平成28年2月10日判決言渡平成25年(行ウ)第386号社会保険審査会の裁決取消請求事件主文 1 社会保険審査会が平成24年12月26日付けでした裁決(平成23年(厚)第1315号)を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要原告は,総務大臣に対し,年金記録の訂正に係る総務大臣によるあっせんを求める旨の申立て(以下「あっせん申立て」という。)をしたところ,年金記録確認東京地方第三者委員会(以下「東京第三者委員会」という。また,総務省組織令附則22条,23条(平成27年政令234号による改正前のもの)に規定する年金記録確認中央第三者委員会及び年金記録確認地方委員会を併せて「第三者委員会」という。)の審議の結果,年金記録を訂正する必要があると認められたため,東京第三者委員会により作成されたあっせん案に基づき,総務大臣から厚生労働大臣に対して年金記録の訂正に関するあっせん(以下「本件あっせん」という。)がされ,厚生年金保険法(以下「厚年法」という。)104条の4第1項(平成24年法律第62号による改正前のもの)の規定に基づき厚生労働大臣から委任を受けた日本年金機構(以下「機構」という。)から,厚生年金保険の保険給付及び保険料の納付の特例等に関する法律(以下「納付特例法」といい,特に注記するほかは,平成26年法律第64号による改正前のものをいう。)1条1項の規定に基づき,平成23年10月11日付けで,別紙2「処分目録」記載のとおりの各処分(以下,当該各処分をまとめて「本件原処分」という。)を受けた。 これに対し,原告を使用していた納付特例法2条1項に規定する対象事業主(以 11日付けで,別紙2「処分目録」記載のとおりの各処分(以下,当該各処分をまとめて「本件原処分」という。)を受けた。 これに対し,原告を使用していた納付特例法2条1項に規定する対象事業主(以下「対象事業主」という。)である株式会社A(以下「A」という。)は,本件原処分を不服として,関東信越厚生局社会保険審査官(以下,社会保険審査官を「審査官」という。)に対する審査請求をし,これを却下する決定を受けた後,社会保険審査会(以下「審査会」という。)に対して再審査請求をしたところ,審査会は平成24年12月26日付けで本件原処分を取り消す旨の裁決(以下「本件裁決」という。)をした。 本件は,原告が,本件裁決には,Aが不服申立て(審査官に対する審査請求及び審査会に対する再審査請求)をする者(以下「不服申立人」という。)としての適格等を欠くのに,これを看過して,本件原処分を取り消した違法があるなどと主張して,本件裁決の取消しを求める事案である。 1 関係法令別紙3「関係法令」記載のとおりである(別紙3の略称は以下においても用いる。)。 2 前提事実(争いのない事実,顕著な事実,掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 原告について原告は,Aに勤務していたことがある者である。 (2) 本件原処分に至る経緯ア原告は,平成22年7月1日,機構品川年金事務所に対し,厚生年金の加入期間の照会の申出を行ったところ(甲1の2),同事務所長は,同月6日付けで,原告に対して,昭和51年7月から昭和59年6月までの間のうち,昭和55年8月2日から昭和59年5月26日まで以外の期間の加入記録の確認ができなかった旨の回答をした(甲1の4,6)。 そこで,原告は,平成22年10月1日付けで,総務大臣に対 ち,昭和55年8月2日から昭和59年5月26日まで以外の期間の加入記録の確認ができなかった旨の回答をした(甲1の4,6)。 そこで,原告は,平成22年10月1日付けで,総務大臣に対し,厚生年金保険の加入期間とされていない昭和51年11月1日から昭和55年 7月31日までの期間についても,B株式会社(現在のA)に勤務していたとして,これらの期間も厚生年金保険の被保険者であった期間として認めてもらうため,年金記録の訂正について,あっせん申立てをした(甲2の1)。 その後,原告は,平成23年6月24日付けで,年金記録の訂正に係るあっせん申立てを求める期間を,①昭和51年11月1日から昭和55年8月2日までの期間(以下「期間①」という。),②昭和59年5月26日から同年7月1日までの期間(以下「期間②」といい,期間①と併せて「本件申立期間」という。)に変更している(甲2の9)。 イ総務大臣は,平成23年9月13日,厚生労働大臣に対し,東京第三者委員会における審議の結果,原告の申立てのうち,期間①の全期間及び期間②のうち昭和59年5月26日から同年6月10日までの期間に係る原告の年金記録を訂正する必要があると認め,年金記録の訂正に係る本件あっせんをした(甲2の11)。 ウ厚生労働大臣は,平成23年9月16日付けで,本件あっせんの結果(納付特例法1条1項に規定する機関の意見があったこと)を,機構理事長宛てに通知した(甲4の10・19頁)。 エ厚生労働大臣から通知を受けた機構は,平成23年10月11日付けで,納付特例法1条1項,厚年法18条,20条から24条までの規定に基づき,原告に対し,本件原処分をした(甲3の1,5~9,乙8の1~38)。 (3) 本件訴えに至る経緯 3年10月11日付けで,納付特例法1条1項,厚年法18条,20条から24条までの規定に基づき,原告に対し,本件原処分をした(甲3の1,5~9,乙8の1~38)。 (3) 本件訴えに至る経緯ア Aは,本件原処分に関し,「平成23年10月11日付通知書(厚生年金保険資格取得確認および標準報酬決定通知書…)に対し,…不服申立を致します」などとして,平成23年12月7日,関東信越厚生局審査官に対し,審査請求をした(甲4の10・66~70頁)。 これに対し,同審査官は,平成24年1月20日付けで,上記の審査請求につき,所定の審査事項以外の請求を求める趣旨のものであって不適法であり,その不備は補正することができないとして,これを却下する旨の決定をした(甲4の10・74~78頁)。 イ Aは,平成24年3月22日,前記アの決定に不服があるとして,審査会に対し,再審査請求をした(甲4の10・79~96頁)。 ウ審査会は,平成24年8月10日付けで,官会法34条の規定に基づき,原告を再審査請求に係る手続に当事者として参加させる決定をした上(甲4の2,3),同法36条,30条1項(平成25年法律第63号による改正前のもの)及び社会保険審査官及び社会保険審査会法施行規則3条(平成27年厚生労働省令第43号による改正前のもの)に基づき,審理の期日及び場所を定め,Aの代理人(以下「A代理人」という。),原告,社会保険審査会参与及び機構に通知した(甲4の4~9)。 エ原告は,平成24年9月27日の審理期日に出頭しなかったが,A代理人は,これに出頭して意見を述べた(乙1)。 オ審査会は,平成24年12月26日付けで,Aの再審査請求の趣旨を,本件原処分の取消しを求めるものとした上で,本件原処分を取 なかったが,A代理人は,これに出頭して意見を述べた(乙1)。 オ審査会は,平成24年12月26日付けで,Aの再審査請求の趣旨を,本件原処分の取消しを求めるものとした上で,本件原処分を取り消す旨の裁決をした(甲5の2。本件裁決)。なお,本件裁決は,同月28日,申立人に送達された(乙2)。 カ機構は,平成25年2月14日付けで,本件裁決を受けて,年金記録を再度訂正する各措置(以下,当該各措置をまとめて「本件措置」という。)をした(甲6の1,5~8)。 キ原告は,平成25年6月25日,本件裁決の取消しを求めて,本件訴訟を提起した。 3 争点本件裁決の適法性 4 争点に関する当事者の主張被告の主張の要点は,別紙4「被告の主張の要点」に記載のとおりであり(別紙4の略称は以下においても用いる。), 原告の主張の要点は,別紙5「原告の主張の要点」に記載のとおりである。 第3 当裁判所の判断 1 Aによる不服申立ての可否について(1) 原告は,本件裁決には,裁決行政庁が,Aにおいて不服申立ての利益及び不服申立人としての適格を欠くにもかかわらず,これを認めた上で裁決をした違法があると主張するのに対し,被告は,Aにおいて,厚年法90条1項の規定に基づき,納付特例法1条1項に規定する確認等に対して不服申立てをすることができると主張するので,まずこの点について検討する。 ア行政事件訴訟法9条は,処分の取消しの訴えは当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」に限り提起することができるとし(同条1項),処分の相手方以外の者について上記の法律上の利益の有無を判断するに当たっては,当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく,当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべ 項),処分の相手方以外の者について上記の法律上の利益の有無を判断するに当たっては,当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく,当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとし,この場合において,当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては,当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし,当該利益の内容及び性質を考慮するに当たっては,当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする(同条2項)旨を規定している。そして,上記の「法律上の利益を有する者」とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうと解される(最高裁判所平成17年12月7日判決・民集59巻10号2645頁)。 イ納付特例法に基づいて発生した未納保険料等に係る処分等に対する不服申立てについては,特に,同法11条が厚年法91条等の規定を適用する旨を定めるのに対し,納付特例法1条1項に規定する確認等に対する不服申立てについては,そのような規定がないことからすれば,同項に規定する確認等に対する不服申立てについては,厚年法90条1項の規定の適用の有無が問題となるものと考えられる。 ところで,同項は,被保険者の資格等に関する処分に不服がある者は,審査請求及び再審査請求をすることができる旨を規定している。この規定は,いわゆる行政上の不服申立てを定めるものであると解されるところ,行政上の不服申立ての制度が,原則として,国民の権利ないし法律上の利益の救済を図る手続であることからすれば,行政庁の処分に対して不服申立てをすることが 不服申立てを定めるものであると解されるところ,行政上の不服申立ての制度が,原則として,国民の権利ないし法律上の利益の救済を図る手続であることからすれば,行政庁の処分に対して不服申立てをすることができる者についても,法律の特別の規定がない限り,前記アの場合と同様,当該処分について不服申立てをする法律上の利益がある者,すなわち,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれがある者をいうと解すべきである(最高裁判所昭和53年3月14日判決・民集32巻2号211頁参照)。