主文 一本件控訴をいずれも棄却する。 二控訴費用は、控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第一控訴の趣旨一原判決を取り消す。 二被控訴人運輸大臣が、昭和六二年一一月二七日付けでした原判決別紙物件目録記載一の土地(本件土地)上所在の同目録記載二及び三記載の各建物(それぞれ第一工作物、第二工作物)並びにその他一切の工作物を含む通称「木の根団結砦」(総称して本件工作物)に対する除去処分(本件除去処分)を取り消す。 三被控訴人運輸大臣は、被控訴人新東京国際空港公団(被控訴人公団)に対して、本件土地の占有を控訴人らに回復させるための命令、勧告等適切な措置を講ぜよ(命令・勧告等措置請求)。 四被控訴人国、被控訴人千葉県(被控訴人県)及び被控訴人公団は、控訴人三里塚芝山連合空港反対同盟(控訴人同盟)に対し、連帯して二〇〇万円及びこれに対する昭和六二年一一月二七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 五被控訴人国、被控訴人県及び被控訴人公団は、控訴人同盟に対し、連帯して、昭和六二年一一月二七日から被控訴人公団の本件土地明渡済みまで一か月六三〇〇円の割合による金員を支払え。 六被控訴人国、被控訴人県及び被控訴人公団は、控訴人A及び控訴人Bに対し、各自連帯して五〇万円及びこれに対する昭和六二年一一月二七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 七訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。 八第四ないし第六項につき仮執行宣言第二事案の概要被控訴人運輸大臣は、昭和六二年一一月二六日、新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(緊急措置法)六条一項に基づき、通称「木の根団結砦」について同法三条八項の除去措置を講ずる旨を決定し、被控訴人公団に除去措置事務を実施させることとし、被控訴人公団は、同 安全確保に関する緊急措置法(緊急措置法)六条一項に基づき、通称「木の根団結砦」について同法三条八項の除去措置を講ずる旨を決定し、被控訴人公団に除去措置事務を実施させることとし、被控訴人公団は、同月二七日、本件工作物に対し本件除去処分を完了した。また、被控訴人県(千葉県警察)は、同月二四日から二六日にかけて、本件工作物に対する捜索差押許可状の執行に赴き、捜索のため本件土地内に立ち入り、捜索に際し合計七名を逮捕した。 そこで、本件工作物の所有者であると主張する控訴人同盟並びに第一工作物の管理を控訴人同盟から委託されてこれに居住してきた控訴人A及び控訴人Bは、被控訴人運輸大臣に対し、本件除去処分の取消し及び被控訴人公団をして本件土地の占有を控訴人らに回復させるための命令・勧告等適切な措置を講ずるよう求め、さらに、本件除去処分及び逮捕活動は違法であり、これらは被控訴人国、被控訴人県及び被控訴人公団の共同不法行為に当たると主張し、右被控訴人らに対し、第一、第二工作物の破壊及び本件土地の占有喪失等を理由に損害賠償を控訴人同盟に、本件除去処分により受けた精神的苦痛の慰謝料を控訴人らに、それぞれ支払うよう求めた。 これに対し、原判決は、被控訴人運輸大臣に対する訴えにつき、本件工作物が完全に除去され本件除去処分が終了した以上、その取消しを求める訴えの利益はない、控訴人らが求める命令・勧告等の措置は、直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定する効果を伴うものではないから、抗告訴訟の対象とならず、いわゆる無名抗告訴訟の要件も備えていないと説示し、いずれも不適法であるとして却下した。また、原判決は、被控訴人国、被控訴人県及び被控訴人公団に対する控訴人らの損害賠償請求につき、緊急措置法三条八項は、控訴人らが主張する憲法の各条項に違反しておらず、本件 不適法であるとして却下した。