平成25年6月20日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成23年(ワ)第15297号不正競争行為差止等請求事件口頭弁論終結日平成25年4月23日判決当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由第1 当事者の求めた裁判 1 原告(1) 被告株式会社ティー・エー・ティーは,別紙標章目録記載1の標章を使用して金属加工機械,工作機械,分析機器,測定機器,機械工具を販売し又は「」,「 社代理店」,「 社総輸入元」,「ベルグ社代理店」,「ベルグ社総輸入元」,その他(ベルグ・ウント・ツェーオー・ゲーエムベーハー・シュパンテクニック。以下「ベルグ社」という。)の代理店である旨を表示して金属加工機械,工作機械,分析機器,測定機器,機械工具を輸出し,輸入し,売買し若しくは加工する業務を行ってはならない。 (2) 被告株式会社ティー・エー・ティーは,別紙標章目録記載2の標章を使用して金属加工機械,工作機械,分析機器,測定機器,機械工具を販売し又は「 社代理店」,「 社総輸入元」,「 社代理店」,「シュミット社総輸入元」,その他(シュミット・ インダストリーズ・インク。以下「シュミット社」という。)の代理店である旨を表示して金属加工機械,工作機械,分析機器,測定機器,機械工具を輸出し,輸入し,売買し若しくは加工する業務を行ってはならない。 (3) 被告株式会社ワイエムティーは,別紙標章目録記載1の標章を使用して金属加工機械,工 ,工作機械,分析機器,測定機器,機械工具を輸出し,輸入し,売買し若しくは加工する業務を行ってはならない。 (3) 被告株式会社ワイエムティーは,別紙標章目録記載1の標章を使用して金属加工機械,工作機械,分析機器,測定機器,機械工具を販売し又は「」,「 社代理店」,「 社総輸入元」,「ベルグ社代理店」,「ベルグ社総輸入元」,その他ベルグ社の代理店である旨を表示して金属加工機械,工作機械,分析機器,測定機器,機械工具を輸出し,輸入し,売買し若しくは加工する業務を行ってはならない。 (4) 被告株式会社ティー・エー・ティーは,別紙ウェブサイト目録記載1のウェブサイトから別紙標章目録記載の各標章を削除せよ。 (5) 被告株式会社ワイエムティーは,別紙ウェブサイト目録記載2のウェブサイトから別紙標章目録記載1の標章を削除せよ。 (6) 被告らは,原告に対し,連帯して1億円及びこれに対する平成22年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (7) 訴訟費用は被告らの負担とする。 (8) 仮執行宣言 2 被告ら(1) 原告の請求をいずれも棄却する。 (2) 訴訟費用は原告の負担とする。 第2 事案の概要 1 前提事実(証拠等の掲記がない事実は当事者間に争いがない。)(1) 当事者原告は,「機械及び電気関係の技術コンサルタント・調査並びにサービス業」等を目的とする会社である。 被告株式会社ティー・エー・ティー(以下「被告ティー・エー・ティー」! という。)は,「金属加工機械,工作機械,分析機器,測定機器,機械工具の輸出入,売買,加工,リース及びそれらの仲介業務」等を目的とする会社であり,被告P1は,その代表取締役である。 被告株式会社ワイエムティー(以下「被告ワイエムティー」という。 ,測定機器,機械工具の輸出入,売買,加工,リース及びそれらの仲介業務」等を目的とする会社であり,被告P1は,その代表取締役である。 被告株式会社ワイエムティー(以下「被告ワイエムティー」という。)は,「工具,工作機械及びそれらの周辺機器の設計,製造並びに販売」等を目的とする会社であり,被告P2は,その代表取締役である。 (2) 原告とベルグ社及びシュミット社との取引アベルグ社との取引ベルグ社は,ドイツ連邦共和国ノルトライン=ヴェストファーレン州ビーレフェルト市に本店を置き,「」の商標及び別紙標章目録記載1の標章を用いて機械,器具及び電気機器等を製造,販売する会社である。 原告は,昭和48年から,ベルグ社との間で,同社の製品を日本国内に輸入し,販売する取引を開始した(甲19)。 イシュミット社との取引シュミット社は,アメリカ合衆国オレゴン州ポートランド市に本店を置き,「」の商標及び別紙標章目録記載2の標章を用いて工作機械,測定機器及び機械工具等を製造,販売する会社である。 原告は,平成9年頃から,シュミット社との間で,同社の製品を日本国内に輸入し,販売する取引を開始した(甲6)。 (3) 被告P1の原告への入社と代表取締役への就任被告P1は,平成18年,原告に入社し(被告P1本人尋問の結果,乙3),平成20年11月19日,原告の代表取締役に就任した。 (4) 被告P1が被告ワイエムティーを原告の中部地区代理店としたこと被告P1は,平成21年9月頃,被告ワイエムティーを原告の中部地区代理店とした(乙3)。 (5) 被告P1の原告代表取締役からの退任"被告P1は,P3(原告の現在の代表者)に対し,平成22年1月6日,原告の代表取締役を同年2月5日付けで辞任する旨の申出をし とした(乙3)。 (5) 被告P1の原告代表取締役からの退任"被告P1は,P3(原告の現在の代表者)に対し,平成22年1月6日,原告の代表取締役を同年2月5日付けで辞任する旨の申出をし(甲29),同日,原告の代表取締役を辞任により退任した。 (6) 原告とシュミット社及びベルグ社との取引関係の終了シュミット社は平成22年1月26日付けで(甲31-2),ベルグ社は同月29日付けで(甲31-1),いずれも,原告に対し,同年2月末日をもって原告との取引関係を終了させる旨の通知をした。 (7) 被告らの行為ア被告P1及び被告ティー・エー・ティー被告P1は,平成22年2月10日,被告ティー・エー・ティーを設立し,被告ティー・エー・ティーは,ベルグ社及びシュミット社と日本国内における代理店契約を締結して,両社の製品を輸入販売している。また,別紙ウェブサイト目録記載1のウェブサイトにおいて,別紙標章目録記載1及び2の標章(以下「本件標章1」及び「本件標章2」といい,併せて「本件各標章」という。)