昭和56(う)558 火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和57年4月26日 大阪高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      本件各控訴を棄却する。          理    由  本件各控訴の趣意は、被告人両名の弁護人下村忠利、同上野勝共同作成の控訴趣 意書に記載のとおりであり、これに対する答弁は

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主文 本件各控訴を棄却する。 理由 本件各控訴の趣意は、被告人両名の弁護人下村忠利、同上野勝共同作成の控訴趣意書に記載のとおりであり、これに対する答弁は、検察官山下松男作成の答弁書記載のとおりであるから、これらを引用する。 控訴趣意第一について論旨は、要するに、原判示第一及び第二の物件は、いずれも、その発火装置が、火炎びんの使用等の処罰に関する法律(以下、「本法」という)所定のものと著しく異つて、その構造的な順序が逆であり、その容器が、同法所定の容器にあたらない破砕性のない複数のポリ容器であるうえ、火炎びんの最も本質的な特性である投てき性を欠くものであつて、もつぱら、ガソリンを燃えあがらせ、政治的抗議の示威行為を行う目的に使用されるものであつて、人の生命、身体又は財産に害を加えるのに使用されるものという要件を欠き、結局時限装置のついた燃焼物にすぎないのに、これを本法にいう火炎びんに該当するとした原判決は、火炎びんの意義について、刑罰法令においては禁止されている類推ないし拡張解釈をしたものであつて、法令の適用を誤つている、というのである。 <要旨>そこで、案ずるに、関係証拠によると、原判決が火炎びんであると認定した原判示第一及び第二の物件は、</要旨>ほぼ同様の形状、構造及び機能を有するものであるところ、現物がほぼそのままの形で領置された原判示第二の物件(豊中の物件)につきその形状、構造及び機能などをみるに、同物件は、ガソリン合計約五・四四リツトルを入れたふた付のポリ容器五個に、時限発火装置である発炎筒二本、携帯燃料一個、脱脂綿若干、プラスチツクケース入りの電気回路一式などを組み合わせ、これをガムテープで緊縛固定したものであつて、高さ約二九センチメートル、縦・横約一九センチメートル×約二 発炎筒二本、携帯燃料一個、脱脂綿若干、プラスチツクケース入りの電気回路一式などを組み合わせ、これをガムテープで緊縛固定したものであつて、高さ約二九センチメートル、縦・横約一九センチメートル×約二八センチメートルのダンボール箱に収納され、一人で容易に運搬できる形状、重量のものであること、ポリ容器に施された時限発火装置は、IC用プリント基板に、トランジスター二個、サイリスター一個、固定抵抗器六個、半固定抵抗器一個、コンデンサー二個を配線固定し、これに電源となる単三電池四個のほか、スイツチ一個、ガス点火用二・五ボルトヒーター二個をリード線で接続し、リード線の先端のガス点火用ヒーターを携帯燃料の上に置いたものであつて、スイツチを入れると、電池からの電流が半固定抵抗器、固定抵抗器を経てコンデンサーに充電され、コンデンサーの電圧が三・四ないし三・六ボルトに達すると、トランジスターが働いてサイリスターに電気信号が送られ、サイリスターが導通状態になつてガス点火用ヒーターに通電され、その先端のニクロム部が赤熱状態となつて、携帯燃料、脱脂綿、発炎筒に順次着火し、その火力でポリ容器が溶解して中のガソリンが流出燃焼する仕掛になつており、スィツチを入れてからガス点火用ヒーターに通電されるまでの間に約一〇分間を要すること、右と同様の構造をもつた物件(ダンボール箱を除く本体のみ)につき燃焼実験をした結果によると、外部電源を使用してガス点火用ヒーターに通電後、四〇秒くらいで携帯燃料に着火し、その数秒後に発炎筒に着火し、一分くらいでガソリンに着火して炎が広がり、一分二〇秒から三分くらいの間が燃焼の最盛期で、その時の炎の高さは最高約三メートル、幅は最大半径約一・五メートルに広がり、二五分くらいで消火したこと、原判示の犯行は、後記のとおり、刑事事件に対する抗議行動として ら三分くらいの間が燃焼の最盛期で、その時の炎の高さは最高約三メートル、幅は最大半径約一・五メートルに広がり、二五分くらいで消火したこと、原判示の犯行は、後記のとおり、刑事事件に対する抗議行動として行われたものであつて、原判示第一の物件は、原判示田尾勇裁判官方通用門のすぐ横の塀ぎわに設置される予定であつたものであり、原判示第二の物件は、原判示木下忠良大阪高等裁判所長官方庭の植込みに設置されたものであること、以上の事実が認められる。 