平成14(行コ)66 道路位置指定廃止等承認申請却下処分取消請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成13年(行ウ)第77号)

裁判年月日・裁判所
平成15年2月18日 大阪高等裁判所 警察関係
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判決文本文5,293 文字)

主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人(1) 原判決を取り消す。 (2) 被控訴人の請求を棄却する。 (3) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 2 被控訴人主文同旨第2 事案の概要 1 本件は,その一部が建築基準法42条1項5号の規定により位置指定道路に認定されている土地及びその余の残部が同法42条2項の規定により私道認定されている数筆の土地を所有する被控訴人が,同法45条1項に定める権限を有する特定行政庁である控訴人(寝屋川市長)に対してした道路位置指定の廃止及び私道認定廃止承認の申請につき,上記位置指定道路を前面道路として使用している者の承諾書が添付されていないことを理由にこれを却下した控訴人の処分が違法であると主張して,その取消しを求めている事案である。 2 本件に関連する法令の定め,前提事実(争いのない事実及び証拠から容易に認定できる事実),争点及び争点に対する当事者双方の主張は,後記3のとおり付加するほか,原判決の事実及び理由,第2の1ないし4に記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,原判決3頁23行目から24行目にかけての「法4条の2」を「本件細則4条の2」に改める。)。 3 控訴人の控訴理由原判決の認定には,本件条例及び本件細則の存在意義及びその解釈に誤りがあり,取消しを免れないものである。 (1) 私道の廃止に伴う利害関係人の承諾を求める理由についてア私道の廃止等により建物敷地が接道義務を満たさないことにならないとしても,私道の利害関係人は,多くの場合,その私道に接して建築物を建築しているので,私道の廃止等によって,建築基準法上,容積率の適用や道路斜線制限の適用において不利益を受ける場合がある にならないとしても,私道の利害関係人は,多くの場合,その私道に接して建築物を建築しているので,私道の廃止等によって,建築基準法上,容積率の適用や道路斜線制限の適用において不利益を受ける場合があるのみならず,日常生活上においても,その私道に存するいわゆるライフラインの使用ができなくなるとか,複数の接道がある敷地であっても,玄関の面している私道が廃止されると,その玄関が使用できなくなるという不利益を受けることが明らかである。このように,私道の廃止等は,土地所有者及び利害関係人にとっても,必ずしも利益処分になるものではないから,その意向に関係なく自己所有の私道を廃止されることは,私権に対する違法・不当な制約であるといえる。 イ寝屋川市は,位置指定道路(私道)内に公共下水道や水道管といったいわゆるライフラインを埋設するに際しては,その私道所有者の同意を得るのみで,地下地上権,地役権あるいは対抗力のある賃借権を設定することなく,これを行っており,本件私道内の公共下水道及び水道管の埋設も同様である。 ウ本件私道が廃止され,被控訴人の所有する敷地の一部となると,その利用計画次第で,埋設された公共下水道及び水道管の移設を要求されるおそれがあり,①寝屋川市は,移設先用地の確保や移設費用の捻出を余儀なくされるし,②本件私道の隣接者は,給排水設備の付け替えや建物の出入り口の変更を要することになる。 エ以上のように,位置指定道路(私道)の廃止等は,行政運営や実生活の上で多大の影響を及ぼすものであるから,これらの問題の発生を未然に防止するため(公共の福祉向上のため),控訴人は,私道の廃止等の申請について利害関係人の同意書・承諾書を徴しているのである。 (2) 建築基準法45条と同法52条・56条との関係についてア建築基準法45条は,接道要件に欠ける場合に ),控訴人は,私道の廃止等の申請について利害関係人の同意書・承諾書を徴しているのである。 (2) 建築基準法45条と同法52条・56条との関係についてア建築基準法45条は,接道要件に欠ける場合には,私道の廃止等を制限又は禁止する権限を特定行政庁に与えているが,容積率や道路斜線制限に係る不利益が生じる場合の調整については,何ら規定しておらず,同法45条(私道の廃止)と同法52条(容積率)・56条(道路斜線制限)との関係については,市民生活上,見過ごすことのできない矛盾がある。 イそのため,寝屋川市は,前記(1)の行政運営及び利害関係人の実生活上の問題発生を未然に防止するとともに,建築基準法の各条文間の矛盾を解消するために,私道の廃止等の申請について利害関係人の承諾を求めているのである。 ウ平成12年4月1日に施行された地方分権一括法で,私道の廃止等に係る手続が自治事務となり,地方公共団体における自己決定・自己責任による行政運営が基本となるべきものとされたことにかんがみれば,控訴人を含む寝屋川市には,公共の福祉の実現に向けた行政運営の遂行のため,上記のような取扱いをする「建築基準法の解釈・運用における裁量権」が認められなければならない。 (3) 私道負担者の私権の制限についてア本件の利害関係人(A)の敷地は,接道が2か所(本件位置指定道路と国道170号)あり,一方の本件位置指定道路は,その敷地の半分が利害関係人の所有であるが,他方の国道170号の側は,高低差3ないし4メートルの崖状地となっており,進入通路を確保しないと接道要件を満たさないものである。 イ本件位置指定道路が廃止されると,利害関係人は,国道170号の管理者である大阪府知事の占用許可を得る必要があるが,将来,国道170号が高架にされたり,占用許可が取り消されれば,利害関係 である。 イ本件位置指定道路が廃止されると,利害関係人は,国道170号の管理者である大阪府知事の占用許可を得る必要があるが,将来,国道170号が高架にされたり,占用許可が取り消されれば,利害関係人の建築物は違法建築となってしまう。 ウこのような事態が予想されるから,私道の廃止等に当たっては,接道に関する使用権原の種別(法的安定性)についての配慮・考慮がされるべきであり,したがって,利害関係を有する者との利害調整(利害関係人の承諾)は,市民生活上も,行政運営上も,極めて重要な要件であって,本件取扱いには合理的な理由がある。 エ原判決は,控訴人を含む寝屋川市に与えられている前記裁量権に基づく「接道の使用権原の種別に係る配慮・考慮」の観点を無視して,建築確認の際の「使用権原に関する建築主事の調査義務不存在」を類推して,本件私道が廃止された後も,「占用許可」に基づく接道が,「ただ単に存在する事実」のみに着目しているにすぎず,不当である。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,被控訴人の控訴人に対する本訴請求は理由があり,これを認容すべきものと判断するが,その理由は,次のとおり付加するほか,原判決の事実及び理由,第3の1,2に記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,原判決12頁13行目の「第2,1(1)」を「第2,1(2)」に改める。)。 2(1) 利害関係人の承諾を求める理由についてア控訴人は,前記控訴人の控訴理由(1)のとおり,「私道の廃止等は,土地所有者及び利害関係人にとっても,必ずしも利益処分になるものではないから,その意向に関係なく私道を廃止されることは,私権に対する違法・不当な制約である。」旨主張する。 イしかし,そもそも控訴人主張の利害関係人(A)の不利益は,いずれも建築基準法に基づく道路位置指定の処分による反射的な利 私道を廃止されることは,私権に対する違法・不当な制約である。」旨主張する。 イしかし,そもそも控訴人主張の利害関係人(A)の不利益は,いずれも建築基準法に基づく道路位置指定の処分による反射的な利益を失うというものであって,事実上の不利益にすぎないから,特定行政庁による私道の廃止(道路位置指定の廃止)処分がされたからといって,直ちに私権に対する違法・不当な制約があるものとはいえない。 