主文 1 本件訴えをいずれも却下する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 原告の請求 1 主位的請求原告が平成9年4月15日付けでした病床185床・仮称八代鏡病院の開設許可申請に対し,被告が同年11月5日付けでした病院開設の中止勧告のうち,80床分について,勧告が失効したことを確認する。 2 予備的請求原告が平成9年4月15日付けでした病床185床・仮称八代鏡病院の開設許可申請に対し,被告が同年11月5日付けでした病院開設の中止勧告が無効であることを確認する。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 第2 事案の概要本件は,原告が熊本県八代郡αに病院の開設を計画し,被告に対し平成9年4月15日付けで病院開設の許可申請(以下「本件許可申請」という。)をしたのに対し,被告が原告に対して同年11月5日付けで病院開設の中止勧告(以下「本件中止勧告」という。)をしたところ,原告が,①主位的に,社団法人八代郡医師会(以下「八代郡医師会」という。)が病床80床の病院開設許可申請を取り下げたことにより,必要病床数に80床分余剰を生じた結果,本件中止勧告のうち80床分につき失効したとして,本件中止勧告の一部が失効したことの確認を,②予備的に,本件中止勧告は,著しい公正手続違背に基づくもので重大かつ明白な瑕疵があるなどとして,無効であることの確認を,それぞれ求めたのに対し,被告が,本件中止勧告には処分性が認められないから,本件訴えはいずれも却下されるべきであり,また,本件中止勧告に何ら違法性はないからなどとして原告の請求には理由がないと争っている事案である。 1 前提となる事実(争いのない事実及び各項末尾記載の証拠並びに弁論の全趣旨より容易に認められる事実)(1)(当事者)原告は,医師であり,熊本県八代郡α24 理由がないと争っている事案である。 1 前提となる事実(争いのない事実及び各項末尾記載の証拠並びに弁論の全趣旨より容易に認められる事実)(1)(当事者)原告は,医師であり,熊本県八代郡α246番地に,名称を八代鏡病院,病床数185床とする病院(以下「本件病院」という。)を開設することを計画し,平成9年11月5日に医療法7条に基づく病院開設の許可を受けた者である。 被告は,平成11年法律87号による改正前の地方自治法148条2項別表第3,1(31)に基づき,医療法の定めるところにより病院開設の許可事務を行うべき職務上の義務を有する行政庁であり,また,医療法30条の7の規定に従い勧告をする権限を有する行政庁である。 (2)(本件許可申請)原告は,本件の原告訴訟代理人である濱秀和弁護士及び宇佐見方宏弁護士を代理人として,平成9年4月15日付けで病床数を185床とする病院開設許可申請(本件許可申請)を行った。被告は,原告に対し,同年6月20日付け,同年7月31日付け及び同年9月8日付けの各書面で病院開設許可申請書について補正を求めたところ,原告により所要の補正がなされた。 (甲1,乙25の1ないし3,26ないし29)(3)(八代郡医師会立病院等の開設許可申請)ところで,平成6年度末時点における八代保健医療圏では,必要病床数が1776床であるのに対し,既存病床数は1591床で,185床が不足している状況であり,この状況は,原告が本件許可申請を行うまで変わらなかった。 社団法人八代市医師会(以下「八代市医師会」という。)は,平成9年4月30日,被告に対し,名称を八代市医師会立病院,開設場所を熊本県八代市β4438とする病院の開設許可申請書を提出し,八代郡医師会は,同年5月14日,被告に対し,名称を八代郡医師会立病院,開設場所を熊本県 日,被告に対し,名称を八代市医師会立病院,開設場所を熊本県八代市β4438とする病院の開設許可申請書を提出し,八代郡医師会は,同年5月14日,被告に対し,名称を八代郡医師会立病院,開設場所を熊本県八代郡γ1157番2とする病院の開設許可申請書を提出した。また,医療法人社団大森会は,名称を大森会病院,開設場所を熊本県八代郡δ1021番地14,病床数185床とする病院の,医療法人芳和会は,名称を八代中央病院,開設場所を熊本県八代市ε1361番地,病床数を58床とする病院の,開設許可をそれぞれ申請した。 (乙12の1・2,14,30,31)(4)(八代郡医師会立病院等の開設許可)被告は,平成9年9月19日,八代市医師会に対し,申請に係る八代市医師会立病院(病床数100床)の開設を,また,八代郡医師会に対し,申請に係る八代郡医師会立病院(病床数80床)の開設を,それぞれ許可した。 (乙32,33)(5)(本件中止勧告と原告の対応)被告は,熊本県医療審議会の意見を聴いた上で,平成9年11月5日,原告に対し,本件病院を開設すると八代保健医療圏における地域医療計画で定めた必要病床数を超えることを理由として,本件中止勧告を行った。これに対し,原告は,同月7日付けで,被告に対し,本件中止勧告に従うことができない旨回答するとともに,早急に病院開設の許可をするように要請した。 (乙34,35の1・2,36,38)(6)(本件許可処分)被告は,平成9年11月18日,原告に対し,本件病院の開設を許可した。 なお,被告は,平成11年10月20日付けの「行政手続法9条2項に基づき求められた情報の提供について」と題する書面で,原告に対し,「八代鏡病院(本件病院)については,医療法30条の7の規定による県知事の開設中止勧告を受けて,これを拒否しているので 続法9条2項に基づき求められた情報の提供について」と題する書面で,原告に対し,「八代鏡病院(本件病院)については,医療法30条の7の規定による県知事の開設中止勧告を受けて,これを拒否しているので,仮に保険医療機関の指定申請があった場合には,健康保険法43条ノ3第4項2号に基づき,申請に係る全病床について指定拒否することとなる。」