ところで、本法一条によると、本法において火炎びんとは「ガラスびんその他の容器にガソリン、燈油その他引火しやすい物質を入れ、その物質が流出し、又は飛散した場合にこれを燃焼させるための発火装置又は点火装置を施した物で、人の生命、身体又は財産に害を加えるのに使用されるものをいう」と定義されているところ、所論は、前記認定の原判示物件は同条の要件に該当しないものであると主張し、原判示物件を本法にいう火炎びんであるとした原判決の判断を論難しているので、以下、所論につき順次検討する。 所論は、まず、本法一条の文言によりすれば、本法にいう火炎びんの発火装置は、ガソリンなど引火しやすい物質の流出又は飛散が先行し、その流出又は飛散した物質を燃焼させるために発火するものであることが必要であると解すべきであるとし、まず容器を溶解して内容物を流出させ、しかる後に内容物を燃焼させる原判示の発火装置は、同条所定の発火装置と構造的な順序が逆であるのに、これを火炎びんの発火装置と認めた原判決の判断は誤つている、というのである。 しかしながら、同条の「その物質が流出し、又は飛散した場合にこれを燃焼させるための発火装置」という文言を、所論のように解釈すべき必然的な根拠はなく、むしろ、火炎びんにおける発火装置の意義が、流出又は飛散した内容物に引 の「その物質が流出し、又は飛散した場合にこれを燃焼させるための発火装置」という文言を、所論のように解釈すべき必然的な根拠はなく、むしろ、火炎びんにおける発火装置の意義が、流出又は飛散した内容物に引火させて燃焼させる点にあることにかんがみると、発火と内容物の流出又は飛散の順序のいかんは、火炎びんとしての性格を左右するものではなく、同条にいう発火装置は、流出又は飛散した内容物に引火させてこれを燃焼させる機能を有するものであれば足りると解すべきである。原判示の発火装置は、前記認定のとおり、ポリ容器を溶解して内容物であるガソリンを流出させる機能を有すると同時に、溶解したポリ容器から流出したガソリンに引火させて、これを燃焼させる機能をも有するものであるから、同条にいう発火装置にあたるというべきであり、原判決の判断は正当であつて誤りはない。 所論は、次に、破砕性がなく、それ自体で内容物が流出、飛散するような形状又は構造をもたない容器は、本法にいう火炎びんの容器にあたらず、また、容器が複数である点も、本法の予想しないところであるのに、破砕性のない五個のポリ容器を組み合わせた原判示物件を、本法にいう火炎びんの容器と認めた原判決の判断は誤つている、というのである。 しかしながら、本法一条は、本法にいう火炎びんの容器について「ガラスびんその他の容器」とのみ規定し、容器の個数及びその破砕性について特に法文上の限定を付しておらず、容器を単数かつ破砕性を有するものに限る合理的理由もないから、個数及び破砕性は容器の要件ではないと解するのが相当である。もつとも、火炎びんは、容器から流出又は飛散したガソリン等が急激に燃焼して高熱を発し、凶器としての威力を有する点に一つの特質があり、法文上も、容器の内容をなす物質が「流出し、又は飛散した場合」という要件が付されてい んは、容器から流出又は飛散したガソリン等が急激に燃焼して高熱を発し、凶器としての威力を有する点に一つの特質があり、法文上も、容器の内容をなす物質が「流出し、又は飛散した場合」という要件が付されているので、火炎びんの容器といいうるためには、容器の内容物が流出又は飛散するような材質、形状又は構造のものでなければならないと解すべきであるが、右の要件は容器じたいにおいて備つている必要はなく、容器と組み合わされた装置等によつて、内容物を流出、飛散さぜることができるものであつてもよいと解すべきである。