平成25(ワ)6014 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成28年11月25日 大阪地方裁判所
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判決文本文37,286 文字)

- 1 - 主文 1 被告は,原告1に対し,1768万7773円及びこれに対する平成24年4月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告2に対し,3096万9249円及びこれに対する平成24年4月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用はこれを5分し,その2を原告らの負担とし,その余を被告の負担とする。 5 この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は,原告1に対し,3542万2024円及びこれに対する平成24年4月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告2に対し,4696万8500円及びこれに対する平成24年4月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,亡Aの相続人である原告らが,被告において,従業員である亡Aの労働時間を適切に管理すべき義務があったのにこれを怠って亡Aに長時間労働及び不規則かつ深夜にわたる労働をさせたことにより,亡Aが致死性不整脈で死亡したと主張して,被告に対し,主位的に不法行為に基づく損害賠償として,予備的に債務不履行に基づく損害賠償として,①原告1については3542万2024円及びこれに対する亡Aの死亡日である平成24年4月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,②原告2については4696万8500円及びこれに対する上記同日から支払済みまで同割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求める事案である。 1 前提事実(争いのない事実及び掲記の証拠等により容易に認定できる事実) - 2 -⑴ 当事者ア被告は, 同日から支払済みまで同割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求める事案である。 1 前提事実(争いのない事実及び掲記の証拠等により容易に認定できる事実) - 2 -⑴ 当事者ア被告は,昭和40年1月26日に設立され,各種商品陳列用什器及び事務用什器備品の賃貸並びに販売を業とする株式会社であり,百貨店や展示会場への什器の設置等を行っている。被告における業務のうち,百貨店や展示会場への什器の搬入・設置作業等については,その業務量が日によって大きく変動するため,主として,被告との間でアルバイトとして登録した者(以下「アルバイト従業員」という。)を使用し,現場ごとにアルバイト従業員を募ってこれを行わせている。 イ亡Aは,昭和48年5月26日生まれの男性であり,高等学校を卒業後,複数の職を経て,遅くとも平成9年5月頃からアルバイト従業員として被告の大阪営業所(大阪府高槻市大塚町所在)において恒常的に勤務し始め,以後,平成24年4月12日の死亡日まで,百貨店等への陳列什器の設置作業等に従事し,被告大阪営業所の指示により業務を行っていた。 ウ原告1は亡Aの妻であり,原告2(平成22年12月12日生)は原告1と亡Aとの間の子である。ほかに亡Aの相続人はいない。 ⑵ アルバイト従業員の業務内容アルバイト従業員は,被告大阪営業所の営業担当社員から事前に指示を受け,指示された現場に赴き,被告の担当社員から具体的な指示を受けて,催事陳列什器等の設置作業・撤収作業を行っていた。 アルバイト従業員の業務は,様々な場所・時間帯・時間数にわたるものであるが,就労する現場について特に制限は設けられていなかった。 ⑶ 亡Aの死亡及び相続等亡A(当時38歳)は,平成24年4月12日,仕事を終えて午後8時過ぎ頃帰宅し,自宅で食事をした直 るものであるが,就労する現場について特に制限は設けられていなかった。 ⑶ 亡Aの死亡及び相続等亡A(当時38歳)は,平成24年4月12日,仕事を終えて午後8時過ぎ頃帰宅し,自宅で食事をした直後に意識を失って倒れ,午後9時22分頃救急搬送されたが,病院に到着後死亡が確認された(甲6の2)。 亡Aの死亡により,原告1及び原告2が各2分の1の割合により亡Aを相 - 3 -続した。 ⑷ 労災認定亡Aの死亡を受けて,原告1が,茨木労働基準監督署長に対し遺族補償年金請求を行ったところ,平成25年1月23日,茨木労働基準監督署長は,亡Aの死亡を業務上の災害に起因するものと認定し,原告1に対して遺族補償年金を給付する旨の決定をした。 原告1は,口頭弁論終結日である平成28年8月5日までの間に,労災給付(遺族補償年金及び葬祭料)として,以下の金員の給付を受けた。 遺族補償年金合計1154万6476円葬祭料 84万4330円 2 争点⑴ 業務と亡Aの死との間の因果関係の有無⑵ 被告の安全配慮義務違反の有無⑶ 過失相殺の可否及び過失割合⑷ 損害の発生及び額 3 争点に対する当事者の主張⑴ 争点1(業務と亡Aの死との間の因果関係の有無)について【原告ら】ア亡Aの死亡の原因について亡Aの死因は,発症日を死亡日とする致死性不整脈である。 亡Aの死因について,①死体検案書では「不整脈の疑い」,②救急搬送先の医師の意見書では「致死性不整脈が原因」,③死体検案を行った医師の意見書では「致死性不整脈が生じたと考えるのが妥当」,④局医職業病相談員医師の意見書では,「原因不明の致死性不整脈の可能性が高い」と各記載されている。このような各医師の見解によれば,亡Aの死亡原因は致死性不整脈であったと判断する高度の るのが妥当」,④局医職業病相談員医師の意見書では,「原因不明の致死性不整脈の可能性が高い」と各記載されている。このような各医師の見解によれば,亡Aの死亡原因は致死性不整脈であったと判断する高度の蓋然性が認められる。 - 4 -亡Aは,死亡前,長時間かつ不規則な労働に従事していたところ,そのような労働に従事することにより,致死性不整脈を含む脳・心臓疾患を発症する危険があることは,医学的に裏付けられている。 被告は,亡Aの食生活や喫煙の習慣等が発症の原因である可能性について指摘するが,食生活が不規則となったのは被告における勤務時間が不規則であるために過ぎず,喫煙についても少量であって,亡A自身が健康管理を怠ったことが発症の原因であるとはいえない。 イ亡Aの労働時間について後記を前提とした場合,脳心臓疾患の発症日である平成24年4月12日の直近6か月間における亡Aの具体的労働時間及び時間外労働時間数は別紙1のとおりである。なお,時間外労働時間とは,1週間単位の総労働時間数のうち40時間を超えるものであるが,1月毎に集計する上で,1週間に満たない日数が生じる場合には,これらの日を含む1週間で就労しなかった日の有無及び日数により休日労働とみなすか否かを決定し,休日労働とする場合は2日間で8時間を超える時間数又は全時間数を,休日労働としない場合は16時間を超える時間数を時間外労働時間とする。 労働時間の算定方法亡Aの実労働時間数は,被告において作成された給与明細及び作業実績一覧(以下「給与明細等」という。)記載の労働時間をもとに算定すべきである。 休憩時間については,被告が所定の休憩時間を与える運用をしていたかどうかが不明であるうえ,亡Aが十分な休憩をとれていなかったことからすれば,労働時間から所定の休憩時間数を控 に算定すべきである。 休憩時間については,被告が所定の休憩時間を与える運用をしていたかどうかが不明であるうえ,亡Aが十分な休憩をとれていなかったことからすれば,労働時間から所定の休憩時間数を控除すべきではない。 現場から現場への移動時間については,合理的な時間数であれば,労働時間としてこれを計算に含めるべきである。被告においては,アルバ - 5 -イト従業員が複数の現場で作業することが通常予定されており,作業現場間の移動は,アルバイト従業員が各現場で職務を遂行するために必要不可欠な行為であり,その作業に当然に付随する行為といえる。したがって,作業現場間の移動時間についても,使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価できる。 被告の主張する各ルールについてa 実開始時刻から実終了時刻までの時間が2時間30分に満たない場合でも賃金算定上労働時間を2時間30分としてカウントするというルール(以下「2時間半ルール」という。)は存在しないし,同ルールを前提として,給与明細等で2時間半とされている作業について実労働時間が1時間15分であると推計することも不合理である。 被告がアルバイト登録の際に交付していた平成23年7月1日改訂の「新規登録についての規定(資料)」と題する書面(乙1。以下「本件規定」という。)には,2時間未満の作業時間に対して2時間分の賃金を支払う旨の記載はあるが,2時間半ルールの記載はない。また,賃金算定上も,労働時間が2時間半未満と算定されている日が複数存在する。 被告が実労働時間の根拠として提出する大丸百貨店心斎橋店(以下「大丸」という。)の入退店表(乙9の2,以下「大丸入退店表」という。)は,亡Aの実際の労働時間を示すものではない。給与明細上労働時間が記載された日のうち,同表への記載がないものが大部分 橋店(以下「大丸」という。)の入退店表(乙9の2,以下「大丸入退店表」という。)は,亡Aの実際の労働時間を示すものではない。給与明細上労働時間が記載された日のうち,同表への記載がないものが大部分である上,記載があったとしても,給与明細上の始業・終業時刻と30分以上の誤差があるものがある。また,店外作業を行う場合や,別の出入口を利用する場合など,大丸入退店表に実労働時間が反映されない場合もある。 b 実終了時刻を30分刻みの時刻に繰り上げて記録するというルー - 6 -ル(以下「30分未満切上げルール」という。)については,同ルールの存在を示す客観的資料はないし,同ルールを前提として,実終了時刻と記録上の終了時刻との間に平均して15分の差があるとするのも不合理である。 なお,仮に被告の主張する点を一定程度考慮し,給与明細等に記録された時間から,①一現場当たり15分ずつ労働時間を減じ(ただし,労働時間が6時間以上7時間未満の現場では休憩時間との二重計上を避けるため適用はないものとする。),②大丸での立会作業の日について午前8時から9時までを除外し,③労働時間が6時間に達した直後の1時間を休憩時間として除外して,亡Aの発症前1か月間の具体的労働時間及び時間外労働時間を算定したものが,別紙2であるが(なお,合理的な移動時間は労働時間としている。),この場合でも,時間外労働が108時間53分に上るような長時間労働に従事していたことになる。 