却水中に沸騰による気泡が存在するので,再循環流量が変化すると単位体積当たりの減速材(冷却水)の量が変化する。このた 出力(核分裂反応の量)が一定になるように制御し運転する。 すなわち,BWRでは冷却水中に沸騰による気泡が存在するので,再循環流量が変化すると単位体積当たりの減速材(冷却水)の量が変化する。このため,再循環流量を変化させることにより,熱中性子の量,つまり核分裂反応の量を調節することができる。また,運転を継続することにより燃料中のウラン235の濃度が低くなると,制御棒を若干引き抜いてこれに吸収される中性子の量を減らすとともに再循環流量を減らして中性子の量を調節し,運転時間に応じて再循環流量を増加していく。 〔乙1(22,23,乙7の1(6,7,乙8(2,3,証人B(①4)))ないし8〕) 本件原子炉施設の構造等(1) 原子炉本体ア炉心本件原子炉の炉心は,高さ約3.7メートル,等価直径約5.2メートルの直円柱形で,872本の燃料集合体と205本の制御棒で構成され- 7 -ている〔乙6(9,26,添8-1-5,6,8-3-1,98。 )〕イ燃料体本件原子炉では,燃料材にウラン235の濃度を数パーセント含む二酸化ウランを円柱状に焼き固めた燃料ペレット(二酸化ウラン焼結燃料)が使用されている。この燃料ペレットを円筒形被覆管に挿入し,両端を密封したものが燃料棒であり,74本の燃料棒と2本のウォーターロッドを9行9列の正方形に配列したものが燃料集合体であり,その概要は本判決別紙2「燃料集合体概要図」のとおりである〔乙6(10,11,65,。 添8-3-4ないし8,21,99.100,111,乙8(1,3,)19,添図10,証人B(①7,8〕))ウ制御材本件原子炉では,炉心に生じた中性子数を調整し,核分裂反応を制御するため,その内部に中性子吸収材(ほう素又はハフニウム)が詰められた十字形の制御棒が使用されており, (①7,8〕))ウ制御材本件原子炉では,炉心に生じた中性子数を調整し,核分裂反応を制御するため,その内部に中性子吸収材(ほう素又はハフニウム)が詰められた十字形の制御棒が使用されており,制御棒駆動機構によりこれを炉心内に挿入,引き抜きすることにより,前記制御が行われている。制御棒の概要は本判決別紙3「制御棒概要図(1)及び(2)」のとおりである。制御棒駆動機構は,電動駆動方式と水圧駆動方式が併用されており,原子炉の起動・停止等の通常時の制御棒の挿入,引き抜きは電動駆動方式で,原子炉の緊急停止時の制御棒の挿入は水圧駆動方式で行われる〔乙6(25ないし。 30,71,添8-3-2,34ないし44,103ないし105,124,125,乙8(2,16,添図2,添図5,添図6,証人B(①))4,5〕)エ圧力容器前記アの炉心は,圧力容器に収められている。この圧力容器は,円筒形の胴部に皿形の底部を付した鋼製容器に,半球形の鋼製上ぶたをボルト締めする構造となっており,胴下部の円錐スカートで支持されるとともに,- 8 -上部は横振防止機構により原子炉遮蔽壁で支持されている。圧力容器の胴部内径は約7.1メートル,胴部肉厚は約170ミリメートル,全高(内のり)は約21メートルで,その材料には低合金鋼が使用され,ステンレス鋼及び高ニッケル合金の内張りがされている。また,放射線遮蔽体として,圧力容器周囲のコンクリート壁,原子炉格納容器円筒部のコンクリート壁及び原子炉格納容器上部のコンクリート平板並びに原子炉建屋原子炉棟側面のコンクリート壁が設けられている〔乙6(12,13,63,。 添8-4-7,8〕)圧力容器の内部構造は,本判決別紙4「原子炉圧力容器内部構造図(断面図」のとおりであり,炉心を支持する炉心支持構造物及び内部構造物 けられている〔乙6(12,13,63,。 添8-4-7,8〕)圧力容器の内部構造は,本判決別紙4「原子炉圧力容器内部構造図(断面図」のとおりであり,炉心を支持する炉心支持構造物及び内部構造物)により構成されている〔乙6(63,添8-3-24,101,102,114,115。 )〕炉心を支持する炉心支持構造物は,シュラウド(ステンレス鋼の円筒で,炉心を上向きに流れる流路を形成すると同時に,その外側の環状部を下向きに流れる再循環流とを分離するもの)等により構成されており,内部。 構造物は,原子炉冷却材再循環ポンプ(炉心で発生した熱を効率的に取り出すため,圧力容器底部のシュラウドと圧力容器の間の環状部に10個配置され,冷却材(軽水)を炉心に循環させるもの)等により構成されて。 いる〔乙6(添8-3-24,26,114,115,8-4-10,61,乙8(14。 ))〕(2) 原子炉冷却系統施設ア一次冷却材設備一次冷却材設備は,原子炉圧力容器へ冷却材を補給する給水系,冷却材を循環させる原子炉冷却材再循環系及び炉心で発生した蒸気を蒸気タービンへ送る主蒸気系からなる原子炉冷却材系,蒸気タービン,復水器(タービンを回転させて発電を行った蒸気を海水によって冷却し,水に戻す設- 9 -備)等で構成されている〔乙6(16,添8-4-2。 。 )〕原子炉冷却材再循環系は,原子炉圧力容器底部に設ける原子炉冷却材再循環ポンプにより,冷却材を炉心内に循環させる。炉心で核分裂反応により発生した高温(摂氏約290度)の蒸気は,主蒸気管を通り蒸気タービンに入り,タービンを回転させて発電を行った後,復水器に導かれる。復水器で凝縮した復水は,原子炉給水ポンプにより給水として原子炉圧力容器に戻される〔乙6(16,添8-4-5,6,10ないし12,乙 ンに入り,タービンを回転させて発電を行った後,復水器に導かれる。復水器で凝縮した復水は,原子炉給水ポンプにより給水として原子炉圧力容器に戻される〔乙6(16,添8-4-5,6,10ないし12,乙。 )8(14〕)原子炉冷却材圧力バウンダリは,原子炉圧力容器及びそれに接続される配管系統から構成され,通常運転時,運転時の異常な過渡変化時及び事故時において,原子炉停止系等の作動等とあいまって,圧力及び温度変化に十分耐え,その健全性を確保する設計となっている〔乙6(16,17,添8-4-3,乙8,証人B(①10。 ))〕イ非常用冷却設備非常用冷却設備は,工学的安全施設の一設備であり,低圧注水系,高圧炉心注水系,原子炉隔離時冷却系及び自動減圧系により構成されている。 これらの各系は,原子炉冷却材喪失等が起こったときに,復水貯蔵タンク水又はサプレッションチェンバのプール水を原子炉に注入し,又は原子炉蒸気をサプレッションチェンバのプール水中に逃がし,原子炉圧力を速やかに低下させるなどにより,炉心を冷却し,燃料の重大な損傷を防止することを目的としている〔乙6(19,20,添8-4-36ないし4。 2,乙8(18,19,添図9〕)) 原子炉の増設,運転に関する国の安全審査(1) 本件安全審査がなされた当時,実用発電用原子炉の型式,熱出力及び基数,原子炉及びその附属施設の位置,構造及び設備並びに使用済燃料の処分の方法等を変更しようとする原子炉設置者は,主務大臣(通商産業大臣)の許可- 10 -を得なければならないとされ(原子炉等規制法26条1項,23条2項2号ないし5号,8号,通商産業大臣は,当該許可申請が同法24条1項各号)に適合していると認めるときでなければ許可してはならず(同法26条4項,),24条1項柱書,主務大 6条1項,23条2項2号ないし5号,8号,通商産業大臣は,当該許可申請が同法24条1項各号)に適合していると認めるときでなければ許可してはならず(同法26条4項,),24条1項柱書,主務大臣が前記許可をする場合においては,あらかじめ同法24条1項3号(技術的能力に係る部分に限る)及び4号に規定する。 基準の適用については原子力安全委員会の意見を聴かなければならないとされていた(同法26条4項,同条2項。 )(2) 原子力安全委員会は,原子力の研究,開発及び利用に関する行政の民主的な運営を図るため,総理府に置かれていた機関であり(平成11年法律第102号による改正前の原子力委員会及び原子力安全委員会設置法(以下「原子力委員会等設置法」という)1条,核燃料物質及び原子炉に関する規。 )制のうち,安全の確保のための規制に関すること等について企画し,審議し,及び決定すること等を所掌事務とし(同法13条,委員5名をもって組織)する(同法14条1項)とされており,原子力安全委員会には,学識経験のある者のうちから内閣総理大臣により任命された60名以内の審査委員で組織する原子炉安全専門審査会が置かれ,原子炉に係る安全性に関する事項を調査審議する(同法16条,17条,平成12年政令第196号による改正前の同法施行令6条1項。 )原子力安全委員会は,発電用軽水型原子炉の設置許可申請に係る安全審査において,安全確保の観点から設計の妥当性について判断する際の基礎を示すことを目的として定めた「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針〔乙9(7ないし37,以下「安全設計審査指針」という〕を指針」)。 として審査を行っている。また,原子力安全委員会は,安全審査において,原子炉施設の安全評価の妥当性について判断する際の基礎を示すことを目的 し37,以下「安全設計審査指針」という〕を指針」)。 として審査を行っている。また,原子力安全委員会は,安全審査において,原子炉施設の安全評価の妥当性について判断する際の基礎を示すことを目的として定めた「発電用軽水型原子炉施設の安全評価に関する審査指針〔乙」9(101ないし162,以下「安全評価審査指針」といい,これらの指)- 11 -針を併せて「審査指針等」という〕に設置許可申請の内容が適合している。 かどうかを確認している。 (3) 原子炉の設置者は,定期的に通商産業大臣(現経済産業大臣)による定期検査(平成11年法律第121号による改正前の電気事業法54条)等の手続を受けなければならない。 放射線被ばくの人体への影響(1) 原子核の崩壊や核分裂反応のときに放出される素粒子を放射線といい,放射線には,アルファ線(ヘリウムの原子核,ベータ線(高速の電子,ガ))ンマ線(電磁波,中性子線(中性子)などがある。アルファ線(紙1枚程)度の厚さで遮蔽できる)とベータ線(薄い金属板程度の厚さで遮蔽でき。 る)は透過力が比較的弱く,ガンマ線と中性子線は透過力が強い(遮蔽物。 質を透過しても一定の割合で減衰するだけで,完全に阻止することはできない〔甲4(60,甲149(36,41,42,46,47,甲63。)。 ))7の1(15ないし17,乙1(23,24,乙7の2(2〕)))不安定な核種が放射線を放出して別の核種に変化する性質(ないしはその性質の大きさ)を放射能といい,放射能を有する物質を放射性物質という〔甲4(59ないし61,甲149(41,甲150(1,甲635の)))1(16,甲637の1(15。 ))〕(2) 放射線は,細胞のDNAなどに直接当たったり(直接作用,細胞内の水)や有機物質などを し61,甲149(41,甲150(1,甲635の)))1(16,甲637の1(15。 ))〕(2) 放射線は,細胞のDNAなどに直接当たったり(直接作用,細胞内の水)や有機物質などを電離することにより酸化力の強い物質(フリーラジカル)を発生させ,そのフリーラジカルがDNAなどを傷つける(間接作用)ことで生体に影響を与える〔甲1(72,73,甲3(153ないし155,))甲4(81,82,甲149(40,42,43,79ないし106,))乙1(26。 )〕損傷を受けた細胞が死ぬなどして本来の働きを失い,生体の有する自己修復の能力を超えると,その細胞が構成している中枢神経系や臓器,造血器官- 12 -),などの機能が損なわれ,ときには被ばく者が死に至る〔甲4(81,82乙1(26,27。 )〕この種の影響は放射線被ばくの後,数十日以内に現れるが(早期影響,)一定量以下の放射線に被ばくしても医学的に検知できるほどにはその影響は現れないといわれている〔甲1(64,65,甲3(156,甲4(8))3,甲5(148,149,甲58(65,甲129(127,甲1))))37(23,甲145(47,甲635の2(7,8,乙1(27,))))乙7の3(9。 )〕DNAが損傷を受け,自己修復に失敗して細胞分裂の統制が失われると,他の要因とあいまって,被ばく者がガンに罹患することがある(ただし,ガン細胞が医学的に検知できるほどに増殖するには相当の時間を要するのが通常であるため,この種の影響は晩発影響といわれる。また,DNA中の。)遺伝情報を司る部分が損傷を受け,自己修復に失敗して被ばく者の子孫に遺伝性の影響が現れることも考えられる(遺伝的影響。放射線の持つエネル)ギーは極めて大きいため,極め る。また,DNA中の。)遺伝情報を司る部分が損傷を受け,自己修復に失敗して被ばく者の子孫に遺伝性の影響が現れることも考えられる(遺伝的影響。放射線の持つエネル)ギーは極めて大きいため,極めて微量の放射線でも細胞やDNAの損傷をもたらし得ることから,放射線防護を考える際には,晩発影響や遺伝的影響は,被ばくの量が減少してもこれに比例して発生確率が低くなるだけで,被ばくの量を零にしない限り発生を完全に防止することはできないと仮定するのが通例である〔甲4(83,84,甲5(143,144,149ないし。 )156,甲8(97,甲28(22,甲58(65ないし72,甲1))))29(127,甲137(24,甲145(47,甲149(65,6)))6,甲467(33,34,甲469(113ないし118,甲500)))(32ないし35,甲501(110ないし116,甲502(119))ないし125,甲503(127ないし131,甲504(133ない))し139,甲505(137ないし149,甲635の2(7ないし1))2,18ないし22,甲637の1(41ないし43,乙1(27,乙)))- 13 -3(26〕)(3) 放射能の強さを表すのに,キュリー又はベクレルという単位が使われる。 1キュリーは,1グラムのラジウム226が持っている放射能の強さ(毎秒370億個の壊変数)であり,1ベクレルは,毎秒1個の壊変数を表している。したがって,1キュリーは370億ベクレルである。 放射線が質量1キログラムの物体に吸収され,1ジュール(質量1キログラムの物体に1メートル毎秒毎秒の加速度を生じさせる力(1ニュートン)がその力の方向にその物体を1メートル動かすときのエネルギー)のエネルギーを与えた場合,その被ばく され,1ジュール(質量1キログラムの物体に1メートル毎秒毎秒の加速度を生じさせる力(1ニュートン)がその力の方向にその物体を1メートル動かすときのエネルギー)のエネルギーを与えた場合,その被ばく量(以下「吸収線量」という)を1グレイ。 という(なお,物質1グラム当たりの吸収エネルギーが100エルグ(1エルグは,質量1グラムの物体に1センチメートル毎秒毎秒(以下,この単位を「ガル」ということがある)の加速度を生じさせる力(1ダイン)がそ。 の力の方向にその物体を1センチメートル動かすときのエネルギー)である場合の吸収線量を1ラドといい,1グレイは100ラドである。 。)放射線が人体に与える影響は,吸収線量が等しくとも放射線の種類によって異なるので,放射線の種類による重みづけ(放射線荷重係数。例えば,アルファ線は吸収線量の20倍,ベータ線やガンマ線は1倍,中性子線はその中間の倍数と評価する。こうして得られた数値を等価線量という)をした。 被ばく量単位を線量当量といい,レム又はシーベルトという単位で表す。1グレイの被ばくは,ガンマ線による場合は1シーベルト,アルファ線による場合は20シーベルトとなる。1シーベルトは100レムであり,1000ミリシーベルトである。 身体の各部が不均一な被ばくを受けたとき,全身均一な被ばくに換算すればどれだけの被ばく量に相当するかという考え方から出てきた被ばく量の単位が実効線量当量であり,被ばくした組織や臓器の放射線に対する感受性による重みづけ(組織荷重係数。全身の合計が1になる)がなされる。例え。 - 14 -ば,甲状腺だけが2シーベルトの被ばくを受けたとき,甲状腺の組織荷重係数は0.03なので,実効線量当量は0.06シーベルトとなる。 2000年版の国連放射線影響科学委員会報告によれば,0.5シーベル ば,甲状腺だけが2シーベルトの被ばくを受けたとき,甲状腺の組織荷重係数は0.03なので,実効線量当量は0.06シーベルトとなる。 2000年版の国連放射線影響科学委員会報告によれば,0.5シーベルトの全身被ばくで末梢血中のリンパ球が減少し,1シーベルトの全身被ばくで10パーセントの人に悪心,嘔吐が出現し,7ないし10シーベルトの全身被ばくで死亡に至るとされている。 〔甲1(63,64,甲4(72,77,78,甲54,甲149(6))0,61,甲635の2(5ないし7,甲637の1(38,39,甲)))703(前書部分,乙1(25〕))(4) 1シーベルトの放射線に被ばくすると各種の確率的影響の発生確率がどの程度増加するか(リスク係数)という問題について,国際放射線防護委員会(ICRP)は,広島,長崎における原子爆弾被ばく者のデータを主たる資料として,放射線誘発ガンによる死亡のリスク係数は男女及び全年齢の平均値として1シーベルト当たり約100分の1件であり,子や孫に現れる遺伝的影響の平均リスク係数は,遺伝学的に有意であろう被ばくの割合を考慮すれば,1シーベルト当たり約100分の0.4件とすることができるとみている。ICRPの1990(平成2)年勧告は,このリスク係数を前提として,一般公衆の防護のための線量限度として,実効線量限度を1年当たり1ミリシーベルト,眼の水晶体の等価線量限度を1年当たり15ミリシーベルト,皮膚の等価線量限度を1年当たり50ミリシーベルトとすることを勧告している。 ICRPの採用する見解については様々な批判的研究があるが,国際原子力機関(以下「IAEA」という)などの国際機関や各国は,ICRP勧。 告を放射線防護の関連基準の規範としている。 我が国においても,原子炉等規制法35条,平成17年政令第3 的研究があるが,国際原子力機関(以下「IAEA」という)などの国際機関や各国は,ICRP勧。 告を放射線防護の関連基準の規範としている。 我が国においても,原子炉等規制法35条,平成17年政令第333号による改正前の同法施行令11条の2,実用発電用原子炉の設置,運転等に関- 15 -する規則(昭和53年12月28日通商産業省令第77号,以下「実用炉規則」という)1条2項6号,8条3号,同規則の規定に基づく線量限度等。 を定める告示(平成13年3月21日経済産業省告示第187号)3条1項1号により,周辺監視区域(管理区域の周辺区域であって,人の居住が禁止され,業務上立ち入る者以外の者の立ち入りが制限される区域)の外側において,実効線量が1年間に1ミリシーベルトを,皮膚の等価線量が1年間に50ミリシーベルトを,眼の水晶体の等価線量が1年間に15ミリシーベルトをそれぞれ超えないことを求めている。さらに「発電用軽水型原子炉施,設周辺の線量目標値に関する指針(昭和50年5月13日原子力委員会決」定,以下「線量評価指針」という)では,発電用軽水炉施設周辺の公衆の。 受ける線量についての目標値を,実効線量で年間0.05ミリシーベルトとする旨が定められている。 なお,安全評価審査指針は,ICRPの1990年勧告が,特殊な状況においては,5年間にわたる平均が1年当たり1ミリシーベルトを超えなければ,単一年にこれよりも高い実効線量が許されることもあり得るとしていることから,事故の発生頻度が小さいことを前提として,周辺公衆の実効線量の評価値が事故当たり5ミリシーベルトを超えなければ,事故による放射線被ばくを考慮に入れても周辺公衆の実効線量を前記勧告が定める実効線量限度内に抑えることができる(公衆に著しい放射線被ばくのリスクを与えない)としている。 リシーベルトを超えなければ,事故による放射線被ばくを考慮に入れても周辺公衆の実効線量を前記勧告が定める実効線量限度内に抑えることができる(公衆に著しい放射線被ばくのリスクを与えない)としている。 〔甲3(146,147,156ないし167,甲4(89,甲5(2))13ないし220,甲8(92ないし96,104ないし106,113)ないし115,甲27(21,甲28(22ないし25,甲29(24)))ないし26,甲58(73ないし84,甲137(24ないし27,甲)))138(18ないし22,甲139(159ないし173,甲140))(55ないし57,甲144(1ないし6,甲145(47ないし5))- 16 -6,甲146(77ないし81,甲147(19ないし25,甲297,)))甲466(26ないし37,甲467(28ないし35,甲473(1))0ないし12,甲635の2(12ないし17,甲637の2(39な))いし42,48ないし50,乙3(30,31,115,116,11)8,乙6(添9-2-1ないし3,乙7の7(16,17,乙9(11)))1,406,407〕)(5) 地殻を構成している岩石や土砂などの中には,ウラン,トリウム,ラジウムなどの放射性物質が含まれていて,絶え間なく放射線を出している。また,これらの元素から生じたラドンなどの気体状の放射性物質が空気中に混じっていて,それらは呼吸することによって人の体内に取り込まれる。さらに,宇宙線と呼ばれる放射線も人に降り注いでいる。これらは自然放射線と呼ばれ,人は,1年当たり平均で約2.4ミリシーベルトの自然放射線を受けており,その内訳は,宇宙線などの空間から飛来してくるものが0.39ミリシーベルト,土壌から放出されるものが0 らは自然放射線と呼ばれ,人は,1年当たり平均で約2.4ミリシーベルトの自然放射線を受けており,その内訳は,宇宙線などの空間から飛来してくるものが0.39ミリシーベルト,土壌から放出されるものが0.48ミリシーベルト,日常摂取する食物を通じ体内から照射されるものが0.29ミリシーベルト,空気中のラドンなどの吸入によるものが1.26ミリシーベルトとする研究結果が。 ))),ある〔甲1(84,85,甲4(79ないし81,甲8(90,95乙1(24〕)自然放射線は場所によりその強さが異なり,我が国では最も少ない神奈川県と最も多い岐阜県とは1年当たり約0.38ミリシーベルトの開きがある〔乙1(24ないし26,乙7の2(17。 ))〕第3章争点及び争点に関する当事者の主張第1争点1(差止請求の根拠) 被控訴人らの主張原判決第2分冊被控訴人ら最終準備書面第2章2に記載のとおりであり,その要旨は以下のとおりである。 - 17 -本訴請求は,人格権又は環境権に基づくものである。ここにいう「人格権」とは,人間の健康の維持と人たるにふさわしい生活環境の中で生きていくための権利という極めて根源的な内実を持った権利である。ここにいう「環境権」とは,憲法13条,25条を根拠とし,人が健康で快適な生活を維持するために必要な良き環境(自然的環境を含むのはもちろんのこと,社会的・文化的環境も含まれる)を享受し,かつ,これを支配し得る権利であり,人間に様々。 な危害を加える行為について,その被害が各個人に現実化する以前における「環境」そのものに対する侵害行為を排除し,もって人格権を守ることを目的とする権利である。 控訴人の主張被控訴人らが本訴請求の根拠とする人格権は,差止請求の根拠となり得るものの,環境権は,実定法上何らの根拠もなく,そ 侵害行為を排除し,もって人格権を守ることを目的とする権利である。 控訴人の主張被控訴人らが本訴請求の根拠とする人格権は,差止請求の根拠となり得るものの,環境権は,実定法上何らの根拠もなく,その概念,権利の内容,成立要件,法律効果等が全く不明瞭であり,これに基づく差止請求は許されない。 第2争点2(具体的危険」の主張立証責任等)「 被控訴人らの主張原子力発電所内部の放射性物質が外部に放出されれば,周辺公衆の生命,身体及び健康に甚大な被害をもたらすから,放射性物質が外部に放出される具体的危険があることが認められれば,当然に差止請求が認められるべきである。 そして,原子力発電所差止訴訟のような現代型訴訟と呼ばれる訴訟類型においては,訴訟上の信義則等の観点から,立証責任の軽減を図り,控訴人において放射性物質の外部放出の具体的危険がないことを立証する責任があるとすべきである。したがって,本件の審理に際しては,本件原子炉の安全性について,控訴人が相当の根拠を示しているかどうかをまず確認すべきである。 仮に主張立証責任について仙台地判平成6年1月31日判例タイムズ850号169頁のような考え方を採ったとしても,被控訴人らは,①原子力発電所の運転による放射性物質の発生,②原子力発電所の平常運転時及び事故時- 18 -における放射性物質の外部への排出の可能性,③放射性物質の拡散の可能性,④放射性物質の被控訴人らの身体への到達の可能性,⑤放射性物質に起因する放射線による被害発生の可能性について必要な立証を尽くしており,控訴人において安全性に欠けることがない点について立証を行う必要があるところ,控訴人はこの点につき十分な立証を尽くしていない。 なお,控訴人は,原子炉施設につき相対的安全性の考え方が適用されるべきである旨主張するが,原子 欠けることがない点について立証を行う必要があるところ,控訴人はこの点につき十分な立証を尽くしていない。 なお,控訴人は,原子炉施設につき相対的安全性の考え方が適用されるべきである旨主張するが,原子力発電所の安全性については,万が一にも周辺に放射線を放出するような事故を起こしてはならないことが判例上も明確になっているから,控訴人の主張する考え方は原子炉施設については援用されるべきではない。 控訴人の主張本件のような原子力発電所の運転差止を求める民事訴訟における危険性の主張立証責任は,民事訴訟の一般原則に従い,被控訴人らが負担すべきである。 仮に本件のような民事訴訟においても,原子炉設置許可処分の効力を争う行政訴訟における危険性(安全性)の主張立証責任に関する最一小判平成4年10月29日民集46巻7号1174頁に準じた考え方が採用されるとしても,控訴人は,原子炉施設の安全性について相当の根拠を示し,必要な資料を提出した上でその立証をする必要があるという限度にとどまるものであり,控訴人が前記立証を行わない場合には安全性に欠けることが事実上推認されるが,控訴人が前記立証を尽くせば,その事実上の推定が破れ,被控訴人らにおいて安全性が欠けることについて更なる主張立証をすべきものである。 そして,控訴人は,原判決第3分冊控訴人最終準備書面第2章第2並びに後記第4,第6の3及び第14に記載のとおり,本件原子炉施設の安全性について,相当の根拠を示し,必要な資料を提出した上で安全性に欠ける点のないことを主張し,かつ,これを立証してきた。 なお,そもそも,原子炉施設の安全性の意義については,科学技術を利用し- 19 -た装置等については,絶対的に事故発生の危険性がないといった「絶対的安全性」は想定し得ないから,事故発生の危険性が社会通念上容認できる水準 施設の安全性の意義については,科学技術を利用し- 19 -た装置等については,絶対的に事故発生の危険性がないといった「絶対的安全性」は想定し得ないから,事故発生の危険性が社会通念上容認できる水準以下である場合,又はその危険性の相当程度が人間によって管理できると考えられる場合に,その危険性の程度と科学技術の利用により得られる利益の大きさとを比較考慮した上で,これを一応安全なものとして利用するという「相対的安全性」の考え方を採用すべきである。 第3争点3(諸般の事情の総合考慮による差止めの可否)(被控訴人らの主張)原判決第2分冊被控訴人ら最終準備書面第2章3に記載のとおりであり,その要旨は以下のとおりである。 一般事故又は地震事故による放射性物質の外部放出の危険性の問題をひとまずおいても,そもそも原子力発電所が人格権(及び環境権)侵害の潜在的危険性を保有する施設であり,平常運転時に放出される放射性物質による健康被害も無視できない問題であることを前提として,①被害の種類・程度,②地域性,③法令ないし行政基準の違反の有無,④加害者の害意・過失等の主観的態様,⑤加害行為の公共性の有無,⑥加害者の手続上の瑕疵の有無,⑦防止措置ないし代替手段の可能性又は防止措置を採用したか否かという観点から,代替エネルギー(天然ガスや再生可能エネルギー,省エネ)の問題,⑧差止めにより加害者が犠牲にする利益と差止めを認めないことによる被害者の損失との比較考量という観点から,原子力発電の必要性の問題や原子力発電所を含めた核燃料サイクル全体(廃棄物処理や使用済み核燃料の貯蔵・輸送,廃炉等)にわたる問題のような諸般の事情を総合考慮して,人格権ないしは環境権侵害による差止請求が認められるべきである。 第4争点4(原発事故の蓋然性からみた危険性) 用済み核燃料の貯蔵・輸送,廃炉等)にわたる問題のような諸般の事情を総合考慮して,人格権ないしは環境権侵害による差止請求が認められるべきである。 第4争点4(原発事故の蓋然性からみた危険性) 被控訴人らの主張原判決第2分冊被控訴人ら最終準備書面第3章第1に記載のとおりであり,- 20 -その要旨は以下のとおりである。 原発事故が多発している。我が国で発生した多くの原発事故やスリーマイル島(以下「TMI」という)原発事故及びチェルノブイル原発事故を検討す。 ると,①どんな型の原子力発電所でも事故が多発していること,②国が実施した安全審査において想定されていなかった事故が相次いで発生していること,③あらゆる原因で事故が発生していること,④思わぬ小さな故障やミスが次の故障やミスを生み,連鎖反応を起こして大事故に発展するという弱点を有していること,⑤人為的ミスによる事故は不可避で防止し得ないこと,⑥膨大な種類,数の部品ひとつひとつの品質管理,保守点検において,不備,ミスが生じることは避けられないこと,⑦多重の安全確保対策が容易に破綻することを指摘でき,これらの事情によれば,原発事故は,いつでも,また極めて些細な人的,物的原因で起こり,現在の技術レベルでは,事故を防止することは不可能であることが明らかである。 控訴人の主張原判決第3分冊控訴人最終準備書面第2章第2の4に記載のとおりであり,その要旨は以下のとおりである。 本件原子炉施設では,第一に放射性物質の環境への放出につながるような事象の発生を未然に防止するため異常発生防止対策を講じ,第二に何らかの原因によって異常が発生した場合においてもそれが拡大することを防止するため異常拡大防止対策を講じ,第三に異常が拡大した場合においても放射性物質の環境への大量放出という事態だ 策を講じ,第二に何らかの原因によって異常が発生した場合においてもそれが拡大することを防止するため異常拡大防止対策を講じ,第三に異常が拡大した場合においても放射性物質の環境への大量放出という事態だけは確実に防止するための放射性物質異常放出防止対策を講じるという,多重防護の考え方に立った事故防止対策を講じている。 第5争点5(本件原発1号機の事故からみた危険性) 被控訴人らの主張(1) 次項において当審における新たな主張(本件臨界事故)を加える外は,原判決第2分冊被控訴人ら最終準備書面第3章第2に記載のとおりであり,そ- 21 -の要旨は以下のとおりである。 平成5年7月30日に運転を開始した本件原発1号機では,その後の約12年間に,原子力安全・保安院への報告対象事故が5件,それ以外で石川県との覚書に基づいて報告された事故が少なくとも9件発生した。これらの事故の内容,原因,控訴人の対応等を検討すると,①故障や不具合が発生したり,これらを発見しても,直ちに原子炉の運転を停止せず,可能な限り運転を継続しようとする姿勢が認められること,②設計施工上の単純なミスが多いこと,③検査手順書を無視して作業が行われたり,データ捏造,員数管理不十分等が認められること,④想定外の事故があること,⑤事故情報の公開に消極的であること等が認められ,控訴人の企業体質・姿勢自体に本件原子炉の事故を招く要因があることが明らかであるから,本件原子炉に重大事故が発生する具体的危険性が認められる。 (2) 当審における新たな主張(本件臨界事故)ア本件臨界事故の概要控訴人は,定期検査のため本件原発1号機の停止期間中,原子炉停止機能強化工事(異常時に原子炉緊急停止系の作動回路が作動しない場合に,原子炉を自動停止させるためのバックアップ機能を付加する工事)を行 控訴人は,定期検査のため本件原発1号機の停止期間中,原子炉停止機能強化工事(異常時に原子炉緊急停止系の作動回路が作動しない場合に,原子炉を自動停止させるためのバックアップ機能を付加する工事)を行い,平成11年6月18日,同工事の機能確認のため,原子炉停止機能強化工事確認試験(以下「ARI試験」という)を実施しようとした。ARI。 試験は,89本の制御棒のうちの1本が異常信号を模擬した信号により緊急挿入されることを確認するものであるが,その準備作業中,現場の作業員が,本来,中央制御室において制御棒駆動系の水の流量を「0」とした後に行われるはずの制御棒駆動機構の隔離弁の閉止作業を,その前に行ったため,制御棒駆動系の水の圧力(以下「系統圧力」という)が過大と。 なって制御棒が動き出し,制御棒のうち3本が脱落した。制御棒が意図せず脱落した場合でも,本来,コレットフィンガ(制御棒の挿入位置を固定- 22 -するために制御棒駆動機構内部に設けた爪)が機能して制御棒が15セ。 ンチメートル以上脱落することを止めるはずであるが,これが機能せずに落下を続けて原子炉が臨界となり,スクラム(原子炉緊急自動停止)信号が発生した。同信号が発生すると,本来,アキュムレータからの高圧水が制御棒下部に導入され,制御棒が緊急挿入されて原子炉が自動停止するはずであるが,ARI試験を実施するためにアキュムレータに水が充填されていなかったため,制御棒を緊急挿入することができず,手動操作で制御棒を全挿入の位置に戻すまで15分を要し,この間臨界状態が継続した(以下「本件臨界事故」という。 。)イ本件臨界事故の原因及び危険性本件臨界事故の一因は,制御棒を下方から重力に逆らって挿入しなければならないBWRの制御駆動機構の構造的欠陥にある。すなわち,BWRの制御棒駆動 」という。 。)イ本件臨界事故の原因及び危険性本件臨界事故の一因は,制御棒を下方から重力に逆らって挿入しなければならないBWRの制御駆動機構の構造的欠陥にある。すなわち,BWRの制御棒駆動機構は,原子炉圧力容器の炉水の中に制御棒を入れ込む構造となっているため,制御棒の操作は,直接制御棒を動かすのではなく,系統圧力により炉水の水圧に対抗する水圧を掛けて間接的に動作させる複雑な仕組みとなっている。また,制御棒を下から挿入するため,重力で落下しないようコレットフィンガと呼ばれる特別な装置が必要な上,このコレットフィンガも水圧を使って間接的に制御する仕組みとなっている。更にスクラム(原子炉緊急自動停止)信号が発せられた際の制御棒の緊急挿入の仕組みも,アキュムレータから高圧水が送られて制御棒を挿入するという複雑な仕組みとなっている。現に国内の従来型BWRでは,昭和53年11月の東京電力福島第一原子力発電所3号機臨界事故,平成3年5月31日の中部電力浜岡原子力発電所3号機制御棒脱落事故,平成10年2月22日の東京電力福島第一原子力発電所4号機制御棒脱落事故など制御棒脱落事故が多発し,本件原子炉と同じABWRでも平成8年6月10日に柏崎刈羽原発6号機で制御棒脱落事故が発生している。 - 23 -本件臨界事故は,即発臨界事故であったと分析されているところ,即発臨界では,ごく短時間のサイクルで核分裂が繰り返されることから,軽水炉におけるドップラー効果,水の温度変化による効果及びボイド効果という三つの自己制御効果によっては,暴走を止めることは期待できない。本件臨界事故は「幸運」により反応度事故に至らなかったにすぎない。 それにもかかわらず,控訴人の本件臨界事故の分析は,不十分である。 また,控訴人が作成した本件臨界事故の報告書は,調査者が事故を隠 い。本件臨界事故は「幸運」により反応度事故に至らなかったにすぎない。 それにもかかわらず,控訴人の本件臨界事故の分析は,不十分である。 また,控訴人が作成した本件臨界事故の報告書は,調査者が事故を隠蔽した当事者である点,事故調査対策委員会のメンバーの一部に事故により処分を受けた者が含まれている点,事故の重大性の認識が欠如しており,事実関係が十分に解明されていない点において,問題がある。 本件臨界事故は,原子炉の運転停止期間中に発生しているところ,停止期間中は,検査や工事上の必要から多くの安全装置が外されるにもかかわらず,停止中の作業における事故発生防止に向けての対策が講じられていない。 ウ本件臨界事故を隠蔽した控訴人の企業体質本件臨界事故が収束した後,所長以下14名が協議した結果,臨界事故の可能性を認識していたにもかかわらず,所長は「2号機着工が迫って,おり工程が遅れる」ことから,臨界を示すデータ類を誤信号として処理することとし,本件臨界事故を社外へ報告しないことを決め,その後,控訴人本店原子力部,控訴人東京支社及び石川支店の間でテレビ会議が開かれた際「制御棒が過挿入により,位置不明の表示となった「何らかのノ,」,イズによりIRMに信号が入った「実際に出力が上がっていないこと」,から報告対象でない」と報告して,了承され,社外へ報告しないことが決定された。その後,発電課長は,当直長らに対し,本件臨界事故は誤信号であるから,引継日誌に本件臨界事故に関する記述をしないように指示して事故記録の改ざんを行った。 - 24 -この控訴人の本件臨界事故の隠蔽,事故記録の改ざんは,通商産業大臣への報告義務を定めた原子炉等規制法67条1項,平成12年通商産業省令第328号による改正前の実用炉規則24条,必要な記録を残す義務を定めた原子 本件臨界事故の隠蔽,事故記録の改ざんは,通商産業大臣への報告義務を定めた原子炉等規制法67条1項,平成12年通商産業省令第328号による改正前の実用炉規則24条,必要な記録を残す義務を定めた原子炉等規制法34条,実用炉規則7条,保安規定の遵守を定めた原子炉等規制法37条4項等に反するものである。このように控訴人は,法律,保安規定に重大な違反をして本件臨界事故を隠蔽しているが,その決定は,現場の最高責任者である所長の決断によってなされ,同席した原子炉主任技術者(発電所次長)もこれを阻止する役割を果たさず,事故の隠蔽に同意している。 以上のような本件臨界事故後の控訴人の対応は,それが,秘密主義,メーカー任せの無責任・無能力,経済性優先という控訴人の企業体質に根ざすものであり,その企業体質が現在も全く変わっていないことを示している。 控訴人の主張(本件臨界事故)(1) 本件臨界事故における本件原発1号機の安全性の評価本件臨界事故は,燃料の健全性に影響がなく,作業員はもとより一般公衆への放射線被ばく影響もなかったのであるから,本件原発1号機の安全性を損なうようなものではない。そして,本件臨界事故によっても本件原発1号機の安全性が確保できたということは,本件臨界事故の際にも事故防止対策が有効に働いたこと及び原子炉の自己制御性が有効であったことを示すものである。すなわち,本件臨界事故においては,想定外の臨界という異常が発生したものの,異常拡大防止対策としての原子炉自動停止信号を発信し,これにより制御棒の引き抜けがとどまるとともに,原子炉自体が持つ自己制御性としてのドップラー効果が有効に働き,これにより原子炉の中性子束(中性子の速度と密度の積)が即時に降下したのである。 。 (2) 本件臨界事故の原因及び再発防止対策- 25 -本件臨界 自己制御性としてのドップラー効果が有効に働き,これにより原子炉の中性子束(中性子の速度と密度の積)が即時に降下したのである。 。 (2) 本件臨界事故の原因及び再発防止対策- 25 -本件臨界事故の主たる原因は,試験の工事担当課の電気保修課員が,本来作業票に添付すべき試験手順書を添付していなかったため,運転員が事前に試験手順をチェックできず試験の際の操作の内容を知らなかった,運転責任者である当直長が電気保修課員の指揮を行わなかった,試験の体制・役割が不明確なまま試験が進められたという現場作業管理上の原因により本来の手順に従って作業が実施されなかったこと,及び,系統圧力を監視する警報を除外していたため本件臨界事故の際これが機能しなかったことにある。 そこで,控訴人は,制御棒駆動機構の隔離操作はすべて発電課において一元的に実施するとともに手順書に従い1体ごとに実施する,系統圧力上昇による制御棒引き抜けの可能性を注意喚起する,工事要領書は工事担当課が審査・承認して必要なものは作業票に添付するとともに発電課においてダブルチェックする,系統圧力を監視する警報につき,圧力が上昇した場合と低下した場合の警報を分けるなどの技術的な再発防止対策を講じている。また,本件臨界事故を隠蔽した背後要因を掘り下げて根本原因を究明し「隠さな,い企業風土づくり」及び「安全文化の構築」を行うこととしている。このような控訴人の再発防止対策に係る取組は,平成20年3月,社外有識者による再発防止対策検証委員会から「再発防止対策としての取り組みが定着し,た」との評価を受けるとともに,原子力安全・保安院による検査の結果,「再発防止対策について,計画どおり着実に実施されている」と認められた。 (3) 本件臨界事故を踏まえた本件原子炉の安全性本件原子炉は,制御棒の挿入及び引 ともに,原子力安全・保安院による検査の結果,「再発防止対策について,計画どおり着実に実施されている」と認められた。 (3) 本件臨界事故を踏まえた本件原子炉の安全性本件原子炉は,制御棒の挿入及び引き抜きを制御棒駆動機構の電動機を駆動して行うこととなっており,系統圧力が何らかの原因で上昇した場合でも,構造上,水圧が制御棒引き抜け方向に働くことはなく,本件原発1号機と異なる構造となっているから,本件臨界事故と同様な事故は起こり得ない。国内の従来型BWRにおいて発生した制御棒脱落事故は,いずれも何らかの原因で系統圧力が上昇又は高い状態で,この圧力が制御棒引き抜け方向に働い- 26 -たことによるものである。控訴人は,本件原子炉のARI試験を営業運転開始前に実施して問題なく終了している。また,控訴人は,本件原子炉においても,本件臨界事故を踏まえて,本件原発1号機と同様,作業管理に係る品質管理要領の点検及び改善並びに臨界防止に係る設備の手順書等の点検及び改善を実施するとともに,本件原子炉と同じABWRである柏崎刈羽原発6号機で生じた制御棒脱落事故を踏まえて,制御棒が動作する可能性のある試験を実施する際は,制御棒駆動機構の電動機の駆動電源の遮断のみならず,制御棒の引き抜き又は挿入を電動機側に対し指令する制御装置の電源を遮断することとし,安全処置の多重化を図っている。 第6争点6(最近の事故例からみる事故の危険性) 応力腐食割れ(1) 被控訴人らの主張原判決第2分冊被控訴人ら最終準備書面第3章第3の1に記載のとおりであり,その要旨は以下のとおりである。 ア応力腐食割れの発生・進展機序は未解明であり,現在の技術では,その発生を完全に防ぐことは不可能であって,本件原子炉でも発生は不可避である。シュラウドは,重大な役割を果たしており,その損傷 ある。 ア応力腐食割れの発生・進展機序は未解明であり,現在の技術では,その発生を完全に防ぐことは不可能であって,本件原子炉でも発生は不可避である。シュラウドは,重大な役割を果たしており,その損傷は,原子炉の安全性に重大な危険をもたらす。シュラウドや上部格子板に応力腐食割れが進展した状態で(ドイツのビュルガッセン原子力発電所,フィッツパトリック原子力発電所では,上部格子板にも亀裂があることが発見された)大規模な地震動が加わるなどすると,シュラウドが運転中に分断・。 脱落し,炉心における冷却水の流路をふさいだり,ECCSの水が炉心燃料に届かなかったり,横からの強い水流の影響や駆動する空間の歪みにより制御棒が炉心に挿入できない事態も考えられるから,本件原子炉でも応力腐食割れを原因とする重大事故が発生する危険性があることは明らかである。 - 27 -イSUS316Lは,本件原子炉のシュラウド及び原子炉冷却材圧力バウンダリ内の配管において使用されているから,応力腐食割れの問題は,本件原子炉の安全性にも重大な影響がある。 ウ原子力安全・保安院は,中間取りまとめにおいて,原子炉再循環配管の応力腐食割れ対策として,バタリング工法等四つの方法を列挙しているが,そのうち効果が確証されているとするのはバタリング工法のみで,他の方法についてはその効果が確認されていない。 エ超音波探傷試験の結果に信頼性がないことは,原子力安全・保安院が定めた一定の損傷を許容する「維持基準」の前提が崩れたことを意味する。 オ電気事業法の改正は,電気事業者のコスト削減のために,大事故につながらない箇所のトラブルについては,直ちに補修せず運転継続を認めるものであって,いわゆる「維持基準」を導入したものである。しかし,維持基準の内容が経済産業省令に白紙委任されていること, 大事故につながらない箇所のトラブルについては,直ちに補修せず運転継続を認めるものであって,いわゆる「維持基準」を導入したものである。しかし,維持基準の内容が経済産業省令に白紙委任されていること,検査の情報が公開される保障がないこと,検査の信頼性がないこと等に鑑みると,維持基準の導入は,重大事故の発生につながるものである。 (2) 控訴人の主張原判決第3分冊控訴人最終準備書面第2章第2の4(2)のエ(オ)及びオに記載のとおりであり,その要旨は以下のとおりである。 控訴人は,本件原子炉の原子炉冷却材圧力バウンダリ内のシュラウドや配管においては,低炭素ステンレス鋼を使用し,適切な溶接方法ないしは溶接管理を行い,冷却材中の溶存酸素濃度を低減するような運転管理を行っているし,溶接部に対して残留応力の改善対策を実施しており,万一ひび割れが確認された場合には,地震時も含めてその健全性の評価を行うとともに,ひび割れの進展状況について監視し,十分な構造強度を有するうちに補修することとしているから,地震時においてもシュラウドが破断したり,制御棒の挿入が不可能になることはない。 - 28 - 配管減肉問題(1) 被控訴人らの主張原判決第2分冊被控訴人ら最終準備書面第3章第3の2に記載のとおりであり,その要旨は以下のとおりである。 配管の減肉を完全に止めたり,正確に予測したりすることはできないから,厳格な減肉管理が必要となるのに,控訴人が原子力安全・保安院に報告した本件原発1号機についての減肉事例は,高い減肉事例を避けて無難な例を選んだとみるべきであるし,控訴人の減肉管理には,①点検対象が炭素鋼に限定され,他の原子力発電所で激しい減肉が見つかっている対策材(低合金鋼,ステンレス鋼)を対象にしていない,②米国トロージャン原子力発電所では直管部分に 訴人の減肉管理には,①点検対象が炭素鋼に限定され,他の原子力発電所で激しい減肉が見つかっている対策材(低合金鋼,ステンレス鋼)を対象にしていない,②米国トロージャン原子力発電所では直管部分に減肉が確認されているのに,炭素鋼の点検対象も偏流部などに限定され,直管部等を対象にしていない,③代表部位のみを点検することとし,多くの箇所の点検が省略されている,④減肉が加速度的に進む実態が考慮されていない,⑤想定を超える高い減肉率の事例が明らかになる中で,点検頻度が低すぎる可能性がある,といった問題があるから,発見されない減肉が各所に存在することは避け難く,一方で,控訴人による耐震安全性評価は,配管等に減肉がないことが前提となっているから,減肉した配管に対して,大きな地震による強振動が襲えば,複数箇所で同時に配管の破断等が発生するおそれがあり,これが重大事故を引き起こすことは避けられない。 (2) 控訴人の主張本件原子炉施設においては,その設計段階から,使用する配管の環境条件に応じて配管を太くして流速を落とす,腐食を考慮して肉厚を厚くする対策に加え,減肉が発生しやすい箇所には低合金鋼などの減肉対策材を使用するなど材料面において対策を行っている。更に減肉管理として,サンプリング的に代表箇所の配管肉厚を測定し,減肉状況を継続的に監視していくことと- 29 -している。 タービン損傷事故(1) 被控訴人らの主張浜岡原子力発電所5号機では,営業運転開始から約1年5か月後,定期検査終了から約3か月後に,また,本件原子炉施設では,営業運転開始から約3か月余り後に,いずれも低圧タービンの羽根の破損事故(以下,浜岡原子力発電所5号機におけるタービン損傷事故を「浜岡タービン損傷事故」と,本件原子炉施設におけるタービン損傷事故を「本件タービン ら約3か月余り後に,いずれも低圧タービンの羽根の破損事故(以下,浜岡原子力発電所5号機におけるタービン損傷事故を「浜岡タービン損傷事故」と,本件原子炉施設におけるタービン損傷事故を「本件タービン損傷事故」といい,両者を併せて「タービン損傷事故」という)が生じているところ,タ。 ービン損傷事故は,以下のとおり,重大なものである。すなわち,本件タービン損傷事故は,低圧タービンの羽根合計総数840枚のうち3割を超える258枚の動翼の根元の取付部(以下「フォーク」という)にひび割れが。 発生しており,そのうち2箇所はひび割れが折損にまで進展していた。タービンには振動に関する監視装置など種々の運転監視用計測装置が設置されているにもかかわらず,浜岡原子力発電所5号機でも本件原子炉施設でも,タービンの羽根が前記のとおり現実に破損するまで異常を発見できなかった。 タービン損傷事故が発生した際,制御棒挿入の失敗や遅れ,余熱除去の失敗,原子炉圧力の上昇,冷却水の喪失等の事態が生じたり,破断した羽根がタービン建屋を飛び出すタービンミサイル事故が発生するなど,重大な事故が発生する可能性がある。タービン建屋は,放射線管理区域内に存在し,屋内には放射性物質が含まれた蒸気が存在するから,原子力発電所でタービンミサイル事故が発生すれば,放射性物質が含まれた蒸気が外部に流出するし,飛び出した羽根が使用済燃料貯蔵プールや付近の配管に衝突して破損する可能性があり,極めて危険性が高い。それにもかかわらず,控訴人や中部電力が行ったタービン損傷事故の調査は,タービンの羽根の形状や車軸の傷に関する検討が行われていなかったり,熱流動解析の信頼性に問題があるなど不十- 30 -分であり,その原因は十分に解明されていない。また,本件原子炉施設の再発防止策も,応急措置として安全性が の傷に関する検討が行われていなかったり,熱流動解析の信頼性に問題があるなど不十- 30 -分であり,その原因は十分に解明されていない。また,本件原子炉施設の再発防止策も,応急措置として安全性が保証されていない整流板を設置するなど,十分でない。 (2) 控訴人の主張浜岡原子力発電所5号機は,平成18年6月15日「タービン振動過,大」の警報を発し,蒸気タービンが停止するとともに原子炉が自動停止し,点検の結果,低圧タービン3台のうち1台について,第12段の羽根1枚がタービン軸から脱落し蒸気タービン下部に落下していたこと,第12段のタービンの羽根46枚のフォークの一部に折損又はひび割れが生じたこと,他の低圧タービン1台の第12段の羽根にもフォークの一部に折損又はひび割れが存在したことが明らかになったが,原子炉建屋,タービン建屋内における放射性物質放出等の異常はなく,外部への放射能の影響もなかった。 国は,本件原子炉施設である蒸気タービン(以下「本件蒸気タービン」という)が浜岡原子力発電所5号機の蒸気タービンと同型であるため,控訴。 人に対して,本件蒸気タービンの羽根の点検を行うように指示した。控訴人が点検を行った結果,低圧タービンの第12段の羽根840枚のうち258枚の羽根の動翼フォーク部にひび割れ又は折損が確認され,その要因は,金属材料に応力が高サイクル(一般に1万回以上)で繰り返し加わった場合に低い応力でも亀裂が発生する高サイクル疲労亀裂であると推定された。その原因としては,低負荷時(低出力時)及び無負荷時(蒸気タービンに蒸気は流れているが発電はしていないとき)に生じる蒸気タービン内の蒸気流の乱れ(大きな逆流や渦流)によって発生するランダム振動及び抽気系からの蒸気の逆流(以下「フラッシュバック」という)の重畳によるものと推定さ。 が発電はしていないとき)に生じる蒸気タービン内の蒸気流の乱れ(大きな逆流や渦流)によって発生するランダム振動及び抽気系からの蒸気の逆流(以下「フラッシュバック」という)の重畳によるものと推定さ。 れた。そこで,控訴人は,本件タービン損傷の再発防止のため,長期的対策として,本件原子炉施設の3台の低圧タービンについて,発生する振動応力に十分耐え得る設計の12段動翼を新たに製作し交換することとするととも- 31 -に,短期的対策として,低圧タービン12段の動翼及び静翼をすべて取り外し,代わりに他の発電所で実績のある整流板を設置した。 また,本件蒸気タービンは,車室で覆われ,車室の車軸貫通部の透き間は,外側から蒸気を押し込むことにより,放射性物質たる車室内の蒸気の漏えい防止対策が採られている上,異常が発生した場合の安全性についても,以下のとおり確認している。すなわち,本件蒸気タービンには,運転監視用としてタービン速度やタービン軸振動等を測定する種々の計測装置を設置し,これらの計測装置において異常が検知された場合,蒸気流量を制御する弁の自動閉止により本件蒸気タービンが停止し,弁の自動閉止を検知して原子炉緊急停止系が作動し,自動的かつ速やかに全制御棒が挿入され,本件原子炉は安全に停止する。蒸気タービンへの蒸気流量を制御する弁が閉止すると,原子炉で発生した蒸気が行き場を失って原子炉圧力が急上昇して燃料棒が過熱し,燃料被覆管や原子炉冷却材圧力バウンダリの健全性に影響を与えるおそれがあることから,本件原子炉施設では,この弁が閉止した場合に発生した蒸気を直接復水器へ導くタービンバイパス配管を設け,原子炉圧力の急上昇を防止できる設計としている。仮にタービンが損傷し,タービン建屋から放射性物質を含んだ蒸気が流出しても,このときの発電所敷地境界外における 復水器へ導くタービンバイパス配管を設け,原子炉圧力の急上昇を防止できる設計としている。仮にタービンが損傷し,タービン建屋から放射性物質を含んだ蒸気が流出しても,このときの発電所敷地境界外における実効線量は約1.8×10ミリシーベルトであり,安全評価審査指針がリス-2,クは小さいとする5ミリシーベルト未満である。また,本件原子炉施設ではタービン速度を計測する計測装置を設置し,その信号を基に本件蒸気タービンに流入する蒸気流量を調整し,タービン速度を制御するとともに,タービン速度が通常運転時よりも異常に速くなった場合に本件蒸気タービンを安全に停止させるための多重の過速度防止装置を設置している。これら過速度防止装置の作動により,本件蒸気タービンへ流れる蒸気が自動的に遮断され,本件蒸気タービンは自動的に停止することとなっており,十分タービンミサイルの防止対策を実施している。 - 32 -仮に高圧タービン車軸及び発電機ロータが破損したとしても,車室を貫通して外部に飛び出すことはない。仮に本件蒸気タービンの羽根及び軸継手が。 タービン建屋を飛び出したとしても,使用済燃料貯蔵プールには到達しないまた,ディスクは,車軸と一体構造であるため,破損確率は極めて小さく,ディスクがミサイルとなって使用済燃料貯蔵プールへ衝突する確率は1千万年に1回以下である。 第7争点7(先行ABWRの異常事象からみた本件原子炉施設の事故の危険性)(被控訴人らの主張)原判決第2分冊被控訴人ら最終準備書面第3章第4に記載のとおりであり,その要旨は以下のとおりである。 ABWRの先行機である柏崎刈羽原発第6号機及び第7号機(平成3年5月15日両機について原子炉設置許可,平成8年11月7日6号機営業運転開始,平成9年7月2日7号機営業運転開始)は,既に24件の事故を起こして 先行機である柏崎刈羽原発第6号機及び第7号機(平成3年5月15日両機について原子炉設置許可,平成8年11月7日6号機営業運転開始,平成9年7月2日7号機営業運転開始)は,既に24件の事故を起こしている。 従来型BWRよりもABWRの事故頻度は格段に高く,しかも新しいものほど事故頻度が高いところ,本件原子炉施設は更に新しいABWRであるから,その事故頻度,危険性が更に高くなることが大いに懸念される。 第8争点8(ABWRの本質的危険性) インターナルポンプの危険性(1) インターナルポンプによる金属片発生・流入ア被控訴人らの主張原判決第2分冊被控訴人ら最終準備書面第3章第5の2(2)に記載のとおりであり,その要旨は以下のとおりである。 従来型BWRでは,再循環系配管から原子炉に至る系統にストレーナ(ゴミ取り)があり,大きな金属片は流入を阻止できた。福島第二原子力発電所3号機の異常事象では,原子炉内に流入したのは,ストレーナをくぐり抜けた小さな金属片だけであった。しかるに,ABWRでは,インタ- 33 -ーナルポンプの本体や羽根車が破損して金属片が発生すると,その破片はすべて炉心に流れ,燃料体を破損させる可能性がある。 また,従来型BWRでは,原子炉内に可動部分がなかったが,ABWRでは,インターナルポンプが高速運転しているので,外部から流入した金属片がここに噛み込めば,羽根車やその周辺のケーシング部分(枠の部分)を破損する可能性があり,前記の異常事象は,そのことを実証した。 その場合,外部から流入した金属片と破損によって生じた金属片が燃料体を破損させる可能性がある。 さらに,フィンランドのオルキルオト発電所1号機で平成元年に発生した異常事象のように,原子炉内に流入し,あるいは原子炉内で発生した金属粉によって制御棒が引き抜けなくな 体を破損させる可能性がある。 さらに,フィンランドのオルキルオト発電所1号機で平成元年に発生した異常事象のように,原子炉内に流入し,あるいは原子炉内で発生した金属粉によって制御棒が引き抜けなくなる可能性がある。 イ控訴人の主張本件原子炉施設においては,燃料集合体の冷却材入口に異物フィルタを設け,燃料被覆管の損傷原因となり得る異物が燃料集合体内に入ることを防止するとともに,建設時の異物管理において,原子炉につながる系統において異物の発生源となるワイヤブラシを原則使用しないなど,徹底した異物混入防止管理を行ってきたし,運転を開始した後も同様の異物管理を行うとともに,冷却材中の放射能を監視するなどの方法によって,常時燃料被覆管の健全性を確認している。 (2) インターナルポンプ停止に伴う炉内不安定性の増大ア被控訴人らの主張原判決第2分冊被控訴人ら最終準備書面第3章第5の2(3)に記載のとおりであり,その要旨は以下のとおりである。 (ア)従来型BWRの再循環ポンプは羽根車が大きいため,停止後もコーストダウン(停止後も慣性力で回る状態)により徐々に再循環流量が低下するが,羽根車の小さいインターナルポンプでは,コーストダウンが- 34 -ほとんどなく,停止とほぼ同時に流量が零になり,原子炉出力の変動につながる。1,2台が停止した場合は,他のポンプの出力を調整することによって炉心出力を安定させることができるが,5,6台以上停止した場合は,原子炉出力が不安定となる。 (イ)例えば主電源装置の破損や焼損,ケーブルの断線などが起きれば,複数台のインターナルポンプの同時停止が起こり得る。その場合に,原子炉が停止できなければ重大事故につながる。 (ウ)特に,再循環流量が減少した場合,出力発振(出力が振動を始め,その振動の幅が減衰しないで拡大し ターナルポンプの同時停止が起こり得る。その場合に,原子炉が停止できなければ重大事故につながる。 (ウ)特に,再循環流量が減少した場合,出力発振(出力が振動を始め,その振動の幅が減衰しないで拡大していくこと)を引き起こす可能性があり,同時にスクラムが失敗した場合,原子炉の出力が大きく変動し,局所的には燃料の限界を超えることも考えられる。 イ控訴人の主張(ア)インターナルポンプの駆動電動機に電源を供給する可変周波数電源装置は,10台のポンプ各々に独立して接続しているから,電源装置の単一の故障を想定しても,2台以上のポンプが同時に停止することはない。 (イ)控訴人は,インターナルポンプのうち3台が同時に停止し,炉心内の熱除去が異常に変化する事象等について評価を行い,本件原子炉施設は,燃料被覆管及び原子炉冷却材圧力バウンダリの各健全性を十分確保するものであることを確認した。 (ウ)インターナルポンプのうち6台の電源装置には,慣性の大きなフライホイール付きの原子炉冷却材再循環ポンプMGセットを介して電源を供給しており,電源の供給が瞬時に停止しても,フライホイールが回り続けることによって,しばらくの間は発電機が発電し続け,各ポンプに対して3秒以上電源を供給し続けることができるから,ポンプ10台の電源母線がすべて同時に停電しても炉心流量は瞬時に零にはならない。 - 35 -(エ)控訴人は,インターナルポンプ10台がすべて同時に停止することにより炉心冷却状態が著しく変化する事象等について評価を行い,本件原子炉施設における工学的安全施設は,放射性物質の環境への大量放出を防止できることを確認した。 (3) インターナルポンプケーシングの取付部の破損ア被控訴人らの主張インターナルポンプケーシングの取付部の溶接線にも従来型BWR再循環系配 物質の環境への大量放出を防止できることを確認した。 (3) インターナルポンプケーシングの取付部の破損ア被控訴人らの主張インターナルポンプケーシングの取付部の溶接線にも従来型BWR再循環系配管のひび割れと同質の問題があり,現に東京電力では柏崎刈羽原発6号機及び7号機においてこの溶接線の点検を強化している。10台のインターナルポンプケーシングの取付部が同時破断してしまえば,従来型BWR系出口配管の破断と同様の急激な冷却材喪失事故となる。 イ控訴人の主張原子炉圧力容器とインターナルポンプケーシングの取付部は,通常運転時,異常な過渡変化時及び事故時にそれぞれ想定される圧力・温度に耐え得る強度を持つとともに,設計用限界地震が発生してもその健全性が維持できる設計としており,運転開始後も点検することから,溶接部の破断によるポンプの脱落は考えられない。また,前記取付部は,実規模大の原子炉分割モデルを用いた各種試験により信頼性,健全性が確認されている。 さらに,仮に前記取付部が破断し,ポンプが脱落しても,ポンプの軸に設けられた突起部が穴をふさぐため,冷却材が大量に漏れることはない。 (4) 柏崎刈羽原発7号機インターナルポンプ停止事故の原因(被控訴人らの主張)原判決第2分冊被控訴人ら最終準備書面第3章第5の2(5)に記載のとおりであり,その要旨は以下のとおりである。 電力事業者は,福島第二原子力発電所3号機で再循環ポンプ回転体と水中軸受リングとの共振破壊を経験し,それ以後も何度も振動疲労により機器の- 36 -破損事故を繰り返しているのに,同じ原因で平成11年7月28日の柏崎刈羽原発7号機の事故を起こしたものである。このような電気事業者の体質は,今後,原子力発電所において極めて厳しい事故を引き起こす要因となり得る。 改良型制御棒駆動機構の 平成11年7月28日の柏崎刈羽原発7号機の事故を起こしたものである。このような電気事業者の体質は,今後,原子力発電所において極めて厳しい事故を引き起こす要因となり得る。 改良型制御棒駆動機構の危険性(1) 被控訴人らの主張原判決第2分冊被控訴人ら最終準備書面第3章第5の3に記載のとおりであり,その要旨は,本件原子炉施設では水圧式のスクラム時間が従来型BWR(100パーセント挿入時間が2.16秒以下)よりも遅くなっており,安全性無視である,というものである。 (2) 控訴人の主張解析評価により制御棒の緊急時の挿入時間で安全上問題のないことを確認している。 縮小されたECCSの問題点(1) 被控訴人らの主張原判決第2分冊被控訴人ら最終準備書面第3章第5の4に記載のとおりであり,その要旨は以下のとおりである。 アABWRでは再循環系配管が廃止されたことを理由として,ECCSの低圧注水系1系統が廃止され,高圧注入系が追加されたが,インターナルポンプのノズル10基が炉心底部にあるから,必ずしも炉心底部からの冷却材喪失事故を考慮しなくてもよいということにはならないし,主蒸気系統の破断など従来の低圧注入系統で対処しなければならない事故の可能性が減少したわけではないから,低圧注水系を減少させる合理的理由はなく,ABWRは安全性が低下している。 イ小中口径配管の破断や小規模亀裂の発生による冷却材喪失事故では,炉心の水は減り続けるものの炉内の圧力が下がらないという現象が起きるところ,高圧炉心注水系を増加させたのは,原子炉内部の圧力がまだ高い環- 37 -境下でのECCSからの冷却材投入が簡単ではないことを暗に認めた結果であると思われるが,高圧炉心注水系を増やしても,原子炉圧力容器内部の減圧ができなければ,注水できないことに変わりはない 37 -境下でのECCSからの冷却材投入が簡単ではないことを暗に認めた結果であると思われるが,高圧炉心注水系を増やしても,原子炉圧力容器内部の減圧ができなければ,注水できないことに変わりはないから,高圧炉心注水系1系統を追加したことで安全性を確保することができたとはいえない。 (2) 控訴人の主張ECCSの機能で重要な要素は,原子炉圧力容器につながる配管が破断した際の原子炉への注水能力(容量)であるが,本件原子炉施設では,従来型BWRのような再循環系の配管が不要となったから,必要なECCSの容量は相対的に小さくなった。ECCSに必要とされる容量は,原子炉の熱出力によって一義的に決まるものではなく,想定される配管の破断部からの冷却材の流出量で決まるものである。 ABWRの経済性優先性(1) 定期検査短縮の問題(被控訴人らの主張)各原子力発電所では,定期検査の期間の短縮が進められ,他方,定期検査と定期検査との間隔は長期化が進められつつある。従来型BWRでは,定期検査期間は68日であったが,本件原子炉施設では,55日に短縮することが予定されており,更に29日への短縮が目指されているものと推測される。 これらは,安全よりも経済性を優先する姿勢の現れである。 (2) 高燃焼度燃料の採用及び「燃料被覆管の健全性確保」の虚構性ア被控訴人らの主張原判決第2分冊被控訴人ら最終準備書面第3章第5の5(3),第6の3(6)に記載のとおりであり,その要旨は以下のとおりである。 (ア)柏崎刈羽原発の6号機及び7号機での燃料漏えい率は高く,従来の我が国における原子力発電所の平均的漏えい回数の約10倍に及ぶ。し- 38 -かも,漏えいの原因は,従前の例では燃料被覆管にピンホールが生じたことであったが,柏崎刈羽原発6号機及び7号機では燃料被覆管に亀 おける原子力発電所の平均的漏えい回数の約10倍に及ぶ。し- 38 -かも,漏えいの原因は,従前の例では燃料被覆管にピンホールが生じたことであったが,柏崎刈羽原発6号機及び7号機では燃料被覆管に亀裂が生じたことであった。 (イ)ABWRでは,新しいタイプの8×8型ないし9×9型の高燃焼度燃料を使用しており,本件原子炉でも,9×9型燃料集合体を利用している「高燃焼度」というのは,長時間原子炉中に入れて中性子の照射。 をすることを意味している。 (ウ)高燃焼度燃料は,長い時間原子炉中に入れて中性子の照射をするので,時間的な意味で環境が厳しくなるし,燃料集合体のサイズはほとんど従来のものと変わらないため,1本1本の燃料棒の直径が細くなり,燃料被覆管の肉厚も薄く作られるし,単位体積当たりの出力も高くなるから,照射量の面での過酷さも増しており,厳しい環境に置かれることになる。このことが,ABWRで燃料漏えいが増加している原因であると考えられる。 (エ)燃料被覆管の亀裂が生じれば,原子炉を停止して,破損燃料を交換する必要がある。このことは,計画外運転停止の増大によるコスト増大と安定供給の阻害を引き起こすし,破損燃料を抱えての出力振動や冷却水喪失といった過酷な事故の発生の可能性が強くなって,安全性の大幅な低下が懸念される。本件原子炉においても,燃料被覆管に穴が開き,そこから放射性物質が漏れ出すという極めて危険な事故発生の危険性が十分存する。 イ控訴人の主張原判決第3分冊控訴人最終準備書面第2章第2の4(2)ウの(ウ)ないし(キ)に記載のとおりであり,その要旨は以下のとおりである。 本件原子炉では,9×9型燃料を使用している。これは,使用済燃料の発生量を低減するために,従来の燃料に比べてウラン235の濃縮度を若- 39 -干増やし,更な あり,その要旨は以下のとおりである。 本件原子炉では,9×9型燃料を使用している。これは,使用済燃料の発生量を低減するために,従来の燃料に比べてウラン235の濃縮度を若- 39 -干増やし,更なる高燃焼度化を図るとともに,燃料棒の負担を軽減するために燃料棒の配列を従来の8行8列から9行9列として,燃料棒の数を増やしたものである。本件原子炉施設の燃料の設計に当たっては,燃料棒の照射試験等の知見を基に,炉内滞在期間の長期化及び中性子照射量の増加による燃料被覆管の機械的強度等への影響を考慮し,また,燃料被覆管の製造工程で,超音波探傷試験によりその欠陥の有無及びその端栓の溶接部の健全性をそれぞれ確認するとともに,ヘリウム漏えい試験により燃料被覆管に貫通欠陥がないことを確認した。 第9争点9(安全システムの虚構性) 原子炉の固有の安全性,自己制御性の不完全性(被控訴人らの主張)原判決第2分冊被控訴人ら最終準備書面第3章第6の1に記載のとおりであり,その要旨は以下のとおりである。 BWRのドップラー効果,ボイド効果,減速材の温度効果による固有の安全性,自己制御性は,定常運転の範囲を外れた場合には成立せず,圧力増加や冷却水の温度低下によってボイドが消滅すれば,逆に核分裂が急増することになり(ボイド効果の逆転,万一スクラムに失敗すれば,原子炉破損という重大)な事故に至る。 安全性システムの虚構性(1) 被控訴人らの主張原判決第2分冊被控訴人ら最終準備書面第3章第6の2に記載のとおりであり,その要旨は以下のとおりである。 原子力発電所は多重防護の考え方で安全対策を採っているから重大事故が起こることはないという安全神話は,TMI原発事故及びチェルノブイル原発事故によって完全に崩壊した。我が国でも深刻な事故が多発している上,徐々に事故レベ の考え方で安全対策を採っているから重大事故が起こることはないという安全神話は,TMI原発事故及びチェルノブイル原発事故によって完全に崩壊した。我が国でも深刻な事故が多発している上,徐々に事故レベルすなわち危険性のレベルが上がってきているから,多重防- 40 -護なる事故防止対策が虚構であることは明らかである。 また,本件臨界事故により,控訴人が主張する多重防護システムが機能しないことが明らかになった。 (2) 控訴人の主張控訴人は,本件原子炉施設の安全確保のため,第一に,本件原子炉で発生した放射性物質をできるだけ発電所内に閉じ込めることにより運転に伴って環境に放出せざるを得ない放射性物質の量を少なくしており,第二に,多重防護の考え方に立って,自然的立地条件を十分に配慮した上,①異常の発生を防止し,②異常が発生した場合には拡大を防止し,③異常が拡大した場合においても,放射性物質の環境への大量放出という事態だけは確実に防止することとしている。 被控訴人らは,本件臨界事故により多重防護システムが機能しないことが明らかになった旨主張する。しかしながら,本件臨界事故においても,原子炉の多重防御機能及び自己制御性が有効に働いた結果,燃料の健全性に何ら影響がなく,反応度事故及び暴走の可能性は全くなかったのであるから,被控訴人らの前記主張には理由がない。 「異常発生防止対策」の虚構性(1) 原子炉出力の異常発生の危険性ア被控訴人らの主張原判決第2分冊被控訴人ら最終準備書面第3章第6の3(2)に記載のとおりであり,その要旨は以下のとおりである。 昭和63年3月9日,アメリカ合衆国イリノイ州シカゴ近郊にあるラサール原子力発電所2号機で発生した出力振動にとどまらず,インターナルポンプを持つ原子炉でも,昭和62年2月22日にはフィンランドの 。 昭和63年3月9日,アメリカ合衆国イリノイ州シカゴ近郊にあるラサール原子力発電所2号機で発生した出力振動にとどまらず,インターナルポンプを持つ原子炉でも,昭和62年2月22日にはフィンランドのTVO-1原子力発電所で,同年8月20日にはスウェーデンのフォルスマルク原子力発電所1号機で,いずれも出力振動が発生したし,ドイツのブル- 41 -ンスビュッテル原子力発電所,スウェーデンのオスカーシャム原子力発電所3号機でも出力振動が発生した。出力振動の様式は未だ解明されておらず,複雑な機構が関与していることが示唆されている。証人Bは,インターナルポンプを持つ原子炉での出力振動の発生例を全く知らないと供述しており,このことは,控訴人による安全対策の虚構性を示している。 イ控訴人の主張本件原子炉には,ボイド効果を適切に設定することにより,原子炉のすべての運転範囲において,出力振動に対して十分な減衰特性を持たせている。 (2) 原子炉圧力・原子炉水位の異常発生の危険性(被控訴人らの主張)原子炉圧力・水位がしばしば異常を呈することがある。原子炉圧力の異常の原因は,炉心の蒸気発生であるし,原子炉水位の異常の原因は,原子炉給水系の故障である場合もあるし,逃がし安全弁の開固着である場合もある。 (3) 監視制御(被控訴人らの主張)原判決第2分冊被控訴人ら最終準備書面第3章第6の3(4)に記載のとおりであり,その要旨は以下のとおりである。 現実の運転管理ではヒューマン・エラーの続出が問題となっているが,ヒューマン・ファクターによるトラブルは不可避であり,ヒューマン・エラーによって大事故が発生し,設計ベースの事故を越えて,いわゆるシビアアクシデントに至る危険性さえ指摘されている。 (4) 保守管理ア被控訴人らの主張原判決第2分冊被控訴人ら最終 ヒューマン・エラーによって大事故が発生し,設計ベースの事故を越えて,いわゆるシビアアクシデントに至る危険性さえ指摘されている。 (4) 保守管理ア被控訴人らの主張原判決第2分冊被控訴人ら最終準備書面第3章第6の3(5)に記載のとおりであり,その要旨は以下のとおりである。 - 42 -これまで原子力発電所の保守管理には,①格納容器の中にある安全確保のために主要な機能を担う多くの機器が,原子炉停止のとき(定期検査時)でなければ点検できず,日常点検は意味を持たない,②定期検査は点検事項が少なく,現実に十分な点検がなされていない,③現実の定期検査は極めてずさんな実情にあり,その実例は後を絶たない,といった実に多くの問題が指摘されており,現状の保守管理をもってしては原子力発電所の安全性は保てない。 イ控訴人の主張本件原子炉施設においては,その設備が設計どおりの機能を発揮し,それが維持し続けられるように,24時間体制での巡視点検,定期的な機器・系統の作動試験等の日常点検を実施するとともに,ほぼ1年に1回,本件原子炉施設の運転を停止して実施する定期検査において,原子炉本体,原子炉冷却系設備,計測制御系設備等の各設備を,所定の点検頻度で,総合的に点検,整備し,その機能を確認することとしている。 「異常拡大防止対策」の虚構性(1) 異常発生の検知の不十分性(被控訴人らの主張)我が国の原子炉施設では,異常事象を直接に検知する方法ではなく,間接的な検知方法が採られ,そのために異常事象の把握が困難な事例がみられる。 例えば,平成4年9月29日の福島第一原子力発電所2号機の事故で明らかになったのは,給水流量監視システムでは,ポンプの運転状況の監視は行われていたが,給水の流量そのものの監視をしていなかったことであった。また,平成2年9月9 福島第一原子力発電所2号機の事故で明らかになったのは,給水流量監視システムでは,ポンプの運転状況の監視は行われていたが,給水の流量そのものの監視をしていなかったことであった。また,平成2年9月9日発生の同原子力発電所3号機の事故で明らかになったのは,蒸気の流量を直接監視しないで,これを弁の駆動で監視していたことであった。これらの監視方法が採られていることは,本件原子炉施設でも同様であるから,本件原子炉施設における異常拡大防止対策の一角は崩れてい- 43 -る。 (2) 安全保護設備の不十分性(被控訴人らの主張)原判決第2分冊被控訴人ら最終準備書面第3章第6の4(2)③に記載のとおりであり,その要旨は以下のとおりである。 アスクラム系は,もともとは緊急時用に特別に設計されたものではないし,制御棒挿入がなされるにしても,その効果はある程度の長さまで制御棒が挿入されないと現れないから,極めて急激な反応度の増加には間に合わない。 イ逃がし安全弁が開固着して,原子炉冷却水の減少をきたすという事故が過去にいくつもみられ,炉心熔融事故の原因となる可能性を示している。 ウECCSの系統には,配管などに共用部分が多い。控訴人が主張する多重性(機器が複数台設置されていること,独立性(機器が個別に作動し)得ること)が成立するのはポンプのような能動的機器類に限られているから,共用の配管等に故障が生じた場合には,これらの系はコモンモードの故障(共倒れ)になる可能性を持っている。 エ事故例の研究は,スクラム系,逃がし安全弁,ECCS等の安全保護設備の機能喪失の場合を想定して行われているし,固有安全炉の開発動機の一つが,安全保護設備には装置の故障やヒューマン・エラーなどの可能性がついてまわることであることにみられるように,安全保護施設の信頼性は低い 失の場合を想定して行われているし,固有安全炉の開発動機の一つが,安全保護設備には装置の故障やヒューマン・エラーなどの可能性がついてまわることであることにみられるように,安全保護施設の信頼性は低い。 (3) 安全保護設備等の異常事象における総合的な妥当性の解析評価の問題点(被控訴人らの主張)原判決第2分冊被控訴人ら最終準備書面第3章第6の4(2)④に記載のとおりであり,その要旨は以下のとおりである。 ア控訴人が本件原子炉を設置,設計するに当たって想定している事故概念- 44 -は,①運転時の異常な過渡変化,②事故,③重大事故ないし仮想事故である。①は,比較的発生確率は大きいが,事故とはいえないようなもの,②は,①よりは頻度は少ないけれど,放射能が敷地外に出る可能性があるもの,③は,実際には起こり得ないが,立地条件の適否を確認する上で問題とされる事故とされている。一方,原子力発電所を設計するに当たっては,すべての事故をその対象とせず,スクラム失敗事故,炉心熔融事故,原子炉暴走事故,飛行機墜落事故,完全停電事故を想定不適当事故として除外しているが,これには,科学的,技術的根拠はなく,単に経済的・技術的観点から設計可能な事故だけを安全解析の対象としたにすぎない。 イ現在の安全審査は,スクラム失敗は絶対に起こらないとの前提に立っている。しかし,アメリカ合衆国では,現在ではスクラムが必ずしも成功しないということが当然の前提とされている(ATWS)し,チェルノブイル原発事故はスクラム失敗のケースであった。我が国の安全審査でスクラム失敗を想定していないことは,単にスクラム失敗を想定したら原子力発電所が作れなくなるということを示しているにすぎない。 ウ炉心熔融事故はTMI原子力発電所で,原子炉暴走事故はチェルノブイル原子力発電所で現実に ていないことは,単にスクラム失敗を想定したら原子力発電所が作れなくなるということを示しているにすぎない。 ウ炉心熔融事故はTMI原子力発電所で,原子炉暴走事故はチェルノブイル原子力発電所で現実に発生しているから,想定不適当事故は安全解析の対象とする必要がないとの控訴人の主張は,空虚で御都合主義によるものである。 「放射性物質放出防止対策」の虚構性(1) ECCSの有効性欠如(被控訴人らの主張)原判決第2分冊被控訴人ら最終準備書面第3章第6の5(1)に記載のとおりであり,その要旨は以下のとおりである。 アECCSについて,実規模,実炉での実証実験がなされておらず,いくつかの実験がなされているが,いずれも規模が小さく,燃料はLOFT炉- 45 -を除いて電熱ヒーターで代替したものにすぎず,このような小さな(お粗末な)実験から,現実のECCSの有効性は何ら導き出されないのみならず,かえってその有効性に大いに疑問を抱かせるデータが出ている。 イ昭和56年5月12日の福島第一原子力発電所2号機の事故及び平成3年2月9日の美浜原子力発電所2号機の二つの事故からも明らかなように,ECCSは予測に反してうまく機能していない。 (2) 原子炉格納容器(及びその附属設備)の脆弱性(被控訴人らの主張)原判決第2分冊被控訴人ら最終準備書面第3章第6の5(2)に記載のとおりであり,その要旨は以下のとおりである。 そもそもチェルノブイル原発事故級の暴走事故に耐えられる格納容器を作るのは不可能であるし,ABWRの格納容器には,冷却材喪失事故の場合であっても,核燃料がメルトダウンして,炉心のコンクリートと反応して大量のガスを発生させ,爆発的な破壊に至る危険性がある。 第10争点10(安全審査の無効性)(被控訴人らの主張)原判決第2分冊被控訴人ら最終 核燃料がメルトダウンして,炉心のコンクリートと反応して大量のガスを発生させ,爆発的な破壊に至る危険性がある。 第10争点10(安全審査の無効性)(被控訴人らの主張)原判決第2分冊被控訴人ら最終準備書面第3章第7に記載のとおりであり,その要旨は以下のとおりである。 国の安全審査は,原子力開発の推進機関と規制機関がいずれも経済産業省となっており,両者が分離されていない上,安全審査体制の要となる原子力安全委員会の委員や原子炉の安全審査を担当する原子炉安全専門審査会の委員が原子力推進派により占められているという問題がある。また,安全審査は,経済産業省と原子力安全委員会によるダブルチェックが行われるが,既に経済産業省により「安全」との結論が出ていることにより審査に予断が働く上,自ら「安全」との結論を出した経済産業省から原子力安全委員会に対する圧力が考えられるから,ダブルチェック体制にも疑問がある。さらに,その安全審査の- 46 -範囲は「基本設計」とされているが,その範囲は狭すぎるし不明確であり,,審査も極めてすざんである。したがって,国の安全審査を経ていることをもって,本件原子炉施設の安全性が保障されたことにならない。 第11争点11(MOX利用の危険性) 被控訴人らの主張原判決第2分冊被控訴人ら最終準備書面第3章第8に記載のとおりであり,その要旨は以下のとおりである。 従来型のウラン燃料を使用するものとして設置許可処分がなされた本件原子炉施設において,予定されていたものとは全く性質が異なるMOX燃料を使用することにより,元来危険である本件原子炉施設が更に危険度を増すから,プルサーマルが予定されている本件原子炉施設の運転継続は許されるべきではない。 控訴人の主張原判決第3分冊控訴人最終準備書面第3章第2に記載のとおりであり, 件原子炉施設が更に危険度を増すから,プルサーマルが予定されている本件原子炉施設の運転継続は許されるべきではない。 控訴人の主張原判決第3分冊控訴人最終準備書面第3章第2に記載のとおりであり,その要旨は以下のとおりである。 次のとおり,プルサーマルの安全性に問題はない。 (1) MOX燃料は,国内外の軽水炉においてこれまでに4500体が使用されており,十分な使用実績がある。 (2) ウラン燃料を使用する軽水炉においても,運転によってプルトニウムが生成し,燃焼している。すなわち,ウラン燃料のみを使用する軽水炉でも,プルトニウムの生成,燃焼を考慮した設計が行われている。 (3) 原子力安全委員会は,平成7年6月19日,1/3MOX報告書を了承し,軽水炉において炉心の3分の1程度までMOX燃料を装荷した場合,MOX燃料の特性及び挙動は,ウラン燃料のそれと大差ないとした。 (4) MOX燃料とウラン燃料は,その特性及び挙動に大差なく,運転上の熱的制限値もほとんど変わらない。運転操作においても特別な操作が必要となる- 47 -こともない。 (5) MOX燃料の輸送は,衝撃や火災などの厳しい条件に耐え得る頑丈な輸送容器を用い,二重船殻構造の輸送船で輸送することにより,安全性は十分確保される。 第12争点12(事故被害の甚大性)(被控訴人らの主張)原判決第2分冊被控訴人ら最終準備書面第3章第9に記載のとおりであり,その要旨は以下のとおりである。 原発事故がいったん発生して放射性物質が放出されれば,その放射能汚染は地球規模に及ぶ上,その被害は人間の生命・身体・遺伝子に対する直接的かつ継続的損傷をもたらすのみならず,生態系全体に対して同様の損傷をもたらし,いったん汚染された環境は,極めて長期間,継続的かつ蓄積的に汚染が続き,復元は不可能である。こ 身体・遺伝子に対する直接的かつ継続的損傷をもたらすのみならず,生態系全体に対して同様の損傷をもたらし,いったん汚染された環境は,極めて長期間,継続的かつ蓄積的に汚染が続き,復元は不可能である。このことは,チェルノブイル原発事故等によって実証されている。 第13争点13(防災体制の不備) 被控訴人らの主張原子力発電所は,放射性物質を大量に生産するところ,原子炉制御の技術も放射性物質の閉じ込めの技術も不完全であり,また,放射線被ばくによる被害は,症状が広範囲で時間的にも長期にわたるものであるから,原子力発電所を政策として推進してきた国及び現実にこれを使用する控訴人ら電力会社は,原子力災害の被害を発生させない責任を担っている。したがって,原子力発電所の運転に当たっては,万一事故が起きた場合の防災体制も十分に備えなければ施設の安全性として十分なものにはならない。しかしながら,現実に採用されている防災体制は,①初期動作が遅い,②緊急事態応急対策拠点施設の有効性に疑問がある,③原子力発電所から半径10キロメートル以内の地域の防災対策を充実させる国の防災指針は範囲が狭すぎる,④実際に行われてい- 48 -る防災訓練は事故想定が極めてあいまいであり,訓練の範囲も狭い,⑤原子力発電所事業者による発電所敷地内の防災計画と自治体による敷地外の防災計画との連繋がない,⑥住民の安全確保をより確実にするための放射線監視システムが欠如している,⑦原子力発電所の運転が第三者により監視されていない,等の問題点があり,不十分である。 原子力発電所の防災体制の不備は,平成19年(2007年)新潟県中越沖地震(以下「新潟県中越沖地震」という)の際,柏崎刈羽原発において,原。 子炉の緊急停止と変圧器火災を自治体へ通報することができたのは発生から1時間 制の不備は,平成19年(2007年)新潟県中越沖地震(以下「新潟県中越沖地震」という)の際,柏崎刈羽原発において,原。 子炉の緊急停止と変圧器火災を自治体へ通報することができたのは発生から1時間後であり,発電所敷地内の災害対策本部の設置が地震発生から約3時間後だったこと,消防署員が到着するまでの約2時間,3号機近くの変圧器から黒煙が上がり続けたことなどからも明らかである。 控訴人の主張原子力防災は,原子力災害対策特別措置法等に基づく制度として体制が整備されているところ,被控訴人らの主張は,抽象的に原子力防災に係る体制を批判するのみであって,本件原子炉施設の運転が,いかなる機序で,被控訴人らの生命・身体等に被害を及ぼすことになるのかが具体的に主張されていないから,主張自体失当である。また,新潟県中越沖地震の際,柏崎刈羽原発の運転中の原子炉は,いずれも設計どおり安全に自動停止するとともに,極めて微量の放射性物質の漏えいはあったものの「止める「冷やす「閉じ込める」の,」,」,多重防護機能は確保された。 第14争点14(地震・耐震設計の不備)(被控訴人ら)以下に主張するとおり,本件原子炉施設の耐震設計は極めて不十分であって,想定されるべき地震に対する安全性は何ら確保されていない。 (控訴人)以下に主張するとおり,本件原子炉施設は,その耐震設計が原子力安全委員- 49 -会の審査基準(後記の耐震設計審査指針)に適合し,十分な耐震安全性を有している。 時機に後れた攻撃防御方法(1) 被控訴人らの主張控訴人は,後記2ないし7の各項について,原判決から2年経過後の平成20年3月24日に至ってはじめて,平成18年9月19日に改訂された「発電用原子炉施設に関する耐震設計用審査指針(昭和56年7月20日原子力安全委員会決定( 項について,原判決から2年経過後の平成20年3月24日に至ってはじめて,平成18年9月19日に改訂された「発電用原子炉施設に関する耐震設計用審査指針(昭和56年7月20日原子力安全委員会決定(以下,改訂後の同指針を「新耐震指針,改訂前の)」」同指針を「旧耐震指針」といい,両者を併せて「耐震設計審査指針」という)に基づく主張を行っているが,この主張は,時機に後れた攻撃防御方。 法である。 (2) 控訴人の主張本件訴訟は,本件原子炉施設の運転が被控訴人らの生命・身体等に被害を及ぼすかどうか,あるいは被害を及ぼす具体的な危険があるかどうかが争点となるものであり,その侵害が生ずる具体的危険が存在することが必要である。また,民事訴訟は,現在の法律関係に基づき判断されるものであり,そのため,控訴審の審理では続審主義が採られ(民事訴訟法296条2項,298条1項参照,同審の判断は,同審で新たに資料を収集した上で,同審の)口頭弁論終結時までに存在する事実を前提になされる。これらに鑑みると,本件訴訟は,当審の口頭弁論終結時の安全性が審理・判断の対象となるものであり,また,安全規制が極めて詳細かつ専門性の高い分野に係るものであることからすれば,本件原子炉施設がその安全規制に係る行政庁が定めた審査基準に適合しているかどうかは,本件訴訟の審理・判断の基礎をなすものである。 控訴人は,原子炉施設の耐震設計の審査基準である耐震指針への適合性について,原審において,後記10のとおり,旧耐震指針への適合性を主張立- 50 -証し,控訴理由書でもこれを主張したところ,旧耐震指針は,原審の口頭弁論終結後である平成18年9月,原子力安全委員会において新耐震指針に改訂され,同委員会の要望に基づき,原子力安全・保安院は控訴人ら原子力事業者に対し,新耐震指針に照 ころ,旧耐震指針は,原審の口頭弁論終結後である平成18年9月,原子力安全委員会において新耐震指針に改訂され,同委員会の要望に基づき,原子力安全・保安院は控訴人ら原子力事業者に対し,新耐震指針に照らして,原子炉施設の耐震安全性評価(バックチェック)を行うよう指示した。本件訴訟の性質上,新耐震指針への適合性は本件原子炉施設の現在の安全性についての審理・判断の基礎となるべきものであるところ,控訴人は,新耐震指針決定後,速やかにバックチェックを行い,平成20年3月14日にバックチェックに基づき,原子力安全・保安院に対して中間報告をし,同月24日に新耐震指針及び前記バックチェックに基づく主張をしているのであるから,この主張は時機に後れた攻撃防御方法とならない。 震源を特定せず策定する地震動(1) 被控訴人らの主張控訴人は,新耐震指針に基づき「震源を特定せず策定する地震動」とし,て,マグニチュード6.8を想定すれば足りるとしている。しかしながら,そもそも新耐震指針は,地表地震断層が明瞭に現れずにマグニチュード7. 3の規模で発生した兵庫県南部地震及び鳥取県西部地震を全く考慮していないし,現実の地震が原子力発電所の耐震設計で計算された地震動を大きく超える影響を与える事実は,兵庫県南部地震,2005年宮城県南部地震,平成19年(2007年)能登半島地震(以下「能登半島地震」という)及。 び新潟県中越沖地震で明らかになっている。また,地表地震断層の発生確率は,マグニチュード7.3で50パーセントであり,かつ,断層の確認されていないところでも,その規模の地震が多数発生していることは,学界でも通説となっており,マグニチュード7.3以下の地震では地表地震断層が出現しないことが多いというのが最新の知見であり,この知見は,原子力安全委員会原子力安全基 の地震が多数発生していることは,学界でも通説となっており,マグニチュード7.3以下の地震では地表地震断層が出現しないことが多いというのが最新の知見であり,この知見は,原子力安全委員会原子力安全基準・指針専門部会耐震指針検討分科会(以下「分科会」- 51 -という)においても承認されている。たしかに地震調査研究推進本部地震。 調査委員会(以下「地震調査委員会」という)は,平成17年3月23日。 作成,平成18年9月25日改訂の「確率論的地震動予測地図の説明」の中で,活断層が特定されていない場所で発生する地震の規模として,本件原発が存在する領域につきマグニチュード6.8としているが,それはあくまで活断層との対応が明確でない過去の地震をそのまま最大のものとして採用しているにすぎないものである。新耐震指針で想定したマグニチュード6.8という規模は,電力会社が発電所を建設しやすいようにするために設定された妥協的最低線にすぎず,学問的にも間違いであり,ましてや原発震災という未曾有の被害を防止するための基準としては,全く不十分である。また,控訴人は,震源を特定せず策定する地震動として,加藤研一ほか「震源を事前に特定できない内陸地殻内地震による地震動レベル―地質学的調査による地震の分類と強震動観測記録に基づく上限レベルの検討―」に基づく応答ス。 ,ペクトル(以下「加藤スペクトル」という)を用いているが,この見解は原子力安全委員会においても疑問が呈されており,その信頼性は全く検証されていない。松田時彦東京大学地震研究所教授(以下「松田教授」という)は「最大地震規模による日本列島の地震分帯図」において,北陸帯。 ,における最大期待地震規模をマグニチュード7と1/2としており「新編,日本の活断層」でもそれを採用しているから,本来の安全性を検討す 最大地震規模による日本列島の地震分帯図」において,北陸帯。 ,における最大期待地震規模をマグニチュード7と1/2としており「新編,日本の活断層」でもそれを採用しているから,本来の安全性を検討するためには,マグニチュード7.3の地震を想定すべきである。また,震源を特定せず策定する地震動の応答スペクトルの妥当性の確認は,最新の知見に照らして地点ごとに個別に行うべきものであるところ,控訴人は,前記確認に際し,能登半島地震の結果を考慮していないから妥当でない。 (2) 控訴人の主張ア控訴人は,本件原子炉施設のバックチェックに際し,各種調査手法の特徴を生かし,それらを組み合わせて活断層等を調査した上,詳細な調査を- 52 -行っても地震の規模が小さいために把握できない震源断層が存在することを考慮して,震源を特定せず策定する地震動として,加藤スペクトルを用い,本件原子炉施設の敷地(以下「本件敷地」という)の地盤物性を考慮。 して応答スペクトルを策定した。 イ控訴人は,加藤スペクトルを用いることについて,以下のとおり,地域性に関する知見及び確率論的評価に基づいて検討を実施し,本件原子炉施設のバックチェックにおける適用の妥当性を確認した。 (ア)地域性に関する知見原子力安全・保安院は,バックチェックに際し,新耐震指針をバックチェックに反映するために,基本設計及び詳細設計で実施する内容に関して,①原子力事業者が新耐震指針に照らして耐震安全性を評価するための基準的な手法及び②原子力事業者が行った評価結果を原子力安全・保安院において確認するための基準を「新耐震指針に照らした既設,発電用原子炉施設等の耐震安全性の評価及び確認に当たっての基本的な考え方並びに評価手法及び確認基準について(以下「バックチェックル」ール」という)に定めた。こ 基準を「新耐震指針に照らした既設,発電用原子炉施設等の耐震安全性の評価及び確認に当たっての基本的な考え方並びに評価手法及び確認基準について(以下「バックチェックル」ール」という)に定めた。このバックチェックルールにおいては,震源。 を特定せず策定する地震動の応答スペクトルの妥当性の確認は,最新の,知見に照らして地点ごとに個別に行うとされていることから,控訴人は地域性に関する知見に照らし,加藤スペクトルを,本件原子炉施設のバックチェックで適用することの妥当性について検討した。 地震調査委員会が平成17年3月23日に作成し,平成18年9月25日に改訂した「全国を概観した地震動予測地図」の中では,本件敷地が位置する能登地域について「活断層が特定されていない場所で発生す,る地震」の最大マグニチュードを,活断層と関連付けることが困難な地震である1729年能登・佐渡の地震の諸元に基づいて,マグニチュード6.8としている。この規模は,加藤スペクトルで考慮されている地- 53 -震の最大規模であるマグニチュード6.8と同じものであり,地震の規模という観点からは,本件原子炉施設のバックチェックにおいて震源を特定せず策定する地震動として加藤スペクトルを用いることは,地域性に関する知見に照らしても妥当なものである。 (イ)確率論的評価バックチェックルールにおいては,震源を特定せず策定する地震動の応答スペクトルの妥当性の確認は,既往の研究成果や最新知見を踏まえた確率論的な評価等を参考とすることとし,その確率論的な評価の例として,①地表に明瞭な痕跡を示さない震源断層に起因する震源近傍の地震動についての確率論的な研究成果を踏まえた評価(地点を特定しない評価)及び,②陸域で発生する地震のうち活断層が特定されていない場所で発生する地震の地域ごと 示さない震源断層に起因する震源近傍の地震動についての確率論的な研究成果を踏まえた評価(地点を特定しない評価)及び,②陸域で発生する地震のうち活断層が特定されていない場所で発生する地震の地域ごとの最大マグニチュードに関する研究成果を踏まえた地震ハザード評価(地域性を考慮した個別地点ごとの評価)を挙げている。そこで,控訴人は,バックチェックルールで確率論的な評価の例として挙げられた知見と加藤スペクトルとを比較し,検討を行った。その結果,加藤スペクトルを用いて策定した本件原子炉施設の震源を特定せず策定する地震動は,最新知見を踏まえた確率論的な評価からみても,原子炉施設の安全性を評価する上で,十分なレベルであることが確認された。 ウ兵庫県南部地震及び鳥取県西部地震は,いずれも既知の活断層から発生した地震であるから「震源を特定せず策定する地震動」において考慮す,べき地震でない。能登半島地震も同様に震源を特定できる地震であるから,「震源を特定せず策定する地震動」において考慮すべき地震でない。中央防災会議「東南海,南海地震等に関する専門調査会」においても,活断層が地表で認められない地震規模の上限につき,マグニチュード6.9としている。また,兵庫県南部地震及び2005年宮城県南部地震は,観測地- 54 -点の地盤条件や地震の地域特性に起因するものである。能登半島地震については,バックチェックにおいて策定した基準地震動Ssの応答スペクトルは,同地震の際の本件原子炉施設での観測記録を,余裕をもって包絡している。さらに,新潟県中越沖地震については,この地震の結果を前記基準地震動Ssの策定に際して適切に反映させている。 エ被控訴人らは,地表断層の発生確率は,マグニチュード7.3でも50パーセントである旨主張するが,この数値は,潜在地震断層に着目 地震の結果を前記基準地震動Ssの策定に際して適切に反映させている。 エ被控訴人らは,地表断層の発生確率は,マグニチュード7.3でも50パーセントである旨主張するが,この数値は,潜在地震断層に着目し,その地震動を確率的に評価することを目的として,潜在断層の地表への出現率を一定の前提条件の基で算出したものであり,実際に活断層や地表断層を調査し,そのデータに基づき出現確率を求めたものではないから,そのまま用いることはできない。 オ被控訴人らは,松田教授が「最大地震規模による日本列島の地震分帯図」において,北陸帯における最大期待地震規模をマグニチュード7と1/2としていることにも言及するが,松田教授が根拠とするところは,既知の活断層である邑知潟断層帯,金沢平野東縁断層帯及び過去の地震である1729年能登半島地震であるから,震源を特定せず策定する地震動において,前記松田教授の文献を考慮することはできない。 邑知潟断層帯等の評価(1) 被控訴人らの主張ア控訴人は,新耐震指針に基づき,考慮すべき活断層の範囲を12ないし13万年前以降に活動したものに限定しているが「新編日本の活断層」,は,200万年前以降に活動したものを活断層と定義しており,地震調査委員会も約200万年前以降に活動したものを考慮すべきとしているし,平成20年5月に中国四川省で発生した地震(以下「四川大地震」という)を引き起こした断層も12ないし13万年前より以前に活動してい。 たものであるから,前記のように限定した根拠が明らかでない。 - 55 -イ控訴人は,坪山-八野断層は,邑知潟南縁断層帯とは別の断層帯として評価している。しかしながら,松田教授が平成2年に発表した「最大地震規模による日本列島の地震分帯図」で示した基準(以下「松田の基準」という)によれば,① は,邑知潟南縁断層帯とは別の断層帯として評価している。しかしながら,松田教授が平成2年に発表した「最大地震規模による日本列島の地震分帯図」で示した基準(以下「松田の基準」という)によれば,①5キロメートル以内に他の活断層のない孤立した。 長さ10キロメートル以上の活断層,②走向方向に5キロメートル以内の分布間隔をもってほぼ一線に並ぶほぼ同じ走向の複数の断層,③5キロメートル以内の相互間隔をもって並走する幅5キロメートル以内の断層群,④その断層線の中点の位置が主断層から5キロメートル以上離れている走向を異にする付随断層あるいは分岐断層は,いずれも起震断層とされている。松田の基準によれば,坪山-八野断層と他の断層は5キロメートル以内に存在するものであるから,邑知潟断層帯は,坪山-八野断層も含めて,将来的にも全体が一つの区間として活動する全長44キロメートルのものとして考慮しなければならない。断層の向きが逆であっても同時に動くことがあることは,既に濃尾地震,兵庫県南部地震,新潟県中越沖地震及び岩手・宮城内陸地震で知られているところである。また,ほぼ直線上に並んではいるが二つの断層がずれていたり,震源断層のみならず地表断層が離れていても同時に動くことがあることは,濃尾地震,陸羽地震及び三河地震で知られており,控訴人がその主張の根拠とする小島圭二東京大学名誉教授(元同大学工学部教授)作成に係る鑑定書と題する書面。 。 (以下「小島鑑定意見書」という)は,現実の地震の資料と合致しない地震調査委員会は,平成17年3月9日付けで発表した「邑知潟断層帯の長期評価について」と題する報告において,邑知潟断層帯は,将来的にも全体として一つの区間として活動すると推定され,その場合,発生する地震の規模は,松田の基準を前提として,マグニチュード7.6 層帯の長期評価について」と題する報告において,邑知潟断層帯は,将来的にも全体として一つの区間として活動すると推定され,その場合,発生する地震の規模は,松田の基準を前提として,マグニチュード7.6程度と見積もられるとしている。 ウ控訴人は,野寺断層につき,その北側のかほく市野寺から宝達志水町河- 56 -原付近における花崗岩及び中川砂岩層等の約4キロメートルの区間について,邑知潟断層帯の一部としているが,その南側でも隆起が続いているから,南側部分も邑知潟断層帯に含めて考えるべきである。原子力安全委員会耐震安全性評価特別委員会が平成20年6月13日に作成した「活断層等に関する安全審査の手引き」も「後期更新世以降の累積的な地殻変動,が否定できず,適切な地殻変動モデルによっても,断層運動が原因であることが否定できない場合には,これらの原因となる耐震設計上考慮する活断層を適切に想定すること「顕著な海岸隆起によって累積的な変位が」,認められる地域では,弾性波探査によって断層が確認されない場合でも,これを合理的に説明する適切な地形発達過程を検討する必要がある,。」「広域的な隆起等の変動についての要因を活断層に依らないものと判断する際には,その理由を明確にする必要がある」としているところ,控訴。 人の重力探査では,宝達山より内高松の断層まで,重力の大きいところがあることを示しており,この重力の大きい部分は,南にも延びている。また,控訴人の反射法地震探査記録においても,夏栗側線での海側隆起の断層以外でも野寺付近では勾配が大きいが,それ以外でも指江に至るまで中川砂岩層上部が,わずかであるが丘陵隆起側に傾斜している。したがって,邑知潟断層帯の全長は,約44キロメートルとなる。 エ邑知潟断層帯について,全長約44キロメートルを前提に,マグ 指江に至るまで中川砂岩層上部が,わずかであるが丘陵隆起側に傾斜している。したがって,邑知潟断層帯の全長は,約44キロメートルとなる。 エ邑知潟断層帯について,全長約44キロメートルを前提に,マグニチュード7.6,仮に震央距離を21キロメートルとし,金井清東京大学地震研究所教授が昭和33年に発表した,岩盤上の地震動とマグニチュード及び震源距離との関係式(以下「金井式」という)を用いて,大崎スペク。 トル(大崎順彦東京大学工学部教授が昭和54年に提案した,解放基盤表面における速度応答スペクトル(地震動による応答速度の最大値と固有周期との関係を表したもの)をマグニチュードと震央距離とを変数として。 表したもの)を求めると,邑知潟断層帯による地震動が新耐震指針にお。 - 57 -ける基準地震動Ssを超えることは明らかである。 オ耐専スペクトルでは,震源距離として,平均化した数値である等価震源距離を用いることになるため,これに依拠する控訴人の主張では,邑知潟南縁断層帯について,震源距離を,震源断層最短距離18キロメートルの倍以上にもなる38.4キロメートルとしている。このことは,耐専スペクトルが地震動を過小評価するものであることを示すものである。現に耐専スペクトルでは,震源距離が100キロメートル程度までの中距離の場合には,地震動が過小評価されることが明らかになっている。 カ控訴人は,耐専スペクトルでは等価震源距離が近いほど敷地への地震動の影響が大きくなるのであり,邑知潟断層帯を約44キロメートルとして地震動を評価するとしても,笹波沖断層帯(全長)による影響を下回ることは明らかである旨主張するが,前記オのとおり,そもそも震源距離が近い断層について等価震源距離を用いることはできないから,控訴人の前記主張は妥当でない。震源距離が近い断層で 長)による影響を下回ることは明らかである旨主張するが,前記オのとおり,そもそも震源距離が近い断層について等価震源距離を用いることはできないから,控訴人の前記主張は妥当でない。震源距離が近い断層では等価震源距離を用いることができないことは,原子力安全委員会の耐震安全性評価特別委員会地震・地震動評価委員会第6回会議において,入倉孝次郎委員長が指摘しているところである。 キ控訴人は,司宏俊・翠川三郎「断層タイプ及び地盤条件を考慮した最大加速度・最大速度の距離減衰式」日本建築学会構造系論文集第523号(1999年(以下「司・翠川(1999」という)や大野晋ほか))。 「カリフォルニア強震記録に基づく水平動・上下動の距離減衰式と日本の内陸地震への適用」日本建築学会構造系論文集第544号(2001年)(以下「大野ほか(2001」という)などの距離減衰式においても)。 等価震源距離が用いられている旨主張するが,前者においては,等価震源距離と断層最短距離の二つの方式が用いられている上,等価震源距離は,これを定義するためには断層面でのすべり量の分布が必要であるとの前提- 58 -条件付きで用いられている。しかるに,控訴人は,すべり量の分布について全く検討を行っていない。また,後者の筆者である大野及び控訴人がその主張の根拠とする鑑定書の筆者である太田外氣晴足利工業大学総合研究センター研究員(以下「太田研究員」という)は,いずれも等価震源距。 離の提唱者であるから,大野の論文及び太田研究員作成の鑑定書と題する書面(以下「太田鑑定意見書」という)は,いずれも等価震源距離の正。 当性を裏付けるものではない。 ク控訴人は,笹波沖断層帯(全長)の耐専スペクトルの評価に際し,内陸補正を行った場合,能登半島地震の観測記録と整合しないことから,内陸補正 ずれも等価震源距離の正。 当性を裏付けるものではない。 ク控訴人は,笹波沖断層帯(全長)の耐専スペクトルの評価に際し,内陸補正を行った場合,能登半島地震の観測記録と整合しないことから,内陸補正を行わないこととしているが,これは,内陸補正を行った場合,過小評価となることを示すものである。邑知潟断層帯においては,地震観測記録がなく,観測記録と内陸補正を行った場合の整合性を検討できないため,耐専スペクトルによる評価は過小評価となるおそれがある。 ケ控訴人は,新耐震指針に基づく耐震安全性評価(バックチェック)結果の中間報告書(以下「本件中間報告書」という)において,邑知潟断層。 帯の全長を44キロメートルとして地震調査委員会のレシピを前提に断層モデルによる計算も行っている。しかしながら,もともと断層モデルは,当該想定震源断層域における実際の地震観測記録がない限り過小評価を免れないものであり,このことは,宮城県沖地震や鳥取県西部地震の際に明らかになっている。また,断層モデルによる計算は,アスペリティの総面積が重要であるところ,控訴人がアスペリティの総面積を求める際に用いた「短周期レベルによる評価法」は,想定する地震の震源域で成り立つ保証がないものである。そのため,前記レシピにおいては,内陸地震によるアスペリティの総面積Saが断層総面積Sにおいて占める割合も参照することとしているところ,この手法では,アスペリティの平均応力降下量は控訴人が適用した短周期レベルによる評価法から算定した平均応力降下量- 59 -の2倍以上になる。したがって,断層モデルによる控訴人の前記計算は妥当でない。 (2) 控訴人の主張ア控訴人は,バックチェックにおいて,詳細な調査に基づき,活動性や地質構造との関連,セグメント区分,グルーピングの合理的な判断に基づい による控訴人の前記計算は妥当でない。 (2) 控訴人の主張ア控訴人は,バックチェックにおいて,詳細な調査に基づき,活動性や地質構造との関連,セグメント区分,グルーピングの合理的な判断に基づいて,邑知潟断層帯について,以下のとおり,邑知潟南縁断層帯(約34キロメートル)及び坪山-八野断層帯(約10キロメートル)を耐震設計において考慮した。すなわち,邑知潟断層帯の北部は,宝達志水町竹生野から七尾市佐野町付近に至る石動山北西縁に位置し,同区間では三つの背斜構造(南から志雄地塊の背斜構造,鹿島地塊の背斜構造及び七尾地塊の背斜構造)が認められ,各背斜構造の活動性等の違いに着目した場合,各背斜構造の間で異なる活動区間に区分される可能性があるが,控訴人は,安全評価上,中期更新世には活動が終了したと判断される宝達志水町竹生野から同町荻市の区間も含めて,かほく市野寺から七尾市佐野町に至る約34キロメートル区間について,邑知潟南縁断層帯として耐震設計に考慮するものとした。一方,坪山-八野断層については,邑知潟南縁断層帯とずれの向きが逆(坪山-八野断層は西側隆起の逆断層であるのに対し,邑知潟南縁断層帯は東側隆起の逆断層である)であり,それぞれの断層面は地。 下深部では離れていくと考えられることから,坪山-八野断層は,邑知潟南縁断層帯とは別の断層帯であると評価した。邑知潟断層帯に関する控訴人の前記評価については,小島鑑定意見書において,その妥当性が認められている。 イ被控訴人らは,新耐震指針において,考慮すべき活断層の範囲を12ないし13万年前以前に活動したものに限定していることを問題とする。しかしながら,新耐震指針における「活断層」は「最近の地質時代に繰り,返し活動し,将来も活動する可能性のある断層」と定義されているところ,- 60 -「最 たものに限定していることを問題とする。しかしながら,新耐震指針における「活断層」は「最近の地質時代に繰り,返し活動し,将来も活動する可能性のある断層」と定義されているところ,- 60 -「最近の地質時代」は,地質時代区分の観点から後期更新世と考えられるし,最終間氷期の活動の有無,すなわち,概ね12ないし13万年前以降の活動の有無によりその認定が可能であることは,新耐震指針の改訂を行った分科会の構成員である地質学,地震学,地震工学等の専門家の意見の一致するところである。また,四川大地震を引き起こした断層については,独立行政法人産業技術総合研究所(以下「産総研」という)活断層研究。 センターにおいて,後期更新世以降も活動していたことが報告されている。 したがって,被控訴人らの前記主張には理由がない。 ウ地震調査委員会は,邑知潟断層帯について,古府断層から石動山断層を通り内高松付近の断層に至る全体として南東側が隆起する逆断層を主断層とし,北西側隆起の坪山-八野断層等を前記主断層と地下で交差する断層面を持つ副次的な断層と解釈している。しかしながら,控訴人がバックチェックにおいて詳細な調査を行った結果,内高松付近の断層は認められなかったから,坪山-八野断層帯は副次的な断層とはなり得ない。また,5キロメートル以内に断層が近接して分布していても,ずれの向きが逆であり,地下深部では断層面が離れていくと判断されるものについては,地震調査委員会においても別の断層帯として評価されている。したがって,この点においても被控訴人らの主張には理由がない。 エ被控訴人らは,断層の向きが逆であっても同時に動く可能性がある例として濃尾地震,兵庫県南部地震,新潟県中越沖地震,岩手・宮城内陸地震,陸羽地震及び三河地震等を挙げる。しかしながらこれらの地震は,いずれも 人らは,断層の向きが逆であっても同時に動く可能性がある例として濃尾地震,兵庫県南部地震,新潟県中越沖地震,岩手・宮城内陸地震,陸羽地震及び三河地震等を挙げる。しかしながらこれらの地震は,いずれも断層面が連続的に分布する断層か,地下深部で断層面が交差する断層と評価されるものであり,邑知潟南縁断層帯と坪山-八野断層帯のように,断層面が走向方向に連続的に分布しておらず,地下深部で断層面が離れていくという事例ではないから,これらの地震をもって邑知潟南縁断層帯と坪山-八野断層帯が同時に動くということはできない。したがって,邑知- 61 -潟断層帯は,坪山-八野断層帯も含めて全体が一つの区間として活動する全長44キロメートルのものとして考慮しなければならないとする被控訴人らの主張には理由がない。 オ仮に邑知潟断層帯の全長を約44キロメートルとして耐専スペクトル(応答スペクトルに基づく地震動評価についてバックチェックルールにおいて要求された,①解放基盤表面の地震動として評価できること,②震源の拡がりが考慮できること,③敷地における地震観測記録を用いて地震発生様式,地震波伝播経路等に応じた諸特性が考慮できること,④水平方向及び鉛直方向の地震動が評価できること,の4要件を満たす手法として,Noda,S.etal「RESPONSESPECTRAFORDESIGNPURPOSEOFSTIFFSTRUCTURESONROCKSITES(以下「Nodaet」al(2002」という)で提案された,地震観測記録に基づき策定. )。 された距離減衰式による経験的な方法)を用いて地震動を評価するとし。 ても,控訴人が検討用地震として選定した笹波沖断層帯(全長)による地震動と比較すれば,想定される地震の規模は同等(マグニチュード7. れた距離減衰式による経験的な方法)を用いて地震動を評価するとし。 ても,控訴人が検討用地震として選定した笹波沖断層帯(全長)による地震動と比較すれば,想定される地震の規模は同等(マグニチュード7. 6)である上,断層面の傾斜は,笹波沖断層帯(全長)及び邑知潟断層帯はいずれも南東傾斜であるが,本件敷地との位置関係からは,笹波沖断層帯(全長)の断層面が本件敷地に向かってくる方向であるのに対し,邑知潟断層帯の断層面は本件敷地から離れていく方向となっていることから,等価震源距離は笹波沖断層帯(全長)の22.1キロメートルをはるかに超えるものとなる。耐専スペクトルでは等価震源距離が近いほど敷地への地震動の影響が大きくなるのであり,邑知潟断層帯を約44キロメートルとして地震動を評価するとしても,笹波沖断層帯(全長)による影響を下回ることは明らかであるから,本件原子炉施設の耐震安全性評価に何ら影響を与えるものではない。 - 62 -カ被控訴人らは,邑知潟断層帯の耐専スペクトルによる等価震源距離は,震源断層最短距離の倍以上となるから,耐専スペクトルは,地震動を過小評価するものである旨主張する。しかしながら,耐専スペクトルに用いられている等価震源距離とは,断層面の拡がりや傾斜,アスペリティを考慮できる距離であり,建築学会等でも有用性が認められている広く一般的な,,考え方である。この点,太田鑑定意見書において「この等価震源距離は震源の拡がりの効果を点震源と仮定した従来からの距離減衰式の形を大きく変えることなく表現できるとともに,震源断層面のアスペリティ分布も評価可能であることから,有効な考え方で適応性が広い。なお,近年,司・翠川(1999)や大野ほか(2001)などの距離減衰式においてもこの等価震源距離が用いられている。したがって,等価震源距離 布も評価可能であることから,有効な考え方で適応性が広い。なお,近年,司・翠川(1999)や大野ほか(2001)などの距離減衰式においてもこの等価震源距離が用いられている。したがって,等価震源距離を用いる耐専スペクトル手法は震源の面的な拡がりを考慮して地震動を求めることができるものといえる」として,その有効性を認めている。また,被控。 訴人らは,耐専スペクトルでは,震源距離が中距離の場合には,地震動が過小評価される旨主張する。しかしながら,地震動評価としての耐専スペクトルの適用に当たっては「原子力発電所耐震設計技術指針基準地震,動策定・地質調査編JEAG4601-2007(以下「JEAG」(2007」という)において「敷地に多数の観測記録がある場合に)。 ,は,耐専スペクトルによる地震動評価結果と比較の上,敷地固有の評価を行うこととする」とされており,控訴人も,各地震による耐専スペクト。 ルと本件敷地での観測記録のはぎとり波(地震計により観測された地震波から,解析によりその観測位置より上部にある地盤や建物の影響を取り除いた地震波のこと)の応答スペクトルとの比率を算定して,本件敷地固。 有の評価を行っている。その結果,等価震源距離200キロメートル程度以下の18の地震の観測記録による比率の平均値は,耐専スペクトルにおいて内陸地殻内地震の場合に地震動を低減できる内陸補正係数の形状とほ- 63 -ぼ整合しているものの,本件敷地に比較的近い能登半島地震の観測記録では,内陸補正係数を用いない方が整合することから,検討用地震の耐専スペクトルの手法を用いた地震動評価に当たっては,内陸補正係数による低減は行わなかった。かかる控訴人の評価は,太田鑑定意見書においても,その妥当性が認められている。 キ地震調査委員会のレシピは,長大な断層 ルの手法を用いた地震動評価に当たっては,内陸補正係数による低減は行わなかった。かかる控訴人の評価は,太田鑑定意見書においても,その妥当性が認められている。 キ地震調査委員会のレシピは,長大な断層の評価に際しては,内陸地震によるアスペリティの総面積Saが断層総面積Sにおいて占める割合も参照するとしているから,いかなる断層の評価においても参照するとしているわけではない。 酒見断層・富来川南岸断層・笹波沖断層帯・福浦断層等の評価(1) 被控訴人らの主張ア酒見断層控訴人は,酒見断層について,海底断層への連続性を否定している。しかしながら,そもそも海底音波探査ですべての断層が明らかになるものではないことは,能登半島地震及び新潟県中越沖地震でも明らかになっている。控訴人は,酒見断層の海域への延長が認められない根拠として,中位段丘Ⅰ面に変位が認められないことを主張するが,この中位段丘Ⅰ面の形成が極めて古いものであることを立証していないから,控訴人の主張には意味がない。 仮に酒見断層が海底断層までつながっていないとしても,1586年畿内・東海・東山・北陸諸道の地震(以下「1586年天正地震」という,1596年慶長伏見地震,1662年寛文近江若狭地震,濃尾地。)震及び兵庫県南部地震などの例からも明らかなように,単独では小さな地震の原因としかならないと考えられていた断層が連動して活動する可能性があることを考慮すべきであり,その見地から,酒見断層,その延長線上にあるF-20断層,1892年12月9日及び同月11日に連続して起- 64 -きた二つの地震の震源位置並びにその南方に南北軸を持つ長さ約6キロメートルの背斜を一つの断層帯として評価すると,その総延長は29キロメートルに及び,これによって起こる地震の規模は,松田の基準によれば,マグ の地震の震源位置並びにその南方に南北軸を持つ長さ約6キロメートルの背斜を一つの断層帯として評価すると,その総延長は29キロメートルに及び,これによって起こる地震の規模は,松田の基準によれば,マグニチュード7.3が予想される。控訴人は,旧耐震指針における基準地震動の策定の際に設計用最強地震として選定した前記1892年12月9日の地震を全く考慮しておらず,不当である。 また,対応する地表地震断層が確認されていないから起こり得ないとほぼ確実にいえる内陸地殻内地震の規模はマグニチュード7.2ないし7. 3以上というべきであるから,地表に断層がある場合には,その地表で確認できる長さが短い場合でも,地下により長い震源断層が存在していると予想すべきである。控訴人は,酒見断層について,地震の規模をマグニチュード6.9としているが,同断層は,約9.1キロメートルの地表断層が発見されているのであるから,安全評価上,マグニチュード7.3程度の地震が発生する可能性が高いと考えるのが相当である。 イ富来川南岸断層富来川南岸断層は,数多くの文献において活断層と認められているし,控訴人が実施した表土剥ぎ調査の露頭(TN-2)を観察すると,法面に現れている岩稲階の穴水累層を切る断層が確認でき,その上方先端は更に古期扇状地堆積層の半ばまで切っているのが読み取れる。そして,古期扇状地堆積層は後期更新世のものとされることから,その活動時期は,13万年前以降9.5万年前までの間であり,耐震設計上考慮する必要がある。 そして,活断層研究会において,その長さが2キロメートルとされており,控訴人自身も,本件中間報告書において,変動地形の可能性のある地形及び地殻変動に起因する可能性があるリニアメント(以下「リニアメント・変動地形」という)が長さ6キロメートルに及ぶとしていること, ,控訴人自身も,本件中間報告書において,変動地形の可能性のある地形及び地殻変動に起因する可能性があるリニアメント(以下「リニアメント・変動地形」という)が長さ6キロメートルに及ぶとしていること,本件。 敷地からわずか8ないし9キロメートルの地点に位置することから,安全- 65 -評価上,マグニチュード7.3程度の地震が発生する可能性が高いものと考えるのが相当である。 ウ笹波沖断層帯控訴人は,能登半島地震の震源断層を,従来のF-14断層及びF-15断層を含む笹波沖断層帯(東部)約21キロメートルと評価している。 しかしながら,余震域の幅が震源断層の長さに対応すると考えると,能登半島地震の震源断層の長さは,約45キロメートルと推測され,F-14断層ないしF-16断層の三つの断層が同時に動いた可能性が高いから,控訴人の前記評価は誤りである。また,控訴人は,笹波沖断層帯を東部と西部に分けて評価しているが,これらはつながっているから,一体として評価すべきである。 控訴人は,他方で,笹波沖断層帯の東部と西部を安全評価上,一体として扱い,耐専スペクトルを用いて評価している。しかしながら,控訴人は,能登半島地震の震源断層を笹波沖断層帯(東部)としているところ,能登半島地震のはぎとり波による応答スペクトルは,周期0.2秒よりわずかに短い周期帯において1000ガルを超えている。これに対して,控訴人が耐専スペクトルの手法で算定した笹波沖断層帯(東部)の応答スペクトルは,周期0.2秒辺りで約500ガルであり,前記能登半島地震のはぎとり波による応答スペクトルの約2分の1にとどまっている。したがって,耐専スペクトルは地震動を過小評価するものであり,耐専スペクトルを用いた控訴人の前記評価は妥当でない。 エ福浦断層控訴人は,福浦断層について,活動が後期更 約2分の1にとどまっている。したがって,耐専スペクトルは地震動を過小評価するものであり,耐専スペクトルを用いた控訴人の前記評価は妥当でない。 エ福浦断層控訴人は,福浦断層について,活動が後期更新世に及んでおらず,耐震設計上評価する必要がないとしているが,地層の年代評価法であるC年 代測定法及び広域テフラによる対比法による年代評価を行っていない上,その活動時期が後期更新世に及んでいないとする唯一の客観的データとい- 66 -うべき遊離酸化鉄分析のデータの公開を行っていない。本件設置変更許可申請書第3.2-17図露頭スケッチ〔乙6(添6-3-137〕によれ()ば,粘土質砂礫層ⓑが断層を不整合に覆っているのが確認でき,ⓑ層から判断すると,断層の活動した時期は3ないし4万年以前であるとするのが合理的,科学的である。現に「新編日本の活断層」においても,福浦断,層は,長さ2.5キロメートルの断層とされている。したがって,控訴人の前記評価は妥当でない。 (2) 控訴人の主張ア酒見断層酒見断層については,リニアメント・変動地形の南端付近を横断して分布する中位段丘I面の旧汀線高度(現在の海水準とは異なる高度に存在する過去の海水準)がほぼ連続しており,そこに変位が認められないことから,海域へは延長していないものと判読し,さらに,南方延長の海上音波探査においても断層が認められないことを確認している。被控訴人らが取り上げる1892年の地震については,科学的な地震観測が行われておらず,その震央も被害状況等から推測されたものであるから,震央との関係で活断層の有無を議論することはできない。また,兜岩沖断層(従来のF-20断層)については,中期更新世に形成されたB層から下位の地層に 推定される断層であり,後期更新世に形成されたB層に変位・ 係で活断層の有無を議論することはできない。また,兜岩沖断層(従来のF-20断層)については,中期更新世に形成されたB層から下位の地層に 推定される断層であり,後期更新世に形成されたB層に変位・変形を与え ていないことから,耐震設計上考慮する必要はないと評価し,断層の傾きも酒見断層と逆で,同断層から10キロメートル程度離れており,海上音,波探査の結果,両断層をつなぐような断層も認められなかった。その結果志賀町西海風戸から輪島市門前町舘分付近までの約9.1キロメートル区間について,耐震設計上考慮するものとした。その上で,長さが短い孤立した活断層については,震源断層面が地表の長さ以上に拡がっている可能性を評価することとし,その長さは,震源断層面の幅が,地震発生層の深- 67 -さ(本件敷地周辺の微小地震等の深さの方向の分布状況に基づき,その上限深さを3キロメートル,下限深さを18キロメートルとして想定)及び傾斜角(活断層の調査等から傾斜角を60度として設定)から,17.3キロメートルとなるので,安全評価上,17.3キロメートルとし,この長さから地震の規模をマグニチュード6.9と設定した。また,本件敷地までの距離については,前記のとおり算定した震源断層面の幅から等価震源距離15.8キロメートルを算定した。酒見断層及び兜岩沖断層(従来のF-20断層)に関する控訴人の前記評価については,小島鑑定意見書も,その妥当性を認めている。被控訴人らは,単独では小さな地震の原因としかならないと考えられていた断層が連動して活動した例として1586年天正地震,1596年慶長伏見地震,1662年寛文近江若狭地震,濃尾地震及び兵庫県南部地震を挙げるが,前3者の地震はいずれも古い地震であり,関連する活断層について種々の見解があるし,濃尾地震及び兵庫県南 震,1596年慶長伏見地震,1662年寛文近江若狭地震,濃尾地震及び兵庫県南部地震を挙げるが,前3者の地震はいずれも古い地震であり,関連する活断層について種々の見解があるし,濃尾地震及び兵庫県南部地震については,酒見断層と兜岩沖断層(従来のF-20断層)のように10キロメートル程度も離れた断層が一つの活断層として活動した事例ではないから,被控訴人らの主張には理由がない。 イ富来川南岸断層控訴人は,富来川南岸断層について,バックチェックに際し,以下のとおり,詳細な調査に基づき評価を行っている。最新の知見を反映した社団法人土木学会原子力土木委員会「原子力発電所の立地多様化技術(追補版」や井上大榮ほか「2000年鳥取県西部地震震源域の活断層調査」)等のリニアメント判読基準を参考に,敷地周辺陸域の地質・地質構造を考慮して,段丘面・扇状地面等の平坦面上の判読要素等について更に充実させたリニアメント・変動地形判読基準(以下「新リニアメント判読基準」という)によれば,志賀町和田東方から同町富来地頭町までの約6キロ。 メートルの区間にリニアメント・変動地形が判読された。志賀町東小室西- 68 -方では,リニアメント・変動地形は富来川左岸の急崖とその基部に分布する古期扇状地との境界に位置し,前記リニアメント・変動地形を横断してトレンチ調査を実施した結果,古期扇状地堆積層及び穴水累層に断層は認められなかった。さらに,その北東方の急崖の傾斜変換部で判読したリニアメント・変動地形を横断して表土剥ぎ調査を実施した結果,穴水累層の安山岩にリニアメント・変動地形に対応する断層は認められなかった。また,このリニアメント・変動地形として判読した急崖については,丘陵基部の平野下に伏在する断層に起因して形成された可能性があるが,リニアメント・変動地形の両側に分 に対応する断層は認められなかった。また,このリニアメント・変動地形として判読した急崖については,丘陵基部の平野下に伏在する断層に起因して形成された可能性があるが,リニアメント・変動地形の両側に分布する中位段丘Ⅰ面に分布高度差が認められないことから,その活動は中位段丘Ⅰ面形成以降に及んでいないと考えた。 以上の調査結果を踏まえ,富来川南岸断層については,少なくとも後期更新世以降の活動が問題となるものではないと評価した。 被控訴人らは,控訴人が実施した表土剥ぎ調査の露頭(TN-2)を観察すると,法面で穴水累層を切る断層が確認でき,その上方先端はさらに古期扇状地堆積層の半ばまで切っている旨主張する。しかしながら,被控訴人らが古期扇状地堆積層としている地層は,TN-2の範囲に分布するものではなく,正しくは,その性状から,穴水累層の凝灰角礫岩や礫岩と判断されるものである。また,被控訴人らが穴水累層中の断層とするものは,シーム(岩盤中にある粘土あるいは岩片混じりの粘土からなる薄い連。 ,続性のある弱層)として捉えていたものである。このシームについては穴水累層中にとどまっており,さらに,その上方延長部で穴水累層を覆う新第三紀の地層である礫岩はほぼ水平に分布し変位・変形は認められない。 したがって,シームについては,そもそもリニアメント・変動地形に対応するものではないが,その活動性に関しても問題とならないことは明らかである。以上によれば,富来川南岸断層について,後期更新世の活動があるとする被控訴人らの主張は失当である。 - 69 -ウ笹波沖断層帯控訴人は,笹波沖断層帯について,バックチェックに際し,文献調査,控訴人において実施した海上音波探査に加えて,各種研究機関等が実施した海上音波探査等の調査結果を総合的に検討するとともに,活断層の評価に当 は,笹波沖断層帯について,バックチェックに際し,文献調査,控訴人において実施した海上音波探査に加えて,各種研究機関等が実施した海上音波探査等の調査結果を総合的に検討するとともに,活断層の評価に当たっては,活断層の活動性や地質構造との関連,活断層の形態等に基づき,セグメント区分やグルーピングの合理的判断に基づき,評価すべき活断層の長さを適切に判断し,以下のように評価した。すなわち,①能登半島地震後に実施した反射法地震探査及び余震解析等の結果,笹波沖断層帯(東部)とほぼ同じ位置に能登半島地震の震源断層が図示されていること,②笹波沖断層帯(東部)と笹波沖断層帯(西部)とは,地質構造や最新活動時期に違いがあることから,笹波沖断層帯は,東部と西部の二つの活動区間に分かれて活動してきたものと推測され,今後も二つの区間に分かれて活動するものと推定した。 笹波沖断層帯(東部)については,海岸線から輪島市門前町浦上付近までの区間を含めた約21キロメートル区間を能登半島地震の震源断層として,耐震設計上考慮した。この長さから松田の基準を用いて,地震の規模をマグニチュード7.0,本件敷地までの距離については,等価震源距離22.1キロメートルを算定した。 笹波沖断層帯(西部)については,安全評価上,約22キロメートル区間について耐震設計上考慮した。この長さから松田の基準を用いて,地震の規模をマグニチュード7.1,本件敷地までの距離については,等価震源距離22.1キロメートルを算定した。 さらに,安全評価上,これらの二つの活断層が連動する場合を想定し,笹波沖断層帯(全長)として,地震の規模をマグニチュード7.6,本件敷地までの距離を等価震源距離22.1キロメートルと算定した。 被控訴人らは,余震域の幅から,能登半島地震の震源断層が45キロメ- 70 -ー (全長)として,地震の規模をマグニチュード7.6,本件敷地までの距離を等価震源距離22.1キロメートルと算定した。 被控訴人らは,余震域の幅から,能登半島地震の震源断層が45キロメ- 70 -ートルになる旨主張する。しかしながら,震源断層の長さは余震域の幅の。 みをもって判断するものではないから,被控訴人らの主張は妥当ではない現に被控訴人らが引用する国土地理院の公表資料「平成19年(2007年)能登半島地震を起こした震源断層の姿」においても,震源断層の長さは,21.2キロメートルとされている。被控訴人らは,笹波沖断層帯の東部と西部はつながっているから一体として評価すべきである旨主張するが,つながっていることに関する地質学的な根拠を挙げることなく,単につながる可能性を主張するにすぎないから,失当である。 また,耐専スペクトルの手法は,地震学及び地震工学の最新の知見を踏まえて高度化されたものであって,応答スペクトル法として地震動がより精度よく評価できることの特徴を有しており,かつ,バックチェックルールの要求を満たすものである。太田鑑定意見書も,耐専スペクトルについて「現在の地震学及び地震工学の最新の知見を反映して策定されており,,地震動評価に係る手法として有効で,またバックチェックルールの要求事項にすべて対応している」とするとともに,本件原子炉施設のバックチェックに用いることについても「考慮する地震の規模,距離は耐専スペクト,ル手法の適用範囲にあり,適切な地震観測記録を収集して地域補正係数が適切に算出されている」として,その妥当性を認めている。被控訴人らのいう笹波沖断層帯(東部)の耐専スペクトル評価は,検討用地震の選定において,各地震の本件敷地での相対的影響を検討するために算定した検討過程のものであって,かかる評価自体は地震動評価 る。被控訴人らのいう笹波沖断層帯(東部)の耐専スペクトル評価は,検討用地震の選定において,各地震の本件敷地での相対的影響を検討するために算定した検討過程のものであって,かかる評価自体は地震動評価に用いられたものではない。さらに,耐専スペクトルに基づく手法により策定した基準地震動Ss-1は,検討用地震である笹波沖断層帯(全長)による地震及び震源を特定せず策定する地震動の応答スペクトルを包絡するとともに,能登半島地震のはぎとり波による応答スペクトルを,余裕をもって包絡している。 エ福浦断層- 71 -活断層の最新活動時期については,断層露頭の状況から上載地層への断層変位の影響を適切に判断し,その影響を受けていない上載地層のうち最も古い地層により堆積時期を判断する。受堤北方の山腹の断層露頭では,断層が認められた安山岩のくぼみ部分を礫混じり粘土からなるⓒ層が埋積しており,さらに,この安山岩及びⓒ層を,これらよりも新しく堆積した,ⓑ層が覆っていることから,この2層が上載地層となる。ⓒ層については安山岩とⓒ層の境界に断層変位を受けた形跡が認められないから,断層による影響は及んでおらず,福浦断層の活動性は,ⓒ層をもって評価できることになる。ⓒ層中には,C年代測定法を用いるために必要な炭素系試 料も広域テフラによる対比法を用いるために必要な火山灰も存在しなかったことから,地層の年代を評価する上で有効な指標の一つである赤色土壌に着目し,赤色土壌化の度合いを定量的に把握するために遊離酸化鉄の分析を実施した結果,ⓒ層は,少なくとも下末吉期以前の堆積物と考えられた。そして,前記のとおり,ⓒ層には断層による影響は及んでおらず,周辺に分布する高位段丘面にリニアメント・変動地形を挟んで系統的な高度差が認められないから,福浦断層は,後期更新世以降に 物と考えられた。そして,前記のとおり,ⓒ層には断層による影響は及んでおらず,周辺に分布する高位段丘面にリニアメント・変動地形を挟んで系統的な高度差が認められないから,福浦断層は,後期更新世以降に活動が及んでいないと判断し,耐震設計上考慮する必要がないと評価した。被控訴人らは,遊離酸化鉄分析データの公開を行っていない旨主張するが,同データは,本件中間報告書に添付している。 耐専スペクトルの手法,断層モデルを用いた手法による地震動評価(1) 被控訴人らの主張ア耐専スペクトルの手法は,44個の地震観測記録に基づいて定められた方法であるところ,そのうち32個がプレート間地震で,内陸地殻内地震は残りの12個にすぎないから,内陸地殻内地震の観測記録が少なく,主としてプレート間地震の観測記録に基づく方法である。そして,震源断層から出る短周期地震動の強さは,内陸地殻内地震を1とすると,プレート- 72 -間地震で2程度とされていることから,耐専スペクトルの手法においては,内陸地殻内地震については,内陸補正を行うこととなっている。 ところが,控訴人は,前記3(1)クのとおり,笹波沖断層帯(全長)の耐専スペクトルの評価に際し,内陸補正を行った場合,能登半島地震の観測記録と整合しないことから,内陸補正を行っていない。また,同じく内陸地殻内地震であった新潟県中越沖地震においても,内陸補正を行った場合に観測記録と整合しないことが明らかになっている。これらのことは,耐専スペクトルの手法が,内陸地殻内地震に適合しないことを示すものである。 イ耐専スペクトルの基となった44個の地震観測記録のうち,マグニチュード7以上のものは,マグニチュード7.0のもの1個にすぎず,内陸地殻内地震に限れば,すべてマグニチュード6.8以下であるから,耐専スペクトルの手法 基となった44個の地震観測記録のうち,マグニチュード7以上のものは,マグニチュード7.0のもの1個にすぎず,内陸地殻内地震に限れば,すべてマグニチュード6.8以下であるから,耐専スペクトルの手法は,地震動を過小評価する危険性をはらんでいる。 ウ耐専スペクトルの手法は経験式であるにもかかわらず,その基となった44個の地震観測記録の等価震源距離は,内陸地殻内地震では,マグニチュード6.7で26キロメートル,マグニチュード6.5で34キロメートルのものがあるほかは,いずれも60キロメートル以上のものであり,近距離地震のデータが少なく,経験式の妥当性が実証されておらず,地震動を過小評価する危険性がある。 エ耐専スペクトルが震源距離として用いる等価震源距離は,前記3(1)オのとおり,震源距離が100キロメートル程度までの中距離の場合には,地震動を過小評価するものであるし,同キのとおり,一般的な手法とはいえず,その正当性は認められていない。耐専スペクトルを考案した野田静男も耐専スペクトルの手法が地域性を有するものであることを認めている。 オ断層モデルを用いた手法による地震動評価は,前記3(1)ケのとおり,当該想定震源断層域における実際の地震観測記録がない限り過小評価を免- 73 -れないものである。 (2) 控訴人の主張ア耐専スペクトルの手法は,前記4(2)ウのとおり,地震学及び地震工学の最新の知見を踏まえて高度化されたものであって,応答スペクトル法として地震動がより精度よく評価できることの特徴を有しており,かつ,バックチェックルールの要求を満たすものであり,太田鑑定意見書も,その妥当性を認めている。 イ耐専スペクトルに用いられている等価震源距離とは,前記3(2)カのとおり,断層面の拡がりや傾斜,アスペリティを考慮できる距離で,建築学 たすものであり,太田鑑定意見書も,その妥当性を認めている。 イ耐専スペクトルに用いられている等価震源距離とは,前記3(2)カのとおり,断層面の拡がりや傾斜,アスペリティを考慮できる距離で,建築学会等でも有用性が認められている広く一般的な考え方であり,現に司・翠川(1999)や大野ほか(2001)などの距離減衰式においても用いられており,太田鑑定意見書もその有効性を認めている。 ウ被控訴人らは,耐専スペクトルでは,震源距離が中距離の場合には,地震動が過小評価される旨主張する。しかしながら,控訴人は,邑知潟断層帯の地震動評価について耐専スペクトルを適用するに際し,前記3(2)カのとおり,JEAG(2007)に従い,各地震による耐専スペクトルと本件敷地での観測記録のはぎとり波の応答スペクトルとの比率を算定して,本件敷地固有の評価を行っており,この地震動評価は,太田鑑定意見書においても,その妥当性が認められている。 エ断層モデルを用いた手法による地震動評価は,震源の破壊過程や地震波の伝播特性等がモデル化されるため,個別の地震の特性をより現実的かつ詳細に評価できる手法である。新耐震指針においても「震源が敷地に近,く,その破壊過程が地震動評価に大きな影響を与えると考えられる地震については,断層モデルを用いた手法を重視すべきである」としている。 