令和1(行ウ)11 公有水面埋立承認取消処分取消裁決の取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和2年11月27日 那覇地方裁判所 却下
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判決文本文77,484 文字)

主文 1 本件訴えを却下する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 処分行政庁国土交通大臣が平成31年4月5日付けでした下記裁決を取り消す。 記沖縄防衛局長が平成30年10月17日に提起した審査請求(沖防第5115号)に係る処分(平成30年8月31日付け沖縄県達土第125号・沖 縄県達農第646号)を取り消す旨の裁決(国水政第13号)第2 事案の概要 1 沖縄防衛局は,沖縄県宜野湾市所在の普天間飛行場の代替施設を同県名護市辺野古沿岸域に設置するため,沖縄県知事から,名護市辺野古地区及びこれに隣接する区域を埋立対象地とする公有水面埋立法42条1項に基づく 公有水面埋立ての承認を受けていた(以下「本件承認処分」という。)ところ,その後,本件承認処分は,事後に判明した事情等を理由として取り消された(以下「本件撤回処分」という。)。その後,沖縄防衛局は,公有水面埋立法を所管する国土交通大臣(裁決行政庁)に対し,本件撤回処分の取消しを求めて行政不服審査法に基づく審査請求を行った(以下「本件審査請求」とい う。)ところ,裁決行政庁は,本件撤回処分を取り消す旨の裁決をした(以下「本件裁決」という。)。 本件は,原告が,本件裁決には成立の瑕疵があり,その内容においても違法があると主張して,行政事件訴訟法3条3号に基づき,被告を相手に,本件裁決の取消しを求める事案である。 2 関係法令の定め 関係法令の定めは,別紙2「関係法令の定め」記載のとおりである。以下,行政不服審査法を「行審法」と,行政事件訴訟法を「行訴法」と,公有水面埋立法を「埋立法」と,地方自治法を「自治法」という。 3 前提事実(当事者間に争いのない事実 定め」記載のとおりである。以下,行政不服審査法を「行審法」と,行政事件訴訟法を「行訴法」と,公有水面埋立法を「埋立法」と,地方自治法を「自治法」という。 3 前提事実(当事者間に争いのない事実,後掲各証拠(枝番があるものは枝番も含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実) ⑴ 国は,アメリカ合衆国軍隊が使用する普天間飛行場につき,同国との間で,一定の措置を講じた後に返還される旨を合意し,その後,同飛行場の代替施設を名護市辺野古沿岸域に設置することとした。 沖縄防衛局は,名護市辺野古に所在するキャンプ・シュワブの施設敷地内の辺野古崎地区及びこれに隣接する水域に建設する目的で,平成25年 3月22日,沖縄県知事に対し,埋立法42条1項に基づき,同地区に隣接する区域の公有水面の埋立て(以下「本件埋立事業」という。)の承認申請を行い,同年12月27日付けで,当時のa沖縄県知事から,本件承認処分を受けた。 (乙1~4) ⑵ b前沖縄県知事(以下「b知事」という。)は,平成27年10月13日付けで,沖縄防衛局に対し,本件承認処分に瑕疵があったことを理由として,本件承認処分を取り消した(以下「前件取消し」という。)。 国土交通大臣は,平成28年3月16日,前件取消しが違法であるとして,b知事に対して前件取消しを取り消すよう是正の指示をしたが,b知 事は当該指示に係る措置を講じなかった。 そこで,国土交通大臣は,国地方係争処理委員会での審査を経て,同年7月22日,福岡高等裁判所那覇支部に対し,b知事が是正の指示に係る措置を講じずに前件取消しを取り消さないことは違法であるとして,b知事を被告として,不作為の違法確認訴訟を提起した。 福岡高等裁判所那覇支部は, 支部に対し,b知事が是正の指示に係る措置を講じずに前件取消しを取り消さないことは違法であるとして,b知事を被告として,不作為の違法確認訴訟を提起した。 福岡高等裁判所那覇支部は,同年9月16日,b知事が前件取消しを取 り消さないことは違法であることを確認する旨の判決を行い,これに対し,b知事が上告受理申立て等を行ったものの,上告審は,上告受理の申立てについて一部を受理する決定をした上で,同年12月20日,上告を棄却する旨の判決をした。 上記判決を受け,b知事は,同月26日,前件取消しを取り消した。 (乙5~8)⑶ b知事は,平成30年7月31日,沖縄防衛局に対して,本件承認処分の取消処分に係る聴聞を同年8月9日に行う旨の通知をし,同聴聞は同日に実施され,終了した。 b知事は,同年8月8日に死亡し,これにより沖縄県知事の職務代理者 (自治法152条1項)となった沖縄県副知事cは,同法153条1項に基づき,沖縄県副知事dに対し,委任期間を同月16日から同県知事選挙における当選人の告示の日の前日までとして,「普天間飛行場代替施設建設事業に対する公有水面埋立ての承認の取消処分」の事務を委任した。 沖縄県副知事dは,同月31日,上記委任に基づき,沖縄防衛局に対し, 本件承認処分後に判明した事情によれば,本件埋立事業は埋立法4条1項1号及び2号の各要件に適合していないこと,本件承認処分の附款である留意事項に沖縄防衛局が違反していること等を理由として,本件承認処分を取り消す旨の処分(本件撤回処分)をした。 (甲7,乙9,10) ⑷ 沖縄防衛局は,平成30年10月17日,国土交通大臣に対し,本件撤回処分を取り消す裁決を求める旨の本件審査請求をするとともに 分(本件撤回処分)をした。 (甲7,乙9,10) ⑷ 沖縄防衛局は,平成30年10月17日,国土交通大臣に対し,本件撤回処分を取り消す裁決を求める旨の本件審査請求をするとともに,行審法25条3項及び4項の規定に基づく執行停止申立て(以下「本件執行停止申立て」という。)をした。 国土交通大臣は,同月30日,本件執行停止申立てについて,本件審査 請求の裁決があるまでの間,本件撤回処分の効力を停止する決定をした。 沖縄県知事が,同年11月29日,同決定について,国地方係争処理委員会に対し,本件執行停止決定を取り消すべきである旨の勧告を国土交通大臣にするように求める審査申出(自治法250条の13)をしたところ,国地方係争処理委員会は,平成31年2月19日,同審査申出は不適法であるとして却下する決定をした。 沖縄県知事は,同年3月22日,国土交通大臣を被告として,本件執行停止決定は違法な国の関与(自治法250条の7第2項)であると主張して,自治法251条の5の規定に基づく違法な国の関与の取消請求訴訟を提起したところ,後記⑸のとおり,同年4月5日付けで本件裁決がなされたことから,同訴訟は同月22日に取り下げられた。 (甲10,乙12,13,15)⑸ 国土交通大臣は,平成31年4月5日,本件審査請求に対して,本件撤回処分は違法かつ不当であるとして,本件撤回処分を取り消す旨の本件裁決をし,本件裁決は,同月6日,沖縄県知事に送達された。 沖縄県知事が,同月22日,本件裁決は違法な国の関与であると主張し て,国地方係争処理委員会に対し,本件裁決を取り消すべきである旨の勧告を国土交通大臣にするように求める旨の審査申出をしたところ,国地方係争処理委員会は 本件裁決は違法な国の関与であると主張し て,国地方係争処理委員会に対し,本件裁決を取り消すべきである旨の勧告を国土交通大臣にするように求める旨の審査申出をしたところ,国地方係争処理委員会は,令和元年6月17日,本件裁決は国の関与に当たらず,同委員会の審査の対象とならないから,同審査申出は不適法であるとして,同審査申出を却下する旨の決定をした。 沖縄県知事は,同年7月17日,本件裁決は国の関与に当たるものであり,国地方係争処理委員会の上記決定に不服があるとして,福岡高等裁判所那覇支部に対し,自治法251条の5第1項に基づき,被告を相手方として,本件裁決の取消訴訟を提起したものの,同年10月23日,本件裁決は国の関与に当たらないとの判断により,訴え却下の判決がされた。 沖縄県知事は,上記判決を不服として上告したものの,上告審は,令和 2年3月26日,上告棄却の判決をした。 (甲1,11,乙14,16)⑹ 沖縄県知事は,本件訴え提起の承認に係る沖縄県議会の令和元年7月11日付け決議を経て,同年8月7日,本件訴えを提起した。 (当裁判所に顕著) 4 争点⑴ 本案前の争点ア本件訴えの法律上の争訟該当性イ抗告訴訟としての取消訴訟を前提とした本件裁決の処分性ウ抗告訴訟としての取消訴訟を前提とした原告適格の有無 エ行訴法3条3項の取消訴訟の性質⑵ 本案の争点ア本件裁決の手続的違法性 本件審査請求が行審法7条2項に反する不適法なものであるか 本件審査請求は審査請求先を誤った不適法なものであるか 本件審査請求及び本件裁決は行政不服審査制度を濫用したものといえるか 法7条2項に反する不適法なものであるか 本件審査請求は審査請求先を誤った不適法なものであるか 本件審査請求及び本件裁決は行政不服審査制度を濫用したものといえるかイ本件裁決の実体的違法性 公有水面埋立承認処分の職権取消しの可否 本件承認処分の埋立法4条1項1号の要件の不充足 本件承認処分の埋立法4条1項2号所定の災害配慮要件の不充足 本件承認処分に付された負担の不履行 本件承認処分の埋立法4条1項2号所定の環境保全要件の不充足 本件撤回処分が職権取消処分制限法理による制約を受けるか 5 争点に関する当事者の主張 ⑴ 本件訴えの法律上の争訟該当性(争点⑴ア) (被告の主張)ア法律上の争訟該当性の判断枠組み行政事件を含む民事事件において裁判所がその固有の権限に基づいて審判することのできる対象は,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」,すなわち当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関 する紛争であって,かつ,それが法令の適用により終局的に解決することができるものに限られる(最高裁判所昭和56年4月7日第三小法廷判決・民集35巻3号443頁参照)。また,国又は地方公共団体が提起した訴訟であって,財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるような場合には,法律上の争訟に当たるというべきである が,国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は,法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって,自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから,法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象とな 履行を求める訴訟は,法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって,自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから,法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではなく,法律の特別の規定がある場合に限り,提起 することが許されるものと解される(最高裁判所平成14年7月9日第三小法廷判決・民集56巻6号1134頁(以下「平成14年最高裁判決」という。)参照)。 平成14年最高裁判決は,司法権,法律上の争訟及び裁判を受ける権利(国民の権利利益の保護救済)を等号で結んだ上で,行政主体の「行 政権限」の救済を本来的な司法権の枠外の問題と位置付ける考え方を背景に,行政事件を含む民事事件における「法律上の争訟」性について,自己の権利利益の保護救済を目的とするものかどうかという観点から判断したものと解される。すなわち,行政事件を含む民事事件における「裁判を受ける権利」は,自己の権利利益が違法に侵害されたと考える ときは裁判所に訴訟を提起して救済を求める権利としての出訴権を意 味するものと解されるから,「司法権」が本来的な対象とすべき範囲は,自己の権利利益の侵害があり,その保護救済を求める場合に限られることとなるのであり,行政主体が提起した訴訟が「法律上の争訟」に当たるか否かは,自己の権利利益の保護救済を目的とするものか否かという観点から判断すべきことを示したものである。 また,最高裁判所は,国民健康保険の保険者である大阪市が私人からの被保険者証の交付請求を拒否したところ,同人からの審査請求に基づき,国民健康保険審査会(以下「審査会」という。)が拒否処分を取り消して同人を被保険者とする旨の裁決をしたため,これを不服とする大阪市が審査会を被告として裁決の取消しを求めた 人からの審査請求に基づき,国民健康保険審査会(以下「審査会」という。)が拒否処分を取り消して同人を被保険者とする旨の裁決をしたため,これを不服とする大阪市が審査会を被告として裁決の取消しを求めた事案において,大阪市の 訴えを却下している(最高裁判所昭和49年5月30日第一小法廷判決・民集28巻4号594頁(以下「昭和49年最高裁判決」という。))。 同判決は,大阪市の地位を専ら国の事務である国民健康保険事業の実施という行政作用を担当する行政主体としての地位にあると認めた上で,審査会の裁決を上級行政庁の下級行政庁に対する監督行為すなわち行 政組織の内部関係に関する行為と捉えているところ,審査会の裁決は大阪市の権利利益を侵害するものではないとして,その取消しを求める大阪市の訴えについて法律上の争訟性を否定したものと解される。さらに同判決は,行政作用を担当する行政主体の訴訟提起を認めなくとも,行政主体の裁判を受ける権利を侵害したことにはならないとしており,法 律上の争訟と裁判を受ける権利を同様の概念として捉える平成14年最高裁判決と整合する考え方が示されている。すなわち,昭和49年最高裁判決は,平成14年最高裁判決同様の考え方を背景として,審査会の裁決の取消しを求める大阪市の訴えについて法律上の争訟性を否定したものということができる。 イ本件訴えが法律上の争訟に該当しないこと 本件訴えは,本件撤回処分について,沖縄防衛局からの本件審査請求を受けた国土交通大臣が,本件撤回処分を取り消してその効力を消滅させる旨の本件裁決をしたことに対し,原告が,本件裁決の効力を争い,その取消しを求めて提起したものである。 都道府県知事は,埋立法上,法定受託事務として公有水面埋立ての免 許及び承認等の処分を る旨の本件裁決をしたことに対し,原告が,本件裁決の効力を争い,その取消しを求めて提起したものである。 都道府県知事は,埋立法上,法定受託事務として公有水面埋立ての免 許及び承認等の処分を行う権限を有している(埋立法2条,42条)ところ,本件撤回処分はこのような埋立法上沖縄県知事に付与された権限に基づいて行われたものであるから,その効果を取り消すという国土交通大臣による裁決の効力を原告自らが争って取消しを求めることは,原告の知事権限に基づく処分の効力の復活を目的とするものであって,埋 立法上の権限の救済を求める訴訟にほかならない。すなわち,本件訴えを提起した原告の立場は,埋立法上沖縄県知事に与えられた撤回権限の救済を求めるものであり,行政権限の適正な行使を実現するという目的の,一般公益を保護する行政権の主体としての立場というべきである。 したがって,本件訴えは,原告が,行政権の主体としての立場におい て,沖縄県知事に付与された埋立法上の撤回権限の救済を求め,行政権限の適正な行使を実現するという,一般公益の保護を目的として提起した訴訟であって,自己の権利利益の保護救済を目的とするものではないから,「法律上の争訟」に当たらない。 ウ原告の主張についての反論 原告の主張の概要原告は,後記(原告の主張)のとおり,①本件訴えには平成14年最高裁判決の射程は及ばない,②平成14年最高裁判決には論理的な難点があり,同判決の背景にある一般理論を拡張して本件に当てはめることは妥当ではない,③公権に基づく主観訴訟が許されるべきであ る,と主張するが,以下のとおり,いずれも理由がない。 平成14年最高裁判決の射程について(上記①)a 平成14年最高裁判決の事案は国又は地方公共団体 訴訟が許されるべきであ る,と主張するが,以下のとおり,いずれも理由がない。 平成14年最高裁判決の射程について(上記①)a 平成14年最高裁判決の事案は国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対する行政上の義務の履行を求める訴訟であるのに対し,本件訴えは被告を国とする裁決の取消しを求める訴訟であるから,国民を被告としていない点,行政上の義務の履行を 求めるものではないという点で事案を異にする。しかし,平成14年最高裁判決の判断の根拠は,当該訴訟が法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって,自己の権利利益の保護救済を目的とするものではないということにあるから,本件訴えが「法律上の争訟」といえるかどうかは,法規の適用の適正ないし一 般公益の保護を目的とするものであり,自己の権利利益の保護救済を目的とするものではないかどうかによって判断されるべきである。平成14年最高裁判決が前提とする見解は,行政機関が提起した訴訟も含めて「法律上の争訟」性を考えるに当たって通用する一般的な法理であるところ,本件訴えは,原告が行政権の主体として, 埋立法上の行政権限の適正な行使を実現するという一般公益の保護を目的として提起した訴訟であって,自己の権利利益の保護救済を目的とするものではないから,法律上の争訟に当たらない。 b 原告は,最高裁判所平成8年10月29日第三小法廷判決・民集50巻9号2506頁(以下「平成8年最高裁判決」という。)にお いて,道路管理権という公物管理権に基づく訴訟についても法律上の争訟性が認められているところ,本件埋立事業に係る公有水面の管理権を有する主体である原告がその公物管理権の保護救済をも求めて提起する本件訴えは,平成14年最高裁判決の射程外である についても法律上の争訟性が認められているところ,本件埋立事業に係る公有水面の管理権を有する主体である原告がその公物管理権の保護救済をも求めて提起する本件訴えは,平成14年最高裁判決の射程外である旨主張する。しかし,平成8年最高裁判決は道路管理者が有する所 有権又は占有権を根拠とする管理権に基づく請求を認めたものと 解すべきであり,原告の主張は失当である。 平成14年最高裁判決に対する原告の批判について(上記②)a 原告は,平成14年最高裁判決のよって立つ,司法権,法律上の争訟及び裁判を受ける権利(国民の権利利益の保護救済)を等しいものとして捉える考え方を批判するが,上記のような司法権の概念 は特異なものではなく,従来の通説を前提としたものである。 原告の主張は,平成14年最高裁判決とは異なり,「司法権」の範囲を拡張すべきという立場を述べるにすぎないか,「司法権」と「裁判を受ける権利」が基本的に同じ範囲であるとする確立された見解とは異なる立場を主張するにすぎない。 b 原告は,平成14年最高裁判決の考え方によれば刑事訴訟が法律上の争訟に含まれることが説明できないとするが,平成14年最高裁判決は,判示の冒頭において「行政事件を含む民事事件において」との限定を付しており,行政事件を含む民事事件に限定して法律上の争訟を検討していることが明らかである。すなわち,裁判を受け る権利は,行政事件を含む民事事件と刑事事件とで内容が異なるものと解されており,平成14年最高裁判決は,これを前提に,自己の権利利益が侵害された場合にその権利の救済を求めるために裁判を受ける権利を保障される出訴権者の立場に着目し,自己の権利利益の保護救済を目的とすることを法律上の争訟の要件としたに すぎない。 c 原告 侵害された場合にその権利の救済を求めるために裁判を受ける権利を保障される出訴権者の立場に着目し,自己の権利利益の保護救済を目的とすることを法律上の争訟の要件としたに すぎない。 c 原告は,平成14年最高裁判決からすれば,処分の名宛人である国民が提起する抗告訴訟は法律上の争訟に該当する一方,これと表裏の関係にある行政主体が提起する行政上の義務の履行請求訴訟が法律上の争訟に該当しないと解することになるが,そのような片 面的な法律上の争訟概念を認めることは不合理であるとする。 しかし,抗告訴訟は,行政権により制約を受けた国民が自己の権利利益の保護救済を図るために提起するものであり,憲法32条の裁判を受ける権利が保障されるのに対し,行政主体が行政処分に基づく義務の履行を求める訴訟は,行政主体が専ら行政権の主体としての地位に基づいて訴訟を提起するものであり,憲法32条の裁判 を受ける権利が保障されるものではないから,両者の取扱いが異なるのは当然である。また,行政権の主体としての地位に基づく訴訟を認めることは,司法が,行政による国民の権利利益に対する制約をする権限行使に資する方向に機能することになることからすると,国民の権利利益の保護救済を図るための抗告訴訟が認められて いるとしても,上記のような訴訟を認めるべき必然性はない。 公権に基づく主観訴訟が許されるべきであるとの主張について(上記③)原告は,公権に基づく主観訴訟を認めた事案として,最高裁判所昭和37年4月12日第一小法廷判決・民集16巻4号781頁を引用 する。しかし,同判決は,土地調整委員会設置法上,土地調整委員会の裁定の取消訴訟は行政機関が一般公益の保護を目的として訴訟提起することができること,すなわち,自己の権利利益の救済 1頁を引用 する。しかし,同判決は,土地調整委員会設置法上,土地調整委員会の裁定の取消訴訟は行政機関が一般公益の保護を目的として訴訟提起することができること,すなわち,自己の権利利益の救済を求める主観訴訟ではなく,法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とする客観訴訟として認められることを前提とするものであるから,こ れを主観訴訟と捉えて平成14年最高裁判決を批判する原告の主張は誤りである。 (原告の主張)ア法律上の争訟の意義司法権は,「具体的な争訟について,法を適用し,宣言することによっ て,これを裁定する国家の作用」であるところ,法律上の争訟はこれと ほぼ等式に捉えられている。すなわち,法律上の争訟とは,「当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって,且つそれが法律の適用によって終局的に解決し得べきものであることを要する」とされている(最高裁判所昭和28年11月17日第三小法廷判決・行集4巻11号2760頁参照)。