ウ業務の過重性について亡Aの従事していた業務は,日ごとに作業現場が異なり,それに伴い作業時間も異なるものであった。また,午後10時以降の深夜勤務時間帯に労働することもあり,不規則かつ深夜にわたる勤務を行っていた。 不規則な勤務は生活リズムの悪化をもたらす場合が多く,深夜労働は疲労が取れ も異なるものであった。また,午後10時以降の深夜勤務時間帯に労働することもあり,不規則かつ深夜にわたる勤務を行っていた。 不規則な勤務は生活リズムの悪化をもたらす場合が多く,深夜労働は疲労が取れにくくなることが知られている。亡Aは,恒常的な長時間労働に加え,不規則かつ深夜にも及ぶような労働を行ったことにより,生活リズムの悪化をもたらし,疲労が蓄積していたと考えられる。 【被告】ア亡Aの死因が不明であること本件では,亡Aの遺体は解剖が実施されておらず,器質的変性の存在が確認されていない。また,亡Aの死亡前後の医療記録としては,救急搬送された先の病院でも診療録や,血液検査結果しか存在せず,生前における - 7 -既往歴や健康診断の結果を表す資料も提出されていない。心臓疾患が原因となって亡Aが死亡したことを示す証拠は何ら存在しない。 イ亡Aの労働時間について給与明細等における亡Aの労働時間について,後記補正を加えた上で亡Aの死亡前約6か月の実労働時間を推計した場合,亡Aの具体的労働時間及び時間外労働時間数は別紙3のとおりであり,原告が主張する労働時間を大幅に下回る。なお,時間外労働時間数の計算方法については,休日が定まっていないアルバイト従業員の労働形態を考慮すべきであるから,1週間に満たない日数(29日目及び30日目)について,その総労働時間数から11時間25分(40時間÷7日×2日(小数点以下切捨て))を引いて,2日間の時間外労働時間数とすべきである。 被告における賃金算定上のルールについて平成24年頃,被告においては,賃金算定上のルールとして,以下のとおり,2時間半ルール,30分未満切上げルール並びに移動時間及び休憩時間についてのルールが定められており,亡Aの実労働時間の算定に当たっては以下のとおりと いては,賃金算定上のルールとして,以下のとおり,2時間半ルール,30分未満切上げルール並びに移動時間及び休憩時間についてのルールが定められており,亡Aの実労働時間の算定に当たっては以下のとおりとすべきである。 a 2時間半ルールについて2時間半ルールとは,実際の作業開始時刻(以下「実開始時刻」という。)から実際の作業終了時刻(以下「実終了時刻」という。)までの時間が2時間30分に満たない場合でも賃金算定上労働時間を2時間30分としてカウントするというルールをいう。同ルールを前提とすれば,労働時間が2時間30分として記録された場合,理論上はその中のあらゆる数値を取り得るから,実際の労働時間の平均値はその半分の1時間15分とすべきである。 なお,大丸入退店表(乙9の2)は,被告のアルバイト従業員が大丸に入退店する際に記入するものであるところ,大丸での業務は入店 - 8 -後開始し退店前に終了するから,実労働時間はこの幅に収まることになる。大丸入退店表によれば,給与明細等上,労働時間が2時間30分とされている場合の入店からまでの時間は平均して1時間6分であり(乙10),実際の労働時間の平均はこれよりも少なかった。 よって,給与明細等記載の労働時間が2時間30分の作業については,記録上終了時刻を1時間15分早い時刻に補正するものとして,朝の立会い(午前8時から午前10時30分)については概ね9時から作業が開始されていたという実態に近付けるため,午前9時から10時15分と補正する。 b 30分未満切上げルールについて30分未満切上げルールとは,実終了時刻を30分刻みの時刻に繰り上げて記録するというルールをいう。同ルールを前提とすると,理論上は,実終了時刻と記録終了時刻の間には平均15分の差(実終了時刻が記録終了時刻よりも1 ルールとは,実終了時刻を30分刻みの時刻に繰り上げて記録するというルールをいう。同ルールを前提とすると,理論上は,実終了時刻と記録終了時刻の間には平均15分の差(実終了時刻が記録終了時刻よりも15分早い)が生じることとなるため,記録上の終了時刻よりも平均的には15分早かったものと補正して算定すべきである。 c 移動時間について被告においては,2つの現場の移動時間が概ね1時間以内の場合には移動時間を賃金算定時間に含めていた。労働時間でない移動時間が賃金算定時間に含まれていることから,実際の労働時間は賃金算定時間よりも現場間の移動時間分少ないことになる。そこで,給与明細等上,前の現場の終了時刻と次の現場の開始時刻が同時刻の場合には,前の現場の記録上の終了時刻を,移動時間分早い時刻に補正すべきである。 原告は,現場間の移動時間を労働時間に含めるべきと主張するが,労働時間とは労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいう - 9 -ところ,アルバイト従業員は,開始時間までに現場に集合し,業務が終了すると現場で解散するのであり,異なる現場での業務は,別個のものである。両現場の業務に連続性はなく,移動中のアルバイト従業員が使用者の指揮命令下に置かれていないことは明らかであるから,現場間の移動時間は労働時間には当たらず,これを労働時間に含めるべきではない。 d 休憩時間について被告においては,労働時間が6時間を超える場合に1時間の休憩を,労働時間が9時間を超える場合には2時間の休憩を,アルバイト従業員にとらせていたが,これらの休憩時間を賃金算定時間に含めていた。 上記補正を加えた実際の労働時間が7時間を超える場合には1時間分,11時間を超える場合には2時間分,休憩時間に当たる時間を控除すべきである。 ウ業務の過重性につ 時間を賃金算定時間に含めていた。 上記補正を加えた実際の労働時間が7時間を超える場合には1時間分,11時間を超える場合には2時間分,休憩時間に当たる時間を控除すべきである。 ウ業務の過重性について亡Aが携わっていた作業は,主に,①百貨店等での什器の搬入・設置・搬出,②立会い,③倉庫での什器の搬入・搬出であったが,什器の運搬には台車が利用され,また,立会いではほとんど作業がなかったため,いずれの作業も身体にそれほど負担をかけるものではなかった。 作業が長時間に及ぶ場合には,被告社員の指示のもとで休憩が与えられ,亡Aは休憩室で食事等の休憩をとることができた。休憩時間でないときも什器が到着するまでの間や,別の業者等の作業が終了するまでの間等に,作業を行わずに待機していることもしばしばあった。 亡Aには業務上のノルマが課されておらず,自身の都合に合わせて働きたいときだけ働くことが可能であったため,亡Aの業務上の精神的負担は極めて小さいものであった。 ⑵ 争点2(被告の安全配慮義務違反の有無)について - 10 -【原告ら】ア本件の事実関係からすれば,被告は,亡Aとの関係において,遅くとも亡Aが死亡する1か月前までには,亡Aの労働時間を把握し,長時間労働となるおそれがある場合には申込みを受け付けない等の措置をとるべき義務を負っていたにもかかわらず,かかる義務を怠った。 使用者は,業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負っていると一般的に解されているところ,亡Aは被告との間で継続的にアルバイト勤務に従事しており,特別な社会的接触の関係に入った当事者に当たるといえるから,具体的な労務の指示が都度行われるとしても,被告が亡Aに対し上記安全配慮義務を負うこと は被告との間で継続的にアルバイト勤務に従事しており,特別な社会的接触の関係に入った当事者に当たるといえるから,具体的な労務の指示が都度行われるとしても,被告が亡Aに対し上記安全配慮義務を負うことは明らかである。 被告におけるアルバイト従業員の労働条件(賃金等)は,各現場とも共通しており,現場ごとに異なるわけではない。それゆえ,賃金の支払も,現場単位ではなく,10日単位となっている。被告のアルバイト従業員の特色として挙げられる点は,要は,各アルバイト従業員が自分の希望により現場や働く時間を選択できるということに過ぎず,その選択の結果として長時間労働等の過重労働となる場合が生じ得ることは,正社員や一定期間の雇用期間が想定される有期雇用の場合と何ら異ならないから,被告において労働時間の適正把握等の義務を負わないとする根拠とはならない。 また,短期間の過重業務も脳心臓疾患の発症の原因となることは医学的に知られているところ,雇用期間が形式としては短期間であることをもって,使用者がその労働者に過重な業務をさせてはならないとの義務が否定されるものではない。 イ被告は,各アルバイト従業員の申込み及び配置のみならず,その実際の労働時間を把握することも十分に可能であった。実際にも,現在では被告は各アルバイト従業員の労働時間を比較的正確に把握した上で,働き過ぎ - 11 -ている場合には休みをとるように伝えるという運用になっている。 また,各アルバイト従業員からの申込みは具体的な勤務の約1週間前にされることから,被告においてその時点における正確な労働時間を集計することはできないとしても,月初から申し込み時点までの間の当該従業員の累積労働時間を確認することは可能である。 ウアルバイト従業員を必要なときに確保するという雇用形態が採用さ な労働時間を集計することはできないとしても,月初から申し込み時点までの間の当該従業員の累積労働時間を確認することは可能である。 ウアルバイト従業員を必要なときに確保するという雇用形態が採用されているのは,被告の便宜のためであるから,亡Aの判断で業務を選択できる可能性のあったことをもって,安全配慮義務を否定する根拠とすべきではない。 【被告】ア被告は,亡Aに対して,原告らの主張するような安全配慮義務を負ってはいなかった。 アルバイト従業員の各現場の作業は個々に完結しており,他の作業との連続性はない。また,アルバイト従業員は,現実に従事する現場の作業以外にノルマを負っていない。 勤務日程や作業量を決定するのは,各アルバイト従業員の権限である。 被告が募集した現場作業の中からどれを選択して申し込むかは自由であり,申込の後でも,被告に電話連絡を入れてキャンセルすることができる。 アルバイト従業員は,各現場で作業を行っている間だけ,被告との間に使用従属関係が生じているに過ぎない。アルバイトから作業の申込みを受け付ける段階においては,被告とアルバイト従業員との間に使用従属関係があるとはいえず,「使用者」には当たらない。 これは,亡Aのように繰り返し現場作業に従事するアルバイト従業員との間においても同様である。被告はバイトの申込みを順次受け付けているに過ぎず,個々のアルバイト従業員の1週間分の作業予定を定めて作業に従事するよう指示しているわけではない。 - 12 -なお,各現場では,現場の安全性を確保するとともに,アルバイト従業員に適度の休憩をとらせるなどしていた。 イ被告は,各現場の作業日の約1週間前からアルバイト従業員の申込みを逐次受け付けるところ,その後の当該アルバイト従業員の作業予定を把握していない ト従業員に適度の休憩をとらせるなどしていた。 