令和3(わ)38 被告人Aに対する生命身体加害略取,逮捕監禁,傷害,窃盗,被告人Bに対する生命身体加害略取,逮捕監禁,傷害各被告事件

裁判年月日・裁判所
令和3年9月27日 札幌地方裁判所
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判決文本文10,940 文字)

令和3年9月27日宣告令和3年(わ)第38号,第103号判決前記被告人Aに対する生命身体加害略取,逮捕監禁,傷害,窃盗,同Bに対する生命身体加害略取,逮捕監禁,傷害各被告事件について,当裁判所は,検察官大友隆並びに被告人Aの国選弁護人宮下尚也及び被告人Bの国選弁護人横田亜季各出席の上審理し,次のとおり判決する。 主文 被告人Aを懲役5年に,被告人Bを懲役3年に処する。 被告人両名に対し,未決勾留日数中各160日を,それぞれその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)第1(令和3年2月26日付追起訴状記載の公訴事実)被告人Aは,令和2年12月27日午後9時頃から同日午後9時5分頃までの間に,札幌市a区所在の共同住宅bc号室C方において,同人所有の現金約20万8000円在中の財布1個(時価約1000円相当)を窃取した。 第2(令和3年1月27日付起訴状記載の公訴事実第1及び第2)被告人両名は,共謀の上, 1 令和2年12月27日午後9時頃,前記C方において,同人(当時48歳)に対し,その顔面等を複数回手拳で殴打するなどし,同人の身体に対する加害の目的で,同日午後9時5分頃,前記共同住宅b前路上において,被告人両名の暴行により畏怖していた前記Cを自動車の後部座席に乗り込ませ,その両拇指を結束バンドで緊縛し,タオルで目隠しをし,その頃から同日午後10時20分頃までの間,同市d区所在のD方敷地まで同車を走行させ,被告人両名の支配下に前記Cを置き,同車内から脱出不能にし,その間,前記共同住宅b前 路上から前記D方敷地までを走行中の同車内において,前記Cの顔面を複数回手拳で殴打し, 2 分離前の相被告人Eとも共謀の上,同日午後10時20 脱出不能にし,その間,前記共同住宅b前 2 路上から前記D方敷地までを走行中の同車内において,前記Cの顔面を複数回手拳で殴打し,2 分離前の相被告人Eとも共謀の上,同日午後10時20分頃,前記D方敷地において,前記Cに対し,その顔面及び胸部等を複数回足蹴にし,その大腿部等をアイスピックで突き刺すなどし,同日午後10時29分頃,同所において,被告人両名及び前記Eの暴行により畏怖していた前記Cを自動車の後部座席に乗り込ませ,同車を発進させた上,その両手首及び両足首を結束バンドで緊縛し,その頃から同月28日午前3時4分頃までの間,同市e区所在の共同住宅f前路上まで同車を走行させ,同人を同車内等から脱出不能にし,その間,前記D方敷地から前記共同住宅f前路上までを走行中の同車内において,前記Cの顔面を複数回手拳で殴打し,もって,同人の身体に対する加害の目的で同人を略取するとともに,同月27日午後9時5分頃から同月28日午前3時4分頃までの間,不法に同人を逮捕監禁し,その際,前記一連の暴行により,同人に全治約3か月間を要する胸骨骨折,右頬骨骨折,顔面打撲・皮下気腫及び両大腿多発刺創等の傷害を負わせた。 3 被告人Aは,同日午前3時4分頃から同月29日午前0時30分頃までの間,被告人両名及び前記Eの暴行により畏怖していた前記Cを前記共同住宅fg号室,同区所在のビルhi号室及び同区所在の共同住宅jk号室に連行し,その都度,同人を自動車の後部座席に乗り込ませ,同車を発進させ,同市a区(住所省略)付近路上に至るまで同車を走行させるなどし,その間,同人を監視するなどし,自動車内等から脱出不能にし,もって不法に同人を監禁した。 (証拠の標目)(省略)(事実認定の補足説明)第1 争点判示第1,第2の各事実のうち,判示第1の 間,同人を監視するなどし,自動車内等から脱出不能にし,もって不法に同人を監禁した。 (証拠の標目)(省略)(事実認定の補足説明)第1 争点判示第1,第2の各事実のうち,判示第1の窃盗について,被害品の内容及 3 び不法領得の意思が争われており,判示第2の2の逮捕監禁,傷害の暴行の一部について,被告人Bの共謀が争われているので,以下,補足して説明する。 