旨見解を述べた。 (甲12,乙11)(7)(八代郡医師会立病院の開設許可取消しと病院開設許可)八代郡医師会は,平成10年11月18日付けで,被告に対し,許可を受けた開設場所を変更して病院を建設するため,平成9年9月19日付けの病院開設許可取消しの申請及び病院開設予定地を変更した病床総数80床の病院開設許可申請書を新たに提出した。 そして,被告は,同年12月7日付けで,八代郡医師会に対し,上記病院の開設を許可した。 (乙49の2,60) 2 争点(1) 本件中止勧告の処分性の有無(原告の主張)医療法30条の7に基づく中止勧告は,これに従わないで病院開設をした者に対して,都道府県知事が健康保険法43条ノ3に定める保険医療機関の指定をしないのであるから,単なる行政指導ではなく,「処分」である。 ア 「勧告」は,通常,相手方の任意の協力を求める行政機関の願望の表明であり,その法律上の性質は,単なる事実行為であって,これにより相手方の権利義務に何らの変動を生じさせるものでないが,本件中止勧告は,上記のような性質のものではない。すなわち,厚生省(現在の厚生労働省。なお,従来の厚生省及び厚生大臣は,現行の国家行政組織上,厚生労働省及び厚生労働大臣となったが,以下,「厚生省」及び「厚生大臣」の用語を用いる。)保険局長は,昭和62年9月21日,各都道府県知事に対し,「医療計画公示後における病院開設等の取扱いについて」 生労働省及び厚生労働大臣となったが,以下,「厚生省」及び「厚生大臣」の用語を用いる。)保険局長は,昭和62年9月21日,各都道府県知事に対し,「医療計画公示後における病院開設等の取扱いについて」と題する通知(以下「昭和62年通知」という。)を発して,医療法30条の7に基づく知事の勧告を受けた病院の開設者が病院を開設し,当該病院から保険医療機関の指定申請があった場合は,これが平成10年6月法律第109号による改正前の健康保険法(以下「旧健康保険法」という。)43条ノ3第2項の「著シク不適当ト認ムルモノナルトキ」に該当するものとして,地方社会保険医療協議会に対し,指定拒否又は受理拒否の諮問を行うこととし,一律に保険医療機関の指定を拒否するよう指示した。 被告を含む各都道府県知事は,厚生大臣の受任機関として,同大臣の補助機関の通達には従わなければならないところ,上記昭和62年通知によれば,中止勧告に従わないで病院開設をした者に対しては,旧健康保険法43条ノ3に定める保険医療機関の指定をしないというのであるから,医療法30条の7に基づく勧告は,単なる行政指導ではなく,講学上の「下命」であって,処分性を有するものである。 このことは,旧健康保険法の平成10年改正により明確化された。すなわち,旧健康保険法は,平成10年に改正されたが(平成10年法律第109号,同年8月1日施行。以下「平成10年改正健康保険法」という。),平成10年改正健康保険法43条ノ3第4項2号は,保険医療機関の指定について,「都道府県知事は,医療計画で定める必要病床数を勘案して厚生大臣の定めた方法により算定した病床数を超えることとなる場合で,病院開設者等が医療法30条の7に基づく勧告を受け,これに従わないときは,保険医療機関の指定を行わないことができる。」旨規定し,医療法 大臣の定めた方法により算定した病床数を超えることとなる場合で,病院開設者等が医療法30条の7に基づく勧告を受け,これに従わないときは,保険医療機関の指定を行わないことができる。」旨規定し,医療法30条の7による勧告に従わないことが保険医療機関指定拒否の要件であることを明文で規定した。また,厚生省は,同法の適用についても,中止勧告に従わない医療機関からの保険医療機関の指定等の申請があった場合には一律に保険医療機関の指定をしない取扱いを現場に指示している。保険医療機関の指定拒否は明らかに不利益処分であるから,平成10年改正健康保険法においては,医療法30条の7による勧告は,そのような不利益処分に従うことを強制しているといえ,行政指導ではなく,講学上の「下命」にあたり,処分性が認められる。 そして,厚生省ないし被告の説明によれば,同規定は,従来,昭和62年通知により運用され,不明確であった病院開設申請に対する勧告の扱いを明確化したというのであるから,旧健康保険法の適用においても,病院開設申請者が医療法30条の7による勧告に従うべき義務があったことは明らかである。 イ被告は,旧健康保険法43条ノ3第2項は,行政指導に従わないことをもって「著シク不適当ト認ムルモノナルトキ」に該当するとしたのではなく,保険医療費の適正化を図る観点から過剰な病床が発生する場合を「著シク不適当ト認ムルモノナルトキ」に該当するとして保険医療機関としての指定を行わないものとしたのであるから,勧告に従わないことをもって,病院開設者の法律上の地位に変化を与えるものとはいえない旨主張する。 しかし,都道府県知事は,上記の昭和62年通知のとおりの扱いをしており,中止勧告を受けた場合は,実際上,保険医療機関の指定は受けられないのである。したがって,中止勧告は,病院開設者の法律 張する。 しかし,都道府県知事は,上記の昭和62年通知のとおりの扱いをしており,中止勧告を受けた場合は,実際上,保険医療機関の指定は受けられないのである。したがって,中止勧告は,病院開設者の法律上の地位に変化を与えるものであることは明らかである。 ウまた,被告は,旧健康保険法43条ノ3第2項は「拒ムコトヲ得」と規定しており,中止勧告を受けることによって,一律に指定を拒否するものとはされていないから,このような地位の変化は事実上の変化に過ぎない旨主張する。 