を使用している。 イ被告P2及び被告ワイエムティー被告ワイエムティーは,ベルグ社の許諾を得て,日本国内に輸入された同社の製品を販売しており,別紙ウェブサイト目録記載2のウェブサイトにおいて本件標章1を使用している。 2 原告の請求原告は,被告らに対し,以下の各請求をしている。 ① 被告ティー・エー・ティーの行為が不正競争防止法2条1項1号の不正競争に当たるとして,被告ティー・エー・ティーに対し,同法3条に基づき,本件各標章,その他のベルグ社及びシュミット社の代理店である旨の表示(以下,本件標章1とベルグ社の代理店である旨の表示を併せたものを「本件表示1」,本件標章2とシュミット社の代理店である旨の表示を併せた 各標章,その他のベルグ社及びシュミット社の代理店である旨の表示(以下,本件標章1とベルグ社の代理店である旨の表示を併せたものを「本件表示1」,本件標章2とシュミット社の代理店である旨の表示を併せたものを#「本件表示2」,これらを併せて「本件各表示」という。)の使用差止め(前記第1の1(1),同(2))並びに本件各標章の別紙ウェブサイト目録記載1のウェブサイトからの削除(同(4))② 被告ワイエムティーの行為が不正競争防止法2条1項1号の不正競争に当たるとして,被告ワイエムティーに対し,同法3条に基づき,本件表示1の使用差止め(前記第1の1(3))及び本件標章1の別紙ウェブサイト目録記載2のウェブサイトからの削除(同(5))③ 被告ティー・エー・ティー及び被告ワイエムティーに対しては不正競争防止法4条,民法719条に基づき,被告P1に対しては会社法423条又は民法709条,719条に基づき,被告P2に対しては民法709条,719条に基づき,連帯して,一部金請求として1億円の損害賠償及びこれに対する平成22年3月1日(原告と,ベルグ社及びシュミット社との間の取引が終了した日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(前記第1の1(6)) 3 争点(1) 不正競争防止法2条1項1号に基づく請求に係る争点ア本件各表示が原告の営業表示として需要者の間に広く認識されているものであるか (争点1-1)イ混同のおそれの有無 (争点1-2)(2) 会社法423条1項又は民法709条に基づく請求に係る争点ア被告P1がベルグ社及びシュミット社に対し原告との取引関係を終了するように働きかけたか等 争点1-2)(2) 会社法423条1項又は民法709条に基づく請求に係る争点ア被告P1がベルグ社及びシュミット社に対し原告との取引関係を終了するように働きかけたか等 (争点2-1)イ被告P1が原告の取締役退任前に競業行為をしたか (争点2-2)ウ被告ティー・エー・ティーの行為が被告P1の競業避止義務違反に当たるか (争点2-3)エ上記アからウまでの行為を理由とする不法行為の成否 (争点2-4)$(3) 損害額等 (争点3)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1-1(本件各表示が原告の営業表示として需要者の間に広く認識されているものであるか)について【原告の主張】以下のとおり,本件各表示は原告の営業表示として需要者の間に広く認識されているものである。 (1) 本件表示1ア原告は,ベルグ社との間で,昭和48年頃,同社の製品を日本国内に輸入し,販売することを内容とする一手輸入販売契約を締結した。その後の37年間,合計1682回にもわたり,日本国内における唯一の総輸入元,総代理店として,ベルグ社の製品を日本国内に輸入し,同社の商標である「」及び本件標章1を使用して販売してきた。 イ原告は,営業活動をするに当たり,取扱製品の製造元として「ドイツ・ベルグ社」などと表示した「経歴書」や「会社案内書」を作成して原告の事業を紹介してきており,これによりベルグ社の総輸入元,総代理店である旨を表示してきた。その結果,原告は,多数の顧客を獲得し,その数は上場会社だけでも30社以上,その他を含めると100社以上にのぼる。 原告は,これらの顧客(需要者)の間 社の総輸入元,総代理店である旨を表示してきた。その結果,原告は,多数の顧客を獲得し,その数は上場会社だけでも30社以上,その他を含めると100社以上にのぼる。 原告は,これらの顧客(需要者)の間で,ベルグ社の日本における総輸入元,総代理店として広く認識されている。 ウ原告は,日刊工業新聞において,複数回にわたり,ベルグ社の日本総代理店であることを示した新聞広告を掲載した。また,原告がベルグ社の新製品の販売を始めた旨の記事が掲載されたこともある。 日刊工業新聞は,日本国内における主要な経済紙であるから,遅くとも上記広告が掲載された平成4年6月頃には,原告がベルグ社の総輸入元,総代理店であることは,需要者の間に広く認識されていた。 %エこれらのことからすれば,本件標章1は,ベルグ社の総輸入元,総代理店である原告自身の営業を表すものであり,原告の営業表示である。 「」,「 社代理店」,「 社総輸入元」,「ベルグ社代理店」,「ベルグ社総輸入元」,その他ベルグ社の代理店である旨の表示も同様である。 (2) 本件表示2ア原告は,シュミット社との間で,平成9年頃,同社の製品を日本国内に輸入し,販売することを内容とする一手輸入販売契約を締結した。その後の13年間,合計169回にもわたり,日本国内における唯一の総輸入元,総代理店として,シュミット社の製品を日本国内に輸入し,同社の商標である「」及び本件標章2を使用して販売してきた。 イ原告は,シュミット社の ブランド製品の日本国内における総輸入元,総代理店として,日本国内の顧客(需要者)に対し,同社の製品を販売してきた。その結果,顧客(需要者)の間に,シュミット社の日本における総輸入元,総代理店として広く認識されて 本国内における総輸入元,総代理店として,日本国内の顧客(需要者)に対し,同社の製品を販売してきた。その結果,顧客(需要者)の間に,シュミット社の日本における総輸入元,総代理店として広く認識されている。 ウこれらのことからすれば,本件標章2は,シュミット社の総輸入元,総代理店である原告自身の営業を表すものであり,原告の営業表示である。 