第2 前提事実関係証拠によれば,以下の事実が容易に認められ,おおむね争いがない。 1 被告人両名は,被告人Aが判示のC(以下「被害者」という。)に制裁を加える目的で,令和2年12月27日(以下,日付の記載は全て同月を指す。),被告人Aが運転し,被告人Bが同乗する判示第2の1の自動車(以下「自動車F」という。)で乗り付け,同日午後9時頃,被害者方である判示共同住宅bc号室に押し入った上,判示第2の1の犯行を開始し,被告人両名がそれぞれ被害者の顔面等を複数回手拳で殴打するなどし,被告人Aが被害者の頭部を被害者方にあった焼酎の空き瓶で殴った。 2 被告人両名は,同日午後9時5分頃,被害者を外に連れ出した。このとき,被告人Aは,判示第1の行為に及び,被害者に無断で,被害者方の居間にあった被害者の財布(以下「本件財布」という。)を持ち去った。 3 被告人両名は,被害者を自動車Fの後部座席に乗せ,運転する被告人Aの指示の下,被害者の隣に着席した被告人Bが,被害者の両拇指を結束バンドで緊縛した上,タオルで目隠しをし,自動車Fを走行させた(以下「自動車Fでの監禁」などということがある。)。 4 自動車Fが判示D方敷地(以下「土場」という。)に到着し,被告人両名は,被告人Aが呼び出し,判示第2の2の自動車(以下「自動車G」という。)に乗車してきた判示のEと合流し,自動 とがある。)。 4 自動車Fが判示D方敷地(以下「土場」という。)に到着し,被告人両名は,被告人Aが呼び出し,判示第2の2の自動車(以下「自動車G」という。)に乗車してきた判示のEと合流し,自動車Fから被害者を降車させ,服や下着を脱がせて全裸にし,被告人両名及びEが被害者の顔面や胸部等を複数回足蹴にするなどし,被告人Aが被害者の大腿部等をアイスピックで突き刺した。 5 その後,被告人両名,E及び被害者は,Eの運転する自動車Gに乗って土場を出発し,札幌市内や小樽市内及びその周辺を移動し,この間,被告人Aが被害者の顔面を複数回殴打し,被害者の両手首及び両足首を結束バンドで緊縛す るなどした(以下「自動車Gでの監禁」などということがある。)。自動車Gは,被告人Bが自宅のある判示共同住宅j付近で降車した後,28日午前3時4分頃,E方である判示共同住宅fg号室に立ち寄った。 6 その後,被告人Aは,判示第2の3の犯行を続け,引き続き被害者を連れ,車を乗り換えるなどしつつ,同判示の各所のほか,被害者の胸部を止血する絆創膏を購入するためにドラッグストアH店(以下「本件薬局」という。)を回り,29日午前0時30分頃,被害者を解放した。 第3 判示第1の窃盗について 1 判示第1の窃盗に関し,被告人Aの弁護人は,本件財布に20万8000円は入っていなかったから,この現金在中の同財布を窃取した事実はないし,被告人Aは同財布を被害者から一時預かっていただけであるから,不法領得の意思を欠き,窃盗罪は成立しないと主張する。 2 被害者は,本件財布の中身やこれを被告人Aが持ち去った経緯等に関して,① 26日,勤務先の社長であるIから,給料を20万円前借りし,一万円札20枚を受け取ったこと② 27日夕方,知人のJと二人でファスト の中身やこれを被告人Aが持ち去った経緯等に関して,① 26日,勤務先の社長であるIから,給料を20万円前借りし,一万円札20枚を受け取ったこと② 27日夕方,知人のJと二人でファストフード店Kに行き,Jに一万円札1枚を渡して買物をさせ,8000円余りのお釣りを受け取り,これを本件財布に納めたとき,紙幣が合計20万8000円入っていることを確認したこと③ 被告人Aが本件財布を持ち去ったことは,土場を出発した後,自動車G車内において,被告人Aが,かばんから同財布を取り出し,中を確認し,Eに紙幣を何枚か渡していた場面で気付いたこと④ 本件薬局のレジにおいて,被告人Aが,かばんから本件財布を取り出し,「お前の金で払う」と言って,同財布から代金を支払ったこと⑤ 被告人Aから本件財布を返されたのは,解放される直前であり,警察署,病院を回り,知人の家に向かう途中に同財布の中を確認したところ,紙幣は 五千円札1枚しか入っていなかったことなどを公判で供述する。 3 このうち,①26日に20万円を前借りした点については,同旨のI証言と合致しており,また,勤務先作成の前借一覧表と題する書面によって裏付けられてもいる。