しかし,保険医療機関の指定の申請者は,旧健康保険法に基づき同法43条ノ3が定める消極的要件に該当しない限り保険医療機関としての指定を受けられる法的地位を有しているところ,中止勧告は,病院の開設者から本来約束されていた病院開設の自由を奪い,著しく不安定な地位に陥れる行為であって,未だ事実上の影響に止まるとの被告の主張は失当である。のみならず,被告は,厚生省と相談の上,上記第2,1(6)のとおり平成11年10月20日付けの「行政手続法9条2項に基づき求められた情報の提供について」と題する書面(甲12)において,「本件病院については,中止勧告を拒否しているので,仮に保険医療機関の指定申請があった場合には,申請に係る全病床について指定拒否することとなる。」旨明言しており,厚生省が,中止勧告に従わなかった病院については,保険医療機関の指定を拒否すると断言しているのである。また,行政庁は,許認可等をするかどうかを判断するために審査基準を設けておかなければならないのに(行政手続法5条),地方社会保険医療協議会においては,どのような場合に中止勧告を受けても保険病床の指定をするのか全く基準を示していないから,保険医療機関の指定を否定していると見て差し支えない。これらのことからすれば,原告が申請して 療協議会においては,どのような場合に中止勧告を受けても保険病床の指定をするのか全く基準を示していないから,保険医療機関の指定を否定していると見て差し支えない。これらのことからすれば,原告が申請しても拒否されるのは明らかであるから,地位の変化は事実上のものとはいえない。 エ我が国は国民皆保険制を採用しており,健康保険が使用できない医療機関に患者が来院することはあり得ないから,保険医療機関の指定を受けるか否かは,病院開設者の病院開設の自由という重大な法的利益に関わる問題である。保険医療機関の指定の申請者は,旧健康保険法に基づき同法43条ノ3の定める消極的要件に該当しない限り保険医療機関としての指定を受けられる法的地位を有しているのである。 中止勧告がなされると,保険医療機関としての指定を拒否できることとなるのであるから,違法な中止勧告は,病院開設者の保険医療機関としての指定を受けられる法的地位を不安定にし,これを侵害するものであり,処分性が認められるべきである。 オ仮に中止勧告が行政指導であるとしても,行政指導の不服従が次の侵害行為の要件として法律上組み込まれている場合は,処分性が認められるところ,中止勧告の不服従が次の侵害的処分である保険医療機関の指定拒否の要件となっていることは,上記のとおりである。したがって,中止勧告には処分性が認められるというべきである。 カさらに,中止勧告がなされると,原告は,中止勧告を受けていない医療機関と比べて格段の危険に立たされ,重大な不利益を被るところ,勧告に処分性があると解しないと救済の方途を欠くこととなる。すなわち,保険医療機関の指定申請をするには,多額の費用を費やして施設や医療器材などの設備及び医師や看護婦等の人員などを確保して病院の使用許可(医療法27条)を受けていなければならない。 その後 る。すなわち,保険医療機関の指定申請をするには,多額の費用を費やして施設や医療器材などの設備及び医師や看護婦等の人員などを確保して病院の使用許可(医療法27条)を受けていなければならない。 その後,保険医療機関の指定申請が拒否されると,保険診療を行うことができず,国民皆保険をとる我が国においては,病院を経営することは不可能となり,上記設備や人員の確保が無為に帰し,多額の損失を被ることは明らかである。そして,行政事件訴訟法においては,行政処分について仮の救済規定をおいていないから,そのような危険を冒して病院を開設した上で保険医療機関の指定拒否処分を争うことは不可能である。したがって,医療法に基づく中止勧告に処分性を認めるべきである。 (被告の主張)本件中止勧告は,行政事件訴訟法3条2項に規定する「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」とはいえないから,その一部失効確認及び無効確認を求める本件訴えは,いずれも不適法であって却下されるべきである。 ア医療法30条の7に基づく中止勧告は,これに従わなくても自由に病院を開設することができるのであるから,行政指導としての性質しか認められない。すなわち,医療法7条4項は,「都道府県知事・・・は,前3項の許可の申請があった場合において,その申請に係る施設の構造設備及びその有する人員が第21条及び第23条の規定に基づく省令の定める要件に適合しているときは,前3項の許可を与えなければならない。」と定め,病院開設の申請があったときは,営利の目的で開設しようとする者からの申請である場合や公的医療機関である場合で地域における病院の病床数が医療計画に定める必要病床数を超えることとなるとき等を除いて,申請に係る病院の構造設備及び人員が医療法及びこれに基づく省令の規定に適合する限り,許可を与えなければならな で地域における病院の病床数が医療計画に定める必要病床数を超えることとなるとき等を除いて,申請に係る病院の構造設備及び人員が医療法及びこれに基づく省令の規定に適合する限り,許可を与えなければならないとしている。したがって,申請に係る病院が医療法30条の7の勧告を受け,病院開設者が勧告に従わない意思を明確に表明した場合でも,都道府県知事は,申請に係る病院の構造設備及び人員が医療法及びこれに基づく省令の規定に適合する限り,許可を与えるよう義務づけられているのである。 