そして,同項に関し,上記のような法律上の特別な規定はないから,同項の「処分に不服がある者」についても,一般の行政処分についての不服申立ての場合と同様に解すべきである。 (2) そこで,前記(1)を踏まえて,Aが,納付特例法1条1項に規定する確認等に該当する本件原処分の取消しを求めるにつき,「法律上の利益を有する者」といえるかどうかを検討する。 ア厚年法75条は,保険料を徴収する権利が時効によって消滅したときは(同法92条1項),当該保険料に係る被保険者であった期間に係る被保険者資格の取得について同法27条の規定による届出又は同法31条1項の規定による被保険者又は被保険者であった者の確認の請求があった後に 上記権利が時効によって消滅した場合を除き,当該被保険者であった期間に基づく保険給付は行わないと規定する。 もっとも,被保険者が,事業主による保険料の源泉控除を受け,現に保険料を負担したにもかかわらず,保険料を納付しないという事業主の側に起因する事情により保険料を徴収する権利が時効によって消滅したという場合には,かかる被保険者について,その救済を図る必要があることから,このような場合の特例を設けたのが納付特例法であり 事業主の側に起因する事情により保険料を徴収する権利が時効によって消滅したという場合には,かかる被保険者について,その救済を図る必要があることから,このような場合の特例を設けたのが納付特例法であり,同法1条1項に規定する確認等は,厚年法上の厚生労働大臣の確認等(同法18条,21条(いずれも平成24年法律第63号による改正前のもの)と同様に,被保険者資格の取得及び喪失並びに標準報酬月額を確定する効力を有するものと解される。 イそして,前記アのとおり,納付特例法1条1項に規定する確認等は,保険料を徴収する権利が時効によって消滅している場合に限定されており,同法2条6項及び7項の規定のとおり,対象事業主が特例納付保険料の納付の申出をしたときに初めて当該特例納付保険料の納付義務が生じるものとされているのであるから,同法1条1項に規定する確認等の効果として上記納付義務が生じるものではないことは明らかである。 ウまた,納付特例法1条1項に規定する確認等がされた場合,原則として,同法2条2項の規定により対象事業主に対する納付の勧奨がされることとなるが,この納付の勧奨は,対象事業主に対し任意に特例納付保険料を納付することを促すものにすぎない。 エ他方で,納付特例法3条1号イは,納付の勧奨がされたにもかかわらず対象事業主が同法2条6項の規定による申出を行わなかった場合には,厚生労働大臣は,特例対象者に係る厚年法82条2項の保険料を納付する義務が履行されたかどうか明らかでないと認められる場合において納付の勧奨を行ったときを除いて,対象事業主の氏名又は名称を公表しなければな らない旨を規定する。 しかしながら,上記の公表が,対象事業主に対し,納付の勧奨に応じて納付の申出をすることを促すものであるとしても,納付の申出をし,納付義 主の氏名又は名称を公表しなければな らない旨を規定する。 しかしながら,上記の公表が,対象事業主に対し,納付の勧奨に応じて納付の申出をすることを促すものであるとしても,納付の申出をし,納付義務を負担することを法的に強制するものでないことは明らかであるし,対象事業主が納付の勧奨に応じて申出をしなかった場合に,対象事業主の氏名等が公表されて不利益を被ることがあるとしても,それは事実上の不利益であるというほかはない。また,国は,前記アのような被保険者(特例対象者)を救済するため,特に納付特例法2条9項の規定に基づき,特例対象者に係る特定納付保険料の額に相当する額の総額を負担して,特例対象者に対する保険給付を行うものとしているところ(同法1条3項),同法3条は,政府が管掌する厚生年金保険事業及び国民年金事業の適正な運営並びに厚生年金保険制度及び国民年金制度に対する国民の信頼の確保を図るため,納付の勧奨等の諸手続の過程を公表することとしているのであって,その余の関係法令をみても,この点に関し,対象事業主の利益を個別的利益として保護すべきものとする趣旨はうかがわれない。 オ以上によれば,対象事業主は,納付特例法1条1項に規定する確認等によって自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれがある者に該当するとはいえないから,対象事業主に当該確認等の取消しを求める法律上の利益はないというべきである。 したがって,本件原処分に係る対象事業主であるAには,本件原処分に対する不服申立人としての適格はないというべきである。 (3) これに対して,被告は,対象事業主が,納付特例法1条1項に規定する確認等により,納付の勧奨を受け,これに応じて保険料を納付する旨を申し出れば,これを納付する義務を負い(同条6項 きである。 (3) これに対して,被告は,対象事業主が,納付特例法1条1項に規定する確認等により,納付の勧奨を受け,これに応じて保険料を納付する旨を申し出れば,これを納付する義務を負い(同条6項,7項),そうでなければ,納付がなかったこと等の公表を受け得る立場に置かれるところ(同法3条1号),そのような対象事業主が置かれる地位や,対象事業者に時効によって 消滅した保険料の納付を求めるという同法の目的,上記の確認等を通知する相手方に対象事業主を含めていることを含む,関係する同法の規定や特異な法構造,これに対する対象事業主の不服を,迅速,公平かつ統一的に処理すべき必要性に鑑みれば,納付特例法及び厚年法は,納付特例法1条1項の確認等について,対象事業主に不服申立ての利益を認める立法政策を採用していると解釈できること等からすれば,対象事業主は,厚年法90条の規定に基づき,不服申立てをすることができる旨を主張する。 しかしながら,前記(2)で述べたとおり,納付特例法1条1項に規定する確認等の効果等を踏まえれば,対象事業主に,同項に規定する確認等に関し,法律上保護された利益があるということはできない。 また,同法に基づいて発生した未納保険料等に係る処分等に係る不服申立てについては,特に同法11条が厚年法91条等を適用する旨を定めるのに対し,納付特例法1条1項に規定する確認等に係る不服申立てについては,そのような規定がないところ,同法1条1項に規定する確認等のほか,同法2条2項の規定による勧奨や同法3条の規定による公表に係る効果等については,前記(2)のとおりであり,それにもかかわらず,特に対象事業主について,同法1条1項に規定する確認等に対する不服申立てを認める旨の条項が規定されていないことに照らせば,被告が主張するような立法政策が採用 2)のとおりであり,それにもかかわらず,特に対象事業主について,同法1条1項に規定する確認等に対する不服申立てを認める旨の条項が規定されていないことに照らせば,被告が主張するような立法政策が採用されているものとも解し難い。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 2 以上に述べたところによれば,Aには本件原処分に対して不服申立てをする法律上の利益がないにもかかわらず,Aによる再審査請求を却下せず,同請求に基づき本件原処分を取り消した本件裁決は,違法であり取り消されるべきである。 よって,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は理由があるから認容することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官舘 内 比佐志 裁判官大竹敬人 裁判官大畠崇史 (別紙2)処分目録 ① 厚生年金保険の資格取得年月日を昭和51年11月1日と確認し,標準報酬月額を6万4000円と決定する処分② 昭和51年12月から標準報酬月額を7万6000円と決定する処分③ 昭和52年1月から標準報酬月額を6万4000円と決定する処分④ 昭和52年2月から標準報酬月額を6万8000円と決定する処分⑤ 昭和52年3月から標準報酬月額を6万4000円と決定する処分⑥ 昭和52年5月から標準報酬月額を5万6000円と決定する処分⑦ 昭和52年6月から標準報酬月額を6万8000円と決定する処分⑧ 昭和52年7月から標準報酬月額を8万円と決定する処分⑨ 昭和52年8月から標準報酬月額を7万2000円と決定する処分⑩ 昭和52年9月から標準報酬月額を10万4000円と決定す する処分⑧ 昭和52年7月から標準報酬月額を8万円と決定する処分⑨ 昭和52年8月から標準報酬月額を7万2000円と決定する処分⑩ 昭和52年9月から標準報酬月額を10万4000円と決定する処分⑪ 昭和52年10月から標準報酬月額を7万2000円と決定する処分⑫ 昭和52年12月から標準報酬月額を6万8000円と決定する処分⑬ 昭和53年1月から標準報酬月額を5万6000円と決定する処分⑭ 昭和53年2月から標準報酬月額を7万2000円と決定する処分⑮ 昭和53年3月から標準報酬月額を6万4000円と決定する処分⑯ 昭和53年6月から標準報酬月額を7万2000円と決定する処分⑰ 昭和53年7月から標準報酬月額を6万8000円と決定する処分⑱ 昭和53年8月から標準報酬月額を7万6000円と決定する処分⑲ 昭和53年9月から標準報酬月額を9万2000円と決定する処分⑳ 昭和53年11月から標準報酬月額を9万8000円と決定する処分㉑昭和53年12月から標準報酬月額を8万円と決定する処分㉒昭和54年1月から標準報酬月額を6万4000円と決定する処分 ㉓昭和54年2月から標準報酬月額を9万8000円と決定する処分㉔昭和54年4月から標準報酬月額を8万円と決定する処分㉕昭和54年5月から標準報酬月額を6万8000円と決定する処分㉖昭和54年6月から標準報酬月額を8万6000円と決定する処分㉗昭和54年7月から標準報酬月額を7万2000円と決定する処分㉘昭和54年9月から標準報酬月額を8万円と決定する処分㉙昭和54年10月から標準報酬月額を9万2000円と決定する処分㉚昭和54年11月から標準報酬月額を9万8000円と決定する処分㉛昭和54年12月から標準報酬月額 8万円と決定する処分㉙昭和54年10月から標準報酬月額を9万2000円と決定する処分㉚昭和54年11月から標準報酬月額を9万8000円と決定する処分㉛昭和54年12月から標準報酬月額を8万円と決定する処分㉜昭和55年2月から標準報酬月額を8万6000円と決定する処分㉝昭和55年4月から標準報酬月額を8万円と決定する処分㉞昭和55年5月から標準報酬月額を8万6000円と決定する処分㉟昭和55年6月から標準報酬月額を10万4000円と決定する処分㊱昭和55年7月から標準報酬月額を8万円と決定する処分㊲昭和59年5月から標準報酬月額を10万4000円と決定する処分㊳厚生年金保険の資格喪失年月日を昭和59年6月10日と確認する処分 (別紙3)関係法令 第1 納付特例法1(1) 納付特例法1条1項は,国家行政組織法8条に規定する機関であって年金記録に関する事項の調査審議を専門的に行うものの調査審議の結果として,厚年法27条に規定する事業主が,同法84条1項又は2項の規定により被保険者の負担すべき保険料を控除した事実があるにもかかわらず,当該被保険者に係る同法82条2項の保険料を納付する義務を履行したことが明らかでない場合(当該保険料(以下「未納保険料」という。)