イ被告は,各現場の作業日の約1週間前からアルバイト従業員の申込みを逐次受け付けるところ,その後の当該アルバイト従業員の作業予定を把握していない。このため,被告は申込みを受け付けた時点では,当該アルバイト従業員が長時間労働となるおそれが生じるか否かを判断することができない。また,被告は,多数のアルバイト従業員からの申込みを一斉に受け付けて,多数の作業現場への人員配置を行っており,個々のアルバイト従業員の過去の労働時間等の個別事情を勘案して受け付けるか否かを決めることは極めて困難である。 被告は,申し込まれた勤務日を変更したり申し込まれた作業以外の作業を指示する権限を有していない。 ウ被告は,亡Aから健康状態に不安があるなどと言った報告は受けておらず,職場においてもそのような様子は見られなかったため,亡Aから申込みを受けた時点において,亡Aが業務により死亡することを予見することは不可能であった。 ⑶ 争点3(過失相殺の可否及び過失割合)について【被告】ア亡Aは,アルバイト従業員として働くことを自ら希望し,各作業の申込みを行っていた。 亡Aは,平成24年1月,原告1及び原告2とともに大阪市北区天満から京都市左京区千代田町に転居したが,転居後も主として大丸や被告の第2センター(兵庫県西宮市鳴尾浜)等における作業に従事していた。亡Aは,自宅から遠く通勤に時間のかかる現場での作業を自ら申し込んでいたものである。 イ亡Aは,アルバイト従業員であり,被告における健康診断対象者には当 - 13 -たらなかったのであるから,自身の健康を管理するため,自ら定期的に健康診断を受ける等して健康状態を把握すべきであったにもかかわらず,長期間にわたり健康診断を受けていなかった。 当 - 13 -たらなかったのであるから,自身の健康を管理するため,自ら定期的に健康診断を受ける等して健康状態を把握すべきであったにもかかわらず,長期間にわたり健康診断を受けていなかった。その上,深夜に多くの量の食事をとり,喫煙をする等して,自身の健康管理を怠っていた。 【原告ら】ア被告は,亡Aに対して健康診断を受けさせる義務を負っていたというべきであるから,これを怠った被告において,亡Aが健康診断を受けていなかったという事実を自己に不利な事情として主張することは許されない。 イ亡Aの食生活が不規則であることについては,ことさら強調されるようなものではないし,仮に日中食事がとれなかったとしても,それは勤務時間が不規則であったことや,業務中に休憩時間が与えられていなかったことによるものであり,むしろ勤務実態に問題があるということになる。 亡Aに喫煙の習慣があったことは事実であるが,1日につき3本程度に過ぎず,およそ健康に悪影響を及ぼすような喫煙量ではない。 (4) 争点4(損害の発生及び額)【原告ら】ア死亡による慰謝料 2800万円イ死亡による逸失利益 5443万7000円年収額 513万6280円遺族補償年金の給付基礎日額は1万4072円である。これは,被告から支給された賃金だけでなく,法律上支払われるべき時間外労働等割増賃金を加算して算出されている。これを年収に引き直すと,513万6280円(1万4072円×365日)となる。 就労可能年数 29年(ライプニッツ係数15.141)亡Aは死亡時38歳であり,就労可能年数は29年である。 生活費控除 30% - 14 -亡Aの家族構成(夫婦と未成年の子1名)に照らせば,30%とするのが相当である。 よって,亡Aの死亡による 38歳であり,就労可能年数は29年である。 生活費控除 30% - 14 -亡Aの家族構成(夫婦と未成年の子1名)に照らせば,30%とするのが相当である。 よって,亡Aの死亡による逸失利益は,5443万7000円(513万6280円×15.141×(1-0.3))となる(千円未満切り捨て。)。 ウ葬祭料 150万円エ弁護士費用 1000万円オ原告両名による相続後の合計額原告両名は,上記アないしエの合計額である9393万7000円について,それぞれ2分の1の額である4696万8500円ずつを相続した。 カ損益相殺原告1は,遺族補償年金として口頭弁論終結時までに合計1154万6476円の支給を受けており,これについて損益相殺を行うと,原告1の残損害額は3542万2024円となる。 キまとめ(原告ら各自の請求額)原告1 3542万2024円原告2 4696万8500円【被告ら】ア逸失利益については争い,その余は不知。 イ逸失利益を計算する際の年収額は,過去の年収額の実績から算出すべきであり,仮定の数値である給付基礎日額から算出すべきではない。死亡前の亡Aの年収額である480万7665円(平成23年4月11日から平成24年4月10日までの賃金総額)を逸失利益算定の基礎収入とすべきである。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実 - 15 -前記前提事実に証拠(甲6,8ないし10,15,乙1,2,9,16ないし21,証人B,証人C,証人D,原告1本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 ⑴ 亡Aの生前の生活状況等ア生前,亡Aは原告1及び原告2と3人で居住しており,原告1及び原告2は,亡Aの収入により生計を維持していた。 亡Aは,平成9 以下の事実を認めることができる。 ⑴ 亡Aの生前の生活状況等ア生前,亡Aは原告1及び原告2と3人で居住しており,原告1及び原告2は,亡Aの収入により生計を維持していた。 亡Aは,平成9年5月頃から被告においてアルバイト従業員として働いていた。また,亡Aは,他に稼働先はなく,被告からの収入のみで生計を立てていた。 イ亡Aの喫煙量は1日2,3本程度,飲酒量は350mlの缶ビールを2缶(700ml)程度であった。なお,亡Aは,生前,被告のアルバイト従業員に対し,「不整脈がある」と述べたことがあった。 ウ亡A,原告1及び原告2は,平成22年から大阪市a区bに居住していたが,原告2のアトピーがひどかったこと,京都でも被告の仕事現場があること等から,平成24年1月頃から京都市c区d町へ転居した。 転居後の自宅最寄駅であるe駅(叡山電鉄)から心斎橋駅(大阪市駅御堂筋線)までは,電車で約1時間半の距離にある。 亡Aは,終業時間が遅くなり,電車で帰宅できない場合は,大阪市f区gにある亡Aの実母宅へ行っていた。 エ亡Aには,通院中の疾病はなく,平素から服薬している薬はなかった。 ⑵ 被告の業務及び規模等平成24年当時,被告大阪営業所において取引関係のある百貨店等は約50店舗あり,年間の作業現場としては約8000か所に上っていた。 ⑶ 被告におけるアルバイト従業員の採用等ア被告においてアルバイト従業員として仕事を行うには,被告に履歴書等を提出して面接を受け,被告のアルバイト従業員として登録を受けた上, - 16 -個別の仕事を受けるために,後記⑷記載の仕事の申込みを行うという手順を踏む必要がある。 登録する際にアルバイト従業員に交付される本件規定には,賃金・交通費の計算や支払方法等として,要旨以下のとおりの記載がある 受けるために,後記⑷記載の仕事の申込みを行うという手順を踏む必要がある。 登録する際にアルバイト従業員に交付される本件規定には,賃金・交通費の計算や支払方法等として,要旨以下のとおりの記載がある。 賃金は,時給1000円からスタートし,25円刻みで1350円まで加算される。(⑸賃金規定①)作業時間は30分刻みで計算する。(⑸賃金規定③)2時間未満の作業勤務に対しては2時間分の賃金を支払う。(⑸賃金規定④)1日に2つ以上の現場で作業するための移動時間は,1時間以内であれば,作業時間とみなす。(⑸賃金規定⑤)交通費は,往復1000円までの実費とする。複数現場の移動のための交通費は,現場間の実費とする。具体的には,1日に現場が1か所の場合,自宅最寄駅から現場までの交通費(往復)を支給する。1日に現場が複数ある場合は,自宅最寄駅から最初の現場までの交通費(往路)及び最終現場から自宅最寄駅までの交通費(復路)を支給するとともに,①現場間移動時間が2時間未満の場合には現場間の交通費を支給し,②現場間移動時間が2時間以上の場合には,自宅最寄駅から現場までの金 作業現場までの自動車,バイク等の利用は,原則として認めない(⑺交通費☆印)イ平成24年当時,被告のアルバイト従業員の登録人数は約300人であり,うち約100人が実際に作業に従事していた。主に被告での勤務により生計を立てている者は,そのうち30人から40人程度であった。 ウ被告は,アルバイト従業員については,健康診断を受診させていない。 ⑷ アルバイト従業員の作業申込み - 17 -ア被告大阪営業所においては,実際に作業を行う日の約1週間前までには,どの現場にどれだけの人数が必要であるかが判明することから,各現場の作業日の約1週間前から,アルバ 申込み - 17 -ア被告大阪営業所においては,実際に作業を行う日の約1週間前までには,どの現場にどれだけの人数が必要であるかが判明することから,各現場の作業日の約1週間前から,アルバイト従業員から作業の予約を受け付けていた。具体的な手順としては,アルバイト従業員が大阪営業所労務課に電話をかけ,募集されている作業現場,日時等を確認した上で,当該アルバイト従業員の希望する作業現場,日時を営業所の受付担当者に告げると,先に予約をした者から順次現場に配置され,各現場の定員に達した場合には当該現場の予約受付を終了するという流れにより,作業の予約が行われていた。申し込むべき作業のノルマは特に定められていない。 他方で,ある現場に必要な人数に達する申込みがない場合には,被告の営業担当社員又は労務課社員から,アルバイト従業員として登録している者全員にメールを送信し,あるいは,アルバイト従業員に対して個別に電話をしており,亡Aに対しても,アルバイト従業員が足りない日について作業の引受けの打診を行うことがあった。 イ亡Aの死亡後,被告は,アルバイト従業員ごとに実労働時間を把握し,1か月ごとに集計するようにしており,長時間労働になるような場合には,被告の方から休みをとるよう勧告するとの運用をしている。 ⑸ アルバイト従業員の作業時間の管理及び作業の監督等アアルバイト従業員は,作業当日,作業開始時間の概ね5分前から10分前までに現地に集合し,社員の指示に従って作業を行い,作業が終了すると現地で解散する。 イ大阪営業所の営業担当社員は,各現場において,アルバイト従業員に対する作業の指示や監督のほか,アルバイト従業員の作業開始時刻及び作業終了時刻の確認を行っており,アルバイト従業員の作業開始時刻及び作業終了時刻の確認も営業担当社員に 場において,アルバイト従業員に対する作業の指示や監督のほか,アルバイト従業員の作業開始時刻及び作業終了時刻の確認を行っており,アルバイト従業員の作業開始時刻及び作業終了時刻の確認も営業担当社員において行っていた。