- 1 -平成19年11月28日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成16年(ワ)第10667号損害賠償等請求事件口頭弁論終結日平成19年10月29日判決川崎市中原区〈以下省略〉原告富士通株式会社同訴訟代理人弁護士吉澤敬夫同牧野知彦アメリカ合衆国94538カルフォルニア州〈以下省略〉被告センティリアム・コミュニケーションズ・インコーポレイテッド東京都港区〈以下省略〉被告センティリアム・ジャパン株式会社被告両名訴訟代理人弁護士鈴木修同横井康真同河野祥多被告両名復代理人弁護士岡本義則被告両名補佐人弁理士田中英夫主文 原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 - 2 -第1請求 原告の請求(主位的請求)( )被告らは,原告に対し,連帯して,32億3000万円及びこれに対す る被告センティリアム・コミュニケーションズ・インコーポレイテッドについては平成16年9月1日から,被告センティリアム・ジャパン株式会社については,同年8月3日から,それぞれ支払済みまで各年5分の割合による金員を支払え。 ( )被告センティリアム・コミュニケーションズ・インコーポレイテッドは, 原告に対し,2億円及びこれに対する平成16年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (予備的請求)被告らは,原告に対し,連帯して,31億3325万円及びこれに対する被告センティリアム・コミュニケーションズ・インコーポレイテッドについては平成16年9月1日から,被告センティリアム・ジャパン株式会社については,同年8月3日から,それぞれ支払済みまで各年5分の割合による金員を支払え。 被告らの答弁( コーポレイテッドについては平成16年9月1日から,被告センティリアム・ジャパン株式会社については,同年8月3日から,それぞれ支払済みまで各年5分の割合による金員を支払え。 被告らの答弁( )本案前の答弁 原告の被告センティリアム・コミュニケーションズ・インコーポレイテッドに対する訴えをいずれも却下する。 ( )本案の答弁 主文同旨第2事案の概要本件は,データ伝送方式に関する発明についての特許権の共有持分を有している原告が,別紙被告物件目録記載のADSLモデム用のチップセット(以下- 3 -「被告製品」という。)の製造,販売をしている(この製造,販売が日本で行われていると評価できるかについては争いがある。),アメリカ合衆国(以下「米国」という。)法人である被告センティリアム・コミュニケーションズ・インコーポレイテッド(以下,「被告CCI」という。)及びその日本における子会社である被告センティリアム・ジャパン株式会社(以下,「被告CJ」という。)に対し,被告製品を内蔵したモデムによるADSL通信は,本件発明の技術的範囲に属するから,被告製品の生産,譲渡,輸入,譲渡の申出の各行為は,平成15年1月1日以後同年8月30日までの行為に対しては,平成18年法律第55号による改正前の特許法101条3号(以下「特許法101条3号」という。)及び同条4号(以下「特許法101条4号」という。)により,平成14年12月31日以前の行為に対しては,平成14年法律第24号による改正前の特許法101条2号(以下「平成14年改正前特許法101条2号」という。)により,いずれも,本件特許権の間接侵害行為に当たるところ,①住友電機工業株式会社(以下「住友電工」という。)及び日本電気株式会社(以下「NEC」という。)は,被告製品又はこれを内蔵し 号」という。)により,いずれも,本件特許権の間接侵害行為に当たるところ,①住友電機工業株式会社(以下「住友電工」という。)及び日本電気株式会社(以下「NEC」という。)は,被告製品又はこれを内蔵したADSLモデムを輸入し,被告製品を内蔵したADSLモデムを東日本電信電話株式会社(以下「NTT東日本」という。)及び西日本電信電話株式会社(以下「NTT西日本」といい,NTT東日本とNTT西日本を併せて「NTT」又は「NTT東西地域会社」という。)へ譲渡しており,住友電工及びNECは,上記各行為について,本件特許権の間接侵害による不法行為責任を負うが,被告らには,上記各行為について,上記各社と共同不法行為(民法719条1項又は2項)が成立すること(主位的主張),②被告らによる,被告製品又はこれを内蔵したADSLモデムの譲渡行為は,日本国内で行われていると評価できること(予備的主張1),③被告らは,日本国内において,被告製品又はこれを内蔵したADSLモデムの譲渡の申出をしていること(予備的主張2),④被告らは,被告製品の心臓部であるウエハを,三菱電機株式会社(以下「三- 4 -菱電機」という。)に日本国内で製造させているが,三菱電機の日本国内での上記行為は,被告らによるものと評価できること(予備的主張3)を主張して,特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求及び不当利得返還請求,並びに被告CCIについては,訴状送達の日の翌日である平成16年9月1日から,被告CJについては,訴状送達の日の翌日である同年8月3日から民法所定年5分の割合による遅延損害金の請求をしている事案である。 争いのない事実等(証拠によって認定した事実は末尾に当該証拠番号を表記した。)( )当事者 ア原告は,通信機器・装置・システムの製造及び販売などを業とする株 の請求をしている事案である。 争いのない事実等(証拠によって認定した事実は末尾に当該証拠番号を表記した。)( )当事者 ア原告は,通信機器・装置・システムの製造及び販売などを業とする株式会社である。 イ被告CCIは,米国デラウェア州法に基づき設立されたカルフォルニア州所在の株式会社であり,ADSLモデム用チップセットなどの製造販売を業としている(弁論の全趣旨)。 被告CJは,日本における被告CCIの100パーセント出資による株式会社である。被告CJの商業登記簿の「目的」の欄には,「通信用半導体の販売代理店業務,通信用半導体の市場開拓及び市場調査」等の記載がされている。 ( )原告の特許権 原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,特許請求の範囲請求項1の特許発明を「本件発明」という。また,本件特許権に係る特許を「本件特許」といい,その明細書を「本件明細書」と,図面を「本件図面」という。)の2分の1の共有持分を有している。 特許番号第2012849号発明の名称データ伝送方式出願年月日昭和58年8月30日- 5 -出願番号特願昭58-158221登録年月日平成8年2月2日特許請求の範囲「送信装置から回線の歪度合を測定するための歪測定信号として4相位相変調方式により変調されてなる4値ランダム符号を特定の伝送速度で送信し,受信装置は,該送信装置から受信した上記歪測定信号の振幅,あるいは位相の誤差を演算して回線の歪度合を測定し,測定結果に基づき,上記特定の伝送速度よりも高速な伝送速度を含む複数の伝送速度の中から送信装置との間の伝送速度を決定するとともに,伝送速度を該送信装置に通知し,送信装置は通知された伝送速度でデータ伝送を行う事を特徴とするデータ伝送方式」( )構成要件の分説 本件発明を構成 ら送信装置との間の伝送速度を決定するとともに,伝送速度を該送信装置に通知し,送信装置は通知された伝送速度でデータ伝送を行う事を特徴とするデータ伝送方式」( )構成要件の分説 本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりとなる。 A送信装置から回線の歪度合を測定するための歪測定信号として4相位相変調方式により変調されてなる4値ランダム符号を特定の伝送速度で送信し,B受信装置は,該送信装置から受信した上記歪測定信号の振幅,あるいは位相の誤差を演算して回線の歪度合を測定し,C測定結果に基づき,上記特定の伝送速度よりも高速な伝送速度を含む複数の伝送速度の中から送信装置との間の伝送速度を決定するとともに,伝送速度を該送信装置に通知し,D送信装置は通知された伝送速度でデータ伝送を行うE事を特徴とするデータ伝送方式( )被告らの行為 被告CCIは,被告製品を製造,販売している(被告CCIが,被告製品を,日本国内において,製造,販売していると評価できるかについては争い- 6 -がある。)。 被告CJは,少なくとも,被告製品の技術発表会や記者会見を開催したり,被告製品についての顧客からの問い合わせに対し,製品情報を提供するなどして,被告CCIの被告製品の販売活動をサポートする等の活動をしている(被告CJのサポートする被告CCIの販売活動が日本国内で行われていると評価できるかについては,上記のとおり争いがある。また,被告CCIの被告製品の販売行為に対する被告CJの関与の態様及び程度についても争いがある。)。 被告製品は,日本におけるADSL通信に利用されているモデム用のチップセットであるが,被告製品が組み込まれたモデムを利用して実際に行われている伝送方式(以下「被告方法」という。)の具体的内容については争いがある。 ( ) DSL通信に利用されているモデム用のチップセットであるが,被告製品が組み込まれたモデムを利用して実際に行われている伝送方式(以下「被告方法」という。)の具体的内容については争いがある。 ( )本件特許の出願経過(甲1,38,乙32ないし36,37の1及び2, 51)本件特許は,昭和58年8月30日に特許出願され(以下「本件出願」といい,本件出願の願書に添付した明細書(乙36)を「本件出願当初明細書」という。),平成3年10月17日,進歩性欠如を理由とする拒絶理由通知(以下「本件拒絶理由通知」という。)が発せられ(乙32),これに対し,原告は,平成4年1月18日,意見書(乙33,以下「本件意見書」という。)及び補正書(乙37の1,以下「本件補正書1」といい,本件補正書1に係る補正を「本件補正1」という。)を提出したが,同年3月25日,拒絶査定(乙34)がされた。そこで,原告は,同年5月21日,拒絶査定不服審判を請求し,同年6月22日,審判請求理由補充書(乙35,以下「本件審判請求理由補充書」という。)及び補正書(乙37の2,以下「本件補正書2」といい,本件補正書2に係る補正を「本件補正2」という。)を提出したところ,上記審判において,上記拒絶査定は取り消され,- 7 -本件出願について,特許査定がされ,平成8年2月2日,本件特許について設定の登録がされた。その後,原告は,平成16年7月6日,訂正審判請求(以下「本件訂正審判請求」といい,その書面(乙51)を「本件訂正審判請求書」と,その審判を「本件訂正審判」という。)をし,同年9月21日,本件訂正審判請求に係る請求を認める旨の審決(以下「本件訂正審決」という。)(甲38)がされた。 争点 ( )被告CCIに対する訴えの国際裁判管轄の有無 ( )被告方法の構成 ( 日,本件訂正審判請求に係る請求を認める旨の審決(以下「本件訂正審決」という。)(甲38)がされた。 争点 ( )被告CCIに対する訴えの国際裁判管轄の有無 ( )被告方法の構成 ( )被告方法は,本件発明の技術的範囲に含まれるか ア被告方法において,伝送速度の決定のために,「歪度合を測定するための歪測定信号」を用いているか(構成要件A,B,Cの充足性)イ被告方法において,仮に歪測定信号を送信しているとしても,これを「特定の伝送速度で」送信しているといえるか(構成要件Aの充足性)ウ被告方法において,仮に歪測定信号を送信しているとしても,歪測定信号とは別にイコライザのトレーニング信号をも送信しているという点において,構成要件Aを充足するかエ被告方法において,仮に歪測定信号を送信しているとしても,被告方法は,構成要件Aの「歪測定信号として4相位相変調方式により変調されてなる・・・符号を・・・送信し」の要件を充足するかオ被告方法において,仮に歪測定信号を送信し,同信号を符号と捉えることができるとしても,同符号は「4値」の符号といえるか(構成要件Aの充足性)カ被告方法において,仮に歪測定信号を送信し,これを4値の符号と捉えることができるとしても,その場合,同符号は「4値ランダム符号」といえるか(構成要件Aの充足性)- 8 -キ被告方法は,構成要件Bの「上記歪測定信号の振幅,あるいは位相の誤差を演算して回線の歪度合を測定し」の要件を充足するかク被告方法は,構成要件Cの「測定結果に基づき・・・伝送速度を決定する」の要件を充足するかケ被告方法においては,伝送速度が歪測定信号よりも高速の伝送速度を含む範囲の中から決定されているといえるか(構成要件Cの充足性)コ被告方法は,構成要件Dを充足するかサA 」の要件を充足するかケ被告方法においては,伝送速度が歪測定信号よりも高速の伝送速度を含む範囲の中から決定されているといえるか(構成要件Cの充足性)コ被告方法は,構成要件Dを充足するかサADSLは,本件出願当初明細書に開示された技術思想の範囲外として,本件発明の技術的範囲に含まれないといえるか( )被告方法の実施は,複数の主体によってされているとしても,被告らに 本件特許権に対する間接侵害は成立するか( )間接侵害の成否 ア被告製品は,直接侵害行為の使用に用いる物を製造するために用いる物であるとして,特許法101条3号及び同条4号並びに平成14年改正前特許法101条2号は適用されないかイ被告製品は,特許法101条3号の「その方法の使用にのみ用いる物」,平成14年改正前特許法101条2号の「その発明の実施にのみ使用する物」ということができるか( )本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものか ( )原告の請求は権利濫用として許されないものか ( )不法行為の成否 ( )損害額 争点に対する当事者の主張( )争点( )(被告CCIに対する訴えの国際裁判管轄の有無)について (原告)ア国際裁判管轄の有無の判断基準- 9 -被告が我が国に住所を有しない場合であっても,我が国と法的関連を有する事件については,我が国の国際裁判管轄を肯定すべき場合のあることは,否定し得ないところであるが,どのような場合に我が国の国際裁判管轄を肯定すべきかについては,国際的に承認された一般的な準則が存在せず,国際的慣習法の成熟も十分ではないため,当事者の公平や裁判の適正・迅速の理念により条理に従って決定するのが相当である。そして,我が国の民事訴訟法(以下「民訴法」という。)の規定する裁判籍のい せず,国際的慣習法の成熟も十分ではないため,当事者の公平や裁判の適正・迅速の理念により条理に従って決定するのが相当である。そして,我が国の民事訴訟法(以下「民訴法」という。)の規定する裁判籍のいずれかが我が国内にあるときは,原則として,我が国の裁判所に提起された訴訟事件につき,被告を我が国の裁判権に服させるのが相当であるが,我が国で裁判を行うことが当事者間の公平,裁判の適正・迅速を期するという理念に反する特段の事情があると認められる場合にのみ,我が国の国際裁判管轄を否定すべきである。 原告の被告らに対する損害賠償請求の法律構成は,以下の4つであり,その詳細は,後記()で主張するとおりであるから,被告CCIに対す る訴えは,いずれの主張に係るものについても,我が国の国際裁判管轄が認められるべきである。 (ア)主位的主張1及び2住友電工及びNECが被告製品を輸入したこと,及び同社が被告製品を内蔵したモデムをNTTへ譲渡したことについて,被告らには,住友電工及びNECと民法719条1項の共同不法行(主位的主張1)又は同条2項の共同不法行為(主位的主張2)が成立する。 (イ)予備的主張1被告らは,被告製品を,日本国内で譲渡していると評価できるから,被告らには,本件特許権侵害の不法行為が成立する。 (ウ)予備的主張2被告らは,日本国内で,被告製品の譲渡の申出をしているから,被- 10 -告らには,本件特許権侵害の不法行為が成立する。 被告らは,住友電工及びNECの両社に対し,平成11年3月ころから同年6月にかけて,サンプル,プレ製品,製品版の評価ボード(製品を販売するに当たって,販売先に,製品仕様の評価をしてもらうために提供するもの)を提供し,これらの日本企業が製品仕様を確認することにより,被告製品の将来の安定供給体制を確立 製品版の評価ボード(製品を販売するに当たって,販売先に,製品仕様の評価をしてもらうために提供するもの)を提供し,これらの日本企業が製品仕様を確認することにより,被告製品の将来の安定供給体制を確立したのである。すなわち,当該評価ボードは,決定的な購入動機を与えたものであるところ,この評価ボードは,被告らの社員が日本企業に自ら持参するか,あるいは,輸送に使用する運送会社を自らの手足として使用して,被告らが顧客となる日本企業に届けているのであるから,評価ボードの提供はすべて日本において被告らによって行われているものといえる。 (エ)予備的主張3被告らは,三菱電機を下請けとして,日本国内において,被告製品に利用されるウエハを生産させており,同行為は,被告らによる生産行為と評価できるから,被告らに,本件特許権侵害の不法行為が成立する。 イ本件における検討(ア)民訴法4条1項,同条5項に依拠した管轄被告CJは,我が国の法人格を取得しているが,以下に挙げる点からすれば,その実体は,被告CCIの日本における営業所にすぎない。 a被告CJは,被告CCIの100パーセント出資による子会社である。 b被告CJは,被告CCIの活動を補助するための会社であって,被告CCIと関係のない独立の経済活動を行う会社ではない。 c被告CJの営業所の賃料が,被告らが単なる営業所であることを認- 11 -めている中国や台湾などの「営業所」と同様に,被告CCIによって支払われている。 d被告CCI自身,被告CJを「」とし,被告CCJapanSalesOfficeTokyoIによるプレスリリースでは,被告CJが「営業所」(「」)として紹介されている。 Office(イ)民訴法7条ただし書に依拠した管轄被告CJには,我が国の国際裁判管轄が認めら iceTokyoIによるプレスリリースでは,被告CJが「営業所」(「」)として紹介されている。 Office(イ)民訴法7条ただし書に依拠した管轄被告CJには,我が国の国際裁判管轄が認められ,被告CJと共同不法行為責任を負う被告CCIにも,民訴法7条ただし書により我が国の国際裁判管轄が認められる。 (ウ)国際裁判管轄を否定すべき特段の事情がないこと本訴の争点は,日本特許に対する侵害行為の有無であり,その証拠は日本に集中している。また,被告CCIは,上記のとおり,実質的な日本における営業所というべき被告CJを設立している上,日本のADSLモデム用チップセット市場において5割強に届くシェアを有し,売上げの80パーセントが日本市場向けであることからすれば,日本とは極めて密接な関係がある。 したがって,本件訴えについての裁判を我が国で行うことが,当事者間の公平,裁判の適正・迅速を期するという理念に反する特段の事情があるとは,到底認められない。 (被告CCI)ア不法行為に基づく管轄は認められないこと原告の被告CCIに対する訴えについては,以下のとおり,いずれの観点からも,我が国の裁判所に管轄は認められない。 (ア)原告の主位的主張に係る訴えにおける管轄についてa被告らは,住友電工及びNECが被告製品を輸入することについて,意思の共同がなく,また,教唆や幇助もしていないから,被告- 12 -らに,住友電工及びNECの被告製品の輸入行為について,共同不法行為は成立しない。この点は,後記()で主張するとおりである。 b仮に,被告らに,住友電工及びNECと意思の共同があり,又は,両社に対する教唆・幇助があったとしても,被告CCIと住友電工及びNECとの契約はすべて日本国外で行われており,共謀に係る行為はすべて日本国外で行 らに,住友電工及びNECと意思の共同があり,又は,両社に対する教唆・幇助があったとしても,被告CCIと住友電工及びNECとの契約はすべて日本国外で行われており,共謀に係る行為はすべて日本国外で行われていること,教唆・幇助行為も日本国外で行われていること,民訴法5条9号の「不法行為があった地」とは,不法行為を構成する要件事実の生じた地をいうのであって,不法行為の共謀といった単なる準備行為が日本国内で行われただけでは管轄は認められないことから,被告らには,民訴法5条9号に基づく管轄は認められない。 (イ)原告の予備的主張1に係る訴えにおける管轄についてa被告CCIは,被告製品を日本国外で製造し,それを日本国外で販売しているにすぎない。顧客は,日本の国外で製造された被告製品を,被告CCIの指定する日本の国外の場所で受け取り,顧客が,輸送手段を手配した上で,日本の内外の自らの工場等への搬入を行っているのである。 すなわち,被告製品の販売は,被告CCIからその購入者に対し,当該購入者の使用する運送業者に引き渡して納品することにより行わpointれていたが,当該引渡しは,被告CCIの指定する製品所在地()にて行われた。この被告CCIの指定する製品所在地とは,oforigin被告CCIの下請けの被告製品製造業者の日本国外にある所在地であるか,米国カリフォルニア州フレモントの被告の本店所在地である。 被告CCIが,被告製品を顧客の利用する運送業者に引き渡した後に,顧客が同製品をどこへ移送するかについては,被告らは関与していない。 - 13 -NECが購入した被告製品は,そのすべてが米国のNEC子会社が購入しており,また,住友電工が購入した製品も,そのすべてが日本以外の国において引き渡されている。 b特許法は,特許権者が自らの発明を公 NECが購入した被告製品は,そのすべてが米国のNEC子会社が購入しており,また,住友電工が購入した製品も,そのすべてが日本以外の国において引き渡されている。 b特許法は,特許権者が自らの発明を公開する代わりに,その代償として特許法が規定する範囲でその発明について日本国内での独占権を与え,発明を利用する者と特許権者との利益のバランスを図ることにより産業の発展を促進することを目的とし,かかる趣旨のもと,特許権の及ぶ範囲を規定しているところ,特許権の及ぶ範囲として規定されている「輸入」の実行行為を何らしていない者を,民法上の不法行為で捕捉し,実質的にその者を特許権侵害者とすることは,特許権の及ぶ範囲を特許法の趣旨に反して実質的に拡大するものであり,特許権者の利益を過大に保護するものに他ならない。 したがって,輸入行為を何ら行っていない被告CCIは,特許法の趣旨やその想定している保護範囲の点からも,共同不法行為者に該当するとすべきではない。 (ウ)原告の予備的主張2に係る訴えにおける管轄について被告らが,日本国内で評価ボードを住友電工及びNECに販売したことはない。 (エ)原告の予備的主張3に係る訴えのおける管轄について被告CCIが,三菱電機をして,被告製品を日本国内で製造させたと評価するに足る事情は一切なく,上記のとおり,被告製品は,すべて日本国外で製造している。 イ民訴法4条1項,同条5項に依拠した管轄は認められないこと被告CJは,日本において法人格を有しており,実質的にも被告CCIの営業所として活動しているのではなく,一法人として,独立して企業活動をしているものである。このことは,被告CCIが中国や台湾に設置し- 14 -ている営業所とは異なり,被告CJが独立して法人格を備えていることからも明らかである。 ウ民訴法7条た 立して企業活動をしているものである。このことは,被告CCIが中国や台湾に設置し- 14 -ている営業所とは異なり,被告CJが独立して法人格を備えていることからも明らかである。 ウ民訴法7条ただし書に依拠した管轄は認められないこと民訴法7条ただし書による管轄は,相被告が日本国外の者である場合には原則として認められない。 この点,東京地裁昭和62年7月28日判決(乙29)は,「民事訴訟法21条は,併合請求の関連裁判籍を規定するが,国内土地管轄の場合と異なり,国際裁判管轄に関して,主観的併合を理由に同条の法理に基づく併合請求の関連裁判籍を管轄原因として認めることは,原則として許されない」としつつ,「固有必要的共同訴訟の場合その他特にわが国裁判所の裁判管轄権を認めることが当事者間の公平,裁判の適正・迅速を期するという理念に合致する特段の事情が存する場合には,わが国裁判所の裁判管轄権を認めることが条理に適う」と判示しているところ,本件は必要的共同訴訟の場合でもない。 なお,本件では,日本において管轄を有する住友電気工業,NECについてさえ訴えが提起されていないのであるから,被告CCIについてのみ日本において管轄を認めることが当事者間の公平,裁判の適正・迅速という理念に適うこともない。 したがって,本件訴訟について,被告CCIに,民訴法7条ただし書に依拠した国際裁判管轄は認められない。 エ国際裁判管轄を否定すべき特段の事情の存在我が国の民訴法の規定する裁判籍のいずれかが我が国内にあるときであっても,我が国で裁判を行うことが当事者間の公平,裁判の適正・迅速を期するという理念に反する特段の事情があると認められる場合には,我が国の国際裁判管轄を否定すべきである(最高裁平成5年(オ)第1660号同9年11月11日第三小法廷判決・民集51巻10号 正・迅速を期するという理念に反する特段の事情があると認められる場合には,我が国の国際裁判管轄を否定すべきである(最高裁平成5年(オ)第1660号同9年11月11日第三小法廷判決・民集51巻10号4055頁)。 - 15 -被告CJは,被告CCIとは全く別の法人であり,独立の活動を日本において行っているものである。一方,被告CCIは,子会社として日本に被告CJを有しているとはいえ,独自では全く日本において経営基盤を有しておらず,また,被告製品に関する証拠等も,被告CCIの本店所在地である米国に集中している。 以上のようなことから,被告CCIについて日本における裁判管轄を認め,日本において応訴を強いることは,当事者間の公平,裁判の適正・迅速を期するという理念に反するものである。 ( )争点( )(被告方法の構成)について (原告)被告方法の構成は,別紙被告方法説明書1(原告主張)のとおりである。 (被告ら)被告方法の構成は,別紙被告方法説明書2(被告ら主張)のとおりである。 ( )争点( )ア(「歪度合を測定するための歪測定信号」を用いているか- 構成要件A,B,Cの充足性)について(原告)ア「歪度合を測定するための歪測定信号」の意味本件発明における「歪度合を測定するための歪測定信号」とは,回線の歪に限らず,SN比を含むあらゆる不特定の伝送特性の劣化を生じさせる要因を測定する信号を意味する。理由は以下のとおりである。 (ア)本件発明における「歪測定信号」は,構成要件Bにあるとおり,受信装置において,その「振幅,あるいは位相の誤差を演算」して「回線の歪度合」を測定するものであり,この「回線の歪度合」の測定では,当然,ノイズを含めて,あらゆる不特定の伝送特性の劣化を生じさせる要因を包含した形で測定する。 (イ)技術 の誤差を演算」して「回線の歪度合」を測定するものであり,この「回線の歪度合」の測定では,当然,ノイズを含めて,あらゆる不特定の伝送特性の劣化を生じさせる要因を包含した形で測定する。 (イ)技術的にみて,受信側において,ノイズと回線の歪を区別して,ノ- 16 -イズ又は回線の歪にのみ起因する信号点のズレを判別することは不可能であり,両者に起因する信号点のズレをまとめて判定するのが常識であって,本件明細書でもそのように記載されている。 (ウ)当技術分野では,SN比と歪を区別しないで表現していることも多く,SN比測定と歪測定とは厳密に区別されていない。当業者であれば,回線の歪を測定するとの記載があれば,当然のことながら,その発生原因を区別することなく,受信側において判定される信号点のズレを意味するものと理解する。 (エ)被告方法が本件発明の技術的範囲に属するかについての,特許庁における平成15年7月4日付判定(甲11の3,以下「本件判定」という。)では,構成要件Bにおける「回線の歪度合」は,振幅又は位相の誤差を,これらの誤差の発生原因を区別せずに演算して測定されるものを包含すること,本件発明における「歪度合」と被告方法における「SN比」とは実質的に同じものであることを認定している。 イ対比(ア)被告方法において,宅側CPEモデムから局側COモデムへ送信されるR-MEDLEYは,回線の複数の劣化要因が重畳された信号であり,同信号の振幅又は位相の誤差を測定することにより回線の歪度合を測定するのであるから,R-MEDLEYは,本件発明の「歪度合を測定するための歪測定信号」に当たり,したがって,被告方法においては,「歪度合を測定するための歪測定信号」を用いているといえる。 (イ)これに対し,被告は,R-MEDLEYは,SN比を測定 度合を測定するための歪測定信号」に当たり,したがって,被告方法においては,「歪度合を測定するための歪測定信号」を用いているといえる。 (イ)これに対し,被告は,R-MEDLEYは,SN比を測定するための信号である旨主張する。 しかし,まず,「歪度合を測定するための歪測定信号」の「ための」とは,目的を意味するのではなく,機能を有するという意味であ- 17 -るから,仮に,R-MEDLEYがSN比を測定するための信号であるとしても,「歪度合を測定するための歪測定信号」ということができる。 また,そもそも,R-MEDLEYは,SN比のみを測定しているわけではなく,被告が主張するところの歪も測定している。すなわち,ADSLを使用してデータ伝送する場合,信号は,NTT等の電話局の局内装置や電柱,電線,更には家庭のパソコンの装置等,多くの装置や電線のつなぎ目等を経由して伝送されるが,この場合において,伝送特性を劣化させる要因の主なものには,回線上に設けられたブリッジタップ(電線の分岐装置)での反射,手ひねりによる接続(ハンダを使用せず,線を手でひねるだけで接続すること)点での線路抵抗の変化,線径や絶縁材料の異なる異種心線接続に伴う線路伝送特性の変化,雷や放送波などによる誘導雑音,他の伝送方式からの漏話雑音やアナログ電話回線からのインパルス雑音(ADSLによるデータ通信と従来の固定電話の通話とは帯域が異なるため平行して同時に利用できるが,その時の固定電話からくる影響による雑音)などがあり,受信側では,送信信号にこれらの要因に基づくすべての劣化の影響が重畳された信号を受信することになる。そして,被告方法においても,イコライザやサイクリックプリフィックスによって,ノイズ以外の劣化要因を完全に除去することはできない以上,送信される信号は,上 響が重畳された信号を受信することになる。そして,被告方法においても,イコライザやサイクリックプリフィックスによって,ノイズ以外の劣化要因を完全に除去することはできない以上,送信される信号は,上記の多様な劣化要因の影響を受けることになる。したがって,R-MEDLEYがSN比のみを測定しているという被告の主張は事実に反する。 (被告ら)ア「歪度合を測定するための歪測定信号」の意味本件発明における「歪度合を測定するための歪測定信号」とは,回線- 18 -の歪を測定するための信号を意味し,SN比を測定するための信号を含まない。理由は以下のとおりである。 (ア)「ノイズ」と「歪」とは明確に異なるものである。 すなわち,ノイズとは一般的にはランダムな偶発現象で,その振幅も位相もランダムなものとなり,そこに再現性はない。「同じようなノイズ」というものはあっても,「同一のノイズ」というものは存在しないのである。その発生原因も,系の内部で発生するもの(熱運動のゆらぎにより発生する熱雑音等)と系の外部から混入するもの(他の電波による干渉等)とがあり,ノイズ対策としてはそのようなノイズ発生の原因を防止するために何らかの新たな行為を行う必要がある。 これに対して,「歪」とは,伝送チャネルの周波数に対する不均一な損失及び位相があるために生じるもので,イコライザーによって補正されるものなのである。そして,「歪」とは,回路や伝送系の応答特性のために起こる波形の乱れで,波形の崩れ方に再現性が認められる。すなわち,こういう波形を入力すれば,元の波形はこのように崩れるということが記述できるのであって,同一条件下における同一の回路では「同一の歪」が発生するのである。歪の発生原因は,回路構造そのものに起因するので,その対策としては,新たな行為を行うというよりも, ということが記述できるのであって,同一条件下における同一の回路では「同一の歪」が発生するのである。歪の発生原因は,回路構造そのものに起因するので,その対策としては,新たな行為を行うというよりも,回路構造そのものを見直すことが中心となる。 そして,当業者においても,ノイズと歪を区別して使用するのが通常であり,両者を共通のものとして使用することはない。また,電子情報通信における用語の定義では,ノイズは歪に含まれない。 (イ)本件発明で使用される周波数の使用帯域は,300Hzから3.4kHzと非常に狭い範囲に限られており,本件発明は,高周波雑音に対して雑音耐力が高い。すなわち,本件発明では,3.4kHzよりも高い周波数帯域において発生する雑音に対しては,ローパスフィルタ(低- 19 -周波のみを通し,高周波をカットするフィルタ)を使用することによって,そのほとんどを除去できることになるのである。しかも,本件発明では,トレーニング信号(この中に品質測定用信号パターンが含まれ,これが本件発明の歪測定信号に相当する。)として,データ伝送用に規定された勧告V29の4800bpsの信号伝送速度を使用しているが,勧告V29の4800bpsの信号伝送速度は,本件明細書にも記載してあるように雑音耐力が強いことで知られており,雑音の影響を受けにくくなっている。