平成29(ワ)3397 損害賠償等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和6年11月20日 横浜地方裁判所
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判決文本文168,084 文字)

主文 1 本件各訴えのうち次の部分を却下する。 ⑴ 別紙2(差止請求原告目録)記載の原告ら(ただし、別紙3(死亡差止請求原告目録)記載の原告らを除く)による、自衛隊の使用する航空機に関する差止請求に係る部分 ⑵ 同原告らによる、アメリカ合衆国との協議に関する請求に係る部分⑶ 令和5年11月2日以降に生ずべき損害の賠償請求に係る部分 2 被告は各原告に対し次の金員を支払え。 ⑴ 別紙21(損害賠償認容額一覧表)の総計欄記載の金員⑵ 第1事件原告らについては同別紙の各合計欄記載の金員に対する各 合計欄に対応する賠償期間欄記載の期間の最終日の翌月1日(ただし、当該期間の最終日が、令和2年3月31日のものについては同年8月1日、令和5年11月1日のものについては令和6年8月1日)から、第2事件原告らについては同別紙の各合計欄記載の金員に対する各合計欄に対応する賠償期間欄記載の期間の最終日の翌月1日(ただし、当 該期間の最終日が、令和2年3月31日のものについては同年12月1日、令和5年11月1日のものについては同年12月1日)から、第3事件原告らについては同別紙の各合計欄記載の金員に対する各合計欄に対応する賠償期間欄記載の期間の最終日の翌月1日(ただし、当該期間の最終日が、令和2年3月31日のものについては同年5月1日、 令和5年11月1日のものについては令和6年5月1日)から、いずれも支払済みまで年5分の割合(ただし、当該期間の初日が令和2年4月1日以降のものについては年3分の割合)による金員 3 原告らのその余の請求(ただし、次項の部分を除く。)をいずれも棄却する。 4 本件訴訟のうち別紙3(死亡差止請求原告目録)記載の原告らによる、差止請求に係る部分及びアメリカ合衆国との協議に 原告らのその余の請求(ただし、次項の部分を除く。)をいずれも棄却する。 4 本件訴訟のうち別紙3(死亡差止請求原告目録)記載の原告らによる、差止請求に係る部分及びアメリカ合衆国との協議に関する請求に係る部分は、同別紙記載の死亡日に、同原告らの死亡により終了した。 5 訴訟費用は、第1事件、第2事件及び第3事件を通じ、別紙2(差止請求原告目録)記載の原告らに生じた費用はこれを8分し、その7を同原告らの、その余を被告の各負担とし、その余の原告らに生じた費用はこれを 7分し、その6を同原告らの、その余を被告の各負担とし、被告に生じた費用はこれを7分し、その6を原告らの、その余を被告の各負担とする。 6 この判決は、第2項に限り、被告に送達された日から14日を経過したときは、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1章請求及び事案の概要等第1 請求 1 被告は、厚木飛行場の使用により、自ら又はアメリカ合衆国軍隊(以下「米軍」という。)をして、別紙2(差止請求原告目録)記載の原告ら(以下「差止請求原告ら」という。)のために、 ⑴ 毎日午後8時から翌日午前8時までの間、航空機騒音、エンジン作動音その他一切の騒音をその居住地に到達させてはならない。 ⑵ 被告が防衛施設について用いている算定方式(以下「施設庁方式」という。)によるWECPNLの値(以下「W値」といい、具体的なW値を表す場合には「75W」などということがある。)が75を超える航空機騒音をその居 住地に到達させてはならない。 2 被告は、差止請求原告らのために、前項の請求(以下「本件差止請求」という。)が実現されるまでの間、厚木飛行場の使用について、アメリカ合衆国(以下「米国」という。)との間で本件差止請求の内容の実現のための は、差止請求原告らのために、前項の請求(以下「本件差止請求」という。)が実現されるまでの間、厚木飛行場の使用について、アメリカ合衆国(以下「米国」という。)との間で本件差止請求の内容の実現のための協議を行わなければならない。 3 被告は、各原告に対し、次の金員を支払え。 ⑴ 別紙4(第1事件訴状添付損害賠償額一覧表)の「請求額合計」欄記載の金員、別紙5(第2事件訴状添付損害賠償額一覧表)の「請求額合計」欄記載の金員及び別紙6(第3事件訴状添付損害賠償額一覧表)の「請求額合計」欄記載の金員。 ⑵ 第1事件原告らについては、別紙4(第1事件訴状添付損害賠償額一覧表) の「A」欄記載の金員に対する平成27年8月1日から、同「B」欄記載の金員に対する平成28年8月1日から、同「C」欄記載の金員に対する平成29年8月1日からいずれも支払済みまで年5%の割合による金員、第2事件原告らについては、別紙5(第2事件訴状添付損害賠償額一覧表)の「A」欄記載の金員に対する平成27年12月1日から、同「B」欄記載の金員に対 する平成28年12月1日から、同「C」欄記載の金員に対する平成29年12月1日からいずれも支払済みまで年5%の割合による金員、第3事件原告らについては、別紙6(第3事件訴状添付損害賠償額一覧表)の「A」欄記載の金員に対する平成28年5月1日から、同「B」欄記載の金員に対する平成29年5月1日から、同「C」欄記載の金員に対する平成30年5月1 日から、いずれも支払済みまで年5%の割合による金員⑶ 第1事件原告らについては、別紙4(第1事件訴状添付損害賠償額一覧表)の「D」欄記載の金員、並びに平成29年9月1日から本件差止請求に係る差止め及び騒音の規制が実現するまで毎月末日ごとに1か月につき金4万6000円 いては、別紙4(第1事件訴状添付損害賠償額一覧表)の「D」欄記載の金員、並びに平成29年9月1日から本件差止請求に係る差止め及び騒音の規制が実現するまで毎月末日ごとに1か月につき金4万6000円、並びにこれらに対する毎年8月1日を始期とする翌年7月31日 までの1年に属する各月の損害賠償額の合計額に対する当該翌年8月1日から支払済みまでそれぞれ年5%の割合による金員、第2事件原告らについては、平成29年12月1日から本件差止請求に係る差止め及び騒音の規制が実現するまで毎月末日ごとに1か月につき金4万6000円、並びにこれらに対する毎年12月1日を始期とする翌年11月30日までの1年に属する 各月の損害賠償額の合計額に対する当該翌年12月1日から支払済みまでそれぞれ年5%の割合による金員、第3事件原告らについては、平成30年5月1日から本件差止請求に係る差止め及び騒音の規制が実現するまで毎月末日ごとに1か月につき金4万6000円、並びにこれらに対する毎年12月1日を始期とする翌年11月30日までの1年に属する各月の損害賠償額の合計額に対する当該翌年12月1日から支払済みまでそれぞれ年5%の割合 による金員第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は、海上自衛隊及びアメリカ合衆国海軍(以下「米海軍」という。)が使用する厚木海軍飛行場(以下では、通称名である「厚木基地」ということが ある。)の周辺地域である神奈川県大和市、同綾瀬市、同相模原市、同座間市、同藤沢市、同海老名市、同茅ヶ崎市及び東京都町田市に居住している又は居住していた原告らが、厚木基地を離着陸する航空機の騒音等に関し、以下の各請求をする事案である。これらの請求は単純併合である。 なお、厚木基地の周辺住民は、昭和51年以降4次にわたり、厚木基地を離 住していた原告らが、厚木基地を離着陸する航空機の騒音等に関し、以下の各請求をする事案である。これらの請求は単純併合である。 なお、厚木基地の周辺住民は、昭和51年以降4次にわたり、厚木基地を離 着陸する航空機による騒音等の被害を受けているとして、被告に対し損害賠償等を求める訴えを提起してきた(以下、これらの訴訟を総称して「厚木基地騒音訴訟」という。)。本件訴訟は、平成19年12月17日に提起され、既に終局した第4次の損害賠償等請求事件(以下「4次民事訴訟」という。その事実審の口頭弁論終結の日は平成27年5月14日)の後行の訴訟として提起さ れたものである。 ⑴ 原告ら8738名(第1、第2、第3事件の原告合計数)が、厚木基地を離着陸する航空機の発する騒音により身体的被害及び睡眠妨害、生活妨害等の精神的被害を受けているとして、被告に対し、国家賠償法(以下「国賠法」という。)2条1項に基づき、厚木基地の一部に被告が設置した海上自衛隊 の飛行場(以下「厚木飛行場」という。)の周辺地域での居住期間中に生じた損害及び将来生ずべき損害(損害額は一律に1名につき1か月当たり慰謝料4万円と弁護士費用6000円の合計4万6000円)並びに上記居住期間中の所定の各1年間に属する各月の損害賠償額の合計額に対する当該1年の末日の翌日(不法行為の日より後の日)から支払済みまでそれぞれ民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。)所定の年5分の割合による遅 延損害金の支払を求めるもの(請求の趣旨第3項)。 なお、損害賠償請求の対象となる期間は、第1事件原告らについては平成26年8月4日以降、第2事件原告らについては同年12月1日以降、第3事件原告らについては平成27年5月1日以降(ただし、いずれの事件においても、4次民事訴訟の原 間は、第1事件原告らについては平成26年8月4日以降、第2事件原告らについては同年12月1日以降、第3事件原告らについては平成27年5月1日以降(ただし、いずれの事件においても、4次民事訴訟の原告らであった者については、その事実審の口頭弁 論終結日の翌日である同月15日以降)で、それぞれ本件差止請求に係る差止め及び騒音規制が実現するまでの期間のうち、各原告が施設庁方式によるW値が75以上の地域に居住開始した以降の期間である。 ⑵ 原告らのうち1371名(差止請求原告ら)が、被告に対し、前記⑴と同様の被害を受けるおそれがあるとして、人格権に基づき、厚木飛行場の使用又 は供用により、被告又は米軍をして、差止請求原告らのために、自衛隊の使用する航空機(以下「自衛隊機」という。)及び米軍の使用する航空機(以下「米軍機」という。)が発する騒音について、①毎日午後8時から翌日午前8時までの間、航空機騒音等の騒音をその居住地に到達させることの禁止、②施設庁方式によるW値が75を超える航空機騒音をその居住地に到達させる ことの禁止を求めるもの(請求の趣旨第1項。本件差止請求)。 ⑶ 差止請求原告らが、被告に対し、人格権に基づき、本件差止請求が実現されるまでの間、厚木飛行場の米軍への供用について、米国との間で本件差止請求の内容の実現のための協議を求めるもの(請求の趣旨第2項。以下「本件協議請求」という。)。 2 関連事件差止請求原告らは、民事訴訟である本件訴訟と並行して、平成29年8月4日、厚木飛行場の、自衛隊機及び米軍機の運航のための使用又は供用の差止め等を求める行政訴訟を提起し、同年12月1日、平成30年5月1日にそれぞれ追加提訴をしており、同訴訟は、本件とともに当裁判所において並行して審理され、判決も同日に言い 航のための使用又は供用の差止め等を求める行政訴訟を提起し、同年12月1日、平成30年5月1日にそれぞれ追加提訴をしており、同訴訟は、本件とともに当裁判所において並行して審理され、判決も同日に言い渡される。 第2章前提事実(争いのない事実並びに後掲各証拠(枝番が付されていないものは枝番全てを含む趣旨である。以下同様。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)第1 厚木基地について 1 厚木基地の現況 ⑴ 厚木基地の施設等厚木基地は、神奈川県大和市及び同綾瀬市に位置し、その面積は約505万6000㎡である。その主な施設として、長さ2438m、幅45m、オーバーラン南北各304mの滑走路、延長6764m、幅22mの誘導路、面積約15万2680㎡のエプロン(駐機場)、格納庫施設、管制塔施設等が ある。 厚木基地は、現在、以下の3つの部分から構成されている(このようになった経緯は、2で後述する。)。 ① 「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に 基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」(昭和35年条約第7号。以下「日米地位協定」という。)2条1項(a)に基づき、米国の使用する施設及び区域として米国に提供されていたが、使用転換され、海上自衛隊が管轄管理する施設及び区域であり、米軍が同条4項(b)に基づき一定の期間を限って使用を許される施設及び区域(別 紙7(厚木基地図面)の赤斜線部分。263万9157㎡の土地及びその上の建物等。「厚木飛行場区域」という。)② 同条1項(a)に基づき、米国の使用する施設及び区域として米国に提供されているものの、同条4項(a)に基づき、海上自衛隊の臨時的使用が認められた施設及び区域(別紙7(厚木基地図面) という。)② 同条1項(a)に基づき、米国の使用する施設及び区域として米国に提供されているものの、同条4項(a)に基づき、海上自衛隊の臨時的使用が認められた施設及び区域(別紙7(厚木基地図面)の黄色部分。117万8779㎡の土地及びその上の建物等。以下「日米共同使用区域」とい う。)③ 同条1項(a)に基づき、米国の使用する施設及び区域として米国に提供され、米軍が使用する施設及び区域(別紙7(厚木基地図面)の青色部分(①及び②以外の部分)。以下「米軍専用区域」という。) なお、厚木飛行場区域には、滑走路及び管制塔施設が含まれており、ここに厚木飛行場が設置されている。(争いのない事実、乙A1、弁論の全趣旨)⑵ 自衛隊機及び米軍機の厚木基地の利用状況等厚木基地の構造及び地理的な条件から、厚木基地を離着陸する航空機は、自衛隊機及び米軍機のいずれも、風向きによって厚木基地の北側又は南側を 通って離着陸するところ、離着陸の際の旋回のほか、訓練飛行のための旋回時に、その周辺住宅地の上空を飛行する(争いのない事実)。 2 設置及び管理、基地の利用状況の経緯⑴ 設置及び管理の経緯ア昭和46年6月の日米合同委員会まで 厚木基地は、昭和16年頃から旧海軍省により航空基地として使用されていたが、太平洋戦争後の昭和20年9月2日に米国陸軍に接収され、昭和25年12月からは、米海軍が管理及び運用する航空基地として使用された。 厚木基地は、昭和27年4月28日以降は、同日に発効した「日本国と アメリカ合衆国との間の安全保障条約」(昭和27年条約第6号)及び「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第3条に基く行政協定」(以下「日米行政協定」という。)2条1項に基づき、昭和35年6月23日 リカ合衆国との間の安全保障条約」(昭和27年条約第6号)及び「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第3条に基く行政協定」(以下「日米行政協定」という。)2条1項に基づき、昭和35年6月23日以降は、同日に発効した日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和35年条約第6号。以下「日米安保条約」という。)及び日米地位協定2条1項(a)に基づき、米軍の使用する施設及び区域とし て米国に提供されることとなった。そして、昭和27年4月28日以降、米国に対して提供される厚木基地の施設及び区域の決定並びにその返還を求める具体的手続については、日米行政協定ないし日米地位協定の実施に関する日本政府と米国政府との協議機関として設けられた日米合同委員会の協議を経て行われることとなった(日米行政協定2条1項、26条、 日米地位協定2条1項(a)、25条)。(争いのない事実、甲A1の1~3・5・6、60、乙A61の2、弁論の全趣旨)イ昭和46年6月の日米合同委員会以後日米合同委員会において、昭和46年6月30日、政府間協定が締結され、厚木基地の一部について、海上自衛隊との共同使用及び使用転換が決 定され、同年7月6日に告示され(昭和46年防衛施設庁告示第7号。甲A14)、厚木基地は、前記1⑴の①ないし③の厚木飛行場区域、日米共同使用区域、米軍専用区域の各部分により構成されることとなった。 そして、防衛庁長官は、自衛隊法107条5項に基づく「飛行場及び航空保安施設の設置及び管理の基準に関する訓令」(昭和33年防衛庁訓令 第105号)2条に基づき、厚木飛行場区域に自衛隊の飛行場施設(厚木飛行場)を設置した。 これにより、海上自衛隊第4航空群が、千葉県下総基地より厚木基地に移駐し、 」(昭和33年防衛庁訓令 第105号)2条に基づき、厚木飛行場区域に自衛隊の飛行場施設(厚木飛行場)を設置した。 これにより、海上自衛隊第4航空群が、千葉県下総基地より厚木基地に移駐し、同群の長が厚木飛行場を管理することとなり、昭和46年7月1日以降、海上自衛隊厚木航空基地分遣隊(現在は厚木航空基地隊)が航空 交通管制業務のうち飛行場管制業務及び着陸誘導管制業務を行うこととなった。(争いのない事実、甲A12、14、弁論の全趣旨)⑵ 米軍の利用状況厚木基地は、昭和25年12月から、米海軍が管理及び運用する航空基地として使用されるようになり、米海軍第7艦隊その他の部隊から飛来する航空機の整備、修理、補給等の後方支援業務、同艦隊所属の航空母艦艦載機の 操縦士の飛行訓練を行う基地として使用されるようになった。そして、昭和48年10月には、米海軍第7艦隊の空母ミッドウェイが横須賀を事実上の母港として初めて入港し、その後、空母インディペンデンス、キティホーク、ジョージ・ワシントン、ロナルド・レーガンが横須賀を母港とし、これらの空母の艦載機が厚木基地に飛来して着艦訓練(FieldCarrierLanding Practice。以下「FCLP」という。)等を行うようになった。昭和57年2月からは、厚木基地において、空母艦載機のFCLPのうち夜間に実施するもの(NightLandingPractice。以下「NLP」という。)を実施するようになった。なお、FCLPは、滑走路の一部を空母の甲板に見立てて、通常より狭い飛行場の場周経路を旋回しながら何度もタッチアンドゴー(航空機の 離着陸訓練の一つであり、滑走路へ進入降下し、着陸し、地上滑走した後、再びエンジン出力を上げて離陸するという一連の操作を繰り返すこと 場の場周経路を旋回しながら何度もタッチアンドゴー(航空機の 離着陸訓練の一つであり、滑走路へ進入降下し、着陸し、地上滑走した後、再びエンジン出力を上げて離陸するという一連の操作を繰り返すこと。)を行うものである。 厚木基地には、米海軍の厚木航空施設司令部及び第5空母航空団等が配置され、上記の各空母が横須賀に入港している間、その艦載機の拠点として使 用されていたが、後記第2・4⑴イ(ウ)のとおり、平成29年8月から米海軍の第5空母航空団所属の固定翼機の岩国飛行場への移駐が開始され、平成30年3月30日に完了した。 また、平成26年7月からはオスプレイが厚木基地に飛来するようになった。オスプレイは、固定翼機と回転翼機の両方の機能を持つ航空機であり、離 着陸は回転翼を用いて垂直に行い、移動時には固定翼機として高速飛行を行う。(争いのない事実、甲A1の1~3・5・6、60、62の3、乙A61の2、88、91、弁論の全趣旨)⑶ 自衛隊の利用状況海上自衛隊は、前記⑴イのとおり、昭和46年7月1日以降、厚木飛行場の管理に当たっており、厚木飛行場には、海上自衛隊の航空集団司令部が置か れるとともに、隷下の第4航空群、第51航空隊、第61航空隊及び航空管制隊等が置かれている。第4航空群は、日本の周辺海域における対潜航空活動を中心として、災害派遣等の民生協力活動等も行い、第51航空隊は、航空機の運用についての調査、研究、試験、教育等を、第61航空隊は、人員及び貨物の輸送業務を、航空管制隊は、海上自衛隊の航空機運航に必要な航空情報 の通報、飛行計画の申請及び承認に関する連絡事務等をそれぞれ行っている。 厚木飛行場には、P-1(哨戒機。ジェット機)、P-3C(哨戒機。プロペラ機)、SH-60J(哨戒機。ヘリコプタ 空情報 の通報、飛行計画の申請及び承認に関する連絡事務等をそれぞれ行っている。 厚木飛行場には、P-1(哨戒機。ジェット機)、P-3C(哨戒機。プロペラ機)、SH-60J(哨戒機。ヘリコプター)、SH-60K(哨戒機。ヘリコプター)、USH-60K(多用途機。ヘリコプター)、UP-1、UP-3C(多用途機。プロペラ機)、C-130R(輸送機。プロペラ機)及びLC -90(連絡機。プロペラ機)等が配備されている。(争いのない事実、甲A1の1~3・6、60、乙A61の2、62、弁論の全趣旨) 3 厚木基地における騒音問題厚木基地は、昭和25年12月に米海軍が管理運用するようになってから、米海軍第7艦隊の後方支援業務等を行ってきたが、昭和30年代には滑走路の 延長、かさ上げ等の整備・拡大がされ、ジェット戦闘機等が配備されるようになった。 大和市議会において、昭和35年8月に爆音対策委員会(のちの基地対策委員会)が設置され、神奈川県、同大和市及び同綾瀬町(当時)が国などに対して騒音軽減の要請を行ったり、同年9月には周辺住民が厚木基地爆音防止期成同 盟を結成して被害救済を求めるなどしており、遅くともこの頃までには厚木基地周辺における航空機騒音が社会問題化していた。 そして、前記2⑵のとおり、昭和48年10月に米海軍の空母艦載機が飛来するようになってからは、厚木基地が市街地に位置することもあって、同基地を離着陸する航空機による騒音が特に問題となっていった。さらに、昭和57年2月にNLPが実施されるようになると、夜間の騒音が激化し、問題が深刻 化した。 厚木基地周辺は、都市化が進んでおり、被告が住宅防音工事の対象としている第一種区域内には、小田急小田原線、小田急江ノ島線、相鉄本線、東急田園都市線、JR横浜線、 激化し、問題が深刻 化した。 厚木基地周辺は、都市化が進んでおり、被告が住宅防音工事の対象としている第一種区域内には、小田急小田原線、小田急江ノ島線、相鉄本線、東急田園都市線、JR横浜線、JR東海道線、横浜市営地下鉄線の7路線17駅が存在し、東名高速道路、国道1号、166号、134号、246号、467号といった幹 線道路が走り、学校、保育園、幼稚園といった教育施設や病院、介護施設が多数存在する。(争いのない事実、甲A1の1~3・6、乙A89)第2 航空機騒音について 1 評価方法⑴ 音及び騒音に関する一般的説明(争いのない事実、甲C1の1~4・14、 55、56、乙A26、乙C2、3、5、7、12、13、15、弁論の全趣旨)ア音の大きさを決めるのは、音の物理的側面である強弱(音波の振幅の程度)が基本であり、音の強弱は、音波によって空気中に生ずる大気圧の変化である音圧(単位はマイクロパスカル)によって決まる。人間が聞くこ とのできる音圧の幅が非常に広く、また、人間の音の大きさの感覚は、音圧の対数に対応することから、音圧の対数を用いた尺度である音圧レベルをdB(デシベル)という単位を用いて表している(音圧が10倍になると音圧レベルは20dB大きくなる関係にある。)。もっとも、音圧が等しく物理的に同じ強さの音であっても、音の高さ(周波数)が異なれば、人 間には異なった大きさの音に聞こえ、概ね4000Hzまでは音圧レベルが同じ場合には周波数が小さいほど音が小さく聞こえる。そこで、騒音の測定においては、音圧を計測する際に人間の耳の感度に近くなるように周波数に応じた補正をすることにより、音の大きさのレベル(騒音レベル)を測定する方法が用いられている。周波数ごとの補正の相違により複数の特性がある 、音圧を計測する際に人間の耳の感度に近くなるように周波数に応じた補正をすることにより、音の大きさのレベル(騒音レベル)を測定する方法が用いられている。周波数ごとの補正の相違により複数の特性があるところ、通常用いられているものはA特性であり、単位として はdB(A)と表記されるが、単にdBとされることも多い。本判決においても、単にdBと表記する場合にはdB(A)を意味する。 イ一般に人が聞くことができる音の周波数範囲は、20Hzから2万Hzとされており、これを「可聴域」、この範囲の音を「可聴音」といい、環境省では、周波数が20Hzからおよそ100Hzまでの低い周波数の音と、 音としては通常聞こえない20Hz以下の空気振動をまとめて「低周波音」と呼んでいる。そして、20Hz以下の低周波音に対する人の感度に近くなるような周波数に応じた補正をするものとしてG特性があり、dB(G)と表記される。周波数の比が2である二つの音の対数周波数間隔をオクターブ、これらの二つの音の間の周波数帯域をオクターブバンドといい、こ れを3分の1に分割したものを1/3オクターブバンドという。これらは、通常、上下の音の周波数の中心の周波数帯で表される。 ウ騒音とは、「望ましくない音、例えば、音声、音楽などの聴取を妨害したり、生活に障害、苦痛を与えたりする音」と定義されることがあり、同じ音でも受け止める者によって騒音になったりならなかったりする、人間の 感覚が織り込まれた概念であるため、物理的な基準のみに基づいてある音が騒音か否かを判断することはできない。 そこで、騒音の評価においては、主観量との対応がよい物理量による評価が必要であるが、例えば、一定の期間内に発生した音のうちの最大の音圧レベルであるLAmaxを尺度とする場合や一定の とはできない。 そこで、騒音の評価においては、主観量との対応がよい物理量による評価が必要であるが、例えば、一定の期間内に発生した音のうちの最大の音圧レベルであるLAmaxを尺度とする場合や一定の期間内に曝露された 変動騒音の総エネルギー量を時間で平均(音圧レベルの一定な定常騒音に置き換えた場合の音圧レベルに変換)した等価騒音レベルLAeq,T(Tには「24h」や「8h」など総エネルギー量を平均する時間が記載されることがある。)を尺度とする場合などがある。LAeq,Tのうち、特に日中の等価騒音レベルについてLday、夜間についてLnightなどと表現されることもある。 ⑵ 航空機騒音に関する各評価方法・評価尺度航空機騒音は、広い周波数帯の雑音に周期的な音が重なった間欠的な音であるなどの特性があり、航空機騒音にさらされる者の感じる特有のうるささを加味する観点から、種々の評価方法が考案されており、本件訴訟に関連するものとして以下のものがある(争いのない事実、甲A47の1、57、6 1、甲C1の1~5・17、47、55、乙A10、21、22、28、94、乙C1~4、7~11、弁論の全趣旨)。 ア WECPNLWECPNLは「WeightedEquivalentContinuousPerceivedNoiseLevel」(加重等価継続感覚騒音レベル)のことであり、国際連合の専門機 関の一つである国際民間航空機関(InternationalCivilAviationOrganization。以下「ICAO」という。)によって昭和46年に提案された航空機騒音に特化した評価指標である。騒音に対して感じるやかましさを基礎に音の大きさのレベルを示すPNL(PerceivedNoiseLevel ICAO」という。)によって昭和46年に提案された航空機騒音に特化した評価指標である。騒音に対して感じるやかましさを基礎に音の大きさのレベルを示すPNL(PerceivedNoiseLevel。感覚騒音レベル。A特性とは異なる感覚尺度である。)に継続時間補正及び 純音補正を加えて求めた航空機1機ごとのEPNL(EffectivePerceivedNoiseLevel。実効感覚騒音レベル)をもとに1日当たりの全機の騒音を累積し、これに騒音発生時間帯により5dB又は10dBを加える重み付けを行った上で、1日当たりの総騒音量の時間平均を求めるものである。 (ア)環境基準方式 ICAOの提案したW値の算定方法は複雑なものであるが、日本においては、昭和48年中央公害対策審議会の答申に基づいて「航空機騒音に係る環境基準について」(乙A10。平成19年環境省告示第114号による改正前のもの。以下「昭和48年環境基準」という。また、同改正後の環境基準を「現行環境基準」といい、これらを併せて「環境基準」ということがある。)が策定され、航空機騒音の評価尺度としてその 算定方法を簡略化した方法(以下「環境基準方式」という。)が採用された。 環境基準方式においては、原則として連続7日間航空機騒音の測定を行い、暗騒音より10dB以上大きい航空機騒音のピークレベル(dB。 ある指定された時間内に生じる最大の瞬時レベル)及び航空機の機数を 記録し、これらをもとに年間のW値を求めるが、主に、①ジェット機から発生する騒音のEPNLは、一般的な騒音計により測定される騒音レベル(A特性)に13を加えるものに近似するので、騒音計の測定結果に13を加えたもので代替する点、②離着陸において最大値から10dB低いレベルを超える騒音の継続時間 的な騒音計により測定される騒音レベル(A特性)に13を加えるものに近似するので、騒音計の測定結果に13を加えたもので代替する点、②離着陸において最大値から10dB低いレベルを超える騒音の継続時間を一律に20秒とする点、③夕方 及び夜間の補正において、5dB又は10dB加算するのではなくそれぞれ機数を3倍又は10倍する点、④特異音補正を省略する点で、ICAOの提案したW値の算定方法と異なる。その具体的な計算式は、次のとおりである。 WECPNL=dB(A)+10㏒10N-27 ここでいうdB(A)は、1日の全てのピークレベルをパワー平均したもの(1日当たりの航空機騒音について、1機ごとに対数であるdB(A)を一旦エネルギー量に戻し、全機分のエネルギー量を合算してか ら、1機当たりのエネルギー量に平均し、再び対数化することによって算出したもの)である。また、Nは、飛行機数(騒音発生回数)であるが、環境基準方式においては、飛行機数(騒音発生回数)の重み付けとして、午後7時から午後10時までの時間帯は、昼間の時間帯(午前7時から午後7時まで)の3倍、午前0時から午前7時まで及び午後10時から午後12時までの時間帯は昼間の時間帯の10倍に加重される。 1機ごとのピークレベルと継続時間に大きな差がなく、年間を通して1日当たりの飛行回数がほとんど一定の場合は、環境基準方式によってもICAO提案の方法によるW値とほぼ一致するとされている。 (イ)施設庁方式防衛施設庁(現防衛省)は、防衛施設周辺の整備等に関する法律(昭 和49年法律第101号により廃止。以下「旧周辺整備法」という。現在の防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律(以下「生活環境整備法」という。))所定の住宅防音工事等の各対策の対象区域 昭 和49年法律第101号により廃止。以下「旧周辺整備法」という。現在の防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律(以下「生活環境整備法」という。))所定の住宅防音工事等の各対策の対象区域を定めるために、旧周辺整備法施行規則(現在の生活環境整備法施行規則)において、環境基準方式を修正したW値の計算方法である施設庁方式を採用 した。 自衛隊等の利用する防衛施設である空港においては、民間空港と比べて機種、飛行回数や経路が複雑であり、騒音のピークレベルと継続時間の変化が大きく、環境基準方式によってW値を求めてもICAO提案の方法による値と大きく異なる。その結果、環境基準方式によるW値が同 じだとしても、防衛施設である空港の周辺住民による航空機騒音に対する反応は、民間空港の周辺住民のそれとは異なる場合がある。そこで、民間空港と防衛施設である空港との間で、W値が同じであれば同じ住民反応が示されるといえるようにするために、施設庁方式によるW値の算定方法が考案された。 施設庁方式は、環境基準方式と比べて、次の点が異なっており、一般に環境基準方式よりも施設庁方式の方が、W値が3ないし5高くなるとされている。 なお、以後、本判決で記載するW値については、特段の記載のない場合は、施設庁方式によるW値を示す。 ① 最近1年間の、飛行しない日も含めた1日の総飛行回数の少ない方からの累積度数曲線を求め、累積度数90%に相当する値をその防衛施設における1日の標準総飛行回数とすること。 ② 継続時間補正について、最大値から10dB低いレベルを超える騒音の継続時間を一律に20秒とするのではなく、実際の継続時間をも とに補正するなどすること。 ③ 着陸音補正として、ジェット機の着陸音に2dBを加えること。 0dB低いレベルを超える騒音の継続時間を一律に20秒とするのではなく、実際の継続時間をも とに補正するなどすること。 ③ 着陸音補正として、ジェット機の着陸音に2dBを加えること。 イ Lden(時間帯補正等価騒音レベル)Ldenという騒音評価尺度は、一定の時間内に変動する騒音レベルを エネルギー的な平均値として表した等価騒音レベルLAeqについて、昼間(午前7時から午後7時まで)、夕方(午後7時から午後10時まで)、夜間(午前0時から午前7時まで及び午後10時から午後12時まで)の時間帯別に重み付けをして求めた1日の等価騒音レベルであり、単位はdBである。WECPNLと同様に、夕方の騒音には5dB、夜間の騒音に は10dBをそれぞれ加える形で、時間帯による重み付けをしている。なお、Ldenにおいては、WECPNLと異なり離着陸時に伴って生じる飛行騒音だけではなく、航空機が誘導路上を移動する際に発生する騒音などの地上騒音も評価の対象となるが、これがLdenの騒音評価全体に与える影響は非常に小さい。 等価騒音レベルを基本とした評価指標には、ほかに、Ldn(Ldenとは異なり夕方の時間帯の重み付けをしないもの)、LAeq,24h(時間帯の重み付けをしないもの)などがある。 以下、本判決では、Ldenの値を「Lden57dB」などと表記することがある。 ウ 72%HA 72%HAとは、社会音響調査(社会調査)における質問において「地域騒音のうるささの強さ尺度目盛りの下端から72%以上、あるいは上端から28%以内と定義される高度のうるささ」の反応率であり、特定の騒音曝露に対する住民反応の程度を表す指標である。 社会音響調査は、騒音による心理的影響を評価するための手法であり、 上、あるいは上端から28%以内と定義される高度のうるささ」の反応率であり、特定の騒音曝露に対する住民反応の程度を表す指標である。 社会音響調査は、騒音による心理的影響を評価するための手法であり、 近時はICBEN(InternationalCommissiononBiologicalEffectofNoise)によって国際的に標準化された「騒音によって悩まされたり、邪魔されたり、あるいはうるさいと感じたりすることがありますか」といった質問を用いて、対象とする騒音について居住者が感じている「うるささ」(アノイアンス)の程度を質問すると同時に、回答者宅での対象音の騒 音レベルを測定する調査を、広範囲の地域で実施する。この質問に対して、7段階の尺度であれば最上位及び次順位を回答した者、5段階の尺度であれば最上位を回答した全ての者及び次順位を回答した者のうちの4割の者が、当該対象音について「高度のうるささ」であると反応したことになる。そのような者が全体の30%いれば、72%HA30%とな る。 2 環境基準等⑴ 昭和48年環境基準環境基準は、騒音に係る環境上の条件について、人の健康を保護し生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準として定められているもので ある(環境基本法16条1項)。 昭和48年環境基準は、当時の公害対策基本法9条1項に基づき、飛行場周辺の環境基準について、専ら住居の用に供される地域(地域類型Ⅰ)においてW値(環境基準方式。以下本項で同様。)70以下、その他の地域(地域類型Ⅱ)においてW値75以下とした。 厚木基地は、昭和48年環境基準の第一種空港に相当するものとして扱わ れ、環境基準の達成期間を「10年をこえる期間内に可及的速やかに」としつつ、中間的な改善目 Ⅱ)においてW値75以下とした。 厚木基地は、昭和48年環境基準の第一種空港に相当するものとして扱わ れ、環境基準の達成期間を「10年をこえる期間内に可及的速やかに」としつつ、中間的な改善目標として、①5年以内にW値を85未満とすること又はW値85以上の地域において屋内でW値65以下とすること、②10年以内にW値を75未満とすること又はW値75以上の地域において屋内でW値60以下とすることを達成しつつ、段階的に環境基準が達成されるようにするも のとされている。平成5年に環境基本法が公布、施行されたことに伴って公害対策基本法は廃止されたが、昭和48年環境基準は、環境基本法16条1項に基づく環境基準とみなすこととされた。(争いのない事実、乙A10、11)⑵ 現行環境基準昭和48年環境基準は、平成19年環境省告示114号により改正され、平 成25年4月1日から現行環境基準が施行された。その主な改正内容は次のとおりである。 ① 評価指標をWECPNLに代えてLdenに変更すること。 ② 地域類型Ⅰ(専ら住居の用に供される地域)の基準値をLden57d B以下、地域類型Ⅱ(それ以外の地域)の基準値をLden62dB以下とすること。 ③ 中間的な改善目標につき、従前85WとされていたものをLden70dB、65WとされていたものをLden50dB、75WとされていたものをLden62dB、60WとされていたものをLden47dBにそ れぞれ変更すること。 上記②及び③については、従来のW値をLden値に近似的に置き換えたもので、基準を実質的に変更するものではない。従来のW値で評価した騒音と同じ大きさの騒音をLdenで評価した場合の値との関係は、以下のとおりであるが、Ldenの値は推定値であ 値に近似的に置き換えたもので、基準を実質的に変更するものではない。従来のW値で評価した騒音と同じ大きさの騒音をLdenで評価した場合の値との関係は、以下のとおりであるが、Ldenの値は推定値であるため、一定の範囲内でばらつきが生じ 得るものである。これによれば、W値が高くなるほどLdenの値との差が広がるが、これは、WECPNLにおいては実際の騒音の継続時間ではなく、全ての騒音の継続時間を20秒と仮定しているところ、飛行騒音の継続時間はおおむねW値が70から80までの地域では20秒に近いのに対し、これよりも高騒音域になると継続時間が短くなる傾向にあることに起因する。 W値Ldenの値(dB) また、昭和48年環境基準においては、飛行時間帯別の重み付けについては、夕方及び夜間の飛行機数(騒音発生回数)をそれぞれ3倍、10倍にしていたところ、現行環境基準においては、それぞれ5dB、10dBを加算する こととなっているが、補正の結果はほぼ同様である。 評価指標がWECPNLからLdenに変更された背景には、騒音測定機器の技術的進歩に伴って高度な測定を簡易に行うことが可能となったことが挙げられる。すなわち、WECPNLにおいては、騒音の最大値と、仮定した騒音の継続時間(20秒)から近似的に騒音の曝露量を推計するのに対し、Lden(等価騒音レベルLAeqも同様)においては、実際に連続的に測定された騒音値と実継続時間をもとに積分演算により騒音の曝露量を計算することから、より高度で正確な測定が可能となったことである。そのほかにも、国際的にLden又はこれに類似した評価指標が主流となっていたこと、WE CPNLが航空機 演算により騒音の曝露量を計算することから、より高度で正確な測定が可能となったことである。そのほかにも、国際的にLden又はこれに類似した評価指標が主流となっていたこと、WE CPNLが航空機騒音に特化した指標である一方で、等価騒音レベルを基本とした評価指標であれば各種騒音との相互比較が可能であることも挙げられる。(争いのない事実、甲A61、乙A6、7、94、弁論の全趣旨) 3 厚木飛行場周辺における騒音コンターの作成及び区域指定等⑴ 騒音コンター及び告示コンター ア平成18年まで被告は、後記4⑵のとおり、厚木基地周辺地域において複数の周辺対策事業を実施しているが、そのうち、生活環境整備法(同法制定前は、旧周辺整備法)に基づく周辺対策事業等に関し、その対象区域等を指定してきた。 これらの指定に当たっては、厚木基地周辺の航空機騒音の各測定点における測定結果をもとに施設庁方式によりW値を算定し、その値に基づいて、W値が70又は75以上となる地域について5Wごとに同一のW値を結んだ線を騒音コンターとした上で、騒音コンター上の分類、道路や河川の位置等が考慮されている。 現在の指定区域等の指定に至るまでの主な経緯は、次のとおりである。 昭和54年9月5日(同年防衛施設庁告示第18号)第一種区域(85W以上)の指定昭和56年10月31日第一種区域の拡大(80W以上)に伴っ(同年防衛施設庁告示第19号)て80W以上の地域の指定第二種区域(90W以上)の指定昭和59年5月31日(同年防衛施設庁告示第9号)第一種区域の拡大(75W以上)に伴って75W以上の地域の指定新たな第二種区域(90W以上)及び第三種区域(95W以上)の指定昭和61年9月10日(同年防衛施設庁告示第9 告示第9号)第一種区域の拡大(75W以上)に伴って75W以上の地域の指定新たな第二種区域(90W以上)及び第三種区域(95W以上)の指定昭和61年9月10日(同年防衛施設庁告示第9号)新たな第一種区域(75W)の指定 また、被告は、昭和63年7月、第一種区域中、後記4⑵イの第Ⅰ工法による防音工事の対象地域であるW値が80以上となる地域と、第Ⅰ工法を簡略化した第Ⅱ工法による防音工事の対象地域であるW値が80未満となる地域を分ける工法区分線を定めた。(争いのない事実、乙A21) イ本件告示コンター図被告は、平成15年度から平成16年度にかけて実施した81箇所の航空機騒音度調査の結果及び予測手法に基づく予測結果を用いて各地点で施設庁方式により算定したW値に基づいて、75Wから95Wまでの騒音コンターを設定し、これを示した騒音コンター図(別紙8(平成16年度騒 音コンター図)。以下「平成16年度騒音コンター図」という。)を作成した。同別紙上の黒実線が75Wから95Wまでの各騒音コンターである。 これを踏まえ、被告は、平成18年1月17日、騒音コンターと重なる住宅の所在状況を勘案し、騒音コンターに沿って存在する街区、道路、河川等の位置に則した最小限の修正を加えて、前記アの区域指定を改定し、こ れを告示した(平成18年防衛施設庁告示第1号)。また、被告は、同月31日、後記4⑵イの外郭防音工事の対象地域であるW値が85以上となる地域とそれ以外の地域とを画する工法区分線を定めるとともに、前記アの第Ⅰ工法と第Ⅱ工法との工法区分線を見直した。これ以後、新たな区域指定等はされていない。 これらの結果、厚木基地周辺については、平成18年1月末日時点において、以下のとおり、W値の大きさに従って地域を区分する線が 法との工法区分線を見直した。これ以後、新たな区域指定等はされていない。 これらの結果、厚木基地周辺については、平成18年1月末日時点において、以下のとおり、W値の大きさに従って地域を区分する線が引かれたことになる。 ① 75W以上の第一種区域とそれ以外を区分する線② 80Wの第Ⅰ工法と第Ⅱ工法との工法区分線③ 85Wの外郭防音工事に係る工法区分線④ 90W以上の第二種区域とそれ以外を区分する線 ⑤ 95W以上の第三種区域とそれ以外を区分する線 これらの線により第一種区域等の範囲を示したものが別紙9(本件告示コンター図)であり、以下、同図面を「本件告示コンター図」という。同別紙上の赤、青、緑、黄、薄緑の各実線が上記①ないし⑤の各線である。 本判決では、本件告示コンター図などにおける5Wごとの線で区分された各区域について、例えば、75W以上80W未満の区域は「75Wの区域」、80W以上85W未満の区域は「80Wの区域」などといい、75W以上の区域全体(すなわち第一種区域全体)を表す場合には特に「75W以上の区域」などという。特段の記載がない場合には、本件告示コンター 図による区分を意味する。 なお、前記2⑵の環境基準の改正を受けて、区域指定に係る騒音の評価指標としてLdenが採用され、第一種区域はLden62dB以上、第二種区域はLden73dB以上、第三種区域はLden76dB以上とされた(平成25年防衛省令第5号による生活環境整備法施行規則の改正) が、Ldenを評価指標とする区域指定は、同改正の施行日である平成25年4月1日以後の生活環境整備法による新たな区域指定の時から適用することとされた。厚木基地について、同日以後、生活環境整備法による新たな区域指定はなく、現在において は、同改正の施行日である平成25年4月1日以後の生活環境整備法による新たな区域指定の時から適用することとされた。厚木基地について、同日以後、生活環境整備法による新たな区域指定はなく、現在においてもW値を基にした本件告示コンター図による区域指定等がされている。(争いのない事実、乙A20、22、23、乙B24~33) ⑵ みなし区域生活環境整備法に基づく90W以上の第二種区域及び95W以上の第三種区域以外に、みなし第二種区域及びみなし第三種区域(以下、併せて「みなし区域」という。)がある。みなし第二種区域は、厚木基地の滑走路の進入表面及び転移表面の投影面と一致する区域のうち着陸帯の短辺の端(南北端) から滑走路延長上1000mの地点までに挟まれた長方形の区域(指定区域)であり、みなし第三種区域は、みなし第二種区域のうち転移表面の投影面と一致する区域以外の区域である。 これらは旧周辺整備法制定前である昭和35年度から予算措置として移転補償等が行われ始めた区域であり、みなし第二種区域については、生活環境 整備法5条1項の規定により指定された区域とみなされ、後記4⑵ウの移転等の補償の対象となり(同法制定附則4項)、みなし第三種区域については、移転等の補償及び買入れの対象物件に関して同法6条1項に規定する第三種区域とみなされる(同法施行令制定附則3項)。 なお、進入表面とは、着陸帯の短辺に接続し、かつ、水平面に対し上方へ 50分の1の勾配を有する平面であって、その投影面が進入区域と一致するものであり(航空法2条8項)、航空機の離陸直後又は最終着陸の際の直線飛行の安全を確保するために設けられた制限表面のひとつである。ここでいう進入区域とは、着陸帯の短辺の両端及びこれと同じ側における着陸帯の中心線の延長3000mの 空機の離陸直後又は最終着陸の際の直線飛行の安全を確保するために設けられた制限表面のひとつである。ここでいう進入区域とは、着陸帯の短辺の両端及びこれと同じ側における着陸帯の中心線の延長3000mの点において中心線と直角をなす一直線上におけるこの 点から600mの距離を有する2点を結んで得た平面をいう(同条7項)。また、転移表面とは、着陸帯の長辺及び進入表面の斜辺に接し、水平面に対し着陸帯の外側上方へ7分の1の勾配を有する平面で、その末端が水平表面との接線となるものをいい(同条10項参照)、航空機が着陸のための進入を誤った時の脱出の安全を確保するために物件の設定等が制限されている。 (甲A51、乙A141、142) 4 厚木基地における騒音問題への対応状況⑴ 音源対策等ア自衛隊厚木飛行場において、第4航空群所属の自衛隊機による騒音に関し、次のような自主規制がされている(乙A17、18)。 (ア)厚木飛行場規則(平成19年第4航空群達第2号)による規制① 訓練飛行(タッチアンドゴー、ローアプローチ)及び地上試運転の規制時間は、原則として次の表のとおりとする。 区分曜日規制時間訓練飛行全ての航空機日曜日終日月曜日~土曜日午後10時~午前6時地上試運転ジェット機日曜日終日月曜日~土曜日午後6時~午前8時ジェット機以外日曜日終日月曜日~土曜日午後10時~午前6時 ② 場周経路内における連続離着陸訓練機数及び連続離着陸訓練回数は制限する。 ③ 厚木管制圏内での編隊飛行は、原則として実施しないものとする。 ④ 飛行場及びその周辺空域における既定の飛行経路の高度よりも低い高度での飛行は、任務及び訓練上必要 離着陸訓練回数は制限する。 ③ 厚木管制圏内での編隊飛行は、原則として実施しないものとする。 ④ 飛行場及びその周辺空域における既定の飛行経路の高度よりも低い高度での飛行は、任務及び訓練上必要な場合を除き行わないものとする。 ⑤ 離陸時のアフターバーナーの使用は、運航上必要な場合に限る。ただし、この場合、飛行場の境界線又は安全な高度及び速度に達したときは、使用を中止するものとする。 ⑥ 着艦訓練(FCLP)は、許可しない。 (イ)厚木航空基地における航空機騒音の軽減に関する規制措置について(平成28年4空群運第329号)による規制① 同一時間に離着陸機が集中しないよう、曜日及び時間帯(午前9時から午後1時まで(午前)、午後1時から午後5時まで(午後)、午後 5時から午後9時30分まで(夜間)の3つ)別で、航空隊(飛行隊)ごとに離着陸訓練時間を定めている。 ② 場周経路内の同時機数について、昼間は、固定翼機のみの場合は3機以内、回転翼機のみの場合は4機以内、両者が混在する場合はそれぞれ2機以内とし、夜間は、いずれかのみの場合はそれぞれ2機以内、 両者が混在する場合はそれぞれ1機とする。 ③ 連続離着陸訓練は、固定翼機については、昼間4回、夜間3回以内とし、更に訓練を実施する場合は、一度場周経路を離脱し、10分以上経過後に再度進入することとし、回転翼機については、昼間4回、夜間3回以内とし、更に訓練を実施する場合は、B1又は各ヘリパッ ドで10分以上のホバリング等を実施する。 ④ 厚木管制圏内では、編隊飛行は実施しない。 イ米軍(ア)日米合同委員会による合意日米合同委員会は、昭和38年9月19日、厚木基地周辺の米軍の活 動に伴う騒音について合意し、昭和44年11月2 編隊飛行は実施しない。 イ米軍(ア)日米合同委員会による合意日米合同委員会は、昭和38年9月19日、厚木基地周辺の米軍の活 動に伴う騒音について合意し、昭和44年11月20日、同合意について一部改正した(以下、この合意を「騒音規制合意」という。)。同改正後の合意内容のうち、主なものは次のとおりである。(乙A16)① 午後10時から午前6時までの間、厚木基地における全ての活動(飛行及びグランド・ラン・アップ)は、運用上の必要に応じ、及び米軍の態勢を保持する上に緊要と認められる場合を除き、禁止する。 ② 訓練飛行は、日曜日には最小限にとどめる。 ③ アフターバーナー装備の航空機を操作する操縦士は全て、厚木基地空域内においてできるだけ速やかに離陸・上昇することが要求される。 アフターバーナーは、安全飛行状態を持続するために継続して使用しなければならない場合又は運用上の必要による場合を除き、飛行場の 境界線に達する前に使用を停止しなければならない。 ④ 離陸及び着陸の間を除き、航空機は、人口稠密地域の上空を低空で飛行しない。 ⑤ 航空機は、運用上の必要がなければ、低空で、高音を発する飛行を行ったり、あるいは、他人に迷惑を及ぼすような方法で操縦しない。 ⑥ 航空機は、厚木海軍飛行場周辺の空域において曲技飛行及び空中戦闘訓練を実施しない。ただし、年間定期行事として計画された曲技飛行のデモンストレーションは、その限りではない。 ⑦ 空母着艦訓練及び反射鏡利用による着艦訓練のための航空機は、場周経路にあっては2機に制限される。また、これらの訓練の巡航速度 は、1マッハ以下にとどめる。さらに、これらの訓練のための航空機は、特 着艦訓練及び反射鏡利用による着艦訓練のための航空機は、場周経路にあっては2機に制限される。また、これらの訓練の巡航速度 は、1マッハ以下にとどめる。さらに、これらの訓練のための航空機は、特定のタイプの訓練を必要とする場合を除き、平均海面上1600ft以下で飛行しない。特殊の訓練は、訓練の必要に見合った必要最小限度にとどめるものとし、かつ、そのパターンは、平均海面800ft以下は通らない。 ⑧ 運用能力又は態勢が損なわれる場合を除き、ジェットエンジンは、午後6時から午前8時までの間、試運転されない。 ⑨ ジェットエンジンテストの実施に当たり、厚木海軍飛行場は、実行可能なできるだけ早い時期に効果的な消音器を装備し、それを騒音減衰のために使用する。エンジンテストを行うためには、ジェットエンジンテストセル地区が使用される。テストセルに適合しないジェット 機エンジンがテストされなければならないような場合はこの限りではないが、そのような状況下においては、騒音の持続時間とレベルを最小限に保つよう最大の注意が払われるものとする。 (イ)NLPの硫黄島での実施厚木基地においては、昭和57年2月からNLPが行われていたが、 被告は、平成元年から硫黄島に米海軍空母艦載機の暫定的なNLP訓練施設の建設に着手し、平成5年3月に同施設が完成し、同年9月頃から、同施設においてNLPが行われるようになり、同年以降、NLPの通告日数が減少した(争いのない事実、甲A1)。 (ウ)空母艦載機の岩国飛行場への移駐 被告は、平成18年5月1日、在日米軍再編に関する「再編実施のための日米のロードマップ」を発表し、厚木基地に所属する米海軍第5空母航空団を岩国飛行場に移駐(以下「岩国移駐」という。)することとし 被告は、平成18年5月1日、在日米軍再編に関する「再編実施のための日米のロードマップ」を発表し、厚木基地に所属する米海軍第5空母航空団を岩国飛行場に移駐(以下「岩国移駐」という。)することとした。米海軍は、平成29年8月から岩国移駐を開始し、平成30年3月30日にこれを完了させた。移駐したのは、早期警戒機E-2D(5機)、 戦闘攻撃機FA-18の4部隊(計約48機)、電子戦機EA-18G(約6機)、輸送機C-2(約2機)の各部隊とされている。(乙A4、24、25、90、乙D1~4、弁論の全趣旨)⑵ 周辺対策被告は、当初は行政措置として、昭和41年以降は旧周辺整備法に基づき 周辺対策を実施してきた。 そして、昭和49年に成立した生活環境整備法は、自衛隊又は日米安保条約に基づき日本にある米軍の行為又は防衛施設(自衛隊の施設又は日米地位協定2条1項の施設及び区域)の設置若しくは運用により生ずる障害の防止等のため、防衛施設周辺地域の生活環境等の整備について必要な措置を講ずるとともに、自衛隊の特定の行為により生ずる損失を補償することにより、 関係住民の生活の安定及び福祉の向上に寄与することを目的とし(同法1条)、種々の措置について定めている。 被告が同法に基づき実施している厚木基地周辺地域における周辺対策事業の主なものは次のとおりである。(乙A3、9、74、75、77、78、80、弁論の全趣旨) ア学校、病院等における騒音防止工事に対する助成(同法3条2項)自衛隊等の航空機の離陸、着陸等のひん繁な実施等により生ずる音響で著しいものの防止・軽減のために地方公共団体等が行う学校、病院等の防音工事に対して助成をするものである。 イ住宅防音工事の助成(同法4条) 自衛隊等 実施等により生ずる音響で著しいものの防止・軽減のために地方公共団体等が行う学校、病院等の防音工事に対して助成をするものである。 イ住宅防音工事の助成(同法4条) 自衛隊等の航空機の離陸、着陸等のひん繁な実施等により生ずる音響に起因する障害が著しいと認めて防衛大臣が指定する防衛施設の周辺の区域である第一種区域に所在する個人の住宅について、防衛省の定めた住宅防音工事標準仕方書(乙A75、76)により行う防音工事に対して助成をするもので、助成額は、原則、工事費の全額(一定の上限がある。)であ る。 対象は、同条によれば、第一種区域の指定の際に現に所在する住宅であるところ、前記3⑴アのとおり、第一種区域の指定基準が段階的に緩やかにされてきており(85Wから80W、75W)、また、第一種区域等の指定が新たに指定された範囲のみを指定する方法でされていることとの関 係で、同時期に建てられた建物であっても、75Wの区域の建物は助成対象であっても、85Wの区域の建物は助成対象外となってしまうことがあるが、このような場合には、被告は予算措置として助成を行うなどして不利益が生じないようにしている。 住宅防音工事には、80W以上の区域に対して行う計画防音量を25dB以上とする第Ⅰ工法と、75Wの区域に対して行う計画防音量を20d B以上とする第Ⅱ工法がある。なお、住宅防音工事においては、計画防音量に達する防音効果を上げるためには、室内を密閉する必要があることから、防音工事済みの居室の環境を保持するために有効な換気設備及び冷暖房設備を設置している。 住宅防音工事には次の種類がある。 ① 新規防音工事未だ住宅防音工事が実施されていない住宅を対象とする工事で 換気設備及び冷暖房設備を設置している。 住宅防音工事には次の種類がある。 ① 新規防音工事未だ住宅防音工事が実施されていない住宅を対象とする工事であり、住宅の世帯人員にかかわらず2居室以内(ただし、平成11年12月10日までは、世帯人員4人以下の場合には1居室以内であった。)が対象である。なお、新規防音工事は平成21年度をもって廃止され、以後は、 次の②の一挙防音工事を実施することとされている。 ② 一挙防音工事未だ住宅防音工事が実施されていない住宅を対象とする工事であり、世帯人員に1を加えた居室数まで(5居室が上限)が対象である。 ③ 追加防音工事 従前行われていた前記①の新規防音工事のみを実施した住宅を対象とする工事で、一挙防音工事による上限数から従前の新規防音工事で実施した居室数を除いた居室が対象である。 ④ 防音区画改善工事バリアフリー対応住宅や身体障害者などが居住する住宅等を対象に 行うもので、台所、区画された玄関、廊下、浴室その他の居室以外の区画と居室とを合わせて一つの防音区画として、住宅防音工事を実施するものである。居室については世帯人員が4人以下の場合は5居室まで、5人以上の場合は世帯人員に1を加えた居室数まで(ただし、既に住宅防音工事が実施されたことがある場合には、当該工事を実施した居室数を減じた居室数まで)が対象である。ただし、一挙防音工事又は追加防 音工事を実施した住宅については、原則として、これらの工事から10年を経過しなければ対象外である。 ⑤ 外郭防音工事平成14年度から実施されている工事で、世帯人員にかかわらず住宅全体を一つの区画として、その外郭について実施する住宅防音工事であ る。85 ければ対象外である。 ⑤ 外郭防音工事平成14年度から実施されている工事で、世帯人員にかかわらず住宅全体を一つの区画として、その外郭について実施する住宅防音工事であ る。85W以上の区域に所在する住宅と、75Wの区域及び80Wの区域に所在し、未だ住宅防音工事を行っていない鉄筋コンクリート造の集合住宅のうち一定の条件を満たした住宅が対象である。ただし、85W以上の区域に所在し、一挙防音工事又は追加防音工事を実施した住宅については、原則として、これらの工事から10年を経過しなければ対象 外である。 ⑥ その他の工事機能復旧工事は、住宅防音工事により設置した空気調和機器の機能を復旧する工事で、住宅防音工事の完了後10年を経過し、その機能の全部又は一部を保持していない空気調和機器を対象とした工事であり、そ の補助率は9割である。 防音建具の機能復旧工事は、住宅防音工事により外部開口部に設置した防音建具の機能を復旧する工事で、住宅防音工事の完了後10年を経過し、その機能の全部又は一部を保持していない防音建具を対象とする工事であり、その補助率は10割である。 建替防音工事は、防音工事の助成を受けてから10年以上経過し、建て替え前の住宅との間に代替性、継続性が認められる建て替え後の住宅に対する工事である。 工法是正工事は、第Ⅱ工法により、住宅防音工事を実施したものの、その後、工法区分線の変更によって第Ⅰ工法の対象区域に所在することとなった場合に改めて第Ⅰ工法による工事を実施するものである。 ウ移転等の補償(同法5条1項)及び土地の買入れ(同条2項)第一種区域のうち航空機の離陸、着陸等のひん繁な実施により生ずる音響に起因する障害が特に著しいと認めて防衛大臣が指定す ウ移転等の補償(同法5条1項)及び土地の買入れ(同条2項)第一種区域のうち航空機の離陸、着陸等のひん繁な実施により生ずる音響に起因する障害が特に著しいと認めて防衛大臣が指定する区域である第二種区域(90W以上の区域)にその指定の際現に所在する建物等の所有者が、当該建物等を同区域外に移転し、又は除却するときに、当該建物 等の所有者に対し、当該移転又は除却により通常生ずべき損失を補償し、第二種区域に所在する土地の所有者が当該土地の買入れを申し出るときに、当該土地の買入れ等をするもの(以下「移転措置」という。)であり、周辺住民の生活環境の整備を図り、併せて厚木基地の安全確保に資することを目的とするものである。 移転措置の補償を受けるか否かは、対象区域に居住する者の選択に委ねられている。補償を受けない場合においても、同法4条に基づく住宅防音工事の助成を受けることができる。建物等の移転補償には、建物の移転費又は除却費、工作物・動産の移転費、仮住居等の使用に要する費用、営業休止等の補償費等が含まれ、移転に伴う土地の買入れは、建物等の移転、 除却に係る宅地及びその他の関連土地を対象としている。 なお、付随するものとして、移転先地において多数の移転者がいるなどにより、公共施設の整備が必要となった場合の地方公共団体等への助成(同法5条3項)、買い入れた土地を地方公共団体が広場等の用に供する場合に無償で使用させること(同法7条)も定められている。 エ緑地帯の整備(同法6条)第二種区域のうち航空機の離陸、着陸等のひん繁な実施により生ずる音響に起因する障害が新たに発生することを防止し、併せてその周辺における生活環境の改善に資する必要があると認めて防衛大臣が指定する区域である第三 のうち航空機の離陸、着陸等のひん繁な実施により生ずる音響に起因する障害が新たに発生することを防止し、併せてその周辺における生活環境の改善に資する必要があると認めて防衛大臣が指定する区域である第三種区域(95Wの区域)に所在する土地で、移転等の補償によ り買い入れた土地についての緑地帯その他の緩衝地帯として整備されるように必要な措置を採るものである。 第3 厚木基地における騒音訴訟の経緯厚木基地の周辺住民は、昭和51年以降4次にわたり、厚木基地を離着陸する航空機による騒音等の被害を受けているとして、被告に対し、厚木基地騒音 訴訟を提起してきた。各訴訟における請求と判決の概要は次のとおりである。 (甲A1の1・2・6、弁論の全趣旨) 1 1次訴訟厚木基地の周辺住民92名は、昭和51年9月8日、被告に対し、厚木基地における航空機の離着陸等及び一定以上の航空機騒音の到達の差止め並びに 過去及び将来の損害の賠償を求める訴えを横浜地方裁判所に提起した。同裁判所は、昭和57年10月20日、各差止め及び将来の損害の賠償請求に係る訴えを却下し、過去の損害の賠償請求を一部認容する判決を言い渡した(判例時報1056号26頁)。 双方が控訴し、東京高等裁判所は、昭和61年4月9日、各差止め及び将来 の損害の賠償請求に係る訴えを却下すべきものとし、過去の損害の賠償請求をいずれも棄却する判決を言い渡した(判例時報1192号1頁)。 周辺住民が上告し、最高裁判所は平成5年2月25日、過去の損害の賠償請求に係る部分について原判決を破棄し、東京高等裁判所に差し戻した(最高裁昭和62年(オ)第58号平成5年2月25日第一小法廷判決・民集47巻2 号643頁。以下「厚木基地1次最判」という。)。 差戻審である東京高等裁判所は、平成 京高等裁判所に差し戻した(最高裁昭和62年(オ)第58号平成5年2月25日第一小法廷判決・民集47巻2 号643頁。以下「厚木基地1次最判」という。)。 差戻審である東京高等裁判所は、平成7年12月26日、過去の損害の賠償請求を一部認容する判決を言い渡し、この判決は確定した(判例時報1555号9頁)。 2 2次訴訟厚木基地の周辺住民161名は、昭和59年10月22日、被告に対し、厚 木基地における航空機の離着陸等及び一定以上の航空機騒音の到達の差止め並びに過去及び将来の損害の賠償を求める訴えを横浜地方裁判所に提起した。同裁判所は、平成4年12月21日、将来の損害の賠償請求及び米軍機の差止めに係る訴えを不適法として却下し、自衛隊機の差止請求を棄却する一方、過去の損害の賠償請求を一部認容する判決を言い渡した(判例時報1448号42 頁)。 双方が控訴し、東京高等裁判所は、平成11年7月23日、自衛隊機の差止請求については訴えを不適法として却下し、将来の損害の賠償請求及び米軍機の差止めに係る訴えについては原判決と同様に却下すべきものとし、過去の損害の賠償請求については、その請求を一部認容する判決を言い渡し、この判決 は確定した(訟務月報47巻3号381頁)。 3 3次訴訟厚木基地の周辺住民2823名は、平成9年12月8日、被告に対し、過去及び将来の損害の賠償を求める訴えを横浜地方裁判所に提起した。その後の追加提訴があり、原告となった周辺住民の総数は5000名を超えた。同裁判所 は、平成14年10月16日、将来の損害の賠償請求に係る訴えを不適法として却下し、周辺住民4935名について、過去の損害の賠償請求を一部認容する判決を言い渡した(判例時報1815号3頁)。 双方が控訴し、東 月16日、将来の損害の賠償請求に係る訴えを不適法として却下し、周辺住民4935名について、過去の損害の賠償請求を一部認容する判決を言い渡した(判例時報1815号3頁)。 双方が控訴し、東京高等裁判所は、平成18年7月13日、将来の損害の賠償請求については訴えを却下すべきものとし、過去の損害の賠償請求について は、その請求を一部認容する判決(公刊物未登載)を言い渡し、この判決は確定した。 4 4次訴訟厚木基地の周辺住民6130名は、平成19年12月17日、厚木基地における航空機の離着陸等及び一定以上の航空機騒音の到達の差止め並びに過去及び将来の損害の賠償を求める民事訴訟を横浜地方裁判所に提起し、また、厚 木基地の周辺住民58名は、厚木基地における所定の自衛隊機の運航及び米軍に対する所定の厚木飛行場区域の使用許可の差止めを求める行政訴訟を横浜地方裁判所に提起した。その後追加提訴があり、民事訴訟の原告となった周辺住民は6993名、行政訴訟の原告となった周辺住民は67名となった。同裁判所は、平成26年5月21日、民事訴訟については、将来の損害の賠償請求 に係る部分及び自衛隊機についての差止等を求める部分を不適法として却下し、米軍機についての差止等を求める請求を主張自体失当として棄却し、過去の損害の賠償請求を一部認容する判決(判例時報2277号123頁)を、行政訴訟については、米軍機についての差止等を求める部分を不適法として却下し、自衛隊機に係る差止請求については、午後10時から午前6時までの運航 に関し、やむを得ないと認める場合を除いて請求を認容する判決(判例時報2277号38頁)を言い渡した。 双方が控訴し、東京高等裁判所は、平成27年7月30日、民事訴訟については、自衛隊機についての やむを得ないと認める場合を除いて請求を認容する判決(判例時報2277号38頁)を言い渡した。 双方が控訴し、東京高等裁判所は、平成27年7月30日、民事訴訟については、自衛隊機についての差止等を求める部分を却下すべきもの、米軍機についての差止等を棄却すべきものとし、損害賠償請求につき過去分だけでなく将 来分のうち平成28年末までの分について一部認容する判決(判例時報2277号84頁)を、行政訴訟については、米軍機についての差止等を求める部分を不適法として却下すべきものとし、自衛隊機に係る差止請求については、同年末までの午後10時から午前6時までの運航に関し、やむを得ない事由に基づく場合を除いて請求を認容する判決(判例時報2277号13頁)を言い渡 した。 これに対し、民事訴訟及び行政訴訟のそれぞれにつき、周辺住民らが上告及び上告受理申立てを、被告が上告受理申立てをした。最高裁判所は、民事訴訟については、被告の上告受理申立ての理由中一部を排除してこれを受理した上、平成28年12月8日、周辺住民らの損害賠償請求権のうち事実審の口頭弁論終結の日の翌日以降の分は、将来の給付の訴えを提起することのできる請 求権としての適格を有しないとして、将来の損害の賠償請求については訴えを却下すべきものとした(最高裁平成27年(受)第2309号同28年12月8日第一小法廷判決・集民254号35頁。以下「厚木基地4次民訴最判」という。)。また、最高裁判所は、行政訴訟については、双方の上告受理申立てを受理した上、同日、自衛隊機に係る差止請求について、周辺住民に行政事件 訴訟法(以下「行訴法」という。)37条の4第1項の「重大な損害を生ずるおそれ」があると認められるが、厚木基地における自衛隊機の運航に係る防衛大臣の権限の 止請求について、周辺住民に行政事件 訴訟法(以下「行訴法」という。)37条の4第1項の「重大な損害を生ずるおそれ」があると認められるが、厚木基地における自衛隊機の運航に係る防衛大臣の権限の行使が、同条第5項所定の行政庁がその処分をすることがその裁量権の範囲を超え又はその濫用となると認められるときに当たるとはいえないとして、同請求に係る部分について原判決を破棄し、周辺住民らの当該請求を 棄却した(最高裁平成27年(行ヒ)第512号、513号同28年12月8日第一小法廷判決・民集70巻8号1833頁。以下「厚木基地4次行訴最判」という。)。 第3章争点及び争点に関する当事者の主張第1 争点 1 損害賠償請求に関する争点⑴ 国賠法2条1項に基づく損害賠償責任の有無(争点1-1)⑵ 原告らの損害額(争点1-2)⑶ 相互保証の有無(争点1-3)⑷ 将来の損害賠償請求の適法性(争点1-4) 2 本件差止請求に関する争点⑴ 自衛隊機に係る本件差止請求の適法性(争点2-1)⑵ 米軍機に係る本件差止請求の適否(争点2-2)⑶ 夜間、深夜・早朝及び75Wを超える騒音の違法性(争点2-3) 3 本件協議請求に関する争点⑴ 本件協議請求の適法性(争点3-1) ⑵ 対米交渉義務の有無(争点3-2)第2 争点1-1(国賠法2条1項に基づく損害賠償責任の有無)について 1 原告らの主張被告は、公の営造物である厚木飛行場を設置・管理し、これを自ら使用し、また米軍に使用させている。原告らは、厚木飛行場の供用により、厚木飛行場 を離着陸する航空機により生じる騒音等により甚大な被害を受け、その人格権が違法に侵害されているから、被告は、国賠法2条1項により、原告らに対し 。原告らは、厚木飛行場の供用により、厚木飛行場 を離着陸する航空機により生じる騒音等により甚大な被害を受け、その人格権が違法に侵害されているから、被告は、国賠法2条1項により、原告らに対して損害賠償責任を負う。 ⑴ 軍用機騒音の特質等ア軍用機のうるささ 騒音の不快感に関連する諸要素として、一般に、騒音のレベル(音量)、ピッチ(音の高さ)、時間的変動(レベルや周波数の変動、立ち上がりの傾斜、繰り返し等)、音の非局在性(音源の位置)、不必要な騒音か否か、地域性、公共性、利害関係、被害者・加害者の立場の互換性、被害者の数などが挙げられる。また、騒音が断続的であれば、そのこと自体によってア ノイアンス(騒音による不快感)が高められ、ピークレベルの騒音持続時間が長くなくとも、騒音の最大値が大きいほど人間に与える影響は甚大になる。 航空機騒音の特徴として、①音量が極めて大きく、特にジェット機ではその最大レベルが人間の可聴限界である130dBに達すること、②特に、 ジェット機において着陸時に生じる騒音には高周波成分を含む金属音の純音成分が含まれ不快感を増大させること、③騒音の発生が間欠的であり、持続時間は短くても一度の騒音で生じた心理的動揺等は残存すること、④騒音レベルや周波数構成が絶えず変動するとともに、音の立ち上がりが急激であり、不快感を増幅させること、⑤音源が上空にあって絶えず移動し、騒音の範囲が広大で家屋構造による遮音が難しいことなどが挙げられ、騒 音のうるささの要素を全て兼ね備えており、航空機騒音は他の騒音源と比べて、その「うるささ」は著しいといえる。 さらに、軍用機騒音については、民間機とは異なり低騒音化が進まず、民間機との間に20dB以上の違いがあることや、高周波音を多く含み、音量や周 の騒音源と比べて、その「うるささ」は著しいといえる。 さらに、軍用機騒音については、民間機とは異なり低騒音化が進まず、民間機との間に20dB以上の違いがあることや、高周波音を多く含み、音量や周波数の変動も大きいこと、飛行コースの非局在性、騒音発生の不 規則性、夜間・深夜の飛行があること、飛行機種の多様性、基地の周辺住民にとって不必要な騒音であること、低周波音が大きいこと、軍用機に事故が多いことなどの要素も相まって、民間機の騒音と比べてもうるささは特に顕著である。 イ低周波音 W値の算定においては、低い周波数の音が小さく評価されるから、航空機騒音に高レベルの低周波音が含まれていてもその影響がほとんど反映されない。しかし、低周波音には、家屋の防音効果が及びにくい、屋内で共鳴しやすい、距離減衰しにくいなどの、中・高周波音とは異なる特殊な性質がある。また、環境省による調査等では、低周波音が圧迫感・振動感 を伴う心理的影響、頭痛、耳鳴り、吐き気などの生理的影響、入眠障害や早期覚醒などの睡眠への影響や、建具のがたつき等の物的影響を生じさせることが指摘されている。さらに、世界保健機関(以下「WHO」という。)は、低周波音に関し、騒音に低周波音が含まれる場合は、不快感においてより強い住民反応が報告されること、低周波音が含まれない場合よりも低 い環境騒音のガイドライン値が適用されるべきであること、低周波成分が卓越している場合はA特性による評価は不適切であることなどを指摘している。 したがって、航空機騒音の被害の総体を把握するためには、低周波音による心身等への影響を考慮する必要がある。 ⑵ 騒音等による被害 原告らは、いずれも生活環境整備法4条に基づく第一種区域である75W以上の の被害の総体を把握するためには、低周波音による心身等への影響を考慮する必要がある。 ⑵ 騒音等による被害 原告らは、いずれも生活環境整備法4条に基づく第一種区域である75W以上の区域に本件口頭弁論終結時に居住している又はこれ以前に居住していた者である。 航空機による騒音被害は、航空機の運航というひとつの侵害行為が頭上から広範囲に及んで多数の住民の利益を侵害するという点に特徴がある。その 被害は、原告ら各人の生活スタイルに応じて様々な時間に様々な現れ方をするが、頭上からの同一の侵害行為により、各種の身体的被害、睡眠妨害など健康に関わる被害を受け、健康への危険や不安を抱えることなく平穏に生活する権利を侵害され、また、様々な日常生活上の妨害を受け、交通事故、墜落事故などの現実的危険を抱えての生活を余儀なくされているのであり、こ のような被害を受けるという点で、その性質上、騒音に曝露される全員が等しく被っていると認められる程度の被害を認めることができる。 原告らは、原告らに生じる被害のうち、原告全員に同一に存在が認められるものや具体的内容に差異があっても原告らにとっておよそ同一と認められる性質・程度の被害を全員に共通する損害としてとらえ、一律に最低限の賠 償を求めているのであり、原告らがそれぞれ被る様々な被害について、一つ一つの被害を個別的に主張して、その損害の賠償を求めるものではない(最高裁昭和51年(オ)第395号同56年12月16日大法廷判決・民集35巻10号1369頁。以下「大阪空港最判」という。)。 このように、原告らは、このような総体としての被害を共通して被ってお り、重大な身体的被害を受けるとともに平穏な日常生活を破壊されるという人格権侵害を受けている。 すなわち、原告らが、騒音曝 このように、原告らは、このような総体としての被害を共通して被ってお り、重大な身体的被害を受けるとともに平穏な日常生活を破壊されるという人格権侵害を受けている。 すなわち、原告らが、騒音曝露によって健康を害され、航空機事故の危険に日常的にさらされていることは、生命・身体の危険に日常的にさらされていることにほかならず、原告らの生命・身体権(憲法13条)が侵害されている。実際に健康被害を生ずるに至っていなくても、健康被害に対する不安 は全ての原告に共通して認められ、睡眠妨害は、健康被害を高めるリスクを増加させるほか、仕事や私生活上の様々な活動を停滞させ、あるいはその危険性を高めている。また、聴取妨害、作業妨害、イライラ感・不快感(アノイアンス)の惹起等の被害は、日常的に生じ、かつ、長期間継続して日常生活全般に及んでいるから、原告らは、人格的存在として生存する権利である 人格権(同条)を侵害されており、この人格権には、健康上の危険にさらされることなく平穏かつ安全に生活する権利である平穏生活権も含まれる。 そして、岩国移駐後においても、岩国移駐前以上にプロペラ機やヘリコプターによる騒音被害が発生し、岩国移駐とは関係なく米軍機が厚木基地に飛来するなど、原告らの実感としてもこれらの被害は甚大なままである。 原告らの被っている具体的な被害は次のとおりである。原告らは、航空機騒音の被害を生活の本拠である住居において日常的に被っており、これらの被害は個々に独立したものではなく、相互に関連して有機的に結び付いて、生活の質を全体として損なわせているものであり、反復継続することにより蓄積していくおそれのあるものである。 ア健康被害航空機騒音が、騒音に曝露される人に対し、健康影響を含め、看過しえない悪影響を なわせているものであり、反復継続することにより蓄積していくおそれのあるものである。 ア健康被害航空機騒音が、騒音に曝露される人に対し、健康影響を含め、看過しえない悪影響を及ぼすものであることは、WHOによるガイドラインが存在するなど国際的に確立した知見である。 すなわち、環境騒音により、高血圧、心臓血管系疾患、子どもの認知能 力の低下、聴力損失と耳鳴、低体重児の出生等が生じると指摘されているほか、騒音による精神的ストレスにさらされ続けることで、身体面の疾患に至り、自律神経、内分泌、免疫システムのバランスを失わせ様々な病気を招くことなどが指摘されている。また、騒音による高度の睡眠妨害によって、睡眠障害に至ることもある。 現に、原告らの中にも高血圧症、虚血性心疾患、不眠症等を発症した者 がいる。 イ睡眠妨害原告らは、深夜・早朝の騒音により、入眠を妨げられ、睡眠の途中や早朝に覚醒させられるなど睡眠を妨害され、翌日の不眠感や疲労感等を訴えている。また、昼間は夜間よりも大きく多数の騒音が発生するが、交代勤 務や夜間勤務等のために夜間以外の時間帯に就寝しなければならない原告らも多数いる。 睡眠が心身の健康を保つうえで極めて重要であることはいうまでもなく、睡眠妨害は健康に影響を及ぼすと同時に、高頻度の睡眠妨害はそれ自体が疾患になり得、自律神経系等への悪影響を生じさせ、健康障害を引き 起こすのであり、睡眠妨害は深刻な被害である。 ウアノイアンス(不快感)アノイアンスとは、音に関わる不快感の総称であり、騒音影響に特有の概念であって、生活妨害も含めて騒音による直接的、間接的影響の総体がもたらす迷惑感、邪魔感、煩わしさであるとも指摘される。アノイアンス アノイアンスとは、音に関わる不快感の総称であり、騒音影響に特有の概念であって、生活妨害も含めて騒音による直接的、間接的影響の総体がもたらす迷惑感、邪魔感、煩わしさであるとも指摘される。アノイアンス は、騒音源の情報を含む騒音の特性だけではなく、音以外の社会的、心理的、経済的な要因の影響も受ける。WHOは、高度な不快感(アノイアンス)を生じることも健康影響として位置付けている。 原告らは、騒音そのものからアノイアンスを生じさせられると同時に、会話等の聴取、仕事、趣味などを妨害され、体調への影響を感じさせられ るなど、日常生活を妨害させられることにイライラや不安を覚え、健康や航空機事故の不安等を掻き立てられ、これらによってアノイアンスを生じさせられてもいる。 エ生活妨害原告らは、航空機騒音により、家族等との会話を妨害されたり、電話での会話を中断させられたり、テレビ・ラジオの視聴等を妨害されたり、休 息を妨げられたりして、平穏な生活を著しく妨害されている。 オ知的作業の妨害原告らは、趣味、宗教活動、仕事、集中する必要のある作業等の知的作業を妨害されている。これらの活動は、人の自己実現等に関わり、これを制限されることによる精神的苦痛は甚大である。 カ子どもの発育等に関する被害子どもは、騒音の影響を受けやすい高感受性群であるだけでなく、成長・発達の途上にあり、騒音曝露により発達に影響を受け、その影響が将来にわたって及ぶことからすれば、その被害は不可逆的である。低体重児出生と騒音との関係が明らかにされているほか、騒音によって睡眠妨害、注意 力や集中力の低下と学習妨害も引き起こされている。 そして、これらの被害は、子育てをする親の不安としても顕在化してい 音との関係が明らかにされているほか、騒音によって睡眠妨害、注意 力や集中力の低下と学習妨害も引き起こされている。 そして、これらの被害は、子育てをする親の不安としても顕在化しているといえる。 このように、原告らは、その年齢にかかわらず、子どもの頃から騒音にさらされることにより成長、発達を妨害されるなどし、親としても子ども の養育を妨害されるという被害を受けている。 キ墜落事故等、交通事故の危険昭和27年4月から平成26年1月までの集計で、神奈川県内で発生した軍用機の墜落・不時着、軍用機からの落下物等の事故は242件にも及び、厚木基地周辺では、軍用機が住宅地に墜落して住民に多数の死傷者を 発生させる事故が何度も発生し、不時着や落下物の事故も後を絶たない。 これらの事故を目撃したり、新聞報道等により知ったりした周辺住民らは、事故自体に対する恐怖を抱くとともに、上空を飛行する軍用機に対する現実的で具体的な危険を実感して、より強い精神的苦痛を抱えている。 軍用機の事故発生率は、10万飛行時間当たり24.53であり、民間機の約200倍である。また、平成26年7月以降、頻繁に厚木基地に飛 来するオスプレイについては、その構造上の欠陥等に起因して、重大事故の発生率が極めて高いことに加え、厚木基地は神奈川県内で有数の人口密集地にあり、トラブル発生時に市街地への被害を避けることが困難な状況であることも踏まえれば、厚木基地周辺においては航空機墜落等の危険性は抽象的なものにとどまらず現実の具体的な危険性を有するものである といえる。 軍用機による墜落その他の事故の頻発、その事故率の高さは、民間機と比べて突出しており、軍用機騒音のうるささやアノイアンスを高めている点で騒音に内在する特質 性を有するものである といえる。 軍用機による墜落その他の事故の頻発、その事故率の高さは、民間機と比べて突出しており、軍用機騒音のうるささやアノイアンスを高めている点で騒音に内在する特質であると同時に、単なるうるささの問題にとどまらない危険性として、独自の侵害行為性を有する。 また、航空機騒音は、その大きさや音質から、車のエンジン音、クラクション、遮断機の警報等をかき消すため、原告らは、航空機騒音によって常に交通事故の危険にさらされている。 ク低周波音による被害プロペラ機やヘリコプターからは高レベルの低周波音が生じている。高 レベルの低周波音は、人に心理的影響、生理的影響を及ぼすところ、これらの被害を訴える原告は、75W以上の区域全般に及んでいる。 そして、低周波音については、騒音とは異なり、規制基準、環境基準のいずれも定められていないものの、例えば、環境省は、「低周波音問題対応の手引書」(甲C17、乙C14。以下「低周波音手引書」という。平成1 6年6月公表。)において、低周波音に係る物的苦情及び心身に係る苦情について、低周波音が原因か否かを判断するための、物的苦情に関する参照値と心身に係る苦情に関する参照値(以下、併せて「参照値」という。)を設定しているほか、中村俊一らによる「低周波音に対する感覚と評価に関する基礎研究」における「気になる-気にならない曲線」の評価値、「圧迫感・振動感の閾値曲線」の評価値が提唱されており、これらは航空機騒音 を発生源とする場合にも評価指標となり得る。 ケ振動・排気ガス厚木基地周辺を飛行する航空機は、原告らの居住する家屋上空に飛来するとき、強い振動を引き起こす。また、航空機の飛行やエンジンテスト等により、厚木基地周辺地域には大量の排 る。 ケ振動・排気ガス厚木基地周辺を飛行する航空機は、原告らの居住する家屋上空に飛来するとき、強い振動を引き起こす。また、航空機の飛行やエンジンテスト等により、厚木基地周辺地域には大量の排気ガスがまき散らされており、飛 行経路直下においては、洗濯物の汚損などの被害も生じている。 これらの振動や排気ガスによる被害も、看過することができない。 ⑶ 騒音の違法性の判断基準ア騒音量と住民反応との関係で違法性が判断されるべきこと厚木基地を離着陸する航空機により生ずる騒音の違法性は、騒音量と住 民反応との関係によって決せられるべきであり、具体的には次のとおりである。 (ア)75W以上の区域における騒音は違法であること昭和48年環境基準において定められたW値70(現行環境基準ではLden57dB)という環境基準は、本来であればW値65とすべき ところを当時の技術的制約や航空輸送の実状を踏まえて設定された妥協の産物であるほか、10年以内にW値75(現行環境基準ではLden62dB)未満又はこれ以上の地域においては屋内でW値60(現行環境基準ではLden47dB)以下とするという改善目標が定められてから既に50年が経過していること、平成30年にWHO欧州事務局が 公表した「欧州地域向けの環境騒音ガイドライン」(甲C49。以下「平成30年ガイドライン」という。)においては健康影響を防ぐための航空機騒音のガイドライン値として、Lden45dB、夜間についてはLnight40dBと定めていることなどからすれば、現在においては、専ら住居の用に供される地域(地域類型Ⅰ)においては、W値70(Lden57dB)を超える騒音、その他の地域(地域類型Ⅱ)において は、W値75(Lden62dB)を超える騒音 現在においては、専ら住居の用に供される地域(地域類型Ⅰ)においては、W値70(Lden57dB)を超える騒音、その他の地域(地域類型Ⅱ)において は、W値75(Lden62dB)を超える騒音状態は、違法である。 したがって、少なくとも本件告示コンター図において75W以上とされている区域における騒音は違法である。 (イ)72%HA30%(Lden47dB)以上となる騒音は違法であり、岩国移駐後も75W以上の区域における騒音が違法であること 騒音の物理的エネルギー量が同じでも騒音源によって住民反応は異なるところ、高度の不快感反応の訴え率である72%HAという評価尺度を用いることにより、物理的エネルギー量だけではない騒音影響を把握し、異なる音源同士を比較することが可能である。 航空機騒音は、道路、鉄道などの他の交通騒音に比べて住民反応が大 きく、道路騒音、在来鉄道騒音、新幹線鉄道騒音の規制は、概ね72%HAが約30%の水準で実施されているのに対し、民間機騒音についての第一種区域の指定は、72%HAが43%の水準に、軍用機騒音についての第一種区域の指定は、72%HAが67%の水準にそれぞれ相当する。 このように航空機騒音、とりわけ軍用機騒音については、他の交通騒音に比して規制が極めて緩いものとなっている。しかし、軍用飛行場周辺に居住する住民のみが他の市民よりも過酷な環境を甘受しなければならない理由はなく、厚木基地周辺においても、72%HAが約30%となるような騒音のレベルをもって、航空機騒音に起因する障害が著しい と認められるべきである。 自動測定箇所における騒音の測定結果や被告が本件のために測定した結果から厚木基地周辺の各地点のLden値を実測又は推計し、72%HAが30%以上となる区域(L い と認められるべきである。 自動測定箇所における騒音の測定結果や被告が本件のために測定した結果から厚木基地周辺の各地点のLden値を実測又は推計し、72%HAが30%以上となる区域(Lden47dB以上)を線引きすると、平成30年度においては、別紙10(72%HA30%図)の黒実線のとおりとなり、本件告示コンター図の第一種区域にほぼ相当する区域に なる。 したがって、岩国移駐後においても、少なくとも本件告示コンター図において75W以上とされている区域における騒音は違法である。 (ウ)少なくともLden53dB以上となる騒音は違法であること仮に、72%HA30%となるような騒音のレベルをもって航空機騒 音に起因する障害が著しいとはいえないとしても、軍用機は民間機と比べると住民反応が大きいところ、施設庁方式が採用された後、民間機については低騒音化が大きく進んだことや、民間機の騒音に対する住民反応が低い傾向にあるマンション居住者が増加したことなどもあり、住民反応の差は大きく拡大しており、施設庁方式による補正では軍用機騒音 に対する住民反応を正しく反映できていないことが明らかになった。 このように、施設庁方式は軍用機騒音を過小評価してきたというべきであるから、少なくとも軍用機騒音に対する規制を、民間機に対する規制(Lden62dB)に対応する72%HAと同程度(72%HA43%)となる規制基準に合わせるべきであり、これに相当する軍用機騒 音におけるLden値は53dBであるから、Lden53dB以上の騒音への曝露が違法ではないとされる余地はない。 もっとも、騒音被害が一過性のものではなく、累積していくものであることに鑑みれば、Lden53dBに至らない地域においても航空機騒音の影響が生じていることは 曝露が違法ではないとされる余地はない。 もっとも、騒音被害が一過性のものではなく、累積していくものであることに鑑みれば、Lden53dBに至らない地域においても航空機騒音の影響が生じていることは否定できないから、厚木基地を離着陸す る航空機の騒音が違法となるのはLden53dB以上となる地域に限定されるべきではない。 なお、軍用機騒音がLden53dB以上となる区域を線引きすると、別紙11(Lden53dB図)の黒実線のとおりとなり、被告の主張する令和2年度分布図と比べても相当広範囲に及ぶ。 イ受忍限度論によるとした場合の判断 これまでの基地訴訟の裁判例が採用する、被害が受忍限度を超えるか否かといういわゆる受忍限度論によるとした場合であっても、被侵害利益が生命、身体という絶対的に保障されるべき権利及びこれに直接結び付く平穏生活権である場合には、侵害行為の態様と程度、被侵害利益の性質と内容その他の諸事情を考慮するまでもなく違法と判断されるべきである。 そして、85W以上の区域に居住する原告らの中には、高血圧症、狭心症などの虚血性心疾患、不眠症を発症し、航空機騒音との関連が指摘されている者もいることからすれば、航空機騒音によって身体権を侵害されているといえる。また、疾患を発症していない原告らにとっては疾患を発症する可能性があるレベルの騒音に曝露されているのであって健康被害の 現実的不安を生じさせられて、生命・身体権に直接結び付く平穏生活権を侵害されているというべきである。 したがって、本件告示コンター図上の85W以上の区域については、受忍限度論によっても違法であることは明白である。 ウみなし区域の扱いについて みなし区域は、前記前提事実第2・3⑵のとお て、本件告示コンター図上の85W以上の区域については、受忍限度論によっても違法であることは明白である。 ウみなし区域の扱いについて みなし区域は、前記前提事実第2・3⑵のとおり、厚木基地の滑走路に近接した区域であるところ、前記⑵キのとおり、軍用機の事故率は高く、航空機事故の大半は離着陸前後に発生しているほか、基地近傍での航空機の飛行高度は極めて低く、その危険感、圧迫感、恐怖感は著しい。また、基地近傍は、航空機騒音についても基地の近さに起因して、W値に反映さ れない基地内のエンジンテスト音などの長時間続くがレベルが相対的に低い地上音や運用上、基地の近傍を飛び回ることが多いヘリコプターの長時間続く低周波音が多く含まれる騒音などの被害もある。これらを総合すれば、みなし区域は、常時事故の危険にさらされているほか、騒音について必ずしもW値に反映されないものも含めて特有の被害があるため、第二種区域又は第三種区域と同様に評価されるべきである。 ⑷ 騒音等の状況ア騒音の測定結果等厚木基地周辺の各自治体及び神奈川県が設置している17か所の測定地点(別紙12(自治体騒音測定点))における測定結果によれば、北1km、北2km、南500m、上土棚(県)の4地点における、本件訴訟におい て損害賠償請求の対象とされた期間(以下「損害賠償請求期間」という。)における騒音の状況は、岩国移駐の前後にかかわりなく、土日、夜間(午後7時から午後10時まで)・早朝(午前0時から午前6時まで)・深夜(午後10時から午後12時まで)の時間帯を含め、1年間で測定された70dB以上の騒音のうち最も高いdBが記録された騒音レベル(最高音)、1 年間で測定された70dB以上の騒音の測定回数、1年間で70dB以上の騒音が最も多く 時間帯を含め、1年間で測定された70dB以上の騒音のうち最も高いdBが記録された騒音レベル(最高音)、1 年間で測定された70dB以上の騒音の測定回数、1年間で70dB以上の騒音が最も多く測定された日における当該騒音の測定回数及び1年間で測定された70dB以上の騒音の測定回数の1日当たりの平均について、それぞれ4次民事訴訟の審理対象期間である平成18年から平成25年までの騒音状況と比較して、同程度の水準にあるといえる。 具体的には、最高音は、年間、土日、夜間を通じて、いずれの期間についても顕著な変化はなく、岩国移駐後も120dBに達する騒音が発生し、夜間の最高音も広い範囲で110dB又は100dBに達している。また、平成18年から平成25年までをみると、全体の70dB以上の騒音測定回数は2割から3割程度変動しており、日曜日や早朝・深夜に限定すると さらに変動幅が大きくなるため、特定の地点や時間帯で短期的に騒音の減少が認められたとしても、その状態が継続するとは限らない。現に深夜の測定回数は、令和3年以降増加傾向がみられる。 平成18年から平成25年までと比較可能なデータは上記4地点に限られるが、厚木基地周辺で生じる航空機騒音の原因の大部分は、離着陸する航空機によるものであるから、各W値の区域に応じたレベルの差があるに しても、上記4地点で認められる上記の傾向は、他の13地点にも妥当する。 なお、これらの騒音は、すべて70dB以上、かつ、5秒以上継続した騒音だけが測定されたものである。地方自治体による測定によれば、岩国移駐後に騒音の回数が約32%減少しているのに対して、管制の回数の減 少率が約16.5%にとどまっていること、原告らの測定によれば60dB台の騒音が相当数確認できることなどからすれば、70 国移駐後に騒音の回数が約32%減少しているのに対して、管制の回数の減 少率が約16.5%にとどまっていること、原告らの測定によれば60dB台の騒音が相当数確認できることなどからすれば、70dB未満又は5秒未満の騒音も多数発生していることが明らかである。 イ低周波音の測定結果等原告らが低周波音を測定したところ、参照値、「気になる-気にならな い曲線」及び「圧迫感・振動感の閾値曲線」の各評価値を大きく超える値が測定されている。このように原告らは、第一種区域に相当する広い範囲で、オスプレイを含むヘリコプター、プロペラ機によって、環境省が設定した参照値等をはるかに超える高いレベルの低周波音に曝露されており、低周波音特有の被害を訴える原告らが75W以上の区域全域に存在して いることも踏まえれば、これによる独自の影響と被害も明らかであるから、騒音とは別異の侵害行為として位置付けられるべきである。 したがって、原告ら厚木基地周辺住民は、等しく航空機騒音に含まれる高レベルの低周波音に曝露されることにより、上記低周波音特有の被害を受けているというべきである。 2 被告の主張⑴ 違法性の判断基準国賠法2条1項にいう「公の営造物」の設置又は管理に瑕疵があったとは、当該営造物が通常有すべき安全性を欠く状態、すなわち、当該営造物又は物件を構成する物的施設自体に存する物理的、外形的な欠陥ないし不備によって他人に危害を生ぜしめる危険性がある場合のみならず、その物件が供用目 的に沿って利用されることとの関連性において、他人に危害を生ぜしめる危険性がある場合をも含み、また、その危害は、当該物件の利用者以外の第三者に対するそれをも含むと解される。 すなわち、供用目的に沿って利用されることとの関連において営 他人に危害を生ぜしめる危険性がある場合をも含み、また、その危害は、当該物件の利用者以外の第三者に対するそれをも含むと解される。 すなわち、供用目的に沿って利用されることとの関連において営造物の設置、管理の瑕疵が認められるためには、その営造物を利用に供した結果、利 用者以外の第三者の権利ないし法益を侵害し、同侵害が社会生活上受忍すべき限度を超え違法であると判断されることが必要である。そして、この違法性の存否は、侵害行為の態様と侵害の程度、被侵害利益の性質と内容、侵害行為のもつ公共性ないし公益上の必要性の内容と程度等を比較検討するほか、侵害行為の開始とその後の継続の経過及び状況、その間にとられた被害の防 止に関する措置の有無及びその内容、効果等の事情をも考慮し、これらを総合的に考察して決すべきである(大阪空港最判)。 