。 本件原子炉施設の耐震安全余裕(1) 被控訴人らの主張- 74 -一般的に構造物の設計において安全余裕があるのは,設計上の不確かさ,材料のばらつき,施工時に生じる不均一性及び経年劣化から当然のことであり,何ら特別なものではない。本件原子炉施設の基本設計段階の余裕については,現実に発生した能登半島地震に照らせば,設計用限界地震の選定自体が誤っており,その結果,策定された基準地震動Sは過小であ あり,何ら特別なものではない。本件原子炉施設の基本設計段階の余裕については,現実に発生した能登半島地震に照らせば,設計用限界地震の選定自体が誤っており,その結果,策定された基準地震動Sは過小であるから,余裕 はない。降伏応力と許容応力との差,極限応力と許容応力との差は工学的に。 必要な安全しろであり,許容値の設定における余裕は安全余裕とはいえない詳細設計段階の余裕についても,そもそも策定された基準地震動S自体が過 小なものであるから,発生応力値が許容値を超えることも否定できないのであり,安全余裕とはいえない。建設段階の余裕についても,原子炉施設の建設に使用する諸材料が日本工業規格等の基準を満たす仕様であることは当然であり,安全余裕ではない。 控訴人は,能登半島地震及び新潟県中越沖地震を踏まえて,本件原子炉施設の更なる耐震裕度の向上のための工事を行った旨主張するが,もともと本件原発は旧耐震指針に基づき設計・建築されているから,その耐震強度を,新耐震指針を満たすように1.2ないし1.6倍も補強することが可能であるかは疑問である。 (2) 控訴人の主張本件原子炉施設の建設に当たっては,基本設計段階,詳細設計段階及び建設段階の各段階においてそれぞれ余裕を設定しているので,仮に想定を超える地震動が発生したとしても,直ちに本件原子炉施設の建物・構築物や機器・配管系に安全上の影響が出ることはない。また,2005年宮城県南部地震による女川原子力発電所の事例や,大型振動台による実証試験の結果からも,耐震指針に基づき設計・建設された原子炉施設が耐震安全性において十分な余裕を有していることが実証されている。加えて,本件原子炉施設は,能登半島地震を踏まえた耐震安全性の確認においても,十分な耐震安全余裕- 75 -を有することが確認されている。さら において十分な余裕を有していることが実証されている。加えて,本件原子炉施設は,能登半島地震を踏まえた耐震安全性の確認においても,十分な耐震安全余裕- 75 -を有することが確認されている。さらに,控訴人は,本件原子炉施設の更なる耐震裕度の向上のため,平成18年11月から平成20年3月に掛けて,耐震裕度向上工事を行っている。すなわち,まず,平成18年11月から平成19年9月に掛けて,配管サポート類や電線サポート類等について,補強部材の取付け,より強い部材への取替え,新たなサポート類の追加等を実施し,さらに,能登半島地震や新潟県中越沖地震の発生を踏まえ,平成19年11月から平成20年3月に掛けて,工事対象範囲を拡大して工事を実施した。その上で,バックチェックにおいては,より詳細かつ入念な地質調査に基づき,より厳しく慎重な活断層評価を行った上で,不確かさ(ばらつき)を十分考慮してより安全側の評価となるように基準地震動Ssを策定し,この基準地震動Ssに対し,対象とする安全上重要な施設が耐震安全性にかかる評価基準を満足しており,本件原子炉施設が旧耐震指針のみならず,新耐震指針に照らしても十分な耐震安全性を有することを確認している。具体的には,バックチェックの際の基準地震動Ssの策定において,応答スペクトルに基づく手法による基準地震動Ss-1は,検討用地震として選定した笹波沖断層帯(全長)の地震動を包絡する「震源を特定せず策定する地震動」の応答スペクトルに対し,水平方向で1.20倍ないし1.60倍,鉛直方向で1.33倍ないし1.85倍となっている。また,施設の耐震安全性評価においては,安全上重要な建物・構築物(原子炉建屋,原子炉格納容器)について,基準地震動Ssによる最大応答せん断ひずみが,バックチェックにおける評価基準値の5分の1(原子 また,施設の耐震安全性評価においては,安全上重要な建物・構築物(原子炉建屋,原子炉格納容器)について,基準地震動Ssによる最大応答せん断ひずみが,バックチェックにおける評価基準値の5分の1(原子炉建屋,8分の1(原子炉格納容器))程度となっているほか,その他の安全上重要な施設においても,評価基準を満足していることを確認している。バックチェックにおいて策定した基準地震動Ssの応答スペクトルは,能登半島地震による本件原子炉施設での観測記録を余裕をもって包絡している。 新潟県中越沖地震は,柏崎刈羽原発に対して,設計時に想定した最大加速- 76 -度を上回る大きな揺れをもたらしたが,運転中又は起動中の原子炉はすべて,安全に自動停止した。IAEA及び原子力安全・保安院は,その原因として実際の設計の各段階における安全余裕の考慮によるものと評価している。 新耐震指針全体及び本件原子炉施設の同指針の基準充足性(1) 被控訴人らの主張ア新耐震指針は,結局,旧耐震指針と比べて,①評価する断層の範囲を5万年前から12ないし13万年前まで広げたこと,②複数断層を考慮すべきことがあるとしたこと,③考慮する直下地震の規模をマグニチュード6.5からマグニチュード6.8程度に引き上げたこと,④地震動評価について断層モデルを取り入れたこと,以上の程度の変化しかなく,ほとんど旧耐震指針と同一のものである。新耐震指針は,改訂作業を行った分科会の委員の過半数が,電力会社の業界団体である「日本電気協会」の専門部会などの委員を兼任していることからも明らかなように,電力会社が自ら既存の原子力発電所が1基も不適格とならないように作成したものである。したがって,本件原子炉施設が新耐震指針の基準を満たしても,地震・耐震設計の安全性を満たしているとは評価できない。 電力会社が自ら既存の原子力発電所が1基も不適格とならないように作成したものである。したがって,本件原子炉施設が新耐震指針の基準を満たしても,地震・耐震設計の安全性を満たしているとは評価できない。 イまた,もともと本件原発は,旧耐震指針に基づき設計され,その設計値に従って建設されているところ,その値は,Asクラスで490ガル,Aクラスで375ガルとされていたのであるから,新耐震指針に基づく設計値600ガルを満たす性能を有しているものとは考え難い。 (2) 控訴人の主張新耐震指針は,旧耐震指針の策定以後,兵庫県南部地震など幾多の地震経験により,地質学,地震学及び地震工学等に関する様々な知見の蓄積,技術の進歩があったことから,これらの専門家により構成される分科会における5年に及ぶ調査審議の結果を経て策定されたものであり,最新の知見を反映させたものである。控訴人は,本件原子炉施設のバックチェックに際し,こ- 77 -の新耐震指針に従い,より詳細かつ入念な地質調査に基づき,より厳格かつ慎重な活断層評価を行った上,より説明性・信頼性の高い基準地震動Ssを策定し「止める「冷やす「閉じ込める」の安全機能を保持するための,」,」,重要な施設等について耐震安全性評価を行い,そのいずれにおいても耐震安全性を有することを確認しているから,本件原子炉施設は,新耐震指針の基準を満たすものである。 能登半島地震(1) 被控訴人らの主張ア能登半島地震の概要平成19年3月25日午前9時42分ころに能登半島西岸沖を震源とする,マグニチュード6.9,最大震度6強を記録する能登半島地震が発生した。能登半島地震の震源断層は,本件原子炉施設までの距離が,震央距離約18キロメートル,震源距離約21キロメートルとされ,既知の海底断層であるF-14断層ない 震度6強を記録する能登半島地震が発生した。能登半島地震の震源断層は,本件原子炉施設までの距離が,震央距離約18キロメートル,震源距離約21キロメートルとされ,既知の海底断層であるF-14断層ないしF-16断層が活動したことが推測されるともに,陸域にも震源断層が存在することが推測される。 イ能登半島地震により明らかになったこと控訴人の主張によれば,詳細な調査を行い本件敷地に影響を及ぼすような活断層等はすべて確認されているはずであるところ,前記アの陸域での活断層は確認されていない。したがって,能登半島地震により,①すべての地震断層を把握することは困難であること,②活断層が確認されていないところでもマグニチュード6.5を超える地震が発生しないと想定することは明らかに誤りであり,安全上マグニチュード7.3の地震を想定すべきこと,③F-15断層は活動時期が古いため震源断層として評価する必要がないとする控訴人の考え方及び断層を単体でしか評価しない控訴人の評価方法が誤りであること,以上の諸点が明らかになったということができる。 - 78 -ウ能登半島地震による本件原発への影響本件原発は,能登半島地震により,最大で711ガルという地震動を受けた。これは,本件原発の設計時に考慮した基準地震動Sに基づく揺れ の最大加速度374ガルを超えるものである。 本件原発1号機建屋に設置された地震観測用強震計は,能登半島地震の本震及び余震の記録を約30分間も記録できなかった。能登半島地震は,余震回数が特に多い地震ではないから,本件原発の地震に対する真剣さの欠如を明らかにするものである。 本件原発は,能登半島地震により,①1号機の使用済燃料貯蔵プール内の水約45リットルが飛散し,②1・2号機の変圧器内の圧力が上昇して所定の圧力を超えたため放圧装置 欠如を明らかにするものである。 本件原発は,能登半島地震により,①1号機の使用済燃料貯蔵プール内の水約45リットルが飛散し,②1・2号機の変圧器内の圧力が上昇して所定の圧力を超えたため放圧装置が作動し,③原子炉建屋最上階である運転階の天井からつり下げられている水銀灯2個が落下し,④タービン建屋1階天井のコンクリートがはがれ,⑤本件原子炉施設の低圧タービンの組み立て中の車軸(ローター)の位置ずれが生じた。これらは,本件原発の地震に対するもろさを示すものである。 (2) 控訴人の主張能登半島地震により,本件原発のある石川県羽咋郡志賀町では震度6弱を観測し,激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律に基づく激甚災害として指定されるほどの大きな被害が発生した。控訴人は,能登半島地震の発生後直ちに,本件原子炉施設の巡視・点検及び試験等による安全確認を行い,その結果,安全上重要な施設に被害がなかったことを確認している。したがって,能登半島地震が,本件原子炉施設の耐震安全性を損なうような地震ではなかったことは明らかである。 被控訴人らが主張する本件原発への影響中,①の使用済燃料貯蔵プール内の水の飛散は,1号機で発生したものであり,本件原子炉施設の耐震安全性と関係がない。また,②ないし⑤は,いずれも抽象的に危険発生の可能性を- 79 -指摘するのみで,いかなる機序で本件原子炉施設の安全性が損なわれるかが具体的に主張されていないから,主張自体失当である。 新潟県中越沖地震(1) 被控訴人らの主張ア新潟県中越沖地震の概要平成19年7月16日に新潟県上中越沖を震源とする,マグニチュード6.8,最大震度6強を記録する新潟県中越沖地震が発生した。新潟県中越沖地震の震源断層は,柏崎刈羽原発までの距離が約17キロメートルとされ,F 7月16日に新潟県上中越沖を震源とする,マグニチュード6.8,最大震度6強を記録する新潟県中越沖地震が発生した。新潟県中越沖地震の震源断層は,柏崎刈羽原発までの距離が約17キロメートルとされ,F-A断層ないしF-D断層の四つの断層が活動したことが推測されている。同原子力発電所は,新潟県中越沖地震により,1号機において,原子炉建屋基盤(原子炉建屋の地中で実際に地震計が設置されている場所のこと)上で最大で680ガルという地震動を受けた。この観測値に基。 づいて,1号機における解放基盤表面(基盤面上の表層や構造物がないものと仮定し,基盤のS波速度が700m/s相当以上の値を有する硬質基盤のこと。基準地震動は,旧耐震指針のS,S及び新耐震指針のSs のいずれもがこの解放基盤表面に設定されている)でのはぎとり波を推。 定すると最大加速度で1699ガルとなった。 イ新潟県中越沖地震により明らかになったこと東京電力の主張によれば,柏崎刈羽原発から30キロメートル圏内は,詳細な調査が行われており,同原子力発電所の敷地に影響を及ぼすような活断層等はすべて確認されていたはずであるところ,新潟県中越沖地震の震源断層は,この区域内に所在する。したがって,新潟県中越沖地震により,①地震断層を把握することは困難であること,②活断層が確認されていないところでもマグニチュード6.5を超える地震が発生しないと想定することは誤りであること,③F-A断層ないしF-D断層は第四紀後期以降の活動がなく,F-C断層は長さが1.5キロメートルしかな- 80 -いため,いずれも震源断層として考慮する必要がないとする東京電力の考え方が誤りであること,以上の諸点が明らかになるとともに,④前記はぎとり波の最大加速度1699ガルという値は,同原発の旧耐震指針による基 いずれも震源断層として考慮する必要がないとする東京電力の考え方が誤りであること,以上の諸点が明らかになるとともに,④前記はぎとり波の最大加速度1699ガルという値は,同原発の旧耐震指針による基準地震動S(現実に発生することはほとんどないと考えられるものの 万が一のために想定する地震動)における最大加速度450ガルの4倍近い値であり,また,新耐震指針による全国各原発の基準地震動Ssの中で最大加速度が最も大きい値となっている浜岡原子力発電所の800ガルの2倍以上の値であって,旧耐震指針において大崎スペクトルに基づき算定した地震動や新耐震指針において耐専スペクトルに基づき算定した地震動は,現実に発生した地震による地震動と比べて地震動を過小評価するものであること,が明らかになったということができる。解放基盤表面でSが 生じれば,地表の原発施設は弾性限界を超えて塑性変形する可能性があるとされているところ,原発施設が塑性変形すれば,設計段階で想定されて,いた施設の安全性は保たれないことになるから,新潟県中越沖地震により耐震設計指針そのものが崩壊したということができる。耐専スペクトルを提案した野田静男は,新潟県中越沖地震を受けて開催された原子力安全委員会耐震安全性に関する調査プロジェクトチーム第4回会合において,新潟県中越沖地震を受けて,耐専スペクトルを見直す必要があることを述べている。 ウ新潟県中越沖地震による柏崎刈羽原発への影響柏崎刈羽原発は,新潟県中越沖地震により,前記のとおり原子炉建屋基盤上で最大680ガルという地震動を受けるとともに,観測記録が消失し,機械の破損・変形,建物等のひび・剥離,水漏れ等合計3270件にも上るトラブルが生じた。これらは,原子力発電所の地震に対するもろさを示すものである。 エ東京電力は,後記(2) ,観測記録が消失し,機械の破損・変形,建物等のひび・剥離,水漏れ等合計3270件にも上るトラブルが生じた。これらは,原子力発電所の地震に対するもろさを示すものである。 エ東京電力は,後記(2)イのとおり,柏崎刈羽原発1号機において,新潟- 81 -県中越沖地震により,同原発の策定した基準地震動から求められる最大加速度を大きく超える加速度が観測された要因として三つの要因を挙げているが,あくまで仮説にすぎないものである。仮にこの分析が正しいとしても,同じ要因が本件敷地に存在しないことにはならないし,同じ要因のいずれかが本件敷地に存在した場合,その増幅度合いが柏崎刈羽原発と同程度であるかも不明である。新潟県中越沖地震が生じてはじめて,柏崎刈羽原発の増幅要因が明らかになったのであるから,本件敷地の地下構造に柏崎刈羽原発以上の増幅要因が隠されている可能性も否定できない。そもそも柏崎刈羽原発の増幅要因とされる①の震源特性の影響については,柏崎刈羽原発における特殊要因である理由が明らかでないし,②及び③の深部地盤及び浅部地盤における不整形性についても,地層が常に整形性を保っているといえない以上,本件敷地においても存在する可能性は否定できない。さらに,東京電力の前記分析により,旧耐震指針及び新耐震指針に基づく基準地震動が,地震動を4倍にも増幅する要因を全く考慮していないものであり,原子力発電所の安全性評価の基準となり得ないことが明らかになった。 (2) 控訴人の主張ア新潟県中越沖地震については,原子力安全・保安院が,原子力事業者に対し,この地震を踏まえたバックチェックに反映すべき事項を指示しているところ,控訴人は,本件原子炉施設のバックチェックの中間報告において,かかる指示事項を,検討用地震の選定,震源断層モデルの設定,海域の地層年代, 踏まえたバックチェックに反映すべき事項を指示しているところ,控訴人は,本件原子炉施設のバックチェックの中間報告において,かかる指示事項を,検討用地震の選定,震源断層モデルの設定,海域の地層年代,褶曲構造及び活断層の評価並びに基準地震動の策定等において適切に反映している。 イ柏崎刈羽原発1号機においては,新潟県中越沖地震により,東京電力が策定した基準地震動から求められる最大応答加速度680ガルを超える最大加速度1699ガルが観測された。東京電力は,その要因について,①- 82 -震源特性の影響,②深部地盤における不整形性(地震基盤の屈曲)の影響,及び③浅部地盤における不整形性(敷地下の古い褶曲構造)の影響を挙げている。本件敷地の地下構造は,弾性波探査,微動アレイ探査,重力探査,ボーリング調査及びPS検層の結果,柏崎刈羽原発の敷地と異なり,地表から浅く,ほぼ水平に分布しており,地震基盤の屈曲や地震基盤よりも上部の地盤の褶曲構造が存在しないことが確認されている。したがって,本件敷地においては,柏崎刈羽原発の前記要因のうち②及び③は該当しない。また,本件原子炉施設の基準地震動Ssは,能登半島地震の震源特性等をも考慮し,適切に策定されているから,前記要因のうち①も該当しない。以上によれば,本件原子炉施設においては,柏崎刈羽原発において策定した基準地震動より大きな地震動が観測された要因はいずれも当てはまらないということができる。 旧耐震指針に関する主張(1) 被控訴人らの主張原判決第2分冊被控訴人ら最終準備書面第4章及び被控訴人ら最終準備書面(補充)に記載のとおりである。 (2) 控訴人の主張原判決第3分冊控訴人最終準備書面第2章第2の2(3)及び控訴人最終準備書面(補充)に記載のとおりである。 第15争点15(本件原子炉の 備書面(補充)に記載のとおりである。 (2) 控訴人の主張原判決第3分冊控訴人最終準備書面第2章第2の2(3)及び控訴人最終準備書面(補充)に記載のとおりである。 第15争点15(本件原子炉の不要性)(被控訴人らの主張)原判決第2分冊被控訴人ら最終準備書面第5章に記載のとおりであり,その要旨は以下のとおりである。 原子力発電は危険であり,いったん事故が起きれば取り返しのつかない結果が招来されるところ,日本の電力需給に鑑みれば,原子力発電所を廃止することは可能である。また,控訴人が北陸地域に電力を安定供給するために本件原- 83 -発は必要でない。そして,エネルギー供給基盤の脆弱性,電源多様化,地球温暖化防止の見地からも,原子力発電所の建設を促進しなければならないような理由は存在しない。原子力発電については,閉鎖ないし凍結するのが世界の趨勢であるし,日本の原発政策には,国民の意思が反映されていない。したがって,本件原子炉は不要である。 第16争点16(廃棄物処理等ダウンストリームの不備) 被控訴人らの主張原判決第2分冊被控訴人ら最終準備書面第6章に記載のとおりであり,その要旨は以下のとおりである。 本件原子炉の運転を継続をした場合,発生した使用済み核燃料は,青森県六ヶ所村で操業予定の六ヶ所再処理工場に搬入するまでの間,本件原発の施設において貯蔵を要するところ,使用済み核燃料は,燃え残りのウラン,プルトニウム,核分裂生成物,超ウラン元素など多種雑多の放射性核種が含まれており,非常に強い放射能毒性を有し,再臨界の可能性もあるから,非常に危険なものである。そして,本件原発の使用済み核燃料の貯蔵容量は,本件原子炉及び本件原発1号機の運転を継続した場合,十分とはいえないから,危険な使用済み核燃料は,その行き場を失い,被控訴人ら付近の 危険なものである。そして,本件原発の使用済み核燃料の貯蔵容量は,本件原子炉及び本件原発1号機の運転を継続した場合,十分とはいえないから,危険な使用済み核燃料は,その行き場を失い,被控訴人ら付近の住民の生命,健康に対して重大な危険性が生じることになる。 控訴人の主張原判決第3分冊控訴人最終準備書面第3章第3に記載のとおりであり,その要旨は以下のとおりである。 本件原発から発生する使用済み核燃料は,原子炉建屋内に設けられた使用済燃料貯蔵プールにおいて冷却貯蔵し,その後,計画的に青森県六ヶ所村で操業中の日本原燃株式会社の使用済燃料受入・貯蔵施設に搬入することとしているが,前記貯蔵プールは,十分な貯蔵能力・安全性を確保している。 第4章当裁判所の判断- 84 -第1争点1(差止請求の根拠)について原判決「事実及び理由」欄の第2章第1の3に説示のとおりであるから,これを引用する。 第2争点2(具体的危険」の主張立証責任等)について「人格権に基づく原子力発電所の運転差止訴訟においては,当該原子力発電所に安全性に欠けるところがあって,被控訴人らの生命,身体,健康が現に侵害されているか又は侵害される具体的危険があることについての主張立証責任は,人格権に基づく差止訴訟の一般原則どおり,本来,被控訴人らが負うものと解するのが相当である。 そして,本件原子炉についてこれを具体的に想定すれば,被控訴人らは,①本件原子炉の運転による放射線,放射性物質の発生,②本件原子炉の平常運転時又は地震等の異常事象時における放射線,放射性物質の外部への排出の具体的可能性,③外部へ排出した放射線,放射性物質による被控訴人らの被ばくの具体的可能性について主張立証しなければならないというべきである。 しかしながら,前記第2章第2「前提事実」の4「原子力発電の仕 的可能性,③外部へ排出した放射線,放射性物質による被控訴人らの被ばくの具体的可能性について主張立証しなければならないというべきである。 しかしながら,前記第2章第2「前提事実」の4「原子力発電の仕組み」に判示のとおり,本件原子炉を含め,原子力発電所は,放射性物質を内蔵する施設であり,その運転は,原子炉の出力を一定にするため,高度かつ複雑な科学技術を用いて,核燃料の放射性物質の核分裂反応の量が一定に維持される(臨界)ように制御しながら行われるものであるから,常に潜在的な危険性を内包しており,このような技術利用の前提となる安全管理が不十分である場合は,この潜在的危険が顕在化し,放射性物質が原子炉の外部へ排出される可能性を有するものである。そして,前記第2章第2「前提事実」の7「放射線被ばくの人体への影響」に判示のとおり,放射線の持つエネルギーは極めて大きいため,極めて微量の放射線でも細胞やDNAの損傷をもたらし得ることからすれば,放射性物質が原子炉の外部へ排出された場合,この放射性物質により,被控訴人らのうち少なくとも本件原子炉の周辺に居住する住民の被ばくの可能性- 85 -が存在するというべきである。原子炉等規制法が第4章に「原子炉の設置,運転等に関する規制」に関する規定を設け,前記第2章第2「前提事実」の6「原子炉の増設,運転に関する国の安全審査」にも判示したように,原子炉設置・増設の許可基準として「原子炉施設の位置,構造及び設備が核燃料物質,(使用済燃料を含む。以下同じ,核燃料物質によって汚染された物(原子。)核分裂生成物を含む。以下同じ)又は原子炉による災害の防止上支障がない。 ものであること(同法24条1項4号,26条4項)と規定するなど,災。」害の防止を原子炉の設置・増設,運転上の重要な課題とし,これを確保するた 以下同じ)又は原子炉による災害の防止上支障がない。 ものであること(同法24条1項4号,26条4項)と規定するなど,災。」害の防止を原子炉の設置・増設,運転上の重要な課題とし,これを確保するため,安全の確保に関する規制は原子力安全委員会が所掌し(原子力委員会等設置法13条,その規制に専門的な知見と検討結果が反映される制度が採られ)(同法16条,17条等,原子力安全委員会の関与の下に学識経験者等の専)門家により原子炉施設の安全性を確保するに足りるものとして策定された安全設計審査指針,安全評価審査指針,耐震設計審査指針等の審査指針等に基づいて原子炉施設の設置,運転の許否が審査されているほか,原子炉施設の運転開始後も,設置者において通商産業大臣(現経済産業大臣)による定期検査(平成11年法律第121号による改正前の電気事業法54条)等を受けることが予定されているのも,原子炉が前記のような危険性を有することによるものである。 そして,その安全管理の方法は,各原子炉ごとに異なり,かつ,その資料はすべて原子炉設置者の側が保持していることなどの点を考慮すると,本件原子炉の安全性については,控訴人の側において,まず,その安全性に欠ける点のないことについて,相当の根拠を示し,かつ,必要な資料を提出した上で主張立証する必要があり,控訴人がこの主張立証を尽くさない場合には,本件原子炉に安全性に欠ける点があり,その周辺に居住する住民の生命,身体,健康が現に侵害され,又は侵害される具体的危険があることが事実上推認されるものというべきである。そして,控訴人において,本件原子炉の安全性について前- 86 -記説示の主張立証を尽くした場合は,本来主張立証責任を負う被控訴人らにおいて,本件原子炉に安全性に欠ける点があり,被控訴人らの生命,身体,健康が現に いて,本件原子炉の安全性について前- 86 -記説示の主張立証を尽くした場合は,本来主張立証責任を負う被控訴人らにおいて,本件原子炉に安全性に欠ける点があり,被控訴人らの生命,身体,健康が現に侵害され,又は侵害される具体的危険があることについて,その主張立証責任に適った主張立証を行わなければならないとするのが相当である。 そして,この安全性は,前記のような原子力発電所の持つ危険性に鑑みれば厳しく審査する必要があるが,他方で,科学技術を利用した各種の機械,装置等については,絶対的に災害発生の危険がないという「絶対的安全性」は想定できないから,原子炉施設においても,放射線,放射性物質の環境への排出を完全に防止することを意味するということはできず,放射線,放射性物質の環境への排出を可及的に少なくし,これによる災害発生の危険性を社会通念上無視し得る程度に小さなものに保つことを意味すると解するのが相当である。 なお,控訴人は,前記安全性について,事故発生の危険性の程度と科学技術の利用に得られる利益の大きさとの比較衝量の上,決すべきである旨主張する。 しかしながら,前記のように,放射性物質が原子炉の外部に排出された場合,その周辺に居住する住民が被ばくする可能性が存在するという原子力発電所の危険性に鑑みれば,原子力発電所の利用により得られる利益がいかに大きなものであったとしても,その危険性の程度を緩和することはできず,前記のとおり,放射線,放射性物質の環境への排出を可及的に少なくし,これによる災害発生の危険性を社会通念上無視し得る程度に小さなものであることを要すると解するのが相当である。 第3判断の進め方証拠〔乙6(6ないし8,添10-1-1ないし10-4-50,乙9)(3ないし38,62ないし78,101ないし163,1300ないし13 要すると解するのが相当である。 第3判断の進め方証拠〔乙6(6ないし8,添10-1-1ないし10-4-50,乙9)(3ないし38,62ないし78,101ないし163,1300ないし1302〕によれば,通商産業大臣及び原子力安全委員会が本件設置変更許可申)請について行った本件安全審査においては,平常時はもちろん,地震,機器の故障その他の異常時においても,一般公衆及び従業員に対して放射線障害を与- 87 -えず,かつ,万が一の事故を想定した場合にも一般公衆の安全が確保されることを基本方針とし,①立地条件に係る安全確保対策,②平常運転時の被ばく低減に係る安全確保対策,③事故防止に係る安全確保対策,④運転段階における安全確保対策について審査したことが認められる。 そこで,以下では,まず,本件原子炉施設が本件安全審査における審査指針等の定める安全上の基準を満たしているかについて,①立地条件に係る安全確保対策,②平常運転時の被ばく低減に係る安全確保対策,③事故防止に係る安全確保対策,④運転段階における安全確保対策の順に検討し,これらが満たされていることが確認された場合には,控訴人は,本件原子炉に安全性に欠ける点がないことについて,相当の根拠を示し,かつ必要な資料を提出した上での主張立証を尽くしたことになるというべきである。そして,この場合には,本来的に主張立証責任を負う被控訴人らにおいて前記具体的危険性についてその主張立証責任に適った主張立証を果たしているか否かを検討すべきことになる。そこで,前記の審査指針等適合性の検討に続いて,被控訴人らの主張立証について,前記各観点から検討判断することとする。 第4控訴人の安全確保対策 立地条件に係る安全確保対策(1) 総論証拠〔乙9(7,10,27〕によれば,以下の事実が認 ,被控訴人らの主張立証について,前記各観点から検討判断することとする。 第4控訴人の安全確保対策 立地条件に係る安全確保対策(1) 総論証拠〔乙9(7,10,27〕によれば,以下の事実が認められる。 )本件安全審査における安全設計審査指針は,軽水炉に関する経験と最新の技術的知見に基づいて,軽水炉の設置許可申請に係る安全審査に当たって確認すべき安全設計の基本方針を定めたものであり,その中で「自然現象に対する設計上の考慮」として以下の2点を要求している。 ア安全機能を有する構築物,系統及び機器は,その安全機能の重要度及び地震によって機能の喪失を起こした場合の安全上の影響を考慮して,耐震設計上の区分がなされるとともに,適切と考えられる設計用地震力に十分- 88 -耐えられる設計であること。 イ安全機能を有する構築物,系統及び機器は,地震以外の想定される自然現象によって原子炉施設の安全性が損なわれない設計であること。重要度の特に高い安全機能を有する構築物,系統及び機器は,予想される自然現象のうち最も苛酷と考えられる条件,又は自然力に事故荷重を適切に組み合わせた場合を考慮した設計であること。 そして,同指針は,耐震設計については,耐震設計審査指針において定めるところによるとしている。 自然的立地条件として考慮すべきものには,地震をはじめとして,地盤,水理等があるので,以下,順に検討する。 (2) 地震に係る安全確保対策ア地震発生のメカニズム証拠〔甲397(3,4,甲717(3ないし19,45ないし4)7,甲718(3,4,7ないし9,甲783(39,乙14(4,)))37,38,乙17(3,4,乙20(5,証人F(①3,4,6,)))15,16,②23,24〕によれば,以下の事実が認められる。 )(ア)地震とは 甲783(39,乙14(4,)))37,38,乙17(3,4,乙20(5,証人F(①3,4,6,)))15,16,②23,24〕によれば,以下の事実が認められる。 )(ア)地震とは,地下の岩石が破壊して地震波(岩石の振動が高速で地球内部を伝わって行く波)を放出する現象をいい,地震動とは,地震波が地表に到達して地面が揺れる現象をいう。ほとんどすべての地震は,出発点(震源)から始まった破壊が面状に急速に拡大しながらその両側の岩盤が互いに逆向きに激しくずれ動くという形の破壊(ずれ破壊)を起こすものである。その破壊面を震源断層面といい,震源断層面が地表に現れると,地形のずれが生じる。これを「地表地震断層」という。 ほとんどの地震は,何度も破壊を繰り返してきた部分(弱面」とも「いう)が再び破壊されて発生するが,ずれ破壊は地震前に特に強く固。 着していた部分(アスペリティ)で飛び飛びに激しく進行していく。 - 89 -マグニチュードとは,地下の岩石破壊の規模を表す尺度であり,概ね震源断層面の大きさに対応しており,マグニチュードが2大きくなると震源断層面の長さ及び幅,ずれの量,破壊時間はいずれも約10倍になり,マグニチュードが1大きくなると,放出される地震波のエネルギーは約30倍になる。震度とは,地表の各地点の地震動の強さを示す目安である。 (イ)現在の学界の通説であるプレートテクトニクスによれば,地球の表面は,十数枚のプレート(巨大な岩石層の厚い板)で構成され,プレートは長い年月を掛けて少しずつ移動している。日本列島周辺には,大陸プレートであるユーラシアプレート及び北米プレート(この両者の境界は未確認とされている)並びに海洋プレートである太平洋プレート及。 びフィリピン海プレートと呼ばれる四つのプレートが存在しており,海洋 レートであるユーラシアプレート及び北米プレート(この両者の境界は未確認とされている)並びに海洋プレートである太平洋プレート及。 びフィリピン海プレートと呼ばれる四つのプレートが存在しており,海洋プレートは大陸プレートの下に潜り込むように移動している。アムールプレートと呼ばれるユーラシアプレートから分離した小さなプレートが東へ動いており,その東縁がサハリン,北海道,東北,北陸,山陰付近に位置するとの学説もある。 プレートの運動によって蓄積された歪みのエネルギーがある限界を超えたときに,プレート境界部(プレート境界型地震)やプレート内の弱面(プレート内型地震)がずれてエネルギーを解放して地震が発生する。 プレート内型地震は,内陸地殻内地震,海洋プレートのうちプレート境界部より海洋側で発生する海洋プレート内地震及び大陸プレートの下に沈み込んだ部分(スラブ)で発生するスラブ内地震の三つに分けられる。 日本列島の陸のプレートは大部分の場所で非常に薄く,特に内陸や日本海沿岸では固くて壊れやすいのは地表の少し下から深さ15キロメートルないし20キロメートルくらいまで(上部地殻)である。内陸地殻内地震は,一般に震源が浅く,しばしば直下型地震と呼ばれ,ときにマ- 90 -グニチュード8クラスの巨大地震も起こるが,その場合でも震源断層面の深さ方向の幅は15キロメートルないし20キロメートル程度である。 スラブ内地震は,最近我が国で目立っており,その例としては,平成5年の釧路沖地震(マグニチュード7.8,平成6年の北海道東方沖)地震(マグニチュード8.1,平成13年の芸予地震(マグニチュー)ド6.7)が挙げられる。 イ旧耐震指針の概要証拠〔乙9(62ないし78〕によれば,以下の事実が認められる)(なお,以下,各項目ごとに主たる証拠を掲記する。 3年の芸予地震(マグニチュー)ド6.7)が挙げられる。 イ旧耐震指針の概要証拠〔乙9(62ないし78〕によれば,以下の事実が認められる)(なお,以下,各項目ごとに主たる証拠を掲記する。 。)旧耐震指針は,昭和53年9月に発電用原子炉施設の耐震設計の妥当性を評価するために原子力安全委員会において定められ,その後,昭和56年7月,平成13年3月29日に一部改訂されたものであり,その概要は以下のとおりである。 (ア)旧耐震指針の基本方針等旧耐震指針は,基本方針として,発電用原子炉施設は,想定されるいかなる地震力に対しても,これが大きな事故の誘因とならないよう十分な耐震性を有していなければならず,建物・構造物は原則として剛構造とするとともに,重要な建物・構造物は岩盤に支持させなければならないと定めている〔乙9(62。 )〕(イ)耐震設計上の重要度分類旧耐震指針は,原子炉施設の耐震設計上の施設別重要度を,地震により発生する可能性のある放射線による環境への影響の観点からAクラスないしCクラスに分類している。 具体的には,Aクラスは,①自ら放射性物質を内蔵しているか又は内蔵している施設に直接関係しており,その機能喪失により放射性物質を外部に放散する可能性のあるもの,②これらの事態を防止するため- 91 -に必要なもの,及び③これらの事故発生の際に,外部に放散される放射性物質による影響を低減させるために必要なものであって,その影響,効果の大きいもの,Bクラスは,前記①ないし③のうち,その影響・効果が比較的小さいもの,Cクラスは,A及びBクラス以外であって,一般産業施設と同等の安全性を保持すればよいもの,とされている。 Aクラスの施設のうち,安全上特に重要とされる,①原子炉冷却材圧力バウンダリを構成する機器・配管系,②使 及びBクラス以外であって,一般産業施設と同等の安全性を保持すればよいもの,とされている。 Aクラスの施設のうち,安全上特に重要とされる,①原子炉冷却材圧力バウンダリを構成する機器・配管系,②使用済燃料を貯蔵するための施設,③原子炉の緊急停止のために急激に負の反応度を付加するための施設及び原子炉の停止状態を維持するための施設,④原子炉停止後,炉心から崩壊熱を除去するための施設,⑤原子炉冷却材圧力バウンダリ破損事故の際に圧力障壁となり放射性物質の拡散を直接防ぐための施設を限定して,Asクラスの施設としている。 〔乙9(63,64〕)(ウ)耐震設計の基本方針旧耐震指針は,前記各クラス別に耐震設計に関する基本的な方針を満足することを要求している。 具体的には,①Aクラスの施設は設計用最強地震による地震力又は静的地震力のいずれか大きい方の地震力に耐えること,さらに,Asクラスの施設はこれに加えて設計用限界地震による地震力に対してその安全機能が保持できること,②Bクラスの施設は静的地震力に耐えるとともに共振のおそれのある施設についてはその影響の検討も行うこと,③Cクラスの施設は静的地震力に耐えること,④上位の分類に属するものは,下位の分類に属するものの破損によって波及的破損が生じないこと,とされている。 〔乙9(64〕)(エ)設計用最強地震及び設計用限界地震による地震力の算定方法- 92 -旧耐震指針は,設計用最強地震及び設計用限界地震による地震力の算定方法を以下のとおり定める〔乙9(65,66,69ないし73。 )〕a原子炉施設の耐震設計に用いる地震動は,地表面の起伏や表層等の影響を受けない単純化した地震動を評価するため,敷地の解放基盤表面(旧耐震指針では,基盤(旧耐震指針では,概ね第三紀層及びそれ以前の a原子炉施設の耐震設計に用いる地震動は,地表面の起伏や表層等の影響を受けない単純化した地震動を評価するため,敷地の解放基盤表面(旧耐震指針では,基盤(旧耐震指針では,概ね第三紀層及びそれ以前の堅牢な岩盤であって,著しい風化を受けていないもの)面上。 の表層や構造物がないと仮定した上で,基盤面に著しい高低差がなく,ほぼ水平であって相当な拡がりのある基盤の表面をいう)において。 考慮する地震動(基準地震動)に基づいて評価する。また,水平地震力は,基準地震動により算定し,鉛直地震力を基準地震動の最大加速度振幅の2分の1で高さ方向に一定とし,水平地震力と同時に不利な方向の組合せで作用するものとする。 b設計用最強地震としては,①歴史的資料から過去に敷地又はその近傍に影響を与えたと考えられ,再来すれば敷地及びその周辺に同様の影響を与えるおそれのある地震,及び②近い将来敷地に影響を与えるおそれのある活動度の高い活断層(旧耐震指針では,第四紀(約180万年前以降)に活動し,将来も活動する可能性のある断層)。 による地震のうちから最も影響の大きいものを想定し,この地震によりもたらされる基準地震動を「S」とする。 c設計用限界地震としては,地震学的見地に立脚し,設計用最強地震を上回る地震について,①過去の地震の発生状況,②敷地周辺の活断層の性質,及び③地震地体構造(地震規模,震源深さ,発震機構,地震発生頻度等に着目するとき,地震の発生の仕方に共通の性質をもっているある拡がりをもった一定の地域の地質構造)に基づき工学的見地からの検討を加え,最も影響の大きいものを想定し,この地震によりもたらされる基準地震動を「S」とする。 - 93 -d基準地震動S,Sを生起する地震については,近距離及び遠距 離地震を考慮するものとし ,最も影響の大きいものを想定し,この地震によりもたらされる基準地震動を「S」とする。 - 93 -d基準地震動S,Sを生起する地震については,近距離及び遠距 離地震を考慮するものとし,基準地震動Sには,マグニチュード6. 5の直下地震によるものを含むものとする。 e基準地震動の策定に当たっては,近距離に存在する活断層にも着目することになるが,すべての活断層を等しく考慮に入れることは実際的でなく,例えば,今後活動する可能性があるとはいえ,大地震発生の可能性が極めて低い活断層に対して,再びそれが発生することを予期するのは,工学的見地から必ずしも適切とはいえないので,活断層を考慮する場合には,その活動度を評価し,その大小に応じた考慮を行うものとしている。具体的には,年間の平均変位速度が1ミリメートル以上のものをA級,0.1ミリメートル以上1ミリメートル未満をB級,0.1ミリメートル未満をC級とし,基準地震動Sの発生 源としては,①歴史資料により過去に地震を発生したと推定されるもの,②A級活断層に属し,1万年前以降に活動したもの又は地震の再来期間が1万年未満のもの,③微小地震の観測により,断層の現在の活動性が顕著に認められるものを考慮し,基準地震動Sの発 生源としては,①A級活断層に属するもの(前記②を除く,②。)B及びC級活断層に属し,5万年前以降活動したもの,又は地震の再来期間が5万年未満のものを考慮する。 f基準地震動の策定に当たっては,①敷地及びその周辺地域に影響を与えた過去の地震について,そのマグニチュード,震央,震源,余震域及びそのときの地震動の最大強さ(又はその推定値)と震害状況(構造物の被害率,墓石の転倒等を含む,②過去の破壊的地震。)動の強さの統計的期待値,③地震のマグニチュ ュード,震央,震源,余震域及びそのときの地震動の最大強さ(又はその推定値)と震害状況(構造物の被害率,墓石の転倒等を含む,②過去の破壊的地震。)動の強さの統計的期待値,③地震のマグニチュード及びエネルギー放出の中心から敷地までの距離,④過去の観測例,敷地における観測結果及び基盤の岩質調査結果を十分に考慮する。 - 94 -g基準地震動は,①最大振幅(原則として速度で表す,②周。)波数特性,③地震動の継続時間(地震動の開始からそれが実効上消滅するとみなされるまでの時間を考慮する)及び振幅包絡線の経時。 的変化が適切なものと評価できるものでなければならない。 (オ)静的地震力の算定方法旧耐震指針は,静的地震力の算定方法を次のとおり定める〔乙9(65,73ないし76。 )〕水平地震力は,建物・構築物の各部分の高さに応じ,当該部分に作用する全体の地震力として算定し,一般の建物に考慮する静的地震力の3倍(Aクラスの施設,1.5倍(Bクラスの施設)又は1倍(Cクラ)スの施設)として算定するとしている。また,Aクラスの施設については,鉛直地震力も考慮することとし,鉛直地震力は震度0.3を基準とし,建物・構築物の振動特性,地盤の種類等を考慮して求めた鉛直震度より算定するものとし,水平地震力と鉛直地震力は,同時に不利な方向に作用するものとして算定するとしている。 機器・配管系についての各クラスの地震力は,建物・構築物についての水平地震力及び鉛直地震力をそれぞれ20パーセント増しとした震度より求めるものとしている。 (カ)荷重の組合せと許容限界旧耐震指針は,耐震設計に関する荷重の組合せと許容限界の基本的考え方について以下のとおり定めている〔乙9(66ないし68,7 。 )〕a建物・構築物(a)Asクラスの建 の組合せと許容限界旧耐震指針は,耐震設計に関する荷重の組合せと許容限界の基本的考え方について以下のとおり定めている〔乙9(66ないし68,7 。 )〕a建物・構築物(a)Asクラスの建物・構築物①常時作用している荷重及び運転時に施設に作用する荷重(以下「運転時荷重等」という)と基準地震動Sによる地震力又は。 - 95 -静的地震力とを組み合わせ,その結果発生する応力に対して安全上適切と認められる規格及び基準による許容応力度を許容限界とし,かつ,②運転時荷重等と基準地震動Sによる地震力との組合せ に対して,構造物全体として十分変形能力(ねばり)の余裕を有し,終局耐力(荷重が作用して変形又は歪が著しく増加した状態における最大荷重負荷)に対し妥当な安全余裕を有する必要があるとしている。 (b)Aクラス(Asクラスを除く)の建物・構築物。 前記のAsクラスの建物・構築物の①と同様の許容応力度を持つ必要があるとしている。 (c)Bクラス及びCクラスの建物・構築物運転時荷重等と静的地震力とを組み合わせ,その結果発生する応力に対して,安全上適切と認められる許容応力度を有する必要があるとしている。 b機器・配管系(a)Asクラスの機器・配管①通常運転時,異常な過渡変化時及び事故時に生じるそれぞれの荷重と基準地震動Sによる地震力又は静的地震力とを組み合わ せ,その結果発生する応力に対して,降伏応力又はこれと同等な安全性を有する応力を許容限界とし,かつ,②通常運転時,異常な過渡変化時及び事故時に生じるそれぞれの荷重と基準地震動Sに よる地震力とを組み合わせ,その結果発生する応力に対して,構造物の相当部分が降伏し,塑性変形する場合でも過大な変形,亀裂,破損等が生じ,その施設の機能に影響を及ぼすことがない必要 基準地震動Sに よる地震力とを組み合わせ,その結果発生する応力に対して,構造物の相当部分が降伏し,塑性変形する場合でも過大な変形,亀裂,破損等が生じ,その施設の機能に影響を及ぼすことがない必要があるとしている。 (b)Aクラス(Asクラスを除く)の機器・配管。 - 96 -前記のAsクラスの機器・配管の①と同様の耐性を持つ必要があるとしている。 (c)B,Cクラスの機器・配管通常運転時,運転時の異常な過渡変化時の荷重と静的地震力とを組み合わせ,その結果発生する応力に対して,降伏応力又はこれと同等な安全性を有する応力を許容限界とするとしている。 ウ新耐震指針の概要証拠〔乙93,乙94,乙96,乙126〕によれば,以下の事実が認められる(なお,以下,各項目ごとに主たる証拠を掲記する。 。)旧耐震指針は,その後,兵庫県南部地震などにより,地震学及び地震工学に関する知見の蓄積がされるとともに,原子炉施設の耐震設計技術の改良及び進歩があったことから,これらを反映させるため,改訂されることとなり,地質学,地震学,地震工学等の専門家により構成された分科会での4年10か月に及ぶ調査審議を経て,平成18年9月,新耐震指針が策定された。その概要は,以下のとおりである。 (ア)新耐震指針の基本方針新耐新指針では,基本方針として「耐震設計上重要な施設は,敷地周,辺の地質・地質構造並びに地震活動性等の地震学及び地震工学的見地から施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性があり,施設に大きな影響を与えるおそれがあると想定することが適切な地震動による地震に対して,その安全機能が損なわれることがないように設計されなければならない。さらに,施設は,地震により発生する可能性のある環境への放射線による影響の観点からなされる耐震設計上の区分 震動による地震に対して,その安全機能が損なわれることがないように設計されなければならない。さらに,施設は,地震により発生する可能性のある環境への放射線による影響の観点からなされる耐震設計上の区分ごとに,適切と考えられる設計用地震力に十分耐えられるように設計されなければならない」とするとともに「建物・構築物は,十分な支持性能。 ,を保つ地盤に設置されなければならない」と定めている〔乙96。 。 - 97 -(2〕)(イ)耐震設計上の重要度分類新耐震指針は,原子炉施設の耐震設計上の重要度分類を,旧耐震指針のAクラスをAsクラスと同等の扱いとすることとして,Asクラス及びAクラスをSクラスとし,クラス分類を従来の四つから三つにした〔乙96(3,4。 )〕(ウ)基準地震動の策定新耐震指針では,基準地震動は,敷地周辺の地質・地質構造並びに地震活動性等の地震学及び地震工学的見地から施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性があり,施設に大きな影響を与えるおそれがあると想定することが適切なものとして策定しなければならないとし(以下,この地震動を「基準地震動Ss」という,その策定方針。)を以下のとおり定める〔乙96(4ないし8。 )〕a基本方針「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」及び「震源を特定せず策定する地震動」について,敷地における解放基盤表面(新耐震指針では,基準地震動を策定するために,基盤(新耐震指針では,概ねせん断波速度Vs=700m/s以上の硬質地盤であって,著しい風化を受けていないもの)面上の表層や構造物がないものとして仮想。 的に設定する自由表面であって,著しい高低差がなく,ほぼ水平で相当な拡がりをもって想定される基盤の表面のこと)における水平方。 向及び鉛直方向の地震動としてそれぞ 層や構造物がないものとして仮想。 的に設定する自由表面であって,著しい高低差がなく,ほぼ水平で相当な拡がりをもって想定される基盤の表面のこと)における水平方。 向及び鉛直方向の地震動としてそれぞれ策定する。 b敷地ごとに震源を特定して策定する地震動敷地ごとに震源を特定して策定する地震動は,以下の方針により策定する。 (a)敷地周辺の活断層(新耐震指針では,最近の地質時代に繰り返- 98 -し活動し,将来も活動する可能性のある断層のこと)の性質,過。 去及び現在の地震発生状況等を考慮し,さらに地震発生様式等(内),陸地殻内地震(陸のプレートの上部地殻地震発生層に生じる地震プレート間地震(相接する二つのプレートの境界面で発生する地震,海洋プレート内地震(沈み込む海洋プレート内部で発生する)地震)による地震の分類を行った上で,敷地に大きな影響を与え)ると予想される地震(以下「検討用地震」という)を複数選定す。 る。 (b)前記(a)の敷地周辺の活断層の性質に関しては,次に示す事項を考慮する。 ⅰ耐震設計上考慮する活断層としては,後期更新世以降の活動が否定できないものとする。なお,その認定に際しては,最終間氷期の地層又は地形面に断層による変位・変形が認められるか否かによることができる。 ⅱ活断層の位置・形状・活動性等を明らかにするため,敷地からの距離に応じ,地形学,地質学,地球物理学的手法等を総合した十分な活断層調査を行う。具体的には,既存文献の調査,変動地形学的調査,地表地質調査,地球物理学的調査等を適切に組み合わせて十分な調査を実施することとし,特に,敷地近傍においては,精度の高い詳細な調査を行う必要がある。 (c)(a)で選定された検討用地震ごとに,後記ⅰの応答スペクトルに基づく地震動評価及び後記ⅱの断層モデル 調査を実施することとし,特に,敷地近傍においては,精度の高い詳細な調査を行う必要がある。 (c)(a)で選定された検討用地震ごとに,後記ⅰの応答スペクトルに基づく地震動評価及び後記ⅱの断層モデルを用いた手法による地震動評価の双方を実施し,それぞれによる基準地震動Ssを策定する。なお,地震動評価に当たっては,地震発生様式,地震波伝播経路等に応じた諸特性を十分に考慮する(震源が敷地に近く,その破壊過程が地震動評価に大きな影響を与えると考えられる地震につい- 99 -ては,断層モデルを用いた手法を重視すべきである。 。)ⅰ応答スペクトルに基づく地震動評価については,検討用地震ごとに,適切な手法を用いて応答スペクトルを評価の上,それらをもとに設計用応答スペクトルを設定し,これに地震動の継続時間,振幅包絡線の経時的変化等の地震動特性を適切に考慮して地震動評価を行う。 ⅱ断層モデルを用いた手法による地震動評価については,検討用地震ごとに,適切な手法を用いて震源特性パラメータを設定し,地震動評価を行う。活断層調査によっても,震源として想定する断層の形状評価を含めた震源特性パラメータの設定に必要な情報が十分得られなかった場合には,その震源特性の設定に当たって不確かさの考慮を適切に行う。 (d)(c)の基準地震動Ssの策定過程に伴う不確かさ(ばらつき)については,適切な手法を用いて考慮する。この考慮に当たっては,基準地震動Ssの策定に及ぼす影響が大きいと考えられる不確かさ(ばらつき)の要因及びその大きさの程度を十分踏まえつつ,適切な手法を用いることとする。 c震源を特定せず策定する地震動震源を特定せず策定する地震動は,震源と活断層を関連付けることが困難な過去の内陸地殻内の地震について得られた震源近傍における観測記録を収集し,これら ることとする。 c震源を特定せず策定する地震動震源を特定せず策定する地震動は,震源と活断層を関連付けることが困難な過去の内陸地殻内の地震について得られた震源近傍における観測記録を収集し,これらを基に敷地の地盤物性を加味した応答スペクトルを設定し,これに地震動の継続時間,振幅包絡線の経時的変化等の地震動特性を適切に考慮して基準地震動Ssを策定する。 (エ)耐震設計方針新耐震指針は,前記(イ)耐震設計上の重要度分類のクラス別に耐震設計に関する基本的な方針を満足することを要求している〔乙96- 100 -(8。 )〕具体的には,①Sクラスの施設は,基準地震動Ssによる地震力に対してその安全機能が保持できること,また,後記(オ)bの弾性設計用地震動Sdによる地震力又は後記(オ)cの静的地震力のいずれか大きい方の地震力に耐えること,②Bクラスの施設は,後記(オ)cの静的地震力に耐えるとともに共振のおそれのある施設についてはその影響についての検討も行うこと,③Cクラスの施設は,後記(オ)cの静的地震力に耐えること,④上位の分類に属するものは,下位の分類に属するものの破損によって波及的破損が生じないこと,が要求されている。 (オ)地震力の算定方法新耐震指針は,地震力の算定方法を以下のとおり定める〔乙96(8。 )〕a基準地震動Ssによる地震力基準地震動Ssによる地震力は,基準地震動Ssを用いて,水平方向及び鉛直方向について適切に組み合わせたものとして算定する。 b弾性設計用地震動Sdによる地震力弾性設計用地震動Sdは,基準地震動Ssに基づき,工学的判断から求められる係数を基準地震動Ssに乗じて設定する。また,弾性設計用地震動Sdによる地震力は,水平方向及び鉛直方向について適切に組み合わせたものとして算定する。 c 震動Ssに基づき,工学的判断から求められる係数を基準地震動Ssに乗じて設定する。また,弾性設計用地震動Sdによる地震力は,水平方向及び鉛直方向について適切に組み合わせたものとして算定する。 c静的地震力静的地震力の算定は,旧耐震指針のAクラスをSクラスに置き換えているだけであり,内容の変更はない。 (カ)荷重の組合せと許容限界荷重の組合せと許容限界については,旧耐震指針の基準地震動S及 びSを,それぞれ弾性設計用地震動Sd及び基準地震動Ssに置き換 - 101 -えているだけであり,内容の変更はない〔乙96(13,14。 )〕(キ)地震随伴現象に対する考慮新耐震指針は,地震随伴現象として,①施設の周辺斜面で地震時に想定し得る崩壊等,②施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性があると想定することが適切な津波,によっても,施設の安全機能が重大な影響を受けるおそれがないことを十分考慮した上で設計されなければならないとした〔乙96(15。 )〕エバックチェックルール証拠〔乙92〕によれば,以下の事実が認められる(なお,以下,各項目ごとに主たる証拠を掲記する。 。)原子力安全・保安院は,平成18年9月20日,控訴人ら原子力事業者に対し,新耐震指針に照らして,原子炉施設の耐震安全性評価(バックチェック)を行うよう指示し,その際,新耐震指針をバックチェックに反映するために,以下のとおり,バックチェックルールを定め,基準地震動Ssの策定に関し,以下のとおり定めた。 (ア)敷地周辺で発生する地震に関する調査〔乙92(添18,19〕)a敷地周辺(敷地から少なくとも半径30キロメートルを目安とする範囲)の活断層,活褶曲,活撓曲等(以下「活断層等」という)の分。 布を把握するため,文献調査,リニアメントを含 (添18,19〕)a敷地周辺(敷地から少なくとも半径30キロメートルを目安とする範囲)の活断層,活褶曲,活撓曲等(以下「活断層等」という)の分。 布を把握するため,文献調査,リニアメントを含む変動地形の調査,地表地質調査,海上音波探査等の結果に基づくとともに必要に応じトレンチ調査,物理探査等の実施結果も考慮して,20万分の1程度の地質図,変動地形の分布図を作成する。なお,半径30キロメートル以遠において敷地に大きな影響を与えることが想定される活断層等についても同様とする。 b敷地及び敷地近傍(敷地から少なくとも半径5キロメートルを目安とする範囲)においては,不明瞭,若しくは小規模な変動地形までも- 102 -含めて活断層等の分布を詳細に把握するため,敷地周辺における陸域及び海域の調査手法に加え,ボーリング調査,トレンチ調査,物理探査等による詳細な地質・地球物理学的調査を適切に組み合わせて,精度の高い調査を実施し,この結果に基づき2万5000分の1程度の詳細な地質図,変動地形の分布図を作成する。なお,半径5キロメートルの範囲内に分布する変動地形がこの範囲を超えて連続する場合についても同様とする。 c敷地,敷地近傍及び敷地周辺に分布する変動地形については,地質調査結果に基づき活断層等との関連について評価するものとし,活断層等との関連を否定する場合は明確な地形・地質学的根拠に基づくものとする。 d活断層等の最新活動時期,長さ,単位変位量等については,変動地形の調査,地表地質調査,ボーリング調査,トレンチ調査,物理探査等の各種調査・探査結果により,後期更新世以降の地層又は地形面等の変位・変形等に基づいて評価する。さらに,震源を想定する場合は,前記の評価結果を基に,断層の破壊過程,地震発生様式,地下構造等に関する地形学・地質 探査結果により,後期更新世以降の地層又は地形面等の変位・変形等に基づいて評価する。さらに,震源を想定する場合は,前記の評価結果を基に,断層の破壊過程,地震発生様式,地下構造等に関する地形学・地質学・地球物理学の最新知見等を考慮する。 (イ)敷地ごとに震源を特定して策定する地震動の検討のうち,応答スペクトルに基づいた地震動評価〔乙92(添21〕)最新の知見を取り入れた応答スペクトル評価手法若しくは既往の手法のうち,敷地に適用できる手法の中から,①解放基盤表面の地震動として評価できること,②震源の拡がりが考慮できること,③敷地における地震観測記録を用いて地震発生様式,地震波伝播経路等に応じた諸特性(その地域における特性を含む)が考慮できること,④水平方。 向及び鉛直方向の地震動が評価できること,の条件を満足する手法を用- 103 -いることを基本とする。 (ウ)敷地ごとに震源を特定して策定する地震動の検討のうち,断層モデルを用いた手法による地震動評価〔乙92(添22〕)a検討用地震について地震動を評価する際,敷地において要素地震として適切な観測記録がある場合には経験的グリーン関数法によることとし,無い場合は統計的グリーン関数法によることを原則とする。 b地震動を評価する際には,ハイブリッド合成法による地震動評価も併せて行い,経験的グリーン関数法あるいは統計的グリーン関数法の結果の妥当性を確認する。 c震源パラメータは,最新の知見等に基づいて設定し,①震源断層は,活断層等の調査により得られた情報等や,地震活動や地殻変動等に関する情報をもとに設定する,②巨視的断層パラメータ(断層面積,地震モーメント等)は,断層面積と地震モーメントとの関係等をもとに設定し,必要に応じて,過去に発生した地震のパラメータに関する知 に関する情報をもとに設定する,②巨視的断層パラメータ(断層面積,地震モーメント等)は,断層面積と地震モーメントとの関係等をもとに設定し,必要に応じて,過去に発生した地震のパラメータに関する知見等も活用する,③微視的断層パラメータ(アスペリティの面積及び位置,実効応力,すべり量等)は,既往の研究成果等を参考とし,最新知見をもとに設定する,④その他のパラメータ(断層の破壊開始点,破壊伝播速度等)は,既往の研究成果等を参考とし,最新知見をもとに設定する,こととする。 d地震動評価においては,震源付近から敷地近傍に掛けての地下構造が適切にモデル化され,震源から評価地点までの伝播特性,増幅特性が,既往の研究成果,最新知見に基づいて適切に評価されていることを確認する。 e応答スペクトルに基づいた地震動評価結果等との比較検討を行い,断層モデルを用いた手法により評価した地震動の妥当性を確認する。 (エ)震源を特定せず策定する地震動〔乙92(添23〕)- 104 -応答スペクトルの妥当性の確認は,最新の知見に照らして地点ごとに個別に行うこととする。その際には,既往の研究成果や最新知見を踏まえた確率論的な評価等を参考とする。この確率論的な評価の例としては,①地表に明瞭な痕跡を示さない震源断層に起因する震源近傍の地震動についての確率論的な研究成果を踏まえた評価(地点を特定しない評価,②陸域で発生する地震のうち活断層が特定されていない場所で)発生する地震の地域ごとの最大マグニチュードに関する研究成果を踏まえた地震ハザード評価(地域性を考慮した個別地点ごとの評価,が挙)げられる。 (オ)敷地ごとに震源を特定して策定する地震動による基準地震動Ssの策定〔乙92(添24,25〕)a総論検討用地震について,既往の研究成果等や最新 た個別地点ごとの評価,が挙)げられる。 (オ)敷地ごとに震源を特定して策定する地震動による基準地震動Ssの策定〔乙92(添24,25〕)a総論検討用地震について,既往の研究成果等や最新の知見に基づき設定した基本的な震源要素により地震動評価を行い,その上で,敷地へ与える影響を踏まえ,震源の不確かさを考慮して地震動評価を行う。地震動評価に当たっては,応答スペクトルに基づく手法及び断層モデルを用いた手法の双方により実施し,それらの結果を基に敷地ごとに震源を特定して策定する地震動による基準地震動Ssを策定する。 b応答スペクトルに基づく手法による評価震源の不確かさの考慮に当たっては,基本的な震源要素を基に地震学的知見に整合が取れる範囲で規模と位置を設定し,応答スペクトルを評価する。 c断層モデルを用いた手法による評価断層モデルを用いた手法により震源の不確かさを考慮するに当たっては,敷地に大きな影響を与えると考えられる支配的なパラメータについて要因分析を行い,パラメータスタディを実施した上で地震動評- 105 -価を実施する。その際には,基本的な震源要素を基に地震学的知見に整合が取れる範囲でパラメータを考慮し,各パラメータ間の関係式を満たすように留意する。 震源が敷地に近い場合には,その破壊過程が地震動評価に大きな影響を与える可能性があることを重視し,より詳細な検討を実施する。 d基準地震動Ssの策定応答スペクトルに基づく手法による基準地震動Ssは,前記bの評価結果を考慮し,少なくとも,最も大きな応答スペクトルを下回らないように設計用応答スペクトルを設定した上で策定する。 応答スペクトルに基づく手法による基準地震動Ssの模擬地震波は,設計用応答スペクトルに適合するように作成する。その際の振幅包絡線は,地震動の継続時間に留 設計用応答スペクトルを設定した上で策定する。 応答スペクトルに基づく手法による基準地震動Ssの模擬地震波は,設計用応答スペクトルに適合するように作成する。その際の振幅包絡線は,地震動の継続時間に留意して設定する。なお,敷地における観測記録等の位相特性についても,必要に応じて留意する。 断層モデルを用いた手法による基準地震動Ssは,施設に与える影響の観点から地震動の諸特性(周波数特性,継続時間,位相特性等)を考慮して,設計用応答スペクトルとの関係を踏まえつつ,前記cの評価結果から選定し,その地震波形を用いて策定する。 長さが短い孤立した活断層等による地震動評価については,最新の知見を踏まえて安全上の観点から震源を想定し,応答スペクトルに基づく手法,断層モデルを用いた手法等により地震動を評価し,基準地震動Ssの妥当性を確認する。 また,必要に応じて前記b及びcにより選定された手法以外の手法を用いて地震動を評価し,基準地震動Ssの妥当性を確認する。なお,その場合は,各手法の適用条件に留意する。 (カ)震源を特定せず策定する地震動による基準地震動Ssの策定〔乙92(添25〕)- 106 -前記(エ)により設定した震源を特定せず策定する地震動の応答スペクトルに適合するよう模擬地震波を作成し,震源を特定せず策定する地震動による基準地震動Ssとして策定することを基本とする。模擬地震波を作成する際の振幅包絡線は,応答スペクトルを評価する際に用いた観測地震波の波形を包絡するように設定する。 なお,震源を特定せず策定する地震動の応答スペクトルが前記(オ)d(敷地ごとに震源を特定して策定する地震動による基準地震動Ssの策定)で設定した設計用応答スペクトルに全周期帯において包絡される場合等は,敷地ごとに震源を特定して策定する地震動による基準地震動Ss (敷地ごとに震源を特定して策定する地震動による基準地震動Ssの策定)で設定した設計用応答スペクトルに全周期帯において包絡される場合等は,敷地ごとに震源を特定して策定する地震動による基準地震動Ssで代表させることができる。 (キ)地震動の超過確率の参照〔乙92(添26〕)将来の確率論的評価の安全規制への本格的導入の検討に役立つ情報として可能な限り活用していくとの観点から,基準地震動Ssがどの程度の超過確率に相当しているかを把握し,併せて,その算出手法や用いた設定条件についても示すこととする。 オ本件原子炉施設の耐震安全性評価証拠〔甲365,乙6,乙9,乙17,乙20,乙92,乙96,乙125-3,証人F〕及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる(なお,以下,各項目ごとに主たる証拠を掲記する。 。)(ア)控訴人が行った地質調査控訴人は,本件原子炉施設に関し,耐震設計(後記a)及びバックチェック(後記b)の際,以下のとおり,地質調査を行った。 a耐震設計の際の調査控訴人は,本件原子炉施設の耐震設計に際し,敷地及び敷地周辺の地質・地質構造を把握するため,原子力発電所の地質,地盤に関する審査の手引き(以下「地質,地盤の手引き」という)及び社団法人日。 - 107 -本電気協会「原子力発電所耐震設計技術指針JEAG4601-1987(以下「旧JEAG」という)に基づき,以下のとおり,調」。 査を行った〔甲365,乙6(添6-3-1,2,乙9(1300な)いし1302,乙17(5,6,乙20(6ないし11,証人F)))(①7ないし15,②13ないし15,弁論の全趣旨。 )〕(a)敷地周辺陸域控訴人は,本件原子炉施設の耐震設計に際し,敷地周辺陸域の地質・地質構造を把握するため,敷地の中心から半径30キロメ (①7ないし15,②13ないし15,弁論の全趣旨。 )〕(a)敷地周辺陸域控訴人は,本件原子炉施設の耐震設計に際し,敷地周辺陸域の地質・地質構造を把握するため,敷地の中心から半径30キロメートル内の範囲の陸域について,既存の地形図,地質図,活断層に関する文献の調査,空中写真判読,地表踏査等を実施した〔甲365,乙6(添6-3-1,4,5,乙20(6ないし10,証人F))(①7ないし13。 )〕(b)敷地周辺海域控訴人は,本件原子炉施設の耐震設計に際し,敷地周辺海域の地質・地質構造を把握するため,敷地を中心として沿岸方向約60キロメートル,沖合方向約30キロメートルの範囲の海域(以下「敷地前面調査海域」という)について,既存の海底地形図,海底地質。 図等の文献の調査,海上音波探査等を実施した。また,敷地を中心とする半径約30キロメートルの範囲の七尾湾及び富山湾(以下「七尾湾調査海域」という)については,海上保安庁水路部におい。 て実施した音波探査記録の解析を実施した〔甲365,乙6(添6-3-1,5,乙20(6,7,9,10,証人F(①13ない))し15。 )〕(c)敷地近傍控訴人は,本件原子炉施設の耐震設計に際し,敷地近傍の地質・地質構造を把握するため,陸域においては,文献調査,空中写真判- 108 -読及び地表踏査等を,海域については,海上音波探査等を実施した〔甲365,乙6(添6-3-1,5,乙20(6ないし10,))証人F(①7ないし15。 )〕(d)敷地控訴人は,本件原子炉施設の耐震設計に際し,敷地の地質・地質構造を把握するため,文献調査,空中写真判読及び地表踏査を実施するとともに,地表からの弾性波探査,ボーリング調査,試掘坑調査及びトレンチ調査等の調査を実施した〔甲365,乙 に際し,敷地の地質・地質構造を把握するため,文献調査,空中写真判読及び地表踏査を実施するとともに,地表からの弾性波探査,ボーリング調査,試掘坑調査及びトレンチ調査等の調査を実施した〔甲365,乙6(添6-3-47,51,52,乙20(6ないし11,証人F(①7な))いし13。 )〕bバックチェックの際の調査控訴人は,バックチェックに際し,新耐震指針,バックチェックルール及び平成19年9月5日に改訂されたJEAG(2007)に基づき,以下のとおり,地質調査を行った〔乙92,乙96,乙125-3-1,弁論の全趣旨。 〕(a)敷地周辺陸域控訴人は,バックチェックに際し,敷地周辺陸域について,活断層の位置,形状,活動性等をより詳細に把握するため,これまで実施してきた前記a(a)の調査に加え,文献調査,変動地形学的調査(敷地の中心から半径約30キロメートルの範囲内における航空レーザ計測及び新リニアメント判読基準に基づくリニアメント・変動地形の抽出・分類,地表地質調査並びに地球物理学的調査(重力探)査,反射法地震探査及び地中レーダ探査)を追加して実施した〔乙125-3-2ないし4,177。 〕控訴人は,これらの調査結果に基づいて,敷地の中心から半径約30キロメートルの範囲について原縮尺20万分の1の敷地周辺陸- 109 -域のリニアメント・変動地形分布図及び地質図等を作成するとともに,主要な断層の周辺について縮尺2万5000分の1の敷地周辺陸域のリニアメント・変動地形分布図及び地質図等を作成した。また,高解像度の地形データに基づく等高線間隔1メートルの等高線図及び立体地図を作成した〔乙125-3-1ないし4,189な。 いし197〕(b)敷地周辺海域控訴人は,バックチェックに際し,これまで実施してきた前記a(b づく等高線間隔1メートルの等高線図及び立体地図を作成した〔乙125-3-1ないし4,189な。 