原判示の容器は、前記認定のように、ふた付のポリ容器で、容器じたいに破砕性はなく、それじたいにおいて内容物が流出又は飛散するような形状、構造をもつ容器ではないが、容器に時限発火装置が組み合わされていて、発炎筒の火力によりポリ容器が溶解して中のガソリソが流出する仕掛が施されているものであるから、同条にいう容器にあたるというべきであり、原判決の判断は正当であつて誤りはない。 所論は、更に、本法にいう火炎びんは、攻撃対象に即応して移動、運搬することができ、かつ、投てき性のあることを要件とすると解すべきものであつて、投てき性こそ火炎びんの最も本質的な特性であるのに、投てき性は火炎びんの要件ではないとして、投てきして使用できない原判示物件を火炎びんと認めた原判決の判断は誤つている、というのである。 しかしながら、火炎びんの危険性は、容器から流出又は飛散したガソリン等の引火しやすい物質が、急激に燃焼して高熱を発し、これが凶器としての威力をもつことのほかに、その製造、運搬が容易で、随時、随所において容易に使用しうる点にあると考えるべきである。したがつて、容器が巨大で重いなどその形状、重量によつては、火炎びんとはいいえないものもあると解すべきであるが、火炎びんの上記 が容易で、随時、随所において容易に使用しうる点にあると考えるべきである。したがつて、容器が巨大で重いなどその形状、重量によつては、火炎びんとはいいえないものもあると解すべきであるが、火炎びんの上記の危険性は、投てきして使用される場合だけではなく、一定の場所に設置して使用される場合においても同様に生じうるものであり、本法が容器の大小及びその形状、ことに投てき性の有無につき法文上の限定をしていないことなどをも併せ考えると、本法は、火炎びんが投てき使用される場合だけではなく、一定の場所に設置して使用される場合の危険の防あつをも所期したものと解すべきであつて、これらによれば、本法にいう火炎びんといいうるためには、すくなくとも、一人で運搬できる程度の形状、重量のものであれば足り、投てき性は必ずしもその要件とはされていないものと解するのが相当である。原判示の物件は、前記認定のとおり、時限発火装置付のものであつて、本来、投てきして使用するのに適する形状、構造のものではないが、時限発火装置を作動させたのち、これを走行中の車両等から投下して使用することもできると認められるばかりか、一人で容易に運搬することができ、時限装置の制約があるとはいえ、この点をも考慮して使用すれば、随時、随所にこれを設置して、内容物であるガソリンを燃焼させることが可能な物件であるから、本法一条にいう火炎びんに該当するものというべきである。原判決のこの点の判断は正当であつて誤りはない。 所論は、また、原判示の物件は、もつぱら、ガソリンを燃えあがらせ、政治的抗議の示威行為を行う目的に使用される時限装置のついた燃焼物にすぎず、人の生命、身体又は財産に害を加えるのに使用されるものではないから、本法一条にいう火炎びんにあたらないのに、これを火炎びんであるとした原判決の判断は誤つている、 れる時限装置のついた燃焼物にすぎず、人の生命、身体又は財産に害を加えるのに使用されるものではないから、本法一条にいう火炎びんにあたらないのに、これを火炎びんであるとした原判決の判断は誤つている、というのである。 しかしながら、前記認定の原判示各物件の形状、構造、機能よりすると、原判示の各物件は、その通常の使用方法により容易に人の生命、身体又は財産に害を加えることができるものであり、これを設置し又は設置しようとした場所など本件におけるその使用状況によつてもこれが人の財産に害を加えるのに使用されたことは明らかであつて、これらの点に徴すれば、原判示の物件は、上記各法益に害を加えるのに使用されるものであると認めることができ、単なる示威行為を行う目的に使用されるものとは解しがたいものである。原判決のこの点の判断は正当であつて誤りはない。 