そうすると、厚木基地における航空機騒音について、受忍限度の範囲内か否かについては、厚木基地の有する公共性及び公益性、被告が実施した生活環境整備法に基づく住宅防音工事等、岩国移駐、航空機騒音等によって発生 している影響の内容等を総合的に考察して決すべきである。 原告らは、本件告示コンター図における75W以上の区域に居住している事実から直ちに75W以上に相当する航空機騒音への曝露及びこれによる被害及び違法な権利侵害がある旨を主張すると解されるが、本件告示コンター図は、防衛施設周辺住民の生活の安定及び福祉の向上に寄与することを目 的とする政策的補償措置の実施基準として、周辺対策を実施する区域を画するために作成されたもので、環境基準方式よりもW値が高くなる傾向にある施設庁方式が採用されているほか、周辺対策の実施範囲を広くするよう配慮して各種の補正が行われたものである。そうすると、違法性判 するために作成されたもので、環境基準方式よりもW値が高くなる傾向にある施設庁方式が採用されているほか、周辺対策の実施範囲を広くするよう配慮して各種の補正が行われたものである。そうすると、違法性判断における受忍限度を意味する実勢騒音を示したものでないことは明らかである。 しかも、本件告示コンター図は、NLPが厚木基地で実施されていた平成 15年及び平成16年を含む騒音調査に基づくものであり、調査の対象となった時期が本件の損害賠償請求期間とは異なるばかりでなく、平成30年に岩国移駐が完了し、平成30年以降は一度もFCLP(NLP)が厚木基地では実施されてないことなど、本件の損害賠償請求期間については、本件告示コンター図の基礎となる調査がされた当時とは前提が大きく異なる。 したがって、上記の原告らの主張には理由がなく、原告らが実際に曝露されている実勢騒音に基づいて、受忍限度の判断がされるべきである。 ⑵ 航空機騒音による侵害の有無及び程度ア航空機騒音の特殊性航空機騒音は、音源である航空機が高速度で移動するものであることか ら、常時又は頻繁に発生するものではなく、1回当たりの発生持続時間が短く、一過性のもので間欠的である。また、騒音がピークレベル値を示すのは瞬時にすぎないため、仮にある航空機の発する騒音により飛行場周辺住民の生活に何らかの影響があるとしても、その影響は短時間の後には消失し、生活上の平穏は直ちに回復する。 また、飛行場から同一の距離であっても、離着陸の別、その方向、飛行経路、風向き等によっても騒音の程度は全く異なるから、航空機騒音の程度を判断するに際して、航空機の離着陸回数、1機当たりの騒音量、飛行場からの距離だけを基準にすることは正当ではない。 さらに、厚 向き等によっても騒音の程度は全く異なるから、航空機騒音の程度を判断するに際して、航空機の離着陸回数、1機当たりの騒音量、飛行場からの距離だけを基準にすることは正当ではない。 さらに、厚木基地のような防衛施設としての飛行場については、民間機 が使用する飛行場とは異なり、航空機が比較的多く飛行する日もあればほとんど飛行しない日もあり、原告らが受忍限度を超えると主張する75W以上の騒音が1年中発生していることはあり得ない。 加えて、屋内、とりわけ住宅防音工事が施された建物においては、建物の遮音効果により騒音の影響は相当程度緩和される。 したがって、原告らが航空機騒音による違法な権利侵害を受けていたか 否かを判断するにあたっては、このような事情も考慮する必要がある。 イみなし区域の扱いについてみなし区域は、防衛施設の設置、運用とその周辺地域社会との調和という政策的観点から、第二種区域又は第三種区域と同等の移転補償を行うことを目的として定められたもので、航空機騒音の測定結果に基づいて指定 されたものではない。航空機騒音による原告らの被害の程度は、個々の原告が損害賠償請求期間に実際に曝露した実勢騒音を前提とされるべきであるから、実際の騒音量に沿ったものではないみなし区域は、違法性の判断及び損害の認定に用いるべきではない。 ウ岩国移駐後 少なくとも岩国移駐後の実勢騒音は、令和元年度及び令和2年度に実施した騒音状況の調査に基づいて作成された厚木基地周辺地域における5WごとのW値の分布を示す図面(別紙13(令和2年度分布図)。以下「令和2年度分布図」という。)により認定されるべきである。そして、令和2年度分布図によれば、岩国移駐後には、75W以上の区域が、本件告示コ のW値の分布を示す図面(別紙13(令和2年度分布図)。以下「令和2年度分布図」という。)により認定されるべきである。そして、令和2年度分布図によれば、岩国移駐後には、75W以上の区域が、本件告示コ ンター図や平成16年度騒音コンター図における75W以上の区域よりも厚木基地に相当近い位置まで縮小し、90W以上の区域が厚木基地内に収まるなど、第一種区域に相当する程度の航空機騒音が生じている範囲は著しく小さくなり、航空機騒音が著しく低減している。 また、岩国移駐により騒音が大きく低減していることは、国が設置して いる自動測定装置14箇所においても、移駐の開始により、1箇所を除いてW値(環境基準方式)が減少しており、移駐完了後は、全ての地点のW値(環境基準方式)がさらに減少し、また、騒音発生回数についても移駐開始後の平成29年度から令和4年度まで、移駐開始前の年度である平成28年度の騒音発生回数を一度も上回ったことがないこと、厚木基地周辺自治体が岩国移駐完了後の騒音低減を認めていることなどからも明らか である。 そうすると、令和2年度分布図において75W以上の区域外に居住する原告らについては、第一種区域に相当する航空機騒音への曝露が認められず、その他航空機騒音の曝露の内容及び程度等について個別具体的な立証をせず、それに基づく被害についても同様に十分な立証をしないから、航 空機騒音の違法性は認められない。 ⑶ 原告らの主張する被害の不存在ア騒音被害原告らは、原告ら個々の生活形態にかかわらず、一定の騒音等が生じている状況下で、当然に影響を受けると考えられる通常人の基本的な生活利 益及びそれが妨げられたことによる共通の被害というものを想定することができると主張しており、原告らに最小限度共通する損 じている状況下で、当然に影響を受けると考えられる通常人の基本的な生活利 益及びそれが妨げられたことによる共通の被害というものを想定することができると主張しており、原告らに最小限度共通する損害の賠償を求めていると解される。そうであれば、原告らは、何を共通損害としてとらえるのかを明らかにした上で、原告ら全員がこの損害を一定の限度で等しく被っていることを立証する必要がある。原告らは、身体的被害についても 主張するが、身体的被害は、各人に特有の事実であり、共通被害として認められる余地はない。 また、これまで実施された国内外における国際的な調査・研究によれば、航空機騒音を受けることにより、肉体的、精神的に直接的かつ深刻な影響を受けることを示すものはなく、むしろそのような影響を及ぼすことは一 般的に否定されている。 さらに、原告らの主張する生活妨害について、一般的に航空機騒音が各種の生活妨害、不快感等の日常生活に望ましくない影響を与える可能性があることは否定できないが、本件で問題とされるのは一般的な影響ではなく、具体的な被害としての航空機騒音の内容・程度である。そして、航空機の離着陸に際して常にある程度の騒音が生じることは避けられないと ころ、厚木飛行場の供用による社会的効用が多大であること、被告は住宅防音工事等の対策によって被害の軽減に努めていることからすれば、ある程度の航空機騒音については不可避的なものとして受忍限度を超えないものといわざるを得ず、騒音による生活妨害等が社会生活上耐え難い程度の被害として厚木基地周辺の大部分の居住者に発生することが認められ るのは、騒音レベルが相当程度に高い場合に限られるべきである。そして、厚木基地周辺の実際の騒音の程度や住宅防音工事による減音効果なども考慮すれば、原告らが 分の居住者に発生することが認められ るのは、騒音レベルが相当程度に高い場合に限られるべきである。そして、厚木基地周辺の実際の騒音の程度や住宅防音工事による減音効果なども考慮すれば、原告らが何らかの生活妨害を被っているとしても、いずれも受忍限度内のものというべきである。 加えて、原告らは上記生活妨害を受けていることを前提に、これらに伴 う精神的苦痛を受けていると主張する。しかし、そもそもうるささは、騒音被害として述べられているものに対する人間の主観的な反応であって、個人差が顕著なものであること、航空機騒音と人の精神症状との間に明確な関係性は認められないとの調査研究結果があることによれば、法による保護に値する利益の被害といえるかは慎重な検討を要する。航空機騒音に よる精神的損害は、原告らの共通損害になり得るものではなく、各原告の個別の主張立証なしに認めることはできない。しかし、原告らは、各原告の個別の精神的被害について十分な主張立証をしないから、原告らの主張には理由がない。 このほか、原告らは、各ガイドラインに照らして航空機騒音による生活 妨害、アノイアンス、睡眠妨害等の被害を主張する。しかし、これらのガイドラインは、騒音による健康影響を防ぐために健康影響を生じる可能性がある一定の値を示したものにすぎず、同水準の騒音を受けた者が同様の健康影響を受けることを示すものではないし、被害の発生を推認させる基準や受忍限度を超える程度の共通損害が生じている基準になるものでもない。 イ振動・排気ガスこれまでの調査結果などからすれば、航空機による振動によって家屋等に被害を生じさせるとは考えられておらず、原告らも振動による具体的な被害等について主張立証していない。また、航空機の離着陸は単発的、間欠的で の調査結果などからすれば、航空機による振動によって家屋等に被害を生じさせるとは考えられておらず、原告らも振動による具体的な被害等について主張立証していない。また、航空機の離着陸は単発的、間欠的であり、一定の時間間隔があること、航空機の排気ガスは大容量噴気 で排ガス中の汚染物質の成分濃度が薄く、拡散率が高いことからすれば、大気汚染を起こすとはいい難い。 したがって、航空機による振動や排気ガスが基地周辺住民の健康及び生活環境等に特段の影響を及ぼすとはいえないから、航空機の騒音とは別に振動及び排気ガスが原告らに対する侵害行為となることはない。 ウ墜落事故等の危険そもそも航空機の墜落事故は極めてまれにしか発生せず、厚木基地は、航空法の基準を満たし、航空管制に関する設備等も十分に具備され、米軍においても自ら安全性の確保に努めているのであるから、原告らの主張する航空機墜落の危険は抽象的なものにすぎない。そして、このような最善 の措置がとられているにもかかわらず発生するような希少性の高い事故という抽象的な危険性に対する危惧感や不安感があることをもって、違法な権利利益の侵害が存するとは到底認められない。 エ低周波音原告らが高レベルの低周波音に曝露していたとはいえない。 すなわち、低周波音について、家屋による防音効果、距離減衰等についても考慮する必要があるほか、その被害の認定においては、低周波音苦情の分類に応じた知見を考慮する必要があり、一般住環境にも低周波音が存在するなど、苦情の存在から直ちに具体的な被害の存在が認められたり、その原因が航空機による低周波音にあると認められたりするものではない。 また、短時間のみ曝露する航空機騒音に含まれる低周波音については、現時点において十分な 体的な被害の存在が認められたり、その原因が航空機による低周波音にあると認められたりするものではない。 また、短時間のみ曝露する航空機騒音に含まれる低周波音については、現時点において十分な調査研究が行われているわけではなく、その評価方法も定まっていない。そして、原告らの主張する被害は、主張の根拠が明確でなく、これが厚木基地における航空機から発生する低周波音に起因するものと認めるに足る証拠はない。 ⑷ 公共性ないし公益性等ア厚木基地の重要性厚木基地は、日本周辺のいずれの海域にも迅速に進出することができる位置にあり、海上からの侵攻に対する防衛を主たる任務とする海上自衛隊にとって、関東地方において最も重要な飛行場である。このような観点か ら、厚木基地には、海上自衛隊航空集団司令部及び隷下の第4航空群等が配置されている。 第4航空群は、主に、周辺海域における警戒監視・情報収集として対潜航空活動等を行っているほか、災害派遣等の民生協力活動、防災活動における地方自治体との連携、国際貢献及びこれらに必要な教育訓練を行って おり、これらの活動には、固定翼哨戒機をはじめとする各航空機の運航が欠かせない。そして、自衛隊において航空機を安全かつ効率的に飛行させ、その任務を遂行するために常日頃からの飛行訓練が必要不可欠であることは明らかである。 また、厚木基地は、米軍の飛行場としても重要である。すなわち、厚木 基地に所在する主要部隊のひとつである米海軍第5空母航空団は、我が国の安全に寄与、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、母艦が配備されている横須賀海軍施設近傍の厚木基地を使用していた。そして、岩国移駐後においても、厚木基地は、多種多様な航空機の離着陸が可能 並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、母艦が配備されている横須賀海軍施設近傍の厚木基地を使用していた。そして、岩国移駐後においても、厚木基地は、多種多様な航空機の離着陸が可能であること、西太平洋とインド洋を担当する米海軍第7艦隊が、その配備される横須賀海軍施設から近距離区域内にある厚木基地を利用 することで我が国の平和並びに極東における国際の平和及び安全の維持が図られることからして、米軍の飛行場としても重要な施設である。 イ周辺住民が厚木基地の設置により利益を受けていること自衛隊及び米軍の活動範囲には厚木基地周辺地域も含まれているから、災害派遣等により周辺住民が利益を受けていることは明白である。そして、 外部からの攻撃や災害等には平素から備える必要があるため、周辺住民らが受けている上記利益は日常的なものである。 また、米軍を含む厚木基地の所属部隊等は、基地周辺地域の市民生活において、社会貢献活動等を行っており、このような観点からも周辺住民らは厚木基地の設置により利益を受けているといえる。 ⑸ 騒音対策被告は、以下のとおり、航空機騒音の軽減に向けた種々の対策をしており、これは、受忍限度の判断において、十分に斟酌されるべきである。 ア FCLPの実施場所の移転及び低騒音機の導入等被告は、NLPを含むFCLPによる騒音の軽減を図るため、FCLP の実施場所が移転されるよう、米国に対し、硫黄島の使用を含むあらゆる暫定措置の検討を申し入れ、平成元年から硫黄島を暫定的に使用することについて米側の基本的了解を得て、平成5年3月末に、硫黄島に必要な施設を完成させた。同年9月以降は、天候不良等のやむをえない事情がない限り、米軍はFCLPを硫黄島で実施するようになった 使用することについて米側の基本的了解を得て、平成5年3月末に、硫黄島に必要な施設を完成させた。同年9月以降は、天候不良等のやむをえない事情がない限り、米軍はFCLPを硫黄島で実施するようになった。これにより、最 近10年間で厚木基地においてFCLPが実施されたのは、平成24年の3日間のみであり、空母艦載機の移駐が完了した平成30年以降は一度も実施されていない。 また、被告は、海上自衛隊第3航空隊に配備されていたP-3C哨戒機について、平成25年3月以降、民間航空機に対する規制であるICAO騒音基準値を満たす、より静寂性と安全性に優れたP-1哨戒機に順次更 新したり、厚木基地内の3か所に自衛隊機及び米軍機の消音装置を設置するなどして、航空機騒音の静粛化を図った。 さらに、被告は、騒音規制合意及び自衛隊の自主規制によって、運航時間帯の規制、離着陸の方法、滑走路の使い方、飛行経路、航空交通管制の方法等を変更し、累次にわたって米軍に対して騒音軽減に努めるよう申入 れをしている。 イ岩国移駐被告は、深刻化する厚木基地の騒音問題について、米軍の抑止力を維持しつつ、騒音等の地元の負担を軽減するため、米国政府と検討を重ね、厚木基地に所属する米海軍第5空母航空団を岩国飛行場へ移駐することを 計画した。移駐は、平成29年8月に開始し、平成30年3月30日に約60機の固定翼機の移駐が完了した。この結果、移駐開始後から騒音が大きく低減し、移駐完了後は更に騒音が低減した。環境基準におけるW値の基準値(専ら居住用の地域ではW値70以下)は行政上の理想値にすぎないが、平成30年度の騒音の計測結果では、75Wの区域においては概ね この基準値さえも満たしている。 したがって、岩国移駐に関して被告 ら居住用の地域ではW値70以下)は行政上の理想値にすぎないが、平成30年度の騒音の計測結果では、75Wの区域においては概ね この基準値さえも満たしている。 したがって、岩国移駐に関して被告が努力した経緯や騒音の低減を考慮すべきである。 ウ周辺対策等被告は、厚木基地の存続によってもたらされる公益の重大性とこれを維 持するために影響を受ける住民の生活上の利益との調和を図るために種々の周辺対策等を実施しており、これにより、周辺住民への不利益ないし影響は、既に相当程度防止又は軽減されている。 (ア)移転措置は、航空機騒音の影響を抜本的に解決する手段であり、実際に居住者が利用するか否かにかかわらず、移転措置の対象区域に居住する者の受忍限度、損害額の認定に当たって十分に考慮されるべきである。 (イ)住宅防音工事は、80W以上の区域に所在する住宅については25dB以上の、75Wの区域に所在する住宅については20dB以上の計画防音量を目標とした住宅防音仕方書に従った図面どおりに施工されたことが担保されている。したがって、住宅防音工事は、75W以上の区域において屋内でW値60以下に維持することが望ましいとされる行 政上の理想値である環境基準を達成するよう実施されているといえる。 そして、被告は、令和4年度までに、住宅防音工事を延べ35万5089世帯に実施しているのであるから、違法性の判断において、被害の防止に関する措置の有無及びその内容、効果等に関する事情として、住宅防音工事の効果が考慮されるべきである。 (ウ)その他の防音工事として、被告は、学校等、病院等に対する防音工事助成及び民生安定に係る施設の防音工事助成をしており、それぞれ十分な防音効果が生じているといえるから、これも違法性の判断におい (ウ)その他の防音工事として、被告は、学校等、病院等に対する防音工事助成及び民生安定に係る施設の防音工事助成をしており、それぞれ十分な防音効果が生じているといえるから、これも違法性の判断において考慮されるべきである。 (エ)被告は、騒音対策以外にも各種の周辺対策を実施し、厚木基地の存在 によって周辺住民に生活上の支障が生じないように配慮しているところ、直接的に騒音値を低下させるものではないが、騒音による精神的不快感を解消又は軽減させるものであるため、違法性の判断において考慮されるべきである。 ⑹ 総合的な評価 アおよそ人間の生活と騒音は密接な相関関係にあり、狭あいな国土に多数の国民が生活している我が国の現状下では、その発生源に高度の公共性、社会的有用性が認められるものについては、相当程度の騒音も受忍すべきである。そして、厚木基地の設置により、我が国又は国民が受ける利益は、国家存立の根本にかかわるものであり、我が国の独立国としての安全と平和の確保が国民の自由、権利の保障の前提となっていることを踏まえれば、 誠に大きいものである。また、厚木基地は、周辺自治体と連携し、大規模な自然災害において支援、物資等の空輸の拠点となり、地域の防災等にも寄与しているなど、周辺地域の住民は、厚木基地の設置により、日常的・具体的に利益を受けているといえ、厚木基地は、高度の公共性ないし公益性を有し、その使用は公共のために必要不可欠であるから、これらの公共 性ないし公益性は違法性の判断において十分考慮されるべきである。 また、厚木基地は、自衛隊法等並びに日米安保条約及び日米地位協定に基づき、海上自衛隊及び米軍が使用しているところ、原告らの主張する騒音等は厚木基地を任務の遂行に必要な場所として使用することにより必然的に生ず 基地は、自衛隊法等並びに日米安保条約及び日米地位協定に基づき、海上自衛隊及び米軍が使用しているところ、原告らの主張する騒音等は厚木基地を任務の遂行に必要な場所として使用することにより必然的に生ずるものであり、海上自衛隊及び米軍が与えられた権限を逸脱・濫 用して生じているものではない。 その一方で、原告らに身体的被害等の重大な利益侵害はない。 したがって、受忍限度の判断に際しては、原告らの受ける影響と厚木基地の高度の公共性、公益性について、その性質、内容、位置付けを評価して、総合的全体的な衡量を行う必要がある。 イそして、令和2年度分布図において75W以上の区域外に居住する原告らだけでなく、それ以外の原告らについても、岩国移駐により、騒音の曝露量が著しく減少し被害の程度が大幅に軽減したと認められることに加え、岩国移駐開始前を含めて、原告らの被侵害利益が認められないこと、厚木基地に高度の公共性ないし公益性が認められること、被告が岩国移駐を達 成し、巨額の費用を投じて住宅防音工事等の周辺対策事業を実施してきたこと、航空機騒音の著しい減少が被告の外交努力等の結果であることも併せて考慮すれば、本件の損害賠償請求期間を通じて、厚木飛行場の使用及び供用の違法性は認められないというべきである。 また、少なくとも、岩国移駐開始後である平成29年8月以降又は岩国移駐完了後である平成30年4月以降は、行政上の理想値というべき環境 基準の定める基準値さえも達成したと評価できる航空機騒音の著しい減少が認められるから、令和2年度分布図上、75W以上の区域に居住する原告らを含めて、厚木飛行場の使用及び供用の違法性は認められないというべきである。 第3 争点1-2(原告らの損害額)について 1 原告らの主張⑴ 原告ら 75W以上の区域に居住する原告らを含めて、厚木飛行場の使用及び供用の違法性は認められないというべきである。 第3 争点1-2(原告らの損害額)について 1 原告らの主張⑴ 原告らの被害原告らは、日常的に音量が極めて大きく、金属的な音質を有する航空機騒音に曝露されること自体に加え、騒音により会話等の聴取、睡眠、療養等を妨害されることによっても、アノイアンス(不快感)を惹起させられており、 その精神的苦痛は甚大である。また、身体的被害やその他の悪影響が現に生じていなくても、これらが発生する危険の下での生活を強いられ、日常的に健康に対する不安や子供の発育等への悪影響の不安、交通事故の不安、航空機事故の恐怖と不安等を抱えて生活しなければならないことによる精神的苦痛を被っている。これらの各被害は個別に捉えられるべきではなく、相互に 関連しあい有機的に結びつくことによって、原告らの健康を害し、生活を破壊し、精神的苦痛を生じさせている。 ⑵ 損害額原告らは、人格権侵害に関し、身体的被害に基づくもののうちの非財産的損害とその他の様々な被害に基づく全ての精神的損害としての慰謝料を併せ て包括的に請求する。原告らの被害は連日のように繰り返されるとともに、被害そのものが重なり合ってより深刻化し、蓄積される性質のものであるから、その精神的損害は大きい。 また、被告は厚木基地について度重なる司法判断を受けながらも今日まで継続して違法な航空機騒音を発生させており、その加害行為は悪質であるから、慰謝料は増額されるべきである。 しかし、これまでの裁判例において認容された賠償額は極めて低廉であった。 そこで、原告らは、被っている損害のうちの一部の賠償として、4次民事訴訟までの請求額である月額2万 れるべきである。 しかし、これまでの裁判例において認容された賠償額は極めて低廉であった。 そこで、原告らは、被っている損害のうちの一部の賠償として、4次民事訴訟までの請求額である月額2万円ではなく、一律1か月4万円及び弁護士費用として1か月金6000円を請求する。本件訴訟は、大規模な公害に関 するもので、高度な訴訟活動を要し弁護士に委任する必要があるから、原告らに生じる弁護士費用も相当因果関係が認められるべきである。 なお、原告らは、原告らの請求が本来被っている損害のごく一部にすぎないことから、月の途中に出生、死亡、75W以上の区域への転入又は同区域からの転出があった場合においても、当該月について慰謝料4万円及び弁護 士費用6000円の請求をするものであり、本件口頭弁論終結日を含む令和5年11月についても同様である。仮に、当該月の損害額について全額を認定することができないのであれば、日割り分を請求する。 ⑶ 防音工事等による減額は許されないこと住宅防音工事は、その防音効果自体に疑問が残ること、生活上の不利益を 生むものであること、生活実態としても防音室のみで生活するわけではないことなどによれば、住宅防音工事をもって、住民の被害の防止又は軽減が図られるものではなく、住宅防音工事の実施をもって減額事由として評価すべきではない。 仮に、防音工事等を理由として減額することができるとしても、住宅内で の生活状況や居室利用の実態は多種多様であり、防音室数が増えたとしても原告の利益ないし利便性が比例して拡大するものではないから、防音工事が施された居室数に応じて一定の減額率を加算すべきではなく、一律で一定の割合とすべきである。 2 被告の主張争う。 住宅防音工事の して拡大するものではないから、防音工事が施された居室数に応じて一定の減額率を加算すべきではなく、一律で一定の割合とすべきである。 2 被告の主張争う。 住宅防音工事の実績は、損害額の減額要素として適切に判断されるべきである。 第4 争点1-3(相互保証の有無)について 1 外国人である原告らの主張⑴ 国賠法6条の違憲性 国賠法6条の立証趣旨は、衡平の観念に基づくものであるところ、これは、国賠法が制定された昭和22年当時の、国家無答責の法理が国際社会においていまだ広く認められ、国際的な人の往来が極めて少なかったという時代背景を反映しているものである。現在では、国際的な人の往来があり、人権保障の国際化は諸外国にも浸透し、国賠法の立法当時の状況とは大きくかけ離 れており、同条の立法趣旨の基礎となる事情は既に失われている。実質的にも、当該外国人の関与の及ばない本国の法制度次第で救済の途が断たれることは極めて不合理である。したがって、同条は、憲法17条に照らして違憲無効である。 また、憲法14条1項は、合理的な理由のない差別を禁じているところ、 上記のとおり、国家賠償請求権は、基本的人権の侵害に対する極めて重要な救済手段で、基本的人権の保持にとって必要不可欠な権利であるから、国家からの不法行為に対しては、日本人であっても外国人であっても平等に救済されるべきで立法裁量の余地はないというべきであり、仮に裁量があっても相応の合理的根拠が必要である。しかし、前記のとおり、国賠法6条の立法 趣旨は基礎を失っているし、当該外国人の関与の及ばない事由で救済の可否を決定することは合理的な手段ではない。したがって、同条は、立法目的及び手段のいずれも合理性のないものであり、憲法14条 趣旨は基礎を失っているし、当該外国人の関与の及ばない事由で救済の可否を決定することは合理的な手段ではない。したがって、同条は、立法目的及び手段のいずれも合理性のないものであり、憲法14条1項に違反する。 ⑵ 適用違憲仮に、国賠法6条が違憲ではないとしても、本件において外国人である原告ら(以下「外国人原告ら」という。)に対して国賠法6条を適用することは 違憲である。 すなわち、本件において、原告らは、厚木基地を離着陸する航空機騒音による被害に対する賠償を求めているところ、国籍に関係なく、同様に厚木基地周辺に生活の本拠を置き、同様の環境で生活し、深刻な騒音被害を数年又は数十年にわたって受け続けている。このような中で特定の国の被害者のみ が、本国法において国賠法又はこれに類似する法制度を有していないとの理由で国家賠償請求が認められないとすれば、当該被害者に全く帰責性のない事情により司法的救済を一方的に否定する結果となり、極めて不合理である。 また、このような差異は国籍を理由とした差別にほかならず、憲法14条1項に違反する不合理な差別というべきである。 ⑶ 国賠法6条を前提としても外国人原告らの損害賠償請求は認められるべきであること国賠法6条が違憲ではないとしても、その内容の妥当性や存在意義について否定的な見解が数多くあることからすれば、国賠法6条の要件については、被害者の救済の不当な妨げにならないよう弾力的に解釈されるべきである。 具体的には、まず、法令の調査能力の差等に鑑みて、被告が相互の保証のないことの立証責任を負うべきである。また、国によって国家体制、法体系だけでなく法的概念の定義、実務的運用も様々であり、要件を対比すること自体が不可能に近いことに鑑みて、当該 て、被告が相互の保証のないことの立証責任を負うべきである。また、国によって国家体制、法体系だけでなく法的概念の定義、実務的運用も様々であり、要件を対比すること自体が不可能に近いことに鑑みて、当該外国の法制度の下で、同国において日本国民の賠償請求権がおよそ認められないことが明らかである場合を除いて、 我が国と当該外国との間の相互の保証が認められると解釈すべきである。 そして、以下のとおり、各国においては日本国民の賠償請求権がおよそ認められないことが明らかな場合とはいえず、相互の保証があると認められる。 アイタリア共和国イタリア共和国(以下「イタリア」という。)では、憲法において国家賠償責任が定められ、外国人の国家賠償請求を排除する規定は見当たらない。 むしろ、内国公務員の国外での職務違反に基づく内外国人による請求が積極的に認められている。 イインドネシア共和国インドネシア共和国(以下「インドネシア」という。)は、移住労働者に対して公務による権利侵害について効果的な救済を確保する措置をとるも のとされている「すべての移住労働者及びその家族の権利の保護に関する国際条約」を批准している。 ウカンボジア王国カンボジア王国(以下「カンボジア」という。)の民法においては、公務員の不法行為につき、我が国の国賠法と同旨の規定があり、厳密に公私の 区別がないところ、カンボジアの民法には土地工作物責任についても規定され、国が工作物の管理者又は所有者であってもその責任は認められ得るし、外国人に対してこれらを制限する規定は見当たらない。 エタイ王国タイ王国(以下「タイ」という。)においては、政府関係者の行為によっ て民間人に損害が生じた場合には、国家賠償請求をすることができ、公の営造物の 限する規定は見当たらない。 エタイ王国タイ王国(以下「タイ」という。)においては、政府関係者の行為によっ て民間人に損害が生じた場合には、国家賠償請求をすることができ、公の営造物の設置又は管理に瑕疵があった場合を含めて、その要件及び範囲は重要な点において我が国の国賠法の定めと異なるところはなく、外国人に係る特則はない。 オ大韓民国 大韓民国(以下「韓国」という。)の国家賠償法において、営造物責任が認められる要件及び範囲は重要な点で我が国の国賠法の定めと異なるところはなく、外国人について相互保証主義を採用している。 カ中華人民共和国中華人民共和国(以下「中国」という。)の民法典の規定及び人民法院の裁判例によれば、日本人が中国で政府に対して営造物の設置又は管理の瑕 疵による損害賠償を求めた場合には認められ、その要件は我が国の国賠法と異ならない。 キ中華民国(台湾)台湾の国家賠償法における製造物責任が認められる要件及び範囲は我が国の国賠法と重要な点において異なるところはなく、外国人について相互 保証主義を採用している。 ク朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮籍)朝鮮籍人については、我が国の裁判例上、相互保証が認められている。 ケドミニカ共和国ドミニカ共和国(以下「ドミニカ」という。)法において国家賠償責任が 認められる要件及び範囲は我が国の国賠法と重要な点において異なるところはなく、外国人に対しても認められている。 コナイジェリア連邦共和国ナイジェリア連邦共和国(以下「ナイジェリア」という。)の労働法には、政府職員が職務上行った行為によって生じた損害の種類に応じて私人が損 害賠償を請求でき、営造物の設置・管理についてもその欠陥に責任を負う政府は、賠償責任 ナイジェリア」という。)の労働法には、政府職員が職務上行った行為によって生じた損害の種類に応じて私人が損 害賠償を請求でき、営造物の設置・管理についてもその欠陥に責任を負う政府は、賠償責任を負うことになる。そして、その要件や損害の範囲は我が国の国賠法と重要な点において異なるところはなく、外国人が政府に損害賠償請求する場合についてもほぼ同じである。 サパキスタン・イスラム共和国 パキスタン・イスラム共和国(以下「パキスタン」という。)については、我が国の裁判例上、相互保証が認められている。 シフィリピン共和国フィリピン共和国(以下「フィリピン」という。)においては、原則として国家無答責の法理が採用されているが、近年では合法的な訴えの場合には国が訴訟に同意を与えるなどして同法理の適用が制限されることが一般 的な方針である。また、相互保証を条件とすることなく外国人も賠償を受けることができる。 ス米国不法行為の主体が連邦政府職員である場合には、国家賠償責任を負い、これには施設所有者・管理者賠償責任も含まれ、その要件は我が国の国賠 法と重要な点において異なるところはなく、外国人を適用除外とする規定は見当たらない。 セベトナム社会主義共和国ベトナム社会主義共和国(以下「ベトナム」という。)については、我が国の裁判例上、相互保証が認められている。 ソペルー共和国ペルー共和国(以下「ペルー」という。)では、行政手続一般法において、行政機関により直接的に供された行政行為が直接の原因となる行政客体への損害について各機関は経済的な責任を負うと定められ、損害の範囲には精神的ダメージも含まれるなど、要件及び範囲は我が国の国賠法と重要な 点において異なるところはない。 2 被告の 行政客体への損害について各機関は経済的な責任を負うと定められ、損害の範囲には精神的ダメージも含まれるなど、要件及び範囲は我が国の国賠法と重要な 点において異なるところはない。 2 被告の主張⑴ 国賠法6条の合憲性国賠法6条の立法趣旨は、日本人に保護を与えない国の国民に我が国が積極的に保護を与える必要はないという衡平の観念に基づくものである。そし て、日本人が外国から受けた被害についてその外国に賠償請求をすることができないのに、我が国が進んでその外国に属する者に賠償責任を負う必要はなく、そうしたとしても、今日の国際情勢上直ちに国際主義の精神に反するほど不合理とはいえないから、その限りにおいて、被害を受けた外国人の国家賠償請求権を制限する結果が生じたとしても合理的な制約である。 そして、憲法17条は「法律の定めるところにより」損害賠償を請求でき る旨を規定するにとどまり、必ずしも外国人に日本人と同様の国家賠償請求を保障しなければならないことを要請するものではなく、前記の国賠法6条の趣旨及び内容には一定の合理性が認められるから、同条が憲法17条に反するとはいえない。 また、国賠法6条の趣旨及び内容に合理的理由が認められるから、同条が 憲法14条に反するともいえない。 ⑵ 相互保証の要件の主張立証責任等外国人原告らに対して国賠法を適用するには、国賠法6条所定の相互保証の要件を充足していることが必要であるところ、その主張立証責任は外国人原告らが負う。また、その要件該当性を緩やかに解すべき理由はなく、本件 に即せば、①公の営造物の設置又は管理の瑕疵から発生した、②生命、身体、財産に直接の影響を与えない生活妨害等の精神的被害に基づく慰謝料請求が、③加害者の故意、過失を要せずに認められること、又は に即せば、①公の営造物の設置又は管理の瑕疵から発生した、②生命、身体、財産に直接の影響を与えない生活妨害等の精神的被害に基づく慰謝料請求が、③加害者の故意、過失を要せずに認められること、又はこれらより厳重でない要件のもとに、当該外国人の国籍国が日本人の被害者に対して賠償責任を負うことについて主張立証しなければならない。 ⑶ 各国の法制度が相互保証の要件を満たさないこと各国について相互保証の要件を満たす旨の原告らの主張は争う。一部の国に関する個別の反論は次のとおりである。 アカンボジアカンボジアには、国が設置又は管理する公の営造物に関して生じた損害 についての国の賠償責任に関する規定はないものと考えられ、日本人が、本件と同様の請求原因をもってカンボジア政府に対して損害賠償請求を行った場合、精神的苦痛に対する慰謝料という非財産的損害について、どのような要件の下にこれが認められるかは何ら明らかではなく、相互保証の要件を満たすことの主張立証はされていない。 イタイ タイ政府は、国家賠償法に関する外国立法例の調査において、「当局関係者の不法行為責任に関する法律」には国又は公共団体が設置又は管理する公の営造物に関して生じた損害についての国又は公共団体の賠償責任に関する規定はない旨の回答をしており、飛行場における航空機の運用等、公の営造物が供用目的に沿って利用されることとの関連において、公の営 造物の設置、管理の瑕疵が認められるためには、公の営造物を利用に供したことにより、利用者以外の第三者の権利又は法律上の利益を侵害し、同侵害が社会通念上受忍すべき限度を超えるようなものであるかとの調査事項に対する回答も、「該当なし」であることは明らかである。これらの回答によれば 利用者以外の第三者の権利又は法律上の利益を侵害し、同侵害が社会通念上受忍すべき限度を超えるようなものであるかとの調査事項に対する回答も、「該当なし」であることは明らかである。これらの回答によれば、日本人が、本件と同様の請求原因をもってタイ政府に対して 損害賠償請求を行った場合、タイ政府がその賠償責任を負う制度は確立されていないものと考えられる。したがって、相互保証の要件を満たすことの主張立証はされていない。 ウ中国中国の国家賠償法では、原因となり得る国家機関職員の行為が刑事手続 等一定の行為に限定されており、日本人が、本件と同様の請求原因をもって中国政府に対して損害賠償請求を行った場合、中国の国家賠償法の範疇ではなく、中国民法典に基づくことになるとされている。そして、中国民法典は、故意、過失を要件とするなどより厳重な要件を規定しており、生活妨害等に係る慰謝料が認められるかどうかは不明である上、公の営造物 の設置又は管理に瑕疵があったことにより生じた損害を賠償することを明確に定める規定はない。したがって、相互保証の要件を満たすことの主張立証はされていない。 エドミニカドミニカにおいては、日本人が、本件と同様の請求原因をもってドミニカ政府に対して損害賠償請求を行った場合、精神的苦痛に対する慰謝料と いう非財産的損害について、どのような要件の下にこれが認められるかは何ら明らかではなく、相互保証の要件を満たすことの主張立証はされていない。 オペルーペルーには、国が設置又は管理する公の営造物に関して生じた損害につ いての国の賠償責任に関する規定はないものと考えられ、そうすると、日本人が、本件と同様の請求原因をもってペルー政府に対して損害賠償請求 、国が設置又は管理する公の営造物に関して生じた損害につ いての国の賠償責任に関する規定はないものと考えられ、そうすると、日本人が、本件と同様の請求原因をもってペルー政府に対して損害賠償請求を行った場合、ペルー政府がその賠償責任を負う制度は確立されていないものと考えられる。したがって、相互保証の要件を満たすことの主張立証はされていない。 第5 争点1-4(将来の損害賠償請求の適法性)について 1 原告らの主張⑴ 将来請求の意義は、将来の強制執行を容易にするだけでなく、特に継続的侵害行為に対する損害賠償請求の事案においては間接強制的に将来の侵害行為を予防することにあるところ、騒音の差止請求が却下されたり、違法性の 程度が損害賠償を基礎付けるには十分ではあるが、差止めの理由としては不十分であるとして棄却されたりするような場合には、被告による将来の違法行為を抑止するために将来請求を認容する必要がある。 ⑵ いかなる請求について将来請求が認められるべきかは、将来生ずる不確定要素の立証の負担を原告と被告のいずれに負担させるのが妥当かという利益 衡量によるべきで、大阪空港最判の判例法理は見直されるべきである。 ⑶ 本件において、仮に、①請求権の基礎となるべき事実関係及び法律関係が既に存在し、その継続が予測され、②当該請求権の成否及びその内容につき債務者に有利な影響を生ずるような将来における事情の変動が、あらかじめ明確に予測し得る事情に限られ、③このような事情について、請求異議の訴えによりその発生を証明してのみ執行を阻止し得るという負担を債務者に課 しても格別不当とは考えられない場合に該当する場合には、将来給付の訴えが適法であるという大阪空港最判の法理に従うとしても、次のとおり、将来請 証明してのみ執行を阻止し得るという負担を債務者に課 しても格別不当とは考えられない場合に該当する場合には、将来給付の訴えが適法であるという大阪空港最判の法理に従うとしても、次のとおり、将来請求は認められるべきである。 ア原告らの損害賠償請求権の基礎となる事実関係は、厚木飛行場周辺における航空機騒音の発生、原告らの75W以上の区域での居住の各事実であ る。前者については、厚木飛行場の使用及び供用の違法状態が少なくとも60年以上もの極めて長期にわたって継続しており、岩国移駐によってもその違法性が解消されていないことからすれば、その継続は明確に予測される。後者については、4次民事訴訟の第1審原告ら約7000名のうち、第1審口頭弁論終結日の翌日から第2審口頭弁論終結日までの約1年8か 月の間に転居した者は、約160名にすぎず、また、その間に死亡した者が約80名にすぎず、本訴訟の第1審口頭弁論終結時点で75W以上の区域に居住する者のほとんどが、将来にわたって長期間転居することなく当該地域での居住を継続することが推認される。また、そもそも原告らの転居や死亡の可能性については、事後的な事情変動として考慮すれば足りる ものである。 イまた、将来における損害賠償請求権の成立及びその内容に影響を及ぼし得る事後的な事情変動は、その大部分が被告によりされる損害防止のための諸方策であるから、その予測可能性は公平弾力的に解すべきである。そして、これまでの厚木基地騒音訴訟において請求権の成否や損害額の点で 被告に有利となり得る事情の変動として挙げられたのは、①航空機騒音の状況、②住宅防音工事の実施状況及び③周辺住民の転居・死亡である。②及び③はその有無が客観的に明確であるし、①についても客観的かつ継続的な 利となり得る事情の変動として挙げられたのは、①航空機騒音の状況、②住宅防音工事の実施状況及び③周辺住民の転居・死亡である。②及び③はその有無が客観的に明確であるし、①についても客観的かつ継続的な騒音測定データと騒音評価指標に基づけば複雑な判断や評価を要せず、将来に成立すべき不法行為において判断されるべき損害の内容や変動状況は明確かつ具体的に把握することができる。 ウさらに、前記①については、被告は厚木飛行場を使用及び管理する者として、これを離着陸する航空機の発する騒音状況を最もよく把握し得る立場にあり、現に周辺に航空機騒音自動測定装置を設置して、継続的にこれを測定しているから、今後もその把握は容易である。前記②については、住宅防音工事は、被告の費用助成により実施されており、その実施状況は 被告が最もよく把握し、かつ証明することができる。前記③については、第1審判決記載の住所と同一の住所における居住継続又は同判決時と同一住所での住民票の提出があることを条件とすることを判決主文に掲げる条件付き判決とすれば、転居又は死亡にかかわらず賠償を被告に強いることを回避するとともに被告の立証負担も解消できる。 エ以上の通り、本件においては大阪空港最判の示す要件をいずれも満たすから、将来請求は適法である。 2 被告の主張⑴ 損害賠償請求権の性質そのものからして不適法であること同一態様の行為が将来も継続されることが予測される場合であっても、そ れが現在と同様に不法行為を構成するか否か及び賠償すべき損害の範囲いかん等が流動性をもつ今後の複雑な事実関係の展開とそれらに対する法的評価に左右されるなど、損害賠償請求権の成否及びその額をあらかじめ一義的に明確に認定することができず、具体的に請求権が成 害の範囲いかん等が流動性をもつ今後の複雑な事実関係の展開とそれらに対する法的評価に左右されるなど、損害賠償請求権の成否及びその額をあらかじめ一義的に明確に認定することができず、具体的に請求権が成立したとされる時点においてはじめてこれを認定することができるとともに、その場合における権利 の成立要件の具備については当然に債権者においてこれを立証すべく、事情の変動を専ら債務者の立証すべき新たな権利成立阻却事由の発生としてとらえてその負担を債務者に課するのは不当であると考えられるようなものについては、将来の給付の訴えにおける請求権としての適格を有さないところ、本件のようないわゆる基地騒音訴訟の事案について、損害賠償請求権の性質そのものから将来の損害賠償請求に係る訴えが不適法とされることは、判例 上確立している(大阪空港最判、最高裁平成18年(受)第882号同19年5月29日第三小法廷判決・集民224号391頁(以下「横田基地4次最判」という。)、厚木基地4次民訴最判)。 すなわち、航空機の騒音等の被害を理由とする損害賠償請求については、侵害される権利・利益は健康被害、生活妨害等の人格的利益であり、人が社 会生活をする限り他者との相互的な影響によって侵害され得る蓋然性を内包するもので、その侵害が社会生活上合理的な限度を超えるとみられる場合に初めて違法性を帯び、被害の程度そのものが規定的な意味を持つという特徴がある。また、侵害行為の態様は、個別具体的な騒音等の曝露の状態であり、単に事実の有無が問題となるにすぎないものでもない。本件においては、口 頭弁論終結後に原告らのいう侵害行為又は損害の発生の基礎となる事実関係が変動することが予想される。 そして、その違法性判断は、周辺住民等の被害が受忍限度を超えるかといっ 本件においては、口 頭弁論終結後に原告らのいう侵害行為又は損害の発生の基礎となる事実関係が変動することが予想される。 そして、その違法性判断は、周辺住民等の被害が受忍限度を超えるかといった観点からの法的評価であり、前記第2・2⑴で挙げた諸事情を総合的に考察してされるものである。また、損害の内容は、精神的損害という性質上、 金銭で計測・換価しえない種類の損害が中心であり、これも諸般の事情を斟酌して裁判所が慰謝料額を認定する性質のものである。さらに、訴訟上も、侵害行為の継続を具体的に立証することが本来必要であり、将来請求部分について後訴で争う場合には前訴の口頭弁論終結時から経過した期間についての継続的な侵害の立証が求められるし、明確な具体的基準により、賠償され るべき損害の変動状況をあらかじめ把握することも極めて困難である。 したがって、航空機の騒音等の被害を理由とする損害賠償請求は、一般的にみて権利の内容の変動性が高く、将来における予測可能性も低く、後訴において執行力を排除するための債務者の負担も無視できない。 よって、原告らの将来の給付の訴えが適法となる余地はない。 ⑵ 原告らの求める将来給付の内容をみても原告らの訴えが適法とされる余 地がないこと原告らが前記1⑶イで将来における損害賠償請求権の成否や損害額の点で被告に有利となり得る事情の変動として挙げる①ないし③の観点から検討しても、将来の給付の訴えの適格を有しないことは明らかである。 すなわち、前記⑴のとおり、違法性の有無は、諸事情を総合的に考察して 決せられるべきものであり、原告らが違法性判断において考慮すべき事情として主張する航空機騒音の状況、住宅防音工事の実施状況及び住民の転居・死亡の3点に限られる理由は全くなく、刻々と変化する国 決せられるべきものであり、原告らが違法性判断において考慮すべき事情として主張する航空機騒音の状況、住宅防音工事の実施状況及び住民の転居・死亡の3点に限られる理由は全くなく、刻々と変化する国際情勢や突然発生する災害等により大きく変動し、その予測が困難な侵害行為の持つ公共性ないし公益上の必要性の内容と程度も当然に考慮要素となる。また、原告らの 主張する点についても、航空機騒音の状況については、その時々の国内外の情勢に応じて常に変動し得るものである上、厚木基地については岩国移駐により明らかな騒音低下が認められており、被告の行った住宅防音工事を含めた周辺対策全体は今後も着実に進行していくものであるなど、将来の変動が明確に予測できるとは言えない。