被告人Aの弁護人は,同書面が手書きで作成されており,追記や書き換えが可能であるから証明力が弱いと主張するが,体裁や記載自体を見ても不自然な点はなく,その証明力を肯定できる。 次いで,②Kで確認した時点で本件財布に約20万8000円が入っていた点については,被害者が同財布から現金を取り出す際に紙幣が10枚以上重なっているのが見えた,被害者から紙幣1枚を預かって代金二,三千円を支払い,お釣りを返した旨のJ証言とおおむね整合している。なお,被告人Aの弁護人は,同財布に多数のレシートが入ってい が10枚以上重なっているのが見えた,被害者から紙幣1枚を預かって代金二,三千円を支払い,お釣りを返した旨のJ証言とおおむね整合している。なお,被告人Aの弁護人は,同財布に多数のレシートが入っていたのにレシートは見なかったと思う旨のJ証言は信用できないと主張するが,現金に注意が向いたためレシートの有無が記憶に残らないことは十分考えられ,レシートと紙幣とを見間違えるとも考え難く,J証言の信用性に疑いはない。 さらに,④本件薬局で被告人Aがかばんから本件財布を取り出して代金を支払った点については,同財布を返してくれるものと思い手を差し伸べたという被害者の動作が,同薬局内の防犯カメラ映像により裏付けられている。この点,被告人Aは,このとき取り出したのが同財布ではなく自分の財布であり,その財布ごと被害者に渡して代金を支払わせようとしたが,レジが進んだため自ら支払ったと述べる。しかし,同映像から,被告人Aに財布を渡そうとする素振りがなく,財布が取り出されると直ちに被害者が手を差し伸べたことが認められる上,連れ回されていた被害者のほうから被告人Aの財布を受け取ろうとすることは考え難いから,前記の被告人Aの供述は信用できない。 加えて,⑤返された本件財布の中の紙幣が五千円札1枚のみであった点については,病院で同財布の中を確認したら紙幣は1枚しか入っていなかった旨の 6 I証言と整合している。 前記①,②,⑤に関し,被害者が,IやJとの間で,虚偽の供述をさせたり,Iの協力を得て虚偽の書面を作成するなどといった事情はうかがわれない。 被告人Aの弁護人は,被害者が返された本件財布の中を直ちに確認しなかったことが不自然であるとか,被害者証言が,警察署において被害者から金を取られた旨謝罪されたとのI証言と,同財布の中を確認した時点が 被告人Aの弁護人は,被害者が返された本件財布の中を直ちに確認しなかったことが不自然であるとか,被害者証言が,警察署において被害者から金を取られた旨謝罪されたとのI証言と,同財布の中を確認した時点が食い違うと主張するが,被害終了後の経緯に関する周辺的事情であり,被害者の記憶に混乱があったとしても,前記①ないし⑤の証言の核心部分の信用性に影響するものとはいえない。 以上によれば,前記①ないし⑤の被害者証言の信用性は高い。この被害者証言によれば,被告人Aが持ち去った本件財布には約20万8000円の紙幣が入っていたことが認められる。また,同財布が被害者に返された時点で五千円札1枚しか入っていなかったことが認められ,その間に被告人A以外の者が同財布を扱う機会はうかがわれないから,被告人Aが同財布の中から約20万円の紙幣を抜き取ったものと推認できる。したがって,被告人Aが同財布を持ち出した時点でその中の現金を含めて自己のものにしようとし,不法領得の意思を有していたことも推認できる。 4 被告人Aは,被害者に被害者の車を運転させるために免許証の入っている本件財布と車の鍵を持ち出したが,被害者方の外に人がいたので自動車Fで移動することになり,被害者に返すのを忘れて預かっていただけである,途中で訪れたE方で被害者に返した上,被害者の承諾を得て再び預かっていたが,遅くともB方にいるときまでに被害者に同財布を返しており,B方で被害者が同財布を所持して開けている場面があった,また,同財布の中を開けて確認したこともないなどと供述する。 しかし,激しい暴行を加えて重傷を負わせた直後の被害者に車を運転させようとすることも,その運転免許証を携帯させるために,無断で本件財布を長時 7 間持ち続けることも,それ自体不合理で不自然である。被告人Aに被害者 て重傷を負わせた直後の被害者に車を運転させようとすることも,その運転免許証を携帯させるために,無断で本件財布を長時 間持ち続けることも,それ自体不合理で不自然である。