このように,医療法30条の7の勧告を受けても病院開設者は勧告に従わないで病院を自由に開設することができるのであるから,医療法30条の7の勧告は,相手方に対する強制力を何ら有せず,病院の開設等をある方向に誘導することを内容とした行為であり,計画変更を勧める行政指導の範疇に属する行為である。 イ原告は,医療法30条の7の勧告に従わないで病院を開設した場合,保険医療機関の指定を申請しても拒否されるという取扱いがなされていることから,同法30条の7の勧告には病院開設者の法律上の地位に変化を生じさせる処分性が認められる旨主張する。 しかし,旧健康保険法43条ノ3第2項は,中止勧告に従わないことをもって,「著シク不適当ト認ムルモノナルトキ」に該当するとしたのではなく,保険医療費の適正化を図る観点から,過剰な病床が発生する場合を「著シク不適当ト認ムルモノナルトキ」に該当するとして保険医療機関としての指定を行わないものとしたのであるから,勧告に従わないことをもって,病院開設者の法律上の地位に変化を与えるものとはいえない。 また,同項は,「著シク不適当ト認ムルモノナルトキ」に該当すると認める場合でも,「其ノ指定ヲ拒ムコトヲ得」と規定しており,必ず指定を拒否するとは規定していないし,医療法 与えるものとはいえない。 また,同項は,「著シク不適当ト認ムルモノナルトキ」に該当すると認める場合でも,「其ノ指定ヲ拒ムコトヲ得」と規定しており,必ず指定を拒否するとは規定していないし,医療法施行規則30条の32第1項が規定するように,病床過剰地域であっても整備の必要が認められる特定の病床等については,これを考慮することができるものとされている。さらに,旧健康保険法43条ノ3第3項は,保険医療機関の指定を拒否するには,地方社会保険医療協議会の議決に従わなければならない旨定めているから,地方社会保険医療協議会が保険医療機関としての指定することを相当と認めれば,勧告に従わない場合でも拒否されることはない。 したがって,勧告に従わないことは,必然的に医療機関としての指定拒否に結びつくものではないから,原告の主張は採用できない。 ウ原告は,中止勧告が病院開設の自由又は旧健康保険法に基づき同法43条ノ3の定める消極的要件に該当しない限り保険医療機関としての指定を受けられる法的地位を不安定にしてこれを侵害することを理由に,中止勧告に処分性を認めるべきである旨主張する。 しかしながら,上記のとおり本件中止勧告は,病院開設の自由を何ら侵害するものではない。また,健康保険制度は,国民の生存権の保障のための施策であって,病院が健康保険制度から受ける利益は,保険者が保険医療機関等の指定をした医療機関を通じて被保険者に療養の給付等を行うことによりもたらされる反射的な利益にすぎず,病院が保険医療機関の指定を受けて初めて得られる利益である。したがって,病院開設者に原始的に保険医療機関として指定される法律上の地位ないし権利があるとは到底認められないから,原告の上記主張は理由がない。 エまた,原告は,中止勧告に対する不服従が,次の侵害的処分である保険医療機関 原始的に保険医療機関として指定される法律上の地位ないし権利があるとは到底認められないから,原告の上記主張は理由がない。 エまた,原告は,中止勧告に対する不服従が,次の侵害的処分である保険医療機関等の指定拒否の要件として法律上組み込まれているから,処分性が認められる旨主張する。 しかし,病院が健康保険制度から受ける利益は,上記のとおり反射的な利益にすぎず,法律上の利益ということはできない上,原始的に有しているものでもない。 したがって,保険医療機関等の指定をしないことは,利益を与える処分をしないというだけであり,病院開設者が本来有している利益を侵害したり,新たに義務を課したりするものではないから,保険医療機関等の指定拒否は侵害処分ではない。また,保険医療機関等の指定拒否は,当該医療圏における保険医療機関として不要と判断された医療機関について保険医療機関の指定拒否を行うのであって,病院開設者が中止勧告に従わないためになされるものではない。したがって,医療法30条の7の勧告に対する不服従は,必ずしも次の侵害的処分に続くわけではないから,原告の上記主張も理由がない。 オ原告は,保険医療機関の指定申請の拒否処分の取消しを求めるのでは大きな損失を免れないから,保険医療機関の指定申請をする以前の段階においても,中止勧告に処分性を認めるべきである旨主張する。 しかし,本件で問題となる勧告は,医療法7条による病院開設許可の手続の過程で行われる事柄であり,同手続は病院開設許可によって終結している。保険医療機関の指定は,旧健康保険法43条ノ3に基づくものであり,病院開設手続とは別個の手続であって,勧告が保険医療機関の指定にあたって考慮されるとしても,あくまで別個の手続である。したがって,本件中止勧告の段階で事件の成熟性を認めることはできない。 (2) 病院開設手続とは別個の手続であって,勧告が保険医療機関の指定にあたって考慮されるとしても,あくまで別個の手続である。したがって,本件中止勧告の段階で事件の成熟性を認めることはできない。 (2) 本件中止勧告の一部失効の有無(原告の主張)八代郡医師会は,平成10年11月24日に,平成9年9月19日付けの被告の許可に係る病床80床の病院開設許可申請を取り下げたから,その効果が発生したことにより,八代保健医療圏における必要病床数に80床分余剰を生じた。ところで,中止勧告が単なる行政指導であるとすれば,勧告は被勧告者の権利義務に何らの影響を及ぼすものではないから,上記のように必要病床数に空きができた場合には,勧告を受けた病院開設の申請者は,その空いた病床だけの病院を開設しても,勧告の趣旨に反することにはならないし,病院開設について不利益に扱われることはないはずである。