ウまた,控訴人主張の寝屋川市の不利益も,単なる事実上の不利益にすぎず,しかも,証拠(甲2,甲4,甲12)及び弁論の全趣旨によれば,本件各道路が廃止されても,現時点では,下水,上水の取扱い及び周辺への排水については格別の支障があるとは認められないし,電気,ガス等の関係においても,支障がないことが認められるから,行政運営及び利害関係人の実生活上の問題発生を未然に防止するためとはいっても,上記のような事情の下においては,そのことから直ちに憲法29条2項(同法12条,13条)にいう「公共の福祉」に適合するものとは到底認められず,したがって,本件位置指定道路を前面道路として利用している利害関係人(A)の承諾書がないことを理由にして,憲法上保障されている被控訴人の私有財産権に制限を加えること(本件各道路の廃止申請を認めないこと)は,許されないものといわなければならない。 エよって,控訴人の控訴理由(1)の主張は,採用するに由ないものである。 (2) 建築基準法45条と同法52条・56条との関係についてア控訴人は,前記控訴人の控訴理由(2)のとおり,「建築基準法45条と同法52条・56条との関係については,市民生活上,見過ごすことのできない矛盾があり,そのため,寝屋川市は,上記のような各条文間の矛盾を解消するために,私道の廃止等の申請について利害関係人の承諾を求め 52条・56条との関係については,市民生活上,見過ごすことのできない矛盾があり,そのため,寝屋川市は,上記のような各条文間の矛盾を解消するために,私道の廃止等の申請について利害関係人の承諾を求めており,地方分権一括法の趣旨にかんがみれば,控訴人を含む寝屋川市には,公共の福祉の実現に向けた行政運営の遂行のため,上記のような取扱いをする「建築基準法の解釈・運用における裁量権」が認められなければならない。」旨主張する。 イしかし,本件位置指定道路が存在することによる容積率及び道路斜線制限の緩和は,反射的な利益にすぎないものであって,上記各規定の間に矛盾があるとはいえず,地方分権一括法により地方公共団体における自己決定・自己責任による行政運営が基本となるべきものとされたからといって,そのことから直ちに控訴人主張のような裁量権が生ずるものではないから,控訴人の上記主張は失当というほかない。 (3) 私道負担者の私権の制限についてア控訴人は,前記控訴人の控訴理由(3)のとおり,「利害関係人(A)の敷地は,接道が2か所(本件位置指定道路と国道170号)あるが,国道の側は,高低差3ないし4メートルの崖状地となっており,進入通路を確保しないと接道要件を満たさない。本件位置指定道路が廃止されると,利害関係人は,国道の管理者である大阪府知事の占用許可を得る必要があるが,将来,国道が高架にされたり,占用許可が取り消されれば,利害関係人の建築物は違法建築となる。このような事態が予想されるから,私道の廃止等に当たっては,接道に関する使用権原の種別についての配慮・考慮がされるべきであり,したがって,利害関係人の承諾は,市民生活上も,行政運営上も,極めて重要な要件であって,本件取扱いには合理的な理由がある。」旨主張する。 イしかし,Aの所有する574番4の土 慮がされるべきであり,したがって,利害関係人の承諾は,市民生活上も,行政運営上も,極めて重要な要件であって,本件取扱いには合理的な理由がある。」旨主張する。 イしかし,Aの所有する574番4の土地が西側で国道170号線と接し,本件位置指定道路を除いても,概ね12メートル以上,公道に接していることは前記のとおりである(前提事実(3)のイ)。そして,証拠(甲10,甲12,乙6)及び弁論の全趣旨によれば,利害関係人は,既に昭和52年2月以降道路占用の許可を得た上,通路橋を設置して上記国道に接道し,現に店舗を構えていることが認められ,その使用状況や周辺の状況等にかんがみると,上記国道が高架にされることになったとしても,必ずしも占用許可が取り消されるものとは限らないし,少なくともそのような計画が具体化し,その内容等が明らかにならない限り,上記占用の許可は更新されるものと推認されるところ,そのような計画があるとの点については何らの主張立証もないから,上記占用許可が取り消される現実的な可能性があるとは倒底認められない。したがって,控訴人の上記主張は,単なる仮定の事実を前提とするものであって,独自の見解に基づくものというほかなく,採用の限りでない。 3 結論以上のとおり,原判決は相当であって,控訴人の本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第12民事部裁判長裁判官大谷種臣裁判官佐藤嘉彦裁判官端二三彦

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