を徴収する権利が時効によって消滅する前に同法27条の規定による届出又は同法31条1項の規定による確認の請求があった場合を除き,未納保険料を徴収する権利が時効によって消滅している場合に限る。)に該当するとの当該機関の意見があった場合には,厚生労働大臣は,当該意見を尊重し,遅滞なく,未納保険料に係る期間を有する者(以下「特例対象者」という。)に係る同法の規定による被保険者の資格の取得及び喪失の確認又は標準報酬月額若しくは標準賞 は,厚生労働大臣は,当該意見を尊重し,遅滞なく,未納保険料に係る期間を有する者(以下「特例対象者」という。)に係る同法の規定による被保険者の資格の取得及び喪失の確認又は標準報酬月額若しくは標準賞与額の改定若しくは決定(以下「確認等」という。)を行うものとし,ただし,特例対象者が,当該事業主が当該義務を履行していないことを知り,又は知り得る状態であったと認められる場合には,この限りでない旨を定める。 (2) 納付特例法1条2項は,厚生労働大臣は,特例対象者に係る確認等を行ったときは,厚年法28条の規定により記録した事項の訂正を行うものとする旨を定める。 (3) 納付特例法1条3項は,同条2項の訂正が行われた場合における厚年法75条ただし書の規定(他の法令において引用し,又は準用する場合を含む。)の適用については,未納保険料を徴収する権利が時効によって消滅す る前に同法27条の規定による届出があったものとし,厚生労働大臣が確認等を行った特例対象者の厚生年金保険の被保険者であった期間について同法による保険給付(これに相当する給付を含む。以下同じ。)を行うものとする旨を定める。 (4) 納付特例法1条6項は,厚生労働大臣は,特例対象者に係る確認等を行ったときは,厚年法29条1項の規定にかかわらず,当該特例対象者,当該特例対象者を使用し,又は使用していた納付特例法1条1項の事業主その他の厚生労働省令で定める者に対し,厚年法29条1項の規定による通知を行うものとする。この場合においては,同条2項から4項までの規定は,適用しない旨を定める。 2(1) 納付特例法2条1項は,厚生労働大臣が特例対象者に係る確認等を行った場合には,当該特例対象者を使用し,又は使用していた同法1条1項の事業主(当該事業主の事業を承継する者及び当該事業主であっ 2(1) 納付特例法2条1項は,厚生労働大臣が特例対象者に係る確認等を行った場合には,当該特例対象者を使用し,又は使用していた同法1条1項の事業主(当該事業主の事業を承継する者及び当該事業主であった個人を含む。 対象事業主)は,厚生労働省令で定めるところにより,特例納付保険料として,未納保険料に相当する額に厚生労働省令で定める額を加算した額を納付することができる旨を定める。 (2) 納付特例法2条2項は,厚生労働大臣は,対象事業主に対して,同条1項の特例納付保険料(以下「特例納付保険料」という。)の納付を勧奨しなければならず,ただし,やむを得ない事情のため当該勧奨を行うことができない場合は,この限りでない旨を定める。 (3) 納付特例法2条5項は,厚生労働大臣は,同法3条の規定による公表を行う前に同法2条2項又は4項の規定による勧奨を行う場合(特例対象者に係る厚年法82条2項の保険料を納付する義務が履行されたかどうか明らかでないと認められる場合において納付特例法2条2項又は4項の規定による勧奨を行うときを除く。)には,対象事業主又は同条3項の役員であった者に対して,厚生労働大臣が定める期限までに同条6項の規定による申出を行 わないときは同法3条の規定による公表を行う旨を,併せて通知するものとする旨を定める。 (4) 納付特例法2条6項は,対象事業主又は同条3項の役員であった者は,同条2項又は4項の規定による勧奨を受けた場合には,未納保険料に係る全ての期間に係る特例納付保険料を納付する旨を,厚生労働省令で定めるところにより,厚生労働大臣に対し書面により申し出ることができる旨を定める。 (5) 納付特例法2条7項は,対象事業主又は同条3項の役員であった者は,同条6項の規定による申出を行った場合には,厚生労働大臣が定める納期限まで に対し書面により申し出ることができる旨を定める。 (5) 納付特例法2条7項は,対象事業主又は同条3項の役員であった者は,同条6項の規定による申出を行った場合には,厚生労働大臣が定める納期限までに,同項に規定する特例納付保険料を納付しなければならない旨を定める。 (6) 納付特例法2条9項は,国は,毎年度,厚生労働大臣が特例対象者に係る確認等を行った場合(特例対象者に係る厚年法82条2項の保険料を納付する義務が履行されたかどうか明らかでないと認められる場合において当該特例対象者に係る確認等を行ったときを除く。)であって納付特例法3条(同条1号ロ又は2号ロに係る部分を除く。)の規定による公表を行ったときにおいて,その後に次のア,イに掲げる場合に該当するときは,当該特例対象者に係る特例納付保険料の額に相当する額の総額を負担する旨を定める。 ア納付特例法3条の規定による公表を行った後において厚生労働大臣が定める期限までに同法2条6項の規定による申出が行われなかった場合(後記イの場合を除く。)イ次のいずれかに該当するとき。 (ア) 厚生労働省令で定める期限までに納付特例法2条2項の規定による勧奨を行うことができない場合(後記(イ)に掲げる場合及び同条4項の規定による勧奨を行った場合を除く。)(イ) 前記(ア)に規定する厚生労働省令で定める期限までに納付特例法2条2項及び4項の規定による勧奨を行うことができない場合 3 納付特例法3条は,厚生労働大臣は,政府が管掌する厚生年金保険事業及び国民年金事業の適正な運営並びに厚生年金保険制度及び国民年金制度に対する国民の信頼の確保を図るため,次の(1)から(3)までに掲げる場合の区分に応じ当該(1)から(3)までに定める事項その他同法1条1項に規定する場合において厚生労働大臣が講 度及び国民年金制度に対する国民の信頼の確保を図るため,次の(1)から(3)までに掲げる場合の区分に応じ当該(1)から(3)までに定める事項その他同法1条1項に規定する場合において厚生労働大臣が講ずる措置で厚生労働省令で定めるものの結果を,インターネットの利用その他の適切な方法により随時公表しなければならない旨を定める。 (1) 対象事業主に対して納付特例法2条2項の規定による勧奨を行った場合(特例対象者に係る厚年法82条2項の保険料を納付する義務が履行されたかどうか明らかでないと認められる場合において納付特例法2条2項の規定による勧奨を行ったときを除く。)において,ア又はイに掲げる場合に該当するとき。 当該対象事業主の氏名又は名称ア当該対象事業主が納付特例法2条5項の期限までに同条6項の規定による申出を行わなかった場合イ当該対象事業主が納付特例法2条5項の期限までに同条6項の規定による申出を行ったが,同条7項の規定に違反して,同項の納期限までに特例納付保険料を納付しない場合(2) 納付特例法2条3項の役員であった者に対して同条4項の規定による勧奨を行った場合(特例対象者に係る厚年法82条2項の保険料を納付する義務が履行されたかどうか明らかでないと認められる場合において納付特例法2条4項の規定による勧奨を行ったときを除く。)において,ア又はイに掲げる場合に該当するとき。 当該役員であった者(厚生労働省令で定める者を除く。)の氏名ア当該役員であった者が納付特例法2条5項の期限までに同条6項の規定による申出を行わなかった場合イ当該役員であった者が納付特例法2条5項の期限までに同条6項の規定による申出を行ったが,同条7項の規定に違反して,同項の納期限までに 特例納付保険料を納付しない場合(3) ア又はイに掲 イ当該役員であった者が納付特例法2条5項の期限までに同条6項の規定による申出を行ったが,同条7項の規定に違反して,同項の納期限までに 特例納付保険料を納付しない場合(3) ア又はイに掲げる場合に該当するとき。当該対象事業主の氏名又は名称ア納付特例法2条2項の規定による勧奨を行うことができない場合(後記イに掲げる場合,同条4項の規定による勧奨を行った場合及び特例対象者に係る厚年法82条2項の保険料を納付する義務が履行されたかどうか明らかでないと認められる場合において納付特例法2条2項の規定による勧奨を行うことができないときを除く。)イ納付特例法2条2項及び4項の規定による勧奨を行うことができない場合(特例対象者に係る厚年法82条2項の保険料を納付する義務が履行されたかどうか明らかでないと認められる場合において納付特例法2条2項及び4項の規定による勧奨を行うことができないときを除く。) 4 納付特例法11条1項(同条については,平成25年法律第63号による改正前のもの。同条について以下同じ。)は,厚生労働大臣のした特例納付保険料の徴収の処分又は同法2条8項の規定によりその例によるものとされる厚年法86条の規定による処分は,同法に基づく処分とみなして,同法91条から91条の3までの規定及び社会保険審査官及び社会保険審査会法(以下官会法」という。)の規定を適用する旨を定める。 第2 厚年法 1 厚年法75条(平成26年法律第64号による改正前のもの)は,保険料を徴収する権利が時効によって消滅したときは,当該保険料に係る被保険者であった期間に基づく保険給付は,行わず,ただし,当該被保険者であった期間に係る被保険者の資格の取得について同法27条の規定による届出又は31条1項の規定による確認の請求があった後に,保険料を徴収 であった期間に基づく保険給付は,行わず,ただし,当該被保険者であった期間に係る被保険者の資格の取得について同法27条の規定による届出又は31条1項の規定による確認の請求があった後に,保険料を徴収する権利が時効によって消滅したものであるときは,この限りでない旨を定める。 2(1) 厚年法90条1項(平成26年法律第64号による改正前のもの)は,被保険者の資格,標準報酬又は保険給付に関する処分に不服がある者は,審 査官に対して審査請求をし,その決定に不服がある者は,審査会に対して再審査請求をすることができる旨を定める。 (2) 厚年法90条4項(平成24年法律第63号による改正前のもの)は,被保険者の資格又は標準報酬に関する処分が確定したときは,その処分についての不服を当該処分に基づく保険給付に関する処分についての不服の理由とすることができない旨を定める。 3 厚年法91条(平成24年法律第63号による改正前のもの)は,保険料その他この法律の規定による徴収金の賦課若しくは徴収の処分又は同法86条の規定による処分に不服がある者は,審査会に対して審査請求をすることができる旨を定める。 4 厚年法91条の2(平成24年法律第63号による改正前のもの)は,同法90条,91条の審査請求及び再審査請求については,行政不服審査法(以下「行服法」という。)第二章第一節,第二節(18第条及び19条を除く。)及び第五節の規定を適用しない旨を定める。 5 厚年法91条の3(平成24年法律第63号による改正前のもの)は,同法90条1項又は91条に規定する処分の取消しの訴えは,当該処分についての再審査請求又は審査請求に対する審査会の裁決を経た後でなければ,提起することができない旨を定める。 