具体的には,当該現場に入るアルバイト従業員の氏名及び連絡先等が印字された作業確認リ - 18 -スト(乙17)をもとに,集合したアルバイト従業員の氏名や人数等を営業担当社員が確認した後,アルバイト従業員において作業確認リストに「開始時間」を記入して,営業担当社員がその時刻を確認し,作業が終了すると,アルバイト従業員において「終了時間」を記載し,営業担当社員がこれを確認するという流れにより,作業開始及び終了時刻を記録していた。 営業担当社員において作業の発注元に対する見積書を作成する際には,自身の経験や記憶のほか,過去の作業確認リスト等に基づき,必要な人数や時間を見積もっていた。 ウ小規模の現場であれば,営業担当社員が現場に行かない場合があり,その際には,亡Aのような経験の長いアルバイト従業員に現場を任せることがしばしばあった。 エ作業確認リストに記載された作業開始時刻は,実際の作業開始時刻と概ね同じであるが,立会作業(後記⑹イ)等,被告の労務管理課において正確な作業開始時刻を把握していない場合には,実際の作業開始時刻と異なっていることがあった。 オ作業現場で作成された作業確認リストは,被告の労務管理課に提出された後,被告の記録媒体に各アルバイト従業員の作業時間が入力された。平成24年頃において,作業確認リストに記載された労働時間は,現場間で作業時間が重なる場合を除き,原則として,そのまま記録媒体に入力され,これが作業実積一覧(甲6の22)に反映されていた。なお,現場間で作業時間が重なる場合には,入力の 記載された労働時間は,現場間で作業時間が重なる場合を除き,原則として,そのまま記録媒体に入力され,これが作業実積一覧(甲6の22)に反映されていた。なお,現場間で作業時間が重なる場合には,入力の際に重ならないよう修正していた。 カ休憩について被告社員が現場にいるときは,社員の指示により適宜アルバイト従業員に休憩をとらせており,什器備品類の到着が遅れている場合には待機時間として適宜休憩所に行かせることもあった。なお,現場が百貨店である場 - 19 -合には,アルバイト従業員が使用可能な休憩所があることが多いが,それ以外のホテル等の現場では,アルバイト従業員が使用できる休憩所が事実上ない場合があり,屋外で立ったまま休憩をとることもあった。 ⑹ アルバイト従業員の作業内容被告のアルバイト従業員が行う作業は,概ね以下の3種類があった。 ア百貨店や展示会場での什器の搬入,設置及び搬出百貨店や展示会場において使用する陳列棚やパーテーション等の什器がトラックで運ばれてくるのを現地で待ち受け,トラックの到着後に,什器をトラックから降ろして,台車や,什器自体に附属しているキャスター等を使用して運搬し,所定の場所に設置する。 イ立会作業百貨店等における催事のオープン当日,開店(開場)までの間に,電灯が点いているか,什器が適切に稼働しているか等の確認を催事担当者が行う際,これに立ち会う。催事の担当者から変更依頼があった場合には,これに応じて変更作業等を行う。なお,朝に通常の搬入作業をすることもあるため,朝に行われる作業が必ず立会作業であるというわけではない。 ウ倉庫での什器の搬入・搬出鳴尾浜にある被告第2センターの倉庫(以下「第2倉庫」という。)における作業であり,事前に搬送する予定の什器をまとめておく,各現場に搬送 であるというわけではない。 ウ倉庫での什器の搬入・搬出鳴尾浜にある被告第2センターの倉庫(以下「第2倉庫」という。)における作業であり,事前に搬送する予定の什器をまとめておく,各現場に搬送する什器をトラックに積み込む,トラックで搬送されてきた什器を倉庫の元の位置に戻す等の作業を行う。倉庫内には什器を収納した多くのコンテナが置かれ,必要な什器が入ったコンテナの取出し等は,全てコンピューター制御により行われていた。トラックまでの運搬や積込み等には,台車や,什器自体に付属するキャスターを使用していた。 ⑺ 大丸の外来者入退店表被告のアルバイト従業員は,作業のために大丸の通用口を利用する際,入 - 20 -店証や作業用の腕章を持っている場合を除いては,同通用口に備付けの大丸入退店表(乙9の2)に会社名,氏名,入店時刻等を記載する必要があった。 亡Aは作業用の腕章を所持していたが,腕章を忘れた場合には大丸入退店表への記入をしていた。 ⑻ アルバイト従業員の賃金の計算及び支払等アルバイト従業員に対する平成24年頃の賃金の支払方法は,各月10日ごとに締め,その約10日後に送金等により支払うという月3回払の形式をとっていた(なお,現在では,毎月15日締め翌月15日払の形式になっている。)。 亡Aの賃金は,同年頃には,第2倉庫について1時間1000円,それ以外の現場については1時間1350円となっており,深夜帯の作業については30分当たり150円の手当が加算されていた。なお,平成23年12月頃までは,第2倉庫での作業についても,賃金は1時間当たり1350円であった。また,1日に複数の現場がある場合には,現場間の移動に要した交通費が支払われていた。 ⑼ 現場間の移動ア同じアルバイト従業員が一日に複数の現場で就労する場合には, 間当たり1350円であった。また,1日に複数の現場がある場合には,現場間の移動に要した交通費が支払われていた。 現場間の移動 同じアルバイト従業員が一日に複数の現場で就労する場合には,一つの現場から次の現場へ直接移動することもあった。被告は現場間の移動方法について特に指示をしておらず,アルバイト従業員は,現場までの距離に応じ,電車や自転車,バイク等を用いて移動していた。 アルバイト従業員が作業を行う各現場間の移動にかかる時間は,以下のとおりと認められる。 大丸―第2倉庫 1時間06分 大丸―ダイエー京橋店 21分 大丸―リッツカールトンホテル 19分 大丸―大丸梅田店 12分 大丸―サンライズビル 3分 大丸―ホテル日航大阪 2分 大丸―高島屋泉北店 42分 大丸―西武百貨店大津店 1時間14分 大丸心斎橋―ル・ベンケイ 1時間05分 大丸―高島屋堺 24分 大丸―阪急梅田駅 13分 大丸―ダイエー京橋店 21分 大丸―ダイエー吹田店 30分 大丸―イトーヨーカ堂阿倍野店 17分 大丸―JR京都伊勢丹 50分 第2倉庫―リッツカールトン 55分 第2倉庫―ホテルオークラ神戸 1時間23分 第2倉庫―ハービスエント 52分 第2倉庫―西武百貨店高槻店 1時間21分 第2倉庫―大丸梅田店 52分 第2倉庫―JR京都伊勢丹 1時間11分 第2倉庫―ホテル日航 1時間07分 第2倉庫―セントレジス大阪 1時間0 1時間21分第2倉庫―大丸梅田店 52分第2倉庫―JR京都伊勢丹 1時間11分第2倉庫―ホテル日航 1時間07分第2倉庫―セントレジス大阪 1時間06分大阪城ホール―ダイエー曽根店 42分帝国ホテル大阪―大丸 29分インテックス大阪―大丸 34分ル・ベンケイ―梅田クリスタルホール1時間10分神戸国際展示場―太閤園 54分ホテルオークラ京都―大丸 47分グルメシティ豊中店―大丸 34分 - 22 -阪急梅田駅―京都国際会館 1時間01分ダイエー京橋店―リーガロイヤルホテル16分ホテル阪急インターナショナル―大丸 17分リッツカールトンホテル―インテックス大阪42分リーガロイヤルホテル―リッツカールトン15分イトーヨーカ堂阿倍野店―高島屋京都店 1時間13分⑽ 亡Aの賃金の額について亡Aの平成23年4月11日から平成24年4月10日までの賃金の総支給額は,480万7665円であった。 また,平成21年以降,被告から亡Aに対して支払われた賃金の総額は以下のとおりである。 平成21年分 367万9275円平成22年分 321万7900円平成23年分 420万6900円⑾ 労災認定原告1は,平成24年7月,茨木労働基準監督署長に対し,遺族補償年金及び葬祭料の支給を請求した。 同署長は,亡Aを含む。)),症状の発現日(発症日)を死亡日である平成24年4月12日とした上で,亡Aの発症前1か月(同年3月14日から同年4月12日)までの拘束時間が391時間,時間外労働時間数が154時間30分であり,長時間労働が長期間にわたり継続していたものとし 年4月12日とした上で,亡Aの発症前1か月(同年3月14日から同年4月12日)までの拘束時間が391時間,時間外労働時間数が154時間30分であり,長時間労働が長期間にわたり継続していたものとして,亡Aの死亡を業務上の災害に起因するものと認定した。 ⑿ 亡Aの死亡の経過及び死因に関する医師の意見ア亡Aは,平成24年4月11日の早朝に自宅を出発し,同日の朝から翌日である同月2日の夕方まで徹夜での作業を行った後,午後8時30分頃 - 23 -に帰宅してすぐ,原告1に対し,「疲れた。眠たい。」「ご飯を食べたら横になりたい」と述べ,夕飯を食べた後,急に意識を失って倒れた。 亡Aは,京都第一赤十字病院へ搬送され,同日午後9時38分に同病院へ到着した後,亡Aに対しCPR(心肺蘇生法)が開始された(担当はE医師であった。)。同日午後9時38分から40分頃まではVf(心室細動),同日午後9時40分から午後10時16分までAsys(心停止)の状態が続き,同日午後10時54分,原告1立会いのもと,亡Aの死亡が確認された。 京都府警察医(Fクリニック)F医師は,同月13日(死亡翌日),亡Aの遺体を検案し,死体検案書(甲6の7)を作成した。同検案書中,「直接死因」の欄には「不整脈の疑い」,「その他特に付言すべきことがら」の欄には「夕食後意識消失し救急隊が到着した頃には死亡していた。CTにて脳内出血,胸膜腔内出血認めず。」と記載されている。 イ E医師の意見の要旨亡Aは致死性不整脈が原因で死亡した。元々詳細不明ではあるが不整脈の既往があること,若年者の突然発症のCPA(心肺停止)であったこと,CPR(心肺蘇生法)開始後一度も波形が戻っていないこと等から,これがもっとも考えられる。その他の死因の可能性については否定できないが,特に疾患は 若年者の突然発症のCPA(心肺停止)であったこと,CPR(心肺蘇生法)開始後一度も波形が戻っていないこと等から,これがもっとも考えられる。その他の死因の可能性については否定できないが,特に疾患は挙げられない。 ウ F医師の意見の要旨心臓死にしてもあまりにも突然死亡しているため,致死性不整脈が生じたと考えるのが妥当である。客観的判断ができる資料(心電図等)に乏しいため,あくまでも推定である。今回の死亡原因が「心停止若しくは心臓当たるかについては,前兆なく突然死亡しているので,心臓死が考えやすい。 エ局医職業病相談のG医師(専門医)の意見の要旨 - 24 -本件被災者(亡A)はいわゆる突然死であるところ,突然死の多くは心原性であり,本件では年齢等から原因不明の致死性不整脈の可能性が高い。 ⒀ 業務起因性にかかる認定基準等ア専門検討会報告書について脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会が,厚生労働省からの依頼による検討結果を取りまとめた報告書である平成13年11月15日付け「脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会」の検討結果(方針)について」(甲10。以下「専門検討会報告書」という。)