- 1 - 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は,控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 処分行政庁が,平成22年3月25日付けで株式会社A(営業所の所在地:熊本県天草市α×番地30)に対してした製造たばこ小売販売業の許可処分を取り消す。 3 被控訴人は,控訴人に対し,26万7011円を支払え。 第2 事案の概要(略語は原判決の表記による。) 1 本件は,九州財務局長(処分行政庁)が株式会社A(訴外会社)に対し,平成22年3月25日付けでした製造たばこ小売販売業の許可処分(本件処分)について,同許可に係る営業所(本件営業所。同営業所の所在地:熊本県天草市α×番地30)の近隣で同小売販売業の許可を受けて同業を営む控訴人が,本件処分の取消しを求めるとともに,本件処分により財産的損害を被ったとして被控訴人に対し,国家賠償法1条1項に基づき,損害(逸失利益)の賠償を求める事案である。 原審は,控訴人の本件処分の取消しを求める訴えにつき原告適格を認めたものの,本件処分は適法であり,国家賠償法上の違法性も認められないとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。そこで,控訴人がこれを不服として控訴した。 2 前提事実等並びに争点及び争点に関する当事者の主張(1) 本件の前提事実,関連法令等の定め並びに争点及び争点に関する当事者の主張は,後記(2)のとおり当審における当事者の補足的主張を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」欄の第2の1ないし4に記載のとおり- 2 -であるから,これを引用する(以下,原判決を摘示ないし引用する場合には,「原判決第2の1」などのように表記し,当審において補正があるときは補正後のものによる 2の1ないし4に記載のとおり- 2 -であるから,これを引用する(以下,原判決を摘示ないし引用する場合には,「原判決第2の1」などのように表記し,当審において補正があるときは補正後のものによる。)。 (2) 当審における当事者の補足的主張(控訴人の主張)ア争点(1)(原告適格)について被控訴人の主張する距離の測定方法が正しいか否かは実体審理をしなければ判明しないものであり,それは訴訟要件の問題とは別の問題である。 イ争点(2)ア(ア)(本件距離基準適合性)について既設営業者及び予定営業者の予測可能性保護の見地からすれば,距離の測定方法の規定は,一義的に解釈できなければならない。そうでなければ,行政の恣意的運用を許すことになるからである。したがって,予定営業所と既設営業所との距離の測定方法について,「店舗の出入口」を基準とすると定めているのであれば,当然,横断歩道と店舗との距離についても,「店舗の出入口」と横断歩道との距離を測定しなければならない。仮に測定の趣旨が異なるとしても,直ちに測定方法まで変更すべきとの結論には直結しない。 ウ争点(2)ア(イ)(行政手続法5条2項及び3項違反)について本件マニュアルは,かつては行政機関であったB株式会社が作成した文書であり,その文書の作成には行政機関の強い関与があり,内容も行政処分の一要件といえるほど重要なものであることなどからすれば,実質的には行政機関の定めている審査基準と見るべきである。 (被控訴人の主張)ア争点(1)(原告適格)について控訴人の経営する既設営業所は,法23条3号及び規則20条2号- 3 -による距離基準に係る規制の範囲内には位置していないから,控訴人は本件処分の取消しを求めるにつき,「法律上の利益を有する者」には該当しない。 設営業所は,法23条3号及び規則20条2号- 3 -による距離基準に係る規制の範囲内には位置していないから,控訴人は本件処分の取消しを求めるにつき,「法律上の利益を有する者」には該当しない。 イ争点(2)ア(ア)(本件距離基準適合性)について取扱要領第2章第一2(1)は,予定営業所から既設営業所までの距離の測定方法に係る原則を定めた規定であり,本件取扱いにおける「概ね20メートル以内」は,当該距離の測定に当たり横断歩道を通るべきか否かを決めるための判断基準であるから,両者は,その趣旨が全く異なる。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(原告適格)について(1) 行政事件訴訟法9条1項にいう「法律上の利益を有する者」の意義,本件許可制に係る法令の文言,趣旨及び目的並びに本件処分において考慮されるべき利益の内容及び性質についての当裁判所の判断は,原判決第3の1(1)ないし(3)のとおりであるから,これを引用する。 (2) 上記(1)によれば,距離規制の範囲内において,既に製造たばこ小売販売業の許可を受けている(又は受けた者とみなされている)既存の小売販売業者は,当該距離規制に違反して製造たばこ小売販売業の許可がされたとして,他者に対する許可の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」に当たると解するのが相当である。 そして,その範囲については,これが取消訴訟の実体審理を受ける利益に係るものであることに鑑みると,当該既存の小売販売業者の営業所が,厳密にこの距離規制の範囲内にある場合にとどまらず,距離規制の範囲内か否かが実体審理しなければ判明しない程度の距離にある場合もこれに含まれるというべきである。この点,法23条3号によって委任された規則20条2号が,「予定営業所と最寄りの小売販売業者の営業所との距離が,- 審理しなければ判明しない程度の距離にある場合もこれに含まれるというべきである。この点,法23条3号によって委任された規則20条2号が,「予定営業所と最寄りの小売販売業者の営業所との距離が,- 4 -特定小売販売業(劇場,旅館,飲食店,大規模な小売店舗・・・その他の閉鎖性があり,かつ,消費者の滞留性の強い施設内の場所を営業所として製造たばこの小売業を業として行うことをいう。)を営もうとする場合その他財務大臣の定める場合を除き,予定営業所の所在地の区分ごとに,25メートルから300メートルまでの範囲内で財務大臣が定める距離に達しない場合」と定めていることからすれば,予定営業所が特定小売販売業を営もうとする場合等を除き,予定営業所と最寄りの小売販売業者の営業所とが,直線距離において300メートルに達しない範囲内にある場合には,距離規制の範囲内か否か実体審理をしなければ判明しない程度の距離にあるものというべきである。なお,この場合,告示や取扱要領まで含めて上記範囲を決めることは,法が直接に委任していない下位の規範によることになり,原告適格の範囲を定めるものとして,相当でない。 これを本件について見るに,本件営業所と控訴人営業所とは直線距離において300メートルに達しない範囲内にあることが認められるから(乙3の2),控訴人は,距離規制に違反して製造たばこ小売販売業の許可がされたとして本件処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」に当たり,その取消訴訟の原告適格を有するものというべきである。 (3) 当審における当事者の補足的主張に対する判断被控訴人は,当審において,控訴人の経営する既設営業所が法23条3号及び規則20条2号による距離規制の範囲内には位置していないから,控訴人は本件処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有す 判断 被控訴人は,当審において,控訴人の経営する既設営業所が法23条3号及び規則20条2号による距離規制の範囲内には位置していないから,控訴人は本件処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」には該当しない旨主張する。 しかしながら,上記のとおり,距離規制の範囲内か否かが実体審理をしなければ判明しない程度の距離にある既存の小売販売業者も,実体審理を受ける法律上の利益を有するものというべきであって,被控訴人の上記主張は理由がない。 - 5 - 2 争点(2)ア(ア)(本件距離基準適合性)について(1) 認定事実及び法律上の判断は,後記(2)のとおり原判決を補正し,同(3)のとおり当審における当事者の補足的主張に対する判断を加えるほか,原判決第3の2(1)ないし(4)のとおりであるから,これを引用する。 (2) 原判決の補正ア 23頁12行目の末尾に改行の上,次のとおり加える。 「(2) 基準の合理性法22条1項は,製造たばこの小売販売を業として行おうとする者は,当分の間,その製造たばこに係る営業所ごとに財務大臣の許可を受けなければならないとし,法23条3号は,この許可をしないことができる場合として,営業所の位置が製造たばこ小売販売を業として行うのに不適当であるとして財務省令で定める場合とし,これを受けて規則20条2号は,法23条3号に規定する営業所の位置が製造たばこの小売販売を業として行うのに不適当である場合として財務省令で定める場合は次に掲げるものとし,その一つとして,予定営業所と最寄りの小売販売業者の営業所との距離が,予定営業所の所在地の区分ごとに,25メートルから300メートルまでの範囲で財務大臣が定める距離に達しない場合と定めている。そして,告示において,規則20条2号に基づき財務大臣が定める距離につ が,予定営業所の所在地の区分ごとに,25メートルから300メートルまでの範囲で財務大臣が定める距離に達しない場合と定めている。