平成12(ワ)1301 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成14年10月30日 名古屋地方裁判所
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判決文本文40,028 文字)

主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告らは,原告に対し,連帯して500万円及びこれに対する平成10年10月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告A株式会社に日雇の形式で雇用された原告が,アスファルト工事に従事中に両足に熱傷を負ったとして,被告A株式会社及び同工事の元請であった被告B株式会社並びに両社の各代表者に対し,債務不履行(安全保護義務違反)ないし不法行為に基づき,治療費等の損害の一部の支払を求めた事案である。 1 争いのない事実等(特に証拠を掲げたもの以外は,当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア原告は,平成10年10月18日,被告A株式会社に作業員として日雇の形式で雇用された労働者である(ただし,これ以前に原告が被告A株式会社に日雇雇用されたことがあるか及び平成10年10月18日に後記(2)のアスファルト舗装工事に従事したかについては争いがある。)。 イ被告B株式会社は,道路工事の請負,土木建築工事の請負,コンクリート製品の製造及び販売,アスファルト合材の製造及び販売等を目的とする株式会社であり,同社は平成10年2月17日,平成9年度23号港陽高架橋橋面補修工事(以下「本件23号線工事」という。)を国より請け負い,同工事を施工していた(甲12)。 被告Cは,被告B株式会社の代表取締役である。 ウ被告A株式会社は,土木建築の請負工事,これに附帯する一切の業務を目的とする株式会社であり,本件23号線工事につき,作業員を提供していた。 被告Dは,被告A株式会社の代表取締役である。 エ被告A株式会社と被告B株式会社との間に直接の元請・下請関係はなく,被告A株式会社は,被告B株式会社の下 線工事につき,作業員を提供していた。 被告Dは,被告A株式会社の代表取締役である。 エ被告A株式会社と被告B株式会社との間に直接の元請・下請関係はなく,被告A株式会社は,被告B株式会社の下請であるE株式会社の更に下請に当たる(甲13)。 (2) 平成10年10月18日,本件23号線工事の現場では,アスファルト舗装工事が行われた(以下「本件舗装工事」という。)。 (3) 原告の負った傷害と労災申請の経過等ア原告は,平成10年10月18日,F病院救急外来を受診し,両足甲部熱傷3度の診断を受けた(甲5,10,以下「本件傷害」という。)。その後の治療を経て,症状固定に至ったが,左足背部瘢痕拘縮の後遺障害が残った(甲6)。 イ本件傷害について,被告A株式会社及び原告は,平成10年11月上旬ころ,労災申請の手続をした(以下「本件労災申請」という。)。 本件労災申請においては,災害の原因及び発生状況につき,名古屋市a区bにある被告A株式会社の資材置場(以下「bの資材置場」又は「被告A株式会社の土場」という。)において,片付け作業中にバーナーの火炎がゴム長靴の甲部に当たり,やけどをしたとされていた(丙1の3)。 ウ本件労災申請の結果,原告は,平成11年8月19日までの間に,次のとおり労災保険給付を受けた。(甲7,8の1ないし8,丙1の1)。 (ア) 療養補償給付 272万1680円(イ) 休業補償給付 199万9404円(保険給付費149万9553円,特別支給金49万9851円)(ウ) 障害補償給付 65万6016円(保険給付費57万6016円,特別支給金8万円)エ原告は,上記ウの労災給付金の交付を受けた後,名古屋東労働基準監督署に対し,本件労災申請における被災状況は虚偽であり,真実は本件舗装工事に従事した際に被災したものである ,特別支給金8万円)エ原告は,上記ウの労災給付金の交付を受けた後,名古屋東労働基準監督署に対し,本件労災申請における被災状況は虚偽であり,真実は本件舗装工事に従事した際に被災したものである旨申し立て,その後,本件訴訟を提起した。 2 争点本件の争点は,(1)被告らは,原告に対し,債務不履行ないし不法行為に基づく損害賠償責任を負うか,(2)損害額の2点であるが,(1)につき,そもそも原告が,平成10年10月18日に本件舗装工事に従事したか否かが,最大の争点であり,これに関連して,①平成10年10月18日より以前から本件23号線工事に従事しており,その延長で,本件舗装工事にも従事した旨の原告主張(後記3(1)(原告の主張)ア)の信用性,②本件労災申請において被告A株式会社は,本件傷害が後記3(1)(原告の主張)ウの労災事故によることを認めていた旨の原告主張(後記3(1)(原告の主張)オ)の当否が問題になっている。 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)(被告らは,原告に対し,債務不履行ないし不法行為に基づく損害賠償責任を負うか。)について(原告の主張)ア原告と被告A株式会社との雇用関係及び具体的経緯について原告は,平成10年10月14日,初めて被告A株式会社に作業員として日雇の形式で雇用され,本件23号線工事の現場で作業に従事し,その後,同月15日,同月18日にも,被告A株式会社の日雇作業員として,同現場で作業に従事した。その具体的経緯は,以下のとおりである。 (ア) 原告は,平成10年10月14日午前6時ころ,名古屋市c区d町にある,いわゆる青空労働市場(以下「青空労働市場」という。)に職を求めて出向いたところ,原告の友人のGから声を掛けられ,Hという人物を紹介された。その後,Hは,原告とGを本件23号線工 市c区d町にある,いわゆる青空労働市場(以下「青空労働市場」という。)に職を求めて出向いたところ,原告の友人のGから声を掛けられ,Hという人物を紹介された。その後,Hは,原告とGを本件23号線工事の現場に車で案内し,原告は自己の軽自動車にGを乗せてHの後をついて行った。 本件23号線工事の現場において,Hは原告を被告A株式会社の社員であるI由明に紹介し,Iは,原告に対して,Jという作業員が休んでいるので代替要員として原告を雇った,余り作業員が替わると被告B株式会社の監督がうるさいので,Jと言っておいてくれ,と言った。 同日午前8時,本件23号線工事の現場事務所で被告B株式会社及び被告A株式会社の正社員,日雇作業員等を集めて朝礼が行われた。被告A株式会社の日雇は原告,Gのほか2名で,正社員等は5名ほどおり,原告は,朝礼終了後,七,八分歩いて作業現場に着き,後記イ(ア)記載の作業に従事した。 作業終了後,Iは,原告が運転免許を有し,車も持っていたので都合がよいと思ったのか,原告に翌日以降も電話をするから働きにきてほしいと言い,連絡用に自分の名刺を渡した。 (イ) そして,平成10年10月15日午前6時ころ,Iより連絡があり,出てほしいとのことであったので,原告は本件23号線工事の現場に出勤し,前日と同様の作業に従事した。 (ウ) 一方,同月16日及び同月17日の二日間は,台風のため作業は休みであり,両日とも,朝,Iから原告に対し,作業が休みである旨の連絡があった。 (エ) 同月18日の早朝,Iから原告に電話があり,同月15日と同様,作業に出てほしいとのことであった。その後,同日午前6時ころ,原告は,前記青空労働市場で仕事を求めていたKに声を掛け,Kと二人で本件23号線工事の現場事務所まで赴いた。原告とKは,同日,本件23号線工事の現場において のことであった。その後,同日午前6時ころ,原告は,前記青空労働市場で仕事を求めていたKに声を掛け,Kと二人で本件23号線工事の現場事務所まで赴いた。原告とKは,同日,本件23号線工事の現場において,本件舗装工事に従事し,そこで原告は,後記ウの労災事故に遭ったものである。 イ原告が従事した作業の内容等(ア) 平成10年10月14日及び同月15日原告は,両日とも,本件23号線工事の現場においてコンクリート舗装工事の補助作業に従事した。具体的には,コンクリートミキサーでかくはんされたスチールファイバー入りのコンクリートを拡布・散布するフィニッシャーをスコップを持って追尾し,後記(イ)のスコップマン作業と同様の作業をしたものである。ただし,スチールファイバー入りコンクリートは熱くない。 (イ) 同月18日原告は,本件23号線工事の現場において,午前中は台風の後片付けに従事した(ただし,当該作業は午前10時ころに終了した可能性がある。)。その後同日午後5時まで,本件舗装工事に従事したが(ただし,午後5時前に後片付けをした。),その内容はおおむね下記のとおりである。 a 被告B株式会社の社員が操作するフィニッシャーが先導し,熱せられたアスファルトを敷均する。 b 被告A株式会社の作業員数名がフィニッシャーを歩いて追尾し,被告B株式会社の社員の指示に従って,スコップを使ってアスファルトの不足分を補充したりなどしてアスファルトがまんべんなく道路上に散布された状態にする(以下,この作業を「スコップマン作業」,同作業を行う作業員を「スコップマン」という。)。 スコップマン作業を行うに当たっては,アスファルトが熱いため,各作業員は,足の防護のため底の相当厚い安全靴を履くことになっていた。 c その後,被告B株式会社の社員がローラーを操作し,転圧する。 スコップマン作業を行うに当たっては,アスファルトが熱いため,各作業員は,足の防護のため底の相当厚い安全靴を履くことになっていた。 c その後,被告B株式会社の社員がローラーを操作し,転圧する。 ウ労災事故(以下「本件労災事故」という。)の発生(ア) 原告は,前記イ(イ)のとおり,平成10年10月18日,本件舗装工事に従事したが,このとき,所定の安全靴を履かずに,当日自己が履いてきていたゴム長靴を履いたまま,作業に従事した。 (イ) 同日,原告が帰宅してゴム長靴を脱いだところ,両足が水膨れとなっており,水膨れがつぶれ,痛みを感じたため,F病院の救急外来の診療を受けた。その結果,熱傷3度と診断され,本件傷害を受傷していたことが判明した。 (ウ) これは,後記カのような経過で,ゴム長靴の上に熱せられたアスファルトが付着したことによるものである。 エ被告らの責任(ア) 被告A株式会社は,原告の直接の雇用主として,労働契約の付随義務として労働者を作業に従事させるにつき,その生命・身体の安全を保護する義務を負担している。 本件についていえば,原告を本件舗装工事に従事させる際に,拡布・散布にかかるアスファルトは相当高い温度であるから,作業中,足に熱傷を負わないように,所定の安全靴を用意し,これを装着したことを確認すべきである。しかし,被告A株式会社は前記のとおり,原告をゴム長靴のまま本件舗装工事に従事させ,そのために原告は本件傷害を負った。 したがって,被告A株式会社には,上記安全保護義務に反した債務不履行責任がある。 (イ) また,被告Dは,被告A株式会社の代表取締役として,作業員をアスファルト補助作業に従事させるとき,所定の安全靴を用意し,これを必ず作業員に装着させるようその職制機構を通じて実現すべき義務があるのに,これを怠った点におい 株式会社の代表取締役として,作業員をアスファルト補助作業に従事させるとき,所定の安全靴を用意し,これを必ず作業員に装着させるようその職制機構を通じて実現すべき義務があるのに,これを怠った点において民法709条の不法行為責任を負い,被告A株式会社はこの被告Dの不法行為につき,民法44条により責任を負う。 (ウ) 被告B株式会社は,本件23号線工事の元請会社であり,本件舗装工事の施工について,被告A株式会社の作業員を直接又は間接に指揮監督していた。したがって,被告B株式会社にも,雇用主に準じて労働契約の付随義務として労働者を作業に従事させるにつき,その生命・身体の安全を保護する義務を負担している。 本件についていえば,原告を本件舗装工事に従事させる際,拡布・散布に係るアスファルトは相当高い温度であるから,作業中,足に熱傷を負わないように,所定の安全靴を自らあるいは被告A株式会社が用意し,これを装着したことを確認すべきである。しかし,被告B株式会社は,前記のとおり,原告をゴム長靴のまま本件舗装工事に従事させ,そのために原告は本件傷害を負った。 したがって,被告B株式会社には,上記安全保護義務に反した債務不履行責任がある。 (エ) また,被告Cは,被告B株式会社の代表取締役として,下請の作業員をアスファルト補助作業に従事させるとき,所定の安全靴を被告B株式会社自らあるいは被告A株式会社が用意し,これを必ず作業員に装着させるようその職制機構を通じて実現すべき義務があるのに,これを怠った点において民法709条の不法行為責任を負い,被告B株式会社はこの被告Cの不法行為につき,民法44条により責任を負う。 オ平成10年10月18日以後の経過について(ア) 原告は,本件傷害受傷当日,Gに対し,本件舗装工事において本件傷害を受傷した旨電話で伝え,翌日, 不法行為につき,民法44条により責任を負う。 オ平成10年10月18日以後の経過について(ア) 原告は,本件傷害受傷当日,Gに対し,本件舗装工事において本件傷害を受傷した旨電話で伝え,翌日,Iに同旨の電話をした。 その後,原告はL組合の事務所に行き,組合員のMに対して,本件23号線工事の現場で被災したことを説明した。これに対し,Mは,①労働者災害補償保険が適用になること,②同保険の休業補償給付では保険給付とならない二日分については会社からお金がもらえることの2点を原告に教え,また,Iの携帯電話に架電した。そのときの電話でMがIとどのようなやりとりをしたかは不明である。 (イ) 原告は,Mを同行して,本件傷害受傷後10日ないし15日経過後の午後5時過ぎころに,本件23号線工事の現場を訪れた。 Mは,現場で労災関係成立票の看板を見て,労働災害保険関係が成立していることを確認しており,同看板の事業主若しくは保険加入者欄には,被告B株式会社の名が記載されていた。 同日,築地口の喫茶店で,M及び原告は,被告A株式会社社員であるN及びIと話し合った。 なお,この話合いに先だって,Mは原告に対し,話合いについてはMに任せるように言い,原告自身は,労災手続に不案内であったこともあり,原告は喫茶店内では黙っていた。 話合いの席で,Iは,10万円渡すので示談してほしいと言っており,また,Nも,原告が本件舗装工事中にやけどを受傷したことを認め,「最初,Oさんがゴム長靴を履いているのでためらった。しかし,日雇の人に安全靴を渡すと持って帰ってしまうことが多いので,ゴム長靴のまま働いてもらった。」と,安全靴を支給せずゴム長靴のままで作業させた経緯と理由を話したが,Mは,Iの上記示談の提案を断って,飽くまでも労災保険手続をするように申し入れた。 また,Iらは, ゴム長靴のまま働いてもらった。」と,安全靴を支給せずゴム長靴のままで作業させた経緯と理由を話したが,Mは,Iの上記示談の提案を断って,飽くまでも労災保険手続をするように申し入れた。 また,Iらは,病院の治療費について,原告が領収書を持参すれば被告A株式会社が支払う旨約束もした。 一方,Iらは,労災申請について,本件23号線工事の現場を被災現場として申請した場合,元請である被告B株式会社の加入する労災保険を適用しなければならないとの理由で,その申請を渋っていた。 (ウ) 被告A株式会社は,平成10年11月16日に本件労災申請の手続をなしたが,これは,被告B株式会社の労災保険が適用されることを飽くまで回避し,自らが事業主として加入している労災保険を適用するため,あえてbの資材置場における被災をでっち上げたものである。 すなわち,労災申請に当たって,当初,Nより本件舗装工事で被災したのか,被告A株式会社の土場で被災したのかいずれで被災したのか分からないということで,被災状況を作文するので了解願いたいとの連絡があり,その後,原告が入院中に,被災状況は,被告A株式会社の土場一本でいくのでよろしくと電話があった。さらに,労働基準監督署が調査すると言っているので,原告にも調査があるかもしれないとの連絡があったが,これについても,その後,労働基準監督署の調査は「まあ,いいということになった。」と連絡を受けている。 なお,原告には本件労災申請に至った経緯は詳細には分からないが,Mが,被告A株式会社との話合いが難航するあまり,同被告の提案を受けて,同被告自らが加入する労災保険を適用して労災保険申請手続を進めることを合意した可能性はある。 カ被告らの主張に対する反論被告らは,原告が,平成10年10月18日の作業終了後,Iらに対して痛みを訴えたりしていないこ る労災保険を適用して労災保険申請手続を進めることを合意した可能性はある。 カ被告らの主張に対する反論被告らは,原告が,平成10年10月18日の作業終了後,Iらに対して痛みを訴えたりしていないことを指摘するが,これは,原告が糖尿病に罹患していたため,痛みを感じなかったからであると考えられる。 また,被告A株式会社及び被告Dは,ゴム長靴が溶解,変形するはずであると主張するが,ゴム長靴の耐熱性(一番低い天然ゴムでも摂氏100度)とタンパク質が変質する(すなわち熱傷を生ずる)温度(摂氏42度)とを比較すれば,ゴム長靴が溶解,変形していなかったことと熱傷を生じたこととが矛盾するものではない。 さらに,被告らは,原告の本件傷害の部位が足の甲部であることを指摘して,不自然であると主張するが,スコップマン作業中,靴の上面にアスファルトが飛んで付着したりする一方,ゴム長靴は安全靴のように鉄板が入っておらず,材質も革ではない。したがって,足の甲の部分が熱傷を負う可能性は十分ある。 仮に,原告の熱傷が,入浴,炊事,飲食等の日常生活の中での熱源への接触のために生じたものであるならば,業務起因性も遂行性も認められないことになり,被告A株式会社が本件労災申請の手続をしたこと自体,説明に窮することになる。この点につき,被告A株式会社は,連日のように原告ら大勢の日雇労働者が押し掛けてきたため,その圧力に屈して本件労災申請の手続をなしたかのように主張するが,IもNも,労働基準監督官らに対して,上記のような事実は全く供述しておらず,被告A株式会社の上記主張事実は虚偽である。 (被告A株式会社・同長谷川の主張)ア原告が平成10年10月18日に従事した作業の状況等について(ア) 被告A株式会社の日雇作業員雇用状況について被告A株式会社は,被告B株式会社が受注し (被告A株式会社・同長谷川の主張)ア原告が平成10年10月18日に従事した作業の状況等について(ア) 被告A株式会社の日雇作業員雇用状況について被告A株式会社は,被告B株式会社が受注していた本件23号線工事に関し,直接にはE株式会社を通じて,平成10年春ころから各土木建築工事の下請工事に受注参画するようになった。 そして,上記受注工事期間中,現場において,被告A株式会社からは,現場責任者に当たり得る工事長のIを始め正社員が二,三名,日雇雇用の作業員及び常駐ないし臨時アルバイトなどの臨時作業員が工程に応じて3名ないし8名程度,各作業に従事していた。 ところで,上記日雇作業員に関し,同年9月ころからは,以前にも被告A株式会社で日雇雇用の実績があり,信頼のおけるHが常駐アルバイト的存在として上記工事に従事するようになり,Hが進んで自分の知人や仲間らの中から当日必要な員数の日雇作業員を連れてくるなどしていた。 (イ) 平成10年10月18日の工程についてそして,平成10年10月18日の工程として,本件舗装工事が予定され,被告B株式会社の従業員らと共に,被告A株式会社の正社員であるI及び重田にHなどの常駐アルバイト4人が加わり,他の日雇作業員は予定せず,計6名が被告A株式会社の分担業務を担当する段取りになっていた。 なお,本件舗装工事における作業内容は,おおむね(原告の主張)イ(イ)記載のとおりであるが,スコップマン作業の内容をより具体的に述べると,以下のとおりである。 すなわち,(原告の主張)イ(イ)aの工程と並行して,スコップマン作業に従事する被告A株式会社の作業員数名が,フィニッシャーより後方で,かつフィニッシャーの通る幅より横に外れた側方でその流布したアスファルト(べとついた重い砂のような状態であるため,飛び散ったりするこ 従事する被告A株式会社の作業員数名が,フィニッシャーより後方で,かつフィニッシャーの通る幅より横に外れた側方でその流布したアスファルト(べとついた重い砂のような状態であるため,飛び散ったりすることはない。)に直接触れないような位置で,フィニッシャーの移動に合わせて,一定間隔を保ったまま,平行に歩を進め,流布されたアスファルト量のばらつきにより薄くなっている箇所等にスコップで補充をしていくものである。そして,その直後に,レーキマンと呼ばれる被告B株式会社の従業員が,フィニッシャーの後方を追尾しながらトンボによりアスファルトの流された道路面をならしていくのである。 (ウ) 平成10年10月18日に原告が従事した作業について平成10年10月18日午前7時過ぎころ,Hは原告を連れて現場を訪れ,急な用事で都合が悪くなったためにHの代わりの作業要員として原告を連れてきた旨告げ,原告をIに紹介するとすぐにその場を立ち去った。 そこで,Iもやむなく了解し,原告にHの代わりとして本件舗装工事に従事してもらおうと考えたが,原告の足下を見ると,同人が安全靴ではなくゴム長靴を履いているのが目に留まった。 被告A株式会社の作業員が分担して行う作業内容としては,スコップマン作業が中心となるところ,スコップマンは直接アスファルトに接することはないものの,安全靴を履いて作業をすることが安全上必須であるため,Iは,原告がゴム長靴を履いているのを見て,当初から本件舗装工事には関与させられないものと判断した。 このため,Iは,原告に対し,まず,本件舗装工事の現場からは少し離れた箇所で,前夜の台風に備えて養生していたトラロープや型枠の支柱の撤去などの後処理仕事,次に,国道23号線高架下の資材置場辺りで台風のために散乱した型枠等の片付け仕事を指示し,それぞれ らは少し離れた箇所で,前夜の台風に備えて養生していたトラロープや型枠の支柱の撤去などの後処理仕事,次に,国道23号線高架下の資材置場辺りで台風のために散乱した型枠等の片付け仕事を指示し,それぞれの作業に従事させたものであり,原告が本件舗装工事に従事したり,本件舗装工事の作業現場に立ち入ったことは一切ない。 そして,同日午前10時過ぎころには上記片付け仕事等は一段落したが,当日の現場の工程上,安全靴を履いておらずアスファルト舗装工事に関与させられない原告には,当該現場では適当な仕事もなかった。 そこで,本件23号線工事の現場とは別に,やはり前夜の台風の影響でbの資材置場の資材等が散乱していたため,その片付け,整理の作業をさせることとし,Iが原告を乗せて車を運転し,bの資材置場に向かった。 そして,同日午前11時過ぎころ,Iは,bの資材置場で原告を降ろし,既に当地での片付け作業を行っていた被告A株式会社のアルバイト作業員Pと共に台風で散乱したベニヤ,シーツ,バケツ等を整理するよう指示し,原告は,同日の日中は同資材置場で片付け作業に従事し,終業時間に当たる午後5時少し前ころ,Pが運転する車に同乗して本件23号線工事現場に戻った。 