第3 官会法 1 官会法13条は,審査官は,審理を終えた 分の取消しの訴えは,当該処分についての再審査請求又は審査請求に対する審査会の裁決を経た後でなければ,提起することができない旨を定める。 第3 官会法 1 官会法13条は,審査官は,審理を終えたときは,審査請求の全部又は一部を容認し,又は棄却する決定をしなければならない旨を定める。 また,官会法44条は,同法13条等の規定は,再審査請求又は審査請求の手続に準用し,この場合において,当該規定中「審査官」とあるのは「審査会」と,「決定」とあるのは「裁決」と,「決定書」とあるのは「裁決書」などと読み替えるものとする旨を定める。 2(1) 官会法39条1項は,当事者及びその代理人は,審理期日に出頭し,意 見を述べることができる旨を定める。 (2) 官会法39条2項は,同法30条1項の規定により指名された者のうち,被保険者の利益を代表する者は,同項に規定する各保険の被保険者たる当事者の利益のため,事業主の利益を代表する者は,事業主たる当事者の利益のため,それぞれ審理期日に出頭して意見を述べ,又は意見書を提出することができる旨を定める。 (3) 官会法39条3項は,同法30条2項の規定により指名された者は,国民年金の被保険者又は受給権者たる当事者の利益のため,審理期日に出頭して意見を述べ,又は意見書を提出することができる旨を定める。 3 官会法40条1項は,審査会は,審理を行うため必要があるときは,当事者若しくは同法30条1項若しくは2項の規定により指名された者の申立てにより又は職権で,次の(1)から(5)までに掲げる処分をすることができる旨を定める。 (1) 当事者又は参考人の出頭を求めて審問し,又はこれらの者から意見若しくは報告を徴すること。 (2) 文書その他の物件の所有者,所持者若しくは保管者に対し,当該物件の提出を命 定める。 (1) 当事者又は参考人の出頭を求めて審問し,又はこれらの者から意見若しくは報告を徴すること。 (2) 文書その他の物件の所有者,所持者若しくは保管者に対し,当該物件の提出を命じ,又は提出物件を留め置くこと。 (3) 鑑定人に鑑定させること。 (4) 事件に関係のある事業所その他の場所に立ち入って,事業主,従業員その他の関係人に質問し,又は帳簿,書類その他の物件を検査すること。 (5) 必要な調査を官公署,学校その他の団体に嘱託すること。 別紙4被告の主張の要点 第1 Aによる不服申立ての可否について 1 以下に述べるとおり,本件原処分の根拠法規である納付特例法1条1項及び厚年法18条等は,厚生労働大臣がする標準報酬月額の決定及び改定について,対象事業主に不服申立てを認める立法政策を採用しているから,対象事業主であるAに不服申立ての利益が認められることは明らかである。 2 不服申立ての利益の有無は処分の根拠法規の解釈問題であること本件原処分は,納付特例法1条1項及び厚年法18条,20条から24条までに基づいて厚生労働大臣が行った原告の標準報酬月額の決定及び改定である。 同法90条1項は,「被保険者の資格,標準報酬又は保険給付に関する処分に不服がある者は,社会保険審査官に対して審査請求をし,その決定に不服がある者は,社会保険審査会に対して再審査請求をすることができる」と規定しているから,本件原処分に対して「不服がある者」は,不服申立てができることになる。 ここにいう「不服がある者」とは,当該処分又は決定について不服申立てをする法律上の利益がある者,すなわち,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうと解される。 そ は決定について不服申立てをする法律上の利益がある者,すなわち,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうと解される。 そして,当該処分との関係で,いかなる利益が「法律上保護された利益」として取り扱われているかについては,一般的には立法政策の問題である。そうすると,不服申立てができる者であるか否かは,法令の内容や処分の性質等に照らして,法が,その者の利益を当該処分との関係で保護されたものとして取り扱う趣旨といえるかどうかにより判断すべきものである。このように,「法律上保護された利益」の有無は,処分の根拠となる行政法規の解釈によって定 まるのである。 そこで,以下,本件原処分の根拠法規である納付特例法及び厚年法の解釈,具体的には,これらの法律が,厚生労働大臣が行う標準報酬月額の決定及び改定について,いかなる立法政策を採用しているか検討する。 3 納付特例法及び厚年法は,納付特例法1条1項に規定する確認等について,同法2条1項に規定する対象事業主に不服申立ての利益を認める立法政策を採用していること(1) 納付特例法の規定ア納付特例法は,同法2条1項に規定する対象事業主等が,厚年法84条1項又は2項により被保険者の負担すべき保険料を控除した事実があるにもかかわらず,保険料を納付する義務を履行したことが明らかでない場合,厚生労働大臣が,同法の規定による被保険者の資格の取得及び喪失の確認又は標準報酬月額若しくは標準賞与額の改定若しくは決定(確認等)を行うものとされている(納付特例法1条1項)。すなわち,同法は,同法1条1項に基づく確認等について,厚年法を直接適用しているということができる。 若しくは標準賞与額の改定若しくは決定(確認等)を行うものとされている(納付特例法1条1項)。すなわち,同法は,同法1条1項に基づく確認等について,厚年法を直接適用しているということができる。 イ確認等をした厚生労働大臣は,対象事業主に対し,厚年法29条1項に基づく通知を行うとともに,原則として未納保険料の納付を勧奨しなければならない(納付特例法1条6項,同法2条2項)。勧奨の際には,納付の申出をしない場合に同法3条に基づく公表を行う旨も併せて通知するものとされている(同法2条5項)。 ウ前記の勧奨を受けた対象事業主は,納付義務が時効によって消滅した未納保険料について,厚生労働大臣に対して納付する旨を書面により申し出ることができ,かかる申出をした場合には未納保険料の納付義務が発生し,発生した場合には厚年法の規定に基づき強制的に徴収することが可能になる(納付特例法2条6項から8項まで)。 エ前記の勧奨によっても納付の申出等がない場合,厚生労働大臣は,インタ ーネット等で対象事業主名等を公表しなければならない(納付特例法3条。 ただし,保険料納付義務が履行されたかどうか明らかでない場合には,対象事業主名の公表は行わない(同条1号の括弧書内)。)。 オ納付特例法に基づいて納付義務が生じた未納保険料について,厚生労働大臣が厚年法に基づいて徴収の処分をした場合などには,不服がある者は審査請求をすることができる(納付特例法11条,厚年法91条から91条の3まで)。 なお,納付特例法において,確認等に対する審査請求の規定を設けなかった趣旨は,確認等は厚年法による資格の確認等であると解されるため,不服がある場合には,納付特例法に基づくことなく,厚年法に基づく審査請求をすれば足りるからである。したがって, 請求の規定を設けなかった趣旨は,確認等は厚年法による資格の確認等であると解されるため,不服がある場合には,納付特例法に基づくことなく,厚年法に基づく審査請求をすれば足りるからである。したがって,被保険者の資格,標準報酬又は保険給付に関する処分に不服がある場合には,同法90条が直接適用されることになる。これに対し,納付特例法に基づいて発生した未納保険料等については,厚年法ではなく納付特例法に基づいて徴収されるため,同法11条の規定を創設し,同条を介して厚年法91条等を適用することとしたものである。 カ以上に述べたところからすると,納付特例法は,時効により納付義務が消滅した未納保険料について,対象事業主に支払わせようとする立法であると解することができる。 (2) 厚年法の規定ア厚年法90条1項は,「被保険者の資格,標準報酬又は保険給付に関する処分に不服がある者は,社会保険審査官に対して審査請求をし,その決定に不服がある者は,社会保険審査会に対して再審査請求をすることができる。」と定める。同項は,行政庁の処分に対して国民に簡易迅速な手続による権利利益の救済の手段を与えるという趣旨から,行政庁が行った被保険者の資格,標準報酬,保険給付に関する処分について,被保険者や事業主その他の関係者に不服がある者に対して不服申立てを認めたものである。 イ厚年法90条1項に加えて同条4項は,「被保険者の資格又は標準報酬に関する処分が確定したときは,その処分についての不服を当該処分に基づく保険給付に関する処分についての不服の理由とすることができない。」と定める。 これらの規定の趣旨についてみると,保険給付に関する処分が行われるのは,通常,被保険者の資格又は標準報酬についての事実があってから相当後 服の理由とすることができない。」と定める。 これらの規定の趣旨についてみると,保険給付に関する処分が行われるのは,通常,被保険者の資格又は標準報酬についての事実があってから相当後のことであって,遡ってその事実を調査することは困難である場合が多く,被保険者の権利が十分に保護されない嫌いがあったことから,こうした被保険者の権利を保護するという趣旨から,同条1項は,被保険者の資格又は標準報酬に関する処分を,保険給付に関する処分に関連なく,独立として審査の対象とし,その処分の適否を当該処分時において争わせることとしたものである。また,保険給付に関する処分について被保険者の資格又は標準報酬に関する処分の適否を再び争い得ることは上記の趣旨にも沿わないことであり,いたずらに事務の繁雑さを増すだけであるから,同条4項は,被保険者の資格又は標準報酬に関する処分が確定したときには,その処分についての不服をその処分に基づく保険給付に関する処分についての不服の理由とすることができない旨規定したものである。 前記(1)オのとおり,被保険者の資格,標準報酬又は保険給付に関する処分に不服がある者の審査請求については,納付特例法には規定されておらず,厚年法90条が直接適用されることになる。 (3) 納付特例法及び厚年法は,納付特例法1条1項に規定する確認等について,対象事業主に不服申立ての利益を認める立法政策を採用していることア納付特例法の規定は前記(1)のとおりであって,同法は,未納保険料の納付義務が時効により消滅しているにもかかわらず,これを厚生労働大臣による確認等を通じて,対象事業主に納付させることを直接の目的とするものである。同法は,その名称のとおり特例的な制度を定めるもので 納付義務が時効により消滅しているにもかかわらず,これを厚生労働大臣による確認等を通じて,対象事業主に納付させることを直接の目的とするものである。同法は,その名称のとおり特例的な制度を定めるものであり,同法の 目的自体が,対象事業主の存在を予定し,かつ,対象事業主に対し,時効によって消滅したはずの未納保険料の納付義務を履行するという不利益を甘受することを求めるという,極めて特異な法構造を採用しているのである。 このような法構造の観点から見た場合,同法における対象事業主は,被保険者の利益と直接的に相対立する当事者としての地位に位置付けられていることは明らかである。