平成13(ワ)142 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成14年3月28日 名古屋地方裁判所
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判決文本文5,600 文字)

主文 1 被告Aは,原告に対し,5540万円及びこれに対する平成12年7月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,原告に生じた費用の2分の1を被告Aの負担とし,被告Bに生じた費用を原告の負担とし,その余を各自の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告らは,原告に対し,連帯して5590万円及びこれに対する平成12年7月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 前提事実(争いのない事実並びに証拠(被告A本人,被告B本人)及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)・原告は,妻Cとともに,呉服商を営んでいる者である。 ・被告Bは,NHK紅白歌合戦に出場したことのある歌謡曲の歌手である。 ・被告Aは,被告Bの妻の母で,被告Bの所属する株式会社Dの株主であり,いわゆる西武セゾングループ(以下「西武」という。)のオーナーに関係があるとする者で,西武鉄道線の駅で飲食店の営業をしていた株式会社Eの代表取締役社長であった。 ・原告及びCは,被告Bのいわゆるファンであったが,平成11年7月ころ,知人を通じて被告らと知り合い,平成12年5月ころには,被告Bを再度NHK紅白歌合戦に出場させるための署名運動を行うなどした。 ・原告及びCは,被告Aの勧誘を受け,西武関連企業の未公開株式取得に関するものとして,原告が第一勧業銀行池袋支店の被告A名義の当座預金口座に,平成12年5月31日4450万円(以下「第1振込」という。),同年7月4日890万円(以下「第2振込」という。)を各振込送金し(合計5340万円。以下「本件振込金」という。),被告Aは,本件振込金を受領した。 2 本件は,原告が,被告らに対し,被 という。),同年7月4日890万円(以下「第2振込」という。)を各振込送金し(合計5340万円。以下「本件振込金」という。),被告Aは,本件振込金を受領した。 2 本件は,原告が,被告らに対し,被告Aは,真実は受領した金員を自分のために費消する意図であるのにこれを秘し,原告及びCに架空の未公開株式取得の話を持ちかけ,その資金名目で原告から本件振込金5340万円を騙し取り,原告及びCはこのような大金を騙し取られた心労で体調を崩すまでの精神的苦痛を被ったが,被告Bは,被告Aと詐欺行為を共謀していたか,少なくとも事情を知りながら被告Aの詐欺行為に加担し,幇助したものであり,原告は,本件振込金5340万円,慰謝料50万円及び弁護士費用200万円(合計5590万円)の損害を被ったとして,その賠償及びこれに対する第2振込の日である平成12年7月4日から支払済みまで民法所定(年5分の割合)の遅延損害金の連帯支払を求めている事案である。 これに対し,被告らは,被告Aは,西武関連企業である株式会社若菜(以下「若菜」という。)の未公開株式を取得しようと考え,原告からその資金を借用したもので,結果的に未公開株式の取得ができず,現在まで本件振込金の返済もできないではいるが,未公開株式取得の話は架空のものではなく,これを騙し取ったものではないし,被告Bは,被告Aの行為に関与したことはなく,当時は被告Aの行為自体知らなかったとして争っている。 3 争点・被告Aは,原告から本件振込金を騙し取ったものか。 ・被告Aの不法行為についての被告Bの共謀又は幇助・原告の損害第3 当裁判所の判断 1 争点・(被告Aは,原告から本件振込金を騙し取ったものか。)について・前記前提事実に証拠(甲3号証,4号証,6号証,7号証,8号証の1,2,9号証ないし11号証,14号 第3 当裁判所の判断 1 争点・(被告Aは,原告から本件振込金を騙し取ったものか。)について・前記前提事実に証拠(甲3号証,4号証,6号証,7号証,8号証の1,2,9号証ないし11号証,14号証の1,2,16号証,証人C,被告A本人。ただし,後記採用しないものを除く。)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の各事実が認められ,これに反する乙1号証(被告Aの陳述書)の記載部分及び被告Aの供述部分は採用できない。 