そして,日本国憲法下では行政事件が 司法権の概念に含まれることから,「法律上の争訟」性における「法律関係」の意義は,実体的請求権についての「具体的権利義務」の紛争に限定されるものではなく,行政法領域における行政上の「法律関係の存否」に関する紛争も「法律上の争訟」に該当する。 イ本件訴えが法律上の争訟に該当すること 本件承認処分及び同処分を取り消した本件撤回処分により,原告と沖縄防衛局との間に法律関係が形成されるところ,本件裁決という国の関与により,本件撤回処分の効力が消滅するか否かについて争いがあるのであるから,原告と国との間に,具体的な法律関係についての紛争が存することは明らかであり,かかる紛争は,裁判所が法令を適用して本件 り,本件撤回処分の効力が消滅するか否かについて争いがあるのであるから,原告と国との間に,具体的な法律関係についての紛争が存することは明らかであり,かかる紛争は,裁判所が法令を適用して本件 裁決の効力について判断を示すことにより解決が可能であるから,本訴訟は「法律上の争訟」に該当する。 ウ平成14年最高裁判決との関係について被告の主張被告は,平成14年最高裁判決によれば,本件訴えは「法律上の争 訟」に該当しない旨主張する。 本件訴えに平成14年最高裁判決の射程は及ばないこと平成14年最高裁判決に対しては,行政法学者及び憲法学者から激しい批判が加えられており,判旨に賛成する学者はほぼみられないところ,その問題点に鑑みれば,その射程は極力控えめに解するべきで ある。すなわち,平成14年最高裁判決の妥当範囲は,「国又は地方公 共団体が専ら行政権の主体として」「国民に対して」「行政上の義務の履行を求める訴訟」に限定されるものであり,これを超えて拡張されるべきではない。本件訴えの被告は国であるから,平成14年最高裁判決とは,「国民に対して」という点において事案を異にし,「行政上の義務の履行を求める訴訟」でもなく抗告訴訟であるから,この点で も事案を異にしており,平成14年最高裁判決の射程は及ばない。 また,平成8年最高裁判決は,公物管理権に基づく請求を認容したものであるところ,公物管理権に基づく訴えについては,財産上の権利利益に基づく訴えに準じるものといえる。そして,原告は,国有財産法9条3項,同法施行令6条2項1号カ,沖縄県国土交通省所管公 共用財産管理規則に基づき,本件埋立事業に係る公有水面の財産管理権を有する主体であって,本件訴えは,その公物管理権の保護救済をも求めて提起したも 施行令6条2項1号カ,沖縄県国土交通省所管公 共用財産管理規則に基づき,本件埋立事業に係る公有水面の財産管理権を有する主体であって,本件訴えは,その公物管理権の保護救済をも求めて提起したものであるから,平成8年最高裁判決に係る事案と同様に,平成14年最高裁判決は妥当しない。 平成14年最高裁判決は拡張的に解釈するべきでないこと a 被告は,平成14年最高裁判決は,法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とする訴訟一般は法律上の争訟に該当せず,自己の主観的な権利利益に基づき保護救済を求める訴えに限り「法律上の争訟」に該当すると判断したものであることを前提に,本件訴えについて法律上の争訟性が否定される旨主張するが,このような法 律上の争訟概念は,伝統的な法律上の争訟概念に対し,「私権保護の目的による訴訟提起」という新たな要素を付け加えたものである。 しかし,このような,平成14年最高裁判決の判示を広範に拡張して解釈した法律上の争訟概念は誤りである。 b 平成14年最高裁判決の法律上の争訟概念は,憲法上,司法権に その解決を委ねなければならない紛争と法律上の争訟,国民の裁判 を受ける権利の救済が求められる範囲を全て等号で結び,法律上の争訟性の有無を,自己の権利利益の保護救済を求めるものか否かで区別したものであり,平成14年最高裁判決は,これを前提に,行政主体に国民に対する行政上の義務の履行請求権がないことから,法律上の争訟性の要件に欠けると判断したものと考えられる。 しかし,司法権の本来的役割が国民の権利利益の保護救済にあるとしても,そのことから直ちに,平成14年最高裁判決のように,裁判を受ける権利が及ぶ範囲と司法権の範囲ひいては法律上の争訟とが同一視され,提訴者の私的権利利益の保護救済 民の権利利益の保護救済にあるとしても,そのことから直ちに,平成14年最高裁判決のように,裁判を受ける権利が及ぶ範囲と司法権の範囲ひいては法律上の争訟とが同一視され,提訴者の私的権利利益の保護救済を求めることが法律上の争訟の要件になることにはつながらない。かえって,平 成14年最高裁判決がよって立つと考えられる司法権概念は,以下のとおり成り立ち得ないものである。 第一に,司法権が国民の権利利益を保護するものであるなら,行政上の義務の確保についても司法権の関与が望ましいから,行政上の義務の履行請求が原則として許されないことにはならず,行政主 体による提訴が一般的に否定される筋合いはない。 第二に,国民の裁判を受ける権利を受け止めることが司法権の役割であるとしても,そのことは,「国民の裁判を受ける権利」に対応しない紛争裁定作用が司法権に含まれないことを意味するものではない。 第三に,国民の裁判を受ける権利と司法権を等号で結んだ概念から法律上の争訟概念を説明すると,行政主体は国民ではない以上,私法的に行動する場合であっても裁判を受ける権利等の基本的人権を享受し得ないため,行政主体が提起する訴訟はおよそ法律上の争訟に含まれ得ないことになることとなる。しかし,平成14年最 高裁判決は,行政主体が財産権の主体として自己の財産上の利益の 保護救済を求める場合は法律上の争訟に該当するとしており,このような訴訟が法律上の争訟に含まれることを適切に説明できない。 第四に,平成14年最高裁判決は,その調査官解説を前提とすると,納税義務や賦課金納付義務等について,時効中断等のために提起する給付訴訟や確認訴訟は法律上の争訟に該当するとするが,課 税権限は行政主体の財産的権利ではなく,財産的権利に由来するも 提とすると,納税義務や賦課金納付義務等について,時効中断等のために提起する給付訴訟や確認訴訟は法律上の争訟に該当するとするが,課 税権限は行政主体の財産的権利ではなく,財産的権利に由来するものでもないから,納税義務の履行や義務の確認を司法手続で求めることは私法上の権利利益の保護救済を求めるものではなく,上記の司法権概念からはこれが法律上の争訟に該当することを説明できない。 c さらに,平成14年最高裁判決の法律上の争訟概念については,以下の問題点を指摘できる。 第一に,平成14年最高裁判決の法律上の争訟概念では,法律上の争訟である刑事事件を包含できない。すなわち,刑事事件が法律上の争訟に含まれるのは,刑罰権という公権が行政主体である国家 に帰属し,行政主体と被告人との間に刑罰権の存否をめぐる紛争が存するからであるが,提訴者の私的な権利利益の保護救済を目的とするという要素を法律上の争訟概念に含めると,刑事事件を統一的な概念として説明することができない。平成14年最高裁判決は,「行政事件を含む民事事件において」と限定しているが,このよう な限定をすることのできる根拠は示されていない。 第二に,平成14年最高裁判決の法律上の争訟概念によれば,処分の名宛人から取消訴訟を提起した場合には法律上の争訟に含まれるにもかかわらず,逆の場合は法律上の争訟に含まれないことになるが,このような片面的な法律上の争訟概念には根拠がない。す なわち,本来,法律上の争訟概念は訴訟の対象に関わる実体的な概 念として構成されていたところ,法律上の争訟概念に訴訟の目的を取り込む場合には,同じ実体を持つ紛争が片方からみれば法律上の争訟となり,他方からみれば法律上の争訟ではなくなるという片面的な法律上の争訟概念を許容す れていたところ,法律上の争訟概念に訴訟の目的を取り込む場合には,同じ実体を持つ紛争が片方からみれば法律上の争訟となり,他方からみれば法律上の争訟ではなくなるという片面的な法律上の争訟概念を許容する結果となるが,そこに根拠はない。 公権に基づく主観訴訟が許されるべきであること 平成14年最高裁判決の前後には,公権に基づく取消訴訟について,法律上の争訟性を肯定した判例・裁判例が現に存在する。例えば,最高裁判所昭和37年4月12日第一小法廷判決・民集16巻4号781頁(以下「昭和37年最高裁判決」という。)は,私人に対してなされた試掘権設定許可に対して,水道行政の主体としての小倉市(現在 の北九州市)が,鉱区内の石灰石掘採が行われることにより住民の唯一の水源が破壊されその生活が脅かされるなどと主張して,土地調整委員会に対して出願許否の取消裁定を求めたものの,これが排斥されたことから,裁定の取消しを求めた事案,すなわち原告たる小倉市がその住民の水源に関する利益の保護のために訴えを提起した事案に おいて,法律上の争訟性を認めた。 小括以上のとおり,平成14年最高裁判決の法律上の争訟概念は,その拠って立つ司法権概念が成り立ち得ず,あるいは司法権概念から説明することが困難である上,同じ規定中に,異なる要素を取り込まなけ れば刑事事件について統一的に把握できない点,訴訟の対象たる実体概念であるにもかかわらず,片面的な法律上の争訟を許す点でも,看過し得ない解釈上の難点を抱えており,妥当でない。そうすると,平成14年最高裁判決について,事案の相違を超えて本件に拡張的に当てはめることは妥当ではなく,同判決を根拠に,本件訴えの法律上の 争訟性を否定することはできない。 ⑵ 抗告訴訟とし 14年最高裁判決について,事案の相違を超えて本件に拡張的に当てはめることは妥当ではなく,同判決を根拠に,本件訴えの法律上の 争訟性を否定することはできない。 ⑵ 抗告訴訟としての取消訴訟を前提とした本件裁決の処分性(争点⑴イ)(被告の主張)処分性のある行政行為とは,「公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう」(最高裁判所 昭和39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁参照)とされているところ,行政機関を名宛人とする行政行為については,財産権等自己の権利利益が問題となる立場で受ける場合には,当該行政機関の権利利益を変動させるものとして処分性を有するが,専ら行政権の主体として一般公益の保護を目的とする立場で受ける場合には,その行為は行政 機関の権利利益に影響を及ぼさないため処分性を有しない。 本件裁決は沖縄防衛局の埋立てをなし得る地位に変動をもたらす行政処分である一方,原告との関係においては,本件裁決は沖縄県知事が行った埋立承認の取消しの効果を否定するという行政権限行使の効果に影響を及ぼすものにすぎず,権利主体としての権利利益に変動をもたらすもの ではないから,処分性が否定される。 (原告の主張)抗告訴訟(取消訴訟)の対象となる行政処分であるか否かは,当該処分の客観的性格によって定まるものであるところ,裁決が定型的に行政処分に当たることは否定し得ないし,本件裁決は,その名宛人である埋立事業 者たる沖縄防衛局との関係において処分性が認められることも明らかである。被告は,本件裁決により原告の権利主体としての権利利益が侵害されていないとも主張す 本件裁決は,その名宛人である埋立事業 者たる沖縄防衛局との関係において処分性が認められることも明らかである。被告は,本件裁決により原告の権利主体としての権利利益が侵害されていないとも主張するが,本件裁決は,単に原告による行政権限行使の効果に影響を及ぼしたものではない。すなわち,埋立法4条1項が埋立承認要件の判断を都道府県知事に委ねた趣旨は,漁業・農業・港湾管理・工 業地帯立地などの様々な観点からの地域の国土利用上の適正かつ合理的 な利用を図り,その際には環境保全や災害防止といった地域の利益も考慮して地域の利益を図るというものであって,これは憲法上保護された地方自治により認められるものである。そして,本件裁決は,埋立法4条1項の保護する当該地域における国土利用の適正を図るための,地方公共団体による自治権を侵害する処分であるから,原告は,自治権という「自己の 権利利益」に基づいて本件裁決を司法において争うことができるというべきである。 ⑶ 抗告訴訟としての取消訴訟を前提とした原告適格の有無(争点⑴ウ)(原告の主張)ア取消訴訟の原告適格について 行訴法9条は,取消訴訟は,「当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者」に限り提起することができる旨を定めており,判例上も,取消訴訟の原告適格について,「当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者」に原告適格が認められると定式化されている(最高裁 判所昭和53年3月14日第三小法廷判決・民集32巻2号211頁等参照)。 イ原告は処分の準名宛人として法律上の利益が認められること本件裁決は,沖縄県知事がなした本件撤回処分の効力を失わしめ,原告と沖縄防衛局と 日第三小法廷判決・民集32巻2号211頁等参照)。 イ原告は処分の準名宛人として法律上の利益が認められること本件裁決は,沖縄県知事がなした本件撤回処分の効力を失わしめ,原告と沖縄防衛局との間の公法上の法律関係を変動させるものであるか ら,本件裁決は,その法的効果が原告に及んでいることが明らかであり,同時に原告の自治権を侵害するものでもあるから,原告には,裁決の準名宛人として原告適格が認められる。 ウ取消訴訟の原告適格は私人に限定されないこと一般に,取消訴訟は主観訴訟であるといわれているが,いわゆる主観 訴訟,客観訴訟の観念は訴訟目的に着目するものであるところ,取消訴 訟の目的が,国民の権利保護という主観的な目的であるのか,行政の客観的な適法性確保という客観的な目的であるのかという区別は,相対的な差異にすぎないのであり,このような観念から条文解釈を行うことは相当でない。実際,取消訴訟の訴訟物は処分の違法性一般であり,その判決の効力は対世効を有し,原告の権利救済に必要な限度を超えて違法 な処分の効力を除去することで,公益に資する制度となっている点など,取消訴訟が主観訴訟であるといっても,副次的に公益の実現をも目的としていることは否定できず,これらの目的が混じり合った制度となっている。 原告適格に関する行訴法9条1項も「取消しを求めるにつき法律上の 利益を有する者」と規定するにとどまっており,取消訴訟の目的を私権保護目的に限定する趣旨は読み取れないし,前記⑴(原告の主張)ウのとおり,公権に基づく取消訴訟も認められている。 エ自治権に基づく出訴が許されること埋立法に基づく公有水面埋立免許・承認に係る事務は,都道府県の事 務(法定受託事務)であり,埋立免許・承認は都道府県知事が 取消訴訟も認められている。 エ自治権に基づく出訴が許されること埋立法に基づく公有水面埋立免許・承認に係る事務は,都道府県の事 務(法定受託事務)であり,埋立免許・承認は都道府県知事がなすものとされている(埋立法2条1項,42条1項)。地方公共団体の行政執行権は内閣の下にあるものではなく,憲法が直接与えたものであるから,地方自治の保障という憲法原理が妥当している現行法秩序において,立法府が都道府県に委ねた上記事務について,国と地方公共団体の有機的 関連性ないし協力関係の保持が,国家関与における国家行政機関の意思の優越性という形で担保されるべきものとはいえない。そうすると,国家関与の根拠及びその態様が法律の留保に属し,その範囲内の関与にのみ地方公共団体が服従するとみるべきであり,国家関与がその限界を超えた場合には,その是正手段が制度上存在していなければならないし, また,その是正の要求が,個別地方公共団体の自治権の侵害の排除とい う形をとる限りにおいて,具体的権利義務に関する訴訟として,裁判所による救済の方法が認められると解するべきである。この点,例えば裁定的関与に対して地方公共団体の出訴を認めると,不服申立人の権利との調整が問題となり得るが,地方公共団体に訴権を認めないことによる地方公共団体の権限の侵害の程度に鑑みれば,問題となる不服申立人た る私人の不利益は,許容されるべき範囲内にとどまるものといえる(また,少なくとも,審査請求人である沖縄防衛局が国の機関であって私人ではない本件においては,この点は問題となり得ない。)。したがって,本件のような場合に,行政主体相互間の内部関係であることを理由に出訴が制限されると解するのは相当ではなく,原告は,自治権に基づいて, 本件裁決の取消訴訟を提起 題となり得ない。)。したがって,本件のような場合に,行政主体相互間の内部関係であることを理由に出訴が制限されると解するのは相当ではなく,原告は,自治権に基づいて, 本件裁決の取消訴訟を提起することができるというべきである。 (被告の主張)抗告訴訟が特定人の権利利益の保護を目的とする主観訴訟であることから,その出訴資格についても,個人の権利利益の侵害の有無という観点からその存否を判断すべきである。したがって,原告について本件裁決の 取消訴訟の原告適格が認められるか否かも,原告の権利利益の侵害があるかどうかという観点から検討すべきであるところ,本件訴えに法律上の争訟性が認められない理由として述べたとおり(前記⑴(被告の主張)イ),本件裁決による原告の権利利益の侵害はないから,原告適格は否定される。 ⑷ 行訴法3条3項の取消訴訟の性質(争点⑴エ) (被告の主張)一般に,行政争訟の制度・手続に関しては,特定人の権利利益の保護救済を目的とする主観争訟と,法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とする客観争訟があり,主観争訟は「法律上の争訟」に当たるが,客観争訟は「法律上の争訟」に含まれないため,法に特別の定めがない限り, 司法審査の対象とはならない(裁判所法3条1項)。 そして,行訴法は,抗告訴訟(行訴法3条),当事者訴訟(同法4条),民衆訴訟(同法5条)及び機関訴訟(同法6条)についてそれぞれ規定しているが,その規定の内容に照らすと,抗告訴訟及び当事者訴訟を主観訴訟として,民衆訴訟及び機関訴訟を客観訴訟として,それぞれ位置付けており,これらを明確に区別していることが明らかである。すなわち,主観 訴訟である抗告訴訟は「行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟(行訴法3条 訟及び機関訴訟を客観訴訟として,それぞれ位置付けており,これらを明確に区別していることが明らかである。すなわち,主観 訴訟である抗告訴訟は「行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟(行訴法3条1項)」とされ,取消訴訟においては「処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(行訴法9条1項)」に原告適格を認めているから,個人の権利利益の保護救済を求める類型の訴訟として位置づけられていることが明らかである。そして,行訴法3条3項は,主観訴訟と しての裁決取消訴訟について定めたものであって,客観訴訟としての裁決取消訴訟を認めたものではない。 本件において,原告が侵害されたと主張する自治権の具体的内容は,埋立法上の知事の承認権限や公物管理権といった一般公益の保護を目的として付与された行政権限にすぎず,自己の権利利益として観念し得るもの ではない以上,本件訴えを主観訴訟と解する余地はなく,行訴法3条3項の訴えとして適法なものとされる余地はない。 (原告の主張)被告は,行訴法3条3項は,主観訴訟としての裁決取消訴訟について定めたものであることを前提としているが,条文上,抗告訴訟は,「取消しを 求めるにつき法律上の利益を有する者」が提起できるとされているのみであり,かかる文言から,私人が主観的権利利益の保護を目的として利用する場合に限定する趣旨は読み取れないし,判例・裁判例においても,公権に基づく取消訴訟が認められていることは,前記⑴(原告の主張)ウにおいて主張したとおりである。また,行訴法も憲法と適合的に解釈されな ければならないところ,地方自治の本旨に対する憲法の保障を実効的なも のとするためには,抗告訴訟の原告適格を基礎付ける法律上の利益に,自治権が侵害された場合も含まれなけ に解釈されな ければならないところ,地方自治の本旨に対する憲法の保障を実効的なも のとするためには,抗告訴訟の原告適格を基礎付ける法律上の利益に,自治権が侵害された場合も含まれなければならないと解され,かかる観点からも,行訴法3条3項は,自治権に基づく取消訴訟を認めていると解するべきである。 なお,本件のような裁定的関与に対する抗告訴訟が許容されるかという 点については,機関訴訟として設けられている関与取消訴訟(自治法251条の5)との関係が問題となり得る。しかし,関与取消訴訟の制度は,地方公共団体が司法救済を求めることのできなかった国の関与について,法律で特別に客観訴訟たる機関訴訟を設けたものではなく,一般の抗告訴訟による司法救済ができることを前提に,別途,簡易迅速な制度を付加し たものであり,その際,立法技術上,機関訴訟として位置付けられたにすぎない。したがって,関与取消訴訟の制度が機関訴訟として設けられたことは,裁定的関与に対する抗告訴訟が行訴法上の機関訴訟であることを意味しないし,関与取消訴訟制度に排他的管轄を認めて,一般の抗告訴訟の手段を排除したものではない。 ⑸ 本件審査請求が行審法7条2項に反する不適法なものであるか(争点⑵ (原告の主張)ア行審法7条2項は,「国の機関又は地方公共団体その他の公共団体若しくはその機関に対する処分で,これらの機関又は団体がその固有の資 格において当該処分の相手方となるもの及びその不作為については,この法律の規定は,適用しない。」と定め,国の機関が「固有の資格」において処分の相手方となる場合には,行審法に基づく審査請求をすることができないことを明確にしている。ここで,「固有の資格」とは,一般私人ではなく,国の機関又は地方 と定め,国の機関が「固有の資格」において処分の相手方となる場合には,行審法に基づく審査請求をすることができないことを明確にしている。ここで,「固有の資格」とは,一般私人ではなく,国の機関又は地方公共団体その他の公共団体若しくはその 機関であるからこそ立ち得る立場をいうものと理解されているところ, 公有水面埋立てについて,埋立承認に係る処分は国の機関のみが名宛人となるものであること,国の機関を名宛人とする埋立承認と一般私人を名宛人とする埋立免許とでは,処分の効果にも本質的な相違があることなどから,国の機関は,「固有の資格」において埋立承認に係る処分の名宛人となるものといえる。