そうすると,必要病床数に空きができた場合には,その空いた病床数だけ勧告の持つ負担,不利益がなくなるものと解するほかはない。したがって,本件中止勧告のうち,80床分については失効するというべきである。 (被告の主張)仮に本件中止勧告に処分性が認められるとしても,八代郡医師会立病院は,場所を変更するだけで,実質は同一であること,八代保健医療圏では高齢者社会に対応するため療養型病床群の整備が急務であり,他方,救急医療のための一般病床の必要性はある程度充実していたこと,八代郡医師会の病院開設許可取消申請当時,既に必要病床を超過していたことなどから,八代郡医師会の病院開設許可取消申請により本件中止勧告が80床分につき失効することはあり得ない。したがって,原告の主張は理由がない。 (3) 本件中止勧告の違法性の有無(原告の主張)医療法に基づく医療計画及び中止勧告制度は,国民に提供 本件中止勧告が80床分につき失効することはあり得ない。したがって,原告の主張は理由がない。 (3) 本件中止勧告の違法性の有無(原告の主張)医療法に基づく医療計画及び中止勧告制度は,国民に提供する医療の質を高めることを目的としており,保険財政の健全化を目的とするものではないにもかかわらず,昭和62年通知は,中止勧告の制度を必要病床数を超える病院の開設・増床を一律に制限するように中身をすり替えたものである。ところで,医療法30条の7は,都道府県知事が病院開設申請者に対し勧告をすることができるのは「医療計画の推進のため特に必要がある場合」と規定しているところ,昭和61年8月30日付け「医療計画について」と題する厚生省健康政策局長通知(以下「昭和61年通知」という。)は,「医療計画の推進のため特に必要がある場合」とは,二次医療圏の病院の病床数が,医療計画に定める当該区域の必要病床数に既に達している場合又は申請病院の開設等によって必要病床数を超えることとなる場合をいうものである旨通知していたから,都道府県知事は,上記昭和61年通知に拘束される。しかも,病床の整備や病院開設の当否の判断は,何ら政策的専門的技術的判断ではないから,中止勧告にあたっては,「医療計画の推進のため特に必要がある場合」との要件判断においても,要件が満たされた場合に勧告をするかどうかの判断にあたっても,裁量の余地はないというべきである。また,病院開設の許可制度は,警察許可であるから,知事が許可の時期を自由に選択したり,他の申請と比較検討する余地は実定法上全くない。したがって,都道府県知事は,病院開設の許可申請が競合して医療圏における必要病床の余剰病床を超過している場合,公平・公正に許可するには当然これを案分すべきである。 平成7年当時,八代保健医療圏における地域医療計 道府県知事は,病院開設の許可申請が競合して医療圏における必要病床の余剰病床を超過している場合,公平・公正に許可するには当然これを案分すべきである。 平成7年当時,八代保健医療圏における地域医療計画の定める残存病床数は185床であったが,被告の補助機関である健康福祉部医務福祉課は,原告の病院開設を妨害すべく,八代市医師会及び八代郡医師会と通謀し,両医師会の病院開設許可申請の処理を急ぎ,八代郡医師会に対し,病院開設が到底できそうもない,崖のある場所を開設場所として病院開設の許可をした。被告は,上記のとおり必要病床数を案分すべきであるのに,必要病床数が5床を残すだけとして,原告に対し本件中止勧告をしたのである。 このように,八代市医師会及び八代郡医師会のなした病院開設許可申請は,原告の病院開設を妨害することを目的とするものである。そして,被告は,上記のような目的を有する八代郡医師会の申請に対し許可を与えており,このような行為は公正手続に違背して違法であるから,本件中止勧告は無効である。 (被告の主張)仮に本件中止勧告に処分性が認められるとしても,本件中止勧告は,八代保健医療圏内の病床数が医療計画で定めた必要病床数に達していたことから,医療法30条の7による知事の適正な裁量に基づいてなしたものであり,適法である。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件中止勧告の処分性の有無)について(1) 本件において,原告は,本件中止勧告につき,主位的に一部失効の確認を,予備的に全部無効の確認を求めているが,原告の請求が認められるためには,いずれにしても本件中止勧告が,「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当しなければならない(行政事件訴訟法3条4項)。そして,「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」とは,公権力の主体たる国又は地 件中止勧告が,「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当しなければならない(行政事件訴訟法3条4項)。そして,「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」とは,公権力の主体たる国又は地方公共団体が法令の規定に基づき行う行為のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうと解される(最高裁第一小法廷昭和39年10月29日判決・民集18巻8号1809頁)。 (2) そこで,本件で問題となっている病院開設許可及び保険医療機関の指定についての法令の規定について検討する。 ア医療法における病院開設許可及び医療計画等(甲43,53の1ないし3,乙13,58)① 病院開設許可平成9年法律第124号による改正前の医療法7条1項は「病院を開設しようとするとき・・・は,開設地の都道府県知事の許可を受けなければならない。」