さらに、住民の転居・死亡についても、こ れらは不定期に被告とは無関係の事情によって生じるものであり、被告が全ての原告の転居・死亡について把握することはほぼ不可能であるし、住宅防音工事についても、同工事を行った住宅に原告らが居住しているか否かを把握することはさらに困難である。 したがって、損害賠償請求権の基礎となる事実関係等の継続は予測できず、 当該請求権の成否等について債務者に有利な事情変動が明確に予測し得る事情に限られるともいえず、そのような事情について請求異議の訴えでその発生を証明してのみ執行を阻止し得るという負担を債務者に課すことは不当であるから、将来の給付の訴えの適格を認めることはできない。 第6 争点2-1(自衛隊機に係る本件差止請求の適法性)について 1 差止請求原告らの主張 ⑴ 民事訴訟による差止めの必要性厚木基地4次行訴最判において、自衛隊機に関する差止請求の適法性が認められたが、民事訴訟の要件・効果と行政訴訟におけるそれは異なるから、民事訴訟に の主張 ⑴ 民事訴訟による差止めの必要性厚木基地4次行訴最判において、自衛隊機に関する差止請求の適法性が認められたが、民事訴訟の要件・効果と行政訴訟におけるそれは異なるから、民事訴訟による幅広い抜本的な差止命令による解決が必要である。すなわち、差止めの要件は、民事訴訟においては厚木基地の供用による騒音等により差 止請求原告らの人格権の侵害があることであるのに対し、行政訴訟においては裁量の逸脱濫用があることであり、権利侵害の有無のほか、行政行為の目的や被告における法定の手続の履践状況、侵害の態様や経過等も考慮され得る。また、差止めの効果たる既判力の範囲も、民事訴訟においては人格権に基づく妨害予防請求権の有無、行政訴訟においては航空機運航処分の違法性 である。さらに、公用財産の供用に行政処分性は観念し難く、公用財産である施設の管理者と周辺住民との関係は私的な相隣関係として扱われるべきであり、民事訴訟によるべきである。このように、行政処分として適法であっても民事上は人格権の侵害が認められ、騒音の到達が禁止されることは十分あり得るし、民事訴訟による差止めの方法により被害住民が救済された例も あるから、民事訴訟における差止請求が認められるべきである。 ⑵ 差止請求は公権力の行使や発動を求めるものではないこと自衛隊機に係る本件差止請求は、個々の行為を対象としていた4次民事訴訟とは異なり、専ら結果としての騒音(昼夜間についてはWECPNLという1年を通じた騒音量)の存在そのものの違法性を主張して、騒音の到達と いう結果の差止めを抽象的不作為請求により求めるものであり、その実現方法は被告に委ねられている。仮に、自衛隊機が離着陸しても一定の騒音さえ到達しなければよく、個々の行政行為の違法性は何ら問題としておらず、 果の差止めを抽象的不作為請求により求めるものであり、その実現方法は被告に委ねられている。仮に、自衛隊機が離着陸しても一定の騒音さえ到達しなければよく、個々の行政行為の違法性は何ら問題としておらず、必然的に公権力の行使や発動を求めるものではない。現に、人格権に基づく妨害排除請求権という訴訟物の種類、侵害行為の態様ないし類型、審理対象が共通する道路公害等の訴訟においても、差止めの目的を達成する方法として、 事実行為が想定できること、公権力の発動を求めるものではないことから、民事訴訟による差止請求が認められている(大阪高判平成4年2月20日判時1415号3頁、最高裁平成4年(オ)第1503号同7年7月7日第二小法廷判決・民集49巻7号1870頁)。 被告は、厚木基地4次民訴最判等を根拠に、自衛隊機に係る本件差止請求 について「必然的に防衛大臣にゆだねられた自衛隊機の運航に関する行政上の権限の行使の取消変更又はその発動を求める請求を包含する」としているが、差止請求原告らの請求の趣旨を正しく理解しないものであるし、少なくとも本件訴訟における請求には妥当しない。 2 被告の主張 ⑴ 自衛隊機に係る本件差止請求は、必然的に防衛大臣にゆだねられた自衛隊機の運航に関する行政上の権限の行使の取消変更又はその発動を求める請求を包含するものであるから、このような行政権の行使に対し、私人が私法上の給付請求権を有すると解することはできず、民事上の請求としては不適法である(厚木基地1次最判、最高裁平成4年(オ)第1180号同6年1月 20日第一小法廷判決・集民171号15頁)。 ⑵ 差止請求原告らは、自衛隊機に係る本件差止請求は手段を特定しない抽象的不作為請求であり、公権力の行使を伴わない騒音の到達防止方法も存在する 20日第一小法廷判決・集民171号15頁)。 ⑵ 差止請求原告らは、自衛隊機に係る本件差止請求は手段を特定しない抽象的不作為請求であり、公権力の行使を伴わない騒音の到達防止方法も存在するから、厚木基地1次最判の射程は及ばないと主張する。 しかし、厚木基地1次最判における原告らの差止請求の内容と本件訴訟に おける本件差止請求の内容は実質的に同様であるし、本件と同旨の差止請求がされた4次民事訴訟においても、控訴審は、同請求に係る訴えを却下し、最高裁判所もこの点についての上告を棄却し、上告受理申立てを不受理とする決定をした。 第7 争点2-2(米軍機に係る本件差止請求の適否)について 1 差止請求原告らの主張 ⑴ 米軍の行為の違法性は問題とならないこと米軍機に係る本件差止請求は、自衛隊機に係る本件差止請求と同様に、騒音の到達という結果の差止めを抽象的不作為請求により求めるもので、その実現方法は被告に委ねられている。仮に、米軍機が離着陸しても一定の騒音さえ到達しなければよいのであって、個々の米軍の行為の違法性は何ら問題 としておらず、米軍の行為を被告が直接規制することや米軍機運航に対して何らかの支配を及ぼすことを求めているのではないから、そもそも米軍に対して被告の支配が及ぶか否かは問題とはならない。 ⑵ 被告は米軍機の規制、制限をし得ること厚木基地1次最判は、被告の支配の及ばない第三者の行為の差止めを求め るものであるとして、米軍機に係る差止請求を主張自体失当としたが、同最判の示したいわゆる「第三者行為論」は、改める必要がある。 すなわち、国家は領域内において自由で排他的な支配を及ぼすことができるという領域主権の原則及び各国の主権は互いに等価であるという主権平等の原則によれば、在留米軍は日 行為論」は、改める必要がある。 すなわち、国家は領域内において自由で排他的な支配を及ぼすことができるという領域主権の原則及び各国の主権は互いに等価であるという主権平等の原則によれば、在留米軍は日米地位協定及び関連合意によってはじめて日 本国の領域に駐留でき、領域主権の原則は日本に駐留する米軍にも妥当する。 そして、日米地位協定はその構造上、日本に駐留する米軍にも日本国法令の適用があることを前提としており、その適用を免除する特段の合意はないし、慣習国際法上も同様である。また、日米地位協定締結時の政府答弁等からすれば、日本が米軍に提供する施設・区域にも日本国法令が適用されるという べきである。したがって、被告は、米軍又は米国に対して日本国法令の遵守を求めることができる。 そして、厚木飛行場については日本に管理権があり、米国に管理権を認める日米合意は存在しない。日米地位協定2条4項(b)についての政府統一見解等によれば、厚木飛行場については、米軍の専用する施設、区域への出入りの都度使用を認めるものであるところ、防衛大臣は、その職務を執行す るにあたり、日本国民の権利を侵害してはならない義務を負うのであるから、米軍による厚木飛行場使用の目的が米軍の専用する施設、区域への出入りのため及びそれに関連したその他の運航上の必要性を満たすものであるとしても、その使用により基地周辺住民の人権を侵害することとなるときは、米軍に対し厚木飛行場の使用を認めてはならない義務を負う。 また、自衛隊法107条5項は、防衛施設である飛行場の設置管理者として防衛大臣に飛行場を使用する全ての航空機による障害を防止するための規制権限を認めており、これには米軍機の運航に対する規制権限も含まれる。 したがって、防衛大臣は、条約上は日米地位協定2条4項 として防衛大臣に飛行場を使用する全ての航空機による障害を防止するための規制権限を認めており、これには米軍機の運航に対する規制権限も含まれる。 したがって、防衛大臣は、条約上は日米地位協定2条4項(b)に基づき、国内法令上は自衛隊法107条5項により、米軍機の運航等を規制、制限し 得るから、米軍は、被告にとって支配の及ばない第三者ではない。 2 被告の主張米軍機に係る本件差止請求は、被告に対し、厚木基地における米軍の航空機騒音、エンジン作動音その他一切の騒音を、夜間に差止請求原告らの居住地に到達させることの禁止及び航空機騒音の音量規制を求めるものであるから、被 告に対して、その支配の及ばない第三者の行為の差止めを求めるものとして、その余の点を論じるまでもなく、主張自体失当として棄却を免れない。 すなわち、被告は、厚木飛行場区域の返還を受けたものであるが、厚木基地は、その全体が日米安保条約及び日米地位協定に基づいて我が国の安全並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するために米軍の使用が認めら れている。そのため、米軍の目的遂行のための使用が尊重され、厚木飛行場に関する被告の管理権は米軍の目的に資するように行わなければならず、駐留目的を達成するための米軍による諸活動について、被告の管理権行使によって同目的達成を阻害するような制約はできない。厚木基地における米軍機の保有、運航権限は、全て米軍の運用に属しており、日米安保条約の目的達成のために米軍が駐留している以上、目的達成のために独自にその判断と責任に基づき、 航空機の保有、運航等を行うのは当然である。また、厚木基地に係る被告と米軍との法律関係は条約に基づくものであり、被告は、条約ないしこれに基づく国内法令に特段の定めのない限り、厚木基地にお き、 航空機の保有、運航等を行うのは当然である。また、厚木基地に係る被告と米軍との法律関係は条約に基づくものであり、被告は、条約ないしこれに基づく国内法令に特段の定めのない限り、厚木基地における米軍の運航等を規制し、その活動を制限し得ないところ、関係条約及び国内法令にはそのような特段の定めは存在しない。 したがって、本件米軍機差止めの訴えは、被告に対してその支配の及ばない第三者の行為の差止めを請求するものというほかない(最高裁昭和63年(オ)第611号平成5年2月25日第一小法廷判決・集民167号359頁(以下「横田基地1・2次最判」という。)、厚木基地1次最判)。 第8 争点2-3(夜間、深夜・早朝及び75Wを超える騒音の違法性)について 1 差止請求原告らの主張差止請求原告らは、人格権に基づく妨害排除請求権ないし妨害予防請求権として、航空機騒音をその居住地に到達させることの差止めを求めているところ、前記第2・1のとおり、本件における人格権の侵害は、差止請求原告らの健康被害や生活の破壊という、人間の生存の基本条件である生命・身体権及び生命、 身体、財産等を害されることなく平穏な日常生活を営む権利をその内実とする平穏生活権に対する深刻な侵害であり、極めて重大である。仮に、ある時点で身体症状等があらわれていなくとも、疾患発症に至る過程に置かれているというべきであるから、発症に至らない段階においても、航空機騒音の健康への影響を除去する必要がある。このような被害の救済のためには、航空機騒音を居 住地に到達させることの差止めが必要不可欠である。 そして、これまでの騒音訴訟において差止請求が認容された裁判例をみると、騒音レベルは厚木基地周辺地域よりもずっと低い。これらの裁判例では、差止めを認める上での受 ることの差止めが必要不可欠である。 そして、これまでの騒音訴訟において差止請求が認容された裁判例をみると、騒音レベルは厚木基地周辺地域よりもずっと低い。これらの裁判例では、差止めを認める上での受忍限度の指標として、公法上の規制値を超えている点が重要な判断要素とされており、健康的な生活、人格権の保障を目的として制定された規制基準を超過していれば、特段の事情がない限り、差止請求が認容され ている。 ⑴ 夜間、深夜・早朝の騒音到達禁止の必要性夜間、深夜・早朝は、人の生命、健康の維持に不可欠な睡眠を取る時間であるとともに、人が1日の活動による心身の疲れを癒やす時間であり、その静ひつの必要性はいうまでもない。この時間帯における航空機騒音は、差止 請求原告らに対して睡眠妨害をもたらし、健康被害の大きな原因となり得るし、その他にもイライラ、恐怖や不安などの精神的苦痛が甚だしく、とりわけ深刻である。 平成30年ガイドラインでは、航空機騒音について、住民の高度の睡眠妨害の反応率が3%となる曝露量としての夜間のガイドラインがLnigh t40dBとされている。 また、8時間の睡眠を確保するにあたり、90%の住民の睡眠を保護するには午後9時から翌午前8時まで、10歳以上の子供の入眠を保護するには午後8時からの騒音を制限する必要があること、一般騒音・道路騒音の環境基準や騒音規制法に基づく工場騒音等の規制等の趣旨からすれば、少なくと も午後8時から翌午前8時までの時間帯の航空機騒音等の到達禁止が必要不可欠である。 そして、航空機騒音により睡眠が妨害されると、健康への影響が生じるところ、WHOの「環境騒音のガイドライン実務的抄録」(甲C10。以下「WHOガイドライン」という。)では、屋外の最大騒音レベル60dBが睡眠妨 機騒音により睡眠が妨害されると、健康への影響が生じるところ、WHOの「環境騒音のガイドライン実務的抄録」(甲C10。以下「WHOガイドライン」という。)では、屋外の最大騒音レベル60dBが睡眠妨 害の閾値とされているところ、厚木基地周辺では岩国移駐前後を通じて、70dBを超える騒音が深夜・早朝において頻繁に発生している。また、神奈川県では午後10時の時点で2割の住民が就眠していることに鑑みれば、睡眠妨害の有無を検討する際には、午後7時から午後10時までの夜間騒音発生回数も問題とすべきところ、岩国移駐後である平成30年4月以降も70dBを超える騒音が年間1000回程度以上発生している。 以上からすれば、夜間、深夜・早朝の騒音は睡眠妨害を生じさせているといえる。 ⑵ 75Wを超えることとなる騒音の到達禁止の必要性現在までの各地の軍用航空基地に関する判決は、初期のものを除いて、75Wを損害賠償上の違法基準としているところ、被告は、裁判所から違法で あるとして損害賠償を繰り返し命じられているにもかかわらず、その違法行為をやめないことから、少なくともその違法なレベルの騒音を差し止める必要があることは明らかである。 なお、原告らは、現在においては、施設庁方式では軍用航空機のうるささと住民反応を的確に評価できないと主張しているが、現状、厚木基地につい て適用されているのは施設庁方式であり、これまで蓄積されてきた過去の各地の裁判例の違法基準もこれを用いてきたことを踏まえ、現時点における航空機騒音の差止めの基準値としては、これを用いることが最小限度の住民の保護として必要かつ適当である。 2 被告の主張 争う。 第9 争点3-1(本件協議請求の適法性)について 1 差止請求原告ら の基準値としては、これを用いることが最小限度の住民の保護として必要かつ適当である。 2 被告の主張 争う。 第9 争点3-1(本件協議請求の適法性)について 1 差止請求原告らの主張本件協議請求は、被告が差止請求原告らの人格権侵害を防止することを目的として厚木飛行場の管理、運営に関し、これを見直すために、米国との間で協 議を行うことを求めるものである。 米国との協議は、行政権の行使で行政作用のひとつということはできても、国民の権利義務に直接的な影響を及ぼすものではないし、協議の実施自体は法的効果を生ずるものでもなく、差止請求原告らの権利義務に影響を及ぼすことはなく、行訴法3条所定の処分に当たる余地はない。 また、差止請求原告らの人格権を保全するための効果的な手段として、被告 に対して米国との協議を求めるものであって、本件協議請求に係る訴訟物は、厚木飛行場の騒音等により差止請求原告らの人格権が侵害されていることであって、私法関係であるから、行訴法4条所定の公法上の法律関係に関する訴訟にも当たらない。 したがって、本件協議請求は、民事訴訟における請求として適法である。 2 被告の主張⑴ 差止請求原告らは、人格権の実現の手段として、米国との外交交渉を行うことを請求しているが、被告に対して他国との間で自己の権利利益の実現のための外交交渉をさせることを内容とする請求権なるものは人格権の内容ないし法的効果に当たるとはいえず、私法上の権利ないし法律関係とはいえな い。そうすると、少なくとも民事訴訟の方法でする余地はなく、不適法な訴えである。 また、差止請求原告らの求める外交交渉は、内閣の職務のひとつであり(憲法73条2号)、行政権の行使そのものであるから、同請求は必然的に行政権 訴訟の方法でする余地はなく、不適法な訴えである。 また、差止請求原告らの求める外交交渉は、内閣の職務のひとつであり(憲法73条2号)、行政権の行使そのものであるから、同請求は必然的に行政権の行使を求めるものであり、民事訴訟の方法ですることは不適法である(那 覇地裁沖縄支部判決平成17年2月17日訟務月報52巻1号1頁及びその控訴審である福岡高裁那覇支部判決平成21年2月27日)。 ⑵ 外交交渉については、憲法上、内閣に帰属することが明記されており、内閣において、国内外の情勢等の諸般の事情を総合勘案して決定すべき事柄であって、国の協議義務を規定する法律等は存在しない。それにもかかわらず、裁 判所の判決によって、被告に対して特定の事案について外国と外交交渉するよう命ずることは、内閣の有する外交関係の処理に関する権限との関係で、司法権の限界を超えるものというべきである(東京地判平成21年9月10日・判例タイムズ1371号141頁及びその控訴審である東京高判平成24年12月26日参照)。 第10 争点3-2(対米交渉義務の有無)について 1 差止請求原告らの主張差止請求原告らは、厚木基地を離着陸する米軍機の騒音等により、憲法13条が国民に保障する基本的人権の内実をなす、生命・身体権に直結した権利としての平穏生活権及び安全で平穏な生活を送る権利としての平穏生活権という人格権を侵害されている。 被告は、自ら国民の人格権を違法に侵害してはならないだけではなく、第三者からの違法な侵害から国民の人格権を保護すべき義務を負うところ、本件において、被告は、米軍に対して厚木飛行場の使用を許しているのであるから、加害者の側にある。被告がそのような立場にある以上、国家による過剰介入を懸念したり、国家の作為義務を認め 務を負うところ、本件において、被告は、米軍に対して厚木飛行場の使用を許しているのであるから、加害者の側にある。被告がそのような立場にある以上、国家による過剰介入を懸念したり、国家の作為義務を認めることに抑制的である必要はないし、米軍 機の騒音に関して金銭賠償による事後的な救済しかされない事態は許されない。 また、米軍は、日本国法令を遵守する義務を負うのだから、仮に日本政府が米軍機の運航について直接強制できる関係にないとしても、日本は米国に対して日本国法令の遵守を要請することができるし、そのように交渉するしかない。 そして、被告は、米軍による日本国民の人権侵害行為又は日米合意の違反状態 を回避するための現実的で実効性のある方法として、日米合同委員会における協議等の手段を有しているから、同協議を実施すべき義務がある。 岩国移駐後も、米軍機が厚木基地に離着陸して騒音を発生させており、本件差止請求の実現には程遠いから、被告の義務が岩国移駐により消滅することはない。 以上からすれば、被告は、米軍機の飛行による差止請求原告らの権利の侵害を防ぐために、米国に対し、日本国法令を遵守して違法な飛行を止めるよう要請すべき義務を負い、本件差止請求が実現されるまで、厚木飛行場の使用について、米国との間でその実現のための協議を行わなければならない。 なお、日米合同委員会における騒音規制合意自体に問題があること及び同合意の存在にもかかわらず、約50年もの間、騒音被害が続き、これについては 周辺住民の受忍限度を超える違法なものであるとの司法判断が既に4度確定しているものの現在もなお違法状態が継続していることに鑑みれば、日本側の代表である外務省北米局長及び米国側の代表である在日米軍司令部副司令官により組織される協議機関にすぎない日米合同委員 に4度確定しているものの現在もなお違法状態が継続していることに鑑みれば、日本側の代表である外務省北米局長及び米国側の代表である在日米軍司令部副司令官により組織される協議機関にすぎない日米合同委員会における是正要請では違法状態の是正が期待できないから、被告においては、別途日米両政府としての意思 決定ができる機関を設けるなどして、米国政府との間で協議、交渉を行うべきである。 2 被告の主張前記第9・2のとおり、外交交渉は内閣の権能に属し、いかなる事項について、いかなる内容の外交交渉をするかについては、内閣が諸般の事情を総合的 に考慮した上で高度の政策的判断に基づいて行うべきものであり、これについて、被告が特定の国民との間で外交交渉を行う私法上の義務を負担するものではない(東京地裁八王子支部判決平成14年5月30日・判例タイムズ1164号196頁及びその控訴審である東京高判平成17年11月30日・判例タイムズ1270号324頁)。 第4章当裁判所の判断第1 認定事実前記前提事実並びに掲記の各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 1 原告らの居住関係 ⑴ 認定事実原告らは、別紙21(損害賠償認容額一覧表)の各原告に対応する「居住期間」欄の「始期」欄記載の日から「終期」欄記載の日までの期間について、対応する「居住地」欄の「住所」欄記載の住所地に居住していた。 そして、原告らの当該住所地に対応する本件告示コンター図(平成30年3月31日まで)及び令和2年度分布図(平成30年4月1日以降)上のW値 の区分は、同別紙の「居住地」欄の「W値」欄記載のとおり(みなし第三種区域については「m95」と表記している。)である。 (争いのない事実、甲E1、20、乙B36、 0年4月1日以降)上のW値 の区分は、同別紙の「居住地」欄の「W値」欄記載のとおり(みなし第三種区域については「m95」と表記している。)である。 (争いのない事実、甲E1、20、乙B36、弁論の全趣旨)⑵ 住所地での居住の事実の認定についての補足説明住民票及び戸籍の附票には住所が記載されるところ、転入、転居、転出の事 実については届出が義務付けられており(住民基本台帳法22~24条)、正当な理由がなくてこれらの届出をしない者には制裁があり得ること(同法52条2項)に鑑みれば、住民票及び戸籍の附票に記載された住所は、実際の居住地の異動を反映しているのが通常であり、これを疑わせる具体的な事情のない限り、原告らが当該住所地に居住していると推認できる。したがって、原 告らの主張する期間の居住地が住民票又は戸籍の附票の記載と一致している場合には、当該住所地に居住しているものと認められる。 他方、住民票又は戸籍の附票に記載された住所とは異なる住所地に居住していたと主張する原告ら及び損害賠償請求期間における住民票又は戸籍の附票の住所地の異動歴が一部不明な原告らについての個別の判断は別紙14 (住所地の認定について(個別判断))のとおりである。 よって、原告らの住所地での居住の事実については、前記⑴のとおり認定した。 2 騒音被害に関する国際的なガイドライン等⑴ WHOガイドライン WHOが平成7年までの知見に基づいて公表したWHOガイドラインでは、騒音による健康影響や特定の環境におけるガイドライン値等について、以下の点が指摘されている(甲A7、甲C10、50、51、弁論の全趣旨)。 ア評価指標等についてLAeqは連続音に適している。航空機騒音や鉄道騒音のように、一つ一つが明確に区別できる音 いて、以下の点が指摘されている(甲A7、甲C10、50、51、弁論の全趣旨)。 ア評価指標等についてLAeqは連続音に適している。航空機騒音や鉄道騒音のように、一つ一つが明確に区別できる音がある場合には、LAeq,Tだけでなく、A特性 音圧レベルの最大値(LAmax)や単発騒音曝露レベル(LAE)のような個々の発生騒音の指標も用いるべきである。 現在実務的には、ほとんどの騒音で等エネルギー原理(複合音の影響は、それらの騒音のエネルギーの和と関係があるという原理)が成立し、LAeq,Tと騒音影響の対応は概ね良いという考え方が一般的だが、発生回数の 少ない音の場合や、睡眠妨害やその他の生活妨害の評価にはA特性音圧レベルの最大値(LAmax)がより適している。LAeqについて夜間の重み付けをする場合があるが、これは夜間に不快感の感受性が増大することを反映するためのものであり、これにより住民の睡眠を保護するものではない。 LAeq,T以外の騒音評価指標を使用する明確な理由がない場合、事実上連続音とみなせる騒音の評価にはLAeq,Tの使用が望ましい。発生回数が少ない散発的な騒音が問題となる場所では、LAeq,Tに加えて、LAmaxやLAEの使用が望ましい。 騒音対策や騒音規制を行う際は、住民の中の高感受性群(特定の疾患や高 血圧などの健康問題を有する人、入院患者や自宅療養中の人、乳児、小児、高齢者など)に着目すべきである。 各国政府は、長期的な達成目標として本ガイドライン値を採用すべきである。 イ騒音による健康への影響 騒音の特異的健康影響として、会話聴取妨害、聴力障害、睡眠妨害、読解能力の習得への影響、アノイアンス、社会的行動への影響等が挙げられており、それぞれの内容は、以下の への影響 騒音の特異的健康影響として、会話聴取妨害、聴力障害、睡眠妨害、読解能力の習得への影響、アノイアンス、社会的行動への影響等が挙げられており、それぞれの内容は、以下のとおりである。 (ア)聴力障害環境騒音のLAeq,24hが70dB以下であれば生涯にわたって曝露されても大多数の人には聴力障害は生じないと期待される。聴力保 護の観点からすれば、衝撃音のピーク音圧は、成人に対して140dB、小児に対して120dB以下にとどめることが絶対的に必要である。 (イ)会話妨害正常な聴力を有する人が複雑な内容(学校での会話、電話の声など)を正確に理解するためには、信号-雑音(SN)比(例えば、会話音と 妨害音のレベル差)は少なくとも15dBは必要であり、通常、話者が1m離れて会話する場合は50dB程度であるため、暗騒音を35dB以下にとどめるべきである。 (ウ)睡眠妨害睡眠妨害は、環境騒音の主要な影響のひとつである。騒音により、睡 眠中に生じる一次影響として、入眠困難、覚醒や睡眠深度の変化、血圧・心拍数等の上昇、血管収縮、呼吸の変化、不整脈、体動の増加などがあり、騒音曝露を受けた翌朝又はその後の数日間に現れる二次影響として、不眠感、疲労感、憂うつ、作業能率の低下がある。騒音のレベルそれ自体よりも、暗騒音とのレベル差が反応確率に関与し、騒音によって覚醒 する確率は、一晩当たりの騒音発生回数の増加とともに高くなる。 LAeqで30dB程度の騒音から測定可能な睡眠影響が現れるため、快適な睡眠のためには、夜間の連続的な暗騒音のLAeqは30dB以下にとどめるべき(低周波音が多く含まれている騒音に対してはより低いレベルが求められる。)で、暗騒音のレベルが低い場合、可能な限り、 LAm めには、夜間の連続的な暗騒音のLAeqは30dB以下にとどめるべき(低周波音が多く含まれている騒音に対してはより低いレベルが求められる。)で、暗騒音のレベルが低い場合、可能な限り、 LAmaxが45dBを超えるような騒音を制限すべきである。高感受性群の人のためにはさらに低い値が望ましい。通常の就寝時間帯の騒音対策は、入眠を確保する上で効果的であると考えられている。 間欠音による睡眠妨害は、最大騒音レベルとともに増加し、たとえ全体的な等価騒音レベルがかなり低くても、高い最大騒音レベルが少しでも発生すれば睡眠に影響が生じる。そのため、睡眠妨害を防ぐためには、 環境騒音のガイドラインは、等価騒音レベルだけでなく、最大騒音レベルや騒音の発生回数によっても定められるべきである。 低周波騒音の場合には、低い音圧レベルでも休息や睡眠を妨害する可能性がある。 (エ)生理的機能への影響 騒音が空港等の近傍の住民に対して生理的機能に急性的・慢性的な影響を及ぼしている可能性がある。長期曝露により高感受性群が高血圧や虚血性心疾患などの永続的な影響を発現することになると考えられる。 心循環器系への影響は、LAeq,24hが65~70dB(A)の航空機騒音の長期曝露地域においても明らかにされている。騒音と高血圧 や心疾患の発症率との関連は必ずしも強いものではないが、高血圧よりも虚血性心疾患の方が騒音との関連がいくぶん強いとされている。騒音に曝露されている人員の多さに鑑みると、わずかなリスク上昇であっても重大である。 (オ)作業・学習への影響 主に労働者や小児に対して、騒音が認知作業の成績に悪影響を及ぼし得ることが明らかにされている。特に影響を受けるのは、読解力、集中力、問題を解く力、記憶力などであり、騒音によって集中力が 響 主に労働者や小児に対して、騒音が認知作業の成績に悪影響を及ぼし得ることが明らかにされている。特に影響を受けるのは、読解力、集中力、問題を解く力、記憶力などであり、騒音によって集中力が賦活されて単純作業の能率を短期間上昇させることもあるが、複雑な作業の場合、認知作業の成績は大幅に低下する。騒音への曝露は、曝露終了後の成績 にも悪影響が生じると考えられ、慢性的に航空機騒音に曝露されている空港周辺の学校の生徒は、詳細な読解力、難問に取り組む際の持続力等が標準よりも低く、航空機騒音に順応しようと試みるなど相当の代償を払っていることを認識する必要がある。 (カ)行動への影響、不快感(アノイアンス)騒音は、不快感だけでなく、社会的影響を及ぼすとともに行動へも影 響を及ぼすが、これらの影響は、複合的、潜在的、かつ間接的であるため、多くの非聴覚的要因の交互作用の結果として生じると考えられる。 環境騒音に対する不快感は質問紙調査や生活妨害の程度を調査することにより評価できる。しかし、同じ曝露量であっても、別の交通騒音等では不快感の程度が異なることを認識する必要がある。これは、不快感 は、騒音の特性(騒音源の情報も含む。)だけでなく、音以外の社会的、心理的、経済的な要因の影響も受けるからである。騒音曝露量と不快感との関連については、個人レベルよりも集団レベルにおいてより高い相関関係が得られる。騒音に振動を伴う場合や低周波音が含まれる場合、衝撃音が含まれる場合には、より強い住民反応が報告される。 騒音を不快に感じるかどうかは、音圧レベルや周波数統制及びこれらの時間変動といった騒音の物理的特性によって決まる。昼間はLAeqが55dB未満なら高度に不快と感じる人は少なく、50dB未満なら少し不快と感じる人はほとんど かは、音圧レベルや周波数統制及びこれらの時間変動といった騒音の物理的特性によって決まる。昼間はLAeqが55dB未満なら高度に不快と感じる人は少なく、50dB未満なら少し不快と感じる人はほとんどいない。夕方と夜間の騒音レベルは昼間より5~10dB低い値にとどめるべきである。低周波音を含む騒音に ついてはさらに低いガイドライン値が望まれる。間欠音については最大騒音レベルと発生回数の両方を考慮に入れる必要がある。 ウ環境騒音についてのガイドライン値WHOガイドラインは、これらの知見に基づき、特定の環境と重要な健康影響ごとにガイドライン値を設定している。このうち居住地域一般に関 わるものは次のとおりである。この表のガイドライン値は、対応する「重要な健康影響」が生ずる最低のレベルであるとされる。 なお、低周波音を多く含む騒音の場合は、さらに低い値が必要であり、低周波成分が卓越している場合、A特性による評価は不適切である。騒音に低周波音が多く含まれていると健康影響が憎悪する可能性がある。 LAeqの値は、その時間区分、すなわち昼間と夕方であればその時間 帯の合計16時間における等価騒音レベルを、夜間であればその時間帯8時間における等価騒音レベルを示す。また、LAmaxfastの値は、夜間における最大の騒音レベル(fastの動特性)を示す。なお、窓を開けた状態での睡眠妨害については、窓を開けた場合の屋外から屋内への騒音レベルの減衰を15dBと仮定して定められたものである。 環境条件重要な健康影響LAeq(dB)時間区分(時間)LAmaxfast(dB)居住地域(屋外) 高度に不快(昼間と夕方)少し不快(昼間と夕方) --居住地域(屋内 (dB)時間区分(時間)LAmaxfast(dB)居住地域(屋外) 高度に不快(昼間と夕方)少し不快(昼間と夕方) --居住地域(屋内) 会話妨害(昼間と夕方)少し不快(昼間と夕方) -寝室(屋内)睡眠妨害(夜間) 寝室(屋外)窓を開けた状態での睡眠妨害 ⑵ 「欧州夜間騒音ガイドライン(実務的概要)」WHOの欧州地域事務局は、WHOガイドラインが公表された後の研究成果を踏まえ、平成21年に「欧州夜間騒音ガイドライン(実務的概要)」(甲 C11。以下「夜間騒音ガイドライン」という。)を公表した。その主な内容は次のとおりである。(甲C11、48)ア睡眠時間帯について平成18年の調査結果によれば、成人が床についている平均時間は約7. 5時間で実際の平均睡眠時間はこれよりも若干短い。24時間の中で8時間の睡眠時間帯を確保することは、睡眠保護のための最低限度の選択である。国ごとに結果は異なるものの、調査結果によれば、固定された8時間 では約50%の住民の睡眠しか保護できず、80%の住民の睡眠を確保するには10時間の睡眠時間帯が必要である。 イ夜間騒音曝露と健康影響に関する知見について①睡眠は生物学的に必要であり、睡眠の妨害は健康に係わる様々な悪影響と関連している。②睡眠中の騒音が生物学的に影響を与えることに関す る十分な知見(夜間騒音曝露と健康影響との因果関係が既に確立されているもの、偶然の一致、バイアス、歪みなどが十分に排除されていると考えられる研究において、その関係を確認しうるもの、騒音が健康影響をもたらす生物学的妥当性も十分に確立されているものをいう。)がある。心拍数 の、偶然の一致、バイアス、歪みなどが十分に排除されていると考えられる研究において、その関係を確認しうるもの、騒音が健康影響をもたらす生物学的妥当性も十分に確立されているものをいう。)がある。心拍数の増大、脳幹の反応、睡眠深度の変化、覚醒反応である。③夜間騒音曝露 が、自己申告による睡眠妨害、(環境要因による)不眠症の原因となることを示す十分な知見がある。④騒音による睡眠妨害は、それ自体が健康問題(環境要因による不眠症)であるとみなされるが、健康及び生活満足度にさらなる悪影響を引き起こす、⑤睡眠妨害が、疲労、事故、作業能力の低下を引き起こすという限定的な知見(騒音と健康影響の関連性は直接的に は観測されていないが、因果関係を支持するに足る優れた既存の知見があるもの、間接的な知見は豊富に存在し、それらは、健康に悪影響を及ぼす生理学的変化の中間的影響と騒音曝露とを結びつけているものをいう。)がある。⑥夜間騒音が、ホルモンレベルの変化や心臓血管系疾患、うつ、その他の精神的疾患といった臨床症状を引き起こすという限定的な知見があ る。 ウ健康影響の閾値等Lnight,outsideが30dB未満では、夜間騒音により睡眠中に体動の頻度が少し上昇することを除けば、睡眠への影響は生じない。 30dB以上40dB未満では、体動、覚醒反応、自己申告による睡眠妨害、脳幹の反応など睡眠に対して多くの影響が生じ、特に高感受性群は 影響を受けやすい。影響の程度は音源の特性と騒音発生回数に依存するが、最悪の場合でも影響はそれほど大きくないと考えられ、健康に悪影響を及ぼす生物学的な十分な知見は見当たらない。 40dB以上55dB未満では、健康への悪影響が認められ、多くの住民は夜間の騒音に適応するために生活を変更しなければな きくないと考えられ、健康に悪影響を及ぼす生物学的な十分な知見は見当たらない。 40dB以上55dB未満では、健康への悪影響が認められ、多くの住民は夜間の騒音に適応するために生活を変更しなければならなくなり、高 感受性群はより重度に影響を受ける。 55dBを超えると高頻度で健康影響が生じ、相当数の住民が高度の不快感を訴え、睡眠妨害を受け、循環器系疾患のリスクが上昇するという知見がある。 エガイドライン値の提案 以上を踏まえて、夜間騒音ガイドライン値として、Lnight,outside40dBを、また、暫定目標値(実現可能性に基づいた中間目標で、健康影響に基づいた値ではなく、高感受性群は保護されない水準)として、同55dBを提案している。なお、大多数の人々が少し窓を開けて眠りたいと考えていることを考慮して、家屋による遮音量として21d Bを見込んだ値となっている。 ⑶ 環境騒音による疾病負荷WHO欧州事務局は、平成23年、政策立案者が環境騒音の健康影響を定量化するための一助とし、環境騒音の健康リスク評価の方法に関する指針等を提示することを目的として、「環境騒音による疾病負荷」を公表した。 同文書では、WHOが健康を、単に病気とか虚弱でないというだけではなく、身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態にあると定義していることを受けて、アノイアンスについて、環境騒音による高度のアノイアンスは環境性健康負荷のひとつとみなすべきであるとし、高度に不快(highlyannoyed)とする割合が、アノイアンスの住民反応率としてもっとも広範に用いられている指標であるとしている。(甲C12) ⑷ 平成30年ガイドラインWHO欧州事務局は、最新の環境騒音曝露についての公衆衛生 アノイアンスの住民反応率としてもっとも広範に用いられている指標であるとしている。(甲C12) ⑷ 平成30年ガイドラインWHO欧州事務局は、最新の環境騒音曝露についての公衆衛生上の勧告値を示すため、平成30年ガイドラインを公表した。 このガイドラインの主な目的は、人の健康を道路、鉄道及び航空の交通騒音、風車騒音、レジャー騒音などの様々な音源から生じる環境騒音曝露から 守るための勧告値を示すことにあり、音源別にそれぞれ勧告が策定され、強い勧告か条件付きの勧告として評価されている。 そして、平成30年ガイドラインでは、Ldenと高度のアノイアンスの反応率(%HA)との関係、夜間等価騒音レベル(Lnight)と高度の睡眠妨害の反応率との関係が音源別に示され、これらの曝露反応関係を基にガ イドライン値が決定されているが、レジャー騒音を除いて、72%HA10%となる曝露量(Lden)を1日のガイドライン値、高度の睡眠妨害の反応率が3%となる曝露量を夜間のガイドライン値としている。 航空機騒音については、Lden45dB以上の騒音は健康への悪影響に関連するとして、これ未満にするよう強く勧告し、特に夜間については、L night40dB以上の騒音は睡眠への悪影響に関連するとして、これ未満にするよう強く勧告している。(甲A47の1、48、49、57、甲C49、58) 3 騒音被害に関する一般的な知見⑴ 航空機騒音の特徴 ア音のうるささについて音のうるささの物理的な要素として、音のレベル、音の高さ、音の時間的変動、音の局在性が挙げられる。そして、広帯域騒音よりも純音成分を含む場合、より高い音の場合、騒音の強さや周波数構成が絶えず変化する場合、騒音源が局在する場合、その発生が不規則であ 高さ、音の時間的変動、音の局在性が挙げられる。そして、広帯域騒音よりも純音成分を含む場合、より高い音の場合、騒音の強さや周波数構成が絶えず変化する場合、騒音源が局在する場合、その発生が不規則である場合、その発生を 事前に予測することが不可能な場合の方がそれぞれそうでない場合と比べて不快感が増すといわれている。(甲C1の1、3、4、7)イ防衛施設である飛行場の周辺における航空機騒音の特徴軍用機を含む航空機の騒音は、他の騒音との比較において、発生が間欠的で、発生持続時間は1機のみであれば数十秒程度であるが、その音量が 極めて大きく、特にジェット機について高周波成分を含む金属性の音質を有し、時に衝撃的であり、発生場所が上空で騒音の及ぶ範囲が広大で、家屋構造による遮音が難しい、気象条件による飛行方向や音の伝搬特性の変化により地上で聞こえる騒音の性状やレベルが大きく変化するなどの特徴がある。そのため、飛行場から同一の距離であっても、騒音の程度は全く 異なるし、同一の場所であっても、気象条件その他によって、騒音の程度には日によって大きなばらつきがある。 また、軍用機は、民間機と異なって、その特殊性から、離着陸する航空機の飛行経路や飛行予定が原則として公表されず、飛行経路等も一定しないことから、原告らを含む周辺住民がこれをあらかじめ予測することは困 難である。 さらに、自衛隊の航空機については自衛隊法107条1項により、米軍機については「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定及び日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の実施 に伴う航空法の特例に関する法律」2項により、それぞれ航空機の騒音の基準に適合し 区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定及び日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の実施 に伴う航空法の特例に関する法律」2項により、それぞれ航空機の騒音の基準に適合した有効な耐空証明を受ける義務(航空法11条)をはじめとする航空法の一部の適用が除外されているなど、民間機との比較において、飛行性能等が重視されるなどして、低騒音化が進みにくいといった特徴がある。 このほか、ジェット機が離陸する場合、ジェット機を地上で高出力で試 運転する場合などにおいて、高速で流れるジェット流が原因となって超低周波音を発生することがある。(甲C5、16、59、乙C1)⑵ 低周波音についてア低周波音とA特性W値の基礎となるA特性による騒音レベルは、人の耳の感度に合わせて 補正されるところ、人の耳には概ね4000Hzまでは周波数が小さいほど音が小さく聞こえるから、およそ100Hz以下の低周波音は、A特性では相対的に小さく評価される(前記前提事実第2・1⑴)。 イ低周波音と評価指標低周波音については、環境基準やガイドラインは存在しない。一般環境 で観測されるような低周波音の領域(周波数範囲と音圧レベル)では、人間に対する生理的な影響は明確には認めることができないが、影響がないと言い切ることもできず、低周波音による影響や評価指標に関する科学的な知見が確立しているとはいい難い状況にある(甲C17、乙A27、乙C14、弁論の全趣旨)。 ウ低周波音とその影響低周波音は、高い周波数の音と比べて地表面吸収及び空気吸収が極めて小さく、長距離伝搬の場合、高い周波数の音の方が減衰が大きく、伝搬距離が長くなるにしたがって低周波側の成分が卓越するのが一般的である。 そのため、音は直接的に感知されないが、 吸収及び空気吸収が極めて小さく、長距離伝搬の場合、高い周波数の音の方が減衰が大きく、伝搬距離が長くなるにしたがって低周波側の成分が卓越するのが一般的である。 そのため、音は直接的に感知されないが、建具のがたつきで間接的に低周 波音の存在が感知されることもある。 低周波音の心理的影響としては、圧迫感や不快感があり、人間の感覚受容器を通じて大脳辺縁系、自律神経系等を媒介して生理反応を引き起こすことがあるとされるが、低周波音が病的な影響を引き起こす可能性は少ないとされる。 低周波音の苦情として、気分のいらいら、胸や腹の圧迫感といった心理 的影響、頭痛、耳鳴り、吐き気といった生理的影響、睡眠影響、家具の振動等の物的影響があるが、人体に関する苦情は低周波音との因果関係がはっきりしない場合もある。 G特性音圧レベルで平均の人では約100dBを超えると超低周波音を感じ、120dBを超えると強く感じる。浅い眠りの場合10Hzで10 0dB、20Hzで95dBあたりから影響が現れ始めるところ、これはG特性音圧レベルではそれぞれ100dB、104dBであるとされている。揺れやすい建具ではおよそ5Hzで70dB、10Hzで73dB、20Hzで80dBあたりからがたつき始めるとされている。(甲C14、15、17、乙C12、14) エ低周波音に関する各種参考値低周波音手引書は、ある時間連続的に固定された音源から発生する低周波音について苦情が発生した場合に、苦情内容の把握・測定を行い、低周波音問題対応の評価指針に基づき評価することにより、低周波音問題の解決に至る道筋を示すものであり、1/3オクターブバンドで測定された音 圧レベルと比較して、当該苦情が低周波音に起因するか否かのひとつの判断要素とするための参照値を設定した り、低周波音問題の解決に至る道筋を示すものであり、1/3オクターブバンドで測定された音 圧レベルと比較して、当該苦情が低周波音に起因するか否かのひとつの判断要素とするための参照値を設定した。 また、中村俊一らによる「低周波音に対する感覚と評価に関する基礎研究」において、24名の被験者に対して特定の試験音を聞かせ、音が出ているか分かるか、音が気になるか、不快な感じがするか、音による圧迫感 があるか、音による振動感があるかといった5つの項目に対して、それぞれ「(全く)ない」、「ある」、「大いにある」といった3段階の回答をさせる実験を行い、周波数ごとに被験者の50%が「判らない/全く気にならない/しない/全くない」と回答する音圧レベルの推定値を結んだ曲線として、「気になる-気にならない曲線」が示されている。 さらに、同論文において、中村らは、28名の被験者に対し、特定の試 験音を聴かせ、「わからない」、「わかる」、「気になる」、「やかましい」、「圧迫感がある」、「振動感がある」、「痛みを感じる」、「音のにごりがある」との選択肢の中から、最も優位と判断される項目を一つ選択して回答するという実験を行い、周波数及び音圧レベルごとに「わかる」「気になる」「圧迫感・振動感がある」「やかましい」「痛みを感じる」という項目の中で最 も得票のあった項目を分析し、このうち「圧迫感・振動感がある」という項目の領域を区画する曲線として「圧迫感・振動感の閾値曲線」が示されている。 これらの参照値及び各曲線の評価値の1/3オクターブバンド中心周波数ごとの音圧レベル(dB)は次表のとおりである。(甲C17、19、 乙C14、弁論の全趣旨) 4 原告らに生じている具体的な被害の例(甲E2、3、7のや4175、8の 波数ごとの音圧レベル(dB)は次表のとおりである。(甲C17、19、 乙C14、弁論の全趣旨) 4 原告らに生じている具体的な被害の例(甲E2、3、7のや4175、8の ふ107、9のや3465、10のや3107、11のや2174、12さ222、13のあ241、14のや748、原告ら本人尋問の結果)⑴ 睡眠妨害 6.3 12.5 31.5 物的苦情に関する参照値 --心身に係る苦情に関する参照値--- 気になる-気にならない曲線の評価値--- 71.5 59.553.5 圧迫感・振動感の閾値曲線の評価値 1/3オクターブバンド中心周波数(Hz)原告らの多くが、夜遅い時間帯に航空機の音が気になってイライラするなどして寝付きが悪くなったり、入眠後であっても、航空機の音が響いて途中で覚醒するなどして、睡眠時間が不足したり、十分な質の睡眠がとれないことをしばしば経験しており、航空機騒音による入眠障害や中途覚醒の被害を訴えている。翌日の眠気や疲労感、集中力不足、日常的な疲れやすさなどを 感じる者も多く、そのような状態で仕事等に臨むことに不安を覚える者も多い。 また、原告らの中には、夜勤等のため、日中に睡眠を確保する必要があるにもかかわらず、日中の航空機騒音により、睡眠を妨害されている者もいる。 ⑵ 生活妨害 ア聴取妨害原告らのほとんどが、対面や電話での会話中な 日中に睡眠を確保する必要があるにもかかわらず、日中の航空機騒音により、睡眠を妨害されている者もいる。 ⑵ 生活妨害 ア聴取妨害原告らのほとんどが、対面や電話での会話中などに、航空機騒音により相手の声などがかき消され、あるいは不明瞭にしか聞き取れず、聞き返したり、航空機が過ぎ去るのを待つこと、会話自体の終了を余儀なくされるなどし、円滑なコミュニケーションを妨害されている。また、原告らのほ とんどが、テレビやラジオの視聴中、音楽鑑賞中に、航空機騒音によりその音の聴取を妨害されるなどして、音量を上げたり、聴取を断念するなどの対応等を余儀なくされ、情報収集や余暇の機会等を妨害されている。 