このように本件発明では,低周波帯域においてノイズの影響を受け難い勧告V29(国際電気通信連合において採用された,ポイントツウポイント4線式専用電話形回線用に標準化された9600bit/sモデムに関する勧告(乙7),以下「勧告V29」という。)の4800bpsという信号伝送速度を使用することで,品質測定用信号を極めてノイズの影響を受けにくいものとしているのである。 したがって,本件発明によるトレー 告(乙7),以下「勧告V29」という。)の4800bpsという信号伝送速度を使用することで,品質測定用信号を極めてノイズの影響を受けにくいものとしているのである。 したがって,本件発明によるトレーニング信号(歪測定信号)では,ノイズ又はSN比を計測することはできないのである。そのため,本件明細書には,SN比については開示がないのである。 これに対して,歪については,本件発明ではシングルキャリア変調を行っており,また,イコライザも,アナログイコライザであるため,十分に歪を除去することができない。したがって,本件発明においては,信号は歪による影響を直接受けることになる。そのため,除去されなかった歪こそが本件発明においての信号劣化の主たる原因となっているのであり,伝送速度を決定しているのである。 この点,原告は,本件発明においても,ノイズが信号に全く影響していないとはいえないと主張するが,本件発明においては,ノイズ成分の存在が回線の品質判定に影響を与えるものではなく,ノイズは実質的には無視し得るのであるから,本件発明は,歪により信号の品質を判定し- 20 -ているというほかない。 (ウ)原告は,本件訂正審判請求書において,本件発明は「歪測定信号」による回線の歪度合の測定だけで最適伝送速度を決定できるのに対し,刊行物1では,歪測定の測定結果だけでは最適伝送速度を決定できず,ノイズ測定結果を組み合わせることによって初めて最適伝送速度を決定することができるとして,刊行物1との差異を力説している。したがって,「歪測定信号」が,歪以外の測定も含むとの原告の主張は,本件訂正審判における主張と整合しない。 (エ)原告は,本件判定では,歪度合とSNRとは実質的には同じであるとの判断がされた旨主張するが,本件判定において,被請求人である住友電工から提 の主張は,本件訂正審判における主張と整合しない。 (エ)原告は,本件判定では,歪度合とSNRとは実質的には同じであるとの判断がされた旨主張するが,本件判定において,被請求人である住友電工から提出された答弁書には,歪とノイズの根本的な差異についてはほとんど触れられておらず,そのため,本件判定は,歪とノイズとの違いを十分考慮することなく行われたのであり,その判断内容は誤りである。 イ対比(ア)被告方法では,ノイズ測定信号を用いて,SN比のみを測定して回線の品質を判断し,信号の伝送速度を決定しているから,本件発明の「歪度合を測定するための歪測定信号」を用いていない。 すなわち,被告方法が前提とするADSLでは,電話線が本来予定する音声通話の周波数帯域(300Hz~3.4kHz)よりはるかに高い周波数帯域(25kHz~1.1MHz)を用いるため,チャンネルインパルス応答が,FAXに比較して非常に短い時間しかなく,これにより,受信機側のイコライザによって回線の歪を除去することが容易となる。また,FAXモデムにおいて使用されているシングルキャリア変調とは全く異なるDMT変調を行うADSLにおいては,回線の歪は,サイクリックプリフィックスやアダプティブデジタル時間ドメインイコ- 21 -ライザを用いることで実際上ほぼ完全に除去できる。したがって,被告方法における通信速度決定のための回線の品質の判定では,回線の歪の影響は無視できるのである。 一方,ADSLでは,高い周波数帯域を用いるため,信号に対するノイズの影響が大きくなり,また,サーマルノイズ,AMラジオ,冷凍冷蔵庫等が大きなノイズ源となる。 このように,被告方法においては,SN比の測定によって,通信速度を決定しているのであり,回線の歪は,SN比の測定前に除去すべき攪乱要因にすぎない ,AMラジオ,冷凍冷蔵庫等が大きなノイズ源となる。 このように,被告方法においては,SN比の測定によって,通信速度を決定しているのであり,回線の歪は,SN比の測定前に除去すべき攪乱要因にすぎない。 これに対し,原告は,被告方法においても,回線の歪を完全に除去することはできない旨主張する。しかし,「歪度合を測定するための歪測定信号」の「ための」とは,文言上,目的を表しており,被告方法において,回線の歪を完全に除去できないとしても,R-MEDLEYの目的がSN比の測定であることに変わりはないから,回線の歪を完全に除去できないことによって,R-MEDLEYが「歪度合を測定するための歪測定信号」となるものではない。また,被告方法においては,歪についてはノイズに比べて無視し得る程度にまで低減できるのであるから,歪が完全に除去されていないとしても,R-MEDLEYが「歪度合を測定するための歪測定信号」となるものではない。 (イ)なお,仮に,本件発明の「歪度合を測定するための歪測定信号」を,回線の歪に起因する誤差とノイズに起因する誤差の混合量を測定するための信号と解したとしても,上記のとおり,「歪度合を測定するための歪測定信号」の「ための」とは,文言上,目的を表し,R-MEDLEYの測定の目的は,あくまでもSN比の測定であるから,R-MEDLEYは,「歪度合を測定するための歪測定信号」ということはできない。 したがって,本件発明の「歪度合を測定するための歪測定信号」を- 22 -上記のように解したとしても,被告方法において,本件発明の「歪度合を測定するための歪測定信号」を用いているということはできない。 ( )争点( )イ(仮に歪測定信号を送信しているとしても,「特定の伝送速度 で」送信しているといえるか-構成要件Aの充足性)について るための歪測定信号」を用いているということはできない。 ( )争点( )イ(仮に歪測定信号を送信しているとしても,「特定の伝送速度 で」送信しているといえるか-構成要件Aの充足性)について(原告)FBMモードでは,R-MEDLEYは通信を行う単位時間のみに送信されることになるが,この場合であっても,送信される際のR-MEDLEYの伝送速度は,別紙被告方法説明書1(原告主張)の3a記載の速度として特定されている。 (被告ら)仮に,R-MEDLEYが,本件発明の「歪測定信号」であるとしても,以下のとおり,R-MEDLEYの伝送速度は必ずしも一定ではないから,被告方法においては,歪測定信号を特定の伝送速度で送信しているということはできない。 アR-MEDLEYの速度は,FBMモードか,DBMモードかにより,異なる。 この点,原告は,上記モードの選択はシステム始動前に行われており,本件発明が実施される段階では,既に特定の伝送速度に決定されている旨主張するが,上記モードの選択はシステムの始動後に行われるのであるから,原告の上記主張は失当である。 イFBMモードでは,ISDN遠端漏話の場合にしか伝送が行われないから,同モードにおけるR-MEDLEYの伝送速度は,時間と共に小刻みに変動し,特定の速度ではない。すなわち,FBMモードの場合,R-MEDLEYが複数キャリアを通じて1秒間に送っている全ビット数の合計は,巨視的に見れば通常の約38パーセントになり,微視的に見れば,時間と共に変動することになり,R-MEDLEYの伝送速度- 23 -は1つの特定の伝送速度とはならないのである。 ( )争点( )ウ(仮に歪測定信号を送信しているとしても,歪測定信号とは 別にイコライザのトレーニング信号をも送信しているという点において,構 は1つの特定の伝送速度とはならないのである。 ( )争点( )ウ(仮に歪測定信号を送信しているとしても,歪測定信号とは 別にイコライザのトレーニング信号をも送信しているという点において,構成要件Aを充足するか)について(原告)アイコライザのトレーニング信号と回線の歪測定信号とを別個の信号として送信する場合にも本件発明の構成要件Aを充足するかについてイコライザをトレーニングするためのトレーニング信号と回線の歪度合を測定するための歪測定信号とを別個の信号として送信する場合にも,構成要件Aを充足する。理由は以下のとおりである。 (ア)本件発明は,イコライザのトレーニングと歪測定とを同時に行うか否か,また,これを1つの信号で行うか否かの点については,何ら限定していない。 (イ)本件明細書は,「変調信号線14は信号線bの立ち上がりにより,トレーニング信号及び歪測定信号を発生するべく動作する。変調装置14はトレーニング信号と歪測定信号に対応するデータパターンを発生する回路140を備えており」(6欄35ないし38行)と記載しており,トレーニング信号のデータパターンと歪測定信号のデータパターンとが異なるものであることを明記している。 (ウ)モデムを使用する通信であれば,速度決定に先立ち,当該モデムの自動イコライザを信号が受けやすい状態に調整するトレーニングを行い,その後に,速度決定を行うことは極めて当然のことにすぎない。このようにしなければ,速度決定を行うための信号を的確に受信することができず,速度決定を行うことができなくなるからである。したがって,トレーニング信号が先に送られ,その後に速度決定のための歪測定信号を送信することは必要であるとしても,それを続けて送るのか,ある程度- 24 -の時間をおいて送信するのかは,本件発明を たがって,トレーニング信号が先に送られ,その後に速度決定のための歪測定信号を送信することは必要であるとしても,それを続けて送るのか,ある程度- 24 -の時間をおいて送信するのかは,本件発明を実施する者が任意に設定すべき事項であり,このような事情が本件発明の技術的範囲を限定する要素となり得ないことは明らかである。 イ対比被告方法において,宅側CPEモデムから送信されるR-REVERB1及びR-REVERB2は,自動イコライザのトレーニング信号であり,本件発明の「歪測定信号」とは明確に区別される信号である。したがって,被告方法において,R-REVERB1及びR-REVERB2を送信していることをもって,被告方法が構成要件Aを充足しなくなるということはない。 (被告ら)アイコライザのトレーニング信号と回線の歪測定信号とを別個の信号として送信する場合にも本件発明の構成要件Aを充足するかについて構成要件Aは,イコライザのトレーニングのためのトレーニング信号を含めて,1つの歪測定用の信号を1回送信することを前提としている。 すなわち,構成要件Aを充足するというためには,1つの信号が歪測定信号とイコライザのトレーニング信号を兼ねている必要があり,トレーニング信号と歪測定信号とを別々に送信する場合は,構成要件Aを充足しない。理由は以下のとおりである。 (ア)イコライザのトレーニングは,歪測定をするのに必要であるところ,本件発明は,1つの信号を1回送信するだけで,イコライザのトレーニングと歪測定とを同時に行うという技術思想に基づいている。 (イ)本件明細書には,「歪度合が受信側において判定できるトレーニング信号をモデムMOD1から送信される」(4欄50行ないし5欄1行),「上記したトレーニング信号の内,回線の歪等の品質測定用の信号パタ 本件明細書には,「歪度合が受信側において判定できるトレーニング信号をモデムMOD1から送信される」(4欄50行ないし5欄1行),「上記したトレーニング信号の内,回線の歪等の品質測定用の信号パターンは,送信する画像信号の全ての信号パターンが現れる- 25 -様,ランダムパターンである事が望ましい。」(5欄10ないし14行),「以上説明した様に本発明によれば,最適な伝送速度が歪測定用の信号を一つの特定の伝送速度で送信するだけで識別でき,データの伝送手順が簡略化でき,データを送信する迄の時間を短縮出来る。」(12欄4ないし7行)との記載があり,同記載からすれば,本件発明は,トレーニング信号と歪測定信号は1つの同じ信号であることを前提としている。 adatagenerating(ウ)本件特許の米国での対応特許の明細書では,“circuit 211 whichgeneratesthedatapatterncorrespondingtothedistortion”と記載され,データパターン()が単measurementsignalthedatapattern数形で表示されており,1つであることが分かり,また,トレーニンthedistortionグ信号と歪測定信号が同じものであるから,歪測定信号()だけを記載していることが分かる。 measurementsignal(エ)本件出願当初明細書には,「以上説明した様に本発明によれば,最適な伝送速度が歪測定用の信号を一つの特定の伝送速度で送信するだけで識別でき,画像信号の伝送手順が簡略化でき,画像信号を送信する迄の時間を短縮出来る」との記載,本件意見書には,「従って,本願発明では,1つの歪測定用の信号を送信するだけで,回線の歪度合が識別できるため,簡単な手 信号の伝送手順が簡略化でき,画像信号を送信する迄の時間を短縮出来る」との記載,本件意見書には,「従って,本願発明では,1つの歪測定用の信号を送信するだけで,回線の歪度合が識別できるため,簡単な手順で最高速度の伝送速度を決定することができます」との記載,本件審判請求理由補充書には,「このような構成により,本願発明では伝送回線に最適な伝送速度を,歪測定信号を一度送出するだけで,容易に識別することが可能となる。」との記載があり,原告は,出願経過においては,歪測定用の信号は1個だけでよいこと,すなわち,送信される信号は,イコライザをトレーニングする信号も含めて,全部で1個だけでよいことを,本件発明の特徴として強調している。 - 26 -したがって,原告が,歪測定用の信号として,歪測定信号とは別に,イコライザのトレーニング信号を送信する場合も,構成要件Aに含まれると主張することは,上記出願経過に照らし,許されない。 イ対比R-MEDLEYは,前記( )のとおり,SN比の測定のための信号で あり,歪測定信号ではないが,仮に,R-MEDLEYが歪測定信号であるとしても,被告方法においては,1つの「回線の歪度合を測定するための歪測定信号」を1回送信しているとはいえない。すなわち,被告方法においては,R-MEDLEYによって回線の歪を測定する前に,イコライザのトレーニング信号として,R-REVERB1とR-REVERB2という少なくとも2つの信号を送信しているが,このR-REVERB1及びR-REVERB2も,R-MEDLEYによる歪測定を準備するための信号であり,歪測定用の信号であるから,被告方法においては,歪測定用の信号を複数回送信しているのである。 したがって,被告方法は,本件発明の構成要件Aを充足しない。 ( )争点( )エ(被告方 ための信号であり,歪測定用の信号であるから,被告方法においては,歪測定用の信号を複数回送信しているのである。 したがって,被告方法は,本件発明の構成要件Aを充足しない。 ( )争点( )エ(被告方法は,構成要件Aの「歪測定信号として4相位相変 調方式により変調されてなる・・・符号を・・・送信し」の要件を充足するか)について(原告)ア被告は,本件発明では,「歪測定信号」と「4相位相変調方式により変調されてなる符号」とが等式で結ばれる関係が成り立つことが必要であるが,歪測定信号であるR-MEDLEYは「4相位相変調方式により変調されてなる符号」ではないから,被告方法は構成要件Aを充足しない旨主張する。 しかし,「信号」とはある情報を受け手に届けるためのものであり,そこで送信される情報が「符号」であり,本件発明でいえば,送信される- 27 -「情報」が「4相位相変調方式により変調されてなる符号」であり,「歪測定信号」はそのような符号を乗せて「特定の伝送速度で送信」して相手に届けるものである。本件発明において,「歪測定信号」に求められる機能は,その成分である「符号」という情報を乗せて受け手に届けること及びそのような情報の受け手において,当該情報を誤りなく取り出せ,それを基に演算することで回線の歪を測定できるということであるから,本件発明では,そのような「歪測定信号として」,情報としての「4相位相変調方式により変調されてなる4値ランダム符号」を,送信していれば足りるのである。 このように,符号と信号とは必ずしも同一の概念ではないから,両者は等式で結ばれるとする被告の主張は,失当である。 そして,ADSL送信におけるR-MEDLEYの成分である各サブキャリアは,4相位相変調方式により変調されてなる符号が乗った正弦波として理解される は等式で結ばれるとする被告の主張は,失当である。 そして,ADSL送信におけるR-MEDLEYの成分である各サブキャリアは,4相位相変調方式により変調されてなる符号が乗った正弦波として理解されるのであるから,これは「4相位相変調方式により変調されてなる符号」に他ならない。 イそして,歪測定信号に当たるR-MEDLEYは,各サブチャンネル毎に変調され,各サブチャンネル毎の4QAM変調成分を含んでいるのであるから,被告方法において,「歪測定信号として4相位相変調方式により変調されてなる符号」を送信していることは明らかである。 (被告ら)ア仮に,R-MEDLEYが歪測定信号に当たるとしても,まず,「歪測定信号として」という文言,及び訂正審判では新規事項は追加できないことから,構成要件Aにおいては,歪測定信号全体が,4相位相変調方式により変調されてなる「符号」であるという関係,すなわち,歪測定信号全体を符号として捉えたとき,「歪測定信号」と「4相位相変調方式により変調されてなる符号」とは等式で結ばれる関係に立つ必要がある。 - 28 -すなわち,原告は,本件訂正審判において,「歪測定信号を・・・送信し」を「歪測定信号として4相位相変調方式により変調してなる4値ランダム符号を・・・送信し」と訂正したところ,これが請求項の減縮として,許容される訂正といえるためには,「歪測定信号=4相位相変調方式により変調してなる4値ランダム符号」という関係が成り立つ必要があり,本件訂正審決が,上記訂正を認めたのは,「歪測定信号=4相位相変調方式により変調してなる4値ランダム符号」という関係が成り立つと判断したからである。 なお,本件明細書の実施例では,歪測定信号全体を符号として見た場合,4相位相変調方式により変調されてなる4値ランダム符号であるという関 4値ランダム符号」という関係が成り立つと判断したからである。 なお,本件明細書の実施例では,歪測定信号全体を符号として見た場合,4相位相変調方式により変調されてなる4値ランダム符号であるという関係が満たされている。 イところが,歪測定信号であるR-MEDLEYは,以下の理由から,「4相位相変調方式により変調されてなる符号」ということはできないから,被告方法は,構成要件Aを充足しない。 (ア)R-MEDLEYの変調方式は,マルチキャリア変調方式であるDMT変調方式であり,4相位相変調方式ではない。 DMTは,各サブチャンネルが相互に不可分に関連することによって,あくまでも全体として,ノイズに強い通信を実現する点に本質を有するから,各サブチャンネルを単独で論ずるのは適切でない。 (イ)R-MEDLEYは,サイクリックプリフィックスを有する広帯域の1つの信号であるから,「4相位相変調方式により変調してなる符号」ではない。 (ウ)仮に,R-MEDLEYをトーン毎に見ても,各サブチャンネル毎の処理において,4相位相変調方式は用いられていない。理由は以下のとおりである。 a確かに,DMTの各サブチャンネル毎の処理及び4相位相変調方式- 29 -とも,4QAMコンステレーション・エンコーディングを用いており,この点で,両者は類似する。しかしながら,マルチキャリアの1サブチャンネルにおけるコンステレーション・エンコーディングの処理は,本件発明にいう「変調方式」ではない。本件発明の「変調方式」とは,本件明細書の記載に照らし,伝送され,受信され,元の情報ビットを復元すべく復調がなされる物理的なアナログ電気信号を生成することを前提とする概念であり,マルチキャリアの1サブチャンネルにおけるコンステレーション・エンコーディングの処理を指すものではな 報ビットを復元すべく復調がなされる物理的なアナログ電気信号を生成することを前提とする概念であり,マルチキャリアの1サブチャンネルにおけるコンステレーション・エンコーディングの処理を指すものではない。 bDMTは,キャリア毎の時間領域信号を生成するのではなく,ビットのまとまりをIDFTの1つのステップにおいて1つのデジタル時間領域信号に変換するものである。また,DMTにおけるトーン毎の処理のすべては,デジタル値の操作を通じて行われる。 cR-MEDLEYシンボルの波形とQPSKシンボルの波形は,完全に異なる。 dR-MEDLEYの各サブチャンネル毎の処理は,シングルキャリアQAM変調方式とは,前提技術,位置付け,趣旨,目的などが,すべて異なる。 ( )争点( )オ(仮に歪測定信号を送信し,同信号を符号と捉えることがで きるとしても,同符号は「4値」の符号といえるか-構成要件Aの充足性)について(原告)被告らは,R-MEDLEYを符号として捉えた場合には,2の52乗値の符号となる旨主張するが,R-MEDLEYを符号と捉えることは誤りである。 マルチキャリアシステムでは,各サブキャリア毎(使用する複数の周波数毎)の歪を測定する必要があることから,R-MEDLEYとして,各サブ- 30 -キャリア毎に発生させた4値擬似ランダム符号を送信しているにすぎず,複数のサブキャリア毎の4値擬似ランダム符号を送信していることをもって,各トーンの「4値」を合算した数やその乗数を論ずるのは,明らかに技術常識に反した主張であって,このような用語を使用する例はない。この点について,被告らは,当初,4×トーンの個数(例えば,26個)の104値を主張し,その後,4のトーンの個数乗の値(例えば,26トーンの場合,4の26乗=2の52乗=4,500 用する例はない。この点について,被告らは,当初,4×トーンの個数(例えば,26個)の104値を主張し,その後,4のトーンの個数乗の値(例えば,26トーンの場合,4の26乗=2の52乗=4,500兆値)の信号と主張していることからも明らかなとおり,被告ら自身が自らの主張をよく理解できていないことが示されている。 (被告ら)仮に,R-MEDLEYを歪測定信号と解し,かつ,符号と捉えた場合,R-MEDLEYは,1シンボル間隔当たり52ビットの符号となるから,2の52乗値の符号となる。 したがって,R-MEDLEYを上記のように解した場合は,「4値」ということはできない。 ( )争点( )カ(被告方法において,仮に歪測定信号を送信し,これを4値 の符号と捉えることができるとしても,その場合,同符号は「4値ランダム符号」といえるか-構成要件Aの充足性)について(原告)被告自身がランダム符号であることを認めている1976年に採用されたITU(国際電気通信連合,以下「ITU」という。)の勧告V29には,系列()といわれるアルゴリズムによって発生されるラMmaximumlengthcodeンダムシーケンス発生器の構成が記載されているが,この勧告V29では,初期値を0101010の7ビットとしているのに対し,本件で問題となっているITU-TG992.1やG992.2では,初期値を111111の6ビットとしているという違いはあるものの,どちらも同じM系列のアル- 31 -ゴリズムを採用しているのであるから,勧告V29のアルゴリズムがランダム符号であるのと同様に,ITU-TG992.1やG992.2に対応している被告方法においても,当然,ランダム符号を使用している。 (被告ら)ITU勧告では,2値(0又は1)の擬似ランダムシーケン ム符号であるのと同様に,ITU-TG992.1やG992.2に対応している被告方法においても,当然,ランダム符号を使用している。 (被告ら)ITU勧告では,2値(0又は1)の擬似ランダムシーケンス(UPRD)発生器が1つ設けられているにすぎない。したがって,サブキャリア毎に4値擬似ランダム符号を発生させるわけではない。 また,G992.2の7.10.4によれば,UPRDのパターンは,b1,b2・・・b63の繰り返し,具体的には,111111000001000011000101001111010001110010010110111011001101010という長さ63のシーケンスの繰り返しとなるが,G992.2の11.10.8に記載されるように,1つのDMTシンボルに64ビットが用いられるため,1シンボルごとに開始位置が1つ遅れ,サブチャンネルの発生パターンは,たとえば,(b1,b2),(b2,b3),(b3,b4)・・・となる。すなわち,サブチャンネルについては,4値のパターンとしては,前のパターンの下位ビットが必ず次のパターンの上位ビットとなるパターンしか出てこない。ここで,(0,0)を0,(0,1)を1,(1,0)を2,(1,1)を3として,0,1,2,3の4値の符号の列として表記すると,サブチャンネルについては,前のパターンの下位ビットが必ず次のパターンの上位ビットとなるため,4値の符号としては,極めて強い規則性を有する。 例えば,3の次には,0や1が来ることはなく,2か3のいずれかが必ず来ることになる。このように,サブチャンネルについて見れば,4値の符号としては極めて強い規則性を有し,ランダムはおろか,擬似ランダムですらないものである。 ( )争点( )キ(被告方法は,構成要件Bの「上記歪測定信号の振幅,ある いは位 て見れば,4値の符号としては極めて強い規則性を有し,ランダムはおろか,擬似ランダムですらないものである。 ( )争点( )キ(被告方法は,構成要件Bの「上記歪測定信号の振幅,ある いは位相の誤差を演算して回線の歪度合を測定し」の要件を充足するか)に- 32 -ついて(原告)本件発明における「歪測定信号の振幅,あるいは,位相の誤差を演算して回線の歪度合を測定し」とは,IQ平面という横軸を実数軸(I),縦軸を虚数軸(Q)とする複素平面上に複数の信号点(符号)をマッピングし,その分布状態を演算することであるところ,被告方法では,R-MEDLEYに含まれるすべてのサブキャリア毎の受信された4QAMコンスタレーション(信号点)の複素数データを算出し,その分布状態を演算することで,すべてのサブキャリア毎のSNR(信号対雑音比)を評価しているのであるから,被告方法は,本件明細書に開示された方法によって,歪信号であるR-MEDLEYの「振幅,あるいは,位相の誤差を演算して回線の歪度合を測定し」ているのにほかならない。 したがって,被告方法は構成要件Bを充足する。 (被告ら)ア本件発明における「位相」とは,1つの周期的な正弦波に基づくものである。 ところで,R-MEDLEYは,DMT変調による複雑な数学的処理の結果,得られるものであり,その波形は,複数のQPSK信号の波形を単に結合する(重ね合わせる)ことによって得られるものではない。R-MEDLEYは,個々のキャリアを複雑な数学的処理によって結合して得られる複雑な波形にサイクリック・プリフィックスを加え,1つのユニットとして送信されるパターンを有する,広帯域の1つの信号である。 したがって,R-MEDLEYには,本件発明の「位相」は存在しない。 また,R-MEDLEYには,本件発明に ックスを加え,1つのユニットとして送信されるパターンを有する,広帯域の1つの信号である。 したがって,R-MEDLEYには,本件発明の「位相」は存在しない。 また,R-MEDLEYには,本件発明における「振幅」も存在しない。 - 33 -イ原告は,「歪測定信号の振幅,あるいは,位相の誤差を演算する」とは,IQ平面という横軸を実数軸(I),縦軸を虚数軸(Q)とする複素平面上に複数の信号点(符号)をマッピングし,その分布状態を演算するという数学的な処理であると主張する。 しかし,本件明細書の請求項は,「・・・受信した上記歪測定信号の振幅,あるいは位相の誤差を演算」と規定し,文言上,受信した歪測定信号に振幅,又は位相が観念できることを前提としており,原告の上記主張は,請求項の文言とかけ離れており,根拠がない。 ウしたがって,被告方法は,構成要件Bを充足しない。 ()争点( )ク(被告方法は,構成要件Cの「測定結果に基づき・・・伝送 速度を決定する」の要件を充足するか)について(原告)ア被告らは,歪度合に関する1つの測定結果以外に基づいて速度を定める方法は,本件発明の技術的範囲に属さない旨主張するが,本件発明は,歪測定信号を1回送信するだけで最適な通信速度を決定できるというものであり,1つの測定結果に基づいて最適の通信速度を定めるというものではないから,被告らの上記主張は失当である。 本件特許の出願経過や本件訴訟における原告の主張について,被告らが指摘する部分は,本件発明が歪測定信号を1回送信するだけで最適な通信速度を決定できるというものであり,従来技術である,歪測定用の信号を複数回送信するような発明とは異なるという趣旨であることは明らかであり,被告らの上記の点に係る主張は,原告の主張を曲解するものである。 イ被告らは, いうものであり,従来技術である,歪測定用の信号を複数回送信するような発明とは異なるという趣旨であることは明らかであり,被告らの上記の点に係る主張は,原告の主張を曲解するものである。 イ被告らは,被告方法においては,近端漏話と遠端漏話の2つのSN比の測定結果を用いて,最適の通信速度を決定している旨主張する。 被告らの上記主張において前提とするDBMモードは,ISDNの影響が強い単位時間には伝送量を少なくし,ISDNの影響が弱い単位時間に- 34 -は伝送量を多くするモードであるために,1回のR-MEDLEYに基づいて,それぞれの単位時間における伝送量を,それぞれSN比を用いて定めているにすぎない。 ウ被告らは,被告方法においては,通信速度は,SN比の他に,ノイズマージンの値に基づいて計算される旨主張するが,この主張は,ADSLでは速度を決定する要素として,SN比のほかに,ノイズマージンがあることを述べているにすぎず,ADSLにおいて,R-MEDLEY以外の歪測定信号を使用していることを主張するものではないので,非侵害の理由になっていない。 (被告ら)ア本件発明は,歪測定信号を用いた歪測定の結果だけで最適伝送速度を決定できるというものであり,歪度合に関する1つの測定結果以外に基づいて速度を定める方法は,本件発明の技術的範囲に属さない。 これに対して,原告は,本件発明は,歪測定信号を1回送信するだけで最適な通信速度を決定できるというものであり,1つの測定結果に基づいて最適の通信速度を定めるというものではない旨主張する。 しかし,原告は,本件訂正審判請求書において,本件発明と刊行物1との相違について,「本件発明によれば,歪測定信号を用いた歪測定の測定結果だけで最適伝送速度を決定できるのに対し,・・・刊行物における 最適伝送速度の決 正審判請求書において,本件発明と刊行物1との相違について,「本件発明によれば,歪測定信号を用いた歪測定の測定結果だけで最適伝送速度を決定できるのに対し,・・・刊行物における 最適伝送速度の決定には,歪測定のための信号とは別のノイズ測定のための信号を用いたノイズ測定結果の反映が必須である。また,歪測定手段に加えてノイズ測定手段を設けることが不可欠であるから,装置の構成が本件発明のものと比べてより複雑にならざるを得ない。」と主張し,また,刊行物2ないし4との相違について,「・・・本件発明の特徴ある歪測定信号を一つの特定の伝送速度で送信するだけで最適伝送速度を決定することについては,何らの開示も示唆もない。」と主張する。また,本訴にお- 35 -いて,刊行物1が,①歪度合についての測定結果に加え,②ハンドシェイク信号の解析から得られるノイズについての測定結果という2つの指標を基に,伝送速度を決定しているため,刊行物は,「歪度合に関する1つ の測定結果に基づいて伝送速度を決める」という本件発明の特徴を有していないと主張し,刊行物2及び3についても,複数の測定結果に基づいて伝送速度を決定することを理由に,本件発明の特徴を満たさないと主張する。このような原告の態度からすれば,原告は,1つの測定結果以外に基づいて速度を求める方法は,本件発明とは全く異なる技術であることを自認しているというべきであり,原告の上記主張は認められない。 イ被告方法においては,以下のとおり,1つのSN比の測定結果のみから伝送速度を決定していないから,被告方法は,本件発明の構成要件Cを充足しない。 (ア)被告方法においては,近端漏話と遠端漏話の2つのSN比の測定結果を用いて,ADSL信号の通信速度を決定している。 (イ)被告方法においては,ADSL信号の通信 明の構成要件Cを充足しない。 (ア)被告方法においては,近端漏話と遠端漏話の2つのSN比の測定結果を用いて,ADSL信号の通信速度を決定している。 (イ)被告方法においては,ADSL信号の通信速度は,SN比のほかに,ノイズマージン,料金などによって外部から指定される速度オプション等,数多くのファクターに基づいて計算される。 ()争点( )ケ(伝送速度が歪測定信号よりも高速の伝送速度を含む範囲の 中から決定されているといえるか-構成要件Cの充足性)について(原告)被告方法においては,評価結果に基づき宅用CPEモデムとの上りデータ通信速度を32(kbps)からX(kbps)までの範囲における32ビット刻みのデータ通信速度(32,64,96・・・)を表す4つのオプションの中から決定し,C-RATES2によって,上り方向に使用される通信速度に関する最終的決定を宅用CPEモデムに送信しているところ,上記のXは,G.992.2では,512(kbps)以上,G.992.1- 36 -及びANSIT1.413では,640(kbps)以上,G.992. 3及びG.992.5では,800(kbps)以上である。