したがって,沖縄防衛局は,「固有の資格」に おいて本件承認処分の名宛人となったものといえ,本件審査請求は,行審法7条2項に反し,不適法である。 イ 「固有の資格」による行審法の適用除外の趣旨は,行審法は一般私人の救済のための法律であることから,国の機関又は地方公共団体その他の公共団体若しくはその機関に対しても一般私人と同じ立場にある場 合にはその規定を適用するが,そもそも一般私人と異なる立場の場合には行審法の対象外とすることにあり,したがって,「固有の資格」の意義については,一般私人ではなく,国の機関又は地方公共団体その他の公共団体若しくはその機関であるからこそ立ち得る立場と理解されている。 ウ埋立法は,国以外の者が埋立てをする場合には,「都道府県知事ノ免許ヲ受クヘシ」(埋立法2条)と定め,国による埋立てについては「国ニ於テ埋立ヲ為サムトスルトキハ当該官庁都道府県知事ノ承認ヲ受クヘシ」(埋立法42条1項)と定め,国以外の者が埋立てをする場合の免許制度と国が埋立てをする場合の承認制度を別個の制度としている。 テ埋立ヲ為サムトスルトキハ当該官庁都道府県知事ノ承認ヲ受クヘシ」(埋立法42条1項)と定め,国以外の者が埋立てをする場合の免許制度と国が埋立てをする場合の承認制度を別個の制度としている。 そして,免許により造成工事がなされた場合には,埋立地の土地所有権取得の前提となる公有水面の公用廃止は,竣工認可という免許とは別個の都道府県知事の処分によってなされることになる一方,承認については,竣工通知の日において,当該埋立地についての支配権が私法上の所有権に転化しこれを取得するものとされており,竣工通知という国の 機関等の行為によって公有水面の公用廃止という効果が生ずるのであ って,承認処分の法効果には,国の機関に対し,竣工通知により公用廃止という効果を生じさせるという,公有水面という自然公物に係る公物管理上の地位ないし権限を付与するという内容が包含されている。 また,埋立法は,埋立ての過程における事業者に対する規律についても,国の機関が承認処分を受けて行う埋立てと,国以外の者が免許処分 を受けて行う埋立てとでは,その規律を異にしている。 さらに,免許処分により国以外の者に対して設定される「埋立ヲ為ス権利」については,譲渡が認められており(埋立法16条~21条),差押の対象ともなるなど融通性を有するものであるが,承認処分については,これらの規定を準用しておらず,譲渡は認められないと解されてい る。 以上によれば,免許と承認は本質的に異なる処分であり,一般私人が埋立承認処分を受けることはできず,国の機関であるからこそ埋立承認処分の相手方となり得るのであるから,埋立承認処分について,国の機関は固有の資格において当該処分の相手方となるというべきである。 エ けることはできず,国の機関であるからこそ埋立承認処分の相手方となり得るのであるから,埋立承認処分について,国の機関は固有の資格において当該処分の相手方となるというべきである。 エ本件埋立事業の内容は,専ら国の機関の責務として処理されるべき事項であるから,国の機関のみが担い手となるものであるところ,このことからしても,沖縄防衛局は「固有の資格」において埋立承認処分に係る処分の名宛人となったものといえる。 すなわち,本件埋立事業は,日本国とアメリカ合衆国との間の相互協 力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定2条による「施設及び区域」の提供義務の履行のためにされるものであって,国は,外交・防衛に係る条約上の義務の履行という目的をもって,埋立法上の公有水面埋立承認手続を経て,一連の基地建設のための事業を遂行しようとしているものであり, これは一般私人が立ち得ない,まさに国家としての立場においてなされ る一連の行為にほかならず,本件埋立事業による利益は外交・防衛上の一般公益であって行政不服審査制度が救済の対象とする私人の個別的な権利利益とはいえないから,「固有の資格」においてされているといえる。 (被告の主張) 認否の要を認めない(ただし,原告の主張を認める趣旨ではない。)。 ⑹ (原告の主張)本件撤回処分は,d沖縄県副知事が行ったものであるところ,仮に沖縄防衛局がこれに対して審査請求できる立場にあるとすれば,その請求を審 査すべき行政庁は,行審法4条4号に基づき,沖縄県知事の補助機関となるd沖縄県副知事の最上級庁たる沖縄県知事であり,国土交通大臣ではない。したがって,国土交通大臣は本件審査請求 その請求を審 査すべき行政庁は,行審法4条4号に基づき,沖縄県知事の補助機関となるd沖縄県副知事の最上級庁たる沖縄県知事であり,国土交通大臣ではない。したがって,国土交通大臣は本件審査請求に対して裁決をする権限はなく,本件裁決は権限のない行政庁が行ったものであるから違法である。 (被告の主張) 認否の要を認めない(ただし,原告の主張を認める趣旨ではない。)。 ⑺ 本件審査請求及び本件裁決は行政不服審査制度を濫用したものといえ (原告の主張)普天間飛行場の移設問題について,政府は,「平成22年5月28日に日 米安全保障協議委員会において承認された事項に関する当面の政府の取組について」と題する同日付け閣議決定において,「日米両国政府は,普天間飛行場を早期に移設・返還するために,代替の施設をキャンプ・シュワブ辺野古崎地区及びこれに隣接する水域に設置することとし,必要な作業を進めていく」ことを決定した。本件埋立事業は,以上のような閣議決 定に基づくものであり,国土交通大臣も,内閣の一員として,もともと本 件埋立事業を推進する立場にある。そして,本件裁決に先立つ本件執行停止決定において,国土交通大臣が示した「埋立地の利用価値も含めた工事を停止せざるを得ないことにより生じる経済的損失ばかりでなく,普天間飛行場周辺に居住する住民等が被る航空機による事故等の危険性の除去や騒音等の被害の防止を早期に実現することが困難となるほか,日米間の 信頼関係や同盟関係等にも悪影響を及ぼしかねないという外交・防衛上の不利益が生ずること」との認定は,沖縄防衛局の主張を全面的に認容したものであるが,平成27年10月27日閣議了解において同様の見解が確認されており,沖縄防衛局による本件審査 ないという外交・防衛上の不利益が生ずること」との認定は,沖縄防衛局の主張を全面的に認容したものであるが,平成27年10月27日閣議了解において同様の見解が確認されており,沖縄防衛局による本件審査請求等をまつまでもなく,国土交通大臣は予め同一の判断を有していたものといえる。 以上の事実を踏まえると,本件裁決は,国土交通大臣が内閣の一致した方針に従って,辺野古に普天間飛行場代替施設を建設するために本件撤回処分の効力を妨げることを目的として,中立・公正な立場から適正な審理をすることが求められる審査庁の立場(行審法1条,9条,17条,28条~43条)を放棄して行われたものといえる。 国土交通大臣は,中立公正な判断者としての審査庁の立場から権限行使をすることなく,沖縄防衛局と同一の立場において本件埋立事業を遂行する目的で本件裁決をしたものであるから,本件裁決には行政不服審査に名を借りた濫用的関与という違法が存する。 (被告の主張) 認否の要を認めない(ただし,原告の主張を認める趣旨ではない。)。 ⑻ (原告の主張)埋立法は,国以外の者が事業者である場合の公有水面埋立免許について,埋立法32条において免許の取消し(講学上の職権取消しと撤回)事由を 定めているが,国が事業者となる場合の承認に関する規定である埋立法4 2条3項は埋立法32条を準用していない。これは,国による埋立てにおいては,埋立法32条各号に掲げられた問題が生じた場合には,まず,国と地方公共団体との協議によって調整することを前提としていると解されるからであり,協議が整わない場合には,一般法理による埋立承認の職権取消しないし撤回も可能と解される。この点につき,最高裁判所平成2 団体との協議によって調整することを前提としていると解されるからであり,協議が整わない場合には,一般法理による埋立承認の職権取消しないし撤回も可能と解される。この点につき,最高裁判所平成2 8年12月20日判決・民集70巻9号2281頁は,埋立承認処分に瑕疵があれば,職権取消しの根拠規定がなくとも,処分庁はこれを職権で取り消すことができることを前提とする判示を行っており,これは撤回についても同様であると解される。 したがって,法律上,原告が本件承認処分を取り消す旨の処分(本件撤 回処分)をすることは可能である。 (被告の主張)認否の要を認めない(ただし,原告の主張を認める趣旨ではない。)。 ⑼ (原告の主張) ア軟弱地盤の問題について軟弱地盤に係る埋立法4条1項1号の要件に係る本件撤回処分の 理由 本件承認処分は,沖縄防衛局が出願の際に提出した願書添付図書の設計概要説明書における本件埋立事業に係る地盤の土質条件,設計土 層の記載や,公有水面埋立承認の審査における原告の質問に対する沖縄防衛局の回答(液状化の可能性は低く,圧密沈下は生じないと想定される旨の内容)等を前提になされたものである。しかし,本件承認処分後の土質調査によって,本件埋立事業におけるC護岸計画箇所の地形・地質は承認時に想定されていなかった特殊な地形・地質である ことが明らかとなっており,非常に緩い砂質土又は非常に軟らかい粘 性土のため地盤の液状化の危険性や当該箇所に護岸等を構築した場合には圧密等による沈下等が生じる可能性があるものと認められた。 本件承認処分から既に5年以上を経過しているにもかかわらず,未だに全体の実施設計すら完成していないが,これは,海底地盤の土質が設計概要説明書の 密等による沈下等が生じる可能性があるものと認められた。 本件承認処分から既に5年以上を経過しているにもかかわらず,未だに全体の実施設計すら完成していないが,これは,海底地盤の土質が設計概要説明書の記載と異なる軟弱地盤であり,承認を受けた「設計 の概要」に従って実施設計を完成させることができないことが判明したことによることは明らかである。本件埋立事業については,仮に地盤改良工事を内容とする「設計の概要」変更の承認申請がされて承認を受け,その「設計の概要」に従って完成した実施設計について協議が調う場合でも,本件埋立承認時には想定されていなかった工事を要 することになるところ,現時点においては「設計の概要」変更承認申請すらなされていないのであるから,仮に軟弱地盤改良工事により本件埋立事業を完成させることが可能であるとしても,変更承認や実施設計の完成までにどれだけの年月を要するのかすら不明であるし,仮に実施設計が完成した場合でも,軟弱地盤改良工事にどれだけの年数 を要するのかも定かではない。そうすると,本件埋立事業により普天間飛行場駐留部隊の移設をしようとするのであれば,仮に「設計の概要」の変更によって本件埋立事業を完成させ得るとしても,辺野古新基地完成までに要する長い年数の間,普天間飛行場に海兵隊航空部隊が駐留をし続けることになり,これは,普天間飛行場の事実上の長期 にわたる固定化にほかならない。 本件承認処分後に判明した上記事実によれば,C護岸計画箇所は,公有水面埋立承認審査基準の「埋立をしようとする場所は,埋立地の用途に照らして適切な場所といえるか」に適合しておらず,本件埋立事業は,「国土利用上適正且合理的ナルコト」の要件を充足していない のであり,本件承認処分の効力を維持することにより公益に 立地の用途に照らして適切な場所といえるか」に適合しておらず,本件埋立事業は,「国土利用上適正且合理的ナルコト」の要件を充足していない のであり,本件承認処分の効力を維持することにより公益に適合しな い状態が生じているから,本件撤回処分は適法である。 軟弱地盤に係る本件裁決理由が誤っていることa 本件撤回処分の時点では地盤調査結果が全て判明していなかったとの理由について国土交通大臣は,本件裁決の理由において,「本件撤回時において は,地盤の強度等について,一部のボーリング調査の結果しか明らかになっておらず,埋立地の護岸等について所要の安定性等を確保できないかどうかが確認されていたものではない」とする。しかし,本件撤回処分は,処分時点で判明していなかった調査結果を根拠としたものではなく,処分の時点で明らかになっていた調査結果を根 拠に,調査結果が開示されていた箇所について,土の性質や強度等が承認の前提とされた内容と異なることを確認し,土質工学の専門家の意見も求めて具体的専門的に検討した結果,承認の前提とされた所要の安定性を確認できないことを理由として,撤回処分をしたものである。 確かに,本件審査請求の手続の中で沖縄防衛局が提出した報告書等により,本件撤回処分の理由とされた箇所以外にも広範に軟弱地盤が存在することが明らかにされているが,そのことと,本件撤回処分の理由とされた箇所について所要の安定性を確認できなかったこととは全く異なる。そして,本件撤回処分の理由とされた箇所 について,新たな調査がされたものではなく,所要の安定性を有するという反論や反証は皆無である。 b 地盤改良工事が不可能ではないから要件不充足とはならないとする理 由とされた箇所 について,新たな調査がされたものではなく,所要の安定性を有するという反論や反証は皆無である。 b 地盤改良工事が不可能ではないから要件不充足とはならないとする理由について国土交通大臣は,本件裁決の理由として,「C-1護岸,C-3護 岸,護岸(係船機能付),A護岸,中仕切岸壁A,中仕切岸壁B,中 仕切護岸N-1及び大浦湾側埋立地内の一部において,地盤改良工事を行わなければ所要の安定性を満足しないことが認められる。 (中略)地盤改良工事を実施すれば,所要の安定性を確保して工事を行うことが可能であるといえるから,審査基準の『埋立てをしようとする場所は,埋立地の用途に照らして適切な場所といえるか』 に適合しなくなったとは認められない。(中略)(本件撤回処分はその理由として)地盤改良工事による全体の工事期間の長期化による普天間飛行場の固定化を指摘する。確かに,地盤改良工事を行うことによってどの程度工事期間が延びるかは現時点で確定しているものではないが,上記のとおり,地盤改良工事は日本に在籍する作 業船により施工可能な一般的な工法によること,今後の詳細な検討によってより合理的な設計・施工方法によることも考えられることからすると,このような地盤改良工事を要することにより工事期間が延びるとしても,本件埋立事業を行うことが具体的・現実的に実現可能なものと見込まれる状況にあることから,『国土利用上適正 且合理的ナルコト』の要件を欠くに至ったとは認められない。」とする。 しかし,本件撤回処分の理由は,地盤改良工事が不可能であるということではなく,「普天間飛行場の早期の移設・返還を実現して,沖縄県の負担軽減を図る」との本件埋立事業の必要性に照らして, 承 しかし,本件撤回処分の理由は,地盤改良工事が不可能であるということではなく,「普天間飛行場の早期の移設・返還を実現して,沖縄県の負担軽減を図る」との本件埋立事業の必要性に照らして, 承認時に想定されていなかった特殊な地形・地質であることが明らかとなったことにより,辺野古新基地の建設には,本件承認処分時には想定されていなかった工事を要することになり,辺野古新基地建設による普天間飛行場からの移駐が早期にはなし得ないことになったと認められる以上,公有水面埋立承認審査基準の『埋立てを しようとする場所は,埋立地の用途に照らして適切な場所といえる か』に適合せず,本件埋立事業については『国土利用上適正且合理的ナルコト』の要件を充足していないと認められるに至ったというものである。すなわち,理論上技術上の問題として地盤改良工事が可能か否かということは直接の争点ではなく,問題となるのは,上記の処分理由が誤りであることが示されているかということにな る。 結局,地盤改良工事自体が可能であるというだけでは,本件撤回処分の理由を否定したことにはならないのであり,本件裁決の上記理由は,非論理的で明らかに不合理である。 また,軟弱地盤が存在するために,本件承認処分から5年半余を 経過しても,辺野古新基地の完成には全く近付いていないことは,以下のとおり明らかな事実である辺野古新基地建設のための埋立ては,辺野古崎を挟んで非常に浅いリーフ側と大深度の水域が存する大浦湾側にまたがるものである。大浦湾側とリーフ側は並行して工事が行われる工程とされてい るが,最初に着工して最後に完成をするのは大浦湾側とされている。 すなわち,沖縄防衛局が沖縄県知事に提出した設計概要説明書の工程表では,大浦湾側の東 フ側は並行して工事が行われる工程とされてい るが,最初に着工して最後に完成をするのは大浦湾側とされている。 すなわち,沖縄防衛局が沖縄県知事に提出した設計概要説明書の工程表では,大浦湾側の東側護岸(A護岸)に1年次1月目に着工し,5年次に東側護岸で最後に築造される護岸(係船機能付)が完成することにより,埋立てに関する工事が完了するものとされている。 大浦湾側と並行して行われるとされている非常に浅いリーフ側の埋立工事は,大浦湾側よりも遥かに工期が短いものであり,大浦湾側の東側護岸の着工よりも後に着工し,東側護岸が完成する遥か前に埋立てが完成するものとされている。大浦湾側とリーフ側は並行して行われるものであるから,大浦湾側の東側護岸に着工しない限 り,非常に浅いリーフ側の埋立てのみを進めても,埋立工事の完成 に近づくことにはならない。ところが,東側護岸〔二重鋼管矢板式護岸のA護岸並びにケーソン式(スリットケーソン含む)護岸のC-1~C-3護岸,隅角部護岸,護岸(係船機能付)の6種の護岸〕のうち,ケーソン式(スリットケーソン含む)の5種の護岸については,未だ,実施設計すらできていない。また,東側護岸のA護岸 については,工程では1年次1月目に着工とされているが,未だ着工もしていない。本件承認処分から5年余を経過しても,沖縄防衛局が東側護岸のケーソン式(スリットケーソン含む)護岸の実施設計をできないのは,軟弱地盤が存在するため,承認を受けた「設計の概要」に従って実施設計をすることができないからである。工作 物の構造自体は「設計の概要」のまま実施設計した護岸についても,「設計の概要」に従って,地盤改良工事をしないで工事をするならば,軟弱地盤のため,工作物等の荷重による地盤破壊,地震時の地盤の液状化や沈 の構造自体は「設計の概要」のまま実施設計した護岸についても,「設計の概要」に従って,地盤改良工事をしないで工事をするならば,軟弱地盤のため,工作物等の荷重による地盤破壊,地震時の地盤の液状化や沈下の危険性があることが明らかとなっていることから,沖縄防衛局は工事に着工できないのである。そして,仮に地 盤改良工事により埋立工事を完成させることが理論上技術上は可能であるとしても,地盤改良工事にいつ着手できるのかは不明であるし,着手をしたとしても実際にどれだけの年数を要するのかも不明である。地盤改良に使われる砂の量は650.9万㎥と試算されているが,仮にこれにより地盤改良工事が可能であるとした場合で も,これだけの砂の量は沖縄県の砂利採取量の数年分にも及ぶ莫大なものであり,いつ,どれだけの量が,どこから,どのようにして確保できるのかということすら,具体的な目途がまったく示されていないのであるから,地盤改良工事に着手したとしても,地盤改良工事自体に途方もない年数を要することになる。また,地盤改良工 事に伴い,盛り上がった軟弱地盤が約54万㎥も浚渫され,その後 に護岸等の築造がなされることになるが,浚渫された非常に軟らかい粘性土等の処理や浚渫による環境への影響の程度やその対応方法も明らかにされていない。 地盤改良工事に着手する前には,設計の概要の変更手続が必要であるし,着手前に大浦湾側の7万4000群体のサンゴ類の移植も 必要になるから,仮に本件撤回処分の効力が否定され,設計の概要の変更が承認されたとしても,地盤改良工事の着工までには一定の年数を要することになる。地盤改良工事を終え,その後に護岸工事等に着工して埋立てが完成しても,埋立工事及び飛行場施設を完成させ,その後に飛行場認証手続や提供手続が必要である 工事の着工までには一定の年数を要することになる。地盤改良工事を終え,その後に護岸工事等に着工して埋立てが完成しても,埋立工事及び飛行場施設を完成させ,その後に飛行場認証手続や提供手続が必要であるから,埋立 工事完成から供用までに更に何年もの年数を要することになる。 以上によれば,仮に軟弱地盤改良が理論上技術上可能であるとしても,辺野古新基地が完成するのは遠い将来のこととなり,辺野古新基地建設によって,普天間飛行場駐留部隊の同飛行場からの移駐を図ることは,事実上の普天間固定化にほかならない。それにもか かわらず,国は,工程表に反し,大浦湾側の東側護岸等の工事は着工せず,埋立工事完成には近付くことがないにもかかわらず,軟弱地盤の存在を秘匿したまま非常に浅いリーフ側の埋立工事着工を強行し,辺野古新基地に固執し続けることによって,普天間飛行場の早期返還の模索をしないことを正当化している。したがって,本 件撤回処分が正当な理由に基づくものであることは明らかである。 c 地盤改良工事と環境への影響に係る理由について辺野古崎・大浦湾は国内でもここでしか見られない極めて特徴的な生態系を有しているところ,本件撤回処分は,海底地盤の改良工事をすることにより,工事に起因する濁り等でサンゴ類をはじめと する海域生物等の生育に影響を与える旨の環境保全上の問題も指 摘したものである。しかし,本件裁決は,地盤改良工事による環境負荷について,「環境に与える負荷も,審査請求人は,大気質,騒音,振動,土砂による水の濁り(浚渫によるものを含む。),海底振動及び水中音について,工事工程を調整すること等により,そのピーク値は環境保全図書の予測結果の範囲にとどめることが可能である としているところ,その内容 の濁り(浚渫によるものを含む。),海底振動及び水中音について,工事工程を調整すること等により,そのピーク値は環境保全図書の予測結果の範囲にとどめることが可能である としているところ,その内容は,環境保全図書での環境予測法を参考にしつつ,従来から用いられている手法を用いて検討されたものであって,概略検討としてその結果に特段不合理な点は認められない。」とする。 この本件裁決の判断は,沖縄防衛局が提出したコンサルタント業 者による「地盤に係る設計・施工の検討結果報告書」や,国土交通大臣が採用した日下部治氏作成の鑑定書によるものである。