イ精神的作業の妨害原告らのほとんどが、仕事、学習や読書などの趣味の活動中に、航空機 騒音にさらされることで集中力をそがれたり、中断を余儀なくされるなどして、これらの活動を妨害されている。 ⑶ その他の精神的苦痛アアノイアンス騒音の心理的影響については「うるさい」、「やかましい」と表現されて きたが、騒音被害の深刻さを表す形容詞としての適切さが疑問視され、生活妨害も含めた騒音による直接的、間接的影響の総体がもたらす迷惑感、煩わしさ、いら立ち、悩みといった比較的深刻な被害感を包含した、「アノイアンス」という概念が騒音被害を評価するために用いられるようになった。最近の我が国の社会調査においても、「どの程度うるさいですか」という質問に代えて「騒音によって悩まされたり、邪魔されたり、あるいはう るさいと感じたりすることがありますか」という国際的に標準化された質問様式が採用されるようになっている。(甲C47、58)原告らのほとんどが、航空機騒音にさらされること自体や う るさいと感じたりすることがありますか」という国際的に標準化された質問様式が採用されるようになっている。(甲C47、58)原告らのほとんどが、航空機騒音にさらされること自体や、騒音により睡眠や各種の活動等が妨害されることに対して、いら立ちや不快感を募らせ、また、ストレスを感じている。 イ健康被害等に対する不安原告らの多くの者が、航空機騒音により自ら又は家族等の健康に悪影響が生じていないか不安に考え、あるいは、持病の発症又は悪化について航空機騒音が原因ではないかとの懸念を有している。航空機騒音によるストレスを原因とする体調悪化を懸念する原告らも多い。 また、原告らのうち、少なくない者が、学齢期の子らの授業や自宅学習等が航空機騒音により妨害されたり、未就学児が航空機騒音におびえる様子を目にするなどし、これにより子どもの成育に悪影響が出ることについて不安を覚えている。 ウ航空機事故に対する不安 原告らの多くの者が、厚木基地周辺を飛行する航空機の墜落や不時着、航空機からの落下物等の事故の報道等を見聞きして、これらの事故により自己の生命・身体・財産に危害が及ぶことに対する不安を感じている。その中には、航空機が低空で飛行し、又は、航空機を間近で見ることによってその不安を感じる者が多い。 エ交通事故に対する不安原告らの多くの者が、航空機騒音により、自動車等の走行音や警報音等が聞こえないという状況を体験しており、航空機騒音によりこれらの音がかき消されたり、航空機騒音に気を取られることで、交通事故の危険が高まるのではないかという不安を抱いている。 ⑷ 圧迫感等原告らの中には、ヘリコプターなどの航空機の飛行に伴って かき消されたり、航空機騒音に気を取られることで、交通事故の危険が高まるのではないかという不安を抱いている。 ⑷ 圧迫感等原告らの中には、ヘリコプターなどの航空機の飛行に伴って、振動感や圧迫感を感じている者が一定数いる。 5 騒音の状況等⑴ 被告測定データの推移(乙B2の2、14) 被告は、別紙15(被告騒音測定点)1枚目のとおり、厚木基地周辺の23か所に航空機騒音自動測定装置を設置し、継続的に航空機騒音を測定している(なお、これらの測定点のおおよその位置は、同別紙2枚目の図面の番号(同別紙1枚目の「No.」の列記載の番号と対応している。)のとおり。 ただし、No.11は、同別紙1枚目の「No.11-2」の「中村自治会 館」の位置である。)。 これらの測定結果のうち、第一種区域内の測定地点における平成15年度から平成19年度及び平成24年度から令和4年度までのW値(環境基準方式)を集計したものが別紙16(被告騒音測定結果)である。 ⑵ 自治体騒音測定データの推移 ア厚木基地の周辺自治体は、別紙12(自治体騒音測定点)のとおり、厚木基地周辺に年間を通して24時間連続稼働する自動記録騒音計を設置し、70dB以上かつ5秒以上の継続音について、継続的に最高音(LAmax。以下同じ。)、測定回数等を測定している(なお、これらの測定点のおおよその位置は、同別紙2枚目の図面の番号(同別紙1枚目の「B号証」 の列記載の番号と対応している。)のとおり。以下、自治体の騒音データの測定点については、「B号証」の列記載の番号を用いて「No.1の地点」などという。)。これらの測定点は、本件告示コンター図においては、別紙12の1枚目の「コンター」欄記載の区域に位置しており、令和2年度分布図上も75W以上 」の列記載の番号を用いて「No.1の地点」などという。)。これらの測定点は、本件告示コンター図においては、別紙12の1枚目の「コンター」欄記載の区域に位置しており、令和2年度分布図上も75W以上の区域となっているのは、No.1~4、6、7の6地点である。 これらの測定結果のうち、平成26年1月から令和4年12月まで、各月に測定された最高音及び70dB以上の騒音測定回数、1日当たりで騒音が測定された回数のうち最高のもの及び1日当たりの平均測定回数並びに土曜日、日曜日、夜間(午後7時から午後10時まで)及び深夜(午前0時から午前6時まで及び午後10時から午後12時まで)についての最 高音、騒音測定回数及び当該曜日又は時間帯における1日当たりで騒音が測定された回数のうち最高のものを集計したものが、別紙17(騒音集計表)である(なお、データの根拠が証拠上ないものには×印を付してある。)。 また、平成15年以降の年間の騒音の測定回数の推移についてまとめたものが、別紙18(騒音測定回数推移)である。(甲A47の6の2・14、 甲B1~18、弁論の全趣旨)イ厚木基地の周辺自治体が設置する航空機騒音自動観測装置のうち、平成15年度以降の年間W値(環境基準方式)又はLden値の比較が可能な富士見台小学校及び滝の沢小学校を測定地点とするW値(環境基準方式)又はLden値の推移は次のとおりである。 なお、平成25年度よりも前は、W値(環境基準方式)が実測値であるが、平成25年度以降は、環境基準の改正により、評価指標がLden値とされているため、Lden値が実測値である。前記前提事実第2・2⑵のとおり、W値(環境基準方式)とLdenの推計値との差が、W値(環境基準方式)が70~75のときは13、80のときは14であり 値とされているため、Lden値が実測値である。前記前提事実第2・2⑵のとおり、W値(環境基準方式)とLdenの推計値との差が、W値(環境基準方式)が70~75のときは13、80のときは14であり、W値 (環境基準方式)が高くなるほど差が大きくなることから、ここでは比較のため、Lden値が62以下であれば13を、62よりも大きければ14をそれぞれ近似的に加えたものをW値(環境基準方式)欄に記載している。(乙B15の5、51) 富士見台小学校滝の沢小学校Lden値W値Lden値W値平成15年度77.866.2平成16年度78.065.4平成26年度62.676.654.767.7平成27年度62.176.154.367.3平成28年度62.576.553.566.5平成29年度62.376.352.365.3平成30年度49.762.742.055.0令和元年度48.761.741.854.8令和2年度46.559.538.651.6令和3年度47.960.941.254.2令和4年度44.457.438.151.1 ウ厚木基地の周辺自治体が第一種区域内に設置した自動記録騒音計のデータのうち、証拠上、岩国移駐前後を通じて年間のW値(環境基準方式)又はLden値が判明するもののデータを平成26年度以降について集計すると、別紙19(自治体測定W値等推移)のとおりである。なお、計測地点によって、W値(環境基準方式)である場合とLden値である場合 など、評価指標が異なっている。(乙B15の5の2、15の6、36の2・ 自治体測定W値等推移)のとおりである。なお、計測地点によって、W値(環境基準方式)である場合とLden値である場合 など、評価指標が異なっている。(乙B15の5の2、15の6、36の2・3・6、46、48、51)⑶ 原告らによる低周波音の測定結果ア 4次訴訟における測定結果(甲C24の3、弁論の全趣旨)原告らから委託を受けた日東紡音響エンジニアリング株式会社(現・日本音響エンジニアリング株式会社。以下、商号変更の前後を通じて「日本音響」という。)は、平成27年1月8日午前10時05分から午後3時4 5分までの間に、90Wの区域に位置する、厚木基地の滑走路オーバーランの北端から北に約1.4kmの緑の広場44号(神奈川県大和市上草柳8-438-1)及び滑走路の南端から南南東に約300mの同市福田349所在の広場において、低周波音を含む航空機騒音(音圧レベル、G特性音圧レベル、1/3オクターブバンド中心周波数ごとの音圧レベル)を 測定した(ただし、測定場所によって測定した時間帯は異なる。)。 その結果、全ての航空機において、特定の周波数帯で低周波音手引書における心身に係る苦情に関する参照値及び「気になる-気にならない曲線」の評価値を超える値が測定され、特に31.5~80Hzの周波数帯でこれらの参照値及び評価値を超える値が多く測定され、高い周波数帯ほど、 参照値及び評価値を大きく超える値が測定された。 145回の測定のうち、G特性音圧レベルが100dBを超える値は3回測定された。 イ周辺住民の住居内外での測定結果(甲C23、弁論の全趣旨)原告らから委託を受けた日本音響は、令和元年12月18日に厚木基地 の西端から西に約100mで75Wの区域に位置する木造2階建ての住居 周辺住民の住居内外での測定結果(甲C23、弁論の全趣旨)原告らから委託を受けた日本音響は、令和元年12月18日に厚木基地 の西端から西に約100mで75Wの区域に位置する木造2階建ての住居の屋内外、令和2年1月15日に滑走路北端から北に約1.9kmで90Wの区域に位置する木造2階建ての住居の屋内外、同年2月5日に滑走路北端から西に約500mで85Wの区域に位置する木造2階建ての住居の屋内外で、それぞれ低周波音を含む航空機騒音(最大騒音レベル、G特性 音圧レベル、1/3オクターブバンド中心周波数ごとの音圧レベル)を測定した(ただし、測定場所によって測定した時間帯は異なる。)。 その結果、飛来した延べ40機の航空機の全てについて、特定の周波数帯で低周波音手引書における心身に係る苦情に関する参照値及び「気になる-気にならない曲線」の評価値を超える値が測定され、特に31.5~80Hzの周波数帯でこれらの参照値及び評価値を超える値が多く測定さ れ、また、ほとんど全てのプロペラ機及びヘリコプターで、16Hz以上の一部の周波数帯で「圧迫感・振動感の閾値曲線」の評価値を超える値が測定され、とりわけP-3C(プロペラ機)では同評価値を大きく超える値が測定された。 ウ現地進行協議期日における測定結果(甲A50、56、乙B36の1、弁 論の全趣旨)原告らから委託を受けた日本音響は、現地進行協議期日を実施した令和4年3月10日及び令和5年5月11日、厚木基地の滑走路オーバーランの南端から南に約150mで95Wの区域に位置する大和ゆとりの森(神奈川県大和市福田字九ノ区4110)、前記緑の広場44号、厚木基地の滑 走路北端から北北東に約500mで95Wの区域に位置するふれあいの森草柳広場(同市下草柳552。ただ る大和ゆとりの森(神奈川県大和市福田字九ノ区4110)、前記緑の広場44号、厚木基地の滑 走路北端から北北東に約500mで95Wの区域に位置するふれあいの森草柳広場(同市下草柳552。ただし、令和5年5月11日のみ実施)、厚木基地の西側約200mで80Wの区域に位置するさくら公園(神奈川県綾瀬市蓼川1丁目26。ただし、令和4年3月10日のみ実施)において、低周波音を含む航空機騒音(最大騒音レベル、G特性音圧レベル、1 /3オクターブバンド中心周波数ごとの音圧レベル)を測定した(ただし、測定場所によって測定した時間帯は異なる。)。 その結果、全ての航空機について、特定の周波数帯で低周波音手引書における心身に係る苦情に関する参照値及び「気になる-気にならない曲線」の評価値を超える値が測定され、特に31.5~80Hzの周波数帯でこ れらの参照値及び評価値を超える値が多く測定され、高い周波数帯ほど、参照値及び評価値を大きく超える値が測定された。また、ヘリコプターについては、16~20Hzの周波数帯において、低周波音手引書における物的苦情に関する参照値を超える値が多く測定された。さらに、40~50Hzの周波数帯において、「圧迫感・振動感の閾値曲線」の評価値を超える値も複数測定された。 276回の測定のうち、G特性音圧レベルが100dBを超える値は29回測定され、いずれもヘリコプター又はジェット機(FA-18)であった。 ⑷ その他の公表値等ア自治体による公表値等 神奈川県は、厚木基地の滑走路の北端から約1kmの測定地点(別紙12(自治体騒音測定点)の「No.1」の測定地点)における、100dB以上の5秒以上継続する騒音の測定回数について、次のように公表している。 年間(年度) 走路の北端から約1kmの測定地点(別紙12(自治体騒音測定点)の「No.1」の測定地点)における、100dB以上の5秒以上継続する騒音の測定回数について、次のように公表している。 年間(年度)の測定回数は、平成26年度から平成28年度までは各年 度2000~2400回程度だったが、平成30年度から令和4年度は各年度30~100回程度であった。 また、県内11か所に設置している騒音計の各地点における平成28年4月から令和4年9月までのLden値の推移を移駐前後で比較(ただし、移駐が平成29年8月から平成30年3月にかけて実施されたことから 平成29年度は全期間を比較対象から除いている。)すると、各地点で10から15dBほど減少している。(乙B5の2)イ苦情件数航空機騒音に関する電話やメール等で寄せられた苦情件数は、平成21年度に約3700件、平成22年度に約2100件であった後は、平成2 4年度をピークに平成29年度までは4000件以上で推移していたが、平成30年度以降令和4年度までは1000件前後にとどまっている(乙B6、17)。 ウ管制実績(甲A54)各年度における厚木飛行場における管制実績は次のとおりである。ただし、軍用機のデータには米軍機以外も含まれ、令和4年度のデータは、令 和4年4月から9月までの集計値である。 年度自衛隊機(回)軍用機(回)合計(回)平成25年度181751856936744平成26年度180071949037497平成27年度176491852636175平成28年度182372103239269平成29年度152921733132623平成30年度17802 年度176491852636175平成28年度182372103239269平成29年度152921733132623平成30年度178021469432496平成31年度160701380829878令和2年度140981546929567令和3年度150481686931917令和4年度7688873516423 エ米海軍の空母の寄港状況米海軍の空母は、平成26年以降、11月下旬頃から翌年5月中旬頃ま でを中心に、毎年概ね180日から210日間、横須賀海軍施設に寄港しており、平成29年及び平成30年も同様である。また、令和元年以降も概ね11月頃から翌年5月中旬頃まで横須賀海軍施設に寄港している。 (乙B5の2、13) 6 厚木基地周辺における航空機事故⑴ 国際航空運送協会(IATA)によると、民間機の平成31(令和元)年の100万フライト当たりの事故発生率は1.13である。これに対し、米海軍・海兵隊が運用するヘリコプターを含む航空機の平成29会計年度(平成28年10月から平成29年9月)の事故率(10万飛行時間当たりの事 故の件数)は24.53であり、このうち、クラスA(政府及び政府所有財産への被害総額が200万ドル以上(令和元年10月以降は250万ドル以上に変更)、国防省所属航空機の損壊、あるいは、死亡又は全身不随に至る傷害若しくは職業に起因する病気等を引き起こした事故)に当たる事故率は1. 77だった。また、オスプレイの10万飛行時間当たりのクラスAに当たる 事故率は、米海兵隊MV-22では令和4年9月末時点で2.27であり、米空軍CV-22では令和2会計年度で6.58だった。( 7だった。また、オスプレイの10万飛行時間当たりのクラスAに当たる 事故率は、米海兵隊MV-22では令和4年9月末時点で2.27であり、米空軍CV-22では令和2会計年度で6.58だった。(甲A55)⑵ 神奈川県内で昭和27年4月から平成26年1月までに発生した米軍機又は自衛隊機の墜落、不時着、部品の落下等の事故は、242件であり、うち63件が墜落事故である。特に、昭和33年、同35年、同36年、同3 9年、同40年及び同52年には、それぞれ乗員又は周辺住民が死亡する墜落事故が発生している。同年を最後に民間人に死者が出る事故は発生していないが、平成20年以降も、厚木基地周辺において、不時着や落下物の事故等がしばしば発生し、周辺住民の物的損害が生じている。(甲A1の1・2・5・6、甲D2、14、15、28、35、39、52、59、73、79、 82、107、122、124、140、146、164、170、194、208、212、259、294、332、333) 7 令和2年度分布図被告は、岩国移駐の完了により厚木基地周辺の航空機騒音について、具体的にどの程度の範囲でどの程度低減しているのかを把握するため、騒音測定など の調査を公益財団法人防衛基盤整備協会に業務委託し、同協会は、令和元年度及び令和2年度に騒音状況の調査を行い、その結果を図で示した令和2年度分布図を作成した。この調査及び令和2年度分布図の作成に当たっては、本件告示コンター図作成時の騒音状況との比較を容易にするため、可能な限り平成15年度及び平成16年度に実施した騒音度調査における調査方法及び施設庁方式によるW値の算定方法を踏襲することとし、騒音の測定地点の数や測定方法、 W値の評価方法を同じくした。具体的には、岩国移駐後に厚木基地で 16年度に実施した騒音度調査における調査方法及び施設庁方式によるW値の算定方法を踏襲することとし、騒音の測定地点の数や測定方法、 W値の評価方法を同じくした。具体的には、岩国移駐後に厚木基地で主に運用されている海上自衛隊のP-1、P-3C、C-130、SH-60及びLC-90を設定し、米軍機のFA-18、FA-18E/F、E-2C及びC-40については、平成15年度及び平成16年度に実施した騒音度調査の基礎データをそのまま使用し、自衛隊機については、海上自衛隊厚木基地に確認し て機種、飛行方向、飛行態様ごとの飛行経路を設定し、米軍機については平成16年度に実施した騒音度調査において設定された飛行経路をそのまま使用し、1日の標準飛行回数は、平成30年4月1日から平成31年3月31日までの1年間の管制記録を基に決定するなどした。そして、このように測定されたデータを基に、滑走路の中心を基準に設定した等間隔(250m)の格子点にお いて、最大騒音レベル、航空機騒音の継続時間及び1日の標準飛行回数を踏まえてW値を算出し、75W以上を示す点について、5Wごとに同一の点を線で結ぶメッシュ法を用いてコンター図を作成した。 また、騒音評価等の学識経験を有する者で構成される検討委員会を設置し、同委員会の意見を受けながらこれらの調査及び令和2年度分布図の作成を行っ た。 令和2年度分布図は別紙13(令和2年度分布図)のとおりであり、75Wないし95Wの各区域の分布は同別紙の黒実線のとおりである。(乙B19~31、34、35、証人A、弁論の全趣旨) 8 被告による騒音への対応 ⑴ 岩国移駐ア移駐に至る経緯被告は、米国との間で在日米軍再編に関する協議を進め、平成18年5月1日、再編案を最終的に取りまとめた「再編実施 全趣旨) 8 被告による騒音への対応 ⑴ 岩国移駐ア移駐に至る経緯被告は、米国との間で在日米軍再編に関する協議を進め、平成18年5月1日、再編案を最終的に取りまとめた「再編実施のための日米のロードマップ」を発表し、米海軍第5空母航空団を厚木飛行場から岩国飛行場へ移駐することとした。この移駐は、FA-18、EA-6B(EA-18 Gに換装)、E-2C(E-2Dに換装)及びC-2航空機から構成されること、必要な施設が完成し、訓練空域及び岩国レーダー進入管制空域の調整が行われた後、平成26年までに完了することとされた。その後、岩国飛行場の施設整備の全体の工程の見直しを踏まえ、平成25年10月3日の日米安全保障協議委員会「2+2」において、岩国移駐が平成29年頃 までに完了することを認識した旨を共同発表した。 そして、平成29年8月9日、E-2Dの1部隊を皮切りに、岩国飛行場への移駐が開始し、その後、同年11月にFA-18の2部隊及びEA-18Gの1部隊、同年12月にC-2の1部隊の移駐が順次実施され、最終的にFA-18の残余部隊の移駐により、平成30年3月30日に移 駐が完了した。(乙A4、5、24、25、弁論の全趣旨)イ移駐に要した経費等被告は、移駐先の岩国飛行場において、空母艦載機のための駐機場、整備格納庫、第5空母航空団等の施設をそれぞれ整備するとともに、移駐に伴う軍人、軍属及びこれらの家族の住宅の建設のために岩国飛行場近傍の 不動産を購入し、家族住宅や学校施設等を整備するなどした。 これらの移駐等に要した経費の平成18年度から平成30年度までの予算額は、契約ベースで約5520億円であり、平成18年度から平成28年度までの支出済歳出額で約3981億9298万7000円であった。 ( らの移駐等に要した経費の平成18年度から平成30年度までの予算額は、契約ベースで約5520億円であり、平成18年度から平成28年度までの支出済歳出額で約3981億9298万7000円であった。 (乙A91、92) ⑵ 防音工事の実施状況ア実施件数等被告は、住宅防音工事について、昭和50年度から令和4年度までの間に、延べ35万5089世帯に対して、合計9049億3395万0310円を助成した。このうち、外郭工事については、延べ5万3933世帯に対して、合計2104億2973万7113円、防音区画改善工事につ いては、延べ4547世帯に対して、合計198億8569万6890円をそれぞれ助成した。 また、被告は、昭和29年度から令和4年度までの間、学校、幼稚園及び保育所並びに病院、老人ホーム等の防音工事について、合計627施設に対し、合計826億5165万9926円を助成した。(乙A8の2) イ原告らの住宅に対する防音工事の状況原告らは、別紙21(損害賠償認容額一覧表)の「居住期間」欄の「始期」欄の日から「終期」欄の日まで、それぞれ対応する「防音工事」欄の「室数・種類」欄記載の住宅防音工事(数字が記載されている場合には、当該数字の室数の新規防音工事、一挙防音工事又は追加防音工事、「外」が 記載されている場合には外郭防音工事、「区」が記載されている場合には防音区画改善工事)が施された、「居住地」欄の「住所」欄記載の住所に所在する建物に居住していた(争いのない事実、甲E15のあ12・あ75・あ154・あ162・あ241・あ303・あ400・あ430・あ612・あ679・あ794・あ905・あ928・え32・え39・え98・ え179・え213・え243・え244・さ47・さ171・さ378・さ ・あ241・あ303・あ400・あ430・あ612・あ679・あ794・あ905・あ928・え32・え39・え98・ え179・え213・え243・え244・さ47・さ171・さ378・さ510・さ616・ざ35・ざ116・ざ180・ざ241・ざ263・ざ316・ざ331・ざ412・ざ537・ふ33・ふ53・ふ55・ふ68・ふ155・ふ258・や46・や60・や132・や424・や515・や601・や615・や635・や756・や821・や855・ や859・や1073・や1080・や1183・や1217・や1230・や1266・や1312・や1332・や1657・や1746・や1757・や2009・や2052・や2463・や2494・や3132・や3149・や3294・や3428・や3519・や3573・や3609・や4004・や4124・や4154・や4441・や4710・や4968・や5119・や5135・や5159・や5163・や 5176・や5179・や5232・や5276・や5323・や5622・や5725・や5821、乙E1の3・7・9・11~17・19~23・25~29・34・35・37・39~41・43~45・48~56・58~61・63~66・68~71・73・74・76・78~80・84・85・88・89・91・92・94・95・97~103・ 105~108・110~116・118~128・130~132・134~137・139~144・147~152・155・156・158・159・161・162・166・168・169・175・178~181・183~185・190~195・197・198・200・203~205・207・208・210~224・226~229・2 31~2 162・166・168・169・175・178~181・183~185・190~195・197・198・200・203~205・207・208・210~224・226~229・2 31~233・236・238~240・242~245・247・250~258・260~262・265・267~273・275・276・280~291・293・294・296~301・304~315・317~323・327・333・334・336・337・340~342・344~356・360~367・369・370・372・375 ~379、弁論の全趣旨)。 なお、住宅防音工事を施された住宅が滅失した日が判明している場合には当該日まで、滅失した日が不明であるものの、同じ敷地上の新建物の新築日が判明している場合には当該日まで、当該住宅防音工事がされた住宅に居住していたものとして扱い、また、リフォーム等により住宅防音工事 の施された室数等に変動が生じていると認められる場合において、当該リフォーム工事等の完了日が年又は月単位でのみ判明しているものについては、当該年又は月の末日を工事完了日として扱っている。 ⑶ 移転措置被告は、厚木基地周辺地域において、生活環境整備法制定前である昭和35年度の予算措置をもって、厚木基地に近接し、航空機の運航上好ましくな く、また、航空機の離着陸等の頻繁な実施に伴う航空機騒音等の影響によって居住等の環境として適切でないと思われる区域に建物等を所有する者について、移転措置の実施を開始した。 移転措置の令和4年度までの補助金交付実績は、移転戸数が576戸で移転補償額計89億8891万8372円、買入土地面積が合計82万743 3㎡で買入額計147億3152万2730円である。(乙A8の2、弁論の 度までの補助金交付実績は、移転戸数が576戸で移転補償額計89億8891万8372円、買入土地面積が合計82万743 3㎡で買入額計147億3152万2730円である。(乙A8の2、弁論の全趣旨)⑷ 被告によるその他の対策等ア NLPを含むFCLPの移転FCLPは、米海軍の空母ミッドウェイが横須賀海軍施設に入港した昭 和48年10月頃から、三沢及び岩国両飛行場において開始されたが、昭和57年2月16日より、厚木基地においてNLPを含めたFCLPが実施されるようになった。 厚木基地周辺は都市化が進んでいたところ、昭和61年に米海軍の空母艦載機が騒音レベルの高いFA-18へ変更されたこともあり、周辺住民 や関係地方公共団体等からの苦情や訓練中止要請が著しく増えた。 そこで、被告は、昭和63年4月、米国に対し、三宅島に代替施設が設置されるまでの間、硫黄島の使用を含むあらゆる暫定措置を検討するよう申入れ、平成元年1月、硫黄島を暫定的に使用することについて、米国と基本合意をした。 その後、平成3年8月、硫黄島においてはじめてのFCLPが行われ、平成5年3月末に硫黄島にFCLPに必要な施設を完成させ、同年9月以降は、硫黄島において本格的にFCLPが行われるようになった。その結果、硫黄島における天候不良時の代替として使用される以外には、原則として厚木基地においてFCLPは行われないこととなった。また、「再編実施のための日米のロードマップ」においては、恒常的なFCLP施設につ いて検討を行うための日米二国間の枠組みを設け、恒常的な施設を平成21年7月又はその後のできるだけ早い時期に選定することが目標とされた。 平成3年以降のNLPの訓練の状況の推移は次のとおりである。 平成3年から平成5年までは、年間 みを設け、恒常的な施設を平成21年7月又はその後のできるだけ早い時期に選定することが目標とされた。 平成3年以降のNLPの訓練の状況の推移は次のとおりである。 平成3年から平成5年までは、年間30日前後、回数にして年間155 0回から1760回のNLPが厚木基地において実施されていたが、平成6年から平成19年までは、年間概ね数日程度で多くとも11日、回数にして年間概ね200回から450回程度で、多くとも620回であった。 平成20年以降は、平成24年に3日間計100回実施されたことを除いて、厚木基地においてNLPが実施されることはなく、硫黄島において概 ね1000回以上のNLPが実施されていた。なお、平成19年頃におけるNLPが硫黄島で実施された割合は、概ね95%である。 また、FCLPについては、平成23年度から令和3年度までの間、平成24年5月に3日間、平成29年9月に4日間それぞれ実施された以外には、厚木基地においては実施されていない。これらのFCLPの実施の 際には、滑走路北約1kmの住宅地で70dB以上かつ5秒以上継続する騒音がFCLP実施時間帯に、平成24年5月には合計549回、平成29年9月には合計728回それぞれ測定されている。 (乙A4、88、89、乙B39、40、弁論の全趣旨)イ P-1哨戒機の導入 被告は、平成25年3月から、固定翼哨戒機P-3Cの後継機としてICAOの騒音基準値を満たすよう低騒音化設計されたとされるP-1の配備を開始し、平成29年8月29日には第3航空隊で運用していたP-3Cが全てP-1へ移行し、厚木基地においてP-3Cを保有するのは第51航空隊のみとなった(乙A2、14、15、35、37、39、乙B1、弁論の全趣旨)。 ウ消音装置の設置 していたP-3Cが全てP-1へ移行し、厚木基地においてP-3Cを保有するのは第51航空隊のみとなった(乙A2、14、15、35、37、39、乙B1、弁論の全趣旨)。 ウ消音装置の設置被告は、厚木基地における航空機の騒音対策として、消音装置を設置し、稼働させている。自衛隊機については、昭和50年11月に、エンジンに不具合が生じた場合の試運転を実施する建物に建物外へ漏れる音を減じる消音機を設置している。 また、米軍機に関しては、エンジンテストの際の騒音防止のため、昭和55年度から昭和57年度にかけて機体用の消音装置を1 基、平成9年度から平成12年度にかけてエンジン用の消音装置を1基、それぞれ整備した。(弁論の全趣旨) 9 厚木基地の果たす役割等 ⑴ 自衛隊の使用する飛行場としての役割厚木基地は、固定翼哨戒機がオホーツク海、日本海、東シナ海など我が国周辺のいずれの方面の海域にも進出できる位置にある。 厚木基地を離着陸する自衛隊機の大部分は、第4航空群所属のものである。 そして、厚木基地所属の第4航空群は、周辺海域の防衛や海上交通の安全確 保、各国等との安全保障協力等を機動的に実施し得るよう、平素から、哨戒機等によって洋上における情報収集・警戒監視を周辺海域で広域にわたり実施するとともに、即時に各種事態に対応できるような態勢を維持している。 また、厚木基地は、東日本大震災や平成28年熊本地震の際に物資等の輸送の経由地として利用されたほか、第4航空群において行方不明の船舶等の 捜索、患者の輸送、救助活動等を多数行うなど、災害派遣をはじめとした民生協力活動も担っている。(乙A14、42、43、46~49、59、60、62~64、72、弁論の全趣旨)⑵ 米海 の 捜索、患者の輸送、救助活動等を多数行うなど、災害派遣をはじめとした民生協力活動も担っている。(乙A14、42、43、46~49、59、60、62~64、72、弁論の全趣旨)⑵ 米海軍の使用する飛行場としての役割厚木基地に所在する米海軍の主要部隊は、厚木海軍航空施設司令部及び第5空母航空団(同航空団所属の固定翼機は平成30年3月30日までに岩国 飛行場への移駐が完了した。)である。厚木基地は、第7艦隊が配備されている横須賀海軍施設から近距離区域内にある地上の飛行場であるところ、同艦隊は侵略を思いとどまらせ、海上交通路の安全を確保することなどを任務とし、西太平洋からインド洋にかけての約1万3500㎢にわたる海域をその作戦行動範囲としている。そのため、同艦隊が同基地を使用することにより、 我が国及びその周辺におけるプレゼンスが維持され、平和及び安全の維持が図られるほか、防災活動における地方自治体との連携や災害救援に資するなど、同基地は、米海軍にとっても重要な施設である。(甲A1の2、弁論の全趣旨)第2 争点1-1(国賠法2条1項に基づく損害賠償責任の有無)について 1 判断枠組み前記前提事実第1・2⑴のとおり、厚木飛行場は、防衛大臣が設置・管理している飛行場であり、国賠法2条1項にいう「公の営造物」に当たるところ、原告らは、厚木飛行場に離着陸する航空機により生じる騒音等により被害を受けていることをもって、厚木飛行場の設置又は管理に瑕疵があると主張する。 同項にいう営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いている状態、すなわち他人に危害を及ぼす危険性のある状態をいうが、これには営造物が使用目的又は供用目的に沿って利用されることとの関連においてその利 は管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いている状態、すなわち他人に危害を及ぼす危険性のある状態をいうが、これには営造物が使用目的又は供用目的に沿って利用されることとの関連においてその利用者以外の第三者に対して危害を生じさせる危険性がある場合をも含むものと解すべきであり、当該営造物の設置・管理者においてこのような危 険性のある営造物を使用及び利用に供し、その結果第三者に社会生活上受忍すべき限度を超える被害が生じた場合、すなわちその使用及び供用の違法性が肯定される場合には、原則として同項の規定に基づく責任を免れることができないと解すべきである。 そして、営造物の使用及び供用が第三者に対する関係において違法な権利侵害ないし法益侵害となり、営造物の設置・管理者において賠償義務を負うかど うかを判断するに当たっては、侵害行為の態様と侵害の程度、被侵害利益の性質と内容、侵害行為のもつ公共性ないし公益上の必要性の内容と程度等を比較検討するほか、侵害行為の開始とその後の継続の経過及び状況、その間に採られた被害の防止に関する措置の有無及びその内容、効果等の事情をも考慮し、これらを総合的に考察して判断すべきものである(大阪空港最判、厚木基地1 次最判参照)。 2 航空機騒音の曝露状況等原告らは、本件告示コンター図上の75W以上の区域に居住している又は居住していた者であり、同区域における騒音は違法であると主張して損害賠償請求をする。しかし、本件告示コンター図は、前記前提事実第2・3⑴のとおり、 平成15年度及び平成16年度にかけて実施した調査結果及び予測手法に基づく予測結果を用いて作成された平成16年度騒音コンター図を基に作成されたものであり、これが直ちに損害賠償請求期間である平成26年8月以降の同区域における航空 かけて実施した調査結果及び予測手法に基づく予測結果を用いて作成された平成16年度騒音コンター図を基に作成されたものであり、これが直ちに損害賠償請求期間である平成26年8月以降の同区域における航空機騒音の実状を示すものということはできない。そこで、同区域での上記期間における航空機騒音の実状及びこれによって原告らが受けてい るとする被害の実態を検討する必要がある。 この点に関し、被告は、岩国移駐により騒音が相当程度減少した旨を主張するので、ここでは、岩国移駐前と岩国移駐後に分けて検討する。 ⑴ 岩国移駐前ア前記第1・5⑴の被告の設置する航空機騒音自動測定装置の測定データ におけるW値のうち、平成15年度及び平成16年度と本件の損害賠償請求期間を含む平成26年度以降を比較すると、平成29年度まではほぼ横ばいであるが、平成30年度以降は、W値が大きく低下し、平成15年度及び平成16年度とのW値の差は、8~15程度になっている。 また、前記第1・5⑵イのとおり、神奈川県藤沢市内の富士見台小学校及び滝の沢小学校における航空機騒音自動観測装置の測定データによれ ば、平成15年度及び平成16年度におけるW値の実測値と、平成26年度以降の実測のLden値から推計したW値を比較すると、平成29年度まではほぼ横ばいであるが、平成30年度以降は、W値が大きく低下し、平成15年度及び平成16年度とのW値の差は、10~20程度になっている。 なお、上記のW値は、いずれも環境基準方式によるものであるが、W値の推移の比較としては、同じ方式によるW値である以上問題はない。 このように、少なくとも平成29年度までは、平成15年度及び平成16年度のW値と同水準のW値が継続して測定されているといえる。 移の比較としては、同じ方式によるW値である以上問題はない。 このように、少なくとも平成29年度までは、平成15年度及び平成16年度のW値と同水準のW値が継続して測定されているといえる。 イそして、本件告示コンター図における区域ごとに、前記第1・5⑴及び 同⑵ウで認定した航空機騒音自動測定装置の測定データにおける環境基準方式のW値又はLden値を近似的に施設庁方式によるW値に換算した上、本件告示コンター図上のW値(施設庁方式)と比較したものが、別紙20(区域ごとのW値の推移)のグラフであり、平成29年度までは、本件告示コンター図上のW値(施設庁方式)と同程度かそれ以上のW値(施 設庁方式)が測定されているといえる。 なお、同測定データのうち、Lden値については、前記前提事実第2・2⑵で示したLden値とW値(環境基準方式)との関係から、Lden値が62以下の場合には13、62よりも大きく66以下の場合には14、66よりも大きく70以下の場合には15、70よりも大きく73以下の 場合には17を加えて近似的なW値(環境基準方式)に換算している。その上で、W値(環境基準方式。上記のとおりLden値から換算したものを含む。)については、前記前提事実第2・1⑵ア(イ)のとおり、施設庁方式は環境基準方式よりも一般にW値が3~5高くなるのであるから、近似的に環境基準方式に4を加えて本件告示コンター図上のW値(施設庁方式)と比較している。 ウまた、平成15年度及び平成16年度以降、岩国移駐までに厚木基地周辺の騒音状況を大きく変動させるような事情はうかがわれない。 なお、前記第1・8⑷イのとおり、被告は、平成25年3月から低騒音化設計がされたというP-1の配備を開始しているが、これは段階的に行 地周辺の騒音状況を大きく変動させるような事情はうかがわれない。 なお、前記第1・8⑷イのとおり、被告は、平成25年3月から低騒音化設計がされたというP-1の配備を開始しているが、これは段階的に行われ、平成29年8月29日に第3航空隊について完了したにとどまり、 未だにP-3Cの飛行は相当数確認されている(甲A50、56)ほか、自衛隊機の一部の機種について低騒音化が進められたとしても、騒音状況を大きく変動させるものとはいい難い。 エ以上のとおり、本件の損害賠償請求期間のうち、平成26年8月以降、岩国移駐完了時である平成30年3月までは、原告らの居住地における実 勢騒音は、本件告示コンター図上のW値と同程度であったと評価することができる。 オ被告は、岩国移駐の開始時から騒音状況が改善している旨を主張する。 確かに、前記第1・5⑴のとおり、平成29年度からW値がやや減少していることをみてとることができる。しかし、①前記イのとおり、平成2 9年度においても、未だ本件告示コンター図上のW値と同水準のW値が測定されていること、②軍用機は、年間を通じて運航の程度にばらつきがあり、前記第1・5⑵アのとおり、月ごとの騒音発生回数等も相当のばらつきがあるだけでなく、同⑷エのとおり、米海軍空母の横須賀海軍施設への寄港は1年間のうち特定の期間に集中しており、少なくとも1年以上の期 間をもって、W値の減少等が認められるか否かを判断するのが相当であるところ、岩国移駐が行われた平成29年8月から平成30年3月までの8か月間のみでW値の減少等の有無を評価すべきではないこと、③岩国移駐は順次行われ、移駐開始によって直ちに空母艦載機のほとんどが移駐した事実が認められるわけでもないことからすれば、岩国移駐が完了するまで 間のみでW値の減少等の有無を評価すべきではないこと、③岩国移駐は順次行われ、移駐開始によって直ちに空母艦載機のほとんどが移駐した事実が認められるわけでもないことからすれば、岩国移駐が完了するまでは、本件告示コンター図上のW値が原告らの居住地における実勢騒音を示 しているというべきであり、被告の上記主張は採用することができない。 ⑵ 岩国移駐後ア前記⑴アのとおり、平成30年度以降、被告の設置する航空機騒音自動測定装置の測定データにおけるW値(環境基準方式)は大きく低下し、平成15年度及び平成16年度の水準とは大きく異なっている。 また、前記第1・5⑴及び同⑵ウで認定した測定データにおけるW値(ただし、前記⑴イと同様に環境基準方式のW値又はLden値から推計したもの)について、本件告示コンター図上のW値と比較すると、別紙20(区域ごとのW値の推移)のグラフのとおり、平成30年度以降は、ほとんどの地点で5以上低い値となり、多くの測定点で10以上低い値となってい る。 さらに、前記第1・5⑵イ及びウのとおり、厚木基地の周辺自治体の設置する騒音計における平成26年度以降のW値(環境基準方式)やLden値の推移をみても、多くの地点で平成30年度から10程度低下している。 イ前記第1・8⑴のとおり、平成29年8月9日から平成30年3月30日にかけて、厚木基地に所属する米海軍第5空母航空団の固定翼機が岩国飛行場に移駐したところ、移駐の対象には米軍のジェット戦闘機であり、空母艦載機であるFA-18などがある。もともと、厚木基地における航空機の騒音問題については、前記前提事実第1・3のとおり、米海軍の空 母艦載機の離着陸に伴う騒音が特に問題であったところ、空母艦載機が岩国飛行 A-18などがある。もともと、厚木基地における航空機の騒音問題については、前記前提事実第1・3のとおり、米海軍の空 母艦載機の離着陸に伴う騒音が特に問題であったところ、空母艦載機が岩国飛行場に移駐すれば、必然的に空母艦載機の厚木基地での離着陸回数が減少し、これに伴って騒音が軽減すると考えられる。 そして、前記第1・5⑵ア及び同⑷アのとおり、現に、騒音の発生状況をみると、平成30年度以降は、100dB以上のものも含めて、騒音(70dB以上又は100dB以上かつ5秒以上継続するもの)の測定回数が 大きく減少している。同イのとおり、航空機騒音に関する苦情件数が平成30年度以降半数以下にとどまっていることも、苦情につながるような特に大きな騒音が相対的に減少したことを示すものであるといえる。 これらの騒音状況の変化の結果として、前記アで示したとおり、W値(環境基準方式)やLden値は相当程度低下しており、前記第1・7のとお り、令和2年度分布図によれば、本件告示コンター図と比べて、75W以上の区域の範囲は、相当狭まったといえる。 そうすると、岩国移駐によって、本件告示コンター図作成時とは騒音の前提が大きく変わり、実際に騒音の曝露状況にも大きな変化があったというべきであるから、岩国移駐が完了した後においては、本件告示コンター 図上のW値が、原告らの居住地における実勢騒音を示しているということはできない。 ウ以上のとおり、本件の損害賠償請求期間のうち、岩国移駐完了後である平成30年4月以降については、本件告示コンター図を根拠に原告らの居住地における実勢騒音が本件告示コンター図上のW値と同程度であった と評価することはできない。 エもっとも、前記第1・5⑴並びに⑵イ及びウのとおり、令 示コンター図を根拠に原告らの居住地における実勢騒音が本件告示コンター図上のW値と同程度であった と評価することはできない。 エもっとも、前記第1・5⑴並びに⑵イ及びウのとおり、令和2年度分布図の作成のもととなった騒音状況の調査が行われた令和元年度及び令和2年度と比較して、平成30年度以降のW値又はLden値に大きな変動がみられないことからすれば、令和2年度分布図は、平成30年4月以降 の原告らの居住地における実勢騒音を示すものであるといえるから、同月以降の原告らの居住地における実勢騒音は、これにより評価することができる。 なお、原告らは、令和2年度分布図について、そのもととなった報告書(乙B22)に一部誤りがあったにもかかわらず、それを騒音評価等の学識経験を有する者で構成される検討委員会が見落としていたこと、環境基 準方式と施設庁方式の違いについての基本的な理解を欠いていることなどを指摘して、騒音調査と結果の信用性が疑わしく、これらに信用性が認められないと主張する。しかし、同報告書の誤りについてはその後訂正がされている(乙B22、34)上、同検討委員会の検討対象には上記誤りに係る個々のデータの確認が含まれていない(乙B34)以上、同検討委 員会の検討が不十分ということはできず、証人Aも本件告示コンター図を作成した時と同じやり方が継承されている旨を証言するなど、調査等の方法に問題があったとはいえない。また、原告らが環境基準方式と施設庁方式の違いについての基本的な理解を欠いているとする同報告書の部分は、W値の予測計算のプロセスの妥当性を検証する部分にすぎず(乙B34)、 調査の結果に直接影響を及ぼす部分ではなく、証人Aがそのプロセスについて特段問題視していないことからすれば、同報告 分は、W値の予測計算のプロセスの妥当性を検証する部分にすぎず(乙B34)、 調査の結果に直接影響を及ぼす部分ではなく、証人Aがそのプロセスについて特段問題視していないことからすれば、同報告書の信用性を左右するものとはいえず、令和2年度分布図が信用できないということはできない。 ⑶ 小括平成26年8月から平成30年3月までの原告らの居住地における実勢騒 音は、本件告示コンター図上のW値と同等程度であるということができる。 また、同年4月以降の原告らの居住地における実勢騒音は、令和2年度分布図上のW値と同等程度であるということができる。なお、岩国移駐の完了は同年3月30日であるが、本件では原告らが基本的に月単位で損害賠償請求をしていることも踏まえ、同月末日をもって期間を区切るのが相当である。 この他に原告らの居住地における実勢騒音を認めるに足る証拠は見当たらない。 ⑷ 原告らの主張についてア原告らは、最高音や騒音の発生回数は岩国移駐後も顕著な変化はなく、W値が低下したのは100dBを超えるような巨大音の回数が減ったことによるとみられるとし、岩国移駐後においても、岩国移駐前と変わらない 程度の騒音の被害を受けていると主張する。 しかしながら、前記第1・5⑵のとおり、騒音の測定回数は平成30年度以降明らかに低下しており、騒音の発生回数に顕著な変化はないとの原告らの主張はその前提を欠く。また、最高音や騒音の発生回数を比較しても、原告らの居住地における騒音の総曝露量を比較することにはならず、 岩国移駐前後の騒音の曝露状況の比較には適切ではない。一方で、前記前提事実第2・1⑵ア及びイのとおり、W値やLden値が一定期間に発生した総騒音量の時間平均をもとにした指標であり、原告らの居住地におけ 移駐前後の騒音の曝露状況の比較には適切ではない。一方で、前記前提事実第2・1⑵ア及びイのとおり、W値やLden値が一定期間に発生した総騒音量の時間平均をもとにした指標であり、原告らの居住地における騒音の総曝露量を反映するものといえるから、これらを基準に岩国移駐前後の騒音曝露状況の変化を比較するのが適切であるといえる。 したがって、原告らの上記主張は採用することができない。 イまた、原告らは、各騒音測定データは、70dB以上かつ5秒以上継続した騒音の測定に限られているところ、岩国移駐後に、管制実績が自治体の測定結果と比較して同程度に減少していないこと、原告らがうるさいと感じた航空機騒音を記録した爆音日誌(甲E5の1・2・4)、現地進行協 議期日の結果からすれば、70dB未満又は5秒未満の騒音は、岩国移駐後も多数発生している旨を主張する。 しかし、岩国移駐後に70dB未満又は5秒未満の騒音が実際にどの程度発生し、それがW値又はLden値にどの程度の影響を及ぼすかについて、前記の認定判断と異なる具体的な主張立証はない。