「」,「 社代理店」,「 社総輸入元」,「シュミット社代理店」,「シュミット社総輸入元」,その他シュミット社の代理店である旨の表示も同様である。 (3) 原告とベルグ社及びシュミット社との取引関係が終了していないこと前記のとおり,原告は,ベルグ社及びシュミット社の日本国内における唯一の総輸入元,総代理店であり,長期間かつ継続的に取引を続けてきた。 したがって,原告がベルグ社及びシュミット社との取引関係が今後も継続されると期待することには合理性があり,この期待は法的に保護されるべきものである。また,両社との取引は原告の売上高の大部分を占めるから,両&社との取引が終了すると,原告は深刻な損害を被る。 これらのことからすれば,原告と両社との取引関係は,特段の事情がない限り終了させることができないものであり,本件では上記特段の事情がないから,原告と両社との取引関係は終了していない。 【被告らの主張】(1) 前記【原告の主張】(1)について原告がベルグ社と一手輸入販売契約を締結したこと,ベルグ社の日本国内における唯一の総輸入元,総代理店であるという事実は否認又は知らない。 (2) 前記【原告の主張】(2)について原告がシュミット社と一手輸入販売契約を締結したこと,シュミット社の日本国内における唯一の総輸入元,総代理店である であるという事実は否認又は知らない。 (2) 前記【原告の主張】(2)について原告がシュミット社と一手輸入販売契約を締結したこと,シュミット社の日本国内における唯一の総輸入元,総代理店であるという事実は否認又は知らない。 (3) 本件各表示が原告の営業表示ではないこと等本件各表示は,いずれも原告の営業を表示するものではなく,ベルグ社及びシュミット社の代理店であることを表示するものにすぎない。 しかも,原告は,両社から平成22年2月末日をもって取引関係を終了されており,両社の総輸入元,総代理店ではないから,本件各表示は原告の営業表示ではない。 また,原告が両社から取引関係を終了されたことは,原告の取引先(需要者)の間に広く認識されていることからしても,本件各表示は原告の営業表示として需要者の間に広く認識されているものではない。 (4) 本件各表示が被告らにとって「他人の商品等表示」ではないことア被告ティー・エー・ティー被告ティー・エー・ティーは,ベルグ社及びシュミット社と代理店契約を締結しているから,両社の代理店であることを表示する本件各表示は「他人の商品等表示」ではない。 'イ被告ワイエムティー被告ワイエムティーは,ベルグ社の許諾を得て,日本国内に輸入された同社の製品を販売しており,別紙ウェブサイト目録記載2のウェブサイトにおいて別紙標章目録記載1の標章を使用しているにすぎないから,他人の商品等表示を無断で使用しているものではない。 2 争点1-2(混同のおそれの有無)について【原告の主張】前記1【原告の主張】のとおり,原告がベルグ社及びシュミット社の日本国内における唯一の総輸入元,総代理店であることは,需要者に広く認識されている。 したがって,被告らの行為は, の主張】前記1【原告の主張】のとおり,原告がベルグ社及びシュミット社の日本国内における唯一の総輸入元,総代理店であることは,需要者に広く認識されている。 したがって,被告らの行為は,原告の営業と混同を生じさせるおそれがある。 【被告らの主張】前記1【被告らの主張】のとおり,原告は,ベルグ社及びシュミット社から取引関係を終了され,両社の代理店ではなくなっており,このことは原告の取引先(需要者)の間に広く認識されている。 被告らが本件各表示を使用するに当たり,原告の名称や標章等を使用するなど,原告の営業と誤信させるような行為をしたこともないから,混同を生じさせるおそれはない。 3 争点2-1(被告P1がベルグ社及びシュミット社に対し原告との取引を終了するように働きかけたか等)について【原告の主張】以下のとおり,被告P1は,ベルグ社及びシュミット社に働きかけて,原告との取引を終了させたものであり,これは被告P1の原告に対する取締役としての善管注意義務,忠実義務に違反するものである。 (1) 被告P1がベルグ社及びシュミット社に働きかけたこと被告P1は,平成21年8月頃,被告P2と共謀の上,自らが新会社を設(立するなどして,原告からベルグ社及びシュミット社の日本国内における代理店業務を奪うことを計画した。 被告P1は,平成21年9月頃から平成22年1月頃までの間,ベルグ社及びシュミット社の取締役に対し,原告の株主には会社を存続させる意思も能力もないなどと虚偽の事実を告げ,原告との取引関係を終了させ,原告に対する両社の製品の納入を停止させた。 しかしながら,原告の株主は会社存続の意思を有しており,原告にはベルグ社及びシュミット社の総輸入元,総代理店としての業務を継続する意思も能 終了させ,原告に対する両社の製品の納入を停止させた。 しかしながら,原告の株主は会社存続の意思を有しており,原告にはベルグ社及びシュミット社の総輸入元,総代理店としての業務を継続する意思も能力も現実に存在していた。 (2) 被告P1が,原告の取締役として,原告のベルグ社及びシュミット社との取引を存続させる義務を負っていたことベルグ社及びシュミット社の製品に関する売上げは,原告の売上高の大部分を占めていたから,両社との取引関係が終了すると,原告の経営は成り立たない。 したがって,被告P1は,原告の取締役として,原告のベルグ社及びシュミット社との取引を存続させる義務を負っていたものであり,それにもかかわらず,前記(1)のとおり,原告のベルグ社及びシュミット社との取引関係を終了させたものであるから,取締役としての任務を怠ったものとして損害賠償義務を負う(会社法423条1項)。 【被告P1の主張】原告がベルグ社及びシュミット社との取引関係を終了されたのは,両社の経営判断によるものであり,被告P1が両社に原告との取引関係を終了するように働きかけた事実はない。 4 争点2-2(被告P1が原告の取締役退任前に競業行為をしたか)について【原告の主張】以下のとおり,被告P1は原告の取締役を退任する前に競業行為をしたものであるから,会社法423条1項に基づく損害賠償義務を負う。 (1) 被告P1が被告ワイエムティーを原告の中部地区代理店としたこと被告P1は,平成21年7月頃,被告ワイエムティーを原告の中部地区代理店としたが,原告は,取締役会非設置会社であり,平成21年7月5日から平成22年2月5日までは,被告P1とP4の2名が原告の取締役であったから,代理店契約を締結するに当たっては少なくと 中部地区代理店としたが,原告は,取締役会非設置会社であり,平成21年7月5日から平成22年2月5日までは,被告P1とP4の2名が原告の取締役であったから,代理店契約を締結するに当たっては少なくともP4の同意が必要である(会社法356条1項1号)。 被告P1は,上記同意を得ていなかったから,被告ワイエムティーを代理店としたことは,会社法356条1項1号に違反する違法な競業行為である。 (2) 株式会社ジェイテクトに対する営業行為被告P1は,平成22年2月4日,株式会社ジェイテクト(以下「ジェイテクト」という。)を訪問し,被告P1が原告の代表取締役を退任した後は,被告P1自身がベルグ社製品等に関するアフターサービスの提供をする旨説明した。 また,同月5日,ジェイテクトに対し,原告に対する注文を取り消して,後日,被告P1が設立する代理店に注文するよう指示する電子メールを送信した。 これらの行為は,競業避止義務(会社法356条1項1号)及び忠実義務(同法355条)に違反するものである。 【被告P1の主張】以下のとおり,被告P1が原告の取締役を退任する前に競業行為をしたことはない。 (1) 被告P1が被告ワイエムティーを原告の中部地区代理店としたことそもそも,被告ワイエムティーを原告の中部地区代理店とするということは,被告P1が原告の代表取締役として被告ワイエムティーと販売代理店契約を締結する行為であって,原告との関係で競業取引又は利益相反取引には 当たらない。 また,上記販売代理店契約の締結は,平成21年7月頃,原告の営業活動を補完することを企図し,ベルグ社の了承を得て行ったものであり,何ら違法・不当なものではない。 (2) ジェイテクトに対する営業行為原告のベルグ社及びシュミット社との取 7月頃,原告の営業活動を補完することを企図し,ベルグ社の了承を得て行ったものであり,何ら違法・不当なものではない。 (2) ジェイテクトに対する営業行為原告のベルグ社及びシュミット社との取引が終了されることとなったため,終了後における顧客への対応をしたにすぎず,取引自体も,被告P1が原告の取締役を退任した後にしたものであるから,競業避止義務及び忠実義務に違反するものではない。 5 争点2-3(被告ティー・エー・ティーの行為が被告P1の競業避止義務違反に当たるか)について【原告の主張】以下のとおり,被告ティー・エー・ティーの行為は,被告P1の原告に対する競業避止義務等違反に当たる。 (1) 被告P1が,原告の代表取締役を退任した後も競業避止義務等を負うこと取締役が競業取引による取引先奪取等をした場合,それに至るまでの会社内部の事情や取引開始の経緯,当該取締役の行為が会社の業務に与える影響の度合い等を総合して,その態様が取引通念に反して不当な場合には,当該取締役は,信義則上,取締役の退任後も,競業避止義務,善管注意義務,忠実義務を負う。 (2) 被告P1の被告ティー・エー・ティーにおける代表取締役としての行為が取引通念に反して不当なものであること前記3【原告の主張】のとおり,被告P1は,被告P2と共謀の上,原告から取引先を奪うことを企て,ベルグ社及びシュミット社に働きかけるなどして,原告との取引関係を終了させたものであり,また,両社との取引が中止されると,原告の経営は成り立たない。 !(3) これらのことからすると,被告ティー・エー・ティーの行為(ベルグ社及びシュミット社の代理店としての業務を行うこと)は,被告P1の競業避止義務等の違反に当たる。 【被告P1の主張】取締役 れらのことからすると,被告ティー・エー・ティーの行為(ベルグ社及びシュミット社の代理店としての業務を行うこと)は,被告P1の競業避止義務等の違反に当たる。 【被告P1の主張】取締役を退任した後は,会社に対する競業避止義務,善管注意義務,忠実義務を負うことはない。 そもそも,前記3【被告P1の主張】のとおり,被告P1が,ベルグ社及びシュミット社に働きかけるなどして,原告との取引を終了させた事実もない。 6 争点2-4(不法行為の成否)について【原告の主張】前記3から5までの各【原告の主張】の被告P1の行為によって,原告に対する不法行為が成立する。 被告P2は,前記3【原告の主張】のとおり,被告P1と共謀して原告から取引先を奪ったものであるから,この行為についても,原告に対する不法行為が成立する。 【被告らの主張】前記3から5までの【被告P1の主張】のとおり,被告P1の行為は,何ら違法,不当なものではない。 被告P2が被告P1と共謀して原告から取引先を奪った事実もない。 7 争点3(損害額等)について【原告の主張】原告は,過去10年間にわたるベルグ社製品及びシュミット社製品の輸入販売事業により,合計6億5300万0989円の利益を受けた。 被告らの行為がなければ,原告は少なくとも今後10年以上にわたり上記事業を継続し,同額の利益を受けることができた。 したがって,原告が平成22年4月から今後10年間に受けることのできた"上記利益6億5300万0989円は本件と相当因果関係のある損害である。 【被告らの主張】否認又は知らない。 原告がベルグ社製品及びシュミット社製品を輸入することが不可能となったのは,両社から代理店契約を解除されたこ 件と相当因果関係のある損害である。 【被告らの主張】否認又は知らない。 原告がベルグ社製品及びシュミット社製品を輸入することが不可能となったのは,両社から代理店契約を解除されたことが原因である。 被告らの行為と原告が主張する損害との間に因果関係はない。 第4 当裁判所の判断 1 本件の経緯前提事実に加え,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件の経緯に関する以下の事実を認定することができる。 (1) 被告P1が,原告に入社した後,原告の代表取締役に就任する前の状況(被告P1本人尋問の結果,乙3)ア被告P1の入社した当時の状況被告P1は,平成18年,原告に入社した。原告に入社した当初は,営業を主に担当していたが,平成19年からは,製品の入荷,出荷準備も行うようになった。 当時,原告には,被告P1のほかに,代表取締役であるP5,取締役であるP4(P5の妻),P6,監査役であるP3(P5の子),その他の従業員として,P7,P8,P9(P3の妹)がいた。もっとも,P5は,1週間の内2~4日間(1日当たり約3時間)しか出社しておらず,P4も1か月に1回給料日に出社するのみであり,P3は1年に1,2回しか出社していなかった。 イ P5の死亡とその前後の状況P5は,平成20年9月1日,喘息の発作が原因で心肺停止状態となり,入院後も意識のない状態が続いた。 P4は,同月8日,原告の従業員を集めて,従業員の中から次期社長へ#の立候補者が出ない場合には原告を清算する旨述べた。 P5は,同年11月1日,死亡した。 (2) 被告P1の原告代表取締役への就任等(被告P1本人尋問の結果,甲51,66,乙3)被告P1は,P4から,被告P1が社長にならない場合には原告を清算すると言われ 11月1日,死亡した。 (2) 被告P1の原告代表取締役への就任等(被告P1本人尋問の結果,甲51,66,乙3)被告P1は,P4から,被告P1が社長にならない場合には原告を清算すると言われたことなどから,平成20年11月19日,原告の代表取締役に就任した(原告の株式のうち,P4が70%を,P3が20%を,P9が10%を保有しており,被告P1は保有していなかった。)。 同日,P7が原告の取締役に就任した。 そのころ,取締役兼従業員であったP6が退職したが,その補充はなかった。 (3) 被告P1が被告ワイエムティーを原告の中部地区代理店としたこと(被告P1及び被告P2各本人尋問の結果,乙3)被告P1は,平成21年7月頃,被告ワイエムティーの代表取締役である被告P2と面識を得た。 被告P1は,被告ワイエムティーに対し,同年9月,原告の中部地区代理店になることを依頼して,承諾を受けた。 (4) P7の退職(被告P1本人尋問の結果,乙3)原告の取締役であったP7は,平成21年8月,原告を退職した。 これにより,原告に勤務する者の構成は,代表取締役である被告P1と従業員であるP8(通常勤務)及びP9(通常勤務)となった。なお,取締役であるP4は,高齢及び体調不良のため勤務実態がなく,監査役であるP3は,P4の看病のため,勤務実態がなかった。 (5) 被告P1が原告の代表取締役を辞任した経緯P9は,平成22年1月5日,原告を無断欠勤した(被告P1本人尋問の結果,乙3)。 $被告P1は,同日午後,P3から,「今後の方針等株主提案書01」と題する書面を渡された。その内容は,被告P1及びP8が,P3の妹であるP9を疎外しているなどとして非難した上,P4の自宅を1か月に1回以上訪問して原告の経営について報 今後の方針等株主提案書01」と題する書面を渡された。その内容は,被告P1及びP8が,P3の妹であるP9を疎外しているなどとして非難した上,P4の自宅を1か月に1回以上訪問して原告の経営について報告すること,ダイレクトメール営業をすること,カタログを作ることに直ちに着手することなどを求め,さらにこれらの要求に対し,1週間以内に回答を求めるというものであった。 被告P1は,普段の経営に関与していないP3から一方的に経営に口出しをされたことから,株主であるP3の親族らと良好な関係を継続することは困難であると判断し,翌6日,同年2月5日付けで原告の代表取締役を辞任する旨の通知をした(甲29)。 (6) 原告とシュミット社及びベルグ社との取引関係の終了アベルグ社からP1への取引継続の依頼ベルグ社の代表取締役は,被告P1に対し,平成22年1月21日,原告を退職した後もベルグ社製品を取り扱ってほしい旨の電子メールを送付した(乙3)。 イ原告からベルグ社に対する取引継続の依頼P3は,同月24日,ベルグ社代表取締役と面談した際に,一旦退職したP7(前記(4))が復職することを説明して,原告との取引の継続を求めた(甲51の7頁)。 ウシュミット社との取引の終了シュミット社は,同月26日付けで,P3に対し,同年2月末日をもって,原告に対する販売を中止する旨の通知をした(甲31-2)。 エベルグ社との取引の終了ベルグ社は,同月29日付けで,P3に対し,同年2月末日をもって,原告との関係を終了する旨の通知をした(甲31-1)。 (7) 被告P1の退任と被告ティー・エー・ティーの設立等%被告P1は,平成22年2月5日,原告の代表取締役を辞任により退任し,同月10日,被告ティー・エー・ティーを設立した。 )。 (7) 被告P1の退任と被告ティー・エー・ティーの設立等%被告P1は,平成22年2月5日,原告の代表取締役を辞任により退任し,同月10日,被告ティー・エー・ティーを設立した。 被告ティー・エー・ティーは,ベルグ社及びシュミット社と日本国内における代理店契約を締結し,両社の製品を輸入販売している。被告ワイエムティーは,ベルグ社の許諾を得て,日本国内に輸入された同社の製品を販売している。 2 争点1-1(本件各標章が原告の営業表示として需要者の間に広く認識されているものであるか)について(1) 本件各表示について本件標章1は,ベルグ社の商標であり,本件標章2も,シュミット社の商標である(当事者間で争いがない。)ところ,原告は,これら本件各標章が総輸入元,総代理店である原告自身の営業を表すものであるから,原告の営業表示である旨主張する。 しかしながら,本件各標章について,需要者が原告の営業表示と認識していたことを認めるに足りる主張立証はない。かえって,後記(2)アのとおり,原告は,両社の総代理店であることを明示して営業をしていたことが認められるから,需要者としては,本件各標章について,代理店にすぎない原告の営業表示ではなく,本人であるベルグ社又はシュミット社の商品表示又は営業表示として受け取るものと認められる。 したがって,本件各表示のうち,これら本件各標章についてはベルグ社又はシュミット社の商品表示又は営業表示であり,原告の営業表示とはいえない。 