令和5(ワ)70178 特許権侵害差止請求事件

裁判年月日・裁判所
令和6年9月26日 東京地方裁判所
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令和6年9月26日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和5年(ワ)第70178号特許権侵害差止請求事件口頭弁論終結日令和6年8月1日判決原告ノーベルファーマ株式会社 同訴訟代理人弁護士川田篤同訴訟代理人弁理士大塚章宏同補佐人弁理士宮澤純子田中康子被告沢井製薬株式会社 同訴訟代理人弁護士森本純芳賀彩 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は、別紙被告医薬品目録記載の各医薬品を製造し、使用し、譲渡し、貸し渡し、輸入し、輸出し、又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。 2 被告は、別紙被告医薬品目録記載の各医薬品を廃棄せよ。 第2 事案の概要原告は、特許第6716464号の特許(以下「本件特許1」という。)及び特許第6768984号の特許(以下「本件特許2」といい、本件特許1及び2を併せて「本件特許」と、本件特許に係る特許権を「本件特許権」と、それぞれいう。また、本件特許1の願書に添付された明細書を「本件明細書1」と、 本件特許2の願書に添付された明細書を「本件明細書2」と、それぞれいい、 本件明細書1及び本件明細書2を併せて「 れいう。また、本件特許1の願書に添付された明細書を「本件明細書1」と、 本件特許2の願書に添付された明細書を「本件明細書2」と、それぞれいい、 本件明細書1及び本件明細書2を併せて「本件明細書」という。)の各特許権者である。 被告は、令和5年8月4日から、別紙被告医薬品目録記載の製品(以下、同目録記載の符号に合わせて「被告医薬品1」「被告医薬品2」といい、被告医薬品1及び2を併せて「被告医薬品」という。)の製造販売を行っている(第2回 口頭弁論調書参照)。 本件は、原告が、被告に対し、被告医薬品に係る製造方法(以下「被告方法」という。)が本件特許に係る発明の技術的範囲に属するものであるから、被告方法は本件特許権を侵害すると主張して、特許法100条1項に基づき被告医薬品の製造、販売などの差止めを求めるとともに、同条2項に基づき被告医薬品 の廃棄を求める事案である。 なお、本件の充足論に係る主たる争点は、「乾燥して造粒物を得る工程」における「品温が40℃未満」該当性(後記争点1-2参照)であるところ、被告方法には、全体として40℃を超える部分を含むため、その中核的争点は、「乾燥して造粒物を得る工程」の終期がいつであるかという点である(第4回弁論 準備手続(技術説明会)調書参照)。この点につき、原告は、「打錠用粉体に適した造粒物を得るために必要な状態まで溶媒が除去された時点」(この時点までの乾燥を「必要な乾燥」といい、その後の乾燥は「余分な乾燥」という。)であると主張し、被告は、「乾燥を終了した時点」であると主張し、技術説明会では、専門委員の立会いの下、上記中核的争点を中心に口頭議論が行われた。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の各証拠(以下、特記しない限り枝番を含む。 ると主張し、技術説明会では、専門委員の立会いの下、上記中核的争点を中心に口頭議論が行われた。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の各証拠(以下、特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により認められる事実をいう。)⑴ 当事者原告及び被告は、いずれも医薬品などの製造及び販売などを目的とする株式会社である。 ⑵ 本件特許について 原告は、以下の本件特許について特許権を保有している。 ア本件特許1(甲1)登録番号特許第6716464号発明の名称酢酸亜鉛水和物錠及びその製造方法出願日平成27年12月2日 優先日平成26年12月3日優先権主張番号特願2014-244689登録日令和2年6月12日イ本件特許2(甲2)登録番号特許第6768984号 発明の名称酢酸亜鉛水和物錠及びその製造方法出願日令和2年6月8日原出願日平成27年12月2日優先日平成26年12月3日優先権主張番号特願2014-244689 登録日令和2年9月25日⑶ 本件特許の特許請求の範囲ア本件特許1の特許請求の範囲の請求項1の記載(以下「本件発明1-1」という。)は、次のとおりである。 「(1)酢酸亜鉛水和物(C4H6O4Zn・2H2O)、賦形剤、崩壊剤及 び溶媒の混合物を造粒した後乾燥して造粒物を得る工程、(2)該造粒物を打錠して素錠を得る工程を含み、前記工程(1)における品温が40℃未満であることを特徴とする、酢酸亜鉛水和物錠の製造方法。」イ本件特許1の特許請求の範囲の請求項3の記載(以下「本件発明1-3」という。)は を得る工程を含み、前記工程(1)における品温が40℃未満であることを特徴とする、酢酸亜鉛水和物錠の製造方法。」イ本件特許1の特許請求の範囲の請求項3の記載(以下「本件発明1-3」という。)は、次のとおりである。 「酢酸亜鉛水和物錠が、酢酸亜鉛水和物(C4H6O4Zn・2H2O)を 5~200mg含有し、大きさが直径5~12mm、厚さ1~6mmであって、日局溶出試験法パドル法50回転(試験液:水900mL)によって測定される15分後の亜鉛の溶出量が85%以上である、請求項1又は2に記載の酢酸亜鉛水和物錠の製造方法。」ウ本件特許2の特許請求の範囲の請求項1の記載(以下「本件発明2-1」 という。)は、次のとおりである。 「(1)酢酸亜鉛水和物(C4H6O4Zn・2H2O)、賦形剤、結合剤、崩壊剤及び溶媒を含む混合物を造粒した後乾燥して造粒物を得る工程、(2)該造粒物を打錠して素錠を得る工程を含み、前記工程(1)における品温が40℃未満であることを特徴とする、酢酸亜鉛水和物錠の製造方 法。」エ本件特許2の特許請求の範囲の請求項3の記載(以下「本件発明2-3」といい、本件発明1-1、1-3、2-1及び2-3を併せて「本件発明」という。)は、次のとおりである。 「酢酸亜鉛水和物錠が、酢酸亜鉛水和物(C4H6O4Zn・2H2O)を 5~200mg含有し、大きさが直径5~12mm、厚さ1~6mmであって、日局溶出試験法パドル法50回転(試験液:水900mL)によって測定される15分後の亜鉛の溶出量が85%以上である、請求項1又は2に記載の酢酸亜鉛水和物錠の製造方法。」⑷ 本件発明の構成要件の分説 本件発明を構成要件に分説すると、以下のとおりである(以下、分説した構成要件をその符 以上である、請求項1又は2に記載の酢酸亜鉛水和物錠の製造方法。」⑷ 本件発明の構成要件の分説 本件発明を構成要件に分説すると、以下のとおりである(以下、分説した構成要件をその符号に従い「構成要件1-1A」などという。)。 ア本件発明1-11-1A (1)酢酸亜鉛水和物(C4H6O4Zn・2H2O)、賦形剤、崩壊剤及び溶媒の混合物を造粒した後乾燥して造粒物を得る工程、 1-1B (2)該造粒物を打錠して素錠を得る工程を含み、 1-1C 前記工程(1)における品温が40℃未満であることを特徴とする、1-1D 酢酸亜鉛水和物錠の製造方法イ本件発明1-31-3A 酢酸亜鉛水和物錠が、酢酸亜鉛水和物(C4H6O4Zn・2H2 O)を5~200mg含有し、1-3B 大きさが直径5~12mm、厚さ1~6mmであって、1-3C 日局溶出試験法パドル法50回転(試験液:水900mL)によって測定される15分後の亜鉛の溶出量が85%以上である、1-3D 請求項1又は2に記載の酢酸亜鉛水和物錠の製造方法 ウ本件発明2-12-1A (1)酢酸亜鉛水和物(C4H6O4Zn・2H2O)、賦形剤、結合剤、崩壊剤及び溶媒を含む混合物を造粒した後乾燥して造粒物を得る工程、2-1B (2)該造粒物を打錠して素錠を得る工程を含み、 2-1C 前記工程(1)における品温が40℃未満であることを特徴とする、2-1D 酢酸亜鉛水和物錠の製造方法エ本件発明2-32-3A 酢酸亜鉛水和物錠が、酢酸亜鉛水和物(C4H6O4Zn・2H2 O)を5~200mg含有し、2-3B 大きさが直径5~12mm、厚さ1~6mmであって、2-3C 日局溶出試験法 3A 酢酸亜鉛水和物錠が、酢酸亜鉛水和物(C4H6O4Zn・2H2 O)を5~200mg含有し、2-3B 大きさが直径5~12mm、厚さ1~6mmであって、2-3C 日局溶出試験法パドル法50回転(試験液:水900mL)によって測定される15分後の亜鉛の溶出量が85%以上である、2-3D 請求項1又は2に記載の酢酸亜鉛水和物錠の製造方法 ⑸ 被告の行為等 被告医薬品は、原告が本件発明に係る方法により製造し販売する医薬品である「ノベルジン錠25mg」及び「ノベルジン錠50mg」のいわゆる後発医薬品であり、被告は、令和5年8月4日から、被告医薬品の製造販売を行っている。なお、被告方法は、本件発明の各構成要件のうち、少なくとも下記争点1-2に係る部分を除いた構成要件を、全て充足する方法である。 2 争点⑴ 被告方法が本件発明の技術的範囲に属するか(争点1)ア特許法104条による推定の可否(争点1-1)イ 「乾燥して造粒物を得る工程」における「品温が40℃未満」該当性(争点1-2(構成要件1-1A及びC、1-3D、2-1A及びC、2-3 D)。以下、当該工程を「本件工程」という。)⑵ 本件発明について無効理由の有無ア乙17発明を主引例とする進歩性欠如の有無(争点2-1)イ乙24発明を主引例とする進歩性欠如の有無(争点2-2)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1-1(特許法104条による推定の可否)について(原告の主張)⑴ 本件発明により生産されるものは、酢酸亜鉛水和物の錠剤である。そして、原告の酢酸亜鉛水和物の錠剤「ノベルジン錠25mg」及び「ノベルジン錠50mg」(甲6の添付文書。以下「原告各医薬品」という。)も本件発 明により生産されるものは、酢酸亜鉛水和物の錠剤である。そして、原告の酢酸亜鉛水和物の錠剤「ノベルジン錠25mg」及び「ノベルジン錠50mg」(甲6の添付文書。以下「原告各医薬品」という。)も本件発明の 製造方法により生産される酢酸亜鉛水和物の錠剤である。 そして、被告医薬品は、原告各医薬品の後発医薬品であり、原告各医薬品と同じ酢酸亜鉛水和物の錠剤である。したがって、被告医薬品は原告各医薬品と同一の物であり、ひいては本件発明により製造される医薬品と同一の物である。 また、本件特許の優先日(いずれも基礎出願である特願2014-244689の出願日である平成26年12月3日)において、酢酸亜鉛水和物のカプセル剤は公然知られていたが、本件発明により生産される酢酸亜鉛水和物の錠剤は公然知られていない。 したがって、特許法104条により、被告医薬品は、物を生産する方法の 発明である本件発明により生産されたものと推定される。 なお、本件特許1に係る出願は、平成26年12月3日に日本特許庁に出願された特許出願(特願2014-244689)を基礎として優先権を主張し、特許法184条の3第1項により我が国の特許出願とみなされたものである。また、本件特許2に係る出願は、本件特許1に係る出願の特許法4 4条1項による出願(分割出願)である。したがって、本件発明に対する特許法104条の適用においては、優先日である平成26年12月3日を基準として公然知られていたものかどうかの判断がされる(特許法41条2項)。 ⑵ 被告の主張についてア原告のホームページの記載について 被告は、本件特許の優先日(平成26年12月3日)より前の日である平成26年9月10日に、原告のホームページ上のニュースリリース(以 の主張についてア原告のホームページの記載について 被告は、本件特許の優先日(平成26年12月3日)より前の日である平成26年9月10日に、原告のホームページ上のニュースリリース(以下「本件ニュースリリース」という。)において、「NPC-02(酢酸亜鉛)ウイルソン病治療剤ノベルジン®錠25mg及び50mgの製造販売承認(剤形追加)を取得」との公表がされており、本件発明により製造さ れる医薬品は、本件特許出願の優先日において「日本国内において公然知られた物」に当たるから、被告医薬品について特許法104条の推定規定の適用は認められないと主張する。 しかしながら、原告各医薬品の添付文書が、本件特許出願の優先日よりも前に公開されているのであればともかく、このような記載のみから本件 発明により製造される医薬品が「公然知られた物」になるとはいえない。 そして、「酢酸亜鉛」が「酢酸亜鉛水和物」なのか「酢酸亜鉛無水和物」なのかも判別することができず、また、「賦形剤」、「結合剤」、「崩壊剤」を含むかどうかも、この記載自体からは明らかではなく、「錠剤」であれば少なくとも「賦形剤」は含むであろうと推測する余地はあるが、それも推測であるにすぎない。 したがって、本件発明を用いて生産される物は、本件特許出願の優先日当時、公然知られた物ではなく、本件発明を用いて生産される物と同一の被告医薬品は、本件発明の方法を用いて生産されることが推定される。 イ 「その物を製造する手がかりが得られる程度に知られた事実」について被告は、「公然知られた物」といえるためには、「その物を製造する手が かりが得られる程度に知られた事実」が存すれば足り、それは、本件発明により製造される医薬品についても妥当する旨主張している。 しかしな 然知られた物」といえるためには、「その物を製造する手が かりが得られる程度に知られた事実」が存すれば足り、それは、本件発明により製造される医薬品についても妥当する旨主張している。 しかしながら、本件発明との関係において、「その物を製造する手がかり」とは、正に本件発明に係る製造方法にほかならず、本件特許出願の優先日当時、そのような「手がかり」は公然知られていない。したがって、本件 発明により製造される医薬品を「製造する手がかりが得られる程度に知られた事実」は存在しないから、被告の主張は理由がない。 (被告の主張)⑴ 原告は、本件特許の優先日において、本件発明により生産される酢酸亜鉛水和物の錠剤は公然知られていないとして、特許法104条の推定規定の適 用がなされ、被告医薬品は、物を生産する方法の発明である本件発明により生産されたものと推定される旨主張する。 ⑵ しかしながら、原告は、本件特許の優先日(平成26年12月3日)より前の日である平成26年9月10日に、本件ニュースリリースにおいて、「NPC-02(酢酸亜鉛)ウイルソン病治療剤ノベルジン®錠25mg及 び50mgの製造販売承認(剤形追加)を取得」した旨公表した(乙17)。 上記の医薬品(原告各医薬品)は、本件発明の製造方法により生産される酢酸亜鉛水和物の錠剤であり、被告医薬品は、原告各医薬品の後発医薬品である。 したがって、本件発明について、特許法104条が定める「その物」は、本件特許の優先日において「日本国内において公然知られた物」であるか ら、被告医薬品について、特許法104条の推定規定の適用は認められない。 ⑶ さらにいえば、特許法104条の「公然知られた物」は、その物が必ずしも現実に存在することは必要でないが、少なくとも当 ら、被告医薬品について、特許法104条の推定規定の適用は認められない。 ⑶ さらにいえば、特許法104条の「公然知られた物」は、その物が必ずしも現実に存在することは必要でないが、少なくとも当該技術の分野における通常の知識を有する者においてその物を製造する手がかりが得られる程度に 知られた事実が存することをいうものと解されている(知財高判令和4年2月9日等)。 ア結晶水を有する医薬品(水和物)について、結晶水の脱離が生じると、生物学的利用能や製剤の経時的安定性に影響が生じる可能性があるため、結晶水の脱離が生じないよう乾燥条件を設定することは、本件特許の優先 日前の技術常識である。加えて、本件明細書の段落【0005】にも記載されているとおり、酢酸亜鉛水和物を有効成分とする先行医薬品の剤形を変更する場合、剤形の変更に伴い水和物の一部が無水物に転移すると、薬事行政上、ウィルソン病の治療薬として承認されていない有効成分を含有する医薬品となってしまう。そのため、剤形についてカプセル剤から錠剤 への変更を検討する当業者は、錠剤において無水物化が生じないよう当然に留意する。 また、水和物中の結晶水が、50℃~150℃程度の加熱乾燥等により比較的容易に脱水され、無水物となることは、本件特許の優先日前の水和物全般についての技術常識であり、これは、酢酸亜鉛水和物にも当然に妥 当する。しかも、本件特許の優先日前には、酢酸亜鉛水和物について、結 晶水の脱水(無水物化)が50℃~100℃で生じる(50℃を超える加熱により脱水が生じ始め、100℃で完全に無水物化する)ことが知られていた(乙7。本件特許の優先日前に公開された文献である 。)。そのため、医薬品の製造に携わる当業者であれば、当然に、酢酸亜鉛水和物錠の製造 水が生じ始め、100℃で完全に無水物化する)ことが知られていた(乙7。本件特許の優先日前に公開された文献である 。)。そのため、医薬品の製造に携わる当業者であれば、当然に、酢酸亜鉛水和物錠の製造に当たり、結晶水が脱水しないよう、加熱乾燥の温度に留意して、乾燥工 程における品温を50℃以下の適宜の温度に設定することを検討する。 イまた、本件ニュースリリースには「NPC-02(酢酸亜鉛)ウイルソン病治療剤ノベルジン®錠25mg及び50mgの製造販売承認(剤形追加)を取得」と記載されており、同含量は亜鉛の含量であるところ、この亜鉛の含量を酢酸亜鉛水和物の含量に換算することにより、当業者は、本件ニュー スリリースに係る酢酸亜鉛錠における酢酸亜鉛水和物の含量を理解することができる。さらに、酢酸亜鉛水和物の大きさについてみると、本件発明1-3及び2-3が定める大きさは、当業者が通常選択する大きさの範囲内のものでしかない。また、溶出量についても、剤形追加の場合には、製造販売承認申請に当たり、生物学的同等性試験(溶出性試験を含む。)を行 い、生物学的同等性を証する必要があるところ、その実施の詳細は「後発医薬品ガイドラインの第3章に従う」旨定められており(乙35)、これによれば、本件発明1-3及び2-3が定める溶出量(「日局溶出試験法パドル法50回転(試験液:水900mL)によって測定される15分後の亜鉛の溶出量が85%以上」)は、医薬品における一般的な基準の一つでしかない。 そして、以上の酢酸亜鉛水和物の含量、錠剤の大きさ及び溶出量を備えた錠剤の製造は、当該技術の分野における通常の知識を有する者において、特段の手がかりが必要とされるようなものではない。 ウしたがって、本件ニュースリリースの公表は、特許法104条の「その を備えた錠剤の製造は、当該技術の分野における通常の知識を有する者において、特段の手がかりが必要とされるようなものではない。 ウしたがって、本件ニュースリリースの公表は、特許法104条の「その物」について、本件特許の優先日前に、当該技術の分野における通常の知 識を有する者においてその物を製造する手がかりが得られる程度に知られ た事実が存していたことの根拠となるものであり、被告医薬品について、特許法104条の推定規定が適用される余地はない。 ⑷ 加えて、特許法104条は、現行法が制定された昭和34年当時、物質発明が特許することができない発明とされていたことの代替として、新規化学物質の開発のインセンティブを確保する目的で設けられた推定規定であり、 昭和50年特許法改正によって、特許法旧32条3号を廃止し、物質発明が認められることになったことで、歴史的な役目を終えた規定である。 ましてや、本件発明は、物質発明ではなく、そもそも特許法104条が制定当初に念頭においていた類型の発明ではない。このような意味でも、特許法104条の適用は、安易に認められるべきではない。 ⑸ 原告の主張に対する反論ア原告は、本件ニュースリリースの記載では、「酢酸亜鉛」が「酢酸亜鉛水和物」なのか「酢酸亜鉛無水和物」なのかを判別することができないと主張する。 しかしながら、本件ニュースリリースでは、「NPC-02(酢酸亜鉛)ウ イルソン病治療剤ノベルジン®錠25mg及び50mgの製造販売承認(剤形追加)を取得」と記載されている。