平成14(行ウ)9 不当利得金返還請求事件

裁判年月日・裁判所
平成15年10月15日 宇都宮地方裁判所
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判決文本文5,035 文字)

主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告栃木県議会自由民主党議員会は,栃木県に対し,209万3127円及びこれに対する平成14年9月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告民主党・県民連合議員団は,栃木県に対し,280万3810円及びこれに対する平成14年9月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告公明党栃木県議会議員会は,栃木県に対し,56万8919円及びこれに対する平成14年9月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告日本共産党は,栃木県に対し,43万1860円及びこれに対する平成14年9月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告が,栃木県議会の会派である被告らに対する政務調査費の支出のうち被告らが広報費として使用した分が平成14年法律第4号による改正前の地方自治法(以下「法」という。)100条12項に違反して違法であり,被告らが広報費相当額を不当に利得したとして,被告らに対し,法242条の2第1項4号に基づき広報費相当額の返還を求めた住民訴訟である。 1 争いのない事実(1) 原告は栃木県の住民であり,被告らは栃木県議会の会派である。 (2) 栃木県においては,政務調査費の交付に関して,法100条12項,13項の規定に基づき,栃木県政務調査費の交付に関する条例(平成13年栃木県条例第1号。以下「本件条例」という。)が制定され,所定の手続に従って,栃木県議会の会派に対して政務調査費を交付することとされている。 そして,本件条例8条は「会派は,政務調査費を議長が別に定める基準に従い使用しなけれ という。)が制定され,所定の手続に従って,栃木県議会の会派に対して政務調査費を交付することとされている。 そして,本件条例8条は「会派は,政務調査費を議長が別に定める基準に従い使用しなければならない。」と規定し,その委任を受けて,栃木県政務調査費の交付に関する条例施行規程(平成13年栃木県議会告示第1号。以下「本件規程」という。)4条は,政務調査費の使途基準の一つとして「広報費」を規定し,その内容として「会派が行う議会活動及び県政に関する政策等の広報活動に要する経費(広報誌・報告書等印刷費,送料,交通費等)」と規定している。 (3) 参加人は,本件条例に基づき,平成13年度の政務調査費として,被告栃木県議会自由民主党議員会(以下「被告自民党議員会」という。)に対して総額1億5000万円の,被告民主党・県民連合議員団(以下「被告民主党議員団」という。)に対して総額1800万円の,被告公明党栃木県議会議員会(以下「被告公明党議員会」という。)に対して総額1080万円の,被告日本共産党(以下「被告共産党」という。)に対して総額360万円の交付決定,変更交付決定をし,4半期ごとの支出命令,支払(以下総称して「本件支出」という。)により,被告らは,それぞれ上記政務調査費の交付を受けた。 (4) 被告らは,上記政務調査費のうち広報費として,被告自民党議員会は209万3127円を,被告民主党議員団は280万3810円を,被告公明党議員会は56万8919円を,被告共産党は43万1860円を使用した。 その内訳は,被告らが栃木県議会議長に提出した平成13年度政務調査費収支報告書によると,被告自民党議員会が「報告書等印刷費(県庁舎整備関係・BSE関係・降霜被害関係・降ひょう被害関係・産業廃棄物関係・県予算関係・国会等移転関係等64件) した平成13年度政務調査費収支報告書によると,被告自民党議員会が「報告書等印刷費(県庁舎整備関係・BSE関係・降霜被害関係・降ひょう被害関係・産業廃棄物関係・県予算関係・国会等移転関係等64件)118万6580円,その他交通費等」,被告民主党議員団が「会派広報誌作成費(14件)107万8550円,会派広報誌郵送料67万2970円,その他広報関係費等」,被告公明党議員会が「会派県議会だより作成費5件32万5000円,その他郵送料等」,被告共産党が「会派広報紙作成費25件33万8000円,新聞折込料7万5000円,その他郵送料,DPE代等」である。 (5) 原告は,平成14年6月20日,栃木県監査委員に対し,上記政務調査費のうち広報費に使用された分の不当利得返還を被告らに求める措置をとることを要求する旨の監査請求を行ったところ,同監査委員は,同年8月9日,監査請求を棄却した。 2 争点及び当事者の主張本件の争点は,被告らが本件規程4条の使途基準に基づいて政務調査費の一部を広報費として使用したことが違法であるか否かである。 (1) 原告の主張本件規程4条にいう「会派が行う議会活動及び県政に関する政策等の広報活動」は議員の議会活動又は政治活動であって,調査研究とはいえず,本件規程4条にいう「広報費」は,法100条12項にいう「議員の調査研究に資するため必要な経費」に該当しない。したがって,本件規程4条において使途基準の一つとして広報費を規定したことは法100条12項に違反して違法であり,被告らが,これに基づいて政務調査費の一部を広報費として使用したことも法100条12項に違反して違法である。 被告らは,交付を受けた政務調査費のうち広報費に使用した分を不当に利得したものであり,栃木県に対しこれを返還すべき義務を負 を広報費として使用したことも法100条12項に違反して違法である。 被告らは,交付を受けた政務調査費のうち広報費に使用した分を不当に利得したものであり,栃木県に対しこれを返還すべき義務を負う。 (2) 被告ら及び参加人の主張議員の調査研究は,その成果を議会活動に反映させ,議会の審議能力の充実,議会の活性化に寄与するために行われるものであり,県政に対する県民の意見,要望等を十分に把握し,これを会派や議員の議会活動に反映させていくことが重要であるところ,そのためには,その前提として,会派や議員の議会活動や県政に関する政策等を県民に知らせることが必要である。 こうした観点から,栃木県議会議長が,広報活動に要する経費が法100条12項にいう「議員の調査研究に資するため必要な経費」に該当するものとして,本件規程4条において使途基準の一つとして広報費を規定したことは,十分に合理的であり,その裁量を逸脱した違法があるとはいえない。 被告らは,本件規程4条の使途基準に基づいて政務調査費の一部を広報費として使用したもので何ら違法性はなく,不当に利得したものではない。 第3 当裁判所の判断 1 原告は,本件規程4条において使途基準の一つとして広報費を規定したこと及びこれに基づき被告らが政務調査費の一部を広報費として使用したことが法100条12項に違反する旨主張しているところ,被告らが提出した平成13年度政務調査費収支報告書によると,被告らが政務調査費のうち広報費として使用した額及び内訳は,前記第2,1(4)に記載のとおりであり,これらが,本件規程4条に規定する広報費に該当することは当事者間に争いがない。 2 そこで,本件規程4条において使途基準の一つとして広報費を規定したことが,法100条12項に違反するか否かについて検 れらが,本件規程4条に規定する広報費に該当することは当事者間に争いがない。 2 そこで,本件規程4条において使途基準の一つとして広報費を規定したことが,法100条12項に違反するか否かについて検討する。 法100条12項は,普通地方公共団体が,条例の定めるところにより,その議会の議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として,議会の会派又は議員に対して政務調査費を交付することができるとして,政務調査費交付制度を設けるとともに,政務調査費の交付の対象,額及び交付の方法は,条例で定めなければならないとして,具体的な実施方法等を条例の制定に委ね,また,法100条13項は,政務調査費の交付を受けた会派又は議員は,条例の定めるところにより,収支報告書を議長に提出することとしている。このように法が政務調査費交付制度を設けた趣旨は,地方議会の活性化を図るため,地方議員の調査活動基盤を充実させその審議能力を強化させるとともに,あわせて,その使途の透明性を確保することにあると解される。そして,法が政務調査費交付制度の具体的な実施方法等を条例の制定に委ねていることからすると,条例により,法100条12項にいう「議員の調査研究に資するため必要な経費」を具体化して,使途基準を定めることができ,更に,議会の自律的判断を尊重するという観点から,これを議長の制定する規程に委ねることも許されるというべきであるが,その規程が法100条12項に違反するか否かは,政務調査費を当該使途に用いることが,上記政務調査費交付制度の制定の趣旨に反するものであり,委任の範囲を逸脱するか否かを基準とすべきである。 前記第2,1(2)のとおり,本件規程4条にいう広報費は,会派の広報活動のうち議会活動及び県政に関する政策等の広報活動に関する経費を対象とするものである。原告は か否かを基準とすべきである。 前記第2,1(2)のとおり,本件規程4条にいう広報費は,会派の広報活動のうち議会活動及び県政に関する政策等の広報活動に関する経費を対象とするものである。原告は,上記広報活動は,議員の議会活動又は政治活動であって,調査研究とはいえない旨主張する。しかしながら,法100条12項にいう「議員の調査研究に資するため必要な経費」とは,その文言上,調査研究に直接用いられる費用に限られるものではなく,上記政務調査費交付制度の制定の趣旨に鑑みると,議会の活性化を図るため議員の調査活動基盤を充実させその審議能力を強化させるという観点からみて,調査研究のために有益な費用も含まれるというべきである。そして,県議会において,県民の意思を適正に反映させることは必要不可欠であり,県民の意思を収集,把握することは議員の調査研究の一つとして重要であるところ,議会活動及び県政に関する政策等を県民に知らせることは,県政に対する県民の意思を的確に収集,把握するための前提として意義を有するものということができる。したがって,本件規程4条にいう広報費は,調査研究に直接用いられる費用ではないとしても,上記の意味において,調査研究のために有益な費用ということができる。 なお,使途の透明性については,本件規程4条にいう広報費は上記のとおり限定されたものであることに加え,本件条例上,政務調査費の交付を受けた会派の代表者は所定の手続により政務調査費による支出の総額及びその内訳を記載した収支報告書を議長に提出しなければならないこと(本件条例9条),議長は政務調査費の適正な運用を期するため収支報告書が提出されたときは必要に応じて調査を行うこととされていること(本件条例10条),県内の住民等が収支報告書の閲覧をすることができること(本件条例12条) 政務調査費の適正な運用を期するため収支報告書が提出されたときは必要に応じて調査を行うこととされていること(本件条例10条),県内の住民等が収支報告書の閲覧をすることができること(本件条例12条)等の制度を通じて,確保することが可能である。 以上によれば,政務調査費を上記広報費に使用することが,政務調査費交付制度の制定の趣旨に反するものであるとはいえず,本件規程4条において使途基準の一つとして上記広報費を規定したことが委任の範囲を逸脱したものであるということはできないから,同規定が法100条12項に違反して違法であるとはいえない。 そして,本件支出が本件条例に基づきなされたことは前記第2,1(3)のとおりであるから,本件支出は適法になされたというべきである。 3 よって,その余の点を判断するまでもなく,原告の請求は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 宇都宮地方裁判所第2民事部裁判長裁判官羽田弘裁判官宮田祥次裁判官天川博義

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