また,R-MEDLEYの伝送速度は,「69/68×4000(symbol/s)×2(bit)×n≒8.118×n(kbps)」であるから,「8.118×n(kbps)≦X(kbps)」の関係が成り立つ。 そして,局用COモデムは,このようなR-MEDLEYのデータ通信速度よりも高速なデータ通信速度を含む32ビット刻みの複数のデータ通信速度の中から宅用CPEモデムとの間のデータ通信速度を決定して,これを該宅用CPEモデムに通知しているので,被告方法は構成要件Cを充足する。 (被告ら)ADSLサービスにおいては,料金を安くする代わりに の中から宅用CPEモデムとの間のデータ通信速度を決定して,これを該宅用CPEモデムに通知しているので,被告方法は構成要件Cを充足する。 (被告ら)ADSLサービスにおいては,料金を安くする代わりに,上りの最高速度を128kbpsに限っているサービスがあり,この場合,原告の上記主張に従ってR-MEDLEYの速度を計算すると,n=26であるから,R-MEDLEYの通信速度は約211kbps(8.118×26≒11)となるが,通信速度の最高値は128kbpsであるから,原告の主張する上記不等式を明らかに満たさない。 したがって,被告方法は,上記の場合,構成要件Cを充足しない。 ()争点( )コ(構成要件Dの充足性)について (原告)本件発明における「伝送速度」とは,モデム間の通信速度であるから,パソコンの設定などにより,本件発明の「伝送速度」が変わることはない。被告方法においては,宅用CPEモデムは,通知された上り通信速度でデータ通信を行っており,被告方法は,構成要件Dを充足する。 (被告ら)コンピュータ及びソフトウェアからデータが送られてくる速度が遅くなれば,それに伴ってADSLのデータ通信速度も遅くなる。宅用CPEモデム- 37 -の潜在的な信号通信能力がいくら高くても,コンピュータ及びソフトウェアがデータをゆっくりとしか渡さないならば,「データの伝送速度」は上がらない(極端な話,コンピュータ及びソフトウェアがデータを宅用CPEモデムに全く渡さなければ,局用COモデムまでの「データの伝送速度」も0になる。)。この他にも,ADSLによるデータの通信速度は,インターネットのトラフィック等の要因によって影響される。このように,ADSLにおけるデータの通信速度は,ADSLの全体のシステムのすべての要素から影響を受け,あらかじめ によるデータの通信速度は,インターネットのトラフィック等の要因によって影響される。このように,ADSLにおけるデータの通信速度は,ADSLの全体のシステムのすべての要素から影響を受け,あらかじめモデム間で選択された速度で,実際に通信を行うことは不可能である。 また,そもそも,ADSLでは,送信側の利用者のコンピュータは,モデムから,速度指定の通知(命令)を受け取らないので,どのような速度でデータを送信するかを知らない。 したがって,被告方法は,構成要件Dを充足しない。 ()争点( )サ(ADSLは,本件出願当初明細書に開示された技術思想の 範囲外として,本件発明の技術的範囲に含まれないといえるか)について(原告)ア被告らは,本件出願当初明細書はファクシミリ伝送方式しか開示されていないと主張するが,本件出願当初明細書には,「尚,上記第4図の実施例においては,説明を簡単にするため・・・様説明したが,信号伝送速度に応じ,信号の復調方式が異なる場合,例えば9.6kbps,7.2kbps,4.8kbpsの変復調方式は通常CCITT勧告V.29に従う振幅位相変調方式であり,又4.8kbps,2.4kbpsの変復調方式は勧告V.27terに従うものである。こうした変復調方式が混在する場合には自動等価器135は各変復調方式に対応して設ける方がよい。」(26頁8行行~同頁下2行)と記載されているところ,ここに記載されているCCITT勧告V.29や勧告V.27terは一般的なモ- 38 -デムの信号処理方式に関する勧告であるから,本件出願当初明細書の上記記載からして,ファクシミリ用のモデムを使用することで実施可能な方法が,他のモデムを使用しても実施可能であることは自明な事項であり,したがって,本件出願当初明細書は,モデムが使われるその 細書の上記記載からして,ファクシミリ用のモデムを使用することで実施可能な方法が,他のモデムを使用しても実施可能であることは自明な事項であり,したがって,本件出願当初明細書は,モデムが使われるその他のデータの伝送方式についても開示しているといえる。 イまた,被告らは,本件出願当初明細書に開示があるのは,シングルキャリアに関するファックスの発明だけであるから,ADSLまで本件特許権の保護を及ぼすことはできない旨主張するが,本件出願当初明細書に開示があった技術思想は,最適な伝送速度を決定するという技術思想であり,この技術思想は,ファックスなどの特定のデータ伝送方式特有のものでなく,また,シングルキャリアの場合のみに適用される技術思想でもなく(本件出願当初明細書には,本件発明がシングルキャリアの場合だけに適用されるなどとは規定していない。),データ伝送一般に適用できる技術思想であることは当業者に自明である。 また,被告らは,ADSLにはファックスにはない新しい技術がある(例えば,音声通話の周波数帯域よりはるかに高い周波数帯域を使用することやサイクリックプリフィックス等)ことを強調しているが,特許権侵害製品に新たな技術を追加しても,製品の技術が特許請求の範囲に入る限り,当該製品が特許権侵害とならないわけではない。被告らが主張するような,ファックスとADSLが一般論としてどこが違うとか,新技術が追加されているというような点,出願当時のファックスの技術水準とADSLとの相違などという点は,本件とは無関係な事情である。 (被告ら)ア本件出願当初明細書の発明の詳細な説明に開示された技術思想は,昭和58年当時のファックス通信であり,ここでは,音声の周波数帯域を用いた通信が前提となっている。 - 39 -これに対し,ADSLは,電話線が本来予定す の発明の詳細な説明に開示された技術思想は,昭和58年当時のファックス通信であり,ここでは,音声の周波数帯域を用いた通信が前提となっている。 - 39 -これに対し,ADSLは,電話線が本来予定する音声通話の周波数帯域(300Hzないし3.4kHz)よりはるかに高い周波数帯域(25kHzないし1.1MHz)を用いる技術であり,昭和58年当時の常識を超える技術である。電話線は,音声通話を目的としているので,音声の周波数帯域においては,ノイズや減衰が少なくなるように設計されており,ADSLの使用する極めて高い周波数帯域における歪やノイズの特性を考えて設計されてはいない。また,ADSLで用いられる周波数は,高周波であるから距離が長くなると信号の減衰が極端に大きくなるため,ノイズの効果が最大データ伝送速度について与える影響として最大の考慮要素となる。本件出願当初明細書は,かかる条件下で,1つの信号を1回送信するだけで最適な伝送速度を決定するという技術思想については,何ら開示していない。 仮に,本件発明の技術的範囲を,ADSLによるデータ伝送をも含むように広く解釈するのであれば,そのような解釈は,本件出願当初明細書の発明の詳細な説明に開示された技術思想(使用し得る最大伝送速度に与える影響としてノイズより回線の歪のほうが優先的な考慮要素となる周波数帯域を使った通信を前提にし,1つの歪測定用の信号を1回送信するだけで最適な伝送速度を決定するという技術思想)の範囲を超えることになる。 したがって,本件発明の技術的範囲を解釈するに当たって,ADSLまで含めたデータ伝送方式まで含むという解釈は採ることができない。 イ本件出願当初明細書の「伝送速度」は,ファクシミリの画像信号の信号伝送速度を意味しており,ここで開示されているのは,信号伝送速度,データ伝 データ伝送方式まで含むという解釈は採ることができない。 イ本件出願当初明細書の「伝送速度」は,ファクシミリの画像信号の信号伝送速度を意味しており,ここで開示されているのは,信号伝送速度,データ伝送速度,変調速度等が一致するファクシミリ通信方式の技術思想だけであるが,ADSLにおいては,DMT等を用いているため,各種の異なる速度概念が考えられ,これらは必ずしも一致しない。 また,本件出願当初明細書で開示している技術は,シングルキャリア- 40 -システムであるファックス通信のみであるが,ADSLのDMTは,マルチキャリアシステムであるところ,このDMTは,それぞれのキャリアの直交性をIFFT,サイクリックプリフィックスを用いて保証するものであり,単なる複数のキャリアの結合ではない。 そうすると,ADSLにおける上記技術思想は,本件出願当初明細書に開示がなく,ADSLについて,本件特許権による保護を及ぼすことはできない。 ウしたがって,被告方法は,本件発明の技術的範囲に含まれないというべきである。 ()争点( )(被告方法の実施は,複数の主体によってされているとしても, 被告らに本件特許権に対する間接侵害は成立するか)について(原告)ア複数主体が関与する点について(ア)直接侵害の成否について発明の内容によっては,例えば,通信に関する技術のように,複数の法主体によって実施されることが当然予想されるものもあり,このような発明を同一企業内で使用する場合は特許権侵害が成立するが,異なる企業間で使用する場合には特許権侵害は成立しないという結果は合理的ではない。したがって,特許法は,複数の行為者によってすべての構成要件に該当する行為が行われている場合に,複数行使者による共同直接侵害の成立を否定するものではない。学説上も,複数 という結果は合理的ではない。したがって,特許法は,複数の行為者によってすべての構成要件に該当する行為が行われている場合に,複数行使者による共同直接侵害の成立を否定するものではない。学説上も,複数主体が関与する場合であっても,共謀などの事実を要件として,直接侵害の成立を肯定する見解が多数である。 本件発明も,複数の主体によって実施されることが当然に予想される発明であるから,1人の法主体によって本件発明のすべての構成要件が実施されていなくとも,複数の法主体によってすべての構成要件- 41 -が実施されていれば,本件特許権に対する直接侵害が成立するというべきである。 (イ)間接侵害の成否について特許法101条3項の文言からしても,間接侵害の成立に一人の法主体のみによって方法が実施されていなければならないとは規定されておらず,また,単一の法主体によって発明が実施されている場合と,複数主体によって発明が実施されている場合とを比較すると,それに対する間接侵害を行う者の違法性には何ら異なるところはないのであるから,仮に,当該行為主体各人にその責任を帰することができないためにその個人のみをみれば違法性が認められないとしても,システム全体として技術的範囲に含まれ,実施に該当する行為がなされていれば,間接侵害の違法性を基礎付ける事情としては十分といえる。学説上も,本件発明のようなネットワーク型の発明の間接侵害に関しては,独立説からはもとより従属説の立場からも,複数人によって発明が実施されているのであれば,間接侵害を認めるのが多数説であり,これを理由に間接侵害の成立を否定する見解は,ほとんど見当たらない。 したがって,間接侵害の成否の観点からも,本件発明のすべての構成要件を1人の法主体が実施していなくとも,そのためにのみ使用される製品を製造すれ 接侵害の成立を否定する見解は,ほとんど見当たらない。 したがって,間接侵害の成否の観点からも,本件発明のすべての構成要件を1人の法主体が実施していなくとも,そのためにのみ使用される製品を製造すれば,本件特許権に対する間接侵害が成立するというべきである。 イ「業」要件について間接侵害について独立説を採るか従属説を採るかにかかわらず,直接侵害者の一部の者の行為が「業」として行われていない場合でも,間接侵害を認めることにほとんど異論はない。 したがって,本件発明を実施している法主体の一部の者が,これを業として行っていなくとも,当該実施のためにのみ使用される製品を製造- 42 -すれば,本件特許権に対する間接侵害が成立するというべきである。 ウ以上より,被告方法の構成をすべて実行している者はおらず,複数の主体によって,その一部ずつが実行されていること,被告方法の構成の一部を実行している者が業として実施していないことは,被告らに本件特許権に対する間接侵害の成立を妨げるものではない。 (被告ら)1つの主体が請求項のすべての要件を満たさなければ,発明の実施にならないというのは,特許法の大原則である。複数の主体が,請求項の一部ずつを実行することは,それらの主体間に共謀等の特段の事情がない限り,適法な行為である。 そして,間接侵害は,直接侵害を誘発する蓋然性が極めて高い一定の行為をあくまでも二次的,予備的に特許権の侵害とみなす趣旨であるから,直接侵害が成立する蓋然性が非常に低い請求項について,間接侵害を認めることは背理である。したがって,直接行為者の行為が発明の実施に当たらなければ,独立説に立とうと,従属説に立とうと,間接侵害は成立しないと解すべきである。 したがって,被告方法が,複数の主体によって,その構成の一部ずつが実行されている本件にお 為が発明の実施に当たらなければ,独立説に立とうと,従属説に立とうと,間接侵害は成立しないと解すべきである。 したがって,被告方法が,複数の主体によって,その構成の一部ずつが実行されている本件においては,被告らに本件特許権に対する間接侵害が成立する余地はない。 ()争点( )ア(被告製品は,直接侵害行為の使用に用いる物を製造するた めに用いる物であるとして,特許法101条3号及び同条4号並びに平成14年改正前特許法101条2号は適用されないか)について(原告)ア特許法101条3号,4号の適用範囲(ア)知財高判平成17年9月30日(平成17年(ネ)第10040号事件)(以下「一太郎高裁判決」という。)について- 43 -aまず,一太郎高裁判決の判断は,特許法101条4号の新設規定における間接侵害の成立範囲が必ずしも明確でない部分もあるため,その成立範囲が不当に広がることのないよう,その成立範囲を限定して解釈しようとしたものであり,同条4号に限っての判断であって,該判断内容は同条3号に適用されるものではない。 b次に,一太郎高裁判決の判断において,「同号は,その物自体を利用して特許発明に係る方法を実施することが可能である物についてこれを生産,譲渡等する行為を特許権侵害とみなすものであって,そのような物の生産に用いられる物を製造,譲渡等する行為を特許権侵害とみなしているものではない。」としているのは,販売される控訴人製品自体は,「一太郎」というソフトウエアが収録されたCD-ROMであり,当該CD-ROMを購入した者が当該CD-ROMから,そこに収録されたソフトウエアをパソコンにダウンロードして「控訴人製品をインストールしたパソコン」を製造するのであるが,その際,CD-ROMである当該控訴人製品自体は,ソフトウエ D-ROMから,そこに収録されたソフトウエアをパソコンにダウンロードして「控訴人製品をインストールしたパソコン」を製造するのであるが,その際,CD-ROMである当該控訴人製品自体は,ソフトウエアをコンピュータにインストールするためには用いられても,控訴人製品であるCD-ROMそれ自体が当該特許権が定める方法の実施に用いられるものではないために,控訴人製品自体は,「控訴人製品(に収録されたソフトウエア)をインストールしたパソコン」を製造するための一種の道具のような関係にあり,「その物自体を利用して特許発明に係る方法を実施することが可能である物」ではなく,「物の生産に用いられる物」であることを理由として,同号の間接侵害は成立しない,と認定したものにすぎない。また,一太郎高裁判決は,同条2号の判断においては,「控訴人が業として控訴人製品の製造,譲渡等又は譲渡等の申出を行う行為について,本件第1,第2発明について,特許法101条2号所定の間- 44 -接侵害が成立するというべきである」としているところ,譲渡等されているのは,「一太郎というソフトウェアをインストールしたCD」であって,「ソフトウェア」ではない。 (イ)特許法101条4号は,「その方法の使用に用いる物であってその発明による課題の解決に不可欠なもの」の生産・譲渡等についての間接侵害を規定しているから,方法の使用に用いる物の全部でなくとも,そのうちの「課題の解決に不可欠なもの」という「重要な要素」,すなわち,「部品」の生産,譲渡等について間接侵害を構成することを明確に規定している。この点に係る被告の解釈は明文の規定に反するものであって,理由がない。 イ本件の検討(ア)被告製品は,本件発明の方法の使用にのみ用いるものであるから,その生産,譲渡,輸入及び譲渡等の申出は, 。この点に係る被告の解釈は明文の規定に反するものであって,理由がない。 イ本件の検討(ア)被告製品は,本件発明の方法の使用にのみ用いるものであるから,その生産,譲渡,輸入及び譲渡等の申出は,特許法101条3号の間接侵害を構成する。 (イ)a一太郎高裁判決の判断の内容は,上記のとおりであるが,本件方法においては,仮に,本件発明を実施するのがADSLモデムのソフトウエアであり,当該ソフトウエアがCD-ROMに格納されて販売され,当該購入者がCD-ROMからADSLモデムのソフトウエアをADSLモデムのハードウエアにインストールすることが必要な場合に,被告製品がADSLモデムの半導体チップではなく,当該CD-ROMであったと仮定すると,上記の一太郎判決のいう「物の生産に用いられた物」と同様の形になるが,本件発明を実施するソフトウエアは,被告CCIにより開発され,CD-ROMの形ではなく,被告CCIによりADSLモデムのハードウエアに既にインストールされており,かつ,被告製品はこれが既にインストールされた半導体チップなのであるから,被告製品は,一太郎高裁判決における製品構成- 45 -とは全く異なるもので,「物の生産に用いられた物」には該当せず,一太郎高裁判決がいう「その物自体を利用して特許発明に係る方法を実施することが可能である物」そのものである。 そして,被告製品なくして本件発明を実施することはできないのであるから,被告製品は,特許法101条4号にいう,「その方法の使用に用いる物であってその発明による課題の解決に不可欠なもの」に該当する。 b被告らは,モデム単体では,直接に本件発明を実施することはできない旨主張する。 しかし,局側COモデムと宅側CPEモデムの交信のみによって本件発明は実施されるもので,被告の主張するサーバ する。 b被告らは,モデム単体では,直接に本件発明を実施することはできない旨主張する。 しかし,局側COモデムと宅側CPEモデムの交信のみによって本件発明は実施されるもので,被告の主張するサーバ等の関与は必要ない。本件発明は,データ伝送に先立ち伝送速度を決定するものであるが,被告のサーバが必要との主張は,発明の実施による速度が決定された後の,実際のデータ伝送の時のことであろうが,この時は,もはや本件発明の実施とは関係がないのである。 cしたがって,被告製品の生産,譲渡,輸入及び譲渡等の申出は,特許法101条4号の間接侵害を構成する。 (被告ら)ア特許法101条3号,4号の適用範囲(ア)特許法は,101条において,「侵害とみなす行為」,いわゆる間接侵害について定めている。同規定は,特許権の効力を拡張する趣旨のものではなく,100条に定められた直接侵害に対する排除の実効性をあげるために定められたものである。すなわち,特許法101条は,侵害の予備的又は幇助的行為のうち,直接侵害を誘発する蓋然性が極めて高い一定の行為を二次的,予備的に特許権の侵害とみなす規定なのである。 - 46 -本条による間接侵害は,その物自体としては,特許権の技術的範囲に属しない物を,「侵害とみなす」とするものなのであるから,特許権の行使の限界を逸脱して行使される危険性が高い。そのため,本条の適用に当たっては,特許権の行使の限界を逸脱しないように慎重に検討されなければならない。特に,方法の発明については,侵害と主張される物品が無限定に広がるおそれがあるので,注意が必要である。このような点に鑑みれば,方法Aの使用に用いる物Bを生産,譲渡等する行為が間接侵害に該当することはともかく,さらに,方法Aの使用に用いる物Bを製造するために用いる物Cを生産,譲渡等する 必要である。このような点に鑑みれば,方法Aの使用に用いる物Bを生産,譲渡等する行為が間接侵害に該当することはともかく,さらに,方法Aの使用に用いる物Bを製造するために用いる物Cを生産,譲渡等する行為は間接侵害を構成しないと考えるべきである。 実質的に考えても,一般に,方法の発明について,方法を実施する全体のシステムにとどまらず,全体のシステムを構成する構成要素単体や,さらに,その構成要素単体の部品の製造,販売者について間接侵害の成立を認めると,訴訟を起こされる危険のある企業が,指数関数的に増大しかねない。その中から,直接侵害を主張される者から極めて遠い位置にある企業であっても,規模が小さく,訴訟に不慣れな企業や,外国企業等を選んで訴訟を提起できるとすれば,社会に与える害悪が著しく大きい。さらに,特許権者は,方法のクレームを1つ作るだけではなく,具体的な物品を請求項に列挙した物のクレームを作成することによって,必要な物品についての保護を受けることができ,このようにすれば,第三者も,クレームを見て侵害の危険を判断しやすいのであるから,このクレームの公示機能によって,第三者を保護すべきである。 (イ)一太郎高裁判決についてa(a)一太郎高裁判決は,特許法101条4号の適用の可否について,「そうすると,『控訴人製品をインストールしたパソコン』は,そのような方法による使用以外にも用途を有するものではあ- 47 -っても,同号にいう『その方法の使用に用いる物・・・であってその発明による課題の解決に不可欠なもの』に該当するものというべきであるから,当該パソコンについて生産,譲渡等又は譲渡等の申出をする行為は同号所定の間接侵害に該当し得るものというべきである。しかしながら,同号は,その物自体を利用して特許発明に係る方法を実施することが可 ら,当該パソコンについて生産,譲渡等又は譲渡等の申出をする行為は同号所定の間接侵害に該当し得るものというべきである。しかしながら,同号は,その物自体を利用して特許発明に係る方法を実施することが可能である物についてこれを生産,譲渡等する行為を特許権侵害とみなすものであって,そのような物の生産に用いられる物を製造,譲渡等する行為を特許権侵害とみなしているものではない。本件において,控訴人の行っている行為は,当該パソコンの生産,譲渡等又は譲渡等の申出ではなく,当該パソコンの生産に用いられる控訴人製品についての製造,譲渡等又は譲渡等の申出にすぎないから,控訴人の上記行為が同号所定の間接侵害に該当するということはできない」と判示し,「控訴人製品をインストールしたパソコン」が特許法第101条4号にいう「その方法の使用に用いる物・・・であってその発明による課題の解決に不可欠なもの」と認定した上で,当該パソコン自体を生産,譲渡する行為等は間接侵害に該当することを確認的に明らかにしているが,当該パソコンの生産に用いられる物を製造,譲渡等する行為は特許侵害とならないと明確に述べている。 (b)これに対して,原告は,一太郎高裁判決を,「一太郎」というソフトウェアはCD-ROMに収録されているので,CD-ROMそれ自体は方法の実施に用いられるものではないから間接侵害に当たらないと認定したものであり,一太郎高裁判決における「控訴人製品」とは「一太郎というソフトウェア」ではなく,「一太郎というソフトウェアをインストールしたCD」であると- 48 -理解すべき旨主張する。 しかし,一太郎高裁判決は,一太郎というソフトウェアの話をしているのであって,CD-ROMの話をしているわけではない。また,一太郎高裁判決は,「その物自体を利用して特許発明に係る方 き旨主張する。 しかし,一太郎高裁判決は,一太郎というソフトウェアの話をしているのであって,CD-ROMの話をしているわけではない。また,一太郎高裁判決は,「その物自体を利用して特許発明に係る方法を実施することが可能な物」の具体例として,「一太郎というソフトウェアがインストールされたパソコン」を挙げているのであるから,「一太郎というソフトウェア」単体や,「パソコンというハードウェア」単体は,「その物自体を利用して特許発明に係る方法を実施することが可能な物」に当たらないことを前提としていることは明らかである。ソフトウェアをインストールしなければハードウェアは機能を発揮しないし,ハードウェアにインストールされなければソフトウェアは機能を発揮しないので,ソフトウェア単体やハードウェア単体では,特許発明に係る方法を実施することはできないのである。 そして,一太郎高裁判決は,「(3)一方,控訴人製品は,別紙イ号物件目録及びロ号物件目録記載のとおり,文書作成のソフトウエア・・・であって」と判示している。 b本判決の上記判示部分は特許法第101条4号について述べているところであるが,このことは同条3号にも同様に適用されると解すべきである。 すなわち,一般に物の発明であれば,発明の対象が明確であり,間接侵害に該当するか否かは比較的明確に判断し得るが,方法の発明については,方法自体に形があるわけではないし,その方法に使用する装置等も間接侵害の対象となるため,間接侵害の対象範囲がより不明確である。それにもかかわらず,方法の発明に用いる物に,更にそれに用いられる物まで間接侵害の対象を広げると,極めて間接侵害の成- 49 -立範囲が広がってしまい,法的安定性を欠くこととなる。一太郎高裁判決は,方法の発明に関しては間接侵害の成立範囲が不当に広がるの られる物まで間接侵害の対象を広げると,極めて間接侵害の成- 49 -立範囲が広がってしまい,法的安定性を欠くこととなる。一太郎高裁判決は,方法の発明に関しては間接侵害の成立範囲が不当に広がるのを抑制することを意図して,上記の判示をしたのであり,これは特許法101条4号に限らず,同条3号にも妥当するのである。 また,条文解釈から考えても,一太郎高裁判決は,同条4号の「その方法の使用に用いる物(であってその発明による課題の解決に不可欠なもの)」についての解釈論であり,3号の「その方法の使用にのみ用いる物」という同様の文言について,一太郎高裁判決と異なる解釈をするのは不自然である。 また,特許法101条4号は,平成14年の特許法改正によって新しく定められた規定であるが,平成14年改正前特許法101条2号においては,いわゆる「のみ」の要件があるため間接侵害と認定することが困難な事案が多かったという事情に鑑み,上記「のみ」の要件をはずし,その替わりに「発明による課題の解決に不可欠なもの」という客観的要件で間接侵害の客観的限界を画そうとしたものであるところ,特許法101条4号による「発明による課題の解決に不可欠なもの」は,専用品に限られないため,同規定は,客観的な側面から見た場合の間接侵害規定の適用範囲を従前より広げたものと解釈されている。このように,客観的な側面から見た場合の間接侵害規定の適用範囲を広げた同条4号においても,一太郎高裁判決は上記のとおり判示しているのであるから,同条3号においてもこの理は当然に適用されるものなのである(なお,同条4号は,主観的要件の側面では同条3号より狭いが,上記のとおり,客観的側面では3号より広いので,濫用のおそれは,3号と大差はない。)。 イ本件の検討(ア)本件発明は,送信側と受信側でデータ伝送を 号は,主観的要件の側面では同条3号より狭いが,上記のとおり,客観的側面では3号より広いので,濫用のおそれは,3号と大差はない。)。 イ本件の検討(ア)本件発明は,送信側と受信側でデータ伝送を行う方法の発明であり,- 50 -「データ伝送を行うことを特徴とする」という文言が請求項に存する。 一般論として,本件発明を実施するためには,モデムのほかに,①サーバ,②サーバと通信回線で繋がったクライアントコンピュータ,③データを作成するソフトウェア,④データ伝送を制御するOS(オペレーションズシステム),⑤データを受信して表示するソフトウェア等を含めた全体のシステムが必要である。 モデム単体は,かかる全体のシステムの製造に使用され得る一部品にすぎず,モデム単体では,直接に本件発明を実施することはできないのである。さらに,半導体のチップセットは,モデム単体の生産に用いられる物にすぎない。 (イ)この点,原告は,本件発明を実施するためにはモデムがあれば十分であると主張するが,本件特許は,「データ伝送方式」の発明に係るものであり,「データ伝送」は必須要件であるところ,「データ伝送」は,データ通信用ソフトウェアがインストールされたサーバコンピュータやクライアントコンピュータを含む通信システムがなければ実現できないのであるから,原告の上記主張は失当である。 また,原告は,本件発明はデータ伝送に先立ち伝送速度を決定するものであるが,サーバが必要となるのは,発明の実施による速度が決定された後の,実際のデータ伝送の時のことであり,この時は本件発明の実施とは関係がない旨主張するが,同主張は,原告が主張する構成要件の分説に,構成要件D,Eが含まれることに矛盾するものであって採り得ない。 (ウ)したがって,被告製品は,本件発明の使用に用いられる物であるモ 係がない旨主張するが,同主張は,原告が主張する構成要件の分説に,構成要件D,Eが含まれることに矛盾するものであって採り得ない。 (ウ)したがって,被告製品は,本件発明の使用に用いられる物であるモデムの一部品にすぎず,本件発明の間接侵害が成立する余地はない。 ()争点( )イ(間接侵害の成否-被告製品は,特許法101条3号の「そ の方法の使用にのみ用いる物」,平成14年改正前特許法101条2号の- 51 -「その発明の実施にのみ使用する物」ということができるか)について(原告)ア本件発明における「伝送速度」とは,モデム間の通信速度であるから,パソコンの設定などにより,本件発明の「伝送速度」が変わることはない。 イストリーム通信は,局側から送られてくるデータ量の問題にすぎず,伝送速度の問題とは直接関係がない。また,ストリーム通信は,映像等のデータをダウンロードしながら再生するストリーミングモードのダウンロード・再生技術であり,データを受信するサーバのソフトウェアによるダウンロード及び再生の一手法にすぎず,本件発明の問題でも,モデムの問題でもない。 ウさらに,通信速度が料金によって異なる場合は,下りの伝送速度に予め一定の制限を課すという限度で伝送速度に関する問題ではあるが,そうであるからといって,下りにおいて本件発明が実施されていないことにはならない。なお,被告方法においては,被告製品が内蔵されたADSLモデムを使用する限り,上がりだけをみても,必ず本件発明が実施されるのであるから,その点で,特許法101条3号の「のみ」の要件を充足すると解すべきである。 エ被告らは,R-MEDLEYによりある伝送速度(例えば512kbit/s)が決定された場合であっても,送信側からの伝送すべきデータ量が少ないとき(例えば,48k 件を充足すると解すべきである。 エ被告らは,R-MEDLEYによりある伝送速度(例えば512kbit/s)が決定された場合であっても,送信側からの伝送すべきデータ量が少ないとき(例えば,48kbit)には,伝送速度が変わる(上記の例でいえば,48kbit/s程度となる。)旨の主張をしているが,実際には,このようにはならない。 すなわち,送信側のADSLモデムは,パソコンなどから受け取った送信すべきデータを53バイトの固定長のATMセルの形に変換し,これをADSLの出力信号にして転送する。この場合に,送信すべきデータが不- 52 -足している場合には,不足分に対応するダミーデータを挿入し,送信すべきデータがない場合には,セル速度調整のためのアイドルセル(意味のないデータが乗った空きセル)を挿入している。この結果,R-MEDLEYによりある伝送速度(例えば512kbit/s)が決定された後は,パソコンなどからモデムが受け取るデータの多少にかかわらず,ADSLモデム間のセル速度,すなわち,データ伝送速度(例えば512kbit/s)は常に一定に保たれることになる(なお,空きセルは,受信側モデムで分別廃棄され,必要なデータのセルのみが残る。)。 オ被告の指摘するモトローラ社のホストプロセッサは,CO・CPEモデム間の伝送速度の問題ではない。 カソフトないしハード機器等の処理時間,待ち時間等をすべて含めた速度は「実効速度」といい,これに対し,「伝送速度」とは,電線や光ファイバーのような伝送路上での速度であり,本件発明の「伝送速度」とは,上記の「伝送速度」を意味する。 被告らの主張は,伝送速度と実効速度とを区別せず,両者を併せて「通信速度」という言葉で説明しており,失当である。 (被告ら)ア被告方法においては,以下に例示するとおり,必ず 伝送速度」を意味する。 被告らの主張は,伝送速度と実効速度とを区別せず,両者を併せて「通信速度」という言葉で説明しており,失当である。 (被告ら)ア被告方法においては,以下に例示するとおり,必ずしも,「測定結果に基づき伝送速度を決定」するとは限らず,また,データが「通知された伝送速度」で送信されるとは限らないのであるから,被告製品は,本件発明の構成要件C,Dを満たさない方法においても使用できるのであり,したがって,被告製品の製造,販売等は,間接侵害の「のみ」の要件を満たさず,本件特許権に対する間接侵害は成立しない。 すなわち,例えば,ソフトウェアによって,全体の通信システムにおけるデータの伝送速度が制限されている場合は,送信装置は,回線の歪度合から決定されて通知された速度いかんにかかわらず,ソフトウェアが設定- 53 -した速度でデータ伝送を行うことになるので,「測定結果に基づき送信装置との間の伝送速度を決定するとともに,伝送速度を該送信装置に通知し,送信装置は通知された伝送速度でデータ伝送を行う」という本件発明の要件を明らかに満たさない。