そこで,Iは,すぐにその場で原告に対し,当日の日当として1万2000円を手渡し,原告は,これを受け取ると,自らの軽自動車を運転して帰っていった。 したがって,bの資材置場から戻ってきた後,原告は,本件舗装工事に従事したことも,同工事の現場に立ち入ったこともない。 イ原告の熱傷の原因について原告は,ゴム長靴のまま本件舗装工事に従事したとの事実を主張した上,これが原因で,両足が水膨れになっており,両足熱傷3度のやけどを負っていたとする。 しかしながら,原告が本件舗装工事に従事したり,同工事の現場に立ち入った 本件舗装工事に従事したとの事実を主張した上,これが原因で,両足が水膨れになっており,両足熱傷3度のやけどを負っていたとする。 しかしながら,原告が本件舗装工事に従事したり,同工事の現場に立ち入ったことは一切なく,bの資材置場での片付け作業を終えて本件23号線工事現場に戻り,Iから日当をもらって帰る際にも痛みを訴えることもなければ,P,あるいは原告を見かけた作業員らも原告に何らの異常を認めていない。 しかも,両足3度の熱傷であれば,自ら車を運転して帰ることも容易ではないはずであるし,ゴム長靴を履いたままの状況で外因性の熱傷が生じたのであれば,履いていたゴム長靴自体が溶解,変形する等の変化をきたすはずである。にもかかわらず,ゴム長靴の変形も全く見られなかった。 また,診断書の記載等では原告の負傷部位が足の背部即ち甲側になっているが,アスファルト舗装工事の現場でゴム長靴のまま作業に従事したとする原告の主張を前提とするなら,足の裏側にこそやけどが生じるのが当然であるのに,反対の甲側のみに生じているのは不自然である。 かかる事情に照らし,原告の本件主張は不合理なものであり,仮に原告主張のごときやけどを受傷した事実があるとしても,原告主張の本件舗装工事との関連性があるはずもない。受傷の原因は全く別のものであることは明白である。例えば,入浴,炊事,飲食等の日常生活の中での熱湯など熱源への接触などが受傷の原因として考えられる。 ウ平成10年10月18日以後の経緯について(ア) 原告が上記のとおりbの資材置場での片付け作業に従事した日の二日後である平成10年10月20日ころになって,突然原告からIの携帯電話に電話があり,「やけどをしたんで,治療費の金をくれ。」と言ってきた。なお,Iの携帯電話の番号は,同月18日に,原告をbの資材置場に送り届けた際,同 10月20日ころになって,突然原告からIの携帯電話に電話があり,「やけどをしたんで,治療費の金をくれ。」と言ってきた。なお,Iの携帯電話の番号は,同月18日に,原告をbの資材置場に送り届けた際,同所で何か急な連絡事項が生じた場合の緊急連絡先として,Iが原告に告げていたものである。 原告の上記電話に対し,Iは,前記原告の作業内容や態様,様子からしてやけどをするようなことなど全く思い当たらず,「何でやけどしたの。」と問い返したが,原告は「とにかくやけどをした。」と言うばかりで,具体的な説明もないまま終わった。 そして,その翌日,原告は,本件23号線工事の現場にIを訪ねてきて,病院の領収書を見せ,「やけどをしたから,このお金を支払ってくれ。」と詰め寄ったが,Iとしても,やけどをするような仕事に原告を従事させていないことから,具体的にやけどを負ったとする場所や状況などの説明を再度求めたが,やはり原告は上記要求を繰り返すだけであった。 すると,その二,三日後には,原告のみならず,仲間の日雇労働者ら総勢七,八人が,本件23号線工事現場に押し掛けてきて,Iに対し,口々に「金を払え。」と迫ったが,Iは,当初は,原告のやけどの原因について全く思い当たらないため拒否し,押し返していた。 ところが,連日のように大勢で本件23号線工事現場へ押し掛けてくるため,現場での仕事にも影響があり,被告B株式会社ら他社にも迷惑を及ぼしかねないことから,Iは,最後には,作業中のやけどであることを納得しないまま,「治療費くらいなら俺が払ってやるから,領収書を持ってきてくれ,その代わりに,もう現場には来んでくれ。」と告げるに至った。 (イ) 上記Iの返答を受けて,原告らが本件23号線工事現場から帰った数時間後,組合の代表と称する者から,「今から,そちらへ行く。」との連絡がIの携帯 ,もう現場には来んでくれ。」と告げるに至った。 (イ) 上記Iの返答を受けて,原告らが本件23号線工事現場から帰った数時間後,組合の代表と称する者から,「今から,そちらへ行く。」との連絡がIの携帯電話に入り,これに対し,Iは,仕事の段取りの途中で手が離せないことや,治療費を払うにも現金の手持ちがなかったため,「今は困る。」と答えると,電話の相手は「では明日行くから。」と一方的に告げ,電話を切った。 そして,翌日,原告及び組合員ら六,七人が現場を訪ねてきたため,現場付近の喫茶店に場所を移し,原告側は原告本人及びM,被告A株式会社側はI及びNの計4人が店内で話すこととなり,その話合いの場で,Mが,原告が本件傷害を受傷したのは,本件23号線工事の現場での作業中に間違いないことを述べた上,「やけどの治療は長引くんで,幾ら治療費がかかるか分からんから労災を使ってほしい。」と申し入れてきた。 これに対し,Iは,原告の言うやけどがどこで生じたか見当がつかないため即答できない旨答えたが,Mは「労災を使ってくれるまで何人でも組合員を連れて毎日現場にお願いに来ます。」と強硬であった。 このため,Nは,当日の作業内容や事故原因などについて,他の作業員等に聞いて調べてみた上で改めて話し合うことを約し,現場に組合員が大勢で押し掛けてくると工事全体に影響があるため,連絡等はNを窓口とするように求め,その連絡先の電話番号を教え,その日は別れた。 なお,原告は,上記喫茶店内において,Iが,10万円で示談したい旨の申出をしたと主張し,また,Nが,原告が本件舗装工事に従事中本件傷害を受傷したことを認め,ゴム長靴のまま本件舗装工事に従事させた理由を話したと主張するが,そのような事実はない。Iは,喫茶店で話し合う前日に,前記のとおり組合員らに対して「もう現場には来んでくれ。」 を受傷したことを認め,ゴム長靴のまま本件舗装工事に従事させた理由を話したと主張するが,そのような事実はない。Iは,喫茶店で話し合う前日に,前記のとおり組合員らに対して「もう現場には来んでくれ。」と言った際,「10万円くらいなら払うから」という趣旨の発言をしたことはあるが,これは,原告が本件舗装工事に従事して本件傷害を受傷したことを認めたからではなく,単に組合員らが本件23号線工事の現場に押し掛けてくるのを中止することと引換えに10万円程度支払い,本件を解決したいと考えたからにすぎないものである。 (ウ) その後,MからNに対し,翌日から毎日,日によっては同日中に何度も,労災申請の手続を急ぐよう催促する電話がかかるようになった。 これに対し,Nは,作業状況等について,当日現場の作業に関与した者やPらに聞いたが,結局,原告がやけどを負うような状況は認められず,労災を適用する原因が不明ゆえに当然には申請できないと応じた。 しかし,Mは,「当日のうちに病院に行っている以上は間違いない。」と決めつけ,連日Nあてに労災適用の申請を迫り,Nがこれに応じないでいると,「それなら,現場に行ってIさんに言うしかない。」として,現場に押し掛けることを示唆したり,あるいは「労災番号を教えてくれたら必要な書類はこちらで作るから。」などと述べ,労災申請を繰り返し求めた。 このため,Nも最後には,前記(ア)記載の,Iが治療費を自分が払ってもよいと言ったのと全く同様の事情で,労災の申請に協力する旨応じざるを得なかった。 もっとも,Nにおいて,前記のとおり他の作業員や関係者に確認しても,当日の本件23号線工事の現場で原告がやけどを負うような作業をしていた事実は否定されるため,明らかに労災原因が生じない又は生じ得ないような事故状況を記載して労災申請することもでき 係者に確認しても,当日の本件23号線工事の現場で原告がやけどを負うような作業をしていた事実は否定されるため,明らかに労災原因が生じない又は生じ得ないような事故状況を記載して労災申請することもできかねた。 そこで,当日の原告の作業状況等をつぶさに聞き調べてみると,bの資材置場での片付け仕事中,Pが,原告が同所にいる時間中に,先が丸くなったり,曲がったりしたツルハシの先端にバーナーの火炎を当てて修繕する作業をしていたことが分かった。 もちろん,NがPから聞いたところでも,バーナーの火炎が原告の足に当たった事実は認められず,これによって当時原告がやけどを負ったとは考えにくかったが,原告の負傷を当日の作業過程での労災事故によるものと想定するなら,上記bでの作業中にバーナーの火炎が当たったことによるとする以外なく,やむなく,かかる状況での事故による労災である旨を申請に関する書面に記載し,平成10年11月上旬ころ,被告A株式会社で申請手続をとった。 (エ) この結果,原告は,労災保険給付を受けられることとなり,以後平成11年8月ころまで治療費や休業補償給付等を継続して受け,症状固定により後遺症認定を受け,慰謝料等の給付も受給している。 これに先だって同年8月中旬ころ,原告は,上記後遺症の等級が決まり最終給付が確定したことの報告並びに労災手続への協力に対する感謝のために被告A株式会社事務所を訪ねてきたりした。 ところが,同年9月上旬以降,原告は,上記最終給付を受けるや否や,今度は一転して,上記労災適用の事故状況は被告A株式会社が自己の都合で勝手に変更,ねつ造したかのごとく主張し,労災保険の給付のみでは不十分であるとして,未填補の損害賠償を請求するようになり,大勢の組合員による申入れ等を経て,本件訴訟に至ったものである。 しかしながら,この ,ねつ造したかのごとく主張し,労災保険の給付のみでは不十分であるとして,未填補の損害賠償を請求するようになり,大勢の組合員による申入れ等を経て,本件訴訟に至ったものである。 しかしながら,このような原告の主張は,本来の請求原因についてはもちろん,上記交渉の態度,経緯からも,理不尽かつ身勝手なものであり,理論的にも信義則上も到底認め難いものである。 エ原告の主張に対する反論(ア) 平成14年10月14日及び同月15日の被告A株式会社の作業内容について原告が平成10年10月18日に被告A株式会社に雇用されたことは上記のとおりであるが,原告は,同月14日及び同月15日にも,被告A株式会社に雇用されたと主張する。しかし,被告A株式会社が原告を雇用したのは,同月18日のみである。この点,原告は,同月14日及び同月15日には,スチールファイバー入りのコンクリート舗装工事の補助作業を行ったとしているが,実際には,上記両日は,同月18日に実施されたアスファルト舗装工事のための準備作業を行ったものである。 すなわち,同月14日については,専らアスファルト舗装の型枠の設置を,同月15日については,引き続き型枠設置,さらにアスファルト舗装用の一部材料の搬入等の作業を,それぞれE株式会社の監督指示に従って,各日7名程度の被告A株式会社社員・作業員らで行っていたものである。 なお,原告の主張するコンクリート舗装工事は,同月8日及び同月9日に施工されたものと考えられる。 (イ) 原告とIとの連絡について原告は,平成10年10月14日,同月15日及び同月18日に本件23号線工事にかかわる作業に従事したことを前提として,さらに,同月14日のうちに,Iが原告に対し,15日以降も働きにきてほしいと言ってIの携帯電話の番号を記載した名刺を 15日及び同月18日に本件23号線工事にかかわる作業に従事したことを前提として,さらに,同月14日のうちに,Iが原告に対し,15日以降も働きにきてほしいと言ってIの携帯電話の番号を記載した名刺を渡し,同月15日以降連日,Iから原告に早朝電話があり,天候の良かった同月15日及び同月18日は働きにきてほしい旨の連絡が,悪天候であった同月16日及び同月17日は作業中止の確認の連絡が,それぞれなされたと主張している。 