には,概要以下のとおりの記載がある。 業務による過重負荷によって発症する疾患のうち,虚血性心疾患等として,①心筋梗塞,②狭心症,③心停止(心臓性突然死を含む),④解離性大動脈瘤があり,従来「一次性心停止」及び「不整脈による突然死等」とされてきたものは③に含まれる。 心停止とは,心拍出が無となり,循環が停止した状態を指し,心電図上,心室停止,心室細動のいずれかを示すことが多い。主な基礎疾患は虚血性心疾患であり,急性冠症候群の心臓性突然死に当たる。 突然死を発症2時間以内の死と定義した場合,米国では,前死亡の12%が突然死 心室停止,心室細動のいずれかを示すことが多い。主な基礎疾患は虚血性心疾患であり,急性冠症候群の心臓性突然死に当たる。 突然死を発症2時間以内の死と定義した場合,米国では,前死亡の12%が突然死であり,うち70%から85%が心臓由来すなわち心臓性突然死と考えられている。日本においても,突然発症する心停止の多くは,心室頻拍・心室細動が直接の原因であり,その基礎心疾患としては虚血性心疾患,次いで心筋症が多いと考えられる。 長時間労働について長期間にわたる長時間労働や,それによる睡眠不足に由来する疲労の蓄積が血圧の上昇等を生じさせ,その結果,血管病変等をその自然経過を越えて著しく増悪させる可能性がある。疲労の蓄積には,長時間労働以外の種々の就労態様による負荷要因が関与することから,業務の過剰 - 25 -性の判断は,それら諸要因を総合的に評価することによって行われるべきであるが,長時間労働に着目する場合には,1日4時間から6時間程度の睡眠が確保できない状態が継続していたか否かという視点で検討することが妥当である。 1日5時間程度の睡眠を確保できない場合には,脳・心臓疾患の発症との関連に関し,すべての報告において有意性があるとされているところ,1日5時間程度の睡眠が確保できない状態とは,平均的な労働者の場合,1日の労働時間が8時間を超え,5時間程度の時間外労働を行った場合に相当し,これが1か月継続した状態は概ね100時間を超える時間外労働が想定される。また,1日6時間程度の睡眠が確保できない状態とは,平均的な労働者の場合,1日の労働時間が8時間を超え,4時間程度の時間外労働を行った場合に相当し,これが1か月継続した状態は概ね80時間を超える時間外労働が想定される。 1日7時間から8時間程度の睡眠が確保できる状態がもっとも健 時間が8時間を超え,4時間程度の時間外労働を行った場合に相当し,これが1か月継続した状態は概ね80時間を超える時間外労働が想定される。 1日7時間から8時間程度の睡眠が確保できる状態がもっとも健康的であるという研究結果があり,1日7.5時間程度の睡眠が確保できる状態とは,平均的な労働者の場合,1日の労働時間が8時間を超え,2時間程度の時間外労働を行った場合に相当し,これが1か月継続した状態は概ね45時間の時間外労働が想定される。 不規則な勤務について不規則な勤務は,睡眠―覚醒のリズムを障害するため,不眠,睡眠障害,昼間の眠気等の愁訴を高め,生活リズムの悪化をもたらす場合が多いとの報告や,通常の交代制勤務よりも不規則な交代制勤務の方が完全な休息が得られない可能性を指摘する報告がある。予定された業務スケジュールの変更の頻度,程度,事前の通知状況,予測の度合,業務内容の変更の程度等の観点から検討・評価を行うべきである。 拘束時間の長い勤務について - 26 -拘束時間数,実労働時間数だけでなく,拘束時間数の実態等(労働密度,業務内容,休憩・仮眠時間数,休憩・仮眠施設の状況等)から検討すべきである。 交代制勤務,深夜勤務について交代制勤務の心血管疾患に対するリスクは概ね1.2倍から1.5倍になると考えられる。また,夜遅くや主に夜間・早朝に働く労働者の虚血性心疾患のリスクが高いとする報告がある。 交代制勤務や深夜勤務のシフトが変更されると,生体リズムと生活リズムとの位相のずれが生じ,その修正の困難さから疲労がとれにくいといったことが考えられる。 交代制勤務や深夜労働の過重性については,勤務シフトの変更度合,勤務と次の勤務までの時間,交代制勤務における深夜時間帯の頻度がどうであったか等の観点から検討・評価を行うべ いったことが考えられる。 交代制勤務や深夜労働の過重性については,勤務シフトの変更度合,勤務と次の勤務までの時間,交代制勤務における深夜時間帯の頻度がどうであったか等の観点から検討・評価を行うべきである。 業務の過重性(長期間・短期間両方を含む。)を評価するにあたっては,労働時間やその他の就労態様等を考慮すべきである。 発症前1か月ないし6か月間の就労状況を調査すれば,発症と関連する疲労の蓄積が判断され得ることから,疲労の蓄積にかかる業務の過重性を評価する期間を発症前6か月間とすることは,現在の医学的知見に照らし,無理なく,妥当である。 イ厚生労働省の認定基準について厚生労働省は,専門検討会報告書における検討結果をふまえて,平成13年12月12日付け基発1063号による都道府県労働局長宛厚生労働省労働基準局長通知「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」(甲8。以下「本件認定基準」という。)により,脳・心臓疾患に関し,概要以下の内容の認定基準(業務上の疾病該当性の認定要件)を定めている。なお,「心停止(心臓性突然死 - 27 -を含む。)」は,本件認定基準において対象疾病として取り扱われている。 脳・心臓疾患の発症に影響を及ぼす明らかな過重負荷として発症に近接した時期における負荷のほか,長期間にわたる疲労の蓄積も考慮する。 また,業務の過重性の評価に当たっては,労働時間,勤務形態,作業環境,精神的緊張の状態等を具体的かつ客観的に把握,検討し,総合的に判断する必要がある。 発症に近接した時期(発症前概ね1週間)において特に過重な業務に就労したか否かの評価については,業務量,業務内容,作業環境から,特に過重な身体的,精神的負荷と認められるか否かという観点から行われるべきであ 接した時期(発症前概ね1週間)において特に過重な業務に就労したか否かの評価については,業務量,業務内容,作業環境から,特に過重な身体的,精神的負荷と認められるか否かという観点から行われるべきである。その際,労働時間,不規則性,拘束時間の長さ,出張,交代制勤務・深夜勤務,作業環境等の負荷要因を検討すべきであるが,労働時間については,発症前概ね1週間以内に継続した長時間労働が認められるか,休日が確保されていたか等の観点から検討し,評価する。 発症前の長期間にわたって著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したか否かについての評価に当たっては,疲労の蓄積の観点から,労働時間のほか,不規則性,拘束時間の長さ,出張,交代制勤務・深夜勤務,作業環境,精神的緊張等の負荷要因についても十分検討すべきであるが,疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられる労働時間に着目した場合には,①発症前1か月間ないし6か月間にわたって,1か月あたり概ね45時間を超える時間外労働が認められない場合は,業務と発症との関連性が弱いが,概ね45時間を超えて時間外労働が長くなるほど,業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できること,②発症前1か月間に概ね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって,1か月あたり概ね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど,業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できることを踏まえて判断する。また,休日のない連続勤務が長く続くほど業務と発 - 28 -症との関連性をより強めるものであり,逆に,休日が十分確保されている場合は,疲労は回復ないし回復傾向を示すものである。 平成8年1月22日付け基発第30号で対象疾病としていた「不整脈による突然死等」は,不整脈が一義的な原因となって心停止又は心不全症状を発症した 場合は,疲労は回復ないし回復傾向を示すものである。 平成8年1月22日付け基発第30号で対象疾病としていた「不整脈による突然死等」は,不整脈が一義的な原因となって心停止又は心不全症状を発症したものであることから,「不整脈による突然死等」は,「心停止(心臓性突然死を含む。)」に含めて取り扱う。 ウ本件基準の運用上の留意点について厚生労働省平成13年12月12日付け基労補発第31号「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準の運用上の留意点等について」(甲9。以下「留意点等」という。)は,本件認定基準の具体的運用について定めている。同通達においては,発症前2週間以内といった発症前1か月間よりも相当短い期間のみに過重な業務が集中し,それより前の業務の過重性が低いために,長期間の過重業務とは認められない場合には,発症前1週間を含めた当該期間に就労した業務の過重性を評価し,それが特に過重な業務と認められるときは「発症に近接した時期(発症前概ね1週間)において特に過剰な業務に就労した」ものとして取り扱うことができる旨が定められている。 2 争点1(業務と亡Aの死との間の因果関係の有無)について⑴ 亡Aの死因についての各医師の見解前記認定事実のとおり,①亡Aが比較的若年であったこと,②亡Aは,死亡当日,自宅で倒れるまで重大な症状が出ておらず,突然心肺停止の状態になり死亡したこと,③心肺蘇生術中も,心電図の波形がVf(心室細動)又はAsys(心停止)の状態にあったことがそれぞれ認められるところ,亡Aの処置に当たったE医師は,上記①ないし③の事実を踏まえて,致死性不整脈が亡Aの死因であると判断している。 また,亡Aの死体を検案したF医師及び局医であるG医師も,主として上 - 29 -記②の事実から ったE医師は,上記①ないし③の事実を踏まえて,致死性不整脈が亡Aの死因であると判断している。 また,亡Aの死体を検案したF医師及び局医であるG医師も,主として上 - 29 -記②の事実から不整脈が亡Aの死因であると判断しており,亡Aの死因を致死性不整脈とするE医師の上記判断について特に異論を述べていない。 そして,診断上致死性不整脈を含むとされている心停止(心臓性突然死)においては,心電図上,心室静止・心室細動のいずれかを示す場合が多いところ),上記③の事実を踏まえて亡Aの死因を致死性不整脈と判断したE医師の意見に不合理な点は見当たらない。 ⑵ 亡Aの労働時間等についてア被告においては,以下イないしカ等において認定するとおり,本件当時,アルバイト従業員の正確な作業時間を記録しておらず,亡Aの労働時間を直接的かつ客観的に裏付ける証拠は存在しない。したがって,各証拠に照らして,作業の開始及び終了時刻等を合理的に推認することにより,これを認定するほかない。 