また,ストリーム配信の場合は,データ伝送速度は,20k,35k,56k,64k,100k,300kなどの中から選択された一定の速度となるから,本件発明の上記要件を満たさない。 さらに,料金によってADSLの速度を人為的に制限している場合は,SN比の測定結果が同じでも,料金コースによって最大速度が違ってくるので,少なくとも,「測定結果に基づき・・・伝送速度を決定する」ということはできない。 しかも,局用COモデムは,モトローラ社のホストプロセッサーなど多くのコンポーネントから構成されているが,ホストプロセッサーは,プロバイダの設定値に関する情報を,CO・CPE間の上り速度を管理するために用いられ Oモデムは,モトローラ社のホストプロセッサーなど多くのコンポーネントから構成されているが,ホストプロセッサーは,プロバイダの設定値に関する情報を,CO・CPE間の上り速度を管理するために用いられる情報(レジスタ設定情報)に変換し,被告CCIのチップ上のファームウエアに伝送しており,CO・CPE間のADSL信号の通信速度は,プロバイダに依存している。また,パソコンは,サーバの応答に応じて,データの送信を制限するところ,サーバの応答速度は,状況により,速くなったり,遅くなったりする。さらに,データの電送速度は,プロバイダによるSNRマージンの設定,パソコン上の通信ソフト,パソコン,ルーター,OS等の性能や設定に影響を受ける。 イ原告の主張に対する反論(ア)原告は,本件発明の「伝送速度」とは,モデム間の通信速度を意味し,パソコンの設定によって,モデム間の通信速度が異なることはない旨主張する。 しかし,本件出願当初明細書に開示された発明が問題とする「伝送速度」とは,あくまでもファクス送信装置とファックス受信装置との- 54 -間の速度であって,これをADSL通信に対応させれば,コンピュータからコンピュータにデータが送られる速度となるが,この速度は,ADSL加速ソフトの有無やパソコンの設定等により変わり,これに伴い,CPEモデム・COモデム間のデータの転送速度(「伝送速度」ではない。)も変わることになる。したがって,パソコンの設定等で,CPE・COモデム間の通信速度が異なるか否かはともかく,CPE・COモデム間のデータの転送速度が異なることは争いようがない。 (イ)原告は,ストリーム通信が,特定のデータ量に基づいて行われるものであって,データが伝送される速度の問題ではないと主張する。 しかし,実際には,その逆であって,ストリーム通信 争いようがない。 (イ)原告は,ストリーム通信が,特定のデータ量に基づいて行われるものであって,データが伝送される速度の問題ではないと主張する。 しかし,実際には,その逆であって,ストリーム通信とは,データ量の問題ではなく,まさにデータが連続的に伝送される速度の問題なのである。ストリーム通信は,典型的には,データ(その量は固定ではない。)の連続的な流れに関するものであり,その速度は固定速度であり,その固定速度はアプリケーション(例えば,テレビカメラ信号の直接配信等)に基づくものである。 (ウ)原告は,「送信装置」をモデムと捉え,「空きセル」を「データ」に含めている。 しかし,「空きセル」は,意味のないものであり,しかも,結局は分別廃棄されてしまうものである。このような本来送信したいデータではなく,単にデータとデータの間の空いたスペースを埋めるにすぎない「空きセル」を,データとしてカウントすべきではない。そして,本件出願当初明細書は,使用し得るデータ,具体的にはファクシミリの画像信号を伝送する発明を開示しているのであり,受信機によって削除された空き時間を満たすためのATMの「空きセル」の伝送概念を開示しているわけではない。 - 55 -()争点( )(本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものか) について(被告ら)ア従来技術との一致点について(ア)本件特許の出願前である昭和54年5月22日に公開された特開昭54-63607号公報(以下「乙6文献」)に記載された発明(以下「乙6発明」という。)と本件発明とは,次の点で一致している。 ①送信装置から回線の伝送品質を測定するための歪測定信号を特定の伝送速度で送信している点②受信装置は,該送信装置から受信した上記歪測定信号に基づき回線の伝送品質を測定し 次の点で一致している。 ①送信装置から回線の伝送品質を測定するための歪測定信号を特定の伝送速度で送信している点②受信装置は,該送信装置から受信した上記歪測定信号に基づき回線の伝送品質を測定し,その測定結果に基づき,送信装置との間の伝送速度を決定すると共に,該伝送速度を送信装置に通知している点③送信装置は,測定結果に基づいて決定された伝送速度でデータ伝送を行う点(イ)原告の主張に対する反論a原告は,上記一致点①について,本件発明は歪測定信号を1つの特定の伝送速度で送信するだけであるのに対し,乙6発明では伝送品質を測定する信号を繰り返して送らなければならず,両者の間の技術思想が異なると主張する。 しかし,乙6文献の特許請求の範囲には「データを送出する局は,正規のデータを送出する前に,一定のパターンから成る測定データを相手局に送出し,相手局において上記パターンに基づき判定した伝送品質を表す判定データを生成して返送させ,返送された上記判定データに基づき最適の伝送速度を選択」と,発明の詳細な説明には,「判定した結果は次に局Bから局Aに伝送品質に対応された一定のパターンから成る符号で返送される。即ち,伝送品質の良い場合には第2図- 56 -(イ)で示す時間tの判定データSDによって,伝送品質の悪いHB場合は第2図(ロ)で示す時間tの判定データSDによって返送HBされる。この際,判定データSDは回線3ではキャリアで変調されBた信号となる。」,「局Aでは,局Bからの判定データSDを第2B図(d)に示すように受信し,第2図(a)に示すような返送されたキャリア検出信号CDを得る。A局は,返送されたキャリア検出信B号CDの時間を計数し,時間t及びtのいずれかであるかの判定BLHをし,この結果から回線3の伝送品 a)に示すような返送されたキャリア検出信号CDを得る。A局は,返送されたキャリア検出信B号CDの時間を計数し,時間t及びtのいずれかであるかの判定BLHをし,この結果から回線3の伝送品質を知る」(2頁左下欄16行目ないし右下欄10行目)と,それぞれ記載されており,これらの記載によれば,送信装置が一定のパターンの測定データを送信し,受信装置側でそのデータを判定して判定データを返送し,当該判定データによって回線の伝送品質を知り,それに基づいて選択された伝送速度で,送信装置が正規のデータを送信するという技術思想が読み取れる。 したがって,乙6発明においても,本件発明と同様,歪測定信号を1つの特定の伝送速度で送信するだけで伝送速度を決定し得るという技術思想が開示されているのである。 原告の主張は,乙6文献の発明の詳細な説明において,単なる一例として記載されているフォールバックを用いた伝送速度の測定方法のみを採り上げて,乙6文献には,本件発明のように歪測定信号を1つの特定の伝送速度で送信することによって伝送速度を決定する方法は記載されていないというものであるが,乙6文献には,「また,3段階の伝送速度を有するモデムを使用する場合で,上記の最高のデータ伝送速度を選択して行なわれた伝送品質の判定結果が最高のデータ伝送速度での使用に耐えない品質であることを示した場合には,次に速い伝送速度である第一のフォールバック速度に落して同様に伝送品質の測定を行ない,第一のフォールバック速度での使用の可否を判定す- 57 -る方法も可能である。」(2頁右下欄17行目ないし3頁左上欄4行目)と記載されており,乙6発明においては,フォールバックを用いた判定方法はあくまでも「可能である」だけであって,フォールバックを用いた判定方法しかないわけではないこと 17行目ないし3頁左上欄4行目)と記載されており,乙6発明においては,フォールバックを用いた判定方法はあくまでも「可能である」だけであって,フォールバックを用いた判定方法しかないわけではないことは明らかである。 b原告は,上記一致点②について,乙6発明では,最適な伝送速度は送信装置と受信装置とが双方で決定しているのであって,本件発明のように受信装置側で決定していないと主張する。 しかし,乙6発明では,上記aで主張した特許請求の範囲の記載から明らかなように,受信装置が送信装置から送られた測定データを判定し,その判定結果を受けて送信装置が伝送速度を決定するのである。 つまり,まず,伝送品質について受信装置で判定がなされ,その判定の指示で送信装置は伝送速度を決定するのであるから,実質的には受信装置の側で正規データの伝送速度を決定しているものといえる。上記のデータ速度が2通りの場合を例にとっても,受信装置で最初に送られた伝送速度を適当と判定すれば,送信装置はその速度で正規のデータを送るのであるから,まさに受信装置が伝送速度を決定しているものといえる。 c原告は,上記一致点③について,上記bと同様に,乙6発明では,最適な伝送速度は送信装置と受信装置とが双方で決定していると主張するが,上記bで述べたように,乙6発明においても,受信装置での判定結果に基づいて決定された伝送速度で送信装置は正規のデータを伝送しているといい得る。 イ従来技術との相違点について(ア)本件発明と乙6発明とは,次の点で相違する。 ①本件発明では,歪測定信号が4相位相変調方式により変調されてなる4値ランダム符号である点- 58 -②本件発明では,伝送品質の測定を,歪測定信号の振幅,又は位相の誤差を演算して回線の歪度合を測定することによって行う点③本件発明では により変調されてなる4値ランダム符号である点- 58 -②本件発明では,伝送品質の測定を,歪測定信号の振幅,又は位相の誤差を演算して回線の歪度合を測定することによって行う点③本件発明では,受信装置において,測定結果に基づき,特定の伝送速度よりも高速な伝送速度を含む複数の伝送速度の中から送信装置との間の伝送速度を決定する点(イ)上記の相違点について検討する。 a相違点①について(a)信号の伝送に4相位相変調方式で変調された符号を用いることは,1976年に採用された国際電気通信連合のモデムに関する勧告V29(乙7)の258頁の図3に,既に4相位相変調方式による4800bit/sの信号ダイアグラムの記載があり,本件特許の出願日である1983年8月30日において,電気通信に従事する者にとって周知かつ当然の事項にすぎなくなっていたことは明白である。また,伝送品質を測定するためには広い周波数範囲をカバーする信号を送出することが望ましいことは当業者の常識であり,そうした信号の1つとしてランダム符号は広く知られている(例えば,上記ITU勧告にも擬似ランダム符号を利用する旨の記載がある。乙7の付録Ⅰ267頁)。しかも,本件明細書に「回線の歪等の品質測定用の信号パターンは・・・ランダムパターンである事が望ましい」(5欄10ないし13行)と記載されているように,本件発明においてランダム符号を用いることは単なる任意選択事項にすぎず,本件発明が4相位相変調方式で変調された4値ランダム符号を用いたことによって格別の効果を奏するものとも認められない。 したがって,相違点①は,単に当業者の必要により適宜選択し得る程度の設計的事項にすぎない。 (b)これに対し,原告は,数ある信号の中で,伝送品質の測定信- 59 -号としては4相位相変調方式に したがって,相違点①は,単に当業者の必要により適宜選択し得る程度の設計的事項にすぎない。 (b)これに対し,原告は,数ある信号の中で,伝送品質の測定信- 59 -号としては4相位相変調方式により変調されてなる4値ランダム符号を用いることが好適であるという新知見に基づいて,歪測定信号に上記4値ランダム符号を採用した旨主張している。 しかし,本件発明で測定信号として4値ランダム符号が採用されるということは,以下の理由により,極めて当然のことである。 すなわち,通信伝送系においては,伝送媒体を効率的に利用するために伝送すべき情報信号に一定の変換を施す手段が用いられるが,このような操作を変調という。この変調方式には,振幅変調(AM),位相変調(PM),amplitudemodulation :phasemodulation :振幅位相変調(APM)など多様な方法amplitudephasemodulation :があり,特に,変調信号がデジタル信号の場合にはシフトキーイング(SK)といわれ,シフトキーイングには,ASKshiftkeying :(),FSK(),PSKamplitudeshiftkeyingfrequencyshiftkeying()及びAPSK()などphaseshiftkeyingamplitudephaseshiftkeyingがあるところ,本件発明で用いられているPSKは情報内容に対応して搬送波の位相を変化させる方式であるが,何相の位相を割り当てるかによって,一般にM相PSKと呼ばれ,Mが4の場合を4相位相変調方式(QPSK)と呼ぶ。そして,伝送テストを行う際には,データ通信の際に送るべき変調方式による測定信号を送り,伝送系のテストを行うのが最も効果的な伝 M相PSKと呼ばれ,Mが4の場合を4相位相変調方式(QPSK)と呼ぶ。そして,伝送テストを行う際には,データ通信の際に送るべき変調方式による測定信号を送り,伝送系のテストを行うのが最も効果的な伝送テストとなる。すなわち,仮に4相PSK(QPSK)でデータ通信を行う場合には,4相PSKにより変調された測定信号を送り,4相PSKによる変調時の符合誤り率を知る必要があるのである。したがって,QPSKによりデータ通信を行う本件発明において,QPSKで変調された信号を測定信号として送ることは当業者にとって極めて当然のことであり,そこに何らの「新知見」も存しないのである。実際,本件明細- 60 -書において引用された先行技術であるV29スタンダードにおいては,4800bpsのデータ伝送にQPSKが利用されており,本件発明がなされた時点においては,当該技術分野における公知技術であったといえる。 b相違点②について(a)回線の伝送品質を測定するために歪度合を測定することは,1979年4月4日に英国において公開された英国特許第1543698号明細書(以下「乙8文献」という。)に記載されているように公知である。また,信号の歪度合を,該信号の振幅あるいは位相の誤差により測定することは,当該技術分野において通常行われていることである。したがって,回線の伝送品質を測定するために,歪測定信号の振幅あるいは位相の誤差を演算して回線の歪度合を測定することは,当業者が容易に推考することができる程度のことにすぎないので,相違点②に格別の発明を認めることはできない。 (b)これに対し,原告は,乙6文献及び乙8文献のいずれにも,歪測定信号の振幅又は位相の誤差を演算して回線の歪度合を測定することは記載されていないから,乙6発明に乙8文献に記載された事項を組み (b)これに対し,原告は,乙6文献及び乙8文献のいずれにも,歪測定信号の振幅又は位相の誤差を演算して回線の歪度合を測定することは記載されていないから,乙6発明に乙8文献に記載された事項を組み合わせても,本件発明を導き出せないと主張している。 しかしながら,乙6発明においても実質的には歪測定信号の振幅又は位相の誤差を演算して回線の歪度合を測定しているといえるし,仮に,乙6発明において別の測定をしているとしても,伝送品質を測定するために上記のような測定をすることは極めて周知のことであるから,上記周知技術を乙6発明に適用して,本件発明と同様の構成にすることは極めて容易である。特に,SN比を計測し,かかる情報を最大データレートの決定に利用することは,1940年代- 61 -後半にシャノンによって見いだされ,同人の著書において公表されており,SN比と達成し得る最高のビットレートとを関連づけるシャノンの公式は,ほぼすべての教科書に記載されている。 c相違点③について(a)本件発明が,相違点③に基づいて,格別の効果を奏すると認めるに足る記載は,本件明細書及び本件図面のどこにも見い出せない。 また,相違点③は,歪測定信号の伝送速度を複数のデータ伝送速度のうちの最高伝送速度よりも低くなるよう設定することを意味するが,そのように設定したことによってのみ本件発明の効果,すなわち,最適な伝送速度が歪測定用の信号を1つの伝送速度で送信するだけで識別でき,データを送信するまでの時間を短縮できるという効果が奏されるというわけではない。例えば,4800bpsと2400bpsの2つの伝送速度を使用するシステムの場合,歪測定用の特定の伝送速度を高い方の4800bpsに設定しても,本件図面の第5図(c)に示すような,伝送品質と伝送速度との対応表を作ってお 400bpsの2つの伝送速度を使用するシステムの場合,歪測定用の特定の伝送速度を高い方の4800bpsに設定しても,本件図面の第5図(c)に示すような,伝送品質と伝送速度との対応表を作っておくことによって,伝送品質に応じて最適な伝送速度を4800bpsと2400bpsのいずれかに決定することは可能である。 したがって,相違点③に格別の効果を認めることはできない。 また,乙6文献には,「即ち,伝送品質の良い場合には第2図(イ)で示す時間tの判定データSDによって,伝送品質の悪いHB場合は第2図(ロ)で示す時間tの判定データSDによって返送LBされる。」(2頁左下欄18行ないし右下欄1行)とあり,ここでも,一定の伝送品質基準で良否を区別し,それぞれに判定データSDの時間を対応させることを行っている。これを本件図面の第5B図(c)でいえば,データ伝送速度が14.4kbpsと9.6k- 62 -bpsの2種類のみの場合に,伝送品質がS1のラインより上か下かでデータ伝送速度を決定することになるが,これは乙6文献で行っていることと実質的に相違がない。 (b)これに対し,原告は,相違点③は,データを送信するまでの時間を短縮できるという格別の効果があると主張する。 しかし,原告が主張するところの効果は,「受信装置において,測定結果に基づき,特定の伝送速度よりも高速な伝送速度を含む複数の伝送速度の中から送信装置との間の伝送速度を決定すること」に起因する効果ではなく,歪測定信号を1つの特定の伝送速度で送信するだけで伝送速度が決定できることから生じるものである(なお,かかる効果についても,容易に想到しうる程度のものであり「格別」といえるほどのものではない。)。 ウ 結論 以上のとおりであるから,本件発明は,乙6発明及び周知技術から当業 生じるものである(なお,かかる効果についても,容易に想到しうる程度のものであり「格別」といえるほどのものではない。)。 ウ 結論 以上のとおりであるから,本件発明は,乙6発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。したがって,本件特許は同法123条1項2号により無効にすべき明白な事由があり,同法104条の3により,原告の本件特許権に基づく権利行使は,権利の濫用として許されない。 (原告)ア本件発明と乙6発明との一致点に関する被告らの主張ついて(ア)被告らの主張する一致点①について被告らは,本件発明と乙6発明とは,送信装置から回線の伝送品質を測定するための歪測定信号を特定の伝送速度で送信している点で一致している旨主張する。 しかし,乙6発明には,選択可能な伝送速度が二者択一の状態になる- 63 -までは,最高の伝送速度から順次フォールバックして受信データの「誤りビット数」を用いた伝送品質の測定を繰り返して,使用可能な伝送速度を決めることが記載されているのであって,本件発明のごとく,「歪度合」に関する1つの測定結果に基づいて伝送速度を決めるという,本件発明の特徴である「歪測定信号を一つの特定の伝送速度で送信すること」については,何ら開示も示唆もない。乙6発明に記載されている「最高の伝送速度から順次フォールバックして伝送品質の測定を繰り返して使用可能な伝送速度を決める」という手法は,本件明細書2欄10行ないし4欄10行及び本件図面の第1図において詳細に説明されている従来技術と同様な手法であって,基本的な技術思想において本件発明と異なるものである。 乙6発明において,伝送速度を測定するための信号を繰り返し送信しない場合として考えら において詳細に説明されている従来技術と同様な手法であって,基本的な技術思想において本件発明と異なるものである。 乙6発明において,伝送速度を測定するための信号を繰り返し送信しない場合として考えられるのは,伝送速度の候補が2つしかなく,伝送速度を測定するための信号に「最高の・・・伝送速度を選択」(乙6文献の2頁右上欄19行目ないし左下欄1行目)し,さらに,当該伝送速度で可能との判定がなされた場合のみであるが,このような極めて限定された条件の場合であれば,本件明細書に開示されている従来技術であっても,同様な結果となる。このような場合は,本来であれば速度決定のために複数回信号を送信する必要があるが,1回で送信可能と判断されたために,2回目以降の送信がなされなかったというにすぎない。これに対し,本件発明は,歪測定信号を「最高の伝送速度」ではない「特定の伝送速度」で1回送信するというものであり,両者は相互に全く異なる発明である。 (イ)被告らの主張する一致点②について被告らは,本件発明と乙6発明とは,受信装置は,該送信装置から受信した上記歪測定信号に基づき回線の伝送品質を測定し,その測定- 64 -結果に基づき,送信装置との間の伝送速度を決定すると共に,該伝送速度を送信装置に通知している点で一致している旨主張する。 しかし,乙6発明では,速度決定のために送られてくる信号の伝送速度である「ある伝送速度の可否」を判定するのに対し,本件特許発明では,歪測定信号それ自体の通信速度の可否を判定するのではなく,それによって「回線の程度」を判定し,その程度に見合った通信速度を決定するのであって,両者は測定対象が全く異なる。 また,乙6発明には,受信装置で上記の伝送品質の測定を行った伝送速度での「使用の可否」,すなわち,「特定な伝送速度による伝送の可 見合った通信速度を決定するのであって,両者は測定対象が全く異なる。 また,乙6発明には,受信装置で上記の伝送品質の測定を行った伝送速度での「使用の可否」,すなわち,「特定な伝送速度による伝送の可否」を判定することについて記載されているにすぎず,本件発明のごとく,受信装置で「最適な伝送速度を決定する」ことについては,何ら開示も示唆もない。乙6発明では,「受信装置」は特定の伝送速度による伝送の可否のみを判定するのであり,当該伝送速度が不可である場合には,「送信装置」において,次の伝送速度での伝送が試みられるという,両者でのやりとりの繰り返しの結果で初めて伝送速度が決定されるものであって,あえていえば,乙6発明において「伝送速度」を決定しているのは,「送信装置」と「受信装置」の双方である。乙6発明は,本件発明のように「受信装置」において最適な伝送速度を決定するものではない。 (ウ)被告らの主張する一致点③について被告らは,本件発明と乙6発明とは,本件発明では,受信装置において,測定結果に基づき,特定の伝送速度よりも高速な伝送速度を含む複数の伝送速度の中から送信装置との間の伝送速度を決定する点で一致する旨主張する。 しかし,乙6文献では,「送信装置(データを送出する局,局A)」と「受信装置(相手局,局B)」とのやりとりの繰り返しの結果で初め- 65 -て伝送速度が決定されるのであって,乙6発明における送信装置は,「受信装置での判定結果に基づいて決定された伝送速度」で正規なデータを伝送しているのではない。 イ本件発明と乙6発明との相違点に関する被告らの主張について(ア)被告らの主張する相違点①についてa被告らは,相違点①の歪測定信号が4相位相変調方式により変調されてなる4値ランダム符号である点は,当業者の必要により適宜選択し得 る被告らの主張について(ア)被告らの主張する相違点①についてa被告らは,相違点①の歪測定信号が4相位相変調方式により変調されてなる4値ランダム符号である点は,当業者の必要により適宜選択し得る程度の設計的事項にすぎない旨主張する。 しかし,本件発明は,受信信号の誤差のいわゆるアイパターン図における分散の度合から回線の歪度合を測定するためには,数ある信号のうち,最高伝送速度よりは低速な伝送速度の4相位相変調方式により変調されてなる4値ランダム符号を用いることが好適であるとの新知見に基づき,データ伝送速度に先立って上記の歪測定信号を1つの特定の伝送速度で送信することで最適伝送速度を決定するところにその特徴があるのに対し,乙6文献には,本件明細書の従来技術と同様な,本件発明とは全く異なる発明が記載されているのであって,乙6発明に,4相位相変調方式で変調されたランダム符号とを組み合わせても,本件発明の構成とはならない。被告らの主張は,「4相位相変調方式で変調されたランダム符号」自体が公知であったことを理由とするものであるが,当該発明の技術思想そのものが新規でかつ進歩性のあるものであれば,当該発明の一部が公知であることによってその発明の進歩性が否定されるものではないことは明らかである。 bまた,被告らは,本件発明において「4値ランダム符号」を採用することが極めて当然のことであるとする。その理由は,要するに,本件発明は,「QPSKによりデータ通信を行い」,QPSKで変- 66 -調された信号を測定信号とするものであるところ,データ通信の際に送るべき変調方式による測定信号を送り,伝送系のテストを行うのが最も効果的であることは,極めて当然のことであるというものである。 しかし,本件発明は,歪測定信号については4相位相変調方式で変調する 送るべき変調方式による測定信号を送り,伝送系のテストを行うのが最も効果的であることは,極めて当然のことであるというものである。 しかし,本件発明は,歪測定信号については4相位相変調方式で変調するが,データの変調方式については何らの限定を行うものでない。 (イ)被告らの主張する相違点②について被告らは,相違点②の伝送品質の測定を,歪測定信号の振幅,又は位相の誤差を演算して回線の歪度合を測定することによって行う点には,格別の発明を認めることはできない旨主張する。 しかし,乙8文献は本件発明の構成を何ら開示も示唆するものではないから,乙6発明に乙8文献に記載された事項を組み合わせても,本件発明の構成にならないことは明らかであり,また,本件発明は,上記の公知技術の組合せにおいて,単に歪測定信号の振幅又は位相の誤差を演算して回線の歪度合を測定するようにしたものでもない。 (ウ)被告らの主張する相違点③について被告らは,相違点③の受信装置において,測定結果に基づき,特定の伝送速度よりも高速な伝送速度を含む複数の伝送速度の中から送信装置との間の伝送速度を決定する点は,格別の効果を奏すると認めることはできない旨主張する。 しかし,乙6発明は,回線の伝送品質の測定に使用する信号を「選択し得る最高の伝送速度」で送信し,選択可能な伝送速度が二者択一の状態になるまで,順次フォールバックをして伝送品質の測定を繰り返し,使用可能な伝送速度を決定するもので,本件明細書に記載した従来技術に相当するものであるから,回線の伝送品質が悪い場合は複数回の伝送品質の測定が必要となり,伝送速度の決定に至るまでの時- 67 -間が長くなるという欠点を有するのに対し,本件発明は,データ伝送に先立って歪測定信号を1つの特定の伝送速度で送信するだけで最適な伝送速度を決定するこ なり,伝送速度の決定に至るまでの時- 67 -間が長くなるという欠点を有するのに対し,本件発明は,データ伝送に先立って歪測定信号を1つの特定の伝送速度で送信するだけで最適な伝送速度を決定することができ,データを送信するまでの時間を短縮できるという,格別の効果を有するものである。 この点,被告らは,例えば2つの伝送速度を使用するシステムの場合,本件図面の第5図(c)に示すような伝送品質と伝送速度との対応表を作っておけば,歪測定用の伝送速度を高い方の速度,すなわち最高の伝送速度に設定しても,最適伝送速度の決定が可能であると主張する。 しかし,本件図面の第5図(c)に示すような伝送品質と伝送速度との対応表を用いることは,本件明細書が公開された後にその記載内容を参照することによって初めて可能になることであって,そのような知見があれば従来技術を用いても本件発明の効果を奏することができるとする被告の主張は,本件発明の内容を事前に知っていれば,従来技術から本件発明を発明することは容易であると主張することとほとんど同義であって,およそ認められる余地のない主張である。 ウ以上より,被告らの無効主張は理由がない。 ()争点( )(原告の請求は権利濫用として許されないものか)について (被告ら)ア被告製品は,基本的にITUの勧告であるITU-TG992.1に沿ったものであるところ,こうした通信の技術標準又は勧告の採択に当たっては,ITU加盟各国における企業等の有する特許権を侵害することのないように,勧告に採用されるべき技術が抵触する可能性のある特許権については,抵触の可能性が明かになった時点で可能な限り速やかに,所定の様式にて,ITUに届け出ることとされている。 この届出様式には,対象となるITU-Tの勧告,特許権を保有する組- る特許権については,抵触の可能性が明かになった時点で可能な限り速やかに,所定の様式にて,ITUに届け出ることとされている。 この届出様式には,対象となるITU-Tの勧告,特許権を保有する組- 68 -織名,当該組織の連絡先と担当者,ライセンスに関する特許権者の宣言,特許権を特定する情報及びITUが以上の宣言について受領した日付が掲載されることとなる。これらのうち,ライセンスに関する特許権者の宣言については,特許権者が,①特許権者による権利行使を「放棄」する旨の表明,②特許権者が権利行使を放棄するまでは至らないもの,当該発明を実施しようとする者と,非差別的な条件の下で,合理的な条件のライセンス許諾契約を締結する意思を有する旨の表明(この場合,ライセンス許諾契約の交渉は,ITU-Tとは無関係に行われることとなる。),③特許権者が,上記①及び②のいずれも遵守する意思のないことの表明(この場合,勧告の採用には至らない。)の各対応から選択することができる。 ITUが,上記の特許ポリシーを採用しているのも,ITU-T勧告という,たとえ採用が強制ではないにしても全世界で標準的な規格として広く一般的に利用される規格について,特許権を主張する者が存在する場合には,当該特許権者の権利を侵害しないように保護する必要性があると共に,特許権の存在を知らずに規格を利用してしまい,後日侵害訴訟を提起されて不測の損害を被る事業者の被害を防止するため,権利の存在を明白にして,関係当事者がITU外で,迅速にライセンス許諾の交渉等を可能にすることとして,特許権者と事業者等との間の利益のバランスを図る点にある。 イ原告は,ITUに対して,技術分野も対象特許も特定しない包括的な届出を行っているが,上記ITU-TG992.1及びG992.2に関しては,14件もの特許の 間の利益のバランスを図る点にある。 イ原告は,ITUに対して,技術分野も対象特許も特定しない包括的な届出を行っているが,上記ITU-TG992.1及びG992.2に関しては,14件もの特許の宣言を上記②の条件にて行っている。それにも関わらず,原告は,本件特許については,上記②の態様の届出をしていない。 原告の主張するとおり,本件特許が,ADSLの根幹部分に関わるのであれば,我が国においてADSLによる通信サービスをITU勧告のとお- 69 -りに提供しようとするすべての主体に影響しかねないほどの大問題であり,そのようなことを本件特許についての技術に詳しい原告が気が付かないのは不自然極まりない。仮に,原告が,本件特許について,ITUに対して個別具体的な届け出を行っていたとすれば,原告が,全く技術思想が異なる方法に対して濫用的な権利主張を意図している旨が明らかになり,我が国の通信関連業者のみならず,通信関連の製造業者全体から,批判と非難を浴びる行為にほかならないため,個別的な届出をしなかったと見るのが自然である。 以上の原告の行動に照らせば,仮に,被告方法が本件発明の技術的範囲に属するものだとしても,原告が何ら世界的に周知する行動を執ってこなかったこと,我が国でのADSLの利用者が平成16年9月末で既に1280万件を超えた時点に至って,国内の企業に対しては何ら責任を追求することなく,殊更に米国法人である被告CCIを狙って請求を起こしていることを踏まえると,原告自らの本件特許権の行使については,権利の濫用に該当する,あるいは,取引上の信義誠実の原則に全くそぐわない行為として,その効果が否定されてしかるべきである。 ウしたがって,仮に,被告方法が本件発明の技術的範囲に属するとしても,原告の本件特許権に基づく請求は,権利の濫用又は信 誠実の原則に全くそぐわない行為として,その効果が否定されてしかるべきである。 ウしたがって,仮に,被告方法が本件発明の技術的範囲に属するとしても,原告の本件特許権に基づく請求は,権利の濫用又は信義則違背として認められるべきではない。 (原告)アITUに対する特許の届出の方式には,大別して,A.対象特許を限定せずに包括的にライセンス許諾を与える方式と,B.ライセンスする特許を特定する個別的な方式とがある。第三者に対する告知との趣旨からすれば,届出の方式としては,上記Bの個別的な届出を保有するすべての権利について網羅的に行うことが最善ではあろうが,大企業となれば,自らが保有するすべての特許権(原告は,出願中のものを含み,全世界で8万件- 70 -以上保有している。)