そうである以上、 前記⑵で説示したとおり、証拠上判明する各種データの比較により、騒音曝露状況の変化を判断せざるを得ず、原告らの上記主張は採用することができない。 ウさらに、原告らは、長年航空機騒音が続いていたことからすれば、仮に岩国移駐後に騒音が減少しているとしても、一時的なものにすぎないと主張する。 しかし、前記⑵イで説示したとおり、特に問題となっていた米海軍の空母艦載機の固定翼機の岩国移駐の時期と一致してW値等が減少しているのであり、岩国移駐がこのW値の減少の主たる理由であると考えるのが自然であるところ、岩国移駐が一時的な事象ではない以上、一時的な理由による騒音の減少というこ 移駐の時期と一致してW値等が減少しているのであり、岩国移駐がこのW値の減少の主たる理由であると考えるのが自然であるところ、岩国移駐が一時的な事象ではない以上、一時的な理由による騒音の減少ということはできない。また、前記第1・5⑴及び⑵のとお り、岩国移駐前よりも5ないし10程度小さいW値又はLden値の傾向は、岩国移駐完了後である平成31(令和元)年度以降数年にわたって継続しており、この点からも一時的な現象ということはできない。さらに、前記第1・5⑷エのとおり、空母艦載機の厚木基地の離着陸回数に大きな影響を及ぼすと考えられる米海軍空母の横須賀海軍施設への寄港状況が、 岩国移駐前後で大きく変化していないにもかかわらずW値が減少していることも、W値の減少が一時的な要因によるものではないということを示しているといえる。したがって、原告らの上記主張は採用することができない。 ⑸ 被告の主張について 被告は、本件告示コンター図は、被告による政策的補償措置の実施基準として周辺対策を実施する区域を画するために設定されたもので、施設庁方式が採用されているほか各種の補正が行われたものであり、実勢騒音を示したものではないと主張する。 本件告示コンター図のもととなった平成16年度騒音コンター図は、施設 庁方式により作成されたものであって、環境基準方式とは異なるものの、施設庁方式は、前記前提事実第2・1⑵ア(イ)のとおり、防衛施設周辺における各種の補償措置の実施基準を定めるために、自衛隊機等の利用する空港で環境基準方式によるW値を求めてもICAO提案の方法による値と大きく異なることや防衛施設である空港の周辺住民の航空機騒音に対する住民反応が民間空港周辺住民のそれと異なることを考慮して考案されたものである。 式によるW値を求めてもICAO提案の方法による値と大きく異なることや防衛施設である空港の周辺住民の航空機騒音に対する住民反応が民間空港周辺住民のそれと異なることを考慮して考案されたものである。 そうすると、防衛施設である厚木基地周辺の航空機騒音について、その住民に対する悪影響の程度を適切に評価するためには、施設庁方式によってW値を求めることが必要で、それこそが被告のいうところの実勢騒音を示したものであるというべきであり、環境基準方式によるW値ではむしろ住民反応を無視した結果になり、不適切であるといわざるを得ない。 また、本件告示コンター図上の第一種区域の境界線等は、騒音コンターに補正をしたものであるが、前記前提事実第2・3⑴イのとおり、この補正の内容は、騒音コンターに沿って存在する街区、道路、河川等の位置に即して最小限の修正をするというものであるから、騒音コンターと本件告示コンター図上の境界線等は、概ね一致するものと認められる。そして、厚木基地を 離着陸する航空機による周辺住民の騒音被害は、厚木基地からの距離等に応じて連続的に減衰していくものであり、騒音の大きさを画する騒音コンターを引くことができるとしても、その両側で騒音が断続的に減衰するものではないことに加え、本件における違法性判断は、原告らの個別的な事情を直接考慮することなく、第一種区域線等によって画された一定の区域内に居住す ることで受ける騒音被害の程度を考慮して行うもので、当該区域での居住という実態に着目するものであることからすれば、騒音にさらされる地域の街区、道路、河川等といった生活圏等を区分し得る地理的状況に即して最小限の修正を行った本件告示コンター図上の境界線の方が、騒音コンターよりも実態に即した合理的な区分であるということができる。 区、道路、河川等といった生活圏等を区分し得る地理的状況に即して最小限の修正を行った本件告示コンター図上の境界線の方が、騒音コンターよりも実態に即した合理的な区分であるということができる。 したがって、損害賠償請求期間のうち平成30年3月までについては、原告らは、本件告示コンター図に引かれた境界線に従ったレベルの騒音に曝露されているものと認めるのが相当であり、被告の上記主張は、採用することはできない。 ⑹ 令和2年度分布図におけるW値を画する線上の住所地に居住する原告らの居住地のW値の認定について 原告らの中には、令和2年度分布図におけるW値を画する線上の住所地に居住している者(令和2年度分布図におけるW値を画する線をまたがる同一住所地上に複数の建物が存在しているにもかかわらず、いずれの建物に居住しているか不明な者も含む。)がいる。 本件告示コンター図上の境界線の設定に当たっては、前記前提事実第2・3 ⑴イのとおり、騒音コンターに沿って存在する街区、道路、河川等の位置に即した最小限の修正が施されており、騒音コンターをまたがる住所地は予定されていなかったといえる。そして、被告の主張によれば、同境界線は、街区等に即して騒音コンターよりも外側方向に修正されて引かれたというのであるから、少なくとも、令和2年度分布図におけるW値を画する線上の住所地につ いては、大きい方のW値に相当するレベルの騒音に曝露されていると認めるのが相当である。W値を画する線をまたがる住所地について、このような区分として扱う方が合理的であることは前記⑸で説示したとおりである。 3 原告らの被害について⑴ 原告らの主張する共通被害について ア原告らは、航空機による騒音被害の性質上、騒音に曝露される全員が等しく被 ることは前記⑸で説示したとおりである。 3 原告らの被害について⑴ 原告らの主張する共通被害について ア原告らは、航空機による騒音被害の性質上、騒音に曝露される全員が等しく被っていると認められる程度の被害があり、原告らに生じる被害のうち、原告全員に同一に存在が認められるものや具体的内容に差異があっても原告らにとっておよそ同一と認められる性質・程度の被害を全員に共通する損害として捉えて、一律に最低限の賠償を求めている。 これに対し、被告は、原告らには、最小限度で共通する被害が原告らに等しく生じていることの主張立証責任があり、原告ら各人が被ったとする生活妨害等の被害について、共通被害としての性質、程度を明らかにし、どのような部分ないし範囲において共通損害として主張する趣旨であるのかを明確にし、社会生活上耐え難い程度の障害が生じていることを客観的な証拠をもって明らかにしなければならないと主張する。 イ原告らは、各自の被っている被害について、それぞれ固有の権利として損害賠償を請求しているのであるから、各原告についてそれぞれ被害の発生とその内容が確定されなければならない。 もっとも、原告らは、各自が受けた具体的被害の全部について賠償を求めるのではなく、各自が受けた具体的被害の中には厚木基地を離着陸する 航空機の騒音によって周辺住民である原告ら全員が最小限度この程度までは等しく被っていると認められるものがあり、本件においては、このような被害について、原告らのそれぞれが、その限度で慰謝料としてその賠償を求めているのであり、これは、原告らの身体に対する被害、睡眠妨害、静穏な日常生活の営みに対する妨害等の被害及びこれに伴う精神的苦痛を 一定の限度で原告らに共通するものとしてとらえ、 その賠償を求めているのであり、これは、原告らの身体に対する被害、睡眠妨害、静穏な日常生活の営みに対する妨害等の被害及びこれに伴う精神的苦痛を 一定の限度で原告らに共通するものとしてとらえ、その賠償を請求するものと理解することができる。 このような被害についても、原告ら各自の生活条件、身体的条件等の相違に応じてその内容及び程度を異にし得るものではあるが、他方、そこには、全員について同一に存在が認められるものや、また、例えば生活妨害 の場合についていえば、その具体的内容において若干の差異はあっても、静穏な日常生活の享受が妨げられるという点においては同様であって、これに伴う精神的苦痛の性質及び程度について差異がないと認められるものも存在し得るのであり、このような観点から同一と認められる性質・程度の被害を、原告らを含む周辺住民に共通する損害として捉えて、これを主 張立証することによって、原告らが一律にその賠償を求めることも許されないではないというべきである(大阪空港最判参照)。 また、厚木飛行場周辺の航空機騒音がどのような被害を生じさせるのかという違法性に係る判断に際し、原告らのうち少なくない者が被った個別の被害を広く考慮することは許容され、その場合の判断において、一部の者に生じた損害が原告らのどの範囲にまで生じたものであるか、あるいは 現に他の原告らにも共通に生じると認められる性質のものであるかといった点をあえて個別に問題にする必要はないというべきである。 ウそして、前記第1・2のとおり、WHOガイドラインや夜間騒音ガイドラインは、環境騒音の影響としては、聴力障害、会話妨害、睡眠妨害、生理的機能への影響、作業・学習への影響、社会的影響、行動への影響、不 快感(アノイアンス)など種々のものを挙げ、健康 音ガイドラインは、環境騒音の影響としては、聴力障害、会話妨害、睡眠妨害、生理的機能への影響、作業・学習への影響、社会的影響、行動への影響、不 快感(アノイアンス)など種々のものを挙げ、健康影響が生じる最低レベルとしての騒音限度をもとに等価騒音レベルを指標としたガイドライン値を設定するなどしている。 また、前記前提事実第2・2のとおり、我が国においても、人の健康を保護し生活環境を保全する上で維持することが望ましい航空機騒音に係る 基準として、現行環境基準において、Lden値をもって一定の騒音の水準を設定し、同4⑵イのとおり、生活環境整備法は、一定の騒音の水準(75Wなど)を定めて、住宅防音工事に対する助成等の措置を実施すべき最低基準としている。 これらは、いずれも、航空機騒音やこれを含む環境騒音については、そ の被害の現れ方が人によって一様なものではないにしても、一定の地域における一定の騒音の水準(等価騒音レベルを指標とするものが多い)をもって騒音被害の程度を画することができるという考え方に基づくものであるということができる。このような考え方によれば、一定の水準以上の航空機騒音にさらされている地域においては、そこに居住する住民全員に共 通する被害が生じているということができる。原告らが主張する共通損害は、このような考え方からも、裏付けられているということができる。 エ以下では、原告らが曝露されている航空機騒音等の性質及び程度を踏まえて、原告らが主張する共通被害の存否及び程度について検討する。 ⑵ 原告らに生じている共通被害原告らは、航空機騒音等に起因する被害として、多様な被害を主張すると ころ、前記第1・2⑴で示したWHOガイドラインを参考に①聴力障害や生理的機能への影響等の身体的被害、②睡 ている共通被害原告らは、航空機騒音等に起因する被害として、多様な被害を主張すると ころ、前記第1・2⑴で示したWHOガイドラインを参考に①聴力障害や生理的機能への影響等の身体的被害、②睡眠妨害、③聴取妨害等の生活妨害、④その他の精神的苦痛に分類し、それぞれについて検討する。 ア身体的被害(ア)原告らは、高血圧症、狭心症や心筋梗塞等の虚血性心疾患、不眠症等 を発症し、持病が悪化するなど、航空機騒音により身体的被害が発生していると主張し、これに沿う陳述書を提出し、供述をするほか、53名の原告は、これらの疾病にかかる診断書を提出する。 航空機騒音を理由として疾病が発症し、又は持病が悪化したといえるためには、医学的知見に基づいて、航空機騒音との間に因果関係が存在 することが認められる必要がある。そして、これら原告らの主張する身体的被害については、個別性が高く、その発症に至る機序は、個々人の生活条件や身体的条件等に大きく左右されると考えられるため、個別的な立証を要するというべきである。 しかし、原告らの提出する陳述書や本人尋問の結果のみでは、因果関 係を認めるに足りる医学的根拠があるということはできない。また、原告らから提出された診断書は、上記の因果関係について触れないか、その存在について不明とするか、因果関係がある可能性を指摘するにとどまるものがほとんどであるほか、因果関係を肯定する趣旨の記載があっても、漠然としており、その医学的根拠が示されているとはいい難い。 したがって、航空機騒音によって身体的被害が発生しているとする原告らの主張を採用することはできない。 (イ)もっとも、前記第1・2⑴イ(エ)のとおり、WHOガイドラインによれば、騒音の長期曝露により高感受性群が高血圧や虚血性心疾患などの永 生しているとする原告らの主張を採用することはできない。 (イ)もっとも、前記第1・2⑴イ(エ)のとおり、WHOガイドラインによれば、騒音の長期曝露により高感受性群が高血圧や虚血性心疾患などの永続的影響を発現すると考えられていて、心循環器系への影響が明らかにされているのであるから、航空機騒音によって身体的被害が生じ得 ることは医学的に根拠のないこととはいえない。 したがって、陳述書や本人尋問において身体的被害について言及する原告らは、航空機騒音にさらされ続けることによる健康への影響に対して強い不安を覚えているのであって、それには相応の根拠があるから、これらの不安感を航空機騒音に起因する精神的苦痛の一環として捉える ことは妨げられるべきではない。 (ウ)原告らは、原告らがガイドライン値を超える騒音に曝露されていることから、航空機騒音と身体的被害の因果関係が認められるべきであると主張する。しかし、前記第1・2⑴ウのとおり、ガイドライン値は、対応する健康影響が生じる最低レベルとしての騒音限度をもとに設定され たものであり、このレベル以上の騒音に曝露されれば、通常は当該影響が生じることが医学的に認められているものではない。したがって、原告らの主張は採用することができない。 また、原告らは、因果関係の根拠として、騒音の影響に関する論文等を提出するが、前記(ア)で説示したとおり、その発症に至る機序は、 個々人の生活条件や身体的条件等に大きく左右されると考えられ、一般的に関連性が認められるからといって、個別立証が不要ということはできない。したがって、原告らの主張は採用することができない。 イ睡眠妨害前記第1・4⑴のとおり、原告らのうち、多くの者が航空機騒音により、 寝つきの悪さ、中途覚醒、翌日の眠 できない。したがって、原告らの主張は採用することができない。 イ睡眠妨害前記第1・4⑴のとおり、原告らのうち、多くの者が航空機騒音により、 寝つきの悪さ、中途覚醒、翌日の眠気や疲労感等の睡眠への悪影響を訴えているが、その内容は、同2⑴イ(ウ)及び同⑵イのとおり、WHOガイドライン及び夜間騒音ガイドラインで指摘されている騒音により生じる一次影響及び二次影響等と一致している。 前記第1・2⑴及び⑵のとおり、WHOガイドラインでは、睡眠妨害に関するガイドライン値として、屋外における夜間の等価騒音レベルについ て45dB、屋外における最大の騒音レベルについて60dBが設定され、また、暗騒音のレベルが低い場合、可能な限りLAmaxが45dBを超える騒音を制限すべきであるとされている。さらに、夜間騒音ガイドラインでは、睡眠中の騒音が生物学的に影響を与えることに関する十分な知見があり、心拍数の増大、脳幹の反応、睡眠深度の変化及び覚醒反応といっ た悪影響があることが指摘されるとともに、夜間騒音のガイドライン値として、家屋による遮音量21dBを見込んで、Lnight,outside40dBを提案している。 これらの指標はW値やLden値とは異なるから、前記第1・5で認定した厚木飛行場周辺における騒音の大きさと単純に比較することはでき ない。 しかし、前記第1・5⑵アのとおり、自治体騒音測定データによれば、70dB以上かつ5秒以上継続する騒音が、岩国移駐前は、午後7時から午後10時までの夜間においては、少ない年、地点でも年間250回近く測定され、ほとんどの年、地点では年間500回から1000回以上測定 され、午後10時から翌午前6時までの深夜においては、年及び地点によっては、年間を通じて数回 い年、地点でも年間250回近く測定され、ほとんどの年、地点では年間500回から1000回以上測定 され、午後10時から翌午前6時までの深夜においては、年及び地点によっては、年間を通じて数回にとどまっているが、多くの年、地点で年間十数回以上が測定されている。また、岩国移駐後は、令和2年度分布図上も75W以上の区域にあるNo.1ないし4、6、7の6地点についてみると、午後7時から午後10時までの夜間においては、少ない年、地点でも 年間800回近く測定され、多くの年、地点では年間1000回以上測定され、午後10時から翌午前6時までの深夜においては、少ない年、地点でも年間20回程度測定され、多くの年、地点で年間30回から50回程度以上が測定されている。 この点、前記第1・2⑵アのとおり、夜間騒音ガイドラインが、8時間の睡眠時間帯を確保することが必要であり、固定された8時間では約5 0%の住民の睡眠しか保護できず、80%の住民の睡眠を確保するには10時間の睡眠時間帯が必要であるとしていることも踏まえれば、確保すべき睡眠時間帯といえる午後10時から翌午前6時までの前後の時間を含めて、岩国移駐前後を通じ、70dB以上の最高音が75W以上の区域(平成30年4月以降については、令和2年度分布図上の75W以上の区域。 以下同じ)全般に相当数発生しているというべきである。 そして、前記のとおり、WHOガイドラインにおいて、60dBが睡眠妨害に関するガイドライン値とされ、LAmax45dBを超える騒音を可能な限り制限することが望ましいとされているが、70dBという騒音レベルは、これらを大きく超えるものである。 以上によれば、本件告示コンター図上の75W以上の区域においては、睡眠妨害が生じる程度の航空機騒音にさらされていた れているが、70dBという騒音レベルは、これらを大きく超えるものである。 以上によれば、本件告示コンター図上の75W以上の区域においては、睡眠妨害が生じる程度の航空機騒音にさらされていたと認めるのが相当である。なお、前記第1・4⑴のとおり、原告らの中には、夜勤等のために日中に就寝する必要のある者がいるが、日中の方が夜間よりも騒音の発生が多数であることからすれば、これらの原告らに生じる睡眠妨害の程度 は更に大きいというべきである。 そして、前記第1・2⑵イのとおり、夜間騒音ガイドラインにおいて、睡眠は生物学的に必要であり、睡眠妨害が健康に係わる様々な悪影響と関連していること、睡眠中の騒音が生物学的に影響を与えることについての十分な知見があること、夜間騒音曝露が、不眠症の原因となることを示す 十分な知見があること、騒音による睡眠妨害が健康及び生活満足度にさらなる悪影響を引き起こすことなどを指摘していることを踏まえれば、騒音に起因する睡眠妨害は、人にとって不可欠な休息である睡眠それ自体に対する悪影響を及ぼすにとどまらず、健康及び生活の質に対する悪影響や健康に対する不安を引き起こすものであり、原告らの多くが受けている睡眠妨害の被害の程度は深刻なものというべきである。 ウ生活妨害(ア)聴取妨害前記第1・4⑵アのとおり、原告らのほとんどが、航空機騒音によって会話の声や、テレビなどの音声がかき消されるなどの聴取妨害を受けている。 確かに、航空機騒音は間欠的であり、その継続時間は、必ずしも長くなく、一過性のものであるため、聴取妨害についても時間にすれば短時間の影響であることが多いと考えられる。 しかしながら、聴取が妨害される対象やその内容によっては、その聴取を逸したことにより、後に聞き く、一過性のものであるため、聴取妨害についても時間にすれば短時間の影響であることが多いと考えられる。 しかしながら、聴取が妨害される対象やその内容によっては、その聴取を逸したことにより、後に聞き返したりすることが無意味であったり、 聞き返すことが状況的に困難になることも想定され、支障が生じ得るし、円滑なコミュニケーションがとれなくなること自体による不利益も想定できる。また、軍用機の騒音は、事前にその発生を予期することが難しいから、突然聴取を妨害されることによる精神的負担も大きいといえる。さらに、ヘリコプターによる騒音など、騒音が一定時間継続する場 合や、航空機が連続して飛来した際などには、その妨害の程度も大きくなり、それに伴う精神的負担も大きくなるといえる。 したがって、原告らのほとんどが受けている聴取妨害の被害は決して小さいものとはいえない。 (イ)精神的作業の妨害 前記第1・4⑵イのとおり、原告らのほとんどが、仕事や学習、読書等の趣味の活動中に、航空機騒音によって、その集中力をそがれたりするなどして、これらの精神的作業を妨害されている。 精神的作業の妨害の程度は、前記(ア)と同様、時間にすれば短時間の影響であることが多いと考えられる。 しかしながら、特に集中することが求められる精神的作業においては、 集中力が一度途切れると、再度集中するために相当な労力を要し、集中できないことでミスが発生するおそれが大きくなるなど、その精神的負担は大きいといえる。また、軍用機騒音は、事前にその発生を予期することが難しいから、突然作業を妨害されることによる精神的負担も大きいといえる。さらに、騒音が一定時間継続したり、たびたび騒音が発生 したりすれば、作業の妨害の程度が大きくなり、精神的負 期することが難しいから、突然作業を妨害されることによる精神的負担も大きいといえる。さらに、騒音が一定時間継続したり、たびたび騒音が発生 したりすれば、作業の妨害の程度が大きくなり、精神的負担が大きくなるだけでなく、そのような作業を行う意欲すら失われる可能性もあるといえる。 したがって、原告らのほとんどが受けている精神的作業の妨害に関する被害は決して小さいものとはいえない。 エその他の精神的苦痛(ア)アノイアンス前記第1・4⑶アのとおり、原告らのほとんどが航空機騒音によりいら立ちや不快感を感じている。 このようなアノイアンスについては、前記第1・2⑴イのとおり、W HOガイドラインがアノイアンスを騒音の特異的健康影響に掲げていることも踏まえれば、単なる主観的な感情にとどまらず、比較的深刻な被害感であり、れっきとした精神的苦痛を生じさせるものであるというべきであり、その被害も小さいものとはいい難い。 (イ)健康被害等に対する不安 前記第1・4⑶イのとおり、原告らの多くの者が航空機騒音により、自身の健康に悪影響が生じることに対する不安感を抱いている。 前記アで説示したとおり、航空機騒音にさらされ続けることによる健康への影響に対する不安感は航空機騒音に起因する精神的苦痛の一環として捉えることができる。 75Wという水準は、前記前提事実第2・2⑵のとおり、現行環境基 準において、人の健康を保護し生活環境を保全する上で維持されることが望ましいとされる基準値に匹敵するレベルの騒音曝露量であるから、75W以上の騒音にさらされている周辺住民については、将来的に健康影響が生じるとの懸念を生じ、それ自体に精神的苦痛を感じるのも理由があるというべきである。 ま ベルの騒音曝露量であるから、75W以上の騒音にさらされている周辺住民については、将来的に健康影響が生じるとの懸念を生じ、それ自体に精神的苦痛を感じるのも理由があるというべきである。 また、原告らの中に子供の発育等に対する不安を抱いている者も少なからず認められる。前記第1・2⑴アのとおり、乳児や小児は、高感受性群に含まれ、航空機騒音に対する反応が一般に高いと認められ、また、子供は義務教育を受けるなど精神的作業である学習の機会が多く、その学習の充実度が発育に影響し得る。これらによれば、周囲の大人が子供 について航空機騒音により心身に影響を受けるなどして健全に発育できないのではないかという不安感を覚えることにも相応の根拠があるというべきである。したがって、周囲の子供の発育に関する不安も航空機騒音に起因する精神的苦痛のひとつであるというべきである。 以上のとおり、原告らの多くが受けている健康被害や子供の発育等に 対する不安感に関する被害は決して小さいものとはいえない。 (ウ)航空機事故に対する不安前記第1・4⑶ウのとおり、原告らの多くの者が、厚木基地周辺を飛行する航空機の墜落や不時着、航空機からの落下物により自己の生命・身体・財産に危害が及ぶことに対する不安感を抱いている。 前記第1・6⑵のとおり、神奈川県内では、昭和27年4月から平成26年1月までに軍用機に関わる事故が多数発生し、墜落事故も63件発生していて、そのうち乗員や周辺住民が死亡する事故も複数回発生しており、近時においても部品の落下等の事故が発生している。また、同⑴のとおり、軍用機については、民間機と比べて、事故の発生率が極めて高く、クラスAといわれる重大事故の発生率については、オスプレイ も含めて軍用機は高い(な 落下等の事故が発生している。また、同⑴のとおり、軍用機については、民間機と比べて、事故の発生率が極めて高く、クラスAといわれる重大事故の発生率については、オスプレイ も含めて軍用機は高い(なお、IATAによる民間機の事故率は、100万フライト当たりであるのに対し、米海軍等の事故率は10万飛行時間当たりであるが、民間機の1フライト当たりの飛行時間を極端に短く0.1時間であると仮定して双方の分母を揃えても、軍用機の事故率が極めて高いことは明らかである。)。 そして、これらの事故については、各種報道機関等によって報道されており、原告ら厚木基地周辺住民はこれをよく知り得る立場にある。また、実際に過去に事故が多数発生し、かつ、現在も軍用機が頻繁に離着陸する厚木基地周辺に居住する住民らは、他の地域に居住する住民らと比べて航空機事故に巻き込まれる危険性は高いというべきである。 このような立場にある原告らを含む厚木基地周辺住民が、航空機事故の不安を感じるのはもっともであり、これを単なる抽象的な不安であると評価することはできない。そして、この不安は、間近に軍用機を見たり、あるいはその騒音を聞いたりすることにより、事故の危険を感じさせ、過去の事故を想起させられることで掻き立てられる性質のものであ るといえるから、航空機騒音に関連する精神的苦痛のひとつとして評価すべきである。 部品の落下等の事故を含め、ひとたび軍用機事故に巻き込まれれば、自身の生命・身体・財産に重大な危害が及ぶことは明らかであるから、このような航空機事故に対する不安に係る原告らの被害は小さいものと はいい難い。 (エ)交通事故に対する不安前記第1・4⑶エのとおり、原告らの多くの者が航空機騒音により、 ら、このような航空機事故に対する不安に係る原告らの被害は小さいものと はいい難い。 (エ)交通事故に対する不安前記第1・4⑶エのとおり、原告らの多くの者が航空機騒音により、自動車等の走行音や警報音等が聞こえなくなることで、交通事故の危険が高まるのではないかという不安感を抱いている。 前記第1・5⑵のとおり、岩国移駐前後を通じて多くの地点で100 dB以上、地点によっては110dB以上の航空機の最高音が発生することもあることからすれば、実際に航空機騒音により、警報音や周囲の自動車の走行音等の聴取が妨げられるとの不安にも合理的な根拠があるというべきであり、航空機騒音に関連する精神的苦痛のひとつとして評価すべきである。 オ低周波音による被害について(ア)原告らは、原告らの多くが低周波音特有の被害を訴えているところ、各低周波音の測定結果によれば、参照値、「気になる-気にならない曲線」や「圧迫感・振動感の閾値曲線」の各評価値を超える高レベルの低周波音が測定されていることから、原告らは高レベルの低周波音にさらされ ていることによる被害を受けていると主張する。 (イ)前記第1・5⑶のとおり、原告らの行った低周波音の各測定結果によれば、厚木基地を離着陸する航空機から、上記の参照値や各評価値を超える低周波音が発生していることは明らかである。 もっとも、原告らの行った低周波音の測定をみると、損害賠償請求期 間内における測定実施日は6日で、測定地点は8か所に限られ、そのうち、1日しか測定していない測定地点は6か所である。このように、低周波音の測定は、回数や測定地点が限定的なものであり、この測定結果から、厚木基地周辺の75W以上の区域において、広くこれらの測定結果と同様の低周波音に曝露されてい 地点は6か所である。このように、低周波音の測定は、回数や測定地点が限定的なものであり、この測定結果から、厚木基地周辺の75W以上の区域において、広くこれらの測定結果と同様の低周波音に曝露されているということは困難である。 (ウ)この点を措いても、確かに、前記第1・4⑷のとおり、原告らのうち一定の者が、ヘリコプターなどの航空機の飛行に伴って、振動感や圧迫感を感じているところ、同3⑵ウのとおり、これらは、低周波音の苦情として、一般に挙げられているものではある。しかし、同イのとおり、低周波音による人間に対する生理的な影響の有無については、その評価指標を含めて科学的な知見が定まっている状況にはない。 また、同エのとおり、低周波音手引書は、苦情が発生した際に、参照値と測定値を比較することで当該苦情が低周波音に起因するか否かのひとつの判断要素としようとするものであるが、参照値は、低周波音についての環境アセスメントの環境保全目標値、作業環境のガイドラインなどとして定められたものではない上、航空機を含む交通機関等の移動音 源からの低周波音苦情には適用しないものとされているほか、大部分の被験者が許容できる音圧レベルとして設定されたものである(甲C17、25、乙C14)。そうすると、そもそも航空機騒音のような移動する発生源について、上記参照値を用いることは適切ではない上、これを超える低周波音が測定されているとしても、直ちに原告らの訴える被害が低 周波音に起因するものと評価できるともいい難い。 さらに、「気になる-気にならない曲線」の評価値や「圧迫感・振動感の閾値曲線」の評価値は、被験者に対して固定発生源からの試験音を聞かせた実験の結果に基づく分析として学術的価値があることは否定できないとしても、低周波音を原因とする 曲線」の評価値や「圧迫感・振動感の閾値曲線」の評価値は、被験者に対して固定発生源からの試験音を聞かせた実験の結果に基づく分析として学術的価値があることは否定できないとしても、低周波音を原因とする心身への影響について、その機序 や低周波音の程度との関係を航空機騒音のような移動する発生源を含めて一般的に解明した基準として確立、定着したものであるとまではいえない。これらの評価値を用いて低周波音に関わる問題が解決された事例があったとしても、上記判断を左右するものとはいえない。 (エ)さらに、前記(イ)で説示したとおり、厚木飛行場周辺での低周波音 の測定結果は限定的なものである。そして、前記第1・3⑵ウのとおり、低周波音は高い周波数の音と比べて地表面吸収及び空気吸収が極めて小さいことを考慮しても、陳述書で低周波音による被害を受けていると訴える原告らが実際にどの程度の低周波音に曝露されているかが立証されているとはいえず、参照値及び評価値と比較するなどして、当該原告らの訴える被害が低周波音に起因するか否かを判断することはできず、原 告ら全体(あるいは特定の区域に分類された原告ら)が広く低周波音による被害を受けていると評価することはできない。 その他、低周波音に係る規制の基準やガイドライン値等が定められる状況にもないことも考慮すると、上記の参照値や評価値との比較をもって、厚木基地周辺において、広く低周波音による被害が発生していると いうことはできず、低周波音による被害を特に取り上げて検討することはできない。 (オ)もっとも、前記第1・2⑴のとおり、WHOガイドラインにおいては、低周波音が含まれる騒音の場合には、より強い住民反応が報告され、より低いレベルのガイドライン値が望ましいことや、低周波騒音の場合に は低い 第1・2⑴のとおり、WHOガイドラインにおいては、低周波音が含まれる騒音の場合には、より強い住民反応が報告され、より低いレベルのガイドライン値が望ましいことや、低周波騒音の場合に は低い音圧レベルでも睡眠を妨害する可能性があることなどが指摘されているところ、前記(イ)のとおり、厚木基地を離着陸する航空機からは高いレベルの低周波音が発せられているといえるなど、厚木基地の周辺住民に低周波音による生理的な影響がないとも言い切れない状況にある。また、原告らによる測定結果によれば、少なくとも測定点付近にお いては、相当量の低周波音が生じているところ、他の航空機騒音とは異なる圧迫感や振動感といった独特の被害を訴える原告らがいる。これらの事情も考慮すれば、原告らが低周波音に起因すると主張する被害についても、広い意味では航空機騒音に起因するものということができるから、航空機騒音により現れる被害の一環として、受忍限度を判断する上 で考慮すべきであるといえる。 カ振動・排気ガスの被害について原告らは、航空機による家屋の振動、排気ガスによる洗濯物の汚損等の被害を受けている旨を主張する。 しかしながら、原告らの主張によっても、いかなる範囲の原告らに具体的にどのような被害が生じているかは不明である。 そうすると、厚木基地を離着陸する航空機による被害として、振動や排気ガスの影響を広く周辺住民が受けているとは認めることができず、受忍限度の判断の際にこれを考慮することはできない。 キ小括以上のとおり、原告らは、その生活の本拠である住居地において、睡眠 妨害、聴取妨害及び精神的作業の妨害を含む生活妨害、アノイアンスや健康被害、航空機事故、交通事故に対する不安といった精神的苦痛を受けている。これらは その生活の本拠である住居地において、睡眠 妨害、聴取妨害及び精神的作業の妨害を含む生活妨害、アノイアンスや健康被害、航空機事故、交通事故に対する不安といった精神的苦痛を受けている。これらは、厚木基地を離着陸する航空機から発せられる騒音に起因するものであるということができ、原告らそれぞれの生活状況や身体状況等に応じて様々な現れ方をするものであるが、日常的にこれらの被害を受 けることで、各種被害が相互に関連して有機的に結びついて、その生活の質を全体として損なわせているというべきである。 そして、これらの被害の程度は、高感受性群に属するか否かや個々人の感受性の程度に左右されるものではあるが、一般により多くの騒音にさらされるほど、すなわち、その居住地のW値が高いほど、大きくなるものと いえることは明らかである。 ⑶ 被告の主張について被告は、航空機騒音が人の身体又は精神面に影響を及ぼすことは一般的に否定されていると主張して、関連する証拠(乙C20~43)を提出するが、いずれも上記の平成7年までの知見に基づくWHOガイドラインよ りも前の文献であるか、同ガイドラインに示された知見と必ずしも矛盾しないものがほとんどであり、上記で認定した知見を否定するものとまではいえない。 4 違法性の判断前記第1で認定し、また、前記2及び3で検討を加えた事実を踏まえ、前記1で示した判断枠組みに沿って、厚木飛行場の使用及び供用が周辺住民に対す る違法な権利侵害ないし法益侵害となり、その設置・管理をする被告において損害賠償責任を負うかどうかを判断する。 ⑴ 侵害行為の態様と侵害の程度、被侵害利益の性質と内容、侵害行為の持つ公共性ないし公益上の必要性の内容と程度等の比較検討ア被告による侵害行為の態様は、厚木基地周 うかどうかを判断する。 ⑴ 侵害行為の態様と侵害の程度、被侵害利益の性質と内容、侵害行為の持つ公共性ないし公益上の必要性の内容と程度等の比較検討ア被告による侵害行為の態様は、厚木基地周辺に居住する原告らを含む住 民に対して、厚木飛行場の使用及び供用により、これを離着陸する航空機の騒音を曝露させるというものである。航空機騒音は、その性質上、上空から広範囲に影響を及ぼすものであり、その程度によっては、極めて多数人に被害を生じさせ得るものである。 そして、前記2で検討したとおり、原告らが損害賠償を求める平成26 年8月以降、岩国移駐完了前の平成30年3月までは、本件告示コンター図上の75W以上の区域に居住する原告らは、75W以上の航空機騒音にさらされていたといえる。また、岩国移駐完了後である同年4月以降は、令和2年度分布図上の75W以上の区域に居住する原告らについては、75W以上の航空機騒音にさらされていたといえるものの、令和2年度分布 図において75W以上の区域外に居住する原告らについては、同程度以上の航空機騒音にさらされていたということはできず、ほかに同原告らの騒音曝露状況を認定するに足る証拠はない。 前記第1・2⑴ウのとおり、WHOガイドラインは、昼間と夕方の16時間の等価騒音レベル(LAeq)を指標として、居住地域(屋外)にお いて高度に不快という影響が生じる最低レベルとしての騒音限度をもとに55dB、少し不快という影響が生じる最低レベルとしての騒音限度をもとに50dBというガイドライン値を設定している。また、同⑷のとおり、平成30年ガイドラインは、Ldenを指標として、45dB以上の騒音は健康への悪影響に関連するとして、これ未満にするよう強く勧告している。これらは、航空 ライン値を設定している。また、同⑷のとおり、平成30年ガイドラインは、Ldenを指標として、45dB以上の騒音は健康への悪影響に関連するとして、これ未満にするよう強く勧告している。これらは、航空機騒音に特化して各種補正等を施すW値とは異なる指 標であるが、前記前提事実第2・2⑵で示したLdenの推計値とW値との関係からすれば、75Wという水準は、上記の各ガイドライン値と比較して、相当に高い水準の騒音であるということができる。さらに、前記前提事実第2・2⑵及び同4⑵のとおり、現行環境基準は、航空機騒音に係る環境基準を、地域類型Ⅰ(専ら住居の用に供される地域)についてLd en57dB、地域類型Ⅱ(それ以外の地域)についてLden62dBと定めていること、生活環境整備法及びその関連法令が75WないしLden62dBという水準をもって住宅防音工事を行う最低の基準と定めており、かつ、この水準は長年にわたって変更されていないものであることなどに照らしても、75W以上の航空機騒音は相当に高い水準のものであ るというべきであるから、75W以上の騒音にさらされる周辺住民の受ける被害の程度はかなり大きいというべきである。 イそして、原告らの受ける被害の性質及び内容は、①睡眠妨害、②聴取妨害及び精神的作業の妨害を含む生活妨害、③アノイアンスや健康被害、航空機事故、交通事故に対する不安といった精神的苦痛を中心とするもので あり、75W以上の騒音にさらされる周辺住民は、これらの被害の全部又は一部を共通して被っているといえる。 これらの被害のうち、睡眠妨害は、前記第1・2⑵のとおり、健康被害に直接結び付き得るもので、深刻な被害であるといえる。また、これらの被害はそれぞれ単体での被害にとどまるものではなく、相互に有機 これらの被害のうち、睡眠妨害は、前記第1・2⑵のとおり、健康被害に直接結び付き得るもので、深刻な被害であるといえる。また、これらの被害はそれぞれ単体での被害にとどまるものではなく、相互に有機的に関 連し、影響しあうことで、単体で被害を受ける場合よりも大きく、生活の質を全体として損なわせるものであるというべきである。 これらの被害は、生命又は身体に対する直接の侵害とまではいえないものの、睡眠を含めた、人として当然に享受すべき平穏な生活を害されている点で、健康又は生活環境に関わる重要な法的利益に対する侵害というべきであり、原告らを含む厚木基地周辺の住民らの受けている被害は、当然 に受忍すべき軽度な被害であるとはいえない。 そして、厚木基地周辺の75W以上の区域に居住していたことのある原告らは、岩国移駐完了前において約8700名、岩国移駐完了後においても3400名以上いること、原告らの居住する厚木基地周辺の8市(神奈川県綾瀬市、同海老名市、同相模原市、同座間市、同茅ヶ崎市、同藤沢市、 同大和市及び東京都町田市)の令和5年11月1日時点の人口が、約240万人であり(公知の事実)、厚木基地周辺は、都市化が進んでいて、原告ら以外にも多数の周辺住民がいることに照らせば、被害を受けている住民の数は極めて多数に上るといえる。 ウ一方、本件における侵害行為である厚木飛行場における自衛隊機及び米 軍機の運航の持つ公共性ないし公益上の必要性の内容と程度等をみると、前記第1・9のとおり、厚木基地は、海上自衛隊の飛行場としても、米海軍が我が国において使用する飛行場としても、極めて重要な位置付けを与えられており、厚木飛行場を離着陸する自衛隊機及び米軍機の運航活動は、我が国の安全にも、極東における国際の平和と安全の維持にも資 海軍が我が国において使用する飛行場としても、極めて重要な位置付けを与えられており、厚木飛行場を離着陸する自衛隊機及び米軍機の運航活動は、我が国の安全にも、極東における国際の平和と安全の維持にも資するもの であって、国民全体の利益にもつながる公共性を有する。 しかし、厚木飛行場における航空機の離着陸によって原告らを含むその周辺住民が受ける利益は、国民全体が等しく享受する性格を有する上記の公共的利益の範囲にとどまるというべきであり、自衛隊機及び米軍機の発する騒音によって被る被害の増大に必然的にその利益が伴うような彼此相 補の関係が成り立っているとはいえない。このような公共的利益の実現は、原告らを含む厚木基地周辺住民という限られた一部少数者の特別の犠牲の上で成り立っているのであり、その点に看過することのできない不公平が存在しているといえる。 したがって、厚木飛行場における自衛隊機及び米軍機の運航活動は、公共性を有し、その必要性は認められるものの、これによって厚木飛行場の 使用及び供用の違法性が直ちに否定されるものではない。 ⑵ 侵害行為の開始とその後の継続の経過及び状況、その間に採られた被害の防止に関する措置の有無及びその内容、効果等ア前記前提事実第1・3のとおり、厚木基地における航空機騒音は、遅くとも昭和35年頃から既に社会問題化しており、その後昭和46年7月に 厚木飛行場が設置されてから現在に至るまで、特に昭和48年に米海軍の空母艦載機が飛来するようになってからは、厚木飛行場を離着陸する航空機の発する騒音は、継続的に厚木基地周辺住民に前記3で示したような被害を与え続けてきた。 そして、前記前提事実第3のとおり、この間、昭和51年9月、昭和5 9年10月、平成9年12月、平成19年12月の4 は、継続的に厚木基地周辺住民に前記3で示したような被害を与え続けてきた。 そして、前記前提事実第3のとおり、この間、昭和51年9月、昭和5 9年10月、平成9年12月、平成19年12月の4度、厚木基地騒音訴訟が提起され、いずれも厚木飛行場の使用及び供用の違法性を認め、周辺住民による損害賠償請求を一部認容する判決が確定した。直近の4次民事訴訟の事実審の口頭弁論終結日は平成27年5月14日であるところ、これ以降も航空機騒音による被害が継続していることは、前記2及び3で説 示したとおりである。 このように、厚木基地を離着陸する航空機騒音による被害は、4度の違法判断にもかかわらず、相当長期間継続している。 イ前記前提事実第2・4⑵のとおり、被告は、当初は、行政措置として、昭和41年以降は旧周辺整備法に基づき、昭和49年以降は生活環境整備 法に基づき、各種の周辺対策を実施している。 (ア)このうち、住宅防音工事の助成及び学校、病院等における騒音防音工事に対する助成については、これらの防音工事を施すことにより一定の遮音効果が期待できることから、室内における航空機騒音の軽減に資するものであり、防音工事を実施した周辺住民や防音工事の施された学校や病院等を利用する周辺住民に対しては被害への対策として効果がある ものと評価することができる。 そして、前記第1・8⑵アのとおり、住宅防音工事の助成については、昭和50年度から令和4年度までの間に、延べ35万5089世帯に対して実施され、学校、幼稚園及び保育所並びに病院、老人ホーム等の防音工事の助成については、昭和29年度から令和4年度までの間に、合計 627施設に対して実施されており、一定の実績もあるといえる。 もっとも、前記前提事実第2・4⑵イのとおり、住宅 ーム等の防音工事の助成については、昭和29年度から令和4年度までの間に、合計 627施設に対して実施されており、一定の実績もあるといえる。 もっとも、前記前提事実第2・4⑵イのとおり、住宅防音工事について計画防音量が定められており、住宅防音工事仕方書に従って防音工事を実施した場合、計画防音量が達成されることが見込まれているが、実際の工事の効果は、個々の住宅の状況や工事の状況によって必ずしも一様 とはいえず、計画防音量が必ず達成できるとは認められない。現に4次民事訴訟の第一審第40回進行協議期日における測定結果によれば、わずかではあるが計画防音量が達成できていない例があり(乙B8)、限られた測定実績でこのような結果があったことからすれば、計画防音量が達成されない場合が稀であるとはいい難い。また、工事の種類によって は、限られた一部の居室のみに工事が行われ、玄関や廊下、風呂場などが工事の対象とされない場合もあり、そのような場合には、対象となった居室以外では防音効果を得られない。さらに、例えば窓などを開けた際には当然ながら防音効果が薄れることになり、だからといって、航空機騒音に備えて窓や扉など全ての開口部を常時閉め切った生活をするとな れば、通常の生活では感じることのない閉塞感のある生活を強いることになる。このように、住宅防音工事には、被害の防止という観点から自ずと限界がある上、住宅防音工事による設計上の防音効果を得るためには、窓を開けることができないため、気温が高いときには冷房等を利用せざるを得なくなり、電気料金の負担増につながる可能性があるなどの弊害も存在する。 (イ)また、移転措置は、区域外に住居を移転し又は建物を除却することに伴う損失の補償や土地の買入れ等をするものであり、住居の移転等によっ 担増につながる可能性があるなどの弊害も存在する。 (イ)また、移転措置は、区域外に住居を移転し又は建物を除却することに伴う損失の補償や土地の買入れ等をするものであり、住居の移転等によって航空機騒音から逃れられるという面では、航空機騒音による被害を抜本的に解決する措置であるといえる。 しかし、移転措置の対象は第二種区域である本件告示コンター図上の 90W以上の区域に限定されていること、望ましい移転先が容易に見つかるとは限らないこと、移転措置を受けるためには、それまで住んでいた土地を離れなければならず、そのことによる負担を軽視することはできないことを考え併せれば、必ずしも有効な被害の防止措置であるとはいえない。 (ウ)次に、被告は、前記前提事実第2・4⑴並びに前記第1・8⑴及び⑷のとおり、音源対策として、岩国移駐、NLPを含むFCLPの移転、P-1哨戒機の導入、消音装置の設置等を行っている。 確かに、岩国移駐は、前記2で説示したとおり、厚木基地周辺の航空機騒音の状況を相当程度緩和したことが認められ、厚木基地周辺の航空機 騒音を軽減させる効果があったといえる。 NLPを含むFCLPの移転については、夜間の騒音を緩和する効果があったと推認されるものの、前記3⑵イで検討したとおり、依然として、夜間の70dB以上かつ5秒以上継続する騒音も少なくない回数測定されていることなどからすると、その効果は限定的であるというべき である。 その他、P-1哨戒機の導入や消音装置の設置等についても、前記2⑴ウで説示したとおり、P-3C哨戒機が依然として運用されているなど、具体的な騒音被害の軽減に結びついている程度は不明である。 (エ)このほか、被告は、前記前提事実第2・4⑴のとおり、第4航空群所属の自衛隊機につ 、P-3C哨戒機が依然として運用されているなど、具体的な騒音被害の軽減に結びついている程度は不明である。 (エ)このほか、被告は、前記前提事実第2・4⑴のとおり、第4航空群所属の自衛隊機については自主規制、米軍機については騒音規制合意によ り、それぞれ午後10時から翌午前6時までの運航や日曜日の運航に一定の制約を設けるなどしている。しかし、そもそも、いずれの制約も平日日中の騒音の軽減に資する程度は極めて小さいものである。また、例えば自衛隊機については、制限時間を設けているのが訓練飛行や地上試運転に限られており、米軍機については、具体的な規制の在り方を定めるもの ではない上、運用上の必要がある場合や及び米軍の態勢を保持する上に緊要と認められる場合が例外とされていて、例外が広く許容される余地があり、規制の実効性があるとは認め難いものであるし、現に、前記第1・5⑵アのとおり、夜間や日曜日においても70dB以上かつ5秒以上継続する騒音が少なくない回数が測定されていることも踏まえると、こ れらの規制の効果は相当限定的であるといわざるを得ない。 