原告は、平成20年4月から、酢酸亜鉛二水和物を有効成分とするカプセル剤(「ノベルジンカプセル25mg」及び「ノベルジンカプセル50mg」。乙23)について製造販売承認を取得し、これらの医薬品を製造販売 、平成20年4月から、酢酸亜鉛二水和物を有効成分とするカプセル剤(「ノベルジンカプセル25mg」及び「ノベルジンカプセル50mg」。乙23)について製造販売承認を取得し、これらの医薬品を製造販売していた。ここにおいて、用語「剤形追加」 (に係る医薬品)の意義は、「医薬品の承認申請について」(乙26)に定められているとおり、「既承認医薬品等と有効成分、投与経路、効能・効果及び用法・用量は同一であるが、剤形又は含量が異なる医薬品」である。そのため、上記にいう「剤形追加」は、上記の酢酸亜鉛水和物を有効成分とする先行カプセル剤に対し、錠剤という新たな剤形を追加したものにほか ならない。 加えて、「異なる結晶形等を有する医療用医薬品の取扱いについて」(薬食審査発0616第1号。乙27)が定めるところにより、既承認医薬品が水和物であるのに対し、新たに無水物を有効成分として承認申請する場合にあっては、通例、事前に、我が国における一般的名称(JAN)の命名に係る手続が必要とされている。しかしながら、日本医薬品一般的名称(J AN)では、酢酸亜鉛について、現在でも、「酢酸亜鉛水和物」のみが登録されており、酢酸亜鉛無水物についての登録はなされていない(乙28)。 さらに、何よりも、本件優先日前に告示された「使用薬剤の薬価(薬価基準) 等の一部改正について」(平成26年11月27日付け保医発1127第1号。乙29)は、製造販売を承認した厚生労働省が公開した資料であり、 「ノベルジン錠25mg」及び「ノベルジン錠50mg」の有効成分が酢酸亜鉛水和物であることが明記されているから、これは、「ノベルジン錠25mg」及び「ノベルジン錠50mg」の有効成分が酢酸亜鉛水和物であることの決定的な証拠である。 上記にいう乙2 有効成分が酢酸亜鉛水和物であることが明記されているから、これは、「ノベルジン錠25mg」及び「ノベルジン錠50mg」の有効成分が酢酸亜鉛水和物であることの決定的な証拠である。 上記にいう乙26、27は、医薬品の製造販売に携わる当業者における 常識であり、また、上記にいう乙29は、医薬品の製造販売に携わる当業者において、日常業務として、告示がされれば必ず内容を確認する資料である。 したがって、本件ニュースリリースに接した当業者は、「NPC-02(酢酸亜鉛)ウイルソン病治療剤ノベルジン®錠25mg及び50mg」の有効成 分が酢酸亜鉛水和物であることを確知する。 イまた、原告は、本件ニュースリリースの記載では、「賦形剤」、「結合剤」及び「崩壊剤」を含むかどうかも明らかではない旨主張する。 しかしながら、錠剤は、通常、有効成分のほかに賦形剤(錠剤や散剤などの医薬品に、成型、増量、希釈を目的に加える添加剤)、結合剤(原薬や添 加物を含む粉体混合物に、結合力を与えて成形するとともに錠剤の強度を 増すために用いられる添加剤)及び崩壊剤(固形の錠剤が水分を吸収して、崩れやすくする作用を有する添加剤)を含むものである。 そのため、医薬品の製造販売に携わる当業者であれば、何らの特段の「手がかり」がなくても、錠剤が、「賦形剤」、「結合剤」及び「崩壊剤」を含むものと理解する。 ⑹ 以上によれば、被告医薬品について、特許法104条の推定規定は適用されない。 2 争点1-2(「乾燥して造粒物を得る工程」における「品温が40℃未満」該当性)について(原告の主張) ⑴ 本件発明の技術的特徴点ア従来、酢酸亜鉛水和物はカプセル剤として認可され、患者に投与されていた(本件明細書の段落(以下同じ。 40℃未満」該当性)について(原告の主張) ⑴ 本件発明の技術的特徴点ア従来、酢酸亜鉛水和物はカプセル剤として認可され、患者に投与されていた(本件明細書の段落(以下同じ。)【0002】)。しかし、当該カプセル剤については、「カプセルに詰め込まれる成分の総量が非常に多く、また、物理混合物であるため、製造工程において成分をカプセルに充填する 際に成分の流動性が悪く、充填不均一などの問題をおこし、製剤を連続生産する上での大きな障害となっている。」とされている(段落【0003】)。 また、「カプセル剤は、剤径が大きいため(中略)、服用時に飲み込みにくいという問題がある。」とされている(段落【0003】)。 本件発明は、酢酸亜鉛水和物の錠剤の製造方法の発明であるが、これら の問題を解決することを課題とするものである(段落【0004】)。そして、本件発明は、特に「乾燥して造粒物を得る工程」において「品温」(当該工程における酢酸亜鉛水和物の温度をいう。)を「40℃未満」の状態で乾燥することにより、酢酸亜鉛水和物を錠剤とすることを可能とし、その結果、上記課題を解決したものである(段落【0008】)。 イこれに対し、被告は、カプセル剤を錠剤にすることは、本件特許出願の 優先日前の技術常識であり、「湿式顆粒圧縮法」は本件特許出願の優先日前の錠剤の一般的な製造方法の一つであるから、本件発明の技術的特徴は、「酢酸亜鉛水和物錠の製造において、造粒後の乾燥を品温40℃未満で行うことによって、造粒物の製造工程における酢酸亜鉛水和物中の結晶水の消失を抑制(無水物化を防止)し、もって酢酸亜鉛水和物の錠剤化を実現 した点」にしかないと主張している。 本件発明の技術的特徴は、正に被告が指摘する点にあるが、 おける酢酸亜鉛水和物中の結晶水の消失を抑制(無水物化を防止)し、もって酢酸亜鉛水和物の錠剤化を実現 した点」にしかないと主張している。 本件発明の技術的特徴は、正に被告が指摘する点にあるが、このような技術的特徴は、カプセル剤を錠剤にすることが本件特許出願の優先日前の技術常識であり、「湿式顆粒圧縮法」は本件特許出願の優先日前の錠剤の一般的な製造方法の一つであることから、直ちに導かれるものでない。 ⑵ 酢酸亜鉛水和物の無水物化についてア水和物の結晶水が脱水する温度は、水和物の種類ごとに異なり、かつ、添加物の種類による影響も受けるものである。そして、「酢酸亜鉛水和物」において、結晶水の「品温」が「40℃以上」でも消失し得ることは、本件明細書の段落【0005】に記載されている。また、例えば、「40℃」 を超えて「45℃」に達するまでに、「酢酸亜鉛水和物」に添加物を加えた混合物において「結晶水」が「11.6%」ほど消失し得ることは、訴外日医工株式会社の公開特許公報(甲11)の「比較例4」においても示されている。 イ被告は、「酢酸亜鉛水和物については、40℃~50℃で加熱しても結晶 水の脱水(無水物化)は生じず50℃~100℃で結晶水の脱水(無水物化)が生じる」と主張する。 しかしながら、そのような被告の主張を裏付けるような公知技術は、見受けられない。この点につき、被告が、唯一挙げる公知資料は、「水蒸気雰囲気中での酢酸亜鉛の熱分解による酸化亜鉛の低温合成」と題する論文(乙 7)のFig.1(「図1」)である。しかしながら、「図1」の実験は、本 件発明の「乾燥」工程とは、実験の試料も異なり、実験の条件も大きく異なり、実験の目的も異なる。また、「図1」の意味するところ自体も、必ずしも明確 ある。しかしながら、「図1」の実験は、本 件発明の「乾燥」工程とは、実験の試料も異なり、実験の条件も大きく異なり、実験の目的も異なる。また、「図1」の意味するところ自体も、必ずしも明確ではない。例えば、「図1」の「昇温」に伴う「質量」の減少に関するグラフのうち「酢酸亜鉛水和物」の結晶水の消失に関係すると思われる部分は、余りに粗い図であり、何度から水和物の減少による重量の減少 が開始しているのかを正確に読み取ることは不可能である。さらに、「酢酸亜鉛2水和物」の「脱水」に関する記載としては、僅かに「図1」の説明として、「初段(~150℃)の減量(16%)は、2水和物の脱離(16. 4%)に相当する。」(151頁右欄12~13行)との記載があるにすぎない。すなわち、水和物の脱離が「150℃」までに生じたこと以上の具 体的な数値は、記載されていない。 以上によれば、上記論文からは、「図1」も含めても、「酢酸亜鉛2水和物」の「脱水」が開始する温度についての具体的な技術的思想を読み取ることができない。まして、被告が主張するような「酢酸亜鉛水和物については、40℃~50℃で加熱しても結晶水の脱水(無水物化)は生じず5 0℃~100℃で結晶水の脱水(無水物化)が生じる」というような明確な帰結は、一切導かれていない。 ウなお、被告は、「酢酸亜鉛水和物」の「原薬」の「結晶水」の「脱水」が生じる温度が、「賦形剤」などの添加物を含んだ「造粒物」において「結晶水」の「脱水」が生じる温度と一致するはずである旨主張する。しかしな がら、乙7の論文から、そのような知見を導くことはできず、被告の主張は、仮説にすぎない。 ⑶ 本件工程についてア 「乾燥」の一般的意義について「乾燥」の一般的な技術的意義については、例え がら、乙7の論文から、そのような知見を導くことはできず、被告の主張は、仮説にすぎない。 ⑶ 本件工程についてア 「乾燥」の一般的意義について「乾燥」の一般的な技術的意義については、例えば、「ブリタニカ国際 大百科事典」(甲9)には、「多くは水分除去を意味するが、塗料や接着剤 の場合のように溶剤に関していうこともある。いずれにしても蒸発により不要の液体分を除くことである。」と記載され、「世界大百科事典6」(甲10)には、「水分を含む材料に外部から熱を与えて材料中の水分を蒸発させ固形乾燥製品を得る操作。化学工学の単位操作の一つである。湿り固体材料のほかに液状、ペースト状材料がその対象となる。」と記載されて いる。これらの記載からいえば、化学などの分野において「乾燥」とは、材料などに含まれる水分などの液体を加熱などの方法により除去して目的物を得る操作をいうものといえる。その際、液体を完全に除去する必要はなく、目的物を得るために必要な範囲で不要な液体を除去すれば足りることが分かる。 イ本件発明における「乾燥」の意義について本件発明における「乾燥」も、「乾燥」の一般的な技術的意義に沿い、酢酸亜鉛水和物などの混合物を造粒した後の溶媒を含んだ造粒物中の溶媒を加熱などの方法により除去して打錠用粉体とするための酢酸亜鉛水和物の造粒物を得るための操作をいうものといえる。その際、溶媒を完全に除去 する必要はなく、打錠用粉体とするための酢酸亜鉛水和物の造粒物を得るために必要な範囲で不要な溶媒を除去すれば足りるものといえる。 そして、本件発明における「乾燥」においては、一般的な技術的意義に加えて、「乾燥して造粒物を得る工程」における「品温」、すなわち、溶媒を含む造粒物の温度が「40℃未満であること」を特 といえる。 そして、本件発明における「乾燥」においては、一般的な技術的意義に加えて、「乾燥して造粒物を得る工程」における「品温」、すなわち、溶媒を含む造粒物の温度が「40℃未満であること」を特徴としている。この ように、本件発明における「乾燥」において「品温が40℃未満であること」を特徴としているのは、打錠用粉体とするための酢酸亜鉛水和物の造粒物を得るための「乾燥」工程において、「酢酸亜鉛水和物中の結晶水の消失が抑制された」ものとなるようにすることにある。溶媒を目標値である乾燥減量の値の付近まで除去しながら、酢酸亜鉛水和物中の結晶水の消失 が抑制されるようにするために、「品温が40℃未満」の状態で溶媒を除去 するものである。本件明細書の段落【0042】「<酢酸亜鉛水和物の製造>」に係る「(実施例1)」に係る記載からも、本件発明においては、打錠用粉体とするための酢酸亜鉛水和物を含む造粒物を得るために、乾燥後も造粒物中に残存する水分量である「乾燥減量」の目標値を定めて「品温が40℃未満」の状態で乾燥していることが分かる。 ウ本件工程の終期について以上を前提とすると、本件工程の終期は「打錠用粉体に適した造粒物を得るために必要な状態まで溶媒が除去された時点」(この時点までの乾燥を「必要な乾燥」という。)であり、被告製品におけるこれ以降の乾燥(品温40℃以上の加熱)は「余分な乾燥」(余分な加熱)にあたる。このような 「必要な乾燥」又は「余分な乾燥」という解釈を裏付けるクレームや明細書の直接的な記載はないものの、本件発明の「乾燥」の目的に反しない限り、本件発明は、上記にいう「余分な乾燥」を排除するものではない。 エ被告の主張について被告は、「乾燥の目的は、(ⅰ)医薬品の化学的安定性を保 のの、本件発明の「乾燥」の目的に反しない限り、本件発明は、上記にいう「余分な乾燥」を排除するものではない。 エ被告の主張について被告は、「乾燥の目的は、(ⅰ)医薬品の化学的安定性を保ち、細菌や カビなどによる製剤の品質の劣化を防ぐ、・・・(ⅳ)不要揮発成分を除去することにある。乾燥が不十分であれば、それだけ、医薬品の化学的安定性を損なうリスクや細菌やカビなどによる製剤の品質の劣化等のリスクが高くなる。」と主張する。原告としては、このような技術常識の主張自体は争うものではないが、「乾燥」の目的ごとに「乾燥」の程度は異 なることは当然である。 被告は、錠剤の製造における「乾燥」工程には、①予熱期間、②恒率乾燥期間、③減率乾燥期間という段階を経て、平衡含水率に達する趣旨の主張をしている。錠剤の製造に限らず、物質を「乾燥」した場合にこのような段階があり、平衡含水率に達し、その後は同じ条件で加熱を継 続しても水分が蒸発し難い状態になることがあることが、技術常識であ ること自体は、原告は争うものではない。しかしながら、「乾燥」の目的は多様であり、それぞれの「乾燥」の目的に従い、これらの段階におけるどの時点において「乾燥」の目的を達することになるかも様々である。 被告は、原告の主張は、錠剤の製造における「乾燥」の一般的意義、及び、本件明細書が示す本件発明の技術的意義に反するものであり、誤 りである旨主張している。しかしながら、このような被告の主張は、本件発明における「乾燥」の意義を誤解するものである。本件発明においては、「酢酸亜鉛水和物」の結晶水の消失を抑制しながら「打錠用粉体とするための酢酸亜鉛水和物の造粒物」を得る目的を達するに足りる状態になれば、必要な「乾燥」は終了する。それ以外の目的で 件発明においては、「酢酸亜鉛水和物」の結晶水の消失を抑制しながら「打錠用粉体とするための酢酸亜鉛水和物の造粒物」を得る目的を達するに足りる状態になれば、必要な「乾燥」は終了する。それ以外の目的で更なる加熱が され、溶媒を除去することは、それが本件発明の「乾燥」の目的に反しない限りは、許容されることになる。 被告は、本件発明における「乾燥」の意義について、熱を加えて造粒物の溶媒を除去する工程全体を意味すると主張する。しかしながら、不要な溶媒を除去した後の工程は本件発明にいう「乾燥」工程ではないか ら、「熱を加えて造粒物の(不要な)溶媒を除去する工程全体」を超えた加熱についても「乾燥」工程に含ませる趣旨であれば、それは誤解であるといわざるを得ない。一般に、錠剤とするための「打錠用粉体」を得るために「溶媒」を完全に蒸発させる必要はない。かえって「打錠用粉体」となる造粒物(顆粒)を過度に乾燥させたのでは、錠剤の上下側が 帽子状にはがれる現象である「キャッピング」(甲13:最新薬剤学第8版)など好ましくない問題も生じかねない。本件明細書における「乾燥」との関係においても「溶媒」を完全に蒸発させる必要があるようなことを示唆する記載は全くない。かえって、本件明細書の段落【0042】の「実施例1」をみると、「溶媒」を「完全」に除去することは想定して おらず、ある程度「溶媒」が残存することを前提としていることが分か る。 被告は、「一つの乾燥工程は、『必要な範囲』の溶媒の除去と『必要な範囲』を超えた溶媒の除去とに分けられるものではない。」とも主張する。 しかしながら、まず、被告方法においては、混合物の「品温」が「40℃」に達した時点で、直ちに加熱を終了させることも技術的には何らの困難 もなく、可能である けられるものではない。」とも主張する。 しかしながら、まず、被告方法においては、混合物の「品温」が「40℃」に達した時点で、直ちに加熱を終了させることも技術的には何らの困難 もなく、可能であるにもかかわらず、あえて被告医薬品の混合物の「品温」が「40℃」を超え、「41℃」に達するまで、ごく僅かな時間、「給気温度60℃」による加温を継続している。また、被告医薬品1の「製造指図記録書」(甲8の1)においては、一度、「品温」を測定するセンサーが「41℃」に達したところで、加熱を中止している。ところが、 混合物が全体として、本件発明の意味における「乾燥」が未了であったために、言い換えれば、被告が基準としている乾燥減量を上回っていたために、改めて加熱をしている。このように「乾燥」工程自体、必要とされる「乾燥」が終了するまで、工程を分割して実施することができるものである。このようなことから、本件発明の意義における「乾燥」工 程は、その「乾燥」に必要とされる加熱の工程を区別して認識することが可能であることは明らかといえる。したがって、「乾燥」工程とそれ以外の加熱の工程とを区別することができないとする被告の主張は当たらない。 ⑷ 被告方法において本件工程が40℃未満で行われていること ア被告医薬品1について被告医薬品1の「整粒品製造指図記録書」(甲8の1)の「製造記録」を図示したものは、次の「グラフ1」のとおりである。 すなわち、最初の乾燥において「20分」(品温30.7℃)を経過するまでは、ほぼ比例的に温度が上昇し、「品温40℃未満」の条件下における「乾燥」がされていることが分かる。「20分」を過ぎた後、急速に温度が上昇しているが、これは「品温」を測定している箇所の溶媒が局所的にほ ぼ蒸 に温度が上昇し、「品温40℃未満」の条件下における「乾燥」がされていることが分かる。「20分」を過ぎた後、急速に温度が上昇しているが、これは「品温」を測定している箇所の溶媒が局所的にほ ぼ蒸発し、気化熱が生じ難い状態に達したことを示している。この時点において、少なくとも局所的には、被告医薬品1において、打錠用粉体とするための酢酸亜鉛水和物の造粒物を得るための「品温40℃未満」の条件下における「乾燥」が完了したものと見ることができる。 その後、被告医薬品1の造粒物について、「41℃」に達した「26分」 まで加熱している。しかしながら、このような加熱は、打錠用粉体とするための酢酸亜鉛水和物を含む造粒物を得るための「乾燥」は局所的には完了した上で、余分な加熱をしているにすぎない。このような余分な加熱も「品温41℃」に達した時点で直ちに加熱を停止している。それは、「品温40℃以上」の状態における加熱を継続すると酢酸亜鉛水和物中の結晶水 の消失の抑制の観点から好ましくないことによる。このような被告医薬品1の造粒物の最初の加熱における「品温40℃以上」の状態での加熱は、極めて短時間であり、局所的には既に得られている打錠用粉体とするための酢酸亜鉛水和物を含む造粒物に与える影響は、ほぼ無視し得るものである。 このような被告医薬品1の造粒物の「製造記録」の記載からは、その後、 造粒物全体としては乾燥減量の規定の値に達していないことが判明し、再び加熱を開始していることが分かる。この再開された加熱においても、「10分」(品温36.6℃)までは再び「品温40℃未満」の条件下における「乾燥」がされている。その後、「10分」を過ぎた後、急速に温度が上昇しているが、これは、被告医薬品1の造粒物が全体としても溶媒がほぼ蒸 (品温36.6℃)までは再び「品温40℃未満」の条件下における「乾燥」がされている。その後、「10分」を過ぎた後、急速に温度が上昇しているが、これは、被告医薬品1の造粒物が全体としても溶媒がほぼ蒸 発し、気化熱が生じ難い状態に達したことを示している。この時点において、被告医薬品1の造粒物について、全体としても本件発明における酢酸亜鉛水和物の造粒物を得るための「乾燥」は完了したものと見ることができる。 その後、被告医薬品1の造粒物の再開後の加熱においても、「41℃」に 達した「13分」まで加熱している。しかしながら、①このような加熱は、本件発明にいう「乾燥」は完了した上で、余分な加熱をしているにすぎないこと、及び、②酢酸亜鉛水和物中の結晶水の消失の抑制の観点から「41℃」に達した時点で直ちに加熱を停止しており、全体としても既に得られている打錠用粉体とするための酢酸亜鉛水和物を含む造粒物に与える 影響はほぼ無視し得るものであることは、最初の加熱における場合と同様である。 