また、原判決は、被控訴人国、被控訴人県及び被控訴人公団に対する控訴人らの損害賠償請求につき、緊急措置法三条八項は、控訴人らが主張する憲法の各条項に違反しておらず、本件除去処分は、いずれも同条所定の要件を満たしており適法であること、被控訴人県の逮捕活動等は、本件工作物内からの激しい抵抗が行われたこと等に基づくやむを得ないものであり適法であること、被控訴人公団は、本件土地の共有持分三九分の三七を有するから、本件土地の占有は管理行為(民法二五二条)に基づくものとして適法であることなどを説示し、請求をいずれも棄却した。そこで、控訴人らは、本件控訴を提起したものである。 本件事案の概要は、原判決一六頁三行目の「原告代表C」を「控訴人代表者C」に訂正し、以下のとおり当事者の当審における主張を付加するほか、原判決「事実及び理由」の「第二事案の概要」に記載のとおりであるから、これを引用する。 一控訴人らの主張 1 本案前の申立てについて(一) 本件除去処分取消請求の訴えの利益(1) 行政処分の取消しによる効果は、処分前の処分がなかった時の地位の自動的回復ということが第一義であって、そこから行政庁に一定の作為義務が発生するか否かは二次的問題であり、本件除去処分が建物の除去という事実行為であっても、右の自動的に回復されるべき地位は、まず先行して確定し得るものである。したがって、本件に即しても、一時的課題である原地位の回復ということを観念すべきであり、かつ、それに相応しい法的意義が備わっていることを看過すべきではなく、現に、行政事件訴訟法三一条の事情判決の場合、一定の現状の変更をなさしめず、裁判所が処分に対する法的評価(違法の宣言)のみを下すことを許容している。このように、処分に対する違法判断によっても、独自に法的な利益 事件訴訟法三一条の事情判決の場合、一定の現状の変更をなさしめず、裁判所が処分に対する法的評価(違法の宣言)のみを下すことを許容している。このように、処分に対する違法判断によっても、独自に法的な利益の存することが法によっても認められているのであるから、本件除去処分においても、訴えの利益を認めるべきである。 (2) 本件除去処分の取消しによる地位の回復ということは、控訴人らの法的地位に大きな変動を具体的にもたらす。すなわち、被控訴人公団によれば、控訴人らの本件土地の占有権は本件工作物の所有・占有に由来するというのであるが、本件除去処分が取り消され、処分前の地位がそのまま回復することになるから、被控訴人公団の見解によっても、控訴人らは本件土地の占有権を回復することになる。処分者が原状回復すべき根拠規定がないとしても、取消判決の効果として地位回復がされた結果、処分者である被控訴人運輸大臣は控訴人らが本件土地の直接占有を回復しようとすることを容認しなければならず、一方、取消判決は第三者効を有しているから、被控訴人公団もこの判断に覊束され、その結果、被控訴人公団が現在に至るまで継続している本件土地の直接占有に対し、控訴人らが正当に回復すべき法律的地位を回復するに至るのであって、これが「法律上の利益」に当たることはいうまでもない。 (二) 命令・勧告措置請求被控訴人運輸大臣は、緊急措置法三条六項を根拠に、被控訴人公団に対し、本件土地の占有を控訴人らに回復させるための命令、勧告等適切な措置を講ずることができる。すなわち、被控訴人運輸大臣の被控訴人公団に対する授権の範囲は、あくまで本件土地上の工作物の除去であって、その余の行為をなし得る権限は何ら与えられていなかったのであり、被控訴人公団は、本件工作物を除去するため本件土地に立ち入る権限を与えられた る授権の範囲は、あくまで本件土地上の工作物の除去であって、その余の行為をなし得る権限は何ら与えられていなかったのであり、被控訴人公団は、本件工作物を除去するため本件土地に立ち入る権限を与えられたかもしれないが、本件土地に対し何らかの処分をする権限までは与えられていない。