また,前記1(7)のとおり,被告ティー・エー・ティーは,ベルグ社及びシュミット社との間で,日本国内における代理店契約を締結し,両社の製品を輸入販売するに当たり,本件各標章を使用しているのであるから,仮に,原告がベルグ社及びシュミット社との間で日本国内 ベルグ社及びシュミット社との間で,日本国内における代理店契約を締結し,両社の製品を輸入販売するに当たり,本件各標章を使用しているのであるから,仮に,原告がベルグ社及びシュミット社との間で日本国内における独占的排他的な代理&店としての地位を有するとしても,被告ティー・エー・ティーに対して本件各標章の使用差止めを求めることはできないと解される(ベルグ社又はシュミット社に対し,債務不履行責任を追及する余地があるかは別論である。)。 したがって,被告ティー・エー・ティーに対する本件各標章の使用差止め(前記第1の1(1)及び同(2)のうち代理店である表示の使用差止めを除いたもの)及び本件各標章のウェブサイトからの削除(前記第1の1(4))の請求には理由がない。 同様に,被告ワイエムティーは,ベルグ社から許諾を受けて,輸入された同社の製品を日本国内において販売するに当たり,本件標章1を使用しているのであるから,被告ワイエムティーに対する本件標章1の使用差止め(前記第1の1(3)のうち代理店である表示の使用差止めを除いたもの)及び本件標章1のウェブサイトからの削除(前記第1の1(5))の請求にも理由がない。 (2) 本件各表示のうちベルグ社及びシュミット社の代理店である旨の表示が原告の営業表示であるかについてア原告は,ベルグ社及びシュミット社との間で一手輸入販売契約を締結した旨主張する。原告が主張する一手輸入販売契約の内容は必ずしも明らかではないが,両社から日本国内における独占的排他的な代理店としての地位を与えられているから,両社の代理店である旨の表示は原告の営業表示である旨を主張するものと解される。 そこで検討すると,まず,原告とベルグ社及びシュミット社との間では何らの契約書も交わされていない(当事者間に争いがない。 の代理店である旨の表示は原告の営業表示である旨を主張するものと解される。 そこで検討すると,まず,原告とベルグ社及びシュミット社との間では何らの契約書も交わされていない(当事者間に争いがない。なお,このことからすれば法の適用に関する通則法7条の適用はなく,同法8条により原告と両社との法律関係に関する準拠法は日本法であると解される。)。証拠によれば,原告がベルグ社の日本総代理店である旨の記載がある図面(甲57)や,原告がベルグ社の日本総代理店である旨を表示した新聞広告(甲'58)の存在を認めることができるが,これらによっても原告がベルグ社の日本総代理店であることを自称していたことが認められるにすぎない。 また,他の証拠(甲4~7,甲19~21)によれば,原告が,長期間,多数回にわたり,ベルグ社及びシュミット社の製品を日本国内に輸入してきたこと,これまで日本国内において両社の代理店は原告以外に存在しなかったことが認められる。しかしながら,単に,長期間取引を継続してきたことや他に代理店が存在しなかったことから,独占的排他的な代理店としての地位を有するものとまで認めることはできない。 他に上記原告の主張を認めるに足りる証拠はない。 したがって,原告が,両社から日本国内における独占的排他的な代理店としての地位を与えられているから,両社の代理店である旨の表示は原告が独占的に使用することのできる営業表示である旨の上記主張を採用することはできない。 イ仮に,原告に対し,ベルグ社及びシュミット社の製品について独占的排他的な代理店としての地位を与える契約があったとしても,前記1(6)のとおり,原告は,ベルグ社及びシュミット社から,平成22年2月末日をもって,上記契約に係る取引の終了を通知されているのであるから,原告が,第三者 ての地位を与える契約があったとしても,前記1(6)のとおり,原告は,ベルグ社及びシュミット社から,平成22年2月末日をもって,上記契約に係る取引の終了を通知されているのであるから,原告が,第三者に対し,ベルグ社及びシュミット社の代理店である旨の表示の使用の差止めを求めることはできないというべきである。 他方で,前記1(7)のとおり,被告ティー・エー・ティーは,ベルグ社及びシュミット社から代理店としての許諾を受けて,本件各表示を使用し,被告ワイエムティーは,ベルグ社の許諾を得て,日本国内に輸入された同社の製品を販売しているものである。 したがって,原告が,被告ティー・エー・ティーに対し,本件各表示のうちベルグ社及びシュミット社の代理店である旨の表示の使用差止めを求める請求(前記第1の1(1)及び同(2)のうち代理店である表示の使用差止(め)並びに,被告ワイエムティーに対し,本件表示1のうちベルグ社の代理店である旨の表示の使用差止めを求める請求(前記第1の1(3)のうち代理店である表示の使用差止め)にも理由がない。 ウところで,原告は,ベルグ社及びシュミット社との取引関係が終了していないから,本件各表示のうちベルグ社及びシュミット社の代理店である旨の表示が原告の営業表示である旨主張している。両社との取引関係が終了していないとする理由としては,両社との取引関係が長期間かつ継続的なものであったことからすれば,両社との取引関係が今後も継続されると期待することには合理性があり,この期待は法的に保護されるべきものであること,両社との取引が原告の売上高の大部分を占めるものであり,両社との取引が解消されると,原告が深刻な損害を被ることからすれば,原告と両社との間の継続的取引関係は,特段の事情がない限り解除することができない との取引が原告の売上高の大部分を占めるものであり,両社との取引が解消されると,原告が深刻な損害を被ることからすれば,原告と両社との間の継続的取引関係は,特段の事情がない限り解除することができないものであるところ,本件では,上記特段の事情がない旨主張している。 