と規定し,同法7条3項は「都道府県知事は,前2項の許可の申請があった場合において,その申請に係る施設の構造設備及びその有する人員が,同法21条及び23条の規定に基づく省令の定める要件に適合するときは,前2項の許可を与えなければならない。」と規定していた。そして,都道府県知事が許可を与えないことができる場合は,営利を目的として病院を開設しようとする者(同法7条4項)や公的医療機関等の申請において,病院の病床数が医療計画に定める必要病床数を超える場合(同法7条の2)とされていた。 ② 医療計画医療法は,医療資源の効率的な配置により国民の医療を充実させることを目的として,同法30条の3第1項に「都道府県は,当該都道府県における医療を提供する体制の確保に関する計画(以下「医療計画」という。)を定めるものとする。」と規定し,医療計画においては,その対象となる区域(以 ,同法30条の3第1項に「都道府県は,当該都道府県における医療を提供する体制の確保に関する計画(以下「医療計画」という。)を定めるものとする。」と規定し,医療計画においては,その対象となる区域(以下「医療圏」という。)の設定及び必要病床数に関する事項を定めるものとされているほか,病院の機能を考慮した整備の目標に関する事項,へき地の医療及び救急医療の確保に関する事項,医療に関する施設の相互の機能の分担及び業務の連係に関する事項,医療従事者の確保に関する事項,その他医療を提供する体制の確保に関し必要な事項を定めることができるとされていた(同条2項,3項)。 そして,熊本県においては,「熊本県保健医療計画」が策定され,一般の医療需要に対応するために設定する区域を第二次医療圏として,八代地域保健医療圏を含む10の第二次医療圏が設定され,各第二次医療圏における必要病床数等が定められていた。さらに,八代地域保健医療圏では,地域の特性や実情に即した具体策を定めて医療供給計画全般の整備を図るために八代地域保健医療計画が策定されていた(乙20,42,45)。 ③ 医療計画の達成のために必要な措置等医療法30条の5第1項は,「国及び地方公共団体は,医療計画の達成を推進するため,病院又は診療所の不足している地域における病院又は診療所の整備その他必要な措置を講ずるように務めるものとする。」旨規定し,同法30条の7は,「都道府県知事は,医療計画の達成の推進のため特に必要がある場合には,病院を開設しようとする者・・・に対し,都道府県医療審議会の意見を聴いて,病院の開設又は病院の病床数の増加若しくは病床の種別の変更に関して勧告することができる。」旨規定していた。 イ健康保険法における保険医療機関の指定と医療計画① 保険医療機関の指定ところで,旧健康保険法 設又は病院の病床数の増加若しくは病床の種別の変更に関して勧告することができる。」旨規定していた。 イ健康保険法における保険医療機関の指定と医療計画① 保険医療機関の指定ところで,旧健康保険法は,「被保険者の疾病又は負傷に関して,診察,薬剤又は治療材料の支給,処置,手術その他の治療等の療養の給付をなす。」旨規定し(同法43条1項),「給付を受けようとする者は,都道府県知事の指定を受けた病院若しくは診療所(保険医療機関)又は薬局で受けるものとする。」旨規定していた(同条3項)。そして,同法43条ノ3第1項は,「保険医療機関ノ指定ハ命令ノ定ムル所ニ依リ病院若ハ診療所ニシテ其ノ開設者ノ申請アリタルモノニ就キ都道府県知事之ヲ行フ」旨規定して,開設許可を受けた病院が保険診療を行うためには,健康保険法に基づき,都道府県知事により,保険医療機関の指定を受けなければならないとされていた。 なお,平成12年4月1日からは,厚生大臣が保険医療機関の指定をするものとされた(平成11年7月16日法律第87号による改正)。 ② 医療計画と保険医療機関の指定等旧健康保険法43条ノ3第2項は,「都道府県知事は,保険医療機関又は保険薬局の指定の申請があった場合に,当該病院若しくは診療所又は薬局が,保険医療機関若しくは保険薬局の指定若しくは特定承認保険医療機関の承認を取り消され,2年を経過しないものであるとき,保険給付に関し診療若しくは調剤の内容の適切を欠くおそれがあるとして,重ねて同法43条の7第1項の規定による指導を受けたものであるとき,『其ノ他保険医療機関若シクハ保険薬局等トシテ著シク不適当ト認ムルモノナルトキ』,その指定を拒むことができる。」旨規定していたが,厚生省保険局長は,「医療計画公示後における病院開設等の取扱いについて」と題する通知(昭和62年 保険薬局等トシテ著シク不適当ト認ムルモノナルトキ』,その指定を拒むことができる。」旨規定していたが,厚生省保険局長は,「医療計画公示後における病院開設等の取扱いについて」と題する通知(昭和62年通知・乙1)において,「医療法30条の7に基づく知事の勧告を受けた病院の開設者が病院の開設をし,当該病院から保険医療機関の指定申請があった場合は,これが旧健康保険法43条ノ3第2項の「著シク不適当ト認ムルモノナルトキ」に該当するものとして,又は国民健康保険法37条2項の規定に基づき,地方社会保険医療協議会に対し,指定拒否又は受理拒否の諮問を行うこと」と通知し,そのように運用していた。 その後,上記運用を明文化して,平成10年改正健康保険法43条ノ3第4項2号は,「厚生大臣は,医療計画で定める必要病床数を勘案して厚生大臣の定めた方法により算定した病床数を超えることとなる場合で,病院開設者等が医療法30条の7による勧告を受け,これに従わないときは,申請に係る病床の全部又は一部を除いて指定を行うことができる。」旨規定した。 