平成12刑(わ)3744 業務上横領,背任,贈賄被告

裁判年月日・裁判所
平成14年3月26日 東京地方裁判所
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判決文本文6,829 文字)

平成14年3月26日宣告平成12年刑(わ)第3744号,第4023号,平成13年刑(わ)第472号,第710号業務上横領,背任,贈賄被告事件 主文 被告人を懲役3年に処する。 未決勾留日数中50日をその刑に算入する。 この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1 昭和60年6月24日から平成12年10月6日までの間,中小企業における災害に対する補償の共済などの事業を行う財団法人A1(主たる事務所は東京都墨田区ab丁目c番d号。平成6年11月17日以前の名称は財団法人A゛。以下,名称変更の前後を問わず「A1」という)の理事長としてその業務全般を統括掌理し,その資産を管理するなどの業務に従事していたものであるが, 1 A1の経理担当常務理事としてその財務及び経理等の執務を行い,その預金等を管理・出納するなどの業務に従事していた分離前の相被告人B(以下「B」という)と共謀の上,平成6年1月20日から平成10年6月22日までの間,別紙一覧表(1)記載のとおり,前後54回にわたり,東京都千代田区ef丁目g番h号所在の株式会社C銀行e支店ほか4か所において,被告人の私的用途に充てるため,情を知らないA1経理部職員等をして,ほしいままに,被告人及びBがA1のため業務上預かり保管中の預金合計5396万7600円を払い戻させ,これを東京都墨田区ai丁目j番k号所在の株式会社C銀行l支店に開設された被告人管理に係るD会長E名義の普通預金口座に振込送金させ,もって横領し 2 平成10年7月21日から平成12年9月20日までの間,別紙一覧表(2)記載のとおり,前後27回にわたり,前記C銀行e支店において,被告人の私的用途に充てるため,情を知らないA1経理部職員等をして,ほしいままに,被告人がA1のた 年9月20日までの間,別紙一覧表(2)記載のとおり,前後27回にわたり,前記C銀行e支店において,被告人の私的用途に充てるため,情を知らないA1経理部職員等をして,ほしいままに,被告人がA1のため業務上預かり保管中の預金合計2698万3800円を払い戻させ,これを前記D会長E名義の普通預金口座に振込送金させ,もって横領し 3 BらとともにA1の寄附行為を遵守するのはもとより,資金出捐の要否を的確に決するなどして適正な資産管理を行うなどA1のためその職務を誠実に遂行すべき任務を有していたにもかかわらず,Bと共謀の上,被告人と親密な関係にある歌手FことG及び同女らが出資して設立しタレント出演取扱業等を営む有限会社H等の利益を図る目的をもって,その任務に背き,情を知らないA1経理部職員等をして,別紙一覧表(3)記載のとおり,平成10年4月24日から同年6月25日までの間,前後3回にわたり,前記C銀行e支店において,同支店のA1名義の当座預金口座からA1からの補助金でその活動費を賄う任意団体であるI会名義の同支店の当座預金口座に,前記Gの歌唱を記録したコンパクトディスク合計4万枚の購入資金として合計4480万円を振り替えさせた上,同年4月27日から同年6月25日までの間,前後3回にわたり,同支店において,その資金を用いて前記C銀行l支店の有限会社H名義の普通預金口座に前記コンパクトディスクの代金として合計4480万円を振込送金させ,もってA1に同額の財産上の損害を加え 4 A1の経理担当専務理事としてその財務及び経理等の業務を統括し,その預金等を管理・出納するなどの業務に従事していた分離前の相被告人J(以下「J」という)らとともにA1の寄付行為を遵守するのはもとより,資金出捐の要否を的確に決するなどして適正な資産管理を行うなどA1のためその職 ・出納するなどの業務に従事していた分離前の相被告人J(以下「J」という)らとともにA1の寄付行為を遵守するのはもとより,資金出捐の要否を的確に決するなどして適正な資産管理を行うなどA1のためその職務を誠実に遂行すべき任務を有していたにもかかわらず,Jと共謀の上,前記G及び有限会社H等の利益を図る目的をもって,その任務に背き,情を知らないA1経理部職員等をして,別紙一覧表(4)記載のとおり,平成10年7月27日から平成12年9月25日までの間,前後10回にわたり,前記C銀行e支店において,同支店のA1名義の当座預金口座から前記I会名義の当座預金口座に,前記Gの歌唱を記録したコンパクトディスク合計11万枚の購入資金として合計1億2320万円を振り替えさせた上,その都度,同支店において,その資金を用いて前記C銀行l支店の有限会社H名義の普通預金口座に前記コンパクトディスクの代金として合計1億2320万円を振込送金させ,もってA1に同額の財産上の損害を加え第2 いわゆる職人を育成するための大学の設置をめざしてその準備を進めていた財団法人K財団(以下「K財団」という)の会長理事として同財団法人の業務全般を統括するとともに中小企業の社会的・経済的な発展向上を図るために必要な政治活動を行うことを目的としていた政治団体であるL(以下「L」という)を実質的に主宰し,L事務総長である分離前の相被告人M(以下「M」という)をして,昭和55年7月8日から平成13年2月26日まで参議院議員を務めて同院において議題等につき国務大臣等に対して質疑し,討論を行い,表決に加わるなどの職務を行っていたN(以下「N」という)との折衝に当たらせていたものであるが,Mと共謀の上,平成8年1月上旬ころ,東京都千代田区mn丁目o番p号参議院議員会館q号室において,前記職務を わるなどの職務を行っていたN(以下「N」という)との折衝に当たらせていたものであるが,Mと共謀の上,平成8年1月上旬ころ,東京都千代田区mn丁目o番p号参議院議員会館q号室において,前記職務を担当していたNに対し,同月25日に開かれる参議院本会議において,Nが内閣総理大臣の演説に対して質疑するに当たり,国策として前記大学の設置を支援するよう提案するなど同大学設置のため有利な取り計らいを求める質問をされたい旨の請託をし,その請託などの報酬として,同年6月中旬ころ,N及び同人の政策担当秘書を務めていたOとの間で,Nが実質的に賃借している同区mn丁目r番s号Pビルt号室及びu号室の賃料等相当額として,月額88万円を供与することを合意した上,単一の犯意をもって,L会計責任者Qをして,同月25日から同年11月25日までの間,別紙一覧表(5)番号1ないし6記載のとおり,前後6回にわたり,同区mn丁目o番p号所在の株式会社Rv支店に開設されたS会O名義の普通預金口座に合計528万円を振込送金させ,同年12月25日ころから平成10年7月29日ころまでの間,別紙一覧表(5)番号7ないし26記載のとおり,前後20回にわたり,前記Pビルt号室ほか1か所において,前記Oに対し,現金合計1760万円を交付し,もってNの前記職務に関して賄賂を供与し第3 前記K財団会長理事として同財団法人の業務全般を統括するとともに組合員に高速道路料金別納カードを販売するなどの事業を行っていたT組合の代表理事として同組合の業務全般を統括し,Mをして,平成7年7月23日から平成13年1月29日まで参議院議員を務めるとともにその間の平成10年7月31日から平成11年10月4日まで労働政務次官として労働大臣の命を受けて労働省の所掌する労働者の職業に必要な能力の開発及び向上に関する 