ア被告Aは,Cを通じ,原告に対し,平成12年5月末ころ,西武関連企業の未公開株式取得の話があるので,1株8900円で5000株分のお金を出してもらえれば,被告A名義で取得し,同年9月に上場(公開)したときに売却して必ず儲けてもらえる旨持ちかけ,同年5月31日,これを信用した原告から4450万円の第1振込を受けた。 イ被告Aは,Cを通じ,原告に対し,平成12年6月から7月にかけて,上記西武関連企業の未公開株式取得について,もう少し協力してほしいと持ちかけ,平成12年7月4日,これを信用した原告から1株8900円で1000株分の資金として890万円の第2振込を受けた。 ウ被告Aは,株式会社Eの債務10億円近くを同社の役員として連帯保証していたが,株式会社Eは,平成9年ころから資金繰が苦しくなっていたところ,平成12年5月ころには西武鉄道との関係が悪化し,同年6月には西武鉄道線の駅での飲食店営業ができない状態となり,経営が立ち行かなくなっていた。 エまた,被告Aは,原告より前にも,少なくとも10人以上の知り合い等から,未公開株式の取得資金として,借りないしは預かった金員があり,この関係だけでも少なくとも約1億円の債務が残っていた。 オそして,被告Aには,株式会社Eから得ていた月150万円くらいの役員報酬と株式会社Dでのアルバイト として,借りないしは預かった金員があり,この関係だけでも少なくとも約1億円の債務が残っていた。 オそして,被告Aには,株式会社Eから得ていた月150万円くらいの役員報酬と株式会社Dでのアルバイト料以外には,見るべき収入源はなく,その内株式会社Eの経営は上記ウのとおり立ち行かなくなっており,上記エの知り合い等から借りないしは預かった金員も,その一部を株式会社Eの資金繰に回してしまっていたのであって,新たに他から借りたりする以外には,知り合い等から借りないしは預かった金員を返還することはできず,正常な手段での借入も困難な状況であった。 カさらに,被告Aが原告及びCに持ちかけた株式公開予定の企業であったとする若菜についても,平成13年下期を目標にした株式公開の予定はあったものの,被告Aの話にあった平成12年中の株式公開の予定は,当初から存在しなかった。 ・以上の認定事実によれば,被告Aが,原告及びCに西武関連企業の未公開株式取得の話を持ちかけ,原告から第1振込及び第2振込を受けた平成12年当時は,西武関連企業の年内株式公開予定はなく,被告Aは,本件振込金を,西武関連企業の未公開株式取得に当てるのではなく,株式会社Eの資金繰や以前に知り合い等から借りないしは預かった金員の返還等に費消する目的であったのであり,被告Aは,このような情を秘し,西武関連企業の未公開株式取得資金として使用されるものと原告を誤信させて,原告に第1振込及び第2振込をさせたもので,原告はこのような情を知っていれば第1振込及び第2振込をすることはなかったものと認められる。 そうすると,被告Aは,詐欺により原告から本件振込金5340万円を騙し取ったものであり,原告に対し,不法行為による損害賠償責任を負う。 2 争点・(被告Aの不法行為についての被告Bの共謀又は幇助)について ると,被告Aは,詐欺により原告から本件振込金5340万円を騙し取ったものであり,原告に対し,不法行為による損害賠償責任を負う。 2 争点・(被告Aの不法行為についての被告Bの共謀又は幇助)について・原告は,被告Bは,被告Aと共謀していたか,少なくとも事情を知りながら被告Aの詐欺行為に加担し,幇助したものであると主張し,前記前提事実及び上記1・の認定事実に証拠(甲3号証,4号証,6号証,7号証,8号証の1,2,12号証の1,2,13号証の1ないし3,20号証の1ないし10,21号証の1ないし5,証人C,被告A本人,被告B本人。ただし,後記採用しないものを除く。)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の各事実が認められ,これに反する乙1号証(被告Aの陳述書)及び2号証(被告Bの陳述書)の各記載部分並びに被告らの各供述部分は採用できない。 ア被告Aは,原告及びCに対し,第1振込についての平成12年5月31日付けの預り書(甲3号証,21号証の4。以下「第1預り書」という。)とともに,第1振込を受けた4450万円の清算について「ToB,F,G,H,I,JそしてK氏.上記の生存者達に遺言します。」などと記載した同日付けの原告及びC宛書面(甲4号証,21号証の5。以下「第1遺言メモ」という。)