イ作業の現場において被告社員が作業確認リスト記載の作業開始時刻・終了時刻を確認しているところ,被告においては,作業確認リストに記載された時間等をもとに発注元への見積りを作成していること(認定事実⑸イ),作業確認リストに記載された時間は,次の現場と記録上の時間が被らない限りは,原則としてそのまま被告の記録媒体に入力され,作業実績一覧(甲6の22)に反映されることからすれば(認定事実⑸オ),作業実績一覧記載の作業場所,作業開始時刻・終了時刻は,アルバイト従業員の労働時間を比較的正確に反映しているものといえる。したがって,亡Aの労働時間を算定するにあたっては,作業実績一覧記載の作業開始及び終了時刻(以下,それぞれ「記録上開始時刻」及び「記録上終了時刻」という。)に基づい 正確に反映しているものといえる。したがって,亡Aの労働時間を算定するにあたっては,作業実績一覧記載の作業開始及び終了時刻(以下,それぞれ「記録上開始時刻」及び「記録上終了時刻」という。)に基づいてこれを推計すべきである。 他方において,被告の主張する賃金算定上の各種ルールのうち,その存在が認定しえ,かつ,同ルールの存在を前提とした時間数を把握し得るものについては,これを以下のとおり斟酌することとする。 - 30 -ウ 2時間半ルールについて前記認定事実のとおり,本件規定には2時間未満の作業に対しても2時間分の賃金を支払う旨が記載される旨が記載されているところ,被告は,平成23年6月8日付けで,アルバイト従業員に対し,従来「最低保障時間」が3時間であったものを同年7月1日から2時間30分に減縮する旨の通知をしている(乙14)。また,作業実績一覧(甲6の22)をみると,一つの現場における作業時間は,同作業の記録上終了時刻と次の現場における記録上開始時刻とが接着している場合を除き,原則として,最低でも2時間30分(平成23年6月以前については3時間)あるものと記録されている。 また,証人Dは,平成24年当時において,実作業時間にかかわらず,一つの現場では2時間30分の作業をしたものとして算定して賃金の支給を受けていた旨証言し,証人Bは,作業確認リストには作業時間が最低でも2時間30分あるものと記載させ,そのままでは前の現場の作業時間が次の現場の作業時間と重なるような場合を除いて同リストの記載どおりに記録媒体に入力していた旨証言するところ,その内容はいずれも上記各事実と整合するものである。 以上によれば,被告によるアルバイト従業員の賃金の算定おいては,2時間半ルールが存在していたものと考えられる。 しかしながら,実際 するところ,その内容はいずれも上記各事実と整合するものである。 以上によれば,被告によるアルバイト従業員の賃金の算定おいては,2時間半ルールが存在していたものと考えられる。 しかしながら,実際に個々の現場の作業において2時間半ルールが適用されたか否かは,作業実績一覧の記載によっては区別することはできないし,一つの現場にかかる作業時間の最低値は不明であるから,被告の主張するように作業時間の平均を2時間30分の中間値(1時間15分)と認定するのも不合理というべきである。このようにみると,2時間半ルールが存在することを推計の根拠として実作業時間を認定することはできないといわざるを得ない。 - 31 -もっとも,証人Bは,大丸における催事立ち上がり日の朝の立会作業(以下「朝の立会作業」という。)については,記録上開始時刻と実際の作業開始時刻がずれる場合があった旨証言し,証人C及び同Dは,記録上開始時刻にかかわらず,午前9時に集合して作業を開始することが多かった旨証言しており,これらの証言によれば,朝の立会作業の開始時刻は概ね午前9時であったことが認められる。そうすると,朝の立会作業であると認定できる作業については,記録上開始時刻にかかわらず,午前9時に作業を開始したものとして実作業時間を推計するのが相当である。ただし,大丸における作業のうち,記録上開始時刻が午前8時,記録上終了時刻が午前10時30分であるもの(前日夜からの連続勤務になるものを除く。)については,朝の立会作業が行われたと認められるから,かかる作業については,午前9時に開始したものとして作業時間を推計するのが相当である。 エ 30分未満切上げルールについて作業実績一覧記載の作業開始時刻及び終了時刻が,すべて30分刻みで記載されていること,本件規定(乙1)に 開始したものとして作業時間を推計するのが相当である。 エ 30分未満切上げルールについて作業実績一覧記載の作業開始時刻及び終了時刻が,すべて30分刻みで記載されていること,本件規定(乙1)にも,作業時間は30分刻みで計算する旨記載されていること,証人C及び同Dも作業終了時刻を30分単位で繰り上げて作業確認リストに記載していた旨証言していることからすれば,被告の賃金算定上,30分未満切上げルールが存在していたものと認められる。 また,証人Cによれば,作業確認リストには,30分未満切上げルールを適用した後の終了時刻を記入しており,実終了時刻については作業確認リストに記載されていなかったことが認められるから,実際の終了時刻よりも平均的に15分終了時刻を遅らせて作業確認リストへ時刻を記載していたものとして,記録上終了時刻から15分早い時刻を実際の作業終了時刻とすべきである。 - 32 -オ休憩時間について被告においては,アルバイト従業員の具体的な休憩時間について記録せず,記録上開始時刻から記録上終了時刻までの時間数をすべて賃金算定上の労働時間としているが,労働時間は1日に9時間以上にわたる場合があり,このような場合についても常に一切の休憩時間がなかったとは認めがたい。そして,被告は,休憩時間の存在を考慮し,実際の労働時間が7時間を超える場合には1時間分,11時間を超える場合には2時間分,休憩時間に当たる時間を労働時間から控除すべき旨主張するところ,証人C及び同Dが,アルバイト従業員は,6時間の作業であれば,1時間程度の休憩をとっており,食事のための休憩もあった旨証言していることに照らすと,実際の労働時間が7時間を超えた場合には1時間,11時間を超える場合には2時間を控除して算定することには合理性があるというべきであ とっており,食事のための休憩もあった旨証言していることに照らすと,実際の労働時間が7時間を超えた場合には1時間,11時間を超える場合には2時間を控除して算定することには合理性があるというべきである。前記認定事実⑸カのとおり,百貨店以外の現場においては,アルバイト従業員用の休憩場所が確保されず,アルバイト従業員が立ったままで休憩時間を過ごす場合もあったと認められるが,そうではあっても,具体的な指揮命令下を離れているといわざるを得ない以上,かかる事情は労働時間の推計において考慮することはできず,業務の過重性の判断において考慮すべきものである。 なお,機材の到着遅延等により生じた待機時間についても,具体的な指示があれば作業を開始できる状態に置かれている以上,これを休憩時間と同様に扱うことはできず,労働時間から除外すべきではない。 カ移動時間について前記前提事実及び認定事実のとおり,被告が各アルバイト従業員の就業する現場を事前に把握するとともに,現場から現場への移動についても交通費を支給していたこと,現場により業務量が大きく変動するという被告における業務の特殊性のために,1日に複数の現場を設定し,現場ごとに - 33 -アルバイト従業員を募るという形が採られていることからすれば,被告においては,アルバイト従業員が1日に複数の現場で作業を行うことも当然に想定されていたといえる。すなわち,個々の現場における作業は,それ自体としては独立していながらも,ある現場で作業を終えた者が同日のうちに次の現場に移動して業務を行うという行動が当然に予定され,かつ,被告の業務においても必要とされていたといえるから,一つの現場から他の現場への移動に要する時間についても,業務の過重性を判断するに際しては,作業時間と同様,被告の指揮命令に基づくものとみ れ,かつ,被告の業務においても必要とされていたといえるから,一つの現場から他の現場への移動に要する時間についても,業務の過重性を判断するに際しては,作業時間と同様,被告の指揮命令に基づくものとみて,これを労働時間に含めるのが相当である。 なお,30分未満切上げルールが適用された結果として,ある作業の記録上終了時刻と次の現場における記録上開始時刻とが接着している場合については,30分刻みに記載したことにより記録されていない移動時間が存在するものと考えられる。よって,そのような場合は,前記エに基づき推定される実終了時刻から記録上終了時刻までの15分間に移動が行われたものと推認するのが相当である。 キ以上の検討に基づいて推計した亡Aの死亡前直前6か月間における労働時間数及び時間外労働時間数(1週間当たり40時間を超える労働時間のことをいう。ただし,1月ごとに集計する上で,1週間に満たない日数が出る場合には,各労働日につき8時間を超える労働時間をいう。)は,別紙4のとおりとなる。 ⑶ 亡Aの業務の過重性についてア死亡前1か月前から6か月前(平成23年10月16日から平成24年4月12日)までの期間における亡Aの労働時間等についてみると,作業実績一覧によれば,同期間における亡Aの基本的な就業形態は,午前9時頃から立会作業等に従事し,次の現場までの移動時間や空き時間の後,午後から別の現場で作業を行い,午後10時から11時頃にはそ - 34 -の日の作業を終えるというものであった。 他方で,深夜帯(午前0時ないし1時30分)を含む作業を行った日のうち,その終了時刻(30分未満切上げルールを適用後のもの。)から次の作業の開始時刻(立会作業については開始時刻の補正をしたもの。)までの時間が9時間未満となっているものの回数は,以 業を行った日のうち,その終了時刻(30分未満切上げルールを適用後のもの。)から次の作業の開始時刻(立会作業については開始時刻の補正をしたもの。)までの時間が9時間未満となっているものの回数は,以下のとおりであり,7時間未満となっているものの回数は,以下の( )内に記載したとおりである。 平成24年3月14日から同年4月12日まで 5回(3回)平成24年2月13日から同年3月13日まで 6回(5回)平成24年1月14日から同年2月12日まで 4回(2回)平成23年12月15日から平成24年1月13日まで 5回(2回)平成23年11月15日から同年12月14日まで 6回(3回)平成23年10月16日から同年11月14日まで 5回(4回)また,同期間のうち,休日(午前0時を起点とした24時間の間に作業がなかった日をいう。)の日数は以下のとおりであり,1か月当たり平均すると約2.8日となる。 