月29日まで参議院議員を務めるとともにその間の平成10年7月31日から平成11年10月4日まで労働政務次官として労働大臣の命を受けて労働省の所掌する労働者の職業に必要な能力の開発及び向上に関すること等の政策及び企画に参画し,その所掌事務を処理するなどの職務を担当していたU(以下「U」という)との折衝に当たらせていたものであるが,M及び前記T組合の専務理事として同組合の常務を処理していたVと共謀の上,平成10年8月3日ころから平成11年3月2日ころまでの間,数回にわたり,前記墨田区a1丁目所在のA1理事長室等において,前記職務を担当していたUに対し,前記大学の設置等に必要な所要資金を確保するため国の補助金を増額すべく大蔵省に予算要求するなどして欲しい旨の請託をし,その報酬として,同月下旬ころ,Uとの間で,Uが雇用する秘書の給与につき前記T組合から支給させることを合意した上,単一の犯意をもって,別紙一覧表(6)記載のとおり,同年4月23日から平成12年9月25日までの間,前後21回にわたり,前記T組合職員をして,千葉県習志野市wx丁目y番z号所在の株式会社W銀行w支店に開設されたX名義の普通預金口座及び東京都港区a2b2丁目c2番d2号所在の株式会社C銀行a2支店に開設されたY名義の普通預金口座に合計1166万8711円を振込送金させて供与し,もってUの前記職務に関して賄賂を供与したものである。〈別紙省略〉(量刑の理由) 1 本件は,被告人が,(一)A1理事長として,(1)同法人の預金から自らが管理する預金口座に,①同法人常務理事と共謀の上で合計5396万円余りを,②単独で合計2698万円余りを振込送金するなどした2つの業務上横領事犯,(2)A1の資産を適正に管理すべき任務に背いて,①同法人常務理事と共謀の上でコンパクトディスク合 で合計5396万円余りを,②単独で合計2698万円余りを振込送金するなどした2つの業務上横領事犯,(2)A1の資産を適正に管理すべき任務に背いて,①同法人常務理事と共謀の上でコンパクトディスク合計4万枚の購入代金として合計4480万円を,②同法人専務理事と共謀の上でコンパクトディスク合計11万枚の購入代金として合計1億2320万円をそれぞれ支出して,同法人に各損害を与えた2つの背任事犯,(二)職人大学設置を目的として,(1)参議院議員に対して国会の代表質問で内閣総理大臣に同大学設置に有用な質問をしてもらいたい旨請託した後,同議員の賃借する事務所家賃等相当額分を賄賂として供与し,(2)労働政務次官に対して大蔵省へ同大学設置に必要な国の補助金を増額するよう予算要求等してもらいたい旨請託した後,同政務次官が雇用する議員秘書の給与分を賄賂として供与した2つの贈賄事犯である。 2 本件各業務上横領についてみるに,その目的は,親しい女性のために購入したマンションの借入金返済等に充てるなど自らの財産的利益を図ることにあり,自己中心的で酌量の余地はない。その犯行態様は,約6年8か月間,前後81回にわたり,自らが会長を務める団体の預金口座にA1の預金から毎月約100万円を振込送金させるというものであって,犯行が長期間にわたり反復累行されていること,A1の組織内において自己が実権を握っている立場にあることを悪用して,自ら単独で又は常務理事に行わせて本件に及んでいること,被害金額が合計8095万円余りと多額であることに照らすと,悪質な犯行というべきである。 本件各背任についてみるに,その主要目的は,自己がひいきにする女性歌手等の財産的利益を図ることにあり,酌量すべき点は乏しい。その犯行態様は,同歌手の歌唱を記録したコンパクトディスク合計15万枚の購入代金と 背任についてみるに,その主要目的は,自己がひいきにする女性歌手等の財産的利益を図ることにあり,酌量すべき点は乏しい。その犯行態様は,同歌手の歌唱を記録したコンパクトディスク合計15万枚の購入代金として,約2年5か月の間,前後13回にわたり振込送金させて,A1に合計1億6800万円という巨額の財産的損害を与えたというものであるが,長期間にわたって反復累行されていること,その決定を被告人が専断的に行った上,出金に必要な決裁を経理担当の専務理事又は常務理事に行わせて本件に及んでいることなどに照らすと,これまた大胆で悪質な犯行というほかない。 このように,本件業務上横領及び背任は,A1の最高責任者である被告人が,ほぼ絶対的権限を持ち部下らに対して圧倒的な影響力を有している立場を利用し,A1の財産を犠牲にして私的な利益を図ったもので,中小企業の健全な発展と福祉の増進に寄与することを目的とした公益法人であるA1の社会的信用を失墜させ,その加入者の信頼を大きく損なった点も,犯情として看過できず,その刑事責任は重い。 