ウなお、原告らは、被告による騒音源対策に関し、そもそも厚木基地を恒久的な基地として存続させ、その機能を拡充させるなどして騒音被害を拡大させたのは被告自身であり、その背信的な経緯からすれば、これらの対策について違法性を否定する事情として考慮することは許されないと主張 する。 しかし、前記1のとおり、違法性の判断においては、侵害行為の開始とその後の経過の間に採られた被害の防止に関する措置の有無及びその内容・効果等も考慮すべきである。そして、被害防止措置等を違法性判断において考慮すること自体は、被害の軽減に資する面もあるのであり、過去 の経緯を理由に一切その後の被害 する措置の有無及びその内容・効果等も考慮すべきである。そして、被害防止措置等を違法性判断において考慮すること自体は、被害の軽減に資する面もあるのであり、過去 の経緯を理由に一切その後の被害軽減措置を考慮できないとすべき理由はなく、原告らの上記主張は採用することができない。 ⑶ まとめ原告らは、本件告示コンター図上の75W以上の区域における騒音は違法であると主張して損害賠償請求をする。そして、前記⑴アのとおり、被告による侵害行為の程度はかなり大きく、重要な利益に対する侵害であることを 考慮すれば、侵害行為の持つ公共性及び公益上の必要性の内容と程度等が優越するとはいい難い。このことに加え、侵害行為が相当長期にわたりながらも、被害防止措置は岩国移駐を除いて効果の限られたものにとどまっているなどの事情を考慮すれば、周辺住民に対して厚木飛行場を離着陸する航空機により75W以上の騒音を曝露させるという侵害行為が、社会通念上受忍す べき限度にとどまっていると評価することはできない。 したがって、被告による厚木飛行場の使用及び供用は、75W以上の実勢騒音にさらされる地域に居住する原告らに社会生活上受忍すべき限度を超える被害を生じさせるものとして、違法な権利侵害ないし法益侵害に当たるものというべきである。これは、公の営造物の設置又は管理に瑕疵があった ために他人に損害を与えたときに当たるから、厚木飛行場の設置・管理者である被告は、75W以上の実勢騒音にさらされる地域に居住する原告らに対する賠償責任を免れないというべきである。 そして、前記2⑴のとおり、損害賠償請求期間のうち、平成26年8月以降、岩国移駐が完了した平成30年3月までは、本件告示コンター図上の7 5W以上の区域における実勢騒音は、75Wを上回る程度であ して、前記2⑴のとおり、損害賠償請求期間のうち、平成26年8月以降、岩国移駐が完了した平成30年3月までは、本件告示コンター図上の7 5W以上の区域における実勢騒音は、75Wを上回る程度であったと評価することができ、同期間に同区域に居住していた原告らは、75W以上の航空機騒音にさらされていたということができる。したがって、この期間においては、被告は、本件告示コンター図上の75W以上の区域に居住する原告らに対する損害賠償責任を免れない。 一方で、前記2⑵のとおり、岩国移駐完了後である平成30年4月以降については、厚木飛行場の周辺の騒音の状況は変化しており、実勢騒音の状況は、令和2年度分布図により認定すべきであり、同図上の75W以上の区域については、実勢騒音が75Wを上回る程度であったと評価することができ、同期間に同区域に居住していた原告らは、75W以上の航空機騒音にさらされていたということができる。したがって、この期間においては、被告は、 令和2年度分布図上の75W以上の区域に居住する原告らに対する損害賠償責任を免れないが、令和2年度分布図において75W以上の区域外に居住する原告らに対しては、損害賠償責任を負わないことになる。 ⑷ 原告らの主張についてア 72%HA30%(Lden47dB)以上となる騒音は違法であると いう主張について(ア)原告らは、厚木基地を離着陸する航空機騒音の違法性は、騒音量と住民反応との関係によって決せられるべきであるとした上で、他の交通騒音に比べて航空機騒音の住民反応は特に強いところ、他の交通騒音の規制は概ね72%HAが約30%の水準で実施されているから、厚木基地 周辺においても、同程度の騒音のレベル(Lden47dB)をもって、航空機騒音に起因する障害が著し いところ、他の交通騒音の規制は概ね72%HAが約30%の水準で実施されているから、厚木基地 周辺においても、同程度の騒音のレベル(Lden47dB)をもって、航空機騒音に起因する障害が著しいと認められるべきであるとした上で、72%HA30%以上となる区域を線引きすると、平成30年度においては、本件告示コンター図上の第一種区域にほぼ相当するから、岩国移駐後においても、本件告示コンター図上の75W以上の区域における騒 音は違法であると主張する。 (イ)しかし、違法性は騒音量と住民反応との関係によって決せられるべきであるとの主張は、前記1で示した判例に反する独自の主張であり採用することはできない。 (ウ)また、原告の主張を、72%HA30%となるような騒音のレベルを もって受忍限度を画する基準とすべきであるという主張であると解したとしても、採用することはできない。 a すなわち、前記前提事実第2・1⑴のとおり、確かに、騒音は、人間の感覚が織り込まれた概念であるため、その評価においては、物理的な基準のみではなく、主観量との対応関係も重要であると考えられ、72%HAという評価尺度は、主観量である住民反応に基づく尺度と いうことができ、これを基準に被害の程度を検討することには、一応の合理性はあるといえる。 しかし、原告らがその主張の根拠とする証人A、甲A47の1及び甲A57は、今後の規制の在り方として、72%HAを用いた規制を用いることを提案する趣旨のものと解されるものであり、少なくとも 現時点において、原告らの主張に係る基準が、専門家の間で十分に検討されて一定の方向性が示された知見であるということはできないし、仮に、72%HAを用いた規制等があり得るとしても、そのような規制等の水準が当然に航空機騒音 の主張に係る基準が、専門家の間で十分に検討されて一定の方向性が示された知見であるということはできないし、仮に、72%HAを用いた規制等があり得るとしても、そのような規制等の水準が当然に航空機騒音による被害の程度を決定づけるものではない。 b この点を措いても、以下のとおり、72%HAが、原告らに生じている共通被害の程度を適切に評価する指標であるということはできない。 騒音による被害は、睡眠妨害、生活妨害を含めて多種多様であるところ、例えば、前記第1・2⑶のとおり、WHO欧州事務局による「環 境騒音による疾病負荷」では、高度に不快とする割合がアノイアンスの住民反応率として最も広範に用いられている指標であるとされているように、72%HAは、アノイアンスという騒音による影響に関する住民反応に係る評価尺度であり、騒音をどう感じるかという反応が大きな比重を占める心理的な影響に係る被害に適した指標であるとは いうことはできても、聴力障害や睡眠妨害といった生理的影響や聴取妨害など、騒音の物理量に大きく影響されると考えられる被害の程度を表すのにも適した指標であるかには疑問が残る。 前記第1・4⑶アのとおり、アノイアンスという概念は、騒音の直接的、間接的影響の総体がもたらす被害感を包含したものであるから、72%HAでいう高度の不快感の原因に、聴取妨害や睡眠妨害が含ま れることも想定され得る。しかし、72%HAは、前記前提事実第2・1⑵ウのとおり、騒音によって悩まされたり、邪魔されたり、うるさいと感じることがあるかといった包括的な質問を行う社会調査に基づいて算出されるものであって、うるささとは異なる睡眠妨害や聴取妨害等の、個別的な被害についての住民反応を考慮して算出されるもの ではない。すなわち、昭和48年環境基 な質問を行う社会調査に基づいて算出されるものであって、うるささとは異なる睡眠妨害や聴取妨害等の、個別的な被害についての住民反応を考慮して算出されるもの ではない。すなわち、昭和48年環境基準を定める際に参照された住民反応に関する各国調査には、就眠妨害や会話妨害、家の振動、覚醒、テレビの聴取妨害、読書・思考の項目に関するそれぞれの訴え率の結果が含まれていたり(甲C1の18)、施設庁方式によるW値の算定方式が考案された際に参照された調査においては、航空機騒音のうるさ さに関する質問に加え、航空機騒音が日常生活の中で邪魔になるか、会話の妨げになるかという観点からのアンケートも行って、軍用機騒音と民間機騒音の住民反応の比較がされたりしている(甲C1の5・17)のとは異なるのである。このように、72%HAは、騒音の主観面、しかも包括的な被害感に着目した住民反応を尺度とするもので、 W値やLdenのように騒音の物理面に主観面(住民反応の程度)を加味した指標とは異質というべきであるから、騒音にまつわる被害を広く代表する指標であるとはいい難い。 また、前記第1・2⑷のとおり、WHO欧州事務局は、平成30年ガイドラインにおいて、高度の睡眠妨害の反応率を参照して夜間のガ イドライン値を定めており、睡眠妨害の評価については高度の睡眠妨害の反応率を参照することが適切であると考えられる。そもそもガイドライン値は、単に病気とか虚弱でないというだけではなく、身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態という意味合いにおける健康を守るための勧告値であり、必ずしも72%HAが騒音の被害全般を的確に示す指標であることの根拠になるとはいえない。 そうすると、72%HAが、原告らに生じている共通被害の程度を適切に評価する指標であるというこ であり、必ずしも72%HAが騒音の被害全般を的確に示す指標であることの根拠になるとはいえない。 そうすると、72%HAが、原告らに生じている共通被害の程度を適切に評価する指標であるということはできない。 c また、他の交通騒音による規制水準との比較によって72%HA30%となるような騒音のレベルをもって、航空機騒音に起因する障害が著しいと認められるべきであるとする原告らの主張についても、こ れを採用することができない。 すなわち、道路交通騒音に関しては、騒音に係る環境基準(平成10年環境庁告示第64号)が、各地域(道路に面する地域を含む)における騒音の基準値について、昼間(午前6時から午後10時)及び夜間(午後10時から翌午前6時)に区分した上で、それぞれ時間の 区分ごとの全時間を通じた等価騒音レベルによって評価するものとし、騒音規制法17条1項に基づく「騒音規制法第17条第1項の規定に基づく指定地域内における自動車騒音の限度を定める省令」は、自動車騒音の限度について、昼間(午前6時から午後10時)及び夜間(午後10時から翌午前6時)に区分した上で、それぞれ時間の区分ごと に3日間の原則として全時間を通じてエネルギー平均した値を騒音の大きさとして、等価騒音レベルによって評価するものとしている。また、在来鉄道騒音に関しては、在来鉄道の新設又は大規模改良に際しての騒音対策の指針において、その指針値について、昼間(午前7時から午後10時)と夜間(午後10時から翌午前7時)に区分した上 で、等価騒音レベルによって評価するものとしている。さらに、新幹線鉄道騒音に関しては、新幹線鉄道騒音に係る環境基準について(昭和50年環境庁告示第46号)が、その基準値について上り及び下りの列車を合わせて、原則として連続し 評価するものとしている。さらに、新幹線鉄道騒音に関しては、新幹線鉄道騒音に係る環境基準について(昭和50年環境庁告示第46号)が、その基準値について上り及び下りの列車を合わせて、原則として連続して通過する20本の列車について、当該通過列車ごとの騒音のピークレベルを読み取って測定し、その中からレベルの大きさが上位半数のものをパワー平均した値によっ て評価するものとしている。(証人A、甲A47の1、57、弁論の全趣旨)このように、例えば新幹線鉄道騒音に係る環境基準においては、騒音のピークレベルをもって規制するなど、各種の交通騒音はそれぞれ異なる方法により算出された指標を用いて基準値が定められるなどし ている。これらは、それぞれの交通騒音の特徴に即したものと考えられ、これらの基準値等に採用された各種指標がそれぞれの騒音源に対する住民反応と最も対応関係がよいとされていると考えられるのに対し、Ldenと当該騒音源についての住民反応との対応関係がどの程度優れているかは必ずしも明らかでなく、これらの交通騒音に係る基 準値等をLdenに換算して、72%HAと比較することの意義は見出し難い。すなわち、各種の交通騒音による基準値等に対する高度の不快感反応率がどの程度であるかを検討しなければ意味がないといえる。そうすると、異なる趣旨のもと、異なる指標等によって定められた各種交通騒音に関する基準値等について、概ね72%HAが30% となるように規制されているということはできない。 d このほか、前記bで説示したとおり、平成30年ガイドラインにおける勧告値の趣旨からすれば、これとの比較において、72%HA30%が相当深刻な被害であると直ちに評価することもできない。 e よって、72%HA30%となるような騒音のレベルをもって、 ラインにおける勧告値の趣旨からすれば、これとの比較において、72%HA30%が相当深刻な被害であると直ちに評価することもできない。 e よって、72%HA30%となるような騒音のレベルをもって、航 空機騒音に起因する障害が著しいということはできない。 (エ)以上のとおり、原告らの上記主張は、違法性の判断基準としても、また、原告らの航空機騒音による被害の程度を示す根拠としても、採用することができない。 イ少なくともLden53dB以上となる騒音は違法であるという主張について 原告らは、厚木基地を離着陸する航空機騒音の違法性は、騒音量と住民反応との関係によって決せられるべきであるとした上で、軍用機は民間機と比べると住民反応が強いところ、施設庁方式による補正では軍用機騒音に対する住民反応を正しく反映できておらず、少なくとも軍用機騒音に対する規制を、民間機に対する規制(Lden62dB)に対応する72% HAと同程度(72%HA43%)となる規制基準に合わせるべきであるとし、これに相当する軍用機騒音におけるLden53dB以上の騒音曝露が違法ではないとされる余地はない旨、騒音被害は一過性のものではなく累積していくものであることに鑑みれば、違法とされるのはLden53dB以上の地域に限定されるべきではない旨を主張する。 しかし、前記アで説示したとおり、違法性が騒音量と住民反応との関係によって決せられるべきであるとの主張は採用することができないし、環境基準の基準値や第一種区域を画する値が直ちに受忍限度を画する基準となるわけでもない。 また、同じLden値の場合に、民間機と軍用機で72%HAが異なり、 軍用機に対する住民反応の方がより厳しいとしても、72%HAが航空機騒音の被害 受忍限度を画する基準となるわけでもない。 また、同じLden値の場合に、民間機と軍用機で72%HAが異なり、 軍用機に対する住民反応の方がより厳しいとしても、72%HAが航空機騒音の被害を広く代表する指標といえるのか疑問があることは前記アで説示したとおりである上、72%HAが同程度であっても、必ずしも同様の被害を共通して受けているということはできないから、72%HAが同程度であれば同程度の被害を受けていることを前提とする原告らの主張はそ の前提を欠くものである。 さらに、これらの点を措いても、証人A、甲A47の1及び甲A57にいう民間機と軍用機の住民反応の違いを反映させるための換算式(軍用機騒音について得られたLden値を、民間機騒音に対する72%HAと軍用機騒音に対する72%HAが等しくなるように換算する式)が専門家の間で確立された知見であるとはいえず、これを直ちに採用することはでき ない。 したがって、原告らの上記主張は、違法性を画する基準としても、また、原告らの航空機騒音による被害の程度を示す根拠としても採用することができない。 ⑸ 被告の主張について 被告は、被告の努力により岩国移駐が実現し、騒音が大きく低減されたから、令和2年度分布図上の75W以上の区域に居住する原告らとの関係でも違法性が否定され、また、岩国移駐前の違法性も否定されると主張する。 しかし、前記2ないし4で説示したとおり、75W以上の騒音にさらされていた原告らは、重要な利益に対する侵害を受けていたのであるから、岩国 移駐が結果として騒音の軽減に寄与したとしても、その結果が現れるまでの過去の分についてまで受忍限度の範囲内にとどまると評価することはできない。 また、前記2ないし4で説示したとおり、令和2年度分布図上の7 果として騒音の軽減に寄与したとしても、その結果が現れるまでの過去の分についてまで受忍限度の範囲内にとどまると評価することはできない。 また、前記2ないし4で説示したとおり、令和2年度分布図上の75W以上の区域に居住する原告らは、岩国移駐後においても、相当に高いレベルの 騒音に曝露され、重要な利益に対する侵害を受けており、本件訴訟における原告らに限ってもそのような被害を受けている者が3400名以上はいるのであり、航空機騒音の問題は依然として重大である。岩国移駐の前後で75W以上の騒音に曝露される原告らの範囲が狭まったからといって、令和2年度分布図上の75W以上の区域に居住する原告らとの関係でも受忍限度 の範囲にとどまるとは評価し難い。 したがって、被告の上記主張は採用することができない。 第3 争点1-2(原告らの損害額)について 1 共通被害としての慰謝料請求原告らは、本件訴訟において、原告らに生じている被害のうち、原告ら全員に同一に存在が認められるものやおよそ具体的内容について差異があっても、 原告らにとって同一と認められる性質・程度の被害を全員に共通する損害として捉え、一律に最低限の賠償を求めている。 前記第2・3⑵で説示したとおり、原告らには、睡眠妨害、聴取妨害及び精神的作業の妨害を含む生活妨害並びにアノイアンス、健康被害・航空機事故・交通事故に対する不安を含むその他の精神的苦痛の被害が生じている。これら は、原告らの一部の者にのみ発生するにとどまらず、他の多くの原告らにも共通して生じると認められるような性質、内容及び程度のものであることは、航空機騒音の曝露状況に関する認定事実、騒音被害に関する知見等から明らかであり、前記第2・3⑴で説示した共通被害ということができる。そして、これらの れるような性質、内容及び程度のものであることは、航空機騒音の曝露状況に関する認定事実、騒音被害に関する知見等から明らかであり、前記第2・3⑴で説示した共通被害ということができる。そして、これらの被害は、その現れ方には原告らによって差異があるものの、平穏な生活を 害されているという側面においては原告ら全員に共通して発生しているといえ、このことに伴う精神的苦痛が発生していると認めることができる。 2 損害の評価これらの共通被害については、前記第2・3⑵キで説示したとおり、原告らの居住地と厚木基地との位置関係で騒音の曝露状況に差が生じ、その居住地の W値が高いほど上記の意味での共通被害及び精神的苦痛の程度が大きくなることは明らかであるから、原告らの居住地を騒音の曝露状況で区分された地域類型に分け、それぞれの共通被害として認められる慰謝料額を算定することも可能である。 騒音の曝露状況は、日によって一様ではなく、月によっても一様ではないが、 原告らが月を単位として損害賠償を請求していること、前記第1・5⑵アのとおり月によって騒音の発生状況に一定の傾向があることまでは見出し難く、月によって損害額を変えるほどの事情は見当たらないことなどを踏まえれば、月当たりの損害額を算定することが相当である。 そして、慰謝料額は、裁判所がその事件に関する一切の事情を斟酌して自由な心証をもって決定すべきものである。本件について認められる侵害行為の態 様と侵害の程度、被侵害利益の性質と内容、侵害行為のもつ公共性ないし公益上の必要性の内容と程度等を比較検討するほか、侵害行為の開始とその後の継続の経過及び状況、その間に採られた被害の防止に関する措置の有無及びその内容、効果等の事情に加えて、昨今においては静かな生活環境に関する人格的 容と程度等を比較検討するほか、侵害行為の開始とその後の継続の経過及び状況、その間に採られた被害の防止に関する措置の有無及びその内容、効果等の事情に加えて、昨今においては静かな生活環境に関する人格的利益の重要性が高まっているといえること、厚木基地騒音訴訟がこれまで4次 にわたって繰り返され、その都度、周辺住民に相当額の損害賠償が認められながら、抜本的な対策がとられないまま(岩国移駐により一定程度の騒音の減少はあったものの、それでも75W以上の区域に居住する原告らがなお多数であることは前記認定のとおりである。)、この度、本件訴訟が提起されたという経過等を考慮し、原告らそれぞれの居住する地域における騒音の大きさに応じて、 本件告示コンター図又は令和2年度分布図上のW値の区域ごとに分類し、原告らの被っている精神的苦痛に対する慰謝料を1か月当たり次のとおりとするのが相当である。なお、みなし第三種区域については、95Wの区域として扱う。 75Wの区域 5000円80Wの区域 10000円 85Wの区域 15000円90Wの区域 20000円95Wの区域 25000円また、相当因果関係の認められる弁護士費用は、慰謝料額の1割が相当である。 そして、原告らは、原告らが月の途中で75W以上の区域外へ転出した場合など、当該月に1日でも居住していた事実がある場合には、当該月1か月分の慰謝料等を請求しているが、騒音にさらされる期間は居住期間に応ずるものであるから、適切な損害額の評価という観点からは、そのような場合には日割り計算とするのが相当である。 居住期間については、原告らが各提訴日の3年前からの損害についてその賠 償を請求する理由が消滅時効期間を考慮したものであると考えられること、4次 合には日割り計算とするのが相当である。 居住期間については、原告らが各提訴日の3年前からの損害についてその賠 償を請求する理由が消滅時効期間を考慮したものであると考えられること、4次民事訴訟の原告らは4次民事訴訟で認容された期間の終期である平成27年5月14日の翌日以降の損害について賠償を請求していることを踏まえ、第1事件、第2事件及び第3事件の各提訴日の3年前である平成26年8月4日、同年12月1日、平成27年5月1日及び4次民事訴訟の事実審の口頭弁論終 結日の翌日である同月15日を始期とする期間については、初日を居住期間に含めるものとする。それ以外の場合については、各原告が損害賠償を求める期間の初日を居住期間に含めない取扱いとする。また、本件においては、損害賠償請求期間中に多数の原告らについて住居の異動があることも考慮し、転居の日は従前の住居に住んでいた取扱いとする。 なお、原告らは、一人1か月当たり慰謝料として4万円及び弁護士費用として6000円を請求し、従来の基地訴訟における裁判例で認容されてきた賠償額が低廉にすぎると主張する。しかし、前記のとおり、慰謝料額は、裁判所がその事件に関する一切の事情を斟酌して自由な心証をもって決定すべきものであるところ、前記1のとおり、原告らが共通被害について損害として請求する 以上、原告らが等しく最低限被っているといえる損害についての慰謝料額を認定することになることを考慮すれば、慰謝料額は前記の額とするのが相当であり、原告らの上記主張は採用することができない。 3 防音工事による損害額の減額の可否及び程度前記前提事実第2・4⑵イのとおり、住宅防音工事は、所定の防音効果が得 られるように考慮された住宅防音工事仕方書に基づき実施されるものであ 3 防音工事による損害額の減額の可否及び程度前記前提事実第2・4⑵イのとおり、住宅防音工事は、所定の防音効果が得 られるように考慮された住宅防音工事仕方書に基づき実施されるものであるから、騒音被害を一定程度軽減させる効果を有するものであるといえる。 そうすると、その住宅について住宅防音工事を受けた原告らについては、被告の負担において、騒音被害を軽減させるという利益を得ているというべきであるから、損害の公平な分担という見地からすれば、損害額を一定の割合で減額すべきである。 もっとも、前記第2・4⑵イ(ア)で説示した住宅防音工事の限界や弊害に鑑みれば、住宅防音工事の実施をもって損害額を大きく減額することは相当ではない。 そして、減額の方法についてであるが、居住する住宅に住宅防音工事を施工した原告らの当該住宅における居室の利用状況は、その家族構成や生活スタイ ル等に応じて多様であることが想定される。また、前記前提事実第2・4⑵イのとおり、一挙防音工事、追加防音工事及び防音区画改善工事においては、世帯人員に応じて工事の対象となる居室数が決定されるところ、これは、世帯人員が増えれば防音工事をすべき居室数が増える関係にあること、すなわち、世帯人員が増えれば防音工事をする居室数を増やさなければ騒音被害の防止に 繋がらない関係にあることを前提にしていると考えられる。これらのことを考慮すると、住宅防音工事の施された住宅に住む原告ら全員について、必ずしも、工事実施室数の増加に伴って共通被害の原因となる航空機騒音の程度が比例的に減少する関係にあるとはいえない。そこで、住宅防音工事による慰謝料の減額は、住宅防音工事を実施した部屋数に関わりなく、一律に10%を減額す ることを相当とする。ただし、外郭防音工事において 的に減少する関係にあるとはいえない。そこで、住宅防音工事による慰謝料の減額は、住宅防音工事を実施した部屋数に関わりなく、一律に10%を減額す ることを相当とする。ただし、外郭防音工事においては、特定の居室のみならず、廊下や風呂場等を含めた建物全体について、防音区画改善工事については、世帯人員に応じた居室数に加え廊下や風呂場等の区画について、それぞれ防音工事が施されるのであるから、その他の工事と比べて騒音の程度が軽減される割合が大きくなるだけでなく、例えば居室と廊下の間の扉を開放しても防音効 果に影響はなく、その他の工事に比べて防音工事による弊害もやや小さくなるといったことが考えられるから、これらの工事が施工された住宅に居住する原告らについては、一律に20%を減額することを相当とする。 4 遅延損害金について原告らは、ある月に1日でも本件告示コンター図上の75W以上の区域に居住していた日がある場合には、当該月1か月分の慰謝料及び弁護士費用(以下 「慰謝料等」という。)を請求するとともに、当該月を含む所定の1年間の末日の翌月1日を起算点として当該1年間の慰謝料等の合計額に係る遅延損害金を請求している。具体的には、第1事件原告らについては毎年8月1日から翌年7月31日までの慰謝料等の合計額に対する当該翌年8月1日から支払済みまで、第2事件原告らについては毎年12月1日から翌年11月30日までの慰 謝料等の合計額に対する当該翌年12月1日から支払済みまで、第3事件原告らについては毎年5月1日から翌年4月30日までの慰謝料等の合計額に対する当該翌年5月1日から支払済みまでの各遅延損害金を請求している。したがって、これらの遅延損害金については、原告らの請求内容を踏まえ、これらの所定の1年間の慰謝料等の合計額につい 料等の合計額に対する当該翌年5月1日から支払済みまでの各遅延損害金を請求している。したがって、これらの遅延損害金については、原告らの請求内容を踏まえ、これらの所定の1年間の慰謝料等の合計額について、それぞれ当該1年間の末日の翌月 1日から算定することとする。 ただし、遅延損害金の利率については、損害賠償請求期間内である令和2年4月1日に、平成29年法律第44号による改正後の民法が施行されたため、同期間のうち、令和2年3月までの各月に発生する慰謝料等に対しては同改正前の民法所定の年5分の割合による割合、令和2年4月以降の各月に発生する 慰謝料等に対しては同改正後の民法所定の年3分の割合を適用する。 5 被告の主張について⑴ 被告は、4次民事訴訟における現地進行協議等において実施された、住宅防音工事の施された建物内外で測定された騒音の比較結果をもとに、住宅防音工事について十分な遮音効果が得られている旨を主張する。しかし、そも そも建物自体による遮音効果があることは明らかであり、住宅防音工事による効果が実際上どの程度であるのかは不明であるといわざるを得ないから、被告の上記主張は、採用することができない。 ⑵ 被告は、移転措置について、実際に居住者が利用するか否かにかかわらず、損害額の認定に当たって十分に考慮すべき旨を主張する。しかし、前記第2・4⑵イ(イ)で説示したとおり、移転措置は被害の防止措置として必ずしも 有効なものではなく、移転措置を受けるか否かはその対象となる者の意思に委ねられているのであるから、移転措置を受けなかった原告らについて、移転措置の制度があることを理由にその損害額を減額すべき理由はなく、被告の上記主張は採用することができない。 ⑶ 被告は、みなし区域の指定は航空機騒音の測定結果に 措置を受けなかった原告らについて、移転措置の制度があることを理由にその損害額を減額すべき理由はなく、被告の上記主張は採用することができない。 ⑶ 被告は、みなし区域の指定は航空機騒音の測定結果に基づくものではない こと、特に岩国移駐後は、90W以上の地域については、厚木基地内に収まっていることなどから、みなし区域を第二種区域等と同列に扱うべきではない旨を主張する。 しかし、厚木基地を離着陸する航空機による被害は、その騒音によるものが主たるものであるとしても、決してこれのみに限られるものではなく、間 近を航空機が飛行することによる航空機事故の不安なども含まれる。そして、みなし区域は、被告自身が、飛行場に近接して航空機の運航上好ましくなく、航空機騒音等の影響により居住等の環境として適切でないと思われる区域であるとして、生活環境整備法の制定時に経過措置として定められた後において、騒音度の調査結果に基づいて実勢騒音に即して区域を指定し直す機会が 何度もあったにもかかわらず、実勢騒音と切り離して、移転措置を含めた補償の対象とし続けていた地域である(甲A52の2、53、乙A142)。 また、みなし区域は、航空法に基づく一定の制限表面の投影面の一部であるところ、同法が制限表面を設けるのは、離着陸前後の航空機の安全を確保する趣旨に出たものであり、そのことからすれば、そのような方法で安全を確保す る必要がある程度に事故を含めた不測の事態が生じる危険性がある区域であるということができるのであって、このような観点からも、居住等の環境として不適切であることは明らかである。 そうすると、本件における損害賠償請求に関しては、みなし区域については、岩国移駐の前後を問わず、騒音の測定結果に基づいて分類することが適切であるとはいえず として不適切であることは明らかである。 そうすると、本件における損害賠償請求に関しては、みなし区域については、岩国移駐の前後を問わず、騒音の測定結果に基づいて分類することが適切であるとはいえず、みなし区域が定められた趣旨に従って、みなし第三種区域 については95Wの区域に相当するものとして取り扱うのが相当である(なお、原告らは、みなし第二種区域に居住する者のうち、みなし第三種区域以外に居住する者については、特定して主張していない。)。 したがって、被告の上記主張はいずれも採用することができない。 6 結論 以上のとおり、原告らの慰謝料額は、平成26年8月から平成30年3月までは本件告示コンター図上のW値の区域の分類に従い、同年4月以降は令和2年度分布図上のW値の区域の分類に従い、それぞれ75Wの区域に居住していた原告らについては5000円、80Wの区域に居住していた原告らについては10000円、85Wの区域に居住していた原告らについては15000円、 90Wの区域に居住していた原告らについては20000円、95Wの区域に居住していた原告らについては25000円が、それぞれ居住期間1か月当たりの額(慰謝料基準月額)であり、このうち、外郭防音工事及び防音区画工事以外の工事を行った住宅に居住していた期間については10%を、外郭防音工事又は防音区画工事を行った住宅に居住していた期間については20%を上記 慰謝料基準月額からそれぞれ減額した額が各月の具体的な慰謝料額となる。そして、居住期間が1か月に満たない分については日割り計算を行った額が慰謝料額となる。 そして、上記の各月又は日割り計算後の具体的な慰謝料額の1割が弁護士費用相当額の損害として認められる。 なお、原告らは、請求の趣旨第3項⑶ は日割り計算を行った額が慰謝料額となる。 そして、上記の各月又は日割り計算後の具体的な慰謝料額の1割が弁護士費用相当額の損害として認められる。 なお、原告らは、請求の趣旨第3項⑶において、それぞれ本件差止請求に係る差止め及び騒音の規制が実現するまで毎月末日ごとに1か月につき4万6000円の支払を求めており、これは本件口頭弁論終結日である令和5年11月1日の翌日以降の将来請求を含むものであるから、その将来請求の可否は後記第5で判断する。原告らの請求は、本件口頭弁論終結日(令和5年11月1日)までに生じた損害については、過去分の損害として賠償請求をする趣旨と解さ れるから、それに応じて、同日分までに生じた損害を、過去分の損害として認めることとする。また、計算の結果1円未満の端数が生じた部分については、国等の債権債務等の金額の端数計算に関する法律2条1項に基づき、これを切り捨てるものとする。 第4 争点1-3(相互保証の有無)について 1 外国人原告らの国籍等原告らのうち次の者は、その右側に掲げた国又は地域の国籍等を有する外国人であることが認められる(甲E1、弁論の全趣旨)。 あ125~128・130~133 ベトナムあ685 カンボジア あ1012 ドミニカえ104、さ705~707、ざ355、や300・3345・4095中国え188、や304・305・499・2546・2820 フィリピンさ62 パキスタン さ292 イタリアさ687、や2527 2820 フィリピンさ62 パキスタン さ292 イタリアさ687、や2527 朝鮮ざ130 米国ざ147 ナイジェリアや449・922・1035・1145~1148・2413・2528・ 4442・4640・4941・5123・5412・5678~5682 韓国や589・5256 タイや3599 ペルーや4959 インドネシアや5864 台湾 2 国賠法6条の合憲性⑴ 法令違憲の主張について外国人原告らは、国賠法6条が憲法17条及び同14条に照らして違憲であると主張する。 憲法17条は、「法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償 を求めることができる。」と定めており、このような文言からすれば、同条に基づいて直ちに具体的な損害賠償請求権が生じるものではないと解されるところ、同条が「何人も」と定めていることを踏まえても、外国人による国家賠償請求権について、日本国民と同一の保障をすべきことまで要請しているとまでは解することはできず、法律により、特定の国籍を有する外国人につい て日本国民とは異なる事情が認められる場合に国家賠償請求権に制約を加えることも、その内容が不合理なものではない限り、同条に反するものではないと解すべきである。 そして、国賠法6 国人につい て日本国民とは異なる事情が認められる場合に国家賠償請求権に制約を加えることも、その内容が不合理なものではない限り、同条に反するものではないと解すべきである。 そして、国賠法6条の趣旨は、日本国民に国家賠償による救済を与えない国の国民に我が国が積極的に保護を与える必要がないという衡平の観念に基 づくものであると解され、また、我が国が外国人による国家賠償請求について相互の保証を必要とすることにより、外国において日本人による当該外国における国家賠償請求を可能とすることを促し日本国民の救済を拡充することにも資する面があることからすると、同条の規定には一定の合理性が認められるから、憲法17条に違反するということはできない。 原告らは、国際的な人の往来があり、人権保障の国際化が諸外国にも浸透している現在では、国賠法6条の立法趣旨の基礎となる事情はすでに失われていると主張する。確かに、国賠法が制定された昭和22年と今日とを比較すれば、国際的な人の往来は増大し、基本的人権の国際的な保障が重要なものとなっているということができる。しかし、そうであるとしても、外国人からの国家賠償請求に関する諸外国の立法の動向が具体的に明らかにされて いるとはいえない(なお、後記のとおり、本件で検討した外国法でも、相互の保証を要件としているものがある。)。また、国際的な人の往来が少ないことを前提として同条が定められたともいえない以上、同条が憲法17条に照らして合理性を欠くものになっているということもできない。 また、憲法14条1項は、法の下の平等を定めた規定であるが、この規定 の趣旨は、特段の事情の認められない限り、外国人に対しても類推されるべきものと解される(最高裁昭和37年(あ)第927号同39年11月18日大 は、法の下の平等を定めた規定であるが、この規定 の趣旨は、特段の事情の認められない限り、外国人に対しても類推されるべきものと解される(最高裁昭和37年(あ)第927号同39年11月18日大法廷判決・刑集18巻9号579頁)。もっとも、同項は、絶対的な平等を保障したものではなく、合理的理由のない差別を禁止する趣旨であり、事柄の性質に即応した合理的な根拠に基づく区別は同項に違反するものではな い(最高裁昭和37年(オ)第1472号同39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁、最高裁昭和45年(あ)第1310号同48年4月4日大法廷判決・刑集27巻3号265頁参照)。 そして、国賠法6条が外国人による国家賠償請求について相互の保証を要することとした趣旨は、前記のとおりであり、その趣旨及び内容に一定の合 理性が認められることからすれば、同条の規定が憲法14条1項に違反するということはできない。 ⑵ 適用違憲の主張について外国人原告らは、仮に、国賠法6条が違憲ではないとしても、本件において外国人原告らに対して同条を適用することは違憲であると主張する。 しかしながら、外国人原告らが適用違憲を主張する理由は、結局のところ、法令違憲について主張するのと同様に、多数人が同様の被害を受けている中で特定の国籍の被害者のみが、当該被害者に帰責性のない事情で救済されないことの不合理性を主張するもので、同条が当然に適用を予定している場合についてその適用を違憲と主張するものであって、法令違憲に関する主張と同様のものである。 したがって、前記⑴で説示したとおり、外国人原告らの主張は、採用することができない。 3 外国人原告らについての相互保証の有無国賠法2条1項は、特段の限定を付することなく単に「他人」に損 したがって、前記⑴で説示したとおり、外国人原告らの主張は、採用することができない。 3 外国人原告らについての相互保証の有無国賠法2条1項は、特段の限定を付することなく単に「他人」に損害を生じたときに国が賠償責任を負う旨を定め、同法6条は、「外国人が被害者である場 合」には、「相互の保証があるときに限り」同法を適用する旨を定めている。これらの規定の文言からは、同法2条1項が国に対する損害賠償請求権の発生要件を規定し、同法6条がその適用を除外する例外を定めたと解する余地もあるし、同条が同法の適用の大前提を定めているとして、外国人については、相互の保証が存在することが同法2条1項の定める損害賠償請求権の発生要件であ ると解する余地もある。 もっとも、憲法17条は、「何人も」と規定しており、同条の性質上、日本国民のみを対象とするものとはいい難い。また、各国の法制度は様々で国家に対する賠償請求の要件、効果、手続等について日本と比較するには当該国の法令だけでなく裁判例を含む現実の解釈や運用も問題になり得、損害賠償を求める 当該国の外国人であっても容易ではなく、むしろ被告の方が在外公館を通じた調査等により資料を入手しやすい立場にあるといえるだけでなく、相互の保証を問題とすることにより損害賠償責任を免れる利益は被告にある。 以上のような憲法の定め、立証の難易及び衡平の観点を考慮すれば、国際協調主義を採用している憲法の要請を受けて立法された国賠法の解釈としては、 当該外国法につき相互の保証がないことを被告において抗弁として主張立証すべきと解するのが相当である。 そして、前記2⑴で説示したとおり、国賠法6条は、日本国民に国家賠償による救済を与えない国の国民に我が国が積極的に保護を与える必要がないとい 弁として主張立証すべきと解するのが相当である。 そして、前記2⑴で説示したとおり、国賠法6条は、日本国民に国家賠償による救済を与えない国の国民に我が国が積極的に保護を与える必要がないという衡平の観念に基づくものであると解されること、国によって法制度の在り方に差異があり、民事上の請求に関する要件、効果、手続等について、我が国の 場合と比較することが困難であることを考え併せれば、被告において、日本人が被害者として外国において当該事案と同種の損害賠償請求をすることがそもそもできないか、できる場合においても、要件及び効果の点からみて、国賠法と重要な点で異なり、上記のような衡平の観念に反することについて立証を要すると解すべきである。 そこで、以上の観点から、外国人原告らについて、相互の保証が認められないといえるか判断する。 ⑴ イタリアイタリア憲法28条は、国及び公共団体の公務員及び公務被用者は、その行為によって権利を侵害したときは、刑事法、民事法及び行政法に従い、直 接、責任を負い、この場合、民事上の責任は、国及び公共団体に及ぶ旨を定めている。また、イタリアにおいては、内国公務員の国外での職務違反に基づく内外国人による請求もイタリア法によるというのが最高裁の立場であるとされており、外国人の国家賠償請求を排除する規定は見当たらない。(弁論の全趣旨) このように、イタリア憲法上、公務員による権利侵害に対して、国は民事上の責任を負うとされていることからすれば、本件のように飛行場の供用に関連した権利侵害についても国が民事上の責任を負い得るものと考えられる。 また、イタリアにおいては、外国人による内国公務員の職務違反に基づく請求がイタリア法によるとされ、国家責任が排除されていないのであるから、 イ ても国が民事上の責任を負い得るものと考えられる。 また、イタリアにおいては、外国人による内国公務員の職務違反に基づく請求がイタリア法によるとされ、国家責任が排除されていないのであるから、 イタリアで日本人が被害者として本件と同種の損害賠償請求をした場合、要件及び効果の点からみて、国賠法と重要な点で異ならないで賠償を受け得ると考えられる。 したがって、相互保証が認められないとはいえない。 ⑵ インドネシア被告は、インドネシアにおいて、日本人が本件と同種の損害賠償請求をす ることができないか、できるとしても要件及び効果の点からみて、国賠法と重要な点で異なることについて何ら具体的な主張・立証をしない。 したがって、相互保証が認められないとはいえない。 ⑶ カンボジアカンボジア民法749条1項は、国の公権力の行使に当たる公務員が、そ の職務を行うにつき故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国がこれを賠償する責任を負う旨を定めている。また、カンボジア民法753条1項は、土地に接着した工作物の設置又は管理に瑕疵があり、それによって他人に損害が生じたときは、当該工作物の管理者及び所有者は、連帯して損害を賠償すべき責任を負うが、管理者は、適正な管理をしていたことを 証明した場合にはその責任を免れる旨を定めている。さらに、カンボジア民法744条は、賠償の範囲について、743条(一般的不法行為の要件及び立証責任)の責任を負う者は、財産以外の損害についても賠償しなければならない旨を定めている。その他、外国人による損害賠償請求権を制限する規定は見当たらない。(乙A140) 以上のとおり、カンボジア民法753条1項の定める土地工作物について、国が賠償責任を負うか否かはその明文からは明らかでないが、同法が、 償請求権を制限する規定は見当たらない。(乙A140) 以上のとおり、カンボジア民法753条1項の定める土地工作物について、国が賠償責任を負うか否かはその明文からは明らかでないが、同法が、国家の賠償責任についても定めており、一般の不法行為と比べて厳格な要件を定めていないことからすると、国が土地工作物責任を負うことは否定されていないと考えられる。そうすると、カンボジアで日本人が被害者として本件と 同種の損害賠償請求をした場合、要件及び効果の点からみて、国賠法と重要な点で異ならないで賠償を受け得ると考えられる。 したがって、相互保証が認められないとはいえない。 ⑷ タイタイ行政裁判所事務総局外務局は、我が国の在タイ大使館からの、民間人が、日本国の国家賠償法などの公共施設の設置又は管理の瑕疵に起因する損 害賠償の請求ができる法令の有無等に関する各国の状況調査に係る照会に対し、我が国における国賠法2条の規定の例に関連する法令における賠償の法的根拠の概要及び賠償制度の要件のデータについて、該当なしと回答している(乙A134)。しかし、この回答の趣旨は、同条に対応する法令等が見当たらないという趣旨である可能性も否定することができず、この回答をもっ て、必ずしも、タイで日本人が被害者として本件と同種の損害賠償請求をした場合、要件及び効果の点からみて、国賠法と重要な点で異ならないで賠償を受けることができないことを示すものとはいえない。 むしろ、タイにおいては「当局関係者の不法行為責任に関する法律」において、政府機関の公務員又は被用者が公務を遂行する過程で行った不法行為 について、民間人が政府機関に損害賠償を請求することが認められている。 民間人は、行政裁判所に対して政府機関を訴えることもでき、その場合には賠償額に 被用者が公務を遂行する過程で行った不法行為 について、民間人が政府機関に損害賠償を請求することが認められている。 民間人は、行政裁判所に対して政府機関を訴えることもでき、その場合には賠償額に制限はなく、不法行為の状況と重大性に基づいて賠償の方法と範囲が決定される。タイにおいては、外国人が被害者である場合の特別な法律はない。(乙A134) 以上のとおり、タイにおいては、公務員が公務を遂行する過程で行った不法行為に関し、政府機関に対する損害賠償請求が認められており、本件のような飛行場の供用に関連した権利侵害についても、公務員による不法行為とみることができるものであるから、タイで日本人が被害者として本件と同種の損害賠償請求をした場合、要件及び効果の点からみて、国賠法と重要な点 で異ならないで賠償を受け得ると考えられる。 したがって、相互保証が認められないとはいえない。 ⑸ 韓国韓国においては、国家賠償法5条1項が、道路・河川、その他の公共の営造物の設置や管理に瑕疵があるために他人に損害を発生させたときは、国家や地方自治体はその損害を賠償しなければならないと定めており、韓国大法 院の判例上、営造物が公共の目的に利用されるに際し、その利用状態及び程度が一定の限度を超過し、第三者が社会通念上我慢できない被害を受ける場合も「営造物の設置や管理に瑕疵」がある場合に当たるとされている。また、韓国大法院は、国家賠償が慰謝料請求権を排除するものではないと解釈している。さらに、韓国の国家賠償法7条は相互保証主義を採用している。(乙A 136)そうすると、韓国で日本人が被害者として本件と同種の損害賠償請求をした場合、要件及び効果の点からみて、国賠法と重要な点で異ならないで賠償を受け得ると考えられる。 したがって、相互 136)そうすると、韓国で日本人が被害者として本件と同種の損害賠償請求をした場合、要件及び効果の点からみて、国賠法と重要な点で異ならないで賠償を受け得ると考えられる。 したがって、相互保証が認められないとはいえない。 ⑹ 中国中国においては、公の営造物の設置・管理の瑕疵によって私人に生じた損害の賠償を求める場合は、公務員の行為によって私人に生じた損害の賠償を求める根拠となる国家賠償法ではなく、中国民法典の総則編・権利侵害責任編等に基づくことになり、民事賠償の範疇となるが、これに基づく外国人に よる請求について、何らかの制限を加える規定は認められない。 そして、中国民法典の第7編「権利侵害責任」では、第7章「環境汚染及び生態破壊責任」において、環境の汚染により他人に損害をもたらした場合には、権利侵害者は権利侵害責任を負わなければならないとされ、この場合には故意又は過失は要件とされず(1229条)、損害賠償の範囲について は、自然人の人身上の権益を侵害して重大な精神的損害をもたらした場合には、被権利侵害者は、精神的損害を請求する権利を有するとされている(1183条)。