いし197〕(b)敷地周辺海域控訴人は,バックチェックに際し,これまで実施してきた前記a(b)の調査に加え,本件設置変更許可申請以降に公表された最新の文献について追加して調査を実施するとともに,敷地近傍ではより,精度の高い調査を行う必要があるとの新耐震指針の考え方に照らし敷地近傍を中心とした沿岸域等において,電磁誘導式(ブーマー・マルチチャンネル)の海上音波探査を新たに実施した〔乙125-3-1,4。 〕また,控訴人は,海域の断層等の評価に際し,敷地周辺海域において能登半島地震が発生したことを踏まえた平成19年8月保安院指示事項に基づき,能登半島地震に関する各種研究機関の調査研究成果を反映した。なお,各種研究機関の調査研究については,能登半島地震の震源域の周辺海域において,東京大学地震研究所(以下「東大震研」という)及び産総研等により,エアガン式(マルチチ。 ャンネル)及び電磁誘導式(ブーマー・マルチチャンネル)の海上音波探査等の詳細な調査が実施され,同地震の震源断層等についての総合的な評価がなされている〔乙125-3-114,362〕。 控訴人は,これらの調査結果に基づいて,縮尺20万分の1の敷地前面調査海域及び七尾湾調査海域の海底地形図,海底地質図及び海底地質断面図を作成した〔乙125-3-1,4,363ないし- 110 -370,399,400。 〕(c)敷地近傍控訴人は,バックチェックに際し,これまで実施してきた前記a(c)の調査に加え,不明瞭若しくは小規模な変動地形までも含めて地質・地質構造を更に詳細に把握するため,敷地周辺の調査結果を踏まえ,敷地を中心とする半径約5キロメートルの範囲において,既存文献の (c)の調査に加え,不明瞭若しくは小規模な変動地形までも含めて地質・地質構造を更に詳細に把握するため,敷地周辺の調査結果を踏まえ,敷地を中心とする半径約5キロメートルの範囲において,既存文献の調査,変動地形学的調査,地質学的調査,地球物理学的調査を追加して実施した。具体的には,陸域について,①変動地形学的調査として新リニアメント判読基準を用いて地形判読をするとともにリニアメント・変動地形を抽出し,②地質学的調査として新たな地形判読の結果を踏まえ,地表踏査を追加して実施し,③地球物理学的調査として,地下深部の大規模な地質構造を把握するため詳細な重力探査を実施し,敷地近傍の重力異常図(ブーゲー異常図)を作成した。また,海域については,敷地近傍を含む沿岸海域において,電磁誘導式(ブーマー・マルチチャンネル)の海上音波探査を新たに実施し,重力異常図(ブーゲー異常図)を作成した〔乙125-3-1,136,137,143,481〕。 以上の調査結果に基づいて,控訴人は,敷地の中心から半径約5,キロメートルの範囲について,縮尺2万5千分の1の詳細な地形図地質図,地質断面図及びリニアメント・変動地形分布図等を作成した〔乙125-3-136,137,3-474ないし476,482,483。 〕(d)敷地控訴人は,バックチェックに際し,これまで実施してきた前記a(d)の調査に加え,文献調査,地形調査等を行った〔乙125-3-1,154。 〕- 111 -(イ)控訴人による活断層評価証拠〔乙125-3,乙181〕によれば,以下の事実が認められる(なお,以下,各項目ごとに主たる証拠を掲記する。 。)控訴人は,耐震設計及びバックチェックの際における前記地質調査の結果,本件原子炉施設の活断層を以下のとおり評価した。 a敷地周辺陸域 られる(なお,以下,各項目ごとに主たる証拠を掲記する。 。)控訴人は,耐震設計及びバックチェックの際における前記地質調査の結果,本件原子炉施設の活断層を以下のとおり評価した。 a敷地周辺陸域の断層(本件敷地中心から半径30キロメートル以内)の評価結果(a)邑知潟断層帯邑知潟断層帯の北部は,宝達志水町竹生野から七尾市佐野町付近に至る石動山北西縁に位置し,同区間では三つの背斜構造(南から志雄地塊の背斜構造,鹿島地塊の背斜構造及び七尾地塊の背斜構造)の北西部翼に当たる。鹿島地塊の背斜構造に関連する活動は完新世に及んでおり,活動度もB級であるのに対し,七尾地塊の背斜構造の区間については,約3万年前以降は活動していない可能性があり,活動度はC級であった。これらの活動性等の違いに着目した場合,両背斜構造の間で異なる活動区間に区分される可能性があるが,ともに後期更新世以降の活動の可能性があることや石動山地の隆起を形成した背斜構造としての一体性を考慮し,志雄地塊の北東区間を含めて,石動山北西縁の宝達志水町荻市北方から七尾市佐野町について,安全評価上,東側隆起の逆断層として後期更新世以降,の活動の可能性があるものとして取り扱った〔乙125-3-3940。 〕これら石動山北西縁の東側隆起の逆断層と野寺断層との関連については,それぞれ石動山地と宝達山地の異なる隆起に伴う構造であることなどから,異なる活動区間に区分される可能性があるが,両断層を一体としている文献(杉戸信彦ほか「邑知潟平野南東縁・石- 112 -動山断層の活動時期と地震時変位量」地震第2輯第60巻)もあることなどを考慮して,安全評価上,中期更新世には活動が終了したと判断される宝達志水町竹生野から同町荻市の区間も含めて,かほ,く市野寺から七尾市佐野町に至る約34キロメー 地震第2輯第60巻)もあることなどを考慮して,安全評価上,中期更新世には活動が終了したと判断される宝達志水町竹生野から同町荻市の区間も含めて,かほ,く市野寺から七尾市佐野町に至る約34キロメートル区間について邑知潟南縁断層帯として耐震設計に考慮するものとした〔乙125-3-40。 〕一方,坪山-八野断層については,邑知潟南縁断層帯とずれの向きが逆(坪山-八野断層は西側隆起の逆断層であるのに対し,邑知潟南縁断層帯は東側隆起の逆断層である)であり,それぞれの断層。 面は地下深部では離れていくと考えられることから,坪山-八野断層は,邑知潟南縁断層帯とは別の断層帯であると判断した〔乙125-3-40。 〕(b)眉丈山第1断層・眉丈山第2断層・徳田北方の断層眉丈山第1断層については,眉丈山南東斜面には,リニアメント・変動地形は判読されず,北西側隆起の眉丈山第1断層の存在を示唆するような断層露頭や花崗岩と滝礫岩層との境界線の不連続も認められず,反射法地震探査によれば,断層の存在を示唆する反射構造は認められないとされている(下川浩一ほか「石川県羽咋市付近における邑知潟断層帯の反射法地震探査,活断層・古地震研究報告」独立行政法人産業技術総合研究所地質調査総合センター)ことから,眉丈山第1断層は存在しないと評価した〔乙125-3-48。 〕眉丈山第2断層については,新リニアメント判読基準により判読される,羽咋市千路町付近から中能登町-青深沢付近までの約12キロメートル区間で眉丈山南東斜面と邑知潟平野との境界のリニアメント・変動地形(以下,このリニアメント・変動地形を「眉丈山- 113 -リニアメント」という)が対応するものと考えられるが,他方,そ。 の南西方延長には沖積層が分布しており,断層が平野下に伏在する可能性も考えられること リニアメント・変動地形を「眉丈山- 113 -リニアメント」という)が対応するものと考えられるが,他方,そ。 の南西方延長には沖積層が分布しており,断層が平野下に伏在する可能性も考えられることから,南西方の海域で実施した海上音波探査の結果により後期更新世以降の活動が認められない測線(No. 13U測線)から,眉丈山リニアメントの北東方に当たる,高階層及び中位段丘Ⅰ面に変位・変形が認められない中能登町羽坂付近までの約19キロメートル区間について,安全評価上,耐震設計に考慮するものとした〔乙125-3-48,49。 〕徳田北方の断層については,地表地質調査,反射法地震探査等の結果から,七尾市徳田町から同市国分町までの約3.4キロメートル区間に丘陵と沖積平野との境界に判読したリニアメント・変動地形を横断して高階層,赤浦砂岩層等に変位,変形は認められないことから,徳田北方の断層に対応する断層は存在しないと評価した〔乙125-3-49。 〕(c)酒見断層新リニアメント判読基準によれば,志賀町西海風戸から輪島市門田町舘分付近までの約9.1キロメートルの区間でリニアメント・変動地形が判読された。このうち,志賀町大福寺北西方から同町酒見西方までの約4.6キロメートルの区間に判読されたリニアメント・変動地形(以下「酒見リニアメント」という)については,そ。 の両側に分布している高位段丘面に分布高度差が認められ,その活動が後期更新世に及ぶとする見解(加藤碵一・杉山雄一「50万分の1活構造図「金沢)もあることなどから,後期更新世以降の活」」動の可能性があるものとし,安全評価上,段丘面に高度不連続が認めれらない区間も含め,リニアメント・変動地形が判読される前記約9.1キロメートル全区間について,耐震設計に考慮するものと- 114 -した 能性があるものとし,安全評価上,段丘面に高度不連続が認めれらない区間も含め,リニアメント・変動地形が判読される前記約9.1キロメートル全区間について,耐震設計に考慮するものと- 114 -した〔乙125-3-54,55。 〕(d)富来川南岸断層新リニアメント判読基準によれば,約6キロメートルの区間にリニアメント・変動地形が判読されたが,後期更新世以降の活動が問題となるものではなく,他にも後期更新世以降の活動が問題となる断層は認められないとして,耐震設計上考慮しないものとした〔乙125-3-58,59。 〕(e)横田付近の断層新リニアメント判読基準によれば,約2.5キロメートルの区間にリニアメント・変動地形が判読されたが,後期更新世以降の活動が問題となるものではないとして,耐震設計上考慮しないものとした〔乙125-3-61,62。 〕(f)七尾市中島町西谷内周辺の断層新リニアメント判読基準によれば,七尾市中島町古江北西方から同市中島町河内南東方までの約3.3キロメートル区間にリニアメント・変動地形が判読されるが,後期更新世以降の活動が問題となるものではなく,他にも後期更新世以降の活動が問題となる断層は認められないとして,耐震設計上考慮しないものとした〔乙125-3-65,66。 〕(g)富来川断層新リニアメント判読基準によれば,穴水町越渡南東方から志賀町地保までの,富来川に沿う約3キロメートル区間にリニアメント・変動地形が判読され,急崖の崖面が新鮮で直線性を有すること,急崖下には古い構造を反映した西側隆起の断層が伏在する可能性もあること,及び,後期更新世以降の活動を否定するための具体的な資料が得られなかったことを踏まえ,安全評価上,前記約3キロメー- 115 -トル全区間について耐震設計に考慮するものし,他 る可能性もあること,及び,後期更新世以降の活動を否定するための具体的な資料が得られなかったことを踏まえ,安全評価上,前記約3キロメー- 115 -トル全区間について耐震設計に考慮するものし,他には,後期更新世以降の活動が問題となる断層は認められないとした〔乙125-3-69,70。 〕(h)七尾市中島町小牧周辺の断層新リニアメント判読基準によれば,七尾市中島町小牧付近の約1. 7キロメートルの区間及び同市中島町鹿島台付近の約0.6キロメートルの区間にリニアメント・変動地形が判読されるが,いずれも後期更新世以降の活動が問題となるものではなく,他にも後期更新世以降の活動が問題となる断層は認められないとして,耐震設計上考慮しないものとした〔乙125-3-73,74。 〕(i)穴水町鹿島周辺の断層新リニアメント判読基準によれば,穴水町横見北西方から同町緑ヶ丘西方まで約4.4キロメートルの区間,同町曽福西方から同町緑ヶ丘までの約5.2キロメートルの区間及び同町曽福から同町根木までの約2.9キロメートルの区間にリニアメント・変動地形が判読されるが,いずれも後期更新世以降の活動が問題となるものではなく,他にも後期更新世以降の活動が問題となる断層は認められないとして,耐震設計上考慮しないものとした〔乙125-3-76,77。 〕(j)能登島の断層新リニアメント判読基準によれば,七尾市能登島半浦町から同市能登島閨町東方までの約1.8キロメートル区間で並行した2条の西側隆起のリニアメント・変動地形が判読され,西側のリニアメント・変動地形は半の浦西断層にほぼ対応し,東側のリニアメント・変動地形は半の浦東断層にほぼ対応し,いずれも後期更新世以降の,活動の可能性がある。そして,これら各断層の南方延長の海域には- 116 -N-3断層 の浦西断層にほぼ対応し,東側のリニアメント・変動地形は半の浦東断層にほぼ対応し,いずれも後期更新世以降の,活動の可能性がある。そして,これら各断層の南方延長の海域には- 116 -N-3断層ないしN-7断層及びN-9断層ないしN-11断層が分布しており,走向及び落下方向が前記各断層と一致していることから,以上の断層を一連の断層帯(以下「能登島半の浦断層帯」という)として取り扱った。そして,北方延長の変位・変形が認めら。 れない高位段丘Ⅰ面を北端とし,南端については,海域の断層との一連の構造の可能性を考慮した上で,中位段丘Ⅰ面において西側隆起に対応する高度不連続が認められない七尾湾陸域沿岸部とし,この間の約10キロメートル区間について,安全評価上,耐震設計に考慮するものとし,他には,後期更新世以降の活動が問題となる断層は認められないとした〔乙125-3-81,82〕。 (k)能都断層帯新リニアメント判読基準によれば,穴水町鹿波から能登町藤波ま。 で約18キロメートル区間でリニアメント・変動地形が判読された前記区間のうち,穴水町沖波から能登町七見までの約7.5キロメートル区間で認められるリニアメント・変動地形及び穴水町鹿波から同町竹太までの約8キロメートル区間で認められるリニアメント・変動地形の南西方延長の海域において断層が認められない測線から,能登町小垣から同町藤波までの約7キロメートル区間で認められるリニアメント・変動地形の北東方延長の高位段丘面及び中位段丘Ⅰ面に高度不連続が認められない能登町宇出津までの約20キロメートル区間について,安全評価上,後期更新世以降の活動の可能性があるものとして取り扱い,耐震設計に考慮するものとした〔乙。 125-3-88,89,乙181〕(l)高浜断層後期更新世以降の活動が問題とな について,安全評価上,後期更新世以降の活動の可能性があるものとして取り扱い,耐震設計に考慮するものとした〔乙。 125-3-88,89,乙181〕(l)高浜断層後期更新世以降の活動が問題となるものではないとして,耐震設計上考慮しないものとした〔乙125-3-91,92。 〕- 117 -(m)輪島市門前町原周辺の断層後期更新世以降の活動が問題となるものではないとして,耐震設計上考慮しないものとした〔乙125-3-94。 〕(n)敷地の中心から30キロメートル以内のその他の断層及びリニアメント・変動地形志賀町矢駄付近で判読されたリニアメント・変動地形,輪島市門前町西中尾付近で判読されたリニアメント・変動地形及び穴水町下唐川付近で判読されたリニアメント・変動地形については,いずれも後期更新世以降の活動が問題とはならないものと判断した〔乙125-3-96,98,99,101。 〕b敷地周辺陸域の断層(本件敷地中心から半径30キロメートル以遠)の評価結果(a)跡津川断層跡津川断層については,岐阜県白川村の天生峠西方から富山県立山町弥陀原付近に至る約69キロメートルの区間について,安全評価上,活動が後期更新世に及んでいる可能性があるものとして取り扱い,耐震設計に考慮するものとした〔乙125-3-108,109,乙181。 〕(b)牛首断層牛首断層については,岐阜県白川村卒塔婆峠付近から富山県富山市小見付近までの約56キロメートルの区間で活動が後期更新世に及んでいる可能性があるものと評価し,耐震設計に考慮するものとした〔乙125-3-110。 〕(c)御母衣断層安全評価上,リニアメント・変動地形が判読された石川県金沢市の医王山西方から岐阜県郡上市明宝奥住付近までの約70キロメー- 118 -トル区間を御母 乙125-3-110。 〕(c)御母衣断層安全評価上,リニアメント・変動地形が判読された石川県金沢市の医王山西方から岐阜県郡上市明宝奥住付近までの約70キロメー- 118 -トル区間を御母衣断層とし,活動が後期更新世に及んでいる可能性があるものと評価し,耐震設計に考慮するものとした〔乙125-3-112。 〕(d)糸魚川-静岡構造線活断層系地震調査委員会は,糸魚川-静岡構造線活断層系について,マグニチュード8程度(マグニチュード7と1/2ないし8と1/2)の可能性が高いとしており,このうち,トレンチ調査の結果から,北部と中部の約100キロメートルの区間について歴史地震との関連性を指摘し,想定される地震の規模はマグニチュード8程度(マグニチュード7と3/4ないし8と1/4)であった可能性が高いとしていることから,地震調査委員会が想定した上限の規模の地震を耐震設計に考慮するものとした〔乙125-3-113。 〕c敷地周辺海域の断層等(本件敷地の中心から半径30キロメートル以内)の評価結果(a)笹波沖断層帯笹波沖断層帯は,笹波沖隆起帯北縁から笹波沖小隆起帯北縁~西縁に沿って位置する断層及び撓曲群から構成され,本断層帯の走向は,笹波沖隆起帯北縁に沿ってはほぼ直線的に東北東-西南西方向を示すが,笹波沖小隆起帯との境界付近では北東-南西方向を示しステップ状に屈曲している。そして,①能登半島地震の震源断層が前記屈曲する位置以東の断層(以下「笹波沖断層帯(東部」とい)う)とほぼ対応していること,②笹波沖断層帯(東部)と前記屈。 曲する位置以西の断層(以下「笹波沖断層帯(西部」という)と)。 では地質構造の違いや最新活動時期に違いがあり,二つの活動区間に分かれて活動してきたと推定されること,から,今後も過去と同様に二 曲する位置以西の断層(以下「笹波沖断層帯(西部」という)と)。 では地質構造の違いや最新活動時期に違いがあり,二つの活動区間に分かれて活動してきたと推定されること,から,今後も過去と同様に二つの区間に分かれて活動すると推定した。そして,笹波沖断- 119 -層帯(東部)については,海岸線から輪島市門前町浦上付近までの区間を含めた約21キロメートル区間を能登半島地震の震源断層として,耐震設計上考慮した。また,笹波沖断層帯(西部)については,安全評価上,南西方向で断層関連褶曲が認められなくなる測線までの約22キロメートル区間について一体として評価し,後期更新世以降の活動の可能性があるものとして耐震設計に考慮するものとした〔乙125-3-121ないし123〕。 (b)海士岬沖断層帯笹波沖隆起帯と海士岬沖小隆起帯との境界付近で走向が屈曲することなどから,それぞれの活動区間に区分される可能性もあるが,安全評価上,北東方の断層が認められない測線から南西方でB層に 変位・変形が認められない測線までの約18キロメートル区間について,後期更新世以降の活動の可能性があるものとして取り扱い,耐震設計に考慮するものとした〔乙125-3-124。 〕(c)前ノ瀬東方断層群笹波沖断層帯と走向が概ね同じであり断層周辺の地質構造に類似性があること及びB層に層理の撓みが認められる区間が断続するこ とから,安全評価上,本断層群を構成する断層を一連とみなし,北東方の断層が認められない測線から,南西方の断層が認められない測線までの約30キロメートル区間について,後期更新世以降の活動の可能性があるものとして取り扱い,耐震設計に考慮するものとした〔乙125-3-125。 〕(d)羽咋沖西撓曲及び羽咋沖東撓曲羽咋沖西撓曲及び羽咋沖東撓曲については,い て,後期更新世以降の活動の可能性があるものとして取り扱い,耐震設計に考慮するものとした〔乙125-3-125。 〕(d)羽咋沖西撓曲及び羽咋沖東撓曲羽咋沖西撓曲及び羽咋沖東撓曲については,いずれも東翼が急傾斜で幅が狭く,西翼が緩傾斜で幅が広い非対称な褶曲であるとし,羽咋沖西撓曲については,安全評価上,褶曲構造の形状から褶曲の- 120 -東翼基部に西傾斜の逆断層が伏在していると推定し,非対称な褶曲構造が認められない測線までの約23キロメートル区間について,後期更新世以降の活動の可能性があるものとして耐震設計に考慮するものとした。羽咋沖東撓曲については,安全評価上,褶曲構造の,形状から褶曲の東翼基部に西傾斜の逆断層が伏在していると推定し南部の背斜構造が不明瞭な区間を含め,非対称な褶曲構造が認められない測線までの約32キロメートル区間について,後期更新世以降の活動の可能性があるものと評価し,耐震設計に考慮するものとした〔乙125-3-126,127〕。 (e)敷地前面調査海域のその他の断層後期更新世以降の活動が問題となるものではないとして,耐震設計上考慮しないものとした〔乙125-3-127。 〕(f)七尾湾調査海域の断層後期更新世以降の活動が問題となるものではないとして,耐震設計上考慮しないものとした〔乙125-3-128。 〕d敷地周辺海域の断層等(本件敷地の中心から半径30キロメートル以遠の範囲)の評価結果(a)富山湾西側海域の断層,この断層は,富山湾西側の大陸斜面基部に示されたものであるがその中間部約11キロメートル区間については,少なくとも新第三系上部に断層等が存在しないと判断されることから,安全評価上問題としなかった。また,北部約7キロメートル区間及び南部約22キロメートル区間については,数条 ロメートル区間については,少なくとも新第三系上部に断層等が存在しないと判断されることから,安全評価上問題としなかった。また,北部約7キロメートル区間及び南部約22キロメートル区間については,数条の断層の推定が可能であり,そ,の一部が中部更新統以上に変位を与えていると判断されることからそれぞれの区間を後期更新世以降の活動の可能性があるものと評価し,耐震設計に考慮するものとした〔乙125-3-129,13。 - 121 -0〕(b)猿山岬北方沖の断層安全評価上,本断層の東端付近で断層が認められない測線から,断層が屈曲する猿山岬沖で上部更新統に変位・変形が認められない測線までの約40キロメートル区間について,後期更新世以降の活動の可能性があるものとして取り扱った。そして,安全評価上,この40キロメートルの区間に完新世離水地形が存在する輪島市門前町鹿磯付近までの沿岸区間を含め,合計約49キロメートル区間を猿山岬北方沖断層として一括して取り扱い,耐震設計に考慮するものとした〔乙125-3-131,132〕。 (c)珠洲岬沖の断層群地質構造的にいくつかの活動区間に区分される可能性もあるが,安全評価上,地質調査所の音波探査記録により第四系に断層等が認められないことを確認した各測線の間の約69キロメートル区間(以下「珠洲岬沖断層帯」という)について,後期更新世以降の活。 動の可能性があるものとして取り扱い,耐震設計に考慮するものとした〔乙125-3-133,134。 〕(d)敷地から30キロメートル以遠のその他の断層Fu1及びFu2については,少なくとも第四系には対応する断層は存在しないし,また,敷地前面調査海域の西部には,B層及びC層中に正断層からなる小断層群が推定されるが,これらの小断層は,連続性が認め難く,途中で消失す ついては,少なくとも第四系には対応する断層は存在しないし,また,敷地前面調査海域の西部には,B層及びC層中に正断層からなる小断層群が推定されるが,これらの小断層は,連続性が認め難く,途中で消失するもの及び収れんする傾向のものもあり,また,海底地形が平坦であることなどから,いずれも安全評価上問題としなかった〔乙125-3-134,135。 〕また,文献により敷地周辺海域に示されたその他の断層については,断層の長さと敷地からの距離を考慮し,安全評価上問題としな- 122 -かった〔乙125-3-135。 〕e敷地近傍陸域の断層の評価結果(a)福浦断層新リニアメント判読基準によれば,志賀町福浦港東方から同町赤住北東方までの中期更新世に形成された高位段丘面群の分布域に,北部の約1.4キロメートル区間,南部の約1.2キロメートル区間で断続的にリニアメント・変動地形が判読された。このリニアメント・変動地形の周辺には高位段丘面が四面(以下,低い方から「Ⅰ面「Ⅱ面「Ⅲ面「Ⅳ面」という)分布している。南部の」,」,」,。 約1.2キロメートル区間のリニアメント・変動地形を挟んで高位段丘Ⅰ面及びⅡ面が分布しており,高位段丘Ⅰ面にはリニアメント・変動地形を挟んで分布高度に系統的な差が認められず,また,高位段丘Ⅱ面にも分布高度に系統的な差が認められない。さらに,北部の約1.4キロメートル区間のリニアメント・変動地形を挟んで高位段丘Ⅱ面,Ⅲ面及びⅣ面が分布しており,南部の約1.2キロメートルの区間と同様,高位段丘Ⅱ面,Ⅲ面及びⅣ面にはリニアメント・変動地形を挟んで分布高度に系統的な差が認められない。ま,た,地表踏査によれば,受堤北方の山腹で認められた断層露頭では安山岩中の断層を礫混じり粘土からなる堆積物が不整合に覆っており,断 メント・変動地形を挟んで分布高度に系統的な差が認められない。ま,た,地表踏査によれば,受堤北方の山腹で認められた断層露頭では安山岩中の断層を礫混じり粘土からなる堆積物が不整合に覆っており,断層直上の安山岩と堆積物の境界については,同境界部の軟X線写真によれば断層変位を受けた形跡は認められない。断層を覆う堆積物は,赤色土壌化及びくさり礫化の程度が周辺の高位段丘堆積層の赤色土壌化及びくさり礫化の程度と類似しており,遊離酸化鉄の分析結果でも,活性度,結晶化指数は,敷地近傍の高位段丘の土壌と同程度の値を示していた。このような赤色土壌化及びくさり礫化は下末吉期の温暖な気候下で形成されたと考えられることから,- 123 -,この堆積物は,少なくとも下末吉期以前に堆積したものと考えられこれに断層が認められないことから,活動が後期更新世に及んでいないと判断した。以上の調査結果から,活動が後期更新世に及んでおらず,耐震設計に考慮する必要がないと評価した〔乙125-3。 -146,147,乙181〕(b)長田付近の断層新リニアメント判読基準によれば,約2.5キロメートルの区間でリニアメント・変動地形が判読されるが,穴水累層と草木互層との硬軟の差を反映した差別侵食による組織地形と判断されることから,耐震設計上考慮しなかった〔乙125-3-149。 〕(c)和光台南の断層後期更新世以降の活動が問題となるものではなく,耐震設計上考慮する必要はないと評価した〔乙125-3-150。 〕(d)敷地近傍陸域のその他の断層高ツボリ山の北西方に2条,高ツボリ山の東方に1条存在する確実度Ⅲ(活断層の可能性があるが,変位の向きが不明であったり,他の原因,例えば川や海の浸食による崖あるいは断層に沿う浸食作用によってリニアメントが形成された疑いが残る ツボリ山の東方に1条存在する確実度Ⅲ(活断層の可能性があるが,変位の向きが不明であったり,他の原因,例えば川や海の浸食による崖あるいは断層に沿う浸食作用によってリニアメントが形成された疑いが残るもの)のリニアメ。 ントについて,いずれも後期更新世以降の活動が問題となるものではなく,耐震設計上考慮する必要はないと評価した〔乙125-3-150,151。 〕f敷地近傍海域の断層の評価敷地近傍海域には,志賀町福浦港周辺の碁盤島西方海域の断層及び同町赤住周辺の兜岩沖断層の2本の断層の存在が推定されるが,いずれも後期更新世以降の活動が問題となるものではなく,耐震設計上考慮する必要はないと評価した〔乙125-3-152,153。 〕- 124 -g敷地の評価前記(ア)a(d)及びb(d)の調査の結果,断層は認められなかった〔乙125-3-154ないし158。 〕(ウ)新耐震指針及びバックチェックルールに基づく基準地震動Ssの策定証拠〔乙125-4,乙127-1,乙136,乙181〕及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる(なお,以下,各項目ごとに主たる証拠を掲記する。 。)控訴人は,新耐震指針及びバックチェックルールに基づき,以下のとおり基準地震動Ssを策定した。 a敷地ごとに震源を特定して策定する地震動(a)検討用地震の選定控訴人は,地震の発生様式として,内陸地殻内地震,プレート間地震,海洋プレート内地震及びその他の地震に分類した上,1884年以前については宇佐美龍夫「最新版日本被害地震総覧[41 (東京大学出版会,2001,1885年から1922年につ]」)いては宇津徳冶ほか編「地震の事典[第2版(朝倉書店,200]」1,1923年以降については気象庁「地震火山月報(カタログ)編)等(192 会,2001,1885年から1922年につ]」)いては宇津徳冶ほか編「地震の事典[第2版(朝倉書店,200]」1,1923年以降については気象庁「地震火山月報(カタログ)編)等(1923~2007)といった最新の地震カタログを用い,」以下のとおり,過去の地震から検討用地震を選定した。 すなわち,控訴人は,内陸地殻内地震として,①1586年天正地震(マグニチュード7.8,②1729年能登・佐渡の地震)(マグニチュード6.8,③1858年飛越地震(マグニチュー)ド7.1,④1891年濃尾地震(マグニチュード8.0,⑤))1892年能登の地震(マグニチュード6.4)及び⑥ 3年能登半島の地震(マグニチュード6.0)を抽出した。 - 125 -,〔乙125-4-2,5,6,22,42,46ないし49,5266,67〕また,控訴人は,同様に内陸地殻内地震である能登半島地震(マグニチュード6.9)については,その震源断層を笹波沖断層帯(東部)であるとし,同断層帯による地震として評価した〔乙125-4-2,51。 〕控訴人は,プレート間地震についてはその発生領域から本件敷地までの距離が300キロメートル以上離れていることから,また,海洋プレート内地震及びその他の地震(日本海東縁部で発生する地震)についてはいずれもその発生領域から本件敷地までの距離が200キロメートル以上離れていることから,いずれも,本件敷地に,与える影響は小さいと判断した〔乙125の4-2,7,8,1819,42。 〕(b)地震の規模の算定控訴人は,前記(イ)で評価した活断層から想定される地震の規模は,活断層の長さから松田式を用いてマグニチュードを算定し,前記(a)で選定した過去の地震の規模は,地震カタログによるマグニチュードを 控訴人は,前記(イ)で評価した活断層から想定される地震の規模は,活断層の長さから松田式を用いてマグニチュードを算定し,前記(a)で選定した過去の地震の規模は,地震カタログによるマグニチュードを用いた。ただし,活断層のうち,長さが短い孤立した活断層については,震源断層面が地表付近の長さ以上に拡がっている可能性を考慮し,安全評価上,震源断層面が地震発生層の上限から下限まで拡がっているものと仮定して震源断層面の幅を算定した上で,地震学的知見に基づき,震源断層面の幅の長さを断層長さとしてマグニチュードを算定した。具体的には,震源断層面の幅は,地震発生層の深さ(本件敷地周辺の微小地震等の深さ方向の分布状況に基づき,その上限深さを3キロメートル,下限深さを18キロメートルとして想定)及び傾斜角(活断層の調査等から傾斜角を60- 126 -度として設定)から17.3キロメートルとなる〔乙125-4-57〕ため,長さがこれより短い孤立した活断層,すなわち,酒見断層,富来川断層,能登島半の浦断層帯及び坪山-八野断層について,前記(イ)の活断層評価の結果にかかわらず,安全評価上,その活断層の長さを一律に17.3キロメートルとし,この長さから地震の規模をマグニチュード6.9として設定した〔乙125-4-。 17,51,52〕(c)本件敷地までの距離の算定控訴人は,前記(b)で想定した地震の震源の本件敷地までの距離については,後記(f)(応答スペクトルに基づいた地震動評価)において耐専スペクトルの手法を用いることから,等価震源距離として算定した。具体的には,活断層による地震については,活断層の位置,傾斜角及び地震発生層の上限,下限深さから算定した震源断層面の幅により設定した震源断層面に基づき等価震源距離を算定した。過去の地震については,地震 的には,活断層による地震については,活断層の位置,傾斜角及び地震発生層の上限,下限深さから算定した震源断層面の幅により設定した震源断層面に基づき等価震源距離を算定した。過去の地震については,地震の規模に応じた面積を持つ仮想の断層面を地震カタログによる震央位置に仮定して等価震源距離を算定した。長さが短い孤立した活断層については,安全評価上,位置の不確かさを考慮し,本件敷地に最も近くなる位置に設定して等価震源距離を算定した〔乙125-4-22,51,52,54〕。 (d)検討用地震の候補となる地震の選定控訴人は,前記(b)で求めたマグニチュード及び前記(c)で求めた等価震源距離から,活断層による地震及び過去の地震における本件敷地への相対的な影響を検討した結果,①酒見断層(マグニチュード6.9,等価震源距離15.8キロメートル,②眉丈山第)2断層(マグニチュード7.0,等価震源距離15.3キロメートル,③笹波沖断層帯(東部(マグニチュード7.0,等価震源))- 127 -距離22.1キロメートル,④笹波沖断層帯(西部(マグニチ))ュード7.1,等価震源距離22.1キロメートル,⑤前ノ瀬東)方断層帯(マグニチュード7.3,等価震源距離25.9キロメートル,⑥邑知潟南縁断層帯(マグニチュード7.4,等価震源距)離38.4キロメートル,⑦笹波沖断層帯(全長(マグニチュ))ード7.6,等価震源距離22.1キロメートル,⑧猿山岬北方)沖断層(マグニチュード7.7,等価震源距離41.9キロメートル,⑨珠洲岬沖断層帯(マグニチュード7.9,等価震源距離6)9.9キロメートル,⑩糸魚川-静岡構造線活断層系(マグニチ)ュード8.5,等価震源距離158キロメートル)及び⑪ 2年能登の地震(マグニチ 層帯(マグニチュード7.9,等価震源距離6)9.9キロメートル,⑩糸魚川-静岡構造線活断層系(マグニチ)ュード8.5,等価震源距離158キロメートル)及び⑪ 2年能登の地震(マグニチュード6.4,等価震源距離13.1キロメートル)を,検討用地震の候補として選定した〔乙125-4-22,42,54,55。 〕(e)検討用地震の選定控訴人は,前記(d)の検討用地震の候補とした各地震について,マグニチュードと等価震源距離から耐専スペクトルの手法に基づき,応答スペクトルを算定し,本件敷地における地震動の大きさを比較検討した結果,前記(d)の⑦笹波沖断層帯(全長)による地震の応答スペクトルが,同①ないし⑥及び⑧ないし⑪の各地震の応答スペクトルを全周期帯にわたって上回っていることから,検討用地震として,笹波沖断層帯(全長)による地震を選定した〔乙125-4-23,42,56,81。 〕(f)応答スペクトルに基づく地震動評価控訴人は,応答スペクトルに基づく地震動評価について,JEAG(2007)が,敷地ごとに震源を特定して策定する地震動評価につき距離減衰方式を用いた経験的な方法として示している,耐専- 128 -スペクトルの手法(Nodaetal(2002)で提案さ. れた,地震観測記録に基づき策定された距離減衰式による経験的な方法)が,前記エ(イ)においてバックチェックルールが示す各要。 件(①解放基盤表面の地震動として評価できること,②震源の拡がりが考慮できること,③敷地における地震観測記録を用いて,地震発生様式,地震波伝播経路等に応じた諸特性が考慮できること④水平方向及び鉛直方向の地震動が評価できること)を満たす手法であるとし,これを用いて,前記(e)において検討用地震として,選定した笹波沖断 様式,地震波伝播経路等に応じた諸特性が考慮できること④水平方向及び鉛直方向の地震動が評価できること)を満たす手法であるとし,これを用いて,前記(e)において検討用地震として,選定した笹波沖断層帯(全長)による地震について,以下のとおり,基本的なケースの検討及び不確かさを考慮したケースの検討を行い水平方向及び鉛直方向の地震動を評価した〔乙125-4-24,25,27,42,57,59,84ないし86,90,91,添27,28,34,乙127-1-18ないし27,41,42,乙181。 〕ⅰ基本的なケースの検討控訴人は,耐専スペクトルの手法を用いて地震動評価を行うために必要なパラメータである震源断層面,アスペリティ及び等価震源距離については,以下のように設定した。 (ⅰ)震源断層面笹波沖断層帯(東部)については,後記(g)(断層モデルを用いた手法による地震動評価)のとおり,傾斜角及び断層長さは,能登半島地震による実際の観測記録を再現したシミュレーション解析(以下「能登半島地震のシミュレーション解析」という)で設定した値に基づき,傾斜角を60度,断層長さを2。 0.6キロメートルと設定し,震源断層面の幅については,安全評価上,その下端を地震発生層の下限まで拡げて17.3キ- 129 -ロメートルと設定した。これらの傾斜角,震源断層面の幅及び断層長さに基づき,笹波沖断層帯(東部)の震源断層面を設定した。笹波沖断層帯(西部)については,後記(g)(断層モデ,ルを用いた手法による地震動評価)のとおり,傾斜角を60度断層長さを22.2キロメートル,震源断層面の幅を17.3キロメートルと設定した。これらの傾斜角,震源断層面の幅及び断層長さに基づき,笹波沖断層帯(西部)の震源断層面を設定した。 (ⅱ)アスペリティ笹波沖断 .2キロメートル,震源断層面の幅を17.3キロメートルと設定した。これらの傾斜角,震源断層面の幅及び断層長さに基づき,笹波沖断層帯(西部)の震源断層面を設定した。 (ⅱ)アスペリティ笹波沖断層帯(東部)については,能登半島地震のシミュレーション解析によって得られた結果に基づき設定した。また,笹波沖断層帯(西部)については,後記(g)(断層モデルを用いた手法による地震動評価)の際に設定したものを用いた。 (ⅲ)等価震源距離笹波沖断層帯(東部)及び笹波沖断層帯(西部)のいずれについても,前記(ⅱ)で設定したアスペリティを考慮して算定した。 以上のように設定したケースを基本的なケースとした震源モデルは,本判決別紙5-1図1のとおりである。 なお,JEAG(2007)は,内陸地震に耐専スペクトルを適用する際には,地震基盤における水平地震動に対して補正係数を乗じると地震動の平均的な特性をより正確に表すことができる事例もあることから,対象とする地震の震源メカニズム等を過去の地震の事例と照らし合わせ,その妥当性を確認の上,前記補正を行うことができる旨規定している〔乙127-1-41,42。控訴人は,耐専スペクトルの評価に当たって,この内陸補正〕- 130 -係数による低減の可否を検討するため,能登半島地震を含む本件敷地で観測されたマグニチュード5.3以上,等価震源距離が200キロメートル程度以下の地震である18の地震による観測記録を用い,それぞれの地震による,耐専スペクトルと観測記録のはぎとり波(これまでに敷地で観測された内陸地殻内地震の記録のEL(標高)マイナス10メートルから上部の地盤の影響を取り除いて解析的に求めた解放基盤表面の地震動)の応答スペクト。 ルとの比率を算定した。その結果,周期ごとに求めた比率の平均値は,内陸地 録のEL(標高)マイナス10メートルから上部の地盤の影響を取り除いて解析的に求めた解放基盤表面の地震動)の応答スペクト。 ルとの比率を算定した。その結果,周期ごとに求めた比率の平均値は,内陸地殻内地震の場合に地震動を低減できる内陸補正係数の形状とほぼ整合していることを確認したものの,能登半島地震(規模の大きい二つの余震を含む)による観測記録に限定して算。 定したところ,内陸補正係数を用いない方が整合することから,内陸補正係数による低減は行わないこととした。 ⅱ不確かさを考慮したケースの検討,控訴人は,前記ⅰのとおり,笹波沖断層帯(東部)については震源断層面下端を,安全評価上,地震発生層下限まで拡げて設定した。また,控訴人は,アスペリティの位置の不確かさについても考慮して地震動を評価することとし,前記ⅰの基本的なケースを基に,笹波沖断層帯(西部)のアスペリティの位置を震源断層面内において,安全評価上,本件敷地に対して最も近くなる位置に設定したり(以下「不確かさを考慮したケース1」という,。)震源断層の破壊開始地点を破壊が本件敷地に向かう方向となる笹波沖断層帯(西部)の西側アスペリティ下端部に設定するなどした(以下「不確かさを考慮したケース2」という。以上のよう。)に設定した不確かさを考慮したケースの震源モデルは,本判決別紙5-1図2のとおりである。そして,不確かさを考慮した場合- 131 -の地震動評価のうち,不確かさを考慮したケース2については,基本的なケースの評価結果と同じ結果となることから,不確かさを考慮した場合の地震動評価として,不確かさを考慮したケース1の評価結果で代表させることとした。 ⅲ地震動の評価結果前記の基本的なケース及び不確かさを考慮したケース(不確かさを考慮したケース1)の耐専スペクトル 地震動評価として,不確かさを考慮したケース1の評価結果で代表させることとした。 ⅲ地震動の評価結果前記の基本的なケース及び不確かさを考慮したケース(不確かさを考慮したケース1)の耐専スペクトルは,本判決別紙5-2ないし5-5のとおりである。この二つのケースにおいて,基本的なケースの等価震源距離(Xeq)は22.0キロメートル,不確かさを考慮したケース(不確かさを考慮したケース1)の等価震源距離(Xeq)は21.7キロメートルとなることから,本件敷地における地震動は,不確かさを考慮したケース(不確かさを考慮したケース1)がより大きいものとなる。 (g)断層モデルを用いた手法による地震動評価控訴人は,震源及び地下構造のモデルを適切に把握するために,以下のとおり,能登半島地震のシミュレーション解析を実施し(後記ⅰ,このシミュレーション解析の結果を基に,検討用地震の地震)動評価を行った(後記ⅱ。さらに,応答スペクトルに基づく地震動)評価と同様に,基本的なケースの検討だけでなく,不確かさを考慮したケースの検討も行い(後記ⅲ,地震動の評価を行った(後記)ⅳ。 )また,控訴人は,断層モデルを用いた地震動評価手法としては,後記ⅰの能登半島地震のシミュレーション解析において,経験的グリーン関数法のみを用いて計算した結果に比べて,短周期側を経験的グリーン関数法を用い,長周期側を理論的手法を用い,それぞれ計算し,その結果を合成するハイブリッド合成法を用いた方が,能- 132 -登半島地震の観測記録を全周期帯にわたって精度よく再現できたとして,ハイブリッド合成法を用いた。 ,〔乙125-4-24ないし28,31,57,58,60,8487ないし89,92ないし95,添46ないし69,乙181,弁論の全趣旨〕ⅰ能登半島地震のシミュレ ハイブリッド合成法を用いた。 ,〔乙125-4-24ないし28,31,57,58,60,8487ないし89,92ないし95,添46ないし69,乙181,弁論の全趣旨〕ⅰ能登半島地震のシミュレーション解析控訴人は,能登半島地震について,各種研究機関の調査結果及び控訴人の調査結果を踏まえた最新の知見を考慮して断層モデルを用いたシミュレーション解析を実施した。 (ⅰ)震源のモデル化控訴人は,震源をモデル化するため必要なパラメータである震源断層面,アスペリティ等につき,以下のように設定した。 能登半島地震の震源断層面については,能登半島地震の余震分布状況に基づき傾斜角,震源断層面の幅及び断層長さを設定し,これらにより震源断層面を設定した。具体的には,傾斜角は,余震の深さ方向の分布状況から60度とし,震源断層面の幅は,傾斜角を考慮して13.9キロメートルとし,断層長さについては余震の分布状況に基づき20.6キロメートルとして設定した。そして,これらの傾斜角,震源断層面の幅及び断層長さに基づき能登半島地震の震源断層面を設定した。また,アスペリティの大きさ,位置及び個数については,各種研究機関の調査結果を基に設定した。 (ⅱ)地下構造のモデル化控訴人は,地下構造をモデル化するため必要なパラメータで。 ある速度構造及び減衰構造については,以下のように設定した速度構造については,控訴人が本件敷地周辺で実施した弾性- 133 -波探査の結果,T.Iidakaetal「Config. urationofsubductingPhilippineSeaplateandcrustalstructureinthecentralJapanregion」の調査結果及び岩田知孝・関口春子「2000年鳥取県西部地震の震源 pineSeaplateandcrustalstructureinthecentralJapanregion」の調査結果及び岩田知孝・関口春子「2000年鳥取県西部地震の震源過程と震源域強震動(以下「岩田」・関口(2002」という)による値等を用いて設定した。 )。 また,減衰構造については,地震基盤以浅は控訴人が実施した本件敷地地盤における原位置試験の結果に基づいて設定した値を用いて設定し,地震基盤以深については,地震基盤相当の減衰値が記載されている,岩田・関口(2002)による値を用いて設定した。 (ⅲ)要素地震の選定控訴人は,要素地震に,本震の震源域付近で発生し,本震と同様なメカニズム解を持つ余震の観測記録を用いた。 (ⅳ)シミュレーション解析の結果前記のように設定した震源モデル,地下構造モデル及び要素地震に基づき能登半島地震のシミュレーション解析を実施した,結果,ハイブリッド合成法によるシミュレーション解析結果は周期0.6秒付近の特徴を含め,能登半島地震による本件敷地で観測された全体的な特徴をよく再現するものとなったことから,控訴人は,検討用地震を用いた断層モデル手法による地震動評価においても,このシミュレーション解析によって得られた結果を反映することとした。 ⅱ基本的なケースの検討控訴人は,前記ⅰの能登半島地震のシミュレーション解析の結- 134 -果を基に,断層モデルを用いた手法による地震動評価を行うために必要な震源モデル及び地下構造モデルを,以下のように設定した。 (ⅰ)震源モデルの設定控訴人は,震源モデルの設定のために必要な断層パラメータは,能登半島地震のシミュレーション解析により求められた値に基づいて設定した。 具体的には,巨視的断層パラメータである震源断層面は,笹波沖 定控訴人は,震源モデルの設定のために必要な断層パラメータは,能登半島地震のシミュレーション解析により求められた値に基づいて設定した。 具体的には,巨視的断層パラメータである震源断層面は,笹波沖断層帯(東部)については,能登半島地震のシミュレーション解析で設定した震源断層面を基本とし,傾斜角を60度,断層長さを20.6キロメートルとしたが,震源断層面の幅については,その下端深さは,能登半島地震のシミュレーション解析の結果では15キロメートルとなるものの,安全評価上,本件敷地周辺における微小地震等の深さ方向の分布状況に基づき想定した地震発生層の下限深さである18キロメートルまで拡げることとし,震源断層面の上端は3キロメートル,下端は18キロメートルとし,傾斜角を考慮して17.3キロメートルと設定した。また,笹波沖断層帯(西部)については,傾斜角と断層長さについては,活断層調査の結果等に基づき,傾斜角を60度,断層長さを22.2キロメートルと設定し,震源断層面の幅については,本件敷地周辺における微小地震等の深さ方向の分布状況に基づき地震発生層の上限深さは3キロメートル,下限深さは18キロメートルと想定していることから,震源断層面がその上限から下限まで拡がっているものとして,震源断層面の上端は3キロメートル,下端は18キロメートルとし,傾斜角を考慮して17.3キロメートルと設定した。 - 135 -,次に,微視的断層パラメータであるアスペリティについては笹波沖断層帯(東部)のアスペリティは,能登半島地震のシミ,ュレーション解析によって得られたアスペリティとした。また笹波沖断層帯(西部)のアスペリティは,変位の大きい区間に対応させて設定した。 その他のパラメータである破壊開始点については,笹波沖断層帯(西部)のアスペリティのう 得られたアスペリティとした。また笹波沖断層帯(西部)のアスペリティは,変位の大きい区間に対応させて設定した。 その他のパラメータである破壊開始点については,笹波沖断層帯(西部)のアスペリティのうち本件敷地に近い東側のアスペリティの下端に設定した。 前記により設定したケースを基本的なケースとし,その震源モデルについては本判決別紙5-6図1のとおりであり,応力降下量等,その他必要なパラメータについては,本判決別紙5-7のとおりである。 (ⅱ)地下構造モデルの設定地下構造モデルは,能登半島地震のシミュレーション解析により求められた値に基づき設定した。 ⅲ不確かさを考慮したケースの検討控訴人は,前記(f)ⅱ(応答スペクトルに基づく地震動評価における不確かさを考慮したケースの検討)のとおり,笹波沖断層帯(東部)につき,①アスペリティの位置を,西部のアスペリティを敷地に最も近くなる位置に設定した場合(不確かさを考慮したケース1)の検討を行うとともに,②震源断層の破壊開始地点を破壊が本件敷地に向かう方向となる笹波沖断層帯(西部)の西側アスペリティ下端部に設定した場合(不確かさを考慮したケース2)の検討を行った。 以上のように設定した不確かさを考慮したケースの震源モデルは,本判決別紙5-6図2,図3のとおりである。 - 136 -ⅳ地震動の評価結果控訴人は,前記の基本的なケース,不確かさを考慮したケース1及び不確かさを考慮したケース2の三つのケースについて,それぞれ断層モデルを用いた手法により地震動評価を行った。この結果,求められた応答スペクトルは,本判決別紙5-8ないし5-11のとおりである。 控訴人は,本判決別紙5-12ないし5-14のとおり,前記断層モデルを用いた手法により求められた応答スペクトルの結果と前記(f)の応答ス ペクトルは,本判決別紙5-8ないし5-11のとおりである。 控訴人は,本判決別紙5-12ないし5-14のとおり,前記断層モデルを用いた手法により求められた応答スペクトルの結果と前記(f)の応答スペクトルに基づく地震動評価(耐専スペクトルの手法による地震動評価,大野ほか(2001)による評価結)果及び司・翠川(1999)による評価結果との比較検討を行ったところ,断層モデルを用いた手法による地震動評価結果は,耐専スペクトルによる地震動評価に比べ,部分的に大きくなるところがあるものの,全体的にほぼ同程度であり,また,前記大野ほか(2001)による評価結果に対しては,応答スペクトルの短周期側では大きめの評価となっており,司・翠川(1999)による評価結果に対しては,最大加速度及び最大速度の値が大きいものとなっていたことから,断層モデルを用いた手法による地震動評価が妥当であるとの結論を得た。 b震源を特定せず策定する地震動控訴人は,JEAG(2007)が震源を特定せず策定する地震動の策定方法の一例として加藤スペクトルを用いた場合を挙げていることから〔乙127-1-参39ないし52,震源を特定せず策定する〕地震動として,本判決別紙5-15及び5-16のとおり,加藤スペクトルを用いて本件敷地の地盤物性を考慮した応答スペクトルを策定した〔乙125-4-29,31,96,97。 〕- 137 -また,控訴人は,加藤スペクトルを用いることについて,地域性に関する知見(後記(a))及び確率論的評価(後記(b))に基づいて検討を実施し,本件原子炉施設のバックチェックにおいて適用する妥当性を有するものとの結論を得た。 (a)地域性に関する知見に基づく震源を特定せず策定する地震動の妥当性の評価前記エ(エ)のとおり,バックチェックルールでは,震 のバックチェックにおいて適用する妥当性を有するものとの結論を得た。 (a)地域性に関する知見に基づく震源を特定せず策定する地震動の妥当性の評価前記エ(エ)のとおり,バックチェックルールでは,震源を特定せず策定する地震動の「応答スペクトルの妥当性の確認は,最新の知見に照らして地点ごとに個別に行うこととする」とされている。そ。 こで,控訴人は,地域性に関する知見に照らし合わせて,加藤スペクトルについて,本件原子炉施設のバックチェックでの適用の妥当性について検討した。地震調査委員会が平成17年3月23日に作成し,平成18年9月25日に改訂した「確率論的地震動予測地図の説明〔乙136〕は,本件敷地が位置する能登地域について,」「活断層が特定されていない場所で発生する地震」の最大マグニチュードを,活断層と関連付けることが困難な地震である1729年能登・佐渡の地震の諸元に基づいて,マグニチュード6.8としているところ,この規模は,加藤スペクトルで考慮されている地震の最大規模であるマグニチュード6.8〔乙127〕と同じであり,,整合していた。その結果,控訴人は,地震の規模という観点からは本件原子炉施設のバックチェックにおいて震源を特定せず策定する地震動として加藤スペクトルを用いることは,地域性に関する知見に照らしても妥当なものであるとの結論を得た〔乙125-4-3。 0〕(b)確率論的評価に基づく震源を特定せず策定する地震動の妥当性の評価- 138 -前記エ(エ)のとおり,バックチェックルールでは,震源を特定せず策定する地震動の応答スペクトルの妥当性の確認には「既往の研,究成果や最新知見を踏まえた確率論的な評価等を参考とする」とさ。 れ,その確率論的な評価の例として,①地表に明瞭な痕跡を示さない震源断層に起因する震源近傍 ペクトルの妥当性の確認には「既往の研,究成果や最新知見を踏まえた確率論的な評価等を参考とする」とさ。 れ,その確率論的な評価の例として,①地表に明瞭な痕跡を示さない震源断層に起因する震源近傍の地震動についての確率論的な研究成果を踏まえた評価(地点を特定しない評価,及び,②陸域で)発生する地震のうち活断層が特定されていない場所で発生する地震の地域ごとの最大マグニチュードに関する研究成果を踏まえた地震ハザード評価(地域性を考慮した個別地点ごとの評価)が挙げられている。そこで,控訴人は,バックチェックルールで確率論的な評価の例として挙げられた知見と加藤スペクトルとを比較し,検討を行った。その結果,以下のとおり,加藤スペクトルを用いて策定した本件原子炉施設のバックチェックにおける震源を特定せず策定する地震動は,最新知見を踏まえた確率論的な評価からみても,原子炉施設の安全性を評価する上で,妥当性を有するものと評価した。 〔乙125-4-32〕ⅰ地表に明瞭な痕跡を示さない震源断層に起因する震源近傍の地震動についての確率論的な研究成果を踏まえた評価の検討地表に明瞭な痕跡を示さない震源断層に起因する震源近傍の地震動についての確率論的な研究成果を踏まえた評価としては,独立行政法人原子力安全基盤機構(以下「JNES」という)によ。 る「震源を特定しにくい地震による地震動の検討に関する報告書」が存在する。この報告書では,震源を特定しにくい地震による地震動について,日本全国を地域に区分し,それぞれの地域における水平方向の地震動の年超過確率ごとの地震基盤での応答スペクトル(10ないし10の四つの応答スペクトル)が求めら-3-6- 139 -れている。そこで,控訴人は,本判決別紙5-17のとおり,本件敷地が該当する地域である「中部・近畿 基盤での応答スペクトル(10ないし10の四つの応答スペクトル)が求めら-3-6- 139 -れている。そこで,控訴人は,本判決別紙5-17のとおり,本件敷地が該当する地域である「中部・近畿」における年超過確率ごとの応答スペクトルと,地震基盤での加藤スペクトルとを比較した。その結果,加藤スペクトルは,全周期帯にわたって年超過確率が10ないし10程度となっているとの結論を得た〔乙。 -4-5125-4-32,98,99〕ⅱ陸域で発生する地震のうち活断層が特定されていない場所で発生する地震の地域ごとの最大マグニチュードに関する研究成果を踏まえた地震ハザード評価の検討陸域で発生する地震のうち活断層が特定されていない場所で発生する地震の地域ごとの最大マグニチュードに関する研究成果を踏まえた地震ハザード評価としては,社団法人日本原子力学会が定めた「原子力発電所の地震を起因とした確率論的安全評価実施基準:2007」が存在する。そこで,控訴人は,この基準に基づき,本件敷地周辺を3つに区分した領域について,活断層と関連付けることができない地震の最大マグニチュードをそれぞれ設定し,そのマグニチュードを持った地震が各領域内のどこにでも発生すると仮定した震源(以下「領域震源」という)による年超。 過確率ごとの解放基盤表面での応答スペクトルを水平方向及び鉛直方向それぞれについて求め,本判決別紙5-18及び5-19のとおり,このスペクトルと解放基盤表面での加藤スペクトルとを比較した。その結果,水平方向及び鉛直方向の地震動とも,加藤スペクトルは,短周期側では年超過確率が10ないし10程-4-5度であり,長周期側では年超過確率が10よりも小さくなって-5いるとの結論を得た〔乙125-4-32,99,100〕。 c基準地震動Ssの策定 周期側では年超過確率が10ないし10程-4-5度であり,長周期側では年超過確率が10よりも小さくなって-5いるとの結論を得た〔乙125-4-32,99,100〕。 c基準地震動Ssの策定- 140 -控訴人は,応答スペクトルに基づく地震動評価と断層モデルを用い。 た手法による地震動評価のそれぞれによる基準地震動Ssを策定した(a)応答スペクトルに基づく手法による基準地震動Ssの策定敷地ごとに震源を特定して策定する地震動の応答スペクトルに基づく手法(前記a(f))による基準地震動Ssの設計用応答スペクトルは,本判決別紙5-20及び5-21のとおりであり,前記a(f)ⅲにおける基本的なケース及び不確かさを考慮したケースの耐専スペクトル(本判決別紙5-2ないし5-5)を包絡し,更に全周期帯について安全余裕を考慮して,水平方向及び鉛直方向の地震動について策定した(策定した基準地震動Ssについて,水平方向をSs-1H,鉛直方向をSs-1Vとした〔乙125-4-3。)3,101,102。 〕また,前記エ(カ)のとおり,バックチェックルールでは,震源を特定せず策定する地震動の応答スペクトルが,敷地ごとに震源を特定して策定する地震動による基準地震動Ssの設計用応答スペクトルに全周期帯において包絡されている場合等は,敷地ごとに震源を特定して策定する地震動による基準地震動Ssで代表させることができるとされているところ,本判決別紙5-22及び5-23のとおり,前記bにおいて震源を特定せず策定する地震動として加藤スペクトルを用いて策定した水平方向及び鉛直方向の地震動の応答ス,ペクトル(本判決別紙5-15及び5-16)は,全周期にわたり敷地ごとに震源を特定して策定する地震動による基準地震動Ssの設計用応答スペクトルたるSs-1H及 平方向及び鉛直方向の地震動の応答ス,ペクトル(本判決別紙5-15及び5-16)は,全周期にわたり敷地ごとに震源を特定して策定する地震動による基準地震動Ssの設計用応答スペクトルたるSs-1H及びSs-1Vを下回っていることから,控訴人は,震源を特定せず策定する地震動(加藤スペクトルを用いて策定した地震動の応答スペクトル)は,敷地ごとに震源を特定して策定する応答スペクトルに基づく手法による基準地- 141 -震動Ssで代表させることとした〔乙125-4-35,105,106。 〕(b)断層モデルを用いた手法による基準地震動Ssの策定前記エ(オ)dのとおり,バックチェックルールでは,断層モデルを用いた手法による基準地震動Ssの策定の際には「断層モデルを,用いた手法による基準地震動Ssは,施設に与える影響の観点から地震動の諸特性を考慮して,設計用応答スペクトルとの関係を踏まえつつ,断層モデルを用いた手法による地震動の評価結果から選定」し,その地震波形を用いて策定するとされている。そこで,控訴人は,本判決別紙5-24及び5-25のとおり,前記(a)の基準地震動Ss-1の設計用応答スペクトルと前記a(g)ⅳで行った断層モデルを用いた手法による地震動評価(本判決別紙5-8ないし5-11)との比較を行った。その結果,基本的なケース及び不確かさを考慮したケース1の地震動レベルは,不確かさを考慮したケース2の地震動よりも基準地震動Ss-1の設計用応答スペクトルに対して相対的に大きなものとなっていることから,控訴人は,断層モデルを用いた手法による基準地震動Ssについては,基本的なケース及び不確かさを考慮したケース1の評価結果を代表として選定し,それぞれ基準地震動Ss-2及びSs-3とした〔乙125-。 4-34,103,104〕( よる基準地震動Ssについては,基本的なケース及び不確かさを考慮したケース1の評価結果を代表として選定し,それぞれ基準地震動Ss-2及びSs-3とした〔乙125-。 4-34,103,104〕(c)基準地震動Ssの妥当性の確認前記エ(オ)dのとおり,バックチェックルールでは,必要に応じて応答スペクトルに基づく手法及び断層モデルを用いた手法により選定された手法以外の手法を用いて地震動を評価し,基準地震動Ssの妥当性を確認するとされている。そこで,控訴人は,本判決別紙5-26及び5-27のとおり,前記a(a)で選定した検討用地- 142 -震に対し,距離減衰式の知見として知られている,大野ほか(20,01)に基づき検討用地震による地震動の応答スペクトルを算出し基準地震動Ssと比較・検討した。その結果,基準地震動Ss-1の応答スペクトルは,前記の知見に基づく応答スペクトルを全周期にわたって上回っており,余裕が認められた〔乙125-4-36,。 107,108,乙181〕また,前記エ(キ)のとおり,バックチェックルールでは,基準地震動Ssがどの程度の超過確率に相当しているかを把握するとされている。そこで,控訴人は,本判決別紙5-28及び5-29のとおり,前記b(b)ⅱで用いた「原子力発電所の地震を起因とした確率論的安全評価実施基準:2007」に基づき,領域震源と活断層による地震を組み合わせた地震ハザード評価結果から,本件敷地における年超過確率ごとの応答スペクトルを求め,このスペクトルと基準地震動Ssの応答スペクトルとを比較した。その結果,応答スペクトルに基づく手法による基準地震動Ss-1H及びSs-1Vは,全周期帯にわたって年超過確率が10ないし10程度となっ-4-5ていたことから,基準地震動Ssは,原子炉施設の安全性を評 ,応答スペクトルに基づく手法による基準地震動Ss-1H及びSs-1Vは,全周期帯にわたって年超過確率が10ないし10程度となっ-4-5ていたことから,基準地震動Ssは,原子炉施設の安全性を評価する上で,十分なレベルであるとの結論を得た〔乙125-4-39,。 40,114,115〕(エ)本件原子炉施設の耐震安全性評価証拠〔乙92,乙125-5,乙125-6,乙125-7,乙125-8,乙125-9,乙125-10,乙137ないし139,乙148,乙149,乙181〕によれば,以下の事実が認められる(なお,以下,各項目ごとに主たる証拠を掲記する。 。)控訴人は,平成18年11月から平成19年9月に掛けて及び同年11月から平成20年3月に掛けて,本件原子炉施設のうち,相対的に裕- 143 -度の少ない設備について後記aのとおり耐震裕度向上工事を行った上,前記(ウ)のとおり策定した基準地震動Ssに対し,バックチェックルールに従い,以下のとおり,①原子炉建屋基礎地盤の安定性評価(後記b,②安全上重要な建物・構築物の耐震安全性評価(後記c,③))安全上重要な機器・配管系の耐震安全性評価(後記d,④地震随伴事)象に対する考慮(後記e)につき,本件原子炉施設の耐震安全性評価を実施した。 a耐震裕度向上工事控訴人は,平成18年11月から平成19年9月に掛けて及び同年11月から平成20年3月に掛けて,耐震裕度向上工事として,①防震器を大容量のものに取り替える,補強部材を取り付ける,より耐震強度を有する配管サポートに取り替える,新たな配管サポートを追加設置するなどの配管サポート改造工事,及び,②耐震補強材を追加設置する電路類サポート改造工事を行った〔乙137ないし139。 〕b原子炉建屋基礎地盤の安定性評価(a 新たな配管サポートを追加設置するなどの配管サポート改造工事,及び,②耐震補強材を追加設置する電路類サポート改造工事を行った〔乙137ないし139。 〕b原子炉建屋基礎地盤の安定性評価(a)評価方針及び地震応答解析,バックチェックルールに基づき,炉心で直交する2断面について基準地震動Ssによる地震動に対して地震応答解析を行い,安定性評価を実施した〔乙92(添27,乙125-5-2,38。 )〕安定性評価に用いる地震動は,バックチェックルールに基づき,解放基盤表面上における基準地震動Ssを一次元波動論によりEL(標高)マイナス200メートルの位置まで引き戻して評価したものを用いた〔乙92(添28,乙125-5-52。 )〕地震応答解析は,バックチェックルールに基づき,周波数応答解析法を用い,基準地震動Ssの水平地震動と鉛直地震動による応答- 144 -を考慮した〔乙92(添27,29),乙125-5-47ないし51。なお,同解析においては,バックチェックルールに基づき,地〕盤状況に応じて,等価線形解析法により,ひずみ依存性も考慮した〔乙92(添29,乙125-5-3,55ないし66。 )〕前記の炉心で直交する2断面は,本件設置変更許可申請時点の地,盤調査や強度試験等の結果に基づいて地盤の解析用物性値を設定し二次元動的有限要素法を用いて原子炉建屋基礎地盤をモデル化した)〕。 ものを用いた〔乙92(添28,乙125-5-39ないし44安定性評価は地震時の支持性能について評価するものとし,具体的には,バックチェックルールに基づき,地震応答解析の結果得られたすべり安全率により評価した〔乙125-5-3,4,10ないし30。なお,評価においては,バックチェックルールに基づき,〕初期地圧,地震力,地下水位等も考慮 ルに基づき,地震応答解析の結果得られたすべり安全率により評価した〔乙125-5-3,4,10ないし30。なお,評価においては,バックチェックルールに基づき,〕初期地圧,地震力,地下水位等も考慮した〔乙92(添27,29,乙125-5-53。 )〕さらに,地震時における原子炉建屋基礎の底面の鉛直方向の相対変位等については,バックチェックルールに基づき,鉛直方向の相対変位及び傾斜により評価した〔乙92(添29,乙125-5-)4,31ないし36。 〕(b)評価基準,原子炉建屋基礎地盤については,バックチェックルールに基づきすべり安全率が評価基準値を上回っているかどうかを確認した〔乙92(添30,乙125-5-3,4,54。 )〕評価基準値は,バックチェックルールに基づき,1.5とした〔乙92(添30。 )〕また,原子炉建屋基礎底面の鉛直方向の相対変位及び傾斜については,当該相対変位及び傾斜が,耐震設計上重要な機器・配管の機- 145 -能に支障を与えるかどうかを確認した〔乙92(添30,乙125)-5-4,54。 〕(c)評価結果評価の結果,すべり安全率の最小値は4.1であり,すべり安全,率の評価基準値を上回っているとの結論を得た〔乙125-5-410ないし30。 〕また,原子炉建屋基礎底面の鉛直方向の相対変位の最大値は基礎底面幅74.4メートルに対して2.2ミリメートル,傾斜の最大値は3万3800分の1と十分小さな値となっており,耐震設計上重要な機器・配管の機能に支障を与えるものではないとの結論を得た〔乙125-5-5,31ないし36。 〕c安全上重要な建物・構築物の耐震安全性評価(a)評価方針,入力地震動の算定及び地震応答解析原子炉建屋については,バックチェックルールに基づき,原子炉建屋 125-5-5,31ないし36。 〕c安全上重要な建物・構築物の耐震安全性評価(a)評価方針,入力地震動の算定及び地震応答解析原子炉建屋については,バックチェックルールに基づき,原子炉建屋の応答性状を適切に表現できるモデルを設定し,基準地震動Ssによる地震動に対し地震応答解析を行い,その結果得られた耐震壁のせん断ひずみをもとに耐震安全性評価を実施した〔乙92(添31ないし34,乙125-6-1,2。 )〕地震応答解析では,地盤の状況を適切に反映させるため,解放基盤表面上における基準地震動Ssからモデル化した地盤を介して原子炉建屋の地震応答解析モデルに入力する地震動を求め,その入力地震動による建屋各部の応答を求めた〔乙92(添32,乙125)-6-1,2,9。 〕原子炉建屋の地震応答解析モデルに入力する地震動の算定に当た,っては,水平方向と鉛直方向の地震動を考慮する必要があるところ,まず水平方向の地震動については,バックチェックルールに基づき- 146 -基準地震動Ssを解放基盤表面からEL(標高)マイナス200メートルまで一次元波動論によりいったん引き戻した上で,これにより得られた地震波を用いてEL(標高)マイナス200メートルから地表まで,表層部分の影響を詳細に反映できる有限要素法を用いて地盤の地震応答解析を行い,原子炉建屋基礎下端で評価した〔乙92(添32,乙125-6-9ないし13。 )〕一方,鉛直方向の地震動については,水平方向の地震動とは異なり,敷地地盤における表層地盤等の影響を余り受けないことから,基準地震動Ssをそのまま入力地震動として用いた〔乙125-6-14。 〕また,地震応答解析のモデル化に当たっては,バックチェックルールに基づき,以下のとおり地盤のモデル化及び原子炉建屋のモデル化を 地震動Ssをそのまま入力地震動として用いた〔乙125-6-14。 〕また,地震応答解析のモデル化に当たっては,バックチェックルールに基づき,以下のとおり地盤のモデル化及び原子炉建屋のモデル化を行った〔乙92(添32,33,乙125-6-9,10,)19。 〕ⅰ地盤のモデル化〔乙92(添32,乙125-6-9,10〕)本件原子炉施設の建設に際し実施した評価(以下「既往評価」という)において,本件敷地における地盤調査や強度試験等の結。 果に基づいた地盤物性値を設定して地盤のモデル化を行っていることから,これをそのまま用いた。 ⅱ原子炉建屋のモデル化〔乙92(添33,乙125-6-19)ないし23〕まず水平方向の地震動に対しては,建物と地盤とのエネルギー授受の現象を適切に評価できる地盤-建物・構築物連成系モデルであるスウェイ・ロッキングモデルを用い,また,鉛直方向の地震動に対しては,鉛直方向の振動特性を考慮できる質点系モデルを用いることを基本とし,能登半島地震による実際の観測記録に- 147 -みられた振動性状を適切に表現した建屋に関するシミュレーション解析結果を反映した。 なお,原子炉建屋のモデル化に際し用いる建屋物性値については,構造形式に応じた減衰定数や社団法人日本建築学会の規準に基づいた値を設定した。 一方,原子炉格納容器についても,原子炉建屋の主たる耐震要素である耐震壁の役割を担っていることから,前記と同様の評価を実施した。 