しかし,本件撤回処分が対象としているのは,本件承認処分の対象となった「設計の概要」とそれに基づく環境保全措置等の埋立承認要件充足の有無であるところ,沖縄防衛局は,現時点において,本件承認処 分の対象となった「設計の概要」について何ら変更の手続を行わないまま事業を続行しているから,本件撤回処分の審査の対象は,当該「設計の概略」とそれに対応する環境保全措置にとどまる。仮に将来,変更承認申請がなされるとしても,上記報告書はコンサルタント業者による検討の域にとどまり,当該報告書においても「実際 に設計・施工を行う際には,更に検討を重ね,本報告書に記載したものより合理的な設計・施工方法を追求することとなる」と記載しているとおり,その内容がそのまま変更承認申請の内容となるものでもない。また,本件裁決が依拠する鑑定書さえも,大気質,土砂による水の濁り,水中音等に関し,環境負荷が増大することを前提 にその対応を求めているのであって,具体的な環境保全措置が合理 的にされ得る旨を判断したものではないし,「環境保全図書の予測結果の範囲にとどめる」べく措置がなされてもいない以上 前提 にその対応を求めているのであって,具体的な環境保全措置が合理 的にされ得る旨を判断したものではないし,「環境保全図書の予測結果の範囲にとどめる」べく措置がなされてもいない以上,工法や工程によって重大な環境影響が生じることを否定できない。さらに,上記報告書による環境影響の検討は,上記検討段階においても,重大な具体的影響の懸念を否定できず,地盤改良工事を追加した工事 全体の環境影響が検討されていない点,環境影響の検討の前提となる地盤改良工事計画が不確実なものである点,多数の船舶の運用による生態系への影響について十分な予測・評価が行われていない点,海底から巻き上げられた土砂が大浦湾全域に流出する可能性についての検討不足の点,砂杭の本数が7万7000本に及ぶ地盤改良 工事全体の影響を踏まえた海底振動の検討不足の点,海底の底質の改変範囲拡大の環境影響について予測・評価が行われていない点など,多くの問題を指摘できる。よって,地盤改良工事によって新たに増大,変化する環境への負荷について,上記の報告書や鑑定書を根拠にその合理性を認めることはできない。 イ大浦湾海底の活断層の問題について大浦湾海底の活断層と埋立法4条1項1号の要件に係る本件撤回処分の理由a 理由の要旨本件埋立事業の埋立区域である大浦湾海底には,谷地形又は谷 側壁の急斜面(以下,併せて「海底谷地形」という。)が存在し,本件埋立事業は,この海底谷地形の箇所の直上に海兵隊飛行場滑走路等の施設を建設するものである。 本件承認処分後において,地質学者であるe琉球大学名誉教授(以下「e教授」という。)から,この海底谷地形は活断層の位置 を示していると推定されるとの指摘がされ,『名護 のである。 本件承認処分後において,地質学者であるe琉球大学名誉教授(以下「e教授」という。)から,この海底谷地形は活断層の位置 を示していると推定されるとの指摘がされ,『名護・やんばるの地 質』の著者であるf(以下「f氏」という。)も,上記海底谷地形は辺野古断層であると認められるとの判断を示している。専門家により活断層の存在が指摘されている箇所を海兵隊飛行場建設のための埋立地場所として選定することは,公有水面埋立承認審査基準である「埋立てをしようとする場所は,埋立地の用途に照 らして適切な場所といえるか」に適合せず,埋立法4条1項1号の要件を充足していないものと認められる。 b 上記理由が正当であることe教授は,具体的な根拠・直接証拠(推定断面図)に基づいて本件埋立事業の施工区域内の滑走路予定位置に近接する海底の 落込み箇所に活断層が認められることを明らかにし,この落込み箇所と辺野古断層を結ぶ海底谷地形(線状構造)に活断層が位置することが推認されることを具体的な根拠により論証しているところ,原告は,このe教授の指摘によって,活断層の存在が指摘されていることを認識した。また,f氏も大浦湾海底において 実施された土質調査のデータをも踏まえた上で,辺野古新基地滑走路予定地を横切る活断層が存在するとの判断を示している。そして,活断層の有するリスクについて,e教授は「大浦湾には活断層と推定される谷地形が存在し,それが基地建設予定地の下を走っている。したがって,この断層が活動したとき,基地建設を 行ったが故の深刻かつ重大な被害が発生する。」と指摘し,f氏も滑走路を横切る段差が生ずるおそれ等を指摘する。 専門家が具体的な根拠に基づいて活断層の存在 動したとき,基地建設を 行ったが故の深刻かつ重大な被害が発生する。」と指摘し,f氏も滑走路を横切る段差が生ずるおそれ等を指摘する。 専門家が具体的な根拠に基づいて活断層の存在を指摘する場所について,これを海兵隊飛行場建設のための埋立地として選定することは,「埋立てをしようとする場所は,埋立地の用途に照ら して適切な場所といえるか」とする審査基準に適合せず,「国土利 用上適正且合理的ナルコト」の要件を充足しないものであり,かかる要件不充足という本件承認処分の瑕疵が明らかとなったことを理由とする本件撤回処分は正当である。 大浦湾海底の活断層に係る本件裁決理由についてa 本件裁決理由が不自然・不可解であること 本件撤回処分は,大浦湾海底に活断層が存在するとの専門家の指摘を理由とするものであるところ,本件裁決は,大浦湾海底に活断層が存在するとの指摘については一切触れず,複数の文献で辺野古陸域に活断層の記載がないことから辺野古周辺には活断層が認められないとするもので,およそ理由がない。国土交通大 臣は,e教授が指摘する落込み箇所が大浦湾海底の活断層であることを否定することができないから,本件撤回処分を取り消すという結論ありきで,本件裁決理由において落込み箇所について触れないという不自然・不可解な選択をした疑いは払拭できない。 b 本件裁決理由が誤っていること 本件裁決理由は,「処分庁は,活断層が存在し,そのような場所を飛行場建設のための埋立地として選定することは,審査基準の『埋立てをしようとする場所は,埋立地の用途に照らして適切な場所といえるか』に適合せず,『国土利用上適正且合理的ナルコト』の要件を充足しないこととなったと指摘する。し て選定することは,審査基準の『埋立てをしようとする場所は,埋立地の用途に照らして適切な場所といえるか』に適合せず,『国土利用上適正且合理的ナルコト』の要件を充足しないこととなったと指摘する。しかし,地震調査 研究推進本部が紹介している各調査の結果やデータベース,国立研究開発法人産業技術総合研究所が作成する『活断層データベース』,多数の地質学者等により編集,解説がされた『活断層デジタルマップ』においては,埋立対象区域である辺野古周辺に活断層の存在を示す記載はない。」とする。しかし,この本件裁決の理由 に示された上記の各データ間においてすら,活断層の記載は一致 していない上,活断層か否かの判断が分かれている断層も存在するのであるから,これらに活断層との記載がないことから,直ちに埋立て対象地域に活断層が存在しないことが示されるものとはいえない。また,本件裁決理由が引用する地震調査研究本部のウェブサイトに掲載されている『活断層の地震に備える』において も,「日本の周辺には約2000もの活断層があり,それ以外にもまだ見つかっていない活断層が多数あるといわれています。」,「活断層では,地震の規模がある程度大きくなければ,地表に断層のずれが現れません。また,断層のずれが地表に現れていた場合でも,その後の浸食や土壌の堆積により痕跡が不明瞭になり,見つ かっていない活断層もあるかもしれません。したがって,活断層が確認されていない場所でも,被害をもたらすような地震は起きることがあります。」と明記されているし,「活断層データベース」でも「表示された断層線以外に活断層が存在する可能性を否定するものではありません。」と明記されている。さらに,本件裁決理 由は,e教授の意見書において,「活断層詳細デジタルマップ ータベース」でも「表示された断層線以外に活断層が存在する可能性を否定するものではありません。」と明記されている。さらに,本件裁決理 由は,e教授の意見書において,「活断層詳細デジタルマップ」が「断層変位地形を伴わずに第四紀層中の断層露頭のみを根拠に活断層と認定されていたもの…などは,推定活断層とはせず,活断層と認定しなかった」ことをもって,同デジタルマップは活断層が存在していても表示されない場合があるとする点について, 「『活断層詳細デジタルマップ』は,『新編日本の活断層』において活断層の疑いがあるとされていたもののうち,再検討した結果,活断層である可能性が極めて低いと判断されたものは,活断層として認定していないものであ」り,「同デジタルマップにおける活断層の認定方法は一般的な理解に基づくものである。」とし,その 根拠として審査請求書添付証拠40「聴取結果報告書」を掲げて いる。しかし,かかる聴取結果報告書は,聴取者は匿名である上,聴取者と文書作成者が同一か否かも不明であるし,記載内容自体から見ても,文書作成者が基礎的な専門的知識すら有していないことは明らかである。また,本件裁決の理由は,「なお,空港の設置に当たり,一定の規模の地震に対する耐震性は求められている が,空港の設置が予定される場所の近隣や直下に活断層が存在しないことは法令等において要件とされておらず,また,本件承認に当たって,活断層の有無が審査対象とされていたとは認められない。以上のことからすれば,活断層の存在をもって『国土利用上適正且合理的ナルコト』の要件を欠くに至ったとは認められな い。」としているが,埋立法は「国土利用上適正且合理的ナルコト」といった不確定概念をもって要件を定めており,広範な事情がこの要件充足の裁量判断 的ナルコト』の要件を欠くに至ったとは認められな い。」としているが,埋立法は「国土利用上適正且合理的ナルコト」といった不確定概念をもって要件を定めており,広範な事情がこの要件充足の裁量判断の考慮要素となり得る。そして,本件埋立事業は,軍事空港施設を埋立地の用途とするところ,軍事飛行場下の活断層が断層運動を起こした場合,軍事飛行場に重大な損傷 を与えるのみならず,周辺住民の生命,身体,財産等へも広範な被害を与え得るのであるから,軍事飛行場建設を用途とする埋立ての要件充足の判断について,埋立対象地域における活断層の存在が考慮要素となることは当然である。 ウ統一基準の高さ制限の問題について 統一基準の高さ制限に係る本件撤回処分の理由a 理由の要旨米国防総省の統一施設基準書「飛行場・ヘリポートの計画と設計(UFC3·260·01)」(2008年11月更新。以下「統一施設基準」という。)では,航空機の安全な航行を目的として, 飛行場の周辺空間に進入表面,水平表面等の高さ制限(以下「高 さ制限」という。)を設定しているところ,水平表面の高さ制限に関しては,滑走路の中心から半径2286mの範囲に,滑走路から上空45.72mで設定されている。 辺野古新基地の滑走路は,標高に換算すれば約8.8mとなることから,標高約54.52mを超える範囲に高さ制限が設定さ れることとなるが,辺野古新基地が完成して海兵隊飛行場として供用された場合には,国立沖縄工業高等専門学校の校舎,米軍辺野古弾薬庫地区内の弾薬倉庫,通信事業者及び沖縄電力の鉄塔,久辺小・中学校をはじめとする公共建築物,周辺地域の民家やマンション等が高さ制限に抵触する。統一施設基準の高さ制限に抵 触する 軍辺野古弾薬庫地区内の弾薬倉庫,通信事業者及び沖縄電力の鉄塔,久辺小・中学校をはじめとする公共建築物,周辺地域の民家やマンション等が高さ制限に抵触する。統一施設基準の高さ制限に抵 触する既存建物等が周辺に所在する場所を飛行場建設のために埋立対象地として選定をすることは,公有水面埋立承認審査基準の「埋立てをしようとする場所は,埋立地の用途に照らして適切な場所といえるか」に適合せず,海兵隊飛行場である辺野古新基地を建設するために辺野古沿岸を埋立てることは「国土利用上適 正且合理的ナルコト」の要件を充足していないと認められる。 b 上記理由が正当であること水平表面に係る高さ制限は,旋回飛行等,低空飛行をする航空機の安全を確保し,航空機が安全に離着陸するために設けられているものであるから,これに抵触するということは,飛行の安全 性が確保されていないということであり,住民の側からみれば,飛行の安全性が確保されておらず,生命・身体・財産の安全性が確保されないということを意味する。防衛省が平成30年12月19日に超党派国会議員による「沖縄等米軍基地問題議員懇談会」において公表した内容によれば,対象の建造物は358件に及ぶ ものであり,その内訳は,沖縄電力や携帯電話会社などの鉄塔1 3件,建物112件,電柱や標識など233件で,最も高い鉄塔は制限を約48m上回っている。 以上のとおり,辺野古新基地が建設されて海兵隊飛行場として供用された場合には,航空機の航行の安全性が確保されていないことになり,周辺住民の生命・身体・財産等への深刻な脅威が生 じることを意味する。それに加え,沖縄防衛局は平成23年の調査で具体的に高さ制限違反の事実を認識しながらこの事実を明らかにしないまま本件 になり,周辺住民の生命・身体・財産等への深刻な脅威が生 じることを意味する。それに加え,沖縄防衛局は平成23年の調査で具体的に高さ制限違反の事実を認識しながらこの事実を明らかにしないまま本件承認出願をして本件承認処分を得ていたことからも,統一施設基準の高さ制限の抵触を理由とする本件撤回処分は正当である。 統一基準の高さ制限に係る本件裁決理由が誤っていること本件裁決理由は,統一施設基準には適用除外が認められていることから,航空機の飛行の安全性が確認されれば水平表面を超える物件があっても差し支えないものとされているとして,「水平表面を超える物件が存在することをもって,航空機の飛行の安全性に重大 な脅威を与えることになるとは認められず,その結果,周辺建物の居住者等の生命・身体・財産等に重大な脅威を与えることになるとも認められない。」とする。しかし,本件裁決理由は,統一施設基準の適用除外の要件やその要件を本件事案にどのように適用したのかについて明らかにしておらず,具体的な理由は示されていない。 本件撤回処分以前に,原告が沖縄防衛局に対して適用除外理由の照会をした際にも,「米軍内部の手続として定められているものであり,…適用除外に関する個別の事例についてお答えできない」として,回答を実質的に拒絶するなどしており,国は,辺野古新基地建設予定地周辺の建物等が統一施設基準の適用除外となるとして いることについての具体的な理由を明らかにしていなかった。そも そも,航空機の安全な航行を目的として,飛行場の周辺空間に進入表面,水平表面等の高さ制限が設定されているのは,この範囲内に構造物があることは飛行の安全に支障を生じることを示しているから,当該範囲内に高さ制限に抵触する構造物が 的として,飛行場の周辺空間に進入表面,水平表面等の高さ制限が設定されているのは,この範囲内に構造物があることは飛行の安全に支障を生じることを示しているから,当該範囲内に高さ制限に抵触する構造物が存在しても飛行の安全性に支障が生じないというのであれば,その個別具体的な根拠 が示されなければならない。それにもかかわらず,国が飛行の安全性を確保できるとする理由を全く明らかにしなかった以上,航空機の安全な航行が確保されていると認めることはできず,「統一施設基準の高さ制限に抵触する既存建物等が周辺に所在する場所を飛行場建設のために埋立対象地として選定することは,公有水面埋立 承認審査基準の『埋立てをしようとする場所は,埋立地の用途に照らして適切な場所といえるか』に適合せず,海兵隊飛行場である辺野古新基地を建設するために辺野古沿岸を埋め立てることは『国土利用上適正且合理的ナルコト』の要件を充足していない」とした本件撤回処分の理由には根拠がある。 エ普天間飛行場の返還条件の問題について 普天間飛行場の返還条件に係る本件撤回処分の理由a 理由の要旨沖縄防衛局は,埋立必要理由書において,県内では辺野古への移設以外に選択肢がないことの理由の一つとして,「滑走路を含め,所 要の地積が確保できること」を挙げ,また,国外,県外への移設が適切ではないことの理由として,「普天間飛行場の危険性を早期に除去する必要があり,極力短期間で移設できる案が望ましいこと」を挙げていた。しかし,米会計検査院の報告書において辺野古新基地の滑走路長が短いことは機能上の欠陥とされていること,及び, g防衛大臣(当時)が,平成29年6月6日の参議院外交防衛員会 において,「民間施設の使用の改善」に係る返 いて辺野古新基地の滑走路長が短いことは機能上の欠陥とされていること,及び, g防衛大臣(当時)が,平成29年6月6日の参議院外交防衛員会 において,「民間施設の使用の改善」に係る返還条件も整わなければ普天間飛行場は返還されない旨を答弁したことにより,辺野古新基地建設では,「滑走路を含め,所要の地積が確保できる」との埋立必要理由が認められないことが明らかとなった上,辺野古新基地が建設されても「民間施設の使用の改善」の返還条件が整わなければ普 天間飛行場は返還されないことから,「普天間飛行場の危険性を早期に除去する必要があり,極力短期間で移設できる案が望ましい」との埋立必要理由が成り立たないことも明らかとなった。そうすると,本件埋立事業は,「埋立てをしようとする場所は,埋立地の用途に照らして適切な場所といえるか」及び「埋立ての動機となった土 地利用に当該公有水面を廃止するに足る価値があると認められるか」という公有水面埋立承認の「埋立ての必要性」に係る審査基準に適合しないと認められる。 辺野古新基地建設は沖縄への基地負担の固定化を意味するものであるところ,普天間飛行場に駐留している部隊の沖縄駐留の必然 性はなく,移駐先が沖縄県内である必然性もないことからすれば,本件承認処分後に埋立必要理由書に示された理由が成り立たないことが判明したことによって,辺野古新基地建設のための本件埋立事業は「国土利用上適正且合理的ナルコト」の要件を充足していないと認められる。 b 上記理由が正当であること前記のとおり,沖縄防衛局は,辺野古選定の理由として,「滑走路を含め,所要の地積が確保できること」及び「普天間飛行場の危険性を早期に除去する必要があり,極力短期間で移設できる案 こと前記のとおり,沖縄防衛局は,辺野古選定の理由として,「滑走路を含め,所要の地積が確保できること」及び「普天間飛行場の危険性を早期に除去する必要があり,極力短期間で移設できる案が望ましいこと」を挙げていたところ,原告は,これを前提として審査を 行い,本件埋立事業は埋立法4条1項1号の要件の審査基準に適合 していると認め,本件承認処分をした。他方,平成25年4月5日に日米政府間において合意された「沖縄における在日米軍・区域に関する統合計画」では,普天間飛行場の返還条件として,「普天間飛行場代替施設では確保されない長い滑走路を用いた活動のための緊急時における民間施設の使用の改善」を含む8つの項目が示され ていたところ,平成29年4月5日に公表された米会計検査院の米軍再編に関する報告書においても,辺野古新基地では,特定の航空機にとっては滑走路が短く,普天間飛行場の代替機能を果たさないとされている。すなわち,辺野古新基地で普天間飛行場と同等の長さの滑走路が利用できなければ,辺野古新基地が完成をしても普天 間飛行場は返還されないということであり,これは前記g防衛大臣(当時)の答弁において裏付けられている。したがって,辺野古新基地建設によっては,普天間飛行場の代替機能に必要な所要の規模の滑走路は確保できないから,「滑走路を含め,所要の地積が確保できること」とする埋立必要理由は成り立たない。また,上記返還条 件にいう「民間施設の使用の改善」にいう民間施設が那覇空港であることは明らかであるが,那覇空港は様々な経済活動や県民生活を支える極めて重要で,他に代替し得ない沖縄県の社会基盤であるから,これを「民間施設の使用の改善」に係る民間施設として供することはおよそ認められない。辺野古新基地が建設され 様々な経済活動や県民生活を支える極めて重要で,他に代替し得ない沖縄県の社会基盤であるから,これを「民間施設の使用の改善」に係る民間施設として供することはおよそ認められない。辺野古新基地が建設されても,「民間施 設の使用の改善」の返還条件が整わなければ普天間飛行場は返還されないことからすれば,埋立必要理由書で示された「普天間飛行場の危険性を早期に除去する必要があり,極力短期間で移設できる案が望ましいこと」との理由は成り立たない。そのほか,辺野古新基地建設は沖縄への過重な基地負担を将来にわたって固定するもの であること,完成までにどれだけの年数を要するのかも定かではな い辺野古新基地建設は,その間の普天間飛行場を事実上固定化するものであることなどの様々な問題が存する一方,普天間飛行場に駐留している部隊の沖縄駐留の必然性はなく,移駐先が沖縄県内であることに必然性もないことからすれば,埋立必要理由書に示された理由が成り立たない以上,辺野古新基地建設による基地負担の固定 化等を正当化する根拠はおよそ存しない。 返還条件に係る本件裁決理由が誤っていること本件裁決理由は,前記の返還条件について,「当該条件の存在は,処分庁においてもこれを認識していた事情であって,このことを前提として本件承認がされていたと認められることから,上記条件が成就し ないこととなったなどの特段の事情がない限り,当該条件の存在をもって,撤回の理由とすることはできない。そして,緊急時における民間施設の使用を含む上記の返還条件については,現時点では協議・調整中であり,本件承認後にそれが成就しないことが明らかになったことなどをうかがわせる事情も見当たらないことから,これをもって, 撤回の理由とすることはできないものと認めら ,現時点では協議・調整中であり,本件承認後にそれが成就しないことが明らかになったことなどをうかがわせる事情も見当たらないことから,これをもって, 撤回の理由とすることはできないものと認められる。さらに,処分庁が指摘する滑走路長等に関する米会計検査院の指摘も,普天間飛行場代替施設は,オスプレイ等の運用機能を移設することを予定し,長い滑走路を必要とする大型固定翼機の運用機能を移設することは前提としていないと認められること,滑走路長は米国の同意を得ているこ とからすれば,これが上記条件の成就の妨げになるものとは認められない。」とする。しかし,法律による行政の原理に照らせば,処分要件を欠く処分が効力を保持している状態は違法であるから,違法であることが判明した以上,適法状態を回復することが要請されるのであり,本件承認時において返還条件を認識していたことを理由に撤回でき ないことにはならない。