これらの2回にわたる余分な加熱が打錠用粉体とするための酢酸亜鉛水和物を含む造粒物に対して与える影響は、ほぼ無視し得るものであることは、被告医薬品1において、その後、問題なく打錠がされ、結晶水も維 持された酢酸亜鉛水和物の素錠が得られていることからも裏付けられている。 このように、被告医薬品1において、打錠用粉体とするための酢酸亜鉛水和物を含む造粒物を得るための「乾燥」は、最初の加熱及び再開後の加熱のいずれにおいても「品温40℃未満」において実施されている。これ らの最初の加熱及び再開後の加熱のいずれにおいても、その後、「品温4 1℃」に達するまで加熱がされているが、これは打錠用粉体とするための酢酸亜鉛水和物を含む造粒物 されている。これ らの最初の加熱及び再開後の加熱のいずれにおいても、その後、「品温4 1℃」に達するまで加熱がされているが、これは打錠用粉体とするための酢酸亜鉛水和物を含む造粒物を得るための「乾燥」後に、余分な加熱がされているにすぎない。 したがって、被告医薬品1において、打錠用粉体とするための酢酸亜鉛水和物を含む造粒物を得るための「乾燥」の工程において、本件発明にい う「品温40℃未満」の条件下における「乾燥」が実施されているといえる。 イ被告医薬品2について被告医薬品2の「整粒品の製造指図記録書」(甲8の2)の「製造記録」を図示したものは、次の「グラフ2」のとおりである。 このように、被告医薬品2においても、被告医薬品1と同様に、打錠用粉体とするための酢酸亜鉛水和物を含む造粒物を得るための「乾燥」は、「品温40℃未満」において実施されている。その後、「品温41℃」に達するまで加熱がされているが、これは、打錠用粉体とするための酢酸亜鉛 水和物を含む造粒物を得るための「乾燥」後に、余分な加熱がされているにすぎない。 したがって、被告医薬品2においても、打錠用粉体とするための酢酸亜鉛水和物を含む造粒物を得るための「乾燥」の工程において、本件発明にいう「品温40℃未満」の条件下における「乾燥」が実施されているとい える。 ウ被告の主張について 令和5年8月4日に販売が開始された被告医薬品の量産品の製造方法が明らかではないこと特許法104条の推定を覆滅するためには、被告は、被告医薬品の量産品の製造方法が本件発明の製造方法には当たらないことを立証しなければならない。しかしながら、以下のとおり、被告が提出した証拠のみ では、被告医薬品の量産品の実際の には、被告は、被告医薬品の量産品の製造方法が本件発明の製造方法には当たらないことを立証しなければならない。しかしながら、以下のとおり、被告が提出した証拠のみ では、被告医薬品の量産品の実際の製造方法を立証したことには、およそなり得ない。 a 「整粒品製造指図記録書」(甲8)は、平成28年5月2日の少量の治験薬に関するものである。したがって、令和5年8月4日に販売が開始された被告医薬品の量産品の製造方法とは、時期において7年以 上も前のものであり、かつ、量的にもその生産量に大きく隔たりがある。そうすると、甲8に記載の製造条件が、令和5年8月4日に販売が開始された現時点の被告医薬品の量産品の製造方法を立証するものとは、到底いい得ない。 b 「製造指図記録書」(乙31)の証拠は、令和4年10月4日付けと 被告が称するものである。しかしながら、まず、同日頃に作成されたものかどうかが、証拠には「日付」などの記載が一切ないことから、明らかではない。また、仮に同日頃に作成されたものであるとしても、被告医薬品の販売が開始された令和5年8月4日よりも、10か月も前のものであり、これが被告医薬品の量産品の製造条件を示すもので あるかどうかは明らかではない。したがって、乙31に記載の製造条件が、令和5年8月4日に販売が開始された現時点の被告医薬品の量産品の製造方法を立証するものとは、到底いい得ない。 c 被告は、乙20の試験に使用されたものは、被告医薬品と原料や配合割合は同一のものであると主張し(乙32)、かつ、被告医薬品では 結晶水の脱離が摂氏50度までは生じないとし、乙20の試験におい ても結晶水の脱離が生じていない旨主張する。しかしながら、乙20の試験における被告医薬品の混合物と称するものについても、ま 結晶水の脱離が摂氏50度までは生じないとし、乙20の試験におい ても結晶水の脱離が生じていない旨主張する。しかしながら、乙20の試験における被告医薬品の混合物と称するものについても、また、令和5年8月4日に販売が開始された被告医薬品の製造過程における混合物についても、原料及びその配合割合などの詳細は、一切明らかにされていない。したがって、乙20の試験において実際に結晶水の 脱離が生じているかどうかも、原告としては検証しようがなく、明らかではない。 まして、当該試験の混合物と被告医薬品の製造過程における混合物との関連性も明らかではない。 d 被告は、乙11の試験に使用されたものは、被告医薬品と原料や配合割合は同一のものであると主張し(乙32)、かつ、乙11の試験の 目的は、被告医薬品の結晶水の脱離が生ずる温度の確認である旨主張する。しかしながら、乙11の試験は令和3年9月11日から同月13日にかけて実施されたものであり、当該試験における混合物が、令和5年8月4日から販売された被告医薬品の量産品の製造過程における混合物と、その原料及び配合割合において一致するものかどうかは 明らかではない。したがって、乙11の試験において結晶水の脱離が生じている温度が、被告の主張しているとおりのものであるのか、原告としては検証しようがなく、実際に何度で結晶水の脱離が生じているのかが明らかにされたとはいい難い。 e なお、乙20と乙11に基づく被告の主張は、いずれも訴外日医工 株式会社の公開特許公報(甲11)に記載された「比較例4」において45℃の時点においても結晶水の離脱が「11.6%」生じている事実と整合していない。 被告は、被告医薬品の「乾燥」工程について、「乾燥終点における品温を41℃以上50℃以下とする 例4」において45℃の時点においても結晶水の離脱が「11.6%」生じている事実と整合していない。 被告は、被告医薬品の「乾燥」工程について、「乾燥終点における品温を41℃以上50℃以下とする」ものであると主張する。しかしながら、 以下のとおり、被告は、同主張を裏付けるに足りる証拠を提出していな い。 a 被告が提出する各証拠のうち、「乾燥終点における製品温度は《50℃》以下とする。」との被告医薬品の製造販売承認書(乙19-1及び19-2)の記載は、被告医薬品の実際の製造方法において加熱の終点が「50℃」付近でされていることを示すものではない。したが って、このような証拠により、被告医薬品が本件発明の技術的範囲に属する「乾燥」工程を実施して製造されていることが推定されることが否定されるものではない。 b 被告は、「試験結果報告書」(乙20)を提出し、被告医薬品の「乾燥」工程が「乾燥終点における品温を41℃以上50℃以下とする」 ものであることを裏付ける証拠として提出している。 しかしながら、まず、被告の試験結果報告書(乙20)と被告医薬品との関連性は不明である。例えば、被告医薬品の混合物における現実の「乾燥」工程における加熱は、被告の試験結果報告書(乙20)におけるように「70分」間、「品温」が「45.8℃」に達するまで、 続けられているわけでもない。また、被告医薬品の混合物が平衡含水率に達するまで溶媒の除去が続けられているかどうかも不明である。 したがって、このような実験の結果から、被告医薬品が本件発明の技術的範囲に属する方法で製造されていることが否定されるものではない。また、被告の試験結果報告書(乙20)の実験の混合物と、被告 医薬品の製造工程における混合物との関連性も不明である 件発明の技術的範囲に属する方法で製造されていることが否定されるものではない。また、被告の試験結果報告書(乙20)の実験の混合物と、被告 医薬品の製造工程における混合物との関連性も不明である。しかも、当該実験の混合物を構成する「酢酸亜鉛水和物」、「結晶セルロース」、「トウモロコシデンプン」については、「所定量」とするのみで、どのような重量パーセントで「酢酸亜鉛水和物」の「結晶水」が含まれるのかも不明であり、また、「所定量の練合液」を加えたとあるが、「練 合液」の組成も、その量も不明であり、「練合液」の「溶媒」が「水」 かどうかも、記載がない。 したがって、上記実験における「乾燥減量」のどこまでが「溶媒」の減少によるものか、「結晶水」の減少によるものか全く不明であり、このような実験の結果から何が裏付けられるのか不明である。このような証拠により、被告医薬品が本件発明の技術的範囲に属する「乾燥」 工程を実施して製造されていることが推定されることが否定されるものではない。 c 被告は、「試験結果報告書」(乙11)を提出し、被告医薬品の「乾燥」工程が「乾燥終点における品温を41℃以上50℃以下とする」ものであることを裏付ける証拠として提出している。 しかしながら、被告の試験結果報告書(乙11)についても、被告の試験結果報告書(乙20)について前述した点が、そのまま当てはまる。すなわち、被告医薬品の混合物の現実の「乾燥」工程との関連性は明らかではなく、実験に使用された「混合物」や「練合液」の組成や量なども不明であり、このような実験結果から何が裏付けられる のか不明である。特に、乙20の試験結果報告書では、「給気温度」を「60℃設定」に維持しているが、乙11の試験結果報告書では、「給気温度」 不明であり、このような実験結果から何が裏付けられる のか不明である。特に、乙20の試験結果報告書では、「給気温度」を「60℃設定」に維持しているが、乙11の試験結果報告書では、「給気温度」を「70℃」、「80℃」、「90℃」と段階的に上げており、被告医薬品の混合物の製造工程(甲8:製造指図記録書)との関連性は更に乏しい。また、乙11の試験結果報告書により、「品温」が「5 0℃」を超えると「結晶水」が脱水するので、「品温」が「50℃以下」になるようにする必要があることが仮に裏付けられるのであるとしても、被告医薬品の混合物の製造工程において「品温」が「41℃」に達した時点で直ちに加熱を中止していることとの関連性も不明である。 このような証拠により、被告医薬品が本件発明の技術的範囲に属す る「乾燥」工程を実施して製造されていることが推定されることが否 定されるものではない。 被告は、被告医薬品では、恒率乾燥期間から減率乾燥期間へ移行した後も、平衡含水率に達するまで溶媒の除去が続いている旨主張している。 しかしながら、まず、被告の試験結果報告書(乙20)の実験においては、前記のとおり「乾燥減量」のどこまでが「溶媒」の減少によるも のか、「結晶水」の減少によるものか全く不明である。また、「平衡含水率」に達する温度は、被告の試験結果報告書(乙20)の実験の結果からは、これも断定はできないが、「45℃」付近であるようにも見える。 被告医薬品の混合物に対する加熱は、「品温」が「41℃」に到達した時点において直ちに停止されていることからすれば、被告医薬品の「乾燥」 工程が「41℃」で「平衡含水率」に達した時点まで続けられているとする被告の主張も、このような実験結果とは整合しない。 被告は、被告医薬 停止されていることからすれば、被告医薬品の「乾燥」 工程が「41℃」で「平衡含水率」に達した時点まで続けられているとする被告の主張も、このような実験結果とは整合しない。 被告は、被告医薬品1においては乾燥工程が2回行われていることから、1回目の乾燥工程における「品温」が「40℃」に達してから「41℃」に達するまでの部分の加熱が、原告の主張に従えば「余分な乾燥」 になるので、原告の主張には無理がある旨主張する。 しかしながら、「酢酸亜鉛水和物の打錠用粉体」を得るために必要な状態まで溶媒を除去することという本件発明の「乾燥」の目的に従えば、被告医薬品1の2回目の乾燥工程において初めて、被告医薬品1が全体として本件発明の「乾燥」の状態に達したといえる。被告医薬品1の1 回目の乾燥工程は局所的な「品温」が「40℃」に達したのみであり、全体としては「品温」が「40℃」に達していない状態にあったのであるから、その段階における「加熱」は、本件発明の「乾燥」の状態に達する前の状態における加熱であり、「余分な乾燥」にはならないことになる。したがって、原告の説明には、何ら無理なところはない。 被告は、「試験結果報告書」(乙11)を証拠として提出し、「酢酸亜鉛 水和物」において「50℃」に達するまで「結晶水」が維持されるとし、「品温40℃以上」の状態における加熱が「結晶水」の消失の抑制の観点から好ましくないとする原告の主張は、誤りである旨主張する。 しかしながら、まず、乙11の実験においては、前記のとおり、「乾燥減量」のどこまでが「溶媒」の減少によるものか、「結晶水」の減少によ るものか全く不明であり、当該「試験結果報告書」の結果は、その信用性に乏しい。 また、前述したとおり、訴外日医工株式会 減量」のどこまでが「溶媒」の減少によるものか、「結晶水」の減少によ るものか全く不明であり、当該「試験結果報告書」の結果は、その信用性に乏しい。 また、前述したとおり、訴外日医工株式会社の公開特許公報(甲11)の【表13】を見ると、「酢酸亜鉛水和物」と添加剤とから成る「比較例4」において、「無水物含有量」が、「品温」が「45℃」に達するまで に、既に「11.6%」生じていることが分かる。訴外日医工株式会社は原告の競業他社であり、その実験の結果は第三者性の高いものであるほか、被告の「試験結果報告書」(乙11)の実験条件の記載よりも、詳細な実験条件の記載がされており、信用性が高いものといえる。 以上によれば、本件明細書の記載及び訴外日医工株式会社の公開特許 公報の「比較例4」についての記載からすれば、「品温40℃以上」の状態における加熱が、「結晶水」の消失の抑制の観点から好ましくないことは明らかといえる。 被告は、原告が減率乾燥期間の途中で乾燥が完了すると主張しているような整理をしているが、原告はそのような主張をしていない。原告は 「酢酸亜鉛水和錠の打錠用粉体」を得るために必要な状態が得られた時点で乾燥が終了するという主張をしているのであり、当該時点が「恒率乾燥期間」から「減率乾燥期間」に移行し「平衡含水率」に達するまでのいずれの時点であるのかは、本件発明においては重要ではない。 ⑸ 小括 以上によれば、被告方法は、「乾燥して造粒物を得る工程」における「品温 が40℃未満」であるとの構成要件を充足する。 (被告の主張)⑴ 本件発明の技術的特徴点ア本件発明について、本件明細書には、以下の記載がなされている。 ① ウィルソン病の治療薬として、本件特許権の優先日前に、 の構成要件を充足する。 (被告の主張)⑴ 本件発明の技術的特徴点ア本件発明について、本件明細書には、以下の記載がなされている。 ① ウィルソン病の治療薬として、本件特許権の優先日前に、酢酸亜鉛水 和物(C4H6O4Zn・2H2O)を有効成分とするカプセル剤が認可され、使用されていた(段落【0002】)。 ② 当時の酢酸亜鉛水和物のカプセル剤は、カプセルに詰め込まれる成分の総量が非常に多く、また、物理混合物であるため、製造工程において成分をカプセルに充填する際に成分の流動性が悪く、充填不均一などの 問題をおこし、製剤を連続生産する上での大きな障害となっていた。また、該カプセル剤は、剤径が大きいため、服用時に飲み込みにくい(嚥下しにくい)という問題があり、剤径(直径)がより小さいものが必要とされていた(段落【0003】)。 ③ 上記の問題を解決する方法として、剤形をカプセル剤から錠剤等の他 の剤形に変更する方法が考えられる(段落【0005】の第1文)。 ④ しかし、本発明者らが酢酸亜鉛水和物について研究を重ねたところ、酢酸亜鉛水和物は、品温約40℃あるいは40℃以上の温度となるよう加熱すると、酢酸亜鉛水和物中の結晶水が消失して無水物に転移し、ウィルソン病の治療薬の有効成分としては承認されていない無水物となっ てしまう(段落【0005】の第3文、段落【0033】)。 ⑤ そこで、本件発明は、酢酸亜鉛水和物錠の製造において、造粒後の乾燥を品温40℃未満で行うことによって、造粒物の製造工程における酢酸亜鉛水和物中の結晶水の消失が抑制された酢酸亜鉛水和物錠を得ることができ、また、従来の酢酸亜鉛水和物のカプセル剤と比べて服用時に 飲み込みやすい薬剤を得ることができた(段落【0008】、段落【00 の結晶水の消失が抑制された酢酸亜鉛水和物錠を得ることができ、また、従来の酢酸亜鉛水和物のカプセル剤と比べて服用時に 飲み込みやすい薬剤を得ることができた(段落【0008】、段落【00 33】)。 イ本件明細書は、カプセル剤であった従来技術について、流動性が悪く、また、剤径が大きいため服用時に飲み込みにくいという問題を挙げているが、上記の流動性の問題は、薬物粉末の性質によるものであって、顆粒にする等の製剤学的な工夫によって改善することができる。また、剤径が大 きいため服用時に飲み込みにくいという上記の問題は、カプセル剤を錠剤に変更し、その錠剤を小型化することによって解決することができる。これらは、本件特許の優先日前の技術常識でしかなく(乙1ないし3)、本件明細書も、発明の前提事項として、上記のカプセル剤の問題を解決する方法として、剤形をカプセル剤から錠剤等の他の剤形に変更する方法が考え られる旨記載しているところである。 また、錠剤の製造について、有効成分のほか、賦形剤、結合剤、崩壊剤及び溶媒を含有し、これらを含む混合物を造粒した後乾燥して造粒物を得て、これを打錠して素錠を得る方法は、「湿式顆粒圧縮法」と呼ばれる製造方法であり、これは、本件特許の優先日前の錠剤の一般的な製造方法の一 つでしかない(乙4)。実際、本件明細書も、造粒及び乾燥について、従来公知の方法に従ってよい旨記載している(段落【0028】、段落【0032】)。 ウ以上の本件特許の優先日前の技術常識を踏まえると、本件発明の技術的特徴点は、わずかに、酢酸亜鉛水和物錠の製造において、造粒後の乾燥を 品温40℃未満で行うことによって、造粒物の製造工程における酢酸亜鉛水和物中の結晶水の消失を抑制(無水物化を防止)し、もって酢酸亜 は、わずかに、酢酸亜鉛水和物錠の製造において、造粒後の乾燥を 品温40℃未満で行うことによって、造粒物の製造工程における酢酸亜鉛水和物中の結晶水の消失を抑制(無水物化を防止)し、もって酢酸亜鉛水和物の錠剤化を実現した点にしか認められない。 エこれに対し、原告は、訴状において、従来技術であるカプセル剤では、流動性が悪く、剤径が大きいため服用時に飲み込みにくいといった課題の みを挙げる。しかしながら、前記のとおり、これらのカプセル剤の問題を 解決する方法として、剤形をカプセル剤から錠剤に変更し、その錠剤を小型化する方法が存在することは、本件特許の優先日前の技術常識でしかない。そのため、本件明細書の記載によれば、本件発明の具体的な課題は、酢酸亜鉛水和物の錠剤化において、造粒物の製造工程における酢酸亜鉛水和物中の結晶水の消失を抑制することにあり、本件発明は、その課題解決 手段として、造粒後の乾燥を品温40℃未満で行い、もって酢酸亜鉛水和物の錠剤化を実現したものと解するよりほかない。 ⑵ 酢酸亜鉛水和物の無水物化について水和物中の結晶水が、50℃~150℃程度の加熱乾燥等により比較的容易に脱水され、無水物となることは、本件特許の優先日前の水和物全般に妥 当する技術常識であり、酢酸亜鉛水和物にも当然に妥当するものである(乙5、乙6)。 水和物の加熱乾燥による無水物化については、本件特許の優先日前の技術常識として、50℃~150℃程度の加熱乾燥等により比較的容易に脱水され、無水物となることが知られていたところ、「水蒸気雰囲気中での酢酸亜鉛 の熱分解による酸化亜鉛の低温合成」(乙7)では、酢酸亜鉛水和物の無水物化について、上のチャート(TG)では50~100℃で減量があり(2℃/min~20℃/m 「水蒸気雰囲気中での酢酸亜鉛 の熱分解による酸化亜鉛の低温合成」(乙7)では、酢酸亜鉛水和物の無水物化について、上のチャート(TG)では50~100℃で減量があり(2℃/min~20℃/min)、この間の減量(16%)が酢酸亜鉛2水和物から水分子2個が脱離する理論減量率(16.4%)に相当し、かつ、同図の下のチャート(DTA)において、同温度で吸熱ピークを示している。 