しかし,前記のとおり,Iが連絡用の携帯電話番号を原告に知らせたのは,同月18日に本件現場からbの資材置場へ移動した際に何か急用があった場合の連絡先として教えたものにすぎない。 しかも,Iが原告に名刺を渡した際,反対に原告から電話番号等を聞いてはいなかったし,そもそもIが原告を含め日雇雇用の労働者に個別に連絡をして雇用者を確保することは全くない上,ましてや悪天候で当日の作業が中止であることの確認をするような事例も必要性も全くない。 原告は,原告が運転免許と車を持っていたためにIが都合がよいと思った旨主張しているが,本件23号線工事の過程において日雇雇用の必要がある作業日は必ずしも多くなく,日雇雇用が必要な場合も作業内容は定型的・代替的であり,作業場所が移動することもない。そして,本件23号線工事の現場は,交通の不便な場所でもなく,同現場までどのような交通手段を用いるかは,乗合わせや公共交通機関等,個々人に任せており,格別運転免許や車があることで都合がよいと考えることも,ましてや作業のない日も含めて連日電話連絡をするような密な関係を持つ必要性も合理性も全くない。 さらに,このように同月14日及び同月15日に原告自身が本件23号線工事現場で作業をしていたのであれば,同月18日の作業内容も原告自身が当然知り得るところであ を持つ必要性も合理性も全くない。 さらに,このように同月14日及び同月15日に原告自身が本件23号線工事現場で作業をしていたのであれば,同月18日の作業内容も原告自身が当然知り得るところであり,安全靴でなくゴム長靴で来ること自体考えられない。 以上から,Iが原告に対し,連日,電話により連絡をして,原告を雇用していたなどという事実はない。 (ウ) 本件労災申請をなすに至った経緯について被告A株式会社が,本件労災申請をなすに至った経緯は,上記ウ(ウ)のとおりであるが,原告は,被告A株式会社が被告B株式会社の労災保険適用を回避し,自社の労災保険を適用したいがために,bの資材置場での被災をでっち上げて労災申請したと主張する。 しかし,原告は,bの資材置場での被災であることを内容とする各申請書等の書面の作成に何らの異議を述べることなく署名し,Mもこれに異議等を述べたことは全くなかった。 また,原告が,本件23号線工事現場での負傷を主張して労災申請を求めたいのであれば,労災関係成立票の看板を見て,当該保険の内容や保険加入者が被告B株式会社であることを当初から承知していたわけであるから,最初から被告B株式会社に直接労災適用申請を求めて交渉すればよいのであって,むしろ原告自身この段階では全くそのような行動をしていないのである。 このように,原告は,本件23号線工事現場での負傷事実を認めていない被告A株式会社に労災保険の申請を強いて,前記ウに記載したような状況でやむなくこれに応じさせたばかりか,最大限以上の協力をさせておきながら,「でっち上げ」などと理不尽な主張をしているものである。 (被告B株式会社・同川中の主張)ア被告B株式会社の本件労災事故についての認識(ア) 被告B株式会社は,本件労災事故について,原告が事故当日であると主張す 理不尽な主張をしているものである。 (被告B株式会社・同川中の主張)ア被告B株式会社の本件労災事故についての認識(ア) 被告B株式会社は,本件労災事故について,原告が事故当日であると主張する平成10年10月18日前後において全く確認していない。 通常,アスファルト舗装工事においては,アスファルト合材の温度が現場において110度の高温であるため,熱傷事故がないわけではないが,すべて事故現場において直ちに発覚するので,労災事故の存否について問題化することは全くないものである。 ところが,本件労災事故を被告B株式会社が聞知したのは,平成11年9月16日である。この段階では,本件労災事故が発生したとされる日から既に約1年経過しており,被告B株式会社は,本件労災事故の発生を確認することはできなかった。 その後,平成11年11月1日に,原告らが被告B株式会社を訪問したことがあったが,被告B株式会社から原告に本件労災事故の真実を尋ねようとすると,原告に付き添ってきた者が口止めをするようなことがあり,この付添の者が一方的に要求を述べるのみで,原告の主張について真に解明することはできなかった。 (イ) 被告A株式会社からの事情聴取被告B株式会社は,本件労災事故について被告A株式会社から事情を聴取したが,その概略は以下のとおりである。 原告が平成10年10月18日朝,被告A株式会社で働くため友人と一緒に出頭したが,その際,原告はゴム長靴を履いていた。 同日午前中,初めは全員で前日の台風の後片付けをして,その後本件舗装工事に取り掛かった。しかし,被告A株式会社は,原告が,上記のように安全靴でなくゴム長靴を履いていたため,本件舗装工事から除外して現場事務所の横にある資材置場で型枠等の片付けをさせた。その後,原告をbの資材置場に連れて行き し,被告A株式会社は,原告が,上記のように安全靴でなくゴム長靴を履いていたため,本件舗装工事から除外して現場事務所の横にある資材置場で型枠等の片付けをさせた。その後,原告をbの資材置場に連れて行き,そこで前日の台風の後片付けをさせた。原告は同日午後5時ころ,bの資材置場から本件23号線工事の現場事務所に戻り,当日の日当を受け取って,自分の車で帰った。 したがって,原告が主張するような熱傷を負う事故が発生することは考えられず,現に原告がその時点で本件労災事故の発生を訴えたことはなかった。 (ウ) 被告B株式会社としては,上記のとおり,原告の本件傷害について,事故現場で当日確認できなかったものであり,これを認めることはできない。 イ平成10年10月14日及び同月15日の作業内容について原告は,本件傷害を受傷したとする平成10年10月18日に先立ち,同月14日及び同月15日にも作業に従事していると主張し,両日の作業内容はスチールファイバー入りのコンクリート舗装工事であったという。しかしながら,被告B株式会社が施工したのは両日ともアスファルト舗装工事であってコンクリート舗装工事ではない。 本件23号線工事の現場では,被告B株式会社大江工場から同月14日午前7時52分から同12時54分まで,155トン(付着性改質改善粗粒)の,同月15日午前7時41分から同7時47分まで,40トン(付着性改質密粒)の各アスファルト合材の出荷を受けており,アスファルト舗装を施工したことに間違いはない。 なお,スチールファイバー入りのコンクリート舗装工事を施工したのは,同年10月9日である。 上記のように,原告の主張は事実に反するものである。 ウ原告の供述する本件舗装工事の作業状況等について(ア) 原告は,フィニッシャーの前輪と後輪の中間辺りで,進行方向に ,同年10月9日である。 上記のように,原告の主張は事実に反するものである。 ウ原告の供述する本件舗装工事の作業状況等について(ア) 原告は,フィニッシャーの前輪と後輪の中間辺りで,進行方向に向かって右側の位置でスコップマン作業に従事したとして,その場所は非常に熱かったと供述している。 しかし,原告が作業したと供述する位置は,それほど熱い場所ではない。すなわち,エンジンの熱といっても,多少温かくなるくらいであり,また,バーナーは,作業の始めにフィニッシャー後部のアイロンを熱するために使用するが,作業が始まったらバーナーを使用することはない。 (イ) また,原告は,本件傷害について最初に受診した医師に対して,午前11時ころに受傷した旨申告しているようであるが(甲10),そうであれば,昼食時に本件23号線工事の現場事務所で弁当を食べた際,ゴム長靴を脱いで,本件傷害を受傷したことを知り得たはずである。上記現場事務所の休憩室には,床が張られ,土足厳禁であった。入室者全員が靴を脱いで入室するようになっているのである。そして,昼食時には同僚たちとくつろぐわけであるから,もしやけどをしていれば,同僚たちに訴えたり,相談したりするはずであるが,原告は全くこれをしていない。 (ウ) さらに,原告は,本件傷害を受傷した具体的な時間については,あいまいな供述をしながら,その一方で,「痛ぁいといって冷やしてからまた仕事を続けたりして,5時までその繰り返しでした。」と供述し,また,ゴム長靴に油を塗って,冷やした旨供述している。 これらの原告の供述からすれば,原告は,相当程度,やけどの自覚症状を有していたと思われ,糖尿病のためにやけどに気付かなかった旨の原告の主張と矛盾する。 さらに,そもそも,油を塗っても,冷却効果はほとんどなく,一度靴が熱くなれば, 原告は,相当程度,やけどの自覚症状を有していたと思われ,糖尿病のためにやけどに気付かなかった旨の原告の主張と矛盾する。 さらに,そもそも,油を塗っても,冷却効果はほとんどなく,一度靴が熱くなれば,我慢して仕事を継続するなどということは考えられない。そのような状況で,原告が同僚作業員に何らやけどの事実を訴えなかったことは,理解に苦しむものである。 エ本件傷害の部位等について本件傷害の部位は,足の甲部であるが,アスファルト舗装工事においては,アスファルトの上に乗ることはあっても,足の甲の部分が熱傷を受けることは考え難い。仮にアスファルトが足の甲部に乗ったとしても,すぐに振り落とされ,やけどを受傷するほど長時間アスファルトが乗っているとは考えられない。 したがって,本件傷害が本件舗装工事において発生したものであるとはいい難い。 オ本件舗装工事終了後の原告の行動について(ア) 原告は,本件舗装工事の作業終了後,すぐに賃金を受け取って,そのまま自己の車を運転して帰ったと主張し,帰宅するまでの間,一度もゴム長靴を脱がなかったという。 しかし,本件舗装工事は,基層アスファルトの上に表層アスファルトを舗装する工事であったところ,基層アスファルトと表層アスファルトを密着させるために,基層アスファルト上にアスファルト乳剤を散布する工程がある。原告が本件舗装工事に従事したとすれば,上記アスファルト乳剤がゴム長靴に付着して,原告のゴム長靴はべとべとの状態になっていたはずである。原告が,帰宅するまでゴム長靴を脱がなかったということは,ゴム長靴を十分に清掃しないまま車を運転して帰ったということになるが,そうであれば,車の運転操作に違和感を感じたり,車の床がべとべとに汚れたりしたはずであるのに,原告はこの点について何ら触れていない。 (イ) 原告は,平 いまま車を運転して帰ったということになるが,そうであれば,車の運転操作に違和感を感じたり,車の床がべとべとに汚れたりしたはずであるのに,原告はこの点について何ら触れていない。 (イ) 原告は,平成10年10月18日午後6時ころに帰宅し,本件傷害を受傷していることに気付いたが,食事や着替えなどをして,同日午後9時ころに病院で受診したと主張する。そして,その間,Iの携帯電話にやけどをした旨の報告をするため架電したが,本人が応答しなかったため,そのまま何ら報告をせずに電話を切ったと供述している。 しかし,やけどの報告のために架電しながら,伝言の依頼や再度の架電をせずに放置しているのは不自然である。 また,午後6時から午後9時までの3時間もの間,受診が他の障害ではなく原告本人の気持ちのみで遅れていることも不自然である。 カ被告B株式会社の責任について被告B株式会社としては,労災事故の発生防止に意を尽くしていることは当然であるが,万一,発生した場合,これを忌避するようなことは全くなく,社内に専任の安全環境部長も設置して,対策に努めており,被告B株式会社には,原告が主張するような安全保護義務違反はない。 (2) 争点(2)(損害額)について(原告の主張)ア入通院の経過原告は,本件傷害につき,前記のとおり,F病院の救急外来を受診し,両足熱傷3度の診断を受けたが,その後,同病院等に以下のとおり入通院をした。 (ア) 平成10年10月18日から同年11月5日までF病院皮膚科に通院(期間19日間,実日数約15日間)(イ) 平成10年11月6日から同月15日までF病院形成外科に通院(期間10日間,実日数は後記(エ),(カ)と合わせて15日間)(ウ) 平成10年11月16日から同年12月30日までF病院形成外科に以下の治療のため入院(期 ら同月15日までF病院形成外科に通院(期間10日間,実日数は後記(エ),(カ)と合わせて15日間)(ウ) 平成10年11月16日から同年12月30日までF病院形成外科に以下の治療のため入院(期間45日間)a 11月16日に糖尿病の治療を開始する。 b 12月8日に皮膚移植術・植皮術を受ける。 c 同月21日に皮膚形成術を受ける。 (エ) 平成10年12月31日から平成11年3月14日までF病院形成外科に通院(期間74日間,実日数は前記(イ),後記(カ)と合わせて15日間)(オ) 平成11年3月15日から同月26日までF病院形成外科に入院し(期間12日間),同月16日に皮膚形成術を受ける。 (カ) 平成11年3月27日から同年6月14日までF病院形成外科に通院(期間80日間,実日数は前記(イ),(エ)と合わせて15日間)(キ) 平成11年7月8日から同年8月3日までQ病院形成外科に通院(期間27日間,実日数3日間)イ症状固定と後遺障害の等級症状固定日は平成11年8月3日であり,左足背部瘢痕拘縮の後遺障害を残した。 名古屋東労働基準監督署長は,同月16日付けで,傷病・障害等級14級20号の認定をした。 ウ損害額本件は労災保険により保険金が支給されているため,未填補の損害額を算定すると,下記のとおりであり,合計648万1077円となる。 (ア) 症状固定時までa 入院雑費 8万5500円b 通院交通費 7600円c 文書料 6300円d 休業損害 119万3176円e 入通院慰謝料 200万円(イ) 後遺障害による損害a 逸失利益 206万4517円b 慰謝料 120万円c 上記a,bに関し,57万6016円の保険給付があり,未填補額は268万8501円となる。 (ウ) 弁護士費用 50万円エ被告B株式会社, 逸失利益 206万4517円b 慰謝料 120万円c 上記a,bに関し,57万6016円の保険給付があり,未填補額は268万8501円となる。 (ウ) 弁護士費用 50万円エ被告B株式会社,同川中の過失相殺の主張に対する反論(ア) 被告B株式会社,同川中は,まず,原告としては,①自ら安全靴でないため作業できない旨申し出るか,②他に安全靴の用意はないかと安全靴の借受けの申出をなすべきであるとして,これをもって原告に過失がある旨主張する。 しかしながら,そもそも,使用者が労働者に対して負っている安全保護義務は,労働者の不注意をも予測して不可抗力以外の労災死傷病事故の発生を防止すべき万全の措置を講ずべき義務である。また,一般に使用者はその用意した作業場所及び作業用機器,計器を提供して,被用者に労働を提供させる形を取ることがほとんどであり,使用者において指揮命令権もある。したがって,使用者の側で,被用者が危険な目に遭わないように,機械等の取扱手順を定め,かつ,被用者に定めた安全に関する基準を指揮命令して遵守させるなどして,安全を管理することが十分可能である。このような当事者の関係からしても,自動車事故の場合とは根本的に事故発生の構造が異なるものである。以上のとおり,使用者は高度な労災防止義務を負っていると解すべきであり,労災職業病の発生過程で労働者の「不注意」があったとしても,それは多くの場合,使用者の安全保護義務違反に比べて「軽微」であり,使用者の安全保護義務違反に吸収され,過失相殺の対象とすべきではないというべきである。 本件でも,被告B株式会社が自ら認めるように,安全靴を着用せずに作業に従事することは危険であることを熟知していたのであるから,原告が安全靴を履かないまま作業に従事することのないよう,措置を講ずるべきである。 一方,原告 会社が自ら認めるように,安全靴を着用せずに作業に従事することは危険であることを熟知していたのであるから,原告が安全靴を履かないまま作業に従事することのないよう,措置を講ずるべきである。 一方,原告は日雇労働者であり,種々の仕事に従事しており,スコップマン作業も初めてであったので,同被告がいうように原告が安全靴を履かないままスコップマン作業をすれば危険であると知っていたわけではない。 したがって,原告が過失相殺をされる余地はない。 (イ) また,被告B株式会社,同川中は,原告が糖尿病に罹患しており,本件傷害の治療と合わせて糖尿病の治療も受けたと推認できるから,糖尿病の治療に係る一切の費用及び損害は自己負担すべきであるとして,過失相殺の主張をしている。 しかし,被告B株式会社は,新規の労働者を迎えるとき,新規入場時教育を実施すべきであり,この中で,健康診断の有無,既往症及び健康状態についてチェックすることになっている。仮に,同被告が原告に対し新規入場時教育を実施していたならば,原告の健康状態をチェックできたはずである。 自己がなすべきことをせず,過失相殺を主張する根拠として糖尿病の罹患の事実を主張するのは不当である。 (被告B株式会社,同川中の主張)ア損害額について(ア) 原告は,休業日数を290日と主張するが,甲8の1ないし8から推定すると,入通院に伴う休業日数は188日であると考えられる。 (イ) また,原告は労災保険で平均賃金の60パーセント相当額の給付を受けたと主張するが,甲8の1ないし8から推定すると,80パーセント相当額の給付を受けたものと考えられる。 (ウ) 仮に,原告に逸失利益が発生するとしても,現に得ている収入額を基礎として計算するのが当然であり,それによれば,原告は現に日額1万0286円の平均賃金を得ていたと主張してい ものと考えられる。 (ウ) 仮に,原告に逸失利益が発生するとしても,現に得ている収入額を基礎として計算するのが当然であり,それによれば,原告は現に日額1万0286円の平均賃金を得ていたと主張しているので,年額では375万4390円となり,これを前提に労働能力喪失率5パーセント,余命稼働年数11年のライプニッツ係数8. 3064をもって計算すると,総額は155万9273円となる。 さらに,原告は,保険給付額を57万6016円と主張するが,甲7によれば65万6016円である。 (エ) 加えて,原告は後遺障害等級14級を主張して,労働能力喪失率5パーセントを理由として,将来の得べかりし収入の5パーセントを逸失利益として計算しているが,後遺障害があるとしても,その部位,程度からすると逸失利益が認められるかどうかは疑問である。まして,原告の余命稼動期間の全期間について逸失利益が認められるとするのは合理性に欠けるものというべきである。 イ過失相殺等(ア) 仮に原告が本件舗装工事において本件傷害を受傷したとしても,アスファルト舗装工事の現場においては作業従事者全員が,安全靴を着用せずに作業に従事することが危険であることを承知しているのであるから,安全靴を着用していない者が作業に従事しようとしても直ちに監督者のみならず同僚からも排除されるはずであり,このことは原告本人もアスファルト舗装工事に従事しようとしている者として十分に承知していたはずである。そうだとすれば,原告は被告らに対して,自ら,安全靴を着用していないため作業に従事できない旨を申し出るか,安全靴を借り受けたい旨の申出をすべき信義則上の注意義務があるというべきであり,原告はこのような注意義務を怠ったのであるから,原告にも過失があるというべきである。 (イ) また,原告は糖尿病の持病があり,本 り受けたい旨の申出をすべき信義則上の注意義務があるというべきであり,原告はこのような注意義務を怠ったのであるから,原告にも過失があるというべきである。 (イ) また,原告は糖尿病の持病があり,本件傷害の治療と同時に糖尿病の治療も受けていたものと推認される。そうすると,糖尿病の治療に要した一切の費用は原告が自己負担すべきものであって,これを被告らが負担する合理的理由はない。 (ウ) 以上の事情を総合的に考慮すれば,50パーセントの過失相殺がなされるべきである。 ウ原告の反論に対する再反論(ア) 原告は,被告B株式会社の過失相殺の主張に対し,労災事故は使用者の安全配慮義務の下で個々の労働者の不注意をも予測して不可抗力以外の労災死傷事故を防止するための万全の措置を講ずべきものであるから,被災者に仮に不注意があったとしても過失相殺などをすることはできないと反論する。 確かに,原告主張のような学説が一部存在することは認めるが,裁判例及び実務において,被災者側の過失に基づく過失相殺を一般論として否定したり制限したりする見解は採用されていない。 雇用法上,使用者側に安全配慮義務又は安全保証義務があるとしても,そこから直ちに民法上の債務不履行や不法行為の過失相殺の規定を労働契約について一般的に否定したり制限したりする根拠は現行法上見出し難い。また,民法1条2項の信義則,労基法1条の労働条件の原則などをよりどころとしても,過失相殺を一般的に禁止したり制限したりする結論を導き出すことは困難である。 過失相殺の適用,その割合についての判断は民事の労災訴訟においても当事者間における公平の見地から民法の規定に従って裁判官の裁量にゆだねられているものと解されるところである。 (イ) また,原告は本件傷害の受傷について,当時糖尿病疾患があったため単なる熱 おいても当事者間における公平の見地から民法の規定に従って裁判官の裁量にゆだねられているものと解されるところである。 (イ) また,原告は本件傷害の受傷について,当時糖尿病疾患があったため単なる熱傷の場合に比して受傷の程度,治療の内容,治療期間等について事実上拡大したものと考えられる。この場合,原告が糖尿病に罹患していたことは原告の過失とはいえないとしても,そのことにより必要であった治療行為,治療期間等に伴う損害についてまで使用者側が補償をなすべき理由はなく,その糖尿病に係る損害と労災事故とは相当因果関係が存しないものというべきである。この部分については,損害の割合的認定がなされるべきである。 第3 当裁判所の判断 1 前提となる事実前記当事者間に争いのない事実等及び後掲各証拠並びに弁論の全趣旨によると次の事実が認められる。 (1) 本件23号線工事の工程等について(甲12,13,18,丙8)同工事においては,総延長920メートルの橋面補修を平成10年2月18日から平成11年2月26日にかけて実施することが予定されており,工事の進行方向としては,国道23号線港陽高架橋の上り方面を始点として,下り方面へ向かって進行していくことになっていた。そして,具体的な実施方法としては,工事対象区域全体を4ブロックに分割し,各区域ごとに①まず既存路面の切削工と研掃工を行って,従前舗装してあったアスファルト及びコンクリートの一部を切削して,表面をスチールショットと人力はつりで研掃し,②その上に増厚コンクリート工を実施して,超速硬SFコンクリートを打設し,③その養生後(甲13・25頁によれば,3時間以上とされている。),更にその上に防水,排水設備をした上,④本件で問題となっているアスファルト舗装工(鋼橋の場合は表層のみであり,PC(プレスコンク ,③その養生後(甲13・25頁によれば,3時間以上とされている。),更にその上に防水,排水設備をした上,④本件で問題となっているアスファルト舗装工(鋼橋の場合は表層のみであり,PC(プレスコンクリート)橋の場合は,基層と表層の2層に分かれている。なお,甲13・28頁によれば,1次転圧の際の目標転圧温度は,摂氏160度ないし摂氏170度とされている。)