また,平成8年に承認されたSACO最終報 告においても,現行の辺野古新基地建設計画を決めた平成18年5月の「再編実施のための日米のロードマップ」において,緊急時における民間施設の使用が整わなければ辺野古新基地が供用されても普天間飛行場が返還されないということは明示されていなかったところ,前記統合計画において辺野古新基地が完成しても,「民間施設の使用 の改善」について整わなければ普天間飛行場が返還されないとの合意がされたのであれば,普天間飛行場移設問題・辺野古新基地建設問題についての重大変更であるが,この点について,国から原告に対して何らの説明もなかった。かかる経緯に照らせば,統合計画という文書の内容の実質的な意義・位置付けを原告において認識し得たのは,前 記g防衛大臣(前記)の答弁によるものであって,本件承認処分後 て何らの説明もなかった。かかる経緯に照らせば,統合計画という文書の内容の実質的な意義・位置付けを原告において認識し得たのは,前 記g防衛大臣(前記)の答弁によるものであって,本件承認処分後に判明した事実により,同処分が処分要件を欠くまま違法にされたものであることが判明したといえるから,これを取り消すことを妨げる事情は存在しない。 (被告の主張) 認否の要を認めない(ただし,原告の主張を認める趣旨ではない。)。 ⑽ 本件承認処分の埋立法4条1項2号所定の災害配慮要件の不充足(争点 (原告の主張)ア 「災害防止ニ付十分配慮」要件の意義 埋立法4条1項2号は,「其ノ埋立ガ…災害防止ニ付十分配慮セラレタルモノナルコト」を求めているが,これは,埋立ては,人の生命・身体・財産等に重大な影響を及ぼし得るものであるから,安全性が十分に認められない埋立てを許容しない趣旨であり,ここにいう「災害防止ニ付十分配慮」とは,埋立地そのものの安全性と埋立てに伴い他に与える 災害の二面のほか,船舶航行の安全性の問題について,問題の状況及び 影響を的確に把握した上で,これに対する措置が適正に講じられていることであり,その程度において十分と認められることと解される。そして,「災害防止ニ付十分配慮」の要件は,人の生命・身体等にかかるものであるから,免許・承認処分後の埋立工事施工段階においても維持されなければならない基幹的処分要件である。 イ 「災害防止ニ付十分配慮」要件の充足判断について公有水面埋立ての免許・承認は,出願人が願書と添付図書で内容を特定して出願し,都道府県知事は願書等により特定された内容を審査してこの特定された内容に対して免許・承認をするものであるところ,当 て公有水面埋立ての免許・承認は,出願人が願書と添付図書で内容を特定して出願し,都道府県知事は願書等により特定された内容を審査してこの特定された内容に対して免許・承認をするものであるところ,当該埋立ての埋立工事の内容については,願書等により特定された「設計の 概要」を対象として要件充足の判断をすることになり,免許・承認を受けた者は,特定された内容に基づき工事を遂行する義務を負う。 埋立法2条は,「設計ノ概要」を願書の必要的記載事項と定めている(同条2項4号)が,これは,埋立てに関する工事についての全範囲にわたる工事施工内容の概要を特定するものであり,免許等に際しての同 法4条に規定する免許基準の判断や埋め立てに関する工事期間中の同法32条による匡正等の基準となる。そして,同法2条3項2号は「設計ノ概要ヲ表示シタル図書」を願書の必要的添付図書として定め,願書の「設計の概要」の記載と「設計ノ概要ヲ表示シタル図書」によって,設計の概要が特定されるものとしている。埋立法施行規則は,願書の「設 計の概要」の記載の具体的項目として,「埋立地の地盤の高さ」,「護岸,堤防,岸壁その他これらに類する工作物の種類及び構造」,「埋立てに関する工事の施行方法」,「公共施設の配置及び規模の概要」を定め,「設計ノ概要ヲ表示シタル図書」について,同規則2条2号は,「埋立地横断面図縮尺は,横二千五百分の一以上,縦百分の一以上とすること。」,「埋 立地縦断面図縮尺は,横二千五百分の一以上,縦百分の一以上とするこ と。」,「工作物構造図縮尺は,百分の一以上とし,護岸,堤防,岸壁その他これらに類する工作物の構造を表示すること。」及び「設計概要説明書設計の概要についての説明を記載すること。」を定めている。 沖縄県は,公有水面 造図縮尺は,百分の一以上とし,護岸,堤防,岸壁その他これらに類する工作物の構造を表示すること。」及び「設計概要説明書設計の概要についての説明を記載すること。」を定めている。 沖縄県は,公有水面埋立ての免許に係る審査基準において,形式審査及び内容審査についての審査事項を定めている。形式審査では,願書の 「設計の概要」の記載及び添付図書である「設計概要説明書」の記載について,願書の「設計の概要」及び添付図書の「設計概要説明書」によって,埋立てに関する工事についての全範囲にわたる工事施行内容の概要が特定できているか否かを審査するものとしている。内容審査における免許禁止基準の埋立法4条1項2号にかかる審査事項においては,願 書の「設計の概要」及び添付図書「設計概要説明書」で特定された埋立てに関する工事についての全範囲にわたる工事施行内容の概要が,「災害防止ニ付十分配慮」の要件を充足しているか否かを審査するものとしている。 以上のとおり,出願人は,願書の「設計の概要」の記載及び添付図書 「設計概要説明書」によって,免許の内容となる設計の概要(埋立てに関する工事についての全範囲にわたる工事施行内容の概要)を具体的に特定し,都道府県知事は,願書等により特定された設計の概要を審査の対象として,「災害防止ニ付十分配慮」要件の充足不充足を判断するという仕組みが採用されている。 ウ軟弱地盤の判明により「災害防止ニ付十分配慮」要件の不充足が明らかとなったこと本件撤回処分の理由の要旨護岸等の構築物は地盤によって支えられているのであるから,地盤が構築物を支えることができないのであれば安全性は認められないと ころ,本件承認処分に係る審査において,設計概要説明書に記載され た地形・地質,設計概要及び安定計 るのであるから,地盤が構築物を支えることができないのであれば安全性は認められないと ころ,本件承認処分に係る審査において,設計概要説明書に記載され た地形・地質,設計概要及び安定計算結果等並びに地盤の液状化及び沈下の可能性についての事業者の回答を前提として,埋立地の護岸等の構造や地盤改良について,災害防止につき十分配慮していると判断して審査基準適合性を認めた。しかし,本件承認処分後になされた土質調査の結果によれば,前記⑼(原告の主張)アのとおり,埋立地の 特殊な地形・地質等から,地盤の液状化や圧密等による沈下等の危険性が認められ,設計概要説明書に示された安定計算の前提が覆滅しているものと認められた。したがって,公有水面埋立承認審査基準の「埋立地の護岸の構造が…災害防止に十分配慮」「埋立区域の場所の選定…海底地盤…の地盤改良等の工事方法等に関して,埋立地をその用途に 従って利用するのに適した地盤となるよう災害防止につき十分配慮」に適合しておらず,「災害防止ニ付十分配慮」の要件を充足していないと認められ,本件承認処分の効力を存続させることが公益に適合しない状態が生じている。 上記理由が正当であること 本件審査請求において,沖縄防衛局からは,前記理由のうち,「設計概要説明書に示された安定計算の前提が覆滅している」ということ自体についての反論はなされておらず,むしろ,沖縄防衛局の提出した報告書等によれば,本件承認処分後に明らかとなった地盤の土質を前提として,「設計の概要」に従った工事を完成させた場合には,所定の 安定性を欠き,護岸等の荷重による地盤破壊の危険性が存することが明らかとなっている。すなわち,本件審査請求において沖縄防衛局が提出した土質調査の結果等は,「設計概要説明書に示された安 所定の 安定性を欠き,護岸等の荷重による地盤破壊の危険性が存することが明らかとなっている。すなわち,本件審査請求において沖縄防衛局が提出した土質調査の結果等は,「設計概要説明書に示された安定計算の前提が覆滅している」という本件撤回処分の理由に対する反論足り得ず,逆に承認の前提となった安定計算の結果が覆されていることを より具体的に明らかにするものである。また,設計概要説明書に従っ て工事を行うのであれば地盤の液状化や沈下の危険性があるという点についても,本件審査請求において,沖縄防衛局からは何ら具体的な反論はなされておらず,むしろ,沖縄防衛局が提出した報告書等によれば,新規の調査箇所においても地質からして地盤の液状化や圧密等における沈下の危険性が示されており,本件撤回処分の正当性を裏 付けている。 以上のとおり,本件承認処分後の土質調査により判明した特殊な地形・地質等によれば,地盤の液状化や圧密等による沈下等の危険性が認められ,また,設計概要説明書に示された安定計算の前提が覆滅しているものと認められるとして,「災害防止ニ付十分配慮」要件に不適 合とした本件撤回処分の理由は正当である。 本件裁決理由の誤り国土交通大臣は,本件裁決の理由として,「地盤改良工事を実施すれば,所要の安定性を確保して埋立工事を行うことが可能であるといえ,上記のとおり,変更承認がされ得るような設計・施工が想定できるの であるから(工事着工後は変更承認の申請をすることができないとの処分庁の指摘に理由がないことは,上記のとおりである。),上記各審査基準に適合せず『災害防止ニ付十分配慮セラレタルモノナルコト』の要件を欠くに至ったとは認められない。」とする。しかし,「災害防止ニ付十分配慮」要件は,願書等で特 ,上記のとおりである。),上記各審査基準に適合せず『災害防止ニ付十分配慮セラレタルモノナルコト』の要件を欠くに至ったとは認められない。」とする。しかし,「災害防止ニ付十分配慮」要件は,願書等で特定された「設計の概要」につい て充足しているか否かが判断されるものであって,設計変更の可能性が対象となるものではないから,設計変更が承認される可能性があれば「災害防止ニ付十分配慮」要件を充足しているとする法解釈は誤りである。国土交通大臣は,「地盤改良工事を実施すれば,所要の安定性を確保して埋立工事を行うことが可能」とするが,これは,地盤改良 工事を行わなければ所要の安定性は認められないということである。 承認を受けた事業者は,「設計の概要」として特定された内容に従って工事を遂行する義務を負い,これと異なる内容の工事を行うことはできないのであるから,「設計の概要」については,所要の安定性が認められない,すなわち,「災害防止ニ付十分配慮」要件を充足していないということにほかならない。上記裁決理由の誤りは明らかである。 「災害防止ニ付十分配慮」要件の不適合を理由とする撤回が制限されないこと処分後に基幹的処分要件の不充足が明らかとなった場合,一般的には,撤回事由(要件の事後的不充足)が生じた時点ですでに当該処分は違法であるから,撤回しないという選択肢は現実的ではない。 他方,公有水面埋立の免許・承認について,設計の概要で判断される「災害防止ニ付十分配慮」要件に関しては,設計の概要の変更許可を受けることで,要件不充足という瑕疵を治癒することができ,工事着工前の実施設計の調整の段階において設計の概要の変更の許可を受けることによって対応し得るから,設計の概要の変更許可による解 決の可能性があ で,要件不充足という瑕疵を治癒することができ,工事着工前の実施設計の調整の段階において設計の概要の変更の許可を受けることによって対応し得るから,設計の概要の変更許可による解 決の可能性があると認められるときには,工事を停止して設計の概要の変更許可を検討することなどの行政指導を行うこともなく直ちに取消処分を行うことは比例原則による制限を受けるものと解される。 もっとも,本件承認処分に付されている留意事項のうち第1項(以下「留意事項1」という。)は,「工事の施工について工事の実施設 計について事前に県と協議を行うこと」というものであるが,本件では,後記⑾(原告の主張)のとおり,これに反して工事に着工されたものであるから,「災害防止ニ付十分配慮」要件の不充足を理由とする取消処分は制限されるものではない。また,仮に本件埋立事業が留意事項1に違反していない場合,上記の比例原則による制限が問題とな るものの,①「設計の概要」の変更の必要性が覚知された場合には速 やかに工事を停止して都道府県知事と協議して所要の手続をとるべきであること,②本件では広範囲な軟弱地盤の存在により,沖縄防衛局は,現在の設計の概要では工事が進められないこと,③仮に地盤改良工事により工事が施工可能であるとしても,極めて大規模な地盤改良工事が必要となり,大規模な地盤改良工事に伴う工期の大幅な延長 及び環境に与える負荷の増大等を沖縄防衛局は認識していたこと,④「設計の概要」の変更が必要である場合には,沖縄県知事が変更後の「設計の概要」について要件充足を判断しなければならなかったこと,⑤本件の埋立予定地は極めて特異・貴重な自然環境を有する箇所であること,したがって,変更後の要件充足を沖縄県が確認できない状況 下で,沖縄防衛局が工事を進 足を判断しなければならなかったこと,⑤本件の埋立予定地は極めて特異・貴重な自然環境を有する箇所であること,したがって,変更後の要件充足を沖縄県が確認できない状況 下で,沖縄防衛局が工事を進めることは不適切であったこと,⑥沖縄防衛局が軟弱地盤の存在及びそれに伴う設計の概要の変更承認の必要性について秘匿し続け,軟弱地盤部分を含めた全体の実施設計の協議をせず,また,変更承認申請をせずに工事を強行する態度が明白であったこと,⑦本件撤回処分時点において,既に着工から1年が経過 し,大浦湾の自然環境が破壊することなどを看過することは許されなかったことからすれば,本件撤回処分以外の対応による解決が望めなかったことは明らかで,かつ,その責めは沖縄防衛局に存するものであるから,比例原則により撤回が制限されることはない。 小括 以上のとおり,本件埋立事業が「災害防止ニ付十分配慮」要件に適合していないことは明らかであり,また,同要件不適合を理由とする撤回を制限すべき事情は本件では認められないから,本件撤回処分は正当である。 (被告の主張) 認否の要を認めない(ただし,原告の主張を認める趣旨ではない。)。 ⑾ (原告の主張)ア本件承認処分に付された附款の不履行を理由とする撤回が認められること埋立法は,公有水面埋立承認について都道府県知事に承認要件の充足 の判断についての裁量を付与しているから,明文の規定がなくとも,免許処分について裁量権の許す範囲内で附款を付すことができる。埋立法施行令6条は免許に附款を付し得ることを明確にしており,同条は,同施行令30条により国が埋立てを施行する場合にも準用されている。実施設計に関する協議を義務付ける附款は,埋立 付すことができる。埋立法施行令6条は免許に附款を付し得ることを明確にしており,同条は,同施行令30条により国が埋立てを施行する場合にも準用されている。実施設計に関する協議を義務付ける附款は,埋立法42条3項が同法2条 2項を準用して「設計の概要」に基づく審査で承認をできるとしたところ,大規模工事等では不確実な要素が残ることから,実施設計を終えた後の段階において再度の確認を行うことによって,当該埋立の埋立て工事の安全性,「災害防止ニ付十分配慮」要件が工事着工時においても充足していることを担保するものである。かかる附款を付して承認処分によ り得た地位自体に,実施設計の審査の段階で埋立の安全性,埋立法4条1項2号所定の要件の充足を確認できなければ着工をすることはできないという制約が内在しているから,承認処分に実施設計に関する協議を担保するための負担が付された場合には,その負担の不履行は当然に承認処分の撤回事由となり得る。 イ本件承認処分に付された附款の不履行本件承認処分に付された附款である留意事項1は,「工事の施工について工事の実施設計について事前に県と協議を行うこと」としているが,沖縄防衛局は,工事の実施設計について事前に協議を行うことなく,平成29年2月7日に汚濁防止膜設置に係る海上工事に,同年4月25 日に護岸工事に,それぞれ着工し,留意事項1に違反した。 ウ留意事項1の不履行に係る本件裁決の誤り国土交通大臣は,「審査請求人が全体の実施設計を示していないことをもって,留意事項1に違反していることはできない。」とし,また,「協議が整わずに工事を行ったとしても,留意事項1に違反したということはできず,更にはそれにより埋立承認の要件を欠如するに至ったという ,留意事項1に違反していることはできない。」とし,また,「協議が整わずに工事を行ったとしても,留意事項1に違反したということはできず,更にはそれにより埋立承認の要件を欠如するに至ったという こともできない。」とする。しかし,附款とは,行政行為の本来の内容に付加される従たる内容の行政庁の意思表示であり,その内容は,行政庁がその裁量の範囲内において定めるものであるから,留意事項1の意味内容については,一義的に沖縄県知事の意思表示の解釈の問題である。 原告は,当初から,全体の実施設計について,着工前に協議が調う必要 があることについて,繰り返し指導してきているのであって,それと異なる意味内容に解釈する余地はない。 (被告の主張)認否の要を認めない(ただし,原告の主張を認める趣旨ではない。)。 ⑿ 本件承認処分の埋立法4条1項2号所定の環境保全要件の不充足(争点 (原告の主張)ア埋立法4条1項2号の意義等 埋立法4条1項1号及び2号の免許基準は,昭和48年に,大規模埋立てがもたらした公害その他の環境問題の深刻化に対応する ための改正により,新設された規定である。この改正により,埋立免許・承認の要件について,同条1項各号が定められ,これらの要件にすべて適合していなければ,都道府県知事は免許・承認をなし得ないこととなり,また,願書を3週間公衆の縦覧に供することにより利害関係者の意見を反映させること,50haを超える大規模 埋立てについては環境保全上の見地からの環境庁長官の意見を求 めること等の規定も新設され,さらに,施行規則において,埋立ての願書には「環境保全に関し講じる措置を記載した図書」の添付が求められることとなった。これにより,環境影響事前評価,いわゆる環 めること等の規定も新設され,さらに,施行規則において,埋立ての願書には「環境保全に関し講じる措置を記載した図書」の添付が求められることとなった。これにより,環境影響事前評価,いわゆる環境アセスメントの実施が義務付けられるようになった。この改正経緯に鑑みれば,埋立法4条1項2号の「環境保全ニ付十分配慮 セラレタルモノナルコト」という要件(以下「環境保全要件」という。)は基幹的な要件であり,これを充足していなければ免許も承認もなし得ないものと解される。 上記の昭和48年改正後,環境影響評価法が制定された結果,現在においては,環境影響評価手続と埋立免許・承認処分及び処分後 の埋立工事の連続性がより一層明確となっており,環境保全要件は,事前に行われた環境影響評価手続の結果,作成された環境影響評価書及び環境保全措置に対する知事意見に基づいて,その充足が判断され,当該評価書に記載されている環境保全措置を埋立免許・承認後に実施することが要求されている。 以上のとおり,環境保全要件は,かかる要件を充足しない限り,処分権者は,免許・承認処分をなし得ない重要な要件であって,これは,免許・承認処分後に環境影響評価書に記載されている環境保全措置をとることを前提として,当該評価書に基づいてその充足が判断されることになる。したがって,実際の工事を行うに際して処 分の前提となった環境保全措置の実施が要求されることを通じて,環境保全要件は処分後も維持されることが求められていると解されるから,同要件が事後的に消滅し,あるいは,処分時に要件を欠いていたことが事後的に判明した場合には,講学上の撤回ないし非遡及的な取消しが認められる。 イ環境保全要件の不充足の事実 本件撤回処分は,本件埋立事業が, は,処分時に要件を欠いていたことが事後的に判明した場合には,講学上の撤回ないし非遡及的な取消しが認められる。 イ環境保全要件の不充足の事実 本件撤回処分は,本件埋立事業が,本件承認処分後に環境保全要件が充足されないこととなったことをその理由の一つとするものである。以下,詳述する。 留意事項2の意義と環境保全要件との関係本件承認処分に付されている留意事項のうち第2項(以下「留意 事項2」という。)の内容は,「実施設計に基づき環境保全対策,環境監視調査及び事後調査などについて詳細検討し沖縄県と協議を行うこと。なお,詳細検討及び対策等の実施にあたっては,各分野の専門家・有識者から構成される環境監視等委員会(仮称)を設置し助言を受けるとともに,特に,外来生物の侵入防止対策,ジュゴ ン,ウミガメ等海生生物の保護対策の実施について万全を期すこと。 また,これらの実施状況について沖縄県及び関係市町村に報告すること。」というものであり,①環境保全対策等についての原告との協議,②環境監視等委員会の設置と重要な対策の万全な実施,③当該実施状況の報告を求めている。 環境影響評価手続が,環境影響予測や評価等の不確実性や環境改変の不可逆性を踏まえ,これらの科学的評価をするとともに社会的合意形成の手続を経ていくことによって事業実施に関わる環境保全を図ろうとする制度設計となっていること,環境影響評価法による事業実施に際しての報告書の提出等の仕組みがあること,埋立法 においても事業実施過程における免許権者による環境保全のための関与の継続の仕組みが予定されていることに照らせば,埋立法による公有水面埋立事業の実施過程における環境保全措置の履行に関して免許権者による関与をなすことは,当然予定されて 権者による環境保全のための関与の継続の仕組みが予定されていることに照らせば,埋立法による公有水面埋立事業の実施過程における環境保全措置の履行に関して免許権者による関与をなすことは,当然予定されていたといえる。そうすると,留意事項2における,①環境保全対策等につい て原告との協議を求める附款は,事業実施過程における環境保全要 件の継続的な充足を担保するために必要不可欠なものであり,環境保全対策等について,本件承認処分時の環境保全図書における具体性及び実効性のある対策等の提示を先送りした部分を確実に担保するために付したものであって,その実施は,事業の実施継続に当たって要件適合性を充足するために必要なものであるから,当該協 議を十分実施せずに事業を行うことは,環境保全要件の欠缺を招来するものといえる。そして,ここにいう「協議」については,国による埋立てについて免許権者の監督権限に係る規定が準用されておらず,環境保全措置等の問題が生じた場合には,国と地方公共団体との協議手続によって解決することが想定されていることから すれば,単に国が事業について情報を提供して地方公共団体から質問や意見を聴取し,国が一方的に事業の実施に係る環境保全措置等を決定するというのではなく,その適正さを承認権者と事業者である国が確認する必要があることから,原則として「協議が調う」ことが求められ,両者の間で実質的に合意が得られるような段階に至 る協議が求められていると解される。 