例えば,前記(1)のとおり,同法2条2項は,確認等がされた場合,厚生労働大臣が,原則として,対象事業主に対し,同条1項に定める特例納付保険料の納付を勧奨しなければならないと定める。したがって,対象事業主は,確認等により,勧奨を受けなければならない立場に置かれることになる。また,同条6項は,対象事業主がその勧奨を受けた場合に,特例納付保険料を納付する旨を申し出ることができると定めた上で,同条7項において,その申出を行った場合,特例納付保険料を納付しなければならない旨を定める。さらに,同法3条1号は,一定の場合において上記勧奨の事実等を公表する旨を定める。このように,同法は,同法1条1項の確認等につき,対象事業主が利害関係を有することを前提とする規定を置いているのであり,これを踏まえて,同条6項において,厚生労働大臣が,確認等を行ったときに,その確認等を通知する相手方に対象事業主を含めているのである。 また,かかる同法に基づいて厚生労働大臣による確認等がされたということは,見方を変えれば,対象事業主が,被保険者の負担すべき保険料 通知する相手方に対象事業主を含めているのである。 また,かかる同法に基づいて厚生労働大臣による確認等がされたということは,見方を変えれば,対象事業主が,被保険者の負担すべき保険料を控除した事実があるにもかかわらず,保険料を納付する義務を履行していないこと又は履行したことが明らかでないことが公的に確認されたという意味合いを持つことでもある。このような公的な確認につき,実際には保険料を納付した対象事業主が不服を持つことも十分考えられるところである。 そして,いわゆる「消えた年金問題」について多数の被保険者がいることは半ば公知の事実であるから,同法による確認等の申出を行う被保険者が相 当数に上り,これに不服のある対象事業主が多数生じることは,同法の立法過程において当然予想されたことである。厚年法90条が行政庁の処分に対して国民に簡易迅速な手続による権利利益の救済の手段を与えるという趣旨から,審査請求等を認めたことからすれば,これら予想される大量の事務を簡易迅速に処理するためにも,立法政策上,対象事業主の不服を同条に基づく審査請求の手続により処理する必要性があるものである。 このような納付特例法の目的や同法が採用した特異な法構造,更には,勧奨等によって対象事業主の置かれる地位や,これに対する不服を迅速,公平かつ統一的に処理すべき必要性に鑑みれば,同法及び厚年法は,納付特例法1条1項に規定する確認等について,対象事業主に不服申立ての利益を認める立法政策を採用していると解釈することができる。 イまた,前記(2)イのとおり,厚年法90条1項及び4項において,被保険者や事業主その他の関係者に対し,被保険者の資格又は標準報酬に関する処分については,保険給付に関する処分に関係なく,独立し イまた,前記(2)イのとおり,厚年法90条1項及び4項において,被保険者や事業主その他の関係者に対し,被保険者の資格又は標準報酬に関する処分については,保険給付に関する処分に関係なく,独立して審査の対象とし,その処分の適否を当該処分時に争わせることとし,その後の保険給付に関する処分についての不服の理由とすることはできないとしていることからすれば,保険料及び厚生年金額の算定の前提事項となる被保険者の資格又は標準報酬については,保険料及び厚生年金額に関する争いとは独立して審査の対象とするのが同条の趣旨であると解される。 ウ仮にこのような解釈を採用せず,対象事業主に不服申立てを認めないとすると,納付特例法に基づく通知及び納付の勧奨を受けた対象事業主が厚生労働大臣の確認等の内容に不服がある場合においても,これを争う手段がなくなることになり,著しく不当である。すなわち,対象事業主は,同法2条6項の申出をして特例納付保険料の納付義務をあえて発生させた上で,納付義務を懈怠し,その後の徴収に係る処分に対して審査請求をすることになる。 しかしながら,かかる手法は明らかにう遠かつ非現実的である。その上,徴 収に係る処分の前提となる確認等は行政処分であって公定力が生じるから,かかる手法を採ったところで,対象事業主が確認等の違法性を争うことが許されるのか明らかではない。したがって,対象事業主にとって実効的な手段ではない。 また,対象事業主が行政事件訴訟法4条に基づく確認等の違法確認訴訟を提訴することも考えられる。しかしながら,不服申立ての利益が認められないという前提であれば当然に訴えの利益も認められないはずであるから,かかる訴えが適法であるといえるか明らかではない。また,確認等は行政処分であって公定力が生じ得るから,仮 服申立ての利益が認められないという前提であれば当然に訴えの利益も認められないはずであるから,かかる訴えが適法であるといえるか明らかではない。また,確認等は行政処分であって公定力が生じ得るから,仮に訴え自体が適法とされたとしても確認等の違法性を争うことができないおそれがある。したがって,対象事業主にとって実効的な手段ではない。 さらに,未納保険料が明らかに存在したと認定された対象事業主については,かかる判断に不服がある場合,納付義務が時効によって消滅したにもかかわらず,納付を申し出ていったん消滅したはずの納付義務を発生させるか,納付せずに未納付事実を公表されるという社会的制裁を受けるかのいずれかの選択を迫られるという地位に置かれるのであり,これに対して適切な不服申立ての機会を与えないという解釈は極めて不合理であって,前記(2)で述べた厚年法90条の趣旨からしても,納付特例法及び厚年法の予定するところではないと解される。 4 以上より,本件原処分につき,対象事業主であるAに不服申立ての利益が認められる。 第2 Aの再審査請求における請求の趣旨の扱いと審査請求前置主義違反に係る原告の主張について 1 原告は,本件裁決は,再審査請求に至っての審査請求の趣旨の変更を許しているが,再審査請求における審査請求の趣旨の変更は,原則として許されないため,本件裁決には審査請求前置主義の違反がある旨主張する。 2 しかしながら,Aは,その審査請求書において,「平成23年10月11日付通知書(厚生年金保険資格取得確認および標準報酬決定通知書:以下,先の通知書とする)に対し,以下の通り不服申立を致します。」と記載しているところ,ここにいう「平成23年10月11日付通知書」とは,本件原処分の通知書を指すものであるから,この記 決定通知書:以下,先の通知書とする)に対し,以下の通り不服申立を致します。」と記載しているところ,ここにいう「平成23年10月11日付通知書」とは,本件原処分の通知書を指すものであるから,この記載を合理的に解釈すれば,Aの審査請求は,当初から本件原処分の取消しを含むものであったというべきである(なお,審査官はAの審査請求を不適法却下しているが,これは,Aの審査請求の趣旨を正解しなかったためであるといえる。)。そうすると,再審査請求書において,請求の趣旨として「原処分の取消しを求めます。」と記載されていることは,審査請求において請求の趣旨が正解されなかったため,Aが本件原処分の取消しを求める意思を明確にしたものにすぎないと解される。したがって,再審査請求においてAが請求の趣旨を変更したという事実は存在せず,原告の主張はその前提を欠くものである。 また,上記の点をおくとしても,訴訟手続においては,民事訴訟法307条により,控訴裁判所が訴えを不適法として却下した第一審判決を取り消す場合には,事件を第一審裁判所に差し戻さなければならないことが定められており,第一審判決が訴訟判決である場合の控訴裁判所の審判の対象を第一審裁判所の訴え却下の当否のみに限っているため,控訴審においてこの趣旨に反する訴えの変更が許されるか否かが問題となるが,官会法及び行服法には民事訴訟法307条に相当する規定はない。そして,官会法における再審査請求の審判の対象は,審査官の行った決定の当否ではなく,本件原処分の当否であるとされているから,本件裁決においても,審査会が本件原処分の違法の有無を審査することはむしろ当然である。 したがって,この点について本件裁決に違法はない。 第3 釈明義務違反等に係る原告の主張について 1 原告は,機構及び 会が本件原処分の違法の有無を審査することはむしろ当然である。 したがって,この点について本件裁決に違法はない。 第3 釈明義務違反等に係る原告の主張について 1 原告は,機構及び利害関係人である原告に求釈明することや,給料明細書の 原本をみることもなく,原告が出席しないまま審理期日を1回で打ち切った本件裁決には,釈明義務違反等の手続的瑕疵がある旨主張する。 2(1)アしかしながら,審査会は,以下のような手続を経た上で,本件裁決を行っているところ,このような裁決の手続は,官会法の規定に照らして適法なものである。 イすなわち,審査会は,Aからの再審査請求を受けて,原告を利害関係人として参加させる決定をした上で,審理の期日及び場所を定め,A,原告,社会保険審査会参与及び機構に通知した。これに先立ち,審査会は,審査官から機構が官会法11条に基づき審査官に提出した本件原処分に係る一切の資料を含む関係資料一式を入手した。その上で,審査会は,公開の審理を行い,機構の代理人である機構の職員及びA代理人が意見を陳述した。 審査会は,これらの手続を経た上で,本件裁決を行った。 ウしたがって,本件裁決に手続的な違法は存在しない。 (2)アこれに対して,原告は,行政不服申立ての審理では職権主義が採用されていること等を前提に,釈明義務違反等がある旨を主張するところ,審査会が行う再審査請求では,行服法の適用の大半が排除されている(厚年法91条の2)。他方で,官会法40条は,審理のための処分として,審査会が審理を行うため必要があるときは,当事者若しくは社会保険審査会参与の申立てにより又は職権で文書その他の物件の所有者,所持者若しくは保管者に対し,当該物件の提出を命じ,又は提出物件を留め置くことができる旨定める。しかしながら, は,当事者若しくは社会保険審査会参与の申立てにより又は職権で文書その他の物件の所有者,所持者若しくは保管者に対し,当該物件の提出を命じ,又は提出物件を留め置くことができる旨定める。しかしながら,この規定は,その文言から明らかなとおり,審査会に職権で上記処分に関する権限を付与するものであるから,審査会が職権を行使することが義務とされるものではない。そして,「必要と認めるとき」に審査会が職権を行使できると定めるのであるから,職権を行使するか否かは審査会の裁量に任されているというべきであって,審査会が職権を行使しなかったことが違法となるのは,職権を行使しないこ とが裁量権の濫用と評価できるような例外的な場合に限られるというべきである。その上,同法は,行服法と異なり,公開の場で審理を行わなければならない旨を定めるとともに(官会法37条),審理における意見陳述権を定めることからすれば(同法40条),同法に基づく再審査請求の手続は,当事者主義的構造を採用しているといえるのであって,このことも,審査会による上記職権の不行使が違法となる場合が例外的であることを示すものといえる。 また,同法39条1項は,「当事者及びその代理人は,審理期日に出頭し,意見を述べることができる」と規定しているが,この規定は,当事者及びその代理人が審理期日に出席することや,審理期日において意見を述べることを審理期日における審理の必要的要件としているものではなく,当事者及びその代理人に対し審理期日へ出席する機会や審理期日において意見を述べる機会を与えることを定めた規定である。