- 1 - 令和元年5月14日宣告平成3128号承諾殺人,死体遺棄被告事件 主文 被告人を懲役3年に処する。 未決勾留日数中30日をその刑に算入する。 この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。 佐賀地方検察庁で保管中のネクタイ1本(平成31年領第106号符号2)を没収する。 理由 (罪となるべき事実)第1 被告人は,仕事に関し借金を重ねて将来を悲観し,平成30年7月,妻であるA(以下「被害者」という。)と心中を試みたが,失敗した。その後,弁護士に依頼して破産手続をとることにし,仕事も見つけたが,同年9月に貸金返還訴訟を起こされると,再び将来を悲観して,同年10月に被害者を心中に誘った。被害者は,長年連れ添い,自殺をほのめかして家出を繰り返してきた被告人を見捨てることができず,心中の誘いに応じた。被告人と被害者は,同月から平成31年1月にかけて,死に場所を探して主に関西地方をさまよい,その間,何度か心中を試みたがいずれも失敗した。被告人は,同月16日深夜,被害者に対し,睡眠導入剤を飲んで眠った状態の被害者を被告人が絞殺し,その後に被告人が自殺するという方法を提案し,被害者は承諾した。同月17日午前2時半頃,兵庫県たつの市a町b番地Bサービスエリア下り線駐車場に駐車した自動車において,殺意をもって,睡眠導入剤を飲んで眠っていた被害者(当時79歳)の頸部をネクタイ(佐賀地方検察庁平成31年領第106号符号2)で絞め付け,間もなく同所において,同人を窒息により死亡させて殺害した。 第2 同日,被害者の死体を載せたまま前記自動車を運転し,同所から佐賀県神埼郡c町d番地道の駅C北西方約200m先まで運搬し,同日午後1時頃,同死体- 2 - を同所先の斜面に投棄して遺棄した 第2 同日,被害者の死体を載せたまま前記自動車を運転し,同所から佐賀県神埼郡c町d番地道の駅C北西方約200m先まで運搬し,同日午後1時頃,同死体- 2 - を同所先の斜面に投棄して遺棄した。 (法令の適用) 1 罰条判示第1の行為刑法202条判示第2の行為刑法190条 2 刑種の選択判示第1の罪について所定刑中懲役刑を選択 3 併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(重い判示第1の罪の刑に同法47条ただし書の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で処断) 4 未決勾留日数の本刑算入刑法21条 5 刑の執行猶予刑法25条1項 6 没収刑法19条1項2号,2項本文(判示第1の犯罪行為の用に供した物で,被告人以外の者に属しない) 7 訴訟費用の不負担刑訴法181条1項ただし書(量刑の理由)本件は,心中を目的とした承諾殺人と死体遺棄の事案である。 被告人は,弁護士に依頼して破産手続をとることになったのに,周囲に十分な相談もせず将来を悲観し,被害者の気持ちを深く考えずに,被害者に心中を迫っており,犯行に至るいきさつに酌むべき事情は乏しい。もっとも,被害者は,地域包括支援センターの職員に被告人との関係や今後の生活について相談していたのに,結局は被告人と離れることなく,被告人とともに約3か月にわたって死に場所を- 3 - 探す旅を続け,心中の方法や場所等も話し合って決めており,死の承諾は被害者の真意に基づくものであったと認められる。検察官は,被害者が被告人の自殺企図に強く影響されて消極的に死を承諾したにすぎないから,同種事案の中で悪質性が高いと主張するが,そのような見方には賛同できない。 その上で,被告人に古い交通罰金前科以外に前科がなく,事実を認めて反省 に強く影響されて消極的に死を承諾したにすぎないから,同種事案の中で悪質性が高いと主張するが,そのような見方には賛同できない。 その上で,被告人に古い交通罰金前科以外に前科がなく,事実を認めて反省の態度を示していること,佐賀県地域生活定着支援センターの担当者が,被告人の社会復帰後の環境調整を支援する旨述べていることなどを考慮して,被告人に対し,主文の刑を定めた上で,今回に限りその刑の執行を猶予するのが相当と判断した。 (求刑・懲役5年,主文同旨の没収)令和元年5月14日佐賀地方裁判所刑事部 裁判長裁判官今泉裕登 裁判官杉原崇夫 裁判官髙岡寛実
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