留意事項4の意義と環境保全要件との関係本件承認処分に付されている留意事項のうち第4項(以下「留意事項4」という。)の内容は,「申請書の添付図書のうち,公有水面埋立法規則第3条第5号(埋立に用いる土砂等の採取場所及び採取 量を記載した図書 分に付されている留意事項のうち第4項(以下「留意事項4」という。)の内容は,「申請書の添付図書のうち,公有水面埋立法規則第3条第5号(埋立に用いる土砂等の採取場所及び採取 量を記載した図書),第7号(埋立地の用途及び利用計画の概要を表示した図面)及び第8号(環境保全に関し措置を記載した図書)を変更して実施する場合は,承認を受けること」というものである。 留意事項4の法的意義についてみると,これらの図書等は,埋立法13条の2による承認変更申請の対象ではないが,その重要性に照 らし,これらを変更して実施する場合については,免許権者の許可 を受けさせる条件を付すことが行政実務となっている。これは,免許付与段階における環境保全措置が環境保全図書をもとにした審査によるとしても,事業実施期間中継続的に免許要件である環境保全要件が充足され続けることを担保するためには,これら添付図書の内容を変更して事業を実施しようとする際は,改めて免許要件の 充足を審査すべきとの立場によるものである。もとより,環境保全要件は,事業実施が継続している期間にわたって充足していなければならない要件であって,「設計の概要の変更」のないままに環境保全措置に変更が生じた場合には,免許・承認要件が欠缺する可能性もあり得ることから,環境保全図書に記載した保全措置の変更に承 認手続の負担を課すことは,埋立法4条1項2号による規律に含まれ得るものであって,これを留意事項として免許・承認条件とすることができると解される。したがって,留意事項4のうち,環境保全図書を変更して実施する際に承認手続を求める趣旨は,環境影響評価手続に基づく環境保全図書の変更が必要となったときには,改 めて環境影響評価手続をなす代替として免許・承認権者である知事による承認 書を変更して実施する際に承認手続を求める趣旨は,環境影響評価手続に基づく環境保全図書の変更が必要となったときには,改 めて環境影響評価手続をなす代替として免許・承認権者である知事による承認手続を経ることによって環境保全を担保しようとするものであり,留意事項4の違反も,環境保全要件の欠缺を招来するものといえる。 環境保全要件が事後的に消滅していると認められる理由 a 留意事項2に違反して環境保全対策等につき原告と協議を経ずに工事を行っていること沖縄防衛局は,本件埋立事業に係る全ての工事についての実施設計を明らかにすることなく,一部の護岸の実施設計に基づいて一方的に環境保全対策等を策定し,留意事項2に基づく事前協議 は終了したと一方的に主張して工事に着手した。しかし,環境は 極めて多様な環境要素が一定の地域的広がりをもって複雑に相互に影響しあって形成されるものであるから,事業による環境影響に伴う環境保全措置は,事業の全体的な実施状況が明らかにならなければ十全にはなされ得ない。したがって,工事中の環境保全対策等について,一部の護岸だけの影響として検討するのでは なく,連続した一体の護岸全体による環境影響に対して環境保全対策等を検討すべきであり,留意事項2に基づく事前協議を行うためには,護岸全体を含む埋立全体の実施設計に基づき詳細検討した環境保全対策等の提出が必要であり,実施設計の全容を示して協議をしないことには,環境保全措置についての実質的な協議 はできない。そのため,事業全体の実施設計を明らかにすることのないまま形式的に協議文書を提出したとしても,それは留意事項2において要求されている環境保全措置についての協議とはいうことができず,沖縄防衛局は,留意事項2に違反したと認 施設計を明らかにすることのないまま形式的に協議文書を提出したとしても,それは留意事項2において要求されている環境保全措置についての協議とはいうことができず,沖縄防衛局は,留意事項2に違反したと認められる。仮に提出された協議文書を前提としても,沖縄防衛局は, 原告によるかかる文書に対する不十分な点についての指摘に対して十分な対応をしておらず,一方的に自ら必要と判断した文書を提出するのみで協議を経たと主張しているにすぎない。前記の「協議」の意義からすれば,かかる実質的な協議がなされていない点でも,留意事項2に違反している。 以上によれば,沖縄防衛局は,留意事項2に違反し,埋立全体の実施設計に基づいて詳細検討した環境保全対策等について協議をしないところ,本件承認処分時にその限度で示された環境保全措置及び対策を事業実施段階において具体化して確実に実施し,環境保全につき十分な配慮を図ることができなくなっている こと,すなわち,環境保全要件の不充足が認められる。 b サンゴ類に関する環境保全措置が適切でないこと沖縄防衛局が本件承認処分後にサンゴ類について策定している具体的な環境保全措置については,以下の点が不適切であり,事業実施区域周辺海域におけるサンゴ類の保全に支障が生じるおそれがある。 移植優先順位等の環境監視等委員会からの指摘を踏まえた工事の詳細な工程表と各環境保全措置の実施期間を重ねた表を作成・提出していないことサンゴ類の移植・移築作業を工事と並行して実施する場合,当該工事により周辺への汚濁の拡散等が懸念されることから, これら各工事時期と移植・移築作業時期は予め明確にしてその環境保全措置が適切であることを確認することが求められ,これらの する場合,当該工事により周辺への汚濁の拡散等が懸念されることから, これら各工事時期と移植・移築作業時期は予め明確にしてその環境保全措置が適切であることを確認することが求められ,これらの移植・移築作業について随時適切な対応が図られることが計画されなければならない。沖縄防衛局は,サンゴ類の移植時期について,サンゴ類が分布する海域での護岸等工事の着手 までに実施することとしているが,明確な移植時期は,当該護岸等工事の計画を踏まえて決定され,現時点において明確なものは決まっていないとして,事前に詳細な工程とこれに対応する環境保全措置の実施期間と内容を明らかにしておらず,環境保全措置の検討が不十分である。 ⒝ 移植・移築の対象となるサンゴの選定基準沖縄防衛局は,サンゴ類の移植・移築に当たり,移植・移築元の範囲を「水深20m以浅の範囲」とし,移植・移築対象のサンゴを「小型サンゴ:総被度5%以上で0.2ha以上の規模を持つ分布域の中にある長径10cm以上のサンゴ類」とし て選定基準を定めているが,かかる基準について科学的根拠は 全く示されていないから,その妥当性を確認できず,環境保全対策として十分であることが確認できない。 ⒞ 移植先の選定沖縄防衛局は,サンゴの移植・移築先の選定に当たっては,有識者研究会での意見も踏まえ,現状の分布域に加え,これま でサンゴが生育していた場所もポテンシャル域として勘案し,波当たりの状況や濁りに関するシミュレーション結果も踏まえて検討しているとするが,淡水流入時の影響を踏まえて検討を行ったのかが不明であり,環境保全対策としてのサンゴ類の移植・移築の安全性が確認できない。 ⒟ 未記載種やレッドリストサンゴの環境保全 ているとするが,淡水流入時の影響を踏まえて検討を行ったのかが不明であり,環境保全対策としてのサンゴ類の移植・移築の安全性が確認できない。 ⒟ 未記載種やレッドリストサンゴの環境保全措置が不十分であること原告は,沖縄防衛局に対し,未記載種であるサンゴ類について,その調査や保全策について明らかにするよう再三求めていたが,検討中ないし今後環境監視等委員会の指導・助言を受け る等との回答にとどまっていた。また,平成29年3月17日に環境省が「海洋生物レッドリスト」を公表し,評価書に記載された確認種のうち,サンゴ類5種が新たに貴重な種に該当したことから,原告は,該当種の生息場所や移植予定について照会を行ったが,沖縄防衛局は「追って答える」として回答を行 わず,同年4月25日,護岸工事に着工した。その後も,原告は,レッドリストサンゴの生息場所や移植予定について照会を行うとともに,レッドリストサンゴについては沖縄防衛局が設定した移植・移築対象の基準を満たしていなくとも移植を検討すべきであることを通知し,沖縄防衛局が護岸工事を強行して いることから,これらについて早急に回答するよう求め,併せ て護岸工事の停止を求めたのに対し,沖縄防衛局は,レッドリストサンゴの取扱いについては検討中であることを繰り返し,原告に対して生息場所等調査の実施の有無,調査結果や調査の現状を報告しなかった。 その後の平成29年9月27日,沖縄防衛局が環境監視等委 員会に突如レッドリストサンゴの調査・確認結果を提出したことにより,原告が繰り返し照会を行っていた同年7月の時点では既に調査を開始していたにもかかわらず,承認権者である原告へ報告を行っていなかったことが明らかとなった。また,当該調査・確認結 提出したことにより,原告が繰り返し照会を行っていた同年7月の時点では既に調査を開始していたにもかかわらず,承認権者である原告へ報告を行っていなかったことが明らかとなった。また,当該調査・確認結果においては,同月5日から22日にかけてレ ッドリストサンゴ14群体が確認されたが,同年8月18日の調査において,6群体が死亡し,6群体が消失していることが確認され,同年9月1日の調査では,ヒメサンゴ1群体の死亡が確認されている。沖縄防衛局は,これらレッドリストサンゴを同年7月に確認した後,直ちに工事を停止して原告へ報告し, 移植の要否等の保全対策を協議すべきであったにもかかわらず,これを行わなかった。上記のレッドリストサンゴ13群体の死亡・消失が沖縄防衛局の工事の影響ではないといえないのであり,レッドリストサンゴに対する環境保全策が十分になされているとはいえない。 移植・移築実施時の監視及び委員への情報発信体制が整えられていないこと沖縄防衛局は,環境監視等委員会において,サンゴ類の移植・移築の実施については,随時,専門の委員に情報発信して適切な対応であるかダブルチェックして進める必要がある旨の指 摘を受けていたが,かかる作業状況の監視及び連絡体制につい て,当該移植・移築を実際に行う時までに構築し,専門の委員に対し,随時,当該作業状況についての情報提供を行うとするのみで,具体的な体制は整えられていない。 ⒡ 立入調査に応じないこと原告は,沖縄防衛局によるサンゴ類の分布状況やその種など の調査報告が極めて不十分であることから,これらの確認のため立入調査を求めたのに対し,沖縄防衛局は,自身による現況調査の結果を提示することで確認できるとして立入調査を認め 布状況やその種など の調査報告が極めて不十分であることから,これらの確認のため立入調査を求めたのに対し,沖縄防衛局は,自身による現況調査の結果を提示することで確認できるとして立入調査を認めておらず,沖縄防衛局が環境保全図書に基づいて適切にサンゴ類に対する環境保全措置を実施しているかどうかが確認で きていないことから,適切な環境保全措置が講じられないまま,自然環境に重大な影響を及ぼす施工がなされるおそれがある。 c ジュゴン保護のための環境保全措置が不十分であること 海草藻場についての環境保全対策等についてジュゴンの餌場として利用される海藻草類の環境保全措置に ついては,環境保全図書に「消失する海草藻場に関する措置として,被度が低い状態の箇所や静穏域を対象とし,専門家等の指導・助言を得て,海草類の移植や生育範囲拡大に関する方法等やその事後調査を行うことについて検討し,可能な限り実施」する旨の記載があるが,詳細な検討資料が環境監視等委員会へ 提出されたのは,工事着手後の平成29年12月5日である。 ジュゴンの餌場である海草藻場が消失すれば,ジュゴンへの影響が生じることは明白であるから,海草藻場の環境保全措置は,本来,海藻草類を消失させる前,すなわち,工事開始前に検討・実施すべきところ,工事着手後に実施した場合,当該環境保全 措置によって新たな餌場が確保されるまでジュゴンの餌場が 大幅に減少するから,「環境の保全上の支障」が生じる。 ⒝ ジュゴン監視・警戒システムに問題があること沖縄防衛局は,環境保全図書にジュゴン監視・警戒システムを構築することを予定する旨記載し,本件承認処分後にこれを構築しているが,同システムに関しては,工事前後のデータの 収 ること沖縄防衛局は,環境保全図書にジュゴン監視・警戒システムを構築することを予定する旨記載し,本件承認処分後にこれを構築しているが,同システムに関しては,工事前後のデータの 収集方法が異なっており連続性の確保が図られていないこと,タイ国で検証試験を行ったのみで大浦湾での検証を行わないまま工事が開始されたこと,ヘリコプターによる生息確認の頻度が不十分であること,原告が監視・警戒システムの実施状況について現地で確認することを合理的な理由なく拒否したこ となどの問題がある。したがって,絶滅危惧種であるジュゴンの生息環境の保全のために具体的な環境保全策を講じるに当たって十分なものではなく,ジュゴンについて「環境の保全上の支障」が生ずるおそれがある。 ⒞ 専門家による指導・助言の内容とその反映状況が不明である こと沖縄防衛局における環境保全措置等の検討にあたり,沖縄防衛局に対するジュゴンの専門家の助言内容とこれに対する対応が明らかにされていないため,適正な環境保全策が実施されているかを確認できない。 ⒟ 事後調査により判明した工事による実害が生じるおそれについての影響の有無を調査していないこと普天間飛行場代替施設建設事業に係る事後報告書においては,事前に確認されていたジュゴン一個体が確認されなかった旨の記載があるところ,沖縄防衛局は,これと工事の関係につい て十分検討しておらず,科学的解明に取り組む姿勢をみせてい ない。 d 海藻草類に関して本件承認処分後に策定すべき環境保全対策等を策定していないこと 生育範囲拡大や調査方法の検討実施状況環境保全図書においては,工事の実施において周辺海域の海 草藻場の生育分布状 認処分後に策定すべき環境保全対策等を策定していないこと 生育範囲拡大や調査方法の検討実施状況環境保全図書においては,工事の実施において周辺海域の海 草藻場の生育分布状況が明らかに低下してきた場合には,必要に応じて,海草類の移植等による生育範囲拡大に関する方法等を検討し,可能な限り実施するとされているが,護岸工事に着手している現時点においても,海草藻場の生育分布状況が明らかに低下してきたと判断する具体的な基準は未だ策定されて いない。沖縄防衛局は,海草藻場の生育分布状況が明らかに低下してきたと判断する具体的な基準について,過去の調査結果の変動範囲を基本に,その範囲から外れた状態が継続しているかどうかを判断材料とするとしているが,「変動範囲」について,過去の調査結果に照らして生育範囲・面積や生育被度に関する 具体的な数値で示すことができるはずであるにもかからわず,これが示されていないし,変動範囲から「外れた状態が継続しているかどうか」についても,その期間として具体的な数値は示されておらず,判断基準として具体的な検討がなされているのか不明である。 ⒝ 生育分布状況低下の判断について環境保全図書には,代替施設の存在に伴い消失する海草藻場に関する措置として,海草類の移植等による生育範囲拡大に関する方法等やその事後調査を行うことについて検討し,可能な限り実施することが記載されているが,沖縄防衛局は,代替施 設等の存在及び供用に係る環境保全措置であるから,埋立て後 の工事の終了後に実施するものであり,工事の実施に先立ち講じるものではないなどとして,未だ環境保全対策を講じていない。しかし,代替施設の存在区域に係る海草藻場は,工事中に消失していくものであるから の工事の終了後に実施するものであり,工事の実施に先立ち講じるものではないなどとして,未だ環境保全対策を講じていない。しかし,代替施設の存在区域に係る海草藻場は,工事中に消失していくものであるから,工事の着手前又は工事中に,埋立区域内の海藻草類の移植を含めた環境保全措置を行う必要 があることは当然である。現時点においても,生育範囲の拡大方法の具体的内容,実施時期を示した全体計画が示されておらず,これに係る原告との協議や具体的な措置の実行には至っていないことからすれば,本件撤回処分時において,沖縄防衛局が,「海藻草類について,環境保全図書の記載に違反して,行う べき環境保全措置又はその検討を行っていない」と評価するに足る十分な理由がある。 e 留意事項4に違反してサンゴ類を事業実施前に移植・移築せずに工事に着手したこと サンゴ移植に係る事前の計画と環境保全措置の現況 沖縄防衛局は,環境保全図書において,事業実施前にサンゴ類を移植・移築することを前提とした記載をしていた上,環境監視等委員会に提出した報告書等においても,これを前提とした記載をしており,沖縄防衛局が事業実施前にサンゴ類の移植・移築を行うことを予定していたことは明らかである。沖縄 防衛局は,工事着工後も護岸工事が相当程度進行した現在に至るまでサンゴ類の移植を行っていないが,この点について,環境保全図書の記載は,あくまで事業実施前にサンゴ類の保護のための専門家等の指導・助言を得ることを記載したものであり,事業実施前のサンゴ類の移植・移築を義務付けることを意味す るものではないなどとして,環境保全図書の変更承認を得てい ない。 ⒝ 環境保全図書に反して工事がなされていることによる環境保全上の問題 ・移築を義務付けることを意味す るものではないなどとして,環境保全図書の変更承認を得てい ない。 ⒝ 環境保全図書に反して工事がなされていることによる環境保全上の問題環境保全措置としての移植は,事業の実施によって失われることになる動植物の個体を,他の生息適地に移植することによ って当該個体の保全を図ろうとする措置であるから,当然,事業の実施によってこれらが失われる前に行う必要がある。とりわけ,サンゴ類については,短期間のうちに環境変化の影響を受ける可能性があり,事業実施前に重要な種等を移植・移動することが通常であるし,埋立区域内のサンゴ類が消失するとい うことのみではなく,工事の実施自体による濁り等の影響も考えられるのであるから,これら工事による影響を回避・低減する措置としても,工事前の移植の実施が求められる。事業実施前にサンゴ類を移植・移築することなく工事を行い,護岸工事を行うことによって,潮流,流速,海水温,栄養塩量等の変化 や底質の変化により,周辺域に分布するサンゴ類に影響が生じるおそれがあり,現に,オキナワハマサンゴに環境保全図書に記載のない新たな対策を講じなければならなくなるほどの影響を生じさせている。 また,本件承認処分に付された留意事項4は,環境保全図書 に変更がある場合には,沖縄県知事の変更承認が必要であることを規定しているところ,上記の沖縄防衛局の措置は,環境保全図書による保全措置について,変更承認申請を行うことなく措置を変更したものであり,留意事項4に違反する。 f 留意事項4に違反してウミボッスを事業実施前に移植・移築せ ずに工事に着手したこと ウミボッス移植に係る環境保全図書の記載と環境保全措置の現況 項4に違反する。 f 留意事項4に違反してウミボッスを事業実施前に移植・移築せ ずに工事に着手したこと ウミボッス移植に係る環境保全図書の記載と環境保全措置の現況ウミボッスは,環境省レッドリスト及びレッドデータおきなわにおいて絶滅危惧Ⅰ類とされており,環境保全図書では,改変区域内に生息する底生動物のうち,主に自力移動能力の低い 貝類や甲殻類の重要な種,必要と判断される海藻類の重要な種については,埋立工事の着手前に,現地調査時に重要種が確認された地点及びその周辺において,可能な限りの人力捕獲を行い,各種の生息に適した周辺の場所へ移動を行う旨記載されているところ,沖縄防衛局は,ウミボッスについては,底生動物 の移植作業と同様に工事実施前に移植するとの見解を述べていた。しかし,沖縄防衛局は,平成29年2月7日に海上工事に,同年4月25日には護岸工事に,それぞれ着手しており,ウミボッスの繁茂期とされる3月上旬から4月上旬の間,ウミボッスを移植することなく,その保全に重大な影響を与えるよ うな工事を次々と実施した。その後,ウミボッスの移植に関しては,平成30年3月28日に,過去の調査で確認したウミボッスの生育位置を踏まえて設定した52地点のうち1地点で,わずかに1個体を発見して移植されたことが報告されているのみである。 ⒝ 環境保全図書に反して工事がなされていることによる環境保全上の問題海藻類の移植には,元々生息していた場所への影響の有無,移植先への影響の有無に係る事前の調査が必要であり,また,移植先での安定的な生育のため,移植先でも世代交代が維持さ れていることを確認する必要がある。また,同種の生物間での 生育場所の違いによる遺 の有無に係る事前の調査が必要であり,また,移植先での安定的な生育のため,移植先でも世代交代が維持さ れていることを確認する必要がある。また,同種の生物間での 生育場所の違いによる遺伝子の差異にも留意する必要もあることから,実効的な移植のためには,工事の開始による影響が生じる前に移植を行うことが重要である。沖縄防衛局は,工事着手前に何らウミボッスの移植を行っていないところ,工事実施前の移植を予定していた環境保全図書の記載と異なる環境 保全措置であることは明らかであり,その変更承認申請を行っていない点で留意事項4に違反するとともに,実際にウミボッスの保全に重大な支障を及ぼしている。 g 環境保全図書に反して傾斜堤護岸用石材を海上搬入したこと沖縄防衛局は,環境保全図書において,傾斜堤護岸用石材の運 搬方法についてはダンプトラックのみを挙げており,海上運搬を行うことは記載されていなかった。ところが,沖縄防衛局は,平成29年11月14日,K-9護岸を使用した海上搬入を実施した。積出場所及び搬入場所のいずれも環境保全図書に記載のないものであって,留意事項4に違反する施工である。このような施 工は,水深の浅い海域に船舶が接近することによる底質の巻き上げ等の新たな環境影響が生じるおそれがある上,ジュゴンの生息域を直接横断することになるから,これらの生物への影響も検討する必要がある。 