そこで検討すると,証拠(甲31-1,34-1,35)によれば,ベルグ社は,被告P1が原告の代表取締役を退任したことにより,原告とは従前と同様の取引関係の維持を期待することができないと判断して,原告との取引関係を終了させたこと,P3が原告の代表取締役に就任し,P7が原告に復職する旨の説明をしたものの,上記判断を変えられなかったこと(前記1(6)イ)が認められる。 ベルグ社の製品は,その技術的サポートに専門的な知識を有するものであるところ(当事者間で争いがない。),前記1(4)のとおり,被告P1が原告代表取締役を辞任する旨の申出をした当時,原告の従業員として通常の勤務をしていた者は他にP8とP9しかいなかったのであり,そのような状況の下で代表取締役である被告P1が退任することから,原告との取引関係を継続することができないとベルグ社が判断したことについて,取引関係の解消の効果を否定されるような事情があるとはいえない。 シュミット社が原告との取引関係を終了させた理由は,本件記録上,必ずしも明らかではないが,その後,被告ティー・エー・ティーを代理店としていることからも同様の理由によるものであることは優に認定することができる。 したがって,原告とベルグ社及びシュミット社との取引関係は,適法に終了したものであることが認められる。 3 不正競争防止法2条1項1号に基づく請求に係る判断前記2で検討したところからすれば,争点1-2について判断するまでもなく,不正競 の取引関係は,適法に終了したものであることが認められる。 3 不正競争防止法2条1項1号に基づく請求に係る判断前記2で検討したところからすれば,争点1-2について判断するまでもなく,不正競争防止法2条1項1号に基づく原告の請求には理由がない。なお,原告は,被告ティー・エー・ティー及び被告ワイエムティーに対する損害賠償請求との関係でも,同号の不正競争を請求原因としているものと解されるところ,これと前記第3の7【原告の主張】で主張する損害との因果関係もない。 4 争点2-1(被告P1がベルグ社及びシュミット社に対し原告との取引を終了するように働きかけたかなど)について(1) 被告P1がベルグ社及びシュミット社に対し原告との取引を終了するように働きかけたかについて原告は,被告P1が,平成21年9月頃から平成22年1月頃までの間に,ベルグ社及びシュミット社の取締役らに対し,原告の株主には会社を存続させる意思も能力もないなどと虚偽の事実を告げて,ベルグ社及びシュミット社から原告に対する同社製品の納入を停止させた旨主張する。 そこで検討すると,証拠(甲44-2)によれば,被告P1がベルグ社の取締役に対し,平成22年1月15日付けで,電子メールを送信したことが認められる。その内容は,原告の株主が被告P1の辞任を承認したこと,原告の株主の選択肢としては,できるだけ早急に原告を閉鎖するか,被告P1の後任にP7かP3を雇うことであること,被告P1としては,株主に対し原告の閉鎖の決議をさせようとしているが,閉鎖することが皆のため一番よいと考えていることを告げるものである。 これに対して,ベルグ社からは,被告P1に対し,前記1(6)アのとおり,同月21日付けで,原告を退職した後も,ベルグ社の製品を取り扱ってほしい旨の電子メ いと考えていることを告げるものである。 これに対して,ベルグ社からは,被告P1に対し,前記1(6)アのとおり,同月21日付けで,原告を退職した後も,ベルグ社の製品を取り扱ってほしい旨の電子メールが送られ,証拠(甲46-2)によれば,同年2月4日にも,日本での営業を依頼する旨の電子メールが送られたことが認められる。 その一方で,P3は,同年1月24日,ベルグ社の取締役P10と直接面談し,P7の復職や今後の方針などの説明をするとともに,原告との取引の継続を要請したが(甲67),後日,ベルグ社から取引の終了を通知されたことが認められる(甲31-1)。 これらの事実に照らすと,被告P1が,ベルグ社及びシュミット社に対し,虚偽の事実を告げて,取引を終了するよう働きかけたということはできない。 むしろ,ベルグ社及びシュミット社が原告との取引関係を終了させたのは,被告P1が原告の代表取締役を退任すると聞き,ベルグ社自身が,原告との取引の継続に不安を抱き,P3とも直接面談した上,取引の終了を判断したことが理由であると考えられる。 ところで,原告は,被告P1が,平成21年8月頃,被告P2と共謀の上,自らが新会社を設立するなどして,原告からベルグ社及びシュミット社の日本国内における代理店業務を奪うことを計画した旨主張する。しかしながら,前記1(5)のとおり,被告P1が退任したのは,平成22年1月5日に,P3が原告の経営に介入したことが端緒となっているものであり,他に,上記原告の主張する事実を認めるに足りる的確な証拠はない。前記1(3)のとおり,被告P1は,平成21年9月,被告ワイエムティーを原告の中部地区代理店としたが,このことのみをもって,原告の主張を裏付けるものということはできない。 (2) 前記(1)で検討したところによれば,被告P P1は,平成21年9月,被告ワイエムティーを原告の中部地区代理店としたが,このことのみをもって,原告の主張を裏付けるものということはできない。 (2) 前記(1)で検討したところによれば,被告P1がベルグ社及びシュミット社!に働きかけて原告との取引を終了させたものであり,これにより被告P1が会社法423条1項に基づく損害賠償義務を負うとする原告の主張には理由がない。 5 争点2-2(被告P1が原告の取締役退任前に競業行為をしたか)について(1) 被告P1が被告ワイエムティーを原告の中部地区代理店としたこと原告は,被告P1が被告ワイエムティーを原告の中部地区代理店とした行為が会社法356条1項1号の競業取引に当たること,原告が取締役会非設置会社であり,平成21年7月5日から平成22年2月5日までの原告の取締役は被告P1とP4の2名であったから,代理店契約を締結するに当たっては,少なくともP4の同意が必要であったこと,被告P1がP4の同意を得ていなかったことからすれば,上記競業取引は会社法356条1項1号に違反する違法なものである旨主張する。 しかしながら,被告P1が,原告の代表取締役として締結した,被告ワイエムティーを代理店とする旨の契約の効果は原告に帰属するものであり,被告P1の行為は,会社法356条1項1号が想定する取締役の行為に該当しない。 