ウ地方社会保険医療協議会による審議都道府県知事が保険医療機関の指定を拒むとき(旧健康保険法43条ノ3第4項),あるいは,厚生大臣が申請に係る病床の全部又は一部を除いて指定を行うとき(平成10年改正健康保険法43条ノ3第7項)は,「地方社会保険医療協議会ノ議ニ依ルコトヲ要ス」と規定していた。 ところで,地方社会保険医療協議会は,各地方社会保険事務局に置かれ社会保険医療協議会法1条),保険者・被保険者・事業主等を代表する委員8人,医師等を代表する委員8人,公益を代表する委員4人の合計20人をもって組織され,公益を代表する委員以外の委員は,関係団体の推薦に基づき任命され(同法3条),会長は公益を代表する委員のうちから委員により選 を代表する委員8人,公益を代表する委員4人の合計20人をもって組織され,公益を代表する委員以外の委員は,関係団体の推薦に基づき任命され(同法3条),会長は公益を代表する委員のうちから委員により選挙されることとされており(同法5条),都道府県知事(改正後は厚生大臣)からは独立した組織になっている。そして,都道府県知事(改正後は厚生大臣)が保険医療機関の指定拒否を相当としても,地方社会保険医療協議会がこれと異なる決議をすれば,指定を拒否することはできないとされていた(乙50)。 (3) 以上説示の関係各法令を前提に本件中止勧告の効力について検討するに,まず,医療法は,上記(2)ア①のとおり,平成9年法律第124号による改正前の医療法7条3項において,都道府県知事は,病院開設の許可申請があった場合において,その申請に係る施設の構造設備及びその有する人員が法定の要件に適合するときは,開設許可を与えなければならない旨規定しているから,都道府県知事は,病院開設の申請があった場合,上記のとおり同法7条4項や同法7条の2の除外事由がある場合を除いて,申請に係る施設の構造設備及びその有する人員が法定の要件に適合する限り,許可を与えなければならない。 そうすると,都道府県知事は,医療法30条の7の勧告を受け,それに従わない意思を表明した者による病院開設の申請であっても,医療法の定める除外事由に当たらず,かつ,医療法や厚生省令の定める要件を満たせば,許可を与えなければならないのであって,医療法30条の7の勧告を受けても,病院を開設することはできるのである。 したがって,同条の勧告は,医療計画の達成の推進のため,病院の開設等をある方向に誘導することを内容として,計画変更を勧める行政指導であって,病院開設の関係で申請者の権利義務を形成し又はその範囲を確定す たがって,同条の勧告は,医療計画の達成の推進のため,病院の開設等をある方向に誘導することを内容として,計画変更を勧める行政指導であって,病院開設の関係で申請者の権利義務を形成し又はその範囲を確定するものではない。 (4) ところで,行政庁の行為が,それ自体としては国民の権利義務に具体的な変動をもたらさないものであっても,これに続く不利益処分と法的に直結しており,しかも後続処分を待って争ったのでは国民の権利利益の救済として十分でない場合には,当該行為に処分性を認める余地があると解される。 そこで,この見地から医療法30条の7に基づく勧告と保険医療機関の指定との関係について検討する。 ア保険医療機関の指定拒否に関して,旧健康保険法は「指定ヲ拒ムコトヲ得」(同法43条ノ3第2項)と規定し,平成10年改正健康保険法は「其ノ申請ニ係ル病床ノ全部又ハ一部ヲ除キテ其ノ指定ヲ行フコトヲ得」(同法43条ノ3第4項)と規定しており,法文上,医療法30条の7に基づく中止勧告を受けた病院の開設者がこれに従わなかったとしても,必ず保険医療機関の指定拒否をしなければならないという規定とはなっていない。 また,保険医療機関の指定申請を拒否する場合には,上記(2)ウのとおり,都道府県知事(改正後は厚生大臣)は,「地方社会保険医療協議会ノ議ニ依ルコトヲ要ス」と規定しており(旧健康保険法43条ノ3第3項,平成10年改正健康保険法43条ノ3第7項),そして,地方社会保険医療協議会が都道府県知事(改正後は厚生大臣)からは独立した組織になっており,都道府県知事(改正後は厚生大臣)が保険医療機関の指定拒否を相当とする場合であっても,地方社会保険医療協議会がこれと異なる議決をすれば,都道府県知事(改正後は厚生大臣)は指定を拒否することができないとされていることは,上記説示のとお 保険医療機関の指定拒否を相当とする場合であっても,地方社会保険医療協議会がこれと異なる議決をすれば,都道府県知事(改正後は厚生大臣)は指定を拒否することができないとされていることは,上記説示のとおりである。 これら関係各法規に照らすと,病院の開設申請者が医療法30条の7による中止勧告に従わない場合,その後開設された病院について必然的に保険医療機関の指定申請が拒否されることになっているものとは認めることができないというべきである。したがって,本件中止勧告が原告に対する不利益処分に法律上当然に結びつくとはいえない。 イ原告は,本件中止勧告がされた当時の旧健康保険法下においては,同法43条ノ3第2項の運用についての昭和62年通知により,医療法30条の7に基づく中止勧告に従わない場合には,保険医療機関の指定申請を拒否する運用が確立しており,実際上,保険医療機関の指定は受けられないので,中止勧告を受けた病院は不利益を被る旨主張する。 しかし,上記のとおり,旧健康保険法において昭和62年通知による運用がされていた場合であっても,中止勧告がされた場合において保険医療機関の指定を「拒むことができる」旨が規定されているにすぎず,また,保険医療機関の指定を拒否するにあたっては,地方社会保険医療協議会の審議及び答申によるべきとされていたのである(このことは,平成10年改正健康保険法においても同じである。)。 