(乙A135)以上のとおり、中国においては、公務員の行為によって私人に生じた損害の賠償は、中国民法典によることとされており、同民法典によれば、環境の汚染について、権利侵害者は責任を負うものとされているから、本件のよう な飛行場の供用に関連した権利侵害についても、同法に基づく損害賠償請求が可能であると考え得る。そして、当該請求に関して外国人について何らかの制限があることは認められないから、中国で日本人が被害者として本件と同種の損害賠償請求をした場合、要件及び効果の点からみて、国賠法と重要な点で異ならないで賠償を受け得ると考えられる。 ついて何らかの制限があることは認められないから、中国で日本人が被害者として本件と同種の損害賠償請求をした場合、要件及び効果の点からみて、国賠法と重要な点で異ならないで賠償を受け得ると考えられる。 したがって、相互保証が認められないとはいえない。 ⑺ 中華民国(台湾)台湾の国家賠償法3条1項は、公有の公共施設の設置又は管理の不備により、人民の生命、身体、人身の自由又は財産が損害を受けた場合についても、国家は損害賠償責任を負うべきである旨を定めており、慰謝料の請求も可能 であるとされている。また、同法15条は、相互保証主義を採用している。 (乙A138)以上によれば、台湾で日本人が被害者として本件と同種の損害賠償請求をした場合、要件及び効果の点からみて、国賠法と重要な点で異ならないで賠償を受け得ると考えられる。 したがって、相互保証が認められないとはいえない。 ⑻ 朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮籍)朝鮮半島では、韓国と朝鮮民主主義人民共和国の両政府が成立し、対立している状態にあること、日本は韓国政府を朝鮮半島の一定部分を実効支配する唯一の合法的な政府として承認する一方で、朝鮮民主主義人民共和国政府 を承認していないこと、両政府はそれぞれ全く異なる別個の法律制度を有することは公知の事実である。これらの事実に照らせば、朝鮮籍の原告らについては、韓国又は朝鮮民主主義人民共和国のいずれの法制度に服すべきか決定し難く、いずれの法制度にも服する可能性があると評価することができる。 そうすると、朝鮮籍の原告らは、韓国の法制度に服する可能性もあるが、前記⑸で説示したとおり、韓国については相互の保証が認められないとはい えないから、朝鮮籍の原告らについても、韓国籍の原告らに準じて相互の保証がないとはいえないとす 制度に服する可能性もあるが、前記⑸で説示したとおり、韓国については相互の保証が認められないとはい えないから、朝鮮籍の原告らについても、韓国籍の原告らに準じて相互の保証がないとはいえないとするのが相当である。 ⑼ ドミニカドミニカ憲法148条は、公法上の法人及び公務員又はその代理人は、不法な行政行為又は不作為によって物理的又は法的に生じた損害について、法 律に従い連帯して責任を負う旨を定め、公務員法41条は、国又は公務員の作為又は不作為によって引き起こされた損害について、連帯して責任を負う旨を規定している。また、損害賠償が認められる要件としては、民法に定められた不法行為責任及び損害、法律違反、因果関係の一般要件を満たす必要があり、賠償され得る損害の範囲としては、個人損害賠償と私有財産権の両 方が含まれるとされている。そして、非財産的損害が賠償の範囲に含まれるかは不明であるが、損害額の評価は管轄する裁判官が行うものとされている。 さらに、外国人についてもドミニカ人と同様の損害賠償責任が認められ、相互保証を条件としていない。(乙A139)以上のとおり、ドミニカにおいては、国は民法に定められた不法行為責任 等の一般要件を満たすと民事責任を負うところ、本件のような飛行場の供用に関連した権利侵害についても、国による不法行為と考え得るから、ドミニカで日本人が被害者として本件と同種の損害賠償請求をした場合、要件及び効果の点からみて、国賠法と重要な点で異ならないで賠償を受け得ると考えられる。 したがって、相互保証が認められないとはいえない。 ⑽ ナイジェリアナイジェリアにおいては、労働法で、政府職員の行為によって生じた損害の種類に応じて、私人が損害賠償を請求できる旨の規定があり、営造物の設置・管理の欠陥に られないとはいえない。 ⑽ ナイジェリアナイジェリアにおいては、労働法で、政府職員の行為によって生じた損害の種類に応じて、私人が損害賠償を請求できる旨の規定があり、営造物の設置・管理の欠陥に責任を負う政府又はその機関は、この点で訴えられた場合に、欠陥等が裁判所において証明されれば責任を負うとされている。賠償の 範囲には慰謝料も含まれる場合がある。外国人についても、相互保証を条件とせず、損害賠償請求が可能であり、その要件や賠償範囲はほぼ同じである。 (乙A145)以上のとおり、ナイジェリアにおいて、営造物の設置・管理の欠陥等が証明されれば、政府が私人に対して責任を負うのであるから、本件のような飛 行場の供用に関連した権利侵害についても、同様であると考えられる。そうすると、ナイジェリアで日本人が被害者として本件と同種の損害賠償請求をした場合、要件及び効果の点からみて、国賠法と重要な点で異ならないで賠償を受け得ると考えられる。 したがって、相互保証が認められないとはいえない。 ⑾ パキスタンパキスタンにおいては、国家賠償に関する法制度は、不法行為法に含まれ、これにより、公務員の職務執行の違法または公の営造物の設置・管理の瑕疵により私人に生じた損害に対し、国は賠償責任を負い、精神的損害も賠償の対象となる。また、相互保証を条件とせず、外国人も賠償を受けることがで きる。(弁論の全趣旨)以上のとおり、パキスタンにおいて、営造物の設置・管理の瑕疵により私人に生じた損害について国は賠償責任を負うのであるから、本件のような飛行場の供用に関連した権利侵害についても、同様であると考えられる。そうすると、パキスタンで日本人が被害者として本件と同種の損害賠償請求をし た場合、要件及び効果の点からみて、国賠法と重要 な飛行場の供用に関連した権利侵害についても、同様であると考えられる。そうすると、パキスタンで日本人が被害者として本件と同種の損害賠償請求をし た場合、要件及び効果の点からみて、国賠法と重要な点で異ならないで賠償を受け得ると考えられる。 したがって、相互保証が認められないとはいえない。 ⑿ フィリピンフィリピンにおいては、憲法16条3項において、国はその同意がなければ訴えられることはない旨が定められ、国家無答責の法理が妥当している。 しかし、国家無答責の法理の適用は、無条件、無限定ではなく、国が明示的又は黙示的に訴訟への同意をすることが可能であるほか、個別の事案において裁判所が同法理の適用を制限的に適用又は解釈することもある。同国最高裁判所は、政府そのものが法律に違反する場合には公務員が国の事前の同意なしに訴えられてもよいとの判断を示しており、私人が自己の財産の回復等 を公務員に対して求める裁判上の請求が成立した裁判例が存在する。また、国は合法的な訴えをしている当事者に対しては免責を主張しないことがよくあり、国が訴訟に同意を与えるという例外が今日では一般的な方針となり、その結果、国に対する裁判の提訴が以前より困難でなくなってきたとの見方もされている。 国が責任を負う場合は、国家賠償法のような特別法が存在しないため、民法等の一般法に基づき私人に対する賠償義務を負う。民法では、過失により他人に損害を与えた場合、賠償責任を負うとされ、物に欠陥がある場合に、自らが所有又は使用する物から生ずる結果を修復できない、あるいはその因果関係を避けるために必要な対策を怠ったときは、過失責任が生ずると理解 されている。民法上の賠償の対象となる損害には慰謝料が含まれ、相互保証を条件とすることなく、外国人も賠償を受けるこ その因果関係を避けるために必要な対策を怠ったときは、過失責任が生ずると理解 されている。民法上の賠償の対象となる損害には慰謝料が含まれ、相互保証を条件とすることなく、外国人も賠償を受けることができる。 (弁論の全趣旨)このような、フィリピンにおいては、国家無答責の法理が規定されているものの、その適用範囲は限定される場合もあり、これを絶対視することは相当ではない。国又は公務員の責任については、一般法である民法等が適用さ れるところ、民法では、物に欠陥がある場合の所有者の賠償責任が規定されており、国がその設置・管理する営造物の瑕疵を理由に私人に対して賠償義務を負う可能性は排除されておらず、精神的損害も賠償の対象となり、外国人が被害者の場合に相互保証は条件となっていない。 以上によれば、フィリピンで日本人が被害者として本件と同種の損害賠償請求をした場合、要件及び効果の点からみて、国賠法と重要な点で異ならな いで賠償を受け得ると考えられる。 よって、相互保証が認められないとはいえない。 ⒀ 米国米国においては、不法行為の主体が連邦政府職員である場合には、連邦不法行為請求権法に基づき、国家賠償責任を負うとされている。この国家賠償 責任には、施設所有者・管理者賠償責任も定められており、連邦政府は、連邦政府が所有し、占有し、又はそれに対して管理を及ぼしている不動産上に存在している危険な状況又は活動によって生じた損害について賠償責任を負い得る。この賠償責任は過失責任であり、その具体的要件として、加害行為がされた地の法に照らし、仮に合衆国が私人であったならば、請求人に対し て損害賠償義務を負うといえることが定められている。損害の範囲は、当該不法行為が発生した地の州法によるが、一般的には財産的損害のみならず、精神 、仮に合衆国が私人であったならば、請求人に対し て損害賠償義務を負うといえることが定められている。損害の範囲は、当該不法行為が発生した地の州法によるが、一般的には財産的損害のみならず、精神的苦痛も賠償の対象に含まれうる。外国人が原告となる場合についての特段の規定は存在せず、相互の保証を条件としていない。(乙A137)以上のとおり、米国では、連邦政府が所有するなどしている不動産上の危 険な状況又は活動によって生じた損害について賠償責任を連邦政府が負い得るところ、本件のような飛行場の供用に関連した権利侵害についても、同様であり、仮に米国が私人であったとしても損害賠償義務を負うと考えられる。 そうすると、米国で日本人が被害者として本件と同種の損害賠償請求をした場合、要件及び効果の点からみて、国賠法と重要な点で異ならないで賠償を 受け得ると考えられる。 したがって、相互保証が認められないとはいえない。 ⒁ ベトナムベトナムには国家賠償法が存在するが、公の営造物の設置・管理の瑕疵によって私人に生じた損害の賠償は民事賠償とされており、設置・管理をする法人が民法に基づき賠償責任を負うとされている。そして、民法においては、 高度危険源(機械化された交通輸送手段、送電システム、稼働している製造工場等)の所有者は、高度危険源によって生じた損害を賠償しなければならないとされ、また、環境を汚染し、損害を起こしたときは、賠償をしなければならないとされ、損害賠償の範囲には精神的損害が含まれる。(弁論の全趣旨) 以上のとおり、ベトナムで日本人が被害者として本件と同種の損害賠償請求をした場合、要件及び効果の点からみて、国賠法と重要な点で異ならないで賠償を受け得ると考えられる。 したがって、相互保証が認められないとはいえない。 ムで日本人が被害者として本件と同種の損害賠償請求をした場合、要件及び効果の点からみて、国賠法と重要な点で異ならないで賠償を受け得ると考えられる。 したがって、相互保証が認められないとはいえない。 ⒂ ペルー ペルーにおいては、行政手続一般法260条1項は、一般法及び特別法で定められる責任とは別に、行政機関により直接的に供された行政行為若しくは公的サービスが直接の原因となる行政客体への損害について、各機関は経済的な責任を負う旨を定め、同5項は、補償の範囲について、直接的な損害の他に、機会利益、身体的・精神的ダメージなどその損害を起こした作為や 不作為から生じたその他の結果にも及ぶ旨を定めている。その他、ペルーにおいては、外国人が損害賠償を請求する際の取扱いについての法令等はなく、その要件や賠償されうる損害の範囲に、外国人とペルー人との間に差異はなく、相互の保証を条件としていない。(乙A144)以上のとおり、ペルーにおいて、行政機関により直接的に供された行政行 為が直接の原因となる行政客体への損害について、各機関は経済的な責任を負うのであるから、本件のような飛行場の供用に関連した権利侵害についても、同様であると考えられる。そうすると、ペルーで日本人が被害者として本件と同種の損害賠償請求をした場合、要件及び効果の点からみて、国賠法と重要な点で異ならないで賠償を受け得ると考えられる。 したがって、相互保証が認められないとはいえない。 4 小括よって、外国人原告らについては、いずれの国についても相互の保証がないとはいえず、相互の保証がないとして外国人原告らの請求を棄却すべきとの被告の主張は採用することができない。 第5 争点1-4(将来の損害賠償請求の適法性)について 1 判断継続的不 いとはいえず、相互の保証がないとして外国人原告らの請求を棄却すべきとの被告の主張は採用することができない。 第5 争点1-4(将来の損害賠償請求の適法性)について 1 判断継続的不法行為に基づき将来発生すべき損害賠償請求権については、たとえ同一態様の行為が将来も継続されることが予測される場合であっても、損害賠償請求権の成否及びその額をあらかじめ一義的に明確に認定することができず、具体的に請求権が成立したとされる時点において初めてこれを認定することが でき、かつ、その場合における権利の成立要件の具備については債権者においてこれを立証すべきであり、事情の変動を専ら債務者の立証すべき新たな権利成立阻却事由の発生としてとらえてその負担を債務者に課するのは不当であると考えられるようなものは、将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての適格を有しないものと解するのが相当である。そして、飛行場等にお いて離着陸する航空機の発する騒音等により周辺住民らが精神的又は身体的被害等を被っていることを理由とする損害賠償請求権のうち事実審の口頭弁論終結の日の翌日以降の分については、将来それが具体的に成立したとされる時点の事実関係に基づきその成立の有無及び内容を判断すべきであり、かつ、その成立要件の具備については請求者においてその立証の責任を負うべき性質のも のであって、このような請求権は、将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての適格を有しない(大阪空港最判、厚木基地1次最判、横田基地1・2次最判、横田基地4次最判)。 したがって、厚木基地において離着陸する米軍機及び自衛隊機の発する騒音等により精神的又は身体的被害等を被っていることを理由とする原告らの被告に対する損害賠償請求権のうち事実審の口頭弁論終結の日 。 したがって、厚木基地において離着陸する米軍機及び自衛隊機の発する騒音等により精神的又は身体的被害等を被っていることを理由とする原告らの被告に対する損害賠償請求権のうち事実審の口頭弁論終結の日の翌日以降の分につ いては、その性質上、将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての適格を有しないものというべきである(横田基地4次最判の裁判官上田豊三及び同堀籠幸男の補足意見、厚木基地4次民訴最判の裁判官小池裕の補足意見参照)。 以上によれば、原告らの本件訴えのうち口頭弁論終結の日の翌日(令和5年 11月2日)以降に生ずべき損害の賠償請求に係る部分は、権利保護の要件を欠くものというべきであるから、同部分に係る訴えを却下すべきである。 2 原告らの主張について原告らは、将来の損害賠償請求について大阪空港最判が示した考え方は、民事訴訟法135条の意義を失わせるものであり、いかなる場合に将来の損害賠 償請求が認められるかは、将来生ずる不確定要素の立証の負担を原告、被告いずれに負担させるのが妥当かという利益衡量の問題であり、具体的な事案に応じて判断されるべきであると主張する。 大阪空港最判は、継続的不法行為に基づき将来発生すべき損害賠償請求権に係る訴えの適格性について、①請求権の基礎となるべき事実関係及び法律関係 が既に存在し、その継続が予測されること、②当該請求権の成否及びその内容につき債務者に有利な影響を生ずるような将来における事情の変動が予め明確に予測し得る事由に限られること、③当該事由については請求異議の訴えによりその発生を証明してのみ執行を阻止し得るという負担を債務者に課しても格別不当とはいえないことといった点において期限付債権等と同視し得るような 場合には、将来給付の訴えを許しても格別支障があ りその発生を証明してのみ執行を阻止し得るという負担を債務者に課しても格別不当とはいえないことといった点において期限付債権等と同視し得るような 場合には、将来給付の訴えを許しても格別支障があるとはいえないと判示した。 民事訴訟法135条が将来の給付の訴えについて、「あらかじめその請求をする必要がある場合に限」って認めているのは、およそ将来に生ずる可能性のある給付請求権の全てについて将来の給付の訴えを認める趣旨ではなく、既に権利発生の基礎をなす事実上及び法律上の関係が存在しており、これに基づく具体的な請求権の成立が将来における一定の時期の到来や債権者において立証を 必要としないか又は容易に立証し得る別の一定の事実の発生にかかっているにすぎず、将来具体的な給付義務が成立したときに改めて訴訟により請求権成立の全ての要件の存在を立証することを要しないと考えられるようなものについて、例外として請求を許す趣旨に出たものと考えられる。 このような趣旨からすれば、継続的不法行為における将来請求の可否につい ては、口頭弁論終結時以後における事態の変動に応じて請求異議訴訟を提起する負担をどこまで債務者に負わせるのが公平の理念に沿う解決であるか、という観点から考えるべきものであることは否定できないが、この観点から考えるとしても、少なくとも過去におけるのと同様の被害及び請求権の成否、内容を決定付ける事実の存続が高度の蓋然性をもって予測されるのでなければ、債務 者にとって公平の理念に沿う解決であるとはいえない。 そして、本件についてこれを考えた場合、原告らの主張する損害賠償請求権の成否は、前記第2・1で説示したとおり、諸事情を総合考慮して行われるものであるところ、例えばそのひとつの要素である侵害の程度に係る事情である厚木飛行場を離着 た場合、原告らの主張する損害賠償請求権の成否は、前記第2・1で説示したとおり、諸事情を総合考慮して行われるものであるところ、例えばそのひとつの要素である侵害の程度に係る事情である厚木飛行場を離着陸する航空機の発する騒音等の状況は、その時々の国際情勢 や我が国の防衛力の整備状況等に応じて常に変動する可能性を有するもので、原告らに相当の被害を及ぼす程度に継続することが高度の蓋然性をもって予測できるとは直ちにいい難く、現に岩国移駐により、騒音状況に変化がみられている。また、その他の考慮要素についても、様々な事情によって変動し得る複雑な要素に係るものもある。そうすると、そもそも騒音状況の継続が高度の蓋 然性をもって予測できないだけでなく、これまで同種事案の判決において75W以上の区域に居住する原告らに対する侵害行為について受忍限度を超える違法なものであるという判断が積み重ねられてきたとしても、今後も同じような基準で受忍限度の範囲が画されるかどうかも明確であるとはいい難い。しかも、違法性が認められた場合の損害額についても明確な具体的基準によって定まるものではなく、上記諸事情を考慮して定められるべき性質のものというべきで ある。 このように考えると、原告らの主張する損害賠償請求権は、それが成立したとされる時点の事実関係に基づいて事後的に判断すべき性質のものであり、このような請求権について将来請求を認め、これについて請求異議訴訟を提起する負担を債務者に負わせることは、公平の観点からも相当ではないというべき である。 また、原告らは、大阪空港最判の考え方を前提としても、厚木飛行場周辺における航空機騒音の被害については、これまでに4次にわたる確定判決により損害賠償請求が認容されており、長期にわたって継続しているのであって、厚 は、大阪空港最判の考え方を前提としても、厚木飛行場周辺における航空機騒音の被害については、これまでに4次にわたる確定判決により損害賠償請求が認容されており、長期にわたって継続しているのであって、厚木飛行場が軍用飛行場として使用及び供用されている以上、侵害行為が容易に 解消されることはないなどして、原告らの主張する損害賠償請求権について、将来給付の訴えが許されると主張する。 しかし、厚木飛行場が軍用飛行場として使用及び供用されている以上、周辺住民に一定の騒音被害が生ずることが予測されるとしても、同飛行場を離着陸する航空機の発する騒音の状況は、常に変動する可能性を有するものであり、 原告らに相当の被害を及ぼす程度に継続することなどが高度の蓋然性をもって予測できるとは直ちにいい難いことは前記のとおりである。大阪空港最判は、そのような事情を踏まえて、飛行場を離着陸する航空機の発する騒音等による周辺住民の損害賠償請求権は、その性質上、将来の給付の訴えを提起することができる請求権としての適格を有しないものと判断したものと解される(厚木 基地4次民訴最判の裁判官小池裕の補足意見参照)。 したがって、原告らの上記主張は前記1で挙げた判例に反するもので採用することができない。 第6 死亡した差止請求原告らによる本件差止請求及び本件協議請求に係る訴えについて甲E1及び弁論の全趣旨によれば、別紙3(死亡差止請求原告目録)記載の原 告ら(以下「死亡差止請求原告ら」といい、以下で単に「差止請求原告ら」という場合、死亡差止請求原告らを除く差止請求原告らを指す。)は、同別紙記載の死亡日にそれぞれ死亡したことが認められる。差止請求原告らの本件差止請求に係る請求権及び本件協議請求に係る請求権は、いずれも人格権に基づくものであり、これは 差止請求原告らを指す。)は、同別紙記載の死亡日にそれぞれ死亡したことが認められる。差止請求原告らの本件差止請求に係る請求権及び本件協議請求に係る請求権は、いずれも人格権に基づくものであり、これは請求権者の一身に専属する権利であって相続の対象となり得な いものと解される。したがって、本件訴訟のうち、死亡差止請求原告らによる本件差止請求に関する部分並びに本件協議請求に関する部分は、死亡差止請求原告らの死亡により当然に終了したというべきである。 したがって、本件訴訟のうち上記各請求に関する部分は、死亡差止請求原告らの死亡により終了したことを宣言することとする。 第7 争点2-1(自衛隊機に係る本件差止請求の適法性)について 1 判断差止請求原告らは、被告に対し、自衛隊機に係る厚木飛行場の使用により、①毎日午後8時から翌日午前8時までの間、航空機騒音、エンジン作動音その他一切の騒音をその居住地に到達させること、②施設庁方式によるW値が75 を超える航空機騒音をその居住地に到達させることの差止めを求めている。 しかしながら、自衛隊機に係る本件差止請求は、必然的に防衛大臣にゆだねられた自衛隊機の運航に関する行政上の権限の行使の取消変更又はその発動を求める請求を包含するものであるから、民事上の請求としては不適法であるというべきである。 すなわち、防衛大臣は、自衛隊に課せられた我が国の防衛等の任務の遂行のため自衛隊機の運航を統括し、その航行の安全及び航行に起因する障害の防止を図るため必要な規制を行う権限を有する(自衛隊法107条5項)ところ、自衛隊機の運航はこのような防衛大臣の権限の下において行われるものである。 そして、自衛隊機の運航にはその性質上必然的に騒音等の発生を伴うものであり、防衛大臣は、当該騒音等による 07条5項)ところ、自衛隊機の運航はこのような防衛大臣の権限の下において行われるものである。 そして、自衛隊機の運航にはその性質上必然的に騒音等の発生を伴うものであり、防衛大臣は、当該騒音等による周辺住民への影響にも配慮して自衛隊機の 運航を規制し、統括すべきであるが、自衛隊機の運航に伴う騒音等の影響は飛行場周辺に広く及ぶことが不可避であるから、自衛隊機の運航に関する防衛大臣の権限の行使は、その運航に必然的に伴う騒音等について周辺住民の受忍を義務付けるものといわざるを得ない。そうすると、当該権限の行使は、当該騒音等により影響を受ける周辺住民との関係において、公権力の行使に当たると いうべきである。(厚木基地1次最判)したがって、差止請求原告らの自衛隊機に係る本件差止請求に係る訴えは、不適法であり、その余の点について判断するまでもなく、却下を免れない。 2 差止請求原告らの主張について差止請求原告らは、自衛隊機に係る本件差止請求は、手段を特定せずに騒音 到達という結果の防止を求める抽象的不作為請求であり、その実現方法は被告に委ねられており、公権力の行使に関する判断を求めておらず、厚木基地1次最判の射程は及ばないと主張する。 確かに、差止請求原告らの自衛隊機に係る本件差止請求は、自衛隊機に係る航空機騒音を原告らの居住地に到達させることの差止めを求めるものであり、 航空機の離着陸の禁止等を直接求めるものではなく、被告が、防衛大臣の自衛隊機の運航に関する上記権限とは関わりのない手段によって本件差止請求を実現することを否定するものではない。しかし、航空機が空中を飛行して騒音を発生させる以上、例えば厚木基地自体に防音設備を設けたとしても、飛行中の騒音を軽減させることはできないのであり、防衛大臣の自衛隊機の運航に関す するものではない。しかし、航空機が空中を飛行して騒音を発生させる以上、例えば厚木基地自体に防音設備を設けたとしても、飛行中の騒音を軽減させることはできないのであり、防衛大臣の自衛隊機の運航に関す る権限とは関わりのない手段、すなわち自衛隊機の運航に関わりのない手段で自衛隊機に係る本件差止請求を実現する方法としては、騒音源となり得る厚木飛行場を離着陸する可能性のある全ての自衛隊機の静粛化を進めるしかないことは明らかである。 そして、自衛隊機に係る本件差止請求のうち、毎日午後8時から翌日午前8時までの間、航空機騒音等その他一切の騒音を原告らの居住地に到達させるこ とを禁じることは、事実上、その間の自衛隊機の運航を禁じることと等しいものである。 また、自衛隊機に係る本件差止請求のうち、一定の騒音(75W)を超えることとなる騒音を原告らの居住地に到達させることを禁じるものについても、これを実現するとすれば、自衛隊機の運航を制限するか、自衛隊機の静粛化を 進めるという方法によるしかないものと考えられるが、前記第1・3⑴イのとおり、騒音の基準に適合した有効な耐空証明を受ける義務等が免除されるなど、自衛隊機については自衛隊に求められる任務を遂行するために必要な性能が優先され、騒音量の大きいものがあることを自衛隊法も認めていることなどからして、現時点で航空機自体の静粛化でこれを実現する手段はおよそ想定できな い。 このように、自衛隊機に係る本件差止請求に関する航空機騒音の規制を実現するには、自衛隊機の運航の回数の制限等の措置を講ずる必要があるのであって、そのことは、結局のところ、防衛大臣に委ねられた自衛隊機の運航に関する権限の行使の取消変更ないしその発動を求めることに帰着する。 したがって、自衛隊機に係る本件差止 る必要があるのであって、そのことは、結局のところ、防衛大臣に委ねられた自衛隊機の運航に関する権限の行使の取消変更ないしその発動を求めることに帰着する。 したがって、自衛隊機に係る本件差止請求は、その実質において、防衛大臣の有する自衛隊機の運航に関する行政上の権限の行使の取消変更又はその発動を求めるものにほかならないから、差止請求原告らの上記主張は採用することができない。 第8 争点2-2(米軍機に係る本件差止請求の適否)について 1 認定事実本争点に関して証拠により認定できる事実等は次のとおりである。 ⑴ 関係する条約ア日米安保条約6条日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が 日本国において施設及び区域を使用することを許される。 前記の施設及び区域の使用並びに日本国における合衆国軍隊の地位は、1952年2月28日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第3条に基く行政協定(改正を含む。)に代わる別個の協定及び合意される他の取極により規律される。 イ日米地位協定(ア)2条1項(a)合衆国は、相互協力及び安全保障条約第6条の規定に基づき、日本国内の施設及び区域の使用を許される。個個の施設及び区域に関する協定は、第25条に定める合同委員会を通じて両政府が締結しなければなら ない。「施設及び区域」には、当該施設及び区域の運営に必要な現存の設備、備品及び定着物を含む。 (イ)2条4項(b)合衆国軍隊が一定の期間を限って使用すべき施設及び区域に関しては、合同委員会は、当該施設及び区域に関する協定中に、適用があるこ の協定の規定の範囲を明記しなければならない。 条4項(b)合衆国軍隊が一定の期間を限って使用すべき施設及び区域に関しては、合同委員会は、当該施設及び区域に関する協定中に、適用があるこ の協定の規定の範囲を明記しなければならない。 (ウ)3条3項合衆国軍隊が使用している施設及び区域における作業は、公共の安全に妥当な考慮を払って行なわなければならない。 ⑵ 厚木飛行場区域の返還及びその使用に関連する事実 ア被告は、昭和46年6月24日、日米合同委員会の下部組織である施設特別委員会において、厚木飛行場区域の使用転換に関し、厚木飛行場区域「は、米側航空機の米軍専用区域への出入りのため、及びその他の運航上の必要のために使用される」こと、日米地位協定の関連ある規定は、米軍機が厚木飛行場区域を使用する期間適用されることなどを米国と合意し、同月25日、この合意は、日米合同委員会において了承された。 内閣は、同月29日、厚木飛行場区域について、海上自衛隊の管轄管理する施設として、米軍に対しては日米地位協定2条4項(b)の規定の適用のある施設及び区域として一時使用を認める旨を閣議決定した。なお、同閣議決定においては、この使用について、米側航空機による米軍専用区域への出入のため及びそれに関連したその他の運航上の必要を満たすた めに使用されるものとされた。 そして、被告及び米国は、同月30日、政府間協定を締結して、厚木飛行場区域を使用転換する旨の合意(以下「使用転換合意」という。)をし、同年7月1日、厚木飛行場区域は我が国に返還され、被告が設置・管理する厚木飛行場となった。(甲A8の3、12~14) イ当時の防衛庁長官は、昭和46年2月27日、衆議院予算委員会において、日米地位協定2条4項(b)の解釈について、「一定の期間を限って使用すべき 場となった。(甲A8の3、12~14) イ当時の防衛庁長官は、昭和46年2月27日、衆議院予算委員会において、日米地位協定2条4項(b)の解釈について、「一定の期間を限って使用すべき施設・区域」とは、米軍の恒常的な使用が認められる通常の施設・区域(同条1項(a))及び日本側が臨時的に使用できる施設・区域(同条4項(a))とは異なり、日本側のものではあるが、米軍の使用が認められ、 その使用する期間が何らかの形で限定されるものをいうとした上で、実情に即すると①年間何日以内など日数を限定して使用を認めるもの、②日本側と調整の上、その都度期間を区切って使用を認めるもの、③米軍の専用する施設・区域への出入りの都度使用を認めるもの、④その他これらに準じて何らかの形で使用期間が限定されるものが一応挙げられるという政府 見解を示していた。 また、当時の外務省アメリカ局長は、昭和48年10月9日の衆議院内閣委員会において、厚木基地の滑走路の使用について、米軍の専用する施設、区域への出入りの都度使用を認めるものという形態に属する日米地位協定2条4項(b)の共同使用形態をとっている旨を答弁した。(争いのない事実、甲A8の1・2) 2 判断差止請求原告らは、人格権に基づき、被告に対し、米軍機に係る厚木飛行場の使用により、①毎日午後8時から翌日午前8時までの間、航空機騒音、エンジン作動音その他一切の騒音をその居住地に到達させること、②施設庁方式によるW値が75を超える航空機騒音をその居住地に到達させることの差止めを 求めている。 差止請求原告らが被告に対して、米軍の行為、すなわち米軍機による(一定以上の)騒音の到達の差止めを求めるには、被告が米軍機の運航等を規制し、制限することのできる立場にあることを要するという いる。 差止請求原告らが被告に対して、米軍の行為、すなわち米軍機による(一定以上の)騒音の到達の差止めを求めるには、被告が米軍機の運航等を規制し、制限することのできる立場にあることを要するというべきである。 前記1⑵アのとおり、被告は、使用転換合意により、米国との間で、厚木飛 行場について、米軍機の米軍専用区域への出入りのため及びその他の運航上の必要のために使用されることを合意しており、厚木飛行場に係る被告と米国との法律関係は日米安保条約及び日米地位協定2条4項(b)に基づくものである。したがって、被告は、条約ないしこれに基づく国内法令に特段の定めのない限り、米軍の厚木飛行場の管理運営の権限を制約し、その活動を制限するこ とはできない。(厚木基地1次最判、横田基地1・2次最判)そして、使用転換合意のほかに日米の条約ないしこれに基づく国内法令において、米軍による厚木飛行場の使用の制限を認めたと解される定めはない。米軍の我が国への駐留目的は、日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与すること(日米安保条約6条)という、広範囲に 及ぶものである。そうすると、日米合同委員会の合意内容であるところの、米軍専用区域への出入りのため及びその他の運航上の必要のためとの意味は、このような米軍の駐留目的に沿って用いられる厚木基地の米軍専用区域の使用に関するものであるか、その他駐留目的に沿って運航上の必要が認められるものであれば足りると解される。このように米軍による厚木飛行場の使用が広範に認められている以上、米軍が厚木飛行場を使用しようとする場合に、防衛大臣 がその是非を検討して場合によってはこれを拒否し得るなどということが日米両政府間の協定において予定されていたとは解されない。そうである以上、防衛 が厚木飛行場を使用しようとする場合に、防衛大臣 がその是非を検討して場合によってはこれを拒否し得るなどということが日米両政府間の協定において予定されていたとは解されない。そうである以上、防衛大臣が米軍に厚木飛行場の使用を許可しないことはできないというべきである。 そうすると、差止請求原告らが米軍機による(一定以上の)騒音の到達の差 止めの請求は、被告の支配の及ばない第三者の行為の差止めを請求するものというべきであるから、その余の点について判断するまでもなく、主張自体失当として棄却を免れないというべきである。 3 差止請求原告らの主張について⑴ 差止請求原告らは、米軍機に係る本件差止請求が抽象的不作為請求であり、 何ら米軍の行為を問題としておらず、そもそも米軍の行為についての被告の支配可能性を問題とすることが誤っていると主張する。 しかし、前記第7・2で説示したとおり、差止請求原告らの求める騒音の到達禁止及び音量規制を実現するためには、航空機騒音の性質上、航空機自体の静粛化を進めるか、米軍機の運航自体を制限するしかない。 したがって、米軍機に係る本件差止請求は、必然的に被告において米軍機の運航等を規制し、制限することのできる立場にあることを前提とせざるを得ないから、差止請求原告らの上記主張は採用することができない。 ⑵ア差止請求原告らは、①我が国に駐留する米軍に対して領域主権の原則が妥当するほか、日米地位協定の構造等からして、米軍や米軍に提供する施 設・区域には日本国法令が適用されること、②厚木飛行場区域について、日米地位協定2条4項(b)に基づいて提供される施設・区域であり、その具体的性質が、米軍の専用する施設・区域への出入りの都度使用を認める類型に当たり、これは出入りのため及びそれに 行場区域について、日米地位協定2条4項(b)に基づいて提供される施設・区域であり、その具体的性質が、米軍の専用する施設・区域への出入りの都度使用を認める類型に当たり、これは出入りのため及びそれに関連した使用のみを許しているとして、米軍専用区域への出入目的以外の使用を許さないことができ、米軍専用区域への出入目的であっても、米軍による使用が国民の基本 的人権を侵害するような結果を生じる場合、法令上の根拠なく私権を制限する結果となるような場合には、国民との関係において、そのような使用を許可してはならない義務を負うから、被告は米軍に対してこのような使用を許さないことができることを指摘して、米軍ないし米国は、被告の支配の及ばない第三者ではないと主張する。 しかし、領域主権の原則を前提にするとしても、我が国に駐留する米軍の地位は、我が国と米国との条約に基づくものであり、条約及び日米間の政府間協定において、防衛大臣がその権限に基づいて米軍機の使用を制限することが予定されているとは解されないのは前記説示のとおりである。 イ差止請求原告らは、他国の地位協定も駐留外国軍隊に受入国内法令を適 用していると主張する。しかし、ある国が他国の軍隊を駐留させる場合、駐留する軍隊の地位は、受入国と駐留国との条約(地位協定)によって決められることになるものであり、その内容は、駐留目的、当該国家間の関係、国際情勢等によって定められるものであるから、他国間の地位協定の内容から直ちに我が国と米国との日米地位協定の内容を解釈することがで きるものではない。 ⑶ 差止請求原告らは、日米地位協定3条3項に基づき、米軍は、日本の法令が公共の安全のために定める基準を遵守することが求められると主張する。 しかし、これは、米軍に、我が国の公共 い。 ⑶ 差止請求原告らは、日米地位協定3条3項に基づき、米軍は、日本の法令が公共の安全のために定める基準を遵守することが求められると主張する。 しかし、これは、米軍に、我が国の公共の安全に対する妥当な配慮を求めるものにすぎず、これをもって、米軍が受忍限度を超える騒音を発生させる ような航空機の運航を禁じられているとか、そのような運航に係る厚木飛行場の使用を防衛大臣が拒否し得るということはできず、差止請求原告らの上記主張は採用することができない。 第9 争点3-1(本件協議請求の適法性)について 1 判断差止請求原告らは、被告に対し、本件差止請求が実現されるまでの間、厚木 飛行場の使用について、米国との間で本件差止請求の内容の実現のための協議を行うよう求めている。 しかしながら、本件協議請求は、憲法上、内閣の職務とされている外交関係を処理すること(憲法73条2号)に係る請求であるところ、外交関係の処理は、内閣において、国内外の情勢等の諸般の事情を総合的に勘案して、交渉を すべきか否か、その時期及びその交渉の進め方や内容等を決定すべき事柄であり、政治問題であることは明らかであって、裁判所の判決により、被告に対し、特定の事案について、外国との外交交渉をすべきことを命じることは、内閣に与えられた外交関係の処理に関する権限との関係で、司法権の限界を超えるというべきであるから、不適法として却下を免れない。 2 差止請求原告らの主張について差止請求原告らは、本件協議請求は特定の結果を求めるものではなく、外交交渉を被告に課したとしても不利益が生じず、司法権の限界を超えるものではないと主張する。 しかし、外交交渉は、その申入れをするかしないかについても、他国や関係 国にどの のではなく、外交交渉を被告に課したとしても不利益が生じず、司法権の限界を超えるものではないと主張する。 しかし、外交交渉は、その申入れをするかしないかについても、他国や関係 国にどのような影響を与えるかを十分に考慮して行うべきものであり、特定の事案について外交交渉をすべき義務の存在を司法権が認めること自体が、司法権の限界を超えるものであることは明らかである。 しかも、前記第8・3⑴で説示したように、米軍機騒音の低減を求めることは必然的にその運航の制限を求めることを伴うことになるから、米国の防衛戦 略等に影響を与える可能性があり、そのこと自体、高度な政治問題であるといわざるを得ない。 そうである以上、内閣に与えられた外交関係の処理に関する権限にかかわらず、裁判所が、被告に対して、米国との間で特定の事項について外交交渉をすべきことを命じることは司法権の限界を超えるものである。 第5章結論 よって、原告らの請求に対する当裁判所の判断は次のとおりであるから、それぞれ主文のとおり判決する。 1 差止請求原告らによる本件差止請求のうち、自衛隊機に係るものは不適法であるからその請求に係る訴えは却下し、米軍機に係るものは主張自体失当であるから棄却することとする。 2 差止請求原告らによる本件協議請求は不適法であるから、その請求に係る訴えは却下することとする。 3 原告らの損害賠償請求のうち、将来(令和5年11月2日以降)に生ずべき損害に係る部分は不適法であるから、その請求に係る訴えは却下することとする。 原告らの損害賠償請求のうち、過去(令和5年11月1日以前)に生じた損害に係る部分については、別紙21(損害賠償認容額一覧表)の総計欄記載の金額及びその一部である同別紙の各合計欄記 原告らの損害賠償請求のうち、過去(令和5年11月1日以前)に生じた損害に係る部分については、別紙21(損害賠償認容額一覧表)の総計欄記載の金額及びその一部である同別紙の各合計欄記載の各金額に対する遅延損害金の限度で理由があるから、これらを認容することとし、その余の請求には理由がないから、これらを棄却することとする。 なお、本判決については、過去の損害賠償請求を認容する部分(主文第3項)に限り、仮執行の宣言を付することが相当であり、仮執行免脱の宣言は相当ではないので付さない。ただし、仮執行の宣言の執行開始時期については、本判決が被告に送達された日から14日を経過したときと定めるのが相当である。 4 本件訴訟のうち、死亡差止請求原告らによる本件差止請求及び本件協議請求 に係る部分については、死亡差止請求原告らの死亡により当然に終了した。 横浜地方裁判所第1民事部 裁判長裁判官 岡田伸太 裁判官 向井敬二 裁判官 野田 翼 略語一覧表略語説明等4次民事訴訟平成19年12月17日に提起された第4次の厚木基地騒音訴訟のうちの民事訴訟75W以上の区域75W以上の区域全体75Wの区域75W以上80W未満の区域FCLP空母艦載機の着艦訓練(FieldCarrierLanding 地騒音訴訟のうちの民事訴訟75W以上の区域75W以上の区域全体75Wの区域75W以上80W未満の区域FCLP空母艦載機の着艦訓練(FieldCarrierLandingPractice)ICAO国際民間航空機関(InternationalCivilAviationOrganization)NLPFCLPのうち夜間に実施するもの(NightLandingPractice)WHO世界保健機関WHOガイドライン環境騒音のガイドライン実務的抄録W値WECPNLの値厚木基地厚木海軍飛行場の通称名厚木基地騒音訴訟厚木基地周辺住民が昭和51年以降4次にわたり、厚木基地に離着陸する航空機による騒音等の被害を理由に被告に対して損害賠償等を求めて提訴してきた訴訟の総称厚木基地1次最判最高裁昭和62年(オ)第58号平成5年2月25日第一小法廷判決・民集47巻2号643頁厚木基地4次民訴最判最高裁平成27年(受)第2309号同28年12月8日第一小法廷判決・集民254号35頁厚木基地4次行訴最判最高裁平成27年(行ヒ)第512号、513号同28年12月8日第一小法廷判決・民集70巻8号1833頁厚木飛行場厚木基地の一部に被告が設置した海上自衛隊の飛行場厚木飛行場区域別紙7(厚木基地図面)の赤斜線部分。263万9157㎡の土地及びその上の建物等 移転措置生活環境整備法5条1項、2項に基づく、第二種区域にその指定の際現に所在する建物等の所有者が当該建物等を同区域外に移転し、又は除却するときに、当該建物等の所有者に対し、当該移転又は除却により通常生ずべき損失を補償し、第二種区域に所在する土地の所有者が当該土地の買入れを申し出るときに、当該 該建物等を同区域外に移転し、又は除却するときに、当該建物等の所有者に対し、当該移転又は除却により通常生ずべき損失を補償し、第二種区域に所在する土地の所有者が当該土地の買入れを申し出るときに、当該土地の買入れ等をするもの岩国移駐厚木基地に所属する米海軍第5空母航空団を岩国飛行場へ移駐すること大阪空港最判最高裁昭和51年(オ)第395号同56年12月16日大法廷判決・民集35巻10号1369頁外国人原告ら外国人である原告ら環境基準昭和48年環境基準及び現行環境基準の総称環境基準方式ICAO提案のW値の算定方式を修正した、環境基準におけるW値の算定方式行訴法行政事件訴訟法現行環境基準平成19年環境省告示第114号による改正後の「航空機騒音に係る環境基準について」国賠法国家賠償法差止請求原告ら別紙2(差止請求原告目録)記載の原告ら参照値低周波音手引書における物的苦情に関する参照値と心身に係る苦情に関する参照値自衛隊機自衛隊の使用する航空機施設庁方式環境基準方式を修正した、被告が防衛施設について用いているW値の算定方式死亡差止請求原告ら別紙3(死亡差止請求原告目録)記載の原告ら使用転換合意昭和46年6月30日の厚木飛行場区域を使用転換する合意昭和48年環境基準平成19年環境省告示第114号による改正前の「航空機騒音に係 る環境基準について」生活環境整備法防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律騒音規制合意昭和38年9月19日の日米合同委員会における厚木基地周辺の米軍の活動に伴う騒音についての合意(昭和44年の改正を含む)損害賠償請求期間本件訴訟において損害賠償請求の対象とされた期間。具体的には第1事件については平成26 同委員会における厚木基地周辺の米軍の活動に伴う騒音についての合意(昭和44年の改正を含む)損害賠償請求期間本件訴訟において損害賠償請求の対象とされた期間。具体的には第1事件については平成26年8月4日から、第2事件については同年12月1日から、第3事件については平成27年5月1日からの各期間。 低周波音手引書低周波音問題対応の手引書日米安保条約日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約日米共同使用区域別紙7(厚木基地図面)の黄色部分。117万8779㎡の土地及びその上の建物等日米行政協定日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第3条に基く行政協定日米地位協定日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定米海軍アメリカ合衆国海軍米軍アメリカ合衆国軍隊米軍機米軍の使用する航空機米軍専用区域別紙7(厚木基地図面)の青色部分米国アメリカ合衆国平成16年度騒音コンター図平成15年度から平成16年度にかけて実施した調査等に基づいて作成された騒音コンターを示した図面平成30年ガイドライン平成30年にWHO欧州事務局が公表した「欧州地域向けの環境騒音ガイドライン」 本件協議請求請求の趣旨第2項の請求本件告示コンター図平成18年告示等に基づき、平成18年1月末日時点で第一種区域等の範囲が示された図面本件差止請求請求の趣旨第1項の請求みなし区域みなし第二種区域及びみなし第三種区域の総称横田基地1・2次最判最高裁昭和63年(オ)第611号平成5年2月25日第一小法廷判決・集民167号359頁横田基地4次最判 最高裁平成18年 し第二種区域及びみなし第三種区域の総称横田基地1・2次最判最高裁昭和63年(オ)第611号平成5年2月25日第一小法廷判決・集民167号359頁横田基地4次最判 最高裁平成18年(受)第882号同19年5月29日第三小法廷判決・集民224号391頁夜間騒音ガイドライン欧州夜間騒音ガイドライン(実務的概要)令和2年度分布図令和元年度及び令和2年度に実施した騒音状況の調査に基づいて作成された厚木基地周辺地域における5WごとのW値の分布を示す図面以上

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