を作成し,第1預り書及び第1遺言メモを小封筒(甲21号証の3)に入れ,それを株式会社Dの封筒(甲21号証の2)に入れ,平成12年6月7日,名古屋観光ホテルのロビーで,被告BからCに手渡し,Cは,被告Bに対し,預けた金が大きく育ってくれるとよいなどと述べた。 イ被告Aは,原告及びCに対し,第2振込についての平成12年7月4日付けの預り書(甲6号証)とともに,第2振込を受けた890万円の清算について「ToB・F・G・H・I・JそしてK氏上記の生存者達に遺言します ,原告及びCに対し,第2振込についての平成12年7月4日付けの預り書(甲6号証)とともに,第2振込を受けた890万円の清算について「ToB・F・G・H・I・JそしてK氏上記の生存者達に遺言します。」などと記載した同日付けの原告及びC宛書面(甲7号証)を作成し,そのころ郵送した。 ウ原告及びCは,被告Aに対する平成12年10月13日付けの本件振込金に関する手紙(甲8号証の1)及び振込先の原告の預金口座を記載したメモ(甲8号証の2)を作成し,同日名古屋市付近を走行中のタクシーの中で,Cが,被告Bに見せた上,被告Bに手渡した。 エ被告Bは,平成12年12月2日放送のラジオ番組で,被告Aのことを,真実は義母であるのに「お袋は僕を産んですぐねえ,勘当させられて」などと実の母親であるかのように述べたり,「弁護士の資格を持ってたりねえ,医者の免許も持ってるんですよ」などと虚偽の事実を述べた。 オ原告及びCは,弁護士に依頼して,被告Aに対し,平成12年11月16日到達の内容証明郵便(甲12号証の1。以下「本件内容証明郵便」という。)で,本件振込金4450万円を返還するよう請求した。 カ被告Aは,幼少のころから親交のあったLに対し,原告及びCに対するものと同様の未公開株式取得のための資金の拠出を持ちかけ,平成12年9月5日1780万円の交付を受けるなどしており,この1780万円の返還を求められていたが,被告Bは,被告AのLに対する,返済期限を同月とし,利息を年12パーセントとする,1780万円の平成13年3月9日付け金銭借用証書(甲20号証の8)に連帯保証人として署名押印し,Lに対し,被告Aの同債務を連帯保証した(以下「別件連帯保証」という。)。 ・以上の認定事実によれば,被告Bは,原告ないしCに対しても,被告Aを持ち上げるような虚偽の部分を含 証人として署名押印し,Lに対し,被告Aの同債務を連帯保証した(以下「別件連帯保証」という。)。 ・以上の認定事実によれば,被告Bは,原告ないしCに対しても,被告Aを持ち上げるような虚偽の部分を含む発言をしており,原告ないしCと被告Aとの間で株式等に関する何らかの金銭的なやりとりがなされていることを平成12年6月ころにも知っていたものと認められるが,被告Aや被告Aの経営する株式会社Eの資金繰等の状況や,被告Aが架空の未公開株式取得の話を作って多額の金員を騙取しないしは騙取しようとしていたことまで知っていたと認めるに足りる証拠はないし,平成13年3月9日ころ,原告と同様の事案について,Lに対し1780万円の別件連帯保証をしていることからすると,むしろこのようなAの詐欺行為を伺わせる事情までは知らなかったのではないかとも考えられ,被告Bが,被告Aと詐欺行為を共謀したり,被告Aの詐欺行為を幇助したものと認めることはできない。 3 争点・(原告の損害)について以上によれば,原告は,被告Aの詐欺行為により,被告Aに騙取された本件振込金5340万円の損害を被ったものと認められる。 なお,原告は,慰謝料50万円を請求しているが,本件で原告に生じた精神的苦痛は,本件振込金分の損害が賠償されれば慰謝される性質のものというべきであり,原告の慰謝料の請求は理由がない。 本件弁護士費用としては,200万円が相当である。 そうすると,原告が,被告Aに対し,被告Aの詐欺行為について賠償を求めることのできる損害は,本件振込金分5340万円及び弁護士費用200万円の合計5540万円となる。 4 よって,原告の請求は,被告Aに対し,上記3の5540万円及びこれに対する第2振込の日である平成12年7月4日から支払済みまで民法所定(年5分の割合)の遅延損害金を求める 540万円となる。 4 よって,原告の請求は,被告Aに対し,上記3の5540万円及びこれに対する第2振込の日である平成12年7月4日から支払済みまで民法所定(年5分の割合)の遅延損害金を求める限度で理由があり,その余は理由がなく,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第7部裁判官長谷川恭弘

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