したがって、被控訴人公団が本件土地に勝手に管理柵を設置するなどということは絶対に許されないところであり、被控訴人公団のかかる越権行為・法律上の地位の悪用に対し、本来の処分者である被控訴人運輸大臣は、何らかの是正の措置を執り得るはずであり、それは、緊急措置法三条六項に基づく被控訴人運輸大臣の権限に内在するものというべきである。 2 本件除去処分の違法について(一) 緊急措置法三条一項、八項が憲法二一条、二二条、二五条、二九条、三一条に違反するものであることは明らかであるが、仮に右規定の合憲性を前提とするとしても、本件除去処分をすることができるのは、乗客の生命の安全にかかわる空港施設の破壊を意図するような人物が、まさにそのような行為に出ようとして集合していることが客観的に明らかな場合に限定されるべきである。さらに重要なのは、暴力主義的破壊活動者が、かかる活動を実行しようとする蓋然性が真に認定され得たとしても、だからといって直ちに、運輪省によっても暴力主義的破壊活動者ではないと言明されているところの控訴人同盟が所有している工作物についてまで、右規定による処分がされることになってよいということには決してならないということであり、あくまで当該蓋然性とその工作物との関連性が認められることが必須の要件である。本件は、(二)のとおり、そもそも暴力主義的破壊活動者が暴力主義的破壊活動を実行しようとする蓋然性が認定できる場合に当たらないし、右の蓋然性と本件工作物との関連性が認められない が必須の要件である。本件は、(二)のとおり、そもそも暴力主義的破壊活動者が暴力主義的破壊活動を実行しようとする蓋然性が認定できる場合に当たらないし、右の蓋然性と本件工作物との関連性が認められない場合であることは明らかである。 (二) 本件除去処分の前提となる事実認定及び法的評価に対する原判決の誤りを個別に摘示すると、以下のとおりである。 (1) 昭和六二年五月一二日の本件使用禁止命令後、控訴人A、控訴人B、D、E、F及びGの六名が本件工作物に出入りをしていたというが出入りというだけで暴力主義的破壊活動が実行される蓋然性のある集合があったということはできない。Dに検挙歴があったというが、そのことに係る闘争が空港を攻撃し乗客の安全を脅かすようなものでなかったことは明らかである。また、D、E、F及びGが革労協所属の者と行動を共にしていた事実は何ら証明されていない。 (2) 革労協は、本件使用禁止命令後も、「解放」において様々なスローガンを記載しているが、これらは現実の闘争の具体的方針それ自体を表現しているものではなく、運動の抽象的方向性が大衆鼓舞的に強調されたものであるにすぎないのであって、このような大衆宣伝の現象を捉えて革労協の政治方針と認める原判決は粗雑のそしりを免れない。 (3) 原判決は、本件工作物が要塞化されていたというが、それはあくまで防御目的であり、本件工作物に対する警察権力による嫌がらせ・破壊攻撃が激化していたことから、反対運動を防衛するため、一定の防御措置を講ずることが必須であった。空港本体から数百メートル離れた本件工作物が、警察の暴力に対して防御を固める態勢を採ったからといって、空港の安全・乗客の生命の安全が脅かされる具体的危険が生じたなどとは到底いえないであろう。 また、昭和六二年七月五日、同年九月一三日、同月一五日の三日 暴力に対して防御を固める態勢を採ったからといって、空港の安全・乗客の生命の安全が脅かされる具体的危険が生じたなどとは到底いえないであろう。 また、昭和六二年七月五日、同年九月一三日、同月一五日の三日にわたり、暴力主義的破壊活動者と認められる控訴人A、控訴人B、革労協所属ないしこれらの者と行動を共にしていると認められる多数の者らが本件工作物内に集合したというが、革労協所属の事実の証明はないし、単に気勢を上げたというだけであり、暴力主義的破壊活動が実行される蓋然性は何ら存在していない。 (4) 原判決は、昭和六二年一一月一六日に被控訴人公団が管理柵の設置等の作業を行うにつき、本件工作物内櫓上から、大型パチンコや素手で、石塊、ボルト、電池等を投擲したことを挙げるが、このことが空港に対する破壊行為、乗客の生命を危殆に頻せしめる行為に当たらないことは明らかである。 (5) 昭和六二年一一月二四日から二六日まで、一定の実力闘争が行われた事実は存在しているが、そのことがいかなる意味・態様において空港の保全・乗客の生命の安全を脅かすことになるのか。右の実力闘争は、砦を防衛する目的のためのものであり、空港に対する攻撃的なものではなかったことは明らかである。さらに、右の闘争の主体が刑事手続により処罰されることがあったとしても、このことと無関係の第三者たる控訴人同盟が、行政上の手続保障を何ら受けることなく、その所有する本件工作物を除去されてしまうことが許されるということはあり得ない。 二被控訴人国及び被控訴人運輸大臣の主張 1 訴えの利益について控訴人らは、抗告訴訟の本質は、処分の違法の宣言にあり、原状回復の作為義務の有無が訴えの利益の有無を決するわけではないと主張する。しかし、取消訴訟の原状回復機能は、すべての取消訴訟に共通する最も重要な機能であって、行政 の本質は、処分の違法の宣言にあり、原状回復の作為義務の有無が訴えの利益の有無を決するわけではないと主張する。しかし、取消訴訟の原状回復機能は、すべての取消訴訟に共通する最も重要な機能であって、行政行為により変動した法律関係が判決により原状に復することになるのであり、取消しにより行政行為がなかった状態になる。本件のような事実行為としての本件除去処分においては、原状回復は観念的なものにとどまらず、一定の作為を要するところ、被控訴人運輸大臣にそのような作為義務を認める法律上の規定がない以上、原状回復は不可能であるから、結局、本件除去処分を取り消す訴えの利益がないことに帰する。 また、控訴人らは、本件において、原状回復を義務づける法規定がないとしても、取消し自体によって地位の回復が観念でき、これにより本件工作物の敷地に対する占有の回復という利益がある旨を主張する。しかし、そもそも占有とは、排他的に物を支配している外形的事実を前提として観念し得るものであるところ、その外形的事実は、本件除去処分によって消滅しており、処分を取り消しただけで右事実が回復するわけではないことに鑑みれば、占有が回復することをもって取消しによる法的利益があるとする控訴人らの主張は、その前提を誤っているといわなければならない。 2 本件除去処分の適法性について被控訴人運輸大臣は、当該工作物が多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されているか否かを判断するに当たって、緊急措置法の立法目的を十分に考慮し、単に同法三条一項一号が定める要件を充足しているか否かにとどまらず、当該集合と暴力主義的破壊活動等との関連性などについても検討した上、慎重に同号を適用してきたところである。その判断に際しては、具体的に、①当該工作物の建設経緯、構造、外形が日常生活を行うためのものとは通常認め 暴力主義的破壊活動等との関連性などについても検討した上、慎重に同号を適用してきたところである。その判断に際しては、具体的に、①当該工作物の建設経緯、構造、外形が日常生活を行うためのものとは通常認められず、暴力主義的破壊活動等を行う闘争の拠点としての性格を有するものであるか否か、実際に多数の暴力主義的破壊活動者が常駐ないし出入りし、暴力主義的破壊活動を主張する集会への出発拠点や機関誌の発行拠点等として使用されているか否か、②常駐ないし出入りしている者の所属する過激派集団が、これまで暴力主義的破壊活動等を実施することを数多く主張し、実際に暴力主義的破壊活動等を実施しているか否か、③右過激派集団が機関誌等において、当該工作物を暴力主義的破壊活動等の拠点(要塞化、砦化など)とする、使用禁止命令に反発して当該工作物を死守する等の挑戦的な意思を表明し、その具体化として工作物を要塞化したり、当該工作物への緊急措置法適用に反発して暴力主義的破壊活動等を行ったか否か等の事情を総合衡量して、当該集合が暴力主義的破壊活動等に関連して行われたか否かを判断したものである。したがって、本件除去処分は適法である。 