被告人Aに被害者に車を運転させる意図があったとの点は,被告人Bの供述を含め裏付けとなる事情がない。また,立ち寄り先で同財布を返そうとしたが被害者の承諾を得て再び預かったとの点は,被告人Aの元から逃れたいはずの被害者が,被告人Aが引き続き同財布を持ち続けることを承諾するとは考え難い。したがって,前記の被告人Aの供述は信用できない。 5 被告人Aの弁護人は,その他にも,本件財布の中身や不法領得の意思に関して主張をするが,これまでの検討・判断を左右すべきものはない。 以上によれば,本件財布に約20万8000円の現金が在中していたこと,被告人Aが不法領得の意思を有していたことは疑いなく認められ,判示第1のとおり認定した。 第4 被告人Bの罪の成立範囲について 1 判示第2の逮捕監禁,傷害に関し,被告人Bの弁護人は,同第2の2の暴行のうち,被害者の大腿部等をアイスピックで突き刺したこと,両手首及び両足首を結束バンドで緊縛したこと及び顔面を複数回手拳で殴打したことに,被告人Bは全く関与していないから,被告人Aとの共謀を欠き,これらの事実については被告人Bに罪が成立しないと主張する。 2 そこで検討すると,被害者に制裁を加える目的で一連の犯行を立案,主導したのは被告人Aであるものの,被告人Bは,判示第2の1,2を通じて被告人Aに同行し,自らも前記前提事実のとおりの暴行を被害者に加えるなどしている。したがって,被告人Bは,被告人Aとの間で,いかに遅くとも,被害者方で被害者の顔面等を手拳で殴打するなどの暴行を加えるまでの間に,被害者に対して強度の暴行を加える 暴行を被害者に加えるなどしている。したがって,被告人Bは,被告人Aとの間で,いかに遅くとも,被害者方で被害者の顔面等を手拳で殴打するなどの暴行を加えるまでの間に,被害者に対して強度の暴行を加える旨の意思を通じ,共謀を成立させたと認められる。 また,被告人両名は,Eとの間でも,いかに遅くとも,土場で3名が被害者の顔面や胸部等を足蹴にするなどの暴行を加えるまでに,同様の共謀を成立させたと認められる。そして,被告人両名及びEが,被害者に対する暴行の態様や 時間,場所等を限定する旨合意をした等の事情は,被告人両名の供述によってもうかがわれない。 その上で,土場におけるアイスピックでの突き刺しについてみると,アイスピックを準備し,この突き刺しを実行したのは被告人Aである一方,被告人Bは,Eとともに,土場にいたことが認められ,被告人Bが,アイスピックでの突き刺しを制止するなどした事情はうかがわれない。被告人Bが,被告人Aとの間で凶器を用いない旨合意したことなどはうかがわれず,現に,被告人Aが被害者方で焼酎の空き瓶で被害者の頭部を殴った際,これを認識した被告人Bが抗議や制止等したこともなかったと認められることなどからすれば,被告人Bは,被告人Aが被害者に暴行を加えるに当たり,凶器を使用することを許容していたと認められる。したがって,アイスピックでの突き刺しについて,被告人Bが被告人Aとの間でした被害者に対する暴行等の共謀の範囲内に含まれていたと合理的に考えられる。 次に,自動車Gでの監禁における結束バンドでの両手首及び両足首の緊縛や顔面の殴打についてみると,被告人B自身,自動車Fでの監禁に際して結束バンドで被害者を縛ったことがあり,被害者方や土場で被害者を殴打するなどの暴行を加えてもいるから,引き続き被害者を連れ回している自 顔面の殴打についてみると,被告人B自身,自動車Fでの監禁に際して結束バンドで被害者を縛ったことがあり,被害者方や土場で被害者を殴打するなどの暴行を加えてもいるから,引き続き被害者を連れ回している自動車G車内で,被告人Aが同様の方法で緊縛し,顔面を殴打するなどの暴行を更に被害者に加えることが,被告人Bと被告人Aとの間でした共謀の範囲から除外される理由はない。 被告人Bの弁護人は,被告人Bが,土場で被告人両名及びEが被害者に対して足蹴にするなどの暴行を終えた時点で,犯行が一旦終了したと認識した旨主張し,被告人Bもこれに沿う供述をする。しかし,被告人Bの供述によっても,被告人両名やEが被害者に対する暴行を止める旨の合意をしたなどの事情はうかがわれず,また,被告人Bは,それまでの暴行から引き続いて土場及び自動車G車内で被告人Aと行動を共にしていたとみるほかなく,一連の犯行が終了 したと評価できる事情はない。