さらに,原子力安全・保安院は,局所的な応答による構造物の安全性への影響を評価する必要がある場合には,水平方向と鉛直方向の地震動による各応答結果を二乗和平方根(SRSS)法又は組み合わせ係数法により組み合わせて評価することを求めているところ〔乙92(添31,控訴人は,原子炉建屋の屋根ト 合には,水平方向と鉛直方向の地震動による各応答結果を二乗和平方根(SRSS)法又は組み合わせ係数法により組み合わせて評価することを求めているところ〔乙92(添31,控訴人は,原子炉建屋の屋根トラ)〕スの部材について,鉛直地震動による影響が大きく,局所的な応答による評価が必要と判断し,水平方向と鉛直方向の地震動による各応答結果を組合せ係数法により組み合わせて耐震安全性評価を実施した。 (b)評価基準ⅰ原子炉建屋原子炉建屋については,バックチェックルールに基づき,主たる耐震要素である耐震壁について,各層の最大応答せん断ひずみが評価基準値を超えないかどうかを確認した〔乙92(添34,)乙125-6-2,51。 〕評価基準値は,バックチェックルールに基づき,2.0×10とした〔乙92(添34,乙125-6-2,51。 )〕-3また,局所的な応答による影響を評価するために選定した屋根- 148 -トラスについては,バックチェックルールに基づき,屋根トラスの部材における発生応力値が評価基準値を超えないかどうかを確認し〔乙92(添1,評価基準値は,バックチェックルールに)〕基づき,建築基準法に基づいた許容値(応力度)を適用した〔乙92(添29,乙125-6-2,51。 )〕ⅱ原子炉格納容器原子炉格納容器については,前記原子炉建屋の耐震壁の評価に併せて,最大応答せん断ひずみが評価基準値(2.0×10)-3を超えないかどうかを確認した〔乙92(添29,乙125-6)-2,51。 〕(c)評価結果ⅰ原子炉建屋,評価の結果,最大応答せん断ひずみは0.43×10であり-3評価基準値を超えないとの結論を得た〔乙125-6-52。 〕また,屋根トラスについては,すべての部材において評価基準値を超えないとの 評価の結果,最大応答せん断ひずみは0.43×10であり-3評価基準値を超えないとの結論を得た〔乙125-6-52。 〕また,屋根トラスについては,すべての部材において評価基準値を超えないとの結論を得た〔乙125-6-62,63。 〕ⅱ原子炉格納容器,評価の結果,最大応答せん断ひずみは0.25×10であり-3評価基準値を超えないとの結論を得た〔乙125-6-52。 〕d安全上重要な機器・配管系の耐震安全性評価(a)評価方針バックチェックルールに基づき,機器・配管系の応答性状を適切に表現できるモデルを設定し,基準地震動Ssによる地震動に対し地震応答解析を行い,その結果得られた機器・配管系の発生応力値等をもとに耐震安全性評価を実施した〔乙92(添35ないし39,乙125-7-1,4。 )〕- 149 -耐震安全性評価は,構造強度評価又は動的機能維持評価により実施した。具体的には以下のとおりである。 ⅰ構造強度評価構造強度評価とは,施設の機能が地震時に構造強度的に維持されることを確認するために行う評価である。評価は,バックチェ,ックルールに基づき,地震慣性力による1次応力評価を基本とし評価箇所における発生応力値と評価基準値との比較により実施した〔乙92(添35,36,乙125-7-1,4,5。 )〕なお,発生応力値の算出に当たり,バックチェックルールは,①応答倍率法を用いることができること,また,詳細な解析が必要な場合はスペクトルモーダル解析法又は時刻歴応答解析法を,用いることができること,さらに,②適切な手法がある場合はその手法を用いることができることを定めている〔乙92(添3)〕, 。そこで控訴人は,より詳細かつ正確な評価を実施するためスペクトルモーダル解析法,時刻歴応答解析法,又は適切な 法がある場合はその手法を用いることができることを定めている〔乙92(添3)〕, 。そこで控訴人は,より詳細かつ正確な評価を実施するためスペクトルモーダル解析法,時刻歴応答解析法,又は適切な手法として既往評価で使用されている旧JEAGが定める手法〔乙141〕等を用いて発生応力値を算出した〔乙125-7-5,6。 〕具体的には,機器については,時刻歴応答解析法又は旧JEAGが定める手法等により算出した。一方,配管については,スペクトルモーダル解析法により算出した。 ⅱ動的機能維持評価動的機能維持評価とは,動的機器を有する施設について,その動的機能が地震時に維持されることを確認するために行う評価である。評価は,バックチェックルールに基づき,動的機器の設置位置における応答加速度と機能確認済み加速度の比較を基本とし- 150 -)〕。 て実施した〔乙92(添36,乙125-7-1,4,7,8また,動的機器の設置位置における応答加速度は,当該施設の据付床面の床応答等により算出した〔乙92(添36,乙125)-7-8。 〕なお,前記評価結果により詳細評価が必要なものについては,バックチェックルールに基づき,最新の知見である社団法人日本電気協会の検討会資料「水平・鉛直地震動に対する動的機器の地震時機能維持評価法の改正案について第15回機器・配管系検討会資料No.15-4-4-2平成18年9月11日(以」下「検討会資料」という)により詳細評価を行った〔乙92(添。 1,乙125-7-7,8,添7-3-5,乙142。 )〕(b)地震応答解析地震応答解析では,バックチェックルールに基づき,大型機器等の建物・構築物との相互作用が無視できない機器等については,建屋と機器とを連成させた解析モデルを用いた地震応答解析(建屋・ )地震応答解析地震応答解析では,バックチェックルールに基づき,大型機器等の建物・構築物との相互作用が無視できない機器等については,建屋と機器とを連成させた解析モデルを用いた地震応答解析(建屋・機器連成応答解析)を実施した〔乙92(添36,乙125-7-)4,9ないし12。一方,比較的小型の機器等で建屋と非連成で評〕価して差し支えない機器等については,当該施設の据付床面の床応答を用いた地震応答解析を実施した〔乙92(添36,乙125-)7-4。 〕また,耐震安全性評価に際しては,以下の事項も考慮した。 まず,床応答スペクトルについては,バックチェックルールに基づき,建物・構築物の地震応答解析で得られた床応答時刻歴を用いて,水平方向及び鉛直方向について算定した。さらに,地盤や建屋の物性等のばらつきが床応答に与える影響を考慮するため,既往評価と同様に,旧JEAGに基づき,周期方向にプラスマイナス10- 151 -パーセント拡幅した上で床応答スペクトルを設定した〔乙92(添。 37,乙125-7-19〕)次に,地震応答解析モデルについては,バックチェックルールに基づき,既往評価で使用した旧JEAGに示されたモデル等を使用,した。また,減衰定数については,バックチェックルールに基づき既往評価で使用した「原子力発電所耐震設計技術指針JEAG4601-1991追補版(以下「JEAG(1991」という)」)。 に示された値や,試験で妥当性が確認された値を使用した〔乙92。 (添37,38,乙125-7-9,32〕)さらに,発生応力値を求めるに当たっては,バックチェックルールに基づき,水平方向及び鉛直方向の応答結果を二乗和平方根(SRSS)法により組み合わせを行った〔乙92(添36,乙125)-7-4。 〕(c) 応力値を求めるに当たっては,バックチェックルールに基づき,水平方向及び鉛直方向の応答結果を二乗和平方根(SRSS)法により組み合わせを行った〔乙92(添36,乙125)-7-4。 〕(c)評価基準ⅰ炉心支持構造物炉心支持構造物については,建設時の耐震設計において安全裕度(評価基準値を発生応力で除した値)が低い箇所を選定し,最も低い箇所から順に炉心支持板,シュラウドサポートのレグ,上部格子板のグリッドプレート及びシュラウドサポートの下部胴について構造強度評価を実施して,それぞれの評価箇所における発生応力値が評価基準値を超えないかどうかを確認した〔乙125-7-37。 〕発生応力値は,炉心支持構造物が建物・構築物との相互作用が無視できない機器であるため,建屋・機器連成による時刻歴応答解析法により算出した〔乙92(添35,36。 )〕評価基準値は,既往評価で使用されている値のほか,実験等で- 152 -妥当性が確認されている値等を用いることができるところ〔乙92(添39,控訴人は,既往評価で使用されている「原子力発)〕電所耐震設計技術指針JEAG4601-補・1984(以下」「JEAG(1984」という,旧JEAG及び社団法人日本)。)機械学会「発電用原子力設備規格設計・建設規格(2005年(以下「設計・建設規格」という)に示された1次応力の許)」。 容値を適用した〔乙125-7-34,37。 〕ⅱ制御棒(挿入性)地震時において動的機能が要求される制御棒に対し,制御棒の挿入性について動的機能維持評価を実施した。具体的には,検討会資料に基づき,基準地震動Ssに対して解析を実施し,これにより得られた制御棒挿入時間が,評価基準値を超えないかどうかを確認した〔乙125-7-39。 〕制御棒挿入時間は 施した。具体的には,検討会資料に基づき,基準地震動Ssに対して解析を実施し,これにより得られた制御棒挿入時間が,評価基準値を超えないかどうかを確認した〔乙125-7-39。 〕制御棒挿入時間は,JNESが構築した地震時の制御棒挿入挙動を再現できる制御棒挿入解析モデルを用いて本件原子炉の制御棒挿入解析モデルを設定し,基準地震動Ssに対する制御棒挿入時間を時刻歴応答解析法により算出した〔乙125-7-39,添7-4-1ないし6。 〕評価基準値は,バックチェックルールに基づき,本件原子炉のスクラム挿入時間に関する既往評価で使用されている値である「全ストロークの60パーセント挿入までは1.44秒以下,100パーセント挿入までは2.80秒以下」を適用した〔乙92(添39,乙125-7-40,添7-4-1ないし6。 )〕ⅲ残留熱除去ポンプ(ⅰ)構造強度評価残留熱除去ポンプについては,建設時の耐震設計において安- 153 -全裕度が最も低い箇所である基礎ボルトについて構造強度評価を実施し,当該評価箇所における発生応力値が評価基準値を超えないかどうかを確認した〔乙125-7-37。 〕発生応力値は,残留熱除去ポンプが比較的小型の機器等で建屋と非連成で評価して差し支えない機器であるため,当該機器の据付床面の最大応答加速度を求めた上で,旧JEAGが定める手法により算出した〔乙92(添36,37。 )〕評価基準値は,バックチェックルールに基づき,JEAG(1984,旧JEAG及び設計・建設規格に示された1次応)力の許容値を適用した〔乙92(添39,乙125-7-34,)37。 〕(ⅱ)動的機能維持評価さらに,残留熱除去ポンプの動的機能が地震時に維持されることを確認するため,当該ポンプの動的機能維持評価を実施し,当該ポン 2(添39,乙125-7-34,)37。 〕(ⅱ)動的機能維持評価さらに,残留熱除去ポンプの動的機能が地震時に維持されることを確認するため,当該ポンプの動的機能維持評価を実施し,当該ポンプの設置位置における応答加速度が評価基準値を超えないかどうかを確認した〔乙125-7-35,40。 〕応答加速度は,残留熱除去ポンプが比較的小型の機器等で建屋と非連成で評価して差し支えない機器であるため,当該機器の据付床面の最大応答加速度を求めて算出した〔乙92(添36,37。 )〕評価基準値は,バックチェックルールに基づき,水平方向についてはJEAG(1991)に示された機能確認済み加速度である10G(1Gは約9.8メートル毎秒毎秒)を,鉛直方向については検討会資料に示された機能確認済み加速度である1Gを適用した〔乙92(添39,乙125-7-35,40,)乙142(3。 )〕- 154 -ⅳ残留熱除去系配管(ⅰ)配管の構造強度評価残留熱除去系配管については,建設時の耐震設計において評価対象としたすべての配管について構造強度評価を実施し,それぞれの配管の評価箇所における発生応力値が評価基準値を超えないかどうかを確認した〔乙125-7-37。 〕発生応力値は,残留熱除去系配管が比較的小型の機器等で建屋と非連成で評価して差し支えない機器であるため,当該施設の据付床面の床応答スペクトルを求めた上で,スペクトルモーダル解析法により算出した〔乙92(添36,37。 )〕評価基準値は,バックチェックルールに基づき,JEAG(1984,旧JEAG及び設計・建設規格に示された1次応)力の許容値を適用した〔乙92(添39,乙125-7-34,)37。 〕(ⅱ)弁の動的機能維持評価残留熱除去系配管に接続された弁の動的機能が ,旧JEAG及び設計・建設規格に示された1次応)力の許容値を適用した〔乙92(添39,乙125-7-34,)37。 〕(ⅱ)弁の動的機能維持評価残留熱除去系配管に接続された弁の動的機能が地震時に維持されることを確認するため,建設時の耐震設計において評価対象としたすべての弁について動的機能維持評価を実施し,当該弁の設置位置における応答加速度が評価基準値を超えないかどうかを確認した〔乙125-7-35,41。 〕応答加速度は,バックチェックルールに基づき,同配管の構造強度評価の際に実施したスペクトルモーダル解析法により,併せて算出した〔乙92(添37。 )〕評価基準値は,バックチェックルールに基づき,水平方向についてはJEAG(1991)に示された機能確認済み加速度である6Gを,鉛直方向については検討会資料に示された6G- 155 -を適用した〔乙92(添39,乙125-7-35,41,乙)142(4。 )〕ⅴ原子炉圧力容器原子炉圧力容器については,建設時の耐震設計において安全裕度が低い箇所を選定し,最も低い箇所から順に制御棒駆動機構ハ,ウジング貫通孔のスタブチューブ,上部ガイドロッドブラケットスタビライザブラケット,下部鏡板の球殻部及び胴板について構造強度評価を実施して,それぞれの評価箇所における発生応力値が評価基準値を超えないかどうかを確認した〔乙125-7-37。 〕また,耐震安全上重要な箇所である基礎ボルトについても同様に,構造強度評価を実施し,発生応力値が評価基準値を超えないかどうかを確認した〔乙125-7-37。 〕発生応力値は,原子炉圧力容器が建物・構築物との相互作用が無視できない機器であるため,建屋・機器連成による時刻歴応答解析法により算出した〔乙92(添36,37。なお,基礎ボ) 5-7-37。 〕発生応力値は,原子炉圧力容器が建物・構築物との相互作用が無視できない機器であるため,建屋・機器連成による時刻歴応答解析法により算出した〔乙92(添36,37。なお,基礎ボ)〕ルトについては,建屋・機器連成応答解析により当該機器に加わる地震力を求めた上で,旧JEAGが定める手法により算出した〔乙92(添36,37。 )〕評価基準値は,バックチェックルールに基づき,JEAG(1984,旧JEAG及び設計・建設規格に示された1次応力の許))〕。 容値を適用した〔乙92(添39,乙125-7-34,37ⅵ主蒸気系配管(ⅰ)配管の構造強度評価主蒸気系配管については,建設時の耐震設計において評価対象としたすべての配管について構造強度評価を実施し,それぞ- 156 -れの配管の評価箇所における発生応力値が評価基準値を超えないかどうかを確認した〔乙125-7-38,乙148,乙149。 〕発生応力値は,主蒸気系配管が比較的小型の機器等で建屋と非連成で評価して差し支えない機器であるため,当該施設の据付床面の床応答スペクトルを求めた上で,スペクトルモーダル解析法により算出した〔乙92(添36,37。 )〕評価基準値は,バックチェックルールに基づき,JEAG(1984,旧JEAG及び設計・建設規格に示された1次応)力の許容値を適用した〔乙92(添39,乙125-7-34,)38,乙148,乙149。 〕(ⅱ)弁の動的機能維持評価主蒸気系配管に接続された弁の動的機能が地震時に維持されることを確認するため,建設時の耐震設計において評価対象としたすべての弁について動的機能維持評価を実施し,このうち詳細評価が必要な弁(主蒸気隔離弁)については,検討会資料に基づき,主蒸気隔離弁の駆動部の機能確認及び同弁の 設時の耐震設計において評価対象としたすべての弁について動的機能維持評価を実施し,このうち詳細評価が必要な弁(主蒸気隔離弁)については,検討会資料に基づき,主蒸気隔離弁の駆動部の機能確認及び同弁の構造強度評価を実施した。具体的には,まず駆動部の機能確認については,鉛直方向の応答加速度が評価基準値を超えないかどうかを確認した〔乙125-7-39,41。 〕評価基準値は,バックチェックルールに基づき,控訴人を含めBWR型の原子炉施設を所有する電気事業者がメーカーと共同で実施した主蒸気隔離弁の耐震試験により確認された駆動部の鉛直方向の機能確認済み加速度12.3Gを適用した〔乙9)〕。 2(添39,乙125-7-41,添7-5-2,乙143次に,弁の構造強度評価については,JEAG(1991)- 157 -及び検討会資料に基づき,主蒸気隔離弁の構造上の最弱部であるヨークロッド付根のアンダーカット部について構造強度評価を実施し,評価箇所における発生応力値が評価基準値を超えないかどうか確認した〔乙92(添39,乙125-7-35,)41,乙144。 〕発生応力値は,同弁の応答加速度により算出した〔乙125-7-35,41。 〕評価基準値は,バックチェックルールに基づき,検討会資料及び設計・建設規格に示された1次応力の許容値を適用した〔乙92(添39,乙125-7-34,41,添7-5-1,)3。 〕ⅶ原子炉格納容器原子炉格納容器については,建設時の耐震設計において安全裕度が低い箇所を選定し,最も低い箇所から順にドライウェルスプレイ配管貫通部のスリーブ,主蒸気系配管貫通部のフランジプレート(原子炉格納容器の内側,電気配線貫通部のフランジプレー)ト(原子炉格納容器の外側及び内側)について構造強度評価を実施して,それぞれの イ配管貫通部のスリーブ,主蒸気系配管貫通部のフランジプレート(原子炉格納容器の内側,電気配線貫通部のフランジプレー)ト(原子炉格納容器の外側及び内側)について構造強度評価を実施して,それぞれの評価箇所における発生応力値が評価基準値を超えないかどうかを確認した〔乙125-7-38。 〕発生応力値は,貫通する配管からの反力を考慮する必要がある評価箇所については,スペクトルモーダル解析法により当該反力を求めて算出した。一方,反力を考慮する必要のない評価箇所については,当該評価箇所の据付位置における床面の最大応答加速度を求めて算出した〔乙92(添36,37。 )〕評価基準値は,バックチェックルールに基づき,JEAG(1984,旧JEAG及び設計・建設規格に示された1次応力の許)- 158 -)〕。 容値を適用した〔乙92(添39,乙125-7-34,38(d)評価結果ⅰ炉心支持構造物評価の結果,発生応力値が評価基準値を超えないとの結論を得た〔乙125-7-37。 〕ⅱ制御棒(挿入性)評価の結果,制御棒挿入時間が評価基準値を超えないとの結論を得た〔乙125-7-40。 〕ⅲ残留熱除去ポンプ評価の結果,①構造強度評価については,発生応力値が評価基準値を超えないとの結論を得〔乙125-7-37,また,②〕動的機能維持評価については,応答加速度が評価基準値を超えないとの結論を得た〔乙125-7-40。 〕ⅳ残留熱除去系配管評価の結果,①配管の構造強度評価については,すべての配管の評価箇所における発生応力値が評価基準値を超えないとの結論を得〔乙125-7-37,また,②弁の動的機能維持評価〕については,すべての弁における応答加速度が評価基準値を超えないとの結論を得た〔乙125-7-41。 〕ⅴ原子炉 値を超えないとの結論を得〔乙125-7-37,また,②弁の動的機能維持評価〕については,すべての弁における応答加速度が評価基準値を超えないとの結論を得た〔乙125-7-41。 〕ⅴ原子炉圧力容器評価の結果,発生応力値が評価基準値を超えないとの結論を得た〔乙125-7-37。 〕ⅵ主蒸気系配管評価の結果,①配管の構造強度評価については,すべての配管の評価箇所における発生応力値が評価基準値を超えないとの結論を得〔乙125-7-38,乙148,乙149,また,②〕- 159 -弁の動的機能維持評価については,すべての弁における応答加速度が評価基準値を超えないとの結論を得た〔乙125-7-41。 〕ⅶ原子炉格納容器評価の結果,発生応力値が評価基準値を超えないとの結論を得た〔乙125-7-38,乙148,乙149。 〕e地震随伴事象に対する考慮(a)周辺斜面の安定性ⅰ評価方針バックチェックルールに基づき,耐震設計上重要な機器・配管等を内包する建物・構築物とその周辺斜面との離間距離に基づいて安定性評価の対象とすべき斜面を抽出し,当該斜面が,基準地震動Ssによる地震力に対しても崩壊を起こさないことの評価を実施した〔乙92(添43,乙125-8-1。 )〕評価対象とすべき斜面については,バックチェックルールに基づき,旧JEAGの規定(斜面法尻と原子炉建屋との離間距離「が約50メートル以内の斜面,あるいは斜面の高さの約1,4倍以内の斜面を考える)を考慮し,本件原子炉建屋の東に位置す。」る斜面を選定した〔乙92(添1,乙125-8-1。 )〕なお,控訴人は,本件設置変更許可申請の際,前記b(a)の原子炉建屋基礎地盤と同様,前記選定した斜面もモデル化を行っているので,当該モデルを用いて耐震安定性評価を (添1,乙125-8-1。 )〕なお,控訴人は,本件設置変更許可申請の際,前記b(a)の原子炉建屋基礎地盤と同様,前記選定した斜面もモデル化を行っているので,当該モデルを用いて耐震安定性評価を行った〔乙92(添43,乙125-8-1。 )〕ⅱ評価基準バックチェックルールに基づき,原子炉建屋基礎地盤と同様,地震応答解析の結果得られたすべり安全率が評価基準値を上回っ- 160 -ているかどうかを確認した〔乙92(添43,乙125-8-)2。 〕評価基準値は,バックチェックルールに基づき,1.2とした〔乙92(添43。 )〕ⅲ評価結果評価の結果,すべり安全率の最小値は4.9と評価基準値を上回っており,基準地震動Ssによる地震力に対して当該斜面が崩壊を起こさないとの結論を得た〔乙125-8-3。 〕(b)津波に対する安全性ⅰ評価方針バックチェックルールに基づき,既往の津波の発生状況,活断層の分布状況及び最新の知見等を考慮して,施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性がある津波を想定し,数値シミュレーションにより,当該津波発生時の施設への影響について評価を実施した〔乙92(添44,乙125-9-1。 )〕津波の想定に当たっては,バックチェックルールに基づき,能登半島地震による津波等最新の津波のほか,日本海東縁部を含む周辺の既往の津波の発生状況や,日本海東縁部で想定される地震による津波,更には基準地震動Ssの前提となる活断層を含む海域の活断層等を考慮し津波を想定した〔乙92(添44,乙1)25-9-3。 〕前記のとおり想定した複数の津波をもとに敷地前面調査海域における津波高を数値シミュレーションにより求め,これらの中から敷地前面調査海域に最も影響を与える水位上昇及び水位低下に潮位を考慮した 。 〕前記のとおり想定した複数の津波をもとに敷地前面調査海域における津波高を数値シミュレーションにより求め,これらの中から敷地前面調査海域に最も影響を与える水位上昇及び水位低下に潮位を考慮したものを評価用の津波水位とした〔乙92(添44,乙125-9-3ないし9。 )〕- 161 -また,本件原子炉施設では,原子炉補機冷却系海水を,取水口から取水路,取水槽を経て,海水熱交換器建屋内にある海水ポンプ室まで導水していることから,バックチェックルールに基づき,取水施設の水理特性による水位変動を考慮し,海水ポンプ室における水位低下も評価した〔乙92(添45,乙125-9-1)0,11。 〕さらに,バックチェックルールに基づき,津波による二次的な影響に対する評価として,津波に伴う土砂移動の影響について評価した〔乙92(添45,乙125-9-12。 )〕なお,津波高の数値シミュレーションに用いたモデル及び計算手法の妥当性を確認するため,控訴人は,1993年北海道南西沖地震津波等で観測された痕跡高と数値シミュレーションによる津波高の比較を行い,痕跡高の再現性を得ている〔乙92(添44,乙125-9-6,7。 )〕ⅱ評価基準バックチェックルールに基づき,評価用の津波水位による水位上昇及び水位低下に対して,原子炉施設の安全性に問題となるかどうかを評価基準値と比較することにより確認した〔乙92(添 。 )〕評価基準値は,バックチェックルールに基づき,建設時の耐震設計に用いた値を適用した〔乙92(添1。具体的には,敷地)〕前面調査海域においては補機冷却水取水口位置における呑口下端レベルT.P(東京湾平均海面)マイナス6.5メートルを下. 回らないこと,汀線から本件敷地においては本件敷地の標高であるT.P.プラス11. 調査海域においては補機冷却水取水口位置における呑口下端レベルT.P(東京湾平均海面)マイナス6.5メートルを下. 回らないこと,汀線から本件敷地においては本件敷地の標高であるT.P.プラス11.0メートルを上回らないことであり,海水ポンプ室においては原子炉補機冷却水系海水ポンプの設計水位- 162 -T.P.マイナス6.3メートルを下回らないこととした〔乙125-9-7,45,46。 〕また,津波による二次的な影響として,取水口位置で取水に影響を与えるような多量の土砂が堆積しないかどうかを確認した〔乙92(添45,乙125-9-12,49,50。 )〕ⅲ評価結果評価の結果,敷地前面調査海域での津波高については,取水口位置における最低水位はT.P.マイナス3.0メートル程度,汀線から本件敷地における最大水位はT.P.プラス5.0メートル程度であり,いずれも評価基準値を満たしているとの結論を得た〔乙125-9-10,45。 〕また,取水施設の水理特性による水位変動を考慮した海水ポンプ室での低下水位についても,T.P.マイナス5.4メートル程度と評価基準値を満たしており,取水に影響を与えるものではないとの結論を得た〔乙125-9-11,48。 〕さらに,津波に伴う土砂移動についても,最も土砂が堆積する場合でも数センチメートルにすぎず,取水に影響を与えるものではないとの結論を得た〔乙125-9-12,50。 〕カ本件原子炉施設の新耐震指針及びバックチェックルール適合性以上のとおり,控訴人は,原子炉建屋基礎地盤の安定性評価(前記オ(エ)b,安全上重要な建物・構築物の耐震安全性評価(前記オ(エ)c,))機器・配管系及び屋外重要土木構造物の耐震安全性評価として前記7施設の安全性評価(前記オ(エ)d,並びに地震随伴事象に対す (エ)b,安全上重要な建物・構築物の耐震安全性評価(前記オ(エ)c,))機器・配管系及び屋外重要土木構造物の耐震安全性評価として前記7施設の安全性評価(前記オ(エ)d,並びに地震随伴事象に対する考慮(前記オ)(エ)e)のいずれにおいても,策定された基準地震動Ssに対し,本件原子炉施設が耐震安全性を有しているとの結論を得ているところ,この評価・確認は,前記オ(ア)認定のとおり,控訴人が耐震設計の際に行った地質- 163 -調査並びにバックチェックの際に新耐震指針及びバックチェックルールに則って行った地質調査に基づくものであり,また,控訴人が策定した基準地震動Ssも,前記オ(ウ)のとおり,新耐震指針及びバックチェックルールに基づいて行われたものである。そして,証拠〔乙125〕及び弁論の全趣旨によれば,控訴人は,平成20年3月14日,この確認の結果を本件中間報告書にまとめて原子力安全・保安院に対して報告したこと,本件中間報告書について原子力安全・保安院が何らかの問題点を指摘していると窺わせる事情は認められないことを考え併せれば,控訴人が策定した基準地震動Ssは新耐震指針及びバックチェックルールに適合するものであり,本件原子炉施設も新耐震指針及びバックチェックルールに適合するものであると認めるのが相当である。 (3) 地盤に関する安全確保対策ア審査基準(ア)地質,地盤の手引き証拠〔乙9(1300ないし1302〕によれば,地質,地盤の手)引きは「原子炉施設の設置される場所の地質,地盤は,原子炉施設の,自己荷重のほか,想定される地震その他の荷重を厳しく評価しても,原。 ,子炉施設の安全性を十分に確保し得るものでなければならない」とし地質,地盤に関し,安全審査に際して,審査すべき事項及びその内容につき,以下のとおり定めてい その他の荷重を厳しく評価しても,原。 ,子炉施設の安全性を十分に確保し得るものでなければならない」とし地質,地盤に関し,安全審査に際して,審査すべき事項及びその内容につき,以下のとおり定めていることが認められる。 a地質敷地の中心から少なくとも半径30キロメートルの範囲の陸地について,既存の文献等を参考とし,必要に応じて航空写真判読,地表踏査等を加えて作成された原縮尺20万分の1以上の地質図並びにこれに基づく地質説明が適切かつ妥当であると評価できなければならない。 敷地前面が海域である場合は陸域に準ずる範囲について既存の文献- 164 -等を参考とし,必要に応じて弾性波探査等を加えて作成された海底地形図,海底地質図,海底地質構造図等に基づく海底地質の説明が適切かつ妥当であると評価できなければならない。 敷地周辺の地質構造において,顕著な断層又は褶曲構造の存在が認められるときは,その活動性について十分安全側の評価がなされなければならない。 敷地内の地質については,①地表踏査,物理探査,ボーリング調査,トレンチ調査,試掘坑内調査等を実施して作成された地質図及び同図に基づく詳細地質説明,②原子炉建屋基礎岩盤について,少なくとも5本のオールコア・ボーリングを実施し,その深度が基礎底面下基礎底面幅以上であるボーリング調査の結果,③地質区分,コア採取率,岩盤等級等の表示されたボーリング柱状図,及びボーリング全長のコアの写真,④原則として原子炉建屋基礎面直上部で互いに直交するよう配置された坑内の地質境界,断層,破砕状況等を表示する地質展開図(原縮尺分100分の1程度)として示されている試掘坑の調査結果,⑤ボーリング等による地下水位等,地下水の状態に関する調査の結果が,いずれも適切かつ妥当であると評価できなければならない。 b 図(原縮尺分100分の1程度)として示されている試掘坑の調査結果,⑤ボーリング等による地下水位等,地下水の状態に関する調査の結果が,いずれも適切かつ妥当であると評価できなければならない。 b岩石・岩盤物性原子炉施設の設置予定場所の基礎岩盤については,以下に示す各種の岩石・岩盤物性試験の実施に基づく支持力,すべり及び沈下に関する性状解析結果から,基礎岩盤が十分な安全性を有することを評価しなければならない。 (a)一般物理特性を把握するため,基礎岩盤の岩石についての密度,含水比,間隙比等を測定する。 (b)強度特性を把握するため,①採取した岩石の一軸及び必要に- 165 -応じて三軸圧縮試験並びに引張試験,②岩盤のせん断及び支持力試験を行う。 (c)変形特性を把握するため,①一軸及び必要に応じて三軸圧縮試験を行い,弾性係数,ポアソン比を得るとともに,超音波試験を行い,動弾性係数,動ポアソン比を得る,②岩盤変形試験を行い,諸定数を得る,③軟岩の場合にあっては,岩石・岩盤のクリープ特性を得る。 (d)岩盤に節理や層理が発達している場合はその異方性に関する特性を把握する。 (e)その他必要に応じて,岩盤物性のバラツキの程度,初期地圧及び透水係数を把握する。 (イ)新耐震指針新耐震指針は,前記(2)ウ(ア)のとおり「建物・構築物は,十分な,支持性能を保つ地盤に設置されなければならない」としている。そし。 て,新耐震指針は,前記(2)ウ(ウ)aのとおり,敷地における解放基盤表面における水平方向及び鉛直方向の地震動を策定するとし,解放基盤表面とは「基盤(せん断波速度Vs=700m/s以上の硬質地盤で,あって,著しい風化を受けていないもの)面上の表層や構造物がない。 ものとして仮想的に設定する自由表面であって,著し とし,解放基盤表面とは「基盤(せん断波速度Vs=700m/s以上の硬質地盤で,あって,著しい風化を受けていないもの)面上の表層や構造物がない。 ものとして仮想的に設定する自由表面であって,著しい高低差がなく,ほぼ水平で相当な拡がりをもって想定される基盤の表面のこと」とし。 ているから,地盤として,硬質な地盤であって,著しい風化を受けていないものを想定しているということができる。 (ウ)バックチェックルール証拠〔乙92(添30〕によれば,バックチェックルールは,原子)炉建屋基礎地盤の安定性評価について「地震時の原子炉建屋基礎地盤,にすべりが生じないことを確認する。動的解析における時刻歴のすべり- 166 -安全率の評価基準値は,既往評価等の実績を考慮して,1.5とする。 また,動的解析から求まる等価震度を用いて実施する静的非線形解析等によるすべり安全率の評価基準値についても動的解析と同等の値とする」と規定していることが認められる。 。 イ控訴人が行った調査控訴人は,本件原子炉施設に関し,耐震設計の際,地質,地盤の手引き及び旧JEAGに基づき,前記(2)オ(ア)aの地質調査を行うとともに,バックチェックの際,新耐震指針及びバックチェックルールに基づき,前記(2)オ(ア)bの地質調査を行った。 ウ控訴人による原子炉建屋基礎地盤の安定性評価前記(2)オ(エ)b(c)で認定した事実及び証拠〔乙6(添6-3-6ないし17,49,50,61,62,67,75,76,77,乙31)(34ないし38〕によれば,以下の事実が認められる(なお,以下,)各項目ごとに主たる証拠を掲記する。 。)控訴人は,耐震設計及びバックチェックの際における前記地質調査の結果,本件原子炉施設建屋基礎地盤の安定性を以下のとおり評価した。 (ア)敷地周辺 下,)各項目ごとに主たる証拠を掲記する。 。)控訴人は,耐震設計及びバックチェックの際における前記地質調査の結果,本件原子炉施設建屋基礎地盤の安定性を以下のとおり評価した。 (ア)敷地周辺の地盤文献調査等の結果によれば,敷地及びその周辺には,主として新第三系(地質年代の新第三紀(約2350万年前から約170万年前まで)にできた地質)の火山岩類(地中のマグマが地表ないし地表近くに噴。 出して生じた岩石(流紋岩,安山岩,玄武岩等)を総称したもの)及。 び堆積岩類(岩石の砕屑物,生物の遺骸,火山噴出物等が水中又は陸上に堆積し,次第に固結して形成された岩石をいう)が分布しており,。 地質的には安定していると評価した〔乙6(添6-3-6ないし1 。 )〕(イ)敷地の地盤- 167 -本件敷地は,敷地前面の海岸線に沿って分布する段丘(かって河床,海底あるいは湖底で浸食作用や堆積作用により形成された平坦面が陸化した地形をいう)とその東側の標高50メートル前後のなだらかな丘。 陵とからなり,地すべり地形(地すべりの発生に伴って形成された地形をいう)は認められない。敷地の地盤は,地表地質踏査等の結果によ。 れば,新第三系中新統(新第三紀のうち,中新世(約2350万年前から約530万年前まで)にできた地層の総称)の穴水累層(能登半島。 に分布する,主として新第三紀中新世の安山岩質の火山岩類で構成された地層)とこれを覆う第四紀(約170万年前から現在まで)の堆積。 物からなり,規模の大きな断層や破砕帯(何らかの力により岩盤の一部が破砕された結果,不規則な割れ目や砕けた岩石が,ある幅をもって,ある方向に,帯状に連なっているもの)は認められない〔乙6(添。 。 6-3-49,50,乙31(34〕))(ウ)本件原子炉施設建設場所の地 果,不規則な割れ目や砕けた岩石が,ある幅をもって,ある方向に,帯状に連なっているもの)は認められない〔乙6(添。 。 6-3-49,50,乙31(34〕))(ウ)本件原子炉施設建設場所の地盤本件原子炉施設が建設されている場所の地盤は,穴水累層の安山岩(均質,安山岩(角礫質)及び凝灰角礫岩から構成されている。そし)て,岩盤分類(岩石の硬さ及び割れ目の頻度に応じて一番硬質なものを〔Aa〕級,一番軟質なものを〔Db〕級とし,安山岩(均質)につき,〔Aa〕級〔Ba〕級〔Ca〕級及び〔Da〕級の4段階に,安山,,岩(角礫質)及び凝灰角礫岩につき〔Ab〕級〔Bb〕級〔Cb〕,,,級及び〔Db〕級の4段階に分類したもの)上は,その大部分が〔B。 a〕級の安山岩(均質〔Bb〕級の安山岩(角礫質)及び〔Bb〕),級の凝灰角礫岩から構成されている〔乙6(添6-3-61,62,。 )乙31(35〕)a支持力に対する安全性本件原子炉建屋の常時接地圧は1平方ミリメートル当たり約0.5- 168 -ニュートン,地震時最大接地圧は約1.1ニュートンであるところ,施設を支持する岩盤の支持力は,岩盤試験の結果,1平方ミリメートル当たり13.7ニュートン以上であったから,控訴人は,本件原子炉施設が建設されている場所の地盤は,十分な支持力を有するものとの結論を得た。また,控訴人は,原子炉建屋基礎地盤の岩盤分類,シームの分析状況及び岩石・岩盤試験等の結果を評価して行った安定解析結果により,本件原子炉施設が建設されている場所の地盤は,十分な支持力を有しているとの結論を得た。 以上により,控訴人は,本件原子炉施設が建設されている場所の地盤は,支持力に対して十分な安全性を有しているとの結論を得た。 〔乙6(添6-3-67,75,乙31(37〕 力を有しているとの結論を得た。 以上により,控訴人は,本件原子炉施設が建設されている場所の地盤は,支持力に対して十分な安全性を有しているとの結論を得た。 〔乙6(添6-3-67,75,乙31(37〕))bすべりに対する安全性前記(2)オ(エ)b(c)で認定したとおり,原子炉建屋基礎地盤のすべり安全率の最小値は4.1であり,すべり安全率の評価基準値を上回っていることから,控訴人は,本件原子炉施設が建設されている場所の地盤は,すべりに対して十分な安全性を有しているとの結論を得た。 c沈下に対する安全性本件原子炉施設が建設されている場所の地盤は,前記のとおり,主として〔Bb〕級の岩盤から構成されているところ,同岩盤の解析用物性値を用い,原子炉建屋の常時接地圧1平方ミリメートル当たり約0.5ニュートンに対する沈下量を算出すると,原子炉建屋築造による沈下量は,原子炉建屋基礎中心で約1.3センチメートルとなった。 また,隣接して設置するタービン建屋によって,原子炉建屋基礎に生じる不同沈下量は,最大約0.5センチメートル,建屋基礎の傾斜は,約1万7000分の1であった。さらに,原子炉建屋基礎地盤の岩盤- 169 -分類,シームの分布状況及び岩石・岩盤試験等の結果を評価して行った安定解析結果によれば,地震時における原子炉建屋基礎の傾斜は,1万分の1以下であった。以上のことから,控訴人は,原子炉建屋基礎地盤は,沈下に対して十分な安全性を有しているとの結論を得た。 〔乙6(添6-3-76,77,乙31(38〕))エ審査基準適合性以上によれば,控訴人が前記ウのとおり地盤について行った安定性評価は,前記イのとおり,地質,地盤の手引き,新耐震指針及びバックチェックルールに基づく詳細な調査の結果に基づくものであり,また,評価自体も,前記アの 控訴人が前記ウのとおり地盤について行った安定性評価は,前記イのとおり,地質,地盤の手引き,新耐震指針及びバックチェックルールに基づく詳細な調査の結果に基づくものであり,また,評価自体も,前記アの地質,地盤の手引き,新耐震指針及びバックチェックルールに基づいて行われており,不合理な点は認められないから,これらの審査基準を満たすものであり,妥当と認めるのが相当である。 (4) 水理に係る安全確保対策ア審査基準(ア)安全設計審査指針証拠〔乙9(10〕によれば,安全設計審査指針は「安全機能を),有する構築物,系統及び機器は,予想される自然現象のうち最も苛酷と考えられる条件,又は自然力に事故荷重を適切に組み合わせた場合を考慮した設計であること」を要する旨規定しているから,洪水等の陸水並びに波浪及び津波等の海象に対して,安全上支障がないことを要求していると解される。 (イ)バックチェックルール前記(2)オ(エ)e(b)で認定のとおり,バックチェックルールは,既往の津波の発生状況,活断層の分布状況及び最新の知見等を考慮して,施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性がある津波を想定し,当該津波発生時の施設への影響を適切に評価することを要- 170 -求している。 イ控訴人の行った調査,安全性評価前記(2)オ(エ)e(b)で認定した事実及び証拠〔乙6(添6-4-1ないし5,乙31(40〕によれば,控訴人は,本件原子炉の水理に関))して,耐震設計及びバックチェックの際,以下のとおり,調査,検討を行い,安全性を確認したことが認められる(なお,以下,各項目ごとに主たる証拠を掲記する。 。)(ア)陸水本件敷地は,能登半島中央部の日本海に面するなだらかな丘陵地に位置しており,本件敷地を流れる河川としては準用河川の大坪 められる(なお,以下,各項目ごとに主たる証拠を掲記する。 。)(ア)陸水本件敷地は,能登半島中央部の日本海に面するなだらかな丘陵地に位置しており,本件敷地を流れる河川としては準用河川の大坪川が,近傍河川としては準用河川の赤住川及び松戸川が存在するが,いずれの河川も集中面積は小さく,流量は少量である。 また,発電所構内の降雨水は,大部分構内排水路で集水し,海域へ排出するが,集水面積は小さく流量は少量である。 控訴人は,このような地形及び表流水の状況から判断して,洪水により原子炉施設等が影響を受けることはないとの結論を得た。 〔乙6(6-4-1〕)(イ)海象a波浪控訴人は,耐震設計に際し,沖合約500メートル,水深約15メートルの海底に超音波式波高計を設置し,平成6年7月から平成7年6月まで観測を実施したところ,観測期間内における最大波高は9. 6メートル,最大有義波高は5.4メートルであった〔乙6(添6-4-3,乙31(40。 ))〕また,控訴人は,昭和34年から昭和53年までの20年間における顕著な気象擾乱を抽出し,波浪推算を行い,水深,屈折等の変化を- 171 -考慮して,防波堤設計波高14.1メートルを求めた。控訴人は,波浪は汀線に至るまでに砕波して波高は十分に小さくなることから,この波高は,T.P.プラス11.0メートルの本件敷地上の本件原子炉施設に影響を及ぼすことはないとの結論を得た〔乙6(添6-4。 -3,乙31(40〕))b津波控訴人は,前記(2)オ(エ)e(b)で認定のとおり,バックチェックルールに基づき,津波の評価基準として,敷地前面調査海域においては補機冷却水取水口位置における呑口下端レベルT.P(東京湾平均. 海面)マイナス6.5メートルを下回らないこと,汀線から本件敷地において ルに基づき,津波の評価基準として,敷地前面調査海域においては補機冷却水取水口位置における呑口下端レベルT.P(東京湾平均. 海面)マイナス6.5メートルを下回らないこと,汀線から本件敷地においては本件敷地の標高であるT.P.プラス11.0メートルを上回らないこと,海水ポンプ室においては原子炉補機冷却水系海水ポンプの設計水位T.P.マイナス6.3メートルを下回らないことを用いるとともに,津波による二次的な影響として,取水口位置で取水に影響を与えるような多量の土砂が堆積しないかどうかを確認した。 その結果,敷地前面調査海域での津波高については,取水口位置における最低水位はT.P.マイナス3.0メートル程度,汀線から本件敷地における最大水位はT.P.プラス5.0メートル程度であり,いずれも評価基準値を満たしていることを確認するとともに,取水施設の水理特性による水位変動を考慮した海水ポンプ室での低下水位についても,T.P.マイナス5.4メートル程度と評価基準値を満たしていること,津波に伴う土砂移動についても,取水に影響を与えるものではないとの結論を得た。 ウ審査指針適合性以上によれば,控訴人が前記イのとおり水理について行った安全性評価は,前記イのとおり,バックチェックルール等に基づく詳細な調査の結果- 172 -に基づくものであり,また,評価自体も,前記アの安全設計審査指針及びバックチェックルールに基づいて行われており,不合理な点は認められないから,これらの審査基準を満たすものであり,妥当と認めるのが相当である。 平常運転時の被ばく低減に係る安全確保対策(1) 審査基準等前記第2「前提事実」の7「放射線被ばくの人体への影響」(4)で認定した事実及び証拠〔乙9(7ないし37,406ないし410,乙31(8)4〕によれば,安全設 係る安全確保対策(1) 審査基準等前記第2「前提事実」の7「放射線被ばくの人体への影響」(4)で認定した事実及び証拠〔乙9(7ないし37,406ないし410,乙31(8)4〕によれば,安全設計審査指針及び線量評価指針は,原子炉施設は,そ)の基本設計ないし基本的設計方針において,平常運転に伴って環境へ放出される放射性物質による公衆の被ばく線量を十分低く抑えること,すなわち,平常運転時における安全性を確保し得るものであることを要求していると解される。具体的には,平常運転に伴って環境に放出される放射性物質の評価が,原子力安全委員会が定めた線量評価指針に示される線量目標値である年間実効線量0.05ミリシーベルトを下回ることを求めている。 (2) 本件原子炉施設の平常運転時の被ばく低減対策証拠〔乙1(24ないし26,50,51,乙6(添8-1-1,7,)8-10-1ないし23,9-5-1ないし19,乙31(84ないし8)8〕によれば,本件原子炉施設においては,運転により生じた放射性物質)が環境へ放出される量をできるだけ少なくするため,以下のような対策が採られていることが認められる。 第一に,燃料棒内に発生した核分裂生成物等の放射性物質はできるだけ核燃料棒内に閉じ込め,第二に,冷却材中に現れた放射性物質は原子炉冷却系内に閉じ込めるとともに,これをできる限り捕捉し,第三に,原子炉冷却系外へ現れた放射性物質は,その形態に応じて適切に処理して本件原子力発電所内に貯蔵,保管することによって,放射性物質をできる限り環境へ放出し- 173 -ないようにしている。 そして,控訴人は,前記の対策が十分であるかを確認するため,本件原子炉及び本件原発1号機の各運転に伴って環境に放出される放射性物質からの放射線による周辺公衆への実効線量が年間で最大約0 にしている。 そして,控訴人は,前記の対策が十分であるかを確認するため,本件原子炉及び本件原発1号機の各運転に伴って環境に放出される放射性物質からの放射線による周辺公衆への実効線量が年間で最大約0.018ミリシーベルトにとどまることを確認した。なお,前記第2「前提事実」の7「放射線被ばくの人体への影響」(5)で判示したとおり,人間は,1人当たり平均で,年間約2.4ミリシーベルトの自然放射線を受けており,我が国における自然放射線量による実効線量の地域差は,最大で年間約0.38ミリシーベルトである。 (3) 審査基準適合性以上によれば,本件原子炉施設が安全設計審査指針等の審査基準に適合しているというためには,本件原子炉施設の平常運転に伴って環境へ放出される放射性物質の量を十分低く抑えるような対策となっていること,平常運転に伴って環境に放出される放射性物質の評価が,年間実効線量0.05ミリシーベルトを下回ることを要すると解されるところ,控訴人が前記(2)のとおり行った本件原子炉施設の平常運転時の被ばく低減対策は,平常運転に伴って環境へ放出される放射性物質の量ができる限り少なくなるようにしており,その量は,年間で最大約0.018ミリシーベルトにとどまっているから,安全設計審査指針等の審査基準を満たしており,妥当と認めるのが相当である。 事故防止に係る安全確保対策(1) 審査基準等証拠〔乙9(7ないし37,101ないし162〕によれば,安全設計)審査指針,安全評価審査指針等は,原子炉施設がその基本設計ないし基本的設計方針について,多重防護の考え方に基づき,以下のとおり,各種の事故防止対策が講じられていることを要求していることが認められる。 - 174 -すなわち,安全設計審査指針は,安全審査において,安全確保の観点から設計の妥当性 考え方に基づき,以下のとおり,各種の事故防止対策が講じられていることを要求していることが認められる。 - 174 -すなわち,安全設計審査指針は,安全審査において,安全確保の観点から設計の妥当性について判断する際の基礎を示すことを目的として定められており,信頼性に関する設計上の考慮として,①安全機能を有する構築物,系統及び機器は,その安全機能の重要度に応じて,十分に高い信頼性を確保し,かつ,維持し得る設計であること,②重要度の特に高い安全機能を有する系統については,その構造,動作原理,果たすべき安全機能の性質等を考慮して,多重性又は多様性及び独立性を備えた設計であること,③重要度の特に高い安全機能を有する系統は,その系統を構成する機器の単一故障の仮定に加え,外部電源が利用できない場合においても,その系統の安全機能が達成できる設計であることを要求している。 (2) 控訴人が行っている事故防止に係る安全確保対策ア異常発生防止対策証拠〔乙5(5,6,乙6(添8-1-2,6,41,57,8-3-)4ないし21,67ないし81,8-4-3,7,18ないし22,8-6-2,3,8-7-15ないし23,乙8(4ないし8,乙29(6,))26,乙31(54,82,83,証人B(①8ないし12,23,2))4,証人E(①3ないし5〕及び弁論の全趣旨によれば,控訴人は,放))射性物質の環境への放出につながるような事象の発生を未然に防止するため,本件原子炉施設において,以下のような異常発生防止対策を講じていることが認められる(なお,以下,各項目ごとに主たる証拠を掲記する。 。)(ア)総論本件原子炉の運転に伴って生じる主な放射性物質には,燃料の核分裂によって生じる核分裂生成物と,冷却材中の不純物等が中性子により放射化される 各項目ごとに主たる証拠を掲記する。 。)(ア)総論本件原子炉の運転に伴って生じる主な放射性物質には,燃料の核分裂によって生じる核分裂生成物と,冷却材中の不純物等が中性子により放射化されることなどによって生じる放射化生成物との2種類があるところ,本件原子炉施設においては,核分裂生成物は燃料被覆管内に,また,- 175 -放射化生成物及び燃料被覆管内から冷却材中に漏出した核分裂生成物は,運転時には原子炉冷却系内に,異常発生時には原子炉冷却材圧力バウンダリ内にそれぞれ閉じ込めることによって,放射性物質の環境への放出を防止している。したがって,異常発生防止対策としては,燃料被覆管と原子炉冷却材圧力バウンダリの健全性を確保すること,また,これらの健全性を十分な余裕をもって確保するため,原子炉を安定に制御することが必要であるところ,本件原子炉施設では,原子炉の安定した運転の維持,燃料被覆管の健全性の確保及び原子炉冷却材圧力バウンダリの健全性の確保のため,以下のような対策を採っている〔乙8(4ない。 し8,証人B(①10〕))(イ)原子炉の安定した運転の維持本件原子炉施設は,原子炉を安定に制御するために,原子炉の出力を制御する原子炉出力制御系,原子炉の圧力を制御する圧力制御系及び原子炉の水位を制御する原子炉給水制御系からなる原子炉制御系が設けられている。原子炉出力制御系は,制御棒の出し入れや原子炉冷却材再循環ポンプの回転数制御による冷却水流量の調整により原子炉の出力を制御している。圧力制御系は,蒸気加減弁及びタービンバイパス弁の開度を自動調整することにより原子炉の圧力を一定に制御している。原子炉給水制御系は,タービン駆動原子炉給水ポンプの回転数制御等により給水流量を自動調整し,原子炉の水位を一定に制御している。これらの制御 を自動調整することにより原子炉の圧力を一定に制御している。原子炉給水制御系は,タービン駆動原子炉給水ポンプの回転数制御等により給水流量を自動調整し,原子炉の水位を一定に制御している。これらの制御系は,それぞれ多重化しており,制御中の1系列が故障したとしても全く同じ機能を持つ待機中の制御系がこれをバックアップし,原子炉の安定な制御が継続できるようにしている。また,原子炉出力制御系により制御棒の引き抜き操作を行う場合,これらの制御棒周辺の中性子束を監視し,ある定められた値以上になると自動的に制御棒の引き抜きを停止するなどのインターロック(機器の誤操作や誤作動を防止するため,- 176 -あるいは機器の一連の動作を自動的に行わせるため,機器が一定の条件を満たしたときに限って作動するように,他の機器からの電気的ないし機械的な情報伝達機構等と連動させたシステム)を設け,原子炉が異常。 な状態になるのを未然に防止している〔乙8(5,証人B(①10な。 )いし12〕)さらに,原子炉出力,原子炉圧力及び原子炉水位をいずれも集中的に監視,制御できるようにするため,原子炉制御系の計測制御装置を中央制御室に配置している。この制御盤は,運転操作が円滑に遂行でき,かつ,運転員の誤操作及び誤判断を防止できるようにするため,系統ごとに集中して操作及び監視ができるように複数のフラットディスプレイを設置するとともに,大型の表示盤に重要なプラント情報を表示することにより運転員全員が情報を共有することができるようにするなどの人間工学的な配慮を行っている〔乙5(5,6,乙6(添8-7-15な。 )いし23〕)(ウ)燃料被覆管の健全性の確保a総論本件原子力発電所において使用する燃料被覆管については,①沸騰遷移(燃料棒の熱出力が冷却材の冷却能力を上回 乙6(添8-7-15な。 )いし23〕)(ウ)燃料被覆管の健全性の確保a総論本件原子力発電所において使用する燃料被覆管については,①沸騰遷移(燃料棒の熱出力が冷却材の冷却能力を上回ることにより,燃料被覆管の表面が蒸気膜で覆われた状態になること。この状態が発生すると,燃料被覆管から冷却材に伝えることのできる熱量が少なくなり,燃料被覆管の温度が上昇する)による燃料被覆管の焼損防止,②。 燃料ペレットの膨張による燃料被覆管の機械的損傷防止,③燃料ペレットから浸出した気体状の核分裂生成物による内圧や冷却材による外圧等による燃料被覆管の損傷防止,④冷却材中の不純物等に起因する化学的腐食による燃料被覆管の損傷防止などについて,以下のとおり安全上の対策が採られている〔乙8(6。 )〕- 177 -b沸騰遷移に対する健全性の確保燃料被覆管の表面で沸騰遷移を生じさせる燃料集合体出力に対して,実際の燃料集合体出力が7パーセント下回っていれば,沸騰遷移が生じないことが知られていることから,本件原子炉施設では,沸騰遷移が生じないようにするため,炉心の設計に際し,最小限界出力比(燃料被覆管の表面で沸騰遷移を生じさせる燃料集合体出力を,実際の燃料集合体で除した値である限界出力比のうち,最も小さな値)1. 。 07を許容限界とするとともに,実際の運転に際しては,最小限界出力比を1.22以上とすることとしている〔乙6(添8-1-6,41,8-3-69,70,乙8(6,乙31(54,弁論の全趣)))旨。 〕c燃料ペレット膨張に対する機械的な健全性の確保本件原子炉施設では,燃料ペレットの膨張による燃料被覆管の機械的損傷を防止するため,線出力密度(燃料棒の単位長さ当たりの出力)の最大値を,燃料被覆管が燃料ペレットの膨張により機械的 的な健全性の確保本件原子炉施設では,燃料ペレットの膨張による燃料被覆管の機械的損傷を防止するため,線出力密度(燃料棒の単位長さ当たりの出力)の最大値を,燃料被覆管が燃料ペレットの膨張により機械的に損。 傷する可能性のある1メートル当たり約75キロワットより低い1メートル当たり44キロワット以下で運転することとしている〔乙6(添8-1-6,8-3-69,70,乙8(6。 ))〕d内圧や外圧等に対する機械的な健全性の確保本件原子炉施設では,燃料ペレットから浸出した気体状の核分裂生成物による内圧や冷却材による外圧等による燃料被覆管の損傷を防止するため,これらの圧力に十分耐え得る強度の燃料被覆管を使用するとともに,気体状の核分裂生成物の蓄積等によって内圧が過大とならないようにその上部又は下部に十分な空間(プレナム)を設けている〔乙6(添8-3-6,乙8(6。 ))〕e化学的腐食に対する燃料被覆管の健全性の確保- 178 -本件原子炉施設では,冷却材中の不純物等に起因する化学的腐食による燃料被覆管の損傷を防止するため,燃料被覆管に耐食性に優れたジルコニウム合金を材料として用いるとともに,冷却材中の不純物等を除去することによって冷却材の水質を高純度に維持するため,原子炉冷却材浄化系及び復水浄化系を設けている〔乙6(添8-3-5,6,8-4-18ないし22,8-6-2,3,乙8(6。 ))〕f異物に対する健全性の確保本件原子炉施設では,燃料集合体の冷却材入口に異物フィルタを設け,燃料被覆管損傷の原因となり得る異物が燃料集合体内に侵入することを防止するとともに,建設時の異物管理において,原子炉につながる系統において異物の発生源となるワイヤブラシを原則として使用しないなど,異物混入管理を行っている〔乙29(6,26,証人 に侵入することを防止するとともに,建設時の異物管理において,原子炉につながる系統において異物の発生源となるワイヤブラシを原則として使用しないなど,異物混入管理を行っている〔乙29(6,26,証人)E(①3ないし5。 )〕gその他の健全性の確保本件原子炉施設では,使用する燃料被覆管について,その製造工程において,超音波探傷試験,ヘリウム漏えい試験などにより燃料被覆管の健全性を確認するとともに,運転を開始した後も,冷却材中の放射能を監視することなどにより,常時燃料被覆管の健全性を確認している〔乙6(添8-3-18,乙8(6。 ))〕(エ)原子炉冷却材圧力バウンダリの健全性の確保a総論原子炉冷却材圧力バウンダリは,前記(ア)のとおり,異常発生時に放射性物質をその中に閉じ込めることによって,放射性物質の環境への放出を防止するという重要な機能を果たしていることから,本件原子炉施設では,原子炉冷却材圧力バウンダリについて,①過大な圧力による原子炉冷却材圧力バウンダリの機械的損傷防止,②原子炉- 179 -圧力容器の中性子照射脆化による損傷防止,③冷却材中の不純物等に起因する原子炉冷却材圧力バウンダリの損傷防止,④応力腐食割れによる原子炉冷却材圧力バウンダリの損傷防止などについて,以下のとおり,安全上の対策が採られている〔乙6(添8-1-57,8-4-3,乙8(7。 ))〕b機械的な健全性の確保本件原子炉施設では,過大な圧力により原子炉冷却材圧力バウンダリが機械的な損傷を被ることを防止するため,原子炉冷却材圧力バウンダリ内の圧力がほぼ一定となる(過大とならない)ように圧力制御. 系を設けるとともに,原子炉冷却材圧力バウンダリは,運転圧力約71メガパスカルよりも高い約8.6メガパスカルに耐え得る強度とし ウンダリ内の圧力がほぼ一定となる(過大とならない)ように圧力制御. 系を設けるとともに,原子炉冷却材圧力バウンダリは,運転圧力約71メガパスカルよりも高い約8.6メガパスカルに耐え得る強度としている。なお,原子炉冷却材圧力バウンダリ内の圧力が最も高くなる事故である「原子炉冷却材流量の喪失」解析では,その最高圧力は,約8.5メガパスカルとなっている〔乙6(添8-1-57,8-4。 -3,乙8(7,証人B(①23,24。 )))〕c中性子照射に起因する脆化に対する健全性の確保本件原子炉施設では,原子炉圧力容器の中性子照射脆化による損傷を防止するため,原子炉圧力容器の材料として,延性が高くかつ中性子照射による脆性遷移温度の上昇の程度が小さいものを使用するとともに,運転開始後は,原子炉圧力容器の温度をその脆性遷移温度よりも十分高く維持し,原子炉圧力容器と同一の材料から採取した試験片を原子炉圧力容器内壁に挿入し,この試験片を検査することにより脆性遷移温度の変化を把握している〔乙8(7。 )〕d化学的腐食に対する健全性の確保本件原子炉施設では,冷却材中の不純物等に起因する原子炉冷却材圧力バウンダリの損傷を防止するため,原子炉圧力容器内面の冷却材- 180 -と接する部分に,耐食性に優れたステンレス鋼等の内張り材を設けており,また,原子炉冷却材浄化系及び復水浄化系により腐食の要因となる冷却材中の塩素等の不純物を除去するとともに,復水器で溶存酸,素を脱気するなどの水質管理を行っている〔乙6(添8-4-3,718ないし22,8-6-2,3,乙8(7。 ))〕e応力腐食割れに対する健全性の確保本件原子炉施設では,材料,引張応力及び水質環境の三つの要因が重なることにより発生する応力腐食割れによる原子炉冷却材圧力バウ,ン ,3,乙8(7。 ))〕e応力腐食割れに対する健全性の確保本件原子炉施設では,材料,引張応力及び水質環境の三つの要因が重なることにより発生する応力腐食割れによる原子炉冷却材圧力バウ,ンダリの損傷を防止するため,原子炉冷却材圧力バウンダリの材料に応力腐食割れを起こしにくい低炭素ステンレス鋼等を用い,また,溶接時の入熱量を減らすなどの適切な溶接管理等により残留応力の低減を図るとともに,原子炉の起動前に冷却材中の溶存酸素濃度を低減するなどの水質管理を行っている〔乙6(添8-4-3,7,乙8)(8。 )〕fその他の健全性の確保本件原子炉施設では,原子炉冷却材圧力バウンダリに使用する機器及び配管について,素材の段階で超音波探傷試験等を,その溶接部については放射線透過試験,耐圧試験等を,それぞれ行ってその健全性を確認するとともに,運転開始後も,漏えい監視設備により原子炉冷却材圧力バウンダリからの漏えいの有無を監視し,定期検査時には,超音波探傷試験等により健全性を確認している〔乙8(8。 )〕イ異常拡大防止対策(ア)総論証拠〔乙5(5,6,乙6(添8-4-4,8-7-6,8,9,1)5ないし23,34ないし43,85,乙8(8ないし10,証人B))(①12,13〕によれば,控訴人は,前記アの異常発生防止対策に)- 181 -もかかわらず,何らかの異常が発生した場合に対処するため,その異常な状態が拡大したり,あるいは放射性物質を放出するような事故に至るのを防止するため,以下のような異常拡大防止対策を講じていることが認められる(なお,以下,各項目ごとに主たる証拠を掲記する。 。)(イ)異常発生の検知本件原子力発電所には,何らかの異常が発生した場合,この異常の発生を早期にかつ確実に検知する各種の計測装置が 認められる(なお,以下,各項目ごとに主たる証拠を掲記する。 。)(イ)異常発生の検知本件原子力発電所には,何らかの異常が発生した場合,この異常の発生を早期にかつ確実に検知する各種の計測装置が設置されている。 具体的には,原子炉出力,原子炉圧力及び原子炉水位の変化については,それぞれ原子炉核計装系,原子炉圧力計及び原子炉水位計により,検知することとしている。また,燃料被覆管からの核分裂生成物の漏えいについては,主蒸気管モニタ及び蒸気式空気抽出器排ガスモニタ等により放射線レベルを監視することにより,検知することとしている。さらに,原子炉冷却材圧力バウンダリからの冷却材の漏えいについては,原子炉格納容器の底部に設けたサンプ(溜め升)の水量や原子炉格納容器内雰囲気中の放射線レベル等を監視することにより,検知することとしている〔乙6(添8-4-4,8-7-6,8,9,34ないし43,。 85,乙8(8,9,乙31(82,83〕)))また,異常を検知した場合,中央制御室にその程度に応じた警報を発する装置を設け,運転員によって速やかに原子炉の停止等必要な措置が採れるようにしている〔乙5(5,6,乙6(添8-7-15ないし2)3,乙8(8,9,乙31(83。 )))〕(ウ)安全保護設備の設置a総論証拠〔乙6(添8-3-32ないし44,8-4-9,10,30ないし35,8-7-2ないし14,乙8(9,10,16,証))人B(①30ないし33〕によれば,控訴人は,本件原子力施設に)- 182 -おいて,異常が発生し,それに対して迅速な措置を講じなければ燃料被覆管あるいは原子炉冷却材圧力バウンダリの健全性に重大な影響を,及ぼすおそれのある場合に備えて,以下のとおり,原子炉緊急停止系原子炉隔離時冷却系及び主蒸気系の逃 して迅速な措置を講じなければ燃料被覆管あるいは原子炉冷却材圧力バウンダリの健全性に重大な影響を,及ぼすおそれのある場合に備えて,以下のとおり,原子炉緊急停止系原子炉隔離時冷却系及び主蒸気系の逃がし安全弁等からなる安全保護設備を設置していることが認められる(なお,以下,各項目ごとに主たる証拠を掲記する。 。)b原子炉緊急停止系原子炉緊急停止系は,原子炉の水位が異常に低下したり,原子炉の出力又は圧力が異常に上昇した場合等に,全制御棒を自動的かつ速やかに挿入することによって,原子炉の出力を低下させ,燃料ペレット,及び燃料被覆管の温度の異常な上昇等を抑制するものであり,制御棒制御棒駆動機構及び制御棒駆動水圧系から構成される。 原子炉緊急停止系は,安全保護系によって作動するが,安全保護系は,これを構成する検出器,論理回路等に,同じ機能を有するものを二つ以上設けており,多重性を有している。また,多重に設けた各機器等は,運転状態の変動(例えば,機器に供給される電源の喪失)があっても,同時に故障したり,一つの機器に故障が生じても,その影響を受けて他の機器が故障したりすることがないよう独立性が維持されている。さらに,安全保護系の多重故障により原子炉が停止できないような事態が発生することを防止するため,安全保護系とは別の信号によって制御棒を挿入させる機能を設けている。 また,原子炉緊急停止系には,電源が何らかの原因で喪失した場合に制御棒が即時かつ自動的に炉心に挿入され,原子炉を停止させることができるという,いわゆるフェイルセーフ機能が設けられている。 〔乙6(添8-3-32ないし44,8-7-2ないし14,乙8)(9,10,16,証人B(①30ないし33〕))- 183 -c原子炉隔離冷却系本件原子炉施設では,原子炉の停止後何ら 。 〔乙6(添8-3-32ないし44,8-7-2ないし14,乙8)(9,10,16,証人B(①30ないし33〕))- 183 -c原子炉隔離冷却系本件原子炉施設では,原子炉の停止後何らかの原因によって給水系のポンプ等が停止し,原子炉圧力容器内への給水ができなくなって原子炉の水位が低下するような状態が発生した場合に備えて,原子炉隔離時冷却系を設けている。原子炉隔離時冷却系のポンプは,炉心の崩壊熱等で発生する蒸気の一部を用いた専用のタービンによって駆動するため,外部電源を必要としない設計となっている〔乙6(添8-4。 -30ないし35〕)d主蒸気系の逃がし安全弁本件原子炉施設では,原子炉圧力容器内の圧力が異常に上昇した場,合に備えて,主蒸気系に逃がし安全弁を設けている。逃がし安全弁は原子炉冷却材圧力バウンダリ内の蒸気を自動的にサプレッションチェンバ内のプール水中に放出することにより減圧し,原子炉冷却材圧力バウンダリの過圧による損傷を防止するものである。 逃がし安全弁は,原子炉の圧力高の信号により強制的に弁を開放する逃がし弁機能と,逃がし弁機能のバックアップとして,圧力の上昇に伴いバネの力に打ち勝って自動的に開放する安全弁機能とを有しており,後者の安全弁機能はその作動に電源等を必要としない設計となっている。なお,逃がし安全弁は,後記ウ(イ)の非常用炉心冷却系の一部として,原子炉冷却材喪失時に強制的に開放して原子炉の圧力を速やかに低下させ,低圧注水系の早期の注入を促す自動減圧機能も有している。 〔乙6(添8-4-9,10〕)ウ放射性物質異常放出防止対策(ア)総論証拠〔乙6(添8-4-36ないし43,8-5-1ないし14,乙)- 184 -8(10ないし12,18,19,添図9,証人B(①17,18〕) ウ放射性物質異常放出防止対策(ア)総論証拠〔乙6(添8-4-36ないし43,8-5-1ないし14,乙)- 184 -8(10ないし12,18,19,添図9,証人B(①17,18〕))によれば,控訴人は,前記イの異常拡大防止対策が功を奏しない場合に放射性物質の環境への異常な放出を防止するため,放射性物質異常放出防止対策として,以下のようにECCS(非常用炉心冷却系,原子炉格)納容器及びその附属設備,非常用ガス処理系等からなる工学的安全施設を設けている事実が認められる(なお,以下,各項目ごとに主たる証拠を掲記する。 。)(イ)ECCS(非常用炉心冷却系)本件原子炉施設では,原子炉冷却材圧力バウンダリを構成するいかなる配管の破断等が生じても,燃料被覆管の重大な損傷を防止するため,原子炉内に緊急に水を注入するECCS(非常用炉心冷却系)を設けている。具体的には,低圧注水系3系統,高圧炉心注水系2系統,原子炉隔離時冷却系1系統及び自動減圧系(原子炉圧力容器の逃がし安全弁18個のうち8個からなるもので,原子炉圧力を速やかに低下させて低圧注水系の注入を可能とする系)1系統を設けている。このうち,自動減。 圧系は,高圧時の対応能力の強化を目的として,起動信号が出てから30秒で作動するようにされている。また,これらの注水系は,物理的,電気的に独立した三つの区分それぞれに高圧系及び低圧系を1系統づつ配置している。そして,原子炉冷却材喪失時の事故解析においては,高圧炉心注水系配管の破断事故を想定し,更に破断配管とは別区分のECCS(高圧炉心注水系1系統及び低圧注水系1系統)が動作しないなどの仮定の下でも,事故後,炉心は常に冠水しており,また,燃料被覆管の最高温度が摂氏約600度にとどまり,事故時の判断基準摂氏1200度以下を 圧炉心注水系1系統及び低圧注水系1系統)が動作しないなどの仮定の下でも,事故後,炉心は常に冠水しており,また,燃料被覆管の最高温度が摂氏約600度にとどまり,事故時の判断基準摂氏1200度以下を満足するものであることを確認している〔乙6(添8-4-。 36ないし43,乙8(11,18,19,証人B(①17,18,)))証人E(①19ないし24〕)- 185 -(ウ)原子炉格納容器及びその附属設備本件原子炉施設では,仮に原子炉冷却材圧力バウンダリから放射性物質が放出されても,これを閉じ込めることができるように,極めて気密性の高い,鋼製ライナを内張した鉄筋コンクリート造の原子炉格納容器を設けるとともに,可燃性ガス濃度制御系及び格納容器スプレイ冷却系からなる附属設備を設けている。 原子炉格納容器は,原子炉圧力容器等を取り囲むドライウェル,サプレッションチェンバ等で構成し,サプレッションチェンバには水を貯蔵している。