三被控訴人公団の主張仮に、被控訴人公団の行為が占有侵奪に当たるとしても、①控訴人らは本件土地の所有権を有しないこと、②仮に控訴人同盟が共有者から黙示的に本件土地の使用を認められていたとしても、本件除去処分により本件建物等が除去された時点で、承認された使用目的による使用収益を終了し、使用借権は消滅していること、③本件土地に三九分の三七の共有持分権を有する被控訴人公団は、控訴人らの土地使用を認めていないし、残る三九分の二は控訴人らと敵対関係にある反対同盟熱田派に所属する者が所有しており、控訴人らに使用を認める可能性はないこと、④したがって、控訴人らは、 訴人公団は、控訴人らの土地使用を認めていないし、残る三九分の二は控訴人らと敵対関係にある反対同盟熱田派に所属する者が所有しており、控訴人らに使用を認める可能性はないこと、④したがって、控訴人らは、本件土地に何らの占有権原を有しておらず、むしろ被控訴人公団に対し本件土地を返還すべき立場にあること、⑤本件土地は、その周囲がすべて被控訴人公団の所有地に囲まれており、適法な占有権原を有しない限り控訴人らは囲繞地通行権を有せず、被控訴人公団が通行を認めない限り、建築基準法上、本件土地上に再び建物を建築することはできないことなどからすると、占有喪失によって控訴人らに何ら損害は発生していないというべきである。 第三当裁判所の判断当裁判所は、本件全資料を検討した結果、控訴人らの被控訴人運輸大臣に対する本件除去処分の取消請求及び命令・勧告等措置請求は、いずれも不適法であるから却下を免れず、被控訴人国、被控訴人公団及び被控訴人県に対する各損害賠償請求はいずれも理由がないから棄却すべきものと判断する。その理由は、一のとおり原判決を補正し、二のとおり控訴人の当審における主張に対する判断を付加するほか、原判決「第三当裁判所の判断」に説示のとおりであるから、これを引用する。 一原判決の補正 1 原判決一五〇頁九行目の「なお、」から同一五一頁一行目の「認められる。」までを「なお、丁五及び弁論の全趣旨によれば、控訴人らは、被控訴人公団を被告として占有回収の訴えを提起したが(千葉地方裁判所昭和六三年(ワ)第四八号、差戻後平成二年(ワ)第一七二八号)、一審において請求棄却判決を受け、その控訴審においても控訴棄却の判決を受け(東京高等裁判所平成五年(ネ)第四五八四号)、平成一二年三月一七日、上告審における上告棄却の判決により確定した(最高裁判所平成九年(オ)第一〇六 決を受け、その控訴審においても控訴棄却の判決を受け(東京高等裁判所平成五年(ネ)第四五八四号)、平成一二年三月一七日、上告審における上告棄却の判決により確定した(最高裁判所平成九年(オ)第一〇六五号)ことが認められる。)に訂正する。 2 原判決二三〇頁二行目の「被告公団の本件土地占有の適法性」を「本件土地の占有侵害の有無」に訂正し、同二三二頁九行目冒頭から同二三四頁一一行目末尾までを以下のとおり訂正する。 「2 以上の認定に対し、控訴人らは、本件土地は、高橋から控訴人同盟に贈与されたものであり、その所有権は控訴人同盟が有すると主張する。しかしながら、高橋は、本件土地に係る自己の持分を被控訴人公団に譲渡しているものであり、右の贈与の事実を認めるに足る証拠はない。なお、仮に、高橋から控訴人同盟に対する贈与があったとしても、控訴人同盟は、昭和六一年に高橋から譲り受けた持分を含め本件土地の三九分の三七の持分につき登記を経由している被控訴人公団に対し、その所有権取得を対抗することはできない。したがって、右の控訴人らの主張を採用することはできない。 3 ところで、緊急措置法三条八項は、そこで示される異常な事態に対処するため、厳格な要件の下に、使用禁止命令違反の状態が生じた場合の直接強制として当該工作物を除去することができることを認めたものであるから、これによる本件工作物の除去は適法であり、よって、控訴人同盟の第一、第二工作物の破壊を理由とする損害賠償請求及び本件除去処分による慰謝料請求並びに控訴人A及び控訴人Bの本件除去処分の実施等により被った精神的苦痛に対する慰謝料請求は、いずれも理由がないというべきである。