平成13(う)328 道路交通法違反被告

裁判年月日・裁判所
平成14年5月21日 高松高等裁判所
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判決文本文2,914 文字)

主文 本件控訴を棄却する。 理由 本件控訴の趣意は,弁護人柳瀬治夫作成の控訴趣意書に記載のとおりであるから,これを引用する。 論旨は,被告人を懲役4月に処した原判決の量刑は重過ぎて不当であり,被告人に対しては,罰金刑をもって臨むか,仮に懲役刑を選択する場合は刑の執行を再度猶予すべきである,というのである。 そこで,所論にかんがみ,記録を調査して検討する。 本件は,被告人が,酒気を帯び,アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態で,普通貨物自動車(軽四)を運転した,という道路交通法違反1件の事案である。原判決がその「量刑の理由」の項で説示するところは,当裁判所においてもこれを相当として是認することができる。すなわち,この犯行の罪質,動機,態様及び被告人の前科関係等,殊に,被告人がこの犯行に及んだ動機・経緯に酌むべき事情などは認められないこと,この犯行直後における被告人の呼気検査では,呼気1リットル中0. 7ミリグラムの高濃度のアルコール分が検出されている上に,警察官が現認したところによると,犯行当時,被告人は左右に大きく蛇行しながら運転したり,合図なく左折して後続のバイクと衝突しそうになったりしていたというのであるから,その酔いの程度は著しく,この運転は現に非常に危険なものであったといえること,被告人は,多数の前科を有し,その中には業務上過失傷害罪や酒気帯び運転の罪による罰金前科4犯が含まれ,さらに,平成12年6月には業務上過失傷害罪及び酒気帯び運転の罪により懲役5月・3年間刑執行猶予の判決の言渡しを受けて社会内で自力更生する機会を与えられたのに,自重自戒することなく,この執行猶予期間中に又もや安易に本件の犯行に及んでおり,こうしたことに照らすと,被告人には交通法規を守る精神が著しく欠けているというほかないこと,以上を 会を与えられたのに,自重自戒することなく,この執行猶予期間中に又もや安易に本件の犯行に及んでおり,こうしたことに照らすと,被告人には交通法規を守る精神が著しく欠けているというほかないこと,以上を併せ考えると,本件の犯情は甚だ悪く,被告人の刑事責任を軽くみることができない。 そうすると,被告人が本件について反省の態度を示していること,犯行当時運転していた前記車両を廃車にしたということ,その他所論が指摘し記録上も肯認し得る被告人のために酌むべき諸事情を十分考慮し,かつ,被告人は,本件で実刑判決が確定すると前記懲役刑前科の刑執行猶予が取り消されてその刑も併せて執行される蓋然性が高いことを勘案しても,本件は被告人に対し罰金刑をもって臨むのを相当とする事案でないことはもとより,懲役刑に再度執行猶予を付すべき事案であるとも認められず,被告人を懲役4月の実刑に処した原判決の量刑は,刑期の点でも,重過ぎて不当であるとはいえない。論旨は理由がない。 なお,当審では,被告人に対する控訴趣意書差出最終日延期通知書及び公判期日召喚状を,いずれも原判決記載の被告人の住居(以下「肩書住居」ともいう。)にあてて書留郵便に付して送達したが,これらは以下の理由によりいずれも有効であると考える。 記録によると,この送達手続について,次のような事実を認めることができる。すなわち,・被告人は,捜査段階はもとより,原審での人定質問の際にも,自己の住居は肩書住居である旨,一貫して供述していたこと,・被告人は,原判決を不服として控訴を申し立てることにし,被告人の記名押印のある控訴申立書を妻に託して,原審に提出させたこと(なお,この控訴申立書には被告人の署名がなく,被告人は,原審の裁判所書記官から直接電話でこれを補正するように促されて,これを了解したものの,その後補正に赴いた形 を妻に託して,原審に提出させたこと(なお,この控訴申立書には被告人の署名がなく,被告人は,原審の裁判所書記官から直接電話でこれを補正するように促されて,これを了解したものの,その後補正に赴いた形跡はない。ちなみに,本件では原審弁護人からも適法な控訴申立てがなされている。),・前記被告人の控訴申立書には,「自宅 089.×××.××××」との手書きの記載があるが,この電話番号は,被告人が捜査段階で肩書住居に設置した電話の番号として供述していたものと一致していること,・この控訴申立書の提出以降,当審弁論終結に至るまで,被告人は,刑訴規則62条1項に定める住居又は事務所を届け出ず,送達受取人を選任して届け出ることもしていないこと,・当審の裁判所書記官が肩書住居にあてて控訴趣意書差出最終日通知書を発送したところ,受取人不在のために配達することができなかったことから,同裁判所書記官は,検察官による被告人の所在調査結果(肩書住居に非居住)を踏まえた上で,控訴趣意書差出最終日延期通知書(差出最終日を平成14年1月10日から同年2月14日に延期した旨通知するもの)を,あらためて肩書住居にあてて書留郵便に付して送達したこと,・その後,同裁判所書記官は,肩書住居にあてて公判期日召喚状を発送したが,これも受取人不在のために配達することができなかったことから,再度の検察官による被告人の所在調査結果(肩書住居に非居住)を踏まえた上で,公判期日召喚状を,あらためて肩書住居にあてて書留郵便に付して送達したこと,以上の事実が認められる。 こうした事実によると,被告人は,・のとおり住居等の届出義務を怠った上に,・のとおり控訴申立書に「自宅 089.×××.××××」と記載することにより,肩書住居を連絡場所ひいては書類の送達場所とするように意思表示しているものとみること とおり住居等の届出義務を怠った上に,・のとおり控訴申立書に「自宅 089.×××.××××」と記載することにより,肩書住居を連絡場所ひいては書類の送達場所とするように意思表示しているものとみることができるから,肩書住居にあてて送付された書類が現実に被告人に届かないことがあったとしても,その不利益を被告人が被るのはやむを得ないところである(なお,仮に控訴申立書に「自宅 089.×××.××××」と記載したのが妻であったとしても,・ないし・の事情等に照らすと,その記載は被告人の意思に基づくものとみることができるから,それを自ら記載した場合と同様に被告人が不利益を被るのはやむを得ない。)。したがって,被告人に対する控訴趣意書差出最終日延期通知書及び公判期日召喚状は,刑訴規則63条1項の趣旨に照らし,いずれも肩書住居にあてて書留郵便に付してその送達をすることができるものと解するのが相当であって,当審において肩書住居にあてて行った書留郵便に付する送達は,いずれも有効である。 よって,刑訴法396条により本件控訴を棄却することとし,当審における訴訟費用を被告人に負担させないことにつき刑訴法181条1項ただし書を適用して,主文のとおり判決する。 平成14年5月21日高松高等裁判所第1部裁判長裁判官正木勝彦裁判官増田耕児裁判官齋藤正人

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