また,原子炉格納容器を貫通する配管には,隔離弁を設けている。原子炉冷却材圧力バウンダリを構成する配管の破断等があった場,合,ドライウェル内に放出された冷却材は,蒸気と水の混合物となるがこの蒸気は,サプレッションチェンバ内のプール水により冷却し凝縮されることによってドライウェル内の圧力の上昇を抑制する設計となっている。また,原子炉冷却材喪失事故が発生した場合,原子炉水位低やドライウェル圧力高等の信号によって隔離弁を自動的に閉鎖し,ドライウェル内に放出された放射性物質を閉じ込める設計となっている。 原子炉格納容器の附属設備たる可燃性ガス濃度制御系は,原子炉冷却材喪失時において,燃料被覆管における水-ジルコニウム反応等により発生した水素ガス等を再結合器で水に戻し,原子炉格納容器内の水素ガス等の濃度を一定以下に保つこと る可燃性ガス濃度制御系は,原子炉冷却材喪失時において,燃料被覆管における水-ジルコニウム反応等により発生した水素ガス等を再結合器で水に戻し,原子炉格納容器内の水素ガス等の濃度を一定以下に保つことによって,これらが急激に反応することを防止する設計となっている。また,格納容器スプレイ冷却系は,原子炉冷却材喪失時において,サプレッションチェンバ内のプール水を原子炉格納容器内にスプレイし,内部の温度,圧力を低減させることによって,その健全性を確保するとともに,原子炉格納容器内部に放出された気相中のよう素を除去する設計となっている。 〔乙6(添8-5-1ないし13,乙8(11,12,証人B(①3))- 186 -6ないし40〕)(エ)非常用ガス処理系本件原子炉施設では,原子炉格納容器から放射性物質が原子炉棟内に漏れ出た場合,これを捕捉するための設備として,非常用ガス処理系を設けている〔乙6(添8-5-14,乙8(12。 ))〕(3) 安全設計評価証拠〔乙6(添10-1-1ないし26,10-2-1ないし55,10-3-1ないし80,乙8(10,12,13,乙9(101ないし1))62,乙29,乙31(89ないし122,証人B(①14ないし1))8〕によれば,控訴人は,安全評価審査指針に基づき,前記の事故防止に)係る安全確保対策(異常発生防止対策,異常拡大防止対策,放射性物質異常放出防止対策)について以下のとおり解析評価を行っている事実が認められる(なお,以下,各項目ごとに主たる証拠を掲記する。 。)ア運転時の異常な過渡変化として想定される事象について(ア)想定される事象安全評価審査指針は,運転時の異常な過渡変化(原子炉の運転中において,原子炉施設の寿命期間中に予想される機器の単一の故障若しくは誤動作又は運 変化として想定される事象について(ア)想定される事象安全評価審査指針は,運転時の異常な過渡変化(原子炉の運転中において,原子炉施設の寿命期間中に予想される機器の単一の故障若しくは誤動作又は運転員の単一の誤操作,及びこれらと類似の頻度で発生すると予想される外乱によって生ずる異常な状態に至る事象をいう)とし。 て評価の対象とすべき事象を,以下のとおり規定しており,これらの各事象について事業者が解析を実施し,炉心の損傷がないこと,通常運転に復帰できる状態で事象が収束されることを確認することを求めている〔乙9(102,103,116,117,乙31(89,90。 ))〕a炉心内の反応度又は出力分布の異常な変化具体的には,①原子炉起動時における制御棒の異常な引き抜き,②出力運転中の制御棒の異常な引き抜きである。 - 187 -b炉心内の熱発生又は熱除去の異常な変化具体的には,①原子炉冷却材流量の部分喪失,②原子炉冷却系の停止ループの誤起動,③外部電源喪失,④給水加熱喪失,⑤原子炉冷却材流量制御系の誤動作である。 c原子炉冷却材圧力又は原子炉冷却材保有量の異常な変化具体的には,①負荷の喪失,②主蒸気隔離弁の誤閉止,③給水制御系の故障,④原子炉圧力制御系の故障,⑤給水流量の全喪失である。 (イ)判断基準安全評価審査指針で示された判断基準は,以下のとおりである〔乙6(添10-1-5,10-2-10,乙9(103,104,271)ないし335,乙31(89,90。 ))〕a最小限界出力比が許容限界値1.07以上であること。 b燃料被覆管は機械的に破損しないこと,すなわち,燃料被覆管の円周方向の平均塑性歪が1パーセント(以下「1パーセント塑性歪」という。これは,表面熱流束171パーセントに相当する) 以上であること。 b燃料被覆管は機械的に破損しないこと,すなわち,燃料被覆管の円周方向の平均塑性歪が1パーセント(以下「1パーセント塑性歪」という。これは,表面熱流束171パーセントに相当する)以下であ。 ること。 c燃料エンタルピ(燃料の中に蓄えられている熱エネルギー量)が「発電用軽水型原子炉施設の反応度投入事象に関する評価指針(以」下「反応度投入事象評価指針」という)に示された燃料の許容設計。 限界(浸水燃料の破裂による衝撃圧力等の発生によっても,原子炉停止能力及び原子炉圧力容器の健全性を損なわないこと)以下であること。 d圧力バウンダリに掛かる圧力は,最高使用圧力(8.62メガパスカル)の1.1倍(9.48メガパスカル)以下であること。 (ウ)控訴人の解析結果- 188 -a炉心内の反応度又は出力分布の異常な変化(a)原子炉起動時における制御棒の異常な引き抜き控訴人は,原子炉起動時における制御棒の異常な引き抜きを想定して解析したところ,制御棒を引き抜いていくと中性子束が増加し,約10秒後に原子炉周期単制御棒引抜阻止信号で制御棒の引き抜きが阻止され,約26秒後に原子炉はスクラムすることを確認した。 そして,控訴人は,前記過渡変化において投入される反応度は,約0.65ドルにとどまり,また,原子炉出力の上昇も緩やかであることから,燃料エンタルピは,反応度投入事象評価指針に示された燃料の許容設計限界には至らないと評価した。また,控訴人は,原子炉出力は定格値の約1.8×10に上昇するにとどまり,原子-4炉内圧力の上昇はほとんどなく,圧力バウンダリに掛かる圧力が最高使用圧力の1.1倍以下であることを確認した〔乙6(添10。 -2-8ないし10,乙31(90,91〕))(b)出力運転中の制御棒の異常な引き抜き控 どなく,圧力バウンダリに掛かる圧力が最高使用圧力の1.1倍以下であることを確認した〔乙6(添10。 -2-8ないし10,乙31(90,91〕))(b)出力運転中の制御棒の異常な引き抜き控訴人は,出力運転中の制御棒の異常な引き抜きとして,制御棒1本の引き抜きを想定して解析したところ,制御棒を引き抜いていくと引抜制御棒近傍の出力が上昇し,制御棒引抜監視装置がこれを検出して定格時の105パーセントのところで制御棒引抜阻止信号が出され,制御棒の引き抜きが阻止されることを確認した。そして,控訴人は,前記過渡変化を通じて,①最小限界出力比は1.09にとどまり,許容限界値を下回ることがないこと,②燃料棒の表面熱流束の最大値は定格値の約120パーセントであり,1パーセント塑性歪を与えるまでには十分に余裕があることから,燃料被覆管が機械的に破損しないこと,③原子炉平均出力の上昇は3パーセント程度にとどまり,原子炉圧力の上昇はほとんどなく,圧力バ- 189 -ウンダリに掛かる圧力が最高使用圧力の1.1倍以下であること,を確認した〔乙6(添10-2-11ないし13,乙31(9。 )1,92〕)b炉心内の熱発生又は熱除去の異常な変化(a)原子炉冷却材流量の部分喪失控訴人は,原子炉の出力運転中に再循環ポンプ3台の電源が喪失し,炉心流量が減少する場合を想定して解析したところ,再循環ポンプ3台がトリップすることにより,炉心流量は急速に減少し,ボイド(減速材の蒸気泡)が急増し,ボイドの増加によって原子炉水位は上昇するが,原子炉水位高(レベル8)によるタービントリップには至らず,原子炉はスクラムしないことを確認した。そして,控訴人は,前記過渡変化を通じて,①最小限界出力比は1.16以上であり,許容限界値を下回ることがないこと,② 8)によるタービントリップには至らず,原子炉はスクラムしないことを確認した。そして,控訴人は,前記過渡変化を通じて,①最小限界出力比は1.16以上であり,許容限界値を下回ることがないこと,②表面熱流束は初期値を超えることがないことから,燃料被覆管が機械的に破損しないこと,③原子炉圧力は,約7.18メガパスカルにとどまり,圧力バウンダリに掛かる圧力が最高使用圧力の1.1倍以下であること,を確認した〔乙6(添10-2-14,15,乙3。 )1(94〕)(b)外部電源喪失控訴人は,原子炉の出力運転中の外部電源の喪失として,所内補機への常用電源の供給が失われる発電機負荷遮断を想定して解析を行ったところ,発電機の出力負荷アンバランス検出回路の信号で蒸気加減弁が急速閉止し,瞬時に蒸気加減弁急速閉信号が発生して原子炉はスクラムすることを確認した。そして,控訴人は,前記過渡変化を通じて,①最小限界出力比は1.15以上であり,許容限界値を下回ることがないこと,②表面熱流束は初期値を超えるこ- 190 -とがないことから,燃料被覆管が機械的に破損しないこと,③原子炉圧力は約8.00メガパスカルにとどまり,圧力バウンダリに掛かる圧力が最高使用圧力の1.1倍以下であること,を確認した。 〔乙6(添10-2-16ないし18,乙31(92,93〕))(c)給水加熱喪失控訴人は,原子炉の出力運転中に給水加熱器への蒸気流量が喪失して,給水温度が徐々に低下し,炉心入口サブクーリングの増加により原子炉出力が上昇する場合を想定して解析を行ったところ,約83秒で中性子束高(熱流束相当)信号が発生し原子炉がスクラムすることを確認した。そして,控訴人は,前記過渡変化を通じて,①最小限界出力比は1.07以上であり,許容限界値を下回ることが ころ,約83秒で中性子束高(熱流束相当)信号が発生し原子炉がスクラムすることを確認した。そして,控訴人は,前記過渡変化を通じて,①最小限界出力比は1.07以上であり,許容限界値を下回ることがないこと,②表面熱流束の最大値は定格値の約118パーセントであり,1パーセント塑性歪を与えるまでには十分に余裕があることから,燃料被覆管が機械的に破損しないこと,③原子炉圧力は約7.21メガパスカルにとどまり,圧力バウンダリに掛かる圧力が最高使用圧力の1.1倍以下であること,を確認した〔乙。 6(添10-2-19,20,乙31(93,94〕))(d)原子炉冷却材流量制御系の誤動作控訴人は,原子炉の出力運転中に原子炉冷却材の再循環流量制御系の故障等により,再循環流量が増加し,原子炉出力が上昇する場合を想定して解析を行ったところ,再循環流量制御系の誤動作による炉心流量の増加に伴い出力も増加するが,燃料の熱伝達遅れによって,表面熱流束の増加は炉心流量の増加に比較して緩やかなものとなり,中性子束が増加し,約10秒後に中性子束高信号が発生して原子炉はスクラムすることを確認した。そして,控訴人は,前記過渡変化を通じて,①最小限界出力比は1.15以上であり,許- 191 -容限界値を下回ることがないこと,②表面熱流束の最大値は定格値の約103パーセントであり,1パーセント塑性歪を与えるまでには十分に余裕があることから,燃料被覆管が機械的に破損しないこと,③原子炉圧力は約7.15メガパスカルにとどまり,圧力バウンダリに掛かる圧力が最高使用圧力の1.1倍以下であること,を確認した〔乙6(添10-2-21,22,乙31(94〕。 ))c原子炉冷却材圧力又は原子炉冷却材保有量の異常な変化(a)負荷の喪失控訴人は,原子炉の出力運転 の1.1倍以下であること,を確認した〔乙6(添10-2-21,22,乙31(94〕。 ))c原子炉冷却材圧力又は原子炉冷却材保有量の異常な変化(a)負荷の喪失控訴人は,原子炉の出力運転中に発電機負荷遮断が生じ,蒸気加減弁が急速に閉止し,原子炉圧力が上昇する場合を想定して解析を行ったところ,タービンバイパス弁不作動の場合,発電機負荷遮断が生じると,発電機の出力負荷アンバランス検出回路の信号で蒸気加減弁が急速閉止し,瞬時に蒸気加減弁急速閉信号が発生して原子炉がスクラムすることを確認した。そして,控訴人は,前記過渡変化を通じて,①最小限界出力比は1.10以上であり,許容限界値を下回ることがないこと,②表面熱流束は初期値を超えることがないことから,燃料被覆管が機械的に破損しないこと,③原子炉圧力は約8.29メガパスカルにとどまり,圧力バウンダリに掛かる圧力が最高使用圧力の1.1倍以下であること,を確認した。 〔乙6(添10-2-23ないし25,乙31(95〕))(b)主蒸気隔離弁の誤閉止控訴人は,原子炉の出力運転中に主蒸気隔離弁が誤閉止し,原子炉圧力が上昇する場合を想定して解析を行ったところ,約0.3秒で主蒸気隔離弁が10パーセント閉止すると,主蒸気隔離弁閉信号が発生し原子炉がスクラムするとともに,主蒸気隔離弁の閉止に伴い原子炉圧力が上昇するが,逃がし安全弁が作動することにより原- 192 -子炉圧力の上昇が抑えられることを確認した。そして,控訴人は,前記過渡変化を通じて,①最小限界出力比は初期値を下回ることがないこと,②表面熱流束は初期値を超えることがないことから,燃料被覆管が機械的に破損しないこと,③原子炉圧力は約8.05メガパスカルにとどまり,圧力バウンダリに掛かる圧力が最高使用圧力の1.1倍以下 と,②表面熱流束は初期値を超えることがないことから,燃料被覆管が機械的に破損しないこと,③原子炉圧力は約8.05メガパスカルにとどまり,圧力バウンダリに掛かる圧力が最高使用圧力の1.1倍以下であること,を確認した〔乙6(添10-。 2-26,27,乙31(95,96〕))(c)給水制御系の故障控訴人は,原子炉の出力運転中に原子炉給水制御系の故障等により,給水流量が急激に増加し,炉心入口サブクーリングの増加によってボイドが減少し,原子炉出力が上昇する場合を想定して解析を行ったところ,原子炉水位は原子炉水位高(レベル8)に達し,タービンがトリップし,これにより約11秒後に主蒸気止め弁閉信号が発生して,原子炉がスクラムするとともに,10台の再循環ポンプのうち4台がトリップし,タービンバイパス弁及び逃がし安全弁が作動することを確認した。そして,控訴人は,前記過渡変化を通じて,①最小限界出力比は1.12以上であり,許容限界値を下回ることがないこと,②表面熱流束の最大値は定格値の約106パーセントであり,1パーセント塑性歪を与えるまでには十分に余裕があることから,燃料被覆管が機械的に破損しないこと,③原子炉圧力は約8.02メガパスカルにとどまり,圧力バウンダリに掛かる圧力が最高使用圧力の1.1倍以下であること,を確認した。 〔乙6(添10-2-28,29,乙31(96〕))(d)原子炉圧力制御系の故障控訴人は,原子炉の出力運転中に圧力制御装置に主蒸気流量を最大とするような最大出力信号の誤信号が発生する場合を想定して解- 193 -析を行ったところ,主蒸気流量の増加により原子炉圧力は低下し,このためボイドが増加し,中性子束が減少するとともに,タービン入口圧力低によって主蒸気隔離弁が閉止し,約8.2秒後に主蒸気隔離 93 -析を行ったところ,主蒸気流量の増加により原子炉圧力は低下し,このためボイドが増加し,中性子束が減少するとともに,タービン入口圧力低によって主蒸気隔離弁が閉止し,約8.2秒後に主蒸気隔離弁閉信号によって原子炉はスクラムすることを確認した。そして,控訴人は,前記過渡変化を通じて,①最小限界出力比は初期値を下回ることがないこと,②表面熱流束は初期値を超えることがないことから,燃料被覆管が機械的に破損しないこと,③原子炉圧力は,約7.72メガパスカルにとどまり,圧力バウンダリに掛かる圧力が最高使用圧力の1.1倍以下であること,を確認した。 〔乙6(添10-2-30ないし32,乙31(96,97〕))(e)給水流量の全喪失控訴人は,原子炉の出力運転中に部分的な給水流量の減少又は全給水流量の喪失が起こり,原子炉水位が低下する場合を想定して解析を行ったところ,給水流量が喪失すると,原子炉圧力容器への流入給水量と流出蒸気量との不整合により,原子炉水位は急速に低下し,約7.0秒後に原子炉水位低(レベル3)信号が発生して原子炉はスクラムし,10台の再循環ポンプのうち4台がトリップし,更に水位が低下すると原子炉水位低(レベル2)により残り6台の再循環ポンプがトリップすることを確認した。そして,控訴人は,前記過渡変化を通じて,①最小限界出力比は初期値を下回ることがないこと,②表面熱流束は初期値を超えることがないことから,燃料被覆管が機械的に破損しないこと,③原子炉圧力は,初期値を超えることはなく,圧力バウンダリに掛かる圧力が最高使用圧力の1.1倍以下であること,を確認した〔乙6(添10-2-3。 3,34,乙31(97,98〕))イ事故の想定について- 194 -(ア)想定される事象安全評価審査指針は,事故( 圧力の1.1倍以下であること,を確認した〔乙6(添10-2-3。 3,34,乙31(97,98〕))イ事故の想定について- 194 -(ア)想定される事象安全評価審査指針は,事故(運転時の異常な過渡変化」を超える異「常な状態であって,発生する頻度はまれであるが,発生した場合は原子炉施設からの放射性物質の放出の可能性があり,原子炉施設の安全性を評価する観点から想定する必要のある事象をいう)として評価の対象。 とすべき事象を,以下のとおり規定しており,これらの各事象について事業者が解析を実施し,炉心の溶融あるいは著しい損傷のおそれがなく,かつ,他の異常状態の原因となるような二次的損傷がないこと,放射性物質の放射に対する障壁の設計が妥当であることを確認することを求めている〔乙9(102ないし104,117,乙31(100。 ))〕a原子炉冷却材の喪失又は炉心冷却状態の著しい変化具体的には,①原子炉冷却材喪失,②原子炉冷却材流量の喪失,③原子炉冷却材ポンプの軸固着である。 b反応度の異常な投入又は原子炉出力の急激な変化具体的には,制御棒落下である。 c環境への放射性物質の異常な放出具体的には,①放射性気体廃棄物処理施設の破損,②主蒸気管破断,③燃料集合体の落下,④原子炉冷却材喪失,⑤制御棒落下である。 d原子炉格納容器内圧力,雰囲気等の異常な変化具体的には,①原子炉冷却材喪失,②可燃性ガスの発生,③動荷重の発生である。 (イ)判断基準安全評価審査指針で示された判断基準は,以下のとおりである〔乙6(添10-1-7,8,乙9(104,271ないし335,乙3))1(100,101。 )〕- 195 -a炉心は著しい損傷に至ることなく,かつ十分な冷却が可能であること。 b燃料エ (添10-1-7,8,乙9(104,271ないし335,乙3))1(100,101。 )〕- 195 -a炉心は著しい損傷に至ることなく,かつ十分な冷却が可能であること。 b燃料エンタルピは,反応度投入事象評価指針に示された制限値を超えないこと。 c圧力バウンダリに掛かる圧力は,最高使用圧力(8.62メガパスカル)の1.2倍(10.34メガパスカル)以下であること。 d原子炉格納容器バウンダリに掛かる圧力は,最高使用圧力(310キロパスカル)以下であること。 e周辺の公衆に対し,著しい放射線被ばくのリスクを与えないこと。 (ウ)控訴人の解析結果a原子炉冷却材の喪失又は炉心冷却状態の著しい変化(a)原子炉冷却材喪失控訴人は,原子炉の出力運転中に原子炉冷却材圧力バウンダリを構成する配管又はこれに付随する機器等の破損等により,原子炉冷却材が系外に流出し,炉心の冷却能力が低下する場合を想定して,燃料被覆管温度が最高となる高圧炉心注水系配管の瞬時両端破断事故の解析を行ったところ,①沸騰遷移が生じて燃料被覆管の温度が上昇するが,その最高値は摂氏約600度であること,②前記過渡変化を通じて生じる燃料被覆管の酸化層厚みの増加は極めて小さいこと,③全燃料被覆管のジルコニウム-水反応割合は無視し得る程度であること,④長期にわたっての長半減期核種の崩壊熱の除去は,原子炉隔離時冷却系を除くECCSのうちいずれか1台のポンプが作動すれば確保されること,を確認した。控訴人は,前記①の最高温度,前記②の燃料被覆管の酸化層厚みの増加及び前記③のジルコニウム-水反応割合は「軽水型動力炉の非常用炉心冷,却系の性能評価指針(以下「ECCS性能評価指針」という)」。 - 196 -において示されている,①燃料被覆の温度の計算値 前記③のジルコニウム-水反応割合は「軽水型動力炉の非常用炉心冷,却系の性能評価指針(以下「ECCS性能評価指針」という)」。 - 196 -において示されている,①燃料被覆の温度の計算値の最高値摂氏1200度,②燃料被覆管の酸化量の上限値被覆管の厚さの15パーセント,③燃料被覆及び構造材が水と反応するに伴い発生する水素の量は十分低い値であること,の要件をいずれも満たすこと,及び前記④のとおり,長期間にわたっての崩壊熱の除去が確保されることから,炉心は著しい損傷に至ることなく,かつ十分に冷却が可能であり,燃料エンタルピは制限値を超えないものとの結論を得た〔乙6(添10-3-2ないし11,乙9(222ないし2。 )70,乙31(101ないし104〕))(b)原子炉冷却材流量の喪失控訴人は,原子炉の出力運転中に再循環ポンプが同時に全台とも停止することにより,炉心流量が定格出力時の流量から自然循環流量にまで大幅に低下し炉心の冷却能力が低下する事象を想定して解析を行ったところ,炉心流量の急減によりボイド量が増加するとともに,約2.0秒後には炉心流量急減信号が発生して原子炉がスクラムし,ボイドの急増に伴う原子炉水位上昇により約3.1秒で原子炉水位高(レベル8)信号が発生してタービンがトリップするが,①原子炉圧力は,原子炉スクラムと逃がし安全弁の安全弁機能の作動により約8.24メガパスカルに抑えられること,②炉心流量の急激な減少により,沸騰遷移が生じて燃料被覆管の温度が上昇するが,その最高値は摂氏約569度であること,③燃料被覆管の酸化層厚みの増加は,燃料被覆管温度が低いため極めて小さいこと,を確認した。控訴人は,前記②の最高温度,前記③の燃料被覆管の酸化層厚みの増加は,前記(a)判示のECCS性能評価指針に 燃料被覆管の酸化層厚みの増加は,燃料被覆管温度が低いため極めて小さいこと,を確認した。控訴人は,前記②の最高温度,前記③の燃料被覆管の酸化層厚みの増加は,前記(a)判示のECCS性能評価指針において示されている燃料被覆の温度の計算値の最高値及び燃料被覆管の酸化量の上限値の要件をいずれも満たすことから,炉心は著し- 197 -い損傷に至ることなく,かつ十分に冷却が可能であり,燃料エンタルピは制限値を超えないとの結論を得た。また,控訴人は,圧力バウンダリに掛かる圧力は,前記①のとおり,約8.24メガパスカルにとどまり,最高使用圧力の1.2倍以下であることを確認した。 〔乙6(添10-3-12ないし17,乙31(104ないし1)06〕)b反応度の異常な投入又は原子炉出力の急激な変化-制御棒落下控訴人は,原子炉が臨界又は臨界近傍にあるときに,制御棒駆動機構のボールナットから分離して炉心内にとどまっていた制御棒1本がこれと結合した中空ピストンと一体となって炉心から落下し,急激な反応度投入と出力分布変化が生じる事象を想定して解析を行ったところ,①燃料エンタルピの最大値は1キログラム当たり約746キロジュール二酸化ウランとなること,②原子炉冷却材圧力バウンダリに掛かる圧力の最大値は約8.48メガパスカルであること,を確認した。控訴人は,前記①の燃料エンタルピの最大値は,反応度投入事象評価指針に示される1キログラム当たり963キロジュール二酸化ウランから燃焼の進行及びガドリニア添加に伴うペレット融点低下分に相当するエンタルピを差し引いた値である1キログラム当たり837キロジュール二酸化ウランを下回っていること,前記②の圧力の最大値は,最高使用圧力の1.2倍以下であることを確認した〔乙6。 (添10-3-18ないし30,乙31(1 である1キログラム当たり837キロジュール二酸化ウランを下回っていること,前記②の圧力の最大値は,最高使用圧力の1.2倍以下であることを確認した〔乙6。 (添10-3-18ないし30,乙31(106ないし108〕))c環境への放射性物質の異常な放出(a)放射性気体廃棄物処理施設の破損控訴人は,原子炉の通常運転時に何らかの原因で気体廃棄物処理系の一部が破損し,ここに貯留されていた希ガスが環境に放出される事象を想定して解析を行ったところ,大気中に放出される核分裂- 198 -生成物の量は希ガス約8.3×10ベクレルであること,この大 気放出に伴う敷地等境界外での最大実効線量当量は約1.3×10ミリシーベルトであることを確認し,本事故による周辺の公衆に-2与える放射線被ばくのリスクは十分に小さいものとの結論を得た〔乙6(添10-3-31ないし36,乙31(108ないし1) 。 )〕(b)主蒸気管破断控訴人は,原子炉の出力運転中何らかの原因により原子炉格納容器外で主蒸気管の1本が破断し,破断口から原子炉冷却材の流出が起こり,放射性物質が環境に放出される事象を想定して解析を行ったところ,①沸騰遷移が生じて燃料被覆管の温度が上昇するが,その最高値は摂氏約569度であること,②燃料被覆管の酸化層厚みの増加は,燃料被覆管温度が低いため,極めて小さいこと,③大気中に放出される核分裂生成物の量は,希ガス及びハロゲン等約3.8×10ベクレル,よう素約4.1×10ベクレルであ ること,④この大気放出に伴う敷地等境界外での最大実効線量当量は,約1.8×10ミリシーベルトであること,を確認した。 -2控訴人は,前記①の最高温度,前記②の燃料被覆管の酸化層厚みの増加は,前記a(a)判示のECCS性能評価指針にお 外での最大実効線量当量は,約1.8×10ミリシーベルトであること,を確認した。 -2控訴人は,前記①の最高温度,前記②の燃料被覆管の酸化層厚みの増加は,前記a(a)判示のECCS性能評価指針において示されている燃料被覆の温度の計算値の最高値及び燃料被覆管の酸化量の上限値の要件をいずれも満たすことから,本事故により新たに燃料棒の破損は生じないものとの結論を得た。また,控訴人は,前記③及び④から,本事故による周辺の公衆に与える放射線被ばくのリスクは十分に小さいものとの結論を得た〔乙6(添10-3-37な。 いし49,乙31(110ないし113〕))(c)燃料集合体の落下- 199 -控訴人は,燃料集合体が落下して破損し,放射性物質が環境に放出される事象を想定して解析を行ったところ,①この事故により破損する燃料棒の本数は,燃料集合体に換算して2.3体相当以下であること,②大気中に放出される核分裂生成物の量は,希ガス約2.6×10ベクレル,よう素約6.9×10ベクレルである こと,③この大気放出に伴う敷地等境界外での最大実効線量当量は,約2.2×10ミリシーベルトであること,を確認し,本事-2故による周辺の公衆に与える放射線被ばくのリスクは十分に小さいものとの結論を得た〔乙6(添10-3-50ないし56,乙3)1(113ないし115。 )〕(d)原子炉冷却材喪失控訴人は,原子炉冷却材喪失時に放射性物質が環境に放出される事象を想定して解析を行ったところ,①大気中に放出される核分裂生成物の量は,希ガス約3.5×10ベクレル,よう素約6. 3×10ベクレルであること,②この大気放出に伴う敷地等境 界外での最大実効線量当量並びに直接ガンマ線及びスカイシャインガンマ線による実効線量当量の敷地等境界外 10ベクレル,よう素約6. 3×10ベクレルであること,②この大気放出に伴う敷地等境 界外での最大実効線量当量並びに直接ガンマ線及びスカイシャインガンマ線による実効線量当量の敷地等境界外での合計は,最大で約4.7×10ミリシーベルトであること,を確認し,本事故によ-5る周辺の公衆に与える放射線被ばくのリスクは十分に小さいものとの結論を得た〔乙6(添10-3-57ないし62,乙31(1)15ないし117。 )〕(e)制御棒落下控訴人は,制御棒落下時に放射性物質が環境に放出される事象を想定して解析を行ったところ,①大気中に放出される核分裂生成物の量は,希ガス約8.3×10ベクレル,よう素約6.7×1 0ベクレルであること,②この大気放出に伴う敷地等境界外で - 200 -の最大実効線量当量は,約1.5×10ミリシーベルトであるこ-3と,を確認し,本事故による周辺の公衆に与える放射線被ばくのリスクは十分に小さいものとの結論を得た〔乙6(添10-3-63ないし67,乙31(117,118。 ))〕d原子炉格納容器内圧力,雰囲気等の異常な変化(a)原子炉冷却材喪失控訴人は,原子炉冷却材喪失時に原子炉格納容器内の圧力及び温度が異常に上昇する事象を想定して解析を行ったところ,原子炉格納容器内圧力の最高値は約250キロパスカルであり,最高使用圧力である310キロパスカルを下回っていることを確認した〔乙6(添10-3-68ないし73,乙31(118,119。 ))〕(b)可燃性ガスの発生控訴人は,原子炉冷却材喪失時に可燃性ガスが発生する事象を想定して解析を行ったところ,可燃性ガス濃度制御系の作動により,原子炉格納容器内の可燃性ガス濃度は,最大でも,ドライウェル内の水素ガス濃度が約3.5ボリュ 炉冷却材喪失時に可燃性ガスが発生する事象を想定して解析を行ったところ,可燃性ガス濃度制御系の作動により,原子炉格納容器内の可燃性ガス濃度は,最大でも,ドライウェル内の水素ガス濃度が約3.5ボリュームパーセント,ドライウェル内の酸素ガス濃度が約4.5ボリュームパーセントであり,可燃限界である水素4ボリュームパーセント及び酸素5ボリュームパーセントより低いことから,可燃性ガスの発生によって原子炉格納容器の健全性が問題となることはないとの結論を得た〔乙6(添10-3-74ないし78,乙31(119,120。 ))〕(c)動荷重の発生控訴人は,原子炉格納容器及び原子炉格納容器内部の構造物は,原子炉冷却材喪失時及び逃がし安全弁作動時に生じると考えられる動荷重に対し健全性を損なわない構造強度を要する設計とするため,通商産業省告示等に定められている基準を満たすように設計されて- 201 -いることから,その設計方針は妥当なものとの結論を得た〔乙6(添10-3-79,乙31(120,121。 ))〕(4) 審査指針等適合性前記(2),(3)の各事実及び弁論の全趣旨によれば,安全評価審査指針等への適合性について次のとおり判断できる。 ア異常発生防止対策本件原子炉施設においては,①自動的に原子炉の出力,圧力及び水位を安定に制御できるよう設計された原子炉制御系が設けられるとともに,これとは別に運転員の操作により原子炉の出力,圧力及び水位を監視・制御できるようにするため,原子炉制御系の監視装置や制御装置が中央制御室の制御盤に配置され,さらに,インターロックが設けられるなど,本件原子炉施設を安定して運転するための設備が設けられていること,②燃料被覆管の健全性確保のために各種の安全上の対策が採られていること,③圧力バウンダリの健全 ,インターロックが設けられるなど,本件原子炉施設を安定して運転するための設備が設けられていること,②燃料被覆管の健全性確保のために各種の安全上の対策が採られていること,③圧力バウンダリの健全性を確保するために,各種要因に対して設計上の配慮がされていることがそれぞれ認められる。 イ異常拡大防止対策本件原子炉施設においては,①原子炉の出力,圧力及び水位の計測装置並びに燃料被覆管からの核分裂生成物の漏えいについて監視装置が設置され,異常の発生を早期かつ確実に検知する体制が採られていること,②原子炉緊急停止系,原子炉隔離冷却系,主蒸気逃がし安全弁など,安全保護設備が独立性,多重性を有するように設置され,安全設計評価においても適切な事象の想定がされた上でその基本設計の妥当性が確認されていることが認められる。 ウ放射性物質異常放出防止対策本件原子炉施設においては,前記(2)のとおり,ECCSには複数の系統が設けられ,多重性,多様性が確保されていること,各系統はそれぞれ- 202 -物理的,電気的に独立性を有する設計となっていることが認められ,また,本件原子炉施設には極めて気密性の高い鋼製ライナを内張した鉄筋コンクリート造の格納容器が設置されており,原子炉冷却材圧力バウンダリを構成する配管の破断等があった場合,ドライウェル内に放出された冷却材は,サプレションチェンバ内のプール水により冷却されてドライウェル内の圧力の上昇を抑制するとともに,原子炉冷却材喪失事故が発生した場合,隔離弁を自動的に閉鎖し,ドライウェル内に放出された放射性物質を閉じ込める設計となっていることが認められる。 エ小括以上によれば,控訴人は,本件原子炉施設について,安全設計審査指針及び安全評価審査指針に基づき,機器の設計の妥当性及び敷地周辺への放射性物質放出防 める設計となっていることが認められる。 エ小括以上によれば,控訴人は,本件原子炉施設について,安全設計審査指針及び安全評価審査指針に基づき,機器の設計の妥当性及び敷地周辺への放射性物質放出防止の観点から複数の事象を想定した評価を行い,安全性を確認しており,また,証拠〔乙31〕によれば,平成11年3月,通商産業省から,控訴人の各事故防止対策は,安全評価審査指針に適合し,妥当であるとの審査結果を得ている事実が認められるから,控訴人の各事故防止対策は安全設計審査指針及び安全評価審査指針に適合したものと認められる。 運転段階における安全確保対策(1) 総論前記3で判示したとおり,本件原子炉施設においては,多重防護の考え方に従った各種の事故防止対策が講じられているが,異常状態の発生を未然に防止し,また,異常状態が発生した場合にその拡大を防止するためには,運転開始以降においても,事故防止の対策のための機器,系統等の機能や健全性が確保されている必要がある。原子炉等規制法,実用炉規則は事業者に適切な保安活動の枠組みの構築を要求し,電気事業法は原子力発電所の個々の機器の適切な維持管理を要求していることから,以下において本件原子炉施- 203 -設の運転管理,保守管理等及び設備の維持管理が前記各法及び規則の要求を満たすものであるかどうかについて検討する。 (2) 控訴人が行っている運転段階における安全確保対策証拠〔乙8〕によれば,控訴人は本件原子炉施設の運転段階において,以下のような安全確保対策を講じていることが認められる。 ア原子炉運転中の機器,系統等の維持管理本件原子炉施設では,原子炉運転中の機器,系統等の維持管理のため,当直長をはじめとする運転員のチームが,3交替勤務で,中央制御室での運転状態の監視,現場の機器,系統等の巡視点検等 ,系統等の維持管理本件原子炉施設では,原子炉運転中の機器,系統等の維持管理のため,当直長をはじめとする運転員のチームが,3交替勤務で,中央制御室での運転状態の監視,現場の機器,系統等の巡視点検等を行い,異常の有無を確認している〔乙8(13。 )〕イ安全上重要な機器,系統等の定期的な動作検査控訴人は,制御棒,非常用炉心冷却系や非常用ディーゼル発電機等安全上重要な機器,系統等について,1か月1回といった頻度で実際に作動させることにより,その動作検査を行っている〔乙8(13。 )〕ウ定期検査控訴人は,ほぼ1年に1回本件原子炉を停止して,機器,系統等の点検,整備を行うとともに,運転に伴う経年劣化についても評価し,必要に応じて,機器の取替え,補修を行うこととしている〔乙8(13。 )〕エ起動・停止操作訓練,事故対応訓練控訴人は,当直長をはじめとする運転員において,運転訓練シミュレータにより,プラントの起動・停止操作訓練や事故対応訓練などを行っている〔乙8(13。 )〕(3) 運転段階における安全確保対策の妥当性本件原子炉施設では,前記(2)のとおり,原子炉運転中の機器,系統等の維持管理のため,中央制御室での運転状態の監視及び現場の機器,系統等の巡視点検,安全上有用な機器,系統等の動作検査,定期検査並びに起動・停- 204 -止操作訓練,事故対応訓練を行っているから,原子炉等規制法,実用炉規則及び電気事業法等の要請をいずれも満たすものと認めるのが相当である。 小括以上1ないし4のとおり,控訴人の主張立証を検討したところからすれば,本件原子炉施設の設置,設計及び運転は審査指針等の定める安全上の基準を満たしているということができる。したがって,前記審査指針等の合理性・相当性やその指針等への適合性について被控訴人らから控 れば,本件原子炉施設の設置,設計及び運転は審査指針等の定める安全上の基準を満たしているということができる。したがって,前記審査指針等の合理性・相当性やその指針等への適合性について被控訴人らから控訴人の前記主張立証を揺るがす反論反証のない限り,控訴人は,本件原子炉施設が,その安全性が欠ける点がないことについて,相当の根拠を示し,かつ,必要な資料を提出した上で主張立証を尽くしたということができる。そこで,以下において,前記反論反証が有効になされているか否かの観点,及び,本件原子炉施設には安全性に欠ける点があり,被控訴人らの生命,身体,健康を侵害する具体的危険があるとの本来的主張立証がなされているか否かの観点から,被控訴人らの主張立証について検討することとする。 第5被控訴人らの主張に対する判断 争点3(諸般の事情の総合考慮による差止めの可否)について以下のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」欄の第2章「当裁判所の判断」第3「諸般の事情の総合考慮による差止めの主張について」の2「判断」に説示のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)(1)原判決24頁22行目「周辺公衆」を「周辺公衆が」と改める。 (2)原判決24頁24行目冒頭から同26行目末尾までを以下のとおり改める。 「アウラン235の原子核の核分裂反応により,クリプトン85,ストロンチウム90,よう素131,セシウム137等の放射性物質(核分裂生成物)が発生し,また,核分裂に際し発生した中性子がウラン238- 205 -等の原子核に吸収されるなどにより,ネプツニウム239,プルトニウム239,プルトニウム240等の放射性物質(超ウラン元素)が発生する」。 (3)原判決25頁5行目「2ないし5,6」を「2ないし7」と改める。 (4)原判決25行目8 ニウム239,プルトニウム239,プルトニウム240等の放射性物質(超ウラン元素)が発生する」。 (3)原判決25頁5行目「2ないし5,6」を「2ないし7」と改める。 (4)原判決25行目8行目「乙7の3(8ないし10」の次に「乙19),4」を加える。 ,(5)原判決25頁18行目「50ないし55」を「50ないし54」と改める。 (6)原判決25頁21行目「内張りした」から同22行目「被覆管」とい「う」までを「内張りした燃料被覆管」と改める。 。)(7)原判決26頁13行目「原子炉の通常運転時に」から同18行目「バ(,ウンダリとなる」を削除する。 。)(8)原判決27頁13行目「10,11」を「①10,11」と改める。 (9)原判決27頁14行目冒頭から同24行目末尾までを以下のとおり改める。 「ウそして,前記第4「控訴人の安全確保対策」の2「平常運転時の被ばく低減に係る安全確保対策」(2)「本件原子炉施設の平常運転時の被ばく低減対策」に判示のとおり,控訴人は,本件原子炉及び本件原発1号機の各運転に伴って環境に放出される放射性物質からの放射線による周辺公衆への実効線量を評価し,その結果,年間で最大約0.018ミリシーベルトにとどまるとの結論を得た。この数値は,人間が受ける自然放射線の量の平均値約2.4ミリシーベルトを大きく下回る上,我が国における自然放射線量による実効線量の最大地域差約0.38ミリシーベルト及び線量評価指針に示される線量目標値である年間実効線量0. 05ミリシーベルトをも下回っている」。 (10)原判決28頁6行目「1161」を「1161」と改める。 )- 206 -(11)原判決28頁9行目「監視することを予定している」を「監視してい。 る」と改める。 。 (12)原判決28 0)原判決28頁6行目「1161」を「1161」と改める。 )- 206 -(11)原判決28頁9行目「監視することを予定している」を「監視してい。 る」と改める。 。 (12)原判決28頁11行目冒頭から21行目末尾までを以下のとおり改める。 「エ前記第4「控訴人の安全確保対策」の3「事故防止に係る安全確保対策」の(3)「安全設計評価」及び(4)「審査指針等適合性」に判示のとおり,控訴人は,安全評価審査指針に基づいて,燃料及び原子炉冷却材圧力バウンダリについて,本件原子炉施設の運転時の異常な過渡変化及び事故の解析を行っているところ,その評価結果は,いずれの場合においても,その健全性が確保されているというものであり,この評価結果は,いずれも安全評価審査指針に適合するものである。そして,証拠〔乙6),(添10-2-1ないし55,10-3-1ないし127〕によれば前記解析の結果,放出される核分裂生成物の線量当量は,その数値が最も高い燃料集合体の落下事故においても,0.022ミリシーベルトにとどまったことが認められる」。 (13)原判決28頁24行目「に事故が頻発した」を「の事故が発生した」と改める。 (14)原判決29頁3行目「前記(1)」を「前記(2)」と改める。 (15)原判決29頁8行目「証拠はない」から同12行目「あるから」ま。 ,でを「証拠はなく」と改める。 , 争点4(原発事故の蓋然性からみた危険性)について以下のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」欄の第2章「当裁判所の判断」第4「本件原子炉における事故の危険性の主張について」の1「原発事故の蓋然性からみた危険性の主張について」の(1)「前提事実」及び(3)「判断」に説示のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)(1)原判決30 故の危険性の主張について」の1「原発事故の蓋然性からみた危険性の主張について」の(1)「前提事実」及び(3)「判断」に説示のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)(1)原判決30頁5行目「スリーマイル島(TMI」を「TMI」と改め)- 207 -る。 (2)原判決30頁6行目から7行目に掛けての「ドルフィン郡」を「ドーフィン郡」と改める。 (3)原判決30頁8行目「95.9キロ万ワット」を「95.9万キロワット」と改める。 (4)原判決30頁14行目「甲57(3,4,6」を「甲57(3ないし)11」と改める。 (5)原判決30頁15行目「24,25」を「25」と改める。 (6)原判決30頁21行目「16」を「15ないし17」と改める。 (7)原判決31頁12行目「更に核分裂反応を起こして」を「崩壊して」と改める。 (8)原判決31頁18行目から19行目に掛けての「計算応力」を「計算能力」と改める。 (9)原判決32頁20行目「25ないし27,39,40,50」を「25ないし53」と改める。 (10)原判決32頁22行目「9」の次に「,乙195」を加える。 )(11)原判決33頁1行目「甲58(94」を「甲58(94,95」と))改める。 (12)原判決34頁5行目「ボイド係数」から同6行目「で説明する」ま。)でを「ボイド係数(ボイド量が1単位変化するのに見合った炉心の反応度,量の変化」と改める。 )(13)原判決34頁26行目「195ないし200」を「195ないし203」と改める。 (14)原判決35頁2行目「6ないし9」を「4ないし9」と改める。 (15)原判決35頁3行目「28ないし29」を「28ないし31」と改める。 (16)原判決36頁26行目末尾「後記」から37頁1行目「 原判決35頁2行目「6ないし9」を「4ないし9」と改める。 (15)原判決35頁3行目「28ないし29」を「28ないし31」と改める。 (16)原判決36頁26行目末尾「後記」から37頁1行目「説明する」(。)- 208 -までを削除する。 (17)原判決37頁4行目「197,198」を「197」と改める。 (18)原判決37頁21行目「前記第3の2(2)オのとおり」を「前記1,「争点3(諸般の事情の総合考慮による差止めの可否)について」に判示のとおり」と改める。 ,(19)原判決38頁4行目冒頭から同7行目末尾までを削除する。 争点5(本件原発1号機の事故からみた危険性)について(1) 以下のとおり補正するとともに,次項のとおり,当審における新たな主張(本件臨界事故)に対する判断を加えるほかは,原判決「事実及び理由」欄の第2章「当裁判所の判断」第4「本件原子炉における事故の危険性の主張について」の2「本件原発1号機の事故からみた危険性の主張について」(2)「判断」に説示のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)原判決38頁24行目「前記第3の2(2)オで認定したとおり」を「前,記1「争点3(諸般の事情の総合考慮による差止めの可否)について」に判示のとおり」と改める。 ,(2) 当審における新たな主張(本件臨界事故)に対する判断ア前提事実証拠(以下の各項に括弧書きしたもの)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (ア)本件原発1号機の制御棒駆動機構の概要証拠〔乙110(11ないし17〕及び弁論の全趣旨によれば,以)下の事実が認められる。 本件原発1号機の制御棒は,通常時の挿入及び引き抜き並びに原子炉緊急停止時の緊急挿入のいずれにおいても,制御棒駆動水圧系により供給される水圧によ 弁論の全趣旨によれば,以)下の事実が認められる。 本件原発1号機の制御棒は,通常時の挿入及び引き抜き並びに原子炉緊急停止時の緊急挿入のいずれにおいても,制御棒駆動水圧系により供給される水圧により駆動する。 - 209 -制御棒駆動水圧系は,制御棒を各々独立に操作し,一つの制御棒の故障により他の操作に影響を与えないように,制御棒1本につき1組の制御棒駆動系水圧制御ユニットが設置されており,このユニットによって駆動のための水圧が制御される。 原子炉の起動・停止等の通常の制御棒挿入は,駆動ピストンの下側に水圧を掛けることによって上に持ち上げる力を作用させて炉心へ制御棒を挿入する方法で行う。そして,制御棒の位置を確実に制御,維持するため,コレットフィンガと呼ばれる爪をインデックスチューブに引っ掛ける方式が採用されている。通常の制御棒引き抜きは,制御棒の引き抜き側への動きに対してはコレットフィンガが引っ掛かって動かない仕組みとなっていることから,これを外すため,駆動ピストン挿入側(下側)に水圧を掛けてわずかに制御棒を挿入して外した後,コレットフィンガの下面及び駆動ピストンの上側(引き抜き側)に水圧を掛けて,コレットフィンガが外れた状態を維持しながら,制御棒を動かした後に水圧を落とし,再びコレットフィンガで引っ掛けることとしている。このように,制御棒の挿入,引き抜きは,水圧を利用して行うところ,挿入と引き抜きとでは,水の流れが逆となることから,接続されている制御棒駆動系水圧制御ユニットの弁の操作で,この流れを制御している。 原子炉の緊急停止時の制御棒の挿入は,アキュムレータに蓄えられている高圧水を直接駆動ピストン挿入側に供給し,急速に制御棒を挿入する設計となっている。この際,駆動ピストン引き抜き側の水は,スクラム排出配管に排出され,高圧水 棒の挿入は,アキュムレータに蓄えられている高圧水を直接駆動ピストン挿入側に供給し,急速に制御棒を挿入する設計となっている。この際,駆動ピストン引き抜き側の水は,スクラム排出配管に排出され,高圧水によって全挿入された制御棒はコレットフィンガにより保持される。 (本判決別紙6参照)(イ)本件臨界事故の概要証拠(以下の各項に括弧書きしたもの)によれば,以下の事実が認め- 210 -られる。 aARI試験の準備作業の手順控訴人は,定期検査のため本件原発1号機の停止期間中,原子炉停止機能強化工事(異常時に原子炉緊急停止系の作動回路が作動しない場合に原子炉を自動停止させるためのバックアップ機能用の作動回路を新たに付加設置する工事)を行い,平成11年6月18日,同工事の機能確認のため,ARI試験を実施しようとした〔乙109(5,6,添3-1,乙110(7,8。 ))〕ARI試験は,前記の新しい作動回路が適切に作動することを確認するための試験であり,89本の制御棒のうちの1本が,異常信号を模擬した信号により緊急挿入されることを確認するものである〔乙109(5,6。 )〕ARI試験において予定していた準備作業の手順は,まず,①中央制御室で試験対象の制御棒1本を全引き抜きした後,制御棒駆動系の水の流量(駆動水,充填水及び冷却水の全流量。以下「系統流量」という)を「0」とし,次に,②現場の作業員が試験対象を除いた。 制御棒88本が全挿入位置で動かないようにそれぞれの制御棒駆動機構の隔離(水圧制御ユニットの挿入元弁及び引抜元弁を閉止すること)を行うというものであった。なお,挿入元弁及び引抜元弁は,い。 ずれも現場における手動操作で開閉され(原子炉の運転中は開状態で固定,中央制御室における操作では開閉することはできない。また,) と)を行うというものであった。なお,挿入元弁及び引抜元弁は,い。 ずれも現場における手動操作で開閉され(原子炉の運転中は開状態で固定,中央制御室における操作では開閉することはできない。また,)系統流量を0とした後に制御棒駆動機構を隔離する手順としていたのは,系統流量を0とせずに各制御棒駆動機構の隔離を進めていくと,制御棒駆動機構に挿入元弁を介し流れている冷却水の流路が順次遮断され,これに伴って流路抵抗が大きくなり,系統圧力が上昇し,制御棒が引き抜けるおそれがあるためであった〔乙109(6,添3-3,。 - 211 -6,乙110(7〕))b本件臨界事故の経過控訴人は,平成11年6月17日本件原発1号機において,全制御棒を対象として単体スクラム試験を実施した後,引き続きARI試験の準備作業に着手した〔乙109(7,8,添3-16。 )〕準備作業の本来の手順では,前記aのとおり,現場の作業員が各制御棒駆動機構の隔離操作を行う前に,中央制御室で系統流量を0としておくことになっていたが,実際の作業では,中央制御室での前記操作が開始される前に,同月18日2時8分ころから現場の4名の作業員により各制御棒駆動機構の隔離操作が開始された。その結果,系統圧力が徐々に上昇していったが,直前に実施した前記単体スクラム試験において除外していた系統圧力を監視する警報機能が復旧されていなかったため,中央制御室及び現場の作業員等は系統圧力の上昇に気づかないまま,制御棒駆動機構の隔離操作が進められた〔乙109。 (8,添3-11,16,乙110(7,8〕))系統圧力の上昇に伴い,まだ隔離していない挿入配管及び引抜配管はいずれも冷却水により加圧されていったが,制御棒駆動機構のピストンの下部の面積が上部の面積よりも大きいことから,原子炉に制御 ))系統圧力の上昇に伴い,まだ隔離していない挿入配管及び引抜配管はいずれも冷却水により加圧されていったが,制御棒駆動機構のピストンの下部の面積が上部の面積よりも大きいことから,原子炉に制御棒を挿入する方向に押し上げ力が加わり,大半の制御棒駆動機構の隔離操作が終了した時点において,まだ隔離されていない制御棒のコレットフィンガが外れた状態となった〔乙109(14,15,添4-1,2,乙110(18,19。 ))〕コレットフィンガが外れた状態の制御棒に対し,現場の作業員が挿入元弁を閉止したため,挿入配管からの水圧(制御棒駆動機構のピストンの下部への水圧)がなくなり,引抜配管からの水圧(制御棒駆動機構のピストンの上部への水圧)が制御棒を引き抜く側に押し下げた- 212 -ため,同日2時17分,最初の制御棒の引き抜けが始まり,最終的には3本の制御棒がそれぞれ20ポジション,16ポジション及び8ポジションの各位置まで引き抜けた(なお,制御棒の位置は,全挿入で。),0ポジション,全引き抜きで48ポジションである〔乙109(89,添3-11,4-1,2,乙110(8,18,19。 ))〕3本の制御棒の引き抜けにより,同日2時18分,本件原発1号機の原子炉は臨界となった〔乙109(8,9,添3-12,15,1 。 )〕同日2時18分,原子炉内の中性子束レベルを測定する中間領域モニタ(中間領域の中性子束を監視するモニタ)の値が上昇し,原子炉。 自動停止信号が発信された。原子炉自動停止信号の発信により,本来であれば,引き抜けた制御棒は自動的に直ちに挿入されるところ,引き抜けた3本の制御棒の挿入元弁が閉止されており,制御棒は挿入されなかったが,原子炉自動停止信号を受信してスクラム出口弁が自動的に開放したため,引抜配管の水圧が は自動的に直ちに挿入されるところ,引き抜けた3本の制御棒の挿入元弁が閉止されており,制御棒は挿入されなかったが,原子炉自動停止信号を受信してスクラム出口弁が自動的に開放したため,引抜配管の水圧が急減し,制御棒のそれ以上の引き抜けは止まった。原子炉内の異常を察知した中央制御室の当直長(運転員で構成される当直班の長で運転責任者)が,現場でARI試。 験の準備作業を行っていた作業員に対し,閉止していた挿入元弁及び引抜元弁を手動により元に戻すように指示し,前記各元弁が開放されることによって,制御棒駆動系の水圧が制御棒を挿入する方向に加わり,制御棒の挿入が開始し,原子炉自動停止信号が発信した約15分後である同日2時33分,引き抜けていた3本の制御棒が原子炉に全挿入され,原子炉が未臨界状態となった〔乙109(9,14ないし。 16,添3-15,16,乙110(8,9,20〕))なお,本件臨界事故による燃料の損傷,作業員及び一般公衆の被ばくはなかった〔乙109(12,16ないし19,21ないし24,- 213 -添4-19ないし23,乙110(10,30ないし34,乙11))1(3,4。 )〕(ウ)本件臨界事故の隠蔽証拠(以下の各項に括弧書きしたもの)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 a本件臨界事故発生に関する発電所関係者への第一報本件臨界事故が発生した際,中央制御室には,当直長以下4名の運転員がいた。当直長は,本件臨界事故が収束した後,発電課長に連絡した。発電課長は,所長以下関係者に連絡し,本件臨界事故発生から30分を大幅に経過したころ,緊急時対策所に少なくとも所長以下14名が集まった〔乙109(10〕。 )b緊急時対策所での協議内容発電課長は,緊急時対策所において,以下のとおり,状況説明及び事 30分を大幅に経過したころ,緊急時対策所に少なくとも所長以下14名が集まった〔乙109(10〕。 )b緊急時対策所での協議内容発電課長は,緊急時対策所において,以下のとおり,状況説明及び事実確認を行った〔乙109(10。 )〕(a)ARI試験の準備として,制御棒関連の弁を操作していたところ,想定外に制御棒が数本引き抜け,中性子束(IRM)高高で,スクラム信号が発信された。 (b)制御棒全挿入までにかなり時間を要した。 (c)現在,制御棒が全挿入され原子炉は安定に停止している。 c本件臨界事故に対する関係者の認識出席者は,それぞれの専門知識の違いもあるため,本件臨界事故に関する理解が一様でなく,全員が「臨界」が起きたとの認識を持ったわけではなかったものの,その多くは,原子炉停止中に制御棒が落ち,中性子束が上昇するという大変なことが起きたとの認識を持っていた〔乙109(10。 )〕d対応策の検討と意思決定- 214 -出席者は,前記事実確認の後,対応策の検討に入ったが,①本件原子炉施設の建設着工を約2か月後に控えており,今回の事故が外部公表となれば着工が延期されることが容易に予想できたこと,②4日前の平成11年6月14日に非常用ディーゼル発電設備のクランク軸にひびが発見されてその対策に追われ,本件原発1号機立ち上げの目途が全く立っていない状況にあったことから,出席者の多くは,今回の事故を報告した場合の重大さを十分に認識していた。所長は「今回の事故が外部に出ると本件原子炉施設の工程に遅,れが出る」との意見もあったことなどから,社外に報告しないことを決断した。この際,次長(炉主任)は,所長に対して「報告すべ,きである」という意見具申をする役割を果たさず,本件臨界事故を公表しないことに反対しなかった。 その となどから,社外に報告しないことを決断した。この際,次長(炉主任)は,所長に対して「報告すべ,きである」という意見具申をする役割を果たさず,本件臨界事故を公表しないことに反対しなかった。 その後,本件原発1号機発電所と控訴人本店原子力部,控訴人東京支社及び石川支店との間でテレビ会議が行われ,この際,発電所は「制御棒が過挿入により,位置不明の表示となった「何らかの,」,ノイズにより中性子束(IRM)に信号が入った「実際に出力が」,上がっていないことから連絡対象でない」と説明し,誤信号であったとの結論を報告した。この報告に対して,異論が特に出されることなく了承され,テレビ会議は終了した。 〔乙109(10,11〕)e事故記録の改ざん発電課長は,その後,中央制御室に行き,当直長らに対し,本件臨界事故は誤信号であるから,引継日誌に本件臨界事故に関する記述をしないように指示した。当直長及び担当運転員は,引継日誌に本件臨界事故に関する事項を記載しなかった。 また,本件臨界事故を隠蔽するため,炉心中性子束モニタ(SR- 215 -M,IRM)の記録計チャートに「点検」と記載された。 〔乙109(11〕)(エ)控訴人による本件臨界事故の原因の検討と再発防止対策証拠(以下の各項に括弧書きしたもの)によれば,以下の事実が認められる。 控訴人は,原子力安全・保安院長の平成18年11月30日付け「発電設備に係る点検について」の指示に基づき,本件原発の点検,調査を行っていた際,平成11年6月に本件臨界事故を起こしていたことが判明したところから,平成19年3月,これを公表するとともに,以下のとおり,本件臨界事故の発生に至った原因を分析し,本件臨界事故の再発防止対策を策定した〔乙109(1。 )〕a本件臨界事故の原因の分析本件臨 ら,平成19年3月,これを公表するとともに,以下のとおり,本件臨界事故の発生に至った原因を分析し,本件臨界事故の再発防止対策を策定した〔乙109(1。 )〕a本件臨界事故の原因の分析本件臨界事故は,主としてARI試験の準備作業が本来の手順に従って実施されなかったために発生したものであるところ,控訴人は,作業が本来の手順に従って実施されなかった原因として,以下のような問題点を挙げた。 (a)現場作業管理上の原因〔乙109(28,29,添6-1〕)ⅰARI試験の工事担当課である電気保修課員は,本来は作業票に試験手順書を添付し,運転員は,この試験手順に基づく弁の開閉操作等の安全処置事項について検討すべきであったが,実際は作業票に試験手順書を添付しなかったため,運転員は事前に試験手順をチェックできず,また試験に係る操作の内容を知らなかった。 ⅱ本来,電気保修課員と運転員との事前打合せ等により,試験手順,試験体制,役割を相互に確認・把握し,試験時には運転責任者である当直長が電気保修課員を指揮し,制御棒駆動機構の隔離- 216 -操作を行わせるべきであったが,実際は指揮していなかった。 ⅲARI試験の体制,役割等が不明確なまま試験が進められた結果,ARI試験関係者(運転員,電気保修課員及びメーカー作業員)間の連携不足が生じ,現場の作業員は,中央制御室で系統流量を0とする前に制御棒駆動機構の隔離操作を始めてしまった。 (b)設備上の原因系統圧力を監視する警報が「高/低」同一のものであり,かつARI試験の直前に実施していた単体スクラム試験では,系統圧力の低下によって当該警報が頻発することから,この警報機能を除外していたため,本件臨界事故に際し系統圧力が徐々に高くなったにもかかわらず「高」の警報が出なかった〔乙109(29。 試験では,系統圧力の低下によって当該警報が頻発することから,この警報機能を除外していたため,本件臨界事故に際し系統圧力が徐々に高くなったにもかかわらず「高」の警報が出なかった〔乙109(29。 )〕b再発防止対策(a)技術的な再発防止対策ⅰ本件臨界事故公表時点における状況控訴人は,再発防止対策を検討するに先立ち,臨界防止に関する操作手順及び作業管理を確認したところ,以下の点について,既に改善が図られていた〔乙109(32。 )〕(ⅰ)制御棒駆動機構の隔離操作は,手順書によって1体ごとに実施するとともに,系統圧力上昇による制御棒引き抜けの可能性を注意喚起する。 (ⅱ)制御棒駆動機構の隔離操作は,すべて発電課が一元的に実施する。 (ⅲ)工事要領書は,工事担当課が審査・承認するとともに,必要なものは作業票に添付し,発電課にてダブルチェックする。 (ⅳ)試験時の発電所内部の役割分担を明確にする。 ⅱ本件臨界事故公表以降に実施した改善策- 217 -控訴人は,更に確実な対応を図るため,以下のとおり,操作手順及び作業管理面の改善策並びに設備対策を実施した〔乙109(32ないし35。 )〕(ⅰ)作業手順の改善①隣接した制御棒が同時に引き抜けることがないよう制御棒駆動系水圧制御ユニットを隔離する際の全体的な手順等につ。 いて,制御棒の引き抜け防止に効果的な管理方法を検討する②制御駆動系水圧制御ユニット隔離操作中,原子炉・制御棒駆動機構機能冷却水ヘッダ間差圧,中性子源領域計測装置(SRM)指示,中間領域計測装置(IRM)指示,制御棒位置を連続監視する。 (ⅱ)作業管理面の改善①作業手順が確実に遵守されているか,工事監理,立会検査において作業チェックシートにて確認するとともに,各種パトロールで随時確認する )指示,制御棒位置を連続監視する。 (ⅱ)作業管理面の改善①作業手順が確実に遵守されているか,工事監理,立会検査において作業チェックシートにて確認するとともに,各種パトロールで随時確認する。また,作業手順の遵守や要領書改訂の承認手続について,所員及びメーカー作業員等へ継続的に周知徹底する。 ②監視に必要な計器及び警報が供用状態にあることを確認することを手順に明記する。 ③試験時における電力内での具体的な役割分担を事前に明確化することを規定する。 ④原子炉停止中の臨界管理に係る内容を充実させ,速やかに全所員を対象として教育を実施する。 (ⅲ)設備対策系統圧力を監視する警報は,系統圧力が上昇した場合でも低下した場合でも同じものが出ることになっているが,これを- 218 -。 「高」と「低」とに分け,運転員への情報提供の明確化を図る(b)体制を含めた抜本的再発防止対策控訴人は,以下のとおり「隠さない企業風土づくり」及び「安全,文化の構築」を行っていくこととした〔乙109(35ないし4 。 )〕ⅰ隠さない企業風土づくり(ⅰ)隠さない仕組みの構築①迅速かつ確実な対外通報・報告体制の整備,②「トラブル対策会議」運営ルールの明確化,③発電所情報の国及び経営層・原子力本部への伝送,④原子炉主任技術者(炉主任)の地位と権限の強化,⑤企業倫理情報窓口の強化により,隠さない仕組みを構築する。 (ⅱ)企業倫理最重視への意識改革①コンプライアンスマインド変革研修,②経営幹部及び管理職全員に対する集中教育,③発電所の職場単位での集団討議,④コンプライアンスに関する誓約書の署名,⑤コンプライアンスメールマガジンの発信,⑥発電所業務単位の行動規範の策定,⑦原子力部門と他部門との人事交流の活発化により の職場単位での集団討議,④コンプライアンスに関する誓約書の署名,⑤コンプライアンスメールマガジンの発信,⑥発電所業務単位の行動規範の策定,⑦原子力部門と他部門との人事交流の活発化により,企業倫理最重視への意識改革を行う。 ⅱ安全文化の構築(ⅰ)経営トップからの「安全最優先」の強力な意志表明を行う。 (ⅱ)地域と一体となった事業運営を目指した原子力本部を設置する。 (ⅲ)①経営トップと原子力部門とのフランクな対話の実施,②発電所内の組織強化・増員,③事故・トラブル時の応援体制の整備により,原子力を支える体制づくりを行う。 - 219 -(ⅳ)①社長直属の「品質管理部」設置による原子力品質管理の徹底,②失敗事例に学ぶ仕組みの充実,③外部組織による評価の活用,④マイプラント意識向上のための施策の推進により,安全・品質管理の強化を行う。 (オ)証拠〔乙110(46ないし49〕によれば,原子力安全・保安)院は,平成19年4月20日,前記(エ)bの控訴人による本件臨界事故の再発防止対策を,技術的な再発防止対策は当然のものと,体制を含め。 た抜本的再発防止対策は概ね妥当なものと,評価したことが認められる(カ)ABWRにおける制御棒引き抜け事象証拠〔乙110(52,53,69〕及び弁論の全趣旨によれば,)以下の事実が認められる。 本件原子炉施設と同様のABWRである柏崎刈羽原発6号機において,平成8年6月10日,営業運転開始前の試運転中,制御棒動作に関連する制御装置の試験を行っていた際,制御棒4本が想定外に全挿入位置(00ステップ)から128ステップ(全引き抜け位置で200ステップ)まで引き抜ける事象が発生した。 その原因は,制御棒動作に関連する制御装置の試験を行う際に,制御棒の挿入及び引き抜きを行うため 置(00ステップ)から128ステップ(全引き抜け位置で200ステップ)まで引き抜ける事象が発生した。 その原因は,制御棒動作に関連する制御装置の試験を行う際に,制御棒の挿入及び引き抜きを行うための制御信号が発生しても,制御棒が動作することがないよう,制御棒の制御棒駆動機構の電動機の駆動電源を遮断しておくべきところ,誤って遮断しなかったため,当該試験によって発信された制御信号により,制御棒駆動機構の電動機が駆動し,当該制御棒4本が引き抜けたものである。なお,この事象により中性子束に変化はなかった。 イ 判断 前記ア(イ)認定のとおり,本件臨界事故は,原子炉が約15分間にわたり臨界状態となるという重大なものである。また,控訴人は,前記ア(ウ)- 220 -認定のとおり,本件臨界事故を隠蔽し,事故記録を改ざんしているところ,これは,通商産業大臣への報告義務を定めた原子炉等規制法67条1項,平成12年通商産業省令第328号による改正前の実用炉規則24条,必要な記録を残す義務を定めた原子炉等規制法34条,実用炉規則7条,保安規定の遵守を定めた原子炉等規制法37条4項等に反する重大なものである。 しかしながら,他方,本件臨界事故の主たる原因は,前記ア(エ)判示のとおり,ARI試験を本来の作業手順に従って行わなかったことにあるところ,控訴人は,本件臨界事故公表時において,既に,制御棒駆動機構の隔離操作を手順書によって1体ごとに実施する,すべて発電課が一元的に実施するなどの再発防止対策を講じていた上,さらに,隣接した制御棒が同時に引き抜けることがないようにするとともに,隔離操作中,原子炉・制御棒駆動機構機能冷却水ヘッダ間差圧,中性子源領域計測装置(SRM)指示,中間領域計測装置(IRM)指示,制御棒位置を連続監視する,などの作業手順の改善策 うにするとともに,隔離操作中,原子炉・制御棒駆動機構機能冷却水ヘッダ間差圧,中性子源領域計測装置(SRM)指示,中間領域計測装置(IRM)指示,制御棒位置を連続監視する,などの作業手順の改善策,作業手順が確実に遵守されているか,工事監理立会検査において作業チェックシートにて確認するなどの作業管理面の改善策,及び系統圧力を監視する警報を「高」と「低」に分けるなどの設備対策を講じている。また,控訴人は,前記ア(エ)b(b)判示のとおり「隠,さない企業風土づくり」及び「安全文化の構築」を行っていくこととしている。そして,前記ア(オ)判示のとおり,原子力・安全保安院は,控訴人のこれらの再発防止対策は概ね妥当なものと評価している。さらに,前記ア(イ)b判示のとおり,本件臨界事故においても,燃料の損傷,作業員及,び一般公衆の被ばくがなかったこと,本件原発1号機の制御棒駆動機構は前記ア(ア)認定のとおり,ピストンを水圧で駆動することにより制御棒を原子炉に挿入及び引き抜きする装置となっているところ,本件原子炉施設の制御棒駆動機構は,前記第2章「事案の概要」第2「前提事実」の5- 221 -「本件原子炉施設の構造等」(1)「原子炉本体」ウ「制御材」認定のとおり,通常時には電動駆動方式を,原子炉の緊急停止時には水圧駆動方式とを併用する方式を採用しており,本件原発1号機とは異なっていること,前記ア(カ)認定のとおり,本件原子炉施設と同様のABWRである柏崎刈羽原発6号機において制御棒引き抜け事象が生じているものの,中性子束に変化を生じさせるものではなかったことなどを考え併せれば,本件臨界事故及び控訴人がこれを隠蔽したことから直ちに,本件原子炉施設においても同様の臨界事故が発生して放射線,放射性物質が外部へ排出され,被控訴人らが被ばくする具体的 ったことなどを考え併せれば,本件臨界事故及び控訴人がこれを隠蔽したことから直ちに,本件原子炉施設においても同様の臨界事故が発生して放射線,放射性物質が外部へ排出され,被控訴人らが被ばくする具体的危険性が存在するとは認められず,この点に関する被控訴人らの主張には理由がない。 争点6(最近の事故例からみる事故の危険性)について(1) 応力腐食割れについて以下のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」欄の第2章「当裁判所の判断」第4「本件原子炉における事故の危険性の主張について」の3「最近の事故例からみる事故の危険性の主張について」(1)「応力腐食割れの主張について」のア「前提事実」及びウ「判断」に説示のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)ア原判決40頁1行目「甲748(7,甲804(8,9,甲809))(9」を「甲748(7,8,甲804(8ないし10,甲809)))(8,9」と改める。 )イ原判決41頁7行目「SUS316L材」を「SUS304L材」と改める。 ウ原判決41頁7行目「中部電力株式会社」から同8行目「う」まで。)を「中部電力」と改める。 エ原判決42頁6行目「甲748(7」を「甲748(7,8」と改))- 222 -める。 オ原判決42頁8行目「乙18の2」の次に「乙196」を加える。 ,,カ原判決43頁12行目「後記第5の」から同13行目「説示する」までを削除する。 キ原判決48頁10ないし11行目「など適切な水質管理を行う予定である」を「などの水質管理を行っている」と改める。 。 。 ク原判決48頁16行目「健全性を担保する予定である」を「健全性の。 担保を図っている」と改める。 。 ケ原判決48頁18行目「47ないし49」を「47ないし51」と改める 」と改める。 。 。 ク原判決48頁16行目「健全性を担保する予定である」を「健全性の。 