もっとも、緊急措置法三条八項は、被控訴人運輸大臣に対し、本件工作物を除去することができることを認めているが、本件工作物の所在する土地の占 に対する慰謝料請求は、いずれも理由がないというべきである。もっとも、緊急措置法三条八項は、被控訴人運輸大臣に対し、本件工作物を除去することができることを認めているが、本件工作物の所在する土地の占有を解く権限まで与えたということはできないから、本件工作物を除去した後、被控訴人公団が本件土地を占有していることにつき、本件工作物を所有していた控訴人同盟の本件土地の占有喪失(侵奪)を理由とする損害賠償請求(本件除去処分のあった日である昭和六二年一一月二七日から被控訴人公団の本件土地明渡済みまで月額六三〇〇円の損害金)の可否が問題になるといわざるを得ない(なお、控訴人らは、控訴人A及び控訴人Bも本件土地を占有しているかのように主張しているが、同人らは、控訴人同盟から第一工作物の管理を委ねられていたにすぎないから、本件土地を独立して占有していたと認めることはできず、占有権侵害という問題が起こり得ないことは明らかである。)しかしながら、前記1で認定した事実によれば、控訴人らは、本件土地の共有者ではなく、控訴人同盟が被控訴人公団又は他の共有者の承諾を得て本件土地上に本件工作物を所有していたと認めるに足る証拠もないから、控訴人同盟は、本件土地を占有する権原を全く有していないことになる。そうすると、控訴人同盟が侵害されたと主張する本件土地の占有は、控訴人同盟が本件土地上に本件工作物を所有し事実上その敷地部分を支配することにより成立していたにすぎないものであるから、本件除去処分により本件工作物が本件土地から適法に除去されて消滅したことにより、本件建物の所有を介して控訴人同盟が有していた本件土地の占有も消滅したと解するのが相当である。したがって、控訴人同盟が有していた本件土地の占有を消滅させた被控訴人国(運輸大臣)ないし被控訴人公団の行為は適法であるか 介して控訴人同盟が有していた本件土地の占有も消滅したと解するのが相当である。したがって、控訴人同盟が有していた本件土地の占有を消滅させた被控訴人国(運輸大臣)ないし被控訴人公団の行為は適法であるから、同被控訴人らが控訴人同盟に不法行為責任を負うことはあり得ないというべきである。 なお、仮に、本件工作物の除去により控訴人同盟の本件土地の占有は直ちに消滅しないと解するならば、その後の被控訴人公団による本件土地の占有は、控訴人同盟の占有を侵害するものと認める余地がある。しかし、前記のとおり、控訴人同盟は、本件土地を占有する権原を全く有していないから、本件土地の不法占有者として、本件土地につき三九分の三七の共有持分権を有する被控訴人公団から管理権に基づき本件土地の返還を求められれば、当然に本件土地を被控訴人公団に対して返還すべき立場にあるといわざるを得ない。また、本件土地は、その周囲がすべて被控訴人公団の所有地に囲まれているところ(丁三の1~3)、控訴人同盟は、本件土地に通じる通路につき囲繞地通行権を有していないから、被控訴人公団が通行を認めない限り、控訴人同盟が本件土地の占有を実質的に回復しこれを利用することは不可能であることはいうまでもない。これらの事情を考慮すると、仮に、被控訴人公団による本件土地の占有が控訴人同盟の占有を侵害するものであったとしても、本件土地の占有の喪失によって、控訴人同盟が本件土地の占有を現実に回復するまでの間、その主張のように月額六三〇〇円の損害を被ったと認めることはできない。 4 以上のように、控訴人同盟の占有喪失(侵奪)を理由とする損害賠償請求は理由がないというべきである。なお、本件土地につき三九分の三七の持分を有する被控訴人公団が、本件除去処分の後も本件土地を占有し、有刺鉄線により本件土地を囲むなどして控 奪)を理由とする損害賠償請求は理由がないというべきである。