平成24(行コ)138 固定資産税等賦課処分取消等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成23年(行ウ)第305号)

裁判年月日・裁判所
平成24年7月11日 東京高等裁判所 租税
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判決文本文4,127 文字)

 主文 1 本件控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2(主位的請求)東京都新宿都税事務所長が控訴人に対し平成20年6月2日付けでした原判決別紙物件目録記載の家屋に係る平成20年度の固定資産税賦課決定処分のうち176万1000円を超える部分及び都市計画税賦課決定処分のうち37万7300円を超える部分を取り消す。 (予備的請求)東京都固定資産評価審査委員会が控訴人に対して平成21年3月6日付けでした原判決別紙物件目録記載の家屋に係る平成20年度固定資産課税台帳の登録価格についての審査の申出に対する決定を取り消す。 第2 事案の概要等 1 事案の概要事案の概要,争いのない事実等,関係法令の定め,本件の争点及び争点に関する当事者の主張は,次の2のとおり当審における控訴人の主張を付加するほか,原判決「事実及び理由」の「第2 事案の概要等」に記載のとおりであるから,これを引用する。 2 当審における控訴人の主張(1) 地方税法341条4号は,償却資産の概念を法人税法,所得税法及びこれにより委任された法人税法施行令,所得税法施行令の規定に委ねており,上記の法令では,「昇降機は減価償却資産である」と定義されている。すなわち,本件昇降機設備が地方税法上の償却資産であることは,法規の文言上極めて明瞭である。 法人税法,所得税法は,政令で減価償却資産と認められた昇降機等の建物附属設備について,建物とは別の,独立した有体動産であることを初めから肯認している。その証拠に,建物附属設備の耐用年数は,建物の耐用年数と ,所得税法は,政令で減価償却資産と認められた昇降機等の建物附属設備について,建物とは別の,独立した有体動産であることを初めから肯認している。その証拠に,建物附属設備の耐用年数は,建物の耐用年数とは別に,設備ごとに法定されている。したがって,ここに付合の規定(民法242条本文)の解釈を持ち込む必要はなく,付合の問題を持ち出すことは,償却資産を一義的に明確に定義した地方税法の趣旨に反し,納税者の「予測可能性」も課税関係の「法的安全性」も踏みにじることとなり許されない。 (2) 物の独立性の判断は,民法242条本文の付合の要件のみによって判断されるわけではない。同条ただし書,地方税法343条9項,法人税法,所得税法の規定では,「付着した物がもはや切り離しが不可能なまでに固着し,物理的に付着された物の一部」となってしまわない程度の独立性があれば,独立性を喪失しないものとして取り扱っている。 このような独立性があれば,物は従物として主物と切り離して譲渡することができ,譲受人が従物の所有権を取得する。 なお,本件昇降機設備のような家屋附属設備は,一般に家屋に設置したままでの担保設定や所有権譲渡が経済取引として普及し,常態化しているから,経済上の独立性もある。本件昇降機設備も,動産譲渡登記を経ている。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は,原判決の結論は正当であると判断する。その理由は,次の2のとおり当審における控訴人の主張に対する判断を付加するほか,原判決「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」に記載のとおりであるからこれを引用する。ただし,原判決14頁15行目の「所有者は,」の次に「当該不動産の所有者以外の者がその物を付着させた場合であっても,」を加え,15頁最終行の「穴を空け」を「穴を開け」に改め,16頁8行目及び9 する。ただし,原判決14頁15行目の「所有者は,」の次に「当該不動産の所有者以外の者がその物を付着させた場合であっても,」を加え,15頁最終行の「穴を空け」を「穴を開け」に改め,16頁8行目及び9行目の「本件昇降機施設」を「本件昇降機設備」にそれぞれ改め,同頁11行目の「本件ビルに付合していると認められ,」を削り,17頁9行目の「付合の成否」の次に「や所有権の対象としての独立性」を加え,同頁12・13行目の「付合の成否が左右されるものではなく,」を削り,同頁19行目の「付合の成否は,」から21行目の「ものであるから,」までを削り,同頁22行目の「付合の成立が否定されるものではない」を「所有権の対象としての独立性が肯定されるものではない」に改め,19頁12行目の「趣旨とする」の次に「ところ」を加え,24頁19行目の「1項」を削る。 2 当審における控訴人の主張に対する判断(1) 控訴人は,本件昇降機設備が地方税法上の償却資産であることは,同法,法人税法,所得税法及びこれらの施行令の文言上極めて明瞭であると主張する。 法人税法2条23号が,減価償却資産を「建物,構築物・・・その他の資産で償却をすべきものとして政令で定めるものをいう。」