したがって,これらの者が実際に審理期日に出席したか否かにかかわらず,意見を述べる機会が与えられれば足りるというべきである。 イこれを本件において検討すると,審査会は,原告に対して審理 したがって,これらの者が実際に審理期日に出席したか否かにかかわらず,意見を述べる機会が与えられれば足りるというべきである。 イこれを本件において検討すると,審査会は,原告に対して審理期日を通知して,原告に審理期日に参加して意見を述べる機会を与えているのであるし,原告に送付された「審理及び通知についてのご説明」(甲4の5)の5項には,「同封させていただいた『事件プリント(同封の冊子)』に記載されていること以外に,追加して述べたい意見や資料がある場合には,審理期日の10日前までに提出をお願いします。」と記載しているのであるから,原告は,審理期日に欠席するとしても,事前に意見書を提出することにより,自らの主張を行うことができたのである。したがって,これ以上に原告に対して意見を述べることがあるか否かを確認しなければならないということはない。 また,審査会は,事前に機構が保有している本件原処分に係る一切の資 料を審査官を通じて入手していた上,Aから提出された審査請求書の内容を把握している機構の職員は,審理期日におけるA代理人の意見陳述の内容を聞いたにもかかわらず,追加主張及び立証を行いたい旨の意向を示さなかった。その上,利害関係人たる原告が出頭せず,何らの意見書も提出していないことも併せて考慮すれば,審査会が本件原処分の適法性を判断するのに十分な主張及び証拠がそろい,裁決をするのに機が熟したと判断したことは不合理とはいえず,それ以上に関係人に釈明を求めたり,審査会が職権で資料の収集を行ったりしなかったことが,審査会に与えられた裁量権を濫用したと評価できないことは明らかである。 (3) 加えて,後記第4の2のとおり,本件裁決は差戻しの裁決である上,厚年法90条による審査請求又は再審査請求に対する裁決は,原 会に与えられた裁量権を濫用したと評価できないことは明らかである。 (3) 加えて,後記第4の2のとおり,本件裁決は差戻しの裁決である上,厚年法90条による審査請求又は再審査請求に対する裁決は,原処分の手続の不当性を含む処分の不当性を理由に原処分を取り消すことが許されることも考慮すると,審査会が官会法40条の処分を行うか否かの裁量権の範囲は広範であるというべきであって,この点からも裁量権の逸脱又は濫用があるとは解し得ない。 第4 本件裁決が処分行政庁への差戻しの裁決であること並びに主張立証責任の所在及び事実誤認等に係る原告の主張について 1 原告は,本件裁決においては,本件原処分の違法性に係る主張立証責任が,処分行政庁にあると解する余地はないにもかかわらず,あるかのように解釈して判断した違法がある上,関係資料等によれば,本件原処分の判断は正当であり,適法なものであるにもかかわらず,これを取り消した事実誤認等の違法がある旨主張する。 2(1)アしかしながら,そもそも,以下のとおり,本件裁決は,本件原処分の事実認定が違法であるとしたものではなく,本件原処分における事実認定過程又は手続が不当であるとして,本件原処分を取り消し,再度の検討を命じたものであって,差戻しの裁決と解されるものである(訴訟手続に引 き直せば,審理不尽に類似したものに位置付けられると解される。)。 イすなわち,厚年法90条による審査請求又は再審査請求に対する裁決において,原処分の不当性を理由に原処分を取り消すことができる。また,ここでいう原処分の不当性に原処分の手続の不当性が含まれることは,行服法43条2項において,審査請求に対する裁決が,手続の不当を理由に原処分を取り消すことが可能であることを当然の前提とされているところ,厚年法90条による審 原処分の手続の不当性が含まれることは,行服法43条2項において,審査請求に対する裁決が,手続の不当を理由に原処分を取り消すことが可能であることを当然の前提とされているところ,厚年法90条による審査請求又は再審査請求に対する裁決についても,この点を別異に解すべき理由はないことからして,明らかというべきである。 ウそして,本件裁決の理由において,本件原処分の事実認定について疑問点を示した部分はあっても,誤りである旨を明示した部分はなく,かえって,「本件では,保険者の前記陳述に照らして,本件給料明細書に関する前記主張を含め,請求人の主張や,その提出に係る資料の当否について,保険者において必要な具体的検討を行ったものとうかがうことはできず,したがって,保険者からは,上記の疑問について解明し,あるいは,それにもかかわらず原処分を適法かつ相当と認めるに足るような資料は提出されていないのであ」り,「本件については,なお保険者において上記の点などを審査するのが相当と考えられ」る(甲5の2・14及び15頁)との記載があるものである。 上記の理由の記載からすると,本件裁決は,処分行政庁が「請求人の主張や,その提出に係る資料の当否について,保険者において必要な具体的検討を行っ」ていないにもかかわらず,当該具体的検討をせずとも「原処分を適法かつ相当と認めるに足るような資料」もないことから,当該具体的検討を行わなかったことは不当であり,「本件については,なお保険者(引用者注:原処分庁)において上記の点(引用者注:給料明細書の成立の真正と,内容の信憑性に関しての疑問等)などを審査するのが相当と考え」て(甲5の2・14及び15頁),処分行政庁に再審査を求めて本件 原処分を取り消したものと解することができる。 エまた,厚年法90条による 憑性に関しての疑問等)などを審査するのが相当と考え」て(甲5の2・14及び15頁),処分行政庁に再審査を求めて本件 原処分を取り消したものと解することができる。 エまた,厚年法90条による審査請求及び再審査請求に関し行服法に代わる審査手続を定めた官会法は,13条において「審査官は,審理を終えたときは,審査請求の全部又は一部を容認し,又は棄却する決定をしなければならない」と規定し,同条は,同法44条により,厚年法90条による再審査請求に対する審査会の裁決について準用されているところ,官会法13条にいう「審査請求の全部又は一部を容認する決定」には,行服法上の審査請求に対する裁決一般(行服法40条3項参照)と同様,原処分を単に取り消す旨の決定が当然に含まれること及び原処分の取消決定がされると,原処分が申請に対する処分である場合等,一定の場合には,処分行政庁が再処分をすべきこととなることは明らかである。 したがって,官会法44条が準用する同法13条は,上記のような処分行政庁が再処分をすべきこととなる原処分の取消裁決,すなわち,差戻しの裁決を当然に許容しているものといえる。 オしたがって,本件裁決は,本件原処分の事実認定の適法性について判断したものではないから,その主張・立証責任の所在を問題としたものとはいえず,また,本件裁決は,事実認定過程又は手続の不当性から処分行政庁に再検討を命じたものである以上,事実認定の適法性について,審査会が最終的な判断をしたものとはいえないから,原告の前記1の主張には理由はない。 (2) なお,原告は,本件裁決が差戻しの裁決である旨の被告の主張につき,本件措置が本件裁決により本件原処分の効果が当然に失われたことを原告に通知するものにすぎず,機構が本件原処分を取り消す旨の新たな処分をした 原告は,本件裁決が差戻しの裁決である旨の被告の主張につき,本件措置が本件裁決により本件原処分の効果が当然に失われたことを原告に通知するものにすぎず,機構が本件原処分を取り消す旨の新たな処分をしたものではないとの被告の事実経緯に係る説明等と矛盾する旨を主張する。 しかしながら,年金記録の再度の訂正の通知書(甲6の1,甲6の2)に,「再審査請求による審議の結果,あっせんによる原処分の取り消しが裁決さ れましたので,記録を再度訂正しました。」との記載があるとおり,本件措置は,本件原処分により一旦訂正された原告の年金記録につき,本件原処分が本件裁決により取り消されたことを受けて,本件原処分により訂正される前の状況に復元する再訂正を行ったものにすぎず,それ自体は本件裁決と独立した新たな処分ではない。そして,本件裁決に基づき,処分行政庁が再審査すべきところ処分行政庁が再審査に基づく判断を下す前に本件訴えがされたため,本件裁決により単に本件原処分が取り消されただけの状態が継続しているものにすぎない。 したがって,被告の主張等に何ら矛盾するところはない。 3(1)アまた,前記2の点をおくとしても,本件原処分の違法性に係る主張立証責任が,処分行政庁である機構にあると解する余地はない旨の原告の主張については,ある処分の取消訴訟において,当該処分が違法であることの主張立証責任は,当該取消訴訟の原告が常に負うものとはいえず,どちらが主張立証責任を負うかについては,当該処分の性質に加え,関係法令の規定及びその立法趣旨等をも考慮して定めるほかなく,処分行政庁が主張立証責任を負う場合もあり得るもので,失当である。 また,原告は,納付特例法が,被保険者が十分な資料を有していないことも念頭に置いて,被保険者を保護するために定められたのであ なく,処分行政庁が主張立証責任を負う場合もあり得るもので,失当である。 また,原告は,納付特例法が,被保険者が十分な資料を有していないことも念頭に置いて,被保険者を保護するために定められたのであるから,審査請求において被保険者に処分要件を立証させる負担を課したり,保険者の立証の失敗の結果を被保険者に課したりするような解釈は許されないかのようにも主張するところ,仮に原告が主張するように,同法が証拠の散逸等による被保険者の受ける不利益を念頭に置いて立法されていると解しても,そのことから直ちに主張立証責任の所在が定まるわけではないというべきである。 イさらに,取消事由が処分の違法性に限られる取消訴訟とは異なり,一般の行政不服審査においては処分の不当性も争えるとされており(行服法1 条1項),厚年法90条における審査請求及び再審査請求においても格別解釈を異にすべき理由はないところ,主張立証責任とは,飽くまでも法の適用の前提としての事実の存否についてその所在が問題となるものであるから,処分の違法性を判断する際において意味を持つものであり,処分の不当性を判断する際においては,必ずしも主張立証責任の所在を定めなければ判断できないものではない。そうすると,処分の取消訴訟と同様に主張立証責任の所在が一意に定まることを前提とする原告の主張は,この点を何ら考慮しないものであって,前提を欠く。 (2) なお,本件裁決に事実誤認等がある旨の原告の主張に関し,前記2の点をおき,仮に本件裁決が本件原処分の実体的要件に係る事実の存否について判断したものと解釈されることを前提としても,以下のとおり,本件裁決には実体面において違法がないというべきである。 アすなわち,納付特例法1条1項は,被保険者の事業主が,被保険者の負担すべき保険 のと解釈されることを前提としても,以下のとおり,本件裁決には実体面において違法がないというべきである。 