3 本件各贈賄についてみるに,その目的は,参議院議員及び政務次官に対して金銭的な供与をして自らの願望を実現しようとしたもので,自己中心的で酌量の余地は乏しい。犯行態様は,参議院議員に対する贈賄は,前記のような代表質問に関する請託をした上で,その請託などの謝礼として,同議員の事務所家賃等に相当する毎月88万円を約2年余りの間前後26回にわたって振込送金又は手交し,合計2288万円を供与したというものであり,政務次官に対する贈賄は,前記のような大蔵省への予算要求などに関する請託をした上,その謝礼として,同政務次官の私設秘書の給与として,約1年5か月の間前後21回にわたり合計1166万円余りを当該秘書の銀行口座に振込送金して供与したというもの 省への予算要求などに関する請託をした上,その謝礼として,同政務次官の私設秘書の給与として,約1年5か月の間前後21回にわたり合計1166万円余りを当該秘書の銀行口座に振込送金して供与したというものである。 内閣総理大臣に対する代表質問は,国民が政府の基本政策を知るための有益な機会であるばかりか,国民代表たる国会議員の重要な権能であり,また,労働行政が国民生活に密接な影響を持つことに照らすと,国会議員の代表質問や行政機関の最高幹部の職務については高度な清廉性が求められ,また,これについて国民の信頼を維持することが極めて重要であるところ,本件贈賄がこれらを損ない,我が国の民主主義政治への不信を増大させた点は,本件の重大な社会的悪影響といわなければならない。いずれの贈賄も被告人が主導的に行ったもので,その供与金額が多額であり,しかも長期間にわたって反復された犯行であることに照らすと,犯情も悪質である。そして,本件が職人大学の開設に大きな汚点を残した点も看過できない。 以上のように,本件贈賄についての被告人の刑事責任は大きい。 4 しかし,他方で,本件背任については,被告人に判示コンパクトディスクの購入・配布によるA1会員の団結への期待がなかったわけではないこと,本件背任自体から被告人自身が金銭的利得を得たわけではないこと,本件贈賄については,いずれの贈賄も判示請託の後に企図したもので,当初から賄賂供与を手段として請託したものではなかったこと,参議院議員への贈賄は被告人自身の発想ではなく側近からの勧めが発端であったこと,政務次官への贈賄は同次官からの要請によって行われることになったこと,被告人が本件贈賄から得た個人的な利益はないこと,職人大学の設置・推進という動機・目的自体は公益を目指したものであって私利私欲に基づくものではないこと,その他,本件 よって行われることになったこと,被告人が本件贈賄から得た個人的な利益はないこと,職人大学の設置・推進という動機・目的自体は公益を目指したものであって私利私欲に基づくものではないこと,その他,本件全体に係わる情状として,本件各犯行により損害を被ったA1との間で9000万円を支払ったほか,これまで居住していた住居をA1側に引き渡すなどして和解し,民事上の問題を解消したこと,本件犯行の結果,被告人はA1から支給される予定であった億単位の退職金を得られなくなったこと,被告人がこれまで中小企業経営者の地位向上・境遇改善を目指して社会的に有用な組織としてA1を作り,その維持発展に貢献をし,昨今の中小企業の人手不足問題や外国人の就労問題等にも尽力するなど社会的に有意義な活動をしてきたこと,被告人が本件犯行をいずれも認めて深く反省していること,被告人には前科・前歴がないこと,被告人は間もなく81歳となる高齢で,健康への配慮を要する身体状況にあることなど被告人にとって有利に斟酌すべき情状も認められる。 5 そこで,以上の諸事情を総合考慮し,被告人に対しては主文のとおりの刑に処した上,その刑の執行を猶予し,社会内で更生の機会を与えるのが相当であると判断した。 (求刑懲役4年)平成14年4月16日東京地方裁判所刑事第8部裁判長裁判官池田耕平裁判官佐藤基裁判官富張邦夫

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