【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 理 由 弁護人鍜治利一の上告趣意第一点について。 原判決はその理由中第一の(一)のロにおいて、被告人が茨城県地方から不法に 買
主文本件上告を棄却する。 理由弁護人鍜治利一の上告趣意第一点について。 原判決はその理由中第一の(一)のロにおいて、被告人が茨城県地方から不法に買入れて所有する米麦の中玄米十五俵、小麦六俵を、東京都北多摩郡a町A方で同人に対して、所定の統制額より約金八一、三二〇円一〇銭超過する代金九万円で販売したことを判示している。右の事実を挙示の証拠に照らしてみると、玄米十五俵の処分についてすべて公判廷における被告人の供述によつて明らかであり、小麦六俵についても、これを右の米と一しょに運送したことは被告人が公判廷において供述しており、これを判示の価格でAに売つたことは同被告人に対する検事の聴取書中に同人の供述として記載されている。 被告人の当該判決裁判所の公判廷における供述が憲法三八条三項にいわゆる本人の自白に含まれないで完全な証拠能力を有することは、しばしば当裁判所の判例に示されているとおりである。本件の場合においては、被告人の公判廷外における自白と公判廷における供述と相俟つて判示事実を認定することができるのであるから、原判決には所論のように憲法三八条三項に違反するものではない。論旨は理由がない。 同第二点について。 原判示第二の(二)の事実は原判決挙示の各証拠によつて十分にこれを認めることができる。これ等の証拠の中には所論のように一体を成す供述の一部を引き離して罪証に供したものもなく、又相互に矛盾したものもない。(論旨は、Bが被告人から三俵の米を譲り受けるという話になつたことをCが知つていたか否かにつき、CとBとの証言が矛盾することを指摘しているが、この話をCが知つていたか否か- 1 -といことは判示事実に関係なきことである。)論旨は結局原判決における証拠の取捨判断を非難するに外ならないか き、CとBとの証言が矛盾することを指摘しているが、この話をCが知つていたか否か- 1 -といことは判示事実に関係なきことである。)論旨は結局原判決における証拠の取捨判断を非難するに外ならないから、採用できない。 同第三点について。 論旨は原判決の認定しない事実を根拠とする主張であるから採用できない。 以上の理由により旧刑訴四四六条に従い主文のとおり判決する。 この判決は公判廷の自白に関する裁判官塚崎直義、同沢田竹治郎、同井上登、同栗山茂、同小谷勝重の少数意見(昭和二三年(れ)第一六八号同年七月二九日大法廷判決記載のとおり。同判決参照、最高裁判所判例集二巻九号一〇一二頁以下)並びに裁判官島保の少数意見を除く外、裁判官一致の意見によるものである。なお右の点に関する裁判官斎藤悠輔並びに同真野毅の補足意見はそれぞれ前掲昭和二三年七月二九日大法廷判決及び昭和二三年(れ)第一五四四号同二四年四月二〇日大法廷判決記載のとおりである。 上告趣意第一点についての裁判官島保の意見は次のとおりである。 憲法三八条三項の規定は、被告人の裁判外の自白は、たといそれが任意にされたものであつても、ときに真実に反することがありうるので、それだけで被告人を有罪とすることは危険である、被告人の自白の外にその自白の真実に合することを裏書するに足りるなんらかの他の証拠(それは罪体に関するものであることを要するか、或は自白が虚偽であるとすれば存在しなかつたであろう事実についての証拠で足りるかの問題には争があるとしても)があつて、その証拠により自白が補強されなければ有罪とされないという思想上の沿革に基いて制定されたことは疑ない。言いかえれば、この規定は、被告人の自白に不利益な供述だけで被告人を有罪とすることを危険であるとし、被告人の供述とは別個な他の証拠によつて被告人の いという思想上の沿革に基いて制定されたことは疑ない。言いかえれば、この規定は、被告人の自白に不利益な供述だけで被告人を有罪とすることを危険であるとし、被告人の供述とは別個な他の証拠によつて被告人の供述の真実であることが裏書されたときでなければ、被告人を有罪とすることができない趣旨を明らかにして、かゝる実際上の理由から証拠法の一般法則を制限したのであ- 2 -る。しかるに、多数意見は、被告人の公判廷における供述によつて公判廷外における供述の証明力を補うことができるという趣旨を述べているだけであつて、憲法三八条三項の規定の本体には少しも触れていない。しかも、被告人が小麦六俵を米と一しょに運送したという被告人に不利益な情況事実の承認である自認と犯罪事実の全部の承認、すなわち罪責の承認をも含む自白とを同視してかゝる自認に「完全な証拠能力」を認めている趣旨については理解し難い。本論旨で問題となつているのは、被告人の裁判外の自白である検事の聴取書中の供述を被告人の公判廷における供述のみで補強して有罪とすることができるかどうか、簡単に言えば、被告人の自白を同一被告人の供述で補強して有罪とすることができるかどうかであつて、被告人の公判廷における供述がそれのみで完全な証拠能力を有するかどうかの問題ではない。私は、冒頭に述べた理由から多数意見には賛同できず、弁護人の本論旨を理由あるものと認め、原判決はこの点において破毀を免かれないものと考える。 検察官長谷川劉関与昭和二五年一〇月一一日最高裁判所大法廷裁判長裁判官塚崎直義裁判官長谷川太一郎裁判官沢田竹治郎裁判官霜 崎直義裁判官長谷川太一郎裁判官沢田竹治郎裁判官霜山精一裁判官井上登裁判官栗山茂裁判官小谷勝重裁判官島保裁判官斎藤悠輔- 3 -裁判官藤田八郎裁判官岩松三郎裁判官河村又介裁判官真野毅は出張につき署名押印することができない。 裁判長裁判官塚崎直義- 4 -
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