を把握し,それらの権利とITUによる規格との関係を調べ上げることは実際上著しく困難であるのみならず,事実上不可能であるために,現在では上記Aのような包括的な届出を行うことが認められている。現実的な運用としては,ライセンスを拒否する場合には,上記Bの対象特許を特定する方式を行う必要があるが,ライセンスを拒否しない場合には,むしろ,ITUによる標準的な通信規格の作成には好ましいものといえるため,上記Aのような包括的な届出をすることが行われている。被告CCI自身も,公開されているだけでも,特許を10件程度所有しているようであるが,これらの特許について,ITUに対し,一切個別的な宣言は行わずに,包括的な宣言のみを実施している。 イ原告は,当技術分野において,ライセンスを拒否しない方針であるため,上記Aの技術分野も対象特許も特定しない上記の包括的な届出をも行っている。そして,原告がいくつか行っている特許の個別的なライセンス許諾の宣言については,第三者に対する告知という制度の趣 であるため,上記Aの技術分野も対象特許も特定しない上記の包括的な届出をも行っている。そして,原告がいくつか行っている特許の個別的なライセンス許諾の宣言については,第三者に対する告知という制度の趣旨に則り,原告の保有特許権のうちITUの規格との関係が判明しているものの一部について,原告が,あくまで,任意に,自発的に,行っているにすぎない。 ITUに対する届出を行うに当たり,上記Bの個別の届出を行わなければならないなどというものではなく,ITUの勧告技術に対し,企業がすべての特許についてライセンスする意志がある場合は,包括的な宣言を行えばそれで十分であるし,とりわけ,上記のとおり,原告は,技術分野さえも特定しない包括的なライセンス許諾の申出を行っているのであるから,原告の対応に何の問題もないことは明らかである。 ウしたがって,原告は,ITUの精神に則り正しく特許について宣言をしているのであって,原告の本件特許権に基づく請求は,権利の濫用でもなく,信義則違背でもないことは明らかである。 ()争点( )(不法行為の成否)について - 71 -(原告)ア主位的主張-共同不法行為(ア)要約a主位的主張1住友電工及びNECが被告製品を輸入したこと,及び同社が被告製品を内蔵したモデムをNTTへ譲渡したことについて,被告らには,住友電工及びNECと,民法719条1項の共同不法行が成立する。 b主位的主張2仮に,住友電工及びNECの上記各行為について,被告らに,民法719条1項の共同不法行為が成立しないとしても,同条2項の共同不法行為が成立する。 (イ)説明a平成11年2月23日から平成15年8月30日までの間に,住友電工及びNECは,被告製品又は被告製品を内蔵するADSLモデムを,少なくとも合計665万7722ポ 法行為が成立する。 (イ)説明a平成11年2月23日から平成15年8月30日までの間に,住友電工及びNECは,被告製品又は被告製品を内蔵するADSLモデムを,少なくとも合計665万7722ポート分(住友電工は,295万1278ポート分,NECは370万6444ポート分)輸入し,輸入した被告製品を用いたADSLモデム又は輸入したADSLモデムをNTTに譲渡しているが,上記各行為は,本件特許権の間接侵害として,本件特許権を侵害するものとみなされる。 bまず,住友電工及びNECの上記aの各行為について,被告らには,民法719条1項の共同不法行為が成立するというべきである。 以下,詳述する。 (a)被告製品は,被告CCIが当初より日本市場に供給するためのものとしてNTTに提案した上で,日本のモデムメーカーである住友電工やNECと共同して開発したものである。被告製品は,- 72 -日本市場でのみ特に有用なAnnexC対応製品として,当初より専ら日本市場で流通させることを目的に開発,生産された製品である。被告ら自身が,被告製品がAnnexC対応製品であることを宣伝文句にしていることから明らかなとおり,被告製品にAnnexAなどの機能があるとしても,これは全く付随的な機能にすぎない。 そして,平成13年以降は,被告CCIの日本の営業所ともいうべき被告CJを日本に設立し,日本におけるテクニカルなサポート業務及びマーケティング活動を行っている。被告CCIは,自らの製品の日本市場における占有率を把握しているが,これは被告CCI自身が日本市場での被告製品の流通状況を把握していることの証左である。 以上のとおり,被告らは,住友電工及びNECとの共同開発の当初から,被告製品を専ら日本国内で流通させることについて,両社と共通の認識をもっており,開 製品の流通状況を把握していることの証左である。 以上のとおり,被告らは,住友電工及びNECとの共同開発の当初から,被告製品を専ら日本国内で流通させることについて,両社と共通の認識をもっており,開発によって完成した被告製品を,日本国内で流通させること,及びそのために日本に輸入されるべきことについても,両社と共同の意思をもっている。 そして,そのような共通の意図どおり,被告CCIは,住友電工やNECと被告製品の供給契約を結び(なお,NECとの関係では,実際の購入契約はNECUSAInc.(以下「NECアメリカ」という。)との間で締結されているが,これは便宜的な問題にすぎない。),両社の求めに応じて被告製品を両社に供給し続けており,その結果,被告CCIの全売上における日本市場での売上の比率は,少なくとも80ないし90パーセントを占めており,日本市場向けの被告製品を,日本市場において現実に流通させている。 (b)このような被告製品の性質,被告製品を日本市場に流通させる- 73 -ための被告らの準備行為,被告らと住友電工やNECとの共同の意思,及び被告CCIが被告製品を住友電工とNECの求めに応じて供給している事実からすれば,被告製品を日本に輸入しているのは,直接にはこれを購入した住友電工やNECであるとしても,それは,被告製品が開発,生産された時点から当然のこととして予定されているものであり,住友電工やNECとの共通の認識のもとに国内に搬入しているものということができる。 そして,被告CCIが住友電工及びNECと共同で開発した被告製品は専ら日本向けの製品であるから,このような開発を行えば必然的に住友電工及びNECによる輸入が行われ,これがNTTへと譲渡されるのであり,現に,住友電工及びNECは,被告製品の輸入及びNTTへの譲渡を ら日本向けの製品であるから,このような開発を行えば必然的に住友電工及びNECによる輸入が行われ,これがNTTへと譲渡されるのであり,現に,住友電工及びNECは,被告製品の輸入及びNTTへの譲渡を継続して行っているのであるから,被告CCIは,被告製品の共同開発,その後の製品の供給行為により,住友電工及びNECによる輸入及びNTTへの販売を客観的に共同して行ったものというべきである。 したがって,被告CCIの行為は,輸入者である住友電工やNECと共同して,被告製品を日本に輸入しているものと評価することができる。そして,被告らの間には,極めて強い社会的,経済的一体性が認められるから,被告らには,共同不法行為が成立する。 また,被告CCIは,開発当初からNTTと協力することで,実際の日本の通信環境を熟知していたこと,住友電工及びNECが,被告製品をNTTに供給することを熟知していたことから,日本国内での本件特許権の侵害について故意又は少なくとも過失を有する。 なお,住友電工及びNECが被告製品を内蔵したモデムをNTTに販売しなければ,NTTに採用されたのは,原告の製品であることは明らかであるから,住友電工及びNECと被告らの上記- 74 -行為により,原告に損害は発生した。 c仮に,住友電工及びNECの上記aの各行為について,被告らには,民法719条1項の共同不法行為が成立しないとしても,被告らは,同行為の教唆・幇助者に該当するから,同行為について,被告らには,民法719条2項の共同不法行為が成立する。 以下,詳述する。 (a)輸入行為について被告製品は,NTTが行っているISDNとの干渉を避けるⅰという日本国内市場特有の問題を解決するための技術(AnnexC対応技術)を,被告CCIが平成9年にNTTに提案し,その後,住友電工,N 被告製品は,NTTが行っているISDNとの干渉を避けるⅰという日本国内市場特有の問題を解決するための技術(AnnexC対応技術)を,被告CCIが平成9年にNTTに提案し,その後,住友電工,NEC,三菱電機などの日本企業と共同開発したことにより生まれたものである。 被告製品は,専ら日本国内向けの製品であるから,そのようなNTTに対する提案,住友電工及びNECらとの開発行為並びにその結果である被告製品の存在なくしては,住友電工及びNECによる輸入はあり得ない。したがって,被告CCIによるNTTに対する提案行為,住友電工及びNECとの間で行った共同開発契約,共同開発に当たって行った国内外における打ち合わせ等の行為,並びに開発成果たる評価ボードの住友電工及びNECへの提供などの各行為は,上記住友電工及びNECによる輸入の教唆又は幇助に当たる。また,被告製品は専ら日本国内向けの製品であるから,被告CCIには,国内での特許権侵害について故意又は少なくとも過失がある。 上記行為のうち,特に評価ボードの提供は,被告製品の輸入に当たり,それが国内の通信環境において使用し得るかどうかを判断するための重要なプロセスであり,国内における使用が可能で- 75 -あることが確認されれば,輸入が決定されるものであるから,評価ボードの提供は,住友電工及びNECに輸入の可否を決定してもらうための行為であり,住友電工及びNECの被告製品及び被告製品を搭載したモデムの輸入の教唆に当たる。このような評価ボードは,国内における通信環境においてのみ評価が可能なのであるから,その提供については被告ら社員が日本企業に自ら持参していたものと思われる。仮に,評価ボードが輸送されていたとしても,少なくとも,輸送に使用する運送会社を自らの手足として使用することで,住友電工及 ,その提供については被告ら社員が日本企業に自ら持参していたものと思われる。仮に,評価ボードが輸送されていたとしても,少なくとも,輸送に使用する運送会社を自らの手足として使用することで,住友電工及びNECに届けているものであり,評価ボードの提供は国内の行為として評価できる。 住友電工及びNECは,上記aで主張した期間において,前記ⅱ数量の被告製品を搭載したモデムを輸入していたものであるが,被告CCIは,住友電工及びNECとの間で,製品供給契約を締結し,上記期間中,住友電工及びNECの注文に応じて住友電工及びNECの指定する場所に被告製品を供給している。このような供給は,三菱電機など国内企業によって生産された被告製品が被告CCIから直接住友電工及びNECに供給され,国内においてモデムに加工される場合と,一旦国外に運ばれ,外国のモデムメーカーでモデムとして加工された後,住友電工及びNECが輸入する場合,国外で生産された被告製品が直接住友電工及びNECに供給されて国内においてモデムに搭載される場合,国外で生産された被告製品が外国のモデムメーカでモデムに加工された後,住友電工及びNECによって輸入される場合などがあり得るが,いずれにせよ被告CCIが住友電工及びNECの注文に基づいて指定どおり被告製品を供給することがなければ,住友電工及びNECが被告製品を輸入し,又は被告製品を搭載したモデムを輸入- 76 -することはできない。また,被告製品は専ら国内向け仕様であるから,住友電工及びNECらの注文に基づいて,日本国内の指定場所に被告製品を供給することは,本件特許権の間接侵害となる被告製品の輸入を直接幇助する行為であり,日本国外の指定場所に供給する場合についても,これらが国外でモデムに搭載される時間を経た後,日本国内に輸入され流通する することは,本件特許権の間接侵害となる被告製品の輸入を直接幇助する行為であり,日本国外の指定場所に供給する場合についても,これらが国外でモデムに搭載される時間を経た後,日本国内に輸入され流通することは必然なのであるから,これらの住友電工及びNECの注文に応じて,その指定された場所に被告製品を供給する行為は,前記住友電工及びNECの輸入の幇助に当たる。 また,被告CCIは,上記bのとおり,国内での特許権侵害について故意又は少なくとも過失がある。 被告CJは,日本の通信機メーカーとのより深い協力関係を築ⅲくことを意図して設立され,日本国内においてマーケティング活動を行い,問い合わせに応じるなどの営業活動を行っている。このような営業活動のうち,機器の故障やソフトウエアの不具合などに対処するサポート業務は特に重要であり,そのようなサポート体制なしには,住友電工及びNECが行う被告製品を搭載したモデムの譲渡は難しく,これを輸入する意味が失われる。 また,被告ら自身が,「被告CJは,被告製品のマーケティング活動を行って,日本国内の企業や日本国外の企業が,海外で被告製品を自らの製品に使用する為に海外で購入するよう図っているに過ぎない。」,「被告CJは,被告CCIの日本国外で販売する製品についての顧客からの問い合わせに対し,製品情報を提供し,被告CCIの日本国外における被告製品の販売活動をサポートするのである。」,「被告CJは被告CCIの日本国外における製品の販売をサポートするためにマーケティング活動をする- 77 -べく設立されたものであり」などと主張しているのであるから,このような被告らの主張によっても,被告CJが日本国内の企業が被告製品を輸入することを幇助していたということができる。 したがって,被告CJのサポート業務を含む営業活動は と主張しているのであるから,このような被告らの主張によっても,被告CJが日本国内の企業が被告製品を輸入することを幇助していたということができる。 したがって,被告CJのサポート業務を含む営業活動は,住友電工及びNECによる被告製品を搭載したモデムの輸入行為の教唆ないし幇助に当たる。また,被告製品は,専ら日本国内向けの製品であるから,被告CJには,国内での本件特許権侵害について故意又は少なくとも過失がある。 (b)譲渡行為について被告製品は,上記(a)で主張したとおり,ISDNとの干渉ⅰⅱを避けるという,NTTが抱えていた問題に対し,被告CCIがNTTに解決策を提案した上で,住友電工,NEC,三菱電機などの日本企業と共同開発したものであり,当初から主としてNTTへの販売を目的とした製品である。すなわち,被告製品は,開発当初からNTTに販売されることが予定された製品であり,そのような開発行為とその結果たる製品の存在なくしては,住友電工及びNECによるNTTに対する譲渡は不可能であり,被告らは被告製品をNTTに販売することについて明確な意図を持っていたのであるから,住友電工及びNECのNTTに対する譲渡の教唆又は幇助に当たるものとして評価できる。また,被告製品はNTTが抱えていた問題に対する解決策を示す製品(AnnexC対応製品)であり,被告CCIは,これがNTTに譲渡されることは知悉していたから,被告CCIには,国内での特許権侵害について故意又は少なくとも過失がある。 (c)この点,被告らは,被告らには故意・過失がなかったと主張する。 - 78 -しかし,被告CCIは,開発当初からNTTと協力しており,その使用する方法を知らなければ製品の開発などできるはずがないのであるから,被告CCIは,NTTが使用する方法を熟知してい る。 - 78 -しかし,被告CCIは,開発当初からNTTと協力しており,その使用する方法を知らなければ製品の開発などできるはずがないのであるから,被告CCIは,NTTが使用する方法を熟知していたはずである。この点については,三菱商事株式会社(以下「三菱商事」という。)とNTTとの契約(乙17,甲91)の13条において,NTTから三菱商事にコンサルティングを行う基礎となる必要情報が提供されることになっており,実際にも,同情報が被告CCIに伝えられていることからも明らかである。 また,被告CCIは,住友電工及びNECがNTTに製品を供給することについても十分に認識していた上に,これらの者と共同してNTTなどにマーケティングを行っている。 さらに,本件発明の共有権者である株式会社リコー(以下「リコー」という。)から住友電工あてに,平成13年7月16日付けで本件特許権侵害に関する書簡が送られており,以後,被告らが同侵害に関する紛争に対応しているのであるから,この時期以後,被告らは本件発明の存在さえも確実に認識していたのである。この点は,被告CJについても同様である。 したがって,被告らに少なくとも過失があることは明らかである。 イ予備的主張1(ア)要約被告らは,被告製品を,日本国内で,住友電工及びNECに対して,譲渡していると評価でき,被告らには,同行為について,本件特許権侵害の共同不法行為が成立する。 (イ)説明a特許法上の「譲渡」の意味特許法上の「譲渡」といえるか否かについては,所有権及び物の移- 79 -転に関連する重要な行為が国内で行われ,その結果として,最終的に所有権及び物自体が日本国内にいる者に移転していることを基本とし,その際の当該物の性質,対象となる行為の目的や態様などを併せて規範的な評価がなされなければ 為が国内で行われ,その結果として,最終的に所有権及び物自体が日本国内にいる者に移転していることを基本とし,その際の当該物の性質,対象となる行為の目的や態様などを併せて規範的な評価がなされなければならない。なお,上記の「所有権及び物の移転に関する重要な行為」とは,「譲渡の申出」と同義である。 この点について,以下詳述する。 (a)譲渡に「物の移転」が必要であるとする見解があるが,販売等に伴う物や所有権の移転は,①宣伝活動,評価ボードの提供などに代表される譲渡を誘発する行為,②購入希望者からの連絡,③売買契約(贈与契約)の締結,④物品の移転行為という経緯をたどって完成するのが通常である。このような物や所有権の移転が完成するための一連の行為が国境を跨いで行われることが当然なこととなっている昨今の国際取引においては,「物の移転」が必要であると解するとしても,特許法の趣旨に鑑みたより規範的な評価が必要である。 特許法上,特許権者は業として特許発明を実施する権利を占有するとし(特許法68条),同法2条3項において実施の概念を規定しているところ,発明の実施形態として考えられる行為態様のうちで特許法上の実施概念から除外されているのは,日本国内における権利者の利益を害し得ない態様のみとなっている。このような特許法の規定からして,業としての実施権限を特許権者に独占的に付与し,特許権者による我が国内における特許権に係る利益を害する行為を網羅的に禁止することこそが特許法の趣旨なのであるから,このような趣旨に鑑み,日本における特許権者の利益が害されているのか否かをメルクマールとした合理的な解釈が積極的に採用されるべきである。今日のグローバル化した取引の現状の下では,そのよ- 80 -うな合理的な解釈でなければ,特許法による特許権者の保護を全うするこ かをメルクマールとした合理的な解釈が積極的に採用されるべきである。今日のグローバル化した取引の現状の下では,そのよ- 80 -うな合理的な解釈でなければ,特許法による特許権者の保護を全うすることはできない。 (b)本件のような海外の行為が関与する事案においては,さらに,特許法における属地主義の観点からの考察が必要である。 すなわち,属地主義の観点から,海外における譲渡に関連する行為そのものを禁止することはできないので,禁止される対象の行為そのものは,日本における行為であり,また,最終的に所有権及びその物自体が日本国内にいる者に移転することは必要とすべきである。 海外において海外の者に対し製品の販売を行うことは自由であるが,海外にいる者であっても,日本において譲渡に関連する宣伝活動や譲渡の申出などを行うことは違法と評価されるし,その結果として現実に侵害品が日本にいる者に移転したのであれば,そのような行為による結果を併せて違法と評価すべきである。「譲渡」とは,所有権の移転を含む概念であり,売り手側の行為のみではなく,買い手側の行為による結果をも併せて成立するものであるから,国内の者に対する所有権と物の移転という「結果」を評価することは,「譲渡」の解釈として合理的である。 (c)「譲渡」の意味を上記のように解する場合には,日本で行為が行われた時点では,当該行為は違法ではないのに,後に日本にいる者に所有権及び物が移転すれば,遡って当該行為が違法となることになるのか否かという解釈上の疑問が残る。 しかし,原告の主張は,日本で行われた行為は「譲渡の申出」として違法であり,所有権及び物が日本にいる者に移転したという結果が発生することにより,当該行為が「譲渡」として違法と評価されることになるとするものであり,違法でないものが後で違法にな- の申出」として違法であり,所有権及び物が日本にいる者に移転したという結果が発生することにより,当該行為が「譲渡」として違法と評価されることになるとするものであり,違法でないものが後で違法にな- 81 -るとしているのではない。 また,従来の学説であっても,特許法上の「譲渡」といえるためには,所有権と物とが相手方に移転することが必要であるが(所有権の移転は,「貸し渡し」と区別するために必要である。),そのためには,売主側の行為のみならず,買主側による契約締結の意思表示や物の受領行為という他者の行為,言い換えれば,他者への所有権及び物の移転という「結果の発生」が必要なはずであり,このような結果の発生がなければ,売主の行為自体は「譲渡」には該当しない。すなわち,譲渡という行為類型自体は,売主による所有権及び物の移転に向けられた行為(例えば譲渡の申出)が,他者への所有権移転及び物の移転という結果の発生によって,結果的に「譲渡」と評価される行為類型であると解されるのである。 このように,売主による販売の意思表示すなわち「譲渡の申出」があり,その結果として,所有権及び物が相手方に移転していることにより,譲渡が成立するとの理解は,従来の学説における基本的な「譲渡」の理解と異なることはないはずである。 b被告らの行為が特許法上の「譲渡」に当たること(a)被告CCIは,専ら日本国内における流通を目的とした被告製品を国内企業と共同で開発し,被告CJを国内に窓口として設立し,被告CJと共に国内において積極的に被告製品の販売活動をし,被告製品の心臓部を国内生産するなど,国内で被告製品を頒布できるすべての条件を整えた上,日本企業との間で被告製品の供給契約を締結し,その契約に基づき現実に国内企業にこれを供給することによって,最終的に被告製品を国内に 内生産するなど,国内で被告製品を頒布できるすべての条件を整えた上,日本企業との間で被告製品の供給契約を締結し,その契約に基づき現実に国内企業にこれを供給することによって,最終的に被告製品を国内に持ち込ませて国内市場に流通させているので,これらの行為は,特許法上の譲渡と評価すべきである。 - 82 -なお,被告CJは,実質的には,被告CCIの日本における営業所にすぎず,被告らの間には,極めて強い社会的,経済的一体性が認められるから,被告らの行為を全体としてみれば,被告らが共同して譲渡行為を行っているといえる。 (b)被告CCIは,被告製品を,外国から直接国内企業に供給するか,又は外国企業を介して国内企業に供給する,という手段によって,日本国における特許権を潜脱しようとしているが,このような行為は,現実に国内の需要者に特許侵害品を供給し侵害品を国内で流通させる行為であり,国内で侵害品を需要者に頒布する行為と実質的に区別がつかない。仮に,被告の行為のように,国内で流通させるためのお膳立てをすべて整えた上で,単にその供給方法を海外から国内の需要者に対して送付する,という行為とすることによって,特許法の保護を免れるものとすれば,今日のように国際的な流通手段や通信手段が発達した現状においては,特許権の潜脱は極めて容易なことであり,知的財産の保護は到底果たせない。 ウ予備的主張2(ア)要約被告らは,日本国内で,日本企業に対し,被告製品の譲渡の申出をしており,被告らには,同行為について,本件特許権侵害の共同不法行為が成立する。 (イ)説明a「譲渡の申出」の意味(a)特許法101条の「譲渡の申出」に該当するというためには,客観的に日本国内における流通を目的とする態様の誘因活動があれば足りると解すべきで,特許法上,「譲渡」と「譲 a「譲渡の申出」の意味(a)特許法101条の「譲渡の申出」に該当するというためには,客観的に日本国内における流通を目的とする態様の誘因活動があれば足りると解すべきで,特許法上,「譲渡」と「譲渡の申出」は別の実施態様と規定されている以上,その誘因活動によって惹起され- 83 -る結果は必ずしも厳密に「譲渡」に該当する態様でなければならないものではなく,特許権者による特許製品を「譲渡」する利益を害する対応の行為であれば足りると解すべきである。 客観的に「譲渡の申出」に該当する行為があり,その行為が,例えば,特許に係る製品の輸入行為といった違法行為を誘発する蓋然性が高い行為であれば,後に発生する行為が「譲渡行為」そのものでなくてもこれを禁止すべきと解釈しても,客観的に「譲渡の申出」に該当する行為が行われている以上,何ら条文に反するところはなく,むしろ,このように解釈することが法の趣旨に適合した解釈というべきである。 (b)この点,被告らは,「譲渡の申出」は,「国内における譲渡のための譲渡の申出」に限定されると主張する。 しかし,「譲渡の申出」は,「譲渡」という侵害行為の予備段階について,「譲渡」とは別の侵害態様として規定されているものであるが,その趣旨は,そのような行為(典型的にはパンフレットの配布行為など)自体の違法性のみで侵害行為というに足りるとの価値判断によるものである。そうであれば,パンフレットの配布などの行為自体で侵害行為たり得るとするのが法の趣旨であって,それが日本国内における譲渡のための行為であるのか否かは,単なる行為者の主観の問題にすぎないというべきである。条文上も被告が主張するような限定は付されていない。 したがって,特許法における「譲渡の申出」は「国内における譲渡のため」のものに限定されるものではない。 ( の主観の問題にすぎないというべきである。条文上も被告が主張するような限定は付されていない。 したがって,特許法における「譲渡の申出」は「国内における譲渡のため」のものに限定されるものではない。 (c)また,被告らは,「譲渡の申出」があったというためには,日本国内において,当該特許に係るものを所持している必要がある旨主張する。 - 84 -しかし,例えば,「カタログによる勧誘」,「パンフレットの配布」において,これらの行為に加え,現実の物の所持まで要求されるのであれば,特許法100条1項における予防請求として「譲渡等」の差止めが認められるケースがほとんどであろうから,あえて「譲渡の申出」を規定する実益はほとんど認められない。また,実質的に考えてみても,例えば,大型機械,家屋,マンションについては,注文がなされてから物の製造が行われることが多いが,仮に,「譲渡の申出」に所持が必須と解するのであれば,このような場合には,配布されているパンフレットや設計図などからして,これが製造された場合には,特許権を侵害することが明らかな場合であっても,「譲渡の申出」には該当しないことになってしまい,「譲渡の申出」を規定した趣旨が完全に没却してしまう。したがって,「譲渡の申出」に該当するためには,物の所持が必須であると解釈することはできず,少なくとも,当該「譲渡の申出」行為に基づいて,物を現実に供給できる関係にあれば足りると解釈されなければならない。 b被告らの譲渡の申出行為について本件においては,日本国内で被告らが行った商品の宣伝行為,とりわけ,サンプル出荷及び評価ボードの提供行為が「譲渡の申出」に該当する。 評価ボードとは,「購入を検討する企業が社内的な評価を行う為に使用するもの」と被告が自認しているように,被告製品の購入の決定にとって, プル出荷及び評価ボードの提供行為が「譲渡の申出」に該当する。 評価ボードとは,「購入を検討する企業が社内的な評価を行う為に使用するもの」と被告が自認しているように,被告製品の購入の決定にとって,最も重要な物品,最も重要で必ず実行されるプロセスであり,これで所望の性能を含めた仕様を満足していることが確認されれば,直ちに,購入が決定されるといっても過言ではない。 また,被告CCIは,繰り返し日本において被告製品の販売のため- 85 -の宣伝等を行っているが,これらの行為もすべて譲渡の申出に該当するものである。 なお,被告CJは,上記イのとおり,被告CJは,実質的には,被告CCIの日本における営業所にすぎず,被告らの間には,極めて強い社会的,経済的一体性が認められるから,被告らの行為を全体としてみれば,被告らが共同して譲渡の申出を行っているといえる。 エ予備的主張3(ア)要約被告らは,三菱電機を下請けとして,日本国内において,被告製品に利用されるウエハ(以下「本件ウエハ」という。)を生産させており,同行為は,被告らによる生産行為と評価でき,同行為について,被告らに,本件特許権侵害の共同不法行為が成立する。 (イ)説明a被告CCIは,被告製品の心臓部である本件ウエハを,日本の三菱電機に委託して国内生産している。 b被告らは,三菱電機によって供給される製品が,単なるウエハにすぎず,ADSL製造用に使用されるウエハではない旨主張する。 しかし,被告CCIが三菱電機に製造委託している本件ウエハは,被告CCIが設計したADSL向けシステムLSIであり,このシステムLSIは国際電気通信連合(ITU)の「G・ライト」規格に準拠したADSLモデム向けの製品で,被告CCIの専用DSP(デジタル・シグナル・プロセッサー)を生かしたADSL処理回 であり,このシステムLSIは国際電気通信連合(ITU)の「G・ライト」規格に準拠したADSLモデム向けの製品で,被告CCIの専用DSP(デジタル・シグナル・プロセッサー)を生かしたADSL処理回路に,三菱電機の高速SRAM及び位相同期回路(PLL)の機能ブロックを組み合わせている製品なのであって,一般的なウエハなどという被告らの主張は明らかに事実に反する。 また,3.9条(f)では,4つの製品が明示されており,それらは,- 86 -すべてADSL用のチップセットであること,3.8条は,プロトタイプ(試作品)や大量生産について規定されていること,米国の被告CCIの年次報告書からしても,被告CCIがウエハ自体を商品としていないことは明らかであって,被告CCIが一般的に使用されるウエハの製造委託などするはずがないことから,三菱電機が行っていたのは,被告製品用のウエハの製造であることは疑問の余地がない。 cまた,被告らは,本件ウエハは,電気的な機能を有しない単なるシリコンの破片にすぎない旨主張する。 しかし,被告らの主張からすれば,本件ウエハは,DSP,メモリ,I/O,ロジック(回路パターン)を有するシステムLSI(平成10年10月13日付けの新聞記事(甲14)に記載のある「ADSLモデム向けシステムLSI」)ということができ,また,本件ウエハの小片は,電気的なテストを受けていること,契約書の添付(EXHIBIT)Dには,ADSLモデム製品に使用される半導体チップの型名ごと(4種類)に歩留りが規定されていることなどからすれば,本件ウエハは,まさにADSLモデムの機能を有し,ADSLモデムの心臓部たる機能を有する半導体チップであり,被告らの上記主張は全く技術的根拠に欠ける。 本件ウエハは,単なるシリコンの板などではなく,被告CCIがウ さにADSLモデムの機能を有し,ADSLモデムの心臓部たる機能を有する半導体チップであり,被告らの上記主張は全く技術的根拠に欠ける。 本件ウエハは,単なるシリコンの板などではなく,被告CCIがウエハに焼き付ける(ADSLモデムの心臓部たるソフトウエアを半導体チップに書き込むことをいう。)マスクを三菱電機の西条工場に提供し(契約書2.3条),西条工場で,メモリ,入出力,ロジック又はアナログエレメントを含む半導体チップを製造し(契約書1.4条製品の定義条項),処理済製品を,日本において被告CCIに引き渡す(契約書3.8条(f))とするものであるから,回路パターンやメモリなどをすべて備えた,ICとしての機能を有するもので,これに外部- 87 -接続用の端子を設ければ半導体チップとして完成する,まさに被告製品そのものである。 また,被告CCIと三菱電機アメリカとの間で締結されたウエハ供給契約(以下「本件ウエハ供給契約」という。)の契約書(甲47の5,乙27)には,ウエハにとどまらず,製品すなわち半導体チップまで製造することが記載されている。 dまた,被告らは,本件ウエハ供給契約は,被告CCIと三菱電機アメリカ(MELA)との間の契約であることを理由に,三菱電機(MELCO)西条工場によるウエハの製造をもって被告CCIの製造と同視することはできないとも主張する。 しかし,三菱電機の西条工場で製造させることは,他ならぬ被告CCI自身が当事者となって締結された契約書において規定されているのであるから,被告CCIは,西条工場で製造するよう指示した当事者であることは明らかである。また,本件ウエハ供給契約の契約書の3.1条は,「三菱電機または三菱電機アメリカがウエハの製造地の変更を希望する場合は,被告CCIの書面による事前了解を得なければならな 者であることは明らかである。また,本件ウエハ供給契約の契約書の3.1条は,「三菱電機または三菱電機アメリカがウエハの製造地の変更を希望する場合は,被告CCIの書面による事前了解を得なければならない」として,三菱電機グループが製造地を自由に決定できない旨規定されており,これは被告CCIが製造地の最終決定権を持つことを意味しているから,製造地を被告CCIが完全にコントロールしていたことは明らかである。 (被告ら)ア主位的主張に対して(ア)被告CCIは,住友電工及びNECが被告製品を輸入,譲渡することについて,上記両社と共同関係にはなく,また,上記両社を幇助,教唆したこともない。被告CCIは,上記両社の被告製品の輸入行為について,これを日本国外で販売したという以上の何らの関与を有していな- 88 -いのである。この点を,以下詳述する。 被告製品(CopperLiteシリーズのみである。)は,被告CCIが,xDSL技術の開発を住友電工及びNECらとの間で共同で行う際に,その日本向け対応製品の開発を住友電工及びNECが担当し,その結果として完成されたものにすぎない。また,被告CCIと住友電工及びNECとの間の共同開発契約は,いずれも平成9年から平成11年にかけて締結されたものであり,平成12年にはいずれの契約も終了しているのであるから,それ以降,被告CCIは,何ら住友電工及びNECとの契約とは関係なく,製品の開発,供給をしているのである。 また,上記の共同開発契約は,専ら日本向けの製品の開発を目的としているわけではなく,インターネットが用いられている各市場において使用することのできる製品を開発することを目的としているのである。 被告製品は,日本(AnnexC)に限らず,米国及びその他の国(AnnexA)で用いることができるのである。 られている各市場において使用することのできる製品を開発することを目的としているのである。 被告製品は,日本(AnnexC)に限らず,米国及びその他の国(AnnexA)で用いることができるのである。このことは,被告CCIと住友電工との平成9年10月15日付共同開発契約(甲47の2)において,「この提携の目的は・・・インターフェースデバイス技術とシステムを開発することである」とされ,「インターフェースデバイスは・・・xDSLの主要都市に対応できるものでなければならない」とされていること,NECとの平成10年4月3日付共同開発契約(甲47の4)においても,「この提携の目的は,G.LiteおよびJDSLデバイスの開発を協力して行うこと」とし,開発目的としてG.Liteデバイスの開発も含まれていることからも明らかである。また,被告CCIの製品を供給する契約についても,例えば住友電工との契約では,被告CCIの供給する製品は,日本向けの規格であるAnnexCのみならず北米向けの規格であるAnnexAにも対応することとされており,特に日本のみに被告CCIの製品を供給することを目的とするもの- 89 -ではない。 また,住友電工及びNECに対する被告製品の供給は,両社との供給契約に基づくものではなく,個別の発注に基づいて行っている。 (イ)被告CJは,被告CCIの日本国外で販売する製品を紹介したり,同製品に関する情報を提供したり,マーケティング活動をサポートするなどして,被告CCIの日本国外における被告製品の販売活動をサポートしているにすぎず,被告製品を輸入したり,日本国内で販売していない(被告製品は,上記のとおり,日本国外で,被告CCIからその顧客に直接販売されたのである。)。なお,ここでいう「サポート」とは,被告製品に対するクレーム等の情報 輸入したり,日本国内で販売していない(被告製品は,上記のとおり,日本国外で,被告CCIからその顧客に直接販売されたのである。)。なお,ここでいう「サポート」とは,被告製品に対するクレーム等の情報伝達や,新技術発表に際してのロジスティックな活動等のことである。 被告CJの上記行為により,住友電工及びNECが,被告製品を輸入,譲渡することが容易になるということは全くない。 また,被告CJが設立されたのは,平成13年3月であり,この時点では,既に,被告CCIが住友電工及びNECとの間で,被告製品についての契約を締結し,被告製品の提供を完了していたのであるから,被告CJが,被告製品の日本への供給に関与していたことはない。 したがって,住友電工及びNECが被告製品を輸入,譲渡することについて,被告CJは上記両社と共同関係にはなく,また,上記両社を幇助,教唆したこともない。 (ウ)そもそも,特許法が特許権の侵害行為について,直接侵害のみならず間接侵害に該当する行為にまで拡大して特許権の保護を図っている趣旨は,特許権を適正な範囲で保護するため,限定的に侵害行為概念を拡張したものあるから,間接侵害に該当しない行為を民法上の共同不法行為に取り込むとしても,その範囲は上記特許法の趣旨に反しない範囲に限定されるべきであり,民法上の不法行為論に取り込むこ- 90 -とにより不当にその範囲を拡張することは許されるものではない。 したがって,直接侵害者に対する幇助,教唆として共同不法行為に当たる行為といえるためには,直接侵害者の行為が特許権を侵害することを現に認識していることまで必要であると解すべきである。 ところが,被告らは,被告製品が世界的な規格であるITU勧告に従ったものであることから,本件製品を組み込んだモデムが特許権を侵害するなどとは到底想定し得な ていることまで必要であると解すべきである。 ところが,被告らは,被告製品が世界的な規格であるITU勧告に従ったものであることから,本件製品を組み込んだモデムが特許権を侵害するなどとは到底想定し得なかったのである。 したがって,被告らに,住友電工及びNECの本件特許権侵害の不法行為について,同社との共同不法行為が成立することはない。 (エ)また,住友電工及びNECがADSL用モデムを販売したことによって,原告に損害は発生せず,仮に,損害が発生したとしても,住友電工及びNECの上記行為との間に因果関係はない。また,被告らには,原告の主張する不法行為について,故意,過失もない。 イ予備的主張1に対して原告の予備的主張1によれば,「譲渡」というためには,①契約の存在,②所有権及び物の移転に関連する重要な行為が国内で行われること,③所有権及び物自体が日本国内にいる者に移転していること,④③が②の結果に基づくことの要件が満たされる必要がある。 しかし,このように考えると,日本で②の行為が行われた時点では,当該行為は違法ではないのに,後から③が満たされることで,当該行為が違法となってしまい,違法とされる「譲渡」概念が極めて不明確になってしまう。 また,上記②で規定する「重要な行為」というものが「譲渡の申出」と同じ概念ならいざしらず,そうでないとすれば②で規定する「重要な行為」という概念と「譲渡の申出」の概念の関係が不明確であるし,「譲渡の申出」ではない「重要な行為」がなされた場合については,なぜ,当初よ- 91 -り違法であるのかに関して何らの説明がなされていない。 また,原告は,単に「今日のグローバル化した取引の現状」というものを根拠に上記要件を規範的に解すべきであると主張するが,そもそも「今日のグローバル化した取引の現状」というものが何を意 されていない。 また,原告は,単に「今日のグローバル化した取引の現状」というものを根拠に上記要件を規範的に解すべきであると主張するが,そもそも「今日のグローバル化した取引の現状」というものが何を意味するのか明確ではない。グローバル化した取引の中では,譲渡の概念は明確でなければならず,日本が世界の人々が理解できない複雑・怪奇な譲渡概念を勝手に作り出せば,国際取引はかえって混乱するだけである。 また,特許法は,発明の保護及び利用を図ることにより,発明を奨励し,もって産業の発達に寄与することを目的とするものである以上,権利者と発明を利用する者とのバランスを考慮して特許権の及ぶ範囲を規定しているのである。にもかかわらず,海外にいる者については,要件を規範化して考えることで「譲渡」概念を広く捉え,容易に譲渡行為があると考える原告の主張は,我が国の特許法が,実施行為として,国内へ「輸入」する行為を禁止しながらも,国外での譲渡行為自体を規定していないことに反するものである。 ウ予備的主張2に対して(ア)被告CCIは,被告製品の日本における販売の申出をしておらず,被告CJは,被告製品の販売の申出自体を全くしていない。被告CCIによる販売の申出は,日本国外での販売に関するものである。 評価ボードは,通常,販売されないものであり,購入を検討する企業が,社内的な評価を行うために使用するものであるが,被告製品の評価ボードの提供は日本国外で行っている。 また,顧客からの価格の問い合わせに応じる行為は,「譲渡の申出」ではない。 さらに,被告らは,日本において,被告製品の宣伝もしていない。 (イ)そもそも,「譲渡の申出」を侵害態様として規定した趣旨は,「譲- 92 -渡」という侵害行為の予備的態様である「譲渡の申出」をも侵害行為として取り込んだものであり, 品の宣伝もしていない。 (イ)そもそも,「譲渡の申出」を侵害態様として規定した趣旨は,「譲- 92 -渡」という侵害行為の予備的態様である「譲渡の申出」をも侵害行為として取り込んだものであり,したがって,「譲渡の申出」の「譲渡」とは,我が国内での譲渡でなければならないことは当然である。したがって,本件のように日本国内において譲渡行為が全く認められない事案において,「譲渡の申出」のみを認める余地はないというべきである。 この点,原告は,「譲渡の申出」という行為は「譲渡」という行為を前提にしていないので,仮に被告CCIが日本国内における「譲渡」をしていないとしても,「譲渡の申出」はしていると主張する。 しかし,譲渡行為を前提としないというのは,譲渡の申出として侵害行為が成立するには,その後に実際に譲渡行為が行われることを要しないというだけのことであって,譲渡行為が観念的に存在し得ない場合にも,特定の行為が「譲渡の申出」に該当するとして侵害の成立を是認するということではない。「譲渡の申出」は「譲渡」の予備的行為として実施行為の概念に含まれたのであるから,「譲渡」そのものがあり得ない場合において,何らかの行為が「譲渡の申出」として侵害行為を構成すると解釈することは誤りである。 (ウ)また,「譲渡の申出」があるといえるためには,特許に係る物を別途所持していた事実等を立証し,当該物の譲渡又は貸渡しを申し出たことを特定する必要があるところ,原告は被告CCIが被告製品を国内で所持した上で譲渡又は貸渡しを申し出たことを何ら主張,立証していない。 エ予備的主張3に対して(ア)被告製品の製造工程被告製品(チップセット)は,デジタルチップ,アナログチップ,その他型番によってはラインドライバ製品からなる,「セット製品」であるが,その製造過程は,以 的主張3に対して(ア)被告製品の製造工程被告製品(チップセット)は,デジタルチップ,アナログチップ,その他型番によってはラインドライバ製品からなる,「セット製品」であるが,その製造過程は,以下のとおりである。 - 93 -①デジタルウエハ製造②①を原材料にして,デジタルチップ製品製造③アナログウエハ製造④③を原材料にして,アナログチップ製品製造そして,上記工程②,④には,ウエハからのチップの切り出し,パッケージング,テスト等の多くの工程が含まれ,それらの工程が,国外の異なる複数の専門業者によって実施されており,また,被告製品を購入した者は,上記のデジタルチップ製品とアナログチップ製品を,ホストコントローラ等,他のハードウェア,チップ,アナログコンポーネントと共に回路基板の上に組み合わせることになる。 なお,このうち,アナログウエハの製造は,台湾の会社であるユナイテッド・マイクロエレトロニクス・コーポレーションが行っている。 上記の工程のうち,三菱電機が行ったのは,①の工程のみである。 (イ)三菱電機が製造している本件ウエハは,上記(ア)の①のウエハであるが,同ウエハは,一般的な半導体チップを製造するためのウエハにすぎず,AnnexAにもAnnexCにも用いられるものである。 本件ウエハは,シリコンの薄い断片にすぎず,被告製品は,本件ウエハに,ADSL機能を発揮するためのソフトウェア,ファームウェア等を組み込んで(チップにロードして)初めて,その機能を果たすことになるのである。なお,上記のソフトウェア,ファームウェアは,被告製品とは別の外部のコンポーネントであって,ウエハに焼き付けられるものではない。ウエハに焼き付けられるのは回路パターンであるが,本件ウエハに焼き付けられた回路パターンには,R-MEDLEY信号等は入 品とは別の外部のコンポーネントであって,ウエハに焼き付けられるものではない。ウエハに焼き付けられるのは回路パターンであるが,本件ウエハに焼き付けられた回路パターンには,R-MEDLEY信号等は入っていない。 したがって,三菱電機が被告製品を製造しているということはできない。 - 94 -(ウ)被告CCIは,三菱電機ではなく,三菱電機アメリカに本件ウエハの製造を委託したにすぎず,三菱電機アメリカが,更に三菱電機に本件ウエハの製造を委託したのである。 被告CCIと三菱電機との間の契約書には,「MELAはMELCOに製造させる」との記載があるが,三菱電機アメリカが三菱電機に本件ウエハを製造させることは,基本的には製造受託者内部の問題であり,被告CCIには関係のない問題である。 したがって,三菱電機の西条工場での本件ウエハの製造をもって,被告CCIの製造と同視することはできない。 (エ)原告は,本件ウエハは,電気的テストを受けている旨主張する。 しかし,ウエハの小片は,ウエハから切り出した後,チップを製造する過程で電気的テストを受けるが,これは,シリコンの小片がADSLチップとしての機能を有するということを意味しない。 また,本件ウエハは,平成10年10月13日付けの新聞記事(甲14)に記載のある「ADSLモデム向けシステムLSI」とは異なる。 ()争点( )(損害額)について (原告)ア本件における損害額の説明(ア)総論本件における損害額をまとめると,別紙損害額表(以下「損害額表」という。)のとおりである。 まず,損害額表では,期間を,()(本件特許登録後~)平成13年ⅰ5月19日まで,()平成13年5月20日~平成14年6月末まで,ⅱ()平成14年7月1日~権利満了日までに分けており,()の期間は,ⅲ は,期間を,()(本件特許登録後~)平成13年ⅰ5月19日まで,()平成13年5月20日~平成14年6月末まで,ⅱ()平成14年7月1日~権利満了日までに分けており,()の期間は,ⅲⅰ被告らが時効を援用すれば,時効によって損害賠償請求権が消滅する期- 95 -間であり,()の期間は,三菱電機が本件ウエハを全量生産していた期ⅱ間であり,()の期間は,()以後権利満了日までである。 ⅲⅱ次に,損害額表中,「逸失利益」の欄は,特許法102条1項(この適用ないし類推適用がない場合には民法709条)に基づく請求の場合の損害額であり,「実施料相当額」の欄は,102条3項又は不当利得返還請求権に基づく場合の損害額である。なお,本件発明はリコーとの共有であるため,実施料相当額では,2分の1を掛けている。 損害額表における各損害額は,すべてNEC及び住友電工が日本でADSLモデムをADSL事業会社に販売したことにより生じた損害である。なお,1万円未満は,四捨五入した。 (イ)各論a損害額表の③及び④について(a)計算式についてこの期間の基本的な計算式は,NTTの回線数×原告製品の宅用及び局用モデムの価格×モデムの利益率×チップセットの寄与率である。 (b)NTTの回線数についてNTTにモデムを納入しているモデムメーカーは,住友電工及びNECのみであり,NTTのADSL加入者数は総務省の発表から把握することができ,それによると,本件特許の権利満了日である平成15年8月末時点での,NTTのADSL提供回線数は332万8861回線であり,三菱電機が生産を終了した平成14年6月末時点での,NTTのADSL提供回線数は,138万7409回線(74万9827+63万7582)である。また,不法行為の時効が問題となる平 861回線であり,三菱電機が生産を終了した平成14年6月末時点での,NTTのADSL提供回線数は,138万7409回線(74万9827+63万7582)である。また,不法行為の時効が問題となる平成13年5月19日時点のNTTのADSL提- 96 -供回線数は,5月分を日割り計算して考えると,7万8535回線となる(5万258+(9万6394-5万258)×19/31)。 したがって,平成13年5月20日から平成14年6月末までのNTTのADSL提供回線数は130万8874回線となり,平成14年7月1日から平成15年8月末までのNTTのADSL提供回線数は194万1452回線となる。 (c)原告製品の宅用及び局用モデムの価格,モデムの利益率及びチップセットの寄与率について原告におけるADSLモデムの価格は宅用CPEモデムが1台当たり1万500円程度,局用COモデムが1ポート当たり7000円程度,利益率が20パーセント程度,モデム全体におけるチップセットの原価比率は25パーセントを下らない。 (d) 結論 以上から,損害額表中の③における損害額は,11億4527万円(×()××)とな1,308,874,00010,500+7,0000.20.25=1,145,270,000り,同様に,損害額表中の④における損害額は,16億9877万円(×()××)とな1,941,452,00010,500+7,0000.20.25=1,698,770,000る。 b損害額表中の①及び②について(a)計算式について損害額の計算式としては,対象がNTT以外のプロバイダーであることを除けば,③及び④と同様であるので,NTT以外のプロバイダーの回線数×(原告製品の宅用及び局用モデムの価格)×モデムの利益率×チップセッ の計算式としては,対象がNTT以外のプロバイダーであることを除けば,③及び④と同様であるので,NTT以外のプロバイダーの回線数×(原告製品の宅用及び局用モデムの価格)×モデムの利益率×チップセットの寄与率となる。 - 97 -(b)NTT以外のプロバイダーの回線数についてNTT以外のプロバイダーで,被告製品を採用しているプロバイダーとしては,代表的なところとしてイーアクセス及び日本テレコムがあり,その回線シェアについては,マルチメディア研究所が発表しているデータがあり,これによれば,平成15年9月時点のシェアは,NTT東日本が20.7%,NTT西日本が16.5%,イーアクセスが12.9%であるので,平成14年7月1日から平成15年8月末まで(損害額表の「~末」)のシH14/07/01H15/8ェアのデータとしてはこの数字を使用する。 同様に,平成14年2月時点におけるシェアは,上記データによれば,NTT東日本が21.7%,NTT西日本が18.3%,イーアクセスと日本テレコムの合計が18.2%(10.5+7. 7)であるので,平成13年5月20日から平成14年6月末まで(損害額表の「~末」)のシェアのデータとしてH13/05/20H14/6は,この数字を使用し,平成13年3月末時点におけるシェアは,NTT東日本が24%,NTT西日本が13.9%,イーアクセスと日本テレコムの合計が23.9%(23.3+0.6)であるから,平成13年5月19日以前(損害額表の「~まH13/05/19で」)のシェアのデータとしては,この数字を使用する。 さらに,イーアクセス(日本テレコムを含む。)には住友電工及びNEC以外のモデムメーカーの製品が使用されている可能性があり,この分を除外する必要があるが,その正確な数値は不明である 字を使用する。 さらに,イーアクセス(日本テレコムを含む。)には住友電工及びNEC以外のモデムメーカーの製品が使用されている可能性があり,この分を除外する必要があるが,その正確な数値は不明であるため,証拠(甲73の1の157頁)のモデムメーカー別の数量シェアグラフ記載の「その他」が除外すべき最大限といえるため,これをイーアクセス及び日本テレコムの回線シェアからすべて除外することとし(これにより,住友電工及びNECの販売量を少なめに- 98 -見積もったことになる。),除外すべき数値は,平成13年については5.3%を,平成14年以後は1.4%を使用する。 以上から,まず,損害額表中の各時点における他社(イーアクセス及び日本テレコム)のシェアから回線数を求めると,以下のとおりとなる。なお,以下の式では,その時点における上記NTTに関する総務省データを基に計算している。 平成15年8月末時点での,イーアクセス及び日本テレコム提ⅰ供回線のNEC,住友電工納入分102万9083回線(× () ()=332886112.9-1.4 / 20.7+16.5)1,029,083平成14年6月末時点での,イーアクセス及び日本テレコム提ⅱ供回線のNEC,住友電工納入分58万2712回線(× () () =1,387,40918.2-1.4 / 21.7+18.3)582,712平成13年5月19日時点の,イーアクセス及び日本テレコムⅲ提供回線のNEC,住友電工納入分3万8542回線(×() ()=)7853523.9-5.3 / 24.0+13.938,542したがって,損害額表中の各期間の回線数は,以下のとおりとなる。 平成13年5月20日から平成14年6月末までの,イーアクⅰセス及び日本テレコム .9-5.3 / 24.0+13.938,542したがって,損害額表中の各期間の回線数は,以下のとおりとなる。 平成13年5月20日から平成14年6月末までの,イーアクⅰセス及び日本テレコム提供回線数(NEC,住友電工分)54万4170回線(-)582,71238,542=544,170平成14年7月から平成15年8月末までの,イーアクセス及ⅱび日本テレコム提供回線数(NEC,住友電工分)44万6371回線(-=)1,029,083582,712446,371(c) 結論 - 99 -以上から,損害額表中の①における損害額は,4億7615万円(×()××億万)となり,損544,17010,500+7,0000.200.25=47,615害額表中の②における損害額は,3億9057万円(×446,371()××億万)となる。 10,500+7,0000.20.25=39,057c損害額表中の⑤ないし⑦について(a)被告製品の各期間における売上について証拠(甲93の1~4)には,被告製品の各年の12月末日付ⅰけの売上高が,以下のとおり記載されている。 平成11年2509(千ドル)平成12年56324(千ドル)平成13年159207(千ドル)平成14年104784(千ドル)平成15年124863(千ドル)次に,住友電工及びNECについては,証拠(甲93の1~ⅱ4)に被告CCIにおける総売上高に対する比率が記載されており,その数値は以下のとおりである。 平成11年住友電工34.4%,NEC21.1%平成12年住友電工20.0%,NEC10.2%平成13年住友電工48%,NEC38%平成14年住友電工41%,NEC45%平成15年住友電工31 年住友電工34.4%,NEC21.1%平成12年住友電工20.0%,NEC10.2%平成13年住友電工48%,NEC38%平成14年住友電工41%,NEC45%平成15年住友電工31%,NEC49%以上の売上高は単位がドルとなっているので,これを円換算すⅲる必要がある。そのレートについては,日本銀行公表の外為法報告で使用する換算レートの年平均を使用した。 以上を基に,各期間における被告CCIの売上等をまとめると,ⅳ別表のとおりとなる。 - 100 -(b)実施料率について実施料率については,5%が妥当である。 (c)リコーとの共有について本件特許権は,リコーとの共有であり,原告の持分は2分の1である。 (d)以上から,各期間における実施料相当額を計算すると,以下のとおりとなる(以下の式において,100万を乗じているのは,上記表中の日本円の表記が100万円単位であるためである。)。 損害額の表中の⑤の期間ⅰ1億8913万円(()×××175+1,854+5,5361,000,0000.05億万)1/2=8,913損害額の表中の⑥の期間ⅱ10,004+6,1661,000,0000.051/2=44億425万円(()×××億万) 損害額の表中の⑦の期間ⅲ5,186+8,2381,000,0000.051/2=3億3560万円(()×××億万)3,560イ原告の各主張における損害額について原告の各主張における損害額は,以下のとおりである(以下において,「①」などとあるのは損害額表中の番号に対応する。)。 a被告らは,住友電工及びNECによる「輸入」及びNTTへの「譲渡」行為の共犯であるとの主張(主位的主張)における損害額まず,被告C おいて,「①」などとあるのは損害額表中の番号に対応する。)。 a被告らは,住友電工及びNECによる「輸入」及びNTTへの「譲渡」行為の共犯であるとの主張(主位的主張)における損害額まず,被告CJの設立は,平成13年3月であるので,損害額表の「~まで」の期間については,被告CCIのみが責任を負担H13/05/19する。 被告らが連帯責任を負担するのは,不法行為による時効が完成してい- 101 -ない分の損害であり,原告は自らモデムの販売を行っているので,この期間については,特許法102条1項に基づいて請求する(①+②+③+④)。 ところで,本件発明は,リコーとの持分2分の1ずつの共有であるから,リコーの請求分を控除しなければならないところ,リコーはモデムの販売をしていない。そこで,リコーの請求分は,実施料相当額として計算される(⑥+⑦)。 7,615以上から,被告らは,連帯して,29億7091万円((億 9,057 4,527 9,877 万円+億万円+億万円+億万円)-(億万円+億万円)=億万円)の損害について責任を負担 3560 7091すべきである。 なお,以上は,住友電工及びNECによる「輸入」の共犯との主張における損害となるが,NTTへの「譲渡」行為の共犯との主張の範囲に限定した場合には,上記から,①及び②の部分が欠けることになるため, 4,527 9,877 21億419万円((億万円+億万円)-(億万円+億万円)=億万) 3560 となる。 これに加えて,原告は,被告CCIに対し,不法行為による時効が完成した分の損害について,不当利得返還請求権に基づき,1億8913万円(⑤)を請求する。 b ) 3560 となる。 これに加えて,原告は,被告CCIに対し,不法行為による時効が完成した分の損害について,不当利得返還請求権に基づき,1億8913万円(⑤)を請求する。 b被告らの行為は「譲渡」に該当するとの主張(予備的主張1)における損害額被告らが連帯責任を負う額は,上記aと同様,29億7091万円となる。 これに加えて,原告は,被告CCIに対し,上記aと同様,1億8913万円の不当利得返還請求権を有する。 - 102 -c被告らの行為は「譲渡の申出」に該当するとの主張(予備的主張2)における損害額(a)損害賠償請求の主位的主張被告らが連帯責任を負う額は,上記aと同様,29億7091万円となる。 これに加えて,原告は,被告CCIに対し,上記aと同様,1億8913万円の不当利得返還請求権を有する。 (b)損害賠償請求の予備的主張特許法102条1項の規定の適用がない場合には,実施料相当額を請求する。 そこで,被告らが連帯責任を負担する額は,7億3985万円(億万円+億万円=億万)(⑥+⑦)となる。 3560 3895これに加えて,原告は,被告CCIに対し,上記aと同様,1億8913万円の不当利得返還請求権を有する。 d被告らは,本件ウエハを生産していると評価できるとの主張(予備的主張3)における損害額(a)損害賠償請求の主位的主張三菱電機が生産を行っていたのは,平成14年6月末までである。 また,この主張の対象となる被告らの行為は「生産」であるが,ここで生産されたウエハは,被告製品に組み込まれ,被告製品を搭載したモデムとして実際にNTTに販売されているのであるから,時効が完成していない範囲において,原告が被った損害は特許法102条1項(類推適用)に基づき計算されるべ 告製品に組み込まれ,被告製品を搭載したモデムとして実際にNTTに販売されているのであるから,時効が完成していない範囲において,原告が被った損害は特許法102条1項(類推適用)に基づき計算されるべきであり(①+③。なお,仮に,同条項の適用も類推適用もされないとしても,不法行為に基づく損害賠償としてその趣旨は反映されるべきである。),この期間については,被告らには連帯責任が発生する。時効が完成している分について- 103 -は,被告CCIのみについて不当利得に基づく請求となる(⑤)。リコーの請求分が控除されることは上記と同様である(⑥)。 したがって,被告らは連帯して,12億1717万円((億 万円+億万円)-億万円=億万円)(①7,615 4,527 1717+③-⑥)の金額を負担すべきである。 これに加えて,原告は,被告CCIに対し,上記aと同様,1億8913万円の不当利得返還請求権を有する。 (b)損害賠償請求の予備的主張実施料相当額を主張するので,被告らは連帯して⑥を負担し,これに加えて被告CCIは⑤を負担すべきである。 したがって,被告らが連帯責任を負う額は4億425万円,被告CCIが個別に責任を負う額は1億8913万円となる。 (被告ら)争う。 第3当裁判所の判断 争点( )(被告CCIに対する訴えの国際裁判管轄の有無)について ( )事実認定 上記争いのない事実等,証拠(甲3ないし8,16ないし30,47の1ないし8,72,73の1及び2,76の1及び2,80,91,92,乙1ないし5,16ないし27)並びに弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められる。 ア当事者(ア)原告は,昭和10年6月20日に設立され,神奈川県川崎市に本店を有する,通信機器・装置・シス 乙1ないし5,16ないし27)並びに弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められる。 ア当事者(ア)原告は,昭和10年6月20日に設立され,神奈川県川崎市に本店を有する,通信機器・装置・システムの製造及び販売等を業とする株式会社である。 (イ)被告CCIは,平成9年2月21日に米国デラウェア州法に基づ- 104 -き設立された,米国カリフォルニア州フレモントに本店を有する株式会社であり,日本国内には,支店も営業所も有しておらず,ADSLモデム用チップセットなどの製造販売を業としているが,自社工場を有していないいわゆるファブレスメーカーであり,自社内で開発,設計したチップセットの製造を他の製造者に委託している。 (ウ)被告CJは,平成13年3月30日に設立され,東京都港区に本店を有する株式会社であり,被告CCIの100パーセント出資による子会社であるが,同被告の商業登記簿の「目的」の欄には,「通信用半導体の販売代理店業務,通信用半導体の市場開拓及び市場調査」等の記載がされている。 イ被告製品及び被告製品を組み込んだADSLモデムの占有の移転の経緯(ア)被告製品が内蔵されたモデムは,ADSLに対応したものであるが,このADSLとは,電話線を使い高速なデータ通信を行う技術であり,電話の音声を伝えるのには使用されない高い周波数帯を使用して通信を行うxDSL技術の一種である。 ADSLは,xDSL技術の中で最初に実用化されたもので,既に一般家庭に広く普及している電話線を使うために手間がかからず,しかも,一般家庭でも利用できる料金で高速なインターネット接続環境を提供できる技術として,まず,アメリカで普及が始まった。ところが,日本では,電話回線を管理するNTT東日本及びNTT西日本が,ISDNとの混信を理由としてADSLの普及に難 インターネット接続環境を提供できる技術として,まず,アメリカで普及が始まった。ところが,日本では,電話回線を管理するNTT東日本及びNTT西日本が,ISDNとの混信を理由としてADSLの普及に難色を示し,NTT東西地域会社はADSL回線接続サービスの提供に必須となるMDF(主配電盤)での相互接続を回線接続業者になかなか許可せず,これが原因で実用化が遅れていた。しかし,NTT東西地域会社が,平成11年12月にMDFでの相互接続を認め,限定的ながらADSLの商用サービスが開始され,平成12年には全国の電話局を対象にした本格的商用サービスが回線接- 105 -続業者各社によって開始され,ADSLの普及に消極的だったNTT東西地域会社も,平成12年12月に商用サービス(フレッツADSL)を開始した。国内では,当初,G992.2(G.Lite)AnnexC規格による1.5Mbpsサービスが主流だったが,平成13年8月から,G992.1(G.dmt)AnnexA規格による8Mbpsサービスが開始され,以後,同サービスの普及が進んだ。 (イ)NTTは,局用モデム(DSLAM)の製造について,競争入札により納入業者を選定しており,宅用モデムの製造については,NTTが上記入札の落札業者とOEM契約を締結し,これにより製造されたモデムをNTTのADSLサービスを利用する一般消費者に貸与している。そして,上記入札によりDSLAMの納入業者としてNTT東日本が指定した会社は,NECであり,NTT西日本が指定した会社は,住友電工である。 住友電工及びNECがNTTに納入しているADSLモデムには,すべて被告製品が組み込まれている。 (ウ)被告CCIは,被告製品を製造し,これを住友電工及びNECアメリカに対して販売したが,上記の被告製品の引渡場所はいず TTに納入しているADSLモデムには,すべて被告製品が組み込まれている。 (ウ)被告CCIは,被告製品を製造し,これを住友電工及びNECアメリカに対して販売したが,上記の被告製品の引渡場所はいずれも米国であり,その後,被告製品又は被告製品が組み込まれたADSLモデムは,住友電工及びNECにより,米国から直接に又は他の国を経由して,日本国内に輸入され,最終的に,ADSLモデムの形で,NTTに引き渡された。 