なお、本件土地につき三九分の三七の持分を有する被控訴人公団が、本件除去処分の後も本件土地を占有し、有刺鉄線により本件土地を囲むなどして控訴人らの立入りを拒むことは、本件土地に対する管理行為(民法二五二条)として許容されるものであることはいうまでもない。」 3 原判決二三五頁一行目の「さらに、」の前に「これまで説示してきたとおり、被控訴人国、被控訴人公団及び被控訴人県の行為はいずれも適法なものであるが、」を加える。 ニ当審における控訴人の主張に対する判断 1 本案前の申立てについて(一) 本件除去処分取消しの訴えの利益(1) 控訴人らは、行政処分の取消しによる効果は、処分がなかった時の地位の自動的回復ということが第一義であって、そこから行政庁に一定の作為義務が発生するか否かは二次的問題であり、本件除去処分が建物の除去という事実行為であっても、処分に対する違法判断により、右の自動的に回復されるべき地位を先行して確定し得ると主張し、その例として、行政事件訴訟法三一条の事情判決を挙げ、処分に対する違法判断による法的な利益が存することは法により認められているから、本件除去処分においても訴えの利益を認めるべきであると主張する。 しかしながら、行政処分の取消訴訟の目的は、その取消判決の効力によって、処分の法的効果を遡及的に失わしめ、個人の権利ないし法律上保護されている利益に対する侵害状態を解消させ、その法益の全部又は一部を回復させることにあるから(最高裁昭和四七年一二月一二日第三小法廷判決民集二六巻一〇号一八五〇頁、最高裁昭和五七年四月八日第一小法廷判決民集三六巻四号五九四頁参照)、国民の権利利益を侵害する処分の法的効果が存続しており、これが取り消されることによって処分により侵害された国 巻一〇号一八五〇頁、最高裁昭和五七年四月八日第一小法廷判決民集三六巻四号五九四頁参照)、国民の権利利益を侵害する処分の法的効果が存続しており、これが取り消されることによって処分により侵害された国民の権利利益が回復される場合に限り、訴えの利益を肯定することができると解すべきである。 そこで、本件除去処分についてみるに、緊急措置法三条八項に基づく本件除去処分は、目的となる本件工作物を物理的に除去すれば目的を達し終了する事実行為であるから、除去処分が行われて工作物が除去された後に、本件除去処分が取り消されたとしても、実定法上緊急措置法三条八項の除去処分が取り消された場合行政庁(運輸大臣)に本件工作物を建築するなどの原状回復を義務づける規定は存しないから、現段階においては、もはや本件除去処分の取消しを求める訴えの利益はなくなったものといわざるを得ない。 (2) また、控訴人らは、本件除去処分が取り消されると、処分前の地位がそのまま回復することになるから、控訴人らは本件土地の占有権を回復することになり、その結果、処分者である被控訴人運輸大臣は控訴人らが本件土地の直接占有を回復しようとすることを容認しなければならず、一方、取消判決は第三者効を有しているから、被控訴人公団もこの判断に覊束され、その結果、被控訴人公団が現在に至るまで継続している本件土地の直接占有に対し、控訴人らが正当に回復すべき法律的地位を回復するに至るとし、これは「法律上の利益」に当たると主張する。 しかし、本件除去処分は、本件工作物の所在する土地の占有を解く効果まで有しているものではないから、これを取り消すことにより控訴人らが本件土地の占有権を回復するという効果をもたらすものではない。また、前記一2のとおり、本件工作物が適法に除去されて消滅したことにより、本件工作物を所有する ないから、これを取り消すことにより控訴人らが本件土地の占有権を回復するという効果をもたらすものではない。また、前記一2のとおり、本件工作物が適法に除去されて消滅したことにより、本件工作物を所有することによって本件土地に成立していた控訴人同盟の占有も消滅したところ、占有とは、所持、すなわち、物が社会通念上その人の事実的支配に属すると認められる客観的な関係を要素とするものであるから、このことを離れ、本件除去処分の取消しにより既に消滅した占有が観念的に回復すると解することはできないというべきである。