主文 被告人を懲役3年に処する。 この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。 被告人をその猶予の期間中保護観察に付する。 理由 (犯行に至る経緯)被告人は,父母の経営する北海道沙流郡a町bc丁目d番e号所在の株式会社Aで介護士として勤務し,同所で父母らと同居していたものであるが,父のB(以下「父」という。)から,自己の行動をいつになく厳しく叱責されるなどしたため,父には自己の行動を一切認めるつもりはないと思い,平成30年11月頃までには,父に対して 殺意を抱くようになった。被告人は,平成31年2月頃から殺害方法や凶器について調べ始め,同年4月中旬,凶器として使うクロスボウとその矢を購入し,令和元年5月上旬頃,父が株式会社Aで一人で仕事をしている日に父を殺害することを決意した。 (罪となるべき事実)被告人は,令和元年5月11日,前記クロスボウの試し射ちをした後,午後9時頃 から,株式会社A1階食堂で父が2階から下りてくるのを待ち伏せし,午後9時45分頃,その食堂のドアから顔をのぞかせた父(当時59歳)に対し,殺意をもって,左側頭部めがけて前記クロスボウで矢を発射したが,これを父の下口唇部を貫通させて父に全治1週間を要する下口唇裂創の傷害を負わせたにとどまり,殺害の目的を遂げなかった。 (法令の適用)罰条刑法203条,199条刑種の選択有期懲役刑を選択法律上の減軽刑法43条本文,68条3号刑の執行猶予刑法25条1項 保護観察刑法25条の2第1項前段 訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由)まず,本件は,親子関係に起 刑法25条1項 保護観察刑法25条の2第1項前段 訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由)まず,本件は,親子関係に起因するものであるから,親に対する殺人未遂事案の量刑傾向を踏まえ,被告人に対する刑を量定すべきである。 被告人は,前記のとおり,本件犯行の約半年前に父に対して殺意を抱くようになっ てから,情報収集や凶器の準備を順次行い,本件犯行当日は,クロスボウの試し射ちをした上で本件犯行に臨んでいる。客観的に見ると,その目的を遂げる上でより確実な方法もあり得たという点で,周到に計画されたものとまではいえないにしても,約半年もの期間,被告人なりに計画を立て,人の命を奪おうという決して許されない行動に踏み切った意思決定は,厳しく非難されるべきである。 また,犯行態様を見ると,被告人は,至近距離から,父の左側頭部めがけてクロスボウで矢を発射しており,クロスボウの殺傷能力に鑑みれば,矢の当たり所がずれていれば父の命が失われていた可能性も高かったといえ,危険な態様であったといえる。 もっとも,父の怪我は,全治1週間を要する下口唇裂創にとどまっており,幸いにして被害結果は軽い。また,被告人は,被告人の抱えている広汎性発達障害の特性に ついて,周囲の理解を十分得られずに長年過ごしてきた中で,父からいつになく厳しく叱責されたことが引き金となり,それまでは父から叱責を受けても受け流すことができていたものが,受け流すことができなくなったというのである。そのような被告人の境遇が本件犯行の背景にあり,この点は量刑上被告人のために酌むことができる。 これまでに見てきた,犯行態様の危険性や計画性の高さからすると,被告人の刑事 責任は相応に重く,主文の刑は免れな 人の境遇が本件犯行の背景にあり,この点は量刑上被告人のために酌むことができる。 これまでに見てきた,犯行態様の危険性や計画性の高さからすると,被告人の刑事 責任は相応に重く,主文の刑は免れないところであり,当然に執行猶予が付されるほどに軽いものとはいえないが,怪我の程度や犯行に至る背景事情も踏まえると,当然に実刑といえるほどに重いものともいえない。 そこで,その余の事情を見ると,本件については,被告人に交通前科以外の前科がないこと,父が被告人の処罰を望んでいないこと,北海道内に広汎性発達障害を抱え る者を支援する団体が存在し,被告人も同団体の職員による支援を受ける意向を示し ていることなど,被告人のために考慮すべき事情が認められる。 これらの事情も考慮した上で,被告人に対しては,社会内での更生の機会を与えることとするが,本件事案の重大性や現時点で更生への具体的な道筋が未だ定まっているとはいえず,公的機関による継続的な指導,助言が必要な状況にあることも踏まえると,猶予期間は最も長い5年間とし,その猶予期間中,保護観察に付するのが相当 であると判断した。 (求刑懲役5年)令和元年9月24日札幌地方裁判所刑事第2部 裁判長裁判官中川正隆 裁判官牛島武人 裁判官岩竹 遼
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