ウ被告CCIと三菱商事,住友電工,NEC及び三菱電機アメリカ等との契約関係(ア)被告CCIは,三菱電機との間で,平成9年8月25日,xDSL技術に用いる銅線とのインターフェース部分の装置の開発を協力して行う契約を締結し(乙18),同年10月15日には,三菱電機の- 106 -非同期転送モードのアクセスが可能なxDSLシステムに結合させることのできるラインカードの共同開発契約を締結した(甲47の3,乙19)。 (イ)被告CCIは,平成9年10月15日,住友電工との間で,xDSL技術に用いられ,かつ,ADSL用の信号処理のためのデジタルシグナルプロセッサとソフトウェアを構成要素とするインターフェースデバイスの開発を協力して行うことを内容とする契約を締結した(甲47の2,乙20)。 なお,被告製品のうち,別紙被告物件目録1①の製品の一部は,上記契約により製造,開発されたものである。 (ウ)三菱商事とNTTは,平成10年1月28日,ISDNの環境内でのxDSL技術の理論的互換性について,三菱商事がNTTにコンサルティングをすることを内容とする契約(以下「NTT・MC契約」という。)を締結した(乙17)が,同契約の契約書には,「三菱商事と被告CCIによるNTTへのコンサルティング提案」と題する事項の記載があり,そこでは,三菱商 容とする契約(以下「NTT・MC契約」という。)を締結した(乙17)が,同契約の契約書には,「三菱商事と被告CCIによるNTTへのコンサルティング提案」と題する事項の記載があり,そこでは,三菱商事と被告CCIとが,NTTに対して,他の電波障害がある中での日本のループプラントに関する種々のDSL技術の理論的パフォーマンス分析に関するコンサルティング提案を行う旨記載されている。 また,被告CCIと三菱商事とは,同年3月19日,三菱商事がNTTに対して,NTT・MC契約に基づき提供する技術情報を,被告CCIが三菱商事に対して提供することを内容とするコンサルティング契約を締結した(乙23)。 (エ)被告CCIは,平成10年4月3日,NECとの間で,G.Lite(データの送信レートを抑制することで,ADSLとISDNとの干渉を避けるために用いられるスプリッタという機器を不要とする- 107 -規格)及びJDSL(G.Liteのうち,日本の回線環境に対応するインターフェースデバイス)の開発を協力して行う旨の契約(以下「NEC間協力契約」という。)を締結した(甲47の4,乙24)。 なお,被告製品のうち,別紙被告物件目録1①の製品の一部は,上記契約により製造,開発されたものである。 (オ)被告CCIは,平成11年2月23日,NECとの間で,NEC間協力契約の補遺契約を締結したが(甲47の8,乙25),同契約において,被告CCIは,NECに対して,AnnexCを組み込んだチップセットとAnnexCに対応するソフトウェアを納品する旨の合意がされた。 (カ)被告CCIは,平成11年4月20日,住友電工との間で,住友電工間協力契約の補遺契約を締結したが(甲47の6,乙26),同契約において,被告CCIは,住友電工に対して,ソフトウェアを組み込ん カ)被告CCIは,平成11年4月20日,住友電工との間で,住友電工間協力契約の補遺契約を締結したが(甲47の6,乙26),同契約において,被告CCIは,住友電工に対して,ソフトウェアを組み込んだチップセットを,両社の間で合意される別個の製品購入契約の契約条件に従って,供給する旨の合意がされた。 (キ)被告CCIは,平成11年4月22日,三菱電機アメリカとの間で,本件ウエハ供給契約を締結した(甲47の5,乙27)。 本件ウエハ供給契約の契約書には,次のとおりの記載がある。 a三菱電機アメリカは,ウエハを,三菱電機に西条製造工場にて製造させるものとする。 "Wafers" meansprocessedsiliconwaferscontainingfinisheddieforthebProductsmanufacturedbyMELCOandsoldtoCentilliumCommunications, Inc.(1.7条)(訳文)(a)甲47の5による訳文「『ウェハー』は,MELCOによって製造され,センティリ- 108 -アム・コミュニケーションズ・インクに販売される製品(半導体チップ)のための完成したダイを有する加工されたシリコンウェハーの意味である。」(b)乙27による訳文「『ウェハー』とは,『製品(Products)』のための完成したダイを含む加工されたシリコンウェハーであって,MELCOによって製造され,センティリアム・コミュニケーションズに販売されるものを意味する。」エ日本でのDSLモデム市場におけるNEC及び住友電工ないしその関連会社の売上の合計のシェアは,平成13年度においては約64パーセント,平成14年度においては約56パーセント,平成15年度においては約62パーセン モデム市場におけるNEC及び住友電工ないしその関連会社の売上の合計のシェアは,平成13年度においては約64パーセント,平成14年度においては約56パーセント,平成15年度においては約62パーセント,平成16年度においては約63パーセントであり,DSLAM市場における上記シェアは,平成13年度においては約75パーセント,平成14年度においては約51パーセント,平成15年度においては約64パーセント,平成16年度においては約64パーセントであった。 また,被告CCIの年間売上のうち,住友電工及びNECに対する売上が占める割合は,平成12年においては30パーセント,平成13年及び平成14年においては86パーセント,平成15年においては80パーセント,平成16年においては77パーセントであった。 ( )検討 以上の事実を前提に,被告CCIに対する訴えについて,我が国の裁判所に国際裁判管轄が認められるか否かを検討する。 ア国際裁判管轄の判断基準我が国の裁判所に提起された訴訟の被告が,外国に本店を有する外国法人である場合には,当該法人が進んで服する場合のほか日本の裁判権が及- 109 -ばないのが原則であるが,例外として,被告が我が国と何らかの法的関連を有する事件について我が国の国際裁判管轄を肯定すべき場合のあることは,否定し得ないところである。ただし,どのような場合に我が国の国際裁判管轄を肯定すべきかについては,国際的に承認された一般的な準則が存在せず,国際的慣習法の成熟も十分でないため,当事者間の公平や裁判の適正・迅速の理念により条理に従って決定するのが相当である。そして,我が国の民訴法の規定する裁判籍のいずれかが我が国内にあるときには,原則として,我が国の裁判所に提起された訴訟事件につき,被告を我が国の裁判籍に服させるのが相当 って決定するのが相当である。そして,我が国の民訴法の規定する裁判籍のいずれかが我が国内にあるときには,原則として,我が国の裁判所に提起された訴訟事件につき,被告を我が国の裁判籍に服させるのが相当であるが(最高裁昭和55年(オ)第130号同56年10月16日第二小法廷判決・民集35巻7号1224頁),我が国で裁判を行うことが当事者間の公平,裁判の適正・迅速を期するという理念に反する特段の事情があると認められる場合には,我が国の国際裁判管轄を否定すべきである(最高裁平成5年(オ)第1660号同9年11月11日第三小法廷判決・民集51巻10号4055頁)。 そこで,本件において,被告CCIに対する訴えについて,民訴法の規定する裁判籍が認められるかを,以下検討する。 イ民訴法4条1項,5項について上記( )のとおり,被告CCIは,米国に本店を有する米国法人であり, 日本国内には,支店も営業所も有していないのであるから,民訴法4条1項,5項による裁判籍は我が国内に認められず,したがって,被告CCIに対する訴えについて,我が国の裁判所に国際裁判管轄を認めることはできない。 この点,原告は,被告CJは,被告CCIの日本における営業所と同視できる旨主張し,その根拠として,①被告CJは,被告CCIの100パーセント出資による子会社であること,②被告CJは被告CCIの活動を補助するための会社であって,被告CCIと関係のない独立の経- 110 -済活動を行う会社ではないこと,③被告CJの営業所の賃料についても,被告らが単なる営業所であることを認めている中国や台湾などの「営業所」と同様に,被告CCIによって支払われていること,④被告CCI自身,被告CJを「」とし,被告CCIによるプレスリJapanSalesOfficeリースでは,被告CJが や台湾などの「営業所」と同様に,被告CCIによって支払われていること,④被告CCI自身,被告CJを「」とし,被告CCIによるプレスリJapanSalesOfficeリースでは,被告CJが「営業所」(「」)として紹介されTokyoOfficeていること等を挙げるが,上記争いのない事実等で判示したように,被告CJは,法人格を有する,被告CCIとは独立した株式会社であるところ,原告の指摘する上記の②の点は本件全証拠によっても認めるに足りないし,また,原告の指摘する上記の①,③及び④の事実については,仮に,同事実が認められたとしても,被告CJの法人格が形骸にすぎないとまではいえず,その他本件において,被告CJの法人格が形骸にすぎない等の同法人格を否認すべき事情を認めるに足る証拠はないから,原告の上記主張は理由がない。 ウ民訴法7条について民訴法7条ただし書,38条前段により,訴訟の目的である権利又は義務が数人について共通であるとき,又は同一の事実上及び法律上の原因に基づくときは,その数人は,共同訴訟人として訴えられることができるが,このようにして裁判籍が認められるにすぎない場合に,直ちに国際裁判管轄を認めると,被告自身に対する請求とは何ら関連性を有しない国での応訴を強いられることになり,民訴法上の他の規定により裁判籍が認められることにより国際裁判管轄を肯定する場合に比べて,被告の受ける不利益が大きく,当事者の公平や裁判の適正・迅速の理念に基づく条理にそぐわないこととなる。もっとも,相被告に対する請求と当該被告に対する請求との間に,固有必要的共同訴訟の関係ないしそれに類似する程度の強固な関連性があることが認められる場合など,特に我が国の裁判所に国際裁判管轄を認めることが当事者間の公平,裁判所- 111 -の適正・迅速を ,固有必要的共同訴訟の関係ないしそれに類似する程度の強固な関連性があることが認められる場合など,特に我が国の裁判所に国際裁判管轄を認めることが当事者間の公平,裁判所- 111 -の適正・迅速を期するという理念に合致する特段の事情が存する場合には,我が国の裁判管轄を認めることが条理に適うと解される。そこで,民訴法7条ただし書,38条前段の規定に依拠した国際裁判管轄は,原則として認められず,上記のような強固な関連性が認められる場合にのみ認められると解するのが相当である。 そこで,被告CCIに対する請求と被告CJに対する請求の関係について検討するに,原告は,いずれの法律構成においても,被告らは共同不法行為者の関係に立つと主張しているが,上記( )で判示したとおり, 被告製品は,被告CCIが製造し,被告CCIにより住友電工及びNECアメリカに譲渡され,その引渡場所は日本国外であり,被告製品ないしこれを内蔵したモデムは,住友電工及びNECにより日本国内に輸入されているのであり,被告製品の製造及び被告製品の住友電工及びNECに至るまでの流通に被告CJは一切関与していない。これに対し,原告が被告CJによる不法行為の実行行為として主張する,被告CJが,被告製品のサンプルを出荷したり評価ボードを提供していること,被告製品の譲渡の申出をしていることなどについては,実際に行われたとされる具体的態様についての主張がない上,被告CCIによる関与の程度が明らかでなく,しかも,これらの被告CJによる実行行為自体の立証もなされていない。以上のことを考慮すると,被告CCIに対する請求と被告CJに対する請求との間に,強い関連性があるとして,被告CCIに対する訴えについて,民訴法7条に依拠した国際裁判管轄を認めることはできない。 したがって,民訴法7条の規定に依 CIに対する請求と被告CJに対する請求との間に,強い関連性があるとして,被告CCIに対する訴えについて,民訴法7条に依拠した国際裁判管轄を認めることはできない。 したがって,民訴法7条の規定に依拠して,被告CCIに対する訴えについて,我が国の裁判所に国際裁判管轄を認めることはできない。 エ民訴法5条9号について民訴法5条9号の不法行為地の裁判籍の規定に依拠して我が国の国際裁- 112 -判管轄を肯定するためには,原則として,①原告主張に係る不法行為の客観的事実の存在及び②そのうちの実行行為地又は損害の発生地が日本国内であることが証明されれば足り,違法性や故意過失については立証する必要はないと解するのが相当である(最高裁平成12年(オ)第929号同13年6月8日第二小法廷判決・民集55巻4号727頁)。そして,共同不法行為においては,上記①の国際裁判管轄を肯定するために立証すべき客観的事実は,当該不法行為の実行行為,客観的関連共同性を基礎付ける事実又は幇助若しくは教唆行為についての客観的事実,損害の発生及び事実的因果関係であると解するのが相当である。 (ア)主位的主張に係る訴えについての国際裁判管轄の有無a原告は,主位的に,住友電工及びNECが被告製品を輸入したこと,及び同社が被告製品を内蔵したモデムをNTTへ譲渡したことについて,被告らには,住友電工及びNECと,民法719条1項の共同不法行為(主位的主張1)又は同条2項の共同不法行為(主位的主張2)が成立する旨主張する。 bそこで,検討するに,本件においては,上記( )で判示したように, 住友電工及びNECは,被告製品又は被告製品を組み込んだADSLモデムを輸入し,同ADSLモデムをNTTに販売しているのであるから,仮に,本件特許が無効とならず,被告製品の輸入,販売等 ように, 住友電工及びNECは,被告製品又は被告製品を組み込んだADSLモデムを輸入し,同ADSLモデムをNTTに販売しているのであるから,仮に,本件特許が無効とならず,被告製品の輸入,販売等が本件特許権の侵害行為に該当するのであれば,住友電工及びNECの上記行為は,本件特許権を侵害する不法行為を構成し,また,本件特許権を有している原告に,我が国において,損害は発生しているものと認められる。 次に,客観的関連共同性の存否又は幇助・教唆行為の客観的事実の存否については,上記( )で判示したとおり,住友電工及びNEC による「輸入」及び「譲渡」の目的となっている被告製品は,被告C- 113 -CIが製造したものであるところ,上記( )のとおり,被告CCIは, 住友電工との間で,xDSL技術に用いられ,かつ,ADSL用の信号処理のためのインターフェースデバイスの開発を協力して行うことを内容とする契約を締結し,同契約に基づく開発により,被告製品のうちの少なくとも1つのシリーズの製造がされていること,NECとの間で,G.Lite及びJDSLの開発を協力して行う旨の契約を締結し,同契約に基づく開発により,被告製品のうちの少なくとも1つのシリーズの製造がされていること,三菱商事がNTTとの間で,NTTに対して,ISDNの環境内においてxDSL技術の理論的互換性についてのコンサルティングをする旨の契約(NTT・MC契約)を締結したことを前提として,三菱商事との間で,同社に対して,上記のNTT・MC契約に基づき同社がNTTに対して提供する技術情報を提供する旨のコンサルタント契約を締結していること,並びに被告CCIは,住友電工自身,又はNECの関連会社であるNECアメリカに対して,被告製品を販売していることからすると,同被告は,自社が住 報を提供する旨のコンサルタント契約を締結していること,並びに被告CCIは,住友電工自身,又はNECの関連会社であるNECアメリカに対して,被告製品を販売していることからすると,同被告は,自社が住友電工及びNECアメリカに対して販売した被告製品が,そのままで又はADSLモデムに組み込まれて,住友電工及びNECによって輸入され,さらに,ADSLモデムに組み込まれた形でNTTに譲渡されることを認識しており,そのような認識の下に,住友電工及びNECに対して,積極的に被告製品の販売のための活動を行ったものと推測されるから,被告CCIには,住友電工及びNECの上記不法行為について,少なくとも客観的関連共同性が認められ,また,被告CCIの住友電工及びNECに対する被告製品の販売行為及びその前提としての営業行為は,住友電工及びNECの上記不法行為の幇助ないし教唆行為と評価できるというべきである。 したがって,原告の主位的主張に係る訴えについては,我が国の- 114 -裁判所に管轄を肯定するに足る上記の客観的事実及び日本国内での損害の発生を認めることができる。 cそして,上記bで判示した事実関係からすると,被告CCIとしては,自己の製造,販売した被告製品が日本国内に流通し,日本の特許権を侵害する可能性があることを十分予測し得たものと認められる。 また,上記( )のとおり,被告CCIの全売上高に占める住友電工及 びNECに対する売上高の割合が,平成13年ないし平成15年の間は80パーセント以上と,非常に高いものであったことから,被告CCIの主要の市場は日本であったということができる。 以上の事情からすれば,原告の主位的主張に係る訴えについて,我が国で裁判を行うことが当事者間の公平,裁判の適正・迅速を期するという理念に反する結果になるとはいえず,我 本であったということができる。 以上の事情からすれば,原告の主位的主張に係る訴えについて,我が国で裁判を行うことが当事者間の公平,裁判の適正・迅速を期するという理念に反する結果になるとはいえず,我が国における管轄を否定すべき特段の事情があるとは認められない。 dしたがって,原告の被告CCIに対する主位的主張に係る訴えについて,我が国の裁判所に国際裁判管轄が認められる。 (イ)予備的主張に係る訴えについての国際裁判管轄の有無我が国の裁判所の国際裁判管轄が肯定される請求の当事者間における他の請求につき,民訴法の併合請求の規定(民訴法7条本文)に依拠して我が国の裁判所の国際裁判管轄を肯定するためには,両請求間に密接な関係が認められることを要すると解するのが相当である(前記最高裁平成13年6月8日判決)。 これを本件についてみるに,予備的請求1ないし3は,いずれも被告らの行為(三菱電機により行われたものを含む。)が本件特許権を侵害するか否かをめぐる紛争として,被告CCIに対する主位的主張(住友電工及びNECによる本件特許権の侵害に基づく不法行為について,被告らには共同不法行為が成立するとする主張)と,実質的な争点を同じ- 115 -くし,密接な関係があると認められる。 したがって,予備的請求1ないし3については,各々の請求の国際裁判管轄の有無を検討するまでもなく,我が国の裁判所に国際裁判管轄があることを肯定すべきである。 争点( )ウ(被告方法において,仮に歪測定信号を送信しているとしても, 歪測定信号とは別にイコライザのトレーニング信号をも送信しているという点において,構成要件Aを充足するか)について( )本件明細書の記載 本件明細書には,以下のとおりの記載がある(甲2)。 ア「(a)分野」の段落本発明は,データを送信装 も送信しているという点において,構成要件Aを充足するか)について( )本件明細書の記載 本件明細書には,以下のとおりの記載がある(甲2)。 ア「(a)分野」の段落本発明は,データを送信装置から電話交換網等の回線を介して受信装置へ伝送するデータ伝送方式に関し,特に,伝送速度を短時間で精度良く決定するデータ伝送方式に関するものである。 イ「(b)技術の背景」の段落一般に,電話交換網の回線を使用してデータ伝送を行うシステムにおいては,複数の伝送速度を有する変復調装置,所謂モデムを使用し,送信装置,受信装置間で最も高速に且つ歪が少ないデータを伝送できる様な伝送速度を通信開始時に選択してデータに伝送している。 以下,ファクシミリにおける伝送方式について説明を行う。 ウ「(c)従来技術」の段落③ファクシミリ送信装置FAX1は受信された被呼局識別信号により,接続相手先がファクシミリ装置である事を確認し,機能識別信号を待つ。 次に受信される機能識別信号に基づき,ファクシミリ送信装置FAX1は,自己装置と一致する機能を抽出し,その内,最も短い時間で転送できる機能を選択する。例えば,送,受信側共,モデムの信号伝送速度として14.4Kbps,9600bps,7200bps,4800b- 116 -ps,2400bps等の速度を備え,画像符号化方式の種類が二次元符号化方式及び一次元符号化方式を備える場合,ファクシミリ送信装置FAX1は14.4Kbpsの信号伝送速度で二次元符号化方式を選択する。 選択された各機能について,ファクシミリ送信装置FAX1はファクシミリ送信装置FAX2に対し,最終的に伝送に使用する機能であるとして通知する。(命令情報と図示)④ファクシミリ送信装置FAX1は,その命令情報を通知した後,受信側のモデムMOD2を受信可能 ァクシミリ送信装置FAX2に対し,最終的に伝送に使用する機能であるとして通知する。(命令情報と図示)④ファクシミリ送信装置FAX1は,その命令情報を通知した後,受信側のモデムMOD2を受信可能な状態にセットアップする為,その命令情報に示した信号伝送速度のトレーニング信号をモデムMOD1から送信させる。 ファクシミリ送信装置FAX2は,受信命令信号に指定された自己装置側の受信機能を選択し作動状態とする。 モデムMOD2は,モデムMOD1からのトレーニング信号を基に自己装置をセットアップする。またモデムMOD1はそれに続いてトレーニング状態を検査する様信号を発する。 モデムMOD2はその信号をファクシミリ送信装置FAX2に再生出力する。ファクシミリ受信装置FAX2はこの再生出力信号により,その速度で画像信号を誤り少なく受信できるか否か判定する。 ⑤受信不可能と判定するとファクシミリ送信装置FAX2はファクシミリ送信装置FAX1にトレーニング失敗の旨の信号を送信する。ファクシミリ送信装置FAX1は,この信号を受信すると,信号伝送速度を一段階低速にする,所謂フォールバックする様,命令情報を受信側に通知し,以後フォールバックした信号伝送速度で上記④,⑤を繰り返す。 ⑥その速度で画像信号を誤り少なく受信できると判定すると,ファクシミリ送信装置FAX2は,ファクシミリ送信装置FAX1に対し,受- 117 -信準備完了信号を送信する。 ⑦受信準備完了信号をファクシミリ送信装置FAX1が受信すると,ファクシミリ送信装置FAX1は画像信号を該当する信号伝送速度で送信する。 エ「(d)従来技術の欠点」の欄以上説明した従来のオファクシミリシステムにおいては,回線の歪度合が大きい程,回線の品質が悪い程,上記③ステップ,④ステップ,及び⑤ステップの繰り返 で送信する。 エ「(d)従来技術の欠点」の欄以上説明した従来のオファクシミリシステムにおいては,回線の歪度合が大きい程,回線の品質が悪い程,上記③ステップ,④ステップ,及び⑤ステップの繰り返し回数が多くなり,画像信号を送信する迄の時間が長いという欠点を有している。 オ「(e)発明の目的」の欄本発明の目的は,上記従来の欠点を取り除くべく,データを送信する伝送速度の決定迄の時間を短くし得るデータ伝送方式を提供する事にある。 カ「(f)発明の構成」の欄上記目的を達成するため,本発明においては,送信側から,受信側において回線の歪度合が検出できる信号を一つの伝送速度で送信し,受信側における歪度合に基づき伝送速度を決定して送信側に通知し,決定された伝送速度でデータを伝送するものである。 キ「(g)実施例」の欄③ファクシミリ送信装置FAX1は受信された被呼局識別信号により,接続相手方がファクシミリ受信装置である事を確認し,機能識別信号の受信を待つ。次に受信される機能識別信号に基づき,ファクシミリ送信装置FAX1は,自己装置と一致する機能を抽出し,その内,最も短い時間で転送できる機能を選択する。但し,本発明においては,この時点では信号伝送速度の選択は行わない。 選択された各機能について,ファクシミリ送信装置FAX1はファク- 118 -シミリ送信装置FAX2に対し,最終的に伝送に使用する機能であるとして通知する。(命令情報と図示)④’ファクシミリ送信装置FAX1は,受信側においてモデムMOD2を受信可能な状態にセットアップさせる事が出来,且つ歪度合が受信側において判定出来るトレーニング信号をモデムMOD1から送信させる。 このトレーニング信号を送信する為の信号伝送速度は,画像信号の伝送用として使用されている勧告V29の9600bp つ歪度合が受信側において判定出来るトレーニング信号をモデムMOD1から送信させる。 このトレーニング信号を送信する為の信号伝送速度は,画像信号の伝送用として使用されている勧告V29の9600bps,7200bps,或いは勧告V27terの4800bps,2400bps以外のものを使用する。例えば,データ伝送用に規定されている勧告V29の4800bpsの信号伝送速度を使用する。一般に勧告V29の4800bpsの信号伝送速度は雑音耐久力及び回線の品質を認識できる範囲が大きい事が知られており,トレーニング信号の信号伝送速度に適する。 更に,上記したトレーニング信号の内,回線の歪等の品質測定用の信号パターンは,送信する画像信号の全ての信号パターンが現れる様,ランダムパターンである事が望ましい。 第3図において,ファクシミリ送信装置FAX2は,受信命令信号に指定された自己装置側の受信機能を選択し作動状態とする。 モデムMOD2は,モデムMOD1からのトレーニング信号を基に自己装置をセットアップする。またモデムMOD2は受信信号を再生し,回線の歪度合を示す信号を出力する。 ファクシミリ送信装置FAX2はこの出力信号により,何れの信号伝送速度で画像信号を伝送するのが良いか,誤り少なく,且つ高速に伝送できるか判定する。 ⑤信号伝送速度を決定するとファクシミリ送信装置FAX2はファクシミリ送信装置FAX1に,決定された信号伝送速度(命令情報として- 119 -図示)と,受信準備が完了した事をファクシミリ送信装置FAX1に通知する。 ⑥命令情報及び受信準備完了信号をファクシミリ送信装置FAX1が受信すると,ファクシミリ送信装置FAX1は命令情報に示される信号伝送速度をモデムMOD1に設定し,画像信号を該当する信号伝送速度で送信する。 以上の様に本発明 信号をファクシミリ送信装置FAX1が受信すると,ファクシミリ送信装置FAX1は命令情報に示される信号伝送速度をモデムMOD1に設定し,画像信号を該当する信号伝送速度で送信する。 以上の様に本発明では,信号伝送速度を受信側での信号受信状態に依って決定しているので,従来の如く所謂フォールバックの手順を踏む事無く短時間で最適な信号伝送速度を判定できる。 第3図は本発明の一実施例のブロック図である。 (中略)主制御部9は回線制御部から受け渡される受信機能識別情報に基づき,自己装置の送信機能と一致する機能を選択し,最も短い時間で画像信号を転送できる機能を選択する。例えば,画像信号の符号化方式を1次元符号化方式,二次元符号化方式の内圧縮度の高い2次元符号化方式を選択する。選択した機能を受信側に転送するべく,主制御部9は回線制御部11を機能を示す情報を供給する。 回線制御部11はこの情報を受け取ると,変調装置14に対し,信号線aにより信号伝送速度を300bpsを指示し,且つこの情報をオア回路12を介して送信データとして供給する。 変調装置14はこの指示に従い,信号伝送速度300bpsで供給された情報を回線に供給する。 これらの信号を供給し一定時間経過した後,回線制御部11は信号線bを立ち上げる。 変調装置14は信号線bの立ち上がりにより,トレーニング信号及び歪測定信号を発生すべく動作する。変調装置14はトレーニング信号と- 120 -歪測定信号に対応するデータパターンを発生する回路140を備えており,この時点でそのデータパターンを基に1つの高速信号伝送速度に対応する変調方式でキャリア信号を変調する。例えば,信号伝送速度4800bpsの4相位相変調方式により,キャリア信号をデータパターン発生回路140の発生するデータパターンに従って変調する。 ( 度に対応する変調方式でキャリア信号を変調する。例えば,信号伝送速度4800bpsの4相位相変調方式により,キャリア信号をデータパターン発生回路140の発生するデータパターンに従って変調する。 (中略)これらの信号は受信側のモデムMOD2に供給される。 一方,受信側モデムMOD2において,信号伝送速度300bpsの信号は復調装置13によって復調され,その情報が回線制御部7を介し主制御部6に供給される。主制御部6はこの情報に従い,複合化回路21,記録装置22をセットアップする。又,主制御部6は回線制御部7に復調装置13の復調する信号速度が4800bpsとなるよう指示し,後述する品質抽出回路15を作動する。回線制御部7はこの時復調装置13に対し,4800bpsの伝送速度の信号を復調する様信号を立ち上げる。 復調装置13はこの指示に基づく復調方式で,以後に受信されるトレーニング信号を復調し品質抽出回路15に回線歪に対応する信号(後述)を供給する。 品質抽出回路15は復調装置13の信号を受け,信号品質度合を示すデータ信号を判定部16に出力する。 判定部16は公知のROM(リードオンリーメモリー)等コード変換器であり,与えられたデータ信号に応じ,何れの信号伝送速度が最適な速度であるか識別出力する。 判定部16の識別出力は回線制御部7を介し主制御部6に供給される。 主制御部6はこの識別出力に基づき,画像信号を伝送するための速度データを回線制御部7に供給し,変調回路8を介し,300bpsの信- 121 -号速度で,ファクシミリ送信装置FAX1側に画像信号伝送速度を通知する。また,主制御部6はファクシミリ送信装置FAX1に通知した画像信号伝送速度の画像信号が復調できる様,回線制御部7を介し,復調装置13を設定する。 ファクシミリ送信装置FAX1側の 送速度を通知する。また,主制御部6はファクシミリ送信装置FAX1に通知した画像信号伝送速度の画像信号が復調できる様,回線制御部7を介し,復調装置13を設定する。 ファクシミリ送信装置FAX1側のモデムMODEM1の復調回路10はこの画像信号伝送速度データを復調し,回線制御部11を介し,主制御部9に通知する。主制御部9は受信した画像信号伝送速度データに基づき,回線制御部11を介し,変調装置14に該当する信号伝送速度で伝送する様指示する。 (中略)第4図,及び第5図(a),(b),(c)は第3図における復調装置13を含む品質抽出回路15,判定部16の一実施例の詳細ブロック図,及び説明用信号特性図である。 (中略)復調装置13は以下に寄り構成されている。 各速度に対応した復調回路131~134,但し同図においては説明を簡単にするため4個の回路のみ示す。 受信ベースバンド信号の波形を等化する自動等化器135。 波形等化された信号er,eiから送信された信号波形を判定する判定部136。 判定された信号波形を受信データに変換するコード化部137。 自動等化器135の等化誤差を示す信号Er,Eiを作成する減算部138,139を備える。 復調回路131~134は回線制御部7(第3図,図示)から端子Ta~Tdを介し指定されたもののみ作動する様構成されている。 自動等化器135は等化誤差信号Er,Eiを受け,次のベースバン- 122 -ド信号を等化する際の等価係数をこの等化誤差信号Er,Eiに基づき補正するものである。 (中略)第5図(a),(b),(c)を参照し,第4図の動作を説明する。 上記第3図における回線制御部7から歪特性を測定する為,端子Taの信号が立ち上げられる。 これにより復調回路131が作動し,復調回路131は,送信側より送信されるトレ 照し,第4図の動作を説明する。 上記第3図における回線制御部7から歪特性を測定する為,端子Taの信号が立ち上げられる。 これにより復調回路131が作動し,復調回路131は,送信側より送信されるトレーニング信号を復調する。復調回路131は,互いに位相の90度異なる信号成分のベースバンド信号dr,diを出力する。 この信号dr,diは各々受信ベースバンド信号に対応する。 自動等化器135はこの信号dr,diの波形を等化し,等化信号er,eiを出力する。 判定部136は等化信号er,eiを基に受信ベースバンド信号が持つべき,振幅及び位相の値を判定する。判定出力Dr,Diはコード化部137と,減算部138,139に供給される。コード化部137は送信データを振幅値及び位相値を基に再生する。 一方,減算部138,139は等化信号er,eiと判定出力Dr,Diとの各々の差分を取り,自動等化器135が等化できなかった等化誤差として信号Er,Eiを自動等化器135に帰還する。 (中略)第4図において,減算部138,139の各等化誤差信号は品質抽出回路15の電力算出部151に供給される。品質抽出回路15は,端子Teへの回線制御部7からの信号の立上がり時から動作する。電力算出部151は各信号の絶対値の自乗を加算し,等化誤差信号の電力,所謂パワーを算出出力する。 (中略)- 123 -第4図において,乗算部152,スライス部153,積分回路154,増幅系数作成部155からなる帰還制御系の回路はその積分値に対応する積分出力Outを出力する。 即ち,最初に乗算部152は,電力算出部151の出力値Pを,その振幅値を押させるために後述する増幅係数作成部155からの増幅係数に従って増幅する。 スライス部153は,基準値(第5図(b)に図示の基準値a3に対応する値)と ,電力算出部151の出力値Pを,その振幅値を押させるために後述する増幅係数作成部155からの増幅係数に従って増幅する。 スライス部153は,基準値(第5図(b)に図示の基準値a3に対応する値)と,増幅されて信号との差分値を出力するものである。