平成24年3月14日から同年4月12日まで 2日平成24年2月13日から同年3月13日まで 3日平成24年1月14日から同年2月12日まで 2日平成23年12月15日から平成24年1月13日まで 6日平成23年11月15日から同年12月14日まで 2日平成23年10月16日から同年11月14日まで 2日亡Aは,午前9時頃から空き時間等を挟みつつ午後11時頃まで働くという就労形態を基本としていたところ,月に複数回は,作業が深夜帯(午前0時ないし1時30分まで)に及ぶ場合があり,そのうち,終業 - 35 -時から翌日の作業開始までの時間が9時間未満である場合は,4ないし6回あり,そのうち7時間未満である場合は,多ければ月に5回,少なくとも月に2回あったというものである。 翌日の作業開始までの時間が9時間未満であ 業開始までの時間が9時間未満である場合は,4ないし6回あり,そのうち7時間未満である場合は,多ければ月に5回,少なくとも月に2回あったというものである。 翌日の作業開始までの時間が9時間未満である場合には,帰宅するための移動時間,次の出勤に要する移動時間や身支度にかかる時間を考慮すると,自宅等において5時間ないし6時間以上の睡眠時間を確保することは困難であり,これが7時間未満である場合には,上記睡眠を確保することはほぼ不可能と考えられ,結局,労務による疲労が回復しないままに次の作業に従事することとならざるを得ない。また,5時間ないし6時間以上の睡眠時間が確保できる場合であっても,勤務時間帯の変化が生体リズムと生活リズムとの位相のずれをもたらし,疲労の蓄積を招く要因となることからすれば,このような勤務時間帯の変化が亡Aの身体に負担をかけるものであったことは否定できない。 また,平均して月約2.8日の休日によっては,不規則な時間帯に働いたことによる疲労を回復するために十分であるとは認められない。 以上のように,亡Aが死亡前6か月間従事していた業務は,月毎の労働時間数の差等はあれ,その時間帯の不規則さ等から見て,相当程度疲労を蓄積しやすいものであったと認められる。 前記⑵キにおいて認定したとおり,亡Aの死亡前1か月間の時間外労働時間数は,死亡前1か月(平成24年3月14日から同年4月12日)については84時間25分に及んでおり,これ自体としても相当程度長時間の労働に従事していたとみることができるものであるが,殊に,死亡前2週間(同年3月30日から同年4月12日)については49時間22分,死亡前1週間(同年4月6日から同月12日)については31時間42分の時間外労働を行っており,死亡時に近接するほど量的な過重性が増大していった 月30日から同年4月12日)については49時間22分,死亡前1週間(同年4月6日から同月12日)については31時間42分の時間外労働を行っており,死亡時に近接するほど量的な過重性が増大していったものと認められる。 - 36 -また,労働時間帯に着目すれば,死亡前2週間については,作業が午前0時頃まで及んだ日が6日であったのに対し,休日は1日であった。 これに加えて,死亡直前の亡Aの具体的な労働状況についてみると,亡Aは,①4月8日の午後9時から翌9日の午前3時頃まで働いた後,約4時間の空き時間を挟んで,午前7時30分から作業に従事し,移動時間や合計2時間程度の空き時間を挟みながら,同月10日の午前0時頃まで働き,さらに,②同月10日の午前9時から同月11日午前0時近くまで働いた後,③同月11日午前8時から同月12日(死亡日)の午後4時まで,移動時間や約2時間の空き時間を挟みながらも,ほぼ連続して働いていた。 このように,亡Aは,死亡直前の数日間,十分に休息する時間がとれないまま,いわば昼夜を問わず働いている状態にあり,一定の休憩時間が与えられていたことを考慮しても,このような労働が亡Aの身体に重大な負担をかけていたものと認められる。 ウ以上認定したとおり,亡Aの死亡前6か月間の勤務は,不規則な時間帯に働くことが多く,休日が少ないという状況にあって,長期間にわたり従事することにより疲労の蓄積を招きやすいものであったといえる。さらに,死亡に近接した時期には,労働時間数が増加したのみならず,不規則かつ深夜時間帯にわたる作業もより増加していた上,十分な休息なく連続して数日間働くなど,亡Aの身体に重大な負荷が生じていたものと認められる。 また,前記1で認定したとおり,アルバイト従業員の作業内容は,什器の運搬にキャスタ 増加していた上,十分な休息なく連続して数日間働くなど,亡Aの身体に重大な負荷が生じていたものと認められる。 また,前記1で認定したとおり,アルバイト従業員の作業内容は,什器の運搬にキャスターを使用等するとしても,決して軽易なものではなく,催事のオープンに合わせ,時間的制約がある中での作業を強いられるものであり,さらに,亡Aの被告における勤務歴は15年にも及んでおり,現場で相応の役割を果たしていたことにも照らすと,亡Aにとっては現場の選択に際し,強制ではないにしても,疲労が蓄積している場合にもそのこ - 37 -とを理由として現場作業に入らないということも容易にはできない状況であったと考えられるから,その意味でも,肉体的,心理的負荷が存在したと認められる。 ⑷ そして,恒常的な長時間労働等の負荷により疲労の蓄積が生じ,これが自然経過を著しく超えて血管病変等を増悪させ,その結果,心臓や脳の疾患を発生させることがあることは,公知の事実であるところ,亡Aにおいて通常の労務に支障を来すような基礎疾患等を有していたことは明確には認められず,他方で,前記認定のとおり,死亡日前6か月における不規則な労働や,死亡日直前の連続勤務等により,亡Aの身体には特に強度の身体的負荷が生じていたことが認められる。死亡日前2か月目ないし4か月目(平成23年12月15日から平成24年2月14日まで)の間の亡Aの時間外労働時間数は,多かったとまではいえないが(別紙4),時間帯が不規則であるなど,疲労を蓄積しやすいものであったことは前記⑶アのとおりである。 ⑸ 以上の事情によれば,亡Aは,恒常的な長時間勤務ないし生体リズムと生活リズムとの位相のずれを生じ得る不規則な勤務により,慢性的に疲労が蓄積する労働状況にあったところ,ことに亡Aの死亡前1か月間は, 以上の事情によれば,亡Aは,恒常的な長時間勤務ないし生体リズムと生活リズムとの位相のずれを生じ得る不規則な勤務により,慢性的に疲労が蓄積する労働状況にあったところ,ことに亡Aの死亡前1か月間は,労働時間が増大したことに伴い疲労や心理的負荷が蓄積され,これを原因として致死性不整脈による心疾患を発症し,死亡するに至ったと認めるのが相当であり,本件業務と亡Aの致死性不整脈発症及び死亡との間には因果関係が存在するものと認められる。 ⑹ これに対し,被告は,亡Aの死亡原因が医学的知見により判明しているとはいえず,いかなる基礎疾患がどのように増悪し死亡に至ったかについての経過が不明であるとして,亡Aの死因を争う。しかし,亡Aの死亡原因については,前記⑴で認定したとおり,複数の医師が致死性不整脈であるとしているところ,亡Aには,前記のとおり,自然的経過によって致死的不整脈を招来するような既往症があった事実は認められないことや,上記認定を疑わ - 38 -せるような具体的な事情も窺われないことに照らすと,被告の上記主張は採用できず,前記認定は左右されない。 3 争点2(被告の安全配慮義務違反の有無)について⑴ 労働者が労働日に長時間にわたり業務に従事する状況が継続するなどして疲労や心理的負荷等が過度に蓄積すると,労働者の心身の健康を損なう危険のあることは,周知のところであり,労働基準法上の労働時間制限や労働安全衛生法の健康配慮義務は,上記のような危険の発生の防止をも目的とするものと解されるから,使用者は,その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し,業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負うと解するのが相当であり(最高裁判所平成12年3月24日第 を定めてこれを管理するに際し,業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負うと解するのが相当であり(最高裁判所平成12年3月24日第二小法廷判決民集54巻3号1155頁参照),使用者が上記義務に違反した場合には,労働者に対し,不法行為に基づく損害賠償責任を負う。 ⑵ア被告とアルバイト従業員との間の労働契約は,法形式としては,被用者の申込みに応じて,使用者が具体的な作業場所を指示し,被用者が同現場の作業に従事するという形をとるものであるが,被告においては,1人のアルバイト従業員が1日のうちに複数の現場に赴いて稼働することがあることを当然の前提として,賃金の算定における各現場の間の移動時間の取扱いや,移動に要する交通費の支給に関するルールが定められていたのであるから,被告は,個々の現場での作業を完全に独立のものとして扱ってはいなかったというべきである。 イ陳列棚の搬入・組立・設置等の業務は,相当の重量を有すうものであって,一定の体力を要するものであった上,現場によっては被告のアルバイト従業員用の休憩場所が用意されず,立ったまま休憩をとらなければならない場合もあったのであり,業務に従事する者の体力的な負担も相応にあったといえる。 - 39 -また,被告におけるアルバイト従業員の業務は,現場により時間帯や時間数が様々であって,決まったシフト等が存在しない上,前記認定のとおり,深夜の時間帯に及ぶ作業も少なくなかったことに照らせば,被告における労働状況は,長期間稼働する者にとって,稼働の時間帯が非常に不規則であり,疲労の蓄積を招きやすいものであったといえる。 ウ加えて,前記前提事実及び認定事実によれば,亡Aは,遅くとも平成9年5月頃から被告において恒常的にアルバ とって,稼働の時間帯が非常に不規則であり,疲労の蓄積を招きやすいものであったといえる。 ウ加えて,前記前提事実及び認定事実によれば,亡Aは,遅くとも平成9年5月頃から被告において恒常的にアルバイト従業員としての勤務を開始しているところ,①被告における亡Aの年収は遅くとも平成21年頃までには300万円を超え,平成23年については400万円を超えるなどしており,亡Aが専ら被告での勤務により収入を得ていたと認められること,②亡Aは大丸の通用口を出入りするための腕章を所持しており,同現場における業務に継続して従事することが予定されていたといえること,③亡Aは被告における勤務期間が長く,アルバイト従業員が足りない際に作業に入るよう被告従業員から依頼を受けたこともあったこと等からすれば,亡Aが,過去において被告のアルバイト従業員として,15年以上もの長期間継続して労務を提供し,かつ,将来にわたっても長期間継続して労務を提供する意思を有していたことが明らかであり,被告においても,亡Aのそのような意思を認識していたものと認められる。 エ以上のとおり,被告のアルバイト従業員の労働状況として,その従事する業務は,長期間従事することにより疲労の蓄積を招くものであった上,亡Aにおいては,15年以上の長期間にわたり継続的にアルバイト従業員として稼働するとともに,さらに将来にわたって稼働する意思を有しており,被告においてもこのことを認識していたものである。