したがって、本件除去処分により控訴人らが本件土地の占有権を回復することになることを前提とする控訴人らの主張も採用することはできない。 (二) 命令・勧告措置請求被控訴人運輸大臣は、緊急措置法三条六項を根拠に、被控訴人公団に対し、本件土地の占有を控訴人らに回復させるための命令、勧告等適切な措置を講ずることができるとし、被控訴人公団は、本件土地上の工作物を除去する権限は与えられていたものの、本件土地に対し何らかの処分をする権限を与えられておらず、本件土地に勝手に管理柵を設置するなどは許されないのであるから、かかる被控訴人公団の越権行為・法律上の地位の悪用に対し、本来の処分者である被控訴人運輸大臣は何らかの是正の措置を執り得るはずであり、それは緊急措置法三条六項に基づく被控訴人運輸大臣の権限に内在するものであると主張する。 しかしながら、被控訴人公団は、被控訴人運輸大臣の授権に基づき適法に本件工作物を除去したものであるし、前記一2のとおり、その後被控訴人公団が本件土地に管理柵を設置するなどして本件土地を占有していることは、本件土地の三九分の三七の持分に基づく管理行為として許容されるものであるから、管理柵の設置は被控訴人公団が越権行為・法律上の地位を が本件土地に管理柵を設置するなどして本件土地を占有していることは、本件土地の三九分の三七の持分に基づく管理行為として許容されるものであるから、管理柵の設置は被控訴人公団が越権行為・法律上の地位を悪用したものであるとの控訴人らの非難が当を得たものでないことは明らかである。したがって、控訴人らの主張は理由がない。 2 本件除去処分の違法について控訴人らは、被控訴人運輸大臣が本件除去処分をすることができるのは、乗客の生命の安全にかかわる空港施設の破壊を意図するような人物が、まさにそのような行為に出ようとして集合していることが客観的に明らかな場合に限定されるべきであり、暴力主義的破壊活動者が、かかる活動を実行しようとする蓋然性が真に認定され得たことから直ちに、控訴人同盟が所有している本件工作物についてまで、緊急措置法三条八項に基づく本件除去処分がされてよいということにはならず、あくまで当該蓋然性とその本件工作物との関連性が認められることが必須の要件であると主張する。 しかしながら、控訴人らの主張は、暴力主義的破壊活動の意義、対象、人物、集合の動機、蓋然性の程度、右蓋然性と本件工作物との関連などを過度に限定するものであるから、採用することはできない。原判決第三、三、1及び2のとおり、本件工作物は、新空港から三〇〇メートル以内の近距離にあり、本件使用禁止命令以前から新空港及びその周辺の施設に向けて火炎弾を発射する等の暴力主義的破壊活動等を繰り返し行っていた革労協が、暴力主義的破壊活動等の拠点ないし要塞として使用しており、革労協を支援する関係者が多数出入り、集合して暴力主義的破壊活動を行うおそれがあり、今後も本件使用禁止命令に従わないことが明らかな状況にあったことなどに照らすと、緊急措置法三条八項の要件を充足していたと解することができるから 出入り、集合して暴力主義的破壊活動を行うおそれがあり、今後も本件使用禁止命令に従わないことが明らかな状況にあったことなどに照らすと、緊急措置法三条八項の要件を充足していたと解することができるから、本件除去処分は適法というべきである。 三結論以上のように、控訴人らの被控訴人運輸大臣に対する本件除去処分の取消請求及び命令・勧告等措置請求は、いずれも不適法であるから却下を免れず、被控訴人国、被控訴人公団及び被控訴人県に対する各損害賠償請求はいずれも理由がないから棄却すべきである。よって、同旨の原判決は相当であり、本件控訴はいずれも理由がないから棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六七条一項、六一条、六五条を適用して、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第九民事部裁判長裁判官塩崎勤裁判官小林正裁判官萩原秀紀
▼ クリックして全文を表示