右に説示したとおり、原判示第一及び第二の物件は、いずれも、内容物を流出させる装置を施したポリ容器にガソリンを入れ、そのガソリンが流出した場合にこれを燃焼させるための発火装置を施した物で、人の財産に害を加えるのに使用されるものであつて、一人で容易に運搬できる形状、重量のものであるから、本法一条にいう火炎びんに該当するものというべきである。これと同旨の原判決の判断に、同法条を類推ないし拡張解釈したという所論の違法はなく、原判決に所論の法令適用の誤りはない。論旨は理由がない。 控訴趣意第二の一について論旨は、要するに、原判示第一の物件を構成し、かつ、原判決が同判示事実の証拠として挙示しているポリ容器、発火装置と思われる器具などの証拠物(大阪高等裁判所昭和五六年押第二四九号の一ないし二一及び同号の二三ないし二九)は、警察官が被告人らに対し違法な職務質問を続行中に領置されたものであつて、その領置の手続に違法があ る器具などの証拠物(大阪高等裁判所昭和五六年押第二四九号の一ないし二一及び同号の二三ないし二九)は、警察官が被告人らに対し違法な職務質問を続行中に領置されたものであつて、その領置の手続に違法があり、これを証拠とすることが許されないものであるのに、これら証拠物によつて原判示第一の事実を認めた原判決には訴訟手続の法令違反がある、というのである。 しかしながら、関係証拠によると、所論指摘の証拠物が領置されるに至つた経緯は、原判決が「違法収集証拠の主張について」と題する部分で詳細に認定するとおりであつて、要するに、右証拠物は、原判示A裁判官方への火炎びんの設置を企図した被告人両名、C、Dの四名が、普通乗用自動車に原判示第一の火炎びんを積載し、同判示の場所で時間待のために待機中、たまたま覆面パトカーに乗車して、付近で発生した強盗致傷事件の犯人検索等の職務に従事中の警察官Eほか二名に現認され、不審を抱いた同警察官らによつて、同所から数百メートル離れた国道上で停車を求められて職務質問をうけているうち、すきをみて被告人赤木が自動車を発進させ、覆面パトカーの追跡をうけながら逃走の途中で、車窓から放棄したものを、警察官小町満正が領置したものであつて、領置の手続じたいは刑事訴訟法二二一条に則つた適法なものである。所論は、被告人らに強盗致傷の容疑がなくなつた後も、なお執拗に被告人らを追及した警察官Eらの行為は、警職法二条に定める職務質問の範囲を逸脱した違法なものであつて、これから免れるための逃走の過程で投棄を余儀なくされた本件証拠物は違法収集証拠にあたるというのである。しかしながら、被告人らが時間待のため駐車していた時間的、場所的な状況、職務質問に対する被告人らの返答の内容、被告人らの自動車の状況など原判示の諸事情に徴すると、警察官Eらが、被告人らに対し ある。しかしながら、被告人らが時間待のため駐車していた時間的、場所的な状況、職務質問に対する被告人らの返答の内容、被告人らの自動車の状況など原判示の諸事情に徴すると、警察官Eらが、被告人らに対し職務質問を続行すべく、逃走した被告人らの自動車を追跡した行為は、正当であると認めるのが相当であつて、所論指摘の証拠物の領置手続に所論の違法があるものとは認められない。論旨は理由がない。 控訴趣意第二の二について論旨は、要するに、Cは、共犯者とされている被告人両名の面前での供述を嫌忌し、それを拒否する目的で行方を明らかにしていないのであるから、刑事訴訟法三二一条一項二号にいう所在不明には該当せず、また、同人の供述は、強要と利益誘導によりなされたもので、任意性を欠くのに、同人の検察官に対する供述調書の証拠能力を肯認した原判決には訴訟手続の法令違反がある、というのである。 しかしながら、刑事訴訟法三二一条一項二号にいう所在不明とは、所在の発見につき、捜査の通常の過程において相当と認められる手段方法を尽くしてもなおその所在が判明しないことをいい、かつ、それて足りると解されるところ、関係証拠、ことにCの母C千代子及び本件捜査を担当した警察官Iの各原審証言によれば、Cの所在不明の事実は優に肯認しうるところであり、また、同人の供述の任意性に疑いのないことは、原判決が「C調書の証拠能力及び信用性の主張について」と題する部分において判断を示しているとおりであつて、同人は、捜査段階においてのみならず、自己の公判においても、一貫して自白を維持しており、同人が自白をするに至つた経緯、その自白内容など関係証拠によつて認められる原判示の諸事情に徴すると、同人の供述の任意性は優に肯認しうるところである。