担保を図っている」と改める。 。 ケ原判決48頁18行目「47ないし49」を「47ないし51」と改める。 コ原判決48頁19行目「①26ないし29,②25ないし30,41ないし42」を「①25ないし30,②25ないし30,41,42」と改める。 サ原判決48頁20行目「平成15年12月11日」を「平成14年12月11日」と改める。 シ原判決51頁21行目から22行目に掛けての「運用する予定であるところ」を「運用しているところ」と改める。 ,,ス原判決51頁25行目「算定に当たって」の次に「前記ア(ウ)a(c),に判示したように」を加える。 ,セ原判決53頁14行目「相当程度」を削除する。 (2) 配管減肉問題について以下のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」欄の第2章「当裁判所の判断」第4「本件原子炉における事故の危険性の主張について」の3「最近の事故例からみる事故の危険性の主張について」(2)「配管減肉問題の主張について」のア「前提事実」及びウ「判断」に説示のとおりであるから,これを引用する。 - 223 -(原判決の補正)ア原判決54頁10行目から11行目に掛けての「2,4ないし6」を「1ないし7」と改める。 イ原判決55頁9行目「甲816(16,17,甲817(5,6」))を「甲816(13ないし18,甲817(3ないし6」と改める。 ))ウ原判決55頁11行目「②35,37,38」を「②35ないし41」と改める。 エ原判決55頁15行目から16行目に掛けての「原子力施設二次系配管肉厚の管理指針」を「原子力設備二次系配管肉厚の管理指針(PWR」)と改める。 オ原判決58頁11行目から12行目に 改める。 エ原判決55頁15行目から16行目に掛けての「原子力施設二次系配管肉厚の管理指針」を「原子力設備二次系配管肉厚の管理指針(PWR」)と改める。 オ原判決58頁11行目から12行目に掛けての「②35,39」を「②35ないし40」と改める。 カ原判決58頁22行目「甲819」を「甲819(添5」と改め()〔)〕る。 キ原判決59頁5行目「SUS394L」を「SUS304L」と改める。 ク原判決59頁12行目「甲825」を「甲825(14,15」と改)める。 ケ原判決59頁16行目「第14回定期点検時」を「第19回定期検査時」と改める。 コ原判決59頁25行目「甲825,甲945」を「甲825(14,15,甲945(2」と改める。 ))サ原判決60頁4行目「未実施部位合計」を「未実施部位が合計」と改める。 シ原判決60頁25行目「予定であり,他の箇所の点検は予定していない」を「予定である」と改める。 。 。 ス原判決61頁1行目「39,40」を「38ないし40」と改める。 - 224 -セ原判決62頁6行目「考えらる」を「考えられる」と改める。 ソ原判決62頁7行目「代表部位として点検の対象とし」から同8行目,末尾までを「代表部位として点検の対象とするものである」と改める。 。 タ原判決63頁2行目「福島原子力発電所5号機」を「福島第一原子力発電所5号機」と改める。 チ原判決63頁20行目冒頭から64頁3行目末尾までを以下のとおり改める。 「(イ)しかしながら,控訴人は,前記第4「控訴人の安全確保対策」の3「事故防止に係る安全確保対策」(3)「安全設計評価」イ「事故の想定について」(ウ)「控訴人の解析結果」に判示のとおり,原子炉冷却材圧力バウンダリを構成する配管の破損により,原子炉冷却材が 策」の3「事故防止に係る安全確保対策」(3)「安全設計評価」イ「事故の想定について」(ウ)「控訴人の解析結果」に判示のとおり,原子炉冷却材圧力バウンダリを構成する配管の破損により,原子炉冷却材が系外に流出した場合にも炉心が著しい損傷に至ることなく,かつ十分に冷却が可能であり燃料エンタルピが制限値を超えないこと,原子炉格納容器外で主蒸気管が破断し,放射性物質が環境に放出されたとしても,周辺の公衆に与える放射線被ばくのリスクは十分に小さいことを確認しているし,前記第4「控訴人の安全確保対策」の1「立地条件に係る安全確保対策」(2)「地震に係る安全確保対策」のオ「本件原子炉施設の耐震安全性評価」(エ)「本件原子炉施設の耐震安全性評価」d「安全上重要な機器・配管系の耐震安全性評価」及びカ「本件原子炉施設の新耐震指針及びバックチェックルール適合性」に判示のとおり,主蒸気系配管等の安全上重要な配管系の耐震強度は,新耐震指針及びバックチェックルールに適合するとの結論が得られているのであるから,配管減肉により,被控訴人ら本件原発の周辺公衆が許容限度を超える放射線を被ばくする具体的危険性があるとは認められない」。 (3) タービン損傷事故について- 225 -ア前提事実証拠(以下の各項に括弧書きしたもの)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (ア)蒸気タービン設備の概要a発電の仕組みと蒸気の流れ原子力発電においては,原子炉で発生させた蒸気の力によってタービンを回転させて電気を起こしている。本件蒸気タービンは,高圧タービン1台並びに低圧タービン(A(B)及び(C)の3台からな),り,これら4台の蒸気タービンを直列に配置したものである。また,本件蒸気タービンは,本件原子炉を設置している原子炉建屋とは別のタービン建屋 並びに低圧タービン(A(B)及び(C)の3台からな),り,これら4台の蒸気タービンを直列に配置したものである。また,本件蒸気タービンは,本件原子炉を設置している原子炉建屋とは別のタービン建屋に設置されている。本件原子炉は,ABWRであり,原子炉圧力容器内にあるウラン燃料の核分裂反応で生じた熱によって発生した高温(摂氏約290度)の蒸気を高圧タービンに導き,高圧タービンに入った蒸気は,同タービンに回転力を与えた後,低圧タービンに入って同タービンに回転力を与え,その後,復水器に導かれる。 復水器で凝縮された水は原子炉圧力容器に戻される(本判決別紙1,7参照〔乙6(添8-6-1,12,16,乙102,乙104,)。 )乙106(添1-①〕)本件蒸気タービンは発電機につながっており,本件蒸気タービンの回転力が発電機を駆動させて,定格135万8000キロワットの電気出力を発生させる(本判決別紙1,7参照〔乙6(添8-6-4,)12,16。 )〕b本件蒸気タービンを構成する機器高圧タービン及び低圧タービンは,車軸,車室(各蒸気タービンを格納し,蒸気の外部漏えいを防ぐ,羽根(動翼及び静翼,ディスク,。))軸継手からなる。各蒸気タービンの車軸は軸継手を介して接続されて- 226 -いる。羽根を取り付ける部分をディスクといい,ディスクを含む車軸に動翼を取り付けたものを羽根車と呼ぶ(本判決別紙8,9参照。各)蒸気タービンの羽根は動翼及び静翼が片側各7段あり,静翼は動翼の間に設置され,動翼に蒸気を噴きつけて車軸を回転させる(本判決別紙9,10参照〔乙6(添8-6-4,乙104,乙106(添2)。 )-③,3〕)高圧タービンの羽根車は長さ約10メートル,直径約2メートル,低圧タービンの羽根車は1台当たり長さ約12メー 紙9,10参照〔乙6(添8-6-4,乙104,乙106(添2)。 )-③,3〕)高圧タービンの羽根車は長さ約10メートル,直径約2メートル,低圧タービンの羽根車は1台当たり長さ約12メートル,直径約5メートルで,車室も含めた本件蒸気タービン全体の長さは約49メートル,幅約10メートルである(本判決別紙10参照〔乙106(添1)-②。 )〕c本件蒸気タービンにおける放射性物質の漏えい防止対策本件原子炉施設は,前記aで述べたように本件原子炉で発生した蒸気を本件蒸気タービンに導いているが,この蒸気の中には放射性物質が含まれている。 本件蒸気タービンは車室で覆われており,車室の車軸貫通部の透き間は外側から清浄な蒸気を押し込むことで車室内の蒸気の外部漏えいを防止することにより,放射性物質の漏えいを防止している(本判決別紙8参照。 )〔乙6(添8-6-4,乙106(添1-②,弁論の全趣旨〕))d本件蒸気タービンに異常が発生した場合の措置本件蒸気タービンには,運転監視用としてタービン速度やタービン軸振動等を測定する種々の計測装置を設置している。これらの計測装置のいずれかが異常を検知した場合には,蒸気流量を制御する弁(主蒸気止め弁,蒸気加減弁及び組合せ中間弁)が自動的に閉止することにより,本件蒸気タービンを停止させるとともに,本件原子炉を自動- 227 -停止させる設計となっている〔乙6(添8-6-4,16〕。 )本件蒸気タービンへの蒸気流量を制御する弁が閉止すると,そのままでは本件原子炉で発生した蒸気が行き場を失って原子炉の圧力が急上昇し,燃料の核分裂反応が増加する危険性がある。そこで,本件原子炉施設では,このような圧力の上昇を防止するため,本件蒸気タービンへの蒸気流量を制御する弁が閉止した場合に本件原子炉で発 の圧力が急上昇し,燃料の核分裂反応が増加する危険性がある。そこで,本件原子炉施設では,このような圧力の上昇を防止するため,本件蒸気タービンへの蒸気流量を制御する弁が閉止した場合に本件原子炉で発生した蒸気を本件蒸気タービンを通さずに直接復水器へ導くタービンバイパス配管を設け,本件原子炉内の圧力の急上昇を防止する設計としている〔乙6(添8-4-9,8-6-5,12,1。 0-2-23ないし27〕)e本件蒸気タービンが破損した場合の措置(a)主蒸気管破断事故安全評価審査指針は,発生した場合には放射性物質の放出の可能性がある「事故」を想定し,解析・評価を行った上で,その設計の妥当性を確認することを要求している〔乙9(102。 )〕そこで,控訴人は,前記第4「控訴人の安全確保対策」の3「事故防止に係る安全確保対策」(3)「安全設計評価」イ「事故の想定について」(ウ)「控訴人の解析結果」c(b)のとおり,放射性物質の放出の可能性がある「事故」として主蒸気管破断事故を想定し,解析・評価を行った。その結果,このときの発電所敷地境界外における最大実効線量当量は,約1.8×10ミリシーベ-2ルトであり,周辺の公衆に与える放射線被ばくのリスクは十分に低いとの結論を得た。 (b)タービンミサイルⅰタービンミサイルの考慮安全設計審査指針は,内部発生飛来物に対する設計上の考慮と- 228 -して,安全機能を有する構築物,系統及び機器は,原子炉施設内部で発生が想定される飛来物に対し,原子炉施設の安全性を損なうことのない設計とすることを要求している〔乙9(11。 )〕そこで,控訴人は,本件原子炉施設において,本件蒸気タービンについて,この飛来物としてタービンミサイル(蒸気タービンが通常運転時(本件蒸気タービンの場合,毎分1800回転 いる〔乙9(11。 )〕そこで,控訴人は,本件原子炉施設において,本件蒸気タービンについて,この飛来物としてタービンミサイル(蒸気タービンが通常運転時(本件蒸気タービンの場合,毎分1800回転)よ,りも異常に速く回転すること等によって,蒸気タービンが破損しその破損片等が蒸気タービンの車室を破ってミサイルのように飛び出す現象)を考慮し,以下のとおりタービンミサイル防止対策。 を講じるとともに,タービンミサイルが生じた場合の健全性評価を行っている。 ⅱタービンミサイル防止対策本件原子炉施設では,タービン速度を計測する計測装置を設置し,その信号をもとに本件蒸気タービンに流入する蒸気流量を調整し,タービン速度を制御している。また,タービン速度が通常運転時よりも異常に速くなった場合に本件蒸気タービンを安全に停止させるための多重の過速度防止装置を設置している。過速度防止装置のうち,非常調速機は,回転数が定格回転数の1.11倍を超える前に作動し,本件蒸気タービンへの蒸気流量を制御する弁である主蒸気止め弁,蒸気加減弁及び組合せ中間弁が閉止す. る。さらに,非常調速機のバックアップとして定格回転数の約112倍で同様に作動するバックアップ過速度トリップ装置を設けている。これら過速度防止装置の作動により,本件蒸気タービンへ流れる蒸気を自動的に遮断し,本件蒸気タービンを自動的に停止させることとしている〔乙6(添8-6-4,11,8-7-。 29〕)- 229 -ⅲタービンミサイルが発生した場合の健全性評価控訴人は,本件原子炉施設においてタービンミサイルが発生したことを想定して,以下のとおり,本件原子炉施設の健全性を評価している〔乙6(添8-6-11。 )〕控訴人は,安全機能を有する構築物,系統及び機器のうち,系統の多重性,配置等 ンミサイルが発生したことを想定して,以下のとおり,本件原子炉施設の健全性を評価している〔乙6(添8-6-11。 )〕控訴人は,安全機能を有する構築物,系統及び機器のうち,系統の多重性,配置等を考慮して使用済燃料貯蔵プールを対象としたタービンミサイルの影響評価を実施した。その結果,本件蒸気タービンの羽根及び軸継手については,タービン建屋を飛び出し。 たとしても使用済燃料貯蔵プールには到着しないとの結論を得たまた,ディスクについては,過去の事故例に基づいた破損発生率を用いると,隣接するユニットからの寄与も含めて,ディスクミサイルが使用済燃料貯蔵プールへ衝突する確率は1×10/年-7(1千万年に1回)以下であり,極めて小さい値であるとの結論を得た。また,高圧タービン車軸及び発電機ロータは,仮に破損したとしても,車室を貫通して外部に飛び出すことはないとの結論を得た〔乙6(添8-6-11〕。 )(イ)タービン損傷事故a浜岡タービン損傷事故(a)浜岡原子力発電所5号機は,平成18年6月15日「タービン,振動過大」の警報を発報し,蒸気タービンが停止するとともに,全制御棒が挿入されて原子炉が自動停止した。なお,原子炉建屋,タービン建屋内における放射性物質放出等の異常はなく,外部への放射能の影響は認められなかった〔甲972,乙98〕。 (b)中部電力は,原因調査のため同年6月19日より蒸気タービン内部の点検を実施し,同月23日及び同月30日,以下のとおり,点検の結果を取りまとめた〔乙99,乙100。 〕- 230 -ⅰ低圧タービン3台のうち1台について,第12段の羽根1枚がタービン軸から脱落し,蒸気タービン下部に落下していた。 ⅱ当該段について,残りすべての羽根(139枚)を取り外して目視で確認したところ,46枚につ ビン3台のうち1台について,第12段の羽根1枚がタービン軸から脱落し,蒸気タービン下部に落下していた。 ⅱ当該段について,残りすべての羽根(139枚)を取り外して目視で確認したところ,46枚について,フォークの一部に折損又はひび割れを確認した。 ⅲさらに,他の低圧タービン1台について,第12段の羽根のうち4枚を点検したところ,これらの羽根にもフォークの一部に折損又はひび割れを確認した。 (c)中部電力は,平成18年10月,以上の点検,調査結果に基づく原因及び再発防止対策を,以下のとおりとりまとめた〔甲972。 〕ⅰ原因の推定中部電力は,浜岡原子力発電所5号機において,タービン軸振動の挙動の確認,外観調査,第12段動翼の抜き取り調査,損傷部位の破面観察(顕微鏡を用いて,亀裂の破面の状況を観察すること,材料調査,動翼・ロータの製作・組立調査,強度調査,。)運転履歴調査,腐食環境による材料劣化の可能性調査,異物等による動翼への衝突可能性調査,保守作業調査を行った結果,その原因として,①ランダム振動(蒸気タービン内の蒸気流の乱れ(大きな逆流や渦流)によって発生する蒸気の振動をいい,低負荷時及び無負荷時に蒸気タービンに発生するもの)及び②フラ。 ッシュバック(負荷遮断時等に蒸気タービンへの蒸気の流入が急減することによって,蒸気タービン内部の圧力が低下し,それによって給水加熱器から蒸気タービンへ蒸気が逆流して給水加熱器内の圧力が下がるため,給水加熱器内の水が減圧沸騰し,その際発生した蒸気が給水加熱器から蒸気タービンへ高速で流入する現- 231 -象)を推定した〔甲972(1ないし15。 。 )〕ⅱ推定原因に係る詳細検討中部電力は,前記二つの推定原因と運転履歴との比較検討,前記二つの推定原因と振動応力の疲労評価,二 現- 231 -象)を推定した〔甲972(1ないし15。 。 )〕ⅱ推定原因に係る詳細検討中部電力は,前記二つの推定原因と運転履歴との比較検討,前記二つの推定原因と振動応力の疲労評価,二つの推定原因の重畳時の応力等について検討した結果,前記損傷の原因は,試運転中の20パーセント負荷遮断試験時にランダム振動及びフラッシュバックが重畳して発生した応力により,12段動翼フォーク部に亀裂が発生し,その後,無負荷及び低負荷運転中のランダム振動応力と各負荷遮断試験等におけるフラッシュバックによる振動応力により,亀裂が進展したことによるものである,と推定した〔甲972(15ないし20。 )〕ⅲ再発防止対策(ⅰ)長期的対策中部電力は,浜岡原子力発電所5号機の3台の低圧タービンについて,新たに12段動翼を製作し,交換することとした。 新しい動翼の設計に当たっては,①動翼自体の振動の抑制を考慮した構造を検討するとともに,②ランダム振動及びフラッシュバックによる流れの不均一性について検証することとした。 〔甲972(21〕)(ⅱ)短期的対策新しい動翼の設計・製作には,検証試験等を含め相当な期間が見込まれることから,低圧タービン12段の動翼及び隔板をすべて取り外し,代わりに,他の発電所で実績のある圧力プレートを設置し,運転を再開する〔甲972(21,22。 )〕b本件タービン損傷事故- 232 -(a)原子力安全・保安院は,平成18年6月30日,控訴人に対して,浜岡原子力発電所5号機と同型の蒸気タービンである本件蒸気タービンのうち低圧タービンの第12段の羽根車に属する羽根について点検を行うことを指示した〔乙101。 〕(b)控訴人は,前記指示を受け,平成18年7月5日,本件原子炉を停止し,同日から同年8月2日 ビンのうち低圧タービンの第12段の羽根車に属する羽根について点検を行うことを指示した〔乙101。 〕(b)控訴人は,前記指示を受け,平成18年7月5日,本件原子炉を停止し,同日から同年8月2日に掛けて,低圧タービン(A,)(B)及び(C)の第12段の羽根について,以下のとおり,点検を実施した。なお,この際,外部への放射能の影響はなかった〔乙。 102,103〕控訴人は,①外観目視点検,②磁粉探傷試験(検査対象物に磁気を作用させ,磁粉と呼ばれる磁性微粉末を散布すると欠陥のある部分から表面に漏れ出してきた磁束に磁粉が吸い寄せられ指示模様を形成することから,この指示模様を確認して傷を観察する試験方法,③超音波探傷試験及び④浸透探傷試験(毛細管現象を。)利用して,表面に開口している傷に浸透液を浸透させた後,現象液で浸透液を表面に吸い出すことにより拡大された模様として傷を観察する試験方法)を実施し,低圧タービン(A(B)及び(C)。 ),の第12段の羽根840枚のうち258枚の羽根の動翼フォーク部にひび割れ又は折損を確認した〔乙102ないし106。 〕控訴人は,平成18年8月9日,前記結果を受けて,低圧タービン(C)の高圧タービン側の第12段以外の羽根及び車軸の点検を開始したが,ひび割れ又は折損は認められなかった〔乙105,106(添3。 )〕(c)控訴人は,以上の点検・調査結果に基づく原因及び再発防止対策に係る報告書〔乙106。以下「本件タービン調査結果報告書」という〕を,以下のとおり取りまとめ,同年10月27日,原子力。 - 233 -安全・保安院に提出した〔乙107。 〕ⅰ損傷の状況12段動翼フォーク部の損傷について,破面観察として,目視による観察及び走査型電子顕微鏡(試料に電子ビームを当て,表 子力。 - 233 -安全・保安院に提出した〔乙107。 〕ⅰ損傷の状況12段動翼フォーク部の損傷について,破面観察として,目視による観察及び走査型電子顕微鏡(試料に電子ビームを当て,表面から放出された二次電子を捉えてブラウン管上に表示する顕微鏡)による観察とを実施した結果,12段動翼フォーク部破面に。 高サイクル疲労亀裂特有のビーチマーク(疲労破壊した破面に観察される亀裂の進展方向に対して垂直な曲線状のしま模様のこと)及びストライエーション状模様(顕微鏡による観察において。 みられる破面に残る平行なしま状の模様のこと)が確認されたこ。 とから,控訴人は,本件事象の要因は高サイクル疲労亀裂(金属材料に応力が高サイクル(一般に1万回以上)で繰り返し加わった場合に,材料の静的強度に比べて低い応力でも亀裂が発生すること)と推定した〔乙106(1ないし3,19,添3,4-①。 ないし③,5,6-①,②。 )〕ⅱ原因の推定控訴人は,前記損傷の原因を探るために,材料調査,動翼及び車軸の製作・組立調査,強度調査,運転履歴調査,腐食環境による材料劣化の可能性調査並びに異物による動翼への衝突可能性調査を行った結果,前記損傷の要因である高サイクル疲労亀裂の原因として,①ランダム振動及び②フラッシュバックを推定した〔乙106(3ないし10,21,添7ないし45。 )〕ⅲ推定原因に係る詳細検討控訴人は,前記二つの推定原因と運転履歴との比較検討,前記二つの推定原因と振動応力の疲労評価,二つの推定原因の重畳の,可能性,重畳時の応力について検討した結果,前記損傷の原因は- 234 -試運転中の20パーセント負荷遮断試験時にランダム振動及びフラッシュバックが重畳して発生した応力に対して12段動翼フォーク部の強度が十分でなかったこ て検討した結果,前記損傷の原因は- 234 -試運転中の20パーセント負荷遮断試験時にランダム振動及びフラッシュバックが重畳して発生した応力に対して12段動翼フォーク部の強度が十分でなかったことにより,12段動翼フォーク部に亀裂が発生し,その後,無負荷及び低負荷運転中のランダム振動応力と各負荷遮断試験等におけるフラッシュバックによる振動応力により,亀裂が進展したことによるものである,と推定した〔乙106(3,11ないし15,添46ないし53。 )〕ⅳ再発防止対策(ⅰ)長期的対策控訴人は,本件原子炉施設の3台の低圧タービンについて,新たに12段動翼を製作し,交換することとした。 新しい動翼の設計に当たっては,①動翼自体の振動の抑制を考慮した構造を検討するとともに,②ランダム振動及びフラッシュバックの発生を考慮し,発生する振動応力に十分耐え得る設計とすることとした。 〔乙106(16〕)(ⅱ)短期的対策新しい動翼の設計・製作には,実証試験等を含め相当な期間が見込まれることから,低圧タービン12段の動翼及び静翼をすべて取り外し,代わりに,他の発電所で実績のある整流板(圧力プレート)を設置し,運転を再開する〔乙106(1 。 )〕(d)原子力安全・保安院は,同年11月6日,本件タービン調査結果報告書の原因の推定及び再発防止対策の方向性は妥当であると評価した〔乙108。 〕イ 判断 - 235 -前記アに認定のとおり,浜岡タービン損傷事故は,低圧タービン3台のうちの1台の第12段の羽根140枚のうち1枚の羽根がタービン軸から脱落し,また,うち46枚のフォークの一部に折損又はひび割れが生じていたというものであり,また,本件タービン損傷事故は,低圧タービン3台の第12段の羽根840枚のうち258枚の羽根の動翼フ ン軸から脱落し,また,うち46枚のフォークの一部に折損又はひび割れが生じていたというものであり,また,本件タービン損傷事故は,低圧タービン3台の第12段の羽根840枚のうち258枚の羽根の動翼フォーク部にひび割れ又は折損が生じていたというものである。前記ア(ア)c及びdで認定のとおり,本件蒸気タービンは,放射性物質の漏えい防止対策が講じられるとともに,タービン速度やタービン軸振動等を測定する種々の計測装置が設置され,これらの計測装置が異常を検知した場合には,蒸気流量を制御する弁が自動的に閉止することにより本件蒸気タービン及び本件原子炉が自動停止すると同時に,前記弁が閉止した場合に本件原子炉内の圧力の急上昇を防止する設計となっている。そして,現に,前記ア(イ)a(a)及び同b(b)認定のとおり,浜岡タービン損傷事故においては,タービン振動の計測装置が働いて蒸気タービンが停止するとともに原子炉が自動停止しており,浜岡タービン損傷事故及び本件タービン損傷事故においては,外部への放射能漏れは生じなかった。 また,前記ア(イ)認定のとおり,中部電力及び控訴人は,それぞれ浜岡タービン損傷事故及び本件タービン損傷事故において,詳細な点検,調査を行い,その原因を,試運転中の20パーセント負荷遮断試験時にランダム振動及びフラッシュバックが重畳して発生した応力に対して12段動翼フォーク部の強度が十分でなかったことにより,12段動翼フォーク部に亀裂が発生し,その後,無負荷及び低負荷運転中のランダム振動応力と各負荷遮断試験等におけるフラッシュバックによる振動応力により,亀裂が,進展したことによるものであると推定するとともに,再発防止対策として長期的には新たにランダム振動及びフラッシュバックによる振動応力に十分耐え得る設計とすること,短期的には他の発電 により,亀裂が,進展したことによるものであると推定するとともに,再発防止対策として長期的には新たにランダム振動及びフラッシュバックによる振動応力に十分耐え得る設計とすること,短期的には他の発電所で実績のある整流板- 236 -(圧力プレート)を設置することとしており,原子力安全・保安院は,本件タービン損傷事故に係る控訴人の前記原因及び再発防止対策に係る報告を妥当であると評価している(なお,被控訴人らは,中部電力及び控訴人の前記調査は,①タービンの羽根の形状及び車軸の傷の検討,②熱流動解析の信頼性,並びに,③整流板の安全性の検討,がいずれも不十分である旨主張する。しかしながら,前記ア(イ)a(b)及び(c),同b(b),及び(c)で認定した事実,証拠〔甲972,乙106(7,20,添3132,54-②,乙113,乙114〕並びに弁論の全趣旨によれば,①)控訴人は,前記調査に際し,実機大モデル回転試験及びFEM解析(物体を有限の大きさに分割し,物体内部のいろいろな状態,例えば,力を加えたときの変形の模様,歪の分布,応力の分布等をコンピュータで計算するもの)を行っていること,車軸について,控訴人は外観目視点検,磁粉。 探傷試験,超音波探傷試験及び浸透探傷試験を,中部電力は外観調査を,それぞれ実施していること,②控訴人は,熱流動解析に際し,本件蒸気タービンと同じ条件で解析を行っていること,並びに,③整流板は,原子力発電所4例及び火力発電所4例で実績があるものであり,その安全性についてコンピュータ解析を行っている上,浜岡原子力発電所5号機においては実際に整流板を設置して原子炉の運転を異常なく行っていること,が認められる。したがって,被控訴人らの前記主張にはいずれも理由がない。 。)さらに,前記ア(ア)e認定のとおり, 所5号機においては実際に整流板を設置して原子炉の運転を異常なく行っていること,が認められる。したがって,被控訴人らの前記主張にはいずれも理由がない。 。)さらに,前記ア(ア)e認定のとおり,控訴人は,本件蒸気タービンが破損した場合の措置として,安全評価審査指針に基づき主蒸気管破断事故を,安全設計審査指針に基づきタービンミサイルを,それぞれ想定して解析,評価し,主蒸気管破断事故が発生した場合にも周辺の公衆に与える放射線被ばくのリスクが十分に小さいものとの結論を得るとともに,タービン速度を制御するなどのタービンミサイル防止対策を講じた上,タービンミサ- 237 -イルが発生した場合においても,タービン建屋を飛び出した飛来物が使用済燃料貯蔵プールへ衝突する確率は1千万年に1回以下であるとの結論を得ている。 これに対して,被控訴人らは,本件蒸気タービンにおいて損傷事故が発生した場合,制御棒挿入の失敗や遅れ,余熱除去の失敗,原子炉圧力の上昇,冷却水の喪失等の重大な事故が発生する可能性がある旨主張するが,単にその可能性を主張するのみで,どのような機序でこのような事態に至るか具体的な可能性について主張していない。かえって,控訴人は,前記第4「控訴人の安全確保対策」の3「事故防止に係る安全確保対策」(2)「控訴人が行っている事故防止に係る安全確保対策」イ「異常拡大防止対策」(ウ)「安全保護設備の設置」のとおり,本件原子炉施設に,外部電源が喪失しても制御棒を挿入させる原子炉緊急停止系を,原子炉圧力容器内の圧力が異常に上昇した場合に圧力を速やかに低下させる主蒸気系の逃し安全弁を,それぞれ設けているし,同(3)「安全設計評価」イ「事故の想定について」(ウ)「控訴人の解析結果」のとおり,原子炉冷却材の喪失,制御棒落下等を想定して解析,評価し,この せる主蒸気系の逃し安全弁を,それぞれ設けているし,同(3)「安全設計評価」イ「事故の想定について」(ウ)「控訴人の解析結果」のとおり,原子炉冷却材の喪失,制御棒落下等を想定して解析,評価し,このような事態が生じても,本件原子炉の炉心が著しい損傷に至ることはなく,周辺の公衆に対し,著しい放射線被ばくのリスクを与えないとの結論を得ている。 以上によれば,本件蒸気タービンにおいて損傷事故が発生したとしても,これにより,放射線,放射性物質が外部へ排出され,被控訴人らが被ばくする具体的危険性が存在するとは認められず,この点に関する被控訴人らの主張には理由がない。 争点7(先行ABWRの異常事象からみた本件原子炉施設の事故の危険性)について以下のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」欄の第2章「当裁判所の判断」第4「本件原子炉における事故の危険性の主張について」の4「先- 238 -行ARWRの異常事象からみた本件原子炉施設の事故の危険性の主張について」の(2)「判断」に説示のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)原判決64頁15行目から16行目に掛けての「前記第3の2(2)オで認定したとおり」を「前記1「争点3(諸般の事情の総合考慮による差止め,の可否)について」に判示のとおり」と改める。 , 争点8(ABWRの本質的危険性)について(1) インターナルポンプの危険性についてアインターナルポンプによる金属片発生・流入について以下のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」欄の第2章「当裁判所の判断」第4「本件原子炉における事故の危険性の主張について」の5「ABWRの本質的危険性の主張について」(1)「インターナルポンプの危険性の主張について」ア「インターナルポンプによる金属片発生・流入について」の(ア) 炉における事故の危険性の主張について」の5「ABWRの本質的危険性の主張について」(1)「インターナルポンプの危険性の主張について」ア「インターナルポンプによる金属片発生・流入について」の(ア)「前提事実」及び(ウ)「判断」に説示のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)(ア)原判決64頁26行目の「前記第1章の第2の2(4)イ,ウで認定した事実」を「前記第2章「事案の概要」第2「前提事実」の4「原子力発電の仕組み」の(2)及び(3)で認定した事実」と改める。 (イ)原判決65頁14行目「甲233(8,9」を削除する。 )(ウ)原判決65頁14行目から15行目に掛けての「甲377(59,60」を削除する。 )(エ)原判決65頁25行目「甲80(1,2」を「甲80の1・2」)と改める。 (オ)原判決65頁25行目「甲232(51,52」を削除する。 )(カ)原判決65頁26行目「甲233(24」を削除する。 )- 239 -(キ)原判決66頁23行目「これ対し」を「これに対し」と改める。 (ク)原判決67頁14行目冒頭に「甲941」を加える。 ,)。 (ケ)原判決67頁15行目「5」の次に「,弁論の全趣旨」を加える(コ)原判決67頁18行目から19行目に掛けての「東京電力柏原刈羽原子力発電所」を「柏崎刈羽原発」と改める。 (サ)原判決67頁26行目から68頁1行目に掛けての「甲742(39頁」を「甲742(39」と改める。 ))(シ)原判決68頁2行目「平成14年3月には」から同5行目「の傷,が発見され」までを削除する。 ,(ス)原判決69頁13行目「主因は」を「原因は,水中軸受リングの,すみ肉溶接部の溶込み不足と」(セ)原判決70頁4行目「講じることが予定されている」を「講じてい 見され」までを削除する。 ,(ス)原判決69頁13行目「主因は」を「原因は,水中軸受リングの,すみ肉溶接部の溶込み不足と」(セ)原判決70頁4行目「講じることが予定されている」を「講じている」と改める。 (ソ)原判決70頁13行目「定める予定であること」を「定めていること」と改める。 (タ)原判決70頁19行目「相当程度」を削除する。 イインターナルポンプ停止に伴う炉内不安定性の増大について以下のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」欄の第2章「当裁判所の判断」第4「本件原子炉における事故の危険性の主張について」の5「ABWRの本質的危険性の主張について」(1)「インターナルポンプの危険性の主張について」イ「インターナルポンプ停止に伴う炉内不安定性の増大について」(イ)「判断」に説示のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)(ア)原判決72頁12行目冒頭から同13行目「受電する」までを。 「所内変圧器を通して受電する」と改める。 。 - 240 -(イ)原判決74頁15行目「乙6」の前に「前記第4「控訴人の安全確保対策」の3「事故防止に係る安全確保対策」(3)「安全設計評価」ア「運転時の異常な過渡変化として想定される事象について」(ウ)「控訴人の解析結果」b(a)で認定した事実」を加える。 (ウ)原判決75頁26行目「相当程度」を削除する。 ウインターナルポンプケーシングの取付部の破損について以下のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」欄の第2章「当裁判所の判断」第4「本件原子炉における事故の危険性の主張について」の5「ABWRの本質的危険性の主張について」(1)「インターナルポンプの危険性の主張について」ウ「インターナルポンプケーシングの取付部の破損について」(イ)「判断」に説示のとお 性の主張について」の5「ABWRの本質的危険性の主張について」(1)「インターナルポンプの危険性の主張について」ウ「インターナルポンプケーシングの取付部の破損について」(イ)「判断」に説示のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)原判決77頁8行目「実施する予定であること」を「実施していること」と改める。 エ柏崎刈羽原発7号機インターナルポンプ停止事故の原因について以下のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」欄の第2章「当裁判所の判断」第4「本件原子炉における事故の危険性の主張について」の5「ABWRの本質的危険性の主張について」(1)「インターナルポンプの危険性の主張について」エ「柏崎刈羽原子力発電所7号機インターナルポンプ停止事故の原因について」の(ア)「前提事実」及び(ウ)「判断」に説示のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)原判決78頁15行目「相当程度」を削除する。 (2) 改良型制御棒駆動機構の危険性について以下のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」欄の第2章「当裁- 241 -判所の判断」第4「本件原子炉における事故の危険性の主張について」の5「ABWRの本質的危険性の主張について」(2)「改良型制御棒駆動機構の危険性の主張について」のア「前提事実」及びウ「判断」に説示のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)ア原判決78頁19行目冒頭に「前記第2章「事案の概要」の第2「前提事実」の5「本件原子炉施設の構造等」(1)「原子炉本体」ウ「制御材」で認定した事実」を加える。 イ原判決79頁3行目「乙8(」の次に「15」を加える。 ,ウ原判決79頁12行目「乙8(16」の次に「乙31」を加える。 )エ原判決79頁22行目「前記第1章第2の2(4)ウ」を「前記第 。 イ原判決79頁3行目「乙8(」の次に「15」を加える。 ,ウ原判決79頁12行目「乙8(16」の次に「乙31」を加える。 )エ原判決79頁22行目「前記第1章第2の2(4)ウ」を「前記第2章「事案の概要」第2「前提事実」の4「原子力発電の仕組み」(3)及び同5「本件原子炉施設の構造等」(1)「原子炉本体」ウ「制御材」と改め」る。 オ原判決80頁6行目「相当程度」を削除する。 (3) 縮小されたECCSの問題点について以下のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」欄の第2章「当裁判所の判断」第4「本件原子炉における事故の危険性の主張について」の5「ABWRの本質的危険性の主張について」(3)「縮小されたECCSの問題点の主張について」のア「前提事実」及びウ「判断」に説示のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)ア原判決80頁9行目冒頭に「前記第4「控訴人の安全確保対策」の3「事故防止に係る安全確保対策」(2)「控訴人が行っている事故防止に係る安全確保対策」ウ「放射性物質異常放出防止対策」(イ)「ECCS(非常用炉心冷却系」及び同(3)「安全設計評価」イ「事故の想定につい)- 242 -て」(ウ)「控訴人の解析結果」a(a)で認定した事実」を加える。 ,イ原判決80頁23行目「原子力安全委員会の」から同25行目「員会決定」までを「ECCS性能評価指針」と改める。 )ウ原判決81頁7行目「243」の次に「,乙31(63」を加える。 ))エ原判決82頁7行目末尾「甲」の前に「前記第4「控訴人の安全確保対策」の3「事故防止に係る安全確保対策」(2)「控訴人が行っている事故防止に係る安全確保対策」ウ「放射性物質異常放出防止対策」(イ)「ECCS(非常用炉心冷却系」で認定した事実」を加える。 ), 策」の3「事故防止に係る安全確保対策」(2)「控訴人が行っている事故防止に係る安全確保対策」ウ「放射性物質異常放出防止対策」(イ)「ECCS(非常用炉心冷却系」で認定した事実」を加える。 ),オ原判決82頁16行目「乙6」の前に「前記第4「控訴人の安全確保対策」の3「事故防止に係る安全確保対策」(3)「安全設計評価」イ「事故の想定について」(ウ)「控訴人の解析結果」a(a)で認定した事実」を,加える。 カ原判決83頁21行目「前記(1)ウ(イ)」を「前記(1)「インターナルポンプの危険性について」ウ「インターナルポンプケーシングの取付部の破損について」と改める。 」キ原判決84頁5行目「②15」の前に「23」を加える。 ,ク原判決84頁21行目「相当程度」を削除する。 (4) ABWRの経済性優先性についてア定期検査短縮の問題について以下のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」欄の第2章「当裁判所の判断」第4「本件原子炉における事故の危険性の主張について」の5「ABWRの本質的危険性の主張について」(4)「ABWRは経済性優先の原子炉であるとの主張について」ア「定期検査の短縮の問題について」の(ア)「前提事実」及び(ウ)「判断」に説示のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)- 243 -原判決85頁20行目「甲748(6」を「甲748(9ないし1)1」と改める。 )イ高燃焼度燃料の採用及び「燃料被覆管の健全性確保」の虚構性について以下のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」欄の第2章「当裁判所の判断」第4「本件原子炉における事故の危険性の主張について」の5「ABWRの本質的危険性の主張について」(4)「ABWRは経済性優先の原子炉であるとの主張について」イ「高燃焼度燃料の採用及び「 判所の判断」第4「本件原子炉における事故の危険性の主張について」の5「ABWRの本質的危険性の主張について」(4)「ABWRは経済性優先の原子炉であるとの主張について」イ「高燃焼度燃料の採用及び「燃料被覆管の健全性確保」の虚構性について」の(ア)「前提事実」及び(ウ)「判断」に説示のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)(ア)原判決86頁21行目「甲804」の次に「12ないし14」()を加える。 (イ)原判決88頁21行目「しかしながら」の次に「前記第4の3,(2)ア(ウ)で認定した事実」を加える。 ,(ウ)原判決88頁21行目「乙6(添」の次に「8-1-6,41,8-3-5,6」を加える。 ,(エ)原判決88頁22行目「8-3-67ないし73」の次に「8-,4-18ないし22」を加える。 ,(オ)原判決88頁22行目「8-4-63」の次に「,8-6-2,3」を加える。 (カ)原判決90頁8行目「相当程度」を削除する。 争点9(安全システムの虚構性)について(1) 原子炉の固有の安全性,自己制御性の不完全性について以下のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」欄の第2章「当裁判所の判断」第4「本件原子炉における事故の危険性の主張について」の6「安全システムの虚構性の主張について」(1)「原子炉の固有の安全性,事- 244 -故制御性の不完全性について」のア「前提事実」及びウ「判断」に説示のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)ア原判決90頁13行目「前記第1章の第2の2(4)で認定した事実」を「前記第2章「事案の概要」第2「前提事実」の4「原子力発電の仕組み」で認定した事実」に改める。 イ原判決91頁4行目「92ないし94」を「91ないし94」と改める。 ウ原判決91 定した事実」を「前記第2章「事案の概要」第2「前提事実」の4「原子力発電の仕組み」で認定した事実」に改める。 イ原判決91頁4行目「92ないし94」を「91ないし94」と改める。 ウ原判決91頁4行目から5行目に掛けての「甲636の1(3,5」)を「甲636の1(3ないし7」と改める。 )エ原判決91頁5行目「32,33」を「31ないし33」と改める。 オ原判決92頁12行目「相当程度」を削除する。 (2) 安全性システムの虚構性について以下のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」欄の第2章「当裁判所の判断」第4「本件原子炉における事故の危険性の主張について」の6「安全システムの虚構性の主張について」(2)「安全性システムの虚構性の主張について」イ「判断」に説示のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)ア原判決93頁16行目「そうすると」から19行目末尾までを削除す,る。 イ原判決94頁5行目「前記(1)ウ(イ)」を「前記(1)」と改める。 (3) 「異常発生防止対策」の虚構性についてア原子炉出力の異常発生の危険性について以下のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」欄の第2章「当裁判所の判断」第4「本件原子炉における事故の危険性の主張について」の6「安全システムの虚構性の主張について」(3)「異常発生防止対「策」の虚構性の主張について」ア「原子炉出力の異常発生の危険性につい- 245 -て」の(ア)「前提事実」及び(ウ)「判断」に説示のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)(ア)原判決96頁24行目「8頁」を「8」と改める。 ))(イ)原判決97頁23行目「32頁」を「32」と改める。 )(ウ)原判決99頁3行目「起動操作すると」を「インターナルポンプを起動操作する 判決96頁24行目「8頁」を「8」と改める。 ))(イ)原判決97頁23行目「32頁」を「32」と改める。 )(ウ)原判決99頁3行目「起動操作すると」を「インターナルポンプを起動操作すると」と改める。 (エ)原判決99頁17行目から18行目に掛けての「安定性制御曲線」を「安定性制限曲線」と改める。 (オ)原判決100頁2行目「前記5(1)イ(イ)a」を「前記6「争点8(ABWRの本質的危険性)について」(1)「インターナルポンプの危険性について」イ「インターナルポンプ停止に伴う炉内不安定性の増大について」と改める。 」(カ)原判決100頁23行目から24行目に掛けての「相当程度」を削除する。 イ原子炉圧力・原子炉水位の異常発生の危険性について以下のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」欄の第2章「当裁判所の判断」第4「本件原子炉における事故の危険性の主張について」の6「安全システムの虚構性の主張について」(3)「異常発生防止対「策」の虚構性の主張について」イ「原子炉圧力・原子炉水位の異常発生の危険性について」(イ)「判断」に説示のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)原判決101頁8行目から9行目に掛けての「主蒸気管隔離弁」を「主蒸気隔離弁」と改める。 ウ監視制御について- 246 -原判決「事実及び理由」欄の第2章「当裁判所の判断」第4「本件原子炉における事故の危険性の主張について」の6「安全システムの虚構性の主張について」(3)「異常発生防止対策」の虚構性の主張について」ウ「「監視制御」(イ)「判断」に説示のとおりであるから,これを引用する。 エ保守管理について以下のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」欄の第2章「当裁判所の判断」第4「本件原子炉における事故の危険性の主張 イ)「判断」に説示のとおりであるから,これを引用する。 エ保守管理について以下のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」欄の第2章「当裁判所の判断」第4「本件原子炉における事故の危険性の主張について」の6「安全システムの虚構性の主張について」(3)「異常発生防止対「策」の虚構性の主張について」エ「保守管理について」(イ)「判断」に説示のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)原判決103頁14行目「原告が」を「被控訴人らが」と改める。 (4) 「異常拡大防止対策」の虚構性についてア異常発生の検知の不十分性について原判決「事実及び理由」欄の第2章「当裁判所の判断」第4「本件原子炉における事故の危険性の主張について」の6「安全システムの虚構性の主張について」(4)「異常拡大防止対策」の虚構性の主張について」ア「「異常発生の検知の不十分性について」(イ)「判断」に説示のとおりであるから,これを引用する。 イ安全保護設備の不十分性について以下のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」欄の第2章「当裁判所の判断」第4「本件原子炉における事故の危険性の主張について」の6「安全システムの虚構性の主張について」(4)「異常拡大防止対「策」の虚構性の主張について」イ「安全保護設備の不十分性について」(イ)「判断」に説示のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)- 247 -(ア)原判決105頁8行目「前記5(2)ウ」を「前記6「争点8(ABWRの本質的危険性)について」(2)「改良型制御棒駆動機構の危険性について」と改める。 」(イ)原判決105頁11行目「相当程度」を削除する。 (ウ)原判決105頁12行目「前記5(3)ウ」を「前記6「争点8(ABWRの本質的危険性)について」(3)「縮小された いて」と改める。 」(イ)原判決105頁11行目「相当程度」を削除する。 (ウ)原判決105頁12行目「前記5(3)ウ」を「前記6「争点8(ABWRの本質的危険性)について」(3)「縮小されたECCSの問題点について」と改める。 」(エ)原判決105頁24行目「相当程度」を削除する。 ウ安全保護設備等の異常事象における総合的な妥当性の解析評価の問題点について以下のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」欄の第2章「当裁判所の判断」第4「本件原子炉における事故の危険性の主張について」の6「安全システムの虚構性の主張について」(4)「異常拡大防止対「策」の虚構性の主張について」ウ「安全保護設備等の異常事象における総合的な妥当性の解析評価の問題点について」(イ)「判断」に説示のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)(ア)原判決107頁2行目「前記第2の2(1)」を「前記第2「争点2(具体的危険」の主張立証責任等)について」と改める。 「」(イ)原判決107頁9行目「相当程度」を削除する。 (ウ)原判決107頁10行目「前記5(2)ウ」を「前記6「争点8(ABWRの本質的危険性)について」(2)「改良型制御棒駆動機構の危険性について」と改める。 」(エ)原判決107頁12行目「相当程度」を削除する。 (オ)原判決107頁12行目から13行目に掛けての「前記5(3)ウ」を「前記6「争点8(ABWRの本質的危険性)について」(3)「縮小- 248 -されたECCSの問題点について」と改める。 」(カ)原判決107頁14行目「相当程度」を削除する。 (キ)原判決107頁15行目「6(3)ア(ウ)」を「前記7「争点9(安全システムの虚構性)について」(3)「異常発生防止対策」の虚構性「について」ア「 107頁14行目「相当程度」を削除する。 (キ)原判決107頁15行目「6(3)ア(ウ)」を「前記7「争点9(安全システムの虚構性)について」(3)「異常発生防止対策」の虚構性「について」ア「原子炉出力の異常発生の危険性について」と改める。 」(ク)原判決108頁10行目「前記5(2)ア」を「前記6「争点8(ABWRの本質的危険性)について」(2)「改良型制御棒駆動機構の危険性について」と改める。 」(ケ)原判決108頁16行目「前記5(1)ア(ア)b,同(ウ)」を「前記6「争点8(ABWRの本質的危険性)について」(1)「インターナルポンプの危険性について」ア「インターナルポンプによる金属片発生・流入について」と改める。 」(コ)原判決109頁1行目「甲636の1」の次に「16,17」()を加える。 (サ)原判決109頁9行目「前記第4の1(3)イ」を「前記2「争点4(原発事故の蓋然性からみた危険性)について」と改める。 」(5) 「放射性物質放出防止対策」の虚構性についてアECCSの有効性欠如について以下のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」欄の第2章「当裁判所の判断」第4「本件原子炉における事故の危険性の主張について」の6「安全システムの虚構性の主張について」(5)「放射性物質異常放「出防止対策」の虚構性の主張について」ア「ECCSの有効性欠如について」(イ)「判断」に説示のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)原判決111頁14行目「相当程度」を削除する。 イ原子炉格納容器(及びその附属設備)の脆弱性について- 249 -以下のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」欄の第2章「当裁判所の判断」第4「本件原子炉における事故の危険性の主張について」の6「安全システムの虚構性 設備)の脆弱性について- 249 -以下のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」欄の第2章「当裁判所の判断」第4「本件原子炉における事故の危険性の主張について」の6「安全システムの虚構性の主張について」(5)「放射性物質異常放「出防止対策」の虚構性の主張について」イ「原子炉格納容器(及びその付属設備)の脆弱性について」(イ)「判断」に説示のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)原判決112頁1行目「相当程度」を削除する。 争点10(安全審査の無効性)について前記第4「控訴人の安全確保対策」に判示したとおり,控訴人の主張立証を検討した結果,本件原子炉施設の設置,設計及び運転は審査指針等の定める安全上の基準を満たしていると判断しているものであり,単に国の安全審査を経ていることをもって,本件原子炉施設の設置,設計及び運転が審査指針等の定める安全上の基準を満たしているものと判断しているものではないから,この点に関する被控訴人らの主張には理由がない。 争点11(MOX利用の危険性)について以下のとおり補正するほか,原判決「事実及び理由」欄の第2章「当裁判所の判断」第4「本件原子炉における事故の危険性の主張について」の7「MOX利用の危険性について」の(1)「前提事実」及び(3)「判断」に説示のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)原判決113頁25行目「平成17年10月3日」を「平成20年10月27日」と改める。 争点12(事故被害の甚大性)について前記第2「争点2(具体的危険」の主張立証責任等)について」において「判示したとおり,原子力発電所は危険なものであり,その安全性は,厳しく審- 250 -査する必要があるが,他方,原子力発電所のような科学技術を利用した施設においては「絶対的 について」において「判示したとおり,原子力発電所は危険なものであり,その安全性は,厳しく審- 250 -査する必要があるが,他方,原子力発電所のような科学技術を利用した施設においては「絶対的安全性」を想定することはできず,その「安全性」は,放,射線,放射性物質の環境への排出を可及的に少なくし,これによる災害発生の危険性を社会通念上無視し得る程度に小さなものに保つことを意味するものであるから,その事故被害の甚大性を理由に,直ちに「安全性」を有しないものと結論づけることはできない。したがって,この点に関する被控訴人らの主張には理由がない。 争点13(防災体制の不備)について前記第4「控訴人の安全確保対策」の3「事故防止に係る安全確保対策」において認定したとおり,控訴人は,本件原子炉について,異常発生防止対策,異常拡大防止対策及び放射性物質異常放出防止対策の事故防止に係る安全確保対策を講じているところ,被控訴人らは,前記争点においては,本件原子炉施設の防災体制の不備を主張するのみであり,いかなる機序で本件原子炉の外部へ放射線,放射性物質が排出され,被控訴人らが被ばくする可能性があるかについて具体的に主張立証していないから,この点に関する被控訴人らの主張には理由がない。 争点14(地震・耐震設計の不備)について(1) 時機に後れた攻撃防御方法の主張について本件訴訟は,本件原子炉の危険性を理由に,人格権に基づき,その運転差止を求めるものであるところ,前記第2「争点2(具体的危険性」の主張「立証責任等)について」に判示のとおり,原子力発電所のように,科学技術を利用した施設においては,絶対的に災害発生の危険性がないという「絶対的安全性」を想定することはできないから,その運転差止の根拠となる危険性とは,放射線,放射性物質の環 子力発電所のように,科学技術を利用した施設においては,絶対的に災害発生の危険性がないという「絶対的安全性」を想定することはできないから,その運転差止の根拠となる危険性とは,放射線,放射性物質の環境への排出を可及的に少なくし,これによる災害の危険性を社会通念上無視し得る程度に小さなものに保つという「相対的安全性」を欠くことを意味するものというべきである。そうすると,そ- 251 -の危険性(安全性)の評価基準は,科学技術の進歩等並びにこれに基づく立地条件等の確認状況及び施設の機能・性能等により変動することになる。 本件においては,前記第4「控訴人の安全確保対策」の1「立地条件に係る安全確保対策」(2)「地震に係る安全確保対策」のウ「新耐震指針の概要,エ「バックチェックルール」及びカ「本件原子炉施設の新耐震指針及」びバックチェックルール適合性」に判示のとおり,原判決言渡し後の平成18年9月に,地震学及び地震工学に関する新しい知見並びに原子炉施設の耐震設計技術の改良及び進歩を反映させた新耐震指針が策定され,原子力安全・保安院は,同月20日,控訴人ら原子力事業者に対して新耐震指針に照らしてバックチェックを行うように指示した。また,この間,前記第4「控訴人の安全確保対策」の1「立地条件に係る安全確保対策」(2)「地震に係る安全確保対策」オ「本件原子炉施設の耐震安全性評価」(エ)「本件原子炉施設の耐震安全性評価」並びに後記(8)「能登半島地震について」及び同(9)「新潟県中越沖地震について」に判示するとおり,平成19年3月25日に能登半島地震が,同年7月16日に新潟県中越沖地震が発生し,一方,控訴人は,前記新耐震指針等を受けて,平成18年11月以降,本件原子炉施設の一部の施設につき耐震裕度向上工事を行ってきた。そして,控訴人は,原子力安全 年7月16日に新潟県中越沖地震が発生し,一方,控訴人は,前記新耐震指針等を受けて,平成18年11月以降,本件原子炉施設の一部の施設につき耐震裕度向上工事を行ってきた。そして,控訴人は,原子力安全・保安院の前記指示に基づき,前記状況及び科学技術の知見・進歩を踏まえた上で,各種調査(地質調査,過去の地震の調査等)及び施設の耐震安全性評価を行い,平成20年3月,原子力安全・保安院に対して,前記バックチェックの結果を本件中間報告書にまとめて報告し,同月24日,当審第6回口頭弁論期日において,新耐震指針及び前記バックチェックの結果に基づく主張をしている(当裁判所に顕著な事実)のであって,以上の経過及び控訴人の調査・検討の内容等に照らすと,控訴人に前記主張をより早期に提出することを期待することはできなかったと解するのが相当であるから,控訴人の前記主張は,時機に後れた攻撃防御方法ということはできない。し- 252 -たがって,この点に関する被控訴人らの主張は採用することはできない。 (2) 震源を特定せず策定する地震動についてア地表地震断層が出現せずに発生する地震の規模について被控訴人らは,マグニチュード7.3以下の地震では地表地震断層が出現しないことが多いというのが最新の知見であり,この知見は,分科会でも承認されており,現に地表地震断層が明瞭に現れずにマグニチュード7. 3の規模で発生した地震として兵庫県南部地震及び鳥取県西部地震が存在するところ,控訴人は,このような知見,地震を考慮せずに,新耐震指針,. に基づき「震源を特定せず策定する地震動」として,マグニチュード68を想定すれば足りるとしているから不当である旨主張するので以下に検討する。 ),証拠〔甲1249,甲1250,甲1303(21,22,乙153乙155〕によれば,①平 して,マグニチュード68を想定すれば足りるとしているから不当である旨主張するので以下に検討する。 ),証拠〔甲1249,甲1250,甲1303(21,22,乙153乙155〕によれば,①平成14年6月12日に開催された中央防災会議「東南海,南海地震等に関する専門調査会(以下「東南海地震等に関する調査会」という)第5回会議において配布された中央防災会議事務局。 「内陸部の地震による工学基盤の揺れの強さの考え方」には「マグニチ,ュード7.3以下の地震は,必ずしも既知の活断層で発生した地震であるとは限らないことがわかる。したがって,内陸部で発生する被害地震のうち,マグニチュード7.3以下の地震は,活断層が地表に見られていない潜在的な断層によるものも少なくないことから,どこででもこのような規模の被害地震が発生する可能性があると考えられる」との記載があるこ。 と,②産総研活断層研究センター遠田晋次「地表地震断層出現率の再検討-いわゆる「未知の活断層」評価の重要性-」は「地表地震断層から,地震発生事象を推定すると,マグニチュード7.0以上で出現率は44パーセントとなり,2個に1個もの見落としを生じる。したがって,活断層が未発見の地域でも現実問題としてマグニチュード7.0前後までの内陸- 253 -地震を考慮しなければならない」としていること,③平成17年4月22日に開催された第17回分科会において,石橋克彦委員が「一概にマグ」,ニチュード6.8を超えれば地表地震断層が必ず出現するとは言えない「マグニチュード7.3程度までの内陸地震はどこでも起こり得ると考えた方がいい」と発言したこと,が認められる。 しかしながら,前記①については,証拠〔乙154〕及び弁論の全趣旨によれば,平成16年11月26日開催された第17回東南海地震等に どこでも起こり得ると考えた方がいい」と発言したこと,が認められる。 しかしながら,前記①については,証拠〔乙154〕及び弁論の全趣旨によれば,平成16年11月26日開催された第17回東南海地震等に関する調査会において,中部圏,近畿圏(中京大都市圏,京阪神大都市圏並びに津市,豊橋市及び和歌山市の範囲)に影響を与える地震の想定につき,「活断層が地表で認められない地震規模の上限については,防災上の観点から,マグニチュード6台の最大であるマグニチュード6.9の地震を想定する」との整理がなされており,マグニチュード7.3以下の地震は。 地表地震断層がなくてもどこでも発生する可能性があるという前記知見は,同調査委員会における検討の結果,結局採用されなかったことが認められる。また,前記②については,証拠〔乙155〕によれば,ここにいう出現率は,震源断層と地表地震断層の長さが対応する場合に限った比率であり,しかも,原子力発電所の建設等を目的として実際に活断層や地表断層等の調査を行った場合を前提とするものでないことが認められる。したがって,本件原子炉施設の震源を特定せず策定する地震動の策定に際し,前記②の見解を採用して,地震の規模の上限を定めるのが相当であるということはできない。前記③については,前記第4「控訴人の安全確保対策」の1「立地条件に係る安全確保対策」(2)「地震に係る安全確保対策」ウ「新耐震指針の概要」に認定のとおり,新耐震指針は,地質学,地震学,地震工学等の専門家により構成された分科会での4年10か月に及ぶ調査審議の結果「震源を特定せず策定する地震動は,震源と活断層を関連付,けることが困難な過去の内陸地殻内の地震について得られた震源近傍にお- 254 -ける観測記録を収集し,これらを基に敷地の地盤物性を加味した応答スペクトルを設 る地震動は,震源と活断層を関連付,けることが困難な過去の内陸地殻内の地震について得られた震源近傍にお- 254 -ける観測記録を収集し,これらを基に敷地の地盤物性を加味した応答スペクトルを設定する」旨定めているから,分科会において前記石橋委員のような発言があったことをもっては,最新の知見においてマグニチュード7. 3以下の地震では地表地震断層が出現しないことが多いとされていることにはならない。 また,被控訴人らは,地表地震断層が明瞭に現れずに発生した地震としてマグニチュード7.3の兵庫県南部地震及び鳥取県西部地震を挙げる。 ),しかしながら,証拠〔甲777,甲1300,甲1303(9,乙23乙52〕によれば,兵庫県南部地震は,既知の断層である六甲・淡路断層帯の一部を震源として発生したものであること,鳥取県西部地震は,同地震前に撮影された空中写真の判読によりリニアメントの判読が可能であったとされており,いずれも既知の活断層から発生した地震であると認められるから,これらの地震をもって,地表地震断層が明瞭に現れずにマグニチュード7.3の規模の地震が発生するということはできない。 そして,他に,最新の知見ではマグニチュード7.3以下の地震では地表地震断層が出現しないことが多いとされていると認めるに足りる証拠は存在せず,被控訴人らの前記主張は採用できない。 イ加藤スペクトルについて被控訴人らは,震源を特定せず策定する地震動として加藤スペクトルが用いられているが,その信頼性が全く検証されていない旨主張するので検討する。 前記第4「控訴人の安全確保対策」の1「立地条件に係る安全確保対策」(2)「地震に係る安全確保対策」オ「本件原子炉施設の耐震安全性評価」(ウ)「新耐震指針及びバックチェックルールに基づく基準地震動Ssの策定」b「震源を特定 対策」の1「立地条件に係る安全確保対策」(2)「地震に係る安全確保対策」オ「本件原子炉施設の耐震安全性評価」(ウ)「新耐震指針及びバックチェックルールに基づく基準地震動Ssの策定」b「震源を特定せず策定する地震動」に判示のとおり,加藤スペクトルは,JEAG(2007)が震源を特定せず策定する地震動の策定- 255 -方法の一例として挙げている手法である上,控訴人は,加藤スペクトルを用いるに際し,地域性に関する知見及び確率論的評価に基づいて検討を実施し,適用する妥当性を有するものとの結論を得ている。また,証拠〔乙146(11〕によれば,溝上恵東京大学名誉教授(元同大学地震研究)所教授)は,その「鑑定書」と題する書面(以下「溝上鑑定意見書」という)において「加藤スペクトルはデータ数が少ない等の問題があるた。 ,め,無条件でどこにでも適用できるというものではない」旨指摘した上で,本件原子炉施設での適用の妥当性を検証した結果「加藤スペクトルによ,る地震動は,①マグニチュード6.8までの規模の地震観測記録を取り込んだものであり,本件敷地における震源を特定せず策定する地震動の地震の上限規模(マグニチュード6.8)の記録が考慮されていること,②能登半島地震(マグニチュード6.9)による本件敷地での比較的震源近傍の観測記録を概ね上回っており,かつ敷地の地盤物性が反映されたものであることが認められることから,本件原子炉施設の震源を特定せず策定する地震動として適用できるもの」であるとして,その妥当性を肯定していることが認められる。 以上に加えて,被控訴人らは,加藤スペクトルが信頼性を有しないことについて何ら具体的に主張していないことを考え併せれば,加藤スペクトルに関する被控訴人らの前記主張は採用できない。 ウ松田教授「最大地震規模による日 控訴人らは,加藤スペクトルが信頼性を有しないことについて何ら具体的に主張していないことを考え併せれば,加藤スペクトルに関する被控訴人らの前記主張は採用できない。 ウ松田教授「最大地震規模による日本列島の地震分帯図」について被控訴人らは,松田教授が「最大地震規模による日本列島の地震分帯図」において,北陸帯における最大期待地震規模をマグニチュード7と1/2としていることから,震源を特定せず策定する地震動としてマグニチュード7.3を想定すべきである旨主張する。しかしながら,証拠〔甲1241(300〕によれば,松田教授が最大期待地震規模をマグニチュ)ード7と1/2とする根拠は,既知の活断層である邑知潟断層帯,金沢平- 256 -野東縁断層帯及び過去の地震である1729年能登半島地震であることが認められるから,震源を特定せず策定する地震動において,前記松田教授の文献を考慮することはできず,被控訴人らの前記主張には理由がない。 エ能登半島地震の結果の考慮等について被控訴人らは,震源を特定せず策定する地震動の応答スペクトルの妥当性の確認に際し,能登半島地震の結果を考慮していないから妥当でない旨主張する。しかしながら,前記第4「控訴人の安全確保対策」の1「立地条件に係る安全確保対策」(2)「地震に係る安全確保対策」オ「本件原子炉施設の耐震安全性評価」(ウ)「新耐震指針及びバックチェックルールに基づく基準地震動Ssの策定」のa「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」(f)「応答スペクトルに基づく地震動評価」及びc「基準地震動Ssの策定」(a)「応答スペクトルに基づく手法による基準地震動Ssの策定」に判示のとおり,控訴人は,能登半島地震による実際の観測記録を再現した能登半島地震のシミュレーション解析を実施し,このシミュレーション解析の結果を スペクトルに基づく手法による基準地震動Ssの策定」に判示のとおり,控訴人は,能登半島地震による実際の観測記録を再現した能登半島地震のシミュレーション解析を実施し,このシミュレーション解析の結果を基に,応答スペクトルに基づく地震動評価を行い,この地震動評価と比較して,震源を特定せず策定する地震動の応答スペクトルの妥当性を確認しているから,被控訴人らの前記主張は採用できない。 また,被控訴人らは,現実の地震が原子力発電所の耐震設計で計算された地震動を大きく超える影響を与えた事実は,兵庫県南部地震,2005年宮城県南部地震,能登半島地震及び新潟県中越沖地震で明らかになっている旨主張する。しかしながら,仮に現実の地震が原子力発電所の耐震設計で計算された地震動を大きく超える影響を与えた事実が存在したとしても,これらの事実から直ちに本件原子炉施設において震源を特定せず策定する地震動としてマグニチュード6.8を想定したことの相当性が左右されるとはいえない。 オ 結論 - 257 -以上のほか,弁論の全趣旨によれば,東南海地震等に関する調査会が検討対象としている中部圏,近畿圏は,東海地震など大きな地震の発生が予想される地域であることが認められるから,この地域で防災上の観点からマグニチュード6.9を想定していることから直ちに本件原子炉施設においてもマグニチュード6.9を想定するのが相当であるとはいえないこと,並びに,証拠〔乙136(157,乙146(9〕によれば,地震調))査委員会は「確率論的地震動予測地図の説明」の中で,活断層が特定され,ていない場所で発生する地震の規模として,本件原発が存在する領域につきマグニチュード6.8としていること,及び,溝上鑑定意見書は「能,登半島の地形・地質構造と地震活動性から見て,本件原子炉施設での震源を特 所で発生する地震の規模として,本件原発が存在する領域につきマグニチュード6.8としていること,及び,溝上鑑定意見書は「能,登半島の地形・地質構造と地震活動性から見て,本件原子炉施設での震源を特定せず策定する地震動の地震の上限規模はマグニチュード6.8を超えることはない」としていることが認められること,以上の諸点を考え併せれば,控訴人が,新耐震指針及びバックチェックに基づき本件原子炉施設において「震源を特定せず策定する地震動」として,マグニチュード6. 