h 辺野古海域側へフロートを設置したこと 沖縄防衛局は,海藻草類の環境保全措置に関し,濁りの発生量の影響と汚濁防止膜設置による海藻草類等への損傷の可能性を考慮し,状況によっては汚濁防止膜を設置しないとし,辺野古側の護岸・埋立工事に関しては汚濁防止膜を設置しない計画としていたが,フロートは別である 響と汚濁防止膜設置による海藻草類等への損傷の可能性を考慮し,状況によっては汚濁防止膜を設置しないとし,辺野古側の護岸・埋立工事に関しては汚濁防止膜を設置しない計画としていたが,フロートは別であるとして,作業区域の明示,安全確保を 理由に,辺野古海域にフロート及びアンカーを設置した。しかし, 海藻草類の損傷のおそれが生じるのは,フロートを固定するアンカーを海底に設置する場合も同様であるから,フロート及びアンカーを設置するのであれば,環境保全図書の内容を変更してこれに対する十分な環境保全措置をとるべきである。沖縄防衛局の措置は,留意事項4に違反するとともに,辺野古の海域における海 藻草類等の保全に支障を及ぼすおそれがある。 i 変更承認申請を行わず施工順序の変更をなしたこと 願書における施工順序の記載と施工順序の変更埋立承認願書によれば,沖縄防衛局は,護岸工事については,最初にA護岸,中仕切岸壁A・Bが着工され,その約2か月後 にC-1護岸,K-4護岸,K-8護岸,K-9護岸,中仕切護岸N-3・N-4・N-5に着工する施行順序を採用しており,埋立工については,まず埋立区域①から先に行い,埋立区域①の中仕切岸壁にガット船を接岸して土砂を陸揚げし,その土砂をダンプトラックで搬入し,ブルドーザーで巻き出して埋立区 域②を埋め立てるという施工順序を採用していた。ところが,沖縄防衛局は,護岸工事については,平成29年4月25日にK-9護岸に着工したものの,これを途中で中断する一方で,同年11月6日に埋立区域②を取り囲むK-1,N-5護岸に着工,同年12月22日にK-4護岸に着工するなど,承認願 書等の記載とは異なる順序で工事を行っている。また,埋立工については,「埋立区域②につ 6日に埋立区域②を取り囲むK-1,N-5護岸に着工,同年12月22日にK-4護岸に着工するなど,承認願 書等の記載とは異なる順序で工事を行っている。また,埋立工については,「埋立区域②については,現在施工しているK-4護岸の進捗状況や気象・海象の状況等を踏まえつつ,今後,埋立区域①よりも先に具体の埋立工に着手することを予定しております。」と述べて,願書等の記載とは異なり,埋立区域②から 先に埋立工を行うことを明言し,その後このとおり工事を進め ている。 環境影響評価において,工事に伴う環境影響については,工事の各種影響について環境影響評価(調査・予測・評価)を行うが,施行計画,工事工程,重機投入計画などが予測の前提となり,それらを基に環境影響評価を行うことになる。その際は, 全工事工程における環境への影響を予測するのではなく,最も影響が大きくなるピーク時について予測するのが一般的であり,そのピーク時を施行計画等から導き出すことになる。したがって,施行順序が変われば,環境保全対策等策定の前提が変わり,環境保全措置の内容そのものを変更する必要がある。しかし, 沖縄防衛局は,護岸工事について,承認願書等の記載とは異なる順序で護岸工事を行っているにもかかわらず,埋立法13条の2による「設計の概要」の変更承認申請を行わず,かつ環境保全措置の内容を変更しておらず,留意事項4に違反したと認められる。また,埋立工についても,「今回,埋立区域①より先 に埋立区域②の埋立工を行うこととしておりますが,願書に添付された環境保全に関して講じる措置を記載した図書に記載された環境保全措置を変更して,当該埋立工を行う予定はありません。」とし,承認願書等の記載とは異なる順序で埋立工を行うことを明らかにしながら 付された環境保全に関して講じる措置を記載した図書に記載された環境保全措置を変更して,当該埋立工を行う予定はありません。」とし,承認願書等の記載とは異なる順序で埋立工を行うことを明らかにしながら,環境保全措置の内容を変更する予定 はないことを明言しており,埋立法13条の2に基づく変更承認申請が行われる見込みはないとともに,留意事項4に違反することが確実な状況となっている。 ⒝ 施工順序の変更による環境への影響が懸念されること環境保全措置の内容を変更せずに,承認願書等の記載とは異 なる順序で護岸工事や埋立工事を行った結果,工事実施期間中 において,海岸地形の変更に伴い潮流に変化が生じることが容易に推測され,これにより水中の環境や存在する物質,生物の動態に変化を及ぼすおそれがあり,施工順序の変更に伴った環境影響評価のやり直しをしなければ,その環境保全への支障を十分に防ぐことはできない。沖縄防衛局は,施工順序の変更は 設計の概要を変更するものではないし,環境負荷を増加させる見込みもないから,環境保全に関する措置を変更する必要はないとするが,いずれも具体的な根拠に基づくものではなく,失当である。 j 小括 以上のとおり,沖縄防衛局は,留意事項2に基づく事前協議が調わないまま,これに違反した状態で工事を強行しており,また,留意事項4に基づく環境保全図書の変更承認を得ないまま留意事項4に違反して工事を強行しているのであって,このような工事により,前記各事項につき,環境保全上の支障が生じることは 明らかである。したがって,「環境保全ニ付十分配慮セラレタルモノナルコト」という基幹的な要件の事後的消滅に至っているものと認められる。そして,原告による再三の指導に対して,沖縄防衛局 とは 明らかである。したがって,「環境保全ニ付十分配慮セラレタルモノナルコト」という基幹的な要件の事後的消滅に至っているものと認められる。そして,原告による再三の指導に対して,沖縄防衛局は,協議を行うことなく工事を継続しており,上記基幹的な要件が失われている状態を是正する意思が無いことは顕著であ る。こうした状態で沖縄防衛局が工事を強行することにより,現に公益が脅かされていることから,本件承認処分により沖縄防衛局に付与された地位を存続させることは相当ではなく,本件撤回処分は適法である。 (被告の主張) 認否の要を認めない(ただし,原告の主張を認める趣旨ではない。)。 ⒀ 本件撤回処分が職権取消処分制限法理による制約を受けるか(争点⑵イ (原告の主張)ア撤回制限法理に係る本件撤回処分の理由の要旨行政行為に瑕疵がある場合(事後的に瑕疵が生じた場合を含む。)や法 律上の義務に違反しているなどの違法状態がある場合には,法律による行政の原理に基づき行政庁はこれを是正するのが大原則である。撤回制限法理は,あくまでも行政に依存する私人の信頼保護のための例外的法理であるから,法律による行政の原理の下,積極的に法令を遵守し適法な法状態を主体的に形成することが義務付けられている国やあるいは その機関が,撤回制限法理を主張することは許されない。また,撤回制限法理は,財産権の取得,取消時までの財産的給付の保持,取消時以前の時期に係る金銭請求等に関して認められてきた法理であり,公益保護のために事業について免許や資格を要求している場合について違法に付与された免許や資格に基づく事業を将来にわたって継続させること を根拠づけるものではない。さらに,本件では,沖縄防衛局の 益保護のために事業について免許や資格を要求している場合について違法に付与された免許や資格に基づく事業を将来にわたって継続させること を根拠づけるものではない。さらに,本件では,沖縄防衛局の提出した設計概要説明書の記載や承認審査段階における土質についての沖縄防衛局の回答が実際の土質と異なることが判明したことや本件承認処分に付された留意事項を沖縄防衛局が遵守しないことなど,撤回理由が沖縄防衛局に起因しており,沖縄防衛局が留意事項に違反して強行した工 事にかかる支出を損害として主張していることからすれば,沖縄防衛局には撤回制限法理による要保護性も認められない。加えて,沖縄防衛局は国際社会における信頼の低下なども主張するが,沖縄防衛局が撤回制限法理の根拠として主張し得る利益ではないし,かかる主張についての実証的根拠も認められない。 イ撤回制限に係る本件裁決が誤っていること 撤回を制限する理由の欠如本件裁決理由は,撤回制限について,「行政処分については,法律関係尊重の要請は無視できず(これは国の機関が処分の名宛人となる場合であっても同様である。),これを容易に撤回することはできないものと解される。本件承認は,長期間の調整の結果としてされ,かつ, 漁業権者などの利害関係者のみならず,大規模な埋立てとして多数の工事関係者も関与し,しかも,普天間飛行場の周辺住民等の生命・身体に対する危険性除去のためにされたものであるから,このような本件撤回の対象である本件承認の性質,内容からすれば,これを容易に撤回することはできないというべきである。また,その撤回によって 被る審査請求人の経済的不利益についても約920億円に上るなど,審査請求人の被る不利益も重大であるといえる。…本件撤回は許されない することはできないというべきである。また,その撤回によって 被る審査請求人の経済的不利益についても約920億円に上るなど,審査請求人の被る不利益も重大であるといえる。…本件撤回は許されないと解すべきである。」とする。 しかし,上記理由は,撤回制限法理が適用される根拠は一切示されていない上,本件撤回処分に付した理由について何らの判断も示して おらず,理由の体をなしていない。 国が撤回制限法理を主張することは許されないこと法的安定性とは,あくまで,私人の行政に対する依存性を前提に,私人の自由の前提をなすものとして,私人が信頼をする対象であり,そうであるからこそ,法律による行政の原理を制限しても,処分の効 力を維持すべき場合があるとされる。他方,国は基本的人権の享有主体ではないし,法律による行政の原理の遵守を求められる存在である。 行政の行為に依存し,処分を前提に生活設計を行い,保護される場合が認められるべき私人とはその立場が異なる。撤回制限法理は,私人の行政に対する信頼を保護するものであって,国はかかる法理の対象 ではない。 撤回制限法理の適用を前提としても本件撤回処分は制限されないことa 辺野古新基地建設についての特別な公益の有無普天間飛行場には米海兵隊の第36海兵航空群が駐留しており,辺野古新基地は,第36海兵航空群の移駐先として建設されるもの であるが,第36海兵航空群は,元々沖縄県内に駐留していたものではなく,昭和44年に厚木飛行場から移駐したという経緯がある。 そして,その中では,軍事的理由からは閉鎖が検討されていた普天間飛行場について,日本の首都圏の米軍航空機騒音等の軽減の必要という政治的事情のために,第36海兵航空群のホームベースとさ 緯がある。 そして,その中では,軍事的理由からは閉鎖が検討されていた普天間飛行場について,日本の首都圏の米軍航空機騒音等の軽減の必要という政治的事情のために,第36海兵航空群のホームベースとさ れたという経緯がある。したがって,第36海兵航空群の駐留先が沖縄県でなければならないとする地理的必然性はない。また,沖縄への海兵隊駐留や在日米軍基地の沖縄への一極集中という構造は,日本本土の反米軍基地感情の沈静化という政治的課題の解決のため,1950年代の日本本土に駐留していた海兵隊の沖縄への移駐 と沖縄における「銃剣とブルドーザー」による新基地建設,第36海兵航空群の厚木基地の騒音軽減のための普天間飛行場移駐などの日本の首都圏の航空機部隊の沖縄への移駐など,基地負担の沖縄へのしわ寄せによって形作られたものである。 沖縄防衛局は,在日米軍の抑止力の重要性,沖縄の地理的優位性, 国外・県外移設では機動性・即応性を維持できないことなどを強調するが,これらについて実証的根拠は示されていない。かえって,沖縄には揚陸艦の母港となる海軍基地が存在しないことからすると,沖縄は航空機が空母へ乗船する地点にすぎず,沖縄に海兵隊航空基地が存在しなければならない合理的根拠は存せず,普天間飛行 場駐留部隊の機能・実態からしても,沖縄県内への駐留に地理的必 然性は認められない。 以上のとおり,第36海兵航空群の駐留先が沖縄県でなければならないという地理的必然性はなく,辺野古唯一を根拠として辺野古に普天間飛行場に代わる新基地を建設することについて,特別に高度な公益性は認められない。 b 普天間飛行場の危険性除去の必要性との関係普天間飛行場の存在によって周辺住民に被害・負担が生じていること,戦前 を建設することについて,特別に高度な公益性は認められない。 b 普天間飛行場の危険性除去の必要性との関係普天間飛行場の存在によって周辺住民に被害・負担が生じていること,戦前は集落が存在し宜野湾の中心であった場所に普天間飛行場という軍事基地が存在していることにより地域振興開発が阻害されていることは事実であり,これの解決が必要であることそれ自 体は論を俟たない。しかし,そのことから,辺野古新基地建設の必然性が導かれるものではない。 本件埋立事業は,沖縄県内でも前例もないような大規模なもので,本件埋立事業により普天間飛行場周辺の被害・負担の解決を図るということは,いつまでとも知れない長い年数にわたって,普天間飛 行場周辺の被害・負担が固定化されることを意味する。加えて,平成25年12月の本件承認処分から5年半余を経過した時点でも実施設計すら示されていないという,承認時には想定もできなかった事態となっており,その原因が,埋立対象区域の海底地盤が本件埋立承認時において想定もできなかったような土質であったこと にあることは明らかである。承認の対象である「設計の概要」に従って埋立てを完成させることができないことは明らかであり,仮に「設計の概要」変更により対応することが可能であるとしても,軟弱地盤対策工事の実施設計にどれだけの年数を要するのか,実施設計が完成した後の軟弱地盤対策工事にどれだけの年数を要するの かも定かではなく,承認時には想定できなかった長い年数を要する ことが明らかとなっている。 上記のとおり,辺野古新基地を完成させることができるか否かすら不明であり,仮に設計変更により完成をさせることができるとしても完成までにどれだけの歳月を要するのか確かな予測すらでき いる。 上記のとおり,辺野古新基地を完成させることができるか否かすら不明であり,仮に設計変更により完成をさせることができるとしても完成までにどれだけの歳月を要するのか確かな予測すらできないことに照らせば,本件埋立事業による新基地建設後に普天間飛 行場駐留部隊を移駐させるとするならば,辺野古新基地建設を普天間飛行場の危険性の除去の手段として位置付けることは,喫緊の課題への対応とは到底いえない。 c 辺野古新基地建設は沖縄県への過重な基地負担を将来にわたって固定化するものであること 日本の国土面積のわずか0.6%にすぎない狭い沖縄県に,在日米軍専用施設面積の70%を超える広大な面積の米軍専用施設が存在し,米軍基地は,県土面積の約8.3%を占め,とりわけ,人口や産業が集中する沖縄島においては,約14.7%を米軍基地が占めている。 沖縄県の経済に占める米軍基地関連収入は,1950年代は50%を超え,復帰前の昭和40年度には30.4%であったが,本土復帰後,低下を続け,1970年代には10%台となり,平成26年度には5.7%まで低下し,最近は5%台で推移している。沖縄の経済が米軍基地に依存しているというのは完全な誤解であり, アジアのダイナミズムの拡大により,潜在可能性が拡大し成長を続ける沖縄にとって,米軍基地の存在は経済発展の最大の阻害要因であり,米軍基地の返還により民間の市場経済へ転換することが重要な課題となっている。米軍基地の存在自体が基地用地の利用により経済効果をあげる機会を喪失させているのであり,米軍基地の存在 は,沖縄県における健全な経済振興の最大の阻害要因となっている。 また,国は,駐留米軍には日本国内法令が適用されないとする解釈の下に運用 させているのであり,米軍基地の存在 は,沖縄県における健全な経済振興の最大の阻害要因となっている。 また,国は,駐留米軍には日本国内法令が適用されないとする解釈の下に運用をしており,日米地位協定による排他的管理権などの米軍の特権が認められていることから,地方公共団体からすれば,米軍基地とは,事実上自治権の及ばない地域,存在である。すなわち,県土面積の8%以上にも及ぶ地域について自治権が奪われてい ることになり,巨大な自治権の空白地帯となっている。このような米軍基地の存在は,都市形成や交通体系の整備並びに産業基盤の整備など地域の振興開発を図る上で大きな障害となっている上,沖縄周辺には,28か所の水域と20か所の空域が米軍の訓練区域として設定されるなど,陸地だけでなく,海,空の使用も制限されてお り,米軍基地の存在は,均衡ある発展・国土利用を直接的に制約している。 そのほか,広大な米軍基地の存在は,県民生活や自然環境に様々な影響を及ぼしており,とりわけ,日常的に発生する航空機騒音による基地周辺住民の健康への影響,有害物質による土壌汚染・水質 汚濁,戦闘機・ヘリコプター等米軍機の墜落事故,油脂類・赤土等の流出,実弾演習による山林火災や被弾事故等,米軍基地に起因する事件・事故等による県民生活及び環境への影響が問題となっている。 今日新たに沖縄県内に恒久的な米軍基地を建設することは,全国 の在日米軍専用施設の約70.4%を抱える沖縄県において米軍基地の固定化を招く契機となり,基地負担について格差や過重負担の固定化につながるものであって,国土利用を阻害するという側面を有する。 d 代替性のない自然環境を不可逆的に喪失させる不利益 沖縄諸島は,遅くとも2 担について格差や過重負担の固定化につながるものであって,国土利用を阻害するという側面を有する。 d 代替性のない自然環境を不可逆的に喪失させる不利益 沖縄諸島は,遅くとも200万年前頃には既に大陸からのみなら ず,九州地方からつながる区域とは隔絶され,以降他の陸地と地続きになったことのない地域であることから,古い時代の生物相が非常によく保存されている地域である。それゆえ,他の地域では環境の変化等によって絶滅してしまった生物系統が生き残り固有種として進化を遂げた。そのような生物的な特徴を有する沖縄諸島にお いても,本件埋立事業の対象地域である辺野古崎・大浦湾は,ほかにみられない特有の地理的環境を有しており,その特徴的な地理的環境において,希少な生物が多様に生息する国内でもここでしかみられない極めて特徴的な生態系を有している。 総量約2100万㎥もの土砂を投下する本件埋立事業は,この貴 重な自然環境を直接的・不可逆的に喪失させるという側面を有する。 そして,辺野古崎・大浦湾の自然環境は人類の歴史をはるかに超える長い年月をかけて形成された代替性のないものであるところ,これを埋め立ててしまえば,いかに高額な費用を投じても二度と復元することはできない。このようなかけがえのない辺野古崎・大浦湾 の自然環境は,国土利用の上でも最大限尊重されるべきであるが,本件埋立事業は,このような代替性,復元性のない貴重な環境価値を犠牲にするものである。 e 辺野古新基地建設に対する県民の民意平成20年頃以降の沖縄県知事選挙,沖縄県議会議員選挙,衆院 議員選挙,名護市長選,名護市議会議員選挙及び参議院議員選挙の各結果に照らせば,辺野古新基地建設に反対し,普天間飛行場の県外移設を求めるとい 頃以降の沖縄県知事選挙,沖縄県議会議員選挙,衆院 議員選挙,名護市長選,名護市議会議員選挙及び参議院議員選挙の各結果に照らせば,辺野古新基地建設に反対し,普天間飛行場の県外移設を求めるという沖縄県民の民意が繰り返し示され続けてきたということができ,本件撤回処分は,かかる沖縄県民からの負託を受けてなされたものである。かかる民意は本件撤回処分後も変わ らず,平成31年2月24日に行われた「普天間飛行場の代替施設 として国が名護市辺野古に計画している米軍基地建設のための埋立て」の賛否を問う県民投票では,投票総数60万5385票のうち7割を超える43万4273票が反対という結果であったことなど,沖縄県の民意は本件撤回処分を支持している。このような沖縄県民の民意に反して,在日米軍基地が一極集中する沖縄県に新た に恒久的・本格的基地を建設してさらに将来にわたって沖縄に米軍基地を固定化し,日本国内における米軍基地の極端な偏在,一地域の著しい過重負担維持・固定化することは,正義公平の観念,平等原則に反し,地方自治の本旨の保障に悖るものである。 f 本件撤回処分は公益上の要請に基づくこと 本件撤回処分の事由は,「国土利用上適正且合理的ナルコト」の要件の欠缺,「災害防止ニ付十分配慮」という要件の欠缺やこの要件の充足を担保するための留意事項の不履行,「環境保全ニ付十分配慮」という要件の欠缺であるところ,本件承認処分の効力を存続させることにより,原告における国土利用の適正で健全な経済発展等が阻 害され,人の生命・身体・財産等が重大な脅威にさらされ,代替性のない大浦湾の貴重な自然環境が脅かされることになり,本件承認処分の効力を存続させることによる重大な公益侵害が認められるものであるから 害され,人の生命・身体・財産等が重大な脅威にさらされ,代替性のない大浦湾の貴重な自然環境が脅かされることになり,本件承認処分の効力を存続させることによる重大な公益侵害が認められるものであるから,本件承認処分の効力を消滅させるべき公益上の必要性は極めて高い。 g 沖縄防衛局には正当な信頼ないし信頼保護法理の主張適格は認められないこと沖縄防衛局による事実と異なる説明や,国が事実を明らかにしなかったことによって本件承認処分がなされたものということができ,また,沖縄防衛局は,設計概要説明書に示された土質条件と実 際の土質が異なり,設計概要説明書に示された設計では護岸の安全 性を確保できないことを認識しながら,この土質についての事実を明らかにせず,本件承認処分に付された留意事項に違反して工事に着工し,原告が工事を停止して留意事項を遵守するように指導してもこれに従わずに工事を強行し続けてきたものであるから,沖縄防衛局には本件承認処分の効力が存続することについての正当な信 頼ないし信頼保護法理を主張する適格は認められない。 h 小括以上により,仮に撤回制限法理が適用されるとしても,沖縄防衛局の本件承認処分の有効性に対する信頼保護の必要性と本件承認処分の効力を消滅させることの公益上の必要性を衡量すれば,本件 承認処分の効力を消滅させるべき公益上の必要性がより高いといえるから,撤回制限法理による本件撤回処分の制限は認められない。 (被告の主張)認否の要を認めない(ただし,原告の主張を認める趣旨ではない。)。 第3 当裁判所の判断 1 本件訴えの法律上の争訟該当性(争点⑴ア)について⑴ 行政事件を含む民事事件において裁判所がそ の要を認めない(ただし,原告の主張を認める趣旨ではない。)。 