を実施して,熱したアスファルト合材を路面上にフィニッシャーで敷均し,スコップマンが散布状況を調整して,各種ローラーで転圧し,⑤最後に区画線工を行って,アスファルト表面に車線表示その他の区画線を描くという一連の手順を約1か月ないし40日の間隔で繰り返すことになっており,そのほか,⑥コンクリートの不良箇所が見つかった場合には,当該部分のみ床版打換工を実施し,⑦またPC(プレスコンクリート)橋の場合には既存コンクリート撤去の代わりに,埋設ジョイントの撤去・新設をして,同様の仕上げをする(アスファルト舗装が2層に分かれていることは上記のとおり。)ことが予定されていた。 同工事の大まかな工程は,以下のとおりであり,当初の予定では,平成10年9月中旬ころに,3番目の工事区画のコンクリート打設工事が実施されることになっていた。 ア工事開始から平成10年5月上旬まで準備工イ同年5月中旬から同年6月上旬まで仮設工(橋梁足場等設備工,中央分離帯撤去)ウ同年6月中旬及び同月下旬①路面切削工,②床版打換工,③埋設ジョイント,④研掃工エ同年7月上旬①増厚コンクリート工,②橋面防水工,③アスファルト舗装工,④区画線工オ同年7月中旬から同月下旬①路面切削工,②床版打換工,③埋設ジョイント,④研掃工カ同年8月上旬①増厚コンクリート工,②橋面防水工,③アスファルト舗装工,④区画線工キ 装工,④区画線工オ同年7月中旬から同月下旬①路面切削工,②床版打換工,③埋設ジョイント,④研掃工カ同年8月上旬①増厚コンクリート工,②橋面防水工,③アスファルト舗装工,④区画線工キ同年8月中旬から同月下旬①路面切削工(アスファルト,コンクリート切削),②床版打換工,③路面切削工(アスファルト切削)ク同年9月上旬①埋設ジョイント,②研掃工ケ同年9月中旬①増厚コンクリート工,②橋面防水工,③アスファルト舗装工,④区画線工コ同年9月下旬から同年10月上旬①路面切削工,②床版打換工,③埋設ジョイント,④研掃工サ同年10月中旬①増厚コンクリート工,②橋面防水工,③アスファルト舗装工,④区画線工シ同年10月下旬から工事終了時まで①中央分離帯復旧,②橋梁足場等設備工,③準備工(2) 平成10年10月18日前後の名古屋市の天候について(甲23,27,29)平成10年10月17日から同月18日にかけて,台風が接近,通過した。 その前後の名古屋の天候についてみるに,同月16日,同月17日の両日は相当量の雨が降った(同月16日は52.5ミリ,同月17日は54.5ミリ)。そして,本件舗装工事が実施された当日である同月18日は,9ミリの雨であったが,同日中,何時ころにどの程度の雨が降ったかを具体的に認定し得る証拠はない。 (3) 本件23号線工事の現場における,平成10年10月18日の作業内容について平成10年10月16日及び同月17日は,台風のため,本件23号線工事に関わる具体的作業は行われなかった(ただし,台風に備えた養生作業を除く。原告本人,弁論の全趣旨)。そして,同月18日は,本件舗装工事が実施されたが,当日の作業は,最初,全員で,台風のために倒れたフェンスの整理等をし,その後,本 た(ただし,台風に備えた養生作業を除く。原告本人,弁論の全趣旨)。そして,同月18日は,本件舗装工事が実施されたが,当日の作業は,最初,全員で,台風のために倒れたフェンスの整理等をし,その後,本件舗装工事が実施されたものである(丙3)。 (4) 本件労災申請以後の経過についてア本件労災申請は,前記当事者間に争いのない事実等にあるとおり,bの資材置場での被災を内容としてなされたものであるが,その第1回の休業補償給付支給請求は,平成10年11月18日付けで名古屋東労働基準監督署に受理され(丙1の3),その後,原告は,前記当事者間に争いのない事実等にあるとおり,平成11年8月19日までの間,労災保険給付の支給を受けた。 イ原告は,本件労災申請に基づく労災保険給付の請求の際,一度も被災場所がbの資材置場であることにつき異議を唱えることなく,各請求書に押印し,労災給付の支給を受けた際には,被告A株式会社の事務所に,あいさつに訪れた(原告本人,弁論の全趣旨)。 2 争点に対する判断本件では,そもそも,原告が本件舗装工事に従事したか否かにつき争いがあるところ,原告の主張を裏付ける証拠としては,主として証人であるKの証言及び原告本人の供述(いずれも陳述書等を含む。以下同じ。)が挙げられる。そこで,以下,それぞれの信用性について検討した上,原告が本件舗装工事に従事したと認められるかを検討する。 (1) Kの証言の信用性についてア Kが本件舗装工事に従事したとする日時について原告は,平成10年10月18日,Kと共に本件23号線工事の現場へ行き,被告A株式会社の作業員として本件舗装工事に従事した旨主張し,Kはそれに沿う証言をしている。 しかし,その陳述録取書(甲16)においては,原告とともに本件舗装工事に従事した日時について,平成10年 ,被告A株式会社の作業員として本件舗装工事に従事した旨主張し,Kはそれに沿う証言をしている。 しかし,その陳述録取書(甲16)においては,原告とともに本件舗装工事に従事した日時について,平成10年の10月ころとしながら,「日にちとか何月かということは覚えていませんでしたが,台風の過ぎた翌日のことだったのでよく覚えています。」と陳述しているのに,本件口頭弁論期日における証人尋問においては,台風が来ていたという点につき記憶がないばかりか,その季節すら明確に証言していない。 Kの上記陳述録取書において,台風に関する陳述は,原告と共に本件舗装工事に従事した日が平成10年10月18日であることを特定する重要な要素となっているのは明らかであり,陳述録取時から証人尋問実施まで1年数か月が経過していることを考慮しても,台風に関する記憶がないというのは不自然であるというほかない。 したがって,原告と共に本件舗装工事に従事したというKの証言は,もはやその日時を特定する根拠を失ったばかりか,このように日時特定の重要な要素について明確な証言ができないことからすれば,それはKの証言全般についての信用性に関わる問題というべきである。 イ原告に仕事に誘われたときの状況についてKは,原告と共に本件舗装工事に従事した当日の朝,青空労働市場において,原告から「仕事に行ってくれんか。」と声を掛けられた,その場には被告B株式会社(あるいは下請業者)の者が3人おり,Kが,当日の工程がアスファルト舗装工事であることを前提に,「私,長靴だが」と言ったが,上記業者の者から「ええよ。」と言われ,長靴のまま本件23号線工事の現場へ行ったと証言している。 しかし,舗装工事については,E株式会社,被告A株式会社と下請に出しているのに,被告B株式会社の社員が,青空労働市場へ舗装工事の作業員 言われ,長靴のまま本件23号線工事の現場へ行ったと証言している。 しかし,舗装工事については,E株式会社,被告A株式会社と下請に出しているのに,被告B株式会社の社員が,青空労働市場へ舗装工事の作業員を確保するために赴くとは通常考えられないし,Iにもう一人連れてくるように頼まれて,青空労働市場でKに声を掛けた旨の原告の供述とも整合しない。 ウ当日従事した作業の内容・状況についてKは,原告と二人で,朝から作業終了時まで,1日ずっとスコップマン作業に従事し,他にスコップマン作業に従事した者はいなかった旨証言する。しかし,原告が,当日の午前中,当初は前日の台風の片付け作業等に従事したことについては,原告自身が認めるところであるのに,Kの証言はこれと矛盾するものである。また,スコップマン作業が,交替制で行われるものであることは,Iや原告が供述しているところであり,現に他にスコップマン作業に従事した者もいることが認められる(丙3)。したがって,当日スコップマン作業に従事したのが原告とKの二人のみであるということはあり得ない。 この点,Kは,原告とアスファルト舗装工事に従事したのは本件舗装工事の1回のみである旨証言し,原告も,アスファルト舗装工事は本件舗装工事が初めてであると供述しているのであるから,他の機会にKと原告の二人のみでスコップマン作業に従事したということはなく,原告と二人のみでスコップマン作業に従事した旨の証言が,記憶の混同のためということもできない。 上記のようなKの証言は,実際に本件舗装工事に従事した者であれば誤るはずのない重要部分について,事実と異なる証言をしているというほかないものである。 エ結局,Kの証言は,全体を通じて,①原告に誘われて本件23号線工事の現場に行った,②新規入場者教育はなかった,③原告と共にゴム長靴のまま本 ,事実と異なる証言をしているというほかないものである。 エ結局,Kの証言は,全体を通じて,①原告に誘われて本件23号線工事の現場に行った,②新規入場者教育はなかった,③原告と共にゴム長靴のまま本件舗装工事に従事した,④本件舗装工事の元請は被告B株式会社であったといういわば骨格となる部分のみは一貫した証言であるといえるが,本件舗装工事に従事した日時もはっきりしないばかりか,スコップマン作業に従事した作業員の人数や,原告が当初従事した作業など,当日の作業状況の具体的部分について,明らかに事実に反する証言をしている。 さらに,Kは,被告A株式会社・同長谷川代理人に,ほかに日雇作業者はいなかったのかと質問されたのに対し,「とにかく,私1日行きまして,そういうふうやもんで,あと本人(原告を指すものと考えられる。)は,前後多少行っとることは行っとるね。」と答えているが,これは,質問に直接答えず,原告が,本件舗装工事当日の前後に,本件23号線工事の現場に行っているという自己の経験しない事実を証言するものであり,原告の主張に沿う証言をしようとする姿勢が窺われるものである。 オ以上のようなKの証言内容にかんがみれば,原告と共に本件舗装工事に従事した旨の同人の証言は,到底信用することはできない。 (2) 原告本人の供述の信用性についてア平成10年10月14日及び同月15日の本件23号線工事の現場における作業内容について(ア) 原告は,平成10年10月14日及び同月15日にも被告A株式会社に日雇作業員として雇用され,スチールファイバー入りのコンクリート舗装工事の補助作業に従事した旨供述する。 (イ) そこで,上記両日における工程についてみるに,まず,丙8によれば,平成10年10月9日に,コンクリート舗装工事が実施されたことが認められる。ただし,前 工事の補助作業に従事した旨供述する。 (イ) そこで,上記両日における工程についてみるに,まず,丙8によれば,平成10年10月9日に,コンクリート舗装工事が実施されたことが認められる。ただし,前記1(1)認定の本件23号線工事の工程予定からすると,コンクリート舗装工事(前記工程の増厚コンクリート工を指すものと考えられる。)は,4回予定されているところ,同号証によれば,平成10年10月9日のコンクリート舗装工事の実施箇所について,「上り追越し車線(ステップ3)」とされており,同日に実施されたコンクリート舗装工事は,4回予定されている工程のうち,3番目のコンクリート舗装工事であると推認される。したがって,同日にコンクリート舗装工事が実施されているからといって,それのみで平成10年10月14日及び同月15日にコンクリート舗装工事に従事したとの原告の供述が虚偽であるとはいえない。 なお,平成10年10月9日に実施されたコンクリート舗装工事が,前記1(1)のとおり3番目の工程のものであるとすると,同工事は,9月中旬に予定されているものであるから,実際の工程は,予定よりも20日から1か月程度遅れていたと考えられる。 (ウ) 次に,平成10年10月14日及び同月15日における作業についての原告の供述についてみると,原告は,上記両日にコンクリート舗装工事をした地点と,同月18日に本件舗装工事をした地点とは,別の地点であり,本件舗装工事をした地点は,上記両日にコンクリート舗装工事をした地点よりももっと下っていった先の地点であると供述する。 この点,前記1(1)認定のとおり,橋面補修の具体的方法としては,工事予定部分を4区画に分け,それぞれの箇所で①切削・研掃,②コンクリート舗装,③橋面防水,④アスファルト舗装というサイクルで橋面を補修しながら,順次次の 認定のとおり,橋面補修の具体的方法としては,工事予定部分を4区画に分け,それぞれの箇所で①切削・研掃,②コンクリート舗装,③橋面防水,④アスファルト舗装というサイクルで橋面を補修しながら,順次次の箇所に進んでいくという方法が予定されていたと認められる。 そして,前記(イ)のとおり,平成10年10月9日に,前記1(1)認定の工程における3番目のコンクリート舗装工事が実施されていることからすると,原告が従事したというコンクリート舗装工事は,3番目のコンクリート舗装工事の続きあるいは4番目のコンクリート舗装工事であるということになる。 仮に,これが3番目のコンクリート舗装工事の続きであったとすると,このコンクリート舗装工事の後には,同じ箇所について橋面防水工を実施し,その上にアスファルト舗装工事を行うことになるから,コンクリート舗装工事をした場所よりも先に下った地点についてアスファルト舗装工事をしたという原告の供述は,本件23号線工事の工程と矛盾するものである(4区画に分けられた各工事区域内において,前記1(1)認定の工事の進行方向とは逆方向に工事が進められたとは考え難い。)。 このことは,3番目のコンクリート舗装工事が,ある程度の距離にわたって(総工事区間を単純に4分すれば,230メートルとなる。)実施されているであろうことを考慮しても同様である。 なぜなら,同月16日及び同月17日の作業が,台風のため休みであったことは前記1(3)認定のとおりであるから,同月18日の本件舗装工事は,原告が従事したというコンクリート舗装工事の上になされるアスファルト舗装工事であると考えるのが自然であるが,そうであれば,原告が従事したというコンクリート舗装工事は,3番目のコンクリート舗装工事の後半部分ということになるから,それより先の地点についてアスファルト舗 装工事であると考えるのが自然であるが,そうであれば,原告が従事したというコンクリート舗装工事は,3番目のコンクリート舗装工事の後半部分ということになるから,それより先の地点についてアスファルト舗装工事をするということは通常考え難いからである。 次に,原告が従事したというコンクリート舗装工事が,仮に4番目のコンクリート舗装工事であったとすると,3番目のコンクリート舗装工事と,4番目のコンクリート舗装工事の間には,5日程度の期間しかないことになるが,前記1(1)認定の工程予定においては,コンクリート舗装工事の間隔は約1か月程度予定されており,その間に他の工事(アスファルト舗装,切削,研掃等)がなされることになっているのである。前記のとおり実際の工事が工程予定表よりも遅れており,工事関係者が工事を早く進めようとしていたであろうことを考慮しても,1か月程度の期間を予定されている工程が,5日程度で完了するとは到底考えられない。 また,上記のとおり,同月18日に実施された本件舗装工事は,同月14日及び同月15日にコンクリート舗装工事をした箇所の上に,更にアスファルト舗装工事をするというものであったと考えるのが自然であるから,原告の供述するように同月14日及び同月15日にコンクリート舗装工事をした箇所よりもさらに下った箇所を同月18日にアスファルト舗装したということは考え難い。 (エ) 加えて,仮に舗装工事の箇所についての原告の前記供述が,記憶の希薄化あるいは勘違いによるものであり,実際には同じ箇所についてコンクリート舗装工事及びアスファルト舗装工事をしたのだとしても,前記1(1)認定のとおり,コンクリート舗装工事の後には,橋面防水工が予定されている上,その間にコンクリートの養生も予定されており,実際の工事でも,皮膜養生,シート養生等の作業が行われて としても,前記1(1)認定のとおり,コンクリート舗装工事の後には,橋面防水工が予定されている上,その間にコンクリートの養生も予定されており,実際の工事でも,皮膜養生,シート養生等の作業が行われているにもかかわらず(甲18),原告の供述中この点を窺わせる明確な供述はない(グリーンのカバーを被せたという供述はあるものの,シート養生にグリーンのカバーを用いたことを示す証拠はなく,甲18に照らしても,これは雨よけの防水シートのことを供述したものと考えられる。)。 (オ) 以上からすると,平成10年10月14日及び同月15日に,被告A株式会社に雇われてコンクリート舗装工事に従事した旨の原告の供述は,実際の本件23号線工事の工程に照らし矛盾する内容というべきであり,これを直ちに信用することはできない。 (カ) なお,原告は,平成10年10月14日に初めて本件23号線工事の現場に行った際,Iから,Jという作業員の代わりに雇った,作業員が余り替わると被告B株式会社の監督がうるさいから,Jと名乗ってくれと言われた旨供述し,現にJという姓の作業員が,平成10年10月9日に,本件23号線工事の作業員として新規入場者教育を受けていることが認められるが(甲15の一部),仮にIが原告に対し,上記のような言動をしたとしても,それが平成10年10月14日のことであると特定するに足りる証拠はなく,前記の原告の供述の信用性の判断に影響を与えるものではない。 イ平成10年10月15日以降のIとの連絡状況について(ア) 原告は,平成10年10月14日又は同月15日に,Iから,「台風の影響がなければ工事を続けるので,連絡を取り合おうね。」と言われ,名刺を渡された,翌日以降,Iから連絡があり,同月16日及び同月17日には台風のため休みである旨の連絡が,同月18日は仕事に出て 風の影響がなければ工事を続けるので,連絡を取り合おうね。」と言われ,名刺を渡された,翌日以降,Iから連絡があり,同月16日及び同月17日には台風のため休みである旨の連絡が,同月18日は仕事に出てきてほしい,もう一人連れてきてほしいとの連絡がそれぞれあったと供述する。 (イ) Iが原告に名刺を渡したこと自体は,当事者間に争いがないところであり,Iが,従前,被告A株式会社の常駐アルバイトであったHを介して,日雇作業員の確保をしていたことがあることも,I自身が供述している。しかし,そもそも,原告は,Hのような常駐アルバイトではなく,単に日雇労働者の一人にすぎず,しかも,アスファルト舗装工事は今回が初めてであったというのであるから,Iが,あえて原告に対し,今後も連絡を取ろうとする理由は特に認められない。 この点,原告は,Iにおいて,原告が車を所有していることをもって便利であると考えた旨主張するが,本件23号線工事の現場への交通手段について,車で出勤することが便利であると認めるに足りる証拠はなく,Iが原告に対して他の日雇労働者を確保するように依頼したという事実を裏付ける証拠は原告本人の供述以外にはない。 (ウ) さらに,原告の供述によれば,本件傷害を受傷したとする平成10年10月18日当日には,Iの携帯電話に架電したものの連絡は取れず,何ら話しをしなかったというのであるから,翌日にIに架電するまでの間,Iは原告が本件傷害を受傷した事実を知らなかったのであり,そうであれば,同月19日の早朝にも,作業の有無等について,Iから連絡がされ,あるいは前日の作業終了後に,翌日以降の作業予定等について何らかの連絡があるのが自然であるが,原告の供述中,同月19日以降の作業についてのIとの連絡状況については触れるところがない。 (エ) 以上からすると,Iから連 終了後に,翌日以降の作業予定等について何らかの連絡があるのが自然であるが,原告の供述中,同月19日以降の作業についてのIとの連絡状況については触れるところがない。 (エ) 以上からすると,Iから連日,電話で当日の作業についての連絡があった旨の原告の供述は措信できない。 ウ Kとの同行について(ア) 原告は,平成10年10月18日,Iにもう一人日雇作業員を連れてくるように頼まれ,青空労働市場においてKに声を掛けて連れて行った旨供述する。 (イ) まず,この点に関するKの証言が信用できないことは前記(1)のとおりである。 (ウ) また,原告は,労働基準監督署における聴取書(甲17)においては,原告が本件舗装工事においてスコップマン作業に従事した際,原告のほかには二人のスコップマンがおり,交替しながら作業に従事したと供述した上で,原告以外の二人について,名前は分からないが,韓国の方と,もう一人は体格がよい,原告よりも年上と思われる人物であった旨供述している。 そして,陳述録取書(甲20)においては,上記体格のよい人物がKであり,労働基準監督署における聴取の際には思い出せなかった旨陳述している。 しかしながら,労働基準監督署において,原告以外のスコップマンの特徴について上記のとおりある程度具体的に供述しているにもかかわらず,そのうち一人が知り合いのKであったことを失念するのは不自然であるというほかない。 また,原告は,労働基準監督署における供述では,当日作業終了後はまっすぐ家に帰ったと供述しており,本件訴訟の審理においても,当初は同様に主張していたのが,審理の途中から,Kを連れて現場に行き,作業終了後はKを青空労働市場まで送ってから自宅へ帰った旨主張するようになったのであるが,原告の主張及び供述を前提にすれば,本件23号線工事の現場で作業をし が,審理の途中から,Kを連れて現場に行き,作業終了後はKを青空労働市場まで送ってから自宅へ帰った旨主張するようになったのであるが,原告の主張及び供述を前提にすれば,本件23号線工事の現場で作業をしたとする三日間のうち,原告が自宅へまっすぐ帰ったのは平成10年10月15日の1日のみであることになる(同月14日はGを,同月18日はKを車に乗せ,青空労働市場へ送ったことになる。)から,本件傷害受傷当日における同行者の有無につき,ほかの作業日と混同したということも考え難い。 (エ) 上記のような原告の供述の状況に加え,平成10年10月18日にKを誘ったときの状況(業者がいたのか否か),最初に従事した作業の内容(片付け作業か,アスファルト舗装工事か),スコップマンの人数(原告とKの二人だけか,ほかにもいたのか)など,当日の経過の具体的部分について,Kの証言と原告の供述の齟齬は著しく,原告とKが本件舗装工事に一緒に従事したとは到底考えられない。 したがって,Kを同行して一緒に本件舗装工事に従事した旨の原告の供述を信用することはできない。 エ本件傷害の箇所及び受傷の時期等について(ア) 本件傷害の箇所は,原告の両足の甲部であるところ,被告らは,アスファルト舗装工事に従事して,足の甲部をやけどすることは通常考えられないと主張し,更に,両足甲部にやけどを受傷したのであれば,原告のゴム長靴が溶解,変形等しているはずであると主張する。 この点につき,原告は,履いていたゴム長靴に異常はなかった旨供述し,また,足の甲部にアスファルト合材が付着することがあることを前提として,ゴム長靴が溶解・変形しない温度下においても,やけどを受傷することはあると主張している。 (イ) また,原告は,本件傷害の受傷状況,特に受傷の時期につき,本件訴訟の当初から,具体的には特定で として,ゴム長靴が溶解・変形しない温度下においても,やけどを受傷することはあると主張している。 (イ) また,原告は,本件傷害の受傷状況,特に受傷の時期につき,本件訴訟の当初から,具体的には特定できないとしており,その理由は,原告が糖尿病に罹患しており,そのために知覚障害を生じて,やけどを負ったことにすぐ気付かなかったためであると主張している。 (ウ) そこで,上記のような原告の主張・供述について検討するに,まず,ゴム長靴が溶解・変形しない温度で,やけどを受傷することがあり得るとしても,そもそも,前記1(1)認定の工程予定によれば,アスファルト合材の温度は,1次転圧の際に160度ないし170度を目標としていたというのであるから,その前段階たるスコップマン作業に従事したのであれば,実際の工事における誤差を考慮しても,原告が履いていた通常のゴム長靴(原告は「雨靴」という表現も使用していることから,原告の履いていたゴム長靴が特殊な素材でできているものではなかったものと考えられる。)に何らかの変化を生じていたはずであるとの被告の主張は一応首肯できるものであり,本件傷害を受傷したにもかかわらずゴム長靴には何ら変化がなかったとする原告の供述は,直ちに採用できるものではない。 また,仮に原告の主張どおり,本件傷害を受傷したこととゴム長靴が溶解・変形しなかったこととが矛盾しないとしても,これは,原告の主張が矛盾しないことを意味するにとどまり,そのことをもって,原告が本件舗装工事に従事したとの事実が裏付けられるものということはできない。 次に,本件受傷の時期と原告主張の糖尿病による知覚障害との関係についてみるに,確かに,甲10によれば,原告を診察した医師において,糖尿病性神経障害の疑いがもたれた事実が認められるが,熱傷3度という本件傷害の程度を前提にして 告主張の糖尿病による知覚障害との関係についてみるに,確かに,甲10によれば,原告を診察した医師において,糖尿病性神経障害の疑いがもたれた事実が認められるが,熱傷3度という本件傷害の程度を前提にしても,痛みを感じないほどその症状が進行していたのか否かは必ずしも明らかではない。 そして,これに関連して,原告は,糖尿病による知覚障害のために,いつの時点で本件傷害を負ったかは具体的には分からないが多分本件舗装工事のときであり,本件舗装工事を終えて帰宅してゴム長靴を脱いだときに初めて本件傷害に気付いた旨の供述をしているが,その一方,甲10によれば,原告は医師に対して,平成10年10月18日午前11時ころに受傷した旨申告していることが認められ,また,原告は,アスファルトが実際に足に触れ,痛ぁいと言って冷やしてから仕事を続けたなど,本件舗装工事当時に痛みや熱さを感じた旨の供述をし,さらに,日常生活において,それまでに怪我などをして気付かなかったという経験はなかった旨供述している。このように,痛み等の知覚に関する原告の供述は,一貫しておらず,帰宅するまでは本件傷害に気付かなかったとの原告の供述を直ちに信用することはできない。 オ平成10年10月18日の作業終了後の原告の行動について(ア) 原告は,当日,作業終了後,車を運転して午後6時ころ帰宅し,初めてゴム長靴を脱ぎ,本件傷害を受傷していたことに気付いたと供述する。 一方,原告の供述の他の部分によれば,作業中にはゴム長靴に油を何度も塗り,また,アスファルトの合材が足の甲部にかかったというのであるから,原告の履いていたゴム長靴が油等で汚れていたであろうことは容易に推認できるところ,そのようなゴム長靴を帰宅するまで一度も脱がなかったとすれば,ゴム長靴の汚れを十分落とさないまま車を運転して帰宅したことと 履いていたゴム長靴が油等で汚れていたであろうことは容易に推認できるところ,そのようなゴム長靴を帰宅するまで一度も脱がなかったとすれば,ゴム長靴の汚れを十分落とさないまま車を運転して帰宅したこととなり,不自然である。 (イ) また,原告は,帰宅後,病院に行くまでの間に,Iの携帯電話に架電したが,I以外の者が応答したため,本件傷害のことを何ら話すことなく電話を切ったと供述するが,電話に全く応答がなかったわけではなく,少なくともIの関係者とみられる人物が電話に応答したのに,本件傷害のことについて,全く告げずに電話を切るということも不自然である。 (ウ) そして,原告は,病院で受診したのは,その日の午後9時ころであると供述しているが,帰宅したという午後6時から,受診するまでの3時間の間の行動としては,足にタオルを巻く,Iへの電話,夕食,着替えなどを挙げているのみである。しかしながら,本件傷害に気付いたとき,「表面の皮が破れて下の肉が見えている状態」(甲17)であったにもかかわらず,受診まで3時間もの間,放置するというのは通常考え難いし,原告が受診まで3時間要することとなった具体的な事情も何ら窺われない。 カその後の経緯について(ア) 原告は,本件労災申請に至る経過について,詳細はMに任せており分からないとした上で,Nから本件舗装工事で被災したのか,bの資材置場で被災したのか,いずれか分からないということで,被災状況を作文するので了解願いたいとの連絡があり,その後,原告が入院中に,bの資材置場のみで被災したことにする旨の電話があり,さらに,労働基準監督署が調査するといっているので,原告にも調査があるかもしれないとの連絡があったが,これについても,その後,労働基準監督署の調査は「まあ,いいということになった。」と連絡を受けたとして,本件労災 監督署が調査するといっているので,原告にも調査があるかもしれないとの連絡があったが,これについても,その後,労働基準監督署の調査は「まあ,いいということになった。」と連絡を受けたとして,本件労災申請は,被告A株式会社が元請である被告B株式会社の加入する労災保険の適用を回避するために,虚偽の被災状況を作出したものであると主張する。 (イ) この点に関し,原告は,労働基準監督署において,平成10年11月下旬に病院内の喫茶店において原告,M及びNの3名で話合いをした際,Nが「労災でやるから現場と被告A株式会社の資材置場の両方で仕事を行い,やけどをしたことにしてほしい。」との話があったこと,さらにその後,同年11月中に,Nから「今回の事故は被告A株式会社の資材置場で発生したことにする。」と電話があったことを供述する(甲17)。 (ウ) 上記の原告の供述内容は,本件労災申請に至る以前の段階におけるNからの上記申出の存在をいうものと考えられるが,本件では,前記のとおり,平成10年11月18日付けで,第1回休業補償給付支給請求がなされているから(原告は,本件労災申請の手続がなされたのは同月16日であると主張している。),同年11月下旬以降に上記のような申出がなされたとは考えられない。 (エ) また,原告は,陳述録取書(甲21)においては,原告が平成10年11月16日に入院したとした上で,時期は特定できないが,そのころに病院内の喫茶店で原告,M及びNの3人で話をしたと陳述し,さらに,その後,原告の入院中に,Nから「今回の事故は被告A株式会社の資材置場で発生したことにする。」,「土場一本でいくのでよろしく。」と電話があったと陳述している。そうすると,原告の入院後(したがって,本件労災申請の手続がなされたとされる日以降)に,本件労災申請の被災状況についての とにする。」,「土場一本でいくのでよろしく。」と電話があったと陳述している。そうすると,原告の入院後(したがって,本件労災申請の手続がなされたとされる日以降)に,本件労災申請の被災状況についての方針が伝えられたことになり,時期的なずれが認められる。 キ以上のとおり,原告の供述は,①被告A株式会社との雇用関係の経緯,②Iとの連絡状況,③本件傷害を受傷した時点,④Kが同行したか否か,⑤本件傷害受傷後の行動,⑥本件労災申請に至る経緯など,その全般において不自然・不合理な点が多く,特に,①,②,③についての供述は,原告が本件舗装工事に従事するまでの一連の流れを構成する重要な事実であり,また,④については原告が本件傷害を受傷した状況とその認識に関する重要な事実であるのに,そのいずれもが措信できないものである。 そうすると,本件舗装工事に従事した旨の原告の供述自体も信用することはできないというべきである。 (3) 本件労災申請に関する原告の態度について前記1の前提となる事実にあるとおり,原告は,bの資材置場での被災であることを内容とする本件労災申請につき,何ら異議を述べることなく,本件労災申請に基づく労災保険金の支給が完了した平成11年8月まで,給付請求書等に押印をしている。このような原告の態度からすれば,原告は,とにかく労災申請をしてもらい,労災給付の支給を受けたいと考えていたものと思われ,現に,労働基準監督署においても,「給付してもらえるものをもらってから(被災状況が虚偽である旨の)申立てをしようと考えていた」と供述している(甲17)。しかし,原告が,労災給付の支給を受けることを望んでいたのであれば,労災申請に非協力的な被告A株式会社との交渉を続け,自己の意に沿わない被災状況で申請をするという結果を甘受するよりも,被告B株 。しかし,原告が,労災給付の支給を受けることを望んでいたのであれば,労災申請に非協力的な被告A株式会社との交渉を続け,自己の意に沿わない被災状況で申請をするという結果を甘受するよりも,被告B株式会社に対して,直接労災申請を求める方が合理的である。すなわち,原告が主張するように,被告A株式会社が労災申請をすることを拒んでいた理由が,被告B株式会社が加入する労災保険の適用を回避したいという点のみにあり,そのために被告A株式会社との交渉が難航していたのであれば,原告及びMは,本件23号線工事の現場を訪れた際に,労災保険加入者が被告B株式会社であることを知っていたというのであるから,被告B株式会社に直接労災申請をするように求めれば足りるのに,原告がそのような行動をとった事実は認められず,むしろ,交渉の末,bの資材置場での被災であることを前提とする労災申請に合意したというのである。 その後,原告は,本件労災申請の被災状況が虚偽である旨の申立てをしたが,その理由として,被告A株式会社が馬鹿にしたような態度をとったという点を挙げている(甲17)。しかし,この点についても,原告は,Nに「土方で得をした。いまどきそんな(金を)もらえない。」と言われたというのみであり(甲21),本件労災申請をめぐる原告の態度を合理的に説明するに足りるものではない。 結局,本件労災申請をめぐる上記のような原告の態度は,不合理というほかなく,このような本件労災申請の経緯に照らしても,原告が本件舗装工事に従事したとの原告の主張はたやすく採用できない。 (4) 甲10について甲10によれば,原告は,本件傷害につき受診した医師に対し,熱いアスファルトが長靴の上からかかって受傷した旨の申告をしていることが窺われるが,同号証は,平成12年5月25日に作成されたものであ 甲10によれば,原告は,本件傷害につき受診した医師に対し,熱いアスファルトが長靴の上からかかって受傷した旨の申告をしていることが窺われるが,同号証は,平成12年5月25日に作成されたものであり,原告が本件傷害受傷当日に,医師に対して受傷の原因がアスファルト舗装工事であることを申告したものであるとは断定できない上,仮に同日中に申告したものであったとしても,それのみをもって原告が本件舗装工事に従事したとの事実を認定することはできない。 (5) そして,ほかに原告が本件舗装工事に従事した事実を的確に認定するに足りる証拠はなく,原告の主張は採用できない。 3 結論以上のとおり,原告が本件舗装工事に従事した事実を認めることができない以上,その余について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がない。 よって,原告の請求をいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第1部裁判長裁判官橋本昌純裁判官夏目明徳裁判官大橋弘治

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