8を想定すべきとしたことは妥当というべきであり,この点に関する被控訴人らの主張には理由がない。 (3) 邑知潟断層帯等の評価についてア考慮すべき活断層の範囲について被控訴人らは,考慮すべき活断層の範囲を12ないし13万年前以降に活動したものに限定した根拠が明らかでない旨主張する。しかしながら,前記第2「争点2(具体的危険」の主張立証責任等」において判示の「)とおり,原子炉施設の具体的危険性(安全性)は「放射線,放射性物質,の環境への排出を可及的に少なくし,これによる災害発生の危険性を社会通念上無視し得る程度に小さなものに保っているか否か」の見地により判断するものであるから,考慮すべき活断層の範囲も,必ずしも学術上の活断層の定義による必要はなく,それが前記具体的危険性(安全性)を判断- 258 -するために相当性,合理性を有するか否かの見地から判断すべきである。 そして,前記第4「控訴人の安全確保対策」の1「立地条件に係る安全確保対策」(2)「地震に係る安全確保対策」ウ「新耐震指針の概要」に認定のとおり,新耐震指針は,地質学,地震学,地震工学等の専門家により構成された分科会での4年10か月に及ぶ調査審議の結果,活断層を「最近の地質時代に繰り返し活動し,将来も活動する可能性のあ 要」に認定のとおり,新耐震指針は,地質学,地震学,地震工学等の専門家により構成された分科会での4年10か月に及ぶ調査審議の結果,活断層を「最近の地質時代に繰り返し活動し,将来も活動する可能性のある断層」と定義した上で,耐震設計上考慮すべき活断層について,後期更新世以降の活動が否定できないものとし,その認定に際しては,最終間氷期の地層の活動の有無によることができるとしており,控訴人は,この新耐震指針に従って,考慮すべき活断層の範囲を12ないし13万年前以降に活動したものと限定したのであるから「新編日本の活断層」が200万年前以降に活動,したものを活断層と定義していたり,地震調査委員会が約200万年前以降に活動したものを考慮すべきとしていることをもって,控訴人の前記活断層の範囲の限定が根拠に基づかない不当なものということはできない。 また,被控訴人らは,控訴人の前記活断層の範囲の限定が不当である理由として,四川大地震を引き起こした断層も12ないし13万年前より以前に活動していたものである旨主張する。しかしながら,証拠〔乙173(2,3〕によれば,産総研活断層研究センターは,四川大地震は,後期)更新世以降も活動しており,かつ,従前より活動の可能性が指摘されてい,た龍門山断層で発生した地震であると報告していることが認められるから四川大地震に関する被控訴人らの主張には理由がない。 以上によれば,考慮すべき活断層の範囲に関する被控訴人らの主張には理由がない。 イ坪山-八野断層について控訴人は,坪山-八野断層につき,邑知潟南縁断層帯とは別の断層帯として評価しているところ,被控訴人らは,松田の基準によれば,坪山-八- 259 -野断層と他の断層は5キロメートル以内に存在するから,邑知潟断層帯は,坪山-八野断層も含めて全長44キロメートル として評価しているところ,被控訴人らは,松田の基準によれば,坪山-八- 259 -野断層と他の断層は5キロメートル以内に存在するから,邑知潟断層帯は,坪山-八野断層も含めて全長44キロメートルのものとして考慮すべきである旨主張するので以下に検討する。 証拠〔甲1241(289,292〕によれば,松田の基準は,①)走向方向に5キロメートル以内の分布間隔をもってほぼ一線に並ぶほぼ同じ走向の複数の断層,②5キロメートル以内の相互間隔をもって並走する幅5キロメートル以内の断層群,③その断層線の中点の位置が主断層から5キロメートル以上離れている走向を異にする付随断層あるいは分岐断層は,いずれも,離れている断層が同時に動く起震断層としていることが認められる。しかしながら,前記第4「控訴人の安全確保対策」の1「立地条件に係る安全確保対策」(2)「地震に係る安全確保対策」オ「本件原子炉施設の耐震安全性評価」(イ)「控訴人による活断層評価」a「敷地周辺陸域の断層(本件敷地中心から半径30キロメートル以内)の評価結果」(a)「邑知潟断層帯」において認定したとおり,坪山-八野断層は,邑知潟南縁断層帯とずれの向きが逆であり,それぞれの断層面は地下深部では離れていくと考えられるところ,証拠〔乙32(8,乙174(1)1,乙175(10〕によれば,地震調査委員会も,ずれの向きが逆))であり地下深部で断層面が離れていく場合には,別の断層帯と評価していることが認められるから,坪山-八野断層は,邑知潟断層帯と別の断層帯と評価するのが相当である。なお,証拠〔乙32(1ないし3〕によれ)ば,地震調査委員会は「邑知潟断層帯の長期評価について」において,,過去及び将来の活動区間について,断層の位置関係,形状等から推定して,断層帯全体約44キロメートルで 32(1ないし3〕によれ)ば,地震調査委員会は「邑知潟断層帯の長期評価について」において,,過去及び将来の活動区間について,断層の位置関係,形状等から推定して,断層帯全体約44キロメートルで1区間として評価していることが認められる。しかしながら,証拠〔乙32(5,6,乙50(5,6,29,)30〕によれば,この評価の信頼性は,中程度であり,地震調査研究推)進本部も,平成17年8月30日付け「今後の重点的調査観測について- 260 -(-活断層で発生する地震及び海溝型地震を対象とした重点的調査観測,活断層の今後の基盤的調査観測の進め方-」において,補完調査を要す)る断層の候補リストに邑知潟断層帯を挙げていることが認められるところ,控訴人は,本件原子炉施設の耐震設計及びバックチェックに際し,前記第4「控訴人の安全確保対策」の1「立地条件に係る安全確保対策」(2)「地震に係る安全確保対策」オ「本件原子炉施設の耐震安全性評価」(ア)「控訴人が行った地質調査」判示のとおりの地質調査を行った上で,坪山-八野断層は,邑知潟断層帯とずれの向きが逆であり,断層面は地下深部では離れていくと評価しているのであり,その評価の妥当性に疑問を抱くべき資料は見当たらないのであるから,地震調査委員会の前記評価をもって,邑知潟断層帯を全長44キロメートルのものと評価するのが相当であるとはいえない。 また,被控訴人らは,断層の向きが逆であっても同時に動いたり,ほぼ直線状に並んではいるが二つの断層がずれて動いたり,地表断層が離れていても同時に動くことがあることは,濃尾地震,兵庫県南部地震,新潟県中越沖地震,岩手・宮城内陸地震,陸羽地震及び三河地震で知られている旨主張する。しかしながら,証拠〔甲1306,甲1309,乙51(1,2,5,6,10,乙52(1 濃尾地震,兵庫県南部地震,新潟県中越沖地震,岩手・宮城内陸地震,陸羽地震及び三河地震で知られている旨主張する。しかしながら,証拠〔甲1306,甲1309,乙51(1,2,5,6,10,乙52(1,2,9,19,20,乙176(8))40,846,乙177(1,6,乙178(1,7,乙180(1)))15〕によれば,①濃尾地震は,温見断層,根尾谷断層及び梅原断層)が同時に活動して生じたものであるところ,これらの断層は,断層面が北西-南東走向で連続的に分布し,いずれも,北西部は一部で北東側隆起成分を,南東部では南西側隆起成分を伴う左横ずれ断層であり,断層の向きが同一であること,②兵庫県南部地震は,六甲・淡路島断層帯のうち,六甲山地南縁-淡路島東岸区間及び淡路島西岸区間が活動して生じたものであるところ,六甲山地南縁-淡路島東岸区間は,北西側隆起の逆断層成- 261 -分を伴う主として右横ずれ断層であり,また,淡路島西岸区間は,南東側隆起の逆断層成分を伴う主として右横ずれ断層であり,両者の断層の向きは異なるものの,両者は収れんし,地下深部においてY字状に交差していること,③新潟県中越沖地震は,南東傾斜の逆断層と北西傾斜の逆断層が活動して生じたものであるところ,両者は地下深部で交差すること,④岩手・宮城内陸地震は,全体的に西傾斜の逆断層とこれに交わる東傾斜の断層が活動して生じたものと推定されること,⑤陸羽地震は,横手盆地東縁断層帯,真昼山地東縁断層帯及び駒ケ岳西麓断層群が活動して生じたものであるところ,横手盆地東縁断層帯は,東側隆起の逆断層であり,真昼山地東縁断層帯は,西側隆起の逆断層であり,両者の断層の向きは異なるものの,両者は地下5キロメートル程度で交わること,⑥三河地震は,横須賀断層及び深溝断層が活動して生じ 側隆起の逆断層であり,真昼山地東縁断層帯は,西側隆起の逆断層であり,両者の断層の向きは異なるものの,両者は地下5キロメートル程度で交わること,⑥三河地震は,横須賀断層及び深溝断層が活動して生じたものであるが,これらの断層は屈曲しているものの,いずれも西側が隆起する連続する断層であること,がそれぞれ認められる。したがって,これらの地震は,いずれも断層の向きが同一である(濃尾地震)又は断層が連続する(三河地震)か断層の向きが逆であっても各断層が交差している(兵庫県南部地震,新潟県中越沖地震,岩手・宮城内陸地震及び陸羽地震)事案であり,ずれの向きが逆でそれぞれの断層面が地下深部で離れていく事案ではないから,これらの地震をもって,坪山-八野断層と邑知潟断層帯が同時に活動すると評価するのが相当であるとはいえない。 以上の事実に加えて,小島鑑定意見書〔乙145(70〕が「邑知潟)断層帯南部に当たる坪山-八野断層に関しては,①中間報告書に記載されているように,南東側隆起の邑知潟南縁断層帯と北西側隆起の坪山-八野断層とは深さ方向の傾きが逆であり,地下深部に向かうに従って両断層の断層面は大きく離れていくと認められ,②地震調査委員会でも,ずれの向きが逆であり,地下深部では断層面が離れていくと判断されるものに- 262 -ついては別の断層帯をなすものとしていること,さらには,③邑知潟断層帯北部と南部との間に存在する宝達山北縁断層に沿って重力異常の急変帯が横断しており,北部と南部では地下深部の構造に違いがあることから,そもそも北部と南部とを一連の起震断層として扱う必要はないものと考えることができる」としていることを考え併せれば,坪山-八野断層につ。 いて,邑知潟断層帯とは別の断層帯とした控訴人の評価は妥当であり,この点に関する被控訴人らの主 断層として扱う必要はないものと考えることができる」としていることを考え併せれば,坪山-八野断層につ。 いて,邑知潟断層帯とは別の断層帯とした控訴人の評価は妥当であり,この点に関する被控訴人らの主張には理由がない。 ウ野寺断層について被控訴人らは,野寺断層につき,その南側でも隆起が続いているから,南側部分も邑知潟断層帯に含めて考えるべきであり,そうすると,邑知潟断層帯の全長は,約44キロメートルとなる旨主張する。しかしながら,証拠〔乙125-3-33ないし35〕によれば,控訴人は,本件原子炉施設の耐震設計及びバックチェックに際しての地質調査に基づき,野寺断層の南側の区間であるかほく市多田から同市野寺付近のリニアメント・変動地形は,花崗岩及びそれをドーム状にとりまく新第三紀層と中川砂岩層等の第四紀層との境界に位置し,これらの地層の関係は不整合であると評価していることが認められ,小島鑑定意見書〔乙145(66〕も「本)区間に認められるリニアメント・変動地形は,断層による変位地形を示すものではなく,花崗岩及び新第三紀層と中川砂岩層及び埴生累層との地層の硬軟の差を反映した組織地形であると考えられることから,東側の花崗岩及び新第三紀層と西側の第四紀層との不整合境界を反映した組織地形とした控訴人の評価は妥当なものと判断する」としているところ,被控訴。 人らは,控訴人の前記評価の不当性について何ら具体的に主張していないから,控訴人の前記評価は妥当というべきであり,この点に関する被控訴人らの主張には理由がない。 エ耐専スペクトルの手法及び断層モデルの手法による地震動評価について- 263 -被控訴人らは,控訴人が邑知潟断層帯の全長を約44キロメートルと仮定して耐専スペクトルの手法及び断層モデルの手法を用いて行った地震動評価について縷々主張 手法による地震動評価について- 263 -被控訴人らは,控訴人が邑知潟断層帯の全長を約44キロメートルと仮定して耐専スペクトルの手法及び断層モデルの手法を用いて行った地震動評価について縷々主張するが,前記イ及びウ判示のとおり,邑知潟断層帯の全長を34キロメートルとした控訴人の評価は妥当であるから,邑知潟断層帯の全長を約44キロメートルと仮定して行った地震動評価の妥当性について検討する必要はない。 オ金井式を用いて求めた大崎スペクトルについて被控訴人らは,邑知潟断層帯について,全長を44キロメートルを前提に,金井式を用いて大崎スペクトルを求めると,その地震動は新耐震指針における基準地震動Ssを超えることは明らかである旨主張するが,前記イ及びウ判示のとおり,邑知潟断層帯の全長を34キロメートルとした控訴人の評価は妥当であるから,邑知潟断層帯の全長が44キロメートルであることを前提とする被控訴人らの主張には理由がない。 カ 結論 以上によれば,邑知潟断層帯等の評価に関する被控訴人らの主張にはいずれも理由がない。 (4) 酒見断層・富来川南岸断層・笹波沖断層帯・福浦断層等の評価についてア酒見断層について(ア)海底断層への連続性について控訴人は,酒見断層の海域への延長が認められない根拠として,酒見リニアメントの南端付近を横断して分布する中位段丘Ⅰ面の旧汀線高度がほぼ連続しており,変位が認められないことを主張するところ,被控訴人らは,この中位段丘Ⅰ面の形成が古いことは立証されていないから,控訴人の前記主張には理由がない旨主張する。しかしながら,証拠〔乙125-3-11,12,51,52,261〕によれば,酒見リニアメントの南方延長上には,本判決別紙11のとおり,中位段丘Ⅰ面が分- 264 -布し,同段丘面の旧汀線高度はほぼ連続して ,証拠〔乙125-3-11,12,51,52,261〕によれば,酒見リニアメントの南方延長上には,本判決別紙11のとおり,中位段丘Ⅰ面が分- 264 -布し,同段丘面の旧汀線高度はほぼ連続しているが,そこには変位が認められないこと,中位段丘Ⅰ面は,後期更新世に属するものであることが認められるから,酒見リニアメントは,後期更新世以降,すなわち,約12ないし13万年前以降活動していないことが認められる。そうすると,前記中位段丘Ⅰ面の横断より南側については,活断層として評価する必要はない。このことは,小島鑑定意見書〔乙145(80,図10-3,4〕が「志賀町西海風戸付近を酒見断層の南端としている控)訴人の評価は妥当なものと判断する。念のため,酒見南部区間の南方延長における海上音波探査の測線の音波探査記録についても確認したところ,同リニアメント・変動地形に対応するような断層は認められないため,酒見断層は南方の海域に延びるものではない」としていることか。 らも裏付けられる。したがって,酒見断層の海底断層への連続性は認められないとした控訴人の評価は妥当であり,この点に関する被控訴人らの主張には理由がない。 (イ)1892年12月9日及び同月11日の地震の震源位置について被控訴人らは,控訴人の主張は,1892年12月9日及び同月11日に連続して起きた二つの地震の震源位置を考慮していないこと,ことに旧耐震指針における基準地震動の策定の際に設計用最強地震として選定した1892年12月9日の地震を全く考慮していないことから不当であり,酒見断層とその延長線上にあるこれらの震源位置を一つの断層帯として評価すべきである旨主張する。 しかしながら,1892年12月9日及び同月11日の地震の震源位置が被控訴人らが主張する酒見断層の延長線上であることを認 長線上にあるこれらの震源位置を一つの断層帯として評価すべきである旨主張する。 しかしながら,1892年12月9日及び同月11日の地震の震源位置が被控訴人らが主張する酒見断層の延長線上であることを認めるに足りる証拠は存在しない。被控訴人らは,控訴人が旧耐震指針における基準地震動の策定の際に設計用最強地震として選定した1892年12月9日の地震を全く考慮していない旨主張するが,証拠〔乙6(添6-5- 265 --1ないし3,17ないし19,26ないし28,60,107,乙)20(6ないし10,36,48,証人F(①6ないし20〕によ))れば,控訴人は,本件原子炉施設の耐震設計に際し,旧耐震指針に基づき,歴史地震から想定される地震として1892年12月9日の地震を選定しているところ,前記第4「控訴人の安全確保対策」の1「立地条件に係る安全確保対策」(2)「地震に係る安全確保対策」オ「本件原子炉施設の耐震安全性評価」(ウ)「新耐震指針及びバックチェックルールに基づく基準地震動Ssの策定」a「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」(a)「検討用地震の選定」に判示のとおり,控訴人は,新耐震指針及びバックチェックルールに基づく基準地震動Ssの策定においても同様に,検討用地震として前記1892年12月9日の地震を選定しているから,同地震を全く考慮していないとする被控訴人らの主張には理由がない。 以上によれば,1892年12月9日及び同月11日の震源断層と酒見断層を一つの断層帯として評価すべきであるとする被控訴人らの主張には理由がない。 (ウ)兜岩沖断層(従来のF-20断層)について被控訴人らは,兜岩沖断層(従来のF-20断層)と酒見断層を一つの断層帯として評価すべきである旨主張する。しかしながら,証拠〔乙125-3-153,178, 兜岩沖断層(従来のF-20断層)について被控訴人らは,兜岩沖断層(従来のF-20断層)と酒見断層を一つの断層帯として評価すべきである旨主張する。しかしながら,証拠〔乙125-3-153,178,509ないし516〕によれば,海上保安庁水路部が行った海底地質構造調査及び石油公団が行った石油資源探査並びに控訴人が行った音波探査解析の結果,兜岩沖断層は,B層以 下に推定される断層であり,断層推定位置のA層及びB層は海底面にほ ぼ平行に堆積しており,海底地形も平坦であり,断層活動の影響も認められないことから,後期更新世以降,すなわち,約12ないし13万年前以降の活動が問題となるものではないことが認められる。被控訴人ら- 266 -は,海底音波探査によりすべての断層が明らかになるものではない旨主張するが,仮にそうであるとしても,そのことから直ちにあらゆる断層,を震源断層として考慮すべきであるとすることはできない。したがって兜岩沖断層(従来のF-20断層)を震源断層としなかった控訴人の評価は妥当であり,兜岩沖断層(従来のF-20断層)と酒見断層を一つの断層帯として評価すべきであるとする被控訴人らの主張には理由がない。 (エ)マグニチュード7.3程度の地震の発生を想定する必要性について被控訴人らは,地表地震断層が存在しない場合には起こり得ないとほぼ確実にいえる内陸地殻内地震の規模はマグニチュード7.2ないし7. 3以上であることを前提に,約9.1キロメートルの地表断層が発見されている酒見断層については,安全評価上,マグニチュード7.3程度の地震を想定すべきである旨主張する。しかしながら,前記(2)ア判示のとおり,最新の知見ではマグニチュード7.3以下の地震では地表地震断層が出現しないことが多いとされているとは認められないから,これを 震を想定すべきである旨主張する。しかしながら,前記(2)ア判示のとおり,最新の知見ではマグニチュード7.3以下の地震では地表地震断層が出現しないことが多いとされているとは認められないから,これを前提とする被控訴人らの前記主張は採用できない。 (オ) 結論 以上によれば,酒見断層の評価に関する被控訴人らの主張にはいずれも理由がない。 イ富来川南岸断層について被控訴人らは,富来川南岸断層は,数多くの文献において,活断層として認められているし,控訴人が実施した表土剥ぎ調査の露頭(TN-2)を観察すると,法面に現れている岩稲階の穴水累層を切る断層が確認でき,その上方先端は更に古期扇状地堆積層の半ばまで切っているのが読み取れるところ,古期扇状地堆積層は後期更新世のものとされるから,その活動時期は,13万年前以降9.5万年前までの間であり,耐震設計上考慮す- 267 -る必要がある旨主張するので以下に検討する。 たしかに,証拠〔乙125-3-55,56,268〕によれば,活断層研究会編「日本の活断層-分布図と資料-(東京大学出版会,198」0)及び同「新編日本の活断層-分布図と資料- (東京大学出版会,1」,991)は,本判決別紙12のとおり,ほぼ富来川南岸の山麓線に沿って活断層を図示し,富来川南岸断層と命名し,長さ2キロメートル,確実度Ⅱ(活断層であると推定されるもの)と記載していること,加藤碵一・杉。 山雄一編「50万分の1活構造図「金沢(地質調査所,1985)及び」」日本第四紀学会編「日本第四紀地図(東京大学出版会,1987)は,前」記断層とほぼ同じ位置に,主として第四紀後期に活動した推定活断層を図示していること,太田陽子・国土地理院地理調査部「能登半島」1:10「0000,地殻変動土地条件図,国土地理院技術資料,D. 」記断層とほぼ同じ位置に,主として第四紀後期に活動した推定活断層を図示していること,太田陽子・国土地理院地理調査部「能登半島」1:10「0000,地殻変動土地条件図,国土地理院技術資料,D.1-No.347(国土地理院,1997)は,前記断層とほぼ同じ位置に推定活断層」を図示していること,が認められる。 しかしながら,証拠〔乙125-3-56ないし59,273〕によれば,控訴人がバックチェックに際して実施した地形調査の結果,志賀町和田東方から同町富来地頭町までの約6キロメートルの区間にリニアメント・変動地形が判読されるものの,地表地質調査の結果によれば,このリニアメント・変動地形沿いには,これに対応する断層は認められなかったこと,志賀町東小室西方において,前記リニアメント・変動地形を横断してトレンチ調査を実施した結果,古期扇状地堆積層及び穴水累層に断層は認められなかったこと,その北東方の急崖の傾斜変換部に判読したリニアメント・変動地形を横断して表土剥ぎ調査を実施した結果,本判決別紙13のとおり,穴水累層の安山岩にリニアメント・変動地形に対応する断層は認められなかったこと,前記リニアメント・変動地形を横断して反射法地震探査を実施した結果,明瞭な断層や撓曲が認められなかったこと,重力- 268 -探査の結果によれば,前記リニアメント・変動地形沿い及びそのやや北東方延長上に掛けて,リニアメント・変動地形の南東側に,わずかに重力異常が高い傾向が認められるものの,リニアメント・変動地形の南西方延長上の海域には,その傾向は連続しないこと,海上音波探査の結果,リニアメント・変動地形に対応する断層は認められなかったこと,が認められる。 これに対して,被控訴人らは,前記表土剥ぎ調査を行った露頭(TN-2)の法面で穴水累層を切る断層が確認でき 音波探査の結果,リニアメント・変動地形に対応する断層は認められなかったこと,が認められる。 これに対して,被控訴人らは,前記表土剥ぎ調査を行った露頭(TN-2)の法面で穴水累層を切る断層が確認でき,その上方先端は更に古期扇状地堆積層の半ばまで切っている旨主張し,これに沿う証拠として,前記法面のものであるとする写真(甲1311,甲1312)並びにそのスケッチ(甲1313,本判決別紙14)を提出している。しかしながら,証拠〔乙125-3-273〕によれば,被控訴人らが古期扇状地堆積層としている地層は,TN-2の範囲に分布するものではないことが認められる(本判決別紙13参照)から,露頭の法面で古期扇状地堆積層を切る断層が確認できるとする被控訴人らの前記主張には理由がない。 以上に加えて,小島鑑定意見書〔乙145(83〕によれば,小島名)誉教授自ら前記トレンチ調査及び表土剥ぎ調査の状況を現地で直接確認した結果,リニアメント・変動地形に対応する断層が認められないことを確認し「富来川南岸断層については,少なくとも後期更新世以降の活動が,問題となるものではないとしている控訴人の評価は妥当なものである」。 と判断していることが認められることからすれば,富来川南岸断層は耐震設計上考慮する必要があるとする被控訴人らの主張には理由がない。 ウ笹波沖断層帯について(ア)笹波沖断層帯の長さについてa被控訴人らは,余震域の幅が震源断層の長さに対応すると考えると,能登半島地震の震源断層の長さは,約45キロメートルと推測され,F-14断層ないしF-16断層の三つの断層が同時に動いた可能性- 269 -が高いから,能登半島地震の震源断層を笹波沖断層帯(東部)約21キロメートルとする控訴人の評価は誤りであるし,笹波沖断層帯(東部)と笹波沖断層帯(西部)は の断層が同時に動いた可能性- 269 -が高いから,能登半島地震の震源断層を笹波沖断層帯(東部)約21キロメートルとする控訴人の評価は誤りであるし,笹波沖断層帯(東部)と笹波沖断層帯(西部)は一体として評価すべきである旨主張するので以下に検討する。 b証拠〔乙125-3-118ないし123〕によれば,控訴人は,バックチェックに際して敷地前面調査海域で実施した海上音波探査結果及び能登半島地震後に実施された産総研,東大震研等の各種研究機関の海上音波探査記録の解析結果により,笹波沖断層帯について以下のように評価したことが認められる。 笹波沖断層帯は,笹波沖隆起帯の北縁と笹波沖小隆起帯の北縁から西縁に沿って分布し,笹波沖断層帯(東部)は笹波沖隆起帯北縁の断層に対応し,また,笹波沖断層帯(西部)は笹波沖小隆起帯北縁から西縁の断層及び断層関連褶曲に対応する。 井上卓彦ほか「2007年能登半島地震震源域の海底活断層(20」08)は,前記控訴人の海上音波探査の結果及び産総研,東大震研による海上音波探査記録等から,前記断層帯とほぼ同じ位置に,断層及び褶曲を図示している。北東側の断層区間は,長さ約21キロメートルで,完新統に変位を与え,過去約1万年間に複数回の断層運動があるとし,断層東部から中央部は能登半島地震の余震分布域北縁に位置しており,一部で能登半島地震による海底面の傾斜変化が捉えられた,としている。また,南西側の褶曲区間は,長さ約14キロメートルで海底面に傾斜の変化が認められることから完新世に活動した可能性があるとしている。 佐藤比呂志ほか「反射法地震探査・余震観測・地殻変動からみた2007年能登半島地震の特徴について(2008(以下「佐藤ほか」)(2008」という)は,能登半島地震後に実施した反射法地震探)。 - 270 - 反射法地震探査・余震観測・地殻変動からみた2007年能登半島地震の特徴について(2008(以下「佐藤ほか」)(2008」という)は,能登半島地震後に実施した反射法地震探)。 - 270 -査及び余震解析等の結果から,笹波沖断層帯(東部)とほぼ同じ位置に能登半島地震の震源断層を図示している。また,断層東端は陸域に及び,地層分布,トモグラフィーによる速度構造,比抵抗構造によって示される北北西-南南東方向の構造的な不連続と一致するとしている。そして,本震でのすべり領域の西端では,海底の断層トレースが屈曲し,地下の震源断層も屈曲した形状を示すとしている。 笹波沖断層帯(東部)は,笹波沖隆起帯の北西縁に沿ってD層上面が北側に急に落ち込む主断層とその上盤側に並行する副次的な断層から構成され,特に副次的断層が推定される位置のA層に層理の撓みが連続的に認められる。笹波沖断層帯(東部)の西端については,能登半島地震の余震発生状況等から推定された断層面の西端がステップ状に屈曲する位置に対応していることなどから,同位置を西端として評価した。一方,東端については,能登半島地震の震源域の陸域側を対象とした変動地形学的調査及び地表地質調査からも,本地震に対応する地表地震断層は認められないものの,佐藤ほか(2008)では,海岸線から約6キロメートル内陸において,北北西-南南東方向の構造的な不連続が示されており,この構造的な不連続が断層の東端とほぼ一致するとされていることなどを踏まえ,これに対応する輪島市門前町浦上付近を東端として評価した。以上の調査結果を踏まえ,笹波沖断層帯(東部)については,海岸線から輪島市門前町浦上付近までの区間を含めた約21キロメートル区間を能登半島地震の震源断層として,耐震設計に考慮するものとした。 笹波沖断層帯(西部)は,笹 ,笹波沖断層帯(東部)については,海岸線から輪島市門前町浦上付近までの区間を含めた約21キロメートル区間を能登半島地震の震源断層として,耐震設計に考慮するものとした。 笹波沖断層帯(西部)は,笹波沖小隆起帯の北縁から西縁に沿って分布する。笹波沖小隆起帯の北縁ではD層上面が北側に急に落ち込む断層及び断層関連褶曲が推定され,B層又はA層に変位又は層理の撓 みが認められる。また,同隆起帯の北西縁部では東北東-西南西方向- 271 -の断層及び断層関連褶曲が北東-南西方向の屈曲する断層関連褶曲に分岐するとともに,短い断層関連褶曲が並行して分布し,いずれの断層関連褶曲にも,B層に層理の撓みが認められる。笹波沖断層帯(西 部)の西端については,敷地前面調査海域で実施した海上音波探査の結果,No.101-1測線では断層関連褶曲が認められなくなることから,No.101-1測線を西端として評価した。また,東端については,笹波沖断層帯(東部)の西端位置を東端として評価した。 以上の調査結果を踏まえ,笹波沖断層帯(西部)については,笹波沖小隆起帯の北縁に沿って分布する断層及び断層関連褶曲とその南西方に分布する断層関連褶曲とは走向が斜交し,形態も異なることなどから,二つの活動区間に区分される可能性もあるが,後期更新世以降の,活動の可能性が推定される区間がほぼ連続することから,安全評価上これらの断層及び断層関連褶曲を一体として評価し,南西方向で断層関連褶曲が認められなくなる測線までの約22キロメートル区間について,後期更新世以降の活動の可能性があるものとして取り扱い,耐震設計に考慮するものとした。 また,佐藤ほか(2008)により示された能登半島地震の震源断層が笹波沖断層帯(東部)とほぼ対応していること,笹波沖断層帯(東部)と笹波沖断層帯(西部) て取り扱い,耐震設計に考慮するものとした。 また,佐藤ほか(2008)により示された能登半島地震の震源断層が笹波沖断層帯(東部)とほぼ対応していること,笹波沖断層帯(東部)と笹波沖断層帯(西部)とで地質構造の違いや最新活動時期に違いがあることから,両者は,二つの活動区間に分かれて活動してきたと推定され,今後も過去と同様に二つの区間に分かれて活動すると推定されると評価した。 c以上によれば,控訴人は,詳細な調査の上,最新の知見を踏まえ,笹波沖断層帯(東部)の長さを約21キロメートル,笹波沖断層帯(西部)の長さを約22キロメートルと評価したものと認められる。 これに対して,被控訴人らの主張は,余震域の幅のみを根拠に笹波沖- 272 -断層帯の長さを約45キロメートルとしたり,地質学的な根拠を挙げることなく笹波沖断層帯の東部と西部はつながっているから一体として評価すべきであるとするものにすぎない。そして,被控訴人らが引用する国土地理院の公表資料「平成19年(2007年)能登半島地震を起こした震源断層の姿〔甲1216〕においても,震源断層の長」さは,21.2キロメートルとされていること,小島鑑定意見書〔乙145(48〕も控訴人の前記評価は妥当なものと判断していること)を考え併せれば,笹波沖断層帯の長さに関する控訴人の評価は妥当というべきであり,この点に関する被控訴人らの主張は採用できない。 (イ)耐専スペクトルの手法による地震動評価について被控訴人らは,控訴人が耐専スペクトルの手法で算定した笹波沖断層帯(東部)の応答スペクトルは,周期0.2秒辺りで約500ガルであるところ,能登半島地震のはぎとり波の応答スペクトルは,周期0.2秒よりわずかに短い周期帯において1000ガルを超えているから,耐専スペクトルは地震動を過小評価するもので 2秒辺りで約500ガルであるところ,能登半島地震のはぎとり波の応答スペクトルは,周期0.2秒よりわずかに短い周期帯において1000ガルを超えているから,耐専スペクトルは地震動を過小評価するものである旨主張する。 しかしながら,控訴人が耐専スペクトルの手法で算定した笹波沖断層帯(東部)の応答スペクトルは,前記第4「控訴人の安全確保対策」の1「立地条件に係る安全確保対策」(2)「地震に係る安全確保対策」オ「本件原子炉施設の耐震安全性評価」(ウ)「新耐震指針及びバックチェックルールに基づく基準地震動Ssの策定」(e)「検討用地震の選定」に判示のとおり,あくまで検討用地震の選定において,本件敷地における地震動の大きさを比較,検討するために算定したものにすぎず,証拠〔乙146(38〕によれば,本判決別紙15のとおり,控訴人が応)答スペクトル(耐専スペクトル)に基づく手法により策定した基準地震動Ss-1は,能登半島地震による本件原子炉施設での観測記録に対しても包絡していることが認められるから,同地震で観測された地震動と- 273 -対比しても過小評価とはなっておらず,被控訴人らの主張には理由がない。 (ウ) 結論 以上によれば,笹波沖断層帯の評価に関する被控訴人らの主張にはいずれも理由がない。 エ福浦断層について(ア)被控訴人らは,控訴人は,福浦断層について,地層の年代評価法であるC年代測定法及び広域テフラによる対比法による年代評価を行っ ていない上,その活動時期が後期更新世に及んでいないとする唯一の客観的データというべき遊離酸化鉄分析のデータの公開を行っていないし,本件設置変更許可申請書の露頭スケッチによれば,同断層の活動した時期は3ないし4万年以前であるとするのが合理的,科学的であるから,活動が後期更新世に及んでいないとす のデータの公開を行っていないし,本件設置変更許可申請書の露頭スケッチによれば,同断層の活動した時期は3ないし4万年以前であるとするのが合理的,科学的であるから,活動が後期更新世に及んでいないとする控訴人の評価は妥当でない旨主張するので以下に検討する。 (イ)証拠〔乙125-3-145ないし147,488,490,乙127-2-5,乙181〕によれば,以下の事実が認められる。 JEAG(2007)は,活断層の最新活動時期の評価について,上載地層の変位・変形の有無により,断層により変位又は変形を受けてい,ない地層又は変位基準の形成時代のうち,少なくとも最も古い時代以降当該断層はその地点においては活動していないとして評価するとしているところ,受堤北方の山腹の断層露頭では,本判決別紙16のとおり,断層が認められた安山岩のくぼみ部分を礫混じり粘土からなるⓒ層が埋積しており,さらに,この安山岩及びⓒ層を,これらよりも新しく堆積したⓑ層が覆っていることから,この2層が上載地層となる。そして,ⓒ層については,安山岩とⓒ層の境界に断層変位を受けた形跡が認められないから,断層による影響は及んでおらず,福浦断層の活動性は,ⓒ- 274 -層をもって評価することになる。控訴人は,地層の年代を評価する上で有効な指標の一つである赤色土壌に着目し,赤色土壌化の度合いを定量的に把握するために遊離酸化鉄の分析を実施した結果,ⓒ層は,少なくとも下末吉期以前の堆積物と考えられた。そして,前記のとおり,ⓒ層には断層による影響は及んでおらず,周辺に分布する高位段丘面にリニアメント・変動地形を挟んで系統的な高度差が認められないから,福浦断層は,後期更新世以降に活動が及んでいないと判断し,耐震設計上考慮する必要がないと評価した。 (ウ)これに対して,被控訴人らは,控訴 メント・変動地形を挟んで系統的な高度差が認められないから,福浦断層は,後期更新世以降に活動が及んでいないと判断し,耐震設計上考慮する必要がないと評価した。 (ウ)これに対して,被控訴人らは,控訴人は,遊離酸化鉄分析データの公開を行っていない旨主張するが,証拠〔乙125-3-490,乙181〕によれば,本件中間報告書(その後の一部訂正を含む)には,同。 データが添付されていることが認められるから,被控訴人らの主張には理由がない。 また,被控訴人らは,控訴人は,地層の年代評価法であるC年代測 定法及び広域テフラによる対比法による年代評価を行っていない旨主張する。たしかに,控訴人は,ⓒ層の年代を評価するに際し,C年代測 定法や広域テフラによる対比法を行っていないが,前記認定のとおり,地層の年代を評価する上で有効な指標である赤色土壌に着目し,赤色土,壌化の度合いを把握するために遊離酸化鉄の分析を実施しているところ小島鑑定意見書〔乙145(34〕によれば,小島名誉教授自ら現地に)て露頭を確認した結果,前記遊離酸化鉄の分析結果と同様の判断をしているし,地層の年代評価方法として,被控訴人らが主張するC年代測 定法や広域テフラによる対比法を用いず,遊離酸化鉄の分析によったことが合理性・相当性を欠くものであると解すべき根拠は何ら示されていないから,地層の評価方法に関する被控訴人らの主張には理由がない。 以上に加えて,小島鑑定意見書〔乙145(34,35〕が福浦断層)- 275 -の活動が後期更新世に及んでいないとする控訴人の評価は妥当なものであると判断していることを考え併せれば,福浦断層の評価に関する被控訴人らの主張は採用できない。 (5) 耐専スペクトルの手法,断層モデルを用いた手法による地震動評価についてア耐専スペ 当なものであると判断していることを考え併せれば,福浦断層の評価に関する被控訴人らの主張は採用できない。 (5) 耐専スペクトルの手法,断層モデルを用いた手法による地震動評価についてア耐専スペクトルの手法について(ア)被控訴人らは,耐専スペクトルの手法は,44個の地震観測記録に基づき定められた方法であるところ,そのうち内陸地殻内地震の記録は12個しかない上,内陸地殻内地震については内陸補正を要することになっているが,現実の内陸地殻内地震である能登半島地震や新潟県中越沖地震において内陸補正を行うと観測記録と整合しないから,内陸地殻内地震には適合しない手法である旨主張するので以下に検討する。 証拠〔乙127-1-19ないし27,乙147(6ないし14〕)によれば,耐専スペクトルの手法は,JEAG(2007)が,Nodaetal(2002)で提案された手法を基に,その後の社団. 法人日本電気協会の原子力発電耐震設計専門部会での議論を踏まえ,敷地ごとに震源を特定して策定する地震動評価につき距離減衰方式を用いた経験的な方法として示したもので,地震学・地震工学の最新の知見を踏まえ,解放基盤表面相当の地盤に加え,地震基盤の条件に近い地盤における近接5地点の同一地震の観測記録や,地震基盤及び上部の地盤における鉛直アレー観測記録を収集し「せん断波速度秒速2.0ないし,2.8キロメートルの地層は,地震動を考える場合の基準となる地盤と考えられる,また,観測記録の解析結果から,表層地盤内の地震波伝播特性は,水平地震動成分についてはせん断波の重複反射でモデル化され,鉛直地震動成分についてはP波の重複反射でモデル化される」との考え方に基づいて策定された水平及び鉛直動の平均応答スペクトルの評価手- 276 -法であり,太田鑑定意見書において,バ モデル化され,鉛直地震動成分についてはP波の重複反射でモデル化される」との考え方に基づいて策定された水平及び鉛直動の平均応答スペクトルの評価手- 276 -法であり,太田鑑定意見書において,バックチェックルールが応答スペクトルに基づく地震動評価方法に要求している四つの要件-①解放基盤表面の地震動として評価できること,②震源の拡がりが考慮できること,③敷地における地震観測記録を用いて地震発生様式,地震波伝播経路等に応じた諸特性(その地域における特性を含む)が考慮でき。 ること,④水平方向及び鉛直方向の地震動が評価できること-を満たす手法であると評価されていることが認められる。 また,JEAG(2007)は,耐専スペクトルの手法について,「地震基盤の地震動と地盤増幅特性を一体として評価したものであるため,敷地における観測記録を用いて経験的に補正することは良いが,地震基盤の地震動のみを抜き出し,別途地盤構造から理論的に求めた増幅特性を用いて解放基盤表面の地震動を評価する場合には,十分な検討が必要である」としているところ〔乙127-1-26,控訴人は,。 〕前記第4「控訴人の安全確保対策」の1「立地条件に係る安全確保対策」(2)「地震に係る安全確保対策」オ「本件原子炉施設の耐震安全性評価」(ウ)「新耐震指針及びバックチェックルールに基づく基準地震動Ssの策定」a「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」(f)「応答スペクトルに基づく地震動評価」に判示のとおり,内陸補正係数による低減の可否を検討するため,能登半島地震を含む本件敷地で観測されたマグニチュード5.3以上,等価震源距離が200キロメートル程度以下の地震である18の地震による観測記録との比較検討を行い,内陸補正係数を用いない方が観測記録と整合することから内陸補正係数に されたマグニチュード5.3以上,等価震源距離が200キロメートル程度以下の地震である18の地震による観測記録との比較検討を行い,内陸補正係数を用いない方が観測記録と整合することから内陸補正係数による低減は行わないこととしており,JEAG(2007)が言及する前記問題も生じないものである。 たしかに被控訴人らが主張するように,耐専スペクトルの手法は,その基となった内陸地殻内地震の観測記録が12個と少ない上,能登半島- 277 -地震や新潟県中越沖地震において内陸補正を行うと観測記録と整合しない。しかしながら,前記第4「控訴人の安全確保対策」の1「立地条件に係る安全確保対策」(2)「地震に係る安全確保対策」オ「本件原子炉施設の耐震安全性評価」(ウ)「新耐震指針及びバックチェックルールに基づく基準地震動Ssの策定」判示のとおり,控訴人が応答スペクトル(耐専スペクトル)に基づく手法により策定した基準地震動Ss-1は,検討用地震である笹波沖断層帯(全長)による地震及び震源を特定せず策定する地震動の応答スペクトルを包絡しているし,また,前記(4)ウ(イ)判示のとおり,基準地震動Ss-1は,能登半島地震による本件原子炉施設での観測記録に対しても包絡していることが認められる(本判決別紙15参照。さらに,太田鑑定意見書〔乙147(15ないし1)9〕が「控訴人がバックチェックにおいて考慮する地震の規模,距離)は耐専スペクトル手法の適用範囲内にあり,適切な地震観測記録を収集して地域補正係数を適切に算出している」としていることを考え併せると,耐専スペクトルの手法が内陸地殻内地震に適合性が認められないとか,本件原子炉施設の耐震安全性評価に用いるにつき相当性が認められないということはできない。したがって,この点に関する被控訴人らの主張には理由がない ルの手法が内陸地殻内地震に適合性が認められないとか,本件原子炉施設の耐震安全性評価に用いるにつき相当性が認められないということはできない。したがって,この点に関する被控訴人らの主張には理由がない。 (イ)被控訴人らは,耐専スペクトルの基となった地震観測記録のうち,マグニチュード7.0以上のものは1個しか存在しないし,近距離地震のデータが少ないから,耐専スペクトルの手法は,地震動を過小評価する危険性がある旨主張する。 しかしながら,前記(ア)判示のとおり,耐専スペクトルの手法は,バックチェックルールが応答スペクトルに基づく地震動評価方法の要件として要求する4要件を満たすものと評価されており,控訴人が応答スペクトル(耐専スペクトル)に基づく手法により策定した基準地震動Ss- 278 --1は,検討用地震である笹波沖断層帯(全長)による地震及び震源を特定せず策定する地震動の応答スペクトル並びに能登半島地震による本件原子炉施設での観測記録に対しても包絡しているところ,被控訴人らの主張は,耐専スペクトルの手法が地震動を過小評価する危険性がある旨を抽象的に主張するにすぎず,過小評価となる根拠を具体的に主張していないから,被控訴人らの主張には理由がない。 (ウ)被控訴人らは,耐専スペクトルが震源距離として用いる等価震源距離は,震源距離が100キロメートル程度までの中距離の場合には,地震動を過小評価するものであるし,一般的な手法とはいえず,その正当性は認められていない旨主張する。しかしながら,JEAG(2007)は「敷地に多数の観測記録がある場合には,本評価法(耐専スペ,クトル)による地震動評価結果と比較の上,敷地固有の評価を行うこととする」としているところ〔乙127-1-39,証拠〔乙125-〕4-25,添-4,27ないし34〕によれ ,本評価法(耐専スペ,クトル)による地震動評価結果と比較の上,敷地固有の評価を行うこととする」としているところ〔乙127-1-39,証拠〔乙125-〕4-25,添-4,27ないし34〕によれば,控訴人は,内陸補正係数による低減の可否を検討するため,本件敷地で観測されたマグニチュード5.3以上,等価震源距離が200キロメートル程度以下の地震である18の地震(等価震源距離が約21キロメートルの能登半島地震及び等価震源距離が40キロメートル以下の余震二つを含む)による観。 測記録との比較検討を行い,等価震源距離が40キロメートル以下の前記3地震の観測記録と整合するように内陸補正係数を用いないこととし,その結果,前記(4)ウ(イ)判示のとおり,控訴人が応答スペクトル(耐専スペクトル)に基づく手法により策定した基準地震動Ss-1は,本件敷地から震源距離が約21キロメートルの能登半島地震による本件原子炉施設での観測記録に対しても包絡しているのであるから,控訴人が内陸補正係数を用いずに耐専スペクトルの手法により策定した基準地震動Ss-1が,地震動を過小評価したり正当性を是認できないものとは- 279 -いえず,被控訴人らの前記主張には理由がない。 イ断層モデルの手法について被控訴人らは,断層モデルの手法は,当該想定震源断層域における実際の地震観測記録がない限り,過小評価を免れないものである旨主張する。 しかしながら,そもそも断層モデルを用いた手法により地震動評価を実施するとする新耐震指針は,前記第4「控訴人の安全確保対策」の1「立地条件に係る安全確保対策」(2)「地震に係る安全確保対策」ウ「新耐震指針の概要」に認定のとおり,地質学,地震学,地震工学等の専門家により構成された分科会での4年10か月に及ぶ調査審議の結果,策定されたものであ 全確保対策」(2)「地震に係る安全確保対策」ウ「新耐震指針の概要」に認定のとおり,地質学,地震学,地震工学等の専門家により構成された分科会での4年10か月に及ぶ調査審議の結果,策定されたものであり,溝上鑑定意見書〔乙146(12〕も「そもそも断層モ),デル手法による強震動予測は,既に確立された信頼性の高い手法である」としているところである。そして,前記第4「控訴人の安全確保対。 策」の1「立地条件に係る安全確保対策」(2)「地震に係る安全確保対策」オ「本件原子炉施設の耐震安全性評価」(ウ)「新耐震指針及びバックチェックルールに基づく基準地震動Ssの策定」a「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」(g)「断層モデルを用いた手法による地震動評価」に判示のとおり,控訴人は,断層モデルを用いた手法による地震動評価を行うに際し,震源及び地下構造のモデルを適切に把握するため,能登半島地震のシミュレーション解析を実施し,その結果を基に検討用地震の地震動評価を行っており,溝上鑑定意見書〔乙146(12ないし16〕も「本件原子炉施設のバックチェックにおける断層モデル手法を),用いた地震動評価においては,①震源特性パラメータが適切に設定されるとともに,②適切な要素地震が選定されており,また,③不確かさ(ばらつき)も適切に評価されていることから,控訴人が評価した断層モデル手法による地震動は,妥当なものである」としているから,被控訴。 人らの前記主張には理由がない。 - 280 -(6) 本件原子炉施設の耐震安全余裕について前記(2)ないし(5)判示のとおり,被控訴人らが指摘する地震・耐震設計の不備の主張はいずれも理由がないから,本件原子炉施設の耐震安全余裕については判断する必要がない。 (7) 新耐震指針全体及び本件原子炉施設の同指針 )判示のとおり,被控訴人らが指摘する地震・耐震設計の不備の主張はいずれも理由がないから,本件原子炉施設の耐震安全余裕については判断する必要がない。 (7) 新耐震指針全体及び本件原子炉施設の同指針の基準充足性について被控訴人らは,新耐震指針は,ほとんど旧耐震指針と同一のものであるから,本件原子炉施設が新耐震指針の基準を満たしても,地震・耐震設計の安全性を満たしているとは評価できないし,もともと本件原発は,旧耐震指針に基づき設計され,その設計値に従って建設されているから,新耐震指針に基づく設計値600ガルを満たす性能を有しているものとは考え難い旨主張する。 しかしながら,新耐震指針は,前記第4「控訴人の安全確保対策」の1「立地条件に係る安全確保対策」(2)「地震に係る安全確保対策」ウ「新耐震指針の概要」に認定のとおり,地質学,地震学,地震工学等の専門家により構成された分科会での4年10か月に及ぶ調査審議の結果,旧耐震指針が定められた後の地震学及び地震工学に関する知見並びに原子炉施設の耐震設計技術の改良及び進歩を反映させて策定されたものであるところ,本件原子炉施設は,前記第4「控訴人の安全確保対策」の1「立地条件に係る安全確保対策」(2)「地震に係る安全確保対策」のオ「本件原子炉施設の耐震安全性評価」(エ)「本件原子炉施設の耐震安全性評価」及びカ「本件原子炉施設の新耐震指針及びバックチェックルール適合性」に判示のとおり,耐震裕度向上工事を経て,前記判示の新耐震指針に適合すると認められるものである。 これに対して,被控訴人らは,新耐震指針がほとんど旧耐震指針と同一のものであるとか,本件原子炉施設が新耐震指針を満たす性能を有するとは考え難い旨抽象的に主張するのみで,前記(2)ないし(5)で検討し,排斥した各主張以外には,いかなる機序で本件原 旧耐震指針と同一のものであるとか,本件原子炉施設が新耐震指針を満たす性能を有するとは考え難い旨抽象的に主張するのみで,前記(2)ないし(5)で検討し,排斥した各主張以外には,いかなる機序で本件原子炉の外部へ放射線,放射性物質が排出- 281 -され,被控訴人らが被ばくする可能性があるかについて具体的に主張立証していないから,この点に関する被控訴人らの主張には理由がない。 (8) 能登半島地震についてア被控訴人らは,能登半島地震により,①すべての地震断層を把握することは困難であること,②活断層が確認されていないところでもマグニチュード6.5を超える地震が発生しないと想定することは明らかに誤りであり,安全上マグニチュード7.3の地震を想定すべきこと,③F-15断層は活動時期が古いため震源断層として評価する必要がないとする控訴人の考え方及び断層を単体でしか評価しない控訴人の評価方法が誤りであること,④本件原発の地震に対するもろさが明らかになった旨主張するので,以下に検討する。 イ証拠(以下の各項に括弧書きしたもの)によれば,以下の事実が認められる。 (ア)能登半島地震の概要能登半島地震は,平成19年3月25日午前9時42分ころ,石川県輪島市の南西約30キロメートルの能登半島沖で発生した。気象庁の発表によれば,マグニチュードは6.9,震源位置は北緯37度13.2分,東経136度41.1分,震源深さは11キロメートルであり,本件原子炉施設までの距離は,震央距離が約18キロメートル,震源距離は約21キロメートルである〔乙119(2,乙125-添4〕。 )能登半島地震の発生メカニズムは,西北西-東南東方向に圧力軸を持ち,横ずれ成分を含む逆断層型であったとされている〔乙125-添3。 〕(イ)本件設置変更許可申請当時におけ 125-添4〕。 )能登半島地震の発生メカニズムは,西北西-東南東方向に圧力軸を持ち,横ずれ成分を含む逆断層型であったとされている〔乙125-添3。 〕(イ)本件設置変更許可申請当時における控訴人の能登半島地震の震源付近の活断層評価控訴人は,本件設置変更許可申請に当たり,震源位置を含む海域につ- 282 -,いて活断層調査を実施しており,能登半島地震の震源位置付近において耐震設計上考慮すべき活断層として,F-12断層(長さ最大約7.5キロメートル,F-14断層(長さ最大約12キロメートル,F-1))6断層(長さ最大約11キロメートル,F-17断層(長さ最大約5. )5キロメートル)の4本の活断層を確認していた〔乙6(添6-3-44,93,148,6-5-91。前記の活断層以外にもF-15断)〕層等複数の断層の存在を確認しているが,それらについては第四紀後期以降の活動が認められないことから,耐震設計に考慮する必要のない断層であると判断していた〔乙6(添6-3-44,92。 )〕(ウ)能登半島地震の震源断層産総研は,平成19年7月3日から同月10日まで,能登半島地震の震源域を中心とする海域で海上音波探査を行い,その結果について,①長さ18キロメートル以上の活断層を確認し,②この断層は約2万年前に形成された氷河期の浸食面とそれを覆う堆積物にそれぞれ3メートル程度の変位を与えており,③この断層には途中でステップ状に折れ曲がった場所があり,その場所で能登半島地震の地震破壊がとどまった可能性があり,以上のことから,能登半島地震を発生させた断層は,過去約2万年間に1ないし2回活動していること,能登半島地震でも海底までわずかに変動を生じたことが明らかになった,としている〔乙117(2ないし4。 )〕産総研が確認 島地震を発生させた断層は,過去約2万年間に1ないし2回活動していること,能登半島地震でも海底までわずかに変動を生じたことが明らかになった,としている〔乙117(2ないし4。 )〕産総研が確認したとする断層は,控訴人が存在を確認していたF-14断層,F-15断層北部区間及びF-16断層東部区間とほぼ同じ位置に示されており,能登半島地震の地震破壊がとどまった可能性があるとする断層は,F-14断層及びF-15断層北部区間にほぼ対応している〔乙6(添6-3-148,乙118。 )〕(エ)能登半島地震の本件原子炉施設への影響- 283 -本件原子炉施設は,能登半島地震発生時,定期検査のため停止中であったが,本件原発に設置された計測震度計は,震度5弱を観測するとともに,南北方向で151ガル,東西方向で220ガル,上下方向で136ガル(3方向合成の最大値は226ガル)の最大加速度を記録した〔乙119(12。 )〕能登半島地震後,中央制御室における警報の発生状況・パラメータの状況について確認したところ,施設の異常を示すような警報はなく,パラメータの数値にも異常は認められなかった。また,常時監視している放射線の数値,管理区域内の放射線に関するデータにも異常はなく,外部への放射能の影響はなかった。能登半島地震後,原子炉停止状態で機能維持が必要な非常用炉心冷却系のポンプ手動起動試験及び原子炉建屋の気密性能試験等を実施したところ,正常に作動することを確認した。 また,能登半島地震後,燃料が損傷しておらず,冠水していること,本件原子炉が未臨界状態であることを確認した〔乙119(3,5,添5,。 6〕)他方,能登半島地震により,①変圧器内の絶縁油の油面が変動し,変圧器内の圧力の上昇により放圧装置が作動するとともに,②原子炉建屋最上階で ることを確認した〔乙119(3,5,添5,。 6〕)他方,能登半島地震により,①変圧器内の絶縁油の油面が変動し,変圧器内の圧力の上昇により放圧装置が作動するとともに,②原子炉建屋最上階である運転階の天井からつり下げられている水銀灯2個の落下,③組み立て中の低圧タービンの車軸(ロータ)を仮止めしていた治具の変形,車軸位置のずれ,④建屋内コンクリートのはがれ,⑤気水分離器仮置き用の脚の曲がり,⑥主発電機第10軸受シールケースの油切りの変形,⑦本件原発1号機の使用済燃料貯蔵プール水の飛散が生じたが,①ないし⑥は外部へ放射線・放射性物質が排出される可能性を生じる性質のものとは認められず,⑦により外部への放射能の影響はなかった〔乙119(3ないし5,添1ないし4,乙120,弁論)の全趣旨。 〕- 284 -ウ前記イの認定事実によれば,被控訴人らが主張するように,①控訴人は,本件設置変更許可申請に当たり本件原子炉施設の耐震設計をした際,能登半島地震の震源断層の一部であるF-15断層を,第四紀後期以降の活動が認められないとして耐震設計に考慮する必要のない断層であると判断していたこと,②能登半島地震により,本件原子炉施設及び本件原発1号機に,変圧機内の圧力上昇による放圧装置の作動,水銀灯の落下,低圧タービンの車軸のずれ,建屋内コンクリートのはがれ,使用済燃料貯蔵プール水の飛散等が生じたことが認められる。しかしながら,前記第4「控訴人の安全確保対策」の1「立地条件に係る安全確保対策」(2)「地震に係る安全確保対策」オ「本件原子炉施設の耐震安全性評価」(ウ)「新耐震指針及びバックチェックルールに基づく基準地震動Ssの策定」判示のとおり,控訴人は,本件原子炉施設のバックチェックに際し,新耐震指針及びバックチェックルールに基 施設の耐震安全性評価」(ウ)「新耐震指針及びバックチェックルールに基づく基準地震動Ssの策定」判示のとおり,控訴人は,本件原子炉施設のバックチェックに際し,新耐震指針及びバックチェックルールに基づき,震源と活断層を関連付けることが困難な内陸地殻内地震が発生する可能性があることを前提に,震源を特定せず策定する地震動を策定しているし,能登半島地震のシミュレーション解析を実施し,地震動評価を行うに際し,その結果を反映させている。また,前記イ認定のとおり,能登半島地震によっても,本件原子炉施設には,外部への放射能漏れにつながるような損傷は生じていないし,その他にも重大な損傷は生じていないことを考え併せれば,能登半島地震により,本件原子炉の外部へ放射線,放射性物質が排出され,被控訴人らが被ばくする具体的危険性があることが示されたとは認められないし,本件設置変更許可申請の際のF-15断層に関する控訴人の判断が地震後の産総研の調査結果と異なっていることでは,前記の具体的危険性の存在につながるものではなく,その他の被控訴人らの前記主張も前記危険性について具体的に主張立証するものではないから,この点に関する被控訴人らの主張には理由がない。 - 285 -(9) 新潟県中越沖地震についてア被控訴人らは,新潟県中越沖地震により,①地震断層を把握することは困難であり,活断層が確認されていないところでもマグニチュード6. 5を超える地震が発生する可能性があること,②新潟県中越沖地震のはぎとり波の最大加速度1699ガルという値は,柏崎刈羽原発の旧耐震指針による基準地震動Sにおける最大加速度の4倍近い値であり,新耐震指 針による日本国内の原発の基準地震動Ssにおける最大加速度の最大値の2倍以上の値であって,旧耐震指針及び新耐震指針において算定した地震 る基準地震動Sにおける最大加速度の4倍近い値であり,新耐震指 針による日本国内の原発の基準地震動Ssにおける最大加速度の最大値の2倍以上の値であって,旧耐震指針及び新耐震指針において算定した地震動は,現実に発生した地震による地震動と比べて地震動を過小評価するものであること,③柏崎刈羽原発では,新潟県中越沖地震により,観測記録が消失し,機械の破損・変形,建物等のひび・剥離,水漏れ等合計3270件にも上るトラブルが生じており,原子力発電所の地震に対するもろさが明らかになった旨主張するので以下に検討する。 イ証拠(以下の各項に括弧書きしたもの)によれば,以下の事実が認められる。 (ア)新潟県中越沖地震の概要新潟県中越沖地震は,平成19年7月16日午前10時13分ころ,新潟県上中越沖で発生した。気象庁の発表によれば,マグニチュードは6.8,震源位置は北緯37度33.4分,東経138度36.5分,震源深さは17キロメートルであり,柏崎刈羽原発までの距離は,震央距離約16キロメートル,震源距離約23キロメートルであり,F-B断層が震源断層に対応すると考えられている〔乙183(2-1,弁論)の全趣旨。 〕新潟県中越沖地震発生のメカニズムは,大局的には南東傾斜(海から陸に向かって深くなる傾斜)の逆断層運動により発生したとされている〔乙183(2-1,2。 )〕- 286 -(イ)新潟県中越沖地震前における東京電力の新潟県中越沖地震の震源付近の活断層評価東京電力は,柏崎刈羽原発6号機,7号機の設置許可申請に際し,文献調査,海上音波探査等を実施し,F-C断層(長さ最大約2.5キロメートル,敷地からの距離約21.5キロメートル)を活断層と評価していたが,F-A断層(長さ最大約5キロメートル,敷地からの距離約39キロメートル,F-B を実施し,F-C断層(長さ最大約2.5キロメートル,敷地からの距離約21.5キロメートル)を活断層と評価していたが,F-A断層(長さ最大約5キロメートル,敷地からの距離約39キロメートル,F-B断層(長さ最大約8キロメートル,)敷地からの距離約19キロメートル)及びF-D断層(長さ最大約10キロメートル,敷地からの距離約39キロメートル)については,いずれも活断層ではないと評価していた。なお,東京電力は,平成15年6月,活断層の再評価を実施し,F-A断層(長さ39キロメートル,敷地からの距離45.5キロメートル,F-B断層(長さ20)キロメートル,敷地からの距離18.5キロメートル)及びF-D断層(長さ21.5キロメートル,敷地からの距離40.5キロメートル)について,いずれも活断層の可能性があると評価していた〔甲1。 236(21〕)(ウ)新潟県中越沖地震の柏崎刈羽原発への影響新潟県中越沖地震により柏崎刈羽原発原子炉建屋基礎版上で観測された最大加速度及び解放基盤表面において推定される最大加速度は,それぞれ1号機680ガル,1699ガル,2号機606ガル,1011ガル,3号機384ガル,1113ガル,4号機492ガル,1478ガル,5号機442ガル,766ガル,6号機322ガル,539ガル,7号機356ガル,613ガルであり,耐震設計時に設定した旧耐震指針による基準地震動Sにおける最大加速度450ガルを大 きく上回るものであった。なお,柏崎刈羽原発における新潟県中越沖地震の地震観測データは一部消失した〔甲1317,乙156,乙1。 - 287 -83(3-4,乙184(2〕)))柏崎刈羽原発は,新潟県中越沖地震により,運転中又は起動中の2,3,4,7号機がいずれも自動停止した。新潟県中越沖地震により,1な 乙1。 - 287 -83(3-4,乙184(2〕)))柏崎刈羽原発は,新潟県中越沖地震により,運転中又は起動中の2,3,4,7号機がいずれも自動停止した。新潟県中越沖地震により,1ないし7号機で使用済燃料貯蔵プール水があふれ出し,6号機で放射性物質の漏えいが生じたが,その量は2×10ミリシーベルトであ-9り,一般人が自然界で1年間に受ける放射線の量の平均値約2.4ミリシーベルトの約10億分の1であった。7号機では,原子炉が自動停止した際,グランド蒸気排風機の停止操作が遅れたため,軸を覆っている蒸気がなくなり,タービン内の放射性物質を含む蒸気が外部に漏れ出したが,その量は2×10ミリシーベルトであり,前記年間放-7射線量の平均値約2.4ミリシーベルトの約1000万分の1であった。また,3号機では,所内変圧器で火災が発生し,約2時間後に鎮火した。1号機では,消火系配管が損傷し,原子炉複合建屋地下5階において,水位約48センチメートル,最大漏えい量約2000立方メートルの水の漏えいが生じた。さらに,固体廃棄物貯蔵庫において,ドラム缶数百本が転倒し,うち数十本のドラム缶の蓋が開き,約16リットルの水が漏れ出したが,放射性物質の漏れはなかった。6,7号機の中央制御室において,飾り照明の落下,天井化粧板の脱落・ひび・非常灯のずれ・点検口の開放が生じた。構内の道路が寸断し,海側及び屋外で液状化現象が生じた〔乙156,乙161ないし16。 3〕ウ前記イの認定事実によれば,被控訴人らが主張するように,①東京電力は,柏崎刈羽原発の設置許可申請の際,新潟県中越沖地震の震源断層に対応すると考えられるF-B断層を活断層として評価していなかったこと,②新潟県中越沖地震により柏崎刈羽原発で観測された地震動の最大加速度は,耐震設計時に 許可申請の際,新潟県中越沖地震の震源断層に対応すると考えられるF-B断層を活断層として評価していなかったこと,②新潟県中越沖地震により柏崎刈羽原発で観測された地震動の最大加速度は,耐震設計時に設定した旧耐震指針による基準地震動Sにおける最 - 288 -大加速度を大きく上回るものであったこと,③新潟県中越沖地震により,6及び7号機において放射性物質の漏えいが生じるとともに,3号機変圧器の火災等が生じたことが認められる。しかしながら,控訴人は,前記第4「控訴人の安全確保対策」の1「立地条件に係る安全確保対策」(2)「地震に係る安全確保対策」オ「本件原子炉施設の耐震安全性評価」(ウ)「新耐震指針及びバックチェックルールに基づく基準地震動Ssの策定」判示のとおり,本件原子炉施設のバックチェックに際し,新耐震指針及びバックチェックルールに基づき,震源と活断層を関連付けることが困難な内陸地殻内地震が発生する可能性があることを前提に,震源を特定せず策定する地震動を策定しているし,証拠〔乙152,乙163〕によれば,平成19年12月27日,原子力安全・保安院から,本件原子炉施設について,新潟県中越沖地震の結果を踏まえた検討及びこの結果を踏まえたバックチェックを行うよう通知を受け,バックチェックに際し,新潟県中越沖地震の結果を踏まえ,使用済燃料貯蔵プールの水が床面に溢れないように同プール脇の手摺りにシート養生を行うなどの対策を講じていることが認められる。また,前記イ認定のとおり,新潟県中越沖地震による放射性物質の漏れの量は,一般人が自然界で1年間に受ける放射線の量の平均値約2.4ミリシーベルトの1000万分の1以下であることなどを考え併せれば,新潟県中越沖地震により,本件原子炉の外部へ放射線,放射性物質が排出され,被控訴人らが被ばくする に受ける放射線の量の平均値約2.4ミリシーベルトの1000万分の1以下であることなどを考え併せれば,新潟県中越沖地震により,本件原子炉の外部へ放射線,放射性物質が排出され,被控訴人らが被ばくする具体的危険性があることが示されたとは認められないし,被控訴人らの前記主張は本件原子炉における前記危険性について具体的に主張立証するものではないから,この点に関する被控訴人らの主張には理由がない。 (10)旧耐震指針に関する主張について前記第4「控訴人の安全確保対策」の1「立地条件に係る安全確保対策」(2)「地震に係る安全確保対策」ウ「新耐震指針の概要」に判示のとおり,- 289 -新耐震指針は,旧耐震指針が定められた後の地震学及び地震工学に関する知見並びに原子炉施設の耐震設計技術の改良及び進歩を反映させたものであるところ,同カ「本件原子炉施設の新耐震指針及びバックチェックルール適合性」及び前記(2)ないし(7)において判示のとおり,本件原子炉施設は,新耐震指針に適合すると認められ,かつ,新耐震指針は,本件原子炉施設の地震・耐震設計の安全性を満たしているとは評価できない旨の被控訴人らの主張にはいずれも理由がないから,旧耐震指針に関する主張については判断する必要はない。 争点15(本件原子炉の不要性)について前記第4「控訴人の安全確保対策」の3「事故防止に係る安全確保対策」において認定したとおり,控訴人は,本件原子炉について,異常発生防止対策,異常拡大防止対策及び放射性物質異常放出防止対策の事故防止に係る安全確保対策を講じているところ,被控訴人らは,本件原子炉の不要性を主張するのみで,いかなる機序で本件原子炉の外部へ放射線,放射性物質が排出され,被控訴人らが被ばくする可能性があるかについて具体的に主張立証していないから,この点に関す 人らは,本件原子炉の不要性を主張するのみで,いかなる機序で本件原子炉の外部へ放射線,放射性物質が排出され,被控訴人らが被ばくする可能性があるかについて具体的に主張立証していないから,この点に関する被控訴人らの主張には理由がない。 争点16(廃棄物処理等ダウンストリームの不備)について被控訴人らは,本件原子炉の運転を継続した場合,本件原発の施設において貯蔵を要する使用済み核燃料は,非常に強い放射能毒性を有し,再臨界の可能性もある上,その貯蔵容量は不十分で,行き場を失うから,被控訴人ら付近の住民の生命,健康に対して重大な危険性が生じることになる旨主張する。しかしながら,被控訴人らは,使用済み核燃料の危険性を抽象的に主張するのみで,いかなる機序で本件原子炉の外部へ放射線,放射性物質が排出され,被控訴人らが被ばくする可能性があるかについて具体的に主張立証していないから,この点に関する被控訴人らの主張には理由がない。 第6以上,第4,第5に認定説示したところを総合すれば,控訴人は,本件原子- 290 -炉が安全性に欠ける点のないことについて,相当の根拠を示し,かつ,必要な資料を提出した上で,主張立証を尽くしたということができるのに対し,控訴人の前記主張立証を揺るがすに足りる反論反証はなく,また,被控訴人らの主張立証その他本件の全証拠によっても,本件原子炉に安全性に欠ける点があり,被控訴人らの生命,身体,健康が現に侵害され,又は侵害される具体的危険性があるものと認めるには足りないといわざるを得ない。 第7 結論 以上によれば,被控訴人らの請求はいずれも理由がないから,これらを棄却すべきである。 よって,これと結論を異にする原判決を取り消して,被控訴人らの前記請求をいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所金沢支部第 ずれも理由がないから,これらを棄却すべきである。 よって,これと結論を異にする原判決を取り消して,被控訴人らの前記請求をいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所金沢支部第1部裁判長裁判官渡辺修明裁判官沖中康人裁判官桃崎剛(別紙1~16省略)
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