アすなわち,納付特例法1条1項は,被保険者の事業主が,被保険者の負担すべき保険料を控除した事実があるにもかかわらず,当該被保険者に係る厚年法82条2項の保険料を納付する義務を履行したことが明らかでない場合に該当するとの第三者委員会の意見があった場合には,厚生労働大臣(ただし,機構に権限が委任されている)が当該意見を尊重して,未納保険料に係る期間を有する者に係る同法の規定による確認等,すなわち,同法18条,20条から24条まで等による確認等を行うと定めるところ,機構が納付特例法1条1項に定める確認等を行う場合には,当然のことながら,被保険者が事業主に使用されていた事実及び事業主が被保険者の負担すべき保険料を控除していた事実が認められることが必要である。したがって,同項による処分に対する審査請求又は再審査請求において,これらの事実について認定できなければ,本件原処分が取り消されることになる。 イ審査会に提出された資料(甲4の10)並びに期日における機構及びA 代理人の各陳述からすれば,原告が昭和51年11月から昭和59年6月9日までAに使用されており,かつ,厚生年金保険料が控除されていた事実を認める方向で考えられる証拠としては,昭和52年3月から存在するという雇用保険の加入記録と原告から提出された給料明細書に昭和51年11月以降,厚生年金の保険料の控除がされているとの記載がされていることが考えられ,これらによって,上記事実が一応基礎付けられるといえる。 しかしながら,雇用保険の加入記録が昭和52年3月からであることは,原告がそれ以前の昭和51年11月からAに使用されていたことについて て,上記事実が一応基礎付けられるといえる。 しかしながら,雇用保険の加入記録が昭和52年3月からであることは,原告がそれ以前の昭和51年11月からAに使用されていたことについての証明にはならない上,給料明細書に同月から雇用保険の控除がされているという記載があることは,むしろ,昭和52年3月からとの雇用保険の加入記録と整合しないともいえるのであって,給料明細書の内容に疑問が生じる余地がある。また,A代理人は,原告提出の給料明細書にAで給料明細書の作成をしていたAの代表者であるC(以下「A代表者」という。)の字ではない数字の記載があること及びAの基本給は1円単位ではないことを陳述しているが,Aから提出された給与受領台帳には,給料明細書に記載された基本給と異なる金額で,かつ1円単位ではない基本給が記載されており,このようなA代理人の陳述に沿う内容となっている上,給与受領台帳は業務上作成される書類であり,一定の信頼性の担保があると考えられることも併せて考慮すれば,A代理人の陳述内容は,あながち排斥できるものではないというべきである。 このような本件で提出された全ての証拠を総合的に判断すれば,雇用保険の加入記録及び原告提出の給料明細書をもってもなお,原告が本件申立期間中にAに使用されており,かつ,Aが厚生年金保険料の控除をしていたのか否かについては真偽不明であると判断することが誤りであるということはできず,審査会が本件裁決のとおりの判断をして本件原処分を取り 消したことにつき,その実体面に違法は存在しないというべきである。 別紙5原告の主張の要点 第1 Aによる不服申立ての可否について 1 不服申立人としての適格について(1) 本件における不服申立人としての適格は,年金記録の訂 いうべきである。 別紙5原告の主張の要点 第1 Aによる不服申立ての可否について 1 不服申立人としての適格について(1) 本件における不服申立人としての適格は,年金記録の訂正等の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」に認められる(行政事件訴訟法9条1項)。 そして,Aに法律上の利益が認められるのは,保険料の納付に関する処分,すなわち,保険料の納入の告知の処分(厚年法89条,国税通則法36条2項)等についてであり,保険給付に関する処分(厚年法90条4項)である本件原処分についてではない。 (2) いわゆる「消えた年金問題」について多数の被保険者がいることは半ば公知の事実であるから,納付特例法による確認等の申出を行う被保険者が相当数に上り,これに不服のある対象事業主が多数生じることは,同法の立法過程において当然予想されたことであるところ,同法によって,国(厚生労働省)側に記録がなく,被保険者本人も領収書等の物的証拠を持っていないといった事例において,国民の立場に立って,その救済を図ることが可能となるのは,保険給付の問題と保険料の納付の問題が区別されるからである。 (3) そして,保険料の納付に関する処分については,対象事業主においても,「保険料の…賦課…の処分」として,厚年法91条に基づいて,審査会に対して再審査請求をすることができ,その際,仮に前提となる納付特例法1条1項に規定する確認等が違法であれば,それに後行する保険料の納付に関する処分も違法になるとして争うことができる。 (4) したがって,Aには,本件原処分については,不服申立人としての適格が認められない。 2 不服申立ての利益について(1) 前記1の点をおくとしても,不服申立ては主観争訟であるから,不服申立人の権利利益の救 ,本件原処分については,不服申立人としての適格が認められない。 2 不服申立ての利益について(1) 前記1の点をおくとしても,不服申立ては主観争訟であるから,不服申立人の権利利益の救済に資する限りにおいて認められるものである。 (2) そして,Aの保険料の納付義務は時効により確定的に消滅している(厚年法92条,会計法31条)。納付特例法による保険料の納付義務は,勧奨(同法2条2項)に対して申出(同条6項)をしたこと,すなわち,対象事業主が行政指導に任意に応じたことによるものであるし(同条7項。対象事業主が行政指導に任意に応じない場合は,原則どおり国が負担する(同条9項1号)。),そもそも,本件においては,Aは勧奨に対する申出をしておらず,保険料の納付義務を負っていないのである。 (3) 時効により消滅した債務を履行しないことは法律上当然の対応であり,法律上当然の対応をしたことを公表されたとしても,対象事業主の社会的評価に影響が及ぶことはない(現に,民事上の消滅時効の援用は日常的に行われている。)。対象事業主がそのことに危惧を抱くことがあったとしても,それはごく主観的なものにすぎず,客観的な社会的評価の問題ではない。もしも,対象事業主の客観的な社会的評価に影響を及ぼすのであるならば,勧告に従わない者に対して制裁を課すことによって,勧告への服従を強制しようとするものであり(これは,是正命令等の行政処分の実効性を担保するための手段として,その違反者を公表する場面とは異なる。),飽くまでも任意の協力によってのみ実現されるものであるはずの行政指導(行政手続法32条1項)の概念と相容れないことになる(なお,そのことをもって,勧告に処分性が認められるのであれば,不服のある対象事業主は勧告の取消訴訟を提起すべきことになる。)。 の行政指導(行政手続法32条1項)の概念と相容れないことになる(なお,そのことをもって,勧告に処分性が認められるのであれば,不服のある対象事業主は勧告の取消訴訟を提起すべきことになる。)。 (4) したがって,本件裁決を取り消すことはAの権利利益の救済に何ら資するものではなく,不服申立ての利益を欠く。 第2 Aの再審査請求における請求の趣旨の変更は許されず,これを許した本件裁 決は審査請求前置主義にも違反していることについて 1 Aのした審査請求の趣旨は,「加算金の減額」を求めるものであったところ,審査官は,「本案に入って審査する前に,本件審査請求が適法になされたものであるかどうか検討」し,「本件審査請求は,審査事項以外の趣旨のものである」から「本件審査請求は,不適法な請求であって補正することができない」として,審査請求を不適法却下とする決定をした。 Aは,再審査請求をするに際して,審査請求の趣旨を「原処分の取消しを求めます」に変更しているが,不適法却下決定に対する再審査請求での審査請求の趣旨の変更は,本案の審査請求での審理を欠き,原則として許されない。 本件裁決は,改めて審査請求をし,本案審理を経た上でなければ,再審査請求をすることができないにもかかわらず,それを看過した違法なものであり,その意味でも,裁決固有の瑕疵ないし処分手続の違法がある。 2 これに対して,被告は,Aが当初から,本件原処分の取消しを請求していたのであり,不適法却下決定は審査官の誤りであった旨を主張する。 しかしながら,Aの審査請求書には,審査請求の趣旨および理由は「(別紙1)に記載」とされ,別紙1である「審査請求の趣旨および理由」には,「加算金の減額の決定をして頂きたく審査請求を致しました。」,「加算金に対し減額をお願いする」と明記され の趣旨および理由は「(別紙1)に記載」とされ,別紙1である「審査請求の趣旨および理由」には,「加算金の減額の決定をして頂きたく審査請求を致しました。」,「加算金に対し減額をお願いする」と明記されており,Aが,加算金の減額を求めていたことは明らかである(そうでなければ,必要的記載事項である審査請求の趣旨(社会保険審査官及び社会保険審査会法施行令2条1項6号)の記載を欠くものとして,審査請求の却下をするほかない。)。 しかも,本件裁決では被告の主張するような判断はされておらず,かえって,Aは,再審査請求に際し,審査請求の趣旨を変更している。仮に審査会が被告の主張するような判断をしていたのであれば,本件裁決でその旨の判断を示せば足り,審査請求の趣旨を変更させる必要はないし,Aが,再審査請求に際し,審査請求の趣旨を変更する必要もないのである。 また,被保険者の資格,標準報酬,保険給付に関する処分に対する不服については,審査請求,再審査請求の制度が採用されており(厚年法90条),しかも,再審査請求前置主義が採用されている(同法91条の3)。このことは,行政による審査を経ることを義務付けるとともに(民事訴訟法307条と同様),行政による実体審査を2回受ける権利が保障されることを意味する。仮に被告の主張を前提とするならば,不適法却下決定が誤りである場合には,行政による実体審査を2回受けることができるように,審査会は,審査官に差し戻さなければならないところ,そうなっていない以上,被告の主張は失当である。 第3 釈明義務違反等について裁決行政庁は,「保険者からは,上記の疑問について解明し,あるいは,それにもかかわらず原処分を適法かつ相当と認めるに足るような資料は提出されていない」との心証を得たにもかかわらず,機構や原告に釈明を求め, 政庁は,「保険者からは,上記の疑問について解明し,あるいは,それにもかかわらず原処分を適法かつ相当と認めるに足るような資料は提出されていない」との心証を得たにもかかわらず,機構や原告に釈明を求め,資料の提出等を促すこともせずに,審理期日を僅か1回で打ち切り,漠然と証拠がないとして再審査請求を認容しているところ,このようなことは到底許されるものではない。 しかも,第三者委員会は実際に原本を見て,給料明細書が偽造されたものでないことを確認しているにもかかわらず,審査会は原本すら見ようともせず,欠席しても不利益を受けることはないと案内し(厚生労働省保険局総務課保険審査調整室の担当者の説明),法律知識が十分でない一般市民である原告から,審査期日には既に予定が入っており出頭できないが,第三者委員会の判断の内容に疑問点や確認事項があれば何でもお答えするので,いつでも連絡してくださいと申出を受けていたにもかかわらず,審査会は連絡しようともしていないのである。 