したがって、酢酸亜鉛水和物は、結晶水の脱水(無水物化)が50℃~100℃で生じるのであって(50℃を超える加熱により脱水が生じ始め、100℃で完全に無水物化する。)、40℃~50℃での加熱によって結晶水の脱水(無水物化)が生じるものではない。 なお、乙7は、直接には酢酸亜鉛水和物(原薬)について記載したもので あり、酢酸亜鉛水和物に加え賦形剤等を含む造粒物について記載したもので はない。しかしながら、酢酸亜鉛水和物(原薬)について、結晶水の脱水が生じる温度が50℃~100℃であれば、賦形剤等を含んだ造粒物についても、結晶水の脱水が生じる温度は約50℃~約100℃となるところである。 実際、被告医薬品でも、酢酸亜鉛水和物の結晶水の脱離は、50℃以下では生じず、50℃を超える加熱で生じる(乙11:試験結果報告書)。 したがって、酢酸亜鉛水和物に加え賦形剤等を含む造粒物について、結晶水の脱水(無水物化)は約50℃~約100℃で生じるのであって(約50℃を超える加熱により脱水が生じ始め、約100℃で完全に無水物化する)、40℃程度の加熱によって結晶水の脱水(無水物化)が生じるものではない。 これに対し、本件明細書には、酢酸亜鉛水和物が、約40℃あるいは40℃ 以上の温度で加熱されると、水和物中の結晶水が消失して無水物に転移する て結晶水の脱水(無水物化)が生じるものではない。 これに対し、本件明細書には、酢酸亜鉛水和物が、約40℃あるいは40℃ 以上の温度で加熱されると、水和物中の結晶水が消失して無水物に転移する旨記載されているが、明らかな誤りである。実際、本件明細書には、品温が40℃以上に達すると無水物化が生じることを示す比較例の試験結果は、記載されていない。 ⑶ 本件工程について ア 「乾燥」の一般的意義について乾燥とは、熱を加えて物質から液体を取り除くことであり、製剤においては、湿式造粒の後処理としての乾燥が主たるものである。乾燥の目的は、(ⅰ)医薬品の化学的安定性を保ち、細菌やカビなどによる製剤の品質の劣化を防ぐ、(ⅱ)流動性や充填性などの物性を改善する、(ⅲ) 粉体のかさと質量を減少させ、輸送や貯蔵を容易にする、(ⅳ)不要揮発成分を除去する、ことにある。乾燥が不十分であれば、それだけ、医薬品の化学的安定性を損なうリスクや細菌やカビなどによる製剤の品質の劣化等のリスクが高くなる(乙4、6)。 また、錠剤の製造における乾燥工程は、予熱期間→恒率乾燥期間→減 率乾燥期間の3つのプロセスからなる。これらの予熱期間、恒率乾燥期 間及び減率乾燥期間の3つのプロセスは、いずれも錠剤の「乾燥」工程を構成するものである。恒率乾燥期間から減率乾燥期間に移行する時点での含水率を「限界含水率」といい、乾燥を続けてもそれ以上水分が減少しない段階での含水率(水和物の場合は、水和物の状態で、それ以上水分が減少しない段階での含水率)を「平衡含水率」という(甲10、 乙12ないし16)。 イ本件発明における「乾燥」の意義について上記で述べた製剤における乾燥の目的、錠剤の製造における乾燥のプロセスに照らし、錠剤の製造にお 衡含水率」という(甲10、 乙12ないし16)。 イ本件発明における「乾燥」の意義について上記で述べた製剤における乾燥の目的、錠剤の製造における乾燥のプロセスに照らし、錠剤の製造における「乾燥」工程は、熱を加えて造粒物の水分を除去する工程全体であり、同工程に含まれる予熱期間、恒率 乾燥期間及び減率乾燥期間は、全て「乾燥」に該当するというのが、当業者の技術常識に即した解釈である。 また、上記で述べたとおり、本件明細書の記載によれば、酢酸亜鉛水和物は、品温約40℃あるいは品温40℃以上の温度となるよう加熱すると、酢酸亜鉛水和物中の結晶水が消失して無水物に転移し、ウィルソ ン病の治療薬の有効成分としては承認されていない無水物となってしまうところ、本件発明は、酢酸亜鉛水和物錠の製造において、造粒後の乾燥を品温40℃未満で行うことによって、造粒物の製造工程における酢酸亜鉛水和物中の結晶水の消失を抑制し、もって酢酸亜鉛水和物錠の製造を実現したというものであり、この点に技術的特徴点が認められる。 このような本件発明の技術的特徴点に照らせば、本件発明は、乾燥工程の終了まで、品温を40℃未満に維持することを定めた発明であり、ここにいう「乾燥工程」とは、熱を加えて造粒物の溶媒を除去する工程全体(乾燥工程の始めから終了までの工程全体)を意味するものと解するのが相当である。 したがって、本件発明の「乾燥」工程とは、錠剤の製造に係る当業者 の技術常識に照らしても、本件明細書が示す本件発明の技術的特徴点に照らしても、熱を加えて造粒物に含まれる溶媒を除去する工程全体(乾燥工程の始めから終了までの工程全体)を意味すると解するのが相当である。そうすると、本件発明の「乾燥」における「品温40℃未満」の定めは、 ても、熱を加えて造粒物に含まれる溶媒を除去する工程全体(乾燥工程の始めから終了までの工程全体)を意味すると解するのが相当である。そうすると、本件発明の「乾燥」における「品温40℃未満」の定めは、乾燥工程全体(熱を加えて造粒物に含まれる溶媒を除去する工 程全体(乾燥工程の始めから終了までの工程全体、予熱期間〜恒率乾燥期間〜減率乾燥期間))を通じて要求されるものであり、本件発明は、上記の乾燥工程の終了まで、品温を40℃未満に維持することを定めた発明である。したがって、本件発明は、品温が40℃を超える温度に到達するまで乾燥を行う構成を積極的に排除した発明である。 上記で述べたとおり、本件発明の「乾燥工程」は、錠剤の製造に係る当業者の技術常識に照らしても、本件明細書が示す本件発明の技術的特徴点に照らしても、熱を加えて造粒物の水分を除去する工程全体(乾燥工程の始めから終了までの工程全体)を意味すると解するのが相当である。 ウ本件工程の終期について上記の「乾燥」の解釈に照らし、本件工程の終期は「乾燥を終了した時点」であって、本件発明の課題及び解決手段に照らし、本件発明は、原告のいう「余分な乾燥」(品温40℃以上の加熱)を排除するものといえる。 また、本件発明のクレーム及び本件明細書の記載によれば、「必要な乾燥」 と「余分な乾燥」を明確に区分することはできない。 エ原告の主張について原告の主張は、「乾燥」工程の一部のみを切り出して、その一部の終了時に「乾燥が完了」したとし、以降の乾燥工程は、本件発明の「乾燥」に当たらず、「余分な加熱」であるとするものであるが、これは、錠剤の 製造における「乾燥」の一般的意義に反するものであり、誤りである。 原告は、本件発明の「乾燥」について、「そ に当たらず、「余分な加熱」であるとするものであるが、これは、錠剤の 製造における「乾燥」の一般的意義に反するものであり、誤りである。 原告は、本件発明の「乾燥」について、「その際、溶媒を完全に除去する必要はなく、打錠用粉体とするための酢酸亜鉛水和物の造粒物を得るために必要な範囲で不要な溶媒を除去すれば足りるものといえる」と主張するが、その根拠が不明である。 実際、本件明細書には、「乾燥」が「その際、溶媒を完全に除去する必 要はなく、打錠用粉体とするための酢酸亜鉛水和物の造粒物を得るために必要な範囲で不要な溶媒を除去すれば足りるものといえる」ものであることについて、何らの記載も示唆もない。そのため、当業者においては、いかなる程度の溶媒を除去すれば「必要な範囲」での溶媒の除去に該当するのかを理解することが困難である。 かえって、上記で述べたとおり、本件明細書の記載によれば、酢酸亜鉛水和物は、品温40℃以上の温度となるよう加熱すると、酢酸亜鉛水和物中の結晶水が消失して無水物に転移し、ウィルソン病の治療薬の有効成分としては承認されていない無水物となってしまうところ、本件発明は、酢酸亜鉛水和物錠の製造において、造粒後の乾燥を品温40℃未 満で行うことによって、造粒物の製造工程における酢酸亜鉛水和物中の結晶水の消失を抑制し、もって酢酸亜鉛水和物錠の製造を実現したというものであり、この点に技術的特徴点が認められる発明である。このような本件発明の技術的特徴点に照らせば、本件発明は、乾燥工程の終了まで、品温を40℃未満に維持することを定めた発明であり、ここにい う「乾燥工程」とは、熱を加えて造粒物の溶媒を除去する工程全体(乾燥工程の始めから終了までの工程全体)を意味するものと解するのが相当である 0℃未満に維持することを定めた発明であり、ここにい う「乾燥工程」とは、熱を加えて造粒物の溶媒を除去する工程全体(乾燥工程の始めから終了までの工程全体)を意味するものと解するのが相当である。 これに対し、原告の上記主張は、一つの連続した乾燥工程の一部のみを切り出して「乾燥」を捉え、その一部において品温が40℃未満であ れば、本件工程における「品温が40℃未満であること」を充足すると するものであり、本件明細書の記載に明らかに反する。 さらに、原告の上記解釈は、原告が主張する「必要な範囲」で不要な溶媒を除去すれば「乾燥」が完了し、以降の乾燥工程は、余分な加熱をするものであって、「乾燥」ではないとの原告主張の前提となるものであるが、そもそも、一つの連続して行われる乾燥工程は、本件発明の「乾 燥」と「余分な加熱」に分けられるものではない。 その上、錠剤の製造において、「乾燥」の目的は、(ⅰ)医薬品の化学的安定性を保ち、細菌やカビなどによる製剤の品質の劣化を防ぐ、(ⅱ)流動性や充填性などの物性を改善する、(ⅲ)粉体のかさと質量を減少させ、輸送や貯蔵を容易にする、(ⅳ)不要揮発成分を除去することにあり、 溶媒が残存すれば、医薬品の化学的安定性を損なうリスクや、細菌やカビなどによる製剤の品質の劣化等のリスクが存する。このような「乾燥」の目的に照らしても、一つの乾燥工程は、「必要な範囲」の溶媒の除去と、「必要な範囲」を超えた溶媒の除去とに分けられるものではない。 加えて、原告は、本件発明について、段落【0042】の記載を根拠 として、「溶媒を目標値である乾燥減量の値の付近まで除去しながら、酢酸亜鉛水和物中の結晶水の消失が抑制されるようにするために、「品温が40℃未満」の状態で溶媒を除去するもの 】の記載を根拠 として、「溶媒を目標値である乾燥減量の値の付近まで除去しながら、酢酸亜鉛水和物中の結晶水の消失が抑制されるようにするために、「品温が40℃未満」の状態で溶媒を除去するものである」と主張する。 しかしながら、段落【0042】には、溶媒を目標値である乾燥減量の値の「付近」まで除去することについて、何らの記載もない。原告の 上記主張は、何らの根拠なく「付近」なる概念を持ち出すものであって、理由がない。 ⑷ 被告方法において本件工程が40℃未満で行われていないことア被告方法は、乾燥工程において、給気温度60℃で乾燥を行い、乾燥終点における品温を41℃以上50℃以下とすることにより、造粒物の含水 量を平衡含水率(約13.4%)とするものである。したがって、被告方 法は、「乾燥」工程(熱を加えて造粒物の溶媒を除去する工程全体(乾燥工程の始めから終了までの工程全体))において、品温が41℃以上に達するものであって、40℃未満の状態を維持するものではないから、これは、「乾燥して造粒物を得る工程」における「品温が40℃未満」との構成要件を充足するものではない。このことは、以下の証拠から十分に立証され ている。 治験薬の製造指図記録書(甲8)甲8は、被告医薬品の治験薬に係る製造指図記録書である(甲7)。同製造指図記録書には、被告医薬品の治験薬の製造に係る乾燥工程について、品温41度以上で乾燥を終了する旨明記されている。医薬品につい ては、製造方法を確立した上で治験薬の製造を行い、当該治験薬と市販後製品の同等性を保証することにより市販後製品の有効性及び安全性並びに臨床試験の適切性を確保し、その上で、これと同一の方法で厚生労働大臣に対し製造販売承認申請を行い、製造販売承認を得て、製造販 市販後製品の同等性を保証することにより市販後製品の有効性及び安全性並びに臨床試験の適切性を確保し、その上で、これと同一の方法で厚生労働大臣に対し製造販売承認申請を行い、製造販売承認を得て、製造販売承認を得た方法で商用に量産品の製造・販売がなされる。したがって、 甲8は、被告医薬品の量産品の製造において、乾燥終点における品温を41度以上とする方法が使用されていることを証する証拠である。 なお、原告は、甲8が平成28年5月2日に作成されたものであって、被告医薬品の量産品の製造方法と、時期において7年以上も前のものであり、量的にも生産量に隔たりがある旨主張する。しかしながら、甲8 の作成年月日は、同日ではなく、正しくは、甲8-1については令和2年9月2日、甲8-2については同月7日である。原告が主張する「平成28年5月2日」は、製造指図記録書のフォーマットが作成された日であって、甲8の製造指図記録書が作成された日ではない(乙36)。また、品温41度以上で乾燥を終了することは、被告医薬品の製造につい て定められた条件であり、生産量の違いに左右されるものではないから、 治験薬と量産品との間に量的にも生産量に隔たりがあるとする原告の上記主張は、成り立つものではない。 プロセスバリデーションに係る製造指図記録書(乙31、37)医薬品を製造販売するに当たっては、事前に、プロセスバリデーションを実施しなければならない定めとなっている。プロセスバリデーショ ンは、工業化研究の結果や類似製品に対する過去の製造実績等に基づき、あらかじめ特定した製品品質に影響を及ぼす変動要因(原料及び資材の物性、操作条件等)を考慮した上で設定した許容条件の下で稼動する工程が、目的とする品質に適合する製品を恒常的に製造するために妥当で 、あらかじめ特定した製品品質に影響を及ぼす変動要因(原料及び資材の物性、操作条件等)を考慮した上で設定した許容条件の下で稼動する工程が、目的とする品質に適合する製品を恒常的に製造するために妥当であることを確認し、文書化することをいう。乙31は、被告医薬品1につ いて令和4年10月12日に、被告医薬品2について同月15日に被告が実施したプロセスバリデーションに係る製造指図記録書であり、その製造年月日及び生産量(被告医薬品1について120万錠、被告医薬品2について60万錠)を開示する証拠が乙37である。プロセスバリデーションは、その後の商用での量産と同一の製造方法・生産量で製造が実施 されるものであるから、乙37は、被告医薬品の量産品の製造において、乾燥終点における品温を41度以上とする方法が使用されていることを証する証拠である。加えて、プロセスバリデーションで製造された医薬品は、その後、実際に販売されているので、乙37は、量産品の製造条件を示す証拠でもある。 被告医薬品の販売開始直前期の製造指図記録書(乙38)乙38は、被告医薬品の販売開始直前期である令和5年6月16日付け(被告医薬品1)及び同月29日付け(被告医薬品2)の製造指図記録書である。 同製造指図記録書でも、被告医薬品の製造において、乾燥終点における品温を41度以上とする方法が用いられていること、被告医 薬品1について120万錠(量産品)、被告医薬品2について60万錠(量 産品)が製造されたことが明記されている。 試験結果報告書(乙20)及び試験結果報告書(乙11)試験結果報告書(乙20)は、被告において、被告医薬品について、品温と乾燥減量(試料を乾燥させて減量し、その減量が当初の重量に対し占める割合をいい、「乾燥減量 0)及び試験結果報告書(乙11)試験結果報告書(乙20)は、被告において、被告医薬品について、品温と乾燥減量(試料を乾燥させて減量し、その減量が当初の重量に対し占める割合をいい、「乾燥減量」と「含水率」とは同義である。)との 関係を明らかにするために行った試験の結果についての報告書である。 上記報告書が示すとおり、被告医薬品では、品温が40℃に達した以降も、品温が41℃に到達するまで、乾燥減量が減少し続け(水分の除去が引き続きなされている。)、品温が41℃に到達して、初めて乾燥減量が平衡状態に至っている(すなわち、平衡含水率に達している。)。 【試験結果報告書(乙20)の図1】 【試験結果報告書(乙20)の表1】 また、試験結果報告書(乙11)は、被告医薬品について、乾燥を続けて品温を上昇させ、結晶水の脱水が生じる品温を調べた結果についての報告書である。 上記報告書が示すとおり、被告医薬品では、品温が50℃に達するまでは結晶水が維持され、これを超える品温まで到達して、初めて一部無 水物化が生じる。 【試験結果報告書(乙11)の試験結果】 したがって、被告方法において、乾燥終点における品温を41℃以上50℃以下と定めているのは、本件発明が定める「品温が40℃未満で ある」を単に1度上回ったという消極的な理由によるものではなく、平衡含水率まで水分を除去し、乾燥の目的を最大限達成するという積極的な技術的意義を有するものである。 イ原告の主張について原告は、被告医薬品1について、乾燥開始から20分が経過した時点 及び追加乾燥の開始から10分経過した時点で、また、被告医薬品2について、乾燥開始から30分経過した時点で、時間-製品温度グラフの勾配が急にな 品1について、乾燥開始から20分が経過した時点 及び追加乾燥の開始から10分経過した時点で、また、被告医薬品2について、乾燥開始から30分経過した時点で、時間-製品温度グラフの勾配が急になっているとして、これらの勾配が変化した時点で「乾燥」が完了しており、それ以降は「余分な加熱」をしているにすぎない旨主張する。 しかしながら、原告の上記主張は、前提となるグラフの作成において、誤っている。すなわち、原告の作成したグラフは、プロットするデータの数が少なく、そのため、同グラフでは、予熱期間と恒率乾燥期間の区別もなければ、品温が一定の温度を保つ恒率乾燥期間も存在していない。 そのため、原告が作成したグラフは、被告医薬品の時間の経過に伴う品 温の変化を、客観的に正しく反映するものではない。 これに対し、報告書(乙21)が示すとおり、被告において、試験結果報告書(乙20)の試験結果と、甲8(被告医薬品の製造指図記録書)の結果とを重ね合わせると、被告医薬品1の12分時点での品温(25. 8℃)、被告医薬品2の15分時点での品温(26.0℃)が、試験結果 報告書(乙20)の試験結果が示す恒率乾燥期間の品温(1分時点~20分時点における品温25.0℃~26.0℃)とほぼ一致している(乙20の測定結果において、1分時点~20分時点の間の品温に若干の数値の差はあるが、これは測定誤差の範囲内である。)。 また、被告医薬品1の20分時点~26分時点の時間-製品温度のグ ラフの勾配、追加乾燥の10分時点~13分時点の時間-製品温度のグラフの勾配、及び、被告医薬品2の30分時点~36分時点の同グラフの勾配が、試験結果報告書(乙20)の試験結果が示す26分時点~36分時点の時間-製品温度のグラフの勾配と一致している。 製品温度のグラフの勾配、及び、被告医薬品2の30分時点~36分時点の同グラフの勾配が、試験結果報告書(乙20)の試験結果が示す26分時点~36分時点の時間-製品温度のグラフの勾配と一致している。 【報告書(乙21)の図2】 したがって、被告医薬品1及び被告医薬品2の乾燥工程については、被告医薬品1・予熱期間:乾燥開始から約1分程度・恒率乾燥期間:12分時を含む ・減率乾燥期間:20分時及び26分時並びに追加乾燥の10分時及び13分時を含む被告医薬品2・予熱期間:乾燥開始から約1分程度・恒率乾燥期間:15分時を含む ・減率乾燥期間:20分時、30分時及び36分時を含むと理解するのが相当である。 これに対し、原告が作成したグラフでは、時間-製品温度グラフの勾配が、原告が主張する各時点(被告医薬品1における最初の乾燥の20分時点及び追加乾燥の10分時点、被告医薬品2の乾燥における30分 時点)で急になっているが、これは、プロットするデータの数が少ないため、そのように推移しているように見えているにすぎず、時間-製品温度の変化を正しく示すものではない。 以上によれば、原告の主張は、減率乾燥期間の途中で「乾燥」が完了 し、以降の減率乾燥期間は、「乾燥」には当たらず「余分な加熱」であると主張するものと整理される。 しかしながら、試験結果報告書(乙20)が示すとおり、被告医薬品では、原告が主張する上記の各時点以降も、平衡含水率に達するまで溶媒の除去が続いている。すなわち、被告医薬品は、平衡含水率に達する まで乾燥を続けて、乾燥の目的(医薬品の化学的安定性を保ち、細菌やカビなどによる製剤の品質の劣化を防ぐ等の目的)を最大限達成し、かつ、結晶水の脱水が生じない製 被告医薬品は、平衡含水率に達する まで乾燥を続けて、乾燥の目的(医薬品の化学的安定性を保ち、細菌やカビなどによる製剤の品質の劣化を防ぐ等の目的)を最大限達成し、かつ、結晶水の脱水が生じない製剤とするものである。 