被告人Bにおいて,犯行が終了したと認識するような合理的な根拠はなく,前記の被告人Bの供述は信用できず,同旨の弁護人の主張は採用できない。 したがって,被告人Aによるアイスピックでの突き刺しや自動車G車内での緊縛や暴行は,いずれも,被告人Bが被告人AやEとの間でした共謀の範囲内に含まれるというべきである。 3 なお,被告人Bは,前記の被告人Aの暴行を認識していなかった旨供述するので,この点について検討する。 被害者は,土場において,被告人両名及びEから足蹴にされるなどした後に引き続いて,被告人Aからアイスピックで繰り返し突き刺され,被告人Bは一,二メートルほど離れたところで見ており,Eは携帯電話でその状況を撮影していた旨証言する。また,被害者は,自動車Gでの監禁に際し,被告人Aが,被告人BとEに対し,「俺,こういうの慣 れ,被告人Bは一,二メートルほど離れたところで見ており,Eは携帯電話でその状況を撮影していた旨証言する。また,被害者は,自動車Gでの監禁に際し,被告人Aが,被告人BとEに対し,「俺,こういうの慣れてるべ」などと言って被害者を結束バンドで縛った事実を告げた旨証言する。これらの被害者の供述は具体的で迫真性が認められる。自動車Gでの監禁に際し,車内において,運転席でEが運転し,被告人Bは助手席に着席し,後部座席に被告人Aと被害者が着席して,被告人Aが被害者を緊縛したり殴打したりしていたと認められるところ,同じ車内で近接して乗車していた被告人Bは,これらの暴行を容易に認識できたはずである。さらに,自動車Gでの監禁の中で,小樽市内で緊縛されたままの被害者が用便のために被告人Aと車外に出た場面があったことが認められ,同乗していた被告人Bは,このような特異な場面を容易に認識したはずである。 これに対し,被告人Bは,土場で足蹴にするなどの暴行を加えた後,被告人Aと被害者がいる場所から5又は10メートル程度離れ,その後は被告人Aらを気にしなかったので,アイスピックで突き刺していることは認識しなかった,自動車G車内での暴行等についても気にしていなかったので認識しなかったなどと供述する。 10 しかし,被告人Bの供述の内容は,自らも繰り返し暴行を加えていた被害者や,被害者との間の問題が解決したといった事情が生じたわけでもない被告人Aの行動への関心を一切失ったというもので,不自然であるし,夜間であり,被告人Bの視力が低いといっても,隔たった距離が前記の程度にとどまるのにアイスピックで突き刺すという激しい暴行に全く気付かないとも考え難い。自動車G車内での被告人Aの各暴行についても,被告人Aからの指示を受けて行動を共にしつつ,被告人Aや被害者の の程度にとどまるのにアイスピックで突き刺すという激しい暴行に全く気付かないとも考え難い。自動車G車内での被告人Aの各暴行についても,被告人Aからの指示を受けて行動を共にしつつ,被告人Aや被害者の様子への関心を全く失ったというのは不自然であるし,車内という狭い空間で手拳で殴る音や反応した被害者の声が聞こえないとも考え難い。 なお,被告人Aは,一部被告人Bに沿う供述をするが,前記検討のとおり,被告人Bは前記の各暴行を目撃するなどして認識していたと考えるのが自然なのに,特別な理由もなくこれを否定しており,信用性に乏しく,裏付けるものとはいえない。 したがって,前記の被告人Bの供述は信用できず,被告人Bは前記の各暴行を認識していたことが認められる。 4 以上の検討によれば,被告人Bは,判示第2の2で認定したとおり,被告人Aが行った土場におけるアイスピックでの突き刺し,自動車G車内における結束バンドでの緊縛や顔面の殴打について,被告人Aと共謀し,共同正犯として責任を負うものと認められる。 (法令の適用)1 構成要件及び法定刑を示す規定被告人Aの判示第1の所為は刑法235条に,被告人両名の判示第2の1の各所為のうち生命身体加害略取の点はいずれも同法60条,225条に,判示第2の1及び2の各所為のうち,被告人両名の傷害の点はいずれも包括して同法60条,204条に,被告人Bの逮捕監禁の点は同法60条,220条に,被告人Aの判示第2の1及び2の逮捕監禁並びに判示第2の3の所為は包括し 11 て同法60条,220条にそれぞれ該当する。 