そうすると,医療法30条の7による中止勧告を拒否したことが,関係法規上,直接必然的に保険医療機関の指定申請の拒否につながるとはいえない。 ウなお,原告は,被告が厚生省と相談して平成11年10月20日付けの「行政手続法9条2項に基づき求められた情報の提供について」と題する書面(甲12)を提出したのであるから,厚生省は,中止勧告に従わない本件病院について 告が厚生省と相談して平成11年10月20日付けの「行政手続法9条2項に基づき求められた情報の提供について」と題する書面(甲12)を提出したのであるから,厚生省は,中止勧告に従わない本件病院については保険医療機関の指定を拒否すると明言しており,中止勧告を受けた本件病院は,保険医療機関の指定拒否という不利益を被る旨主張する。 しかし,処分性の有無は,法令の解釈により客観的に定められるものであるから,行政の運用や事前の意思表明によって左右されるものではない。そして,上記説示のとおり,法律上,都道府県知事の判断によって,直ちに保険医療機関の指定が拒否されることとはされていないのであるから,被告作成の上記書面の存在によっても上記判断を左右するに足りないというべきである。なお,地方社会保険医療協議会が中止勧告を受けた場合の保険医療機関の指定について審査基準を設けていないとしても,このことから保険医療機関の指定を必ず拒否すると断じることはできないから,この事実も上記判断を左右するものではない。 エ原告は,中止勧告が病院開設の自由又は健康保険法に基づき同法43条ノ3の定める消極的要件に該当しない限り保険医療機関としての指定を受けられる法的地位を不安定にしてこれを侵害することを理由に中止勧告に処分性を認めるべきである旨主張する。 しかしながら,上記(3)説示のとおり都道府県知事は,中止勧告を受けてこれに従わない意思を表明した者による病院開設の申請であっても,医療法の定める除外事由に当たらず,かつ,医療法や厚生省令の定める要件を満たせば,許可を与えなければならないのであるから,医療法30条の7の勧告を受けても,病院を開設することはできるのであって,中止勧告は,病院開設の自由を何ら侵害するものではない。 また,上記説示のとおり中止勧告は,病院開設者の らないのであるから,医療法30条の7の勧告を受けても,病院を開設することはできるのであって,中止勧告は,病院開設の自由を何ら侵害するものではない。 また,上記説示のとおり中止勧告は,病院開設者の法的地位に対して,保険医療機関としての指定を拒否するという法的効果に直結するものではないのであるから,法的に不安定な地位に置かれるというだけで処分性を肯定することはできず,中止勧告がその法的地位を具体的に侵害するものとはいえない。したがって,原告の上記主張は採用できない。 オさらに,原告は,医療法30条の7による勧告が行政指導であるとしても,その不服従が次の侵害処分の要件として組み込まれている場合には処分性を認めるべきであると主張する。 しかしながら,行政指導の不服従が後続の侵害処分の要件として組み込まれている場合に処分性が認められると一概にいうことはできず,少なくとも,当該行政指導と後続の不利益処分との間に法的な直接性があり,後続の処分を待って争ったのでは,国民の権利利益の救済として十分でないことを要すると解される。そして,医療法30条の7による中止勧告が必然的に保険医療機関の指定申請の拒否に法的につながっていないことは上記説示のとおりであるから,原告の上記主張は採用できない。 カ原告は,保険医療機関の指定申請が拒否されると,国民皆保険をとる我が国においては病院の経営が不可能になるところ,そのような危険を冒して病院の使用許可を得て保険医療機関の指定を申請し,その拒否処分を受けた後,上記指定拒否処分を争うことは,大きな損失を避けられないから,中止勧告に処分性を認める必要性がある旨主張する。 しかし,保険医療機関の指定申請について拒否処分がされた場合,その取消しを求めて抗告訴訟が提起され,同処分が取り消されることとなった場合には,申請者 勧告に処分性を認める必要性がある旨主張する。 しかし,保険医療機関の指定申請について拒否処分がされた場合,その取消しを求めて抗告訴訟が提起され,同処分が取り消されることとなった場合には,申請者は既に使用許可を得ている病院施設において,保険医療機関としての病院の経営が可能となるのであるから,事後的に保険医療機関の指定申請の拒否処分を争うことによる救済が可能であると解される。 そして,都道府県知事のなす医療法30条の7の勧告は,医療資源の効率的な配置により国民の医療を充実させることを目的として定められた医療計画の達成の推進のため特に必要がある場合に行われるものであり,健康保険法の保険医療機関の指定拒否は,適正な保険医療を効率的に提供する観点から,病床過剰地域における保険医療機関等の新規病床の制限措置を講じるものと解されることに照らすと,医療法と健康保険法は,病院開設者(保険医療機関の指定申請者)を法的に保護して,原告の主張する不利益を回避するために,中止勧告に処分性を認める趣旨で立法されていると見ることはできないといわざるを得ないから,上記主張は採用できない。 (5) よって,本件中止勧告は,行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当するとはいえないから,本件訴えは,いずれも不適法である。 2 結論以上によれば,その余の点を判断するまでもなく,原告の本件訴えはいずれも不適法であるから,これを却下することとし,主文のとおり判決する。 熊本地方裁判所民事第3部裁判長裁判官永松健幹裁判官堀部亮一裁判官久布白千咲 久布白千咲
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