したがって、原告が主張する上記の各時点以降の乾燥が「余分な加熱」であるとされる理由はなく、原告の上記主張は誤りである。 また、原告の主張は、恒率乾燥期間のみを「乾燥」とし、恒率乾燥期間が終了した時点で「乾燥が完了」したとし、それ以降の減率乾燥期間は「乾燥」には当たらず、「余分な加熱」に当たると主張しているものとも思われる。しかしながら、試験結果報告書(乙20)が示すとおり、被告医薬品では、恒率乾燥期間から減率乾燥期間へ移行した後も、平衡 含水率に達するまで溶媒の除去が続いている。また、予熱期間、恒率乾燥期間及び減率乾燥期間の3つのプロセスのいずれもが、錠剤の「乾燥」工程を構成するものであることは、本件特許の優先日前の技術常識である。 これに対し、原告の上記主張は、恒率乾燥期間から減率乾燥期間へ移 行した後も、平衡含水率に達するまで溶媒の除去は続いていること及び錠剤の製造の技術分野における用語の理解に反するものであり、誤りである。 被告医薬品1では、乾燥工程を終了した後、追加乾燥が行われているところ、原告は、「局所的に乾燥が完了」してから当該乾燥が終了するま での間の加熱を「余分な加熱」である旨主張する。 しかしながら、仮に「局所的に乾燥が完了」したとしても、製品全体としては十分な乾燥に到達しておらず、追加乾燥が必要であったのであるから、最初の乾燥のうち、「局所的に乾燥が完了」してから当該乾燥が終了するまでの間の加熱を「余分な加熱」と評価するのは、明らかに無理があ は十分な乾燥に到達しておらず、追加乾燥が必要であったのであるから、最初の乾燥のうち、「局所的に乾燥が完了」してから当該乾燥が終了するまでの間の加熱を「余分な加熱」と評価するのは、明らかに無理がある。 したがって、原告の上記主張に理由はない。なお、原告は、上記の最初の乾燥の終了について、「『品温40℃以上』の状態における加熱を継続すると酢酸亜鉛水和物中の結晶水の消失の抑制の観点から好ましくないことによる」と主張する。しかしながら、上記で述べたとおり、被告医薬品では、品温が50℃に達するまでは結晶水が維持され、これを超 える品温まで到達して、初めて一部無水物化が生じるものである(試験結果報告書(乙11))。したがって、原告の上記主張も誤りである。実際には、被告医薬品1の乾燥では、41℃に到達した時点で乾燥を終了したが、乾燥が不十分であることが明らかであったため、追加乾燥を行ったものである(被告医薬品が平衡含水率に到達するためには、品温を 41度まで上昇する必要があるが、品温41度に到達すれば、即、平衡含水率に到達するというものではない。)。 原告は、被告医薬品の「品温40℃以上」の状態での加熱が短時間であるとして、既に得られている打錠用粉体とするための酢酸亜鉛水和物を含む造粒物に与える影響は、ほぼ無視し得るものである旨主張する。 しかしながら、上記で述べたとおり、酢酸亜鉛水和物は、品温約40℃あるいは品温40℃以上の温度となるよう加熱すると、酢酸亜鉛水和物中の結晶水が消失して無水物に転移し、ウィルソン病の治療薬の有効成分としては承認されていない無水物となってしまうところ、本件発明は、酢酸亜鉛水和物錠の製造において、造粒後の乾燥を品温40℃未満で行 うことによって(品温を40℃未満に維持する 治療薬の有効成分としては承認されていない無水物となってしまうところ、本件発明は、酢酸亜鉛水和物錠の製造において、造粒後の乾燥を品温40℃未満で行 うことによって(品温を40℃未満に維持することによって)、造粒物の 製造工程における酢酸亜鉛水和物中の結晶水の消失を抑制し、もって酢酸亜鉛水和物錠の製造を実現したという発明である。そのため、原告の上記主張は、本件明細書の記載に基づく本件発明の技術的特徴点を自ら否定するに等しいものである。 また、上記で述べたとおり、被告医薬品では、品温が40℃に達して 以降も、品温が41℃に到達するまで加熱を続けることによって、初めて平衡含水率に到達している。そうすると、原告の上記主張は、被告方法の技術的な意義をも捨象するものである。 したがって、原告の上記主張に理由はない。 原告は、試験結果報告書(乙20)について、被告が、被告医薬品の 「乾燥」工程が「乾燥終点における品温を41℃以上50℃以下とする」ものであることを裏付ける証拠として提出していると主張する。しかしながら、被告は、乙20を、被告医薬品の乾燥工程における品温及び乾燥減量の推移(被告医薬品の乾燥工程では、造粒物の乾燥減量が品温41度まで減少を続け、41度以降は乾燥減量が平衡状態(平衡含水率)に 達すること)を証するために提出したのであるから、誤りである。 原告は、①被告医薬品の混合物における現実の「乾燥」工程における加熱は、試験結果報告書(乙20)におけるように「70分」間、「品温」が「45.8℃」に達するまで、続けられているわけではない、②被告医薬品の混合物が平衡含水率に達するまで溶媒の除去が続けられている かどうかも不明である、③試験結果報告書(乙20)の実験の混合物と、被告医薬品の製 るまで、続けられているわけではない、②被告医薬品の混合物が平衡含水率に達するまで溶媒の除去が続けられている かどうかも不明である、③試験結果報告書(乙20)の実験の混合物と、被告医薬品の製造工程における混合物との関連性や配合割合等が不明であり、試験結果報告書(乙20)と被告医薬品との関連性が不明であるとして、④当該実験における「乾燥減量」のどこまでが「溶媒」の減少によるものか、「結晶水」の減少によるものかが不明である旨主張する。 しかしながら、乙20の試験は、被告医薬品と同一の原料を使用し、 配合割合等の仕様を被告医薬品と同一にして、造粒混合物を製造し、被告医薬品と同じく流動層乾燥機で給気温度を60度に設定して上記造粒混合物について乾燥を行ったものである。このように、被告医薬品と原料や配合割合等の仕様を同一にした試験対象について、被告医薬品と同一の給気温度に設定した流動層乾燥機で乾燥を施したものであるから、 同試験結果は、被告医薬品の特性(品温と乾燥減量との関係)を証するものである。また、上記試験では、70分間、品温が45.8度に達するまで乾燥を継続したが、これは、被告医薬品の乾燥工程における品温及び乾燥減量の推移をみるという試験目的のために行ったものであり、被告医薬品の特性(品温と乾燥減量との関係)に影響を与えるようなもので はない。 原告は、試験結果報告書(乙11)について、被告医薬品の「乾燥」工程が「乾燥終点における品温を41℃以上50℃以下とする」ものであることを裏付ける証拠として提出していると主張する。 しかしながら、試験結果報告書(乙11)は、被告において、被告医薬 品において結晶水の脱離が生じる温度(被告医薬品では、酢酸亜鉛水和物の結晶水の脱離が50度以下では生じず、50 と主張する。 しかしながら、試験結果報告書(乙11)は、被告において、被告医薬 品において結晶水の脱離が生じる温度(被告医薬品では、酢酸亜鉛水和物の結晶水の脱離が50度以下では生じず、50度を超える品温に到達することにより生じること)を証するために提出した証拠であり、原告の上記主張は誤りである。 原告は、乙11の試験結果報告書では、「給気温度」を「70℃」、「8 0℃」、「90℃」と段階的に上げており、被告医薬品の混合物の製造工程(甲8:製造指図記録書)との関連性が乏しく、被告医薬品の混合物の現実の「乾燥」工程との関連性が明らかではない、また、実験に使用された「混合物」や「練合液」の組成や量などが不明であるとして、同試験結果から何が裏付けられるのか不明である旨主張する。 しかしながら、試験結果報告書(乙11)の試験は、被告医薬品と同一 の原料を使用し、配合割合等の仕様を被告医薬品と同一にして、造粒混合物を製造し、被告医薬品と同じく流動層乾燥機で上記造粒混合物について乾燥を行ったものである(乙32)。そして、上記試験は、被告医薬品において結晶水の脱離が生じる温度を確認する目的のものであるところ、給気温度が60度では、品温が45度に達するのに時間が掛かり、 また、品温が50度以上に達しないことから、給気温度を段階的に60度→70度→80度→90度と上昇させたものである(乙11)。このように、乙11の試験は、被告医薬品と原料や配合割合等の仕様を同一にした試験対象について、乾燥工程において結晶水の脱離が生じる温度を確認したものである。また、上記の給気温度の上昇は、結晶水の脱離が 生じる温度に影響を与えるものではない。 また、乙11の試験結果は、水和物中の結晶水が、50℃~150℃程度の加熱乾 温度を確認したものである。また、上記の給気温度の上昇は、結晶水の脱離が 生じる温度に影響を与えるものではない。 また、乙11の試験結果は、水和物中の結晶水が、50℃~150℃程度の加熱乾燥等により比較的容易に脱水され、無水物となるとの技術常識(乙5)と整合するものである。さらに、乙11の試験結果は、原薬と賦形剤等を含んだ造粒物との差違があるとしても、乙7の試験結果 (「酢酸亜鉛水和物(原薬)について、結晶水の脱水が生じる温度が50℃~100℃であること」)とも、整合する。 原告は、乙7では、Fig.1の図が粗い等として、酢酸亜鉛水和物が脱水を開始する温度について具体的な技術的思想を読み取ることができない旨主張する。 しかし、乙7のFig.1のTG-DTAについては、TG(熱重量測定)の結果とDTAの結果を併せて確認することにより、少なくとも、酢酸亜鉛水和物が50度以上で脱水することは明確に読み取ることができる。また、そもそも、無水物化が生じる温度は、酢酸亜鉛水和物の物性であり、この程度のことは、当業者において、試験を実施することによ り容易に確認ができることでしかない。したがって、乙7は、酢酸亜鉛 水和物(原薬)が50度以上で脱水することを示す証拠として、十分である。 3 争点2-1(乙17発明を主引例とする進歩性欠如の有無)について(被告の主張)⑴ 乙17に記載された発明の構成 ア乙17は、本件特許の優先日前に公開された原告のニュースリリースであり、以下の記載がなされている。 「製品情報NPC-02(酢酸亜鉛)ウイルソン病治療剤ノベルジン®錠25mg及び50mgの製造販売承認(剤形追加)を取得」上記にいう「ノベルジン®錠25mg及び50mgの製造販売承認(剤形 。 「製品情報NPC-02(酢酸亜鉛)ウイルソン病治療剤ノベルジン®錠25mg及び50mgの製造販売承認(剤形追加)を取得」上記にいう「ノベルジン®錠25mg及び50mgの製造販売承認(剤形追 加)」は、原告が、従前より、カプセル剤(「ノベルジンカプセル25mg」及び「ノベルジンカプセル50mg」)について製造販売承認を取得していたところ、剤形を追加して、錠剤について製造販売承認を取得したことを意味する記載である。 そして、「ノベルジンカプセル25mg」及び「ノベルジンカプセル50 mg」は、酢酸亜鉛二水和物を有効成分とする医薬品である(乙23)。 イしたがって、乙17には、「酢酸亜鉛水和物を有効成分とする錠剤(酢酸亜鉛水和物錠)」が開示されている(以下「乙17発明」という。)。 ⑵ 一致点及び相違点ア本件発明1-1及び2-1と乙17発明とを比較すると、酢酸亜鉛水和 物錠に関する発明である点において一致する。他方、次の点において相違する。 本件発明は、酢酸亜鉛水和物の製造において、(1)酢酸亜鉛水和物(C4H6O4Zn・2H2O)、賦形剤、結合剤(ただし、本件発明1において含まれているかは不明。)、崩壊剤及び溶媒を含む混合物を造粒した後乾 燥して造粒物を得る工程、(2)該造粒物を打錠して素錠を得る工程を含 む発明であるのに対し、乙17発明は、これらの工程を経て製造されたかどうかが明らかでない点(以下「相違点1-1」という。)本件発明は、「前記工程(1)における品温が40℃未満である」という構成を備えた発明であるのに対し、乙17発明は、同構成を備えているか否かが明らかでない点(以下「相違点1-2」という。) イ本件発明1-3及び2-3と乙17発明を対比すると、 」という構成を備えた発明であるのに対し、乙17発明は、同構成を備えているか否かが明らかでない点(以下「相違点1-2」という。) イ本件発明1-3及び2-3と乙17発明を対比すると、相違点1-1及び相違点1-2に加え、次の点において相違する。 本件発明1-3及び2-3は、酢酸亜鉛水和物錠が、酢酸亜鉛水和物(C4H6O4Zn・2H2O)を5~200mg含有し、大きさが直径5~12mm、厚さ1~6mmであって、日局溶出試験法パドル法50回転(試験液: 水900mL)によって測定される15分後の亜鉛の溶出量が85%以上であるのに対し、乙17発明の酢酸亜鉛水和物錠については、乙17の記載の限りでは、酢酸亜鉛水和物の含量、大きさ、溶出量が明らかではない点(以下「相違点1-3」という。)⑶ 容易想到性 ア相違点1-1相違点1-1は、本件発明は、酢酸亜鉛水和物の製造において「(1)酢酸亜鉛水和物(C4H6O4Zn・2H2O)、賦形剤、結合剤(ただし、本件発明1において含まれているかは不明。)、崩壊剤及び溶媒を含む混合物を造粒した後乾燥して造粒物を得る工程、(2)該造粒物を打錠して 素錠を得る工程」を含む発明であるのに対し、乙17発明は、これらの工程を経て製造されたかどうかが明らかでない点である。 しかしながら、錠剤の製造について、有効成分、賦形剤、結合剤、崩壊剤及び溶媒を含む混合物を造粒した後乾燥して造粒物を得て、これを打錠して素錠を得る方法は、「湿式顆粒圧縮法」と呼ばれる製造方法であ り、本件特許の優先日前の錠剤の一般的な製造方法の一つでしかない。 実際、本件明細書も、造粒及び乾燥について、従来公知の方法に従ってよい旨記載している(段落【0028】、段落【0032】)。 し 許の優先日前の錠剤の一般的な製造方法の一つでしかない。 実際、本件明細書も、造粒及び乾燥について、従来公知の方法に従ってよい旨記載している(段落【0028】、段落【0032】)。 したがって、相違点1-1に係る本件発明の構成(湿式顆粒圧縮法)は、本件特許の優先日前の錠剤の一般的な製造方法の一つでしかなく、当業者が通常採用を検討するものでしかない。 その上、本件明細書は、カプセル剤であった従来技術について流動性が悪いとの課題を挙げているが(段落【0005】)、流動性が「湿式顆粒圧縮法」の採用などの製剤学的な工夫により改善されることは、本件特許の優先日前の技術常識でしかない。 また、本件明細書は、従来技術のカプセル剤では、剤径が大きいため 服用時に飲み込みにくいという課題を挙げているが(段落【0005】)、錠剤の小型化を図ることは製剤開発における一般的な課題でしかなく、「湿式顆粒打錠法」の採用により、主薬含有率を大きくして錠剤の小型化が可能となることは、本件特許の優先日前の技術常識でしかない(なお、乙17発明は錠剤についての発明であるから、カプセル剤から錠剤 への剤形の変更の動機付けについて検討する必要はない。)。 このように、本件発明の上記課題は、錠剤の一般的な製造方法の一つである湿式顆粒打錠法を採用することにより、当然に解決することができるものでしかなく、このことは、本件特許の優先日前の技術常識である。 そうすると、乙17発明に接した当業者においては、湿式顆粒打錠法を採用して酢酸亜鉛錠を製造する動機付けが十分に認められる。 したがって、本件発明の相違点1-1に係る構成は、本件特許の優先日前において、乙17発明に接した当業者が、技術常識に基づき容易に想到し得たものでしかない。 動機付けが十分に認められる。 したがって、本件発明の相違点1-1に係る構成は、本件特許の優先日前において、乙17発明に接した当業者が、技術常識に基づき容易に想到し得たものでしかない。 イ相違点1-2 相違点1-2は、本件発明は「前記工程(1)における品温が40℃未満である」という構成を備えた発明であるのに対し、乙17発明は、当該構成を備えているか否かが明らかでない点である。 この点、結晶水を有する医薬品(水和物)について、結晶水の脱離が生じると、生物学的利用能や製剤の経時的安定性に影響が生じる可能性 があるため、結晶水の脱離が生じないよう乾燥条件を設定することは、本件特許の優先日前の技術常識である。 加えて、本件明細書の段落【0005】でも記載されているとおり、酢酸亜鉛水和物を有効成分とする先行医薬品の剤形を変更する場合、剤形の変更に伴い水和物の一部が無水物に転移すると、ウィルソン病治療 薬として薬事行政上承認されていない有効成分を含有する医薬品となってしまう。そのため、剤形についてカプセル剤から錠剤への変更を検討する当業者は、錠剤において無水物化が生じないよう当然に留意する。 また、水和物中の結晶水が、50℃~150℃程度の加熱乾燥等により比較的容易に脱水され、無水物となることは、本件特許の優先日前の 水和物全般についての技術常識であり、これは、酢酸亜鉛水和物にも当然に妥当する。 しかも、本件特許の優先日前には、酢酸亜鉛水和物について、結晶水の脱水(無水物化)が50℃~100℃で生じる(50℃を超える加熱により脱水が生じ始め、100℃で完全に無水物化する)ことが知られ ていた(乙7)。 そのため、医薬品の製造に携わる当業者であれば、酢酸亜鉛水和物錠の製造に当たり、 じる(50℃を超える加熱により脱水が生じ始め、100℃で完全に無水物化する)ことが知られ ていた(乙7)。 そのため、医薬品の製造に携わる当業者であれば、酢酸亜鉛水和物錠の製造に当たり、当然に、結晶水が脱水しないよう加熱乾燥の温度に留意して、乾燥工程における品温を50℃以下の適宜の温度に設定することを検討する。 なお、乙7は、直接には、酢酸亜鉛水和物(原薬)について記載した ものであり、酢酸亜鉛水和物に加え賦形剤等を含む造粒物について記載したものではない。しかしながら、酢酸亜鉛水和物(原薬)について、結晶水の脱水が生じる温度が50℃~100℃であれば、賦形剤等を含んだ造粒物についても、結晶水の脱水が生じる温度は約50℃~約100℃になる。また、酢酸亜鉛水和物(原薬)と、酢酸亜鉛水和物のほか 賦形剤等を含んだ造粒物との間で、結晶水の脱水が生じる温度に若干の差違が生じたとしても、当業者が酢酸亜鉛水和物錠を製造するに当たり、結晶水が脱水しないよう加熱乾燥の温度に留意して、乾燥工程における品温を50℃以下の適宜の温度に設定することを検討することに変わりはない。 したがって、酢酸亜鉛水和物錠の製造に当たり、乾燥工程における品温を50℃以下の適宜の温度と定めることは、当業者において当然に検討することでしかない。 また、相違点1-2に係る本件発明の構成は、乾燥工程における品温を「40℃未満」とするものであるが、上記で述べたとおり、酢酸亜鉛 水和物については、40℃~50℃で加熱しても結晶水の脱水(無水物化)は生じず、50℃~100℃で結晶水の脱水(無水物化)が生じる(50℃を超える加熱により脱水が生じ始め、100℃で完全に無水物化する。)。 この点につき、本件明細書には、酢酸亜鉛水和物が、 物化)は生じず、50℃~100℃で結晶水の脱水(無水物化)が生じる(50℃を超える加熱により脱水が生じ始め、100℃で完全に無水物化する。)。 この点につき、本件明細書には、酢酸亜鉛水和物が、約40℃あるい は40℃以上の温度で加熱されると、水和物中の結晶水が消失して無水物に転移する旨記載されているが(段落【0005】、段落【0033】)、明らかな誤りである。 また、本件明細書の記載をみても、品温35℃で乾燥した実施例1、品温32℃で乾燥した実施例2及び実施例3しか記載されておらず、造 粒後の乾燥を行う品温を40℃未満とすることについて臨界的意義を示 す試験結果の記載はない。 そのため、本件発明の品温「40℃未満」には、50℃以下の適宜の温度という意義しかなく、これについて臨界的意義は認められない。 したがって、酢酸亜鉛水和物錠の製造に当たり、乾燥工程における品温を50℃以下の適宜の温度と定める上で、品温を「40℃未満」とす ることは、当業者が適宜定める設計事項でしかない。 以上によれば、本件発明の相違点1-2に係る構成は、本件特許の優先日前において、乙17発明に接した当業者が、技術常識及び設計事項の適用により容易に想到し得たものでしかない。 ウ相違点1-3 相違点1-3のうち、酢酸亜鉛水和物の含量についてみると、争点1において述べたとおり、当業者は、本件ニュースリリースに係る酢酸亜鉛錠における酢酸亜鉛水和物の含量を理解することができる。