2 科刑上一罪の処理被告人Aの判示第2の1ないし3並びに被告人Bの判示第2の1及び2の各所為のうち,生命身体加害略取と逮捕監禁は,1個の行為が2個の罪名に触れる場合であり,生命身体加害略取 2 科刑上一罪の処理被告人Aの判示第2の1ないし3並びに被告人Bの判示第2の1及び2の各所為のうち,生命身体加害略取と逮捕監禁は,1個の行為が2個の罪名に触れる場合であり,生命身体加害略取と傷害との間には手段結果の関係があるので,刑法54条1項前段,後段,10条により結局以上を1罪として,被告人両名とも最も重い傷害罪について定めた懲役刑(ただし,短期は生命身体加害略取罪の刑のそれによる。)で処断する。 3 刑種の選択被告人Aの判示第1の罪について懲役刑を選択する。 4 併合罪の処理被告人Aにつき,判示第1の罪と判示第2の罪は刑法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により重い判示第2の罪の刑に法定の加重をする。 5 宣告刑の決定以上の各刑期の範囲内で,被告人Aを懲役5年に,被告人Bを懲役3年に処する。 6 未決勾留日数の算入 被告人両名につき,刑法21条を適用して未決勾留日数中各160日をそれぞれその刑に算入する。 7 訴訟費用の不負担訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人両名に負担させない。 (量刑の理由)まず,被告人両名に共通する判示第2の生命身体加害略取,逮捕監禁,傷害についてみると,その態様は,被害者に対して,突然自宅を襲撃して強度の暴行を加え, 12 車に乗せて手足を縛るなどして長時間にわたり連れ回し,その間,全裸にさせて複数人で殴る蹴る,鋭利な凶器であるアイスピックで突き刺すなどの激しい暴行を更に執ように加えたもので,犯行態様は非常に悪質である。このような被害を受けた被害者は重傷を負っており,多大な肉体的苦痛や恐怖心等の精神的苦痛も被ったことは明らかで,厳罰を望むのは当然である。また,経緯をみると,被害者の言動により面目をつぶされ ある。このような被害を受けた被害者は重傷を負っており,多大な肉体的苦痛や恐怖心等の精神的苦痛も被ったことは明らかで,厳罰を望むのは当然である。また,経緯をみると,被害者の言動により面目をつぶされたという被告人Aの供述を前提にしても,私怨に基づいて被害者に制裁を加えるという犯行目的が正当化される余地は全くなく,身勝手かつ短絡的というほかない。 その上で,被告人Aの犯情を検討すると,被告人Aは,被告人Bや,更にEを誘い入れ,被害者を27時間以上の長時間にわたり監禁し,その間も積極的に暴行を加えており,主導的な役割を果たしているから,責任は特に重い。また,判示第1の窃盗は,判示第2の犯行の中で及んだもので犯行態様は悪質であり,被害額は多額である。 次いで,被告人Bの犯情を検討すると,被告人Aに誘われたことがきっかけであり,従属的立場であるとはいえ,犯行当初から自らも積極的に暴行を加えており,重要な役割を担っている。もっとも,一部の暴行は被告人Aのみが実行したものであり,また,関与した監禁時間は約6時間と被告人Aに比べれば短い。 以上のとおり犯情は悪質であり,被告人両名の刑事責任は重く,特に被告人Aは相当期間の実刑に処するべきであり,被告人Bは,被告人Aよりは短い期間の実刑に処するべきである。 そのほか,一般情状として,被告人Aは,窃盗について不合理な弁解をする一方,窃盗以外の事実を認めていること,傷害による服役前科があり,本件がその刑の執行終了から6年に満たないうちの犯行であること,被告人Bは,事実の相当部分を認めていること,異種のものとはいえ服役前科を含む複数の前科があることなどの事情も考慮した上で,被告人両名に対し,それぞれ主文の刑の量定をした。 よって,主文のとおり判決する。 13 (求刑 被告人Aにつき懲役6年 いえ服役前科を含む複数の前科があることなどの事情も考慮した上で,被告人両名に対し,それぞれ主文の刑の量定をした。 よって,主文のとおり判決する。 13 (求刑 被告人Aにつき懲役6年,被告人Bにつき懲役4年)令和3年9月27日札幌地方裁判所刑事第3部 裁判長裁判官 井 下 田 英 樹 裁判官 山 下 智 史 裁判官 後 藤 紺

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