同人の供述調書の証拠能力を肯認した原判決の判断は正当であり、原判決 に至つた経緯、その自白内容など関係証拠によつて認められる原判示の諸事情に徴すると、同人の供述の任意性は優に肯認しうるところである。同人の供述調書の証拠能力を肯認した原判決の判断は正当であり、原判決に所論の訴訟手続の法令違反はなく、論旨は理由がない。 控訴趣意第三の一について論旨は、要するに、被告人Fの原判示第二の事実について、原判決は、実行行為に関与していない同被告人に対し刑法六〇条を適用して共同正犯としているが、同条は実行行為を共同した者のみを共同正犯とした趣旨に解すべきであるから、同被告人に対し同条を適用して共同正犯の刑責を肯認した原判決は、憲法三一条に違反し、法令の適用を誤つている、というのである。 しかしながら、刑法六〇条の共同正犯には、いわゆる実行共同正犯のほか共謀共同正犯も含まれると解釈すべきであつて、いわゆる共謀共同正犯の成立に必要な共謀に参加した事実が認められる以上、直接実行行為に関与しない者でも、他人の行為をいわば自己の手段として犯罪を行つたという意味において、共同正犯の刑責を負うべきものであり、このように解釈しても憲法三一条に違反するものとは解されない(最高裁判所昭和二九年(あ)第一〇五六号同三三年五月二八日大法廷判決・刑集一二巻八号一七一八頁参照)。したがつて、原判決には所論の法令適用の誤りはなく、論旨は理由がない。 控訴趣意第三の二について論旨は、要するに、被告人Fの原判示第二の事実について、原判決は、同被告人を共謀共同正犯と認定しているところ、共謀共同正犯としての刑責を負わすためには、すくなくとも、実行行為者である他人の行為をいわば自己の手段として犯罪を行つたという事実関係が証明されなければならないのに、具体的な謀議の内容、ことに火炎びんの「所持」の具体的な態様についての証明がなされていない本件につ 者である他人の行為をいわば自己の手段として犯罪を行つたという事実関係が証明されなければならないのに、具体的な謀議の内容、ことに火炎びんの「所持」の具体的な態様についての証明がなされていない本件について、共謀共同正犯の刑責を認めた原判決は事実を誤認している、というのである。 しかしながら、関係証拠によると、被告人Fは、被告人Jを含む原判示の共犯者らとともに、Kに所属していたものであつて、部落差別問題に関連して発生した公務執行妨害被告事件につき、奈良地方裁判所が同事件の被告人に有罪判決を宣告したことから、同事件を担当した同裁判所裁判官A及び同事件の控訴審である大阪高等裁判所のB長官の各住居に対し火炎びんによる抗議行動を起こすとの同評議連合の計画に賛同し、Cらと共に、原判示第二の場所であるB長官方周辺の下見をしたり、同所に設置する火炎びん収納用のダンボール箱やガンリソの調達をするなどの準備をし、Cらに対し、同所を含む右二か所における抗議行動の決行日時を連絡するなどしているうえ、右決行予定日の前日夜、被告人らのアジトであつた原判示のL方に、被告人J、C、D、M及び氏名不詳者一名と共に集合した際、被告人Fにおいて、準備していた本件火炎びん二個の使用方法を説明し、右六名の間で、前記田尾裁判官方に対する抗議行動は被告人両名、C及びDにおいて、前記B長官方に対する抗議行動はM及び氏名不詳者一名において、それぞれ実行する旨の役割分担を決め、火炎びんを所持して各別に右アジトを出発したこと、原判示第二の場所であるB長官方に向つた前記Mらのその後の行動、同長官方付近での火炎びん所持の態様については、これを立証する資料はないが、決行予定日の午前八時四五分ころ、B長官方庭において、前記アジトからMらが持ち出した原判示第二の火炎びんが発見されたこと、以上の事実 近での火炎びん所持の態様については、これを立証する資料はないが、決行予定日の午前八時四五分ころ、B長官方庭において、前記アジトからMらが持ち出した原判示第二の火炎びんが発見されたこと、以上の事実が認められ、これらの事実によると、被告人Fと前記Mらとの間において、原判示第二の事実につき、いわゆる共謀共同正犯の成立に必要な謀議のなされた事実は優に肯認しうるものというべきである。