と規定するのを受けて,同法施行令13条は,法2条23号の資産として「建物及びその附属設備」を挙げ,附属設備につき「暖冷房設備,照明設備,通風設備,昇降機その他建物に附属する設備をいう。」としている。したがって,法人税法及び同法施行令が,建物に附属する昇降機設備を減価償却資産の一つとして規定していることは,そのとおりである(所得税法2条1項19号,同法施行令6条1号も同様である。)。 しかしながら,地方税法341条は,土地,家屋及び償却資産を総称して固定資産と定義し,償却資産を「土地及 ことは,そのとおりである(所得税法2条1項19号,同法施行令6条1号も同様である。)。 しかしながら,地方税法341条は,土地,家屋及び償却資産を総称して固定資産と定義し,償却資産を「土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産」で「その減価償却額又は減価償却費が法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上損金又は必要な経費に算入されるもののうち・・・」と定義している以上,同条にいう償却資産としての固定資産に当たるかについては,まず,家屋であるかどうか,家屋の範囲はどこまでかが検討されなければならない。そして,この家屋の範囲を検討するに当たっては,床,壁,天井など家屋の躯体を構成する部分かどうかに加えて,家屋に附属する設備であって家屋の一部分を構成するかどうかを検討することになる。すなわち,家屋に附属する設備は,家屋の一部分となって独立性が認められないものについては,家屋以外の資産とはなり得ず,家屋とは別個の独立性が認められるものに限り,地方税法にいう償却資産であるかどうかを検討すべきことになる。 控訴人は,「償却資産」とは何かから主張するものであるが,地方税法341条の「土地及び家屋以外の」という部分を没却しており,不当であるといわざるを得ない。 控訴人は,法人税法,所得税法は,昇降機等の建物附属設備について,建物とは別の,独立した有体動産であることを初めから肯認しているとも主張する。しかしながら,先に挙げた法人税法,所得税法及びこれらの施行令の規定は,減価償却資産に建物附属設備が該当することをいうのみであり,建物附属設備であれば,常に,建物以外の所有権の対象となる物としての独立性があるものと評価しているとは解することができない。具体的な建物との付着状況,建物に対する効用を離れて,常に独立性 みであり,建物附属設備であれば,常に,建物以外の所有権の対象となる物としての独立性があるものと評価しているとは解することができない。具体的な建物との付着状況,建物に対する効用を離れて,常に独立性を肯定するということはできないというべきである。 なお,本件では,本件昇降機設備の設置者は,本件ビルの所有者である控訴人であるから(原判決3頁1(1)),民法242条本文を持ち出すまでもなく,本件ビル完成時の本件昇降機設備の所有者は控訴人である。 以上のとおり,本件昇降機設備が地方税法上の償却資産であることは法規の文言上明瞭であるとの控訴人の主張は,採用することができない。 (2) 控訴人は,付着した物がもはや切り離しが不可能なまでに固着し,物理的に付着された物の一部となってしまわない程度の独立性があれば,家屋からの独立性が認められる旨主張する。 しかしながら,所有者以外の者がその物を不動産に付着させた場合であっても,当該不動産の所有者に付着物の所有権が帰属することになる民法242条本文の付合の要件としては,付着物が当該不動産の構成部分又は社会通念上その不動産の一部分と認められる状態となり,取引上の独立性を有しなければ足りるというべきであるから,家屋の範囲を画する家屋の附属設備も同様に解するのが相当である。控訴人の主張するような,切り離しが不可能なまでに固着しなければ独立性を認めるというのは,取引上の独立性としてみると不相当である。 控訴人は,家屋附属設備は,一般に家屋に設置したままでの担保設定や所有権譲渡が経済取引として普及し,常態化していると主張するが,動産譲渡登記ができるか否かから上記のように解することはできず,どのような附属設備であっても上記のような経済取引が行われていると認めるに足りる証拠はない。 として普及し,常態化していると主張するが,動産譲渡登記ができるか否かから上記のように解することはできず,どのような附属設備であっても上記のような経済取引が行われていると認めるに足りる証拠はない。 そこで,前記の観点から本件昇降機設備をみるならば,原判決の説示するとおり(15頁6行目から16頁10行目まで),本件昇降機設備は,社会通念上本件ビルの一部分と認められる状態となり,取引上の独立性を有しないと認めることができる。 控訴人の独立性に関する主張は,採用することができない。 3 以上によれば,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,これをいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第17民事部 裁判長裁判官南敏文 裁判官江口とし子 裁判官野村高弘

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