そして、亜鉛の含量25mg及び50mgをそれぞれ酢酸亜鉛水和物に換算すると、83. 92mg 及び167.84mg であり(乙23の【組成・性状】「成分・含量」 欄の記載)、これは、本件発明1-3及び2-3の「5~200mg」に該当する。そ 亜鉛水和物に換算すると、83. 92mg 及び167.84mg であり(乙23の【組成・性状】「成分・含量」 欄の記載)、これは、本件発明1-3及び2-3の「5~200mg」に該当する。そのため、相違点1-3のうち、酢酸亜鉛水和物の含量は、実質的な相違点となるものではない。 また、酢酸亜鉛水和物の大きさについてみると、本件発明1-3及び2-3が定める錠剤の大きさ(直径5〜12mm、厚さ1〜6mm)は、乙34 に記載の服用性に優れた錠剤形状の調査において、市販医薬品の現状調査の結果に基づき定められた大きさの範囲内のものである。そのため、本件発明1-3及び2-3が定める錠剤の大きさは、当業者が通常選択する範囲内のものでしかない。 さらに、溶出量についても、「剤形追加」の場合、生物学的同等性試験(溶 出性試験を含む。)は、「後発医薬品ガイドラインの第3章に従う」とされ ているところ(乙35)、これによれば、本件発明1-3及び2-3が定める溶出量(「日局溶出試験法パドル法50回転(試験液:水900mL)によって測定される15分後の亜鉛の溶出量が85%以上」)は、医薬品における一般的な基準の範囲内のものでしかない。 そして、本件発明1-3及び2-3は、当該酢酸亜鉛水和物の含量、錠 剤の大きさ及び溶出量を備えた錠剤に固有の製造方法を見出したものではなく、同錠剤は、当業者が適宜の方法において製造することができるものでしかない。 ⑷ 顕著な効果本件発明の効果は、①製造工程における酢酸亜鉛水和物中の結晶水の消失 が抑制された酢酸亜鉛水和物錠を得ることができ、②本件発明の酢酸亜鉛水和物錠は、大きさが小さいため、従来の酢酸亜鉛水和物のカプセル剤と比べて服用時に飲みやすいという効果を奏するものであるが(段落 が抑制された酢酸亜鉛水和物錠を得ることができ、②本件発明の酢酸亜鉛水和物錠は、大きさが小さいため、従来の酢酸亜鉛水和物のカプセル剤と比べて服用時に飲みやすいという効果を奏するものであるが(段落【0008】)、これらの効果は、上記のとおり、当業者が当然に実現を求める効果でしかなく、かつ、当業者において容易に実現が可能な効果でしかない。 したがって、本件発明に顕著な効果が認められる余地はない。 ⑸ 小括以上によれば、本件発明は進歩性が欠如した発明でしかない。 (原告の主張)⑴ 乙17発明の引例適格性 本件ニュースリリースに被告が指摘する記載があることは認めるが、そもそも、本件発明は、物を生産する方法の発明(特許法2条3項3号)であり、「酢酸亜鉛水和物を有効成分とする錠剤」という「物」を主たる引用発明とする被告の主張は、適切ではない。したがって、本件ニュースリリースから物を生産する方法の発明として認定し得る範囲で方法の発明を認定した主張 をすべきである。ただし、錠剤の製造方法も多様であり、本件ニュースリリ ースから錠剤を製造する特定の方法を認識することは、そもそも不可能であるといわざるを得ない。 また、本件ニュースリリースには、「酢酸亜鉛」との記載があるのみであり、「酢酸亜鉛水和物」か「酢酸亜鉛無水和物」かは特定されていない。「剤型追加」との文言から直ちに「有効成分」が「酢酸亜鉛水和物」であることを特 定することができるわけではない。「ノベルジンカプセル25mg」及び「ノベルジンカプセル50mg」の添付文書(乙23)に記載の技術的思想を適用することにより初めて「酢酸亜鉛水和物」を用いた「錠剤」との新たな技術的思想の創作が導かれるのであり、本件ニュースリリースの記載のみからは「酢酸 0mg」の添付文書(乙23)に記載の技術的思想を適用することにより初めて「酢酸亜鉛水和物」を用いた「錠剤」との新たな技術的思想の創作が導かれるのであり、本件ニュースリリースの記載のみからは「酢酸亜鉛水和物」を用いた「錠剤」との技術的思想は導かれない。 さらに、引用発明たり得るためには、特許庁「特許・実用新案審査基準」の「第Ⅲ部第2章第3節新規性・進歩性の審査の進め方」、「3.1.1 頒布された刊行物に記載された発明(第29条第1項第3号)」、「(1) 刊行物に記載された発明」の「b」によれば、「(ii) 方法の発明については、刊行物の記載及び本願の出願時の技術常識に基づいて、当業者がその方法を使用できること が明らかでない場合」 には、「その刊行物に記載されたその発明を『引用発明』とすることができない。」 と記載されている。しかるに、本件ニュースリリースからは、「酢酸亜鉛」の「錠剤」の具体的な製造方法も開示されていなければ、どのようにして製造することができるのかも明らかではない。 したがって、特許庁「特許・実用新案審査基準」の解釈によれば、本件ニ ュースリリースから「物を生産する方法の発明」に係る具体的な技術的思想としての「引用発明」を認定し得ない。 以上によれば、本件ニュースリリースからは、本件発明と対比すべき「物を生産する方法の発明」としての具体的な技術的思想としての「引用発明」を認定することはできない。 ⑵ 一致点及び相違点 本件ニュースリリースから「物を生産する方法の発明」に係る具体的な技術的思想としての「引用発明」 を認定し得ない。したがって、一致点は存在しない。ただし、各相違点があることは認める。 ⑶ 容易想到性本件ニュースリリースには、「酢酸亜鉛水和物」を有効成分と 技術的思想としての「引用発明」 を認定し得ない。したがって、一致点は存在しない。ただし、各相違点があることは認める。 ⑶ 容易想到性本件ニュースリリースには、「酢酸亜鉛水和物」を有効成分とする「錠剤」 を製造する方法が、全く開示されていないのは、前述したとおりである。そして、本件特許出願のその優先日当時、「酢酸亜鉛水和物」を有効成分とする「錠剤」を製造する方法は、全く公然知られていない。したがって、被告が主張するような製剤に関する一般的な技術常識のみから、本件発明に相当する物を生産する方法の発明を、当業者が容易になし得たとはいえない。 ⑷ 顕著な効果本件発明に相当する物を生産する方法の発明を、当業者が容易になし得たとはいえないのであるから、顕著な効果を論ずるまでもない。 ⑸ 小括したがって、被告が主張する乙17発明を主引例とする無効理由は、主た る引用発明自体がおよそ方法の発明を無効とすべき引用発明としての適格性を欠いており、理由がない。このような無効理由により、本件特許出願は特許法29条2項の規定に違反して特許されたものとはいえず、本件特許が特許無効審判により無効とされるべきものと認められる余地もない。 以上によれば、上記無効理由に基づく権利行使の制限の抗弁は認められな い。 4 争点2-2(乙24発明を主引例とする進歩性欠如の有無)について(被告の主張)⑴ 乙24に記載された発明の構成ア特表2008-517022号公報(乙24)は、本件特許の優先日前 に公表された公表特許公報である。同公報は、塩酸ドネペジル水和物を有 効成分とする錠剤の製造方法を開示するものである。乙24には、以下の発明が開示されている(以下「乙24発明」という。)。 塩酸ドネペジ 許公報である。同公報は、塩酸ドネペジル水和物を有 効成分とする錠剤の製造方法を開示するものである。乙24には、以下の発明が開示されている(以下「乙24発明」という。)。 塩酸ドネペジル水和物を有効成分とする錠剤の製造方法である(【請求項3】、段落【0075】、段落【0076】)。 塩酸ドネペジル水和物、微結晶性セルロース、ラクトース一水和物、 ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースをホモジナイズした混合物に精製水を噴霧して造粒機で造粒し、これを流動床乾燥機で乾燥させる工程、及び乾燥した圧縮混合物を錠剤へと圧縮する工程を含む(段落【0075】、段落【0076】)。 微結晶性セルロースは賦形剤及び結合剤であり、ラクトース一水和物 は賦形剤であり、ヒドロキシプロピルセルロースは結合剤であり、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは崩壊剤及び結合剤であり、精製水は溶媒である(段落【0015】~段落【0017】、段落【0038】の(ⅰ’))。 乾燥した造粒物を錠剤へと圧縮する方法として輪転機を用いる(段落 【0047】。なお、輪転機は乙4の135頁に記載のロータリー打錠機に相当し、これは打錠により造粒物を錠剤に圧縮するものである。)。 顆粒の温度が50℃を超えると無水物化が生じる可能性があるため、乾燥工程では、顆粒の温度が50℃を超えないことを確実にするため、流動床乾燥機における吸気の温度を70℃付近若しくはそれより低い温 度に設定する(段落【0041】、段落【0042】)。 イ乙24発明は、塩酸ドネペジル水和物を有効成分とする錠剤の製造方法についての発明であり、本件発明と有効成分が異なるものの、本件発明が定める工程(1)及び工程(2)を備え、かつ、本件発明と同じく、 イ乙24発明は、塩酸ドネペジル水和物を有効成分とする錠剤の製造方法についての発明であり、本件発明と有効成分が異なるものの、本件発明が定める工程(1)及び工程(2)を備え、かつ、本件発明と同じく、乾燥において水和物中の結晶水が消失して無水物に転移することを抑制するた め、乾燥工程における品温を、無水物化が生じる温度よりも低い温度に維 持する方法が開示されている。 ⑵ 一致点及び相違点ア本件発明1-1及び2-1と乙24発明とを比較すると、錠剤の製造方法に関する発明であり、「(1)水和物である有効成分、賦形剤、結合剤(ただし、本件発明1において含まれているかは不明。)、崩壊剤及び溶媒を含 む混合物を造粒した後乾燥して造粒物を得る工程、(2)該造粒物を打錠して素錠を得る工程」を含み、工程(1)における品温を一定温度より低い温度に維持する点において一致し、他方、次の点において相違する。 本件発明は、酢酸亜鉛水和物を有効成分とする錠剤の製造方法の発明であるのに対し、乙24発明は、塩酸ドネペジル水和物を有効成分とす る錠剤の製造方法の発明である点(以下「相違点2-1」という。) 本件発明は、工程(1)における品温が「40℃未満」であるのに対し、乙24発明は、工程(1)における品温が「50℃以下」である点(以下「相違点2-2」という。)イ本件発明1-3及び2-3と乙24発明とを比較すると、相違点2-1 及び2-2に加え、次の点において相違する。 本件発明1-3及び2-3は、酢酸亜鉛水和物錠が、酢酸亜鉛水和物(C4H6O4Zn・2H2O)を5~200mg含有し、大きさが直径5~12mm、厚さ1~6mmであって、日局溶出試験法パドル法50回転(試験液:水900mL)によって 鉛水和物錠が、酢酸亜鉛水和物(C4H6O4Zn・2H2O)を5~200mg含有し、大きさが直径5~12mm、厚さ1~6mmであって、日局溶出試験法パドル法50回転(試験液:水900mL)によって測定される15分後の亜鉛の溶出量が85%以上で あるのに対し、乙24発明では、これらの構成の特定がなされていない点(以下「相違点2-3」という。)⑶ 容易想到性ア相違点2-1相違点2-1は、本件発明は、酢酸亜鉛水和物を有効成分とする錠剤の 製造方法の発明であるのに対し、乙24発明は、塩酸ドネペジル水和物 を有効成分とする錠剤の製造方法の発明である点である。 この点、結晶水を有する医薬品(水和物)について、①水和物中の結晶水が、50℃~150℃程度の加熱乾燥等により比較的容易に脱水され、無水物となること(乙5、6)、②結晶水の脱離が生じると、生物学的利用能や製剤の経時的安定性に影響が生じる可能性があるため、結晶水の 脱離が生じないよう乾燥条件を設定することは(乙18)、本件特許の優先日前の水和物全般についての技術常識であり、これは酢酸亜鉛水和物にも当然に妥当する。 加えて、本件明細書の段落【0005】でも記載されているとおり、水和物を有効成分とする先行医薬品の剤形を変更する場合、剤形の変更に 伴い水和物の一部が無水物に転移すると、薬事行政上、当該先行医薬品の効能・効果に係る治療薬として承認されていない有効成分を含有する医薬品となってしまう。 そのため、水和物中の結晶水が消失して無水物に転移することを抑制することは、水和物を有効成分とする錠剤を製造するに当たっての一般 的な課題であり、乙24発明に接した当業者は、乙24発明の製造方法が、他の水和物を有効成分として含有する錠剤の製造に とを抑制することは、水和物を有効成分とする錠剤を製造するに当たっての一般 的な課題であり、乙24発明に接した当業者は、乙24発明の製造方法が、他の水和物を有効成分として含有する錠剤の製造に当たっても適用可能なものであると理解する。そして、本件特許の優先日前には、酢酸亜鉛水和物を有効成分とする錠剤が公知となっていた(乙17)。 したがって、乙24発明に接した当業者は、乙24発明を、他の水和物 を有効成分として含有する錠剤の一つである酢酸亜鉛水和物錠に適用することを検討するのであって、本件発明の相違点2-1に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものでしかない。 イ相違点2-2相違点2-2は、本件発明は、工程(1)における品温が「40℃未 満」であるのに対し、乙24発明は、工程(1)における品温が「50℃ 以下」である点である。 上記で述べたとおり、水和物中の結晶水が消失して無水物に転移することを抑制することは、水和物を有効成分とする錠剤を製造するに当たっての一般的な課題であり、乙24発明に接した当業者は、乙24発明の製造方法(乾燥工程における品温を一定温度より低い温度に維持する 方法)が、同課題を解決するための手段であると理解する。 そのため、当業者は、乙24発明を酢酸亜鉛水和物錠の製造に適用するに当たり、その有効成分の相違に応じて、乾燥工程における品温を何度未満に設定するかを適宜に検討する。 また、上記で述べたとおり、酢酸亜鉛水和物については、40℃~5 0℃で加熱しても結晶水の脱水(無水物化)は生じず、50℃~100℃で結晶水の脱水(無水物化)が生じる(50℃を超える加熱により脱水が生じ始め、100℃で完全に無水物化する。)。 本件明細書には、酢酸亜鉛水和物が、約40℃あ (無水物化)は生じず、50℃~100℃で結晶水の脱水(無水物化)が生じる(50℃を超える加熱により脱水が生じ始め、100℃で完全に無水物化する。)。 本件明細書には、酢酸亜鉛水和物が、約40℃あるいは40℃以上の温度で加熱されると、水和物中の結晶水が消失して無水物に転移する旨 記載されているが(段落【0005】、段落【0033】)、明らかな誤りである。そして、酢酸亜鉛水和物について、上記のとおり、50℃を超える加温により結晶水の脱水が生じることが知られている中で(50℃を超える加熱により脱水が生じ始め、100℃で完全に無水物化する。乙7)、結晶水の脱水を防止するため、一定程度の余裕をもって品温の上限 の温度設定をすることは、当業者が適宜に検討して定める設計事項でしかない。 さらに、本件明細書の記載をみても、品温35℃で乾燥した実施例1、品温32℃で乾燥した実施例2及び実施例3しか記載されておらず、造粒後の乾燥を行う品温を40℃未満とすることについて臨界的意義を示 す試験結果の記載はない。 そのため、相違点2-2に係る本件発明の品温「40℃未満」には、50℃以下の適宜の温度という意義しかなく、これについて臨界的意義は認められない。 したがって、酢酸亜鉛水和物錠の製造に当たり、乾燥工程における品温を50℃以下の適宜の温度と定める上で、品温を「40℃未満」とするこ とは、当業者が適宜定める設計事項でしかない。 以上によれば、本件発明の相違点2-2に係る構成は、本件特許の優先日前において、乙24発明に接した当業者が、技術常識及び設計事項の適用により容易に想到し得たものでしかない。 ウ相違点2-3 相違点2-3の構成については、争点2-1の相違点1-3の構成に関する主張と同様であ に接した当業者が、技術常識及び設計事項の適用により容易に想到し得たものでしかない。 ウ相違点2-3 相違点2-3の構成については、争点2-1の相違点1-3の構成に関する主張と同様である。 ⑷ 顕著な効果争点2-1において述べたとおり、本件発明に顕著な効果が認められる余地はない。 ⑸ 小括以上によれば、本件発明は進歩性が欠如した発明でしかない。 (原告の主張)⑴ 乙24に記載された発明乙24発明の有効成分は「塩酸ドネペジル水和物」であり、本件発明とは 有効成分が異なるため、「造粒物」の組成も異なるし、「工程(1)」 における「品温」が「50℃」以下とされている点も異なる。 ⑵ 一致点及び相違点一致点及び相違点は、認める。 ⑶ 容易想到性 ア相違点2-1 本件特許出願の優先日当時、「酢酸亜鉛水和物」について「カプセル剤」における課題(本件明細書の段落【0003】に記載されたもの)を解決するために「錠剤」とするという解決手段自体、公知ではない。 この点につき、被告は、水和物を錠剤とするに当たり、水和物の「結晶水」が脱水しないようにすることを動機付けられると主張している。しか しながら、その前提としては、まず、「酢酸亜鉛水和物」について「カプセル剤」を「錠剤」とすることを動機付けられる必要がある。しかるに、乙24発明は、有効成分が「塩酸ドネペジル水和物」であり、「酢酸亜鉛水和物」とは全く異なるものであるから、そのような動機付けを示唆するような記載は、乙24発明には全く見出すことができない。したがって、被告 の相違点2-1に関する主張は、その前提において破綻している。 イ相違点2-2相違点2-2との関係においても、アにおいて前述した点が 4発明には全く見出すことができない。したがって、被告 の相違点2-1に関する主張は、その前提において破綻している。 イ相違点2-2相違点2-2との関係においても、アにおいて前述した点が当てはまる。 すなわち、「酢酸亜鉛水和物」について「カプセル剤」における課題を解決するために「錠剤」とするという解決手段自体、公知ではない。このよう な解決手段を想起しなければ、「酢酸亜鉛水和物」中の「結晶水」が「脱水」しないようにするためには、その混合物において、どのような「品温」で「溶媒」を除去すればよいのかという検討をすること自体も、動機付けられるものではない。そして、有効成分が全く異なる乙24発明から、「酢酸亜鉛水和物」について「錠剤」とするという解決手段を想起することを、 動機付けられることはあり得ない。 これに対し、被告は、「水和物」の乾燥において「結晶水」が「脱水」しないようにすることは一般的課題であり、「酢酸亜鉛水和物」については、「50℃」を超える加熱により「結晶水」が「脱水」することが知られていたことから(乙7)、「亜鉛水和物」について「結晶水」が「脱水」 しないように動機付けられる旨主張する。 しかしながら、まず、「酢酸亜鉛水和物」について「結晶水」が「脱水」しないようにするという動機付けが生ずる前提として、「酢酸亜鉛水和物」について「カプセル剤」を「錠剤」とするという解決手段を想起することが動機付けられる必要がある。また、乙7の論文には、「図1」のほか「図1」の説明として、「初段(~150℃)の減量(16%)は、水和物 の脱離(16.4%)に相当する。」との記載があるのみである。「図1」も含め、このような記載から、「酢酸亜鉛水和物」において「50℃」から「脱水」が開始するという )の減量(16%)は、水和物 の脱離(16.4%)に相当する。」との記載があるのみである。「図1」も含め、このような記載から、「酢酸亜鉛水和物」において「50℃」から「脱水」が開始するというような明確な技術的思想を読み取ることはできない。このような記載からは、酢酸亜鉛水和物錠の製造において、混合物の乾燥を「品温40℃未満」で行うことにより、酢酸亜鉛水和物中の結晶 水の消失を抑制しながら、「酢酸亜鉛水和物の打錠用粉体」を得るという本件発明の特徴が導かれるものではない。 ウまとめしたがって、相違点2-1及び2-2のいずれの相違点に相当する構成を備えた方法を、乙24発明及び本件特許出願の優先日当時の技術水準に 基づいて、当業者が容易になし得たものとはいえない。 ⑷ 顕著な効果前述したとおり、本件発明に相当する物を生産する方法の発明を、当業者が容易になし得たとはいえないのであるから、顕著な効果を論じるまでもない。 ⑸ 小括したがって、被告が主張する乙24発明に係る無効理由には、本件発明の課題を示唆する記載もなければ、その課題を解決すべき手段を示唆する記載もなく、乙24発明及び本件特許出願の優先日当時の技術水準に基づいて、当業者が本件発明に容易に想到することができたとはいえない。 以上によれば、本件特許出願は、特許法29条2項の規定に違反して特許 されたものではなく、上記無効理由により本件特許が特許無効審判により無効とされるべきものと認められる余地もなく、上記無効理由に基づく権利行使の制限の抗弁は認められない。 第4 当裁判所の判断 1 認定事実 前提事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ⑴ 本件明細書の内容(甲1-1、2-1) 限の抗弁は認められない。 第4 当裁判所の判断 1 認定事実 前提事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ⑴ 本件明細書の内容(甲1-1、2-1)本件明細書1及び2には、いずれも以下の記載がある。 【技術分野】【0001】 本発明は、酢酸亜鉛水和物を有効成分とする酢酸亜鉛水和物錠及びその製造方法に関する。 【背景技術】【0002】ウィルソン病は、食事によって摂取された銅が肝臓から胆汁及び腸管中 に正常に排泄されず、肝臓、脳、腎臓等に銅が多量に蓄積することによって、肝臓や神経等に重い障害を引き起こす病気である。ウィルソン病の治療薬としては、米国では1997年に、欧州では2004年に、日本では2008年に、酢酸亜鉛水和物(C4H6O4Zn・2H2O)を有効成分とするカプセル剤が認可され、現在使用されている。 【0003】しかしながら、現在使用されている酢酸亜鉛水和物のカプセル剤は、カプセルに詰め込まれる成分の総量が非常に多く、また、物理混合物であるため、製造工程において成分をカプセルに充填する際に成分の流動性が悪く、充填不均一などの問題をおこし、製剤を連続生産する上での大きな障 害となっている。 また、該カプセル剤は、剤径が大きいため(例えば、1号カプセルは、外径が7mmで長さが19~20mm)、服用時に飲み込みにくい(嚥下しにくい)という問題がある。よって、酢酸亜鉛水和物を有効成分とする剤として、剤径(直径)がより小さいものが必要とされている。 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】【0004】本発明は、上記現状に鑑み、造粒物の製造工程における乾燥温度を品温40℃未満にコントロールすることで、製造 とされている。 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】【0004】本発明は、上記現状に鑑み、造粒物の製造工程における乾燥温度を品温40℃未満にコントロールすることで、製造工程における酢酸亜鉛水和物中の結晶水の消失が抑制された、占有する容積が少ない酢酸亜鉛水和物の コンパクト化された造粒物及びその製造方法を提供することを課題とする。 【課題を解決するための手段】【0005】カプセル剤よりも製造効率が良く、嚥下しやすい酢酸亜鉛水和物の剤を得る方法としては、より直径の小さいカプセルに充填するか、錠剤等の他 の剤形に変更する方法が考えられる。 一方、酢酸亜鉛水和物は、二水和物として知られており、比較的安定(例えば、硫酸中で加熱しても100℃程度まで安定)であると認識されていた。しかしながら、本発明者らが酢酸亜鉛水和物について研究を重ねたところ、酢酸亜鉛水和物は、比較的低温(例えば、約40℃)で加熱される と、該水和物中の結晶水が消失して無水物に転移し、ウィルソン病の治療薬の有効成分としては承認されていない無水物となってしまう場合があった。 よって、本発明者らは、酢酸亜鉛水和物を有効成分とする錠剤の製造においては、酢酸亜鉛水和物の無水物化を避ける必要があり、湿式造粒では 乾燥工程で加熱するため、結晶水の消失が避けられないと考え、乾式造粒 によって剤径が小さい酢酸亜鉛水和物錠を製造することを試みた。しかしながら、乾式造粒法では、剤径が小さい酢酸亜鉛水和物錠を得ることができなかった。 【0006】本発明者らは、上記課題を解決するためにさらに鋭意研究を重ねた結果、 酢酸亜鉛水和物(C4H6O4Zn・2H2O)を5~200mg含有し、大きさが直径5~12mm、厚さ た。 【0006】本発明者らは、上記課題を解決するためにさらに鋭意研究を重ねた結果、 酢酸亜鉛水和物(C4H6O4Zn・2H2O)を5~200mg含有し、大きさが直径5~12mm、厚さ1~6mmであって、日局溶出試験法パドル法50回転(試験液:水900mL)によって測定される15分後の亜鉛の溶出量が85%以上である酢酸亜鉛水和物錠は、意外にも、特定の製造方法(例えば、湿式造粒法、流動層造粒法)によって製造することがで きることを見出した。 本発明者らは、上記以外にも下記するように種々の思いがけない新知見を得て、さらに鋭意検討を重ねて本発明を完成するに至った。 【0007】即ち、本発明は、以下の酢酸亜鉛水和物錠等に関する。 [1]酢酸亜鉛水和物(C4H6O4Zn・2H2O)を5~200mg含有し、大きさが直径5~12mm、厚さ1~6mmであって、日局溶出試験法パドル法50回転(試験液:水900mL)によって測定される15分後の亜鉛の溶出量が85%以上であることを特徴とする、酢酸亜鉛水和物錠。 ・・・(中略)・・・[4](1)酢酸亜鉛水和物(C4H6O4Zn・2H2O)、賦形剤、崩壊剤及び溶媒の混合物を造粒した後乾燥して造粒物を得る工程、(2)該造粒物を打錠して素錠を得る工程、及び (3)該素錠にフィルムコーティングした後乾燥する工程を含み、前記工程(1)における品温が40℃を越えず、 前記工程(3)における品温が50℃以下であることを特徴とする、酢酸 亜鉛水和物(C4H6O4Zn・2H2O)を5~200mg含有し、大きさが直径5~12mm、厚さ1~6mmであって、日局溶出試験法パドル法50回転(試験液:水900mL)によって測定される15分後の亜鉛の溶出量が85%以上で ・2H2O)を5~200mg含有し、大きさが直径5~12mm、厚さ1~6mmであって、日局溶出試験法パドル法50回転(試験液:水900mL)によって測定される15分後の亜鉛の溶出量が85%以上である酢酸亜鉛水和物錠の製造方法。 【発明の効果】 【0008】本発明によれば、造粒物の製造工程における乾燥を品温40℃未満の温度で行うことで、製造工程における酢酸亜鉛水和物中の結晶水の消失が抑制された酢酸亜鉛水和物錠を得ることができる。 また、本発明の酢酸亜鉛水和物錠は、大きさが小さいため、従来の酢酸 亜鉛水和物のカプセル剤と比べて服用時に飲み込みやすい。 なお、本発明の酢酸亜鉛水和物錠の打錠用粉体は、そのまま顆粒剤としたり、或いはカプセルに充填することができる。 【発明を実施するための形態】【0009】 以下、本発明を詳細に説明する。 <酢酸亜鉛水和物錠>本発明の酢酸亜鉛水和物錠は、酢酸亜鉛水和物(C4H6O4Zn・2H2O)を5~200mg含有し、大きさが直径5~12mm、厚さ1~6mmであって、日局溶出試験法パドル法50回転(試験液:水900mL) によって測定される15分後の亜鉛の溶出量が85%以上であることを特徴とする。尚、酢酸亜鉛水和物錠は、通常、酢酸亜鉛水和物の素錠であってよいし、該素錠のフィルムコーティング錠であってもよい。 【0010】本発明の酢酸亜鉛水和物錠において、酢酸亜鉛水和物の含有量は、通常 は約5~200mgであり、好ましくは約50~180mgであり、より 好ましくは約80~170mgである。このような範囲であれば、酢酸亜鉛水和物錠の製造工程における造粒後の乾燥を品温40℃未満の温度で行うことができ、製造工程における酢酸亜鉛水和物中の結晶水 好ましくは約80~170mgである。このような範囲であれば、酢酸亜鉛水和物錠の製造工程における造粒後の乾燥を品温40℃未満の温度で行うことができ、製造工程における酢酸亜鉛水和物中の結晶水の消失を抑制できるため、好ましい。 【0011】 本発明の酢酸亜鉛水和物錠の直径は、通常は約5~12mmであり、好ましくは約5~10mmであり、より好ましくは約6~9mmである。 また、本発明の酢酸亜鉛水和物錠の厚さは、通常は約1~6mmであり、好ましくは約2~5mmであり、より好ましくは約3~4mmである。 本発明において、酢酸亜鉛水和物錠の直径及び厚さの測定方法は、特に 限定されず、従来公知の錠剤の大きさの測定方法に従ってよい。 【0012】本発明の酢酸亜鉛水和物錠は、日局溶出試験法パドル法50回転(試験液:水900mL)によって測定される15分後の亜鉛の溶出量が、85%以上である。本発明の酢酸亜鉛水和物錠は、造粒物の製造工程における乾 燥を品温40℃未満の温度で行うことができ、製造工程における酢酸亜鉛水和物中の結晶水の消失を抑制できるため、前記亜鉛の溶出量がこのような範囲となる。 【0013】本発明の酢酸亜鉛水和物錠の総質量は、通常は、酢酸亜鉛水和物含有量 の約2倍以下であり、好ましくは約1.6倍以下である。 【0014】本発明の酢酸亜鉛水和物錠は、医薬品に一般的に使用される添加剤、医薬有効成分を適量含むことができる。これらは、1種を単独で又は2種以上を使用することができる。 該添加剤としては、例えば、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、コーテ ィング剤、光沢化剤、着色剤、矯味剤、甘味剤、香料等が挙げられ、好ましくは、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤等である。 ・・・( としては、例えば、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、コーテ ィング剤、光沢化剤、着色剤、矯味剤、甘味剤、香料等が挙げられ、好ましくは、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤等である。 ・・・(中略)・・・【0026】本発明の酢酸亜鉛水和物錠は、医薬有効成分を適量含むことができる。 医薬有効成分は、本発明の酢酸亜鉛水和物錠の製造工程における酢酸亜鉛水和物中の結晶水の消失抑制性、並びに該錠の崩壊性及び成型性を損なわない種類及び量であれば良く、特に限定されない。 【0027】<酢酸亜鉛水和物錠の製造方法> 本発明の酢酸亜鉛水和物錠の製造方法は、通常は、(1)酢酸亜鉛水和物(C4H6O4Zn・2H2O)、賦形剤、崩壊剤及び溶媒の混合物を造粒した後乾燥して造粒物を得る工程、(2)該造粒物を打錠して素錠を得る工程、及び(3)該素錠にフィルムコーティングした後乾燥する工程を含み、前記工程(1)における品温は、通常40℃を越えない。また、前記工程(3) におけるフィルムコーティング後の乾燥において、品温は、通常50℃以下である。本発明において、これらの工程は、通常、工程(1)~(3)の順で実施される。また、本発明の酢酸亜鉛水和物錠の製造方法は、前記工程(1)~(3)以外の工程を含んでもよい。 【0028】 <造粒>本発明において、酢酸亜鉛水和物(C4H6O4Zn・2H2O)、賦形剤、崩壊剤及び溶媒の混合物を造粒する方法としては、特に限定されないが、例えば、流動層造粒法、湿式造粒法等が好ましい。これらの造粒方法は、従来十分に確立されており、本発明も従来公知の方法に従ってよい。 【0029】 流動層造粒法は、原料粉粒体を、溶媒又は溶媒と結合剤の混合液を噴霧しながら造粒する処 粒方法は、従来十分に確立されており、本発明も従来公知の方法に従ってよい。 【0029】 流動層造粒法は、原料粉粒体を、溶媒又は溶媒と結合剤の混合液を噴霧しながら造粒する処理であり、必要に応じて、一般的な錠剤の製造に用いられる方法や装置(流動層造粒機等)を使用することができる。尚、本発明において、流動層造粒処理は、転動流動層造粒処理であってもよい。 本発明において、流動層造粒法は、例えば、酢酸亜鉛水和物、賦形剤及 び崩壊剤を、流動層造粒機に入れて混合し、結合剤と溶媒の溶液を噴霧することにより、行うことができる。 【0030】湿式造粒法は、原料粉粒体を溶媒と混合し、次いでこれを造粒する処理であり、必要に応じて、一般的な錠剤の製造に用いられる方法や装置を使 用することができる。本発明においては、湿式造粒法の中でも撹拌造粒法が好ましい。 本発明において、撹拌造粒法は、例えば、酢酸亜鉛水和物、賦形剤、崩壊剤、結合剤及び溶媒の混合物を撹拌造粒機に投入して撹拌することにより、行うことができる。 【0031】また、これら流動層造粒法及び湿式造粒法で用いられる溶媒としては、特に限定されないが、例えば、一般的な錠剤の製造に用いられるエタノール、イソプロパノール等のアルコール類や水等を使用することができる。 【0032】 前記造粒に続いて、該造粒により得られた処理物を乾燥することにより、造粒物を得ることができる。 該乾燥方法は、特に限定されず、乾燥温度が品温40℃未満であれば、流動層乾燥機、棚式乾燥装置等を用いた従来公知の錠剤製造における乾燥方法に従ってよい。 【0033】 一般に、造粒物の製造工程における造粒後の乾燥温度は、60℃付近である。酢酸亜鉛水和 、棚式乾燥装置等を用いた従来公知の錠剤製造における乾燥方法に従ってよい。 【0033】 一般に、造粒物の製造工程における造粒後の乾燥温度は、60℃付近である。酢酸亜鉛水和物は、40℃以上の温度で加熱されると、酢酸亜鉛水和物中の結晶水が消失して無水物に転移しまうが、本発明の酢酸亜鉛水和物錠の製造においては、造粒後の乾燥を品温40℃未満で行うことで、造粒物の製造工程における酢酸亜鉛水和物中の結晶水の消失を抑制すること ができる。 【0034】また、前記乾燥後に、コーミル、スクリーンミル、ジェットミル、ハンマーミル、ピンミル等を用いた整粒;振動ふるいを用いた篩過等の錠剤の製造に必要な操作にさらに付してもよい。 【0035】前記造粒物は、打錠工程の前に、均一化するために混合して打錠用粉体を得ることが好ましい。該混合方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができるが、例えば、該造粒物と滑沢剤を容器回転式混合機に投入して混合することにより、行うことができる。得られた打錠用粉体 は、そのまま顆粒剤とすることができるし、或いは常法を用いてカプセルに充填してカプセル剤とすることもできる。本発明の酢酸亜鉛水和物錠の打錠用粉体が充填されたカプセル剤は、従来の酢酸亜鉛水和物のカプセル剤と比べて大きさが小さいものとすることができる。 【0036】 <打錠>本発明の酢酸亜鉛水和物錠の製造においては、前記造粒物の製造工程に続いて、該造粒物を圧縮成型することにより打錠して素錠が得られる。圧縮成型の際には、必要に応じて、前記添加剤や医薬有効成分を混合して圧縮成型してよい。 圧縮成型方法は、特に限定されず、例えば、ロータリー式打錠機、単発 打錠機等の一般に錠剤の成型 縮成型の際には、必要に応じて、前記添加剤や医薬有効成分を混合して圧縮成型してよい。 圧縮成型方法は、特に限定されず、例えば、ロータリー式打錠機、単発 打錠機等の一般に錠剤の成型に使用される方法や装置を使用することができる。また、この圧縮成型における圧縮圧は、特に限定されない。 尚、前記打錠して得られる素錠の質量は、例えば、最終的に得られる本発明の酢酸亜鉛水和物錠が亜鉛を25mg含有する場合は、約120~130mgであり、最終的に得られる本発明の酢酸亜鉛水和物錠が亜鉛を5 0mg含有する場合は、約245~255mgである。 【0037】<フィルムコーティング>前記素錠を得る打錠工程に続いて、該素錠にフィルムコーティングした後乾燥することにより、本発明の酢酸亜鉛水和物錠が得られる。 フィルムコーティング方法は、特に限定されず、錠剤の製造において一般に使用される方法に従ってよい。フィルムコーティングは、例えば、コーティング機を用いて、コーティング剤と溶媒との懸濁液を、前記素錠に湿式スプレーコーティングすることによって行うことができる。該溶媒としては、例えば、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;水を 使用することができる。 【0038】前記フィルムコーティング後の錠剤の質量は、例えば、最終的に得られる本発明の酢酸亜鉛水和物錠が亜鉛を25mg含有する場合は、約124~134mgであり、最終的に得られる本発明の酢酸亜鉛水和物錠が亜鉛 を50mg含有する場合は、約251~261mgである。 【0039】前記フィルムコーティングした後、得られた錠剤を乾燥することによって、本発明の酢酸亜鉛水和物錠を得ることができる。 該乾燥方法は、特に限定されず、乾燥温度が品温50℃以下 ある。 【0039】前記フィルムコーティングした後、得られた錠剤を乾燥することによって、本発明の酢酸亜鉛水和物錠を得ることができる。 該乾燥方法は、特に限定されず、乾燥温度が品温50℃以下であれば、 従来公知の錠剤の製造におけるコーティング剤の乾燥方法に従ってよい。 本発明において、該乾燥は、品温50℃以下で行うことができ、酢酸亜鉛水和物中の結晶水の消失を抑制することができる。尚、造粒物を得る前記工程(1)では品温が40℃未満であるが、素錠を得た後の当該フィルムコーティング後の乾燥温度は、品温50℃以下であれば酢酸亜鉛水和物中の結晶水の消失を抑制することができる。 該乾燥して得られた本発明の酢酸亜鉛水和物錠には、常法を用いて、光沢化剤を散布してもよい。 【0040】上記のようにして得られた本発明の酢酸亜鉛水和物錠は、通常、常法により、容器又は袋に収容することができる。容器又は袋は、錠剤の容器又 は袋として使用可能なものであれば特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。 ・・・(中略)・・・【産業上の利用可能性】【0046】 本発明の酢酸亜鉛水和物錠は、大きさが小さく服用時に飲み込みやすいため、ウィルソン病の治療薬として好適に使用することができる。 ⑵ 被告医薬品の製造販売等(甲3、4、乙19)被告医薬品は酢酸亜鉛水和物を有効成分とする酢酸亜鉛錠であり、先発品「ノベルジン®錠25mg」及び「ノベルジン®錠50mg」の後発医薬品であ る。被告医薬品は、令和5年2月15日に製造販売承認を取得し、同年8月4日から製造販売をしている。 ⑶ 被告方法に関する資料等ア令和2年9月作成に係る製造指図記録書(甲8、乙36)被告医薬品1及び2の治 は、令和5年2月15日に製造販売承認を取得し、同年8月4日から製造販売をしている。 ⑶ 被告方法に関する資料等ア令和2年9月作成に係る製造指図記録書(甲8、乙36)被告医薬品1及び2の治薬品に係る「整粒品製造指図記録書」(甲8、 乙36)には、「指示事項」欄には「☑製品温度:41℃以上で乾燥終了」 と、「特記事項」欄には「☑製品温度:41.0℃で乾燥終了」と、それぞれ記載されている。 また、各製造指図記録書に添付された製造記録には、被告医薬品1にあっては令和2年9月2日に、被告医薬品2にあっては同月7日に、それぞれ行われた製造につき、次のとおり、「工程」、「時間(分)」、「給気温度(℃)」、 「製品温度(℃)」等が記録されている。 被告医薬品1に係る製造記録① 「乾燥」の工程「時間(分)」が「0」の欄には、「給気温度(℃)」が「60℃設定」と、「製品温度(℃)」が「20.9」と、それぞれ記録され、「時間(分)」 が「26」の欄には、「給気温度(℃)」が「60.0」、「製品温度(℃)」が「41.0」と、それぞれ記録されている。 ② 「追加乾燥」の工程「時間(分)」が「0」の欄には、「給気温度(℃)」が「60℃設定」と、「製品温度(℃)」が「32.0」と、それぞれ記録され、「時間(分)」 が「13」の欄には、「給気温度(℃)」が「59.0」、「製品温度(℃)」が「41.0」と、それぞれ記録されている。 