仮に被告ワイエムティーがベルグ社の製品を代理店として販売する行為が原告の営業に対する違法な競業行為に当たると主張するものであると解したとしても(原告は明示的にはそのような主張をしていない。),前記2(2)アのとおり,原告は日本国内において独占的排他的な代理店としての地位を有するものではないから,上記競業行為は違法なものではない。 なお,被告P1が被告ワイエムテ 主張をしていない。),前記2(2)アのとおり,原告は日本国内において独占的排他的な代理店としての地位を有するものではないから,上記競業行為は違法なものではない。 なお,被告P1が被告ワイエムティーを原告の中部地区代理店としたことにより原告が何らかの損害を被ったことを認めるに足りる主張立証もないし,少なくとも前記第3の7【原告の主張】の損害との因果関係はない。 (2) ジェイテクトに対する営業行為原告は,被告P1が,平成22年2月4日,ジェイテクトを訪問し,被告"P1が原告の代表取締役を退任した後は,被告P1自身がベルグ社製品等に関するアフターサービスの提供をする旨説明したこと,同月5日,ジェイテクトに対し,原告に対する注文を取り消して,後日,被告P1が設立する代理店に注文するよう指示する電子メールを送信したことが競業避止義務等に違反する旨主張する。 証拠(甲52)によれば,被告P1が,平成22年2月5日,原告の取引先であるジェイテクトの担当者宛てに,同社から原告に対する発注について,「部品を今から手配致しますので入荷が3月以降となり新たな代理店よりの納品となります。つきましては,御注文をキャンセル頂き新たに新代理店様への御発注手配をお願い致します。」という内容のメールを送付したことが認められる。 前記のとおり,原告は,同月末日をもってベルグ社及びシュミット社との取引関係を終了されることになっていたため,ジェイテクトに対し,発注を受けた製品を供給できず,アフターサービスの提供も困難な状況となることが予想されたのであるから,ジェイテクトに対し,早期に解約を申し入れるなどの措置を講じるべき状況にあったといえる。 そこで,被告P1は,ベルグ社及びシュミット社からの取引終了の通知を受けた後,原告の代表取締役を退任 から,ジェイテクトに対し,早期に解約を申し入れるなどの措置を講じるべき状況にあったといえる。 そこで,被告P1は,ベルグ社及びシュミット社からの取引終了の通知を受けた後,原告の代表取締役を退任するに当たり,ジェイテクトに対し,上記の説明や指示をしたのであって,これを原告に対する違法な競業行為ということはできないし(同月4日の説明も,退任の挨拶において同旨の説明が行われたものと解することができる。),上記被告P1の行為により原告に何らかの損害が発生したと認めることもできない。 (3) 前記(1)及び(2)で検討したところによれば,被告P1が原告の取締役を退任する前に競業行為をしたとする原告の主張にも理由はない。 6 争点2-3(被告ティー・エー・ティーの行為が被告P1の競業避止義務違反に当たるか)及び争点2-4(不法行為の成否)について#(1) 被告P1が退職後の競業避止義務を負わないこと従業員等が退職した後に競業避止義務を課すためには,退職後の競業避止義務を定めた就業規則や特約等が必要である。 したがって,争点2-3に関する前記第3の5【原告の主張】(1)の主張は失当である。 (2) 不法行為の成否もっとも,元従業員等の競業行為が,社会通念上自由競争の範囲を逸脱した違法な態様で元雇用者の顧客を奪取したとみられるような場合には,その行為は元雇用者に対する不法行為に当たるというべきである(最高裁判所平成22年3月25日第1小法廷判決・最高裁判所民事判例集64巻2号562頁)。 前記4のとおり,本件では,ベルグ社及びシュミット社は,原告の代表取締役であった被告P1が退任することにより,原告との取引を継続することができないと判断して原告との取引を終了させたにすぎない。 したがって,この時点で原告は,ベル 及びシュミット社は,原告の代表取締役であった被告P1が退任することにより,原告との取引を継続することができないと判断して原告との取引を終了させたにすぎない。 したがって,この時点で原告は,ベルグ社及びシュミット社との取引を行えない状態となったのであるから,その後に被告らがベルグ社及びシュミット社との取引をしていることをもって原告の顧客を奪取したとはいえない。 また,前記1で検討した経緯からしても,被告らの行為が社会通念上自由競争の範囲を逸脱した違法な態様によるものであるなどとも到底いえない。 7 会社法423条1項又は民法709条に基づく請求に係る判断前記4から6までで検討したところによれば,会社法423条1項又は民法709条に基づく原告の請求にも理由がない。 8 結論以上によれば,争点3について判断するまでもなく,原告の請求には全部理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 $大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官山田陽三 裁判官松川充康 裁 判 官 西田昌吾%(別紙)当事者目録 原告日本テクノサービス株式会社同訴訟代理人弁護士小原 望同古川智祥同妹尾 悟 被告株式会社ティー・エー・ティー 古川智祥同妹尾 悟 被告株式会社ティー・エー・ティー被告 P1上記両名訴訟代理人弁護士和田慎也被告株式会社ワイエムティー被告 P2上記両名訴訟代理人弁護士朴 憲洙&(別紙)標章目録12'(別紙)ウェブサイト目録 1 被告株式会社ティー・エー・ティーhttp://www.tat-web.com/tat/eindex.asp,http://www.tat-web.com/tat/shohin.html及びhttp://www.tat-web.com/の各URLにより特定されるウェブサイト 2 被告株式会社ワイエムティーhttp://www.ymt-co.jpのURLにより特定されるウェブサイト
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