第3 当裁判所の判断 1 本件訴えの法律上の争訟該当性(争点⑴ア)について⑴ 行政事件を含む民事事件において裁判所がその固有の権限に基づいて審判することのできる対象は,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」,すなわち当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって,かつ,それが法令の適用により終局的に解決することができ るものに限られる(最高裁判所昭和56年4月7日第三小法廷判決・民集35巻3号443頁参照)。そして,国又は地方公共団体が提起した訴訟であって,財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるような場合には,法律上の争訟に当たるというべきであるが,国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を 求める訴訟は,法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするもの であって,自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから,法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではなく,法律に特別の規定がある場合に限り,提起することが許されるものと解するのが相当である(平成14年最高裁判決参照)。 これを本件についてみると,原告は,沖縄県知事が沖縄防衛局に対して した本件撤回処分を取り消した本件裁決の取消しを求めているところ,本件撤回処分が,埋立法が沖縄県知事に委ねた国(沖縄防衛局)による埋立てに対する承認権限(埋立法42条1項)に基づくものであることに照らせば,本件訴えは,原告が,沖縄県知事による埋立法上の承認権限の行使すなわち本件承認処分が事後的に承認要件を欠くに至ったことを理由に これを撤回したこと(本件撤回処分)が適正であったと主張して せば,本件訴えは,原告が,沖縄県知事による埋立法上の承認権限の行使すなわち本件承認処分が事後的に承認要件を欠くに至ったことを理由に これを撤回したこと(本件撤回処分)が適正であったと主張して,埋立法42条1項所定の承認権限(及びそれに基づく撤回権限)の回復を求めるものであるといえるから,自己の主観的な権利利益の保護救済を求める訴訟ではなく,埋立法という法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とした訴訟であるといえる。したがって,本件訴えは法律上の争訟に当た らないものというほかない。 原告は,行政法領域における行政上の「法律関係の存否」に関する紛争も「法律上の争訟」に該当すると主張するが,同主張によれば,法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とした訴訟をも法律上の争訟に含まれる結果となり,前記平成14年最高裁判決に抵触するものとして失当 である。 ⑵ 原告は,①本件訴えは,平成14年最高裁判決とは事案を異にするものである上,公物管理権の保護救済をも求めて提起したものであるから,平成8年最高裁判決と同様,平成14年最高裁判決は妥当しない,②平成14年最高裁判決の法律上の争訟概念には問題があるところ,その判示を拡 張的に解釈して法律上の争訟概念を捉えることは誤りであるから,これを 本件に当てはめることはできない,③公権に基づく主観訴訟が認められるべきであるなどと主張することから,以下,これらの主張について検討する。 ア上記①の主張について原告は,本件訴えは国を被告とする抗告訴訟であって,国民に対し て提起されたものではなく,行政上の義務の履行を求める訴訟でもないから,本件訴えは平成14年最高裁判決の射程外である旨主張する。 しかし,平成14年最高裁判決は,国又は地方公共団体が原告 し て提起されたものではなく,行政上の義務の履行を求める訴訟でもないから,本件訴えは平成14年最高裁判決の射程外である旨主張する。 しかし,平成14年最高裁判決は,国又は地方公共団体が原告又は申立人となる争訟において,自己の財産上の権利利益の保護救済を求める場合は法律上の争訟に当たるが,法規の適用の適正ないし一般公 益の保護を目的とする場合は法律上の争訟に当たらないことを明らかにしたものと解されるのであり,特に当該事案において争訟の相手方が個々の国民であるという点に着目して法律上の争訟性を否定したものとは考えにくいから,国又は地方公共団体という行政主体を被告として提起するか国民を被告として提起したものであるかにかか わらず,当該訴訟の目的が,行政権が自己の主観的な権利利益に基づき保護救済を求めるものではなく,専ら行政の主体という立場において法規の適用の適正ないし一般公益の保護を求めるものである場合において,法律上の争訟性を否定したものと解される。 したがって,本件訴えが,「国民に対して行政上の義務の履行を求め る訴訟」でないことを理由として,平成14年最高裁判決の射程が及ばないとする原告の上記主張は採用することができない。 原告は,平成8年最高裁判決が地方公共団体による公物管理権に基づく訴えについて財産上の権利利益に基づく訴えに準じて法律上の争訟に当たる旨の判断をし,平成14年最高裁判決も同判断を否定し ていないところ,本件訴えは,公有水面に係る公物管理権の保護救済 をも求めるものとして,平成8年最高裁判決の事例と同様に法律上の争訟性が認められると主張する。 共団体が原告又は申立人となる争訟について,法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とする場合には法律上の争訟に当たらない 8年最高裁判決の事例と同様に法律上の争訟性が認められると主張する。 共団体が原告又は申立人となる争訟について,法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とする場合には法律上の争訟に当たらない ことを明らかにしたものであり,地方公共団体による公物管理権に基づく訴えについても,その目的が法規の適用の適正ないし一般公益の保護にあると認められる限りは法律上の争訟に該当しないものと解するのが相当である。この点,平成8年最高裁判決は,市が市道の機能管理権のみならず財産管理権(所有権又は占有権を根拠とする管理 権)を有していたことに着目して,市の請求は,財産上の権利利益の保護救済を求めるものとして,法律上の争訟性を認めたものと解されるのであるから,本件訴えとは事案を異にするものである(なお,最高裁平成18年2月21日第三小法廷判決・民集60巻2号508頁は,道路管理権を根拠に民事上の請求をすることはできないことを前 提として,道路管理者がその占有権に基づいて妨害予防請求をし得る場合に法律上の争訟性を認めている。)。したがって,平成8年最高裁判決の存在をもって,本件訴えが法律上の争訟に当たるとする原告の主張は採用することができない。 イ前記②の主張について 原告は,法律上の争訟に関する被告の解釈は,法律上の争訟の概念に「私権保護の目的による訴訟提起」という新たな要素を加えたものであり,そのような解釈は誤りであると主張するが,原告が上記主張の根拠として指摘するところは,いずれも平成14年最高裁判決と異なる立場に基づく原告独自の主張であり採用することができない。 原告は,平成14年最高裁判決の法律上の争訟概念については,刑 事事件が法律上の争訟に当たることを説明できない点,同判決によれば,同一の処 自の主張であり採用することができない。 原告は,平成14年最高裁判決の法律上の争訟概念については,刑 事事件が法律上の争訟に当たることを説明できない点,同判決によれば,同一の処分に対する取消訴訟が,私人である名宛人が提起すれば法律上の争訟となり,逆の場合は法律上の争訟に含まれないことになり,片面的な法律上の争訟を認める点で不当であるとも主張する。 しかし,平成14年最高裁判決は,行政事件を含む民事事件につい ての判断を示したものであって,刑事事件との関係で法律上の争訟該当性について判断をしたものではないから,原告の主張はその前提において失当である。また,片面的な法律上の争訟を認めることになるとする点については,行政権がもっぱら行政権の主体としての地位に基づき,法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的として訴訟を 提起する場合には,憲法32条の裁判を受ける権利が保障されるものとはいえないのであって,その結果,抗告訴訟が原告主張のような片面的な訴訟となるとしても,憲法上の問題が生ずるとまではいえない。 ウ前記③の主張について原告は,公権に基づく取消訴訟の法律上の争訟性を認めた判例として, 昭和37年最高裁判所判決を挙げるものの,同判決は土地調整委員会設置法49条1項(昭和37年法律第140号による改正前のもの)に基づく裁定取消訴訟に対するものであり,これは,行政機関が一般公益の保護を目的として提起することが特に法律により認められる場合に当たるから,当該事例をもって,公権に基づく主観訴訟が一般的に許容さ れるものとはいい難い。 ⑶ 以上によれば,本件訴えは法律上の争訟に該当しないから,これを特に認める旨の法律がない限りは,不適法なものとして許されない。 2 行訴法3条3項に基づく 容さ れるものとはいい難い。 ⑶ 以上によれば,本件訴えは法律上の争訟に該当しないから,これを特に認める旨の法律がない限りは,不適法なものとして許されない。 2 行訴法3条3項に基づく裁決取消訴訟としての適法性について原告は,行訴法3条3項に基づく裁決取消訴訟として本件訴えを提起して おり,同規定が自治権に基づく取消訴訟を認めるものであると主張するとこ ろ,同主張は,本件訴えが法律上の争訟に該当しないとしても,行訴法3条3項が本件訴えのような自治権に基づく取消訴訟を認める「特別の規定」に当たるとの趣旨であると解される。そこで,以下,本件訴えが行訴法3条3項に基づく裁決取消訴訟として適法といえるか検討する。 ⑴ 本件裁決の処分性(争点⑴イ)について 本件裁決の処分性について検討するに,原告は,本件裁決に処分性が認められることを当然の前提とするところ,被告は,本件裁決は,原告との関係ではその権利利益に影響を及ぼすものではないから,処分性を有しないと主張する。 しかし,行政処分とは,「公権力の主体たる国または公共団体が行う行為 のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう」(最高裁判所昭和39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁参照)ところ,本件裁決は,本件撤回処分を受けた沖縄防衛局が行った本件審査請求に対し,本件撤回処分を取り消す旨の処分であるから,私人としての沖縄 防衛局の権利義務に変動を及ぼすものであって,沖縄防衛局を名宛人とする行政処分であることは明らかである。被告は,これとは別に,原告との関係での本件裁決を観念するようであるが,審査請求に対する裁決はあくまで審査請求人に対する処分であって, て,沖縄防衛局を名宛人とする行政処分であることは明らかである。被告は,これとは別に,原告との関係での本件裁決を観念するようであるが,審査請求に対する裁決はあくまで審査請求人に対する処分であって,これによる拘束力等が原処分庁に及ぶこと(行審法52条1項参照)は格別,さらに原処分庁に対する何ら かの行政行為を観念する余地はない。そして,本件訴えは,審査請求人たる沖縄防衛局に対する行政処分としての本件裁決の取消しを求めるものであり,名宛人ではない原告について,本件裁決の取消訴訟に係る原告適格の有無が問題となることはともかく,本件裁決が処分性を有することは明らかであるというべきである。 ⑵ 原告適格の有無(争点⑴ウ)及び行訴法3条3項の取消訴訟の性質(争 点⑴エ)についてア原告は,行訴法には,抗告訴訟について,私人が主観的権利利益の保護を目的として利用する場合に限って提起を認める趣旨は読み取れないし,憲法が保障する地方自治の本旨を実効あらしめるためにも,裁決により自治権が侵害された場合には,自治権に基づいて裁決取消訴訟を 提起することができると解するべきであり,行訴法3条3項はこのような裁決取消訴訟を認めていると主張する。 この点,行訴法は,行政事件訴訟として,抗告訴訟(行訴法3条),当事者訴訟(同法4条),民衆訴訟(同法5条)及び機関訴訟(同法6条)を定めているところ,同法9条や42条を始めとする行訴法の諸規定に 照らせば,これらのうち,抗告訴訟及び当事者訴訟については,当事者が自己の権利利益の実現のために提起する訴え,すなわち法律上の争訟として認められる訴えについて,行政事件における特別の訴訟形式として規定したものであり,他方,民衆訴訟及び機関訴訟については,当事者の主観的な権利利益の実 のために提起する訴え,すなわち法律上の争訟として認められる訴えについて,行政事件における特別の訴訟形式として規定したものであり,他方,民衆訴訟及び機関訴訟については,当事者の主観的な権利利益の実現のための訴えではなく,客観的な法秩序の 適正を維持するために特に法令によって有権者や行政機関等に訴訟提起を認める訴えについての規定を定めたものと解するのが相当である。 すなわち,行訴法9条は,取消訴訟を提起することのできる資格について,「当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者」に限定しているところ,これは,取消訴訟が,違法な行政活動に よって権利利益を侵害された者の当該権利利益を保護することを目的とするいわゆる主観訴訟であることを宣言したものと解するのが相当であり,行訴法42条は,民衆訴訟及び機関訴訟は,裁判所法の「法律上の争訟」に該当せず,「その他法律において特に定める権限」(裁判所法3条)に属する訴訟,すなわちいわゆる客観訴訟として,法律に定め る場合においてのみ提起でき,出訴権者も法律に定めたものに限られる ことを明確にしたものと解される。 イ以上によれば,行訴法3条3項の裁決取消訴訟は,違法な裁決により権利利益を侵害された者の主観的な権利利益を保護するための訴訟であると解されるから,法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的としてこれを提起することは想定されていないといわざるを得ない。した がって,法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的として裁決の取消しを求める者は,行訴法9条にいう「法律上の利益を有する者」に当たらず,行訴法3条3項の裁決取消訴訟に係る原告適格が認められない。 そして,既に認定・判示したとおり,本件訴えは,沖縄県知事による埋立法上の承認権限の行使が適 いう「法律上の利益を有する者」に当たらず,行訴法3条3項の裁決取消訴訟に係る原告適格が認められない。 そして,既に認定・判示したとおり,本件訴えは,沖縄県知事による埋立法上の承認権限の行使が適正であったと主張してその回復を求め るものであり,埋立法の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とした訴訟であると解される以上,原告は,本件裁決について,行訴法3条3項所定の取消訴訟を提起する適格を欠くものというほかない。 ウこれに対し,原告は,自らは本件裁決の名宛人ではないが,その法効果が及ぶ者,いわゆる準名宛人に当たるから,当然に裁決取消訴訟の原 告適格が認められる,一般に取消訴訟は主観訴訟であるとしても,取消訴訟における主観訴訟と客観訴訟の区別は極めて相対化しているのであるから,かかる観点から原告適格を制限するのは相当ではないなどと主張する。 しかし,一般的に,処分又は裁決の名宛人ではないとしてもその法効 果が及ぶ者にその取消訴訟の原告適格が認められる根拠は,当該処分又は裁決の法効果が及ぶことによって,その法効果による主観的な権利利益の侵害があると考えられることにあるから,処分又は裁決の名宛人以外の者に対してその法効果が及ぶとしても,その効果による主観的な権利利益の侵害がなく,法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的と して裁決の取消しを求める場合には,原告適格は認められないものとい うべきである。 また,行訴法9条は原告適格について単に「当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者」と定めるのみであるが,取消訴訟の性質を含む行訴法全体の規定に鑑みれば,ここにいう「法律上の利益」が主観的な権利・利益を指すものと解すべきことは前記アで摘 示したとおりである。そして,裁決取消 と定めるのみであるが,取消訴訟の性質を含む行訴法全体の規定に鑑みれば,ここにいう「法律上の利益」が主観的な権利・利益を指すものと解すべきことは前記アで摘 示したとおりである。そして,裁決取消訴訟が,違法な裁決によって主観的な権利・利益を侵害された者を保護するための訴訟として機能するのみならず,違法な処分又は裁決が取り消されることによって,行政の客観的な適法性を確保するという機能を有することは否定し得ないとしても,このことをもって,主観的な権利利益の保護救済とは独立して, 行政の客観的な適法性確保のみを目的とした裁決取消訴訟が許されるものとは解し得ず,これに反する原告の上記主張は採用することができない。 エ原告は,憲法が地方自治の制度を定め,これを保障している以上,本件のように国家の関与により地方公共団体の自治権が侵害された場合 には,これを是正するための抗告訴訟が認められるべきであり,自治権を侵害された場合における司法上の救済手段が制度上存在していなければならないと主張する。 この点,都道府県知事の埋立法2条,42条に基づく免許・承認事務は,自治法2条9項1号所定の法定受託事務とされているところ(埋立 法51条1号),自治法は,同法255条の2において,法定受託事務に関する都道府県知事の処分等について不服のある者が,所管大臣に対して審査請求をすることができる旨を規定する一方,審査請求に対する裁決について,処分等をした都道府県知事の属する地方自治体に不服がある場合でも,当該裁決が行審法上適法な裁決であると認められる限りは, これを国の関与として扱わず(自治法245条3号括弧書き),その結果, 国地方係争処理委員会による審査(同法250条の13・14),さらには関与の取消しの訴え(同法251 る限りは, これを国の関与として扱わず(自治法245条3号括弧書き),その結果, 国地方係争処理委員会による審査(同法250条の13・14),さらには関与の取消しの訴え(同法251条の5)による司法上の救済がされないことになる(最高裁判所令和2年3月26日第一小法廷判決・裁判所時報第1745号9頁参照)。そして,行審法上適法とされる裁決について,処分等をした都道府県知事の属する地方自治体に不服がある場合 において,地方自治体の側から提起する抗告訴訟が行訴法上の取消訴訟として不適法とされるのであれば,結局,原告は,本件裁決を司法上争う手段がないことになる。 しかし,都道府県知事が法定受託事務に係る処分等を行い,当該処分について審査請求がされた場合には,処分等をした都道府県知事の属す る地方自治体としては,行審法の手続に従い,当該審査請求の当否を争う機会が与えられているのである。そして,自治法が行審法上の裁決を国の関与として扱わないものとした趣旨は,国においてその適正な処理を特に確保する必要があるという(第一号)法定受託事務の性質を踏まえつつ,私人の権利利益の救済を重視して審査請求を認めることとした 上,審査請求の手続が紛争解決のために行われる準司法的な手続であることに鑑み,審査請求に対する裁決がされた場合に,処分を受けた私人が行訴法に基づく抗告訴訟を提起することができることは格別,処分をした地方自治体において,さらに裁決についての関与取消訴訟の提起等を認めないとしても,地方自治体の権利利益の保護に欠けるものではな く,かえってこれを認める場合には,いたずらに処分の相手方である私人を不安定な状態におくこととなり,紛争の早期解決に資さないと考えられることによるものと解される。 また,本件において はな く,かえってこれを認める場合には,いたずらに処分の相手方である私人を不安定な状態におくこととなり,紛争の早期解決に資さないと考えられることによるものと解される。 また,本件において原告が侵害されたと主張する自治権の内容は,沖縄県知事の埋立法に基づく免許・承認に係る権限であるところ,埋立法 51条1号が埋立ての免許・承認事務を自治事務ではなく,法定受託事 務とした趣旨は,公有水面は国の所有に属するものであるから(埋立法1条1項),本来,公有水面に対する支配管理権能の一部として,国は自らの判断により公有水面の埋立てをする権能を有しているものであるが,埋立てにより周囲に生ずる支障の有無及びそれに伴う利害状況の調整,埋立工事に伴う弊害の防止策等については,その地方の実情に詳し い都道府県知事に審査させることが妥当であると考えたことによるものと解される。このように,都道府県知事による埋立法に基づく免許・承認事務は,本来,公有水面を所有する国において果たすべき役割に係るものであり(自治法2条9項1号参照),埋立法47条が政令により知事の権限を行使するに際し国土交通大臣の認可を要することとする事 由を定めていることも考慮すれば,埋立ての免許・承認事務が地方の実情に通暁した都道府県知事の判断に委ねられた趣旨に基づき,都道府県知事の判断が尊重されるべきであることは当然であるとしても,埋立の免許・承認事務が憲法上,地方自治体に認められた固有の自治権に含まれるものとは解されないのであるから,都道府県知事の処分等に対する 裁決に対し,地方自治体の側から抗告訴訟を提起することができないことが,地方自治体に認められた自治権を侵害するものとして,違憲ないし違法であるとまではいえない。 4 小括以上によ 裁決に対し,地方自治体の側から抗告訴訟を提起することができないことが,地方自治体に認められた自治権を侵害するものとして,違憲ないし違法であるとまではいえない。 4 小括以上によれば,その余の争点について判断するまでもなく,本件訴えは不適法であるから却下を免れない。 第4 結論したがって,本件訴えは不適法であるから却下することとし,主文のとおり判決する。 那覇地方裁判所民事第1部 裁判長裁判官山口和宏 裁判官児島章朋 裁判官進藤諭 別紙1「当事者目録」及び別紙2「関係法令の定め」は掲載省略

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