被告医薬品2に係る製造記録(「乾燥」の工程)「時間(分)」が「0」の欄には、「給気温度(℃)」が「60℃設定」と、「製品温度(℃)」が「22.0」と、それぞれ記録され、「時間(分)」 が「36」の欄には、「給気温度(℃)」が「60.4」、「製品温度(℃)」が「41 「給気温度(℃)」が「60℃設定」と、「製品温度(℃)」が「22.0」と、それぞれ記録され、「時間(分)」 が「36」の欄には、「給気温度(℃)」が「60.4」、「製品温度(℃)」が「41.0」と、それぞれ記録されている。 イ令和4年10月作成に係る製造指図記録書(乙31、37)被告医薬品1及び2の製造指図記録書【造粒】(乙31、37)には、被告医薬品1にあっては令和4年10月12日に実施された120万錠の製 造につき、被告医薬品2にあっては同月15日に実施された60万錠の製 造につき、それぞれ記録されている。いずれの記録についても、「1.乾燥」の「指図・条件」の欄には、「吸気温度:60℃」、「乾燥時間:製品温度41~42℃で終了」、「製品温度:製品温度41~42℃で終了」との記載があり、「記録」の「製品温度」の欄には、1バッチ目、2バッチ目、3バッチ目の全ての欄に「41℃」と記録されている。 ウ令和5年6月作成に係る製造指図記録書(乙38)被告医薬品1及び2係る製造指図記録書【造粒】(乙38)には、被告医薬品1にあっては令和5年6月16日に実施された120万錠の製造につき、被告医薬品2にあっては同月29日に実施された60万錠の製造につき、それぞれ記録されている。いずれの記録についても、「1.乾燥」の「指 図・条件」の欄には、「吸気温度:60℃」、「乾燥時間:製品温度41~42℃で終了」、「製品温度:製品温度41~42℃で終了」との記載があり、「記録」の「製品温度」の欄には、1バッチ目、2バッチ目、3バッチ目の全ての欄に「41℃」と記録されている。 エ医薬品製造販売承認書(乙19) 被告医薬品1及び2の医薬品製造販売承認書(乙19)には、「<第二工程>混合・練合・乾燥 バッチ目、3バッチ目の全ての欄に「41℃」と記録されている。 エ医薬品製造販売承認書(乙19) 被告医薬品1及び2の医薬品製造販売承認書(乙19)には、「<第二工程>混合・練合・乾燥工程」として、「乾燥終点における製品温度は《50℃》以下とする.」との記載がある。 オ試験結果報告書(乙11)試験結果報告書(乙11)は、令和3年9月13日から同月15日にか けて、被告において実施した試験結果の報告書である。同報告書によれば、当該試験においては、被告医薬品の乾燥工程において、製品温度が5℃上昇するごと(55℃まで)及び品温55℃に達した15分後に製品をサンプリングし、サンプリング試料について粉末X線回析(PXRD)による結晶状態及び乾燥減量を測定した。そして、水和物由来ピークを認め、無 水物由来ピークを認めない場合には、水和物を維持し無水物を生じていな いと評価し、無水物由来ピークを認めた場合には、無水物が生じたと評価した。その結果、製品温度50℃までは水和物(無水物なし)と評価されたが、55℃からは一部無水物と評価された。 以上により、被告医薬品における結晶水の脱離は、50℃以下では生じず、50℃を超える品温に到達することにより生ずることが確認された。 カ試験結果報告書(乙20)試験結果報告書(乙20)は、令和5年6月8日及び同月9日、被告において実施した試験結果の報告書である。同報告書によれば、当該試験においては、被告医薬品の乾燥工程において、2分ごとに品温を記録しサンプリングを行い、品温の上昇がみられなくなってからは5分ごとにサンプ リングを行い、各サンプリング試料について乾燥減量を測定した。その結果、製品温度41℃(42分後)までは乾燥減量(%)の減少がみられたが、 品温の上昇がみられなくなってからは5分ごとにサンプ リングを行い、各サンプリング試料について乾燥減量を測定した。その結果、製品温度41℃(42分後)までは乾燥減量(%)の減少がみられたが、製品温度42℃(44分後)からは乾燥減量(%)の減少がみられなくなり、平衡含水率に達することが確認された。 ⑷ 本件ニュースリリース等(乙4、17、23、26、33) ア原告は、「ノベルジン®カプセル25mg」及び「ノベルジン®カプセル50mg」について製造販売承認を取得し、平成20年4月に同医薬品の販売を開始した。同医薬品は、ウィルソン病治療剤(銅吸収阻害剤)であり、酢酸亜鉛水和物を有効成分とするカプセル剤である。 イ原告のホームページにおいては、平成26年9月10日付けで、「NPC -02(酢酸亜鉛)ウイルソン病治療剤ノベルジン®錠25mg及び50mgの製造販売承認(剤形追加)を取得」という本件ニュースリリースがされた。なお、剤形追加に係る医薬品とは、既承認医薬品等と有効成分、投与経路、効能・効果及び用法・用量は同一であるが、剤形又は含量が異なる医薬品をいう。 ウ錠剤の製造方法には、直接粉末圧縮法、湿式顆粒圧縮法、流し込み成形 法等が存在し、湿式顆粒圧縮法においては、通常、賦形剤、崩壊剤、結合剤等の添加剤が使用されている。 2 争点1-2(「乾燥して造粒物を得る工程」における「品温が40℃未満」該当性)⑴ 「乾燥して造粒物を得る工程」の終期 本件の争点整理の経過に鑑み、主たる争点である争点1-2のうち、中核的争点である「乾燥して造粒物を得る工程」の終期がいつであるかという点につき、まず判断する。この点につき、原告は、「乾燥して造粒物を得る工程」の終期とは、「打錠用粉体に る争点1-2のうち、中核的争点である「乾燥して造粒物を得る工程」の終期がいつであるかという点につき、まず判断する。この点につき、原告は、「乾燥して造粒物を得る工程」の終期とは、「打錠用粉体に適した造粒物を得るために必要な状態まで溶媒が除去された時点」(原告はこの時点までの乾燥を「必要な乾燥」といい、これ 以降の乾燥を「余分な乾燥」として区分している。)である旨主張する(第4回弁論準備手続(技術説明会)調書参照)。 そこで検討するに、本件明細書に係る前記認定事実によれば、本件明細書の記載(【0010】、【0033】等)を踏まえると、本件発明の課題は、酢酸亜鉛水和物中の結晶水が消失して無水物に転移することを防ぐことにあり、 その課題の解決手段としては、乾燥工程における品温を40℃未満とするものであると認めるのが相当である。そして、「乾燥」とは、一般的に熱を与えるなどして不要の液体分を取り除くことを意味するものであり(甲9、10)、本件明細書においても、上記と異なる意味で使用されているところはない。 そうすると、「乾燥して造粒物を得る工程」とは、乾燥させる全ての工程を 意味するものであり、その終期とは、文字どおり、全ての乾燥が終了した時点であると解するのが相当である。 これを原告の上記主張についてみると、原告は、乾燥には「必要な乾燥」と「余分な乾燥」に区分され、「余分な乾燥」では40℃を超えることが許容される趣旨をいうものである。 しかしながら、本件発明の構成要件及び本件明細書を精査しても、原告が 自認するように、「必要な乾燥」と「余分な乾燥」に区分されるという原告の解釈を裏付ける記載や示唆は一切なく、上記の間にある「打錠用粉体に適した造粒物を得るために必要な状態まで溶媒が除去された時点 自認するように、「必要な乾燥」と「余分な乾燥」に区分されるという原告の解釈を裏付ける記載や示唆は一切なく、上記の間にある「打錠用粉体に適した造粒物を得るために必要な状態まで溶媒が除去された時点」という原告主張に係る概念も、本件発明の構成要件及び本件明細書に一切記載されておらず、それ自体明確性を欠くことに鑑みても、原告の主張は、その根拠を欠く ものというほかない。 かえって、原告の主張によれば、「余分な乾燥」では40℃を超えることが許容されることになるから、乾燥工程における品温を40℃未満とする本件発明の課題解決手段に明らかに抵触するものとなり、本件明細書によれば本件発明の課題を解決できないことになる。そうすると、原告の主張は、本件 発明の課題解決手段を正解しないものといえる。 したがって、原告の主張は、採用することができない。 ⑵ 被告方法への当てはめ前記認定事実によれば、被告医薬品の医薬品製造販売承認書には「乾燥終点における製品温度は《50℃》以下とする」と記載されており、被告医薬 品に係る製造指図記録書においては、いずれも、品温41.0℃以上で乾燥終了との指示がされていることからすると、被告方法における「乾燥して造粒物を得る工程」では、品温が41℃以上になることが認められる。そうすると、「乾燥して造粒物を得る工程」とは、乾燥させる全ての工程を意味するものであるから、被告方法は、「乾燥して造粒物を得る工程」における「品温 が40℃未満」という構成要件を充足するものとはいえない。 したがって、被告方法は、構成要件1-1A及びC、1-3D、2-1A及びC、2-3Dを充足するものと認めることはできない。 ⑶ 原告の主張に対する判断ア原告は、製造指図記録書(甲8)において、最初の乾燥工程で「20分 要件1-1A及びC、1-3D、2-1A及びC、2-3Dを充足するものと認めることはできない。 ⑶ 原告の主張に対する判断ア原告は、製造指図記録書(甲8)において、最初の乾燥工程で「20分」 を過ぎた後に急速に品温が上昇していることからすると、この時点で少な くとも局所的には打錠用粉体とするための酢酸亜鉛水和物の造粒物を得るための「品温40℃未満」の条件下における「乾燥」が完了した旨主張する。 しかしながら、「必要な乾燥」と「余分な乾燥」に区分されるという原告の主張が採用できないことは、前記において説示したとおりである。そう すると、原告の主張は、その前提を欠くものといえる。 イ原告は、「整粒品製造指図記録書」(甲8)につき、平成28年5月2日の少量の治験薬に関するものであって、時期において7年以上も前のものであり、かつ、量的にもその生産量に大きく隔たりがある旨主張する。 しかしながら、証拠(甲8、乙36)及び弁論の全趣旨によれば、「整粒 品製造指図記録書」の各作成日は、令和2年9月2日と同月7日であると認めるのが相当であり、原告の作成時期に係る主張は、その前提を欠く。 また、令和4年10月(乙31、37)及び令和5年6月(乙38)の被告医薬品製造指図記録書には、被告医薬品1につき120万錠の製造が、被告医薬品2につき60万錠の製造が、それぞれ記録されていることから すれば、原告の生産量に係る主張も、その前提を欠くものといえる。 ウ原告は、「製造指図記録書」(乙31)につき、令和4年10月4日頃に作成されたものかどうかが明らかではなく、仮に同日頃に作成されたものであるとしても、被告医薬品の販売が開始された10か月も前のものであるから、被告医薬品の量産品の製造条件を示すものであるかどうかが 作成されたものかどうかが明らかではなく、仮に同日頃に作成されたものであるとしても、被告医薬品の販売が開始された10か月も前のものであるから、被告医薬品の量産品の製造条件を示すものであるかどうかが明らか ではない旨主張する。 しかしながら、「製造指図記録書」(乙31-1、2)の上部には、「製品名」として被告医薬品1及び2の名称が明記されていること、被告医薬品の発売前2か月以内に実施された製造指図記録書【造粒】(乙38)においても、同様の記載が認められること、これらの製造指図記録書における乾 燥条件が販売に至るまでに変更されたような事情をうかがわせる証拠はな いこと、以上の事情を踏まえると、原告の主張は、前記判断を左右するものとはいえない。 エ原告は、被告医薬品の製造販売承認書(乙19)の記載は、被告医薬品の実際の製造方法において加熱の終点が「50℃」付近でされていることを示すものではない旨主張する。 しかしながら、前記認定に係る被告方法の乾燥条件は、製造販売承認書のみをもって認定するものではなく、乾燥条件が具体的に記載されている製造指図記録書その他の証拠及び弁論の全趣旨を踏まえ、これを認定するものである。そうすると、原告の主張は、前記認定を直ちに左右するものとはいえない。 オ原告は、「試験結果報告書」(乙11、20)につき、それぞれ被告医薬品との関連性が不明であるなどと主張する。 しかしながら、上記「試験結果報告書」は、結晶水の脱離時期や平衡含水率に達する品温を立証趣旨として、被告方法によっても無水物化等が生じないという被告の主張を裏付けるために実施された試験を報告するもの である。そうすると、仮に上記試験における方法が被告方法と完全に同一ではなかったとしても、被告方法の乾燥 ても無水物化等が生じないという被告の主張を裏付けるために実施された試験を報告するもの である。そうすると、仮に上記試験における方法が被告方法と完全に同一ではなかったとしても、被告方法の乾燥工程における品温が40℃を超えるという認定を直ちに左右するものとはいえない。 カ原告は、本件明細書の記載及び訴外日医工株式会社の公開特許公報の「比較例4」に係る記載(甲11)からすれば、品温40℃以上の状態におけ る加熱が、結晶水の消失の抑制の観点から好ましくないことは明らかである旨主張する。 しかしながら、被告医薬品に係る製造指図記録書等を踏まえると、被告方法における品温は40℃を超えていると認められることは、前記において認定したとおりであり、仮に当該状態が好ましくないとしても、原告の 主張は、本件発明の構成要件充足性を左右するものとはいえない。 のみならず、甲11の公開特許公報【0032】及び【0033】によれば、原告主張に係る実施例とは、酢酸亜鉛水和物、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及び精製水を混合したもの(実施例17)と、このうちMCT以外を混合したもの(比較例4)につき、それぞれ造粒物の温度を5℃ずつ上昇させた場合 における無水物含有率を示すものであることが認められる。 しかしながら、比較例4の混合物の構成は、被告医薬品と同一ではなく、そもそも造粒物温度40℃(無水物含有率0.9%)から45℃(無水物含有率11.6%)までの間の無水物率の変化が記載されていないことからすると、原告主張に係る実施例は、本件に適切ではなく、前記認定を直 ちに左右するものとはいえない。かえって、40℃から45℃にかけて無水物含有率が大幅に上昇していることからすると、 いことからすると、原告主張に係る実施例は、本件に適切ではなく、前記認定を直 ちに左右するものとはいえない。かえって、40℃から45℃にかけて無水物含有率が大幅に上昇していることからすると、本件明細書のとおり、条件次第では40℃を超える加熱でも酢酸亜鉛水和物中の結晶水が脱離する場合があることを示唆するものともいえる。 キ原告は、被告方法の乾燥工程及び追加乾燥工程で行われる「品温40℃ 以上」の状態での加熱は極めて短時間であり、造粒物に与える影響はほぼ無視し得るものである旨主張する。 しかしながら、本件発明の課題は、酢酸亜鉛水和物中の結晶水が消失して無水物に転移することを防ぐことにあり、その課題の解決手段として、乾燥工程における品温を40℃未満とするものであることは、前記におい て説示したとおりである。そのため、仮に、被告方法の乾燥工程における「品温40℃以上」の状態での加熱が極めて短時間であったとしても、上記の課題解決手段に明らかに反するものであり、原告主張に係る事情は、構成要件充足性を肯定し得る事情にはなり得ない。 そうすると、原告の主張は、本件発明の課題解決手段を正解しないもの であって、構成要件充足性に係る前記判断を左右するものではない。 クその他に、原告の準備書面及び提出証拠を改めて検討しても、原告の主張は、その余の主張を含め、本件発明の課題解決手段を正解しないものに帰し、前記判断を左右するに至らない。 ケ以上によれば、原告の主張は、いずれも採用することができない。 ⑷ 小括 以上によれば、被告方法は、「乾燥して造粒物を得る工程」における「品温が40℃未満」という構成要件(構成要件1-1A及びC、1-3D、2-1A及びC、2-3D)を充足するものとはいえない。 以上によれば、被告方法は、「乾燥して造粒物を得る工程」における「品温が40℃未満」という構成要件(構成要件1-1A及びC、1-3D、2-1A及びC、2-3D)を充足するものとはいえない。 3 争点1-1(特許法104条による推定の可否)⑴ 被告方法は、「乾燥して造粒物を得る工程」における「品温が40℃未満」 という構成要件(構成要件1-1A及びC、1-3D、2-1A及びC、2-3D)を充足しないことは、前記2において説示したとおりである。 そうすると、仮に、被告医薬品が特許法104条に基づき本件発明に係る製造方法により生産したものと推定された場合であっても、前記2において説示したところによれば、当該推定は、覆されるものと認めるのが相当であ るから、争点1-1は、本件において結論を左右するものとはならない。 もっとも、当事者双方の主張の経過に鑑み、念のため判断するに、前提事実及び前記認定事実によれば、本件発明の優先日前に出された本件ニュースリリースには、「NPC-02(酢酸亜鉛)ウイルソン病治療剤ノベルジン®錠25mg及び50mgの製造販売承認(剤形追加)を取得」という記載が あるところ、本件ニュースリリース前から原告によって販売されているノベルジンカプセル25mg及び50mgは、ウィルソン病治療剤(銅吸収阻害剤)であり、酢酸亜鉛水和物を有効成分とするカプセル剤である。そして、前記認定事実によれば、剤形追加に係る医薬品とは、既承認医薬品等と有効成分、投与経路、効能・効果及び用法・用量は同一であるが、剤形又は含量 が異なる医薬品をいうことからすると、本件ニュースリリースに係る医薬品 は、ウィルソン病治療剤(銅吸収阻害剤)であり、酢酸亜鉛水和物を有効成分とする酢酸亜鉛錠であるものと認められ が異なる医薬品をいうことからすると、本件ニュースリリースに係る医薬品 は、ウィルソン病治療剤(銅吸収阻害剤)であり、酢酸亜鉛水和物を有効成分とする酢酸亜鉛錠であるものと認められる。 これらの事情の下においては、本件ニュースリリースに係る医薬品は、本件発明により生産される物と同一のものといえるから、本件ニュースリリースの掲載により同医薬品の存在が対外的に公表されているといえる。そうす ると、本件発明により生産される「物」は、本件発明の優先日前の時点において、当業者がその物を製造する手がかりが得られる程度に知られたものであったと認めるのが相当である。 したがって、被告医薬品は、特許法104条に基づき、本件発明に係る製造方法により生産したものと推定することはできない。 ⑵ これに対し、原告は、本件ニュースリリースでは、①「酢酸亜鉛」が「酢酸亜鉛水和物」なのか「酢酸亜鉛無水和物」なのかも判別することができず、②「賦形剤」、「結合剤」、「崩壊剤」を含むかどうかも明らかではなく、③上記にいう「その物を製造する手がかり」とは、本件発明に係る製造方法に他ならない旨主張する。 しかしながら、①本件ニュースリリースの記載からすれば、本件ニュースリリースに係る医薬品はノベルジン®カプセル25mg及び50mgの剤形追加であるから、上記医薬品と同様に、酢酸亜鉛水和物を有効成分としていることは明らかであり、②前記認定事実によれば、錠剤の製造においては、有効成分のみで錠剤を形成することは通常あり得ず、賦形剤、結合剤及び崩 壊剤が含まれ得ることは、技術常識であるといえ、③原告の主張の実質は「物」のみならず「製造方法」までも公然と知られていたことを要する趣旨をいうものであり、独自の見解というほかなく、原告の上記主張は 壊剤が含まれ得ることは、技術常識であるといえ、原告の主張の実質は「物」のみならず「製造方法」までも公然と知られていたことを要する趣旨をいうものであり、独自の見解というほかなく、原告の上記主張は、いずれも前記認定を左右するに至らない。したがって、原告の主張は、いずれも採用することができない。 まとめ 以上によれば、被告方法は、本件発明の技術的範囲に属するものとはいえず、その余の争点について判断するまでもなく、原告の請求は理由がない。 結論 よって、原告の請求は理由がないからこれらをいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 中島基至 裁判官 古賀千尋 裁判官 坂本達也 (別紙) 被告医薬品目録 1 医薬品1 販売名「酢酸亜鉛錠25mg『サワイ』」効能又は効果ウィルソン病治療剤(銅吸収阻害剤)低亜鉛血症治療剤 2 医薬品2 販売名「酢酸亜鉛錠50mg『サワイ』」効能又は効果ウィルソン病治療剤(銅吸収阻害剤)低亜鉛血症治療剤 以上

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