被告と亡Aとの間の労働関係は,形式的には各現場ごとに個別の労働契約が成立するものではあるが,上記のような事情に照らせば,被告は,亡Aに対し,期間の定めのない雇用契約における使用者と同様に,業務に伴う疲労等の過度の - 40 -蓄積により心身の健康を損なうことのないよう注意すべき義務を負っていた 情に照らせば,被告は,亡Aに対し,期間の定めのない雇用契約における使用者と同様に,業務に伴う疲労等の過度の - 40 -蓄積により心身の健康を損なうことのないよう注意すべき義務を負っていたと認めるのが相当である。 以上によれば,被告は,遅くとも亡Aが死亡する1年前までの時点において,亡Aが一定期間継続して就労することを前提として,亡Aから具体的な作業の申込みを受けるにつき,作業に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積してその心身の健康を損なうことがないよう注意すべき義務を負っていたものというべきである。すなわち,被告は,亡Aの労働時間数及びその他の労働形態等(稼働する時間帯,現場ごとの作業時間等)を把握するとともに,労働時間数等において亡Aに過度の負担をもたらすことのないよう調整するための措置を採るべき義務を負っていたものであり,具体的には,亡Aによる申込みの前においては労働時間数等を適切に調整するよう,また,申込みの後においても他の日時,時間帯に変更等するよう指導するなど,亡Aの労働状況を適切なものとするための措置を採るべき義務を負っていたものというべきである(なお,被告においてそのような措置を採ることが困難であったとはいえない。)。 ⑶ 前記のとおり,亡Aは,長期間にわたる不規則な労働に加え,死亡直前の2週間における長時間かつ極めて不規則な労働により死亡するに至ったものと認められるところ,被告は,労働時間等の亡Aの労働状況により,被告におけるアルバイト業務が亡Aに過度の負担をもたらすおそれがあるにもかかわらず,亡Aの正確な労働時間を把握することを怠り,かつ,亡Aの労働時間数等を調整するための措置を採ることなく,漫然と亡Aを各現場における作業に従事させたものといえるから,被告は,亡Aに対する上記義務の履行を怠ったものとい 間を把握することを怠り,かつ,亡Aの労働時間数等を調整するための措置を採ることなく,漫然と亡Aを各現場における作業に従事させたものといえるから,被告は,亡Aに対する上記義務の履行を怠ったものというべきである。 4 争点3(過失相殺の可否及び過失割合)について前記認定事実のとおり,被告において作業現場に必要なアルバイト従業員を確保することができない場合には,被告側から作業に入るよう個別に依頼され - 41 -ることがあり,稼働年数が長く,真面目な性格であった亡Aが,その責任感から,現場に穴をあけることのないよう努力して作業を引き受けていたことは容易に推察できるものの,被告においては従事すべき作業のノルマというべきものは設定されておらず,基本的には,亡Aからの申込みがない限り,具体的な作業に従事する義務が発生するものではなかったといえる。 そうすると,亡Aはその従事する作業についてある程度主体的に選択し得る立場にあったともいえるのであって,亡Aが作業に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して心身の健康を損なう事態を避けるためには,自らにおいても業務量を適正なものとし,休息や休日を十分に取ることにより疲労の回復に努めるべきであったことは否定できないから,亡Aの死亡による損害の全額についての賠償を被告に命じるのは,当事者間の公平を失し,相当とはいえない。そこで,民法722条を適用ないし類推適用して,原告らが被告に対して賠償を求め得る金額(ただし,損益相殺による減額前の金額であり,弁護士費用を含めない。)からその30%を控除するのが相当である。 この点,被告は,平成24年1月に亡Aらが大阪市北区天満から京都府左京区千代田町に転居したために長距離通勤となったことや,それにもかかわらず,自宅から遠い大丸や第2倉庫において作業をしてい る。 この点,被告は,平成24年1月に亡Aらが大阪市北区天満から京都府左京区千代田町に転居したために長距離通勤となったことや,それにもかかわらず,自宅から遠い大丸や第2倉庫において作業をしていたこと等から,これらの点についても亡Aの死亡に対する寄与を認めるべきである旨主張する。しかし,上記転居により従前の通勤時間と比較して片道1時間以上を要することとなったとしても,その距離が社会通念上許容されないほどの遠距離ではなく,これをもって損害の減額要因とするのは相当とはいえず,亡A自身による作業時間や現場の選択が可能であったことは,上記のとおり既に評価済みであるから,上記割合を超えて過失相殺をすべきものとは認められない。 また,被告は,亡Aが健康診断を受けていなかったことや,深夜に食事をとり,喫煙を続けているなど,自身の健康管理を怠っていたことが死亡の原因である旨主張するが,死因については前記に認定したとおりであって,健康診断 - 42 -を受けていれば死亡を回避できたものとはいえず,深夜に食事をとらざるを得なかったのは,むしろ深夜勤務に起因する面があるものと認められ,喫煙の程度が亡Aの死亡に寄与したとも認められないから,結局,上記被告の主張する点を損害の減額事由として斟酌することはできない。 5 争点4(損害の発生及び額)について⑴ 亡Aの損害ア逸失利益 5095万4999円前記認定事実のとおり,亡Aが平成23年4月11日から平成24年4月10日までに被告から支給された賃金総額は480万7665円であるところ,前記に認定した亡Aの稼働状況に照らせば,満67歳までの29年間にわたり,上記収入が得られた蓋然性が認められるから,上記金額を基礎収入とするのが相当である。 この点,原告らは,遺族補償年金の給付基礎日額か 定した亡Aの稼働状況に照らせば,満67歳までの29年間にわたり,上記収入が得られた蓋然性が認められるから,上記金額を基礎収入とするのが相当である。 この点,原告らは,遺族補償年金の給付基礎日額から算出した年収額を基礎収入とすべきと主張する。しかし,アルバイト従業員による労務提供は,法形式としては,個々の現場について別個の雇用契約を随時締結したことに基づき行われるものであり,法定時間外労働について労働基準法所定の割増賃金等を当然に請求できるものとは解されず,これまでも割増賃金による支給がされていないことからすれば,亡Aの基礎収入の算定において,割増賃金を考慮することはできないというべきである。 亡Aは一家の支柱として妻子を養っていたから,逸失利益を算定するに当たって控除すべき生活費は,その全稼働期間を通じ,30%とするのが相当である。 よって,480万7665円から生活費として30%を控除した金額に,労働能力喪失期間29年に対応するライプニッツ係数(15.141)を乗じた金額である5095万4999円(480万7665円× - 43 -15.141×(1-0.3)。1円未満切捨て,以下同じ。)をもって,亡Aの死亡による逸失利益と認めるのが相当である。 イ慰謝料 2800万円亡Aは,死亡時は38歳と働き盛りであり一家の支柱であったこと,妻と幼い子を残して死亡したことその他本件に現れた一切の事情を勘案すると,亡Aにかかる死亡慰謝料の額は2800万円と認めるのが相当である。 ウ葬祭料 150万円原告らは,原告らに150万円の葬祭料相当額の損害が生じた旨主張するところ,証拠(甲6の4)及び弁論の全趣旨によれば,亡Aの葬儀が執り行われたことが認められ,上記全額について相当因果関係の範囲内にある損害と認められる。 0万円の葬祭料相当額の損害が生じた旨主張するところ,証拠(甲6の4)及び弁論の全趣旨によれば,亡Aの葬儀が執り行われたことが認められ,上記全額について相当因果関係の範囲内にある損害と認められる。 エ合計 8045万4999円オ過失相殺後の額 5631万8499円前記4において認定したとおり,過失相殺により,エの額の30%を控除するのが相当である。 ⑵ 原告1が請求し得る損害額ア原告らは亡Aの損害賠償請求権の2分の1をそれぞれ相続により承継するから,原告1の後記控除前の損害額は,上記(1)オの2分の1である2815万9249円となる。 イ損益相殺原告1は,①遺族補償年金として,当審口頭弁論終結日である平成28年8月5日までに合計1154万6476円,②葬祭料として84万4330円の給付を受けているところ(前記前提事実⑷),①は原告1が相続した亡Aの損害賠償請求権のうち逸失利益の元金部分(過失相殺後の金額である1783万4249円)につき当然に填補がされ,②も原告1分の - 44 -葬祭費のうち過失相殺後の金額である52万5000円を限度としてその元金部分につきそれぞれ填補がされる(弁論の全趣旨)から,これらを控除した後の損害額は,1608万7773円となる。 (計算式)2815万9249円-(1154万6476円+52万5000円)ウ弁護士費用 160万円本件の事情を総合すると,原告1につき,相当因果関係のある弁護士費用の額は121万円と認めるのが相当である。 エ原告1にかかる損害額の合計 1768万7773円⑶ 原告2が請求し得る損害額ア原告2が亡Aから相続した損害賠償請求権 2815万9249円イ弁護士費用 281万円本件の事情を総合すると,原告2につき,相当因果 1768万7773円⑶ 原告2が請求し得る損害額ア原告2が亡Aから相続した損害賠償請求権 2815万9249円イ弁護士費用 281万円本件の事情を総合すると,原告2につき,相当因果関係のある弁護士費用の額は281万円と認めるのが相当である。 ウ原告2にかかる損害額の合計 3096万9249円⑷ まとめ以上によれば,被告が賠償すべき原告らの損害額は,主位的請求(不法行為)に基づき,原告1については1768万7773円及びこれに対する亡A死亡日からの年5分の割合による遅延損害金,原告2については3096万9249円及びこれに対する同日からの年5分の割合による遅延損害金となる。原告らの予備的請求(債務不履行)に基づく損害は,上記損害額を上回るものではないから,同額を超える予備的請求部分には理由がない。 第4 結論以上の次第で,原告らの請求は,主位的請求に基づき,被告に対し,原告1については1768万7773円及びこれに対する亡Aの死亡日である平成24年4月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害 - 45 -金の支払を求める限度で,原告2については3096万9249円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度でそれぞれ理由があるから,原告らの請求をこの限度において認容し,その余の請求をいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第3民事部 裁判長裁判官長谷部幸弥 裁判官中武由紀 裁判官馬場梨代 - 46 - 中武由紀 裁判官馬場梨代

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