- 1 -令和6年12月25日東京地方裁判所刑事第7部宣告令和6年刑(わ)第1919号礼拝所不敬、器物損壊被告事件 主文 被告人を懲役8月に処する。 未決勾留日数中100日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、A及びBと共謀の上、令和6年5月31日午後9時55分頃から同日午後10時頃までの間、東京都千代田区(住所省略)の宗教法人C神社敷地内において、Aが、同所に設置された同神社(代表役員D)所有の同神社第一鳥居下社号 標にスプレー式赤色塗料で「Toilet」と大書して汚損し(損害見積額462万円)、もって礼拝所に対し、公然と不敬な行為をするとともに、他人の物を損壊したものである。 (量刑の理由)本件における量刑判断の中心となる器物損壊事件の結果についてみると、社号標 は、100年以上前に造られ、神社の名前が刻まれて参道の入り口に設置されている石造りのものであり、それがスプレー式の赤色塗料で大きく落書きされ、汚れが染み込んだため、簡単に除去することができず、目立たないようにするために高圧洗浄機で表面を少し削り取ることになり、それでも落とし切れない塗料が若干残っていたことから、業者による修復のために高額の費用が見積もられている。実際に 修復に要した費用ではないものの、前記の被害状況からすると修復には相当の費用が必要と考えられる上、修復の際に表面が大きく削られる可能性や塗料跡が確実に除去できない可能性も指摘されているのであるから、被害者に与えた影響は大きい。 神社の敷地内の管理責任者は、社号標といういわば神社の顔のようなものが汚され、修復作業中に社号標を削る結果となった 確実に除去できない可能性も指摘されているのであるから、被害者に与えた影響は大きい。 神社の敷地内の管理責任者は、社号標といういわば神社の顔のようなものが汚され、修復作業中に社号標を削る結果となったとして、悔しい思いとともに厳しい被害感 情を述べている。以上からすると、本件の被害は大きいといわざるを得ないが、被 - 2 -害弁償等はされていない。 被告人の役割についてみると、スプレーによる汚損行為は共犯者が行なったものであるが、被告人は、日本に長期間在留し日本語を話せることもあって、被告人の自宅近くのホテルの共犯者らへの紹介や現場の下見、来日した共犯者らの空港への出迎えやホテルへの案内のほか、落書きをするための赤色スプレーや「Toile t」と印刷された紙の購入、共犯者らとの現場の下見、犯行を行った共犯者らの空港への案内など、本件犯行を円滑に遂行するために不可欠な役割を積極的に果たしている。本件を計画し、汚損行為を行った共犯者と比べると責任は軽いものの、被告人の役割は大きい。 被告人は本件犯行の動機について、処理水の放出に抗議し海を守りたかったなど と述べ、弁護人は、個人的な利益を目的としたものではなく、公共の利益を目的とした犯行であるから、酌むべき事情があると主張する。しかし、自らの主張のために本件のような違法な行為に及ぶことは決して許されるものではなく、酌むべき事情があるとはいえない。なお、検察官は、共犯者の動画配信等の活動を復活させることが犯行動機の核心であると主張する。この点、被告人は、共犯者の動画アカウ ントの凍結を解除させたい気持ちもあったが海を守りたいという気持ちがもっと大きかったなどと述べているところ、このような被告人の供述は否定できないが、いずれにしても前記のとおり酌むべき事情は認められ ントの凍結を解除させたい気持ちもあったが海を守りたいという気持ちがもっと大きかったなどと述べているところ、このような被告人の供述は否定できないが、いずれにしても前記のとおり酌むべき事情は認められない。 他方、被告人が当公判廷で犯行を認めて、今後は同じようなことをしない旨述べていること、被告人に前科がないことなど被告人のために酌むべき事情も認められ る。 以上を併せて検討するが、本件は器物損壊事件の中では被害が大きく悪質性の高い事案である一方で、被害弁償等はされていないこと、被告人が重要な役割を果たしていることなどからすると、被告人の責任は重いといわざるを得ず、自らが汚損行為を直接行なっていないことや、犯行を認めており、前科がないことなど被告人 のために酌むべき事情を十分に考慮しても、被告人に対してその刑の執行を猶予す - 3 -ることは困難であり、酌むべき事情は刑期の点で考慮することとし、主文のとおりの刑が相当と判断した。 (求刑懲役1年)令和7年1月8日東京地方裁判所刑事第7部 裁判官福家康史
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