所論は、被告人Fと前記Mらとの間には、火炎びんの使用についての謀議があつたとしても、所持の具体的態様についてまで謀議があつたといえるだけの証明はないから、所持についての共謀を認めることはできないと主張しているが、火炎びんの所持は、火炎びんを実力支配内におけば足り、その態様によつて刑責が左右されるものではないから、原判示第二の火炎びんを、前記B長官方に設置すべく、同所まで携行所持して行く旨の謀議があつた以上、所持の具体的態様についてまで謀議が尽くされていなくても、そのことは同所付近における所持の共謀を認めるにつき妨げとなるものではない。原判決の事実認定は相当であつて、原判決に所論の事案誤認はなく、論旨は理由がない。 控訴趣意第三の三について論旨は、要するに、被告人Fの原判示第二の事実について、同事実に対応する起訴状記載の公訴事実によれば、その犯行の日時は「昭和五二年一〇月二八日早朝」とされており、検察官は公判廷において、右の「早朝」とは「午前五時ころ」のことであると釈明していたのに、この点につき釈明或いは訴因変更の手続をとることなく、「同日(一〇月二七日)午後八時すぎころから翌二八日午前八時すぎころまでの間」と、一二時間もの幅をもたせた認定をした原判決には、審判の請求を受けない事件について判決をした違法がある、というのである。 しかしながら、たしかに、原判決は ろから翌二八日午前八時すぎころまでの間」と、一二時間もの幅をもたせた認定をした原判決には、審判の請求を受けない事件について判決をした違法がある、というのである。 しかしながら、たしかに、原判決は、原判示第二の事実の犯行の日時について、所論指摘のとおり、公訴事実の記載とは異なつた事実を認定しているが、原判文によれば、原判決は、その認定の時間帯において火炎びんを継続所持していたと認定したものではなく、右時間帯のある時点においてこれを所持していたと認定した趣旨に解すべきところ、右時点は、公訴事実記載の「早朝」にあたるか、或いはその前後に比較的近接した時刻であつて、公訴事実記載の時刻と著しく異なるものではなく、記録を検討しても、釈明或いは訴因の変更をすることなく、かかる事実を認定したことが、被告人の防禦に実質的な不利益をもたらしたものとは認めがたいから、原判決にはなんらの違法はないものというべきである。論旨は理由がない。 控訴趣意第四について論旨は、被告人両名につき量刑不当を主張するものである。そこで、所論にかんがみ記録を調査して案ずるに、原判示の犯行は、前記のとおり、被告人両名らが、刑事事件の有罪判決に対する抗議行動として、同事件の第一審担当裁判官及び控訴審である高等裁判所長官の各住居に時限装置付火炎びんの設置を企て、原判示のとおり火炎びんを所持していた事案であつて、犯行の罪質、動機、態様に加え、被告人両名の関与した犯行の数、関与の程度、被告人Fの前科内容などに徴すると、被告人両名の年令、共犯者間の刑の均衡など所論の被告人両名につき酌むべき情状を斟酌しても、被告人Fを懲役一年六月の実刑に、被告人Jを懲役一年二月に処したうえ三年間右刑の執行を猶予した原判決の量刑は相当であつて、重過ぎるものとは認められない。論旨は理由がない。 よつて、 を斟酌しても、被告人Fを懲役一年六月の実刑に、被告人Jを懲役一年二月に処したうえ三年間右刑の執行を猶予した原判決の量刑は相当であつて、重過ぎるものとは認められない。論旨は理由がない。 よつて、刑事訴訟法三九六条により主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官石松竹雄裁判官岡次郎裁判官竹澤一格)

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