したがって,「保険者からは,上記の疑問について解明し,あるいは,それにもかかわらず原処分を適法かつ相当と認めるに足るような資料は提出されて いない」ことを理由とする本件裁決の判断は誤りである。 なお,被告は,官会法40条は処分が「できる」とする旨の規定であることを主張する。しかしながら,行政不服申立ての審理は職権主義であり,同法にこれを変更する規定はない。また,民事訴訟法149条も「できる」規定であるものの,裁判所には釈明義務があり,釈明義務違反は上告理由にもなるとされている。被告の主張するところの「当事者主義的構造」の補完として,官会法40条に基づき,あるいは信義則上の義務として,審査会も釈明義務を負うのは当然のことであり(そもそも,行政不服審査は行政の自己統制の手段であり,当事 ところの「当事者主義的構造」の補完として,官会法40条に基づき,あるいは信義則上の義務として,審査会も釈明義務を負うのは当然のことであり(そもそも,行政不服審査は行政の自己統制の手段であり,当事者主義的構造が採用されたのが,それを疎かにすることを許容する趣旨とは解し得ない。),裁判所と別異に解すべき理由はない。 第4 適法な本件原処分を取り消した本件裁決が,主張立証責任の所在の解釈の誤りも含め,実体上違法であることについて1(1) 納付特例法の趣旨等について国は,「総務省に設置された年金記録確認第三者委員会(以下「第三者委員会」という)は,年金記録の確認について,国(厚生労働省)側に記録がなく,ご本人も領収書等の物的証拠を持っていないといった事例について,年金事務所の回答にご異議のある場合,申立てを十分に汲み取り,様々な関連資料を検討し,誠実に納付された皆様が年金を受け取ることができるように,国民の立場に立って,記録の訂正に関し公正に判断を行います。」とし,「第三者委員会において年金記録の訂正が必要と判断された場合,その判断結果を踏まえ,総務大臣から厚生労働大臣に対し,あっせんします。厚生労働省(日本年金機構)は,これを尊重して記録の訂正を行うこととなっており,ご本人の年金の額に反映されます。」とするために(甲1の1),厚年法の特別法として,納付特例法を制定した。 それにもかかわらず,本件のごとく,対象事業主から不服申立てがあると一転,被保険者が証明をつぶさにしなければならなくなるというのでは,同 法を制定した趣旨は没却されることになる(なお,未納保険料に加え加算金の納付の勧奨まであれば,国(厚生労働省)側に記録がなく,被保険者本人も領収書等の物的証拠を持っていないことを承知している対象事業主から不服申立てがあり得る ことになる(なお,未納保険料に加え加算金の納付の勧奨まであれば,国(厚生労働省)側に記録がなく,被保険者本人も領収書等の物的証拠を持っていないことを承知している対象事業主から不服申立てがあり得ることは,立法段階においても容易に想定することができる。)。 また,本件裁決において,「しかるに,本件では,保険者の前記陳述に照らして,本件給料明細書に関する前記主張を含め,請求人の主張やその提出に係る資料の当否について,保険者において必要な具体的検討を行ったものとうかがうことはできず,したがって,保険者からは,上記の疑問について解明し,あるいは,それにもかかわらず原処分を適法かつ相当と認めるに足るような資料は提出されていないのである。」(甲5の2・14頁)というのは,機構が同法の定めるところに従って処理したことに対する非難であり,審査会は,同法の存在自体を否定しているということになる。 さらに,機構が,主張立証の職責を果たさず,主張立証責任との関係で,本件原処分が取り消されるようなことを許せば,機構の怠慢により,同法を制定した趣旨は完全に没却されることになる。 本件裁決においても,以上の同法の趣旨等を考慮した上で判断がされなければならない。 (2) 本件原処分が適法であり,これを取り消した本件裁決が実体上違法であることについてア給料明細書(甲7)等からすれば,原告は,昭和51年7月から昭和59年6月9日までの間,Aに勤務し,Aは,昭和51年11月分から昭和59年6月分までの間,給料から保険料を控除していたものであることは明らかであるところ,原告の資格取得日は,遅くとも昭和51年11月1日,資格喪失日は,昭和59年6月10日であり,資格取得日を昭和51年11月1日,資格喪失日を昭和59年6月10日とし,その間の標準報 であるところ,原告の資格取得日は,遅くとも昭和51年11月1日,資格喪失日は,昭和59年6月10日であり,資格取得日を昭和51年11月1日,資格喪失日を昭和59年6月10日とし,その間の標準報 酬月額等を決定ないし改定した本件原処分に違法はない(なお,①昭和51年11月1日から昭和55年8月までの期間,②昭和56年5月26日から昭和59年6月10日までの期間の年金記録が消えていたことになる。)。 イこの点,Aが自ら作成した給料明細書(甲7)は,原告がAに勤務していたこと(及びその日にち),Aが給料から保険料を控除していたこと(及びその金額)を示す実質的な直接証拠である。Aから当該給料明細書が偽造あるいは改ざんされたものであるとの見解が示されているが,いずれも事実ではない。 ウまた,本件原処分は,「事業主が…被保険者の負担すべき保険料を控除した事実があるにもかかわらず,当該被保険者に係る…保険料を納付する義務を履行したことが明らかでない場合…に該当するとの当該機関の意見があった場合には,厚生労働大臣は,当該意見を尊重し,遅滞なく,未納保険料に係る期間を有する者…に係る被保険者の資格の取得及び喪失の確認又は標準報酬月額若しくは標準賞与額の改定若しくは決定…を行うものとする。」とする納付特例法1条1項の定めに基づいて,それに従ってされたものであり,法律の規定に基づいて,法律の規定に従ってされた処分が違法となることはあり得ないから,その意味でも,実体的な違法はない。 (3)アさらに,本件原処分の違法性に係る主張立証責任について,前記(1)の納付特例法の趣旨等を踏まえれば,処分行政庁である機構又は厚生労働大臣にあると解する余地はないにもかかわらず,本件裁決は処分行政庁にこれがあると解して,「保険者は当該処分をした者として, 記(1)の納付特例法の趣旨等を踏まえれば,処分行政庁である機構又は厚生労働大臣にあると解する余地はないにもかかわらず,本件裁決は処分行政庁にこれがあると解して,「保険者は当該処分をした者として,これを解明して,処分の適法性,相当性を明らかにすべきものと解するのが相当である。」と判断しており,この点も違法なものである。 イ被告は,不服申立てにおいては違法性だけでなく不当性も取消事由となるから,不当性については主張立証責任が問題とならないと主張する。 しかしながら,本件裁決は,「…保険者は当該処分をした者として,これを解明して,処分の適法性,相当性を明らかにすべきものと解するのが相当である。しかるに,本件では,保険者の前記陳述に照らして,本件給料明細書に関する前記主張を含め,請求人の主張やその提出に係る資料の当否について,保険者において必要な具体的検討を行ったものとうかがうことはできず,したがって,保険者からは,上記の疑問について解明し,あるいは,それにもかかわらず原処分を適法かつ相当と認めるに足るような資料は提出されていないのである。そうであれば,本件の全資料によっても,原処分を適法かつ相当と認めることはできないといわざるを得ない。」(甲5の2・14頁)と述べており,不当性についても,機構が相当であることの主張立証をしないことを取消しの根拠としている。 また,そもそも,年金記録の訂正は,勤務の有無,保険料控除の有無の問題であって,勤務をしており,かつ,保険料が控除されているのであれば,年金記録を訂正することは適法であると同時に妥当となり,勤務をしていないか,又は保険料を控除されていないのであれば,年金記録を訂正することは違法であると同時に不当となるだけのことであって,違法性と不当性を区別して論じる被告の主張は失当で に妥当となり,勤務をしていないか,又は保険料を控除されていないのであれば,年金記録を訂正することは違法であると同時に不当となるだけのことであって,違法性と不当性を区別して論じる被告の主張は失当である。 2 本件裁決が差戻しの裁決である旨の被告の主張について(1) 被告は,本件裁決は認容裁決(自判の裁決)ではなく,差戻しの裁決であり,原告が主張する主張立証責任の所在に係る解釈の誤りや事実誤認等は問題とならない旨主張する。 (2) しかしながら,本件裁決の主文に差し戻す旨の文言はない。被告の主張を前提とすれば,差戻しの裁決も認容裁決も裁決の主文は同一ということになるが,裁決の主文は,その存在意義からして,一義的でなければならないはずであり,差戻しの裁決であるにもかかわらず,裁決の主文に差し戻す旨の文言のない本件裁決には裁決固有の瑕疵がある(現に,後記(3)のように, 処分行政庁の職員の説明や,本件措置の通知書(甲6の1)からすれば,処分行政庁において,本件裁決を認容裁決と,本件措置を認容裁決を踏まえた処分と理解しているのである。)。 (3) また,被告は,本件措置に関し,本件裁決により,本件原処分の効果が当然に失われたことを原告に通知するものにすぎず,機構が本件原処分を取り消す旨の新たな処分をしたものではないと主張し,そして,処分行政庁の職員が,平成25年1月10日に,原告本人に対し,「…今後,厚生労働省より裁決書の内容が届いた時点で,年金記録は,裁決書の内容の指示に従い,再訂正(取消)されることとなります。又,再訂正(取消)された内容の通知書を当事務所より送付させて頂きます」「裁決書の内容について不服が有る場合,今後の手続としては,裁決書の書かれて有る通り,国を相手に裁判を起こすしかない」と説明し(甲8),本件措置に れた内容の通知書を当事務所より送付させて頂きます」「裁決書の内容について不服が有る場合,今後の手続としては,裁決書の書かれて有る通り,国を相手に裁判を起こすしかない」と説明し(甲8),本件措置に係る通知書(甲6の1)において,「なお,添付の決定通知書等に審査請求についての記述がありますが,今回決定の取消処分は,審査会の裁決に請求人及び利害関係人も拘束され,審査請求の対象にはなりません。したがいまして,審査請求されても却下となる可能性があります。」と説明されているところ,これらは,本件裁決によって,行政庁における本件原処分を取り消すかどうかの最終的な判断が,処分行政庁に差し戻され,なお,当該判断が留保された状態にあることを前提にするものとは考えられず,本件裁決が差戻しの裁決であるとする被告の主張と矛盾するものである。 (4) また,被告のいう差戻しの裁決なるものは,実体審査をさせるために審査官に差し戻すというのではなく,処分行政庁に差し戻すものであるが,これは,処分行政庁が新たにする処分に対して,更なる不服申立ての余地を生じさせるものである。 かような差戻しの裁決は,審査会が,自ら原処分の違法の有無を判断することが可能であるにもかかわらず,その職責を果たさず,ひいては,簡易迅 速な手続による権利救済及び行政の自己統制という行政不服申立ての制度趣旨を没却するものであり,許されないというべきである。
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