そして,告示において,規則20条2号に基づき財務大臣が定める距離について,予定営業所と既設営業所との通常人車の往来する道路に沿って測定することとされ,取扱要領において,製造たばこの小売販売業に関する許可等の基準の運用及び事務の取扱いは,この取扱要領の定めるところによるものとされ,距離の測定方法について,予定営業所から既設営業所までの距離は,原則として,予定営業所の営業行為を行う店舗の出入口の中央から既設営業所の営業行為を行う店舗の出入口の中央までを,通常人車の往来する道路に沿って測定し,最短のものを予定営業所から既設- 6 -営業所までの距離とする,予定営業所と既設営業所が道路を隔てて位置する場合,当該道路が横断禁止道路以外の道路である場合は,「両者の間又は両者の概ね20メートル以内に」横断歩道等があるときは,これを通行して測定し,これらのものがないときは,当該道路を直角に横断して測定するなどとしているところ,このような取扱要領の定める基準は,法23条3号,規則20条2号の営業許可の許否を決めるべき基準として何ら不合理な点はない。」イ 23頁13行目の「(2)」を「(3)」と改める。 ウ 24頁4行目の「(3)ア前記(2)」を「(4)ア前記(3)」と改める。 エ 24頁23行目の末尾に,次のとおり加える。 「また,店舗の出入口と道路との間に一定の距離がある場合,その間の敷地は駐車スペースとされるなど自動車が通行するものとして利用されることが多いものと想定されるから,そのような場合,店舗の出入口から道路部分に最短距離で歩行するのが通常の人の通行方法であって,横断歩道に向かって敷地内を斜めに横切る 車が通行するものとして利用されることが多いものと想定されるから,そのような場合,店舗の出入口から道路部分に最短距離で歩行するのが通常の人の通行方法であって,横断歩道に向かって敷地内を斜めに横切るような通行方法は前提としにくいものと思われる。」オ 26頁2行目の「(4) 前記(1)ないし(3)」を「(5) 前記(1)ないし(4)」と改める。 (3) 当審における当事者の補足的主張に対する判断控訴人は,当審において,既設営業者及び予定営業者の予測可能性を保護する見地からすれば,距離の測定方法の規定は,一義的に解釈できるものでなければならず,予定営業所と既設営業所との距離の測定方法について「店舗の出入口」を基準とするのであれば,横断歩道と店舗の出入口との間の距離についても「店舗の出入口」と横断歩道との距離を測定しなければならないもので,仮に測定の趣旨が異なるとしても,直ちに測定方法まで変更すべきとの結論には直結しない旨主張する。 - 7 -しかし,予定営業所と既設営業所との距離の原則的な測定方法の定め(取扱要領第2章第一2(1))と,その測定に際し,予定営業所と既設営業所とが道路を隔てて位置する場合に横断歩道を通行するものと扱うか否かを決めるための判断基準の定め(取扱要領第2章第二2(3))とは,全く趣旨の異なるものであるから,これを同一の測定方法によらなければならないものということはできない。 よって,控訴人の上記主張は理由がない。 3 争点(2)ア(イ)(行政手続法5条2項及び3項違反の有無),同(ウ)(法22条違反の有無)及び同イ(国家賠償法上の違法性の有無)について(1) 当裁判所も,本件処分に行政手続法5条2項及び3項違反の違法並びに法22条違反の違法はいずれも認められず,また,国家賠償法上の違法もないものと び同イ(国家賠償法上の違法性の有無)について(1) 当裁判所も,本件処分に行政手続法5条2項及び3項違反の違法並びに法22条違反の違法はいずれも認められず,また,国家賠償法上の違法もないものと判断するが,そのように判断する理由は,後記(2)のとおり原判決を補正し,同(3)において当審における当事者の補足的主張に対する判断を加えるほか,原判決第3の3ないし同5のとおりであるからこれを引用する。 (2) 原判決の補正原判決29頁15行目の末尾を改行の上,次のとおり加える。 「(3) また,控訴人の主張する法22条違反に関する違法事由は,控訴人の原告適格を基礎付ける規定以外の処分の根拠規定に違反するという違法事由であって,控訴人の法律上の利益に関係のない違法というべきであるから,本件訴訟において主張することができない。」(3) 当審における当事者の補足的主張に対する判断争点(2)ア(イ)(行政手続法5条2項及び3項違反)についての控訴人の当審における補足的主張は,前記の判断に照らすと,これを左右するものとはいえない。 - 8 - 4 以上によれば,控訴人の請求をいずれも棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所第5民事部 裁判長裁判官西謙二 裁判官足立正佳 裁判官島田正人
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