(中略)乗算部153’は,スライス部153の出力する信号値の変動が急激となった場合でも,積分値の変動が急激にならない様小数を乗算し出力する。 積分回路部154は上記の如く作成された差分値を積分,即ち累計加算する。積分回路154の出力は,増幅係数作成部155,及び判定部16に供給される。 増幅係数作成部155は積分回路154の出力値outを基に増幅係数を作成する。 (中略)積分回路154の出力は,上記所定数の4値ランダム符号を受信した時点で,例えば復調回路131から供給されるキャリア検出信号の立下がり(送信キャリア信号の中断を意味する。)の時点で,ゲート回路156を開放し,判定部16に供給される。これにより,判定部16からはその時点の積分値に対応する決定された信号伝送速度が読出し出力されることとなる。 このようにして判定された信号伝送速度は第3図における回線制御部7に供給され,最終的な画像信号の伝送速度として第3図を基に説明し- 124 -た様に使用できる。 ク「(h)発明の効果」の欄以上説明した様に本発明によれば,最適な伝送速度が歪測定用の信号を一つの特定の伝送速度で送信するだけで識別でき,データの伝送手段が簡略化でき,データを送信する迄の時間を短縮できる。 ( )出願経過における原告の主張 出願経過において原告が特許庁に提出した各書面には,以下のとおりの記載があることが認められる。 ア本件意見書(乙33)従って,本願発明では,1つの歪測定用の信号を送信するだけで,回線の歪度合 出願経過において原告が特許庁に提出した各書面には,以下のとおりの記載があることが認められる。 ア本件意見書(乙33)従って,本願発明では,1つの歪測定用の信号を送信するだけで,回線の歪度合が識別できるため,簡単な手順で最高速度の伝送速度を決定することができます。 イ本件補正書1(乙37の1)以上説明した様に本発明によれば,回線の歪度合が歪測定用の信号を一つ,特定の信号伝送速度で送信するだけで識別でき,この識別により,最適な信号伝送速度を決定できる。 ウ本件審判請求理由補充書(乙35)このような構成により,本願発明では伝送回線に最適な伝送速度を,歪測定信号を一度送出するだけで,容易に識別することが可能となる。 エ本件補正書2(乙37の2)以上説明した様に本発明によれば,最適な伝送速度が歪測定用の信号を一つの特定の伝送速度で送信するだけで識別でき,データの伝送手順が簡略化でき,データを送信する迄の時間を短縮できる。 ( )本件発明の構成要件Aの解釈 以上を前提に,本件発明の構成要件Aの内容について検討する。 ア本件発明の内容- 125 -上記争いのない事実等,上記( )で認定した本件明細書の記載及び上記 ( )で認定した本件出願経過における原告の主張からすれば,本件発明の 内容は,次のとおりであると認められる。 すなわち,本件発明は,データを送信装置から電話交換網等の回線を介して受信装置に伝送するデータ伝送方式に関する発明であるところ,従来,例えば,ファクシミリでのデータ伝送においては,画像信号を送信するに先立ち,その伝送速度を決定する作業として,送信側と受信側の各ファクシミリ装置ないし各モデムの間で,受信側のモデムを調整するためのトレーニング信号及びその調整状態を検査するための信号と,同検査信号に基づき,その 送速度を決定する作業として,送信側と受信側の各ファクシミリ装置ないし各モデムの間で,受信側のモデムを調整するためのトレーニング信号及びその調整状態を検査するための信号と,同検査信号に基づき,その伝送速度で画像信号を受信できるかについての判定の結果の信号とのやり取りを,回線の状況によっては,何度も繰り返す必要があった。 これを詳述すれば,送信側のファクシミリ装置は,まず,伝送速度について自己装置の備える機能のうち,最も短い時間で転送できる機能を選択し,その速度のトレーニング信号をモデムから送信させ,受信側のファクシミリ装置は,上記トレーニング信号を受信し,同信号に基づき自己装置をセットアップする。これに引き続き,送信側のモデムは,調整状態を検査するための信号を送信すると,受信側のモデムは,同信号を受信側のファクシミリ装置に再生出力し,同ファクシミリ装置は,上記信号により,上記速度で画像信号を誤り少なく受信できる程度にイコライザを調整できたか否かを判定するが,調整ができなかったと判定すると,送信側ファクシミリ装置に対し,調整が失敗した旨の信号を送信する。送信側のファクシミリ装置は,この調整が失敗した旨の信号を受信すると,信号伝送速度を一段階低速にして,上記と同様の信号を送信し,受信側のファクシミリ装置は,上記と同様,一段階低速とされた信号の判定を行う。送信側のファクシミリ装置と受信側のファクシミリ装置は,このようなやり取りを,受信側のファクシミリ装置が当該速度で画像信号を誤り少なく受信できると判- 126 -定するまで繰り返し,受信側のファクシミリ装置が受信可能と判定すると,送信側のファクシミリ装置に対し,受信準備完了の信号を送信し,送信側のファクシミリ装置は,当該速度で,画像信号を送信することになる。 このような従来の伝送方式では, シミリ装置が受信可能と判定すると,送信側のファクシミリ装置に対し,受信準備完了の信号を送信し,送信側のファクシミリ装置は,当該速度で,画像信号を送信することになる。 このような従来の伝送方式では,回線の歪度合ないし品質によっては,送信側のファクシミリ装置から,本来送信すべき画像信号を送信する前に,その伝送速度を決定するために,最適速度判定用の信号を何度も送信する必要があり,時間のロスがあった。 そこで,本件発明は,回線の歪度合ないし品質に関わらず,送信側の装置から,最適な伝送速度を判定するための信号を1回だけ送信することで,伝送速度を決定できるようにし,このことにより,上記の時間のロスの問題を解消した。すなわち,本件発明においては,送信側のモデムから,受信側のモデムをセットアップし,かつ,回線の歪度合を受信側において測定できる1つの信号を1回送信し,受信側のモデムは,この信号を基に,自己装置をセットアップし,また,上記信号を再生して,回線の歪度合を示す信号を出力し,受信側の装置は,この出力信号により,最適の伝送速度を判断し,画像信号の伝送速度を決定する。そして,受信側の装置は,決定した伝送速度び受信準備が完了したことを送信側の装置に通知し,送信側の装置は,上記伝送速度で,画像信号を送信することになり,このようにして,本件発明では,送信側から,本来送信すべきデータを送信する前に,その最適な伝送速度を判定するための信号を1回だけ送信することで,伝送速度を決定できるのである。 イ「送信装置から回線の歪度合を測定するための歪測定信号・・・送信し」の意味(ア)歪測定信号の送信回数上記アで認定した本件発明の内容からすれば,本件発明の構成要件Aの「送信装置から回線の歪度合を測定するための歪測定信号として・・- 127 -・4値ランダム符 の意味(ア)歪測定信号の送信回数上記アで認定した本件発明の内容からすれば,本件発明の構成要件Aの「送信装置から回線の歪度合を測定するための歪測定信号として・・- 127 -・4値ランダム符号を・・・送信し」とは,「送信装置から回線の歪度合を測定するための歪測定信号として・・・4値ランダム符号」を1回だけ送信することを意味し,これを複数回送信する場合を含まないものと解するのが相当である。 (イ)イコライザの調整のための信号の役割データを送信装置から電話交換網等の回線を介して受信装置へ伝送するデータ伝送に使用される受信装置には,通常,イコライザが内蔵されているところ,送信装置は,送信すべきデータを送信する前に,イコライザを調整するために,そのトレーニング信号を送信しておく必要があるといえる。本件発明においても,受信装置におけるイコライザの内蔵及び送信装置からのイコライザを調整するためのトレーニング信号の送信を当然の前提としているというべきである。 そして,上記アのとおり,本件発明が解決しようとした従来技術の伝送方式の課題は,受信側の装置では,送信側から送信されてきたトレーニング信号を基に,その速度で誤り少なく信号を受信できるか否かのみ,すなわち,当該速度の適合性の有無のみを判定し,いかなる速度であれば誤り少なく信号を受信できるか,すなわち,最適速度が何かについての判断はしないことから,回線の状態によっては,最適の伝送速度を決定するまでに,送信側の装置から,トレーニング信号を順次速度を落として繰り返し送信する必要があり,伝送速度決定のための作業に費やす時間が長くなるという点にあったところ,本件発明は,受信側の装置に,送信側の装置から送られてきたトレーニング信号を基に,最適の伝送速度を判断させ,これにより,信号を1回送信するだ ための作業に費やす時間が長くなるという点にあったところ,本件発明は,受信側の装置に,送信側の装置から送られてきたトレーニング信号を基に,最適の伝送速度を判断させ,これにより,信号を1回送信するだけで送信速度の決定ができるようにして,上記課題を解決したものである。 したがって,仮に,イコライザのトレーニング信号に回線の歪度合- 128 -の測定機能を持たさず,トレーニング信号とは別に歪度合の測定をするための信号を送信する方法を採用すると,伝送速度決定のために要する時間を節約するという本件発明の目的を十分に達成することができないことが明らかである。また,本件明細書には,伝送速度決定のために要する時間を短くするという効果を犠牲にしてまでも,トレーニング信号によっては回線の歪度合を測定せずに,トレーニング信号とは異なる歪度合の測定のための信号を別途送信する必要性又はその可能性についての示唆は全くなく,出願経過からも,これらをうかがわせる事情は認められない。 そうすると,トレーニング信号では回線の歪度合を測定せずに,トレーニング信号とは別の信号により回線の歪度合を測定する方法は,本件発明とは異なる技術思想に基づくものであるというべきである。 そして,本件明細書や出願経緯には,このような技術思想を異にする伝送方式が含まれるとの示唆は一切なく,当業者としても,本件発明における歪測定は,当然にイコライザのトレーニング信号によって行われるものであると認識すると考えられる。 したがって,本件発明においては,受信側の装置が,イコライザのトレーニング信号に基づき,回線の歪度合を測定して,最適の伝送速度を決定すること,すなわち,トレーニング信号が回線の歪度合を測定するための信号を兼ねていることが前提となっているというべきであり,トレーニング信号とは別に, ,回線の歪度合を測定して,最適の伝送速度を決定すること,すなわち,トレーニング信号が回線の歪度合を測定するための信号を兼ねていることが前提となっているというべきであり,トレーニング信号とは別に,回線の歪度合を測定するための信号を送信する方式は,「送信装置から回線の歪度合を測定するための歪測定信号として・・・4値ランダム符号を・・・送信し」の要件には該当せず,本件発明の構成要件Aを充足しないものと解するのが相当である。 (ウ)原告の主張について- 129 -これに対して,原告は,本件明細書には,「変調信号線14は信号線bの立ち上がりにより,トレーニング信号及び歪測定信号を発生するべく動作する。変調装置14はトレーニング信号と歪測定信号に対応するデータパターンを発生する回路140を備えており」(6欄35ないし38行)と記載されており,トレーニング信号のデータパターンと歪測定信号のデータパターンとが異なるものであることが明記されている旨主張する。 しかしながら,原告の指摘する上記記載部分は,本件発明の実施例についての記載であるところ,本件明細書においては,上記( )で認定 したところから明らかなとおり,トレーニング信号と歪測定信号とは同一の信号であると認められ,また,原告の指摘する上記記載部分についても,上記の「トレーニング信号及び歪測定信号」という2つの機能を併せ持つ1つの信号を開示したものと解することに不自然な点はない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 ( )対比 被告方法においては,仮に,R-MEDLEYが,本件発明の「回線の歪度合を測定するための歪測定信号として4相位相変調方式により変調されてなる4値ランダム符号」に当たるとしても,宅用CPEモデムから,局用COモデムに対して,R-MEDLEYの送信に先立 の「回線の歪度合を測定するための歪測定信号として4相位相変調方式により変調されてなる4値ランダム符号」に当たるとしても,宅用CPEモデムから,局用COモデムに対して,R-MEDLEYの送信に先立ち,R-MEDLEYとは別に,イコライザの調整のためのトレーニング信号として,R-REVERB1及びR-REVERB2を送信しており,R-REVERB1及びR-REVERB2の送信によってイコライザの調整をし,R-MEDLEYの送信によって回線の歪度合を測定している。したがって,被告方法においては,トレーニング信号が回線の歪度合を測定するための信号を兼ねていないから,本件発明の構成要件Aを充足しない。 - 130 - 小括上記2のとおり,被告方法は,本件発明の本件発明の技術的範囲に属するものではないから,原告の被告CCIに対する各請求及び被告CJに対する各請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がない。 第4 結論 以上の次第で,原告の各請求は,いずれも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部裁判長裁判官清水節裁判官山田真紀裁判官佐野信- 131 -別紙被告物件目録以下の製品名(シリーズ名)のモデム用チップセット。 ADSL 局用モデム(局用モデム)ADSLCO①シリーズCopperLite②シリーズCopperFlite③シリーズMaximus 宅内モデム(宅用モデム)ADSLCPE①シリーズUniversalOptimizer②シリーズUniversalFliteOptimizer③シリーズUtopia④シリーズUniversalCopperFlite⑤シリーズPa rsalOptimizer②シリーズUniversalFliteOptimizer③シリーズUtopia④シリーズUniversalCopperFlite⑤シリーズParadia- 132 -別紙被告方法説明書1(原告主張)1.被告方法(第三者の方法)が運用されるシステムの概要被告方法が運用されるシステムは,(上の,通信ソフト等を含む),PCPCOSルータ(ブロードバンドルータ),宅用モデム,(局用モデムCPEDSLAMCOを含む),(ブロードバンドアクセスサーバ),地域網,プロバイダ,イBASIPンターネット網,サーバ(サーバ上の,通信ソフトを含む)等からなるデーOSタ通信を行うシステムである。 データは上で動作するソフトウェアにより作成される。 上ので動作PCPCOSする通信ソフトは,のハードウェアを制御し,からデータが送信される。 PCPC上の通信ソフトは,後述のサーバからの情報を受信し,後述の受信した受領PC確認に基づいて,からのデータの送信を制御する。 PCから送信されたデータは,ルータを介して,宅用モデムに送られる。 PCCPEからのデータに対し,宅用モデムにより,ヘッダー,空きセル,サイPCCPEクリックプリフィックス,同期シンボル等が加えられ,信号が作成される。 ADSL信号はアナログ信号であり,銅線加入者回線を介して,に送信ADSLDSLAMされる。 には,局用モデムが含まれている。 DSLAMCOは,東日本,西日本,日本テレコム又はイー・アクセスのいDSLAMNTTNTTDSLAMNTTSTNetずれかが管理するものに限る。例えば,が局内にあっても,等が管理しているものを含まない。 局用 日本,日本テレコム又はイー・アクセスのいDSLAMNTTNTTDSLAMNTTSTNetずれかが管理するものに限る。例えば,が局内にあっても,等が管理しているものを含まない。 局用モデムにおいて,信号から,ヘッダーや空きセルを含む受信デCOADSLータが復元され,空きセルは分別廃棄される。 ヘッダーを含むデータは,地域網を通じて,からに送られる。IPDSLAMBASは,ルータからのプロバイダ識別子に従って,複数のプロバイダのうち,BAS1つのプロバイダに振り分ける。 プロバイダは,それぞれのプロバイダ毎に異なる設備とハードウェア構成を有- 133 -する。振り分けで選ばれたプロバイダは,データをによって元々つくられたPC複数のパケットに再構成した上で,インターネット網に送信する。 インターネット網で,パケットがたどる経路は様々である。 すべてのパケットが,最終的にサーバに到達したときに,データが復元される。 復元されたデータを用いて,サーバ上のソフトウェアは,上の通信ソフトPCに対する受領確認を,以上と逆のルート(インターネット網→地域網→)IPPCで,上の通信ソフトに送信する。その受領確認に基づいて,上の通信ソフPCPCトは,データの送信を制御する。 サーバは,サーバ上の,通信ソフトを含む。サーバの応答速度(レスポンOSス)は,サーバ上のソフトウェアやサーバへのアクセス要求など,様々の状況に応じて変化し,一定ではない。 2.データの送受信を行うシステムの概要銅線加入者回線を介して互いに対向して接続された,ITU-TG992.1AnnexC,のいずれかに対応した宅用モデム(以下,「宅用ITU-TG992.2AnnexCADSLモデム」とする。)と(局用モデ に対向して接続された,ITU-TG992.1AnnexC,のいずれかに対応した宅用モデム(以下,「宅用ITU-TG992.2AnnexCADSLモデム」とする。)と(局用モデムを含む)を用いてデータのCPEDSLAMCO送受信を行うシステムである。 当該データ送受信システムに用いられる局用モデム及び宅用モデムにCOCPEは,被告製品であるモデム用チップセットが組み込まれている。 ADSL局用モデムは,を管理する東日本,西日本,日本テレコCODSLAMNTTNTTム又はイー・アクセスのいずれかが,モデムの接続確立に先立って,その設定値を制御できるように構成されている。 プロバイダによる料金による最高速度制限は,プロバイダの料金コースによりによるデータ通信の上り最高通信速度を制限する場合がある。 ADSLまた,比の測定結果が同じでも,測定に先立ってチップセット外部より指SN定されるノイズマージンの値により,データ通信速度が変わってくる場合がある。 - 134 -・間のによるデータ通信速度は,・モデム間の回線が同COCPEADSLCOCPEじでも,プロバイダによる料金による最高速度制限,ノイズマージン等の情報により異なるものとなる場合がある。 3. モデム間のデータ通信方式ADSLa.宅用モデムは,送信すべきデータの送信に先立って,CPEあらかじめ(ハンドシェークの段階で)局用モデムとの間で設定された条CO件(サブキャリア数など)に基づいて,,,などを送信し,局用モデムからR-REVERB1R-REVERB2R-REVERB3CO,などが送信された後,C-RATES1C-MSG1サブキャリア毎の4値擬似ランダム符号に対応し,との関係で 用モデムからR-REVERB1R-REVERB2R-REVERB3CO,などが送信された後,C-RATES1C-MSG1サブキャリア毎の4値擬似ランダム符号に対応し,との関係でR-MEDLEY信号点を観念できる4コンスタレーションの複素数データを(逆-QAMIDFT離散フーリエ変換)して合成してなる出力のサンプルのブロックの先頭に 当該ブロックの最後のサンプルをサイクリックプリフィックスとして付加し て並列直列変換の後デジタル・アナログ変換して形成されたを,/R-MEDLEY×(s)×()×n≒×n()69/68 4000 symbol/ bit8.118kbpsという特定の通信速度で送信する。 (なお,nは以下の整数値で,対をなす宅用モデムと局用モデム CPECOとが始動する前(ハンドシェーク前)にベンダー(プロバイダー)が選択した値であり,ハンドシェーク完了の後,モデムの接続が確立している間(モデムの稼動中)は変化しない。)b.局用モデムは,宅用モデムから送信されたを受信し,COCPER-MEDLEYDFTサイクリックプリフィックスの少なくとも一部を除去した後のデータを(離散フーリエ変換)して,当該を構成するすべてのサブキャリアR-MEDLEYにおけるコンスタレーションの複素数データを算出し,4-QAMすべてのサブキャリアにおけるコンスタレーションの本来の値から4-QAM- 135 -のずれ(誤差)の程度から,すべてのサブキャリアにおける(信号対雑SNR音比)を評価する。 c.評価結果に基づき宅用モデムとの間の上り通信速度を,ネットデータCPEレイトで()からX()までの範囲における32キロビット刻み kb ける(信号対雑SNR音比)を評価する。 c.評価結果に基づき宅用モデムとの間の上り通信速度を,ネットデータCPEレイトで()からX()までの範囲における32キロビット刻み kbpskbpsの通信速度(・・・)を表す4つのオプション(0001,0010,32,64,960100,1000の4ビット列のいずれかである。また,すべてのオプションが不可の場合には0000の4ビット列となる。)の中から決定し,によって,上り方向に使用される通信速度に関する最終的決定を宅C-RATES2用モデムに送信する。 CPEd.宅用モデムは,通知された上り通信速度でデータ通信を行う。 CPEe.データの通信方式。 但し,Xは,G.992.2では,()以上,G.992.1では, kbps()以上 kbps- 136 -別紙被告方法説明書2(被告ら主張)1.被告方法(第三者の方法)が運用されるシステムの概要被告方法が運用されるシステムは,(上の,通信ソフト等を含む),PCPCOSルータ(ブロードバンドルータ),宅用モデム,(局用モデムCPEDSLAMCOを含む),(ブロードバンドアクセスサーバ),地域網,(ネットBASIPNMSワークマネジメントシステム),プロバイダ,インターネット網,サーバ(サーバ上の,通信ソフトを含む)等からなるデータ通信を行うシステムである。 OSデータは,上の上で動作するソフトウェアにより作成される。 上のPCOSPC上で動作する通信ソフトは,のハードウェアを制御し,からデータがOSPCPC送信される。 上の通信ソフトは,後述のサーバからの情報を受信し,後述のPC受信した受領確認に基づいて,からのデータの送信を制御す トは,のハードウェアを制御し,からデータがOSPCPC送信される。 上の通信ソフトは,後述のサーバからの情報を受信し,後述のPC受信した受領確認に基づいて,からのデータの送信を制御する。 PC送信されたデータは,ルータを介して,宅用モデムに送られる。 CPEデータに対し,宅用モデムにより,ヘッダー,空きセル,サイクリックCPE・プリフィックス,同期シンボル等が加えられ,信号が作成される。 ADSL信号はアナログ信号であり,銅線加入者回線を介して,に送信ADSLDSLAMされる。 には,局用モデムが含まれている。 DSLAMCOは,NTT東日本,NTT西日本,日本テレコム又はイー・アクセスDSLAMのいずれかが自ら管理するものに限る。例えば,がNTT局内にあってDSLAMも,STNet等が管理しているものを含まない。 局用モデムにおいて,信号から空きセルが分別廃棄され,データがCOADSL復元される。 データは,地域網を通じて,に送られる。地域網の通信速度は保証IPBASIPされない。 は,ルータからのプロバイダ識別子に従って,複数のプロバイダのうち,BAS- 137 -1つのプロバイダに振り分ける。 プロバイダは,それぞれのプロバイダ毎に異なる設備とハードウェア構成を有する。振り分けで選ばれたプロバイダは,データをによって元々作られた複PC数のパケットに再構成した上で,インターネット網に送信する。 インターネット網は,パケットがたどる経路は様々であり,通信速度は不定である。 すべてのパケットが,最終的にサーバに到達したときに,データが復元される。 復元されたデータを用いて,サーバ上のソフトウェアは,上の通信ソフトPCに対する受領確認を,以上と逆のルート(インターネット網→ のパケットが,最終的にサーバに到達したときに,データが復元される。 復元されたデータを用いて,サーバ上のソフトウェアは,上の通信ソフトPCに対する受領確認を,以上と逆のルート(インターネット網→地域網→)IPPCで,上の通信ソフトに送信する。その受領確認に基づいて,上の通信ソフPCPCトは,データの送信を制御する。 サーバは,サーバ上の,通信ソフトを含む。サーバの応答速度(レスポンOSス)は,サーバ上のソフトウェアやサーバへのアクセス要求など,様々な状況に応じて変化し,一定ではない。 2. 信号の送受信を行うシステムの概要ADSL銅線加入者回線を介して互いに対向して接続された992.1ITU-TG,992.2のいずれかに対応した宅用モデムとAnnexCITU-TGAnnexCCPE局用モデムを用いて,信号の送受信を行うシステムである。 COADSL当該信号の送受信システムに用いられる局用モデム及び宅用モADSLCOCPEデムには,被告製品であるモデム用チップセットが組み込まれている。局ADSL用モデム及び宅用モデムは,多くの第三者の多くのコンポーネント(ソCOCPEフトウェアを含む)から構成されている。局用モデムのコンポーネントの1COつであるモトローラ社のホストプロセッサーは,プロバイダの設定値に関する情報を,・間の上り速度を管理するために用いられる情報(レジスタ設定COCPE情報)に変換し,被告CCIのチップ上のファームウエアに伝える。 - 138 -プロバイダによる料金による最高速度制限は,プロバイダの料金コースにより信号の上り最高通信速度を制限する。 ADSLまた,比の測定結果が同じでも,チップセット外部より指定されるノイズSNマー プロバイダによる料金による最高速度制限は,プロバイダの料金コースにより信号の上り最高通信速度を制限する。 ADSLまた,比の測定結果が同じでも,チップセット外部より指定されるノイズSNマージンの値により,信号の上りの通信速度が変わってくる。 ADSLプロバイダの料金による最高速度制限,ノイズマージン等の情報は,をNMS通じて,局用モデムに伝えられる。 CO・間の信号の通信速度は,・モデム間の回線が同じでも,COCPEADSLCOCPEプロバイダによる料金による最高速度制限,ノイズマージン等の情報により,異なるものとなる。 3. モデム間の信号の通信方法ADSLADSLa.宅用モデムは,送信すべき信号の送信に先立って,局用モデCPEADSLCOムに,多数の信号を送信する。これには,1,2のほか,R-REVERBR-REVERB2,3,3等が含まれる。逆に,局用モデムR-QUIETR-QUIETR-REVERBCOから宅用モデムにも,1,1等,多くの信号が送信され,CPEC-RATESC-MSG相互にやり取りがなされる。 その後,宅用モデムから,あらかじめ(ハンドシェークの段階で)局CPE用モデムとの間で設定された条件(サブキャリア数など)に基づいて,COが送信される。 は,1つの広帯域の信号である。 R-MEDLEYR-MEDLEYの送信に先立ち,回線の歪成分は上記モデムにより事実上除R-MEDLEYCO去されている。 は,比を推定する目的で送信される。 R-MEDLEYSNの発生過程においては,サブチャンネル毎に,コンスタR-MEDLEY4-QAMレーションが用いられる。 コンスタレーションは,という4-QAMR-MEDL される。 R-MEDLEYSNの発生過程においては,サブチャンネル毎に,コンスタR-MEDLEY4-QAMレーションが用いられる。 コンスタレーションは,という4-QAMR-MEDLEY1つの信号との関係においてのみ,信号点を観念できる。 の生成過程には,擬似ランダムシーケンス()発生器が1R-MEDLEYUPRDつだけ用いられる。擬似ランダムシーケンス発生器は,サブキャリア毎に設け- 139 -られてはいない。 サブキャリアのパターンについては,4値の符号として捉えた場合には,4値擬似ランダム符号ではなく,4値の強い規則性を有する符号である。 R-MEDELYの生成過程において,コンスタレーションの複素4-QAM数は,全サブチャンネルでまとめられ,あくまでも64個の数を64個の数に変換するという全体としての処理(64点の,逆離散フーリエ変換)がIDFTなされる。サブキャリア毎にを行うことはない。 IDFTそして,の64点の出力の,最後の4個の実数を出力並列/直列バッIDFTファへの(最初の4個として前置された)追加の入力として複製して,サイクリック・プリフィックスとして付加している。 そして,並列/直列変換の後,デジタル・アナログ変換して,1つのアナログ信号であるが形成される。 R-MEDLEYなお,被告CCIのハードウェアに関しては,の出力を128点とすIDFTる,又はし得るものがある。また,被告CCIのハードウェアの一部には,前述のとおり,の出力が128点のものがあり,これらについては,64IDFT点の場合の倍に当たる最後の8個の実数(サイクリック・プリフィックス)を出力並列/直列バッファへの(最初の8個として前置された)追加の入力として複製している。 の速度は,通常モードの場合,69 FT点の場合の倍に当たる最後の8個の実数(サイクリック・プリフィックス)を出力並列/直列バッファへの(最初の8個として前置された)追加の入力として複製している。 の速度は,通常モードの場合,69/68× 4000R-MEDLEY()×2()×n≒8.118n(Kbps)となる。nは,被告らsymbol/sbitが知る限り26である。 よって,通常モードのの速度は,約211(Kbps)となる。 R-MEDLEYFBMモードの場合,の速度は,この速度とゼロとの間で変動すR-MEDLEYる。なお,モードとしては,他にモードが存在する。 DBMb.局用モデムは,宅用モデムから送信されたを受信し,COCPER-MEDLEYサイクリック・プリフィックス4サンプルの一部分,及びサイクリック・プリ- 140 -フィックス以外の64サンプルの一部分から,情報を復元する。 そして,局用モデムは復調を受け取ったサンプルについて行い,そCOFFTの結果受信されたに関して,サブチャンネル毎のコンスタR-MEDLEY4-QAMレーションの複素数Ziが得られる。 そして,回線の比のベクトル値を求める。サブキャリア上の比はそSNSNのベクトルの成分である。 c.サブキャリア上の比のベクトルは,外部より与えられるマージン,SNSNR速度制限情報等を勘案した上で,ビットローディングのアルゴリズムによる各COCPEADSLサブキャリアへのビットの割り当てに用いられる。 ・モデム間の信号の通信速度は,外部から与えられる速度制限情報,マージン等によSNRり影響を受ける。 COCPEC-RATESC-RATESモデムからモデムに対し,2信号が送信される。 2信号は,8ビットのパターン(上り4ビット れる速度制限情報,マージン等によSNRり影響を受ける。 COCPEC-RATESC-RATESモデムからモデムに対し,2信号が送信される。 2信号は,8ビットのパターン(上り4ビット,下り4ビット)で,上りに関する値は,0001,0010,0100,1000,0000の5とおりである。 0001:オプション1を選択0010:オプション2を選択0100:オプション3を選択1000:オプション4を選択0000:全オプション失敗オプション1,2,3,4は,モデムとモデムの双方向のやり取りCOCPEや,外部からの指定により定まる。プロバイダからの速度制限情報は,オプションに反映される。 d.宅用モデムは,C-RATE2の上りに関する値が,0001,00CPE10,0100,1000のいずれかであった場合,選択されたオプションを参考にして,信号の送信を行う。 2の上りに関する値が,00ADSLC-RATES- 141 -00であった場合,の信号の送信を行わない。 ADSLe. 信号の通信方法。 ADSL- 142 -別紙損害額表~H13/05/19までH13/05/20~H14/6月末H14/07/01~H15/8月2まで9日(権利満了)まで逸失利益(NTT以外の分)(主張しない)4億7,615万円(①)3億9,057万円(②)(東西NTT分)(主張しない)11億4,527万円(③)16億9,877万円(④)実施料相当額(料率5%)×1/21億8,913万円4億425万円(⑥)3億3560万円(⑦)(⑤)- 143 -別表全世界日本向けNEC+住友NECSumitomo為替レート千ドル千ドル千ドル百万円千ドル千ドル2509¥126/$1999年 万円(⑦)(⑤)- 143 -別表全世界日本向けNEC+住友NECSumitomo為替レート千ドル千ドル千ドル百万円千ドル千ドル2509¥126/$1999年15831392 ¥109/$2000年5632417258170101854574511265¥113.5/$ 2001 1/156717494064877655362155227224~5/19¥113.5/$ 2001 5/20~1024908927988141100043894649195 2001 12/31¥126/$ 2002 1/1569174893748937 6166 日本市場の売上を上限とした~6/30¥126/$ 2002 7/1~2478674115641156 5186 日本市場の売上を上限とした 002 12/31¥120/$ 2003 1/1865426864968649 8238 日本市場の売上を上限とした~8/30
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